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特表2024-530710ジアルキレンフェノールグリコールエーテルの単離
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  • 特表-ジアルキレンフェノールグリコールエーテルの単離 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-23
(54)【発明の名称】ジアルキレンフェノールグリコールエーテルの単離
(51)【国際特許分類】
   C07C 41/42 20060101AFI20240816BHJP
   C07C 43/23 20060101ALI20240816BHJP
   C07C 41/44 20060101ALN20240816BHJP
【FI】
C07C41/42
C07C43/23 A
C07C41/44
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024510329
(86)(22)【出願日】2022-08-24
(85)【翻訳文提出日】2024-02-19
(86)【国際出願番号】 US2022041326
(87)【国際公開番号】W WO2023028112
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】63/237,173
(32)【優先日】2021-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100144417
【弁理士】
【氏名又は名称】堂垣 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】エドワード ディー.ダウグス
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AA05
4H006AD11
4H006AD30
4H006BC31
4H006BE10
4H006GN06
4H006GP01
4H006GP03
4H006GP10
(57)【要約】
本開示は、ジアルキレンフェノールグリコールエーテル(DPGE)を、DPGE及びグリコシル化フェノール不純物を含む混合物から単離するための方法を提供する。本方法は、アルカリ金属源を混合物に添加して、アルカリ金属とグリコシル化フェノール不純物との間の反応から形成されるアルカリフェノール塩を有するフェノールグリコール生成物を形成することと、薄膜蒸発プロセスを介してフェノールグリコール生成物中のアルカリフェノール塩からDPGEを分離して、ジアルキレンフェノールグリコールエーテル生成物を生成することと、を含む。本開示はまた、フェノールグリコール生成物を含み、フェノールグリコール生成物は、DPGEと、水と、グリコシル化フェノール不純物と、アルカリ金属源と、アルカリ金属とグリコシル化フェノール不純物との間の反応から形成されるアルカリフェノール塩と、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジアルキレンフェノールグリコールエーテル及びグリコシル化フェノール不純物を含む混合物からジアルキレンフェノールグリコールエーテルを単離するための方法であって、前記方法は、
アルカリ金属源を前記混合物に添加して、前記アルカリ金属と前記グリコシル化フェノール不純物との間の反応から形成されたアルカリフェノール塩を有するフェノールグリコール生成物を形成することと、
薄膜蒸発プロセスによって、前記フェノールグリコール生成物中の前記アルカリフェノール塩から前記ジアルキレンフェノールグリコールエーテルを分離して、ジアルキレンフェノールグリコールエーテル生成物を生成することであって、前記ジアルキレンフェノールグリコールエーテル生成物は、前記ジアルキレンフェノールグリコールエーテル生成物の総重量に基づいて1重量%未満の前記グリコシル化フェノール不純物を有する、ことと、を含む、方法。
【請求項2】
前記混合物は、水を更に含み、前記フェノールグリコール生成物中の前記アルカリフェノール塩から前記ジアルキレンフェノールグリコールエーテルを分離する前に、前記フェノールグリコール生成物は、脱水工程を受けて、前記フェノールグリコール生成物から前記水の少なくとも一部が除去される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アルカリ金属は、ナトリウム及びカリウムからなる群より選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記アルカリ金属源は、アルカリ水素化物である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記アルカリ水素化物は、水素化ナトリウム及び水素化カリウムからなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記アルカリ金属源は、アルカリ水酸化物である、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記アルカリ水酸化物は、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムからなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記アルカリ金属源は、前記アルカリ水酸化物の水溶液である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記アルカリ水酸化物の前記水溶液は、水酸化ナトリウム水溶液であり、前記水酸化ナトリウム水溶液の最大50重量パーセントの水酸化ナトリウムの量を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記アルカリ金属源を前記混合物に添加することは、1.6重量パーセント(重量%)~5重量%の前記アルカリ金属水酸化物を前記混合物に添加することを含み、前記重量%は、前記フェノールグリコール生成物の総重量に基づく、請求項6~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記アルカリ金属源を前記混合物に添加することは、2重量パーセント(重量%)~3.5重量%の前記アルカリ金属水酸化物を前記混合物に添加することを含み、前記重量%は、前記フェノールグリコール生成物の総重量に基づく、請求項6~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記グリコシル化フェノール不純物は、所定の圧力における沸点を有し、前記沸点は、前記所定の圧力における前記ジアルキレンフェノールグリコールエーテルの沸点とほぼ等しい、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記ジアルキレンフェノールグリコールエーテルは、ジエチレングリコールフェニルエーテルであり、前記グリコシル化フェノール不純物は、2-ヒドロキシフェニルエタノール及び4-ヒドロキシフェニルエタノールを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ジアルキレンフェノールグリコールエーテルは、ジプロピレングリコールフェニルエーテルであり、前記グリコシル化フェノール不純物は、2-ヒドロキシフェニルプロパノール及び4-ヒドロキシフェニルプロパノールを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
ジアルキレンフェノールグリコールエーテルと、
水と、
グリコシル化フェノール不純物と、
アルカリ金属源と、
前記アルカリ金属と前記グリコシル化フェノール不純物との間の反応から形成されたアルカリフェノール塩と、を含む、フェノールグリコール生成物であって、前記フェノールグリコール生成物は、前記ジアルキレンフェノールグリコールエーテル生成物の総重量に基づいて1重量%未満の前記グリコシル化フェノール不純物を有する、フェノールグリコール生成物。
【請求項16】
前記アルカリ金属源は、ナトリウム、水酸化ナトリウム、水素化ナトリウム、カリウム、水酸化カリウム及び水素化カリウムからなる群から選択される、請求項15に記載のフェノールグリコール生成物。
【請求項17】
