(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-27
(54)【発明の名称】防振装置と冷却剤通路とを有する工具ホルダ、及び工具ホルダを備える切削工具
(51)【国際特許分類】
B23B 27/00 20060101AFI20240820BHJP
B23B 29/02 20060101ALI20240820BHJP
B23B 29/12 20060101ALI20240820BHJP
B23C 9/00 20060101ALI20240820BHJP
B23C 5/28 20060101ALI20240820BHJP
B23Q 11/00 20060101ALI20240820BHJP
B23Q 1/72 20060101ALI20240820BHJP
B23B 27/10 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
B23B27/00 C
B23B29/02 A
B23B29/12 Z
B23C9/00 Z
B23C5/28
B23Q11/00 A
B23Q1/72 Z
B23B27/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501851
(86)(22)【出願日】2022-08-08
(85)【翻訳文提出日】2024-03-05
(86)【国際出願番号】 IL2022050859
(87)【国際公開番号】W WO2023037352
(87)【国際公開日】2023-03-16
(32)【優先日】2021-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514105826
【氏名又は名称】イスカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】サフォーリ,ジョニー
【テーマコード(参考)】
3C011
3C022
3C046
3C048
【Fターム(参考)】
3C011AA06
3C022QQ03
3C046BB02
3C046BB07
3C046KK02
3C046MM07
3C048EE10
(57)【要約】
細長工具ホルダ(22)は、筐体外周面を有する質量体筐体部分(40)と、スリーブ穴壁面を有する外側スリーブと、防振装置(34)とを含む。細長溝(92)は、筐体外周面及びスリーブ穴壁面の一方の中に形成される。工具ホルダの組立て状態において、筐体外周面及びスリーブ穴壁面の共通境界面に位置する溝は、溝冷却剤通路を形成する。溝冷却剤通路は、防振装置から離間する工具ホルダ冷却剤通路全体の一部を形成し、したがって、冷却剤を防振装置から隔てる。切削工具(20)は、工具ホルダを組み込む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反対の前方向(D
F)及び後方向(D
R)を画定するホルダ長手方向軸(B)に沿って細長い工具ホルダ(22)であって、前記工具ホルダ(22)は、前記工具ホルダ(22)の前端に固着される切削部分(24)を有するように構成され、前記工具ホルダ(22)は、
外側スリーブ(74)であって、
反対の前方スリーブ端面(76a)及び後方スリーブ端面(76b)、並びに前記前方スリーブ端面(76a)と前記後方スリーブ端面(76b)との間に延在するスリーブ外周面(78)、並びに
前記前方スリーブ端面(76a)及び前記後方スリーブ端面(76b)に開口するスリーブ穴壁面(82)を有するスリーブ穴(80)
を備える外側スリーブ(74)と、
質量体筐体部分(40)であって、
反対の前方筐体端面(41a)及び後方筐体端面(41b)、並びに前記前方筐体端面(41a)と前記後方筐体端面(41b)との間に延在する筐体外周面(39)、並びに
内向き空洞壁面(38)を有する内部ホルダ空洞(36)
を備える質量体筐体部分(40)と、
防振装置(34)であって、
2つの反対の質量体端面(56)、及び前記質量体端面(56)の間に延在する質量体外周面(58)を備える振動吸収質量体(54)
を備える防振装置(34)と、
2つの弾性懸架部材(62)と
を備え、
細長溝(92)は、前記筐体外周面(39)及び前記スリーブ穴壁面(82)の一方の中に形成され、
前記工具ホルダ(22)は、非組立て状態と組立て状態との間で調節可能であり、組立て状態において、
前記振動吸収質量体(54)は、前記内部ホルダ空洞(36)内に配設され、前記内向き空洞壁面(38)に接触する前記2つの懸架部材(62)によって前記内部ホルダ空洞(36)内に弾性的に懸架され、
前記質量体筐体部分(40)は、前記スリーブ穴(80)内に少なくとも部分的に位置し、前記スリーブ穴壁面(82)の少なくとも一部分は、前記ホルダ長手方向軸(B)回りに前記筐体外周面(39)の少なくとも一部分を取り囲むようにし、これにより、共通境界面を画定し、
前記溝(92)は、前記共通境界面に位置し、これにより、溝冷却剤通路(96)を形成し、
前記溝冷却剤通路(96)は、互いに流体連通する外部冷却剤入口(30)と外部冷却剤出口(32)とを有する工具ホルダ冷却剤通路(28)の一部である、工具ホルダ(22)。
【請求項2】
前記溝(92)は、前記筐体外周面(39)内に形成される、請求項1に記載の工具ホルダ(22)。
【請求項3】
前記スリーブ穴壁面(82)は、前記後方スリーブ端面(76b)に開口する、請求項1又は2に記載の工具ホルダ(22)。
【請求項4】
前記溝(92)は、溝軸(G)に沿って線形に延在し、
前記工具ホルダ(22)の組立て状態において、前記溝軸(G)は、前記ホルダ長手方向軸(B)に平行である、請求項1~3のいずれか1項に記載の工具ホルダ(22)。
【請求項5】
