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特表2024-530774環状グアノシン一リン酸アナログの改善された生成方法
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  • 特表-環状グアノシン一リン酸アナログの改善された生成方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-23
(54)【発明の名称】環状グアノシン一リン酸アナログの改善された生成方法
(51)【国際特許分類】
   C07H 19/04 20060101AFI20240816BHJP
   A61K 31/7068 20060101ALN20240816BHJP
   A61P 27/02 20060101ALN20240816BHJP
【FI】
C07H19/04 CSP
A61K31/7068
A61P27/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513779
(86)(22)【出願日】2022-09-06
(85)【翻訳文提出日】2024-02-29
(86)【国際出願番号】 EP2022074740
(87)【国際公開番号】W WO2023031481
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】21195043.1
(32)【優先日】2021-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517325560
【氏名又は名称】ミレカ メディシンズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ボルマーク, マーティン
(72)【発明者】
【氏名】シュヴェーデ, フランク ディーター
【テーマコード(参考)】
4C057
4C086
【Fターム(参考)】
4C057AA18
4C057BB02
4C057DD03
4C057LL03
4C086AA03
4C086AA04
4C086EA17
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA20
4C086ZA33
(57)【要約】
本発明は、環状グアノシン-3’,5’-一リン酸アナログを調製するための方法に関する。本発明はまた、本方法により得られる新しい環状グアノシン一リン酸アナログ及び中間体に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状グアノシン-3’,5’-一リン酸(cGMP)アナログ又はその合成中間体を生成するための方法であって、
i)一般式(I)のグアノシンアナログ又はその塩:
【化1】

(式中、
hは、H、ハロゲン、又はQであり、
及びXは、各々独立して、H又はp’から選ばれ、
p’は、各場合とも独立して、ヒドロキシル保護基から選ばれ、
及びRは、各々独立して、H、-(CH-H、-(CH-C3~9ヘテロシクリル、-(CH-ar、及びarから選ばれ、nの各場合とも独立して、0、1、2、3、若しくは4から選ばれ、又はR及びRは、一緒になって、-CH=C(ar)-若しくは-(CH1~4C(=O)-を形成し、
arは、各場合とも独立して、5若しくは6員芳香環又はヘテロ芳香環、好ましくはフェニル又は2-フラニルであり、arの各場合とも個別に、ハロゲン、-OH、-SH、-NH、-NO、-OCH、-CH、-CHCH、-CH(CH、又は-CFで任意に置換されていてもよく、且つarの第2の場合に任意に縮合されて、好ましくはナフチル部分を形成してもよく、
Qは、-(CH-S-(CH-H、-S-(CH-OH、-S-(CH-NH、-(CH-O-(CH-H、-O-(CH-OH、-O-(CH-NH、-O-C(CH、-O-CH(CH、-(CH-N(-[CHH)、-NH-(CHNH、-NH-(CH-OH、-(CH-Ncであり、c及びcは、それらが結合されているNと一緒になって、3~8員ヘテロ環を形成し、又はcはHであり、且つcは、3~8員ヘテロ環、-(CH-H、-N、-CF、-(CH-ar、-O-(CH-(ar)、-NH-(CH-(ar)、-S-(CH-(ar)、-(CH-アミド-ar、-O-(CH-アミド-(ar)、-NH-(CH-アミド-(ar)、-S-(CH-アミド-(ar)、若しくはリンカー部分であり、いずれの-Hも、ハロゲンにより任意に置き換えられていてもよく、nの各場合とも独立して、0、1、2、3、4、5、6、7、若しくは8から選ばれる)
を提供するステップと、
ii)前記提供されたグアノシンアナログとリンオキソ酸誘導体とを接触させてグアノシン5’-一リンオキソ酸エステルアナログを得るステップと、
iii)前記得られたグアノシン5’-一リンオキソ酸エステルアナログを結晶化により単離するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
ステップi)で使用される一般式(I)の前記グアノシンアナログ又はその塩に対して、
hは、H若しくはハロゲン若しくはQ、好ましくはH若しくはBr若しくはQ、より好ましくはBrであり、
はHであり且つXはp’であり、
p’は、メトキシメチル(MOM)、テトラヒドロピラニル(THP)、t-ブチル(tBu)、アリル(all)、ベンジル(Bn)、(トリ)アルキルシリル(たとえば、t-ブチルジメチルシリル(TBDMS)、トリイソプロピルシリル(TIPS)、若しくはt-ブチルジフェニルシリル(TBDPS))、アシル(たとえば、アセチル(Ac)、ピバロイル(Pv)、若しくはベンゾイル(Bz))から、好ましくはTHP、(トリ)アルキルシリル、及びアシルからなる群から選択され、
及びRは、一緒になって、-CH=C(ar)-を形成し、
arは、フェニル、4-メチルフェニル、3-チオフェニル、若しくは2-フラニル、好ましくはフェニルであり、且つ/又は
Qは、フラニル、-CF、-SCH、-S(イソプロピルフェニル)、-S(フェニルアミドメチル)、-S(ハロフェニル)、-S(ヒドロキシフェニル)、-S(アミノフェニル)、-S(ニトロフェニル)、-S(メトキシフェニル)、-S(トルイル)、-S(トリフルオロメチルフェニル)、-Nc(ここで、c及びcは、それらが結合されているNと一緒になって、3~8員ヘテロ環を形成する)、-S-(CH-OH、-S-(CH-NH、-NH-(CHNH、若しくは-NH-(CHOH、好ましくはフラニル、-CF、-S(4-ヒドロキシフェニル)、若しくは-S(4-クロロフェニル)である、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップi)で使用される一般式(I)の前記グアノシンアナログ又はその塩に対して、
hは、Brであり、
はHであり且つXはp’であり、
p’は、トリイソプロピルシリル(TIPS)であり、
及びRは、一緒になって、-CH=C(ar)-を形成し、且つ
arは、フェニルである、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ステップii)の前記リンオキソ酸誘導体がリン酸化剤又はホスホニル化剤である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップii)の前記リンオキソ酸誘導体が、一般式(P):
【化2】

(式中、
Mは、S若しくはOであり、又は不在であり、
及びoは、各々独立して、ハロゲン、-O-C1~8炭化水素、-S-C1~8炭化水素、-NH-C1~8炭化水素、ボラノ、メチルボラノ、ジメチルボラノ、シアノボラノ、及び-N(C1~8炭化水素)から選択され、且つ
は、H若しくはoに対して定義される通りであり、又はo及びoは、一緒になって、好ましくはC2~12炭化水素であるキラル補助剤を形成する)
のものである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップii)で得られた前記グアノシン5’-一リンオキソ酸エステルアナログが、一般式(II)のもの又はその塩:
【化3】

(式中、
h、X、X、R、及びRは、請求項1~3のいずれか一項に定義される通りであり、
及びoは、それぞれ独立して、-OHであり、又は請求項5に定義される通りであり、且つ
Mは、S又はOである)
である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
がHであり且つXがp’であり、一般式(I)の前記グアノシンアナログ又はその塩が、
Ia)一般式(pI)の非保護グアノシンアナログ又はその塩:
【化4】

(式中、h、R、及びRは、請求項1~3のいずれか一項に定義される通りである)
を提供するステップと、
Ib)前記非保護グアノシンアナログと(トリ)アルキルシリルハリドとを接触させて多重保護グアノシンアナログを得るとともに、任意に結晶化により前記多重保護グアノシンアナログを単離するステップと、
Ic)前記多重保護グアノシンアナログを選択的に脱保護して一般式(I)(式中、XはHであり、且つXはp’である)の前記グアノシンアナログを得るステップと、
Id)前記得られた一般式(I)(式中、XはHであり、且つXはp’である)のグアノシンアナログを結晶化により任意に単離するステップと、
により提供される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
iv)ステップii)で得られた前記グアノシン5’-一リンオキソ酸エステルアナログを環化して環状グアノシン-3’,5’-一リン酸(cGMP)アナログを得るステップであって、前記環化は、立体障害塩基の存在下で好ましくは実施される、ステップ、
をさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記cGMPアナログが、一般式(III)のもの又はその塩:
【化5】

(式中、
h、X、R、及びRは、請求項1~3のいずれか一項に定義される通りであり、好ましくはXは、請求項1~3のいずれか一項に定義されるp’であり、
は、請求項6に定義される通りであり、好ましくはoは、Hである)
であり、
前記方法が、
v)前記cGMPアナログと硫化剤とを接触させて一般式(III)(式中、oは、-SH又は-S-C1~12炭化水素、好ましくは-SHである)のチオール化cGMPアナログを得るステップ
を任意にさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
一般式(III)の前記cGMPアナログが、一般式(III-Rp):
【化6】

(式中、
h、X、R、及びRは、請求項1~3のいずれか一項に定義される通りであり、好ましくはXは、請求項1~3のいずれか一項に定義されるp’であり、
は、請求項6に定義される通りであり、好ましくはoは、Hである)
のものであり、
任意に、前記チオール化cGMPアナログが、一般式(III-Rp)
(式中、
h、X、R、及びRは、請求項1~3のいずれか一項に定義される通りであり、好ましくはXは、請求項1~3のいずれか一項に定義されるp’であり、
は、-SH又は-S-C1~12炭化水素であり、好ましくは-SHである)
のものである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
がp’であり、
vi)Xにより保護された前記ヒドロキシル部分を脱保護して脱保護cGMPアナログを得るステップと、
vii)前記脱保護cGMPアナログを任意にトリチュレートするステップと、
viii)前記脱保護cGMPアナログを薬学的に許容可能な塩、好ましくはナトリウム塩に任意に変換するステップと、
をさらに含む、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
一般式(II)の化合物又はその塩:
【化7】

(式中、
h、X、X、R、及びRは、請求項1~3のいずれか一項に定義される通りであり、
及びoは、それぞれ独立して、-OHであり、又は請求項5に定義される通りであり、好ましくはoはHであり、又はo及びoは、一緒になって、好ましくはC2~12炭化水素であるキラル補助剤を形成し、
Mは、S又はOであり、
好ましくは、前記化合物は塩である)。
【請求項13】
がHである、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
hは、Brであり、
はHであり且つXはp’であり、
p’は、好ましくはトリイソプロピルシリル(TIPS)であり、
及びRは、一緒になって、-CH=C(ar)-を形成し、
arはフェニルであり、
はOHであり、
はHであり、且つ
MはS又はO、好ましくはOである、
請求項12又は13に記載の化合物。
【請求項15】
hは、Brであり、
はHであり且つXはp’であり、
p’は、好ましくはトリイソプロピルシリル(TIPS)であり、
及びRは、一緒になって、-CH=C(ar)-を形成し、
arは、4-メチルフェニルであり、
はOHであり、
はHであり、且つ
MはS又はO、好ましくはOである、
請求項12又は13に記載の化合物。
【請求項16】
前記化合物が結晶性である、請求項12に記載の化合物。
【請求項17】
前記化合物が結晶性である、請求項13に記載の化合物。
【請求項18】
前記化合物が結晶性である、請求項14に記載の化合物。
【請求項19】
前記化合物が結晶性である、請求項15に記載の化合物。
【請求項20】
前記化合物が一般式(II)
(式中、
hは、Hであり、
及びXは、一緒になって、アセトニド保護基を形成し、
はHであり、且つRはH又は-CHであり、
はOHであり、
はHであり、且つ
MはOである)
のものでない、請求項13に記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状グアノシン-3’,5’-一リン酸アナログを調製するための方法に関する。発明はまた、本方法により得られる新しい環状グアノシン一リン酸アナログ及び中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
色素性網膜炎(RP)は、一群の重度障害性遺伝神経変性疾患である。典型的には、桿体フォトレセプター細胞(薄暗い光条件下での視覚を可能にする)が、疾患期間中、最初に変性する。続いて、桿体の損失が、昼光の高解像度色覚源の錐体フォトレセプター細胞の二次変性をトリガーし、最終的に全盲をもたらす。
【0003】
色素性網膜炎で変異した遺伝子は、通常、フォトレセプター機能に関連するが、一般的細胞機能に関係するものも存在する(Kennan et al.2005,Trends Genet.21,103-110)。分子cGMP(環状グアノシン一リン酸)は、光が当たったときにフォトレセプター細胞内に起こる光伝達カスケードで直接的役割を果たす。多くの場合、色素性網膜炎変異は、フォトレセプターにcGMPの過剰蓄積をもたらし(Arango-Gonzalez et al.2014 PLoS One.9,e112142)、フォトレセプターcGMP代謝に関与する酵素の遺伝子が影響を受ける状況がその例である。このことは、cGMPをGMPに加水分解するフォトレセプター酵素のホスホジエステラーゼ6(そのサブユニットは、遺伝子PDE6B、PDE6A、PDE6G、及び錐体フォトレセプターに対するPDE6C、PDE6Hによりコードされる)の変異の場合にあてはまる。Pde6b遺伝子は、色素性網膜炎のrd1マウスモデルで変異し、多くの実験室で十分に研究されてきた。推測されたイベントチェーンでは、PDE6B変異体網膜へのcGMPの蓄積は、実際の遺伝子欠損の直接的帰趨として発生し、そのため、これは早期及び機序的に基本変性成分と見なされうる。その次のステップでは、cGMPの増加は、4つの標的:1)cGMPにより活性化されたときに特異的タンパク質をリン酸化するcGMP依存プロテインキナーゼ(プロテインキナーゼG、PKG)、2)cGMPにより活性化されたときにNa及びCa2+のcGMP制御流入を可能にする環状ヌクレオチドゲートイオンチャネル(CNGC)、3)ホスホジエステラーゼ(PDE)、及び4)過分極活性化環状ヌクレオチドゲート(HCN)チャネルの少なくとも1つを有すると想定可能である。最初の2つのcGMP標的は、フォトレセプター変性に直接関連するが(Paquet-Durand et al.2009,J.Neurochem.108,796-810、Paquet-Durand et al.2011,Hum.Mol.Genet.20,941-947)、他のものは、既知のcGMP標的であることから、変性プロセスに潜在的に関与する。初期イベントとの直接的関連に起因して、PKG及びCNGCは、疾患ドライバーとみなしうるが、とはいえ、下流機序は、依然としてそれほど詳細には理解されていない(Trifunovic et al.2012,Curr.Mol.Med.12,598-612)。
【0004】
cGMPアナログ(たとえば、Rp-8-Br-cGMPSなど)としても知られるcGMP由来PKGインヒビターは、in vitro及びin vivoマウス色素性網膜炎モデルの両方でrd1及びrd2フォトレセプターの保護を提供することが知られている(Paquet-Durand et al.,2009)。
【0005】
cGMPアナログは、当技術分野で公知である。国際公開第2012130829号パンフレットには、環状ヌクレオチドのボラノホスフェートアナログが記載されている。国際公開第2018/010965号パンフレットには、cGMPアナログのマルチメリック複合体が記載されている。Butt et al.(FEBS letters,1990,263(1):48,DOI:10.1016/0014-5793(90)80702-K)には、(Rp)-グアノシン3’,5’-一チオリン酸によるcGMP依存性プロテインキナーゼの阻害が記載されている。その中で、グアノシン3’,5’-一チオリン酸(Sp)-cGMPS及び(Rp)-cGMPS並びに8-クロログアノシン3’,5’一チオリン酸(Sp)-8-Cl-cGMPS及び(Rp)-8-Cl-cGMPS)のジアステレオマーによるcGMP依存性プロテインキナーゼ及びcAMP依存性プロテインキナーゼの活性化が調べられた。(Sp)-ジアステレオマーは、cGMP依存性プロテインキナーゼに結合してそのホスホトランスフェラーゼ活性を刺激した。これとは対照的に、(Rp)-異性体は、その活性の刺激を伴うことなく酵素に結合した。(Rp)-cGMPS及び(Rp)-8-Clc-GMPSは、cGMP依存性プロテインキナーゼの活性化をアンタゴナイズした。(Rp)-cGMPSはまた、cAMP依存性プロテインキナーゼの活性化もアンタゴナイズした。これとは対照的に、(Rp)-8-Cl-cGMPSは、cAMP依存性プロテインキナーゼの弱いインヒビターであった。(Rp)-8-Cl-cGMPSは、cGMP依存性プロテインキナーゼのやや選択的インヒビターであると見られている。
【0006】
cGMPアナログの合成は、当技術分野で公知であるが、Sekhar et al.(1992,Mol.Pharmacol.,42:103-108)やMiller et al.(1973,Biochemistry 12:5310-5319)に記載のものなど、既知のプロトコルは、実験室スケールでのみ実行可能であるにすぎない。この理由は、多くの場合、クロマトグラフィーを含む労力のかかる精製ステップが合成に関与していることにある。Sp又はRp立体異性体のどちらかでありうるcGMPアナログの異なる立体異性体を分離するには、大掛かりなクロマトグラフィーが必要とされうる。この場合、Rp配置がより効力のある物質である。
【0007】
cGMPアナログの合成は、たとえば、国際公開第2005/123755号パンフレットの18頁のスキーム4でcAMPアナログに対して記載されるように、リンの導入に続いて環化が関与している。その中で記載されるように、初期リン酸化は、糖の5’-OH基で起こると考えられるが、2’-OH基も3’-OH基も保護されなかった。この中間体は決して単離されない。その代わりに、次いで、生成物を水性アセトニトリル中で水酸化アルカリにより高希釈で直接環化しておおよそ1:1の比でジアステレオ異性ヌクレオシド-3’,5’-環状チオリン酸cAMPを与え、これをクロマトグラフィー技術により分離しなければならない。国際公開第2005/123755号パンフレットの23頁のスキーム9には、代わりにホスフィットを用いてどのようにジアステレオ異性比を2:3(Sp/Rp)に有利にシフト可能であるかが記載されている。この混合物は、その際も再び分離しなければならなかったか、又は単に混合物として使用しなければならなかった。いずれの場合も、既知の反応は実験室スケールである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
改善された収率を有するよりロバストな合成経路及び生成方法が必要とされる。労力のかかる分離技術を回避する生成方法のニーズが存在する。改善された立体選択性を有する生成方法のニーズが存在する。高純度を有する中間体のニーズが存在する。異なる立体異性体の改善された分離のニーズが存在する。より大きなスケールでの反応を可能にする合成プロトコルのニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、環状グアノシン-3’,5’-一リン酸(cGMP)アナログ又はその合成中間体を生成するための方法であって、
i)一般式(I)のグアノシンアナログ又はその塩:
【化1】