前記フェノールグリコール生成物は、1.6重量パーセント(重量%)~5重量%の前記アルカリ金属源を含み、前記重量%は、前記フェノールグリコール生成物の総重量に基づく、請求項15に記載のフェノールグリコール生成物。
【請求項18】
前記フェノールグリコール生成物は、2重量パーセント(重量%)~3.5重量%の前記アルカリ金属源を含み、前記重量%は、前記フェノールグリコール生成物の総重量に基づく、請求項15に記載のフェノールグリコール生成物。
【請求項19】
前記ジアルキレンフェノールグリコールエーテルは、ジエチレングリコールフェニルエーテルであり、前記グリコシル化フェノール不純物は、2-ヒドロキシフェニルエタノール及び4-ヒドロキシフェニルエタノールを含む、請求項15~18のいずれか一項に記載のフェノールグリコール生成物。
【請求項20】
前記ジアルキレンフェノールグリコールエーテルは、ジプロピレングリコールフェニルエーテルであり、前記グリコシル化フェノール不純物は、2-ヒドロキシフェニルプロパノール及び4-ヒドロキシフェニルプロパノールを含む、請求項15~18のいずれか一項に記載のフェノールグリコール生成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、化学化合物の単離のためのプロセス、より具体的には、ジアルキレンフェノールグリコールエーテルの単離のためのプロセスを対象とする。
【背景技術】
【0002】
フェノールグリコールエーテル(アルキレンフェノールグリコールエーテルとしても知られている)の生成は、周知のプロセスである。このようなフェノールグリコールエーテルの例としては、プロピレングリコールフェニルエーテル(propylene glycol phenyl ether、PPh)及びエチレングリコールフェニルエーテル(ethylene glycol phenyl ether、EPh)が挙げられる。PPh及び/又はEPhを生成するための一般的な技術は、プロピレンオキシド(propylene oxide、PO)及び/又はエチレンオキシド(ethylene oxide、EO)が、触媒として働く水酸化ナトリウム(NaOH)の存在下でフェノールと反応するプロセスを含む。このようなプロセスの一例は、米国特許第8,558,029号に記載されている。
【0003】
PPh又はEPhのいずれかを生成する際に使用される反応条件はまた、高級同族体生成物、例えば、とりわけ、ジエチレングリコールフェニルエーテル又はジプロピレングリコールフェニルエーテルの生成をもたらし得る。反応条件はまた、フェノール系不純物の生成をもたらし得、フェノール系不純物は、需要のある製品を生成するために高級同族体生成物から分離される必要がある。単離された高級同族体生成物中にこれらの不純物が1重量パーセント(重量%)を超えて存在すると、これらの生成物についての製品品質規格を満たすことができなくなる。このような不純物の例としては、2-ヒドロキシフェニルエタノール(2-hydroxyphenylethanol、2-HPEA)及び4-ヒドロキシフェニルエタノール(4-hydroxyphenylethanol、4-HPEA)などの異性体化合物が挙げられ、異性体化合物は、10重量%~15重量%の量で高級同族体生成物と共に存在し得る。
【0004】
生成において、第1の蒸留プロセスは、高級同族体生成物及び不純物からPPh又はEPhを分離し、次いで第2の蒸留プロセスは、不純物から高級同族体生成物を分離する。しかしながら、この第2の蒸留プロセスを使用して不純物から高級同族体生成物を分離し、市場性のある生成物を生成する試みは、非常に困難であった。この困難さの1つの理由は、高級同族体生成物及び多くの不純物の沸点がほとんど同一であり、不純物が所望の高級同族体生成物と共蒸留されるということである。
【0005】
したがって、これらの不純物からこれらの高級同族体生成物を効果的に分離して、1重量%未満の不純物を有する生成物を生成し、高級同族体生成物の製品品質規格を満たすことができるプロセスが、当技術分野において必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、ジエチレングリコールフェニルエーテル(diethylene glycol phenyl ether、DiEPh)又はジプロピレングリコールフェニルエーテル(dipropylene glycol phenyl ether、DiPPh)などの高級同族体生成物を、2-ヒドロキシフェニルエタノール(2-HPEA)及び4-ヒドロキシフェニルエタノール(4-HPEA)などのグリコシル化フェノール不純物から効果的に分離して、1重量パーセント(重量%)未満の不純物を有する高級同族体生成物を生成し、高級同族体生成物の製品品質規格を満たすことができるプロセスを提供する。
【0007】
本開示は、ジアルキレンフェノールグリコールエーテル及びグリコシル化フェノール不純物を含む混合物からジアルキレンフェノールグリコールエーテルを単離するための方法を提供する。本方法は、アルカリ金属源を混合物に添加して、アルカリ金属とグリコシル化フェノール不純物との間の反応から形成されるアルカリフェノール塩を有するフェノールグリコール生成物を形成することと、次いで、薄膜蒸発プロセスによって、フェノールグリコール生成物中のアルカリフェノール塩からジアルキレンフェノールグリコールエーテルを分離して、ジアルキレンフェノールグリコールエーテル生成物の総重量に基づいて1重量%未満のグリコシル化フェノール不純物を有するジアルキレンフェノールグリコールエーテル生成物を生成することと、を含む。
【0008】
本明細書で議論されるように、混合物中のジアルキレンフェノールグリコールエーテルなどの高級同族体生成物の沸点、及びグリコシル化フェノール不純物などの多くの不純物の沸点は、ほぼ同一であり、これはそれらの分離を困難にする。様々な実施形態では、本明細書で提供されるグリコシル化フェノール不純物は、所定の圧力での沸点を有し、その沸点は、その所定の圧力でのジアルキレンフェノールグリコールエーテルの沸点とほぼ等しい。これは、ジアルキレンフェノールグリコールエーテルが、ジエチレングリコールフェニルエーテルであり、グリコシル化フェノール不純物が、2-ヒドロキシフェニルエタノール及び4-ヒドロキシフェニルエタノールを含む場合である。同様に、これは、ジアルキレンフェノールグリコールエーテルが、ジプロピレングリコールフェニルエーテルであり、グリコシル化フェノール不純物が、2-ヒドロキシフェニルプロパノール及び4-ヒドロキシフェニルプロパノールを含む場合である。
【0009】
様々な実施形態について、アルカリ金属源を混合物に添加してフェノールグリコール生成物を形成することは、グリコシル化フェノール不純物がアルカリ金属との反応においてアルカリフェノール塩に変換される際に、グリコシル化フェノール不純物の蒸気圧を効果的に低下させる。フェノールグリコール生成物中のグリコシル化フェノール不純物についての蒸気圧のこの変化により、ジアルキレンフェノールグリコールエーテルは、かつて非常に困難であったが、より容易に分離することができる。
【0010】
様々な実施形態について、本方法で使用されるアルカリ金属は、ナトリウム及びカリウムからなる群から選択される。これらのアルカリ金属源としては、アルカリ水素化物を挙げることができる。アルカリ水素化物は、水素化ナトリウム及び水素化カリウムからなる群から選択することができる。代替実施形態では、アルカリ金属源は、アルカリ水酸化物を含むことができる。アルカリ水酸化物は、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムからなる群から選択することができる。
【0011】
更に、アルカリ金属源は、アルカリ水酸化物の水溶液であり得る。具体的な例では、アルカリ水酸化物の水溶液は、水酸化ナトリウム水溶液であり、水酸化ナトリウム水溶液の最大50重量パーセントの水酸化ナトリウムの量を有する。混合物中に水が存在し得るので、フェノールグリコール生成物は、フェノールグリコール生成物中のアルカリフェノール塩からジアルキレンフェノールグリコールエーテルを分離する前に、フェノールグリコール生成物から水の少なくとも一部を除去するための脱水工程を受けることができる。
【0012】
様々な実施形態では、アルカリ金属源を混合物に添加することは、1.6重量%~5重量%のアルカリ金属水酸化物を混合物に添加することを含むことができ、重量%は、フェノールグリコール生成物の総重量に基づく。代替実施形態では、アルカリ金属源を混合物に添加することは、2重量%~3.5重量%のアルカリ金属水酸化物を混合物に添加することを含むことができ、重量%は、フェノールグリコール生成物の総重量に基づく。
