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特表2024-530873脂質ナノ粒子製造用チップ、これを含む脂質ナノ粒子製造システム及び脂質ナノ粒子製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-27
(54)【発明の名称】脂質ナノ粒子製造用チップ、これを含む脂質ナノ粒子製造システム及び脂質ナノ粒子製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01F 33/301 20220101AFI20240820BHJP
   B01F 23/45 20220101ALI20240820BHJP
   B01F 23/80 20220101ALI20240820BHJP
   B01J 19/00 20060101ALI20240820BHJP
   B01J 14/00 20060101ALI20240820BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20240820BHJP
   B82Y 5/00 20110101ALI20240820BHJP
   C12N 15/88 20060101ALN20240820BHJP
   B01F 101/22 20220101ALN20240820BHJP
   B01F 101/44 20220101ALN20240820BHJP
【FI】
B01F33/301
B01F23/45
B01F23/80
B01J19/00 321
B01J14/00 Z
B82Y40/00
B82Y5/00
C12N15/88 Z
B01F101:22
B01F101:44
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503487
(86)(22)【出願日】2022-07-26
(85)【翻訳文提出日】2024-01-18
(86)【国際出願番号】 KR2022010957
(87)【国際公開番号】W WO2023008875
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】10-2021-0099471
(32)【優先日】2021-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0091613
(32)【優先日】2022-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519140246
【氏名又は名称】インベンテージ ラボ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】INVENTAGE LAB INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イ、サンフン
(72)【発明者】
【氏名】キム、チュ ヒ
(72)【発明者】
【氏名】キム、トン フン
(72)【発明者】
【氏名】チョン、チャン ヒ
【テーマコード(参考)】
4G035
4G036
4G075
【Fターム(参考)】
4G035AB37
4G035AE13
4G036AC70
4G075AA39
4G075BB05
4G075BB07
4G075BD09
4G075BD24
4G075DA02
4G075DA13
4G075EA02
4G075EB50
(57)【要約】
脂質ナノ粒子製造用チップは、第1の原料供給流路、第2の原料供給流路、及び前記第1の原料供給流路及び前記第2の原料供給流路に連結され、前記第1の原料供給流路を通じて供給される第1の原料と、前記第2の原料供給流路を通じて供給される第2の原料を混合するミキサー部を含む。前記ミキサー部は、第1の安定化部、及び前記第1の安定化部と連結され、前記第1の原料と前記第2の原料が互いに混合される第1の混合部を含む。前記第1の原料と前記第2の原料の混合は、前記第1の安定化部よりも前記第1の混合部でより多く行われる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の原料供給流路、
第2の原料供給流路、及び
前記第1の原料供給流路及び前記第2の原料供給流路に連結され、前記第1の原料供給流路を通じて供給される第1の原料と、前記第2の原料供給流路を通じて供給される第2の原料を混合するミキサー部を含み、
前記ミキサー部は、
第1の安定化部、及び
前記第1の安定化部と連結され、前記第1の原料と前記第2の原料が互いに混合される第1の混合部を含み、
前記第1の原料と前記第2の原料の混合は、前記第1の安定化部よりも前記第1の混合部でより多く行われることを特徴とする、脂質ナノ粒子製造用チップ。
【請求項2】
前記第1の安定化部は、第1の幅を有し、第1の長さを有する左側の安定化流路と前記第1の幅を有し、前記第1の長さを有する右側の安定化流路を含むことを特徴とする、請求項1に記載の脂質ナノ粒子製造用チップ。
【請求項3】
前記第1の安定化部の前記左側の安定化流路と右側の安定化流路は、互いに対称に楕円形または円形をなすことを特徴とする、請求項2に記載の脂質ナノ粒子製造用チップ。
【請求項4】
前記第1の混合部は、第2の幅を有する左側の混合流路と、第3の幅を有する右側の混合流路を含み、前記第2の幅と前記第3の幅は互いに異なることを特徴とする、請求項1に記載の脂質ナノ粒子製造用チップ。
【請求項5】
前記第1の混合部の前記左側の混合流路と右側の混合流路は、楕円形または円形をなすことを特徴とする、請求項4に記載の脂質ナノ粒子製造用チップ。
【請求項6】
前記第1の安定化部は、前記第1の原料供給流路及び前記第2の原料供給流路と連結され、
前記第1の原料は前記第1の原料供給流路、前記第1の安定化部及び前記第1の混合部を順に流れ、前記第2の原料は前記第2の原料供給流路、前記第1の安定化部及び前記第1の混合部を順に流れ、前記第1の原料と前記第1の原料がなす界面で前記第1の原料と前記第2の原料の混合が行われるが、前記第1の原料と第2の原料の混合は、前記第1の安定化部よりも前記第1の混合部でより多く行われることを特徴とする、請求項1に記載の脂質ナノ粒子製造用チップ。
