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特表2024-530758繊維表面処理用の環境配慮型含浸システム、その製造方法および含浸処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-23
(54)【発明の名称】繊維表面処理用の環境配慮型含浸システム、その製造方法および含浸処理方法
(51)【国際特許分類】
   D06M 15/693 20060101AFI20240816BHJP
   D06M 15/564 20060101ALI20240816BHJP
   D06M 15/55 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
D06M15/693
D06M15/564 ZAB
D06M15/55
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513503
(86)(22)【出願日】2022-09-01
(85)【翻訳文提出日】2024-04-11
(86)【国際出願番号】 CN2022116397
(87)【国際公開番号】W WO2023030423
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】202111027228.6
(32)【優先日】2021-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512077859
【氏名又は名称】北京化工大学
【氏名又は名称原語表記】BEIJING UNIVERSITY OF CHEMICAL TECHNOLOGY
【住所又は居所原語表記】15 Beisanhuan East Road,Chaoyang District,Beijing,100029,P.R.China
(74)【代理人】
【識別番号】100166729
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 幸子
(72)【発明者】
【氏名】田 明
(72)【発明者】
【氏名】杜 徳松
(72)【発明者】
【氏名】寧 南英
(72)【発明者】
【氏名】王 文才
(72)【発明者】
【氏名】張 立群
(72)【発明者】
【氏名】于 冰
【テーマコード(参考)】
4L033
【Fターム(参考)】
4L033AB01
4L033CA49
4L033CA50
4L033CA68
(57)【要約】
本発明は、繊維表面処理用の環境配慮型含浸システム、及びその製造方法や含浸処理方法を開示する。本発明の繊維表面処理用の環境配慮型含浸システムは、ヒドロキシアクリル樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、ブロックイソシアネート、促進剤、ゴムラテックス、及び脱イオン水を含む。本発明は、繊維の種類、用途によって一浴含浸処理か二浴含浸処理を選択して採用することができる。本発明は、従来のRFLディップにおける有毒素材と中間体の使用を有効に取り替えて人体や環境への危害を減すことができ、RFLほどの接着効果を達成することもできる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維表面処理用の環境配慮型含浸システムであって、重量部で、
脱イオン水 100部
ヒドロキシアクリル樹脂 1~30部
アミノ樹脂 0.1~10部
ブロックイソシアネート 1~10部
促進剤 0.1~5部
ゴムラテックス 50~180部
という成分を含むことを特徴とする繊維表面処理用の環境配慮型含浸システム。
【請求項2】
重量部で、
脱イオン水 100部
ヒドロキシアクリル樹脂 1~15部
アミノ樹脂 0.1~8部
エポキシ樹脂 1~10部
ブロックイソシアネート 1~10部
促進剤 0.1~4部
ゴムラテックス 50~150部
という成分を含むことを特徴とする請求項1に記載の環境配慮型含浸システム。
【請求項3】
前記ヒドロキシアクリル樹脂は、ヒドロキシル基含有量が2.0~5.0wt%であり、数平均分子量が8000~15000であることを特徴とする請求項1または2に記載の環境配慮型含浸システム。
【請求項4】
前記アミノ樹脂は、尿素アルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ポリアミドポリアミンエピクロロヒドリン、エーテル化尿素アルデヒド樹脂、エーテル化グリコールウリル樹脂、完全メチルエーテル化メラミン樹脂、重合型部分メチルエーテル化メラミン樹脂または重合型高イミノ基メチルエーテル化メラミン樹脂からなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の環境配慮型含浸システム。
【請求項5】
前記エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシノボラック樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、1,2-プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、ジグリシジルエーテル、グリセロールグリシジルエーテル、トリメチロールプロパングリシジルエーテル、テトラフェノールエタンテトラグリシジルエーテルエポキシ樹脂、レゾルシノールビスグリシジルエーテル型エポキシ樹脂またはビスレゾルシノールホルムアルデヒドテトラグリシジルエーテルからなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1ないし4に記載の環境配慮型含浸システム。
【請求項6】
前記ブロックイソシアネートは、イソシアネートと末端封鎖剤からなるものであり、前記イソシアネートは、トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、テトラメチルジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、1,3-ベンゼンジイソシアネート、1,4-ベンゼンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート及びジフェニルメタンジイソシアネートからなる群から選択されるものであり、前記末端封鎖剤は、ε-カプロラクタム、ブタノンオキシム及びフェノールからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1ないし5に記載の環境配慮型含浸システム。
【請求項7】
