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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-23
(54)【発明の名称】熱インバータボックス
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/02 20060101AFI20240816BHJP
【FI】
C01B3/02 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513064
(86)(22)【出願日】2022-08-25
(85)【翻訳文提出日】2024-04-23
(86)【国際出願番号】 IB2022057960
(87)【国際公開番号】W WO2023026226
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】2021107333
(32)【優先日】2021-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(31)【優先権主張番号】2021229172
(32)【優先日】2021-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523196323
【氏名又は名称】ティーアイ ホールディングス ベスローテン ヴェンノーツハップ
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ククック ルドルフ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェシック テレンス
(57)【要約】
本発明は、第1分子量を有する第1分子(H)からなる第1流体と第2分子量を有する第2分子(O)からなる第2流体とを親化合物から生成する熱コンバータ(1,2)であり、その第1分子(H)の第1分子量が第2分子(O)の第2分子量より小さいものに関する。その熱コンバータの効率を改善するため、その熱コンバータを、流体形態の親化合物からスプレイを生成するスプレイ装置(18)が備わるものとし、そのスプレイを、その親化合物を分解して第1分子(H)及び第2分子(O)の混合組成物にする反応装置(1)へと供給する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1分子量を有する第1分子(H)からなる第1流体と第2分子量を有する第2分子(O)からなる第2流体とを親化合物から生成する熱コンバータ(1,2)であり、前記第1分子(H)の前記第1分子量が前記第2分子(O)の前記第2分子量より小さい熱コンバータであって、
流体形態の前記親化合物からスプレイを生成するスプレイ装置(18)であり、そのスプレイが、前記親化合物を分解して前記第1分子(H)及び前記第2分子(O)の混合組成物にする反応装置(1)へと供給されるスプレイ装置(18)と、
前記第1及び前記第2分子の前記混合組成物用の混合物インレット(26)と第1及び第2アウトレット(27,28)とを有し、前記第1アウトレット(27)により実質的に前記第1分子(H)を供給し且つ前記第2アウトレット(28)により実質的に前記第2分子(O)を供給するガス分離装置(2)と、
を備える熱コンバータ。
【請求項2】
請求項1に記載の熱コンバータ(1,2)であって、前記スプレイ装置(18)にてベンチュリ効果が利用される熱コンバータ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の熱コンバータ(1,2)であって、前記スプレイ装置(18)が、前記親化合物が入っている流体リザーバ(7)に吸引インレット(182)で以て、且つ前記反応装置(1)のガス発生器インレットにスプレイアウトレット(183)で以て、連結された熱コンバータ。
【請求項4】
