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特表2024-530859誘電泳動を利用して流体試料中での標的粒子を濃縮するマイクロ流体デバイス
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  • 特表-誘電泳動を利用して流体試料中での標的粒子を濃縮するマイクロ流体デバイス 図1
  • 特表-誘電泳動を利用して流体試料中での標的粒子を濃縮するマイクロ流体デバイス 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-27
(54)【発明の名称】誘電泳動を利用して流体試料中での標的粒子を濃縮するマイクロ流体デバイス
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/08 20060101AFI20240820BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20240820BHJP
   G01N 27/00 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
G01N35/08 A
G01N37/00 101
G01N27/00 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580805
(86)(22)【出願日】2021-06-30
(85)【翻訳文提出日】2024-02-09
(86)【国際出願番号】 GB2021051658
(87)【国際公開番号】W WO2023275503
(87)【国際公開日】2023-01-05
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517079180
【氏名又は名称】クァンタムディーエックス グループ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】QUANTUMDX GROUP LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100170597
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直樹
(72)【発明者】
【氏名】エドゥアルド ボアダ オルティズ
(72)【発明者】
【氏名】ローター シュミット
(72)【発明者】
【氏名】ヘザー マートン
【テーマコード(参考)】
2G058
2G060
【Fターム(参考)】
2G058EA03
2G058EA14
2G060AA15
2G060AA19
2G060AD06
2G060FB01
(57)【要約】
誘電泳動(DEP)を利用して流体試料中の標的粒子を濃縮するマイクロ流体デバイスが開示されている。当該マイクロ流体デバイスは、流体試料を受ける流体入口を備える入口チャンバと、前記流体試料を放出する流体出口を備える出口チャンバと、複数のDEPチャネルを備える。前記複数のDEPチャネルの各々は、前記入口チャンバ及び前記出口チャンバと流体接続される。その結果前記流体入口から前記流体出口への流路は、前記複数のDEPチャネルの各々を介するように供される。当該マイクロ流体デバイスは、前記流路の各々が実質的に同一の流体抵抗するように構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電泳動(DEP)を利用して流体試料中の標的粒子を濃縮するマイクロ流体デバイスであって、
流体試料を受ける流体入口を備える入口チャンバと、
前記流体試料を放出する流体出口を備える出口チャンバと、
複数のDEPチャネルを備え、
前記複数のDEPチャネルの各々は、前記入口チャンバ及び前記出口チャンバと流体接続され、その結果前記流体入口から前記流体出口への流路は、前記複数のDEPチャネルの各々を介するように供され、
当該マイクロ流体デバイスは、前記流路の各々が実質的に同一の流体抵抗するように構成される、
マイクロ流体デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載のマイクロ流体デバイスであって、前記複数のDEPチャネルは、前記入口チャンバの細長部分に沿って離間した位置で前記入口チャンバと流体接続され、前記出口チャンバの細長部分に沿って離間した位置で前記出口チャンバと流体接続される、マイクロ流体デバイス。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のマイクロ流体デバイスであって、前記入口チャンバの前記細長部分及び前記出口チャンバの前記細長部分はそれぞれ、前記入口チャンバ及び前記出口チャンバの細長壁を備える、マイクロ流体デバイス。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のマイクロ流体デバイスであって、前記流体入口は、前記入口チャンバの前記細長部分に沿って前記複数のDEPチャネルのうちの第1DEPチャネルの前に位置する、マイクロ流体デバイス。
【請求項5】
請求項2~4のいずれかに記載のマイクロ流体デバイスであって、前記流体入口は、前記入口チャンバの端部に位置する、マイクロ流体デバイス。
【請求項6】
請求項2~5のいずれかに記載のマイクロ流体デバイスであって、前記流体出口は、前記出口チャンバの前記細長部分に沿って前記複数のDEPチャネルのうちの最終DEPチャネルの後ろに位置する、マイクロ流体デバイス。
【請求項7】
請求項2~6のいずれかに記載のマイクロ流体デバイスであって、前記流体出口は、前記出口チャンバの端部に位置する、マイクロ流体デバイス。
【請求項8】
