(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-23
(54)【発明の名称】誘導炉を使用したアルミニウム装入物の溶融方法
(51)【国際特許分類】
B22D 21/04 20060101AFI20240816BHJP
C22B 21/00 20060101ALI20240816BHJP
C22B 9/00 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
B22D21/04 A
C22B21/00
C22B9/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513332
(86)(22)【出願日】2022-08-29
(85)【翻訳文提出日】2024-03-12
(86)【国際出願番号】 FR2022051618
(87)【国際公開番号】W WO2023031545
(87)【国際公開日】2023-03-09
(32)【優先日】2021-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500092697
【氏名又は名称】コンステリウム イソワール
【氏名又は名称原語表記】Constellium Issoire
(71)【出願人】
【識別番号】517422951
【氏名又は名称】コンステリウム ヌフ-ブリザック
【氏名又は名称原語表記】CONSTELLIUM NEUF-BRISACH
(71)【出願人】
【識別番号】522470817
【氏名又は名称】コンステリウム マッスル ショールズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】CONSTELLIUM MUSCLE SHOALS LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100080447
【氏名又は名称】太田 恵一
(72)【発明者】
【氏名】ベルトラ,マルク
(72)【発明者】
【氏名】ピシャ,アンヌ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァズ,エマニュエル
(72)【発明者】
【氏名】ヴァセル,アラン
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA02
4K001BA22
4K001BA23
4K001FA14
4K001GA17
(57)【要約】
本発明は、アルミニウム装入物の溶融方法において:少なくとも15重量%が高さh、最大直径dの本質的に円筒形のボウルの形をしているアルミニウム装入物(11、12、13)を供給するステップと;高さH、最大内径Dの円筒形誘導炉(10)内に前記装入物を装入するステップであって、炉内における前記ボウルの高さ方向が炉の高さ方向に対し実質的に平行である、ステップと;誘導により前記装入物を溶融して、液体金属浴(2)を得るステップと;任意には、前記液体金属を組成調整するステップと;を含み、ここでdは0.7D~0.97D、好ましくは0.84D~0.92Dの範囲内にある方法に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム装入物の溶融方法において、
- 少なくとも15重量%が高さh、最大直径dの本質的に円筒形のボウルの形をしているアルミニウム装入物(11、12、13)を供給するステップと、
- 高さH、最大内径Dの円筒形誘導炉(10)内に前記装入物を装入するステップであって、炉内における前記ボウルの高さ方向が炉の高さ方向に対し実質的に平行である、ステップと、
- 誘導により前記装入物を溶融して、液体金属浴(2)を得るステップと、
- 任意には、前記液体金属を組成調整するステップと、
を含み、
ここでdは0.7D~0.97D、好ましくは0.84D~0.92Dの範囲内にあることを特徴とする方法。
【請求項2】
本質的に円筒形のボウルの2分の1の高さh/2に位置付けられた直径が、炉の底面からH/2-H/4~H/2+H/4の距離のところに位置設定されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
