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特表2024-530813遊星ギアボックス及び遊星ギアボックスのための潤滑剤回収トレイ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-23
(54)【発明の名称】遊星ギアボックス及び遊星ギアボックスのための潤滑剤回収トレイ
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/04 20100101AFI20240816BHJP
【FI】
F16H57/04 J
F16H57/04 K
F16H57/04 Q
F16H57/04 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515022
(86)(22)【出願日】2022-08-19
(85)【翻訳文提出日】2024-03-06
(86)【国際出願番号】 DE2022100616
(87)【国際公開番号】W WO2023036361
(87)【国際公開日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】102021123097.7
(32)【優先日】2021-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Industriestr. 1-3, 91074 Herzogenaurach, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ハイメル
(72)【発明者】
【氏名】アルフレート ホック
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック フィッシャー
(72)【発明者】
【氏名】フローリアン ベーム
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク ザウアー
【テーマコード(参考)】
3J063
【Fターム(参考)】
3J063AB12
3J063AC01
3J063BA11
3J063CB04
3J063CB06
3J063XD03
3J063XD43
3J063XD72
3J063XD73
3J063XF12
3J063XF14
(57)【要約】
本発明は、遊星ギアボックスに関し、遊星ギアボックスは、シャフト(2)であって、潤滑剤を誘導するために提供されており、かつシャフト(2)の外面に開口しているチャネル(5)を有するチャネル構造体(3)を有する、シャフト(2)と、遊星キャリア(6)と、遊星キャリア(6)上に位置し、かつその上に1つの遊星ギア(9)が各々取り付けられている少なくとも2つの遊星ピン(7)であって、各遊星ピン(7)が、遊星ギア(9)の軸受(8)に潤滑剤を誘導するためのチャネル構造体(15)を有する、少なくとも2つの遊星ピン(7)と、潤滑剤回収トレイ(12)であって、回収空間(19)を有し、シャフト側チャネル(5)を介して供給される潤滑剤を回収するために提供されており、かつ少なくとも2つの中空給送口(14)を有し、少なくとも2つの中空給送口(14)が、遊星ピン側のチャネル構造体(15)に各々開口しており、かつ潤滑剤を関連するチャネル構造体(15)の中に誘導するために提供されている、潤滑剤回収トレイ(12)と、を備え、円周方向で見て、チャネル(5)の開口部のより近くに位置決めされている給送口(14)が、より遠く離れて位置決めされている給送口(14)よりも小さい開口部断面(Q1)を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑剤を誘導するためのチャネル構造体(3)を有するシャフト(2)であって、前記シャフト(2)の外面上のチャネル(5)開口部を備える、シャフト(2)と、遊星キャリア(6)と、前記遊星キャリア(6)上に配置されており、かつその上に1つの遊星ギア(9)が各々取り付けられている少なくとも2つの遊星ピン(7)であって、各遊星ピン(7)が、前記潤滑剤を前記遊星ギア(9)の軸受(8