請求項1、2又は3に記載の熱コンバータ(1,2)であって、前記ガス分離器(2)の前記第1又は前記第2アウトレット(27,28)が、前記スプレイ装置(18)のスプレイ媒質インレット(181)に連結された熱コンバータ。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の熱コンバータ(1,2)であって、前記反応装置(1)が更にガス発生器(10)を備え、そのガス発生器のインレットが前記スプレイ装置(18)の前記スプレイアウトレット(183)に連結された熱コンバータ。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の熱コンバータ(1,2)であって、前記反応装置(1)が熱源(4)により加熱される熱コンバータ。
【請求項7】
請求項6に記載の熱コンバータ(1,2)であって、前記反応装置(1)が、前記熱源(4)に対し露出された連結管からなる格子を備える熱コンバータ。
【請求項8】
請求項4に記載の熱コンバータ(1,2)であって、前記スプレイ装置(18)が狭窄部を有し、前記吸引インレット(182)が前記狭窄部内に通ずる熱コンバータ。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の熱コンバータ(1,2)と、第1分子(H)の第1ストリームの燃焼用の燃焼機関(3)と、を備える配列であって、前記熱コンバータ(1,2)の第1アウトレット(27)が前記燃焼機関(3)の吸入弁に連結された配列。
【請求項10】
請求項9に記載の配列であって、前記燃焼機関(3)により産生された熱が前記熱コンバータ(1,2)の前記反応装置(2)へと伝達される配列。
【請求項11】
第1分子量を有する第1分子(H)からなる第1流体と第2分子量を有する第2分子(O)からなる第2流体とを親化合物から生成する反応装置(1)であり、前記第1分子(H)の前記第1分子量が前記第2分子(O)の前記第2分子量より小さく、流体形態の前記親化合物からスプレイを生成するスプレイ装置(18)を備える反応装置(1)であり、そのスプレイの供給を受け前記親化合物を分解して前記第1分子(H)及び前記第2分子(O)の混合組成物にする反応装置。
【請求項12】
水素及び酸素ガスを生成する方法であって、
水を水滴のスプレイに変換するステップと、
前記水滴を第1熱源に対し露出させることで蒸気を発生させるステップと、
前記蒸気を第2熱源に対し露出させることで超臨界蒸気へと前記蒸気を過熱させるステップと、
前記超臨界蒸気を水素分子(H)と酸素分子(O)とに分解するステップと、
前記水素分子(H)と前記酸素分子(O)とを分離させるステップと、
を有する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1分子量を有する第1分子からなる第1流体と第2分子量を有する第2分子からなる第2流体とを親化合物から生成する熱コンバータであり、それら第1分子の第1分子量が第2分子の第2分子量より小さく、流体を分解して第1分子及び第2分子からなる組成物にする反応装置とガス分離装置とを備える熱コンバータに、関する。
【0002】
本発明は、更に、熱コンバータ及び燃焼機関を備える配列に関する。
【0003】
本発明は、また、水素及び酸素ガスを生成する手順に関する。
【背景技術】
【0004】
特許文献1により、その内部に水分子が好ましくは蒸気又は水蒸気形態で導入される放射エネルギ伝達式反応器が知られている。放射エネルギがそれら分子により吸収され、それら分子が水素と酸素とに解離する。分離工程では、時変性磁界を用いそれら解離水素及び酸素の回転を惹起させ、その磁界による遠心効果で水素酸素分離を増強させる。その水素ガスを、他所での使用に備え貯蔵タンク内に注入することや、燃料電池を稼働させるのに用いることや、その反応器付近にある他の機器で燃焼させることができる。
【0005】
特許文献2には、気体収集部、ヘリカル遠心分離部及び液体収集部を備える鉛直構造のヘリカルパイプ複合型気体液体分離器が開示されている。流体がそのヘリカル分離部内のヘリカルパイプに入ると遠心加速度が発生する。その遠心力と重力の共通作用下で、高い密度を有する液体がそのパイプラインの下部に集まる一方、気体(ガス)が上部に集まってからそのヘリカルパイプの上部孔を通じ排出される。流体内気体含有量が少なく又は流体流量が比較的低い条件下では、流体が主として気体収集部側で分離され液体が主として液体収集部内に収集される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第WO2005/005009号パンフレット(A2)
