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特表2024-530874樹脂の付着性を改善するためのシランカップリング剤
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  • 特表-樹脂の付着性を改善するためのシランカップリング剤 図1
  • 特表-樹脂の付着性を改善するためのシランカップリング剤 図2
  • 特表-樹脂の付着性を改善するためのシランカップリング剤 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-27
(54)【発明の名称】樹脂の付着性を改善するためのシランカップリング剤
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20240820BHJP
   C08K 5/544 20060101ALI20240820BHJP
   C08L 79/08 20060101ALI20240820BHJP
   B29C 63/02 20060101ALI20240820BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20240820BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20240820BHJP
   C09D 179/08 20060101ALI20240820BHJP
   B32B 15/088 20060101ALI20240820BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20240820BHJP
   C07F 7/18 20060101ALN20240820BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K5/544
C08L79/08 Z
B29C63/02
C09D201/00
C09D7/63
C09D179/08 A
B32B15/088
H05K1/03 610G
C07F7/18 L
C07F7/18 T
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503547
(86)(22)【出願日】2022-07-18
(85)【翻訳文提出日】2024-02-26
(86)【国際出願番号】 US2022037430
(87)【国際公開番号】W WO2023003797
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】63/223,186
(32)【優先日】2021-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508229301
【氏名又は名称】モメンティブ パフォーマンス マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Momentive Performance Materials Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】ディアオ,チェン
(72)【発明者】
【氏名】プカン,モンジット
(72)【発明者】
【氏名】パテル,ニール
【テーマコード(参考)】
4F100
4F211
4H049
4J002
4J038
【Fターム(参考)】
4F100AB01A
4F100AB04A
4F100AB17A
4F100AB33A
4F100AD00A
4F100AG00A
4F100AH06B
4F100AJ06B
4F100AK01A
4F100AK04B
4F100AK05B
4F100AK06B
4F100AK07B
4F100AK12B
4F100AK15B
4F100AK16B
4F100AK18B
4F100AK19B
4F100AK21B
4F100AK22B
4F100AK25B
4F100AK29B
4F100AK42B
4F100AK45B
4F100AK46B
4F100AK49B
4F100AK51B
4F100AK54B
4F100AK55B
4F100AK56B
4F100AK63B
4F100AK74B
4F100BA02
4F100EH46
4F100EJ50
4F100EJ86
4F100GB41
4F211AA04
4F211AA11
4F211AA13
4F211AA18
4F211AA24
4F211AA28
4F211AA29
4F211AA31
4F211AA40
4F211AB22
4F211AD03
4F211AG01
4F211AG03
4F211AH33
4F211AR06
4F211AR11
4F211AR12
4F211SA07
4F211SC06
4F211SD11
4F211SP21
4H049VN01
4H049VP01
4H049VQ38
4H049VQ59
4H049VQ64
4H049VR21
4H049VR43
4H049VU22
4H049VW22
4J002AB021
4J002AC031
4J002AC061
4J002AC081
4J002AC091
4J002BB031
4J002BB121
4J002BB151
4J002BB171
4J002BB181
4J002BC031
4J002BD031
4J002BD101
4J002BD121
4J002BD131
4J002BD141
4J002BD151
4J002BE021
4J002BF021
4J002BG061
4J002BH011
4J002BK001
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4J002CF071
4J002CF081
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4J002CL001
4J002CM041
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4J002CP031
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4J002GJ01
4J002GP00
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4J002GT00
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4J038EA011
4J038JC30
4J038JC35
4J038KA03
4J038KA04
4J038KA06
4J038KA08
4J038KA09
4J038KA10
4J038PB08
4J038PB09
4J038PC08
(57)【要約】
本願に記載した一般式(I)のシランカップリング剤:
【化4】


およびシランカップリング剤(i)のR、RおよびX基の1つまたはより多くと相互作用性の少なくとも1つの樹脂を含む、樹脂組成物が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)のシランカップリング剤:
【化3】

式中Xは14までの炭素原子を含む芳香族基、または14までのヘテロ原子を含む複素環基を表し、また式中の芳香族基または複素環基は任意選択的にそれぞれが1から4の炭素原子を含む1つまたはより多くのアルキル基、および/または少なくとも1つのヘテロ原子で置換され;
Yは酸素または硫黄であり;
Zは1から20の炭素原子を含む2価の直鎖アルキレン基、または3から20の炭素原子を含む2価の分岐鎖アルキレン基であり、それぞれ任意選択的にヘテロ原子を含み;
下付き文字aは1、2または3であり;
およびRはそれぞれ水素原子または1から40の炭素原子を有する1価の有機基を表し;
は独立して1から12の炭素原子を含む直鎖アルキル基、3から12の炭素原子を含む分岐鎖アルキル基、5または6の炭素原子を含む環状アルキル基、2から12の炭素原子を含むアルケニル基、6の炭素原子を含むアリール基、または7から12の炭素原子を含むアラルキル基、2から12の炭素原子およびヒドロキシル基を含む直鎖アルキル基、3から6の炭素原子およびヒドロキシル基を含む分岐鎖アルキル基、少なくとも1つの酸素原子を含み構造:
-R-(OCHCH(OCHCH(CH))OR
を有するアルキル基からなる群より選択される1価の基、
および共有結合を介して一緒に結合されている2つのR基から形成された2価の基であり、
但し(i)2つのR基が一緒に結合された場合、aは2または3であり(ii)m+nの合計は1から20であり;
それぞれのRは独立して1から12の炭素原子を含む直鎖アルキル基、3から12の炭素原子を含む分岐鎖アルキル基、5または6の炭素原子を含む環状アルキル基、2から12の炭素原子を含むアルケニル基、6の炭素原子を含むアリール基、または7から12の炭素原子を含むアラルキル基からなる群より選択される1価の基であり;
は1から10の炭素原子を含む直鎖アルキル基、3から10の炭素原子を含む分岐鎖アルキル基、および5から10の炭素原子を含む環状アルキル基からなる群より選択される2価の基であり;
は1から18の炭素原子を含む直鎖アルキル基、3から18の炭素原子を含む分岐鎖アルキル基、5から18の炭素原子を含む環状アルキル基、2から18の炭素原子を含むアルケニル基、6から18の炭素原子を含むアリール基、7から18の炭素原子、および水素を含むアラルキル基からなる群より選択される1価の基、またはRは1から10の炭素原子を含むアルキル基、5から10の炭素原子を含む環状アルキル基、およびフェニル基からなる群より選択される2価の基である;および
少なくとも1つの樹脂を含み、この樹脂はシランカップリング剤(I)のR、R、YおよびX基の1つまたはより多くと相互作用し、樹脂組成物の合計重量の約10重量パーセントから約99.99重量パーセントの量で存在する、樹脂組成物。
【請求項2】
およびRはそれぞれH、YはO、Zは2から6の炭素原子を含む2価の直鎖アルキレン基、下付き文字aは3、そしてRのそれぞれは1から3の炭素原子を含む直鎖アルキル基である、請求項1の樹脂組成物。
【請求項3】
Xはフェニル基、そしてRおよびRはそれぞれH、YはO、Zは2から6の炭素原子を含む2価の直鎖アルキレン基、下付き文字aは3、そしてRのそれぞれは1から3の炭素原子を含む直鎖アルキル基である、請求項1の樹脂組成物。
【請求項4】
Xは1または2個のN原子を含む複素環基、そしてRおよびRはそれぞれH、YはO、Zは2から6の炭素原子を含む2価の直鎖アルキレン基、下付き文字aは3、そしてRのそれぞれは1から3の炭素原子を含む直鎖アルキル基である、請求項1の樹脂組成物。
【請求項5】
Xは2個のN原子を含みOヘテロ原子で置換された複素環基、そしてRおよびRはそれぞれH、YはO、Zは2から6の炭素原子を含む2価の直鎖アルキレン基、下付き文字aは3、そしてRのそれぞれは1から3の炭素原子を含む直鎖アルキル基である、請求項1の樹脂組成物。
【請求項6】
Xは2個のN原子を含みOヘテロ原子および1または2個の炭素原子を含むアルキル基で置換された複素環基、そしてRおよびRはそれぞれH、YはO、Zは2から6の炭素原子を含む2価の直鎖アルキレン基、下付き文字aは3、そしてRのそれぞれは1から3の炭素原子を含む直鎖アルキル基である、請求項1の樹脂組成物。