前記質量体筐体部分(40)は、前方筐体部分(40a)と、後方筐体部分(40b)とを備え、前記前方筐体部分(40a)は、前記後方筐体部分(40b)の前方にあり、前記後方筐体部分(40b)より大きな径方向寸法を有し、
前記工具ホルダ(22)の組立て状態において、前記後方筐体部分(40b)のみ前記スリーブ穴(80)内に位置する、請求項1~4のいずれか1項に記載の工具ホルダ(22)。
【請求項6】
前記筐体外周面(39)は、
前記前方筐体部分(40a)に前方筐体外周面(39a)と、
前記後方筐体部分(40b)に後方筐体外周面(39b)と、
前記前方筐体外周面(39a)と前記後方筐体外周面(39b)とを接続する筐体段面(39s)と
を備え、
前記前方筐体部分(40a)は、前記前方筐体部分(40a)の後端部に、前記筐体段面(39s)に開口する前方筐体冷却剤通過通路(88)を備え、
前記工具ホルダ(22)の組立て状態において、前記溝冷却剤通路(96)は、前記前方筐体冷却剤通過通路(88)に延在し、
前記前方筐体冷却剤通過通路(88)は、前記工具ホルダ冷却剤通路(28)の一部である、請求項5に記載の工具ホルダ(22)。
【請求項7】
前記前方筐体冷却剤通過通路(88)は、前記冷却剤出口(32)を形成するように、前記前方筐体部分(40a)の前端部で前記筐体外周面(39)まで更に開口する、請求項6に記載の工具ホルダ(22)。
【請求項8】
前記質量体筐体部分(40)は、筐体凹部(84)を備え、前記筐体凹部(84)は、前記後方筐体端面(41b)に開口する内向き凹部壁面(86)を備え、
前記工具ホルダ(22)は、空洞軸方向封止部材(67)を備え、
前記工具ホルダ(22)の組立て状態において、前記空洞軸方向封止部材(67)は、前記筐体凹部(84)内に位置し、前記後方向(D
R)で前記ホルダ空洞(36)の範囲を定め、前記筐体凹部(84)の前方部分が前記内部ホルダ空洞(36)を形成するようにし、
前記後方筐体部分(40b)は、前記凹部壁面(86)及び前記後方筐体外周面(39b)に開口する後方筐体冷却剤通過通路(90)を備え、
前記工具ホルダ(22)の組立て状態において、前記後方筐体冷却剤通過通路(90)は、前記空洞軸方向封止部材(67)の後方にあり、前記後方筐体冷却剤通過通路(90)は、前記工具ホルダ冷却剤通路(28)の一部である、請求項6又は7に記載の工具ホルダ(22)。
【請求項9】
前記外側スリーブ(74)は、前方外側スリーブ構成要素(74a)と後方外側スリーブ構成要素(74b)とを備え、
前記前方外側スリーブ構成要素(74a)及び前記後方外側スリーブ構成要素(74b)は、互いと固定係合し、前記前方外側スリーブ構成要素(74a)は、前記後方外側スリーブ構成要素(74b)の前方にある、請求項8に記載の工具ホルダ(22)。
【請求項10】
前記工具ホルダ(22)の組立て状態において、前記前方スリーブ端面(76a)及び前記筐体段面(39s)は、互いに当接する、請求項6~9のいずれか1項に記載の工具ホルダ(22)。
【請求項11】
前記後方筐体外周面(39b)は、軸方向に離間する前の後方筐体外周面(39b-a)及び後の後方筐体外周面(39b-b)と、前記前の後方筐体外周面(39b-a)と前記後の後方筐体外周面(39b-b)との間に延在する中間後方筐体外周面(39b-c)とを備え、前記前の後方筐体外周面(39b-a)は、前記後の後方筐体外周面(39b-b)より前記前方筐体部分(40a)に近く、
前記工具ホルダ(22)の組立て状態において、少なくとも前記前の後方筐体外周面(39b-a)及び前記後の後方筐体外周面(39b-b)は、前記スリーブ穴壁面(82)にそれぞれ当接する、請求項6~10のいずれか1項に記載の工具ホルダ(22)。
【請求項12】
前記溝(92)は、前記筐体外周面(39)内に形成され、
前記溝(92)は、2つの溝端部(94a、94b)を備え、
前記前の後方筐体外周面(39b-a)は、前記筐体段面(39s)に交差し、
前記2つの溝端部(94b)の一方は、前記後の後方筐体外周面(39b-b)に位置し、
前記2つの溝端部(94a)のもう一方は、前記前の後方筐体外周面(39b-a)と前記筐体段面(39s)との交線に位置する、請求項11に記載の工具ホルダ(22)。
【請求項13】
前記中間後方筐体外周面(39b-c)は、前記前の後方筐体外周面(39b-a)及び前記後の後方筐体外周面(39b-b)に対して径方向に凹み、
前記工具ホルダ(22)の組立て状態において、前記中間後方筐体外周面(39b-c)は、前記スリーブ穴壁面(82)から離間する、請求項11又は12に記載の工具ホルダ(22)。
【請求項14】
前記質量体筐体部分(40)は、筐体凹部(84)を備え、前記筐体凹部(84)は、前記後方筐体端面(41b)に開口する内向き凹部壁面(86)を備え、
前記工具ホルダ(22)は、空洞軸方向封止部材(67)を備え、
前記工具ホルダ(22)の組立て状態において、前記空洞軸方向封止部材(67)は、前記筐体凹部(84)内に位置し、前記後方向(D
R)で前記ホルダ空洞(36)の範囲を定め、前記筐体凹部(84)の前方部分が前記内部ホルダ空洞(36)を形成するようにする、請求項1~13のいずれか1項に記載の工具ホルダ(22)。
【請求項15】
前記工具ホルダ(22)の組立て状態において、前記凹部壁面(86)は、前記冷却剤入口(30)を形成するように前記後方筐体端面(41b)に開口し、
前記冷却剤入口(30)から延在する前記筐体凹部(84)の一部分は、前記工具ホルダ冷却剤通路(28)の一部である、請求項14に記載の工具ホルダ(22)。
【請求項16】
前記外側スリーブ(74)は、スリーブ材料を含み、
前記質量体筐体部分(40)は、筐体本体材料を含み、
前記スリーブ材料は、前記筐体本体材料より稠密である、請求項1~15のいずれか1項に記載の工具ホルダ(22)。