前記促進剤は、アミン閉鎖ジノニルナフタレンジスルホン酸、アミン閉鎖ジノニルナフタレンスルホン酸、アミン閉鎖ドデシルベンゼンスルホン酸またはアミン閉鎖p-メチルベンゼンスルホン酸からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の環境配慮型含浸システム。
【請求項8】
前記ゴムラテックスは、固形分含有量が20~60wt%であり、ブタジエン-ビニルピリジンゴムララテックス、スチレン-ブタジエンゴムラテックス、ブタジエン-スチレン-ビニルピリジンゴムララテックス、クロロプレンゴムラテックス、ニトリルゴムラテックス又は天然ゴムラテックスからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の環境配慮型含浸システム。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の繊維表面処理用の環境配慮型含浸システムの製造方法であって、前記方法は、それぞれ
(1)一浴ディップ液システムの場合に、ヒドロキシアクリル樹脂、アミノ樹脂、必要に応じてエポキシ樹脂、促進剤を順次に脱イオン水に加えて攪拌し、さらにブロックイソシアネートを加えて攪拌し、最後にゴムラテックスを加えて攪拌し続けて一浴含浸液を得て、そのうち、各成分の使用量は重量部で、脱イオン水100部、ヒドロキシアクリル樹脂1~30部、アミノ樹脂0.1~10部、ブロックイソシアネート1~10部、促進剤0.1~5部、及びゴムラテックス50~180部である、という工程を含む、
または
(2)二浴ディップ液システムの場合に、1)水溶性エポキシ樹脂を脱イオン水に加えて攪拌し、さらにブロックイソシアネートを加えて攪拌し、均一な反応液を得て、よって第1浴含浸液を得て、2)ヒドロキシアクリル樹脂、アミノ樹脂、及び促進剤を脱イオン水に順次に加えて攪拌し、均一な分散液を得て、最後にゴムラテックスを加えて攪拌を続けて、よって第2浴含浸液を得、うちで、前記第1浴含浸液は重量部で、各成分の使用量が、エポキシ樹脂1~2部、ブロックイソシアネート5~8部、及び脱イオン水95~105部であり、前記第2浴含浸液における各成分の使用量が、重量部でヒドロキシアクリル樹脂7~10部、アミノ樹脂1~2.5部、促進剤1.5~3部、ゴムラテックス100~180部、及び脱イオン水95~105部であるという工程を含む
ことを特徴とする繊維表面処理用の環境配慮型含浸システムの製造方法。
【請求項10】
繊維表面処理用の含浸処理方法であって、
繊維を一浴含浸液に含浸させる工程(A)と、
工程(A)で得られた含浸後の繊維を乾燥及び硬化させる工程(B)と、
を含み、
そのうち、一浴ディップ液における各成分の使用量が、重量部で、脱イオン水100部、ヒドロキシアクリル樹脂1~30部、アミノ樹脂0.1~10部、ブロックイソシアネート1~10部、促進剤0.1~5部、及びゴムラテックス50~180部である
ことを特徴とする繊維表面処理用の含浸処理方法。
【請求項11】
繊維表面処理用の含浸処理方法であって、
繊維を第1浴含浸液に入れて含浸させ、前記第1浴含浸液における各成分の使用量が、重量部でエポキシ樹脂0.5~2.5部、ブロックイソシアネート3~10部、脱イオン水90~110部である工程i)、
工程i)処理された繊維を乾燥し、次に硬化させる工程ii)、
工程ii)処理された繊維を第2浴含浸液に入れて含浸させ、前記第2含浸液における各成分の使用量が重量部で、ヒドロキシアクリル樹脂5~15部、アミノ樹脂0.5~3部、促進剤1~5部、ゴムラテックス80~200部、及び脱イオン水90~110部である工程iii)、
工程iii)で処理された繊維を乾燥して硬化させる工程iv)
という工程を含むことを特徴とする繊維表面処理用の含浸処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維ディップ処理の分野に属し、具体的には、繊維表面処理用の環境配慮型含浸システム、その製造方法及び含浸処理方法に関し、特にゴム骨格材料に適用できる。
【背景技術】
【0002】
繊維コード、プライは、ゴムの補強材として、タイヤ、ホース、及び搬送ベルト等の製品に広く用いられている。繊維とゴム基体との界面接着性能は、繊維に対する補強効果には非常に重要である。1935年以降、レゾルシン-ホルムアルデヒド-ラテックス(RFL)含浸方法は、繊維とゴムとの接着性能を向上させる最も効果的な方法となっている。しかしながら、RFLシステムにおけるレゾルシンとホルムアルデヒドとは、ともに有毒物質であり、人体や環境に深刻な毒性をもたらすことがある。レゾルシンは皮膚に接触すると痒みを起こしやすく、しかも、肝臓と心血管システムとに毒性をもたらすことがあり、更にホルムアルデヒドはレゾルシンよりも人体の健康と安全に大きな危害を与え、白血病を招きやすいものとして2004年には世界保健機関所属国際がん研究機関(IARC)に発癌物質の一員であると認定された。そのため、従来のRFLシステムを取り替えるように、新規な環境配慮型の繊維含浸処理システムの開発が切望されている。
【0003】
特許US 20150314644A 1(WO2014091429A 1)、US 2012041113A 1(WO2010125992A 1)、US 5565507A (WO9600749A 1)、CN 105839413Aは、エポキシ樹脂を主体とする環境配慮型のディップ液を開示している。ここで、US 2015314644A1には、ゴムラテックスとエポキシ化合物と分子量190ダルトン超のポリアミンとの接着配合が開示されており、これらの組成物により繊維骨格材とゴム糊材との間に生じる粘性は、従来のRFLシステムによる粘性に近似する。US2012041113A1には、繊維織物とゴムとの接着性を高めるための、エポキシ樹脂、アミノ硬化剤、ブロックイソシアネート、ゴムラテックスからなる含浸液が開示されている。US5565507Aには、3官能以上のエポキシ樹脂と、カルボキシル基、アミノ基またはピリジン基を含有するラテックスとからなる含浸液が開示されている。CN105839413Aには、エポキシ樹脂、アミン系硬化剤、ラテックスからなる含浸システムが開示されており、その接着効果はRFL処理よりも優れているレベルを達した。
【0004】
