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特表2024-530783非晶質摩擦発光材料、その製造方法、非晶質摩擦発光層において発光を生じさせる方法、及び機械的刺激応答性センサー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-23
(54)【発明の名称】非晶質摩擦発光材料、その製造方法、非晶質摩擦発光層において発光を生じさせる方法、及び機械的刺激応答性センサー
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/02 20060101AFI20240816BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20240816BHJP
   C09K 11/00 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
C09K11/02 Z
C09K11/06
C09K11/00 A
C09K11/06 660
C09K11/06 655
C09K11/06 640
C09K11/06 610
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513873
(86)(22)【出願日】2022-08-29
(85)【翻訳文提出日】2024-03-05
(86)【国際出願番号】 JP2022032429
(87)【国際公開番号】W WO2023032921
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】P 2021143024
(32)【優先日】2021-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(81)【指定国・地域】
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 2020年9月21日 Chemical Science 2020,11,10814-10820にて発表
(71)【出願人】
【識別番号】512155478
【氏名又は名称】学校法人沖縄科学技術大学院大学学園
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】狩俣 歩
(72)【発明者】
【氏名】クスヌディノワ ジュリア
【テーマコード(参考)】
4H001
【Fターム(参考)】
4H001DA01
4H001DA03
4H001DA04
4H001DA06
4H001DA09
(57)【要約】
機械的作用に応答して発光を生ずる摩擦発光材料は、機械的刺激応答性センサー、発光装置、及び刺激誘発放光繊維、染料、粒子、ペースト、及びフィルム等に対して幅広く利用される可能性を有しているため非常に注目されている。本明細書で我々は、広範囲のスペクトルの光を発する、機械的作用に応答して発光する、広範な発光団を配合された摩擦発光ポリマー材料を生成する一般的手法を開示したい。ポリマーとの直接接触がなくても(例えば別のポリマーの層を通して)、非破壊的な方法によって光の生成が得られる。生体適合性の発光団を容易に利用することが可能である。発光はまた、乾燥空気下でも観察される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光団とポリマーとを含む、非晶質摩擦発光材料。
【請求項2】
前記発光団はCuを含まない、請求項1に記載の非晶質摩擦発光材料。
【請求項3】
前記発光団は前記ポリマーに対して共有結合されていない、請求項1又は2に記載の非晶質摩擦発光材料。
【請求項4】
前記発光団は3つ以上の環が縮合した縮合多環構造を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の非晶質摩擦発光材料。
【請求項5】
前記発光団及び前記ポリマーの少なくとも1つは生体適合性である、請求項1~4のいずれか1項に記載の非晶質摩擦発光材料。
【請求項6】
前記ポリマーは非晶質ポリマーである、請求項1~5のいずれか1項に記載の非晶質摩擦発光材料。
【請求項7】
前記材料は、前記発光団と前記ポリマーとを含有する非晶質摩擦発光層と、ポリマーを含有し且つ発光団を含有しない発光団非含有層と、を含み、及び
前記非晶質摩擦発光層の前記ポリマーは非晶質ポリマーである、
請求項1~5のいずれか1項に記載の非晶質摩擦発光材料。
【請求項8】
前記発光団非含有層が前記非晶質摩擦発光層上に積層されている、請求項7に記載の非晶質摩擦発光材料。
【請求項9】
前記非晶質摩擦発光層の前記ポリマーと前記発光団非含有層の前記ポリマーとは異なる種類のポリマーである、請求項7又は8に記載の非晶質摩擦発光材料。
【請求項10】
前記発光団非含有層の前記ポリマーは結晶性ポリマーである、請求項7~9のいずれか1項に記載の非晶質摩擦発光材料。
【請求項11】
前記非晶質摩擦発光層は全体的に前記発光団非含有層で覆われている、請求項7~10のいずれか1項に記載の非晶質摩擦発光材料。
【請求項12】
前記非晶質摩擦発光層の一部が前記発光団非含有層で覆われている、請求項7~10のいずれか1項に記載の非晶質摩擦発光材料。
【請求項13】
請求項8に記載の非晶質摩擦発光材料において発光を生じさせる方法であって、前記発光団非含有層の前記非晶質摩擦発光層とは反対側の表面に機械的作用を適用して、前記非晶質摩擦発光層において発光を生じさせることを含む、方法。
【請求項14】
非晶質摩擦発光フィルム中で発光を生じさせる方法であって、
1)ポリマーを含み且つ発光団を含まない発光団非含有フィルムを発光団とポリマーとを含む非晶質摩擦発光材料上に配置することと、
2)前記発光団非含有フィルムの前記非晶質摩擦発光材料とは反対側の表面に機械的作用を適用して、前記非晶質摩擦発光材料において発光を生じさせることと、
を含む、方法。
【請求項15】
非晶質摩擦発光フィルムを製造する方法であって、
発光団とポリマーとの溶液をコーティングし、コーティングされた溶液を乾燥すること、又は
発光団とポリマーとの固体混合物をフィルム状に広げること、
を含む、方法。
【請求項16】
非晶質摩擦発光材料を製造する方法であって、
非晶質ポリマーを含有するポリマーフィルムに発光団を含浸させることを含む、方法。
【請求項17】
請求項1~12のいずれか1項に記載の非晶質摩擦発光材料を含む、機械的刺激応答性センサー、繊維、フィルム、又は染料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械的作用に応答して発光する非晶質摩擦発光材料、その製造方法、及びそれを使用する機械的刺激応答性センサーに関する。より具体的には、本発明は、刺激誘発放光性の(stimuli-induced glowing)繊維、染料、粒子、ペースト、及びフィルム等の刺激誘発放光材料(stimuli-induced glowing materials)に関する。
【背景技術】
【0002】
摩擦発光、即ち機械的作用(破砕、押し砕き、こすり等)に応答して発光を生成する応力発光材料は、機械的刺激応答性センサーや機械的作用の光への直接変換による発光装置等において利用するための有望な材料である(例えば、非特許文献1)[1]。多くの固体結晶性材料が摩擦発光性であることが知られているが、潜在的な欠点の1つとして、結晶相の存在が必要であることが挙げられる。広く使用されているユーロピウム含有摩擦発光固体材料又はポリマーもまた、高価なユーロピウム含有化合物の使用に起因した潜在的な限界を有する。生体適合性の摩擦発光材料の数が限定的であることもまた、ヘルスケア及び健康管理装置、生物学における刺激センサーやファッションアイテムにおけるそれらの利用を制限している。
ポリマーフィルム中で摩擦発光を示す光輝性化合物の例が知られているが、観察される現象の性質は明確ではなく、結晶相の存在が確認されているものばかりではない。Eu含有ポリマーフィルムの幾つかの例が報告されている(例えば、非特許文献2)[2]が、微結晶相の有無が確認できたという研究は報告されていない。ポリマー中でTLを示す金属ドープ硫化亜鉛又は希土類ドープセラミック等の幾つかの半導体粒子も開発されているが、これらの系では、TLを起こすためにバンド構造中にトラップされた電子が必要である。ポリマー中の摩擦発光の他の例は、ポリマーの破砕を伴うか、又は摩擦帯電による不活性ガスプラズマの生成を観測するために特殊機器の使用を必要とする(非特許文献3)[3]。文献に報告されているこれまでのCu錯体含有ポリマーフィルムの研究では、摩擦発光を観測するためには微結晶相の存在が必要であることが示されており(非特許文献4)[4]、非晶質状態においては摩擦発光は見られていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】J.-C. G. Bunzli, K.-L. Wong, Journal of Rare Earths 2018, 36, 1-41.
