(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-23
(54)【発明の名称】超高分子量ポリマー及びそれを使用する方法
(51)【国際特許分類】
C08F 220/56 20060101AFI20240816BHJP
C08F 293/00 20060101ALI20240816BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240816BHJP
A61K 31/78 20060101ALN20240816BHJP
【FI】
C08F220/56
C08F293/00
A61P27/02
A61K31/78
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024510427
(86)(22)【出願日】2022-08-30
(85)【翻訳文提出日】2024-02-20
(86)【国際出願番号】 US2022075616
(87)【国際公開番号】W WO2023034765
(87)【国際公開日】2023-03-09
(32)【優先日】2021-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507371168
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ フロリダ リサーチ ファンデーション インコーポレーティッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デビッドソン,カレン エル.
(72)【発明者】
【氏名】ソーヤー,ウォレス ジー.
(72)【発明者】
【氏名】サマリン,ブレント エス.
(72)【発明者】
【氏名】ウルエニャ ヴァルガス,フアン エム.
【テーマコード(参考)】
4C086
4J026
4J100
【Fターム(参考)】
4C086AA02
4C086FA02
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA58
4C086NA14
4C086ZA33
4J026HA11
4J026HA29
4J026HA32
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4J026HC32
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4J026HC48
4J026HD08
4J026HD11
4J026HE01
4J026HE02
4J100AB07Q
4J100AB07R
4J100AJ02Q
4J100AJ02R
4J100AL08P
4J100AL08Q
4J100AL08R
4J100AM15P
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4J100AM19P
4J100AM21P
4J100AM21Q
4J100AM21R
4J100BA03P
4J100BA08P
4J100BA16Q
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4J100BA51Q
4J100BA51R
4J100BA87Q
4J100BA87R
4J100BC43Q
4J100BC43R
4J100BC69Q
4J100BC69R
4J100CA04
4J100CA05
4J100CA06
4J100FA03
4J100FA04
4J100FA34
4J100JA51
4J100JA53
(57)【要約】
本開示は、少なくとも1つのタイプの水溶性ポリマーを含む組成物、水溶性ポリマーを作製する方法、水溶性ポリマーが配置された構造、及びそれを使用する方法を提供する。本開示の水溶性ポリマーは、ムチン化されたネットワーク及び表面のゲル化及び機能的な生物学的特性の回復に使用することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
約10kDa~10,000kDaの分子量を有する第1の水溶性ポリマーであって、前記第1の水溶性ポリマーが、複数の骨格単位及び少なくとも1つの第1のタイプのムチン結合単位を含み、前記骨格単位が、分子量に基づいて、前記第1の水溶性ポリマーの50%超を構成し、前記第1のタイプのムチン結合単位が、分子量に基づいて、前記第1の水溶性ポリマーの最大50%に対して1単位を構成し、前記水溶性ポリマーが、ムチンポリマーの水和、レオロジー、又は両方を変化させる特徴を有するように、前記第1のタイプのムチン結合単位が官能化されている、第1の水溶性ポリマー、第2の水溶性ポリマー、又はそれらの組み合わせを含み、前記水和、レオロジー、又は両方を変化させることが、粘液接着性、粘液不安定性、粘液統合性、又はそれらの組み合わせを通じて達成される、組成物。
【請求項2】
前記骨格単位が、モノマー単位、前記モノマー単位を含むコポリマー、又は前記モノマー単位と前記コポリマーとの両方を含み、前記モノマー単位が、アクリルアミドモノマー、メタクリルアミドモノマー、アクリレートモノマー、メタクリレートモノマー、スチレン性モノマー、ビニルピリジンモノマー、マレイミドモノマー、無水マレイン酸由来モノマー、ビニルエステルモノマー、ビニルエーテルモノマー、ビニルアミドモノマー、ビニルアミンモノマー、ハロゲン化ビニルモノマー、又はこれらのうちのいずれか1つの誘導体からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記骨格単位が、モノマー単位、前記モノマー単位を含むコポリマー、又は両方を含み、前記モノマー単位が、アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジアルキルアクリルアミド、N-アルキルアクリルアミド、N,N-ジアルキルメタクリルアミド、N-アルキルメタクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)メタクリレート、ポリ(エチレングリコール)アクリルアミド、及びポリ(エチレングリコール)メタクリルアミドからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記骨格単位が、N,N-ジメチルアクリルアミドである、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ムチン結合単位が、モノマー単位、前記モノマー単位を含むコポリマー、又は両方を含み、前記モノマー単位が、アクリル酸、メタクリル酸、4-ビニル安息香酸、4-(アクリルアミド)フェニルボロン酸、3-(アクリルアミド)フェニルボロン酸、(2-(3-アクリルアミドプロパンアミド)フェニル)ボロン酸(APAPBA)、2-(アクリルアミド)フェニルボロン酸、4-ビニルフェニルボロン酸、3-ビニルフェニルボロン酸、2-ビニルフェニルボロン酸、2-(ピリジン-2-イルジスルファンイル)エチルメタクリレート、ピリジルジスルフィドエチルアクリレート、ピリジルジスルフィドエチルアクリルアミド、ピリジルジスルフィドアルキル(例えば、エチル)メタクリルアミド、2-(ピリジン-2-イルジスルファンイル)エチルアクリレート、2-(ピリジン-2-イルジスルファンイル)エチルアクリルアミド、2-(ピリジン-2-イルジスルファンイル)エチルメタクリレート、又は2-(ピリジン-2-イルジスルファンイル)エチルメタクリレート、N-(2-(トリチルチオ)エチル)アクリルアミド、1つ以上のボロン酸基を含むモノマー、1つ以上のジスルフィド形成基を含有するモノマー、これらの各々のハロゲン化バージョン、又はこれらのうちのいずれか1つの誘導体、又はこれらのうちのいずれか1つのコポリマーからなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記ムチン結合単位が、モノマー単位、前記モノマー単位を含むコポリマー、又は両方を含み、前記モノマー単位が、ボロン酸基、カルボキシレート基、カルボン酸基、水素結合基、疎水性基、1,2-ジオール基、1,3-ジオール基、ジスルフィド結合を形成することが可能な基、又はこれらのうちのいずれか1つの誘導体からなる群から選択される官能基を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記第1の水溶性ポリマーが、第2のタイプのムチン結合単位を含み、前記第2のタイプのムチン結合単位が、モノマー単位、前記モノマー単位を含むコポリマー、又は両方を含み、前記モノマー単位が、アクリル酸、メタクリル酸、4-ビニル安息香酸、4-(アクリルアミド)フェニルボロン酸、3-(アクリルアミド)フェニルボロン酸、(2-(3-アクリルアミドプロパンアミド)フェニル)ボロン酸(APAPBA)、2-(アクリルアミド)フェニルボロン酸、4-ビニルフェニルボロン酸、3-ビニルフェニルボロン酸、2-ビニルフェニルボロン酸、2-(ピリジン-2-イルジスルファンイル)エチルメタクリレート、ピリジルジスルフィドエチルアクリレート、ピリジルジスルフィドエチルアクリルアミド、ピリジルジスルフィドアルキル(例えば、エチル)メタクリルアミド、2-(ピリジン-2-イルジスルファンイル)エチルアクリレート、2-(ピリジン-2-イルジスルファンイル)エチルアクリルアミド、2-(ピリジン-2-イルジスルファンイル)エチルメタクリレート、又は2-(ピリジン-2-イルジスルファンイル)エチルメタクリレート、N-(2-(トリチルチオ)エチル)アクリルアミド、1つ以上のボロン酸基を含むモノマー、1つ以上のジスルフィド形成基を含有するモノマー、これらの各々のハロゲン化バージョン、又はこれらのうちのいずれか1つの誘導体、又はこれらのうちのいずれか1つのコポリマーからなる群から選択され、前記第1のタイプのムチン結合単位が、前記第2のタイプのムチン結合単位とは異なる、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記第1の水溶性ポリマーが、第3のタイプのムチン結合単位を含み、前記第3のタイプのムチン結合単位が、モノマー単位、前記モノマー単位を含むコポリマー、又は両方を含み、前記モノマー単位が、アクリル酸、メタクリル酸、4-ビニル安息香酸、4-(アクリルアミド)フェニルボロン酸、3-(アクリルアミド)フェニルボロン酸、(2-(3-アクリルアミドプロパンアミド)フェニル)ボロン酸(APAPBA)、2-(アクリルアミド)フェニルボロン酸、4-ビニルフェニルボロン酸、3-ビニルフェニルボロン酸、2-ビニルフェニルボロン酸、2-(ピリジン-2-イルジスルファンイル)エチルメタクリレート、ピリジルジスルフィドエチルアクリレート、ピリジルジスルフィドエチルアクリルアミド、ピリジルジスルフィドアルキル(例えば、エチル)メタクリルアミド、2-(ピリジン-2-イルジスルファンイル)エチルアクリレート、2-(ピリジン-2-イルジスルファンイル)エチルアクリルアミド、2-(ピリジン-2-イルジスルファンイル)エチルメタクリレート、又は2-(ピリジン-2-イルジスルファンイル)エチルメタクリレート、N-(2-(トリチルチオ)エチル)アクリルアミド、1