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特表2024-530828毛細管排出を容易にする設計の容積式試料採取装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-23
(54)【発明の名称】毛細管排出を容易にする設計の容積式試料採取装置
(51)【国際特許分類】
   B01L 3/02 20060101AFI20240816BHJP
【FI】
B01L3/02 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515638
(86)(22)【出願日】2022-09-13
(85)【翻訳文提出日】2024-04-22
(86)【国際出願番号】 FR2022051721
(87)【国際公開番号】W WO2023041867
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】2109632
(32)【優先日】2021-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513016471
【氏名又は名称】ジルソン エスアーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】デュデク,ブルーノ
(72)【発明者】
【氏名】ギシャルドン,ステファン
(72)【発明者】
【氏名】マルヴォワザン,エルベ
【テーマコード(参考)】
4G057
【Fターム(参考)】
4G057AB18
4G057AB19
(57)【要約】
本発明は、容積式試料採取装置のアセンブリ(30)に関しており、このアセンブリは先端部(16)とイジェクタ(20)とを備え、先端部(16)は、本体(42)と、コネクタにより本体に接続される可動毛細管保持部分(44)と、可動部分に固定されるレバー(54)とを備えるので、コネクタを介したこの部分の径方向内向きの動きが、径方向外向きのレバー(54)の動きにつながり、イジェクタ(20)は、レバー(54)と係合する係止部材(64)を備え、係止部材(64)は、イジェクタ(20)の頂部位置において、レバー(54)が径方向外向きに動くのを防止することにより可動毛細管保持部分(44)を能動的毛細管保持位置に保持する係止位置を取り、排出移動中に、係止部材(64)は、径方向外向きのレバー(54)が動くのを可能にする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容積式装置アセンブリ(30)であって、前記容積式装置アセンブリは、
プランジャ・毛細管システム(18)の毛細管(21)を支持するように意図される先端部(16)であって、中空であり、前記先端部の縦中心軸線(32)を中心とし、前記毛細管の軸方向保持部材(38)を備える外側表面(36)を含む先端部と、
前記プランジャ・毛細管システム(18)を排出するように意図されるイジェクタ(20)であって、上部休止端位置と底部排出端位置との間における前記先端部(16)に対する前記イジェクタ(20)の軸方向排出移動を可能にするように前記容積式装置アセンブリは設計されており、前記軸方向排出移動の最中に毛細管端(21)と軸方向接触するように意図される排出端(60)を含むイジェクタ(20)と、
を備え、
前記先端部(16)は、先端部本体(42)とともに、リンク(52,52,66)により前記先端部本体(42)に接続される可動毛細管保持部分(44)を含み、前記可動毛細管保持部分(44)は、前記毛細管の前記軸方向保持部材(38)の少なくとも一部をその外側表面に含み、
前記先端部はまた、前記可動毛細管保持部分(44)に剛性接続されるレバー(54)を含み、それにより、前記リンク(52,52,66)を介した前記先端部本体(42)に対する前記可動毛細管保持部分(44)の径方向内向き傾斜が、前記レバー(54)の径方向外向き傾斜を作動させ、
前記イジェクタ(20)は、前記レバー(54)と協働する係止部材(64)を備え、