【非特許文献2】R. S. Fontenot, W. A. Hollerman, K. N. Bhat, M. D. Aggarwal, B. G. Penn, Polymer Journal 2014, 46, 111-116.
【非特許文献3】K. Nakayama , R. A. Nevshupa, Journal of Tribology 2003, 125, 780-787.
【非特許文献4】A. Incel, C. Varlikli, C. D. McMillen, M. M. Demir, The Journal of Physical Chemistry C 2017, 121, 11709-11716.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記で述べたように、これまでに報告された摩擦発光材料は、特殊な発光団を使用するもの、結晶構造を有するもの、及び特殊な電子状態にあるものに限定されている。本発明の目的は、種々のポリマー中に配合される広範な発光団を適用することが可能な新たな摩擦発光材料を提供することである。
このような状況下で、本発明者らは、新たな非晶質摩擦発光材料の開発を目的として調査を行ってきた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本出願は以下の発明を含む。
[1]発光団とポリマーとを含む、非晶質摩擦発光材料。
本出願において、用語「非晶質摩擦発光材料」は、紫外線、赤外線等の光によって励起しなくても、また電流を印加しなくても、機械的刺激に応答して発光を生ずる非晶質層を含む材料として定義される。非晶質摩擦発光材料は、フィルム、繊維、粒子、ペースト、スラリー、染料等の形態であり得る。本明細書でいう用語「非晶質」とは、規則的な空間配置を有する結晶を形成することなく発光団分子及びポリマー分子を配合することによって形成される状態を意味する。本出願において、非晶質は、粉末X線回折法及び発光顕微鏡イメージングによって確認される。機械的刺激としては、機械的応力、ひずみ、及び変形が挙げられ、それらは圧縮、張力、引張強さ、衝撃、せん断、屈曲、摩滅、ねじれ、引っ掻き、押し砕き、こすり、すり砕き、及び超音波等の機械的作用に由来する。非晶質摩擦発光材料は、発光のために外側からUV光等の励起光を照射することを必要としない。
本出願において用語「発光団」とは、光の照射によって引き起こされる蛍光、燐光、長残光を含む光の放出を生ずる物質として定義される。非晶質摩擦発光材料において生成される発光は、発光団に由来する。本出願の好ましい実施形態において、発光団はポリマー構造を含有しない。本出願の別の実施形態において、発光団の分子量は1000未満である。
本出願において用語「ポリマー」は、少なくとも3回繰り返す単位を有する化合物として定義され、及び本出願において用語「ポリマー構造」は、少なくとも3回繰り返す単位を有する構造として定義される。本明細書において言う「繰り返す単位」とは、ポリマーのための合成原料としてのモノマーに由来する構造である。
本出願の一実施形態において、非晶質摩擦発光材料は、発光団とポリマーとの混合層を含む。本出願の別の実施形態において、非晶質摩擦発光材料は、非晶質ポリマーを含有するポリマー層と該ポリマー層に含浸された発光体とを含む。この場合、好ましくは、発光団はポリマー層の表面近傍に含浸されて発光領域を形成する。
[2]前記発光団はCuを含まない、[1]に記載の非晶質摩擦発光材料。
発光団は、水素原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子から成る群から選択される2つ以上の原子から構成され得る。発光団はIr、Ru、及びEuから選択される金属原子を含有し得る。
[3]前記発光団は前記ポリマーに対して共有結合されていない、[1]又は[2]に記載の非晶質摩擦発光材料。
[4]前記発光団は3つ以上の環が縮合した縮合多環構造を有する、[1]又は[2]に記載の非晶質摩擦発光材料。
[5]前記発光団及び前記ポリマーの少なくとも1つは生体適合性である、[1]~[4]のいずれか1項に記載の非晶質摩擦発光材料。
生体適合性を有する発光団の例としては、生体物質に共通する環骨格を有する発光団が挙げられる。
[6]前記ポリマーは非晶質ポリマーである、[1]~[5]のいずれか1項に記載の非晶質摩擦発光材料。
[7]前記材料は、前記発光団と前記ポリマーとを含有する非晶質摩擦発光層と、ポリマーを含有し且つ発光団を含有しない発光団非含有層と、を含み、及び
前記非晶質摩擦発光層のポリマーは非晶質ポリマーである、
[1]~[5]のいずれか1項に記載の非晶質摩擦発光材料。
[8]前記発光団非含有層は前記非晶質摩擦発光層上に積層されている、[7]に記載の非晶質摩擦発光材料。
[9]前記非晶質摩擦発光層のポリマーと前記発光団非含有層のポリマーとは異なる種類のポリマーである、[7]又は[8]に記載の非晶質摩擦発光材料。
[10]前記発光団非含有層のポリマーは結晶性ポリマーである、[7]~[9]のいずれか1項に記載の非晶質摩擦発光材料。
[11]前記非晶質摩擦発光層は全体的に前記発光団非含有層で覆われている、[7]~[10]のいずれか1項に記載の非晶質摩擦発光材料。
[12]前記非晶質摩擦発光層の一部が前記発光団非含有層で覆われている、[7]~[10]のいずれか1項に記載の非晶質摩擦発光材料。
[13][8]の非晶質摩擦発光材料において発光を生じさせる方法であって、前記発光団非含有層の前記非晶質摩擦発光層とは反対側の表面に機械的作用を適用して、前記非晶質摩擦発光層において発光を生じさせることを含む、方法。
[14]非晶質摩擦発光材料において発光を生じさせる方法であって
1)ポリマーを含み且つ発光団を含まない発光団非含有フィルムを、発光団とポリマーとを含む非晶質摩擦発光材料上に配置することと、2)前記発光団非含有フィルムの前記非晶質摩擦発光材料とは反対側の表面に機械的作用を適用して、前記非晶質摩擦発光材料において発光を生じさせることと、
を含む、方法。
[15]非晶質摩擦発光フィルムを製造する方法であって、
発光団とポリマーとの溶液をコーティングし、及びコーティングされた溶液を乾燥すること、又は
発光団とポリマーとの固体混合物をフィルム状に広げること、
を含む、方法。
発光団とポリマーとの固体混合物は、溶媒を含まなくてもよい。本出願において、ペインティング溶液、固体を含有する溶液、懸濁液、分散液、ペースト、スラリー、及びコロイド溶液を使用して非晶質摩擦発光フィルムを製造することができる。
[16]非晶質摩擦発光材料を製造する方法であって、
非晶質ポリマーを含有するポリマーフィルムに発光団を含浸させることを含む、方法。
