(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-23
(54)【発明の名称】太陽電池構造の性能予測方法
(51)【国際特許分類】
H02S 50/00 20140101AFI20240816BHJP
H01L 31/0687 20120101ALI20240816BHJP
G06N 3/0464 20230101ALI20240816BHJP
G06N 3/0455 20230101ALI20240816BHJP
G06N 20/00 20190101ALI20240816BHJP
G06F 18/27 20230101ALI20240816BHJP
G06N 20/20 20190101ALI20240816BHJP
【FI】
H02S50/00
H01L31/06 310
G06N3/0464
G06N3/0455
G06N20/00
G06F18/27
G06N20/20
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531557
(86)(22)【出願日】2021-10-15
(85)【翻訳文提出日】2024-02-06
(86)【国際出願番号】 CN2021124175
(87)【国際公開番号】W WO2023060579
(87)【国際公開日】2023-04-20
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504458976
【氏名又は名称】厦▲門▼大学
(71)【出願人】
【識別番号】524030569
【氏名又は名称】嘉庚創新実験室
(74)【代理人】
【識別番号】100205936
【氏名又は名称】崔 海龍
(74)【代理人】
【識別番号】100132805
【氏名又は名称】河合 貴之
(72)【発明者】
【氏名】黄 凱
(72)【発明者】
【氏名】江 瑩
(72)【発明者】
【氏名】姜 卓頴
(72)【発明者】
【氏名】李 琳
(72)【発明者】
【氏名】李 澄
(72)【発明者】
【氏名】李 金釵
(72)【発明者】
【氏名】張 栄
(72)【発明者】
【氏名】康 俊勇
【テーマコード(参考)】
5F251
【Fターム(参考)】
5F251DA19
5F251KA10
(57)【要約】
本発明は、太陽電池の技術分野に関し、太陽エネルギーの構造性能予測方法を提供し、主に太陽電池構造の入力特徴パラメータ及び対応する出力特徴パラメータを収集、抽出し、且つ対応するデータセットを構築し及び既知の基準に基づいてデータセット中のデータを前処理し、機械学習アルゴリズムを利用してモデルを構築し、且つこのモデルに対して構造パラメータ設定及び初期化トレーニングを行い、前処理された前述データセットを活用して構造パラメータ初期化トレーニング後のモデルに対してトレーニング最適化を行い、さらに予測モデルを得、予測対象の太陽電池構造の入力特徴パラメータのテストデータを該予測モデルに入力し、さらに該予測対象の太陽電池構造の出力特徴パラメータの予測値を取得する。これにより、太陽電池構造の性能を迅速に予測でき、操作が簡便で、正確性が高い。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池構造の性能予測方法であって、
太陽電池構造の入力特徴パラメータ及び対応する出力特徴パラメータのデータを収集、抽出し、前記データを生データセット及び予測データセットに分けるステップと、
前記生データセット及び前記予測データセットを前処理し、前処理された生データセット及び前処理された予測データセットを取得するステップと、
機械学習アルゴリズムを活用して初期モデルを構築するステップと、
前記初期モデルに対して構造パラメータ設定を行い、且つ前記構造パラメータに対して初期化トレーニングを行い、初期化されたモデルを取得するステップと、
前記初期化されたモデルを最適化し、前記前処理された生データセットを活用して前記初期化されたモデルに対してトレーニングを行うことで、対応するネットワーク重み及びバイアスを取得し、さらに予測モデルを得るステップと、
予測し、予測対象の太陽電池構造の入力特徴パラメータにおける前記前処理されたテストデータセットを前記予測モデルに入力し、さらに前記予測対象の太陽電池構造の出力特徴パラメータの予測値を取得するステップと、を含むことを特徴とする太陽電池構造の性能予測方法。
【請求項2】
前記機械学習アルゴリズムは、少なくとも深層学習アルゴリズム、多層パーセプトロン、決定木、線形回帰、勾配ブースティング回帰、K近傍アルゴリズムのうちの1つであることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池構造の性能予測方法。
【請求項3】
前記深層学習アルゴリズムは、少なくとも畳み込みニューラルネットワーク、自己符号化、深層信念ネットワークのうちの1つであることを特徴とする請求項2に記載の太陽電池構造の性能予測方法。
【請求項4】
前記太陽電池は、多接合太陽電池構造であり、少なくとも1つのボトムセルと、前記ボトムセルの上方に位置する複数のサブセルと、を含むことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池構造の性能予測方法。
【請求項5】
前記ボトムセルは、積層方向に沿って基板、エミッタ層、ウィンドウ層及びトンネル接合を含み、前記複数のサブセルは、前記ボトムセルのトンネル接合の上方に積層され、各前記サブセルは、積層方向に沿ってバックフィールド層、ベース領域、エミッタ層、ウィンドウ層及びトンネル接合を含み、ここで、最上層又は最上方に位置する前記サブセルの最上層は、コンタクト層であることを特徴とする請求項4に記載の太陽電池構造の性能予測方法。
【請求項6】
前記太陽電池構造の入力特徴パラメータは、前記太陽電池構造における各層の厚さ、層と層の間の積層方式、各層の形状、及び構成材料と材料組成比を含み、前記対応する出力特徴パラメータは、前記太陽電池構造の短絡電流密度、開放電圧及び曲線因子を含むことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池構造の性能予測方法。
【請求項7】
前記生データセット及び前記予測データセットを前処理する方法は、
既知の物理的知識及びデータ間の関係に基づいて前記太陽電池構造の入力特徴パラメータを選別する特徴選別ステップと、
選別された前記特徴データに対して正規化処理を行うデータ処理ステップと、
処理後の前記特徴データのサイズを組み換えるデータ組み換えステップと、を含むことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池構造の性能予測方法。
【請求項8】