前記イジェクタ(20)の前記上部休止端位置において、前記係止部材(64)は、前記レバー(54)の径方向外向き傾斜を防止することにより、前記先端部の前記可動毛細管保持部分(44)を前記毛細管の能動的保持位置に保持する係止位置を占め、
前記イジェクタ(20)の前記軸方向排出移動の最中に、前記係止部材(64)は、
前記毛細管のその能動的保持位置から前記毛細管の後退解除位置への前記可動毛細管保持部分(44)の径方向内向きの傾斜から生じる、前記レバー(54)の径方向外向き傾斜を許容する、または
前記毛細管のその能動的保持位置から前記毛細管のその後退解除位置への前記可動毛細管保持部分(44)の径方向内向き傾斜をもたらす、前記レバー(54)の径方向外向き傾斜を作動させる、容積式装置アセンブリ。
【請求項2】
前記先端部(16)において、前記毛細管の前記可動毛細管保持部分(44)と前記先端部本体(42)との間の前記リンク(52,52)は、可撓性の弾性変形可能なリンクである、請求項1に記載の容積式装置アセンブリ。
【請求項3】
前記先端部(16)は前記縦中心軸線(32)を中心とする中間リング(50)を含み、可撓性を有する前記リンクは肉薄の二つの可撓性ゾーン(52,52)により作られ、前記可撓性ゾーンの間に、第1角度リングセクタ(50a)とともに第2角度リングセクタ(50b)が画定され、前記第1角度リングセクタ(50a)は前記毛細管の前記可動毛細管保持部分(44)と前記レバー(54)とに剛性接続されて、これら二つの間に配置されるのに対して、前記第2角度リングセクタ(50b)は前記先端部本体(42)に剛性接続される、請求項2に記載の容積式装置アセンブリ。
【請求項4】
前記二つの肉薄の可撓性ゾーン(52,52)は、直径方向に対向する、請求項3に記載の容積式装置アセンブリ。
【請求項5】
前記先端部(16)はさらに、前記第2角度リングセクタ(50b)に剛性接続される締結プレート(56)を含む、請求項3又は4に記載の容積式装置アセンブリ。
【請求項6】
前記先端部(16)は一体製作される、請求項2から5のいずれか一項に記載の容積式装置アセンブリ。
【請求項7】
前記イジェクタ(20)に設けられる前記係止部材(64)は、前記先端部レバー(54)の傾斜面(62)と協働するように意図される径方向停止部材により具現される、請求項2から6のいずれか一項に記載の容積式装置アセンブリ。
【請求項8】
前記先端部(16)において、前記可動毛細管保持部分(44)と前記先端部本体(42)との間の前記リンクは、ピボットリンク(66)又はボールジョイントリンクである、請求項1に記載の容積式装置アセンブリ。
【請求項9】
前記可動毛細管保持部分(44)は、略半円筒形状を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の容積式装置アセンブリ。
【請求項10】
前記毛細管の前記軸方向保持部材(38)の別の一部が前記先端部本体(42)の前記外側表面に設けられる、請求項1から9のいずれか一項に記載の容積式装置アセンブリ。
【請求項11】
前記毛細管の前記軸方向保持部材(38)は、前記先端部(16)の前記外側表面(36)の少なくとも一つの環状ビードを使用して具現される、請求項1から10のいずれか一項に記載の容積式装置アセンブリ。
【請求項12】
前記可動毛細管保持部分(44)と前記先端部レバー(54)とが一体製作される、請求項1から11のいずれか一項に記載の容積式装置アセンブリ。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の容積式装置アセンブリ(30)を備える、容積式試料採取装置(1)。
【請求項14】
単一チャネル又は多チャネルで手動又は電動の容積式試料採取ピペットである、請求項13に記載の容積式試料採取装置(1)。
【請求項15】
単一チャネル又は多チャネルで手動又は電動の容積式試料採取プログラマブルコントローラである、請求項13に記載の容積式試料採取装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容積式試料採取装置、例えば実験用ピペット又は液体移送ピペットとも呼ばれる試料採取ピペットの分野に関する。これらは、容器などでの液体の試料採取及び分注を目的とする。本発明は、プログラマブルコントローラ形態での容積式試料採取装置にも関する。