特許CN112176729A (WO2021000918A1)、US2005147817A1、US2005255773A1は、無水マレイン酸化重合体を主体とする環境配慮型のディップ液を開示している。ここで、CN 112176729Aには、無水マレイン酸化重合体、エポキシ樹脂、ブロックイソシアネート、硬化剤、ゴムラテックス、及び任意成分のフィラーからなるディップシステムが開示されており、このディップシステムで処理された繊維は、優れた接着性能を有し、RFLによる接着効果を達成することでもできる。US 2005147817A 1には、半エステル化無水マレイン酸化ポリブタジエン、カーボンブラック、ラテックス等からなるディップ液が開示されており、それは、繊維とエチレンプロピレンジエンゴムとの接着を効果的に高めることができる。US 2005255773A 1には、無水マレイン酸化ポリオレフィン、マレイミド樹脂、ビニル系不飽和カルボン酸金属塩、ラテックスからなる、繊維とゴムとの接着性を向上させるための含浸液が開示されている。
【0005】
特許US2015315410A1、US4472463A、CN109097993Aには、アクリル樹脂を主体とする環境配慮型のディップ液が開示されている。ここで、US2015315410A1には、カルボキシル基含有アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ブロックイソシアネート、ラテックスからなるディップ液が開示されており、その接着効果はRFLよりもやや優れている。US4472463Aに記載のディップ液には、アクリル系単量体と少量のスチレン共重合体とラテックスが含まれており、その接着効果はRFLディップシステムよりもやや優れている。CN109097993Aには、自己架橋型アクリル樹脂と、ブロックイソシアネーと、ゴムラテックスからなる含浸システムが開示されていて、これはゴムディップ織物とゴムとの良好な接着を実現し、従来のRFLによる含浸効果を達成すること、更に超過することができる。
【0006】
CN106120350Aには、タンニン酸、ポリアミン、ラテックスを含む含浸処理システムが開示されており、この方法で処理されるポリエステルプライの接着効果はRFLに相当し、高温での接着効果はRFLよりも優れている。CN 110284326Aには、特殊アミノ樹脂(主にベンゾオキサジン樹脂)、ブロックイソシアネート、助剤、ラテックスを含む含浸処理システムが開示されており、この方法により処理されたナイロン繊維の接着効果がRFLによる処理レベルに達することができる。
【0007】
従来の技術では、繊維とゴムとの接着性能の向上について多少工夫したが、従来の技術においては、主に、供給される含浸システムの接着力がRFLのレベルに達していないこと、配合に使用される素材のいくつかに数多くの要求があるので調達コストが高い、又は、プロセスが複雑であるという問題が依然として残された。従って、目下工業的に使用されているRFL浸漬システムに代わることができ、繊維とゴムとの接着性能を大幅に向上させることができ、レゾルシノール、ホルムアルデヒドなどの有毒物質の使用をも回避できる、新規な繊維表面処理用の、環境に優しい含浸システムの開発が必要である。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、第1方面では、重量部で
【表1】
という成分を含む繊維表面処理用の環境配慮型含浸システムを提供する。
【0009】
好ましくは、本発明が提供する繊維表面処理用の環境配慮型含浸システムは、重量部で、
【表2】
という成分を含む。
【0010】
さらに好ましくは、本発明が提供する繊維表面処理用の環境配慮型含浸システムは、重量部で、
【表3】
という成分を含む。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記繊維表面処理用の環境配慮型含浸システムは、重量部で、脱イオン水100部と、ヒドロキシアクリル樹脂1~30部と、アミノ樹脂0.1~10部と、ブロックイソシアネート1~10部と、促進剤0.1~5部と、ゴムラテックス50~180部とを含む一浴含浸液である。好ましくは、一浴含浸液は、エポキシ樹脂を含み、うちに重量部で環境配慮型含浸システムは、脱イオン水100部と、ヒドロキシアクリル樹脂1~15部と、アミノ樹脂0.1~8部と、エポキシ樹脂1~10部と、ブロックイソシアネート1~10部と、促進剤0.1~4部と、ゴムラテックス50~150部とを含む。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記繊維表面処理用の環境配慮型含浸システムは、
1)重量部で、各成分の含有量は、エポキシ樹脂0.5~2.5部、ブロックイソシアネート3~10部及び脱イオン水90~110部である第1浴含浸液と、2)重量部で、各成分の含有量は、ヒドロキシアクリル樹脂5~15部、アミノ樹脂0.5~3部、促進剤1~5部、ゴムラテックス80~200部、脱イオン水90~110部である第2浴含浸液と、を含む。好ましくは、1)に記載の第1浴含浸液は、重量部で、各成分の含有量が、それぞれエポキシ樹脂1~2部、ブロックイソシアネート5~8部、脱イオン水95~105部であり、2)に記載の第2浴含浸液は、重量部で、各成分の使用量が、それぞれヒドロキシアクリル樹脂7~10部、アミノ樹脂1~2.5部、促進剤1.5~3部、ゴムラテックス100~180部、脱イオン水95~105部である。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記ヒドロキシアクリル樹脂の水酸基含有量は、2.0~5.0wt%である。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記ヒドロキシアクリル樹脂の(数平均)分子量は、8000~15000である。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記アミノ樹脂は、いずれも水またはラテックスエマルジョンに溶解でき、且つ好ましくは、尿素アルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ポリアミドポリアミンエピクロロヒドリン樹脂、エーテル化尿素樹脂、エーテル化グリコールウリル樹脂、完全メチルエーテル化メラミン樹脂、重合型部分メチルエーテル化メラミン樹脂または重合型高イミノ基メチルエーテル化メラミン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である。好ましくは、前記アミノ樹脂の(数平均)分子量は、100~800であってもよい。