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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-27
(54)【発明の名称】四輪駆動車両用走行安定化システム
(51)【国際特許分類】
   B60K 17/35 20060101AFI20240820BHJP
【FI】
B60K17/35 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504470
(86)(22)【出願日】2022-06-27
(85)【翻訳文提出日】2024-02-28
(86)【国際出願番号】 KR2022009146
(87)【国際公開番号】W WO2023022357
(87)【国際公開日】2023-02-23
(31)【優先権主張番号】10-2021-0109797
(32)【優先日】2021-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0072889
(32)【優先日】2022-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524030536
【氏名又は名称】キム ヨハン
(74)【代理人】
【識別番号】110003801
【氏名又は名称】KEY弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】キム ヨハン
【テーマコード(参考)】
3D043
【Fターム(参考)】
3D043AA02
3D043AA03
3D043AB17
3D043EA01
3D043EA16
3D043EA42
3D043EA45
3D043EB03
3D043EB07
3D043EB12
3D043EE03
3D043EE07
3D043EE08
3D043EE12
3D043EF09
3D043EF13
3D043EF14
3D043EF27
(57)【要約】
四輪駆動車両用走行安定化システムが開示される。このシステムは、四輪駆動車両のフロント差動機またはリア差動機に連結された駆動軸、及び駆動軸に連結され、駆動軸の動力をホイール(wheel)へ伝達する被動軸を含む複数の車軸と、駆動軸と被動軸との連結を遮断するための車軸別遮断器と、駆動軸の駆動力を減衰させるための車軸別減衰器と、車両走行安定化が要求される場合、遮断器と減衰器のうちの一部を制御して車両走行を安定化させる制御部と、を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
四輪駆動車両のフロント差動機またはリア差動機に連結された駆動軸、及び駆動軸に連結され、駆動軸の動力をホイール(wheel)に伝達する被動軸を含む複数の車軸と、
駆動軸と被動軸との連結を遮断するための車軸別遮断器と、
駆動軸の駆動力を減衰させるための車軸別減衰器と、
車両走行安定化が要求される場合、遮断器と減衰器のうちの一部を制御して車両走行を安定化させる制御部と、を含む、四輪駆動車両用走行安定化システム。
【請求項2】
車軸別遮断器と減衰器とは一体に構成された、請求項1に記載の四輪駆動車両用走行安定化システム。
【請求項3】
制御部は、車両走行安定化が要求されるホイールスリップ(wheel slip)の発生時に、スリップホイール側の遮断器を制御して駆動軸と被動軸との連結を遮断させ、スリップホイール側の減衰器を制御して駆動軸の駆動力を減衰させることにより、スリップホイールと同一の差動機に連結された反対ホイールへ当該車軸を介して動力が伝達されるようにする、請求項1に記載の四輪駆動車両用走行安定化システム。
【請求項4】
前記制御部は、反対ホイールの回転速度が目標ホイールの回転速度と同一になるようにスリップホイール側の減衰器を制御する、請求項3に記載の四輪駆動車両用走行安定化システム。
【請求項5】
制御部は、反対ホイールの回転速度が目標ホイールの回転速度と同一になると、車両走行が安定化したと判断して、スリップホイール側の遮断器の制御によって駆動軸と被動軸とを再連結させる、請求項4に記載の四輪駆動車両用走行安定化システム。
【請求項6】
制御部は、スリップホイールの回転速度とスリップホイール側の駆動軸の回転速度が所定の誤差範囲から外れる場合、制動制御と減衰制御のうちの少なくとも一つを行って誤差範囲以内となるようにした後、駆動軸と被動軸とを再連結させる、請求項5に記載の四輪駆動車両用走行安定化システム。
【請求項7】
制御部は、車両の旋回走行中に車両走行安定化が要求されるタイトコーナーブレーキング(tight corner breaking)現象が感知される場合、旋回方向の内側ホイールのうちのいずれか一つの内側ホイール側の遮断器を制御して駆動軸と被動軸を遮断させ、内側ホイール側の減衰器を制御して駆動軸の駆動力を減衰させることにより、外側ホイールに当該車軸を介して動力が伝達されるようにする、請求項1に記載の四輪駆動車両用走行安定化システム。
【請求項8】
複数の車軸は、フロント差動機とリア差動機のうちのいずれか一つである同一差動機に連結された左側車軸と右側車軸のみである、請求項7に記載の四輪駆動車両用走行安定化システム。
【請求項9】
制御部は、タイトコーナーブレーキング現象防止のための制御を行った後、操舵ホイールが中心範囲内に復元されると、内側ホイール側の遮断器を制御して駆動軸と被動軸とを再連結させる、請求項7に記載の四輪駆動車両用走行安定化システム。
