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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-27
(54)【発明の名称】コイルドコイル融合タンパク質
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20240820BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20240820BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20240820BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240820BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240820BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240820BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240820BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240820BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240820BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240820BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20240820BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240820BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20240820BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240820BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
C07K16/00
C07K14/47
C12N15/13
C12N15/12
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K38/16
A61K48/00
A61K35/76
A61P35/00
C12N15/62 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577954
(86)(22)【出願日】2022-09-28
(85)【翻訳文提出日】2024-01-31
(86)【国際出願番号】 KR2022014508
(87)【国際公開番号】W WO2023055045
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】10-2021-0128551
(32)【優先日】2021-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0043553
(32)【優先日】2022-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0121834
(32)【優先日】2022-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523473316
【氏名又は名称】エヌビオス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】イ,デ-ヒ
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジョン ウン
(72)【発明者】
【氏名】イム,ソン イン
(72)【発明者】
【氏名】シン,ゴウン
(72)【発明者】
【氏名】クォン,ヒョク テク
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,イ ジ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C084AA06
4C084AA07
4C084AA13
4C084BA01
4C084BA22
4C084BA23
4C084BA44
4C084CA53
4C084NA14
4C084ZB26
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA12
4C087NA14
4C087ZB26
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA18
4H045BA19
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA72
4H045FA74
4H045GA22
(57)【要約】
本発明は、自己結合ドメインを含むポリペプチド、前記ポリペプチドを含む融合タンパク質又はこれをコードする核酸分子、若しくは前記ポリペプチド、融合タンパク質又は核酸分子を含む組成物に関する。本発明の融合タンパク質又は組成物は、所望の目的に応じて様々な薬物モイエティ(タンパク質、抗体切片など)を結合又は搭載させてこれをモジュール形式で具現し、自己結合によって結合させることによってターゲットに対する向上した結合力及び/又は薬物の活性増加を達成できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の構成を含む融合タンパク質:
(i)配列番号1のアミノ酸配列、又は前記配列番号1において6番目、27番目及びこれらの組合せからなる群から選ばれるアミノ酸がシステインに変異したアミノ酸配列を含むポリペプチド1;
(ii)配列番号6のアミノ酸配列、又は前記配列番号6において8番目、29番目及びこれらの組合せからなる群から選ばれるアミノ酸がシステインに変異したアミノ酸配列を含むポリペプチド2;及び
(iii)前記ポリペプチド1及び2のN末端及びC末端からなる群から選ばれる1以上の部位に結合している薬物モイエティ;であって、
前記ポリペプチド1及び2は自己結合で結合することを特徴とする、融合タンパク質。
【請求項2】
前記薬物モイエティは、抗体又はその抗原結合断片、又はタンパク質であることを特徴とする、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
前記抗体の抗原結合断片は、scFvであることを特徴とする、請求項2に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
前記タンパク質は、アルブミン結合ペプチド(ABP;Albumin binding peptide)又はトレール(TRAIL;Tumor necrosis factor-related apoptosis-inducing ligand)であることを特徴とする、請求項2に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
前記タンパク質は、トレール三量体(trimer)であることを特徴とする、請求項4に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
前記薬物モイエティは、前記ポリペプチド1又は2のN末端又はC末端にリンカーで結合したことを特徴とする、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
請求項1の融合タンパク質をコードする核酸分子。
【請求項8】
請求項7の核酸分子を含むベクター。
【請求項9】
下記の構成を含む発現構築物:
(i)配列番号1のアミノ酸配列、又は前記配列番号1において6番目、27番目及びこれらの組合せからなる群から選ばれるアミノ酸がシステインに変異したアミノ酸配列を含むポリペプチド1をコードする核酸分子1;及び
(ii)配列番号6のアミノ酸配列、又は前記配列番号6において8番目、29番目及びこれらの組合せからなる群から選ばれるアミノ酸がシステインに変異したアミノ酸配列を含むポリペプチド2をコードする核酸分子2;を含む発現構築物であって、
前記核酸分子1及び2は、同じベクター又は互いに異なるベクターで発現してポリペプチド1及び2が自己結合で結合可能であることを特徴とする、発現構築物。
【請求項10】
請求項8のベクター又は請求項9の発現構築物を含む宿主細胞。
【請求項11】
下記の構成を含む組成物:
i)自己結合ドメイン1として、配列番号2又は3のアミノ酸配列を含むポリペプチド1又は前記ポリペプチド1をコードする核酸分子1;及び