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記エポキシ樹脂は、いずれも水またはラテックスエマルジョンに溶解でき、且つ好ましくは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ化ノボラック樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、1,2-プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、グリセロールグリシジルエーテル、トリメチロールプロパングリシジルエーテル、テトラフェノールエタンテトラグリシジルエーテルエポキシ樹脂、ソルビトールグリシジルエーテル、レゾルシノールビスグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、およびビスレゾルシノールホルムアルデヒドテトラグリシジルエーテルからなる群から選択される少なくとも1種である。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記ブロックイソシアネートは、イソシアネートと封鎖剤とからなり、前記イソシアネートは、トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、テトラメチルジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、及びジフェニルメタンジイソシアネートからなる群から選択される少なくとも1種であり、前記封鎖剤は、ε-カプロラクタム、ブタノンオキシム、及びフェノールからなる群より選択される少なくとも1種である。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記促進剤は、アミン閉鎖ジノニルナフタレンジスルホン酸、アミン閉鎖ジノニルナフタレンスルホン酸、アミン閉鎖ドデシルベンゼンスルホン酸またはアミン閉鎖p-メチルベンゼンスルホン酸からなる群より選択される少なくとも1種である。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記ゴムラテックスは、固形分が20~60wt%であり、且つカルボキシブタジエン-ビニルピリジンゴムララテックスなどのブタジエン-ビニルピリジンゴムララテックス、カルボキシスチレン-ブタジエンゴムラテックスなどのスチレン-ブタジエンゴムラテックス、カルボキシニトリルラテックスなどのブタジエン-スチレン-ビニルピリジンゴムララテックス、クロロプレンラテックス、ニトリルラテックスまたは天然ラテックスからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
第2方面では、本発明はまた、繊維表面処理用の環境配慮型含浸システムの製造方法を提供し、ここで、本方法は、
一浴ディップ液システムの場合に、ヒドロキシアクリル樹脂、アミノ樹脂、必要に応じてエポキシ樹脂及び促進剤を順次に脱イオン水に加えて攪拌し、さらにブロックイソシアネートを加えて攪拌し、最後にゴムラテックスを加えて撹拌し続けて一浴ディップ液を得て、
うちで、各成分の使用量は、重量部で、脱イオン水100部、ヒドロキシアクリル樹脂1~30部、アミノ樹脂0.1~10部、ブロックイソシアネート1~10部、促進剤0.1~5部、ゴムラテックス50~180部であること、
或いは、
二浴ディップ液システムの場合に、1)エポキシ樹脂を脱イオン水に加えて攪拌し、さらにブロックイソシアネートを加えて攪拌して均一な反応液を得て、よって第1浴含浸液を製造し、2)ヒドロキシアクリル樹脂、アミノ樹脂及び促進剤を脱イオン水に順次に加えて攪拌し、均一な分散液を得、最後にゴムラテックスを加えて攪拌し続け、第2浴含浸液を得て、
うちで、前記第1浴含浸液は、重量部で、各成分の使用量が、エポキシ樹脂1~2部、ブロックイソシアネート5~8部、脱イオン水95~105部であり、前記第2浴含浸液は、各成分の使用量が、重量部で、ヒドロキシアクリル樹脂7~10部、アミノ樹脂1~2.5部、促進剤1.5~3部、ゴムラテックス100~180部、脱イオン水95~105部である
という工程を含む。
【0021】
第3方面において、本発明は、
(A)一浴ディップ浸に繊維を加えて含浸させる、
(B)工程(A)で得られた含浸後の繊維を乾燥して硬化させる。
という工程を含むこと
を特徴とする繊維表面処理用の含浸処理方法を提供する。
ここで、一浴ディップ液は、重量部で、各成分の使用量は、脱イオン水100部、ヒドロキシアクリル樹脂1~30部、アミノ樹脂0.1~10部、ブロックイソシアネート1~10部、促進剤0.1~5部、及びゴムラテックス50~180部である。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態によれば、工程(A)において、前記含浸を行う温度は15~40°Cであり、時間は1~5minである。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態によれば、工程(B)において、前記乾燥を実施する温度は110~160°Cであり、時間は1~10minである。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態によれば、工程(B)において、前記硬化を行う温度は180~250°Cであり、時間は1~10minである
【0025】
本発明のいくつかの実施形態によれば、工程(A)において、含浸前に、前記ディップ液のpHをアルカリ性に調整する。いくつかの実施例では、ディップ液のpHを、アルカリ性溶液例えば水酸化カリウム溶液又はアンモニア水溶液でアルカリ性、好ましくはpH8.0~11.0に調整する。
【0026】
第4方面において、本発明は、
各成分の量が、重量部でそれぞれエポキシ樹脂0.5~2.5部、ブロックイソシアネート3~10部、及び脱イオン水90~110部である第1浴含浸液に繊維を含浸させる工程i)、
工程i)で処理された繊維を乾燥した後、硬化させる工程ii)、
工程ii)で処理した繊維を、各成分が重量部でヒドロキシアクリル樹脂5~15部、アミノ樹脂0.5~3部、促進剤1~5部、ゴムラテックス80~200部、及び脱イオン水90~110部である第2浴含浸液に含浸させる工程iii)、
工程iii)で処理された繊維を乾燥して硬化させる工程iv)
という工程を含むことを特徴とする繊維表面処理用の含浸処理方法を提供する。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態によれば、工程i)において、前記含浸を行う温度は15~40°Cであり、時間は1~5minである
【0028】
本発明のいくつかの実施形態によれば、工程ii)において、前記乾燥を実施する温度は110~160°Cであり、時間は1~10minである
【0029】
本発明のいくつかの実施形態によれば、工程ii)において、前記硬化を実施する温度は180~250°Cであり、時間は1~10minである
【0030】
本発明のいくつかの実施形態によれば、工程iii)において、前記含浸を行う温度は15~40°Cであり、時間は1~5minである
