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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-23
(54)【発明の名称】処置鎮静用マウスピース
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/06 20060101AFI20240816BHJP
【FI】
A61M16/06 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515551
(86)(22)【出願日】2022-09-09
(85)【翻訳文提出日】2024-05-07
(86)【国際出願番号】 EP2022075117
(87)【国際公開番号】W WO2023036935
(87)【国際公開日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】2151118-3
(32)【優先日】2021-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524090057
【氏名又は名称】ステアウェイ・メディカル・アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アケソン、ジョナス
(72)【発明者】
【氏名】ルジュングヴァル、マグナス
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン、ミカエル
(72)【発明者】
【氏名】リスト、トーマス
(57)【要約】
処置鎮静中に解放上気道を確保するためのマウスピース(10)であって、本体(100)の第1の端部(104)から本体(100)の第2の端部(106)まで延びる気道チャネル(102)を備える本体(100)であって、第1の端部(104)が本体(100)の前端であり、第2の端部(106)が本体(100)の後端である本体(100)と、本体(100)によって支持され、患者の口腔内への本体(100)の挿入深度を制御するように構成された第1のストップ(118)と、本体(100)によって支持された第2のストップ(120a、120b)と、本体(100)によって支持された熱可塑性要素(200)と、を備えるマウスピース(10)。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処置鎮静中に解放上気道を確保するためのマウスピース(10)であって、
本体(100)の第1の端部(104)から前記本体(100)の第2の端部(106)まで延びる気道チャネル(102)を備える前記本体(100)であって、前記第1の端部(104)が前記本体(100)の前端であり、前記第2の端部(106)が前記本体(100)の後端である、前記本体(100)と、
前記本体(100)によって支持され、患者の口腔内への前記本体(100)の挿入深度を制御するように構成された第1のストップ(118)と、
前記本体(100)によって支持された第2のストップ(120a、120b)と、
前記本体(100)によって支持された熱可塑性要素(200)であって、前記熱可塑性要素(200)は前記患者から歯型を受け取るように構成される展性状態と、前記歯型の固定を可能にするためのセット状態とを有し、前記本体(100)に対する前記熱可塑性要素(200)の前方および後方移動がそれぞれ前記第1のストップ(118)および前記第2のストップ(120、120a、120b)によって制限されるように前記熱可塑性要素(200)は前記第1のストップ(118)と前記第2のストップ(120a、120b)との間に配置されている、前記熱可塑性要素(200)と、を備える、
マウスピース(10)。
【請求項2】
前記第2のストップ(120a、120b)は、前記本体(100)から延び、前記熱可塑性要素(200)が前記歯型を受け取ることに応じて前記患者の下顎の前方移動を誘発するように構成された前方傾斜面(122)を有する第1の突起(120a)を備える、
請求項1に記載のマウスピース(10)。
【請求項3】
前記第2のストップ(120a、120b)は、前記本体(100)から延び、前記熱可塑性要素(200)が前記歯型を受け取ることに応じて前記上顎および下顎の歯を前記本体(100)に対して適切に位置決めするために構成された前方傾斜面(124)を有する第2の突起(120b)を備える、
請求項1または2に記載のマウスピース(10)。
【請求項4】
前記第2のストップ(120a、120b)は、前記本体(100)から延びる複数のフランジを備える、