【0013】
本開示はまた、フェノールグリコール生成物を提供し、フェノールグリコール生成物は、ジアルキレンフェノールグリコールエーテルと、水と、グリコシル化フェノール不純物と、アルカリ金属源と、アルカリ金属とグリコシル化フェノール不純物との間の反応から形成されるアルカリフェノール塩と、を含み、フェノールグリコール生成物は、ジアルキレンフェノールグリコールエーテル生成物の総重量に基づいて1重量%未満のグリコシル化フェノール不純物を有する。本明細書で論じるように、アルカリ金属源は、ナトリウム、水酸化ナトリウム、水素化ナトリウム、カリウム、水酸化カリウム、及び水素化カリウムからなる群から選択することができる。
【0014】
様々な実施形態では、フェノールグリコール生成物は、1.6重量%~5重量%のアルカリ金属源を含むことができ、重量%は、フェノールグリコール生成物の総重量に基づく。代替実施形態では、フェノールグリコール生成物は、2重量%~3.5重量%のアルカリ金属源を含むことができ、重量%は、フェノールグリコール生成物の総重量に基づく。フェノールグリコール生成物については、ジアルキレンフェノールグリコールエーテルは、ジエチレングリコールフェニルエーテルであり得、グリコシル化フェノール不純物は、2-ヒドロキシフェニルエタノール及び4-ヒドロキシフェニルエタノールを含み得る。代替実施形態では、フェノールグリコール生成物中のジアルキレンフェノールグリコールエーテルは、ジプロピレングリコールフェニルエーテルであり、グリコシル化フェノール不純物は、2-ヒドロキシフェニルプロパノール及び4-ヒドロキシフェニルプロパノールを含む。
【0015】
本開示の上記の概要は、各開示された実施形態を説明するようにも、本開示の全ての実施態様を説明するようにも意図されていない。より具体的に示す本明細書は、例示的な実施形態を例示するものである。本出願全体にわたるいくつかの場所では、例のリストを通じて指針が提供され、これらの例は、様々な組み合わせで使用することができる。どの場合も、列挙されたリストは、代表的なグループとしてのみ機能し、排他的なリストとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本開示に従って使用するための実験室用回転薄膜蒸発器の図である。
図2】塔頂留出物中の2-ヒドロキシフェニルエタノールについてのガスクロマトグラフィ面積パーセントデータの関係を、図1の実験室用回転薄膜蒸発器において分離されるEPh塩基性の試験サンプル中に存在するNaOHの重量パーセントの関数として示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示における数値範囲は近似値であり、したがって、別途示されない限り、範囲外の値を含み得る。数値範囲には、1つの単位の増分で下限値及び上限値を含む全ての値が含まれるが、ただし、任意の下限値と任意の上限値との間で少なくとも2つの単位の分離があることを条件とする。一例として、分子量、粘度、メルトインデックスなどの組成的特性、物理的特性、又は他の特性が100~1,000である場合、100、101、102などの全ての個々の値及び100~144、155~170、197~200などの副範囲が明示的に列挙されることが意図される。1未満である値を含有するか、又は1より大きい分数(例えば、1.1、1.5など)を含有する範囲については、1つの単位は、適切な場合には、0.0001、0.001、0.01、又は0.1とみなされる。10未満の1桁の数字(例えば、1~5)を含有する範囲の場合、1つの単位は、典型的には0.1とみなされる。これらは、具体的に意図されるものの例に過ぎず、列挙された最低値と最高値との間の全ての可能な数値の組み合わせは、本開示において明示的に記述されているとみなされるべきである。数値範囲は、とりわけ、フェノールに対する酸化物の相対量、反応物塊中の触媒の相対量、並びに様々な温度及び他のプロセスパラメータについて、本開示内で提供される。
【0018】
「触媒量」は、反応条件下でフェノール化合物とアルキレンオキシドとの反応を促進して、検出可能なレベル、好ましくは商業的に許容されるレベルでフェノールグリコールエーテルを形成するのに必要な量を意味する。触媒が使用される場合、典型的には、触媒の最小量は、少なくとも100百万分率(parts per million、ppm)である。種々の実施形態について、触媒の量は、使用される場合、100ppm~4,000ppmの範囲であり得る。
【0019】
「均一触媒」及び類似の用語は、例えば、イオン交換樹脂又は固定床触媒に結合した触媒とは対照的に、フェノール化合物又は反応物塊(reaction mass)全体に好ましくは均一に分散した触媒を意味する。
【0020】
「塩基性均一触媒」などの用語は、7より大きいpHを有する水溶液中の均一触媒を意味する。
【0021】
「酸性均一触媒」などの用語は、7未満のpHを有する水溶液中の均一触媒を意味する。
【0022】
「等温反応条件」、「等温反応器」、「等温反応ゾーン」、「等温反応」などの用語は、温度が一定に保持されるか、又は反応器若しくはゾーンの温度が一定に保持されるか、又は化学反応が1つの温度で完了まで進行する反応条件を意味し、すなわち、反応が完了まで継続するために温度の変化を必要としない。
【0023】
「断熱反応条件」、「断熱反応器」、「断熱反応ゾーン」、「断熱反応」などの用語は、反応条件、又は反応器若しくはゾーン、又は外部源からの熱の損失若しくは獲得が、たとえ存在したとしても、ほとんど起こらない又は経験されない反応を意味する。
【0024】
「第1の中間体フェノールグリコールエーテル生成物」及び類似の用語は、等温反応器又は反応ゾーンにおけるフェノール化合物とアルキレンオキシドとの反応から生成される生成物を意味する。この生成物は、フェノールグリコールエーテル及びジアルキレンフェノールグリコールエーテルだけでなく、触媒、未反応フェノール化合物及びアルキレンオキシド、水及び副生成物(例えば、グリコシル化フェノール不純物)もまた含む。
【0025】
「第2の中間体フェノールグリコールエーテル生成物」及び類似の用語は、断熱反応器又は反応ゾーンにおけるフェノール化合物とアルキレンオキシドとの反応から生成される生成物を意味する。この生成物は、第1の中間体フェノールグリコールエーテル生成物の全ての成分を含むが、異なる組成比であり、例えば、より多くのフェノールグリコールエーテルと、より少ない未反応のアルキレンオキシド及びフェノール化合物と、を含有する。
【0026】
「反応物塊」、「反応系」などの用語は、典型的には反応条件下での反応に必要な又は補助的な材料の組み合わせを意味する。反応物塊が特徴付けられる時点に応じて、反応物塊は、反応物、触媒、溶媒、生成物、副生成物、不純物などを含有することとなるか又は含有し得る。反応が開始した後に本開示の一部を形成する典型的な反応物塊は、未反応のアルキレンオキシド及びフェノール化合物、アルカリ金属水酸化物、フェノールグリコールエーテル、ジアルキレンフェノールグリコールエーテル、副生成物グリコール(例えば、グリコシル化フェノール不純物)及び水を含むこととなる。
【0027】
「非水性プロセス」及び類似の用語は、本開示の文脈において、反応物塊が、たとえ存在したとしても、ほとんど水を含有しないことを意味する。本開示のプロセスにおいて、反応物塊に意図的に導入される唯一の水は、触媒を溶解し、その分散を補助するのに必要なものである。存在する任意の他の水は、反応化学の副生成物であるか、又は反応物のうちの1つに関連する不純物としてのいずれかである。第2の中間体フェノールグリコールエーテル生成物中の水の総量は、典型的には、第2の中間体フェノールグリコールエーテル生成物の重量に基づいて、1重量パーセント(重量%)を超えず、好ましくは0.5重量%を超えず、より好ましくは0.05重量%(500ppm)を超えない。
【0028】
「連続プロセス」及び類似の用語は、プロセスが定常状態で操作されることを意味し、すなわち、反応器又は反応ゾーン内の反応物塊が体積及び組成において比較的一定であるように、生成物が反応器又は反応ゾーンから除去される速度と実質的に釣り合う速度で反応物が反応器又は反応ゾーンに供給される。連続プロセスは、バッチプロセス又はセミバッチプロセスを含まず、前者は、経時的な反応物質の枯渇及び生成物の増加によって特徴付けられ、後者は、典型的には、経時的な反応物質の不均衡な添加及び生成物の除去によって特徴付けられる。
【0029】
