(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-26
(54)【発明の名称】反射防止性のための周期的ドットパターンを備えた基材のレーザ干渉パターニングのための装置および方法
(51)【国際特許分類】
G02B 1/118 20150101AFI20240819BHJP
G02B 1/18 20150101ALI20240819BHJP
B23K 26/064 20140101ALI20240819BHJP
B23K 26/354 20140101ALI20240819BHJP
【FI】
G02B1/118
G02B1/18
B23K26/064 A
B23K26/354
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024500550
(86)(22)【出願日】2022-07-04
(85)【翻訳文提出日】2024-02-22
(86)【国際出願番号】 EP2022068490
(87)【国際公開番号】W WO2023280793
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】102021117204.7
(32)【優先日】2021-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(32)【優先日】2022-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】LU
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】524007251
【氏名又は名称】フュージョン バイオニック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】FUSION BIONIC GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100149249
【氏名又は名称】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】ティム クンツェ
(72)【発明者】
【氏名】サブリ アラムリ
【テーマコード(参考)】
2K009
4E168
【Fターム(参考)】
2K009BB02
2K009BB11
2K009DD02
2K009DD03
2K009DD04
2K009EE00
4E168AB01
4E168AC01
4E168CB04
4E168CB07
4E168DA02
4E168DA03
4E168DA04
4E168DA23
4E168DA24
4E168DA26
4E168DA38
4E168DA40
4E168DA45
4E168DA46
4E168DA47
4E168EA05
4E168EA15
4E168EA16
4E168JA14
4E168JA15
4E168JA17
4E168JB03
(57)【要約】
本発明は、マイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の周期的ドット構造を有する基材のパターニングの分野に関し、特に、レーザ干渉パターニングによって透明基材の表面および内部をパターニングするための装置および方法に関する。このような方法で作製された、マイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の周期的ドットパターンを有するパターニングは、顕著な反射防止性により特徴付けられる。更に、本発明は、周期的ドット構造を含む反射防止性を有するパターニングされた基材にも関する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材を直接レーザ干渉パターニングするためのレーザ干渉パターニング装置であって、
-レーザビームを放射するためのレーザ放射源(1)と、
-前記レーザビームの光路(3)に配置されたビームスプリッタ素子(2)と、
-サブビームが干渉領域において基材(5)の表面上または体積内で干渉できるように、前記サブビームが通過するように構成された集束素子(4)と、
を備え、
前記ビームスプリッタ(2)は、前記光路(3)内でその光軸に沿って自由に移動可能であり、
前記ビームスプリッタ(2)は、前記レーザ放射源(1)によって放射された前記入射レーザビームを少なくとも2つのサブビームに分割するように設定される
ことを特徴とする、レーザ干渉パターニング装置。
【請求項2】
第1の偏向素子(7)は、前記レーザ放射源(1)の前記光路(3)において前記ビームスプリッタ素子(2)に連続して配置されており、前記偏向素子(7)を通過するとき、前記少なくとも3つのサブビームが拡大されるように構成されている、請求項1に記載のレーザ干渉パターニング装置。
【請求項3】
更なる偏向素子(6)は、前記光路(3)において前記レーザ放射源(1)および前記ビームスプリッタ素子(2)に連続して配置されており、前記サブビームが前記更なる偏向素子(6)から出た後、互いに実質的に平行になるように前記サブビームを偏向するように構成されている、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記ビームスプリッタ素子(2)は、回折ビームスプリッタ素子または屈折ビームスプリッタ素子である、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記偏向素子(7)が凹レンズである、請求項1~4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記更なる偏向素子(6)が凸レンズである、請求項3~5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記集束素子(4)が凸レンズである、請求項1~6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記装置は、前記偏向素子と前記集束素子との間の前記光路内に配置された少なくとも1つの偏光素子(8)を備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記レーザ放射源は、10ナノ秒~10フェムト秒の範囲のパルス幅を有するパルスレーザ放射源である、請求項1~8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記レーザ放射源によって放射される前記レーザビームの放射プロファイルがガウスプロファイルまたはトップハットプロファイルに対応する、請求項1~9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
更なる光学素子が前記ビームスプリッタ素子の前に配置されており、これをビーム整形に使用することができる、請求項1~10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記装置は、前記基材が取り付けられ、前記レーザ放射源によって放射される前記レーザビーム(1)の前記光路(3)に垂直な、xy平面内で移動可能な保持装置を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記基材が透明材料を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
レーザ干渉パターニングによって、マイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の周期的ドット構造を有する基材を製造するための方法であって、以下のステップ、即ち、
a)好ましくは透明材料を含む基材(5)を提供するステップと、
b)レーザ放射源(1)からレーザビームを放射するステップと、
c)ビームスプリッタ素子(2)によって、前記レーザビームを少なくとも3つのサブビームに分割するステップと、
d)前記サブビームが前記基材の表面上または体積内で建設的および破壊的に干渉するように、前記サブビームを前記基材(5)の前記表面上または前記体積内に集束させるステップと、
を含み、前記マイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の周期的ドット構造が前記基材の前記表面上または前記体積内に生成されるように、前記少なくとも3つのサブビームが前記集束によって前記基材上に重ね合わされ、
前記周期的ドット構造は逆円錐から形成され、
前記逆円錐は、互いに50nm~50μmの範囲の距離で周期的に配置されている
ことを特徴とする、方法。
【請求項15】
前記基材(5)の前記生成された周期的ドット構造の構造周期は、前記ビームスプリッタ素子(2)をその光軸に沿って前記光路(3)内を移動させることによって、マイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲で無段階に調整可能である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記基材(5)は透明材料を含み、前記サブビームは前記透明材料の内部で干渉する、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
レーザ干渉パターニングによって、特に請求項14~16のいずれか一項に記載の方法によって、マイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の周期的ドット構造を有する基材を製造するための方法であって、以下のステップ、即ち、
c)基材(5)の表面に第1のパルスを印加し、前記基材(5)の前記表面上または前記基材(5)内に第1の干渉ピクセルを生成するステップと、
d)基材(5)の表面に第2のパルスを印加し、前記基材(5)の前記表面上または前記基材(5)内に第2の干渉ピクセルを生成するステップと、
を含み、
前記第1および第2の干渉ピクセルはそれぞれ独立して、マイクロメートルおよびサブマイクロメートル範囲の寸法を有する周期的ドット構造を含み、
前記第2の干渉ピクセルと前記第1の干渉ピクセルとの間のオフセットは、前記干渉周期の10%≦x≦50%の範囲にあることを特徴とする、方法。
【請求項18】
前記第1の干渉ピクセルおよび前記第2の干渉ピクセルの前記ドット構造の前記周期が同一である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ステップb)の後、第3のパルスが基材(5)の表面に印加され、第3の干渉ピクセルがマイクロメートルおよびサブマイクロメートル範囲の寸法を有する周期的ドット構造を含み、
前記第3のパルスは、前記基材(5)の前記表面上または前記基材(5)内に第3の干渉ピクセルを生成し、前記第3の干渉ピクセルは、前記第2の干渉ピクセルに対して前記干渉周期の10%≦x≦50%の範囲のオフセットを有する、
請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記干渉周期の前記オフセットは、少なくとも1つの空間方向において均一である、請求項17または18に記載の方法。
【請求項21】
マイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の周期的ドット構造を含む、反射防止性を備えたパターニングされた基材であって、
前記周期的ドット構造は逆円錐から形成され、
前記円錐は相互の距離が50nm~50μmの範囲で周期的に配置されている、パターニングされた基材。
【請求項22】
前記周期的ドット構造は、前記構造化された基材が550nmを超える、好ましくは500nmを超える、最も好ましくは450nmを超える波長を有する電磁放射を透過するように形成される、請求項21に記載のパターニングされた基材。
【請求項23】
マイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の周期的ドット構造を備え、周期的波形構造が前記周期的ドット構造上に重ね合わされ、波山が20nm~5μmの範囲の間隔で配置されている、請求項21または22に記載のパターニングされた基材。
【請求項24】
前記パターニングされた基材は、第1および第2の干渉ピクセルから形成されるドット構造を含み、前記第1および前記第2の干渉ピクセルはそれぞれ独立して、マイクロメートルおよび/またはサブマイクロメートル範囲の寸法を有する周期的ドット構造を含み、前記第1の干渉ピクセルおよび前記第2の干渉ピクセルは、前記第2の干渉ピクセルと前記第1の干渉ピクセルとの間の前記オフセットが前記干渉周期の10%≦x≦50%の範囲内となるように、互いに重ね合わさるように配置されている、請求項21または23のいずれか一項に記載のパターニングされた基材。
【請求項25】
前記周期的ドット構造は、第3の干渉ピクセルと前記第2の干渉ピクセルとの間の前記オフセットが前記干渉周期の10%≦x≦50%の範囲内となるように、少なくとも前記第3の干渉ピクセルが前記第1および前記第2の干渉ピクセルに重ね合わさるように配置されるように形成されている、請求項24に記載のパターニングされた基材。
【請求項26】
前記基材が物理的および/または化学的コーティングを含む、請求項21~25のいずれか一項に記載のパターニングされた基材。
【請求項27】
前記パターニングされた基材が透明材料を含み、前記透明材料が、ガラス、固体ポリマー、透明セラミックまたはそれらの混合物を含む群から選択される、請求項21~26のいずれか一項に記載のパターニングされた基材。
【請求項28】
前記パターニングされた基材の屈折率が段階的である、請求項21~27のいずれか一項に記載のパターニングされた基材。
【請求項29】
前記基材が疎水性または超疎水性を有する、請求項21~28のいずれか一項に記載のパターニングされた基材。
【請求項30】
前記基材が着氷防止性を有する、請求項1~29のいずれか一項に記載のパターニングされた基材。
【請求項31】
前記基材が親水性または超親水性を有する、請求項21~30のいずれか一項に記載のパターニングされた基材。
【請求項32】
前記基材が防曇性を有する、請求項1~31のいずれか一項に記載のパターニングされた基材。
【請求項33】
太陽光発電システムにおける、請求項21~32のいずれか一項に記載の前記パターニングされた基材の使用。
【請求項34】
モニター、スクリーンおよびディスプレイの反射防止グレージングとしての、請求項21~32のいずれか一項に記載の前記パターニングされた基材の使用。
【請求項35】
ガラス繊維における、請求項21~32のいずれか一項に記載の前記パターニングされた基材の使用。
【請求項36】
別の基材上に間接的にパターンを適用または形成するためのネガ型としての、請求項21~32のいずれか一項に記載の前記パターニングされた基材の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材の構造化の分野に関し、特に、レーザ干渉構造化によって、透明基材の表面および内部を構造化するための装置および方法に関する。更に、本発明は、周期的ドット構造を含む、反射防止性を有する構造化基材(本明細書では、例示的に平坦な基材、特にいわゆる反射防止グレージング)に関する。
【背景技術】
【0002】
表面を処理する方法は従来技術から知られており、この方法により、透明基材、特にガラスだけでなく固体ポリマーの表面を、基材の反射を低減できるように改質することができる。一般的なプロセスでは、反射防止処理(いわゆる構造または層構築プロセス)を施すべき基材の表面に追加の材料を適用するが、ここで、様々な材料の屈折率は異なる。
【0003】
例えば、特許文献1では、可能な層構築プロセスが説明されている。このプロセスでは、最初に、少なくとも2つの化学出発原料からコーティング溶液が生成され、次に、コーティング溶液のpH値を低下させ、任意に、更なる溶液で希釈してから、コーティング溶液を所望の基材に適用する。このタイプのコーティングプロセスでは、環境に悪影響を与えることが多く、廃棄や取り扱いに費用と時間がかかる様々な化学物質が使用される。
【0004】
このタイプのプロセスは、弱め合う干渉による反射率の低下に基づいている。ここで、コーティングに使用される材料の屈折率は、コーティングされる基材および基材の周囲の媒体(通常は空気)に適合しなければならない。全てのコーティング材料を同じ方法で処理できるわけではないため、このような手順では、異なる基材をコーティングするために異なるプロセスを使用する必要がある。
【0005】
従って、特許文献2には、基材にポリマーフィルムを適用することによって、基材上にいわゆるモスアイ構造を化学的に生成するプロセスが説明されている。このタイプの構造は、モスアイの原理に基づいてモデル化されており、その表面上には、入射光の波長よりも小さい寸法のナノ構造が規則的に配置されている。これにより、基材の周囲の媒体と基材自体との間の移行部に段階的な屈折率を有する層が作製され、これにより反射が大幅に低減される。
【0006】
この方法で生成されたフィルムは、反射の低減がコーティングに使用される材料の屈折率に依存しないため、コーティングされる基材とは独立して使用することができる。しかしながら、このコーティング方法は、依然として化学物質に基づいており、すでに前述した欠点を有する。
【0007】
更に、この方法で生成されたコーティングは、機械的ストレス(摩耗、衝撃等)の影響を受けやすく、それ故急速に劣化する。従って、しばらくすると、コーティングが基材から剥がれるおよび/または反射低減性を失うことがしばしば生じる。
【0008】
特許文献3には、基材の表面を、レーザを使用して処理して、反射防止性を付与する反射防止構造の製造方法が説明されている。基材は集束レーザビームで改質され、それによって、レーザ誘起周期表面構造(LIPSS)を使用した自己組織化プロセスを通じてナノ構造を生成する。準周期的な繰り返し構造は、レーザフルエンスを適切に選択し、基材表面上でビーム焦点を重ね合わせることによって生成することができる。これにより、反射防止表面が結果的に得られる。化学薬品は必要なく、この方法で幅広い基材を処理することができる。
【0009】
しかしながら、この方法は、LIPSSの基礎となる自己組織化プロセスにより連続的に機能し、時間を要する。LIPSSは近くの表面領域を繰り返し処理することによってのみ形成される故、一度のステップで広い領域にわたってナノ構造を作製することは不可能である。更に、構造の規則性は、特定のプロセスや環境条件に依存するため、表面状態の偏差(材質の僅かな違い、微細な汚れ)によって結果が変化する可能性がある。
【0010】
特許文献4には、薄膜を直接構造化する方法が開示されており、この方法では、干渉レーザビームを用いて金属薄膜に周期的構造を生成することができる。このプロセスでは、いくつかのパルスレーザビームが薄膜に照射され、それによってこれらが干渉領域で干渉し、それにより、薄膜の材料が強度の高い領域で蒸発する。このプロセスは、レーザビームの強度を調整したり、フィルムをz方向(即ち、入射レーザビームの方向または入射レーザビームから離れる方向)にシフトしたりすることによって、結果として得られる構造を変更することができるという点によって特徴付けられる。追加の光学素子を使用してレーザビーム間に位相シフトを生じさせ、これにより干渉パターンに影響を与える。入射レーザビームは集束素子によって薄膜の表面上に集束され、それによってサイズが縮小され、その結果、薄膜の材料が蒸発する強度の高い領域が生じる。
【0011】
このプロセスでは、入射レーザビームの強度を変更する方法が必要である。これは、特定のレーザ放射源を指定することによって、またはレーザビームの強度を制御するユニットを使用することによって、実行できる。強度は、薄膜材料の蒸発閾値に応じて設定する必要がある。従って、異なる材料に対して異なるレーザ放射源を使用しなければならないか、または強度制御のための更なる素子が必要となる。光学素子をシフトしても、結果として生じる干渉パターンを制御することはできない。蒸発閾値の高い材料を処理する場合、レーザビームの光路内の光学素子が損傷することも考えられる。
【0012】
特許文献5では、焦点に可変周期性を有する干渉パターンを生成するように設計された干渉法のための装置が開示されており、この装置は、入射レーザビームを2つのレーザサブビームに分割し、レーザサブビームのうちの少なくとも一方を偏向させる、可動ビームスプリッタ素子および可動リフレクタを備え、ここで、周期性は、ビームスプリッタ素子およびリフレクタを移動させることによって変更することができる。ビームスプリッタ素子およびリフレクタは、電動プラットフォームによって移動する。
【0013】
この装置は、生成される干渉パターンの周期性に影響を与えるビーム整形が2つの光学素子、即ちビームスプリッタ素子およびリフレクタを移動することによってのみ実現できるため、複雑かつ摩耗しやすい構造を有する。更に、ビームスプリッタ素子とリフレクタとの間の距離は固定されており、電動プラットフォーム上にそれらを配置するにはスペースが必要である。
【0014】
直接レーザ干渉パターニングの方法は、科学出版物から公知である(非特許文献1)。しかしながら、これらの方法では、生成された構造を制御するのに、光路内の複数の光学素子の複雑な修正および再調整が必要である。所望の構造幅に対する様々な要件で基材を高スループットで構造化する産業用途では、光路内で光学素子を定期的に移動および調整する必要があるため、プロセスの柔軟性がより低下し、光学素子を新たに調整した結果として、使用するたびに光学素子がより大きな摩耗および損傷のリスクに曝されることになる。
【0015】
更に、直接レーザ干渉構造化によって生成できる最小構造寸法は、マイクロメートル範囲に制限される。出版物に記載されているように、生成可能な最小寸法は、場合によっては、可視スペクトルの放射線の波長よりも大幅に大きい範囲内にある。この方法で製造された反射防止構造は、特に短波長の光に対して望ましくない回折パターンを示す可能性があり、これらの波長範囲での反射を防止したり、可視光の全スペクトルからの入射光線の透過を確実としたりするには適さない。
【0016】
別の出版物(非特許文献2)では、基材上に干渉パターンを生成するための光学セットアップにおけるガウスプロファイルおよびトップハットプロファイルのレーザビームの使用が開示されており、光学セットアップは、レーザ光源、第1の偏向素子、ビーム整形素子、ビームスプリッタ素子、更なる偏向素子、および集束素子を備える。干渉パターンの周期性は、光学素子を相互に移動させることによって、特に、レーザ(サブ)ビームの光路内で更なる偏向素子を移動させることによって、調整することができる。
【0017】
ここでは、干渉パターンを生成するのに多数の光学素子が必要であり、複雑かつ摩耗しやすいセットアップが必要となる。更に、生成可能な構造周期は、最小6.7μmに制限される。
【0018】
更に、レーザパターンスタンプを使用して階層的マイクロテクスチャを作製する方法が知られており(非特許文献3)、レーザパターンスタンプは、直接レーザ書き込み(DLW)および直接レーザ干渉パターニング(DLIP)を使用して作製される。固定光学セットアップを使用し、干渉パターン形成のために3.1μmの所定の構造幅を生成した。このようにして生成された低マイクロメートル範囲の寸法を有する干渉パターニングは、直接レーザ書き込みによって生成されたレーザパターニングに重ね合わせられる。ここでは、最大強度の領域にある基材上に構造を、特に円錐形の構造を形成するために、レーザビームが材料上に直接照射される。ここで、構造の直径は、通常、約110μmであり、これは、干渉構造化によって生成される構造周期の倍数である。この2つの構造を重ね合わせることによって基材内に形成される構造を階層構造と呼ぶ。
【0019】
しかしながら、この与えられた方法は、構造化プロセスがいくつかのプロセスステップ(最初にDLW、次にDLIPを使用した連続的な構造化)で構成され、かつ同じセットアップを使用して作製することができる最小構造寸法が指定された寸法(3.1μm)に制限される故に、広範囲にわたる基材上に反射防止コーティングを生成するには適していない。従って、図示した装置および説明した方法は、1つの構造化ステップ内で、可視光の全スペクトルの電磁波に対して反射防止性を有する可変構造幅を有する、均一な反射防止構造を製造するには適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】米国特許第8557877(B2)号明細書
【特許文献2】米国特許第10459125(B2)号明細書
【特許文献3】国際公開第2019/166836(A1)号パンフレット
【特許文献4】欧州特許出願公開第2431120(A1)号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2004/0227927(A1)号明細書
【特許文献6】欧州特許第2663892号明細書
【特許文献7】独国特許出願公開第102010005774(A1)号明細書
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】Microfabrication and Surface Functionalization of Soda Lime Glass through Direct Laser Interference Patterning, Soldera et al., Nanomaterials 2021
【非特許文献2】Improving throughput and microstructure uniformity in Direct Laser Interference Patterning utilizing top-hat shaped beams, El-Khoury et al., Research Square 2021
【非特許文献3】Hierarchical Microtextures Embossed on PET from Laser-Patterned Stamps, Bouchard et al., Materials 2021
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
従って、本発明の目的は、環境に有害な化学物質を使用せずに、材料に反射防止性を与える、表面の、例えば透明な表面および/または広範囲にわたる表面の直接パターニングを行うことが可能な装置および方法を提供することである。
【0023】
更に、本発明の目的は、可能な限り堅牢であり、透明基材の使用によってその有効性を損失しないパターニングを生成することである。更に、短時間のうちに広範囲にわたる試料を構築できる必要がある。
【0024】
本発明の更なる目的は、レーザ放射源の強度に依存しない、レーザ干渉によるパターニング方法を提供することである。この方法は、強度が高いパターニングされる基材上においても光学素子が損傷しないように構成されなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明は、レーザ干渉パターニングを使用して、基材、例えば広範囲にわたるおよび/または透明な基材のパターニングを可能にする装置を提供する。この装置により、マイクロメートルおよびサブマイクロメートル範囲の寸法を有する周期的ドット構造を透明基材の表面または内部に生成することができ、これにより、基材に反射防止性(透過率の増加)が与えられる。
【0026】
本目的は、本発明に従って、請求項13に記載の、基材(例示として、広範囲にわたるおよび/または透明な基材について本明細書では言及する)の直接レーザ干渉パターニングのためのレーザ干渉パターニング装置を用いて達成され、装置は、
-レーザビームを放射するためのレーザ放射源(1)と、
-レーザビームの光路(3)に配置されるビームスプリッタ素子(2)と、
-レーザの光路内でビームスプリッタ素子に続いて配置されており、サブビームが干渉領域において基材(5)の、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材の表面上または体積内で干渉できるように、サブビームが通過するように構成された集束素子(4)と、
を備え、ビームスプリッタ(2)は、光路(3)内でその光軸に沿って自由に移動可能であり、ビームスプリッタ(2)は、レーザ放射源(1)によって放射された入射レーザビームを少なくとも2つの、好ましくは少なくとも3つのサブビームに、より好ましくは少なくとも4つ、特に4~8、即ち4、5、6、7または8つのサブビームに分割するように配置される。
【0027】
特に好ましくは、ビームスプリッタ(2)は、入射レーザビームを偶数倍、即ち2、4、6または8つのサブビームに、最も好ましくは4つのサブビームに分割するように設定される。
【0028】
代替的にまたは付加的に、ビームスプリッタ(2)は、第1のビームスプリッタと、第1のビームスプリッタに連続して配置される少なくとも1つの更なるビームスプリッタとを備えるように設けることができ、第1のビームスプリッタは、入射レーザビームを少なくとも2つのサブビームに分割し、更なるビームスプリッタがサブビームの少なくとも1つの光路に配置されており、このサブビームを通過する際に少なくとも2つのサブビームに分割する。
【0029】
基材(5)、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材のレーザ干渉パターニングの場合、レーザ放射源によって放射されるレーザビームは、ビームスプリッタ素子(2)によって少なくとも3つ、好ましくは少なくとも4つのサブビームに分割される。従来技術では、ダブルビーム干渉(即ち、2つのサブビームの干渉によるパターニング)のみが知られている。しかしながら、このような2ビーム干渉は、基材上にラインパターンを生成するだけである。
【0030】
次に、サブビームは集束素子(4)によって偏向され、それにより、サブビームが干渉ピクセルとしても知られる干渉領域において、基材(5)、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材の表面上または内部で干渉する。
【0031】
これにより、マイクロメートルおよびサブマイクロメートル範囲の寸法を有する二次元の周期的ドット構造を生成することができ、その構造周期は、ビームスプリッタ素子(2)をその光軸に沿って移動させることによって自由に調整することができる。基材(5)、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材の広範囲にわたる処理が可能である。
【0032】
更に有利な実施形態を明細書および従属請求項に記載する。
【0033】
一般的な利点
本明細書で定義される装置の1つの利点は、本装置と装置の助けによって実現可能な方法とにより、基材をパターニングする際に、特に反射防止性を備えた構造を作製する際に、化学薬品の使用およびその高価な廃棄を省略できることである。更に、基材の精製も省略することができる。
【0034】
更に、幅広い基材、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材、特に透明な材料をこの装置で処理することができる。このプロセスは、屈折率や特定のコーティング材料の基材への接着力に依存しないため、このプロセスは従来の化学プロセスよりもより柔軟である。
【0035】
特許文献3と比較して、本方法による処理時間は、干渉領域内の少なくとも3つ、好ましくは少なくとも4つの入射サブビームの干渉によって構造の周期性が確保されるため、大幅に短縮され、これは、より時間のかかる自己組織化プロセスの結果とは異なる。従来の方法に勝る別の利点は、生成されるマイクロ/ナノ構造の形状(構造設計、幾何学的形状)を制御できることである。構造の幾何学的形状は、干渉する(サブ)ビームの数、その偏光、およびプロセスパラメータの設定によって制御でき、それによって目的の方法で反射防止性に影響を与える。
【0036】
体積内で、即ち基材、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材の内部で、特に透明な材料でパターニングが実施された場合、結果として得られる構造(即ち、パターニングされた基材の周期的ドット構造)は、従来のコーティングよりも衝撃や摩耗に対してより感度が低くなる。本発明者らは、材料内部(即ち、表面の下)の構造(本明細書ではテクスチャとも呼ばれる)が必ずしも反射防止性を生み出すわけではないことを発見した。しかしながら、材料内部のテクスチャは、製品保護、光学データストレージ、装飾等の他の用途にとって興味深いものである。
【0037】
本明細書に開示される装置のセットアップまたは光学部品の配置により、基材を最大0.9m2/分までの、特に0.01~0.9m2/分の範囲の、好ましくは0.05~0.9m2/分の範囲の、最も好ましくは0.1~0.9m2/分の範囲の非常に高いパターニング速度でパターニングすることができることが特に有利である。これは、光学素子の好ましい選択によって、少なくとも3つのサブビームが重なり合う領域を広げることができ、それによって、1つの処理ステップで広い面積を照射できるという事実によって確実とされる。直接レーザ書き込み等の当業者に知られている方法とは対照的に、高解像度のフィーチャを生成するのに強い集束は必要ない。
【0038】