【請求項7】
前記第1の混合部は、前記第1の原料供給流路及び前記第2の原料供給流路と連結され、
前記第1の原料は、前記第1の原料供給流路、前記第1の混合部及び前記第1の安定化部を順に流れ、前記第2の原料は前記第2の原料供給流路、前記第1の混合部及び前記第1の安定化部を順に流れることを特徴とする、請求項1に記載の脂質ナノ粒子製造用チップ。
【請求項8】
前記ミキサー部は、
前記第1の混合部と連結される第2の安定化部、及び
前記第2の安定化部と連結される第2の混合部をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の脂質ナノ粒子製造用チップ。
【請求項9】
第1の原料を供給する第1の原料供給部、
第2の原料を供給する第2の原料供給部、
前記第1の原料及び前記第2の原料を混合して混合液を形成するミキサー部を含む脂質ナノ粒子製造用チップ、及び
前記脂質ナノ粒子製造用チップから製造された脂質ナノ粒子を得る脂質ナノ粒子取得部を含み、
前記脂質ナノ粒子製造用チップの前記ミキサー部は、第1の安定化部、及び
前記第1の安定化部と連結され、前記第1の原料と前記第2の原料が互いに混合される第1の混合部を含むことを特徴とする、脂質ナノ粒子製造システム。
【請求項10】
前記第1の安定化部は、第1の幅を有し、第1の長さを有する左側の安定化流路と前記第1の幅を有し、前記第1の長さを有する右側の安定化流路を含み、前記第1の混合部は、第2の幅を有する左側の混合流路と、第3の幅を有する右側の混合流路を含み、前記第2の幅と前記第3の幅は、互いに異なることを特徴とする、請求項9に記載の脂質ナノ粒子製造システム。
【請求項11】
有効成分を含む第1の原料と脂質(lipid)を含む第2の原料を準備する段階、
前記第1の原料と前記第2の原料を混合して前記有効成分を含む脂質ナノ粒子を形成する段階、及び
前記脂質ナノ粒子を含む溶液をろ過及び個別容器に充填して最終製品を製造する後処理段階を含み、
前記脂質ナノ粒子を形成する段階は、流路が形成された脂質ナノ粒子製造用チップ(chip)上で行われ、
前記第1の原料及び第2の原料が互いに同じ幅と長さを有する左側の安定化流路と右側の安定化流路を含む安定化部を通過する安定化段階、及び
前記第1の原料及び第2の原料が互いに異なる幅を有する左側の混合流路と右側の混合流路を含む混合部を通過して互いに混合される混合段階を含む、脂質ナノ粒子の製造方法。
【請求項12】
前記安定化部の前記左側の安定化流路と前記右側の安定化流路は、互いに対称に楕円形または円形をなしており、
前記混合部の前記左側の混合流路と前記右側の混合流路は、楕円形または円形をなすことを特徴とする、請求項11に記載の脂質ナノ粒子の製造方法。
【請求項13】
前記安定化段階及び前記混合段階は、少なくとも2回以上交互に繰り返されることを特徴とする、請求項11に記載の脂質ナノ粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂質ナノ粒子製造用チップ、前記脂質ナノ粒子製造用チップを含む脂質ナノ粒子製造システム及び脂質ナノ粒子製造方法に関し、より詳細には、mRNAなどの有効成分を含む脂質ナノ粒子を製造するための脂質ナノ粒子製造用チップ、前記脂質ナノ粒子製造用チップを含む脂質ナノ粒子製造システム、及び前記有効成分を含む脂質ナノ粒子製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
mRNA(messenger RNA)は、タンパク質を合成する前の段階の物質であり、遺伝情報を含んでいる。mRNAは、様々な治療剤へのアクセスが可能であり、予防用または治療用ワクチンとして活用可能であり、欠乏したタンパク質もmRNAを介して合成が可能である。mRNA治療剤の長所は、DNAと比較して核まで伝達されなくてもよく、誘電体に挿入されるものではないため、永久的な遺伝性疾患を引き起こさず、安全性が高い。また、タンパク質治療剤がアクセスできない細胞内の欠乏したタンパク質までmRNAで合成が可能である。mRNAは、発現するタンパク質によって様々なサイズを有してもよく、一本鎖として存在する。DNAから作られたmRNAは、核から細胞質に抜け出てリボソームと出会い、タンパク質を生成する。mRNAは、次世代遺伝子治療剤として脚光を浴びているが、一本鎖であるため安定性が非常に低く、血中で核酸分解酵素によって急速に分解され、腎臓を通じて早く体外に排泄されるだけでなく、強い負電荷を帯びて細胞膜を容易に通過できないことが知られている。
【0003】
核酸をはじめとするアニオン性薬物を用いた治療において、安全かつ効率的な薬物伝達技術は、長い間研究されてきており、様々な伝達体及び伝達技術が開発されてきた。mRNAを脂質ナノ粒子(Lipid Nanoparticle)に封入して伝達する方式を用いたmRNAワクチンに関する研究が多様に行われており、これに対する量産システムの研究が続けられている。
【0004】
最近、製薬、ワクチン、DDS(drug delivery system)などの分野でmRNAを脂質ナノ粒子(Lipid Nanoparticle)に封入して伝達する方式が脚光を浴びているが、量産製造において難しさがある。大型容器で乱流を発生させて混合、希釈、濃縮するバルク作製方式があるが、製造された脂質ナノ粒子の均一な品質を得ることが難しく、製造工程の制御が難しいという問題がある。
【0005】
一方、このような問題を解決しようとする努力で、チップ状のミキサーを用いてナノ脂質粒子を製造する方式が研究されているが、流体の流れの特性解析の難しさにより、より効率的かつ高品質なナノ脂質粒子を製造するのに難しさが存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】US 10,835,878