)に誘導するためのチャネル構造体(15)を有する、少なくとも2つの遊星ピン(7)と、シャフト側チャネル(5)を介して供給される前記潤滑剤を回収するための、回収空間(19)を有する潤滑剤回収トレイ(12)であって、前記潤滑剤をそれぞれの前記チャネル構造体(15)の中に誘導するために遊星ピン側のチャネル構造体(15)の中に各々開口している少なくとも2つの中空給送口(14)を備える、潤滑剤回収トレイ(12)と、を備える遊星ギアボックスであって、円周方向で見て、前記チャネル(5)の前記開口部のより近くに位置決めされている給送口(14)が、より遠く離れて位置決めされている給送口(14)よりも小さい開口部断面(Q1)を有することを特徴とする、遊星ギアボックス。
【請求項2】
前記給送口(14)が各々、孔(20)を有し、前記孔の直径が、前記開口部断面(Q1、Q2)を変化させるために異なることを特徴とする、請求項1に記載の遊星ギアボックス。
【請求項3】
1つ以上の給送口(14)が、前記開口部断面(Q1、Q2)を減少させ、かつ前記回収空間(19)に向かって開口している前記給送口(14)の端部に提供されているオリフィス(21)を有することを特徴とする、請求項1に記載の遊星ギアボックス。
【請求項4】
前記遊星キャリア(6)が、前記シャフト(2)に対して半径方向に延在するチーク(10)を有し、前記チーク(10)を使用して前記遊星キャリア(6)が前記シャフト(2)に接続されており、かつ前記チーク(10)には、その上に前記給送口(14)が軸方向に突出する環状底部(13)が近接することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の遊星ギアボックス。
【請求項5】
前記チーク(10)が、前記潤滑剤回収トレイ(12)に面する側部に潤滑剤ガイド構造体を有することを特徴とする、請求項4に記載の遊星ギアボックス。
【請求項6】
環状の回収空間(19)が、より大きい開口部断面(Q2)を有する給送口(14)の領域においてよりも、より小さい開口部断面(Q1)を有する前記給送口(14)の領域において、半径方向により広い、又は軸方向により高いことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の遊星ギアボックス。
【請求項7】
底部(13)によって画定されている回収空間(19)と、前記底部(13)から軸方向に突出しており、かつ前記回収空間(19)と連通している少なくとも2つの中空給送口(14)とを備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の遊星ギアボックス(1)のための潤滑剤回収トレイであって、前記給送口(14)が、少なくとも部分的に異なる開口部断面(Q1、Q2)を有することを特徴とする、潤滑剤回収トレイ。
【請求項8】
前記給送口(14)が各々、孔(20)を有し、前記孔の直径が、前記開口部断面を変化させるために異なることを特徴とする、請求項7に記載の潤滑剤回収トレイ。
【請求項9】
1つ以上の給送口(14)が、流れ断面を減少させ、かつ前記回収空間(19)に向かって開口している前記給送口(14)の端部に提供されているオリフィス(21)を有することを特徴とする、請求項7に記載の潤滑剤回収トレイ。
【請求項10】
環状の回収空間(19)が、より大きい開口部断面(Q2)を有する給送口(14)の領域においてよりも、より小さい開口部断面(Q1)を有する前記給送口(14)の領域において、半径方向により広い、又は軸方向により高いことを特徴とする、請求項7~9のいずれか一項に記載の潤滑剤回収トレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊星ギアボックスに関し、本遊星ギアボックスは、潤滑剤を誘導するためのチャネル構造体を有するシャフトであって、そのシャフトの外面上にチャネル開口部を備える、シャフトと、遊星キャリアと、遊星キャリア上に配置されており、かつその上に1つの遊星ギアが各々取り付けられている少なくとも2つの遊星ピンであって、各遊星ピンが、潤滑剤を遊星ギアの軸受に誘導するためのチャネル構造体を有する、少なくとも2つの遊星ピンと、シャフト側チャネルを介して供給される潤滑剤を回収するための、回収空間を有する潤滑剤回収トレイであって、潤滑剤をそれぞれのチャネル構造体の中に誘導するために遊星ピン側のチャネル構造体の中に各々開口している少なくとも2つの中空給送口を備える、潤滑剤回収トレイと、を備える。
