(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-27
(54)【発明の名称】クロマトグラフィ曲線下面積を介したプール回収基準に対する実時間ピーク積分
(51)【国際特許分類】
G01N 30/86 20060101AFI20240820BHJP
G06F 9/445 20180101ALI20240820BHJP
【FI】
G01N30/86
G06F9/445
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504510
(86)(22)【出願日】2022-07-15
(85)【翻訳文提出日】2024-02-08
(86)【国際出願番号】 US2022037239
(87)【国際公開番号】W WO2023009328
(87)【国際公開日】2023-02-02
(32)【優先日】2021-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】500049716
【氏名又は名称】アムジエン・インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジン,エリック・イー
(72)【発明者】
【氏名】ベーレ,ダイアナ
(72)【発明者】
【氏名】マリー,キャシディー
(72)【発明者】
【氏名】ハン,シュエジュン
(72)【発明者】
【氏名】キタイェン,カイリー・セリーヌ
【テーマコード(参考)】
5B376
【Fターム(参考)】
5B376AE44
(57)【要約】
溶離生成物収率改善システムは、プロセッサと、推定モデルと、プロセッサにより実行されたならば、初期化データを受信し、遠隔処理/自動システムへの通信リンクをインスタンス化し、回収基準を決定し、回収を開始し、データ値を読み出し、推定モデルを介して面積比を計算し、回収を停止すべく構成された命令を含む溶離コントローラアプリケーションとを含む。溶離収率及び純度を向上させるコンピュータ実装された方法は、初期化データを受信することと、遠隔処理/自動システムへの通信リンクをインスタンス化することと、回収基準を決定することと、回収を開始することと、データ値を読み出すことと、面積比を計算することと、回収を中止することを含む。非一時的コンピュータ可読媒体は、実行されたならば、コンピュータに、初期化データを受信させ、遠隔処理/自動システムへの通信リンクをインスタンス化させ、回収基準を決定させ、回収を開始させ、データ値を読み出させ、推定モデルを介して面積比を計算させ、回収を中止させるプログラム命令を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不純物を回避しながら溶離生成物回収の一貫性及び収率を向上させるべくプロセス及び自動システムの制御を向上させるコンピューティングシステムであって、
1つ以上のプロセッサと、
前記1つ以上のプロセッサにより実行されるべく構成されたコンピューティング命令を含む溶離回収コントローラアプリケーションと、
前記溶離回収コントローラアプリケーションにより電子的にアクセス可能であって、前記溶離回収コントローラアプリケーションから受信した実時間プロセスデータを解析して1つ以上の曲線下面積回収基準を推定すべく構成されたピーク面積推定モデルと
を含み、
前記溶離回収コントローラアプリケーションに含まれる前記命令が、前記1つ以上のプロセッサにより実行されたならば、
1つ以上の溶離生成物に対応するカラム負荷質量及び初期回収比率を含む初期化データを受信し、
プロセス制御又は自動システムへの通信リンクをインスタンス化し、
前記1つ以上の溶離生成物に対応する推定全ピーク面積及び面積回収基準を決定し、
前記通信リンクを介して、前記プロセス制御又は自動システムに前記1つ以上の溶離生成物の回収を開始させ、
前記通信リンクを介して、前記プロセス制御又は自動システムから1つ以上のデータ値を読み出し、
前記1つ以上のデータ値を解析する前記ピーク面積推定モデルを介して、前記回収基準に対する、前記1つ以上の溶離生成物の回収量に対応する回収された曲線下面積の比率を計算し、
回収基準に対する、前記回収された曲線下面積の比率に基づいて、前記通信リンクを介して、前記プロセス制御又は自動システムに前記1つ以上の溶離生成物の回収を中止させるべく構成される、
コンピューティングシステム。
【請求項2】
前記溶離回収コントローラアプリケーションに含まれる前記命令が、前記1つ以上のプロセッサにより実行されたならば、
前記通信リンクを介して、前記プロセス制御又は自動システムの制御を獲得し、
前記通信リンクを介して、前記プロセス制御又は自動システムの制御を解除し、
前記通信リンクを介して、前記プロセス制御又は自動システムからの前記1つ以上のデータ値を構文解析して各々のフォーマットされたデータ値に変換させ、
前記通信リンクを介して、前記プロセス制御又は自動システムの出口弁を切り替え、
前記通信リンクを介して、前記プロセス制御又は自動システムの出口弁位置を確認し、
前記通信リンクを介して、前記プロセス制御又は自動システムの入口弁を切り替え、
前記通信リンクを介して、前記プロセス制御又は自動システムの入口弁位置を確認し、又は
前記通信リンクを介して、通信リンクを破棄するように更に構成される、
請求項1に記載のコンピューティングシステム。
【請求項3】
前記通信リンクがオープンプラットフォーム通信(OPC)通信リンクである、請求項1又は2に記載のコンピューティングシステム。
【請求項4】
前記溶離回収コントローラアプリケーションに含まれる前記命令が、前記1つ以上のプロセッサにより実行されたならば、
前記1つ以上の溶離生成物に固有の検量線の線形回帰を用いて、前記1つ以上の溶離生成物に対応する前記推定全ピーク面積及び前記面積回収基準を決定すべく更に構成される、
請求項1~3のいずれか1項に記載のコンピューティングシステム。
【請求項5】
前記プロセス制御又は自動システムから読み出された前記1つ以上のデータ値が、(i)紫外線吸光度、及び(ii)累積体積の一方又は両方を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のコンピューティングシステム。
【請求項6】
前記プロセス制御又は自動システムが、(i)AKTA pureマイクロシステム、又は(ii)Emerson DeltaV自動システムの少なくとも一方である、請求項1~5のいずれか1項に記載のコンピューティングシステム。
【請求項7】
前記溶離回収コントローラアプリケーションに含まれる前記命令が、前記1つ以上のプロセッサにより実行されたならば、
前記1つ以上の溶離生成物の回収の可視化をユーザー装置のグラフィカルユーザーインターフェースに表示させるべく更に構成され、前記可視化が回収開始百分率の表示及び回収終了百分率の表示を含む、
請求項1~6のいずれか1項に記載のコンピューティングシステム。
【請求項8】
不純物を回避しながら溶離生成物回収の一貫性及び収率を向上させるべくプロセス及び自動システムの制御を向上させる、コンピュータ実装された方法であって、
1つ以上のプロセッサを介して、1つ以上の溶離生成物に対応するカラム負荷質量及び初期回収比率を含む初期化データを受信することと、
前記1つ以上のプロセッサを介して、プロセス制御又は自動システムへの通信リンクをインスタンス化することと、
前記1つ以上のプロセッサを介して、前記1つ以上の溶離生成物に対応する推定全ピーク面積及び面積回収基準を決定することと、
前記通信リンクを介して、前記プロセス制御又は自動システムに前記1つ以上の溶離生成物の回収を開始させることと、
前記通信リンクを介して、前記プロセス制御又は自動システムから1つ以上のデータ値を読み出すことと、
前記1つ以上のデータ値を解析するピーク面積推定モデルから、前記回収基準に対する、前記1つ以上の溶離生成物の回収量に対応する回収された曲線下面積の比率を受信することと、
回収基準に対する、前記回収された曲線下面積の比率に基づいて、前記通信リンクを介して、前記プロセス制御又は自動システムに前記1つ以上の溶離生成物の回収を中止させることを含む方法。
【請求項9】
前記通信リンクを介して、前記プロセス制御又は自動システムの制御を獲得することと、
前記通信リンクを介して、前記プロセス制御又は自動システムの制御を解除することと、
前記通信リンクを介して、前記プロセス制御又は自動システムからの前記1つ以上のデータ値を構文解析させて各々のフォーマットされたデータ値に変換することと、
前記通信リンクを介して、前記プロセス制御又は自動システムの出口弁を切り替えることと、
前記通信リンクを介して、前記プロセス制御又は自動システムの出口弁位置を確認することと、
前記通信リンクを介して、前記プロセス制御又は自動システムの入口弁を切り替えることと、
前記通信リンクを介して、前記プロセス制御又は自動システムの入口弁位置を確認することと、又は