【0031】
本発明のいくつかの実施形態によれば、工程iv)において、前記乾燥を実施する温度は110~160°Cであり、時間は1~10minである
【0032】
本発明のいくつかの実施形態によれば、工程iv)において、前記硬化を実施する温度は180~260°Cであり、時間は1~10minである。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態によれば、工程iii)において、含浸前に前記第2浴含浸液のpHをアルカリ性に調整し、いくつかの実施例では、含浸液のpHをアルカリ性溶液例えば水酸化ナトリウム溶液又はアンモニア水溶液でアルカリ性に調整し、好ましくは、pHは8.0~11.0になるように調整する。
【0034】
本発明の処理方法によれば、脱イオン水、ヒドロキシアクリル樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、ブロックイソシアネート、促進剤、ゴムラテックスは、前記と同じなので、ここでは再び釈明されない。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記繊維としては、綿繊維、レーヨン、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、ポリイミド繊維、炭素繊維または前記繊維の混練撚りコードがあげられる。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態によれば、繊維の形態は、モノフィラメント、ストランド、撚りコード、キャンバス、プライ、またはそれらの組み合わせからなる群からなる群から選択される。
【0037】
本発明は、繊維表面処理用の新規な環境配慮型含浸システムを提案して、繊維の種類や用途によって、一浴含浸処理または二浴含浸処理を選択して採用することができる。
【0038】
本発明の含浸システムで処理された繊維とゴム基体とは、優れた接着効果を有し、RFLを取り替える目的を達成することができる。しかも、この環境配慮型含浸システムで処理された繊維は、強度ロスが小さくて、その使用性能に影響を与えない。
【0039】
本発明は、一浴含浸処理を受ける場合に、繊維表面にヒドロキシアクリル樹脂-アミノ樹脂-ゴムラテックスを塗布することにより、ヒドロキシアクリル樹脂とアミノ樹脂とが反応して樹脂ネットワーク構造を形成し、極性基が繊維と反応可能となる一方、ネットワーク構造におけるゴムラテックス粒子がゴム基体における共加硫するに参加することにより繊維骨格材とゴムとの接着性能をより良好にすることができる。二浴含浸処理を受ける場合には、まず、第1浴のエポキシ樹脂とイソシアネートにより繊維表面を活性化させ、次ぎに、その表面上ヒドロキシアクリル樹脂-アミノ樹脂-ゴムラテックスを第2浴含浸液で塗布することにより、繊維とゴム基体との間に上記の物理・化学的作用を引き起こして、接着性能を向上させることができる。
【0040】
本発明は、
1.本発明の含浸液は、レゾルシンとホルムアルデヒドとの使用をなくして、環境や人体への危害を大幅に低減し、かつ、含浸液の調製と繊維含浸工程が簡単となり、反応時間が短くなるので、工業的な生産に有利である、
2.本発明に用いられる原料は、すべて工業化された製品であり、出所が広く、価格が安く、しかもすべて水溶性である、
3.含浸液は、室温条件下で長期放置されていても粘度が大幅に増加せず、繊維骨格材料の含浸・製造の期間における含浸液の長期保存と輸送に有利である
という長所と特徴を有する。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下の実施例及び比較例で用いられた原材料は、いずれも市販で入手されたものであり、ここでは、
ヒドロキシアクリル樹脂は、広州イルカ新材料有限公司から購入され、数平均分子量は10000前後、ヒドロキシ基含有量は3.2wt%である。
アミノ樹脂は、湛新樹脂(中国)有限公司から購入され、その数平均分子量は600前後、固形分は80wt%である。
ソルビトールグリシジルエーテルは、CAS 68412-01-1、南亜エポキシ樹脂有限会社から購入された。
ε-カプロラクタム末端封鎖ジフェニルメタンジイソシアネートは、CAS 5101-68-8、番号CBI 50、常州市科英化学工業有限公司より購入され、固形分50wt%で、粒子径1.5μmである。
スチレン-ブタジエン-ビニルピリジンラテックス(VPラテックスは、番号VP-15、江蘇亜泰化学工業有限公司から購入され、固形分40wt%である。
レゾルシノールは、CAS 108-46-3、上海アラジン生化学技術株式会社から購入され、純度≧99wt%である。
ホルムアルデヒドは、CAS 50-00-0、上海アラジン生化学技術株式会社から購入され、純度37wt%である。
【0042】
以下の実施例及び比較例におけるH引抜き力試験のスプラインの製造方法は以下の通りである。
標準GB/T 2942~2009を用いて、標準ゴム(標準ゴムの配合はGB/T 9101-2017を採用)を完全にディップコードに被覆し、それをスラブ加硫機に置いて加硫し、加硫温度136°C、加硫時間50min、加硫圧力15MPAである。
【0043】
以下の実施例及び比較例における剥離力試験スプラインの製造方法は以下の通りである。
神馬実業株式会社のリフトオフ法を参考にして、ナイロン66のディップ一本コード接着力基準を測定した。加硫に用いられたゴムペーストの配合は、H引抜き力試験と同じである。加硫温度160°C、加硫時間20min、加硫圧力2.354MPA。
【0044】
以下の実施例及び比較例におけるコード引張強度試料の製造方法は以下の通りである。
標準GB/T 32108-2015を採用し、ディップ後のコードを引張機でそのコード強度を測定した。試験区域におけるコードは、長が250mm、引張速度が300mm/minである。
【0045】
以下の実施例と比較例において、コード引断強度試験は、GB/T 32108-2015に従って試験し、H引抜き力は、GB/T 2942-2009に従って試験する。剥離力試験の方法は以下の通りである。
加硫金型の寸法は、ダイキャビティの深さ2mm、長さ250mm、幅170mm、各試料の幅20mm、片と片の間隔6mm、金型の両側にそれぞれ10mmを残し、蓋板と金型底板の厚さとはともに10mm以上である。
加硫に用いられたゴムペーストの配合は、H引抜き力試験と同じである。
加硫プロセスは、160°C×20min、圧力2.354MPAである。
