(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-23
(54)【発明の名称】トチノキ抽出物を含む組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 36/77 20060101AFI20240816BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20240816BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240816BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20240816BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240816BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20240816BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20240816BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20240816BHJP
A61K 31/7048 20060101ALI20240816BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20240816BHJP
A61K 127/00 20060101ALN20240816BHJP
【FI】
A61K36/77
A61P1/02
A61P43/00 111
A61K9/06
A61K9/08
A61Q11/00
A61K8/9789
A61K9/12
A61K31/7048
A23L33/105
A61K127:00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513777
(86)(22)【出願日】2022-08-31
(85)【翻訳文提出日】2024-04-22
(86)【国際出願番号】 KR2022013018
(87)【国際公開番号】W WO2023033535
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】10-2021-0116512
(32)【優先日】2021-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521389169
【氏名又は名称】アンジオラボ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ANGIOLAB,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】キム,ミンヨン
(72)【発明者】
【氏名】パク・ビュンヨン
(72)【発明者】
【氏名】チョ,イルファン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ウンキュ
【テーマコード(参考)】
4B018
4C076
4C083
4C086
4C088
【Fターム(参考)】
4B018LE03
4B018MD61
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4B018MF01
4B018MF06
4C076AA06
4C076AA11
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4C076CC16
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4C083AA111
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4C086AA01
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4C086NA14
4C086ZA67
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4C088BA14
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4C088MA17
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4C088MA57
4C088NA14
4C088ZA67
4C088ZC20
(57)【要約】
本発明は、有効成分としてトチノキ(horse chestnut)抽出物を含む歯周病の予防又は処置用医薬組成物、及び有効成分としてトチノキ抽出物を含む歯周病の予防又は改善用食品組成物に関し、ここで、トチノキ抽出物は、活性成分としてアビクラリン(avicularin)及びジュグラニン(juglanin)を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分としてトチノキ(horse chestnut)抽出物を含む、歯周病の予防又は処置用医薬組成物であって、トチノキ抽出物が活性成分としてアビクラリン及びジュグラニンを含む、医薬組成物。
【請求項2】
トチノキ抽出物が、トチノキ抽出物の全重量に基づいて、活性成分として0.1~4.0重量%のアビクラリン及び0.1~3.0重量%のジュグラニンを含む、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
トチノキ抽出物が、活性成分としてクエルシトリン及びアフゼリンを更に含む、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項4】
トチノキ抽出物が、トチノキ抽出物の全重量に基づいて、活性成分として1.0~7.0重量%のクエルシトリン及び0.1~3.0重量%のアフゼリンを更に含む、請求項3記載の医薬組成物。
【請求項5】
医薬組成物が、破骨細胞分化マーカーである酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ(TRAP)を阻害する、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項6】
