(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-23
(54)【発明の名称】ステロイド系化合物、その調製方法及びその使用
(51)【国際特許分類】
C07J 9/00 20060101AFI20240816BHJP
C07F 7/18 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
C07J9/00 CSP
C07F7/18 A
C07F7/18 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513259
(86)(22)【出願日】2022-08-30
(85)【翻訳文提出日】2024-04-03
(86)【国際出願番号】 CN2022115896
(87)【国際公開番号】W WO2023030332
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】202111013742.4
(32)【優先日】2021-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521556440
【氏名又は名称】コアンチョウ オキュサン オフサルミック バイオテクノロジー カンパニー リミテッド
【住所又は居所原語表記】Room 402, No. 223 West Huanshi Road, Nansha District, Guangzhou, Guangdong 511400 China
(71)【出願人】
【識別番号】523236744
【氏名又は名称】オキュサン・オフサルミック・ファーマスーティカル(コアンチョウ)・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】OCUSUN OPHTHALMIC PHARMACEUTICAL(GUANGZHOU)CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Floor 1-3,Block A,Building 203,Tongfa Road 2,Wanqingsha Town,Nansha District,Guangzhou,Guangdong 511400 China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】于 垂亮
(72)【発明者】
【氏名】李 小林
(72)【発明者】
【氏名】王 延東
(72)【発明者】
【氏名】蘭 小兵
(72)【発明者】
【氏名】▲はお▼ 飛
(72)【発明者】
【氏名】蘇 映雪
(72)【発明者】
【氏名】賀 海鷹
(72)【発明者】
【氏名】呉 美容
【テーマコード(参考)】
4C091
4H049
【Fターム(参考)】
4C091AA01
4C091BB02
4C091CC03
4C091DD01
4C091EE03
4C091FF01
4C091GG01
4C091HH01
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4C091KK01
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4C091PB05
4C091QQ01
4C091RR08
4H049VN01
4H049VP01
4H049VQ06
4H049VR23
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4H049VT42
4H049VT48
4H049VV05
4H049VV09
4H049VW06
4H049VW08
(57)【要約】
ステロイド系化合物、その調製方法及びその使用である。一方では、式Iで表される化合物、その調製方法、及びラノステロールの分離・精製方法におけるその使用を提供し、他方では、ラノステロールの分離・精製方法を提供し、当該方法は、操作が簡単で、工程が安定で、生産能力が高く、コストが低く、得られるラノステロールの純度が高く、その医薬用途に応じることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iで表される構造を有する化合物。
【請求項2】
Xは、TMS、TES、TBS、TBDPS、TIPS、DMIPS、TBDMS又はMDIPSである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
ラノステロールをヒドロキシ保護剤と反応させて式Iの化合物を得ることを含むことを特徴とする、請求項1に記載の式Iの化合物の調製方法。
【請求項4】
前記ヒドロキシ保護剤はシリルエーテル保護剤であることを特徴とする、請求項3に記載の調製方法。
【請求項5】
前記ヒドロキシ保護剤は、トリメチルクロロシラン、トリエチルクロロシラン、tert-ブチルトリクロロシラン、tert-ブチルジフェニルクロロシラン、トリイソプロピルクロロシラン、ジメチルイソプロピルクロロシラン、tert-ブチルジメチルクロロシラン、メチルジイソプロピルクロロシラン、トリイソプロピルクロロシラン及びトリフルオロメタンスルホン酸tert-ブチルジメチルシリルから選択されることを特徴とする、請求項3に記載の調製方法。
【請求項6】
カラムクロマトグラフィーにより式Iの化合物及び式I’の化合物を含む原料Aを分離・精製して、式Iの化合物を得る工程を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の式Iの化合物の分離・精製方法。
【請求項7】
粗ラノステロールをヒドロキシ保護剤と反応させて前記原料Aを得る工程をさらに含む、請求項6に記載の式Iの化合物の分離・精製方法。
【請求項8】
前記ヒドロキシ保護剤はシリルエーテル保護剤であり;例えば、トリメチルクロロシラン、トリエチルクロロシラン、tert-ブチルトリクロロシラン、tert-ブチルジフェニルクロロシラン、トリイソプロピルクロロシラン、ジメチルイソプロピルクロロシラン、tert-ブチルジメチルクロロシラン、メチルジイソプロピルクロロシラン、トリイソプロピルクロロシラン及びトリフルオロメタンスルホン酸tert-ブチルジメチルシリルから選択されることを特徴とする、請求項7に記載の分離・精製方法。
【請求項9】
ラノステロールの分離・精製における、請求項1又は2に記載の式Iの化合物の使用。
【請求項10】
式Iの化合物をヒドロキシ脱保護してラノステロールを得る工程を含む、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
カラムクロマトグラフィーにより式Iの化合物及び式I’の化合物を含む原料Aを分離・精製して、前記式Iの化合物を得る工程をさらに含む、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