フェノール成分(phenolics)と呼ばれることもあるフェノール類は、芳香族炭化水素基に結合したヒドロキシル基(-OH)からなる有機化合物の種類である。最も単純な種類は、フェノール(COH)である。本開示の実施において使用することができるフェノール化合物は、典型的には一価であり、フェノール:o-、m-又はp-クレゾール、o-、m-又はp-エチルフェノール、o-、m-又はp-t-ブチルフェノール、o-、m-又はp-オクチルフェノール、2,3-キシレノール、2,6-キシレノール、3,4-キシレノール、3,5-キシレノール、2,4-ジ-t-ブチルフェノールなどの炭化水素置換基を有するフェノール類;例えば、o-、m-又はp-フェニルフェノール、p-α-クミル)フェノール、4-フェノキシフェノールなどの芳香族置換基又は芳香環などの置換基を有するフェノール類;o-、m-又はp-ヒドロキシベンズアルデヒドなどのアルデヒド基を有するフェノール類;グアヤコール、グエトールなどのエーテル結合を有する置換基を有するフェノール類;アルコール特有の水酸基(以下、「アルコール性水酸基」と呼ぶ)などの置換基を有するフェノール類、例えば、p-ヒドロキシフェネチルアルコール;p-ヒドロキシ安息香酸メチル、p-ヒドロキシフェニル酢酸メチルエステル、ヘプチルパラベンなどのエステル結合を有する置換基を有するフェノール類;2,4,6-トリクロロフェノールなどのハロゲン基を有するフェノール類が挙げられる。これらのうち、フェノール及びクレゾールが好ましい。これらのフェノール類は、単独で又は互いに組み合わせて使用されてもよい。
【0030】
本開示の実施において使用することができるアルキレンオキシド(エポキシドとしても知られる)としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、イソブチレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド、2,3-ブチレンオキシド、及びペンチレンオキシド;スチレンオキシドなどの芳香族アルキレンオキシド;及びシクロヘキサンオキシドが挙げられる。これらのアルキレンオキシドは、単独で又は互いに組み合わせて使用されてもよい。アルキレンオキシド化合物の中でも、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、イソブチレンオキシド、2,3-ブチレンオキシドなどの、2~4個の炭素原子を有する脂肪族アルキレンオキシドが好ましい。アルキレンオキシドは、典型的には液体として添加されるが、気体として添加することもできる。
【0031】
本開示の実施において使用される触媒は、任意の適切な酸又は塩基、例えば、ルイス酸又はルイス塩基であり得るが、好ましくは、触媒は、塩基である。触媒生成に有効なアルカリ性物質としては、アルカリ金属、アルカリ水酸化物、アルカリ水素化物、及びアルカリ炭酸塩、アルカリ土類金属水酸化物、水酸化テトラアルキルアンモニウム及び有機塩基(例えば、ピリジン、トリメチルアミン及びイミダゾール)が挙げられる。好ましいアルカリ金属触媒は、ナトリウム及びカリウムである。好ましいアルカリ水素化物触媒は、水素化ナトリウム及び水素化カリウムである。好ましいアルカリ水酸化物触媒は、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムである。触媒はそのまま添加してもよく、通常は少量の水に溶解してもよいか、又はその場で形成してもよい。触媒は、均一な様式で使用される、すなわち、触媒は、好ましくは反応物塊全体に均一に分散される。典型的には、触媒は、フェノール化合物がアルキレンオキシドと混合される前に、フェノール化合物と混合される。
【0032】
本開示で提供されるプロセスは、フェノール、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド、並びに水酸化ナトリウム触媒又は水酸化カリウム触媒からのエチレングリコールフェニルエーテル(EPh)及び/又はプロピレングリコールフェニルエーテル(PPh)の生成に特に有用である。大過剰のフェノール、たとえ存在したとしても、最小限の水及び均一触媒を使用することによって、EPh及びPPhが選択的に製造され、グリコール副生成物の生成は、最小限である。
【0033】
本開示で提供される方法では、フェノール化合物、アルキレンオキシド及び触媒は、任意の従来の様式で等温反応器又はマルチゾーン反応器の等温ゾーンに連続的に添加される。フェノール化合物は、アルキレンオキシドに対して過剰に添加され、上記のように、触媒は、多くの場合、例えば、フェノール再循環流の一部として、アルキレンオキシドがフェノール化合物などと混合される前に、フェノール化合物と予備混合される。過剰量のフェノール化合物のサイズは、プロセスの所望の操作及び生成物混合物によって変化し得、また変化することとなる。典型的には、より多くのフェノールが存在するほど、反応はより速く進行し、生成される副生成物がより少なくなる。フェノール化合物は、典型的には、アルキレンオキシドに対して0.5%程度の少量から100%程度の大量までの範囲の化学量論的モル過剰で、又は更に200%過剰のフェノール化合物で存在する。
【0034】
フェノール化合物、アルキレンオキシド及び触媒は、等温反応条件下で等温反応器又はゾーンにおいて互いに接触する。これらの条件は、周囲温度(例えば、23セルシウス度(℃))~200℃、好ましくは100℃~180℃、より好ましくは120℃~170℃の温度;及び8,000~50,000水銀柱ミリメートル(mmHg、又は1.067~6.667メガパスカル(MPa))、好ましくは20,000~40,000mmHg(2.067~5.333MPa)、より好ましくは25,000~35,000mmHg(3.333~4.666MPa)の圧力を含む。等温反応器又はゾーン内の反応物塊は、触媒を溶解するために使用されるもの、又は副生成物として形成されるか若しくは不純物として導入されるものを除いて、本質的に水を含まず、任意の従来の手段、例えば、撹拌、乱流などによって撹拌される。反応物塊は、アルキレンオキシドの大部分が変換されて第1の中間体フェノールグリコールエーテル生成物を形成するまで等温反応器又はゾーン内に存在し、次いで、この生成物は、既知の手段によって断熱反応器又はゾーンに移送され、そこで残存アルキレンオキシドの本質的に全てが変換されて第2の中間体フェノールグリコールエーテル生成物を形成する。
【0035】
等温反応ゾーン及び断熱反応ゾーンは、互いに分離して区別され、直列に接続された反応器であってもよいか、又は単一の反応器構造内のゾーンであってもよい。例えば、等温反応器は、全て金属シェル内に収容された沸騰浴内の様々な数の複数の螺旋状平行コイル(例えば、2~4つのコイル)からなるコイル状反応器であってもよい。反応熱は、コイルのシェル側の沸騰水を介して除去され、一方、反応プロセスは、コイル自体の中で起こる。断熱セクションは、(断熱された配管であろうと、又は断熱されたプロセス容器であろうと)完全な酸化物変換のために十分な滞留を提供するように設計された容積であり得る。第1の反応器ゾーンの温度は、第2の反応器ゾーンの温度と異なってもよく、典型的には第2の反応器ゾーンの温度よりも低い。この温度差は、典型的には0~40℃、より典型的には0~20℃、更により典型的には0~10℃である。この温度差以外は、断熱反応器又はゾーンの断熱反応条件は、等温反応器又はゾーンの等温反応条件と本質的に同じである。第1の中間体フェノールグリコールエーテル生成物の温度は、典型的には、その生成物が等温反応器又はゾーンから断熱反応器又はゾーンに移動する際に1つ以上の熱交換器を通過することによって断熱反応器又はゾーンの温度に調節されてよい。断熱反応器又は反応ゾーンにおけるアルキレンオキシドの変換が完了すると、第2の中間体フェノールグリコールエーテル生成物は、排出され、本開示の方法を含む精製操作を受ける。
【0036】
本開示によれば、第2の中間体フェノールグリコールエーテル生成物は、分離ステーション又はゾーン、例えば、第1の蒸留塔に移送され、そこで未反応フェノール化合物、触媒及び水が回収され、第2の中間体フェノールグリコールエーテル生成物の残量は、1つ以上の追加の蒸留塔に移送され、そこでフェノールグリコールエーテルが高純度、典型的には95重量%超、好ましくは99重量%超、より好ましくは99.5重量%超の純度で回収される。第2の搭(及び使用される場合には追加の搭)において、精製されたフェノールグリコールエーテルは、サイドドロー流として回収され、流れの残量を含有する塔頂流は、第1の通過の間に回収されなかった追加の未反応フェノール化合物を回収するために第1の搭に戻される。
