(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-23
(54)【発明の名称】ポリエステル組成物およびそれから作製されたエラストマーコーティングされた物品
(51)【国際特許分類】
C08L 67/00 20060101AFI20240816BHJP
C08K 7/02 20060101ALI20240816BHJP
C08K 5/20 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
C08L67/00
C08K7/02
C08K5/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513720
(86)(22)【出願日】2022-08-29
(85)【翻訳文提出日】2024-04-23
(86)【国際出願番号】 US2022041850
(87)【国際公開番号】W WO2023034197
(87)【国際公開日】2023-03-09
(32)【優先日】2021-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512225379
【氏名又は名称】セラニーズ・インターナショナル・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100141265
【氏名又は名称】小笠原 有紀
(72)【発明者】
【氏名】ジア,カマー
(72)【発明者】
【氏名】マルクグラフ,キルステン
(72)【発明者】
【氏名】ツィーラー,ディルク
(72)【発明者】
【氏名】ニコライ,パトリック
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CF062
4J002CF071
4J002DJ047
4J002DL006
4J002EH098
4J002EP028
4J002FA046
4J002FD016
4J002FD178
4J002FD207
4J002GB01
(57)【要約】
強化用繊維を含有し、エラストマー材料への改善された接着を有し、また、医療用途及び/又は食品サービス用途のために配合され得るポリエステルポリマー組成物を開示する。ポリエステルポリマー組成物は、異なるポリエステルポリマーのブレンドを含有していてもよく、ヒンダードフェノール系抗酸化剤を含んでいなくてもよい。ポリエステルポリマー組成物は、オーバーモールド成形用途で使用することができ、その際、組成物は、最初はポリマーコンポーネントに成形され、次いでエラストマー材料でオーバーモールド成形される。エラストマー材料は、コポリエステルエラストマーを含有していてもよく、シール部材として機能し得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のポリエステルポリマーと第2のポリエステルポリマーとの混合物を含むポリマー組成物を含む、接着が改善されたポリエステル組成物であって、
該第1のポリエステルポリマーは該第2のポリエステルポリマーと異なる結晶化速度を有し、該ポリマー組成物は強化用繊維および核剤をさらに含み、該強化用繊維は該ポリマー組成物中に約5~約50重量%の量で存在し、該ポリマー組成物はヒンダードフェノール系抗酸化剤を含まない、上記組成物。
【請求項2】
前記ポリマー組成物が、潤滑剤をさらに含む、請求項1に記載のポリエステル組成物。
【請求項3】
前記潤滑剤が、エチレンビスステアルアミドを含む、請求項2に記載のポリエステル組成物。
【請求項4】
前記潤滑剤が、前記ポリマー組成物中に約0.05重量%~約1.8重量%の量で存在する、請求項2または3に記載のポリエステル組成物。
【請求項5】
第1のポリエステルポリマーが、ポリブチレンテレフタレートポリマーを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリエステル組成物。
【請求項6】
第2のポリエステルポリマーが、ポリエチレンテレフタレートポリマーを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリエステル組成物。
【請求項7】
前記第1のポリエステルポリマーが、前記組成物中に、約30重量%~約75重量%、例えば約40重量%~約70重量%の量で存在し、前記第2のポリエステルポリマーが、前記ポリマー組成物中に、約12重量%~約40重量%の量で、例えば約18重量%~約35重量%の量で存在する、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリエステル組成物。
【請求項8】
前記強化用繊維が、ガラス繊維を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリエステル組成物。
【請求項9】
前記強化用繊維が、前記ポリマー組成物中に約7重量%~約50重量%の量で存在する、請求項1~8のいずれか一項に記載のポリエステル組成物。
【請求項10】
前記ポリマー組成物が、ジホスファイト安定剤を含まない、請求項1~9のいずれか一項に記載のポリエステル組成物。
【請求項11】
マルチコンポーネントポリマー物品であって:
第1のポリエステルポリマーと第2のポリエステルポリマーとの混合物を含むポリマーコンポーネントであって、該第1のポリエステルポリマーは該第2のポリエステルポリマーと異なる結晶化速度を有し、該ポリマーコンポーネントは強化用繊維および核剤をさらに含み、該強化用繊維は該ポリマーコンポーネント中に約7~約50重量%の量で存在し、該ポリマーコンポーネントはヒンダードフェノール系抗酸化剤を含まない、ポリマーコンポーネント;および
該ポリマーコンポーネントの表面に直接適用されたエラストマーコンポーネントであって、弾性ポリマーを含む、エラストマーコンポーネント
を含む、上記マルチコンポーネントポリマー物品。
【請求項12】
前記弾性ポリマーが、コポリエステルを含む、請求項11に記載のマルチコンポーネントポリマー物品。
【請求項13】
前記弾性ポリマーが、ポリブチレンテレフタレートとポリエーテルまたはダイマージオールセグメントとのブロックコポリマーを含む熱可塑性コポリエステルエラストマーを含む、請求項11に記載のマルチコンポーネントポリマー物品。
【請求項14】
前記弾性ポリマーが、熱可塑性エステルエーテルエラストマーを含む熱可塑性コポリエステルエラストマーを含む、請求項11に記載のマルチコンポーネントポリマー物品。
【請求項15】
前記弾性ポリマーが、熱可塑性コポリエステルエラストマーを含み、該コポリエステルエラストマーは、該エラストマー材料中に約70重量%より多い量で存在する、請求項11に記載のマルチコンポーネントポリマー物品。
【請求項16】
前記ポリマーコンポーネントおよび前記エラストマー材料が、約50Nより高い剥離力を示し、例えば約70Nより高い剥離力を示す、請求項11に記載のマルチコンポーネントポリマー物品。
【請求項17】
第1のポリエステルポリマーが、ポリブチレンテレフタレートポリマーを含む、請求項11に記載のマルチコンポーネントポリマー物品。
【請求項18】
第2のポリエステルポリマーが、ポリエチレンテレフタレートポリマーを含む、請求項17に記載のマルチコンポーネントポリマー物品。
【請求項19】
前記ポリブチレンテレフタレートポリマーが、約40g/10分より高く、約120g/10分未満のメルトフローレートを有する、請求項17または18に記載のマルチコンポーネントポリマー物品。
【請求項20】
前記ポリエチレンテレフタレートポリマーが、前記ポリマーコンポーネント中に約25重量%~約35重量%の量で存在し、前記ポリブチレンテレフタレートポリマーが、前記ポリマーコンポーネント中に約40重量%~約60重量%の量で存在する、請求項18または19に記載のマルチコンポーネントポリマー物品。
【請求項21】
前記マルチコンポーネントポリマー物品が、医療用デバイスを含む、請求項11~21のいずれか一項に記載のマルチコンポーネントポリマー物品。
【請求項22】
前記マルチコンポーネントポリマー物品が、医療用吸入器または医療用インジェクターを含む、請求項11~21のいずれか一項に記載のマルチコンポーネントポリマー物品。
【請求項23】
前記エラストマーコンポーネントが、前記ポリマーコンポーネント上にシール部材を形成する、請求項11~22のいずれか一項に記載のマルチコンポーネントポリマー物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
[0001]本出願は、参照により本明細書に組み入れられる出願日が2021年8月30日の米国仮特許出願第63/238,296号に基づいており、それに対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
[0002]エンジニアリング熱可塑性物質およびエラストマー材料は、成形部品や製品を生産するために、数多くの多様な用途で使用されることが多い。例えば、ポリエステルポリマーおよびポリエステルエラストマーは、あらゆる様々なタイプの成形製品、例えば射出成形製品、吹込成形製品などを生産するのに使用される。例えばポリエステルポリマーは、化学物質耐性にし、優れた強度特性を付与するために配合することができ、さらに、ポリエステルエラストマーを含有する組成物を配合する場合、フレキシブルにするために配合することができる。特に有利なのは、ポリエステルポリマーは、その熱可塑性の性質のために溶融加工できることである。加えて、ポリエステルポリマーは、再利用したり、再加工したりすることができる。