(式中、hは、H、ハロゲン、又はQであり、X及びXは、各々独立して、H又はp’から選ばれ、p’は、各場合とも独立して、ヒドロキシル保護基から選ばれ、R及びRは、各々独立して、H、-(CH-H、-(CH-C3~9ヘテロシクリル、-(CH-ar、及びarから選ばれ、nの各場合とも独立して、0、1、2、3、若しくは4から選ばれ、又はR及びRは、一緒になって、-CH=C(ar)-若しくは-(CH1~4C(=O)-を形成し、arは、各場合とも独立して、5若しくは6員芳香環又はヘテロ芳香環、好ましくはフェニル又は2-フラニルであり、arの各場合とも個別に、ハロゲン、-OH、-SH、-NH、-NO、-OCH、-CH、-CHCH、-CH(CH、又は-CFで任意に置換されていてもよく、且つarの第2の場合に任意に縮合されて、好ましくはナフチル部分を形成してもよく、Qは、-(CH-S-(CH-H、-S-(CH-OH、-S-(CH-NH、-(CH-O-(CH-H、-O-(CH-OH、-O-(CH-NH、-O-C(CH、-O-CH(CH、-(CH-N(-[CHH)、-NH-(CHNH、-NH-(CH-OH、-(CH-Ncであり、c及びcは、それらが結合されているNと一緒になって、3~8員ヘテロ環を形成し、又はcはHであり、且つcは、3~8員ヘテロ環、-(CH-H、-N、-CF、-(CH-ar、-O-(CH-(ar)、-NH-(CH-(ar)、-S-(CH-(ar)、-(CH-アミド-ar、-O-(CH-アミド-(ar)、-NH-(CH-アミド-(ar)、-S-(CH-アミド-(ar)、若しくはリンカー部分であり、いずれの-Hも、ハロゲンにより任意に置き換えられていてもよく、nの各場合とも独立して、0、1、2、3、4、5、6、7、若しくは8から選ばれる)
を提供するステップと、
ii)提供されたグアノシンアナログとリンオキソ酸誘導体とを接触させてグアノシン5’-一リンオキソ酸エステルアナログを得るステップと、
iii)得られたグアノシン5’-一リンオキソ酸エステルアナログを結晶化により単離するステップと、
を含む、方法を提供する。好ましい実施形態では、hは、H若しくはハロゲン若しくはQ、好ましくはH若しくはBr若しくはQ、より好ましくはBrであり、XはHであり且つXはp’であり、p’は、メトキシメチル(MOM)、テトラヒドロピラニル(THP)、t-ブチル(tBu)、アリル(all)、ベンジル(Bn)、(トリ)アルキルシリル(たとえば、t-ブチルジメチルシリル(TBDMS)、トリイソプロピルシリル(TIPS)、若しくはt-ブチルジフェニルシリル(TBDPS))、アシル(たとえば、アセチル(Ac)、ピバロイル(Pv)、若しくはベンゾイル(Bz))から、好ましくはTHP、(トリ)アルキルシリル、及びアシルからなる群から選択され、R及びRは、一緒になって、-CH=C(ar)-を形成し、arは、フェニル、4-メチルフェニル、3-チオフェニル、若しくは2-フラニル、好ましくはフェニルであり、且つ/又はQは、フラニル、-CF、-SCH、-S(イソプロピルフェニル)、-S(フェニルアミドメチル)、-S(ハロフェニル)、-S(ヒドロキシフェニル)、-S(アミノフェニル)、-S(ニトロフェニル)、-S(メトキシフェニル)、-S(トルイル)、-S(トリフルオロメチルフェニル)、-Nc(ここで、c及びcは、それらが結合されているNと一緒になって、3~8員ヘテロ環を形成する)、-S-(CH-OH、-S-(CH-NH、-NH-(CH)nNH、若しくは-NH-(CH)nOH、好ましくはフラニル、-CF、-S(4-ヒドロキシフェニル)、若しくは-S(4-クロロフェニル)である。
【0010】
好ましい実施形態では、ステップi)で使用される一般式(I)のグアノシンアナログ又はその塩は、hがBrであり、XがHであり且つXがp’であり、p’がトリイソプロピルシリル(TIPS)であり、R及びRが、一緒になって、-CH=C(ar)-を形成し、且つarがフェニルである。好ましい実施形態では、ステップii)のリンオキソ酸誘導体は、リン酸化剤又はホスホニル化剤であり、好ましくは、ステップii)のリンオキソ酸誘導体は、一般式(P):
【化2】

(式中、Mは、S若しくはOであり、又は不在であり、o及びoは、各々独立して、ハロゲン、-O-C1~8炭化水素、-S-C1~8炭化水素、-NH-C1~8炭化水素、ボラノ、メチルボラノ、ジメチルボラノ、シアノボラノ、及び-N(C1~8炭化水素)から選択され、且つoは、H若しくはoに対して定義される通りであり、又はo及びoは、一緒になって、好ましくはC2~12炭化水素であるキラル補助剤を形成する)
のものである。
【0011】
好ましい実施形態では、ステップii)で得られるグアノシン5’-一リンオキソ酸エステルアナログは、一般式(II)のもの又はその塩:
【化3】

(式中、o及びoは、それぞれ独立して、-OH又は以上に定義される通りであり、且つMは、S又はOである)
である。好ましい実施形態では、一般式(I)のグアノシンアナログ又はその塩は:Ia)一般式(pI)の非保護グアノシンアナログ又はその塩:
【化4】

を提供するステップと、
Ib)非保護グアノシンアナログと(トリ)アルキルシリルハリドとを接触させて多重保護グアノシンアナログを得るとともに、任意に結晶化により多重保護グアノシンアナログを単離するステップと、
Ic)多重保護グアノシンアナログを選択的に脱保護して一般式(I)(式中、XはHであり、且つXはp’である)のグアノシンアナログを得るステップと、
Id)得られた一般式(I)(式中、XはHであり、且つXはp’である)のグアノシンアナログを結晶化により任意に単離するステップと、
により提供される。
【0012】
好ましい実施形態では、本方法は、
iv)ステップii)で得られたグアノシン5’-一リンオキソ酸エステルアナログを環化して環状グアノシン-3’,5’-一リン酸(cGMP)アナログを得るステップであって、前記環化は、立体障害塩基の存在下で好ましくは実施される、ステップと、
をさらに含む。
【0013】
好ましくは、cGMPアナログは、一般式(III)のもの又はその塩:
【化5】

(式中、好ましくはXは以上に定義されたp’であり、且つ好ましくはoはHである)
であり、且つ本方法は、v)cGMPアナログと硫化剤とを接触させて一般式(III)(式中、oは、-SH又は-S-C1~12炭化水素、好ましくは-SHである)のチオール化cGMPアナログを得るステップを任意にさらに含む。好ましくは、一般式(III)のcGMPアナログは、一般式(III-Rp):
【化6】

(式中、好ましくはXはp’であり、且つ好ましくはoはHであり、任意に、チオール化cGMPアナログは一般式(III-Rp)のものであり、好ましくはXはp’であり、oは-SH又は-S-C1~12炭化水素、好ましくは-SHである)
である。任意にXはp’であり、且つ本方法は、
vi)X2により保護されたヒドロキシル部分を脱保護して脱保護cGMPアナログを得るステップと、
vii)脱保護cGMPアナログを任意にトリチュレートするステップと、
viii)脱保護cGMPアナログを薬学的に許容可能な塩、好ましくはナトリウム塩に任意に変換するステップと、
をさらに含む。
【0014】
他の一態様では、一般式(II)の化合物又はその塩:
【化7】

(式中、h、X1、X、R、及びRは、以上に定義される通りであり、o及びoは、各々独立して、-OH又は以上に定義される通りであり、好ましくはoはHであり、又はo及びoは、一緒になって、好ましくはC2~12炭化水素であるキラル補助剤を形成し、Mは、S又はOであり、好ましくは、化合物は塩である)が提供される。好ましい実施形態では、化合物は結晶性である。好ましくはoはHである。好ましくはhはBrであり、XはHであり且つXはp’であり、p’は、好ましくはトリイソプロピルシリル(TIPS)であり、R及びRは、一緒になって、-CH=C(ar)-を形成し、arはフェニルであり、oはOHであり、oはHであり、且つMはS又はO、好ましくはOである。
【0015】
実施形態の説明
本発明は、cGMPアナログの改善された合成方法を提供する。本発明者らは、驚くべきことに、リンが最初に導入された後に形成される鍵を握る中間体グアノシン5’-一リンオキソ酸エステルアナログ(H-ホスホン酸モノエステルともいわれうる)が結晶化可能であることを見いだした。重要なこととして、この中間体の単離により、本発明の方法を用いたcGMP合成にクロマトグラフィー分離が必要とされない程度の純度を有する生成物を後続ステップで生成可能になった。そのほか、グアノシン5’-一リンオキソ酸エステルアナログ中間体の使用により、後続環化の反応条件全体にわたりより精密な制御が可能になったたため、Rpアナログの改善された収率が可能になるとともに、さらにはいずれの時点でもクロマトグラフィーを必要とすることなくRpアナログの生成に至るまで可能になった。本方法は、50mg程度の少量から100グラムを超えるスケールまでの合成を可能にした。本方法は、その均一反応ステップ、室温での反応性、及び発熱の欠如のおかげで、容易にスケーリング可能である。
【0016】
合成方法
本発明は、環状グアノシン-3’,5’-一リン酸(cGMP)アナログ又はその合成中間体を生成するための方法であって、
i)一般式(I)のグアノシンアナログ又はその塩:
【化8】

(式中、
hは、H、ハロゲン、又はQであり、
及びXは、各々独立して、H又はp’から選ばれ、
p’は、各場合とも独立して、ヒドロキシル保護基から選ばれ、
及びRは、各々独立して、H、-(CH-H、-(CH-C3~9ヘテロシクリル、-(CH-ar、及びarから選ばれ、nの各場合とも独立して、0、1、2、3、若しくは4から選ばれ、又はR及びRは、一緒になって、-CH=C(ar)-若しくは-(CH1~4C(=O)-を形成し、
arは、各場合とも独立して、5若しくは6員芳香環又はヘテロ芳香環、好ましくはフェニル又は2-フラニルであり、arの各場合とも個別に、ハロゲン、-OH、-SH、-NH、-NO、-OCH、-CH、-CHCH、-CH(CH、又は-CFで任意に置換されていてもよく、且つarの第2の場合に任意に縮合されていてもよく、
Qは、-(CH-S-(CH-H、-S-(CH-OH、-S-(CH-NH、-(CH-O-(CH-H、-O-(CH-OH、-O-(CH-NH、-O-C(CH、-O-CH(CH、-(CH-N(-[CHH)、-NH-(CHNH、-NH-(CH-OH、-(CH-Ncであり、c及びcは、それらが結合されているNと一緒になって、3~8員ヘテロ環を形成し、又はcはHであり、且つcは、3~8員ヘテロ環、-(CH-H、-N、-CF、-(CH-ar、-O-(CH-(ar)、-NH-(CH-(ar)、-S-(CH-(ar)、-(CH-アミド-ar、-O-(CH-アミド-(ar)、-NH-(CH-アミド-(ar)、-S-(CH-アミド-(ar)、若しくはリンカー部分であり、いずれの-Hも、ハロゲンにより任意に置き換えられていてもよく、nの各場合とも独立して、0、1、2、3、4、5、6、7、若しくは8から選ばれる)
を提供するステップと、
ii)提供されたグアノシンアナログとリンオキソ酸誘導体とを接触させてグアノシン5’-一リンオキソ酸エステルアナログを得るステップと、
iii)得られたグアノシン5’-一リンオキソ酸エステルアナログを結晶化により単離するステップと、
を含む、方法を提供する。
【0017】
かかる方法は、これ以降では、本発明に係る方法といわれる。本方法は、cGMPアナログを生成するためのものであるが、cGMPアナログのさらなる生成に有用な中間体を生成するためにもかなり好適である。好ましい実施形態では、本方法は、cGMPアナログを生成するためのものである。好ましい実施形態では、本方法は、cGMPアナログへのさらなる変換に好適な中間体を生成するためのものである。本発明に係る方法により生成される好ましい合成中間体は、一般式IIの化合物、一般式IIIの化合物、一般式III-Rpの化合物、又はそれらの塩である。塩及びこれらの化合物に対する定義は、より後の段階で本明細書に提供される。好ましい実施形態では、中間体は、一般式II又はIII-Rpのものである。好ましい実施形態では、中間体は、一般式IIIのものである。好ましい実施形態では、中間体は、一般式III-Rpのものである。一般式IIの化合物は、最も好ましい中間体である。
【0018】
本方法により生成される好ましいcGMPアナログは、以下に記載される。一般的には、それらは、cGMPアナログの適用によりモジュレートされるべき標的結合性タンパク質により支配される。好ましい実施形態では、cGMPアナログは、環状グアノシン-3’,5’-一リン酸依存性プロテインキナーゼの活性化に対するものであり、好ましいcGMPアナログは、一般式III(式中、oはOHである)のもの又は一般式III-Sp(式中、oは、SH、ボラノ、メチルボラノ、ジメチルボラノ、又はシアノボラノである)のものである。カーン・インゴルド・プレローグ命名法規則内で酸素と比較してホウ素の優先度が低いため、前記ホウ素アナログはRpアナログといわれることに留意されたい。
【0019】
好ましい実施形態では、cGMPアナログは、環状グアノシン-3’,5’-一リン酸依存性プロテインキナーゼの阻害のためのものであり、且つ好ましいcGMPアナログは、一般式III-Rp(式中、oは、SH、ボラノ、メチルボラノ、ジメチルボラノ、シアノボラノである)のものである。しかしながら、カーン・インゴルド・プレローグ命名法規則内で酸素と比較してホウ素の優先度が低いため、前記ホウ素アナログはSpアナログといわれる。
【0020】
好ましい実施形態では、cGMPアナログは、環状グアノシン-3’,5’-一リン酸ゲートイオンチャネルの活性化のためのものであり、且つ好ましいcGMPアナログは、一般式III(式中、R及びRは、一緒になって-CH=C(ar)-を形成しない)のものである。
【0021】
好ましい実施形態では、cGMPアナログは、環状グアノシン-3’,5’-一リン酸依存性プロテインキナーゼ及び環状グアノシン-3’,5’-一リン酸ゲートイオンチャネルの同時活性化のためのものであり、且つ好ましいcGMPアナログは、一般式III-Sp(式中、oは、SH、ボラノ、メチルボラノ、ジメチルボラノ、若しくはシアノボラノ、又は任意にOHであり、且つ式中、R及びRは、一緒になって-CH=C(ar)-を形成しない)のものである。
【0022】
好ましい実施形態では、cGMPアナログは、環状グアノシン-3’,5’-一リン酸依存性プロテインキナーゼ及び環状グアノシン-3’,5’-一リン酸ゲートイオンチャネルの同時阻害のためのものであり、且つ好ましいcGMPアナログは、一般式III-Rp(式中、oは、S、ボラノ、メチルボラノ、ジメチルボラノ、若しくはシアノボラノである)のものであり、又はより好ましくは、好ましいcGMPアナログは、一般式III-Rp(式中、oはSであり、且つ式中、R及びRは、一緒になって、-CH=C(ar)-若しくは-(CH1~4C(=O)-、好ましくは-CH=C(ar)-を形成する)のものであり、又はより好ましくは、好ましいcGMPアナログは、一般式III-Rp(式中、oは、ボラノ、メチルボラノ、ジメチルボラノ、若しくはシアノボラノであり、且つ式中、R及びRは、一緒になって-CH=C(ar)-も-(CH1~4C(=O)-も形成しない)のものである。
【0023】
環状グアノシン-3’,5’-一リン酸アナログのさらなる好ましい例は、以下のものである。
1.8-ブロモグアノシン-3’,5’-環状一リン酸(8-Br-cGMP)又はそのチオリン酸(8-Br-cGMPS)、
2.8-(2,4-ジヒドロキシフェニルチオ)グアノシン-3’,5’-環状一リン酸(8-o,pDHPT-cGMP)又はそのチオリン酸8-o,pDHPT-cGMPS、
3.8-(2-アミノフェニルチオ)グアノシン-3’,5’-環状一リン酸(8-APT-cGMP)又はそのチオリン酸8-APT-cGMPS、
4.8-(4-ヒドロキシフェニルチオ)グアノシン-3’,5’-環状一リン酸(8-pHPT-cGMP)又はそのチオリン酸8-pHPT-cGMPS、
5.8-(4-アミノフェニルチオ)グアノシン-3’,5’-環状一リン酸(8-pAPT-cGMP)又はそのチオリン酸8-pAPT-cGMPS、
6.8-(4-クロロフェニルチオ)-β-フェニル-1,N-エテノグアノシン-3’,5’-環式一リン酸(8-pCPT-PET-cGMP)又はそのチオリン酸8-pCPT-PET-cGMPS、
7.8-(4-クロロフェニルチオ)グアノシン-3’,5’-環状一リン酸(8-pCPT-cGMP)又はそのチオリン酸8-pCPT-cGMPS、
8.8-(2,4-ジクロロフェニルチオ)グアノシン-3’,5’-環状一リン酸(8-o,pDClPT-cGMP)又はそのチオリン酸8-o,pDClPT-cGMPS、
9.8-(4-メトキシフェニルチオ)グアノシン-3’,5’-環状一リン酸(8-pMeOPT-cGMP)又はそのチオリン酸8-pMeOPT-cGMPS、
10.8-ブロモ-β-フェニル-1,N-エテノグアノシン-3’,5’-環状一リン酸(8-Br-PET-cGMP)又はそのチオリン酸8-Br-PET-cGMPS、
11.8-ブロモ-(2-ナフチル-1,N-エテノ)グアノシン-3’,5’-環状一リン酸(8-Br-(2-N)ET-cGMP)又はそのチオリン酸8-Br-(2-N)ET-cGMPS、
12.8-(4-ヒドロキシフェニルチオ)-β-フェニル-1,N-エテノグアノシン-3’,5’-環状一リン酸(8-pHPT-PET-cGMP)又はそのチオリン酸8-pHPT-PET-cGMPS、
13.8-(4-クロロフェニルチオ)-β-フェニル-1,N-エテノグアノシン-3’,5’-環状一リン酸(8-pCPT-PET-cGMP)又はそのチオリン酸8-pCPT-PET-cGMPS、
14.2-ナフチル-1,N-エテノグアノシン-3’,5’-環状一リン酸((2-N)ET-cGMP)又はそのチオリン酸(2-N)ET-cGMPS、
15.β-フェニル-1,N-エテノグアノシン-3’,5’-環状一リン酸(PET-cGMP)又はそのチオリン酸PET-cGMPS、
16.4-メトキシβ-フェニル-1,N-エテノグアノシン-3’,5’-一リン酸(pMeO-PET-cGMP)又はそのチオリン酸pMeO-PET-cGMPS、
17.β-1,N-アセチル-8-ブロモグアノシン-3’,5’-環状一チオリン酸(β-1,N-Ac-8-Br-cGMPS)及びそのリン酸(β-1,N-Ac-8-Br-cGMP)、
18. 8-ブロモ-δ-1,N-ブチリルグアノシン-3’,5’-環状一チオリン酸(8-Br-δ-1,N-But-cGMPS)及びそのリン酸(8-Br-δ-1,N-But-cGMP)、
19.8-ブロモ-(4-メチル-β-フェニル-1,N-エテノ)グアノシン-3’,5’-環状一チオリン酸(8-Br-pMe-PET-cGMPS)及びそのリン酸(8-Br-pMe-PET-cGMP)、
20.-ブロモ-(3-チオフェン-イル-1,N-エテノ)グアノシン-3’,5’-環状一チオリン酸(8-Br-(3-Tp)ET-cGMPS)及びそのリン酸(8-Br-(3-Tp)ET-cGMP)、
21.1-ベンジル-8-ブロモグアノシン-3’,5’-環状一チオリン酸(1-Bn-8-Br-cGMPS)及びのそのリン酸(1-Bn-8-Br-cGMP)、
22.8-チオグアノシン-3’,5’-環状一チオリン酸(8-T-cGMPS)及びそのリン酸(8-T-cGMP)、
23.8-(4-イソプロピルフェニルチオ)グアノシン-3’,5’-環状一チオリン酸(8-pIPrPT-cGMPS)及びそのリン酸(8-pIPrPT-cGMP)、
24.8-フェニルアミドメチルチオグアノシン-3’,5’-環状一チオリン酸(8-PAmdMT-cGMPS)及びそのリン酸(8-PAmdMT-cGMP)、
25.β-フェニル-1,N-エテノ-8-フェニルアミドメチルチオグアノシン-3’,5’-環状一チオリン酸(PET-8-PAmdMT-cGMPS)及びリン酸(PET-8-PAmdMT-cGMP)
26.8-(4-イソプロピルフェニルチオ)-β-フェニル-1,N-エテノグアノシン-3’,5’-環状一チオリン酸(8-pIPrPT-PET-cGMPS)及びそのリン酸(8-pIPrPT-PET-cGMP)、
27.8-(2-アミノフェニルチオ)-β-フェニル-1、Nエテノグアノシン3’、5’環状一チオリン酸(8-oAPT-PET-cGMPS)及びのそのホスフェート(8-oAPT-PET-cGMP)
28.β-フェニル-1,N-エテノ-8-チオグアノシン-3’,5’-環状一チオリン酸(PET-8-T-cGMPS)及びそのリン酸(PET-8-T-cGMP)、
29.8-メチルチオ-β-フェニル-1,N-エテノグアノシン-3’,5’-環状一チオリン酸(8-MeS-PET-cGMPS)及びそのリン酸(8-MeS-PET-cGMP)、
30.8-メチルチオ-グアノシン-3’,5’-環状一チオリン酸(8-MeS-cGMPS)、好ましくはナトリウム塩、及びそのリン酸(8-MeS-cGMP)、
31.8-フェニルグアノシン-3’,5’-環状一チオリン酸(8-Phe-cGMPS)及びそのリン酸(8-Phe-cGMP)、
32.8-(2-フリル)グアノシン-3’,5’-環状一チオリン酸(8-(2-Fur)-cGMPS)及びそのリン酸(8-(2-Fur)-cGMP)、
33.8-(4-クロロフェニル)グアノシン-3’,5’-環状一チオリン酸(8-pCP-cGMPS)及びそのリン酸(8-pCP-cGMP)、
34.8-フェニル-β-フェニル-1,N-エテノグアノシン-3’,5’-環状一チオリン酸(8-Phe-PET-cGMPS)及びそのリン酸(8-Phe-PET-cGMP)、並びに
35.8-(4-クロロフェニル)-β-フェニル-1,N-エテノグアノシン-3’,5’-環状一チオリン酸(8-pCP-PET-cGMPS)及びそのリン酸(8-pCP-PET-cGMP)、
並びにそれらの薬学的に許容可能な塩。より好ましいcGMPアナログは、8-Br-cGMP、8-Br-PET-cGMP、及び8-Br-(2-N)ET-cGMP、8-Br-δ-1,N2-But-cGMP、8-Br-δ-1,N2-But-cGMP、8-Br-(3-Tp)ET-cGMP、1-Bn-8-Br-cGMP、並びにそれらのチオリン酸、好ましくはそれらのチオリン酸である。他のより好ましいcGMPアナログは、8-pCPT-PET-cGMP、8-Br-PET-cGMP、8-pHPT-PET-cGMP、8-pCPT-PET-cGMP、PET-cGMP、8-Br-(2-N)ET-cGMP、(2-N)ET-cGMP、8-Br-pMe-PET-cGMP、8-Br-(3-Tp)ET-cGMP、PET-8-PAmdMT-cGMP、8-pIPrPT-PET-cGMP、8-oAPT-PET-cGMP、PET-8-T-cGMP、8-MeS-PET-cGMP、8-Phe-PET-cGMP、8-pCP-PET-cGMP、及びpMeO-PET-cGMP、並びにそれらのチオリン酸、好ましくはそれらのチオリン酸、より好ましくは8-pCPT-PET-cGMP、8-Br-PET-cGMP、8-pHPT-PET-cGMP、8-pCPT-PET-cGMP、PET-cGMP、8-Br-pMe-PET-cGMP、PET-8-PAmdMT-cGMP、8-pIPrPT-PET-cGMP、8-oAPT-PET-cGMP、PET-8-T-cGMP、8-MeS-PET-cGMP、8-Phe-PET-cGMP、8-pCP-PET-cGMP、及びpMeO-PET-cGMP、並びにそれらのチオリン酸、好ましくはそれらのチオリン酸である。他の好ましいcGMPアナログは、β-1,N2-Ac-8-Br-cGMP及び8-Br-δ-1,N2-But-cGMP並びにそれらのチオリン酸、好ましくはそれらのチオリン酸である。最も好ましいcGMPアナログは、8-Br-PET-cGMP又はそのチオリン酸、好ましくはそのチオリン酸である。他の一群のきわめて好ましいcGMPアナログは、8-Br-PET-cGMP、8-Br-pMe-PET-cGMP、8-Br-(3-Tp)ET-cGMP、8-PAmdMT-cGMP、PET-8-PAmdMT-cGMP、8-pIPrPT-PET-cGMPを、及び8-oAPT-PET-cGMP、並びにそれらのチオリン酸、好ましくはそれらのRp異性体、好ましくはそれらのチオリン酸、最も好ましくはそれらのチオリン酸のRp異性体からなる。
【0024】
以上のcGMPアナログは、好ましくはRp異性体である(参照を容易にするために、たとえば、PET-cGMPのRp異性体は、Rp-PET-cGMPで表され、且つ対応するチオリン酸は、PET-cGMPSで表される)。
【0025】
ステップi)グアノシンアナログの提供
本方法の第1のステップは、グアノシンアナログの提供である。本明細書で用いられる場合、グアノシン自体も、グアノシンアナログとみなすことが可能であり、読みやすくするために別々に挙げられていない。グアノシンを用いて本発明を実践しcGMPを得ることも可能であることは、当業者であれば理解される。グアノシンアナログは、本方法の一部として合成的に調製可能であり、又は商業的に取得可能であり、さもなければ他のどこかから調達可能である。本方法の一部として、リンは、このグアノシンアナログの5’位に導入され、その後、環化されてcGMPアナログを形成する。後で本明細書に定義されるh、R1、R2などの可変部分は、ステップi)の終了から開始して一定を維持することが好ましい。
【0026】
グアノシンアナログ(又は以上に説明したようにグアノシン)はまた、塩でありうる。本発明との関連では、塩は、好ましくは薬学的に許容可能な塩である。薬学的に許容可能な塩は、当技術分野で公知である。好ましい塩は、酸付加塩である。他の好ましい塩は、塩基付加塩である。本発明との関連では、薬学的に許容可能な塩は、好ましくは、Li、Na、K、Ca、Mg、Fe、Cu、Zn、Mnなどの無機塩基に由来する塩、N,N’-ジアセチルエチレンジアミン、グルカミン、トリエチルアミン、コリン、ジシクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、(トリ)アルキルアミン、チアミン、グアニジン、ジエタノールアミン、アルファフェニルエチルアミン、ピペリジン、モルホリン、ピリジン、ヒドロキシエチルピロリジン、ヒドロキシエチルピペリジンなどの有機塩基の塩を含む。かかる塩はまた、グリシン、アラニン、シスチン、システイン、リシン、アルギニン、フェニルアラニン、グアニジンなどのアミノ酸の塩を含む。かかる塩は、たとえば、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、過塩素酸塩、ホウ酸塩、HCl塩やHBr塩などのハロゲン化水素酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、パルモ酸塩、メタンスルホン酸塩、トシル酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、アスコルビン酸塩、グリセロリン酸塩、ケトグルタル酸塩など、適宜、酸付加塩を含みうる。好ましい塩は、HCl塩、ギ酸塩、酢酸塩、トリエチルアンモニウム(TEAH+)塩、ナトリウム塩、及びトリフルオロ酢酸塩である。より好ましい塩は、TEAH+塩及びナトリウム塩である。本発明に係る方法により生成されるcGMPアナログに対しては、好ましい塩はナトリウム塩である。本発明に係る方法により生成される又は本発明に係る方法の一部として生成される中間体に対しては、好ましい塩はTEAH+塩である。
【0027】
「薬学的に許容可能」という語句は、生理学的に耐容性のある、且つ典型的には哺乳動物に投与したときに限定されるものではないが胃の不調又は眩暈をはじめとするアレルギー性又は類似の有害反応を引き起こさない、化合物又は組成物を意味する。何が薬学的に許容可能であるかないかは、当業者であれば見分けることが可能である。
【0028】
グアノシンアナログはまた、水和物又は溶媒和物でもありうる。本発明との関連では、水和物は、溶媒が水であるときの溶媒和物を意味する。溶媒和物という用語は、本明細書で用いられる場合、溶媒を含有する物質の結晶形を意味する。溶媒和物は、好ましくは薬学的に許容可能な溶媒和物であり、水和物でありうるか又はアルコール、エーテルなどの他の結晶化溶媒を含みうる。それゆえ、結晶は、水和物又は溶媒和物でありうるとともに、結晶化は、水和物又は溶媒和物を生成可能である。
【0029】
グアノシンアナログは、好ましくは、一般式(I)のもの又はその塩:
【化9】