本質的に円筒形のボウルは、その中心(111)に1つの開口部を備えている、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
本質的に円筒形のボウルが、装入ステップの際に、前記開口部(111)を通って挿入されるマニピュレータツール(3)によって操作される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
圧延プレート、押出しビレット、鍛造ブロックまたはインゴットまたはボウルなどの中間製品(100、101)の製造方法において、
- 請求項1から4のいずれか一つに記載の溶融方法によって、任意には組成調整された液体金属浴を得るステップと、
- 任意には前記液体金属(2)を濾過しかつ/または処理するステップと、
- 前記液体金属の鋳造によって、前記中間製品(100、101)を形成するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
装入物の少なくとも60%が、再溶融金属に由来する、請求項5に記載の中間製品の製造方法。
【請求項7】
溶融に適した高さh、最大直径dのアルミニウム製の本質的に円筒形のボウル。
【請求項8】
少なくとも2つの脚部(113)を備えた、請求項7に記載のボウル。
【請求項9】
本質的に円筒形のボウルが、少なくとも1つの直径(114)の端部において切頭されている、請求項7または8に記載のボウル。
【請求項10】
高さh、最大直径dの本質的に円筒形のアルミニウム製ボウルを鋳造するための金型(4)。
【請求項11】
開口部(111)の作製を可能にするようにするくり抜かれた中央突端部(411)を含む、請求項10に記載の金型。
【請求項12】
開口部(111)の作製を可能にする中央突端部(411)が、取外し可能である、請求項11に記載の金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導炉を用いた、アルミニウム製品の溶融、および特に圧延プレート、押出しビレットまたは鍛造ブロックなどのアルミニウム合金製中間製品の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム製造のカーボンフットプリントは、電気分解によって得られる一次アルミニウムからよりも既存の原料の再生利用によって製品を得る場合の方が、はるかに低いものである。したがって、再生利用のための原料を経済的にかつ効率良く再溶融できる方法を開発することが重要である。その上、電気的に溶融が行なわれる誘導炉は、特に、利用される電気が炭素排出無しに得られる場合、ガス炉よりも炭素排出に関して有利である。
【0003】
しかしながら、誘導炉の工業的効率は、比較的低い溶融速度、制限された寸法および炉の装入の難しさといった理由で、ガス炉の工業的効率よりも低い場合が多い。
【0004】
欧州特許第1101830号明細書は、7000シリーズの既定のアルミニウム合金製のプレート、ビレットまたは鍛造ブロックなどの中間製品の製造方法において:-a)既定の合金にとって許容可能な最大含有量よりも多いZrまたはCrなどの少なくとも1つの第2の抗再結晶化元素の目標含有量を有する少なくとも1つの第2の7000シリーズの合金の機械加工の残片および屑鉄などの再生利用すべき製品の供給ステップ;b)この第2の抗再結晶化元素の含有量を、既定の合金内で許容可能な最大含有量未満の値に削減できるようにする、屑鉄および残片の少なくとも1つの精錬ステップ;c)精錬作業由来の純金属からの液体金属ロットの製造ステップ;d)液体金属の鋳造(40)による中間製品(100)の形成ステップ、を含むことを特徴とする方法を記述している。
【0005】
欧州特許第1913166号明細書は、リチウムを含むアルミニウム合金製スクラップの溶融方法において、(i)アルミニウム-リチウムタイプの合金を含むスクラップを供給し(供給ステップ);(ii)溶融炉内で第1の組成の液体金属初期床を調製し(液体金属初期床の調製ステップ);(iii)前記液体金属床の表面に前記スクラップの浮遊マットを創出するような形で前記液体金属初期床の上に前記スクラップを装入し(装入ステップ);(iv)第1の組成と同じかまたは異なるものであり得る第2の組成の液体金属浴を得るような形で前記スクラップマットを溶融させ(マット溶融ステップ);(v)第2の組成の前記液体金属浴から液体金属を採取する(採取ステップ)方法を記述している。