【0003】
[0003]ポリエステルポリマーは、あらゆる好適な形状または寸法を有する成形物品を生産するのに特によく適している。成形物品は、射出成形、熱成形、または他のあらゆる好適な溶融加工方法を介して作製することができる。次いで、多くの用途では、成形物品は、製品またはシステムに組み込むときに隣接する材料に接着される。例えば、ポリエステルポリマーから作製される多くの射出成形物品は、エラストマー材料でオーバーモールド成形される。エラストマーコンポーネントは、例えば、得られた製品のシール特徴を改善するのに使用できる。エラストマー材料はまた、様々な他の機能特性も有し得る。例えば、エラストマー材料は、スリップ防止面として、音減衰(sound dampening)面として、ソフトタッチの表面として役立つ場合もあるし、またはフレキシブルな表面を提供するのに役立つ場合がある。
【0004】
[0004]しかしながらこれまでに、ポリエステルポリマーから作製された成形物品とエラストマー材料との間に強い接着を形成することの可能性についての問題が経験されてきた。加えて、得られた製品を医療分野または食品サービス産業で使用しようとする場合、化学接着剤の使用は、一般的に、様々な政府規制に従って好ましくないかまたは許容されない。さらに、ポリエステル成形物品における強化用繊維の存在はさらに、物品の表面とエラストマー材料との間の好適な接着の形成を妨害するる役割を果たし得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[0005]上記のことを考慮し、特に、ポリエステルポリマー組成物から作製された物品上にエラストマー材料がオーバーモールド成形される用途において、接着剤または密着層(tie layer)を使用することなくエラストマー材料に対する接着強度が改善されたポリエステルポリマー組成物についての必要が現在ある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[0006]一般的に、本開示は、ポリエステルポリマーのブレンドを含有するポリエステルポリマー組成物に向けられており、この組成物は、物品に成形された際に、エラストマー材料、特定にはコポリエステルエラストマーとの接着強度が劇的に改善された表面を生じる。ポリエステルポリマー組成物は、組成物を医療用途および/または食品を取り扱う用途での使用によく適したものにする低減された量の安定剤を含有するように配合することができる。実際に、様々な安定剤の使用または量を低減させることはまた、意外なことに、ポリエステル成形物品の表面とエラストマー材料との接着強度をさらに増加させることも見出された。
【0007】
[0007]一形態において、例えば、本開示は、第1のポリエステルポリマーと第2のポリエステルポリマーとの混合物を含む、エラストマー材料への接着が改善されたポリエステル組成物に向けられる。第1のポリエステルポリマーは、第2のポリエステルポリマーと異なる結晶化速度(crystallization rate)を有していてもよい。例えば、第1のポリエステルポリマーは、ポリブチレンテレフタレートポリマーであってもよく、第2のポリエステルポリマーは、ポリエチレンテレフタレートポリマーであってもよい。第1のポリエステルポリマーは、組成物中に、約30重量%~約75重量%の量で、例えば約40重量%~約70重量%の量で存在していてもよい。一方で、第2のポリエステルポリマーは、ポリマー組成物中に、約12重量%~約40重量%の量で、例えば約18重量%~約35重量%の量で存在していてもよい。全体として、ポリマー組成物は、1種またはそれより多くのポリエステルポリマーを、約50重量%~約90重量%の量で、例えば約60重量%~約95重量%の量で含有していてもよい。
【0008】
[0008]ポリエステル組成物は、強化用繊維をさらに含有していてもよい。強化用繊維は、ポリマー組成物中に、一般的に約7重量%~約50重量%の量で、例えば約12重量%~約30重量%の量で存在していてもよい。強化用繊維は、ガラス繊維を含んでいてもよい。
【0009】
[0009]一形態において、ポリエステル組成物は、潤滑剤をさらに含有していてもよい。潤滑剤は、アミドであってもよい。一形態において、例えば、潤滑剤は、エチレンビスステアルアミドを含む。潤滑剤は、ポリマー組成物中に、約0.05重量%~約1.8重量%の量で存在していてもよい。
【0010】
[00010]一形態において、ポリエステル組成物は、特定のタイプの安定剤を含まないように配合される。組成物を、特定の用途に、例えば医療分野における用途により適したものにするために、安定剤は組成物から除去されていてもよい。例えば、一実施態様において、ポリエステル組成物は、ヒンダードフェノール系抗酸化剤を含まない。意外なことに、ヒンダードフェノール系抗酸化剤を低減させたりまたは排除したりすることは、実際にはポリマー組成物のエラストマー材料への接着を増加させる可能性があることが発見された。
【0011】
[00011]別の形態において、ポリマー組成物は、特定のリンを含有する安定剤を含まないように配合することができる。例えば、組成物は、ジホスファイト安定剤を含まないように配合することができる。
【0012】
[00012]本開示はまた、マルチコンポーネントポリマー物品にも向けられる。ポリマー物品は、ポリマーコンポーネントおよびエラストマーコンポーネントを含む。ポリマーコンポーネントは、第1のポリエステルポリマーと第2のポリエステルポリマーとの混合物を含む。第1のポリエステルポリマーは、第2のポリエステルポリマーと異なる結晶化速度を有する。例えば、第1のポリエステルポリマーは、ポリブチレンテレフタレートポリマーであってもよく、第2のポリエステルポリマーは、ポリエチレンテレフタレートポリマーであってもよい。ポリマーコンポーネントは、強化用繊維および核剤をさらに含む。強化用繊維は、ポリマーコンポーネント中に約7%~約50重量%の量で存在していてもよい。ポリマーコンポーネントは、ヒンダードフェノール系抗酸化剤を含んでいなくてもよい。
【0013】
[00013]マルチコンポーネントポリマー物品は、ポリマーコンポーネントの表面に適用されたエラストマーコンポーネントをさらに含む。エラストマーコンポーネントは、弾性ポリマーを含み、例えばコポリエステルエラストマーを含む。弾性ポリマーは、例えば、ポリブチレンテレフタレートセグメントとポリエーテルまたはダイマージオールセグメントとのブロックコポリマーを含んでいてもよい。別の形態において、弾性ポリマーは、熱可塑性エステルエーテルエラストマーを含む熱可塑性コポリエステルエラストマーを含む。コポリエステルエラストマーは、材料中に、約70重量%より多い量で、例えば約80重量%より多い量で、例えば約90重量%より多い量で存在していてもよい。ポリマーコンポーネントおよび材料は、約50Nより高い剥離力、例えば約70Nより高い剥離力を示し得る。上記の剥離力は、材料とポリマーコンポーネントの表面との間の接着層または他のあらゆるタイプの密着層を置く必要なく得ることができる。これに関連して、材料は、ポリマーコンポーネントの表面に直接適用することができる。
【0014】
[00014]ポリマーコンポーネントに含有されるポリブチレンテレフタレートは、一形態において、約40g/10分より高く、約120g/10分未満のメルトフローレートを有する。1つの特定の実施態様において、ポリマーコンポーネントは、ポリエチレンテレフタレートポリマーを約25~約35重量%の量で含有する。ポリブチレンテレフタレートポリマーは、ポリマーコンポーネント中に約40~約60重量%の量で存在していてもよい。
【0015】
[00015]マルチコンポーネントポリマー物品は、数多くの多様な用途で使用することができる。例えば、マルチコンポーネントポリマー物品は、食品サービス用途および/または医療用途で使用することができる。一形態において、マルチコンポーネントポリマー物品は、医療用吸入器、医療用インジェクターなどを含む。一実施態様において、物品は、気体で駆動するオートインジェクションデバイスのためのバルブシステムの部品の一部として使用することができ、この場合、エラストマーコンポーネントは、シール構造として役立つ。
【0016】
[00016]本開示はまた、マルチコンポーネントポリマー物品を生産するための方法にも向けられる。本方法は、まず、上述したようなポリエステルポリマー組成物から作製されたポリマーコンポーネントを射出成形することを含む。本方法はさらに、弾性ポリマーを含むポリマーコンポーネントをオーバーモールド成形することを含む。一実施態様において、マルチコンポーネントポリマー物品は、2コンポーネントの射出成形プロセスを介して生産される。プロセス中、まずポリマーコンポーネントを成形し、次いでエラストマー材料でオーバーモールド成形するが、ポリマーコンポーネントはまだ高い温度であり、しかし、その形状を維持するのに十分な剛性を有する。
【0017】
[00017]以下で本開示の他の特徴および形態をより詳細に論じる。
[00018]本開示の詳細かつ実現可能な開示を、添付の図面への参照を含めて本明細書の残りの部分により詳細に明示する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】[00019]