【請求項7】
樹脂(ii)は、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリウレタン、シリル化ポリウレタン、ポリエーテル、シリル化ポリエーテル、ポリフェニレンエーテル、ビスマレイミド、ポリイソシアヌレート、ポリエチレンテレフタレート、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリフッ化ビニル、ポリアミド、ポリメチルペンテン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、エチレンクロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、可塑化ポリ塩化ビニル、ポリフェニレンサルファイド、スチレン-無水マレイン酸、変性ポリフェニレンオキシド、エチレン-プロピレンゴム、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、スチレン-ブタジエン-スチレン、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン、シリコーン、シリル化樹脂、およびこれらの混合物からなる群より選択される、請求項1の樹脂組成物。
【請求項8】
樹脂(ii)は、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリウレタン、ポリフェニレンエーテル、ビスマレイミド、ポリイソシアヌレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1の樹脂組成物。
【請求項9】
樹脂(ii)はポリイミドである、請求項1の樹脂組成物。
【請求項10】
Xは2個のN原子を含みOヘテロ原子および1または2個の炭素原子を含むアルキル基で置換された複素環基、そしてRおよびRはそれぞれH、YはO、Zは2から6の炭素原子を含む2価の直鎖アルキレン基、下付き文字aは3、そしてRのそれぞれは1から3の炭素原子を含む直鎖アルキル基であり;そして樹脂(ii)はポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリウレタン、ポリフェニレンエーテル、ビスマレイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1の樹脂組成物。
【請求項11】
樹脂(ii)はポリイミドである、請求項1の樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1の樹脂組成物から作成される物品であって、樹脂フィルム、銅箔付樹脂フィルム、ラミネートプリプレグ、プリント基板、およびフレキシブル電子デバイスからなる群より選択される、物品。
【請求項13】
ラミネートプリプレグは、プラスチックフィルム、シリコンウェーハ、セラミック、有機材料、金属およびガラスからなる群より選択される基材を含む、請求項12のラミネート。
【請求項14】
金属基材は銅箔である、請求項13のラミネート。
【請求項15】
フレキシブル銅張ラミネートである、請求項13のラミネート。
【請求項16】
フレキシブルディスプレイである、請求項12のフレキシブル電子デバイス。
【請求項17】
請求項16のフレキシブルディスプレイを含む折りたたみ式スマートフォンまたはロール式スマートフォン。
【請求項18】
銅張ラミネート製造するためのプロセスであって:
請求項1の樹脂組成物を銅箔上にコーティングする工程;および
コーティングされた銅箔を加熱して銅張ラミネートを得る工程を含む、プロセス。
【請求項19】
フレキシブルディスプレイを製造するためのプロセスであって:
請求項1の樹脂組成物をガラス基材上にコーティングする工程;および
樹脂組成物を硬化してガラス基材上に樹脂層を形成する工程を含む、プロセス。
【請求項20】
シランカップリング剤(i)および樹脂(ii)を接触させることを含む、請求項1の樹脂組成物を作成するためのプロセス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シランカップリング剤および樹脂を含む樹脂組成的に関する。この樹脂組成物は、種々の電子部品および用途に使用することができる。
【背景技術】
【0002】
樹脂を他の材料と共に使用する用途においては、製品の品質、性能、および長期信頼性を決定するについて、界面結合は非常に重要である。有機ポリマー/樹脂は通常、化学的性質の相違に基づいて、金属、ガラスおよびセラミックといった無機材料に対して、界面結合が弱い。
【0003】
伝統的に、有機樹脂と無機基材の間の界面結合を増大させるために、シランカップリング剤が使用されてきた。シランカップリング剤のシリル部分は無機基材上のヒドロキシル基と結合し、そしてシランカップリング剤の有機官能基は有機樹脂と結合する。
【0004】
それでもなお多くの用途において、既存のシランカップリング剤は、種々の産業上の要求にとって十分な、満足できる界面結合を提供するものではない。例えば、フレキシブル銅張ラミネートの用途においては、有機材料と銅の間の付着が弱いと、処理および適用に際して剥離が生じうる。フレキシブルディスプレイにおいては、有機フィルムとガラス基板の間の付着が弱いと、有機フィルムのガラス基板からの剥離を生ずる可能性があり、製造プロセスが中断される。フレキシブル電子デバイス、例えば折りたたみ式スマートフォンやロール式スマートフォンにおいては、有機ポリマーフィルムを可撓性(フレキシブル)画面カバーとして使用することができ、その上側にコーティングが塗布される。付着が弱いと、そうしたコーティングの有機ポリマーフィルムからの時期尚早な剥離を生ずる可能性があり、コーティングの耐久性に影響がある。折りたたみ式の電子デバイス構造においては、ディスプレイが折られる領域は、互いに対して動くように構成された部分に分割されており、ディスプレイが電子デバイスにおいて固定された位置に静止することを困難にする。電子デバイスが開いた位置と折りたたんだ位置の間を行き来する場合、ディスプレイが折られる領域は変形する可能性があり、平坦な表面を維持することができなくなる。
【0005】
かくして、上記したような用途において付着性を増大させるシランカップリング剤に対する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0006】
本願の発明者らは驚くべきことに、種々の基材と数多くの樹脂材料との間の界面結合を水素結合を介して改善するシランカップリング剤を見出した。理論に拘束されることを望むものではないが、本発明のシランカップリング剤は基材部分とシリル部分の間に水素結合をもたらすだけでなく、それに加えて本願で記載するシランカップリング剤のウレイドおよび芳香族/複素環部分が、多くの異なる樹脂に対する「配位された」水素結合を形成すると考えられる。本願において記載するシランカップリング剤は、種々の電子的用途に使用される樹脂と基材の間において界面結合を改善する。
【0007】
本願においては樹脂組成物が提供され、これは:
一般式(I)のシランカップリング剤:
【化1】

式中Xは14までの炭素原子を含む芳香族基、または14までのヘテロ原子を含む複素環基を表し、また式中の芳香族基または複素環基は任意選択的にそれぞれが1から4の炭素原子を含む1つまたはより多くのアルキル基、および/または少なくとも1つのヘテロ原子、例えば、O、N、Sで置換され;
Yは酸素または硫黄であり;
Zは1から20の炭素原子を含む2価の直鎖アルキレン基、または3から20の炭素原子を含む2価の分岐鎖アルキレン基であり、それぞれ任意選択的にヘテロ原子を含み;
下付き文字aは1、2または3であり;
およびRはそれぞれ水素原子または1から40の炭素原子を有する1価の有機基を表し;
は独立して1から12の炭素原子を含む直鎖アルキル基、3から12の炭素原子を含む分岐鎖アルキル基、5または6の炭素原子を含む環状アルキル基、2から12の炭素原子を含むアルケニル基、6の炭素原子を含むアリール基、または7から12の炭素原子を含むアラルキル基、2から12の炭素原子およびヒドロキシル基を含む直鎖アルキル基、3から6の炭素原子およびヒドロキシル基を含む分岐鎖アルキル基、少なくとも1つの酸素原子を含み構造:
-R-(OCHCH(OCHCH(CH))OR
を有するアルキル基からなる群より選択される1価の基、
および共有結合を介して一緒に結合されている2つのR基から形成された2価の基であり、
但し(i)2つのR基が一緒に結合された場合、aは2または3であり(ii)m+nの合計は1から20であり;
それぞれのRは独立して1から12の炭素原子を含む直鎖アルキル基、3から12の炭素原子を含む分岐鎖アルキル基、5または6の炭素原子を含む環状アルキル基、2から12の炭素原子を含むアルケニル基、6の炭素原子を含むアリール基、または7から12の炭素原子を含むアラルキル基からなる群より選択される1価の基であり;
は1から10の炭素原子を含む直鎖アルキレン基、3から10の炭素原子を含む分岐鎖アルキレン基、および5から10の炭素原子を含む環状アルキレン基からなる群より選択される2価の基であり;
は1から18の炭素原子を含む直鎖アルキル基、3から18の炭素原子を含む分岐鎖アルキル基、5から18の炭素原子を含む環状アルキル基、2から18の炭素原子を含むアルケニル基、6から18の炭素原子を含むアリール基、7から18の炭素原子を含むアラルキル基、および水素からなる群より選択される1価の基、またはRは1から10の炭素原子を含むアルキル基、5から10の炭素原子を含む環状アルキル基、およびフェニル基からなる群より選択される2価の基である;および
少なくとも1つの樹脂を含み、この樹脂はシランカップリング剤(i)のR、R、YおよびX基の1つまたはより多くと相互作用し、樹脂組成物の約10重量パーセントから約99.99重量パーセントの量で存在する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】は銅基材上にコーティングされたポリイミドフィルムに対する引っ掻き試験結果を示す。
図2】はステンレス鋼基材上にコーティングされたポリイミドフィルムに対する引っ掻き試験結果を示す。
図3】はガラス基材上にコーティングされたポリイミドフィルムに対する引っ掻き試験結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本願の明細書および特許請求の範囲において、以下の用語および表現は以下に示すように理解される。
【0010】
単数形「ある」、「1つの」および「その」は複数形を含んでおり、また特定の数値に対する参照は、文脈において特に断りがない限り、少なくともその特定の数値を含んでいる。
【0011】
本願において提示されるあらゆるすべての例示、または例示的な用語(例えば「のような」)の使用は、単に本発明をよりわかりやすく説明することを意図したものであり、特に断りがない限り本発明の範囲に対して制限を課するものではない。
【0012】
「含む」、「包含する」、「含有する」、「特徴とする」という用語、およびこれらの文法的に等価な表現は、包括的または非限定的な用語であって、付加的な記載されていない構成要素または方法的過程を排除するものではなく、またより限定的な用語である「からなる」および「から本質的になる」を含むものであることが理解される。