【特許文献2】中国特許出願公開第200610009659号明細書(A)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
熱コンバータの効率上、ガス分離器の効率は重要である。そこで、ガス分離器の効率を改善することを本発明の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、第1分子量を有する第1分子からなる第1流体と第2分子量を有する第2分子からなる第2流体とを生成する熱コンバータであり、それら第1分子の第1分子量が第2分子の第2分子量より小さいものを、提案する。この熱コンバータは、流体を分解して第1分子及び第2分子からなる組成物にする反応装置を備える。この熱コンバータは、更に、流体形態の親化合物からスプレイを生成するスプレイ装置を備えるものであり、そのスプレイが、親化合物を分解して第1分子及び第2分子の混合組成物にする反応装置に供給される。
【0009】
どのようなスプレイ装置を用いてもよいが、いわゆるベンチュリ効果を利用するスプレイ装置が効率的であることが判明している。
【0010】
本発明のある実施形態では、そのガス分離器の第1又は第2アウトレットがスプレイ装置のスプレイ媒質インレットに連結される。そのガス分離器の第1アウトレットから可燃分子が供給されるのであれば、ガス発生器の他方のアウトレット即ち第2アウトレットがスプレイ媒質インレットに連結される。そのガス分離器の第2アウトレットから可燃分子を供給する場合には、ガス発生器の第1アウトレットがスプレイ媒質インレットに連結される。
【0011】
本発明の別の態様では、そのスプレイ装置が、親化合物が入っている流体リザーバに親化合物インレットで以て、且つ反応装置のガス発生器インレットにスプレイアウトレットで以て、連結される。
【0012】
本発明の応用形態には、第1分子からなる第1ストリーム並びに第2分子からなる第2ストリームのうち一方の燃焼用の燃焼機関がある;どちらになるかは可燃分子が第1分子なのかそれとも第2分子なのかによる。ある好適実施形態では、その燃焼機関の吸入弁にガス分離器から可燃ガス分子が供給される。それら可燃ガス分子は、例えばその燃焼機関のインレットマニホルド内にそれらを供給することによって直接的に供給され、或いはその燃焼機関のキャブレタにそれらを印加することによって間接的に供給される。選択された水素酸素分解対象液体が水である場合の可燃分子は水素分子、即ち酸素分子と比べ小さな分子量を有する分子である。
【0013】
本発明の別の応用形態には、廃物内含有物質の燃焼により排煙を清浄化する熱的廃物処理プロセスがある。
【0014】
本発明の別の態様では、その燃焼により産生された熱がガス発生器及びガス過熱器のうち少なくとも一方に伝達される。この場合、その燃焼機関又は廃物処理プロセスにより産生される廃物エネルギを再使用することができる。それを再使用することで流体リザーバ内流体を予熱でき、或いはガス発生器、ガス過熱器又は反応装置に熱を供給することができる。
【0015】
本発明の別の態様では、その親化合物が水、第1分子が水素分子、第2分子が酸素分子とされる;この場合の可燃分子は水素である。
【0016】
本発明の別の態様では、水素及び酸素ガスを生成する方法が、水を水滴のスプレイに変換するステップと、水滴を第1熱源に対し露出させることで蒸気を発生させるステップと、その蒸気を第2熱源に対し露出させることで超臨界蒸気へとその蒸気を過熱させるステップと、その超臨界蒸気を分解して水素分子(H)及び酸素分子(O)(の混合組成物)にするステップと、それら水素分子(H)と酸素分子(O)とを分離させるステップと、を有するものとされる。ある実施形態では、その分離を達成すべく、直径が拡がりゆく螺旋軌道内へとその混合組成物が案内され、そこで酸素分子(O)が径方向外方へと追いやられ、その軌道の端部、好ましくはその螺旋軌道の軸線付近で水素分子(H)が収集される。第1熱源と第2熱源とをそっくりなものとしてもよかろう。
【0017】
本発明のこれら及びその他の目的、長所及び特徴は、好適実施形態についての後掲の記述を、付属されている図面及び添付されている特許請求の範囲と併せ一読することで、直ちに明らかとなろう。
【0018】
