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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-23
(54)【発明の名称】イヤホンポート
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/02 20060101AFI20240816BHJP
   H04R 1/10 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
H04R1/02 101B
H04R1/10 104Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024514441
(86)(22)【出願日】2022-09-05
(85)【翻訳文提出日】2024-04-02
(86)【国際出願番号】 US2022042584
(87)【国際公開番号】W WO2023034627
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】17/467,187
(32)【優先日】2021-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591009509
【氏名又は名称】ボーズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】BOSE CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】セドリック・ベーコン
(72)【発明者】
【氏名】マーク・マコーリー
(72)【発明者】
【氏名】ドナ・エム・サリヴァン
【テーマコード(参考)】
5D005
5D017
【Fターム(参考)】
5D005BA07
5D017AD13
(57)【要約】
イヤホン用のポートチューブであって、ポートチューブは、イヤホンの後部音響空洞を外部環境に音響的に結合するように構成される。ポートチューブは、後部空洞に近接し、第1の断面積を画定する第1のセクションと、第1のセクションに結合され、徐々に増加する断面積を画定する第2の遷移セクションと、第2のセクションに結合され、第1の断面積よりも大きい第2の断面積を画定する第3の湾曲したバンク状のセクションと、第3のセクションに結合され、徐々に減少する断面積を画定する第4の遷移セクションと、第4のセクションに結合され、第2の断面積よりも小さい第3の断面積を画定する第5のセクションとを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イヤホン用のポートチューブであって、前記ポートチューブは、前記イヤホンの後部音響空洞を外部環境に音響的に結合するように構成され、前記ポートチューブは、
前記後部音響空洞に近接し、第1の断面積を画定する第1のセクションと、
前記第1のセクションに結合され、徐々に増加する断面積を画定する第2の遷移セクションと、
前記第2のセクションに結合され、前記第1の断面積よりも大きい第2の断面積を画定する、第3の湾曲したバンク状のセクションと、
前記第3のセクションに結合され、徐々に減少する断面積を画定する第4の遷移セクションと、
前記第4のセクションに結合され、前記第2の断面積よりも小さい第3の断面積を画定する第5のセクションと、を備える、ポートチューブ。
【請求項2】
前記第1のセクションが湾曲している、請求項1に記載のポートチューブ。
【請求項3】
前記第1のセクションの中心長手方向軸の曲率半径は、前記第3のセクションの中心長手方向軸の曲率半径とほぼ同じである、請求項2に記載のポートチューブ。
【請求項4】
前記第2及び第4のセクションはそれぞれ、断面積においてほぼ同じ量だけ遷移する、請求項1に記載のポートチューブ。
【請求項5】
前記第3のセクションは、内壁及び外壁を備え、前記バンクは、前記内壁と前記外壁との間にある、請求項1に記載のポートチューブ。
【請求項6】
前記第3のセクションは、前記内壁及び前記外壁と交わる下壁を更に備える、請求項5に記載のポートチューブ。