図1は、以下の実施例に記載される試験片の平面図である。
【
図2】[00020]
図2は、本開示に従って作製されたマルチコンポーネント物品の斜視図である。
【
図3】[00021]
図3は、本開示に従って調製された組成物を含む医療用装置の一実施態様を例示する。
【
図4】[00022]
図4は、本開示に従って調製された組成物を含む医療用装置の別の実施態様を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[00023]本明細書および図面における参照記号の繰り返しの使用は、本発明の同じまたは類似した特徴または要素を表すことが意図される。
【0020】
詳細な説明
[00024]本発明の議論は、単に例示的な実施態様の説明であり、本開示のより広い形態を限定することを意図していないことは当業者に理解されるであろう。
【0021】
[00025]本開示は、一般的に、他の材料への、特定には弾性ポリマーへの劇的に改善された表面接着と組み合わせて優れた機械特性を有するポリエステルポリマー組成物に向けられる。一形態において、ポリエステル組成物は、組成物が医療用途および/または食品を取り扱う用途での使用に関する全ての政府規制を満たすように配合することができる。例えば、本開示のポリエステルポリマー組成物は、一実施態様において、低減したレベルの特定のタイプの抗酸化剤および他の安定剤を含有していてもよいし、またはそれらを含んでいなくてもよい。意外なことに、様々な異なる抗酸化剤および/または安定剤を低減させることは、実際には、ポリマー組成物から作製された成形物品とエラストマー材料との接着特性を改善できることが発見された。
【0022】
[00026]ポリエステルポリマー組成物の機械特性を改善するために、組成物は、一般的に、強化用繊維、例えばガラス繊維を含有する。ガラス繊維は、組成物から作製された物品の様々な機械的および物理的特性を改善することができるが、ガラス繊維はまた、成形物品の表面とエラストマー材料との間の接着特徴に干渉する可能性もある。これに関して、本開示のポリエステルポリマー組成物は、接着を改善することが見出されているポリエステルポリマーのブレンドを含有する。例えば、一形態において、ポリエステルポリマー組成物は、所定量のポリエチレンテレフタレートポリマーで改変されたポリブチレンテレフタレートポリマーを含有していてもよい。ポリエチレンテレフタレートポリマーをポリブチレンテレフタレートポリマーと組み合わせて添加することは、組成物から成形された物品の表面の接着特徴をさらに改善することが見出されている。
【0023】
[00027]より特定には、本開示のポリマー組成物は、組成物の主要コンポーネントの代表であるポリエステルポリマーの組合せを含む。1種またはそれより多くのポリエステルポリマーが、例えば、約50重量%より多い量で、例えば約55重量%より多い量で、例えば約60重量%より多い量で、例えば約65重量%より多い量で、また、一般的に約88重量%未満の量で、例えば約85重量%未満の量で、例えば約82重量%未満の量で、ポリマー組成物中に存在する。
【0024】
[00028]1つの特定の実施態様において、ポリマー組成物は、第2のポリエステルポリマーより速い結晶化速度を有する第1のポリエステルポリマーを含有する。第1のポリエステルポリマーは、例えば、ポリブチレンテレフタレートポリマーを含んでいてもよく、第2のポリマーは、ポリエチレンテレフタレートポリマーを含んでいてもよい。例えば、ポリブチレンテレフタレートポリマーは、ポリエチレンテレフタレートポリマーより速い結晶化速度を有していてもよく、全体的に、ポリエチレンテレフタレートポリマーより高い結晶性を有していてもよい。
【0025】
[00029]第2のポリエステルポリマーより速い結晶化速度を有するポリエステルポリマーを組み合わせることは、様々な利点および利益を提供することができる。例えば、異なるポリエステルポリマーを使用することは、全体的に接着特徴が改善されたポリマー組成物が生産されるように使用することができる。ポリマーの組合せはまた、強化用繊維との混合を容易にすることもでき、および/または様々な加工上の利益を提供することもできる。
【0026】
[00030]結晶性が高い方の第1のポリエステルポリマー(例えばポリブチレンテレフタレートポリマー)と、結晶性が低い方の第2のポリエステルポリマー(例えばポリエチレンテレフタレートポリマー)との相対量は、最終用途などの多数の要因に応じて様々であってもよい。一実施態様において、例えば、第1のポリエステルポリマーは、第2のポリエステルポリマーより多い量で存在していてもよい。例えば、第1のポリエステルポリマーと第2のポリエステルポリマーとの重量比は、約1:1~約10:1であってもよく、例えば約1.25:1~約4:1、例えば約1.5:1~約3:1であってもよい。
【0027】
[00031]一形態において、ポリマー組成物は、第1のポリエステルポリマー、例えば1種またはそれより多くのポリブチレンテレフタレートポリマーを、一般的に、約30重量%~約70重量%(それらの間の1重量%ごとの全ての増加分を含む)の量で含有していてもよい。組成物は、単一のポリブチレンテレフタレートポリマーを含有していてもよいし、または異なる特徴を有する複数の異なるポリブチレンテレフタレートポリマーを含んでいてもよい。一形態において、ポリマー組成物は、1種またはそれより多くのポリブチレンテレフタレートポリマーを、約30重量%より多い量で、例えば約40重量%より多い量で、また、一般的に、約75重量%未満の量で、例えば約70重量%未満の量で含有する。
【0028】
[00032]ポリマー組成物は、第2のポリエステルポリマー、例えばポリエチレンテレフタレートポリマーを、一般的に約12重量%より多い量で、例えば約15重量%より多い量で、例えば約18重量%より多い量で、例えば約23重量%より多い量で、例えば約27重量%より多い量で含有していてもよい。第2のポリエステルポリマーは、一般的に、約40重量%未満の量で存在し、例えば約36重量%未満の量で、例えば約33重量%未満の量で存在する。
【0029】
[00033]一実施態様において、ポリマー組成物は、強化用繊維を含有していてもよい。有利に利用することができる強化用繊維は、ガラス繊維などの鉱物繊維、ポリマー繊維、特に、アラミド繊維などの有機高弾性繊維、もしくは鋼繊維などの金属繊維、または炭素繊維もしくは天然繊維、または再生可能資源からの繊維である。
【0030】
[00034]繊維は、改変された形態でもよいし、または改変されていない形態でもよく、例えば、プラスチックへの接着を改善するために、サイジングと共に提供されてもよいし、または化学処理されていてもよい。ガラス繊維が特に好ましい。
【0031】
[00035]ガラス繊維は、サイジングと共に提供されて、ガラス繊維を保護して繊維を滑らかにするだけでなく繊維とマトリックス材料との間の接着も改善してもよい。サイジングは、通常、シラン、フィルム形成剤、潤滑剤、湿潤剤、接着剤を含み、任意に、静電防止剤および可塑剤、乳化剤を含み、任意にさらなる添加剤を含む。
【0032】
[00036]シランの具体的な例は、アミノシランであり、例えば、3-トリメトキシシリルプロピルアミン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(3-トリメトキシシラニルプロピル)エタン-1,2-ジアミン、3-(2-アミノエチル-アミノ)プロピルトリメトキシシラン、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-1,2-エタンジアミンである。
【0033】
[00037]フィルム形成剤は、例えばポリビニルアセテート、ポリエステルおよびポリウレタンである。ポリウレタンに基づくサイジングを有利に使用することができる。
[00038]強化用繊維は、例えば押出機またはニーダーでポリマーマトリックスに混和することができる。
【0034】
[00039]一実施態様によれば、本開示のポリマー組成物は、少なくとも1種の強化用繊維を含み、強化用繊維は、鉱物繊維、好ましくはガラス繊維であり、より好ましくはコーティングまたは含浸されたガラス繊維である。本開示の成形組成物に好適なガラス繊維は、商業的に入手可能であり、例えば、ジョンズ・マンビルの、サーモフロー(ThermoFlow)(登録商標)チョップドストランド(Chopped Strand)753、OCVチョップドストランド408A、日本電気硝子株式会社(NEG)のチョップドストランド(Chopped Strand)T-651である。
【0035】
[00040]繊維直径は、使用される特定の繊維に応じて、さらに、繊維が、細断された形態または連続した形態のいずれであるかどうかに応じて様々であってもよい。繊維は、例えば、約5μm~約100μmの直径を有していてもよく、例えば約5μm~約50μm、例えば約5μm~約15μmの直径の直径を有していてもよい。繊維の長さは、特定の用途に応じて様々であってもよい。例えば、繊維は、約100マイクロメートルより長い平均長さを有していてもよく、例えば約500マイクロメートルより長い、例えば約1,000マイクロメートルより長い、例えば約2,000マイクロメートルより長い平均長さを有していてもよい。繊維の長さは、一般的に約5,000マイクロメートル未満であってもよく、例えば約4,500マイクロメートル未満、例えば約4,000マイクロメートル未満、例えば約3,500マイクロメートル未満であってもよい。