つ以上のボロン酸基を含むモノマー、1つ以上のジスルフィド形成基を含有するモノマー、これらの各々のハロゲン化バージョン、又はこれらのうちのいずれか1つの誘導体、又はこれらのうちのいずれか1つのコポリマーからなる群から選択され、前記第1のタイプのムチン結合単位が、前記第2のタイプのムチン結合単位とは異なり、前記第2のタイプのムチン結合単位が、1つ以上のピリジルジスルフィド基、又はこれらのうちのいずれか1つの誘導体を含む前記第3のタイプのムチン結合単位モノマーとは異なる、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記第1のタイプのムチン結合単位が、分子量に基づいて、前記第1の水溶性ポリマーの約5%に対して1官能単位を構成し、前記第2のタイプのムチン結合単位が、分子量に基づいて、前記第1の水溶性ポリマーの約5%に対して1官能単位を構成し、前記第3のタイプのムチン結合単位が、分子量に基づいて、前記第1の水溶性ポリマーの約5%に対して1官能単位を構成する、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記第1の水溶性ポリマーが、線状又は非線状である構造を有し、前記非線状構造が、星状、分岐状、多分岐状、環式、グラフコポリマー、又はボトルブラシ状からなる群から選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記第1のタイプのムチン結合単位が、前記第1の水溶性ポリマーの一方又は両方の末端にのみ位置する、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記第1の水溶性ポリマーが、ブロックコポリマーである、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記第1の水溶性ポリマーが、ランダムコポリマーである、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記第1の水溶性ポリマーが、統計コポリマーである、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記第1の水溶性ポリマーが、交互コポリマーである、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記第1の水溶性ポリマーが、勾配コポリマーである、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記ブロックコポリマーが、ABジブロックコポリマー又はABAトリブロックコポリマーであり、任意選択的に、前記ムチン結合単位が、前記ABジブロックコポリマーのAブロック、又は前記ABAトリブロックコポリマーの前記Aブロック上で単離される、請求項12に記載の組成物。
【請求項18】
前記第1の水溶性ポリマーが、以下の化学構造:
【化1】
を有し、式中、単位aが、骨格単位であり、mが、分子量に基づいて、前記第1の水溶性ポリマーの50%超であり、単位bが、前記第1のタイプのムチン結合単位であり、nが、分子量に基づいて、前記第1の水溶性ポリマーの約50%に対して1単位であり、
単位aと単位bとが、互いに異なり、
R
a1、R
a2、R
a3、R
a4、R
b1、R
b2、R
b3、及びR
b4が、互いに独立して、H、-OR
1、-NR
1R
2、-N
+(R
1)
3、-N
+(R
1)
2(R
2)、-N
+(R
1)(R
2)(R
3)、-S(O)
2R
1、-S(O)
2OR
1、-S(O)
2NR
1R
2、-NR
1S(O)
2R
2、-NR
1C(O)R
2、-C(O)R
1、-C(O)OR
1、-C(O)NR
1R
2、-NR
1C(O)OR
2、-NR
1C(O)NR
1R
2、-OC(O)NR
1R
2、-NR
1S(O)
2NR
1R
2、-C(O)NR
1S(O)
2NR
1R
2、カテコール、ボロン酸基、及びピリジルジスルフィド基から選択され、各R
1、R
2、及びR
3が、独立して、H、又は線状若しくは分岐状C
1-
18アルキル、並びに-C(O)OCH
2CH
2-OH、-C(O)OCH
2CH
2-N(CH
3)
2、-C(O)OCH
2CH
2-N
+(CH
3)
3、-C(O)OCH
2CH
2-OSO
3
-、-C(O)OCH
2CH
2-OSO
3H、-C(O)OCH
2CH
2-SO
3
-、-C(O)OCH
2CH
2-SO
3H、及び-C(O)N(H)C((CH
3)
2)CH
2SO
3
-、-C(O)N(H)C((CH
3)
2)CH
2SO
3Hであり、
Xが、Cであり、Yが、Cである、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
前記第1の水溶性ポリマーが、以下の化学構造:
【化2】
を有し、式中、単位aが、骨格単位であり、mが、分子量に基づいて、前記第1の水溶性ポリマーの50%超であり、単位bが、前記第1のタイプのムチン結合単位であり、nが、分子量に基づいて、前記第1の水溶性ポリマーの約50%に対して1単位であり、単位cが、前記第2のタイプのムチン結合単位であり、oが、分子量に基づいて、前記第1の水溶性ポリマーの約50%に対して1単位であり、単位aと単位bとが、互いに異なり、
R
a1、R
a2、R
a3、R
a4、R
b1、R
b2、R
b3、R
b4、R
c1、R
c2、R
c3、及びR
c4が、互いに独立して、H、-OR
1、-NR
1R
2、-N
+(R
1)
3、-N
+(R
1)
2(R
2)、-N
+(R
1)(R
2)(R
3)、-S(O)
2R
1、-S(O)
2OR
1、-S(O)
2NR
1R
2、-NR
1S(O)
2R
2、-NR
1C(O)R
2、-C(O)R
1、-C(O)OR
1、-C(O)NR
1R
2、-NR
1C(O)OR
2、-NR
1C(O)NR
1R
2、-OC(O)NR
1R
2、-NR
1S(O)
2NR
1R
2、-C(O)NR
1S(O)
2NR
1R
2、カテコール、ボロン酸基、及びピリジルジスルフィド基であり得、各R
1、R
2、及びR
3が、独立して、H、又は線状若しくは分岐状C
1-
18アルキル、並びに-C(O)OCH
2CH
2-OH、-C(O)OCH
2CH
2-N(CH
3)
2、-C(O)OCH
2CH
2-N
+(CH
3)
3、-C(O)OCH
2CH
2-OSO
3
-、-C(O)OCH
2CH
2-OSO
3H、-C(O)OCH
2CH
2-SO
3
-、-C(O)OCH
2CH
2-SO
3H、及び-C(O)N(H)C((CH
3)
2)CH
2SO
3
-、-C(O)N(H)C((CH
3)
2)CH
2SO
3Hであり、
Xが、Cであり、Yが、Cであり、Zが、Cである、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
単位a、単位b、及び単位cが、互いに異なる、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記第1の水溶性ポリマーが、以下に示される化学構造:
【化3】
を有し、式中、単位aが、骨格単位であり、mが、分子量に基づいて、前記第1の水溶性ポリマーの50%超であり、単位bが、前記第1のタイプのムチン結合単位であり、nが、分子量に基づいて、前記第1の水溶性ポリマーの約50%に対して1単位であり、単位cが、前記第2のタイプのムチン結合単位であり、oが、分子量に基づいて、前記第1の水溶性ポリマーの約50%に対して1単位であり、単位dが、前記第2のタイプのムチン結合単位であり、oが、分子量に基づいて、前記第1の水溶性ポリマーの約50%に対して1単位であり、単位aと単位bとが、互いに異なり、
R
a1、R
a2、R
a3、R
a4、R
b1、R
b2、R
b3、R
b4、R
c1、R
c2、R
c3、R
c4、R
d1、R
d2、R
d3、及びR
d4が、互いに独立して、H、-OR
1、-NR
1R
2、-N
+(R
1)
3、-N
+(R
1)
2(R
2)、-N
+(R
1)(R
2)(R
3)、-S(O)
2R
1、-S(O)
2OR
1、-S(O)
2NR
1R
2、-NR
1S(O)
2R
2、-NR
1C(O)R
2、-C(O)R
1、-C(O)OR
1、-C(O)NR
1R
2、-NR
1C(O)OR
2、-NR
1C(O)NR
1R
2、-OC(O)NR
1R
2、-NR
1S(O)
2NR
1R
2、-C(O)NR
1S(O)
2NR
1R
2、カテコール、ボロン酸基、及びピリジルジスルフィド基であり得、各R
1、R
2、及びR
3が、独立して、H、又は線状若しくは分岐状C
1-
18アルキル、並びに-C(O)OCH
2CH
2-OH、-C(O)OCH
2CH
2-N(CH
3)
2、-C(O)OCH
2CH
2-N
+(CH
3)
3、-C(O)OCH
2CH
2-OSO
3
-、-C(O)OCH
2CH
2-OSO
3H、-C(O)OCH
2CH
2-SO
3
-、-C(O)OCH
2CH
2-SO
3H、及び-C(O)N(H)C((CH
3)
2)CH
2SO
3
-、-C(O)N(H)C((CH
3)
2)CH
2SO
3Hであり、
Xが、Cであり、Yが、Cであり、Zが、Cであり、Qが、Cである、請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
単位a、単位b、単位c、及び単位dが、互いに異なる、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記第1の水溶性ポリマーが、約100kDa~10,000kDaの分子量を有する、請求項1~22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
骨格単位及び少なくとも1つのムチン結合単位を重合して、請求項1~23に記載の第1の水溶性ポリマーを形成することを含む、請求項1~23に記載の第1の水溶性ポリマーを作製する合成方法。
【請求項25】