前記通信リンクを介して、前記通信リンクを破棄することと
を更に含む、請求項8に記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項10】
前記通信リンクがオープンプラットフォーム通信(OPC)通信リンクである請求項8又は9に記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項11】
前記1つ以上の溶離生成物に固有の検量線の線形回帰を用いて、前記1つ以上の溶離生成物に対応する前記推定全ピーク面積及び前記面積回収基準を決定することを更に含む、請求項8~10のいずれか1項に記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項12】
前記プロセス制御又は自動システムから読み出された1つ以上のデータ値が、(i)紫外線吸光度、及び(ii)累積体積の一方又は両方を含む、請求項8~11のいずれか1項に記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項13】
前記プロセス制御又は自動システムが、(i)AKTA pureマイクロシステム、又は(ii)Emerson DeltaV自動システムの少なくとも一方である、請求項8~12のいずれか1項に記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項14】
前記1つ以上の溶離生成物の回収の可視化を、ユーザー装置のグラフィカルユーザーインターフェースに表示させることを更に含み、前記可視化が前記回収開始百分率の表示及び前記回収終了百分率の表示を含む、請求項8~13のいずれか1項に記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項15】
実行されたならば、コンピュータに、
1つ以上の溶離生成物に対応するカラム負荷質量及び初期回収比率を含む初期化データを受信することと、
プロセス制御又は自動システムへの通信リンクをインスタンス化することと、
前記1つ以上の溶離生成物に対応する推定全ピーク面積及び面積回収基準を決定することと、
前記通信リンクを介して、前記プロセス制御又は自動システムに前記1つ以上の溶離生成物の回収を開始させることと、
前記通信リンクを介して、前記プロセス制御又は自動システムから1つ以上のデータ値を読み出させることと、
前記1つ以上のデータ値を解析するピーク面積推定モデルを介して、回収基準に対する、前記1つ以上の溶離生成物の回収量に対応する回収された曲線下面積の比率を計算することと、
回収基準に対する、前記回収された曲線下面積の比率に基づいて、前記通信リンクを介して、前記プロセス制御又は自動システムに前記1つ以上の溶離生成物の回収を中止させることと
を行わせるプログラム命令を含む、非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項16】
実行されたならば、コンピュータに、
前記通信リンクを介して、前記プロセス制御又は自動システムの制御を獲得することと、
前記通信リンクを介して、前記プロセス制御又は自動システムの制御を解除することと、
前記通信リンクを介して、前記プロセス制御又は自動システムからの前記1つ以上のデータ値を構文解析して各々のフォーマットされたデータ値に変換することと、
前記通信リンクを介して、前記プロセス制御又は自動システムの出口弁を切り替えることと、
前記通信リンクを介して、前記プロセス制御又は自動システムの出口弁位置を確認することと、
前記通信リンクを介して、前記プロセス制御又は自動システムの入口弁を切り替えることと、
前記通信リンクを介して、前記プロセス制御又は自動システムの入口弁位置を確認することと、又は
前記通信リンクを介して、通信リンクを破棄することと
を行わせるプログラム命令を更に含む、
請求項15に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項17】
前記通信リンクがオープンプラットフォーム通信(OPC)通信リンクである、請求項15又は16に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項18】
実行されたならば、コンピュータに、
前記1つ以上の溶離生成物に固有の検量線の線形回帰を用いて、前記1つ以上の溶離生成物に対応する推定全ピーク面積及び面積回収基準を決定させる
プログラム命令を更に含む、請求項15~17のいずれか1項に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項19】
前記プロセス制御又は自動システムから読み出された1つ以上のデータ値が、(i)紫外線吸光度、及び(ii)累積体積の一方又は両方を含む、請求項15~18のいずれか1項に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項20】
前記プロセス制御又は自動システムが、(i)AKTA pureマイクロシステム、又は(ii)Emerson DeltaV自動システムのうちの少なくとも一方である、請求項15~19のいずれか1項に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年7月27日出願の米国仮特許出願第63/226,149号「Real Time Peak Integration for Pool Collection Criteria via Chromatographic Area Under the Curve」の優先権を主張するものであり、その開示内容全体は引用により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0002】
本開示は一般に、クロマトグラフィ曲線下面積を介したプール回収基準に対する実時間ピーク積分の分野を対象とし、より具体的には、同時に所望の生成物を取得しながら生成物関連不純物を低減すべく回収点を一貫的に決定することにより勾配溶離を改善する方法及びシステムを対象とする。
【背景技術】
【0003】
クロマトグラフィ溶離処理及びプロシージャに依存する従来の溶離技術は、所望の生成物回収の最適化及び不純物回避の両面で一貫性を欠く恐れがある。細胞培養中に発現される組換えタンパク質と、要求される目標とする生成物品質との間で生成物の品質に大きなギャップが存在する。このギャップは、生成物品質に悪影響を及ぼす生成物関連不純物の存在に起因する場合がある。実際の生成物品質と要求される生成物品質のギャップは一連の問題につながる。例えば、生成物関連不純物は、精製された溶離生成物(例:医薬品原薬)の一貫性を阻害して生成物の品質要件を満たさない生成物が得られる恐れがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
生成物関連不純物は、1つ以上の注目生成物(例:溶離プロセス中に回収された1つ以上のタンパク質)の多様体又は類似体を不注意又は不可避に回収したことに起因する場合がある。例えば、生成物関連不純物には、高分子量多様体、低分子量多様体、タンパク質凝集体、翻訳後修飾されたタンパク質等が含まれる。そのような不純物は、所望の生成物と類似している場合があり、従って、所望の生成物と合わせてクロマトグラフィ媒体から容易に(例:所望の生成物の溶離の直前又は直後)溶離する恐れがある。
【0005】
生成物関連不純物が所望の生成物と混合された場合、回収された生成物の態様が悪影響を受ける。そのような負の結果は、生成物の品質、生成物の力価、生成物の活性、生成物の純度等に影響を及ぼす。そのような不純物はその後で、完全に減少させるか又は無視できるレベルまで減少させる必要あり、さもなければ生成物が傷んで使用不能(例:医薬品として)になる恐れがある。従って、生成物の回収を最大化する、及び/又は不純物の混入を最小化する現行技術の能力不足は一般に、不適切な生成物回収プロセスを繰り返すか又は修復することへの資本及び人的資源の浪費に加え、溶離媒体装置の非効率的な使用を含む問題の原因となっている。
【0006】