トチノキ抽出物が、トチノキの葉を10%~50%(v/v)のアルコール水溶液で抽出し、濃縮することを含む抽出プロセスによって得られる、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項7】
トチノキ抽出物の含量が、医薬組成物の全重量に基づいて、10重量%~90重量%である、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項8】
歯周病が、歯肉炎、歯周炎、歯槽膿漏、及びインプラント周囲炎からなる群より選択される少なくとも1つである、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項9】
有効成分としてトチノキ(horse chestnut)抽出物を含む食品組成物であって、トチノキ抽出物が活性成分としてアビクラリン及びジュグラニンを含む、食品組成物。
【請求項10】
トチノキ抽出物が、トチノキ抽出物の全重量に基づいて、活性成分として0.1~4.0重量%のアビクラリン及び0.1~3.0重量%のジュグラニンを含む、請求項9記載の食品組成物。
【請求項11】
請求項1記載の歯周病の予防又は処置用医薬組成物を含有する、練り歯磨き。
【請求項12】
請求項1記載の歯周病の予防又は処置用医薬組成物を含む、うがい液。
【請求項13】
請求項1記載の歯周病の予防又は処置用医薬組成物を含む、口腔スプレー。
【請求項14】
請求項1~8のいずれか一項記載の有効成分としてトチノキ抽出物を含む医薬組成物の治療有効量を、処置が必要な対象に投与することによって、歯周病を予防又は処置するための方法。
【請求項15】
請求項1~8のいずれか一項記載の有効成分としてトチノキ抽出物を含む医薬組成物の、歯周病を予防又は処置するための使用。
【請求項16】
請求項1~8のいずれか一項記載の有効成分としてトチノキ抽出物を含む医薬組成物の、歯周病の予防又は処置用医薬を製造するための、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有効成分としてトチノキ(horse chestnut)抽出物を含む歯周病の予防又は処置用医薬組成物、及び有効成分としてトチノキ抽出物を含む歯周病の予防又は改善用食品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
歯周炎は、口腔内に生息する微生物の代謝産物である毒素によって歯の周囲の支持組織に発生する炎症の一種である。この歯周病は、初期には歯肉炎から始まり、放置されていると歯ぐきの腫れ、出血、及び深刻な口臭を伴う歯周炎になる。また、歯周炎が進行し続けると、歯根膜を支えるコラーゲンが破壊され、歯を支えている歯槽骨が溶解し、歯周靭帯が剥がれて歯周ポケットが形成され、重篤な場合には歯が損傷する進行性歯周病になる。
【0003】
歯周病の原因は、性別、人種、及び年齢によって異なる。これらの歯周病は長年にわたって悪化と小康状態を繰り返しており、糖尿病、エイズ、好中球減少症、及びダウン症などの全身疾患の患者では感染率が高い。
【0004】
歯周病を予防する最も有効な方法は、これらの微生物の活動を阻害し、炎症を起こした歯肉への血流を促進する物質を使用することによって達成できる。しかし、歯周病の予防及び/又は処置に用いられる薬剤のうち、ペニシリン、エリスロマイシン、及びテトラサイクリンなどの抗生物質は、殺菌及び増殖阻害には有効であるが、耐性菌を出現させるなどの副作用が大きく、クロルヘキシジンなどの抗菌剤は、虫歯の形成を阻害する効果があるが、毒性が強いという問題がある。したがって、副作用の少ない天然物を研究する必要がある。
【0005】
また、歯科インプラントの普及に伴い、インプラントに関連する種々の疾患が多発している。
【0006】
これらの疾患のうち、インプラント周囲炎は、天然歯ではなくインプラント周囲に現れる疾患であり、よってインプラント後に最も注意が必要な疾患である。インプラント周囲炎は、これまでに行われたインプラントの60%以上で発生すると報告されている。特に、インプラントには天然歯とは異なり、内部に神経が分布していないため、インプラント周囲炎の激増が発生の初期段階では気づかれにくく、症状の深刻な悪化を経て初めて認識されるという問題がある。
【0007】
しかし、インプラント周囲炎が発生の初期段階で処置されずに放置されると、重篤な症例ではインプラント周囲炎が歯槽骨の崩壊を引き起こす可能性さえある。よってインプラント周囲炎には慎重な処置が必要であり、インプラント周囲の深刻な骨量減少は、インプラントの失敗による再手術までも必要になる場合もある。
【0008】
また、インプラント周囲炎は、天然歯に発生する他の疾患と比べて進行が早く、また重症度も高い傾向がある。
【0009】
しかし、インプラント周囲炎の予防又は処置に使用されている既存の薬物は、インプラント周囲炎を効果的又は根本的に処置するものではなく、単にその症状を軽減するだけであった。よってインプラント周囲炎が発生した場合、薬物のみでインプラント周囲炎を処置することは困難であり、代わりに外科的処置、手術などのような他の方法が主として利用されてきた。
【0010】
よってインプラント周囲炎を効果的に予防又は処置できる薬物を開発する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】韓国登録特許公報第10-2260037号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、長期投与しても副作用がなく、細胞毒性が低いため安全であり、破骨細胞の分化阻害により歯周病を抑制する、歯周病の予防又は処置用医薬組成物及び歯周病の予防又は改善用食品組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、歯周病の予防又は処置に関する研究の必要性を認識し、そのような疾患を予防又は処置できる天然物質の研究という目的を達成しようと試みた。
【0014】