【0036】
[00041]任意に、ガラス繊維は、平坦な形状またはリボン様の形状を有するポリマー組成物に取り込まれる。例えば、ガラス繊維は、約1:2より大きく、例えば約1:4より大きく、例えば約1:8より大きく、例えば約1:12より大きく、また、一般的に約1:200未満、例えば約1:100未満の厚さ対幅の比率を有していてもよい。
【0037】
[00042]強化用繊維は、ポリマー組成物中に、一般的に、約5~約55重量%(それらの間の1重量%ごとの全ての増加分を含む)の量で存在していてもよい。例えば、ガラス繊維などの強化用繊維は、ポリマー組成物中に、約10重量%より多い量で存在していてもよく、例えば約15重量%より多い量で、例えば約18重量%より多い量で存在していてもよい。強化用繊維は、一般的に、約50重量%未満の量で存在し、例えば約40重量%未満の量で、例えば約35重量%未満の量で、例えば約33重量%未満の量で存在する。
【0038】
[00043]ポリマー組成物はまた、1種またはそれより多くの潤滑剤を含有していてもよい。例えば、脂肪酸と、2~18個、特に2~8個の炭素原子を有するモノアミンまたはジアミン(例えば、エチレンジアミン)との反応によって形成されるアミドワックスが採用される可能性がある。例えば、エチレンビスアミドワックスは、エチレンジアミンと脂肪酸とのアミド化反応(amidization reaction)によって形成され、これが採用される可能性がある。脂肪酸は、C12~C30の範囲であってもよく、例えば、エチレンビスステアルアミドワックスを形成することができるステアリン酸(C18脂肪酸)からの範囲であってもよい。一形態において、エチレンビスステアルアミドワックスは、142℃の個別の溶融温度(discrete melt temperature)を有する。他のエチレンビスアミドとしては、ラウリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、オレオステアリン酸(oleostearic acid)、ミリスチン酸およびウンデカリン酸(undecalinic acid)から形成されたビスアミドが挙げられる。さらに他の好適なアミドワックスは、N-(2-ヒドロキシエチル)12-ヒドロキシステアルアミド、およびN,N’-(エチレンビス)12-ヒドロキシステアルアミドである。
【0039】
[00044]一形態において、本開示のポリエステルポリマー組成物は、多くの慣習的に使用される潤滑剤や離型剤を含まないように配合することができる。例えば、ポリマー組成物は、特定の脂肪酸エステル、特定には、相対的に長い炭素鎖を有する脂肪酸エステルを含まないように配合することができる。1つの特定の実施態様において、例えば、本開示の組成物は、モンタン酸とポリオールとの組合せのエステルなどのモンタン酸から誘導されるいかなる脂肪酸エステルも含まない。組成物は、例えば、モンタン酸エステルおよびモンタン酸カルシウムの混合物を含んでいなくてもよい。
【0040】
[00045]1種またはそれより多くの潤滑剤は、ポリマー組成物中に、一般的に約0.05重量%より多い量で存在していてもよく、例えば約0.1重量%より多い量で、例えば約0.2重量%より多い量で、例えば約0.25重量%より多い量で存在していてもよい。1種またはそれより多くの潤滑剤は、一般的に、約2重量%未満の量で存在し、例えば、約1.8重量%未満の量で、例えば約0.9重量%未満の量で存在する。
【0041】
[00046]本開示のポリマー組成物は、様々な他の添加剤を含有していてもよい。ポリマー組成物に取り込まれる異なる添加剤および他のコンポーネントは、例えば、医療用途および食品サービス関連の用途での使用に好適な組成を維持しながら、1つまたはそれより多くの利益を提供することができる。その結果として、添加剤は、ポリマー組成物の接着特性に干渉しない医療グレードの添加剤であってもよい。
【0042】
[00047]特定の用途において、一部の添加剤は、本開示のポリマー組成物における使用のために意図的に回避される。例えば、ポリマー組成物は、任意に、これまでに一般的に使用されていた特定の抗酸化剤を含んでいなくてもよい。例えば、一実施態様において、本開示のポリエステルポリマー組成物は、ヒンダードフェノール系抗酸化剤を含まないか、またはこのような抗酸化剤を非常に限定的な量で含有する。例えば、ポリマー組成物は、ヒンダードフェノール系抗酸化剤を、約0.1重量%未満の量で、例えば約0.05重量%未満の量で、例えば約0.03重量%未満の量で、例えば0重量%の量で含有するように配合することができる。
【0043】
[00048]このようなフェノール系抗酸化剤の例としては、例えば、カルシウムビス(エチル3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネート)(イルガノックス(Irganox)(登録商標)1425);テレフタル酸1,4-ジチオ-,S,S-ビス(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)エステル(シアノックス(Cyanox)(登録商標)1729);トリエチレングリコールビス(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルヒドロシンナメート);ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート(イルガノックス(登録商標)259);1,2-ビス(3,5,ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナモイル)ヒドラジド(イルガノックス(登録商標)1024);4,4’-ジ-tert-オクチルジフェナミン(ナウガルブ(Naugalube)(登録商標)438R);ホスホン酸(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-,ジオクタデシルエステル(イルガノックス(登録商標)1093);1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’ヒドロキシベンジル)ベンゼン(イルガノックス(登録商標)1330);2,4-ビス(オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン(イルガノックス(登録商標)565);イソオクチル3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(イルガノックス(登録商標)1135);オクタデシル3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(イルガノックス(登録商標)1076);3,7-ビス(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-10H-フェノチアジン(イルガノックス(登録商標)LO3);2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)モノアクリレート(イルガノックス(登録商標)3052);2-tert-ブチル-6-[1-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)エチル]-4-メチルフェニルアクリレート(スミライザー(Sumilizer)(登録商標)TM4039);2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレート(スミライザー(登録商標)GS);1,3-ジヒドロ-2H-ベンゾイミダゾール(スミライザー(登録商標)MB);2-メチル-4,6-ビス[(オクチルチオ)メチル]フェノール(イルガノックス(登録商標)1520);N,N’-トリメチレンビス-[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド(イルガノックス(登録商標)1019);4-n-オクタデシルオキシ-2,6-ジフェニルフェノール(イルガノックス(登録商標)1063);2,2’-エチリデンビス[4,6-ジ-tert-ブチルフェノール](イルガノックス(登録商標)129);N,N’-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナムアミド)(イルガノックス(登録商標)1098);ジエチル(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル(hydroxybenxyl))ホスホネート(イルガノックス(登録商標)1222);4,4’-ジ-tert-オクチルジフェニルアミン(イルガノックス(登録商標)5057);N-フェニル-1-ナフタレンアミン(napthalenamine)(イルガノックス(登録商標)L05);トリス[2-tert-ブチル-4-(3-ter-ブチル-4-ヒドロキシ-6-メチルフェニルチオ)-5-メチルフェニル]ホスフィット(ホスタノックス(Hostanox)(登録商標)OSP1);亜鉛ジノイルジチオカルバメート(dinonyidithiocarbamate)(ホスタノックス(登録商標)VP-ZNCS1);3,9-ビス[1,1-ジメチル(diimethyl)-2-[(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(スミライザー(登録商標)AG80);ペンタエリスリチルテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](イルガノックス(登録商標)1010);エチレン-ビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)-プロピオネート(イルガノックス(登録商標)245);3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシトルエン(ローイノックスBHT(Lowinox BHT)、ケムチュラ(Chemtura))などが挙げられる。