【請求項10】
制御部は、内側ホイールの回転速度と内側ホイール側の駆動軸の回転速度が所定の誤差範囲から外れる場合、制動制御と減衰制御のうちの少なくとも一つを行って誤差範囲以内となるようにした後、駆動軸と被動軸とを再連結させる、請求項9に記載の四輪駆動車両用走行安定化システム。
【請求項11】
四輪駆動車両の走行安定化要求有無を判断するステップと、
四輪駆動車両の走行安定化が要求されれば、フロント差動機またはリア差動機に連結された駆動軸、及び駆動軸に連結されて駆動軸の動力をホイール(wheel)に伝達する被動軸からなる複数の車軸のうちのいずれか一つの車軸の駆動軸と被動軸との連結を遮断制御するステップと、
連結遮断された駆動軸の駆動力を減衰制御するステップと、を含む、四輪駆動車両用走行安定化方法。
【請求項12】
遮断制御ステップは、車両走行安定化が要求されるホイールスリップ(wheel slip)の発生時に、スリップホイール側の駆動軸と被動軸との連結を遮断させ、
減衰制御ステップは、連結遮断された駆動軸の駆動力を減衰させてスリップホイールと同一の差動機に連結された反対ホイールへ当該車軸を介して動力が伝達されるようにする、請求項11に記載の四輪駆動車両用走行安定化方法。
【請求項13】
反対ホイールの回転速度が目標ホイールの回転速度と同一になると、車両走行が安定化したと判断してスリップホイール側の駆動軸と被動軸とを再連結させるが、スリップホイールの回転速度とスリップホイール側の駆動軸の回転速度が所定の誤差範囲から外れる場合、制動制御と減衰制御のうちの少なくとも一つを行って誤差範囲以内となるようにした後、駆動軸と被動軸とを再連結させるステップをさらに含む、請求項12に記載の四輪駆動車両用走行安定化方法。
【請求項14】
遮断制御ステップは、車両の旋回走行中に車両走行安定化が要求されるタイトコーナーブレーキング(tight corner breaking)現象が感知されると、旋回方向のいずれか一つの内側ホイール側の駆動軸と被動軸との連結を遮断させ、
減衰制御ステップは、連結遮断された駆動軸の駆動力を減衰させて外側ホイールへ当該車軸を介して動力が伝達されるようにしてタイトコーナーブレーキング現象を防止する、請求項11に記載の四輪駆動車両用走行安定化方法。
【請求項15】
前記減衰制御ステップは、外側ホイールがその外側ホイールの回転半径に合わせて旋回するように連結遮断された駆動軸の駆動力を減衰制御する、請求項14に記載の四輪駆動車両用走行安定化方法。
【請求項16】
前記減衰制御の後に操舵ホイールが中心範囲内に復元されると、内側ホイール側の駆動軸と被動軸とを再連結させるステップをさらに含む、請求項14に記載の四輪駆動車両用走行安定化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行安定化技術に係り、特に、四輪駆動車両の走行安定化技術に関する。
【背景技術】
【0002】
差動機(デファレンシャル)は、その両端にかかる抵抗に応じて回転数が変わるものであって、車両の旋回のための必須装置である。ところが、滑りやすい路面にホイールが接触して差動機の一方の抵抗が低くなるホイールスリップ(wheel slip)が発生すると、反対側へ動力が伝達されないため車両の駆動力が失われる。そして、四輪駆動車両の場合は、フロント車軸(front axle)とリア車軸(rear axle)のそれぞれに差動機が装着されるが、二輪駆動車両に比べてその症状が一層激しい。このような症状を解決するための方案としてトルクベクタリングがよく知られている。トルクベクタリングとは、差動機の両端にかかる抵抗を制御して出力回転数が変わるようにすることにより、車両の車体姿勢の制御を可能にしたことをいう。
【0003】
しかし、エンジンの動力が差動機を経て車軸を介してホイールまで伝達される動力伝達構造を有するので、エンジンの出力を下げるか或いは制動力で車両の姿勢を制御する従来の方式では限界があり、走行性能が低下する。従来の方式は、フロント車軸とリア車軸との間にさらに装着されるセンター差動機を設けたり、車体の制動力を利用したり、トルクベクタリングで制御したりしたが、エンジンの動力が差動機を経てホイールまで直結されており、動力を伝達しようとするエンジン及び動力伝達装置と制動装置が共に作動する構造上、走行性能の低下が不可避である。
【0004】
一方、四輪駆動車両は、四輪駆動状態で走行する場合、前輪と後輪の回転数が一定であるため、乾いた舗装路を走行したり走行時に急回転操作をしたりするときには、前輪の中心半径と後輪の中心半径との旋回半径差がタイヤ回転数差及び駆動軸回転差に転移され、前輪にはブレーキがかかる感じがし、後輪は空転する感じがする、いわゆるタイトコーナーブレーキング(tight corner braking)現象が発生して車両のコーナリング性能を低下させる。このようなタイトコーナーブレーキング現象は、駆動装置と前後差動装置などに深刻なダメージを与え得るものであり、耐久性を低下させる原因となり、旋回半径が小さいほどこの現象はさらに顕著に現れる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、走行性能の低下を防止しつつホイールスリップの制御を可能とする技術的方案を提供することを目的とする。
【0006】