ii)自己結合ドメイン2として、配列番号7又は8のアミノ酸配列を含むポリペプチド2又は前記ポリペプチド2をコードする核酸分子2。
【請求項12】
請求項1の融合タンパク質、請求項7の核酸分子、請求項8のベクター、請求項9の発現構築物、請求項10の宿主細胞、又は請求項11の組成物を含む癌の予防又は治療用薬剤学的組成物。
【請求項13】
請求項1の融合タンパク質、請求項7の核酸分子、請求項8のベクター、請求項9の発現構築物、請求項10の宿主細胞、又は請求項11の組成物を、それを必要とする対象に投与する段階を含む癌の治療方法。
【請求項14】
下記の構成を含むキット:
(i)配列番号1において6番目、27番目及びこれらの組合せからなる群から選ばれるアミノ酸がシステインに変異したアミノ酸配列を含むポリペプチド1又はこれをコードする核酸分子1;
(ii)配列番号6において8番目、29番目及びこれらの組合せからなる群から選ばれるアミノ酸がシステインに変異したアミノ酸配列を含むポリペプチド2又はこれをコードする核酸分子2;及び
(iii)前記ポリペプチド1及び2のN末端及びC末端からなる群から選ばれる1以上の部位に結合している薬物モイエティ又は前記核酸分子1及び2の5’末端又は3’末端からなる群から選ばれる位置に結合している薬物モイエティコーディングヌクレオチド配列(nucleic acid encoding a drug moiety)。
【請求項15】
前記薬物モイエティは、トレール(TRAIL)であることを特徴とする、請求項14に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、共同発現による結合安定性が向上したコイルドコイルスキャフォールドに関し、本発明で提示するコイルドコイルスキャフォールドは、MBD2-p66α(Methyl-binding domain protein 2-Transcriptional repressor p66α)複合体に薬物モイエティ(タンパク質、抗体切片など)が結合し、様々な機能性分子の多重複合体をモジュール形式で具現できる融合タンパク質又は薬物伝達体に関する。
【0002】
〔背景技術〕
現在、使用中であるか開発中である薬物伝達体は、通常、2重薬物搭載が最大であり、搭載される薬物の形態が1つに限定されている。また、新しい薬物を搭載して伝達体を作るためには、既存の薬物伝達体を生産する工程を同一に行わなければならないという非効率性があり、搭載される薬物の組合せを簡便に変え難いという欠点がある。
【0003】
〔先行技術文献〕
〔特許文献〕
〔特許文献1〕US2014-0073566 A1
〔発明の概要〕
〔発明が解決しようとする課題〕
本発明者らは、種々の薬物モイエティ(治療用タンパク質、抗体切片など)を簡便に搭載できながらも、改善された薬効を示すことができる融合タンパク質又は薬物伝達体のプラットホームを開発するために鋭意努力してきた。その結果、MBD2アミノ酸配列の360-393位置を含むポリペプチド及びp66αアミノ酸配列の138-178アミノ酸位置を含むポリペプチドのN末端又はC末端に薬物モイエティを結合させる場合に、前記両方のポリペプチドが自己結合によって結合することによって、ターゲットに対する向上した結合力及び/又は薬物の活性を示すということを確認し、本発明を完成するに至った。
【0004】
したがって、本発明の目的は、自己結合ドメイン1を含むポリペプチド1及び自己結合ドメイン2を含むポリペプチド2を含む融合タンパク質を提供することにある。
【0005】
本発明の他の目的は、前記融合タンパク質をコードする核酸分子を提供することにある。
【0006】
本発明のさらに他の目的は、前記核酸分子を含むベクターを提供することにある。
【0007】
本発明のさらに他の目的は、自己結合ドメイン1を含むポリペプチド1をコードする核酸分子1、及び自己結合ドメイン2を含むポリペプチド2をコードする核酸分子2を含む発現構築物を提供することにある。
【0008】
本発明のさらに他の目的は、前記ベクター又は発現構築物を含むか、前記ベクター又は発現構築物で形質転換された宿主細胞を提供することにある。
【0009】
本発明のさらに他の目的は、前記融合タンパク質、核酸分子、ベクター、発現構築物又は宿主細胞を含む、癌の予防又は治療用薬剤学的組成物を提供することにある。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、前記ポリペプチド1又は核酸分子1、及びポリペプチド2又は核酸分子2を含むキットを提供することにある。
【0011】
本発明の別の目的及び利点は、後述する発明の詳細な説明、特許請求の範囲、及び図面によってより明確になる。
【0012】
〔課題を解決するための手段〕
本発明の一態様によれば、本発明は、自己結合ドメイン1を含むポリペプチド1及び自己結合ドメイン2を含むポリペプチド2を含む融合タンパク質を提供する。
【0013】
本明細書において、用語「融合タンパク質」は、少なくとも2つの遺伝子のヌクレオチド配列を含む核酸分子によって発現したハイブリッドタンパク質を意味する。
【0014】
本明細書において、用語「自己結合ドメイン」は、他の自己結合ドメインと自己結合してコイルドコイルを形成できるタンパク質を意味する。例えば、自己結合ドメイン1は自己結合ドメイン2と自己結合してコイルドコイルを形成できる。前記自己結合ドメインは、相互間に疎水性及び/又はイオン性相互作用である非共有結合を可能にし、個別ドメインが互いに結合(自己結合)してコイルドコイルを形成できるようにする。
【0015】
前記自己結合ドメイン1は、好ましくは、配列番号1のアミノ酸配列、又は前記配列番号1において6番目、27番目及びこれらの組合せからなる群から選ばれるアミノ酸がシステインに変異したアミノ酸配列を含み、より好ましくは、前記配列番号1において6番目、27番目及びこれらの組合せからなる群から選ばれるアミノ酸がシステインに変異したアミノ酸配列を含む。
【0016】
前記自己結合ドメイン2は、好ましくは、配列番号6のアミノ酸配列、又は前記配列番号6において8番目、29番目及びこれらの組合せからなる群から選ばれるアミノ酸がシステインに変異したアミノ酸配列を含み、より好ましくは、前記配列番号6において8番目、29番目及びこれらの組合せからなる群から選ばれるアミノ酸がシステインに変異したアミノ酸配列を含む。
【0017】
前記アミノ酸位置でのシステインへの変異は、2の自己結合ドメイン間共有結合(二硫化結合)をさらに誘導し、より安定した融合タンパク質を形成可能にする。
【0018】
本発明の一実施例によれば、前記自己結合ドメイン1のシステイン変異位置(配列番号1において6番目、27番目の位置)及び自己結合ドメイン2のシステイン変異位置(配列番号6において8番目、29番目の位置)ではなく他の位置(例えば、配列番号1において16番目、20番目の位置及び/又は配列番号6において18番目、11番目の位置など)にシステイン変異が導入される場合に、安定した融合タンパク質を形成できないか、発現量が顕著に低下することが確認できる(図3A及び図3B)。
【0019】
本発明の好ましい具現例によれば、前記自己結合ドメイン1は、配列番号2又は3のアミノ酸配列を含むものである。
【0020】
本発明の好ましい具現例によれば、前記自己結合ドメイン2は、配列番号7又は8のアミノ酸配列を含むものである。
【0021】
本発明の好ましい具現例によれば、前記融合タンパク質は、配列番号2のアミノ酸配列を含む自己結合ドメイン1、及び配列番号7のアミノ酸配列を含む自己結合ドメイン2を含むものである。
【0022】
本発明の好ましい具現例によれば、前記融合タンパク質は、配列番号3のアミノ酸配列を含む自己結合ドメイン1、及び配列番号8のアミノ酸配列を含む自己結合ドメイン2を含むものである。
【0023】
本発明の融合タンパク質は、1以上の薬物モイエティ(drug moiety)をさらに含んでよい。
【0024】
本発明の好ましい具現例によれば、前記融合タンパク質は、前記自己結合ドメイン1、又は自己結合ドメイン1を含むポリペプチド1のN末端及びC末端からなる群から選ばれる1以上の部位に薬物モイエティを含む。
【0025】
本発明の好ましい具現例によれば、前記融合タンパク質は、前記自己結合ドメイン2、又は自己結合ドメイン2を含むポリペプチド2のN末端及びC末端からなる群から選ばれる1以上の部位に薬物モイエティを含む。
【0026】
本明細書で使われる用語「ポリペプチド1」は、前記自己結合ドメイン1、又は前記自己結合ドメイン1を含むペプチドであり、自己結合ドメイン2、又は前記自己結合ドメイン2を含むペプチド2と自己結合する性質を有するペプチドを意味する。
【0027】
本明細書で使われる用語「ポリペプチド2」は、前記自己結合ドメイン2、又は前記自己結合ドメイン2を含むペプチドであり、自己結合ドメイン1、又は前記自己結合ドメイン1を含むペプチド1と自己結合する性質を有するペプチドを意味する。
