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特表2024-530814遊星ギアボックスのためのオイル回収パン
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  • 特表-遊星ギアボックスのためのオイル回収パン 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-23
(54)【発明の名称】遊星ギアボックスのためのオイル回収パン
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/04 20100101AFI20240816BHJP
   F16H 57/08 20060101ALI20240816BHJP
   F16H 1/28 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
F16H57/04 J
F16H57/08
F16H1/28
F16H57/04 Q
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515023
(86)(22)【出願日】2022-08-10
(85)【翻訳文提出日】2024-03-06
(86)【国際出願番号】 DE2022100585
(87)【国際公開番号】W WO2023036355
(87)【国際公開日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】102021123096.9
(32)【優先日】2021-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Industriestr. 1-3, 91074 Herzogenaurach, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ハイメル
(72)【発明者】
【氏名】アルフレート ホック
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック フィッシャー
(72)【発明者】
【氏名】ラインハルト レーナー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ケック
【テーマコード(参考)】
3J027
3J063
【Fターム(参考)】
3J027FA22
3J027FA23
3J027FB01
3J027GA03
3J027GC22
3J027GE01
3J027GE07
3J063AA04
3J063AB12
3J063AC01
3J063AC03
3J063BA11
3J063CA01
3J063CB04
3J063CB06
3J063CD02
3J063XD03
3J063XD22
3J063XD43
3J063XD46
3J063XD62
3J063XD72
3J063XD73
3J063XE15
3J063XF04
3J063XF12
3J063XF14
(57)【要約】
本発明は、遊星ギアボックス(1)のためのオイル回収パンであって、-チャネル状のオイル回収空間(18)を有するパン本体(14)と、-オイル回収空間(18)と連通する複数の軸方向に張り出している中空オイル給送口(19)と、を備え、オイル回収空間(18)内に半径方向に延在しており、かつ円周の周りに少なくとも部分的に延びる少なくとも1つの保持プレート(21)が提供されており、この保持プレートによって、オイル保持空間(22)がオイル回収空間(18)内に形成されている、オイル回収パンに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊星ギアボックス(1)のためのオイル回収パンであって、チャネル状のオイル回収空間(18)を有するパン本体(14)と、前記オイル回収空間(18)と連通する複数の軸方向に張り出している中空オイル給送口(19)と、を備え、前記オイル回収空間(18)内に半径方向に延在しており、かつ少なくとも円周の周りの部分に延びる少なくとも1つの保持プレート(21)が提供されており、前記保持プレートによって、オイル保持空間(22)が前記オイル回収空間(18)内に形成されていることを特徴とする、オイル回収パン。
【請求項2】
前記保持プレート(21)が、前記円周の全体の周りに延びていることを特徴とする、請求項1に記載のオイル回収パン。
【請求項3】
前記保持プレート(21)の幅が、前記円周の周りで変化することを特徴とする、請求項2に記載のオイル回収パン。
【請求項4】