【0044】
[00049]意外なことに、ヒンダードフェノール系抗酸化剤の使用を低減させたりまたは排除したりすることは、実際には、ポリエステル組成物から作製された成形物品と、エラストマー材料、特にコポリエステルエラストマーから形成されたエラストマー材料との接着強度を増加させることが発見された。不明ではあるが、ヒンダードフェノール系抗酸化剤は、成形物品とエラストマー材料との間の境界層におけるエステル交換を防ぐ可能性があると考えられる。
【0045】
[00050]フェノール系抗酸化剤を含まないことに加えて、本開示のポリマー組成物はまた、ジホスファイト安定剤を含まないように配合されてもよい。
[00051]ポリエステル組成物に含めることができる1つのタイプの安定剤は、ヒンダードアミン光安定剤(「HALS」)である。好適なHALS化合物は、置換されたピペリジン、例えばアルキルで置換されたピペリジル、ピペリジニル、ピペラジノン、アルコキシピペリジニル化合物などから得てもよい。例えば、ヒンダードアミンは、2,2,6,6-テトラアルキルピペリジニルから得てもよい。ヒンダードアミンは、その由来となる化合物に関係なく、典型的には、約1,000またはそれより高い数平均分子量を有するオリゴマーまたはポリマー性の化合物であり、一部の実施態様において、約1000~約20,000、一部の実施態様において、約1500~約15,000、一部の実施態様において、約2000~約5000の数平均分子量を有するオリゴマーまたはポリマー性の化合物である。このような化合物は、典型的には、ポリマー反復単位1個当たり、少なくとも1個の2,2,6,6-テトラアルキルピペリジニル基(例えば、1~4個)を含有する。
【0046】
[00052]理論によって限定されることは意図しないが、高分子量ヒンダードアミンは、比較的熱安定性であり、したがって押出し条件に晒された後でさえも光劣化を阻害することができると考えられる。1つの特に好適な高分子量ヒンダードアミンは、以下の一般的な構造を有する:
【0047】
【0048】
式中、pは、4~30であり、一部の実施態様において、4~20、一部の実施態様において、4~10である。このオリゴマー化合物は、クラリアントからホスタビン(Hostavin)(登録商標)N30という名称で商業的に入手可能であり、1200の数平均分子量を有する。
【0049】
[00053]別の好適な高分子量ヒンダードアミンは、以下の構造を有する:
【0050】
【0051】
式中、nは、1~4であり、R30は、独立して水素またはCH3である。このようなオリゴマー化合物は、アデカ・パルマロールSAS(Adeka Palmarole SAS)(アデカ(Adeka)社とパルマロール(Palmarole)グループとの合弁事業)から、ADK STAB(登録商標)LA-63(R30は、CH3である)およびADK STAB(登録商標)LA-68(R30は、水素である)という名称で商業的に入手可能である。
【0052】
[00054]好適な高分子量ヒンダードアミンの他の例としては、例えば、N-(2-ヒドロキシエチル)-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノールとコハク酸とのオリゴマー(チバ・スペシャルティ・ケミカルズからのチヌビン(Tinuvin)(登録商標)622、MW=4000);シアヌル酸とN,N-ジ(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-ヘキサメチレンジアミンとのオリゴマー;ポリ((6-モルホリン-S-トリアジン-2,4-ジイル)(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)-イミノヘキサメチレン-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)-イミノ)(サイテック(Cytec)からのシアソルブ(Cyasorb)(登録商標)UV3346、MW=1600);ポリメチルプロピル-3-オキシ-[4(2,2,6,6-テトラメチル)-ピペリジニルシロキサン(グレートレイクスケミカル(Great Lakes Chemical)からのウバシル(Uvasil)(登録商標)299、MW=1100~2500);α-メチルスチレン-N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)マレイミドと、N-ステアリルマレイミドとのコポリマー;1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸を有する2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン-3,9-ジエタノールテトラメチル-ポリマーなどが挙げられる。それでもなお他の好適な高分子量ヒンダードアミンは、Malikらの米国特許第5,679,733号およびSassiらの同第6,414,155号に記載されており、これらは、あらゆる目的のためにそれらへ参照することによりそれらの全体が本明細書に取り入れられる。
【0053】
[00055]高分子量ヒンダードアミンに加えて、低分子量ヒンダードアミンも組成物中に採用されてもよい。このようなヒンダードアミンは、一般的にモノマーの性質を有し、約1000またはそれ未満の分子量を有し、一部の実施態様において、約155~約800、一部の実施態様において、約300~約800の分子量を有する。
【0054】
[00056]このような低分子量ヒンダードアミンの具体的な例としては、例えば、セバシン酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)(チバ・スペシャルティ・ケミカルズからのチヌビン(登録商標)770、MW=481);ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)-(3,5-ジtert.ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ブチル-プロパンジオエート;セバシン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル);8-アセチル-3-ドデシル-7,7,9,9-テトラメチル-1,3,8-トリアザスピロ-(4,5)-デカン-2,4-ジオン、ブタン二酸-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)エステル;テトラキス-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート;7-オキサ-3,20-ジアザジスピロ(5.1.11.2)ヘネイコサン-20-プロパン酸、2,2,4,4-テトラメチル-21-オキソ、ドデシルエステル;N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)-N’-アミノ-オキサミド;o-t-アミル-o-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)モノペルオキシカーボネート;β-アラニン、N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)、ドデシルエステル;エタンジアミド、N-(1-アセチル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル)-N’-ドデシル;3-ドデシル-1-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)-ピロリジン-2,5-ジオン;3-ドデシル-1-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)-ピロリジン-2,5-ジオン;3-ドデシル-1-(1-アセチル,2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)-ピロリジン-2,5-ジオン(クラリアントからのサンドバル(Sanduvar)(登録商標)3058、MW=448.7);4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン;1-[2-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオニルオキシ)エチル]-4-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシルフェニルプロピオニルオキシ)-2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン;2-メチル-2-(2”,2”,6”,6”-テトラメチル-4”-ピペリジニルアミノ)-N-(2’,2’,6’,6’-テトラ-メチル-4’-ピペリジニル)プロピオニルアミド;1,2-ビス(3,3,5,5-テトラメチル-2-オキソ-ピペラジニル)エタン;4-オレオイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン;およびそれらの組合せを挙げることができる。他の好適な低分子量ヒンダードアミンは、Malikらの米国特許第5,679,733号に記載されている。
