(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-23
(54)【発明の名称】ポリウレタン組成物、これを用いて調製したコンポジット材料及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
C08G 18/72 20060101AFI20240816BHJP
C08G 18/67 20060101ALI20240816BHJP
C08G 18/10 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
C08G18/72 010
C08G18/67 055
C08G18/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515521
(86)(22)【出願日】2021-09-13
(85)【翻訳文提出日】2024-03-08
(86)【国際出願番号】 CN2021117930
(87)【国際公開番号】W WO2023035262
(87)【国際公開日】2023-03-16
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ、ファン
(72)【発明者】
【氏名】ペラカーニ、ルイージ
(72)【発明者】
【氏名】グオ、クンペン
(72)【発明者】
【氏名】フォン、シャオグァン
(72)【発明者】
【氏名】スン、ガン
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ、ジェンチン
【テーマコード(参考)】
4J034
【Fターム(参考)】
4J034CA04
4J034CC03
4J034DA01
4J034DB03
4J034DB07
4J034DG04
4J034FB01
4J034FC01
4J034FD01
4J034HA01
4J034HA07
4J034HC12
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC71
4J034JA42
4J034QB03
4J034QB14
(57)【要約】
ポリウレタン組成物、これを用いて調製されたコンポジット材料、及びポリウレタン組成物を使用してポリウレタン樹脂を調製する方法が提供される。本ポリウレタン組成物は、A)A1)と、A2)及びA3)の少なくとも1つ:A1)第1のポリイソシアネート化合物;A2)第2のポリイソシアネート化合物と第1のポリオールとの反応によって形成される第1のプレポリマーであって、21~25%のNCO含有率を有する、第1のプレポリマー;A3)第3のポリイソシアネート化合物と第2のポリオールとの反応によって形成される第2のプレポリマーであって、第2のプレポリマーが10~20%のNCO含有率を有する、イソシアネート成分であって、第1のプレポリマーと第2のプレポリマーとの総量が、イソシアネート成分の総重量に対して、10~70重量%である、イソシアネート成分と;B)第3のポリオール及びイソシアネート反応性(メタ)アクリレートモノマーを含む、イソシアネート-反応性成分と;C)遊離ラジカル開始剤とを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン組成物であって、
A)A1)と、A2)又はA3)の少なくとも1つ:
A1)第1のポリイソシアネート化合物;
A2)第2のポリイソシアネート化合物と30~200g/eqの平均当量及び2~3の平均官能価を有する第1のポリオールとの反応によって形成される第1のプレポリマーであって、前記第1のプレポリマーの重量に対して、21~25%のNCO含有率を有する、第1のプレポリマー;
A3)第3のポリイソシアネート化合物と250~3000g/eqの平均当量及び2~3の平均官能価を有する第2のポリオールとの反応によって形成される第2のプレポリマーであって、前記第2のプレポリマーの重量に対して、10~20%のNCO含有率を有する、第2のプレポリマー;
を含むイソシアネート成分であって、
前記第1のプレポリマーA2)と前記第2のプレポリマーA3)との総量が、前記イソシアネート成分A)の総重量に対して、10~70重量%である、イソシアネート成分と、
B)イソシアネート-反応性成分であって、
B1)第3のポリオール、及び
B2)イソシアネート反応性(メタ)アクリレートモノマー
を含む、前記イソシアネート-反応性成分と
C)遊離ラジカル開始剤と
を含む、ポリウレタン組成物。
【請求項2】
前記第1のプレポリマーA2)及び前記第2のプレポリマーA3)が、個別に又は任意の比率で組み合わせて使用され、前記第1のプレポリマーA2)及び前記第2のプレポリマーA3)の総重量が、前記イソシアネート成分A)の総重量に対して、45重量%未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記第1のプレポリマーA2)及び前記第2のプレポリマーA3)の総重量が、前記イソシアネート成分A)の総重量に対して、45重量%~70重量%であり、前記第1のプレポリマーA2)と前記第2のプレポリマーA3)との重量比が、5:1~1:5である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリイソシアネート化合物A1)の含有率が、前記イソシアネート成分A)の総重量に対して、30重量%~90重量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記第1のプレポリマーA2)が、前記第1のプレポリマーA2)の重量に対して、22重量%~24重量%のNCO含有率を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記第2のプレポリマーA3)が、前記第2のプレポリマーA3)の総重量に対して、12重量%~19重量%のNCO含有率を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記第1のプレポリマーA2)及び前記第2のプレポリマーA3)の総重量が、前記イソシアネート成分A)の総重量に対して、45重量%~70重量%であり、前記第1のプレポリマーと前記第2のプレポリマー前記との重量比が4:1~1:4である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記イソシアネート反応性(メタ)アクリレートモノマーB2)が、ヒドロキシC1~10アルキル(メタ)アクリレートモノマーから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記イソシアネート反応性(メタ)アクリレートモノマーB2)が、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートモノマー及びヒドロキシブチル(メタ)アクリレートモノマーから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記イソシアネート反応性(メタ)アクリレートモノマーB2)の含有率が、前記ポリウレタン組成物の総重量に対して、25重量%~40重量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記第3のポリオールが、2~5の平均官能価及び80~600g/eqの平均当量を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記ポリウレタン組成物が、イソシアネート基とヒドロキシル基との間の反応のための触媒、ラジカル重合促進剤、消泡剤、顔料、充填剤及び水分捕捉剤からなる群から選択される、他の添加物を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