(式中、
hは、H、ハロゲン、又はQであり、好ましくは、hは、H、F、Br、Cl、又はQであり、より好ましくは、H、Br、又はQであり、きわめて好ましい実施形態では、hはHであり、きわめて好ましい実施形態では、hはBrであり、きわめて好ましい実施形態では、hはH又はBrであり、きわめて好ましい実施形態では、hはQであり、最も好ましい実施形態では、hはH又はBr又はQであり、
及びXは、各々独立して、H又はp’から選ばれ、好ましくは、XはHであり、より好ましくは、後で本明細書に記載されるように環状リンオキソ酸ジエステルが形成されるステップの前はHであり、好ましくは、5’-リンオキソ酸エステルの形成前で、且つXはp’であり、最も好ましくは、XはHであり、且つXはp’であり、
p’は、各場合とも独立して、ヒドロキシル保護基から選ばれ、ヒドロキシル保護基は、当技術分野で公知であり、ヒドロキシル部分の酸素原子を保護することが可能である)である。好適なヒドロキシル保護基の例は、たとえば、P.G.M.Wuts and T.W.Greene in Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis,Fourth Edition,2006(ISBN:978-0-471-69754-1)により、当技術分野で広範囲に記載されている。当業者であれば、本発明に従って使用される好適な保護基を選択可能であろう。好適なヒドロキシル保護基の例は、メトキシメチル(MOM)、テトラヒドロピラニル(THP)、t-ブチル(tBu)、アリル(all)、ベンジル(Bn)、(トリ)アルキルシリル(たとえば、t-ブチルジメチルシリル(TBDMS)、トリイソプロピルシリル(TIPS)、又はt-ブチルジフェニルシリル(TBDPS)、好ましい(トリ)アルキルシリルはトリアルキルシリルである)、及びアシル(たとえば、アセチル(Ac)、ピバリル(Pv)、又はベンゾイル(Bz))であり、より好ましくはトリイソプロピルシリル(TIPS)である。p’の好ましい基は、THP、(トリ)アルキルシリル、及びアシルである。p’のより好ましい基は、THP及び(トリ)アルキルシリル(好ましくはTIPS)であり、最も好ましくはp’は、(トリ)アルキルシリル(好ましくはTIPS)である。当技術分野で公知のように、p’は、常に酸素に結合され、複数の場合のp’は、一緒になって2つ以上のヒドロキシル基を保護する単一保護基を形成可能である。かかる多価保護基の例は、アセトニド及びベンジリデンアセタールである。好ましい実施形態では、p’により保護された2つの部分が同一炭素原子又は隣接炭素原子に結合されているとき、2つの場合のp’は、一緒になって単一多価保護基を形成する。
【0030】
及びRは、各々独立して、H、-(CH-H、-(CH-C3~9ヘテロシクリル、-(CH-ar、及びarから選ばれ、nの各場合とも独立して、0、1、2、3、若しくは4から選ばれ、又はR及びRは、一緒になって、-CH=C(ar)-若しくは-(CH1~4C(=O)-を形成し、nが0であるとき、CH単位はまったく存在せず、それゆえ、好ましい実施形態では、-(CH-C3~9ヘテロシクリルはC3~9ヘテロシクリルである。ヘテロシクリルは、本発明との関連では、3、4、5、6、7、8、又は9個の炭素原子を有する任意に不飽和であってもよいヘテロ環である。ヘテロ環は、arに対して記載されるように任意に置換されていてもよく、任意の置換中の炭素原子は、C3~9にカウントされない。ヘテロ原子は、好ましくは、O、S、及びNから選択される。好ましくは、ヘテロシクリルは、多くとも3、より好ましくは多くとも2、最も好ましくは多くとも1個のヘテロ原子を有する。ヘテロシクリルは、好ましくは少なくとも1、より好ましくは少なくとも2個のヘテロ原子を有する。ヘテロシクリルの好ましい例は、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、テトラヒドロフラニル、ピラゾリル、及びピロリジニルである。R及びRが、一緒になって、-CH=C(ar)-又は-(CH1~4C(=O)-を形成するとき、好ましい実施形態では、ar又はC(=O)は、R1が描かれた箇所の最も近くにある。他の好ましい実施形態では、ar又は(C=O)は、R2が描かれた箇所の最も近くにある。好ましくは、R及びRが、一緒になって、-CH=C(ar)-又は-(CH1~4C(=O)-を形成するとき、スチリレン部分が形成され、それゆえ、arはフェニルである。最も好ましくは、R及びRが、一緒になって、-CH=C(ar)-を形成するとき、フェニルがR2の最も近くにある-CH=C(フェニル)-が形成される。好ましくは、R及びRが、一緒になって、-(CH1~4C(=O)-を形成するとき、-CH-C(=O)-又は-(CH)3-C(=O)-が形成される。
【0031】
arは、各場合とも独立して、5若しくは6員芳香環又はヘテロ芳香環、好ましくはフェニル又は2-フラニルであり、arの各場合とも個別に、ハロゲン、-OH、-SH、-NH、-NO、-OCH、-CH、-CHCH、-CH(CH、又は-CFで任意に置換されていてもよく、且つarの第2の場合に任意に縮合されて、好ましくはナフチル部分を形成してもよく、好ましくは、arの2つ以下の場合がかかる縮合部分に含まれる。好ましい実施形態では、arはarのさらなる場合に縮合される。好ましい実施形態では、arは6員である。好ましい実施形態では、arは未置換である。arの好ましい例は、フェニル、フラニル、ピリジニル、イミダゾリル、テトラゾリル、トリアゾリル、チオフェニル、ベンゾチアゾリル、インドリル、4-メチルフェニル、3-チオフェニル、及びナフチルである。arのきわめて好ましい実施形態は、4-メチルフェニルである。
【0032】
Qは、-(CH-S-(CH-H、-S-(CH-OH、-S-(CH-NH、-(CH-O-(CH-H、-O-(CH-OH、-O-(CH-NH、-O-C(CH、-O-CH(CH、-(CH-N(-[CHH)、-NH-(CHNH、-NH-(CH)nOH、-(CH-Ncであり、c及びcは、それらが結合されているNと一緒になって、3~8員ヘテロ環を形成し、又はcはHであり、且つcは、3~8員ヘテロ環、-(CH-H、-N、-CF、-(CH-ar、-O-(CH-(ar)、-NH-(CH-(ar)、-S-(CH-(ar)、-(CH-アミド-ar、-O-(CH-アミド-(ar)、-NH-(CH-アミド-(ar)、-S-(CH-アミド-(ar)、若しくはリンカー部分であり、いずれの-Hも、ハロゲンにより任意に置き換えられていてもよく、nの各場合とも独立して、0、1、2、3、4、5、6、7、若しくは8から選ばれ、ヘテロ環は、以上に定義されている。リンカーは、以下に定義される。好ましい実施形態では、Qは、-(CH-S-(CH-H、-S-(CH-OH、-S-(CH-NH、-(CH-O-(CH-H、-O-(CH-OH、-O-(CH-NH、-O-C(CH、-O-CH(CH、-(CH-N(-[CHH)、-NH-(CHNH、-NH-(CH)nOH、-(CH-Ncであり、c及びcは、それらが結合されているNと一緒になって、3~8員ヘテロ環を形成し、又はcはHであり、且つcは、3~8員ヘテロ環、-(CH-H、-N、-CF、-(CH-ar、-O-(CH-(ar)、-NH-(CH-(ar)、若しくは-S-(CH-(ar)であり、いずれの-Hも、ハロゲンにより任意に置き換えられていてもよく、nの各場合とも独立して、0、1、2、3、4、5、6、7、若しくは8から選ばれる。-(CH-S-(CH-Hは、好ましくは-S-(CH-H又は-(CH-SHである。-S-(CH-OHでは、nは、好ましくは2、3、4、5、又は6である。-S-(CH-NHでは、nは、好ましくは2、3、4、5、又は6である。-(CH-O-(CH-Hは、好ましくは-(CH-OH又は-O-(CH-Hである。-O-(CH-OHでは、nは、好ましくは2、3、4、5、又は6である。-O-(CH-NHでは、nは、好ましくは2、3、4、5、又は6である。-(CH-N(-[CH]nH)2は、好ましくは、nが少なくとも2である-(CH-NH、又はnの各場合とも少なくとも2である-(CH-N(-[CH]nH)2である。NH-(CH)nNHでは、nは、好ましくは2、3、4、5、又は6である。-NH-(CH)nOHでは、nは、好ましくは2、3、4、5、又は6である。-(CH-Ncでは、nは、好ましくは2、3、4、5、又は6である。好ましい実施形態では、c及びcは、それらが結合されているNと一緒になって、3~8員ヘテロ環、より好ましくは4~6員ヘテロ環、最も好ましくは5又は6員ヘテロ環を形成する。他の好ましい実施形態では、cはHであり、且つcは、3~8員ヘテロ環、より好ましくは4、5、又は6員ヘテロ環、最も好ましくは5又は6員ヘテロ環である。-(CH-Hでは、nは、好ましくは0、1、2、3、4、5、又は6、より好ましくは1、2、3、又は4、さらにより好ましくは1又は2、最も好ましくは1である。-(CH-arでは、nは、好ましくは0、1、2、3、4、5、又は6、より好ましくは0、1、2、又は3、さらにより好ましくは0、1、又は2、最も好ましくは0又は2である。-O-(CH-(ar)では、nは、好ましくは少なくとも2である。-NH-(CH-(ar)では、nは、好ましくは少なくとも2である。-S-(CH-(ar)では、nは、好ましくは少なくとも2である。好ましくは、少なくとも1つの-Hは、ハロゲン、より好ましくはフッ素により置き換えられていてもよく、好ましくは、-Hの多くとも3つの場合がハロゲンにより置き換えられる。任意に、Hのすべての場合がFにより置き換えられる。好ましくは、直接連結ヘテロ原子を生じるおそれのあるときは、nは0ではなく、より好ましくは0でも1でもない。好ましくは、nは多くとも6である。
【0033】
リンカーは、当技術分野で公知である。リンカーの構造は、リンカーが本発明に使用される化合物に容易に化学結合してリンカー化合物を形成可能になるようにするとともに、得られるリンカー化合物がポリペプチドや表面などのさらなる物質に容易にコンジュゲート可能になるようにするものである。リンカーの選択は、循環系中又は表面上にあるときのかかる最終的コンジュゲートの安定性に影響を及ぼす可能性がある。リンカーは、切断性又は非切断性でありうる。切断性リンカーは、たとえば、リソソームプロテアーゼ又は酸性pHを有する環境に晒されたときに切断可能な部分を含む。好適な切断性リンカーは、当技術分野で公知であり、たとえば、ジ、トリ、又はテトラペプチド、すなわち、2、3、又は4つのアミノ酸残基で構成されたペプチドを含む。そのほか、切断性リンカーは、自己犠牲部分、たとえば、ω-アミノアミノカルボニル環化スペーサー(Saari et al.J.Med.Chem.,1990,33(1),97-101を参照されたい)、又は-NH-CH-O-部分を含みうる。リンカーの切断は、周囲媒体による化合物の利用可能性を向上させることが可能である。非切断性リンカーは、たとえば、コンジュゲートポリペプチドがリソソーム中で分解された後、本発明に係る化合物を依然として効果的に放出可能である。非切断性リンカーとしては、たとえば、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル(シクロヘキサン)-1-カルボキシレート及びマレイミドカプロン酸並びにそれらのアナログが挙げられる。
【0034】
好ましい実施形態では、hは、H若しくはハロゲン若しくはQ、好ましくはH若しくはBr若しくはQ、より好ましくはBr若しくはQ、最も好ましくはBrであり、
はHであり且つXはp’であり、
p’は、メトキシメチル(MOM)、テトラヒドロピラニル(THP)、t-ブチル(tBu)、アリル(all)、ベンジル(Bn)、(トリ)アルキルシリル(たとえば、t-ブチルジメチルシリル(TBDMS)、トリイソプロピルシリル(TIPS)、若しくはt-ブチルジフェニルシリル(TBDPS))、アシル(たとえば、アセチル(Ac)、ピバロイル(Pv)、若しくはベンゾイル(Bz))から、好ましくはTHP、(トリ)アルキルシリル、及びアシルからなる群から選択され、
及びRは、一緒になって、-CH=C(ar)-を形成し、
arは、フェニル、4-メチルフェニル、3-チオフェニル、若しくは2-フラニル、好ましくはフェニル若しくは2-フラニル、より好ましくはフェニルであり、且つ/又は
Qは、フラニル、-CF、-SCH、-S(イソプロピルフェニル)、-S(フェニルアミドメチル)、-S(ハロフェニル)、-S(ヒドロキシフェニル)、-S(アミノフェニル)、-S(ニトロフェニル)、-S(メトキシフェニル)、-S(トルイル)、-S(トリフルオロメチルフェニル)、-Nc(ここで、c及びcは、それらが結合されているNと一緒になって、3~8員ヘテロ環を形成する)、-S-(CH-OH、-S-(CH-NH、-NH-(CH)nNH、若しくは-NH-(CH)nOH、好ましくはフラニル、-CF、-S(4-ヒドロキシフェニル)、若しくは-S(4-クロロフェニル)である。
【0035】
さらにより好ましくは、hはBrであり、XはHであり且つXはp’であり、p’は、トリイソプロピルシリル(TIPS)であり、R及びRは、一緒になって、好ましくはarがR2の最も近くにある-CH=C(ar)-を形成し、且つarは、フェニルであり又は4-メチルフェニルである。
【0036】
提供されるGMPアナログでは、Xがp’であり且つXがHであることが大いに好ましい。というのは、これにより5’-一リンオキソ酸エステルアナログの化学選択的導入が促進されるからである。本発明者らは、驚くべきことに、X1の保護がX2の保護よりも影響が少ないことを見いだした。それゆえ、好ましい実施形態では、XがHであり且つXがp’である本発明に係る方法が提供され、一般式(I)のグアノシンアナログ又はその塩は、以下のステップにより提供される:
Ia)一般式(pI)の非保護グアノシンアナログ又はその塩:
【化10】