請求項1乃至3の何れか1項に記載のマウスピース(10)。
【請求項5】
前記第1のストップ(118)は、前記本体(100)の前記第1の端部(104)に関連する環状フランジ(118)を備える、
請求項1乃至4の何れか1項に記載のマウスピース(10)。
【請求項6】
前記環状フランジ(118)によって支持され、前記マウスピース(10)の手動操作を容易にするように構成されたグリップ要素(110)をさらに備える、
請求項5に記載のマウスピース(10)。
【請求項7】
前記本体(100)の前記第2の端部(106)は湾曲している、
請求項1乃至6の何れか1項に記載のマウスピース(10)。
【請求項8】
前記環状フランジ(118)は湾曲している、
請求項1乃至7の何れか1項に記載のマウスピース(10)。
【請求項9】
前記本体(100)の前記第1の端部(104)から利用可能なアクセスポート(116)から前記気道チャネル(102)内へ延びる側部チャネル(114)を画定する少なくとも1つの管状接続部(108)をさらに備える、
請求項1乃至8の何れか1項に記載のマウスピース(10)。
【請求項10】
前記熱可塑性要素(200)は、前記本体(100)の前記第2の端部(106)に向かって先細りになる切頂円錐形状を有する、
請求項1乃至9の何れか1項に記載のマウスピース(10)。
【請求項11】
前記熱可塑性要素(200)は、前記本体(100)の前記第1の端部(104)の湾曲に対応する湾曲を有する後端(212)を有する、
請求項7に従属する場合の請求項10に記載のマウスピース(10)。
【請求項12】
前記熱可塑性要素(200)は、Ateva(登録商標)4030AC、Ateva(登録商標)2820AG、またはAteva(登録商標)1807EGから成るグループから選択された材料で作られる、
請求項1乃至11の何れか1項に記載のマウスピース(10)。
【請求項13】
前記少なくとも1つの管状接続部(108)の前記アクセスポート(116)は、Luerlock(登録商標)タイプの継手を備える、
請求項9に記載のマウスピース(10)。
【請求項14】
前記気道チャネル(102)は、楕円形の断面積を有する、
請求項1乃至13の何れか1項に記載のマウスピース(10)。
【請求項15】
前記第1のストップ(118)および前記第2のストップ(120a、120b)は、前記本体(100)と一体形成される、
請求項1乃至14の何れか1項に記載のマウスピース(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処置鎮静に関し、特に、処置鎮静中に解放上気道をもたらすためのマウスピースに関する。
【背景技術】
【0002】
処置鎮静は、患者が不快な処置に耐えることが可能な状態を誘発するために、鎮痛剤とともに、または鎮痛剤なしで、鎮静剤または解離性麻酔薬を投与する技術である。これには通常、短時間作用型の鎮静剤の投与が含まれる。
【0003】
様々な種類の医療処置に伴う不快感を軽減するために鎮静が施される患者の増加に伴い、処置鎮静の需要が増加していることが示されている。
【0004】
処置鎮静には、患者を意識抑制状態にすることが含まれる。そのような状態において、患者は、呼吸機能の低下または停止および不整脈のリスクが高まる場合がある。
【0005】
処置鎮静中の呼吸機能の低下は、脳幹内の呼吸中枢に対する鎮静剤の抑制作用、横隔膜活動の低下、および上気道緊張の神経筋制御の低下によって生じ得る。口腔および咽頭における筋緊張の低下により、下顎および舌が後退し、上気道を閉塞する場合がある。患者が継続的に酸素を受け取り、二酸化炭素を排出することを確実にするために、そのような閉塞は即時に検出され、ベッドサイドで迅速かつ適切に管理されなければならない。そのような即時の措置に備えるために、処置鎮静の間中、麻酔専門医および麻酔看護師は、呼吸抑制や低酸素症の徴候について患者を常に監視する。しかし、処置鎮静は、常に病院の管理された環境で行われるわけではなく、病院外の経験の浅い医療従事者によって行われる場合が多い。
【0006】
したがって、処置鎮静中に患者の上気道を確保するためのより良い方法を見出すことが最も望ましい。
【発明の概要】
【0007】
上記観点から、本発明の主要な目的は、処置鎮静中の解放上気道の確保を容易にするマウスピースを提供することである。
【0008】
主要な目的を実現し、以下の説明から明らかになる特定の目的も実現するために、本発明に従って、請求項1に記載の特徴を有するマウスピースが提供される。マウスピースの好適な実施形態は、従属請求項から明らかになる。
【0009】
より具体的には、本発明は、処置鎮静中に解放上気道を確保するためのマウスピースを提供する。
このマウスピースは、