[17][1]~[12]のいずれか1項の非晶質摩擦発光材料を含む、機械的刺激応答性センサー、繊維、フィルム、又は染料。
本出願において、用語「機械的刺激応答性センサー」は、機械的刺激又は機械的損傷を検出してそれに応答する装置として定義される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】2又は3重量%の(a)Py(lex=380、lem=447)、(b)DPA(lex=405、lem=522)、(c)TPE(lex=380、lem=447)、(d)クマリン153(lex=405、lem=522)、(e)VB2-B(lex=488、lem=522)、(f)Cu(dmp)Xantp(lex=405、lem=522)、(g)Ir(ppy)(lex=405、lem=522)、(h)Ru(phen)(lex=405、lem=617)、及び(i)Eu(acac)phen(lex=405、lem=617)を含有するPMMAフィルムの蛍光顕微鏡画像である。lexは励起波長(nm)であり、及びlemはモニタリングされた発光波長である。
図2】2又は3重量%の発光団を含むPMMAフィルムのPXRDパターンである。
図3】5、10、又は15重量%の発光団を含有するPMMAフィルムのPXRDパターンである。
図4】発光団を有さないPMMAフィルムのPXRDパターンである。
図5】Ar下でPMMA中に配合された発光団(1重量%)の正規化されたTLスペクトルである。
図6】Nガス流通下でのPMMA中における発光団(1重量%)のPLスペクトルである。
図7】10重量%の(a)Py、(b)DPA、(c)TPE、(d)クマリン153、(e)VB2-B、(f)Cu(dmp)Xantp、及び(g)3重量%のIr(ppy)、(h)5重量%のRu(phen)、及び(i)15重量%のEu(acac)phenを含有するPMMAフィルムのTLの画像である。前記フィルムを、Ar下、ガラス棒でこすった。
図8】異なるガス中におけるPMMA中の(a)Py(2重量%)、(b)DPA(2重量%)、(c)TPE(2重量%)、(d)クマリン153(3重量%)、(e)VB-B(2重量%)、及び(f)Cu(dmp)Xantp(3重量%)のTLスペクトルである。
図9】異なるガス中におけるPMMA中の(g)Ir(ppy)(2重量%)、(h)Ru(phen)(2重量%)、及び(i)Eu(acac)phen(3重量%)のTLスペクトルである。
図10】N、He、及びAr雰囲気下での(a)PMMA、(b)PS、(c)PCL、(d)PBAC、及び(e)PVCの正規化されたTLスペクトルである。
図11】Ar下においてガラス棒で表面をこすることによって得られた、種々のポリマー中の(a)Py(2重量%)、(b)Py(10重量%)、(c)DPA(2重量%)、(d)TPE(2重量%)、(e)クマリン153(3重量%)、(f)VB-B(2重量%)、(g)Cu(dmp)Xantp(3重量%)、(h)Ir(ppy)(2重量%)、(i)Ru(phen)(2重量%)、及び(j)Eu(acac)phen(3重量%)のTLスペクトルである。
図12】Ar下においてガラス棒で表面をこすることによって得られた、種々のポリマー中の(a)Py(2重量%)、(b)Py(10重量%)、(c)DPA(2重量%)、(d)TPE(2重量%)、(e)クマリン153(3重量%)、(f)VB-B(2重量%)、(g)Cu(dmp)Xantp(3重量%)、(h)Ir(ppy)(2重量%)、(i)Ru(phen)(2重量%)、及び(j)Eu(acac)phen(3重量%)のフルレンジのTLスペクトルである。
図13】カバーフィルムをこすることによって生成されるポリマー中に配合された発光団のTLのイラストである。
図14】乾燥空気下での(a)PMMA及び(b)PS中の1重量%の発光団の正規化されたTLスペクトルである。発光団を含有するPMMA及びPSをPVCフィルム(厚さ:約20μm)で覆い、PVCカバーフィルム上をガラス棒でこすった。
図15】グローブバッグ中の乾燥空気の気流下でのPSにおける2重量%のIr(ppy)のTLの画像である。PSフィルムをガラスペトリ皿に入れ、PVCフィルム(厚み:約20μm)で覆い、PVCフィルムの上からゴム棒を用いてこすった。
図16】1重量%の(a)Py、(b)DPA、(c)TPE(d)クマリン153、(e)VB2-B、(f)Cu(dmp)Xantp、(g)Ir(ppy)h)Eu(acac)phenを含有するPSフィルムのTLの画像である。PSフィルムを、PVCフィルム(厚み:約20μm)で覆い、Ar下でPVCの上からシリコーンゴムを用いて叩いた。カメラの露出時間は5秒間である。このPS及びPVCは、グローブボックスの窓に指で保持される。
図17】23℃の湿った空気(相対湿度:34%)下における3重量%の(a)DPA及び(b)Cu(dmp)xantpを含有するPBACフィルムのTLスペクトルである。フィルムを、光ファイバープローブを含有するガラス管でこすった。
図18】24℃の湿った空気(相対湿度:40%)下における10重量%の(a)DPA及び(b)Cu(dmp)xantpを含有するPBACフィルムのTLの写真である。フィルムを、ガラスペトリ皿上でシリコーンゴム棒でこすった。カメラの露出時間は5秒間である。
図19】スコッチテープで固定されたガラスペトリ皿上のPSフィルム上に油性蛍光マーカーで描いたペインティングの写真であり、TL性能実験に使用した。(b)UVランプ下での前記ペインティング。(c)シリコーンゴム棒を用いてPVCカバーフィルムをこすることによって生成された、グローブボックス中での前記ペインティングのTL(カメラの露出時間は5秒間である)。蛍光マーカーの着色成分の全てが発光を生ずる。湿度はゼロであり、グローブボックス中のセンサーによって確認される。
図20】真空ガラスフラスコ中の発光団を含有するポリマーのTLの生成のイラストである。(a)ガラスフラスコの写真であって、中にこする前のPMMAフィルムが配置されている。丸底フラスコ中の真空下での10重量%の(b)DPA、(c)Cu(dmp)xantpを含有するPMMAフィルムのTLの写真であって、フラスコの底をゴムグローブでこすることによって生成された。(d)こすりを与えない暗所におけるフラスコ。カメラの露出時間は5秒間である。湿った空気下である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の内容を詳細に説明する。下記において、構成要素が本発明の代表的な実施形態及び具体的な実施例を参照して説明されることもあるが、本発明は当該実施形態及び実施例に限定されない。本明細書において、「XからYまで」によって表現される数値範囲は、数値X及びYをそれぞれ下限及び上限として含む範囲を意味する。