請求項4~7のいずれかに記載のマイクロ流体デバイスであって、前記入口チャンバの形状は、前記流体抵抗が、前記流体入口から前記入口チャンバの前記細長部分に沿って増大するようになされ、前出口チャンバの形状は、前記流体抵抗が、前記流体出口へ向かって前記入口チャンバの前記細長部分に沿って減少するようにされる、マイクロ流体デバイス。
【請求項9】
請求項8に記載のマイクロ流体デバイスであって、前記入口チャンバの形状は、該入口チャンバの断面積が前記流体入口から前記入口チャンバの前記細長部分に沿って減少するようになされ、前記出口チャンバの形状は、該出口チャンバの断面積が前記流体出口へ向かって前記出口チャンバの前記細長部分に沿って増大するようになされる、マイクロ流体デバイス。
【請求項10】
請求項8又は9に記載のマイクロ流体デバイスであって、前記流体抵抗は、前記流体抵抗が前記流体出口へ向かって前記出口チャンバの前記細長部分に沿って減少することに対応する量だけ前記流体入口から前記入口チャンバの前記細長部分に沿って増大する、マイクロ流体デバイス。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載のマイクロ流体デバイスであって、前記入口チャンバの外壁及び/又は前記出口チャンバの外壁は、該外壁の少なくとも一部に沿った湾曲形状を有する、マイクロ流体デバイス。
【請求項12】
請求項11に記載のマイクロ流体デバイスであって、前記外壁は、流体入口又は流体出口の一部を構成する、マイクロ流体デバイス。
【請求項13】
請求項1~12のいずれかに記載のマイクロ流体デバイスであって、前記流路の各々は実質的に同一の長さを有する、マイクロ流体デバイス。
【請求項14】
請求項1~13のいずれかに記載のマイクロ流体デバイスであって、前記複数のDEPチャネルの各々は、実質的に同一の流体抵抗を有する、マイクロ流体デバイス。
【請求項15】
請求項1~14のいずれかに記載のマイクロ流体デバイスであって、当該マイクロ流体デバイスはマイクロ流体カセットである、マイクロ流体デバイス。
【請求項16】
請求項1~15のいずれかに記載のマイクロ流体デバイスであって、前記流体入口は、当該マイクロ流体デバイスの第1マイクロ流体チャネルに接続され、前記流体出口は、当該マイクロ流体デバイスの他のマイクロ流体チャネルに接続され、その結果、流体試料は、前記第1マイクロ流体チャネルから前記他のマイクロ流体チャネルへ通過可能となる、マイクロ流体デバイス。
【請求項17】
請求項1~16のいずれかに記載のマイクロ流体デバイスであって、前記複数のDEPチャネルの各々は、1つ以上のDEP電極に係るマイクロ流体チャネルを備え、前記1つ以上のDEP電極は、前記マイクロ流体チャネルを貫流する標的粒子を選択的に捕捉するように配置される、マイクロ流体デバイス。
【請求項18】
誘電泳動(DEP)を利用してマイクロ流体デバイス上で流体試料中の標的粒子を濃縮する方法であって、入口チャンバの流体入口から出口チャンバの流体出口へ、前記入口チャンバ及び前記出口チャンバと流体接続される複数のDEPチャネルを貫く複数の流路を介して流体試料を流す段階を有し、当該マイクロ流体デバイスは、前記複数の流路の各々が実質的に同一の流体抵抗を有するように構成される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電泳動(DEP)を用いて流体試料中の標的粒子を濃縮するマイクロ流体デバイスおよび関連方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ流体システムは、患者から提供された体液試料から、病原体による感染などの健康状態の迅速なポイントオブケア診断を提供するために使用することができる。
【0003】
ポイント・オブ・ケア検査用のマイクロ流体システムは、通常、マイクロ流体診断装置とマイクロ流体カセットを備える。患者からの流体試料はマイクロ流体カセットに導入され、マイクロ流体カセットは処理のためにマイクロ流体診断デバイスに挿入される。マイクロ流体診断装置は通常、検査中にマイクロ流体カセットと相互作用するヒーター、アクチュエーター、画像センサーなどの処理部および検出部を含む。マイクロ流体カセットは、典型的には、流体試料が通過し、マイクロ流体診断装置によってカセットの外側から制御されるプロセスにおいてマイクロ流体カセット内に含まれる様々な試薬と相互作用するための複数のマイクロ流体チャンネルを含む。
【0004】
マイクロ流体診断システムで生じる問題は、標的粒子が少量しか存在しない場合、流体試料中の病原体のような標的粒子の存在を同定することが困難な場合があることである。これは、陽性の結果を返すのに十分な量の標的粒子を同定するために大量の流体試料を処理する必要があるため、ポイント・オブ・ケア設定など、迅速に検査を実施する必要がある場合に特に問題となり得る。大量の流体試料を処理することは、検査の実施に必要な時間を増加させる可能性がある。
【0005】
流体試料内の標的粒子の検出を改善するために、流体試料内の標的粒子を濃縮するマイクロ流体装置でDEP技術を使用することが知られている。DEPは、誘電体粒子を空間的に不均一な電界にさらすことにより、誘電体粒子に力を作用させるプロセスである。誘電体粒子の移動は、電極に向かうDEP(正のDEP)または電極から離れるDEP(負のDEP)を介して誘導され得る。
【0006】
特許文献1は、DEP技術を使用して流体試料中の病原体を濃縮するマイクロ流体デバイスを開示している。このデバイスは、並列に配置されたDEPチャネルのアレイを含み、各DEPチャネルは1つ以上のDEP電極に関連する。流体試料は、DEPチャンネルのアレイを同時に通過する。DEP電極は、流体試料がDEPチャンネルを通過する際に、流体試料中に存在する病原体をDEPチャンネルの壁に対して選択的に捕捉する。
【0007】