【0013】
本明細書におけるいかなる用語も、特許請求の範囲に記載されていない何らかの構成要素が本発明の実施に不可欠であることを示すものとして解釈されてはならない。
【0014】
さらに、構成的、組成的および/または機能的に関連する化合物、材料または物質の群に属するものとして本明細書に明示的または黙示的に開示され、および/または請求項において記載されたすべての化合物、材料または物質は、その群の個々の構成因子およびそれらのすべての組み合わせを含むことが理解される。
【0015】
実施例以外において、または特に断りがない限り、本明細書および特許請求の範囲に記載された材料の量、反応条件、時間の長さ、物質の定量化された特性およびその他を表現するすべての数値は、表現中に用語「約」が使用されているか否かを問わず、すべての場合において用語「約」によって修飾されているものとして理解される。
【0016】
本願における1つの実施形態においては、本願で記載した任意の数値範囲はその範囲内のすべての部分範囲、およびそうした範囲または部分範囲の種々の端点の任意の組み合わせを、それらが実施例または本明細書の他の部分で記載されているか否かを問わず含むことが理解される。
【0017】
本願においてはまた、任意の特定の属または種によって記載され、または本明細書の実施例の欄において詳述された本願発明の成分のいずれのものも、1つの実施形態においては、その成分に関して本明細書の他の部分に記載された範囲の任意の端点についてそれぞれ代替的な定義を規定するために使用することができ、したがって1つの非限定的な実施形態においては、そうした他の部分に記載された範囲の端点を置き換えることができることが理解される。
【0018】
本開示にしたがって1つまたはより多くの他の物質、構成要素、または成分と最初に接触される直前の時点において存在し、現場で形成され、ブレンドされ、または混合される物質、構成要素、または成分に対する言及が行われる。反応生成物、得られる混合物またはその他として特定される物質、構成要素または成分は、本開示にしたがい常識と関連技術分野の当業者(例えば化学技術者)の通常の知識を適用して行われた接触、現場形成、ブレンド、または混合操作の過程の間における化学反応または変性を通じて、独自性、特性、または特徴を獲得してよい。化学反応物質または出発材料の化学生成物または最終物質への変性は連続的に展開する過程であり、それが生ずる速度とは無関係である。したがって、そうした変性過程が進行するにつれて、出発物質と最終物質の混合物が存在してよく、さらには熱力学的寿命に応じて、当業者に知られた現在の分析技術により検出が容易または困難な中間種が存在してよい。
【0019】
本願の明細書または特許請求の範囲において化学名または化学式によって参照される反応物質および成分は、単数形または複数形のいずれで参照される場合でも、化学名または化学種によって参照される別の物質(例えば別の反応物質または溶媒)と接触するよりも前に存在しているものとして識別されてよい。得られる混合物、溶液、または反応媒体において生ずる予備的および/または遷移的な化学変化、変性、または反応が存在する場合には、中間種、マスターバッチその他として識別されてよく、また反応生成物または最終物質の有用性とは別個の有用性を有していてよい。特定された反応物質および/または成分を本開示にしたがって要求される条件の下で一緒に合わせることから、他の後続の変化、変性、または反応がもたらされてよい。こうした他の後続の変化、変性、または反応においては、一緒に合わせられる反応物質、成分または構成要素が、反応生成物または最終物質を特定または指定してよい。
【0020】
本願において使用される表現「シランカップリング剤」は、無機基材上のヒドロキシ基および樹脂の反応性部分の両方と相互作用性および/または反応性であることのできる、例えば有機樹脂の有機基と反応性である材料であると理解される。理論によって拘束されることを望むものではないが、本願に記載の有機シランカップリング剤の式(I)の-OR部分はそれぞれ、水と反応することによってシラノール基を生成する部分であり、そしてこのシラノール基が無機材料、例えば金属またはガラスのような無機基材と脱水縮合して、式:≡Si-OM(M:無機材料)の化学結合を形成する。
【0021】
本願において使用される表現「樹脂」は、硬化したポリマー材料だけでなく、ポリマー前駆体材料、例えば、ポリイミド前駆体を含むことができる。本願における樹脂は、有機樹脂および無機樹脂の両方を含んでいる。
【0022】
本願において使用される表現「複素環基」は、少なくとも2つの元素の原子の環であって、その1つが炭素であり、その他方がヘテロ原子、例えば、N、O、およびSである環であると理解される。
【0023】
本願において使用される表現「相互作用性である」本願に記載するシランカップリング剤の有機部分が本願に記載する樹脂と化学的に反応する能力を指すために用いられている。
【0024】
用語「電子デバイス」は、実装されたプログラムに従って特定の機能を奏するデバイス、例えば「スマートフォン」のような携帯電話、家電製品、電子スケジューラー、携帯式マルチメディアプレーヤー、移動通信端末、タブレットPC、ビデオ/サウンドデバイス、デスクトップPCまたはラップトップコンピュータ、自動車用ナビゲーションその他を意味していてよい。
シランカップリング剤(i)
【0025】
本願の実施形態において、上述した一般式(I)のシランカップリング剤は、Xが6の炭素原子を含む芳香族基、例えばフェニル基、または5までのヘテロ原子、好ましくは3ヘテロ原子、より好ましくは1または2のヘテロ原子を含み、例えばそれぞれがNである複素環基を表し、またここで複素環基は任意選択的に1から4の炭素原子をそれぞれに含む1つまたはより多くのアルキル基、好ましくはメチル基によって置換され、または代替的には1つの置換基としてメチル基を、そして別の置換基としてカルボニル酸素基を含み;
ここでYは好ましくは酸素であり;Zは好ましくは1から12の炭素原子、より好ましくは1から8の炭素原子、そして最も好ましくは1から4の炭素原子、または3の炭素原子を含む2価の直鎖アルキレン基、例えば(-CH-)
下付き文字aは好ましくは2または3、最も好ましくは3であり;
およびRはそれぞれ好ましくは水素原子を表し、または代替的には1から20の炭素原子、より好ましくは1から8の炭素原子、最も好ましくは1から4の炭素原子を有する1価の有機基であり、非限定的な例はメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基およびその他であり;
は好ましくは独立して、1から8の炭素原子、より好ましくは1から4の炭素原子を含む直鎖アルキル基または3から8の炭素原子、より好ましくは3から4の炭素原子を含む分岐鎖アルキル基、例えば非限定的な例はメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基およびその他、6の炭素原子を含む環状アルキル基、2から8の炭素原子、好ましくは2から4の炭素原子を含むアルケニル基、アリール基例えばフェニル基、7から10の炭素原子、好ましくは7から9の炭素原子を含むアラルキル基、2から8の炭素原子およびヒドロキシル基、好ましくは2から4の炭素原子およびヒドロキシル基を含む直鎖アルキル基、3または4の炭素原子およびヒドロキシル基を含む分岐鎖アルキル基、少なくとも1つの酸素原子を含み構造:
-R-(OCHCH(OCHCH(CH))OR
を有し、m+nの合計が1から12、好ましくは1から8、より好ましくは1から4であるアルキル基からなる群より選択される1価の基;
それぞれのRは独立して、1から8の炭素原子、好ましくは1から4の炭素原子を含む直鎖アルキル基、3から8の炭素原子、好ましくは3から4の炭素原子を含む分岐鎖アルキル基、6の炭素原子を含む環状アルキル基、2から8の炭素原子、より好ましくは2から6の炭素原子を含むアルケニル基、アリール基例えばフェニル基、または7から10の炭素原子、好ましくは7から9の炭素原子を含むアラルキル基からなる群より選択される1価の基であり;
は1から10の炭素原子を含む直鎖アルキレン基、3から10の炭素原子を含む分岐鎖アルキレン基、および5から10の炭素原子を含む環状アルキレン基からなる群より選択される2価の基であり;
は好ましくは、1から12の炭素原子、より好ましくは1から8の炭素原子、最も好ましくは1から4の炭素原子を含む直鎖アルキル基、3から12の炭素原子、より好ましくは3から8の炭素原子、そして最も好ましくは3から6の炭素原子を含む分岐鎖アルキル基、6から12の炭素原子、より好ましくは6から8の炭素原子を含む環状アルキル基、2から12の炭素原子、より好ましくは2から8の炭素原子を含むアルケニル基、6から12の炭素原子、より好ましくは6から8の炭素原子を含むアリール基、7から12の炭素原子、より好ましくは7から9の炭素原子を含むアラルキル基、および水素からなる群より選択される1価の基であり、またはRは1から8の炭素原子、より好ましくは1から4の炭素原子を含むアルキル基、6から8の炭素原子を含む環状アルキル基、およびフェニル基からなる群より選択される2価の基である。
【0026】
式(I)の実施形態において、RおよびRはそれぞれH、YはO、Zは2から6の炭素原子を含む2価の直鎖アルキレン基、下付き文字aは3、そしてRのそれぞれは1から3の炭素原子を含む直鎖アルキル基である。
【0027】
式(I)の別の実施態様において、Xはフェニル基、そしてRおよびRはそれぞれH、YはO、Zは2から6の炭素原子を含む2価の直鎖アルキレン基、下付き文字aは3、そしてR3のそれぞれは1から3の炭素原子を含む直鎖アルキル基である。
【0028】
式(I)の別の実施態様において、Xは1または2のN原子を含む複素環基、そしてRおよびRはそれぞれH、YはO、Zは2から6の炭素原子を含む2価の直鎖アルキレン基、下付き文字aは3、そしてR3のそれぞれは1から3の炭素原子を含む直鎖アルキル基である。
【0029】
式(I)のさらに別の実施態様において、Xは2つのN原子を含む複素環基、そしてこれはOヘテロ原子で置換されており、またRおよびRはそれぞれH、YはO、Zは2から6の炭素原子を含む2価の直鎖アルキレン基、下付き文字aは3、そしてR3のそれぞれは1から3の炭素原子を含む直鎖アルキル基である。
【0030】
式(I)の別のさらなる実施態様において、Xは2つのN原子を含む複素環基、そしてこれはカルボニル酸素の形のOヘテロ原子および1または2の炭素原子を含むアルキル基で置換されており、またRおよびRはそれぞれH、YはO、Zは2から6の炭素原子を含む2価の直鎖アルキレン基、下付き文字aは3、そしてR3のそれぞれは1から3の炭素原子を含む直鎖アルキル基である。
【0031】
ある実施形態において、本願に記載する一般式(I)のシランカップリング剤(i)は、以下に示す6つの構造(#1-#6)のいずれかを有することができる:
【化2】
【0032】