以下、図面に描かれている例示的諸実施形態を参照すると共に、それらを記述するため本願中で具体的用語を用いることにする。とはいえ、理解頂ける通り、これは本件開示の技術的範囲の限定を狙うものではない。本願にて描かれている諸特徴の改変及び更なる修正、並びに本願にて描かれている諸原理の付加的な応用であり、関連分野に習熟しているもの(いわゆる当業者)のうち本件開示を入手したものが想到しそうなものは、本件開示の技術的範囲内にあると考えられるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】水を分解して水素分子及び酸素分子にする配列並びにそれら分子を分離させるガス分離器の概観を示す図である。
図2】3個のガス分離装置を有する配列を示す図である。
図3】ガス交換器の断面を示す図である。
図4】ガス過熱器/反応装置の断面を示す図である。
図5】反応器モジュールの三次元外観を示す図である。
図6】熱コンバータの三次元外観を示す図である。
図7】別の角度からの熱コンバータの三次元外観を示す図である。
図8】熱コンバータをワイヤフレームとして示す図である。
図9】スプレイ装置の断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の狙いは、ガス分離器モジュール2における水から水素分子及び酸素分子への分解効率を改善することにある。周知の通り水、具体的には水流を、化学反応中に水素分子と酸素分子とに分解することができる。
2H0→2H+O
【0021】
そのためには、この化学反応を起こすべく吸熱反応熱を付加しなければならない。電気分解の場合これは電流の形態とされうる。温度が十分に高ければこの反応を熱の付加のみで起こすことができ、これは熱分解と通称されている。近年、触媒の使用によって水の熱分解の温度を下げる様々なテクノロジが開発されている。
【0022】
図1には、本発明のある実施形態の概観が示されている。本実施形態では熱分解装置1に熱源4から熱が供給される。熱源4を、化学プラント、廃物処分用焼却炉その他の源泉の未活用熱としてもよい。その熱を用い水を温めることで、やがては沸騰してその相が液体から蒸気に変わり、更にその蒸気を熱することで、やがてはその分子組成成分たる水素Hと酸素Oへの蒸気解離プロセスが始まる温度に到達する。
【0023】
そして水素分子Hと酸素分子Oの混合物がガス分離器モジュール2へと追いやられる。ガス分離器モジュール2では酸素分子Oを水素分子Hから分離させる。それら水素分子Hを収集及び圧縮し、圧縮ガスとしてリザーバ内、例えばガスボトル内に貯蔵してもよい。こうすることで、その水素が例えば燃料として必要とされる場所まで、その圧縮水素入りガスボトルを運ぶことが可能となろう。本実施形態では水素分子Hが燃料として、或いは別の燃料への添加物として、内燃機関3に供給される。内燃機関3は例えば従来型の4ストロークエンジンであり仕事Wを提供する。他のあらゆるガス又はガソリンエンジンと同様、この機関(エンジン)でも、通常は使用されない未活用熱5が産生されるので、それを熱源4へと伝達させることや、熱分解装置1にて用いられる水を予熱するための第2熱源として用いることができる。
【0024】
水から水素分子及び酸素分子への分解効率を改善するため、水HOを、熱分解装置1に印加されるのに先立ち、スプレイ装置18内で水スプレイの態に霧化させる。その水スプレイが汚染されないようにするため、水を水滴へと分断させるための媒質として、ガス分離器2内で水素分子Hから分離された酸素ガス分子Oがスプレイ装置18へと供給される。
【0025】
次に、図2aにはガス分離装置2の側面外観が示されている。本実施形態ではガス分離装置2が第1ガス分離器モジュール21、第2ガス分離器モジュール22及び第3ガス分離器モジュール23で構成されている。本実施形態では、それら第1、第2及び第3ガス分離器モジュール21,22,23が同一構成とされている。各ガス分離器モジュール21,22,23の形状は切頭錐、より精密には互いに平行な底側面24及び頂側面25を有する円錐台である。通常の用語法とは対照的に、底側面24及び頂側面25の面積を比較し、面積が小さな方の側面を底側面24としている。この用語法を用いるのは、こうした応用形態のガス分離器モジュール21,22,23では、水素及び酸素分子H,Oの混合物用のインレットたる混合物インレット26が、図中で左手側にあり面積が小さな方の平面上、即ち底側面24上にあるからである。円錐台の頂側面25内には水素アウトレット27が収まっており、これは図中の各ガス分離器モジュール21,22,23の右手側にあるが、図2aでは第1及び第2ガス分離器モジュールの水素アウトレットが隠れているため、第3ガス分離器モジュール23のそれしか看取することができない。図2bには底側面24の外観が示されており、図2cにはガス分離器モジュール21,22,23の頂側面25の外観が示されている。