また、本開示は、タイトコーナーブレーキング現象を解決することができる技術的方案を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様による四輪駆動車両用走行安定化システムは、四輪駆動車両のフロント差動機またはリア差動機に連結された駆動軸、及び駆動軸に連結され、駆動軸の動力をホイール(wheel)へ伝達する被動軸を含む複数の車軸と、駆動軸と被動軸との連結を遮断するための車軸別遮断器と、駆動軸の駆動力を減衰させるための車軸別減衰器と、車両走行安定化が要求される場合、遮断器と減衰器のうちの一部を制御して車両走行を安定化させる制御部と、を含むことができる。
【0008】
制御部は、車両走行安定化が要求されるホイールスリップ(wheel slip)の発生時に、スリップホイール側の遮断器を制御して駆動軸と被動軸との連結を遮断させ、スリップホイール側の減衰器を制御して駆動軸の駆動力を減衰させることにより、スリップホイールと同一の差動機に連結された反対ホイールへ当該車軸を介して動力が伝達されるようにすることができる。
【0009】
制御部は、車両の旋回走行中に車両走行安定化が要求されるタイトコーナーブレーキング(tight corner breaking)現象が感知される場合、旋回方向のリア内側ホイール側の遮断器を制御して駆動軸と被動軸を遮断させ、リア内側ホイール側の減衰器を制御して駆動軸の駆動力を減衰させることにより、リア外側ホイールへ当該車軸を介して動力が伝達されるようにしてタイトコーナーブレーキング現象を防止することができる。
【0010】
一方、一態様による四輪駆動車両用走行安定化方法は、四輪駆動車両の走行安定化要求有無を判断するステップと、四輪駆動車両の走行安定化が要求されれば、フロント差動機またはリア差動機に連結された駆動軸、及び駆動軸に連結されて駆動軸の動力をホイール(wheel)へ伝達する被動軸からなる複数の車軸のうちのいずれか一つの車軸の駆動軸と被動軸との連結を遮断制御するステップと、連結遮断された駆動軸の駆動力を減衰制御するステップと、を含むことができる。
【発明の効果】
【0011】
開示されたところによれば、遮断及び減衰の制御、そして回復後の再結合という制御によって車両走行安定化(車体の姿勢安定化)が可能となり、エンジン又はパワーパックの出力を低くしなくても制御が可能となる効果が創出される。特に、ホイールスリップやタイトコーナーブレーキング現象に対して効果的に走行安定化が達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態による四輪駆動車両用走行安定化のための構成配置を示す図である。
図2】一実施形態による走行安定化システムのブロック図である。
図3】一実施形態による走行安定化制御方法のフローチャートである。
図4】一実施形態による遮断/減衰器の斜視図である。
図5】一実施形態による遮断/減衰器の斜視図である。
図6】一実施形態による遮断/減衰器の側面図である。
図7】一実施形態による遮断/減衰器の断面図である。
図8】一実施形態による遮断/減衰器の分解図である
図9】一実施形態による遮断/減衰器に第1-1作動油が流入したときの作動例示図である。
図10】一実施形態による遮断/減衰器に第1-2作動油が流入したときの作動例示図である。
図11】一実施形態による遮断/減衰器に第2-1作動油が流入したときの作動例示図である。
図12】一実施形態による遮断/減衰器に第2-2作動油が流入したときの作動例示図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
前述した、そして追加的な本発明の様相は、添付図面を参照して説明される好適な実施形態によってさらに明白になるであろう。以下、本発明をこれらの実施形態によって通常の技術者が容易に理解し再現することができるように詳細に説明する。
【0014】
図1は、一実施形態による四輪駆動車両用走行安定化のための構成配置を概略的に示すものであり、図2は、一実施形態による走行安定化システムのブロック図である。フロント差動機1は、フロント左側車軸10とフロント右側車軸20を介してフロント左側ホイール(FLホイール)50及びフロント右側ホイール(FRホイール)60に連結され、リア差動機2は、リア左側車軸30とリア右側車軸40を介してリア左側ホイール(RLホイール)70及びリア右側ホイール(RRホイール)80に連結される。ここで、それぞれの車軸10、20、30、40は、駆動軸11、21、31、41と被動軸12、22、32、42からなるが、駆動軸11、21、31、41は、差動機1、2に連結されて回転駆動される軸であり、被動軸12、22、32、42は、駆動軸11、21、31、41に結合(連結)され、駆動軸11、21、31、41の駆動力をホイールへ伝達する軸である。
【0015】
駆動軸11、21、31、41と被動軸12、22、32、42は、制御部900の制御によって連結遮断(分離)されるか、或いは遮断後に再連結されることができ、このために、遮断器100、300、500、700が構成されることができる。そして、それぞれの車軸ごとに駆動軸11、21、31、41の回転速度を下げるための減衰器(差動減衰器)200、400、600、800も構成できる。さらに、図1及び図2には示されていないが、走行安定化システムには、車両の走行安定化が必要であるかを判断するのに用いられる情報を収集するためのセンサー(例えば、ABSホイール回転速度センサー、操舵角センサー、ヨーセンサー、駆動軸回転速度センサーなど)も構成できる。