既存の戦略では、一貫した生成物回収及び不純物除去の両方に対処できない。例えば、陰イオン交換クロマトグラフィ精製戦略は不純物除去を改善する一方で、溶離プロセス実行中の所望の生成物の回収が一貫性を欠くことに起因して反復可能な結果が得られない恐れがある。従って、一貫して不純物を回避しながら所望の生成物を効率的に取得するプロセスを生成する回収点を一貫して決定する改良された技術が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様において、不純物を回避しながら溶離生成物回収の一貫性及び収率を向上させるべくプロセス及び自動システムの制御を向上させるコンピューティングシステムは、1つ以上のプロセッサと、1つ以上のプロセッサにより実行されるべく構成されたコンピューティング命令を含む溶離回収コントローラアプリケーションと、溶離回収コントローラアプリケーションにより電子的にアクセス可能であって、溶離回収コントローラアプリケーションから受信した実時間プロセスデータを解析して1つ以上の曲線下面積回収基準を推定すべく構成されたピーク面積推定モデルとを含む。溶離回収コントローラアプリケーションに含まれる命令は、1つ以上のプロセッサにより実行されたならば、(i)1つ以上の溶離生成物に対応するカラム負荷質量及び初期回収比率を含む初期化データを受信し、(ii)プロセス制御又は自動システムへの通信リンクをインスタンス化し、(iii)1つ以上の溶離生成物に対応する推定全ピーク面積及び面積回収基準を決定し、(iv)通信リンクを介して、プロセス制御又は自動システムに1つ以上の溶離生成物の回収を開始させ、(v)通信リンクを介して、プロセス制御又は自動システムから1つ以上のデータ値を読み出し、(vi)1つ以上のデータ値を解析するピーク面積推定モデルを介して、回収基準に対する、1つ以上の溶離生成物の回収量に対応する回収された曲線下面積の比率を計算し、(vii)回収基準に対する、回収された曲線下面積の比率に基づいて、通信リンクを介して、プロセス制御又は自動システムに1つ以上の溶離生成物の回収を中止させるべく構成される。
【0008】
別の態様において、不純物を回避しながら溶離生成物回収の一貫性及び収率を向上させるべくプロセス及び自動システムの制御を向上させる、コンピュータ実装された方法は、(i)1つ以上のプロセッサを介して、1つ以上の溶離生成物に対応するカラム負荷質量及び初期回収比率を含む初期化データを受信することと、(ii)1つ以上のプロセッサを介して、プロセス制御又は自動システムへの通信リンクをインスタンス化することと、(iii)1つ以上のプロセッサを介して、1つ以上の溶離生成物に対応する推定全ピーク面積及び面積回収基準を決定することと、(iv)通信リンクを介して、プロセス制御又は自動システムに、1つ以上の溶離生成物の回収を開始させることと、(v)通信リンクを介して、プロセス制御又は自動システムから1つ以上のデータ値を読み出すことと、(vi)1つ以上のデータ値を解析するピーク面積推定モデルから、回収基準に対する、1つ以上の溶離生成物の回収量に対応する回収された曲線下面積の比率を受信することと、(vii)回収基準に対する、回収された曲線下面積の比率に基づいて、通信リンクを介して、プロセス制御又は自動システムに、1つ以上の溶離生成物の回収を中止させることを含む。
【0009】
更に別の態様において、非一時的コンピュータ可読媒体は、実行されたならば、コンピュータに、(i)1つ以上の溶離生成物に対応するカラム負荷質量及び初期回収比率を含む初期化データを受信することと、(ii)プロセス制御又は自動システムへの通信リンクをインスタンス化することと、(iii)1つ以上の溶離生成物に対応する推定全ピーク面積及び面積回収基準を決定することと、(iv)通信リンクを介して、プロセス制御又は自動システムに、1つ以上の溶離生成物の回収を開始させることと、(v)通信リンクを介して、プロセス制御又は自動システムから1つ以上のデータ値を読み出させることと、(vi)1つ以上のデータ値を解析するピーク面積推定モデルを介して、回収基準に対する、1つ以上の溶離生成物の回収量に対応する回収された曲線下面積の比率を計算することと、(vii)回収基準に対する、回収された曲線下面積の比率に基づいて、通信リンクを介して、プロセス制御又は自動システムに、1つ以上の溶離生成物の回収を中止させることとを行わせるプログラム命令を含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態による、不純物を回避しながら溶離生成物回収の一貫性及び収率を向上させるべくプロセスと自動システムの制御を向上させるコンピューティング環境を示す。
【
図2】一実施形態による、不純物を回避しながら溶離生成物回収の一貫性及び収率を向上させるべくプロセスと自動システムの制御を向上させるプール回収プロセスの例示的なグラフを示す。
【
図3】一実施形態及びシナリオによる、不純物を回避しながら溶離生成物回収の一貫性及び収率を向上させるべくプロセス及び自動システムの制御を向上させる例示的なコンピュータ実装された方法のフロー図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書に記述する複数の実施形態は、特に、クロマトグラフィ曲線下面積(AUC)を介してプール回収基準に対する実時間ピーク積分を実行する技術に関し、より具体的には、不純物を回避しながら所望の生成物品質属性を有する生成物の回収を最適化すべく溶離実行中に生成物回収の停止及び/又は開始点を決定することによりプロセス制御又は自動システム(例:1つ以上の遠隔処理制御又は自動システム)を制御する方法及びシステムに関する。
【0012】
上述のように、従来の技術は一貫性を欠いている。例えば、従来の溶離では、所望の生成物と共に生成物類似体を回収することできる。既存のプロセス制御及びプロセス自動システムは、本技術が提供するような、回収をきめ細かく且つ正確にパラメータ化及び/又は制御可能にする機能を含んでいない。
【0013】
このようなプロセスのきめ細かく且つ個別の管理が欠如していることは、いくつかの理由から先行技術における重大な問題である。上述のように、ある種の生成物(例:バイオシミラー医薬品)の製造において、いくつかのプロセス性能指標(PPI)を一貫的に満たす必要があり、さもなければ、そのような製造工程で生成された生成物は認証できず、従って使用できない。これは、無駄な時間及び貴重な材料資源の浪費につながる。
【0014】
従来のシステムには、使用する各生成物の詳細内容を考慮しない、又は調整及び機能の欠如に起因して他の問題を引き起こすピーク積分機能が組み込まれ得る。例えば、従来のシステム(AKTA pureシステム、AKTAavantシステム等)のオンボードピーク積分機能を用いるためプロセスのばらつきが極端に大きくなり、多数回の実行にわたり溶離に一貫性がなくなる恐れがある。勾配開始の遅延及び/又は勾配オーバーシュートの結果、PPI基準を満たさない生成物が生じる恐れがある。本技術と異なり、従来のシステムは実行時にきめ細かくパラメータ化できない。従って、本技術は特に、工業プロセスからピーク形状の感度を除外することにより、先行技術に存在する問題を解決して、収率を最大化すると共に不純物を最小化する堅牢且つ反復可能なプロセスを可能にする。
【0015】
本発明について以下の例により更に説明する。これらの例は本発明を説明するものであり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【0016】
例示的なコンピューティング環境
図1に、一実施形態による、不純物を回避しながら溶離生成物回収の一貫性及び収率を向上させるべくプロセス及び自動システムの制御を向上させるコンピューティング環境100を示す。コンピューティング環境100は、クライアントコンピューティング装置102、クロマトグラフィカラム106に通信可能に結合された遠隔処理制御システム104、及び電子ネットワーク108を含み得る。クライアントコンピューティング装置102、遠隔処理制御システム104、及びクロマトグラフィカラム106のいずれも、電子ネットワーク108を介して互いに通信可能に結合され得る。この結合により、コンピューティング環境100の任意の/全ての要素間で双方向のネットワーク通信が可能になる。例えば、クライアント装置102は、遠隔処理制御システム104と(例:1つ以上のオープンプラットフォーム通信(OPC)リンクを介して)双方向通信することができる。
【0017】
クライアントコンピューティング装置102は、例えば、デスクトップ、仮想化及び/又はクラウドコンピューティング環境に各々実装され得る1つ以上のコンピュータを含み得る。いくつかの実施形態において、クライアントコンピューティング装置102は、モバイルコンピューティング装置(例:ラップトップ、タブレット、携帯電話、ウェアラブル装置等)として実装され得る。クライアントコンピューティング装置102は、プロセッサ110及びメモリ112を含み得る。プロセッサ110は単数形で表現されているが、1種類以上の任意の適当な個数のプロセッサ(例:1つ以上の中央処理装置(CPU)、グラフィック処理装置(GPU)、コア等)を含み得る。メモリ112は、1種類以上の1つ以上のメモリ(例:永続メモリ、固体メモリ、ランダムアクセスメモリ(RAM)等)を含み得、1つ以上のモジュール120を保存し得る。クライアントコンピューティング装置102は更にI/O装置140及びネットワークインターフェース142を含み得、電子データベース150に通信可能に結合され得る。
【0018】
