(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-27
(54)【発明の名称】処置のために頭蓋内アテローム動脈硬化性疾患の患者を選択するための方法
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20240820BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240820BHJP
A61P 7/02 20060101ALI20240820BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240820BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20240820BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20240820BHJP
A61K 31/4365 20060101ALI20240820BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20240820BHJP
A61K 31/443 20060101ALI20240820BHJP
A61K 38/12 20060101ALI20240820BHJP
A61K 31/616 20060101ALI20240820BHJP
A61K 31/4439 20060101ALI20240820BHJP
A61K 31/437 20060101ALI20240820BHJP
A61K 31/727 20060101ALI20240820BHJP
A61K 31/37 20060101ALI20240820BHJP
C12Q 1/06 20060101ALI20240820BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240820BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20240820BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20240820BHJP
C07K 14/735 20060101ALN20240820BHJP
C12N 15/113 20100101ALN20240820BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20240820BHJP
【FI】
A61K45/00 ZNA
A61P9/10 101
A61P7/02
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K31/713
A61K31/7088
A61K31/4365
A61K31/519
A61K31/443
A61K38/12
A61K31/616
A61K31/4439
A61K31/437
A61K31/727
A61K31/37
C12Q1/06
G01N33/53 D
A61K38/16
C12N15/12
C07K14/735
C12N15/113 Z
C07K16/28
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506885
(86)(22)【出願日】2021-08-04
(85)【翻訳文提出日】2024-03-25
(86)【国際出願番号】 US2021044439
(87)【国際公開番号】W WO2023014354
(87)【国際公開日】2023-02-09
(81)【指定国・地域】
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 2021年2月25日、https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7947292/を通じて発表。
(71)【出願人】
【識別番号】524045518
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ バーモント アンド ステイト アグリカルチュラル カレッジ
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】シュナイダー デイビッド ジェイ.
【テーマコード(参考)】
4B063
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA19
4B063QQ02
4B063QQ08
4B063QQ79
4B063QR48
4B063QR72
4B063QR77
4B063QS36
4B063QS40
4B063QX02
4C084AA17
4C084BA01
4C084BA17
4C084BA25
4C084BA26
4C084CA59
4C084NA05
4C084ZA451
4C084ZA452
4C084ZA541
4C084ZA542
4C084ZC421
4C084ZC422
4C085AA13
4C085DD62
4C085EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA19
4C086BC17
4C086CB05
4C086CB09
4C086CB29
4C086DA17
4C086EA16
4C086EA27
4C086GA02
4C086GA08
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZA45
4C086ZA54
4C086ZC42
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA50
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA75
4H045EA50
(57)【要約】
本発明は、頭蓋内アテローム動脈硬化性疾患(ICAD)に関連する軽症脳卒中または一過性脳虚血発作(TIA)に罹患したことがある患者に対する処置を選択するための方法を特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択された対象を処置するための方法であって、以下の工程を含む、方法:
以前に少なくとも1回の脳卒中にかかったことがある該選択された対象に抗血栓剤を投与する工程であって、該対象に由来する血小板上にあるFcγRIIaタンパク質のレベルが参照と比べて増加していると決定することによって該対象が選択され、それによって該対象を処置する、工程。
【請求項2】
前記対象が頭蓋内アテローム動脈硬化性疾患を有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
選択された対象を処置するための方法であって、以下の工程を含む、方法:
頭蓋内アテローム動脈硬化性疾患を有しかつ少なくとも1回の脳卒中にかかったことがある対象に、抗血栓剤を投与する工程であって、該対象に由来する血小板上にあるFcγRIIaタンパク質のレベルが参照と比べて増加していると決定することによって該対象が選択され、それによって該対象を処置する、工程。
【請求項4】
個々の血小板上にあるFcγRIIaの分子の数を定量する工程をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
前記脳卒中が軽症脳卒中および/または一過性脳虚血発作である、請求項1~4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
前記抗血栓剤が、低分子化合物、阻害性核酸、および抗体またはその抗原結合断片からなる群より選択される、請求項1~5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
阻害性核酸が、アンチセンス分子、shRNA、およびsiRNAからなる群より選択される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記抗血栓剤が抗血小板剤または抗凝固剤を含む、請求項1~7のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
前記薬剤が、アデノシン二リン酸(ADP)受容体アンタゴニストおよび/またはプロテアーゼ活性化受容体(PAR)アンタゴニストを含む、請求項1~7のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
前記抗血栓剤がADP受容体アンタゴニストを含む、請求項1~9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
ADP受容体アンタゴニストがP2Y
12を標的とする、請求項10記載の方法。
【請求項12】
ADP受容体アンタゴニストが低分子化合物を含む、請求項10または請求項11記載の方法。
【請求項13】
ADP受容体アンタゴニストがチエノピリジンを含む、請求項10~12のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
チエノピリジンがプラスグレル、クロピドグレル、チカグレロル、またはチクロピジンを含む、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記抗血栓剤がPARアンタゴニストを含む、請求項1~14のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
PARアンタゴニストがPARI、PAR3、またはPAR4を標的とする、請求項15記載の方法。
【請求項17】
PARアンタゴニストがPARIを標的とする、請求項15または請求項16記載の方法。
【請求項18】
PARアンタゴニストが低分子化合物を含む、請求項15~17のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
PARアンタゴニストがボラパクサールを含む、請求項15~18のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
前記抗血栓剤が、アセチルサリチル酸(ASA)、ジピリダモール、および/またはエプチフィバチドを含む、請求項1~19のいずれか一項記載の方法。
【請求項21】
少なくとも2種の抗血栓剤を前記対象に投与する工程を含む、請求項1~20のいずれか一項記載の方法。
【請求項22】
前記抗血栓剤が抗凝固剤を含む、請求項1~8または請求項21のいずれか一項記載の方法。
【請求項23】
前記抗凝固剤が第XIa因子の阻害剤である、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記抗凝固剤が、アピキサバン、アルガトロバン、ベトリキサバン、ビバリルジン、ダビガトラン、デシルジン、エドキサバン、エノキサパリン、ヘパリン、レテプラーゼ、リバーロキサバン、および/またはワルファリンを含む、請求項22記載の方法。
【請求項25】
血小板上にあるFcyRIIaタンパク質のレベルが、フローサイトメトリー、イムノアッセイ、ELISA、ウェスタンブロッティング、およびラジオイムノアッセイからなる群より選択されるアッセイを用いて決定される、請求項1~24のいずれか一項記載の方法。
【請求項26】
血小板上にあるFcyRIIaタンパク質のレベルが、蛍光定量的アッセイまたは比色アッセイを用いて決定される、請求項1~25のいずれか一項記載の方法。
【請求項27】
血小板上にあるFcγRIIaタンパク質のレベルを決定することが、血小板を捕捉試薬と接触させることを含む、請求項1~26のいずれか一項記載の方法。
【請求項28】
前記捕捉試薬が、検出可能な標識を含む、抗FcγRIIaタンパク質抗体またはその抗原結合断片を含む、請求項21記載の方法。
【請求項29】
前記検出可能な標識が蛍光色素を含む、請求項22記載の方法。
【請求項30】
血小板上にあるFcγRIIaタンパク質のレベルがフローサイトメトリーを用いて決定される、請求項1~23のいずれか一項記載の方法。
【請求項31】
前記参照が、脳卒中にかかったことがない健常対象である、請求項1~30のいずれか一項記載の方法。
【請求項32】
前記参照が、頭蓋内アテローム動脈硬化性疾患を有しない健常対象である、請求項1~31のいずれか一項記載の方法。
【請求項33】
前記増加が少なくとも約1.5倍、2倍、3倍、4倍、または5倍の増加である、請求項1~32のいずれか一項記載の方法。
【請求項34】
血小板上にあるFcγRIIaタンパク質のレベルが、血小板あたり約7,500、8,000、9,000、または10,000より多いFcyRIIaタンパク質分子である場合、前記参照と比べて増加している、請求項1~33のいずれか一項記載の方法。
【請求項35】
血小板上にあるFcγRIIaタンパク質のレベルが、血小板あたり約8,000より多いFcyRIIaタンパク質分子である場合、前記参照と比べて増加している、請求項1~34のいずれか一項記載の方法。
【請求項36】
血小板上にあるFcγRIIaタンパク質のレベルが、血小板あたり約11,000より多いFcyRIIaタンパク質分子である場合、前記参照と比べて増加している、請求項33記載の方法。
【請求項37】
前記対象に由来する血小板上にあるFcγRIIaのレベルが、2つの時点で、血小板あたり約11,000コピーまたは約11,000コピーより多いFcγRIIaであると決定される場合にのみ、前記対象が選択される、請求項1~36のいずれか一項記載の方法。
【請求項38】
前記時点が少なくとも約1日隔てられている、請求項37記載の方法。
【請求項39】
前記時点が少なくとも約7日隔てられている、請求項37または請求項38記載の方法。
【請求項40】
心血管イベントの発生率および/または重症度が低減する、請求項1~39のいずれか一項記載の方法。
【請求項41】
後の脳卒中の発生率および/または重症度が低減する、請求項1~40のいずれか一項記載の方法。
【請求項42】
死亡の発生率が低減する、請求項1~41のいずれか一項記載の方法。
【請求項43】
頭蓋内アテローム動脈硬化性疾患を有しかつ少なくとも1回の脳卒中にかかったことがある、選択された対象を処置するための方法であって、以下の工程を含む、方法:
抗血小板剤および/または抗凝固剤を該選択された対象に投与する工程であって、該対象に由来する血小板上にあるFcγRIIaのレベルを決定することによって該対象が選択され、血小板あたり約7,500コピーより多いFcγRIIaのレベルによって、該対象が後の脳卒中および/または心血管イベントのリスクがありかつ抗血栓療法を必要とすると特定される、工程。
【請求項44】
個々の血小板上にあるFcγRIIaタンパク質の分子の数を定量する工程をさらに含む、請求項43記載の方法。
【請求項45】
前記抗血小板剤がアデノシン二リン酸(ADP)受容体アンタゴニストおよび/またはプロテアーゼ活性化受容体(PAR)アンタゴニストを含む、請求項43または請求項44記載の方法。
【請求項46】
アデノシン二リン酸(ADP)受容体アンタゴニストおよび/またはプロテアーゼ活性化受容体(PAR)アンタゴニストが、プラスグレル、チカグレロル、クロピドグレル、およびボラパクサールのうちの1つまたは複数を含む、請求項45記載の方法。
【請求項47】
前記抗血小板剤が、アセチルサリチル酸(ASA)、ジピリダモール、またはエプチフィバチドを含む、請求項43~46のいずれか一項記載の方法。
【請求項48】
前記抗凝固剤が、アピキサバン、アルガトロバン、ベトリキサバン、ビバリルジン、ダビガトラン、デシルジン、エドキサバン、エノキサパリン、ヘパリン、レテプラーゼ、リバーロキサバン、およびワルファリンのうちの1つまたは複数を含む、請求項43~47のいずれか一項記載の方法。
【請求項49】
FcγRIIa結合コンジュゲートと血小板の表面にあるFcγRIIaタンパク質分子との結合複合体を形成させるために前記対象に由来する血小板を含む試料をFcγRIIa結合コンジュゲートと接触させること、および
FcγRIIa結合コンジュゲートとFcγRIIaタンパク質分子との間の結合を検出すること
によって、FcγRIIaのレベルが決定される、請求項43~48のいずれか一項記載の方法。
【請求項50】
FcγRIIa結合コンジュゲートが抗FcγRIIa抗体である、請求項49記載の方法。
【請求項51】
血小板FcγRIIaのレベルが、フローサイトメトリー、イムノアッセイ、ELISA、ウェスタンブロッティング、およびラジオイムノアッセイからなる群より選択されるアッセイを用いて決定される、請求項43~50のいずれか一項記載の方法。
【請求項52】
請求項1~51のいずれか一項記載の方法において使用するためのキットであって、FcγRIIaタンパク質捕捉試薬を含む、キット。
【請求項53】
前記捕捉試薬が蛍光色素標識抗体を含む、請求項52記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
頭蓋内アテローム動脈硬化性疾患(ICAD)は、一過性脳虚血発作(TIA)および軽症脳卒中の重要な原因である可能性があり、高い脳卒中再発リスクと関連付けられ得る。内科的療法が、続いて起こる脳卒中の予防の中心になる可能性がある。主な内科的療法が抗血小板剤二剤併用療法(DAPT)である。DAPT(例えば、アスピリンとチカグレロルの併用)を用いると、脳卒中は、1種の薬物だけの使用より大きな程度まで予防される。しかしながら、薬物併用によって重度出血の発生率が上昇する。内科的療法は、この脳卒中予防と出血リスクのトレードオフを伴うことがあるので、臨床医は、現在、治療戦略決定を効果的に導くための適切なツールなしで、これらのトレードオフに面している治療戦略を決定するというジレンマに直面している。
【0002】
従って、脳卒中および/または一過性脳虚血発作(TIA)に罹患したことがある患者のリスクを評価するための、ならびに脳卒中および/または一過性脳虚血発作(TIA)に罹患したことがある患者に対する処置を選択するための改善された方法が、依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
下記のように、本発明は、頭蓋内アテローム動脈硬化性疾患(ICAD)に関連する軽症脳卒中または一過性脳虚血発作(TIA)に罹患したことがある患者に対する処置を選択するための組成物および方法を特徴とする。一局面において、本発明は、選択された対象を処置するための方法を特徴とする。前記方法は、以前に少なくとも1回の脳卒中にかかったことがある選択された対象に抗血栓剤を投与する工程であって、それによって対象を処置する、工程を伴う。対象は、対象に由来する血小板上にあるFcγRIIaタンパク質のレベルが参照と比べて増加していると決定することによって、選択される。態様において、対象は頭蓋内アテローム動脈硬化性疾患を有する。
【0004】
別の局面において、本発明は、選択された対象を処置するための方法を特徴とする。前記方法は、頭蓋内アテローム動脈硬化性疾患を有しかつ少なくとも1回の脳卒中にかかったことがある対象に、抗血栓剤を投与する工程であって、それによって対象を処置する、工程を伴う。対象は、対象に由来する血小板上にあるFcγRIIaタンパク質のレベルが参照と比べて増加していると決定することによって、選択される。
【0005】
別の局面において、本発明は、頭蓋内アテローム動脈硬化性疾患を有しかつ少なくとも1回の脳卒中にかかったことがある、選択された対象を処置するための方法を特徴とする。前記方法は、抗血小板剤および/または抗凝固剤を選択された対象に投与する工程を伴う。対象は、対象に由来する血小板上にあるFcγRIIaのレベルを決定することによって選択され、血小板あたり約7,500コピーより多いFcγRIIaのレベルによって、対象は後の脳卒中および/または心血管イベントのリスクがありかつ抗血栓療法を必要とすると特定される。
【0006】
別の局面において、本発明は、前記局面のいずれか一つの方法において使用するためのキットであって、FcγRIIaタンパク質捕捉試薬を含有する、キットを特徴とする。
【0007】
個々の血小板上にあるFcγRIIaタンパク質の分子の数を定量する工程をさらに含む、請求項43記載の方法。
【0008】
上記の局面のいずれかにおいて、前記方法は、個々の血小板上にあるFcγRIIaの分子の数を定量する工程をさらに伴う。
【0009】
上記の局面のいずれかにおいて、脳卒中は軽症脳卒中および/または一過性脳虚血発作である。
【0010】
上記の局面のいずれかにおいて、抗血栓剤は、低分子化合物、阻害性核酸、および抗体またはその抗原結合断片のうちの1つまたは複数より選択される。態様において、阻害性核酸は、アンチセンス分子、shRNA、およびsiRNAのうちの1つまたは複数より選択される。
【0011】
上記の局面のいずれかにおいて、抗血栓剤は抗血小板剤または抗凝固剤を含有する。上記の局面のいずれかにおいて、前記方法は少なくとも2種の抗血栓剤を対象に投与する工程を伴う。
【0012】
上記の局面のいずれかにおいて、前記薬剤は、アデノシン二リン酸(ADP)受容体アンタゴニストおよび/またはプロテアーゼ活性化受容体(PAR)アンタゴニストを含有する。
【0013】
上記の局面のいずれかにおいて、抗血栓剤はADP受容体アンタゴニストを含有する。態様において、ADP受容体アンタゴニストはP2Y12を標的とする。態様において、ADP受容体アンタゴニストは低分子化合物を含有する。態様において、ADP受容体アンタゴニストはチエノピリジンを含有する。態様において、チエノピリジンは、プラスグレル、クロピドグレル、チカグレロル、またはチクロピジンを含有する。
【0014】
上記の局面のいずれかにおいて、抗血栓剤はPARアンタゴニストを含有する。態様において、PARアンタゴニストはPARI、PAR3、またはPAR4を標的とする。態様において、PARアンタゴニストはPARIを標的とする。態様において、PARアンタゴニストは低分子化合物を含有する。態様において、PARアンタゴニストはボラパクサールを含有する。態様において、抗血栓剤は、アセチルサリチル酸(ASA)、ジピリダモール、および/またはエプチフィバチドを含有する。
【0015】
上記の局面のいずれかにおいて、抗血栓剤は抗凝固剤を含有する。態様において、抗凝固剤は第XIa因子の阻害剤である。態様において、抗凝固剤は、アピキサバン、アルガトロバン、ベトリキサバン、ビバリルジン、ダビガトラン、デシルジン、エドキサバン、エノキサパリン、ヘパリン、レテプラーゼ、リバーロキサバン、および/またはワルファリンを含有する。
【0016】
上記の局面のいずれかにおいて、血小板上にあるFcyRIIaタンパク質のレベルは、フローサイトメトリー、イムノアッセイ、ELISA、ウェスタンブロッティング、およびラジオイムノアッセイのうちの1つまたは複数より選択されるアッセイを用いて決定される。上記の局面のいずれかにおいて、血小板上にあるFcγRIIaタンパク質のレベルはフローサイトメトリーを用いて決定される。上記の局面のいずれかにおいて、血小板上にあるFcyRIIaタンパク質のレベルは、蛍光定量的アッセイまたは比色アッセイを用いて決定される。上記の局面のいずれかにおいて、血小板上にあるFcγRIIaタンパク質のレベルを決定することは、血小板を捕捉試薬と接触させることを伴う。態様において、捕捉試薬は、検出可能な標識を含有する、抗FcγRIIaタンパク質抗体またはその抗原結合断片を含有する。態様において、検出可能な標識は蛍光色素を含有する。態様において、捕捉試薬は蛍光色素標識抗体を含有する。
【0017】
上記の局面のいずれかにおいて、参照は、脳卒中にかかったことがない健常対象である。上記の局面のいずれかにおいて、参照は、頭蓋内アテローム動脈硬化性疾患を有しない健常対象である。
【0018】
上記の局面のいずれかにおいて、増加は、少なくとも約1.5倍、2倍、3倍、4倍、または5倍の増加である。上記の局面のいずれかにおいて、血小板上にあるFcγRIIaタンパク質のレベルは、血小板あたり約7,500、8,000、9,000、または10,000より多いFcyRIIaタンパク質分子である場合、参照と比べて増加している。上記の局面のいずれかにおいて、血小板上にあるFcγRIIaタンパク質のレベルは、血小板あたり約8,000より多いFcyRIIaタンパク質分子である場合、参照と比べて増加している。上記の局面のいずれかにおいて、血小板上にあるFcγRIIaタンパク質のレベルは、血小板あたり約11,000より多いFcyRIIaタンパク質分子である場合、参照と比べて増加している。
【0019】
上記の局面のいずれかにおいて、対象に由来する血小板上にあるFcγRIIaのレベルが、2つの時点で、血小板あたり約11,000コピーまたは約11,000コピーより多いFcγRIIaであると決定される場合にのみ、対象は選択される。態様において、時点は少なくとも約1日隔てられている。態様において、時点は少なくとも約7日隔てられている。
【0020】
上記の局面のいずれかにおいて、心血管イベントの発生率および/または重症度が低減する。上記の局面のいずれかにおいて、後の脳卒中の発生率および/または重症度が低減する。上記の局面のいずれかにおいて、死亡の発生率が低減する。
【0021】
上記の局面のいずれかにおいて、抗血小板剤は、アデノシン二リン酸(ADP)受容体アンタゴニストまたはプロテアーゼ活性化受容体(PAR)アンタゴニストを含有する。上記の局面のいずれかにおいて、アデノシン二リン酸(ADP)受容体アンタゴニストおよび/またはプロテアーゼ活性化受容体(PAR)アンタゴニストは、プラスグレル、チカグレロル、クロピドグレル、およびボラパクサールのうちの1つまたは複数を含有する。上記の局面のいずれかにおいて、抗血小板剤は、アセチルサリチル酸(ASA)、ジピリダモール、またはエプチフィバチドを含有する。上記の局面のいずれかにおいて、抗凝固剤は、アピキサバン、アルガトロバン、ベトリキサバン、ビバリルジン、ダビガトラン、デシルジン、エドキサバン、エノキサパリン、ヘパリン、レテプラーゼ、リバーロキサバン、およびワルファリンのうちの1つまたは複数を含有する。
【0022】
上記の局面のいずれかにおいて、FcγRIIa結合コンジュゲートと血小板の表面にあるFcγRIIaタンパク質分子との結合複合体を形成させるために対象に由来する血小板を含有する試料をFcγRIIa結合コンジュゲートと接触させること、およびFcγRIIa結合コンジュゲートとFcγRIIaタンパク質分子との間の結合を検出することによって、FcγRIIaのレベルは決定される。態様において、FcγRIIa結合コンジュゲートは抗FcγRIIa抗体である。
【0023】
本発明は、頭蓋内アテローム動脈硬化性疾患(ICAD)に関連する軽症脳卒中または一過性脳虚血発作(TIA)に罹患したことがある患者に対する処置を選択するための組成物および方法を提供する。本発明によって定義される組成物および物品は、下記で示される実施例に関連して単離されるか、別の方法で製造される。本発明の他の特徴および利点は、詳細な説明および特許請求の範囲から明らかである。
【0024】
定義
特に定義のない限り、本明細書で使用する全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者により一般的に理解される意味を有する。以下の参考文献:Singleton et al., Dictionary of Microbiology and Molecular Biology (2nd ed. 1994); The Cambridge Dictionary of Science and Technology (Walker ed., 1988); The Glossary of Genetics, 5th Ed., R. Rieger et al. (eds.), Springer Verlag (1991);およびHale & Marham, The Harper Collins Dictionary of Biology (1991)は、当業者に、本発明において用いられる用語の多くの一般的な定義を提供する。本明細書で使用する以下の用語は、特に定めのない限り、以下の、これらの用語のものとされている意味を有する。
【0025】
「FcγRIIaタンパク質」とは、GenBankアクセッション番号NP_001129691.1に対して少なくとも約85%の同一性を有する低親和性免疫グロブリンγFc領域受容体II-a、またはIgGタンパク質に結合する、その断片を意味する。FcγRIIaの例示的なアミノ酸配列は、GenBankアクセッション番号NP_001129691.1:
で提供される。
【0026】
「FcγRIIaポリヌクレオチド」とは、FcγRIIaタンパク質をコードする核酸分子を意味する。FcγRIIaタンパク質をコードする例示的な核酸分子は、GenBankアクセッション番号NM_001136219.1:
で提供される。
【0027】
「FcγRIIaタンパク質特異的薬剤」とは、FcγRIIaタンパク質に特異的に結合する任意の低分子化合物、抗体、核酸分子、またはタンパク質、またはそれらの断片を意味する。FcγRIIaタンパク質特異的薬剤の非限定的な例は、抗FcγRIIaタンパク質抗体またはその断片である。
【0028】
「プロテアーゼ活性化受容体(PAR)タンパク質」とは、その細胞外ドメインの一部が切断されることで活性化されるGタンパク質共役受容体を意味する。PARは血小板中に高レベルで存在する。PARにはトロンビン受容体PARI、PAR3、およびPAR4が含まれる。PARは、トロンビンなどのセリンプロテアーゼの作用によって活性化される(例えば、PAR1、3および4を活性化する)。受容体のN末端が切断されると、アゴニストとして作用するテザーリガンド(SFLLRN)が生じて生理学的応答が引き起こされる。トロンビンの細胞作用がプロテアーゼ活性化受容体(PAR)によって媒介される。血小板におけるトロンビンシグナル伝達は止血および血栓症に寄与する。トロンビン受容体アンタゴニストには、PARIアンタゴニストであるボラパクサール(SCH530348)が含まれる。
【0029】
「アデノシン二リン酸(ADP)受容体タンパク質」とは、ヌクレオチドアデノシン二リン酸(ADP)によって刺激されるプリンGタンパク質共役受容体を意味する。ADP受容体には、血栓症を調節するP2Y12が含まれる。アデノシン二リン酸(ADP)受容体アンタゴニストは、アデノシン二リン酸受容体を阻害する薬剤である。P2Y12は、プラスグレル、クロピドグレル、チカグレロル、チクロピジン、および他のチエノピリジンを含む抗血小板薬物の標的である。
【0030】
「アセチルサリチル酸(ASA)」とは、CAS番号50-78-2に対応しかつ構造
を有する化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和化合物を意味する。アセチルサリチル酸(ASA)は血小板凝集阻害剤である。
【0031】
「クロピドグレル」とは、CAS番号113665-84-2に対応しかつ構造
を有する化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和化合物を意味する。クロピドグレルは強力な血小板凝集阻害剤である。
【0032】
「ジピリダモール」とは、CAS番号58-32-2に対応しかつ構造
を有する化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和化合物を意味する。ジピリダモールは血小板凝集阻害剤である。
【0033】
「エプチフィバチド」とは、CAS番号188627-80-7に対応しかつ構造
を有する化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和化合物を意味する。エプチフィバチドは血小板凝集阻害剤である。
【0034】
「プラスグレル」とは、CAS番号150322-43-3に対応しかつ構造
を有する化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和化合物を意味する。プラスグレルは強力な血小板凝集阻害剤である。
【0035】
「チカグレロル」とは、CAS番号274693-27-5に対応しかつ構造
を有する化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和化合物を意味する。チカグレロルは強力な血小板凝集阻害剤である。
【0036】
「チクロピジン」とは、CAS番号55142-85-3に対応しかつ構造
を有する化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和化合物を意味する。チクロピジンは強力な血小板凝集阻害剤である。
【0037】
「ボラパクサール」とは、CAS番号618385-01-6に対応しかつ構造
を有する化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和化合物を意味する。ボラパクサールは強力な血小板凝集阻害剤である。
【0038】
「アピキサバン」とは、CAS番号503612-47-3に対応しかつ構造
を有する化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和化合物を意味する。アピキサバンは抗凝固剤である。
【0039】
「アルガトロバン」とは、CAS番号74863-84-6に対応しかつ構造
を有する化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和化合物を意味する。アルガトロバンは抗凝固剤である。
【0040】
「ベトリキサバン」とは、CAS番号330942-05-7に対応しかつ構造
を有する化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和化合物を意味する。ベトリキサバンは抗凝固剤である。
【0041】
「ビバリルジン」とは、CAS番号128270-60-0に対応しかつ構造
を有する化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和化合物を意味する。ビバリルジンは抗凝固剤である。
【0042】
「ダビガトラン」とは、CAS番号211915-06-9に対応しかつ構造
を有する化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和化合物を意味する。ダビガトランは抗凝固剤である。
【0043】
「デシルジン」とは、アミノ酸配列
に対して少なくとも85%の配列同一性を有するペプチドを意味する。態様において、デシルジンのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:1に対して少なくとも約90%、95%、または99%の配列同一性を有する。態様において、デシルジンのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:1と比べて1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の変化を含有する。デシルジンは抗凝固剤である。
【0044】
「エドキサバン」とは、CAS番号480449-70-5に対応しかつ構造
を有する化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和化合物を意味する。エドキサバンは抗凝固剤である。
【0045】
「エノキサパリン」とは、CAS番号679809-58-6に対応しかつ構造
を有する化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和化合物を意味する。エノキサパリンは抗凝固剤である。
【0046】
「ヘパリン」とは、CAS番号9005-49-6に対応しかつ構造
を有する化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和化合物を意味する。ヘパリンは抗凝固剤である。
【0047】
「レテプラーゼ」とは、アミノ酸配列
に対して少なくとも85%の配列同一性を有するペプチドを意味する。態様において、レテプラーゼのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:2に対して少なくとも約90%、95%、または99%の配列同一性を有する。態様において、レテプラーゼのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:2と比べて1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の変化を含有する。レテプラーゼは抗凝固剤である。
【0048】
「リバーロキサバン」またはとは、CAS番号366789-02-8に対応しかつ構造
を有する化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和化合物を意味する。リバーロキサバンは抗凝固剤である。
【0049】
「ワルファリン」とは、CAS番号81-81-2に対応しかつ構造
を有する化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和化合物を意味する。ワルファリンは抗凝固剤である。本明細書で使用する「薬学的に許容される塩」という用語は、適切な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、過敏、アレルギー反応などが無く、ヒトおよび下等動物の組織との接触における使用に適しており、妥当なベネフィット/リスク比に見合った塩を指す。アミン、カルボン酸、および他のタイプの化合物の薬学的に許容される塩が、当技術分野において周知である。例えば、S. M. Bergeらは、本明細書において参照により組み入れられるJ Pharmaceutical Sciences 66 (1977): 1-19において、薬学的に許容される塩を詳述している。塩は、本願の化合物(例えば、FDAに認可された化合物)の最後の単離および精製の間にインサイチューで調製されてもよく、別々に、下記でおおまかに説明されるように遊離塩基官能基もしくは遊離酸官能基を適切な試薬と反応させることによってインサイチューで調製されてもよい。例えば、遊離塩基官能基を適切な酸と反応させることができる。さらに、本願の投与される化合物が酸性部分を有する場合、その適切な薬学的に許容される塩は、金属塩、例えば、アルカリ金属塩、例えば、ナトリウム塩またはカリウム塩;およびアルカリ土類金属塩、例えば、カルシウム塩またはマグネシウム塩を含んでいてもよい。薬学的に許容される無毒の酸添加塩の例は、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、および過塩素酸、または有機酸、例えば、酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸、もしくはマロン酸を用いて形成されるアミノ基の塩、あるいはイオン交換などの当技術分野において用いられる他の方法を用いることで形成されるアミノ基の塩である。他の薬学的に許容される塩には、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩(camphorate)、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチネート(pectinate)、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などが含まれる。代表的なアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩には、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどが含まれる。さらなる薬学的に許容される塩には、適宜、無毒のアンモニウム、四級アンモニウム、および対イオンを用いて形成されるアミンカチオン、例えば、ハロゲン化物、水酸化物、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、低級アルキルスルホン酸塩、およびアリールスルホン酸塩が含まれる。
【0050】
「抗血栓剤」とは、抗血栓療法において使用するのに適した薬剤を意味する。抗血栓剤の非限定的な例には、抗血小板薬物、例えば、PARアンタゴニスト(例えば、ボラパクサール)、ADP受容体アンタゴニスト(例えば、クロピドグレル、プラスグレル、チカグレロル、チクロピジン、および他のチエノピリジン)、アセチルサリチル酸(ASA)、ジピリダモール、ならびにエプチフィバチドが含まれる。抗血栓剤のさらなる非限定的な例には、抗凝固剤、例えば、アピキサバン、アルガトロバン、ベトリキサバン、ビバリルジン、ダビガトラン、デシルジン、エドキサバン、エノキサパリン、ヘパリン、レテプラーゼ、リバーロキサバン、ワルファリン、および第XIa因子(FXIa)阻害剤(例えば、Rami A. Al-Horani and Umesh R. Desani, Expert Opin Ther Pat. 26:323-345 (2016)に記載のもの)が含まれる。
【0051】
「抗血栓療法」とは、対象において血栓症を阻害または低減するのに用いられる任意の処置を意味する。態様において、抗血栓療法は、抗血小板剤および/または抗凝固剤を対象に投与することを伴う。
【0052】
「薬剤」とは、任意の低分子化合物、抗体、核酸分子、またはタンパク質、またはそれらの断片を意味する。態様において、前記薬剤は抗血栓剤である。
【0053】
「寛解させる」とは、疾患の発症または進行を減少させる、抑制する、弱める、減らす、止める、または安定化することを意味する。
【0054】
「変化」とは、標準的な、当技術分野において公知の方法、例えば、本明細書に記載の方法によって検出される、ポリヌクレオチドまたはタンパク質の配列、レベル、または活性の変動(増加または減少)を意味する。本明細書で使用する変化は、レベルが10%変動すること、レベルが好ましくは25%変動すること、より好ましくは40%変動すること、最も好ましくは50%以上変動することを含む。
【0055】
「類似体」とは、参照分子と同一ではないが、類似する機能特徴または構造特徴を有する分子を意味する。例えば、タンパク質類似体は、天然タンパク質と比べて類似体の機能を増強する、ある特定の生化学的改変を有しながら、対応する天然タンパク質の生物学的活性を保持している。このような生化学的改変は、例えば、リガンド結合を変えることなく、類似体のプロテアーゼ耐性、膜透過性、または半減期を増加できるかもしれない。類似体は非天然アミノ酸を含んでいてもよい。
【0056】
「捕捉試薬」とは、タンパク質または核酸分子に特異的に結合する試薬を意味する。様々な態様において、FcγRIIaタンパク質に対する捕捉試薬は抗FcγRIIaタンパク質抗体である。
【0057】
「心血管イベント」とは、心筋に対する損傷と関連付けることができるインシデントを意味する。心血管イベントの非限定的な例には心筋梗塞(MI;すなわち、心臓発作)および心不全が含まれる。
【0058】