【背景技術】
【0002】
遊星ギアボックスは、多種多様な用途で使用される。それらは、例えば、ハイブリッド変速機などの車両用変速機に使用される。遊星ギアは、好適な軸受、通常はニードル軸受の形態の転がり軸受を介して、遊星キャリア上に配置された遊星ピン上に回転可能に取り付けられ、遊星ギアは、それ自体知られている様式でリングギアと噛み合う。潤滑剤を遊星ギアの軸受に供給するために、対応する潤滑剤デバイス又は潤滑剤供給源が提供される。一方では、このデバイスは、中心シャフト上に提供されるチャネル構造体、例えばシャフト軸に沿って延びるチャネルを備え、このチャネルから更なるチャネルが半径方向に分岐し、このチャネルはシャフトの外面に開口している。また、潤滑剤回収トレイが提供されており、この潤滑剤回収トレイは、チャネルを介して供給され、チャネルから漏出する潤滑剤のための回収空間を有しており、すなわち、この回収空間内に潤滑剤が回収される。遊星ピンの数に対応する数の給送口が、回収トレイの底部から延在し、一方では回収空間と連通し、他方では各遊星ピンに提供されるチャネル構造体と連通している。回収空間から来る潤滑剤は、それぞれの給送口を介して遊星ピン側のチャネル構造体に給送され、ピン側チャネル構造体を介して軸受に給送される。
【0003】
独国特許出願公開第102008000900号明細書では、そのような遊星ギアボックスの一例が開示されている。シャフトには、潤滑油を搬送するための中央チャネルが提供されており、この中央チャネルから、チャネルが、ギアと遊星キャリアとの間の間隙内に横方向に通じている。潤滑油は、間隙から軸受を介して潤滑剤回収トレイに流れる。この潤滑剤回収トレイの回収空間は、半径方向にガイドプレートに続いており、このガイドプレートはまた、軸受のニードルのためのレースウェイを有している。潤滑剤回収トレイは、遊星ギアボックスの遊星ピンの数に対応する数の給送口を有し、給送口の各々は、遊星ピンの孔に挿入される。給送口は、潤滑剤回収トレイのチャネル状の回収空間から延在し、この回収空間は、シールディスクによって遊星キャリアに向かって軸方向に画定され、かつカバーディスクによって給送口の反対側に画定されており、その結果、潤滑油は、シールディスク及びカバーディスクによって画定された回収空間の中に回収される。給送口の開口部は、シールディスクにおいて潤滑剤回収トレイ内に開口し、かつ回収空間内部に位置しており、その結果、その中に回収された潤滑剤を、給送口を介して遊星軸受に給送することができる。
【0004】
独国特許出願公開第102016206745号明細書では、2つの軸方向に連続する遊星セットが1つの同じ潤滑剤回収トレイによって潤滑油を供給することができる遊星ギアボックスが開示されている。他の遊星セットに面する潤滑剤回収トレイのカバーディスクは、この目的のために貫通開口部を有し、この貫通開口部は、回収空間に対向する給送口開口部のレベルにほぼ位置する。これにより、回収空間に回収される潤滑油は、給送口を通って一方の遊星セットの遊星軸受、及び貫通孔を介して他方の遊星セットの遊星軸受の両方に比例的に到達する。
【0005】
別の遊星駆動装置が独国特許出願公開第102018123592号明細書に開示されており、この遊星駆動装置の遊星軸受には、好ましくは、遊星キャリアが回転するとすぐに、潤滑剤回収トレイによって油溜めから潤滑油が供給されるべきである。その中で使用される潤滑剤回収トレイの回収空間は、隔壁によって円周方向に分離される。隔壁は、回収空間を給送口の数に対応する数の回収区画に分割する。隔壁は、遊星キャリアの回転方向が逆転する場合であっても開口部に潤滑油を最適に供給することができるように、それぞれの給送口の開口部に位置決めされている。
【0006】