(式中、h、R、及びRは、一般式Iに対して定義される通りである)
を提供するステップ。このステップでは、ステップii)で変換されるグアノシンアナログの前駆体が提供される。この前駆体は、X及びXの両方にHを有することを特徴とし、したがって、非保護グアノシンアナログといわれる。
Ib)非保護グアノシンアナログと(トリ)アルキルシリルハリドとを接触させて多重保護グアノシンアナログを得るとともに、任意に結晶化により多重保護グアノシンアナログを単離するステップ。このステップでは、非保護グアノシンアナログは、(トリ)アルキルシリルハリドを用いて保護され、p’の好ましい保護基である(トリ)アルキルシリル保護基になったX2をもたらす。そのほか、5’-OH基は、この反応ステップで保護状態になることが可能である。驚くべきことに、Xは、Hを維持することが見いだされた。5’-及び2’-保護グアノシンアナログは、結晶化により便利に単離可能であり、これは好ましい実施形態では行われる。反応は、好ましくは、DMF、ピリジン、テトラメチルウレア、ジメチルアセトアミド、NMPなどの非プロトン性極性溶媒中、より好ましくはDMF又はNMP中で実施される。反応は、好ましくはマイルドな塩基、より好ましくはマイルドな有機塩基、たとえば、イミダゾール、ピリジン、トリメチルアミンなどのトリアルキルアミン、N-メチルモルホリン、又はN-メチルイミダゾール、より好ましくはイミダゾールの存在下で実施される。反応の進行は、好ましくは、クロマトグラフィー技術などの分析技術、TLC又はHPLCを用いてモニターされる。実質的にすべてのXが保護された後、反応は、好ましくは、たとえば、10当量(equiv.)などの過剰の水の添加によりクエンチされる。クエンチされた反応は、好ましくは、水性相で洗浄した後、非プロトン性有機溶媒、好ましくはトルエンなどの低極性のもの、イソプロピルアセテートやブチルアセテートなどのエステル、tert-ブチルメチルエーテルなどのエーテル、又はベンゼン、より好ましくはトルエン中に抽出される。反応生成物は、好ましくは結晶化により、好ましくはメタノールでない有機溶媒から、より好ましくは非プロトン性有機溶媒から、さらにより好ましくはエチルアセテートやプロピルアセテートなどの極性のものから、最も好ましくはイソプロピルアセテートから単離される。結晶化は、好ましくは種晶を加えて、より好ましくは結晶化される所望の生成物を用いて行われる。好ましくは少なくとも4、より好ましくは少なくとも8、さらにより好ましくは少なくとも12時間放置される結晶化の後、結晶は、好ましくは洗浄及び/又は乾燥される。洗浄は、好ましくは、結晶化に使用されたものと同一の溶媒を用いて実施される。乾燥は、好ましくは真空中で、より好ましくは昇温で、たとえば約40~80℃で、好ましくは約50~70℃で実施される。
Ic)多重保護グアノシンアナログを選択的に脱保護して一般式(I)(式中、XはHであり、且つXはp’である)のグアノシンアナログを得るステップ。このステップでは、2’-及び5’-保護位の反応性の差が使用され、水性TFAなどのマイルドな反応条件を用いて保護5’-OHが選択的に脱保護される。このステップは、THF及び/又は水と酸とのいずれかの組合せ、好ましくはTFAを用いて実施可能であるが、好ましくは、非プロトン性有機溶媒、好ましくは極性のもの、たとえば、THF又は1,4-ジオキサン中で実施される。脱保護は、好ましくは、強酸、好ましくはTFAを用いて、好ましくは約7~13、たとえば10体積の溶媒、約1~3、たとえば2体積の水、及び約0.2~1、たとえば0.45体積のTFAを用いて行われる。反応の進行は、好ましくは、クロマトグラフィーなどの好適な分析技術、たとえばHPLCを用いてモニターされる。モニタリングは、2’位もまた脱保護されるおそれのある過剰脱保護を検出可能であるので有益である。実質的にすべての5’-保護基が除去されたとき、反応は、好ましくは、塩基、好ましくはアンモニアなどのマイルドな窒素ベース塩基、若しくはトリアルキルアミンなどの好適なアミン塩基、又はカーボネートやビカーボネートなどの無機塩基、より好ましくはアンモニア又はアミン塩基(これはガスの発生を回避する)、最も好ましくは体積効率の良いアンモニアの添加によりクエンチされる。好ましくは、クエンチされた粗反応混合物は、蒸発され、完全脱保護された副生成物が可溶でない混合物中に、たとえば、ジクロロメタン又はクロロホルムと少量の水との混合物(約10~20、たとえば15体積のたとえばジクロロメタン対約1~3、たとえば2体積の水)中に、又はアセトンなどの混合物中に再懸濁される。得られた希釈スラリーは、可能性のある不溶性汚染物を除去するために選択的に濾過される。濾液の有機相は、好ましくは分離され、その後、蒸発させて残渣を得ることが可能である。残渣は、好ましくは、極性有機溶媒、好ましくは非プロトン性のもの、たとえば、アセトニトリル又はエチルアセテート、より好ましくはアセトニトリルを用いてトリチュレートされる。残留固形分は、好ましくは、トリチュレーションに使用したものと同一の溶媒を用いて洗浄され、その後、生成物は、好ましくは真空乾燥などで乾燥される。
Id)得られた一般式(I)(式中、XはHであり、且つXはp’である)のグアノシンアナログを結晶化又は好ましくはトリチュレーションにより任意に単離するステップ。ここで、p’は、(トリ)アルキルシリルであるとともに、2’-保護グアノシンアナログは、結晶化により便利に単離される。単離は、好ましくは、ステップIcで以上に記載したように実施される。
【0037】
ステップi)のグアノシンアナログがR及びRの両方にHを有するとき、アナログは、R及びRが一緒になって-CH=C(ar)-を形成するアナログに有利に変換可能である。この目的では、R及びRの両方がHであるアナログは、好ましくは、高極性非プロトン性溶媒、好ましくはDMSO中に溶解され、その後、約1~3、たとえば1.5equiv.の(ar)-C(=O)-CHBrが添加される。本明細書では、arは、以上に定義される通りであり、たとえばフェニル又はフラニル、好ましくはフェニルである。(ar)-C(=O)-CHBr中のarがフェニルであるとき、反応剤はフェナンシルブロミドである。(ar)-C(=O)-CHBrの添加後、強塩基、好ましくは強有機塩基、たとえばDBU又はテトラメチルグアニジン、より好ましくはDBU、好ましくは約1~5、たとえば約2.5equiv、好ましくはある時間にわたり、たとえば約10~60分間、たとえば約30分間にわたり添加される。反応完了後、たとえば約1h後、反応は、好ましくは、中和され、より好ましくは、酸、好ましくは弱酸、より好ましくは有機酸、たとえば酢酸の添加により行われる。生成物は、好ましくは、たとえば水、たとえば約10体積の添加により粗反応混合物から沈殿される。沈殿生成物は、好ましくは、濾過により単離され、好ましくは、たとえば水性DMSO又は水で洗浄され、その後、固形分は、好ましくは、真空乾燥などで乾燥される。次いで、好ましくは、固形分は、好適な非プロトン性極性有機溶媒、たとえばアセトニトリル又はTHF、より好ましくはアセトニトリルを用いてトリチュレートされ、その後、生成物は、好ましくは、真空乾燥などで乾燥される。真空乾燥は、好ましくは、昇温で、たとえば約70℃で実施される。
【0038】
ステップii)グアノシン5’-一リンオキソ酸エステルアナログの形成
第2のステップでは、ステップi)で提供されたグアノシンアナログは、グアノシン5’-一リンオキソ酸エステルアナログを得るためにリンオキソ酸誘導体に接触される。リンオキソ酸誘導体は、好ましくは、リン酸化剤又はホスホニル化剤であり、リンオキソ酸誘導体という用語は、実際のオキソ酸のみを包含するように狭義に解釈されるべきでなく、チオ-アナログ及び誘導体、たとえばPCl3もまた包含されることが想定される。かかる作用剤は、当技術分野で公知である。本発明との関連では、作用剤は、グアノシンアナログの5’位にリンオキソ酸エステルを導入してGMPアナログを形成するためのものである。リン酸化剤は、リンが形式酸化状態P(V)であるエステル、たとえば(HO)P(=O)-グアノシンを形成する。ホスホニル化剤は、リンが形式酸化状態P(III)であるエステル、たとえば(HO)HP(=O)-グアノシンを形成する。好ましい実施形態では、リンオキソ酸誘導体はリン酸化剤である。さらにより好ましい実施形態では、リンオキソ酸誘導体はホスホニル化剤である。
【0039】
好ましい実施形態では、ステップii)のリンオキソ酸誘導体は、一般式(P):
【化11】

(式中、
Mは、S若しくはOであり、又は不在であり、好ましい実施形態では、Mは、S又はOであり、より好ましくはOであり、他の好ましい実施形態では、Mは、不在であり、
及びoは、各々独立して、ハロゲン、-O-C1~8炭化水素、-S-C1~8炭化水素、-NH-C1~8炭化水素、ボラノ、メチルボラノ、ジメチルボラノ、シアノボラノ、及び-N(C1~8炭化水素)から選択され、且つ
は、H若しくはoに対して定義される通りであり、又はo及びoは、一緒になって、好ましくはC2~12炭化水素であるキラル補助剤を形成する)
のものである。一般式(P)の化合物がリン酸化剤であるとき、oはHでなく、且つMは不在でない。一般式(P)で示される化合物がホスホニル化剤であるとき、oはHであり、又はMは不在であるとともo及びoは一緒になってキラル補助剤を形成する。
【0040】
1~8炭化水素は、これとの関連では、好ましくは、好適な脱離基を形成する。炭化水素は、ヘテロ原子を含むことが可能であり、ハロゲンで、好ましくはフッ素で任意に置換可能である。好ましい実施形態では、oは、好適な脱離基、たとえば、ハロゲン、-OCなどの-O-C1~8炭化水素、-SCなどの-S-C1~8炭化水素、-NH-C1~8炭化水素、及び-N(C1~8炭化水素)を表す。好ましい実施形態では、oは、好適な脱離基、たとえば、ハロゲン、-O-C1~8炭化水素、-S-C1~8炭化水素、-NH-C1~8炭化水素、及び-N(C1~8炭化水素)を表す。より好ましい実施形態では、o及びoは、両方とも好適な脱離基を表す。好ましくは、o及びoは、同一部分を表す。好適な脱離基の例は、フェノール、ペンタフルオロフェノール、イミダゾール、トリアゾール、ジイソプロピルアミン、及びハロゲン、たとえば塩素又は臭素、より好ましくは塩素である。N(C1~8炭化水素)では、2つの炭化水素は、一緒になって、たとえば、イミダゾールが形成されるときなど、それらが結合されている窒素を含む環式構造を形成可能であるものと理解される。
【0041】
キラル補助剤は、当技術分野で公知のように(たとえば、Knouse et al.,2018,Science,DOI:10.1126/science.aau3369を参照されたい)、キラル補助剤が一般式(P)の中心リン原子の周りにキラル環式構造を形成することから、所与の立体化学配置で最終的環化を促進する部分である。キラル中心を強調するために使用される下線付きで、o及びoが結合された位置間をブリッジする2価基としてここに描かれたキラル補助剤の例は、
【化12】

(式中、C及びC**は、それらが結合されている炭素原子と一緒になって、
【化13】

を表すことにより環式構造を形成する)である。キラル補助剤が存在する一般式(P)の化合物では、Mは、好ましくはS又はO、より好ましくはSである。
【0042】
一般式(P)の好ましい化合物は、ジフェニルホスフィット、ジメチルホスフィット、ジエチルホスフィット、ジイソプロピルホスフィット、ジクロロホスフィットなどのジハロホスフィット、ジ(ペンタフルオロフェニル)ホスフィット、ジフェニルチオホスフィット、ジメチルチオホスフィット、ジエチルチオホスフィット、ジイソプロピルチオホスフィット、ジクロロチオホスフィットなどのジハロチオホスフィット、ジ(ペンタフルオロフェニル)チオホスフィット、ジ(ジイソプロピルアミノ)メトキシホスフィット([(iPr)2N]2P[OMe])、[(iPr)2N]2P[OEt]、Cl2P(S)(OMe)、Cl2P(S)(OEt)、Cl2P(O)(SMe)、Cl2P(O)(SEt)、(ペンタフルオロフェニル)OP(S)=(キラル補助剤)、P(S)Cl3、P(O)Cl3、ClP(S)(OMe)2、ClP(S)(OEt)2、ClP(O)(OMe)2、ClP(O)(OEt)2、(ペンタフルオロフェニル)OP(S)=(OMe)2、(ペンタフルオロフェニル)OP(S)=(OEt)2、(ペンタフルオロフェニル)OP(O)=(OMe)2、(ペンタフルオロフェニル)OP(O)=(OEt)2、ClP(S)(SMe)2、ClP(S)(SEt)2、ClP(O)(SMe)2、ClP(O)(SEt)2、(ペンタフルオロフェニル)OP(S)=(SMe)2、(ペンタフルオロフェニル)OP(S)=(SEt)2、(ペンタフルオロフェニル)OP(O)=(SMe)2、及び(ペンタフルオロフェニル)OP(O)=(SEt)2であり、より好ましいのは、以下により好ましいホスホニル化剤又はリン酸化剤として表されるものである。
【0043】
好ましいホスホニル化剤は、ジフェニルホスフィット、ジメチルホスフィット、ジエチルホスフィット、ジイソプロピルホスフィット、ジハロホスフィット、たとえば、ジクロロホスフィット、ジ(ペンタフルオロフェニル)ホスフィット、ジフェニルチオホスフィット、ジメチルチオホスフィット、ジエチルチオホスフィット、ジイソプロピルチオホスフィット、ジハロチオホスフィット、たとえば、ジクロロチオホスフィット、ジ(ペンタフルオロフェニル)チオホスフィット、[(iPr)N]P[OMe]、及び[(iPr)N]P[OEt]であり、より好ましいのは、ジフェニルホスフィット、ジフェニルチオホスフィット、及び[(iPr)N]P[OMe]であり、最も好ましいのは、ジフェニルホスフィットである。
【0044】
好ましいリン酸化剤は、Cl2P(s)(OMe)、Cl2P(s)(OEt)、Cl2P(O)(SMe)、Cl2P(O)(SEt)、(ペンタフルオロフェニル)OP(S)=(キラル補助剤)、P(S)Cl3、P(O)Cl3、ClP(S)(OMe)2、ClP(S)(OEt)2、ClP(O)(OMe)2、ClP(O)(OEt)2、(ペンタフルオロフェニル)OP(S)=(OMe)2、(ペンタフルオロフェニル)OP(S)=(OEt)2、(ペンタフルオロフェニル)OP(O)=(OMe)2、(ペンタフルオロフェニル)OP(O)=(OEt)2、ClP(S)(SMe)2、ClP(S)(SEt)2、ClP(O)(SMe)2、ClP(O)(SEt)2、(ペンタフルオロフェニル)OP(S)=(SMe)2、(ペンタフルオロフェニル)OP(S)=(SEt)2、(ペンタフルオロフェニル)OP(O)=(SMe)2、及び(ペンタフルオロフェニル)OP(O)=(SEt)2であり、より好ましいのは、Cl2P(S)(OMe)、Cl2P(O)(SMe)、(ペンタフルオロフェニル)OP(S)=(キラル補助剤)、P(S)Cl3、P(O)Cl3、ClP(S)(OMe)2、ClP(O)(OMe)2、ClP(S)(SMe)2、及びClP(O)(SMe)2である。
【0045】
リンオキソ酸誘導体とグアノシンアナログとを接触させることは、好ましくは、グアノシン5’-一リンオキソ酸エステルアナログの形成に資する条件下で実施される。接触させることは、好ましくは非プロトン性溶媒中で、より好ましくは相対的に低極性の非プロトン性溶媒、たとえばジクロロメタン又はクロロホルム中で実施される。接触させることは、好ましくは、マイルドな塩基、好ましくは非求核性のもの、たとえば、ピリジン、ルチジン、イミダゾール、又は約4~7、より好ましくは約5~7のpKaを有する他の含窒素塩基の存在下で実施される。接触させることは、好ましくは、過剰のリンオキソ酸誘導体を用いて、好ましくは、約2~約5equiv.、たとえば、約3equiv.の反応剤を用いて実施される。反応が進行した後、反応は、好ましくは、たとえば、塩基性水性溶液、たとえば、水性(トリ)アルキルアミン溶液、たとえば、1体積の水及び1体積のトリメチルアミンを用いてクエンチされ、次いで、好ましくは、約10~60分間、たとえば、約30分間放置される。有機相は、好ましくは、その後、水などで洗浄される。次いで、有機相は、好ましくは、たとえば、溶媒の蒸発、好ましくは、続いて共蒸発、たとえば、トルエン、エチルアセテート、又はイソプロパノールを用いて、好ましくはエチルアセテート及び/又はイソプロパノールを用いて共蒸発により乾燥させる。
【0046】
こうした接触の生成物は、グアノシン5’-一リンオキソ酸エステルアナログである。この化合物は、好ましくは、一般式(II)のもの又はその塩:
【化14】