【0008】
非晶質摩擦発光材料
本発明の非晶質摩擦発光材料は、発光団とポリマーとを含む。本発明の一実施形態では、発光団はポリマーに共有結合されていない。本発明の好ましい実施形態では、非晶質摩擦発光材料は少なくとも1つの非晶質摩擦発光層を含む。非晶質摩擦発光層は、前記発光団と非晶質ポリマーとを含み、及び非晶質摩擦発光材料に対する機械的作用に応答して発光を生ずる非晶質層である。
以下、本発明の非晶質摩擦発光材料に含まれる各構成成分について説明する。
【0009】
発光団
前記発光団は、半導体粒子又は金属イオンを用いた蛍光材料、遅延蛍光材料、燐光材料、又は長残光性発光材料であってよい。本発明の一実施形態では、発光団は金属元素を含有しない有機化合物である。例えば、発光団は、水素原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子から成る群から選択される2つ以上の原子から成る。金属元素を含まない発光団は、ポリマー中に容易に分散される。本発明の一実施形態では、発光団はCuを含まない。本発明の一実施形態では、発光団はIr、Ru、及びEuから選択される金属を含有する。本発明の一実施形態では、発光団は、N-複素環式カルベンリガンド及びピリジノファンリガンドを含まない。
【0010】
発光団の例としては、芳香族化合物、ヘテロ芳香族化合物、及び有機金属錯体が挙げられる。本発明で言う用語「芳香族化合物」は、少なくとも1つの芳香環を含有する化合物を意味する。本発明で言う用語「ヘテロ芳香族化合物」は、少なくとも1つのヘテロ芳香環を含有する化合物を意味する。芳香環及びヘテロ芳香環は、単環式環であってもよく、また縮合多環構造を有する縮合環であってもよい。ヘテロ芳香環を構成するヘテロ原子の例としては、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子が挙げられる。
発光団としての芳香族化合物の例としては、2つ以上のベンゼン環が縮合した多環式芳香環を有する縮合多環芳香族化合物及び2つ以上の芳香環(例えば、ベンゼン環)がπ共役連結基によって連結された構造を有する化合物が挙げられる。芳香環及びπ共役連結基の各々の少なくとも1つの水素原子は、置換基によって置換されていてもよい。縮合多環芳香族化合物の環骨格の具体例として、アントラセン環及びピレン環が挙げられる。π共役連結基は、芳香環の二重結合と共役系を形成する連結基であり、それらの例としてはエテニレン基、1,3-ブタジエン-1,4-ジイル基、及びポリエン構造を有する連結基が挙げられる。
芳香環及びπ共役連結基の置換基の例としてはアルキル基(好ましくは炭素原子数が1~50)、アルキレン基(好ましくは炭素原子数が1~50)、アルキニル基(好ましくは炭素原子数が1~50)、アルコキシ基(好ましくは炭素原子数が1~50)、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、チオール基、アシル基(好ましくは炭素原子数が1~50)、シリル基(好ましくは炭素原子数が1~50)、アミノ基、アルデヒド基、イソシアネート基、チアゾリル基、アリール基(好ましくは炭素原子数が6~50)、ヘテロシクロアルキル基(好ましくは炭素原子数が3~50)、及びヘテロアリール基(好ましくは炭素原子数が3~50)が挙げられる。これらの例示された基は、更に置換されていてもよい。かかる更なる置換基としては、例えば、アラルキル基、ハロアルキル基、及びアルコキシシリル基が挙げられる。芳香環及びπ共役連結基の置換基は、カルボキシル結合、カルボキシアミド結合、エステル結合、アミド結合、スルフィド結合、ジスルフィド結合等を有し得る。
【0011】
発光団としての芳香族化合物の好ましい例としては、下記式のいずれかで表される構造を有する化合物が挙げられる。下記構造に含有される少なくとも1つの水素原子は、置換基で置換されていてもよい。置換基の好ましい範囲及び具体例については、上述の芳香環及びπ共役連結基の置換基の説明を参照してよい。
【0012】
【化1】
【0013】
発光団としてのヘテロ芳香族化合物の好ましい例としては、下記式のいずれかで表される構造を有する化合物が挙げられる。下記構造に含有される少なくとも1つの水素原子は、置換基で置換されていてもよい。置換基の好ましい範囲及び具体例については、上述の芳香環及びπ共役連結基の置換基の説明を参照してよい。
【0014】
【化2】
【0015】
発光団としてのヘテロ芳香族化合物のより好ましい例としては、下記式(1)又は(2)で表される化合物が挙げられる。
【0016】
【化3】
【0017】
式(1)中、Rはフルオロアルキル基を表す。式(2)中、R及びRはそれぞれ独立してアルキル基を表し、Rはアルキルカルボニルオキシ基で置換されたアルキル基を表す。R及びRは互いに同じであっても異なっていてもよい。式(2)で表される化合物は、ビタミンB2の環構造を有するため高い生体適合性を有する。
式(1)中、Rとしてのフルオロアルキル基は、アルキル基の全ての水素原子がフッ素原子で置換されたパーフルオロアルキル基であっても、又はアルキル基の少なくとも1つであるが全てではない水素原子がフッ素原子で置換された部分フルオロアルキル基であってもよい。前記フルオロアルキル基は、直鎖状、分枝状、又は環状であってよい。前記フルオロアルキル基は、好ましくは1~20個の炭素原子、より好ましくは1~10個の炭素原子、更に好ましくは1~5個の炭素原子を有する。前記フルオロアルキル基の具体例としては、パーフルオロメチル基(トリフルオロメチル基)、パーフルオロエチル基、及びパーフルオロプロピル基が挙げられる。
式(2)中、R及びRとしてのアルキル基は、直鎖状、分枝状、又は環状であってよい。前記アルキル基は好ましくは、1~20個の炭素原子、より好ましくは1~10個の炭素原子、更に好ましくは1~5個の炭素原子を有する。前記アルキル基の具体例としては、メチル基(Me)、エチル基、n-プロピル基(n-Pr)、イソプロピル基(i-Pr)、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、及びtert-ブチル基(t-Bu)が挙げられる。
としてのアルキルカルボニルオキシ基で置換されたアルキル基は好ましくは、下記式で表される構造を有する。
【0018】
【化4】
【0019】
式中、R41及びR42はそれぞれ独立してアルキル基を表し、nは0以上の整数を表し、*は窒素原子に対する結合位置を表す。R41及びR42は互いに同じであっても異なっていてもよい。nが2以上である場合、2つ以上のR41は互いに同じであっても異なっていてもよい。アルキル基の説明について、それらの好ましい範囲及び具体例については、上述のR及びRとしてのアルキル基の説明を参照してよい。nは好ましくは0~8、より好ましくは1~6、更に好ましくは2~4である。