【0055】
[00057]ヒンダードアミンは、望ましい特性を達成するためのあらゆる量で、単独で、または組み合わせて採用することができるが、ヒンダードアミンは、典型的には、ポリマー組成物の約0.01wt.%~約4wt.%を構成する。
【0056】
[00058]UV吸収剤、例えばベンゾトリアゾールまたはベンゾフェノンは、紫外光エネルギーを吸収するために、組成物中に採用されてもよい。好適なベンゾトリアゾールとしては、例えば、2-(2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、例えば2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール;2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール(サイテックからのシアソルブ(登録商標)UV5411);2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾ-トリアゾール;2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール;2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール;2,2’-メチレンビス(4-tert-オクチル-6-ベンゾ-トリアゾリルフェノール);2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-カルボキシフェニル)ベンゾトリアゾールのポリエチレングリコールエステル;2-[2-ヒドロキシ-3-(2-アクリロイルオキシエチル)-5-メチルフェニル]-ベンゾトリアゾール;2-[2-ヒドロキシ-3-(2-メタクリロイルオキシエチル)-5-tert-ブチルフェニル]ベンゾトリアゾール;2-[2-ヒドロキシ-3-(2-メタクリロイルオキシエチル)-5-tert-オクチルフェニル]ベンゾトリアゾール;2-[2-ヒドロキシ-3-(2-メタクリロイルオキシエチル)-5-tert-ブチルフェニル]-5-クロロベンゾトリアゾール;2-[2-ヒドロキシ-5-(2-メタクリロイルオキシエチル)フェニル]ベンゾトリアゾール;2-[2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-(2-メタクリロイルオキシエチル)フェニル]ベンゾトリアゾール;2-[2-ヒドロキシ-3-tert-アミル-5-(2-メタクリロイルオキシエチル)フェニル]ベンゾトリアゾール;2-[2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-(3-メタクリロイルオキシプロピル)フェニル]-5-クロロベンゾトリアゾール;2-[2-ヒドロキシ-4-(2-メタクリロイルオキシメチル)フェニル]ベンゾトリアゾール;2-[2-ヒドロキシ-4-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピル)フェニル]ベンゾトリアゾール;2-[2-ヒドロキシ-4-(3-メタクリロイルオキシプロピル)フェニル]ベンゾトリアゾール;およびそれらの組合せを挙げることができる。
【0057】
[00059]同様に、例示的なベンゾフェノン光安定剤としては、2-ヒドロキシ-4-ドデシルオキシベンゾフェノン;2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン;2-(4-ベンゾイル-3-ヒドロキシフェノキシ)エチルアクリレート(サイテックからのシアソルブ(登録商標)UV209);2-ヒドロキシ-4-n-オクチルオキシ)ベンゾフェノン(サイテックからのシアソルブ(登録商標)531);2,2’-ジヒドロキシ-4-(オクチルオキシ)ベンゾフェノン(サイテックからのシアソルブ(登録商標)UV314);ヘキサデシル-3,5-ビス-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート(サイテックからのシアソルブ(登録商標)UV2908);2,2’-チオビス(4-tert-オクチルフェノラート)-n-ブチルアミンニッケル(II)(サイテックからのシアソルブ(登録商標)UV1084);3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシケイ皮酸、(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)エステル(サイテックからのシアソルブ(登録商標)712);4,4’-ジメトキシ-2,2’-ジヒドロキシベンゾフェノン(サイテックからのシアソルブ(登録商標)UV12);およびそれらの組合せを挙げることができる。
【0058】
[00060]UV吸収剤は、採用される場合、ポリマー組成物全体の約0.01wt.%~約4wt.%を構成していてもよい。
[00061]ポリマー組成物が形成されたら、それを様々な異なる用途における使用のための成型した部品に成形することができる。例えば、成型した部品は、乾燥させ予熱したプラスチック顆粒が型に注入される射出成形プロセスを使用して成形することができる。射出成形物品に加えて、本開示のポリマー組成物は、成型した物品を生産するために、あらゆる好適な成形プロセスを介してフィードできることが理解されるものとする。このような成形プロセスとしては、押出し、吹込成形、熱成形などが挙げられる。
【0059】
[00062]本開示のポリエステルポリマー組成物からポリマーコンポーネントが形成されたら、エラストマー材料は、ポリマーコンポーネントに接着したエラストマーコンポーネントを生産するためのコンポーネントの表面に適用される。ポリマーコンポーネントに適用されたエラストマー材料は、主としてあらゆる好適な弾性ポリマーから作製することができる。1種またはそれより多くの弾性ポリマーは、コーティング中に、約80重量%より多い量で、例えば約90重量%より多い量で含有されていてもよい。エラストマー材料は、あらゆる好適な弾性ポリマーから作製することができる。コーティングを生産するのに使用できる弾性ポリマーとしては、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、シリコーンエラストマーなどが挙げられる。
【0060】
[00063]一実施態様において、エラストマーコンポーネントは、コポリエステルエラストマーから形成される。例えば、一実施態様において、エラストマー材料は、セグメント化された熱可塑性コポリエステルを含有していてもよい。熱可塑性ポリエステルエラストマーは、例えば、マルチブロックコポリマーを含んでいてもよい。有用なセグメント化された熱可塑性コポリエステルエラストマーは、エステル結合によりヘッドからテールにかけて合体した、多数の繰り返しの長鎖エステル単位と短鎖エステル単位を含む。長鎖単位は、以下の式
【0061】
【0062】
によって表すことができ、短鎖単位は、以下の式
【0063】
【0064】
によって表すことができ、式中、Gは、約600~6,000の範囲の数平均分子量および約55℃未満の融点を有する長鎖ポリマー性グリコールからの末端ヒドロキシル基の除去後に残存する2価ラジカルであり、Rは、約300未満の分子量を有するジカルボン酸からのカルボキシル基の除去後に残存する炭化水素ラジカルであり、Dは、約250未満の分子量を有する低分子量ジオールからのヒドロキシル基の除去後に残存する2価ラジカルである。
【0065】
[00064]コポリエーテルエステル中の短鎖エステル単位は、コポリエーテルエステルの重量の約15~95%を提供し、コポリエーテルエステル中の短鎖エステル単位の約50~100%が同一である。
【0066】
[00065]用語「長鎖エステル単位」は、長鎖グリコールとジカルボン酸の反応生成物を指す。長鎖グリコールは、末端(または可能な限り末端の近くの)ヒドロキシ基、約600を超える分子量、例えば約600~6000の分子量、約55℃未満の融点を有し、炭素と酸素との比率が約2.0またはそれより大きいポリマー性グリコールである。長鎖グリコールは、一般的に、ポリ(酸化アルキレン)グリコールまたはポリ(酸化アルキレン)ジカルボン酸のグリコールエステルである。場合によって、化合物とグリコールまたはジカルボン酸の重合に干渉しないあらゆる置換基が存在していてもよい。反応してコポリエステルを形成する長鎖グリコールのヒドロキシ官能基は、可能な限り末端の基であってもよい。末端ヒドロキシ基は、鎖と異なる末端キャッピンググリコール単位上に配置されていてもよく、すなわち、ポリ(プロピレンオキシドグリコール)上のエチレンオキシド末端基であってもよい。
【0067】
