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特表2024-530857フィルムを含浸させるための方法及び装置、並びに、経皮治療システムを製造するための方法
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  • 特表-フィルムを含浸させるための方法及び装置、並びに、経皮治療システムを製造するための方法 図1
  • 特表-フィルムを含浸させるための方法及び装置、並びに、経皮治療システムを製造するための方法 図2a
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-27
(54)【発明の名称】フィルムを含浸させるための方法及び装置、並びに、経皮治療システムを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/00 20240101AFI20240820BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20240820BHJP
   B05C 3/132 20060101ALI20240820BHJP
   B05C 11/04 20060101ALI20240820BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20240820BHJP
   A61M 37/00 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
A61F13/00 T
A61F13/00 355G
A61F13/00 355Z
A61K9/70 401
B05C3/132
B05C11/04
B05C11/10
A61M37/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579036
(86)(22)【出願日】2022-05-31
(85)【翻訳文提出日】2024-02-19
(86)【国際出願番号】 EP2022064713
(87)【国際公開番号】W WO2022268450
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】102021115977.6
(32)【優先日】2021-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】300005035
【氏名又は名称】エルテーエス ローマン テラピー-ジステーメ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】シュタインボルン,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】シュローゲル,ゲオルク
(72)【発明者】
【氏名】グーテクンスト,ドロテア
(72)【発明者】
【氏名】ステインブレシェル,ビクトリア
(72)【発明者】
【氏名】ホフマン,ゲルト
(72)【発明者】
【氏名】ヴィーダースベルク,サンドラ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C267
4F040
4F042
【Fターム(参考)】
4C076AA78
4C076BB31
4C076CC01
4C076DD34
4C076EE03
4C267AA71
4C267BB06
4C267CC01
4C267CC05
4C267FF10
4C267GG03
4C267GG06
4C267GG16
4C267GG46
4F040AA22
4F040AB20
4F040BA47
4F040CC02
4F040CC19
4F040CC20
4F042AA22
4F042AB00
4F042CC02
4F042CC09
4F042DD07
4F042DD09
(57)【要約】
【解決手段】フィルム(12)を含浸させるための方法は、含浸するフィルム(12)を供給する工程、フィルム(12)を含浸剤(14)に浸漬する工程、及びフィルム(12)への含浸剤(14)の所定の充填をもたらすためにフィルム(12)から含浸剤(14)を部分的に分離する工程を有する。更に、フィルム(12)を含浸させるための装置(10)は、含浸剤(14)で満たされる浸漬容器(16)と、フィルム案内部と、フィルム(12)への含浸剤(14)の所定の充填をもたらすためにフィルム(12)から含浸剤(14)を除去するための分離装置(18)とを備えている。更に、経皮治療システムを製造するための方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム(12)を含浸させるための方法であって、