繊維強化材料及び請求項1~12のいずれか一項に記載のポリウレタン組成物から得たポリウレタン樹脂を含む、コンポジット材料。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか一項に記載のポリウレタン組成物を使用する、ポリウレタン樹脂を調製する方法であって、
1)A1)と、A2)及びA3)の少なくとも1つ、
A1)第1のポリイソシアネート化合物;
A2)第2のポリイソシアネート化合物と30~200g/eqの平均当量及び2~3の平均官能価を有する第1のポリオールとの反応によって形成される第1のプレポリマーであって、前記第1のプレポリマーの重量に対して、21~25%のNCO含有率を有する、第1のプレポリマー;
A3)第3のポリイソシアネート化合物と250~3000g/eqの平均当量及び2~3の平均官能価を有する第2のポリオールとの反応によって形成される第2のプレポリマーであって、前記第2のプレポリマーの重量に対して、10~20%のNCO含有率を有する、第2のプレポリマー;
を含む、成分A)であるイソシアネート成分を用意することであって、
前記第1のプレポリマーA2)と前記第2のプレポリマーA3)との総量が、前記イソシアネート成分の総重量に対して、10~70重量%である、ことと、
2)イソシアネート-反応性成分B)を用意することであって、
B1)第3のポリオール、及び
B2)イソシアネート反応性(メタ)アクリレートモノマー
を含む前記イソシアネート-反応性成分B)を用意することと、
3)遊離ラジカル開始剤C)を用意することと、
4)次に、前記遊離ラジカル開始剤C)の存在下で、前記イソシアネート成分A)を前記イソシアネート-反応性成分B)と反応させて、前記ポリウレタン樹脂を形成することと
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリウレタン組成物、繊維強化材料とポリウレタン組成物から得たポリウレタン樹脂とを含むコンポジット材料、並びにポリウレタン組成物を調製する方法に関する。ポリウレタン樹脂は、調節可能な粘度、長いオープンタイム、及び良好な物理的機械特性を有しており、これにより、ポリウレタン樹脂は、広範囲のコンポジット製造プロセス及び最終用途に適する。
【背景技術】
【0002】
コンポジット材料は、不均質材料のタイプであり、高強度を実現するための繊維強化材料と、繊維を固定して損傷から保護するためのポリマーマトリックスとを含む。コンポジット材料の性能及び耐用年数は、強化材料に依存するだけでなく、含浸の質及び利用されるポリマー樹脂の特性にも大きく依存する。コンポジット材料には、良好な含浸品質を確保するために、液状ポリマー樹脂が低粘度及び長いオープンタイムを有すると同時に、適切な製造サイクル時間を可能にする硬化時間をもたらすことが、通常、要求される。それとは別に、引張強度/曲げ強度及び弾性率などの硬化樹脂の物理的機械特性もまた、最終製品の一層長い寿命の実現に重要である。
【0003】
典型的な顧客臨界品質(CTQ)尺度は、最終コンポジット材料の製造プロセス及び最終用途に依存する。
【0004】
風力ブレード用途のための真空注入プロセスでは、調整可能性及び低い初期樹脂粘度(良好な注入品質のためには、<150mPa.s)を有する長いオープンタイム(最大で数時間)が望ましい。Germanischer Lloyd規格(Rules for Classification and Construction II Materials and Welding,2:Non-metallic Materials)によれば、風力ブレード注入のための硬化ポリマーはまた、さまざまな追加の要件、例えば、曲げ強度>100MPa(ISO178)、ひずみ率%>2.5%(ISO178)、熱変形温度(HDT)>70℃(ISO75-2、モードA)もまた満たさなければならない。
【0005】
エポキシ樹脂は、現在、風力ブレード注入市場において優勢な樹脂技術である。これは、加工の容易さ(1~10時間の範囲の高い調節可能性を有する長いオープンタイム)及び良好なポリマー物理特性性能による。しかし、コストが高く、かつ硬化プロファイルが遅いために、一層良好に機能する代替解決策が市場において必要とされている
【0006】
従来のポリウレタン樹脂は、通常、2成分、すなわちイソシアネート及び配合されたポリオールからなる。それらは、エポキシ樹脂に対する費用効率の高い代替物のクラスとなり、高い靭性、硬度、良好な耐摩耗性及び耐疲労性を特徴とするポリマー特性をもたらす。しかし、従来の2成分ポリウレタン溶液の反応性が本質的に速いことは、有利なことに、速い硬化プロファイルをもたらす一方、ある特定の用途には短すぎるオープンタイム値をももたらす。この理由のため、2成分ポリウレタン溶液は、真空注入などの長いオープンタイムを必要とするコンポジット用途には望ましくない。
【0007】
上記の理由のために、ポリウレタン製造産業において、低粘度、長いオープンタイム、速い硬化プロファイル、及び硬化後の良好な物理的機械特性を有するポリウレタン組成物を開発することが依然として必要とされている。持続的な探索の後、本発明者らは、驚くべきことに、低い初期粘度、長いオープンタイム、反応プロファイルの高い調節可能性、並びに硬化後の満足のいく物理的機械的及び熱的特性をもたらすポリウレタン組成物を開発した。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、とりわけ、コンポジット用途のための固有のポリウレタン組成物、繊維強化材料及びポリウレタン組成物から得たポリウレタン樹脂を含むコンポジット材料、並びにポリウレタン組成物を調製する方法を提供する。
【0009】
本開示の第1の態様では、本開示は、
A)A1)と、A2)又はA3)の少なくとも1つ:
A1)第1のポリイソシアネート化合物;
A2)第2のポリイソシアネート化合物と30~200g/eqの平均当量及び2~3の平均官能価を有する第1のポリオールとの反応によって形成される第1のプレポリマーであって、第1のプレポリマーの重量に対して、21~25%のNCO含有率を有する、第1のプレポリマー;
A3)第3のポリイソシアネート化合物と250~3000g/eqの平均当量及び2~3の平均官能価を有する第2のポリオールとの反応によって形成される第2のプレポリマーであって、第2のプレポリマーの重量に対して、10~20%のNCO含有率を有する、第2のプレポリマー;
を含むイソシアネート成分であって、
第1のプレポリマーA2)と第2のプレポリマーA3)との総量が、イソシアネート成分A)の総重量に対して、10~70重量%である、イソシアネート成分と、
B)イソシアネート-反応性成分であって、
B1)第3のポリオール、及び
B2)イソシアネート反応性(メタ)アクリレートモノマー
を含む、イソシアネート-反応性成分と、
C)遊離ラジカル開始剤と
を含む、ポリウレタン組成物を提供する。
【0010】
ポリウレタン組成物は、他の添加物を更に含んでもよい。添加物は、イソシアネート基とヒドロキシル基との間の反応のための触媒、ラジカル重合促進剤、消泡剤、顔料、充填剤及び水分捕捉剤からなる群から選択することができる。
【0011】
好ましい一実施形態では、第1のプレポリマーA2)及び第2のプレポリマーA3)が、個別に又は任意の比率で組み合わせて使用され、第1のプレポリマーA2)及び第2のプレポリマーA3)の総重量が、イソシアネート成分A)の総重量に対して、45重量%未満である。
【0012】
別の好ましい実施形態では、第1のプレポリマーA2)及び第2のプレポリマーA3)の総重量が、イソシアネート成分A)の総重量に対して、45重量%~70重量%であり、第1のプレポリマーA2)と第2のプレポリマーA3)との重量比が、5:1~1:5である。
【0013】
本開示の第2の態様では、本開示は、繊維強化材料と、本明細書に記載されるポリウレタン組成物から得たポリウレタン樹脂とを含むコンポジット材料を提供する。