本願のある実施形態においては、シランカップリング剤(i)は樹脂組成物中に、樹脂(ii)の選択に基づく種々の量、および/または樹脂組成物の用途に基づく種々の量で存在することができ、そして量は技術分野における当業者によって決定される。しかしながら1つの実施形態において、シランカップリング剤(i)の量は樹脂(ii)の100質量部に対して約0.01から約40質量部、そしてより好ましくは約0.5から約10質量部であることができる。本願における1つの実施形態において、樹脂組成物は本願に記載する1つまたはより多くのシランカップリング剤(i)、すなわち2つまたはより多くの異なるシランカップリング剤(i)の混合物を含むことができる。
樹脂(ii)
【0033】
本願において記載するところでは、樹脂(ii)は任意の有機または無機ポリマーまたはポリマー前駆体であることができ、本願に記載のシランカップリング剤(i)と化学反応が可能な部分を含んでいる。
【0034】
本願のある実施形態においては、樹脂(ii)は、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリウレタン、シリル化ポリウレタン、ポリエーテル、シリル化ポリエーテル、ポリフェニレンエーテル、ビスマレイミド、ポリイソシアヌレート、ポリエチレンテレフタレート、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリフッ化ビニル、ポリアミド、ポリメチルペンテン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、エチレンクロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、可塑化ポリ塩化ビニル、ポリフェニレンサルファイド、スチレン-無水マレイン酸、変性ポリフェニレンオキシド、エチレン-プロピレンゴム、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、スチレン-ブタジエン-スチレン、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン、シリコーン、例えばポリメチルフェニルシロキサン、シリル化樹脂、例えばシリル化ポリウレタン樹脂、およびこれらの混合物からなる群より選択される。
【0035】
好ましくは、樹脂(ii)は、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリウレタン、ポリフェニレンエーテル、ビスマレイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され、そして最も好ましくはポリイミド、例えば従来のポリイミド、または無色のポリイミドである。
【0036】
樹脂組成物に用いられる樹脂(ii)の量は、具体的なポリマーおよび樹脂組成物の意図する用途に依存しており、そして技術分野における当業者によって決定されうる。しかしながら1つの非限定的な実施形態において、樹脂(ii)の量は約10重量パーセントから約99.99重量パーセント、または別の実施形態において約15重量パーセントから約99.99重量パーセント、好ましくは約50重量パーセントから99重量パーセント、より好ましくは約80重量パーセントから約99重量パーセント、そして最も好ましくは約90重量パーセントから約99重量パーセントであることができ、この重量パーセントは樹脂組成物の合計重量に基づく。
【0037】
別の非限定的な実施形態において、樹脂(ii)はポリイミドであり、そして本願の樹脂組成物は、ジアミンモノマーとジ無水物モノマーをNMP溶媒中で高粘度になるまで反応させて作成したポリイミド前駆体溶液を、シランカップリング剤と混合し、数時間(通常は2から12時間)撹拌することによって作成される。しかしながら、このプロセスは樹脂(ii)としてポリイミドに限定されたものではなく、技術分野における当業者によって理解されるように、プロセスは本願に記載する樹脂(ii)のいずれに対応するようにも修正することができる。1つの実施形態においては、本願に記載する樹脂組成物は、本願に記載のシランカップリング剤(i)および樹脂(ii)を接触させること、例えば混合することによって作成することができる。
補助的添加剤
【0038】
本発明の樹脂組成物は、上述した組成物の成分であるシランカップリング剤(i)および樹脂(ii)に加えて、任意の他の添加剤を含んでいてよいが、但しそれらは本発明の有利な効果を損なうことのない範囲内の量で使用され、またそうした量の範囲は技術分野における当業者によって理解される。例えば組成物は、酸化防止剤、光安定剤、界面活性剤、難燃剤、可塑剤、紫外線吸収剤、上述した有機樹脂(ii)以外の任意の他のポリマー化合物、硬化剤、硬化促進剤、無機フィラー、溶媒、酸化防止剤、顔料、染料およびその他の任意の1つまたはより多くを含んでいてよい。
【0039】
硬化剤の非限定的な1つの例はフェノール系硬化剤である。適切なフェノール系硬化剤は技術分野における当業者によって知られている。硬化剤の構造としては、2から10のOH基を有する多価アルコールが好ましい。
【0040】
硬化促進剤としての幾つかの非限定的な例には、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、および2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾールなどのイミダゾール;2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリエチレンジアミン、トリエタノールアミン、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7、およびトリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどの第3級アミン;ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィンなどの有機ホスフィン;テトラフェニルホスホニウム/テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウム/エチルトリフェニルボレートなどの4置換ホスホニウム/4置換ボレート;およびシュウ酸スズのような金属化合物が含まれる。硬化剤の量は、樹脂(ii)の100質量部に対して約0.01から約20.0質量部、より好ましくは約0.1から約5.0質量部の量であることができる。
【0041】
樹脂組成物はまた、無機フィラーを含むことができる。無機フィラーの例には:酸化チタン、アルミナ、溶融シリカ(溶融球状シリカ、溶融破砕シリカ)、および結晶シリカパウダーのような酸化物;タルク、ガラス、焼成クレイのような珪酸塩;窒化アルミニウム、窒化ホウ素、および窒化ケイ素のような窒化物;炭酸カルシウムおよび炭酸マグネシウムのような炭酸塩;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムおよび水酸化カルシウムのような水酸化物;硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウムなどの硫酸塩または亜硫酸塩が含まれる。これらの無機フィラーは単独で、または2種類またはより多くの種類の組み合わせで使用してよい。無機フィラーの平均粒径は特に限定されるものではないが、しかし好ましくは透過型電子顕微鏡法(TEM)によって求めて約0.01から約30μm、そしてより好ましくは約0.03から約14μmである。
【0042】
これらの中でも、溶融シリカおよび結晶シリカのようなシリカパウダーが好ましい。無機フィラーの含有量は樹脂組成物の固形分で好ましくは約14から約96質量%、より好ましくは約20から約96質量%、さらにより好ましくは約50から約95質量%、そして特に好ましくは約60から約93質量%である。固形分とは、有機溶媒以外の成分として定義される。
【0043】
本発明の樹脂組成物は溶媒、好ましくは有機溶媒を含んでいてよい。有機溶媒の例には:N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、メチルエチルケトン、N,N-ジメチルホルムアミド、クレゾール、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、N-メチル-2-ピロリドン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トルエン、およびキシレンが含まれ、特にメチルエチルケトン、シクロペンタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、およびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが好ましいが、しかしこれらに限定されるものではない。これらの有機溶媒は単独で、または2種類またはより多くの種類の組み合わせで使用してよい。樹脂組成物中の固形分濃度に基づく有機溶媒の適切な量は、好ましくは約40から約90質量%である。
【0044】
本発明の樹脂組成物は、難燃性を向上させるために難燃剤を含有していてよい。難燃剤としては、リン系の難燃剤を用いてよい。これらの例には、ホスファゼン化合物、リン酸エステル化合物、およびリン酸エステルアミド化合物が含まれる。難燃剤の含有量は、樹脂(ii)100質量部に対して好ましくは3から40質量部である。
【0045】
上記の他にも、多種多様な添加剤を適宜添加して、樹脂組成物の貯蔵安定性または作業性といった種々の性質を改良してよい。例えば、脂肪酸エステル、グリセリン酸エステル、ステアリン酸亜鉛、およびステアリン酸カルシウムのような内部離型剤、およびフェノール系、リン系、またはイオウ系の酸化防止剤を添加してよい。さらにまた組成物は、非限定的な例がカーボンブラックであるような顔料で着色してよい。
【0046】
本発明の1つの実施形態においては、シランカップリング剤(i)以外に何のフィラーや添加剤も樹脂(ii)へと取り込まれず、それによって透明度の高い積層物を生成することができる。
【0047】
この樹脂組成物は物品作成のために用いることができ、例えばその場合に物品は、樹脂フィルム、銅箔付樹脂フィルム、ラミネート、例えば、フレキシブル銅張ラミネート、プリプレグ、プリント基板、およびフレキシブル電子デバイスからなる群より選択される。ある実施形態において、ラミネートは、プラスチックフィルム、シリコンウェーハ、セラミック、有機材料、金属、例えば銅箔、およびガラスからなる群より選択される基材を含んでいる。ある実施形態において、ラミネートはフレキシブル銅張ラミネートである。フレキシブル電子デバイスはフレキシブルディスプレイであることができ、それは部分的または全体的に用いて折りたたみ式またはロール式のスマートフォンを作成することができる。
【0048】
別の実施形態においては、本発明の樹脂組成物からフィルム形状に作成される樹脂フィルムが提供される。本発明の樹脂フィルムは、樹脂組成物を技術分野における当業者に知られているように処理してフィルムとすることによって得られる。
【0049】