単一のDEPチャネルを使用するのではなく、並列に配置されたDEPチャネルのアレイを使用して流体試料を処理することは、デバイスを通る全体流量を減少させることなく、各DEPチャネルを通る流量を減少させることができるため、望ましい流体流れ特性(例えば、乱流ではなく層流)を維持しながら、より高い体積流量で流体試料を処理することができるので有利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2017/220534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に開示された装置は、一連の分岐する入口チャネルと出口チャネルを使用して、平行なDEPチャネルを通して流体試料を導く。複数の平行DEPチャネルを通して流体試料を誘導するのに有用であるが、分岐入口チャネルおよび出口チャネルは、デバイス上で大量の表面積を占め、チャネルがデバイス内の異なる深さに提供されることを伴う可能性がある。これは、装置のサイズとコスト、および装置の製造の複雑さを増大させるため、不利になる可能性がある。小型で低コストかつ製造が容易な装置を提供することは、装置がポイントオブケアで使用される場合に特に重要である。
【0010】
さらに、DEP流路に最も近い分岐入口流路と分岐出口流路は、断面積が小さい。このため、流路の製造が難しくなり、コストが高くなる可能性がある。さらに、分岐した入口と出口の流路を使用すると、装置を通過する流体試料は、流路壁のより大きな表面積にさらされることになる。このことは、分岐入口および出口流路の低い断面積と相まって、流体試料中に存在する標的粒子の流路壁への吸着を増加させ、それにより流体試料に対して実施される試験の感度を低下させる恐れがある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1態様による誘電泳動(DEP)を用いて流体試料中の標的粒子を濃縮するためのマイクロ流体デバイスが提供される。マイクロ流体デバイスは、流体試料を受け入れるための流体入口を含む入口チャンバと、流体試料を排出するための流体出口を含む出口チャンバと、複数のDEPチャネルと、を備える。各DEPチャンネルは、流体入口から流体出口への流体経路が各DEPチャンネルを通って提供されるように、入口チャンバおよび出口チャンバに流体的に接続されており、マイクロ流体デバイスは、各流体経路が実質的に同じ流体抵抗を有するように構成されている。
【0012】
任意に、複数のDEP流路は、入口チャンバの細長部分に沿って間隔を隔てた位置で入口チャンバに流体的に接続され、出口チャンバの細長部分に沿って間隔を隔てた位置で出口チャンバに流体的に接続される。
【0013】
任意選択で、入口チャンバの細長部分と出口チャンバの細長部分は、入口チャンバと出口チャンバのそれぞれの細長い壁を構成する。
【0014】
任意選択で、流体入口は、複数のDEPチャネルの第1のDEPチャネルの前に入口チャンバの細長部分に沿って配置される。
【0015】
任意選択で、流体入口は入口チャンバの端部に配置される。
【0016】
任意選択で、流体出口は、複数のDEPチャネルの最後のDEPチャネルの後に、出口チャンバの細長部分に沿って配置される。
【0017】
任意選択で、流体出口は、出口チャンバの端部に配置される。
【0018】
任意選択で、入口チャンバは、流体抵抗が入口チャンバの細長部分に沿って流体入口から増加するような形状であり、出口チャンバは、流体抵抗が出口チャンバの細長部分に沿って流体出口に向かって減少するような形状である。
【0019】
任意選択で、入口チャンバは、入口チャンバの断面積が入口チャンバの細長部分に沿って流体入口から減少するような形状であり、出口チャンバは、出口チャンバの断面積が出口チャンバの細長部分に沿って流体出口に向かって増加するような形状である。
【0020】
任意選択で、流体抵抗は、流体抵抗が出口チャンバの細長部分に沿って流体出口に向かって減少するのに対応する量だけ、入口チャンバの細長部分に沿って流体入口から増加する。
【0021】
任意選択で、入口チャンバの外壁および/または出口チャンバの外壁は、その長さの少なくとも一部に沿って連続的な湾曲形状を有する。
【0022】
任意選択で、外壁は流体入口または流体出口の一部を形成する。
【0023】
任意選択で、流体経路の各々は実質的に同じ長さを有する。
【0024】
任意選択で、複数のDEP流路の各DEP流路は実質的に同じ流体抵抗を有する。
【0025】
任意選択で、マイクロ流体デバイスはマイクロ流体カセットである。
【0026】
任意選択で、流体入口は、マイクロ流体デバイスの第1のマイクロ流体チャネルに接続され、流体出口は、流体試料が第1のマイクロ流体チャネルからさらなるマイクロ流体チャネルに通過することができるように、マイクロ流体デバイスのさらなるマイクロ流体チャネルに接続される。
【0027】
任意選択で、複数のDEPチャネルの各々は、1つ以上のDEP電極に関連するマイクロ流体チャネルを含み、1つ以上のDEP電極は、マイクロ流体チャネルを流れる標的粒子を選択的に捕捉するように配置される。
【0028】
本発明の第2態様による誘電泳動(DEP)を用いて流体試料中の標的粒子をマイクロ流体デバイス上で濃縮する方法が提供される。この方法は、入口チャンバの流体入口から出口チャンバの流体出口まで、入口チャンバおよび出口チャンバに流体的に接続された複数のDEPチャネルを通る複数の流体経路を介して流体試料を流す工程を含み、マイクロ流体デバイスは、各流体経路が実質的に同じ流体抵抗を有するように構成される。
【0029】
有利なことに、複数のDEPチャネルを通して流体試料を導くために一連の分岐入口チャネルおよび出口チャネルを使用する既存のマイクロ流体デバイスとは対照的に、本発明の実施形態に従って配置されたマイクロ流体デバイスは、DEPチャネルの各々を入口チャンバおよび出口チャンバに流体的に接続することによって、分岐チャネルの必要性を回避することができる。入口チャンバと出口チャンバはそれぞれ、マイクロ流体デバイス内の密閉空間を画定する。入口チャンバは、流体試料を入口チャンバの流体入口から各DEPチャンネルの入口に導き、出口チャンバは、流体試料を各DEPチャンネルの出口から出口チャンバの流体出口に導く。