前記保持プレート(21)が、円周部分の周りにのみ延在しており、かつオイル給送口(19)につながる少なくとも1つの開口部の上に達していることを特徴とする、請求項1に記載のオイル回収パン。
【請求項5】
前記保持プレート(21)が、前記開口部の両側に延在することを特徴とする、請求項4に記載のオイル回収パン。
【請求項6】
前記保持プレート(21)が、軸方向で見て、前記パン本体(14)の底壁(15)であって、そこから前記オイル給送口(19)が延在する、底壁(15)に対して、反対側の壁(17)よりも近くに位置決めされていることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のオイル回収パン。
【請求項7】
オイルを誘導するためのチャネル構造体(7)を有するシャフト(6)であって、前記シャフト(6)の外側にチャネル(9)開口部を備える、シャフト(6)と、遊星キャリア(2)と、前記遊星キャリア(2)上に配置された少なくとも2つの遊星ピン(3)であって、前記遊星ピンの各々上に遊星ギア(5)が取り付けられており、各遊星ピン(3)が、前記オイルを前記遊星ギア(5)の軸受(4)に給送するためのチャネル構造体(10)を有する、少なくとも2つの遊星ピン(3)と、請求項1~6のいずれか一項に記載の、シャフト側チャネル(9)を介して給送されたオイルを回収するためのオイル回収パン(13)と、を備え、前記オイル回収パン(13)が、少なくとも2つの中空オイル給送口(19)であって、各々が、前記オイルをそれぞれの遊星ピン側チャネル構造体(10)内に給送するために前記チャネル構造体(10)内に開口している、少なくとも2つの中空オイル給送口(19)を備える、遊星ギアボックス。
【請求項8】
幅が変化する保持プレート(21)を有し、前記オイル回収パン(13)が、円周方向で見て、最大幅の領域が前記シャフト側チャネル(9)の前記開口部を覆うように位置決めされていることを特徴とする、請求項7に記載の遊星ギアボックス。
【請求項9】
前記円周の周りに部分的にのみ延在する保持プレート(21)を有し、前記オイル回収パン(13)は、前記保持プレート(21)が、前記円周の方向で見て、前記シャフト側チャネル(9)の前記開口部を覆うように位置決めされていることを特徴とする、請求項7に記載の遊星ギアボックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊星ギアボックスのためのオイル回収パンであって、チャネル状のオイル回収空間を有するパン本体と、オイル回収空間と連通する複数の軸方向に張り出している中空オイル給送口と、を備える、オイル回収パンに関する。
【背景技術】
【0002】
遊星ギアボックスは、多種多様な用途で使用される。それらは、例えば、ハイブリッド変速機などの車両用変速機に使用される。遊星ギアボックスは、上に複数の遊星ピンが配置された遊星キャリアを有し、遊星ピンの上には、遊星ギアが、好適な軸受、通常はニードル軸受の形態の転がり軸受を介して回転可能に取り付けられる。外歯遊星ギアは、それ自体知られている方法で内歯リングギアと噛み合う。潤滑剤を遊星ギアの軸受に供給するために、対応する潤滑剤装置又は潤滑剤供給が提供される。一方では、この装置は、中心シャフト上に提供されるチャネル構造体、例えばシャフト軸に沿って延びるチャネルを備え、このチャネルから更なるチャネルが半径方向に分岐し、このチャネルはシャフトの外側に開口している。更に、オイル回収パンが提供され、このオイル回収パンは、チャネルを介して給送される潤滑油のためのオイル回収空間を有しており、潤滑油がこのオイル回収空間から漏出するか、又はこのオイル回収空間から外側に放出される。したがって、オイルはオイル回収空間の中に回収される。遊星ピンの数に対応する数のオイル給送口が、すなわち、例えば貫通孔を有する軸方向口が、オイル回収パンの底部から延在している。オイル給送口は、オイル回収空間と、各遊星ピンに提供されたチャネル構造体とに連通し、チャネル構造体は、通常、ピンの長手方向軸に沿って延在し、中にそれぞれのオイル給送口が係合するチャネルと、そこから半径方向に分岐し、軸受につながる分岐チャネルとを備える。オイル回収空間から来るオイルは、それぞれの給送口を介して遊星ピン側チャネル構造体に給送され、ピン側チャネル構造体を介して遊星ギア軸受に流れる。オイル回収空間及び対応するオイル給送口を有するそのようなオイル回収パンは、関連付けられた軸方向軸受ワッシャを有する軸方向軸受を介して遊星キャリアに固定されており、例えば、独国特許出願公開第102005054084号明細書から知られている。
【0003】
