(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-23
(54)【発明の名称】組織をフラクショナルアブレーション処置するための装置および方法
(51)【国際特許分類】
A61N 5/067 20060101AFI20240816BHJP
A61B 18/22 20060101ALN20240816BHJP
【FI】
A61N5/067
A61B18/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024514045
(86)(22)【出願日】2022-09-02
(85)【翻訳文提出日】2024-04-30
(86)【国際出願番号】 US2022042478
(87)【国際公開番号】W WO2023034579
(87)【国際公開日】2023-03-09
(32)【優先日】2021-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501012517
【氏名又は名称】アイピージー フォトニクス コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ディリップ・パイタンカー
(72)【発明者】
【氏名】イリヤ・ヤロスラフスキー
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー・アルトゥシュラー
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレリヤ・アルヒポワ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレンティン・ティルティシュニー
(72)【発明者】
【氏名】ダニイル・ミャスニコーフ
(72)【発明者】
【氏名】イゴール・ラリオノフ
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー・グリャシュコ
(72)【発明者】
【氏名】ミハイル・ノソフ
【テーマコード(参考)】
4C026
4C082
【Fターム(参考)】
4C026AA02
4C026BB08
4C026FF03
4C026FF17
4C026FF22
4C026HH02
4C026HH05
4C026HH13
4C026HH15
4C082RA01
4C082RC09
4C082RE17
4C082RJ03
4C082RL02
4C082RL13
4C082RL15
(57)【要約】
生体組織の処置を実施するためのデバイス。このデバイスは、3.0ミクロン(μm)~3.25μmの包括的範囲内の波長と、10μm~45μmの包括的範囲内のスポットサイズとを有するレーザビームを供給するように構成されたレーザシステムと、レーザシステムに結合され、生体組織にわたりレーザビームをある損傷パターンでスキャニングするように構成されたコントローラであって、損傷パターンは、0.1mm~1mmの包括的範囲内になるようにサイズ設定されたピッチを有する、コントローラとを備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体組織の処置を実施するためのデバイスであって、
3.0ミクロン(μm)~3.25μmの包括的範囲内の波長と、10μm~45μmの包括的範囲内のスポットサイズとを有するレーザビームを供給するように構成されたレーザシステムと、
前記レーザシステムに結合され、前記生体組織にわたり前記レーザビームをある損傷パターンでスキャニングするように構成されたコントローラであって、前記損傷パターンは、0.1mm~1mmの包括的範囲内になるようにサイズ設定されたピッチを有する、コントローラと
を備える、デバイス。
【請求項2】
前記スポットサイズは、30μm~45μmの包括的範囲内である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記レーザシステムは、パルスあたりの放射曝露(RE)が30J/cm
2~6000J/cm
2の包括的範囲内になるようにパルス放射を発生するように構成される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
パルスあたりの前記REは、100J/cm
2~4000J/cm
2の包括的範囲内である、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記損傷パターンは、スポットのアレイまたはラインのアレイである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記損傷パターンは、100スポット/cm
2~10000スポット/cm
2の包括的範囲内の数密度を有する生体組織の表面上のスポットのアレイである、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記レーザシステムは、パルス放射を発生するように構成され、前記損傷パターンは、アブレーションカラムを含み、前記アブレーションカラムは、生体組織の平方センチメートルあたりのカラム数として定義されるカラム密度を有し、
前記カラム密度は、25、50、100、200、250、300、350、450、550、650、750、900、1000、1500、2000、および3000μmのそれぞれのアブレーション深度に対して、10000、7500、6500、5000、4000、3500、3000、2500、1800、1700、1600、1500、1400、1300、1000、および500の最大値を有する、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記レーザシステムは、パルス放射を発生するように構成され、前記損傷パターンは、アブレーションカラムを含み、前記アブレーションカラムは、生体組織の平方センチメートルあたりのカラム数として定義されるカラム密度を有し、
前記カラム密度は、25、50、100、200、250、300、350、450、550、650、750、900、1000、1500、2000、および3000μmのそれぞれのアブレーション深度に対して、1300、1200、1100、1000、1000、1000、1000、1000、1000、1000、900、800、700、600、500、および300の最小値を有する、請求項6に記載のデバイス。
【請求項9】
前記カラム密度は、隣接し合うカラム密度およびアブレーション深度の数値間の内挿を行うことにより得られる、前記カラム密度および前記アブレーション深度に関する中間値を有する、請求項7または8に記載のデバイス。
【請求項10】
前記レーザシステムは、パルス放射を発生するように構成され、前記損傷パターンは、スポットのアレイであり、前記コントローラは、パルスあたりの放射曝露(RE)が前記アレイの1つまたは複数のエッジ付近に位置するスポットにおいて低下するように、前記レーザビームをスキャニングするようにさらに構成される、請求項5に記載のデバイス。
【請求項11】
前記損傷パターンは、スポットのアレイであり、前記コントローラは、スポットの数密度が前記アレイの1つまたは複数のエッジ付近においてより低くなるように、前記レーザビームをスキャニングするようにさらに構成される、請求項5に記載のデバイス。
【請求項12】
前記スポットのアレイ内の各スポットおよび前記ラインのアレイ内の各ラインが、25μm~3000μmの包括的範囲内のアブレーション深度を有する、請求項5に記載のデバイス。
【請求項13】
前記レーザシステムは、各パルスが0.1W~50Wの包括的範囲内のピーク出力を有するように、パルス放射を発生するように構成される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項14】
前記レーザビームは、疑似ガウスプロファイル、フラットトッププロファイル、またはベッセル-ガウスプロファイルである強度プロファイルを有するスポットで前記生体組織の表面に入射する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項15】
前記コントローラは、前記レーザシステムの少なくとも1つのレーザパラメータを制御または変調するようにさらに構成される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項16】
前記レーザシステムのレーザ光源が、パルスモードで動作するように構成され、前記少なくとも1つのレーザパラメータは、
1マイクロ秒(μs)~250ミリ秒(ms)の包括的範囲内のパルス期間と、
5%~90%の包括的範囲内のデューティサイクルと
を含む、請求項15に記載のデバイス。
【請求項17】
前記レーザビームは、1.0~1.5の包括的範囲内のM
2値を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項18】
前記レーザビームは、1.0~1.3の包括的範囲内のM
2値を有する、請求項17に記載のデバイス。
【請求項19】
前記レーザシステムは、
少なくとも1つのレーザ光源を備えるレーザモジュールと、
ハンドピース内に位置する差周波発生器と、
前記ハンドピース内に位置し、前記スポットサイズへ前記レーザビームを合焦するように構成された光学合焦システムと、
前記レーザモジュールおよび前記差周波発生器に結合された光ファイバと
を備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項20】
前記差周波発生器は、光パラメトリック発振器(OPO)である、請求項19に記載のデバイス。
【請求項21】
前記OPOから発生したレーザ放射のレーザビームは、前記生体組織の処置領域に送られ、前記レーザビームは、組織のアブレーションおよび凝固を実施するように構成される、請求項20に記載のデバイス。
【請求項22】
前記OPOから発せられるレーザ放射の少なくとも一部分が、前記レーザモジュールに送り戻される、請求項21に記載のデバイス。
【請求項23】
前記ハンドピース内に位置するスキャナをさらに備える、請求項19に記載のデバイス。
【請求項24】
前記レーザモジュールは、2つのダイオードポンプファイバレーザ光源を備える、請求項19に記載のデバイス。
【請求項25】
シングルモード(SM)ファイバが、前記2つのダイオードポンプファイバレーザ光源のそれぞれから発せられるレーザ放射をマルチプレクサに送達し、前記マルチプレクサにおいて、前記レーザ放射は、結合され、前記光ファイバにより前記差周波発生器へ送達される、請求項24に記載のデバイス。
【請求項26】
前記2つのダイオードポンプファイバレーザ光源のそれぞれから発せられるレーザ放射は、混合され、前記光ファイバにより前記差周波発生器へ送達される、請求項24に記載のデバイス。
【請求項27】
生体組織に対してアブレーションレーザ処置を実施する方法であって、
3.0ミクロン(μm)~3.25μmの包括的範囲内の波長と、10μm~45μmの包括的範囲内のスポットサイズとを有するレーザビームを発生するステップと、
前記レーザビームで前記生体組織上にある損傷パターンを生成するステップと
を含む、方法。
【請求項28】
前記スポットサイズは、30~45ミクロンの包括的範囲内である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記損傷パターンは、アブレーションカラムを含み、前記レーザビームは、パルスレーザ放射を送達し、前記アブレーションカラムは、生体組織の平方センチメートルあたりのカラム数として定義されるカラム密度を有し、
前記カラム密度は、25、50、100、200、250、300、350、450、550、650、750、900、1000、1500、2000、および3000μmのそれぞれのアブレーション深度に対して、10000、7500、6500、5000、4000、3500、3000、2500、1800、1700、1600、1500、1400、1300、1000、および500の最大値を有する、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記損傷パターンは、アブレーションカラムを含み、前記レーザビームは、パルスレーザ放射を送達し、前記アブレーションカラムは、生体組織の平方センチメートルあたりのカラム数として定義されるカラム密度を有し、
前記カラム密度は、25、50、100、200、250、300、350、450、550、650、750、900、1000、1500、2000、および3000μmのそれぞれのアブレーション深度に対して、1300、1200、1100、1000、1000、1000、1000、1000、1000、1000、900、800、700、600、500、および300の最小値を有する、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
隣接し合うカラム密度およびアブレーション深度の数値間の内挿を行うことにより得られる、前記カラム密度および前記アブレーション深度に関する中間値をさらに含む、請求項29または30に記載の方法。
【請求項32】
生体組織の処置を実施するためのレーザ放射を供給するように構成されたレーザシステムであって、
少なくとも1つのレーザ光源を備えるレーザモジュールと、
前記少なくとも1つのレーザ光源により発生されたレーザ放射のレーザビームをあるスポットサイズに合焦するように構成された光学合焦システムと、