【背景技術】
【0002】
手動の単一チャネル又は多チャネルピペットに関して、これらは、液体試料採取及び分注作業中に作業者が手で持つように意図され、制御ボタンに軸方向圧力を印加することでこのボタンを作動させることにより、これらの作業が行われる。いわゆる容積式ピペットについては、プランジャ・毛細管システムタイプの消耗品と協働するように意図され、排出又は再使用の前に、試料採取される標本との直接接触状態になるようにピストンが設けられる。それゆえ容積式ピペットは、ピストンがピペットの一体的な部分であり、標本との直接接触状態にない従来の空気置換式ピペットのものとは異なる設計を有する。
【0003】
周知の手法において、毛細管はピペットの先端部への装着が意図される。先端部への毛細管の保持力は、液体の粘性に関係なく、ピペット作業中、特に分注中に毛細管が脱離しないことを保証すべく充分しっかりしたものでなければならない。
【0004】
これらの要件はピペットの先端部への毛細管の確実な軸方向装着を必要し、その結果、装着力が増加するにつれて毛細管排出の難度が高くなる。
【0005】
この相反する状況では、プランジャ・毛細管システム排出についての人間工学的な問題が起きる。実際に、ピペットに一体化されたイジェクタを使用して所望の排出を行なうのに、作業者はかなりの力を発揮する必要がある。そしてこれは、快適性の問題とともに反復性外傷(RSI)の発症を結果的に生じ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
先端部と毛細管の間での機械的接続を断つには先端部への毛細管の装着力に対抗するのに充分な大きさを排出モータが有しなければならないので、プランジャ・毛細管システムの電動排出を実施するプログラマブルコントローラなどの装置では、類似の問題が発生する。多チャネル設計ではこれらの問題が深刻であることに言及しておく。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題に対処する為に、本発明は容積式装置アセンブリに関し、このアセンブリは、
プランジャ・毛細管システムの毛細管を支持するように意図される先端部であって、中空であり、先端部の縦中心軸線を中心とし、毛細管の軸方向保持部材を備える外側表面を含む先端部と、
プランジャ・毛細管システムを排出するように意図されるイジェクタであって、上部休止端位置と底部排出端位置との間での先端部に対するイジェクタの軸方向排出移動を可能にするようにアセンブリが設計され、排出移動中に毛細管端との軸方向接触状態にあることがされる排出端を含むイジェクタと、
を備える。
【0008】
本発明によれば、先端部は、本体とともに、リンクにより本体に接続される可動毛細管保持部分を含み、可動保持部分は毛細管の軸方向保持部材の少なくとも一部をその外側表面に含み、先端部はまた、可動保持部分に剛性接続されるレバーを含み、それにより、リンクを介した先端部本体に対する可動部の径方向内向き傾斜が、レバーの径方向外向き傾斜を作動させ、
イジェクタは、レバーと協働する係止部材を備え、それにより、
イジェクタの上部休止端位置において、係止部材は、レバーの径向外向き傾斜を防止することにより、先端部の可動部分を毛細管の能動的保持位置に保持する係止位置を占め、
イジェクタの排出移動中に、係止部材は、
毛細管のその能動的保持位置から毛細管の後退解除位置への可動部分の径方向内向き傾斜から生じる、レバーの径方向外向き傾斜を許容する、または
毛細管のその能動的保持位置から毛細管のその後退解除位置への可動部分の径方向内向き傾斜をもたらす、レバーの径方向外向き傾斜を作動させる。
【0009】
したがって、本発明は、上記の相反する状況に充分に対処することを可能にする区分化/スロット形成した設計を採用することにより、先端部の機能化に備えた。実際に、本発明によって、先端部に支持される可動保持部分がピペット作業中に毛細管の能動的保持位置に保持されることで、先端部へのこの毛細管の確実な装着を保証することができる。さらに、この可動保持部分が毛細管のその後退解除位置へ後退できることにより、プランジャ・毛細管システムの脱離及び排出を始動させるためのイジェクタに展開すべき力をかなり制限することが可能である。