遠隔処理制御システム104は、クロマトグラフィカラム容器106を制御する1つ以上の装置を含む1つ以上の電気機械装置を含み得る。例えば、遠隔処理制御システム104は、クロマトグラフィカラム容器106につながる供給管の1つ以上の弁を含み得る。遠隔処理制御システム104は、ピストンフランジを動作させるモーターを含み得る。遠隔処理制御システム104は、クロマトグラフィカラム容器106の最上部及び底部を開閉するため、及び/又はクロマトグラフィカラム106の1つ以上の物理的ポート(すなわち入口又は出口)を構成するための機械的装置(例:油圧装置)を含み得る。クロマトグラフィカラム106について以下で更に詳細に説明する。
【0019】
いくつかの実施形態において、遠隔処理制御システム104は、クロマトグラフィカラム容器106の内容を監視する1つ以上のゲージ(例:圧力計)を含み得る。遠隔処理制御システム104は、遠隔処理制御システム104内の各々の装置を遠隔制御するコンピュータ要素(例:プログラマブルブレッドボード)を含み得る。制御装置遠隔処理制御システム104は更に、遠隔コンピューティング装置(例:コンピューティング装置102)が遠隔処理制御システム104からデータを受信/取得可能にするCPU、RAM及びオペレーティングシステム(図示せず)を含み得る。例えば、遠隔処理制御システム104は、コンピューティング装置102が遠隔処理制御システム104内に含まれるプロパティ及び情報にアクセスできるようにする1つ以上のソフトウェアライブラリを含み得る。
【0020】
例えば、遠隔処理制御システム104がAKTA pureタンパク質精製システムである場合、デジタルプロトコル(例:オープンプラットフォーム通信(OPC)リンク)を介してアクセス可能である。その場合、コンピューティング装置102は、遠隔処理制御システム104のデフォルト機能を向上させるべく無効又はオーバーライドすることができる。例えば、AKTA pureシステムはデフォルトでピーク積分を自身で行うことができ、その際にクライアント装置は回収開始及び回収終了閾値をピーク最大値の百分率として指定する。しかし、上述のように、このようなピーク積分に対するきめ細かい制御ができなければ勾配オーバーシュート、再現不可能な溶離結果等につながる恐れがある。同じ問題が他の遠隔処理制御システム104の複数の実施形態(例:遠隔処理制御システム104がEmerson DeltaV自動システムである場合)でも存在し得る。無効化/オーバーライド機能は、クライアントコンピューティング装置102の複数のモジュール120のうち1つ(例えば溶離コントローラモジュール130)により実行され得る。
【0021】
クロマトグラフィカラム容器106は任意の適当な寸法のクロマトグラフィカラム容器であってよい。例えば、いくつかの実施形態において、クロマトグラフィカラム容器106は直径1.6mのカラムであってよい。いくつかの実施形態において、容器106はポリマー、プラスチック及び/又は金属(例:各種の鋼合金)製であってよい。いくつかの実施形態において、クロマトグラフィカラム容器106の一部は、材料(例:スラリー、緩衝液等)で充填されている。クロマトグラフィカラム容器106内の媒体は任意の適当な材料であってよい。媒体は加圧されていなくても、又は様々な圧力レベル(例:1~30psi以上)に加圧されていてもよい。クロマトグラフィカラム容器106のピストンは、加圧を行なうべく媒体を所定の高さまで圧縮することができる。
【0022】
当業者には、容器106の具体的な構成はそのサイズを含めて、溶離されている生成物(例:1つ以上のタンパク質の組成)、カラム内に含まれる媒体、遠隔処理制御システム104の構成/特性等を参照することにより各々の実施形態で決定され得ることが理解されよう。例えば、ベンチスケール遠隔処理制御システム104はベンチサイズ容器106を必要とする場合があり、工業規模の遠隔処理制御システム104は遙かに大きい容器106を必要とする場合がある。
【0023】
ネットワーク108は、WAN(例:インターネット)、LAN、3G又は4Gネットワーク、WiFiネットワーク又は他の無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)、衛星通信ネットワーク、及び/又は地上マイクロ波ネットワーク等、1つ以上の適当な無線ネットワークを含み得る。いくつかの実施形態において、ネットワーク108はまた、イーサネット等の1つ以上の有線ネットワークも含む。
【0024】
1つ以上のモジュール120は、例えば各々の機能を実行すべく構成された1つ以上のコンピュータ実行可能命令の集合を含み得る。例えば、1つ以上のモジュール120は、溶離コントローラモジュール130、検量構成器モジュール132、推定モデル134、並びに構文解析及び保存モデル136を含み得る。
【0025】
溶離コントローラモジュール130は、遠隔処理制御システム104にアクセスするためのコンピュータ実行可能命令を含み得る。例えば、溶離コントローラモジュール130は、一実施形態において、溶離コントローラモジュール130がAKTA pureシステムの機能にアクセスできるようにする複数のメソッド/関数(例:AktaClass)を有するクラスライブラリを含み得る。溶離コントローラモジュール130内の関数のライブラリは、メソッドの集合を有するオブジェクト指向クラスを含み得る。サポートされるメソッドの集合は、例えば次表の方法、含まれる関数及びリターンコード(当てはまる場合)を含み得る。
【0026】
【0027】
いくつかの実施形態において、追加的/異なる機能をサポートすべく含まれるメソッドは、より少なくても多くてもよい。また更なる実施形態において、溶離コントローラモジュール130命令は、AktaClassがインスタンス化された際に接続(例:OPC接続)を1回生起させるコンストラクタクラスを含み得、当該接続はAktaClassインスタンスがガーベージ回収されるまで接続されたままである。上述のAktaClassの例は一例に過ぎない。当業者には、より少ない、又はより多くのクラスメソッド、追加的なサブクラス、及び/又は全く異なる関数/インターフェースを含む追加的なクラス(例:DeltaVClass)が含まれ得ることが理解されよう。上記にもかかわらず、溶離コントローラモジュール130は一般に、多くの異なる機種/製造業者から提供され得る1つ以上の遠隔処理制御システム104の制御に必要なあらゆるコンピュータ実行可能命令の集合を含む。
【0028】
検量構成器モジュール132は、生成物毎に1つ以上の過去の検量線を解析することにより1つ以上の係数を決定するコンピュータ実行可能命令を含み得る。例えば、検量構成器モジュール132は、線形回帰、機械学習等の適当な技術を用いて生成物に対応する係数を決定することができる。検量構成器モジュール132は、決定された係数を、生成物の識別子に関連付けてデータベース150に保存することができる。このように、別のモジュール(例:溶離コントローラモジュール130)は、生成物識別子を渡してデータベースを照会して、計算(例:実行時の負荷質量パラメータの観点からの全ピーク面積の計算)で用いる関連付けられた係数を取得することができる。いくつかの実施形態において、検量構成器モジュール132は、負荷された各々の質量について曲線下面積を測定するラボ実験を生成して線形回帰を実行することにより、検量線を生成するコンピュータ実行可能命令を含み得る。
【0029】
推定モデル134は、溶離コントローラ130を介してプロセス制御又は自動システム104から読み出された1つ以上のデータ値を受信するコンピュータ実行可能命令を含み得る。いくつかの実施形態において、1つ以上のデータ値は構文解析/フォーマットされた値であってよい。推定モデル134は台形公式を用いて曲線下推定ピーク面積を計算する命令を含み得る。推定モデル134は、1つ以上の順序付けられたデータ構造(例:各リスト、又はアレイ)を含み得る。推定モデル134は、クロマトグラフィカラムから読み出されたデータに対応する多数のデータ点(すなわち、時系列)について反復的に、1つ以上のデータ値の各々を1つ以上のデータ構造の各々の1つに保存することができる。推定モデル134は、曲線下面積を時系列的に監視できるように、各時間ステップ毎に推定ピーク曲線下面積を計算することができる。例えば、溶離コントローラ130は、データ回収を初期化した後でクロマトグラフィカラム106からデータを反復的に読み出すことができる。
【0030】
各反復又は時間ステップにおいて、推定モデル134は最新のデータ値を用いて更新された曲線下面積を再計算することができる。更に、各反復/時間ステップにおいて、推定モデル134は、2番目に新しい累積体積値から最新の累積体積値を減算することにより計算された累積体積デルタ等のデルタ(すなわち、変化)値を保存することができる。このデルタは、反復されながら自身の索引付きデータ構造に保持することができ、推定モデル134が後の反復時に索引により参照できる累積体積値の永続的アレイにより可能になる。いくつかの実施形態において、推定モデル134は、5分移動平均、変化率等、各々のデータ構造に基づいて集約又はスナップショット値を計算することができる。