【0014】
本開示の第3の態様では、本開示は、
1)A1)と、A2)及びA3)の少なくとも1つ:
A1)第1のポリイソシアネート化合物;
A2)第2のポリイソシアネート化合物と30~200g/eqの平均当量及び2~3の平均官能価を有する第1のポリオールとの反応によって形成される第1のプレポリマーであって、21~25重量%のNCO含有率を有する、第1のプレポリマー;
A3)第3のポリイソシアネート化合物と250~3000g/eqの平均当量及び2~3の平均官能価を有する第2のポリオールとの反応によって形成される第2のプレポリマーであって、10~20重量%のNCO含有率を有する、第2のプレポリマー
を含むA)イソシアネート成分を用意することであって、
第1のプレポリマーA2)と第2のプレポリマーA3)との総量が、A)イソシアネート成分の総重量に対して、10~70重量%である、ことと、
2)イソシアネート-反応性成分B)を用意することであって、
B1)ポリエーテル、ポリエステル及びポリカーボネートポリオールを含む第3のポリオールであって、80~600g/eqの平均当量及び2~5の平均官能価を有する、第3のポリオール
B2)イソシアネート反応性(メタ)アクリレートモノマー
を含むイソシアネート-反応性成分B)を用意することと、
3)遊離ラジカル開始剤C)を用意することと、
4)次に、遊離ラジカル開始剤C)の存在下で、イソシアネート成分A)をイソシアネート-反応性成分B)と反応させて、本明細書に記載されるポリウレタン組成物を形成することと
を含む、ポリウレタン樹脂を調製する方法を提供する。
【0015】
前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明はいずれも、例示的かつ説明的なものにすぎず、特許請求される本発明を限定するものではないことを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0016】
特に定義されないかぎり、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。また、本明細書で言及されるすべての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、参照により組み込まれる。
【0017】
定義
本明細書に開示される数値範囲は、下限値及び上限値を含む、下限値から上限値までのすべての値を含む。明示的な値を含有する範囲(例えば1、又は2、又は3~5、又は6、又は7の範囲)の場合、任意の2つの明示的な値の間の任意の部分範囲が含まれる(例えば、上記の範囲1~7は、部分範囲1~2、2~6、5~7、3~7、5~6などを含む)。
【0018】
反対の記載がないかぎり、文脈から暗示されていないかぎり、又は当該技術分野で慣習的でないかぎり、すべての部及びパーセントは、重量に基づいており、すべての試験方法は、本開示の出願日時点で最新のものである。
【0019】
「組成物」という用語は、当該組成物を構成する材料の混合物、並びに当該組成物の材料から形成された反応生成物及び分解生成物を指す。
【0020】
「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」という用語、及びそれらの派生語は、任意の追加の成分、工程、又は手順が本明細書において具体的に開示されているか否かにかかわらず、それらの存在を排除することを意図したものではない。疑義を回避するために、「含む(comprising)」という用語の使用を通じて特許請求されるすべての組成物は、特に反対の記載がないかぎり、ポリマーであるかその他であるかによらず、任意の追加の添加物、アジュバント、又は化合物を含み得る。対照的に、「から本質的になる」という用語は、操作性に必須ではないものを除き、あらゆる続く記述の範囲からあらゆる他の成分、ステップ、又は手順を除く。「からなる」という用語は、明確に描写又は列挙されていない任意の成分、ステップ、又は手順を除外する。「又は」という用語は、特に明記しないかぎり、列挙されたメンバーを個別に、並びに任意の組合せで指す。単数形の使用は複数形の使用を含み、その逆もまた同様である。
【0021】
「イソシアネート」は、その構造に少なくとも1つのイソシアネート基を含む化学物質である。イソシアネート基は、式:-N=C=Oによって表される。2つ以上又は少なくとも2つのイソシアネート基を含むイソシアネートは「ポリイソシアネート」である。2つのイソシアネート基を有するイソシアネートはジイソシアネートであり、3つのイソシアネート基を有するイソシアネートはトリイソシアネートであり、以下同様である。イソシアネートは芳香族であってもよく、又は脂肪族であってもよい。
【0022】
「ポリオール」は、複数のヒドロキシル(-OH)基を含む有機化合物である。言い換えれば、ポリオールは少なくとも2つのヒドロキシル基を含む。好適なポリオールの非限定例としては、ジオール(2つのヒドロキシル基を含む)、トリオール(3つのヒドロキシル基を含む)及び多ヒドロキシル含有ポリオールが挙げられる。ポリエーテルポリオールはまた、不飽和化学種、すなわち二重結合を有する化学種を形成する副反応の一部として、ポリオールの合成中に形成されるような、少量の一官能性化学種(モノオール)、すなわちヒドロキシル基を1つだけ有する化学種を含んでもよい。
【0023】
「ポリエーテル」は、原子の同じ直鎖に2つ以上のエーテル連結基を含む化合物である。
【0024】
「ポリエステル」は、原子の同じ直鎖に2つ以上のエステル連結基を含む化合物である。
【0025】
「ポリマー」は、同じ種類又は異なる種類のモノマーを重合することによって調製されるポリマー化合物である。したしたがって、ポリマーという総称は、「ホモポリマー」という用語(微量の不純物がポリマー構造に組み込まれ得るという理解の下で、1種類のモノマーのみから調製されたポリマーを指すために使用される)を包含し、「インターポリマー」という用語(「コポリマー」という用語と同じ意味で使用される)には、バイポリマー(2種類の異なるモノマーから調製されたポリマーを指すために使用される)、ターポリマー(3種類の異なるモノマーから調製されるポリマーを指すために使用される)、及び4種類以上の異なるモノマーから調製されるポリマーが含まれる。微量の不純物、例えば触媒残留物が、ポリマー中及び/又はポリマー内に組み込まれる可能性がある。それはまた、例えば、ランダム、ブロックなど、あらゆる形態のコポリマーを包含する。ポリマーは、1つ以上の特定のモノマーから「作られている」、特定のモノマー又はモノマータイプに「基づいている」、特定のモノマー含有量を「含有している」などと称されることが多いが、この文脈では、「モノマー」という用語は、特定のモノマーの重合した残存物を指し、未重合の化学種を指していないと理解されることに留意されたい。一般に、本明細書におけるポリマーは、対応するモノマーの重合形態である「単位」に基づくものである。
【0026】
「ヒドロキシル価」は、ポリオール中のヒドロキシル基の含有量を表す。ヒドロキシル価を測定する方法は当業者に周知であり、例えば、Houben Weyl,Methoden der Organischen Chemie、vol.XIV/2Makromolekulare Stoffe,p.17、Georg Thieme Verlag;Stuttgart 1963によって開示されている。「平均当量」は、混合物中のさまざまな成分に関連する当量の平均である。混合物が異なるポリオールによって形成される場合、平均当量は、以下のように計算することができる:滴定又は赤外分光法などの当分野で周知のさまざまな実験技法の1つを使用して、混合物の平均OH数をOHavとして測定する:次に、EWav=56100/OHavとして平均当量を計算する。