【0026】
第1ガス分離器モジュール21、第2ガス分離器モジュール22及び第3ガス分離器モジュール23は縦続配列されている;即ち、第2ガス分離器モジュール22の混合物インレット26が第1ガス分離器モジュール21の水素アウトレット27に連結され、第3ガス分離器モジュール23の混合物インレット26が第2ガス分離器22の水素アウトレット27に連結されている。この配列故に、解離水素分子H及び酸素分子Oの混合物は図2a中で左手側から図の右手側へと流れる。第1ガス分離器モジュール21、第2ガス分離器モジュール22及び第3ガス分離器モジュール23の各酸素アウトレット28は酸素収集管30により連結されている。明瞭性上の理由で、図2aにはその酸素収集管が示されていないが、図6には示されている。各円錐台の底エリア24・頂エリア25間距離は約90mmであるので、3個のガス分離器モジュール21,22,23を備えるガス分離装置2の長さは合計で約270mmとなる。これらの寸法値は、熱コンバータ/ガス分離器ユニットから内燃機関に給熱される応用形態での一例である。明白な通り、これらの寸法値は、選択されている機関のパワー次第で変わるものであり、小さめな機関では小さめ、よりパワフルな機関では大きめになりうる。
【0027】
ガス分離器モジュール21,22,23の各円錐台は、その円錐台の内部に、案内要素6を備えている。案内要素6を1個の案内要素で構成してもよいし、複数個の案内要素6で構成してもよい。効果的なことに、案内要素6はガス混合物インレット24から各ガス分離器モジュール21,22,23の水素アウトレット27まで延びる螺旋を形成している。この螺旋は回転せず、寧ろその円錐台の内壁に固定されている。内壁によりその螺旋が閉じ込められているため、ガス混合物インレット26に進入してきたガス混合物は、ガス圧によってその螺旋路に沿い水素アウトレット27及び酸素アウトレット28の方へと追いやられるので、側壁29の内面沿い螺旋を迂回できない。
【0028】
ガス分離器モジュール21の混合物インレット26に進入するガス分子H,Oの混合物は、その圧力によって加速される。このガス混合物は低圧方向、即ち水素アウトレット27及び酸素アウトレット28に向かう方向へと追いやられる。アウトレット27,28へと向かう直線路がないため、そのガス混合物のガス分子は螺旋6を辿ることを強いられる。これによりそれらガス分子は螺旋6の仮想軸線を巡る回転を強いられ、各ガス分子に遠心力を及ぼす。遠心力は加速対象物体の質量に比例するので、原子量が32の酸素分子Oは原子量が2の水素分子Hよりも16倍強く加速される。そのため、酸素分子は遠心力により螺旋の仮想軸線から径方向に遠ざかる方、即ちガス分離器の側壁29の方向に加速され、その一方で水素分子Hは酸素分子Oに比べ螺旋の仮想軸線寄りに留まることとなる。こうして螺旋によりガス混合物H,Oが分離されるので、ガス分離器21の側壁29付近のガス分子は概ね酸素分子O、螺旋の仮想軸線付近のガス分子は概ね水素分子Hとなる。即ち、頂側面25の中央にある水素アウトレット27を通じ出てくるガス分子は概ね水素分子Hであり、且つ側壁29の最大直径個所にある酸素アウトレット28から出てくるガス分子がある。
【0029】
現実の応用形態では、ガス分子分離は理論におけるそれほど完全にはなりえず、水素アウトレット27から出てくるガス分子にはなお、何パーセントかの酸素分子Oが含まれうる。残存酸素分子を更に抜き退けてガス混合物を純化するため、本実施形態では第2ガス分離器22、また必要であれば更にガス分離器23を、後続させることを提案している。各段にてどんどんと酸素分子Oが除去されるので、最終段の水素アウトレット27にて水素分子を目標純度で得ることができる。
【0030】