【0031】
推定モデル134は、台形公式を用いてピーク曲線下面積を推定することができる。具体的には、推定モデル134は、例えば、最新のデルタ体積に2個の最新の紫外線吸収値の平均を乗算することにより、各反復又は時間ステップにおける曲線下面積画分を計算することができる。曲線下面積値は、各時間ステップにおいて、前の時間ステップ/反復における曲線下面積値に分数曲線下面積値を加算することにより更新されてもよい。推定モジュール134は、最新の曲線下面積値を全ピーク面積で除算することにより、各反復/時間ステップにおけるピーク回収基準の百分率として曲線下面積を計算することができる。
【0032】
直列化及び保存モジュール136は、データ(例:プロセス制御又は自動システム104から読み出されたデータ値)を、プロセス制御又は自動システム104からのフォーマット及び構文解析されたデータを直列化データフォーマット(例:データフレーム、沈積データフォーマット等)に変換する等により直列化データに変換するコンピュータ実行可能命令を含み得る。いくつかの実施形態において、直列化及び保存モジュール136は、方法300の実行中に回収された全てのデータを永続させる命令を含み得る。例えば、保存モジュール136は、遠隔処理制御システム104から受信した全ての入力パラメータ、時系列データ構造、及び生データをデータベース150、及び/又はメモリ112に保存することができる。直列化されて保存されたならば、保存されたデータを別のモジュール(例:検量構成器モジュール132)が照会して取り出すことができる。いくつかの実施形態において、メモリ112に含まれるモジュールは、より少なくても多くてもよい。
【0033】
モジュール120を実行するコンピュータ実行可能命令は、1種類以上の適当なプログラミング言語(例:C、C++、R、Java、Python、JavaScript、LISP等)で記述されていてよく、
図2に示すように、上述の技法を実行するアルゴリズムだけでなく、エンドユーザー(例:エンジニア、科学者、プログラマー、品質保証テスター、統計学者等)がデータを構築、パラメータ化、評価及び/又は解釈(例:可視化により)するのを支援する追加的な命令を含み得る。
【0034】
I/O装置140は、コンピューティング装置102に入力及びアクセス機能を提供することができる。例えば、I/O装置140は、コンピュータ周辺機器(例:キーボード、マウス、マイクロフォン等)から入力を受信するための、及びコンピュータ周辺機器及び他の装置(例:1つ以上のコンピュータモニタ)に出力を送信するための1つ以上のドライバを含み得る。一般に、I/O装置140により、クライアントコンピューティング装置のユーザーは、ソフトウェアモジュール120の管理及びランタイムパラメータ(例:本明細書に記述する生成物固有パラメータ)の提供の両方の目的で1つ以上のグラフィカルユーザーインターフェースを介してデータを入力することができる。I/O装置140は、ユーザーに向けて1つ以上のアプリケーション(例:溶離制御アプリケーション)をコンピュータモニタ、スマートフォン/タブレットディスプレイ等に表示することができる。
【0035】
ネットワークインターフェース142は、クライアントコンピューティング装置の低レベルネットワーク接続を可能にする1つ以上の有線又は無線イーサネットインターフェースを含み得る。特に、ネットワークインターフェース142は、オペレーティングシステム(すなわち、カーネル)レベルの機能を用いてクライアントコンピューティング装置102が電子ネットワーク108に接続できるようにしてよい。
【0036】
電子データベース150は、構造化問い合わせ言語(SQL)データベース、キー値保存データベース(例:MongoDB)、フラットファイルデータベース等であってよい。データベース150は、クライアントコンピューティング装置102のローカルトランジェントメモリ112、及び/又はメモリ112の永続ディスク、及び/又はネットワーク108を介してアクセス可能な遠隔コンピューティングクラウドに保存され得る。電子データベースは、モジュール120が情報を作成、読み出し、更新及び削除できるようにするテーブルの集合を各々含む1つ以上のデータベースを含み得る。例えば、溶離コントローラ130は、データベース150から事前設定されたパラメータ及び係数情報をロードすることができる。直列化及び保存モジュール136は実行時に情報をデータベース150に挿入することができる。
【0037】
運用に際して、クライアントコンピューティング装置102の1人以上のユーザーは、溶離コントローラモジュール130により表示するグラフィカルユーザーインターフェースにアクセスできる。グラフィカルユーザーインターフェースは、アプリケーション(例:デスクトップアプリケーション、モバイル装置用のiPhone又はAndroidダウンロード可能なアプリケーション等)の一部としてパッケージ化され得る。ユーザーは、初期化データを提供することができる。例えば、ユーザーは、1つ以上の生成物及び1つ以上の各々の溶離カラム(例:クロマトグラフィカラム106に対応する)を選択することができる。いくつかの実施形態において、環境100は、複数の遠隔処理制御システム104を含み得る。その場合、ユーザーは、グラフィカルユーザーインターフェースを介して複数の遠隔処理制御システム104から選択することができる。いくつかの実施形態において、ユーザーは、1つ以上のホスト名をタイプ入力することにより遠隔処理制御システムを指定することができる。
【0038】
遠隔処理制御システム104及び1つ以上の生成物を選択した後で、ユーザーは追加的な入力パラメータを与えることができる。入力パラメータについては、以下でより詳細に説明する。溶離コントローラモジュール130は、選択された遠隔処理制御システム104、生成物及び各々のパラメータ集合のリストをメモリ112に保持することができる。ユーザーは次いで、1つ以上の選択された遠隔処理制御システム104を指定して、溶離プロセスを開始すべきであると指示することができる。例えば、ユーザーは、ユーザーがある個数のパラメータを与えた第1の遠隔処理制御システム104に関して「Go」ボタンを押すことができる。ユーザーがボタンを選択したことに応答して、溶離コントローラ130は、制御フローを検量構成モジュール132に渡すことができ、その時点で検量構成モジュール132が、選択された生成物に対応する事前設定された係数を選択する。検量構成モジュール132は選択された係数を溶離コントローラに戻すことができる。
【0039】
溶離コントローラモジュール130は、選択された遠隔処理制御システム104への通信リンクをインスタンス化して、通信リンクへのオブジェクト(すなわち、ハンドル又は参照)をメモリ112に保存することができる。溶離コントローラモジュール130は、選択された溶離生成物に対応する推定全ピーク面積及び面積回収基準を決定することができる。溶離コントローラモジュール130は、通信リンクを介して周期的にデータ値の読み出しを開始することができる。溶離コントローラモジュール130は、データ値の処理を、選択された生成物及び遠隔処理制御システム104に対応するピーク面積推定モデルモジュール134にオフロードすることができる。遠隔処理制御システム104は1つ以上の順序付けられたデータ構造をメモリ112及び/又はデータベース150に保存して、本明細書に記述するように、順序付けられたデータ構造に保存された値及び溶離コントローラモジュール130から受信したデータ値に関する計算を実行することができる。
【0040】
溶離コントローラモジュール130は、推定モジュール134から計算結果を受信して、直列化及び保存モジュール136に計算結果を渡すことができる。溶離コントローラモジュール130は、別個の通信リンクをメモリ112に保存できること、及びクライアントコンピューティング装置102の1つ以上のプロセッサ110が複数の通信リンクを並列に用いて上述の処理の異なる段階を動作させ得ることを理解されたい。モジュール134、136により実行される処理は溶離コントローラ130を阻害して、溶離130が遠隔処理制御システム104からデータを読み出せなくする恐れがある。マルチスレッド又はマルチプロセッシングアプローチを用いて推定モデルモジュール134及び直列化及び保存モジュール136への入力データの処理を並列化することにより、本技術は有利に、個数がほぼ無制限の遠隔処理制御システム104の動作を単一のクライアントコンピューティング装置102がきめ細かく管理できるようにして、単一スレッド(及び粗い)ピーク積分機能しか提供しない従来技術に比べて向上させる。
【0041】