【0020】
発光団としての有機金属錯体の例としては、Cu、Ir、Ru、及びEuから成る群から選択される中心金属を有する錯体が挙げられ、そのリガンドの例としては、ピリジン環又はピロール環等のヘテロ芳香環を含有するリガンド、ホスフィン構造を有するリガンド、及びジケトンリガンドが挙げられる。リガンドにおけるヘテロ芳香環は、単環式環であってよく、又は1以上のヘテロ芳香環が1以上の芳香環又はヘテロ環と縮合された縮合環であってもよい。前記ヘテロ芳香環の少なくとも1つの水素原子は、置換基で置換されていてもよい。
前記リガンドの好ましい例としては、下記式のいずれかで表される構造が挙げられる。
【0021】
【化5】
【0022】
上記式中、Phはフェニル基を表す。R及びRはそれぞれ独立して1~10個の炭素原子を有するアルキル基を表す。R及びRは互いに同じであっても異なっていてもよい。アルキル基及びその好ましい範囲及び具体例の説明については、上述のR及びRとしてのアルキル基についての説明を参照してよい。上記構造に含有される少なくとも1つの水素原子は置換基で置換されていてもよい。置換基の好ましい範囲及び具体例については、上述の芳香環及びπ共役連結基の置換基の説明を参照してよい。
発光団の具体例を以下に示す。しかしながら、本発明において使用可能な発光団は、これらの具体例に限定されるものと解釈されない。
【0023】
【化6】
【0024】
非晶質摩擦発光材料に含有される発光団は、1種又は2種以上であってよい。
【0025】
ポリマー
前記ポリマーは、前記発光団のためのマトリクス材料としての機能を有する。更に、前記非晶質摩擦発光材料において、非晶質摩擦発光層のポリマーは非晶質ポリマーである。
前記ポリマーの例としては、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリスチレン、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリカーボネート(ポリ(ビスフェノールA)カーボネート)、ポリビニルクロリド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリラクトン、ポリアルキレンオキシド、ポリシロキサン、ポリジメチルシロキサン、ポリラクチド、ポリオレフィン、ポリイソブチレン、ポリアミドイミド、ポリブタジエン、エポキシ樹脂、ポリアセチレン、及びビニルポリマーが挙げられる。これらのポリマーから選択される非晶質ポリマーは、摩擦発光非晶質層中で使用されてもよい。非晶質ポリマーの好ましい例としては、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリスチレン、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリカーボネート(ポリ(ビスフェノールA)カーボネート)、及びポリビニルクロリドが挙げられる。これらのうち、ポリ(ε-カプロラクトン)は高い生体適合性を有する。ポリアクリレートは好ましくはポリアルキルアクリレートであり、及びポリメタクリレートは好ましくはポリアルキルメタクリレートである。前記ポリアルキルアクリレート及び前記ポリアルキルメタクリレートのアルキル基の炭素原子数は好ましくは1~40、より好ましくは1~20、更に好ましくは1~6である。前記ポリマーの分子量は特に限定されず、例えば、1000~300000、より好ましくは5000~50000の範囲から選択され得る。非晶質摩擦発光材料中に含有されるポリマーは、1種又は2種以上であってよい。
本発明で使用されるポリマーは、該ポリマーの繰り返し単位中に光輝性部位を有していても有していなくてもよい。光輝性部位は蛍光、燐光、熱活性化遅延蛍光、又は長残光性発光を示し得る。本発明の一実施形態では、非晶質摩擦発光材料中のポリマーは、光輝性部位を有さない。
【0026】
発光団のポリマーに対する量比
非晶質摩擦発光材料における発光団の量は、それぞれポリマーの合計重量基準で、好ましくは0.001重量%以上、より好ましくは0.01重量%以上、更に好ましくは0.1重量%以上、好ましくは30重量%以下、より好ましくは10重量%以下、更に好ましくは5重量%以下である。
【0027】
非晶質摩擦発光材料の他の構成成分
本発明の非晶質摩擦発光材料は、発光団及びポリマーのみから成ってもよく、又は更に他の構成成分を含んでいてもよい。
【0028】
非晶質摩擦発光材料層
本発明の非晶質摩擦発光材料は、前記発光団と前記非晶質ポリマーとを含有する1つの層(前記非晶質摩擦発光層)のみを有する単層構造を有していてもよく、又は2つ以上の層を有する多層構造を有していてもよい。非晶質摩擦発光材料が多層構造を有する場合、該多層構造の全ての層が、前記発光団と前記非晶質ポリマーとを含有する非晶質摩擦発光層であってもよく、或いは、少なくとも1つの層が前記発光団と前記非晶質ポリマーとを含有する非晶質摩擦発光層であり且つ少なくとも1つの層がポリマーを含有し及び発光団を含有しない発光団非含有層である。本発明の好ましい実施形態では、発光団非含有層は、非晶質摩擦発光層上に積層されている。本発明のより好ましい実施形態では、発光団非含有層(第1の発光団非含有層)、非晶質摩擦発光層、及び発光団非含有層(第2の発光団非含有層)がこの順に積層されている。他の好ましい実施形態では、非晶質摩擦発光層は全体的に発光団非含有層で覆われている。
【0029】
非晶質摩擦発光材料が非晶質摩擦発光層及び発光団非含有層を含む場合、非晶質摩擦発光層に含有されるポリマー及び発光団非含有層に含有されるポリマーは互いに同じであっても異なっていてもよいが、好ましくは異なっている。発光団非含有層に含有されるポリマーは、結晶性ポリマーであっても又は非晶質ポリマーであってもよい。結晶性ポリマーの例としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリマー、及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が挙げられる。非晶質ポリマーの例については、上述の「ポリマー」の段落の説明を参照してよい。
【0030】
非晶質摩擦発光材料の厚みは、用途によって適宜決定されてよいが、例えば、0.1~100000μm、好ましくは1~10000μm、例えば1~1000μm、又は10~200μmの範囲から選択されてよい。非晶質摩擦発光材料が多層構造を有する場合、非晶質摩擦発光層の厚みは好ましくは0.1~1000μm、より好ましくは0.1~100μm、例えば1~10μmである。発光団非含有層の厚みは好ましくは0.1~10000μm、より好ましくは1~1000μm、例えば5~50μmである。