シャフトのチャネル構造体は、多くの場合、シャフトの外側に一方の半径方向に延在するチャネル開口部のみを有し、それを通して、潤滑剤、通常は油が、外側に吐出される。結果として、潤滑剤は、一点において局所的にのみ適用され、これは、シャフト円周の周りに均一な分布が存在しないことを意味する。これは、円周の周りに見られるように、回収空間内に均一な潤滑剤分布も存在しないことを意味し、これは、個々の給送口への潤滑剤流れもまた、この不均一性に起因して均一ではないことを意味する。一方では遊星キャリア又は遊星ピンに対する、他方ではシャフトに対する潤滑剤回収トレイの固定された位置関係に起因して、より多くの潤滑剤が、円周方向にオフセットされた領域、特に反対側の領域よりも、シャフト側チャネルの延長部に隣接するか又はその延長部に直接存在する回収空間の領域に集まる。これは、円周方向で見てシャフト側チャネルの開口部の最も近くに位置決めされている給送口に、円周方向にオフセットして配置される給送口よりも多くの量の潤滑剤が供給されることを意味する。シャフト上の不均一な潤滑剤供給は、潤滑剤が円周方向で見られるように複数の位置において送達されるように、シャフト円周の周りに複数の半径方向チャネルを提供することによって相殺することができる。理想的には、チャネルの数は、給送口の数に対応し、これにより遊星ピンの数に対応することになる。しかしながら、特にシャフトに関する強度の理由から、複数のそのようなチャネルの形成は常に実用的であるとは限らず、そのため、多くの場合、1つのみの半径方向に延在するチャネルが提供される。不均一な潤滑剤供給は、それぞれの軸受の異なるレベルの潤滑をもたらし、これは、遊星ピンの異なる温度挙動に反映される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明は、比較的改良された遊星ギアボックスを提供することに基づく。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために、冒頭で述べたタイプの遊星ギアボックスでは、本発明によれば、円周方向で見て、チャネルの開口部のより近くに位置決めされている給送口が、より遠く離れて位置決めされている給送口よりも小さい開口部断面を有する。
【0009】
本発明によれば、潤滑剤回収トレイ上に提供される給送口は、異なる開口部断面によって特徴付けられ、それぞれのより小さいか又はより大きい開口部断面かは、円周方向で見て、一方のシャフト側チャネルの開口部に対する給送口の位置に依存する。上述のように最大量の潤滑剤が蓄積する、円周方向で見て開口部の最も近くに位置決めされている給送口は、円周方向で見てより遠く離れて位置決めされた給送口よりも小さい開口部断面を有し、これにより流れ断面を有する。当然のことながら遊星ピン及び遊星ギアの数に対応して、少なくとも2つの給送口が、しかし通常はより多くの、例えば3つ以上の給送口が、円周方向に分散されて提供される。したがって、個々の給送口の開口部断面又は流れ断面の実質的に位置に依存する変化又は調整は、円周方向で見て、回収空間内に存在する潤滑剤の量に関する不均一性に対処するために使用することができる。これは、小さい又は最小の開口部断面又は流れ断面を有するので、より少ない潤滑剤が開口部に最も近い給送口に供給され、その結果、より少ない潤滑剤が軸受点に到達し、一方、より多くの潤滑剤が円周方向により遠く離れて位置する1つ以上の給送口に供給され、その結果、隣接して位置決めされている給送口を介するよりもわずかに多い潤滑剤が関連付けられた軸受に供給されるためである。全体として、給送口の開口部断面又は流れ断面の設計又は変化は、当然ながら、動作中にほぼ同じ量の潤滑剤が各遊星ピンに供給され、これにより各軸受に供給されるように選択され、その結果、潤滑剤回収の一部における所与の不均一性にもかかわらず、均一な潤滑が達成される。
【0010】