本体の第1の端部から本体の第2の端部まで延びる気道チャネルを備える本体であって、第1の端部が本体の前端であり、第2の端部が本体の後端である、前記本体と、
本体によって支持され、患者の口腔内への本体の挿入深度を制御するように構成された第1のストップと、
本体によって支持された第2のストップと、
本体によって支持された熱可塑性要素と、を備える。
熱可塑性要素は、熱可塑性要素が患者から歯型を受け取るように構成される展性状態と、歯型の固定を可能にするためのセット状態とを有する。熱可塑性要素は、本体に対する熱可塑性要素の前方および後方移動がそれぞれ第1のストップおよび第2のストップによって制限されるように第1のストップと第2のストップとの間に配置される。したがって、患者の顎の位置は、熱可塑性要素のセット状態において固定することができ、患者の下顎および舌が後退して気道の閉塞を招くリスクを低減することができる。これにより、患者を監視している介護者の負担が軽減される。中央ワーキングおよび気道チャネルは、処置のために患者への経口アクセスを可能にし、患者が制限なく呼吸することを可能にする。
【0010】
第2のストップは、本体から延び、熱可塑性要素が歯型を受け取ることに応じて患者の下顎の前方移動を誘発するように構成された前方傾斜面を有する第1の突起を備えてよい。第1の突起は、患者が歯型を形成する際にマウスピースに対する患者の下顎の位置決めを容易にする。
【0011】
第2のストップは、本体から延び、熱可塑性要素が歯型を受け取ることに応じて上顎および下顎の歯を本体に対して適切に位置決めするために構成された前方傾斜面を有する第2の突起を備えてよい。上顎が本体に対して適切に配置されることにより、上顎の歯が位置決めされた後に熱可塑性要素において位置決めされ得る下顎の相対的な位置決めが容易になる。
第2のストップは、本体から延びる複数のフランジを備える。これらのフランジは、患者の歯列弓の形状に基本的に一致するように湾曲して配置され得る。
第1のストップは、本体の第1の端部に関連する環状フランジを備えてよい。
マウスピースは、環状フランジによって支持され、マウスピースの手動操作を容易にするように構成されたグリップ要素をさらに備えてよい。
本体の第2の端部は湾曲してよく、舌、特に舌の内側部との干渉が低減されることにより、マウスピースを使用する患者の不快感が軽減される。
環状フランジは湾曲してよく、それによって第1のストップが患者の歯列弓により良く一致し得るため、患者の快適性が向上する。
マウスピースは、本体の第1の端部から利用可能なアクセスポートから気道チャネル内へ延びる側部チャネルを画定する少なくとも1つの管状接続部をさらに備えてよい。管状接続部は、二酸化炭素の採取および測定、追加の酸素の供給、および/または気道チャネルからの唾液および/または粘液の除去のために使用され得るので、側部チャネルは、患者の監視および管理を容易にする。熱可塑性要素には、患者の口内へのマウスピースの挿入を容易にする、本体の第2の端部に向かって先細りになる切頂円錐形状が設けられ得る。
【0012】
熱可塑性要素は、本体の第1の端部の湾曲に対応する湾曲を有する後端を有してよい。
【0013】
熱可塑性要素は、Ateva(登録商標)4030AC、Ateva(登録商標)2820AG、またはAteva(登録商標)1807EGから成るグループから選択された材料で作られ得る。
【0014】
少なくとも1つの管状接続部のアクセスポートは、ルアーロック(Luer lock)タイプの継手を備えてよい。
【0015】
気道チャネルは、楕円形の断面積を有してよい。
【0016】
第1のストップおよび第2のストップは、本体と一体形成され得る。
【0017】
一般に、特許請求の範囲において使用される全ての用語は、本明細書において別段の明示的定義がない限り、本技術分野における通常の意味に従って解釈される。「a/an/the[要素、デバイス、構成要素、手段、ステップなど]」という言及は全て、別段の明示的記載がない限り、上記要素、デバイス、構成要素、手段、ステップなどの少なくとも1つの例を指すものとしてオープンに解釈される。本明細書に開示される任意の方法のステップは、特に明示されない限り、開示された順序そのもので行われる必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明の上記ならびに追加の目的、特徴、および利点は、同じ参照番号が同様の要素に用いられる添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態の例示的かつ非限定的な詳細な説明を通し、より深く理解される。
【0019】
図1図1は、マウスピース用本体の正面下面図を開示する。