前記生体組織に対して前記レーザビームをある損傷パターンで送るように構成されたハンドピースと、
ハンドピース内に位置する差周波発生器と、
前記レーザモジュールおよび前記差周波発生器に結合された光ファイバと
を備える、レーザシステム。
【請求項33】
前記差周波発生器は、光パラメトリック発振器(OPO)である、請求項32に記載のレーザシステム。
【請求項34】
前記OPOから発せられるレーザ放射の少なくとも一部分が、前記レーザモジュールに送り戻される、請求項33に記載のレーザシステム。
【請求項35】
前記レーザモジュールは、2つのダイオードポンプファイバレーザ光源を備える、請求項32に記載のレーザシステム。
【請求項36】
2つのファイバレーザの中の第1のものが、1.00~1.05μmの範囲内の波長を有するレーザ放射を発生するように構成され、2つのファイバレーザの中の第2のものが、1.5~1.6μmの範囲内の波長を有するレーザ放射を発生するように構成される、請求項35に記載のレーザシステム。
【請求項37】
ビームスポットは、10μm~45μmの包括的範囲内のスポットサイズを有する、請求項36に記載のレーザシステム。
【請求項38】
前記2つのファイバレーザにより発生されるレーザ放射のビームが、1.0~1.5の包括的範囲内のM
2値を有する、請求項36に記載のレーザシステム。
【請求項39】
前記ハンドピース内に位置するスキャナをさらに備え、前記スキャナは、前記生体組織上に前記損傷パターンを生成するように構成される、請求項32に記載のレーザシステム。
【請求項40】
前記光学合焦システムは、前記ハンドピース内に位置する、請求項32に記載のレーザシステム。
【請求項41】
生体組織の処置を実施するためのレーザ放射を供給するように構成されたレーザシステムであって、
3.0ミクロン(μm)~3.25μmの包括的範囲内の波長と、1.0~1.5の包括的範囲内のM
2値とを有するレーザ放射のビームと、
前記生体組織に対して前記レーザ放射のビームをある損傷パターンで送るように構成されたハンドピースと、
レーザ光源により発生されるレーザ放射を前記ハンドピースに送出するように構成された光ファイバと
を備える、レーザシステム。
【請求項42】
前記レーザ放射のビームは、10μm~45μmの包括的範囲内のスポットサイズを有する、請求項41に記載のレーザシステム。
【請求項43】
前記光ファイバは、10μm~90μmの包括的範囲内のコア径を有する、請求項41に記載のレーザシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、いずれも「APPARATUS AND METHOD FOR FRACTIONAL ABLATIVE TREATMENT OF TISSUE」と題する2021年9月2日に出願された米国仮特許出願第63/240,119号および2021年9月13日に出願された米国仮特許出願第63/243,489号に基づく優先権を主張する。これらの仮特許出願の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
当技術分野は、一般的にはレーザエネルギーを利用した生体組織のフラクショナルアブレーション処置に関する。
【背景技術】
【0003】
配向されるレーザエネルギーを利用した完全アブレーション生体組織処置法は、皺または皮膚の弛みの改善をもたらすスキンリサーフェシングなどの治療において非常に高い効果を有するが、見栄えを損なう長期にわたる著しい副作用をもたらす可能性がある。これに対して、フラクショナルレーザアブレーション処置が展開されてきた。かかる処置の最中には、損傷を被っていない皮膚領域により隔てられた損傷カラムが形成される。かようなカラムは、スキャナ、マイクロレンズ、または回折光学素子を用いて形成され得る。これは、きめ、小皺、皺、瘢痕、および異常色素沈着などの皮膚特徴の改善をもたらす。これによる大きな利点は、治癒の早期化および完全未満のアブレーションにより、完全アブレーション処置の場合と比較してダウンタイムが大幅に短縮され、副作用の重さが軽減され比較的短期的なものになる点である。
【0004】
しかし、従来のフラクショナルアブレーション処置は、完全アブレーション処置よりも有効性が低い。その主な理由は、皮膚の大部分が未処置となる点である。換言すれば、「制御損傷」を有する皮膚面積が少ない。さらに、従来のフラクショナルアブレーション処置の場合のソーシャルダウンタイムは、約3~15日であり、理想的には例えば1~3日などに短縮する必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Ashforth、Oosterbeek、およびSimpson、「Ultrafast pulsed Bessel beams for enhanced laser ablation of bone tissue for applications in LASSOS」、Proc. SPIE 10094、Frontiers in Ultrafast Optics: Biomedical, Scientific, and Industrial Applications XVII、100941O (22 February 2017); https://doi.org/10.1117/12.2250068
【非特許文献2】Fitzpatrickら、Pulsed carbon dioxide laser resurfacing of photo-aged facial skin, Arch Dermatol.、395-402頁、1996年
【非特許文献3】Ramsdell、2012年、Fractional Carbon Dioxide Laser Resurfacing, Semin Past Surg、vol 26、125-130頁、https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3580980/
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
態様および実施形態は、生体組織を処置するための方法およびデバイスに関するものである。
【0007】
例示的な一実施形態によれば、生体組織の処置を実施するためのデバイスが提供される。このデバイスは、3.0ミクロン(μm)~3.25μmの包括的範囲内の波長と、10μm~45μmの包括的範囲内のスポットサイズとを有するレーザビームを供給するように構成されたレーザシステムと、このレーザシステムに結合され、生体組織にわたりレーザビームをある損傷パターンでスキャニングするように構成されたコントローラであって、損傷パターンが0.1mm~1mmの包括的範囲内になるようにサイズ設定されたピッチを有する、コントローラとを備える。
【0008】
一例では、スポットサイズは、30μm~45μmの包括的範囲内である。
【0009】
一例では、レーザシステムは、パルスあたりの放射曝露(RE)が30J/cm2~6000J/cm2の包括的範囲内になるようにパルス放射を発生するように構成される。他の例では、パルスあたりのREは、100J/cm2~4000J/cm2の包括的範囲内である。
【0010】
一例では、損傷パターンは、スポットのアレイまたはラインのアレイである。
【0011】
一例では、損傷パターンは、100スポット/cm2~10000スポット/cm2の包括的範囲内の数密度を有する生体組織の表面上のスポットのアレイである。
【0012】
一例では、レーザシステムは、パルス放射を発生するように構成され、損傷パターンは、アブレーションカラムを含み、アブレーションカラムは、生体組織の平方センチメートルあたりのカラム数として定義されるカラム密度を有し、このカラム密度は、25、50、100、200、250、300、350、450、550、650、750、900、1000、1500、2000、および3000μmのそれぞれのアブレーション深度に対して、10000、7500、6500、5000、4000、3500、3000、2500、1800、1700、1600、1500、1400、1300、1000、および500の最大値を有する。
【0013】
一例では、レーザシステムは、パルス放射を発生するように構成され、損傷パターンは、アブレーションカラムを含み、アブレーションカラムは、生体組織の平方センチメートルあたりのカラム数として定義されるカラム密度を有し、このカラム密度は、25、50、100、200、250、300、350、450、550、650、750、900、1000、1500、2000、および3000μmのそれぞれのアブレーション深度に対して、1300、1200、1100、1000、1000、1000、1000、1000、1000、1000、900、800、700、600、500、および300の最小値を有する。
【0014】
他の一例では、カラム密度は、隣接し合うカラム密度およびアブレーション深度の数値間の内挿を行うことにより得られる、カラム密度およびアブレーション深度に関する中間値を有する。
【0015】
一例では、レーザシステムは、パルス放射を発生するように構成され、損傷パターンは、スポットのアレイであり、コントローラは、パルスあたりの放射曝露(RE)がアレイの1つまたは複数のエッジ付近に位置するスポットにおいて低下するように、レーザビームをスキャニングするようにさらに構成される。
【0016】
一例では、損傷パターンは、スポットのアレイであり、コントローラは、スポットの数密度がアレイの1つまたは複数のエッジ付近においてより低くなるように、レーザビームをスキャニングするようにさらに構成される。
【0017】
一例では、スポットのアレイ内の各スポットおよびラインのアレイ内の各ラインが、25μm~3000μmの包括的範囲内のアブレーション深度を有する。
【0018】
一例では、レーザシステムは、各パルスが0.1W~50Wの包括的範囲内のピーク出力を有するように、パルス放射を発生するように構成される。
【0019】
一例では、レーザビームは、疑似ガウスプロファイル、フラットトッププロファイル、またはベッセル-ガウスプロファイルである強度プロファイルを有するスポットで生体組織の表面に入射する。
【0020】
一例では、コントローラは、レーザシステムの少なくとも1つのレーザパラメータを制御または変調するようにさらに構成される。一例では、レーザシステムのレーザ光源が、パルスモードで動作するように構成され、少なくとも1つのレーザパラメータは、1マイクロ秒(μs)~250ミリ秒(ms)の包括的範囲内のパルス期間と、5%~90%の包括的範囲内のデューティサイクルとを備える。
【0021】
一例では、レーザビームは、1.0~1.5の包括的範囲内のM2値を有する。他の一例では、レーザビームは、1.0~1.3の包括的範囲内のM2値を有する。
【0022】
一例では、レーザシステムは、少なくとも1つのレーザ光源を備えるレーザモジュールと、ハンドピース内に位置する差周波発生器と、ハンドピース内に位置し、スポットサイズへレーザビームを合焦するように構成された光学合焦システムと、レーザモジュールおよび差周波発生器に結合された光ファイバとを備える。
【0023】
一例では、差周波発生器は、光パラメトリック発振器(OPO)である。
【0024】
一例では、OPOから発生したレーザ放射のレーザビームは、生体組織の処置領域に送られ、レーザビームは、組織のアブレーションおよび凝固を実施するように構成される。
【0025】
一例では、OPOから発せられるレーザ放射の少なくとも一部分が、レーザモジュールに送り戻される。
【0026】
一例では、このデバイスは、ハンドピース内に位置するスキャナをさらに備える。
【0027】
一例では、レーザモジュールは、2つのダイオードポンプファイバレーザ光源を備える。他の一例では、シングルモード(SM)ファイバが、2つのダイオードポンプファイバレーザ光源のそれぞれから発せられるレーザ放射をマルチプレクサに送達し、このマルチプレクサにおいて、レーザ放射は、結合され、光ファイバにより差周波発生器へ送達される。一例では、2つのダイオードポンプファイバレーザ光源のそれぞれから発せられるレーザ放射は、混合され、光ファイバにより差周波発生器へ送達される。
【0028】
別の例示的な実施形態によれば、生体組織に対してアブレーションレーザ処置を実施する方法が提供される。この方法は、3.0ミクロン(μm)~3.25μmの包括的範囲内の波長と、10μm~45μmの包括的範囲内のスポットサイズとを有するレーザビームを発生するステップと、このレーザビームで生体組織上にある損傷パターンを生成するステップとを含む。
【0029】
一例では、スポットサイズは、30~45ミクロンの包括的範囲内である。
【0030】
一例では、損傷パターンは、アブレーションカラムを含み、レーザビームは、パルスレーザ放射を送達し、アブレーションカラムは、生体組織の平方センチメートルあたりのカラム数として定義されるカラム密度を有し、このカラム密度は、25、50、100、200、250、300、350、450、550、650、750、900、1000、1500、2000、および3000μmのそれぞれのアブレーション深度に対して、10000、7500、6500、5000、4000、3500、3000、2500、1800、1700、1600、1500、1400、1300、1000、および500の最大値を有する。
【0031】