シャフトのチャネル構造体は、多くの場合、シャフトの外側に1つの半径方向に延在するチャネル開口部のみを有し、その開口部を通してオイルが外側に排出される。結果として、オイルは、一点においてのみ局所的に加えられ、これは、シャフト円周の周りに均一な分布がないことを意味する。これは、円周の周りに見て、オイル回収空間の中に均一なオイル分布も存在しないことを意味し、これは、個々の給送口へのオイル流れもまた、この不均一性に起因して均一ではないことを意味する。一方では遊星キャリア又は遊星ピンに対する、他方ではシャフトに対する、オイル回収パンの固定された位置関係に起因して、より多くのオイルが、多くの場合、円周方向にオフセットされた領域、特に、反対側の領域よりも、シャフト側チャネルの延長部に隣接するか又はその延長部に存在するオイル回収空間の領域に集まる。これは、円周方向で見て、シャフト側チャネルの開口部の最も近くに位置決めされているオイル給送口に、円周方向にオフセットして配置されているオイル給送口よりも多い量のオイルが供給されることを意味する。シャフト上の不均一な潤滑剤供給は、潤滑剤が、円周方向で見て、複数の位置において送達されるように、シャフト円周の周りに複数の半径方向チャネルを提供することによって相殺することができる。理想的には、チャネルの数は、オイル給送口の数に対応し、これにより遊星ピンの数に対応することになる。しかしながら、特にシャフトに関する強度の理由から、複数のそのようなチャネルの形成は常に実用的であるとは限らず、そのため、多くの場合、1つのみの半径方向に延在するチャネルが提供される。不均一なオイル供給は、それぞれの軸受の異なるレベルの潤滑をもたらし、これは、遊星ピンの異なる温度挙動に反映される。
【0004】
独国特許出願公開第102018123592号明細書には、チャネル状のオイル回収空間によって外周が区切られたパン本体を有する遊星ギアボックスのためのオイル回収パンが開示されている。遊星ピンの数に対応する数のオイル給送口が、オイル回収パンから延在している。オイル回収空間は複数の部分に分割されており、これらの部分は円周上で隔壁によって互いに分離されている。
【0005】
独国特許出願公開第102019108050号明細書には、潤滑装置が開示されており、その潤滑装置のオイル回収パンは、オイル給送口と、オイル回収パンを遊星キャリアに締結するための締結手段とを提供する。オイル回収パンの幅は変化し、オイル給送口に向かって狭くなる。加えて、オイル回収パンは、パイプソケットの領域に各々1つの隔壁を備え、その隔壁は、オイル回収パンを2つの部分に分割する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
こうして、本発明は、個々のオイル給送口へのオイル給送を可能にし、これにより遊星ピンをより均一にすることを可能にする、改良されたオイル回収パンを提供するという目的に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、冒頭で述べた形式のオイル回収パンでは、本発明によれば、オイル回収空間内に半径方向に延在しており、かつ少なくとも円周の周りの部分に延びる少なくとも1つの保持プレートが提供されており、この保持プレートによって、オイル保持空間がオイル回収空間内に形成されている。
【0008】
本発明によるオイル回収パンは、オイル保持空間がオイル回収空間の中に追加的に統合されていることを特徴とし、オイル保持空間は、対応する量のオイル又はオイル供給を回収及び蓄積するようにもともと機能し、オイル保持空間は、保持空間のサイズによって画定される対応する量のオイルを常に蓄積し、それを一種のリザーバとして保持するように機能する。このオイル保持空間は、少なくとも1つの環状保持プレートによって実装され、この環状保持プレートは、オイル回収空間内に半径方向にわずかに延在し、すなわち、部分的環状に又は環状にチャネル状のオイル回収空間の内側から実質的に内向きに延びている。したがって、保持プレートは、オイル回収空間内に張り出している一種のウェブを形成する。シャフトによって出射され、パンによって回収されるオイルの流入の方向に関して、流入の方向に隣接する部分的環状空間又は完全環状空間が、このウェブを介して形成され、その中にオイル又はオイルの大部分が最初に流入する。オイルは、最初にそこに保持され、したがって、この保持プレート、すなわち保持ウェブを越えて流れず、最初にオイル保持空間の中に残り、その中で円周の周りに分配される。オイル保持空間が充填されるときのみ、すなわち、十分に大きいオイルリザーバがその中に構築されたときのみ、オイルは、保持プレートを越えて流れ、これにより、オイル保持空間から出て、オイル給送口の中に流れることができる。
【0009】