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の技術的課題は、このような点に着目したもので、本発明の目的は、脂質ナノ粒子を製造するための脂質ナノ粒子製造用チップを提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、前記脂質ナノ粒子製造用チップを含む脂質ナノ粒子製造システムを提供することである。
【0009】
本発明のさらに他の目的は、脂質ナノ粒子の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記本発明の目的を実現するための一実施例による脂質ナノ粒子製造用チップは、第1の原料供給流路、第2の原料供給流路、及び前記第1の原料供給流路及び前記第2の原料供給流路に連結され、前記第1の原料供給流路を通じて供給される第1の原料と、前記第2の原料供給流路を通じて供給される第2の原料を混合するミキサー部を含む。前記ミキサー部は第1の安定化部、及び前記第1の安定化部と連結され、前記第1の原料と前記第2の原料が互いに混合される第1の混合部を含む。前記第1の原料と前記第2の原料の混合は、前記第1の安定化部よりも前記第1の混合部でより多く行われる。
【0011】
本発明の一実施例において、前記第1の安定化部は第1の幅を有し、第1の長さを有する左側の安定化流路と前記第1の幅を有し、前記第1の長さを有する右側の安定化流路を含んでもよい。
【0012】
本発明の一実施例において、前記第1の安定化部の前記左側の安定化流路と右側の安定化流路は、互いに対称に楕円形または円形をなすことができる。
【0013】
本発明の一実施例において、前記第1の混合部は、第2の幅を有する左側の混合流路と、第3の幅を有する右側の混合流路を含み、前記第2の幅と前記第3の幅は、互いに異なってもよい。
【0014】
本発明の一実施例において、前記第1の混合部の前記左側の混合流路と右側の混合流路は、楕円形または円形をなすことができる。
【0015】
本発明の一実施例において、前記第1の安定化部は、前記第1の原料供給流路及び前記第2の原料供給流路と連結されてもよい。前記第1の原料は前記第1の原料供給流路、前記第1の安定化部及び前記第1の混合部を順に流れ、前記第2の原料は前記第2の原料供給流路、前記第1の安定化部及び前記第1の混合部を順に流れ、前記第1の原料と前記第1の原料がなす界面で前記第1の原料と前記第2の原料の混合が行われるが、前記第1の原料と第2の原料の混合は、前記第1の安定化部よりも前記第1の混合部でより多く行われてもよい。
【0016】
本発明の一実施例において、前記第1の混合部は、前記第1の原料供給流路及び前記第2の原料供給流路と連結され、前記第1の原料は、前記第1の原料供給流路、前記第1の混合部及び前記第1の安定化部を順に流れ、前記第2の原料は、前記第2の原料供給流路、前記第1の混合部及び前記第1の安定化部を順に流れてもよい。
【0017】
本発明の一実施例において、前記ミキサー部は、前記第1の混合部と連結される第2の安定化部、及び前記第2の安定化部と連結される第2の混合部をさらに含んでもよい。
【0018】
前記本発明の目的を実現するための一実施例による脂質ナノ粒子製造システムは、第1の原料を供給する第1の原料供給部、第2の原料を供給する第2の原料供給部、前記第1の原料及び前記第2の原料を混合して混合液を形成するミキサー部を含む脂質ナノ粒子製造用チップ、及び前記脂質ナノ粒子製造用チップから製造された脂質ナノ粒子を得る脂質ナノ粒子取得部を含む。前記脂質ナノ粒子製造用チップの前記ミキサー部は、第1の安定化部、及び前記第1の安定化部と連結され、前記第1の原料と前記第2の原料が互いに混合される第1の混合部を含む。
【0019】
本発明の一実施例において、前記第1の安定化部は、第1の幅を有し、第1の長さを有する左側の安定化流路と前記第1の幅を有し、前記第1の長さを有する右側の安定化流路を含んでもよい。前記第1の混合部は、第2の幅を有する左側の混合流路と第3の幅を有する右側の混合流路を含み、前記第2の幅と前記第3の幅は、互いに異なってもよい。
【0020】
前記本発明の目的を実現するための一実施例による脂質ナノ粒子の製造方法は、有効成分を含む第1の原料と脂質(lipid)を含む第2の原料を準備する段階、前記第1の原料と前記第2の原料を混合して前記有効成分を含む脂質ナノ粒子を形成する段階、及び前記脂質ナノ粒子を含む溶液をろ過及び個別容器に充填して最終製品を製造する後処理段階を含む。前記脂質ナノ粒子を形成する段階は、流路が形成された脂質ナノ粒子製造用チップ(chip)上で行われ、前記第1の原料及び第2の原料が互いに同じ幅と長さを有する左側の安定化流路と右側の安定化流路を含む安定化部を通過する安定化段階、及び前記第1の原料及び第2の原料が互いに異なる幅を有する左側の混合流路と右側の混合流路を含む混合部を通過して互いに混合する混合段階を含む。
【0021】
本発明の一実施例において、前記安定化部の前記左側の安定化流路と前記右側の安定化流路は、互いに対称に楕円形または円形をなすことができる。前記混合部の前記左側の混合流路と前記右側の混合流路は、楕円形または円形をなすことができる。
【0022】
本発明の一実施例において、前記安定化段階及び前記混合段階は、少なくとも2回交互に繰り返すことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の実施例による脂質ナノ粒子製造用チップのミキサー部は、互いに交互に配置された安定化部と混合部を含む。前記安定化部と前記混合部の流路設計によって、高品質のナノ脂質粒子をより安定的かつ効率的に製造しうる。
【0024】
ただし、本発明の効果は、前記効果に限定されるものではなく、本発明の思想及び領域から逸脱しない範囲で多様に拡張できるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施例による脂質ナノ粒子製造システムの概略図である。
図2図1の脂質ナノ粒子製造システムの脂質ナノ粒子製造用チップのミキサー部を詳細に示す図である。
図3図2のミキサー部での流体の流れを説明するための図である。
図4】本発明の一実施例による脂質ナノ粒子製造システムの脂質ナノ粒子製造用チップのミキサー部を詳細に示す図である。