具体的には、本発明者らは、長期間投与しても毒性や副作用がなく、破骨細胞の分化を効果的に阻害して骨量減少を低下させ、骨量減少により誘導されるか又は骨量減少に起因する歯周病の発症を予防/処置できる天然物を研究する中で本発明を完成した。トチノキ抽出物は、酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ(以下「TRAP」という)を阻害することにより、歯周病に対する予防及び/又は治療効果を有することが確認された。
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0016】
有効成分としてトチノキ抽出物を含む歯周病の予防又は処置用医薬組成物
本発明は、歯周病の予防又は処置用の有効成分としてトチノキ抽出物を含む医薬組成物であり、歯周病の予防又は処置用のトチノキ抽出物の活性成分としてアビクラリン(avicularin)及びジュグラニン(juglanin)を含む医薬組成物を提供する。
【0017】
本発明において「トチノキ(Horse Chestnut)」という用語は、トチノキ科(Hippocastanaceae)に属し、そしてコンカー・ツリー(Conker Tree)ともフランスではマロニエ(Marronier)とも呼ばれる。
【0018】
本発明の例示的な実施態様において、トチノキ抽出物は、葉又は種子から(Saraja)、特に葉から得ることができる。
【0019】
例えば、本発明のトチノキ抽出物は、市販のトチノキの葉又は春から秋に収穫した葉を陰干しするといったように使用してもよい。あるいはトチノキ抽出物は、トチノキの種子から調製されるトチノキの乾燥抽出物であってもよく、トリテルペン配糖体、即ち無水エシン(aescin)を10重量%以上の量で含むものを使用してもよい。より好ましくは、トチノキの葉の抽出物を使用することができる。
【0020】
本発明の例示的な実施態様において、トチノキは、トチノキ(Aesculus turbinata BLUME)、シナトチノキ(Aesculus chinensis Bge及びAesculus wilculus Rehd)、ヨーロッパトチノキ(Aesculus hippocastanum L.)など、特にヨーロッパトチノキ(Aesculus hippocastanum L. Kalisz, Poland)であってもよいが、これらに限定されない。
【0021】
本発明において「抽出物」という用語は、当該技術分野において通常用いられる粗抽出物を意味するが、広義にはその抽出物を更に分画して得られる画分をも含み、そして具体的には本発明には、抽出によって得られた抽出物、抽出物の希釈物又は濃縮物、抽出物を乾燥して得られた乾燥生成物、抽出物の粗生成物又は精製生成物又は混合生成物、抽出物を使用して形成され得る全ての製剤の抽出物、及び抽出物自体が含まれる。
【0022】
本発明において「有効成分」という用語は、その固有の薬理作用により組成物の効力を直接的又は間接的に発現すると期待される物質又は物質群(薬理活性成分が同定されていない漢方薬などを含む)のことをいい、そして主成分を含むことを意味する。
【0023】
本発明において「歯周病」という用語は、歯の周囲の歯肉、歯根膜、及び歯槽骨などの歯の周囲の組織に現れる疾患のことをいう。
【0024】
本発明において「予防」という用語は、本発明のトチノキ抽出物の投与により、破骨細胞分化マーカーであるTRAPを阻害することによって、歯周病を抑制するか又は遅延させる任意の作用のことをいう。
【0025】
本発明において、「処置」という用語は、本発明のトチノキ抽出物の投与により、破骨細胞分化マーカーであるTRAPを阻害することによって、歯周病を改善するか又は有益に変化させる任意の作用のことをいう。
【0026】
本発明において、トチノキ抽出物は、活性成分としてアビクラリン及びジュグラニンを含む。
【0027】
本発明のトチノキ抽出物の活性成分であるアビクラリンは、下記化学式1で表すことができる。
【0028】
【0029】
本発明のトチノキ抽出物の活性成分であるジュグラニンは、下記化学式2で表すことができる。
【0030】
【0031】
本発明において、トチノキ抽出物は、活性成分としてアビクラリンを、トチノキ抽出物の全重量に基づいて0.1~4.0重量%の量で、特に0.3~3.0重量%、更には0.5~2.0重量%の量で含むことができる。
【0032】
本発明において、トチノキ抽出物は、活性成分としてジュグラニンを、トチノキ抽出物の全重量に基づいて0.1~3.0重量%の量で、特に0.12~2.0重量%、更には0.15~1.0重量%の量で含むことができる。
【0033】
本発明において、トチノキ抽出物は、別の活性成分としてクエルシトリン(quercitrin)及びアフゼリン(afzelin)を更に含むことができる。
【0034】
本発明のトチノキ抽出物の活性成分であるクエルシトリンは、下記化学式3で表すことができる。
【0035】
【0036】
本発明のトチノキ抽出物の活性成分であるアフゼリンは、下記化学式4で表すことができる。
【0037】
【0038】
本発明において、トチノキ抽出物は、活性成分としてクエルシトリンを、トチノキ抽出物の全重量に基づいて1.0~7.0重量%の量で、特に1.3~6.0重量%、更には1.5~5.0重量%の量で含むことができる。
【0039】
本発明において、トチノキ抽出物は、活性成分としてアフゼリンを、トチノキ抽出物の全重量に基づいて0.1~3.0重量%の量で、特に0.2~2.0重量%、更には0.3~1.0重量%の量で含むことができる。
【0040】
即ち、トチノキ抽出物は、トチノキ抽出物の全重量に基づいて活性成分として0.1~4.0重量%のアビクラリン、1.0~7.0重量%のクエルシトリン、0.1~3.0重量%のジュグラニン、及び0.1~3.0重量%のアフゼリンを含むことができ、特に(1)0.3~3.0重量%のアビクラリン、1.3~6.0重量%のクエルシトリン、0.12~2.0重量%のジュグラニン、及び0.2~2.0重量%のアフゼリン、(2)0.5~2.0重量%のアビクラリン、1.5~5.0重量%のクエルシトリン、0.15~1.0重量%のジュグラニン、及び0.3~1.0重量%のアフゼリンを含むことができる。
【0041】
以下、例示的な実施態様において、本発明のトチノキ抽出物は、特に断りない限り、アビクラリン、クエルシトリン、ジュグラニン及びアフゼリンを上記重量%で含むことができる。
【0042】