この開示では、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含有する(containing)」、および「有する(having)」などは、米国特許法においてこれらの用語のものとされている意味を有することがあり、「含む(includes)」、「含む(including)」などを意味することがある。同様に、「から本質的になる(consisting essentially of)」または「本質的になる(consists essentially)」は、米国特許法においてこの用語のものとされている意味を有し、この用語はオープンエンドであり、列挙されたものの基本的な、または新規の特徴が、列挙されたものより多いが、先行技術の態様を除くものが存在することで変わらない限り、列挙されたものより多くのものが存在するのを可能にする。特定の成分または要素を「含む(comprising)」と指定されたどの態様も、一部の態様において、特定の成分もしくは要素「からなる(consisting of)」または特定の成分もしくは要素「から本質的になる」とも意図される。
【0059】
「から本質的になる」とは、成分が、市販の材料に存在する通常の不純物と一緒に、かつ本開示の操作に影響を及ぼさないレベルで、例えば、5重量%未満もしくは1%未満のレベルで、または0.5重量%のレベルでさえ存在する他の任意の添加物と共に、列挙された成分しか含まないことを意味する。
【0060】
「検出する」とは、検出しようとする分析物の存在、非存在、または量を特定することを指す。態様において、分析物はFcγRIIaタンパク質である。「分析物結合コンジュゲート」とは、検出しようとする化合物に結合する検出可能な分子を意味する。態様において、分析物結合コンジュゲートは、検出可能な標識を含む抗FcγRIIa抗体である。
【0061】
「検出可能な標識」とは、関心対象の分子と連結された時に、関心対象の分子の検出を可能にする組成物を意味する。一部の態様において、検出可能な標識は、分光学的手段、光化学的手段、生化学的手段、免疫化学的手段、または化学的手段を介して検出される。例えば、有用な標識には、放射性同位体、磁気ビーズ、金属ビーズ、コロイド粒子、蛍光色素、高電子密度試薬、酵素(例えば、ELISAにおいて一般的に用いられる酵素)、ビオチン、ジゴキシゲニン、またはハプテンが含まれる。
【0062】
「疾患」とは、細胞、組織、または臓器の正常機能を傷つけるか、またはそれを妨害する任意の状態または障害を意味する。疾患の非限定的な例には、一過性脳虚血発作(TIA)、頭蓋内アテローム動脈硬化性疾患(ICAD)、および脳卒中が含まれる。
【0063】
「有効量」とは、未処置の患者と比べて疾患の症状および/または発生率を寛解させるのに有効な薬剤の量を意味する。一部の態様において、薬剤の有効量は、血栓または血栓を発症する傾向を安定化するか、低減するか、または無くすのに有用な量である。疾患の治療的処置のために本発明を実施するのに用いられる活性化合物の有効量は、投与方法、対象の年齢、体重、および全身の健康状態に応じて変わる。最終的に、主治医または獣医師が適切な量および投与計画を決める。このような量は「有効」量と呼ばれる。疾患の発生率の寛解は、イベント(例えば、脳卒中、心血管イベント、または死亡)の発生の頻度を減少させる、または無くすことを含んでいてもよい。
【0064】
「断片」とは、タンパク質または核酸分子の部分を意味する。この部分は、好ましくは、参照核酸分子またはタンパク質の全長の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%を含有する。断片は、10、20、30、40、50、60、70、80、90、または100、200、300、400、500、600、700、800、900、または1000ヌクレオチドまたはアミノ酸を含有してもよい。
【0065】
「ハイブリダイゼーション」とは、ワトソン-クリック、フーグスティーン、または逆フーグスティーン水素結合でもよい相補的核酸塩基間の水素結合を意味する。例えば、アデニンおよびチミンは、水素結合の形成によって対形成した相補的核酸塩基である。
【0066】
「増加する」とは、参照と比べて少なくとも10%、25%、50%、75%、または100%プラスに変化することを意味する。
【0067】
「阻害性核酸」とは、哺乳動物細胞に投与された時に、標的遺伝子の発現を(例えば、10%、25%、50%、75%、または90~100%さえ)減少させる、二本鎖RNA、siRNA、shRNA、もしくはアンチセンスRNA、またはその一部、またはそのミメティックを意味する。典型的に、核酸阻害剤は、標的核酸分子、もしくはそのオルソログの少なくとも一部を含むか、または標的核酸分子の相補鎖の少なくとも一部を含む。例えば、阻害性核酸分子は、本明細書において描写された任意または全ての核酸の少なくとも一部を含む。
【0068】
「単離された」、「精製された」、または「生物学的に純粋な」という用語は、天然状態で見出されるように、通常、付随する成分を様々な程度で含まない材料を指す。「単離する」とは、元の供給源または周囲にあるものからの分離の程度を示す。「精製する」とは、単離より大きな分離の程度を示す。「精製された」または「生物学的に純粋な」タンパク質は、どの不純物も、そのタンパク質の生物学的特性に大きく影響を及ぼさないように、または他の有害な結果を引き起こさないように他の材料が十分に無い。すなわち、本発明の核酸またはペプチドは、組換えDNA法によって産生された時に細胞材料もウイルス材料も培養培地も実質的に含まなければ、または化学合成された時に化学前駆体も他の化学物質も実質的に含まなければ精製されている。純度および均一性は、典型的に、分析化学技法、例えば、ポリアクリルアミドゲル電気泳動または高速液体クロマトグラフィーを用いて決定される。「精製された」という用語は、核酸またはタンパク質が電気泳動ゲル中で1つのバンドを生じることを示すことがある。修飾、例えば、リン酸化またはグリコシル化に供することができるタンパク質の場合、異なる修飾が異なる単離されたタンパク質を生じることがあり、これらは別々に精製することができる。
【0069】
「単離されたポリヌクレオチド」とは、本発明の核酸分子が得られた生物の天然ゲノム中にある、遺伝子の隣接遺伝子が無い核酸(例えば、DNA)を意味する。従って、この用語は、例えば、ベクター;自己複製プラスミドもしくはウイルス;または原核生物もしくは真核生物のゲノムDNAに組み込まれているか、あるいは他の配列とは無関係に別々の分子(例えば、PCRまたは制限エンドヌクレアーゼ消化によって生じたcDNAまたはゲノム断片もしくはcDNA断片)として存在する組換えDNAを含む。さらに、この用語は、DNA分子から転写されたRNA分子、ならびに、さらなるタンパク質配列をコードするハイブリッド遺伝子の一部である組換えDNAを含む。
【0070】
「単離されたタンパク質」とは、天然で付随する成分から分離されている本発明のタンパク質を意味する。典型的に、タンパク質は、天然で関連するタンパク質および天然有機分子を含まず、少なくとも60重量%である時に単離されている。好ましくは、調製物は、少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、最も好ましくは少なくとも99重量%の本発明のタンパク質である。本発明の単離されたタンパク質は、例えば、天然供給源からの抽出によって入手されてもよく、このようなタンパク質をコードする組換え核酸の発現によって入手されてもよく、タンパク質を化学合成することによって入手されてもよい。純度は、任意の適切な方法、例えば、カラムクロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、またはHPLC分析によって測定することができる。
【0071】
「マーカー」とは、疾患または障害と関連する変化を含む任意のタンパク質、ポリヌクレオチド、または臨床パラメータを意味する。一部の態様において、変化とは、レベル、活性、または二次的修飾の変動である。例えば、FcγRIIaタンパク質のレベル、活性、リン酸化、および/または発現の増加は、血小板反応性の増加、ならびに/または脳卒中、心血管イベント、および/もしくは死亡の発生率の増加と関連付けられる可能性が高い。
【0072】
「薬剤を入手する」の中にあるように本明細書で使用する「入手する」とは、その薬剤を合成する、購入する、または別の方法で獲得することを含む。
【0073】
「タンパク質」または「アミノ酸配列」とは、長さにも翻訳後修飾にも関係ない任意のアミノ酸鎖を意味する。態様において、タンパク質は翻訳後修飾を含む。態様において、タンパク質は1つの分子である。様々な態様において、翻訳後修飾はグリコシル化またはリン酸化である。様々な態様において、タンパク質の機能的に等価な変種またはホモログを提供するように、保存的アミノ酸置換がタンパク質に行われてもよい。一部の局面において、本発明は、保存的アミノ酸置換をもたらす配列変化を包含する。一部の態様において、「保存的アミノ酸置換」は、保存的アミノ酸置換が行われるタンパク質の相対電荷またはサイズ特徴を変えないアミノ酸置換を指す。変種は、当業者に公知のタンパク質配列を変えるための方法、例えば、このような方法を編集した参考文献、例えば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, J. Sambrook, et al., eds., Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989、またはCurrent Protocols in Molecular Biology, F. M. Ausubel, et al., eds., John Wiley & Sons, Inc., New Yorkにおいて見られる方法に従って調製することができる。アミノ酸の保存的置換の非限定的な例には、以下のグループ:(a)M、I、L、V;(b)F、Y、W;(c)K、R、H;(d)A、G;(e)S、T;(f)Q、N;および(g)E、Dの中のアミノ酸間でなされる置換が含まれる。様々な態様において、保存的アミノ酸置換は、前記タンパク質および本明細書において開示されたタンパク質のアミノ酸配列に対して行うことができる。
【0074】
「低減する」とは、少なくとも10%、25%、50%、75%、または100%マイナスに変化することを意味する。
【0075】
「参照」とは、標準または対照の条件を意味する。参照の非限定的な例は、健常対象または健常対象から採取された試料である。態様において、健常対象は、脳卒中、心血管イベント、もしくは死亡に罹患したことがない、および/または前の脳卒中もしくは心血管イベントの後に、後の脳卒中、心血管イベント、もしくは死亡に罹患したことがない。
【0076】
「参照配列」とは、配列比較の基準として用いられる規定された配列である。参照配列は、指定された配列の一部でもよく全体でもよく、例えば、完全長cDNAもしくは遺伝子配列、または完全cDNAもしくは遺伝子配列の一部でもよい。タンパク質の場合、参照タンパク質配列の長さは、一般的に、少なくとも約16アミノ酸、好ましくは少なくとも約20アミノ酸、より好ましくは少なくとも約25アミノ酸、さらにより好ましくは約35アミノ酸、約50アミノ酸、または約100アミノ酸である。核酸の場合、参照核酸配列の長さは、一般的に、少なくとも約50ヌクレオチド、好ましくは少なくとも約60ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも約75ヌクレオチド、さらにより好ましくは約100ヌクレオチド、もしくは約300ヌクレオチド、またはそのあたりの、もしくはその間にある任意の整数である。
【0077】
「siRNA」とは二本鎖RNAを意味する。最適には、siRNAは、長さが18、19、20、21、22、23または24ヌクレオチドであり、その3'末端に2塩基オーバーハングを有する。これらの二本鎖RNA(dsRNA)を個々の細胞または動物全体に導入することができる。例えば、これらの二本鎖RNA(dsRNA)は血流を通して全身に導入され得る。このようなsiRNAはmRNAレベルまたはプロモーター活性をダウンレギュレートするのに用いられる。
【0078】
「特異的に結合する」とは、本発明のタンパク質を認識および結合するが、試料、例えば、天然で本発明のタンパク質を含む生物学的試料の中にある他の分子を実質的に認識および結合しない化合物または抗体を意味する。
【0079】
「脳卒中」とは、ニューロン細胞死をもたらす、中枢神経系に向かう血流の中断を意味する。脳卒中の血管性の原因には、脳梗塞、脳内出血(ICH)、およびくも膜下出血(SAH)が含まれるが、これに限定されない。脳卒中の種類の非限定的な例については、Sacco et al., An updated definition of stroke for the 21st century, Stroke 2013;44:2064-89と以下の表 1も参照されたい。態様において、脳卒中は軽症脳卒中である。態様において、軽症脳卒中を有する対象は、あらゆるNational Institutes Health Stroke Scale(NIHSS)項目において≦1のスコアと正常意識および/またはNIHSS ≦1 3を有する(Fischer, et al,「What Is a Minor Stroke?」, Stroke, 41:661-666 (2010)を参照されたい)。態様において、軽症脳卒中を有する対象は、0~3のNIHSSと、NIHSSでは測定できない欠陥、純粋感覚性脳卒中、孤立性運動失調、孤立性構音障害、または孤立性顔面脱力のうちの1つまたは複数を有する(Strambo, et al., 「Defining minor symptoms in acute ischemic stroke」, Cerebrovascular Diseases, 39-209-215 (2015)を参照されたい)。態様において、軽症脳卒中を有する対象は、0~1のNIHSSと、NIHSSでは測定できない欠陥、または意識水準(LOC)、注視、顔面神経麻痺、感覚、もしくは構音障害において割り当てられた点で全NIHSSスコア=1になる欠陥のうちの1つまたは複数(Stramboらを参照されたい)を有する。態様において、軽症脳卒中を有する対象は≦3のNIHSSを有する。態様において、軽症脳卒中を有する対象は、≦6のNIHSSと、意識水準(LOC)項目の維持、皮質(言語および視野)ならびに運動項目(四肢および会話)のスコア≦1、利き腕の運動項目のスコア0、ならびに残りの項目の任意のスコア(Stramboらを参照されたい)を有する。