【0006】
米国特許第6393044号明細書は、誘導による溶融システムにおいて、高い電気抵抗率または高い透磁率を有する材料で形成されたるつぼおよび、電源を伴ってコンパクト設計を提供する誘導炉を形成する目的で個別に絶縁された銅製の複数の導線で構成された巻かれたケーブルで形成されている単数または複数の誘導コイルを使用するシステムについて記述している。
【0007】
誘導炉内での溶融は、再生利用のための原料の溶融に極めて有用である。
【0008】
アルミニウムおよびアルミニウム合金を再生利用するための原料のタイプ(特に「スクラップ」という名称で知られている)は、EN12258-3規格に記載されている。
【0009】
複数の産業において、中間製品の機械加工、加工、切断などによる最終金属製品の製造方法は、機械加工の残片および切り屑を大量に生成する。これらの余剰の材料は、旋盤加工、外丸削り、平削り、フライス削り、表面削り、型取り、穴あけ、ねじ立て、ねじ切り、鋸引き、中ぐりまたは仕上げ機械加工の作業、あるいは類似の作業によって製造プロセス中に中間製品から取除かれる。このタイプのスクラップは、切り屑などの削り屑タイプの小さな寸法の破片のみならず、薄いまたは厚い鋼板、形鋼、プレート、ビレットの切断またはせん断の残片などの切り刻まれたスクラップタイプの、より大きな寸法の破片にも関係する。
【0010】
再生利用プロセスにおいて一般に使用される他のタイプのスクラップは、使用済み飲物缶および使用済み食品包装材などの使用済み包装材である。
【0011】
スクラップは、直接的溶融を目的とした、前処理済み、バルク、粉砕済み、顆粒成型済み、圧縮済み、清浄済み、コーティング済み、陽極処理済み、混錬済みの形態などの様々な形態をしていてよい。
【0012】
したがって、いくつかの事例においては、スクラップは、直接溶融に適したものにするための少なくとも1つの第1の加工、例えば圧縮(例えば「レンガ」を生成するように)または溶融(「ボウル」などの再溶融インゴットを生成するように)を受ける。この第1の加工によって、残片および切り屑の輸送、ハンドリング、溶融および/または保管を簡略化することができ、油残渣を低減させ均質な組成を得ることによってスクラップの改善に寄与することが可能である。
【0013】
したがって、再溶融インゴットは、組成を修正しかつ/または一定の金属または非金属不純物を取り去ることを目的とするいくつかの治金学的処理を場合によって受けている、再溶融するのに適した形状に鋳造された金属である。ボウルは、重量が典型的には500kgである再溶融インゴットである。本発明に係るボウルは、モノリシックである。モノリシックとは、ボウルが、単一の金属または合金で構成されていることを意味し、このことは、それが再溶融インゴットであるという事実に結び付いている。ボウルは通常、全体的に平行六面体で、フォークリフトによる操作に適した形状をしている。ボウルは通常、保管されており、圧延プレート、押出しビレット、鍛造ブロックなどの中間製品の製造のために必要に応じて使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】欧州特許第1101830号明細書
【特許文献2】欧州特許第1913166号明細書
【特許文献3】米国特許第6393044号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明が解決しようとする課題は、特に再生利用向け原料を大きな割合で使用するプロセスのために、円筒形誘導炉内での溶融を含む製造方法の生産性およびエネルギー効率を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の目的は、アルミニウム装入物の溶融方法において:
- 少なくとも15重量%が、高さh、最大直径dの本質的に円筒形のボウルの形状をしているアルミニウム装入物を供給するステップと;
- 高さH、最大内径Dの円筒形誘導炉内に前記装入物を装入するステップであって、炉内における前記ボウルの高さ方向が炉の高さ方向に対し実質的に平行である、ステップと;
- 誘導により前記装入物を溶融して、液体金属浴を得るステップと;
- 任意には、前記液体金属を組成調整するステップと;
を含み、
ここでdは0.7D~0.97Dの範囲内にあることを特徴とする方法にある。
【0017】