【0027】
「平均官能価」は、混合物中のさまざまな成分に関連する官能価の平均である。混合物が異なるポリオールによって形成される場合、平均官能価は、以下のように計算することができる:混合物の平均OH数(OHav)が与えられ、第1の成分の官能価(f1)が与えられ、第2の成分の官能価(f2)が与えられ、第1の成分のOH数(OH1)が与えられ、第2の成分のOH数(OH2)が与えられ、第1の成分の重量分率(a)が与えられ、第2の成分の重量分率(b=1-a)が与えられると、混合物の平均官能価は以下となる:
官能価av.=(OHavxf1xf2)/[(OH1xf2xa)+(OH2xf1xb)]
【0028】
第1のポリイソシアネート化合物A1
本開示のさまざまな実施形態によれば、成分Aに使用される第1のポリイソシアネート化合物A1は、少なくとも2つのイソシアネート基を有する芳香族化合物である。本開示の好ましい実施形態によれば、ポリイソシアネート化合物は、少なくとも1つの芳香族環(例えば、アリール基又はヘテロアリール基)を含み、ポリイソシアネート化合物中のすべてのイソシアネート基は、芳香族環と、それらの間にいずれの連結基も存在することなく直接結合している。上述の芳香族ポリイソシアネートのカルボジイミド修飾誘導体もまた、ポリイソシアネート化合物A1に使用することができ、この場合、カルボジイミド修飾誘導体という用語は、少なくとも2つのイソシアネート基を含むカルボジイミド修飾芳香族ポリイソシアネートを含むことができる。別の好ましい実施形態では、好適な芳香族ポリイソシアネート化合物としては、m-フェニレンジイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネート及び/又は2,6-トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)のさまざまな異性体、ポリマーMDI(ポリフェニルメタンポリイソシアネート)中に存在するMDIのさまざまなオリゴマー、カルボジイミド修飾MDI生成物、又はそれらの混合物が挙げられる。別の好ましい実施形態では、好適な芳香族ポリイソシアネート化合物としては、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)のさまざまな異性体、及びカルボジイミド修飾MDI生成物が挙げられる。別の好ましい実施形態では、好適な芳香族ポリイソシアネート化合物としては、モノマー形態、ポリマー形態又はそれらの組合せ形態のジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)のさまざまな異性体が挙げられる。
【0029】
一般に、第1のポリイソシアネート化合物A1の量は、ポリウレタン生成物の実際の要件に基づいて変わり得る。例えば、例示的な一実施形態としては、第1のポリイソシアネートA1化合物の含有率は、ポリウレタン組成物の総重量に対して、15重量%~70重量%、15重量%~60重量%又は18重量%~50重量%又は23重量%~40重量%又は25重量%~37重量%であり得る。
【0030】
別の好ましい実施形態では、第1のポリイソシアネート化合物A1の含有率は、イソシアネート成分Aの総重量に対して、30重量%~95重量%、又は30重量%~90重量%、又は35重量%~90重量%、又は40重量%~85重量%、又は45重量%~80重量%、又は50重量%~70重量%であり得る。
【0031】
第1のプレポリマーA2
第1のプレポリマーA2は、第1のポリオールと第2のポリイソシアネート化合物との反応によって形成される。第2のポリイソシアネート化合物は、イソシアネートモノマー又はイソシアネートポリマーであることができ、この場合、イソシアネートモノマーは、いずれの場合も、MDI又はTDIなどの、2つのNCO基を有するイソシアネート分子を指す。プレポリマーA2を形成するために使用される第2のポリイソシアネート化合物は、少なくとも2つのイソシアネート基を有する芳香族化合物である:これは、先に記載された成分A1と同様に説明することができる。
【0032】
プレポリマーA2に使用される第1のポリオール成分は、30~200g/eqの平均当量及び2~3の平均官能価を有する。本出願の好ましい一実施形態では、ポリオールは、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブテンジオール、1,4-ブチンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ビス(ヒドロキシメチル)-シクロヘキサン、1,2-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(ヒドロキシメチル)-シクロヘキサン、2-メチルプロパン-1,3-ジオール、メチルペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ジブチレングリコール、トリブチレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、並びに例えば、グルコース、ソルビトール、マンニトール及びスクロースなどの糖化合物、多価フェノール、レゾール、並びにそれらの任意の組合せからなる群から選択される。別の好ましい実施形態では、ポリオールは、触媒の存在下で、オレフィンオキシドをスターターと反応させることによって調製することができるポリエーテルポリオールである。触媒は、好ましくは、以下に限定されないが、アルカリ水酸化物、アルカリアルコキシド、五塩化アンチモン、三フッ化ホウ素-ジエチルエーテラート又はそれらの組合せである。好適な重合触媒には、水酸化カリウム、水酸化セシウム、三フッ化ホウ素、又はヘキサシアノコバルト酸亜鉛などの二重シアン化物錯体(double cyanide complex、DMC)触媒、又は四ホスファゼニウム化合物が含まれ得る。オレフィンオキシドは、好ましくは、以下に限定されないが、テトラヒドロフラン、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド、2,3-ブチレンオキシド、スチレンオキシド又はそれらの組合せ;好ましくは、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドである。スターター分子は、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブテンジオール、1,4-ブチンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ビス(ヒドロキシメチル)-シクロヘキサン、1,2-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(ヒドロキシメチル)-シクロヘキサン、2-メチルプロパン-1,3-ジオール、メチルペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ジブチレングリコール、トリブチレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、並びに例えば、グルコース、ソルビトール、マンニトール及びスクロースなどの糖化合物、多価フェノール、レゾール、並びにそれらの任意の組合せのうちの1つである。
【0033】
プレポリマーA2中の第1のポリオールの含有率は、得られるプレポリマーA2が、第1のプレポリマーの総重量に対して、21重量%~25重量%のNCO含有率、好ましくは22重量%~24重量%のNCO含有率を有するかぎり、当業者によって調節され得る。
【0034】
プレポリマーA2は、第1のプレポリマーの総重量に対して、21重量%~25重量%のNCO含有率、好ましくは22重量%~24重量%のNCO含有率を有する。
【0035】