したがって、保持プレートは、これによりオイル保持空間の形成は、流入するオイルの大部分が流入の方向に隣接するオイル給送口に直接流入することを防止し、その結果、円周方向に続くオイル給送口に給送されるオイルが少なくなる。むしろ、最小量のオイルがオイル保持空間を介してオイル保持空間の中に常に保持され、オイル保持空間が満杯であるときにのみオイルがプレート上を流れることができるので、オイル保持空間の形成は、個々のオイル給送口へのオイルの均一な流れを可能にするが、これは、プレートの長さにわたってほぼ均一に生じる。結果として、全ての遊星ギア軸受には、ほぼ同じ量のオイルが供給され、その結果、個々の軸受点の潤滑及び冷却は、ほぼ均一であり、軸受領域における温度発生もまた、ほぼ均一である。
【0010】
保持プレートは、オイル回収空間又はパン本体の円周の周りの部分にのみ延在することができる。これに関して、位置決めは、オイルがオイル回収パンに入るとき及びオイル回収空間の中での分配中のオイルの流れ挙動を考慮して選択することができる。動作中にオイル回収パンの回転の方向に基づいて好ましい流れ方向が確立される場合には、この特性を考慮して、円周方向での保持プレートの延在方向並びに延在長さを決定することができる。当然ながら、保持プレートは、オイル給送口の前に延在し、このオイル給送口は、このオイル給送口への直接的な流れが防止されるべきであるので、組み立て位置において、オイルが放出されるシャフト側チャネルに隣接して位置決めされている。次いで、プレートが一方向又は他の方向にどれだけ遠くまで延びるか、したがって、オイル保持空間がどれだけ遠くまで延びるかは、オイル流れなどの様々な設計パラメータだけでなく、次の隣接するオイル給送口間の距離なども考慮に入れて、記載のように画定することができる。
【0011】
部分的にのみ環状であるプレートを有する、すなわち、オイル回収空間が部分的にのみ円周の周りに延在しているオイル回収パンを使用する場合には、組み立て中に、オイル回収パンがある特定の画定された向きで遊星キャリアに取り付けられるように注意しなければならない。これは、保持プレートが、これによりオイル保持空間が、シャフト側出口チャネルに対して正確に位置決めされるようにオイル回収パンが向けられることを確実にしなければならないためである。組み立て中に観察されるべきこのような向きを回避するために、本発明によれば、保持プレートが円周全体の周りに延びていることが考えられる。これは、保持プレートが円周全体又はオイル回収空間の周りに延在し、その結果、オイル保持空間もチャネル状の円周保持チャネルを構成することを意味する。したがって、オイルは、部分的にだけではなく、パンの円周全体の周りに蓄積している。この理由のために、パンのこの実施形態では、オイル回収パンは、任意の向きで遊星キャリア上に取り付けることができる。
【0012】
この文脈では、保持プレートの幅が円周の周りで変化することが考えられる。これは、保持プレートがオイル回収空間内に異なる距離で延在し、その結果、チャネル状の保持空間が、事実上、異なる深さであることを意味する。例えば、プレートは、オイル入口の領域、すなわち、シャフト側出口チャネルに隣接する領域においてわずかに高く、片側又は両側に向かって高さが徐々に減少することができる。その結果、プレートは、シャフト側出口チャネルに隣接する第1のオイル給送口に隣接する領域においてわずかに高く、円周方向に続く更なるオイル給送口に隣接する領域においてわずかに低い。これは、それぞれのオイル給送口にオイルを給送するために超えなければならない保持閾値が、後続のオイル給送口の領域よりも第1のオイル給送口の領域においてわずかに高いことを意味する。記載のように、オイルは主に第1のオイル給送口の領域の中に流れ込むので、そこには常にわずかに多くのオイルが存在する。したがって、異なる高さは、プレートがそこでわずかに高いので、この領域のオイルが、円周方向に続く領域よりも少し多く保持されることを確実にすることができる。それにもかかわらず、保持プレートは、全てのオイル給送口が均一に供給されるように、小さな時間ウィンドウ内で至る所でオーバーフローする。この実施形態でも、オイル回収パンは、円周保持プレートにもかかわらず、組み立て中に正確に位置決めされなければならない。
【0013】
代替的に、上述のように、プレートが円周部分の周りにのみ延在しており、かつオイル給送口につながる少なくとも1つの開口部の上に達することも考えられ、この場合、このオイル給送口は、組み立て位置においてシャフト側出口チャネルに隣接して位置決めされる。この点に関して、保持プレートは、開口部の両側まで延在することができ、すなわち、両側に延在することができ、両側の横方向の延在は、既に上述したように、同じであっても異なっていてもよい。
【0014】