粗ラノステロールをヒドロキシ保護剤と反応させて前記原料Aを得る工程をさらに含む、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
式Iの化合物及び式I’の化合物を含む原料Aを再結晶化させることにより前記式Iの化合物を得る工程を含む式Iの化合物の精製方法。
(ここで、Xの定義は請求項1又は2に記載の通りであり、前記再結晶化の溶媒は、
1)酢酸エチルとイソプロピルアルコールの混合物、又は2)酢酸イソプロピルから選択され;
好ましくは、前記酢酸エチルとイソプロピルアルコールの混合物において、酢酸エチルとイソプロピルアルコールの体積比は、1:(0.5~10)であり;好ましくは、1:(1~10)、例えば1:(0.5~2)である。)
【請求項14】
前記原料Aにおいて、前記式Iの化合物の質量百分率は75%以上であり;好ましくは85%以上であり;より好ましくは90%以上である、請求項13に記載の精製方法。
【請求項15】
式Iの化合物及び式I’の化合物を含む組成物Y。
【請求項16】
Xは、TMS、TES、TBS、TBDPS、TIPS、DMIPS、TBDMS又はMDIPSであることを特徴とする、請求項15に記載の組成物Y。
【請求項17】
前記式Iの化合物の質量百分率は55%~95%であり、例えば、56%、57%、58%、59%、60%、61%、65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%又は94%であることを特徴とする、請求項15又は16に記載の組成物Y。
【請求項18】
1)粗ラノステロールをヒドロキシ保護剤と反応させて、請求項6又は14に記載の式Iの化合物及び式I’の化合物を含む原料Aを得る工程;
2)前記原料Aをカラムクロマトグラフィーにより分離して、式Iの化合物を得る工程;及び
3)前記式Iの化合物をヒドロキシ脱保護して、精製されたラノステロールを得る工程;を含み;
ここで、前記粗ラノステロールは、ラノステロールとジヒドロラノステロールを含み;
前記ヒドロキシ保護剤は、シリルエーテル保護剤である、
ことを特徴とするラノステロールを精製する方法。
【請求項19】
前記シリルエーテル保護剤は、トリメチルクロロシラン、トリエチルクロロシラン、tert-ブチルトリクロロシラン、tert-ブチルジフェニルクロロシラン、トリイソプロピルクロロシラン、ジメチルイソプロピルクロロシラン、tert-ブチルジメチルクロロシラン、メチルジイソプロピルクロロシラン、トリイソプロピルクロロシラン及びトリフルオロメタンスルホン酸tert-ブチルジメチルシリルから選択されることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ラノステロールと前記ヒドロキシ保護剤との反応は有機溶媒の存在下で行われ;
好ましくは、前記有機溶媒は、N,N-ジメチルホルムアミド又はジクロロメタンである、請求項3~5のいずれか一項に記載の調製方法、請求項7~8のいずれか一項に記載の分離・精製方法、又は請求項18~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記ラノステロールと前記ヒドロキシ保護剤との反応は酸結合剤の存在下で行われ;
好ましくは、前記酸結合剤は有機塩基又は無機塩基であり;
より好ましくは、前記酸結合剤は、ピリジン、イミダゾール、ジイソプロピルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、炭酸カリウム、又は炭酸ナトリウムである、請求項3~5のいずれか一項に記載の調製方法、請求項7~8のいずれか一項に記載の分離・精製方法、又は請求項18~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記ラノステロールと前記ヒドロキシ保護剤との反応は25~120℃の温度で行われ;
好ましくは、前記ラノステロールと前記シリルエーテル保護剤との反応は、60~85℃の温度で行われる、請求項3~5のいずれか一項に記載の調製方法、請求項7~8のいずれか一項に記載の分離・精製方法、又は請求項18~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記カラムクロマトグラフィーはシリカゲルカラムクロマトグラフィーであり;
好ましくは、前記シリカゲルカラムクロマトグラフィーで選択されるシリカゲルの仕様は、100~200メッシュ、200~300メッシュ、又は300~400メッシュであり;
好ましくは、前記シリカゲルカラムクロマトグラフィーで使用される溶離剤は、石油エーテル、n-ヘプタン、n-ヘキサン、ジクロロメタン、及び酢酸エチルのうちの一つ又は複数であり;
より好ましくは、前記シリカゲルカラムクロマトグラフィーで使用される溶離剤にアンモニア水が添加される、請求項11~12のいずれか一項に記載の使用又は請求項18~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記ヒドロキシ脱保護は、酢酸、フッ化テトラアルキルアンモニウム、トリフルオロ酢酸、又は塩酸のうちの一つ又は複数の存在下で行われ;
好ましくは、前記ヒドロキシ脱保護は、フッ化テトラブチルアンモニウムの存在下で行われる、請求項10に記載の使用又は請求項18~19のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、出願日が2021年8月31日である中国特許出願2021110137424の優先権を主張する。本出願は上記の中国特許出願の全文を引用する。
【0002】
本発明は、有機化合物の分離・精製の分野に関し、具体的にはステロイド系化合物、その調製方法及びその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
ラノステロールは四環式トリテルペノイドに属し、コレステロールの生合成の中間体である。現在、ラノステロールは主に粗ラノステロールからの分離・抽出によって得られている。しかし、粗ラノステロールは、ラノリンから結晶化によって分離された四環式トリテルペノイドの混合物であり、一般的に約60%のラノステロール(CAS番号:79-63-0)と約30%のジヒドロマノステロール(CAS番号:79-62-9)、及びコレステロール(CAS番号:57-88-5)などのその他の不純物を含んでいる。このうち、ラノステロールとジヒドロラノステロールは極性が非常に似ているため、分離することが非常に困難である。
【0004】
CN101691391には、高速液体クロマトグラフィー分離による分離純度97%のラノステロールの調製が報告されているが、調製量はわずか250mgであり、コストが高く、商業的に大規模に生産することは困難である。現在、90%を超える純度のラノステロールを大規模に生産及び調製するための精製工程は存在せず、医療用途のニーズを満たすことは困難である。