【0016】
一方、図1において、それぞれの遮断器100、300、500、700と減衰器200、400、600、800は、別個に構成されたものとして示されているが、これは、配置位置を明確に示そうとしたもので、一体に構成されたものであってもよい。すなわち、遮断器100、300、500、700と減衰器200、400、600、800は、別個に構成された装置であってもよく、一体に構成された装置であってもよい。遮断器100、300、500、700と減衰器200、400、600、800とが一体に構成された場合には、これを遮断/減衰器と命名することができ、遮断/減衰器としては、噛み合いクラッチ方式、遊星歯車方式、及び電磁クラッチとリターダーを適用した方式が挙げられる。そして、図1において、左側ホイールと右側ホイールは、制御部900によってそれぞれ一つのグループに指定されて管理できる。すなわち、FLホイール50とRLホイール70が同じグループ(第1グループ)に属し、FRホイール60とRRホイール80が同じグループ(第2グループ)に属する。
【0017】
制御部900は、VDC(Vehicle Dynamic Control)、ESC(Electronic Stability Control)、ESP(Electronic Stability Program)などとして知られているシステムに構成されるコントローラであり得る。また、制御部900は、ホイール制動制御のためのシステムに構成されるコントローラも含むことができる。このような制御部900は、車両走行安定化が要求される場合、遮断器100、300、500、700と減衰器200、400、600、800のうちの一部を制御して車両走行を安定化させる。具体的に、駆動軸と被動軸との連結を遮断制御し、駆動軸の回転速度を減衰制御して車両走行を安定化させることができる。そして、車両走行安定化が要求される場合は、ホイールスリップ(wheel slip)やタイトコーナーブレーキング(tight corner breaking)であり得る。
【0018】
図3は、一実施形態による四輪駆動車両用走行安定化制御方法を示すフローチャートであって、ホイールスリップとタイトコーナーブレーキングを解消するための制御方法を示すものである。制御部900は、走行中の車両のホイールにスリップが発生したか否かを判断する(S100)。一実施形態において、制御部900は、それぞれのABSホイール速度センサーから回転速度値を受信し、同一グループに属するフロントホイールとリアホイールとの回転速度差が基準値以上であると確認される場合、回転速度の高いホイールにスリップが発生したと判断する。このとき、車両が旋回中であるか否かも考慮でき、旋回中の場合と旋回中でない場合の基準値は異なり得る。このような、ホイールにスリップが発生したか否かに対する判断方式は、一つの例に過ぎないものであり、これに限定されず、既に広く知られているところによって行われ得る。
【0019】
S100でホイールスリップが発生したと判断されれば、制御部900は、スリップが発生したホイール(スリップホイール)に連結された車軸の遮断器を制御してその車軸の駆動軸と被動軸との連結を遮断させる(S110)。例えば、FLホイール50にスリップが発生したと判断されれば、制御部900は、FL遮断器100を制御してFL車軸10の駆動軸11と被動軸12との連結を遮断させる。ところが、遮断のみ行われると、フロント差動機1の左側は、走行抵抗も消えてFLホイール50と分離されたまま内部でさらに速い速度で回転するようになり、FR車軸20には動力が伝達されなくなる。これを防止するために、制御部900は、FL減衰器200を制御してFL車軸10の駆動軸11の速度を減衰させることにより、FRホイール60へ動力が伝達されるようにする(S120)。すなわち、動力伝達が遮断されたFL側に正常走行時の抵抗である偽走行抵抗を作ることにより(差動減衰制御によって)、FRホイール60が正常速度で回転できるようにするのである。
【0020】
制御部900は、遮断制御と減衰制御によって車両の走行が安定化したか否かを判断する(S130)。すなわち、車体の姿勢が安定したかを判断するのである。一実施形態において、制御部900は、FRホイール60の回転速度が目標ホイールの回転速度と同一になれば、車両の走行が安定化したと判断する。ここで、目標ホイールとは、FRホイール60と同じグループに属する他のホイールをいうもので、本例では、RRホイール80が目標ホイールとなる。すなわち、目標ホイールは、固定されているのではなく、スリップホイールによって変わるもので、スリップホイールと同じ差動機に連結された反対ホイールと同じグループに属するホイールが目標ホイールとなるのである。
【0021】
S130で走行が安定化していないと判断されれば、制御部900は、FRホイール60の回転速度が目標ホイールの回転速度と同一になるようにFL減衰器200を再び制御する。すなわち、FL減衰器200の減衰力を補正してFRホイール60の回転速度を目標ホイールの回転速度に合わせるのである。制御部900は、これを繰り返して両ホイールの回転速度が同一になれば、車両走行が安定化したと判断する。一方、制御部900は、動力伝達の遮断されたFLホイール50に対するABS制動制御も行うことができるが、これは、S120で減衰器の制御と共に行われることができる。制動制御によってFLホイール50が滑ることなく操舵を可能にするためである。