本発明の第2の目的は、本発明に係る方法による溶融に適応された高さh、最大直径dのアルミニウム製の本質的に円筒形のボウルにある。
【0018】
本発明のもう1つの目的は、圧延プレート、押出しビレット、鍛造ブロックまたはインゴットまたはボウルなどの中間製品の製造方法において:
- 本発明に係る溶融方法によって、任意には組成調整された液体金属浴を得るステップと;
- 任意には前記液体金属(2)を濾過しかつ/または処理するステップと;
- 前記液体金属の鋳造によって、前記中間製品(100、101)を形成するステップと;
を含むことを特徴とする方法にある。
【0019】
本発明のさらに別の目的は、本発明に係るボウルを鋳造するための金型にある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の方法の好ましい実施形態を例示する。
【
図3a】本発明に係る別のボウルを例示し、1つの上面図および2つの断面図を示す。
【
図3b】本発明に係る別のボウルを例示し、1つの斜視図を示す。
【
図4】本発明に係るボウルの考えられる操作を例示する。
【
図6a】平行六面体ブロックでの実施例の装入を例示する。
【
図7】本発明に係る中間製品の製造方法の一実施形態を例示する。
【
図8】本発明の一実施形態に係るボウルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
別段の明示の無い限り、EN12258規格、特にEN12258-1および12258-3規格の定義が適用される。
【0022】
本出願人は、あらゆる予想に反して、炉の寸法に適応された寸法の本質的に円筒形のボウルの使用により、円筒形誘導炉内の装入持続時間および溶融持続時間を大幅に短縮することができるということを確認した。
【0023】
本発明によると、アルミニウム装入物の溶融方法は:
- アルミニウム装入物の供給ステップ;
- 誘導炉内への装入物の装入ステップ;
- 装入物の溶融ステップ;
を含む。
【0024】
【0025】
本発明において、アルミニウムなる用語は、純粋アルミニウムならびに特にアルミニウム協会が刊行するTeal Sheets中に記載されている合金などの、少なくとも50%のアルミニウムを含む全てのアルミニウム合金を意味する。
【0026】
供給ステップにおいて、アルミニウム装入物の少なくとも15重量%は、高さh、最大直径dの本質的に円筒形のボウル(11)の形をしている。ボウルの寸法に応じて、この最小数量に達するのに1つのボウルで十分な場合があるものの、概して2個、3個、4個以上のボウルといった複数のボウルが使用される。好ましくは、装入物の少なくとも25重量%、好適には少なくとも35重量%、さらには少なくとも50重量%、少なくとも70重量%または少なくとも90重量%が、本質的に円筒形のボウル(11)の形をしている。本発明によると、単数または複数の本質的に円筒形のボウルの重量は、少なくとも100kg、好適には少なくとも300kg、さらに一層好適には少なくとも400kg、有利には少なくとも500kgである。本発明の一実施形態において、単数または複数の本質的に円筒形のボウルの重量は、少なくとも700kg、有利には少なくとも1000kg、好適には少なくとも1500kgである。しかしながら、700kg未満、例えば100kg~700kgの重量のボウルは、単独であるいはより重いボウルと組合せた形で適切であり得る。
【0027】
ボウルは、本質的に円筒形である、すなわち、その形状は主として、円筒および/または円錐台の全体の最大直径および最小直径の差が10%以下、好ましくは7%以下、好適には5%以下であるような、同じ回転軸の重ね合わされた単数または複数の円筒および/または単数または複数の円錐台で構成されている。したがって、本質的に円筒形の回転軸に直交する断面が、概して円形である。本質的に円筒形の回転軸に直交するあらゆる断面が、部分的に切頭された円で構成され得るものの、切頭部分は、円周の50%未満、好ましくは40%未満を占める。本質的に円筒形の形状は、中央開口部を有することができる。本質的に円筒形の形状は、脚部を含むことができる。本質的に円筒形の形状の高さhは、最大直径に直交する最大寸法、すなわち回転軸に沿った最大寸法に対応する。好ましくは、ボウルは、高さh、最大直径dの本質的に円筒形のアルミニウム合金製でモノリシックであり、ここでdは0.7D~0.97Dの範囲内にあり、Dは、円筒形誘導炉の最大内径である。