【0005】
さらに、ラノステロールとその他の不純物化合物の分離も非常に難しく、カラムクロマトグラフィーや再結晶化によってラノステロールを完全に分離することはほとんど不可能である。例えば、他の不純物を混合したラノステロールを再結晶化させた後、析出したラノステロール結晶中の不純物の割合が結晶化前と大きく変わらないことが判明した研究もある。
【0006】
従って、ラノステロールをよりよく研究し、医療分野に使用するためには、ラノステロールを分離・精製する方法が市場で緊急に必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、従来技術に存在する上記の技術的課題の一つを解決するために、ステロイド系化合物、その調製方法及びその使用を提供し、さらに本発明は、粗ラノステロールからラノステロールを分離・精製することができるラノステロールの精製方法を提供する。当該方法は、操作が簡単で、工程が安定で、生産能力が高く、コストが低く、得られるラノステロールの純度が高く、その医薬用途に応じることができる。
【0008】
本発明の一態様は、式Iで表される構造を有する化合物を提供する。
【0009】
本発明のいくつかの実施形態によれば、Xは、TMS、TES、TBS、TBDPS、TIPS、DMIPS、TBDMS又はMDIPSである。
【0010】
本発明の別の態様は、ラノステロールをヒドロキシ保護剤と反応させて式Iの化合物を得る工程を含む、前記式Iの化合物の調製方法を提供する。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記ヒドロキシ保護剤は、シリルエーテル保護剤である。本発明のいくつかの実施形態によれば、前記ヒドロキシ保護剤は、トリメチルクロロシラン、トリエチルクロロシラン、tert-ブチルトリクロロシラン、tert-ブチルジフェニルクロロシラン、トリイソプロピルクロロシラン、ジメチルイソプロピルクロロシラン、tert-ブチルジメチルクロロシラン、メチルジイソプロピルクロロシラン、トリイソプロピルクロロシラン及びトリフルオロメタンスルホン酸tert-ブチルジメチルシリルから選択される。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記ラノステロールと前記ヒドロキシ保護剤との反応は、有機溶媒の存在下で行うことができる。本発明の他のいくつかの実施形態によれば、前記有機溶媒は、N,N-ジメチルホルムアミド又はジクロロメタンである。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記ラノステロールと前記ヒドロキシ保護剤との反応は、酸結合剤の存在下で行われる。本発明の他のいくつかの実施形態によれば、前記酸結合剤は、有機塩基又は無機塩基である。本発明のさらにいくつかの実施形態によれば、前記酸結合剤は、ピリジン、イミダゾール、ジイソプロピルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、炭酸カリウム、又は炭酸ナトリウムである。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記ラノステロールと前記ヒドロキシ保護剤との反応は、25~120℃の温度で行うことができる。本発明のいくつかの実施形態によれば、前記粗ラノステロールと前記ヒドロキシ保護剤との反応は、60~85℃の温度で行うことができる。
【0015】
本発明の別の態様は、カラムクロマトグラフィーにより式Iの化合物及び式I’の化合物を含む原料Aを分離・精製して、式Iの化合物を得る工程を含む、前記式Iの化合物の分離・精製方法を提供する。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記原料Aにおいて、前記化合物Iの質量百分率は45%~85%である。本発明のいくつかの実施形態によれば、前記原料Aにおいて、前記化合物Iの質量百分率は55%~70%である。本発明のいくつかの実施形態によれば、前記原料Aにおいて、前記化合物Iの質量百分率は60%~70%である。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記カラムクロマトグラフィーは、シリカゲルカラムクロマトグラフィーである。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記シリカゲルカラムクロマトグラフィーで選択されるシリカゲルの仕様は、100~200メッシュ、200~300メッシュ、又は300~400メッシュである。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記シリカゲルカラムクロマトグラフィーで使用される溶離剤は、石油エーテル、n-ヘプタン、n-ヘキサン、ジクロロメタン、及び酢酸エチルのうちの一つ又は複数である。本発明のいくつかの実施形態によれば、前記シリカゲルカラムクロマトグラフィーで使用される溶離剤にアンモニア水が添加される。本発明のいくつかの実施形態によれば、前記シリカゲルカラムクロマトグラフィーで使用される溶離剤は、n-ヘプタンと酢酸エチルの混合物、n-ヘキサンと酢酸エチルの混合物、又はn-ヘプタン、酢酸エチル及びアンモニア水の混合物であってもよい。本発明のいくつかの実施形態によれば、前記シリカゲルカラムクロマトグラフィーで使用される溶離剤は、n-ヘプタンと酢酸エチルの混合物であってもよく、ここで、n-ヘプタンと酢酸エチルの体積比は、(90~100):(10~0)、例えば100:1である。本発明のいくつかの実施形態によれば、前記シリカゲルカラムクロマトグラフィーで使用される溶離剤は、n-ヘキサンと酢酸エチルの混合物であってもよく、ここで、n-ヘキサンと酢酸エチルの体積比は、(90~100):(10~0)、例えば100:1である。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記原料Aは、100~200メッシュのシリカゲルと混合された後、上記のシリカゲルカラムクロマトグラフィーが行われる。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記シリカゲルカラムクロマトグラフィーは、1回又は複数回、例えば、1、2、3、4又は5回行うことができる。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記式Iの化合物の分離・精製方法は、粗ラノステロールをヒドロキシ保護剤と反応させて前記原料Aを得る工程をさらに含む。