一例では、損傷パターンは、アブレーションカラムを含み、レーザビームは、パルスレーザ放射を送達し、アブレーションカラムは、生体組織の平方センチメートルあたりのカラム数として定義されるカラム密度を有し、このカラム密度は、25、50、100、200、250、300、350、450、550、650、750、900、1000、1500、2000、および3000μmのそれぞれのアブレーション深度に対して、1300、1200、1100、1000、1000、1000、1000、1000、1000、1000、900、800、700、600、500、および300の最小値を有する。
【0032】
別の例では、この方法は、隣接し合うカラム密度およびアブレーション深度の数値間の内挿を行うことにより得られる、カラム密度およびアブレーション深度に関する中間値をさらに備える。
【0033】
別の例示的な実施形態によれば、生体組織の処置を実施するためのレーザ放射を供給するように構成されたレーザシステムが提供される。このレーザシステムは、少なくとも1つのレーザ光源を備えるレーザモジュールと、少なくとも1つのレーザ光源により発生されたレーザ放射のレーザビームをあるスポットサイズに合焦するように構成された光学合焦システムと、生体組織に対してレーザビームをある損傷パターンで送るように構成されたハンドピースと、ハンドピース内に位置する差周波発生器と、レーザモジュールおよび差周波発生器に結合された光ファイバとを備える。
【0034】
一例では、差周波発生器は、光パラメトリック発振器(OPO)である。一例では、OPOから発せられるレーザ放射の少なくとも一部分が、レーザモジュールに送り戻される。一例では、レーザモジュールは、2つのダイオードポンプファイバレーザ光源を備える。一例では、2つのファイバレーザの中の第1のものが、1.00~1.05μmの範囲内の波長を有するレーザ放射を発生するように構成され、2つのファイバレーザの中の第2のものが、1.5~1.6μmの範囲内の波長を有するレーザ放射を発生するように構成される。一例では、ビームスポットは、10μm~45μmの包括的範囲内のスポットサイズを有する。一例では、2つのファイバレーザにより発生されるレーザ放射のレーザビームが、1.0~1.5の包括的範囲内のM2値を有する。一例では、このレーザシステムは、ハンドピース内に位置するスキャナをさらに備え、スキャナは、生体組織上に損傷パターンを生成するように構成される。一例では、光学合焦システムは、ハンドピース内に位置する。
【0035】
別の例示的な実施形態によれば、生体組織の処置を実施するためのレーザ放射を供給するように構成されたレーザシステムが提供される。このレーザシステムは、3.0ミクロン(μm)~3.25μmの包括的範囲内の波長と、1.0~1.5の包括的範囲内のM2値とを有するレーザ放射のビームと、生体組織に対してレーザ放射のビームをある損傷パターンで送るように構成されたハンドピースと、レーザ光源により発生されるレーザ放射をハンドピースに送出するように構成された光ファイバとを備える。一例では、レーザ放射のビームは、10μm~45μmの包括的範囲内のスポットサイズを有する。一例では、光ファイバは、10μm~90μmの包括的範囲内のコア径を有する。
【0036】
以降では、これらの例示の態様および実施形態のさらに他の態様、実施形態、および利点をさらに詳細に論じる。さらに、前述の情報および後述の詳細な説明はいずれも、様々な態様および実施形態の単なる例にすぎず、特許請求される態様および実施形態の特性および特徴を理解するための概観またはフレームワークを提示することを意図されたものである点を理解されたい。本明細書において開示される実施形態は、他の実施形態と組み合わされてもよく、「一実施形態(an embodiment)」、「一例」、「いくつかの実施形態」、「いくつかの例」、「他の一実施形態」、「様々な実施形態」、「一実施形態(one embodiment)」、「少なくとも1つの実施形態」、「この実施形態および他の実施形態」、または「いくつかの実施形態」等の語は、必ずしも相互に排他的であるとは限らず、記載されるある特定の特徴、構造、または特性が少なくとも1つの実施形態において含まれ得ることを示唆するように意図される。本明細書においてかかる語が使用される場合に、これらの語はいずれも、必ずしも同一の実施形態を指すとは限らない。
【0037】
以降では、添付の図面を参照として少なくとも1つの実施形態の様々な態様について論じる。これらの図面は、縮尺どおりに描くことを意図されていない。これらの図面は、様々な態様および実施形態の例示およびさらなる理解を提供することを意図され、本明細書に組み込まれ本明細書の一部を構成するが、いずれの実施形態の範囲を定義するようにも意図されない。これらの図面は、本明細書の以降の部分と共に、説明および特許請求される態様および実施形態の原理および動作を説明する役割を果たす。図面では、様々な図において示す同等またはほぼ同等の各構成要素が、同様の参照数字で示される。明瞭化のために、すべての図面においてすべての構成要素に符号を付さない場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】2.5~3.5ミクロンの波長範囲における水吸収率と、本発明の態様によるレーザシステムのための動作波長範囲の一例とを示すグラフである。
【
図2】本発明の態様によるマイクロフラクショナル損傷パターンの一例の概略図である。
【
図3A】本発明の態様によるマイクロフラクショナル損傷パターンの他の例の概略図である。
【
図3B】本発明の態様によるマイクロフラクショナル損傷パターンの他の例の概略図である。
【
図3C】本発明の態様によるマイクロフラクショナル損傷パターンの他の例の概略図である。
【
図4】本発明の態様による変動パルスエネルギーを用いたスポットのアレイの概略図である。
【
図5】本発明の態様による変動ピッチを用いたスポットのアレイの概略図である。
【
図6】本発明の態様によるスポット密度に対するスキャン次元を示したグラフである。
【
図7】本発明の態様によるパルスエネルギーに対するスキャン次元を示したグラフである。
【
図8】本発明の1つまたは複数の態様による最大数密度に対するアブレーション深度を示したグラフである。
【
図9】本発明の1つまたは複数の態様によるレーザシステムの一例の概略図である。
【
図10】本発明の1つまたは複数の態様によるハンドピースの2つの例の斜視外面図である。
【
図11】本発明の態様によるハンドピースの一例の概略図である。
【
図12A】本発明の態様による、実施された実験による処置領域および対照領域に関する計測されたTEWL値を示す棒グラフである。
【
図12B】本発明の態様による、実施された実験による処置領域および対照領域に関する計測されたTEWL値を示す棒グラフである。
【
図13】本発明の態様による放射曝露に対するアブレーション深度を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
概要
上述のように、従来のフラクショナルレーザアブレーション処置は、完全アブレーション処置よりも有効性が低いため、処置面積を増大させながらソーシャルダウンタイムを増大させないことによって有効性を向上させることを可能にする必要性が依然として存在している。少なくとも1つの実施形態によれば、これは、スポットサイズの縮小により実現される。スポットサイズは、生体組織の表面上におけるビームスポット(またはビームサイズ)を示す語である点を理解されたい。このスポットサイズは、アブレーションカラムの直径とほぼ同等であり、治癒時間およびソーシャルダウンタイムを規定する主要要素となる。従来のフラクショナルレーザ処置デバイスは、120ミクロン(μm)以上のスポットサイズを有する。少なくとも1つの実施形態によれば、約45μm未満のスポットサイズ、およびいくつかの例では約10~30μm未満のスポットサイズが、生体組織上において正常に使用される。本明細書においては、これらのサイズを「マイクロフラクショナル」なサイズと呼ぶ。小さいスポットサイズは、より早期の治癒をもたらし、副作用の重度および期間を大幅に軽減しつつ高い数密度(またはカバー率)を可能にすることにより、従来のフラクショナル処置よりも高い有効性をもたらす。
【0040】
少なくとも1つの実施形態によれば、損傷からの治癒速度は、異なるスポットサイズ間で比較した場合に、同一の「カバー率」(ここで「カバー率」は損傷面積/総面積として定義される)において(1/(スポットサイズ))に比例する。さらに、治癒速度は、処置後ダウンタイムに反比例する。したがって、スポットサイズがより小さく、ピッチがより低く、数密度がより高いことにより、ダウンタイムを短縮し、リスクを軽減し、重度を低下させ、有害副作用の期間を短縮しつつ、完全アブレーションにより一層近い有効性を得ることができる。一実施形態によれば、10μm~45μmの包括的範囲内のスポットサイズを有するレーザビームを提供するように構成されたレーザシステムが開示される。以降においてさらに詳細に論じるように、さらに、いくつかの実施形態では、レーザビームは3.0μm~3.25μmの包括的範囲内の波長を有する。これらのレーザエネルギー波長は、組織の加熱および再生プロセスを調整するためにアブレーションゾーンを囲む最適な凝固ゾーン幅で組織内水分を沸点温度まで加熱することにより、アブレーション閾値を上回る放射曝露による皮膚表面から開始される組織アブレーションを実現することが可能である。対照的に、皮膚組織を加熱する非アブレーションレーザ処置では、あまり吸収されない波長が用いられる。これらの波長は、水の沸点に達しないピーク温度を有し、原則的にアブレーションではなく凝固をもたらす。非アブレーションフラクショナル処置は、本明細書において説明される皮膚引締め処置および皺削減処置についてはあまり効果が高くないことが判明している。
【0041】
いくつかの実施形態によれば、皮膚に対するフラクショナルアブレーション処置は、皮膚(すなわち生体組織)に対して実質的に垂直方向となるカラム(アブレーションカラムとも呼ぶ)のアレイであり得る。いくつかの実施形態では、損傷は、ラインのアレイであることも可能である。これらのラインは、グルーブと呼ばれる場合もある。いくつかの実施形態では、ラインは、分割することが可能である(「破線」と呼ぶ)。いくつかの実施形態では、ラインは、筋肉の動きまたは皮膚内のコラーゲン連結組織中のランゲル裂線のいずれかにより結果としてある特定の方向を有する皺またはかような条件に対して、有効性を最大限に伸ばしダウンタイムを最小限に抑えるために一定方向パターンで施され得る。
【0042】
いくつかの実施形態によれば、アブレーション深度は、放射曝露(RE)において高い役割を有し、このことは、ヒトの皮膚の優良なモデルであるex vivoミニブタ皮膚に対して本出願人が実施した実験により実証されている。
【0043】
いくつかの実施形態によれば、最大密度(立方センチメートルあたりのカラム数)は、ヒトに対して実施される試験により、許容可能なa)疼痛およびb)副作用に基づき、ヒトの皮膚において判定される。様々な実施形態によれば、これらの結果は、所与の波長または波長範囲に対する特定の放射曝露に対応した様々なアブレーション深度ごとの密度の上限値または密度範囲(カバー率と同等)を提供する。
【0044】
本明細書において開示する方法およびシステムは、皮膚科学(皮膚)および婦人科学(膣上皮)に適用することが可能である。
【0045】
波長
皮膚科学および婦人科学においてアブレーションフラクショナルリサーフェシングまたは非フラクショナルリサーフェシングのために使用される従来のレーザは、CO2レーザ(10.6μmの波長を有する)およびEr:YAGレーザ(2.94μmの波長を有する)である。別の例は、皮膚科学におけるEr:YSGGレーザ(2.79μmの波長を有する)も備える(この波長の市販製品の一例はPearl Fractional(商標)、Cutera Inc.、Brisbane、CAである)。皮膚または膣組織などの組織において、水は、上記のレーザの主要発色団である。皮膚または膣組織中における含水率は、典型的には70%である。上記のレーザ波長に対する水吸収係数は、以下の通りである。
CO2(10.6μm波長):mua_水=800cm-1、mua_皮膚=mua_水の70%=560cm-1
Er:YAG、2.94μm、mua_水=12,800cm-1、mua_皮膚=mua_水の70%=8,960cm-1
Er:YSGG、2.79μm、mua_水=5,000cm-1、mua_皮膚=mua_水の70%=3,500cm-1
ここで、mua_水は、水吸収係数であり、mua_皮膚は、皮膚の吸収係数である。2.94μm波長の光は、水により非常に高く吸収される(約12,800cm-1の水吸収係数を有する)。この波長での放射は、吸収係数が高いことにより非常に浅い深度の範囲内で吸収され、結果として得られるアブレーション有効性は、アブレーションゾーン外に薄い凝固ゾーンを有しつつ非常に高くなる。10.6μm波長のCO2レーザでは(約800cm-1の水吸収係数を有する)、より厚い凝固ゾーンが得られ、処置は疼痛度のより高いものとなる。より厚い凝固ゾーンは、より長期間にわたり身体により吸収され、したがって治癒時間が長くなる。しかし、このより長い治癒時間の最中に、例えば瘢痕化などの副作用の可能性は上昇するものの、新しい皮膚により一層近い皮膚のより良好な再生がもたらされ、それによってより優れた美容的な成果が得られる。対照的に、2.94μm波長Er:YAGレーザの場合には、処置は疼痛度のより低いものとなり、皮膚はより迅速に治癒し、これによって瘢痕化リスクは低下するが美容的利点は低下する。
【0046】