【請求項17】
前記スリーブ材料はカーバイドである、請求項16に記載の工具ホルダ(22)。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか1項に記載の工具ホルダ(22)と、
前記工具ホルダ(22)の前端部に位置する切削部分(24)と
を備える切削工具(20)であって、前記切削部分(24)は、少なくとも1つの切削インサート(26)を備える、切削工具(20)。
【請求項19】
前記切削部分(24)は、前記工具ホルダ(22)に解放可能に取り付けられる、請求項18に記載の切削工具(20)。
【請求項20】
前記冷却剤出口(32)は、前記ホルダ長手方向軸(B)回りに前記切削インサート(26)と回転的に位置合わせされる、請求項18又は19に記載の切削工具(20)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の主題は、一般に、工具ホルダに関し、詳細には、防振装置を有するそのような工具ホルダに関し、更に詳細には、冷却剤通路を有するそのような工具ホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
工具ホルダは、金属切削動作中、工具ホルダの振動を抑える防振装置を備え得る。典型的には、防振装置は、空洞と、弾性支持部材によって空洞の中に懸架される振動吸収質量体とを含むばね-質量体システムである。空洞には、粘性流体を充填し得る。
【0003】
いくつかのそのような防振装置において、冷却流体を切削領域に供給する更なる冷却剤通路が設けられる。そのような工具保持システムの一例は、例えば、US7,681,869B2に開示されている。US7,681,869B2は、その
図2において、軸方向中ぐり6が中を通過する制振体1を開示している。中ぐり棒材の内側には、軸方向に延在する長手方向管3があり、長手方向管3は、概して、その外側端部で又は中ぐり棒材の内側で、制振すべき物体に堅く固着されるように適合される。管3は、中ぐり棒材内に更に延在する通路と連通する管3自体を通じて冷却流体を誘導するように適合される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
防振装置と冷却剤通路とを有する、新たな、改善された工具ホルダを提供することは、本願の主題の一目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願の主題の第1の態様によれば、反対の前方向及び後方向を画定するホルダ長手方向軸に沿って細長い工具ホルダを提供し、工具ホルダは、工具ホルダの前端部に固着される切削部分を有するように構成され、工具ホルダは、
外側スリーブであって、
反対の前方スリーブ端面及び後方スリーブ端面、並びに前方スリーブ端面と後方スリーブ端面との間に延在するスリーブ外周面、並びに
前方スリーブ端面及び後方スリーブ端面に開口するスリーブ穴壁面を有するスリーブ穴
を備える外側スリーブと、
質量体筐体部分であって、
反対の前方筐体端面及び後方筐体端面、並びに前方筐体端面と後方筐体端面との間に延在する筐体外周面、並びに
内向き空洞壁面を有する内部ホルダ空洞
を備える質量体筐体部分と、
防振装置であって、
2つの反対の質量体端面、及び質量体端面の間に延在する質量体外周面を備える振動吸収質量体、並びに
2つの弾性懸架部材
を備える防振装置と
を備え、
細長溝は、筐体外周面及びスリーブ穴壁面の一方の中に形成され、
工具ホルダは、非組立て状態と組立て状態との間で調節可能であり、組立て状態において、
振動吸収質量体は、内部ホルダ空洞内に配設され、内向き空洞壁面に接触する2つの懸架部材によって内部ホルダ空洞内に弾性的に懸架され、
質量体筐体部分は、スリーブ穴内に少なくとも部分的に位置し、スリーブ穴壁面の少なくとも一部分は、ホルダ長手方向軸回りに筐体外周面の少なくとも一部分を取り囲むようにし、これにより、共通境界面を画定し、
溝は、共通境界面に位置し、これにより、溝冷却剤通路を形成し、
溝冷却剤通路は、互いに流体連通する外部冷却剤入口と外部冷却剤出口とを有する工具ホルダ冷却剤通路の一部である。
【0006】
本願の主題の第2の態様によれば、切削工具が提供され、切削工具は、
上記した種類の工具ホルダと、
工具ホルダの前端部に位置する切削部分と
を備え、切削部分は、少なくとも1つの切削インサートを備える。
【0007】
上記は概要であり、以下で説明する特徴は、任意の組合せで本願の主題に適用可能とし得る。例えば、以下の特徴のいずれかは、工具ホルダ又は切削工具に適用可能とし得ることを理解されたい:
溝は、筐体外周面内に形成し得る。
スリーブ穴壁面は、後方スリーブ端面に開口し得る。
溝は、溝軸に沿って線形に延在し得る。工具ホルダの組立て状態において、溝軸は、ホルダ長手方向軸に平行とし得る。
質量体筐体部分は、前方筐体部分と、後方筐体部分とを備えることができ、前方筐体部分は、後方筐体部分の前方にあり、後方筐体部分より大きな径方向寸法を有する。工具ホルダの組立て状態において、後方筐体部分のみ、スリーブ穴内に位置し得る。
筐体外周面は、前方筐体部分に前方筐体外周面と、後方筐体部分に後方筐体外周面と、前方筐体外周面と後方筐体外周面とを接続する筐体段面とを備え得る。前方筐体部分は、前方筐体部分の後端部に、筐体段面に開口する前方筐体冷却剤通過通路を備え得る。工具ホルダの組立て状態において、溝冷却剤通路は、前方筐体冷却剤通過通路に延在し得る。前方筐体冷却剤通過通路は、工具ホルダ冷却剤通路の一部とし得る。
前方筐体冷却剤通過通路は、冷却剤出口を形成するように、前方筐体部分の前端部で筐体外周面まで更に開口し得る。