このようなセットアップにより、有利なことに、基材の表面を迅速に走査することが可能となり、それにより、最大3m2/分の、特に0.05~2m2/分の範囲の、好ましくは0.1~1m2/分の範囲の、最も好ましくは0.1~0.9m2/分の範囲の高いパターニング速度を達成することができる。正確なパターニング速度は、特に、利用可能なレーザ出力に依存する。従って、より高いレーザ出力を備えた将来のテクノロジーでは、更に高いパターニング速度を達成できる可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図2】サブビームを平行化するための偏向素子(6)を含む、本発明による装置の概略斜視図である。
【
図3】光路(3)の光軸に対するサブビームの角度を広げるための偏向素子(7)を含む、本発明による装置の概略斜視図である。
【
図4A】部分ビームを集束素子(4)上に偏向させる、平面の反射面を有する光学素子(6)を含む、本発明による装置の概略斜視図である。
【
図4B】ビーム整形用の光学素子としてガルボミラー(9)を備え、これによりパターニングプロセス中にパターニングされる基材の静止位置決めを可能にする、本発明による装置の概略斜視図である。
【
図5A】装置がサブビームの位相経過を互いに対してシフトさせる偏光素子(8)を含み、ビームスプリッタ素子(2)がレーザ放射源(1)の近くの光路(3)内に配置されている、本発明による装置の概略斜視図である。
【
図5B】装置がサブビームの位相経過を互いに対してシフトさせる偏光素子(8)を含み、ビームスプリッタ素子(2)が光路(3)内の偏向素子(7)の近くに配置されている、本発明による装置の概略斜視図である。
【
図6】幅Dを有する基材の表面または内部に生じる干渉ピクセルと、基材の表面上または内部の個々の干渉ピクセルの分布との概略図であり、干渉ピクセルがピクセル密度Pdで互いに対してシフトされている図である。
【
図7】マイクロメートルおよびサブマイクロメートル範囲の寸法を有する、逆円錐からなる、生成された周期的ドット構造を備えたパターニングされた基材(5)と、象徴的に、生成された構造の構造周期よりも大きな波長を有する入射電磁波の透過と、生成された構造の範囲内またはそれより小さい波長を有する入射電磁波の回折と、の概略斜視図である。
【
図8】光学素子として、サブビームを集束素子(4)上に偏向させる、平面の反射面を有するガルボミラー(9)と、ポリゴンホイール(91)とを含む、本発明による装置の概略斜視図である。
【
図9】3つの異なる構造幅を持つ、パターニングされた基材の入射光の波長に対する入射光の回折角のグラフである。
【
図10】マイクロメートル範囲の寸法を有しており、逆円錐からなる、その上にサブマイクロメートル範囲の周期的な波形構造が重ね合わされた、生成された周期的ドット構造を有するパターニングされた基材(5)の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明による装置は、特に基材上またはこの基材の体積内(即ち内部)に、いわゆる反射防止グレージングを作製するための、マイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の周期的ドット構造を含む、パターニングされた基材を製造するために、基材、例えば広範囲にわたるおよび/または透明な基材をレーザ干渉パターニングするための構造を説明する。
【0041】
基材
本発明の目的上、基材という用語は、その表面がいくつかの空間方向に広がりを有する基材を指す。基材、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材は、平面基材または湾曲基材、例えば放物線状基材であることができる。本発明の目的上、広範囲にわたるとは、基材、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材、例えばx方向およびy方向への平面基材の範囲、またはその曲率半径に沿った湾曲基材の範囲が、少なくとも3つのサブビームが互いに干渉する領域の範囲よりも大きいことを意味する。
【0042】
好ましい実施形態では、基材は、x方向およびy方向への広がりまたは曲率半径に沿った広がりが、少なくとも3つのサブビームが互いに干渉する領域の広がり以下である基材である。基材の均一なパターニングは、1つの処理ステップ(レーザパルス中)で可能である。
【0043】
特に好ましい実施形態では、基材は、x方向およびy方向への広がりまたは曲率半径に沿った広がりが、少なくとも3つのサブビームが互いに干渉する領域の広がりよりも大きい広範囲にわたる基材である。基材をxおよびy平面内で移動させることにより、複数の処理ステップ(複数のレーザパルスを使用)で基材を広範囲にわたり均一に構造化することが可能である。基材は、回転または並進運動によって、または回転と並進運動との重ね合わせによって移動させることができる。
【0044】
本発明の目的上、基材という用語は、反射面を有する固体材料を指す。このような材料の例としては、金属、ポリマー、セラミックおよびガラス等が挙げられる。
【0045】
本明細書で定義される周期的ドット構造を有する、特に反射防止性を備えた、本発明によるレーザ干渉パターニング方法を適用することによって処理できる基材に関しては、透明および半透明だけでなく不透明の材料等、幅広い選択肢があるが、これらは本発明の範囲内にある。
【0046】
特に好ましい実施形態では、広範囲にわたる基材は透明な材料を含む。
【0047】
一般に、透明材料は、用途に応じて異なるが、可視光の透過率が高い材料である。透明材料の透過率は、可視光領域(波長380nm~780nm)においてスペクトルに偏りがなく、70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上である。
【0048】
基材の幾何学的形状は変更可能である。従って、例えば平面である、湾曲しているまたは凹凸な表面を有する広範ににわたる基材および/またはチューブあるいは繊維のような広範囲にわたらない基材を使用することもできる。
【0049】
好ましくは、基材は、広範囲にわたるおよび/または透明な材料である。
【0050】
基材は、例えば太陽光フィルムまたはディスプレイに使用されるような、可撓性ガラスフィルム、(人工)皮革、金属箔、薄いシートまたはプラスチックフィルム等の可撓性および/または湾曲可能な基材として設計することができる。
【0051】
特に好ましい実施形態では、広範囲にわたる基材は透明な材料を含み、好ましくは、基材は透明な材料からなる。材料または基材は、1nm~1mの間の電磁放射のスペクトルの少なくとも副範囲に対して高い透過率を有する場合、本発明の意味において透明である。そのような部分範囲は、例えば、380nm~780nmの可視光の範囲、または780nm~5,000nmの、赤外光も含む範囲、または赤外光(熱放射)の範囲またはマイクロ波放射線の範囲の電磁放射、特に1mm~10mの波長範囲のレーダー放射線、または所望の用途、特にレーザ源の波長に従って適合された別の部分範囲でもよい。このような副範囲は、好ましくは、波長の少なくとも10%または50%の幅を有し、これが副範囲の下限を形成する。本発明の目的上、部分範囲における高い透過率は、部分範囲における各波長に対して、即ち、部分範囲内のスペクトル全体に対して少なくとも50%または好ましくは少なくとも70%または特に好ましくは少なくとも80%または少なくとも90%の透過率である。しかしながら、透明基材は、可視光範囲内の特定の波長範囲に対して選択的に高い透過率を有する基材として説明することもでき、例えば、基材は、500nm~800nmの範囲の波長を有する電磁放射に対して高い透過率を有する。透過率は、透過する波長範囲にわたって変化することができ、例えば、波長380nm~500nmの範囲では70%以上、500nm~750nmの範囲では90%以上である。例えば、基材は、380nm~780nmの波長の放射線を透過する。特に高い透過率を有するが、例えば、450nm~690nmの波長では透過率は90%であり、これより短いおよび長い波長での透過率は、例えば、70%である。
【0052】
透明材料の半透明性は、基材の体積内/内部の平面のレーザ干渉加工が可能であるという利点も提供する。
【0053】
本発明の目的において、透明材料には、透明材料、特にガラス(例えば、ホウケイ酸ガラス、石英ガラス、アルカリ土類アルカリケイ酸ガラス(例えば、ソーダ石灰ガラス)、アルミノケイ酸ガラス、金属ガラス)が含まれ、また、固体ポリマー(例えば、Makrolon(登録商標)およびApec(登録商標)のようなポリカーボネート、Makroblend(登録商標)およびBayblen(登録商標)のようなポリカーボネートブレンド、Plexiglas(登録商標)のようなポリメチルメタクリレート、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン)および透明セラミック(例えば、Mg-Alスピネルのようなスピネルセラミックス、ALON、酸化アルミニウム、イットリウムアルミニウムガーネット、酸化イットリウムまたは酸化ジルコニウム)またはそれらの混合物が含まれる。ポリカーボネートは、ホモポリカーボネート、コポリカーボネート、および熱可塑性ポリエステルカーボネートである。
【0054】
特に好ましい実施形態によれば、透明材料は、(本明細書で定義されるような)ガラスまたは(本明細書で定義されるような)固体ポリマーを含む。
【0055】
ガラスのケイ酸塩骨格は、170nm~5000nmの範囲の波長、即ち、380nm~780nmの範囲の可視光を含み、赤外線を含む波長範囲の透過窓を提供することが好ましい。
【0056】
あるいは、基材、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材は、不透明な材料を含むこともできる。不透明材料をパターニングすることによって、本明細書で定義されるマイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の周期的ドット構造が、不透明材料の表面上に作製される。結果として、反射防止性を有する構造を不透明材料上に生成することができ、それにより、不透明基材の表面の元の粗さ(即ち、本発明によるパターニングの適用前)は、巨視的には変化しないか、またはほとんど変化しない状態を維持し、これにより、不透明材料の反射性表面、例えば金属表面の反射を効果的に低減する。適切な不透明材料には、金属(例えば、シリコン、アルミニウム、銅、金)、金属合金(例えば、鋼、真鍮)、セラミック材料(例えば、酸化ジルコニウム、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム)およびポリマー(PEEK、ポリエーテルエーテルケトン、テフロン等のポリフッ素化炭化水素)並びにそれらの組み合わせが含まれる。例えば、そのようなパターニングされた基材は、別の基材上に構造を間接的に適用または生成するためのネガ型として適している。パターニングされた基材は、例えば、任意の数の他の基材上にある基材上に作製された構造とは逆の構造を作製するための「スタンプ」として使用することができる。更に、そのようなパターニングされた基材は、電磁放射の回折の増加を示し、基材のパターニングにより、基材の指向性反射の減少をもたらす。構造の寸法により、これらの構造上で散乱プロセスが発生し、これは基材のレベルで、特にその表面のうちの1つでの干渉パターニングによってもたらされる。
【0057】
ドット構造/干渉パターン/反射防止グレージング
本発明は、反射防止性を有するパターニングされた基材(5)も含み、パターニングされた基材は、マイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の周期的ドット構造を含み、周期的ドット構造は逆円錐から形成され、逆円錐は、それぞれの鞍点または高さの中心(円形底面)に対して、50nm~50μmの範囲、好ましくは50nm~20μmの範囲、より好ましくは100nm~4μmの範囲、より好ましくは100nm~4μmの範囲の距離で周期的に離間している。
【0058】
本発明の目的上、逆円錐という用語は、円形、楕円形、三角形または実質的に長方形の底面、特に円形の底面を有する構造を指し、これにより、基材内に垂直方向に円錐形に収束し、鞍点に丸みを帯びた円錐形の先端を有する。逆円錐は、パターニングプロセス中、即ち、高強度領域が基材に当たる結果としてレーザパルスが構造化される基材に当たるときに形成され、それによって、基材上または基材内の逆円錐間の領域は、強度がゼロの弱め合う干渉により、理想的には本質的に構造化されない状態を維持するようにする。その結果として、レーザ(サブ)ビームを基材上または基材内に集束させることによって、強度分布が指定するもののネガが形成される。逆円錐の記載された形状は、基材の表面上に配置されたドット構造を指す。体積内の平面内または平面に沿った点構造の配置により、対称的な形状が得られる。本発明の目的上、レーザ干渉構造化によって体積内に生成されるドット構造は、逆円錐とも呼ばれる。
【0059】
楕円形の底面を有する円錐は、例えば、集束されたレーザ(サブ)ビームの入射角に対して基材を傾けることによって、干渉体積(即ち、体積ピクセル、ボクセル、サブビームが基材の表面上または体積内に集束され、それにより、サブビームが干渉領域において干渉する角度)を基材に対して傾けることによって、例えば装置を基材に対して傾けることによって、またはそれらの組み合わせによって、生成することができる。好ましい実施形態によれば、楕円形の底面を有する円錐は、集束されたレーザ(サブ)ビームの入射角に関して基材を傾けることによって生成される。
【0060】
本発明の目的上、構造の周期をΛと呼ぶ。一般に、干渉レーザ(サブ)ビームの波長、干渉レーザ(サブ)ビームの入射角、および干渉レーザ(サブ)ビームの数に依存する。
【0061】
本発明の目的上、反射防止性(本明細書では反射防止グレージングと称する)を有するパターニングされた基材は、マイクロメートルおよびサブマイクロメートルの範囲の、即ち50nm~50μmの範囲の構造幅を有する周期的ドット構造を有する基材、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材を表す。これらの反射防止性は、生成された構造の寸法、即ち構造周期および個々の円錐の寸法が可視光の波長よりも小さい範囲にある場合に達成される。
【0062】
物理学では、反射とは、異なる屈折率を有する物質の界面で電磁波が跳ね返ることである。透明基材における光の反射角および透過角は、一般に、以下のようにスネリウスの屈折の法則を使用して計算することができる。
【0063】
[数1]
n1sinδ1=n2sinδ2
ここで、n1およびn2は空気および基材の屈折率を示し、δ1およびδ2はそれぞれ入射ビームおよび反射ビームの角度を示す。
【0064】
基材、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材の表面上または体積内の周期的ドット構造により、基材の屈折率は、段階的に屈折率が生じるように変化する。その結果、周期的ドット構造の構造周期Λよりも長い波長を有する光がますます透過するようになる。周期的ドット構造以下の波長を有する光は、表面で回折される。
【0065】
本発明の文脈において、反射防止性とは、その寸法が入射電磁波の範囲内にあり、それにより、反射が「邪魔なもの」として知覚されないように入射波が観察者から回折されるような周期的ドット構造を指す。更に、本発明の意味における反射防止性という用語には、第1の媒体、例えば空気と基材、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材との間の境界における屈折率が段階的であり、入射電磁波について、ある媒体から別の媒体への明確な移行はなく、入射電磁波がますます伝達されるようになることも含まれる。
【0066】
本発明の目的上、反射防止性を有するパターニングされた基材は、周期的ドット構造を含む基材も指し、周期的ドット構造は重ね合わせられた構造からなり、少なくとも1つの構造は、サブマイクロメートル範囲の寸法を有し、少なくとも1つの構造は、特にレーザビームを干渉させることによって生成され得る(本明細書で定義されるような)逆円錐から形成される。
【0067】
例えば、周期的ドット構造、特に重ね合わせた構造からなる周期的ドット構造は、干渉レーザビームが使用される場合、適宜パラメータ(レーザ放射源、光学素子の配置、パルスの持続時間および強度、干渉ピクセルに当たるレーザパルスの数の選択)を構成することによって、それぞれの用途の要件に最適に適合させることができる。
【0068】
例えば、この方法で生成された反射防止性を備えた構造は、マイクロメートル範囲の平均寸法、特にそれぞれの鞍点または高さの中心に対する平均距離が1μm~50μmである逆円錐で構成される周期的ドット構造である。更なる構造がこの周期的ドット構造上に重ね合わされ、重ね合わされた構造の平均寸法は、好ましくは、レーザ波長λ、またはλ/2、特に100nm~1000nm、好ましくは100nm~800nm、特に好ましくは100nm~600nm、特に100nm~400nmの範囲である。本発明の目的上、そのような構造は階層構造とも呼ばれる。
【0069】
特に、重ね合わせられた構造は、準周期的な波形構造を有し、重ね合わせられた構造の領域における基材表面上の材料は、その周期性がサブマイクロメートル範囲の、特に好ましくは100nm~1000nmの範囲、好ましくは100nm~800nmの範囲、特に好ましくは100nm~600nm、特に100nm~400nmの範囲の一連の波山および波谷を有する。
【0070】
波形構造は、パターニングプロセス中に形成される。即ち、高強度領域の発生の結果として、レーザパルスが構造化すべき基材に当たるとき、高強度領域のレーザパルスによる基材材料の少なくとも部分的な溶融により励起される自己組織化プロセスによって、パターニングが生じる。特に、レーザ誘起周期表面構造(LIPSS)を利用することによって波形構造が生成され、これらの表面構造の発生は、干渉レーザビームによる周期的ドット構造の生成と連動している。
【0071】
あるいは、本発明によるマイクロメートル範囲の平均寸法を有する逆円錐のドット構造に重ね合わせられる波形構造は、その後に更なる干渉ピクセルを適用することによって、(事前に構造化された)基材の表面に適用することもでき、それによって、更なる干渉ピクセルにより生成された構造は、更なる干渉ピクセルにより形成された円錐に対して、100nm~1,000nmの範囲、好ましくは100nm~800nmの範囲、特に好ましくは100nm~600nmの範囲、例えば200nm~500nmの範囲、特に100nm~400nmの範囲の統計的平均範囲の構造周期を有する。
【0072】
有利なことに、例えば、レーザビームを干渉させ、レーザ誘起の周期的表面構造を使用することによって反射防止性を備えた基材の広範囲にわたるパターニングが、長い処理時間や連続して実行可能な多数のプロセスステップを必要とすることなく可能となる。従って、本発明は、反射防止性を有する基材の分野と、自己洗浄性、疎水性または超疎水性の分野との両方の技術分野で、並びに着氷防止性および/または防曇性を備える親水性または超親水性の基材で使用可能な階層構造を同時に生成することを可能にする。
【0073】
本発明の好ましい実施形態によれば、例えば、レーザ干渉パターニングによる基材の表面上または体積内への第1、第2および/または第3の干渉ピクセルの干渉ピクセル(または基材上または基材内に干渉ピクセルを生成する干渉体積)の適用は、基材の表面に対して45°~90°(垂直)、好ましくは60°~90°の角度、特に好ましくは75°~90°の角度で、例えば90°の/までの角度範囲にある角度で、いくつかのレーザ(サブ)ビームで基材を照射することによって行われる。それぞれのケースにおいて、基材の光軸に対して76°、77°、78°、79°、80°、81°、82°、83°、84°、85°、86°、87°、88°、89°、90°から/までの角度範囲である。干渉ピクセルは、表面に対して垂直線に沿って本質的に垂直に、即ち、90°±1°の角度で基材の表面に適用されることが特に好ましい。
【0074】
干渉領域または干渉ピクセル
本発明による装置は、基材上にマイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の周期的ドット構造を生成するように設計されており、周期的ドット構造は、干渉領域で干渉するレーザビームによって生成することができる。
【0075】
干渉領域は、その空間範囲内で放射線強度の最大値と最小値とが交互に発生するという特徴がある。これらの最大値および最小値は、周期的、即ち反復的な規則性で発生し、従って、基材に転写可能な干渉パターンを形成する。このパターンが認識できる干渉領域を干渉ピクセルとも呼ぶ。干渉ピクセルの範囲は通常円形であるが、他の幾何学的範囲、例えば、楕円形または線形の範囲も考えられる。干渉パターンが認識できる干渉領域は、処理される基材の強度閾値によって物理的に定義される。強度閾値は、基材の材料が入射レーザビームと相互作用するエネルギーを表し、それにより、例えば、材料の溶解または除去等、材料内で変化が生じる。ガウス放射プロファイルを有するレーザ放射源の場合、干渉パターンの最大値で発生する干渉レーザビームのエネルギーは、干渉領域の端縁に向かって減少するため、基材に適用される干渉ピクセルは、干渉領域よりも小さく、正確なサイズは、レーザ放射源および基材の特性によって決定される。
【0076】
干渉ピクセルという用語、例えば、第1、第2、第3および/または更なる干渉ピクセルは、本発明の意味において、基材の表面上の少なくとも3つの逆円錐、好ましくは少なくとも7つの逆円錐、最も好ましくは少なくとも19の逆円錐の周期的パターンまたはグリッドを指し、これらは、干渉ピクセル内に形成される(
図6参照)。好ましくは、周期的パターンまたはグレーティングは、少なくとも3つ、特に好ましくは少なくとも4つのレーザ(サブ)ビームを重ね合わせることによって、これらのレーザ(サブ)ビームを基材の表面上または内部に集束させる(束ねる)結果として生成され、これにより、サブビームが基材の表面上または内部で建設的および破壊的に干渉する。
【0077】
本発明の好ましい実施形態によれば、構造化された基材は、1つのタイプの単一の干渉ピクセル、例えば第1の干渉ピクセル、第2の干渉ピクセルおよび/または第3の干渉ピクセルを単に含むのではなく、むしろ1つのタイプの複数の干渉ピクセルを含み、例えば、複数の第1の干渉ピクセルおよび/または複数の第2の干渉ピクセルは、平面内で少なくとも1つの空間方向(x方向および/またはy方向)に、特に好ましくは互いに反復的にオフセットして隣接する、2つの空間方向(2次元方向)に、それぞれ互いに独立して配置される。例えば、第1のステップでは、少なくとも1つの空間方向に配置され、互いに対して反復的にオフセットされた、平面内の少なくとも複数の第1の干渉ピクセルが、構造化される基材の表面上または体積内の平面に適用されてもよく(例えば、
図6参照)、第2のステップでは、平面内の複数の第2の干渉ピクセルが、少なくとも同じ空間方向に適用され、互いに対して反復的にオフセットされ、これらの複数の第1の干渉ピクセル上に重ね合わされる。それにも関わらず、これらのいくつかの第1の干渉ピクセルといくつかの第2の干渉ピクセルとが交互に、(即ち、第1の干渉ピクセル、次に第2の干渉ピクセル、そして再び最初から)平面に適用されるようにしてもよい。
【0078】
いくつかの第1の干渉ピクセルおよびいくつかの第2の干渉ピクセルを配置することによって、特定の特性、特に反射防止性を広い領域にわたって、特に基材の表面によって広がる基材の平面にわたって、または基材の体積内で達成/適用することができる。いくつかの第1の干渉ピクセルおよびいくつかの第2の干渉ピクセルによるそのようなパターニングは、例えば、ポリゴンスキャナで基材を走査することによって達成することができる。
【0079】
好ましくは、1つのタイプの干渉ピクセル内の周期的ドット構造は、円錐断面の変動係数(標準偏差を平均値で割った値)が15%以下、より好ましくは10%以下、更により好ましくは5%以下である。これにより、プロセスに起因して偏差がより大きく、生成される構造周期のマッピングの精度がより低くなる、基材をパターニング/コーティングするための従来の方法(例えば、エッチング、粒子ブラスト、ポリマーコーティング)と比較して、本発明に従ってパターニングされた基材の検出可能性もより良好になる。
【0080】
レーザ放射源
本発明による装置は、レーザビームを放射するレーザ放射源(1)を有する。放射されたレーザビームの放射プロファイルは、ガウスプロファイルまたはトップハットプロファイルのいずれかに対応し、特に好ましくはトップハットプロファイルに対応する。トップハットプロファイルは、基材表面をパターニングまたはカバーしてより均一に構造化するのに役立ち、必要に応じて、より速いパターニング速度を可能にする。
【0081】
特に好ましい実施形態では、レーザ放射源(1)は、パルスレーザビームを発生する放射源である。パルスレーザ放射源のパルス幅は、例えば、10フェムト秒~100ナノ秒、特に50フェムト秒~10ナノ秒、最も好ましくは50フェムト秒~100ピコ秒未満の範囲である。
【0082】
特に明記されていない限り、レーザビームまたはサブビームという用語は、幾何光学の理想化されたビームを指すのではなく、限りなく小さいビーム断面を有しないが、拡張されたビーム断面(ガウス分布プロファイルまたは固有のトップハットビーム)を有するレーザビーム等の実際の光ビームを指す。
【0083】
トップハットプロファイルまたはトップハット強度分布は、少なくとも1つの方向に関して、本質的に長方形関数(rect(x))によって説明可能な強度分布を指す。パーセンテージ範囲または傾斜エッジにおける長方形関数からの偏差を示す実際の強度分布は、トップハット分布またはトップハットプロファイルとも呼ばれる。トップハットプロファイルを生成するための方法および装置は、当業者には周知であり、例えば、特許文献6に記載されている。レーザビームの強度プロファイルを変換するための光学素子も既に知られている。例えば、回折光学および/または屈折光学を用いて、ガウス形状の強度プロファイルを有するレーザビームを、ガウス-対-TOPAG Lasertechnik GmbHのトップハットフォーカスビームシェイパー(例えば、特許文献7参照)のような、1つ以上の画定された平面内におけるトップハット形状の強度プロファイルを有するレーザビームに変換することができる。本質的に一定のエネルギーまたは出力密度により、特に良好かつ再現性のある加工結果を達成することができるため、特に50psよりも短いレーザパルスを使用する場合には、トップハット形状の強度プロファイルを有するこのようなレーザビームは、レーザ材料加工にとって特に魅力的である。
【0084】
本発明による装置に含まれるレーザ放射源(1)は、0.01~5J/cm2、特に好ましくは0.1~2J/cm2、非常に特に好ましくは0.1~0.5J/cm2の強度を有することができる。本発明による装置により、レーザ放射源の強度をある範囲内で柔軟に選択することができる。ビーム直径は、基材上、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材上での干渉パターンの生成には何の役割も果たさない。レーザの光路における光学素子の好ましい配置により、レーザビームの強度を制御するユニットは必要ない。
【0085】
レーザ放射源は、200nm~15μmの範囲の波長(例えば、10.6μm~の範囲のCO2レーザ)、最も好ましくは266nm~1,064nmの範囲の波長を放射するように構成されることが好ましい。適切なレーザ放射源には、UVレーザ光源、緑色光(532nm)を放射するレーザ放射源(155~355nm)、ダイオードレーザ(通常は800~1000nm)または近赤外線(通常は1064nm)を放射する、特に200~650nmの範囲の波長を有するレーザ放射源が含まれる。微細加工に適したレーザが当業者には知られており、例えば、HeNeレーザ、HeAgレーザ(約224nm)、NeCuレーザ(約249nm)、Nd:YAGレーザ(約355nm)、YAGレーザ(約532nm)、InGaNレーザ(約532nm)が含まれる。
【0086】
更なる実施形態によれば、本発明による装置は、第1のレーザ放射源のレーザビームまたは干渉領域においてサブビームに分割される第1のレーザ放射源のレーザビームと干渉するレーザビームを生成するように設計された少なくとも1つの更なるレーザ放射源を有する。更なるレーザ放射源は、上記と同じ特性を有するが、これらは、第1のレーザ放射源の特性と同様であっても異なっていてもよい。
【0087】
光学素子
本発明は複数の光学素子を含む。これらの素子は、主にプリズムおよびレンズである。
【0088】
これらのレンズは、屈折型または回折型であることができる。球面レンズ、非球面レンズまたは円筒レンズを使用することができる。好ましい実施形態では、円筒レンズが使用される。これにより、サブビームの重なり合う領域(本明細書では干渉ピクセルとも呼ばれる)をある空間方向に圧縮し、別の空間方向に伸ばすことが可能になる。レンズが球面/非球面ではなく円筒である場合、ビームを同時に変形することができるという利点がある。これにより、処理スポット(即ち、基材上に作製された干渉パターン)を点から干渉パターンを含む線に変形させることができる。レーザからの十分なエネルギーにより、この線の長さは、10~15mmの範囲になり得る(太さは、約100μm)。
【0089】
更に、空間光変調器(SLM)をビーム整形に使用することができる。入射光ビームの位相あるいは強度または位相および強度の空間変調にSLMを使用することは、当業者には知られている。ビーム分割に液晶オンシリコン(LCoS)SLMを使用することは文献に記載されており、本発明による装置でも考えられる。更に、SLMを使用して、サブビームを基材上に集束させることもできる。このようなSLMは、光学的、電子的または音響的に制御することができる。
【0090】
以下に説明する全ての光学素子は、レーザの光路(3)に配置される。本発明の目的上、レーザの光路とは、レーザ放射源によって放射されるレーザビームの経路と、ビームスプリッタ素子によって分割されるサブビームの経路との両方を指す。しかしながら、光路(3)の光軸は、レーザ放射源(1)によって放射されるレーザビームの光軸であるものと理解される。別段の説明がない限り、全ての光学素子は、光路(3)の光軸に対して垂直に配置される。
【0091】
ビームスプリッタ素子
ビームスプリッタ素子(2)は、レーザ放射源(1)の後ろのレーザの光路(3)に配置される。ビームスプリッタ素子(2)は、回折ビームスプリッタ素子または屈折ビームスプリッタ素子とすることができる。回折ビームスプリッタ素子は、略して回折光学素子(DOE)とも呼ばれる。本発明の目的上、回折ビームスプリッタ素子とは、異なる回折次数に従って、入射ビームを異なるビームに分割するマイクロ構造またはナノ構造、好ましくはマイクロ構造を含む光学素子を指す。本発明の目的上、屈折ビームスプリッタ素子とは、表面の屈折率差に基づいてビームを分割するビームスプリッタ素子を指し、これらは通常、プリズムまたは二重プリズムのような透明な光学素子である。好ましくは、ビームスプリッタ素子(2)は、回折光ビームスプリッタ素子である。
【0092】
好ましい実施形態によれば、ビームスプリッタ素子は、単一の光学素子、特に回折または屈折光学素子であり、入射レーザビームの細分がビームスプリッタ素子の光学特性に基づくように構成される。これにより、有利には、複数の光学素子(例えば、ミラー、プリズム等)からなる多部品ビームスプリッタ素子と比較して、より単純な光学構造を確実に実現できる。いくつかの光学素子の配置を互いに対して校正したり調整したりする必要なく、所望のビーム分割を実現することができる。単一の光学素子のみを移動させる必要があるため、光路内でのビームスプリッタ素子の可動性も容易に実現できる。更に、一体型のビームスプリッタ素子を使用することで、結果的に、磨耗しやすく交換が必要となり得るコンポーネントがより少なくなる。
【0093】
考えられる一実施形態によれば、ビームスプリッタは、結果として得られるビームの一方が他方とは異なる偏光を有する偏光ビームスプリッタとして、または偏光がビームの分割に対して何の役割も果たさない非偏光ビームスプリッタとして設計される。
【0094】
好ましい実施形態では、ビームスプリッタ素子(2)は、放射されたレーザビームを少なくとも3つ、好ましくは少なくとも4つ、特に4~8つ、即ち4つ、5つ、6つ、7つまたは8つのサブビームに分割する。
【0095】
更なる実施形態では、ビームスプリッタ素子(2)は、放射されたレーザビームを少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つ~4つ、特に4~10、即ち4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つまたは10のサブビームに分割する。
【0096】
ビームスプリッタ素子(2)は、その光軸に沿って自由に移動可能である。換言すれば、その光軸に沿って、レーザ放射源に向かってまたはレーザ放射源から遠ざかるように移動させることができる。ビームスプリッタ素子(2)の動きは、少なくとも3つのサブビームの広がりを変化させ、それにより、それらが互いに異なる距離で集束素子に当たるようにする。その結果、サブビームが基材(5)、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材に当たる角度θを変化させることができる。これにより、4つのサブビームの重ね合わせから以下の数式2に、構造周期Λがシームレスに変化する。