選別された前記特徴データに対して正規化処理を行った後、前記特徴パラメータのデータ平均値は0、標準偏差は1であることを特徴とする請求項7に記載の太陽電池構造の性能予測方法。
【請求項9】
前記初期化されたモデルを最適化するステップにおいて、平均二乗誤差を採用して前記初期化されたモデルのトレーニング結果を判定し、前記平均二乗誤差式は
【数1】
であり、ここで、Predict
i、Actual
iはそれぞれi番目サンプルの予測値、真値であることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池構造の性能予測方法。
【請求項10】
前記太陽電池構造の入力特徴パラメータ及び対応する出力特徴パラメータのデータは、前記太陽電池構造のタイプに応じて選別し、調整することができることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池構造の性能予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池の技術分野に関し、特に機械学習アルゴリズムモデルを活用して太陽電池構造の性能を予測する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、太陽光を利用して直接発電する光電子半導体シートで、「ソーラーチップ」又は「光電池」とも呼ばれ、一定の照度条件を満たした照度にされれば、瞬時に電圧を出力し、回路がある場合に電流を発生させることができる。物理学では、太陽光発電(Photovoltaic、略称PV)、略して光起電力と呼ばれる。太陽電池は、主に半導体材料を基礎としており、その動作原理は、光起電力材料を利用して光エネルギーを吸収した後に光起電力反応を起こすことである。太陽電池は、光電効果や光化学効果によって光エネルギーを電気エネルギーに直接変換する装置であるともいえる。太陽電池は、太陽エネルギーを電気エネルギーに直接変換することができ、最も効果的なクリーンエネルギーの形態の1つである。
【0003】
現在市販されている太陽電池は、主に単結晶シリコンを原料として生産された単結晶シリコン太陽電池である。太陽電池産業の発展に伴い、他の様々な太陽電池技術も次々と登場している。太陽電池の大規模な用途においては、太陽電池の変換効率(光電変換効率、又は発電効率とも呼ばれる)を向上させ、生産コストを低減するための継続的な技術改良が必要である。現在、新しいタイプの太陽電池の技術研究開発において、多接合太陽電池技術は、その高い変換効率、優れた耐放射線性、安定した温度特性、及び量産が容易であるなどの利点から、太陽電池研究のためのホットスポットになりつつある。
【0004】
しかしながら、多接合太陽電池構造設計は依然として、性能を向上させるために主に経験的照合に頼る、ある程度の盲点が存在する。低効率、シミュレーションにおける人為的なパラメータ選定の最適化が困難、実験検証コストが高いなどの明らかな欠点がある。一方、機械学習は、人工知能及びパターン認識分野の共同研究ホットスポットであり、その理論及び方法は、工学と科学の分野における複雑な問題を解決するために広く用いられている。現在のインターネット技術が急速に発展している時代に、人工知能における機械学習手法を多接合太陽電池構造設計に適用すると、実現できる効率向上は幾何学的なレベルで倍増する可能性がある。
【0005】
新しいタイプの太陽電池の構造設計において、どのように機械学習手法を用いて設計された太陽電池構造の性能を予測し、且つこの予測結果を用いて、効率のより良い太陽電池又は光電池及び対応する電子デバイスを得るために、この新しいタイプの太陽電池構造の設計案を適時に調整するかが、当業者にとって積極的に解決すべき課題の1つとなっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術における新しいタイプの太陽電池構造設計におけるその構造性能予測の不足を解決するために、太陽電池構造の性能予測方法を提供し、該方法は、機械学習における異なるアルゴリズムモデルを利用して太陽電池構造の性能に対する予測を実現することができ、且つこの予測結果の指示に基づいて太陽電池構造の設計案を適時に調整することにより、太陽電池の構造設計全体がより優れた性能、例えばより良い光電変換効率を有し、製品寿命が延長される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施例において、太陽電池構造の性能予測方法であって、太陽電池構造の入力特徴パラメータ及び対応する出力特徴パラメータのデータを収集、抽出し、前記データを生データセット及び予測データセットに分けるステップ(S1)と、前記生データセット及び前記予測データセットを前処理し、前処理された生データセット及び前処理された予測データセットを取得するステップ(S2)と、機械学習アルゴリズムを活用して初期モデルを構築するステップ(S3)と、前記初期モデルに対して構造パラメータ設定を行い、且つ前記構造パラメータに対して初期化トレーニングを行い、初期化されたモデルを取得するステップ(S4)と、前記初期化されたモデルを最適化し、前記前処理された生データセットを活用して前記初期化されたモデルに対してトレーニングを行うことで、対応するネットワーク重み及びバイアスを取得し、さらに予測モデルを得るステップ(S5)と、予測し、予測対象の太陽電池構造の入力特徴パラメータにおける前記前処理されたテストデータセットを前記予測モデルに入力し、さらに前記予測対象の太陽電池構造の出力特徴パラメータの予測値を取得するステップ(S6)と、を含んでもよい。
【0008】
一実施例において、前記機械学習アルゴリズムは、深層学習アルゴリズム、多層パーセプトロン、決定木、線形回帰、勾配ブースティング回帰、K近傍アルゴリズムのうちの1つを含んでもよいがこれらに限定されない。ここで、前記深層学習アルゴリズムは、畳み込みニューラルネットワーク、自己符号化、深層信念ネットワークのうちの1つを含んでもよいがこれらに限定されない。
【0009】
一実施例において、前記太陽電池は、多接合太陽電池構造であり、少なくとも1つのボトムセルと、前記ボトムセルの上方に位置する複数のサブセルと、を含む。
【0010】
一実施形態において、前記ボトムセルは、積層方向に沿って基板、エミッタ層、ウィンドウ層及びトンネル接合を含んでもよく、前記複数のサブセルは、前記ボトムセルのトンネル接合の上方に積層される。各サブセルは、積層方向に沿ってバックフィールド層、ベース領域、エミッタ層、ウィンドウ層及びトンネル接合を含む。ここで、最上層又は最上方に位置する前記サブセルの最上層は、コンタクト層である。
【0011】