第2のプレポリマーA3
第2のプレポリマーA3は、第2のポリオールと第3のポリイソシアネート化合物との反応によって形成される。プレポリマーA3を形成するために使用される第3のポリイソシアネート化合物は、少なくとも2つのイソシアネート基を有する芳香族化合物である:これは、先に記載された成分A1と同様に説明することができる。
【0036】
プレポリマーA3に使用される第2のポリオール成分は、触媒の存在下で、オレフィンオキシドをスターターと反応させることによって調製することができるポリエーテルポリオールである。触媒は、好ましくは、以下に限定されないが、アルカリ水酸化物、アルカリアルコキシド、五塩化アンチモン、三フッ化ホウ素-ジエチルエーテラート又はそれらの組合せである。好適な重合触媒には、水酸化カリウム、水酸化セシウム、三フッ化ホウ素、又はヘキサシアノコバルト酸亜鉛などの二重シアン化物錯体(DMC)触媒、又は四ホスファゼニウム化合物が含まれ得る。オレフィンオキシドは、好ましくは、以下に限定されないが、テトラヒドロフラン、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド、2,3-ブチレンオキシド、スチレンオキシド又はそれらの組合せ;好ましくは、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドである。スターター分子は、1分子あたり少なくとも1つ、好ましくは2~8つのヒドロキシル基、より好ましくは2~4つのヒドロキシル基を有する化合物を含む:それらは、分子中に1つ以上の第一級アミン基を含んでもよい。好適なスターター分子は、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブテンジオール、1,4-ブチンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ビス(ヒドロキシメチル)-シクロヘキサン、1,2-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(ヒドロキシメチル)-シクロヘキサン、2-メチルプロパン-1,3-ジオール、メチルペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ポリブチレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ヒマシ油、例えば、グルコース、ソルビトール、マンニトール及びスクロースなどの糖化合物、多価フェノール、フェノールとホルムアルデヒドとのオリゴマー縮合生成物及びフェノールとホルムアルデヒドとジアルカノールアミンとのマンニッヒ縮合物などのレゾール、並びにメラミンをも含む群から選択される。分子中に1つ以上の第一級アミン基を有するスターター分子は、例えば、アニリン、エチレンジアミン、TDA(トルエンジアミン)、MDA(メチレンジアニリン)及びPMDA(ポリマーMDA)からなる群から、より好ましくはTDA及びPMDAを含む群から、最も好ましくはTDAから選択され得る。
【0037】
本出願の好ましい一実施形態では、プレポリマーA3において使用される第2のポリオール成分は、少なくとも1種のポリエーテルポリオールを含み、2~3の平均官能価、及び250~3,000g/eq、より好ましくは500~2,500g/eq、更により好ましくは1,000~2,000g/eqの当量を有する。
【0038】
プレポリマーA3に使用される第2のポリオール成分の含有率は、プレポリマーA3の総重量に対して、20重量%~70重量%、好ましくは35重量%~70重量%、より好ましくは40重量%~60重量%である。
【0039】
プレポリマーA3は、10重量%~20重量%、又は12重量%~19重量%、又は13重量%~18重量%、又は14重量%~16重量%のNCO含有率を有する。
【0040】
プレポリマーA2は、第1のプレポリマーと称されることがあり、プレポリマーA3は第2のプレポリマーと称されることがある。第1のプレポリマー及び第2のプレポリマーの総重量は、イソシアネート成分Aの総重量に対して、10重量%~70重量%、又は10重量%~65重量%、又は15重量%~60重量%、又は20重量%~55重量%、又は30重量%~50重量%である。
【0041】
第1のプレポリマーA2及び第2のプレポリマーA3は、イソシアネート成分Aの総重量に対して、第1のプレポリマーA2及び第2のプレポリマーA3の総重量が45重量%未満、好ましくは40%未満、好ましくは10~40重量%、より好ましくは10~39重量%、更により好ましくは12~38重量%、又は25~37重量%である場合、個々に又は任意の比率で組み合わせて使用することができる;第1のプレポリマーA2及び第2のプレポリマーA3の総重量が、イソシアネート成分Aの総重量に対して45重量%~70重量%である場合、第1のプレポリマーA2と第2のプレポリマーA3との重量比は、5:1~1:5、好ましくは4:1~1:4、又は4:1~1:2、又は4:1~1.4:1である。
【0042】
B1)第3のポリオール
第1のポリオールは、プレポリマーA2の合成において使用されるものである。第2のポリオールは、プレポリマーA3の合成において使用されるものである。第3のポリオールB1は、本発明のポリウレタン組成物のイソシアネート反応性成分B)の一部である。第3のポリオールB1は、80~600g/eqの平均当量及び2~5の平均官能価を有する。それは、当分野においてポリウレタンを調製するために一般的に使用されるポリオールを含み、以下に限定されないが、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、又はそれらの組合せを含む。
【0043】
ポリエーテルポリオールは、公知の方法、例えば、触媒の存在下でオレフィンオキシドとスターターとを反応させることにより調製することができる。触媒は、好ましくは、以下に限定されないが、アルカリ水酸化物、アルカリアルコキシド、五塩化アンチモン、三フッ化ホウ素-ジエチルエーテラート又はそれらの組合せである。オレフィンオキシドは、好ましくは、以下に限定されないが、テトラヒドロフラン、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド、2,3-ブチレンオキシド、スチレンオキシド又はそれらの組合せ;好ましくは、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドである。好適なスターター分子は、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブテンジオール、1,4-ブチンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ビス(ヒドロキシメチル)-シクロヘキサン、1,2-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(ヒドロキシメチル)-シクロヘキサン、2-メチルプロパン-1,3-ジオール、メチルペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ポリブチレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ヒマシ油、例えば、グルコース、ソルビトール、マンニトール及びスクロースなどの糖化合物、多価フェノール、フェノールとホルムアルデヒドとのオリゴマー縮合生成物及びフェノールとホルムアルデヒドとジアルカノールアミンとのマンニッヒ縮合物などのレゾール、並びにメラミンをも含む群から選択される。分子中に1つ以上の第一級アミン基を有するスターター分子は、例えば、アニリン、エチレンジアミン、TDA(トルエンジアミン)、MDA(メチレンジアニリン)及びPMDA(ポリマーMDA)からなる群から、より好ましくはTDA及びPMDAを含む群から、最も好ましくはTDAから選択され得る。