【0097】
[数2]
Λ=λ/√2sinθ
ここで、λは放射されるレーザビームの波長である。
【0098】
本発明の好ましい実施形態によれば、ビームスプリッタ素子は、回転素子として設計される。これにより、有利には、サブビームの偏光を変更できるようになる。
【0099】
特に好ましくは、部分ビームが基材(5)、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材に当たる角度θは、0.1°~89.9°、好ましくは5°~85°、特に好ましくは10°~60°、最も好ましくは15°~45°である。
【0100】
角度θは、光学素子間の距離、特に光学素子とビームスプリッタ素子との間の距離、特に集束素子とビームスプリッタ素子との間の距離にも依存する。広範囲にわたるおよび/または透明な基材上または基材内に生成される所望の構造周期に応じて、所望の構造周期が設定できるようにビームスプリッタ素子の位置を調整または計算することができる。装置に含まれる光学素子の位置、特にビームスプリッタ素子に対する集束素子の位置は、光学素子間の距離がより大きいかまたはより小さい場合、それに応じてビームスプリッタ素子の位置を調整できるように考慮されている。
【0101】
反射防止性を有するパターニングされた基材を生成するには、ビームスプリッタ素子(2)から偏向素子(7)までの距離を10~300nmに設定することが特に有利であることが判明した。
【0102】
一実施形態によれば、好ましくは100nm~1,000nmの範囲(または本明細書で更に定義されるような範囲)の統計的平均にある小さな構造周期を有するドット形状の構造は、干渉パターンを適用することによって直接生成することができ、ビームスプリッタ素子(2)と偏向素子(7)との間の距離は大きく、例えば、40mm~200mm、特に80mm~150mmの範囲である。
【0103】
更なる実施形態によれば、好ましくは100nm~1,000nmの範囲(または本明細書で更に定義されるような範囲)の統計的平均にある小さな構造周期を有するドット形状の構造は、LIPSSの自己組織化プロセスによって生成することができ、ビームスプリッタ素子(2)と偏向素子(7)との間の距離は小さく、例えば、1mm~100mm、特に50mm~75mm、特に好ましくは10~50mmの範囲である。このようにして、干渉パターンを直接適用することによって、サブマイクロメートル範囲のドット構造(本明細書で定義される)が重ね合わさる大きな構造周期を有する干渉パターンを生成することができる。
【0104】
本発明の好ましい実施形態によれば、装置はまた、測定装置、特にビームスプリッタ素子の位置と、必要に応じて、他の光学素子からのビームスプリッタ素子の距離とを、特に集束素子の位置を測定するように構成された、レーザまたは光センサによって動作する測定装置を備える。
【0105】
更に、本発明による装置は、信号技術の観点から測定装置に接続され、特に、ビームスプリッタ素子の測定位置を第1の所定の比較値と比較することができるように、計算ユニットに接続される制御装置を備えることができ、制御装置は、プログラミングに関して、ビームスプリッタ素子と他の光学素子との距離、特に集束素子および/または偏向素子(7)の位置が第1の所定の比較値よりも大きいまたは小さい場合、制御信号が制御装置を介して生成されるように構成され、それにより、光学素子、特にビームスプリッタ素子(2)の少なくとも1つの位置が、特に偏向素子(7)に関連したビームスプリッタ素子(2)において、所望の構造周期が基材上に生成されるように変更される。
【0106】
これに関連して、特にステップ(a)の後に、マイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲のドット構造を有する基材を製造する方法は、以下のステップ、即ち、
(i)ビームスプリッタ素子(2)の位置および、必要に応じて、ビームスプリッタ素子から更なる光学素子まで、または更なる光学素子のうちの少なくとも1つまで、特に集束素子(4)および/または偏向素子(7)の位置までの距離を測定するステップと、
(ii)ビームスプリッタ素子の測定された位置を第1の所定の基準値と比較するステップと、
(iii)ビームスプリッタ素子から他の光学素子まで、または他の光学素子のうちの少なくとも1つまで、特に集束素子(4)および/または偏向素子(7)の位置までの測定された距離が第1の所定の基準値よりも大きいまたは小さい場合、所望の構造周期が基材上に生成されるように、光学素子、特にビームスプリッタ素子(2)の(特に他の光学素子に関する、特に好ましくは偏向素子(7)に関連してビームスプリッタ素子(2)の)位置を変更するステップと、
も含むことができる。
【0107】
ビームスプリッタ素子(2)内でのレーザビームの分割は、部分反射ビームスプリッタ素子(例えば半透明ミラー)によって、または透過ビームスプリッタ素子(例えばダイクロイックプリズム)のいずれかによって行うことができる。
【0108】
好ましい実施形態では、更なるビームスプリッタ素子がレーザの光路内のビームスプリッタ素子(2)に続いて配置される。これらのビームスプリッタ素子は、少なくとも3つのサブビームのそれぞれを少なくとも2つの更なるサブビームに分割するように配置される。これにより、より多くのサブビームを生成することが可能になり、サブビームは基材、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材上に指向され、基材の表面上または内部で干渉する。これにより、干渉パターンの構造周期を調整することができる。
【0109】
集束素子(4)
更に、集束素子(4)は、レーザの光路(3)内のビームスプリッタ素子(2)に続いて配置され、サブビームは、サブビームが干渉領域において構造化される基材(5)の表面上または内部で干渉するよう、集束素子(4)を通過するように構成されている。集束素子(4)は、少なくとも3つのサブビームを空間方向に集束させるが、少なくとも3つのサブビームを空間方向に垂直な空間方向には集束しない。例えば、集束素子(4)は、集束光学レンズであってもよい。本発明の文脈において、集束とは、基材、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材の表面上または内部で少なくとも3つのサブビームを束ねることを意味する。
【0110】
集束素子(4)は、光路(3)内で自由に移動可能である。本発明の好ましい実施形態によれば、集束素子(4)は、光路内または光軸に沿って固定される。
【0111】
本明細書で定義される光学素子は、例えば、ビームを分割し、それに応じて構造化される基材の方向にサブビームを位置合わせするために、共通のハウジング内に配置され得ることが理解されよう。
【0112】
好ましい実施形態では、集束素子(4)は、球面レンズである。球面レンズは、入射する少なくとも3つのサブビームが、構造化される基材(5)、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材の表面上または内部の干渉領域で干渉するように、それらが球面レンズを通過するように構成される。干渉領域の幅は、好ましくは1~600μm、特に好ましくは10~400μm、最も好ましくは20~200μmとする。このようにして、例えば本明細書で定義されるような高いパターニング率を同時に設定することができる。
【0113】
特に好ましい実施形態では、集束素子(4)は、円筒レンズである。円筒レンズは、少なくとも3つのサブビームが基材(5)、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材の表面上または内部で重なる領域が空間方向に引き延ばされるように構成される。その結果、基材上で干渉パターンを生成することができる基材の領域は、楕円形となる。この楕円の大きな半軸の長さは、20μm~15mmに達することがある。これにより、1回の照射内で構造化できる領域が増加する。
【0114】
第1の偏向素子
特に好ましい実施形態では、偏向素子(7)は、集束素子(4)の前かつビームスプリッタ素子(2)の後に配置され、レーザの光路(3)に配置されることが好ましい。この偏向素子(7)を使用して、少なくとも3つのサブビーム間の距離を広げ、従って、サブビームが基材(5)、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材に当たる角度を変更することもできる。偏向素子(7)は、少なくとも3つのサブビームの発散を増大させ、従って、少なくとも3つのサブビームが干渉する領域を光路(3)の光軸に沿ってレーザ放射源(1)から遠ざけるように移動させるように構成される。
【0115】
本発明の文脈において、少なくとも3つのサブビーム間の距離を広げることは、レーザ放射源(1)によって放射されるレーザビームの光軸に対するそれぞれのサブビームの角度が増大することを意味すると理解される。
【0116】
サブビームを広げることおよびその結果として生じる偏向には、集束素子(4)によってサブビームをより強力に束ねることができるという利点がある。これにより、少なくとも3つのサブビームが基材(5)、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材の表面上または内部で干渉する領域の強度がより高くなる。
【0117】
偏向素子を適切に選択することは、レーザビームの強度を制御するためのユニットを省略できることを意味する。装置の好ましい実施形態では、偏向素子(7)を使用して、少なくとも3つのサブビームを拡大することによって、集束素子(4)により少なくとも3つのサブビームを基材(5)上に集束させることができ、それによって、基材、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材の表面上または内部の干渉点の強度を、レーザ放射源(1)の強度を更に調整することなく達成することができる。これには、周期的ドット構造を生成しながら基材のパターニングに低強度(面積当たりの出力)のレーザ放射源も使用することができ、それにより、光学素子が摩耗から保護されるという利点がある。
【0118】
更なる偏向素子
更に、更なる偏向素子(6)がレーザ放射源(1)の光路(3)においてビームスプリッタ素子(3)に続いて配置されてもよく、これにより、サブビームが更なる偏向素子(6)から出た後、互いに本質的に平行に走るようにサブビームを偏向することもできる。その結果、装置は、ビームスプリッタ素子がレーザの光路内でその光軸に沿って移動する際に、処理点、即ち、基材、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材の表面上または内部で少なくとも3つのサブビームが干渉する点が一定に保持されるように構成することができる。「本質的に平行」という用語は、本明細書の文脈において、2つのサブビーム間における+15°~-15°の間、特に+10°~-10°のみの間、非常に好ましくは+5°~-5°の間の角度オフセットを意味すると理解されるべきであるが、もちろん、特に非常に小さい角度オフセット、即ち、+1°~-1°でもあり得る。理想的には、角度オフセットは0°であるが、光学素子の製造公差に起因して若干の誤差が生じる可能性がある。
【0119】
更なる偏向素子(6)は、従来の屈折レンズであることができる。しかしながら、代替的に、更なる偏向素子(6)を回折レンズ(例えば、フレネルレンズ)として設計することもできる。回折レンズは、極めてより薄くかつより軽量であるという利点を有しており、これにより、本明細書に開示される装置の小型化が容易になる。
【0120】
光学素子(4)、(6)および(7)の屈折率を適切に選択することによって、光学素子と基材との間の距離並びに構造周期Λを調整することができる。ビームスプリッタ素子(2)を除く全ての光学素子をレーザの光路(3)内に固定することができることが好ましい。従って、この特に好ましい実施形態は、干渉領域または干渉角度を調整するのにただ1つの素子、即ちビームスプリッタ素子(2)のみを移動させる必要があるという利点を提供する。これにより、装置を所望の構造周期に合わせて校正する等、装置を構成する際のプロセスステップを節約する。更に、固定設定により、即ち、好ましくは全ての光学素子がレーザの光路(3)内に固定された場合、光学素子の磨耗が防止される。
【0121】
偏光素子
更なる実施形態では、偏光素子(8)は、偏向素子の後ろに、特に好ましくは、更なる偏向素子(6)の後ろに2つの偏向素子(6)、(7)を備えた構成で、かつ集束素子(4)の前に配置されるようにし、少なくとも3つのサブビームの光路のうちの少なくとも1つにおいて、サブビームごとに1つの偏光素子が存在するようにする。偏光素子は、サブビームの偏光を互いに対して変更することができる。これにより、少なくとも3つのサブビームが基材、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材の表面上または体積内にマッピングされる、結果として生じる干渉パターンを修正することが可能になる。偏光素子(8)をサブビームの光路のうちの少なくとも1つに、好ましくはサブビームの各光路ではなく、好ましくは最大(n-1)の光路に配置することによって(nは適用プロセスで生成されるサブビームの数である)、ビーム経路内の少なくとも1つのサブビームの偏光面を有利に回転させることができ、従って、基材面内の干渉ピクセルのパターンを「妨げる」ことができる。
【0122】
従って、特に、干渉サブビームは、非偏光、直線偏光、円偏光、楕円偏光、ラジアル偏光またはアジマス偏光であり得る。
【0123】
ビーム整形のための光学素子
更なる実施形態では、レーザ放射源(1)は、上述したようなガウスプロファイルに対応する放射プロファイルを有する。このような実施形態では、ビーム整形のための更なる光学素子を、レーザ放射源(1)の後ろかつビームスプリッタ素子(2)の前に配置することができる。この素子を使用して、レーザ放射源の放射プロファイルをトップハットプロファイルに調整する。
【0124】
凹放物面または平面反射面を有する光学素子も本発明による装置に設けることができ、光学素子は、例えば少なくとも1つの軸の周りに回転可能であるか、または光路(3)に沿って変位可能であるように設計される。その結果、必要に応じて、光路(3)内に配置された更なる集束素子(4)または更なる偏向素子(6)を省略することができる。例えば、この光学素子を使用して、ビームがパターニングされる記載に到達して構造素子を形成する前に、レーザビームまたはレーザサブビームを集束素子(4)または別の集束光学素子の表面上に指向することができる。
【0125】
あるいは、例えば、少なくとも1つの軸の周りに回転可能であるか、または光路(3)に沿って変位可能であるように設計された、凹放物面または平面反射面を有する少なくとも1つの光学素子を設けることもでき、例えば、この光学素子は、光路内で第1の偏向素子(7)および更なる偏向素子(6)に連続して配置される。例えば、サブビームを光路内で偏向するか(偏向ミラー)、またはパターニングされる基材が処理中に固定位置に配置され得るように光路内で集束させることができる(いわゆる、集束ミラーまたはガルボミラー(レーザスキャナ)(9))。
【0126】
ポリゴンスキャナを備える実施形態も考えられる。この実施形態では、少なくとも1つの光学素子は、周期的に回転するプリズム、好ましくは周期的に回転するミラープリズム、特にポリゴンミラーまたはポリゴンホイールと、周期的に回転するプリズムに連続して光路内に配置される集束素子(4)とを備える。集束素子は、サブビームが干渉領域でパターニングされる基材(5)の表面上または内部で干渉するよう、サブビームが集束素子を通過するように構成される。好ましい実施形態では、光学素子は、少なくとも1つの更なる偏向素子、例えば光路内のサブビームを偏向するための反射偏向素子を更に備える。少なくとも1つの更なる偏向素子は、光路内において周期的に回転するプリズムの前および/または後に配置することができる。少なくとも1つの更なる偏向素子は、光路内において集束素子の前に配置される。
【0127】
このような構成により、有利なことに、基材の表面を迅速に走査することが可能となり、それにより、最大3m2/分、特に0.05~2m2/分の範囲、特に好ましくは0.1~1m2/分の範囲、最も好ましくは0.1~0.9m2/分の範囲の高いパターニング速度を達成することができる。正確なパターニング速度は、特に利用可能なレーザ出力に依存する。従って、より高いレーザ出力を備えた将来の技術では、更に高いパターニングレートを達成できる可能性がある。
【0128】
基材のための保持装置
更なる実施形態では、基材(5)、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材は、xy平面内で移動可能である。基材(5)、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材をxy平面内で移動させることによって、レーザ干渉パターニングによる広範囲にわたる処理を確実にすることができる。各処理ステップ(即ち、パターニングされる基材に当たるレーザパルス)において、(本明細書で定義されるような)干渉ピクセルが生成され、干渉ピクセルは、レーザビームの入射角および強度分布、並びに光学素子の集束特性に依存するサイズDを有する。異なる干渉ピクセル間の距離、即ちピクセル密度Pdは、レーザ放射源(1)の繰り返し率と、光学素子の焦点、即ち干渉領域が基材の表面上または内部に生成される地点に対する基材の動きと、によって決定される。ピクセル密度Pdが干渉ピクセルのサイズDよりも小さい場合、広い面積にわたって均一な処理が可能である。
【0129】
パルスレーザ(サブ)ビームと組み合わせて、集束点(干渉ピクセルを生成する)に対して基材を移動させることによって、基材、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材の表面上または内部に、広範囲にわたる、任意に均一かつ周期的なドット構造を生成することができる。
【0130】
集束点に対して基材を移動させる代わりに、集束点を(例えば、スキャナベースの方法を使用して)サンプルまたは基材上で移動させることもできる。
【0131】
パターニングされる基材、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材をレーザビーム内で移動させることは、プロセス中に移動する質量が比較的大きいため、比較的時間がかかり、遅くなる可能性がある。従って、基材、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材を処理中に固定位置に設け、サブレーザビームを光学素子(集束ミラーまたはガルボミラー(レーザスキャナ))によりビーム方向に操作することによって、サブビームを基材の表面上または体積に集束させることにより、基材の広範囲にわたるパターニングを実現することが有利である。このプロセスで移動する質量は比較的小さいため、はるかに少ない労力で、即ち、はるかに素早く実現することができる。基材はプロセス中、静止していることが好ましい。
【0132】
方法
本発明はまた、レーザ干渉パターニングによって、マイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の周期的ドット構造を有する基材、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材を製造する方法も含む。
【0133】
本発明によれば、レーザ干渉パターニングによってマイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の周期的ドット構造を有するパターニングされた基材、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材を製造する方法は、以下のステップを含む:
基材(5)、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材を提供し、これを保持装置上に配置する。レーザビームをレーザ放射源(1)から放射する。レーザビームをビームスプリッタ素子(2)によって、少なくとも3つ、好ましくは4つのサブビームに分割する。サブビームは、集束素子(4)に当たり、集束素子(4)により、少なくとも3つ、特に好ましくは4つのサブビームを基材(5)、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材の表面上または内部に集束させ(束ね)、それにより、サブビームが基材の表面上または内部で建設的かつ破壊的に干渉する。従って、マイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の周期的ドット構造が、レーザ干渉処理によって、基材(5)、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材の表面上または内部に生成される。この方法は、2Dパターンが生成されるように少なくとも3つのサブビームが重ね合わされることを特徴とする。
【0134】
本発明の更なる実施形態によれば、レーザビームは、ビームスプリッタ素子によって少なくとも2つのサブビームに分割される。サブビームは、集束素子(4)に当たり、集束素子(4)は、少なくとも3つ、特に好ましくは4つのサブビームを基材(5)、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材の表面上または内部に集束させ(束ね)、それにより、サブビームが基材の表面上または内部で建設的および破壊的に干渉する。従って、マイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の周期的ドット構造が、レーザ干渉処理によって、基材(5)、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材の表面上または内部に生成される。この方法は、1Dパターン、特に線パターンが生成されるように少なくとも3つのサブビームが重ね合わされることを特徴とする。
【0135】
この方法で生成されたドット構造は、周期的に配置された、逆円錐の形状をしており、頂点間の距離(即ち、高さの中心(単数または複数))の統計的平均が50nm~50μmの範囲、好ましくは50nm~20μmの範囲、特に好ましくは100nm~4μmの範囲、より好ましくは100nm~2μmの範囲、更により好ましくは200nm~1.5μmの範囲、非常に特に好ましくは300nm~800nmの範囲である。
【0136】
本発明の発明者らは、更に、周期性に加えて、構造深さ(即ち、窪みの鞍点から頂点までを測定した逆円錐の深さ)またはプロファイル深さが(本明細書に定義するように)反射防止性に影響を与えることを発見した。例えば、逆円錐の構造深さまたはプロファイル深さ(隆起および窪み)の統計的平均は、5nm~500nmの範囲、好ましくは5nm~300nmの範囲、最も好ましくは5nm~100nmの範囲、更により好ましくは5nm~75nmの範囲である。干渉ピクセルの逆円錐の構造深さは、一般に、平均構造深さ(d50)によって表され、これは、構造深さの指定値よりも小さいまたは大きい特定の構造深さを有する干渉ピクセル内の円錐の50%の割合を定義する。
【0137】
本発明の好ましい実施形態によれば、逆円錐は5nm~200nmの範囲、特に好ましくは5nm~150nmの範囲、最も好ましくは10nm~100nmの構造深さを有する。
【0138】
好ましくは、装置を使用して、2つの偏向素子(6)、(7)を備える、パターニングされた基材(5)、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材を製造する。偏向素子(6)、(7)は、ビームスプリッタ素子(2)と集束素子(4)との間のレーザの光路(3)に配置される。偏向素子(6)、(7)は、少なくとも3つの、特に好ましくは4つのサブビームの回折角を広げるように機能し、サブビームは基材(5)、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材の表面上または内部で干渉する。光学素子間の距離を調整することによって、構造周期を変更するために、ビームスプリッタ素子(2)のみがその光軸に沿って移動可能である必要があることを保証することができる。これにより、加工時の調整工程がより容易になる。
【0139】
特に好ましい実施形態では、透明な材料が広範囲にわたる基材として提供される。透明な材料の半透明性により、好ましくは上述の装置の実施形態を用いて、基材内部のレーザ干渉処理が可能となる。
【0140】
好ましい実施形態では、パルスレーザ放射源(1)を使用する装置が、パターニングされた基材、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材を製造するために使用される。特に好ましい実施形態では、パターニングされた基材、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材を製造するための装置が使用され、この装置は、レーザ放射源(1)によって放射されるレーザビームの光路(3)に垂直な、xy平面内で自由に移動可能な基材のための保持装置を有する。
【0141】
ピクセル密度Pd、即ち、幅Dの干渉ピクセルを基材、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材に適用できる距離は、レーザ放射源(1)の頻度fと、保持装置の移動速度vとを介して調整することができる。
【0142】
[数3]
Pd=v/f
【0143】
干渉ピクセルの幅Dがピクセル密度Pdよりも大きい場合、隣接する干渉ピクセルが領域内で重なり合う。この領域は、当業者にはパルスオーバーラップ(OV)として知られている。パルスオーバーラップは、次のように計算可能である。
【0144】
[数4]
OV=(D-Pd)/D
【0145】
好ましい実施形態では、パターニングされた基材、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材を製造するためのプロセスにおいて、PdはDよりも小さい。結果として生じるパルスオーバーラップOVにより、基材、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材は複数回照射される。従って、好ましくは、テクスチャのない表面を避けることができる。
【0146】
特に好ましい実施形態では、パターニングされた基材、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材を製造するプロセスにおいて、同じ干渉ピクセルが数回照射されるようにする。これにより、結果的に得られるマイクロ構造の深さを増加させることが可能となる。
【0147】
このような方法によって製造されるパターニングされた基材、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材の利点は、マイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の構造寸法を有する生成された周期的ドット構造の規則性が高いことである。このようにして製造された、マイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の寸法を有する周期的ドット構造は、好ましくは、円錐断面の変動係数(標準偏差を平均値で割った値)が15%以下、より好ましくは10%以下、更により好ましくは5%以下である。
【0148】
基材への複数回の照射は、階層構造の生成に特に適している。同じ干渉ピクセルを複数回照射することにより、基材が少なくとも部分的に溶融し、それによって、パターニングプロセス中、即ちレーザパルスが基材に当たるとき、高強度領域が発生する結果として波形構造が形成される。構造、特に波形構造は、自己組織化プロセスによって形成される。特に、波形構造は、レーザ干渉パターニングによって生成可能な、マイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の周期的ドット構造に重ね合わされる。従って、1つのプロセスステップで基材内に階層的パターニングを生成することができる。従って、本発明の好ましい実施形態によれば、同じ干渉ピクセルの複数の照射、好ましくは2~400、特に20~300、特に好ましくは50~200の照射が基材上に実行される。それによって(本明細書で定義されるような)波形構造が形成され、特に周期的ドット構造が重ね合わされた構造から形成され、少なくとも1つの構造がサブマイクロメートル範囲の寸法、特に準周期的な波形構造を有し、少なくとも1つの構造は逆円錐から形成される。個々のパルス間の時間オフセットは、特に好ましくは、レーザパルスのパルス持続時間の範囲内、好ましくは1fs~100nsの範囲内、特に好ましくは10fs~10nsの範囲内、非常に特に好ましくは10fs~15psの範囲内である。
【0149】
階層的パターニングとは、干渉パターンに対応する、マイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の寸法を有する第1の構造が、第1の構造の寸法未満の寸法を有し、自己組織化プロセスによって形成される更なる構造によって重ね合わされるパターンを指す。好ましくは、自己組織化プロセスによって形成される更なる構造の寸法は、干渉パターンに対応する、第1の構造の寸法の1%~30%の範囲内である。
【0150】
階層的パターンを適用する技術分野は数多く存在し、例えば、疎水性または超疎水性、並びに、親水性または超親水性の表面を備えた基材や、冒頭で説明した反射防止性を備えた基材に加えて、防氷性または防曇性を備えた基材の製造が挙げられる。有利には、本明細書に記載されるような、そのような階層的パターンを生成する方法は、レーザ放射源の適切な選択およびレーザの光路内のビームスプリッタ素子の対応する変位によって、構造寸法に影響を与えるプロセスパラメータの正確な調整を可能にする。
【0151】
更に、本明細書で定義される方法は、同じ装置を用いて、更に、同じプロセスステップで階層的パターンを有する基材を提供することを可能にする一方、従来のプロセスは、連続的に進行する、即ち、干渉パターンに対応する、マイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の寸法を有する第1の構造と、自己組織化プロセスによって形成される更なる構造とを同時に生成することはできない。
【0152】
パターニングされる基材、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材をレーザビーム内で移動させることは、プロセス中に移動する質量が比較的大きいため、比較的時間を要するうえに遅い。従って、基材、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材を処理中に固定位置に提供し、ビーム方向に光学素子(集束ミラーまたはガルボミラー(レーザスキャナ))を備えたレーザサブビームを操作することによって基材の表面上または体積にサブビームを集束させることによって基材の広範囲にわたるパターニングを実現することが有利である。このプロセスで移動する質量は比較的小さいため、はるかに少ない労力で、またははるかに素早く実現可能である。基材は、プロセス中に静止していることが好ましい。
【0153】
もちろん、基材の二次元パターニングは、原理的には、基材をレーザビーム内で移動させることによっても可能である。
【0154】
本明細書に開示される方法および装置によって生成されるマイクロメートルおよび/またはナノメートル範囲の周期的構造により、このようにパターニングされた基材は、反射防止性を有する。これは、基材に入射する光の反射が少ないか、または材料表面を垂直に見たときに「妨げる」効果を有しないような平坦な角度で反射するという事実によって保証される。
【0155】
従って、本発明は、マイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の周期的ドット構造を含む反射防止性を有するパターニングされた基材もカバーし、周期的ドット構造は逆円錐から形成され、逆円錐は、それらの鞍点または中心点に対して、50nm~50μmの範囲、好ましくは50nm~20μmの範囲、特に好ましくは100nm~4μmの範囲、より好ましくは100nm~2μmの範囲、更により好ましくは200nm~1.5μmの範囲、より好ましくは100nm~1000nmの範囲、特に好ましくは300nm~800nmの範囲の間隔をあけて周期的に配置される。
【0156】
本発明の好ましい実施形態によれば、パターニングされた基材は、本明細書で定義される方法で処理することによって得られる。
【0157】
本発明はまた、レーザ干渉パターニングにより、特に本明細書に開示される方法によって、マイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の周期的ドット構造を有する基材を製造する方法にも関しており、以下のステップ、即ち、
a)好ましくは本明細書で定義されるような装置によって、基材(5)の表面上に第1のパルスを印加し、これにより、基材(5)の表面上または基材(5)内に第1の干渉ピクセルを生成するステップと、