【0010】
本発明はまた、二次システムへの排出機能の埋め合わせを可能にするのに対して、既存システムでは、排出制御はピペット動作制御と概ね重複し、それゆえにかなりの力が生じることが最終的に強調される。
【0011】
本発明は、好ましくは、単独又は組合せで採用される以下の任意の特徴のうち少なくとも一つを有する。
【0012】
好ましくは、先端部において、可動毛細管保持部分と先端部本体との間のリンクは、可撓性の弾性変形リンクである。
【0013】
好ましくは、先端部はその縦中心軸線を中心とする中間リングを含み、可撓性リンクは肉薄の二つの可撓性ゾーンにより作られ、これらゾーンの間に、第1角度リングセクタとともに第2角度リングセクタが画定され、第1角度セクタは、可動毛細管保持部分とレバーとに接続されて、これら二つの間に配設されるのに対して、第2角度セクタは先端部本体に剛性接続される。
【0014】
好ましくは、肉薄の二つの可撓性ゾーンは直径方向に対向する。好ましくは、先端部は第2角度リングセクタに剛性接続される締結プレートも含む。
【0015】
好ましくは、代替例として互いに組み立てられる幾つかの部品の設計が発明の範囲を逸脱することなく考案され得るとしても、先端部は一体製作される。好ましくは、イジェクタに設けられる係止部材は、先端部レバーの傾斜面と協働するように意図される径方向停止部材により具現される。
【0016】
上に記載された可撓性リンクの代替例によれば、可動毛細管保持部分と先端部本体との間のリンクは、ピボットリンク又はボールジョイントリンクであり得る。好ましくは、可動毛細管保持部分は略半円筒形状を有する。好ましくは、毛細管の軸方向保持部材の別の一部が先端部本体の外側表面に設けられる。
【0017】
これに関して、毛細管の軸方向保持部材は、好ましくは、先端部の外側表面の少なくとも一つの環状ビードを使用して具現されることに言及しておく。
【0018】
好ましくは、可動保持部分と先端部本体との間のリンクについて選択される設計に関係なく、可動毛細管保持部分と先端部レバーとが一体製作される。
【0019】
本発明は、このようなアセンブリを少なくとも一つ備える容積式装置にも関する。例えば、この装置は、単一チャネル又は多チャネルで手動又は電動の容積式試料採取ピペット、あるいは、単一チャネル又は多チャネルの容積式試料採取プログラマブルコントローラである。
【0020】
本発明の更なる利点及び特徴は、以下の非限定的で詳細な記載において明白になるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
添付図面に関して記載する。
図1】本発明による容積式試料採取ピペットの斜視図を表す。
図2】前図に示されているピペットの部分的縦断面図を表し、特に本発明の好適な第一実施形態によるアセンブリを示す。
図3】前図に示されているアセンブリに属するピペット先端部の斜視図を表す。
図4】前図に示されている先端部の側面図を表す。
図5図2のものと類似した部分的縦断面図を表し、プランジャ・毛細管システム排出作業中の所与の時点でのアセンブリを示す。
図6図5に表されている所与の時点に採用される状態での先端部の斜視図を表す。
図7】プランジャ・毛細管システム排出作業の終了時における、図5と類似した部分的縦断面図を表す。
図8】本発明の第二実施形態によるアセンブリの側面図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
最初に図1を参照すると、本発明による手動作動式単一チャネル容積式ピペット1が図示されている。この手動ピペットは「メカニカルピペット」とも呼ばれる。以下の記載を通して、「上部」及び「底部」の語は、ピペット動作位置又はこの位置の近くで直立に保たれたピペットについて考えられるものとする。
【0023】
図1では、ピペット1は、作業者の手2に持たれた状態で図示され、親指4を使用して、既に吸入された液体の分注を生じさせるべくピペットを作動させている。より具体的には、ピペット1は、ピペットの上方本体を形成するハンドル6を備え、このハンドルからピペット動作制御ロッド10が突き出ている。このロッドはピペット動作位置における上端で制御ボタン12を支持し、その上部は作業者の親指4により押されるように意図される。