【0080】
【0081】
「一過性脳虚血発作(TIA)」とは、一過性の神経学的機能不全をもたらす、中枢神経系に向かう血液供給の中断を意味する。態様において、TIAは可逆的な神経学的機能不全と関連する。
【0082】
本発明の方法において有用な核酸分子は、本発明のタンパク質またはその断片をコードする任意の核酸分子を含む。このような核酸分子は内因性核酸配列と100%同一である必要はないが、典型的に、実質的同一性を示す。内因性配列に対して「実質的同一性」を有するポリヌクレオチドは、典型的に、二本鎖核酸分子のうちの少なくとも1本の鎖とハイブリダイズすることができる。本発明の方法において有用な核酸分子には、本発明のタンパク質またはその断片をコードする任意の核酸分子が含まれる。このような核酸分子は内因性核酸配列と100%同一である必要はないが、典型的に、実質的同一性を示す。内因性配列に対して「実質的同一性」を有するポリヌクレオチドは、典型的に、二本鎖核酸分子のうちの少なくとも1本の鎖とハイブリダイズすることができる。「ハイブリダイズする」とは、様々なストリンジェンシー条件下で相補的ポリヌクレオチド配列(例えば、本明細書に記載の遺伝子)またはその一部の間で二本鎖分子を形成するように対になることを意味する(例えば、Wahl, G. M. and S. L. Berger (1987) Methods Enzymol. 152:399; Kimmel, A. R. (1987) Methods Enzymol. 152:507を参照されたい)。
【0083】
例えば、ストリンジェントな塩濃度は、通常、約750mM未満のNaClおよび75mM未満のクエン酸三ナトリウムであり、好ましくは、約500mM未満のNaClおよび50mMのクエン酸三ナトリウムであり、より好ましくは約250mM未満のNaClおよび25mMのクエン酸三ナトリウムである。低ストリンジェンシーハイブリダイゼーションは、有機溶媒、例えば、ホルムアミドの非存在下で得ることができるのに対して、高ストリンジェンシーハイブリダイゼーションは少なくとも約35%ホルムアミド、より好ましくは少なくとも約50%ホルムアミドの存在下で得ることができる。ストリンジェントな温度条件は、通常、少なくとも約30℃、より好ましくは少なくとも約37℃、最も好ましくは少なくとも約42℃の温度を含む。ハイブリダイゼーション時間、界面活性剤、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の濃度、および担体DNAの含有または除外などのさらなるパラメータの変更は当業者に周知である。ストリンジェンシーの様々なレベルが、必要に応じて、これらの様々な条件を組み合わせることで成し遂げられる。好ましい態様において、ハイブリダイゼーションは、750mM NaCl、75mMクエン酸三ナトリウム、および1%SDSの中で30℃で行われる。より好ましい態様において、ハイブリダイゼーションは、500mM NaCl、50mMクエン酸三ナトリウム、1%SDS、35%ホルムアミド、および100μg/ml変性サケ精子DNA(ssDNA)の中で37℃で行われる。最も好ましい態様において、ハイブリダイゼーションは、250mM NaCl、25mMクエン酸三ナトリウム、1%SDS、50%ホルムアミド、および200μg/ml ssDNAの中で42℃で行われる。これらの条件の有用なバリエーションは当業者に容易に明らかである。
【0084】
ほとんどの用途について、ハイブリダイゼーションに続く洗浄工程もストリンジェンシーの点で変わる。洗浄ストリンジェンシー条件は塩濃度と温度によって規定することができる。上記のように、塩濃度を減少させることで、または温度を増加させることで洗浄ストリンジェンシーを増加することができる。例えば、洗浄工程用のストリンジェントな塩濃度は、好ましくは、約30mM未満のNaClおよび3mMのクエン酸三ナトリウム、最も好ましくは約15mM未満のNaClおよび1.5mMのクエン酸三ナトリウムである。洗浄工程のためのストリンジェントな温度条件は、通常、少なくとも約25℃、より好ましくは少なくとも約42℃、さらにより好ましくは少なくとも約68℃の温度を含む。好ましい態様において、洗浄工程は、30mM NaCl、3mMクエン酸三ナトリウム、および0.1%SDSの中で25℃で行われる。より好ましい態様において、洗浄工程は、15mM NaCl、1.5mMクエン酸三ナトリウム、および0.1%SDSの中で42Cで行われる。より好ましい態様において、洗浄工程は、15mM NaCl、1.5mMクエン酸三ナトリウム、および0.1%SDSの中で68℃で行われる。これらの条件のさらなるバリエーションは当業者に容易に明らかである。ハイブリダイゼーション法は当業者に周知であり、例えば、Benton and Davis(Science 196:180, 1977); Grunstein and Hogness (Proc. Natl. Acad. Sci., USA 72:3961, 1975); Ausubel et al. (Current Protocols in Molecular Biology, Wiley Interscience, New York, 2001); Berger and Kimmel (Guide to Molecular Cloning Techniques, 1987, Academic Press, New York);およびSambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New Yorkに記載されている。
【0085】
「実質的に同一の」とは、参照アミノ酸配列(例えば、本明細書に記載のアミノ酸配列のいずれか1つ)または核酸配列(例えば、本明細書に記載の核酸配列のいずれか1つ)に対して少なくとも50%の同一性を示すタンパク質または核酸分子を意味する。好ましくは、このような配列は、比較のために用いられた配列に対してアミノ酸レベルまたは核酸で少なくとも60%、より好ましくは80%または85%、より好ましくは90%、95%、またはさらに99%同一である。
【0086】
配列同一性は、典型的に、配列分析ソフトウェア(例えば、Genetics Computer Group, University of Wisconsin Biotechnology Center, 1710 University Avenue, Madison, Wis. 53705の配列分析ソフトウェアパッケージ(Sequence Analysis Software Package)、BLAST、BESTFIT、GAP、またはPILEUP/PRETTYBOXプログラム)を用いて測定される。このようなソフトウェアは、相同性の程度を様々な置換、欠失、および/または他の修飾に割り当てることで同一の配列または類似の配列を一致させる。保存的置換は、典型的に、以下のグループ:グリシン、アラニン;バリン、イソロイシン、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン;セリン、スレオニン;リジン、アルギニン;およびフェニルアラニン、チロシンの中での置換を含む。同一性の程度を決定する例示的なアプローチでは、BLASTプログラムが用いられる場合があり、e-3~e-100の確率スコアが、密接に関連する配列を示す。
【0087】
「対象」とは動物を意味する。動物は哺乳動物でもよい。哺乳動物は、ヒトまたは非ヒト哺乳動物、例えば、ウシ、ウマ、イヌ、ヒツジ、げっ歯類、もしくはネコでもよい。
【0088】
本明細書において提供される範囲は、その範囲内にある値の全ての省略表現だと理解される。例えば、1~50の範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、または50からなる群からの任意の数、数の組み合わせ、または部分範囲を含むと理解される。
【0089】
本明細書で使用する「処置する(treat)」、「処置する(treating)」、「処置」などという用語は、障害および/またはそれに関連する症状を低減すること、または寛解させることを指す。除外されてはいないが、障害または状態の処置は、障害、状態、またはこれらに関連する症状が完全に無くなることを必要としないことが理解される。処置は、脳卒中、心血管イベント、および/もしくは死亡の少なくとも1つの症状の寛解を伴ってもよい、および/または脳卒中、心血管イベント、および/もしくは死亡のリスク、発生、後の発生、もしくは再発を低減してもよい。心血管イベントの非限定的な例は心臓発作である。
【0090】
具体的に述べられていない限り、または文脈から明らかでない限り、本明細書で使用する「または」という用語は包括的であると理解される。具体的に述べられていない限り、または文脈から明らかでない限り、本明細書で使用する用語「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は単数または複数であると理解される。
【0091】
具体的に述べられていない限り、または文脈から明らかでない限り、本明細書で使用する「約」という用語は、当技術分野において通常の許容差の範囲内、例えば、平均の2標準偏差の範囲内だと理解される。約は、述べられた値の10%以内、9%以内、8%以内、7%以内、6%以内、5%以内、4%以内、3%以内、2%以内、1%以内、0.5%以内、0.1%以内、0.05%以内、または0.01%以内であると理解され得る。文脈から明らかでない限り、本明細書において提供される数値は全て、約という用語によって修飾される。
【0092】
本明細書における変数の任意の定義における化学グループの一覧の説明は、任意の1つのグループとして、または列挙されたグループの組み合わせとして、その変数を定義することを含む。本明細書における変数または局面についての態様の説明は、任意の1つの態様として、または他の任意の態様もしくはその一部と組み合わせて、その態様を含む。
【0093】
本明細書において提供される任意の組成物または方法を、本明細書において提供される他の組成物および方法のいずれかのうちの1つまたは複数と組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【
図1】
図1は、フローサイトメトリーを用いてP-セレクチンの表面レベルによって特定された血小板活性化を示した棒グラフを示す。末期腎臓病患者(n=33)を、FcγRIIaタンパク質レベルの中央値に基づいて2つの群に層別化した。アゴニストの非存在下での、およびコラーゲンミメティックであるコンブルキシン(1ng/ml)、血小板活性化因子(PAF、1nM)、アデノシン二リン酸(ADP 0.2μM)、またはトロンビン(1nM)に応答した、表面にP-セレクチンを有する血小板のパーセントを示した。高い血小板FcγRIIaタンパク質レベルが、各アゴニストに応答した大きな血小板活性化と関連付けられた。
【
図2】
図2は、試験デザインの概要を説明した模式図を示す。
【
図3】
図3は、心臓発作、脳卒中、および死亡が無い確率のカプラン・マイヤー曲線を示す。経過観察の平均期間は20ヶ月(範囲6~29ヶ月)であった。
【
図4】
図4は、FcγRIIaタンパク質血小板活性化の模式図を示す。理論に拘束されないが、FcγRIIaタンパク質のクラスター形成によってリン酸化が起こり、リン酸化によって下流シグナル伝達と血小板活性化が起こる。FcγRIIaタンパク質は刺激またはアゴニストに応答して血小板活性化を増幅することができる。理論に拘束されないが、血小板FcγRIIaタンパク質レベルは巨核球産生を反映しているので、FcγRIIaタンパク質レベルは、血小板機能に伴って見られる、ばらつきの大きさを示さない。従って、FcγRIIaタンパク質は、一貫して高いか、または上昇した血小板活性の理想的なバイオマーカーであり得る。
【発明を実施するための形態】
【0095】
発明の詳細な説明
本発明は、対象において脳卒中のリスクを評価するのに有用な、および処置選択に有用な組成物および方法を特徴とする。態様において、対象は脳卒中、一過性脳虚血発作(TIA)を罹患したことがある。
【0096】
本発明は、少なくとも部分的に、FcγRIIaタンパク質が新規のバイオマーカーであり、FcγRIIaタンパク質を定量することで、脳卒中および心血管イベントのリスクが高い患者と、脳卒中および心血管イベントのリスクが低い患者を特定することができるという発見に基づいている。脳卒中および心血管イベントは、前のイベント後の後のイベントでもよい。理論に拘束されないが、FcγRIIaタンパク質は増大した血小板反応性のマーカーである。大きな血小板反応性は高い心血管イベントリスクまたは脳卒中リスクと関連付けることができる。本明細書において提供される方法は血小板反応性の増加を再現性よく特定することができる。本明細書において提供される方法は、血小板表面にあるFcγRIIaタンパク質のレベルを使用して、残存する心血管リスクおよび/または脳卒中リスクが高い患者と、残存する心血管リスクおよび/または脳卒中リスクが低い患者を特定し、個別化された抗血小板処置を効果的に導くことを伴う。
【0097】
心血管疾患は蔓延しており、再発性心血管イベントは罹患および死亡の主な原因である。心血管リスクを低減する治療選択肢の、拡大を続けている医療設備は、後のリスクに療法を効果的に合わせるプレシジョンメディシンの将来性を強調する。臨床リスクツールと現在利用可能な血小板機能試験は療法を効果的に導くのに十分でない。本発明は、後の心血管イベントのリスクが高い患者と、後の心血管イベントのリスクが低い患者を特定するための方法、および個別化処置を導くように設計された後の治験につながる重要な予備データを提供するための方法を特徴とする。
【0098】
抗血小板剤二剤併用療法トレードオフ
アテローム性動脈硬化症は全身疾患であり、冠状動脈疾患(CAD)は脳卒中患者間で蔓延している。頭蓋内動脈破裂によって引き起こされる脳卒中の患者間で、破裂しやすい非石灰化冠状動脈プラークの有病率が高いことから、頭蓋内動脈内にあるプラークと冠状動脈内にあるプラークは同じようにふるまうことが示唆される。頭蓋内アテローム動脈硬化性疾患(ICAD)患者における脳卒中の原因としてのプラーク破裂の重要性から、冠状動脈疾患(CAD)処置において有用な処置戦略が頭蓋内アテローム動脈硬化性疾患(ICAD)患者において成功する可能性があると示唆される。態様において、本明細書に記載の任意の方法によって処置される対象は、中枢神経系にアテローム性動脈硬化症(例えば、頭蓋内アテローム動脈硬化性疾患(ICAD))を有する。