(式中、h、X1、X、R、及びRは、以上に定義される通りであり、hは、好ましくはBrであり、Xは、好ましくはHであり、Xは、好ましくはp’、より好ましくは(トリ)アルキルシリル、たとえばTIPSであり、Rは、好ましくはHであり又はR2と一緒になって-CH=C(ar)-を形成し、Rは、好ましくはR2と一緒になって-CH=C(ar)-を形成し又はHであり、最も好ましくはR及びRは、-CH=C(ar)-を形成し、
及びoは、各々独立して、-OH又は以上に定義される通りであり、且つ
Mは、S又はO、好ましくはOである)
である。一般式(II)の化合物では、hの定義及び好ましい実施形態は、好ましくは一般式(I)の化合物に対して定義される通りである。一般式(II)の化合物では、R1の定義及び好ましい実施形態は、好ましくは一般式(I)の化合物に対して定義される通りである。一般式(II)の化合物では、R2の定義及び好ましい実施形態は、好ましくは一般式(I)の化合物に対して定義される通りである。一般式(II)の化合物では、X1の定義及び好ましい実施形態は、好ましくは一般式(I)の化合物に対して定義される通りである。一般式(II)の化合物では、X2の定義及び好ましい実施形態は、好ましくは一般式(I)の化合物に対して定義される通りである。
【0047】
好ましい実施形態では、oはHであり、且つoは、-OH、-O-C1~8炭化水素、-S-C1~8炭化水素、-NH-C1~8炭化水素、ボラノ、メチルボラノ、ジメチルボラノ、シアノボラノ、又は-N(C1~8炭化水素)、より好ましくは-O-C1~8炭化水素、-S-C1~8炭化水素、-NH-C1~8炭化水素、又は-N(C1~8炭化水素)である。他の好ましい実施形態では、o及びoは両方とも、-OH、-O-C1~8炭化水素、-S-C1~8炭化水素、-NH-C1~8炭化水素、ボラノ、メチルボラノ、ジメチルボラノ、シアノボラノ、又は-N(C1~8炭化水素)、より好ましくは-O-C1~8炭化水素、-S-C1~8炭化水素、-NH-C1~8炭化水素、又は-N(C1~8炭化水素)である。好ましい実施形態では、o及びoは、一緒になって、以上に定義されるキラル補助剤を形成する。最も好ましくは、oは-OHであり、且つOはHである。
【0048】
下記は、一般式(II)の好ましい化合物である。
1.8-ブロモグアノシン5’-一リン酸、
2.8-(2,4-ジヒドロキシフェニルチオ)グアノシン-5’-一リン酸、
3.8-(2-アミノフェニルチオ)グアノシン-5’-一リン酸、
4.8-(4-ヒドロキシフェニルチオ)グアノシン-5’-一リン酸、
5.8-(4-アミノフェニルチオ)グアノシン-5’-一リン酸、
6.8-(4-クロロフェニルチオ)-β-フェニル-1,N2-エテノグアノシン-5’-一リン酸
7.8-(4-クロロフェニルチオ)グアノシン-5’-一リン酸、
8.8-(2,4-ジクロロフェニルチオ)グアノシン-5’-一リン酸、
9.8-(4-メトキシフェニルチオ)グアノシン-5’-一リン酸、
10.8-ブロモβ-フェニル-1、Nエテノグアノシン-5’-一リン酸
11.8-ブロモ-(2-ナフチル-1、Nエテノ)グアノシン-5’-一リン酸
12.8-(4-ヒドロキシフェニルチオ)-β-フェニル-1、Nエテノグアノシン-5’-一リン酸
13.8-(4-クロロフェニルチオ)-β-フェニル-1、Nエテノグアノシン-5’-一リン酸
14.2-ナフチル-1,N-エテノグアノシン-5’-一リン酸
15.β-フェニル-1,N-エテノグアノシン-5’-一リン酸、
16.4-メトキシ-β-フェニル-1,N-エテノグアノシン5’-一リン酸
17.8-ブロモグアノシン-5’-モノ-H-ホスホン酸、
18.8-(2,4-ジヒドロキシフェニルチオ)グアノシン-5’-モノ-H-ホスホン酸、
19.8-(2-アミノフェニルチオ)グアノシン-5’-モノ-H-ホスホン酸、
20.8-(4-ヒドロキシフェニルチオ)グアノシン-5’-モノ-H-ホスホン酸、
21.8-(4-アミノフェニルチオ)グアノシン-5’-モノ-H-ホスホン酸、
22.8-(4-クロロフェニルチオ)-β-フェニル-1,N-エテノグアノシン-5’-モノ-H-ホスホネート、
23.8-(4-クロロフェニルチオ)グアノシン-5’-モノ-H-ホスホン酸、
24.8-(2,4-ジクロロフェニルチオ)グアノシン-5’-モノ-H-ホスホン酸、
25.8-(4-メトキシフェニルチオ)グアノシン-5’-モノ-H-ホスホン酸、
26.8-ブロモ-β-フェニル-1,N-エテノグアノシン-5’-モノ-H-ホスホン酸、
27.8-ブロモ-(2-ナフチル-1,N-エテノ)グアノシン-5’-モノ-H-ホスホン酸、
28.8-(4-ヒドロキシフェニルチオ)-β-フェニル-1,N-エテノグアノシン-5’-モノ-H-ホスホン酸、
29.8-(4-クロロフェニルチオ)-β-フェニル-1,N-エテノグアノシン-5’-モノ-H-ホスホン酸、
30.2-ナフチル-1,N-エテノグアノシン-5’-モノ-H-ホスホン酸、
31.β-フェニル-1,N-エテノグアノシン-5’-モノ-H-ホスホン酸、
32.4-メトキシ-β-フェニル-1,N-エテノグアノシン-5’-モノ-H-ホスホン酸、
33.β-1,N-アセチル-8-ブロモグアノシン5’-一リン酸及びそのモノ-H-ホスホン酸、
34.8-ブロモ-δ-1,N-ブチリルグアノシン-5’-一リン酸及びそのモノ-H-ホスホン酸、
35.8-ブロモ-(4-メチル-β-フェニル-1,N-エテノ)グアノシン-5’-一リン酸及びそのモノ-H-ホスホン酸、
36.8-ブロモ-(3-チオフェン-イル-1,N-エテノ)グアノシン-5’-一リン酸及びそのモノ-H-ホスホン酸、
37.1-ベンジル-8-ブロモグアノシン-5’-一リン酸及びそのモノ-H-ホスホン酸、
38.8-チオグアノシン-5’-一リン酸及びそのモノ-H-ホスホン酸、
39.8-(4-イソプロピルフェニルチオ)グアノシン-5’-一リン酸及びそのモノ-H-ホスホン酸、
40.8-フェニルアミドメチルチオグアノシン-5’-一リン酸及びそのモノ-H-ホスホン酸、
41.β-フェニル-1,N-エテノ-8-フェニルアミドメチルチオグアノシン-5’-一リン酸及びそのモノ-H-ホスホン酸、
42.8-(4-イソプロピルフェニルチオ)-β-フェニル-1,N-エテノグアノシン-5’-一リン酸及びそのモノ-H-ホスホン酸、
43.8-(2-アミノフェニルチオ)-β-フェニル-1,N-エテノグアノシン-5’一リン酸及びそのモノ-H-ホスホン酸、
44.β-フェニル-1,N-エテノ-8-チオグアノシン-5’一リン酸及びそのモノ-H-ホスホン酸、
45.8-メチルチオ-β-フェニル-1,N-エテノグアノシン-5’-一リン酸及びそのモノ-H-ホスホン酸、
46.8-メチルチオ-グアノシン-5’-ホスホン酸、好ましくはナトリウム塩及びそのモノ-H-ホスホン酸、
47.8-フェニルグアノシン-5’-一リン酸及びそのモノ-H-ホスホン酸、
48.8-(2-フリル)グアノシン-5’-一リン酸及びそのモノ-H-ホスホン酸、
49.8-(4-クロロフェニル)グアノシン-5’-一リン酸及びそのモノ-H-ホスホン酸、
50.8-フェニル-β-フェニル-1,N-エテノグアノシン-5’-一リン酸及びそのモノ-H-ホスホン酸、
51.8-(4-クロロフェニル)-β-フェニル-1,N-エテノグアノシン-5’-一リン酸及びそのモノ-H-ホスホン酸又はその塩。
【0049】
以上のリストの化合物への参照は、かかる化合物の塩も参照することが意図され、この場合、塩は、本明細書の他の箇所に定義される通りである。好ましい実施形態では、遊離塩基化合物が参照される。好ましい実施形態では、塩が参照される。より好ましい実施形態では、化合物は、化合物1~16から選択される。他のより好ましい実施形態では、化合物は、化合物17~32から選択される。他の好ましい実施形態では、化合物は、1、10、11、17、26、及び27から、より好ましくは1、10、及び11から、代替的により好ましくは17、26、及び27から選択される。他の好ましい実施形態では、化合物は、6、10~16、22、及び26~32から、より好ましくは6及び10~16から、代替的により好ましくは22及び26~32から選択される。他の好ましい実施形態では、化合物は、6、10~13、15、16、22、26~29、31、及び32から、より好ましくは6、10~13、15、及び16から、代替的により好ましくは22及び26~29、31、及び32から選択される。他の好ましい実施形態では、化合物は、1~5、7~9、17~21、及び23~25から、より好ましくは1~5及び7~9から、代替的により好ましくは17~21及び23~25から選択される。非常にきわめて好ましい化合物は、化合物10及び26、最も好ましくは化合物26である。他の非常にきわめて好ましい化合物は、化合物10、35、36、及び40~43、並びにそれらのモノ-H-ホスホン酸、より好ましくはそれらのモノ-H-ホスホン酸である。
【0050】
ステップiii)グアノシン5’-一リンオキソ酸エステルアナログの結晶化
本発明者らは、驚くべきことに、ステップii)で生成された5’-一リンオキソ酸エステルアナログを結晶化可能であることを見いだした。この中間体は、当技術分野で公知のcGMP生成方法では決して単離されないが、この中間体の精製は、環化収率の増加、環化生成物のキラリティーに対する制御の改善など、有利な効果を有することが見いだされた。好ましくは、グアノシン5’-一リンオキソ酸エステルアナログは、結晶化されるときは塩であり、より好ましくは、カウンターイオンが水素化有機塩基である塩、最も好ましくはカウンターイオンがTEAH+などの水素化(トリ)アルキルアミンであるものである。
【0051】
グアノシン5’-一リンオキソ酸エステルアナログは、好ましくは非プロトン性有機溶媒から、より好ましくは極性のもの、たとえば、エチルアセテート又はプロピルアセテート又はTHF又はtert-ブチルメチルエーテルから、最も好ましくはエチルアセテートから、結晶化により単離される。結晶化は、好ましくは種晶を加えて、より好ましくは結晶化される所望の生成物を用いて行われる。好ましくは少なくとも4、より好ましくは少なくとも8、さらにより好ましくは少なくとも12時間放置される結晶化の後、結晶は、好ましくは洗浄及び/又は乾燥される。結晶化は、好ましくは室温でのものである。洗浄は、好ましくは、結晶化に使用されたものと同一の溶媒を用いて実施される。乾燥は、好ましくは真空中で、より好ましくは昇温で、たとえば約40~80℃で、好ましくは約50~70℃で実施される。好ましい実施形態では、得られる結晶は溶媒和物である。好ましい結晶は、実質的に純粋な生成物を含み、より好ましくは少なくとも80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、又は100%、さらにより好ましくは少なくとも95、96、97、98、99、又は100%、最も好ましくは少なくとも97%、任意にそれ以上の純度を有する。
【0052】
ステップiv)環状ジエステルの形成
ステップiii)で単離された5’-リン酸モノエステルは、cGMPアナログの合成を継続するために有利に使用可能である。それゆえ、好ましい本発明に係る方法は、以下のステップをさらに含む。
iv)ステップii)で得られた(及びステップiiiで結晶化された)グアノシン5’-一リンオキソ酸エステルアナログを環化して環状グアノシン-3’,5’-一リン酸(cGMP)アナログを得るステップであって、前記環化は、好ましくは、立体障害塩基の存在下で実施される、ステップ。XがHでない場合、好ましくは、このステップに先行して、対応する保護ヒドロキシル部分を脱保護することによりX1からHへの変換を行うことは、理にかなっている。
【0053】
cGMPアナログは、好ましくは、一般式(III)のもの又はその塩:
【化15】