【0022】
以上によれば、スリップホイール以外のホイールには動力が伝達され続け、フロント車軸とリア車軸との速度差が発生しないため、センター差動機なしでも静粛な運転が可能となる。また、動力の遮断されたホイールも制動制御され続けるので、車両の姿勢制御が円滑になる。
【0023】
S130で走行が安定化したと判断されれば、制御部900は、FL遮断器100を制御して、連結分離されているFL駆動軸11とFL被動軸12とを再連結させることにより、FLホイール50へ動力伝達が正常に行われるようにする(S320)。このとき、制御部900は、走行安定化がされたとして無条件にS320を行うのではなく、速度同期化が必要な場合には速度同期化を行う(S310)。これは、遮断器の両端の速度差が許容範囲を外れる場合には再連結が難しいためである。
【0024】
一実施形態において、制御部900は、FLホイール50の回転速度とFL駆動軸11の回転速度とを比較して、速度差が許容速度値から外れると、許容速度値以内となるように減衰制御及び/又は制動制御を行う。ここで、許容速度値は30RPMであってもよい。したがって、FLホイール50の回転速度とFL駆動軸11の回転速度との差が30RPM以内であれば、直ちにS320を行い、そうでなければ、S310を行った後にS320を行う。
【0025】
FLホイール50の回転速度がFL駆動軸11の回転速度より高いながら許容速度値から外れる場合、制御部900は、ABS制動制御及び/又は減衰制御を行うことができる。このとき、制動制御はFLホイール50を対象とし、減衰制御はFR減衰器400を対象とすることができる。FLホイール50の回転速度がFL駆動軸11の回転速度より低いながら許容速度値から外れる場合、制御部900は、減衰制御のみを行うことができる。このとき、減衰制御は、FL減衰器200を対象とすることができる。
【0026】
次に、タイトコーナーブレーキングに対する制御方法について説明する。制御部900は、タイトコーナーブレーキング現象を感知する(S200)。一実施形態において、制御部900は、操舵角センサーによって確認された操舵角が既設定の関心操舵角以上であり、且つ関心操舵角以上の状態が一定時間以上持続しながら車両の旋回速度が増加する場合、タイトコーナーブレーキングが発生したか或いは発生しうると判断する。ここで、関心操舵角は、最大操舵角、または最大操舵角に近接した角であり得る。ちなみに、図3において、S200はS100の後に行われることが示されているが、これに限定されず、S100とは無関係に独立して行われることができる。
【0027】
S200で「はい」と判断されれば(タイトコーナーブレーキング現象が感知されれば)、制御部900は、タイトコーナーブレーキング現象を予め防止または解消するために、旋回方向の内側リア遮断器(内側リアホイール側の遮断器)を制御して駆動軸と被動軸との連結を遮断させる(S210)。すなわち、左旋回の場合には、RLホイール70に連結されたRL遮断器500を制御してRL車軸30の駆動軸31と被動軸32との連結を遮断させ、右旋回の場合には、RRホイール80に連結されたRR遮断器700を制御してRR車軸40の駆動軸41と被動軸42との連結を遮断させるのである。
【0028】
遮断制御の後、制御部900は、内側リア減衰器を制御して外側リアホイールへ動力が伝達されるようにする(S220)。すなわち、左旋回の場合には、RL減衰器600を制御してRRホイール80へ動力が伝達されるようにし、右旋回の場合には、RR減衰器800を制御してRLホイール70へ動力が伝達されるようにするのである。このようにする理由は、上述したスリップホイールの場合と同様に遮断のみ行われると、外側リアホイールには動力が伝達されなくて外側ホイールが止まってしまうためである。
【0029】
次に、制御部900は、操舵角センサーによって確認された操舵角を介して操舵ホイールが中心範囲内に復元されたか否かを判断する(S230)。S230で操舵ホイールが中心範囲内に復元されたと判断されれば、制御部900は、当該遮断器を制御して駆動軸と被動軸とを再連結させる。すなわち、左旋回の後に操舵ホイールが中心範囲内に復元された場合には、RL遮断器500を制御してRL駆動軸31とRL被動軸32とを再連結させ、右旋回の後に操舵ホイールが中心範囲内に復元された場合には、RR遮断器700を制御してRR駆動軸41とRR被動軸42とを再連結させるのである。この時、制御部900は、操舵角が直進走行に近似した角度値となったとして、無条件に駆動軸と被動軸とを再連結させるのではなく、ホイールスリップの場合と同様に当該遮断器の両端の速度同期化が必要な場合には、速度同期化を行った後に再連結させる(S300)(S310)(S320)。
【0030】
上述したS220で、制御部900は、内側リア減衰器を制御して差動機の反対側ホイールの速度を変化させて三つのホイールをそれぞれの旋回半径に合う速度に制御することができる。ホイールスリップの場合と比較すると、上述したように、ホイールスリップ制御は、制御対象ホイールの回転速度を目標ホイールの回転速度と比較して同一となるように制御することであり、これに対し、タイトコーナーブレーキング制御は、遮断された内側ホイールの減衰器を作動させて差動機の反対側の外側ホイールが回転半径に合うように旋回するように速度を計算して制御することである。