【0099】
CAD処置において、再発性虚血性イベントのリスクを低減するように設計された戦略は、アテローム動脈硬化性プラークの破裂によって引き起こされた心臓発作後の抗血小板剤二剤併用療法(DAPT)の継続である。長期DAPTは後の心血管イベントのリスクを低減する。しかしながら、この処置は出血リスク増加と関連付けられる。従って、DAPTによる治療処置の利益は出血の増加によって少なくとも部分的に相殺される。このトレードオフのために、CAD患者の治療においてDAPTの長期使用は制限されている。出血イベントのリスクを制限するように設計された戦略は、DAPTからアセチルサリチル酸(ASA;アスピリン)単独療法への早期移行(漸減)である。漸減は出血発生率の低減と関連付けられ、ステント血栓症などの血栓性合併症の発生率の増加とも関連付けられる。一過性脳虚血発作(TIA)および軽症脳卒中の患者の処置において、初期の急性虚血期に開始した短期DAPT(≦1ヶ月)は、さらに長いDAPTよりも少ない出血と関連付けられ、単独療法と比較して再発性脳卒中の大きな低減と関連付けられる。
【0100】
FcγRIIa
理論に拘束されないが、血小板表面にあるFcγRIIaタンパク質は血小板の直接の活性化と血小板活性化の増幅を両方とも行うことができる。態様において、本発明の方法は、バイオマーカーFcγRIIaタンパク質のレベルに基づいて脳卒中または心血管イベントの患者リスクを評価する工程を含む。本発明の方法を用いて、FcγRIIaタンパク質のレベルを、後の脳卒中もしくは心血管イベントのリスクが高い患者と、後の脳卒中もしくは心血管イベントのリスクが低い患者を特定するのに使用することができる。著しい個体内のばらつきを示す血小板機能測定とは異なり、FcγRIIaタンパク質の血小板表面レベルは、一貫した血小板反応性マーカーである。
【0101】
健常若年者からの血小板は1,000~4,000個のFcγRIIaタンパク質分子を運ぶことができる(Karas SP, Rosse WF, Kurlander RJ. Characterization of the IgG-Fc receptor on human platelets. Blood 1982;60:1277-82)。
【0102】
FcγRIIaタンパク質レベルは、当技術分野において利用可能な方法、例えば、下記の、および/または米国特許第10,502,737B2号に記載の方法を用いて測定することができる。FcγRIIaタンパク質レベルは、非限定的な例として、血液、血清、または血漿を含む様々な生物学的試料の中で測定することができる。フローサイトメトリーは、血小板表面にあるFcγRIIaタンパク質のレベルを評価することができる強力なツールであり得る。血小板は、そのサイズならびに表面マーカーによって特定することができる。外部標準を用いるとフローサイトメトリーにおいて蛍光強度単位を標準化することができる(例えば、Kay S, Herishanu Y, Pick M, Rogowski, O, Baron S, Naparstek E, Polliack A, Deutsch V R. Quantitative flow cytometry of ZAP-70 levels in chronic lymphocytic leukemia using molecules of equivalent soluble fluorochrome. Cytometry 2006;70B:218-226;およびQuadrini KJ, Hegelund AC, Cortes KE, Xue C, Kennelly SM, Ji H, Hogerkorp C-M, Mc Closky TW. Validation of a flow cytometry-based assay to assess C5aR receptor occupancy on neutrophils and monocytes for use in drug development. Cytometry B Clin Cytom 2016;90B:177-190)。従って、血小板FcγRIIaタンパク質レベル(例えば、血小板表面にあるタンパク質分子の数)は、相対的な血小板FcγRIIaレベルではなく、血小板表面にある分子の数を定量するために外部標準を用いて定量することができる。様々な態様において、本発明の方法は、血小板表面にあるFcγRIIaタンパク質分子の数を定量する工程を伴う。
【0103】
理論に拘束されないが、FcγRIIaタンパク質は血小板活性化を増幅するので、血小板FcγRIIaタンパク質レベルの増加によって、一貫して高い血小板反応性を有する患者を特定することができる。従って、高い血小板FcγRIIaレベルは血小板反応性増加の臨床リスクに影響を与え、これは100を超える研究と22,000人以上の患者により証明された。さらに、血小板FcγRIIaレベルを定量することで、血液の調製と血小板のインビトロ活性化を含む血小板機能試験に伴うばらつきの原因となる要因が除外される。
【0104】
理論に拘束されないが、FcγRIIaタンパク質は、免疫グロブリン(Ig)Gのフラグメント定常(Fc)部分に対する低親和性受容体であると特定された。血小板は、FcγRIIaタンパク質を介して細菌などのIg結合(オプソニン化)実体をコーティングことができ、この結合によって、血小板の活性化と、広範囲の細菌に対する血小板応答を増幅させる二次メディエーターの放出が誘発される。さらに、血小板FcγRIIaタンパク質はヘパリン起因性血小板減少症および血栓症に関与する。抗血小板因子4/ヘパリン抗体の主要な細胞標的は血小板FcγRIIa受容体タンパク質である。FcγRIIaタンパク質と糖タンパク質VIタンパク質はヒト血小板上で連結される。両受容体に作用するリガンドは2つのタンパク質分解性調節経路を活性化することができる。動脈および静脈の剪断(shear)の条件下で、コラーゲンでコーティングされたフローチャンバー上に血小板が灌流された時に、FcγRIIaタンパク質は血栓形成を著しく強化することができる。FcγRIIaタンパク質がリン酸化されると血小板活性化が増幅される。多くのFcγRIIaタンパク質を有する血小板は、最大下濃度の複数種のアゴニストに応答して大きな活性化を示す。FcγRIIaタンパク質は、血小板反応性が高い患者を特定することができる新規のバイオマーカーである。
【0105】
FcγRIIaタンパク質に関連する血小板活性化を抗血小板剤および/または抗凝固剤によって低減、阻害、または寛解することができる。抗血小板剤には、非限定的な例として、プロテアーゼ活性化(PAR)タンパク質および/またはアデノシン二リン酸(ADP)受容体タンパク質に関連する発現および/またはシグナル伝達活性を低減する薬剤が含まれる。ADP受容体タンパク質アンタゴニストには、非限定的な例として、化合物プラスグレル、クロピドグレル、チカグレロル、チクロピジン、および他のチエノピリジンが含まれる。PARタンパク質アンタゴニストには非限定的な例としてボラパクサール(SCH530348)が含まれる。抗血小板剤のさらなる非限定的な例には、アセチルサリチル酸(ASA)、ジピリダモール、およびエプチフィバチドが含まれる。抗凝固剤には、非限定的な例として、アピキサバン、アルガトロバン、ベトリキサバン、ビバリルジン、ダビガトラン、デシルジン、エドキサバン、エノキサパリン、ヘパリン、レテプラーゼ、リバーロキサバン、ワルファリン、および第XIa因子(FXIa)阻害剤が含まれる。
【0106】
FcγRIIaタンパク質レベルならびに脳卒中および/または心血管イベント
血小板反応性の増加によって、後の脳血管イベント(例えば、脳卒中)のリスクが大きい、軽症脳卒中またはTIAの患者を特定することができる。血小板試験はリスクを特定することができるが、抗血小板療法の選択を効果的に導くことができない。臨床試験では、現在利用可能な血小板機能試験を用いて処置を導くことができると証明されていない。従って、現在利用可能な血小板機能試験は個別化治療を導くことができない。
【0107】
理論に拘束されないが、FcγRIIaタンパク質レベルは従来の血小板機能試験よりも正確な脳卒中リスク指標である可能性が高い。血小板FcγRIIaタンパク質レベルは巨核球産生によって決定される可能性があり、巨核球産生はインターフェロンγによって増加する。血小板機能に対するFcγRIIaタンパク質の効果は血小板の生涯にわたって一貫している可能性がある。理論に拘束されないが、FcγRIIaタンパク質は血小板表面に安定してディスプレイされる可能性がある。約6~約62週間の期間にわたる血小板FcγRIIaタンパク質レベルの変動の平均は約10%未満である可能性がある。
【0108】
選ばれたアゴニストまたはアゴニストグループに応答した血小板反応性を測定する現在利用可能な血小板機能試験とは異なり、血小板FcγRIIaタンパク質レベルは様々なアゴニストに応答した血小板反応性増加を予測する(
図1)。
【0109】
理論に拘束されないが、血小板FcγRIIaタンパク質レベルの決定は表面マーカーの定量を伴うので、アッセイ条件に関連する混乱に対して感度が低い(表2; J Thromb Thrombolysis 2019 Jul;48(1):88-94も参照されたい)。抗凝固剤もP2Y12アンタゴニストも血小板FcγRIIaタンパク質レベルを変えない(表2)。
【0110】
表1では、血液を3人の対象から採取し、トウモロコシトリプシン阻害剤(32μg/ml)、クエン酸三ナトリウム(3.2%)、未分画ヘパリン(1.2U/ml)、およびビバリルジン(8μg/ml)を用いて抗凝固剤処理した。クエン酸塩で抗凝固剤処理した血液にカングレロル(500nM)を添加した。各条件下で、血小板FcγRIIaタンパク質レベルの決定を二度繰り返して求めた。
【0111】
(表2)血小板FcγRIIaタンパク質レベルアッセイのアッセイ内変動係数(CV)
【0112】
診断法
本発明は、処置のために対象を選択するための方法を特徴とする。この場合、選択された対象は、参照と比べて血小板上に、増加したFcγRIIaタンパク質レベルを有し、これが脳卒中、心血管イベント、および/または死亡のリスク増加を示す。態様において、増加したFcγRIIaタンパク質レベルは、前の脳卒中および/または心血管イベント後の、後の脳卒中、心血管イベント、および/または死亡のリスク増加を示す。任意の適切な方法が、対象試料において血小板FcγRIIaタンパク質を検出するのに使用することができ、脳卒中、心血管イベント、および/または死亡の対象リスクを特徴付けるのに使用することができる。生物学的試料には、体液(例えば、血液、血清、血漿、羊水、痰、尿、脳脊髄液、リンパ液、涙液、糞便、唾液、または胃液)が含まれる。本発明の首尾良い実施は、血小板FcγRIIaタンパク質を検出および/または定量することができる方法の1つまたは組み合わせを用いて成し遂げることができる。様々な形式のイムノアッセイ(例えば、フローサイトメトリー、ELISA)が、固相上に捕捉された分析物を検出するための方法の非限定的な例である。このような方法は、FcγRIIaタンパク質特異的抗体の使用を伴うことがある。
【0113】
FcγRIIaタンパク質を検出するのに、当技術分野において公知の実質的に任意の方法を使用することができる。例えば、血小板FcγRIIaタンパク質レベルは、当技術分野において周知の手順、例えば、フローサイトメトリー、イムノアッセイ、ELISA、ウェスタンブロッティング、ラジオイムノアッセイ、免疫細胞化学、磁気ビーズおよび/または抗体コーティングビーズへの結合、インサイチューハイブリダイゼーション、蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(FISH)、フローチャンバー接着アッセイ、マイクロアレイ分析、または比色アッセイによって比較される。方法は、エレクトロスプレーイオン化質量分析法(ESI-MS)、ESI-MS/MS、ESI-MS/(MS)n、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法(MALDI-TOF-MS)、表面増強レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析法(SELDI-TOF-MS)、シリコン上脱離/イオン化(DIOS)、二次イオン質量分析(SIMS)、四重極飛行時間型(Q-TOF)、大気圧化学イオン化質量分析法(APCI-MS)、APCI-MS/MS、APCI-(MS)n、大気圧光イオン化質量分析法(APPI-MS)、APPI-MS/MS、およびAPPI-(MS)n、四重極質量分析法、フーリエ変換質量分析法(FTMS)、ならびにイオントラップ質量分析法のうちの1つまたは複数をさらに含んでいてもよい。式中、nは0より大きな整数である。検出方法はバイオチップアレイの使用を含む場合がある。本発明において有用なバイオチップアレイはタンパク質アレイおよびポリヌクレオチドアレイを含む。1種または複数種のマーカーがバイオチップアレイ上で捕捉され、試料中のマーカーレベルを検出する分析に供される。
【0114】
血小板FcγRIIaタンパク質は、バイオチップ、マルチウェルマイクロタイタープレート、樹脂、またはニトロセルロース膜などの固体支持体に固定された捕捉試薬を用いて捕捉されてもよく、その後に、固体支持体はマーカーの存在またはレベルについて探索される。捕捉はクロマトグラフィー表面で行われてもよく、生体分子特異的表面で行われてもよい。例えば、血清などのマーカーを含有する試料が、結合するのに十分な時間にわたってバイオチップの活性表面と接触するのに用いられる場合がある。結合しなかった分子はリン酸緩衝食塩水などの適切な溶離液を用いて表面から洗浄される。一般的に、溶離液のストリンジェンシーが高いほど、タンパク質が洗浄後に保持されるように、しっかりと結合されるはずである。
【0115】
バイオチップ上に捕捉されると、例えば、気相イオン分光分析法、光学的方法、電気化学的方法、原子間力顕微鏡、および高周波法より選択される様々な検出方法によって、分析物が検出される。一態様において、質量分析法、特に、SELDIが用いられる。光学的方法には、例えば、蛍光、ルミネセンス、化学ルミネセンス、吸光度、反射率、透過率、複屈折または屈折率の検出(例えば、表面プラズモン共鳴、エリプソメトリー、レゾナントミラー法、グレーティングカプラ導波路法(grating coupler waveguide method)、または干渉法)が含まれる。光学的方法には顕微鏡(共焦点および非共焦点)、イメージング法および非イメージング法が含まれる。電気化学的方法にはボルタメトリーおよびアンペロメトリー法が含まれる。高周波法には多極共鳴分光分析法(multipolar resonance spectroscopy)が含まれる。