含浸させるフィルム(12)を供給する工程、
前記フィルム(12)を、好ましくは浸漬容器(16)内に含まれる含浸剤(14)に浸漬する工程、及び
前記フィルム(12)への含浸剤(14)の所定の充填をもたらすために、前記フィルム(12)から前記含浸剤(14)を部分的に分離する、特に取り去る工程
を有する、方法。
【請求項2】
フィルム(12)を含浸させるための装置(10)であって、
含浸剤(14)で満たされる浸漬容器(16)と、
含浸させるフィルム(12)を供給し、前記フィルム(12)を前記浸漬容器(16)に浸漬し、前記フィルム(12)を送り出すためのフィルム案内部と、
前記フィルム(12)への含浸剤(14)の所定の充填をもたらすために、前記フィルム(12)から前記含浸剤(14)を分離するための分離装置(18)と
を備えている、装置。
【請求項3】
前記含浸剤(14)の分離を分離装置(18)によって行う、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記分離装置(18)は、好ましくはシリコーンでコーティングされている少なくとも1つのワイパを有している、請求項3に記載の方法又は請求項2に記載の装置(10)。
【請求項5】
前記ワイパは、少なくとも1つの縁部及び/又は少なくとも1つのローラを有している、請求項4に記載の方法又は装置(10)。
【請求項6】
特に加圧されたワイパが、含浸剤(14)が充填されたフィルム(12)の両側に配置されている、請求項4又は5に記載の方法又は装置(10)。
【請求項7】
前記分離装置(18)は、前記含浸剤(14)を分離することによって前記所定の充填をもたらすように可変的に調整可能であるように構成されている、請求項3~6のいずれか1つに記載の方法又は請求項2,4~6のいずれか1つに記載の装置(10)。
【請求項8】
前記分離装置(18)は、特に前記ワイパの圧力及び/又は距離を調整するための少なくとも1つの調整装置を有しており、前記調整装置は、好ましくは空気圧式装置、液圧式装置、ばね装置、エラストマ、圧力ねじ及び微調整ねじを含んでいる、請求項7に記載の方法又は装置(10)。
【請求項9】
前記分離装置(18)は、分離された含浸剤(14)が前記浸漬容器(16)内に戻る、特に前記浸漬容器(16)内に落下するように配置されている、請求項3~8のいずれか1つに記載の方法又は請求項2,4~8のいずれか1つに記載の装置(10)。
【請求項10】
分離された含浸剤(14)を回収するための、好ましくは前記浸漬容器(16)に連結されている回収トレイを更に備えている、請求項1,3~9のいずれか1つに記載の方法又は装置(10)。
【請求項11】
前記含浸剤(14)は油、好ましくは鉱油を含んでおり、特に油、好ましくは鉱油で構成されている、請求項1,3~10のいずれか1つに記載の方法又は請求項2,4~10のいずれか1つに記載の装置(10)。
【請求項12】
前記フィルム(12)は、特にポリプロピレンを含む多孔質フィルム(12)である、請求項1、3~11のいずれか1つに記載の方法、又は請求項2,4~11のいずれか1つに記載の装置(10)。
【請求項13】
含浸剤(14)が充填されたフィルム(12)を試験するために特に光学式及び/又は重量記録のプロセス制御を行う更なる工程を有する、請求項1,3~12のいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
含浸剤(14)が充填されたフィルム(12)を試験するための、特にスケール(44)及び/又は光学式制御装置(42)を有する試験装置(46)を更に備えている、請求項1,3~13のいずれか1つに記載の方法、又は請求項2,4~13のいずれか1つに記載の装置(10)。
【請求項15】
経皮治療システムを製造するための方法であって、
請求項1,3~14のいずれか1つに記載の方法を、特に請求項2,4~14のいずれか1つに記載の装置(10)を用いて行う工程、並びに
前記フィルム(12)内に及び/又は前記フィルム(12)上に有効成分を追加する工程
を有する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムを含浸させるための方法、フィルムを含浸させるための装置、及び経皮治療システムを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
含浸フィルム、特に膜は、例えば経皮治療システムで層として使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