【0028】
装入物を補完するために、特にインゴット、ビレット、プレートタイプの未加工形状(12)および、帯材、板材、形鋼、棒材、管材、線材、鍛造部品などの様々な製造段階において加工された形状(13)、すなわち生産スクラップ、特に、切断、せん断作業または類似の作業に由来する切り刻まれたスクラップまたは使用後の製品、例えば使用済み飲料缶、使用済み包装材、焼却炉スクラップ、機械加工または他の作業によって生成された特に結晶粒、切り屑、金屑で構成された削り屑などの他の形をしたアルミニウムが使用される。スクラップがコーティングされている場合、コーティング除去されたスクラップを得るためのコーティング除去作業を行なうことが有利である。好ましくは、使用後のスクラップは粉砕される。本発明の一実施形態において、装入物の少なくとも15重量%、好ましくは少なくとも30重量%、さらには40重量%が、加工済み製品(13)の形、好ましくは、切り刻まれたスクラップ、削り屑、使用済み飲料缶または使用済み包装材などの細かく分割された形をしている。
【0029】
その形状の如何に関わらずアルミニウムの由来は、金属化合物または再溶融金属すなわち既に一度凝固された金属の分解によってか、または還元によって金属化合物から抽出された、一次アルミニウムであってよい。一実施形態において、本発明に係るボウルは、一次金属の鋳造により得られる。別の実施形態において、本発明に係るボウルは、再溶融金属の鋳造によって得られる。好ましくは、本発明に係るボウルは、使用後の製品に由来する回収スクラップを含む再溶融金属の鋳造によって得られる。本発明の一実施形態においては、装入物の少なくとも60%が、再溶融金属、好ましくは生産スクラップまたは回収スクラップに由来する。
【0030】
好ましくは、装入物は、2XXXまたは3XXXまたは4XXXまたは5XXXまたは6XXXまたは7XXXまたは8XXXシリーズの適切に選別された合金で構成されている。有利な一実施形態において、装入物は、例えばAA2050、AA2196またはAA2198合金などの、少なくとも0.5重量%のリチウムを含む2XXXシリーズの合金で構成されている。別の有利な実施形態においては、装入物は、3XXXシリーズの合金で構成され、少なくとも30%の使用済みの飲料缶または使用済み包装材を含む。
【0031】
装入物はその後、以下で「円筒形誘導炉」という表現で呼称され英語で「coreless crucible induction furnace」として知られている本質的に円筒形のコアレスるつぼ形誘導炉(10)内に装入される。円筒形誘導炉は、炉のるつぼの最大内径に対応する最大内径Dを有する。るつぼは、取外し可能であるかまたは一体であってよい。本質的に円筒形とは、円筒および/または円錐台の全体の最大直径および最小直径の差が10%以下、好ましくは7%以下、好適には5%以下であるような、同じ回転軸の重ね合わされた単数または複数の円筒および/または単数または複数の円錐台で主として構成されている形状を意味する。本発明に係るボウルの最大直径dは、炉の最大内径Dに適応されており、したがってdは0.7D~0.97Dの範囲内、好ましくは0.84D~0.92Dの範囲内にある。本発明に係るボウルの最大直径を炉に対して正確に適応させることおよびボウルの本質的に円筒形の形状によって、特に、誘導炉のコイルとのより優れた誘導結合を生成することが可能となり、炉内の装入物の密度を増大させることもまた可能となる。その上、ボウルの高さhは、ボウルの鋳造時の冶金学的欠陥を回避するために、最大直径dの多くとも50%、好ましくは多くとも40%、そして好ましくは多くとも30%であることが好ましい。
【0032】
ボウルは、ボウルの高さの方向が炉の高さの方向に対して実質的に平行になるような形で、装入される。有利には、ボウルの装入は、装入されるボウルの数の如何に関わらず、単一回の作業で実施される。
【0033】
有利には、本質的に円筒形のボウルは、その中心(111)に開口部を含む。開口部(111)は、特に、例えばフォークリフトまたは走行クレーンに固定されたマニピュレータツールの挿入を可能にする。
【0034】