例えば、3つの給送口が提供される場合、最小の開口部断面又は流れ断面を有する給送口は、好都合には、チャネル又は開口部の半径方向延長部に実質的に位置決めされ、一方、他の2つの給送口は、わずかに大きい開口部断面又は流れ断面を有し、第1の給送口に対して120°だけオフセットして位置決めされている。しかしながら、同じ角度オフセットに起因して、それらは同じ開口部断面を有する。例えば、4つの給送口が提供される場合、最小の開口部断面を有する第1の給送口は、チャネルの半径方向延長部に位置決めされ、より大きい開口部断面を有するが、両方とも同じ開口部断面を有する2つの更なる給送口は、90°だけオフセットされて位置決めされ、一方、第4の給送口は、180°だけオフセットされて位置決めされ、その場合、最大の流れ断面を有する。これは、最大量の潤滑剤が結局チャネル開口部に直接隣接する円周の周りに存在し、最小量の潤滑剤が180°反対側の領域に存在するという事実を反映している。
【0011】
開口部断面は、異なる方式で変化させることができる。こうして、本発明の第1の変形例によれば、各給送口は孔を有することができ、個々の給送口の孔径は、開口部断面を変化させるために異なる。給送口は、組立位置においてピンホールに係合するので、好ましくは中空円筒形であり、円筒形の孔を有し、開口部断面を変化させるために、孔径を容易に変化させることができる。これは、開口部断面又は流れ断面が内径によって制御されることを意味する。
【0012】
代替的な変形形態では、1つ以上の給送口はまた、好ましくは回収空間に向かって開口している給送口の端部に提供された、開口部断面を減少させるオリフィスを有することができる。この場合、断面は、オリフィスの形態の断面の幾何学的減少によって変化し、これは、オリフィス制御がここで提供されることを意味する。それぞれの給送口の好ましくは中空円筒形の孔内に多少張り出すオリフィスは、好都合には、回収空間への移行部に位置するが、他方の端部に位置決めすることもできる。
【0013】
また、遊星キャリアがシャフトに対して半径方向に延在するチークを有し、このチークを使用して遊星キャリアがシャフトに接続され、かつこのチークには、その上に給送口が軸方向に突出する環状底部が近接することも考えられる。このようにして、遊星キャリアをシャフトに容易に接続することができ、同時に、トレイの底部へのチーク表面の移行部によって、潤滑剤をこのチークを介して適宜にガイドすることもできる。本発明の更なる発展形態では、チークは、潤滑剤回収トレイに面する側部に潤滑剤ガイド構造体を有することができる。例えば、チークは、断面で見て、内周から始まって曲げられ、その結果、潤滑剤をガイドすることができる対応する角張った構造体が得られる。
【0014】
本発明の好都合な更なる発展形態によれば、環状回収空間は、より大きい開口部断面を有する給送口の領域においてよりも、より小さい開口部断面を有する給送口の領域において、半径方向により広くすることができる。そのため、回収空間は、異なる程度に局所的に半径方向に拡張するので、円周方向で見て非対称である。したがって、より小さい開口部断面を有する給送口の領域には、他の給送口位置よりもわずかに大きい貯油層が存在し、より多くの油が給送口を介して吐出される。半径方向の変化の代替として、軸方向における局所的な変化のために、回収空間をやや高く又は低くなるように構成することも考えられる。これは、非対称設計を達成するために使用することもできる。
【0015】
遊星ギアボックス自体に加えて、本発明はまた、上述のタイプの遊星ギアボックスのための潤滑剤回収トレイに関する。潤滑剤回収トレイは、底部によって画定された回収空間と、底部から軸方向に突出しており、かつ回収空間と連通している少なくとも2つの中空給送口とを有する。給送口は、異なる開口部断面を少なくとも部分的に有することを特徴とする。
【0016】
給送口は各々、孔を有することができ、孔径は、開口部断面を変化させるために異なる。代替的に、1つ以上の給送口はまた、好ましくは回収空間に向かって開口している給送口の端部に提供された、流れ断面を減少させるオリフィスを有することができる。両方の代替形態は、それに応じて開口部断面又は流れ断面を変化させることを容易にする。
【0017】
最後に、環状回収空間は、より大きい開口部断面を有する給送口の領域においてよりも、より小さい開口部断面を有する給送口の領域において、半径方向により広い、又は軸方向により高くすることができる。
【0018】