例えば、米国特許第4436741 号明細書には、油含浸膜を含むスコポラミンを送達するための経皮治療システムが記載されている。
【0004】
膜などのフィルムを含浸させるための一般的な方法では、エングレービング波を用いたリバースロールコーティングを使用してコーティング機でコーティングする。
【0005】
エングレービングローラを使用する場合、含浸量が、ローラのエングレービング、例えばエングレービングギャップによって決定される。ローラ、例えばエングレービング深さを、含浸量の変化に応じて変える必要がある。
【0006】
既存の方法の不利点は、特にフィルムへの含浸剤の充填が不正確であるということである。
【0007】
更に以前の方法は、製造の点で時間がかかる、複雑である、並びに/又は追加の作業工程及び/若しくは装置を必要とする。
【0008】
本発明の目的は、含浸を最適化する、フィルムを含浸させるための方法、フィルムを含浸させるための装置、及び経皮治療システムを製造するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、本発明の目的は、請求項1に係るフィルムを含浸させるための方法、請求項2に係るフィルムを含浸させるための装置、及び請求項15に係る経皮治療システムを製造するための方法によって達成される。
【0010】
本発明に係る膜を含浸させるための方法は特に、好ましくは経皮治療システムに使用するために膜を含浸させるための方法である。本方法の第1の工程では、含浸させるフィルムを供給する。フィルムが供給ローラから巻き戻されるように、ロール処理で供給を行うことが好ましい。供給されたフィルムを含浸剤に浸漬する。特に、フィルムを含浸剤に完全に浸漬する。含浸剤は、含浸浴としても知られている浸漬容器に含められていることが好ましい。好ましい実施形態では、フィルムを、含浸剤を通して少なくとも部分的に実質的に水平に導く。フィルムに含浸剤を通過させた後、フィルムに含浸剤を完全に充填することが好ましい。その後、含浸剤をフィルムから部分的に分離する。この分離を、特にフィルムへの含浸剤の所定の充填をもたらすように行う。特に、分離により、フィルムには5g/m2~20g/m2、好ましくは7g/m2~13g/m2、特に好ましくは約10g/m2の油が充填される。分離する際、フィルムから含浸剤を取り去ることが好ましい。
【0011】
本発明に係る膜を含浸させるための装置は特に、好ましくは経皮治療システムに使用するために膜を含浸させるための装置である。装置は、含浸浴としても知られている、含浸剤で満たされる浸漬容器を備えている。浸漬容器は、フィルムを含浸剤に特に連続的に浸漬するように構成及び/又は配置されている。装置はフィルム案内部を備えている。フィルム案内部は、特にフィルムを供給する、フィルムを通過させる、フィルムを浸漬容器に浸漬する、及び/又はフィルムを送り出すように構成されている。フィルムを供給するとは、特にフィルムを装置内に案内することを意味し、フィルムを通過させるとは、特にフィルムを装置内に案内することを意味し、フィルムを浸漬するとは、特にフィルムを浸漬容器を通して案内することを意味し、フィルムを送り出すとは、特にフィルムを装置の外に案内することを意味する。少なくとも1つの、特に回転可能な案内ローラが、フィルムを案内するために浸漬容器内に少なくとも部分的に配置されていることが好ましい。フィルムが少なくとも浸漬容器の一部を通って実質的に水平に導かれ得るように、少なくとも2つ、特にちょうど2つの案内ローラが浸漬容器内に配置されていることが特に好ましい。更に、フィルム案内部が、少なくとも1つの、特に回転可能なローラ、例えば案内ローラを有していることが好ましい。少なくとも1つのローラは円形であるように構成されていることが好ましい。少なくとも1つのローラが駆動されることが好ましい。フィルム案内部が、フィルムを巻き戻すための供給ローラ及び/又はフィルムを巻くための送出ローラを有していることが好ましい。特に、供給ローラ及び送出ローラの少なくとも1つが駆動されるように構成されている。少なくとも1つのローラ、特に供給ローラ及び/又は送出ローラが装置の外側、装置の内側、又は装置の部分的に外側及び内側に配置され得ることが好ましい。更に、装置は、フィルムから含浸剤を特に部分的に分離するための分離装置を備えている。分離装置は、フィルムへの含浸剤の所定の充填をもたらすべく含浸剤を分離するように構成されていることが好ましい。
【0012】
本発明に係る方法では、含浸剤の分離を分離装置によって行うことが好ましい。方法の範囲内で使用される分離装置は、特に本発明に係る装置の分離装置のように構成されている。
【0013】