【0037】
次いで、第1の蒸留塔から回収されたフェノール化合物及び残留水流は、典型的には乾燥ステーションに移送され、そこで乾燥操作を受ける。乾燥ステーションの例は、多段蒸留塔であり、塔内の温度及び圧力プロファイルを調整することによって、水(より軽い成分)がフェノール(より重い成分)から物理的に分離される。乾燥搭の前に新鮮なフェノール及び/又は触媒を添加して、これらの材料中に存在する水を除去することができる。得られたフェノールと触媒との混合物を取り出し、反応器系に戻す。使用することができる他の乾燥方法としては、モレキュラーシーブ、乾燥剤、及び膜が挙げられる。
【0038】
第2の塔から精製フェノールグリコールエーテルを回収することに加えて、フェノールグリコールエーテル生成物の生成中に生成されるフェノール系不純物と共に、とりわけ、より高級な同族体生成物、例えば、ジアルキレングリコールフェニルエーテル及びトリアルキレングリコールエーテルを含む混合物が、第2の蒸留塔から塔底留出物として回収される。フェノールグリコールエーテルを形成する際の反応物としてエチレンオキシドが使用される場合、このような不純物の例としては、2-ヒドロキシフェニルエタノール(2-HPEA)及び4-ヒドロキシフェニルエタノール(4-HPEA)などの異性体化合物が挙げられ、これらは、混合物の総重量に基づいて10重量パーセント(重量%)~15重量%の量で高級同族体生成物(例えば、ジエチレングリコールフェニルエーテル)と共に存在し得る。
【0039】
本明細書で議論されるように、フェノールグリコールエーテル生成物(例えば、エチレングリコールフェニルエーテル(EPh)又はプロピレングリコールフェニルエーテル(PPh))を生成する際に使用される反応条件はまた、市販のジアルキレンフェノールグリコールエーテル生成物を生成するために高級同族体生成物から分離される必要があるグリコシル化フェノール不純物と共に、高級同族体生成物、例えば、とりわけ、ジエチレングリコールフェニルエーテル又はジプロピレングリコールフェニルエーテルなどのジアルキレンフェノールグリコールエーテルの生成をもたらし得る。このようなグリコシル化フェノール不純物の例としては、本明細書に記載の2-HPEA及び4-HPEAなどの異性体化合物が挙げられる。
【0040】
本開示によれば、グリコシル化フェノール不純物を含む混合物からジアルキレンフェノールグリコールエーテルを単離するための方法は、アルカリ金属源を混合物に添加して、アルカリ金属とグリコシル化フェノール不純物との間の反応から形成されるアルカリフェノール塩を有するフェノールグリコール生成物を形成することを含む。本明細書で提供されるように、グリコシル化フェノール不純物の多くは、所定の圧力における沸点を有し、その沸点は、その所定の圧力におけるジアルキレンフェノールグリコールエーテルの沸点とほぼ等しい。結果として、従来の蒸留プロセスを使用する場合、グリコシル化フェノール不純物は、所望の高級同族体生成物と共蒸留される。
【0041】
しかしながら、本開示は、グリコシル化フェノール不純物をアルカリ金属と反応させて、フェノールグリコール生成物中にアルカリフェノール塩を形成する。様々な実施形態について、アルカリ金属源を混合物に添加してフェノールグリコール生成物を形成することは、グリコシル化フェノール不純物がアルカリ金属との反応においてアルカリフェノール塩に変換される際に、グリコシル化フェノール不純物の蒸気圧を効果的に低下させる。フェノールグリコール生成物中のグリコシル化フェノール不純物についての蒸気圧のこの変化により、ジアルキレンフェノールグリコールエーテルは、かつて非常に困難であったが、より容易に分離することができる。したがって、様々な実施形態について、グリコシル化フェノール不純物の蒸気圧を変化させる(例えば、低下させる)ためのアルカリフェノール塩へのこの変換は、薄膜蒸発プロセスによってフェノールグリコール生成物中のアルカリフェノール塩からジアルキレンフェノールグリコールエーテルを分離して、ジアルキレンフェノールグリコールエーテル生成物の総重量に基づいて1重量%未満のグリコシル化フェノール不純物を有するジアルキレンフェノールグリコールエーテル生成物を生成することを可能にする。
【0042】
様々な実施形態について、アルカリ金属源を混合物に添加して、アルカリフェノール塩を有するフェノールグリコール生成物を形成することは、0セルシウス度(℃)~200℃及び10キロパスカル(kPa)~200kPaの範囲の温度及び圧力で行うことができる。好ましくは、アルカリ金属源を混合物に添加してフェノールグリコール生成物を形成することは、0℃~50℃の温度及び50kPa~150kPaの圧力、より好ましくは17℃~27°の温度及び90kPa~110kPaの圧力、最も好ましくは25℃の温度及び101kPaの圧力で行われる。混合物及びアルカリ金属源は、所望の温度及び圧力でフェノールグリコール生成物を形成する反応を促進するために、機械的撹拌などの公知の混合技術を使用して混合することができる。
【0043】
様々な実施形態について、薄膜蒸発プロセスを用いて、フェノールグリコール生成物中のアルカリフェノール塩からジアルキレンフェノールグリコールエーテルを分離して、ジアルキレンフェノールグリコールエーテル生成物の総重量に基づいて1重量%未満のグリコシル化フェノール不純物を有するジアルキレンフェノールグリコールエーテル生成物を生成する。本明細書で提供されるように、ジアルキレンフェノールグリコールエーテルの例は、ジエチレングリコールフェニルエーテルであり、グリコシル化フェノール不純物は、2-ヒドロキシフェニルエタノール及び4-ヒドロキシフェニルエタノールを含む。代替例では、ジアルキレンフェノールグリコールエーテルは、ジプロピレングリコールフェニルエーテルであり、グリコシル化フェノール不純物は、2-ヒドロキシフェニルプロパノール及び4-ヒドロキシフェニルプロパノールを含む。
【0044】
本開示の薄膜蒸発プロセスは、温度及び圧力の変数を利用して、所与の温度及び圧力での成分の蒸気圧に少なくとも部分的に基づいて成分を分離する、分離技術である。様々な実施形態に関して、薄膜蒸発プロセスは、薄膜蒸発器、撹拌式薄膜蒸発器(wiped film evaporator)、回転薄膜蒸発器、流下薄膜蒸発器又は上昇薄膜蒸発器として既知であってもよい、かつ/又はそれらの形態をとってもよい。薄膜蒸発プロセスは、このプロセスが、グリコシル化フェノール不純物との混合物中に存在するジアルキレンフェノールグリコールエーテルなどの熱感受性成分の分離を可能にするので、好ましい。
【0045】
本実施形態について、薄膜蒸発プロセスは、薄膜蒸発器が約210℃以下の温度で動作することを可能にするのに十分に低い真空で行うことができる。例えば、薄膜蒸発プロセスは、1.3kPa以下の圧力、約210℃以下の温度で行うことができる。好ましくは、薄膜蒸発プロセスは、670Pa以下の圧力、約210℃以下の温度で行うことができ、最も好ましくは、薄膜蒸発プロセスは、133Pa以下の圧力、約210℃以下の温度で実施することができる。より具体的な例では、薄膜蒸発プロセスは、0℃~210℃の温度及び0.1Pa~1.3kPaの圧力で、より好ましくは100℃~210℃の温度及び10Pa~700Paの圧力で行うことができる。薄膜蒸発プロセスを使用してフェノールグリコール生成物中のアルカリフェノール塩からジアルキレンフェノールグリコールエーテルを分離するための滞留時間は、0.5秒~5分程度であり得る。他の時間もまた可能である。
【0046】
様々な実施形態では、本方法で使用されるアルカリ金属は、ナトリウム、カリウム、リチウム、及びカルシウムからなる群から選択される。好ましくは、本方法で使用されるアルカリ金属は、ナトリウム及びカリウムからなる群から選択される。これらのアルカリ金属源としては、アルカリ水素化物を挙げることができる。アルカリ水素化物は、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化カルシウム及び水素化リチウムからなる群から選択することができる。好ましくは、アルカリ水素化物は、水素化ナトリウム及び水素化カリウムからなる群から選択することができる。代替実施形態では、アルカリ金属源は、アルカリ水酸化物を含むことができる。アルカリ水酸化物は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム及び水酸化リチウムからなる群から選択することができる。好ましくは、アルカリ水酸化物は、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムからなる群から選択することができる。