質量体筐体部分は、筐体凹部を備え、筐体凹部は、後方筐体端面に開口する内向き凹部壁面を備え得る。工具ホルダは、空洞軸方向封止部材を備え得る。工具ホルダの組立て状態において、空洞軸方向封止部材は、筐体凹部内に位置することができ、後方向でホルダ空洞の範囲を定め、筐体凹部の前方部分が内部ホルダ空洞を形成するようにする。後方筐体部分は、凹部壁面及び後方筐体外周面に開口する後方筐体冷却剤通過通路を備え得る。工具ホルダの組立て状態において、後方筐体冷却剤通過通路は、空洞軸方向封止部材の後方とし得、後方筐体冷却剤通過通路は、工具ホルダ冷却剤通路の一部とし得る。
外側スリーブは、前方外側スリーブ構成要素と後方外側スリーブ構成要素とを備え得る。前方外側スリーブ構成要素及び後方外側スリーブ構成要素は、互いと固定係合でき、前方外側スリーブ構成要素は、後方外側スリーブ構成要素の前方にある。
工具ホルダの組立て状態において、前方スリーブ端面及び筐体段面は、互いに当接し得る。
後方筐体外周面は、軸方向に離間する前の後方筐体外周面及び後の後方筐体外周面と、前の後方筐体外周面と後の後方筐体外周面との間に延在する中間後方筐体外周面とを備えることができ、前の後方筐体外周面は、後の後方筐体外周面より前方筐体部分に近い。工具ホルダの組立て状態において、少なくとも前の後方筐体外周面及び後の後方筐体外周面は、スリーブ穴壁面にそれぞれ当接し得る。
溝は、筐体外周面内に形成し得る。溝は、2つの溝端部を備え得る。前の後方筐体外周面は、筐体段面に交差し得る。2つの溝端部の一方は、後の後方筐体外周面に配置し得る。2つの溝端部のもう一方は、前の後方筐体外周面と筐体段面との交線に配置し得る。
中間後方筐体外周面は、前の後方筐体外周面及び後の後方筐体外周面に対して径方向に凹ませ得る。工具ホルダの組立て状態において、中間後方筐体外周面は、スリーブ穴壁面から離間し得る。
質量体筐体部分は、筐体凹部を備え、筐体凹部は、後方筐体端面に開口する内向き凹部壁面を備え得る。工具ホルダは、空洞軸方向封止部材を備え得る。工具ホルダの組立て状態において、空洞軸方向封止部材は、筐体凹部内に位置することができ、後方向でホルダ空洞の範囲を定め、筐体凹部の前方部分が内部ホルダ空洞を形成するようにする。
工具ホルダの組立て状態において、凹部壁面は、冷却剤入口を形成するように後方筐体端面に開口し得る。冷却剤入口から延在する筐体凹部の一部分は、工具ホルダ冷却剤通路の一部とし得る。
外側スリーブは、スリーブ材料を含み得る。質量体筐体部分は、筐体本体材料を含み得る。スリーブ材料は、筐体本体材料より稠密とし得る。
スリーブ材料はカーバイドとし得る。
切削部分は、工具ホルダに解放可能に取り付け得る。
冷却剤出口は、ホルダ長手方向軸回りに切削インサートと回転的に位置合わせし得る。
【0008】
本願をより良好に理解し、本願をいかに実際に実行し得るかを示すため、次に、添付の図面を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】防振装置を示す、本願による切削工具の斜視図である。
【
図2】本願による
図1の切削工具の分解斜視図である。
【
図4】
図3の線IV-IVに沿って取られた、
図1の切削工具の径方向断面図である。
【
図5】
図3の線V-Vに沿って取られた工具ホルダの径方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
説明を簡単、明快にするため、図示の要素は、必ずしも一定の縮尺で描かれていないことは了解されよう。例えば、要素の一部の寸法は、明快のために他の要素に対して誇張される場合がある、又はいくつかの物理的構成要素は、1つの機能ブロック若しくは要素内に含まれる場合がある。更に、適切であるとみなされる場合、参照数字は、対応する又は類似の要素を示すように図面の間で繰り返される場合がある。
【0011】
以下の説明では、本願の主題の様々な態様を説明する。説明のために、特定の構成及び詳細は、本願の主題に対する完全な理解をもたらすように、十分詳細に示される。しかし、本願の主題を本明細書に提示される特定の構成及び詳細を伴わずに実行し得ることは、当業者には明らかであろう。
【0012】
まず、本願の一態様を示す、チップ除去のための切削工具20を示す
図1に注意を向けられたい。切削工具20は、工具長手方向軸Aを有する。本願の主題のいくつかの実施形態によれば、切削工具20は、固定切削工具とし得る。即ち、切削工具20は、回転軸回りに回転するように設計されていない。図示される非限定的な例では、切削工具20は、中ぐり棒材である。しかし、本願の主題は、中ぐり棒材のみに制限されず、例えば、限定はしないが、旋削工具全般にも適用可能とし得る。本願の主題は、フライス・カッタ及びドリル等の回転切削工具にも適用可能とし得る。そのような回転切削工具の場合、切削工具20は、工具長手方向軸A回りの回転方向で回転可能であるように設計される。
【0013】
切削工具20は、工具ホルダ22を含む。切削工具20は、少なくとも1つの切削インサート26を含み得る切削部分24も含む。少なくとも1つの切削インサート26は、金属切削動作を実施するように設計され、この目的で切れ刃を有する。本願の主題のいくつかの実施形態によれば、少なくとも1つの切削インサート26は、切削部分24に解放可能に取り付け得る。切削部分24は、工具ホルダ22と一体に形成し得る。代替的に、図示される非限定的な例でみられるように、切削部分24は、工具ホルダ22に解放可能に取り付け得る。切削部分24は、工具ホルダ22の前端部に配設し得る。工具ホルダ22の後端部は、保持デバイスによって固着されるように構成される。
【0014】
次に、本願の別の態様を示す、工具ホルダ22の分解図を示す
図2を参照されたい。工具ホルダ22は、反対の前方向D
F及び後方向D