一実施形態において、前記太陽電池構造の入力特徴パラメータは、前記太陽電池構造における各層の厚さ、層と層の間の積層方式、各層の形状、及び構成材料と材料組成比を含むことができるがこれらに限定されない。前記対応する出力特徴パラメータは、前記太陽電池構造の短絡電流密度、開放電圧及び曲線因子を含むがこれらに限定されない。前記太陽電池構造の入力特徴パラメータ及び対応する出力特徴パラメータのデータは、前記太陽電池構造のタイプに応じて選別し、調整することができる。換言すれば、選択された太陽電池構造の入力特徴パラメータ及び出力特徴パラメータは、必要に応じて削減又は増幅することができる。
【0012】
一実施例において、前記生データセット及び前記予測データセットを前処理する方法は、既知の物理的知識及びデータ間の関係に基づいて前記太陽電池構造の入力特徴パラメータを選別する特徴選別ステップ(1)と、選別された前記特徴データに対して正規化処理を行うデータ処理ステップ(2)と、処理後の前記特徴データのサイズを組み換えるデータ組み換えステップ(3)と、を含んでもよい。
【0013】
一実施例において、選別された前記特徴データに対して正規化処理を行った後、前記特徴パラメータのデータ平均値は0、標準偏差は1である。
【0014】
一実施例において、前記初期化されたモデルを最適化するステップにおいて、平均二乗誤差を採用して前記初期化されたモデルのトレーニング結果を判定し、前記平均二乗誤差式は
【数1】
であり、ここで、Predict
i、Actual
iはそれぞれi番目サンプルの予測値、真値である。
【発明の効果】
【0015】
以上のことから、本発明が提供する太陽電池構造の性能予測方法は、従来のAPSYSなどのシミュレーションソフトウェアと比較して、以下の効果を有する。
1、機械学習における異なるアルゴリズムモデルを利用して太陽電池構造の性能を予測する方法は、ネットワーク構造のフィッティングがこのモデル内で収束するか否かにかかわらず、異なる構造デバイスの性能の迅速な予測を実現でき、且つこの予測結果に基づいて太陽電池構造の設計案の最適化をより良く指示することができる。
2、本発明における機械学習アルゴリズムに用いられるニューラルネットワークモデルは、Dropoutなどの戦略を用いることにより、構築されたニューラルネットワークモデルのオーバーフィッティングを効果的に防止又は低減し、さらに構築されたニューラルネットワークモデルの太陽電池構造の性能予測に対する正確率を向上させることができる。
3、本発明では、ビッグデータに対して機械学習を行った後、対応するニューラルネットワークモデルを構築し、該ニューラルネットワークモデルを用いて異なる組成比、構造を有する太陽電池全体の構造材デバイスの性能を予測する。これにより、データ面から太陽電池全体の構造における比較的複雑な物理面のルールを探索することができ、操作が簡便である。
【0016】
本発明の他の特徴及び有益な効果は、後の説明書で説明され、部分的に明細書から明らかとなるか、又は本発明の実施により理解されるであろう。本発明の目的及び他の有益な効果は、明細書、特許請求の範囲、及び図面に具体的に示された構造によって達成され得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明の実施例又は従来技術における技術案をより明確に説明するために、以下に実施例又は従来技術の説明で必要な図面を簡単に紹介するが、明らかに、以下の説明における図面は本発明の幾つかの実施例であり、当業者にとって、創造的な労力を与えずに、これらの図面に基づいて他の図面を得ることができ、以下の説明において、図面に記載された位置関係は、特に断らない限り、図面に示された部材が示す方向を基準とする。
【0018】
【
図1】本発明における太陽電池の一実施例の構造模式図である。
【
図2】本発明における古典的なニューラルネットワークモデルの模式図である。
【
図3】本発明における太陽電池構造の性能予測に用いられる畳み込みニューラルネットワークの構造模式図である。
【
図4】本発明における太陽電池構造の性能予測方法の一実施例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施例の目的、技術案及び利点をより明確にするために、以下、本発明の実施例における図面を参照して、本発明の実施例における技術案を明確且つ完全に説明し、明らかに、説明された実施例は、本発明の一部の実施例であって、全ての実施例ではなく、以下に説明される本発明の様々な実施形態に設計された技術的特徴は、互いに矛盾しない限り、互いに組み合わせることができ、本発明における実施例に基づいて、発明的な努力をせずに当業者が思いつく他の全ての実施例が、本発明の保護範囲に属する。
【0020】
本発明の説明において、なお、本発明で使用される全ての用語(技術的及び科学的な用語を含む)は、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有し、本発明を限定するものと理解されてはならず、本発明で使用される用語は、本明細書の文脈及び関連技術でのそれらの意味と一致する意味を有するものと理解されるべきであり、本発明で明らかに定義しない限り、理想的又は過度に形式的な意味として理解されるべきではないことがさらに理解されるべきである。
【0021】
新しいタイプの太陽電池の技術研究開発において、多接合太陽電池は高効率太陽電池の1種である。各電池は、分子線エピタキシー法又は有機金属化学気相成長法を用いて生成された複数の薄膜を有する。これらの薄膜で構成される異なる半導体は、異なるエネルギーギャップを有し、このエネルギーギャップによりスペクトル中の特定の周波数の電磁波エネルギーを吸収することができる。生成された半導体は、太陽光の中のほとんどの周波数の光を吸収するように特別に設計されており、それによって、より多くのエネルギーを生成する。多接合太陽電池は、ここ10年間の発展を経て宇宙分野で広く応用され、効率記録もリフレッシュされ続けている。説明、理解の便宜のために、本発明の実施例の説明では、多接合太陽電池の構造を例として、機械学習における異なるアルゴリズムモデルを活用して多接合太陽電池構造の性能予測方法を解釈説明する。
【0022】
図1を参照すると、
図1は、本発明における太陽電池の一実施例の構造模式図である。図に示すように、前記太陽電池は多接合太陽電池であって、この多接合太陽電池構造は、複数のPN接合(又はpn接合)を含んでいる。多接合太陽電池1の全体構造は、主に、少なくとも1つのボトムセル10と、このボトムセル10の上方に位置し、且つボトムセル10の上方に順に積層された複数のサブセル20と、を含む。ボトムセル10は、積層方向(