【0047】
好ましくは、アルカリ金属源は、本明細書で提供されるようなアルカリ水酸化物の水溶液である。アルカリ水酸化物の水溶液を有することにより、ジアルキレンフェノールグリコールエーテル及びグリコシル化フェノール不純物を含む混合物と容易に混合することができるアルカリ金属の可溶性形態を提供する。水溶液は、本明細書で提供されるように、水溶液がジアルキレンフェノールグリコールエーテル及びグリコシル化フェノール不純物を含む混合物と混和性のままである限り、広範囲の値にわたるアルカリ水酸化物濃度を有することができる。様々な実施形態について、アルカリ水酸化物の水溶液は、水溶液の総重量に基づいて1~50重量パーセント(重量%)のアルカリ水酸化物の量を有することができる。好ましくは、アルカリ水酸化物の水溶液は、水溶液の総重量に基づいて30~50重量%のアルカリ水酸化物の量を有することができる。
【0048】
様々な実施形態について、アルカリ金属源と共に混合物に添加されてフェノールグリコール生成物を形成するための水の量は、薄膜蒸発プロセスによってフェノールグリコール生成物中のアルカリフェノール塩からジアルキレンフェノールグリコールエーテルを分離する前に除去される必要があり得ることもまた理解される。したがって、アルカリ水酸化物の水溶液を使用する場合、その水溶液は、水溶液の総重量に基づいて50重量%又はそれに近いアルカリ水酸化物の濃度を有することが好ましい。水溶液の総重量に基づいて50重量%を超えるアルカリ水酸化物の濃度を有するアルカリ水酸化物の水溶液を使用することが可能であるが、得られる混合物の粘度に関する過度に望ましくない問題が存在し得る。具体的な例では、アルカリ水酸化物の水溶液は、水酸化ナトリウム水溶液の総重量に基づいて最大50重量%の水酸化ナトリウムの量を有する水酸化ナトリウム水溶液である。より具体的な例では、アルカリ水酸化物の水溶液は、水酸化ナトリウム水溶液の総重量に基づいて50重量%の水酸化ナトリウムを有する水酸化ナトリウム水溶液である。
【0049】
様々な実施形態について、除去される必要がある水を混合物が含む場合、フェノールグリコール生成物中のアルカリフェノール塩からジアルキレンフェノールグリコールエーテルを分離する前に、様々な脱水工程を使用してフェノールグリコール生成物から水の少なくとも一部を除去することができる。そのようなプロセスは、所定の圧力でエネルギー(例えば、熱)を加えて、水の物理状態をフェノールグリコール生成物中に存在する液体から気体へと変化させることによって、フェノールグリコール生成物から水を除去する蒸発プロセスを含むことができ、その気体は、フェノールグリコール生成物から水を除去するために凝縮させることができ、蒸発プロセスのための温度及び圧力の例としては、50~110℃の温度及び12.3kPa~101.3kPaの圧力が挙げられる。水を除去すると、ジアルキレンフェノールグリコールエーテルは、本明細書で提供されるように、薄膜蒸発プロセスによってフェノールグリコール生成物中のアルカリフェノール塩から分離され、フェノールグリコール生成物中に残存する水の残留量は、たとえ存在したとしても、必要な真空を維持しながら、フェノールグリコール生成物を薄膜蒸発器に供給することができる速度を決定するのに役立つ。
【0050】
様々な実施形態では、フェノールグリコールエーテルを生成する際に形成されるグリコシル化フェノール不純物などの不純物の量は、本明細書で論じるように、反応条件並びにフェノール化合物及びアルキレンオキシドの相対量に応じて変動し得る。その結果、フェノールグリコール生成物を形成するために混合物に添加されるアルカリ金属源中のアルカリ金属の量は、混合物中の不純物の量に応じて増加又は減少することとなる。しかしながら、そのような反応において生成される不純物の量は、既知の技術を用いて測定することができ、次いで、そのような情報を、フェノールグリコール生成物を形成するために混合物に添加するアルカリ金属の量を決定する際に用いることができる。例えば、フェノールグリコール生成物を形成するために混合物に添加されるアルカリ金属源中のアルカリ金属のモル量は、混合物中で測定される不純物のモル量に一致させることができる。したがって、アルカリ金属源中のアルカリ金属のモル量は、混合物中で測定された不純物の測定量に応じて増加又は減少することとなる。
【0051】
上記の議論に基づいて、混合物に添加されるアルカリ金属源は、モル量比が0.5:1のアルカリ金属のモル数:不純物のモル数~1.1:1のアルカリ金属のモル数:不純物のモル数であり得る。このようなモル量についての他の比は、0.75:1のアルカリ金属のモル数:不純物のモル数~1:1のアルカリ金属のモル数:不純物のモル数又は0.8:1のアルカリ金属のモル数:不純物のモル数~1:0.9のアルカリ金属のモル数:不純物のモル数の範囲であり得る。代替的なアプローチでは、アルカリ金属源を混合物に添加することは、1.6重量%~5重量%のアルカリ金属水酸化物を混合物に添加することを含むことができ、重量%は、フェノールグリコール生成物の総重量に基づく。代替実施形態では、アルカリ金属源を混合物に添加することは、2重量%~3.5重量%のアルカリ金属水酸化物を混合物に添加することを含むことができ、重量%は、フェノールグリコール生成物の総重量に基づく。
【0052】
本開示はまた、本明細書で提供されるフェノールグリコール生成物を提供し、フェノールグリコール生成物は、ジアルキレンフェノールグリコールエーテルと、水と、グリコシル化フェノール不純物と、アルカリ金属源と、アルカリ金属とグリコシル化フェノール不純物との間の反応から形成されるアルカリフェノール塩と、を含み、フェノールグリコール生成物は、ジアルキレンフェノールグリコールエーテル生成物の総重量に基づいて1重量%未満のグリコシル化フェノール不純物を有する。
【0053】
本開示はまた、本明細書で論じるように、フェノールグリコール生成物を提供する。本明細書で提供されるように、フェノールグリコール生成物は、ジアルキレンフェノールグリコールエーテルと、水と、グリコシル化フェノール不純物と、アルカリ金属源と、アルカリ金属とグリコシル化フェノール不純物との間の反応から形成されるアルカリフェノール塩と、を含み、フェノールグリコール生成物は、ジアルキレンフェノールグリコールエーテル生成物の総重量に基づいて1重量%未満のグリコシル化フェノール不純物を有する。本明細書で論じるように、アルカリ金属源は、ナトリウム、水酸化ナトリウム、水素化ナトリウム、カリウム、水酸化カリウム、及び水素化カリウムからなる群から選択することができる。具体的な例では、様々な実施形態について、フェノールグリコール生成物は、1.6重量%~5重量%のアルカリ金属源を含むことができ、重量%は、フェノールグリコール生成物の総重量に基づく。代替実施形態では、フェノールグリコール生成物は、2重量%~3.5重量%のアルカリ金属源を含むことができ、重量%は、フェノールグリコール生成物の総重量に基づく。フェノールグリコール生成物については、ジアルキレンフェノールグリコールエーテルは、ジエチレングリコールフェニルエーテルであり得、グリコシル化フェノール不純物は、2-ヒドロキシフェニルエタノール及び4-ヒドロキシフェニルエタノールを含み得る。代替実施形態では、フェノールグリコール生成物中のジアルキレンフェノールグリコールエーテルは、ジプロピレングリコールフェニルエーテルであり、グリコシル化フェノール不純物は、2-ヒドロキシフェニルプロパノール及び4-ヒドロキシフェニルプロパノールを含む。
【0054】
本開示を前述の明細書でかなり詳細に説明してきたが、この詳細は例示の目的のためであり、以下の特許請求の範囲に対する限定として解釈されるべきではない。全ての米国特許、許可された米国特許出願、及び米国特許出願公開は、参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例
【0055】
材料/成分