Rを画定するホルダ長手方向軸Bを有する。工具ホルダ22は、ホルダ長手方向軸Bに沿って細長い。本願の主題のいくつかの実施形態によれば、切削工具20及び工具ホルダ22は、互いに同軸とし得る。2つの要素(例えば、本ケースでは切削工具20及び工具ホルダ22)は、これらの長手方向軸が一致する(互いに位置合わせされる)場合、互いに同軸であることに留意されたい。
【0015】
本明細書及び特許請求の範囲全体にわたる用語「前方」及び「後方」の使用は、ホルダ長手方向軸Bの方向で、
図3でそれぞれ左及び右に向かう相対的な位置を指すことに更に留意されたい。概して、前方向は、切削部分24に向かう方向である。
【0016】
図3を参照すると、工具ホルダ22は、外部冷却剤入口30と外部冷却剤出口32とを有する工具ホルダ冷却剤通路28を含む。冷却剤入口30及び出口32は、互いに流体連通する。冷却剤は、工具ホルダ22を通り、工具ホルダ冷却剤通路28を介して冷却剤流路F(図では矢印によって示される)に沿って進行する。本明細書及び特許請求の範囲全体にわたる用語「外部入口/出口」の使用は、工具ホルダ22の外周部に位置する開口を指すことに留意されたい。更に、本明細書及び特許請求の範囲全体にわたる用語「内部入口/出口」の使用は、工具ホルダ22の内側に位置する開口を指すことに留意されたい。
【0017】
図1及び
図2に最良に示されるように、工具ホルダ22は、外側スリーブ74を含む。外側スリーブ74は、反対の前方スリーブ端面76a及び後方スリーブ端面76bと、前方スリーブ端面76aと後方スリーブ端面76bとの間に延在するスリーブ外周面78とを含む。外側スリーブ74は、スリーブ穴80を更に含む。スリーブ穴80は、前方スリーブ端面76aに開口するスリーブ穴壁面82を有する。本願の主題のいくつかの実施形態によれば、スリーブ穴壁面82は、後方スリーブ端面76bに開口し得る。そのような構成において、スリーブ穴80は、貫通孔を形成する。本願の主題のいくつかの他の実施形態によれば、スリーブ穴壁面82は、後方スリーブ端面76に開口しない場合がある。そのような構成において、スリーブ穴80は、止まり穴を形成する。スリーブ穴壁面82は、円筒形形状を有し得る。組み立てられた切削工具20において、スリーブ穴80は、工具長手方向軸Aと共に延在し得る。
【0018】
本願の主題のいくつかの実施形態によれば、外側スリーブ74は、前方外側スリーブ構成要素74aと後方外側スリーブ構成要素74bとを含み得る。前方外側スリーブ構成要素74a及び後方外側スリーブ構成要素74bは、互いと固定係合し得る。前方外側スリーブ構成要素74aは、後方外側スリーブ構成要素74bの前方にある。スリーブ穴80は、前方外側スリーブ構成要素74a内の貫通孔、及び後方外側スリーブ構成要素74b内の止まり穴、又は前方外側スリーブ構成要素74a及び後方外側スリーブ構成要素74bの両方内の貫通孔から形成し得ることに留意されたい。前方外側スリーブ構成要素74aは、前方スリーブ端面76aと後方スリーブ端面76bとの間で測定した際に後方外側スリーブ構成要素74bより長くし得る。
【0019】
外側スリーブ74は、スリーブ材料を含む。本願の主題のいくつかの実施形態によれば、スリーブ材料はカーバイドとし得る。
【0020】
工具ホルダ22は、質量体筐体部分40も含む。質量体筐体部分40は、反対の前方筐体端面41a及び後方筐体端面41bと、前方筐体端面41aと後方筐体端面41bとの間に延在する筐体外周面39とを含む。組み立てられた工具ホルダ22において、筐体外周面39は、ホルダ長手方向軸B回りに延在する。
【0021】
本願の主題のいくつかの実施形態によれば、質量体筐体部分40は、筐体凹部84を含み得る。筐体凹部84は、内向き凹部壁面86を含み得る。凹部壁面86は、後方筐体端面41bに開口し得る。
【0022】
本願の主題のいくつかの実施形態によれば、質量体筐体部分40は、前方筐体部分40aと後方筐体部分40bとを含み得る。前方筐体部分40aは、後方筐体部分40bの前方に位置し得る。前方筐体部分40aは、後方筐体部分40bより大きな径方向寸法を有し得る。前方筐体部分40aは、前方筐体部分40aに固着される切削部分24を有するように構成される。この目的で、図示されるこの非限定的な例では、前方筐体端面41aは、切削部分26の対応する面と係合するように鋸歯状である。
【0023】
本願の主題のいくつかの実施形態によれば、筐体外周面39は、前方筐体部分40aに前方筐体外周面39aと、後方筐体部分40bに後方筐体外周面39bとを含み得る。筐体外周面39は、前方筐体外周面39aと後方筐体外周面39bとを接続する筐体段面39sを含み得る。筐体段面39sは、好ましくはホルダ長手方向軸Bに直交して向けられた状態で、後方向DRに面し得る。
【0024】
図6を参照すると、本願の主題のいくつかの実施形態によれば、前方筐体部分40aは、その後端部で、筐体段面39sに開口し得る前方筐体冷却剤通過通路88を含み得る。前方筐体冷却剤通過通路88は、その前端部で、筐体外周面39若しくは前方筐体外周面39a、又は筐体外周面39と前方筐体外周面39aとの交線に更に開口し、冷却剤出口32を形成し得る。
【0025】
図7を参照すると、本願の主題のいくつかの実施形態によれば、後方筐体部分40bは、凹部壁面86及び後方筐体外周面39bに開口し得る後方筐体冷却剤通過通路90を含み得る。
【0026】