一実施形態において、本発明に係るボウルの装入は、水平位置への炉の傾動後に実施される。ボウルは、例えばフォークリフトを用いて傾動され装入される。この実施形態においては、高さhが水平位置にあることから、ボウルを傾動させたときに安定性を確保するような形で切頭された円周を有するボウルを使用することが有利である。この実施形態においてかつ複数のボウルを装入する場合には、フォークリフトに固定され単一回の作業で開口部(111)内に挿入されるマニピュレータツールなどを用いて、ボウルの傾動および挿入を行なうことが有利である。この実施形態では、ボウルが傾動されたときの安定性を確保するような形で切頭された円周を有する同一のボウルを使用することが有利である。その後、炉は、スクラップなどの装入物の他の要素の導入のため、垂直に再度傾動させられる。
【0035】
別の実施形態において、ボウルは、垂直位置にある炉内に導入される。例えば、ボウルは、開口部(111)内に挿入された適切なマニピュレータツールを用いて操作され、誘導炉の壁に触れることなく炉内に導入されてよい。場合によって面取りされた
図2に例示されているような円形開口部を作製する場合には、例えば膨張性マンドレルを有する空気圧ツールを使用することができる。同様に、
図3に例示されているような細長い開口部を作製することもできる。
図4に例示されているように、矩形くさび(32)を含むマニピュレータツール(3)を細長い開口部(111)内に導入し、その後ボウルの下に固定されるような形でロッド(31)を用いて枢動させることができる。その後、アセンブリは、走行クレーンを用いて容易に操作可能であり、炉内にボウルが位置付けされた時点でマニピュレータツール(3)を解放するために逆の作業が行なわれる。
【0036】
両方の場合において、本発明に係るボウルの堆積を直接導入することが可能であり、これにより、装入作業は極めて迅速になり、るつぼの耐火材の劣化は回避され、一名の作業員だけで実行することができる。
【0037】
一実施形態において、炉は、まず初めに生産スクラップおよび/または回収スクラップ(13)および/またはインゴット(12)により部分的に満たされ、その後、本発明に係るボウルが導入され、その後改めて、特に本発明に係るボウルと炉の壁の間に残留する空間内に生産スクラップおよび/または回収スクラップが導入され、装入は、最終的に生産スクラップおよび/または回収スクラップおよび/またはインゴットによって完了する。
【0038】
別の実施形態によると、本発明に係るボウルが最初に導入され、次に生産スクラップおよび/または回収スクラップが、特に本発明に係るボウルと炉壁の間に残留する空間内に導入され、装入は、最終的に生産スクラップおよび/または回収スクラップおよび/またはインゴットによって完了する。一実施形態においては、生産スクラップおよび/または回収スクラップの導入を容易にするために、本発明に係るボウルを炉内の中心に配置しないことが有利であり得る。
【0039】
本発明者らは、溶融がより迅速でかつより消費エネルギーの少ないものとするためには、本発明に係る少なくとも1つのボウルを炉の2分の1の高さ付近に位置付けすることが有利であることを確認した。したがって、有利な一実施形態において、本質的に円筒形のボウルの2分の1の高さh/2に位置付けされた直径は、炉の底面、すなわちるつぼの底面からH/2-H/4~H/2+H/4、好ましくはH/2-H/5~H/2+H/5の距離のところに位置設定される。
【0040】
その後、液体金属浴(2)を得るために誘導による装入物の溶融が実施される。溶融は、蓋が有る状態または無い状態で、不活性雰囲気下または周囲空気において実施可能である。使用される出力および周波数は、使用される炉および/または装入物に応じて選択される。典型的には、出力は最大出力の40%~100%であり、周波数は50Hz~400Hzである。周波数は特に、誘導炉の寸法に適応される。
【0041】
一実施形態において、溶融は装入物を完全に導入する前に開始され得る、すなわち装入物がひとたび部分的に溶融した時点で、場合によっては、装入サイクルを再開することができ、また例えば、プライヤまたはウォームスクリュを用いてあるいはバケットを空にすることによってスクラップを導入することができる、という点に留意すべきである。
【0042】
任意には、目標の組成に達するために、組成調整用の合金元素が次に炉入れされる。合金元素は概して、単一元素でもしくはこれらの元素を含有する強力に合金化されたアルミニウム合金の形態で、または純粋な添加金属の形態で添加される。合金元素を添加するために使用されるさまざまな形態が、「マスター合金および溶加材」を意味する「MAFM」という略号で知られている。