前記重合が、カチオン重合、アニオン重合、開環重合、又は配位重合である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記重合が、ラジカル重合、従来のラジカル重合、可逆的不活性化ラジカル重合、可逆性付加-開裂連鎖移動(RAFT)重合、ザンテートの交換反応を用いた巨大分子設計(MADIX)重合、光イニファータ重合、原子移動ラジカル重合(ATRP)、又は安定フリーラジカル重合(SFRP)であるか、又は任意選択的に、前記重合が、可逆性付加-開裂連鎖移動(RAFT)重合、光イニファータ重合、若しくはザンテートの交換反応を用いた巨大分子設計(MADIX)重合である、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記骨格単位が、前記モノマー単位を含み、アクリルアミドモノマー、メタクリルアミドモノマー、アクリレートモノマー、メタクリレートモノマー、スチレン性モノマー、ビニルピリジンモノマー、マレイミドモノマー、無水マレイン酸由来モノマー、ビニルエステルモノマー、ビニルエーテルモノマー、ビニルアミドモノマー、ビニルアミンモノマー、ハロゲン化ビニルモノマー、又はこれらのうちのいずれか1つの誘導体からなる群から選択される、請求項24~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記骨格単位が、アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジアルキルアクリルアミド、N-アルキルアクリルアミド、N,N-ジアルキルメタクリルアミド、N-アルキルメタクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)アクリレート(例えば、オリゴ(エチレングリコール)アクリレート)、ポリ(エチレングリコール)メタクリレート(例えば、オリゴ(エチレングリコール)メタクリレート)、ポリ(エチレングリコール)アクリルアミド(例えば、オリゴ(エチレングリコール)アクリルアミド)、及びポリ(エチレングリコール)メタクリルアミド(例えば、オリゴ(エチレングリコール)メタクリルアミド)からなる群から選択される、請求項24~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記ムチン結合単位が、モノマー単位、前記モノマー単位を含むコポリマー、又は両方を含み、前記モノマー単位が、ボロン酸基、カルボキシレート基、カルボン酸基、水素結合基、疎水性基、1,2-ジオール基、1,3-ジオール基、ジスルフィド結合を形成することが可能な基、又はこれらのうちのいずれか1つの誘導体からなる群から選択される官能基を含む、請求項24~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記ムチン結合単位が、アクリル酸、メタクリル酸、4-ビニル安息香酸、4-(アクリルアミド)フェニルボロン酸、3-(アクリルアミド)フェニルボロン酸、(2-(3-アクリルアミドプロパンアミド)フェニル)ボロン酸(APAPBA)、2-(アクリルアミド)フェニルボロン酸、4-ビニルフェニルボロン酸、3-ビニルフェニルボロン酸、2-ビニルフェニルボロン酸、2-(ピリジン-2-イルジスルファンイル)エチルメタクリレート、ピリジルジスルフィドエチルアクリレート、ピリジルジスルフィドエチルアクリルアミド、ピリジルジスルフィドアルキル(例えば、エチル)メタクリルアミド、2-(ピリジン-2-イルジスルファンイル)エチルアクリレート、2-(ピリジン-2-イルジスルファンイル)エチルアクリルアミド、2-(ピリジン-2-イルジスルファンイル)エチルメタクリレート、又は2-(ピリジン-2-イルジスルファンイル)エチルメタクリレート、N-(2-(トリチルチオ)エチル)アクリルアミド、1つ以上のボロン酸基を含むモノマー、1つ以上のジスルフィド形成基を含有するモノマー、これらの各々のハロゲン化バージョン、又はこれらのうちのいずれか1つの誘導体、又はこれらのうちのいずれか1つのコポリマーからなる群から選択される、請求項24~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記ムチン結合単位が、ボロン酸基、カルボキシレート基、カルボン酸基、水素結合基、疎水性基、1,2-ジオール基、1,3-ジオール基、及びジスルフィド結合を形成することが可能な基からなる群から選択される官能基を含む、請求項24~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記ムチン結合単位又はムチン結合単位の組み合わせが、コポリマー単位の重合後反応によって前記コポリマーに組み込まれる、請求項24~31のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる、2021年8月31日出願の”ULTRA-HIGH MOLECULAR WEIGHT POLYMERS AND METHODS OF USING THE SAME”という題名を有する米国仮出願第63/239,027号の利益及び優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
外部環境に対する眼の最初の防御線は、角膜の表面にある湿った上皮細胞の薄い層状の層であり、これは、水性及び粘性の涙膜によって遮蔽されている。眼の健康、耐久性、及び快適性は、これらの上皮細胞がムチンを産生してグリコカリックスを形成し、涙膜を安定させる能力に厳然と関連している。眼のムチンは、眼表面の恒常性に寄与し、角膜及び涙膜の透明性を維持し、選択されたガス、流体、イオン、及び栄養素の迅速な通過を可能にしながら、異物(例えば、病原体、毒素、及び粒子)に対する保護の物理的障壁を提供する。
【0003】
角膜及び結膜は、低分子量の膜貫通ムチン(MUC1、MUC4、MUC16、及びMUC20)を発現し、これらは、結膜上皮に見出される杯細胞によって産生される分泌型ムチン及びゲル形成ムチン(MUC2、MUC5AC)を固定する。涙膜に存在するムチン(MUC1、MUC2、MUC4、MUC5AC、及びMUC16)は、一緒になって、眼表面の水和及び透明性を維持し、潤滑性を提供し、まばたき中の角膜と結膜上皮との間の接着に抵抗するように機能するゲル層を形成する。
【0004】
これらのムチンは、グリコカリックスと呼ばれるゲルを広げる(gel-spanning)ハイドロゲルネットワークを生成し、涙膜を安定させ、脱湿を防止する。このゲルネットワークは、化学的架橋とは対照的に、主に物理的架橋を通じて架橋している。重要なことに、弱い物理的架橋及び大きなメッシュサイズのムチンゲルは、スライド中の表面に本質的に低い剪断応力及び低い降伏応力を生じる。降伏応力が過度である場合の(例えば、まばたき中の)条件下では、物理的架橋は、動的に破綻及び修復され、ゲルを広げるムチンネットワークは、その下の上皮細胞に伝達され得る応力の潜在的な損傷レベルを制限する機械的ヒューズのように作用する。
【0005】
表1(
図1)は、眼環境で見出されるムチンの列挙を示している。この多彩なムチンは、限界降伏応力、シアシニングを有するゲルを広げるネットワークを生成し、光学界面にわたり滑らかかつ均一な膜厚を維持する系として機能する。ゲルを形成する可溶性ムチンは、角膜上皮細胞によって形成されない。
【0006】
起きている間に、眼はほとんど休息せず、1日に約20,000回まばたきする。まばたきの間、まぶたワイパー(eyelid wiper)は、およそ100mm/sの最大速度まで加速し、下まぶたに近づき、次いで後退し、プロセス全体は、約100ミリ秒で行われる。この活動中にまぶたが角膜に及ぼす接触圧力は、直接測定されていないが、1~5kPa程度であると考えられる。
【0007】
細胞間に分泌されるムチンMUC20及びワックス状脂質層を含む、眼表面に会合している角膜上皮、涙膜、ムチンの概略図を、
図2の挿入図に概略的に示す。健康な眼の恒常性は、動的均衡であり、角膜及び結膜にわたる低い剪断応力を必要とする。これは、ムチン、塩、タンパク質、並びにサイトカイン、ケモカイン、及び成長因子の複雑な配列で構成される涙膜を維持することを通じて達成されてきた。涙膜の組成の欠陥は、脱水及び剪断応力レベルの上昇をもたらし得る。両方の組織は、疼痛受容体で高度に神経支配されており、生理学的に「正常」レベルを上回る剪断応力は、疼痛の知覚を生成し得る。涙膜(約5μmの厚さ)は、眼表面の角膜上皮細胞(約55μmの厚さ)を覆う。脂質ラフト(50~100nmの厚さ)は、まぶたの縁にあるマイボーム腺によって産生され、涙膜の蒸発を妨げ、微細な粉塵及び破片が眼環境に進入するのを防止すると考えられている。挿入図はまた、分泌型ムチン及びゲル形成ムチン、並びに可溶性の涙膜ムチンの大きな分子量及び複雑な構造を示している。角膜上皮の超微細構造及び層状の扁平上皮表面の微絨毛の細部は、膜結合ムチンMUC1、MUC4、及びMUC16を分泌するための表面積を増加させる。これらのムチンは一緒に、分泌型ムチン及び可溶性ムチンを固定し、涙膜を安定させ、脱湿を防止するグリコカリックスと呼ばれるバイオポリマーハイドロゲルを形成する。ドライアイの不快感は、根底にある病因を有し得、良好に忍容することができる生理学的レベルを超える摩擦剪断応力に関与する。涙膜の質は、これらの両方の用途に非常に重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本開示は、少なくとも1つのタイプの水溶性ポリマーを含む組成物、水溶性ポリマーを作製する方法、水溶性ポリマーが配置された構造、及びそれを使用する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、約10kDa~10,000kDaの分子量を有する第1の水溶性ポリマーであって、第1の水溶性ポリマーが、複数の骨格単位及び少なくとも1つの第1のタイプのムチン結合単位を含み、骨格単位が、分子量に基づいて、第1の水溶性ポリマーの50%超を構成し、第1のタイプのムチン結合単位が、分子量に基づいて、第1の水溶性ポリマーの最大50%に対して1単位を構成し、水溶性ポリマーが、ムチンポリマーの水和、レオロジー、又は両方を変化させる特徴を有するように、第1のタイプのムチン結合単位が官能化されている、第1の水溶性ポリマー、第2の水溶性ポリマー、又はそれらの組み合わせを含み、水和、レオロジー、又は両方を変化させることが、粘液接着性(mucoadhesion)、粘液不安定性(mucolability)、粘液統合性(mucointegration)、又はそれらの組み合わせを通じて達成される、組成物を提供する。
【0010】
本開示は、骨格単位及び少なくとも1つのムチン結合単位を重合して、上記及び本明細書に記載の第1の水溶性ポリマーを形成することを含む、上記及び本明細書に記載の第1の水溶性ポリマーを作製する合成方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本開示の更なる態様は、添付の図面と併せて考慮されるとき、以下に記載される、その様々な実施形態の詳細な説明の検討後、より容易に理解されるであろう。
【0012】
【
図1】表1は、眼環境で見出されるムチンの列挙を示している。
【
図2】細胞間に分泌されるムチンMUC20及びワックス状脂質層を含む、眼表面に会合している角膜上皮、涙膜、ムチンの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
便宜上、本開示の更なる説明の前に、本明細書、実施例、及び添付の特許請求の範囲で使用されるある特定の用語がここに収集されている。本開示は、記載される特定の実施形態に限定されないと理解されるべきであり、したがって、そのような実施形態は、もちろん変化し得る。本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、本開示の範囲が添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるので、限定することを意図するものではないことも理解されたい。これらの定義は、本開示の残りの部分に照らして閲読され、当業者によって理解されるべきである。別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者に一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書全体を通じて使用される用語は、別途特定の例で限定されない限り、以下のように定義される。