本願の主題のいくつかの実施形態によれば、後方筐体外周面39bは、ホルダ長手方向軸Bに沿って互いから軸方向に離間する前の後方筐体外周面39b-aと後の後方筐体外周面39b-bとを含み得る。前の後方筐体外周面39b-aは、後の後方筐体外周面39b-bより前方筐体部分40aに近い。前の後方筐体外周面39b-aは、筐体段面39sに交差し得る。前の後方筐体外周面39b-a及び後の後方筐体外周面39b-bは、円筒形状を有し得る。後方筐体外周面39bは、前の後方筐体外周面39b-aと後の後方筐体外周面39b-bとの間に延在する中間後方筐体外周面39b-cを含み得る。中間後方筐体外周面39b-cは、前の後方筐体外周面39b-a及び後の後方筐体外周面39b-bに対して径方向に凹ませ得る。即ち、中間後方筐体外周面39b-cは、環状凹部を形成し得る。したがって、中間後方筐体外周面39b-cは、前の後方筐体外周面39b-a及び後の後方筐体外周面39b-bの両方の最大径方向断面より小さい最大径方向断面を有し得る。
【0027】
質量体筐体部分40は、筐体本体材料を含む。本願の主題のいくつかの実施形態によれば、スリーブ材料は、筐体本体材料より稠密とし得る。
【0028】
工具ホルダ22は、筐体外周面39及びスリーブ穴壁面82の一方の中に形成される細長溝92を含む。即ち、細長溝92は、筐体外周面39及びスリーブ穴壁面82の一方の中に凹んでいる。本願の主題のいくつかの実施形態によれば、溝92は、筐体外周面39内に形成し得る。
【0029】
溝92は、2つの反対の溝端部94a、94bを有する。2つの溝端部94aの一方は、後の後方筐体外周面39b-bに位置し得る。2つの溝端部94aのもう一方は、前の後方筐体外周面39b-aと筐体段面39sとの交線に位置し得る。溝92は、溝軸Gに沿って延在する。本願の主題のいくつかの実施形態によれば、溝92は、溝軸Gに沿って線形に延在し得る。
【0030】
図5aを参照すると、本願の主題のいくつかの実施形態によれば、溝92は、ホルダ長手方向軸B及び溝軸Gを含む半平面HPの両側に位置する2つの反対の溝側面95と、2つの反対の溝側面95の間に延在する溝基面93とを含み得る。溝基面93は、溝軸Gに沿って延在し得る。溝92は、溝基面93の周方向中心から径方向内側方向で測定される溝深さGDを有し得る。溝深さGDは、1mmから2mmの間とし得る。溝92は、2つの反対の溝側面95の間の方向で測定される溝幅GWを有し得る。溝幅GWは、3mmから4mmの間とし得る。
【0031】
工具ホルダ22は、防振装置34を含む。工具防振装置34は、切削工具20が金属切削動作を実施する際に切削工具20の振動を低減する又はなくすように設計される。本願の主題のいくつかの実施形態によれば、防振装置34は、切削工具20の前端部に配設し得る。
【0032】
質量体筐体部分40は、中に形成される内部ホルダ空洞36を有する。即ち、内部ホルダ空洞36は、質量体筐体部分40内に封入される。ホルダ空洞36は、少なくとも一部は、内向き空洞壁面38によって形成される。空洞壁面38は、質量体筐体部分40からホルダ空洞36の範囲を定める。質量体筐体部分40は、ホルダ空洞36を取り囲む。ホルダ空洞36は、空洞中心軸Dを有する。本願の主題のいくつかの実施形態によれば、ホルダ空洞36は、空洞中心軸Dに沿って細長とし得る。ホルダ空洞36は、工具ホルダ22と同じ方向で細長とし得る。特に、ホルダ空洞36は、工具ホルダ22と同軸とし得る。空洞壁面38は、2つの反対の空洞壁端面42と、空洞壁端面42の間に延在する空洞壁外周面44とを含み得る。空洞壁外周面44は、空洞中心軸D回りに延在し得る。
【0033】
空洞壁外周面44を通る(空洞中心軸Dを含む平面で取られる)ホルダ空洞36の軸方向断面図を示す
図3を更に参照すると、ホルダ空洞36は、空洞横断面を有する。本願の主題のいくつかの実施形態によれば、前記空洞横断面は、空洞中心軸Dに沿って一様とし得る。空洞壁外周面44は、ほぼ円筒形状を有し得る。空洞壁外周面44は、2つの空洞壁端面42の近傍で円筒形状を有し得る。2つの空洞壁端面42は、平坦であり、空洞中心軸Dに横断的に向け得る。2つの空洞壁端面42は、空洞中心軸Dに直交して向け得る。
【0034】
図1及び
図2に戻ると、本発明の工具ホルダ22は、少なくとも1つの振動吸収質量体54を含む防振装置34も含む。本願の主題のいくつかの実施形態によれば、振動吸収質量体54は硬質とし得る。いくつかの実施形態では、質量体筐体部分40は、鉄鋼等の第1の金属材料から形成され、振動吸収質量体54は、タングステン等のより稠密な第2の金属材料から形成し得る。
【0035】
図2~
図3を参照すると、振動吸収質量体54は質量体中心軸Eを有する。振動吸収質量体54は、2つの軸方向に反対の質量体端部60a、60bと、前方質量体端部60aと、後方質量体端部60bとを含み、前方質量体端部60aは、後方質量体端部60bの前方にある。2つの軸方向に反対の質量体端部60a、60bは、質量体中心軸Eに沿って互いから離間する。本願の主題のいくつかの実施形態によれば、振動吸収質量体54は、2つの反対の質量体端面56と、質量体端面56の間に延在する質量体外周面58とを含み得る。質量体外周面58は、質量体中心軸E回りに延在し得る。2つの質量体端面56は、2つの質量体端部60a、60bにそれぞれ位置する。振動吸収質量体54は、質量体中心軸Eに沿って細長とし得る。振動吸収質量体54は、質量体端面56の間に、質量体中心軸Eに直交して向けられる平面内でほぼ一定の断面積を有し得る。
【0036】
図3を参照すると、本願の主題のいくつかの実施形態によれば、質量体端面56は、振動吸収質量体54の中心部分から離れる方向で内側に先細になる状態で、円錐形状とし得る。質量体外周面58は、円筒形状を有し得る。
【0037】
防振装置34は、2つの弾性懸架部材62を更に含む。2つの懸架部材62は、弾性変形可能である。本願の主題のいくつかの実施形態によれば、2つの懸架部材62は、振動吸収質量体54の材料とは異なる材料から形成し得る。いくつかの実施形態では、懸架部材62は、60A~95Aの間のデュロメータ硬度を有するゴムから作製される。2つの懸架部材62は、Oリングとし得る。