【0031】
非晶質摩擦発光材料において発光を生じさせる方法
本発明の方法は、発光団非含有層が非晶質摩擦発光層上に積層されている非晶質摩擦発光材料において発光を生じさせる方法であって、
前記発光団非含有層の前記非晶質摩擦発光層とは反対側の表面に機械的作用を適用して前記非晶質摩擦発光層において発光を生じさせること、を含む。
【0032】
本発明の別の方法は、前記非晶質摩擦発光材料において発光を生じさせる方法であって
1)ポリマーを含み且つ発光団を含まない発光団非含有フィルムを発光団とポリマーとを含む非晶質摩擦発光材料上に配置することと、
2)前記発光団非含有フィルムの前記非晶質摩擦発光材料とは反対側の表面に機械的作用を適用して前記非晶質摩擦発光材料において発光を生じさせることと、を含む。
【0033】
非晶質摩擦発光材料、非晶質摩擦発光層、及び発光団非含有層の説明については、上述の非晶質摩擦発光材料についての対応する説明を参照してよい。
これらの方法において使用することが可能な機械的作用の例としては、圧縮、張力、引張強さ、衝撃、せん断、屈曲、摩滅、ねじれ、引っ掻き、押し砕き、こすり、すり砕き、及び超音波が挙げられる。
これらの方法では、非晶質摩擦発光層に機械的作用を直接適用することなく(非晶質摩擦発光層に機械的作用を間接的に適用して)前記非晶質摩擦発光層において発光を生じさせることが可能である。したがって、機械的作用に起因する非晶質摩擦発光層に対する損傷が抑制される。
【0034】
非晶質摩擦発光フィルムを製造する方法
前記非晶質摩擦発光材料は好ましくは、フィルム(非晶質摩擦発光フィルム)の形態である。
本発明の1つの方法は、非晶質摩擦発光フィルムを製造する方法であり、発光団とポリマーとの溶液をコーティングすることと、コーティングされた溶液を乾燥することと、を含む。
非晶質摩擦発光フィルム、発光団、ポリマー、発光団のポリマーに対する量比の説明については、上述の非晶質摩擦発光フィルムの説明における対応する説明を参照してよい。
【0035】
前記溶液のために使用することができる溶媒の例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、及びクロロベンゼン等の芳香族類;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジメトキシエタン、及びジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、及びプロピオン酸エチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、及びシクロヘキサノン等のケトン類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、及びノナン等の炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、及び1,2-ジクロロエタン等のハロゲン類;炭化水素類;ギ酸、酢酸、及びプロピオン酸等の有機酸類;N、N-ジメチルホルムアミド、N、N-ジメチルアセトアミド、及びN-メチルピロリドン等の極性溶媒;水;及びこれらの溶媒の混合物が挙げられる。選択された溶媒は溶液を調製するために使用される。
調製された溶液を基剤上にコーティングする方法は特に限定されず、キャスティング法及びスピンコーティング法等の既知の湿式プロセスを適宜選択して使用してよい。
溶液は、空気中で又は減圧雰囲気下で乾燥されてよく、及び空気中で実質的に乾燥された後、減圧雰囲気下で更に乾燥されてもよい。
【0036】
本発明の別の方法は、非晶質摩擦発光フィルムを製造する方法であって、発光団とポリマーとの固体混合物をフィルム状に広げることを含む。
この場合の固体混合物は、溶媒を含まなくてもよい。好ましくは、固体混合物は固体流体混合物である。前記混合物の例としては、塗料、ペースト、及びスラリーが挙げられる。この別の方法では、固体混合物は、例えば、印刷、ペインティング、浸漬、及びプラスチック着色剤法のようなすり砕きによって広げることができる。
当該非晶質摩擦発光フィルム、発光団、ポリマー、及び発光団のポリマーに対する量比の説明については、上述の非晶質摩擦発光フィルムについての説明における対応する説明を参照してよい。
【0037】
非晶質摩擦発光材料の製造方法
本発明の方法は、非晶質摩擦発光材料の製造方法であって、
非晶質ポリマーを含有するポリマーフィルムに発光団を含浸させることを含む。
非晶質ポリマー及び発光団の説明については、上述の非晶質摩擦発光材料についての対応する説明を参照してよい。
ポリマーフィルムに発光団を含浸させる方法の例としては、ポリマーフィルムを発光団を含有する液体材料に浸漬する方法、及びポリマーフィルム上に発光団を含有する液体材料を供給する方法が挙げられる。含浸に使用される液体材料は、発光団に加えて、溶媒、樹脂、及び他の既知の添加剤を含有してよい。発光団を含む液体材料は、例えば筆記具を用いて、ポリマーフィルム上に塗布され得る。結果として、ペインティング及び文字等の平面形状を有する発光領域を生成することが可能である。筆記具は、発光団を含有する液体材料をポリマーフィルム上に供給することが可能であればよく、それらの例としては蛍光マーカー、蛍光万年筆、及び毛筆が挙げられる。
【0038】
機械的刺激応答性センサー、繊維、フィルム、及び染料
本発明の機械的刺激応答性センサー、繊維、フィルム、及び染料は、本発明の非晶質摩擦発光材料を含む。前記繊維、フィルム、及び染料は、センサー又は放光性の(glowing)製品として使用され得る。
本発明の非晶質摩擦発光材料の説明については、上述の非晶質摩擦発光材料の説明を参照してよい。
本発明のセンサーが機械的刺激又は機械的損傷を受容する時、該センサーに含有される材料が、その刺激に応答して発光する。したがって、発光又は発光色の変化を観察することによって、センサーによって受容された機械的刺激又は機械的損傷を容易に検出することが可能である。センサー中に含有される材料は、繊維、粒子、ペースト、又はフィルムの形態であり得る。
本発明のセンサーは、本発明の材料を含有する感応ユニットと、その感応ユニットにおいて生成された光を検出し、それをアナログ電圧又はデジタル信号に変換する受光ユニットと、を有し得る。
【実施例
【0039】
[実施例1]