[00066]用語「短鎖エステル単位」は、約550未満の分子量を有する低分子量化合物またはポリマー鎖単位を指す。これらは、低分子量ジオール(約250未満)をジカルボン酸と反応させることによって作製される。
【0068】
[00067]ジカルボン酸は、ジカルボン酸の縮合重合等価体を含む場合があり、すなわち、それらのエステルまたはエステルを形成する誘導体、例えば酸塩化物および無水物、またはグリコールとの重合反応において実質的にジカルボン酸のようにふるまう他の誘導体を含む場合がある。
【0069】
[00068]エラストマーの場合のジカルボン酸単量体は、約300未満の分子量を有する。これは、芳香族、脂肪族または脂環式であってもよい。ジカルボン酸は、重合反応に干渉しないあらゆる置換基またはそれらの組合せを含有していてもよい。代表的なジカルボン酸としては、テレフタル酸およびイソフタル酸、ビ安息香酸、ベンゼン核を有する置換されたジカルボキシ化合物、例えば、ビス(p-カルボキシフェニル)メタン、p-オキシ-(p-カルボキシフェニル)安息香酸、エチレン-ビス(p-オキシ安息香酸)、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、フェナントラレン(phenanthralene)ジカルボン酸、アントラレン(anthralene)ジカルボン酸、4,4’-スルホニル二安息香酸など、ならびにC1~C10アルキルおよびその他の環置換誘導体、例えばハロ、アルコキシまたはアリール誘導体が挙げられる。芳香族ジカルボン酸も存在するのであれば、p(β-ヒドロキシエトキシ)安息香酸などのヒドロキシ酸も使用することができる。
【0070】
[00069]代表的な脂肪酸および脂環式酸は、セバシン酸、1,3-または1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、グルタル酸、コハク酸、炭酸、シュウ酸、イタコン酸、アゼライン酸、ジエチルマロン酸、フマル酸、シトラコン酸、アリルマロン酸(allylmalonate acid)、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボキシレート酸、ピメリン酸、スベリン酸、2,5-ジエチルアジピン酸、2-エチルスベリン酸、2,2,3,3-テトラメチルコハク酸、シクロペンタンジカルボン酸、デカヒドロ-1,5-(または2,6-)ナフチレンジカルボン酸、4,4’-ビシクロヘキシルジカルボン酸、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルカルボン酸)、3,4-フランジカルボキシレート、および1,1-シクロブタンジカルボキシレートである。
【0071】
[00070]ジカルボン酸は、約300未満の分子量を有していてもよい。一実施態様において、フェニレンジカルボン酸、例えばテレフタル酸およびイソフタル酸が使用される。
[00071]反応してコポリエステルの短鎖エステル単位を形成する低分子量(約250未満の)ジオールとしては、なかでも特に、非環式、脂環式、および芳香族のジヒドロキシ化合物が挙げられる。2~15個の炭素原子を有するジオールとしては、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、2,2-ジメチルトリメチレン、ヘキサメチレンおよびデカメチレングリコール、ジヒドロキシシクロヘキサン、シクロヘキサンジメタノール、レソルシノール、ヒドロキノン、1,5-ジヒドロキシナフタレンなどが挙げられる。またその例としては、2~8個の炭素原子を含有する脂肪族ジオールも挙げられる。使用可能なビスフェノールとしては、なかでも特に、ビス(p-ヒドロキシ)ジフェニル、ビス(p-ヒドロキシフェニル)メタン、およびビス(p-ヒドロキシフェニル)プロパンが挙げられる。また等価なエステルを形成するジオールの誘導体も有用である(例えば、エチレンオキシドまたはエチレンカーボネートが、エチレングリコールの代わりに使用することができる)。低分子量ジオールとしてはまた、このような等価なエステルを形成する誘導体も挙げられる。
【0072】
[00072]ポリマーの調製に使用可能な長鎖グリコールとしては、ポリ(酸化アルキレン)グリコール、例えばポリエチレングリコール、ポリ(1,2-および1,3-プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ペンタメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘプタメチレンオキシド)グリコール、ポリ(オクタメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ノナメチレンオキシド)グリコール、およびポリ(1,2-ブチレンオキシド)グリコール;エチレンオキシドと1,2-プロピレンオキシドとのランダムおよびブロックコポリマー、ならびにホルムアルデヒドをグリコールと反応させることによって調製されたポリホルマール、例えばペンタメチレングリコール、またはグリコールの混合物、例えばテトラメチレンとペンタメチレングリコールとの混合物が挙げられる。
【0073】
[00073]加えて、ポリ(アルキレンオキシド)のジカルボキシメチル酸、例えばポリテトラメチレンオキシド由来のものであるHOOCCH2(OCH2CH2CH2CH2)xOCH2COOH IVが、長鎖グリコールをその場で形成するのに使用することができる。またポリチオエーテルグリコールおよびポリエステルグリコールも、有用な生成物を提供する。ポリエステルグリコールを使用することにおいて、一般的に、溶融重合中の交換への傾向を制御することに注意しなければならないが、特定の立体障害性ポリエステル、例えば、ポリ(2,2-ジメチル-1,3-プロピレンアジペート)、ポリ(2,2-ジメチル-1,3-プロピレン/2-メチル-2-エチル-1,3-プロピレン2,5-ジメチルテレフタレート)、ポリ(2,2-ジメチル-1,3-プロピレン/2,2-ジエチル-1,3-プロピレン、1,4シクロヘキサンジカルボキシレート)およびポリ(1,2-シクロヘキシレンジメチレン/2,2-ジメチル-1,3-プロピレン1,4-シクロヘキサンジカルボキシレート)は、通常の反応条件下で利用することができ、短い滞留時間が採用される場合、他のより高い反応性のポリエステルグリコールを使用してもよい。ポリブタジエンまたはポリイソプレングリコールのいずれか、これらのコポリマーおよびこれらの材料の飽和水素化生成物も、申し分のない長鎖ポリマー性グリコールである。加えて、ポリイソブチレンジエンコポリマーの酸化によって形成されたジカルボン酸のグリコールエステルは、有用な原材料である。
【0074】
[00074]上記の長鎖ジカルボン酸(IV)は、酸として重合反応混合物に追加されてもよいよいが、これは、存在する低分子量ジオールと反応し、これらは常に過量であり、対応するポリ(酸化アルキレン)エステルグリコールを形成し、次いで重合して、ポリマー鎖中でG単位を形成し、これらの特定のG単位は、1つの低分子量ジオール(Dに相当する)のみが採用される場合、構造
【0075】
【0076】
を有する。1つより多くのジオールが使用される場合、ポリマー鎖単位の各末端に異なるジオールのキャップが存在していてもよい。このようなジカルボン酸はまた、存在する場合、長鎖グリコールと反応する場合もあり、そのようなケースにおいて、Dが長鎖グリコールのポリマー性残基で置き換えられていることを除いて上記のVと同じ式を有する材料が得られる。しかしながら、低分子量ジオールは著しくモル過量で存在するため、この反応が起こる程度は極めて小さい。
【0077】
[00075]単一の低分子量ジオールの代わりに、このようなジオールの混合物を使用してもよい。この発明の組成物採用され得る熱可塑性コポリエステルエラストマーを調製することにおいて、単一の長鎖グリコールまたは等価体の代わりに、このような化合物の混合物を利用してもよく、単一の低分子量ジカルボン酸またはその等価体の代わりに、2種またはそれより多くの混合物を使用してもよい。したがって、上記の式II中の文字「G」は、単一の長鎖グリコールの残基または数々の異なるグリコールの残基を表すことができ、式IIIにおける文字Dは、1個または数個の低分子量ジオールの残基を表すことができ、式IIおよびIIIにおける文字Rは、1個または数個のジカルボン酸の残基を表すことができる。シクロヘキサンジカルボン酸のシス-トランス異性体などの幾何異性体の混合物を含有する脂肪酸が使用される場合、異なる異性体は、コポリエステルにおいて同じジオールと異なる短鎖エステル単位を形成する異なる化合物としてみなされるものとする。コポリエステルエラストマーは、従来のエステル交換反応によって作製されてもよい。
【0078】
[00076]長鎖または短鎖オキシアルキレングリコールのいずれかの、交互のランダムな長さの配列を有するコポリエーテルエステルは、結晶化が可能な高融点ブロックと、相対的に低いガラス転移温度を有する実質的に非晶質のブロックとの繰り返しを含有していてもよい。一実施態様において、ハードセグメントは、テトラメチレンテレフタレート単位で構成されていてもよく、ソフトセグメントは、脂肪族ポリエーテルおよびポリエステルグリコール由来であってもよい。特に有利なことに、上記の材料は、硬質セグメントの部分的な結晶化によって形成された微結晶のネットワークの存在のために、表面温度における変形に耐性を有する。ハードセグメントのソフトセグメントに対する比率が、材料の特徴を決定する。したがって、熱可塑性ポリエステルエラストマーの別の利点は、ソフトエラストマーおよびハードエラストプラスチックがハードおよびソフトセグメントの比率を変化させることによって生産できることである。