【0030】
このようにして、DEPチャンネルは、共通の入口チャンバと出口チャンバを挟んで並列に接続される。流体入口と流体出口との間の複数の流体経路は、それぞれの複数のDEPチャンネルを介して提供される。この装置は、複数の流体経路のそれぞれが実質的に同じ流体抵抗を有するように構成されている。
【0031】
有利なことに、複数の流体経路が実質的に同じ流体抵抗を有することにより、使用時に、流体試料は、実質的に同じ体積流量で複数のDEPチャネルのそれぞれを通って流れる。さらに、複数のDEP流路を並列に使用することで、各DEP流路を通る流体試料の流量を減らすことができる。有利なことに、これは、各DEPチャンネルを通る規則的な層流を確保し、気泡形成を防止することによって、DEPチャンネルを通る流体流れ特性を改善することができる。DEPチャンネルを通る流体流動特性を改善することは、ひいては、DEP電極が標的粒子を捕捉する能力を改善することができる。
【0032】
さらに、記載された有利な流体流れ特性は、一連の分岐した入口および出口チャネルを使用するような既存の配置と比較して、著しく少ない表面積を占め、製造がより簡単な方法で提供され得る。マイクロ流体カセットは、よりコンパクトにすることができ、製造がより複雑で高価でなくすることができるため、マイクロ流体デバイスが、ポイント・オブ・ケアで使用するためのマイクロ流体カセットの一部として使用される場合、より少ない「面積(footprint)」を占めることは、特に有利であり得る。
【0033】
有利なことに、本発明の実施形態に従って配置されたマイクロ流体デバイスは、流体試料を複数のDEPチャネルに同時に供給するために、一連の狭い分岐入口チャネルおよび出口チャネルを含む必要がないため、既存のマイクロ流体デバイスよりも製造が容易で安価であり得る。
【0034】
有利なことに、本発明の実施形態に従って配置されたマイクロ流体デバイスを通過する流体試料は、チャネル/チャンバ壁の小さな表面積に曝される。これは、流体試料中に存在する標的粒子のチャネル/チャンバ壁への吸着量を低減することによって、流体試料に対して実施される試験の感度を改善することができる。
【0035】
本発明の様々なさらなる特徴および態様は、特許請求の範囲に定義されている。
【図面の簡単な説明】
【0036】
以下、本発明の実施形態を、同種の部品には対応する参照数字が付され、添付の図面を参照して例示的にのみ説明する。
図1】本発明の特定の実施形態によるマイクロ流体デバイスの簡略化された概略図である。
図2】本発明の特定の実施形態に従ったさらなるマイクロ流体デバイスの簡略化された概略図である。
図3】本発明の特定の実施形態に従った、複数のDEP電極を含む図2のマイクロ流体デバイスの簡略化された概略図である。
図4】本発明の特定の実施形態に従った、さらなるマイクロ流体デバイスの簡略化された概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1は、本発明の特定の実施形態によるマイクロ流体デバイス100の簡略化された概略図である。マイクロ流体デバイス100は、誘電泳動(DEP)を用いて流体試料中の病原体などの標的粒子を濃縮するように操作可能である。マイクロ流体デバイス100は、マイクロ流体カセット内に存在する流体試料の処理のためにマイクロ流体診断デバイスに挿入されるように配置されたマイクロ流体カセットの一部であり得る。典型的には、マイクロ流体デバイス100は、図1に示したものに加えて、流体試料の処理に必要なさらなる構成要素を含むことが理解されよう。
【0038】
マイクロ流体デバイス100は、入口チャンバ101と出口チャンバ102を備える。マイクロ流体デバイス100は、入口チャンバ101および出口チャンバ102に流体的に接続される第1のDEPチャネル105a、第2のDEPチャネル105bおよび第3のDEPチャネル105cをさらに備える。
【0039】
入口チャンバ101は流体入口103を備え、出口チャンバ102は流体出口104を備える。流体入口103は入口チャンバ101の端壁に位置し、流体出口104は出口チャンバ102の端壁に位置する。
【0040】
入口チャンバ101と出口チャンバ102はそれぞれ、マイクロ流体デバイス100内の密閉空間を画定する。
【0041】
入口チャンバ101は細長いチャンバである。入口チャンバ101は、複数のDEPチャンネルが接続されている入口チャンバ101の細長部分に沿って、流体入口103から流体抵抗が増加するように形成されている。入口チャンバ101の細長部分は、流体入口103に隣接する入口チャンバ101の第1の端部と、流体入口103から離れた入口チャンバ101の第2の端部との間に延びている。流体抵抗は、流体入口103に隣接する入口チャンバ101の第1の端部が入口チャンバ101の第2の端部よりも大きな断面積を有することにより、入口チャンバ101の細長部分に沿って増加する。
【0042】
流体抵抗は、ある領域を通る流体の流れに対する抵抗(水力インピーダンスとしても知られる)を意味することが理解されよう。
【0043】
出口チャンバ102は、実質的に入口チャンバ101と対応している。出口チャンバ102は、複数のDEPチャネルが接続された出口チャンバ102の細長部分に沿って、流体抵抗が流体出口104に向かって減少するように形成されている。出口チャンバ102の細長部分は、流体出口104に隣接する出口チャンバ102の第1の端部と、流体出口104から離れた出口チャンバ102の第2の端部との間に延びている。流体抵抗は、流体出口104に隣接する出口チャンバ102の第1の端部が出口チャンバ102の第2の端部よりも大きな断面積を有することによって、流体出口104に向かって細長部分に沿って減少する。
