(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-23
(54)【発明の名称】非線形曲げ剛性を有するマイクロカテーテルデバイス
(51)【国際特許分類】
A61M 25/00 20060101AFI20240816BHJP
【FI】
A61M25/00 624
A61M25/00 504
A61M25/00 632
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513987
(86)(22)【出願日】2022-09-02
(85)【翻訳文提出日】2024-04-19
(86)【国際出願番号】 US2022042517
(87)【国際公開番号】W WO2023034601
(87)【国際公開日】2023-03-09
(32)【優先日】2021-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515246317
【氏名又は名称】サイエンティア・バスキュラー・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100202854
【氏名又は名称】森本 卓行
(72)【発明者】
【氏名】マッジオ,リチャード・エフ
(72)【発明者】
【氏名】スナイダー,エドワード・ジェイ
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA02
4C267AA05
4C267AA28
4C267AA41
4C267BB02
4C267BB04
4C267BB12
4C267BB38
4C267BB40
4C267CC08
4C267GG02
4C267GG23
4C267GG24
4C267HH03
4C267HH08
4C267HH12
(57)【要約】
有効な軸方向応答と、曲げ力の良好な分散と、剛性の急激な変化を最小限にする滑らかな曲げ剛性プロファイルとを提供する特徴を有するマイクロカテーテルデバイスが開示される。カテーテルデバイスは、複数の隙間を有する微細加工内側シャフトと、隙間内に配置されるポリマー材料を含む外側部材とを備える。カテーテルデバイスは、曲げ角度が増加するにつれて曲げがより困難になるように非線形曲げ剛性を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の隙間が形成されている内側シャフトと、
前記隙間内に配置されるポリマー材料を含む外側部材と、
を備える、カテーテルデバイスであって、
前記カテーテルデバイスは、曲げ角度が増加するにつれて曲げがより困難になるように非線形曲げ剛性を提供する、カテーテルデバイス。
【請求項2】
前記内側シャフトは、複数の周方向に延びるリングをつなぐ複数の軸方向に延びる桁を含む、請求項1に記載のカテーテルデバイス。
【請求項3】
前記内側シャフトは、3本桁セクションおよび2本桁セクションのうちの一方または両方を含み、前記3本桁セクションは、前記2本桁セクションの近位に配置され、前記3本桁セクションの少なくとも一部は、前記2本桁セクションよりも高い曲げ剛性を有する、請求項2に記載のカテーテルデバイス。
【請求項4】
前記外側部材は、ポリマーの複数の異なるデュロメータを含む、請求項1に記載のカテーテルデバイス。
【請求項5】
前記外側部材は、第1のポリマーが異なる硬度の第2のポリマーに隣り合う移行セクションを含み、前記移行セクションが前記外側部材の曲げ剛性の変化を含み、前記微細加工シャフトは、前記移行セクションにおける前記カテーテルデバイスの曲げ剛性の全体変化が、前記移行セクションにおける前記外側部材自体の曲げ剛性の全体変化よりも低くなるよう、前記外側部材の曲げ剛性の変化を補償するように構成される、前記移行セクションと一致するセクションを含む、請求項4に記載のカテーテルデバイス。
【請求項6】
前記第2のポリマーは、前記第1のポリマーの近位にあり、前記第1のポリマーよりも大きい硬度を有し、そのため、前記外側部材は遠位から近位方向に前記移行セクションにわたる曲げ剛性が増加する、請求項5に記載のカテーテルデバイス。
【請求項7】
前記シャフトは、前記外側部材の曲げ剛性の増加を補償するように遠位から近位方向に前記移行セクションの少なくとも一部にわたる曲げ剛性が増加しない、請求項6に記載のカテーテルデバイス。
【請求項8】
前記シャフトは、カット間の間隔の変化、カット深さの変化、前記カットの間隔の変化、または隣り合う対のリングを接続する桁の本数の変化、のうちの1つまたは複数により、曲げ剛性が変化する、請求項7に記載のカテーテルデバイス。
【請求項9】
周りに前記シャフトが配置される内側ライナをさらに備える、請求項1に記載のカテーテルデバイス。
【請求項10】
前記外側部材の前記ポリマー材料は、前記ライナに融合され、前記シャフトの前記隙間を満たし、前記シャフトの外側表面を覆って前記シャフトを封じ込むかつ埋め込む、請求項9に記載のカテーテルデバイス。
【請求項11】
前記シャフトは、ニチノールから形成される、請求項1に記載のカテーテルデバイス。
【請求項12】
前記外側材料は、1つまたは複数のポリエーテルブロックアミドポリマーを含む、請求項1に記載のカテーテルデバイス。
【請求項13】
前記カテーテルデバイスは、遠位15cmセクションについて約6.0×10
-7以下、遠位35cmセクションについて約9.0×10
-7以下、および/または遠位50cmセクションについて約9.0×10
-7以下の曲げ剛性勾配((N・m
2)/cm)を有する、請求項1に記載のカテーテルデバイス。
【請求項14】
前記カテーテルデバイスの遠位35cmの少なくとも一部は、5×10
-6N・m
2以上の曲げ剛性を有し、前記カテーテルデバイスは、遠位35cmセクションについて約4.0×10
-6以下および/または遠位50cmセクションについて約4.5×10
-6以下の曲げ剛性勾配((N・m
2)/cm)を有する、請求項1に記載のカテーテルデバイス。
【請求項15】
(1)前記カテーテルデバイスの遠位35cmの少なくとも一部は、5×10
-6N・m
2以上の曲げ剛性を有し、(2)前記カテーテルデバイスは、遠位15cmおよび/または遠位35cmセクションにわたって0.051mm(0.002インチ)以下の外径の変化を有し、(3)前記カテーテルデバイスは、遠位15cmセクションについて約1.3×10