(式中、h、X、R、及びRは、以上に定義される通りであり、好ましくは一般式(II)の化合物に対して定義される通りである)
である。好ましくはXはp’であり、より好ましくはTIPSなどの(トリ)アルキルシリルである。oは、一般式(II)の化合物に対して定義される通りであり、好ましくはoはHである。他の好ましい実施形態では、oは、-OH、-O-C1~8炭化水素、-S-C1~8炭化水素、-NH-C1~8炭化水素、ボラノ、メチルボラノ、ジメチルボラノ、シアノボラノ、又は-N(C1~8炭化水素)、最も好ましくは-OHである。
【0054】
一般式(III)の化合物では、hの定義及び好ましい実施形態は、好ましくは一般式(II)の化合物に対して定義される通りである。一般式(III)の化合物では、R1の定義及び好ましい実施形態は、好ましくは一般式(II)の化合物に対して定義される通りである。一般式(III)の化合物では、R2の定義及び好ましい実施形態は、好ましくは一般式(II)の化合物に対して定義される通りである。一般式(III)の化合物では、X2の定義及び好ましい実施形態は、好ましくは一般式(II)の化合物に対して定義される通りである。
【0055】
環化は、当技術分野で公知の方法を用いて実施可能である。好ましくは、環化は、カップリング試薬の存在下で実施される。好ましくは、環化は、立体障害塩基又はピリジン、より好ましくはマイルドな立体障害塩基又はピリジン、さらにより好ましくはマイルドな立体障害塩基の存在下で実施される。最も好ましくは、カップリング試薬及び立体障害塩基の両方が使用される。環化は、好ましくは、希釈条件下で、たとえば、溶媒1リットル当たりの5’-一リンオキソ酸エステルアナログの重量として表したとき、多くとも約200g/L、好ましくは多くとも約100g/L、より好ましくは多くとも約80g/L、さらにより好ましくは多くとも約60g/L、たとえば、約50g/Lで実施される。溶媒は、好ましくは非プロトン性溶媒、より好ましくはわずかに極性のもの、たとえばジクロロメタン又はクロロホルム又はアセトニトリル、さらにより好ましくはクロロホルム又はジクロロメタンである。当業者であれば気付くであろうが、希釈条件下では、塩基は、好ましくは過剰に、たとえば約2~9equiv.、より好ましくは約4~6equiv.、たとえば約5equiv.で存在する。同様に、カップリング試薬は、好ましくは過剰に、たとえば約1.1~5equiv.、より好ましくは約1.2~3equiv.、たとえば約1.5equiv.で存在する。好ましくは、最初に塩基が希釈5’-一リンオキソ酸エステルアナログ溶液に添加され、その後、カップリング試薬が添加される。反応は、好ましくは少なくとも30分間、より好ましくは少なくとも1時間、最も好ましくは約2時間以上進行させる。
【0056】
好適な立体障害塩基の好ましい例は、ルチジン、ピコリン、コリジン、N,N-ジメチルアニリン、N-メチルモルホリン、及びキノロン、より好ましくはルチジンである。さらに好ましい立体障害塩基は、約4~7、より好ましくは約5~7のpKaを有する。
【0057】
好適なカップリング試薬は、当技術分野で周知である。好適なカップリング試薬の好ましい例は、アリールスルホン酸誘導体、ジエステルクロロホスフェート、カルボジイミド、及びアシルハリド、たとえば、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)、ビス(2-オキソ-3-オキサゾリジニル)ホスフィン酸クロリド(BOP-Cl)、2-クロロ-4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン(CDMT)、(クロロメチレン)ジメチルイミニウムクロリド(フィルスマイヤー試薬)、N-(ジメチルアミノプロピル)-N’-エチル-カルボジイミド(EDC)、カルボニルジイミダゾール(CDI)、プロピルホスホン酸無水物(T3P)、ジエチルクロロホスフェート、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、イソブチルクロロホルメート、及びピバロイルクロリドである。より好ましくはアシルハリドが使用され、そのうちアシルクロリド、たとえば、プロピルクロリド、ベンゾイルクロリド、エチルクロロホルメート、イソブチルクロロホルメート、及びピバロイルクロリドが最も好ましい。ピバロイルクロリドは、最もきわめて有利である。
【0058】
好ましくは、cGMPアナログは、好ましくは水で、有機相を洗浄することにより単離可能であり、その後、好ましくは、アセトニトリルなどの非プロトン性極性溶媒で希釈される。好ましくは、有機相は蒸発される。得られた粗生成物は、好ましくは、アセトニトリルなどの非プロトン性極性溶媒中に粗固形分を再懸濁させることによりさらに精製され、その後、固形分は濾別される。次いで、濾液は、好ましくは真空濃縮され、その後、好ましくは、アセトニトリルなどの非プロトン性極性溶媒中に再溶解される。次いで、粗溶液は、好ましくは、過剰のエーテル溶媒、好ましくはtert-ブチルエーテル溶媒、たとえばtert-ブチルメチルエーテル(TBME)の添加により処理される。過剰は、好ましくは少なくとも5体積、より好ましくは少なくとも10体積、たとえば約12体積である。得られた組成物は、好ましくは少なくとも約4時間、より好ましくは少なくとも約8時間放置し、その後、溶媒は、好ましくはデカンテーション及び/又は蒸発により除去される。得られた残渣は油でありうる。得られた残渣は、好ましくは真空乾燥され、その後、好ましくはエーテル溶媒、好ましくはTBMEなどのtert-ブチルエーテル溶媒を用いてトリチュレートされる。他のきわめて好ましい実施形態では、好ましくは、環化に続いてホスホロチオエート形成を行うべきであり、cGMPアナログは、いずれのさらなる反応ステップの前でも単離されない。
【0059】
本発明者らは、驚くべきことに、立体障害塩基の使用が反応の非常に望ましい立体化学的結果をもたらすこと、すなわち、好ましい立体異性体であるRp立体異性体の大きなジアステレオマー過剰率をもたらすことを見いだした。一般式(III)のRp及びSp立体異性体は、以下に示されており、それぞれ、一般式(III-Rp)及び(III-Sp)のものである。理論に拘束されることを望むものではないが、立体障害塩基の使用は、全体的に緩徐な反応又は速度論的制御下の反応をもたらすことが可能であり、その結果、Rp生成物である速度論的生成物の好ましい形成が得られる。
【化16】
【0060】
好ましい実施形態では、一般式(III)の化合物は、一般式(III-Rp)のものである。異なる用途では異なるジアステレオマーが妥当でありうるので、他の好ましい実施形態では、一般式(III)の化合物は、一般式(III-Sp)のものである。一般式(III-Rp)又は(III-Sp)の化合物では、h、X、R、及びRは、好ましくは以上に定義される通りであり、より好ましくは一般式(III)の化合物に対して定義される通りである。好ましくはXは、p’、より好ましくは(トリ)アルキルシリル、最も好ましくはTIPSである。oは、好ましくは、一般式(II)の化合物に対して定義される通りであり、より好ましくは、そこに定義される通りであるが、ただし、-OHではなく、さらにより好ましくはoは、H又はSHである。ステップivで生成される中間生成物として、最も好ましくはoはHである。
【0061】
好ましくは、化合物が一般式(III-Rp)又は一般式(III-Sp)のものであるとき、対応するジアステレオマーは、少なくとも2:1、より好ましくは少なくとも3:1、さらにより好ましくは少なくとも4:1、そのほかより好ましくは少なくとも5:1、そのほかさらにより好ましくは少なくとも6:1、そのほかより好ましくは少なくとも7:1、最も好ましくは少なくとも約8:1のジアステレオマー過剰率で存在する。好ましくは、一般式(III)及び/又は一般式(III-Rp)若しくは(III-Sp)の化合物がステップiv)の後に得られるとき、化合物は、少なくとも60、65、70、75、80、85、90、95、96、97、98、99、又はそれ以上のパーセントの純度を有する。より好ましくは純度は、少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも75%、そのほかより好ましくは少なくとも80%、そのほかさらにより好ましくは少なくとも85%、そのほかより好ましくは少なくとも90%である。純度は、公知の技術を用いてアッセイ可能であり、好ましくはHPLCを用いてアッセイされる。
【0062】
一般式(III)の好ましい化合物は、その塩、より好ましくはカウンターイオンが水素化有機塩基である塩、最も好ましくはカウンターイオンがTEAH+などの水素化(トリ)アルキルアミンであるものである。一般式(III-Rp)の好ましい化合物は、その塩、より好ましくはカウンターイオンが水素化有機塩基である塩、最も好ましくはカウンターイオンがTEAH+などの水素化(トリ)アルキルアミンであるものである。一般式(III-Sp)の好ましい化合物は、その塩、より好ましくはカウンターイオンが水素化有機塩基である塩、最も好ましくはカウンターイオンがTEAH+などの水素化(トリ)アルキルアミであるものである。
【0063】
ステップv)ホスホロチオエート形成
ホスホロチオエートは、有用なcGMPアナログである。それゆえ、好ましい実施形態では、本発明に係る方法は以下のステップv)を含む:
v)cGMPアナログと硫化剤とを接触させて、一般式(III)(式中、oは-SH又は-S-C1~12炭化水素、好ましくは-SHである)のチオール化cGMPアナログを得るステップ。好ましい実施形態では、cGMPアナログは一般式(III-Rp)のものである。他の好ましい実施形態では、cGMPアナログは一般式(III-Sp)のものである。ステップv)は、Mが一般式(II)のグアノシン5’-一リンオキソ酸アナログでOであるとき、有利である。一般式(II)のかかる前駆体でMがSであるとき、好ましくはステップv)は本方法に含まれない。
【0064】
硫化剤は、当技術分野で公知である。硫化剤の好ましい例は、硫黄、フェニルアセチルジスルフィド、及びN-(アルキル-チオ)-スクシンイミド、たとえば、N-メチルチオ-スクシンイミド、N-エチルチオ-スクシンイミド、及びN-プロピルチオ-スクシンイミドである。硫黄は最も好ましい。好ましいC1~12炭化水素は、C1~8炭化水素、より好ましくはC1~4炭化水素である。好ましい-S-C1~12炭化水素の例は、-SCH、-S-CHCH、-S-CH(CH、-SC(CH、及び-S-フェニルであり、-S-CHは最も好ましい。好適な硫黄導入は、求電子性硫黄を使用すること、好ましくは以上に記載の硫化剤の使用、それに続く酸化(すなわち、酸化状態の増加)、好ましくは以下に記載の酸化剤を使用すること、を含む。求核性硫黄の使用は有利でない。
【0065】
好ましくは、接触させることは、塩基、より好ましくは(トリ)アルキルアミン、たとえばトリエチルアミンの存在下で実施される。反応は、好ましくは、少なくとも30分間、より好ましくは少なくとも60分間、最も好ましくは少なくとも90分間進行させる。反応の進行は、好ましくはHPLCなどの公知の技術を用いてアセスされる。
【0066】
代替的に、o3がHであるcGMPアナログから開始してこのステップが実施されるとき、P(III)をP(V)に変換することが有用でありうる。それゆえ、好ましい実施形態では、本発明に係る方法は以下のステップv-O)を含む。
v-O)cGMPアナログと酸化剤とを接触させてo3が-OHである一般式(III)のcGMPアナログを得るステップ。かかるオキソ誘導体は、PKGのアクチベーターであり、o3がSを含むチオホスフェートなどのそのインヒビターではない。特徴及び条件は、好ましくは、ステップv)に対して記載される通りである。酸化剤は、当技術分野で公知である。ステップv-O)は、好ましくは、無水条件下で実施される。ステップv-O)に好適な酸化剤の例は、ペルオキシド、たとえば、過酸化水素、ビス(トリメチルシリル)ペルオキシド、t-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ヨウ素、及びアルキルアミノ-オキシド、たとえばN-メチルモルホリンN-オキシドである。代替的に、作用剤は、Pd/C粉末などの触媒でありうる。ホスフェートへのホスフィット酸化の例は、たとえば、ペルオキシドを用いたHayakawa et al.(Tet.Lett.1986,DOI:10.1016/S0040-4039(00)84946-1)から、及びPd/Cを用いたNagaosa and Aoyama(Carbon,2001,DOI:10.1016/S0008-6223(01)00206-8)から、公知である。
【0067】
好ましくは、一般式(III)及び/又は一般式(III-Rp)若しくは(III-Sp)の化合物がステップv)又はv-O)の後に得られるとき、化合物は、少なくとも60、65、70、75、80、85、90、95、96、97、98、99、又はそれ以上のパーセントの純度を有する。より好ましくは純度は、少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも75%、そのほかより好ましくは少なくとも80%、そのほかさらにより好ましくは少なくとも85%、そのほかより好ましくは少なくとも90%である。純度は、公知の技術を用いてアッセイ可能であり、好ましくはHPLCを用いてアッセイされる。
【0068】
ステップvi)cGMPアナログの脱保護
興味深い薬理学的性質を有する生成物を得るために、本発明の方法により生成されたcGMPアナログは、好ましくは脱保護される。このことは、本発明との関連では、生成された一般式(III)のcGMPアナログが、好ましくは、HであるX2を有することを意味する。したがって、好ましい実施形態では、Xがp’である本発明に係る方法が提供され、本方法は、以下のステップをさらに含む。
vi)X2により保護されたヒドロキシル部分を脱保護して脱保護cGMPアナログを得るステップ。脱保護cGMPアナログは、一般式(III)(式中、XはHである)のcGMPアナログである。脱保護の手段は、当技術分野で周知であり、p’の性質に依存する。一般に、脱保護は、酸性条件で、たとえばpH<1で、任意に昇温で実施可能である。脱保護はまた、好ましくはフルオリドの存在下で、たとえば、HF、(トリ)アルキルアミン・HF、又はTBAFを用いて、実施される。(トリ)アルキルシリル保護基の脱保護では、フルオリドの存在下での脱保護、より好ましくは(トリ)アルキルアミン・HF、たとえばトリエチルアミンHFを用いた、好ましくは10~50vol.-%、より好ましくは20~40vol.-%、たとえば約33vol.-%の溶液でのものが好ましい。脱保護は、好ましくは非プロトン性溶媒、より好ましくは環状エーテルである極性非プロトン性溶媒、たとえばテトラヒドロフラン又は1,4-ジオキサン中で実施される。反応は、好ましくは約1日間、より好ましくは約2日間、さらにより好ましくは約3日間進行させる。反応進行をモニターするために、HPLCなどの標準的分析技術を使用可能である。沈殿した脱保護生成物は、好ましくは、濾過により単離され、その後、好ましくは洗浄され、より好ましくは脱保護に使用された溶媒が使用される。その後、生成物は、好ましくは、真空下などで乾燥される。この方法で得られた生成物は、脱保護cGMPアナログのフルオリド複合体である。好ましい実施形態では、生成されたcGMPアナログは、フルオリドとの複合体の状態である。このcGMPアナログフルオリド複合体は、好ましくは、cGMPアナログのアッセイで、少なくとも60、65、70、75、又は80パーセントの純度を有する。より好ましくは純度は、少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも75%、そのほかより好ましくは少なくとも80%である。純度は、公知の技術を用いてアッセイ可能であり、好ましくはHPLCを用いてアッセイされる。この化合物は、好ましくは塩、より好ましくは(トリ)アルキルアミン塩、最も好ましくはTEAH+塩である。
【0069】
ステップvii)脱保護cGMPアナログのトリチュレーション
好ましい実施形態では、本発明に係る方法は以下のステップviii)を含む。
vii)脱保護cGMPアナログをトリチュレートするステップ。
【0070】
脱保護cGMPアナログは、以上に記載される通りである。このトリチュレーションは、好ましくは、cGMPアナログフルオリド複合体からフルオリドを除去する。しかしながら、本発明者らはまた、驚くべきことに、トリチュレーションが、単離された一般式(III-Rp)の化合物の改善されたジアステレオマー過剰率をもたらすことを見いだした。それゆえ、本発明は、ステップvi)を含む、より好ましくはステップvi)及びviiを含む、cGMPアナログの生成方法を提供する。ここで、特徴及び定義は、本明細書の他の箇所に定義される通りであり、好ましくは本方法はまた、以下に記載のステップviii)も含む。
【0071】
好ましくは、トリチュレーションでは、脱保護cGMPアナログは、極性溶媒、好ましくはアセトニトリルなどの非プロトン性極性溶媒に再懸濁させることが可能である。次いで、好ましくは、濾過及び洗浄し、より好ましくは、再懸濁させた溶媒を用いて洗浄する。得られるcGMPアナログは、好ましくは少なくとも60、65、70、75、80、85、90、95、96、97、98、99、又はそれ以上のパーセントの純度を有する。より好ましくは純度は、少なくとも75%、さらにより好ましくは少なくとも80%、そのほかより好ましくは少なくとも85%、そのほかさらにより好ましくは少なくとも90%、そのほかより好ましくは少なくとも約95%である。この脱保護cGMPアナログは、好ましくは実質的にフルオリドフリー、より好ましくは完全にフルオリドフリーである。フルオリドの不在は、19F NMRを用いて確認可能である。純度は、公知の技術を用いてアッセイ可能であり、好ましくはHPLCを用いてアッセイされる。この化合物は、好ましくは塩、より好ましくは(トリ)アルキルアミン塩、最も好ましくはTEAH+塩である。
【0072】
ステップviii)薬学的に許容可能な塩の形成
医薬用途では、cGMPアナログは、遊離塩基又は薬学的に許容可能な塩のどちらか、より好ましくは薬学的に許容可能な塩であることが好ましい。それゆえ、好ましい本発明に係る方法は以下のステップviii)を含む。
viii)脱保護cGMPアナログを薬学的に許容可能な塩、好ましくはナトリウム塩に任意に変換するステップ。特徴及び定義は、以上に提供される通りである。ステップviii)で変換されるcGMPアナログは、好ましくはステップvi)又はステップvii)の、最も好ましくはステップvi)それに続くのステップvii)の生成物である。この化合物は、最も好ましくは塩、より好ましくは(トリ)アルキルアミン塩、最も好ましくはTEAH+塩である。
【0073】
好ましくは、cGMPアナログは、プロトン性溶媒、より好ましくはメタノールなどの低級アルコールと混合される。この結果として、好ましくはサスペンジョンが得られる。これに続いて、好ましくは、カウンターイオンが薬学的に許容可能なcGMP塩に対する意図されたカウンターイオンであるアルコキシド塩、好ましくは、溶媒と、アルカリ金属、たとえばカリウム又はナトリウム、より好ましくはナトリウムと、のアルコキシド塩の添加が行われる。好ましいアルコキシド塩は、ナトリウムメトキシドである。得られた溶液は、cGMPアナログの薬学的に許容可能な塩、好ましくはナトリウム塩を得るために、好ましくは真空濃縮される。
【0074】
この濃縮の後、得られた固形分は、好ましくは低級アルコールと共に、より好ましくはエタノールと共に撹拌され、その後、固形分は濾過により分離される。本発明者らは、驚くべきことに、濾過後、母液が濾別された固形分よりも低い分率のSpジアステレオマーを含有することを見いだした。それゆえ、本発明は、ステップviii)を含む、cGMPアナログの生成方法を提供する。ここで、特徴及び定義は、本明細書の他の箇所に定義される通りであり、好ましくは本方法はまた、以上に記載のステップvii)も含む。
【0075】
好ましい実施形態では、固形分は、少なくとも1、より好ましくは少なくとも2時間にわたり、わずかに湿潤した低級アルコールと共に、より好ましくはわずかに湿潤したエタノールと共に、最も好ましくは96%エタノール(残りの4%は、好ましくは実質的に水であり、両方ともvol.-%である)と共に撹拌される。この後、濾液は、好ましくは真空濃縮される。得られた固形分の純度は、好ましくは、無水低級アルコール中、好ましくは無水エタノール中へのさらなる懸濁によりさらに増加され、その後、サスペンジョンは濾過され、固形分は、好ましくは追加の無水アルコール、好ましくは再懸濁に使用したものと同一のアルコールで洗浄される。その後、得られた固形分は、好ましくは、真空乾燥などで乾燥される。
【0076】
好ましくは、cGMPアナログの薬学的に許容可能な塩は、多くとも10%、より好ましくは多くとも5%、さらにより好ましくは多くとも4、3、又は2%、さらにより好ましくは多くとも1%、たとえば多くとも0.5%の望まれないジアステレオマーを含む。好ましくは、cGMPアナログの薬学的に許容可能な塩は、少なくとも80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、又はそれ以上のパーセントの純度を有する。より好ましくは純度は、少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも94%、そのほかより好ましくは少なくとも95%、そのほかさらにより好ましくは少なくとも96%、そのほかより好ましくは少なくとも約97%である。純度は、公知の技術を用いて、好ましくはNMRを用いてアッセイ可能である。
【0077】
きわめて好ましい実施形態では、Xがp’である本発明に係る方法が提供され、本方法は、
vi)X2により保護されたヒドロキシル部分を脱保護して脱保護cGMPアナログを得るステップと、
vii)脱保護cGMPアナログを任意にトリチュレートするステップと、
viii)脱保護cGMPアナログを薬学的に許容可能な塩、好ましくはナトリウム塩に任意に変換するステップと、
をさらに含む。
【0078】
本方法により生成される生成物及び中間体
本発明に係る方法はまた、cGMPアナログに至る有利な経路を提供する以外に、いくつかの鍵を握る中間体の効率的形成を可能にする。他の一態様では、本発明は、こうした化合物のいくつか、好ましくは一般式(II)の化合物又はその塩を提供する。式中、h、X1、X、R、及びRは、以上に定義される通りであり、o及びoは、各々独立して、-OH又は一般式(P)の化合物に対して定義される通りであり、好ましくはoはHであり、又はo及びoは、一緒になって、好ましくはC2~12炭化水素であるキラル補助剤を形成し、Mは、S又はOであり、好ましくは、化合物は塩である。生成物は、医薬剤、好ましくは色素性網膜炎の処置のための医薬剤の製造に使用可能である。
【0079】