好ましい実施形態では、分離装置は少なくとも1つのワイパを有している。ワイパはシリコーンコーティングが施されていることが好ましい。特に、ワイパは、好ましくは厚さが0.8 mm~3mmのシリコーンのフィルムでコーティングされている、好ましくは積層されている。ワイパは、含浸剤と接する、好ましくは含浸剤に押し付けられるように構成及び/又は配置されていることが好ましい。特に、ワイパは加圧されている。分離装置がフィルムの一側又はフィルムの両側で含浸剤を分離することが好ましい。
【0014】
好ましい実施形態では、分離装置は少なくとも1つの縁部及び/又は少なくとも1つの、好ましくは回転可能なローラを有している。縁部は、好ましくは正方形状又は円形状の構造を有する。縁部は、縁部に対して近づく又は遠ざかるフィルムと接するように構成及び/又は配置されていることが好ましい。言い換えれば、縁部は、フィルムが動く方向に関してフィルムに対して鋭角又は鈍角又は直角であることが好ましい。分離装置は、縁部を形成する少なくとも圧力プレートを有していることが好ましい。特に、圧力プレートは曲げることができる。
【0015】
好ましい実施形態では、ワイパは、含浸剤が充填されたフィルムの両側に配置されている。
【0016】
好ましい実施形態では、ワイパは、特にフィルムに押し付けるようにフィルムに両側で接する。少なくとも1つのワイパが、両面構成の2つの対向するローラを有していることが好ましい。他方では、両面のワイパは、2つの対向する縁部、又は1つの縁部及び1つの対向する押圧面、例えばアンビルを有し得る。
【0017】
好ましい実施形態では、分離装置、特に少なくとも1つのワイパは、含浸剤を分離することによってフィルムへの含浸剤の所定の充填をもたらし得るように可変的に調整可能であるように構成されている。従って、分離装置、特に少なくとも1つのワイパは、所望の充填、例えばフィルム表面(平方メートル)当たりの油(リットル又はキログラム)の所定の品質をもたらし得るように構成されていることが好ましい。
【0018】
好ましい実施形態では、分離装置は、所定の充填を調整するための少なくとも1つの調整装置を有している。特に、調整装置は、空気圧式装置、液圧式装置、ばね装置、エラストマ、圧力ねじ及び微調整ねじの内の1つを有しているか又はこれらの内の1つで構成されている。特に、前記調整装置は、少なくとも1つのワイパがフィルムを押す圧力及び/又は少なくとも1つのワイパ及びフィルム間の距離を調整するように配置及び/又は構成されている。少なくとも1つのワイパの両面構成では、調整装置は、特にワイパの2つの対向する要素間、例えばローラ、縁部又は圧力面間の圧力及び/又は距離を調整するように配置及び/又は構成されている。特にばね装置は、特に渦巻ばねの形態の圧縮ばね又は引張ばねを有している。特にゴムを含むエラストマは、特にゴムバンドである。特に縁部を有する構成のワイパの迎角は調整可能であることが好ましい。例えば、例えば圧力プレートの縁部の角度を、対向する縁部又は対向する圧力面に対して変更し得ることが好ましい。ワイパが変更可能であるため、特に様々な充填条件が調整可能である。両面構成のワイパの対向する要素が互いにずれている又は平行であることが好ましい。対向する要素のずれが調整可能であることが好ましい。分離装置が、特に様々な実施形態で上記のワイパの一又は複数を有していることが好ましい。
【0019】
好ましい実施形態では、分離装置は、分離された含浸剤が浸漬容器に戻されるように少なくとも部分的に構成及び/又は配置されている。分離装置は、分離された含浸剤が重力により浸漬容器内に落下するように少なくとも部分的に構成及び/又は配置されていることが好ましい。ここでは、分離装置が浸漬容器の上側に少なくとも部分的に配置されていることが好ましい。本発明に係る方法では、特に分離装置のこの構成に加えて又はこの構成に代えて、分離された含浸剤の少なくとも一部を、好ましくは重力によって戻す工程を有する。フィルムは、浸漬容器を出た後、例えばフィルム案内部によって実質的に垂直方向に案内されることが好ましい。
【0020】
好ましい実施形態では、装置は、分離された含浸剤を回収するための、好ましくは浸漬容器に連結されている回収トレイを備えている。回収トレイは、好ましくは浸漬容器に流体を導くように連結されている。他方では、回収トレイは浸漬容器とは別に構成されていることが好ましい。回収トレイは、特に表面積の点で浸漬容器より大きいことが好ましい。浸漬容器及び回収トレイが分離装置の下側の領域を特に完全に覆うため、例えば滴下する分離される含浸剤が回収されることが好ましい。
【0021】
好ましい実施形態では、含浸剤は油、特に鉱油である。含浸剤は、特に皮膚に優しい。
【0022】