【0044】
典型的には、入口チャンバ101と出口チャンバ102の形状は実質的に、流体抵抗が出口チャンバ102の細長部分に沿って流体出口104に向かって減少することに対応する量だけ入口チャンバ101の細長部分に沿って流体入口103から増加するようにして対応する。図1に示すように、出口チャンバ102は入口チャンバ101に対応する形状を有するが、流体入口103と流体出口104がマイクロ流体デバイス100の反対側に位置するように入口チャンバ101に対して180°回転している。
【0045】
流体入口103は、流体試料が入口チャンバ101に導入されるように流体試料を受け入れるように配置され、流体出口104は、流体試料が出口チャンバ102から排出されるように配置される。
【0046】
流体入口103は、マイクロ流体デバイス100のマイクロ流体チャネルに接続することができ、流体出口104は、マイクロ流体デバイス100のさらなるマイクロ流体チャネルに接続することができる。使用時には、以下でさらに詳細に説明するように、流体入口103および流体出口104は、図1に示すマイクロ流体デバイス100の部分への流体試料の通過およびそこからの流体試料の流出に使用される。
【0047】
第1のDEPチャネル105a、第2のDEPチャネル105bおよび第3のDEPチャネル105cは、マイクロ流体デバイス100の1つ以上のDEP電極(図示せず)に関連するマイクロ流体チャネルである。
【0048】
第1のDEPチャネル105a、第2のDEPチャネル105bおよび第3のDEPチャネル105cは、これらのチャネルを通過する流体試料に対してDEPを実行するように配置される。DEP電極は、病原体などの標的粒子がDEP電極に関連するDEPチャネルの表面上に選択的に捕捉され得るように、流体試料が複数のDEPチャネルを通過しているときに選択的に活性化され得る。
【0049】
第1のDEP流路105a、第2のDEP流路105bおよび第3のDEP流路105cはそれぞれ、流体が複数のDEP流路105a 105b 105cのそれぞれを介して入口チャンバ101から出口チャンバ102に通過できるように、第1の端部で入口チャンバ101に流体的に接続され、第2の端部で出口チャンバ102に流体的に接続される。複数のDEPチャネルは、入口チャンバ101の細長い壁によって提供される入口チャンバ101の細長部分に沿って間隔を隔てた位置で入口チャンバ101に流体的に接続される。同様に、DEP流路は、出口チャンバ102の細長い壁によって設けられた出口チャンバ102の細長部分に沿って間隔を隔てた位置で、出口チャンバ102に流体連通している。
【0050】
複数のDEPチャネルは、第1のDEPチャネル105aが流体入口103に隣接して配置され、第2のDEPチャネル105bが第1のDEPチャネル105aに隣接して配置され、第3および最後のDEPチャネル105cが第2のDEPチャネル105bに隣接し、流体入口103から最も離れて配置されるように、順次入口チャンバ101に流体接続される。
【0051】
複数のDEPチャネルは、複数のDEPチャネルが流体入口および流体出口に対して入口チャンバ101に流体接続される順序とは逆の順序で出口チャンバ102に流体接続される。第3のDEP流路105cは流体出口104の隣に位置し、第2のDEP流路105bは第3のDEP流路105cの隣に位置し、第1のDEP流路105aは第2のDEP流路105bの隣に位置し、流体出口104から最も離れている。
【0052】
第1のDEP流路105a、第2のDEP流路105bおよび第3のDEP流路105cはそれぞれ、流体が複数のDEP流路105a 105b 105cのそれぞれを介して入口チャンバ101から出口チャンバ102に通過できるように、第1の端部で入口チャンバ101に流体的に接続され、第2の端部で出口チャンバ102に流体的に接続される。複数のDEPチャネルは、入口チャンバ101の細長い壁によって提供される入口チャンバ101の細長部分に沿って間隔を隔てた位置で入口チャンバ101に流体的に接続される。同様に、DEP流路は、出口チャンバ102の細長い壁によって設けられた出口チャンバ102の細長部分に沿って間隔を隔てた位置で、出口チャンバ102に流体連通している。
【0053】
複数のDEPチャネルは、第1のDEPチャネル105aが流体入口103に隣接して配置され、第2のDEPチャネル105bが第1のDEPチャネル105aに隣接して配置され、第3および最後のDEPチャネル105cが第2のDEPチャネル105bに隣接し、流体入口103から最も離れて配置されるように、順次入口チャンバ101に流体的に接続される。
【0054】
複数のDEPチャネルは、複数のDEPチャネルが流体入口および流体出口に対して入口チャンバ101に流体接続される順序とは逆の順序で出口チャンバ102に流体接続される。第3のDEP流路105cは流体出口104の隣に位置し、第2のDEP流路105bは第3のDEP流路105cの隣に位置し、第1のDEP流路105aは第2のDEP流路105bの隣に位置し、流体出口104から最も離れている。
【0055】
このようにして、流体入口103に最も近い位置で入口チャンバ101に接続されるDEPチャネルは、流体出口104から最も遠い位置で出口チャンバ102に接続される。同様に、流体入口103から最も遠い位置で入口チャンバ101に接続されているDEPチャンネルは、流体出口104に最も近い位置で出口チャンバ102に接続されている。
【0056】
図1はまた、流体が流体入口103と流体出口104の間を流れるための複数の流体経路を示している。
【0057】
第1の経路106aが、流体入口103から入口チャンバ101を通り、第1のDEPチャネル105aを通り、出口チャンバ102を通って流体出口104まで示されている。
【0058】