【請求項7】
前記バンクは、前記外壁よりも長い前記内壁を含む、請求項6に記載のポートチューブ。
【請求項8】
前記バンクが、前記外壁の長さよりも約20パーセント大きい長さを有する前記内壁を含む、請求項7に記載のポートチューブ。
【請求項9】
前記第5のセクションが湾曲している、請求項1に記載のポートチューブ。
【請求項10】
前記第5のセクションの中心長手方向軸の曲率半径は、前記第3のセクションの中心長手方向軸の曲率半径よりも小さい、請求項9に記載のポートチューブ。
【請求項11】
前記ポートチューブは、前記ポートチューブが前記イヤホンの前記後部音響空洞に流体結合される第1の端部と、前記ポートチューブが前記外部環境に流体結合される第2の端部との間の長さに沿ってほぼ「S」字形状である、請求項1に記載のポートチューブ。
【請求項12】
前記「S」字形状が、前記第1の端部に最も近い第1の湾曲部と、前記第2の端部に最も近い第2の湾曲部とを画定する、請求項11に記載のポートチューブ。
【請求項13】
前記第1の湾曲部は、前記ポートチューブの前記第2の湾曲部の中心長手方向軸の曲率半径よりも大きい、前記ポートチューブの中心長手方向軸の曲率半径を有する、請求項12に記載のポートチューブ。
【請求項14】
前記第2の断面積は、前記第1の断面積よりも約12パーセント大きい、請求項1に記載のポートチューブ。
【請求項15】
前記ポートチューブは、前記ポートチューブの長さ方向に沿った長さ寸法と、前記ポートチューブの長さ方向に直交する前記ポートチューブの幅にわたる幅寸法とを有し、前記幅寸法は、前記長さ寸法全体に沿ってほぼ同じである、請求項1に記載のポートチューブ。
【請求項16】
前記第1、第3、及び第5のセクションはそれぞれ、前記第1、第3及び第5のセクションの長さ方向に沿って一定の断面積を有する、請求項1に記載のポートチューブ。
【請求項17】
前記第1及び第5のセクションの前記断面積は同じであり、前記第3のセクションの断面積は、前記第1及び第5のセクションの前記断面積よりも大きい、請求項16に記載のポートチューブ。
【請求項18】
イヤホン用のポートチューブであって、前記ポートチューブは、前記イヤホンの後部音響空洞を外部環境に音響的に結合するように構成され、前記ポートチューブは、
前記後部空洞に近接し、第1の断面積を画定する第1の湾曲したセクションと、
前記第1のセクションに結合され、徐々に増加する断面積を画定する第2の遷移セクションと、
前記第2のセクションに結合され、前記第1の断面積よりも大きい第2の断面積を画定し、内壁と、外壁と、前記内壁及び前記外壁と交わる下壁とを備える第3の湾曲したバンク状のセクションであって、前記バンクが、前記外壁の長さよりも大きい長さを有する前記内壁を備える、第3の湾曲したバンク状のセクションと、
前記第3のセクションに結合され、徐々に減少する断面積を画定する第4の遷移セクションと、
前記第4のセクションに結合され、前記第2の断面積よりも小さい第3の断面積を画定する第5の湾曲したセクションと、を備え、
前記第2及び第4のセクションはそれぞれ、断面積においてほぼ同じ量だけ遷移し、
前記ポートチューブは、前記ポートチューブの長さ方向に沿った長さ寸法と、前記ポートチューブの長さ方向に直交する前記ポートチューブの幅にわたる幅寸法とを有し、前記幅寸法は、前記長さ寸法全体に沿ってほぼ同じであり、
前記第1、第3、及び第5のセクションはそれぞれ、前記ポートチューブの長さ方向に沿って一定の断面積を有し、前記第1及び第5のセクションの前記断面積は同じであり、前記第3のセクションの前記断面積は、前記第1及び第5のセクションの前記断面積より大きい、ポートチューブ。
【請求項19】
前記第5のセクションの中心長手方向軸の曲率半径は、前記第3のセクションの中心長手方向軸の曲率半径よりも小さい、請求項18に記載のポートチューブ。
【請求項20】
前記第2の断面積は、前記第1の断面積よりも約12パーセント大きい、請求項19に記載のポートチューブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、イヤホン用ポートに関し、2021年9月4日に出願された米国特許出願第17/467,187号の優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