【0028】
本明細書で使われる用語「薬物モイエティ」は、抗体又はその抗原結合断片、又はタンパク質(例えば、治療用タンパク質、リガンド、レセプター、Fc部位)など、他の種類のタンパク質又は物質と相互作用するか、発現時に特定機能を有し得る物質のことを指す。前記タンパク質は、全長タンパク質の他に、特定機能を担当するドメイン又はポリペプチドの一部であってもよく、天然型又は人為的な配列であってよい。
【0029】
本明細書において、用語「抗体」は、免疫学的に特定抗原と反応性を有する免疫グロブリン分子を含む、抗原を特異的に認識する受容体役割を担うタンパク質分子を意味し、多クローン抗体及び単クローン抗体のいずれをも含む。
【0030】
抗体は、完全な全長(full-length)抗体の形態の他、抗体分子の抗原結合断片(抗体断片)も含む。完全な抗体は、2個の全長の軽鎖及び2個の全長の重鎖を有する構造であり、それぞれの軽鎖は重鎖と二硫化結合で連結されている。重鎖定常領域は、ガンマ(γ)、ミュー(μ)、アルファ(α)、デルタ(δ)、及びエプシロン(ε)のタイプを有し、サブクラスとして、ガンマ1(γ1)、ガンマ2(γ2)、ガンマ3(γ3)、ガンマ4(γ4)、アルファ1(α1)、及びアルファ2(α2)を有する。軽鎖の定常領域は、カッパ(kappa,κ)及びラムダ(lambda,λ)のタイプを有する。
【0031】
本明細書において、用語「抗体の抗原結合断片」は、全抗体分子内で抗原を特異的に認識し、抗原-抗体結合機能を保有する断片を意味し、単一ドメイン抗体(sdAb)、一本鎖抗体(scFv)、Fab、F(ab’)、F(ab’)2、及びFvなどを含む。断片の例には、VL、VH、Cκ(又は、CL)、及びCH1ドメインで構成された1価断片(Fab断片);ヒンジ領域で二硫化物ブリッジによって連結された2個のFab断片を含む2価断片(F(ab’)2断片);VH及びCH1ドメインで構成されたFd断片;抗体の1つのアーム(arm)のVL及びVHドメイン、及び二硫化物-連結されたFv(sdFv)で構成されたFv断片;VHドメインで構成されたdAb断片;及び、分離された相補性決定領域(CDR)又はリンカーによって選択的につながり得る2つ以上の分離されたCDRの組合せを含む。また、scFvは、VLとVH領域が対をなして1価分子を形成した単一タンパク質鎖をなすようにリンカーによってつながってよい。このような一本鎖抗体も抗体の断片に含まれる。また、前記抗体又は抗体の断片は、2個の重鎖分子と2個の軽鎖分子を含むテトラマー抗体;抗体軽鎖モノマー;抗体重鎖モノマー;抗体軽鎖ダイマー、抗体重鎖ダイマー;イントラボディー;1価抗体;ラクダ抗体;及び単一ドメイン抗体(sdAb)を含む。
【0032】
本発明の好ましい具現例によれば、前記薬物モイエティとして抗体の抗原結合断片は、scFvである。
【0033】
本発明の好ましい具現例によれば、前記薬物モイエティとしてタンパク質は、アルブミン結合ペプチド(ABP;Albumin binding peptide)又はトレール(TRAIL;Tumor necrosis factor-related apoptosis-inducing ligand)である。
【0034】
本明細書で使われる用語「アルブミン結合ペプチド」は、血液浸透圧の維持、様々な基質の輸送などにおいて重要な役割を担う多機能性血漿タンパク質であるアルブミンに結合するペプチド又はタンパク質を意味する。アルブミンは、FcRnに対する結合力を有しているので、3週の長い血漿半減期を有し、アルブミンに結合活性を保有するアルブミン結合ペプチドの配列を融合タンパク質に含めることによって半減期増加の特性を付与することができる。当業界には種々のアルブミン結合ペプチドが開示(Zorzi et al.,Medchemcomm.2019 Jul 1;10(7):1068-1081など)されており、本明細書に参照によって組み込まれる。
【0035】
本明細書で使われる用語「トレール」は、腫瘍壊死因子(Tumor necrosis factor,TNF)の一種で、腫瘍細胞の自己細胞死滅を誘導するリガンドを意味する。TRAILは4個の受容体を有しており、前記受容体のうち死滅受容体(death receptor,DR4、DR5)は癌細胞株において、デコイ受容体(Decoy receptor,DcR1、DcR2)は正常細胞株において過発現する。前記TRAILは、腫瘍細胞の表面にあるDR4及びDR5のような死滅受容体に結合して腫瘍細胞の死滅を誘導することができる。前記デコイ受容体は、c末端に死滅ドメインを有しておらず、細胞死滅信号伝達が細胞内に伝達されない。したがって、TRAILに基づく治療は、正常細胞に対しては無害であり、様々な癌細胞株に対してのみ毒性を誘導するという特徴を有することから、非常に効果的な次世代抗癌治療剤である。しかし、TRAILは、このような長所にもかかわらず、トレール単量体(monomer)の活性型である三量体(homotrimer)は非共有結合で連結されているため、構造安定性及び体内持続性が弱く、臨床的応用に制限がある。
【0036】
本発明の好ましい具現例によれば、前記薬物モイエティとしてタンパク質はトレール三量体(trimer)である。
【0037】
前記トレール三量体は、前記自己結合ドメイン1、又は自己結合ドメイン1を含むポリペプチド1のN末端及び/又はC末端に結合するか、前記自己結合ドメイン2、又は自己結合ドメイン2を含むポリレペプチド2のN末端及び/又はC末端に結合することによって、三量体、六量体、九量体、十二量体などを融合タンパク質内に構築できる。
【0038】
本発明の一実施例によれば、トレール三量体-自己結合ドメイン1及びトレール三量体-自己結合ドメイン2が自己結合して形成されたトレール六量体は、1)トレール三量体-自己結合ドメイン1、又は2)トレール三量体-自己結合ドメイン2が単独で発現した場合と比較して、死滅受容体との親和度が2~5倍増加したことが確認できる(図4)。
【0039】
本発明のさらに他の実施例によれば、トレール三量体-自己結合ドメイン1及びトレール三量体-自己結合ドメイン2が自己結合して形成されたトレール六量体は、1)トレール三量体-自己結合ドメイン1、又は2)トレール三量体-自己結合ドメイン2が単独で発現した場合と比較して癌細胞死滅率が4倍以上増加したことが確認できる(図5A及び図5B)。
【0040】
本明細書で使われる用語「N末端」及び「C末端」は、ポリペプチドにおいてアミノ末端及びカルボキシ末端を意味する。前記薬物モイエティは、同種(例えば、トレール三量体+トレール三量体など)のタンパク質が、前記自己結合ドメイン1、又は自己結合ドメイン1を含むポリペプチド1のN末端及び/又はC末端に結合するか、前記自己結合ドメイン2、又は自己結合ドメイン2を含むポリレペプチド2のN末端及び/又はC末端に結合してよく、異種(例えば、トレール三量体+ABP、又はトレール三量体+ABP+scFvなど)のタンパク質がそれぞれのN末端及び/又はC末端に結合してもよく、様々な機能性分子の多重複合体をモジュール形式で具現することができる。
【0041】
本発明の好ましい具現例によれば、前記薬物モイエティは、前記ポリペプチド1又は2のN末端又はC末端にリンカーで結合したものであってよい。
【0042】
本明細書に使われた用語「リンカー」は、前記ポリペプチド1又は2のN末端又はC末端と薬物モイエティのN末端又はC末端との間に存在するアミノ酸配列を意味する。前記リンカーは任意のアミノ酸組合せであってよいが、これに限定されず、前記ポリペプチド1又は2と薬物モイエティの結合及び解離を促進する配列であるが、コイルドコイル形成ドメインに柔軟性を付与したり、コイルドコイル形成ドメインが結合する時に発生する立体障害などを減少させる目的で導入することができる。前記リンカーは、任意の長さのグリシン及びセリン豊富配列が好ましく、例えば、Gly-Ser、Gly-Gly-Ser、Gly-Gly-Gly-Ser、Gly-Gly-Gly-Gly-Ser又はこれらの組合せが反復されるものであってよいが、これに限定されるものではない。
【0043】
本発明の好ましい具現例によれば、本発明は、下記の構成を含むコイルドコイル(Coiled-Coil)複合体に関する:
(i)配列番号1において6番目、27番目及びこれらの組合せからなる群から選ばれるアミノ酸がシステインに変異したポリペプチド1;及び
(ii)配列番号6において8番目、29番目及びこれらの組合せからなる群から選ばれるアミノ酸がシステインに変異したポリペプチド2。
【0044】
本発明の他の態様によれば、本発明は、前記融合タンパク質又はコイルドコイル複合体をコードする核酸分子を提供する。
【0045】