本発明において、トチノキ抽出物中のアビクラリン、クエルシトリン、ジュグラニン及びアフゼリンの含量は、抽出物に含まれるアビクラリン、クエルシトリン、ジュグラニン及びアフゼリンの含量を定量することによって測定することができる。
【0043】
本発明のトチノキ抽出物に含まれるアビクラリン、クエルシトリン、ジュグラニン、及びアフゼリンは、定量過程において他の物質に変換される可能性があるため、トチノキ抽出物中の成分を正確に定量するには、定量過程を厳密に制御する必要がある。
【0044】
特に、本発明のトチノキ抽出物がアビクラリンとジュグラニンとを上記範囲内の重量比で含む場合に、歯周病の予防又は処置効果は優れたものとなろう。
【0045】
具体的には、トチノキ抽出物の活性成分としてのアビクラリン及びジュグラニンは、トチノキ抽出物の活性成分として開示されたことがない新規成分であり、アビクラリン及びジュグラニンは破骨細胞の分化を阻害する機能性成分と考えることができる。
【0046】
ただし、トチノキ抽出物中のアビクラリン及びジュグラニンの含量は、地域、年、及び収穫時期により、効果が維持される範囲内で変化してもよい。
【0047】
本発明の医薬組成物は、破骨細胞分化マーカーであるTRAPを阻害することにより歯周病の予防及び処置に効果を有し、そして副作用が少なく優れた薬理効果を有する。
【0048】
具体的には、骨代謝及び骨形成において、骨芽細胞による骨形成と破骨細胞による骨吸収とのバランスにより骨の恒常性が維持されている。破骨細胞は骨の表面に付着し、酸やタンパク質分解酵素を分泌して、骨を構成する骨基質を除去し、老化した骨を溶解する。
【0049】
破骨細胞の分化が活性化すると、骨を分解する種々の酵素が産生される。骨を酸化して分解する酸性ホスファターゼ酵素であるTRAPは、破骨細胞の特別なマーカーとして使用される。
【0050】
具体的には、TRAPの分泌は、破骨細胞が骨吸収を行う際に増加し、ATP及びニトロフェニルリン酸塩が存在すると活性が高くなる。TRAPは、破骨細胞の分化の程度を測定できる細胞化学マーカー酵素である。
【0051】
したがって、破骨細胞分化に対する阻害効果を評価する方法は、TRAPの活性を分析することであり、本発明の医薬組成物がTRAPの活性を阻害することにより骨破壊を防止できることが確認できる。
【0052】
別の態様において、トチノキ抽出物100gに基づいて、活性成分としてアビクラリン0.5~2.0gが含まれてもよい。
【0053】
別の態様において、トチノキ抽出物100gに基づいて、活性成分としてクエルシトリン1.5~5.0gが含まれてもよい。
【0054】
別の態様において、トチノキ抽出物100gに基づいて、活性成分としてジュグラニン0.15~1.0gが含まれてもよい。
【0055】
別の態様において、トチノキ抽出物100gに基づいて、活性成分としてアフゼリン0.3~1.0gが含まれてもよい。
【0056】
本発明において、トチノキ抽出物は、トチノキの葉を10%~50%(v/v)アルコール水溶液で抽出して濃縮することを含む抽出プロセスによって得ることができる。
【0057】
本発明において、「アルコール」という用語は、アルキル又は置換アルキルの炭素原子にヒドロキシル基が結合した化合物のことをいい、そして「アルキル」という用語は、直鎖状の飽和炭化水素基又は分岐状の飽和炭化水素基のことをいい、そして「置換アルキル基」という用語は、アルキル基の炭素に結合した置換基がヒドロキシ、シアノ、ハロゲン化物などであることを意味する。
【0058】
本発明の例示的な実施態様において、水性アルコールは、20~30%(v/v)のアルコール水溶液であってもよい。
【0059】
アルコール水溶液とは、20~30%(v/v)エタノール水溶液、メタノール水溶液などを含むC1~C4アルコールのことをいい、好ましくはエタノール水溶液又はメタノール水溶液、より好ましくは25%(v/v)エタノール水溶液のことをいう。
【0060】
本発明において、「C1~C4」という用語は、1~4個の炭素原子を有する官能基又は主鎖を意味する。
【0061】
本発明において、抽出物は、熱風乾燥法、又は凍結乾燥法、又は噴霧乾燥法を使用して乾燥することができる。例えば、抽出物は、熱風乾燥機を用いて熱風乾燥してもよいし、又は抽出物を凍結させて気圧を下げて凍結乾燥してもよいし、又は抽出物を噴霧して熱風を吹き付けて噴霧乾燥してもよい。
【0062】
本発明のトチノキ抽出物の調製において、乾燥したトチノキの葉、乾燥していないトチノキの葉、又はそれらの混合物を使用することができる。効果的に抽出するには、トチノキの葉を細かく砕いて使用することができる。
【0063】
本発明において、アルコール抽出物は以下の工程により得ることができるが、これに限定されるものではない。
(S1)トチノキの葉を10%~50%(v/v)のアルコール水溶液で75~85℃で1~5時間抽出してアルコール抽出物を得る抽出工程;
(S2)アルコール抽出物を25~35℃の温度条件、及び-755~-650mmHgの圧力条件下で濃縮して濃縮抽出物を得る工程;並びに
(S3)濃縮抽出液にBrix濃度20~40%になるように精製水を加えて、これを溶解し、次に溶解した濃縮抽出液を凍結乾燥してトチノキ抽出物を得る工程。
【0064】
本発明において、(S1)のアルコール抽出物は、トチノキの葉の5~15倍(v/w)の10~50%(v/v)アルコール水溶液、好ましくは20~30%(v/v)アルコール水溶液を用いて調製することができ、そして工程(S1)は、1、2又は3回繰り返すことができ、例えば、2又は3回繰り返す場合、各工程のアルコール抽出物が得られ、分離され、そして最後に混合されて、アルコール抽出物が得られる。
【0065】
歯周病の予防又は処置用医薬組成物は、有効成分としてトチノキ抽出物を全重量に基づいて10~90重量%の量で含むことができる。特に、15~70重量%の量のトチノキ抽出物、更には40~60重量%の量のトチノキ抽出物、更に詳細には45~55重量%の量のトチノキ抽出物が含まれていてもよい。
【0066】
本発明において、歯周病は、歯肉炎、歯周炎、歯槽膿漏、及びインプラント周囲炎からなる群より選択される1つ以上であってもよい。
【0067】
本発明において、「歯肉炎」という用語は、歯肉、言い換えれば歯茎の炎症のことをいう。これは、単純性歯肉炎、潰瘍性歯肉炎、壊疽性歯肉炎、及び肥大性歯肉炎に分類することができる。
【0068】