イヤホン質量ポート(mass port)は、低周波数においても空気流を維持すべきである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
態様及び例は、2~6Hz程度の低い周波数であっても空気流を支持するのに有効である、増大した直径及び長さを有するイヤホン用の質量ポートを対象とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
下記で言及される全ての実施例及び特徴は、任意の技術的に可能な方式で組み合わせることができる。
【0005】
一態様では、イヤホン用のポートチューブであって、イヤホンの後部音響空洞を外部環境に音響的に結合するように構成されたポートチューブは、後部音響空洞に近接し、第1の断面積を画定する第1のセクションと、第1のセクションに結合され、徐々に増加する断面積を画定する第2の遷移セクションと、第2のセクションに結合され、第1の断面積より大きい第2の断面積を画定する第3の湾曲したバンク状のセクションと、第3のセクションに結合され、徐々に減少する断面積を画定する第4の遷移セクションと、第4のセクションに結合され、第2の断面積より小さい第3の断面積を画定する第5のセクションとを含む。
【0006】
いくつかの実施例は、上記及び/若しくは下記の特徴のうちの1つ、又はそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの例では、第1のセクションは湾曲している。一例では、第1のセクションの中心長手方向軸の曲率半径は、第3のセクションの中心長手方向軸の曲率半径とほぼ同じである。一例では、第2及び第4のセクションはそれぞれ、断面積においてほぼ同じ量だけ遷移する。
【0007】
いくつかの実施例は、上記及び/若しくは下記の特徴のうちの1つ、又はそれらの任意の組み合わせを含む。一例では、第3のセクションは、内壁及び外壁を備え、バンクは、内壁と外壁との間にある。一例では、第3のセクションは、内壁及び外壁と交わる下壁を更に備える。一例において、バンクは、外壁よりも長い内壁を含む。一例において、バンクは、外壁の長さよりも約20パーセント大きい長さを有する内壁を含む。
【0008】
いくつかの実施例は、上記及び/若しくは下記の特徴のうちの1つ、又はそれらの任意の組み合わせを含む。一例では、第5のセクションは湾曲している。一例では、第5のセクションの中心長手方向軸の曲率半径は、第3のセクションの中心長手方向軸の曲率半径よりも小さい。一例では、ポートチューブは、ポートチューブがイヤホンの後部音響空洞に流体結合される第1の端部と、ポートチューブが外部環境に流体結合される第2の端部との間のその長さに沿ってほぼ「S」字形状である。一例では、「S」字形状は、第1の端部に最も近い第1の湾曲部と、第2の端部に最も近い第2の湾曲部とを画定する。一例では、第1の湾曲部は、ポートチューブの第2の湾曲部の中心長手方向軸の曲率半径よりも大きい、ポートチューブの中心長手方向軸の曲率半径を有する。
【0009】
いくつかの実施例は、上記及び/若しくは下記の特徴のうちの1つ、又はそれらの任意の組み合わせを含む。一例では、第2の断面積は、第1の断面積よりも約12パーセント大きい。一例では、ポートチューブは、ポートチューブの長さ方向に沿った長さ寸法と、ポートチューブの長さ方向に直交するポートチューブの幅にわたる幅寸法とを有し、幅寸法は、長さ寸法全体に沿ってほぼ同じである。一例では、第1、第3、及び第5のセクションはそれぞれ、第1、第3、及び第5のセクションの長さ方向に沿って一定の断面積を有する。一例では、第1及び第5のセクションの断面積は同じであり、第3のセクションの断面積は第1及び第5のセクションの断面積よりも大きい。
【0010】