本明細書において、用語「核酸分子」は、DNA(gDNA及びcDNA)及びRNA分子を包括的に含む意味を有し、核酸分子において基本構成単位であるヌクレオチドは、自然のヌクレオチドだけでなく、糖又は塩基部位が修飾された類似体(analogue)も含む(Scheit,Nucleotide Analogs,John Wiley,New York(1980);Uhlman and Peyman,Chemical Reviews,(1990)90:543-584)。本発明の融合タンパク質をコードする核酸分子の配列は修飾されてよい。前記修飾は、ヌクレオチドの追加、欠失、又は非保存的置換又は保存的置換を含む。
【0046】
本発明の核酸分子は、上述したヌクレオチド配列に対して実質的な同一性を示すヌクレオチド配列も含むものと解釈される。上記の実質的な同一性は、上述した本発明のヌクレオチド配列と任意の他の配列を極力対応するようにアラインし、当業界で通常用いられるアルゴリズムによってアラインされた配列を分析した場合に、少なくとも80%の相同性、一特定例では少なくとも90%の相同性、他の特定例では少なくとも95%の相同性を示すヌクレオチド配列を意味する。
【0047】
本発明の好ましい具現例によれば、前記ポリペプチド1をコードする核酸分子(核酸分子1)及び/又は前記ポリペプチド2をコードする核酸分子(核酸分子2)の5’末端又は3’末端からなる群から選ばれる位置に、薬物モイエティをコードするヌクレオチド配列が含まれてよい。
【0048】
本発明のさらに他の態様によれば、本発明は、前記核酸分子を含むベクターを提供する。
【0049】
本明細書において、用語「ベクター」は、前記核酸分子配列を複製できる細胞への導入のためにポリヌクレオチド配列を挿入できる伝達体を意味する。ポリヌクレオチド配列は、外生(Exogenous)又は異種(Heterologous)であってよい。ベクターとしては、プラスミド、コスミドベクター、及びウイルスベクター(レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ-付属ウイルスベクターなど)を挙げることができるが、これに限定されない。当業者は標準的な組換え技術によってベクターを構築することができる(Maniatis,et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1988;及び、Ausubel et al.,In: Current Protocols in Molecular Biology,John,Wiley & Sons,Inc,NY,1994など)。
【0050】
本明細書において、用語「発現構築物」は、転写される遺伝子産物のうち少なくとも一部分をコードするヌクレオチド配列を含むベクターを意味する。一部の場合には、以降、RNA分子がタンパク質、ポリペプチド、又はペプチドとして翻訳される。発現ベクターには様々な調節配列を含んでよい。転写及び翻訳を調節する調節配列に加え、ベクター及び発現ベクターにはさらに他の機能も提供する核酸配列も含まれてよい。前記発現構築物は、同一のベクター内に前記ポリペプチド1をコードする核酸分子1及び前記ポリペプチド2をコードする核酸分子2を同時に含むか、互いに異なるベクター内に含んでよい。前記核酸分子1及び2はインビトロ又はインビボで同一のベクター又は互いに異なるベクターから発現したポリペプチド1及び2が自己結合で結合して融合タンパク質を形成することができる。
【0051】
本発明のさらに他の態様によれば、本発明は、前述したベクター又は発現構築物を含むか、前記ベクター又は発現構築物で形質転換された宿主細胞を提供する。
【0052】
本明細書において、用語「細胞」は、真核細胞及び原核細胞を含み、前記ベクターを複製可能であるか、ベクターによってコードされる遺伝子を発現させることができる任意の形質転換可能な細胞を意味する。細胞は、前記ベクターによって形質感染(Transfected)、形質導入(Transduced)又は形質転換(Transformed)されてよく、これは、外生のポリヌクレオチド(核酸分子)が宿主細胞内に伝達又は導入される過程を意味する。本明細書において、用語「形質転換」は、前記形質感染(Transfected)及び形質導入(Transduced)を含む意味で使われる。
【0053】
本発明の(宿主)細胞は限定されないが、好ましくは、昆虫細胞又は哺乳動物細胞、より好ましくは昆虫細胞の場合に、Sf9、哺乳動物細胞の場合に、HEK293細胞、HeLa細胞、ARPE-19細胞、RPE-1細胞、HepG2細胞、Hep3B細胞、Huh-7細胞、C8D1a細胞、Neuro2A細胞、CHO細胞、MES13細胞、BHK-21細胞、COS7細胞、COP5細胞、A549細胞、MCF-7細胞、HC70細胞、HCC1428細胞、BT-549細胞、PC3細胞、LNCaP細胞、Capan-1細胞、Panc-1細胞、MIA PaCa-2細胞、SW480細胞、HCT166細胞、LoVo細胞、A172細胞、MKN-45細胞、MKN-74細胞、Kato-III細胞、NCI-N87細胞、HT-144細胞、SK-MEL-2細胞、SH-SY5Y細胞、C6細胞、HT-22細胞、PC-12細胞、NIH3T3細胞などを用いることができる。
【0054】
本発明の宿主細胞は、好ましくは単離した宿主細胞である。
【0055】
本発明のさらに他の態様によれば、本発明は、前述した融合タンパク質、前記核酸分子、前記ベクター、前記発現構築物、又は前記細胞を含む組成物を提供する。
【0056】
本発明のさらに他の態様によれば、本発明は、i)自己結合ドメイン1として、配列番号2又は3のアミノ酸配列を含むポリペプチド1又は前記ポリペプチド1をコードする核酸分子1、及びii)自己結合ドメイン2として、配列番号7又は8のアミノ酸配列を含むポリペプチド2又は前記ポリペプチド2をコードする核酸分子2、を含む組成物を提供する。
【0057】
本発明において、前記「ポリペプチド」、「核酸分子」、「薬物モイエティ」など、上述した項目と同じ内容については、明細書の複雑性及び反復を避けるために省略する。
【0058】
前記組成物に含まれる、配列番号2又は3のアミノ酸配列を含むポリペプチド1及び配列番号7又は8のアミノ酸配列を含むポリペプチド2のN末端及びC末端からなる群から選ばれる1以上の部位には薬物モイエティが結合してよい。
【0059】
したがって、前記組成物は、i)ポリペプチド1-薬物モイエティ、薬物モイエティ-ポリペプチド1、又は薬物モイエティ-ポリペプチド1-薬物モイエティ、及びii)ポリペプチド2-薬物モイエティ、薬物モイエティ-ポリペプチド2、又は薬物モイエティ-ポリペプチド2-薬物モイエティを含んでよい。
【0060】
また、前記組成物に含まれる、配列番号2又は3のアミノ酸配列を含むポリペプチド1をコードする核酸分子1及び配列番号7又は8のアミノ酸配列を含むポリペプチド2をコードする核酸分子2の5’末端又は3’末端からなる群から選ばれる位置に、薬物モイエティをコードするヌクレオチド配列が結合してよい。
【0061】
また、前記組成物に含まれる、核酸分子1、核酸分子2、及びこれに結合した薬物モイエティをコードするヌクレオチド配列は、1つ又は複数のベクターに挿入された形態で組成物内に存在してよい。
【0062】
本発明の好ましい具現例によれば、前記組成物は、癌の予防又は治療用薬剤学的組成物である。
【0063】
本発明のさらに他の態様によれば、本発明は、前述した融合タンパク質、前記核酸分子、前記ベクター、前記発現構築物、前記細胞又は前記組成物の薬剤学的有効量を対象体に投与する段階を含む癌の予防又は治療方法を提供する。
【0064】
本発明のさらに他の態様によれば、本発明は、前述した融合タンパク質、前記核酸分子、前記ベクター、前記発現構築物、前記細胞又は前記組成物の治療用途(for use in therapy)を提供する。
【0065】
本発明の好ましい具現例によれば、前記治療用途は、癌の治療用途である。
【0066】
本明細書において、用語「予防」は、疾患又は疾病を保有していると診断されたことはないが、このような疾患又は疾病にかかる可能性のある対象体において疾患又は疾病の発生を抑制することを意味する。
【0067】
本明細書において、用語「治療」は、(a)疾患、疾病又は症状の発展の抑制;(b)疾患、疾病又は症状の軽減;又は、(c)疾患、疾病又は症状を除去すること、を意味する。
【0068】
したがって、本発明の組成物は、それ自体で癌治療用組成物であってもよく、或いは、他の薬理成分と併せて投与されてその治療反応性を向上させる治療補助剤として適用されてもよい。そこで、本明細書において、用語「治療」又は「治療剤」は、「治療補助」又は「治療補助剤」の意味を含む。
【0069】
本明細書において、用語「投与」又は「投与する」は、本発明の組成物の治療的有効量を対象体に直接に投与することによって、対象体の体内で同一の量が形成されるようにすることを指す。
【0070】
本発明におい、用語「治療的有効量」は、本発明の薬剤学的組成物を投与しようとする個体に組成物中の薬理成分が治療的又は予防的効果を提供するのに十分な程度で含まれた組成物の含有量を意味し、よって、「予防的有効量」を含む意味である。