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記ヒドロキシ保護剤は、シリルエーテル保護剤である;例えば、トリメチルクロロシラン、トリエチルクロロシラン、tert-ブチルトリクロロシラン、tert-ブチルジフェニルクロロシラン、トリイソプロピルクロロシラン、ジメチルイソプロピルクロロシラン、tert-ブチルジメチルクロロシラン、メチルジイソプロピルクロロシラン、トリイソプロピルクロロシラン及びトリフルオロメタンスルホン酸tert-ブチルジメチルシリルから選択される。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記粗ラノステロールと前記ヒドロキシ保護剤との反応は、有機溶媒の存在下で行われる。本発明のいくつかの実施形態によれば、前記有機溶媒は、N,N-ジメチルホルムアミド又はジクロロメタンである。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記粗ラノステロールと前記ヒドロキシ保護剤との反応は、酸結合剤の存在下で行われる。本発明のいくつかの実施形態によれば、前記酸結合剤は、有機塩基又は無機塩基である。本発明のいくつかの実施形態によれば、前記酸結合剤は、ピリジン、イミダゾール、ジイソプロピルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、炭酸カリウム、又は炭酸ナトリウムである。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記粗ラノステロールと前記ヒドロキシ保護剤との反応は、25~120℃の温度で行われる。本発明のいくつかの実施形態によれば、前記粗ラノステロールと前記ヒドロキシ保護剤との反応は、60~85℃の温度で行われる。
【0027】
本発明の別の態様は、ラノステロールの分離・精製における前記式Iの化合物の使用を提供する。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記使用は、式Iの化合物をヒドロキシ脱保護してラノステロールを得る工程を含む。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記ヒドロキシ脱保護は、酢酸、フッ化テトラアルキルアンモニウム、トリフルオロ酢酸、又は塩酸のうちの一つ又は複数の存在下で行われる。本発明のいくつかの実施形態によれば、前記ヒドロキシ脱保護は、フッ化テトラブチルアンモニウムの存在下で行われる。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記使用は、カラムクロマトグラフィーにより式Iの化合物及び式I’の化合物を含む原料Aを分離・精製して、式Iの化合物を得る工程をさらに含む。
【0030】
【0031】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記Xは、TMS、TES、TBS、TBDPS、TIPS、DMIPS、TBDMS又はMDIPSである。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記原料Aにおいて、前記化合物Iの質量百分率は45%~85%である。本発明のいくつかの実施形態によれば、前記原料Aにおいて、前記化合物Iの質量百分率は55%~70%である。本発明のいくつかの実施形態によれば、前記原料Aにおいて、前記化合物Iの質量百分率は60%~70%である。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記カラムクロマトグラフィーは、シリカゲルカラムクロマトグラフィーである。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記シリカゲルカラムクロマトグラフィーで選択されるシリカゲルの仕様は、100~200メッシュ、200~300メッシュ、又は300~400メッシュである。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記シリカゲルカラムクロマトグラフィーで使用される溶離剤は、石油エーテル、n-ヘプタン、n-ヘキサン、ジクロロメタン、及び酢酸エチルのうちの一つ又は複数である。本発明のいくつかの実施形態によれば、前記シリカゲルカラムクロマトグラフィーで使用される溶離剤にアンモニア水が添加される。本発明のいくつかの実施形態によれば、前記シリカゲルカラムクロマトグラフィーで使用される溶離剤は、n-ヘプタンと酢酸エチルの混合物、n-ヘキサンと酢酸エチルの混合物、又はn-ヘプタン、酢酸エチル及びアンモニア水の混合物であってもよい。本発明のいくつかの実施形態によれば、前記シリカゲルカラムクロマトグラフィーで使用される溶離剤は、n-ヘプタンと酢酸エチルの混合物であってもよく、ここで、n-ヘプタンと酢酸エチルの体積比は、(90~100):(10~0)、例えば100:1である。本発明のいくつかの実施形態によれば、前記シリカゲルカラムクロマトグラフィーで使用される溶離剤は、n-ヘキサンと酢酸エチルの混合物であってもよく、ここで、n-ヘキサンと酢酸エチルの体積比は、(90~100):(10~0)、例えば100:1である。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記原料Aは、100~200メッシュのシリカゲルと混合された後、上記のシリカゲルカラムクロマトグラフィーが行われる。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記シリカゲルカラムクロマトグラフィーは、1回又は複数回、例えば、1、2、3、4又は5回行うことができる。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記式Iの化合物の分離・精製方法は、粗ラノステロールをヒドロキシ保護剤と反応させて前記原料Aを得る工程をさらに含む。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記ヒドロキシ保護剤は、シリルエーテル保護剤である;例えば、トリメチルクロロシラン、トリエチルクロロシラン、tert-ブチルトリクロロシラン、tert-ブチルジフェニルクロロシラン、トリイソプロピルクロロシラン、ジメチルイソプロピルクロロシラン、tert-ブチルジメチルクロロシラン、メチルジイソプロピルクロロシラン、トリイソプロピルクロロシラン及びトリフルオロメタンスルホン酸tert-ブチルジメチルシリルから選択される。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記粗ラノステロールと前記ヒドロキシ保護剤との反応は、有機溶媒の存在下で行われる。本発明のいくつかの実施形態によれば、前記有機溶媒は、N,N-ジメチルホルムアミド又はジクロロメタンである。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記粗ラノステロールと前記ヒドロキシ保護剤との反応は、酸結合剤の存在下で行われる。本発明のいくつかの実施形態によれば、前記酸結合剤は、有機塩基又は無機塩基である。本発明のいくつかの実施形態によれば、前記酸結合剤は、ピリジン、イミダゾール、ジイソプロピルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、炭酸カリウム、又は炭酸ナトリウムである。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記粗ラノステロールと前記ヒドロキシ保護剤との反応は、25~120℃の温度で行われる。本発明のいくつかの実施形態によれば、前記粗ラノステロールと前記ヒドロキシ保護剤との反応は、60~85℃の温度で行われる。