【0024】
必要なものとして、ハンドル6には表示画面(不図示)が設けられ得ることに言及しておく。同様に、試料採取される体積を設定する為の手段がこのハンドル6において作業者に利用可能である。
【0025】
ハンドル6の下で、ピペット1は着脱可能な底部14とその外側底部本体15とを含む。底部15は、プランジャ・毛細管システムと呼ばれる消耗品18を受容する先端部16を底部の終端とする。毛細管21と先端部16との内側にプランジャが設置されるので、図1ではシステム18の毛細管21のみが視認され得る。周知の手法では、プランジャ・毛細管システム18は、ピペット動作後にイジェクタ20により機械的に排出され得、イジェクタの作動ボタン22は、例えば制御ボタン12の近傍でハンドルの頂部を越えて突出して設置される。
【0026】
ピペット動作制御ロッド10は、その底端で把持システム(図1には不図示)に接続され、ここでは記載されない周知の手法によりプランジャ・毛細管システム18のプランジャを把持しそれから解除することが可能である。
【0027】
さて図2から図4を参照すると、本発明の好適な第一実施形態によるアセンブリ30が図示されており、このアセンブリは図1に示されているピペットに一体化され、特定設計の先端部16及びイジェクタ20の全体を含む。図3及び4で最も視認可能な先端部16は、ここでは単一チャネルピペットの縦中心軸線に対応する先端部の縦中心軸線32を中心とする中空形状を有する。先端部16の中空にはプランジャ・毛細管システム18のプランジャ23が通るように意図されており、プランジャの上端は、ピペット動作制御ロッドにより作動される把持システム34により把持される。
【0028】
先端部16の外側表面36は、軸線32を中心とする環状ビード、肩部の形態、あるいは類似の形態により具現される毛細管の軸方向保持部材38を備える。いずれのケースでも、部材38は、毛細管21を先端部16に保持するように意図される軸方向停止部を形成する。周知の手法で、毛細管の上部の内側表面は、例えば、径方向内向きに延出して、底部で部材38により画定される先端部の凹部41に収容される環状突出部40を配置することにより、先端部の軸方向保持部材38と協働する形状を成している。
【0029】
より具体的には、先端部の外側表面36が本発明に固有の区分化/スロット形成した設計を有するので、毛細管の軸方向保持部材38はこの外側表面周りで連続的には延在せず、これについては後で記載する。こうして部材38は同じような周方向の区分化/スロット形成した設計を有する。
【0030】
先端部本体42と可動毛細管保持部分44との間で区分化が行われるので、先端部16の主要部は実際には完全な円筒形ではない。先端部本体42は固定されてその上部42aは略半円筒形状を有するのに対して、底部42bは概ね円筒形の全体形状を取り、二つの部分は互いに軸方向に並んで配置されて、好ましくは単一体で製作される、つまり一体であるか、区分化されていない。使用される材料は、好ましくはプラスチック、あるいは例えば外側被覆アルミニウムである。
【0031】
上部42aに面する先端部本体42の中空部は、好ましくはやはり略半円筒形状である可動保持部分44で占められる。先端部本体42と可動保持部分44とはともに、空間46がこれらを周方向及び軸方向に分離して、上に引用された区分化/スロット形成した設計が結果的に得られることを除いて、従来の先端部を形成する。
【0032】
ビード又は肩部38は、一部が先端部本体42の外側表面に、そして一部が可動保持部分44の外側表面に設置される。
【0033】
それゆえ軸線32を中心とする円筒体の大部分をともに形成する二つの要素42,44は、やはり軸線32を中心とする中間リング50を使用して上端で互いに接続されている。
【0034】