以下の実施例(Ex)及び比較例(CE)は、本明細書において「EPh塩基性」と称されるものを使用する。「EPh塩基性」は、米国特許第8,558,029号に従って生成される第2の中間体フェノールグリコールエーテル生成物である。「EPh塩基性」は、フェノールグリコールエーテル、未反応フェノール化合物(例えば、フェノール)、触媒(例えば、NaOH)、水、並びにグリコシル化フェノール不純物(例えば、2-ヒドロキシフェニルエタノール(2-HPEA)及び4-ヒドロキシフェニルエタノール(4-HPEA))を含む副生成物グリコール不純物の混合物である。フェノールグリコールエーテルとしては、エチレングリコールフェニルエーテル(EPh)、ジエチレングリコールフェニルエーテル(DiEPh)、トリエチレングリコールフェニルエーテル(TriEPh)及びテトラエチレングリコールフェニルエーテル(TetraEPh)を挙げることができる。
【0056】
本実施例では、EPh塩基性の生成は、以下の通りである。2リットル(L)のステンレス鋼Parr反応器に、396.4グラム(g)のフェノール及び0.79gの固体水酸化ナトリウムを投入する。反応器を密封し、圧力をチェックする。反応器を160℃に加熱した後、84.1gのエチレンオキシドを31秒かけて添加する。5時間後、冷却し、得られたEPh反応生成物を取り出す。本明細書に記載のGC分析を用いてEPh反応生成物を分析する。EPhの反応生成物のGC分析は、以下に提供されるように、フェノール、EPh、DiEPh、TriEPh、TetraEPh、2-ヒドロキシフェニルエタノール(2-HPEA)、4-ヒドロキシフェニルエタノール(4-HPEA)及び追加的な高分子量不純物(例えば、高級体1及び高級体2)の存在を示す。
【0057】
EPh塩基性を生成するために、157.4gのEPh反応生成物を、温度制御された加熱マントル中で磁気撹拌しながら250mLの丸底フラスコに添加し、18インチ高の真空ジャケット付き蒸留カラム、還流スプリッタ、及び50℃に設定された凝縮器を装着する。系を16キロパスカル(KPa、120torr)の真空下に置き、EPh反応生成物を160℃に加熱する。塔頂留出物のフェノール含量が98%未満に低下するまで、5対1の還流比で塔頂留出物を除去する。250mLフラスコ内の温度を160~165℃に維持するために、真空を8.8KPa(66torr)までゆっくりと下げる。蒸留を継続して、87%を超えるフェノール含有量を有する塔頂留出物、次いで92%を超えるEPh含有量を有する塔頂留出物を除去した後、蒸留プロセスを停止する。蒸留プロセスからの搭底留出物は、EPh塩基性であり、これは、EPh、DiEPh、TetraEPh、2-HPEA、4-HPEA、高級体1、高級体2及び0.2重量%未満のフェノールを含有する混合物である。表1は、上記の記載に従って生成されたEPh塩基性の、下記のようなガスクロマトグラフィ(gas chromatography、GC)分析を提供する。
【0058】
【表1】
【0059】
50%水酸化ナトリウム水溶液(Sigma Aldrichから入手可能な50%水酸化ナトリウム溶液)。
【0060】
1重量%クロロトリメチルシラン試薬を含有するBSTFA(BSTFA溶液、Sigma Aldrich)。
試験測定
【0061】
塩基濃度測定-較正されたMettler Toledo DL70 Autotitratorを使用して、0.1~5グラム(g)のサンプルを2-プロパノール水溶液で希釈し、0.0100N塩酸で滴定することによって塩基濃度を測定する。結果を重量パーセント(重量%)NaOHとして報告する。
【0062】
水分濃度測定(カールフィッシャー分析)-Mettler-Toledo GA 42プリンタ及びMettler Toledo AE160化学天秤に取り付けられたMettler DL 18カールフィッシャー水分滴定装置を使用して、ASTM E203に従って水分濃度を測定する。1.00重量パーセントの水を含有するAquastar(登録商標)からの水標準を使用して滴定装置を較正する。
【0063】
ガスクロマトグラフィ(GC)分析-GC分析のためにN,O-ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド(BSTFA)誘導体化を用いるHewlett Packard 6890 GCを使用する。分析のために、200マイクロリットル(μL)のサンプルを0.5ミリリットル(mL)のピリジン及び0.5mLのBSTFA溶液と混合し、少なくとも15分間保持した後、4μLのサンプルを72mL/分(min)のスプリットフロー(スプリット比20:1)で内径0.32ミリメートル(mm)i.d.、60メートル(m)の1マイクロメートル(μm)ZB-1カラムに、50セルシウス度(℃)で注入し、8℃/分の速度で280℃まで上昇させる。インジェクタ温度は、275℃であり、FID検出器温度は、300℃である。172.4キロパスカル(KPa、25ポンド/平方インチ)のヘッド圧力でキャリアガスとしてヘリウムを使用し、3.6mL/分又は41センチメートル/秒(cm/秒)のフローを与える。10分後に積分を開始する。表2は、GC保持時間、規格限界、及び典型的な生成物組成を提供する。
【0064】
実験装置及び手順
カスタマイズされたUIC RFT-6実験室用回転薄膜蒸発器(UICgmbH,Alzenau-Horstein,Germany)で実験を行う。図1は、カスタマイズされたUIC RFT-6実験室用回転薄膜蒸発器100を示す。UIC RFT-6実験室用回転薄膜蒸発器100は、0.06平方メートルの内部ステンレススチール蒸発面積を有する蒸発器102を含む。蒸発器102の内部ステンレススチール蒸発領域は、等しい表面積の上部ゾーン及び下部ゾーンに分割されている。上部ゾーン及び下部ゾーンのそれぞれは、それら自体のMarlotherm(登録商標)SH熱伝達流体を充填したJulabo SE-6熱油浴(Julabo USA,Inc.)を介して独立して温度制御される。
【0065】
試験のために、50%水酸化ナトリウム水溶液の量を、以下の表1に従ってEPh塩基性の試験サンプルに添加する。EPh塩基性の試験サンプルを2リットルのジャケット付き供給容器104に投入し、0.66cm/回転の供給速度を有するMahr Feinpruf Model N19 0.6スピニングポンプ106(Mahr-Gruppe)を使用して、試験サンプルを蒸発器102の蒸発領域に計量供給する。KB Penta-Drive(商標)Model KBPC-240D Speed Controlに取り付けられたBodine Electric Company Model 42A5BEPM-5N Gearmotor 108を用いてポンプ106の回転速度を制御する。エチレングリコール/水を充填したJulabo 25再循環浴(Julabo USA,Inc.)を使用して、ジャケット付き供給容器104内の温度を制御する。
【0066】
試験中、試験サンプルは、蒸発器領域の中心付近の穴を通ってUIC RFT-6実験室用回転薄膜蒸発器100の蒸発器102に入り、そこで、試験サンプルは、ローラバスケットの上部の回転ステンレススチールプレートに接触し、蒸発器本体の内壁に移送され、蒸発器部分の壁を流下する際に、ワイパバスケットの3つの垂直シャフト上の浮動テフロン(登録商標)ローラによって薄膜へと広げられる。IKA RW20 DZMn撹拌モータ(IKA Works,Inc.)を使用してワイパバスケット速度を制御する。水道水で冷却された0.3~0.6平方メートルの表面積のガラス凝縮器110を使用して、内部蒸発器102から蒸発器セクション112を出る塔頂留出物を凝縮する。凝縮器110からの留出物を丸底フラスコ114に集める。ドライアイスを充填したコールドトラップ116を使用して、ガラス凝縮器110内で凝縮しなかった蒸気を捕捉し、凝縮物があれば丸底フラスコ118内に収集する。回転薄膜蒸発器100の蒸発領域102からの底部残留物を、蒸発器本体の下に配置された丸底フラスコ120に収集する。Leybold TRIVAC(登録商標)D4B回転羽根真空ポンプ122を使用し、48.3kPa(7PSig)の窒素が供給されるLeybold EV 016 DOS ABドージングバルブ124でポンプ122を制御して、回転薄膜蒸発器100に真空を供給する。
【0067】
表2は、以下のように、実施例(Ex)及び比較例(CE)の両方を試験する際に使用される回転薄膜蒸発器100の条件及び設定を提供する。比較例A~比較例Dは、EPh塩基性を伴う50%水酸化ナトリウム水溶液の使用を含まない。実施例1~実施例4は、EPh塩基性を伴う50%水酸化ナトリウム水溶液の使用を含み、一方、実施例5~実施例12は、脱水工程の使用及びEPh塩基性を伴う50%水酸化ナトリウム水溶液の使用を含む。
【0068】