図5】本発明の一実施例による脂質ナノ粒子製造システムの脂質ナノ粒子製造用チップを示す図である。
図6】本発明の一実施例による脂質ナノ粒子製造システムの脂質ナノ粒子製造用チップの流体の流れをシミュレーション及び実験した結果を示す図である。
図7図6の実験のための混合効率(Mixing Index)計算を説明するための図である。
図8】本発明の一実施例による脂質ナノ粒子製造システムの脂質ナノ粒子製造用チップのミキサー部の長さによる混合程度をシミュレーション及び実験した結果を示すグラフである。
図9】本発明の一実施例による脂質ナノ粒子の製造方法を示すフローチャートである。
図10図9の脂質ナノ粒子製造方法のチップ上で脂質ナノ粒子を製造する段階を詳細に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施例をより詳細に説明する。
【0027】
本発明は、様々な変更を加えることができ、様々な形態を有することができるので、特定の実施例を図面に例示し、本文に詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態について限定しようとするものではなく、本発明の思想及び技術の範囲に含まれるすべての変更、均等物ないし代替物を含むものと理解されなければならない。
【0028】
図1は、本発明の一実施例による脂質ナノ粒子製造システムの概略図である。
【0029】
図1を参照すると、前記脂質ナノ粒子製造システムは、mRNAを含む第1の原料供給部10、脂質(Lipid)を含む第2の原料供給部20、脂質ナノ粒子取得部30及び脂質ナノ粒子製造用チップ100を含む。
【0030】
前記第1の原料供給部10は第1の原料を貯蔵し、前記脂質ナノ粒子製造用チップ100に前記第1の原料を提供する。前記第1の原料は、mRNAを含む溶液であってもよい。例えば、前記第1の原料は、mRNA及び水を含んでもよいが、これに制限されるものではない。例えば、前記第1の原料は、mRNAだけでなく、miRNA、siRNA、DNAなどの核酸またはCRISPRなどの様々な形態の有効成分を含んでもよい。
【0031】
前記第2の原料供給部20は、第2の原料を貯蔵し、前記脂質ナノ粒子製造用チップ100に前記第2の原料を提供する。前記第2の原料は、脂質(Lipid)を含む溶液であってもよい。例えば、前記第2の原料は、脂質及びエタノールを含んでもよい。
【0032】
前記脂質ナノ粒子製造用チップ100は、前記第1の原料及び前記第2の原料を混合してmRNAを含む脂質ナノ粒子溶液を製造してもよい。
【0033】
前記脂質ナノ粒子製造用チップ100は、第1の原料供給流路110、第2の原料供給流路120、ミキサー部200及び脂質ナノ粒子取得流路130を含んでもよい。
【0034】
前記第1の原料供給流路110は、前記第1の原料供給部10から前記第1の原料の供給を受けて前記ミキサー部200に伝達してもよい。前記第2の原料供給流路120は、前記第2の原料供給部20から前記第2の原料の供給を受けて前記ミキサー部200に伝達してもよい。
【0035】
前記ミキサー部200は、前記第1及び第2の原料供給流路110、120と連結され、前記第1の原料及び前記第2の原料を混合して脂質ナノ粒子を含む混合液を製造してもよい。前記ミキサー部110は、chaotic mixer,herringbone mixerなど一般的にマイクロチャネル(microchannel)内でよく使用されるマイクロ流体ミキサー(microfluidic mixer)が使用されてもよい。このとき、流路内での前記第1の原料と前記第2の原料のミキシングを通じて2つの流体の界面で脂質とmRNAの自己集合(self-assembly)により形成される脂質ナノ粒子を含む混合液が製造されてもよい。
【0036】
前記ミキサー部200は、互いに交互に配置される少なくとも1対の安定化部及び混合部を含んでもよい。前記第1の原料の有効成分が前記第2の原料の脂質によって囲まれて有効成分を含む高品質の脂質ナノ粒子を形成するためには、溶液(第1の原料及び第2の原料)間の混合だけでなく、溶液間の接触面の面積、形態、周囲溶液の流れなどがすべて影響を及ぼすので、そのための最適な設計が必要であり、本発明の実施例は、前記のように少なくとも1対の安定化部及び混合部を含むように前記ミキサー部200を構成することにより、これを実現した。前記ミキサー部200については、図2の説明で詳細に後述する。
【0037】
前記脂質ナノ粒子取得流路130は、前記ミキサー部200に連結され、前記脂質ナノ粒子取得部30は、前記脂質ナノ粒子取得流路130を通じて前記ミキサー部で形成された前記脂質ナノ粒子を含む混合液を得ることができる。
【0038】
その後、前記混合液を必要に応じて希釈または濃縮し、所望の濃度の脂質ナノ粒子溶液を形成した後、前記脂質ナノ粒子を含む溶液をろ過及び個別容器に充填して最終製品を製造してもよい。
【0039】
前記脂質ナノ粒子製造用チップ100は、内部に流路を形成するための様々な構造を有してもよく、例えば、グルーブが第1の基板と前記第1の基板上に前記第1の基板に接合される第2の基板を含む構造を有してもよい。
【0040】
図2は、図1の脂質ナノ粒子製造システムの脂質ナノ粒子製造用チップのミキサー部を詳細に示す図である。
【0041】
前記ミキサー部200は、併合部202、第1の安定化部210、第1の混合部220、第2の安定化部230、第2の混合部240及び排出部204を含んでもよい。
【0042】
前記併合部202は、第1の原料供給流路(図1の110)と第2の原料供給流路(図1の120)が併合される地点である。前記併合部202には第1の安定化部210が連結されてもよい。
【0043】
前記第1の安定化部210は、第1の幅w1を有し、第1の長さを有する左側の安定化流路212と前記第1の幅w1を有し、前記第1の長さを有する右側の安定化流路214を含んでもよい。これにより、前記第1の安定化部220の前記左側の安定化流路212と右側の安定化流路214は、第2の方向D2を基準にして、互いに対称に楕円形または円形をなすことができる。前記併合部202において、前記第1の原料と前記第2の原料が混合し始め、混合境界面で自己集合によって形成される脂質ナノ粒子が十分な構造形成時間を有するように前記第1の安定化部220の流路を通過しうる。