【0014】
値の範囲が提供される場合、(別段文脈が明確にそうでないことを示さない限り)下限の単位の10分の1まで、その範囲の上限と下限との間の各介在値、及びその記述された範囲内の任意の他の記述された値又は介在値が、本開示内に包含されることが理解される。これらのより小さな範囲の上限及び下限は、独立して、より小さな範囲に含まれてもよく、また、記述された範囲内の任意の明確に除外された限定を前提として、本開示内に包含される。記述された範囲が、限界の一方又は両方を含む場合、それらの含まれる限界のうちのいずれか又は両方を除外する範囲もまた、本開示に含まれる。
【0015】
本開示を読むと当業者には明らかであろうように、本明細書に記載及び例示される個々の実施形態の各々は、本開示の範囲又は趣旨から逸脱することなく、他のいくつかの実施形態のいずれかの特徴から容易に分離され得る、又はそれらと組み合わされ得る個別の成分及び特徴を有する。任意の詳述された方法は、詳述された事象の順序、又は論理的に可能である任意の他の順序で実行することができる。
【0016】
本開示の実施形態は、別段示されない限り、当該技術分野の範囲内にある化学、生化学、分子生物学、遺伝学などの技術を用いるであろう。そのような技術は、文献で十分に説明されている。
【0017】
以下の例は、本明細書において開示及び特許請求される方法をどのように実施するか、並びに組成物及び化合物をどのように使用するかの完全な開示及び説明を当業者に提供するために記載される。数値(例えば、量、温度など)に関して精度を保証するように努力がなされてはいるが、いくらかの誤差及び偏差が考慮されるべきである。別段の指示がない限り、部は重量部であり、温度は℃であり、圧力は大気圧又はその付近である。標準温度及び圧力は、20℃及び1気圧と定義されている。
【0018】
本開示の実施形態が詳細に説明される前に、別段の指示がない限り、本開示は、特定の材料、試薬、反応物質、製造プロセスなどに限定されないので、変化し得ることが理解されるであろう。また、本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、限定することを意図するものではないことを理解されたい。本開示では、ステップが、これが論理的に可能である異なる順序で行われ得ることも可能である。
【0019】
冠詞「a」、「an」、及び「the」は、冠詞の文法上の目的語のうちの1つ又は2つ以上(すなわち、少なくとも1つ)を指すために使用される。
【0020】
本明細書で使用される場合、「約」、「およそ」などは、数値変数と関連して使用される場合、一般に、変数の値、及び実験誤差内(例えば、平均の95%信頼区間内)、又は示された値の+/-10%以内のいずれか大きい方である変数の全ての値を指す。
【0021】
「含む(comprise)」、「含むこと(comprising)」、「含むこと(including)」、「含有すること(containing)」、「を特徴とする(characterized by)」という用語、及びそれらの文法的等価物は、包括的な開放的な感覚で使用され、追加の要素が含まれ得ることを意味する。これは、「のみからなる」と解釈されることを意図していない。
【0022】
本明細書で使用される場合、「対象」は、少なくとも1つの細胞で構成される任意の生体を指す。生物は、例えば、単一の単離された真核細胞若しくは培養細胞若しくは細胞株ほどに単純であり得るか、又はヒト、及び動物(例えば、脊椎動物、両生類、魚類、哺乳類、例えば、ネコ、イヌ、ウマ、ブタ、ウシ、ヒツジ、げっ歯類、ウサギ、リス、クマ、霊長類(例えば、チンパンジー、ゴリラ、及びヒト)を含む哺乳類ほど複雑であり得る。
【0023】
本明細書で使用される場合、「治療すること」及び「治療」という用語は、一般に、所望の薬理学的及び/又は生理学的効果を得ることを指し得る。効果は、疾患、その症状又は状態を防止するか、又は部分的に防止するという点で、予防的であり得るが、必ずしもそうである必要はない。効果は、疾患、状態、症状、又は疾患、障害、若しくは状態に起因する副作用の部分的な又は完全な治癒の点で、療法的であり得る。本明細書で使用される「治療」という用語は、以下のうちのいずれか1つ以上を含み得る:(a)疾患の素因があり得るが、未だ疾患を有すると診断されていない対象において疾患が発生することを防止すること、(b)疾患を阻害すること、すなわち、その発症を阻止すること、並びに(c)疾患を軽減すること、すなわち、疾患及び/又はその症状若しくは状態を緩和又は改善すること。本明細書で使用される「治療」という用語は、療法的治療単独、予防的治療単独の両方、又は療法的治療と予防的治療との両方を指し得る。治療を必要とするもの(治療を必要とする対象)としては、既に障害を有するもの、及び/又は障害が防止されるべきものが挙げられる。本明細書で使用される場合、「治療すること」という用語は、疾患、障害、又は状態を阻害すること、例えば、その進行を妨げること、並びに疾患、障害、又は状態を軽減すること、例えば、疾患、障害、及び/又は状態の退行を引き起こすことを含み得る。疾患、障害、又は状態を治療することは、基礎となる病態生理が影響を受けない場合でさえも、そのような薬剤が疼痛の原因を治療しないが、鎮痛剤の投与によって対象の疼痛を治療することなどの、特定の疾患、障害、又は状態の少なくとも1つの症状を改善することを含み得る。
【0024】
本明細書で使用される場合、「防止的」及び「防止する」は、診断されていなくても、又は疾患若しくは状態が依然として亜臨床段階にある間であっても、疾患又は状態が発生する前に、疾患又は状態を妨害又は停止することを指す。
【0025】
「ポリマー」としては、限定されないが、ホモポリマー、例えば、ブロック、グラフト、ランダム、及び交互のコポリマー、ターポリマーなどのコポリマー、並びにそれらのブレンド及び修飾物が挙げられることが理解される。
【0026】
本明細書で使用される場合、「疾患」という用語は、身体機能、系、又は臓器の妨害、停止、又は障害を指す。
【0027】
本明細書で使用される場合、「誘導体」は、1つ以上の化学反応によって親化合物から作製される化学的な化合物又は分子を指す。
【0028】
考察
本開示は、約10kDa~10,000kDaの分子量を有する少なくとも1つのタイプの水溶性ポリマーを含む組成物、水溶性ポリマーを作製する方法、水溶性ポリマーが配置された構造、及びそれを使用する方法を提供する。
【0029】
本開示は、高分子量(例えば、約10kDa~10,000kDaの分子量)を有する水溶性ポリマー、及びムチン化されたネットワーク及び表面のゲル化及び機能的な生物学的特性の回復のための水溶性ポリマーの適用を提供する。水溶性ポリマーの実施形態は、以下の特徴のうちの1つ以上を有し得る:(1)粘液接着性:天然に存在するムチンとの共有結合的又は非共有結合的相互作用(例えば、非共有結合的相互作用は、限定されないが、水素結合、イオン結合、ファンデルワールス相互作用、疎水性相互作用、及び巨大分子鎖絡み合いを含む超分子相互作用として説明することができる)を形成することが可能である、(2)粘液不安定性:水溶性ポリマーとムチンとの間の相互作用は、典型的には、可逆的であるべきであるので、これらの相互作用は、機械的な力、背景加水分解、酸化還元反応、又は他の相互作用による交換によって逆転される、並びに(3)粘液統合性:天然ムチンとの相互作用を形成する能力を理由として、及び天然ムチンと同程度の親水性を理由として、水溶性ポリマーは、ムチンネットワークに統合すること、及び/又は膜結合ムチンと相互作用することが可能である。これらの3つの特徴の組み合わせは、本明細書に記載の材料が、インビボでムチン化(mucinate)された表面の水和及びレオロジーを増強することを可能にする。本開示の水溶性ポリマーは、急速に可逆的な相互作用を介して、又はムチンとの最小数の相互作用のみを形成することのいずれかによって、ムチンと弱く相互作用するように設計される。
【0030】
本開示の水溶性ポリマーは、親水性モノマーの重合から合成することができ、非常に水溶性のポリマーが得られる。一態様では、水溶性ポリマーは、約10kDa~10,000kDa、又は約100kDa~10,000kDaの全体分子量を有し得る。これらのポリマーの分子量の大部分(例えば、水溶性ポリマーの分子量の50重量パーセント超又は約75~99.9重量パーセント)は、骨格中の不活性な親水性官能基(例えば、N,N-ジメチルアクリルアミド)に由来する。モノマーの官能基及び/又はモノマー上の官能基は、ムチンと、及び互いとの弱い一過性の可逆的相互作用を形成することによって、粘液性ゲルのシアシニング挙動を復元する能力に基づいて、選択され得る。これらの一過性相互作用は、共有結合(例えば、ボロン酸エステルの形成、ジスルフィドの形成)又は非共有結合(例えば、水素結合、カルボキシレートを介したカルシウム架橋)、又はそれらの組み合わせであり得る。言い換えれば、ポリマーの単位の一部分は、ムチン結合単位である。一例では、これらの相互作用は、それぞれ、N,N-ジメチルアクリルアミド、アクリル酸、3-(アクリルアミド)フェニルボロン酸、及びピリジルジスルフィドアクリルアミドで構成されるポリマーを通じて達成され得る。加えて、本開示の水溶性ポリマーはまた、全体的なポリマーが水溶性であることを条件として、疎水性及び親水性モノマーの混合物で(例えば、アクリレート又はスチレン酸及びマレイミドの重合を介して)構成され得る。一態様では、ムチンとの、又は本開示の水溶性ポリマー間の一過性相互作用を担う官能基(例えば、モノマー及び/又は官能基などのムチン結合単位)は、典型的には、骨格全体を通じてまばらに分布して、水溶性ポリマーの全分子量の約0.1%~50%、約0.1%~40%、約0.1%~35%、約0.1%~30%、約0.1%~25%を構成する。一態様では、低含有量のモノマー/官能基は、ポリマーの特定の領域で単離され得、特定の領域では、結合官能基が、ポリマー骨格に沿って勾配型様式で存在するか、又は主に若しくはポリマーの一端若しくは両端(例えば、末端に位置する)単独の、又はポリマーの中間領域(例えば、中央に位置する)のみの領域へと単離される。この方式で、ムチン結合単位の重量パーセントは、非常に低いもの(例えば、0.1~1重量パーセント)から、水溶性ポリマーの全分子量の0.1~25重量パーセント(例えば、約0.1~25、約0.1~20、約0.1~15、約0.1~10、約0.1~5、約0.1~2、約0.1~1、約0.1~0.5、約1~25、約1~20、約1~15、約1~10、約1~5、約1~2)の範囲内のいずれかであり得る。
【0031】
「水溶性ポリマー」における「水溶性」という用語は、室温で水に可溶性である任意のポリマーである。典型的には、水溶性ポリマーの溶液は、濾過後に同じ溶液によって透過される光のうちの少なくとも約75%、より好ましくは少なくとも約95%を透過するであろう。重量基準では、水溶性ポリマーは、好ましくは、水に少なくとも約35%(重量)可溶性であり、より好ましくは、水に少なくとも約50%(重量)可溶性であり、なおより好ましくは、水に約70%(重量)可溶性であり、なおより好ましくは、水に約85%(重量)可溶性である。水溶性ポリマーは、水に約95%(重量)可溶性であるか、又は水に完全に可溶性であることが最も好ましい。