好ましくは、保持プレートは、軸方向で見て、パン本体の底壁であってそこからオイル給送口が延在する、底壁に対して、反対側の壁よりも近くに位置決めされている。これは、オーバーフローが起こり得る前に最初に満たさなければならない比較的大きな保持リザーバを形成するように機能することができる。一方では、これは、適宜高いリザーバ量が画定されることを可能にし、他方では、残りの回収空間が適宜より小さく、したがってそれぞれのオイル給送口の開口部までの距離もより小さいので、オイルは、オーバーフローの開始時にオイル給送口内に比較的急速に流入することもできる。
【0015】
オイル回収パン自体に加えて、本発明はまた、オイルを誘導するためのチャネル構造体を有するシャフトであって、シャフトの外側にチャネル開口部を備える、シャフトと、遊星キャリアと、遊星キャリア上に配置された少なくとも2つの遊星ピンであって、その遊星ピンの各々上に遊星ギアが取り付けられており、各遊星ピンが、オイルを遊星ギアの軸受に給送するためのチャネル構造体を有する、少なくとも2つの遊星ピンと、上述の、シャフト側チャネルを介して給送されたオイルを回収するためのオイル回収パンと、を備え、オイル回収パンが、少なくとも2つの中空オイル給送口であって、各々が、オイルをそれぞれの遊星ピン側チャネル構造体内に給送するために構造体内に開口している、少なくとも2つの中空オイル給送口を備える、遊星ギアボックスに関する。本発明によるオイル回収パンは、好適な手段を介して、例えば、遊星キャリア上の対応する係止レセプタクル又は係止部分に係合する、プラスチック製のオイル回収パン上に形成された対応するスナップインフック又はスナップイン部分を介して、又は、遊星キャリアが軸方向に支持され取り付けられ、同時にオイル回収パンも固定する、隣接する軸方向軸受配置を介して、遊星キャリアに固定される。
【0016】
円周保持プレートを有するオイル回収パンが使用され、幅が変化する保持プレートを有する場合、オイル回収パンは、円周方向で見て、最大幅の領域がシャフト側チャネルの開口部を覆うように位置決めされている。これは、軸方向で見て、保持プレートが最も幅広である領域がシャフト側チャネル開口部に隣接するように、オイル回収パンが位置決めされ、取り付けられることを意味する。
【0017】
円周の周りに部分的にのみ延在する保持プレートを有するオイル回収パンが使用される場合、オイル回収パンは、保持プレートが、円周方向で見て、シャフト側チャネルの開口部を覆うように位置決めされている。この場合もまた、保持プレートが、軸方向で見て、チャネル開口部に隣接して、又は実質的にチャネル開口部の背後に位置するように、位置指向の設置が必要である。
【0018】
本発明は、図面を参照して例示的な実施形態に基づいて以下に説明される。図面は、概略図である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明によるオイル回収パンを有する本発明による遊星ギアボックスの長手方向断面図を示す。
図2図1の平面II-IIに沿った断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、遊星キャリア2を有する、本発明による遊星ギアボックス1を示しており、遊星キャリア2の上には、複数の遊星ピン3が配置され、外歯遊星ギア5が配置されかつ通常はニードル軸受である対応する軸受4を介して回転可能に取り付けられている。遊星キャリア2は、シャフト6に堅固に接続されている。
【0021】
軸受4にオイルを供給するために、すなわち軸受4を潤滑及び冷却するために、オイル供給装置が提供されている。一方では、この装置は、シャフト6上に形成されたチャネル構造体7を備え、チャネル構造体7は、ブラインド孔の形態の軸方向に延在するチャネル8と、チャネル8から分岐して半径方向に延在し、シャフトの外側に開口するチャネル9とを有する。オイルは、シャフト6を介してこのチャネル構造体7を介して供給され、半径方向外側に排出されるか、又はむしろ、シャフト6が回転すると、外側に放出される。
【0022】
また、各遊星ピン3はまた、ブラインド孔の形態の軸方向に延在するチャネル11、並びにそれから分岐して半径方向に延在するチャネル12を含むチャネル構造体10を有し、チャネル12は、軸受4の下で開口している。潤滑油は、このチャネル構造体10を介して軸受4に直接給送することができる。
【0023】
通常はプラスチック部品であるオイル回収パン13が、オイルをチャネル9の出口からチャネル11の入口に誘導するために提供される。このパンは、底部15と、円周側壁16と、底部15の反対側の壁17とを有するパン本体14を有し、底部15及び壁16、17によってオイル回収空間18が画定され、その中にチャネル9から漏出するオイルが回収され、そこからチャネル構造体10に給送される。