本発明は、図面を参照して例示的な実施形態に基づいて以下に説明される。図面は、概略図である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明による遊星ギアボックスの概略図を第1の横断面における断面図で示し、第1の横断面は、シャフト側チャネルと、この断面に位置する潤滑剤回収トレイの給送口とを通って延びている。
図2図1の遊星ギアボックスを、図1の給送口に対して120°だけオフセットされた給送口を通って延びる横断面に沿った断面図で示し、この例では、120°だけオフセットされている。
図3】第2の実施形態における本発明による遊星ギアボックスの概略図を断面図で示し、図1に対応して、やはり、チャネルと、チャネルに半径方向に隣接する給送口とを通って延びており、オリフィスによって給送口の開口部断面が減少している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明による遊星ギアボックス1の概略図を示しており、遊星ギアボックス1は、軸方向に延在するチャネル4と、チャネル4から半径方向に分岐し、シャフト2の外面に開口しているチャネル5とからなるチャネル構造体3を有するシャフト2を備える。このチャネル構造体3を介して、潤滑剤を軸方向から給送することができる。
【0021】
更に、遊星キャリア6が提供されており、遊星キャリア6の上に複数の遊星ピン7(図示の例では3つ)が配置され、遊星ギア9が、転がり軸受の形態の軸受8を介して各遊星ピン7上に配置されている。遊星キャリア6は、一方の側にチーク10を有し、これを介してシャフト2のフランジ11に固定されている。フランジ11は曲げられている、すなわち、角度付けされている。この曲げられた、すなわち角度付けされた構造体は、潤滑剤ガイド構造体を形成し、この潤滑剤ガイド構造体を介して、以下に記載されるように、潤滑剤を標的化された様式でガイドすることができる。
【0022】
また、好ましくはプラスチック製の潤滑剤回収トレイ12が提供されており、この潤滑剤回収トレイ12は環状であり、かつ遊星ピン7の数に対応する3つの中空給送口14がそこから軸方向に突出する底部13を有する。各中空給送口14は、それぞれの遊星ピン7のチャネル構造体15に係合しており、チャネル構造体15は、軸方向に延在するチャネル16と、そこから半径方向に分岐し、軸受8の下で開口しているチャネル17とを備える。
【0023】
潤滑剤回収トレイ12はまた、トレイ縁部18を有し、このトレイ縁部18は、底部13から軸方向に延在し、次いで半径方向内向きに引き込まれ、その結果、底部13とともにトレイ縁部18によって円周方向回収空間19が形成されている。潤滑剤回収トレイ12は、軸方向で見て開口しており、その結果、チャネル5から漏出する潤滑剤は、潤滑剤回収トレイ12に入り、回収空間19の中に回収することができる。軸方向で見て、チーク10が底部13に続いているので、この構成は結局閉鎖されており、その結果、潤滑剤ガイドが提供される。潤滑剤回収トレイ12は、中空給送口14を介して遊星ピン7に向かってのみ開口している。
【0024】
図1による断面図に示される給送口14は、実際には、チャネル5の開口部の半径方向延長部に、又はチャネル5の開口部と同じ平面に位置する。給送口14は円筒状の孔20を有しており、この孔20は第1の内径を有し、この第1の内径によって、流れ断面とも称することができる第1の開口部断面Q1が規定される。この開口部断面Q1は、全ての給送口14と比較して小さいか、又は全ての給送口の最小開口部断面である。これは、この領域がチャネル5の開口部に直接隣接しているので、潤滑剤の大部分が潤滑剤回収トレイ12又は回収空間19のこの領域に集まるからである。
【0025】