-6以下、遠位35cmセクションについて約4.2×10
-6以下、および/または遠位50cmセクションについて約1.1×10
-5以下の曲げ剛性勾配((N・m
2)/cm)を有する、請求項1に記載のカテーテルデバイス。
【請求項16】
前記シャフトの遠位に配置されたコイルをさらに備える、請求項1に記載のカテーテルデバイス。
【請求項17】
前記コイルは、可変ピッチを有する、請求項16に記載のカテーテルデバイス。
【請求項18】
カテーテルデバイスであって、
複数の隙間が形成されている微細加工内側シャフトであって、
前記内側シャフトは、複数の周方向に延びるリングをつなぐ複数の軸方向に延びる桁を含み、
前記内側シャフトは、3本桁セクションおよび2本桁セクションを含み、
前記3本桁セクションは、前記2本桁セクションの近位に配置され、
前記3本桁セクションの少なくとも一部は、前記2本桁セクションよりも高い曲げ剛性を有する、微細加工内側シャフトと、
前記隙間内に配置されるポリマー材料を含む外側部材であって、
前記外側部材は、ポリマーの複数の異なるデュロメータを含み、
前記外側部材は、第1のポリマーが異なる硬度の第2のポリマーに隣り合う移行セクションを含み、前記移行セクションが前記外側部材の曲げ剛性の変化を含み、前記微細加工シャフトは、前記移行セクションにおける前記カテーテルデバイスの曲げ剛性の全体変化が、前記移行セクションにおける前記外側部材自体の曲げ剛性の全体変化以下となるよう、前記外側部材の曲げ剛性の変化を補償するように構成される、前記移行セクションと一致するセクションを含む、カテーテルデバイス。
【請求項19】
前記第2のポリマーは、前記第1のポリマーの近位にあり、前記第1のポリマーよりも大きい硬度を有し、そのため、前記外側部材は遠位から近位方向に前記移行セクションにわたる曲げ剛性が増加し、前記シャフトは、前記外側部材の曲げ剛性の増加を補償するように遠位から近位方向に前記移行セクションの少なくとも一部にわたる曲げ剛性が増加しない、請求項18に記載のカテーテルデバイス。
【請求項20】
複数の隙間が形成された微細加工内側シャフトと、
前記隙間内に配置されるポリマー材料を含む外側部材と、
を備える、カテーテルデバイスであって、
前記内側シャフトおよび前記外側部材は、滑らかな曲げ剛性プロファイルを提供するようにともに構成され、前記カテーテルデバイスは、遠位15cmセクションについて約6.0×10
-7以下、遠位35cmセクションについて約9.0×10
-7以下、および/または遠位50cmセクションについて約9.0×10
-7以下の曲げ剛性勾配((N・m
2)/cm)を有する、カテーテルデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本出願は、2022年9月1日に出願された、「Microcatherer Device Swith Non-Linear Bending Stiffness」という名称の米国実用出願第17/901,821号に対する優先権およびその利益、ならびに2021年10月22日に出願された、「Intravascular Guidewire and Microcatheter System」という名称の米国仮出願第63/271,114号および2021年9月3日に出願された、「Microcatheter Device with Non-Linear Bending Stiffness」という名称の米国仮出願第63/240、845号に対する優先権を主張し、これら出願のそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
[0002]人体内の深部で繊細な処置を行うために医療分野においてガイドワイヤおよびカテーテルなどの介入的デバイスが利用される場合が多い。典型的に、カテーテルは、患者の大腿血管、橈骨血管、頸動脈血管、または頸静脈血管に挿入され、ガイドワイヤを通じて、患者の血管系を通って心臓、脳、または他の標的の解剖学的構造にナビゲートされる。配置されると、カテーテルは、薬剤、ステント、塞栓デバイス、放射線不透過性染料、または、所望のやり方で患者を治療するための他のデバイスもしくは物質を送達するのに使用することができる。
【0003】
[0003]多くの用途において、そのような介入的デバイスは、標的の解剖学的構造に到達するために、血管系通路の蛇行した曲がりおよび湾曲を通ってナビゲートされねばならない。かかる介入的デバイスは、そのような蛇行経路をナビゲートするために、特にその遠位端のより近くで十分な可撓性を必要とする。しかしながら、他の設計面も考慮されねばならない。例えば、介入的デバイスは、十分なトルク伝達性(すなわち、近位端において印加されたトルクを遠位端までずっと伝達する能力)、押込伝達性(すなわち、中間部分を曲げるおよび拘束するのではなく遠位端に軸方向押込を伝達する能力)、および意図された医療機能を行うための構造的完全性を与えることもできなければならない。
【0004】
[0004]カテーテルデバイスが良好な軸方向応答を有することが望ましい。換言すると、使用者は、デバイスの近位端を移動させると、遠位端が同じ距離を移動すると予測する。しかしながら、多くの場合、デバイスが血管系の曲がりおよび湾曲内に配置されるにつれ、軸方向移動の大部分は、実際に遠位端を前方に前進させるのではなくデバイスの中間部分を血管系の湾曲部分の壁に押し入れるのに用いられる。近位端において使用者が与える軸方向押込量と、その結果生じる遠位端の前方移動とのこのような対応の欠如は、ナビゲーションをより困難にするとともに触覚的直感の低いものにする。
【0005】
[0005]さらに、従来のカテーテルデバイスは、近位端から遠位端にかけて曲げ剛性の勾配を与えるために複数の異なる材料を用いる。しかしながら、異なる剛性の材料間の移行がある場合は常に、デバイスの曲げ剛性プロファイル、軸方向剛性プロファイル、ねじり剛性プロファイルは、急激なステップ変化を含む。曲げ剛性のそのような急激な変化は、特定の場所に機械的応力を集中させる可能性があり、キンク点を生じさせ、デバイスの滑らかな移動および曲げを中断させ、蛇行した血管系のナビゲーションを複雑にするため、望ましくない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