本明細書において開示する1つまたは複数の実施形態は、疼痛のさらなる低下、瘢痕化リスクのさらなる低下、治癒のさらなる迅速化(Er:YAGレーザにより顕著)、およびそれに加えて有効性の上昇(CO2レーザ波長による)というこれらのそれぞれの利点を組み合わせた波長範囲を利用する。さらに、この波長範囲は、Er:YAGレーザおよびCO2レーザにより実現される吸収係数の間の中間的な吸収係数を有する。一実施形態によれば、水吸収係数は、2100~11640cm-1の範囲内である。これらは、以下の波長範囲により、すなわち2.75μm~2.85μm、および3.0μm~3.25μmの範囲内において実現される。いくつかの実施形態では、この波長は、3.0μm~3.25μmの包括的範囲内である。
【0047】
別の実施形態によれば、700cm-1~11640cm-1の包括的範囲内の水吸収係数に対応する波長が利用される。いくつかの実施形態では、これは、CO2レーザ波長を含む。
【0048】
図1は、約2.94μmに吸収ピークを有する2.5~3.5μmの波長範囲における水(液体)の吸収率を示すグラフである。
図1の陰影をつけられた領域は、一実施形態によるレーザシステムの動作波長範囲の非限定的な一例を示し、その範囲は、この例では3.0μm~3.25μmの包括的範囲内となる。この範囲は、先行文献に記載されている範囲よりもさらに限定的なものであり、上記で論じたように限定的な凝固効果をもたらす2.94μmでの吸収ピークを回避するために部分選択される。例えば2.8μmまたは2.9μmの波長に設定されたレーザを使用することにより、アブレーションは強化されるが、所望未満の凝固しか得られない。凝固ゾーン(例えば凝固幅)は、所望の美容的効果に対して最適を下回るものとなる。
【0049】
いくつかの実施形態によれば、3.05μm波長出力と0.1W~50Wの包括的範囲内内のピーク出力電力とを有するシングルステージOPOを用いて構成されたレーザシステムが使用される。別の実施形態では、ピーク出力電力は、0.1W~20Wの包括的範囲内となる。少なくとも1つの実施形態では、シングルステージOPOは、3.05μm波長にて約10Wの平均出力を出力するように構成される。これは、約10,000cm-1の水吸収係数を有し、アブレーションを生じさせる店において非常に効率的であることが判明している。しかし、いくつかの例では、凝固幅が過度に小さい(約20μm)と見なされる。
【0050】
別の実施形態によれば、透過深度を高めさらなる凝固を発生させることにより皮膚収縮およびより優れた美容的成果の達成にとって望ましいものとするために、より低い吸収係数を有する波長のレーザ光が使用される。いくつかの実施形態によれば、約3,635cm-1の水吸収係数を有する3.20μmの波長で設定されたレーザ光源が生成される。一実施形態では、かかる波長は、1.56μmおよび3.05μmの非線形混合を実施して第2のOPOステージにおいて3.20μmを生じさせることにより実現される。いくつかの実施形態では、パルス放射が生成され、各パルスは0.1W~50Wの包括的範囲内のピーク出力を有する。例えば、一実施形態では、第2のOPOステージから退出するレーザビームが、約3.05μmの第1の波長および第1のピーク出力と、約3.2μmの第2の波長および第2のピーク出力とを有し、第1のピーク出力および第2のピーク出力の合計は、0.1W~20Wの包括的範囲内となる。一実施形態では、これにより10Wの平均出力が得られた。いくつかの態様によれば、20Wの総出力での2つの波長帯域における出力ブレークダウンは、3.05μmにて2/3であり、3.20μmにて1/3となる。
【0051】
別の実施形態によれば、1.4μm~1.6μmの包括的範囲内の波長と10μm~45μmの包括的範囲内のスポットサイズとを有するレーザビームを供給するように構成された第1のレーザ光源が用意され、3.0μm~3.25μmの包括的範囲内の波長と10μm~45μmの包括的範囲内のスポットサイズとを有するレーザビームを供給するように構成された第2のレーザ光源が用意される。いくつかの実施形態によれば、ある処置方法は、生体組織表面上に2つのシステムのスポットサイズ同士を同一位置に配置することと、2つのレーザシステムを同期的にまたは連続的に動作させることと、生体組織にわたりあるピッチを有する損傷パターンで2つのシステムのレーザビームをスキャニングすることとを含む。
【0052】
皮膚科学および婦人科学における適用
いくつかの実施形態によれば、本開示のシステムおよび方法を使用し得る皮膚科的適用の非限定的な例として以下のものが挙げられる。
1.皮膚などの生体組織の浅いラインおよび皺の改善
2.皮膚の深いラインおよび皺の改善、ならびに弛んだ皮膚の引締め
3.例えばざ瘡瘢痕、外傷性瘢痕、熱傷瘢痕などの瘢痕外観の改善
4.真皮中への薬物の送達
5.例えば日焼け損傷により生じるものなどの望ましくない異常色素沈着の軽減
【0053】
いくつかの実施形態によれば、本開示のシステムおよび方法を使用し得る婦人科的適用の非限定的な例として以下のものが挙げられる。
1.膣の弛み、乾燥、薄い膣壁、緊張性尿失禁、性交疼痛、排尿障害、性機能、および他の閉経関連尿路性器症候群(GSM)の改善
2.膣上皮を経由した例えば局所的に適用されるホルモン剤などの薬物の送達
【0054】
フラクショナル損傷パターン
いくつかの実施形態によれば、フラクショナル損傷パターンは、組織上のスポットのアレイおよび組織上のラインのアレイの少なくとも一方を含む。また、組織上のスポットは、アブレーションカラムとも呼ばれ得る。スポットのアレイの場合には、このアレイは、正方形パターン、六角形パターン、または任意の他の規則的なもしくは不規則なパターンであってもよい。前述のように、これらのラインは、グルーブとも呼ばれ得る。ラインの場合には、これらのラインは、平行なラインを、すなわち非損傷皮膚により隔てられたラインを含み得る。いくつかの実施形態では、これらのラインは「分割」され、本明細書においては「破線」とも呼ばれる。以降では、これらの両タイプのパターンについて
図2および
図3A~
図3Cを参照としてさらに説明する。
【0055】
「マイクロフラクショナル」損傷パターン
アブレーションフラクショナル処置において、治癒は、損傷カラムまたは損傷グルーブの外方表面から始まる。従来のアブレーションフラクショナル処置は、120μm超のスポットサイズを利用するが、本明細書において説明する方法およびシステムは、はるかにより小さいスポットサイズを利用する。
【0056】
小径カラムと大径カラムとから得られた結果を比較することが可能である。治癒速度は、カラムの円筒状表面積に原則的に比例する。幾何学的な考察から、所与面積に対する治癒速度は(1/カラム直径)に比例することが分かる。直径がより小さいほど、総表面積あたりの同一の損傷表面積に対する治癒速度はより速くなる。目標は、ダウンタイムを最小限に抑える(例えば2~3日など)と共に、完全アブレーションフラクショナル処置により得られる有効性に近づけることである。小径のカラムは、小スポットサイズ(≦45μm)を利用することにより実現することが可能であり、既述のように本開示においては「マイクロフラクショナル」であると定義する。この小さいレーザビームスポット(スポットサイズ)は、生体組織の表面上にレーザビームを合焦することにより実現される。このスポットの直径は、スポットサイズと呼ばれ、ガウスビームの場合には放射照度が(1/e2)または最大値の13.5%である円の直径として定義される。所与のカバー率を実現するために、および少なくとも1つの実施形態によれば、平方センチメートルあたりの高い数密度と組み合わせたより小さいスポットサイズの利用が提案され、これは、ダウンタイムの短縮および有効性の上昇をもたらす。また、凝固ゾーンが、カラムの底部に追加されることが可能となり、これについては以降においてさらに詳細に説明する。
【0057】
図2は、マイクロフラクショナル損傷パターンの非限定的な一例である。一実施形態によれば、スポットサイズは、10μm~45μmの包括的範囲内である。
【0058】
少なくとも1つの態様によれば、仮説として、かかる小スポットサイズを用いたマイクロフラクショナル処置により、新しい皮膚が適切に再生される、すなわちこの新しい皮膚が正常なコラーゲンおよびエラスチン構造を有したものとなる。これは、より大きなスポットが利用された場合に見られる、瘢痕を有する異常コラーゲンおよびエラスチン構造の皮膚とは対照的である。
【0059】
1日以下である望ましい創傷閉鎖時間
皮膚上のアブレーション創傷は、可能な限り迅速に閉鎖することがきわめて望ましい。これは、美容術的により良好であるばかりでなく、さらには感染リスクを軽減する。本明細書において開示するマイクロフラクショナルシステムおよびマイクロフラクショナル方法は、独自の利点によりかかる迅速な治癒をもたらす。
【0060】
仮説として、経表皮水分蒸散量(TEWL)を創傷閉鎖の指標として利用することができる。マイクロフラクショナルアブレーション処置の直後には、皮膚中のホールの位置にて皮膚バリア機能を喪失していることによりTEWLが上昇することが予想される。この創傷が実質的に閉じられ上皮で覆われると、TEWL値は、基線値付近に戻ることが予想される。
【0061】
この仮説を検証するために1つの実験を行った。Tewameter(登録商標)(Courage and Khazaka TM300)およびレーザデバイス(3.0μmおよび3.25μmの波長、50μmのスポットサイズ、ならびにスキャナを有する)を使用して、以下のパラメータを利用し2つの被験体に対して処置を実施した。
- 各被験体の前腕に対して処置を実施した。
- スキャン領域:10mm×10mm、領域内の50箇所のスポット
- ピッチ、x方向:0.5mm
- ピッチ、y方向:1.0mm
- パルスエネルギー:8.6mJ
- TEWL測定値:基線、処置後(直後、3~4時間後、1日後、2日後、5日後)
これらの結果は、
図12Aおよび
図12Bでそれぞれ被験体1および被験体2に関して概略的に示され(ここで、C=対照領域、T=処置領域、処置結果は対照結果のすぐ右側に位置する)、基線(BL、処置前)、処置直後(Imm、10分以内)、処置の3.3時間後(3.3h)、処置の1日後(1d)、処置の2日後(2d)、および処置の5日後(5d)における測定結果が示されている。処置後には、両被験体においてTEWLの即時上昇(約1000%)が見られ、1日後には、処置領域のTEWLは対照付近(「ノイズ帯域」の範囲内)となった。したがって、マイクロフラクショナル処置により、創傷閉鎖時間は1日未満の時間にわたるものとなることが推定される。一実施形態によれば、より小さい(50μm未満)のスポットサイズを用いることにより、同様のまたはさらに短い閉鎖時間を期待することができる。
【0062】
カラム損傷またはライン損傷のアスペクト比
少なくとも1つの実施形態によるカラム損傷のアスペクト比は、損傷の直径に対する損傷深度の比として定義される。一実施形態によれば、0.5~100の包括的範囲が開示される。別の実施形態では、この範囲は1.0~100の包括的範囲内となる。ラインについては、ライン幅が直径の代わりに使用される。
【0063】
ライン
様々な実施形態によれば、皺または瘢痕の自然張力ラインに沿ったライン、この自然張力ラインに対して垂直方向のライン、またはこの自然張力ラインに対して任意角度のラインが開示される。
図3Aでは、ラインを用いたフラクショナルパターンの非限定的な一例が示される。いくつかの実施形態では、
図3Cに示す例において分かるように、これらのラインは連続的ではなく、スキャンフィールド内において分割されてもよい(「グルーブ」)。深度およびピッチもまた調節可能である。アブレーション深度は、浅い(「表層アブレーション」)または深い(「深部アブレーション」)ものが可能である。アブレーションゾーンは、典型的には凝固ゾーンにより囲まれる。アブレーションの代わりとして、完全凝固がさらなる1つのオプションとなる。一実施形態によれば、
図3Bに示す例において分かるように、2方向へのライン(例えば相互に垂直方向の)がさらに開示される。
【0064】
ラインにおける変調損傷
スポットサイズは、1つのラインを描いて進むスポットの場合に、スキャンフィールド中を一定の速度でスキャニングされることが予期される。いくつかの実施形態によれば、このスキャン時間の最中に、例えばレーザ出力などのレーザシステムの少なくとも1つのパラメータが変調される(例えばポンプレーザ変調または他のかかる方法により)。次いで、1つのラインスキャンが完了すると、いくつかの実施形態では、スポットはこの移動方向に対して垂直方向に一定の距離(すなわちピッチ)だけ移動され、再びスキャンフィールド中を上記のように並進移動される。
【0065】
いくつかの実施形態によれば、周期的にレーザ出力を変調する(すなわちパルスモード)非限定的な例としては、(a)最小出力(P_min)、最大出力(P_max)、および周波数の中の1つまたは複数が調節される正弦変調と、(b)異なるオンタイムおよびオフタイムを用いた、立ち上がり時間および立ち下がり時間が約0.2msである「正方形」パターン変調とが含まれる。
【0066】
制御アブレーション損傷を実現するためのレーザパラメータ