b)好ましくは本明細書で定義されるような装置によって、基材(5)の表面上に第2のパルスを印加し、これにより、基材(5)の表面上または基材(5)内に第2の干渉ピクセルを生成するステップと、
を含み、第1および第2の干渉ピクセルはそれぞれ独立して、マイクロメートルおよびサブマイクロメートル範囲の寸法を有する周期的ドット構造を含み、
第2の干渉ピクセルと第1の干渉ピクセルとの間のオフセットは、干渉周期の10%≦x≦50%の範囲にあることを特徴とする。
【0158】
これは、基材上、特に防眩性を有する透明な基材上に構造を形成するのに特に有利である。
【0159】
本発明の文脈において、眩しさとは、画面上で何が起きているのかを見えにくくする可能性のある、透明な基材、例えば窓または画面上の光源(例えば太陽)からの光の反射を指す。
【0160】
これらの眩しさは、表面の防眩処理(通常は、最新技術のコーティングによって行われる)を利用して軽減することができる。防眩構造により入射光を表面上で散乱させ、それにより、眩しさを大幅に軽減することができる。
【0161】
本発明の好ましい実施形態によれば、第1の干渉ピクセルのドット構造の周期と第2の干渉ピクセルの周期とは同一である。
【0162】
更に、ステップb)の後に、好ましくは本明細書で定義されるような装置によって、基材(5)の表面上に第3のパルスを印加してもよく、第3の干渉ピクセルは、マイクロメートルおよびサブマイクロメートル範囲の寸法を有する周期的ドット構造を含むことができ、第3のパルスは、基材(5)の表面上または基材(5)内に第3の干渉ピクセルを生成し、第3の干渉ピクセルは、第2の干渉ピクセルに対して干渉周期の10%≦x≦50%の範囲のオフセットを有する。
【0163】
干渉周期のオフセットは、少なくとも1つの空間方向において均一である、請求項17または18に記載の方法。
【0164】
パターニングされた基材
本発明者らは、主に本明細書に開示される装置または方法によってパターニングされた基材が、顕著な反射防止性によって特徴付けられることを発見した。従って、本発明はまた、本明細書で定義される反射防止性を有し、マイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の周期的ドット構造を含む、パターニングされた基材にも関し、周期的ドット構造は、特に逆円錐構造(本明細書では、逆円錐とも称する)から形成され、逆円錐はその鞍点または中心に対して、50nm~50μmの範囲、好ましくは50nm~20μmの範囲、特に好ましくは100nm~4μmの範囲、より好ましくは100nm~2μmの範囲、更により好ましくは200nm~1.5μmの範囲、より好ましくは100nm~1,000nmの範囲、特に好ましくは300nm~800nmの範囲で周期的に間隔をあけて配置されている。
【0165】
この方法で生成された周期的ドット構造には、その構造の寸法に応じて、10nm~1mmの範囲の波長を有する入射電磁放射を周期的構造によってますます透過または回折することができ、その結果、基材の表面での反射を減少させるという特性がある。生成された周期的ドット構造の周期が入射電磁波の波長の範囲内にある場合、基材の表面で回折される。生成された周期的ドット構造の周期が入射電磁波の波長よりも小さい場合、電磁波は透過する。
【0166】
周期的ドット構造は、構造化された基材が、1,000nm未満の周期的ドット構造で550nmを超える、好ましくは750nm未満の周期的ドット構造で500nmを超える、最も好ましくは600nm未満の周期的ドット構造で450nmを超える波長を有する電磁放射を透過するように形成されることが好ましい。逆円錐の構造深さに応じて、赤色および/または黄色の光スペクトル、緑色光スペクトル、更には青色光スペクトルの波長を基材に透過することができる。
【0167】
パターニングされた基材の屈折率は、作製された周期的ドット構造により段階的である。屈折率は構造の高さとともに減少し、それ故、明確な空気-媒体移行はない。これにより、生成されたドット構造の構造周期よりも長い波長を有する入射電磁波がますます透過し、かつ生成されたドット構造の構造周期の範囲内の波長を有する入射電磁波がますます回折する。
【0168】
製造可能な構造寸法が非常に小さいため、反射防止パターニングを製造するための本明細書に開示される装置および方法は、疎水性および/または超疎水性並びに親水性および/または超親水性を有する表面を製造するのにも適している。
【0169】
疎水性は、基材の化学特性と表面特性、特に表面粗さとの両方に依存する。本発明者らは、驚くべきことに、本発明による方法により、マイクロメートルおよびサブマイクロメートル範囲の構造の導入によって、特に疎水性基材を得ることができ、特に超疎水性および自浄性を有する(本明細書で定義されるような)重ね合わせた構造の基材表面が得られることを見出した。超疎水性を有する基材は、階層的な表面パターニングを有する基材であることが特に好ましい。この文脈における階層的な表面パターニングとは、マイクロメートル範囲の寸法を有する規則的な構造が存在し、その表面上にサブマイクロメートル範囲の寸法を有するパターンを有する表面を意味する。このような階層的なパターニングにより、表面粗さが大きくなる可能性がある。
【0170】
本発明者らはまた、主に本明細書に開示される装置または方法によってパターニングされた基材が、基材表面の顕著な疎水性によって特徴付けられることも発見した。マイクロメートルおよびサブマイクロメートル範囲の寸法を有する反射防止パターンを生成するための本明細書に開示される装置および方法を用いて、表面パターニング、特に基材表面の表面粗さを生成するためのパターニングも可能であり、結果的に疎水性または超疎水性を有する基材となる。疎水性材料特性は、直接レーザ干渉パターニングを使用して、マイクロメートルおよび/またはサブマイクロメートル範囲の寸法を有する構造を作製することによって生成することができる。好ましい実施形態では、マイクロメートル範囲の寸法を有する構造が最初に表面上に作製される。次に、ビームスプリッタ素子をレーザの光路内で移動させることによって、サブマイクロメートル範囲の寸法を有する構造が、好ましくは基材を複数回照射することにより、第1の構造の表面上に生成される。このようにして生成された階層的パターンは、疎水性または超疎水性を有する。
【0171】
疎水性を有する基材を製造するのに、中間ステップでビームスプリッタ素子を移動させることなく、マイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の寸法を有する構造のみを製造することも考えられる。
【0172】
従って、有利には、疎水性および/または超疎水性を有する基材は、同じ方法を用いて、同じ装置に基づいて、マイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の周期的ドット構造および/またはマイクロメートルおよびサブマイクロメートル範囲の階層的パターンを有する周期的ドット構造を生成することによって、技術的に容易に実現可能な方法で生成することができる。ビームスプリッタ素子を移動させることにより、構造を更に変更することなく、例えば、光学素子を交換するまたは基材を移動させることなく、基材の表面上に少なくとも2つの、または任意の数の更なる構造を実現することが可能である。これにより、従来の方法または装置と比較して、構造の位置合わせの精度とプロセスの速度との両方が向上する。
【0173】
本発明者らは、基材の表面特性とその表面上の氷の形成との間の相関関係を確立した。特に、基材表面の構造サイズが十分に小さい場合、いわゆる着氷防止性を生成することができる。研究結果によると、超疎水性を有する基材は着氷防止性も示し得ることがわかっている。
【0174】
本発明の目的上、着氷防止性とは、基材の表面上で水が全く凍らない、または極めて僅かしか凍らないことを意味すると理解され、この特性は表面特性、特に表面粗さに起因する。
【0175】
このような基材は、露出した部品を着氷から保護するために、航空宇宙分野、風力タービン、自動車部品の分野、または電気通信およびアンテナ技術においても有利に使用することができる。
【0176】
本発明の一実施形態では、本明細書に開示される方法および装置は、レーザ干渉パターニングによって製造され、反射防止性を特徴とする、マイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の周期的ドット構造を含む基材を製造するのに適している。本発明の意味において、本明細書における反射防止性とは、可視光の範囲の波長、特に400nm~700nmの範囲の波長を有する入射電磁放射線の増加した透過または回折を指す。基材は、基材に含まれる周期的ドット構造が好ましくはサブマイクロメートル範囲、特に好ましくはナノメートル範囲の寸法を有するという事実によって特徴付けられる。特に好ましいのは、可視光の範囲内の電磁放射の波長の範囲内の周期的ドット構造の寸法である。従って、周期的ドット構造の寸法は、好ましくは赤色の光の透過または回折については630nm~700nmの範囲、赤色およびオレンジ色の光の透過または回折については590nm~630nmの範囲、赤色、オレンジ色および黄色の光の透過または回折については560nm~590nmの範囲、赤色、オレンジ色、黄色および緑色の光の透過または回折については500nm~560nmの範囲、赤色、オレンジ色、黄色、緑色および青緑色の光の透過または回折については475nm~500nmの範囲、赤色、オレンジ色、黄色、緑色、青緑色および青色の光の透過または回折には450nm~475nmの範囲、オレンジ色、黄色、緑色、青緑色、青色および藍色の光については425nm~450nmの範囲、並びに赤色、オレンジ色、黄色、緑色、青緑色、青色、藍色および紫色の光については400nm~425nmの範囲である。従って、基材の反射防止性は、周期的ドット構造の寸法を変更することによって制御することができる。
【0177】
本発明の一実施形態では、本明細書に開示される方法および装置は、レーザ干渉パターニングによって製造され、反射防止性を特徴とする、マイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の周期的ドット構造を含む基材を製造するのに適している。本発明の意味において、本明細書における反射防止性とは、非可視光の範囲、特に赤外線の範囲の波長を有する入射電磁放射線、または特に780nm~1mmの範囲の波長を有する熱放射線の増加した透過または回折を指す。基材は、それに含まれる周期的ドット構造が好ましくはマイクロメートル範囲の寸法を有するという事実によって特徴付けられる。有利なことに、基材の熱伝達は、周期的ドット構造の寸法を変えることによって調整することができる。
【0178】
本発明の一実施形態では、本明細書に開示される方法および装置は、レーザ干渉パターニングによって製造され、反射防止性を特徴とする、マイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の周期的ドット構造を含む基材を製造するのに適している。本発明の意味において、本明細書における反射防止性とは、非可視光の範囲、特に紫外線(IV放射線)の範囲の、特に100nm~380nmの範囲の波長を有する入射電磁放射線の増加した透過または回折を指す。基材は、それに含まれる周期的ドット構造が、好ましくはナノメートル範囲の寸法を有するという事実によって特徴付けられる。このようにパターニングされた基材は、紫外線に対する保護が必要な領域で有利に使用され得る。
【0179】
本発明の更なる実施形態では、本明細書に開示される方法および装置は、同じ干渉ピクセルの複数回の照射によるレーザ干渉パターニングによって生成され、疎水性または超疎水性特性を特徴とする階層的パターンを含む基材を製造するのに適している。疎水性または超疎水性は、マイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の寸法を有する構造、特にマイクロメートルおよびサブマイクロメートル範囲の寸法を有する階層的パターンが、濡れ角がより大きくなるように基材上の液体の濡れ角を変化させるという事実によるものである。濡れ角がより大きいとは、表面に当たった液体が表面を十分に濡らさず、代わりに転がり落ちることを意味する。このように処理された基材は、自浄性および撥水性を備える。そのようにパターニングされた基材に特に適した材料は、既に疎水性を有する材料、例えば、金属またはポリマーの表面である。
【0180】
本発明の更なる実施形態では、本明細書に開示される方法および装置は、同じ干渉ピクセルの複数回の照射によるレーザ干渉パターニングによって生成され、着氷防止性、即ち氷層の形成を防ぐ特性を特徴とする、階層的パターンを有する基材を生成するのに適している。着氷防止性は、マイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の寸法を有する構造、特にマイクロメートルおよびサブマイクロメートル範囲の寸法を有する階層的パターンが、濡れ角がより大きくなるように基材上の液体の濡れ角を変化させるという事実に基づいている。従って、パターニングされた基材は、疎水性または超疎水性を示す。濡れ角が大きいとは、表面に当たった液体が表面を十分に濡らさず、代わりに転がり落ちることを意味する。これにより、表面に氷の層がより堆積しにくくなる。既に疎水性を備えている材料、例えば、金属またはポリマー表面は、そのようにパターニングされる基材に特に適している。
【0181】
本発明の更なる実施形態では、本明細書に開示される方法および装置は、同じ干渉ピクセルの複数回の照射によるレーザ干渉パターニングによって生成された、親水性または超親水性を特徴とする階層的パターンを含む基材を製造するのに適している。親水性または超親水性は、マイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の寸法を有する構造、特にマイクロメートルおよびサブマイクロメートル範囲の寸法を有する階層的パターンが、濡れ角がより小さくなるように基材上の液体の濡れ角を変化させるという事実に起因している。濡れ角がより小さいとは、表面に当たった液体が表面を十分に濡らし、液滴の形成が見られないことを意味する。代わりに、均一な濡れが達成され、これにより基材の透明性が損なわれることはない。このようなパターニングされた基材に特に適した材料は、既に親水性を有する材料、例えばガラス面である。
【0182】
本発明の更なる実施形態では、本明細書に開示される方法および装置は、同じ干渉ピクセルの複数回の照射によるレーザ干渉パターニングによって生成された、防曇性、即ち、曇らない特性を特徴とする階層的パターンを有する基材を生成するのに適している。防曇性は、マイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の寸法を有する構造、特にマイクロメートルおよびサブマイクロメートル範囲の寸法を有する階層的パターンが、濡れ角がより小さくなるように基材上の液体の濡れ角を変化させるという事実に基づいている。従って、構造化された基材は、親水性または超親水性を示す。濡れ角が小さいとは、表面に当たった液体が表面を十分に濡らし、液滴の形成が見られないことを意味する。代わりに、均一な濡れが達成され、これにより基材の透明性が損なわれることはない。このようなパターニングされた基材に特に適した材料は、既に親水性を有する材料、例えばガラス面である。この方法でパターニングされた基材は、自動車産業や航空宇宙産業で有利に使用可能であるが、一般的には建築技術におけるグレージングにも使用可能である。
【0183】
本発明の一実施形態では、本明細書に開示される方法および装置は、レーザ干渉パターニングによって生成される、表面粗さが増した、マイクロメートルまたはサブマイクロメートルの周期的ドット構造を含む基材を製造するのに適している。表面粗さの増加は、基材に導入される周期的ドット構造によって表面テクスチャがマイクロメートルまたはサブマイクロメートルの範囲で変化するという事実、特に基材の表面に導入された周期的ドット構造による凹凸があるという事実に基づいている。特に、表面粗さの増加は、同じ干渉ピクセルの複数回の照射によるレーザ干渉パターニングによってマイクロメートルおよびサブマイクロメートル範囲の寸法を有する階層的パターンで、本明細書に記載の方法および装置によって基材をパターニングすることによって達成することができる。この方法で処理された基材は、製造分野において、例えば技術部品間の静摩擦および/または滑り摩擦を増加させるために、または医療技術において、外面上の細胞の接着を増加させるために有利に使用することができる。
【0184】
本発明の一実施形態では、本明細書に開示される方法および装置は、レーザ干渉パターニングによって生成されるマイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の周期的ドット構造を含む基材を生成するのに適しており、同じ外形寸法を有するパターニングされていない基材と比較して表面積が増加する。マイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の周期的ドット構造は、基材の表面積が干渉ピクセルあたりの干渉領域の密度に比例して増加するという事実に寄与する。特に、同じ外形寸法を有するパターニングされていない基材と比較して、表面積の増加は、本明細書に記載の方法および装置を用いて、同じ干渉ピクセルを複数回照射することによるレーザ干渉パターニングによって、マイクロメートルおよびサブマイクロメートル範囲の寸法を有する階層パターンで基材をパターニングすることによって達成することができる。この方法で処理された基材は、同じ外形寸法を有するパターニングされていない基材と比較して、表面積の増加により熱交換容量がより大きくなるため、高熱伝達が必要な技術分野で有利に使用することができる。更に、この方法で処理された基材は、電気接続技術の分野において、接触抵抗を減らすのに使用することができ、なぜなら、表面積が増加するということは、同じ外形寸法を有するパターニングされていない基材と比較して、接触する材料間により多くの接触点を生成できることを意味するためである。更に、この方法でパターニングされた基材は、電池技術の分野において、特にアノードおよびカソードのパターニングに使用することができ、なぜなら、表面積が増加するということは、同じ外形寸法を有するパターニングされていない基材と比較して、電極の金属間で電荷キャリアを交換するための容量がより大きいことを意味するためである。
【0185】
更に、本明細書に開示される方法および装置は、抗菌(防腐)性を有する、マイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の寸法を有する周期的ドット構造を含む基材を製造するのに適している。好ましい実施形態では、周期的ドット構造は、その上に堆積したバクテリアよりも著しく大きい、少なくとも10%~30%大きい寸法を有する。これにより、表面に堆積したバクテリアが分離され、それらを無害化する。特に好ましい実施形態では、周期的ドット構造は、その上に堆積したバクテリアよりも著しく小さい、少なくとも10%~30%小さい寸法を有する。これにより、表面へのバクテリアの付着が防止され、表面を無菌状態に保つ。
【0186】
本明細書に開示される方法および装置によって製造されるパターニングされた基材は、更なるコーティングプロセスによる更なる処理に更に適しており、基材は物理的および/または化学的コーティングを受けることができる。このようなコーティングにより、パターニングされる基材の特性、例えば、反射防止性および/または親水性および/または疎水性を強化することができる。化学スプレーコーティングの適用および/または化学蒸着および/またはスパッタリングおよび/またはゾルゲルプロセスによるコーティングの適用が考えられる。
【0187】
本発明の好ましい実施形態によれば、パターニングされた基材は、第1および第2の干渉ピクセルで形成されたドット構造を備え、第1および第2の干渉ピクセルはそれぞれ独立して、マイクロメートルおよびサブマイクロメートルの寸法を有する周期的ドット構造を備えており、第1の干渉ピクセルおよび第2の干渉ピクセルは、第2の干渉ピクセルと第1の干渉ピクセルとの間のオフセットが干渉周期の10%≦x≦50%の範囲、特に20%≦x<50%の範囲、特に好ましくは25%≦x≦45%の範囲となるように、互いに重ね合わさって配置される。これは、基材上の本明細書で定義されるドット構造の寸法により(それらの適用領域に関係なく)、特に透明基材上において、防眩性を有するパターニングを生成することができるため特に有利である。
【0188】
本発明の好ましい実施形態によれば、周期的ドット構造は、第3の干渉ピクセルと第2の干渉ピクセルとの間のオフセットが干渉周期の10%≦x≦50%の範囲、特に20%≦x<50%の範囲、特に好ましくは25%≦x≦45%の範囲となるように、少なくとも第3の干渉ピクセルが第1および第2の干渉ピクセルに重ね合わされて配置されるように設計される。
【0189】
パターニングされた基材の使用
本明細書で定義される反射防止性を有するパターニングされた基材は、例えば、太陽光発電システムにおいて使用され、反射防止性を導入することによって、これらの太陽光発電システムの効率を大幅に高めることができる。太陽光発電システムの分野における主要な課題は、太陽光線の反射によって生じる大きな損失にある。平均して、反射によりシステムごとに40%のエネルギー/電力損失を引き起こす。従って、太陽光発電システムの効率は、常に改善されなければならない。最も有望なアプローチの1つに、表面の反射防止コーティングおよび/またはテクスチャリングを利用して反射を低減する方法が挙げられる。本明細書に開示されるプロセスを使用することにより、表面の処理が簡素化され、促進され、かつ改善される。
【0190】
また、モニターやスクリーンは固定された場所に設置されることが多いため、好ましくない光の入射の影響を受けやすく、それにより視聴者に視覚的な問題をもたらすことも知られている。この影響を最小限に抑える方法はあるが、これらのアプローチは実際に問題を解決するというよりもむしろ症状を緩和する傾向があるため、広くは使用されていない。本明細書で定義される反射防止性を備えたパターニングされた基材は、例えば、モニター、スクリーンおよびディスプレイ用の反射防止グレージングの形態で、例えば、ディスプレイ領域への適用または統合に理想的に適している。
【0191】
更なる利用分野は、より高い伝送速度を確保し、後方反射を最小限に抑える、光ファイバー内での反射防止を達成する分野に開かれている。従って、本明細書に開示されるプロセスは、ガラス繊維のパターニングに理想的に適しており、この方法でパターニングされたガラス繊維は、反射防止性を有する本明細書で定義されるパターニングされた基材への更なる適用例を提供する。従って、本発明は、ガラス繊維の構成要素として本明細書で定義されるパターニングされた基材の使用も含む。
【0192】
更に、本発明者らは、本明細書で定義される方法が(反射防止グレージングの別の例として)窓ガラスのパターニングに適していることを発見した。例えば、本明細書に開示されるパターニングされた基材は、反射防止グレージングの形態で、または家のファサード上のフィルムコーティングとして使用することができ、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材を、例えば、湾曲した家のファサードからの集中した太陽放射から保護し、建物の断熱性を向上させるのに使用可能な断熱グレージングとして使用することができる。
【0193】
更に、顕微鏡や望遠鏡において反射を低減することにより、それらにより記録される画像のコントラストが高まるため、これらの光学装置の効率および用途が増加する。従って、本発明は、ビーム案内、ビーム整形、ビーム集束および/またはビーム集束が非常に重要である顕微鏡や望遠鏡等の光学装置において、マイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の周期的ドット構造を有する光学素子として本明細書で定義されるパターニングされた基材の使用も含む。
【0194】
例えば、別の基材上に構造を間接的に適用または生成するためのエンボス加工プロセス内で、本明細書で定義されるパターニングされた基材をネガ型(いわゆるマスター)として使用することも有用である。これは、例えば、ホットまたはUVエンボス加工プロセスを使用して連続プロセスで構造をマスター(通常はニッケル等の金属)からポリマーフィルム(例えば、PET)に転写するロールツーロールプロセスに関連している。これにより、マイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の周期的ドット構造として、高スループットで他の基材上に逆構造を生成することが可能となる。
【0195】
本発明による装置および本発明による方法は、多大な技術的労力を使用することなく、疎水性または超疎水性を有する広範囲にわたる基材を製造する可能性も提供する。この方法でパターニングされた基材は、疎水性および/または超疎水性基材の自浄性が求められる分野、例えば自動車部品、ディスプレイまたはグレージングの分野だけでなく、航空またはアンテナ技術の分野まで幅広い用途がある。
【0196】
本発明による装置および本発明による方法は、多大な技術的労力を使用することなく、親水性または超親水性を有する広範囲にわたる基材を製造する可能性も提供する。この方法でパターニングされた基材は、親水性および/または超親水性基材の均一な濡れ特性が求められる分野、例えば自動車部品、ディスプレイまたはグレージングの分野だけでなく、航空またはアンテナ技術の分野まで幅広い用途がある。
【0197】
更に、本発明による方法および装置は、更なる処理、例えば化学的および/または物理的処理に、特に化学スプレーコーティングによる、および/または結果的に得られる基材の反射防止性および/または疎水性または超疎水性および/または親水性または超親水性を増加させるおよび/または変更するためのコーティングに適したパターニングされた基材を製造する可能性も提供する。
【0198】
本発明の好ましい実施形態によれば、本明細書に開示される方法は、防眩性を有するように基材表面をパターニングするのに適している。この目的に特に適しているのは、本明細書で定義されるように、第1および第2の干渉ピクセルから形成されるドット構造を有するパターニングされた基材であり、第1および第2の干渉ピクセルは、それぞれ独立して、マイクロメートルおよびサブマイクロメートル範囲の寸法を有する周期的ドット構造を含み、第2の干渉ピクセルと第1の干渉ピクセルとの間のオフセットが干渉周期の10%≦x≦50%の範囲、特に20%≦x<50%の範囲、特に好ましくは25%≦x≦45%の範囲となるように、前記第1の干渉ピクセルおよび第2の干渉ピクセルを互いに重なり合うように配置する。
【符号の説明】
【0199】
1 レーザ放射源
2 ビームスプリッタ素子
3 光路
4 集束素子
5 基材
6 更なる偏向素子
7 偏向素子
8 偏光素子
9 集束ミラーまたはガルボミラー
31 光軸
91 ポリゴンホイール
【実施例】
【0200】
以下の図面および例示的な実施形態を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。特に、個々の図面に示され、それぞれの例について説明した特徴は、それぞれの個々の例に限定されるものではない。
【0201】
図1は、第1の実施形態において、レーザビームを放射するためのレーザ放射源(1)を備える、本発明による装置を視覚化している。レーザ放射源(1)の後ろのレーザビームの光路(3)内に移動可能に配置されたビームスプリッタ素子(2)は、ビーム経路(3)内に位置する。集束素子(4)は、ビームスプリッタ素子(2)の後ろのレーザビームの光路(3)に配置されている。基材(5)、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材が取り付けられている保持装置は、集束素子(4)の後ろのレーザビームの光路(3)に配置されている。
【0202】
この実施形態では、レーザ放射源(1)は、パルスレーザビームを放射する。この場合、レーザ放射源は、波長355nmかつパルス幅12psのUVレーザである。この実施形態では、レーザ放射源の放射プロファイルは、トップハットプロファイルに対応している。
【0203】
この実施形態では、ビームスプリッタ素子(2)は、回折ビームスプリッタ素子に対応している。ここでの回折ビームスプリッタ素子は、マイクロまたはナノ構造を含むビームスプリッタ素子である。ビームスプリッタ素子(2)は、レーザビームを4つのサブビームに分割する。
【0204】
この実施形態では、集束素子(4)は、本質的に互いに平行に走るサブビームを基材(5)、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材上に指向する屈折球面レンズに対応しており、それらは干渉領域において干渉する。この実施形態では、干渉角は、27.2°に対応し、結果的に、同じ偏光状態における周期的ドット構造の構造周期は550nmとなる。
【0205】
この例示的な実施形態によれば、広範囲にわたる基材は1回照射されると、結果的に、構造単位当たり、即ち干渉ピクセル当たりの処理時間は12psとなる。
【0206】
基材(5)、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材は、ガラス、特に石英ガラスであり、レーザ放射源(1)から放射されるレーザビームの光路に垂直なxy平面内で移動することができるように保持装置上に取り付けられる。
【0207】
図2は、
図1に記載の装置の更なる実施形態を視覚化したものであり、ビームスプリッタ素子(2)および集束素子(4)の後のレーザの光路(3)に位置する偏向素子(6)を更に備える。
【0208】
この実施形態では、偏向素子は従来の屈折凸レンズである。サブビームは、偏向素子を通過した後、本質的に互いに平行になるように偏向素子(6)に当たる。これにより、サブビームが基材の表面または内部で干渉する点を調整することができる。
【0209】
図3は、更なる実施形態における、
図1および
図2に示されるセットアップに基づく装置を視覚化している。更に、このセットアップは、ビームスプリッタ素子(2)と偏向素子(7)との間のレーザの光路(3)内に配置される更なる偏向素子(6)を備える。
【0210】
この実施形態では、更なる偏向素子(7)は、従来の屈折凹レンズである。サブビームは、光路の光軸に対する角度が広がるように、更なる偏向素子に当たる。これにより、サブビームが基材、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材の表面または内部で干渉する干渉角を変更することが可能になる。
【0211】
この実施形態では、ビームスプリッタ素子(2)を除く全ての光学素子は、光路(3)の光軸に沿って固定されている。基材上のサブビームの干渉角は、光路の光軸に沿ってビームスプリッタ素子(2)を移動させることによって設定される。
【0212】
図4Aは、更なる実施形態において、サブビームを集束素子(4)上に偏向させるように構成された、平面反射面を有する光学素子(6)を備える、
図3のような装置を示す。
【0213】
この実施形態では、少なくとも3つのサブビームは、光学素子(6)をシフトすることによって好ましい角度で基材上に偏向される。これは、レンズの形態の偏向素子(
図3の参照符号(6))を省略できることを意味する。
【0214】
図5は、更なる実施形態において、偏向素子(6)と集束素子(4)との間のレーザビームの光路(3)に配置された、サブビームごとに1つの偏光素子(8)を更に備える、
図3のような装置を視覚化している。
【0215】
偏光素子は、干渉パターンに変化が生じるように、個々のサブビームの偏光を相互に変化させるように配置される。
【0216】
この実施形態は、2つの異なる構成で示されている。
図5a)では、ビームスプリッタ素子(2)は、光路(3)内のレーザ放射源(1)の近くに配置されている。
図5b)では、ビームスプリッタ素子(2)は、光路(3)内の偏向素子(7)の近くに配置されている。このようにして、基材(5)の表面上の干渉サブビームの干渉パターンは、セットアップまたは基材内の他の光学素子を移動させる必要なしに、無限に調整することができる。
【0217】
レーザビームの光路(3)においてレーザ放射源(1)に連続して配置される、ビーム整形のための更なる光学素子を含む構成も考えられる。この実施形態では、レーザ放射源の放射プロファイルは、ガウスプロファイルに対応する。ビーム整形用の光学素子は、このプロファイルをトップハットプロファイルに変換する。
【0218】
図6は、幅Dを有する基材の表面または内部に生じる干渉ピクセルと、基材の表面または内部での個々の干渉ピクセルの分布との概略図を示しており、それによって干渉ピクセルはピクセル密度Pdで相互にシフトされる。
【0219】
この実施形態では、ピクセル密度Pdは、干渉ピクセルの幅Dよりも小さい。従って、パルスレーザビームによって基材(5)を移動させることによって、基材、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材の表面上または内部に広範囲にわたる均質な周期的ドット構造を生成することができる。