[0006]したがって、カテーテルデバイスの分野においていくつかの制約が存在し、例えば、軸方向応答および/またはねじり応答と、曲げ力の分散とを改善する、かつ/または滑らかな曲げ剛性プロファイルを提供することが可能であるデバイスの継続的な必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[0007]本発明の様々な目的、特徴、特性および利点は、添付の図面および添付の特許請求の範囲と併せて、そのすべてが本明細書の一部を形成する実施形態の以下の説明から明らかとなるとともにより容易に理解される。図面において、同様の参照番号は、様々な図面における対応するまたは類似の部品を示すために用いることができ、示された様々な要素は、必ずしも縮尺通りに描かれていない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】[0008]カテーテルおよびハブを含む、カテーテルシステムの概観を示す。
【
図2】[0009]カテーテルシステムのカテーテルの様々なセクションを示す、詳細な図を示す。
【
図3A】[0010]本明細書において説明されるカテーテルシステムにおいて使用される微細加工シャフトに含まれ得る、1本桁セクションの例を示す。
【
図3B】本明細書において説明されるカテーテルシステムにおいて使用される微細加工シャフトに含まれ得る、2本桁セクションの例を示す。
【
図3C】本明細書において説明されるカテーテルシステムにおいて使用される微細加工シャフトに含まれ得る、3本桁セクションの例を示す。
【
図4】[0011]カテーテルの遠位側セクションの詳細図を示す。
【
図5A】[0012]血管(人工血管が示されている)内で起こり得る軸方向応答の相違を示す写真であり、従来のカテーテルの軸方向応答を示す。
【
図5B】血管(人工血管が示されている)内で起こり得る軸方向応答の相違を示す写真であり、従来のカテーテルの軸方向応答を示す。
【
図5C】血管(人工血管が示されている)内で起こり得る軸方向応答の相違を示す写真であり、本開示によるカテーテルの改善された軸方向応答を示す。
【
図5D】血管(人工血管が示されている)内で起こり得る軸方向応答の相違を示す写真であり、本開示によるカテーテルの改善された軸方向応答を示す。
【
図6】[0013]蛇行した解剖学的構造において、曲げ力、ねじり力、および軸方向力を分散させるよう、カテーテルがどのように構成されているかを示す、曲げ時のカテーテルの一セクションを概略的に示す。
【
図7A】[0014]1つのポリマーから別のポリマーへの移行による、外側ポリマー層における剛性のステップ変化を補償するよう、微細加工シャフトが構成されていることを示す。
【
図7B】1つのポリマーから別のポリマーへの移行による、外側ポリマー層における剛性のステップ変化を補償するよう、微細加工シャフトが構成されていることを示す。
【
図8A】[0015]本開示によるカテーテルデバイス(「Plato17」と付されている)の曲げ剛性プロファイルを様々な従来のカテーテルデバイスの曲げ剛性プロファイルと比較した図であり、遠位先端部から60cmまでの曲げ剛性を示す。
【
図8B】本開示によるカテーテルデバイス(「Plato17」と付されている)の曲げ剛性プロファイルを様々な従来のカテーテルデバイスの曲げ剛性プロファイルと比較した図であり、遠位先端部から15cmまでの曲げ剛性を示す。
【
図9】[0016]本開示によるカテーテルデバイス(「Plato17」と付されている)の遠位長さに沿った外径を様々な従来のカテーテルデバイスと比較した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
例示的なカテーテルデバイスの概観
[0017]
図1は、改善された軸方向応答性、曲げ力の改善された分散、および/または滑らかなデバイス曲げ剛性プロファイルのうちの1つまたは複数を与える特徴を含む、以下でより詳細に説明する、例示的なカテーテルデバイス100の概観である。
【0010】
[0018]カテーテルデバイス100は、近位端がハブ104に接続されているとともにハブ104から遠位端103に延びるカテーテル102を含む。カテーテル102は、接着剤、摩擦嵌めを用いて、インサート成形、および/または他の適切な取着手段により、ハブ104に結合され得る。ストレインリリーフ部材106もまた、カテーテル102の近位側セクションにわたってハブ104の近くに配置される。ストレインリリーフ部材106は、ハブ104の隣り合うセクションに実質的に一致する外径を有する。ストレインリリーフ部材106は、ほぼ一定の外径を有するハブ104からある距離にわたって延びてから、カテーテル102が出現するとともにさらに遠位に延びる端部まで遠位にテーパする。ストレインリリーフ部材106は、ストレインリリーフ部材106にさらなる可撓性を与えるように機能する、かつ/または、ユーザグリップおよび触覚係合のための表面特徴を与えるように機能する、ほぼ一定の外径のセクションに配置された溝パターン108を含み得る。
【0011】
[0019]カテーテル102の作動長さ(すなわち、ストレインリリーフ(106)の遠位端とカテーテル(102)の遠位端(103)との間の距離)は、特定の用途に応じて様々とすることができる。一例として、カテーテル102は、約50cmから約200cmの作動長さを有するが、適切な場合には、より短いまたはより長い長さが用いられてもよい。カテーテルサイズ(典型的には、内径/管腔サイズを指す)もまた、特定の応用ニーズに従って様々であってもよい。例として、0.254mm(0.010インチ)、0.330mm(0.013インチ)、0.432mm(0.017インチ)、0.533mm(0.021インチ)、0.686mm(0.027インチ)、0.762mm(0.030インチ)、0.890mm(0.035インチ)、0.965mm(0.038インチ)、1.143mm(0.045インチ)、1.651mm(0.065インチ)、2.519mm(0.085インチ)、2.54mm(0.100インチ)、または端点として上記の値の任意の2つを含む範囲が挙げられる。カテーテルの内径は、より小さい遠位部分からより大きい近位部分にテーパし得る。必要に応じて、いくつかの用途において、より小さいまたはより大きいサイズが用いられてもよい。