【0024】
これを可能にするために、遊星ピン3の数に対応する数のオイル給送口19が底部15に提供され、これらのオイル給送口19は、対応する軸方向孔20を有する中空給送口である。孔20は、一方では、オイル回収空間18と連通し、他方では、それぞれのチャネル11の中のそれぞれのオイル給送口19の係合により、チャネル11又はチャネル構造体10とも連通している。オイル回収パン13は、例えばスナップイン接続を介して遊星キャリア2に締結され、したがって遊星キャリア2とともに回転し、こうしてシャフト6とともに回転する。これは、チャネル9の相対位置、より正確には個々のオイル給送口19に対するその開口部の相対位置が常に同じままであることを意味する。
【0025】
壁17は、軸方向で見て、環状であり、開口しており、これは、チャネル9から排出されたオイルは、この環状開口部を介してオイル回収空間18に入り、そこで回収することができることを意味する。チャネル9の開口部は、軸方向及び円周方向で見て、図1の上部に示されるオイル給送口19に隣接し、一方、2つの他のオイル給送口19は、円周方向に120°だけそれにオフセットされて位置決めされている、すなわち、それらは、オイル回収パン13内へのオイルの流入点から比較的遠くに配置されていることが明らかである。したがって、3つの遊星ピン3が各々遊星ギア5とともに提供されており(これに関しては図2も参照されたい)、これが、3つのオイル給送口19が必然的に提供される理由である。動作中の回転にもかかわらず、チャネル9に対する3つの遊星ピン3の固定された位置関係、これによりオイル給送口19の固定された位置関係も、図2に見ることができる。この図は、図1の線II-IIに沿った断面図を示している。チャネル9は、詳細には示されていないが、図示によれば、シャフト6の中央チャネル8から垂直方向上向きに延在している、すなわち、図2に示すように、その上に位置決めされたオイル給送口に隣接して開口している。チャネル9に対して円周方向に120°だけオフセットされて位置決めされたオイル給送口19は、これから比較的大きく離れている。
【0026】
1つのチャネル9しか提供されていないので、オイルは、この領域でのみオイル回収パン13内に流入する。結果として、本発明による対応する手段が提供されない場合、流入するオイルの大部分は、軸方向及び円周方向に直接隣接している、図示の頂部に示されているオイル給送口19を介して直接流出するが、オフセットされたオイル給送口19に到達するオイルは少なくなる。これを防止するために、本発明によれば、保持プレート21が提供され、保持プレート21は、ウェブ状にオイル回収空間18内に半径方向に延在し、保持プレート21を介して、オイル保持空間22がオイル回収空間18内に形成されている。図2が示すように、保持プレート21は、パン本体14又はチャネル状のオイル回収空間18の円周の周りに完全に延在している。しかしながら、プレートは、幅が変化する、すなわち、プレートは、異なる位置で異なる程度にオイル回収空間18内に張り出している。図2に示すように、保持プレート21は、点Aから開始して反時計回り方向に徐々に広がり、実際には、上部オイル給送口19の直前でその最大幅に達し、再び幅が徐々に減少するまでの短い距離だけ保持される。幅は、円周方向で見て、反時計回り方向で上部オイル給送口19に続く第2のオイル給送口の手前で既にわずかに縮小している。次いで、保持プレート21が点Aにおいてその最小幅に戻る前に、右側に示されるオイル給送口19に向かって幅の更なる縮小が起こる。この幅の変化は、オイル給送口19の孔20の位置を示すピッチ円23と比較することによって容易に認識することができる。ピッチ円23に関して、保持プレート21の内側縁部の幅が変化しているか、又は、保持プレート21の内側縁部の経路が変化している。
【0027】
上述のように、保持プレート21は、流入するオイルが最初に蓄積する環状の保持空間22を画定する。これによりオイルリザーバが形成され、このオイルリザーバは、オイルが保持プレート21を越えて流れ、個々のオイル給送口19に流れることができる前に、最初にオイル保持空間22を満たさなければならない。特に、チャネル9に隣接する上部オイル給送口19の領域において、これにより、オイルがこのオイル給送口19に直接流入することが防止される。その代わりに、オイルは最初に保持プレート21に向かって流れ、保持プレート21に沿ってオイル保持空間22の中に分配される。
【0028】