このリング50には、先端部本体42と可動保持部分44との間の可撓性リンクが、直径方向に対向して二つの肉薄の可撓性ゾーン52の形態で組み込まれている。これら二つの可撓性ゾーン52の間には、可動保持部分44に剛性接続された第1角度リングセクタ50aが最初に画定され、そして反対の第2角度リングセクタ50bは先端部本体42に剛性接続されている。可撓性リンクは、二つの可撓性ゾーン52の弾性変形により、これら二つの可撓性ゾーン52を通る横旋回軸線に沿った、二つの角度リングセクタ50a,50bの互いに対する旋回移動を全体として可能にする。
【0035】
やはりここで、中間リング50は先端部の要素42,44を含む一体製作される。
【0036】
可動保持部分44の上部と並んで、第1角度リングセクタ50aからのレバー54により、先端部が完成される。こうして、第1角度リングセクタ50aは軸線32の方向に沿って可動部分44とレバー54との間に配置される。ゆえに要素44,50a,54は、好ましくは一体製作されて、ピペットが使用される時にほぼ変形を受けないように意図される剛性接続アセンブリを形成する。他方で、以下で記載される作業を行なうには、このアセンブリが変形せずに動き得るような手法で、特に、リンク52,52を介した先端部本体42に対する可動保持部44の径方向内向き傾斜が、レバー54の径方向外向き傾斜を作動させることを保証するべく、一定の剛性が求められる。
【0037】
最後に、先端部16は、第2角度リングセクタ50bから上向きに延出する締結プレート56により完成する。レバー54と直径方向に対向して配設されるプレート56は、底部ピペット部分の外側本体15に直接的又は間接的に締結されるように意図される先端部の固定部を形成する。
【0038】
図2に見られるイジェクタ20としては、毛細管21の上端への軸方向圧力によりプランジャ・毛細管システム18を排出するように意図される。ピペットは、図2に示されている上部休止端位置と、図7に示されて以下に記載される底部排出端位置との間での先端部16に対するイジェクタ20の軸方向排出移動を可能にする。これを行なう為に、イジェクタ20は、排出移動中に上部毛細管端との軸方向接触状態となるように意図される底部排出端60を備える。周知の手法で、軸線32を中心とするイジェクタの底部排出端60は、例えば180°を超える広い周方向範囲を有し得る。
【0039】
イジェクタ20とレバー54とは、プランジャ・毛細管システム18の排出を行なう為にイジェクタ20で展開される力を制限することを可能にしながら、ピペット動作中には先端部16への毛細管21の確実な装着を維持すべく、ともに協働するように意図される。
【0040】
したがって、レバー54は、径方向外側カム表面62を上端部に有し、その形状は、この表面62が上向きに軸線32から径方向に広がるようなものである。それゆえカム表面62は傾斜面、代わりに湾曲表面であり得る。
【0041】
また、レバー54のカム表面62と協働する為に、イジェクタ20はここでは軸方向停止部材に対応する係止部材64を備える。図2に示されるように、イジェクタ20の上部休止端位置で、係止部材64はカム表面62と接触して設置される一方でこれに対して径方向外向きに配設される係止位置を占める。ゆえに、係止部材64はレバー54が径方向外向きに傾斜するのを防止してレバーを直線位置に保持し、こうして可動保持部分44を毛細管の能動的保持位置に維持するのに役立つ。
【0042】
図2に示されるように、可動部分44の能動的保持位置は、固定された先端部本体42とともにかろうじて円筒体を再構成するこの可動保持部分44の直線位置にも対応する。言い換えると、この能動的保持位置で、可動保持部分44の外側表面に設置されるビード38の一部は、軸線32に対してその最も偏心した位置に配置され、これは毛細管21を先端部に確実に保持するのに役立つのを可能にする。要素62,64間の径方向圧力により可動保持部分44をこの位置に係止することにより、先端部と毛細管との間のリンクを破損するリスクを伴わないピペット作業を可能にする。
【0043】
ピペット動作後に、排出移動が開始されると、イジェクタ20は下向きに移動され、急速に毛細管21の上端と接触するようになり、毛細管は先端部16から脱離する。これに関して、この段階で、プランジャ23は周知の手法で把持システムから解除されていることに言及しておくが、ここではこれについて記載しない。
【0044】