【0012】
[0020]直線形状を有するものとしてカテーテル102の遠位側セクションがこの例において示されているが、他の実施形態は成形遠位先端を含んでもよい。例えば、カテーテル102の遠位側セクションは、傾斜形状、湾曲形状(例えば、45度角度、90度角度、J形状など)、複合湾曲形状、または当該技術分野において知られている他の適切な傾斜もしくは湾曲形状を有することができる。
【0013】
[0021]本明細書において説明されるカテーテルデバイス100は、様々な介入用途のために、最も一般的には、心臓血管処置、末梢血管処置、および神経介入処置において用いられ得る。例として、遠位の解剖学的構造へのアクセス、血管病変もしくは凝血の横断、虚血治療、治療薬剤(例えば、塞栓コイルまたは他の塞栓薬剤)の送達、診断剤(例えば、造影剤または塩水)の注射、回復用途、呼吸用途、または、マイクロカテーテルの使用が有益である他の用途が挙げられる。
【0014】
[0022]カテーテル102の内部特徴を以下でより詳細に説明する。カテーテル102の外側表面は、表面をより潤滑にするために親水性コーティングなどの適切なコーティング材料でコーティングされ得る。コーティング材料は、カテーテル102の作動長さのほぼすべてまたはその一部を覆ってもよい。例えば、コーティング材料は、カテーテル102の作動長さの最遠位の30%から80%に適用され得る。
【0015】
[0023]
図2は、カテーテル102の内部構成要素のうちのいくつかおよび種々の長手方向セクションをよりよく示す、カテーテル102の詳細図を示す。図示のように、カテーテル102は、デバイスの内側管腔を画定する内側ライナ110を含む。ライナ110は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)および/または他の適切なポリマーから形成され得る。遠位端103の近くのワイヤにコイル114が配置されている。コイル114は、そこから近位に延びる微細加工シャフト112(本明細書において「内側シャフト」とも呼ばれる)の隣に取り付けられるまたは配置される。1つまたは複数のポリマー材料から形成される外側部材115が典型的に、コイル114およびシャフト112に対しておよびコイル114およびシャフト112にわたって熱収縮積層され、両方を包むとともにライナに取り付けもする。
【0016】
[0024]一実施形態では、コイル114は、ステンレス鋼から形成され、シャフト112はニチノールから形成される。これらの材料は、本明細書において説明される他の特徴と組み合わせて使用される場合、有効な軸方向応答、曲げ力の有効な分散、および滑らかな曲げ剛性プロファイルを提供することが見出されている。他の実施形態は、コイル114、シャフト112またはそれらの両方について1つまたは複数の種々の材料を用い得る。いくつかの実施形態では、例えば、シャフト112は、他の超弾性合金、および/または、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)もしくは他のポリアリルエーテルケトン(PAEK)などの1つまたは複数のポリマーを含み得る。いくつかの実施形態では、コイル114は、ニチノールなどの超弾性合金、1つまたは複数の他の金属、合金、またはポリマーを含み得る。
【0017】
[0025]カテーテル102は、曲げ剛性プロファイル全体が近位側セクションでのより高い剛性(およびより低い曲げ可撓性)から遠位側セクションでのより低い剛性(およびより大きい曲げ可撓性)に移行するように構成される。たいていの用途では、比較的高い軸方向、ねじり剛性、および曲げ剛性の近位側セクションが可撓性と、押込伝達性と、トルク伝達性とのよい組合せを提供することができるため、そのようなセクションを示すことが望ましい。しかしながら、遠位側セクションは多くの場合、蛇行した血管系を通ってナビゲートされ、したがって、好ましくは、曲がるときに比較的より可撓性がある。この剛性プロファイル勾配は、微細加工シャフト112の特定の特徴を調整することによって、および/または、外側部材115においてシャフト112をコーティングおよび埋め込むように種々のポリマー材料を用いることによって形成することができる。以下でより詳細に説明するように、いくつかの実施形態では、マイクロカテーテル112および外側部材115は、剛性の急激な変化を最小限にするとともに滑らか剛性移行を提供する剛性プロファイル全体を提供するよう、ともに作動するように構成される。
【0018】
[0026]例示の実施形態は、遠位側セクション120と、中間セクション122と、近位側セクション124とを含む。遠位側セクション120において、外側部材115は、第1のポリマー材料116aから形成される。中間セクション122において、外側部材115は、第2のポリマー材料116bから形成される。近位側セクション124において、外側部材115は、第3のポリマー材料116cから形成される。ポリマー材料116a、116b、および116cは、異なる硬度を有し、したがって、そのそれぞれのセクションの剛性に異なって影響する。第2のポリマー材料116bは、第1のポリマー材料116aよりも高い硬度を有し、第3のポリマー材料116cは、第2のポリマー材料116bよりも高い硬度を有する。ある実施形態は、3よりも多いポリマー材料を含んでもよい。このような実施形態では、説明された実施形態と同様、ポリマー材料は近位方向に、あるポリマー材料から次のポリマー材料へと漸次的により高い硬度を有してもよい。
【0019】
[0027]一組のポリマー材料の一例はともに用いられると有効であることが見出されているため、第1のポリマー材料116aは、約20から約30のショアD硬度を有し得、第2のポリマー材料116bは、約30から約50のショアD硬度を有し得、第3のポリマー材料116cは、約50から約80のショアD硬度を有し得る。他の実施形態は、遠位部分においてより柔らかいなど、所望に応じて、これらの値を変えることができるが、上記の値が特に有効であることが見出されている。ポリマー材料116a、116bおよび116cは、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)ポリマーなどの適切なポリマーから独立して形成され得、ポリマーのデュロメータにおいて約10のショアA硬度から約100のショアD硬度の範囲にあるものとすることができる。