【0032】
一態様では、本開示は、水溶性ポリマーを含む眼科用溶液を提供する。一態様では、本開示は、対象の眼の状態を治療又は防止する方法であって、治療有効量の本明細書に開示の眼科用溶液を眼に投与し、それによって、水溶性ポリマーが、ムチン又はムチン結合タンパク質と非共有結合的相互作用又は可逆的共有結合を形成することを含む、方法を提供する。別の態様では、水溶性ポリマーは、構造又はデバイス上に層を形成することができ、デバイスが、ムチン環境で使用される。
【0033】
一態様では、組成物は、約10kDa~10,000kDa、又は約100kDa~10,000kDaの分子量を有する水溶性ポリマーを含む。一態様では、組成物は、他のタイプの水溶性ポリマーを含み得る。本明細書の考察のうちの多くでは、「第1の水溶性ポリマー」に対して言及されているが、2つ以上のタイプの水溶性ポリマーを含む組成物では、「第1の水溶性ポリマー」について本明細書で提供される説明は、2つのタイプの水溶性ポリマーが化学的に異なる場合の、他のタイプの水溶性ポリマーに等しく適用されることに留意されるべきである。
【0034】
第1の水溶性ポリマーは、複数の骨格単位、及び少なくとも1つの第1のタイプのムチン結合単位を含む。骨格単位は、分子量に基づいて、第1の水溶性ポリマーの50%超又は約75~99.9%を構成する。第1のタイプのムチン結合単位は、分子量に基づいて、第1の水溶性ポリマーの最大50%又は約0.1~25%に対して1単位を構成する。他の態様では、第1の水溶性ポリマーは、第2のタイプ又は第3のタイプのムチン結合単位を含み得る。各タイプのムチン結合単位は、分子量に基づいて、第1の水溶性ポリマーの最大25%に対して1単位、約5%、約0.1~25%、約0.1~20%、約0.1~15%、約0.1~10%、約0.1~5%、又は約0.1~1%に対して1官能単位であり得る。
【0035】
一実施形態では、第1の水溶性ポリマーは、線状、又は星状、分岐状、多分岐状、くし/ブラシ状、グラフコポリマー、ボトルブラシ状、若しくは環式などの非線状であり得る。一実施形態では、第1の水溶性ポリマーは、高分子電解質、高分子両性電解質、又は高分子双性電解質であり得る。
【0036】
一態様では、骨格単位は、モノマー単位、モノマー単位を含むコポリマー、又はモノマー単位とモノマー単位を含むコポリマー単位との両方を含み得る。一態様では、第1の水溶性ポリマーは、ブロックコポリマー、ランダムコポリマー、統計コポリマー、交互コポリマー、又は勾配コポリマーであり得る。一態様では、第1の水溶性ポリマーは、ABジブロックコポリマー又はABAトリブロックコポリマーなどのブロックコポリマーである。任意選択的に、ムチン結合単位は、ABジブロックコポリマーのAブロック、又はABAトリブロックコポリマーのAブロック上で単離される。一態様では、AB又はABAブロックコポリマーのA及びBブロックは、コモノマー単位の混合物を含有する。一態様では、A又はBブロック内のコモノマー単位は、交互な様式、ランダムな様式、統計的な様式、又は勾配的な様式で配置され得る。別の態様では、コポリマーの1つ以上のブロックは、全体的なコポリマーが水溶性である限り、水不溶性であってもよい。例えば、ABジブロックコポリマー又はABAトリブロックコポリマーのAブロック又はBブロックのうちの1つは、水不溶性であり得、コポリマー自体は、水溶性である。
【0037】
勾配コポリマーは、少なくとも1つのモノマー単位の出現頻度がポリマー鎖に沿って徐々に変化する、2つ以上のタイプのモノマー単位を有するポリマーである。統計コポリマーは、モノマー単位の連続的な分布が既知の統計的法則に従い、相対反応性に基づいている、コポリマーである。
【0038】
一態様では、モノマー単位は、アクリルアミドモノマー、メタクリルアミドモノマー、アクリレートモノマー、メタクリレートモノマー、スチレン性モノマー、ビニルピリジンモノマー、マレイミドモノマー、無水マレイン酸由来モノマー、ビニルエステルモノマー、ビニルアミドモノマー、ハロゲン化ビニルモノマー、又はこれらのうちのいずれか1つの誘導体から選択され得る。特定の態様では、骨格単位は、モノマー単位、又はモノマー単位を含むコポリマーを含み得、モノマー単位が、アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジアルキルアクリルアミド、N-アルキルアクリルアミド、N,N-ジアルキルメタクリルアミド、N-アルキルメタクリルアミド、アルキルメタクリレート、アルキルアクリレート、オリゴ(エチレングリコール)アクリレート、オリゴ(エチレングリコール)メタクリレート、オリゴ(エチレングリコール)アクリルアミド、又はオリゴ(エチレングリコール)メタクリルアミド、他の置換アクリレート(例えば、置換基(R)は、ヒドロキシ基、アミン基、カルボキシレート基、スルホネート基などの官能基を含む)、他の置換メタクリレート(例えば、置換基(R)は、ヒドロキシ基、アミン基、カルボキシレート基、スルホネート基などの官能基を含む)から選択される。特定の態様では、骨格単位は、N,N-ジメチルアクリルアミドである。
【0039】
各タイプ(例えば、第1のタイプ、第2のタイプ、第3のタイプ)のムチン結合単位は、水溶性ポリマーが、ムチン系ポリマー、第2の水溶性ポリマー、又はそれらの組み合わせの水和、レオロジー、又は両方を変化させるという特徴を有するように官能化され得る。水和、レオロジー、又は両方を変化させる特徴は、本明細書に記載されるように、粘液接着性、粘液不安定性、粘液統合性、又はそれらの組み合わせを通じて達成することができる。
【0040】
一態様では、ムチン結合単位は、モノマー単位、モノマー単位を含むコポリマー、又は両方を含み得、モノマー単位が、モノマーに結合した官能基を含み、官能基が、ボロン酸基、カルボキシレート基、カルボン酸基、水素結合基、疎水性基、又はジスルフィド結合を形成することが可能な基であり得る。一実施形態では、複数の官能基は、第1の水溶性ポリマーに均質に、ランダムに、勾配のある、又はブロック状の秩序で分布し、特定の態様では、水溶性ポリマーの末端に分布する。
【0041】
各タイプのムチン結合単位は、モノマー単位、又はモノマー単位を含むコポリマーのセグメントであり得る。モノマー単位は、アクリル酸、メタクリル酸、4-ビニル安息香酸、4-(アクリルアミド)フェニルボロン酸、3-(アクリルアミド)フェニルボロン酸、(2-(3-アクリルアミドプロパンアミド)フェニル)ボロン酸(APAPBA)、2-(アクリルアミド)フェニルボロン酸、4-ビニルフェニルボロン酸、3-ビニルフェニルボロン酸、2-ビニルフェニルボロン酸、2-(ピリジン-2-イルジスルファンイル)エチルメタクリレート、ピリジルジスルフィドエチルアクリレート、ピリジルジスルフィドエチルアクリルアミド、ピリジルジスルフィドアルキル(例えば、エチル)メタクリルアミド、2-(ピリジン-2-イルジスルファンイル)エチルアクリレート、2-(ピリジン-2-イルジスルファンイル)エチルアクリルアミド、2-(ピリジン-2-イルジスルファンイル)エチルメタクリレート、又は2-(ピリジン-2-イルジスルファンイル)エチルメタクリレート、N-(2-(トリチルチオ)エチル)アクリルアミド、これらの各々のハロゲン化バージョン、又はこれらのうちのいずれか1つの誘導体、又はこれらのうちのいずれか1つのコポリマーからなる群から選択され得る。
【0042】
一態様では、第1の水溶性ポリマーは、
【化1】
などの化学構造を有し得る。一態様では、単位aは、骨格単位であり、mは、分子量に基づいて、第1の水溶性ポリマーの50%超又は約75~99.9%である。一態様では、m及びnは、互いに独立して、約1000~100,000であり得る。単位bは、第1のタイプのムチン結合単位であり、nは、分子量に基づいて、第1の水溶性ポリマーの最大50%又は約0.1~25%(又は約0.1~10%、約0.1~15%、約1~10%、約1~15%、約5~10%、約5~15%、約5~20%、約5~25%などの本明細書で提供される別の範囲)に対して1単位である。単位aと単位bとは、互いに異なる。R
a4及びR
b4の破線は、これが、それぞれX及びYに基づいて、任意選択的に存在することを示した。
【0043】
一態様では、Ra1、Ra2、Ra3、Ra4、Rb1、Rb2、Rb3、及びRb4は、互いに独立して、H、-OR1、-NR1R2、-N+(R1)3、-N+(R1)2(R2)、-N+(R1)(R2)(R3)、-S(O)2R1、-S(O)2OR1、-S(O)2NR1R2、-NR1S(O)2R2、-NR1C(O)R2、-C(O)R1、-C(O)OR1、-C(O)NR1R2、-NR1C(O)OR2、-NR1C(O)NR1R2、-OC(O)NR1R2、-NR1S(O)2NR1R2、-C(O)NR1S(O)2NR1R2、カテコール、ボロン酸基、及びピリジルジスルフィド基であり得、各R1、R2、及びR3が、独立して、H、又は線状若しくは分岐状C1-18アルキル、並びに-C(O)OCH2CH2-OH、-C(O)OCH2CH2-N(CH3)2、-C(O)OCH2CH2-N+(CH3)3、-C(O)OCH2CH2-OSO3
-、-C(O)OCH2CH2-OSO3H、-C(O)OCH2CH2-SO3
-、-C(O)OCH2CH2-SO3H、-C(O)N(H)C((CH3)2)CH2SO3
-、又は-C(O)N(H)C((CH3)2)CH2SO3Hである。
【0044】
一態様では、Xは、N又はCであり得、Yは、C又はNであり得る。特定の態様では、X及びYは、Cである。
【0045】
別の態様では、第1の水溶性ポリマーは、
【化2】
などの化学構造を有する。一態様では、単位aは、骨格単位であり得、mは、分子量に基づいて、第1のポリマーの50%超又は約75~99.9%である。一態様では、m、n、及びoは、互いに独立して、約1000~100,000であり得る。単位bは、第1のタイプのムチン結合単位であり得、nは、分子量に基づいて、第1のポリマーの最大50%又は約0.1~24%(又は本明細書に提供される別の範囲)に対して1単位である。単位cは、第2のタイプのムチン結合単位であり、oは、分子量に基づいて、第1のポリマーの最大50%又は約0.1~24%(又は本明細書に提供される別の範囲)に対して1単位である。単位a及び単位bは、互いに異なるか、又は単位a、単位b、及び単位cは、互いに異なる。R
a4、R
b4、及びR
c4の破線は、これが、それぞれX、Y、及びZに基づいて、任意選択的に存在することを示した。一態様では、単位cは、例えば、ムチン結合を担い得るか、又は(例えば、電荷を導入することによって)骨格の親水性を更に向上させることを担い得る。
【0046】