いくつかの実施形態において、直列化及び保存モジュール136は、溶離コントローラモジュール130が遠隔処理制御システム104からデータを読み出すに従いデータベース150にデータを連続的に保存することができる。更なる実施形態において、直列化及び保存モジュール136は、溶離コントローラモジュール130が遠隔処理制御システム104に溶離生成物の回収を停止させるまで、メモリ112内のデータをキャッシュすることができ、停止した時点で直列化及び保存モジュール136がキャッシュされたレコードのデータベース150へのバッチ挿入を実行することができる。
【0042】
例示的な可視化の実施形態
上述のように、
図2のメモリ120のコンピュータ実行可能命令はプール回収プロセスを可視化できるようにする。プール回収プロセスは、緩衝液を用いる1つ以上のクロマトグラフィ解析に対応していてよい。ローカル又は遠隔であるプロセス制御システム(例:
図1の遠隔処理制御システム104)は、1つ以上のクロマトグラフィカラム緩衝液槽(例:カラム容器106のような円筒容器)に取り付けられ得る。運用に際して、遠隔処理制御システム104は、チューブ弁及びポンプを介してクロマトグラフィカラムを制御することができる。例えば、遠隔処理制御システム104は、緩衝液供給源から緩衝液を引き出して、カラムを洗浄、平衡化、及び操作(例:サンプル搭載後のカラム洗浄)すべく緩衝液をカラムに投入できる。遠隔処理制御システム104は、タンパク質をカラムに流入させて、洗浄、平衡化及び洗浄ステップからの廃液を除去することができる。遠隔処理制御システム104は、付着したサンプルをカラムから溶離させることができる。溶離は、緩衝液が一定であるアイソクラティックであっても、又はpH/導電率が異なる複数の緩衝液製剤を溶離プロセスの過程で混合して塩/導電率/pHの変化に基づいて勾配を形成する勾配であってもよい。使用する溶離方法に依らず、緩衝液は、クロマトグラフィカラムに付着したタンパク質を除去してカラムから溶離液中に流すことができる。遠隔処理制御システム104は、カラム内を流れる溶離液を回収することができる。
【0043】
図2に、一実施形態による、不純物を回避しながら溶離生成物回収の一貫性及び収率を向上させるべくプロセス及び自動システムの制御を向上させるプール回収プロセスの例示的なグラフ200を示す。カラムから溶離する際に、カラムから流出する流体の吸光度を(例:遠隔処理制御システム104により)測定することができる。吸光度は、特定の波長(例:280nm)で紫外線によりmAU単位で測定され得る。この吸光度を用いて、標準曲線、過去の知見、公開情報等と比較して試料中のタンパク質濃度を計算することができる。カラムは、カラム1本分の液体に対応する画分(すなわち、カラム体積画分(CV))で溶離されてよく、各画分の液体は独立に回収される。
【0044】
溶離の過程で、各画分の吸光度は、勾配が増すに従いより多くのタンパク質がカラムから溶離されるにつれて変化し得る。クライアントコンピューティング装置102は、この吸光度の変化を測定して、当該変化を各画分の吸光度の読取値のトレースを示すクロマトグラムの曲線としてグラフ化することができる。例えば、グラフ200は、ミリ吸光度単位(mAU)を表すY軸202-A及びミリリットルを表すX軸202-Bを含む。グラフ200は、特定の割合の負荷質量及び勾配を有する溶離プロセス(例:上述のような)のラボスケール実行の視覚的表現を表していてよい。当業者には、いくつかの実施形態においてグラフ200が溶離緩衝液の導電率又はpHの変化を表現できることが理解されよう。いくつかの実施形態において、グラフ200は、分数(例:1から所定の点までの)を表していてよい。グラフ200は、溶離領域204及びプール開始点206-A並びにプール終了点206-Bを含み、溶離が開始及び終了する位置、及び/又は廃棄物の回収が開始される位置を表している。例えば、プール開始点206-Aは全ピーク面積に基づいて、全ピーク面積に基づいて負荷質量が特定の百分率に達し、且つ回収開始すべき百分率に達したならば開始され得る。プール回収開始点は、本明細書に記述するように溶離コントローラ130により制御され得る。プール終了点206-Bは所定の波長に基づいて、ピーク最大値の百分率(例:10%)に対応していてよい。
【0045】
溶離領域204は、いくつかの無視できる不純物が存在する、注目タンパク質を含む画分、又は注目タンパク質の百分率を含む領域を指定する線分間の領域に対応していてよい。このような画分はプールされて(すなわち、組み合わされて)更なる溶離に用いられてよい。カットは、注目タンパク質を含む画分の開始を指定する点であってよい。グラフ200において、曲線下面積は、溶離の開始から、注目タンパク質が溶離し始めるカット点までの面積であってよい。
【0046】
曲線下面積は、溶離開始から、注目タンパク質が溶離し始めるカット点までの面積に対応していてよい。この面積は、カラムに付着している、注目タンパク質よりも親和力が低い不純物がカラムから溶離する面積に対応していてよい。これらの不純物は、回収に適さない注目タンパク質の形態であり得る。例えば、これらの不純物は、抗体の半分(例:単一重鎖及び単一軽鎖)、注目タンパク質の一部、部分の凝集体、又は不正確な翻訳後特徴を有する注目タンパク質(例:不正確な構造糖、不完全な添加等)であり得る。バイオシミラーの場合、そのような不純物はタンパク質の活性に影響を及ぼしてイノベータータンパク質との類似性が低下する恐れあるため、翻訳後修飾が一致することは必須である。いわゆる「生成物関連」の不純物は、クロマトグラフィマトリクスに対する結合親和力を含む所望の生成物と特徴を共有するが注目タンパク質ではなく、従って最終的な医薬品原薬から除外しなければならない。
【0047】
いくつかの実施形態において、本技術は、グラフ200を含む可視化を、溶離プロシージャの実行中又は実行後にユーザーの装置(例:クライアントコンピューティング装置102)に表示させることができる。このように、ユーザーは有利に、進行中の溶離プロセスを監視することができ、従来技術に欠落しているきめ細かい自動化プロセスに関するフィードバックをユーザーに提供する。
【0048】
例示的なコンピュータ実装された方法
図3に、一実施形態及びシナリオによる、不純物を回避しながら溶離生成物回収の一貫性及び収率を向上させるべくプロセス及び自動システムの制御を向上させるコンピュータ実装された方法300のフロー図を示す。非限定的な例として、方法300の1つ以上のステップが
図1のコンピューティング環境100により実行され得る。
【0049】
方法300は、1つ以上のプロセッサを介して、1つ以上の溶離生成物に対応するカラム負荷質量及び初期回収比率を含む初期化データを受信すること(ブロック302)を含み得る。例えば、方法300はI/O装置140を介して、エンドユーザーが1つ以上の生成物を選択して当該1つ以上の生成物、遠隔処理制御システム104の態様、カラム負荷質量、初期回収比率等に対応する各々のパラメータを与えられるようにする1つ以上の要素(例:ドロップダウンメニュー、1つ以上の入力フィールド等)を含むグラフィカルユーザーインターフェース(図示せず)を表示することができる。次表は、一実施形態において、ユーザーが入力できる例示的な入力パラメータである
【0050】
【0051】
方法300は初期化データ型を検証することを含み得る。例えば、本方法は、出口パラメータが整数値であることを検証することができる。いくつかの実施形態において、これらのパラメータは、標準入力(例:カンマ区切り値(CSV)ファイルからの入力、自動化スクリプトへのフラグ(例:cronジョブを介した)等)で受信され得る。ユーザーは必ずしもI/O装置140を介して手動でパラメータを与える必要はなく、自動化された手段を介して初期化データを受信してもよいことが理解されよう。
【0052】
方法300は、1つ以上のプロセッサを介して、プロセス制御又は自動システムへの通信リンクをインスタンス化すること(ブロック304)を含み得る。例えば、ブロック304のプロセス制御又は自動システムは、
図1の遠隔処理制御システム104に対応していてよい。従って、ブロック304のプロセス制御又は自動システムは、
図1のクロマトグラフィカラム容器106に対応するクロマトグラフィカラム容器を含み得る。プロセス制御又は自動システム104は、AKTA pureマイクロシステム、又はEmerson DeltaV自動システム等、任意の適当なシステムであってよい。本技術は、ベンチスケール及びより大きなスケールのプロセス制御/自動環境に適用可能である。
【0053】
ブロック304における通信リンクのインスタンス化は、例えば、クライアントコンピューティング装置102で1つ以上のOPCリンクを作成することを含み得る。いくつかの実施形態において、他の適当な通信リンクがインスタンス化されてもよい(例:無線リンク、有線リンク、無状態HTTPリンク等)。一般に、溶離コントローラモジュール130は、クライアントコンピューティング装置102のメモリ112内に1つ以上のオブジェクトを作成し、各オブジェクトは、遠隔処理制御システム104への各通信リンクの状態を追跡する。各メモリ内オブジェクトは、溶離コントローラが遠隔処理制御システム104の機能にアクセスできるようにする上述のインターフェースメソッドを提供する。