【0043】
本発明の別の態様は、式Iの化合物及び式I’の化合物を含む原料Aを再結晶化させることにより前記式Iの化合物を得る工程を含む式Iの化合物の精製方法を提供する。
【0044】
ここで、Xの定義は上記の通りであり、前記再結晶化の溶媒は、
1)酢酸エチルとイソプロピルアルコールの混合物、又は2)酢酸イソプロピルから選択される。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記酢酸エチルとイソプロピルアルコールの混合物において、酢酸エチルとイソプロピルアルコールの体積比は、1:(0.5~10)であり、好ましくは、1:(1~10)、例えば1:(0.5~2)である。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記原料Aにおいて、前記式Iの化合物の質量百分率は75%以上であり、好ましくは85%以上であり、より好ましくは90%以上である。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記再結晶化は、まず前記原料Aを前記溶媒に溶解し、溶解するまで温度を上昇させ、次に室温まで冷却することを含む。
【0048】
本発明の別の態様は、式Iの化合物及び式I’の化合物を含む組成物Yを提供する。
【0049】
【0050】
本発明のいくつかの実施形態によれば、Xは、TMS、TES、TBS、TBDPS、TIPS、DMIPS、TBDMS又はMDIPSである。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記組成物Yにおいて、前記式Iの化合物の質量百分率は55%~95%であり、例えば、56%、57%、58%、59%、60%、61%、65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%又は94%である。
【0052】
本発明の別の態様は、
1)粗ラノステロールをヒドロキシ保護剤と反応させて、式Iの化合物及び式I’の化合物を含む原料Aを得る工程;
2)前記原料Aをカラムクロマトグラフィーにより分離して、式Iの化合物を得る工程;及び
3)前記式Iの化合物をヒドロキシ脱保護して、精製されたラノステロールを得る工程;
を含むラノステロールを精製する方法を提供する。
ここで、前記粗ラノステロールは、ラノステロールとジヒドロラノステロールを含む。
前記ヒドロキシ保護剤は、シリルエーテル保護剤である。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記シリルエーテル保護剤は、トリメチルクロロシラン、トリエチルクロロシラン、tert-ブチルトリクロロシラン、tert-ブチルジフェニルクロロシラン、トリイソプロピルクロロシラン、ジメチルイソプロピルクロロシラン、tert-ブチルジメチルクロロシラン、メチルジイソプロピルクロロシラン、トリイソプロピルクロロシラン及びトリフルオロメタンスルホン酸tert-ブチルジメチルシリルから選択される。
【0054】
ここで、前記ラノステロールの精製方法において、原料A、式Iの化合物、並びに各工程の反応条件及び操作は、上記のいずれかのスキームに記載された通りである。
【0055】
本発明は、粗ラノステロール(原料)の精製を実現するために、まず粗ラノステロールをヒドロキシシリルエーテルで保護し、ヒドロキシシリルエーテルにより保護されたラノステロールとヒドロキシシリルエーテルにより保護されたジヒドロラノステロールとの間に存在する極性の差を利用し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより両者を分離して、純粋なヒドロキシシリルエーテルにより保護されたラノステロールを得ることができ、次にシリルエーテル保護基を除去した後、純粋なラノステロールを得る。さらに、本発明は、ヒドロキシシリルエーテルにより保護されたラノステロールが良好な結晶化特性を有し、保護基を除去する前に再結晶化させることで一部の不純物を母液中に保持し、その後ヒドロキシ保護基を除去することにより、精製されたラノステロールが得られることを見出した。得られたラノステロールは、大規模調製という商業的ニーズを満たすだけでなく、医薬使用のニーズも満たすことができる。多くの実験により、アルキルエーテル、カルボン酸エステル、アミノ酸エステルなどの他の非シリルエーテル基のヒドロキシ保護基ではラノステロールとジヒドロラノステロールを分離できないことが証明されている。
【0056】
以下、本発明の理解を助けるために実施例を提供する。しかしながら、これらの実施例は本発明を説明するためにのみ使用され、いかなる制限も構成しないことを理解されたい。本発明の実際の保護範囲は特許請求の範囲に記載されている。本発明の精神から逸脱することなく、いかなる修正及び変更も可能であることを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0057】
本発明の目的、技術的解決策及び利点をより明確かつ理解しやすくするために、以下、実施例に関連して本発明をさらに詳細に説明する。ここで説明する具体的な実施例は、本発明を説明するためにのみ使用され、本発明を限定するものではない。さらに、以下の説明では、本発明の概念を不必要に混乱させることを避けるために、周知の構造及び技術の説明を省略する。このような構造及び技術は多くの出版物にも記載されている。
【0058】
別段の定義がない限り、本発明で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野で一般的に使用されるものと同じ意味を有する。本明細書を解釈する目的で、下記の定義が適用され、必要に応じて、単数形で使用される用語には複数形も含まれ、またその逆も同様である。
【0059】
本明細書で使用される場合、「一つ」及び「一個」という表現は、文脈上明らかに別段の指示がない限り、複数の指示対象を含む。例えば、「一つの細胞」への言及には、複数のそのような細胞及び当業者に知られている等価物などが含まれる。