【0044】
前記第1の混合部220は、前記第1の安定化部210と連結される。前記第1の混合部220は、第2の幅w2を有する左側の混合流路222と、第3の幅w3を有する右側の混合流路224を含み、前記第2の幅w2と前記第3の幅w3は、互いに異なる。これにより、前記第1の混合部220の前記左側の混合流路222と右側の混合流路224は、非対称の楕円形または円形をなすことができる。前記第1の原料と前記第2の原料の混合は、前記第1の安定化部210よりも前記第1の混合部220でより多く行われてもよい。
【0045】
前記第2の安定化部230は、前記第1の混合部220に連結される。前記第2の安定化部230は、前記第1の幅w1を有し、前記第1の長さを有する左側の安定化流路232と前記第1の幅w1を有し、前記第1の長さを有する右側の安定化流路234を含んでもよい。これにより、前記第2の安定化部230の前記左側の安定化流路232と右側の安定化流路234は互いに対称に楕円形または円形をなすことができる。前記第1の混合部220において流体の混合境界面で自己集合によって形成される脂質ナノ粒子が十分な構造形成時間を有するように前記第2の安定化部230の流路を通過しうる。
【0046】
前記第2の混合部240は、前記第2の安定化部230と連結される。前記第2の混合部240は、前記第3の幅w3を有する左側の混合流路242と、前記第2の幅w2を有する右側の混合流路244を含んでもよい。これにより、前記第2の混合部240の前記左側の混合流路242と右側の混合流路244は、非対称の楕円形または円形をなすことができ、前記第1の混合部220の形状と対称形状であってもよい。前記第1の原料と前記第2の原料の混合は、前記第2の安定化部230よりも前記第2の混合部240でより多く行われもよい。
【0047】
前記排出部204は、前記第2の混合部240と連結され、脂質ナノ粒子取得流路(図1の130)と連結されてもよい。
【0048】
本実施例において、前記ミキサー部200は、2対の互いに交互に配置される安定化部と混合部を含むが、これに限定されるものではない。例えば、より多くの安定化部と混合部が交互に配置されるか、または安定化部よりも混合部が先に配置されるなどの様々な構造が可能である。
【0049】
図3は、図2のミキサー部における流体の流れを説明するための図面である。
【0050】
一般に、ナノ脂質粒子は互いに異なる2つの溶液(water base,oil base)の混合中に発生する溶液間の接触面(Interfacial Area)でパーティクルが構造化される自己集合過程(Self-Assembly process)を通じて生成される。マイクロ流体(Microfluidic)技術を適用したナノ脂質粒子製造用チップをデザインするにあたって主な要因は、a)適用する溶液の流量条件、b)内部溶液の慣性(Inertial)と粘性(Viscous)による相対的な力の力学関係を無次元数で定量化したレイノルズ数(Reynolds Number)、c)接触面で発生する溶液間の濃度及び溶液流体の流れによる運動量の差により発生する拡散(Diffusion)現象の分析などがある。
【0051】
また、Water baseとOil base溶液の供給比率であるFlow Rate Ratio(FRR)とTotal Flow Rate(TFR)の流量条件が考慮されてもよい。FRRは、それぞれの2つの溶液の比率として
【数1】

と定義され、2つの溶液のFlow Rateの総和をTFRと定義する。FRRとTFRの値によって2つの溶液間の接触面の発生程度及び接触面での濃度差に変化が生じるので、前記ナノ脂質粒子製造用チップのデザインを考慮しなければならない。
【0052】
無次元数レイノルズ数(Reynolds Number)を通じて、ナノ脂質粒子製造用チップのチャネル(流路)内の溶液の混合及び接触面の発生程度を予想しうる。前記チャネル内の流れにおいてレイノルズ数(Re)を導出する方式は、下記<数式1>の通りである。
【0053】
【数2】
【0054】
ρは、内部溶液の密度、Umeanは、溶液の平均速度、Dは、チャネル内の直径の特性が水力学的に反映された直径(Hydraulic Diameter)であり、μは、溶液の粘性係数である。通常、レイノルズ数が2,300以下の場合、当該溶液の流れは、層流(Laminar Flow)と定義でき、レイノルズ数が2,300よりもさらに高くなると、遷移流(Transition Flow)を経て最終的に乱流(Turbulent Flow)をなす。前記変数から確認できるように、慣性と粘性の比率の無次元化したレイノルズ数を適切に調整及び調律し、内部溶液の移流(Advection)程度と接触面での濃度差による拡散と運動量の拡散(Momentum Diffusion)を通じて溶液内のナノ脂質粒子の自己集合(Self-Assembly)に肯定的な影響を及ぼし、高品質のナノ脂質粒子を効率的に製造できるようになる。前記検討により、流量条件のレイノルズ数による移流(Advection)程度と運動量の拡散(Momentum Diffusion)による影響及び濃度差による拡散による影響関係を考慮し、ナノ脂質粒子製造用チップのチャネルをデザインした。
【0055】
一方、チャネルの内径の特性が反映された水力学的直径(Hydraulic Diameter)がレイノルズ数の調整及び調律に重要な影響を及ぼし、前記水力学的直径は、チャネル内に溶液が満ちているという仮定の下で、下記の<数式2>により計算しうる。
【0056】
【数3】
【0057】
さらに、レイノルズ数は内部溶液、流体の特性とも深い関係がある。特に密度と粘性は考慮すべき1つの要因である。FRRによって混合の程度が変わるが、基本的にはWater BaseとOil Baseの混合溶液とみなすことができ、水と油は溶液間の混合程度(miscibility)が良くないため混合された比率、FRRによる混合溶液の粘性に大きな差がある。ナノ脂質粒子の製造に広く使用されるエタノール及び水を使用する場合、水とエタノールの混合程度による粘性の変化は、下記の<テーブル.1>のようにKhattab,Iの研究を参考してもよい。