【0079】
[00077]1つの特定の実施態様において、ポリエステル系熱可塑性エラストマーは、以下の式:-[4GT]x[BT]yを有し、式中、4Gは、ブチレングリコール、例えば1,4-ブタンジオールであり、Bは、ポリ(テトラメチレンエーテルグリコール)であり、Tは、テレフタレートであり、xは、約0.60~約0.99であり、yは、約0.01~約0.40である。
【0080】
[00078]一形態において、熱可塑性ポリエステルエラストマーは、ポリブチレンテレフタレートと、ポリエーテルセグメントおよび/またはダイマージオールセグメントとのブロックコポリマーであってもよく、以下の構造を有していてもよい:
【0081】
【0082】
式中、aおよびbは、整数であり、2~50,000の範囲、例えば約2~約10,000の範囲で変更してもよい。上述したブロックコポリマーにおけるハードおよびソフトセグメント間の比率は、エラストマーの特性を変更するために変更してもよい。
【0083】
[00079]一形態において、エラストマー材料は、ポリブチレンテレフタレートセグメントと、ポリテトラメチレンエーテルグリコールテレフタレートセグメントとを含有するブロックコポリマーを含むコポリエステルエラストマーを含有していてもよい。
【0084】
[00080]一形態において、上記で示されるポリエステルエラストマーの密度は、約1.05g/cm3~約1.15g/cm3であってもよく、例えば約1.08g/cm3~約1.2g/cm3であってもよい。
【0085】
[00081]一形態において、コポリエステルエラストマーは、約100未満のショアD硬度を有していてもよく、例えば約90未満、例えば約80未満、例えば約70未満、例えば約60未満、例えば約50未満、例えば約40未満のショアD硬度を有していてもよい。エラストマーのショアD硬度は、一般的に、約10より大きくてもよく、例えば約15より大きくてもよく、例えば約20より大きくてもよく、例えば約25より大きくてもよい。
【0086】
[00082]エラストマー材料は、あらゆる好適な方法または技術を使用して、ポリエステル組成物から作製されたポリマーコンポーネントに適用することができる。一実施態様において、例えば、エラストマー材料は、ポリマーコンポーネントの表面上にオーバーモールド成形されて、エラストマーコンポーネントを形成することができる。例えば、ポリマーコンポーネントはまず射出成形されてもよく、冷却する前に、同様に射出成形プロセスを使用して、エラストマー材料でオーバーモールド成形されてもよい。
【0087】
[00083]本開示によれば、接着剤またはいかなる介入する密着層を使用することなく、エラストマーコンポーネントとポリマーコンポーネントの表面との間に、顕著な接着が形成される。エラストマー材料とポリマーコンポーネントの表面との間の接着強度は、例えば、約50Nより高く、例えば約55Nより高く、例えば約60Nより高く、例えば約65Nより高く、例えば約70Nより高く、また、一般的に約200N未満の剥離力を示すことができる。
【0088】
[00084]多種多様なタイプの製品は、本開示に従って作製できる。例えば、本開示に従って作製されたマルチコンポーネント物品は、医療分野における使用に特によく適しており、様々な異なるタイプの医療用製品を生産することができる。医療用製品は、例えば、吸入器、インジェクターなどであってもよい。一実施態様において、例えば、マルチコンポーネントポリマー物品は、ガスアシスト射出成形デバイスにおけるバルブのコンポーネントを生産するのに使用することができる。エラストマーコンポーネントは、ポリマーコンポーネント上にシール部材を形成することができる。エラストマーコンポーネントは、例えば、シールリングまたはOリングとして役立つ可能性がある。
【0089】
[00085]例えば、
図2を参照すると、本開示に従って作製されたマルチコンポーネント物品が示される。この物品は、上述したようにポリエステル組成物から作製されたポリマーコンポーネント14を含む。ポリマーコンポーネント14を、リングの形状を有するエラストマーコンポーネント16に接着させる。この実施態様において、エラストマーコンポーネント16は、気体や液体などの流体に対してシールするためのシール部材として役立つ。
【0090】
[00086]マルチコンポーネント物品は、多種多様なタイプのデバイスに取り入れることができる。例えば、
図3を参照すると、マルチコンポーネント物品を取り入れることができる吸入器30が示される。吸入器30は、マウスピース34に取り付けられたハウジング32を含む。吸入させようとする組成物を含有するキャニスターを受け入れるためのプランジャー36は、ハウジング32と動作可能に関連した状態である。示されていないが、プランジャーは、本開示によるエラストマーコンポーネントを含んでいてもよい。組成物は、スプレーまたは粉末を含んでいてもよい。
【0091】
[00087]使用中、吸入器30は、定量の薬物療法剤、例えば喘息の薬物療法剤を患者に投与する。喘息の薬物療法剤は、噴射剤中に懸濁もしくは溶解させてもよいし、または粉末中に含有させてもよい。患者が吸入器を作動させて薬物療法剤を吸い込むと、バルブが開き、マウスピースから薬物療法剤が出ることを可能にする。本開示によれば、制御された量の組成物をよりよく分散させるために、プランジャー36上のエラストマーコンポーネントは、ハウジングに対するシールを形成することができる。
【0092】
[00088]
図4を参照すると、本開示に従って作製できる別の医療用製品が示される。
図4では、医療用インジェクター40が例示される。医療用インジェクター40は、プランジャー44と動作可能に関連したハウジング42を含む。ハウジング42は、プランジャー44に対してスライドすることができる。医療用インジェクター40は、ばね式であってもよい。医療用インジェクターは、患者に、典型的には大腿部または臀部に薬物を注入するためのものである。医療用インジェクターは、無針であってもよいし、または針を含有していてもよい。針を含有する場合、典型的には、針の先端は、注入前、ハウジング内で保護される。一方で、無針インジェクターは、針を使用することなく皮膚を通って薬物療法剤を押し入れる加圧ガスのシリンダーを含有していてもよい。本開示によれば、プランジャー44は、シール部材を含んでいてもよく、本開示のマルチコンポーネント物品から作製されていてもよい。
【0093】
[00089]本開示は、以下の実施例を参照しながらよりよく理解することができる。
【実施例】
【0094】
[00090]3種の異なるポリエステルポリマー組成物を配合し、様々な物理的特性に関して試験した。加えて、ポリマー組成物を射出成形し、次いで、剥離強度を測定するために、コポリエステルエラストマーのストリップでオーバーモールド成形した。
【0095】
[00091]より特定には、以下のポリマー組成物を配合した。
【0096】
【0097】
[00092]上記のポリマー組成物を様々な物理的特性に関して試験し、以下の結果を得た。
【0098】
【0099】
[00093]上述したポリマー組成物を射出成形し、次いでコポリエステルエラストマーから作製されたストリップでオーバーモールド成形した。試験片は、
図1に示される。
図1に示されるように、ポリマーコンポーネント10は、エラストマーストリップ12に接着されている。エラストマーストリップは、29.3mmの幅を有していた。
【0100】
[00094]剥離速度は、剥離試験を実行するためにクランプを備えたツビック(Zwick)のテルフォートテンシルシステム(Telfort Tensile System)を使用して、100mm/分であった。剥離試験は、ISO4578/DIN EN1464に従って行われた。
【0101】
[00095]各ポリエステルポリマー組成物につき、2種の異なるコポリエステルエラストマーをポリエステルポリマーコンポーネントに接着させ、剥離強度に関して試験した。使用されたコポリエステルエラストマーは、ポリブチレンテレフタレートセグメントとダイマージオールセグメントとを含有するブロックコポリマーであった。第1のエラストマーは、25のショアD硬度を有し、一方で第2のコポリエステルエラストマーは、35のショアD硬度を有していた。以下の結果を得た。
【0102】
【0103】
[00096]上記で示したように、サンプル番号2および3は、サンプル番号1より劇的に優れた剥離強度を示した。
[00097]本発明へのこれらのおよび他の改変およびバリエーションは、添付の特許請求の範囲により詳細に記載される本発明の本質および範囲から逸脱することなく、当業者によって行うことができる。加えて、様々な実施態様の形態は、全体的または部分的のいずれでも交換できることが理解されるものとする。さらに、当業者は、前述の説明は単なる一例であり、このような添付の特許請求の範囲にさらに記載される発明を限定することは意図されないことを理解しているであろう。
【符号の説明】
【0104】
14 ポリマーコンポーネント
16 エラストマーコンポーネント
30 吸入器
32 ハウジング
34 マウスピース
36 プランジャー
40 インジェクター
42 ハウジング
44 プランジャー
【国際調査報告】