【0020】
[0028]シャフト112はまた、可変曲げ剛性を提供する特徴を含む。図示のように、シャフト112は、一連の微細加工カットを含むチューブ構造である。これらカットは、連続的な周方向に延びる「リング」を接続する軸方向に延びる「桁」を形成する。これらのカットパターンは、シャフト112の曲げ剛性を調整するように様々であってもよい。例えば、曲げ剛性は、隣り合うリングの各対間にある桁の本数を調整することによって適応させることができる。遠位側セクション120に示すような「2本桁セクション」は、隣り合うリングの各対間に2本の桁を含む。中間セクション122および近位側セクション124において示すような「3本桁セクション」は、隣り合うリングの各対間に3本の桁を含む。他のすべて(シャフト材料、カット深さ、カット幅、カット間隔)が等しい場合、3本桁セクションは曲げ剛性が2本桁セクションよりも大きい。隣り合うリングを接続する単一の桁を有する「1本桁セクション」も用いられ得、このセクションは、他のすべてが等しい場合、2本桁セクションよりもさらに低い曲げ剛性を有する。「4本桁セクション」および/または4つよりも多くの桁を有するセクションも用いられ得、したがって、このセクションは、隣り合うリングの各対間の桁の本数が増えるにつれ、より高い曲げ剛性を提供する。
【0021】
[0029]
図3A~
図3Cは、それぞれ1本桁セクション、2本桁セクション、および3本桁セクションの例を示し、そのようなセクションにおける、桁130およびリング132の例示的な配置を示す。桁は、連続した組の桁間の角度オフセット(またはその欠如)に応じて、および/または角度オフセットがどのくらいの頻度で(例えば、各リングの後または2つ以上のリングの後で)加えられるかに応じて、様々な配置で構成することができる。
図3Aの1本桁セクションは例えば、1本の桁から隣の桁に180度角度オフセットを含み、
図3Bの2本桁セクションは、1本の桁対から隣の桁に90度オフセットを含み、
図3Cの3本桁セクションは、1組の桁から隣の桁に120度角度オフセットを含む。これらのタイプのオフセットは、有益である一方、好ましい曲げ平面にも関連付けられ、好ましい曲げ平面を最小限にするまたは排除するために他の配置が設けられてもよい。例として、螺旋配置、分散配置、不完全ランプ配置、および鋸歯状配置が挙げられる。本開示のシャフト102に用いられ得る桁配置に関するさらなる詳細は、米国特許出願第2020/0121308号に提示されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0022】
[0030]リング間に配置された桁の本数を調整することに加え、シャフト112の曲げ可撓性が、カットの深さ、カットの幅、および/またはカットの間隔を調整することによって制御され得る。典型的に、カットの幅は、所与の値(例えば、カット用ブレードサイズに対応する)に設定され、曲げ剛性プロファイルに対して所望の制御を提供するために製造時にカット深さおよび/またはカット間隔を調整することが容易である。他のすべてが等しい場合、リング幅が減少(すなわち、カット間隔が減少)するにつれ、カット幅が増大し、および/または桁幅が減少(すなわち、カット深さが増大)し、結果として、曲げ剛性が低減する。例示の実施形態では、3本桁セクション(中間セクション122および近位側セクション124と一致する)におけるカット間の間隔は、遠位側セクション120に近くなるにつれ、漸次的に減少する。同様に、2本桁セクション(遠位側セクション120と一致する)は、カット間のより大きいスペースで始まり、コイル114および遠位端103に近くなるにつれ、カット間のより小さいスペースに進む。好ましくは、種々の幾何学形状間(例えば、3本桁から2本桁への)移行は、曲げ剛性がこれらのセクションの移行にわたって同じまたは同様であるように構成される。したがって、シャフト112は、3本桁セクションから2本桁セクションに移行するものとして、また、より離間しているカットから比較的あまり離間していないカットに移行するものとしてそれぞれのセクション内にもある、剛性勾配を提供する。
【0023】
[0031]2本桁セクションの遠位端において、カットパターンは、コイル114の高い可撓性に滑らかな移行を提供するために、比較的高い可撓性を有して構成される。いくつかの実施形態では、コイル114は省略され、代わりに、遠位端103におけるまたはその近くの位置に延びる2本桁セクション(または代替的に、1本桁セクション)の多くが用いられる。
【0024】
[0032]桁120、122および124の長さは、特定の応用ニーズまたは好みに応じて様々であってもよい。一実施形態では、遠位側セクション120は、約5cmから約40cmの長さを有し得、中間セクション122は、約10cmから約50cmの長さを有し得、近位側セクション124は、カテーテル102の作動長さの残りを占める。例示の実施形態は、シャフト112が、中間セクション122から遠位側セクション120への移行において3本桁構成から2本桁構成に移行することを示す。しかしながら、シャフト112の移行は、別個のセクション120、122、および124を画定するポリマー材料の移行に必ずしも対応する必要はない。以下でより詳細に説明するように、シャフト112および外側部材115は、急激な剛性変化を補償するとともに最小限にするようにともに構成され、いくつかの例では、外側部材115のポリマー移行と全く重ならないシャフト移行ゾーンを伴ってもよい。
【0025】
[0033]
図4は、ライナ110、遠位放射線不透過性マーカバンド140、コイル114、シャフト112、および近位放射線不透過性マーカバンド142などの特定の遠位特徴をよりよく示す、カテーテル102の遠位側セクション120の詳細図を示す。マーカバンド140および142は、ステンレス鋼よりも放射線不透過性である材料から形成される。例として、白金、イリジウム、タングステン、他の高放射線不透過性金属、およびその合金が挙げられる。遠位マーカバンド140は、カテーテル102の遠位端103の位置の表示を提供するが、近位マーカバンド142は、着脱可能な塞栓コイル、または、カテーテル102を通じて展開される他の構成要素の適切な配置を助けるために、所定の長さ(例えば、2から5センチメートル、または約3センチメートル)だけオフセットされる。