【0054】
方法300は、1つ以上のプロセッサを介して、1つ以上の溶離生成物に対応する推定全ピーク面積及び面積回収基準を決定すること(ブロック306)を含み得る。いくつかの実施形態において、推定全ピーク面積を決定することは、検量構成器132が、上述のように1つ以上の過去の検量線の線形回帰を実行して1つ以上の係数を推定することを含み得る。このように、所与の負荷質量初期化パラメータに対して、溶離コントローラモジュール130は単に、実行時に生成物固有の係数を(例:電子データベース150から)取得して、正しい全ピーク面積計算を行うことができる。例えば、方法300は、負荷質量初期化パラメータと、生成物入力パラメータ(すなわち、上の例を続くABP938AEX)に対応する係数(例:30.44)の積を計算することにより全ピーク面積を決定することができる。
【0055】
無論、ユーザーが選択した、又はコマンドライン入力として提供された生成物に応じて、過去の検量線に基づいて異なる係数が選択されてもよい。このように、本技術は、既知の良好生成物係数値に基づいて実行時にユーザーがパラメータをプログラムにより選択する能力を含めない従来技術よりも有利に向上させると考えられる。正しい係数の選択は更なるモデル化計算で用いられるため、この柔軟性は、回収開始/終了時点の正しい決定を可能にする本技術に直接つながる。従って、本技術は、きめが粗く、且つ一般的な「1サイズで間に合わせる」ピーク積分機能しか提供しない従来技術と比較して多面的な利点をもたらす。方法300は、全ピーク面積と回収開始百分率の積を計算することにより曲線下面積回収基準を決定することができる。上述のように、全ピーク面積の計算はきめ細かい生成物固有の係数が含まれるため、回収基準は、より一般的な(又は仮説的な)入力に依存する従来のピーク積分アプローチに比べて、経験的観察に基づいて精度が向上したことによる恩恵を受ける。
【0056】
方法300は、通信リンクを介して、プロセス制御又は自動システム104に1つ以上の溶離生成物の回収を開始させること(ブロック308)を含み得る。例えば、一実施形態において、溶離コントローラ130は、上述のように、AktaClassのcollect()メソッドを呼び出すことができる。いくつかの実施形態において、クライアントコンピューティング装置102の溶離コントローラ130は、別の遠隔処理制御システム104に固有の別の機能(例:DeltaVシステムに回収を開始させる固有のメソッド)を呼び出すことができる。いくつかの実施形態において、方法300は、クロマトグラフィカラム106を通って移動相(例:緩衝液)に流れ始めさせる等、溶離コントローラ130が呼び出せる他のメソッドを含み得る。
【0057】
方法300は、通信リンクを介して、プロセス制御又は自動システムから1つ以上のデータ値を読み出すこと(ブロック310)を含み得る。例えば、方法300が、プロセス制御又は自動システム104に、1つ以上の溶離生成物の回収を開始させ、溶離コントローラ130は通信リンクを介して紫外線吸光度及び/又は蓄積体積等のデータ値を読み出すことができる。いくつかの実施形態において、溶離コントローラ130は、プロセス制御又は自動システム104からデータを反復的に読み出す命令を含み得る。いくつかの実施形態において、溶離コントローラ130は、プロセス制御又は自動システム104からのデータ値の読み出しに遅延を導入する命令を含み得る。例えば、溶離コントローラ130は、反復間(例:0.5秒毎)に設定可能な遅延を入れて、周期的又は反復的にデータを回収する命令を含み得る。
【0058】
方法300は、1つ以上のデータ値を解析するピーク面積推定モデルから、回収基準に対する、1つ以上の溶離生成物の回収量に対応する回収曲線下面積の比率を受信すること(ブロック312)を含み得る。方法300は、溶離コントローラ130が、読み出された1つ以上のデータ値をプロセス制御又は自動システム104から推定モデルモジュール134に渡すことを含み得る。上述のように、溶離コントローラ130は、進行中の溶離プロセスの曲線下面積を周期的に計算することができる。
【0059】
方法300は、回収基準に対する、回収された曲線下面積の比率に基づいて、通信リンクを介して、プロセス制御又は自動システムに1つ以上の溶離生成物の回収を中止させること(ブロック314)を含み得る。例えば、溶離コントローラ130は、回収基準に対する、回収された曲線下面積の比率を比較して、比率が回収基準を超えたならば、本方法は、通信リンクに対応するオブジェクトのメソッドを呼び出して、遠隔処理制御又は自動システム104に生成物の回収を中止させるべく出口弁を切り替えさせることができる。上述のように、例えば
図2を参照するに、方法300は、回収基準に対する、1つ以上の溶離生成物の回収の実行中及び停止後に回収された曲線下面積の比率等を可視化して表示させることを含み得る。
【0060】
上述のように、溶離制御装置130の一連のメソッドにより、遠隔処理制御又は自動システム104の様々な態様を管理すること、及びプロセス制御又は自動システム104の状態を検査することが可能になる。そのような管理/検査機能は、通信リンクを介してプロセス制御又は自動システム104の制御を行うことと、通信リンクを介してプロセス制御又は自動システム104の制御を解除することと、通信リンクを介してプロセス制御又は自動システム104の出口弁を切り替えることと、通信リンクを介してプロセス制御又は自動システム104の出口弁位置を確認することと、通信リンクを介して、プロセス制御又は自動システム104の入口弁を切り替えることと、通信リンクを介して、プロセス制御又は自動システム104の入口弁位置を確認することと、及び通信リンクを介してプロセス制御又は自動システム104への通信リンクを破棄することを含む。上述のように、通信リンクはOPC通信リンクであってよい。
【0061】
本明細書で提供する複数の例は、説明目的で単純化されており、いくつかの実施形態は、クロマトグラフィカラム容器、プロセス制御及び/又は自動システム、コンピューティング装置等のより複雑なレイアウト/構成を含み得ることを理解されたい。例えば、本技術は、いくつかの実施形態において、ベンチ設定又は大規模な商業生産プラントにおいてクロマトグラフィカラム容器のアレイの状態を監視すべく用いられてよい。
【0062】
追加的考慮事項
本明細書で引用した全ての参照文献は、特許、特許出願、文献刊行物等を含めて、引用によりその全文を本明細書に取り込んでいる。
【0063】
また、値の範囲を記述する場合、本開示は当該範囲内に現れる個々の値を考慮していることを理解すべきである。例えば、「約20nm~約200nmの細胞凝集体サイズ」は40nm、60nm、100nm等、及びそのような値の間の任意の値であってよいが、これらに限定されない。本明細書に記述するいずれの範囲においても、範囲の端点は当該範囲に含まれる。しかし、本明細書はまた、最下点及び/又は最上点を除外した同じ範囲も考慮する。
【0064】
また、本特許ではある用語が「本明細書で用いる用語「_」はここでは...を意味するものと定義する」又は同様の文言を用いて明示的に定義されない限り、明示的か暗黙的かに依らず、当該用語の意味をその明白又は通常の意味を越えて限定することは意図しておらず、そのような用語は、本特許の(請求項の文言以外の)どの段落でなされた宣言に基づいて範囲が限定されると解釈すべきでないことも理解されたい。本開示の末尾の請求項に記載するどの用語も本開示で単一の意味に整合するように言及されている限り、これは読者を混乱させないよう明快さのためだけに行われており、このような請求項の用語が、暗黙的か否か依らず、当該単一の意味に限定されることを意図していない。最後に、請求項の要素が、いかなる構造にも言及せずに用語「手段」及び機能に言及することにより定義されない限り、いかなる請求項の要素の範囲を米国法典第35巻112条(f)の適用に基づいて解釈することを意図していない。本明細書に記述するシステム及び方法はコンピュータの機能の向上に向けられており、従来のコンピュータの機能を向上させる。
【0065】
本明細書を通じて、用語「集合」は、別途明示的に定義されない限り、1つ以上の要素を有する集合を意味するが、空集合は除外する。
【0066】
本明細書を通じて、複数のインスタンスが、単一のインスタンスとして記述される要素、動作、又は構造を実装する場合がある。1つ以上のメソッドの個々の動作を別々の動作として図示及び説明しているが、1つ以上の個々の動作を同時に実行してもよく、これらの動作を図示する順序で実行する必要は一切ない。複数の構成例において別々の要素として示す構造及び機能が組み合わされた構造又は要素として実装され得る。同様に、単一の要素として示す構造及び機能が別々の要素として実装され得る。これら及び他の変形、変更、追加、及び改良も本明細書の主題の範囲に含まれる。