【0116】
質量分析法(MS)は、化合物を分析するための周知のツールである。従って、一態様において、本発明の方法は、血清ペプチドマーカーを測定するために定量MSを実施する工程を含む。前記方法は自動形式(Villanueva, et ah, Nature Protocols (2006) 1(2):880-891)で実施されてもよく、半自動形式で実施されてもよい。これは、例えば、液体クロマトグラフィー装置に機能的に連結されたMS(LC-MS/MSもしくはLC-MS)またはガスクロマトグラフィー装置に機能的に連結されたMS(GC-MSもしくはGC-MS/MS)を用いて成し遂げることができる。MSを実施するための方法は当技術分野において公知であり、例えば、米国特許出願公開第20050023454号;同第20050035286号;USP5,800,979、およびそれらの中に開示された参考文献において開示されている。タンパク質断片は、タンパク質の主鎖に由来するペプチドであっても側鎖の残基であっても、コレクションレイヤー上に収集される。次いで、タンパク質断片は、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化(MALDI)またはエレクトロスプレーイオン化(ESI)に基づく分光学的方法によって分析され得る。一態様において、MS分析は、MALDI-TOF MSとして知られるMALDIと飛行時間型(TOF)分析である。これは、例えば、文献に記載のように、使用される特定の波長で入射光を強力に吸収する薬剤を用いて膜上にマトリックスを形成することを伴う。MALDI質量分析計では試料をUVまたはIRレーザー光によって励起させて気相にする。蒸発によってイオンが発生し、イオンプルーム(ion plume)を形成する。イオンは電場において加速され、ある特定の距離に沿った移動距離に従って分離される。これにより非常に正確であり、かつ感度の高い質量/電荷(m/z)読み取り値が得られる。MALDI分光計はPerSeptive Biosystems, Inc.(Frazingham, Mass., USA)から市販されており、文献、例えば、上記で引用された、M. Kussmann and P. Roepstorffに記載されている。
【0117】
他の態様において、FcγRIIaタンパク質のレベルは1種または複数種のさらなるマーカーと組み合わせて検出される。個々のマーカーは有用な診断マーカーであるが、場合によってはマーカーを組み合わせることで1種のマーカー単独よりも大きな予測値が得られる。試料中の複数種のマーカー(場合によっては、マーカーの非存在)を検出することで、真の陽性および真の陰性の診断のパーセントを増やし、偽陽性または偽陰性の診断のパーセントを減らすことができる。従って、本明細書において説明されるものは、複数種のマーカーまたは臨床パラメータの測定値を提供する。
【0118】
複数種のマーカーの使用は、試験の予測値を増大させ、かつ診断、毒物学、患者層別化および患者モニタリングにおける有用性を高める。「パターン認識」と呼ばれるプロセスによって、複数種のマーカーによって形成されるパターンが検出される。さらなるマーカーを含めることで、望ましくない血小板反応性増加に関連する血栓性疾患または障害を発症する患者リスクの決定において感度および特異度が改善する可能性がある。臨床試料からのデータの微妙な変動から、タンパク質レベルまたは発現(例えば、FcγRIIaタンパク質レベル)のある特定のパターンによって血小板反応性増加などの表現型を予測することができる、あるいはより積極的/強力な薬物処置(例えば、より強力な抗血小板剤、例えば、クロピドグレル、ジピリダモール、エプチフィバチド、プラスグレル、チカグレロル、チクロピジン、もしくはボラパクサールによる処置、および/または抗凝固剤、例えば、アピキサバン、アルガトロバン、ベトリキサバン、ビバリルジン、ダビガトラン、デシルジン、エドキサバン、エノキサパリン、ヘパリン、レテプラーゼ、リバーロキサバン、ワルファリン、および第XIa因子(FXIa)阻害剤による処置)から利益を得る可能性がある患者を特定することができることが分かる。血小板FcγRIIaタンパク質レベルは血小板反応性と相関関係があり、従って、診断において有用である。FcγRIIaタンパク質に特異的に結合する抗体または当技術分野において公知の他の任意の方法が、血小板FcγRIIaタンパク質レベルをモニタリングするのに使用することができる。正常参照試料と比べた変化の検出を血小板反応性の診断指標として使用することができる。特定の態様において、血小板FcγRIIaタンパク質レベルの2倍、3倍、4倍、5倍、または6倍の倍率変化が血小板反応性を示し、血小板FcγRIIaタンパク質レベルの上昇と一致する。
【0119】
一態様において、血小板FcγRIIaタンパク質レベルは少なくとも2つの異なる時に測定され、正常な参照レベルと比較したレベルの経時変化が、脳卒中、心血管イベント、および/または死亡のリスク増加のリスク指標として用いられる。態様において、レベルの変化(例えば、増加)は、前の脳卒中および/または心血管イベント後の、後の脳卒中、心血管イベント、および/または死亡のリスク増加を示す。一般的に、血小板FcγRIIaタンパク質レベルは健常対象(すなわち、反応性血小板を有さない対象)では低レベル(血小板あたり約6,000コピー)で存在する。一態様において、血小板FcγRIIaタンパク質レベルの増加は、脳卒中、心血管イベント、および/または死亡のリスク増加を示す。血小板FcγRIIaタンパク質レベルの増加/上昇は、約7,000分子/血小板、7,500分子/血小板、8,000分子/血小板、9,000分子/血小板、10,000分子/血小板、11,000分子/血小板、12,000分子/血小板、13,000分子/血小板、14,000分子/血小板、もしくは15,000分子/血小板の閾値、または少なくとも約7,000分子/血小板、7,500分子/血小板、8,000分子/血小板、9,000分子/血小板、10,000分子/血小板、11,000分子/血小板、12,000分子/血小板、13,000分子/血小板、14,000分子/血小板、もしくは15,000分子/血小板の閾値でもよい。約7,000分子/血小板、8,000分子/血小板、9,000分子/血小板、10,000分子/血小板、11,000分子/血小板、12,000分子/血小板、13,000分子/血小板、14,000分子/血小板、もしくは15,000分子/血小板の閾値より少ないFcγRIIaタンパク質レベルは、脳卒中、心血管イベント、および/または死亡のリスクがより低い、または低いことを示すことがある。血小板FcγRIIaタンパク質レベルの増加は、参照と比べて約1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、もしくは10倍、または少なくとも約1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、もしくは10倍の増加でもよい。FcγRIIaタンパク質はFACS分析を用いて測定することができる。
【0120】
態様において、血小板FcγRIIaタンパク質レベルの一貫した上昇は、脳卒中、心血管イベント、および/または死亡のリスクの増大を示す。態様において、血小板FcγRIIaタンパク質レベルは、約1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、13週間、14週間、15週間、17週間、18週間、19週間、20週間、21週間、22週間、23週間、24週間、25週間、26週間、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、もしくは12ヶ月、または少なくとも約1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、13週間、14週間、15週間、17週間、18週間、19週間、20週間、21週間、22週間、23週間、24週間、25週間、26週間、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、もしくは12ヶ月隔てられている少なくとも2つの測定時点で、上記で列挙した閾値のうちの1つまたは複数より大きければ、一貫して上昇しているとみなされる。態様において、レベルの一貫した上昇が無いことは、レベルの一貫した上昇がある対象と比べて脳卒中、心血管イベント、または死亡のリスクが小さいことを示している。
【0121】
本明細書に記載の診断方法は、脳卒中、心血管イベント、および/または死亡のリスクをより正確に診断するために、個々に使用されてもよく、または本明細書に記載の他の任意の診断方法と組み合わせて使用されてもよい。
【0122】
FcγRIIaタンパク質レベルと、脳卒中、心血管イベント、および/または死亡のリスクとの相関関係は、血小板FcγRIIaタンパク質の対照量(例えば、正常対象または血小板反応性が未検出の対象における)と比較した、試料中にある血小板FcγRIIaタンパク質の量を考慮に入れている場合がある。相関関係を用いて、脳卒中、心血管イベント、および/または死亡の患者リスクを評価することができ、任意で、イベントは、前の脳卒中および/または心血管イベント後の後のイベントである。対照は、例えば、正常対象の比較可能な試料に存在する血小板FcγRIIaタンパク質の量の平均または中央値でもよい。対照量は、試験量の測定と同じ実験条件下で、または実質的に類似する実験条件下で測定される。結果として、対照は参照標準として使用することができ、この場合、正常表現型が既知であり、対照を再実行するのではなく、それぞれの結果を標準と比較することができる。
【0123】
従って、マーカープロファイルが対象試料から入手され、対象を、参照集団に属するもの、または参照集団に属さないものと分類できるように、参照集団から入手された参照値と比較され得る。相関関係は、試験試料におけるマーカーの存在または非存在および対照における同じマーカーの検出頻度を考慮に入れている場合がある。相関関係は、脳卒中、心血管イベント、および/または死亡のリスクの決定を容易にするために、このような要因を両方とも考慮に入れている場合がある。
【0124】
ある特定の態様において、前記方法は、血小板上にあるFcγRIIaタンパク質のレベルの上昇を有する対象に施すために抗血栓療法を選択する工程を、さらに含む。処置は、非限定的な例として、抗血小板剤、例えば、アセチルサリチル酸(ASA)、クロピドグレル、ジピリダモール、エプチフィバチド、プラスグレル、チカグレロル、チクロピジン、もしくはボラパクサール、および/または抗凝固剤、例えば、アピキサバン、アルガトロバン、ベトリキサバン、ビバリルジン、ダビガトラン、デシルジン、エドキサバン、エノキサパリン、ヘパリン、レテプラーゼ、リバーロキサバン、ワルファリン、および第XIa因子(FXIa)阻害剤より選択することができる。本発明はまた、薬物または療法の投与後に血小板FcγRIIaタンパク質が再測定される、このような方法も提供する。これらの場合、前記方法は患者状態をモニタリングするするのに用いられる。
【0125】
抗体
本明細書において報告されるように、FcγRIIaタンパク質に特異的に結合する抗体は診断方法ならびに治療方法において有用である。例えば、血小板FcγRIIaタンパク質アンタゴニストとして作用する抗体(例えば、IV.3 Fab)が本発明の方法において有用であるかもしれない。特定の態様において、本発明は、血小板反応性を阻害するために抗血小板FcγRIIaタンパク質抗体を使用する方法を提供する。IV.3は、血小板活性化中に血小板FcγRIIaタンパク質のリン酸化を阻害するモノクローナル抗FcγRIIaタンパク質抗体である。態様において、本発明は、FcγRIIaタンパク質分子の検出において使用するための、抗体および/またはFcγRIIa結合コンジュゲート(例えば、検出可能な標識とコンジュゲートされた抗体)を提供する。
【0126】
態様において、抗体は、抗体コンジュゲート;例えば、FcγRIIa結合コンジュゲートである。場合によっては、FcγRIIa結合抗体は検出可能な標識(例えば、蛍光標識)とコンジュゲートされる。
【0127】
FcγRIIaタンパク質分子の検出に有用な抗体またはその断片には、市販の抗体が含まれる。任意で、検出可能な標識にコンジュゲートされ、FcγRIIaに結合し、FcγRIIaタンパク質分子の検出に使用することができる市販の抗体またはその断片の非限定的な例には、Fisher Scientific(カタログ番号(Cat #)BDB550586)およびBiosciences(Cat #550586)から入手可能なFLI8.26モノクローナル抗体;ならびにBioss(Cat #BS-2573R)から入手可能なCD32ポリクローナル抗体が含まれる。任意で、検出可能な標識にコンジュゲートされ、FcγRIIaに結合し、FcγRIIaタンパク質分子の検出に使用することができる抗体またはその断片のさらなる非限定的な例には、Invitrogenから入手可能な、示されたカタログ番号を有する以下の抗体:CD32モノクローナル抗体(6C4(CD32)), FunctionalGrade, eBioscience(商標)(Cat #16-0329-81);CD32モノクローナル抗体(6C4(CD32)), FITC, eBioscience(商標)(Cat #11-0329-42);CD32モノクローナル抗体(6C4(CD32)), eFluor450, eBioscience(商標)(Cat #48-0329-42);CD32モノクローナル抗体(6C4(CD32)), APC, eBioscience(商標)(Cat #17-0329-42);CD32モノクローナル抗体(6C4(CD32))、PE-Cyanine7、eBioscience(商標)(Cat #25-0329-42);CD32モノクローナル抗体(6C4(CD32)), PE, eBioscience(商標)(Cat #12-0329-42);CD32モノクローナル抗体(6C4(CD32)), PerCP-eFluor710, eBioscience(商標)(Cat #46-0329-42);CD32モノクローナル抗体(AT10)(Cat #MA1-81191);CD32モノクローナル抗体(AT10)(Cat #MA1-81209);CD32組換えウサギモノクローナル抗体(JM10-70)(Cat #MA5-32601);CD32ポリクローナル抗体(Cat #PA5-114980);CD32/FCGR2ポリクローナル抗体(Cat #PA5-102032);CD32モノクローナル抗体(6C4(CD32)), PE-Cyanine5.5, eBioscience(商標)(Cat #35-0329-42);CD32モノクローナル抗体(6C4(CD32)),ビオチン, eBioscience(商標)(Cat #13-0329-82);CD32モノクローナル抗体(CCG36), FITC(Cat #MA5-28346);CD32モノクローナル抗体(CCG36), PE(Cat #MA5-28347);CD32モノクローナル抗体(CCG39), FITC(Cat #MA5-28348);CD32モノクローナル抗体(CCG36)(Cat #MA5-28349);CD32モノクローナル抗体(CCG39)(Cat #MA5-28350);CD32様モノクローナル抗体(VPM63)(Cat #MA5-28351);ホスホ-CD32(Tyr288)ポリクローナル抗体(Cat #PA5-105099);CD32ポリクローナル抗体(Cat #PA5-116206);CD32ポリクローナル抗体(Cat #PA5-77978);およびCD32ポリクローナル抗体(Cat #PA5-87604)が含まれる。本発明において有用な他の抗体は、血小板FcγRIIaタンパク質シグナル伝達を弱める抗体である。