第2の経路106bが、流体入口103から入口チャンバ101を通り、第2のDEPチャネル105bを通り、出口チャンバ102を通って流体出口104まで示されている。
【0059】
第3の経路106cは、流体入口103から入口チャンバ101を通り、第3のDEPチャネル105cを通り、出口チャンバ102を通って流体出口104に至る経路を示している。
【0060】
マイクロ流体デバイス100は、マイクロ流体デバイス100を通る各経路106a 106b 106cに沿って通過する流体試料が受ける流体抵抗が、入口チャンバ101および出口チャンバ102の形状および構成、ならびに複数のDEPチャネルが入口チャンバ101および出口チャンバ102に流体的に接続される順序によって実質的に同じになるように配置される。
【0061】
例えば、第1の経路106aに沿って通過する流体試料は、流体入口103から第1のDEPチャネル105aの入口までの距離が短く、流体試料が通過する入口チャンバ101の部分の断面積が大きいため、入口チャンバ101内で相対的に少量の流体抵抗を受ける。第1の経路106aに沿って進むと、流体試料は、第1のDEPチャネル105aの出口から流体出口104までの距離が大きく、流体試料が通過する出口チャンバ102の部分の断面積が小さいため、第1のDEPチャネル105aの出口から出口チャンバ102を通って流体出口104まで、相対的に大きな流体抵抗を受ける。
【0062】
対照的に、第2の経路106bに沿って通過する流体試料は、入口チャンバ101において中程度の量の流体抵抗を受け、出口チャンバ102において中程度の量の流体抵抗を受け、第3の経路106cに沿って通過する流体試料は、入口チャンバ101において相対的に大きな量の流体抵抗を受け、出口チャンバ102において相対的に小さな量の流体抵抗を受ける。マイクロ流体デバイス100は、DEPチャネルの前後の複数の経路の各々に沿って実質的に同じ流体抵抗を提供するように配置される。典型的には、DEP流路はそれぞれ実質的に同じ流体抵抗を有する。
【0063】
このようにして、マイクロ流体デバイス100は、各流体経路に沿って実質的に同じ流体抵抗を提供する。有利なことに、このことは、使用時に流体試料が複数のDEP流路のそれぞれを実質的に同じ体積流量で流れることを意味する。有利なことに、これは、各DEP流路を通る規則的な層流を確保し、気泡形成を防止することによって、DEP流路を通る流体流れ特性を改善することができる。DEP流路を通る流体流動特性を改善することは、ひいては、DEP電極が標的粒子を捕捉する能力を改善することができる。
【0064】
各流体経路に沿った流体抵抗は、適切な計算流体力学(CFD)技術を含む任意の適切な技術によって決定できることが理解されるであろう。
【0065】
さらに、マイクロ流体デバイス100は、一連の分岐入口および出口チャネルを使用するような既存の配置と比較して、マイクロ流体デバイス100上の表面積を著しく小さくしながら、このような有益な流体流れ特性を提供することができる。これは、マイクロ流体デバイス100が、ポイントオブケア環境で使用するためのマイクロ流体カセットの一部である場合に、マイクロ流体カセットをよりコンパクトにすることができ、製造コストがより効果的になり得るので、特に有利であり得る。
【0066】
次に、マイクロ流体デバイス100の使用方法について説明する。
【0067】
病原体などの標的粒子を含む流体試料は、流体入口103を介して入口チャンバ101に導入され、第1の経路106a、第2の経路106bおよび第3の経路106cを介してマイクロ流体デバイス100を通過して流体出口104に至る。
【0068】
より具体的には、流体試料は流体入口103から入口チャンバ101を通過する。流体試料の一部は、第1のDEPチャネル105a、第2のDEPチャネル105bおよび第3のDEPチャネル105cのそれぞれを通過する。その後、流体試料は、第1のDEPチャネル105a、第2のDEPチャネル105b、および第3のDEPチャネル105cから出口チャンバ102に通過し、出口チャンバ102から流体出口104に排出される。
【0069】
流体試料が複数のDEPチャネルを通過している間、複数のDEPチャネルに関連するDEP電極は、複数のDEPチャネルを通って流れている流体試料中に浮遊している標的粒子が電極によって捕捉され、電極に関連するDEPチャネルの壁に付着するように、選択的に活性化される。
【0070】
標的粒子がDEP電極によって捕捉される間、流体試料はマイクロ流体デバイス100を通って流れ続ける。その後、電極は非活性化される。これにより、標的粒子が流体試料に再封入され、標的粒子で濃縮された流体試料量が提供される。この濃縮された流体試料は、流体排出口104を介して、さらなる処理のために導くことができる。
【0071】
ポンプを使用して、流体試料を流体入口103と流体出口104の間に送り込むことができる。ポンプは、マイクロ流体デバイス100の一部または外部部品とすることができる。
【0072】
他の実施形態では、マイクロ流体デバイス100は、異なる数のDEPチャネルおよびマイクロ流体デバイス100を通る対応する経路を含むことができることが理解されるであろう。さらに、マイクロ流体デバイス100を通る流体経路は概略的なものであり、マイクロ流体デバイス100を通る流体の流れの一般的な方向を描写することを意図していることが理解されよう。
【0073】
入口チャンバ101、出口チャンバ102、第1のDEPチャネル105a、第2のDEPチャネル105bおよび第3のDEPチャネル105cは、典型的には、基板の表面の凹部領域として形成される。典型的には、マイクロ流体デバイス100を流体的に封止するために、基板上に封止層が固定される。
【0074】
特定の実施形態において、入口チャンバ101および出口チャンバ102は、デバイス100を通る流体経路にわたって流体抵抗が均衡するように、様々な適切な形状および構成を取り得ることが理解されよう。
【0075】