【0031】
S220について左旋回の場合をもって具体的に説明する。一実施形態において、制御部900は、FLホイール50の回転速度とFRホイール60の回転速度とを平均した値に加重値を適用した値を目標回転値として決定し、外側リアホイールであるRRホイール80の回転速度がその決定された目標回転値に到達するようにRL減衰器600を制御する。ここで、目標回転値は、一度指定されれば固定されるのではなく、FLホイール50の回転速度値とFRホイール60の回転速度値の変化に合わせて可変する。すなわち、ホイール速度センサーから持続的に受信される回転速度値をもって目標回転値を更新しながらRL減衰器600の減衰力を補正するのである。
【0032】
そして、目標回転値を算出する際に適用される加重値は、フロントホイールとリアホイールとの旋回半径差があることを考慮したものであるが、旋回半径差のためにリアホイールの回転速度はフロントホイールの回転速度よりも速いので、これを考慮して適正加重値を反映して目標回転値を決定することができるようにしたのである。ここで、加重値は、操舵角によって異なることができ、操舵角別に加重値が予め設定されて適用されることができる。
【0033】
一方、上述した実施形態では、S210とS220で内側リア遮断器と内側リア減衰器を制御するものと説明したが、必ずしも内側リア車軸の遮断器と減衰器である必要はなく、S210とS220での制御対象は、内側フロント車軸の遮断器と減衰器であってもよい。すなわち、内側車軸の遮断器と減衰器であればよく、フロント車軸の遮断器と減衰器を対象にするか、それともリア車軸の遮断器と減衰器を対象にするかは単純選択事項であり得る。一実施形態において、前輪方式の四輪駆動の場合には、内側リア車軸の遮断器と減衰器を制御し、後輪方式の四輪駆動の場合には、内側フロント車軸の遮断器と減衰器を制御する。
【0034】
S210とS220で内側フロント車軸の遮断器と減衰器を制御する場合には、リアホイールの平均回転速度に加重値を適用した値を目標回転値として決定し、外側フロントホイールの回転速度が目標回転値に到達するように内側フロント車軸の減衰器を制御することができる。そして、遮断器と減衰器は、フロント車軸(FL車軸とFR車軸)とリア車軸(RL車軸とRR車軸)の両方に構成されず、フロント車軸又はリア車軸にのみ構成されてもよい。このようにフロント車軸又はリア車軸にのみ遮断器と減衰器が構成されても、タイトコーナーブレーキング現象防止のための上述した制御が可能である。
【0035】
以上によれば、タイトコーナーブレーキングの際には、一つの内側ホイールへの動力伝達は遮断され、残りのホイールはそれぞれの旋回半径に合うように回転することにより、タイトコーナーブレーキングを解消することができ、旋回走行が終了し次第に四つのホイールの全てに動力伝達が行われるようにすることにより、車両駆動が正常に行われることができる。また、フロント車軸又はリア車軸にのみ遮断器と減衰器が構成されても、当該車軸に連結されたホイールにスリップが発生する場合には、上述したところによってホイールスリップ防止が可能である。そして、遮断器と減衰器を適用していない車軸は、既存の制動力を用いた制御を行い、遮断器と減衰器を適用した車軸は、減衰制御によってホイールスリップ制御とトルクベクタリング制御を行うことができる。
【0036】
以下、遮断/減衰器について説明する。遮断/減衰器は、図4図8に示すように、ハウジング1000、入力軸2000、出力軸3000及びピストン4000を含む。このような遮断/減衰器は、車両を構成する差動機と車輪との間に設けられ、差動機から伝達された動力が車輪へ伝達されるようにするか、或いは差動機から伝達された動力にも拘らず車輪へ動力が伝達されないようにすることができ、差動機の少なくとも一端にかかる抵抗を制御することもできる。
【0037】
ハウジング1000は、中空の筒状に形成され、入口部1100と出口部1200とが対向するように形成される。一例として、横たわった円筒状をなすハウジング1000には、後方に向かって入口部1100が突設され、前方に向かって出口部1200が突設され得る。このようなハウジング1000は、その内部に備えられる構成の組み立てが行われるように、前方に向かって出口部1200が形成され且つ後面が開放された筒状の第1ハウジング1000aと、後方に向かって入口部1100が形成され且つ前面が開放された筒状の第2ハウジング1000bと、を含むように分離構成できる。
【0038】
入力軸2000は、上述した車軸の駆動軸を意味する。入力軸2000は、一端部がハウジング1000内に備えられるように入口部1100を貫通しながら入口部1100に回転可能に結合されることができ、外部から動力の伝達を受けて回転することができる。例えば、入力軸2000は、他端が差動機と連結されて差動機から動力の伝達を受けて回転することができる。
【0039】
出力軸3000は、上述した車軸の被動軸を意味する。出力軸3000は、一端部がハウジング1000内に備えられるように出口部1200を貫通しながら出口部1200に回転可能に結合されることができ、他端が車輪と連結されることができる。このような出力軸3000の一端部は、入力軸2000と一体に回転するピストン4000に噛み合って動力の伝達を受けることができる。一例として、出力軸3000の一端部は、図7及び図8に示すように、ピストン4000と対向する板状に形成されることができ、後方に向かって放射状に複数の第1噛み合い突起3100が突設されてピストン4000と噛み合うことができる。また、入力軸2000及び出力軸3000の安定的な回転のために、出力軸3000の一端部の回転中心には、ベアリングを介して入力軸2000が独立に回転するように結合されることができる。