【0067】
また、本明細書において特定の実施形態が、論理又はある個数のルーティン、サブルーティン、アプリケーション、又は命令を含むものとして記述している。これらは、ソフトウェア(非一時的有形機械可読媒体に実装されたコード)又はハードウェアのいずれかを構成していてよい。ハードウェアにおいて、ルーティン等は、特定の動作を実行可能な有形の装置であり、特定の仕方で構成又は配置され得る。例示的な実施形態において、1つ以上のコンピュータシステム(例:スタンドアロン、クライアント又はサーバコンピュータシステム)又はコンピュータシステムの1つ以上のモジュール(例:プロセッサ又はプロセッサ群)はソフトウェア(例:アプリケーション又はアプリケーション部分)により本明細書に記述するような特定の動作を実行すべく動作するモジュールとして構成され得る。
【0068】
様々な実施形態において、モジュールは機械的又は電子的に実装され得る。従って、用語「モジュール」は、本明細書に記述する特定の仕方で動作するか又は特定の動作を実行すべく物理的に構築され、永続的に構成された(例:ハードワイヤード)、又は一時的に構成された(例:プログラミングされた)有形エンティティを包含するものと理解されたい。モジュールが一時的に構成された(例:プログラミングされた)実施形態を考慮するに、各モジュールは、同一時点で構成又はインスタンス化される必要はない。例えば、モジュールがソフトウェアを用いて構成された汎用プロセッサを含む場合、当該汎用プロセッサは異なる時点で各々の異なるモジュールとして構成され得る。従ってソフトウェアはプロセッサを、例えば、ある時点で特定のモジュールを構築し、異なる時点で異なるモジュールを構築すべく構成され得る。
【0069】
複数のモジュールが他のモジュールに情報を提供すること、又は他のモジュールから情報を受信することができる。従って、上述のモジュールは通信可能に結合されていると考えてよい。このような複数のモジュールが同時に存在する場合、通信は、モジュールを接続する信号伝送(例:適当な回路及びバスを介した)を通じて実現できる。複数のモジュールが異なる時点で構成又はインスタンス化される実施形態において、そのようなモジュール間の通信は、例えば、当該複数のモジュールがアクセス可能なメモリ構造における情報の保存及び取り出しを通じて実現できる。例えば、あるモジュールが動作を実行して当該動作の出力を通信可能に結合されたメモリ装置に保存することができる。次いで更なるモジュールが後の時点でメモリ装置にアクセスして保存された出力を取り出して処理することができる。モジュールはまた、入出力装置との通信を開始してリソースに対して動作(例:情報の回収)を行うことができる。
【0070】
本明細書に記述する例示的な方法の様々な動作は、関連動作を実行すべく(例:ソフトウェアにより)一時的に構成された、又は永続的に構成された1つ以上のプロセッサにより少なくとも部分的に実行され得る。一時的又は永続的に構成されたかに依らず、そのようなプロセッサは、1つ以上の動作又は機能を実行すべく動作するプロセッサに実装されたモジュールを構成していてよい。本明細書で言及するモジュールは、いくつかの例示的実施形態においてプロセッサに実装されたモジュールを含み得る。
【0071】
同様に、本明細書に記述する方法又はルーティンは少なくとも部分的にプロセッサに実装され得る。例えば、ある方法の動作の少なくとも一部が1つ以上のプロセッサ又はプロセッサに実装されたモジュールにより実行され得る。特定の動作の実行は1つ以上のプロセッサ間で分散されて、単一のマシン内に存在するだけでなく、ある個数のマシンに跨って展開され得る。いくつかの例示的な実施形態において、プロセッサ又はプロセッサ群は単一の位置に(例:家庭環境内、オフィス環境内、又はサーバファームとして)配置されていてよく、他の実施形態においてプロセッサは複数の箇所に分散され得る。
【0072】
特定の動作の実行は、1つ以上のプロセッサ間で分散されていてよく、単一のマシン内に常駐するだけでなく、ある個数のマシンに跨って展開され得る。いくつかの例示的な実施形態において、1つ以上のプロセッサ又はプロセッサに実装されたモジュールは、単一の地理的位置に(例:家庭環境、オフィス環境、又はサーバファーム内)に配置され得る。他の例示的な実施形態において、1つ以上のプロセッサ又はプロセッサに実装されたモジュールはある個数の地理的位置に分散され得る。
【0073】
別途具体的に述べない限り、本明細書における「処理」、「コンピューティング」、「計算」、「決定」、「提示」、「表示」等の用語を用いた記述は、情報を受信、保存、送信、又は表示する1つ以上のメモリ(例:揮発性メモリ、不揮発性メモリ、又はこれらの組み合わせ)、レジスタ、又は他の機械要素内の物理的(例:電子的、磁気的、又は光学的)量として表されるデータを操作又は変換する機械(例:コンピュータ)の動作又は処理を指す場合がある。いくつかの実施形態は、語句「結合された」及び「接続された」をそれらの派生語と共に用いて記述される場合がある。例えば、いくつかの実施形態は、用語「結合された」を用いて2個以上の要素が直接物理的又は電気的に接触していることを示す場合がある。しかし、用語「結合された」はまた、2個以上の要素が互いに直接接触していないが、それでも互いに協力又は相互作用することを意味する場合がある。これら複数の実施形態はこの文脈に限定されない。
【0074】
本明細書で用いる「1つの実施形態」又は「一実施形態」へのいかなる言及も、当該実施形態との関連で記述される特定の要素、特徴、構造、又は特性が少なくとも1つの実施形態に含まれ得ることを意味する。本明細書の様々な箇所に語句「一実施形態において」が現れた場合、必ずしも全てが同一の実施形態を指している訳ではない。また、「a」又は「an」の使用は、本明細書における実施形態の要素及び部品を記述するために採用されている。これは、単に便宜上であり、説明の一般的な意味を与えるために行うのに過ぎない。本明細書及びそれに続く請求項は、1つ又は少なくとも1つを含むように読まれるべきであり、単数形は、そうでないことを意味することが明らかでない限り複数形も含む。
【0075】
本明細書で用いる用語「含む」、「含む」、「包含する」、「包含している」、「有する」、「有している」又はそれらの他のあらゆる変形は非排他的な包含を対象とすることを意図している。例えば、要素のリストを含む処理、方法、物品、又は装置は必ずしもそれらの要素だけに限定されるものではなく、明示的に列挙されていないか又はそのような処理、方法、物品、又は装置に固有の他の要素を含み得る。更に、明示的に反対に言明されていない限り、「又は」は排他的論理和ではなく包含的論理和を指している。例えば、条件A又はBは、Aが真(又は存在)且つBが偽(又は存在しない)、Aが偽(又は存在しない)且つBが真(又は存在する)、及びAとBの両方が真(又は存在する)のいずれか一つにより満たされる。
【0076】
本明細書における詳細な説明は例示的に過ぎないと解釈すべきであり、全ての可能な実施形態を説明することは不可能ではないにせよ現実的ではないため、全ての可能な実施形態を説明するものではない。現在の技術又は本出願の出願日の後で開発された技術を用いて多くの代替的な実施形態を実装することができる。当業者であれば本開示を精査することにより、本明細書に開示する原理を通じて本開示のシステム及び方法を実行するまた更に代替的な構造及び機能設計を理解されよう。従って、特定の実施形態及びアプリケーションを図示及び説明してきたが、開示する実施形態が本明細書に開示する厳密な構造及び要素に限定されないことを理解されたい。本明細書に開示する方法及び装置の配置、動作及び詳細事項に対して、添付の請求項に定義された主旨及び範囲から逸脱することなく、当業者には明らかになるであろう様々な修正、変更及び変形を行うことができる。
【0077】
任意の特定の実施形態の特定の特徴、構造、又は特性は、選択された特徴を使用するが対応する他の特徴は使用しない任意の適当な仕方で、且つ1つ以上の他の実施形態との任意の適当な組み合わせで組み合わせることができる。また、多くの変更を加えることにより、特定の用途、状況、又は材料を本発明の本質的な範囲及び主旨に適合させることができる。本明細書に記述及び図示する本発明の実施形態の他の変形及び変更は、本明細書の教示に照らして可能であり、本発明の精神及び範囲の一部とみなされることを理解されたい。
【0078】
本発明の好適な実施形態を説明してきたが、本発明はそれに限定されず、本発明から逸脱することなく変更を加えることができることを理解されたい。本発明の範囲は、添付の請求項により定義され、請求項の範囲の意味内に入る全ての装置は、文字通り又は等価的に包含されるものとする。従って、上述の詳細な説明は限定的ではなく例示的なものとみなすことが意図されており、本発明の主旨及び範囲を定義するのは以下の請求項及び全ての等価物であることを理解されたい。
【国際調査報告】