本発明の樹脂フィルムは、樹脂組成物から得られた樹脂フィルム上に保護フィルムが積層されたものであってよい。本発明の樹脂フィルムを製造するための方法の1つの非限定的な例においては、シランカップリング剤(i)および(ii)、並びに他の成分が混合されて樹脂組成物溶液が調製され、この樹脂組成物溶液がリバースロールコーターまたはコンマコーターにより、保護フィルム上に所望の厚さで塗布される。樹脂組成物溶液が塗布された保護フィルムはインラインドライヤーを通されて、約80から約160℃において約2から約20分間乾燥されて有機溶媒が除去され、その後ロールラミネーターを使用して圧縮および別の保護フィルムとの積層が行われて、樹脂フィルムが内部に形成された積層フィルムを得ることができる。
【0050】
本発明の樹脂組成物がフィルム形状に形成される場合、厚さに対する制限はないが、しかし厚さは好ましくは約2mmまたはより小さく、より好ましくは約50μmまたはより厚く、そして約1,200μmまたはより薄く、そしてさらに好ましくは約80から約850μmである。
【0051】
保護フィルムは、樹脂組成物から作成された樹脂フィルムの形状を損なうことなしに剥離可能である限りは特に限定されるものではないが、保護フィルムおよびウエーハ用の剥離フィルムとして機能し、また通常はポリエチレン(PE)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリメチルペンテン(TPX)フィルム、およびポリエステルフィルムといった離型処理を施されたプラスチックフィルムが使用される。さらにまた、剥離力は好ましくは約50から約300mN/分である。保護フィルムの厚さは好ましくは約25から約150μmであり、そしてより好ましくは約38から約125μmである。
【0052】
本発明の積層体(ラミネート)は、基材上に本発明の樹脂フィルムである硬化生成物を有する。1つの実施形態においては、本発明の積層体を製造するための非限定的な方法は、樹脂フィルムを基材上に接合して基材を成型する工程と、基材上で樹脂フィルムを加熱し硬化する工程とを有する方法である。別の非限定的な実施形態においては、積層体はポリイミドの金属張(メタルクラッド)ラミネートであり、ポリイミドの誘電層と少なくとも金属箔の導電層、例えば銅箔を含んでいる。これらの層は付着剤で、または付着剤なしで結合される。
【0053】
ポリイミド銅張ラミネートは本願の1つの実施形態においては、フレキシブル銅張ラミネート(FCCL)であることができる。
【0054】
また本願において提供されるのは、積層体、好ましくは銅張ラミネート、より好ましくはフレキシブル銅張ラミネートを製造するためのプロセスである。最初に、本発明の樹脂(ii)、例えばポリイミド前駆体が提供される。次いでシランカップリング剤(i)と樹脂(ii)、および他の任意選択的な成分が混合されて樹脂組成物が調製され、樹脂組成物溶液は銅箔基材上に塗布される。次いで、樹脂組成物はバッチ式または連続式に金属基材上に流延されて高温で焼成されて樹脂が硬化され、銅張ラミネートが得られる。一般に、焼成は約200℃から約450℃の温度である。銅箔は、箔の表面粗さが樹脂(ii)の透明度に対して有する影響が最小限(表面形状に起因する光散乱が最小)となるように選択される。通常、選択された銅箔は約0.7μmまたはそれ未満の表面粗さを有し、そうした銅箔は「平滑な銅箔」と称される。
【0055】
別の実施形態においては、本願に記載の樹脂組成物を含むフレキシブルディスプレイを製造するためのプロセスが提供される。1つの実施形態においては、この方法は樹脂組成物をガラス基材上に塗布すること;および、樹脂組成物を硬化してガラス基材上に樹脂層を形成することを含む。本開示の実施形態による電子デバイスでフレキシブルディスプレイを含んでいてよいものの例には、スマートフォン、タブレットパソコン(PC)、携帯電話、ビデオ電話、電子ブックリーダー、デスクトップPC、ラップトップコンピュータ、ノートパソコン、ワークステーション、サーバー、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、ポータブルマルチメディアプレーヤー(PMP)、MP3プレーヤー、モバイル医療機器、カメラ、またはウェアラブルデバイスの少なくとも1つが含まれる。
【0056】
実施例
試料の調製プロセス
ポリイミド前駆体溶液:15gのポリイミド前駆体固体が85gのN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に溶解される。
シラン溶液:0.075gのシランが5gのN-メチル-2-ピロリドンに溶解されてシラン溶液が作成される。対照試料はシランを含まない。
試験溶液:上記のシラン溶液がポリイミド前駆体溶液に添加されて試験溶液が調製される。
配合処方は以下の表に示されている:
【表1】

試験溶液コーティング:それぞれの基材は30ミルの厚さのポリイミド前駆体溶液で塗布された。
硬化プロファイル:塗布されたポリイミド基材は対流オーブン内で110℃において1時間にわたって乾燥され;次いで普通のオーブン内で100℃において2時間にわたり;200℃で1時間にわたり;250℃で1時間にわたり乾燥され;最後に室温まで冷却された。
基材:銅、ステンレス鋼、およびガラスを以下の例について基材として使用した。
付着特性:標準的なエリクセン社の430P試験機を用いてクロスカット試験を行って付着性を評価し、試験条件は:2mm間隔の40×40mmの碁盤目;荷重5N;硬化カーバイドチップ使用。
実験結果:
【0057】
20×20の引っ掻きパターンをポリイミド樹脂でコーティングされた銅(図1の写真の列)、ステンレス鋼(図2の写真の列)およびガラス試料(図3の写真の列)のそれぞれの上に描いた。ポリイミド樹脂コーティングの耐引っ掻き特性は、基材に対するポリイミド樹脂コーティングの付着性の直接的な指標である。図面の左から右に向かって示されているように、シランカップリング剤の水素結合力が増大するにつれて、ポリイミド樹脂コーティングとその基材との間の界面結合が増大し、ポリイミド樹脂フィルムの引っ掻き剥離がより少なくなる結果となった。
【0058】
この実験においてはガンマ-ウレイドプロピルトリメトキシシランを比較例として使用した。本願に示すように、上記に定義したシラン#2、#3および#5は明らかに、ガンマ-ウレイドプロピルトリメトキシシランおよび対照と比較して、ずっと良好な耐引っ掻き特性を示した。同様に、トリス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)イソシアヌレートは付着性を増大させるために多くの用途において使用されている別のシランであるが、しかしガラスが基材として使用された実験において、シラン#2、#3および#5は付着特性に関してトリス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)イソシアヌレートよりも良好な挙動を示した。
【0059】
本発明を所定の実施形態に関連して記載してきたが、本発明の範囲から逸脱することなしに、種々の変更を行ってよく、本発明の要素に対して均等物を置き換えてよいことが、当業者には理解される。加えて、本発明の本質的な範囲から逸脱することなしに、特定の状況または材料に適合するために、本発明の教示に対して多くの修正を行ってよい。したがって本発明は、本発明を実施するために考慮されたベストモードとして開示された特定の実施形態に限定されるのではなく、添付の特許請求の範囲内に包含されるすべての実施形態を含むものであることが意図されている。

図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2024-06-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正書】
【提出日】2024-06-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0058
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0058】
この実験においてはガンマ-ウレイドプロピルトリメトキシシランを比較例として使用した。本願に示すように、上記に定義したシラン#2、#3および#5は明らかに、ガンマ-ウレイドプロピルトリメトキシシランおよび対照と比較して、ずっと良好な耐引っ掻き特性を示した。同様に、トリス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)イソシアヌレートは付着性を増大させるために多くの用途において使用されている別のシランであるが、しかしガラスが基材として使用された実験において、シラン#2、#3および#5は付着特性に関してトリス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)イソシアヌレートよりも良好な挙動を示した。

【手続補正書】
【提出日】2024-06-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シランカップリング剤および樹脂を含む樹脂組成的に関する。この樹脂組成物は、種々の電子部品および用途に使用することができる。
【背景技術】
【0002】
樹脂を他の材料と共に使用する用途においては、製品の品質、性能、および長期信頼性を決定するについて、界面結合は非常に重要である。有機ポリマー/樹脂は通常、化学的性質の相違に基づいて、金属、ガラスおよびセラミックといった無機材料に対して、界面結合が弱い。
【0003】
伝統的に、有機樹脂と無機基材の間の界面結合を増大させるために、シランカップリング剤が使用されてきた。シランカップリング剤のシリル部分は無機基材上のヒドロキシル基と結合し、そしてシランカップリング剤の有機官能基は有機樹脂と結合する。
【0004】
それでもなお多くの用途において、既存のシランカップリング剤は、種々の産業上の要求にとって十分な、満足できる界面結合を提供するものではない。例えば、フレキシブル銅張ラミネートの用途においては、有機材料と銅の間の付着が弱いと、処理および適用に際して剥離が生じうる。フレキシブルディスプレイにおいては、有機フィルムとガラス基板の間の付着が弱いと、有機フィルムのガラス基板からの剥離を生ずる可能性があり、製造プロセスが中断される。フレキシブル電子デバイス、例えば折りたたみ式スマートフォンやロール式スマートフォンにおいては、有機ポリマーフィルムを可撓性(フレキシブル)画面カバーとして使用することができ、その上側にコーティングが塗布される。付着が弱いと、そうしたコーティングの有機ポリマーフィルムからの時期尚早な剥離を生ずる可能性があり、コーティングの耐久性に影響がある。折りたたみ式の電子デバイス構造においては、ディスプレイが折られる領域は、互いに対して動くように構成された部分に分割されており、ディスプレイが電子デバイスにおいて固定された位置に静止することを困難にする。電子デバイスが開いた位置と折りたたんだ位置の間を行き来する場合、ディスプレイが折られる領域は変形する可能性があり、平坦な表面を維持することができなくなる。
【0005】
かくして、上記したような用途において付着性を増大させるシランカップリング剤に対する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0006】