【0040】
ピストン4000は、リング状に形成されて入力軸2000の一端部を取り囲むようにハウジング1000内に備えられることができ、入力軸2000に結合されて入力軸2000と一体に回転することができる。このようなピストン4000は、入力軸2000の一端部の長手方向に沿って前後方向に移動可能であり、前方に移動して出力軸3000の一端部と噛み合うことができる。一例として、入力軸2000の一端部の外周面には、長手方向に沿って放射状に結合溝が凹設され、ピストン4000の内周面には、結合溝に嵌め込まれる結合突片が放射状に突設され、結合突片が結合溝に沿って移動することにより、ピストン4000が入力軸2000の前後方向に移動するとともに、入力軸2000と一体に回転することができる。
【0041】
そして、ピストン4000には、図7及び図8に示すように、前方に向かって複数の第1噛み合い突起3100の間々に配置される第2噛み合い突起4100が放射状に突設される。すなわち、ピストン4000が前進して第1噛み合い突起3100と第2噛み合い突起4100とが噛み合うと、入力軸2000の回転数と同じ動力が出力軸3000へ伝達され、ピストン4000が後進して第1噛み合い突起3100と第2噛み合い突起4100との噛み合いが解除されると、出力軸3000への動力伝達が遮断され、入力軸2000が回転しても出力軸3000が回転しなくなる。
【0042】
図7及び図8に示すように、遮断/減衰器は、ピストン4000がハウジング1000内で前後方向に移動する経路を提供するシリンダ8000をさらに含むことができ、シリンダ8000は、ピストン4000と共に回転が行われるようにハウジング1000内に備えられることができる。一例として、ハウジング1000の内周面に固定されるベアリングの内側にシリンダ8000が回転可能に備えられることができ、その内側に前後方向に移動するピストン4000が備えられることができる。このとき、ピストン4000は、周りに沿ってリップシール4200が備えられ、リップシール4200によってシリンダ8000がピストン4000と共に回転するようにすることができる。このようにピストン4000とシリンダ8000が共に回転することにより、摩擦によるダメージが防止されて耐久性が向上しうる。
【0043】
一実施形態において、出力軸3000とピストン4000との噛み合いが行われるようにするか、或いは出力軸3000とピストン4000との噛み合いが解除されるようにする際に、油圧が利用される。このために、ハウジング1000は、図7に示すように、ピストン4000を基準として、前方側に形成された第1制御空間1300を含むことができ、第1制御空間1300は、ピストン4000を始めとした他の構成によってピストン4000の後方側と空間的に分離されることが好ましい。また、ハウジング1000は、第1制御空間1300と外部とが連通するように第1制御ホール1310が貫設されることができ、第1制御ホール1310を介して作動油が流出入することができる。
【0044】
一例として、ピストン4000が前進して出力軸3000に噛み合った状態で、第1制御ホール1310を介して、第1-1設定圧を有する作動油が第1制御空間1300に流入すると、図9に示すようにピストン4000が後方に移動して出力軸3000との噛み合いが解除され、これにより入力軸2000と出力軸3000間の動力伝達が遮断される。これとは逆に、ピストン4000が後進して出力軸3000との噛み合いが解除された状態で、第1制御ホール1310を介して流入した第1-1設定圧を有する作動油を外部に流出させれば、ピストン4000が前方に移動して出力軸3000と噛み合うようになり、これにより入力軸2000と出力軸3000間の動力伝達が行われる。
【0045】
他の一例として、第1制御ホール1310を介して、第1-1設定圧よりも高い第1-2設定圧を有する作動油が流出入することができ、このとき、遮断/減衰器は、ピストン4000を基準として、後方側で入力軸2000とハウジング1000との間に備えられる減速モジュールをさらに含むことができる。減速モジュールは、第1-2設定圧を有する作動油が第1制御空間1300に流入すれば作動して、入力軸2000と出力軸3000間の動力伝達が遮断された状態で、入力軸2000の回転を減少させることができる。このような減速モジュールは、一例として、図7及び図8に示すように、弾性部材5000、圧力板6000及び多板クラッチ7000を含むことができる。
【0046】
弾性部材5000は、入力軸2000を取り囲みながらピストン4000の隣接した後方に配置されることができ、シリンダ8000の内側に備えられることができる。弾性部材5000は、ピストン4000と圧力板6000との間で前後方向に作用する力を弾性的に支持する役割を果たす。一例として、第1-1設定圧を有する作動油が第1制御空間1300に流入するとき、ピストン4000が出力軸3000との噛み合いが解除されるように後方に移動した状態で、弾性部材5000は、圧力板6000が後方に押されないように弾性的に支持することができる。これに対し、図10に示すように、第1-1設定圧よりも高いながら弾性部材5000の弾性力より大きい第1-2設定圧を有する作動油が第1制御空間1300に流入すると、弾性部材5000は圧力板6000を後方に押す。