好ましい実施形態では、フィルムはポリプロピレンを含んでおり、特にポリプロピレンで構成されている。フィルムは、特に多孔質、好ましくは微多孔質であるように構成されている。特に、フィルムはセルガード社のセルガード(登録商標)2400である。
【0023】
好ましい実施形態では、本発明に係る方法は、含浸剤が充填されたフィルムの試験、特にプロセス制御を行う更なる工程を有する。この工程を特に、所望の充填を行うために含浸剤を分離した後に行う。特に、現在の充填量を、試験中に決定する。この現在の充填量は、特に実際の充填量に対応する。更に実際の充填量を目標の充填量と比較することが好ましい。分離装置を調整する工程を、特に実際の充填量を目標の充填量に調整するために更に行うことが好ましい。試験を、特に光学式で及び/又は重量を記録するように行う。試験のため、フィルムの一部を除去し、例えば切り取り、その後、その部分を試験することが好ましい。試験を、好ましくは下記の試験装置を使用して行うことができる。
【0024】
好ましい実施形態では、装置は、含浸剤が充填されたフィルムを試験するための試験装置を備えている。試験装置は、特にフィルムが導かれる方向で分離装置の後ろに配置されている。試験装置は、フィルムの重量を量るためのスケールを有していることが好ましい。加えて又は代わりに、試験装置は特にカメラなどの少なくとも1つの光学式制御装置を有している。試験装置は、例えばフィルムの導電率を測定可能であるように磁気的又は電気的に更に構成され得る。
【0025】
フィルムを含浸させるための方法の特に最後の工程では、含浸フィルムを送り出すことが好ましい。含浸フィルム又は含浸フィルムを有するフィルム複合体が送出ローラに巻かれるように、特にロール処理で送り出しを行う。供給ローラ及び/又は送出ローラは好ましくは駆動され得る。
【0026】
特に、フィルムを含浸させるための範囲内に記載されている特徴は、装置に更に適用可能であり、その逆も同様である。フィルムを含浸させるための方法は、上記の装置を用いて行われることが好ましい。
【0027】
本発明に係る経皮治療システムを製造するための方法は、特に経皮パッチ又は経皮パッチの半製品を製造するための方法である。経皮治療システムを製造するための方法は、フィルムを含浸させるための上記の方法の工程を有する。フィルムを含浸させるための方法を行うとき、上記の装置を使用することが好ましい。経皮治療システムを製造するための方法は、有効成分を含浸フィルム内に及び/又は含浸フィルム上に追加するための工程を更に有する。ここで、フィルムが、特に液状の有効成分でコーティングされることが可能である。他方では又は加えて、含浸フィルムを、有効成分を含有する一又は複数のフィルムと結合させてフィルム複合体を形成することが更に可能である。特に、有効成分はスコポラミンを含有する。
【0028】
フィルムを含浸させるための方法又は経皮治療システムを製造するための方法は、特に連続的な方法である。
【0029】
本出願の範囲内で、含浸とは特に、フィルム、特に多孔質フィルムに油などの含浸剤を充填することを意味する。
【0030】
本発明は、好ましくは経皮治療システムを製造するための装置システムに更に関する。装置システムは、本発明に係るフィルムを含浸させるための装置及び有効成分供給装置を備えている。特に、有効成分供給装置は、有効成分を含浸フィルム内に及び/又は含浸フィルム上に追加するように配置及び/又は構成されている。ここで、フィルムが、特に液状の有効成分でコーティングされることが可能である。他方では又は加えて、含浸フィルムを、有効成分を含有する一又は複数のフィルムと結合させてフィルム複合体を形成することが更に可能である。特に、有効成分はスコポラミンを含有する。
【0031】
本発明の別の利点は、特にフィルムが経皮治療システムで使用される場合、含浸の作業工程を、従来技術の場合のように追加のコーティング工程として又はコーティングシステム内で行う代わりに、組立システム内又は組立中に行うことが可能であるということである。
【0032】
以下に、添付図面を参照して好ましい実施形態によって本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明に係る装置の実施形態を示す側面略図である。
図2a図1の詳細な部分IIに基づく代替のワイパを示す概略図である。
図2b図1の詳細な部分IIに基づく代替のワイパを示す概略図である。
図2c図1の詳細な部分IIに基づく代替のワイパを示す概略図である。
図3】本発明に係る装置の別の実施形態を示す斜視側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図面には、同様又は同一の部品又は要素が同一の参照番号又はその変形例(例えば12及び12’,12’’又は14及び14’,14’’)で特定されている。