さらなる特徴及び定義は、一般式(II)の化合物に対する以上の第1の態様に記載される通りである。それゆえ、この態様内の好ましい実施形態では、oはHであり、且つoは、-OH、-O-C1~8炭化水素、-S-C1~8炭化水素、-NH-C1~8炭化水素、ボラノ、メチルボラノ、ジメチルボラノ、シアノボラノ、又は-N(C1~8炭化水素)、より好ましくは-O-C1~8炭化水素、-S-C1~8炭化水素、-NH-C1~8炭化水素、又は-N(C1~8炭化水素)である。他の好ましい実施形態では、o及びoは両方とも、-OH、-O-C1~8炭化水素、-S-C1~8炭化水素、-NH-C1~8炭化水素、ボラノ、メチルボラノ、ジメチルボラノ、シアノボラノ、又は-N(C1~8炭化水素)、より好ましくは-O-C1~8炭化水素、-S-C1~8炭化水素、-NH-C1~8炭化水素、又は-N(C1~8炭化水素)である。好ましい実施形態では、o及びoは、一緒になって、以上に定義されるキラル補助剤を形成する。最も好ましくは、oは-OHであり、且つoはHである。
【0080】
好ましくは、この態様内の化合物は結晶性である。中間体はまた、水和物又は溶媒和物でもありうる。好ましい実施形態では、結晶は、溶媒和物、より好ましくはイソプロピルアセテート溶媒和物である。他の実施形態では、結晶は水和物である。きわめて好ましい実施形態では、結晶は、溶媒和物でも水和物でもない。好ましい実施形態では、結晶はフルオリドを含む。好ましい実施形態では、結晶は、実質的に純粋な中間体を含み、より好ましくは少なくとも80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、又は100%、さらにより好ましくは少なくとも95、96、97、98、99、又は100%、最も好ましくは少なくとも97%、又は任意にそれ以上の純度を有する。
【0081】
好ましい実施形態では、本発明は、一般式(II)の化合物又はその塩(式中、h、X1、X、R、及びRは、以上に定義された通りであり、oは、-OH又は一般式(P)の化合物に対して定義される通りであり、oは、Hであり、Mは、S又はOであり、好ましくは化合物は、塩、より好ましくはTEAH+塩である)を提供する。さらなる特徴及び定義は、一般式(II)の化合物に対する以上の第1の態様に記載される通りである。
【0082】
好ましい実施形態では、本発明は、一般式(II)の化合物又はその塩(式中、h、X1、X、R、及びRは、以上に定義された通りであり、又はo及びoは、一緒になって、好ましくはC2~12炭化水素であるキラル補助剤を形成し、Mは、S又はOであり、好ましくは、化合物は塩である)を提供する。さらなる特徴及び定義は、一般式(II)の化合物に対する以上の第1の態様に記載される通りである。
【0083】
好ましい実施形態では、本発明は、一般式(II)の化合物又はその塩(式中、hはBrであり、XはHであり且つXはp’であり、p’は、好ましくは(トリ)アルキルシリル、より好ましくはトリイソプロピルシリル(TIPS)であり、R及びRは、一緒になって、好ましくはarがR2に最も近接する-CH=C(ar)-を形成し、arは、フェニル又はナフチル、好ましくはフェニルであり、oはOHであり、oはHであり、且つMはS又はO、好ましくはOである)を提供する。
【0084】
本方法の望ましい生成物は、一般式(III)のもの、より好ましくは一般式(III-Rp)のもの(式中、oは-SHであり(又は任意に化合物がナトリウム塩であるときは-Sであり)、XはHであり、hは-Brであり、且つR及びRは、一緒になって、好ましくはarがR2に最も近接する、且つarが4-メチルフェニルである、-CH=C(ar)-を形成する)である。
【0085】
一般的定義
本文書及び特許請求の範囲では、「to comprise(~を含む)」は、その非限定的な意味で用いられ、その単語に続くアイテムを含むが具体的に挙げられていないアイテムを除外するものではないことを意味する。そのほか、不定冠詞「a」又は「an」による「an element(要素)」への参照は、ただ1つの要素のみが存在することが文脈上明らかに必要とされない限り、2つ以上の要素が存在する可能性を排除しない。そのため、不定冠詞「a」又は「an」は、通常、「at least one(少なくとも1つ)」を意味する。
【0086】
数値との関連で用いられるときの「about(約)」又は「approximately(おおよそ)」という語(たとえば、about 10(約10))は、好ましくは、所与の値がそれよりも1%大きい又は小さい値でありうることを意味する。
【0087】
オキソ酸はまた、オキシ酸としても知られ、水素と酸素と少なくとも1原子のさらなる元素とを含有するとともに、酸素に結合された少なくとも1個の水素原子が、H+カチオンと酸のアニオンとを生成するように解離可能である、化合物である。リンオキソ酸は、さらなる元素がリンであるオキソ酸である。
【0088】
本発明で提供される分子は、任意に置換可能である。好適な任意の置換は、ハロゲンによる-Hの置換えである。好ましいハロゲンは、F、Cl、Br、及びIである。さらなる好適な任意の置換は、-NH、-OH、=O、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、アルケン、ハロアルケン、アルキン、ハロアルキン、及びシクロアルキルによる1つ以上の-Hの置換である。アルキル基は、一般式C2n+1を有し、代替的に線状又は分岐状でありうる。非置換アルキル基はまた、環状部分も含有しうるので、付随的一般式C2n-1を有する。任意に、アルキル基は、本文書にさらに具体的に示された1つ以上の置換基により置換される。アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、2-プロピル、t-ブチル、1-ヘキシル、1-ドデシルなどが挙げられる。
【0089】
とくに明記されていない限り、-Hは、C~C12アルキル基、C~C12アルケニル基、C~C12アルキニル基、C~C12シクロアルキル基、C~C12シクロアルケニル基、C~C12シクロアルキニル基、C~C12アルコキシ基、C~C12アルケニルオキシ基、C~C12-アルキニルオキシ基、C~C12シクロアルキルオキシ基、ハロゲン、アミノ基、オキソ、及びシリル基からなる群から独立して選択される1つ以上の置換基で任意に置換されていてもよく、この場合、シリル基は、式(RSi-により表すことが可能であり、Rsは、C~C12アルキル基、C~C12アルケニル基、C~C12アルキニル基、C~C12シクロアルキル基、C~C12アルコキシ基、C~C12アルケニルオキシ基、C~C12アルキニルオキシ基、及びC~C12シクロアルキルオキシ基からなる群から独立して選択され、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基、及びシクロアルキルオキシ基は、任意に置換されていてもよく、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、及びシクロアルコキシ基は、O、N、及びSからなる群から選択される1個以上のヘテロ原子が任意に介在していてもよい。
【0090】
構造式又は化学名はキラル中心を有すると当業者により理解されるが、とはいえキラリティーがまったく指示されていないとき、各キラル中心に対して、ラセミック混合物、純Rエナンチオマー、及び純Sエナンチオマーの3つのどれに対してもすべて、個別の参照が行われる。2つの部分が一緒になって結合を形成すると言われるとき、このことは、これらの部分の原子として不在を示唆し、原子価の遵守は置換え電子結合により満たされる。部分の表現中のダッシュは、主に読者に手引きを与える働きをし、非限定的例として、-NH-(CH-OH及び-NH-(CHOHは、同一部分を意味する。こうしたことはすべて、当技術分野で公知である。
【0091】
物質のパラメーターが本発明との関連で考察されるときは常に、とくに明記されていない限り、パラメーターは、生理学的条件下で決定、測定、又は発現されると仮定される。生理学的条件は、当業者に公知であり、一般に、水性溶媒系、大気圧、6~8のpH値、室温~約37℃の範囲内の温度(約20℃~約40℃)、及び緩衝塩又は他の成分の好適な濃度を含む。電荷は、多くの場合、平衡に関連付けられるものと理解される。電荷を運搬又は担持すると言われる部分は、かかる電荷を担持も運搬もしないものよりも頻繁にかかる電荷を担持又は運搬する状態で見いだされるであろう部分である。このため、当業者であれば理解されるであろうが、荷電されることが本開示で示唆される原子は、具体的条件下で非荷電でありうるとともに、中性部分は、具体的条件下で荷電されうる。
【0092】
本発明との関連では、アセスされるパラメーターの減少又は増加は、そのパラメーターに対応する値の少なくとも5%の変化を意味する。より好ましくは、値の減少又は増加は、少なくとも10%、さらにより好ましくは少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも90%、又は100%の変化を意味する。この後者の場合、そのパラメーターに関連する検出可能値がもはや存在しない場合でありうる。
【0093】
本文書に記載の医薬剤としての物質の使用はまた、医薬剤の製造における前記物質の使用としても解釈可能である。同様に、物質が処置のために又は医薬剤として使用されるときは常に、それはまた、処置のための医薬剤の製造にも使用可能である。使用のための生成物は、処置方法での使用に好適である。
【0094】
濾過は、当技術分野で公知のいずれかの方法を用いて、たとえば、好ましくはブフナー漏斗又はアジテートヌッチェフィルターを用いて、実施可能である。
【0095】
本発明は、いくつかの模範的実施形態を参照して以上に記載されている。いくつかの部分又は要素の修正及び代替実現形態が可能であり、添付の特許請求の範囲に定義される保護範囲に含まれる。文献及び特許文書のすべての引用は、本願をもって参照により組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0096】
図1】Rp-8-Br-PET-cGMPSに至る合成経路。
【発明を実施するための形態】
【0097】
実施例
実施例1-Rp-8-Br-PET-cGMPSの合成
1.1 PET形成
152g 8-ブロモグアノシン(90%アッセイ、残部水)を5vol DMSO(760ml)中で撹拌し、1.5equiv.フェナシルブロミドをサスペンジョンに添加した。その次に、2.5equiv.のDBUを30min添加した。1時間後、3equiv(65ml)の酢酸を添加した。10vol水(1520ml)を徐々に添加することにより生成物を沈殿させた。スラリーを濾過し、2000ml DMSO:水1:2続いて200ml水で洗浄した。ケークを真空乾燥し、2500ml MeCN中に再懸濁し、一晩撹拌した。濾過及びMeCN洗浄後、70℃で真空乾燥し、130g(74%)の中間体1を与えた。
【0098】
1.2 グアノシンアナログの保護
130g Br-PET-グアノシン(中間体1)を5vol DMF(650ml)中に懸濁させた。5equiv.イミダゾール(96g)及び2.5equiv.TIPS-Cl(151ml)を添加した。48h後、反応を分析した(HPLCは、1.08% 5’-モノTIPS、67.76% 5’2’-ジTIPS、29.52% 5’3’-ジTIPS、及び1.64% 5’2’3’-トリTIPSを示した)。反応を50ml水(10equiv.)でクエンチし、1h撹拌した。15volトルエン(1900ml)で希釈した後、反応物を3×5vol水(各650ml)で洗浄した。有機相を蒸発させ、スティッキー残渣を20体積i-プロピルアセテート(2300ml)中に溶解させ、シードし一晩放置して結晶化させた。濾過及びi-プロピルアセテートによる洗浄は、真空乾燥後、81g(37%)の中間体2(HPLCにより98.5%純度)を与えた。
【0099】
1.3 選択的脱保護
150g 5’-,2’-ジTIPS-Br-PET-グアノシン(中間体2)を10vol THF(1500ml)中に溶解させた。次いで、2vol水(300ml)及び0.45vol TFA(67.5ml)を添加した。一晩撹拌後(反応をチェックし、HPLCは、3.88%ダブル脱保護、94.75%の所望の2’-TIPS生成物、及び1.37%未変換生成物を示した)、0.4vol 28%アンモニア(aq.)(60ml)を添加し(pHは5になった)、混合物を濃縮した。15vol CHCl2(2250ml)及び2vol水(300ml)を添加し、得られた希釈スラリーを濾過した(これにより過加水分解材料、すなわちBr-PET-グアノシンが除去される)。有機相を分離し、蒸発させた。残渣に3volアセトニトリル(450ml)を添加し、スラリーを1時間撹拌し、その後、濾過及び2volアセトニトリル(300ml)による洗浄を行った。真空乾燥により96g(78%)の中間体3を与えた。これはHPLCにより純度100%であるとアッセイされた。
【0100】
1.4 5’-モノエステルの形成
111gの2’-TIPS-Br-PET-グアノシン(中間体3)を混合物の19vol CHCl2(1945ml)及び1volピリジン(110ml)中に溶解させた。その次に、撹拌しながら3equiv.(102ml)のジフェニルホスフィットを添加した。2時間後、1volの水(110ml)及び1volのトリエチルアミン(110ml)を添加し、反応を30min放置し、次いで、2×10体積(2×1100ml)の水で洗浄した。有機相を蒸発させ、残渣を500ml i-プロパノール続いて500mlエチルアセテートで共蒸発させた。次いで、残油を1500mlエチルアセテート中に溶解させ、シードし一晩放置して結晶化させた。濾過及びエチルアセテートによる洗浄は、真空乾燥後、106g(76%)の中間体4を与えた。生成物は、逆相液体クロマトグラフィーシステムで良好な挙動を示さず、広幅の遅いピークを与えるが(H2O:MeCN、0.1%ギ酸)、97.56%でアッセイされる。
【0101】
1.5 環化によるcGMPアナログの形成
50.5gの5’-ホスホネート-2’-TIPS-BrPETグアノシンを1000ml CHCl2(20vol.)中に溶解させ、続いて37ml 2,6-ルチジン(5equiv.)を添加した。その次に、11.8mlピバロイルクロリドを添加した。反応を放置し、2時間進行させた。
【0102】
1.6 ホスホロチオエートの形成
実施例1.5の粗反応溶液に、5.9gの硫黄(3equiv.)続いて26mlのトリエチルアミンを添加した。1.5h後(HPLCは、74.05% Rpジアステレオマー及び9.72% Spジアステレオマーを示し、残部は不純物であった)、溶液を2×200ml水で洗浄し、有機相を200ml MeCNで希釈し、蒸発させた。残渣(100g)を400ml MeCN中に10minスラリー化し、濾過した。濾液を蒸発させ、100ml MeCN中に再溶解させた。1200ml TBMEを徐々に添加し、一晩撹拌し、いくらかの油状スティッキー沈殿を与えた。デカンテーション及び蒸発及び溶解の後、残留油を高真空により徹底的に乾燥させ、スティッキーフォームを形成した。フォームを撹拌し、700ml TBMEでトリチュレートし、濾過及び乾燥後、38g黄色粉末を生成した。アッセイは、所望のジアステレオマーのTEAH塩として計算して68%であり、50%の補正収率を与えた。HPLC純度は80%(260nm)であり、ジアステレオマー比は8:1であった。
【0103】
1.7 cGMPアナログの脱保護
35gの中間体5(68%アッセイのRpジアステレオマー)を4vol THF(140ml)に溶解させ、2vol TEA・3HF(70ml)を添加した。反応物を3日間撹拌し(HPLCは70.68%脱保護を示した)、濾過し、3vol THF(105ml)で洗浄し、そして真空乾燥させた。83%アッセイ(収率76%)を有する17.5gの生成物が得られた。材料は、ある種のフルオリド含有複合体である(19F NMRに見られるように及び低いアッセイから明らかなように)。材料を300ml MeCN中にスラリー化し、濾過し、150ml MeCNで洗浄した(このMeCN再スラリーは、NMRに見られるフルオリドを除去し、全体の純度を改善し、HPLCは、97.13%の所望のRp生成物及びわずか0.78%の望まれないSp生成物を示したが、一方、母液は、76.83%のRp生成物及び14.53%の望まれないSp生成物を含んでいた)。これは、95%アッセイ、収率67%を有する13.5gの材料を与えた。材料は、19F NMRに基づいてフルオリドを含有していなかった。
【0104】
1.8 ナトリウム塩の形成
13g中間体6(8-Br-PET-cGMP TEAH塩、95%NMRアッセイ)を500ml MeOH中に懸濁させた。1equiv(1.095g)ナトリウムメトキシドを添加してサスペンジョンを溶液とし、これをロータリーエバポレーターで濃縮した。溶液は、約150mLが残留したとき、ゲルに変換された。蒸発を継続したところ、ゲルは、粉末に変換された。固形分を950ml 96%EtOHと共に1時間撹拌し、そして濾過した。これは、乾燥後、9gの材料を与えた。濾液は、蒸発及び乾燥後、2.9gの材料を与えた。HPLCは、母液からの材料が9g部分よりも少ない望まれないジアステレオマーを含有することを示したので(0.25%対0.85)、材料をプールし、950ml 96%エタノール中に2時間再スラリー化し、その後、濾過した。母液(生成物のほとんどを含有する)を蒸発させ、170ml無水エタノール中に再スラリー化した。濾過及び100ml無水エタノールによる洗浄は、ゲル様ケークを与え、これを真空乾燥させ、0.5%望まれないジアステレオマー(97%NMRアッセイ、収率72%)を有する8.1gの8-Br-PET-cGMPナトリウム塩を与えた。
【0105】
実施例2-ジアステレオマー的純粋R-グアノシン-3’,5’-環状チオリン酸アナログのクロマトグラフィーフリー合成、
2.1 概要
環状グアノシン一チオリン酸アナログ1aは、現在、遺伝性網膜神経変性の処置のための薬剤として潜在能力を示している。その進行中の前臨床開発を支援するために、我々は、その調製のためのジアステレオ選択的クロマトグラフィーフリー合成を開発した。合成シーケンスの注目すべき特徴は、3’,5’-ヒドロキシルに優先して2’,5’-の80%選択率を有するシリル化ステップ及びSジアステレオマーに対して90%選択率を有する5’-H-ホスホン酸モノエステルの閉環を含む。化合物は、125g収量及び>99.9%HPLC純度でEt3NH+塩として得られた最終生成物1aを含めて、結晶化を介して単離された。
【0106】
2.2 緒言
遺伝性網膜神経変性(IRD)のいくつかの動物モデルでのフォトレセプター死は、グアノシン依存性プロテインキナーゼ(PKG)の過剰活性化により部分的に媒介される代替的非アポトティック経路により主に支配されることが、最近の研究により示唆されている。この過剰活性化は、光伝達カスケードの破壊が原因であるフォトレセプター中への環状グアノシン-一リン酸(cGMP)の非天然蓄積から生じる。これは、このPKG媒介経路をブロックすることによりIRDの治療剤として潜在的に作用可能なcGMPアナログの探究への関心を引き起こした。その結果は、in vivoで効力のあるニューロン保護作用を有する有望な環状グアノシン一チオリン酸(cGMPS)アナログ1aの発見であった。化合物は、ヌクレオ塩基上にフェニルエテニル(PET)基及びチオリン酸上にR配置を有する8-ブロモ-cGMPS誘導体である。環状ヌクレオチド一チオリン酸(cNMPS)は、ホスホジエステラーゼによる切断に耐えることが知られており、したがって、細胞中でそのリン酸カウンターパートよりも長く生存し、このことが治療剤としての1aの潜在能力に加わる。PKGに対するそのアンタゴニスティック活性とは対照的に、そのS-ジアステレオマー1b及びそのリン酸等価物1cは両方との、天然cGMPと同様にPKGアゴニストであることが見いだされた(スキーム1)。
【化17】
【0107】
前臨床開発をさらに可能にするために、この活性医薬成分(API)のより大量供給が望まれ、高純度1aの調製のためのスケーラブルロバスト合成プロセスを目指す我々の研究がここに提示される。公開された環状チオリン酸合成は、スホリルクロリドとアニリンとの反応でホスホロアニリデートジアステレオマーの混合物を得て、次いで、これを分離することが関与するStecらによるものを含む(Stereospecific Synthesis of Adenosine 3’,5’-(Sp)-and-(Rp)-Cyclic Phosphorothioates(cAMPS).Journal of the Chemical Society,Chemical Communications 1979,940-941)。完全立体配置保持を有する環状チオリン酸を生成するために、所望の異性体は、強塩基及び二硫化炭素で処理される(ステック反応)。Ecksteinらは、5’-ビスニトロフェニルホスホロチオエートを調製するために、非保護ヌクレオシド上でビスニトロフェニルホスホロクロリドチオエートを使用した。これらは、カリウムtert-ブトキシドによる処理により直接環化された。Genieserのグループは、米国特許第5625056号明細書に記載のように、環化ステップ用の前駆体として5’-チオホスホロジクロリデートを得るためにチオホスホリルクロリドを利用することにより類似のアプローチを使用し、事実上1aを合成する第1のグループであった。以上のすべての事例では、cNMPSs(又はその前駆体)は、後でクロマトグラフィーにより分離されるジアステレオマー混合物として得られた。より最近の合成では、Andrei et al.(Organic & Biomolecular Chemistry 2007,5,2070-2080)は、これらの方法から着想を得て、立体選択的塩素化-アミド化-ステックシーケンスを開発し、今度は出発材料として環状アデノシン一リン酸を用いた。しかしながら、この戦術では、Rジアステレオマーのみが利用可能であり、さらなるクロマトグラフィー精製が依然として必要とされた。cGMPSに至るまったく異なるアプローチは、Stawinskiのグループ(Org.Lett.2013,15,4082-4085)により開発されたH-ホスホン酸経路である。それは、対応する3’,5’-環状H-ホスホン酸ジエステルを形成するためにヌクレオシド-3’-H-ホスホン酸モノエステルの内部環化を必要とし、続いて、硫化により環状チオリン酸を与える。そうしたレポートでは、3’,5’-環状ヌクレオシド-H-ホスホン酸は、ジアステレオ選択的に形成され、且つこの選択率は、優先性のあるジアステレオマーに向けることが可能であることが示された。
【0108】
2.3 結果及び考察