本明細書において我々は、生体適合性の分子を包含する広範な発光団を配合された摩擦発光ポリマーフィルムの調製に対する一般的なアプローチを開発した。ポリマーマトリクスも幅広く使用可能である。これらの材料においては、ポリマーとの直接接触がなくても(別の材料の層を介して)、こすりに応答して光が生成され得る。不活性ガス雰囲気下であるか或いは乾燥空気下であっても、この応答を見ることができ、発光材料の破砕や機械的損傷を必要としない。ポリマーフィルムの調製は、ポリマーの発光団との単純な物理的配合を伴い、共有結合を必要としない。
本方法の有用性を実証するために我々は、蛍光又は燐光を示す以下の9つの代表的な発光団を使用した:ピレン(Py)、9,10-ジフェニルアントラセン(DPA)、テトラフェニルエテン(TPE)、2,3,6,7-テトラヒドロ-9-(トリフルオロメチル)-1H,5H,11H-[1]ベンゾピラノ[6,7,8-ij]キノリジン-11-オン(クマリン153)、ビタミンBブチラート(VB-B)、(4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテン)(2,9-ジメチル-1,10-フェナントロリン)銅(I)ヘキサフルオロホスフェート(Cu(dmp)Xantp)、fac-トリス(2-フェニルピリジナト-C,N)イリジウム(III)(Ir(ppy))、fac-トリス(1,10-フェナントロリン)-ルテニウム(II)ビス(ヘキサフルオロホスフェート)(Ru(phen))、トリス(アセチルアセトナト)モノ(1,10-フェナントロリン)ユーロピウム(III)(Eu(acac)(phen))(スキーム1)。これらの誘導体は、機能性材料、有機発光ダイオード(OLED)、プローブ、及び光レドックス触媒において広く使用されている。これらのうち、Pyは結晶においてすり砕きによりTLを示さないことが文献において調査、報告されている。
【0040】
【化7】
【0041】
発光団及びポリメチルメタクリレート(PMMA)を用いて、発光団の粉末(1~10重量%)及びPMMAをジクロロメタンに単純に溶解した後、ガラス上にキャスティングして真空乾燥することによって、非晶質配合ポリマーフィルムを調製した。このフィルムのPXRD及び発光顕微鏡イメージングによって、結晶相及び微結晶相が存在しないことを確認した(図1、2、3)。管内に光ファイバープローブを含有するガラス管で表面をこすることによって、PMMA中のこれらの発光団のTLスペクトルを測定した。Arガス下での代表的なTLスペクトルを図5に示す。このTLスペクトルは、PMMAフィルム中の対応する発光団のフォトルミネッセンス(PL)スペクトルに酷似している(図6)。PMMA中のPL及びTLの最大発光を表1にまとめて示す。
【0042】
【表1】
【0043】
フルレンジのTLスペクトルは、近赤外領域におけるアルゴンガス放電に対応する発光を示している(図12)。10重量%の発光団を有するPMMAフィルムのAr下でのTLの画像を図7に示す。混和性に劣るため、いくつかの金属系の発光団、Ru(phen)及びIr(ppy)については、PMMAフィルム中10重量%では均一な分布を得ることができなかった。PMMAフィルム中に配合された発光団の、窒素、酸素、ヘリウム、及び乾燥空気等が挙げられる種々の気体中でのTLスペクトルは、対応する発光団のピークとともに気体放電発光線を含むTLスペクトルを示す(図8、9)。発光団の非存在下でも、肉眼で識別できる可視光発光は観察されないものの、PMMAフィルムは対応する気体放電線を示している(図10)。Cu(dmp)Xantp、Ir(ppy)、Ru(phen)を含有するPMMAフィルムのTL発光はまた、分光計測により純粋なOガス下でも観察されている。
【0044】
[実施例2]
次に、我々は、ポリスチレン(PS)、ポリ(ε-カプロラクトン)(PCL)、ポリ(ビスフェノールA)カーボネート(PBAC)、ポリ(塩化ビニル)(PVC)等が挙げられる種々のポリマーマトリクスを同じ発光団のセットと配合した場合にもTLが観察されることを確認した。これらのポリマー中における9つの発光団の選択のTLスペクトルを図12に示す。我々の知る限り、VB2-B及びPCL等の生体適合性の材料からのTLの観察は前例がない。
【0045】
[実施例3]
我々は次に、図13に示すように、直接接触がなく発光団又は他の添加剤を含有しない別のフィルムの層を通した場合でも発光が観察されることを確認した。そのことを立証するために、発光団を含有する(1重量%)PMMA又はPSフィルムを発光団を含有しないPVCポリマーフィルムで物理的に覆った。その後、乾燥空気下でPVC上層の表面をガラス棒でこすった。スペクトルを図14に示す。これは、別の材料による直接摩擦の非存在下で生成され、別の不活性な添加剤非含有ポリマーの層を通した機械的刺激により生成される、ポリマーに配合された発光団のTLの初めての実例である。ガラス棒に換えてポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)ゴム棒又はラテックスゴムを用いてPVCカバーフィルムの表面をこすることにより、乾燥空気下でさえも可視光発光を生ずるはるかに強いTLが示された。暗室乾燥空気下でPVCカバーをシリコーンゴムでこすることによって生成された、PSフィルムに配合されたIr(ppy)(2重量%)のTLの画像を図15に示す。アルゴン雰囲気下でTL強度が増大することが分かったが、これはおそらく、アルゴンガスの低い絶縁耐力に起因する。かすかな室内光中でPVCカバーフィルムの表面をやさしく叩くことによって生成された、PS中に配合された1重量%の発光団のより明るいTLの画像を図16に示す。このTLはまた、アルゴン雰囲気下でPVCのカバーフィルムをポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリプロピレン(PP)等が挙げられる他のポリマーフィルムで置き換えることによっても観察される。
要約すると、我々は、広範なポリマーマトリクスの一般に入手可能な光輝性化合物との単純な物理的配合によって、摩擦発光ポリマーフィルムを得ることができることを示してきた。ポリマーフィルムを直接又は別の材料の層を通してこすることによって、分光計測又はイメージング法によって肉眼でも識別される可視光発光が生成される。この発光は不活性ガス雰囲気下又は乾燥空気下で見ることができる。こうした条件下ではVB2-B等の生体適合性の発光団もまた利用可能である。
【0046】
[実施例4]
本実施例においては、湿った空気下におけるPBACフィルム中の発光団の摩擦発光性を調べた。