【0035】
図1は、本発明に係るフィルム12を含浸させるための装置10の実施形態を示す。
【0036】
好ましくは多孔質のフィルム12が、矢印58で示されているように反時計回りに回転する供給ローラ36から巻き戻される。従って、フィルム12は矢印40の方向に導かれる。
【0037】
含浸剤14が未だ充填されていないフィルム12は参照番号12’で特定されている一方、充填されたフィルム12は参照番号12’’で特定されている。
【0038】
フィルム12’はまず、含浸剤14が満たされた浸漬容器16に導かれ、浸漬容器16内で好ましくは完全に含浸剤14で充填される。フィルム12が浸漬容器16内で含浸剤14を通って実質的に水平に動くように、2つの案内ローラ34が浸漬容器16内に配置されている。その後、充填されたフィルム12’’は浸漬容器16を出る。
【0039】
その後、フィルム12’’は、分離装置18の第1のワイパ20b に導かれる。ここで、フィルム12’’は、(矢印29によって示されているように)縁部27を有する圧力プレート26によって圧力面28に押し付けられる。そのため、含浸剤14の一部がフィルム12’’から分離する。このような分離は、除去された含浸剤14の滴14’によって例示されている。浸漬容器16に対する第1のワイパ20b の配置により、除去された含浸剤14は浸漬容器16内に落下して再利用され得る。フィルム12’’は、案内ローラ34を介して分離装置18の別のワイパ20a に更に導かれる。前記ワイパ20a は対向する2つのローラ22を有している。フィルム12’’に圧力がかかるように、ローラ22の内の少なくとも1つ、特に2つのローラ22を(矢印24によって示されているように)加圧することが好ましい。ワイパ20a はフィルム12’’から含浸剤14を更に除去し、滴14’によって例示されている。分離された含浸剤14’は、含浸剤14’’を回収する回収トレイ32内に落下する。
【0040】
特に、分離装置18は、フィルム12への含浸剤14の所定の充填を実施する。ここで、ワイパ20a, 20bを有する分離装置18の図示されている構成は、単なる1つの好ましい可能性に過ぎない。一又は複数のワイパを有する分離装置18の構成、様々なワイパの構成(例えば図2a~2c参照)、ワイパの様々な配置、及び/又はワイパのための様々な調整装置が可能である。ワイパ20a, 20bの調整装置は、図1ではワイパ20a に関して矢印24によって概略的に示され、ワイパ20b に関して矢印29によって概略的に示されているだけである。調整装置が調整可能に構成されていることが好ましい。調整装置は、例えば空気圧式装置、液圧式装置、ばね装置、エラストマ、圧力ねじ、及び/又は微調整ねじとすることができる。調整装置を使用して、ローラ22間又は圧力プレート26及び圧力面28間などのワイパ要素間の距離及び/又は角度及び/又は圧力を変え得ることが好ましい。
【0041】
案内ローラ34並びに供給ローラ36及び送出ローラ38を使用して、フィルムを導く。ここで、様々な変形例が更に可能である。供給ローラ36及び/又は送出ローラ38を駆動することが可能である。
【0042】
フィルムが、図示されているワイパ20a を通過した後、特にフィルム12’’’が所望の充填状態にある。
【0043】
その後、フィルム12’’’を試験装置46で試験する。特に、フィルム12’’’の充填状態を試験する、好ましくは測定する。試験装置46は、フィルム12’’’の重量を量るためのスケール44を有するように図示されている。特に、フィルム12’’’の表面部分の重量を量る。更に、図示されている試験装置46は、カメラなどの光学式試験装置42を有している。フィルム12’’’を充填すると、一般的にフィルム12’’’の見た目が変わる。例えば、フィルム12’’’は、含浸剤の充填量が増加するにつれて透明になる。この状態が、光学式試験装置42によって検出され得る。図示されている試験装置46の代わりに、別の構成が更に可能であり、例えば、1つのスケール44のみを有する試験装置46又は1つの光学式試験装置42のみを有する試験装置46が更に可能である。試験装置46を備えない他の点では同一の構成の装置10が更に可能である。
【0044】
その後、フィルム12’’’は送出ローラ38に巻かれる。送出ローラ38は、(矢印60によって示されているように)反時計回りに回転するように図示されている。
【0045】