少なくとも1つの実施形態によれば、レーザシステム(以降においてさらに詳細に説明する)が、生体組織に対するパルスあたりのREが30J/cm2~6000J/cm2の包括的範囲内となるように、パルス放射を発生させるように構成される。別の実施形態では、パルスあたりの放射曝露(RE)は、100J/cm2~4000J/cm2の包括的範囲内である。本明細書において、パルスあたりの「放射曝露」という用語は、スポットの円(スポットサイズと同一の直径を有する)の表面積でエネルギー密度または総パルスエネルギーを除算したものを意味する。さらには、医学および皮膚科学の文脈においては、「フルエンス」がこの量を説明するために用いられる用語となる。本明細書において、これらの用語は互換的に用いられ得る。処置方法は、表層アブレーションまたは深部アブレーションのいずれかに一般的に分類することが可能であり、以降において概説する。少なくとも1つの実施形態によれば、アレイにおける各スポットまたは各ラインは、25μm~3000μmの包括的範囲内のアブレーション深度を有する。
【0067】
表層アブレーション、アブレーション深度25~500μm
本明細書では、表層アブレーション(すなわちアブレーション深度範囲:25μm~500μm)および深部アブレーション(すなわち500μm~3000μm、以降において説明する)をカラムにおいて実現するための処置方法を開示する。一実施形態により使用されるレーザの波長は、3.05μmおよび3.2μmである。アブレーション深度は、原則的に放射曝露(RE、J/cm2)に依存する。一例として、34μmのビームウエストの場合に、2.0mJ/パルス(220J/cm2のRE)は、200~250μmのアブレーション深度をもたらす。同様に、5mJ/パルス(551J/cm2)は、約500μmのアブレーション深度をもたらす。ある特定のパルスエネルギーを達成するために、様々な出力、パルス期間の組合せを使用することができる。少なくとも1つの実施形態によれば、レーザ出力は、1W~20Wの範囲内である。いくつかの実施形態では、パルス期間は、0.1~5msの範囲内である。一実施形態では、レーザ出力は、表層アブレーションカラムの場合に2.5~5Wの範囲内である。いくつかの実施形態では、かようなより低い出力値により、再現可能なパルスエネルギーおよびより小さい(望ましい)熱損傷直径がもたらされる。
例-約34μmのスポットサイズの場合の表層アブレーションのレーザパラメータ
RE:100~600J/cm2
ピーク出力範囲:1~20W、好ましいピーク出力範囲:1.0~5.0W、さらに好ましいピーク出力範囲:2.0~4.0W
パルスエネルギー:1.0~5.0mJ
パルス期間:0.5ms~5ms
【0068】
深部アブレーション、アブレーション深度500μm~3,000μm
本明細書では、深部アブレーション(すなわち500μm~3,000μm)をカラムにおいて実現するための処置方法を開示する。いくつかの実施形態では、レーザの波長は、3.05μmおよび3.20μmである。一例として、34μmのビームウエストの場合に、10mJ/パルス(1101J/cm2のRE)は、700~900μmのアブレーション深度をもたらす。同様に、20mJ/パルス(2200J/cm2)は、約1000μmのアブレーション深度をもたらす。ある特定のパルスエネルギーを達成するために、様々な出力およびパルス期間の組合せを使用することができる。少なくとも1つの実施形態によれば、レーザ出力は、10W~20Wの範囲内である。いくつかの実施形態では、パルス期間は、0.1~5msの範囲内である。
例-約34μmのスポットサイズの場合の表層アブレーションのレーザパラメータ
RE:500~8800J/cm2
ピーク出力範囲:1~20W、好ましいピーク出力範囲:10~20W
パルスエネルギー:5.0~80mJ
パルス期間:0.5ms~5ms
【0069】
図13は、3.05μmおよび3.20μmの波長ならびに34μmのスポットサイズを用いた表層アブレーションおよび深部アブレーションの両カラムに関する放射曝露に対するアブレーション深度を示すグラフである。これらの結果は、放射曝露の上昇により、アブレーション深度もまた増大することを示している。一般的な理解にしたがえば、スポットサイズは、この関係性に対して有意な影響を及ぼさない。
【0070】
レーザパラメータの他の例
いくつかの実施形態によれば、レーザパラメータ(レーザ動作パラメータとも呼ぶ)には、1マイクロ秒(μs)~250ミリ秒(ms)の包括的範囲内のパルス期間と、0.1%~50%の包括的範囲内のデューティサイクルとを有するパルスモードが含まれる。いくつかの実施形態では、デューティサイクルは、5%~90%の包括的範囲内である。また、これは、レーザパラメータがコントローラにより変調され得る一例でもある。
【0071】
アブレーションチャネルに対する凝固の追加
少なくとも1つの実施形態によれば、3.05μm~3.25μmの波長範囲を使用したレーザ処置の実施により、20μm~60μmの(包括的)範囲内の凝固ゾーンが得られる。少なくとも1つの実施形態によれば、アブレーションチャネルの底部において凝固ゾーンの拡大が実現される方法が開示される。これは、いくつかの実施形態においては、低REにてより長時間にわたり複数のパルスを追加することによって実現される。一例によれば、前述の範囲内の波長を有するレーザは、以下の特性を、すなわち1~5ミリ秒(ms)である各パルスのパルス期間と(一例では)1~50msおよび(別の例では)1~5msのパルス同士の間の間隔とを各パルスが有する、例えば10パルスなどの複数のパルスで、0.5~2.0Wの連続波(CW)出力という特性を有し得る。いくつかの実施形態によれば、この凝固の拡大はカラムに対して適用可能である。
【0072】
フラットトップビームまたはスーパーガウスビーム
一実施形態によれば、レーザビームは、疑似ガウスプロファイルまたはフラットトッププロファイルである強度プロファイルを有するスポットで生体組織の表面に入射する。ガウスビームでは、この強度は、ビーム軸上においてその最大値からゼロへと平滑的に減衰する。特定の実施形態では、疑似ガウスビームが使用される。他の実施形態では、フラットトップビームが使用され、このビームはカバー領域の大半にわたりフラット(「矩形」)である強度プロファイルを有する。フラットトップビームは、なお平滑エッジを有し、スーパーガウスプロファイルに近似し得る。いくつかの実施形態では、かかるスーパーガウスビームが使用される。
【0073】
ベッセルビーム
いくつかの実施形態によれば、ガウスビーム(1~1.2のM2)が、レーザ処置の実施のために使用される。1つまたは複数の実施形態により使用されるベッセル-ガウスビームの使用を含む他のタイプのビームもまた、いくつかの利点を提供し得る。
【0074】
Ashforthら(Ashforth、Oosterbeek、およびSimpson、「Ultrafast pulsed Bessel beams for enhanced laser ablation of bone tissue for applications in LASSOS」、Proc. SPIE 10094、Frontiers in Ultrafast Optics: Biomedical, Scientific, and Industrial Applications XVII、100941O (22 February 2017); https://doi.org/10.1117/12.2250068)が、骨アブレーション用途のためにベッセルビームを用いることによるアブレーション閾値の大幅な低下とアブレーション効率のさらなる向上とについて論じている。これは、ベッセルビームが、レイリー長を上回る大きさの距離に対して合焦状態に留まり得る点と、伝搬経路に沿った障害物にかかわらず自己再生し得る点とによって説明されてきた。
【0075】
少なくとも1つの実施形態によれば、このコンセプトは、皮膚および軟骨のレーザ処置におけるベッセルビームの使用へと拡張される。いくつかの実施形態では、例えば軟骨および骨などの深部構造物(例えば>3mmの深さ)が処置される。さらに、フラクショナル処置が開示される。非侵襲処置の場合には、合焦により、表層構造物は影響を被らないことが可能となる。アブレーション損傷は、合焦された放射曝露がアブレーション閾値を超過するより深部において生じる。したがって、例えば軟骨および骨などの深部に位置する構造物の非侵襲的なフラクショナル処置が開示される。
【0076】
様々な実施形態によれば、ベッセルビームへの近似が、アキシコンレンズを用いてガウスビームを合焦させることによりベッセル-ガウスビームを発生させること、軸対称回折格子を使用すること、またはファーフィールドに小環状アパーチャを配置することのいずれかによって実現される。
【0077】
1つのラインでスポットがスキャニングされるベッセルビーム
ラインの場合の一実施形態では、最大滞在時間は、スキャニング方向のラインに沿った(すなわちx軸に沿った)中心軸中になる。
【0078】
この中心軸に沿って(theta=0)、RE=RE0=P/(d*v)、x方向、運動方向に沿って。
【0079】
フラットトップビームの場合には、コサイン分布、RE=RE0*cos(theta)、ここでRE0=P/(d*v)。この効果は、円形スポットのエッジにかけて照射が急減するガウスビームを用いることにより誇張される。
【0080】
いくつかの実施形態によれば、リング形状ビームプロファイルが使用される。スキャニングされると、このビームはy方向(移動方向に対して垂直な方向)においてより均一なビームプロファイルを生じさせることが判明した。かかるビームは、円錐形状表面を有するアキシコンを用いて実現されるベッセルビームと呼ぶことが可能である。また、これらのビームは、回折光学素子(DOE)の組合せ(例えば2つの)によっても実現され得る。
【0081】
別の実施形態によれば、ビームプロファイルは、リングが楕円形になるように設定される。この楕円は、中間部のくぼみがy方向のみとなる(移動方向がx方向である場合)ように構成される。これは、移動と共に均一に近いREをもたらすことが判明している。
【0082】
皮膚の1.56μm波長照射を利用した曝露による凝固
1.56μmでは、水吸収係数は10cm-1となる。いくつかの態様によれば、皮膚の吸収係数はこの数値の70%と推定され、すなわち7cm-1となる。一実施形態では、この波長は、0.1~10msの範囲内のパルス期間で約500μmの透過深度をもたらし、結果として100~200μmの範囲内の凝固幅をもたらす。このレベルの凝固は、特に皮膚の収縮および引締めが所望の最終目的となる用途など、いくつかの用途において望ましいものとなる。
【0083】
一実施形態によれば、光パラメトリック発振器(OPO)が1.03μmレーザ(例えば50Wの出力で)および1.56μm信号レーザ(例えば1.5Wの出力で)でエネルギー供給される。いくつかの実施形態では、OPOから発せられるレーザ放射の少なくとも一部分が、コンソールへ戻され、熱として放散される。例えば、OPOから退出するポンプビームの少なくとも一部分が、コンソールへ戻され、熱として放散される。いくつかの実施形態では、1.56μm信号ビームの少なくとも一部分が、標的皮膚へと送られて凝固を生じさせる。いくつかの実施形態では、これは、適切に選択されたミラーコーティングを用いることにより実現される。
【0084】
レーザチャネル支援による薬物送達
アブレーションフラクショナルリサーフェシングは、真皮中への薬物送達の速度および量を上昇させるために利用されてきた。この場合には、アブレーションホールが、薬物の輸送に対する角質層バリアを回避させる。これは、角質層に対して非常に低い拡散率を有する大きな分子の場合には特に有効となる。本開示のマイクロフラクショナル処置の実施形態(小さいスポットサイズおよび高い数密度)を用いることにより、より高速での薬物輸送が可能となる。
【0085】
一実施形態によれば、カラムを有する円筒状表面を介した薬物送達が実施される。いくつかの態様によれば、マイクロフラクショナル処置後における皮膚中への薬物の質量移動速度は、個別にアブレーションされた円筒状部の表面積とこの表面上における円筒状部の数密度との積に比例する。アブレーションされた円形断面カラムを介した質量移動が原則的に円筒状表面を介して行われることを仮に前提とした場合に、皮膚表面積に対する質量移動面積は、4*(カバー率)*アブレーション深度/ホール直径により算出される。同一の数密度(または代替的にはカバー率)および同一のアブレーション深度の場合に、皮膚表面に対する質量移動面積は、スポットサイズと直接的な関係にあるホール直径に対して反比例する。したがって、マイクロフラクショナル処置の小さいスポットサイズ(≦45μm)を高い数密度と組み合わせることにより、非常に高い質量移動面積を得ることが可能となる。
【0086】
ダウンタイムを最小限に抑えたフラクショナルアブレーション技術によるタトゥー除去
望ましくないタトゥーを除去するためのさらに有効かつ効率的な方法(既存のものとの比較において)に対する需要が存在する。タトゥー除去処置に対しては、ナノ秒およびピコ秒レベルのパルス期間を有するレーザパルスが使用されてきた。その仮説としての作用は、これらのレーザパルスが、慣性閉込めおよび熱閉込めを生じさせる短いパルス期間でインクを破壊するというものである。破壊されより小さくなったインク粒子は、リンパ系により皮膚から除去される。しかし、かかる粒子のさらに迅速な除去に対する需要が存在し、前述の作用は、非効率的であり、タトゥーの実質的消去を実現するために複数回の(例えば10回の)処置を必要とする。
【0087】
いくつかの実施形態によれば、1つまたは複数のフラクショナル処置方法が、「従来的な」nsレーザ、psレーザ、またはさらにはfsレーザによる処置後に実施される。一実施形態では、吸引カップがフラクショナル処置後においてさらに使用される。処置のこの組合せにより、少なくとも以下の2つの方法でタトゥー消去が向上する。