【0060】
本明細書で使用される「約」という用語は、その後の数値の±20%の範囲を意味する。いくつかの実施形態において、「約」という用語は、その後の数値の±10%の範囲を意味する。いくつかの実施形態において、「約」という用語は、その後の数値の±5%の範囲を意味する。
【0061】
本明細書で使用される溶媒は市販品として入手可能である。本明細書では下記の略語が使用される:
TIPS:トリイソプロピルシラン
TIPSCl:トリイソプロピルクロロシラン
DMIPS:ジメチルイソプロピルシラン
DMIPSCl:ジメチルイソプロピルクロロシラン
TES:トリエチルシラン
TESCl:トリエチルクロロシラン
TMS:トリメチルシラン
TBDPS:tert-ブチルジフェニルシラン
TBDPSCl:tert-ブチルジフェニルクロロシラン
TBS:tert-ブチルジメチルシラン
TBSCl:tert-ブチルジメチルクロロシラン
TMSCl:トリメチルクロロシラン
TLC:薄層クロマトグラフィー
TBAF:フッ化テトラブチルアンモニウム
THF:テトラヒドロフラン
DCM:ジクロロメタン
DMF:ジメチルホルムアミド
eq:当量
化合物は手作業で又はソフトウェアChemDraw(登録商標)を使用して命名し、市販の化合物はサプライヤーのカタログ名を使用して命名した。
【0062】
ラノステロール原料(粗生成物)(サプライヤーはShandong Junrui Medical Technology Co., Ltd.又はSpectrum China Ltd.である)
【0063】
<実施例>
カラムクロマトグラフィーでは、溶離液中の標的中間体の溶出を薄層クロマトグラフィー(TLC)で追跡し、その条件は石油エーテル:酢酸エチル=5:1であり、発色にはリンモリブデン酸を使用した。
【0064】
経験に基づいて、核磁気分析と組み合わせて、標的中間体を含む収集された溶出液のTLC結果を3つのカテゴリに分類した。不純物スポットが基本的にないもの(高純度生成物と定義され、1H NMR特性ピークの積分割合又はHPLC純度は約85~90%の間である)、不純物スポットがあるが純度に大幅な改善があるもの(純度の比較的高い生成物と定義され、1H NMR特性ピークの積分割合又はHPLC純度は約70~85%の間である)、不純物スポットがあるが純度に大幅な改善が見られず、溶離液中の標的中間体の濃度は比較的高いもの(低純度生成物と定義され、1H NMR特性ピークの積分割合又はHPLC純度は一般的に<70%である)、ここで、純度の改善は、その時点でカラムクロマトグラフィーによる試料の純度に対するものである。
【0065】
<実施例1>
1.1 ヒドロキシ保護
市販のラノステロール原料(ラノステロールの純度は約60%である)500gを250gずつ2等分し、それぞれ下記の処理を行った。
【0066】
15℃で250gのラノステロール原料のN,N-ジメチルホルムアミド溶液(2500mL)にイミダゾール(87.8g、1.29mol)及びTBSCl(132.5g、879mmol)を加え、85℃で6時間撹拌した。次に、15℃まで冷却し、石油エーテル(2500×2mL)を加えて抽出し、石油エーテル相を飽和NaCl溶液(2000mL)及び水(2000mL)で順次洗浄した。
【0067】
348gの中間生成物1a及び350gの中間生成物1bをそれぞれ得た。
【0068】
当分野の常識によれば、ヒドロキシ保護反応前後の中間生成物1a、1bとラノステロール原料との純度の差は無視できるほどである。
【0069】
1.2 カラムクロマトグラフィー
348gの中間生成物1aを1000gの100~200メッシュのシリカゲルと混合し、10kgの200~300メッシュのシリカゲルカラム(1000mm×230mm)でクロマトグラフィーを行った。n-ヘプタンと酢酸エチル(100:1)の混合物で溶出を行った。溶出過程をTLCで追跡し、純度の比較的高い生成物の溶出液を収集し、減圧蒸留して乾燥した後、125gの中間生成物1cを得、収率は約66%であった。
【0070】
350gの中間生成物1bを1000gの100~200メッシュのシリカゲルと混合し、10kgの200~300メッシュのシリカゲル(1000mm×230mm)でカラムクロマトグラフィーを行った。n-ヘプタンと酢酸エチル(100:1)の混合物で溶出を行った。溶出過程をTLCで追跡し、高純度生成物の溶出液を収集し、乾燥し、121gの中間生成物1dを得、収率は約64%であった。
【0071】
中間生成物1cと1dを合わせ、740gの100~200メッシュのシリカゲルと混合し、7.4kgの200~300メッシュのシリカゲルカラム(1000mm×230mm)でクロマトグラフィーを行い、n-ヘプタンと酢酸エチル(100:1)の混合物で溶出を行った。溶出過程をTLCで追跡し、高純度生成物の溶出液を収集し、減圧蒸留して乾燥した後、179gの中間生成物1eを得、収率は約47%であった。
【0072】
179gの中間生成物1eを540gの100~200メッシュのシリカゲルと混合し、5.4kgの200~300メッシュのシリカゲルカラム(1000mm×230mm)でクロマトグラフィーを行った。n-ヘキサンと酢酸エチル(100:1)の混合物で溶出を行った。溶出過程をTLCで追跡し、高純度生成物の溶出液を収集し、乾燥し、161gの中間生成物1fを得、収率は約42%であった。中間生成物1fをTLCでモニタリングしたところ、薄い不純物スポットの存在が依然として観察され、1H NMR特性ピークの積分により、TBS-ラノステロールは全ステロールの約83%を占めることが示された。
【0073】
161gの中間生成物1fを480gの100~200メッシュのシリカゲルと混合し、5.0kgの200~300メッシュのシリカゲルカラム(1000mm×230mm)でクロマトグラフィーを行った。n-ヘキサンと酢酸エチル(100:1)の混合物で溶出を行った。溶出過程をTLCで追跡し、高純度生成物の溶出液を収集し、減圧蒸留して乾燥した後、147gの中間生成物1hを得た。4回の精製の合計収率は約39%であった。中間生成物1hをTLCでモニタリングしたところ、不純物スポットが明らかではないことが示され、1H NMR特性ピークの積分により、TBS-ラノステロールは全ステロール含有量の約91%を占めることが示された。
【0074】
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ=5.07(br t,J=7.2Hz,1H),3.17(dd,J=4.6,11.2Hz,1H),2.05‐1.35(m,24H),1.29(br s,5H),1.18‐0.97(m,5H),0.95(s,3H),0.90‐0.88(m,4H),0.84(s,9H),0.74(s,3H),0.66(s,3H),0.00(d,J=2.5Hz,7H)ppm.