本発明において、「歯周炎(periodontitis)」という用語はまた、歯周炎(paradentitis)とも呼ばれ、歯周組織に影響を及ぼす炎症性疾患のことをいう。
【0069】
本発明において、「歯槽膿漏」という用語は、慢性辺縁性歯周炎のことをいい、化膿性歯根膜炎の症状である。
【0070】
本発明において、「インプラント周囲炎」という用語は、歯科インプラント周囲の歯肉骨組織に生じる炎症性疾患のことをいう。
【0071】
本発明のトチノキ抽出物を含む歯周病の予防又は処置用医薬組成物は、有効成分としてトチノキ抽出物を含み、そして散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、エアゾール剤などの経口投与剤形に、並びに外用剤及び無菌注射剤用に、従来法により製剤化するための薬学的に許容し得る担体を更に含むことができる。
【0072】
本発明において、「薬学的に許容し得る」という用語は、生理学的に許容し得る組成物であって、かつヒトに投与された場合に胃腸障害、目まい、又は類似の反応などのアレルギー反応を通常引き起こさない組成物のことをいう。
【0073】
本発明において、「薬学的に許容し得る担体」という用語は、典型的には、医薬組成物の液体又は非液体ベースを含む。医薬組成物が液体の形態で提供される場合、担体は典型的には、パイロジェンフリー水;等張食塩水又は緩衝(水)溶液、例えば、リン酸塩、クエン酸などを含む。注射用緩衝液は、特定の基準媒体中で高張、等張、又は低張であってもよい、即ち、緩衝液は、特定の基準媒体中で高い、等しい、又は低い塩含量を有してもよく、好ましくは、浸透圧又は他の濃度効果による細胞損傷を誘発しないような濃度の前述の塩を使用することができる。
【0074】
基準媒体は、「インビボ」法において存在し、例えば、血液、リンパ液、細胞質液、若しくは他の体液、又は「エクスビボ」法において基準媒体として(例えば、一般的な緩衝液又は液体として)使用できる体液などである。このような一般的な緩衝液又は液体は当業者には公知である。
【0075】
薬学的に許容し得る担体は、当該技術分野で一般的に使用されるもの、例えば、乳糖、デキストロース、ショ糖、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン、アカシアゴム、アルギン酸塩、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウム及びミネラルオイルなどを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0076】
更に、本発明の医薬組成物は、充填剤、増量剤、結合剤、保湿剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤又は賦形剤、及び他の薬学的に許容し得る添加剤を含んでもよい。
【0077】
本発明の医薬組成物は、液剤、懸濁剤、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、丸剤又はエキスの剤形に製造することができる。
【0078】
本発明の組成物は、経口又は非経口(例えば、リニメント剤、又は静脈内、皮下、腹腔内注射)投与することができる。
【0079】
本発明において、「経口投与」という用語は、病的症状(歯周病)を軽減するために薬物を口から入れる方法であり、そして本発明において、「非経口投与」という用語は、口からの投与を除いて、チューブを用いた皮下、筋肉内、静脈内、又は腹腔内投与の方法のことをいう。
【0080】
経口投与のための固体投与剤形は、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、ソフトカプセル剤、丸剤などを含んでもよい。経口投与のための液体投与剤形は、懸濁剤、内服液、乳剤、シロップ剤、エアゾール剤などを含んでもよく、そして単純な希釈剤としてよく使用される、水や流動パラフィンの他に、種々の添加剤、例えば、保湿剤、甘味剤、香味剤、保存剤などを含んでもよい。
【0081】
非経口投与の投与剤形としては、滅菌水溶液、液剤、非水溶媒、懸濁化剤、乳剤、点眼剤、眼軟膏剤、シロップ剤、坐剤、エアゾール剤などの外用剤、並びに滅菌注射剤を従来法により製剤化して使用することができ、好ましくはクリーム剤、ゲル剤、パッチ剤、スプレー剤、軟膏剤、硬膏剤、ローション剤、リニメント剤、眼軟膏剤、点眼剤、パスタ剤又はパップ剤製剤を製剤化することができるが、これらに限定されない。局所投与用の組成物は、臨床処方に応じて、無水性であっても水性であってもよい。非水溶媒及び懸濁化剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、及びオレイン酸エチルなどの注射用エステル類を使用することができる。坐剤の基剤としては、ウィテプゾール、マクロゴール、トゥイーン61、カカオ脂、ラウリン、グリセロゼラチンなどを使用することができる。
【0082】
本発明の薬学的に許容し得る添加剤は、組成物に基づいて0.1~99.9重量部、具体的には0.1~50重量部で含まれ得るが、この範囲に限定されない。
【0083】
本発明において、有効成分としてトチノキ抽出物を含む歯周病の予防又は処置用医薬組成物は、TRAPに対する阻害作用を示し、よって歯周病の予防又は処置効果を有する。有効成分としてトチノキ抽出物を含む歯周病の予防又は処置用医薬組成物は、従来どおりに、経口、直腸内、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、胸骨内、経皮、局所、眼内又は皮内の経路により投与することができ、そして特に経口経路により投与することができる。
【0084】
本発明の有効成分としてトチノキ抽出物を含む歯周病の予防又は処置用医薬組成物は、1日1回又は数回投与する場合、好ましくは0.001mg/kg~50mg/kgの用量で投与される。
【0085】
有効成分としてトチノキ抽出物を含む食品組成物
有効成分としてトチノキ抽出物を含む食品組成物であって、歯周病の予防又は改善用の活性成分としてアビクラリン及びジュグラニンを含む組成物を提供する。
【0086】
本発明において、トチノキ抽出物は、トチノキ抽出物の全重量に基づいて活性成分として0.6~1.5重量%のアビクラリン及び0.2~0.4重量%のジュグラニンを含む。