【0026】
[0034]シャフト112は、近位マーカバンド142が配置される位置に周溝を含み得る。この溝は、マーカバンド142の外側表面がシャフト112の外径を超えて過度に延びないようにマーカバンド142を受け入れることができる。近位マーカバンド142にわたる、デバイスの外径は、外側部材115によって覆われると、ほぼ面一のままとなる。
【0027】
[0035]例示の実施形態では、コイル114は可変ピッチとされる。コイル114の各端は、コイルが微細加工チューブに移行するなど、或る幾何学形状から別の幾何学形状への曲げ剛性のより改善された移行を提供する狭ピッチ領域を含む。一例として、コイル114は、約1cmから約3cmの長さを有し得る。図示のように、ライナ110の一部は、コイル114および遠位マーカコイル140から遠位に或る距離を延び得る。この距離は、例えば約0.2mmから約2mmまで様々であり得る。
【0028】
曲げ力分散
[0036]本明細書において説明されるカテーテルデバイスは、曲げ力を効果的に分散させることにより使用時に改善された軸方向応答をもたらす特徴を含む。
図5Aおよび
図5Bは、人工血管系構造中で従来のカテーテル(この例ではExcelsior SL-10が示されている)をナビゲートすることの一般的な制約を示す。カテーテルが血管中の曲がりに接近するにつれ、カテーテルの特定の長さが曲がりの周りに延びる(
図5Aの初期位置)。さらに押し込むと、連続した押し込みにより、血管系を通るカテーテルの遠位先端部を実際に前進させることにならないうちに、カテーテルを血管の壁に押し付けて湾曲に入る(
図5Bにおける押込位置の後;矢印によって示す接触点を参照のこと)際に初期の軸方向移動がとられる。近位端において使用者によって与えられる軸方向押込量と、その結果生じる遠位端の前方移動とのこのような対応の低減は、ナビゲーションをより困難にするとともにより触覚直感の低いものにする。
【0029】
[0037]
図5Aおよび
図5Bにおけるような従来のカテーテルの応答と比較すると、
図5Cおよび
図5Dは、本明細書において説明されるようなカテーテル102を使用した、血管の曲がりのナビゲーションを示す。図示のように、「初期」位置(
図5C)から押込後の位置(
図5D)まで、血管の湾曲に入る際に軸方向移動はあまりとられず、したがって、軸方向移動のより多くがカテーテル102の遠位端の実際の移動に伝達される。この機能は、カテーテル102の長さに沿って曲げ力を分散させる能力の向上に起因する。曲げ力をよりよく分散させることによって、カテーテル102は、任意の1つの特定の場所における曲げによりよく抵抗し、それにより、近位の軸方向移動をデバイスの遠位端によりよく伝達することができる。
【0030】
[0038]
図6は、カテーテル102が曲げ力を効果的に分散させることができることをさらに示す。
図6は、曲げ時のシャフト112の一部を示す。ポリマー材料116がシャフト112の桁とリングとの間の隙間を満たしている。見やすくするため、ポリマー材料116は、シャフト112の隙間のそれぞれにおいて個別のセクションで示されている。多くの場合、ポリマー材料116は、隙間を満たし、ライナ110と融合し、シャフト112の外側表面にわたって延びてもいることで、シャフト112を完全に封じ込めるかつ埋め込む。
【0031】
[0039]シャフト112の曲げ時、シャフト構造は、曲げ応力をより分散させにくいとともにより捩れさせやすいコイルまたはブレイドに比して、より多くの曲げ応力に局所的に抵抗し、より有効にこの応力を構造の隣り合う部分に分散させる。さらに、ポリマー材料116は、シャフト112の隣り合うリング間にそれぞれ配置された一連のダンパーとして有効に機能する。曲がりの内側において、ポリマー材料116は圧迫され、したがって、外方へリングに押し当たるとともにさらなる曲げに抵抗する反作用力をもたらす。同様に、曲がりの外側において、ポリマー材料116は引張状態にされ、したがって、リングを内方へ引くとともにさらなる曲げに抵抗する反作用力をもたらす。カテーテル102の曲げ剛性は非線形であり、その理由は、曲げ角度が増加するにつれ、非線形的に、曲げに対して漸増的に抵抗性があるものとなるためである。
【0032】
[0040]曲げ時、従来のカテーテルは、先端が曲がり始め、カテーテルの断面形状が「楕円状になる」傾向がある可能性がある。「楕円化」が始まると、曲げに対する抵抗が減少し、したがって、曲げ力を連続して加えることにより曲がることがますます容易となる。これに対し、開示されるカテーテル102において、シャフト112に対する微細加工構造およびポリマー材料116の作用によって提供される曲げ抵抗が、カテーテル102の軸方向長さに沿って曲げ力を分散させるとともに楕円化と特定のキンク点における曲げ力の集中とを回避する傾向がある。例えば、曲げ抵抗は、曲がりを特定の点に集中させることによりキンク位置を形成するのではなく、曲がりをより大きい曲率半径に広げる傾向がある。したがって、カテーテル構造によって提供される曲げ抵抗は、(
図5Cおよび
図5Dによって示すような)軸方向応答性の向上、および、曲げ応力によって引き起こされる機械的疲労からの保護の向上も提供する。
【0033】
曲げ剛性プロファイルの平滑化
[0041]
図7Aおよび
図7Bは、微細加工シャフトが1つのポリマーから別のポリマーへの移行による外側部材の剛性のステップ変化を補償するように構成され得ることを示す。
図7Aは、カテーテル102のうち、第1のポリマー材料116aが第2のポリマー材料116bと合流する部分を示す。
図7Bに示すように、これは、外側部材のポリマー層の曲げ剛性の急激なステップ変化に関連付けられる。曲げ剛性のそのような急激な変化は望ましくなく、その理由は、そのような急激な変化が、機械的応力を集中させ、キンク点を生じさせ、デバイスの滑らかな移動および曲げを途絶させ、蛇行した血管系におけるナビゲーションを複雑にする可能性があるためである。
【0034】
[0042]このステップ変化を補償するために、シャフトは、曲げ剛性が、全く変わるとともにポリマー外側部材の曲げ剛性の急激な変化を補償するように構成される。その結果、カテーテルの曲げ剛性全体が、第1のポリマー116aから第2のポリマー116bへの移行にわたって比較的滑らかなままとなる。曲げ剛性の急激なステップ変化を最小限にするとともに滑らかにするために他のポリマー移行ゾーンにおいて同様の構成が用いられ得る。シャフト112は、様々なやり方でステップ変化を補償するように構成することができる。