表2について、蒸発器温度(Evap Temp、℃)は、内部蒸発領域102の下部ゾーン及び上部ゾーンの両方に設定された温度であり、蒸発器圧力(Evap Press、Torr)は、内部蒸発領域102内の圧力であり、供給物重量(Feed Wt.)は、2リットルジャケット付き供給容器104中のEPh塩基性供給物の重量であり、供給物1グラム当たりの50%NaOHのグラム数(供給物1g当たりの50%NaOHのg数)は、内部蒸発領域102にEPh塩基性供給物1グラム当たりに添加される50%水酸化ナトリウム水溶液の重量であり、NaOHの重量パーセント(供給物中のNaOHの重量%)は、内部蒸発領域102へのEPh塩基性供給物中に存在するNaOHの重量%であり、NaOHの重量%は、以下の塩基濃度測定セクションに記載されるように測定される。
【0069】
表2において、「Dehy」は、脱水工程「Via WFE」又は「Via Roto」の使用を示す。脱水工程「Via WFE」では、内部蒸発領域102の上部ゾーン及び下部ゾーンを13.3Pa~133.3Pa(0.1Torr~1Torr)の真空下で60℃に加熱する。本明細書に記載されるように、カールフィッシャー分析を使用して、2リットルのジャケット付き供給容器104内のEPh塩基性供給物中に存在する水の量を測定する。EPh塩基性供給物を内部蒸発領域102に添加して脱水させ、水のみを除去するが、蒸発器セクション112から塔頂留出物を取り出さない。丸底フラスコ120内に収集された重質留分中に存在する水の量を、カールフィッシャー分析を用いて測定して0.05重量%未満に低減させるのに十分な時間、内部蒸発領域102へのEPh塩基性供給物を保持する。
【0070】
脱水工程「Via Roto」の場合、回転蒸発器の丸底フラスコ中のEPh塩基性供給物を、カールフィッシャー分析を用いて測定してEPh塩基性供給物が0.05重量%未満の水の量を有するまで、13.3KPa~1.3KPa(100Torr~10Torr)の真空下で60℃の温度に加熱する。
【0071】
次いで、得られた脱水EPh塩基性を、表2に示す回転薄膜蒸発器100の操作条件及び設定を使用して分離する。表3は、表2の実施例及び比較例についてのGC分析結果を提供する。
【0072】
【表2】
【0073】
【表3】
【0074】
図2は、(供給容器104内に存在する)EPh塩基性の試験サンプル中に存在するNaOHの重量パーセントの関数としての、(蒸発器セクション112を出る)塔頂留出物中の2-HPEAについてのGC面積パーセントデータの関係を示す。図2にプロットされたデータ点は、x軸を横切って左から右に移動して、比較例A、比較例B、比較例E、実施例3、実施例8、実施例5、実施例7、実施例11、実施例4及び実施例2についてのものである。
【0075】
図2に示されるように、追加の水酸化ナトリウムが投入されたEPh塩基の薄膜蒸発は、EPh塩基中の2-HPEA含量を、EPh塩基の総重量に基づいて1重量パーセント未満に実質的に減少させることができた。
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2024-02-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジアルキレンフェノールグリコールエーテル及びグリコシル化フェノール不純物を含む混合物からジアルキレンフェノールグリコールエーテルを単離するための方法であって、前記方法は、
アルカリ金属源を前記混合物に添加して、前記アルカリ金属と前記グリコシル化フェノール不純物との間の反応から形成されたアルカリフェノール塩を有するフェノールグリコール生成物を形成することと、
薄膜蒸発プロセスによって、前記フェノールグリコール生成物中の前記アルカリフェノール塩から前記ジアルキレンフェノールグリコールエーテルを分離して、ジアルキレンフェノールグリコールエーテル生成物を生成することであって、前記ジアルキレンフェノールグリコールエーテル生成物は、前記ジアルキレンフェノールグリコールエーテル生成物の総重量に基づいて1重量%未満の前記グリコシル化フェノール不純物を有する、ことと、を含む、方法。
【請求項2】
前記混合物は、水を更に含み、前記フェノールグリコール生成物中の前記アルカリフェノール塩から前記ジアルキレンフェノールグリコールエーテルを分離する前に、前記フェノールグリコール生成物は、脱水工程を受けて、前記フェノールグリコール生成物から前記水の少なくとも一部が除去される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アルカリ金属は、ナトリウム及びカリウムからなる群より選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記アルカリ金属源は、アルカリ水素化物である、又は
前記アルカリ水素化物は、水素化ナトリウム及び水素化カリウムからなる群から選択される、又は
前記アルカリ金属源は、アルカリ水酸化物である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記アルカリ水酸化物は、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムからなる群から選択される、又は
前記アルカリ金属源は、前記アルカリ水酸化物の水溶液である、又は
前記アルカリ水酸化物の前記水溶液は、水酸化ナトリウム水溶液であり、前記水酸化ナトリウム水溶液の最大50重量パーセントの水酸化ナトリウムの量を有する、又は
前記アルカリ金属源を前記混合物に添加することは、1.6重量パーセント(重量%)~5重量%の前記アルカリ金属水酸化物を前記混合物に添加することを含み、前記重量%は、前記フェノールグリコール生成物の総重量に基づく、又は
前記アルカリ金属源を前記混合物に添加することは、2重量パーセント(重量%)~3.5重量%の前記アルカリ金属水酸化物を前記混合物に添加することを含み、前記重量%は、前記フェノールグリコール生成物の総重量に基づく、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記グリコシル化フェノール不純物は、所定の圧力における沸点を有し、前記沸点は、前記所定の圧力における前記ジアルキレンフェノールグリコールエーテルの沸点とほぼ等しい、請求項1に記載の方法
【請求項7】
前記ジアルキレンフェノールグリコールエーテルは、ジエチレングリコールフェニルエーテルであり、前記グリコシル化フェノール不純物は、2-ヒドロキシフェニルエタノール及び4-ヒドロキシフェニルエタノールを含む、又は
前記ジアルキレンフェノールグリコールエーテルは、ジプロピレングリコールフェニルエーテルであり、前記グリコシル化フェノール不純物は、2-ヒドロキシフェニルプロパノール及び4-ヒドロキシフェニルプロパノールを含む、請求項1、2、6のいずれか一項に記載の方法
【請求項8】
ジアルキレンフェノールグリコールエーテルと、
水と、
グリコシル化フェノール不純物と、
アルカリ金属源と、
前記アルカリ金属と前記グリコシル化フェノール不純物との間の反応から形成されたアルカリフェノール塩と、を含む、フェノールグリコール生成物であって、前記フェノールグリコール生成物は、前記ジアルキレンフェノールグリコールエーテル生成物の総重量に基づいて1重量%未満の前記グリコシル化フェノール不純物を有する、フェノールグリコール生成物
【請求項9】
前記アルカリ金属源は、ナトリウム、水酸化ナトリウム、水素化ナトリウム、カリウム、水酸化カリウム及び水素化カリウムからなる群から選択される、又は
前記フェノールグリコール生成物は、1.6重量パーセント(重量%)~5重量%の前記アルカリ金属源を含み、前記重量%は、前記フェノールグリコール生成物の総重量に基づく、又は
前記フェノールグリコール生成物は、2重量パーセント(重量%)~3.5重量%の前記アルカリ金属源を含み、前記重量%は、前記フェノールグリコール生成物の総重量に基づく、請求項8に記載のフェノールグリコール生成物
【請求項10】
前記ジアルキレンフェノールグリコールエーテルは、ジエチレングリコールフェニルエーテルであり、前記グリコシル化フェノール不純物は、2-ヒドロキシフェニルエタノール及び4-ヒドロキシフェニルエタノールを含む、又は
前記ジアルキレンフェノールグリコールエーテルは、ジプロピレングリコールフェニルエーテルであり、前記グリコシル化フェノール不純物は、2-ヒドロキシフェニルプロパノール及び4-ヒドロキシフェニルプロパノールを含む、請求項8又は9に記載のフェノールグリコール生成物
【国際調査報告】