【0044】
ポリエステルポリオールは、二塩基性カルボン酸又は二塩基性カルボン酸無水物とポリオールとの反応によって調製される。二塩基性カルボン酸は、好ましくは、以下に限定されないが、2~12個の炭素を有する脂肪族カルボン酸であるが、以下に限定されないが、好ましくはコハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、又はこれらの組合せである。二塩基性カルボン酸無水物は、好ましくは、以下に限定されないが、無水フタル酸、無水テトラクロロフタル酸、無水マレイン酸又はそれらの組合せである。二塩基性カルボン酸又は無水物と反応するポリオールは、好ましくは、以下に限定されないが、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、1,3-メチルプロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,10-デカンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン又はそれらの組合せである。ポリエステルポリオールには、ラクトンから調製されるポリエステルポリオールも含まれる。ラクトンから調製されるポリエステルポリオールは、好ましくは、以下に限定されないが、8-カプロラクトンである。
【0045】
ポリカーボネートポリオールは、二金属シアン化物触媒の存在下で、活性水素を含むスターターに二酸化炭素及びアルキレンオキシド化合物を添加することによって調製することができる。ジオールをジヒドロカルビルカーボネート又はジアリールカーボネート又はホスゲンと反応させることによって調製されるポリカーボネートジオールも、本発明の目的に好適である。ジオールは、好ましくは、以下に限定されないが、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリオキシメチレンジオール又はそれらの混合物である。ジヒドロカルビル又はジアリールカーボネートは、好ましくは、以下に限定されないが、ジフェニルカーボネートである。
【0046】
一般に、第3のポリオールの量は、ポリウレタン生成物の実際の要件に基づいて変わり得る。例えば、例示的な一実施形態としては、第3のポリオールの含有率は、ポリウレタン組成物の総重量に対して、5重量%~40重量%又は6重量%~35重量%又は7重量%~30重量%又は8重量%~25重量%又は10重量%~20重量%であり得る。
【0047】
B2)イソシアネート反応性(メタ)アクリレートモノマー
イソシアネート反応性(メタ)アクリレートモノマーB2は、少なくとも1つのC=C結合と、OHなどの少なくとも1つのイソシアネート反応性基とを有する。イソシアネート反応性(メタ)アクリレートモノマーB2は、ヒドロキシC1~10アルキル(メタ)アクリレートモノマー、より好ましくはヒドロキシC1~6アルキル(メタ)アクリレートモノマー、更により好ましくは、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートモノマー、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート又はヒドロキシブチル(メタ)アクリレートモノマーから選択することができる。
【0048】
(メタ)アクリレートという用語は、対応するアクリレート並びにメタクリレート構造の両方を含むことが意図される:したがって、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートという用語は、ヒドロキシプロピルメタクリレート及び/又はヒドロキシプロピルアクリレートに対応することができる。
【0049】
一般に、イソシアネート反応性(メタ)アクリレートモノマーの量は、ポリウレタン生成物の実際の要件に基づいて変わり得る。例えば、例示的な一実施形態としては、イソシアネート反応性(メタ)アクリレートモノマーの含有率は、ポリウレタン組成物の総重量に対して、25重量%~40重量%又は26重量%~38重量%又は27重量%~37重量%又は28重量%~35重量%であり得る。
【0050】
C)遊離ラジカル開始剤
遊離ラジカル開始剤は、アゾ化合物又は過酸化物とすることができる。好ましくは、アゾ化合物は、2,2-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)であり得る;過酸化物は、ペルオキシ安息香酸tert-ブチル、4,4-ジ(tert-ブチルペルオキシ)吉草酸ブチル、ジ-tert-アミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシル)ヘキサン、tert-ブチルクミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシル)ヘキシン-3、ジ-tert-ブチルペルオキシド、3,6,9-トリエチル-3,6,9-トリメチル-1,4,7-トリペルオキソナン、イソプロピルクミルヒドロペルオキシド、1,1,3,3-テトラメチルブチルヒドロペルオキシド、クミルヒドロペルオキシド、tert-ブチルヒドロペルオキシド、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択することができる。
【0051】
一般に、本明細書において使用される遊離ラジカル開始剤の含有率は、ポリウレタン組成物の総重量に対して、0超、少なくとも0.1重量%、又は少なくとも0.2重量%、又は少なくとも0.3重量%であり、最大でも6.0重量%、好ましくは最大でも5.0重量%、より好ましくは最大でも4.0重量%、より好ましくは最大でも3.0重量%、又は最大でも2.0重量%、又は最大でも1.0重量%である。
【0052】
D)他の添加物
ポリウレタン組成物は、他の添加物を更に場合により含む。添加物は、イソシアネート基とヒドロキシル基との間の反応のための触媒、ラジカル重合促進剤、消泡剤、顔料、充填剤及び水分捕捉剤からなる群から選択することができる。
【0053】
本出願のポリウレタン組成物は、イソシアネート基とヒドロキシル基との間の反応を促進することができる1種以上の触媒を含んでもよい。理論に限定されるものではないが、触媒には、例えば、グリシン塩;三級アミン;トリアルキルホスフィン及びジアルキルベンジルホスフィンなどの三級ホスフィン;モルホリン誘導体;ピペラジン誘導体;Be、Mg、Zn、Cd、Pd、Ti、Zr、Sn、As、Bi、Cr、Mo、Mn、Fe、Co、及びNiなどの金属と、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、トリフルオロアセチルアセトン、アセト酢酸エチルなどから得ることができものなどの様々な金属のキレート;塩化第二鉄及び塩化第二スズなどの強酸の酸性金属塩;アルカリ金属、アルカリ土類金属、Al、Sn、Pb、Mn、Co、Ni及びCuなどの様々な金属を有する有機酸の塩;有機カルボン酸のスズ(II)塩、例えば、スズ(II)ジアセテート、スズ(II)ジオクタノエート、スズ(II)ジエチルヘキサノエート及びスズ(II)ジラウレート、並びに有機カルボン酸のジアルキルスズ(IV)塩、例えば、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレエート及びジオクチルスズジアセテートなどの有機スズ化合物;有機カルボン酸のビスマス塩、例えば、オクタン酸ビスマス;三価及び五価のAs、Sb及びBiの有機金属誘導体、並びに鉄及びコバルトの金属カルボニル;テトライソプロピルチタネート、テトラ(n-ブチル)チタネート、テトラオクチルチタネート、チタン酢酸塩、チタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)及びチタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)などのチタン(IV)系触媒;ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムヘキサフルオロアセチルアセトネート、ジルコニウムトリフルオロアセチルアセトネート、テトラキス(エチルトリフルオロアセチル-アセトネート)ジルコニウム、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-ヘプタンジオネート)、ジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート)及びジルコニウムジイソプロポキシビス(2,2,6,6-テトラメチル-ヘプタンジオネート)などのジルコニウム系触媒;又はこれらの混合物からなる群から選択される。