イジェクタ20の底部排出端60が毛細管21の上端を押圧する間に、イジェクタはその下向き移動において、それにより所望の径方向停止部の形成が可能なボス、スラグ、又は他のレリーフ形状の形をした係止部材64を作動させる。
【0045】
そしてカム表面62に沿った係止部材64の下向き移動が起こり、傾斜面形状によるレバー54の径方向外向き傾斜を可能にする。レバー54の傾斜は可動部分44の径方向外向き傾斜から生じるが、それ自体は可動部分44の表面でのビード38の一部への毛細管21の圧力により引き起こされる。このような状況は、可撓性リンク52,52の弾性変形とレバー54の係止解除により可能になり、排出移動中の中間段階でのアセンブリを示す図5及び6に図示されており、この段階で、可動部材44は径方向内向きに圧迫されることで毛細管21が後退解除位置を取る。
【0046】
図7としては、底部排出端位置でのイジェクタの底部排出端60が、先端部16の外側表面ともはや接触しなくなるのに充分なほど毛細管21を移動させた時である排出移動の終了時の状況を表している。この段階で、毛細管21により圧迫されていないという事実ゆえに、そしてリンクの可撓性ゾーン52により発生する弾性復帰力の作用を受けて、可動保持部分44は直線位置に復帰している。イジェクタ20が作業者により解除されてばねの作用によりその上部休止端位置へ復帰した時に、係止部材64は傾斜レバーカム表面62との接触を回復して、図2のようにこれを係止する結果となる。
【0047】
必要なものとして、毛細管21を先端部16に位置決めする最初の作業は、ピペットを垂直方向下向きに力で動かすことにより、古典的な従来の手法で実施されることに言及しておく。そして、先端部のビード38と毛細管の突出部40との間に所望の協働状態になるまで、可動保持部分44の若干の弾性変形のおかげで毛細管21は把持される。この毛細管21の把持作業中に、レバー54はその係止位置で不動のままである。
【0048】
図8は、本発明の好適な第二実施形態を表し、可撓性ゾーン52はピボット又はボールジョイントリンク66により置き換えられ、二つの中間リングセクタ50a,50bの間に接合部を設けた二つのハーフリンクの形態を取る。二つのハーフリンクを通る軸線を持つピボットリンク66は、例えばシャフト、クレビス等を使用して従来通りに製造される。リンク66は、毛細管のその能動的保持位置の方へ可動保持部分44を押圧する弾性復帰手段を備え得る。代替的に、可動保持部分44の位置は、レバー54に形成される傾斜溝62’でのイジェクタの係止部材64の相対位置により決定されてもよい。
【0049】
排出移動中に、スラグ又はロール形態の係止部材64は、溝62’での移動時に、レバー54の径方向外向き傾斜を作動させて、それから、毛細管21の能動的保持位置から毛細管の後退解除位置への可動部分44の径方向内向き傾斜に至る。
【0050】
単なる非限定的な例として上に記載された発明に対する様々な変更が当業者により加えられてもよく、その範囲は添付の請求項により規定される。特に、上に記載された好適な実施形態は、手動又は単一チャネルピペットでの発明の実装に対応するが、全ての教示は、他のタイプのピペット、電動及び/又は多チャネル、あるいはプログラマブルコントローラに適用され得る。
【符号の説明】
【0051】
1 ピペット
2 手
4 親指
6 ハンドル
10 ピペット動作制御ロッド
12 制御ボタン
14 底部
15 外側底部本体
16 先端部
18 プランジャ・毛細管システム
20 イジェクタ
21 毛細管
22 作動ボタン
30 容積式装置アセンブリ
32 縦中心軸線
34 把持システム
36 外側表面
38 軸方向保持部材
40 環状突出部
41 凹部
42 先端部本体
42a 上部
42b 底部
44 可動毛細管保持部分
46 空間
50 リング
50a 第1角度リングセクタ
50b 第2角度リングセクタ
52 可撓性ゾーン
54 レバー
56 締結プレート
60 底部排出端
62 傾斜面
62’ 傾斜溝
64 係止部材
66 ピボット/ボールジョイントリンク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】