【0058】
【表1】
【0059】
常温(Room Temperature,298K)でエタノールと混ざっていない水の場合、粘性(μ)が計算値0.8914mPa・s、測定値0.8914mPa・sを有し、純粋なエタノールの場合は、計算値1.099mPa・s、測定値1.099mPa・sを有する。しかし、水とエタノールの低い混合程度(miscibility)により混合時に発生するナノサイズの粒子(particle)による粘性値がエタノールmole fraction 0.316の場合、計算値2.161mPa・s、測定値2.423mPa・sとして大きな差がある。したがって、FRRとそれによる粘性変化の程度を綿密に分析し、より正確なレイノルズ数の計算によってのみ最適化されたナノ脂質粒子製造用チップのチャネルをデザインしうる。
【0060】
一方、2つの溶液間の接触面で発生する拡散現象は、2つの場合に分けて分析しうる。第一に、溶液間に発生する濃度差による微視的な観点からの拡散と混合時に発生する粘性及び混合溶液の流体特性の変化による巨視的な運動量の観点からの拡散である。濃度差による拡散の場合、下記の<数式.3>のように、Fick’s Lawを通じて拡散する物質の拡散量と濃度差の関係をいくつかの仮定を通じて数値化してデザインに反映してもよい。
【0061】
【数4】
【0062】
運動量の観点からの分析は、流速の相関関係を用いて流体力学分析に最も多く使用される2つのモデル質量連続方程式(Mass conservation continuity equation)とナビエ-ストークス方程式(Navier-Stoke’s equation)による導出方法で行われてもよい(下記の<数式.4>参照)。
【0063】
【数5】
【0064】
この2つの方法を用いて、シミュレーション及び流体力学解析を通じて様々なナノ脂質粒子製造用チップのチャンネルデザインの性能を分析し、実験を通じてシミュレーション及び解析値との比較により検証を行った。
【0065】
本発明の実施例では、Laminar Flowを用いた移流(Advection)で流体の主な流れ方向にパーティクルまたは物質(Substance)を移送させる現象に流体の流れを分け、粉砕させるカオス効果を追加したカオス的移流(Chaotic advection)の作動原理に基づいてチャンネルデザインを設計した。カオス的移流方式は、従来の移流現象の最大の短所である運送が主な流体の流れの一方向性に制約されるという短所を克服し、より高い効率の溶液間の混合(Mixing)を具現しうる。
【0066】
マイクロ流体ベースのチップにおいて幾何学的構造物の差による受動型(Passive)カオス的移流効果を増進させるためには、a)円形の構造物形態のチップ内のチャネルを通過したディーン渦(Dean Vortex)と、b)流体の流れを分け(Split)、再配列(rearrange)した後、再会(Re-Combine)する形態でチャンネルをデザインし、低い圧力変化でも高い混合効率を実現できるようにすることが可能である。
【0067】
しかし、これは互いに異なる2つの溶液(Water base,Oil base)の混合効率を高める方案に過ぎず、ナノ脂質粒子の製造に完全に適用することはできず、混合中に発生する溶液間の接触面で自己集合(Self-Assembly)されるナノ脂質粒子製造の特徴をさらに考慮する必要がある。出願人は、混合の効率を高める方案とナノ脂質粒子製造の接触面での自己集合を極大化し、高効率でナノ脂質粒子を製造できるようにチャンネルデザイン設計を精密に調律し、本発明の実施例による安定化部と混合部を含むナノ脂質粒子用チップを設計した。カオス的移流を用いた前述した一般的な特性の他に対称(Symmetric)と非対称(Asymmetric)構造を適用し、溶液流体の効率的な混合だけでなく、高品質のナノ脂質粒子をより安定的かつ効率的に製造できる方向にデザイン及び設計された。
【0068】
図3を参照すると、円形の対称及び非対称構造を通じてそれぞれのチャネルを通過するとき、ディーン渦の効果によって2つの溶液の接触面を増加させることにより、混合だけでなくナノ脂質粒子の自己集合(Self-Assembly)も増進させることができるようにデザインされた。特にディーン渦の強度は、下記の<数式.5>のように無次元数Dean Numberと定義できる。
【0069】
【数6】
【0070】
Dean Numberは、円形チャネル内の流体に適用される慣性力、遠心力と粘性力の関係で、ρは、内部溶液の密度、U_meanは、溶液の平均速度、D_hは、水力学的直径、μは、溶液の粘性係数、及びR_cは、曲率半径である。非対称区間のチャネル幅、広い区間(図2のw2参照)と狭い区間(図2のw3参照)の比率(Ratio)を特定化して調整することにより、非対称チャネル間の水力学的直径と曲率半径の変更を用いて、a)非対称区間におけるディーン渦の強度及び影響力を増加させ、b)ディーン渦の影響を受ける区間の増加による特定の区間でのより高い混合効率を達成し、ナノ脂質粒子の製造に最適な溶液間の接触面が形成されるようにした。また、対称と非対称構造物の混合適用により、流路の流れが再会する対称と非対称連結区間が増加及び拡大し、流路の非対称慣性衝突と様々な方向の細部的な渦(Vortices)の形成により溶液間の接触面の増加と高い効率の混合を持つことができるようにした。
【0071】
すなわち、本実施例では、流体の流れを分けて(Split)、互いに衝突して(Collision)混合され、混合安定化反応区間を経て自己集合(Self-Assembly)過程を通じて脂質ナノ粒子が形成、安定化され、ディーン渦(Dean Vortex)を通じて混合と自己集合過程が効率的に行われてもよい。
【0072】