本開示の最も好ましい実施形態によれば、イソシアネート成分A)とイソシアネート反応性成分B)との間の反応、及び第1のポリイソシアネートと第1のポリオールとの間の反応、又は第2のポリイソシアネートと第2のポリオールとの間の反応のための触媒は、有機カルボン酸のビスマス塩、例えば、オクタン酸ビスマス(III)又はネオデカン酸ビスマス(III)である。
【0054】
一般に、本明細書において使用される触媒の含有率は、ポリウレタン組成物の総重量に対して、0超であり、最大でも2.0重量%、好ましくは最大でも1.5重量%、より好ましくは最大でも1.0重量%、より好ましくは最大でも0.5重量%、又は最大でも0.1重量%、又は最大でも0.05重量%である。
【0055】
本出願のポリウレタン組成物は、ラジカル重合促進剤を場合により含んでもよい。促進剤は、あらゆる種類の金属又はアミン促進剤から選択することができる。一般に、本明細書において使用される促進剤の含有率は、ポリウレタン組成物の総重量に対して、0超であり、最大でも2.0重量%、好ましくは最大でも1.5重量%、より好ましくは最大でも1.0重量%、より好ましくは最大でも0.5重量%、又は最大でも0.1重量%、又は最大でも0.05重量%である。
【0056】
本出願のポリウレタン組成物は、阻害剤を場合により含んでもよい。阻害剤は、一般に使用されている阻害剤とすることができる。一般に、本明細書において使用される阻害剤の含有率は、ポリウレタン組成物の総重量に対して、0超であり、最大でも2.0重量%、好ましくは最大でも1.5重量%、より好ましくは最大でも1.0重量%、より好ましくは最大でも0.5重量%、又は最大でも0.1重量%、又は最大でも0.05重量%である。
【0057】
本出願のポリウレタン組成物は、消泡剤を場合により含んでもよい。消泡剤は、シリコーン又は有機消泡剤とすることができる。一般に、本明細書において使用される消泡剤の含有率は、ポリウレタン組成物の総重量に対して、0超であり、最大でも2.0重量%、好ましくは最大でも1.5重量%、より好ましくは最大でも1.0重量%、より好ましくは最大でも0.8重量%、又は最大でも0.5重量%である。
【0058】
本出願のポリウレタン組成物は、水分捕捉剤を場合により含んでもよい。水分捕捉剤は、一般に使用されているゼオライト又は液状水捕捉剤とすることができる。一般に、本明細書において使用される水分捕捉剤の含有率は、ポリウレタン組成物の総重量に対して、0超であり、最大でも10重量%、好ましくは最大でも8重量%、より好ましくは最大でも7重量%、より好ましくは最大でも6重量%、又は最大でも5重量%、又は最大でも1重量%である。
【0059】
本開示の好ましい実施形態によれば、ポリウレタン組成物は、その中に意図的に添加された水又は水分を実質的に含まない。例えば、「水を含まない」又は「水不含」とは、ポリウレタン組成物を調製するために使用されるすべての原料の混合物が、原料の混合物の総重量に対して、3重量%未満、好ましくは2重量%未満、好ましくは1重量%未満、より好ましくは0.5重量%未満、より好ましくは0.2重量%未満、より好ましくは0.1重量%未満、より好ましくは100重量ppm未満を含むことを意味する。
【0060】
本発明のポリウレタン組成物は、例えば、光安定剤、紫外線(UV)吸収化合物、平滑剤、湿潤剤、分散剤、中和剤若しくはレオロジー改質剤、又はそれらの混合物などの慣用的な添加物を更に含んでもよい。これらの添加物は、ポリウレタン組成物の重量に対して、重量基準で0~20%、0.1~10%の量で存在し得る。
【0061】
本発明のポリウレタン組成物は、当技術分野で知られている技術を使用して調製することができる。本ポリウレタン組成物を調製する方法は、
1)A1)と、A2)及びA3)の少なくとも1つ
A1)第1のポリイソシアネート化合物;
A2)第2のポリイソシアネート化合物と30~200g/eqの平均当量及び2~3の平均官能価を有する第1のポリオールとの反応によって形成される第1のプレポリマーであって、21~25%のNCO含有率を有する、第1のプレポリマー;
A3)第3のポリイソシアネート化合物と250~3000g/eqの平均当量及び2~3の平均官能価を有する第2のポリオールとの反応によって形成される第2のプレポリマーであって、10~20%のNCO含有率を有する、第2のプレポリマー
を含む、成分A)であるイソシアネート成分を用意することであって、
第1のプレポリマーA2)と第2のプレポリマーA3)との総量が、A)イソシアネート成分の総重量に対して、10~70重量%である、ことと、。
【0062】
2)イソシアネート-反応性成分B)を用意することであって、
B1)第3のポリオール、及び
B2)イソシアネート反応性(メタ)アクリレートモノマー
を含む、イソシアネート-反応性成分B)を用意することと、
3)遊離ラジカル開始剤C)を用意することと、
4)イソシアネート基とヒドロキシル基との間の反応のための触媒、ラジカル重合促進剤、消泡剤、顔料、充填剤及び水分捕捉剤などの、当分野で公知の場合による他の添加物D)を用意することと、
5)次に、遊離ラジカル開始剤C)及び場合により他の添加物D)の存在下で、イソシアネート成分A)をイソシアネート-反応性成分B)と反応させて、本明細書に記載されるポリウレタン組成物を形成することと
を、通常、含む。
【0063】
本発明のポリウレタン組成物は、ワンショット(one-shot)プロセスによって調製されてもよい。本発明のポリウレタン組成物は、スチレン、メタクリル酸メチルなどの反応性希釈剤のいずれかを使用することなく調製することができる。
【0064】
ポリウレタン組成物は、4℃~150℃の範囲、好ましくは周囲温度(25℃)~80℃の範囲の温度で硬化させることができる。
【0065】
ポリウレタン組成物は、コンポジット材料の調製において使用することができる。したがって、本出願のコンポジット材料は、繊維強化材料及び本明細書に記載されるポリウレタン組成物を含む。繊維強化材料は、当分野で公知の任意の繊維とすることができる。
【0066】
上記の説明は、一般的であることを意図しており、本発明のすべての可能な実施形態を含むことを意図していない。同様に、以下の実施例は、例示のみを目的として提供されており、いかなるようにも本発明を規定又は制限することを意図するものではない。当業者は、特許請求の範囲の範囲内の他の実施形態が、本明細書に開示される本発明の明細書及び/又は実施の検討から明らかになることを十分に認識するであろう。そのような他の実施形態は、特定の成分並びにそれらの構成及び割合;混合及び反応条件、容器、展開装置並びにプロトコル;性能及び選択性;製品及び副製品の識別;その後の加工及び使用などの選択を含み得、当業者は、そのようなものが本明細書に添付の特許請求の範囲の範囲内で変化し得ることを認識するであろう。
【実施例】
【0067】