プレート高さが変化することには、オイルが、チャネル9に隣接するオイル給送口19の領域に流れ込み、その結果、円周方向に隣接する領域よりも常にわずかに多くのオイルがそこに存在するという事実を考慮に入れている。プレート高さが変化することによって、オイルは最終的にプレート全長にわたって均一に保持プレート21を介して流れることができるので、個々の軸受4への十分に均一なオイル供給が達成される。
【0029】
図示の例示的な実施形態では、保持プレート21は、パン本体14の円周全体の周りに延びているが、部分的にのみ延ばすことも考えられる。これは、保持プレート21がその最小幅にある領域Aにおいて、保持プレート21が側壁16内に完全に入り込むこともできることを意味する。更に、図示の例では、保持プレート21は底部15に隣接して位置し、その結果、軸方向で見て、比較的広いオイル保持空間22が形成されている。当然ながら、保持プレート21は、異なる軸方向位置に提供することもできる。
【符号の説明】
【0030】
1 遊星ギアボックス
2 遊星キャリア
3 遊星ピン
4 軸受
5 遊星ギア
6 シャフト
7 チャネル構造体
8 チャネル
9 チャネル
10 チャネル構造体
11 チャネル
12 チャネル
13 オイル回収パン
14 パン本体
15 底部
16 側壁
17 壁
18 オイル回収空間
19 オイル給送口
20 軸方向孔
21 保持プレート
22 オイル保持空間
23 ピッチ円
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2024-03-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊星ギアボックス(1)のためのオイル回収パンであって、チャネル状のオイル回収空間(18)を有するパン本体(14)と、前記オイル回収空間(18)と連通する複数の軸方向に張り出している中空オイル給送口(19)と、を備え、前記オイル回収空間(18)内に半径方向に延在しており、かつ少なくとも円周の周りの部分に延びる少なくとも1つの保持プレート(21)が提供されており、前記保持プレートによって、オイル保持空間(22)が前記オイル回収空間(18)内に形成されていることを特徴とする、オイル回収パン。
【請求項2】
前記保持プレート(21)が、前記円周の全体の周りに延びていることを特徴とする、請求項1に記載のオイル回収パン。
【請求項3】
前記保持プレート(21)の幅が、前記円周の周りで変化することを特徴とする、請求項2に記載のオイル回収パン。
【請求項4】
前記保持プレート(21)が、円周部分の周りにのみ延在しており、かつオイル給送口(19)につながる少なくとも1つの開口部の上に達していることを特徴とする、請求項1に記載のオイル回収パン。
【請求項5】
前記保持プレート(21)が、前記開口部の両側に延在することを特徴とする、請求項4に記載のオイル回収パン。
【請求項6】
前記保持プレート(21)が、軸方向で見て、前記パン本体(14)の底壁(15)であって、そこから前記オイル給送口(19)が延在する、底壁(15)に対して、反対側の壁(17)よりも近くに位置決めされていることを特徴とする、請求項に記載のオイル回収パン。
【請求項7】
オイルを誘導するためのチャネル構造体(7)を有するシャフト(6)であって、前記シャフト(6)の外側にチャネル(9)開口部を備える、シャフト(6)と、遊星キャリア(2)と、前記遊星キャリア(2)上に配置された少なくとも2つの遊星ピン(3)であって、前記遊星ピンの各々上に遊星ギア(5)が取り付けられており、各遊星ピン(3)が、前記オイルを前記遊星ギア(5)の軸受(4)に給送するためのチャネル構造体(10)を有する、少なくとも2つの遊星ピン(3)と、請求項1~6のいずれか一項に記載の、シャフト側チャネル(9)を介して給送されたオイルを回収するためのオイル回収パン(13)と、を備え、前記オイル回収パン(13)が、少なくとも2つの中空オイル給送口(19)であって、各々が、前記オイルをそれぞれの遊星ピン側チャネル構造体(10)内に給送するために前記チャネル構造体(10)内に開口している、少なくとも2つの中空オイル給送口(19)を備える、遊星ギアボックス。
【請求項8】
幅が変化する保持プレート(21)を有し、前記オイル回収パン(13)が、円周方向で見て、最大幅の領域が前記シャフト側チャネル(9)の前記開口部を覆うように位置決めされていることを特徴とする、請求項7に記載の遊星ギアボックス。
【請求項9】
前記円周の周りに部分的にのみ延在する保持プレート(21)を有し、前記オイル回収パン(13)は、前記保持プレート(21)が、前記円周の方向で見て、前記シャフト側チャネル(9)の前記開口部を覆うように位置決めされていることを特徴とする、請求項7に記載の遊星ギアボックス。
【国際調査報告】