【0087】
トチノキ抽出物及びその調製方法は、上記と同様である。
【0088】
食品組成物は、歯周病の改善又は予防用である。
【0089】
本発明において、「改善」という用語は、歯周病の症状の重症度を少なくとも軽減する任意の作用を意味する。
【0090】
本発明の食品組成物において、トチノキ抽出物が食品組成物中の添加物として使用される場合には、そのまま添加することもできるし、又は他の食品や食品成分と併用することもでき、そして従来法により適宜使用することができる。有効成分の混合量は、予防、健康又は処置などの各使用目的に応じて適宜決定することができる。
【0091】
本発明の食品組成物の製剤は、散剤、顆粒剤、丸剤、錠剤、及びカプセル剤と同様に、一般の飲食物のいずれの形態にもなし得る。
【0092】
食品の種類は特に限定されず、物質を添加することができる食品の例は、肉類、ソーセージ、パン、チョコレート、キャンディー、スナック、菓子類、ピザ、ラーメン、その他の麺類、ガム類、及びアイスクリームを含む乳製品、各種スープ、飲料、お茶、アルコール飲料、及び複合ビタミン剤を含み、そして従来の意味でのあらゆる食品を含むことができる。
【0093】
一般に、飲食物の製造において、トチノキ抽出物は、100重量部の原料に基づいて、15重量部以下、好ましくは10重量部以下の量で添加してもよい。ただし、保健衛生や健康管理のために長期的に摂取する場合には、上記の範囲よりも少ない場合がある。更に、本発明では天然物からの抽出物を使用しており安全性の点で問題がないため、上記範囲を超えて使用することもできる。
【0094】
本発明の食品組成物における飲料は、従来の飲料と同様に、追加成分として種々の香味剤又は天然炭水化物を含んでもよい。天然炭水化物としては、ブドウ糖やフルクトースなどの単糖類、マルトースやショ糖などの二糖類、デキストリンやシクロデキストリンなどの多糖類、並びにキシリトール、ソルビトール、及びエリスリトールなどの糖アルコール類が挙げられる。甘味料としては、ソーマチンやステビア抽出物などの天然甘味料、又はサッカリンやアスパルテームなどの合成甘味料を使用することができる。天然炭水化物の割合は、本発明の飲料100mLあたり約0.01~0.04g、好ましくは約0.02~0.03gであってもよい。
【0095】
上記に加えて、本発明の食品組成物は、種々の栄養素、ビタミン類、電解質、香味剤、着色剤、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護コロイド性増粘剤、pH調整剤、安定剤、保存料、グリセリン、アルコール、及び炭酸飲料に使用される炭酸化剤を含む。更に、本発明の食品組成物は、果汁飲料及び野菜飲料を製造するために、天然果汁、及び果肉を含んでもよい。これらの成分は、単独で使用してもよいし、組合せて使用してもよい。これらの添加物の割合は特に限定されないが、通常、本発明の食品組成物100重量部に対して0.01~0.1重量部の範囲で選択される。
【0096】
予防又は処置の方法
本発明の別の目的は、有効成分としてトチノキ抽出物を含む治療有効量の医薬組成物を処置が必要な対象に投与することにより、歯周病を予防又は処置する方法を提供することである。
【0097】
本発明の実施態様において、「処置が必要な対象」という用語は、ヒトを含む哺乳動物のことをいい、そして「投与」という用語は、任意の適切な方法によって患者に所定の物質を提供することをいう。本発明の処置方法において、有効成分としてトチノキ抽出物を含む歯周病の予防又は処置用医薬組成物は、従来どおりに、経口、直腸内、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、胸骨内、経皮、局所、眼内又は皮内経路により投与することができる。
【0098】
本発明の歯周病の予防又は処置方法において、本発明のトチノキ抽出物は、従来どおりに、経口、直腸内、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、胸骨内、経皮、局所、眼内又は皮内経路により投与することができ、そして特に、経口投与が可能である。
【0099】
本発明の実施態様において、「治療有効量」という用語は、研究者、獣医師、医師、又は他の臨床家によって考慮される、組織系、動物、又はヒトにおいて生物学的又は医学的反応を誘発する有効成分又は医薬組成物の量のことをいい、これには、処置中の疾患又は障害の症状の改善を誘発する量が含まれる。本発明の有効成分の治療上有効な投与量及び投与頻度が、所望の効果に応じて変化することは当業者には明らかである。したがって、最適な投与量は、当業者であれば容易に決定することができ、そして疾患の種類、疾患の重症度、組成物に含まれる有効成分及び他の成分の含量、製剤の種類、並びに患者の年齢、体重、健康状態、性別及び食事、投与時間、投与経路及び組成物の分泌速度、処置期間、並びに併用薬を含む種々の要因によって調整することができる。
【0100】
本発明の歯周病の予防又は処置方法において、本発明のトチノキ抽出物は、1日1回又は数回投与される場合、好ましくは成人に対して0.001mg/kg~50mg/kgの用量で投与される。
【0101】
歯周病の予防又は処置用の有効成分としてトチノキ抽出物を含む医薬組成物の使用
本発明の目的は、歯周病を予防又は処置するための有効成分としてトチノキ抽出物を含む医薬組成物の使用を提供することである。
【0102】
歯周病の予防又は処置用医薬の製造のための、有効成分としてトチノキ抽出物を含む医薬組成物の使用
本発明の目的は、歯周病の予防又は処置用医薬の製造のための、有効成分としてトチノキ抽出物を含む医薬組成物の使用を提供することである。
【0103】
本発明の例示的な実施態様において、医薬の製造のための有効成分としてトチノキ抽出物を含む医薬組成物は、許容し得る担体などと混合することができ、そして他の薬剤を更に含むことができる。
【0104】
有効成分としてトチノキ抽出物を含む歯周病の予防又は処置用医薬組成物を含有するその他の日用品
本発明の目的は、歯周病の予防又は処置用の有効成分としてトチノキ抽出物を含む医薬組成物を含有する練り歯磨きを提供することである。
【0105】