【0020】
図2図2は、マウスピース用熱可塑性要素の正面下面図を開示する。
【0021】
図3図3は、マウスピースの正面斜視図を開示する。
【0022】
図4図4は、マウスピースの背面斜視図を開示する。
【0023】
図5図5は、マウスピース用の本体の側面図を開示する。
【0024】
図6図6は、マウスピース用の熱可塑性要素の側面図を開示する。
【0025】
図7図7は、マウスピース用の本体の下面図を開示する。
【0026】
図8図8は、マウスピース用の熱可塑性要素の下面図を開示する。
【0027】
図9図9は、マウスピース用の本体の背面斜視図を開示する。
【0028】
図10図10は、マウスピース用の熱可塑性要素の背面斜視図を開示する。
【実施形態の説明】
【0029】
以下、本発明は、本発明の現在好適な実施形態が示される添付図面を参照して、より詳しく説明される。ただし、本発明は、多数の異なる形態で具体化されてよく、以下に記載する実施形態に限定されると解釈すべきではなく、むしろ、これらの実施形態は、徹底性および網羅性のために提供され、当業者に本発明の範囲を完全に伝えるものである。
【0030】
図1は、(図3および図4に示す)マウスピース10用の本体100の正面下面図を開示する。本体100は、(図2に示す)熱可塑性要素200を支持するように構成され、熱可塑性要素200とともに、処置鎮静中に解放上気道を確保するためのマウスピース10を形成する。
【0031】
本体100は、好適には、たとえば低密度ポリエチレン(LDPE)などのプラスティック材料から一体的に作られる。材料は、Celanese(登録商標)AT220LDPEまたはCelanese(登録商標)AT7110LDPEであってよい。同様の特性を有する他の材料が用いられてもよい。ただし、本体100の材料は、医療用として認可されていることが重要である。本体100の材料は、熱可塑性材料であってよいが、好適には、熱可塑性要素200のビカット軟化点よりも高いビカット軟化点を有するべきである。
【0032】
本体100の材料は、さらに、たとえばBormed(商標)RF825MOなどのポリプロピレンランダム共重合体、たとえばBormed(商標)HG820MOやBormed(商標)HD850MOなどのポリプロピレンホモポリマであってもよい。
【0033】
本体100は、本体100の第1の端部104から本体100の第2の端部106まで延びる気道チャネル102を備える。第1の端部104は本体100の前端であり、第2の端部106は本体100の後端である。
【0034】
第2の端部106は、マウスピース10の使用中、患者の口腔内に配置されることが意図される。気道チャネル102は、軌道通路を確保するだけではなく、経口処置アクセスを容易にし、患者のケアを行う専門スタッフのためのヘルスケアの提供を容易にする。気道チャネル102には、楕円形の断面積が設けられ得る。また、気道チャネル102の断面積は、第1の端部104から第2の端部106までの長さに沿って基本的に一定であってよい。
【0035】
本体は、本体100によって支持され、患者の口腔内への本体100の挿入深度を制御するように構成された第1のストップ118をさらに備える。第1のストップ118は、患者の歯の前方に配置されるように構成され、患者の歯に当接することによってストップを形成し、本体118の後方移動を軽減させる。
【0036】
第1のストップ118は、好適には、本体100と一体形成される。
【0037】
第1のストップ118は、好適な実施形態において、本体100の第1の端部104に関連する環状フランジ118をさらに備えてよい。第1のストップ118は、さらに、本体100に対する熱可塑性要素200の前方移動を制御/防止し、それによって、マウスピース10が患者の口内に配置されている場合に本体100が熱可塑性要素200に対して後方に動くことを防ぐ。
【0038】
図1に示すように、環状フランジ118によって支持され、マウスピース10の手動操作を容易にするように構成されたグリップ要素110が設けられ得る。グリップ要素110は、図1に示すように互いに垂直に対向して配置された上側および下側グリップ要素110を備えてよい。各グリップ要素110は、好適には環状フランジ118から前方に延び、それによって医療従事者は、処置鎮静前、処置鎮静中、および処置鎮静前後に所望に応じて患者の口内でマウスピース10を操作および位置決めすることができる。
【0039】
各グリップ要素110には、さらに、介護者にとってマウスピース10の把持を向上させるグリップ強化突起またはリブが設けられ得る。
【0040】