図1の下から上へ)に沿って基板11、エミッタ層12、ウィンドウ層13、及びトンネル接合14を含むことができる。これらのサブセル20は、ボトムセル10のトンネル接合14の上方に積層されたサブセルセットAとして形成されてもよい。各サブセル20は、積層方向(
図1の下から上へ)に沿ってバックフィールド層21、ベース領域22、エミッタ層23、ウィンドウ層24及びトンネル接合25を含むことができる。ここで、最上層又は最上方に位置するサブセル20におけるトンネル接合25は、コンタクト層26によって置き換えられている。
【0023】
さらに、
図1に示すように、ボトムセル10に隣接するサブセル20内のバックフィールド層21は、ボトムセル10内のトンネル接合14に接触して、該ボトムセル10のトンネル接合14の上方に積層されている。これらのサブセル20のうち、後のサブセル20のバックフィールド層21は、それに隣接する前のサブセル20のトンネル接合25に接触している。多接合太陽電池1と他のデバイスとの接触を容易にするために、最上層又は最上方に位置するサブセルセットA内のサブセル20におけるトンネル接合25は、コンタクト層26によって置き換えられている。このサブセル20におけるコンタクト層26は、電流ガイド層としてもよく、この多接合太陽電池1が電極と接続される材料層であってもよく、オーミックコンタクトとしても用いられてもよい。コンタクト層26は、特定の電極金属材料と良好なオーミック接触を形成し、それによってその直列抵抗による電力損失を低減することができる。
【0024】
研究開発の進展、進化に伴い、研究発表された機械学習の手法は多岐に亘り、強調側面によって多様な分類手法が可能である。機械学習は、学習戦略の分類に基づいて、人間の脳を模した機械学習と、数学的手法を直接用いた機械学習に分けることができる。人間の脳を模した機械学習は、さらに、記号学習とニューラルネットワーク学習(又は連合学習)に分けることができる。数学的手法を直接用いた機械学習には、主に統計的機械学習がある。機械学習は、学習方法の分類に基づいて、帰納的学習、演繹的学習、類推的学習、及び分析的学習に分けられる。帰納的学習は、さらに、記号帰納的学習(例学習、決定木学習など)及び関数帰納的学習(又は発見学習と呼ばれ、ニューラルネットワーク学習、例学習、発見学習、統計学習など)に分けることができる。機械学習は、学習方式の分類に基づいて、監督学習(教師あり学習)、無監督学習(教師なし学習)、及び強化学習(ブースティング学習)に分けることができる。機械学習は、データ形式の分類に基づいて、構造化学習及び非構造化学習に分けることができる。機械学習は、学習対象の分類に基づいて、概念学習、規則学習、関数学習、クラス学習、及びベイジアンネットワーク学習に分けることができる。
【0025】
機械学習で比較的よく使用されるアルゴリズムは、決定木アルゴリズム、単純ベイジアンアルゴリズム、サポートベクターマシンアルゴリズム、ランダムフォレストアルゴリズム、人工ニューラルネットワークアルゴリズム、Boosting及びBaggingアルゴリズム、関連規則アルゴリズム、EM(最尤推定)アルゴリズム、並びに深層学習を含むがこれらに限定されない。ここで、深層学習(Deep Learning、略称:DL)は、機械学習(Machine Learning、略称:ML)分野で新たな研究方向としてサンプルデータの固有の規則性と表現階層を学習することができる。深層学習の最終目的は、機械が人間のように分析学習能力を有することができ、文字、画像、及び音声などのデータを認識できるようにすることである。
【0026】
異なる深層学習モデルは、主にニューラルネットワークに基づいて構築される。ニューラルネットワークは、生物ニューラルネットワークの行動特性をシミュレーションしたアルゴリズム数学モデルであり、複数の入力を受信して出力を生成することができる。ニューラルネットワークの発展が進み、深層学習アルゴリズムの反復的な更新が進むにつれて、ネットワークモデルの構造も継続的に調整及び最適化され、特に特徴抽出及び特徴選択の手法は、より大きな改善の余地を有する。それは、任意の複雑な非線形関係をマッピングすることができ、非常に強いロバスト性、記憶能力、自己学習などの能力を有し、分類、予測、パターン認識などにおいて広く応用されている。
【0027】
前述の内容に基づき、本発明の例において、採用した機械学習アルゴリズムは、深層学習アルゴリズム、ニューラルネットワークモデル(Neural Networks、略称:NN)多層パーセプトロン、決定木、線形回帰、勾配ブースティング回帰(Gradient boosting regression、略称:GBR)、K近傍アルゴリズム(K-nearst neighbors、略称:KNN)であってもよい。ここで、深層学習アルゴリズムは、畳み込みニューラルネットワーク、リカレントニューラルネットワーク、自己符号化、深層信念ネットワークであってもよい。以下では、異なる機械学習アルゴリズムモデルを用いて多接合太陽電池構造の性能を予測する手順を通じて、どのように機械学習モデルを活用して新しいタイプの太陽電池構造の性能を予測するかについて解釈説明する。
【0028】
実施例1:深層学習における畳み込みニューラルネットワークアルゴリズムを利用して多接合太陽電池構造の性能を予測する。
【0029】
図2を参照すると、
図2は、本発明における古典的なニューラルネットワークモデルの模式図である。ニューラルネットワーク(Neural Network、略称:NN)は、人間の実際のニューラルネットワークをシミュレーションして情報を処理するアルゴリズム数学モデルであり、単純な処理ユニット(ニューロンと呼ばれる)を多数接続して形成される複雑なネットワークシステムであり、非常に複雑な非線形動力学習システムである。ニューロンは、情報の処理が非線形な多入力単出力の情報処理ユニットである。ニューラルネットワークは、機械学習におけるモデルの1つである。
【0030】
人間の実際のニューラルネットワークと同様に、ニューラルネットワークは、ニューロン、ノードとノードとの間の接続(シナプス)から構成され、各ニューラルネットワークユニットはパーセプトロンとも呼ばれ、複数の入力を受信して出力を生成すると理解される。実際のニューラルネットワーク決定モデルは、多くの場合、複数のパーセプトロンから構成される多層ネットワークである。
図2に示すように、古典的なニューラルネットワークモデルは、主に入力層、暗黙層、出力層から構成される。図に示す例では、LayerL
1は入力層を表し、LayerL
2は暗黙層又は隠れ層を表し、LayerL
3は出力層を表す。機械学習におけるニューラルネットワークモデルの利点に基づいて、多接合太陽電池構造の設計の過程においてニューラルネットワークモデルを用いて多接合太陽電池構造が電子デバイスの光電効率に影響を与える特徴因子を比較的効率的且つ精確に予測し、且つ該予測結果に基づいて多接合太陽電池構造の設計案を適時に調整して、所期の全体機能効果に合致させることができる。