本発明において、歯周病の予防又は処置用医薬組成物が練り歯磨きとして使用される場合、組成物はそのまま練り歯磨きに添加してもよいか、又は機能性食品若しくは機能性成分と混合するか若しくはこれらを添加してもよく、そして従来法により適宜使用することができる。有効成分の配合量は、使用目的に応じて適宜決定することができる。
【0106】
具体的には、フッ素化合物、湿潤剤、発泡剤、結合剤、甘味料、研磨剤、香味剤、保存料などを含む練り歯磨きに通常使用される添加剤を含むことができ、そしてその具体的な種類としては、練り歯磨きに一般に種々の方法で使用できるものであれば限定されない。
【0107】
本発明の別の目的は、歯周病の予防又は処置用医薬組成物を含むうがい液を提供することである。
【0108】
うがい液は、口腔内をうがいできる組成物、口腔内の洗浄及び抗菌作用のためのフッ素化合物、湿潤剤、発泡剤、結合剤、甘味料、研磨剤、香味剤、保存剤などを含み、そしてその特定の種類としては、一般的なうがい液に使用できるものであれば限定されない。特定の配合物は、当業者が選択及び混合することができる組成及び混合範囲の両方を含むものとして定義される。
【0109】
本発明の別の目的は、歯周病の予防又は処置用医薬組成物を含む口腔スプレーを提供することである。
【0110】
口腔スプレーは、口腔内の洗浄及び抗菌作用のための全ての組成物及び他の薬剤を含んでいてもよい。特定の配合物は、当業者が選択及び混合することができる全ての組成及び混合範囲を含むものとして定義される。
【0111】
本発明の医薬組成物、処置方法、使用、及びその他の日用品は、互いに矛盾しない限り同様に適用される。
【0112】
本発明の利点及び特徴、並びにそれらを達成するための方法は、以下に詳細に説明される例示的な実施態様を参照して明らかになるであろう。しかしながら、本発明は以下に開示される例示的な実施態様に限定されるものではなく、様々な異なる形態で実行に移されよう。これらの例示的な実施態様は、本発明の開示を充実させるだけであり、本発明が関係する技術分野の当業者に本発明の範囲を十分に知らせるために提供されており、そして本発明は請求の範囲によってのみ定義される。
【発明の効果】
【0113】
本発明のトチノキ抽出物は、細胞毒性が低く安全であり、そして破骨細胞の分化に及ぼす阻害効果を示す。
【0114】
したがって、本発明の有効成分としてトチノキ抽出物を含む組成物は、歯周病の予防又は処置に有用であり得、副作用が著しく少なく、そして歯周病の予防又は処置効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【
図1】
図1は、本発明の実施例1により調製されたトチノキ抽出物の高速液体クロマトグラフィー(以下「HPLC」という)の結果を示している。
【
図2】
図2は、アビクラリンのHPLC結果を示している。
【
図3】
図3は、クエルシトリンのHPLC結果を示している。
【
図4】
図4は、ジュグラニンのHPLC結果を示している。
【
図5】
図5は、アフゼリンのHPLC結果を示している。
【
図6】
図6は、本発明の実施例1により調製されたトチノキ抽出物の細胞毒性アッセイの結果である。
【
図7】
図7は、アビクラリンの細胞毒性アッセイの結果である。
【
図8】
図8は、クエルシトリンの細胞毒性アッセイの結果である。
【
図9】
図9は、ジュグラニンの細胞毒性アッセイの結果である。
【
図10】
図10は、アフゼリンの細胞毒性アッセイの結果である。
【
図11】
図11は、本発明の実施例1により調製されたトチノキ抽出物によるTRAP活性の阻害を示している。
【
図12】
図12は、アビクラリンによるTRAP活性の阻害を示している。
【
図13】
図13は、クエルシトリンによるTRAP活性の阻害を示している。
【
図14】
図14は、ジュグラニンによるTRAP活性の阻害を示している。
【
図15】
図15は、アフゼリンによるTRAP活性の阻害を示している。
【発明を実施するための形態】
【0116】
発明を実施するための最良の形態
本明細書に使用される用語は、本発明の機能を考慮しながら、可能な限り現在広く使用されている一般的な用語を選択したものであるが、当業者の意図や先例、新技術の出現などに応じて変化する場合がある。更に、特定の場合には、出願人が任意に選択した用語が存在するが、この場合の意味については、本発明の説明において詳しく説明されよう。したがって、本発明により使用される用語は、単なる用語の名称ではなく、用語の意味と本発明の全体的な内容に基づいて定義されるべきである。
【0117】
他に定義されない限り、技術用語又は科学用語を含む本明細書に使用される全ての用語は、本発明が関係する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。一般に使用される辞書で定義されているような用語は、関連技術に照らした意味と一致する意味を有するものと解釈されるものとし、本願において明示的に定義されない限り、理想的に又は過度に形式的な意味で解釈されないものとする。
【0118】
数値範囲には、その範囲内で定義された数が含まれる。本明細書の至るところで与えられる全ての最大数値限界には、あたかも1つの下限数値が明記されているかのように、全ての下限数値が含まれる。本明細書の至るところで与えられる全ての最小数値限界には、あたかも1つの上限数値が明記されているかのように、全ての上限数値が含まれる。この明細書の至るところで与えられる全ての数値限界には、あたかもより狭い数値限界が明記されているかのように、より広い数値範囲内でより優れた全ての数値範囲が含まれるであろう。
【0119】
本発明の理解を助けるために、実施例及び製造例が提示される。以下の実施例及び製造例は、本発明の理解を容易にするためだけに提供されるものであり、本発明の内容がこれらの実施例及び製造例に限定されるものではない。
【実施例】
【0120】
実施例1.トチノキ抽出物の調製
ポーランド、カリシュ(Kalisz)産のトチノキ(Aesculus hippocastanum L.)の葉を室温で日陰で乾燥させ、次に破砕した。破砕葉80kgを25%(v/v)エタノール水溶液800Lにより80℃で3時間抽出し、25μmのカートリッジフィルターで濾過して一次抽出液450Lを得た。
トチノキの葉の残渣を25%(v/v)エタノール水溶液800Lにより80℃で3時間抽出し、25μmのカートリッジフィルターで濾過して二次抽出液830Lを得た。