【0071】
本明細書において、用語「対象体」は、これに限定されないが、ヒト、マウス、ラット、ギニアピッグ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、サル、チンパンジー、ヒヒ又はアカゲザルを含む。具体的には、本発明の対象体はヒトである。
【0072】
薬剤学的に許容される担体、賦形剤又は安定剤(Remington’s Pharmaceutical Sciences(1990) Mack Publishing Co.,Easton,PA)中で所望の程度の純度を有する、本明細書に開示の組成物が本明細書に開示される。許容される担体、賦形剤又は安定剤は、使用された投薬量及び濃度で受恵者に非毒性であり、バッファー、例えばホスフェート、シトレート及び他の有機酸;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;保存剤(例えば、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えばメチル又はプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及び、m-クレゾール);低分子量(約10個残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン;親水性重合体、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、又はリシン;単糖類、二糖類、及びグルコース、マンノース、又はデキストリンを含む他の炭水化物;キレート化剤、例えばEDTA;糖、例えばスクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトール;塩形成反対イオン、例えばナトリウム;金属複合体(例えば、Zn-タンパク質複合体);及び/又は、非イオン界面活性剤、例えばTWEEN(登録商標)、PLURONICS(登録商標)、又はポリエチレングリコール(PEG)を含む。
【0073】
一部の具体例において、薬剤学的組成物は、本明細書に開示の融合タンパク質、核酸分子、ベクター、発現構築物又は細胞を、薬剤学的に許容される担体中に含む。特定具体例において、薬剤学的組成物は、本明細書に開示の融合タンパク質、核酸分子、ベクター、発現構築物又は細胞の有効量、及び選択的に1つ以上の追加の予防又は治療剤を、薬剤学的に許容される担体中に含む。一部の具体例において、融合タンパク質、核酸分子、ベクター、発現構築物又は細胞は、薬剤学的組成物に含まれた唯一の活性成分である。
【0074】
非経口製造物において使われる薬剤学的に許容される担体は、水性ビークル、非水性ビークル、抗菌剤、等張剤、バッファー、抗酸化剤、局所痲酔剤、懸濁及び分散剤、乳化剤、金属イオンの封鎖又はキレート化剤、及び他の製薬的に許容される物質を含む。水性ビークルの例は、塩化ナトリウム注射液、点滴注射液、等張デキストロース注射液、滅菌水注射液、デキストロース及びラクテート点滴注射液を含む。非水性ビークルは、植物起源の固定油、綿実油、とうもろこし油、胡麻油及びピーナッツ油を含む。静菌又は精真菌濃度の抗菌剤が多回用量容器にパッケージされた非経口製造物に添加されてよく、これらは、フェノール又はクレゾール、水銀含有物質、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチル及びプロピルp-ヒドロキシベンゾ酸エステル、チメロサール、塩化ベンザルコニウム及び塩化ベンゼトニウムを含む。等張剤は、塩化ナトリウム及びデキストロースを含む。バッファーは、ホスフェート及びシトレートを含む。抗酸化剤は、重硫酸ナトリウムを含む。局所痲酔剤は、プロカイン塩酸塩を含む。懸濁及び分散剤は、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びポリビニルピロリドンを含む。乳化剤は、ポリソルベート80(TWEEN(登録商標)80)を含む。金属イオンの封鎖又はキレート化剤は、EDTAを含む。製薬学的担体は、また、水混和性ビークル用エチルアルコール、ポリエチレングリコール及びプロピレングリコールを含み、pH調整用水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸又は乳酸を含む。
【0075】
薬剤学的組成物は、対象に対する任意の投与経路に合わせて製剤化してよい。投与経路の具体的な例は、鼻内、経口、非経口、脊髄腔内、脳室内、肺、皮下、又は心室内経路を含む。皮下、筋肉内又は静脈内注射を特徴とする非経口投与も考慮される。注射可能物質が従来の形態で、液体溶液又は懸濁液、注射前に液体中で溶液又は懸濁液になるのに適した固体形態、又はエマルジョンとして製造されてよい。注射可能物質、溶液及びエマルジョンは、また、1つ以上の賦形剤を含有する。適宜な賦形剤は、例えば、水、食塩水、デキストロース、グリセロール又はエタノールである。これに加え、所望であれば、投与される製薬学的組成物は、また、少量の非毒性補助物質、例えば湿潤又は乳化剤、pH緩衝剤、安定剤、溶解性増進剤、及び他の製剤、例えばナトリウムアセテート、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミンオレート及びシクロデキストリンを含有できる。
【0076】
薬剤学的組成物の非経口投与用製造物は、直に注射可能な滅菌溶液、皮下注射用錠剤を含む、使用直前に溶媒と直に組み合わせ可能な滅菌乾燥可溶性製品、例えば凍結乾燥した粉末、直に注射可能な滅菌懸濁液、使用直前にビークルと直に組み合わせ可能な滅菌乾燥不溶性製品、及び滅菌エマルジョンを含む。溶液は、水性又は非水性であってよい。
【0077】
本明細書に開示の薬剤学的組成物は、また、治療される対象の特定組織、受容体、又は他の身体領域に標的化されるように製剤化してよい。様々な標的化方法が当業者に公知されている。このような標的化方法を本組成物に使用することが考慮される。標的化方法の非制限的な例は、米国特許第6,316,652号、第6,274,552号、第6,271,359号、第6,253,872号、第6,139,865号、第6,131,570号、第6,120,751号、第6,071,495号、第6,060,082号、第6,048,736号、第6,039,975号、第6,004,534号、第5,985,307号、第5,972,366号、第5,900,252号、第5,840,674号、第5,759,542号、及び第5,709,874号を参照する。特定の具体例において、本明細書に開示の薬剤学的組成物は、癌を治療するために使われてよい。
【0078】
生体内投与に使用される組成物は、滅菌されてよい。例えば、滅菌濾過膜を用いた濾過によって滅菌されてよい。
【0079】
本発明のさらに他の態様によれば、本発明は、下記の構成を含むキットを提供する:
(i)配列番号1において6番目、27番目及びこれらの組合せからなる群から選ばれるアミノ酸がシステインに変異したアミノ酸配列を含むポリペプチド1又はこれをコードする核酸分子1;
(ii)配列番号6において8番目、29番目及びこれらの組合せからなる群から選ばれるアミノ酸がシステインに変異したアミノ酸配列を含むポリペプチド2又はこれをコードする核酸分子2;及び
(iii)前記ポリペプチド1及び2のN末端及びC末端からなる群から選ばれる1以上の部位に結合している薬物モイエティ又は前記核酸分子1及び2の5’末端又は3’末端からなる群から選ばれる部位に結合している薬物モイエティコーディングヌクレオチド配列(nucleic acid encoding a drug moiety)。
【0080】
本発明において前記「ポリペプチド」、「核酸分子」、「薬物モイエティ」など、前述した項目と同じ内容については、明細書の複雑性及び反復を避けるために省略する。
【0081】
一部の具体例において、本明細書に開示の1つ以上の(i)ポリペプチド1又はこれをコードする核酸分子1、(ii)ポリペプチド2又はこれをコードする核酸分子2、及び(iii)前記ポリペプチド1及び2のN末端及びC末端からなる群から選ばれる1以上の部位に結合している薬物モイエティ又は前記核酸分子1及び2の5’末端又は3’末端からなる群から選ばれる位置に結合している薬物モイエティコーディングヌクレオチド配列で満たされた1つ以上の容器;選択的な使用説明書;を含む薬剤学的パック又はキットが本明細書に開示される。一部の具体例において、キットは、本明細書に開示の薬剤学的組成物及び本明細書に開示の任意の予防又は治療剤を含有する。一部の具体例において、キットは、本明細書に開示の組成物に関する説明書を含む癌の予防又は治療用組成物が開示される。
【0082】
〔発明の効果〕
本発明の特徴及び利点を要約すれば、次の通りである:
(i)本発明は、自己結合ドメインを含むポリペプチド、前記ポリペプチドを含む融合タンパク質又はこれをコードする核酸分子、若しくは前記ポリペプチド、融合タンパク質又は核酸分子を含む組成物を提供する。
【0083】
(ii)本発明の融合タンパク質は、所望の目的に応じて様々な薬物モイエティ(タンパク質、抗体切片など)を結合又は搭載させてそれをモジュール形式で具現し、自己結合によって結合させることによって、ターゲットに対する向上した結合力及び/又は薬物の活性増加を達成することができる。
【0084】
〔図面の簡単な説明〕
図1A〕Alphafold2を用いてコイルC’-GFP-6xHis及びコイルC-mCherry-6xHisの構造を予測した結果である。
【0085】
図1B〕精製されたC’-GFP及びC-mCherryの分子量をSDS-PAGEで測定した結果である。
【0086】
図2A〕コイル融合蛍光タンパク質が正しく折り畳まれたかを確認するためにNative PAGEを行った結果である。
【0087】
図2B〕等温適正熱量計(ITC)を用いてC’-GFP及びC-mCherry間の熱力学を調べて結合媒介変数を決定した結果である。
【0088】
図3A〕Ala27-Ile8、Thr6-Arg29、Coiled coil_F1、及びCoiled coil_F2が安定した複合体を形成するか否かを確認した結果である。
【0089】
図3B〕Ala27-Ile8、Thr6-Arg29、Coiled coil_F1、及びCoiled coil_F2の相対的発現量を比較した結果である。
【0090】
図3C〕Ala27-Ile8のFRET効率を100%とした時に、Thr6-Arg29、C’-GFP/C-mCherryのFRET効率を相対的に比較した結果である。
【0091】
図4〕トレール六量体と死滅受容体との親和度(DR and scTRAIL-C+scTRAIL-C’)を、トレール三量体-C又はトレール三量体-C’と死滅受容体との親和度(DR and scTRAIL-C or DR and scTRAIL-C’)と比較した結果である。
【0092】
図5A〕陽性対照群(R&D TRAIL)、トレール三量体-C(I)試験群、トレール三量体-C’(II)試験群及びトレール六量体試験群(I+II)を処理した膠芽細胞腫細胞株を流細胞分析機(FACS)を用いて観察した結果である。
【0093】
図5B〕陽性対照群(PC)、トレール三量体-C試験群(T1)、トレール三量体-C’(T2)試験群及びトレール六量体試験群(T3)の癌細胞死滅率を比較した結果である。
【0094】
〔発明を実施するための形態〕
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は単に本発明をより具体的に説明するためのもので、本発明の要旨によって本発明の範囲がこれらの実施例によって限定されないということは、当業界における通常の知識を有する者にとって明らかであろう。
【0095】
<実施例>
<材料及び方法>
<1.材料>
NaCl(塩化ナトリウム)、イミダゾール、NaOH(水酸化ナトリウム)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、グリセロール(99.8%)、メチルアルコール(99.8%)、酢酸(99.7%)、H2PO4(リン酸二水素)は、サムチョン(SAMCHUN)から購入した。酵母抽出物、寒天、6N-HCl(6N-Hydrochloric acid)及びブロモフェノールブルー(Bromophenol blue)はデジョン(DAEJUNG)から購入した。BL21(DE3)chemically competent E.coliは、エンザイオミックス(Enzynomics)から購入した。10% SDS溶液、DTT(DL-Dithiothreitol)及びCoomassie bright blue G-250染色溶液は、バイオセサン(Biosesang)から購入した。Bacto tryptoneは、BD DIFCOから購入した。アンピシリンナトリウム塩及びリソザイムはSIGMAから購入した。イソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノサイド(IPTG)は、バイオニア(BIONEER)から購入した。DPBS(Dulbecco’s Phosphate Buffered Saline)は、ウェルジン(WELGENE)から購入した。グリシンはドクサン(DUKSAN)から購入した。Tris/Gycine SDS Pre-cast gel 8~16%及びTris/Glycine non-SDS Pre-cast gel 12%は、KOMABIOTECHから購入した。ポリプロピレンカラムとPD10カラムはそれぞれ、QIAGEN及びGEヘルスケアから購入した。Pierce Biotechnology Inc.の染色されていないタンパク質MWマーカーをSDS-PAGE分析に使用した。
【0096】
<2.プラスミド構築及びバクテリア菌株>
ヒトMBD2又はその変異体(アミノ酸360-393、配列番号1~5)又はp66又はその変異体(アミノ酸138-178、配列番号6~10)のコイルドコイル(coiled-coil)領域をエンコードする挿入物を、アンピシリン耐性を持つpET21aに挿入した。pET-GFP-p66αは、pET21aのNdeIとXhoIとの間にGFP-p66αをクローニングして生成されたし、mCherry-MBD2もpET21aのNdeIとXhoIとの間にクローニングされた。前記実験はBIONICSで行われた。
【0097】
【表1】
【0098】
ヒトMBD2又はその変異体、及びp66α又はその変異体配列
<3.タンパク質発現及び精製>
- 培養
BL21[DE3](chemically competent cell)を氷の上で解凍させ、それぞれ50ulずつ取って微小遠心管(microcentrifuge tube)に入れ、発現ベクター1ulを加えた。この時、陰性対照用微小遠心管2個を準備した後、一方には発現ベクターを追加し、他方には発現ベクターを追加しないで行った。氷の上に30分、42℃で30秒熱衝撃、氷の上に2分置いた。その後、Luria Bertani培地200ulを添加した後、それぞれ70ulずつ取ってLuria Bertani寒天プレートに吸収させた。最後に、37℃に設定したインキュベーターで約12時間以上コロニーを採取し、Luria Bertani培地5mlに入れ、振盪インキュベーターから37℃、200rpmで一晩かけて培養した。Luria Bertani培地400mLを取って1L三角フラスコに入れ、37℃及び200rpmに設定された振盪培養器に入れた。温度が調節されると、アンピシリン400ulを添加し、チューブ培養物を添加し、A600 0.6でイソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシドで誘導した。A600が測定されて2に到達すると細胞を収集した。全ての吸光度は、Biodrop Duo Micro Volume Spectrophotometer(BIODROP)で測定された。
【0099】
- 細胞収穫/溶解
遠心分離用として、表現された培地の重量を正確に半分ずつ分けてOak Ridge Centrifuge Tubesに入れ、4000rcf、10分、4℃で遠心分離した後に上澄液を捨て、沈殿した細胞を-20℃で保管した。各細胞ペレットに20mL溶解緩衝液を追加し、ペレットを溶解させた。その後、溶かした溶液を50mL円錐形チューブに取り込み、リゾチーム400ulを加え、ローテ-ターを用いて4℃で30分間混合した。よく混合された溶液を氷の上で超音波処理した後、7分間超音波処理し、10000rcf、20分、4℃で遠心分離して沈殿物を捨て、上澄液を収集した。
【0100】
- 親和力精製
溶液にNi-NTAアガロース1.5mLを添加した後、ローテーターで10分間混合した。溶液でタンパク質のみを得るために溶液をポリプロピレンカラム(5mL)に追加した。洗浄緩衝液で不純物を除去するためにビーズ上に約15mLを流した。500ulずつビーズに溶出バッファー(elution buffer)を5回添加し、カラムから出る溶液を、滅菌されたマイクロチューブ(micro tube)に入れた。精製されたGFP-p66alphaとmCherry-MBD2は溶出バッファーに入っているので、バッファーをPBSに入れ替えた。PD10カラムをPBSで満たした後、タンパク質含有溶液2.5mLを追加し、PBS 3mLを追加することで、タンパク質のバッファーを変更した。
【0101】
- サイズ排除クロマトグラフィー(FPLC)
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)はPBSで平衡化されたProteoSEC Dynamic 11/303-70 HR SECカラム(Protein Ark,UK)で行われた。Ni-NTAで溶出された試料を遠心フィルターで濃縮し、0.22μmシリンジフィルターで濾過してカラムにロードした。1ml/minの流速でPBSを使ってAKTAprime plusにおいてクロマトグラフィーを行い、溶出されたタンパク質分画を別に収集した。