実施例で使用した物質を、以下の表1に示す。
【0068】
【表1】
注:HPMAは、モレキュラーシーブのビーズを添加することによって更に乾燥した;他の物質は、更なる精製を何ら行うことなく入手したままのものを使用した。ラジカル開始剤は、保管するために冷蔵庫に維持し、その使用の約30分前に冷蔵庫から取り出した。キャスト成形する前に、すべての主要成分を真空下で1時間、脱気した。
【0069】
配合物及び試験結果
プレポリマーA2、A3-1及びA3-2の合成:
これらのプレポリマーは、イソシアネート成分とポリオール成分との反応によって形成した。イソシアネート成分を反応器に添加し、窒素充填(padding)下で撹拌しながら反応温度(約70℃)にした。ポリオール成分は、それらが2種以上の成分からなる場合、プレミックスされ、次いで、イソシアネート基とヒドロキシル基との反応によって生じる発熱の除去を可能にする程、十分に遅い速度で反応器に徐々に添加した。ポリオール成分の添加が完了した後、プレポリマーを、ASTM D5155に従ってNCO含有率をモニタリングしながら、約70℃で撹拌しながら、それをビープ(beep)することによって消費させた。NCOが目標NCO値に到達すると、プレポリマー形成が完了したとみなした。プレポリマーを製造する当業者によって公知のとおり、更なる考慮点が適用される。
【0070】
プレポリマーA2:これは、NCO含有率=23%を有する。それは、4,4’-モノマーMDI(87重量%)とトリプロピレングリコール(13重量%)との反応によって形成した。
【0071】
プレポリマーA3-1:これは、NCO含有率=15%を有する。それは、30%の2,4’-MDI及び70%の4,4’-MDI(18.1重量%)の異性体混合物並びに32重量%のNCO含有率(31.8重量%)を有するMDIポリマーと、EW=1002g/eq(12.6)を有するポリプロピレングリコール並びに15%のEOキャップ及びEW=2040g/eq(37.5)を有するPOベースのトリオールとの反応によって形成した。
【0072】
プレポリマーA3-2:これは、NCO含有率=18.4%を有する。それは、4,4’-MDIモノマー(65.5重量%)とジプロピレングリコール(4.1重量%)、約15%のEOキャップ及びEW=2040g/eq(10.3重量%)を有するEOキャップされたPOベースのトリオール、並びに約20%のEOキャップ及びEW=2025g/eq(20.1重量%)を有するEOキャップされたPOベースのジオールとの反応によって形成した。
【0073】
試料調製
全成分を表中のリストに従う順序で指定の割合でブレンドし、続いてSpeedMixer(DAC 600.1 FVZ、Hauschild)を使用して動的プログラム(800rpmで10秒間、1200rpmで10秒間、1600rpmで10秒間、2000rpmで2分間)で完全に混合した。得られた液体樹脂を真空下で6分間更に脱気し、縦型鋼製鋳型にキャストし、40℃のオーブン中に1時間、続いて70℃で一晩、放置して完全に硬化させた。キャスト成形用プレートは、裁断及び試験のために翌朝、離型することによって得た。
【0074】
本発明の実施例1~3
表2に示されている配合にしたがって、本発明の実施例1~3を調製した。
【0075】
本発明の実施例4~10
本発明の実施例4~10は、上記と同様に調製した。それらは、A)イソシアネート成分の総重量に対して異なる比率又は異なる最終プレポリマー重量%を有するプレポリマーを使用した点で、実施例1~3と異なる。
【0076】
比較例1
比較例1は、他の本発明の実施例と比較して、より少ないHPMAの量を使用した。
【0077】
比較例2~3
比較例2~3は、指定のプレポリマー又はその組合せを使用せず、PMDIを使用する先行技術の配合に準拠して調製する。
【0078】
比較例4~5
比較例4~5は、本発明の実施例7及び9と同じレベルのプレポリマーの重量%の個々のプレポリマーを含む配合物とした。
【0079】
【0080】
本発明の実施例1~3及び比較例1は、異なるレベルのHPMA%を有する樹脂の性能を示す。HPMAの量が増加するにつれて、オープンタイムは増大し、未硬化樹脂の初期粘度はそれに応じて低下した。HPMAレベルが30%を超える場合、良好な物理的機械特性及び熱的特性と共に、2時間を超えるオープンタイムを有する樹脂が得られた。HPMAレベルを37%に向上させた場合(本発明の実施例1)、材料強度は、表2中の他の本発明の実施例と比べて低下したことを示した。HPMAレベルが10%であった場合(比較例1)、熱安定性は工業規格を満たさない。結果は、本発明について、好ましいHPMAモノマー範囲が25~40重量%であることを実証した。
【0081】
代わりに、プレポリマーを使用しないでイソシアネートポリマーしか含有しない比較例2~3は、本発明の実施例において使用される同様のレベルのHPMA%(30~37%)と比較して、著しく低い物理的機械性能を示し、物理的機械特性において、プレポリマーに正の効果があることを実証した。この効果により、このプロセスにおいて使用可能なHPMAの上限値が向上し、したがって、はるかに長いオープンタイムを有する樹脂をそれに応じて得ることができる。
【0082】
【0083】
全プレポリマー含有率が比較的低いレベル(本発明の実施例4、5、6に示される<45%)である場合、個々のプレポリマーを含有する3種の配合物の全部が、いかなるプレポリマーも含まない比較例3と比較して、性能の改善を示した。しかし、プレポリマー含有率がある特定のレベルを超えた場合、単一のプレポリマーを含む配合物は、性能基準を満たすことが困難であった。比較例4に示されるとおり、プレポリマーA2(イソシアネート成分の総重量に対して45%)のみを使用した場合、材料は脆くなり、不十分な強度及び破断点ひずみ%をもたらす一方、プレポリマーA3(イソシアネート成分の総重量に対して56%)のみを使用した場合、剛性が損なわれるので、不十分な強度が得られる(比較例5)。
【0084】
驚くべきことに、両方のプレポリマーを選択した比で組み合わせた場合(本発明の実施例7~10)、すべての配合物が、満足のいく強度を示し、他の所望の特性が良好に維持された。NCO含有率<10%又は>25%超を有するプレポリマーは、範囲外である。<10%のNCO含有率の場合、プレポリマーは極めて粘性であり(通常、25℃で>4000MPa.s)、多量の長鎖ポリオールを含有することが多く、その結果、液状樹脂は、不都合な高い初期粘度、短いオープンタイム及び不十分な剛性を有する。NCO含有率>25%である場合、最終硬化樹脂は、不十分な機械的強度及び脆性となる。
【0085】
本発明の実施例8及び10は、プレポリマー%(イソシアネート成分の総重量に基づく)の影響を示した。プレポリマー%が高いほど、材料の脆性は低くなるが、より高い初期粘度及びより短いオープンタイムも有する。
【0086】
オープンタイム及び粘度は、レオメーターAntonPaar MCR102により測定し、試験は、25℃で、25mm平行板を用い、せん断速度10S-1の回転モードで実施した。オープンタイムは、最初の混合から混合物が500MPa.s到達するまでに必要な時間として定義する。
【0087】
曲げ試験は、標準方法ISO178に準拠して行った。3点曲げ鋳型を適用した。ロードセル:1kN、速度:10mm/分;各試料について、80×10×4mmの寸法を有する5つの試験片を測定した。
【0088】
熱変形温度(HDT)は、標準法ISO75-2-モードAに準拠して測定した。試験は、3点曲げ形状を有するDMA装置を用いて行った。2℃/分の勾配で35℃から150℃まで加熱する間に、静的力を試料に加えた。変位をμm単位で測定し、温度を記録した。
【0089】
ガラス転移温度(Tg)は、3点曲げ形状を有するDMA装置で測定した。試料を40℃から200℃まで3℃/分の勾配で加熱した。
【国際調査報告】