加硫過程は下記のようである。1)金型を136°Cで15~20min予め加熱した後、一本のコードを溝に入れ、コードを垂直に張らせる。2)金型の下端に、その縁の近くに長さ20mm、幅160mm、厚さ0.5mmのゴムシートを入れ、その上にゴムシートより少し大きいセロハンを添付する。3)セロハン紙の上に長さ240mm、幅160mm、厚さ1.7mmのゴムシートを置き、同時に同じサイズの裏地を貼り付ける。キャッピングを型締めして加硫を行う。加硫後、少なくとも2時間冷却し、試料を剪定して離型力を試験した(試料1枚に5本のコードを含む)。
試験過程は下記のようである。セロハンで分離した部分を張力機の上、下のチャックに180°の角度で挟み、延伸・剥離を行う。引張機の速度は、300mm/min、剥離長さは、(150±10)mmに設定された。剥離曲線から平均接着力(N)を読み取り、その一本のコードの剥離力を算出した。
【0046】
実施例1
【0047】
繊維表面環境用の保護含浸処理システムであって、一浴法の配合は、各成分の割合は重量部で、以下の通りである。
【表4】
【0048】
含浸液の製造方法は下記のようである。配合に記載のヒドロキシアクリル樹脂とアミノ樹脂と促進剤を順次に脱イオン水に添加し、電動攪拌器で強力に溶液を3h攪拌する。その後、ブロック化イソシアネートを添加し、1h攪拌し、最後にゴムラテックスをこの溶液に添加し、強力な攪拌を2h維持すると、一浴含浸液を得た。
【0049】
含浸処理方法は下記のようである。室温で繊維コードを含浸液に1min含浸させ、その後オーブンの中で乾燥し、硬化させる。乾燥温度は150°C、乾燥時間は2min、硬化温度は220°C、硬化時間は2minである。
【0050】
実施例2
【0051】
繊維表面環境用の保護含浸処理システムであって、一浴法の配合は、各成分の割合は、重量部で以下の通りである。
【表5】
【0052】
含浸液の調製方法は下記のようである。配合に記載のヒドロキシアクリル樹脂、アミノ樹脂及び促進剤を順次に脱イオン水に加え、電動攪拌器で溶液2hを強力に攪拌した後、ブロックイソシアネートを加えて30min攪拌し、最後にゴムラテックスをこの溶液に添加し、撹拌を強力に1h維持すると、一浴含浸液を得た。
【0053】
含浸処理方法は下記のようである。繊維コードを室温で1.5min含浸液に含浸させた後、オーブンの中で乾燥して硬化させる。乾燥温度は150°C、乾燥時間は3min、硬化温度は210°C、硬化時間は3minである。
【0054】
実施例3
【0055】
繊維表面環境保護含浸処理システムであって、一浴法用の各成分の配合割合は、重量部に基づいて以下の通りである。
【表6】
【0056】
含浸液の調製方法は下記のようである。配合に記載のヒドロキシアクリル樹脂、アミノ樹脂及び促進剤を順次に脱イオン水に加え、電動攪拌器で溶液1.5hを強力に攪拌した後、ブロックイソシアネートを加えて30min攪拌し、最後にゴムラテックスをこの溶液に添加し、強力な撹拌を1.5h維持すると、一浴液を得る。
【0057】
含浸処理方法は下記のようである。繊維コードを室温で1min含浸液に含浸させた後、オーブンの中で乾燥して硬化させる。乾燥温度は150°C、乾燥時間は1.5min、硬化温度は225°C、硬化時間は1.5minである。
【0058】
実施例4
【0059】
繊維表面環境用の保護含浸処理システムであって、一浴法の配合は、各成分の割合は重量部で、以下の通りである。
【表7】
【0060】
含浸液の製造方法は下記のようである。配合に記載のエポキシ樹脂を脱イオン水に添加して1.5h攪拌し、均一な分散液を得る。更にヒドロキシアクリル樹脂、アミノ樹脂、及びブロックイソシアネートを順次に加えて2h攪拌する。その後、促進剤を加え、1h攪拌し、最後にゴムラテックスを加え、攪拌を2h続けると、一浴含浸液を得る。
【0061】
含浸処理方法は下記のようである。繊維コードを室温で1min含浸液に含浸させた後、オーブンの中で乾燥して硬化させた。乾燥温度は160°C、乾燥時間は2min、硬化温度は210°C、硬化時間は2minである。
【0062】
実施例5
【0063】
繊維表面環境用の保護含浸処理システムであって、一浴法用の配合は、各成分の割合は重量部で、以下の通りである。
【表8】
【0064】
含浸液の製造方法は下記のようである。配合に記載のエポキシ樹脂を脱イオン水に添加して1.5h攪拌し、均一な分散液を得る。更にヒドロキシアクリル樹脂、アミノ樹脂、及びブロックイソシアネートを順次に加えて1.5h攪拌する。その後、促進剤を加え、1.5h攪拌し、最後にゴムラテックスを加え、2h攪拌を続けると、一浴含浸液を得た。
【0065】
含浸処理方法は下記のようである。室温で繊維コードを含浸液に1.5min含浸させ、その後オーブンの中で乾燥し、硬化させる。乾燥温度は150°C、乾燥時間は2min、硬化温度は225°C、硬化時間は2minであった。
【0066】
実施例6
【0067】
繊維表面環境用の保護含浸処理システムであって、一浴法用の配合は、各成分の割合は重量部で、以下の通りである。
【表9】
【0068】
含浸液の製造方法は下記のようである。配合に記載のエポキシ樹脂を脱イオン水に添加して1.5h攪拌し、均一な分散液を得る。更にヒドロキシアクリル樹脂、アミノ樹脂、及びブロックイソシアネートを順次に加えて2h攪拌する。その後、促進剤を加え、1.5h攪拌し、最後にゴムラテックスを加え、攪拌を2h続けると、一浴含浸液が得られた。
【0069】
含浸処理方法は下記のようである。室温で繊維コードを含浸液中に2min含浸させ、その後オーブンの中で乾燥して、硬化させる。乾燥温度は160°C、乾燥時間は1.5min、硬化温度は220°C、硬化時間は1.5minである。
【0070】
比較例1
【0071】
比較例1は従来のRFL含浸処理であり、RFLの配合は、以下の表の通りである。
【表10】
【0072】
RFLの製造は下記のようである。まず上記配合の通りに水酸化ナトリウムを脱イオン水に添加し、10min攪拌し、更にレゾルシノールを添加して10min攪拌し、その後ホルムアルデヒド水溶液を添加して常温で6時間攪拌し、均一な反応液を得る。最後にブタジエン-ビニルピリジンゴムララテックスを加え、常温で2時間攪拌し、その間にアンモニア水を加え、最終的にRFL含浸液を得た。
【0073】
RFL含浸処理方法は下記のようである。室温で繊維コードを含浸液に1min含浸させ、その後オーブンの中で乾燥し、硬化させる。乾燥温度は150°C、乾燥時間は3min、硬化温度は220°C、硬化時間は3minであった。
【0074】
応用実施例1~6と応用比較例1では、異なる繊維コードを一浴法で処理し、うちで応用実施例1-1、2-1、3-1、4-1、5-1、6-1、及び応用比較例1-1で用いられたコードはナイロン6コード(1170 dtex/2)であり、応用実施例1-2、2-2、3-2、4-2、5-2、6-2及び応用比較例1-2で用いられたコードはナイロン66コード(1400 dtex/2)である。