本体100は、第2のストップ120a、120bを支持する。第2のストップ120a、120bは、第1のストップ118と協働して、熱可塑性要素200を本体100に固定し、さらに本体100に対する熱可塑性要素200の前方/後方移動を防止するように構成される。また、第2のストップ120a、120bは、患者の上顎に対する下顎の望ましい位置決めを誘発する効果を提供する。本体100は、第1のストップ118と第2のストップ120a、120bとの間で熱可塑性要素200に歯型が形成されるように歯が配置された状態で患者が熱可塑性要素200を噛みしめるように配置される。したがって、第2のストップ120a、120bは患者の歯に対し後方に配置され、第1のストップ118は患者の歯に対し前方に配置される。
【0041】
第2のストップ120a、120bは、本体100と一体に形成され得る。第2のストップ120a、120bは、図1に示され、さらに図5に関連して詳述されるように、本体100から延びる複数のフランジを備えてよい。
【0042】
図1および図2は、横方向Tおよび縦方向Vを画定する。マウスピース10は、本体100および熱可塑性要素200の横方向Tが患者に対して横方向に延び、縦方向Vが患者に対して縦に延びるように、患者の口内で配置されるように構成される。
【0043】
図1にさらに示すように、本体100には、本体100の第1の端部104から利用可能なアクセスポート116から気道チャネル102内に延びる側部チャネル114を画定する少なくとも1つの管状接続部108が設けられ得る。少なくとも1つの管状接続部108のアクセスポート116は、好適にはルアーロックタイプの継手である。管状接続部118は、酸素を供給し、および/または患者から吐出される二酸化炭素を採取/測定するために用いられ得る。
【0044】
図示されるように、マウスピース10の本体100には、好適には両側管状接続部108が設けられる。処置鎮静中の患者は頭部を横向きにして配置される場合が多いため、両側管状接続部108があることにより、管状接続部108の最上部を呼気二酸化炭素の効率的な採取および測定のために用いることができる。最上部の管状接続部は、さらに、たとえば唾液による閉塞が起こりにくく、呼気二酸化炭素の採取および測定により適している。最下部の管状接続部108は、酸素供給のために用いることができ、酸素は制御された正圧で供給されるため、唾液による側部チャネル114の閉塞が起こりにくくなる。
【0045】
処置鎮静中、低酸素症のリスクを低減するために継続的な酸素供給を維持すること、また呼吸抑制および自然換気の低下の初期徴候を検出するために呼気二酸化炭素レベルを測定することが重要である。
【0046】
当技術分野で知られているように、また上述したように、本明細書において提供されるマウスピース10は、患者の呼吸機能に関する連続情報を提供するために、たとえばカプノグラフィによって二酸化炭素の呼気レベルを測定することを可能にする。現在の臨床ガイドライン(Eur J Anaesthesiol 2018; 35: 6-24)において欧州麻酔集中治療学会(ESAIC)によって義務であると記載されている、処置鎮静中のカプノグラフィの継続的使用は、少なくとも1つの管状接続部108を設けることによって容易になる。(1または2つの)管状接続部108により、処置鎮静中および処置鎮静後初期の患者の強制的な監視が容易になる。
【0047】
処置鎮静中、酸素供給は、経皮的パルスオキシメトリで継続的に監視され、また頻度は低いものの、二酸化炭素分圧の推定値を提供するために動脈血の生化学的血液ガス分析で間欠的にも監視される。
【0048】
図2は、(図3に示す)マウスピース10用の熱可塑性要素200の正面下面図を開示する。熱可塑性要素200は、本体100上に配置され、本体100によって支持されるように構成される。熱可塑性要素200は、熱可塑性要素200が患者から歯型を受け取るように構成される展性状態と、歯型の固定を可能にするセット状態とを有する。熱可塑性要素200は、熱可塑性要素200を展性状態に変換するために加熱されるように構成される。加熱は、熱可塑性要素200が可塑性および展性になるために十分な高い温度に到達するように行われる。熱可塑性要素200を展性状態にすることは、少なくとも熱可塑性要素200、任意選択的にマウスピース10全体を、40℃と80℃との間の温度、好適には50℃と60℃との間の温度に加熱することを備えてよい。
【0049】
熱可塑性要素200が可塑性、すなわち展性状態になると、熱可塑性要素200が設けられたマウスピース10は、患者の口内に配置される。患者の歯は、熱可塑性要素200に沈み込んで歯型を形成し、熱可塑性要素200が冷えて可塑性を失うと、熱可塑性要素200のセット状態に固定される。このように、熱可塑性要素200に埋め込まれた歯によって患者の下顎が前方位置に固定され得ることにより、下顎が後方位置に後退して上気道を閉塞するリスクが低減される。