【0075】
1.3 ヒドロキシ脱保護
49.2gの中間生成物1hを取り、250mLの無水テトラヒドロフランに溶解した。15℃で110mLのTBAF溶液(1.0M)を加え、16時間加熱還流させた。反応をTLCでモニタリングした。反応が終了した後、反応溶液を直接減圧スピン乾燥して残渣を得た。残渣に600mLのメタノールを加え、4時間還流させて、白色懸濁液を得た。60℃で24時間撹拌し、次に15℃まで冷却し、ろ過し、ケーキを300mLのメタノールで洗浄し、吸引乾燥して、38.3gの最終生成物を得、収率は約98.4%であり、HPLCで測定したラノステロールの純度は約91%であった。
【0076】
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ=5.12(br t,J=7.15Hz,1H),3.26(dd,J=4.64,11.42Hz,1H),1.73‐2.13(m,10H),1.71(s,3H),1.64‐1.68(m,1H),1.63(s,3H),1.05‐1.59(m,12H),1.02(s,3H),1.00(s,3H),0.93(d,J=6.27Hz,3H),0.90(s,3H),0.83(s,3H),0.71(s,3H)ppm.
【0077】
<実施例2>
2.1 ヒドロキシ保護
15℃で、市販のラノステロール原料(250g、ラノステロールの純度は約60%である)のN,N-ジメチルホルムアミド溶液(2500mL)にイミダゾール(87.8g、1.29mol)及びTESCl(132.5g、879mmol)を加え、80℃で3時間撹拌した。反応をTLCでモニタリングした。反応が終了した後、25℃まで冷却し、600mLのメタノール及び300mLの水を加え、撹拌し、ろ過した。ケーキを300mLのメタノールで洗浄し、ケーキを吸引乾燥して、341gの中間生成物2aを得た。
【0078】
2.2 カラムクロマトグラフィー
341gの中間生成物2aを1000gの100~200メッシュのシリカゲルと混合し、10kgの200~300メッシュのシリカゲルカラム(1000mm×230mm)でクロマトグラフィーを行い、n-ヘプタンと酢酸エチル(100:1)の混合物で溶出を行った。溶出過程をTLCで追跡し、高純度生成物の溶出液を収集し、減圧蒸留して乾燥した後、168gの中間生成物2bを得(TLCでは薄い不純物スポットの存在が依然として観察された)、収率は約88%であった。
【0079】
168gの中間生成物2bを540gの100~200メッシュのシリカゲルと混合し、5.4kgの200~300メッシュのシリカゲルカラム(1000mm×180mm)でクロマトグラフィーを行った。n-ヘプタンと酢酸エチル(100:1)の混合物で溶出を行った。溶出過程をTLCで追跡し、不純物スポットが基本的にない溶出液を収集し、減圧蒸留して乾燥した後、117gの中間生成物2cを得、収率は約62%であり、1H NMR特性ピークの積分により、TES-ラノステロールは全ステロール含有量の約86%を占めることが示された。
【0080】
2.3 ヒドロキシ脱保護
25℃で、27gの中間生成物2cを秤量し、乾燥THF(150mL)及びTBAF(55mL、0.055mol)に溶解し、30分間反応させた。次に、温度を60℃まで上昇させ、還流させ、4時間撹拌した。反応が完了するまでTLCでモニタリングした。80mLの水及び160mLのメタノールを加え、1時間撹拌すると、固体が析出した。ろ過し、ケーキを少量の水及びメタノールで洗浄し、吸引乾燥して、18.5gの白色固体の最終生成物を得、収率は87%であり、HPLCで測定したラノステロールの純度は約89%であった。
【0081】
<実施例3>
3.1 ヒドロキシ保護
15℃で、市販のラノステロール原料(250g、ラノステロールの純度は約60%である)のN,N-ジメチルホルムアミド溶液(2500mL)にイミダゾール(87.8g、1.29mol)及びTESCl(132.5g、879mmol)を加え、80℃で3時間撹拌した。反応をTLCでモニタリングした。反応が終了した後、25℃まで冷却し、600mLのメタノール及び300mLの水を加え、撹拌し、ろ過し、ケーキを吸引乾燥して、355gの中間生成物3aを得た。
【0082】
3.2 カラムクロマトグラフィー
355gの中間生成物3aを1000gの100~200メッシュのシリカゲルと混合し、10kgの200~300メッシュのシリカゲルカラム(1000mm×230mm)でクロマトグラフィーを行った。n-ヘプタンと酢酸エチル(100:1)の混合物で溶出を行った。溶出過程をTLCで追跡し、それぞれ高純度生成物及び純度の比較的高い生成物の溶出物を収集し、減圧蒸留して乾燥した後、純度約87~89%の71gの中間生成物3b、及び純度約70~80%の96gの中間生成物3cをそれぞれ得た。
【0083】
96gの中間生成物3cを再び300gの100~200メッシュのシリカゲルと混合し、3kgの200~300メッシュのシリカゲルカラム(1000mm×180mm)でクロマトグラフィーを行い、n-ヘプタンと酢酸エチル(100:1)の混合物で溶出を行った。溶出過程をTLCで追跡し、純度の比較的高い溶出液を収集し、減圧蒸留して乾燥した後、44gの中間生成物3dを得た。
【0084】