フィルム12’’’が巻かれる前及び/又はフィルム12’’’が巻かれた後に有効成分、例えばスコポラミンをフィルム12’’’と結合させることが可能である。一方では、有効成分を含む更なるフィルム層をフィルム12’’’と結合することが可能である、及び/又は有効成分をフィルム12’’’に、例えば被覆体として直接結合する。このようにして、経皮治療システムを製造することが可能である。
【0046】
図2a~2cは、ワイパ20c, 20d, 20e の代替の構成を例示的に示している。前記ワイパ20c, 20d, 20eは、例えば図1の位置IIにあるワイパ20b の代わりに使用され得る。
【0047】
図2aは、圧力面28及び圧力プレート26が対向して配置されているワイパ20c を示している。ここで、圧力プレート26は、特に圧力面28に対して調整可能であるように構成されている。例えば、圧力プレート26の角度(矢印30a )を変更し得ることが図示されている。例えば、補助線31から+90°~-90°の角度が可能である。+45°~-45°の間で角度を調整可能であることが好ましい。他方では、圧力プレート26及び圧力面28間の距離(矢印30b )が更に調整可能であることが図示されている。このため、例えば圧力を変更することが可能である。圧力の変更を、例えばばね装置及び/又は調整ねじを使用して行うことが可能である。更に、圧力プレート26及び圧力面28間のずれ(矢印30c )が調整可能であることが図示されている。代替の好ましい構成では、調整可能性の一又は複数のみが利用可能である。他のワイパ構成で調整可能であることが好ましくは更に可能である。
【0048】
図2bは、フィルム12’’と接することにより、含浸剤を除去する圧力プレート26を有する一側ワイパ20d を示している。
【0049】
図2cは、ワイパ20e の別の実施形態を示しており、対向して斜めに配置されている2つの圧力プレート26がフィルム12’’及び/又は含浸剤と両側で接して含浸剤を除去する。
【0050】
図3は、本発明に係るフィルム12を含浸させるための装置10の別の実施形態を示す。図3の装置は、図1の装置10と同様に少なくとも部分的に構成されている(上記参照)。
【0051】
装置10は、2つの足部56を有するスタンド装置54を介して配置されている取付プレート52を備えており、取付プレートに装置10の部品の少なくとも一部が取り付けられている。
【0052】
図3では、フィルム12’が右側から供給されて、フィルム12’’’が左側に送り出される。
【0053】
装置10は、フィルム12’から含浸剤を除去する分離装置の複数のワイパ20e ~20h を備えている。
【0054】
ワイパ20e, 20hはローラ対のワイパとして構成されており、調整装置50e, 50hによって圧力を調整可能であることが好ましい。
【0055】
ワイパ20f は圧力プレート26及び圧力面28を有しており、特に圧力プレート26の角度が可変である。
【0056】
ワイパ20g は、僅かにずれるように図示されている2つの圧力プレート26を有している。ずれが無いか又はずれがより大きい対応する配置が更に可能である。圧力プレート26の一方又は両方の角度が可変であることが更に可能である。
【0057】
案内ローラ34は、特に調整装置48によって可変である。
【0058】
本発明に係るフィルムを含浸させるための方法及び/又は本発明に係る経皮治療システムを製造するための方法を、図1~3の一又は複数の特徴を用いて実行可能であることが好ましい。
図1
図2a
図2b
図2c
図3
【手続補正書】
【提出日】2024-02-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムを含浸させるための方法であって、
含浸させるフィルムを供給する工程、
前記フィルムを、好ましくは浸漬容器内に含まれる含浸剤に浸漬する工程、及び
前記フィルムへの含浸剤の所定の充填をもたらすために、前記フィルムから前記含浸剤を部分的に分離する、特に取り去る工程
を有する、方法。
【請求項2】
前記含浸剤の分離を分離装置によって行う、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記分離装置は、好ましくはシリコーンでコーティングされている少なくとも1つのワイパを有している、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記ワイパは、少なくとも1つの縁部及び/又は少なくとも1つのローラを有している、請求項に記載の方法。
【請求項5】
特に加圧されたワイパが、含浸剤が充填されたフィルムの両側に配置されている、請求項又はに記載の方法。
【請求項6】