説明したように、DEPは、誘電体粒子を空間的に不均一な電界にさらすことによって、誘電体粒子に力を及ぼすプロセスである。誘電体粒子の動きは、DEPを介して電極に向かう(正のDEP)または電極から離れる(負のDEP)ように誘導することができる。
【0076】
本明細書に開示されたDEP電極は、活性化されたときにDEPを用いて標的粒子を捕捉するように適切に調整されることが理解されよう。例えば、場合によっては、DEP電極は、スメグマ菌を捕捉するために17V(ピーク・トゥ・ピーク)で5MHzを使用することができる。しかしながら、DEP電極は、流速および電極形状に依存して、適切な周波数および電圧の範囲にわたって働くことができることが理解されるであろう。
【0077】
特定の実施形態では、流体経路の各々は、マイクロ流体デバイス100を通る実質的に同じ長さを有することができる。
【0078】
マイクロ流体デバイス100(および本発明の実施形態に従って本明細書に記載される他のマイクロ流体デバイス)は、誘電泳動を使用して流体試料中の標的粒子をマイクロ流体デバイス上で濃縮する方法を実行するために使用され得る、 この方法は、入口チャンバの流体入口から、入口チャンバおよび出口チャンバに流体連通している複数のDEPチャネルを通る複数の流体経路を介して出口チャンバの流体出口へ流体試料を流すことを含み、マイクロ流体デバイスは、流体経路の各々が実質的に同じ流体抵抗を有するように構成される。本方法は、本明細書に記載されるようなさらなるステップおよび特徴を含み得ることが理解されよう。
【0079】
図2は、本発明の特定の実施形態によるさらなるマイクロ流体デバイスの簡略化された概略図である。
【0080】
マイクロ流体デバイス200は、他に記載され描かれている場合を除き、図1を参照して説明したマイクロ流体デバイス100に実質的に対応する。
【0081】
マイクロ流体デバイス200は、入口チャンバ201および出口チャンバ202を備える。入口チャンバ201は流体入口203を備え、出口チャンバ202は流体出口204を備える。
【0082】
マイクロ流体デバイス200は、第1のDEPチャネル205a、第2のDEPチャネル205b、第3のDEPチャネル205c、第4のDEPチャネル205d、第5のDEPチャネル205e、第6のDEPチャネル205f、第7のDEPチャネル205g、および第8のDEPチャネル205hを備える。DEPチャネルの各々は、第1の端が入口チャンバ201に流体的に接続され、第2の端が出口チャンバ202に流体的に接続される。DEPチャネルの各々は、メインチャネルの両側に入口チャネルと出口チャネルを含む。
【0083】
流体入口203は、第1のDEPチャネル205aに隣接する入口チャンバ201の端部に位置する。流体出口204は、第8(および最終)DEPチャネル205hに隣接する出口チャンバ202の端部に位置する。
【0084】
入口チャンバ201は、細長い外壁と、外壁に対向する細長い内壁を備える。複数のDEPチャネルは、内壁に沿って接続されている。内壁と外壁は実質的に直線である。内壁は、複数のDEPチャネルが接続される入口チャンバ201の細長部分に沿って入口チャンバ201が流体入口203から狭くなるように、外壁に対して角度が付けられている。
【0085】
出口チャンバ202は、細長い外壁と、外壁に対向する細長い内壁を備える。複数のDEPチャンネルは内壁に沿って接続されている。内壁と外壁は実質的に直線である。内壁は、出口チャンバ202が、複数のDEPチャネルが接続されている出口チャンバ202の細長部分に沿って流体出口204に向かって広がるように、外壁に対して角度が付けられている。
【0086】
図3は、本発明の特定の実施形態による複数のDEP電極を含む図2のマイクロ流体デバイス200の簡略化された概略図である。
【0087】
マイクロ流体デバイス200は、DEP電極アレイ300を含む。DEP電極アレイ300は、DEPチャネル上またはDEPチャネルのすぐ隣に配置される複数の電極を備える。本明細書で説明されるように、DEP電極アレイ300は、DEPチャネルを通って流れる流体試料中に懸濁された標的粒子を捕捉するために選択的に活性化され得る。標的粒子は、DEP電極のすぐ隣のDEPチャンネルで捕捉される。DEP電極は、標的粒子がDEPチャンネルを流れる流体中に再び放出されるように、非活性化することができる。
【0088】
図4は、本発明の特定の実施形態によるマイクロ流体デバイス400の簡略化された概略図である。
【0089】
マイクロ流体デバイス400は、特に記載および描写されている場合を除き、図2を参照して説明したマイクロ流体デバイス200に実質的に対応する。
【0090】
マイクロ流体デバイス400は、入口チャンバ401および出口チャンバ402を備える。入口チャンバ401は流体入口403を備え、出口チャンバ402は流体出口404を備え。
【0091】
マイクロ流体デバイス400は、第1のDEPチャネル405a、第2のDEPチャネル405b、第3のDEPチャネル405c、第4のDEPチャネル405d、第5のDEPチャネル405e、第6のDEPチャネル405f、第7のDEPチャネル405g、および第8のDEPチャネル405hを備える。
【0092】
入口チャンバ401は、細長い内壁406と細長い外壁407を備える。同様に、出口チャンバ402は、細長い内壁と細長い外壁を備える。
【0093】
DEP流路のそれぞれは、第一端が流入室401に、第二端が流出室402に、流入室401と流出室402のそれぞれの内壁に沿って間隔をあけて流体連通している。
【0094】
図2のマイクロ流体デバイス200とは対照的に、入口チャンバ401の外壁407は連続的な湾曲形状を有する一方、入口チャンバ401の内壁406は実質的に直線状である。入口チャンバ401の端部において、外壁407は流体入口403の一部を形成する。出口チャンバ402も対応する形状を有する。
【0095】