別の態様では、イヤホン用のポートチューブであって、イヤホンの後部音響空洞を外部環境に音響的に結合するように構成されたポートチューブは、後部空洞に近接し、第1の断面積を画定する第1の湾曲したセクションと、第1のセクションに結合され、徐々に増加する断面積を画定する第2の遷移セクションと、第2のセクションに結合され、第1の断面積よりも大きい第2の断面積を画定し、内壁と、外壁と、内壁及び外壁と交わる下壁とを備える第3の湾曲したバンク状のセクションであって、バンクが、外壁の長さよりも大きい長さを有する内壁を備える、第3の湾曲したバンク状のセクションと、第3のセクションに結合され、徐々に減少する断面積を画定する第4の遷移セクションと、第4のセクションに結合され、第2の断面積より小さい第3の断面積を画定する第5のセクションとを含む。第2及び第4のセクションはそれぞれ、断面積においてほぼ同じ量だけ遷移する。ポートチューブは、その長さに沿った長さ寸法と、その長さに直交するその幅にわたる幅寸法とを有し、幅寸法は、長さ寸法全体に沿ってほぼ同じである。第1、第3及び第5のセクションはそれぞれ、その長さに沿って一定の断面積を有し、第1及び第5のセクションの断面積は同じであり、第3のセクションの断面積は、第1及び第5のセクションの断面積よりも大きい。
【0011】
いくつかの実施例は、上記及び/若しくは下記の特徴のうちの1つ、又はそれらの任意の組み合わせを含む。一例では、第5のセクションの中心長手方向軸の曲率半径は、第3のセクションの中心長手方向軸の曲率半径よりも小さい。一例では、第2の断面積は、第1の断面積よりも約12パーセント大きい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
少なくとも1つの例の様々な態様を、添付図面を参照して、以下で説明するが、これらの図面は、縮尺通りに描かれることを意図しない。これらの図は、様々な態様と例の図示、及び更なる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成するが、本発明の制約の定義として意図されない。図において、様々な図で図示される同一の、又はほとんど同一の構成要素は、同様の文字又は数字で表記され得る。明瞭にするために、全ての図において、全ての構成要素が、必ずしもラベル付けされていない場合がある。
【0013】
図1】イヤホンの斜視図である。
図2A】イヤホンの断面図である。
図2B】イヤホンの断面図である。
図2C】イヤホンの断面図である。
図3A】イヤホン用の内部分割プレートの上面図であり、内部分割プレートに形成されたチャネルを示し、チャネルはイヤホンポートの一部を形成する。
図3B図3Aに示されるプレートの底面図である。
図4A】イヤホンポートの異なる位置を通る断面図である。
図4B】イヤホンポートの異なる位置を通る断面図である。
図5】別のイヤホンポートの断面図である。
図6】標準イヤホンポートと比較した、本開示のイヤホンポートについての流れ抵抗対圧力のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示の例では、イヤホン用のポートチューブは、非常に低い周波数であっても効果的な空気流を提供するように構成される。これは、イヤホンの後部空洞に近接し、第1の断面積を有する第1のセクションと、第1のセクションに結合され、徐々に増加する断面積を画定する第2の遷移セクションと、第2のセクションに結合され、第1の断面積より大きい第2の断面積を画定する第3の湾曲したバンク状のセクションと、第3のセクションに結合され、徐々に減少する断面積を画定する第4の遷移セクションと、第4のセクションに結合され、第2の断面積より小さい第3の断面積を画定する第5のセクションとを含むチューブによって少なくとも部分的に達成される。
【0015】
本明細書で説明されるシステム、方法、及び機器の実施例は、以下の説明に記載されるか、又は添付の図面に図示される構成要素の構成及び配置の詳細に適用することに限定されない。システム、方法及び機器は、他の実施例で実装可能であり、様々な方式で実施又は実行可能である。具体的な実施例は、例示目的のみのために本明細書で提供され、限定を意図するものではない。具体的には、任意の1つ以上の実施例に関連して考察される機能、構成要素、要素、及び特徴は、任意の他の実施例において同様の役割から除外されることを意図するものではない。
【0016】