図7Aの例において、第2のポリマー116bの曲げ剛性が第1のポリマー116aよりも高いため、シャフト112のカット/隙間の構成は、一定のままであるか、または、移行にわたって短距離間狭められてから再び広がって、さらに近位に移動する間にシャフト曲げ剛性を概ね増加させる。曲げ剛性プロファイル全体を滑らかにする結果を達成するために、本明細書において説明されるようなシャフト112の曲げ剛性を調整する(例えば、桁の本数および/またはカット深さを調整する)他の手段が追加的または代替的に使用されてもよい。
【0035】
[0043]ポリマー外側部材115の急激な曲げ剛性変化を補償するようにシャフト112を構成することは有益には、そのような移行を滑らかにするための他の従来手法の複雑化を回避する。従来手法は、複雑なスプライス接続配置またはポリマー共押出および混合技術に依拠する。これらは、余計な複雑化の層を製造プロセスに加え、依然として移行の急激性をわずかしか解決しないであろう。他の手法は、ポリマータイプ間の移行を補償するためにポリマーチュービングの種々の直径および直径勾配を利用する。しかしながら、これらの手法は、不均一な外径をもたらすことになるか、または、さらにより多くの材料を重ねることによってこの不均一な外径をなんとか対処しようとするための要件を加えることになる。
【0036】
[0044]本明細書において説明される平滑化特徴は、従来のマイクロカテーテルに比べて改善された曲げ剛性プロファイルを有するマイクロカーテルの製造を可能にする。
図8Aおよび
図8Bは、本開示に従って作製されたカテーテル(「Plato17」と付されている)の曲げ剛性プロファイルをいくつかの従来のマイクロカテーテルの曲げ剛性プロファイルと比較した試験結果を示す。図中、「SL10」は、Excelsior SL-10(Stryker Neurovascular社により販売)を指し、「XT17」は、Excelsior XT-17(Stryker Neurovascular社により販売)を指し、「Ech14」は、Echelon14(Medtronic社により販売)を指し、「Ech10」は、Echelon10(Medtronic社により販売)を指し、「HW17」は、Headway17(Micro Vention Terumo社により販売)を指す。
図8Aは、デバイスの遠位50から60cmについての曲げ剛性プロファイルを示す。
図8Bは、デバイスの遠位15cmについての曲げ剛性プロファイルのより近い図を提示する。図中、Plato17のデータは、5回の反復回数分の平均を表し、SL10のデータは、3回の反復回数分の平均を表し、XT17のデータは、2回の反復回数分の平均を表し、Ech14のデータは、2回の反復回数分の平均を表し、Ech10のデータは、3回の反復回数分の平均を表し、HW17のデータは、2回の反復回数分の平均を表す。図示のように、本開示に対応するカテーテルは、曲げ剛性の急激な変化がより少ない滑らかなプロファイルをもたらす。
【0037】
[0045]表1は、種々の遠位側セクションサイズを列挙するとともにそのセクション内において最も高く測定された「勾配」を提示することによって、
図8Aおよび
図8Bのデータを示す。「勾配」は、測定されたデータ点間の距離(cm)に対する曲げ剛性(N・m
2)の変化を表す。
図8Aおよび
図8Bにおけるデータ点から明らかなように、0.5cmから2.5cmの増分で測定が行われ、通常、1cmごとに、はっきりとしたポリマー移行が明らかである領域でより小さい増分があり、遠位端から約15から20cmに到達すると、より大きい増分がある。したがって、勾配は、カテーテルの所与のセクションにわたる曲げ剛性変化の急激性の表示を提示する。
【0038】
【0039】
[0046]図示のように、Plato17は、遠位15cmセクションにわたる、遠位35cmセクションにわたる、および遠位50cmセクションにわたる最も低く測定された勾配を有する。
図8Aおよび
図8Bのデータに基づき、表1にさらに開示されるように、いくつかの実施形態では、本明細書において説明されるようなカテーテルデバイスは、遠位15cmセクションについて約6.0×10
-7以下、遠位35cmセクションについて約9.0×10
-7以下、および/または遠位50cmセクションについて約9.0×10
-7以下の曲げ剛性勾配((N・m
2)/cm)を有する。本開示に従って構成されたPlato17デバイスが上記の特徴のそれぞれを達成したのに対し、試験された他の従来のカテーテルデバイスのいずれもそのように達成することができなかった。
【0040】
[0047]いくつかの実施形態では、カテーテルデバイスの遠位35cmの少なくとも一部は、5×10
-6N・m
2以上の曲げ剛性を有する。いくつかの実施形態では、上記の剛性最小に加え、本明細書において説明されるカテーテルデバイスは、遠位35cmセクションについて約4.0×10
-6以下、および/または遠位50cmセクションについて約4.5×10
-6以下の曲げ剛性勾配((N・m
2)/cm)を有する。
図8Aおよび
図8Bならびに表1に示すように、Plato17デバイスがこれらの要件を満たすのに対し、Headway-17カテーテルは、最小曲げ剛性要件を満たさず、試験された他のカテーテルのいずれも勾配要件を満たさない。
【0041】
[0048]
図9は、本開示によるPlato17デバイスの遠位長さに沿った外径を様々な従来のカテーテルデバイスと比較している。より高いデータ点は、ポリマー移行が目に見えて明らかである点を表す。
図9からのデータは表2にも表されており、表2は、カテーテルデバイスのそれぞれの遠位15cmセクションおよび遠位35cmセクション内における最大直径変化を示す。図示のように、Plato17の直径は、遠位15cmセクションにわたって、および遠位35cmセクションにわたって、0.0432mm(0.0017インチ)以下だけ変化する。
【0042】
【0043】