前記分離装置は、前記含浸剤を分離することによって前記所定の充填をもたらすように可変的に調整可能であるように構成されている、請求項のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
前記分離装置は、特に前記ワイパの圧力及び/又は距離を調整するための少なくとも1つの調整装置を有しており、前記調整装置は、好ましくは空気圧式装置、液圧式装置、ばね装置、エラストマ、圧力ねじ及び微調整ねじを含んでいる、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項8】
前記分離装置は、分離された含浸剤が前記浸漬容器内に戻る、特に前記浸漬容器内に落下するように配置されている、請求項のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
分離された含浸剤を回収するための、好ましくは前記浸漬容器に連結されている回収トレイが設けられている、請求項1~4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
前記含浸剤は油、好ましくは鉱油を含んでおり、特に油、好ましくは鉱油で構成されている、請求項1~4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
前記フィルムは、特にポリプロピレンを含む多孔質フィルムである、請求項1~4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
含浸剤が充填されたフィルムを試験するために特に光学式及び/又は重量記録のプロセス制御を行う更なる工程を有する、請求項1~4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
含浸剤が充填されたフィルムを試験するための、特にスケール及び/又は光学式制御装置を有する試験装置が設けられている、請求項1~4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
フィルムを含浸させるための装置であって、
含浸剤で満たされる浸漬容器と、
含浸させるフィルムを供給し、前記フィルムを前記浸漬容器に浸漬し、前記フィルムを送り出すためのフィルム案内部と、
前記フィルムへの含浸剤の所定の充填をもたらすために、前記フィルムから前記含浸剤を分離するための分離装置と
を備えている、装置。
【請求項15】
前記分離装置は、好ましくはシリコーンでコーティングされている少なくとも1つのワイパを有している、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記ワイパは、少なくとも1つの縁部及び/又は少なくとも1つのローラを有している、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
特に加圧されたワイパが、含浸剤が充填されたフィルムの両側に配置されている、請求項15又は16に記載の装置。
【請求項18】
前記分離装置は、前記含浸剤を分離することによって前記所定の充填をもたらすように可変的に調整可能であるように構成されている、請求項14~16のいずれか1つに記載の装置。
【請求項19】
前記分離装置は、特に前記ワイパの圧力及び/又は距離を調整するための少なくとも1つの調整装置を有しており、前記調整装置は、好ましくは空気圧式装置、液圧式装置、ばね装置、エラストマ、圧力ねじ及び微調整ねじを含んでいる、請求項15又は16に記載の装置。
【請求項20】
前記分離装置は、分離された含浸剤が前記浸漬容器内に戻る、特に前記浸漬容器内に落下するように配置されている、請求項14~16のいずれか1つに記載の装置。
【請求項21】
分離された含浸剤を回収するための、好ましくは前記浸漬容器に連結されている回収トレイを更に備えている、請求項14~16のいずれか1つに記載の装置。
【請求項22】
前記含浸剤は油、好ましくは鉱油を含んでおり、特に油、好ましくは鉱油で構成されている、請求項14~16のいずれか1つに記載の装置。
【請求項23】
前記フィルムは、特にポリプロピレンを含む多孔質フィルムである、請求項14~16のいずれか1つに記載の装置。
【請求項24】
含浸剤が充填されたフィルムを試験するための、特にスケール及び/又は光学式制御装置を有する試験装置を更に備えている、請求項14~16のいずれか1つに記載の装置。
【請求項25】
経皮治療システムを製造するための方法であって、
請求項1~4のいずれか1つに記載の方法を、特に請求項1416のいずれか1つに記載の装置を用いて行う工程、並びに
前記フィルム内に及び/又は前記フィルム上に有効成分を追加する工程
を有する、方法。
【国際調査報告】