【0038】
工具ホルダ22は、非組立て状態と組立て状態との間で調節可能である。工具ホルダ22の非組立て状態において、振動吸収質量体54は、内部ホルダ空洞36の外側に配設される、及び/又は質量体筐体部分40は、外側スリーブ74に固着されない。
【0039】
本願の主題のいくつかの実施形態によれば、
図3を参照すると、工具ホルダ22は、空洞軸方向封止部材67を含み、空洞軸方向封止部材67は、後方向D
Rでホルダ空洞36を画定し(ホルダ空洞36の範囲を定め)、ホルダ空洞36を封止する。即ち、空洞軸方向封止部材67は、空洞壁端面38の1つを形成する。ホルダ空洞36が空洞軸方向封止部材67によって封止されていない間(即ち、工具ホルダ22が非組立て位置にある間)、振動吸収質量体54をホルダ空洞36に挿入し得る。
【0040】
工具ホルダ22の組立て状態において、振動吸収質量体54は、ホルダ空洞36内に配設される。
【0041】
工具ホルダ22の組立て位置において、本願の主題のいくつかの実施形態によれば、振動吸収質量体54は、工具ホルダ22と同じ方向で細長とし得る。即ち、質量体中心軸Eは、軸B、Eと共にホルダ長手方向軸Bに平行であり、工具ホルダ22及び振動吸収質量体54それぞれの最長主要寸法を確立し得る。特に、質量体中心軸Eは、ホルダ長手方向軸Bと一致し得る(即ち、振動吸収質量体54は、工具ホルダ22と同軸とし得る)。
【0042】
工具ホルダ22の組立て位置において、振動吸収質量体54は、2つの懸架部材62を介して質量体筐体部分40に接続される。したがって、振動吸収質量体54は、内向き空洞壁面38に接触する2つの懸架部材62によってホルダ空洞36内に弾性的に懸架される。各懸架部材62は、それぞれの質量体端面56に当接し得る。質量体外周面58が内向き空洞壁面38と直接接触する部分はないことに留意されたい。本願の主題のいくつかの実施形態によれば、2つの懸架部材62のそれぞれは、内向き空洞壁面38に対する接触、及び質量体端面56の1つに対する接触によって、圧縮弾性変形下にあり得る。
【0043】
工具ホルダ22の組立て状態において、質量体筐体部分40は、スリーブ穴80内に少なくとも部分的に位置する。本願の主題のいくつかの実施形態によれば、後方筐体部分40bのみがスリーブ穴80内に位置し得る。スリーブ外周面78は、ホルダ長手方向軸B回りに延在する。
【0044】
スリーブ穴壁面82の少なくとも一部分は、質量体筐体部分40の少なくとも一部分を取り囲む。より詳細には、スリーブ穴壁面82の少なくとも一部分は、共通境界面に沿って筐体外周面39の一部分に面する。またより詳細には、共通境界面において、スリーブ穴壁面82の少なくとも一部分は、後方筐体外周面39bに面する。
【0045】
本願の主題のいくつかの実施形態によれば、共通境界面において、前の後方筐体外周面39b-a、後の後方筐体外周面39b-b及び中間後方筐体外周面39b-cは、全てスリーブ穴壁面82に当接し得る。代替的に、本願の主題のいくつかの実施形態によれば、共通境界面において、後方筐体外周面39のいくつかの部分は、スリーブ穴壁面82に当接しなくてよい。例えば、前の後方筐体外周面39b-a及び後の後方筐体外周面39b-bは、スリーブ穴壁面82に当接し得る一方で、中間後方筐体外周面39b-cは、距離dでスリーブ穴壁面82から離間し得る(例えば、中間後方筐体外周面39b-cが前の後方筐体外周面39b-a及び後の後方筐体外周面39b-bに対して凹んでいる構成において。
図5を参照)。この後者の構成は、前者の構成より製造が容易である。前方スリーブ端面76a及び筐体段面39sは、互いに当接し得る。本願の主題のいくつかの実施形態によれば、好ましくは、焼き嵌め係合を使用し、(加熱した)外側スリーブ74と質量体筐体部分40とを連結する。更に、前方スリーブ端面76a及び筐体段面39sは、一緒に固定ろう付けし得る。
【0046】
溝92は、溝冷却剤通路96を形成するように共通境界面に位置する。工具ホルダ冷却剤通路28は、溝冷却剤通路96によって部分的に形成される。即ち、溝冷却剤通路96は、工具ホルダ冷却剤通路28の一部である。溝冷却剤通路96は、溝冷却剤壁面97を含む。溝冷却剤壁面97は、溝軸G回りに延在する。溝冷却剤通路96は、溝冷却剤入口98と溝冷却剤通出口100とを有する。本願の主題のいくつかの実施形態によれば、溝冷却剤入口98及び/又は溝冷却剤出口100は、内側とし得る。溝冷却剤入口98は、2つの溝端部94bの一方に位置し、溝冷却剤出口100は、2つの溝端部94aのもう一方に位置し得る。溝軸Gは、ホルダ長手方向軸Bに平行とし得る。
【0047】
前の後方筐体外周面39b-a、後の後方筐体外周面39b-b及び中間後方筐体外周面39b-cが全てスリーブ穴壁面82に当接する構成において、溝冷却剤壁面97は、溝92(即ち、溝基面93及び2つの溝側面95)によって形成され、筐体外周面39及びスリーブ穴壁面82のどちらか一方の対向部分内には、溝92は形成されない。
【0048】
中間後方筐体外周面39b-cがスリーブ穴壁面82から離間する構成において、溝冷却剤壁面97は、以前の段落で説明したように形成され、また、離間する中間後方筐体外周面39b-cとスリーブ穴壁面82との間に形成される薄い環状間隙AGによっても形成され、薄い環状間隙AGは、円周方向で溝92と合流する(
図5)。薄い環状間隙AGによって画定される容積は、無視し得ることに留意されたい。例えば、距離dは、溝冷却剤通路96に沿った冷却剤の流れに悪影響を及ぼさないことを保証する値を有し得る。例えば、冷却剤が環状間隙AG内にしみ出すことがあっても、高圧冷却剤の流れを依然として実現し得る。距離dは、0.07mm以下とし得る。より好ましくは、距離dは、0.05mm以下とし得る。