【0031】
図2に示すように、フィードフォワードニューラルネットワークでは、情報は、入力ノードから隠れノード(もしあれば)を通って出力ノードに到達するまでの一方向にのみ順方向に移動する。ネットワーク内で循環又はループがない。機械学習の分野において、代表的な深層学習モデルは、主に、(1)畳み込み演算に基づくニューラルネットワークシステム、即ち畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network、略称:CNN)、(2)自己符号化(Auto Encoder)とスパース符号化(Sparse Coding)を含む、マルチレイヤニューロンに基づく自己符号化ニューラルネットワーク、(3)マルチレイヤ自己符号化ニューラルネットワークの方式でプレトレーニングを行い、さらに識別情報と合わせてニューラルネットワークの重みをさらに最適化する深層信念ネットワーク(DBN)という3つのタイプを含むことができる。
【0032】
深層学習モデルは、前述した3つの代表的な深層学習モデルだけでなく、リカレントニューラルネットワーク(Recurrent Neural Networks)、リカーシブニューラルネットワーク(Recursive Neural Networks)などでもある。
【0033】
畳み込みニューラルネットワーク(CNN)は、局所接続、重み共有などの特性を有する深層フィードフォワードニューラルネットワークである。畳み込みニューラルネットワークは、3つの部分から構成され、第1部分は入力層であり、第2部分はn個の畳み込み層とプールリング層の組み合わせからなり(隠れ層、暗黙層とも呼ばれる)、第3部分は1つの全結合された多層パーセプトロン分類器(全結合層とも呼ばれる)で構成される。畳み込みニューラルネットワークは、畳み込み層とサブサンプリング層とからなる特徴抽出器を含む。畳み込みニューラルネットワークの畳み込み層では、1つのニューロンは隣接層のニューロンの一部にのみ接続される。CNNの1つの畳み込み層には、通常、いくつかの特徴平面(FeatureMap)が含まれ、各特徴平面はいくつかの矩形に配列されたニューロンから構成され、同一の特徴平面のニューロンは重みを共有し、かかる共有重みが畳み込みカーネルである。畳み込みカーネルは、一般に、ランダムな小数行列の形で初期化され、ネットワークのトレーニング過程において学習して合理的な重みを得る。共有重み(畳み込みカーネル)は、ネットワークの層間の接続を低減する一方で、オーバーフィッティングのリスクを低減するという直接的な利点を有する。サブサンプリングは、プールリング(Pooling)とも呼ばれ、通常、平均値サブサンプリング(Mean Pooling)と最大値サブサンプリング(Max Pooling)の2つの形式がある。サブサンプリング層(Subsampling Layer)は、プールリング層(Pooling Layer)とも呼ばれ、特徴選択を行い、特徴数を低減し、それによってパラメータ数を低減するという役割を果たす。サブサンプリングは、特定の畳み込みプロセスと見なされ得る。畳み込み及びサブサンプリングは、モデルの複雑性を大幅に単純化し、モデルのパラメータを低減する。
【0034】
図1及び
図2と併せて、
図3及び
図4を参照し、
図3は、本発明における太陽電池構造の性能予測に用いられる畳み込みニューラルネットワークの構造模式図であり、
図4は、本発明における太陽電池構造の性能予測方法の一実施例のフローチャートである。
図3の例では、畳み込みニューラルネットワークアルゴリズムを例としてさらに解釈、説明する。畳み込みニューラルネットワークの深層学習アルゴリズムを活用して、青色多接合太陽電池の多重量子井戸構造の性能を予測する手順は、以下のとおりである。
【0035】
ステップS1:多接合太陽電池構造の入力特徴パラメータ及び対応する出力特徴パラメータのデータを収集、抽出し、且つ収集したこれらのデータに対して対応するデータセットを構築する。
【0036】
多接合太陽電池構造の入力特徴パラメータを収集、抽出する過程において、多接合太陽電池構造における特徴パラメータを選別する必要がある。この選別では、主に多接合太陽電池構造における出力特徴パラメータの予測値に大きな影響を与える入力特徴パラメータを選択してデータ収集及び抽出又は選択を行う。選択される多接合太陽電池構造の入力特徴パラメータは、前記太陽電池構造の各層の厚さ、層と層との間の積層方式、各層の形状、及び構成材料と材料組成比などを含むがこれらに限定されない。選択された多接合太陽電池構造の出力特徴パラメータは、短絡電流密度(Jsc)、開放電圧(Voc)、及び曲線因子(FF)などを含むがこれらに限定されない。
【0037】
次に、これらの選択された入力特徴パラメータに対して対応するデータセットを構築し、且つ対応するデータセットパラメータを設計する。該データセットは、生データセットとテストデータセットとに分けられ、且つデータセットを前処理する。該データセットパラメータは、多接合太陽電池の内部の複雑な構造を表すことができ、それによって多接合太陽電池構造のデータを大量に収集、記録することができる。これにより、1つの多接合太陽電池構造あたりのデータを1つのサンプルとすることができ、複数の多接合太陽電池構造のデータを1つのサンプルセットとすることができる。各サンプル又は各サンプルセットをニューラルネットワーク内の入力層とすることができる。
【0038】
ステップS2:ステップS1で構築されたデータセット中のデータを前処理し、前処理された生データセット及び前処理されたテストデータセットを取得する。前記前処理の方法は、以下のステップを含む。
(1)構築されたデータセットにおいて、既知の物理的知識及び各データ間の相関係数に基づいて、多接合太陽電池構造の入力特徴パラメータを選別する。
(2)選別された特徴データに対して正規化のデータ処理を行い、具体的な計算式は、x’=(x-μ)/σであり、ここで、μは、サンプルの平均値であり、σは、サンプルの標準偏差である。データに対して正規化処理を行うことにより入力データが各次元において平均値が0、標準偏差が1となり、標準正規分布に従う。
(3)データ組み換えであり、処理後のこれらのデータのサイズを組み換え、且つ複数のバッチの分割を行う。
【0039】
なお、2次元畳み込みニューラルネットワークで必要な入力次元は4D(samples,rows,cols,channels)であるため、この例では、生データはtxtで読み込まれた配列である。そのため、生データの並び方を調整して、2次元畳み込みニューラルネットワークの入力サイズに合わせる必要がある。
【0040】