【0075】
応用実施例1~6及び応用比較例1において含浸処理を受けた異なる繊維コードについて、以上の方法に従って試験サンプルを調製してH引抜き試験、剥離試験及びコード強度試験を行い、試験結果は表1に示すようである。
【0076】
【表11(1)】
【表11(2)】
【0077】
表1の結果から、応用実施例1~3における2種類の繊維コードは、H引抜き性能と剥離力で言えば、応用比較例におけるRFL処理による効果とほぼ同等であることが分かった。これに基づいて、エポキシ樹脂を添加したこと、すなわち応用実施例4~6の処理効果は、応用比較例RFLによる接着性能に比べて、該2種類の繊維コードの接着効果がさらに向上した。また、コード強度の試験結果から、この方法で処理された繊維は、強度損失が大きくなく、その使用に影響を受けない。以上を纏めると、この新規な環境配慮型含浸システムの一浴処理を受けた繊維とゴム基体との間に優れた接着効果があり、RFL含浸システムを効果的に取り替えることができる。
【0078】
実施例7
【0079】
繊維表面処理用の環境配慮型含浸処理システムであって、二浴法の配合における各成分の割合は、重量部で以下の通りである。
【表12】
【0080】
ディップ液の調製は下記のようである。第1工程では、配合に記載の水溶性エポキシ樹脂を脱イオン水に加えて15min攪拌し、更にブロックイソシアネートを加えて1h攪拌し、均一な反応液を得て、第1浴含浸液を製造する。第2工程では、配合に記載のヒドロキシアクリル樹脂を脱イオン水に加えて1.5h攪拌し、均一な分散液を得て、さらにアミノ樹脂と促進剤を加えて30min攪拌し、最後にゴムラテックスを加え、1.5h攪拌を続けると、第2浴含浸液を得た。
【0081】
ディップ処理は下記のようである。繊維コードをまず第1浴含浸液中に置き、室温で2min含浸させた後、130°Cで1min乾燥し、210°Cで2min硬化させる。その後、繊維を第2浴含浸液に入れ、室温で2min含浸させた後、130°Cで2min乾燥し、最後に210°Cで2min硬化させ、含浸液を繊維表面に付着させた。
【0082】
実施例8
繊維表面処理用の環境配慮型含浸処理システムであって、二浴法の配合における各成分の割合は、重量部で以下の通りである。
【表13】
【0083】
ディップ液の調製は下記のようである。第1工程で前記水溶性エポキシ樹脂を脱イオン水に加えて1h攪拌し、更にブロックイソシアネートを加えて30min攪拌し、均一な反応液を得て、よって第1浴含浸液を製造する。第2工程では、配合に記載のヒドロキシアクリル樹脂を脱イオン水に加えて2h攪拌し、均一な分散液を得て、さらにアミノ樹脂と促進剤を加えて1h攪拌し、最後にゴムラテックスを加えて、攪拌を1.5h続けると、第2浴含浸液が得られた。
【0084】
ディップ処理は下記のようである。繊維コードをまず第1浴含浸液中に置き、室温で1min含浸させた後、130°Cで1.5min乾燥し、210°Cで2min硬化させる。その後、繊維を第2浴含浸液に入れ、室温で1min含浸させた後、160°Cで1.5min乾燥し、最後に210°Cで2min硬化させ、含浸液を繊維表面に付着させた。
【0085】
比較例2
【0086】
比較例2は、従来のRFL二浴法による処理であり、従来のRFL二浴法の配合は以下の通りである。
【表14】
【0087】
含浸液の調製は下記のようである。まず配合に記載の水溶性エポキシ樹脂を脱イオン水に加えて15min攪拌し、更にブロックイソシアネートを加えて1時間攪拌し、よって第1浴含浸液を得た。その後、上記配合に従って水酸化ナトリウムを脱イオン水に加え、10min攪拌し、さらにレゾルシノールを加えて10min攪拌し、最後にホルムアルデヒド水溶液を加えて常温で6時間攪拌し、均一な反応液を得て、最後にブタジエン-ビニルピリジンゴムララテックスを加え、常温で2時間攪拌し、その間にアンモニア水を加え、最終的にRFL含浸液を得た。
【0088】
ディップ処理は下記のようである。繊維コードをまず第1浴含浸液中に置き、室温で1min含浸させた後、130°Cで3min乾燥し、220°Cで3min硬化させる。その後、繊維を第2浴含浸液に入れ、室温で2min含浸させた後、130°Cで3min乾燥し、最後に220°Cで3min硬化させ、含浸液を繊維表面に付着させた。
【0089】
応用実施例7~8と応用比較例2とは、ともに二浴法で異なる繊維コードを処理したものであり、応用例7-1、8-1、及び応用比較例2-1の処理したコードはナイロン66コード(1400 dtex/2)、応用実施例7-2と8-2と、応用比較例2-2との処理したコードはアラミドコード(1670 dtex/2)、応用実施例7-3と8-3と、応用比較例2-3との処理したコードはポリエステルコード(1440 dtex/2)、応用実施例7-4と8-4と、応用比較例2-4との処理したコードは、アラミド/ナイロン66撚りコード(A1670 dtex/2+N2100dtex/1)である。
【0090】
応用実施例7~8及び応用比較例2で含浸処理を受けた異なる繊維コードについて、前述の方法に従って試験サンプルを調製し、H引抜き試験、剥離試験及びコード強度試験を行い、試験結果は表2に示すようである。
【0091】
【表15】
【0092】
表2の結果から、応用実施例7~8における異なる繊維コードのH引抜き力及び剥離力はともに、応用比較例におけるRFLによる接着効果を上回っていた。特に、応用実施例7-1及び7-2は二浴法を用いてナイロン66コード(1400 dtex/2)を処理した場合、含浸処理後の接着効果は一浴法より優れていた、と分かる。また、コード強度の試験結果から、この二浴法による処理後の繊維への強度損失は大きくなく、その使用に影響を与えることはない。以上を纏めると、この新規な環境配慮型含浸システム二浴法で処理された後の繊維とゴム基体との間に優れた接着効果があり、RFL含浸システムに効果的に取り替えることができる。
【0093】
以上に記載の実施例は、本発明の好適な実施例であると留まり、他の形式で本発明を限定するものではなく、技術的実質で本発明の請求項から逸脱していない限りに、上記の実施例に対して行われるいかなる修正や同等の変更や改善は、依然として本発明の請求項の保護の範囲に属する。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維表面処理用の環境配慮型含浸システムであって、重量部で、
脱イオン水 100部
ヒドロキシアクリル樹脂 1~30部
アミノ樹脂 0.1~10部
ブロックイソシアネート 1~10部
促進剤 0.1~5部
ゴムラテックス 50~180部