このように、流体試料にさらされる入口チャンバ401と出口チャンバ402の内面は丸みを帯びている。有利なことに、これによって、DEP流路のそれぞれの入口と出口における乱流を最小にすることができ、その結果、流体の流れがより滑らかになり、DEP流路のそれぞれにわたる局所的な圧力損失特性が改善されます。
【0096】
有利なことに、入口チャンバ401と出口チャンバ402の形状により、マイクロ流体デバイス400の全体サイズを大きくすることなく、DEPチャネルを長くすることができる。DEP流路を長くすることは、標的粒子を捕捉するDEP流路の能力を向上させることができるので有利である。さらに、各DEPチャネルの入口および出口は実質的に同じ長さを有する。これにより、DEPチャネルの各々を通る流体の流れの規則性がさらに改善され得る。
【0097】
特定の実施形態では、入口チャンバ401は、DEPチャネルが接続される入口チャンバ401の部分(この実施形態では、流体入口403に隣接する入口チャンバ401の第1の端部と流体入口403から最も遠い入口チャンバ401の第2の端部との間)に沿って約20mmの長さを有する。
【0098】
特定の実施形態では、流体入口403に隣接する入口チャンバ401の第1の端部は、約2.4mmと2.6mm端部との間の幅を有し、流体入口403から最も遠い入口チャンバ401の第2の端部は、約0.4mmと0.5mmとの間の幅を有する。特定の実施形態では、入口チャンバ401の深さは約0.06mmである。
【0099】
特定の実施形態では、出口チャンバ402は、実質的に入口チャンバ401と同じ寸法を有する。
【0100】
本明細書に開示されるタイプのマイクロ流体デバイスのアレイは、流体試料を処理するために使用できることが理解されるであろう。例えば、本明細書に開示されるタイプの4つのマイクロ流体デバイスのアレイを使用して、同じ流体試料を処理することができる。このような例では、流体試料の一部を各デバイスに供給することができる。つ以上のマイクロ流体デバイスを使用して流体試料を処理すると、DEPチャネルを通る流体の流れをさらに遅くすることによって、標的粒子の捕捉をさらに改善することができる。
【0101】
本発明の実施形態に従って配置されたマイクロ流体デバイスによって捕捉され得る標的粒子は、病原体(例えば、細菌、ウイルス、または真菌)、またはタンパク質もしくは癌細胞などの関心のある他の粒子であり得ることが理解されるであろう。
【0102】
本明細書(添付の特許請求の範囲、要約および図面を含む)に開示されるすべての特徴、および/またはそのように開示される任意の方法もしくはプロセスのすべてのステップは、そのような特徴および/またはステップの少なくとも一部が相互に排他的である組み合わせを除き、任意の組み合わせで組み合わせることができる。本明細書(添付の特許請求の範囲、要約および図面を含む)に開示された各特徴は、明示的に別段の記載がない限り、同一、同等または類似の目的を果たす代替的な特徴で置き換えることができる。したがって、明示的に別段の記載がない限り、開示される各特徴は、同等または類似の特徴の一般的な一連の一例である。本発明は、前述の実施形態の詳細に限定されるものではない。本発明は、本明細書(添付の特許請求の範囲、要約および図面を含む)に開示された特徴の任意の新規なもの、または任意の新規な組み合わせ、あるいはそのように開示された任意の方法またはプロセスのステップの任意の新規なもの、または任意の新規な組み合わせに及ぶ。
【0103】
本明細書における実質的に任意の複数および/または単数の用語の使用に関して、当業者であれば、文脈および/または用途に応じて、複数形から単数形へ、および/または単数形から複数形へ翻訳することができる。様々な単数/複数の順列は、明瞭さのために本明細書で明示的に規定することができる。
【0104】
一般に、本明細書において、特に添付の特許請求の範囲において使用される用語は、一般に「開かれた」用語として意図されることが当業者には理解されるであろう(例えば、用語「含む」は、「含むが限定されない」と解釈されるべきであり、用語「有する」は、「少なくとも有する」と解釈されるべきであり、用語「含む」は、「含むが限定されない」と解釈されるべきであるなど)。当業者にはさらに、導入された請求項の特定の数の記載が意図される場合、そのような意図は請求項に明示的に記載され、そのような記載がない場合、そのような意図は存在しないことが理解されよう。例えば、理解の一助として、以下の添付の特許請求の範囲には、特許請求の範囲の記載を導入するために「少なくとも1つ」及び「1つ以上」という導入句が使用されている場合がある。しかしながら、このような語句の使用は、不定冠詞「a」または「an」による請求項の繰り返しの導入が、そのような導入された請求項の繰り返しを含む特定の請求項を、そのような繰り返しを1つだけ含む実施形態に限定することを意味すると解釈されるべきではなく、たとえ同じ請求項が、導入語句「1つ以上」または「少なくとも1つ」と、「ある」などの不定冠詞(例えば、「ある」は、「少なくとも1つ」又は「1つ以上」を意味すると解釈されるべきである)。さらに、導入された請求項の繰り返しの特定の数が明示的に記載されている場合であっても、当業者は、そのような復唱は、少なくとも記載された数を意味すると解釈されるべきであることを認識するであろう(例えば、他の修飾語なしの「2つの記載」のそのままの記載は、少なくとも2つの記載、または2つ以上の記載を意味する)。
【0105】
本開示の様々な実施形態が、例示の目的で本明細書に記載されており、本開示の範囲から逸脱することなく様々な変更がなされ得ることが理解されるであろう。従って、本明細書に開示された様々な実施形態は、限定することを意図するものではなく、真の範囲は、以下の特許請求の範囲によって示される。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】