一態様では、Ra1、Ra2、Ra3、Ra4、Rb1、Rb2、Rb3、Rb4、Rc1、Rc2、Rc3、及びRc4は、互いに独立して、H、-OR1、-NR1R2、-N+(R1)3、-N+(R1)2(R2)、-N+(R1)(R2)(R3)、-S(O)2R1、-S(O)2OR1、-S(O)2NR1R2、-NR1S(O)2R2、-NR1C(O)R2、-C(O)R1、-C(O)OR1、-C(O)NR1R2、-NR1C(O)OR2、-NR1C(O)NR1R2、-OC(O)NR1R2、-NR1S(O)2NR1R2、-C(O)NR1S(O)2NR1R2、カテコール、ボロン酸基、及びピリジルジスルフィド基であり得、各R1、R2、及びR3が、独立して、H、又は線状若しくは分岐状C1-18アルキル、並びに-C(O)OCH2CH2-OH、-C(O)OCH2CH2-N(CH3)2、-C(O)OCH2CH2-N+(CH3)3、-C(O)OCH2CH2-OSO3
-、-C(O)OCH2CH2-OSO3H、-C(O)OCH2CH2-SO3
-、-C(O)OCH2CH2-SO3H、-C(O)N(H)C((CH3)2)CH2SO3
-、又は-C(O)N(H)C((CH3)2)CH2SO3Hである。
【0047】
一態様では、Yが、C又はNであり得、Zが、N又はCであり得る場合、Xは、N又はCであり得る。特定の態様では、X、Y、及びZは、Cである。
【0048】
別の態様では、第1の水溶性ポリマーは、
【化3】
などの化学構造を有する。一態様では、単位aは、骨格単位であり得、mは、分子量に基づいて、第1の水溶性ポリマーの50%超又は約75~99.9%である。一態様では、m、n、及びoは、互いに独立して、約1000~100,000であり得る。単位bは、第1のタイプのムチン結合単位であり得、nは、分子量に基づいて、第1のポリマーの最大50%又は約0.1~24%に対して1単位である。単位cは、第2のタイプのムチン結合単位であり得、oは、分子量に基づいて、第1の水溶性ポリマーの約0.1~24%である。単位dは、第3のタイプのムチン結合単位であり得、oは、分子量に基づいて、第1の水溶性ポリマーの最大50%又は約0.1~24%に対して1単位である。単位a及び単位bは、互いに異なり得るか、単位a、単位b、及び単位cは、互いに異なり得るか、又は単位a、単位b、単位c、及び単位dは、互いに異なり得る。R
a4、R
b4、R
c4、及びR
d4の破線は、これが、それぞれX、Y、Z、及びQに基づいて、任意選択的に存在することを示した。一態様では、単位c及び/又は単位dは、例えば、ムチン結合を担い得るか、又は(例えば、電荷を導入することによって)骨格の親水性を更に向上させることを担い得る。
【0049】
一態様では、Ra1、Ra2、Ra3、Ra4、Rb1、Rb2、Rb3、Rb4、Rc1、Rc2、Rc3、Rc4、Rd1、Rd2、Rd3、及びRd4は、互いに独立して、H、-OR1、-NR1R2、-N+(R1)3、-N+(R1)2(R2)、-N+(R1)(R2)(R3)、-S(O)2R1、-S(O)2OR1、-S(O)2NR1R2、-NR1S(O)2R2、-NR1C(O)R2、-C(O)R1、-C(O)OR1、-C(O)NR1R2、-NR1C(O)OR2、-NR1C(O)NR1R2、-OC(O)NR1R2、-NR1S(O)2NR1R2、-C(O)NR1S(O)2NR1R2、カテコール、ボロン酸基、及びピリジルジスルフィド基であり得、各R1、R2、及びR3が、独立して、H、又は線状若しくは分岐状C1-18アルキル、並びに-C(O)OCH2CH2-OH、-C(O)OCH2CH2-N(CH3)2、-C(O)OCH2CH2-N+(CH3)3、-C(O)OCH2CH2-OSO3
-、-C(O)OCH2CH2-OSO3H、-C(O)OCH2CH2-SO3
-、-C(O)OCH2CH2-SO3H、-C(O)N(H)C((CH3)2)CH2SO3
-、又は-C(O)N(H)C((CH3)2)CH2SO3Hである。
【0050】
一態様では、Yが、C又はNであり得、Zが、N又はCであり得、Qが、N又はCであり得る場合、Xは、N又はCであり得る。特定の態様では、X、Y、Z、及びQは、Cである。
【0051】
一態様では、本開示の水溶性ポリマーは、水性可逆的不活性化ラジカル重合を介して調製することができる(Chem,2017,2(1),93-101を参照されたい)。一実施形態では、ポリマー性材料は、ザンテートの交換反応を用いた巨大分子設計(MADIX)重合を介して調製される。一実施形態では、ポリマー性材料は、光イニファータ重合を介して調製される。制御された分子量を有するこれらの材料はまた、原子移動ラジカル重合、及びニトロキシド媒介重合などの他の制御されたラジカル重合方法を通じて誘導することができる。加えて、これらの材料は、従来のラジカル、アニオン、カチオン、開環、及び開環メタセシス重合によって誘導することができる。
【0052】
具体的には、本開示は、骨格単位及び少なくとも1つのムチン結合単位を重合して、第1の水溶性ポリマーを形成することによって、本明細書に提供される第1の水溶性ポリマーを作製する合成方法を提供する。重合は、ラジカル重合、従来のラジカル重合、可逆的不活性化ラジカル重合、可逆性付加-開裂連鎖移動(RAFT)重合、ザンテートの交換反応を用いた巨大分子設計(MADIX)重合、光イニファータ重合、原子移動ラジカル重合(ATRP)、又は安定フリーラジカル重合(SFRP)、並びに重合後修飾による(例えば、活性化エステル基を含有するモノマー単位の修飾による)ものであり得る。
【0053】
トリチオカーボネートによって開始される典型的な光イニファータ重合は、以下の通りである。Mn≧5.00×106g/molを目標とする)。DMA(394mg、3.97mmol)及びトリチオカーボネートイニファータ(1.00mg/mLのジメチルスルホキシド(DMSO)ストック溶液からの20.0μg、7.45×10-5mmol)を、10mLシュレンクフラスコ内で水(1.70mL、2M[DMA])に溶解させ、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)(0.100mL)を内部標準として添加した。イニファータストック溶液を、更なる使用のために2~6℃で保存した。アルゴンを重合溶液に20分間バブリングした。7.0mW/cm2の強度の紫外線(UV)光源から2.50cmに反応容器を配置し、照射時に重合を開始させた。1H NMR分光法によってモノマー変換率を決定して、DMF(s,1H,8.02ppm)に対するDMAビニルピーク(d,1H,5.60ppm)の消失を監視した。各反応アリコートを凍結乾燥によって乾燥させ、分子量特徴評価の少なくとも24時間前に、SEC溶媒(≦1mg/mL)に溶解させた。
【0054】
光イニファータ重合を介して高分子量ブロックコポリマーを作製する能力を実証する例示的な鎖伸長重合は、以下の通りである。DMA(417mg、4.20mmol)及びトリチオカーボネートイニファータ(1.00mg/mLのDMSOストック溶液からの0.100mg、3.72×10-4mmol)を、10mLシュレンクフラスコ内で水(3.70mL、1M[DMA])に溶解させ、DMF(0.100mL)を内部標準として添加した。アルゴンを重合溶液に20分間バブリングした。7.0mW/cm2の強度のUV光源から2.50cmに反応容器を配置し照射時に重合を開始させた。反応物を24時間の間照射し、少量を除去して、ビニルの消失、DMF(s、1H、8.02ppm)に対するDMAピーク(d、1H、5.60ppm)を監視することによって、1H NMR分光法を介してモノマー変換率を決定し、SECを介して分子量を特徴評価した。ポリ(DMA)(PDMA)第一ブロックの重合は、95%超のモノマー変換率に達した。DMA(420mg、4.24mmol)を、水(3.10mL)、DMF(0.100mL)、及び先のPDMA重合混合物に溶解させた。アルゴンを粘性溶液に20分間の間バブリングし、照射時に鎖伸長を開始させた。
【0055】
一態様では、本開示は、ムチン結合単位又はムチン結合単位の組み合わせが、コポリマー単位の重合後反応によってコポリマーに組み込まれる方法を含む。ムチン結合単位を付加するために小分子と反応させることができる反応性モノマー単位としては、活性化エステル(例えば、N-ヒドロキシルスクシンイミドエステル、ペンタフルオロフェニルエステル、ヒドロキシベンゾトリアゾールエステル、ニトロフェノールエステル、フタルイミドエステル)、アジド基、アルキン基、ハロゲン基、カルボン酸基などを挙げることができる。
【実施例】
【0056】
超高分子量ポリマー及びムチンの細胞モデル研究:
そのままの膜結合ムチン及び糖酵素(glycocalyce)(MUC1、MUC4、及びMUC16を含む)、並びに精製されたゲル形成分泌型ムチン、MUC2を含む角膜上皮細胞(自己交配及び適合)のGeminiモデルを、粘液接着性部分を含有する超高分子量ポリマーの存在下及び不在下で評価した。これらの実験は、1mm/sのマイクロバイオトライボメータ上で300~1000サイクル以上の往復スライドでの生理学的接触圧力下で実施した。実験中、細胞培養培地を、ムチン又はポリマーを含まない新鮮な培地と継続的に置き換えて、眼環境における涙膜のターンオーバーを模倣した。超高分子量粘液接着性ポリマーを添加すると、摩擦低減が観察され、ムチン単独での実験よりも有意に多くのサイクルで摩擦係数が低いままであり、超高分子量粘液模倣ポリマーを適用した後、長く持続する粘液接着性を示している。
【0057】
実験環境
角膜上皮細胞のGeminiモデルは、フィブロネクチンでコーティングされたガラス底培養皿及びコラーゲンでコンジュゲートされたポリアクリルアミド膜プローブの表面官能化を介して達成した。共焦点画像化及びバイオトライボロジー:角膜上皮細胞のコンフルエントな単層を、実験の前に、両方の表面(ガラス底培養皿及び膜プローブ)上で慎重に画像化し、特徴評価し、確認した。培養条件を、特性のステージインキュベータを使用して、37±0.2℃、5%CO2、及び約100%の湿度で維持した。2つの上皮細胞表面間に300μNの通常負荷を印加し、界面にわたって約600Paの平均接触圧力を生じた。接触圧力は、角膜細胞でコーティングされた膜プローブの測定された接触面積によって、通常負荷を除算することによって決定した。往復ステージに取り付けられた培養皿上の角膜細胞単層を、1mm/sの速度で300サイクル(30分)の間、膜プローブ上の細胞単層対応物に対して3mmのストローク長でスライドさせた。垂直抗力及び摩擦力は、100Hzのデータ取得速度でのカンチレバーの離反から記録した。トライボロジー実験中、シリンジポンプを使用して、ムチン又はポリマーが存在しない細胞培養物を、18.5μL/分の速度で同時に注入及び吸引して、細胞結合ムチンとの統合性及び接着性を調査した。
【0058】
超高分子量ポリマー及びムチンのマイクロレオロジー:
磁気ピンセットを使用するマイクロレオロジー実験は、超高分子量(UHMW)粘液接着性ポリマーと精製したゲル形成分泌型ムチンMUC2との混合物の降伏応力が、炎症誘発性サイトカイン(40Pa未満)及びアポトーシス(100Pa未満)を生成することが知られている臨界閾値未満であることを示した。重要なことに、MUC2又はUHMW粘液接着性ポリマーのいずれか単独で行ったレオロジー測定は、大きな周波数範囲にわたって粘性流体特徴(G”>G’)を示したが、これら2つの混合物は、上首尾な動的ゲル形成及び保存/損失係数のクロスオーバー(G’>G”)を示した。実験環境