【0220】
図7は、マイクロメートルおよびサブマイクロメートル範囲の寸法を有する逆円錐からなる、生成された周期的ドット構造を有する、本発明による方法によって製造されたパターニングされた基材(5)を視覚化している。生成された構造の構造周期よりも長い波長を有する入射電磁波の透過および生成された構造の範囲内またはそれよりも短い波長を有する入射電磁波の回折も象徴的に示されている。
【0221】
図8は、更なる実施形態において、マークされた軸の周りを回転するように構成されたポリゴンホイールである、平面反射面を有する光学素子(91)を備える、
図4Bのような装置を示す。入射サブビームは、ガルボミラー(9)に当たるように偏向され、これにより、集束素子(4)を介して基材上にビームを指向する。ポリゴンホイールの回転により、露光プロセス中に、ビームが基材上で集束される点が線に沿って移動する。従って、サブビームが基材を走査し、これがプロセス速度の向上につながる。
【0222】
図9は、パターニングされた基材の透過および回折能力を構造幅の関数としてグラフ表示したものである。光の回折角は、3つの異なる構造幅を有する構造の波長の関数として示されている。入射光の波長が構造の幅より長い場合、光は完全に透過される。構造幅以下の範囲の波長では回折が発生する。回折角は、図から求めることができる。
【0223】
図10は、マイクロメートル範囲の寸法を有する、逆円錐からなる、生成された周期的ドット構造を有する、本発明による方法によって製造されたパターニングされた基材(5)を視覚化している。マイクロメートル範囲のこの周期的ドット構造にサブマイクロメートル範囲の周期的な波形構造が重ね合わされるが、これも本明細書に記載の本発明による方法によって、1つの製造ステップで製造することができる。
【手続補正書】
【提出日】2024-02-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材の構造化の分野に関し、特に、レーザ干渉構造化によって、透明基材の表面および内部を構造化するための装置および方法に関する。更に、本発明は、周期的ドット構造を含む、反射防止性を有する構造化基材(本明細書では、例示的に平坦な基材、特にいわゆる反射防止グレージング)に関する。
【背景技術】
【0002】
表面を処理する方法は従来技術から知られており、この方法により、透明基材、特にガラスだけでなく固体ポリマーの表面を、基材の反射を低減できるように改質することができる。一般的なプロセスでは、反射防止処理(いわゆる構造または層構築プロセス)を施すべき基材の表面に追加の材料を適用するが、ここで、様々な材料の屈折率は異なる。
【0003】
例えば、特許文献1では、可能な層構築プロセスが説明されている。このプロセスでは、最初に、少なくとも2つの化学出発原料からコーティング溶液が生成され、次に、コーティング溶液のpH値を低下させ、任意に、更なる溶液で希釈してから、コーティング溶液を所望の基材に適用する。このタイプのコーティングプロセスでは、環境に悪影響を与えることが多く、廃棄や取り扱いに費用と時間がかかる様々な化学物質が使用される。
【0004】
このタイプのプロセスは、弱め合う干渉による反射率の低下に基づいている。ここで、コーティングに使用される材料の屈折率は、コーティングされる基材および基材の周囲の媒体(通常は空気)に適合しなければならない。全てのコーティング材料を同じ方法で処理できるわけではないため、このような手順では、異なる基材をコーティングするために異なるプロセスを使用する必要がある。
【0005】
従って、特許文献2には、基材にポリマーフィルムを適用することによって、基材上にいわゆるモスアイ構造を化学的に生成するプロセスが説明されている。このタイプの構造は、モスアイの原理に基づいてモデル化されており、その表面上には、入射光の波長よりも小さい寸法のナノ構造が規則的に配置されている。これにより、基材の周囲の媒体と基材自体との間の移行部に段階的な屈折率を有する層が作製され、これにより反射が大幅に低減される。
【0006】
この方法で生成されたフィルムは、反射の低減がコーティングに使用される材料の屈折率に依存しないため、コーティングされる基材とは独立して使用することができる。しかしながら、このコーティング方法は、依然として化学物質に基づいており、すでに前述した欠点を有する。
【0007】
更に、この方法で生成されたコーティングは、機械的ストレス(摩耗、衝撃等)の影響を受けやすく、それ故急速に劣化する。従って、しばらくすると、コーティングが基材から剥がれるおよび/または反射低減性を失うことがしばしば生じる。
【0008】
特許文献3には、基材の表面を、レーザを使用して処理して、反射防止性を付与する反射防止構造の製造方法が説明されている。基材は集束レーザビームで改質され、それによって、レーザ誘起周期表面構造(LIPSS)を使用した自己組織化プロセスを通じてナノ構造を生成する。準周期的な繰り返し構造は、レーザフルエンスを適切に選択し、基材表面上でビーム焦点を重ね合わせることによって生成することができる。これにより、反射防止表面が結果的に得られる。化学薬品は必要なく、この方法で幅広い基材を処理することができる。
【0009】
しかしながら、この方法は、LIPSSの基礎となる自己組織化プロセスにより連続的に機能し、時間を要する。LIPSSは近くの表面領域を繰り返し処理することによってのみ形成される故、一度のステップで広い領域にわたってナノ構造を作製することは不可能である。更に、構造の規則性は、特定のプロセスや環境条件に依存するため、表面状態の偏差(材質の僅かな違い、微細な汚れ)によって結果が変化する可能性がある。
【0010】
特許文献4には、薄膜を直接構造化する方法が開示されており、この方法では、干渉レーザビームを用いて金属薄膜に周期的構造を生成することができる。このプロセスでは、いくつかのパルスレーザビームが薄膜に照射され、それによってこれらが干渉領域で干渉し、それにより、薄膜の材料が強度の高い領域で蒸発する。このプロセスは、レーザビームの強度を調整したり、フィルムをz方向(即ち、入射レーザビームの方向または入射レーザビームから離れる方向)にシフトしたりすることによって、結果として得られる構造を変更することができるという点によって特徴付けられる。追加の光学素子を使用してレーザビーム間に位相シフトを生じさせ、これにより干渉パターンに影響を与える。入射レーザビームは集束素子によって薄膜の表面上に集束され、それによってサイズが縮小され、その結果、薄膜の材料が蒸発する強度の高い領域が生じる。
【0011】
このプロセスでは、入射レーザビームの強度を変更する方法が必要である。これは、特定のレーザ放射源を指定することによって、またはレーザビームの強度を制御するユニットを使用することによって、実行できる。強度は、薄膜材料の蒸発閾値に応じて設定する必要がある。従って、異なる材料に対して異なるレーザ放射源を使用しなければならないか、または強度制御のための更なる素子が必要となる。光学素子をシフトしても、結果として生じる干渉パターンを制御することはできない。蒸発閾値の高い材料を処理する場合、レーザビームの光路内の光学素子が損傷することも考えられる。
【0012】
特許文献5では、焦点に可変周期性を有する干渉パターンを生成するように設計された干渉法のための装置が開示されており、この装置は、入射レーザビームを2つのレーザサブビームに分割し、レーザサブビームのうちの少なくとも一方を偏向させる、可動ビームスプリッタ素子および可動リフレクタを備え、ここで、周期性は、ビームスプリッタ素子およびリフレクタを移動させることによって変更することができる。ビームスプリッタ素子およびリフレクタは、電動プラットフォームによって移動する。
【0013】
この装置は、生成される干渉パターンの周期性に影響を与えるビーム整形が2つの光学素子、即ちビームスプリッタ素子およびリフレクタを移動することによってのみ実現できるため、複雑かつ摩耗しやすい構造を有する。更に、ビームスプリッタ素子とリフレクタとの間の距離は固定されており、電動プラットフォーム上にそれらを配置するにはスペースが必要である。
【0014】
直接レーザ干渉パターニングの方法は、科学出版物から公知である(非特許文献1)。しかしながら、これらの方法では、生成された構造を制御するのに、光路内の複数の光学素子の複雑な修正および再調整が必要である。所望の構造幅に対する様々な要件で基材を高スループットで構造化する産業用途では、光路内で光学素子を定期的に移動および調整する必要があるため、プロセスの柔軟性がより低下し、光学素子を新たに調整した結果として、使用するたびに光学素子がより大きな摩耗および損傷のリスクに曝されることになる。
【0015】
更に、直接レーザ干渉構造化によって生成できる最小構造寸法は、マイクロメートル範囲に制限される。出版物に記載されているように、生成可能な最小寸法は、場合によっては、可視スペクトルの放射線の波長よりも大幅に大きい範囲内にある。この方法で製造された反射防止構造は、特に短波長の光に対して望ましくない回折パターンを示す可能性があり、これらの波長範囲での反射を防止したり、可視光の全スペクトルからの入射光線の透過を確実としたりするには適さない。
【0016】
別の出版物(非特許文献2)では、基材上に干渉パターンを生成するための光学セットアップにおけるガウスプロファイルおよびトップハットプロファイルのレーザビームの使用が開示されており、光学セットアップは、レーザ光源、第1の偏向素子、ビーム整形素子、ビームスプリッタ素子、更なる偏向素子、および集束素子を備える。干渉パターンの周期性は、光学素子を相互に移動させることによって、特に、レーザ(サブ)ビームの光路内で更なる偏向素子を移動させることによって、調整することができる。
【0017】
ここでは、干渉パターンを生成するのに多数の光学素子が必要であり、複雑かつ摩耗しやすいセットアップが必要となる。更に、生成可能な構造周期は、最小6.7μmに制限される。
【0018】
更に、レーザパターンスタンプを使用して階層的マイクロテクスチャを作製する方法が知られており(非特許文献3)、レーザパターンスタンプは、直接レーザ書き込み(DLW)および直接レーザ干渉パターニング(DLIP)を使用して作製される。固定光学セットアップを使用し、干渉パターン形成のために3.1μmの所定の構造幅を生成した。このようにして生成された低マイクロメートル範囲の寸法を有する干渉パターニングは、直接レーザ書き込みによって生成されたレーザパターニングに重ね合わせられる。ここでは、最大強度の領域にある基材上に構造を、特に円錐形の構造を形成するために、レーザビームが材料上に直接照射される。ここで、構造の直径は、通常、約110μmであり、これは、干渉構造化によって生成される構造周期の倍数である。この2つの構造を重ね合わせることによって基材内に形成される構造を階層構造と呼ぶ。
【0019】
しかしながら、この与えられた方法は、構造化プロセスがいくつかのプロセスステップ(最初にDLW、次にDLIPを使用した連続的な構造化)で構成され、かつ同じセットアップを使用して作製することができる最小構造寸法が指定された寸法(3.1μm)に制限される故に、広範囲にわたる基材上に反射防止コーティングを生成するには適していない。従って、図示した装置および説明した方法は、1つの構造化ステップ内で、可視光の全スペクトルの電磁波に対して反射防止性を有する可変構造幅を有する、均一な反射防止構造を製造するには適していない。
【0020】
特許文献6は、入射レーザビームを2つより多くのセクション(「サブビーム」)に分割することができ、薄いフォトレジスト層に三次元表面構造を生成することができる、干渉リソグラフィシステムを開示しており、この表面構造は、円筒形状またはカップ形状の穴として形成することができる。しかしながら、特許明細書には、そのような構造化基材が反射防止性を有すること、または反射防止性を生成するためにそのような構造をどのように設計しなければならないかについては開示されていない。
【0021】
特許文献7は、広範囲にわたる試料の干渉構造化のための装置および方法を開示している。この装置は、レーザビームを試料体積内に集束させる集束装置を備える。レーザビームは、第1の空間方向に平行でない更なる空間方向に集束させることもできる。この装置は、集束装置の後の光路内に配置され、レーザビームを拡大する拡大分離装置を含む。レーザビームを2つの部分ビームに分割するのにのみ適した、1つのみのこのようなビームスプリッタが拡大分割装置の一部をなしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】米国特許第8557877(B2)号明細書
【特許文献2】米国特許第10459125(B2)号明細書
【特許文献3】国際公開第2019/166836(A1)号パンフレット
【特許文献4】欧州特許出願公開第2431120(A1)号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2004/0227927(A1)号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2001/035991(A1)号明細書
【特許文献7】欧州特許第2596899(B1)号明細書
【特許文献8】欧州特許第2663892号明細書
【特許文献9】独国特許出願公開第102010005774(A1)号明細書
【非特許文献】
【0023】
【非特許文献1】Microfabrication and Surface Functionalization of Soda Lime Glass through Direct Laser Interference Patterning, Soldera et al., Nanomaterials 2021
【非特許文献2】Improving throughput and microstructure uniformity in Direct Laser Interference Patterning utilizing top-hat shaped beams, El-Khoury et al., Research Square 2021
【非特許文献3】Hierarchical Microtextures Embossed on PET from Laser-Patterned Stamps, Bouchard et al., Materials 2021
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
従って、本発明の目的は、環境に有害な化学物質を使用せずに、材料に反射防止性を与える、表面の、例えば透明な表面および/または広範囲にわたる表面の直接パターニングを行うことが可能な装置および方法を提供することである。
【0025】
更に、本発明の目的は、可能な限り堅牢であり、透明基材の使用によってその有効性を損失しないパターニングを生成することである。更に、短時間のうちに広範囲にわたる試料を構築できる必要がある。
【0026】
本発明の更なる目的は、レーザ放射源の強度に依存しない、レーザ干渉によるパターニング方法を提供することである。この方法は、強度が高いパターニングされる基材上においても光学素子が損傷しないように構成されなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明は、レーザ干渉パターニングを使用して、基材、例えば広範囲にわたるおよび/または透明な基材のパターニングを可能にする装置を提供する。この装置により、マイクロメートルおよびサブマイクロメートル範囲の寸法を有する周期的ドット構造を透明基材の表面または内部に生成することができ、これにより、基材に反射防止性(透過率の増加)が与えられる。
【0028】
本目的は、本発明に従って、請求項13に記載の、基材(例示として、広範囲にわたるおよび/または透明な基材について本明細書では言及する)の直接レーザ干渉パターニングのためのレーザ干渉パターニング装置を用いて達成され、装置は、
-レーザビームを放射するためのレーザ放射源(1)と、
-レーザビームの光路(3)に配置されるビームスプリッタ素子(2)と、
-レーザの光路内でビームスプリッタ素子に続いて配置されており、サブビームが干渉領域において基材(5)の、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材の表面上または体積内で干渉できるように、サブビームが通過するように構成された集束素子(4)と、
を備え、ビームスプリッタ(2)は、光路(3)内でその光軸に沿って自由に移動可能であり、ビームスプリッタ(2)は、レーザ放射源(1)によって放射された入射レーザビームを少なくとも2つの、好ましくは少なくとも3つのサブビームに、より好ましくは少なくとも4つ、特に4~8、即ち4、5、6、7または8つのサブビームに分割するように配置される。
【0029】
特に好ましくは、ビームスプリッタ(2)は、入射レーザビームを偶数倍、即ち2、4、6または8つのサブビームに、最も好ましくは4つのサブビームに分割するように設定される。
【0030】
代替的にまたは付加的に、ビームスプリッタ(2)は、第1のビームスプリッタと、第1のビームスプリッタに連続して配置される少なくとも1つの更なるビームスプリッタとを備えるように設けることができ、第1のビームスプリッタは、入射レーザビームを少なくとも2つのサブビームに分割し、更なるビームスプリッタがサブビームの少なくとも1つの光路に配置されており、このサブビームを通過する際に少なくとも2つのサブビームに分割する。
【0031】
基材(5)、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材のレーザ干渉パターニングの場合、レーザ放射源によって放射されるレーザビームは、ビームスプリッタ素子(2)によって少なくとも3つ、好ましくは少なくとも4つのサブビームに分割される。従来技術では、ダブルビーム干渉(即ち、2つのサブビームの干渉によるパターニング)のみが知られている。しかしながら、このような2ビーム干渉は、基材上にラインパターンを生成するだけである。
【0032】
次に、サブビームは集束素子(4)によって偏向され、それにより、サブビームが干渉ピクセルとしても知られる干渉領域において、基材(5)、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材の表面上または内部で干渉する。
【0033】
これにより、マイクロメートルおよびサブマイクロメートル範囲の寸法を有する二次元の周期的ドット構造を生成することができ、その構造周期は、ビームスプリッタ素子(2)をその光軸に沿って移動させることによって自由に調整することができる。基材(5)、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材の広範囲にわたる処理が可能である。
【0034】
更に有利な実施形態を明細書および従属請求項に記載する。
【0035】
一般的な利点
本明細書で定義される装置の1つの利点は、本装置と装置の助けによって実現可能な方法とにより、基材をパターニングする際に、特に反射防止性を備えた構造を作製する際に、化学薬品の使用およびその高価な廃棄を省略できることである。更に、基材の精製も省略することができる。
【0036】
更に、幅広い基材、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材、特に透明な材料をこの装置で処理することができる。このプロセスは、屈折率や特定のコーティング材料の基材への接着力に依存しないため、このプロセスは従来の化学プロセスよりもより柔軟である。
【0037】
特許文献3と比較して、本方法による処理時間は、干渉領域内の少なくとも3つ、好ましくは少なくとも4つの入射サブビームの干渉によって構造の周期性が確保されるため、大幅に短縮され、これは、より時間のかかる自己組織化プロセスの結果とは異なる。従来の方法に勝る別の利点は、生成されるマイクロ/ナノ構造の形状(構造設計、幾何学的形状)を制御できることである。構造の幾何学的形状は、干渉する(サブ)ビームの数、その偏光、およびプロセスパラメータの設定によって制御でき、それによって目的の方法で反射防止性に影響を与える。
【0038】
体積内で、即ち基材、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材の内部で、特に透明な材料でパターニングが実施された場合、結果として得られる構造(即ち、パターニングされた基材の周期的ドット構造)は、従来のコーティングよりも衝撃や摩耗に対してより感度が低くなる。本発明者らは、材料内部(即ち、表面の下)の構造(本明細書ではテクスチャとも呼ばれる)が必ずしも反射防止性を生み出すわけではないことを発見した。しかしながら、材料内部のテクスチャは、製品保護、光学データストレージ、装飾等の他の用途にとって興味深いものである。
【0039】
本明細書に開示される装置のセットアップまたは光学部品の配置により、基材を最大0.9m2/分までの、特に0.01~0.9m2/分の範囲の、好ましくは0.05~0.9m2/分の範囲の、最も好ましくは0.1~0.9m2/分の範囲の非常に高いパターニング速度でパターニングすることができることが特に有利である。これは、光学素子の好ましい選択によって、少なくとも3つのサブビームが重なり合う領域を広げることができ、それによって、1つの処理ステップで広い面積を照射できるという事実によって確実とされる。直接レーザ書き込み等の当業者に知られている方法とは対照的に、高解像度のフィーチャを生成するのに強い集束は必要ない。
【0040】
このようなセットアップにより、有利なことに、基材の表面を迅速に走査することが可能となり、それにより、最大3m2/分の、特に0.05~2m2/分の範囲の、好ましくは0.1~1m2/分の範囲の、最も好ましくは0.1~0.9m2/分の範囲の高いパターニング速度を達成することができる。正確なパターニング速度は、特に、利用可能なレーザ出力に依存する。従って、より高いレーザ出力を備えた将来のテクノロジーでは、更に高いパターニング速度を達成できる可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図2】サブビームを平行化するための偏向素子(6)を含む、本発明による装置の概略斜視図である。
【
図3】光路(3)の光軸に対するサブビームの角度を広げるための偏向素子(7)を含む、本発明による装置の概略斜視図である。
【
図4A】部分ビームを集束素子(4)上に偏向させる、平面の反射面を有する光学素子(6)を含む、本発明による装置の概略斜視図である。
【
図4B】ビーム整形用の光学素子としてガルボミラー(9)を備え、これによりパターニングプロセス中にパターニングされる基材の静止位置決めを可能にする、本発明による装置の概略斜視図である。
【
図5A】装置がサブビームの位相経過を互いに対してシフトさせる偏光素子(8)を含み、ビームスプリッタ素子(2)がレーザ放射源(1)の近くの光路(3)内に配置されている、本発明による装置の概略斜視図である。
【
図5B】装置がサブビームの位相経過を互いに対してシフトさせる偏光素子(8)を含み、ビームスプリッタ素子(2)が光路(3)内の偏向素子(7)の近くに配置されている、本発明による装置の概略斜視図である。
【
図6】幅Dを有する基材の表面または内部に生じる干渉ピクセルと、基材の表面上または内部の個々の干渉ピクセルの分布との概略図であり、干渉ピクセルがピクセル密度Pdで互いに対してシフトされている図である。
【
図7】マイクロメートルおよびサブマイクロメートル範囲の寸法を有する、逆円錐からなる、生成された周期的ドット構造を備えたパターニングされた基材(5)と、象徴的に、生成された構造の構造周期よりも大きな波長を有する入射電磁波の透過と、生成された構造の範囲内またはそれより小さい波長を有する入射電磁波の回折と、の概略斜視図である。
【
図8】光学素子として、サブビームを集束素子(4)上に偏向させる、平面の反射面を有するガルボミラー(9)と、ポリゴンホイール(91)とを含む、本発明による装置の概略斜視図である。
【
図9】3つの異なる構造幅を持つ、パターニングされた基材の入射光の波長に対する入射光の回折角のグラフである。
【
図10】マイクロメートル範囲の寸法を有しており、逆円錐からなる、その上にサブマイクロメートル範囲の周期的な波形構造が重ね合わされた、生成された周期的ドット構造を有するパターニングされた基材(5)の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明による装置は、特に基材上またはこの基材の体積内(即ち内部)に、いわゆる反射防止グレージングを作製するための、マイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の周期的ドット構造を含む、パターニングされた基材を製造するために、基材、例えば広範囲にわたるおよび/または透明な基材をレーザ干渉パターニングするための構造を説明する。
【0043】
基材
本発明の目的上、基材という用語は、その表面がいくつかの空間方向に広がりを有する基材を指す。基材、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材は、平面基材または湾曲基材、例えば放物線状基材であることができる。本発明の目的上、広範囲にわたるとは、基材、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材、例えばx方向およびy方向への平面基材の範囲、またはその曲率半径に沿った湾曲基材の範囲が、少なくとも3つのサブビームが互いに干渉する領域の範囲よりも大きいことを意味する。
【0044】
好ましい実施形態では、基材は、x方向およびy方向への広がりまたは曲率半径に沿った広がりが、少なくとも3つのサブビームが互いに干渉する領域の広がり以下である基材である。基材の均一なパターニングは、1つの処理ステップ(レーザパルス中)で可能である。
【0045】
特に好ましい実施形態では、基材は、x方向およびy方向への広がりまたは曲率半径に沿った広がりが、少なくとも3つのサブビームが互いに干渉する領域の広がりよりも大きい広範囲にわたる基材である。基材をxおよびy平面内で移動させることにより、複数の処理ステップ(複数のレーザパルスを使用)で基材を広範囲にわたり均一に構造化することが可能である。基材は、回転または並進運動によって、または回転と並進運動との重ね合わせによって移動させることができる。
【0046】
本発明の目的上、基材という用語は、反射面を有する固体材料を指す。このような材料の例としては、金属、ポリマー、セラミックおよびガラス等が挙げられる。
【0047】
本明細書で定義される周期的ドット構造を有する、特に反射防止性を備えた、本発明によるレーザ干渉パターニング方法を適用することによって処理できる基材に関しては、透明および半透明だけでなく不透明の材料等、幅広い選択肢があるが、これらは本発明の範囲内にある。
【0048】
特に好ましい実施形態では、広範囲にわたる基材は透明な材料を含む。
【0049】
一般に、透明材料は、用途に応じて異なるが、可視光の透過率が高い材料である。透明材料の透過率は、可視光領域(波長380nm~780nm)においてスペクトルに偏りがなく、70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上である。
【0050】
基材の幾何学的形状は変更可能である。従って、例えば平面である、湾曲しているまたは凹凸な表面を有する広範ににわたる基材および/またはチューブあるいは繊維のような広範囲にわたらない基材を使用することもできる。
【0051】
好ましくは、基材は、広範囲にわたるおよび/または透明な材料である。
【0052】
基材は、例えば太陽光フィルムまたはディスプレイに使用されるような、可撓性ガラスフィルム、(人工)皮革、金属箔、薄いシートまたはプラスチックフィルム等の可撓性および/または湾曲可能な基材として設計することができる。
【0053】
特に好ましい実施形態では、広範囲にわたる基材は透明な材料を含み、好ましくは、基材は透明な材料からなる。材料または基材は、1nm~1mの間の電磁放射のスペクトルの少なくとも副範囲に対して高い透過率を有する場合、本発明の意味において透明である。そのような部分範囲は、例えば、380nm~780nmの可視光の範囲、または780nm~5,000nmの、赤外光も含む範囲、または赤外光(熱放射)の範囲またはマイクロ波放射線の範囲の電磁放射、特に1mm~10mの波長範囲のレーダー放射線、または所望の用途、特にレーザ源の波長に従って適合された別の部分範囲でもよい。このような副範囲は、好ましくは、波長の少なくとも10%または50%の幅を有し、これが副範囲の下限を形成する。本発明の目的上、部分範囲における高い透過率は、部分範囲における各波長に対して、即ち、部分範囲内のスペクトル全体に対して少なくとも50%または好ましくは少なくとも70%または特に好ましくは少なくとも80%または少なくとも90%の透過率である。しかしながら、透明基材は、可視光範囲内の特定の波長範囲に対して選択的に高い透過率を有する基材として説明することもでき、例えば、基材は、500nm~800nmの範囲の波長を有する電磁放射に対して高い透過率を有する。透過率は、透過する波長範囲にわたって変化することができ、例えば、波長380nm~500nmの範囲では70%以上、500nm~750nmの範囲では90%以上である。例えば、基材は、380nm~780nmの波長の放射線を透過する。特に高い透過率を有するが、例えば、450nm~690nmの波長では透過率は90%であり、これより短いおよび長い波長での透過率は、例えば、70%である。
【0054】
透明材料の半透明性は、基材の体積内/内部の平面のレーザ干渉加工が可能であるという利点も提供する。
【0055】
本発明の目的において、透明材料には、透明材料、特にガラス(例えば、ホウケイ酸ガラス、石英ガラス、アルカリ土類アルカリケイ酸ガラス(例えば、ソーダ石灰ガラス)、アルミノケイ酸ガラス、金属ガラス)が含まれ、また、固体ポリマー(例えば、Makrolon(登録商標)およびApec(登録商標)のようなポリカーボネート、Makroblend(登録商標)およびBayblen(登録商標)のようなポリカーボネートブレンド、Plexiglas(登録商標)のようなポリメチルメタクリレート、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン)および透明セラミック(例えば、Mg-Alスピネルのようなスピネルセラミックス、ALON、酸化アルミニウム、イットリウムアルミニウムガーネット、酸化イットリウムまたは酸化ジルコニウム)またはそれらの混合物が含まれる。ポリカーボネートは、ホモポリカーボネート、コポリカーボネート、および熱可塑性ポリエステルカーボネートである。
【0056】
特に好ましい実施形態によれば、透明材料は、(本明細書で定義されるような)ガラスまたは(本明細書で定義されるような)固体ポリマーを含む。
【0057】
ガラスのケイ酸塩骨格は、170nm~5000nmの範囲の波長、即ち、380nm~780nmの範囲の可視光を含み、赤外線を含む波長範囲の透過窓を提供することが好ましい。
【0058】
あるいは、基材、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材は、不透明な材料を含むこともできる。不透明材料をパターニングすることによって、本明細書で定義されるマイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の周期的ドット構造が、不透明材料の表面上に作製される。結果として、反射防止性を有する構造を不透明材料上に生成することができ、それにより、不透明基材の表面の元の粗さ(即ち、本発明によるパターニングの適用前)は、巨視的には変化しないか、またはほとんど変化しない状態を維持し、これにより、不透明材料の反射性表面、例えば金属表面の反射を効果的に低減する。適切な不透明材料には、金属(例えば、シリコン、アルミニウム、銅、金)、金属合金(例えば、鋼、真鍮)、セラミック材料(例えば、酸化ジルコニウム、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム)およびポリマー(PEEK、ポリエーテルエーテルケトン、テフロン等のポリフッ素化炭化水素)並びにそれらの組み合わせが含まれる。例えば、そのようなパターニングされた基材は、別の基材上に構造を間接的に適用または生成するためのネガ型として適している。パターニングされた基材は、例えば、任意の数の他の基材上にある基材上に作製された構造とは逆の構造を作製するための「スタンプ」として使用することができる。更に、そのようなパターニングされた基材は、電磁放射の回折の増加を示し、基材のパターニングにより、基材の指向性反射の減少をもたらす。構造の寸法により、これらの構造上で散乱プロセスが発生し、これは基材のレベルで、特にその表面のうちの1つでの干渉パターニングによってもたらされる。
【0059】
ドット構造/干渉パターン/反射防止グレージング
本発明は、反射防止性を有するパターニングされた基材(5)も含み、パターニングされた基材は、マイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の周期的ドット構造を含み、周期的ドット構造は逆円錐から形成され、逆円錐は、それぞれの鞍点または高さの中心(円形底面)に対して、50nm~50μmの範囲、好ましくは50nm~20μmの範囲、より好ましくは100nm~4μmの範囲、より好ましくは100nm~4μmの範囲の距離で周期的に離間している。