【0050】
熱可塑性要素200の材料は、エチレン酢酸ビニル(EVA)共重合体であってよい。適切な材料の例は、Ateva(登録商標)4030AC、Ateva(登録商標)2820AG、またはAteva(登録商標)1807EGであってよい。同様の特性を有する他の材料も当然使用され得る。
【0051】
ただし、Bormed(商標)RF825MO、Bormed(商標)HG820MO、またはBormed(商標)HD850MOのグループから選択された本体100の材料と、Ateva(登録商標)4030AC、Ateva(登録商標)2820AG、またはAteva(登録商標)1807EGのグループから選択された熱可塑性要素100の材料との組み合わせが所望の有益な特性を有することが試験で示されている。本体100および熱可塑性要素200におけるこれらの材料の組み合わせは、それぞれ、本体200に対する熱可塑性要素100の所望の接着および保持を実現する。これにより、マウスピース10の2つの構成要素間の移動のリスクが低減され、歯型の固定および患者の下顎の前方位置決めが向上する。
【0052】
特に、上述した材料は、DIN EN 1464に準拠した剥離試験において所望の性能を提供する。
【0053】
熱可塑性要素200は、内部チャネル214を備えてよく、内部チャネル214の内部形状は、好適には、本体100の外形に対応し、本体100の第1のストップ118の後側が熱可塑性要素200の前面210に対して配置されるように本体100を収容するように構成される。
【0054】
熱可塑性要素200には、本体100の少なくとも1つの側部チャネル108を収容するように構成された少なくとも1つの側部チャネル208、好適には両側側部チャネル208が設けられ得る。
【0055】
また、熱可塑性要素200には、本体100の第2のストップ120a、120bを収容するように構成された少なくとも1つの凹部206が設けられ得る。少なくとも1つの凹部206は、熱可塑性要素200の内部チャネル214の上部および下部の両方に設けられ得る。
【0056】
図3および図4は、それぞれ正面斜視図および背面斜視図で示されたマウスピース10を開示する。マウスピース10は、上記で説明され、図3および図4において組立て状態で示される本体100および熱可塑性要素200を備える。熱可塑性要素200は、本体100に対する熱可塑性要素200の前方および後方移動がそれぞれ第1のストップ118および第2のストップ120、120a、120bによって制限されるように、本体100において第1のストップ118と第2のストップ120a、120bとの間に配置される。
【0057】
図5および図6は、マウスピース10の本体100および熱可塑性要素200を側面図で示す。図5に示す本体100の実施形態において、第2のストップは、本体100から延び、熱可塑性要素200が歯型を受け入れることに応じて患者の下顎の前方移動を誘発するように構成された前方傾斜面122を有する第1の突起120aを備える。第1の突起120aは、下向きに配置されるように構成され、剛性であり、熱可塑性要素200に沈み込んで歯型を形成する際に患者の下顎の歯を前方に押し出す。マウスピース10は、下顎の歯型が第1の突起120aと第2のストップ118との間に形成されるように患者の口内に配置される。前方傾斜面122の傾斜角αは、30°と90°との間、好適には40°と60°との間であってよい。
【0058】
第1の突起120aは、図5に示すように、複数のフランジによって形成され得る。第1の突起120aは、5個と12個との間の個数、好適には8個と10個との間の個数のフランジを備えてよい。
【0059】
図5に示す実施形態において、第1のストップ120a、120bは、本体100から延び、熱可塑性要素200が歯型を受け入れることに応じて上顎および下顎の歯を本体100に対して適切に位置決めするために構成された前方傾斜面124を有する第2の突起120bをさらに備える。第2の突起120bは、上向きに、すなわち患者の上顎に向かって配置されるように構成され、剛性であり、熱可塑性要素200に沈み込んで歯型を形成する際に患者の上顎の歯をマウスピース10およびその本体100に対して前方に押し出す。マウスピース10は、上顎の歯型が第2の突起120bと第2のストップ118との間に形成されるように患者の口内に配置される。前方傾斜面124の傾斜角βは、30°と90°との間、好適には40°と60°との間であってよい。
【0060】
第2の突起120bは、図5に示すように、複数のフランジによって形成され得る。第2の突起120bは、5個と12個との間の個数のフランジ、好適には8個と10個との間の個数のフランジを備えてよい。