【0059】
ニッケル系軟磁性合金ロッド(ASTM A753 Type4、MIL N-14411C Comp1)を、幅約100μmのチゼルチップを有するように機械加工した。先端の近くで最適な水平磁場を達成するように、先端の幾何学形状を設計した。次いで、ロッドに、120mmの長さにわたりAWG22銅マグネットワイヤを1200回巻きつけた。装置全体を、倒立型ニコンA1R共焦点顕微鏡と共に手動ステージマニピュレータ(OptoSigma)に取り付けた。試料の乾燥又は水分損失を防止するために、温度制御及び高湿度条件下で実験を行った。全ての測定に、1Aの電流を印加した。これらの環境では、ロッドの電気抵抗加熱は、無視できる。蛍光標識及び超常磁性粒子、直径5.8μm(COMPEL(商標)UMDG002/UMC3F、COOH官能化ビーズ、Bangs Laboratories Inc.,Fishers,Indiana,USA)を、体積分画約0.02の濃度で添加し、15秒間ボルテックス混合して、均一な分散を確実にした。この作業濃度は、測定可能な単一粒子軌道を確保するために試験されている。磁気プローブ動的データは、高速電子増倍CCDカメラ(Andor iXon Life 888,Oxford Instruments,U.K.)を使用して、100フレームs-1の速度で撮像した。水平変位(x方向)が優勢である。プローブ粒子に印加される力は、水中のグリセロール(Sigma-Aldrich)の80重量%溶液中の粒子運動を追跡することによって較正し、これはPa-sに対する動的粘度η=0.060を有し、これはバルクレオロジー測定を使用して確認した。ストークス抵抗を使用して、粒子追跡を通じた位置の関数として測定される、速度の関数としての粒子への力をモデル化した。
【0060】
具体的には、本開示は、限定されないが、以下の態様を提供する。
態様1.本開示は、約10kDa~10,000kDaの分子量を有する第1の水溶性ポリマーであって、第1の水溶性ポリマーが、複数の骨格単位及び少なくとも1つの第1のタイプのムチン結合単位を含み、骨格単位が、分子量に基づいて、第1の水溶性ポリマーの50%超を構成し、第1のタイプのムチン結合単位が、分子量に基づいて、第1の水溶性ポリマーの最大50%に対して1単位を構成し、水溶性ポリマーが、ムチンポリマーの水和、レオロジー、又は両方を変化させる特徴を有するように、第1のタイプのムチン結合単位が官能化されている、第1の水溶性ポリマー、第2の水溶性ポリマー、又はそれらの組み合わせを含み、水和、レオロジー、又は両方を変化させることが、粘液接着性、粘液不安定性、粘液統合性、又はそれらの組み合わせを通じて達成される、組成物を提供する。
態様2.骨格単位が、モノマー単位、モノマー単位を含むコポリマー、又はモノマー単位とコポリマーとの両方を含み、モノマー単位が、アクリルアミドモノマー、メタクリルアミドモノマー、アクリレートモノマー、メタクリレートモノマー、スチレン性モノマー、ビニルピリジンモノマー、マレイミドモノマー、無水マレイン酸由来モノマー、ビニルエステルモノマー、ビニルエーテルモノマー、ビニルアミドモノマー、ビニルアミンモノマー、ハロゲン化ビニルモノマー、又はこれらのうちのいずれか1つの誘導体からなる群から選択される、態様1に記載の組成物。
態様3.骨格単位が、モノマー単位、モノマー単位を含むコポリマー、又は両方を含み、モノマー単位が、アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジアルキルアクリルアミド、N-アルキルアクリルアミド、N,N-ジアルキルメタクリルアミド、N-アルキルメタクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)メタクリレート、ポリ(エチレングリコール)アクリルアミド、及びポリ(エチレングリコール)メタクリルアミドからなる群から選択される、態様1に記載の組成物。
態様4.骨格単位が、N,N-ジメチルアクリルアミドである、態様1に記載の組成物。
態様5.ムチン結合単位が、モノマー単位、モノマー単位を含むコポリマー、又は両方を含み、モノマー単位が、アクリル酸、メタクリル酸、4-ビニル安息香酸、4-(アクリルアミド)フェニルボロン酸、3-(アクリルアミド)フェニルボロン酸、(2-(3-アクリルアミドプロパンアミド)フェニル)ボロン酸(APAPBA)、2-(アクリルアミド)フェニルボロン酸、4-ビニルフェニルボロン酸、3-ビニルフェニルボロン酸、2-ビニルフェニルボロン酸、2-(ピリジン-2-イルジスルファンイル)エチルメタクリレート、ピリジルジスルフィドエチルアクリレート、ピリジルジスルフィドエチルアクリルアミド、ピリジルジスルフィドアルキル(例えば、エチル)メタクリルアミド、2-(ピリジン-2-イルジスルファンイル)エチルアクリレート、2-(ピリジン-2-イルジスルファンイル)エチルアクリルアミド、2-(ピリジン-2-イルジスルファンイル)エチルメタクリレート、又は2-(ピリジン-2-イルジスルファンイル)エチルメタクリレート、N-(2-(トリチルチオ)エチル)アクリルアミド、1つ以上のボロン酸基を含むモノマー、1つ以上のジスルフィド形成基を含有するモノマー、これらの各々のハロゲン化バージョン、又はこれらのうちのいずれか1つの誘導体、又はこれらのうちのいずれか1つのコポリマーからなる群から選択される、態様1に記載の組成物。
態様6.ムチン結合単位が、モノマー単位、モノマー単位を含むコポリマー、又は両方を含み、モノマー単位が、ボロン酸基、カルボキシレート基、カルボン酸基、水素結合基、疎水性基、1,2-ジオール基、1,3-ジオール基、ジスルフィド結合を形成することが可能な基、又はこれらのうちのいずれか1つの誘導体からなる群から選択される官能基を含む、態様1に記載の組成物。
態様7.第1の水溶性ポリマーが、第2のタイプのムチン結合単位を含み、第2のタイプのムチン結合単位が、モノマー単位、モノマー単位を含むコポリマー、又は両方を含み、モノマー単位が、アクリル酸、メタクリル酸、4-ビニル安息香酸、4-(アクリルアミド)フェニルボロン酸、3-(アクリルアミド)フェニルボロン酸、(2-(3-アクリルアミドプロパンアミド)フェニル)ボロン酸(APAPBA)、2-(アクリルアミド)フェニルボロン酸、4-ビニルフェニルボロン酸、3-ビニルフェニルボロン酸、2-ビニルフェニルボロン酸、2-(ピリジン-2-イルジスルファンイル)エチルメタクリレート、ピリジルジスルフィドエチルアクリレート、ピリジルジスルフィドエチルアクリルアミド、ピリジルジスルフィドアルキル(例えば、エチル)メタクリルアミド、2-(ピリジン-2-イルジスルファンイル)エチルアクリレート、2-(ピリジン-2-イルジスルファンイル)エチルアクリルアミド、2-(ピリジン-2-イルジスルファンイル)エチルメタクリレート、又は2-(ピリジン-2-イルジスルファンイル)エチルメタクリレート、N-(2-(トリチルチオ)エチル)アクリルアミド、1つ以上のボロン酸基を含むモノマー、1つ以上のジスルフィド形成基を含有するモノマー、これらの各々のハロゲン化バージョン、又はこれらのうちのいずれか1つの誘導体、又はこれらのうちのいずれか1つのコポリマーからなる群から選択され、第1のタイプのムチン結合単位が、第2のタイプのムチン結合単位とは異なる、態様1に記載の組成物。
態様8.第1の水溶性ポリマーが、第3のタイプのムチン結合単位を含み、第3のタイプのムチン結合単位が、モノマー単位、モノマー単位を含むコポリマー、又は両方を含み、モノマー単位が、アクリル酸、メタクリル酸、4-ビニル安息香酸、4-(アクリルアミド)フェニルボロン酸、3-(アクリルアミド)フェニルボロン酸、(2-(3-アクリルアミドプロパンアミド)フェニル)ボロン酸(APAPBA)、2-(アクリルアミド)フェニルボロン酸、4-ビニルフェニルボロン酸、3-ビニルフェニルボロン酸、2-ビニルフェニルボロン酸、2-(ピリジン-2-イルジスルファンイル)エチルメタクリレート、ピリジルジスルフィドエチルアクリレート、ピリジルジスルフィドエチルアクリルアミド、ピリジルジスルフィドアルキル(例えば、エチル)メタクリルアミド、2-(ピリジン-2-イルジスルファンイル)エチルアクリレート、2-(ピリジン-2-イルジスルファンイル)エチルアクリルアミド、2-(ピリジン-2-イルジスルファンイル)エチルメタクリレート、又は2-(ピリジン-2-イルジスルファンイル)エチルメタクリレート、N-(2-(トリチルチオ)エチル)アクリルアミド、1つ以上のボロン酸基を含むモノマー、1つ以上のジスルフィド形成基を含有するモノマー、これらの各々のハロゲン化バージョン、又はこれらのうちのいずれか1つの誘導体、又はこれらのうちのいずれか1つのコポリマーからなる群から選択され、第1のタイプのムチン結合単位が、第2のタイプのムチン結合単位とは異なり、第2のタイプのムチン結合単位が、1つ以上のピリジルジスルフィド基、又はこれらのうちのいずれか1つの誘導体を含む第3のタイプのムチン結合単位モノマーとは異なる、態様7に記載の組成物。
態様9.第1のタイプのムチン結合単位が、分子量に基づいて、第1の水溶性ポリマーの約5%に対して1官能単位を構成し、第2のタイプのムチン結合単位が、分子量に基づいて、第1の水溶性ポリマーの約5%に対して1官能単位を構成し、第3のタイプのムチン結合単位が、分子量に基づいて、第1の水溶性ポリマーの約5%に対して1官能単位を構成する、態様8に記載の組成物。
態様10.第1の水溶性ポリマーが、線状又は非線状である構造を有し、非線状構造が、星状、分岐状、多分岐状、環式、グラフコポリマー、又はボトルブラシ状からなる群から選択される、態様1に記載の組成物。
態様11.第1のタイプのムチン結合単位が、第1の水溶性ポリマーの一方又は両方の末端にのみ位置する、態様1に記載の組成物。
態様12.第1の水溶性ポリマーが、ブロックコポリマーである、態様1に記載の組成物。
態様13.第1の水溶性ポリマーが、ランダムコポリマーである、態様1に記載の組成物。
態様14.第1の水溶性ポリマーが、統計コポリマーである、態様1に記載の組成物。
態様15.第1の水溶性ポリマーが、交互コポリマーである、態様1に記載の組成物。
態様16.第1の水溶性ポリマーが、勾配コポリマーである、態様1に記載の組成物。
態様17.ブロックコポリマーが、ABジブロックコポリマー又はABAトリブロックコポリマーであり、任意選択的に、ムチン結合単位が、ABジブロックコポリマーのAブロック、又はABAトリブロックコポリマーのAブロック上で単離される、態様12に記載の組成物。
態様18.第1の水溶性ポリマーが、以下の化学構造:
【化4】
を有し、式中、単位aが、骨格単位であり、mが、分子量に基づいて、第1の水溶性ポリマーの50%超であり、単位bが、第1のタイプのムチン結合単位であり、nが、分子量に基づいて、第1の水溶性ポリマーの約50%に対して1単位であり、
単位aと単位bとが、互いに異なり、
R
a1、R
a2、R
a3、R
a4、R
b1、R
b2、R
b3、及びR
b4が、互いに独立して、H、-OR
1、-NR
1R
2、-N
+(R
1)
3、-N
+(R
1)
2(R
2)、-N
+(R
1)(R
2)(R
3)、-S(O)