1.アブレーションによる皮膚の一部の除去(この皮膚はインクを含み、したがってインクの一部が除去される)
2.破壊されたインク粒子の一部を含む間質液の除去
【0088】
少なくとも1つの実施形態によれば、尿素を使用した中間ステップが、上述のステップ1(フラクショナル処置)とステップ2(吸引カップの使用)との間に実施される。尿素は、皮膚の一部を軟化および溶解し、したがってインクおよび流体の輸送をより容易にする。さらなる一実施形態によれば、吸引を実施する前、最中、またはそれらの両方において振動が加えられる。別の実施形態では、ナノ秒レーザ、ピコ秒レーザ、またはフェムト秒レーザによるタトゥー除去処置の前に、フラクショナル処置が実施される。少なくとも1つの実施形態によれば、「マイクロフラクショナル」処置(スポットサイズ≦45μm)は、フラクショナル処置(スポットサイズ≧120μm)と比較した場合に、タトゥーインク除去に対してより有効性の高いおよびより迅速な治癒をもたらすと考えられる。
【0089】
深部筋膜および深部骨膜の低侵襲性フラクショナルレーザ処置
一実施形態によれば、本開示のレーザシステムのレーザ特徴は、例えば深部筋膜および深部骨膜などの顔の深部皮下構造の処置を可能にする。加齢によるこれらの構造の劣化は、顔の皮膚の弛みおよび美的外観の低下の主因となる。現時点では、これらの条件を改善し得る既知の低侵襲介入は存在しない。したがって、かかるフラクショナル処置は、アンチエイジング顔施術の成果を大幅に改善し、顔の皮膚の弛みに悩む患者に対して固有の利点をもたらすことが可能である。
【0090】
いくつかの実施形態によれば、深部フラクショナル施術の成功度は、以下の条件によって左右され、これらの条件には、以下の1つまたは複数の実施形態が含まれる。
1.>40(好ましくは>50)のアスペクト比および70~90μmの包括的範囲内の表面直径を有するアブレーションカラムを生成するように構成されたレーザシステムを提供すること。一実施形態では、これは、約70~90mJの範囲内のパルスエネルギーと、通常の(ガウス)光学またはベッセル光学(すなわちビーム形状またはビームプロファイル)のいずれかとを発生させるように構成されたレーザシステムを提供することにより実現され得る。
2.10~100μmの包括的範囲内の幅を有する厳格に制御された凝固マージン(本明細書において説明される動作パラメータにしたがったレーザシステムにより実現される)。
3.十分な組織冷却。これによりバルクヒーティングおよび周辺カラムからの熱損傷融合が防がれる。かかる冷却は、受動的または能動的なものであってもよい。能動的冷却が望ましい一実施形態では、冷却は、組織表面に対する冷気の吹き付けにより実現される。
【0091】
許容し得る不快感および許容し得る副作用プロファイルでの臨床有効性の最大化
表面にスポットを有するカラム
既に論じたように、融合処置または完全アブレーション処置は、高い臨床有効性を一般的にもたらすが、強い疼痛および長期的な治癒時間(ならびに炎症後色素沈着(PIH)および瘢痕の可能性)を伴う。本明細書において説明されるようなフラクショナルアブレーション処置では、許容し得る不快感ならびに許容し得る治癒時間および例えばPIHなどの他の副作用を伴いつつ、最大のスポット密度またはライン密度を使用することが提案される。以降では、この検証および成果をさらに詳細に説明する。
【0092】
一実施形態によれば、皮膚中に突出するアブレーションカラム(表面にスポットを有する)が一例として用いられる。このコンセプトは、他の実施形態によるラインへと拡張することがさらに可能である。美容および医療の2種類の処置が考えられる。最大密度は、許容し得る疼痛においては、例えば瘢痕、血腫、および長期的PIHなどの許容し得る他の副作用と比較した場合に一般的により低いものとなる。例えば皺および小皺の改善などの美容処置については、最大のドット密度またはスポット密度(平方センチメートルあたりのドット数)は、処置の最中に患者が感じる不快感によって制限される。例えば熱傷瘢痕、外傷性瘢痕、またはざ瘡瘢痕の外観改善などの医療処置については、患者にとって許容し得る不快感はより高い。この場合に、最大密度は、瘢痕化および/またはPIH外観を含み得る許容し得る副作用プロファイルによって制限される。
【0093】
かかるドット(皮膚中のアブレーションカラム)の最大密度の決定を、本出願人が実施した実験における様々なアブレーション深度について行った。5つの被験体において、大腿部および前腕部に対して34-umスポットサイズデバイスを用いて2次元マトリクスフォーマットで処置を行った。様々なアブレーション深度を得るためにパルスエネルギーを変化させた。各アブレーション深度について、ある範囲の数密度を利用した。被験体には、0~5段階で各組合せにて疼痛について尋ねた。ここで0~3は「耐えられる」ものと見なし、4、5は「許容不可」と見なした。副作用に関する経過観察日は、処置の7日後とした。副作用としては、紅斑、浮腫、血腫、瘢痕化、炎症後色素沈着、または他の予期しない副作用が観察された。各アブレーション深度について、耐えられる最高の数密度を上記の基準のそれぞれに対して特定した。次いで、最小の数密度(穏当な選択肢)を、耐えられる最大数密度として選択した。これらの結果を
図8に示す。したがって、このデータは、マイクロフラクショナル処置に対する数密度の許容可能であり、耐えられる、推奨される上限を示す。
【0094】
これらの数密度は、45マイクロメートル未満のスポットサイズを有する各表層アブレーション深度において平方センチメートルあたり数千個のスポットとなり得る。またこれらの数密度は、マイクロフラクショナル処置の重要な要素となる。一実施形態によれば、損傷パターンは、100スポット/cm2~10000スポット/cm2の包括的範囲を有する数密度を有するスポットのアレイである。別の実施形態では、数密度は、150スポット/cm2~1000スポット/cm2の包括的範囲内である。一実施形態によれば、レーザシステム(以降においてさらに詳細に説明する)は、パルス放射を発生させるように構成され、損傷パターンは、あるカラム密度(生体組織の平方センチメートルあたりのカラム数として定義される)を有するアブレーションカラムを備え、レーザビーム(以降においてさらに詳細に論じる)は、カラム密度が3000μm~25μmの包括的範囲内の各アブレーション深度に対して500~10000の包括的範囲内の最大値を有するように、パルスレーザ放射を送達する。別の実施形態では、カラム密度は、25、50、100、200、250、300、350、450、550、650、750、900、1000、1500、2000、および3000μmのそれぞれのアブレーション深度に対して、10000、7500、6500、5000、4000、3500、3000、2500、1800、1700、1600、1500、1400、1300、1000、および500の最大値を有する。最大値付近の密度では、有効性は、完全アブレーション処置により得られる有効性に近いものとなるが、長期間の治癒時間および副作用を伴わない。最大値付近の数密度が使用された場合に、非常に高い有効性、すなわち例えばFitzpatrickの皺スコアにおける2以上の改善(Fitzpatrickら、Pulsed carbon dioxide laser resurfacing of photo-aged facial skin, Arch Dermatol.、395-402頁、1996年)などの皮膚のきめの改善が指摘されている。さらに、様々な実施形態によれば、下回った場合に有効性が不十分となる最小数密度が存在する。一実施形態では、カラム密度は、3000μm~25μmの包括的範囲内の各アブレーション深度に対して300~1300の包括的範囲を有する最小値を有する。別の実施形態では、カラム密度は、25、50、100、200、250、300、350、450、550、650、750、900、1000、1500、2000、および3000μmのそれぞれのアブレーション深度に対して、1300、1200、1100、1000、1000、1000、1000、1000、1000、1000、900、800、700、600、500、および300の最小値を有する。さらなる一実施形態によれば、カラム密度およびアブレーション深度に関する中間値が、隣接し合うカラム密度およびアブレーション深度の数値間の内挿を行うことにより得られる。
【0095】
既に論じたような従来のアブレーションフラクショナル処置は、より大きいスポットサイズを使用し、はるかに低い数密度を有する。かかるシステムの1つは、Sciton ProFractional(登録商標)XCを備え、これはEr:YAGレーザ、430μmスポット、および5.5%、11%、または22%に設定され得る処置密度を使用する。推奨される最大密度である22%および430μmのスポットサイズは、平方センチメートルあたり151個のスポットの数密度に相当する。別の例は、Lumenis UltraPulse(登録商標)CO2レーザである。2つのスポットサイズが利用可能であり、ActiveFX(商標)では1.3mm、DeepFX(商標)では120μmである。1.3mmでは、理論上の最大数密度は、ピッチがスポット直径と同一になるようにサイズ設定される場合であり、平方センチメートルあたり約60個のスポットである場合にこの密度である。120μmでは、Ramsdell(Ramsdell、2012年、Fractional Carbon Dioxide Laser Resurfacing, Semin Past Surg、vol 26、125-130頁、https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3580980/)は、15%の最大カバー率を示唆している。120μmのスポットサイズでは、これは、平方センチメートルあたり2210個のスポットの数密度に相当する。このデバイスにより実現可能な25%のカバー率は、平方センチメートルあたり4421個のスポットの数密度に相当する。45μm未満のスポットサイズを実装する本明細書において開示されるマイクロフラクショナルアブレーションレーザシステムおよび方法は、耐えられるおよび実現可能であることが判明しているはるかにより高い数密度を使用する。
【0096】
表面上の線形グルーブ
上述の結果を実現するために使用される損傷パターンは、生体組織の表面上にスポットを有するカラムである。これらに関して、ピッチは、隣接し合うスポット間の中心間距離とする(正方形アレイと仮定した場合)。カバー率は、(アブレーションゾーンの面積/(ピッチ2))である。数密度は、(1/(ピッチ2))である。
【0097】
皮膚中に延在する線形グルーブが作製されるラインに関して、同様の分析を行うことが可能である。かかるパターンの非限定的な一例を
図3Aに示す。少なくとも1つの実施形態によれば、この状況において最大カバー率を判定することが可能となる。所与の速度、出力、およびチャネルのアブレーション直径に対して、一実施形態によるピーク放射曝露は、出力/(直径_アブレーション*線形速度)として計算される。ピッチは、隣接し合うライン間の中心間距離として定義される。カバー率は、(アブレーション直径をピッチで除算したもの)の比率として定義される。密度は、垂直方向長さあたりのライン数または(1/ピッチ)として定義される。
【0098】
前述のように、ピッチは、隣接し合う2つのスポット間または隣接し合う2つのライン間の中心間距離として定義され得る。いくつかの実施形態では、ピッチは、100μm~1mmの包括的範囲内になるようにサイズ設定される。
【0099】
差周波発生(DFG)に基づく中赤外線レーザシステム
少なくとも1つの実施形態によれば、レーザ空洞外部に差周波発生をもたらし、とりわけファイバレーザ放射の差周波発生を利用して中赤外線レーザ光源の構成を実現するように構成されたレーザシステムが提供される。
【0100】
問題
高平均出力中赤外線放射源は、例えば有機材料加工、外科学、美容学、歯科学等の、様々な用途に適する。しかし、かような従来のマルチワットレベルの放射源は、その範囲を限定するという重大な欠点を有する。
【0101】
例えば、これらのデバイスの大半は、比較的大型であり、それにより加工エリアへの放射送達が複雑化する。CO2レーザにおけるガス能動素子は、低密度の利得媒質に起因する十分な利得および十分な高出力を実現するために典型的には約1メートルのサイズを有する。固体レーザ(例えば量子カスケードレーザおよびバンド間カスケードレーザ、例えばEr:YAG、Cr:ZnSe、Ho:YAG、Ho:YLF、およびその他などのバルク固体レーザ、ツリウムドープファイバ、ホルミウムドープファイバ、ならびにエルビウムドープファイバなど)が、水冷却を必要とする。結果として、例えばハンドピースなどのコンパクトな人間工学的設計物中にかような放射源を配置することは不可能となる。
【0102】
近赤外線レーザの場合には、この問題は、加工領域に対して放射を送達するためにシリカファイバを使用することにより解消される。しかし、中赤外線放射用の送達ファイバは、効果(メートルあたり$100~$1000)、このスペクトル範囲における透過性材料の物理的特性により低品質な特徴を有する(脆性が高い、割断および融着接続に適さない)。これにより、レーザから皮膚標的へと中赤外線放射を伝送するために関節アームの使用がしばしば必要となる。これらの関節アームは、バルク性が高く、非実用的であり、通常使用における衝撃時に不整列を生じやすい傾向がある。一実施形態によれば、放射は、可撓性シリカファイバを用いて送られるが、このファイバは、高価格な脆性ファイバおよび関節アームの使用よりも有利である。