ステップS3:機械学習アルゴリズムに基づいて、畳み込みニューラルネットワークを用いてニューラルネットワークモデルを構築する。
【0041】
図3を参照すると、本例において畳み込みニューラルネットワークを用いて構築された畳み込みニューラルネットワークモデル構造は、順に、主に入力層、複数の畳み込み層、複数の全結合層及び出力層を含み、各層の間は順に接続される。入力層は、前処理された生データセット、前処理されたテストデータセットなどの、前述の多接合太陽電池構造のサンプル又はサンプルセットの入力特徴パラメータのデータ又はデータセットを入力するために用いられることができる。
【0042】
この図に示す例では、畳み込みニューラルネットワークモデル構造において、入力層の後に2つの畳み込み層が接続され、それぞれの畳み込み層には活性化関数が含まれる。
【0043】
畳み込み層は、畳み込みカーネルと特徴マップとの対応の畳み込み計算により特徴マップを抽出し、第1畳み込み層の畳み込みの具体的な過程は、x
(l)= Σx
(l-1)* ω
(l)+b
(l)で表すことができ、ここで、*は行列の畳み込み計算を表し、ω
(l)はl層目のニューロン重みを表し、b
(l)はl層目のバイアスを表す。一般的に、入力行列サイズをω、畳み込みカーネルサイズをk、ステップ幅をk、ゼロパディング層数をpとすると、畳み込み後に生成される特徴マップサイズ計算式は、
【数2】
となる。本例では、入力特徴マップに対してゼロパディング操作を行い、畳み込み後の特徴マップのサイズを不変とする。
【0044】
畳み込み層における活性化関数は、線形整流関数(Relu)である。線形整流関数の数式は、f(x)=max(0,x)となり、特徴マップに対する非線形変換が可能となる。
【0045】
第2畳み込み層は、活性化関数を経た画像のさらなる特徴抽出を行い、第2畳み込み層に出力された画像は、活性化層における線形整流関数(Relu)によって活性化された後、全結合層などの次の部分に伝達される。
【0046】
畳み込み層における活性化関数は、線形整流関数(Relu)である。第1畳み込み層は入力された形状(5,6,1)の画像に対して特徴抽出を行い、サイズ(5,6,16)の画像を出力する。第1畳み込み層における畳み込みカーネルのサイズは3*3であり、畳み込みカーネル数は16であり、パディングモードpaddingはsameを選択する。第2畳み込み層は、活性化関数を経た画像に対して特徴抽出を行い、サイズ(5,6,32)の画像を出力する。第2畳み込み層における畳み込みカーネルのサイズは3*3であり、畳み込みカーネル数は32であり、パディングモードpaddingはsameを選択する。第2畳み込み層に出力された画像は、活性層における線形整流関数(Relu)によって活性化された後、全結合層などの次の部分に伝達される。
【0047】
図3の例では、畳み込みニューラルネットワークモデル構造は、2つの全結合層を有する。前記活性層によって活性化された画像は、平坦化処理(Flatten)を経て、(512)となり、128個のニューロンが設置された第1全結合層に接続される。この例で用いられるトレーニングサンプルが比較的少ないことを考慮して、オーバーフィッティングを抑制又は低減するために、トレーニング1ラウンド当たり20%のニューロンをランダムに不活性化するドロップアウト(Dropout)戦略を採用する。活性化関数を経た画像に対して、第2全結合層を用いて、最終的な予測を完了する。
【0048】
ステップS4:構築した畳み込みニューラルネットワークモデルに対してネットワーク構造パラメータ設定を行い、且つ設定したネットワーク構造パラメータに対して初期化トレーニングを行い、初期化した畳み込みニューラルネットワークモデルを取得する。
【0049】
畳み込みニューラルネットワークモデルに設定されたネットワーク構造パラメータに対して初期化トレーニングを行う方法は、第1畳み込み層のステップ幅を1、出力チャネル数を16、パディングモードpaddingをsameに設定する。第2畳み込み層のステップ幅を1、出力チャネル数を32、パディングモードpaddingをsameに設定する。第1畳み込み層及び第2畳み込み層における重みは、平均値が0で標準偏差が0.1のトランケートされた正規分布ノイズに初期化され、ネットワークにおける全てのバイアスは、定数1に初期化される。トレーニングサンプルの特徴に基づいて学習率をある数値区間内で設定し、トレーニングサンプルのバッチサイズ(Batchsize)を決定し、トレーニングサンプルの設定に基づいて該畳み込みニューラルネットワークモデルに対して繰り返しトレーニングを行い、且つ繰り返しトレーニングの総ターン数を決定することにより、畳み込みニューラルネットワークモデルの初期化トレーニングが完了する。ここで、学習率は、0.00001~0.1の数値区間を設定し、繰り返しトレーニングの総ラウンド数は100~500ラウンドである。
【0050】
さらに説明すると、図に示す例では、トレーニングサンプルの学習率は0.0001に設定されている。トレーニングサンプルのバッチサイズ(Batchsize)は16に設定されており、即ちトレーニングごとに畳み込みニューラルネットワークに16枚の画像を入力し、そして全バッチにわたるサンプルの平均損失を計算する。トレーニングの総ラウンド数は300ラウンドであり、構築された畳み込みニューラルネットワークモデルを確率的勾配降下法(SGD)アルゴリズムで初期最適化する。
【0051】
ステップS5:ステップS2で前処理された多接合太陽電池構造の入力特徴パラメータのデータセットを用いて、前記初期化された畳み込みニューラルネットワークモデルをトレーニング、最適化し、該畳み込みニューラルネットワークモデルのネットワーク重み及びバイアスを取得して保存し、さらに畳み込みニューラルネットワーク予測モデルを得る。ここで、該データセットは、前処理された生データセットである。
【0052】
機械学習では、損失関数は、モデル出力値と目標値との間の損失(ギャップ)を測定するために用いられる。これを踏まえ、ステップS5では、畳み込みニューラルネットワークモデルのトレーニング時の損失関数を、平均二乗誤差を用いて表示し、この畳み込みニューラルネットワークモデルのトレーニング結果の良さを明確にする。この平均二乗誤差式は、
【数3】
であり、ここで、Predict
i、Actual
iはそれぞれi番目のサンプルの予測値、真値である。計算されたMSEの値が0に近いほど、該畳み込みニューラルネットワークモデルのトレーニング、最適化結果がより良好であり、その出力の結果精度がより高いことを示す。これにより、トレーニング、最適化後に得られた畳み込みニューラルネットワーク予測モデルを用いて多接合太陽電池構造の性能予測を行う際に、得られる予測値の精度が高くなる。
【0053】