【0060】
本発明の目的上、逆円錐という用語は、円形、楕円形、三角形または実質的に長方形の底面、特に円形の底面を有する構造を指し、これにより、基材内に垂直方向に円錐形に収束し、鞍点に丸みを帯びた円錐形の先端を有する。逆円錐は、パターニングプロセス中、即ち、高強度領域が基材に当たる結果としてレーザパルスが構造化される基材に当たるときに形成され、それによって、基材上または基材内の逆円錐間の領域は、強度がゼロの弱め合う干渉により、理想的には本質的に構造化されない状態を維持するようにする。その結果として、レーザ(サブ)ビームを基材上または基材内に集束させることによって、強度分布が指定するもののネガが形成される。逆円錐の記載された形状は、基材の表面上に配置されたドット構造を指す。体積内の平面内または平面に沿った点構造の配置により、対称的な形状が得られる。本発明の目的上、レーザ干渉構造化によって体積内に生成されるドット構造は、逆円錐とも呼ばれる。
【0061】
楕円形の底面を有する円錐は、例えば、集束されたレーザ(サブ)ビームの入射角に対して基材を傾けることによって、干渉体積(即ち、体積ピクセル、ボクセル、サブビームが基材の表面上または体積内に集束され、それにより、サブビームが干渉領域において干渉する角度)を基材に対して傾けることによって、例えば装置を基材に対して傾けることによって、またはそれらの組み合わせによって、生成することができる。好ましい実施形態によれば、楕円形の底面を有する円錐は、集束されたレーザ(サブ)ビームの入射角に関して基材を傾けることによって生成される。
【0062】
本発明の目的上、構造の周期をΛと呼ぶ。一般に、干渉レーザ(サブ)ビームの波長、干渉レーザ(サブ)ビームの入射角、および干渉レーザ(サブ)ビームの数に依存する。
【0063】
本発明の目的上、反射防止性(本明細書では反射防止グレージングと称する)を有するパターニングされた基材は、マイクロメートルおよびサブマイクロメートルの範囲の、即ち50nm~50μmの範囲の構造幅を有する周期的ドット構造を有する基材、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材を表す。これらの反射防止性は、生成された構造の寸法、即ち構造周期および個々の円錐の寸法が可視光の波長よりも小さい範囲にある場合に達成される。
【0064】
物理学では、反射とは、異なる屈折率を有する物質の界面で電磁波が跳ね返ることである。透明基材における光の反射角および透過角は、一般に、以下のようにスネリウスの屈折の法則を使用して計算することができる。
【0065】
[数1]
n1sinδ1=n2sinδ2
ここで、n1およびn2は空気および基材の屈折率を示し、δ1およびδ2はそれぞれ入射ビームおよび反射ビームの角度を示す。
【0066】
基材、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材の表面上または体積内の周期的ドット構造により、基材の屈折率は、段階的に屈折率が生じるように変化する。その結果、周期的ドット構造の構造周期Λよりも長い波長を有する光がますます透過するようになる。周期的ドット構造以下の波長を有する光は、表面で回折される。
【0067】
本発明の文脈において、反射防止性とは、その寸法が入射電磁波の範囲内にあり、それにより、反射が「邪魔なもの」として知覚されないように入射波が観察者から回折されるような周期的ドット構造を指す。更に、本発明の意味における反射防止性という用語には、第1の媒体、例えば空気と基材、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材との間の境界における屈折率が段階的であり、入射電磁波について、ある媒体から別の媒体への明確な移行はなく、入射電磁波がますます伝達されるようになることも含まれる。
【0068】
本発明の目的上、反射防止性を有するパターニングされた基材は、周期的ドット構造を含む基材も指し、周期的ドット構造は重ね合わせられた構造からなり、少なくとも1つの構造は、サブマイクロメートル範囲の寸法を有し、少なくとも1つの構造は、特にレーザビームを干渉させることによって生成され得る(本明細書で定義されるような)逆円錐から形成される。
【0069】
例えば、周期的ドット構造、特に重ね合わせた構造からなる周期的ドット構造は、干渉レーザビームが使用される場合、適宜パラメータ(レーザ放射源、光学素子の配置、パルスの持続時間および強度、干渉ピクセルに当たるレーザパルスの数の選択)を構成することによって、それぞれの用途の要件に最適に適合させることができる。
【0070】
例えば、この方法で生成された反射防止性を備えた構造は、マイクロメートル範囲の平均寸法、特にそれぞれの鞍点または高さの中心に対する平均距離が1μm~50μmである逆円錐で構成される周期的ドット構造である。更なる構造がこの周期的ドット構造上に重ね合わされ、重ね合わされた構造の平均寸法は、好ましくは、レーザ波長λ、またはλ/2、特に100nm~1000nm、好ましくは100nm~800nm、特に好ましくは100nm~600nm、特に100nm~400nmの範囲である。本発明の目的上、そのような構造は階層構造とも呼ばれる。
【0071】
特に、重ね合わせられた構造は、準周期的な波形構造を有し、重ね合わせられた構造の領域における基材表面上の材料は、その周期性がサブマイクロメートル範囲の、特に好ましくは100nm~1000nmの範囲、好ましくは100nm~800nmの範囲、特に好ましくは100nm~600nm、特に100nm~400nmの範囲の一連の波山および波谷を有する。
【0072】
波形構造は、パターニングプロセス中に形成される。即ち、高強度領域の発生の結果として、レーザパルスが構造化すべき基材に当たるとき、高強度領域のレーザパルスによる基材材料の少なくとも部分的な溶融により励起される自己組織化プロセスによって、パターニングが生じる。特に、レーザ誘起周期表面構造(LIPSS)を利用することによって波形構造が生成され、これらの表面構造の発生は、干渉レーザビームによる周期的ドット構造の生成と連動している。
【0073】
あるいは、本発明によるマイクロメートル範囲の平均寸法を有する逆円錐のドット構造に重ね合わせられる波形構造は、その後に更なる干渉ピクセルを適用することによって、(事前に構造化された)基材の表面に適用することもでき、それによって、更なる干渉ピクセルにより生成された構造は、更なる干渉ピクセルにより形成された円錐に対して、100nm~1,000nmの範囲、好ましくは100nm~800nmの範囲、特に好ましくは100nm~600nmの範囲、例えば200nm~500nmの範囲、特に100nm~400nmの範囲の統計的平均範囲の構造周期を有する。
【0074】
有利なことに、例えば、レーザビームを干渉させ、レーザ誘起の周期的表面構造を使用することによって反射防止性を備えた基材の広範囲にわたるパターニングが、長い処理時間や連続して実行可能な多数のプロセスステップを必要とすることなく可能となる。従って、本発明は、反射防止性を有する基材の分野と、自己洗浄性、疎水性または超疎水性の分野との両方の技術分野で、並びに着氷防止性および/または防曇性を備える親水性または超親水性の基材で使用可能な階層構造を同時に生成することを可能にする。
【0075】
本発明の好ましい実施形態によれば、例えば、レーザ干渉パターニングによる基材の表面上または体積内への第1、第2および/または第3の干渉ピクセルの干渉ピクセル(または基材上または基材内に干渉ピクセルを生成する干渉体積)の適用は、基材の表面に対して45°~90°(垂直)、好ましくは60°~90°の角度、特に好ましくは75°~90°の角度で、例えば90°の/までの角度範囲にある角度で、いくつかのレーザ(サブ)ビームで基材を照射することによって行われる。それぞれのケースにおいて、基材の光軸に対して76°、77°、78°、79°、80°、81°、82°、83°、84°、85°、86°、87°、88°、89°、90°から/までの角度範囲である。干渉ピクセルは、表面に対して垂直線に沿って本質的に垂直に、即ち、90°±1°の角度で基材の表面に適用されることが特に好ましい。
【0076】
干渉領域または干渉ピクセル
本発明による装置は、基材上にマイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の周期的ドット構造を生成するように設計されており、周期的ドット構造は、干渉領域で干渉するレーザビームによって生成することができる。
【0077】
干渉領域は、その空間範囲内で放射線強度の最大値と最小値とが交互に発生するという特徴がある。これらの最大値および最小値は、周期的、即ち反復的な規則性で発生し、従って、基材に転写可能な干渉パターンを形成する。このパターンが認識できる干渉領域を干渉ピクセルとも呼ぶ。干渉ピクセルの範囲は通常円形であるが、他の幾何学的範囲、例えば、楕円形または線形の範囲も考えられる。干渉パターンが認識できる干渉領域は、処理される基材の強度閾値によって物理的に定義される。強度閾値は、基材の材料が入射レーザビームと相互作用するエネルギーを表し、それにより、例えば、材料の溶解または除去等、材料内で変化が生じる。ガウス放射プロファイルを有するレーザ放射源の場合、干渉パターンの最大値で発生する干渉レーザビームのエネルギーは、干渉領域の端縁に向かって減少するため、基材に適用される干渉ピクセルは、干渉領域よりも小さく、正確なサイズは、レーザ放射源および基材の特性によって決定される。
【0078】
干渉ピクセルという用語、例えば、第1、第2、第3および/または更なる干渉ピクセルは、本発明の意味において、基材の表面上の少なくとも3つの逆円錐、好ましくは少なくとも7つの逆円錐、最も好ましくは少なくとも19の逆円錐の周期的パターンまたはグリッドを指し、これらは、干渉ピクセル内に形成される(
図6参照)。好ましくは、周期的パターンまたはグレーティングは、少なくとも3つ、特に好ましくは少なくとも4つのレーザ(サブ)ビームを重ね合わせることによって、これらのレーザ(サブ)ビームを基材の表面上または内部に集束させる(束ねる)結果として生成され、これにより、サブビームが基材の表面上または内部で建設的および破壊的に干渉する。
【0079】
本発明の好ましい実施形態によれば、構造化された基材は、1つのタイプの単一の干渉ピクセル、例えば第1の干渉ピクセル、第2の干渉ピクセルおよび/または第3の干渉ピクセルを単に含むのではなく、むしろ1つのタイプの複数の干渉ピクセルを含み、例えば、複数の第1の干渉ピクセルおよび/または複数の第2の干渉ピクセルは、平面内で少なくとも1つの空間方向(x方向および/またはy方向)に、特に好ましくは互いに反復的にオフセットして隣接する、2つの空間方向(2次元方向)に、それぞれ互いに独立して配置される。例えば、第1のステップでは、少なくとも1つの空間方向に配置され、互いに対して反復的にオフセットされた、平面内の少なくとも複数の第1の干渉ピクセルが、構造化される基材の表面上または体積内の平面に適用されてもよく(例えば、
図6参照)、第2のステップでは、平面内の複数の第2の干渉ピクセルが、少なくとも同じ空間方向に適用され、互いに対して反復的にオフセットされ、これらの複数の第1の干渉ピクセル上に重ね合わされる。それにも関わらず、これらのいくつかの第1の干渉ピクセルといくつかの第2の干渉ピクセルとが交互に、(即ち、第1の干渉ピクセル、次に第2の干渉ピクセル、そして再び最初から)平面に適用されるようにしてもよい。
【0080】
いくつかの第1の干渉ピクセルおよびいくつかの第2の干渉ピクセルを配置することによって、特定の特性、特に反射防止性を広い領域にわたって、特に基材の表面によって広がる基材の平面にわたって、または基材の体積内で達成/適用することができる。いくつかの第1の干渉ピクセルおよびいくつかの第2の干渉ピクセルによるそのようなパターニングは、例えば、ポリゴンスキャナで基材を走査することによって達成することができる。
【0081】
好ましくは、1つのタイプの干渉ピクセル内の周期的ドット構造は、円錐断面の変動係数(標準偏差を平均値で割った値)が15%以下、より好ましくは10%以下、更により好ましくは5%以下である。これにより、プロセスに起因して偏差がより大きく、生成される構造周期のマッピングの精度がより低くなる、基材をパターニング/コーティングするための従来の方法(例えば、エッチング、粒子ブラスト、ポリマーコーティング)と比較して、本発明に従ってパターニングされた基材の検出可能性もより良好になる。
【0082】
レーザ放射源
本発明による装置は、レーザビームを放射するレーザ放射源(1)を有する。放射されたレーザビームの放射プロファイルは、ガウスプロファイルまたはトップハットプロファイルのいずれかに対応し、特に好ましくはトップハットプロファイルに対応する。トップハットプロファイルは、基材表面をパターニングまたはカバーしてより均一に構造化するのに役立ち、必要に応じて、より速いパターニング速度を可能にする。
【0083】
特に好ましい実施形態では、レーザ放射源(1)は、パルスレーザビームを発生する放射源である。パルスレーザ放射源のパルス幅は、例えば、10フェムト秒~100ナノ秒、特に50フェムト秒~10ナノ秒、最も好ましくは50フェムト秒~100ピコ秒未満の範囲である。
【0084】
特に明記されていない限り、レーザビームまたはサブビームという用語は、幾何光学の理想化されたビームを指すのではなく、限りなく小さいビーム断面を有しないが、拡張されたビーム断面(ガウス分布プロファイルまたは固有のトップハットビーム)を有するレーザビーム等の実際の光ビームを指す。
【0085】
トップハットプロファイルまたはトップハット強度分布は、少なくとも1つの方向に関して、本質的に長方形関数(rect(x))によって説明可能な強度分布を指す。パーセンテージ範囲または傾斜エッジにおける長方形関数からの偏差を示す実際の強度分布は、トップハット分布またはトップハットプロファイルとも呼ばれる。トップハットプロファイルを生成するための方法および装置は、当業者には周知であり、例えば、特許文献8に記載されている。レーザビームの強度プロファイルを変換するための光学素子も既に知られている。例えば、回折光学および/または屈折光学を用いて、ガウス形状の強度プロファイルを有するレーザビームを、ガウス-対-TOPAG Lasertechnik GmbHのトップハットフォーカスビームシェイパー(例えば、特許文献9参照)のような、1つ以上の画定された平面内におけるトップハット形状の強度プロファイルを有するレーザビームに変換することができる。本質的に一定のエネルギーまたは出力密度により、特に良好かつ再現性のある加工結果を達成することができるため、特に50psよりも短いレーザパルスを使用する場合には、トップハット形状の強度プロファイルを有するこのようなレーザビームは、レーザ材料加工にとって特に魅力的である。
【0086】
本発明による装置に含まれるレーザ放射源(1)は、0.01~5J/cm2、特に好ましくは0.1~2J/cm2、非常に特に好ましくは0.1~0.5J/cm2の強度を有することができる。本発明による装置により、レーザ放射源の強度をある範囲内で柔軟に選択することができる。ビーム直径は、基材上、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材上での干渉パターンの生成には何の役割も果たさない。レーザの光路における光学素子の好ましい配置により、レーザビームの強度を制御するユニットは必要ない。
【0087】
レーザ放射源は、200nm~15μmの範囲の波長(例えば、10.6μm~の範囲のCO2レーザ)、最も好ましくは266nm~1,064nmの範囲の波長を放射するように構成されることが好ましい。適切なレーザ放射源には、UVレーザ光源、緑色光(532nm)を放射するレーザ放射源(155~355nm)、ダイオードレーザ(通常は800~1000nm)または近赤外線(通常は1064nm)を放射する、特に200~650nmの範囲の波長を有するレーザ放射源が含まれる。微細加工に適したレーザが当業者には知られており、例えば、HeNeレーザ、HeAgレーザ(約224nm)、NeCuレーザ(約249nm)、Nd:YAGレーザ(約355nm)、YAGレーザ(約532nm)、InGaNレーザ(約532nm)が含まれる。
【0088】
更なる実施形態によれば、本発明による装置は、第1のレーザ放射源のレーザビームまたは干渉領域においてサブビームに分割される第1のレーザ放射源のレーザビームと干渉するレーザビームを生成するように設計された少なくとも1つの更なるレーザ放射源を有する。更なるレーザ放射源は、上記と同じ特性を有するが、これらは、第1のレーザ放射源の特性と同様であっても異なっていてもよい。
【0089】
光学素子
本発明は複数の光学素子を含む。これらの素子は、主にプリズムおよびレンズである。
【0090】
これらのレンズは、屈折型または回折型であることができる。球面レンズ、非球面レンズまたは円筒レンズを使用することができる。好ましい実施形態では、円筒レンズが使用される。これにより、サブビームの重なり合う領域(本明細書では干渉ピクセルとも呼ばれる)をある空間方向に圧縮し、別の空間方向に伸ばすことが可能になる。レンズが球面/非球面ではなく円筒である場合、ビームを同時に変形することができるという利点がある。これにより、処理スポット(即ち、基材上に作製された干渉パターン)を点から干渉パターンを含む線に変形させることができる。レーザからの十分なエネルギーにより、この線の長さは、10~15mmの範囲になり得る(太さは、約100μm)。
【0091】
更に、空間光変調器(SLM)をビーム整形に使用することができる。入射光ビームの位相あるいは強度または位相および強度の空間変調にSLMを使用することは、当業者には知られている。ビーム分割に液晶オンシリコン(LCoS)SLMを使用することは文献に記載されており、本発明による装置でも考えられる。更に、SLMを使用して、サブビームを基材上に集束させることもできる。このようなSLMは、光学的、電子的または音響的に制御することができる。
【0092】
以下に説明する全ての光学素子は、レーザの光路(3)に配置される。本発明の目的上、レーザの光路とは、レーザ放射源によって放射されるレーザビームの経路と、ビームスプリッタ素子によって分割されるサブビームの経路との両方を指す。しかしながら、光路(3)の光軸は、レーザ放射源(1)によって放射されるレーザビームの光軸であるものと理解される。別段の説明がない限り、全ての光学素子は、光路(3)の光軸に対して垂直に配置される。
【0093】
ビームスプリッタ素子
ビームスプリッタ素子(2)は、レーザ放射源(1)の後ろのレーザの光路(3)に配置される。ビームスプリッタ素子(2)は、回折ビームスプリッタ素子または屈折ビームスプリッタ素子とすることができる。回折ビームスプリッタ素子は、略して回折光学素子(DOE)とも呼ばれる。本発明の目的上、回折ビームスプリッタ素子とは、異なる回折次数に従って、入射ビームを異なるビームに分割するマイクロ構造またはナノ構造、好ましくはマイクロ構造を含む光学素子を指す。本発明の目的上、屈折ビームスプリッタ素子とは、表面の屈折率差に基づいてビームを分割するビームスプリッタ素子を指し、これらは通常、プリズムまたは二重プリズムのような透明な光学素子である。好ましくは、ビームスプリッタ素子(2)は、回折光ビームスプリッタ素子である。
【0094】
好ましい実施形態によれば、ビームスプリッタ素子は、単一の光学素子、特に回折または屈折光学素子であり、入射レーザビームの細分がビームスプリッタ素子の光学特性に基づくように構成される。これにより、有利には、複数の光学素子(例えば、ミラー、プリズム等)からなる多部品ビームスプリッタ素子と比較して、より単純な光学構造を確実に実現できる。いくつかの光学素子の配置を互いに対して校正したり調整したりする必要なく、所望のビーム分割を実現することができる。単一の光学素子のみを移動させる必要があるため、光路内でのビームスプリッタ素子の可動性も容易に実現できる。更に、一体型のビームスプリッタ素子を使用することで、結果的に、磨耗しやすく交換が必要となり得るコンポーネントがより少なくなる。
【0095】
考えられる一実施形態によれば、ビームスプリッタは、結果として得られるビームの一方が他方とは異なる偏光を有する偏光ビームスプリッタとして、または偏光がビームの分割に対して何の役割も果たさない非偏光ビームスプリッタとして設計される。
【0096】
好ましい実施形態では、ビームスプリッタ素子(2)は、放射されたレーザビームを少なくとも3つ、好ましくは少なくとも4つ、特に4~8つ、即ち4つ、5つ、6つ、7つまたは8つのサブビームに分割する。
【0097】
更なる実施形態では、ビームスプリッタ素子(2)は、放射されたレーザビームを少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つ~4つ、特に4~10、即ち4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つまたは10のサブビームに分割する。
【0098】
ビームスプリッタ素子(2)は、その光軸に沿って自由に移動可能である。換言すれば、その光軸に沿って、レーザ放射源に向かってまたはレーザ放射源から遠ざかるように移動させることができる。ビームスプリッタ素子(2)の動きは、少なくとも3つのサブビームの広がりを変化させ、それにより、それらが互いに異なる距離で集束素子に当たるようにする。その結果、サブビームが基材(5)、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材に当たる角度θを変化させることができる。これにより、4つのサブビームの重ね合わせから以下の数式2に、構造周期Λがシームレスに変化する。
【0099】
[数2]
Λ=λ/√2sinθ
ここで、λは放射されるレーザビームの波長である。
【0100】
本発明の好ましい実施形態によれば、ビームスプリッタ素子は、回転素子として設計される。これにより、有利には、サブビームの偏光を変更できるようになる。
【0101】
特に好ましくは、部分ビームが基材(5)、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材に当たる角度θは、0.1°~89.9°、好ましくは5°~85°、特に好ましくは10°~60°、最も好ましくは15°~45°である。
【0102】
角度θは、光学素子間の距離、特に光学素子とビームスプリッタ素子との間の距離、特に集束素子とビームスプリッタ素子との間の距離にも依存する。広範囲にわたるおよび/または透明な基材上または基材内に生成される所望の構造周期に応じて、所望の構造周期が設定できるようにビームスプリッタ素子の位置を調整または計算することができる。装置に含まれる光学素子の位置、特にビームスプリッタ素子に対する集束素子の位置は、光学素子間の距離がより大きいかまたはより小さい場合、それに応じてビームスプリッタ素子の位置を調整できるように考慮されている。
【0103】
反射防止性を有するパターニングされた基材を生成するには、ビームスプリッタ素子(2)から偏向素子(7)までの距離を10~300nmに設定することが特に有利であることが判明した。
【0104】
一実施形態によれば、好ましくは100nm~1,000nmの範囲(または本明細書で更に定義されるような範囲)の統計的平均にある小さな構造周期を有するドット形状の構造は、干渉パターンを適用することによって直接生成することができ、ビームスプリッタ素子(2)と偏向素子(7)との間の距離は大きく、例えば、40mm~200mm、特に80mm~150mmの範囲である。
【0105】
更なる実施形態によれば、好ましくは100nm~1,000nmの範囲(または本明細書で更に定義されるような範囲)の統計的平均にある小さな構造周期を有するドット形状の構造は、LIPSSの自己組織化プロセスによって生成することができ、ビームスプリッタ素子(2)と偏向素子(7)との間の距離は小さく、例えば、1mm~100mm、特に50mm~75mm、特に好ましくは10~50mmの範囲である。このようにして、干渉パターンを直接適用することによって、サブマイクロメートル範囲のドット構造(本明細書で定義される)が重ね合わさる大きな構造周期を有する干渉パターンを生成することができる。
【0106】
本発明の好ましい実施形態によれば、装置はまた、測定装置、特にビームスプリッタ素子の位置と、必要に応じて、他の光学素子からのビームスプリッタ素子の距離とを、特に集束素子の位置を測定するように構成された、レーザまたは光センサによって動作する測定装置を備える。
【0107】
更に、本発明による装置は、信号技術の観点から測定装置に接続され、特に、ビームスプリッタ素子の測定位置を第1の所定の比較値と比較することができるように、計算ユニットに接続される制御装置を備えることができ、制御装置は、プログラミングに関して、ビームスプリッタ素子と他の光学素子との距離、特に集束素子および/または偏向素子(7)の位置が第1の所定の比較値よりも大きいまたは小さい場合、制御信号が制御装置を介して生成されるように構成され、それにより、光学素子、特にビームスプリッタ素子(2)の少なくとも1つの位置が、特に偏向素子(7)に関連したビームスプリッタ素子(2)において、所望の構造周期が基材上に生成されるように変更される。
【0108】
これに関連して、特にステップ(a)の後に、マイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲のドット構造を有する基材を製造する方法は、以下のステップ、即ち、
(i)ビームスプリッタ素子(2)の位置および、必要に応じて、ビームスプリッタ素子から更なる光学素子まで、または更なる光学素子のうちの少なくとも1つまで、特に集束素子(4)および/または偏向素子(7)の位置までの距離を測定するステップと、
(ii)ビームスプリッタ素子の測定された位置を第1の所定の基準値と比較するステップと、
(iii)ビームスプリッタ素子から他の光学素子まで、または他の光学素子のうちの少なくとも1つまで、特に集束素子(4)および/または偏向素子(7)の位置までの測定された距離が第1の所定の基準値よりも大きいまたは小さい場合、所望の構造周期が基材上に生成されるように、光学素子、特にビームスプリッタ素子(2)の(特に他の光学素子に関する、特に好ましくは偏向素子(7)に関連してビームスプリッタ素子(2)の)位置を変更するステップと、
も含むことができる。
【0109】
ビームスプリッタ素子(2)内でのレーザビームの分割は、部分反射ビームスプリッタ素子(例えば半透明ミラー)によって、または透過ビームスプリッタ素子(例えばダイクロイックプリズム)のいずれかによって行うことができる。
【0110】
好ましい実施形態では、更なるビームスプリッタ素子がレーザの光路内のビームスプリッタ素子(2)に続いて配置される。これらのビームスプリッタ素子は、少なくとも3つのサブビームのそれぞれを少なくとも2つの更なるサブビームに分割するように配置される。これにより、より多くのサブビームを生成することが可能になり、サブビームは基材、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材上に指向され、基材の表面上または内部で干渉する。これにより、干渉パターンの構造周期を調整することができる。
【0111】
集束素子(4)
更に、集束素子(4)は、レーザの光路(3)内のビームスプリッタ素子(2)に続いて配置され、サブビームは、サブビームが干渉領域において構造化される基材(5)の表面上または内部で干渉するよう、集束素子(4)を通過するように構成されている。集束素子(4)は、少なくとも3つのサブビームを空間方向に集束させるが、少なくとも3つのサブビームを空間方向に垂直な空間方向には集束しない。例えば、集束素子(4)は、集束光学レンズであってもよい。本発明の文脈において、集束とは、基材、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材の表面上または内部で少なくとも3つのサブビームを束ねることを意味する。
【0112】
集束素子(4)は、光路(3)内で自由に移動可能である。本発明の好ましい実施形態によれば、集束素子(4)は、光路内または光軸に沿って固定される。
【0113】
本明細書で定義される光学素子は、例えば、ビームを分割し、それに応じて構造化される基材の方向にサブビームを位置合わせするために、共通のハウジング内に配置され得ることが理解されよう。
【0114】
好ましい実施形態では、集束素子(4)は、球面レンズである。球面レンズは、入射する少なくとも3つのサブビームが、構造化される基材(5)、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材の表面上または内部の干渉領域で干渉するように、それらが球面レンズを通過するように構成される。干渉領域の幅は、好ましくは1~600μm、特に好ましくは10~400μm、最も好ましくは20~200μmとする。このようにして、例えば本明細書で定義されるような高いパターニング率を同時に設定することができる。
【0115】
特に好ましい実施形態では、集束素子(4)は、円筒レンズである。円筒レンズは、少なくとも3つのサブビームが基材(5)、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材の表面上または内部で重なる領域が空間方向に引き延ばされるように構成される。その結果、基材上で干渉パターンを生成することができる基材の領域は、楕円形となる。この楕円の大きな半軸の長さは、20μm~15mmに達することがある。これにより、1回の照射内で構造化できる領域が増加する。
【0116】
第1の偏向素子
特に好ましい実施形態では、偏向素子(7)は、集束素子(4)の前かつビームスプリッタ素子(2)の後に配置され、レーザの光路(3)に配置されることが好ましい。この偏向素子(7)を使用して、少なくとも3つのサブビーム間の距離を広げ、従って、サブビームが基材(5)、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材に当たる角度を変更することもできる。偏向素子(7)は、少なくとも3つのサブビームの発散を増大させ、従って、少なくとも3つのサブビームが干渉する領域を光路(3)の光軸に沿ってレーザ放射源(1)から遠ざけるように移動させるように構成される。
【0117】
本発明の文脈において、少なくとも3つのサブビーム間の距離を広げることは、レーザ放射源(1)によって放射されるレーザビームの光軸に対するそれぞれのサブビームの角度が増大することを意味すると理解される。
【0118】
サブビームを広げることおよびその結果として生じる偏向には、集束素子(4)によってサブビームをより強力に束ねることができるという利点がある。これにより、少なくとも3つのサブビームが基材(5)、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材の表面上または内部で干渉する領域の強度がより高くなる。
【0119】
偏向素子を適切に選択することは、レーザビームの強度を制御するためのユニットを省略できることを意味する。装置の好ましい実施形態では、偏向素子(7)を使用して、少なくとも3つのサブビームを拡大することによって、集束素子(4)により少なくとも3つのサブビームを基材(5)上に集束させることができ、それによって、基材、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材の表面上または内部の干渉点の強度を、レーザ放射源(1)の強度を更に調整することなく達成することができる。これには、周期的ドット構造を生成しながら基材のパターニングに低強度(面積当たりの出力)のレーザ放射源も使用することができ、それにより、光学素子が摩耗から保護されるという利点がある。
【0120】
更なる偏向素子
更に、更なる偏向素子(6)がレーザ放射源(1)の光路(3)においてビームスプリッタ素子(3)に続いて配置されてもよく、これにより、サブビームが更なる偏向素子(6)から出た後、互いに本質的に平行に走るようにサブビームを偏向することもできる。その結果、装置は、ビームスプリッタ素子がレーザの光路内でその光軸に沿って移動する際に、処理点、即ち、基材、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材の表面上または内部で少なくとも3つのサブビームが干渉する点が一定に保持されるように構成することができる。「本質的に平行」という用語は、本明細書の文脈において、2つのサブビーム間における+15°~-15°の間、特に+10°~-10°のみの間、非常に好ましくは+5°~-5°の間の角度オフセットを意味すると理解されるべきであるが、もちろん、特に非常に小さい角度オフセット、即ち、+1°~-1°でもあり得る。理想的には、角度オフセットは0°であるが、光学素子の製造公差に起因して若干の誤差が生じる可能性がある。
【0121】
更なる偏向素子(6)は、従来の屈折レンズであることができる。しかしながら、代替的に、更なる偏向素子(6)を回折レンズ(例えば、フレネルレンズ)として設計することもできる。回折レンズは、極めてより薄くかつより軽量であるという利点を有しており、これにより、本明細書に開示される装置の小型化が容易になる。
【0122】