[0049]いくつかの実施形態では、本明細書において説明されるようなカテーテルデバイスは、(1)カテーテルデバイスの遠位35cmの少なくとも一部において、5×10-6N・m2以上の曲げ剛性、(2)遠位15cmおよび/または遠位35cmセクションにわたって0.051mm(0.002インチ)以下の外径の変化、および(3)遠位15cmセクションについて約1.3×10-6以下、遠位35cmについて約4.2×10-6以下、および/または遠位50cmセクションについて約1.1×10-5以下の曲げ剛性勾配((N・m2)/cm)を有する。本開示に従って構成されたPlato17デバイスが上記の特徴のそれぞれを達成したのに対し、試験された他の従来のカテーテルデバイスのいずれもそのように達成することができなかった。すなわち、Headway-17カテーテルは、最小曲げ剛性要件を満たさず、Echelon-10は、直径変化要件を満たさず、試験された他のカテーテルのいずれも勾配要件を満たさない。
【0044】
[0050]いくつかの実施形態では、上述した有益な曲げ剛性プロファイル特徴は、外側部材の第1のポリマーが外側部材の第2のポリマーに移行する移行セクションに特に当てはまる。
【0045】
[0051]いくつかの実施形態では、シャフト112は、その長さに沿ってほぼ同じ肉厚を維持する。コイルおよび/またはブレイドに基づいた他のカテーテルデバイスはほとんどの場合、調整された肉厚を移行点において有するであろう。肉厚の変化は、さらなるキンクもしくは応力点をもたらす可能性があり、かつ/または、対処するためにさらなる製造ステップを必要とする可能性がある。
【0046】
[0052]いくつかの実施形態では、シャフト112がコイル114に移行し、および/またはコイル114がライナ110の最遠位側セクションに移行することから、遠位先端部領域に関連付けられた許容可能な曲げ剛性変化が存在し得る。これらの剛性変化は、遠位端103のそのような近くにあるために許容可能であり得る。したがって、いくつかの実施形態では、上記の曲げ剛性変化の制約から最遠位3から5cmが想定され得る。
【0047】
耐疲労性
[0053]本明細書において説明されるカテーテルデバイスはまた、有益には、効果的な耐疲労性をもたらす。例えば、ASTM E2948に基づいた曲げおよび捩れ疲労試験方法において、本明細書において説明されるようなカテーテルデバイスは、故障するまで20回超のサイクルを達成することが可能である。曲げおよび捩れ疲労試験方法は、より詳細に文書TM-00127に記載されており、この文書は添付書1として本明細書に添付されている。要するに、試験は、細線の周りでの固体の回転曲げ疲労を測定する標準的な試験方法であるASTM E2948から適合される。
【0048】
[0054]開示されるカテーテルデバイスの効果的な耐疲労性は、デバイスのシャフト部分の全長に沿って、または、デバイスの1つもしくは複数のサブセクションに沿って(例えば、約3から35cm、または約3から20cm、または約3から10cmの長さを有する1つまたは複数のセクションに沿って)存在し得る。効果的な耐疲労性は、以下のパラメータ、すなわち、(1)シャフト112の対応する外径の約30%以下にリング幅を維持すること、および/または(2)シャフト112の外径の約11%以上にカット深さを維持すること、のうちの1つまたは複数によってもたらされる。
【0049】
さらなる用語および定義
[0055]特定の構成、パラメータ、構成要素、要素などに関して、本開示の特定の実施形態を詳細に説明してきたが、これらの説明は例示的であり、特許請求される本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0050】
[0056]本明細書において使用される場合、「微細加工」という用語は、本明細書において開示されるような内側シャフトにおいて隙間を形成することが可能な任意の作製プロセスを含む、本明細書において開示される特徴のうちの1つまたは複数を有するカテーテルデバイスを形成するようにストック材料を取り扱うことが可能な任意の作製プロセスを指す。例として、レーザカットおよびブレードカットが挙げられるがこれらに限定されない。
【0051】
[0057]説明される実施形態の構成要素の任意の所与の要素について、その要素または構成要素について挙げた可能な代替例は概して、別段に暗示的または明示的に述べられていない限り、個別にまたは互いに組み合わせて用いられてもよい。
【0052】
[0058]別段に示されていない限り、本明細書および特許請求の範囲において用いられた、量、成分、距離、または他の測定値を表す数は、「約」という用語またはその同義語によって任意選択的に修正されたものと理解されたい。「約」、「ほぼ」、「実質的に」などの用語が、述べた量、値、または条件に関して使用されている場合、述べた量、値、または条件の20%未満、10%未満、5%未満、1%未満、0.1%未満、または0.01%未満だけ逸脱した量、値または条件を意味するとみなされてもよい。少なくとも、特許請求の範囲の均等物の原則の適用を制限する試みとしてではなく、各数値パラメータは、報告された有効数字の数の観点で、また、通常の丸め技術を適用することによって解釈されるべきである。
【0053】
[0059]本明細書において使用されるいずれもの見出しおよび小見出しは、構成的な目的のためだけであり、本明細書の範囲または特許請求の範囲を限定するために使用されることを意図していない。
【0054】
[0060]本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈がそうでないと明らかに指示していない限り、複数の指示対象を排除しないことも留意されたい。したがって、例えば、単数の指示対象(例えば、「ウィジェット」)に言及する実施形態は、2つ以上のそのような指示対象も含んでもよい。
【0055】
[0061]本明細書において説明される実施形態は、本明細書において説明される他の実施形態において説明される特性、特徴(例えば、成分、構成要素、部材、要素、部品、および/または部分)を含んでもよいことも理解されたい。したがって、所与の実施形態の様々な特徴は、本開示の他の実施形態と組み合わせるかつ/またはそれに組み込むことができる。したがって、本開示の特定の実施形態に関する或る特定の特徴の開示は、特定の実施形態への前記特徴の適用または包含を限定するものと解釈されるべきではない。むしろ、他の実施形態もそのような特徴を含むことができることを理解されたい。
【国際調査報告】