本明細書で開示する例は、本明細書に開示される原理の少なくとも1つと一致する任意の様式で、他の例と組み合わせることができ、更に、「一実施例(an example)」、「いくつかの実施例(some examples)」、「代替例(an alternate example)」、「様々な実施例(various examples)」、「一実施例(one example)」などへの言及は、必ずしも互いに独占的ではなく、説明される特定の特徴、構造、又は特性は、少なくとも1つの実施例に含まれ得ることを示すように意図される。本明細書におけるこうした用語の出現は、必ずしも全てが同じ実施例を示すわけではない。
【0017】
また、本明細書で使用される表現及び用語は、説明目的のみを目的としており、限定的であるとみなされるべきではない。本明細書において単数で言及されるコンピュータプログラム製品、システム及び方法の実施例、構成要素、要素、行為、又は機能に対する任意の言及はまた、複数を含む実施形態を包含してもよく、本明細書における任意の実施例、構成要素、要素、動作、又は機能に対する複数形での任意の言及もまた、単数形のみを含む実施例を包含してもよい。したがって、単数形又は複数形の参照は、本開示のシステム又は方法、それらの構成要素、行為、又は要素を制限することを意図するものではない。本明細書における「含む(including)」、「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含有する(containing)」、「伴う(involving)」、並びに、それらの変形形態の使用は、以下で列挙する項目とその均等物、並びに、他の項目を包含することを意味する。「又は(or)」への言及は、「又は(or)」で記載された全ての用語が、記載された用語の単一、複数、及び、全ての用語のいずれかを示せるよう、包括的であると解釈され得る。
【0018】
本開示のいくつかの実施例は、イヤホン、ヘッドホン、ヘッドセット、又は小型イヤホンとして知られているタイプのウェアラブルオーディオデバイスを説明する。これらの装置は、一般的に、外耳における閉じられた又は部分的に閉じられた容積内に音を届ける。イヤホンは、一般に、音をユーザの外耳道に直接届ける。
【0019】
「ヘッドホン」の語は、通常、耳の周り、耳上、又は耳内に嵌めて装着し、外耳道の中に音響エネルギーを直接又は間接的に放射するデバイスを指すのに使用される。ヘッドホンは、ときには、イヤホン(earphones)、イヤピース(earpieces)、ヘッドセット(headset)、小型イヤホン(earbubs)、又はスポーツヘッドホン(sport headphones)と称され、有線式又は無線式とすることができる。ヘッドホンは、オーディオ信号を音響エネルギーに変換する電気音響変換器(ドライバ)を含む。この音響ドライバは、イヤーカップ内に格納されてもされなくてもよい。ヘッドホンは、各耳に1つずつ、単一の独立型ユニット、又は一対の(各々が少なくとも1つの音響ドライバを含む)ヘッドホンのうちの一方であってもよい。ヘッドホンの一方は、例えば、ヘッドバンドによって、及び/又はヘッドホン内の音響ドライバにオーディオ信号を伝えるリード線によって、ヘッドホンの別の一方に機械的に接続され得る。ヘッドホンは、オーディオ信号を無線で受信する構成要素を含み得る。ヘッドホンは、アクティブノイズリダクション(ANR)システムのコンポーネントを含み得る。ヘッドホンはまた、マイクロホンなどの他の機能性をも含み得る。
【0020】
オーディオを音響的に出力する目的を主に果たすウェアラブルオーディオデバイスの具体的な実装形態は、ある程度の詳細が提示されているが、そのような特定の実装形態の提示は、実施例の提供を通じて理解を容易にすることを意図するものであり、開示の範囲又は請求項がカバーする範囲のいずれをも限定するものとして解釈されるべきではないことに留意されたい。
【0021】