光学素子(4)、(6)および(7)の屈折率を適切に選択することによって、光学素子と基材との間の距離並びに構造周期Λを調整することができる。ビームスプリッタ素子(2)を除く全ての光学素子をレーザの光路(3)内に固定することができることが好ましい。従って、この特に好ましい実施形態は、干渉領域または干渉角度を調整するのにただ1つの素子、即ちビームスプリッタ素子(2)のみを移動させる必要があるという利点を提供する。これにより、装置を所望の構造周期に合わせて校正する等、装置を構成する際のプロセスステップを節約する。更に、固定設定により、即ち、好ましくは全ての光学素子がレーザの光路(3)内に固定された場合、光学素子の磨耗が防止される。
【0123】
偏光素子
更なる実施形態では、偏光素子(8)は、偏向素子の後ろに、特に好ましくは、更なる偏向素子(6)の後ろに2つの偏向素子(6)、(7)を備えた構成で、かつ集束素子(4)の前に配置されるようにし、少なくとも3つのサブビームの光路のうちの少なくとも1つにおいて、サブビームごとに1つの偏光素子が存在するようにする。偏光素子は、サブビームの偏光を互いに対して変更することができる。これにより、少なくとも3つのサブビームが基材、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材の表面上または体積内にマッピングされる、結果として生じる干渉パターンを修正することが可能になる。偏光素子(8)をサブビームの光路のうちの少なくとも1つに、好ましくはサブビームの各光路ではなく、好ましくは最大(n-1)の光路に配置することによって(nは適用プロセスで生成されるサブビームの数である)、ビーム経路内の少なくとも1つのサブビームの偏光面を有利に回転させることができ、従って、基材面内の干渉ピクセルのパターンを「妨げる」ことができる。
【0124】
従って、特に、干渉サブビームは、非偏光、直線偏光、円偏光、楕円偏光、ラジアル偏光またはアジマス偏光であり得る。
【0125】
ビーム整形のための光学素子
更なる実施形態では、レーザ放射源(1)は、上述したようなガウスプロファイルに対応する放射プロファイルを有する。このような実施形態では、ビーム整形のための更なる光学素子を、レーザ放射源(1)の後ろかつビームスプリッタ素子(2)の前に配置することができる。この素子を使用して、レーザ放射源の放射プロファイルをトップハットプロファイルに調整する。
【0126】
凹放物面または平面反射面を有する光学素子も本発明による装置に設けることができ、光学素子は、例えば少なくとも1つの軸の周りに回転可能であるか、または光路(3)に沿って変位可能であるように設計される。その結果、必要に応じて、光路(3)内に配置された更なる集束素子(4)または更なる偏向素子(6)を省略することができる。例えば、この光学素子を使用して、ビームがパターニングされる記載に到達して構造素子を形成する前に、レーザビームまたはレーザサブビームを集束素子(4)または別の集束光学素子の表面上に指向することができる。
【0127】
あるいは、例えば、少なくとも1つの軸の周りに回転可能であるか、または光路(3)に沿って変位可能であるように設計された、凹放物面または平面反射面を有する少なくとも1つの光学素子を設けることもでき、例えば、この光学素子は、光路内で第1の偏向素子(7)および更なる偏向素子(6)に連続して配置される。例えば、サブビームを光路内で偏向するか(偏向ミラー)、またはパターニングされる基材が処理中に固定位置に配置され得るように光路内で集束させることができる(いわゆる、集束ミラーまたはガルボミラー(レーザスキャナ)(9))。
【0128】
ポリゴンスキャナを備える実施形態も考えられる。この実施形態では、少なくとも1つの光学素子は、周期的に回転するプリズム、好ましくは周期的に回転するミラープリズム、特にポリゴンミラーまたはポリゴンホイールと、周期的に回転するプリズムに連続して光路内に配置される集束素子(4)とを備える。集束素子は、サブビームが干渉領域でパターニングされる基材(5)の表面上または内部で干渉するよう、サブビームが集束素子を通過するように構成される。好ましい実施形態では、光学素子は、少なくとも1つの更なる偏向素子、例えば光路内のサブビームを偏向するための反射偏向素子を更に備える。少なくとも1つの更なる偏向素子は、光路内において周期的に回転するプリズムの前および/または後に配置することができる。少なくとも1つの更なる偏向素子は、光路内において集束素子の前に配置される。
【0129】
このような構成により、有利なことに、基材の表面を迅速に走査することが可能となり、それにより、最大3m2/分、特に0.05~2m2/分の範囲、特に好ましくは0.1~1m2/分の範囲、最も好ましくは0.1~0.9m2/分の範囲の高いパターニング速度を達成することができる。正確なパターニング速度は、特に利用可能なレーザ出力に依存する。従って、より高いレーザ出力を備えた将来の技術では、更に高いパターニングレートを達成できる可能性がある。
【0130】
基材のための保持装置
更なる実施形態では、基材(5)、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材は、xy平面内で移動可能である。基材(5)、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材をxy平面内で移動させることによって、レーザ干渉パターニングによる広範囲にわたる処理を確実にすることができる。各処理ステップ(即ち、パターニングされる基材に当たるレーザパルス)において、(本明細書で定義されるような)干渉ピクセルが生成され、干渉ピクセルは、レーザビームの入射角および強度分布、並びに光学素子の集束特性に依存するサイズDを有する。異なる干渉ピクセル間の距離、即ちピクセル密度Pdは、レーザ放射源(1)の繰り返し率と、光学素子の焦点、即ち干渉領域が基材の表面上または内部に生成される地点に対する基材の動きと、によって決定される。ピクセル密度Pdが干渉ピクセルのサイズDよりも小さい場合、広い面積にわたって均一な処理が可能である。
【0131】
パルスレーザ(サブ)ビームと組み合わせて、集束点(干渉ピクセルを生成する)に対して基材を移動させることによって、基材、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材の表面上または内部に、広範囲にわたる、任意に均一かつ周期的なドット構造を生成することができる。
【0132】
集束点に対して基材を移動させる代わりに、集束点を(例えば、スキャナベースの方法を使用して)サンプルまたは基材上で移動させることもできる。
【0133】
パターニングされる基材、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材をレーザビーム内で移動させることは、プロセス中に移動する質量が比較的大きいため、比較的時間がかかり、遅くなる可能性がある。従って、基材、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材を処理中に固定位置に設け、サブレーザビームを光学素子(集束ミラーまたはガルボミラー(レーザスキャナ))によりビーム方向に操作することによって、サブビームを基材の表面上または体積に集束させることにより、基材の広範囲にわたるパターニングを実現することが有利である。このプロセスで移動する質量は比較的小さいため、はるかに少ない労力で、即ち、はるかに素早く実現することができる。基材はプロセス中、静止していることが好ましい。
【0134】
方法
本発明はまた、レーザ干渉パターニングによって、マイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の周期的ドット構造を有する基材、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材を製造する方法も含む。
【0135】
本発明によれば、レーザ干渉パターニングによってマイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の周期的ドット構造を有するパターニングされた基材、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材を製造する方法は、以下のステップを含む:
基材(5)、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材を提供し、これを保持装置上に配置する。レーザビームをレーザ放射源(1)から放射する。レーザビームをビームスプリッタ素子(2)によって、少なくとも3つ、好ましくは4つのサブビームに分割する。サブビームは、集束素子(4)に当たり、集束素子(4)により、少なくとも3つ、特に好ましくは4つのサブビームを基材(5)、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材の表面上または内部に集束させ(束ね)、それにより、サブビームが基材の表面上または内部で建設的かつ破壊的に干渉する。従って、マイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の周期的ドット構造が、レーザ干渉処理によって、基材(5)、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材の表面上または内部に生成される。この方法は、2Dパターンが生成されるように少なくとも3つのサブビームが重ね合わされることを特徴とする。
【0136】
本発明の更なる実施形態によれば、レーザビームは、ビームスプリッタ素子によって少なくとも2つのサブビームに分割される。サブビームは、集束素子(4)に当たり、集束素子(4)は、少なくとも3つ、特に好ましくは4つのサブビームを基材(5)、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材の表面上または内部に集束させ(束ね)、それにより、サブビームが基材の表面上または内部で建設的および破壊的に干渉する。従って、マイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の周期的ドット構造が、レーザ干渉処理によって、基材(5)、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材の表面上または内部に生成される。この方法は、1Dパターン、特に線パターンが生成されるように少なくとも3つのサブビームが重ね合わされることを特徴とする。
【0137】
この方法で生成されたドット構造は、周期的に配置された、逆円錐の形状をしており、頂点間の距離(即ち、高さの中心(単数または複数))の統計的平均が50nm~50μmの範囲、好ましくは50nm~20μmの範囲、特に好ましくは100nm~4μmの範囲、より好ましくは100nm~2μmの範囲、更により好ましくは200nm~1.5μmの範囲、非常に特に好ましくは300nm~800nmの範囲である。
【0138】
本発明の発明者らは、更に、周期性に加えて、構造深さ(即ち、窪みの鞍点から頂点までを測定した逆円錐の深さ)またはプロファイル深さが(本明細書に定義するように)反射防止性に影響を与えることを発見した。例えば、逆円錐の構造深さまたはプロファイル深さ(隆起および窪み)の統計的平均は、5nm~500nmの範囲、好ましくは5nm~300nmの範囲、最も好ましくは5nm~100nmの範囲、更により好ましくは5nm~75nmの範囲である。干渉ピクセルの逆円錐の構造深さは、一般に、平均構造深さ(d50)によって表され、これは、構造深さの指定値よりも小さいまたは大きい特定の構造深さを有する干渉ピクセル内の円錐の50%の割合を定義する。
【0139】
本発明の好ましい実施形態によれば、逆円錐は5nm~200nmの範囲、特に好ましくは5nm~150nmの範囲、最も好ましくは10nm~100nmの構造深さを有する。
【0140】
好ましくは、装置を使用して、2つの偏向素子(6)、(7)を備える、パターニングされた基材(5)、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材を製造する。偏向素子(6)、(7)は、ビームスプリッタ素子(2)と集束素子(4)との間のレーザの光路(3)に配置される。偏向素子(6)、(7)は、少なくとも3つの、特に好ましくは4つのサブビームの回折角を広げるように機能し、サブビームは基材(5)、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材の表面上または内部で干渉する。光学素子間の距離を調整することによって、構造周期を変更するために、ビームスプリッタ素子(2)のみがその光軸に沿って移動可能である必要があることを保証することができる。これにより、加工時の調整工程がより容易になる。
【0141】
特に好ましい実施形態では、透明な材料が広範囲にわたる基材として提供される。透明な材料の半透明性により、好ましくは上述の装置の実施形態を用いて、基材内部のレーザ干渉処理が可能となる。
【0142】
好ましい実施形態では、パルスレーザ放射源(1)を使用する装置が、パターニングされた基材、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材を製造するために使用される。特に好ましい実施形態では、パターニングされた基材、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材を製造するための装置が使用され、この装置は、レーザ放射源(1)によって放射されるレーザビームの光路(3)に垂直な、xy平面内で自由に移動可能な基材のための保持装置を有する。
【0143】
ピクセル密度Pd、即ち、幅Dの干渉ピクセルを基材、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材に適用できる距離は、レーザ放射源(1)の頻度fと、保持装置の移動速度vとを介して調整することができる。
【0144】
[数3]
Pd=v/f
【0145】
干渉ピクセルの幅Dがピクセル密度Pdよりも大きい場合、隣接する干渉ピクセルが領域内で重なり合う。この領域は、当業者にはパルスオーバーラップ(OV)として知られている。パルスオーバーラップは、次のように計算可能である。
【0146】
[数4]
OV=(D-Pd)/D
【0147】
好ましい実施形態では、パターニングされた基材、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材を製造するためのプロセスにおいて、PdはDよりも小さい。結果として生じるパルスオーバーラップOVにより、基材、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材は複数回照射される。従って、好ましくは、テクスチャのない表面を避けることができる。
【0148】
特に好ましい実施形態では、パターニングされた基材、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材を製造するプロセスにおいて、同じ干渉ピクセルが数回照射されるようにする。これにより、結果的に得られるマイクロ構造の深さを増加させることが可能となる。
【0149】
このような方法によって製造されるパターニングされた基材、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材の利点は、マイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の構造寸法を有する生成された周期的ドット構造の規則性が高いことである。このようにして製造された、マイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の寸法を有する周期的ドット構造は、好ましくは、円錐断面の変動係数(標準偏差を平均値で割った値)が15%以下、より好ましくは10%以下、更により好ましくは5%以下である。
【0150】
基材への複数回の照射は、階層構造の生成に特に適している。同じ干渉ピクセルを複数回照射することにより、基材が少なくとも部分的に溶融し、それによって、パターニングプロセス中、即ちレーザパルスが基材に当たるとき、高強度領域が発生する結果として波形構造が形成される。構造、特に波形構造は、自己組織化プロセスによって形成される。特に、波形構造は、レーザ干渉パターニングによって生成可能な、マイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の周期的ドット構造に重ね合わされる。従って、1つのプロセスステップで基材内に階層的パターニングを生成することができる。従って、本発明の好ましい実施形態によれば、同じ干渉ピクセルの複数の照射、好ましくは2~400、特に20~300、特に好ましくは50~200の照射が基材上に実行される。それによって(本明細書で定義されるような)波形構造が形成され、特に周期的ドット構造が重ね合わされた構造から形成され、少なくとも1つの構造がサブマイクロメートル範囲の寸法、特に準周期的な波形構造を有し、少なくとも1つの構造は逆円錐から形成される。個々のパルス間の時間オフセットは、特に好ましくは、レーザパルスのパルス持続時間の範囲内、好ましくは1fs~100nsの範囲内、特に好ましくは10fs~10nsの範囲内、非常に特に好ましくは10fs~15psの範囲内である。
【0151】
階層的パターニングとは、干渉パターンに対応する、マイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の寸法を有する第1の構造が、第1の構造の寸法未満の寸法を有し、自己組織化プロセスによって形成される更なる構造によって重ね合わされるパターンを指す。好ましくは、自己組織化プロセスによって形成される更なる構造の寸法は、干渉パターンに対応する、第1の構造の寸法の1%~30%の範囲内である。
【0152】
階層的パターンを適用する技術分野は数多く存在し、例えば、疎水性または超疎水性、並びに、親水性または超親水性の表面を備えた基材や、冒頭で説明した反射防止性を備えた基材に加えて、防氷性または防曇性を備えた基材の製造が挙げられる。有利には、本明細書に記載されるような、そのような階層的パターンを生成する方法は、レーザ放射源の適切な選択およびレーザの光路内のビームスプリッタ素子の対応する変位によって、構造寸法に影響を与えるプロセスパラメータの正確な調整を可能にする。
【0153】
更に、本明細書で定義される方法は、同じ装置を用いて、更に、同じプロセスステップで階層的パターンを有する基材を提供することを可能にする一方、従来のプロセスは、連続的に進行する、即ち、干渉パターンに対応する、マイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の寸法を有する第1の構造と、自己組織化プロセスによって形成される更なる構造とを同時に生成することはできない。
【0154】
パターニングされる基材、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材をレーザビーム内で移動させることは、プロセス中に移動する質量が比較的大きいため、比較的時間を要するうえに遅い。従って、基材、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材を処理中に固定位置に提供し、ビーム方向に光学素子(集束ミラーまたはガルボミラー(レーザスキャナ))を備えたレーザサブビームを操作することによって基材の表面上または体積にサブビームを集束させることによって基材の広範囲にわたるパターニングを実現することが有利である。このプロセスで移動する質量は比較的小さいため、はるかに少ない労力で、またははるかに素早く実現可能である。基材は、プロセス中に静止していることが好ましい。
【0155】
もちろん、基材の二次元パターニングは、原理的には、基材をレーザビーム内で移動させることによっても可能である。
【0156】
本明細書に開示される方法および装置によって生成されるマイクロメートルおよび/またはナノメートル範囲の周期的構造により、このようにパターニングされた基材は、反射防止性を有する。これは、基材に入射する光の反射が少ないか、または材料表面を垂直に見たときに「妨げる」効果を有しないような平坦な角度で反射するという事実によって保証される。
【0157】
従って、本発明は、マイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の周期的ドット構造を含む反射防止性を有するパターニングされた基材もカバーし、周期的ドット構造は逆円錐から形成され、逆円錐は、それらの鞍点または中心点に対して、50nm~50μmの範囲、好ましくは50nm~20μmの範囲、特に好ましくは100nm~4μmの範囲、より好ましくは100nm~2μmの範囲、更により好ましくは200nm~1.5μmの範囲、より好ましくは100nm~1000nmの範囲、特に好ましくは300nm~800nmの範囲の間隔をあけて周期的に配置される。
【0158】
本発明の好ましい実施形態によれば、パターニングされた基材は、本明細書で定義される方法で処理することによって得られる。
【0159】
本発明はまた、レーザ干渉パターニングにより、特に本明細書に開示される方法によって、マイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の周期的ドット構造を有する基材を製造する方法にも関しており、以下のステップ、即ち、
a)好ましくは本明細書で定義されるような装置によって、基材(5)の表面上に第1のパルスを印加し、これにより、基材(5)の表面上または基材(5)内に第1の干渉ピクセルを生成するステップと、
b)好ましくは本明細書で定義されるような装置によって、基材(5)の表面上に第2のパルスを印加し、これにより、基材(5)の表面上または基材(5)内に第2の干渉ピクセルを生成するステップと、
を含み、第1および第2の干渉ピクセルはそれぞれ独立して、マイクロメートルおよびサブマイクロメートル範囲の寸法を有する周期的ドット構造を含み、
第2の干渉ピクセルと第1の干渉ピクセルとの間のオフセットは、干渉周期の10%≦x≦50%の範囲にあることを特徴とする。
【0160】
これは、基材上、特に防眩性を有する透明な基材上に構造を形成するのに特に有利である。
【0161】
本発明の文脈において、眩しさとは、画面上で何が起きているのかを見えにくくする可能性のある、透明な基材、例えば窓または画面上の光源(例えば太陽)からの光の反射を指す。
【0162】
これらの眩しさは、表面の防眩処理(通常は、最新技術のコーティングによって行われる)を利用して軽減することができる。防眩構造により入射光を表面上で散乱させ、それにより、眩しさを大幅に軽減することができる。
【0163】
本発明の好ましい実施形態によれば、第1の干渉ピクセルのドット構造の周期と第2の干渉ピクセルの周期とは同一である。
【0164】
更に、ステップb)の後に、好ましくは本明細書で定義されるような装置によって、基材(5)の表面上に第3のパルスを印加してもよく、第3の干渉ピクセルは、マイクロメートルおよびサブマイクロメートル範囲の寸法を有する周期的ドット構造を含むことができ、第3のパルスは、基材(5)の表面上または基材(5)内に第3の干渉ピクセルを生成し、第3の干渉ピクセルは、第2の干渉ピクセルに対して干渉周期の10%≦x≦50%の範囲のオフセットを有する。
【0165】
パターニングされた基材
本発明者らは、主に本明細書に開示される装置または方法によってパターニングされた基材が、顕著な反射防止性によって特徴付けられることを発見した。従って、本発明はまた、本明細書で定義される反射防止性を有し、マイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の周期的ドット構造を含む、パターニングされた基材にも関し、周期的ドット構造は、特に逆円錐構造(本明細書では、逆円錐とも称する)から形成され、逆円錐はその鞍点または中心に対して、50nm~50μmの範囲、好ましくは50nm~20μmの範囲、特に好ましくは100nm~4μmの範囲、より好ましくは100nm~2μmの範囲、更により好ましくは200nm~1.5μmの範囲、より好ましくは100nm~1,000nmの範囲、特に好ましくは300nm~800nmの範囲で周期的に間隔をあけて配置されている。
【0166】
この方法で生成された周期的ドット構造には、その構造の寸法に応じて、10nm~1mmの範囲の波長を有する入射電磁放射を周期的構造によってますます透過または回折することができ、その結果、基材の表面での反射を減少させるという特性がある。生成された周期的ドット構造の周期が入射電磁波の波長の範囲内にある場合、基材の表面で回折される。生成された周期的ドット構造の周期が入射電磁波の波長よりも小さい場合、電磁波は透過する。
【0167】
周期的ドット構造は、構造化された基材が、1,000nm未満の周期的ドット構造で550nmを超える、好ましくは750nm未満の周期的ドット構造で500nmを超える、最も好ましくは600nm未満の周期的ドット構造で450nmを超える波長を有する電磁放射を透過するように形成されることが好ましい。逆円錐の構造深さに応じて、赤色および/または黄色の光スペクトル、緑色光スペクトル、更には青色光スペクトルの波長を基材に透過することができる。
【0168】
パターニングされた基材の屈折率は、作製された周期的ドット構造により段階的である。屈折率は構造の高さとともに減少し、それ故、明確な空気-媒体移行はない。これにより、生成されたドット構造の構造周期よりも長い波長を有する入射電磁波がますます透過し、かつ生成されたドット構造の構造周期の範囲内の波長を有する入射電磁波がますます回折する。
【0169】
製造可能な構造寸法が非常に小さいため、反射防止パターニングを製造するための本明細書に開示される装置および方法は、疎水性および/または超疎水性並びに親水性および/または超親水性を有する表面を製造するのにも適している。
【0170】
疎水性は、基材の化学特性と表面特性、特に表面粗さとの両方に依存する。本発明者らは、驚くべきことに、本発明による方法により、マイクロメートルおよびサブマイクロメートル範囲の構造の導入によって、特に疎水性基材を得ることができ、特に超疎水性および自浄性を有する(本明細書で定義されるような)重ね合わせた構造の基材表面が得られることを見出した。超疎水性を有する基材は、階層的な表面パターニングを有する基材であることが特に好ましい。この文脈における階層的な表面パターニングとは、マイクロメートル範囲の寸法を有する規則的な構造が存在し、その表面上にサブマイクロメートル範囲の寸法を有するパターンを有する表面を意味する。このような階層的なパターニングにより、表面粗さが大きくなる可能性がある。
【0171】
本発明者らはまた、主に本明細書に開示される装置または方法によってパターニングされた基材が、基材表面の顕著な疎水性によって特徴付けられることも発見した。マイクロメートルおよびサブマイクロメートル範囲の寸法を有する反射防止パターンを生成するための本明細書に開示される装置および方法を用いて、表面パターニング、特に基材表面の表面粗さを生成するためのパターニングも可能であり、結果的に疎水性または超疎水性を有する基材となる。疎水性材料特性は、直接レーザ干渉パターニングを使用して、マイクロメートルおよび/またはサブマイクロメートル範囲の寸法を有する構造を作製することによって生成することができる。好ましい実施形態では、マイクロメートル範囲の寸法を有する構造が最初に表面上に作製される。次に、ビームスプリッタ素子をレーザの光路内で移動させることによって、サブマイクロメートル範囲の寸法を有する構造が、好ましくは基材を複数回照射することにより、第1の構造の表面上に生成される。このようにして生成された階層的パターンは、疎水性または超疎水性を有する。
【0172】
疎水性を有する基材を製造するのに、中間ステップでビームスプリッタ素子を移動させることなく、マイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の寸法を有する構造のみを製造することも考えられる。
【0173】
従って、有利には、疎水性および/または超疎水性を有する基材は、同じ方法を用いて、同じ装置に基づいて、マイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の周期的ドット構造および/またはマイクロメートルおよびサブマイクロメートル範囲の階層的パターンを有する周期的ドット構造を生成することによって、技術的に容易に実現可能な方法で生成することができる。ビームスプリッタ素子を移動させることにより、構造を更に変更することなく、例えば、光学素子を交換するまたは基材を移動させることなく、基材の表面上に少なくとも2つの、または任意の数の更なる構造を実現することが可能である。これにより、従来の方法または装置と比較して、構造の位置合わせの精度とプロセスの速度との両方が向上する。
【0174】
本発明者らは、基材の表面特性とその表面上の氷の形成との間の相関関係を確立した。特に、基材表面の構造サイズが十分に小さい場合、いわゆる着氷防止性を生成することができる。研究結果によると、超疎水性を有する基材は着氷防止性も示し得ることがわかっている。
【0175】
本発明の目的上、着氷防止性とは、基材の表面上で水が全く凍らない、または極めて僅かしか凍らないことを意味すると理解され、この特性は表面特性、特に表面粗さに起因する。
【0176】
このような基材は、露出した部品を着氷から保護するために、航空宇宙分野、風力タービン、自動車部品の分野、または電気通信およびアンテナ技術においても有利に使用することができる。
【0177】
本発明の一実施形態では、本明細書に開示される方法および装置は、レーザ干渉パターニングによって製造され、反射防止性を特徴とする、マイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の周期的ドット構造を含む基材を製造するのに適している。本発明の意味において、本明細書における反射防止性とは、可視光の範囲の波長、特に400nm~700nmの範囲の波長を有する入射電磁放射線の増加した透過または回折を指す。基材は、基材に含まれる周期的ドット構造が好ましくはサブマイクロメートル範囲、特に好ましくはナノメートル範囲の寸法を有するという事実によって特徴付けられる。特に好ましいのは、可視光の範囲内の電磁放射の波長の範囲内の周期的ドット構造の寸法である。従って、周期的ドット構造の寸法は、好ましくは赤色の光の透過または回折については630nm~700nmの範囲、赤色およびオレンジ色の光の透過または回折については590nm~630nmの範囲、赤色、オレンジ色および黄色の光の透過または回折については560nm~590nmの範囲、赤色、オレンジ色、黄色および緑色の光の透過または回折については500nm~560nmの範囲、赤色、オレンジ色、黄色、緑色および青緑色の光の透過または回折については475nm~500nmの範囲、赤色、オレンジ色、黄色、緑色、青緑色および青色の光の透過または回折には450nm~475nmの範囲、オレンジ色、黄色、緑色、青緑色、青色および藍色の光については425nm~450nmの範囲、並びに赤色、オレンジ色、黄色、緑色、青緑色、青色、藍色および紫色の光については400nm~425nmの範囲である。従って、基材の反射防止性は、周期的ドット構造の寸法を変更することによって制御することができる。
【0178】
本発明の一実施形態では、本明細書に開示される方法および装置は、レーザ干渉パターニングによって製造され、反射防止性を特徴とする、マイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の周期的ドット構造を含む基材を製造するのに適している。本発明の意味において、本明細書における反射防止性とは、非可視光の範囲、特に赤外線の範囲の波長を有する入射電磁放射線、または特に780nm~1mmの範囲の波長を有する熱放射線の増加した透過または回折を指す。基材は、それに含まれる周期的ドット構造が好ましくはマイクロメートル範囲の寸法を有するという事実によって特徴付けられる。有利なことに、基材の熱伝達は、周期的ドット構造の寸法を変えることによって調整することができる。
【0179】
本発明の一実施形態では、本明細書に開示される方法および装置は、レーザ干渉パターニングによって製造され、反射防止性を特徴とする、マイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の周期的ドット構造を含む基材を製造するのに適している。本発明の意味において、本明細書における反射防止性とは、非可視光の範囲、特に紫外線(IV放射線)の範囲の、特に100nm~380nmの範囲の波長を有する入射電磁放射線の増加した透過または回折を指す。基材は、それに含まれる周期的ドット構造が、好ましくはナノメートル範囲の寸法を有するという事実によって特徴付けられる。このようにパターニングされた基材は、紫外線に対する保護が必要な領域で有利に使用され得る。
【0180】