その分離の効率を改善するため、本実施形態ではガス分離器の側壁29を真円ではなく楕円としている。楕円は、短軸と、その短軸に対し垂直な長軸とを有する。ガス分子は、その楕円錐螺旋6沿いに追いやられるたびに、その楕円状断面の短軸を通り、更にそれらの前方にある楕円状断面の長軸の方へと加速される。本実施形態では、底側面24における楕円状断面の短軸長が40mm、その楕円状断面の長軸長が60mmである。各ガス分離器21,22,23の頂側面25では短軸長が60mm、長軸長が90mmである。これによりもたらされる偏心比は60mmを40mmで除したもの並びに90mmを60mmで除したものであり、どちらの断面でも1.5である。本実施形態ではこの比が円錐台の中心軸に沿い均一である。本実施形態では、その偏心比が3個の段全て、即ち第1ガス分離装置21、第2ガス分離装置22及び第3ガス分離装置23全てで、同じである。
【0031】
図3にはガス発生器10の断面が示されている。管13は流体インレット11からガスアウトレット12まで蛇状に巻回され、それにより格子が形成されている。これは断面であるので格子のうち一層しか見えず、図中には管の配列が一層分しか示されていない。とはいえ、ガス発生器10には複数個の格子が備わっていて、それらが互いに前後に積層されている。複数個の層があるため、各層の管13の端部12を次層のインレット11と連結しなければならない。理想的には、十分なエネルギがガス発生器10内に導入され、ひいては流体インレット11を通じ入ってくる流体がある温度、即ちガスアウトレット12での流体の相がガスに変わる温度まで加熱されるよう、層の個数を選択する。
【0032】
スプレイ装置18は流体インレット11に後続する管13内に挿入されている。管13内を流れる水がほぼ沸騰している個所に挿入すればよい。収集管30(図3には示さず)はスプレイ媒質インレット19に連結される。圧力が十分に高くない場合は、収集管30・スプレイ媒質インレット19間にコンプレッサを配置し、それを用いて酸素の圧力を十分なレベルまで高めればよい。このコンプレッサは、ガス発生器10内で産生される蒸気により駆動されるのでも、電気エネルギにより駆動されるのでもよい。
【0033】
図9にはスプレイ装置18がより詳細に示されている。酸素ガス分子はスプレイ媒質インレット181にてスプレイ装置18内に進入する。スプレイ装置18の中部には狭窄部があり、そこには吸引インレット182がある。こうしたスプレイ装置では周知のベンチュリ効果が利用される。スプレイアウトレット183に向かうにつれ、加速された酸素分子により吸引水が分断されて小滴となり、水スプレイが発生する。水滴の表面積は広く、水分子沸騰高速化の支えとなる。
【0034】
図4には、類似した構造を有するガス過熱器/反応装置14が示されている。管16による格子がガスインレット15からガス分離器21の混合物インレット26まで延びている。一体積層時にはそれらの管により立方体が形成される。本実施形態では、管16が、ガス分離器21が収まる窪み17が生じるように配列されている。ガス発生器/ガス過熱器/反応装置は共通のハウジング9内に収容されている。そのハウジング9内には更に、水補充インレット71付の水リザーバ7がある。水リザーバ7・過熱器/反応装置14間には熱発電パッド8が配列されている。水リザーバ7・ガス過熱器/反応装置14間の温度差が大きいため、熱発電パッド8によりかなりの電力を作り出すことができる。その電力を直接印加し、或いは適切な電圧への変換後に印加することで、ガス分離器21,22,23内に静電界を発生させることができる。そのためには、ガス分離器の底部24がそのガス分離器の頂部25から絶縁されていなければならない。熱発電パッド8又は電圧コンバータの出力電圧がそれぞれ底部24及び頂部25に印加される。その静電界によりガス分子が付加的に加速される。
【0035】
図5には、ある代替的実施形態にて反応器モジュール40により構築されるガス発生器/ガス過熱器/反応装置であり、図中で下側から上側にかけ平行に向き決めされた管41を有するものが、示されている。管41は連結グリッド42により熱的に連結されている。図の下端では管41が底板43内へと延びており、図の上側では管41が頂板44内へと延びている。その反応器モジュールが底部モジュールである場合は、底板43に備わっており図では見えていないチャネルによって、隣り合う2本の管41を連結する。その反応器モジュール40が中間モジュールである場合は、管41を底板の貫通孔内へと延設させる。底部モジュール及び中間モジュールは、共に、貫通孔46付の頂板44を有していてそれら貫通孔により管41内の流体を別のモジュールに引き渡せるもの、例えば反応器モジュール40の頂部上に配置されているそれに引き渡せるものとする。これを底部モジュールに対し鏡像的な頂部モジュールとしてもよい;即ち、底板43が貫通孔を有し且つ頂板が一対の管を連結するチャネルを有していて、ガス発生器/ガス過熱器/反応装置全体の管で全ての管41を通じ蛇状循環するようにしてもよい。その場合はガスアウトレット45をガス分離器モジュール2にすればよい。こうしたモジュール的設計とすることで、ガス発生器/ガス過熱器/反応装置を、利用可能な熱と所望の分解ガス分子出力とに相応したサイズにすることができる。