2R
1、-S(O)
2OR
1、-S(O)
2NR
1R
2、-NR
1S(O)
2R
2、-NR
1C(O)R
2、-C(O)R
1、-C(O)OR
1、-C(O)NR
1R
2、-NR
1C(O)OR
2、-NR
1C(O)NR
1R
2、-OC(O)NR
1R
2、-NR
1S(O)
2NR
1R
2、-C(O)NR
1S(O)
2NR
1R
2、カテコール、ボロン酸基、及びピリジルジスルフィド基から選択され、各R
1、R
2、及びR
3が、独立して、H、又は線状若しくは分岐状C
1-
18アルキル、並びに-C(O)OCH
2CH
2-OH、-C(O)OCH
2CH
2-N(CH
3)
2、-C(O)OCH
2CH
2-N
+(CH
3)
3、-C(O)OCH
2CH
2-OSO
3
-、-C(O)OCH
2CH
2-OSO
3H、-C(O)OCH
2CH
2-SO
3
-、-C(O)OCH
2CH
2-SO
3H、及び-C(O)N(H)C((CH
3)
2)CH
2SO
3
-、-C(O)N(H)C((CH
3)
2)CH
2SO
3Hであり、
Xが、Cであり、Yが、Cである、態様1に記載の組成物。
態様19.第1の水溶性ポリマーが、以下の化学構造:
【化5】
を有し、式中、単位aが、骨格単位であり、mが、分子量に基づいて、第1の水溶性ポリマーの50%超であり、単位bが、第1のタイプのムチン結合単位であり、nが、分子量に基づいて、第1の水溶性ポリマーの約50%に対して1単位であり、単位cが、第2のタイプのムチン結合単位であり、oが、分子量に基づいて、第1の水溶性ポリマーの約50%に対して1単位であり、単位aと単位bとが、互いに異なり、
R
a1、R
a2、R
a3、R
a4、R
b1、R
b2、R
b3、R
b4、R
c1、R
c2、R
c3、及びR
c4が、互いに独立して、H、-OR
1、-NR
1R
2、-N
+(R
1)
3、-N
+(R
1)
2(R
2)、-N
+(R
1)(R
2)(R
3)、-S(O)
2R
1、-S(O)
2OR
1、-S(O)
2NR
1R
2、-NR
1S(O)
2R
2、-NR
1C(O)R
2、-C(O)R
1、-C(O)OR
1、-C(O)NR
1R
2、-NR
1C(O)OR
2、-NR
1C(O)NR
1R
2、-OC(O)NR
1R
2、-NR
1S(O)
2NR
1R
2、-C(O)NR
1S(O)
2NR
1R
2、カテコール、ボロン酸基、及びピリジルジスルフィド基であり得、各R
1、R
2、及びR
3が、独立して、H、又は線状若しくは分岐状C
1-
18アルキル、並びに-C(O)OCH
2CH
2-OH、-C(O)OCH
2CH
2-N(CH
3)
2、-C(O)OCH
2CH
2-N
+(CH
3)
3、-C(O)OCH
2CH
2-OSO
3
-、-C(O)OCH
2CH
2-OSO
3H、-C(O)OCH
2CH
2-SO
3
-、-C(O)OCH
2CH
2-SO
3H、及び-C(O)N(H)C((CH
3)
2)CH
2SO
3
-、-C(O)N(H)C((CH
3)
2)CH
2SO
3Hであり、
Xが、Cであり、Yが、Cであり、Zが、Cである、態様1に記載の組成物。
態様20.単位a、単位b、及び単位cが、互いに異なる、態様19に記載の組成物。
態様21.第1の水溶性ポリマーが、以下に示される化学構造:
【化6】
を有し、式中、単位aが、骨格単位であり、mが、分子量に基づいて、第1の水溶性ポリマーの50%超であり、単位bが、第1のタイプのムチン結合単位であり、nが、分子量に基づいて、第1の水溶性ポリマーの約50%に対して1単位であり、単位cが、第2のタイプのムチン結合単位であり、oが、分子量に基づいて、第1の水溶性ポリマーの約50%に対して1単位であり、単位dが、第2のタイプのムチン結合単位であり、oが、分子量に基づいて、第1の水溶性ポリマーの約50%に対して1単位であり、単位aと単位bとが、互いに異なり、
R
a1、R
a2、R
a3、R
a4、R
b1、R
b2、R
b3、R
b4、R
c1、R
c2、R
c3、R
c4、R
d1、R
d2、R
d3、及びR
d4が、互いに独立して、H、-OR
1、-NR
1R
2、-N
+(R
1)
3、-N
+(R
1)
2(R
2)、-N
+(R
1)(R
2)(R
3)、-S(O)
2R
1、-S(O)
2OR
1、-S(O)
2NR
1R
2、-NR
1S(O)
2R
2、-NR
1C(O)R
2、-C(O)R
1、-C(O)OR
1、-C(O)NR
1R
2、-NR
1C(O)OR
2、-NR
1C(O)NR
1R
2、-OC(O)NR
1R
2、-NR
1S(O)
2NR
1R
2、-C(O)NR
1S(O)
2NR
1R
2、カテコール、ボロン酸基、及びピリジルジスルフィド基であり得、各R
1、R
2、及びR
3が、独立して、H、又は線状若しくは分岐状C
1-
18アルキル、並びに-C(O)OCH
2CH
2-OH、-C(O)OCH
2CH
2-N(CH
3)
2、-C(O)OCH
2CH
2-N
+(CH
3)
3、-C(O)OCH
2CH
2-OSO
3
-、-C(O)OCH
2CH
2-OSO
3H、-C(O)OCH
2CH
2-SO
3
-、-C(O)OCH
2CH
2-SO
3H、及び-C(O)N(H)C((CH
3)
2)CH
2SO
3
-、-C(O)N(H)C((CH
3)
2)CH
2SO
3Hであり、
Xが、Cであり、Yが、Cであり、Zが、Cであり、Qが、Cである、態様1に記載の組成物。
態様22.単位a、単位b、単位c、及び単位dが、互いに異なる、態様21に記載の組成物。
態様23.第1の水溶性ポリマーが、約100kDa~10,000kDaの分子量を有する、態様1に記載の組成物。
態様24.骨格単位及び少なくとも1つのムチン結合単位を重合して、態様1~23に記載の第1の水溶性ポリマーを形成することを含む、態様1~23に記載の第1の水溶性ポリマーを作製する合成方法。
態様25.重合が、カチオン重合、アニオン重合、開環重合、又は配位重合である、態様24に記載の方法。
態様26.重合が、ラジカル重合、従来のラジカル重合、可逆的不活性化ラジカル重合、可逆性付加-開裂連鎖移動(RAFT)重合、ザンテートの交換反応を用いた巨大分子設計(MADIX)重合、光イニファータ重合、原子移動ラジカル重合(ATRP)、又は安定フリーラジカル重合(SFRP)であるか、又は任意選択的に、重合が、可逆性付加-開裂連鎖移動(RAFT)重合、光イニファータ重合、若しくはザンテートの交換反応を用いた巨大分子設計(MADIX)重合である、態様24に記載の方法。
態様27.骨格単位が、モノマー単位を含み、アクリルアミドモノマー、メタクリルアミドモノマー、アクリレートモノマー、メタクリレートモノマー、スチレン性モノマー、ビニルピリジンモノマー、マレイミドモノマー、無水マレイン酸由来モノマー、ビニルエステルモノマー、ビニルエーテルモノマー、ビニルアミドモノマー、ビニルアミンモノマー、ハロゲン化ビニルモノマー、又はこれらのうちのいずれか1つの誘導体からなる群から選択される、態様24に記載の方法。
態様28.骨格単位が、アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジアルキルアクリルアミド、N-アルキルアクリルアミド、N,N-ジアルキルメタクリルアミド、N-アルキルメタクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)アクリレート(例えば、オリゴ(エチレングリコール)アクリレート)、ポリ(エチレングリコール)メタクリレート(例えば、オリゴ(エチレングリコール)メタクリレート)、ポリ(エチレングリコール)アクリルアミド(例えば、オリゴ(エチレングリコール)アクリルアミド)、及びポリ(エチレングリコール)メタクリルアミド(例えば、オリゴ(エチレングリコール)メタクリルアミド)からなる群から選択される、態様24に記載の方法。
態様29.ムチン結合単位が、モノマー単位、モノマー単位を含むコポリマー、又は両方を含み、モノマー単位が、ボロン酸基、カルボキシレート基、カルボン酸基、水素結合基、疎水性基、1,2-ジオール基、1,3-ジオール基、ジスルフィド結合を形成することが可能な基、又はこれらのうちのいずれか1つの誘導体からなる群から選択される官能基を含む、態様24に記載の方法。
態様30.ムチン結合単位が、アクリル酸、メタクリル酸、4-ビニル安息香酸、4-(アクリルアミド)フェニルボロン酸、3-(アクリルアミド)フェニルボロン酸、(2-(3-アクリルアミドプロパンアミド)フェニル)ボロン酸(APAPBA)、2-(アクリルアミド)フェニルボロン酸、4-ビニルフェニルボロン酸、3-ビニルフェニルボロン酸、2-ビニルフェニルボロン酸、2-(ピリジン-2-イルジスルファンイル)エチルメタクリレート、ピリジルジスルフィドエチルアクリレート、ピリジルジスルフィドエチルアクリルアミド、ピリジルジスルフィドアルキル(例えば、エチル)メタクリルアミド、2-(ピリジン-2-イルジスルファンイル)エチルアクリレート、2-(ピリジン-2-イルジスルファンイル)エチルアクリルアミド、2-(ピリジン-2-イルジスルファンイル)エチルメタクリレート、又は2-(ピリジン-2-イルジスルファンイル)エチルメタクリレート、N-(2-(トリチルチオ)エチル)アクリルアミド、1つ以上のボロン酸基を含むモノマー、1つ以上のジスルフィド形成基を含有するモノマー、これらの各々のハロゲン化バージョン、又はこれらのうちのいずれか1つの誘導体、又はこれらのうちのいずれか1つのコポリマーからなる群から選択される、態様24に記載の方法。
態様31.ムチン結合単位が、ボロン酸基、カルボキシレート基、カルボン酸基、水素結合基、疎水性基、1,2-ジオール基、1,3-ジオール基、及びジスルフィド結合を形成することが可能な基からなる群から選択される官能基を含む、態様24に記載の方法。
態様32.ムチン結合単位又はムチン結合単位の組み合わせが、コポリマー単位の重合後反応によってコポリマーに組み込まれる、態様のいずれか1つに記載の方法。
【0061】
比、濃度、量、及び他の数値データは、本明細書では範囲の形式で表され得ることに留意されるべきである。そのような範囲形式は、利便性及び簡潔性のために使用され、よって、範囲の限界として明示的に列挙された数値だけでなく、各数値及び部分範囲が明示的に列挙されているかのように、その範囲内に包含される全ての個々の数値又は部分範囲も含むように柔軟に解釈されるべきであることを理解されたい。例示するために、「約0.1%~約5%」の濃度範囲は、約0.1wt%~約5wt%の明示的に列挙された濃度だけでなく、個々の濃度(例えば、1%、2%、3%、及び4%)及び示された範囲内の部分範囲(例えば、0.5%、1.1%、2.2%、3.3%、及び4.4%)も含むと解釈されるべきである。一実施形態では、「約」という用語は、数値の有効数字による従来の端数処理を含み得る。加えて、「約’x’~’y’」は、「約’x’~約’y’」を含む。
【0062】
上記の実施形態には、多くの変形及び修正が行われ得る。そのような全ての修正及び変形は、本開示の範囲内で本明細書に含まれ、以下の特許請求の範囲によって保護されることが意図される。
【国際調査報告】