【0061】
マウスピース10は、下顎の歯型より先に上顎の歯型が形成されるように患者の口内に配置されるように構成され得る。
【0062】
好適な実施形態において、本体100は、第1の突起120aまたは第2の突起120bのいずれかが患者に対して上向き(すなわち頭側向き)になるようにマウスピース10が配置され得るように、横方向にも縦方向にも対称である。
【0063】
第1の突起120aが第2の突起120bの前方に配置される実施形態も想定される。そのような実施形態において、第1の突起120aは、第1および第2の突起120a、120bが互いの真上/真下に配置される図5に示す実施形態と比べて、患者の下顎の前方移動の増大を誘発するであろう。
【0064】
図6に示すように、熱可塑性要素200には、本体100の第2の端部106に向かって、すなわち熱可塑性要素200の後端212に向かって先細りになる切頂円錐形状が設けられ得る。したがって、熱可塑性要素200には、円錐面202が設けられ得る。熱可塑性要素200の円錐形状により、患者の口内へのマウスピース200の挿入が容易になり、不快感が軽減される。
【0065】
熱可塑性要素200には、前面210と円周円錐面202との間に配置された円筒円周面204がさらに設けられ得る。円筒円周面204は、歯型が形成され得る表面を提供し、患者の歯に対しほぼ直角に向けられる。これにより、歯型の形成が容易になり、熱可塑性要素200に歯型が形成される際にマウスピース10が患者に対して前方に摺動するリスクが低減される。
【0066】
図7および図8は、マウスピース10の本体100および熱可塑性要素200を下面図で示す。図7に示すように、本体100の第2の端部106は、湾曲してよい。マウスピース10の後端106の湾曲は横方向に延び、マウスピース10と患者の舌との干渉を低減する。
【0067】
熱可塑性要素200の後端212は、(図9に示す)本体100の後面126を覆うように構成され得る。したがって、熱可塑性要素200の後端212は、マウスピース10の後面を形成してよい。熱可塑性要素200の後端212はさらに、湾曲し、本体100の第2の端部106の湾曲に一致してよい。本体100の第2の端部106および熱可塑性要素200の後端212の湾曲により、マウスピース10の使用中の患者の快適性が向上するとともに、マウスピース10は、気道チャネル102を閉塞するリスクを低減するために十分な舌との接触を提供する。マウスピース10は、上述した湾曲によって、患者の舌の内側には小さく、側面に最も長く口内で後方に延びるため、患者の不快感が軽減される。
【0068】
図7および図8は、さらに、本体100の環状フランジ118が湾曲してよく、対応して熱可塑性要素200の前面210に対応する湾曲が設けられ得ることを示す。環状フランジ118の湾曲により、マウスピース10は、患者の歯列弓の形状に一致することが可能であり、マウスピース10の使用中の患者の快適性が向上する。
【0069】
また、図7は、環状フランジ118の湾曲に対応する湾曲がどのように第1の突起120aに設けられ得るかを示す。第1の突起120aの横方向湾曲は、マウスピース10に患者の歯型を形成することによる圧力が第1の突起120aにより均一に分散するように、患者の歯列弓に一致することが意図される。第1の突起120aのフランジは、フランジの各々における前方傾斜面122が上述した湾曲を形成するように配置されるように配置され得る。さらに、第2の突起120bにも、第1の突起120aに関して上記で説明したような湾曲が設けられ得る。
【0070】
また、各側部チャネル114は、気道チャネル102の延長線に対して斜めに延びるように配置され得る。各側部チャネル114は、アクセスポート116から、横方向および後方向の両方に気道チャネル102内へ延びる。患者が横臥位になった場合、上側部チャネル114は、二酸化炭素の採取および測定を可能にし、下側部チャネル114は、酸素の供給および/または唾液の排出を可能にする。
【0071】
図9および図10は、本体100および熱可塑性要素200を背面斜視図で示す。図9は、本体100の第2の端部106において本体100にどのように湾曲後面126が設けられ得るかを示し、この湾曲は、熱可塑性要素200の後端212の湾曲に一致することが意図される。
【0072】
本発明は、示された実施形態に限定されないことが理解される。したがって、いくつかの変更および変形例が、添付の特許請求の範囲によってのみ定義される本発明の範囲内で想定される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】