図2は、図1の遊星ギアボックスを更なる断面図で示しており、ここでは、3つの遊星ピン7が図1の横断面に対して120°だけオフセットされている。断面図は、第2の給送口14を通って延びており、第2の給送口14は、対応する遊星ピン7内に開口し、対応する遊星ピン7はまた、必然的に、図1の遊星ピン7に対して120°だけオフセットされて位置決めされている。中空給送口14はまた、ここでは円筒状の孔20を有するが、その内径は、図1の給送口14の孔20の内径よりもわずかに大きい。結果として、図2の給送口14は、その開口部断面Q1を有する図1の給送口14よりもわずかに大きい開口部断面Q2を有する。これは、より小さい開口部断面Q1を有する図1の給送口14を介するよりもわずかに多い潤滑剤を、図2の給送口14を介して回収空間19から遊星ピン7に給送することができることを意味する。これは、図2の給送口14が、記載のように図1の給送口14に対して120°だけオフセットされ、これにより図2に示されるチャネル5の開口部に対しても120°だけオフセットされるので、図1の給送口の反対側の回収空間領域よりもわずかに少ない潤滑剤が図2の給送口14に隣接する回収空間19の領域に蓄積するという事実を考慮することができる。
【0026】
これらの異なる開口部断面Q1及びQ2は、低減された量がチャネル5の開口部に直接隣接する遊星ピン7に供給された後に、十分な量の潤滑剤を、チャネル5の開口部に対して円周方向にオフセットされた給送口14を介してそれぞれの遊星ピン7に供給し、これにより軸受8に供給することができることを確実にすることができる。これは、回収空間19の中に蓄積する潤滑剤量の不均一性又は不均等性を、異なる開口部断面を介して補償することができることを意味する。
【0027】
図1及び図2は、中空円筒状の孔20の異なる内径による開口部断面の変化を示しており、それぞれの給送口14がチャネル5の開口部から円周方向により遠く離れて位置決めされているほど、内径は大きくなる。
【0028】
対照的に、図3は、第2の実施形態における本発明による遊星ギアボックス1の実施形態を示している。基本設計は、図1及び図2に示される実施形態と同一であり、そのため、関連する説明が参照され、開口部断面を変化させるための給送口14の領域における潤滑剤回収トレイ12の設計のみが、わずかに異なる。ここでも、やはり、図1の平面に対応する平面における断面図が示されている。これは、横断面がチャネル5及び半径方向に隣接する給送口14を通って延びていることを意味する。これも中空円筒状の孔20を有している。しかしながら、それは、孔20内に実質的に半径方向に延在するオリフィス21を介して断面がわずかに減少している。オリフィス21は、回収空間19への移行部に位置する。このオリフィス21は、開口部断面を狭めており、これは、開口部断面Q1がより小さいことを意味する。開口部断面Q1は、円周方向にオフセットして位置決めされている給送口14の開口部断面Q2よりも小さい。図2による断面図は、図3に関して同じように見ることができ、120°だけ回転された横断面における図3の遊星ギアボックスを通る断面図を示している。120°だけオフセットされて位置決めされている給送口14は、その開口部断面がオリフィスによって狭められておらず、したがって、より大きい開口部断面Q2を有している。
【0029】
したがって、この実施形態では、それぞれの開口部断面は、提供されたオリフィスによって変化し、それに応じて孔径を狭める。
【0030】
図示の例では、3つのみの遊星ギア、したがって3つのみの遊星ピン7が提供され、その結果、3つのみの給送口14が提供されている。当然のことながら、例えば4つ又は5つの遊星ギア9、その結果、遊星ピン7及び給送口14を設けることもでき、これらは、その場合、円周の周りに対応するピッチで位置決めされている。このような場合にも、円周方向で見て、シャフト2のチャネル5の開口部に最も近い、又は好ましくはその半径方向延長部にある給送口14は、最小の開口部断面を有し、開口部断面は、次に続く給送口14がこの第1の給送口14からより遠く離れて位置決めされているほど増加する。
【符号の説明】
【0031】
1 遊星ギアボックス
2 シャフト
3 チャネル構造体
4 軸方向に延在するチャネル
5 半径方向に分岐するチャネル
6 遊星キャリア
7 遊星ピン
8 軸受
9 遊星ギア
10 チーク
11 フランジ
12 潤滑剤回収トレイ
13 底部
14 給送口
15 チャネル構造体
16 軸方向に延在するチャネル
17 チャネル
18 トレイ縁部
19 回収空間
20 孔
21 オリフィス