本願の発明者らは驚くべきことに、種々の基材と数多くの樹脂材料との間の界面結合を水素結合を介して改善するシランカップリング剤を見出した。理論に拘束されることを望むものではないが、本発明のシランカップリング剤は基材部分とシリル部分の間に水素結合をもたらすだけでなく、それに加えて本願で記載するシランカップリング剤のウレイドおよび芳香族/複素環部分が、多くの異なる樹脂に対する「配位された」水素結合を形成すると考えられる。本願において記載するシランカップリング剤は、種々の電子的用途に使用される樹脂と基材の間において界面結合を改善する。
【0007】
本願においては樹脂組成物が提供され、これは:
一般式(I)のシランカップリング剤:
【化1】

式中Xは14までの炭素原子を含む芳香族基、または14までのヘテロ原子を含む複素環基を表し、また式中の芳香族基または複素環基は任意選択的にそれぞれが1から4の炭素原子を含む1つまたはより多くのアルキル基、および/または少なくとも1つのヘテロ原子、例えば、O、N、Sで置換され;
Yは酸素または硫黄であり;
Zは1から20の炭素原子を含む2価の直鎖アルキレン基、または3から20の炭素原子を含む2価の分岐鎖アルキレン基であり、それぞれ任意選択的にヘテロ原子を含み;
下付き文字aは1、2または3であり;
およびRはそれぞれ水素原子または1から40の炭素原子を有する1価の有機基を表し;
は独立して1から12の炭素原子を含む直鎖アルキル基、3から12の炭素原子を含む分岐鎖アルキル基、5または6の炭素原子を含む環状アルキル基、2から12の炭素原子を含むアルケニル基、6の炭素原子を含むアリール基、または7から12の炭素原子を含むアラルキル基、2から12の炭素原子およびヒドロキシル基を含む直鎖アルキル基、3から6の炭素原子およびヒドロキシル基を含む分岐鎖アルキル基、少なくとも1つの酸素原子を含み構造:
-R-(OCHCH(OCHCH(CH))OR
を有するアルキル基からなる群より選択される1価の基、
および共有結合を介して一緒に結合されている2つのR基から形成された2価の基であり、
但し(i)2つのR基が一緒に結合された場合、aは2または3であり(ii)m+nの合計は1から20であり;
それぞれのRは独立して1から12の炭素原子を含む直鎖アルキル基、3から12の炭素原子を含む分岐鎖アルキル基、5または6の炭素原子を含む環状アルキル基、2から12の炭素原子を含むアルケニル基、6の炭素原子を含むアリール基、または7から12の炭素原子を含むアラルキル基からなる群より選択される1価の基であり;
は1から10の炭素原子を含む直鎖アルキレン基、3から10の炭素原子を含む分岐鎖アルキレン基、および5から10の炭素原子を含む環状アルキレン基からなる群より選択される2価の基であり;
は1から18の炭素原子を含む直鎖アルキル基、3から18の炭素原子を含む分岐鎖アルキル基、5から18の炭素原子を含む環状アルキル基、2から18の炭素原子を含むアルケニル基、6から18の炭素原子を含むアリール基、7から18の炭素原子を含むアラルキル基、および水素からなる群より選択される1価の基、またはRは1から10の炭素原子を含むアルキル基、5から10の炭素原子を含む環状アルキル基、およびフェニル基からなる群より選択される2価の基である;および
少なくとも1つの樹脂を含み、この樹脂はシランカップリング剤(i)のR、R、YおよびX基の1つまたはより多くと相互作用し、樹脂組成物の約10重量パーセントから約99.99重量パーセントの量で存在する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本願の明細書および特許請求の範囲において、以下の用語および表現は以下に示すように理解される。
【0009】
単数形「ある」、「1つの」および「その」は複数形を含んでおり、また特定の数値に対する参照は、文脈において特に断りがない限り、少なくともその特定の数値を含んでいる。
【0010】
本願において提示されるあらゆるすべての例示、または例示的な用語(例えば「のような」)の使用は、単に本発明をよりわかりやすく説明することを意図したものであり、特に断りがない限り本発明の範囲に対して制限を課するものではない。
【0011】
「含む」、「包含する」、「含有する」、「特徴とする」という用語、およびこれらの文法的に等価な表現は、包括的または非限定的な用語であって、付加的な記載されていない構成要素または方法的過程を排除するものではなく、またより限定的な用語である「からなる」および「から本質的になる」を含むものであることが理解される。
【0012】
本明細書におけるいかなる用語も、特許請求の範囲に記載されていない何らかの構成要素が本発明の実施に不可欠であることを示すものとして解釈されてはならない。
【0013】
さらに、構成的、組成的および/または機能的に関連する化合物、材料または物質の群に属するものとして本明細書に明示的または黙示的に開示され、および/または請求項において記載されたすべての化合物、材料または物質は、その群の個々の構成因子およびそれらのすべての組み合わせを含むことが理解される。
【0014】
実施例以外において、または特に断りがない限り、本明細書および特許請求の範囲に記載された材料の量、反応条件、時間の長さ、物質の定量化された特性およびその他を表現するすべての数値は、表現中に用語「約」が使用されているか否かを問わず、すべての場合において用語「約」によって修飾されているものとして理解される。
【0015】
本願における1つの実施形態においては、本願で記載した任意の数値範囲はその範囲内のすべての部分範囲、およびそうした範囲または部分範囲の種々の端点の任意の組み合わせを、それらが実施例または本明細書の他の部分で記載されているか否かを問わず含むことが理解される。
【0016】
本願においてはまた、任意の特定の属または種によって記載され、または本明細書の実施例の欄において詳述された本願発明の成分のいずれのものも、1つの実施形態においては、その成分に関して本明細書の他の部分に記載された範囲の任意の端点についてそれぞれ代替的な定義を規定するために使用することができ、したがって1つの非限定的な実施形態においては、そうした他の部分に記載された範囲の端点を置き換えることができることが理解される。
【0017】
本開示にしたがって1つまたはより多くの他の物質、構成要素、または成分と最初に接触される直前の時点において存在し、現場で形成され、ブレンドされ、または混合される物質、構成要素、または成分に対する言及が行われる。反応生成物、得られる混合物またはその他として特定される物質、構成要素または成分は、本開示にしたがい常識と関連技術分野の当業者(例えば化学技術者)の通常の知識を適用して行われた接触、現場形成、ブレンド、または混合操作の過程の間における化学反応または変性を通じて、独自性、特性、または特徴を獲得してよい。化学反応物質または出発材料の化学生成物または最終物質への変性は連続的に展開する過程であり、それが生ずる速度とは無関係である。したがって、そうした変性過程が進行するにつれて、出発物質と最終物質の混合物が存在してよく、さらには熱力学的寿命に応じて、当業者に知られた現在の分析技術により検出が容易または困難な中間種が存在してよい。
【0018】
本願の明細書または特許請求の範囲において化学名または化学式によって参照される反応物質および成分は、単数形または複数形のいずれで参照される場合でも、化学名または化学種によって参照される別の物質(例えば別の反応物質または溶媒)と接触するよりも前に存在しているものとして識別されてよい。得られる混合物、溶液、または反応媒体において生ずる予備的および/または遷移的な化学変化、変性、または反応が存在する場合には、中間種、マスターバッチその他として識別されてよく、また反応生成物または最終物質の有用性とは別個の有用性を有していてよい。特定された反応物質および/または成分を本開示にしたがって要求される条件の下で一緒に合わせることから、他の後続の変化、変性、または反応がもたらされてよい。こうした他の後続の変化、変性、または反応においては、一緒に合わせられる反応物質、成分または構成要素が、反応生成物または最終物質を特定または指定してよい。
【0019】
本願において使用される表現「シランカップリング剤」は、無機基材上のヒドロキシ基および樹脂の反応性部分の両方と相互作用性および/または反応性であることのできる、例えば有機樹脂の有機基と反応性である材料であると理解される。理論によって拘束されることを望むものではないが、本願に記載の有機シランカップリング剤の式(I)の-OR部分はそれぞれ、水と反応することによってシラノール基を生成する部分であり、そしてこのシラノール基が無機材料、例えば金属またはガラスのような無機基材と脱水縮合して、式:≡Si-OM(M:無機材料)の化学結合を形成する。
【0020】
本願において使用される表現「樹脂」は、硬化したポリマー材料だけでなく、ポリマー前駆体材料、例えば、ポリイミド前駆体を含むことができる。本願における樹脂は、有機樹脂および無機樹脂の両方を含んでいる。
【0021】
本願において使用される表現「複素環基」は、少なくとも2つの元素の原子の環であって、その1つが炭素であり、その他方がヘテロ原子、例えば、N、O、およびSである環であると理解される。
【0022】
本願において使用される表現「相互作用性である」本願に記載するシランカップリング剤の有機部分が本願に記載する樹脂と化学的に反応する能力を指すために用いられている。
【0023】
用語「電子デバイス」は、実装されたプログラムに従って特定の機能を奏するデバイス、例えば「スマートフォン」のような携帯電話、家電製品、電子スケジューラー、携帯式マルチメディアプレーヤー、移動通信端末、タブレットPC、ビデオ/サウンドデバイス、デスクトップPCまたはラップトップコンピュータ、自動車用ナビゲーションその他を意味していてよい。
シランカップリング剤(i)
【0024】
本願の実施形態において、上述した一般式(I)のシランカップリング剤は、Xが6の炭素原子を含む芳香族基、例えばフェニル基、または5までのヘテロ原子、好ましくは3ヘテロ原子、より好ましくは1または2のヘテロ原子を含み、例えばそれぞれがNである複素環基を表し、またここで複素環基は任意選択的に1から4の炭素原子をそれぞれに含む1つまたはより多くのアルキル基、好ましくはメチル基によって置換され、または代替的には1つの置換基としてメチル基を、そして別の置換基としてカルボニル酸素基を含み;
ここでYは好ましくは酸素であり;Zは好ましくは1から12の炭素原子、より好ましくは1から8の炭素原子、そして最も好ましくは1から4の炭素原子、または3の炭素原子を含む2価の直鎖アルキレン基、例えば(-CH-)
下付き文字aは好ましくは2または3、最も好ましくは3であり;
およびRはそれぞれ好ましくは水素原子を表し、または代替的には1から20の炭素原子、より好ましくは1から8の炭素原子、最も好ましくは1から4の炭素原子を有する1価の有機基であり、非限定的な例はメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基およびその他であり;
は好ましくは独立して、1から8の炭素原子、より好ましくは1から4の炭素原子を含む直鎖アルキル基または3から8の炭素原子、より好ましくは3から4の炭素原子を含む分岐鎖アルキル基、例えば非限定的な例はメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基およびその他、6の炭素原子を含む環状アルキル基、2から8の炭素原子、好ましくは2から4の炭素原子を含むアルケニル基、アリール基例えばフェニル基、7から10の炭素原子、好ましくは7から9の炭素原子を含むアラルキル基、2から8の炭素原子およびヒドロキシル基、好ましくは2から4の炭素原子およびヒドロキシル基を含む直鎖アルキル基、3または4の炭素原子およびヒドロキシル基を含む分岐鎖アルキル基、少なくとも1つの酸素原子を含み構造:
-R-(OCHCH(OCHCH(CH))OR
を有し、m+nの合計が1から12、好ましくは1から8、より好ましくは1から4であるアルキル基からなる群より選択される1価の基;
それぞれのRは独立して、1から8の炭素原子、好ましくは1から4の炭素原子を含む直鎖アルキル基、3から8の炭素原子、好ましくは3から4の炭素原子を含む分岐鎖アルキル基、6の炭素原子を含む環状アルキル基、2から8の炭素原子、より好ましくは2から6の炭素原子を含むアルケニル基、アリール基例えばフェニル基、または7から10の炭素原子、好ましくは7から9の炭素原子を含むアラルキル基からなる群より選択される1価の基であり;
は1から10の炭素原子を含む直鎖アルキレン基、3から10の炭素原子を含む分岐鎖アルキレン基、および5から10の炭素原子を含む環状アルキレン基からなる群より選択される2価の基であり;
は好ましくは、1から12の炭素原子、より好ましくは1から8の炭素原子、最も好ましくは1から4の炭素原子を含む直鎖アルキル基、3から12の炭素原子、より好ましくは3から8の炭素原子、そして最も好ましくは3から6の炭素原子を含む分岐鎖アルキル基、6から12の炭素原子、より好ましくは6から8の炭素原子を含む環状アルキル基、2から12の炭素原子、より好ましくは2から8の炭素原子を含むアルケニル基、6から12の炭素原子、より好ましくは6から8の炭素原子を含むアリール基、7から12の炭素原子、より好ましくは7から9の炭素原子を含むアラルキル基、および水素からなる群より選択される1価の基であり、またはRは1から8の炭素原子、より好ましくは1から4の炭素原子を含むアルキル基、6から8の炭素原子を含む環状アルキル基、およびフェニル基からなる群より選択される2価の基である。
【0025】
式(I)の実施形態において、RおよびRはそれぞれH、YはO、Zは2から6の炭素原子を含む2価の直鎖アルキレン基、下付き文字aは3、そしてRのそれぞれは1から3の炭素原子を含む直鎖アルキル基である。
【0026】
式(I)の別の実施態様において、Xはフェニル基、そしてRおよびRはそれぞれH、YはO、Zは2から6の炭素原子を含む2価の直鎖アルキレン基、下付き文字aは3、そしてR3のそれぞれは1から3の炭素原子を含む直鎖アルキル基である。
【0027】
式(I)の別の実施態様において、Xは1または2のN原子を含む複素環基、そしてRおよびRはそれぞれH、YはO、Zは2から6の炭素原子を含む2価の直鎖アルキレン基、下付き文字aは3、そしてR3のそれぞれは1から3の炭素原子を含む直鎖アルキル基である。
【0028】
式(I)のさらに別の実施態様において、Xは2つのN原子を含む複素環基、そしてこれはOヘテロ原子で置換されており、またRおよびRはそれぞれH、YはO、Zは2から6の炭素原子を含む2価の直鎖アルキレン基、下付き文字aは3、そしてR3のそれぞれは1から3の炭素原子を含む直鎖アルキル基である。
【0029】
式(I)の別のさらなる実施態様において、Xは2つのN原子を含む複素環基、そしてこれはカルボニル酸素の形のOヘテロ原子および1または2の炭素原子を含むアルキル基で置換されており、またRおよびRはそれぞれH、YはO、Zは2から6の炭素原子を含む2価の直鎖アルキレン基、下付き文字aは3、そしてR3のそれぞれは1から3の炭素原子を含む直鎖アルキル基である。
【0030】
ある実施形態において、本願に記載する一般式(I)のシランカップリング剤(i)は、以下に示す6つの構造(#1-#6)のいずれかを有することができる:
【化2】
【0031】
本願のある実施形態においては、シランカップリング剤(i)は樹脂組成物中に、樹脂(ii)の選択に基づく種々の量、および/または樹脂組成物の用途に基づく種々の量で存在することができ、そして量は技術分野における当業者によって決定される。しかしながら1つの実施形態において、シランカップリング剤(i)の量は樹脂(ii)の100質量部に対して約0.01から約40質量部、そしてより好ましくは約0.5から約10質量部であることができる。本願における1つの実施形態において、樹脂組成物は本願に記載する1つまたはより多くのシランカップリング剤(i)、すなわち2つまたはより多くの異なるシランカップリング剤(i)の混合物を含むことができる。
樹脂(ii)
【0032】
本願において記載するところでは、樹脂(ii)は任意の有機または無機ポリマーまたはポリマー前駆体であることができ、本願に記載のシランカップリング剤(i)と化学反応が可能な部分を含んでいる。
【0033】
本願のある実施形態においては、樹脂(ii)は、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリウレタン、シリル化ポリウレタン、ポリエーテル、シリル化ポリエーテル、ポリフェニレンエーテル、ビスマレイミド、ポリイソシアヌレート、ポリエチレンテレフタレート、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリフッ化ビニル、ポリアミド、ポリメチルペンテン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、エチレンクロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、可塑化ポリ塩化ビニル、ポリフェニレンサルファイド、スチレン-無水マレイン酸、変性ポリフェニレンオキシド、エチレン-プロピレンゴム、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、スチレン-ブタジエン-スチレン、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン、シリコーン、例えばポリメチルフェニルシロキサン、シリル化樹脂、例えばシリル化ポリウレタン樹脂、およびこれらの混合物からなる群より選択される。
【0034】
好ましくは、樹脂(ii)は、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリウレタン、ポリフェニレンエーテル、ビスマレイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され、そして最も好ましくはポリイミド、例えば従来のポリイミド、または無色のポリイミドである。
【0035】
樹脂組成物に用いられる樹脂(ii)の量は、具体的なポリマーおよび樹脂組成物の意図する用途に依存しており、そして技術分野における当業者によって決定されうる。しかしながら1つの非限定的な実施形態において、樹脂(ii)の量は約10重量パーセントから約99.99重量パーセント、または別の実施形態において約15重量パーセントから約99.99重量パーセント、好ましくは約50重量パーセントから99重量パーセント、より好ましくは約80重量パーセントから約99重量パーセント、そして最も好ましくは約90重量パーセントから約99重量パーセントであることができ、この重量パーセントは樹脂組成物の合計重量に基づく。
【0036】
別の非限定的な実施形態において、樹脂(ii)はポリイミドであり、そして本願の樹脂組成物は、ジアミンモノマーとジ無水物モノマーをNMP溶媒中で高粘度になるまで反応させて作成したポリイミド前駆体溶液を、シランカップリング剤と混合し、数時間(通常は2から12時間)撹拌することによって作成される。しかしながら、このプロセスは樹脂(ii)としてポリイミドに限定されたものではなく、技術分野における当業者によって理解されるように、プロセスは本願に記載する樹脂(ii)のいずれに対応するようにも修正することができる。1つの実施形態においては、本願に記載する樹脂組成物は、本願に記載のシランカップリング剤(i)および樹脂(ii)を接触させること、例えば混合することによって作成することができる。
補助的添加剤
【0037】
本発明の樹脂組成物は、上述した組成物の成分であるシランカップリング剤(i)および樹脂(ii)に加えて、任意の他の添加剤を含んでいてよいが、但しそれらは本発明の有利な効果を損なうことのない範囲内の量で使用され、またそうした量の範囲は技術分野における当業者によって理解される。例えば組成物は、酸化防止剤、光安定剤、界面活性剤、難燃剤、可塑剤、紫外線吸収剤、上述した有機樹脂(ii)以外の任意の他のポリマー化合物、硬化剤、硬化促進剤、無機フィラー、溶媒、酸化防止剤、顔料、染料およびその他の任意の1つまたはより多くを含んでいてよい。
【0038】
硬化剤の非限定的な1つの例はフェノール系硬化剤である。適切なフェノール系硬化剤は技術分野における当業者によって知られている。硬化剤の構造としては、2から10のOH基を有する多価アルコールが好ましい。
【0039】
硬化促進剤としての幾つかの非限定的な例には、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、および2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾールなどのイミダゾール;2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリエチレンジアミン、トリエタノールアミン、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7、およびトリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどの第3級アミン;ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィンなどの有機ホスフィン;テトラフェニルホスホニウム/テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウム/エチルトリフェニルボレートなどの4置換ホスホニウム/4置換ボレート;およびシュウ酸スズのような金属化合物が含まれる。硬化剤の量は、樹脂(ii)の100質量部に対して約0.01から約20.0質量部、より好ましくは約0.1から約5.0質量部の量であることができる。
【0040】
樹脂組成物はまた、無機フィラーを含むことができる。無機フィラーの例には:酸化チタン、アルミナ、溶融シリカ(溶融球状シリカ、溶融破砕シリカ)、および結晶シリカパウダーのような酸化物;タルク、ガラス、焼成クレイのような珪酸塩;窒化アルミニウム、窒化ホウ素、および窒化ケイ素のような窒化物;炭酸カルシウムおよび炭酸マグネシウムのような炭酸塩;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムおよび水酸化カルシウムのような水酸化物;硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウムなどの硫酸塩または亜硫酸塩が含まれる。これらの無機フィラーは単独で、または2種類またはより多くの種類の組み合わせで使用してよい。無機フィラーの平均粒径は特に限定されるものではないが、しかし好ましくは透過型電子顕微鏡法(TEM)によって求めて約0.01から約30μm、そしてより好ましくは約0.03から約14μmである。