また、対称区間における相対的に低い効率の混合と非対称区間における高効率の混合を連続(Serial)配列による即時的なWater、Oil Base溶液間の均質混合(Homogeneity Mixing)ではなく、順次的に均質混合に至ることができるようにデザインした。このような理由は、接触面でOil Base溶液に溶けているPhospholipidがWater Base溶液と出会い、疎水性を示すTail部分によりディスク状に集まって生成される初期脂質(Lipid)ベースのInitial Vesicleが特定のOil Bas溶液の濃度、例えば、エタノールの場合、Critical Ethanol Concentrationでより活発に形成され、これは混合過程において該当区間に留まる時間(residence time)に非常に密接な影響を受けるためであると判断される。したがって、Oil Base溶液の濃度を基準にして、急激な濃度の希釈ではなく順次的な希釈が行われるようにデザインされ、これはCritical Concentrationで混合溶液が留まる時間を増やすことによってナノ脂質粒子の製造の効率性を増大させる。
【0073】
図4は、本発明の一実施例による脂質ナノ粒子製造システムの脂質ナノ粒子製造用チップのミキサー部を詳細に示す図である。
【0074】
図4を参照すると、前記脂質ナノ粒子製造用チップのミキサー部500は、安定化部と混合部の配置を除いて、図2の脂質ナノ粒子製造用チップのミキサー部と実質的に同一である。したがって、繰り返される説明は、省略する。
【0075】
前記ミキサー部500は、併合部502、第1の混合部510、第1の安定化部520、第2の混合部530、第2の安定化部540、及び排出部504を含んでもよい。
【0076】
前記併合部502は、第1の原料供給流路と第2の原料供給流路が併合される地点である。前記併合部502には前記第1の混合部510が連結されてもよい。
【0077】
前記第1の混合部510は、第3の幅w3を有する左側の混合流路512と、第2の幅w2を有する右側の混合流路514を含み、前記第2の幅w2と前記第3の幅w3は、互いに異なる。
【0078】
前記第1の安定化部520は、前記第1の混合部510に連結される。前記第1の安定化部520は、第1の幅w1を有し、第1の長さを有する左側の安定化流路522と前記第1の幅w1を有し、前記第1の長さを有する右側の安定化流路524を含んでもよい。
【0079】
前記第2の混合部530は、前記第1の安定化部520と連結される。前記第2の混合部530は、前記第2の幅w2を有する左側の混合流路532と、前記第3の幅w3を有する右側の混合流路534を含んでもよい。
【0080】
前記第2の安定化部540は、前記第2の混合部530に連結される。前記第2の安定化部540は、前記第1の幅w1を有し、前記第1の長さを有する左側の安定化流路542と前記第1の幅w1を有し、前記第1の長さを有する右側の安定化流路544を含んでもよい。
【0081】
前記排出部204は、前記第2の安定化部540と連結され、脂質ナノ粒子取得流路と連結されてもよい。
【0082】
図5は、本発明の一実施例による脂質ナノ粒子製造システムの脂質ナノ粒子製造用チップを示す図である。
【0083】
図5を参照すると、脂質ナノ粒子製造用チップは、ミキサー部が第1のミキサー部200aと第2のミキサー部200bに分けられ、これらを連結する連結流路140がさらに形成されたことを除いて、図1の脂質ナノ粒子製造用チップと実質的に同じである。したがって、繰り返される説明は省略する。
【0084】
前記脂質ナノ粒子用チップ100は、第1の原料供給流路110、第2の原料供給流路120、第1のミキサー部200a、連結流路140、第2のミキサー部200b及び脂質ナノ粒子取得流路130を含んでもよい。
【0085】
前記第1のミキサー部200a及び前記第2のミキサー部200bは、前記連結流路140によって連結される。前記第1のミキサー部200a及び前記第2のミキサー部200bは、それぞれ互いに交互に配置された安定化部及び混合部を含んでもよい。前記安定化部及び混合部の個数が多くなっても、これらを複数の行または列の形態で配列して連結流路を用いて連結することにより、脂質ナノ粒子用チップの空間設計を効率化しうる。
【0086】
図6は、本発明の一実施例による脂質ナノ粒子製造システムの脂質ナノ粒子製造用チップの流体の流れをシミュレーション及び実験した結果を示す図である。図7は、図6の実験のための混合効率(Mixing Index)計算を説明するための図である。図8は、本発明の一実施例による脂質ナノ粒子製造システムの脂質ナノ粒子製造用チップのミキサー部の長さによる混合程度をシミュレーション及び実験した結果を示すグラフである。
【0087】
図6及び図8を参照すると、前記脂質ナノ粒子製造用チップ4箇所(四角形表示参照、互いに異なる混合長さ(lmix)4箇所)での流動のシミュレーション値(simulation)、実際に対応する実験結果値(experiment)及び対応する位置でのチャネル(流路)の断面での流体の流れをシミュレートした値(最下列)を示した。シミュレーション及び流動解析した値と、実際の実験値との類似が確認され、シミュレーション及び流動解析を通じて安定化部と混合部が交互に配置される最適のチャンネル設計の有効性を確認した。
【0088】
実験に使用した作動流体は、Water Base溶液として脱イオン水(Deionized Water)を使用し、Oil Base溶液としてエタノールにRhodamine Bを50μM濃度に希釈した混合溶液を使用した。2つの溶液のミキサー部内での溶液間の接触面の撮影は、ミキサー部の上面に垂直な方向から撮影した。撮影したイメージの画素(Pixel)に基づく強度(Intensity)をイメージの横方向(x軸)をn個数で割り、縦方向(y軸)をm個数で割ってそれぞれのイメージにおいてn-by-m Pixelを通じて分析した。測定しようとする位置でそれぞれの流量に合った流体の流れが時間によって変化しない定常状態(Steady State)に安定化されたときに撮影を行い、さらにより正確な相対的な分析のために、Rhodamine Bとエタノール混合溶液が流れる時と脱イオン水のみが流れる時を撮影し、Rhodamine Bとエタノール混合溶液のみが流れる時を100%Mixing、すなわち、Full Mixingが行われた状態として値を反映し、脱イオン水のみが流れる時を0%Mixing、まだMixingが行われていない状態として値を反映した。実験において撮影したイメージをGrayscaleに変換した後、各ピクセルのピクセル強度(Intensity)を計算する。それぞれの撮影されたイメージにおいて、Pixel Intensityと100% Mixing及び0% MixingでのIntensity値を線形補間(Linear Interpolation)を通じて標準偏差(σ)を求め、Micromixer内でMixingがまだ発生していない初期区間イメージでの標準偏差(σinitial)との比率を通じて混合効率(Mixing Index)を計算して数値化した(図7参照)。