【0047】
このような弾性部材5000は、一例として、図7及び図8に示すように、複数の皿ばねが対称となるように前後に配置されることができる。具体的に、二つの皿ばねが、外側端が隣接しながら内側端が離隔するように配置されることができる。
【0048】
圧力板6000は、中央に貫通孔が設けられた円板状からなり、入力軸2000を取り囲みながら弾性部材5000の隣接した後方に配置されることができる。このような圧力板6000は、ピストン4000との間に備えられた弾性部材5000の弾性力が一定の範囲内で作用できるようにする役割を果たすとともに、後方へ押されることが発生するときに多板クラッチ7000の空隙をなくしながら多板クラッチ7000との摩擦が発生して入力軸2000の回転速度を低下させる役割を果たすことができる。したがって、圧力板6000は、図9に示すように、第1-1設定圧を有する作動油が第1制御空間1300に流入するときには、多板クラッチ7000と多少離隔した状態で弾性部材5000を支持し、図10に示すように、第1-2設定圧を有する作動油が第1制御空間1300に流入するときには、多板クラッチ7000と当接するように移動が行われる。
【0049】
多板クラッチ7000は、中央に貫通孔が設けられた円板状からなり、入力軸2000を取り囲みながら圧力板6000の隣接した後方に配置されることができ、駆動ディスク7100および被動ディスク7200を含むことができる。図7及び図8に示すように、駆動ディスク7100は、内周縁に一定間隔でギア歯が加工されて入力軸2000に結合されて入力軸2000と一体に回転することができ、被動ディスク7200は、外周縁に一定間隔でギア歯が加工されてハウジング1000に固定されることができる。多板クラッチ7000は、前述した駆動ディスク7100および被動ディスク7200が前後方向に複数対繰り返し設置され、互いに多少離隔して空隙が生じるように設置される。したがって、圧力板6000が後方に押されると、圧力板6000と多板クラッチ7000との摩擦が生じるのはもとより、入力軸2000と一体に回転する駆動ディスク7100とハウジング1000に固定された被動ディスク7200との摩擦が生じるので、入力軸2000の回転が減少する。
【0050】
すなわち、第1制御空間1300に第1-2設定圧を有する作動油が流入すると、図10に示すように、ピストン4000が後方に移動することにより、弾性部材5000が圧力板6000及び多板クラッチ7000を加圧し、圧力板6000と多板クラッチ7000との摩擦、及び多板クラッチ7000自体の摩擦により、入力軸2000の回転が減少する。
【0051】
一方、ハウジング1000は、図7に示すように、ピストン4000と圧力板6000との間に形成され、弾性部材5000が備えられる第2制御空間1400を含むことができ、第2制御空間1400は、第1制御空間1300と空間的に分離されることが好ましい。また、ハウジング1000は、第2制御空間1400と外部とが連通するように第2制御ホール1410が貫設されることができ、第2制御ホール1410を介して作動油が流出入することができる。
【0052】
一例として、ピストン4000と出力軸3000との噛み合いが解除された状態で、第2制御ホール1410を介して、第2-1設定圧を有する作動油が第2制御空間1400に流入すると、図8に示すように、ピストン4000が前方に移動して出力軸3000と噛み合うようになり、これにより、入力軸2000と出力軸3000との間の動力伝達が行われる。通常、ピストン4000は、弾性部材5000の弾性力により出力軸3000と噛み合った状態を維持するので、第2-1設定圧を有する作動油を用いた制御は、第1-1設定圧を有する作動油により後方に移動したピストン4000を前方へより迅速に移動させようとするときに有用であり、これにより入力軸2000と出力軸3000との間で遮断された動力が迅速に伝達されることができる。
【0053】
他の一例として、第2制御ホール1410を介して、第2-1設定圧よりも高い第2-2設定圧を有する作動油が流出入することができ、圧力板6000は、第2-2設定圧を有する作動油が第2制御空間1400に流入すると、図9に示すように、多板クラッチ7000を加圧して入力軸2000の回転を減少させることができる。すなわち、出力軸3000とピストン4000とが噛み合って動力伝達が行われる状態で、第2-2設定圧を有する作動油の流入によって入力軸2000及び出力軸3000の回転速度を減少させることができる。
【0054】
これまで、本発明についてその好適な実施形態を中心に説明した。本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明が本発明の本質的な特性から外れることなく変形形態で実現できることを理解することができるであろう。よって、開示された実施形態は、限定的な観点ではなく、説明的な観点から考慮されるべきである。本発明の範囲は、前述した説明ではなく、請求の範囲に示されており、それと同等の範囲内にある全ての相違点は、本発明に含まれるものと解釈されるべきである。
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【国際調査報告】