【0102】
<4.タンパク質電気泳動>
タンパク質精製の様々な段階で収集されたサンプルを、ナトリウムドデシルサルフェート(SDS)を含有する12%不連続ポリアクリルアミドゲルで分析した。タンパク質サンプルを純粋な蒸留水と混合し、SDS-PAGEで分離する前に98℃で7分間培養した。タンパク質を視覚化するために、ゲルをCoomassie Brilliant Blueで染色した。Native PAGEは、最大125Vの電圧で2時間12%ポリアクリルアミドゲルで実行された。その後、UVを照射してタンパク質の蛍光を観察した。
【0103】
<5.等温滴定熱量計>
ITC分析は、韓国基礎科学研究院(オチャン、韓国)でMicroCal Auto-iTC200(Malvern Panalytical)を用いて行った。結合親和度は、PBS緩衝液(pH 7.5)において40ul C’-GFP及び200μl C-mCherryを用いて測定した。滴定実験のために、2ulのC’-GFPを25℃で150秒間隔で4秒間C-mCherryに19回注入し、MicroCal Origin 7.0ソフトウェアを用いてデータを分析した。Nは化学量論的数、KDは結合親和度、ΔH、ΔSはそれぞれ、エンタルピー及び結合エントロピーの変化である。
【0104】
<6.サイズ排除クロマトグラフィー(HPLC)>
タンパク質-タンパク質相互作用を分析するために、YL HPLCシステム(Semi-prep)(YL9100S HPLC)においてPBS(pH7.5)で平衡化されたCytiva superdex 200 increase 10/300 GLカラムを使用した。サンプル(C’-GFP及びC-mCherry又はC’-GFP/C-mCherry)を単独で又は等モル比で混合してカラムにロードした。溶離液は、280nmで吸光度を検出してモニタリングした。
【0105】
<7.蛍光共鳴エネルギー伝達分析(FRET分析)>
野生型GFP単独又はC’-GFP/C-mCherry、Ala27-Ile8及びThr6-Arg29を同一モル数で混合したサンプルをリン酸緩衝食塩水(PBS)に適正に希釈し、総体積が200μl、濃度は4μMとなるようにした。前記サンプルを96ウェルプレートに移し、各ウェルの488nm吸光度と510nm発光度(蛍光)をSynergy H1 Hybrid Multi-Mode Microplate Reader(BioTek)で測定した。野生型GFP単独サンプルの単位吸光度当たりの発光度(A)、各サンプルの単位吸光度当たりの発光度(B)を算出した後、次式を用いて蛍光共鳴エネルギー伝達効率を計算した。
【0106】
【数1】
【0107】
<実験結果>
<1.蛍光タンパク質融合野生型コイルの生成及び特性分析>
コイルドコイルをスキャフォールドとして用いて非天然異種二量体タンパク質複合体を作るために、互いに相補的に自己組立てするp66alphaとMBD2のコイルドコイル領域である138-178(coil C’)及び360-393(coil C)アミノ酸を使用しようとした。その後、緑色蛍光タンパク質(GFP)と赤色蛍光タンパク質のうち一つであるmCherryを用いてコイルの発現と複合体形成を視覚的に追跡した。GFP及びmCherryはそれぞれ、コイルC’及びコイルCのC末端に融合された。6-ヒスチジンタグ(6xHis)を各蛍光タンパク質のC末端にさらに融合させ、ニッケル-ニトリロトリ酢酸アガロース樹脂を用いてタンパク質を精製した。Alphafold2を用いてコイルC’-GFP-6xHis融合タンパク質(以下、C’-GFPという。)とコイルC-mCherry-6xHis融合タンパク質(以下、C-mCherryという)の複雑な構造を予測した(図1A)。pET-C’-GFP及びpET-C-mCherryは、E.coli BL21システムで発現したし、親和性クロマトグラフィーに続いてFPLCで精製された。精製の結果、培養液1リットル当たりに約4mg以上の収率で高純度タンパク質を得た。精製後、採取したタンパク質試料をSDS-PAGEで分離してCoomassie Brilliant Blueで染色した後、脱色して可視化した(図1B)。タンパク質の予想分子量は、C’-GFP及びC-mCherryに対してそれぞれ33.64kDa及び32.65kDaであったし、SDS-PAGEは、結果と類似な35kDaマーカー付近の分子量推定値を提供した。
【0108】
精製後、コイル融合蛍光タンパク質が正しく折り畳まれたかを確認するためにNative PAGEを行った。Native PAGEの結果、C’-GFPとC-mCherryが単独で存在する場合に、緑色蛍光と赤色蛍光を示すことを確認した(図2A)。しかし、C’-GFPとC-mCherryを1:1の比率で混合したとき、緑色蛍光と赤色蛍光とが合わせられて黄色蛍光が観察された。これは、各蛍光タンパク質が正しく折り畳まれており、融合されたコイルが相補的に自己組立てされたことを示す。等温滴定熱量計(ITC)を用いてC’-GFPとC-mCherry間の熱力学を調べて結合媒介変数を決定した。C’-GFPとC-mCherry間の測定された媒介変数は、N=0.7、KD=10.7nM、ΔH=-2.6kcal/mol、ΔS=-52.4cal/mol/degだったし、両分子間の反応は自発的に駆動されたし、高い結合親和度を示した(図2B)。また、C’-GFPとC-mCherryは、0.7:1の比率で反応し、理論的に1:1の比率よりも低かった。これは、コイル間の同種二量体の形成又は実際濃度と等温線とを合わせるために用いられた濃度の差による誤りであり得る。要するに、我らは、正確な折り畳みが可能であり、高い親和性で結合して異種二量体複合体を形成できるC’-GFP及びC-mCherryを発現させた。
【0109】
<2.コイル型システイン突然変異体の設計及び安定性評価>
分子内又は分子間システイン(Cys)残基の両チオール基間に形成された二硫化ブリッジは、正しいタンパク質フォルディング及び構造的安定性の重要な構成要素として働き得る。自己結合時に、解離に対する向上した耐性を提供するために、我らは二硫化結合コイルドコイル複合体を生成しようとした。そのために、我らは、既存のコイルドコイル相互作用の抑制を最小化しながら二硫化結合を形成できる一対の残基の位置を見出した。C’_Ile8-C_Ala27(I8C-A27C)(配列番号7+配列番号2)及びC’_Arg29-C_Thr6(R29C-T6C)(配列番号8+配列番号3)は、良好な静電気相互作用を維持しつつ二硫化結合が形成される最適の架橋部位として判断された。突然変異によるコイルドコイル相互作用の抑制程度を調べるために、良好な静電気相互作用残基対C’_Glu18-C_Arg16(E18C-R16C)(配列番号9+配列番号4)及びC’_Leu11-C_Val20(L11C-V20C)(配列番号10+配列番号5)を選択して比較した。DTT及び突然変異の有無による野生型GFP-C’と野生型mCherry-Cのコイルドコイル相互作用(配列番号6+配列番号1)(GFP-C’+mCherry-C)をNative PAGEで分析した結果、C’_Ile8-C_Ala27(I8C-A27C)(配列番号7+配列番号2)(Ala27-Ile8)及びC’_Arg29-C_Thr6(R29C-T6C)(配列番号8+配列番号3)(Thr6-Arg29)は、C’_Glu18-C_Arg16(E18C-R16C)(配列番号9+配列番号4)(Coiled coil_F1)及びC’_Leu11-C_Val20(L11C-V20C)(配列番号10+配列番号5)(Coiled coil_F2)と比較して、より安定した複合体を形成することが見られた(図3A)。また、相対的な発現量を比較した結果、Ala27-Ile8及びThr6-Arg29がCoiled coil_F1及びCoiled coil_F2に比べて2倍以上高いことが確認できた(図3B)。また、Ala27-Ile8及びThr6-Arg29の安定的コイルドコイル相互作用に起因するGFP、mCherry分子間の蛍光共鳴エネルギー伝達効率を定量分析(FRET分析)した結果、野生型(GFP-C’+mCherry-C)に比べて2倍以上の高い効率が確認できた(図3C)。
【0110】
<3.トレール三量体-コイル及びトレール六量体製造>
<3.1.細胞発現及び精製>
2種のタンパク質(トレール三量体-MBD2(scTRAIL-C)、トレール三量体-p66α(scTRAIL-C’))を、形質転換された大腸菌の培養によってそれぞれ発現させ、親和性クロマトグラフィーを用いて精製した。より具体的には、トレール三量体-MBD及びトレール三量体-p66αは、次の固定によって発現及び精製した:
形質転換されたBL21(DE3)大腸菌細胞を、アンピシリン濃度を0.1mg/mLに調節した固体LB培地で12時間培養した。その後、ベクターの挿入が確認された菌株を2xYT培地(アンピシリン0.1mg/mL、以下同一)に接種して37℃で12時間培養させた後、2xYT培地に1:100に希釈させて再び接種し、200rpm条件で撹拌して30℃で培養した。吸光度が600nmで0.4~0.5になった時に、タンパク質発現誘導のためにIPTGを最終濃度1.0mMになるように添加した後、温度を16~18℃に下げた。20~40時間培養後に4000g条件で10分間遠心分離して細胞ペレットとして回収し、-20℃に冷凍保管した。
【0111】
細胞でタンパク質を精製するために溶解バッファー(lysis buffer)(pH 8.0、50mMリン酸ナトリウム、0.3M NaCl、及び10mMイミダゾール)40mLをペレットに添加し、凍っていた細胞を再浮遊させた。リゾチーム(Lysozyme)を最終濃度1mg/mLで添加した後、4℃で30分程度回転させて混合過程を行った。その後、8分間、10秒間隔で超音波分解を行ったし、再び10,000g条件で30分間遠心分離を行い、タンパク質と細胞残物を分離した。タンパク質が含まれている上澄液を別に移し、Ni-NTAアガロースビーズを1.5mL添加した後、4℃で30分間回転させつつ混合した。重力流(Gravity-flow)カラムを固定させた後、Ni-NTAを混合させた上澄液をカラムに流下させながらビーズとフロースルー(flow through)を分離した。フロースルーは除去した後、ビーズ洗浄のために洗浄バッファー(pH 8.0、50mMリン酸ナトリウム、0.3M NaCl、そして20mMイミダゾール)を十分に流してフロースルーに流れ出る溶液の吸光度が280nmで0.00になるまでビーズに付いた不純物を除去した。ビーズと結合したタンパク質を別に分離するために、溶出バッファー(50mMリン酸ナトリウム(pH 8.0)、0.3MNaCl、そして250mMイミダゾール)を500uLずつ流しながらフロースルーをマイクロチューブに分注した。Biodropを用いて280nmで分注された溶液の濃度をそれぞれ測定し、4℃で冷蔵保管した。
【0112】
<3.2.特性評価>
バインディングアッセイ(binding assay)(MicroScale Thermophoresis,MST)を用いて、1)トレール三量体-C(scTRAIL-C)とトレール三量体-C’(scTRAIL-C’)と取り込みの親和度、2)トレール三量体-C又はトレール三量体-C’と死滅受容体(DR)との親和度、及び3)トレール六量体(scTRAIL-C+scTRAIL-C’)と死滅受容体(death receptor,DR)との親和度、を測定した。DRは、トレールの同族受容体(Cognate receptor)である。
【0113】
より具体的には、下記の方法によって測定した:
分析前にサンプル前処理のために、死滅受容体(Biolegend)とDMSOに溶解されたFlamma(登録商標)648 Sulfo-NHSエステルを1:5のモル比で混合した後、室温で1時間反応させた。Zeba(商標) Spin Desaltingカラム(40K MWCO、0.5mL)は、サンプルを注入する前に1500g条件で1分遠心分離して保存溶液を除去し、炭酸ナトリウム150mM溶液450uLをカラムに満たした後、再び1500g条件で1分遠心分離を行った。その後、反応させたDR混合物を100~150uL注入した後、1500g条件で2分遠心分離を行って、サンプルに微量含まれたDMSOを除去し、炭酸ナトリウム溶液に入れ替えると同時に、non-labeledとlabeled DRを分離した。
【0114】
Monolith NT.115(Germany)MST機器を用いてサンプルを分析する前に、labeled DRを用いて測定強度を調節した。4個のキャピラリー(capillary)に同じ濃度のlabeled DRを満たした後、測定しながら励起出力(excitation power)を調節し、蛍光強度(fluorescence intensity)値が800~1000の間に現れることを確認した。
【0115】
リガンド(Ligand)として使われる組換えタンパク質は、それぞれ、単一分子トレール(MonoTRAIL)、トレール三量体-Cとトレール三量体-C、又はトレール六量体とした。レセプター(Receptor)-リガンド(ligand)混合方法は次の通りである:まず、レセプタータンパク質である死滅受容体を1番目のラック(rack)を除く15個のラックに10uLずつ分注する。次に、リガンドとして作用するトレール三量体-Cを1番目のラックに20uLを入れ、順次に、10uLを1番目のラックから取って2番目のラックに希釈し、さらに10uLを取って3番目のラックに希釈する方式で同一に16回行う。結果的に、216倍希釈されたサンプルが最終16番目のサンプルになる。16個の互いに異なるキャピラリーに互いに異なる濃度のサンプルを注入した後、検出(detection)装置に固定させて測定を始める。このとき、励起出力値は、初期設定値の2倍増加した値で行う。その後、トレール三量体-C’も、六量体トレールも同じ方式で行う。
【0116】
実験の結果、トレール六量体と死滅受容体との親和度(163nM)は、トレール三量体-C又はトレール三量体-C’と死滅受容体との親和度(それぞれ、337nM、787nM)に比べて約2~5倍高く形成されていることが確認できた(図4)。
【0117】
<3.3.In vitro細胞アッセイ>
陽性対照群(R&D TRAIL,R&D systems,Minneapolis,MN,USA)、トレール三量体-C(I)、トレール三量体-C’(II)、トレール六量体(I+II)でそれぞれ4時間処理した膠芽細胞腫細胞株U87-luc細胞(PerkinElmer,Akron,Ohio,USA)を流細胞分析機(FACS)を用いて観察した。
【0118】
前記分析の結果、5%未満の死滅率を示したトレール三量体-C(I)又はトレール三量体-C’(II)試験群とは対照的に、トレール六量体試験群(I+II)は約30%の死滅率を示したし、これは、陽性対照群(R&D TRAIL)の死滅率である8%よりも約4倍高い数値であることが確認された(図5A及び図5B)。
【0119】
以上、本発明の実施例について説明したが、当該技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された本発明の思想から逸脱しない範囲内で、構成要素の付加、変更、削除又は追加などによって本発明を様々に修正及び変更させることが可能であろうし、それらもまた本発明の権利範囲に含まれると言えよう。
【図面の簡単な説明】
【0120】
図1A】Alphafold2を用いてコイルC’-GFP-6xHis及びコイルC-mCherry-6xHisの構造を予測した結果である。
図1B】精製されたC’-GFP及びC-mCherryの分子量をSDS-PAGEで測定した結果である。
図2A】コイル融合蛍光タンパク質が正しく折り畳まれたかを確認するためにNative PAGEを行った結果である。
図2B】等温適正熱量計(ITC)を用いてC’-GFP及びC-mCherry間の熱力学を調べて結合媒介変数を決定した結果である。
図3A】Ala27-Ile8、Thr6-Arg29、Coiled coil_F1、及びCoiled coil_F2が安定した複合体を形成するか否かを確認した結果である。
図3B】Ala27-Ile8、Thr6-Arg29、Coiled coil_F1、及びCoiled coil_F2の相対的発現量を比較した結果である。
図3C】Ala27-Ile8のFRET効率を100%とした時に、Thr6-Arg29、C’-GFP/C-mCherryのFRET効率を相対的に比較した結果である。
図4】トレール六量体と死滅受容体との親和度(DR and scTRAIL-C+scTRAIL-C’)を、トレール三量体-C又はトレール三量体-C’と死滅受容体との親和度(DR and scTRAIL-C or DR and scTRAIL-C’)と比較した結果である。
図5A】陽性対照群(R&D TRAIL)、トレール三量体-C(I)試験群、トレール三量体-C’(II)試験群及びトレール六量体試験群(I+II)を処理した膠芽細胞腫細胞株を流細胞分析機(FACS)を用いて観察した結果である。
図5B】陽性対照群(PC)、トレール三量体-C試験群(T1)、トレール三量体-C’(T2)試験群及びトレール六量体試験群(T3)の癌細胞死滅率を比較した結果である。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
【配列表】
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【国際調査報告】