【0049】
本願の主題のいくつかの実施形態によれば、溝冷却剤通路96は、前方筐体冷却剤通過通路88に延在し得る。したがって、溝92が筐体外周面39内に形成される構成において、溝92は、前方筐体冷却剤通過通路88に延在することに留意されたい。工具ホルダ冷却剤通路28は、前方筐体冷却剤通過通路88によって更に部分的に形成し得る。即ち、前方筐体冷却剤通過通路88は、工具ホルダ冷却剤通路28の一部である。
【0050】
本願の主題のいくつかの実施形態によれば、空洞軸方向封止部材67は、筐体凹部84内に位置することができ、後方向DRでホルダ空洞36の範囲を定める。したがって、筐体凹部84の前方部分は、内部ホルダ空洞36を形成する。後方筐体冷却剤通過通路90は、空洞軸方向封止部材67の後方とし得る。工具ホルダ冷却剤通路28は、後方筐体冷却剤通過通路90によって更に部分的に形成し得る。即ち、後方筐体冷却剤通過通路90は、工具ホルダ冷却剤通路28の一部である。
【0051】
本願の主題のいくつかの実施形態によれば、凹部壁面86は、冷却剤入口30を形成するように後方筐体端面41bに開口し得る。工具ホルダ冷却剤通路28は、冷却剤入口30から延在する筐体凹部84の一部分によって更に部分的に形成し得る。即ち、冷却剤入口30から延在する筐体凹部84の一部分は、工具ホルダ冷却剤通路28の一部である。
【0052】
本願の主題のいくつかの実施形態によれば、冷却剤出口32は、ホルダ長手方向軸B回りに切削インサート26と回転的に位置合わせし得る。このことは、切れ刃と工作物との間の切削境界面での冷却剤の誘導を可能にする。
【0053】
防振装置34は、ホルダ空洞36内に形成される発振空間68を含む。発振空間68は、振動吸収質量体54と質量体筐体部分40との間(より詳細には、振動吸収質量体54と内向き空洞壁面38との間)に位置する。言い方を変えれば、質量体筐体部分40及び振動吸収質量体54は、発振空間68によって離間する。本願の主題のいくつかの実施形態によれば、発振空間68は、振動吸収質量体54を円周方向に完全に取り囲む。即ち、発振空間68は、空洞中心軸Dの全(360°)角度範囲回りに延在し得る。したがって、発振空間68は、振動吸収質量体54の軸方向範囲を取り囲む環状発振空間とみなし得る。
【0054】
振動吸収質量体54は、2つの懸架部材62の弾性変形下、発振空間68内で発振するように構成される。言い方を変えれば、振動吸収質量体54は、2つの懸架部材62が弾性変形を受けた際に発振空間68内で発振し、変位可能である。
【0055】
切削工具20は、工作物に直面する際、振動を受けやすい。典型的には、旋削又はフライス切削動作の場合、振動は横振動である。典型的には、穴あけ切削動作の場合、振動はねじれ振動である。振動吸収質量体54は、ある振動数で発振する。防振装置34は、振動吸収質量体54に、切削工具20の固有振動数と同じ振動数ではないとしても、これに近い振動数をもたらすように設計され、これにより、切削工具20の振動を低減する又はなくす。
【0056】
有利には、防振装置34は、調整可能とし得る(分離可能部品を一切分解する必要なしに、振動吸収質量体54の振動数が切削工具(20)の固有振動数に一致するようにする)。1つ又は複数の機構を、単独で又は組み合わせて、振動吸収質量体54が発振する振動数を改変するために使用し得る。非限定的な一例では、少なくとも2つの懸架部材62に予荷重を加え得る。例えば、
図3を参照すると、防振装置34は、発振空間68内に突出する調整部材70を含み得る。調整部材70は、ねじ部分72を有するねじとし得る(
図7を参照)。調整部材70は、空洞軸方向封止部材67に当接し得る。調整部材70は、空洞中心軸Dに沿って変位可能とし得るため、空洞軸方向封止部材67も変位させ、これにより、2つの懸架部材62の弾性特性を調節する。本願の主題のいくつかの実施形態によれば、発振空間68は空であってよい。例えば、発振空間68には粘性流体がなくてよい。
【0057】
本発明の構成の1つの特徴は、工具ホルダ冷却剤通路28が防振装置34から隔てられていることに留意されたい。言い換えれば、工具ホルダ冷却剤通路28は、振動吸収質量体54と流体連通しない。そのような構成のために、振動吸収質量体54が位置するホルダ空洞36の近傍では、工具ホルダ冷却剤通路28からの冷却剤が漏出する可能性がない。したがって、冷却剤の漏出により、防振装置34の制振効果に干渉することがない。
【0058】
本発明の構成の更なる特徴は、本発明の構成には、(US7,681,869で開示されるような)振動吸収質量体54の発振に干渉する管がないことである。また更に、振動吸収質量体54は、(例えば管を受け入れる)中空部分を有さないという意味において中実であり、振動吸収質量体54自体の重量を低減する。
【0059】
本願の主題をある程度詳細に説明してきたが、以下で請求する本発明の趣旨又は範囲から逸脱することなく様々な改変形態及び修正形態を行い得ることを理解されたい。
【0060】
例えば、溝冷却剤通路96は、筐体外周面39及びスリーブ穴壁面82の両方の中にそれぞれ形成される溝から形成でき、2つの溝は、組み立てた工具ホルダ内で互いに向き合う。
【0061】
更に、例えば、工具ホルダ22は、2つ以上の冷却剤通路96を含み得る。また更に、例えば、防振装置34は、2つ以上の振動吸収質量体54を含み得る。図示されるこの非限定的な例では、防振装置34は、2つの振動吸収質量体54a、54bを含み、2つの振動吸収質量体54a、54bは、2つの中心懸架部材63(例えばOリング)によって弾性的に接続される一方で、上述の弾性懸架部材62は、2つの異なる振動吸収質量体に属する端面56を支持する。
【国際調査報告】