ステップS6:予測対象の多接合太陽電池構造の入力特徴パラメータのうち前処理されたテストデータセットを入力層として該畳み込みニューラルネットワーク予測モデルに入力し、それによって該予測対象の多接合太陽電池構造の出力特徴パラメータの予測値を出力する。予測対象の多接合太陽電池構造の出力特徴パラメータの予測値は、多接合太陽電池構造の短絡電流密度(Jsc)、開放電圧(Voc)、及び曲線因子(FF)などを含むがこれらに限定されない。
【0054】
実施例2:サポートベクトル回帰(SVR)を用いて多接合太陽電池構造の性能を予測する。
【0055】
ステップS1:多接合太陽電池構造の入力特徴パラメータ及び対応する出力特徴パラメータのデータを収集、抽出し、且つ収集したこれらのデータに対して対応するデータセットを構築する。
【0056】
多接合太陽電池構造の入力特徴パラメータを収集、抽出する過程において、多接合太陽電池構造における特徴パラメータを選別する必要がある。この選別では、主に多接合太陽電池構造における出力特徴パラメータの予測値に大きな影響を与える入力特徴パラメータを選択してデータ収集及び抽出又は選択を行う。選択される多接合太陽電池構造の入力特徴パラメータは、前記太陽電池構造の各層の厚さ、層と層との間の積層方式、各層の形状、及び構成材料と材料組成比を含むがこれらに限定されない。選択された多接合太陽電池構造の出力特徴パラメータは、短絡電流密度(Jsc)、開放電圧(Voc)、及び曲線因子(FF)などを含むがこれらに限定されない。
【0057】
次に、これらの選択された入力特徴パラメータに対して対応するデータセットを構築し、且つ対応するデータセットパラメータを設計する。該データセットは、生データセットとテストデータセットとに分けられ、且つデータセットを前処理する。該データセットパラメータは、多接合太陽電池の内部の複雑な構造を表すことができ、それによって多接合太陽電池構造のデータを大量に収集、記録することができる。これにより、1つの多接合太陽電池構造あたりのデータを1つのサンプルとすることができ、複数の多接合太陽電池構造のデータを1つのサンプルセットとすることができる。各サンプル又は各サンプルセットをニューラルネットワーク内の入力層とすることができる。
【0058】
ステップS2:ステップS1で構築されたデータセット中のデータを前処理し、前処理された生データセット及び前処理されたテストデータセットを取得する。前記前処理の方法は、以下のステップを含む。
(1)構築されたデータセットにおいて、既知の物理的知識及び各データ間の相関係数に基づいて、多接合太陽電池構造の入力特徴パラメータを選別する。
(2)選別された特徴データに対して正規化のデータ処理を行い、具体的な計算式は、x’=(x-μ)/σであり、ここで、μは、サンプルの平均値であり、σは、サンプルの標準偏差である。データに対して正規化処理を行うことにより入力データが各次元において平均値が0、標準偏差が1となり、標準正規分布に従う。
(3)データ組み換えであり、処理後のこれらのデータのサイズを組み換え、且つ複数のバッチの分割を行う。
【0059】
なお、2次元畳み込みニューラルネットワークで必要な入力次元は4D(samples,rows,cols,channels)であるため、この例では、生データはtxtで読み込まれた配列である。そのため、生データの並び方を調整して、2次元畳み込みニューラルネットワークの入力サイズに合わせる必要がある。
【0060】
ステップS3:機械学習アルゴリズムに基づいて、サポートベクターマシンアルゴリズムを用いてサポートベクトル回帰モデルを構築する。
【0061】
ステップS4:構築したサポートベクトル回帰モデルに対してネットワーク構造パラメータ設定を行い、初期化したサポートベクトル回帰モデルを取得する。
【0062】
サポートベクトル回帰モデルにおけるハイパーパラメータの設定方法は、アルゴリズムが「linear」カーネルを用い、多項式カーネルの次数が3、許容因子が0.001、ペナルティ係数が0.8である。
【0063】
ステップS5:ステップS2で前処理された多接合太陽電池構造の入力特徴パラメータのデータセットを用いて、前記初期化されたサポートベクトル回帰モデルをトレーニング、最適化し、該サポートベクトル回帰モデルのネットワーク重み及びバイアスを取得して保存し、さらにサポートベクトル回帰予測モデルを得る。ここで、該データセットは、前処理された生データセットである。
【0064】
この例では、二乗平均誤差は、モデル出力値と目標値との間の損失(ギャップ)を測定するために用いられる。これを踏まえ、ステップS5では、サポートベクトル回帰モデルのトレーニング時の損失関数を、平均二乗誤差を用いて表示し、このサポートベクトル回帰モデルのトレーニング結果の良さを明確にする。この平均二乗誤差式は、
【数4】
であり、ここで、、Predict
i、Actual
iはそれぞれi番目のサンプルの予測値、真値である。計算されたMSEの値が0に近いほど、該サポートベクトル回帰モデルのトレーニング、最適化結果がより良好であり、その出力の結果精度がより高いことを示す。これにより、トレーニング、最適化後に得られたサポートベクトル回帰予測モデルを用いて多接合太陽電池構造の性能予測を行う際に、得られる予測値の精度が高くなる。
【0065】
ステップS6:予測対象の多接合太陽電池構造の入力特徴パラメータのうち前処理されたテストデータセットを入力層として該サポートベクトル回帰予測モデルに入力し、それによって該予測対象の多接合太陽電池構造の出力特徴パラメータの予測値を出力する。予測対象の多接合太陽電池構造の出力特徴パラメータの予測値は、多接合太陽電池構造の短絡電流密度(Jsc)、開放電圧(Voc)、及び曲線因子(FF)などを含むがこれらに限定されない。
【0066】
例3:K近傍アルゴリズム(KNN)を用いて多接合太陽電池構造の性能を予測する。
【0067】
ステップS1:多接合太陽電池構造の入力特徴パラメータ及び対応する出力特徴パラメータのデータを収集、抽出し、且つ収集したこれらのデータに対して対応するデータセットを構築する。
【0068】
多接合太陽電池構造の入力特徴パラメータを収集、抽出する過程において、多接合太陽電池構造における特徴パラメータを選別する必要がある。この選別では、主に多接合太陽電池構造における出力特徴パラメータの予測値に大きな影響を与える入力特徴パラメータを選択してデータ収集及び抽出又は選択を行う。選択される多接合太陽電池構造の入力特徴パラメータは、前記太陽電池構造の各層の厚さ、層と層との間の積層方式、各層の形状、及び構成材料と材料組成比を含むがこれらに限定されない。選択された多接合太陽電池構造の出力特徴パラメータは、短絡電流密度(Jsc)、開放電圧(Voc)、及び曲線因子(FF)などを含むがこれらに限定されない。