【0103】
また、M2値が高いまたは放射波長が長いことにより、かかる放射源に対して十分な小サイズのビームウエストを実現することがしばしば不可能となる。この制限的要素は、高い出力密度および正確な切断形状の実現が不可能であるという理由に基づく材料加工の基準となり得る。高出力固体ベースレーザは、活性領域を拡大する必要性によりマルチモード放射を発することになる。また、中赤外線用のファイバの大半が、マルチモード放射のみのために構成される。また、ガスCO2レーザ放射の波長は、中赤外線範囲の遠端に位置する。
【0104】
水吸収係数は、10.6μmの典型的な波長で設定されるCO2レーザの放射では、3μmスペクトル範囲付近の放射を発するように構成されたレーザの場合に比べて1桁低い。これは、例えば生体組織などの高含水量材料を標的とする用途においては重要である。
【0105】
レーザシステムの例
本明細書において開示される処置方法に適したレーザシステムの非限定的な一実施形態は、非線形光学結晶におけるファイバレーザからの近赤外線ポンプ放射の非線形周波数変換に基づくコンパクトな空冷式中赤外線レーザシステムを備える。
図9に、一実施形態によるレーザシステム100の一例の概略図を示す。
図9に示す光学概略図は、コンパクトな波長変換器を有して構成されたハイブリッドレーザを反映している。
【0106】
レーザシステム100は、少なくとも1つのレーザ光源を備えるレーザモジュール110と、ハンドピース130と共に位置する差周波発生器132と、レーザモジュール110および差周波発生器132に結合された光ファイバ115とを一般的に備える。いくつかの実施形態によれば、差周波発生器132は、光パラメトリック発振器(OPO)である。いくつかの実施形態では、光ファイバ115は、ファイバ光送達ケーブル125内に備えられ得る。いくつかの実施形態では、光ファイバ115は、シリカファイバである。少なくとも1つの実施形態によれば、レーザモジュール110のファイバレーザからの放射は、10~90μmの包括的範囲内のコア径を有する送達ファイバによりハンドピース130へと送出される。
【0107】
ハンドピース130(本明細書においてはコンパクトハンドピースとも呼ばれる)は、複数の構成要素を備え、生体組織150に対するレーザ処置を実施するために使用され得るレーザ放射のレーザビーム140を出力するように構成される。いくつかの実施形態では、ハンドピース130は、約20×200mmの寸法および<0.2kgの重量を有する。
図10では、皮膚科ハンドピースおよび婦人科ハンドピースの非限定的な2つの例の斜視図を示す。一実施形態では、ハンドピース130は、共振器を内部に備えずに波長変換器132(すなわち差周波発生器)を備える。少なくとも1つの実施形態によれば、差周波発生器132から発せられたレーザ放射の少なくとも一部分が、レーザモジュール110へと送り戻される。例えば、いくつかの実施形態では、中赤外線へと変換されない放射の少なくとも一部分が、専用シリカファイバ120(送達ファイバ125内に備えられ得る)によりハンドピース130から除去され、レーザモジュール110にて終了する。レーザモジュール110は、送達ケーブル125によりハンドピース130に対して連結され、送達ケーブル125は、1つまたは複数のシリカファイバ、電気ケーブル、および保護ホースを含む。差周波発生のために近赤外線信号放射を使用することにより、高変換効率が実現される。いくつかの実施形態では、ビーム品質係数M
2は、1付近であり、一般的にはポンプビームおよび信号ビームのビーム品質により決定される。
【0108】
また、レーザシステム100は、コントローラ170を備える。いくつかの実施形態では、コントローラ170は、レーザモジュール110およびハンドピース130(およびハンドピース130の1つまたは複数の構成要素)に結合される。いくつかの例では、コンソールが、例えばコントローラ170および/またはレーザモジュール110などのレーザシステムの1つまたは複数の構成要素を収容する。コントローラ170は、ある損傷パターンで生体組織150にわたりレーザビーム140をスキャニングするように構成され、この場合に損傷パターンはあるピッチを有する。例えば、コントローラ170は、スキャナ(例えば以降において説明する
図11のスキャナミラー235)を制御するように構成され得る。前述のように、スキャナは、生体組織に対して損傷パターンを生成するように構成される。
【0109】
コントローラ170は、別個または一体の構成要素であり得る回路を備える。コントローラ170により実施される動作は1つまたは複数のコントローラ、プロセッサ、および/または、ソフトウェア構成要素および/またはハードウェア構成要素を含む電子構成要素により実施され得ることが、当業者には理解されよう。例えば、コントローラ170は、プロセッサ(2つ以上のプロセッサを含み得る)およびコンピュータ可読記憶デバイス、およびメモリ(記憶デバイスとも呼ばれる)、ならびに当業者に理解されるような他のハードウェア構成要素およびソフトウェア構成要素を備える。
【0110】
非線形媒質における返還に基づく発生スキームは、高レベル変換効率を実現するために共振器空洞をしばしば使用する。しかし、このアプローチは、かかる変換器をコンパクトなロバスト設計物に実装することを困難にし、より一層高度な機械的および光学的な構造要素を必要とする。
【0111】
一実施形態によれば、レーザモジュール110は、主発振器出力増幅器(MOPA)構成に配置された2つのファイバレーザを備える。いくつかの実施形態では、2つのファイバレーザは、1.03μm波長と、1.5~1.6μm(例えば1.56μm)波長とでそれぞれ構成され、これらの波長は、差周波発生のためにそれぞれポンプおよび信号として使用される。少なくとも1つの実施形態によれば、レーザモジュール110は、パルスレーザ放射を発生するように構成される。一実施形態では、レーザモジュール110におけるレーザの近赤外線放射パルスは、約1~2nsの期間を有し、時間的に同期される。一実施形態では、ダイオードポンプファイバレーザからの放射が、シングルモード(SM)シリカファイバに結合され得る。一例としては、各ファイバレーザ光源からの放射は、コンバイナ(例えばレーザモジュール110内の波長分割多重(WDM)デバイスなど)を使用して結合することが可能であり、シングルファイバへ出力され得る。いくつかの実施形態では、ポンプ放射および信号放射は、シングルファイバ(例えば光ファイバ115)によりハンドピース130へ送達される。いくつかの実施形態では、それぞれのファイバレーザ光源から光を搬送する各ファイバは、シリカから作製され、結合波長を搬送するファイバ(例えば光ファイバ115)もまた同様である。いくつかの実施形態では、SMファイバは、2つのダイオードポンプファイバレーザ光源のそれぞれから発せられたレーザ放射をマルチプレクサに送達し、そこでレーザ放射は、結合され、光ファイバ115により差周波発生器132に送達される。少なくとも1つの実施形態によれば、光ファイバ115はSMファイバである。
【0112】
一実施形態によれば、ハンドピース130は、フォーカスシステム136(本明細書においては光学合焦システムとも呼ばれる)をさらに備え、このフォーカスシステム136は、1つまたは複数のレンズおよびビームスプリッタシステム134を備える。
図11の概略図では、一実施形態によるハンドピースの非限定的な一例を示す。
図11のハンドピース230は、1つまたは複数の非線形光学結晶を有する差周波発生器を備え、この例ではOPO238として構成される。光ファイバ215内のレーザ放射(例えばポンプ波長および信号波長)は、OPO238を通過する。また、ハンドピース230は、フォーカスシステム236を備え、このフォーカスシステム236は、スポットサイズまたはビームスポットに対してレーザビームを合焦させるように構成される。一実施形態では、光学合焦システム236は、3~5mmの包括的範囲内の焦点距離を有するマイクロレンズに基づくものであり、このマイクロレンズは、ポンプビームウエストと信号ビームウエストとの間に最小距離をもたらす(約100μmのウエスト直径)。一実施形態によれば、OPO238を備える非線形光学結晶の中の1つまたは複数が、周期的強誘電ドメイン構造を有して構成される。いくつかの実施形態では、ハンドピース230は、非線形光学結晶のためのサーモスタットをさらに備える(
図11では明示しない)。
【0113】
上述のように、OPO238から発せられるレーザ放射の少なくとも一部分(例えば変換されないレーザエネルギー)が、レーザモジュール110へと送り戻される。これは、光ファイバ220(いくつかの例では専用シリカファイバである)を使用して送達され得る。また、ハンドピース234は、1つまたは複数のダイクロイックミラーに基づく中赤外線放射濾波システムとして機能するビームスプリッタ234も備える。一実施形態によれば、これらの2つのミラー(
図11に示すような)は、3.0~3.2μm波長範囲内における高い反射性と、1.03μm~1.56μm波長における高い透過性とを有する。レンズBの後のミラーは、1.03μm~1.56μm波長における高い反射性を有し、これらの波長は、光ファイバ120、220を経由してレーザモジュール110へと戻される。かかる例では、レーザモジュール110は、この変換されないレーザ放射を使用する1つまたは複数の構成要素を備える。例えば、一実施形態によれば、光ファイバ220を経由してレーザモジュール110へと送り戻されるレーザ放射の部分は、空気により能動的に冷却されるビームダンプに対して送られる変換されない放射である。いくつかの例では、ビームダンプは、出力測定能力をさらに有して構成される。
【0114】
また、ハンドピース230は、スキャナ235をさらに備え、いくつかの実施形態では、このスキャナ235は、シングルミラースキャナ(
図11に示すような)であるが、他の実施形態では相互に垂直方向に移動する2つのミラーを有する2ガルボシステムであってもよい。OPOにより発生するレーザ放射は、レーザビーム240を経由して生体組織標的へ送られる。また、ハンドピース230は、例えば
図11に示すようなミラー(文字で記す)などのレンズA、レンズB、およびレンズC、ならびに他の光学デバイスを含む、1つまたは複数の光学デバイスをさらに備える。
【0115】
いくつかの実施形態によれば、差周波発生の2つの異なるスキームが使用され得る。
1.1つの非線形結晶(例えばPPLNまたはPPLT)において実施されるシングルステージスキーム:
1030→1560+3050nm(PPLN 30.3/PPLT 約30.5μm)
ここで、1.03μmはポンプ出力を提供し、1.56μmは信号放射を提供し、生体組織を処置するために使用される3.05μmレーザ放射が発生される。
2.2ステージスキームが、2つの別個の結晶または2つの周期的強誘電ドメイン構造を有する1つの結晶において実施され得る。各ステージは、各プロセスに対する疑似位相整合を実現するように設計された異なる期間の強誘電ドメイン構造を有する。
1030→1560+3050nm(PPLN 30.3/PPLT 約30.5μm)
1560→3050+3200nm(PPLN 34.7/PPLT 約33μm)
第2の結晶における差周波発生プロセスでは、1.56μmでの放射が、3.05μm波長および3.20μmの別の無効成分についてポンプとして作用する。一実施形態によれば、2ステージ差周波発生は、3.05μmおよび3.20μmの波長にて50%のポンプ変換効率を有する。
図11はシングルOPOを示唆するが、他の実施形態によれば第2のOPOが備えられてもよい点を理解されたい。
【0116】
発生される中赤外線放射の優良なビーム品質により、導波路、ファイバ、または合焦(例えば光学合焦システム136を使用した)への入力を小径にすることが可能となる。一実施形態では、レーザビームは、1.0~1.5の包括的範囲内のM2値を有する。別の実施形態では、レーザビームは、1.0~1.3の包括的範囲内のM2値を有する。
【0117】
いくつかの実施形態によれば、レーザモジュール110は、2つのファイバレーザを備える。いくつかの実施形態によれば、レーザモジュール110は、2つのダイオードレーザポンプファイバレーザを備える。一実施形態では、2つのファイバレーザの中の第1のものが、1.00~1.05μmの範囲内の波長を有するレーザ放射を発生するように構成され、2つのファイバレーザの中の第2のものが、1.5~1.6μmの範囲内の波長を有するレーザ放射を発生するように構成される。一実施形態では、2つのファイバレーザの中の第1のものが、1.03μmの波長を有するレーザ放射を発生するように構成され、2つのファイバレーザの中の第2のものが、1.56μmの波長を有するレーザ放射を発生するように構成される。いくつかの実施形態では、発生されるレーザエネルギーは、可撓性アンビリカルコード(送達ケーブル125)内に位置するシングルファイバ(
図9で115として示す)中に2つの可撓性ファイバを経由して送達され、ハンドピース130へ送達される。一実施形態では、2つのファイバレーザにより発生されるレーザ放射のレーザビームが、1.0~1.5の包括的範囲内のM
2値を有する。別の実施形態では、レーザビームは、1.0~1.3の包括的範囲内のM
2値を有する。
【0118】