中間生成物3b及び3dを合わせ(中間生成物3eと命名する)、合計115gであり、収率は61%であり、1H NMR特性ピークの積分により、TES-ラノステロールは全ステロール含有量の約90%を占めることが示された。
【0085】
3.3 ヒドロキシ脱保護
25℃で、中間生成物3e(22g、0.04mol)を乾燥THF(120mL)に溶解し、TBAF(45mL、0.045mol)を反応溶液に加え、30分間保持した。次に、温度を60℃まで上昇させ、還流させ、4時間撹拌した。反応をTLCでモニタリングした。反応が終了した後、60mLの水及び120mLのメタノールを加え、1時間撹拌すると、固体が析出した。ろ過し、ケーキを60mLの水で洗浄し、次に100mLのメタノールで洗浄し、ろ過してケーキを得、200mLのメタノールで3時間還流させ、冷却して析出させ、再びろ過して、15.2gの白色固体を得、収率は約88%であり、HPLCで測定したラノステロールの純度は約92%であった。
【0086】
<実施例4>
4.1再結晶化
実施例3で得られた中間生成物3eを50g取り、750mlの酢酸エチルとイソプロピルアルコール(体積比1:1)の混合物に加え、90℃まで加熱し、2時間還流させ、溶解・清澄化させ、撹拌を停止し、次にゆっくりと冷却すると、固体が析出した。固体をろ過してケーキを得、ケーキを洗浄し、乾燥し、40gの中間生成物4aを得、収率は80%であり、1H NMR特性ピークの積分により、TES-ラノステロールは全ステロール含有量の約93%を占めることが示された。
【0087】
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ=0.56‐0.66(m,6H),0.70‐0.91(m,9H),0.92‐1.07(m,19H),1.12‐1.77(m,21H),1.82‐2.12(m,7H),3.25(dd,J=11.29,4.52Hz,1H),5.12(br t,J=7.03Hz,1H)。
【0088】
4.2 脱保護
25℃で、中間生成物4a(20g、0.037mol)を乾燥THF(120mL)に溶解した。TBAF(1M、1.5eq)を反応溶液に加え、30分間保持した。温度を60℃まで上昇させ、還流させ、4時間撹拌した。反応が完了するまでTLCでモニタリングした。60mLの水及び120mLのメタノールを加え、1時間撹拌すると、固体が析出した。ろ過し、ケーキを少量の水及びメタノールで順次洗浄し、ろ過して、ケーキを得た。ケーキに200mlのメタノールを加えて3時間還流させ、冷却析出させ、ろ過して、13gの白色固体を得た。収率は約85%であり、HPLCで測定したラノステロールの純度は>99%であった。
【0089】
<実施例5>
5.1:ヒドロキシ保護
15℃で、市販のラノステロール原料(250g、ラノステロールの純度は約60%である)のN,N-ジメチルホルムアミド溶液(2500mL)にイミダゾール(87.75g、1.29mol)及びTMSCl(95.47g、879mmol)を加え、70℃で5時間撹拌した。反応が終了した後、反応溶液を15℃まで冷却し、石油エーテル(2500×2mL)を加えて抽出し、石油エーテル相を飽和NaCl溶液(2000mL)、水(2000mL)でそれぞれ洗浄し、287gの中間生成物5aを得た。
【0090】
5.2:カラムクロマトグラフィー
287gの中間生成物5aを850gの100~200メッシュのシリカゲルと混合し、8.5kgの200~300メッシュのシリカゲルカラム(1000mm×230mm)でクロマトグラフィーを行い、n-ヘプタン、酢酸エチル及びアンモニア水(100:1:0.05)の混合物で溶出を行った。TLCで追跡・観察し、溶出液を収集し、減圧蒸留して乾燥した後、53gの生成物5bを得、TMS-ラノステロール中間体の収率は約30%であり、1H NMRで測定した純度は約80%であり、TLCでは薄い不純物スポットがあることが示された。
【0091】
<実施例6>
保護剤と実験条件の考察実験
15℃で、市販のラノステロール原料(10g、0.023mol、純度約60%)のDMF溶液100mLにイミダゾール(3.9g)及びトリエチルクロロシラン(1~2eq)を加えた。TLCで反応が終了したことをモニタリングし、比較的きれいに変換された反応の場合は、下記の後処理操作を行った。室温まで冷却し、石油エーテル(75×2mL)を加えて抽出し、石油エーテル相を飽和NaCl溶液(75mL)、水(750mL)でそれぞれ洗浄し、乾燥して対応する粗生成物を得、カラムクロマトグラフィーにより精製した。
【0092】
上記の反応において、溶媒、保護試薬、温度、反応時間を変化させて考察した条件と結果を下表に示す。
【0093】
注:a 後処理操作は下記の通りである:室温まで冷却し、メタノール(25mL)、水(12.5mL)を加え、撹拌し、ろ過し、ケーキを少量のメタノールで洗浄し、ケーキを吸引乾燥して、対応する粗生成物を得、カラムにより精製する。ここで、この後処理操作を採用すると、生成物を直接析出させ、ろ過することができる。
【0094】
<実施例7>
実施例2でカラムにより精製された中間生成物2cを5.41g取り、溶質と溶媒の質量体積比が1g:10mLである下表に示す再結晶化の条件を考察した。
【0095】
本発明の技術的解決策は、上記の具体的な実施例の制限に限定されるものではなく、本発明の技術的解決策に基づいて行われるすべての技術的変形は、本発明の保護範囲に含まれる。
【国際調査報告】