3重量%のDPA又はCu(dmp)Xantpを含有するPBACフィルムの各表面を、23℃及び相対湿度34%の湿った空気下で光ファイバープローブを含有するガラス管でこすり、このPBACフィルムのTLスペクトルを測定した。DPAを含有するPBACのTLスペクトルを図17(a)に示し、Cu(dmp)Xantpを含有するPBACフィルムのTLスペクトルを図17(b)に示す。
【0047】
10重量%のDPA又はCu(dmp)Xantpを含有するPBACフィルムを各ガラスペトリ皿上に置き、PBACフィルムの各表面を、24℃及び相対湿度40%の湿った空気下で指で保持したシリコーンゴム棒で20回こすり、このPBACフィルムのTL画像を露出時間5秒で撮影した。DPAを含有するPBACフィルムのTLの写真を図18(a)に示し、Cu(dmp)Xantpを含有するPBACフィルムのTLの写真を図18(b)に示す。
図17~18に示されるように、湿った空気下でもPBACフィルムにおける発光団の摩擦発光が観察された。
【0048】
[実施例5]
本実施例では、発光団が含浸されたポリマーフィルムの摩擦発光性を調べた。含浸は、ポリマーフィルムの表面上に蛍光マーカーで画像を描くことによって行った。
まず、油性の蛍光マーカーを用いてPSフィルム上にペインティングを描き、このPSフィルムをガラスペトリ皿上に置いて粘着テープで固定した。通常の屋内照明下で撮ったペインティングの写真を図19(a)に示し、UV照射下でのペインティングの写真を図19(b)に示す。その後、このPSフィルムをPVCカバーフィルムで覆い、相対湿度0%下のグローブボックス中で、指で保持したシリコーンゴム棒で20回、PVCカバーフィルムの表面をこすることによって前記ペインティングのTLを生じさせた。このペインティングのTL画像を5秒間の露出時間で撮影した。ペインティングのTLの写真を図19(c)に示す。
図19(c)に示すように、蛍光マーカー中の全ての着色成分が発光を生じた。このように、一般的な蛍光マーカーで描いたペインティングにおいて摩擦発光が観察され、本発明が実用的であることが確認された。
【0049】
[実施例6]
本実施例では、ポリマーフィルムにおける発光団の摩擦発光性を真空下で調べた。
10重量%のDPA又はCu(dmp)Xantpを含有するPMMAフィルムを各丸底ガラスフラスコに入れ、フラスコの内部を脱気し真空状態とした。湿った空気下でフラスコの各底部をラテックスゴムグローブで20回こすってTLを生じさせ、PMMAフィルムのTLを露出時間5秒で撮影した。こする前のPMMAフィルムの丸底ガラスフラスコの写真を図20(a)に示し、DPAを含有するPMMAフィルムのTLの写真を図20(b)に示し、Cu(dmp)Xantpを含有するPMMAフィルムのTLの写真を図20(c)に示し、及びこすりなしの暗所におけるフラスコの写真を図20(d)に示す。
図20(b)及び(c)に示される様に、真空下でもポリマーフィルムにおける発光団の摩擦発光が観察された。
参考文献
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【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明によると、紫外線、赤外線の光照射を行わなくても、また電流及び電圧を印加しなくても、機械的刺激に応答して発光を生ずる摩擦発光材料を実現することが可能である。本発明によると、広範な発光団を用いることにより摩擦発光フィルム及び機械的刺激応答性センサーを実現することも可能である。さらに、ポリマー中のTLによって利用される、温度、pH、機械的損傷、化学物質の指示器として機能する刺激センサーの実現もまた可能である。よって、本発明は、高い産業上の利用可能性を有する。
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図20
【手続補正書】
【提出日】2024-07-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光団とポリマーとを含む、非晶質摩擦発光材料。
【請求項2】
前記発光団はCuを含まない、請求項1に記載の非晶質摩擦発光材料。
【請求項3】
前記発光団は前記ポリマーに対して共有結合されていない、請求項に記載の非晶質摩擦発光材料。
【請求項4】
前記発光団は3つ以上の環が縮合した縮合多環構造を有する、請求項に記載の非晶質摩擦発光材料。
【請求項5】
前記発光団及び前記ポリマーの少なくとも1つは生体適合性である、請求項に記載の非晶質摩擦発光材料。
【請求項6】
前記ポリマーは非晶質ポリマーである、請求項に記載の非晶質摩擦発光材料。
【請求項7】
前記材料は、前記発光団と前記ポリマーとを含有する非晶質摩擦発光層と、ポリマーを含有し且つ発光団を含有しない発光団非含有層と、を含み、及び
前記非晶質摩擦発光層の前記ポリマーは非晶質ポリマーである、
請求項に記載の非晶質摩擦発光材料。
【請求項8】
前記発光団非含有層が前記非晶質摩擦発光層上に積層されている、請求項7に記載の非晶質摩擦発光材料。
【請求項9】
前記非晶質摩擦発光層の前記ポリマーと前記発光団非含有層の前記ポリマーとは異なる種類のポリマーである、請求項に記載の非晶質摩擦発光材料。
【請求項10】
前記発光団非含有層の前記ポリマーは結晶性ポリマーである、請求項に記載の非晶質摩擦発光材料。
【請求項11】
前記非晶質摩擦発光層は全体的に前記発光団非含有層で覆われている、請求項に記載の非晶質摩擦発光材料。
【請求項12】
前記非晶質摩擦発光層の一部が前記発光団非含有層で覆われている、請求項に記載の非晶質摩擦発光材料。
【請求項13】
請求項8に記載の非晶質摩擦発光材料において発光を生じさせる方法であって、前記発光団非含有層の前記非晶質摩擦発光層とは反対側の表面に機械的作用を適用して、前記非晶質摩擦発光層において発光を生じさせることを含む、方法。
【請求項14】
非晶質摩擦発光フィルム中で発光を生じさせる方法であって、
1)ポリマーを含み且つ発光団を含まない発光団非含有フィルムを発光団とポリマーとを含む非晶質摩擦発光材料上に配置することと、
2)前記発光団非含有フィルムの前記非晶質摩擦発光材料とは反対側の表面に機械的作用を適用して、前記非晶質摩擦発光材料において発光を生じさせることと、
を含む、方法。
【請求項15】
非晶質摩擦発光フィルムを製造する方法であって、
発光団とポリマーとの溶液をコーティングし、コーティングされた溶液を乾燥すること、又は
発光団とポリマーとの固体混合物をフィルム状に広げること、
を含む、方法。
【請求項16】
非晶質摩擦発光材料を製造する方法であって、
非晶質ポリマーを含有するポリマーフィルムに発光団を含浸させることを含む、方法。
【請求項17】
請求項1~12のいずれか1項に記載の非晶質摩擦発光材料を含む、機械的刺激応答性センサー、繊維、フィルム、又は染料。
【国際調査報告】