【0069】
次に、これらの選択された入力特徴パラメータに対して対応するデータセットを構築し、且つ対応するデータセットパラメータを設計する。該データセットは、生データセットとテストデータセットとに分けられ、且つデータセットを前処理する。該データセットパラメータは、多接合太陽電池の内部の複雑な構造を表すことができ、それによって多接合太陽電池構造のデータを大量に収集、記録することができる。これにより、1つの多接合太陽電池構造あたりのデータを1つのサンプルとすることができ、複数の多接合太陽電池構造のデータを1つのサンプルセットとすることができる。各サンプル又は各サンプルセットをニューラルネットワーク内の入力層とすることができる。
【0070】
ステップS2:ステップS1で構築されたデータセット中のデータを前処理し、前処理された生データセット及び前処理されたテストデータセットを取得する。前記前処理の方法は、以下のステップを含む。
(1)構築されたデータセットにおいて、既知の物理的知識及び各データ間の相関係数に基づいて、多接合太陽電池構造の入力特徴パラメータを選別する。
(2)選別された特徴データに対して正規化のデータ処理を行い、具体的な計算式は、x’=(x-μ)/σであり、ここで、μは、サンプルの平均値であり、σは、サンプルの標準偏差である。データに対して正規化処理を行うことにより入力データが各次元において平均値が0、標準偏差が1となり、標準正規分布に従う。
(3)データ組み換えであり、処理後のこれらのデータのサイズを組み換え、且つ複数のバッチの分割を行う。
【0071】
なお、2次元畳み込みニューラルネットワークで必要な入力次元は4D(samples,rows,cols,channels)であるため、この例では、生データはtxtで読み込まれた配列である。そのため、生データの並び方を調整して、2次元畳み込みニューラルネットワークの入力サイズに合わせる必要がある。
【0072】
ステップS3:機械学習アルゴリズムに基づいて、K近傍アルゴリズムを用いてKNNモデルを構築する。
【0073】
ステップS4:構築したKNNモデルに対してネットワーク構造パラメータ設定を行い、初期化したKNNモデルを取得する。
【0074】
KNNモデルにおけるハイパーパラメータの設定方法は、クエリに用いる隣接数を3とし、各近傍領域で全ての点の重みが同じになるように設定する。
【0075】
ステップS5:ステップS2で前処理された多接合太陽電池構造の入力特徴パラメータのデータセットを用いて、前記初期化されたKNNモデルをトレーニング、最適化し、該KNNモデルのネットワーク重み及びバイアスを取得して保存し、さらにKNN予測モデルを得る。ここで、該データセットは、前処理された生データセットである。
【0076】
この例では、二乗平均誤差は、モデル出力値と目標値との間の損失(ギャップ)を測定するために用いられる。これを踏まえ、ステップS5では、KNNモデルのトレーニング時の損失関数を、平均二乗誤差を用いて表示し、このKNNモデルのトレーニング結果の良さを明確にする。この平均二乗誤差式は、
【数5】
であり、ここで、Predict
i、Actual
iはそれぞれi番目のサンプルの予測値、真値である。計算されたMSEの値が0に近いほど、該KNNモデルのトレーニング、最適化結果がより良好であり、その出力の結果精度がより高いことを示す。これにより、トレーニング、最適化後に得られたKNN予測モデルを用いて多接合太陽電池構造の性能予測を行う際に、得られる予測値の精度が高くなる。
【0077】
ステップS6:予測対象の多接合太陽電池構造の入力特徴パラメータのうち前処理されたテストデータセットを入力層として該KNN予測モデルに入力し、それによって該予測対象の多接合太陽電池構造の出力特徴パラメータの予測値を出力する。予測対象の多接合太陽電池構造の出力特徴パラメータの予測値は、多接合太陽電池構造の短絡電流密度(Jsc)、開放電圧(Voc)、及び曲線因子(FF)などを含むがこれらに限定されない。
【0078】
以上のように、本発明が提供する畳み込みニューラルネットワークモデル、多層パーセプトロンモデル、KNNモデルは、従来技術と比較して、多接合太陽電池構造の全体構造設計過程において、当該多接合太陽電池構造の短絡電流密度(Jsc)、開放電圧(Voc)、及び曲線因子(FF)などのパラメータをより精確に予測することができ、この予測結果に基づいて多接合太陽電池構造の設計案の最適化をより良く指示し、さらに発光効率が所望に合致する多接合太陽電池全体構造を設計することができる。また、本発明が提供する畳み込みニューラルネットワーク予測モデルは、レーザ、プローブなどの出力パラメータの予測値を予測することもできる。
【0079】
さらに、当業者は、従来技術における多くの問題点が存在するにもかかわらず、本発明の各実施例又は技術案は、従来技術又は背景技術において列挙された技術的問題点の全てを同時に解決することなく、1つ又は複数の態様においてのみ改良され得ることを理解するであろう。特許請求の範囲に記載されていない内容は、該特許請求の範囲の限定として解釈されるべきではないことは、当業者には理解されるであろう。
【0080】
新しいタイプの太陽電池、多接合太陽電池、機械学習、ニューラルネットワークなどの用語が本願ではより多く用いられるが、他の用語が用いられる可能性を排除するものではない。これらの用語は、本発明の本質をより便利に説明及び解釈するためにのみ用いられ、これらは、いかなる追加の制限も本発明の精神に反するものとして解釈され、本発明の実施例の明細書及び特許請求の範囲、並びに上記図面における用語「第1」、「第2」、及び同様のもの(存在する場合)は、類似のものを区別するために用いられ、特定の順序又は前後順序を説明するために用いられる必要はない。
【0081】
最後に、上述の各実施例は、単に本発明の技術案を説明するためにのみ用いられるものであり、本発明を制限するものではなく、前述の各実施例を参照して本発明を詳細に説明したが、当業者であれば、依然として前述の各実施例に記載の技術案を修正したり、技術的特徴の一部又は全部を等価に置き換えたりすることができ、これらの修正又は置換は、対応する技術案の本質を本発明の各実施例の技術案の範囲から逸脱させるものではないことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0082】
1-多接合太陽電池、
10-ボトムセル、
11-基板、
12-エミッタ層、
13-ウィンドウ層、
14-トンネル接合、
A-サブセルセット、
20-サブセル、
21-バックフィールド層、
22-ベース領域、
23-エミッタ層、
24-ウィンドウ層、
25-トンネル接合、
26-コンタクト層。
【国際調査報告】