Q1、Q2 開口部断面
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2024-03-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑剤を誘導するためのチャネル構造体(3)を有するシャフト(2)であって、前記シャフト(2)の外面上のチャネル(5)開口部を備える、シャフト(2)と、遊星キャリア(6)と、前記遊星キャリア(6)上に配置されており、かつその上に1つの遊星ギア(9)が各々取り付けられている少なくとも2つの遊星ピン(7)であって、各遊星ピン(7)が、前記潤滑剤を前記遊星ギア(9)の軸受(8)に誘導するためのチャネル構造体(15)を有する、少なくとも2つの遊星ピン(7)と、シャフト側チャネル(5)を介して供給される前記潤滑剤を回収するための、回収空間(19)を有する潤滑剤回収トレイ(12)であって、前記潤滑剤をそれぞれの前記チャネル構造体(15)の中に誘導するために遊星ピン側のチャネル構造体(15)の中に各々開口している少なくとも2つの中空給送口(14)を備える、潤滑剤回収トレイ(12)と、を備える遊星ギアボックスであって、円周方向で見て、前記チャネル(5)の前記開口部のより近くに位置決めされている給送口(14)が、より遠く離れて位置決めされている給送口(14)よりも小さい開口部断面(Q1)を有することを特徴とする、遊星ギアボックス。
【請求項2】
前記給送口(14)が各々、孔(20)を有し、前記孔の直径が、前記開口部断面(Q1、Q2)を変化させるために異なることを特徴とする、請求項1に記載の遊星ギアボックス。
【請求項3】
1つ以上の給送口(14)が、前記開口部断面(Q1、Q2)を減少させ、かつ前記回収空間(19)に向かって開口している前記給送口(14)の端部に提供されているオリフィス(21)を有することを特徴とする、請求項1に記載の遊星ギアボックス。
【請求項4】
前記遊星キャリア(6)が、前記シャフト(2)に対して半径方向に延在するチーク(10)を有し、前記チーク(10)を使用して前記遊星キャリア(6)が前記シャフト(2)に接続されており、かつ前記チーク(10)には、その上に前記給送口(14)が軸方向に突出する環状底部(13)が近接することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の遊星ギアボックス。
【請求項5】
前記チーク(10)が、前記潤滑剤回収トレイ(12)に面する側部に潤滑剤ガイド構造体を有することを特徴とする、請求項4に記載の遊星ギアボックス。
【請求項6】
環状の回収空間(19)が、より大きい開口部断面(Q2)を有する給送口(14)の領域においてよりも、より小さい開口部断面(Q1)を有する前記給送口(14)の領域において、半径方向により広い、又は軸方向により高いことを特徴とする、請求項1に記載の遊星ギアボックス。
【請求項7】
底部(13)によって画定されている回収空間(19)と、前記底部(13)から軸方向に突出しており、かつ前記回収空間(19)と連通している少なくとも2つの中空給送口(14)とを備える、請求項1に記載の遊星ギアボックス(1)のための潤滑剤回収トレイであって、前記給送口(14)が、少なくとも部分的に異なる開口部断面(Q1、Q2)を有することを特徴とする、潤滑剤回収トレイ。
【請求項8】
前記給送口(14)が各々、孔(20)を有し、前記孔の直径が、前記開口部断面を変化させるために異なることを特徴とする、請求項7に記載の潤滑剤回収トレイ。
【請求項9】
1つ以上の給送口(14)が、流れ断面を減少させ、かつ前記回収空間(19)に向かって開口している前記給送口(14)の端部に提供されているオリフィス(21)を有することを特徴とする、請求項7に記載の潤滑剤回収トレイ。
【請求項10】
環状の回収空間(19)が、より大きい開口部断面(Q2)を有する給送口(14)の領域においてよりも、より小さい開口部断面(Q1)を有する前記給送口(14)の領域において、半径方向により広い、又は軸方向により高いことを特徴とする、請求項7~9のいずれか一項に記載の潤滑剤回収トレイ。
【国際調査報告】