一次抽出液と二次抽出液(抽出液合計1280L)を混合した後、これを温度75~85℃、-755~-650mmHgの条件下で濃縮して、濃縮抽出液20Lを得た。
次いで、濃縮抽出液に精製水50Lを加え、20~30℃で減圧濃縮してエタノール溶媒を除去し、精製水60Lを加えてBrix濃度25~35%になるように溶解した。凍結乾燥機で凍結乾燥後、粉砕機の0.5mmの粉砕網上で1,200rpmで粉砕してトチノキ抽出物の凍結乾燥粉末18kgを得た。
【0121】
実施例2.トチノキ抽出物の成分
(1)分析方法
トチノキ抽出物が、アビクラリン、クエルシトリン、ジュグラニン及びアフゼリンを、特にトチノキ抽出物に活性成分として含まれることが知られていないアビクラリン及びジュグラニンを含むか否かを以下のとおり確認した。
トチノキ抽出物100mgをチューブに入れ、100%メタノール100mLに十分に溶解し、0.22μmのフィルターで濾過してHPLCを行った。結果を
図1に示した。
更に、アビクラリン、クエルシトリン、ジュグラニン、及びアフゼリンのそれぞれについてHPLCを行い、結果をそれぞれ
図2~5に示した。
HPLCの実施条件は以下のとおりとした。
i)カラム:CAPCELL PAK C18 UG120(SHISEIDO、4.6×250mm、5μm)
ii)検出器:UV254nm
iii)流量:1.0mL/分
iv)移動相
移動相A:0.1%(w/v)リン酸、移動相B:アセトニトリル
【0122】
【0123】
(2)結果
実施例1により得られたトチノキ抽出物には、上記分析方法によりアビクラリン、クエルシトリン、ジュグラニン、及びアフゼリンが含まれており、そして特に、トチノキ抽出物の活性成分として知られていないアビクラリン及びジュグラニンが含まれることが確認された。
これらの含量は以下のとおりであった。
アビクラリン:0.7重量%
クエルシトリン:2.2重量%
ジュグラニン:0.2重量%
アフゼリン:0.4重量%
【0124】
試薬の調製
アビクラリン、クエルシトリン、ジュグラニン、及びアフゼリンはSigma-Aldrich Koreaから購入し、その他の試薬もSigma-Aldrich、Sigma-Aldrich Korea及びDuksan General Scienceから購入した。
【0125】
実験例
実験例1.細胞毒性アッセイ
(1)実験方法
マウスマクロファージ細胞株のRAW264.7細胞を96ウェルプレート(Corning, USA)に細胞数が1×103細胞/ウェルとなるように分注し、次にそれぞれ1.25、2.5、5、及び10μ/mlの濃度の本発明のトチノキ抽出物で細胞を処理して、5% CO2インキュベーターで37℃で4日間培養した。更に、トチノキ抽出物の主成分であるアビクラリン、クエルシトリン、ジュグラニン、及びアフゼリンそれぞれ2.5、5、10、及び25μMの濃度で処理し、同様に培養した。各ウェルから培地全100μlを除去し、各ウェルを1×PBS(リン酸緩衝生理食塩水)で洗浄後、新鮮培地100μlを加えた。細胞を1ウェルあたりXTT試薬50μlで処理し、次いで4時間反応させた。ELISA(酵素結合免疫吸着法)リーダー(Molecular Devices, USA)により490nm及び650nm(基準波長)でその吸光度変化を測定して、細胞生存率を百分率で表した。
【0126】
(2)結果
図6の結果から、本発明の実施例1のトチノキ抽出物は、25、50、75、及び100μg/mLの濃度で細胞毒性を示さず、そして更に、アビクラリン、クエルシトリン、ジュグラニン、及びアフゼリンは、それぞれ2.5、5、10、及び25μMの濃度で細胞毒性を示さなかった(
図7~
図10を参照のこと)。
【0127】
実験例2.トチノキ抽出物及びその主成分のTRAP阻害活性
(1)実験方法
破骨細胞の分化に対するトチノキ抽出物の効果を確認するために、NFκB活性化受容体リガンド(以下「RANKL」という)でマウスマクロファージ細胞株(以下「Raw 264.7細胞」という)を処理して破骨細胞の分化を誘導した。実施例1のトチノキ抽出物とトチノキ抽出物の主成分、即ち、アビクラリン、クエルシトリン、ジュグラニン、及びアフゼリンでそれぞれ処理して、破骨細胞特異的マーカーであるTRAPの活性を測定した。
具体的には、Raw 264.7細胞を96ウェルプレートに3×103細胞/ウェルの密度で分注し、RANKLで最終濃度100ng/mlに処理し、次いで実施例1のトチノキ抽出物それぞれ1.25、2.5、5、及び10μg/mlの濃度で処理した。細胞を5% CO2インキュベーターで37℃で4日間培養した。
更に、トチノキ抽出物の主成分であるアビクラリン、クエルシトリン、ジュグラニン、及びアフゼリンそれぞれ2.5、5、10、及び25μMの濃度で処理して、同様に培養した。
培地を除去後、抽出液50μlを各ウェルに加え、5分間反応させた後、ピペット操作を行った。
基質溶液(3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン)50μlを各ウェルに加え、37℃で60分間反応させた。次に停止液(0.5N NaOH)50μlを各ウェルに加えて、405nmで吸光度を測定した。
【0128】
(2)結果
結果として、
図11に示されるとおり、実施例1のトチノキ抽出物は、1.25μg/mlの濃度からTRAP活性を阻害した。具体的には、1.25μg/mlでは活性の約73%が阻害され、2.5μg/mlでは活性の91%が阻害され、そして5μg/mlでは98%以上が阻害された。処理したトチノキ抽出物の濃度が高いほどTRAP阻害効果が優れていることが確認された(
図11を参照のこと)。
更に、アビクラリン、クエルシトリン、ジュグラニン、及びアフゼリンは、2.5μMからそれぞれTRAP活性の阻害を示すことが確認されたが、単一成分と比較した場合に実施例1のトチノキ抽出物は、はるかに優れたTRAP阻害活性を示した(
図12~15を参照のこと)。
【0129】
したがって、本発明の実施例1のトチノキ抽出物は、歯周病の予防又は処置用医薬組成物及び歯周病の予防又は改善用食品組成物として適用することができ、そして歯周病の予防、処置及び/又は改善に有用であり得る。これは副作用も極めて少なく、歯周病を予防及び/又は処置し、症状を改善することが期待できる。
【国際調査報告】