【0036】
ガス発生器/ガス過熱器/反応装置50の別の実施形態が図6に示されている。反応器モジュールとは対照的に、これは非モジュール的に構築されている。本実施形態では管51が底板53から頂板54まで延びている。前掲の実施形態と同じく、頂板54及び底板53により提供されるチャネルにより各対の隣り合う管51が連結されるので、1個の流体インレットと1個の混合物アウトレットとを有する1本の蛇状路がそれらの管51により形成されることとなる。この図では混合物アウトレットが隠れており、第1ガス分離器モジュール21の下方にある。本実施形態では3個のガス分離器モジュール21,22,23が一線的に連結されている。最後段のガス分離器モジュールに水素アウトレット27が備わっている。酸素アウトレット28は酸素収集管33内で終わっている。
【0037】
本発明の応用の一つは、産生された水素Hの燃焼機関内使用である。既知の通り、水素を空気で燃焼させるとその空気中の酸素で以て燃焼して水になるので、環境フレンドリである。
【0038】
図7には、ガス発生装置40とガス過熱器/反応装置50とが備わるガス発生器/ガス過熱器/反応装置60或いは熱コンバータ60が示されている。過熱器/反応装置50は、ガス分離器モジュール21,22,23がぴったり収まるよう寸法設定された窪みを有している。この種の構成では、空間の最適使用が可能になるのと同時に、熱の廃棄が回避される。図7には燃焼機関における熱コンバータ60の応用が示されている。図7では、熱コンバータ60の底部(図の下側)が燃焼機関の排気マニホルドの頂部上に配置されている。矢印で示されている通り、排気マニホルドから流出した排気ガスは熱コンバータ60内に流入し、管41,51の格子内を通って熱コンバータ60の頂部に至る。熱コンバータ60は、明瞭性上の理由で示されていないがハウジングによりくるまれている。そのハウジングは、底側面上にあり排気マニホルドの開口とマッチするインレット91(図8)と、熱コンバータの頂部上に配置されており排気収集マニホルドの開口とマッチするアウトレット92(図8)とを有している。ハウジング9により、確と、燃焼機関の排気ガスの未活用熱が熱コンバータ60内へと案内される。
【0039】
図8には、熱コンバータが図7と同様の角度から、但し熱コンバータ1,2のハウジング9を示すワイヤフレーム付で、示されている。
【0040】
本件開示についての前掲の記述は、いわゆる当業者が本件開示を製作又は使用しうるようにすべく提示されたものである。本件開示に対する様々な修正がいわゆる当業者にとり直ちに明白になろうし、本願にて規定されている一般的諸原理は本件開示の技術的範囲から離隔することなく他の変形例に適用できよう。即ち、本件開示は本願記載の諸例及び諸設計に限定されるべきものではなく、本願にて開示されている諸原理及び新規特徴と符合する最大の技術的範囲に紐づけられるべきものである。
【0041】
理解頂けるように、本願中で何らかの従来技術文献が参照されていても、そうした参照により、豪州その他の国にてその文献によりその技術分野における共通常識の一部分が形成されるとの自認が、構成されるわけではない。
【0042】
後続する特許請求の範囲及び本発明についての前掲の記述では、言語又は必要な含蓄を表現するためそうしないことが文脈上必要とされる場合を除き、語「備える」或いはその変形語例えば「備わる」又は「備えている」が包含的意味合いで、即ち言及されている特徴の存在を明示しつつも本発明の様々な実施形態における更なる特徴の存在又は付加を排除しない意味合いで、用いられている。
図1
図2a
図2b
図2c
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】