一実施形態では、光学が、2ステージPPLN/PPLT結晶OPO変換器(例えばOPO238)において2つの波長を混合するために使用される。OPO238からのレーザビームは、この例ではミラー235として構成されるスキャナ上で平行化され、次いで皮膚面150(すなわち標的生体組織)上で所望の小スポットサイズへと合焦される(例えば1つまたは複数のレンズ236などの光学合焦システム136を使用してなど)。変換されない放射は、シリカファイバ120(
図11では220)を経由してコンソールへと送り戻され、そこで放散される。OPO結晶238の温度は、サーモスタットおよびヒータ(
図9または
図11では図示せず)により制御される。様々な実施形態によれば、すべての光学が、任意の照準ビーム(例えば赤)を含む関心波長に対してコーティングされる。いくつかの実施形態では、レンズの透過率を最大化するためのARコーティングおよび反射率を最大化するためのミラーの反射コーティングもまた実装される。
【0119】
いくつかの実施形態では、組織上のスポットサイズは、25μm~120μmの包括的範囲内であることが可能であり、いくつかの実施形態では30μm~80μmの包括的範囲内であることが可能であり、いくつかの実施形態では10μm~45μmの包括的範囲内であることが可能である。一実施形態では、スポットサイズは、30μm~45μmの包括的範囲内である。
【0120】
一実施形態によれば、OPO結晶238およびスキャナ235は、ハンドピース230内に位置する。いくつかの実施形態では、ハンドピース130、230は、以下の特徴を有するように構成される。
- 形状:相互に対して直角を成す2つのh形状が開示される。第1のチューブは、入力ファイバ、平行化および合焦光学、OPO結晶、その後にさらなる平行化光学を備える。電子制御スキャナミラー(例えば235)が、90度だけレーザビームの方向を変更し、このビームは、第2のチューブを進む。平行化光学は、皮膚科的施術のために皮膚表面上に小スポットサイズを実現する。いくつかの実施形態によれば、
- チューブ1の寸法:190mm~300mmの範囲
- チューブ2の寸法:30mm~100mmの範囲
- ハンドピースの重量:200gm~1000gmの範囲
【0121】
本明細書において開示されるレーザシステムの構成は、複数の利点をもたらす。1つは、レーザモジュール110のレーザは、優れたビーム品質係数(1に近いM2値)を有するレーザビームを発する点である。これは、レーザ放射がより小さいビームサイズへと合焦され得ることを意味し、治癒を迅速化し高い数密度を可能にし本明細書において開示される高い有効性をもたらす「マイクロフラクショナル」処置を実現するために、少なくとも部分的に必要とされる。第2に、シリカファイバ(例えばファイバ115)が、ハンドピースに対してポンプレーザ放射および信号レーザ放射を送達するために使用される。これは、ハンドピース内のスキャナに対してエネルギーを送達するために関節アームまたは特殊非シリカファイバを典型的に必要とするCO2レーザ光源またはEr:YAGレーザ光源とは対照的である。さらに、ハンドピース130、230は冷却を必要としない。なぜならば、OPO構成は発熱しないからである。これにより、ハンドピースの価格が抑えられ、さらなる寸法縮小および軽量化を行うことが可能となる。一例として、ハンドピース内にフラッシュランプを用いる従来のシステムは、水冷(または他の冷却剤)のハンドピースへの送達を必要とする。
【0122】
別の実施形態によれば、
図9において冷却デバイス145として全体的に示す冷却デバイスを使用した皮膚冷却がさらに実施される。皮膚冷却は2つの役割を有する。第1の役割は、処置の最中に患者が被る疼痛を軽減することである。第2の役割は、隣接し合うスポット間において、約44~48℃またはそれ以上である疼痛または熱傷を引き起こし得る温度(またはそれ以上の温度)まで皮膚がバルクヒーティングを生じることを回避することである。これらのまたはそれ以上の温度により、副作用および激痛が引き起こされるおそれがある。冷却により、スポット間の未処置皮膚がかような温度に達することが防がれ、「バルクヒーティング」に関連する副作用が軽減または解消される。冷却デバイス145による冷却は、低温空気の吹込み、皮膚と接触すると蒸発する液体冷寒材の注入、または組織と接触状態にあるサファイアプレートの流体(3.0~3.2μm放射に対して透過性を有する)冷却によって実施可能となる。いくつかの実施形態では、コントローラ170は、冷却デバイス145に結合され、冷却デバイス145の動作パラメータを制御するように構成される。低温空気は、その簡易さから好ましい様式である。例えば、Zimmer Medizin Systems、Irvine、CAによる市販のZimmer CRYO 6装置から得られる低温空気を、スキャン領域内の処置の前、最中、および/または後において皮膚を冷却するために使用することが可能である。いくつかの実施形態によれば、低温空気の温度は、-30℃~10℃の範囲内であることが可能であり、流量は、1000リットル/分であることが可能である。
【0123】
また、本開示の範囲は、婦人科用途にまで及ぶ。いくつかの実施形態では、上述の皮膚科ハンドピース130に対して装着される婦人科アタッチメントが開示される。このアタッチメントは、膣内に挿入するための円筒チューブである。前述の皮膚科ハンドピース130の小スポットサイズは、ビームを90度だけ方向転換することにより膣表面に対して再現される。いくつかの実施形態では、サファイアプレートが、アブレーションデブリをアタッチメント外に避けるために膣表面に接触するように使用され得る。
【0124】
スキャニング技術
いくつかの態様によれば、生体組織へのレーザ放射のスキャニングおよび送達を目的とした「スタンピング」モードが開示される。いくつかの実施形態では、スタンピングは、隣接し合う領域においてスタンピングを行うことと、所望の皮膚領域のすべてに重複することなく処置を行うこととを含む。「スタンプ」は、皮膚上にハンドピース130、230を配置することと、次いでスキャンプロセスを開始することとを含み、レーザビームは、スポット上に合焦され、ある一定の時間にわたりオンに切り替えられる。レーザがオフに切り替えられると、ビームは、同一のスキャン領域内において処置を行うべき次のスポットへと移動され、そこで所望の期間にわたり再びオンに切り替えられる。各位置における出力およびパルス期間により、スポットに送達されるエネルギーが決定される。ピッチは、スキャナにプログラミングされたスキャン領域内における様々なスポットのx座標およびy座標を決定する。所望のスポット位置のすべての処置がスキャン領域内において1回の「スタンプ」にわたって行われると、その後にオペレータは、前回の処置領域とは異なる領域へと「スキャン領域」を移動させる。いくつかの例では、隣接し合うスキャン領域同士における重複がないことが望ましく、さらには隣接し合うスキャン領域同士の間に未処置領域が存在しないことが望ましい。
【0125】
少なくとも1つの実施形態によれば、ユーザによる隣接し合うスキャン領域同士の間におけるある程度の重複が許容される「フェザリング」技術が実装される。例えば、2つの隣接し合うスキャン領域の位置設定の精度不良によりスキャン領域のエッジおよび/またはコーナに沿って若干の重複が存在する可能性がある。これは、過剰処置をもたらすおそれがあり、結果的に望ましくない効果をもたらし得る。この可能性を低下させるために、スキャン領域の1つまたは複数のエッジに沿った「フェザリング」が提案される。様々な実施形態によれば、数密度(ピッチの二乗に反比例する)またはパルスエネルギーがスキャン領域の1つまたは複数のエッジに沿って軽減されることにより、この効果が実現される。
【0126】
少なくとも1つの実施形態によれば、レーザシステム100は、パルス放射を発生するように構成され、損傷パターンは、スポットのアレイであり、コントローラ170は、パルスあたりのREがアレイの1つまたは複数のエッジに付近に位置するスポットにおいて低下するように、レーザビーム140をスキャニングするように構成される。
図4では、かかる技術の非限定的な一例が示される。ここでは、スポットのアレイが示され、REは、色調の段階的明暗で示されるように、アレイの中央部分からアレイのエッジに向かって移動するにつれて(スキャン領域)低下する。この例では、パルスエネルギーは、
図7のグラフにおいて示すように、スキャンのエッジ付近において低下する。
【0127】
いくつかの実施形態では、損傷パターンは、スポットのアレイであり、コントローラ170は、スポットの数密度がアレイの1つまたは複数のエッジに付近に位置するスポットにおいてより低くなるように、レーザビーム140をスキャニングするようにさらに構成される。
図5では、かかる技術の非限定的な一例が示される。ここでは、中央におけるスポットの数密度は、アレイのエッジにおける数密度よりも高い(すなわちピッチがより低い)(スキャン領域)。
図6は、スキャン次元のエッジにて密度がどのように低下するかをグラフにより示す。
【0128】
いくつかの実施形態によれば、上述の2つの「フェザリング」技術の組合せが使用されてもよい。
【0129】
臨床的検証の例
ある被験体は、耳介前部に多数の皺を有することが確認された。左耳前方の耳介前部皮膚領域中に、皺を有する4つの領域を特定した。体外組織に対するアブレーション深度-放射曝露曲線に基づき、42μmスポットサイズの3.05/3.20μm波長アブレーションマイクロフラクショナルデバイスを用いたマイクロフラクショナル処置において、以下のレーザパラメータを使用した。位置ごとに、10mm×10mm寸法の面積の処置を行った。疼痛度は十二分に耐えられる程度であった。
【表1】
基線(治療前)、治療の2週間後、および治療の5週間後において治療領域の写真を撮影した。いずれの領域がいずれの処置を施したものであるかを知らないオブザーバが、これらの写真を類別した。オブザーバには、経過観察時に紅斑、浮腫、およびPIHを0~3の段階(0:なし、1:低、2:中、3:強)に基づき評価させた。さらに、オブザーバには、皺の改善度を0~3の段階(0:なし、1:低度の改善、2:中度の改善、3:高度の改善)に基づき評価させた。処置後5週間目における結果は以下の通りであった。
【表2】
この例は、最小限の副作用を伴う優れた有効性を予兆的に示唆している。
【0130】
本発明による本明細書において開示される態様は、以下の説明で示されるまたは添付の図面に示される構成要素の構造詳細および構成にそれらの用途を限定されるものではない。これらの態様は、他の実施形態を想定することが可能であり、様々な方法で実施され得る。本明細書では、例示のみを目的として具体的な実施形態の例を提示し、したがってこれらの実施形態の例は限定的なものではない。とりわけ、任意の1つまたは複数の実施形態との組合せにおいて論じられる動作、構成要素、要素、および特徴は、いかなる他の実施形態においても同様の役割から排除されるようには意図されない。
【0131】
また、本明細書において使用される表現および術語は、説明を目的とするものであり、限定的なものとして解釈されるべきではない。本明細書において単数で挙げられるシステムおよび方法の例、実施形態、構成要素、要素、または動作に関するいずれの言及も、複数からなる実施形態を包含し得るものであり、本明細書において複数で挙げられる実施形態、構成要素、要素、または動作のいずれに関するいずれの言及も、単数のみからなる実施形態を包含し得る。単数形での言及または複数形での言及は、本開示のシステムもしくは方法、それらの構成要素、動作、または要素を限定するようには意図されない。本明細書において、「含む」、「備える」、「有する」、「含有する」、「伴う」、およびそれらの変形語の使用は、その後の前に列挙されたアイテムおよび他のアイテムを包含するように意図される。「または」という語は、包括的なものとして解釈されてもよく、したがって「または」を使用して記載されるあらゆる項目は、その記載される項目の中の1つ、2つ以上、およびすべてのいずれをも示唆し得る。さらに、本文献と参照により本明細書に組み込まれる文献との間に用語の用いられ方に不一致がある場合には、組み込まれる参考文献での用語の使用は、本文献に対して補足的なものとなる。両立し得ない不一致である場合には、本文献での用語の使用が優先される。さらに、表題または副題が、読者に対する便宜を目的として本明細書において使用される場合があるが、これらは本発明の範囲に影響するものではない。
【0132】
少なくとも1つの例の複数の態様を説明してきたが、様々な変更、修正、および改良が当業者には容易に想起されるであろう点を理解されたい。例えば、本明細書において開示される例は、他の状況で使用されてもよい。かかる変更、修正、および改良は、本開示の一部となることが意図され、本明細書において論じた例の範囲内に包含されるように意図される。したがって、既述の説明および図面は、もっぱら例にすぎない。
【符号の説明】
【0133】
100 レーザシステム
110 レーザモジュール
115 光ファイバ
120 専用シリカファイバ、光ファイバ
125 ファイバ光送達ケーブル、送達ファイバ
130 ハンドピース
132 差周波発生器、波長変換器
134 ビームスプリッタシステム
136 フォーカスシステム、光学合焦システム
140 レーザビーム
145 冷却デバイス
150 生体組織、皮膚面
170 コントローラ
215 光ファイバ
220 光ファイバ
230 ハンドピース
234 ハンドピース
235 スキャナミラー、スキャナ
236 フォーカスシステム、光学合焦システム、レンズ
238 OPO、OPO結晶
240 レーザビーム
【国際調査報告】