という成分を含むことを特徴とする繊維表面処理用の環境配慮型含浸システム。
【請求項2】
重量部で、
脱イオン水 100部
ヒドロキシアクリル樹脂 1~15部
アミノ樹脂 0.1~8部
エポキシ樹脂 1~10部
ブロックイソシアネート 1~10部
促進剤 0.1~4部
ゴムラテックス 50~150部
という成分を含むことを特徴とする請求項1に記載の環境配慮型含浸システム。
【請求項3】
前記ヒドロキシアクリル樹脂は、ヒドロキシル基含有量が2.0~5.0wt%であり、数平均分子量が8000~15000であることを特徴とする請求項1に記載の環境配慮型含浸システム。
【請求項4】
前記アミノ樹脂は、尿素アルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ポリアミドポリアミンエピクロロヒドリン、エーテル化尿素アルデヒド樹脂、エーテル化グリコールウリル樹脂、完全メチルエーテル化メラミン樹脂、重合型部分メチルエーテル化メラミン樹脂または重合型高イミノ基メチルエーテル化メラミン樹脂からなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の環境配慮型含浸システム。
【請求項5】
前記エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシノボラック樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、1,2-プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、ジグリシジルエーテル、グリセロールグリシジルエーテル、トリメチロールプロパングリシジルエーテル、テトラフェノールエタンテトラグリシジルエーテルエポキシ樹脂、レゾルシノールビスグリシジルエーテル型エポキシ樹脂またはビスレゾルシノールホルムアルデヒドテトラグリシジルエーテルからなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の環境配慮型含浸システム。
【請求項6】
前記ブロックイソシアネートは、イソシアネートと末端封鎖剤からなるものであり、前記イソシアネートは、トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、テトラメチルジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、1,3-ベンゼンジイソシアネート、1,4-ベンゼンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート及びジフェニルメタンジイソシアネートからなる群から選択されるものであり、前記末端封鎖剤は、ε-カプロラクタム、ブタノンオキシム及びフェノールからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の環境配慮型含浸システム。
【請求項7】
前記促進剤は、アミン閉鎖ジノニルナフタレンジスルホン酸、アミン閉鎖ジノニルナフタレンスルホン酸、アミン閉鎖ドデシルベンゼンスルホン酸またはアミン閉鎖p-メチルベンゼンスルホン酸からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の環境配慮型含浸システム。
【請求項8】
前記ゴムラテックスは、固形分含有量が20~60wt%であり、ブタジエン-ビニルピリジンゴムララテックス、スチレン-ブタジエンゴムラテックス、ブタジエン-スチレン-ビニルピリジンゴムララテックス、クロロプレンゴムラテックス、ニトリルゴムラテックス又は天然ゴムラテックスからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の環境配慮型含浸システム。
【請求項9】
維表面処理用の環境配慮型含浸システムの製造方法であって、前記方法は、それぞれ
(1)一浴ディップ液システムの場合に、ヒドロキシアクリル樹脂、アミノ樹脂、必要に応じてエポキシ樹脂、促進剤を順次に脱イオン水に加えて攪拌し、さらにブロックイソシアネートを加えて攪拌し、最後にゴムラテックスを加えて攪拌し続けて一浴含浸液を得て、そのうち、各成分の使用量は重量部で、脱イオン水100部、ヒドロキシアクリル樹脂1~30部、アミノ樹脂0.1~10部、ブロックイソシアネート1~10部、促進剤0.1~5部、及びゴムラテックス50~180部である、という工程を含む、
または
(2)二浴ディップ液システムの場合に、1)水溶性エポキシ樹脂を脱イオン水に加えて攪拌し、さらにブロックイソシアネートを加えて攪拌し、均一な反応液を得て、よって第1浴含浸液を得て、2)ヒドロキシアクリル樹脂、アミノ樹脂、及び促進剤を脱イオン水に順次に加えて攪拌し、均一な分散液を得て、最後にゴムラテックスを加えて攪拌を続けて、よって第2浴含浸液を得、うちで、前記第1浴含浸液は重量部で、各成分の使用量が、エポキシ樹脂1~2部、ブロックイソシアネート5~8部、及び脱イオン水95~105部であり、前記第2浴含浸液における各成分の使用量が、重量部でヒドロキシアクリル樹脂7~10部、アミノ樹脂1~2.5部、促進剤1.5~3部、ゴムラテックス100~180部、及び脱イオン水95~105部であるという工程を含む
ことを特徴とする繊維表面処理用の環境配慮型含浸システムの製造方法。
【請求項10】
繊維表面処理用の含浸処理方法であって、
繊維を一浴含浸液に含浸させる工程(A)と、
工程(A)で得られた含浸後の繊維を乾燥及び硬化させる工程(B)と、
を含み、
そのうち、一浴ディップ液における各成分の使用量が、重量部で、脱イオン水100部、ヒドロキシアクリル樹脂1~30部、アミノ樹脂0.1~10部、ブロックイソシアネート1~10部、促進剤0.1~5部、及びゴムラテックス50~180部である
ことを特徴とする繊維表面処理用の含浸処理方法。
【請求項11】
繊維表面処理用の含浸処理方法であって、
繊維を第1浴含浸液に入れて含浸させ、前記第1浴含浸液における各成分の使用量が、重量部でエポキシ樹脂0.5~2.5部、ブロックイソシアネート3~10部、脱イオン水90~110部である工程i)、
工程i)処理された繊維を乾燥し、次に硬化させる工程ii)、
工程ii)処理された繊維を第2浴含浸液に入れて含浸させ、前記第2含浸液における各成分の使用量が重量部で、ヒドロキシアクリル樹脂5~15部、アミノ樹脂0.5~3部、促進剤1~5部、ゴムラテックス80~200部、及び脱イオン水90~110部である工程iii)、
工程iii)で処理された繊維を乾燥して硬化させる工程iv)
という工程を含むことを特徴とする繊維表面処理用の含浸処理方法。
【国際調査報告】