【0089】
実験結果との混合効率(Mixing Index)検証のために数値解析に常用的に使用されるプログラムの一つであるCOMSOL Multiphysicsを用いて分析した。流量が供給されているときのミキサー部内の溶液の流れを空間、時間の座標関数である流動場分布を前記<数式.4>のようなナビエ-ストークス方程式を解析して計算した。流動場分布の計算に適用される条件は、3次元(x-、y-、及びz-direction)と内部溶液の流れが時間に依存しない定常状態(Steady State)、及び溶液の密度(Density)が定数に変化しないという仮定の非圧縮性などが反映された。
【化1】
【0090】
混合された作動流体の密度は、濃度による線形補間で求めることができるが、粘性係数は、前述したように水と油の混合程度が良くなく発生するHydration Layerにより混合時の値の差が線形補間で予測できないため、前記<テーブル.1>のエタノール濃度による粘性値をN次多項式(Polynomial)を用いたLagrange Interpolationを通じて粘性値を適用した。そして、適用された境界条件(Boundary Condition)は、実験及びナノ脂質粒子の製造に使用される流量条件を反映し、ミキサー部内のチャネル壁面には流量の速度がないNon-Slip Conditionが、そしてOutletではゲージ圧が0atm、1atmのOpen Boundary Conditionが適用されて流動場、すなわち、内部溶液の流れの計算を容易にした。
【0091】
前記解析結果から計算された溶液の流速(u)を質量連続方程式において拡散分析法則<数式3.>を通じて微視的な分子単位での拡散(Molecular Diffusion)と流体の流れによる移流(Advection)伝達をカップリング(Coupling)による反映でエタノール濃度分布による混合効率(Mixing Index)を計算した。
【0092】
図8の結果から確認されるように、本発明の一実施例による脂質ナノ粒子製造用チップのミキサー部の構造を活用すれば、有効成分を含む高品質の脂質ナノ粒子を効率的に製造できることを確認した。特に30~40mm長さの混合区間だけでも十分な混合が行われることを確認した。
【0093】
図9は、本発明の一実施例による脂質ナノ粒子の製造方法を示すフローチャートである。図10は、図9の脂質ナノ粒子製造方法のチップ上で脂質ナノ粒子を製造する段階を詳細に示すフローチャートである。
【0094】
図9及び図10を参照すると、前記脂質ナノ粒子の製造方法は、原料を準備する段階S100、チップ上で脂質ナノ粒子を製造する段階S200、及び後処理段階S300を含んでもよい。
【0095】
前記原料を準備する段階S100では、mRNAを含む第1の原料と脂質(lipid)を含む第2の原料を準備してもよい。
【0096】
前記チップ上で脂質ナノ粒子を製造する段階S200では、前記第1の原料と前記第2の原料を混合してmRNAを含む脂質ナノ粒子を形成してもよい。
【0097】
前記後処理段階S300では、前記脂質ナノ粒子を含む溶液を透析ろ過(Diafiltration)、必要な濃度で追加濃縮及び個別容器に充填して最終製品を製造してもよい。
【0098】
このとき、前記脂質ナノ粒子を形成する段階S200は、流路が形成された脂質ナノ粒子製造用チップ(chip)上で行われ、初期混合段階S210、安定化段階S220、混合段階S230を含んでもよい。前記脂質ナノ粒子製造用チップ(chip)は、図1などで説明された脂質ナノ粒子用チップが使用されてもよい。例えば、前記脂質ナノ粒子製造用チップ(chip)は、安定化部と混合部を含むミキサー部を含んでもよい。前記脂質ナノ粒子製造用チップは、図1及び図2に説明された脂質ナノ粒子製造用チップであってもよい。
【0099】
前記初期混合段階S210では、前記第1の原料と前記第2の原料が前記脂質ナノ粒子製造用チップのミキサー部の併合部で初期混合されてもよい。
【0100】
前記安定化段階S220では、前記ミキサー部内の流体が前記併合部を経て安定化部を通過しうる。前記安定化部は、互いに同じ幅と長さを有する左側の安定化流路と右側の安定化流路を含んでもよく、このとき、前記左側の安定化流路と前記右側の安定化流路は、互いに対称に楕円形または円形をなすことができる。
【0101】
前記混合段階S230では、前記ミキサー部内の流体が前記安定化部を経て混合部を通過しうる。前記安定化段階と前記混合段階は、前記ミキサー部の設計によって数回繰り返すことができ、このような過程を通じて、前記第1の原料と前記第1の原料が混合され、脂質ナノ粒子が自己集合(self-assembly)過程を通じて製造されてもよい。
【0102】
以上の実施例を参照して説明したが、当該技術分野の熟練した当業者は、以下の特許請求の範囲に記載された本発明の思想及び領域から逸脱しない範囲内で本発明を様々に修正及び変更させることができることが理解できるだろう。
【符号の説明】
【0103】
10:第1の原料供給部
20:第2の原料供給部
30:脂質ナノ粒子取得部
100:脂質ナノ粒子製造用チップ
200:ミキサー部
210:第1の安定化部
220:第1の混合部
230:第2の安定化部
240:第2の混合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】