経路の開発。我々は、後者のアプローチが最も有望であり、そのため、我々の開発の焦点になることを見いだした。我々は、先行技術分野で1,N2-フェニルエテニル(PET)基が環状チオリン酸の形成後に導入されることに注目した。また、それは2’-ヒドロキシル上でなんら保護を用いることなく実施された。対応するH-ホスホネートアプローチは、ヌクレオ塩基及びリボース上の副反応に対してより感受性があろう。したがって、我々の合成設計は、最初に、保護基に類似して機能するはずであることからPET基を導入することを目指し、次いで、2’,3’-環状副生成物の形成を打ち消すために2’に保護基を導入する。また、我々は、結晶化を優先させてクロマトグラフィー精製を回避すること、さらには望まれないPKGアゴニスト1bや1cなどの鍵を握る不純物を制御するプロセスの能力、に重要を置いた。
【化18】
【0109】
フェニルエテニル化。1,N2-フェニルエテニル(PET)修飾を有する8-ブロモグアノシンの報告された合成は、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク-7-エン(DBU)-DMSO組合せを使用し、これは、我々の開発の出発点の働きをした。10体積(ml/g)のDMSO中に8-ブロモグアノシンを溶解し、5equiv.の2-ブロモアセトフェノン続いて7equiv.のDBUを添加し、メジャー生成物(約70% LC面積)として8-ブロモPETグアノシン2の形成を伴って、30分以内に出発材料の消費を引き起こした。酢酸を用いた中和に続いて、水(15体積)の添加により生成物を沈殿させたが、わずかに着色した固形分であった。2-ブロモアセトフェノン及びDBUの量は両方とも、変換を損なうことなく2.5equiv.まで低減可能であることも判明した。全体として、反応は、化学量論量を変化させたとき、生成物形成の変動がほとんどなくロバストであるように思われた。その次に、体積効率及び仕込み順序を検討した。ブロモケトンの前にDBUを添加することにより、8-ブロモグアノシンは、わずか4体積のDMSOに溶解した。1体積のDMSO中の溶液としてブロモアセトフェノンをこの混合物に添加することにより、ほぼ50%の収率で生成物を与えた。そのほか、2-ブロモアセトフェノン/DMSO溶液は、透明溶液の定常的黄変さらにはHPLCで副生成物の蓄積により示されるように、安定ではなかった。この分解は、収率の低減に関連するとは思われない。というのは、5体積のDMSO中のブロモグアノシン及びDBUの溶液に固形分としてブロモアセトフェノンを添加しても、まったく改善が見られ与えなかったからである。最終的には、8-ブロモグアノシンを真空乾燥させることによりDMSO中へのその溶解性が増加することを見いだした。市販の8-ブロモグアノシンは、約8%水(カールフィッシャー)を含有し、これは、80℃までの温度で純度に影響を及ぼすことなく真空乾燥により>0.5%に低減可能であることが分かった。乾燥させた材料は、15分以内に5体積のDMSO中で透明溶液を与えた。生成物の沈殿に関して、4体積を超える水(5体積のDMSOを使用したとき)でも、純度又は収率の改善はまったく見られなかった。迅速な水添加は、スティッキー塊形成の原因になるので回避されるべきである。興味深いことに、反応混合物が前もって酢酸で中和されなかったとき、たとえ水を徐々に添加したとしても、同じ影響が得られた。また、MeCNを用いた最終ケーク洗浄は、色及びいくらかのマイナー不純物を除去することも判明した。そのため、5体積のDMSO中で反応を実施し、4体積の水を用いて生成物を沈殿させ、続いて、MeCNで洗浄したところ、収率71%で白色固体として中間体2が得られた。生成物は、結晶性及び>98%純物質(HPLC)であることが分かった。
【0110】
保護ストラテジー。
2’位に保護基を導入することは、5’位に導入することなしには達成できず、次いで、後者を除去する必要がある。そのほか、3’-ヒドロキシルに優先して2’-ヒドロキシルの選択率を達成することは、依然として2つの類似反応性に起因して難題である。通常、これは、我々が回避を目指すクロマトグラフィーを介する異性体の分離により対処される。2’位のさらなる保護の後に除去可能である5’及び3’位を同時にブロックするシリル化剤、たとえば、1,3-ジハロ-1,1,3,3-テトラアルキルジシロキサンの助けを借りてこの競合をバイパスすることが可能である。これは広く普及しているアプローチであるが、それは、一般に、2’-保護のための余計なテップが関与し、我々は、2’に対する選択率に関して伝統的シリル化を最適化するとともに、以下に記載のように選択的結晶化を開発することにより、より良好な成功を収めた。
【0111】
選択的保護。
我々は、1:2シリル化剤:塩基混合物、最も一般的な2.5equiv.のt-ブチルジメチルシリルクロリド(TBDMS)及び5equiv.イミダゾールである、最も一般的なシリル化方法の探究から始めた。この方法では、ジシリル化は1.5時間以内に達成されたが、ジシリル化異性体のいずれに対する選択性も実質的に存在しなかった。さらに、2’,3’,5’-トリシリル化副生成物は、生成物組成の44%を構成した。TBDMS-ClをTIPS-Clで置き換えたとき、第2のヒドロキシルでの置換は、2’優位に80:20の比をもたらし、3日後、1%未満の三置換が見られた。しかしながら、2’→3’シリル移動が経時的に発生し、初期の80:20異性体比は、数日にわたり60:40で平衡に達した。残念ながら、第2のヒドロキシル位置の保護は、完全変換前に混合物がいくらかの異性化を受けるのに十分な程度に遅かった。130gの出発材料を用いた1つのトライアルでは、わずか1.5%の5’-O-TIPS-8-ブロモグアノシンが2日後に残留し、ジシリル化生成物は、70:30異性体比を有していた。抽出による後処理及び蒸発に続いて、得られた油は、結晶化試験に付された。結晶化は、いくつかの溶媒から誘発可能であり、完全脱飽和には数日が必要とされることが見いだされた。MeOHは、3’,5’異性体を選択的に結晶化し、一方、他の溶媒は、2’,5’異性体に対して選択的であることが見いだされた。2’,5’-異性体の結晶化では、異性体のみが過剰結晶化し、母液中には1:1に近い異性体混合物が残った。結果として、収率33%で>98%純結晶性材料が得られた。このことに勇気づけられて、我々は、濾液への生成物損失に関して改善を試みた。溶媒体積の変化及び貧溶媒の添加による結晶化収率の増加の試みはすべて、無益であった。というのは、収率の増加は、常に純度の犠牲を伴うからであった。その次に、2ステップ結晶化を試みて、MeOHからの結晶化により望まれない異性体を最初に除去し、蒸発後、イソプロピルアセテートから母液残渣を再結晶化した。これは、40%のいくらか改善された収率で所望の異性体を与えた。依然として、この2ステップ結晶化は、時間がかかるので、スケール上採用しなかった。3’,5’-異性体が結晶化時に所望の2’,5’-異性体に異性化する動的条件を見いだす少数の試みは(DBU及びTEAの添加が試みられた)、失敗であった。異性化も結晶化もどちらも起こらなかった。結晶化試験からの結論は、3の単離収率を増加させるために、シリル化の位置選択性を改善しなければならないことであった。同様に2’→3’シリル移動速度を増加されることなく、シリル化速度を増加させることが難題であることが証明された。試みは、他の溶媒(ピリジン、NMPが試みられた)、各種塩基の使用、及び反応温度の増加を含んでいた。後者で広範な副生成物形成が観測され、完全変換で異性体比を改善したいくつかの条件が見いだされたが(表1のエントリー3を参照されたい)、最も印象的な結果は、TIPS-Cl量を2倍にすることに由来した(表1のエントリー4)。このことから、有意な異性化を伴うことなく第2のシリル化ステップを一晩後に完了することが奨励された。最後に、この異性体混合物の結晶化は、収率58%で3を生成した。
【0112】
【表1】
【0113】
また、このステップを合成の最初として探究した。というのは最低収率を与えたからである。しかしながら、得られた粗製物の結晶化は不成功であり、単離にクロマトグラフィーが必要とされた。そのうえ、後続PETステップの強塩基性条件もまた、いくらかのシリル移動の原因になり、我々はこのシーケンスをさらに探究しなかった。
【0114】
選択的脱保護。我々は、最初にH2O中のAcOH及びTHF中のTFA/H2Oを調べた。出発材料は、最初の混合物に不溶であり、後者は、マイルドな条件で一晩で完全変換を伴って好結果を与えることが見いだされた。依然として、我々は、過加水分解生成物2に対する生成物4の比に及ぼす溶媒、酸強度及び濃度、並びに含水率の影響を探究した(表2参照)。加水分解の代わりにMeOHによるアルコリシスを実施すると、変換が有意に緩徐化されたが、この混合物に水を添加すると、反応速度はいくらかを回復された。トルエン及びDCM(CHCl2)は、THFと比較したとき、わずかに高い反応速度及び低い副生成物形成を与えたが、二相系が形成され、トルエンは、THFやDCMのように良好に出発材料を溶解できなかった。DCMは、2を継続して沈殿させ、その除去を促進するので、有利である。最後に、ほとんどの溶媒中への生成物の溶解性が低いにもかかわらず、MeCNのみは、粗混合物からそれを結晶化させて、三晩後、収率80%及び純度>98%で2’-モノシリルオキシヌクレオシド4を与えることが可能であった。
【0115】
【表2】
【0116】
H-ホスホネートモノエステルの形成。ジフェニルホスフィット(DPP、ジフェニルH-ホスホネート)は、ヌクレオシドH-ホスホン酸モノエステルの形成用の通常の試薬である。それは、簡単にピリジン中でアルコール及びヌクレオシドによるエステル交換を受けて、混合フェニルH-ホスホネートジエステル(たとえば、ジエステル7、スキーム3)を形成する。フェニル部分の加水分解後、ヌクレオシドモノエステルは良好な収率で得られる。DPP(4が2つの遊離ヒドロキシルを有するので、ビスエステル形成のリスクを低減するために1equiv.)をピリジン中の4の溶液に添加したとき、所望の中間体7に加えて、3’,5’-環状H-ホスホネート、3’-混合エステル、又はジヌクレオシドエステルの形成に対応する0~15ppmのいくつかピークが、31P-NMR共鳴に現れる。系があまりにも反応性であったので、DCM中に5%ピリジンを含有するより低塩基性溶媒混合物を評価した。この系を用いて、混合エステル7のクリーン形成が31P-NMRに見られた。緩徐な変換速度に起因して、我々は、DPPの量を3equiv.に増させ、副生成物の形成を伴うことなく1時間以内で完全変換を与えた。1時間後、水及びEt3Nの添加により、混合エステル7を加水分解し、トリエチルアンモニウム5’H-ホスホネートモノエステル5を与えた。抽出による後処理により、過剰のDPPからの残渣のほとんどを除去し、得られた粗製物を結晶化溶媒に関してスクリーニングした。EtOAcへの溶媒交換によりモノエステル5を収率75%及び純度>95%で結晶化させた。
【化19】
【0117】
代替シーケンスもまた簡潔に探究した(スキーム4)。ジシリル中間体3はまた、3’-OHでホスホニル化してモノエステル8を生成することも可能であった。5’-シリル基の酸性脱保護は、2’-保護-3’-H-ホスホネート9を与えた。中間体8の初期結晶化の試みが望み通りにはうまくいかなかったので、我々は、このシーケンスをさらに探究しなかった。
【化20】
【0118】
H-ホスホネート環化。我々は、初期に、カップリング剤としてピバロイルクロリド(Pv-Cl)を用いて、DCM/ピリジン19:1混合物の既知の条件を追跡した。(約10min後に)記録された最初のNMRスペクトル内に、S:R-環状H-ホスホネートの形成に合致する0.1ppm(1JPH=734Hz)及び5.8ppm(1JPH=704Hz)の2つのピーク間の7:3の比が観測された。20min後にこの混合物を元素硫黄で処理することにより、対応する7:3R:S環状ホスホロチオエート混合物を生成した(立体配置保持、それぞれ、56.4及び55.1ppm、3JPH=18及び24Hz)。
【化21】
【0119】
また、Stawinskiのグループにより記載された環状H-ホスホネートジアステレオマー間の異性化挙動も観測された。すなわち、閉環を一晩放置したところ、1:9SP:RP比(それは望まれない1:9RP:SP比で硫化生成物を生成するおそれがある)で環状H-ホスホネートが生成され、初期に形成された速度論的生成物は所望の環状SP-H-ホスホネートであり、且つ平衡は、望まれないジアステレオマー優位であることが示された。所望の速度論的生成物を保存するために、我々は、2,6-ルチジン及びDCMを探求した。というのは、両方ともピリジンとは対照的にエピマー化の速度を低減することが示されているからである。5equiv.の2,6-ルチジンの存在下でDCM中で閉環を実施すると、所望のジアステレオマー優位の初期19:1比で環状H-ホスホネートを与えた(約10min後に)。反応は、この系ではより緩徐であり、完了に達するのに約15minが必要とされたが、これは、1時間放置後、環状H-ホスホネートで依然として見られた15:1SP:RP比により立証される高度に抑制されたエピマー化により相殺された。1時間後、反応物を硫化し、所望のジアステレオマー優位で約10:1比で生成物を与えた。通常、最終硫化混合物は、75~80%の所望の生成物を含有し(31P-NMRに基づく)、残部は、ホスフィット領域(>110ppm)及び生成物領域(約50ppm)の望まれないジアステレオマー及び少量の不純物、さらにはわずかながらの量の出発材料である。他の通常使用されるカップリング剤の1つであるジフェニルクロロホスフェート(DPCP)もまた試したが、同一のジアステレオマー比を与え、利益を提供しなかった。大過剰のカップリング剤は、とくにDPCPの場合、いくつかの副生成物がより多く顕在化されるので、回避されるべきである。1.3equiv.のPv-Clを用いた場合、完全変換にもさらには偶発水に対して耐性のある反応を与えるうえにも十分であることが見いだされた。
【0120】
SP:RP-H-ホスホネートを硫化するとき、我々は、50%過剰の硫黄及びEt3Nで十分であることを見いだした。元素硫黄以外の他の硫化剤は評価しなかった。好適な硫化タイミングは、Pv-Clの添加後の異なる時点で硫黄及びEt3Nを含有するバイアルに反応アリコートを添加することにより決定した。硫黄を仕込んだ後、未反応中間体を45分放置したところ、もはや時間はジアステレオマー比の劣化に関連しなかった。しかしながら、硫黄/Et3Nの添加後、反応混合物は数晩にわたり安定であった。抽出による後処理及び残留硫黄を沈殿させるためのアセトニトリルへの溶媒交換の後、濾過及び蒸発により、粘性油として粗生成物を与えた。いくつかの溶媒のスクリーニングにもかかわらず、この粗製物からのトリエチルアンモニウム塩としての生成物の結晶化は、不成功であった。我々は、取扱いがより簡単である不純及びアモルファス固体として1M HBr(aq)の添加により生成物の沈殿を強制可能であった。
【0121】
2’-保護APIの脱保護。溶媒としてのMeCN、THF、ジオキサン、及びEtOH中のEt3N・3HFを用いた脱保護は、有益であることが証明された。2’-シリルは、観測可能な副反応をまったく伴うことなく除去され、我々は、喜ばしいことに、標的cGMPS 1aが3日間にわたり継続して沈殿し、母液は、望まれないジアステレオマー及び他の不純物で富化されることを見いだした。我々は、溶媒としてTHFを探究することを選んだ。というのは、それが母液への最小損失を与えたからである。粗生成物は、LCによりほとんど純粋な淡黄色結晶性塩であった。しかしながら、その1Hスペクトルは、真空乾燥にもかかわらず、2当量のトリエチルアンモニウムの存在を明らかにした。19F NMRは、おそらくトリエチルアンモニウムフルオリドであるフルオリド複合体の存在を示す-162ppm付近に広幅のピークを示した。MeCN中の再スラリーは、フルオリド、過剰Et3N、さらにはすべての色を除去し、粗形態で生成物を生成した(約1%の望まれないジアステレオマー)。エタノールは、好適な再結晶化溶媒であることが見いだされ、生成物は、結晶性ヘミエタノール溶媒和物として回収された。この溶媒和物は、安定であり、真空乾燥にもかかわらずインタクト状態を維持し、加熱したとき、熱量測定分析は、吸熱もサンプル質量損失も示さなかった。粗生成物は、明らかな分解を伴うことなく20体積の沸騰EtOHに可溶であるので、冷却再結晶化を実施可能である。このため、LC純度>99.9%の結晶性白色粉末として目標化合物が得られた。適正構造及びコンフォメーションの確認は、その分光学的データと以前に調製された材料のものとの比較に基づく。
【0122】
2.4 実験
8-ブロモ-β-フェニル-1,N2-エテノグアノシン(2)。8-ブロモグアノシン(683g、1.86mol)をDMSO(3.41L、5vol.)及びDBU(706g、2.5eq.、4.64mol)中に溶解させた。
2-ブロモアセトフェノン(443g、1.5eq.、2.23mol)をほぼ25℃に保たれた反応混合物に30分間にわたり滴状に仕込んだ。濃酢酸(334g、3eq.、5.57mol)の添加前、反応物を1h撹拌した。反応混合物に水(2.7L、4vol.)を徐々に添加することにより生成物を沈殿させ、濾過し、水(5.5L、8vol)続いてMeCN(5.5L、8vol.)で洗浄した。
80℃で5h真空乾燥した後、ヌクレオシド2(613g、71.5%)を白色結晶性固体として回収した。MS(m-H)m/z:460.0257、実測値:460.0259(ES-)。
【0123】
8-ブロモ-β-フェニル-1,N2-エテノ-2’,5’-ジトリイソプロピルシリルオキシグアノシン(3)。出発ヌクレオシド2(480g、0.99mol)をDMF(2.4L、5vol.)中に懸濁させた。イミダゾール(336g、5eq.、4.93mol)、続いてTIPS-Cl(951g、5eq.、0.54mmol)をサスペンジョンに添加し、出発材料を徐々に溶解させた。混合物を一晩撹拌した後、水(178mL、10eq.、9.87mol)でクエンチし、その後、トルエン(7.2L、15vol.)で希釈した有機相を水(3×2.4L)で洗浄し、蒸発させた。得られた粗油にi-PrOAc(2.4L、5vol.)を添加し、一晩撹拌した。固形分を濾過し、1ケーク体積(672mL)のi-PrOAcで洗浄し、35℃で一晩真空乾燥させ、白色結晶性固体として二保護ヌクレオシド3(462.4g、58.4%)を与えた。MS(m-H)m/z:
772.2925、実測値:772.2950(ES-)。
【0124】
8-ブロモ-β-フェニル-1,N2-エテノ-2’-トリイソプロピルシリルオキシグアノシン(4)。2’,5’-ジシリル化ヌクレオシド3(461g、0.57mol)をDCM(4.61L、10vol.)中に溶解させた。TFA(231mL、0.5vol.)及び水(922mL、2vol.)をベッセル中に仕込み、一晩撹拌した。混合物を35%aq.アンモニア(0.25vol.)で中和し、パックセライトに通して濾過することにより過加水分解副生成物を除去し、DCM(922mL、2vol.)で洗浄した。有機相を水(3×100mL)で洗浄し、蒸発させて粗固形分を与え、MeCN(3.23L、7vol.)中に一晩再懸濁させた。濾過及びMeCN(461mL、1vol.)による固形分の洗浄、続いて35℃で一晩真空乾燥を行って、白色結晶性固体として一保護ヌクレオシド4(257g、74.2%)を与えた。MS(m-H)m/z:616.1591、実測値:616.1615(ES-)。
【0125】
トリエチルアンモニウム 8-ブロモ-β-フェニル-1,N2-エテノ-2’-トリイソプロピルシリルオキシグアノシン-5’-H-ホスホン酸(5)。化合物4(262g、0.42mol)をDCM(4.98L、19vol.)及びピリジン(262mL、1vol.)に溶解させた。ジフェニルホスフィット(292g、3eq.1.25mol)を仕込み、反応物を混合した。2時間後、反応を水(262mL、1vol.)及びEt3N(262mL、1vol.)でクエンチし、1時間撹拌した。混合物を水(2×2.5L)で洗浄し、有機相を2-プロパノール続いてエチルアセテートで共蒸発させた。粗製物をエチルアセテート(2.62L、10vol.)から再結晶し、固形分を濾過し、エチルアセテート(524mL、2vol.)で洗浄し、白色結晶性粉末としてモノエステル5(312g、90.0%)を与えた。MS(M-Et3NH+)m/z:680.1305、実測値:680.1315(ES-)。
【0126】
Rp-8-ブロモ-β-フェニル-1,N2-エテノ-2’-トリイソプロピルシリルオキシグアノシン-3’,5’-環状モノホスホロチオ酸(6)。2,6-ルチジン(199g、5eq.1.86mol)をDCM(6.2L、20vol.)中の5(310g、0.37mol)の溶液に添加し、続いてピバロイルクロリド(67mL、1.5eq.0.56mol)を添加した。1時間撹拌した後、硫黄(18g、1.5eq.、0.56mol)続いてトリエチルアミン(56g、1.5eq.、0.56mol)をベッセルに仕込んだ。1時間後、溶液を水(2×1.24L)で洗浄し、有機相を蒸発させた。残渣をMeCN(1.55L、5vol.)中で撹拌し、硫黄を黄色結晶として沈殿させ、それを濾別した。得られた濾液に臭化水素酸(3.1L、10vol.、1M)を添加して粗固形分を沈殿させ、これを濾別し、MeCN(1.55L、5vol.)中に再懸濁させ、濾過し、1ケーク体積のMeCNで洗浄した。溶媒残渣の除去により、粗白色固体としてチオリン酸6を与え、下記工程に使用した。MS(m-H)m/z:694.0920、実測値:694.0978(ES-)。
【0127】
トリエチルアンモニウムRp-8-ブロモ-β-フェニル-1,N2-エテノグアノシン-3’,5’-環状チオリン酸(1a)。トリエチルアミントリスヒドロフルオリド(620mL、2vol.)をTHF中(1.24L、4vol.)の粗ホスホロチオ酸6の溶液に仕込んだ。混合物にシードし、撹拌し、三晩にわたり沈殿を形成した。固形分を濾別し、次いで、THF(500mL、1.6vol.)で洗浄し、MeCN(930mL、3vol.)中に1h再懸濁させ、その後、濾過し、1ケーク体積のMeCNで洗浄し、結晶性1aを与えた。この材料を20体積の99%EtOHから冷却再結晶化させ、続いて濾過し、1ケーク体積の同一物で洗浄し、純度>99.9%の白色結晶性粉末として標的cGMPS 1a(126.5g、49.5%、2ステップ)を与える。MS(M-Et3NH+)m/z:537.9586、実測値:537.9581(ES-)。
【0128】
2.5 結論
クロマトグラフィーもキラル補助剤も使用しないcGMPS 1aの調製のための6ステップバッチプロセスを開発しアップスケールした。H-ホスホネートアプローチの使用により、所望のRP環状チオリン酸を望まれないSPジアステレオマー1bに対して9:1の比で形成することを可能にした。所望の2’,5’-ジシリル化ヌクレオシドを3’,5’-異性体に対して印象的な86:14の比で与えるように最適化可能なリボース上のシリル保護ストラテジーを考案した。選択的結晶化は、すべての鍵を握るステップで可能であるだった。プロセスは、合計で126グラムの純度>99.9%の結晶性物質1aを与えた(合計収率13.8%)。
図1
【国際調査報告】