図1は、無線インイヤ型ヘッドホン又はイヤホン10の斜視図である。イヤホンは、対象ポートを有するオーディオデバイスの1つの非限定的な例にすぎない。イヤホン10は、イヤホンのアクティブ構成要素を収納する本体又はハウジング12を含む。部分14は、本体12の出口ノズル20に結合され、外耳道の入口に挿入することができるように柔軟である。音は、出口開口部15を通して届けられる。バッテリ充電接点16、抵抗ポート開口部17、マイクロホン開口部18、及び質量ポート開口部19が見える。イヤホンは、当該分野で既知であり(例えば、米国特許第9,854,345号に開示されており、その開示は、参照によって本明細書に組み込まれる)、したがって、イヤホンの特定の詳細は本明細書では更には記載されない。イヤホン10は、本開示によるウェアラブルオーディオデバイスの一例であるが、他のタイプのイヤホンが対象ポートを使用することができるので、本開示の範囲を限定するものではない。
【0022】
図2Aは、本開示をより良く理解するのに有用なイヤホン又は小型イヤホン10の特定の要素のみの部分断面図である。イヤホン10は、電気音響変換器21を囲むハウジング12を備える。変換器21は、前部音響空洞22及び後部音響空洞23内に音圧を発生させる。空洞22及び23内の音は位相がずれている。空洞22からの音は、当該技術分野で知られている方法でユーザの外耳道(図示せず)に結合されたノズル20に届けられる。いくつかの例では、空洞22は、第2の出口17(図1)を含み、第2の出口17は、当該技術分野で知られているタイプの抵抗ポートであってもよい。チャネル51の上部を閉鎖するチャネルカバー69と共に、内部分割プレート52内のチャネル51によって部分的に画定される質量ポートは、一端が後部空洞23に開放され、他端がハウジング12の外側の外部環境37に開放される。プレート52は、イヤホンの音響を上部イヤホン空洞24から分割するように構成され、上部イヤホン空洞24は、電子機器、バッテリ、及び当該技術分野で知られているタイプの他のイヤホン構成要素(図示せず)を収容することができる。質量ポートは反応性ポートである。いくつかの例では、第2の後部抵抗ポート(図示せず)も含まれる。抵抗ポートは、反応性ポートと並列に動作することができる。イヤホン内の反応性及び抵抗性ポートは、当該技術分野で周知であり、したがって、本明細書では更に説明されない。マイクロホン開口部18は、外部音をマイクロホン(図示せず)に伝導するように構成される。
【0023】
図2B及び図2Cは、後部空洞23に対して開いている(すなわち、流体結合されている)質量ポート開口部53と、ハウジング開口部19を介して外部環境37に流体結合されている質量ポート開口部64とを含む、イヤホン10の追加の態様を示す。マイクロホン26は、ノズル20内に配置され、当該技術分野で知られているように、音響雑音消去システムで使用される。マイクロホン29は、前部空洞22内に配置され、当該技術分野で知られているように、音響雑音消去システムで使用される。内部均圧ポート27は、前部空洞22及び後部空洞23を流体接続し、それによって、外部環境37から、質量ポートを通り、後部空洞を通り、前部空洞を通り、それによってノズル及び外耳道の中への音響経路を作成する。イヤホン内の均圧ポートは、当該技術分野で知られており、したがって、本明細書では更に説明しない。
【0024】
イヤホン内の質量ポートは、比較的長く薄いチューブとして構成されることがある。一例では、既存のイヤホン内の質量ポートチューブは、約12mmの長さ及び約0.5mmの直径を有する。境界層効果に起因して、非常に低い周波数では、チューブ内の空気は、チューブの内外に移動することができない場合がある。空気が質量ポートの内外に移動しない場合、ポートは、減衰又は減衰されるとみなされてもよく、これは、ユーザが閉塞効果を感じることにつながり得る。外耳道内のそのような解放されない圧力は、ユーザにとって煩わしいか、又は不快でさえあり得る。例えば、ユーザの足音に起因する非常に低い周波数の振動音は、約2~6Hzの周波数でイヤホンに伝達され得る。質量ポートがこれらの周波数で閉塞される場合、ユーザは、この2~6Hzの周波数で耳に圧力を感じる/聞くことになる。
【0025】