【0041】
これらの中でも、溶融シリカおよび結晶シリカのようなシリカパウダーが好ましい。無機フィラーの含有量は樹脂組成物の固形分で好ましくは約14から約96質量%、より好ましくは約20から約96質量%、さらにより好ましくは約50から約95質量%、そして特に好ましくは約60から約93質量%である。固形分とは、有機溶媒以外の成分として定義される。
【0042】
本発明の樹脂組成物は溶媒、好ましくは有機溶媒を含んでいてよい。有機溶媒の例には:N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、メチルエチルケトン、N,N-ジメチルホルムアミド、クレゾール、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、N-メチル-2-ピロリドン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トルエン、およびキシレンが含まれ、特にメチルエチルケトン、シクロペンタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、およびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが好ましいが、しかしこれらに限定されるものではない。これらの有機溶媒は単独で、または2種類またはより多くの種類の組み合わせで使用してよい。樹脂組成物中の固形分濃度に基づく有機溶媒の適切な量は、好ましくは約40から約90質量%である。
【0043】
本発明の樹脂組成物は、難燃性を向上させるために難燃剤を含有していてよい。難燃剤としては、リン系の難燃剤を用いてよい。これらの例には、ホスファゼン化合物、リン酸エステル化合物、およびリン酸エステルアミド化合物が含まれる。難燃剤の含有量は、樹脂(ii)100質量部に対して好ましくは3から40質量部である。
【0044】
上記の他にも、多種多様な添加剤を適宜添加して、樹脂組成物の貯蔵安定性または作業性といった種々の性質を改良してよい。例えば、脂肪酸エステル、グリセリン酸エステル、ステアリン酸亜鉛、およびステアリン酸カルシウムのような内部離型剤、およびフェノール系、リン系、またはイオウ系の酸化防止剤を添加してよい。さらにまた組成物は、非限定的な例がカーボンブラックであるような顔料で着色してよい。
【0045】
本発明の1つの実施形態においては、シランカップリング剤(i)以外に何のフィラーや添加剤も樹脂(ii)へと取り込まれず、それによって透明度の高い積層物を生成することができる。
【0046】
この樹脂組成物は物品作成のために用いることができ、例えばその場合に物品は、樹脂フィルム、銅箔付樹脂フィルム、ラミネート、例えば、フレキシブル銅張ラミネート、プリプレグ、プリント基板、およびフレキシブル電子デバイスからなる群より選択される。ある実施形態において、ラミネートは、プラスチックフィルム、シリコンウェーハ、セラミック、有機材料、金属、例えば銅箔、およびガラスからなる群より選択される基材を含んでいる。ある実施形態において、ラミネートはフレキシブル銅張ラミネートである。フレキシブル電子デバイスはフレキシブルディスプレイであることができ、それは部分的または全体的に用いて折りたたみ式またはロール式のスマートフォンを作成することができる。
【0047】
別の実施形態においては、本発明の樹脂組成物からフィルム形状に作成される樹脂フィルムが提供される。本発明の樹脂フィルムは、樹脂組成物を技術分野における当業者に知られているように処理してフィルムとすることによって得られる。
【0048】
本発明の樹脂フィルムは、樹脂組成物から得られた樹脂フィルム上に保護フィルムが積層されたものであってよい。本発明の樹脂フィルムを製造するための方法の1つの非限定的な例においては、シランカップリング剤(i)および(ii)、並びに他の成分が混合されて樹脂組成物溶液が調製され、この樹脂組成物溶液がリバースロールコーターまたはコンマコーターにより、保護フィルム上に所望の厚さで塗布される。樹脂組成物溶液が塗布された保護フィルムはインラインドライヤーを通されて、約80から約160℃において約2から約20分間乾燥されて有機溶媒が除去され、その後ロールラミネーターを使用して圧縮および別の保護フィルムとの積層が行われて、樹脂フィルムが内部に形成された積層フィルムを得ることができる。
【0049】
本発明の樹脂組成物がフィルム形状に形成される場合、厚さに対する制限はないが、しかし厚さは好ましくは約2mmまたはより小さく、より好ましくは約50μmまたはより厚く、そして約1,200μmまたはより薄く、そしてさらに好ましくは約80から約850μmである。
【0050】
保護フィルムは、樹脂組成物から作成された樹脂フィルムの形状を損なうことなしに剥離可能である限りは特に限定されるものではないが、保護フィルムおよびウエーハ用の剥離フィルムとして機能し、また通常はポリエチレン(PE)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリメチルペンテン(TPX)フィルム、およびポリエステルフィルムといった離型処理を施されたプラスチックフィルムが使用される。さらにまた、剥離力は好ましくは約50から約300mN/分である。保護フィルムの厚さは好ましくは約25から約150μmであり、そしてより好ましくは約38から約125μmである。
【0051】
本発明の積層体(ラミネート)は、基材上に本発明の樹脂フィルムである硬化生成物を有する。1つの実施形態においては、本発明の積層体を製造するための非限定的な方法は、樹脂フィルムを基材上に接合して基材を成型する工程と、基材上で樹脂フィルムを加熱し硬化する工程とを有する方法である。別の非限定的な実施形態においては、積層体はポリイミドの金属張(メタルクラッド)ラミネートであり、ポリイミドの誘電層と少なくとも金属箔の導電層、例えば銅箔を含んでいる。これらの層は付着剤で、または付着剤なしで結合される。
【0052】
ポリイミド銅張ラミネートは本願の1つの実施形態においては、フレキシブル銅張ラミネート(FCCL)であることができる。
【0053】
また本願において提供されるのは、積層体、好ましくは銅張ラミネート、より好ましくはフレキシブル銅張ラミネートを製造するためのプロセスである。最初に、本発明の樹脂(ii)、例えばポリイミド前駆体が提供される。次いでシランカップリング剤(i)と樹脂(ii)、および他の任意選択的な成分が混合されて樹脂組成物が調製され、樹脂組成物溶液は銅箔基材上に塗布される。次いで、樹脂組成物はバッチ式または連続式に金属基材上に流延されて高温で焼成されて樹脂が硬化され、銅張ラミネートが得られる。一般に、焼成は約200℃から約450℃の温度である。銅箔は、箔の表面粗さが樹脂(ii)の透明度に対して有する影響が最小限(表面形状に起因する光散乱が最小)となるように選択される。通常、選択された銅箔は約0.7μmまたはそれ未満の表面粗さを有し、そうした銅箔は「平滑な銅箔」と称される。
【0054】
別の実施形態においては、本願に記載の樹脂組成物を含むフレキシブルディスプレイを製造するためのプロセスが提供される。1つの実施形態においては、この方法は樹脂組成物をガラス基材上に塗布すること;および、樹脂組成物を硬化してガラス基材上に樹脂層を形成することを含む。本開示の実施形態による電子デバイスでフレキシブルディスプレイを含んでいてよいものの例には、スマートフォン、タブレットパソコン(PC)、携帯電話、ビデオ電話、電子ブックリーダー、デスクトップPC、ラップトップコンピュータ、ノートパソコン、ワークステーション、サーバー、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、ポータブルマルチメディアプレーヤー(PMP)、MP3プレーヤー、モバイル医療機器、カメラ、またはウェアラブルデバイスの少なくとも1つが含まれる。
【0055】
実施例
試料の調製プロセス
ポリイミド前駆体溶液:15gのポリイミド前駆体固体が85gのN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に溶解される。
シラン溶液:0.075gのシランが5gのN-メチル-2-ピロリドンに溶解されてシラン溶液が作成される。対照試料はシランを含まない。
試験溶液:上記のシラン溶液がポリイミド前駆体溶液に添加されて試験溶液が調製される。
配合処方は以下の表に示されている:
【表1】

試験溶液コーティング:それぞれの基材は30ミルの厚さのポリイミド前駆体溶液で塗布された。
硬化プロファイル:塗布されたポリイミド基材は対流オーブン内で110℃において1時間にわたって乾燥され;次いで普通のオーブン内で100℃において2時間にわたり;200℃で1時間にわたり;250℃で1時間にわたり乾燥され;最後に室温まで冷却された。
基材:銅、ステンレス鋼、およびガラスを以下の例について基材として使用した。
付着特性:標準的なエリクセン社の430P試験機を用いてクロスカット試験を行って付着性を評価し、試験条件は:2mm間隔の40×40mmの碁盤目;荷重5N;硬化カーバイドチップ使用。
実験結果:
【0056】
20×20の引っ掻きパターンをポリイミド樹脂でコーティングされた銅(図1の写真の列)、ステンレス鋼(図2の写真の列)およびガラス試料(図3の写真の列)のそれぞれの上に描いた。ポリイミド樹脂コーティングの耐引っ掻き特性は、基材に対するポリイミド樹脂コーティングの付着性の直接的な指標である。図面の左から右に向かって示されているように、シランカップリング剤の水素結合力が増大するにつれて、ポリイミド樹脂コーティングとその基材との間の界面結合が増大し、ポリイミド樹脂フィルムの引っ掻き剥離がより少なくなる結果となった。
【0057】
この実験においてはガンマ-ウレイドプロピルトリメトキシシランを比較例として使用した。本願に示すように、上記に定義したシラン#2、#3および#5は明らかに、ガンマ-ウレイドプロピルトリメトキシシランおよび対照と比較して、ずっと良好な耐引っ掻き特性を示した。同様に、トリス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)イソシアヌレートは付着性を増大させるために多くの用途において使用されている別のシランであるが、しかしガラスが基材として使用された実験において、シラン#2、#3および#5は付着特性に関してトリス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)イソシアヌレートよりも良好な挙動を示した。


【0058】
本発明を所定の実施形態に関連して記載してきたが、本発明の範囲から逸脱することなしに、種々の変更を行ってよく、本発明の要素に対して均等物を置き換えてよいことが、当業者には理解される。加えて、本発明の本質的な範囲から逸脱することなしに、特定の状況または材料に適合するために、本発明の教示に対して多くの修正を行ってよい。したがって本発明は、本発明を実施するために考慮されたベストモードとして開示された特定の実施形態に限定されるのではなく、添付の特許請求の範囲内に包含されるすべての実施形態を含むものであることが意図されている。
【国際調査報告】