本発明の更なる実施形態では、本明細書に開示される方法および装置は、同じ干渉ピクセルの複数回の照射によるレーザ干渉パターニングによって生成され、疎水性または超疎水性特性を特徴とする階層的パターンを含む基材を製造するのに適している。疎水性または超疎水性は、マイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の寸法を有する構造、特にマイクロメートルおよびサブマイクロメートル範囲の寸法を有する階層的パターンが、濡れ角がより大きくなるように基材上の液体の濡れ角を変化させるという事実によるものである。濡れ角がより大きいとは、表面に当たった液体が表面を十分に濡らさず、代わりに転がり落ちることを意味する。このように処理された基材は、自浄性および撥水性を備える。そのようにパターニングされた基材に特に適した材料は、既に疎水性を有する材料、例えば、金属またはポリマーの表面である。
【0181】
本発明の更なる実施形態では、本明細書に開示される方法および装置は、同じ干渉ピクセルの複数回の照射によるレーザ干渉パターニングによって生成され、着氷防止性、即ち氷層の形成を防ぐ特性を特徴とする、階層的パターンを有する基材を生成するのに適している。着氷防止性は、マイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の寸法を有する構造、特にマイクロメートルおよびサブマイクロメートル範囲の寸法を有する階層的パターンが、濡れ角がより大きくなるように基材上の液体の濡れ角を変化させるという事実に基づいている。従って、パターニングされた基材は、疎水性または超疎水性を示す。濡れ角が大きいとは、表面に当たった液体が表面を十分に濡らさず、代わりに転がり落ちることを意味する。これにより、表面に氷の層がより堆積しにくくなる。既に疎水性を備えている材料、例えば、金属またはポリマー表面は、そのようにパターニングされる基材に特に適している。
【0182】
本発明の更なる実施形態では、本明細書に開示される方法および装置は、同じ干渉ピクセルの複数回の照射によるレーザ干渉パターニングによって生成された、親水性または超親水性を特徴とする階層的パターンを含む基材を製造するのに適している。親水性または超親水性は、マイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の寸法を有する構造、特にマイクロメートルおよびサブマイクロメートル範囲の寸法を有する階層的パターンが、濡れ角がより小さくなるように基材上の液体の濡れ角を変化させるという事実に起因している。濡れ角がより小さいとは、表面に当たった液体が表面を十分に濡らし、液滴の形成が見られないことを意味する。代わりに、均一な濡れが達成され、これにより基材の透明性が損なわれることはない。このようなパターニングされた基材に特に適した材料は、既に親水性を有する材料、例えばガラス面である。
【0183】
本発明の更なる実施形態では、本明細書に開示される方法および装置は、同じ干渉ピクセルの複数回の照射によるレーザ干渉パターニングによって生成された、防曇性、即ち、曇らない特性を特徴とする階層的パターンを有する基材を生成するのに適している。防曇性は、マイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の寸法を有する構造、特にマイクロメートルおよびサブマイクロメートル範囲の寸法を有する階層的パターンが、濡れ角がより小さくなるように基材上の液体の濡れ角を変化させるという事実に基づいている。従って、構造化された基材は、親水性または超親水性を示す。濡れ角が小さいとは、表面に当たった液体が表面を十分に濡らし、液滴の形成が見られないことを意味する。代わりに、均一な濡れが達成され、これにより基材の透明性が損なわれることはない。このようなパターニングされた基材に特に適した材料は、既に親水性を有する材料、例えばガラス面である。この方法でパターニングされた基材は、自動車産業や航空宇宙産業で有利に使用可能であるが、一般的には建築技術におけるグレージングにも使用可能である。
【0184】
本発明の一実施形態では、本明細書に開示される方法および装置は、レーザ干渉パターニングによって生成される、表面粗さが増した、マイクロメートルまたはサブマイクロメートルの周期的ドット構造を含む基材を製造するのに適している。表面粗さの増加は、基材に導入される周期的ドット構造によって表面テクスチャがマイクロメートルまたはサブマイクロメートルの範囲で変化するという事実、特に基材の表面に導入された周期的ドット構造による凹凸があるという事実に基づいている。特に、表面粗さの増加は、同じ干渉ピクセルの複数回の照射によるレーザ干渉パターニングによってマイクロメートルおよびサブマイクロメートル範囲の寸法を有する階層的パターンで、本明細書に記載の方法および装置によって基材をパターニングすることによって達成することができる。この方法で処理された基材は、製造分野において、例えば技術部品間の静摩擦および/または滑り摩擦を増加させるために、または医療技術において、外面上の細胞の接着を増加させるために有利に使用することができる。
【0185】
本発明の一実施形態では、本明細書に開示される方法および装置は、レーザ干渉パターニングによって生成されるマイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の周期的ドット構造を含む基材を生成するのに適しており、同じ外形寸法を有するパターニングされていない基材と比較して表面積が増加する。マイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の周期的ドット構造は、基材の表面積が干渉ピクセルあたりの干渉領域の密度に比例して増加するという事実に寄与する。特に、同じ外形寸法を有するパターニングされていない基材と比較して、表面積の増加は、本明細書に記載の方法および装置を用いて、同じ干渉ピクセルを複数回照射することによるレーザ干渉パターニングによって、マイクロメートルおよびサブマイクロメートル範囲の寸法を有する階層パターンで基材をパターニングすることによって達成することができる。この方法で処理された基材は、同じ外形寸法を有するパターニングされていない基材と比較して、表面積の増加により熱交換容量がより大きくなるため、高熱伝達が必要な技術分野で有利に使用することができる。更に、この方法で処理された基材は、電気接続技術の分野において、接触抵抗を減らすのに使用することができ、なぜなら、表面積が増加するということは、同じ外形寸法を有するパターニングされていない基材と比較して、接触する材料間により多くの接触点を生成できることを意味するためである。更に、この方法でパターニングされた基材は、電池技術の分野において、特にアノードおよびカソードのパターニングに使用することができ、なぜなら、表面積が増加するということは、同じ外形寸法を有するパターニングされていない基材と比較して、電極の金属間で電荷キャリアを交換するための容量がより大きいことを意味するためである。
【0186】
更に、本明細書に開示される方法および装置は、抗菌(防腐)性を有する、マイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の寸法を有する周期的ドット構造を含む基材を製造するのに適している。好ましい実施形態では、周期的ドット構造は、その上に堆積したバクテリアよりも著しく大きい、少なくとも10%~30%大きい寸法を有する。これにより、表面に堆積したバクテリアが分離され、それらを無害化する。特に好ましい実施形態では、周期的ドット構造は、その上に堆積したバクテリアよりも著しく小さい、少なくとも10%~30%小さい寸法を有する。これにより、表面へのバクテリアの付着が防止され、表面を無菌状態に保つ。
【0187】
本明細書に開示される方法および装置によって製造されるパターニングされた基材は、更なるコーティングプロセスによる更なる処理に更に適しており、基材は物理的および/または化学的コーティングを受けることができる。このようなコーティングにより、パターニングされる基材の特性、例えば、反射防止性および/または親水性および/または疎水性を強化することができる。化学スプレーコーティングの適用および/または化学蒸着および/またはスパッタリングおよび/またはゾルゲルプロセスによるコーティングの適用が考えられる。
【0188】
本発明の好ましい実施形態によれば、パターニングされた基材は、第1および第2の干渉ピクセルで形成されたドット構造を備え、第1および第2の干渉ピクセルはそれぞれ独立して、マイクロメートルおよびサブマイクロメートルの寸法を有する周期的ドット構造を備えており、第1の干渉ピクセルおよび第2の干渉ピクセルは、第2の干渉ピクセルと第1の干渉ピクセルとの間のオフセットが干渉周期の10%≦x≦50%の範囲、特に20%≦x<50%の範囲、特に好ましくは25%≦x≦45%の範囲となるように、互いに重ね合わさって配置される。これは、基材上の本明細書で定義されるドット構造の寸法により(それらの適用領域に関係なく)、特に透明基材上において、防眩性を有するパターニングを生成することができるため特に有利である。
【0189】
本発明の好ましい実施形態によれば、周期的ドット構造は、第3の干渉ピクセルと第2の干渉ピクセルとの間のオフセットが干渉周期の10%≦x≦50%の範囲、特に20%≦x<50%の範囲、特に好ましくは25%≦x≦45%の範囲となるように、少なくとも第3の干渉ピクセルが第1および第2の干渉ピクセルに重ね合わされて配置されるように設計される。
【0190】
パターニングされた基材の使用
本明細書で定義される反射防止性を有するパターニングされた基材は、例えば、太陽光発電システムにおいて使用され、反射防止性を導入することによって、これらの太陽光発電システムの効率を大幅に高めることができる。太陽光発電システムの分野における主要な課題は、太陽光線の反射によって生じる大きな損失にある。平均して、反射によりシステムごとに40%のエネルギー/電力損失を引き起こす。従って、太陽光発電システムの効率は、常に改善されなければならない。最も有望なアプローチの1つに、表面の反射防止コーティングおよび/またはテクスチャリングを利用して反射を低減する方法が挙げられる。本明細書に開示されるプロセスを使用することにより、表面の処理が簡素化され、促進され、かつ改善される。
【0191】
また、モニターやスクリーンは固定された場所に設置されることが多いため、好ましくない光の入射の影響を受けやすく、それにより視聴者に視覚的な問題をもたらすことも知られている。この影響を最小限に抑える方法はあるが、これらのアプローチは実際に問題を解決するというよりもむしろ症状を緩和する傾向があるため、広くは使用されていない。本明細書で定義される反射防止性を備えたパターニングされた基材は、例えば、モニター、スクリーンおよびディスプレイ用の反射防止グレージングの形態で、例えば、ディスプレイ領域への適用または統合に理想的に適している。
【0192】
更なる利用分野は、より高い伝送速度を確保し、後方反射を最小限に抑える、光ファイバー内での反射防止を達成する分野に開かれている。従って、本明細書に開示されるプロセスは、ガラス繊維のパターニングに理想的に適しており、この方法でパターニングされたガラス繊維は、反射防止性を有する本明細書で定義されるパターニングされた基材への更なる適用例を提供する。従って、本発明は、ガラス繊維の構成要素として本明細書で定義されるパターニングされた基材の使用も含む。
【0193】
更に、本発明者らは、本明細書で定義される方法が(反射防止グレージングの別の例として)窓ガラスのパターニングに適していることを発見した。例えば、本明細書に開示されるパターニングされた基材は、反射防止グレージングの形態で、または家のファサード上のフィルムコーティングとして使用することができ、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材を、例えば、湾曲した家のファサードからの集中した太陽放射から保護し、建物の断熱性を向上させるのに使用可能な断熱グレージングとして使用することができる。
【0194】
更に、顕微鏡や望遠鏡において反射を低減することにより、それらにより記録される画像のコントラストが高まるため、これらの光学装置の効率および用途が増加する。従って、本発明は、ビーム案内、ビーム整形、ビーム集束および/またはビーム集束が非常に重要である顕微鏡や望遠鏡等の光学装置において、マイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の周期的ドット構造を有する光学素子として本明細書で定義されるパターニングされた基材の使用も含む。
【0195】
例えば、別の基材上に構造を間接的に適用または生成するためのエンボス加工プロセス内で、本明細書で定義されるパターニングされた基材をネガ型(いわゆるマスター)として使用することも有用である。これは、例えば、ホットまたはUVエンボス加工プロセスを使用して連続プロセスで構造をマスター(通常はニッケル等の金属)からポリマーフィルム(例えば、PET)に転写するロールツーロールプロセスに関連している。これにより、マイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の周期的ドット構造として、高スループットで他の基材上に逆構造を生成することが可能となる。
【0196】
本発明による装置および本発明による方法は、多大な技術的労力を使用することなく、疎水性または超疎水性を有する広範囲にわたる基材を製造する可能性も提供する。この方法でパターニングされた基材は、疎水性および/または超疎水性基材の自浄性が求められる分野、例えば自動車部品、ディスプレイまたはグレージングの分野だけでなく、航空またはアンテナ技術の分野まで幅広い用途がある。
【0197】
本発明による装置および本発明による方法は、多大な技術的労力を使用することなく、親水性または超親水性を有する広範囲にわたる基材を製造する可能性も提供する。この方法でパターニングされた基材は、親水性および/または超親水性基材の均一な濡れ特性が求められる分野、例えば自動車部品、ディスプレイまたはグレージングの分野だけでなく、航空またはアンテナ技術の分野まで幅広い用途がある。
【0198】
更に、本発明による方法および装置は、更なる処理、例えば化学的および/または物理的処理に、特に化学スプレーコーティングによる、および/または結果的に得られる基材の反射防止性および/または疎水性または超疎水性および/または親水性または超親水性を増加させるおよび/または変更するためのコーティングに適したパターニングされた基材を製造する可能性も提供する。
【0199】
本発明の好ましい実施形態によれば、本明細書に開示される方法は、防眩性を有するように基材表面をパターニングするのに適している。この目的に特に適しているのは、本明細書で定義されるように、第1および第2の干渉ピクセルから形成されるドット構造を有するパターニングされた基材であり、第1および第2の干渉ピクセルは、それぞれ独立して、マイクロメートルおよびサブマイクロメートル範囲の寸法を有する周期的ドット構造を含み、第2の干渉ピクセルと第1の干渉ピクセルとの間のオフセットが干渉周期の10%≦x≦50%の範囲、特に20%≦x<50%の範囲、特に好ましくは25%≦x≦45%の範囲となるように、前記第1の干渉ピクセルおよび第2の干渉ピクセルを互いに重なり合うように配置する。
【符号の説明】
【0200】
1 レーザ放射源
2 ビームスプリッタ素子
3 光路
4 集束素子
5 基材
6 更なる偏向素子
7 偏向素子
8 偏光素子
9 集束ミラーまたはガルボミラー
31 光軸
91 ポリゴンホイール
【実施例】
【0201】
以下の図面および例示的な実施形態を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。特に、個々の図面に示され、それぞれの例について説明した特徴は、それぞれの個々の例に限定されるものではない。
【0202】
図1は、第1の実施形態において、レーザビームを放射するためのレーザ放射源(1)を備える、本発明による装置を視覚化している。レーザ放射源(1)の後ろのレーザビームの光路(3)内に移動可能に配置されたビームスプリッタ素子(2)は、ビーム経路(3)内に位置する。集束素子(4)は、ビームスプリッタ素子(2)の後ろのレーザビームの光路(3)に配置されている。基材(5)、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材が取り付けられている保持装置は、集束素子(4)の後ろのレーザビームの光路(3)に配置されている。
【0203】
この実施形態では、レーザ放射源(1)は、パルスレーザビームを放射する。この場合、レーザ放射源は、波長355nmかつパルス幅12psのUVレーザである。この実施形態では、レーザ放射源の放射プロファイルは、トップハットプロファイルに対応している。
【0204】
この実施形態では、ビームスプリッタ素子(2)は、回折ビームスプリッタ素子に対応している。ここでの回折ビームスプリッタ素子は、マイクロまたはナノ構造を含むビームスプリッタ素子である。ビームスプリッタ素子(2)は、レーザビームを4つのサブビームに分割する。
【0205】
この実施形態では、集束素子(4)は、本質的に互いに平行に走るサブビームを基材(5)、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材上に指向する屈折球面レンズに対応しており、それらは干渉領域において干渉する。この実施形態では、干渉角は、27.2°に対応し、結果的に、同じ偏光状態における周期的ドット構造の構造周期は550nmとなる。
【0206】
この例示的な実施形態によれば、広範囲にわたる基材は1回照射されると、結果的に、構造単位当たり、即ち干渉ピクセル当たりの処理時間は12psとなる。
【0207】
基材(5)、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材は、ガラス、特に石英ガラスであり、レーザ放射源(1)から放射されるレーザビームの光路に垂直なxy平面内で移動することができるように保持装置上に取り付けられる。
【0208】
図2は、
図1に記載の装置の更なる実施形態を視覚化したものであり、ビームスプリッタ素子(2)および集束素子(4)の後のレーザの光路(3)に位置する偏向素子(6)を更に備える。
【0209】
この実施形態では、偏向素子は従来の屈折凸レンズである。サブビームは、偏向素子を通過した後、本質的に互いに平行になるように偏向素子(6)に当たる。これにより、サブビームが基材の表面または内部で干渉する点を調整することができる。
【0210】
図3は、更なる実施形態における、
図1および
図2に示されるセットアップに基づく装置を視覚化している。更に、このセットアップは、ビームスプリッタ素子(2)と偏向素子(7)との間のレーザの光路(3)内に配置される更なる偏向素子(6)を備える。
【0211】
この実施形態では、更なる偏向素子(7)は、従来の屈折凹レンズである。サブビームは、光路の光軸に対する角度が広がるように、更なる偏向素子に当たる。これにより、サブビームが基材、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材の表面または内部で干渉する干渉角を変更することが可能になる。
【0212】
この実施形態では、ビームスプリッタ素子(2)を除く全ての光学素子は、光路(3)の光軸に沿って固定されている。基材上のサブビームの干渉角は、光路の光軸に沿ってビームスプリッタ素子(2)を移動させることによって設定される。
【0213】
図4Aは、更なる実施形態において、サブビームを集束素子(4)上に偏向させるように構成された、平面反射面を有する光学素子(6)を備える、
図3のような装置を示す。
【0214】
この実施形態では、少なくとも3つのサブビームは、光学素子(6)をシフトすることによって好ましい角度で基材上に偏向される。これは、レンズの形態の偏向素子(
図3の参照符号(6))を省略できることを意味する。
【0215】
図5は、更なる実施形態において、偏向素子(6)と集束素子(4)との間のレーザビームの光路(3)に配置された、サブビームごとに1つの偏光素子(8)を更に備える、
図3のような装置を視覚化している。
【0216】
偏光素子は、干渉パターンに変化が生じるように、個々のサブビームの偏光を相互に変化させるように配置される。
【0217】
この実施形態は、2つの異なる構成で示されている。
図5a)では、ビームスプリッタ素子(2)は、光路(3)内のレーザ放射源(1)の近くに配置されている。
図5b)では、ビームスプリッタ素子(2)は、光路(3)内の偏向素子(7)の近くに配置されている。このようにして、基材(5)の表面上の干渉サブビームの干渉パターンは、セットアップまたは基材内の他の光学素子を移動させる必要なしに、無限に調整することができる。
【0218】
レーザビームの光路(3)においてレーザ放射源(1)に連続して配置される、ビーム整形のための更なる光学素子を含む構成も考えられる。この実施形態では、レーザ放射源の放射プロファイルは、ガウスプロファイルに対応する。ビーム整形用の光学素子は、このプロファイルをトップハットプロファイルに変換する。
【0219】
図6は、幅Dを有する基材の表面または内部に生じる干渉ピクセルと、基材の表面または内部での個々の干渉ピクセルの分布との概略図を示しており、それによって干渉ピクセルはピクセル密度Pdで相互にシフトされる。
【0220】
この実施形態では、ピクセル密度Pdは、干渉ピクセルの幅Dよりも小さい。従って、パルスレーザビームによって基材(5)を移動させることによって、基材、好ましくは広範囲にわたるおよび/または透明な基材の表面上または内部に広範囲にわたる均質な周期的ドット構造を生成することができる。
【0221】
図7は、マイクロメートルおよびサブマイクロメートル範囲の寸法を有する逆円錐からなる、生成された周期的ドット構造を有する、本発明による方法によって製造されたパターニングされた基材(5)を視覚化している。生成された構造の構造周期よりも長い波長を有する入射電磁波の透過および生成された構造の範囲内またはそれよりも短い波長を有する入射電磁波の回折も象徴的に示されている。
【0222】
図8は、更なる実施形態において、マークされた軸の周りを回転するように構成されたポリゴンホイールである、平面反射面を有する光学素子(91)を備える、
図4Bのような装置を示す。入射サブビームは、ガルボミラー(9)に当たるように偏向され、これにより、集束素子(4)を介して基材上にビームを指向する。ポリゴンホイールの回転により、露光プロセス中に、ビームが基材上で集束される点が線に沿って移動する。従って、サブビームが基材を走査し、これがプロセス速度の向上につながる。
【0223】
図9は、パターニングされた基材の透過および回折能力を構造幅の関数としてグラフ表示したものである。光の回折角は、3つの異なる構造幅を有する構造の波長の関数として示されている。入射光の波長が構造の幅より長い場合、光は完全に透過される。構造幅以下の範囲の波長では回折が発生する。回折角は、図から求めることができる。
【0224】
図10は、マイクロメートル範囲の寸法を有する、逆円錐からなる、生成された周期的ドット構造を有する、本発明による方法によって製造されたパターニングされた基材(5)を視覚化している。マイクロメートル範囲のこの周期的ドット構造にサブマイクロメートル範囲の周期的な波形構造が重ね合わされるが、これも本明細書に記載の本発明による方法によって、1つの製造ステップで製造することができる。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の周期的ドット構造を含む、反射防止性を備えたパターニングされた基材であって、
前記周期的ドット構造は逆円錐から形成され、
前記円錐は相互の距離が50nm~50μmの範囲で周期的に配置されており、
前記周期的ドット構造に更なる構造が重ね合わされ、
前記重ね合わされた構造は準周期的な波形構造を有し、
前記重ね合わされた構造の領域における前記基材の表面上の材料は、一連の波山および波谷を有し、その周期は100nm~1000nmの範囲内である、パターニングされた基材。
【請求項2】
前記周期的ドット構造は、前記構造化された基材が550nmを超える、好ましくは500nmを超える、最も好ましくは450nmを超える波長を有する電磁放射を透過するように形成される、請求項1に記載のパターニングされた基材。
【請求項3】
マイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の周期的ドット構造を備え、周期的波形構造が前記周期的ドット構造上に重ね合わされ、前記波山が20nm~5μmの範囲の間隔で配置されている、請求項1に記載のパターニングされた基材。
【請求項4】
前記パターニングされた基材は、第1および第2の干渉ピクセルから形成されるドット構造を含み、前記第1および第2の干渉ピクセルはそれぞれ独立して、マイクロメートルおよび/またはサブマイクロメートル範囲の寸法を有する周期的ドット構造を含み、前記第1の干渉ピクセルおよび前記第2の干渉ピクセルは、前記第2の干渉ピクセルと前記第1の干渉ピクセルとの間のオフセットが干渉周期の10%≦x≦50%の範囲内となるように、互いに重ね合わさるように配置されている、請求項1に記載のパターニングされた基材。
【請求項5】
前記周期的ドット構造は、第3の干渉ピクセルと前記第2の干渉ピクセルとの間の前記オフセットが前記干渉周期の10%≦x≦50%の範囲内となるように、少なくとも前記第3の干渉ピクセルが前記第1および前記第2の干渉ピクセルに重ね合わさるように配置されるように形成されている、請求項4に記載のパターニングされた基材。
【請求項6】
前記基材が物理的および/または化学的コーティングを含む、請求項1に記載のパターニングされた基材。
【請求項7】
前記パターニングされた基材が透明材料を含み、前記透明材料が、ガラス、固体ポリマー、透明セラミックまたはそれらの混合物を含む群から選択される、請求項1に記載のパターニングされた基材。
【請求項8】
前記パターニングされた基材の屈折率が段階的である、請求項1に記載のパターニングされた基材。
【請求項9】
前記基材が疎水性または超疎水性を有する、請求項1に記載のパターニングされた基材。
【請求項10】
前記基材が着氷防止性を有する、請求項1に記載のパターニングされた基材。
【請求項11】
前記基材が親水性または超親水性を有する、請求項1に記載のパターニングされた基材。
【請求項12】
前記基材が防曇性を有する、請求項1に記載のパターニングされた基材。
【請求項13】
請求項1~12の何れか1項に記載のパターニングされた基材を製造するために基材を直接レーザ干渉パターニングするためのレーザ干渉パターニング装置であって、
-レーザビームを放射するためのレーザ放射源(1)と、
-前記レーザビームの光路(3)に配置されたビームスプリッタ素子(2)と、
-
前記レーザの前記光路内で前記ビームスプリッタ素子に連続して配置されており、サブビームが干渉領域において基材(5)の表面上または体積内で干渉できるように、前記サブビームが通過するように構成された集束素子(4)と、
を備え、
前記ビームスプリッタ(2)は、前記光路(3)内でその光軸に沿って自由に移動可能であり、
前記ビームスプリッタ(2)は、前記レーザ放射源(1)によって放射された入射レーザビームを少なくとも
3つのサブビームに分割するように設定され、
第1の偏向素子(7)は、前記レーザ放射源(1)の前記光路(3)において前記ビームスプリッタ素子(2)に連続して配置されており、前記偏向素子(7)を通過するとき、前記少なくとも3つのサブビームが拡大されるように構成される
ことを特徴とする、レーザ干渉パターニング装置。
【請求項14】
更なる偏向素子(6)は、前記光路(3)において前記レーザ放射源(1)および前記ビームスプリッタ素子(2)に連続して配置されており、前記サブビームが前記更なる偏向素子(6)から出た後、互いに実質的に平行になるように前記サブビームを偏向するように構成されている、請求項
13に記載の装置。
【請求項15】
前記ビームスプリッタ素子(2)は、回折ビームスプリッタ素子または屈折ビームスプリッタ素子である、請求項
13に記載の装置。
【請求項16】
前記
第1の偏向素子(7)が凹レンズである、請求項
13に記載の装置。
【請求項17】
前記更なる偏向素子(6)が凸レンズである、請求項
14に記載の装置。
【請求項18】
前記集束素子(4)が凸レンズである、請求項
13に記載の装置。
【請求項19】
前記装置は、前記
第1のまたは更なる偏向素子と前記集束素子との間の前記光路内に配置された少なくとも1つの偏光素子(8)を備える、請求項
13に記載の装置。
【請求項20】
前記レーザ放射源は、10ナノ秒~10フェムト秒の範囲のパルス幅を有するパルスレーザ放射源である、請求項
13に記載の装置。
【請求項21】
前記レーザ放射源によって放射される前記レーザビームの放射プロファイルがガウスプロファイルまたはトップハットプロファイルに対応する、請求項
13に記載の装置。
【請求項22】
更なる光学素子が前記ビームスプリッタ素子の前に配置されており、これをビーム整形に使用することができる、請求項
13に記載の装置。
【請求項23】
前記装置は、前記基材が取り付けられ、前記レーザ放射源によって放射される前記レーザビーム(1)の前記光路(3)に垂直な、xy平面内で移動可能な保持装置を含む、請求項
13に記載の装置。
【請求項24】
前記基材が透明材料を含む、請求項
13に記載の装置。
【請求項25】
レーザ干渉パターニングによって、マイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の周期的ドット構造を有する基材を製造するための、
特に請求項1~12の何れか1項に記載のパターニングされた基材を製造するための方法であって、以下のステップ、即ち、
a)好ましくは透明材料を含む基材(5)を提供するステップと、
b)レーザ放射源(1)からレーザビームを放射するステップと、
c)ビームスプリッタ素子(2)によって、前記レーザビームを少なくとも3つのサブビームに分割するステップと、
d)前記サブビームが前記基材の表面上または体積内で建設的および破壊的に干渉するように、前記サブビームを前記基材(5)の前記表面上または前記体積内に集束させるステップと、
を含み、前記マイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲の周期的ドット構造が前記基材の前記表面上または前記体積内に生成されるように、前記少なくとも3つのサブビームが前記集束によって前記基材上に重ね合わされ、
前記周期的ドット構造は逆円錐から形成され、
前記逆円錐は、互いに50nm~50μmの範囲の距離で周期的に配置され、
更なる構造が前記周期的ドット構造に重ね合わされており、
前記重ね合わされた構造は、準周期的な波形構造を有し、前記重ね合わされた構造の領域における前記基材の前記表面上の材料は、一連の波山および波谷を有し、その周期は100nm~1000nmの範囲内である
ことを特徴とする、方法。
【請求項26】
前記基材(5)の前記生成された周期的ドット構造の構造周期は、前記ビームスプリッタ素子(2)をその光軸に沿って前記光路(3)内を移動させることによって、マイクロメートルまたはサブマイクロメートル範囲で無段階に調整可能である、請求項
25に記載の方法。
【請求項27】
前記基材(5)は透明材料を含み、前記サブビームは前記透明材料の内部で干渉する、請求項
25に記載の方法。
【請求項28】
以下のステップ、即ち、
c)基材(5)の表面に第1のパルスを印加し、前記基材(5)の前記表面上または前記基材(5)内に第1の干渉ピクセルを生成するステップと、
d)基材(5)の表面に第2のパルスを印加し、前記基材(5)の前記表面上または前記基材(5)内に第2の干渉ピクセルを生成するステップと、
を含み、
前記第1および第2の干渉ピクセルはそれぞれ独立して、マイクロメートルおよびサブマイクロメートル範囲の寸法を有する周期的ドット構造を含み、
前記第2の干渉ピクセルと前記第1の干渉ピクセルとの間のオフセットは、前記干渉周期の10%≦x≦50%の範囲にあることを特徴とする、
請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記第1の干渉ピクセルおよび前記第2の干渉ピクセルの前記ドット構造の前記周期が同一である、請求項
28に記載の方法。
【請求項30】
ステップb)の後、第3のパルスが基材(5)の表面に印加され、第3の干渉ピクセルがマイクロメートルおよびサブマイクロメートル範囲の寸法を有する周期的ドット構造を含み、
前記第3のパルスは、前記基材(5)の前記表面上または前記基材(5)内に第3の干渉ピクセルを生成し、前記第3の干渉ピクセルは、前記第2の干渉ピクセルに対して前記干渉周期の10%≦x≦50%の範囲のオフセットを有する、
請求項
28に記載の方法。
【請求項31】
前記干渉周期の前記オフセットは、少なくとも1つの空間方向において均一である、請求項
28に記載の方法。
【請求項32】
太陽光発電システムにおける、請求項
1~12の何れか1項に記載の前記パターニングされた基材の使用。
【請求項33】
モニター、スクリーンおよびディスプレイの反射防止グレージングとしての、請求項
1~12の何れか1項に記載の前記パターニングされた基材の使用。
【請求項34】
ガラス繊維における、請求項
1~12の何れか1項に記載の前記パターニングされた基材の使用。
【請求項35】
別の基材上に間接的にパターンを適用または形成するためのネガ型としての、請求項
1~12の何れか1項に記載の前記パターニングされた基材の使用。
【国際調査報告】