本開示では、イヤホンのための質量ポートの直径は、2~6Hzの周波数であっても空気がポートに沿って、及びポートの内外に移動することができるように増加される。一例では、直径は約1mmに増大され、これにより、2~6Hzの周波数であっても、ポートに出入りする空気流が可能になる。質量ポートの音響質量は、そのリアクタンスに実質的な影響を及ぼし、そのリアクタンスは、質量ポートが音響的に結合される後部音響空洞の同調に影響を及ぼす。したがって、同調が同じままであるためには、ポートの音響質量を少なくとも近似的に維持することが必要である。長さが約12mmから約18~19mmに増加し、直径が0.5mmから1mmに増加した場合、ポートの音響質量はほぼ同じままである。しかしながら、イヤホンは必然的に小型である。例えば、イヤホンは、約16mmの最大幅を有してもよい。したがって、18~19mmのストレートポートチューブは、そのようなイヤホンに適合することができない。本開示では、ポートチューブは、その長さがイヤホンの幅よりも大きくなり得るように、その長さに沿って湾曲している。イヤホン10の例では、以下で更に説明するように、質量ポートは、その開放端部53と64との間の長さに沿って2つの湾曲部を有するほぼ「S」字形状を有する。他の例では、質量ポートチューブは、異なる方法でその長さに沿って湾曲している。例えば、質量ポートは、ほぼ「C」字形状、「L」字形状、又は「G」字形状を有することができる。
【0026】
また、質量ポートチューブは、境界層効果を排除して、チューブの直径にわたって比較的一定の空気速度が存在するように設計されることが有用である。一定の速度は、低周波数であっても所望の空気流を実現するのに役立つ。このような一定の空気速度は、ポートチューブの断面積をその長さに沿って変化させること、及びチューブの湾曲部分の少なくとも1つにバンクを形成することのいずれか又は両方によって達成できることが分かっている。
【0027】
図3A(上面図)及び図3B(底面図)に示す例では、質量ポート50は、プレート52内に形成されたチャネル51を含む。開口部53は、後部音響空洞に流体結合されるように構成され、開口部64は、(例えば、イヤホンハウジング内の開口部に接続することによって)外部環境に流体結合されるように構成される。チャネル51に隣接し、チャネル51の全長に沿って延びる凹部68は、チャネル51を覆い、したがって開口部53及び64を除いてポート50を閉じる平坦なプレート69(図2A図2C)を受け入れる。
【0028】
チャネル51(したがって、質量ポート)は、中心長手方向軸63に沿って位置する。チャネル51は、イヤホン後部音響空洞23に近接し、いくつかの例では約1mmである第1の断面積を画定する第1の湾曲セクション54を含む。第2の遷移セクション56は、第1のセクション54に結合され、徐々に増加する断面積を画定し、いくつかの例では、約1mmから約1.12mmまで増加する。遷移セクション56によって達成される漸進的な断面増加は、断面積の急激な増加を回避し、したがって、より滑らかでより層状の空気流をもたらす。
【0029】
いくつかの例では、ポートの断面積の増加は、凹部68の表面から測定されるポートの深さを増加させることによって達成される。いくつかの例では、深さの増加は、ポートの曲線の内側半径内、例えば、(外壁61に対向して)内壁59内にあり、バンク特徴を生成する。深さが増加する場所は、ポートの長さに沿った他の場所であってもよく、目的は、ポートの幅にわたって、かつその長さに沿って一定である滑らかな空気流を得ることである。
【0030】
第3の湾曲したバンク状のセクション58は、第2の部分に結合され、第1の断面積よりも大きい第2の断面積を画定する。いくつかの例では、この第2の断面積は約1.12mmである。第4の遷移セクション60は、第3のセクション58に結合され、徐々に減少する断面積を画定し、これは、一例では、遷移セクション56の徐々に増加する面積の本質的に反対である。第5の湾曲セクション62は、第4のセクション60に結合され、セクション58の断面積よりも小さい断面積を画定する。
【0031】
いくつかの例では、遷移セクション56及び60はそれぞれ、断面積においてほぼ同じ量だけ遷移する。いくつかの例では、各遷移セクションは、その長さに沿ったポート断面積の所望の変化、例えば、長さ単位当たりの線形又は一定の変化などを有する。いくつかの例における断面の変化は、遷移セクションの前後のポートの曲率及び勾配に部分的に依存する。所望の結果は、ポート断面積の滑らかな遷移を達成し、遷移セクションを通る滑らかな空気流をもたらすことである。