【0043】
本発明はまた、圧延プレート、押出しビレット、鍛造ブロック(100)またはインゴットまたはボウル(101)などの中間製品(100、101)の製造方法において、本発明に係る溶融方法によって得られた液体金属の鋳造ステップが行なわれる方法にも関する。この方法は、
図7に例示されている。
【0044】
任意には、鋳造された金属は、例えば複数の誘導炉に由来する液体金属をまとめるため、中間的に大型の炉(102)内に移送されてよい。
【0045】
任意には、鋳造の前に液体金属の濾過および/または処理ステップを実施することができる。典型的には、「濾過袋」内の濾材において液体金属を濾過するかまたは、「脱ガス袋」内で不活性または活性であり得るいわゆる「処理用」ガスを液体金属浴内に導入することができる。この実施形態の有利な一変形形態において、該方法には、介在物を除去するための金属のガス処理が含まれる。ガスは、好ましくは、おおよそ塩素を含み、残分は典型的には窒素またはアルゴンである。
【0046】
その後、液体金属は、液体金属の凝固装置(または「鋳造機」)に向かって誘導されて、圧延プレート(100)、押出しビレット、鍛造ブロック、インゴットまたはボウル(101)などの中間製品を形成する。
【0047】
該方法はまた、半連続式であってもよく、液体金属の一部分のみが鋳造のために採取され、溶湯は炉内に残り、固体アルミニウムが溶湯内に導入される。
【0048】
本発明はまた、円筒形誘導炉内での溶融に適応されたアルミニウム製の本質的に円筒形のボウルにも関する。好ましくは、本質的に円筒形のボウルの重量は、少なくとも700kg、好ましくは少なくとも1000kgさらには少なくとも1500kgである。
【0049】
ボウルは、定義されているような本質的に円筒形のものである。本質的に円筒形の形状の高さに直交するあらゆる断面は、部分的に切頭された円で構成され得るが、切頭部分は円周の50%未満、好ましくは40%未満を占める。本質的に円筒形の形状は、中央開口部を有し得る。本質的に円筒形の形状は、脚部を含むことができる。本質的に円筒形の形状の高さhは、最大直径に直交する最大寸法に対応する。好ましくは、本発明に係るボウルは、その中心(111)に1つの開口部を備えている。一実施形態において、開口部は、
図2に例示されているような円形であり、場合によって面取りされている。別の実施形態において、開口部は、
図3に例示されているように細長い。有利には、細長い開口部はまた、特にボウルの脱型を容易にするような形で、
図3aの断面B-Bが特に示している通り、面取りもされている。面取り角は、脱型と金属の量の間の妥協を最適化するように選択され、有利には面取り角αは、15°~50°の範囲内、好ましくは25°~35°の範囲内にある。一実施形態において、細長いまたは円形の形状の溝(114)が、膨張のための少なくとも20mmのあそびを伴って、ハンドリングツールの垂直方向または水平方向の通過を可能にしている。
【0050】
操作を容易にするためにボウルは、少なくとも2つの脚部(113)を備えていてよい。一実施形態において、ボウルは4つの脚部を備えている。したがって、全ての方向においてフォークリフトを用いてボウルを操作することおよび安全性を喪失することなくボウルを2つに切断することが可能である。ボウルの幾何形状は、特に、詳細には4つの支承ゾーンを有する4つの脚部を含むボウルについて、4つの安定した高さ、有利には、5つまたは6つの安定した高さの安全性の高い積重ねを可能にする。
【0051】
脚部を含まず、ボウルの横断面を表わす
図8によって例示されている別の実施形態において、ボウルは、その操作を可能にする2つのノッチ(115)を備えている。
【0052】
有利には、ボウルは、カラー(112)を備えている。カラーの役目は、ボウル金型の充填の際におよびボウルの使用の際に、視覚的表示を提供することにある。カラーが無い場合、作業員には、金型の充填が最低限であることそして場合によってはボウルの堅牢性が最低限であることについて警告が発せられる。カラーはまた、ハンドリングのための最小限の高さの確保も可能にする。カラーの部位での直径は、最大直径を表し得る。
【0053】