【0032】
いくつかの例では、チューブは、その長さに沿ってほぼ一定の幅を有し、一例では幅は約1.22mmである。いくつかの例では、セクション54及び62の断面積は同じである。セクション58の断面積は、全てのセクションの中で最大である。いくつかの例では、図3Aに示すように、セクション62に沿った長手方向ポート軸の曲率半径は、セクション58及び54の曲率半径よりも小さい。いくつかの例では、セクション54及び58に沿った長手方向ポート軸の曲率半径は、ほぼ同じである。
【0033】
図4Aは、質量ポートのバンクされていない部分におけるチャネル51を通る断面図であり、内側側壁74a及び外側側壁76は、凹部68の下面から測定して同じ長さを有する。これにより、底壁72が凹部68の下面と平行になる。図4Bは、内側側壁74bが外側側壁76より長い、質量ポートのバンク部分におけるチャネル51を通る断面図である。これにより、凹部68の下面に対して傾斜した底壁72が形成される。一例では、バンク状のセクションにおいて、内側チャネル壁の長さは、約0.2mmだけ増加する(例えば、その長さは、約0.91mmから約1.11mmに増加することができ、これは、20パーセントをちょうど超える増加である)。いくつかの例では、チャネルの幅は、その全長に沿って一定である。いくつかの例では、この幅は約1.22mmである。
【0034】
いくつかの例では、図5に示されるように、側壁と底壁との間の他の鋭い角が融合される。例えば、チャネル80は、湾曲した内壁84及び湾曲した外壁82を含み、これらは、下壁86に滑らかに融合する。このような融合は、バンクされたセクション及びバンクされていないセクションの両方において、より層状で滑らかな空気流プロファイルを達成する助けとなり得る。
【0035】
図6は、従来の質量ポート(プロット線110)と、図3Aに示すようなプロット線112の本開示の質量ポートとについての、流れ抵抗(音響オーム単位)対圧力(Pa単位)のプロットである。観察され得るように、ポートの音響質量の維持を伴って達成される、本質量ポートの増加した断面積は、実質的により低い流れ抵抗を呈し、これは、低周波数におけるより良好な流動、及びイヤホンが閉塞されるというユーザへの感覚の著しい低下につながる。
【0036】
少なくとも1つの実施例に関するいくつかの態様について述べてきたが、当業者であれば、様々な変更、修正、並びに、改良が容易に思い付くことが、理解されるであろう。こうした変更、修正、及び改善は、本開示の一部であり、本発明の範囲内であることが意図される。したがって、前述の説明及び図面は、例に過ぎず、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲の適切な構成、並びに、それらの均等物から判定されるはずである。
【符号の説明】
【0037】
10 イヤホン
12 本体、ハウジング
14 部分
15 出口開口部
16 バッテリ充電接点
17 第2の出口、抵抗ポート開口部
18 マイクロホン開口部
19 質量ポート開口部
20 ノズル
21 電気音響変換器
22 前部音響空洞
23 後部音響空洞
24 上部イヤホン空洞
26 マイクロホン
27 内部均圧ポート
29 マイクロホン
37 外部環境
50 質量ポート
51 チャネル
52 内部分割プレート
53 質量ポート開口部、開放端部
54 第1の湾曲セクション
56 第2の遷移セクション
58 第3のセクション
60 第4の遷移セクション
61 外壁
62 第5の湾曲セクション
63 中心長手方向軸
64 質量ポート開口部
68 凹部
69 チャネルカバー、プレート
72 底壁
74a 内側側壁
74b 内側側壁
76 外側側壁
80 チャネル
82 外壁
84 内壁
86 下壁
110 プロット線(従来の質量ポート)
112 プロット線(本開示の質量ポート)
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
【国際調査報告】