一実施形態において、本質的に円筒形のボウルは、少なくとも1つの直径(114)の端部において切頭されている。一実施形態において、直径は2つの直交する直径の端部において切頭されている。
【0054】
直径の切頭を実現することの利点は、一方では、ボウルを一区分上に垂直に位置付けすることを可能にし、こうして、炉が傾動される実施形態において導入を容易にするかまたは90°の角度でフレームに接してボウルを位置付けすることで水平方向の位置付けを容易にしかつこうして、炉が傾動されない実施形態において、ボウルがひとたび炉内に位置付けされた時点でハンドリングシステムの導入およびその引抜きを容易にし、かつひとたびボウルが炉内に位置付けされた時点で炉内へのスクラップの導入を容易にすることにもある。しかしながら、形状が、誘導炉のコイルとの誘導結合を最大化するように本質的に円筒形にとどまることが重要である。
【0055】
本発明はまた、本発明に係るボウルを鋳造するための金型(4)にも関する。本発明に係る金型の一例が、
図5によって例示されている。金型は、ボウルの容易な脱型を可能にする形状を有し、特に抜き勾配角度は、例えば、当業者にとって公知のシミュレーションツールを用いたモデリングによって調整される。好適には本発明に係る金型は、脚部を形成し乱流の無い下つぎ鋳造を可能にするポケット(413)を含み、これには酸化物形成の削減という効果がある。有利には、金型は、開口部(111)の作製を可能にする中央突端部(411)を含む。有利な一実施形態において、開口部(111)の作製を可能にする中央突端部(411)は、取外し可能である。好ましくは、中央突端部は、冷却を改善し、多孔性、気泡巣、引け巣および凝固キャビティなどの冶金学的欠陥を回避するようにくり抜かれている。その上、ボウルの高さhは、冶金学的欠陥を回避するために最大直径dの多くとも50%、好ましくは多くとも40%、そして好ましくは多くとも30%であることが好ましい。
【0056】
したがって、好ましくは、本発明に係るボウルには、多孔性、気泡巣、引け巣および凝固キャビティなどの冶金学的欠陥が無い。本発明に係る金型は、好ましくは鋳鉄、例えばねずみ鋳鉄または球状鋳鉄または鋳鋼で作製される。
【0057】
本発明に係るボウルは、多くの利点を有する。
【0058】
このボウルは、第1に、特に、壁までの距離の制御を可能にする全体的に円筒形の形状によって、るつぼ形円筒形誘導炉内での誘導結合の改善を可能にする。したがって、溶融時間は、少なくとも15%、好ましくは少なくとも30%短縮される。その上、幾何形状は、少なくとも0.5%そして好ましくは少なくとも1%の燃焼損失の改善を可能にする。使用される幾何形状はまた、炉の充填率の少なくとも15%の改善および装入時間の少なくとも10%の改善を可能にし、これによりプロセスの生産性を高めることができる。ボウルの幾何形状はまた、アーチ効果の回避も可能にし、これにより、プロセスの安全性が改善される。装入が容易になるため、耐火材に対する損傷リスクは限定的であり、これによってその寿命が改善される。
【0059】
本発明に係る金型は、反転による迅速な脱型、熱交換の最大化により加速される凝固、および欠陥の無いボウルの獲得を可能にすることから、有利である。
【実施例】
【0060】
異なる装入物の溶融試験を、容量500kg、内径D500mmの円筒形誘導炉内で実施した。炉の中心に垂直方向に設置された平行六面体ブロックの溶融を、コイルの2分の1の高さのところに設置された、平行六面体ブロックと同じ総質量100kg、最大直径d384mmの本発明に係る円筒形のボウルの溶融と比較した(
図6)。基準ブロックもまた、コイルの2分の1高さとの関係において中心に配置されている。385Hzの周波数が使用され、使用された出力は、炉の公称出力の50%に対応していた。
【0061】
試験は、インダクタの2分の1高さに設置されたボウル(
図6b)の溶融時間が、垂直方向に設置された平行六面体ブロック(
図6a)に比べて37%短縮されたことを示している。その上、これらの試験は、溶融モデルの設定のために使用されたものである。
【符号の説明】
【0062】
2 液体金属
3 マニピュレータツール
4 金型
10 誘導炉
11 円筒形のボウル
12 未加工形状
13 加工された形状
100、101 中間製品
111 開口部
112 カラー
113 脚部
411 中央突端部
413 ポケット
【国際調査報告】