【0128】
抗体を調製する方法は免疫学の科学における当業者に周知である。本明細書で使用する「抗体」という用語は、インタクトな抗体分子だけでなく、免疫原結合能力を保持している抗体分子の断片も意味する。このような断片も当技術分野において周知であり、インビトロおよびインビボで通常、用いられる。従って、本明細書で使用する「抗体」という用語は、インタクトな免疫グロブリン分子だけでなく、周知の活性な断片F(ab')2、およびFabも意味する。インタクトな抗体のFc断片を欠く、F(ab')2、およびFab断片はインタクトな抗体よりも迅速に循環から取り除かれ、少ない非特異的組織結合を有することがある(Wahl et al., J. Nucl. Med. 24:316-325 (1983)。本発明の抗体は、天然抗体全体、二重特異性抗体;キメラ抗体;Fab、Fab'、単鎖V領域断片(scFv)、融合タンパク質、および従来と異なった抗体を含む。
【0129】
従来と異なった抗体には、ナノボディ、直鎖抗体(Zapata et al., Protein Eng. 8(10): 1057-1062,1995)、シングルドメイン抗体、単鎖抗体、および複数の結合価を有する抗体(例えば、ダイアボディ、トリボディ、テトラボディ、およびペンタボディ)が含まれるが、これに限定されない。ナノボディは、軽鎖の非存在下で完全に機能するように進化した、天然重鎖抗体の最も小さな断片である。ナノボディは従来の抗体の親和性と特異性を有するが、単鎖Fv断片のサイズの半分しかない。極度の安定性とヒト抗体フレームワークと高度の相同性と組み合わされた、このユニークな構造の結果は、ナノボディが、従来の抗体に到達できない治療標的に結合できることである。複数の結合価を有する組換え抗体断片は高い結合アビディティとユニークな標的特異性を提供する。サイズが約60~100kDaの低分子は急速に血液から取り除かれ、迅速に組織に取り込まれるので、これらの多量体scFv(例えば、ダイアボディ、テトラボディ)は親抗体と比べて改善をもたらす。Power et al., (Generation of recombinant multimeric antibody fragments for tumor diagnosis and therapy. Methods Mol Biol, 207, 335-50, 2003);およびWu et al. (Anti-carcinoembryonic antigen (CEA) diabody for rapid tumor targeting and imaging. Tumor Targeting, 4, 47-58, 1999)を参照されたい。
【0130】
従来と異なった抗体を作製および使用するための様々な技法が説明されている。ロイシンジッパーを用いて生成される二重特異性抗体が、Kostelny et al.(J.Immunol. 148(5): 1547-1553, 1992)に記載されている。ダイアボディ技術が、Hollinger et al.(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448, 1993)に記載されている。単鎖Fv(sFv)ダイナー(diner)を使用することで二重特異性抗体断片を作製するための別の戦略が、Gruber et al.(J. Immunol. 152:5368, 1994)に記載されている。三重特異性抗体が、Tutt et al.(J. Immunol. 147:60, 1991)に記載されている。単鎖Fvタンパク質抗体には、Huston, et al. (Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 85:5879-5883, 1988)に記載のようにVRコード配列とVLコード配列が直接連結されているか、またはペプチドコードリンカーによって連結されている核酸から発現させることができる、共有結合により連結されたVH::VLヘテロ二量体が含まれる。米国特許第5,091,513号、同第5,132,405号、および同第4,956,778号;ならびに米国特許出願公開第20050196754号および同第20050196754号も参照されたい。
【0131】
一態様において、血小板FcγRIIaタンパク質に結合する抗体はモノクローナルである。または、抗血小板FcγRIIaタンパク質抗体はポリクローナル抗体である。ポリクローナル抗体の調製および使用も当業者に公知である。本発明はまた、一対の重鎖と軽鎖が第1の抗体から入手され、他方の対の重鎖と軽鎖が異なる第2の抗体から入手されたハイブリッド抗体も包含する。このようなハイブリッドはまた、ヒト化された重鎖と軽鎖を用いて形成される場合がある。このような抗体は「キメラ」抗体と呼ばれることが多い。
【0132】
一般的に、インタクトな抗体は「Fc」と「Fab」領域を含有すると言われる。Fc領域は補体活性化に関与し、抗原結合に関与しない。Fc'領域が酵素的に切断されている抗体、またはFc'領域なしで産生されている抗体は「F(ab')2」断片と呼ばれ、インタクトな抗体の抗原結合部位を両方とも保持している。同様に、Fc領域が酵素的に切断されている抗体またはFc領域なしで産生されている抗体は「Fab」'断片と呼ばれ、インタクトな抗体の抗原結合部位の1つを保持している。Fab断片は、共有結合により結合された抗体軽鎖と、「Fd」と呼ばれる抗体重鎖の一部からなる。Fd断片は抗体特異性の主な決定基である(1本のFd断片は、抗体特異性を変えることなく10本までの異なる軽鎖と結合され得る)。単離されたFd断片は、免疫原性エピトープに特異的に結合する能力を保持している。
【0133】
抗体は、免疫原として可溶性タンパク質またはその免疫原性断片を利用して、当技術分野において公知の任意の方法によって作製することができる。抗体を入手する方法の1つが、適切な宿主動物を免疫原で免疫化し、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を産生するための標準的な手順に従う方法である。免疫原は、細胞表面での免疫原の提示を容易にする。適切な宿主の免疫化は多くのやり方で行うことができる。ヒトFcγRIIaタンパク質またはその免疫原性断片をコードする核酸配列を、宿主の免疫細胞によって取り込まれる送達ビヒクルに入れて宿主に提供することができる。そして次に、細胞はヒトFcγRIIaタンパク質を発現し、それによって、宿主における免疫原性応答を発生させる。または、ヒトFcγRIIaタンパク質またはまたはその免疫原性断片をコードする核酸配列をインビトロで細胞内で発現させ、その後に、ヒトFcγRIIaタンパク質を単離し、抗体が産生される適切な宿主にFcγRIIaタンパク質を投与することができる。
【0134】
または、血小板FcγRIIaタンパク質に対する抗体は、所望であれば、抗体ファージディスプレイライブラリーに由来してもよい。バクテリオファージは細菌に感染し、その内部で複製することができ、ヒト抗体遺伝子と組み合わせた時にヒト抗体タンパク質をディスプレイするように操作することができる。ファージディスプレイは、ファージ表面にヒト抗体タンパク質を「ディスプレイ」するようにファージを作製するプロセスである。ヒト抗体遺伝子ライブラリーに由来する遺伝子をファージ集団に挿入する。各ファージは、異なる抗体の遺伝子を運び、従って、ファージ表面に異なる抗体をディスプレイする。
【0135】
次いで、当技術分野において公知の任意の方法によって作製された抗体を、宿主から精製することができる。抗体精製方法は、塩析(例えば、硫酸アンモニウムを用いる)、イオン交換クロマトグラフィー(例えば、カチオン交換カラムまたはアニオン交換カラムによる。好ましくは、中性pHで流し、漸増するイオン強度の段階勾配を用いて溶出させる)、ゲル濾過クロマトグラフィー(ゲル濾過HPLCを含む)、ならびにアフィニティ樹脂、例えば、プロテインA、プロテインG、ヒドロキシアパタイト、および抗免疫グロブリンによるクロマトグラフィーを含んでいてもよい。
【0136】
抗体は、その抗体を発現するように操作されたハイブリドーマ細胞から都合よく産生することができる。ハイブリドーマを作製する方法は当技術分野において周知である。ハイブリドーマ細胞を適切な培地の中で培養することができ、使用済みの媒体を抗体供給源として使用することができる。そして次に、関心対象の抗体をコードするポリヌクレオチドを、この抗体を産生するハイブリドーマから入手することができる。次いで、この抗体を、これらのDNA配列から合成により産生してもよく、組換えにより産生してもよい。多量の抗体を産生するために、一般的に、腹水を入手することが便利である。腹水を生じる方法は、一般的に、ハイブリドーマ細胞を、免疫学的にナイーブな、組織適合性または免疫寛容性の哺乳動物、特に、マウスに注射する工程を含む。腹水を生じるために、哺乳動物は適切な組成物(例えば、Pristane)の事前の投与によって刺激されてもよい。
【0137】
本発明の方法によって産生されたモノクローナル抗体(Mab)は、当技術分野において公知の方法によって「ヒト化」することができる。「ヒト化」抗体は、ヒト免疫グロブリンにもっと似るように、配列の少なくとも一部が、その最初の形態から変えられている抗体である。抗体をヒト化する技法は、非ヒト動物(例えば、マウス)抗体が作製される時に特に有用である。マウス抗体をヒト化する方法の例は、米国特許第4,816,567号;同第5,530,101号;同第5,225,539号;同第5,585,089号;同第5,693,762号;および同第5,859,205号に示される。
【0138】
阻害性核酸
阻害性核酸分子は、脳卒中、心血管イベント、死亡、および関連する障害を処置および/または予防するために、血小板FcγRIIaタンパク質のレベルまたは活性を変えるオリゴヌクレオチドである。このようなオリゴヌクレオチドは、FcγRIIaをコードする核酸分子に結合する一本鎖核酸分子および二本鎖核酸分子(例えば、DNA、RNA、およびそれらの類似体)(例えば、アンチセンス分子、siRNA、shRNA)、ならびにその生物学的活性を調整するように血小板FcγRIIaタンパク質に直接結合する核酸分子(例えば、アプタマー)を含む。このような阻害性核酸分子は、巨核球においてFcγRIIaタンパク質またはポリヌクレオチドのレベルを低減し、従って、血小板におけるFcγRIIaタンパク質の低減をもたらす。
【0139】
リボザイム
本発明のアンチセンスFcγRIIaポリヌクレオチド配列を標的とする触媒RNA分子またはリボザイムを用いて、インビボでFcγRIIaポリヌクレオチドの発現を阻害することができる。このようなリボザイムは巨核球におけるFcγRIIaタンパク質またはポリヌクレオチドのレベルを低減し、従って、血小板におけるFcγRIIaタンパク質を低減する。アンチセンスRNAの内部にリボザイム配列を含めるとアンチセンスRNAにRNA切断活性が付与され、それによって構築物の活性が増加する。標的RNA特異的リボザイムの設計および使用は、Haseloff et al., Nature 334:585-591.1988および米国特許出願公開第2003/0003469A1号に記載され、これらのそれぞれが参照により組み入れられる。従って、本発明はまた、結合アームに8~19の連続した核酸塩基を有するアンチセンスRNAを含む触媒RNA分子も特徴とする。本発明の好ましい態様において、触媒核酸分子はハンマーヘッドモチーフまたはヘアピンモチーフの形で形成される。このようなハンマーヘッドモチーフの例は、Rossi et al., Aids Research and Human Retroviruses, 8:183, 1992に記載されている。ヘアピンモチーフの例は、1988年9月20日に出願された米国特許出願第07/247,100号の一部継続出願である、1989年9月20日に出願された、Hampel et al.,「RNA Catalyst for Cleaving Specific RNA Sequences」、Hampel and Tritz, Biochemistry, 28:4929, 1989、およびHampel et al., Nucleic Acids Research, 18: 299, 1990に記載されている。これらの特定のモチーフは本発明において限定的でなく、当業者は、本発明の酵素核酸分子において重要なもの全てが、本発明の酵素核酸分子が標的遺伝子RNA領域のうちの1つまたは複数に相補的な特異的な基質結合部位を有し、その基質結合部位の内部に、または周囲に、RNA切断活性を分子に付与するヌクレオチド配列を有することだと認識している。
【0140】
低分子ヘアピン型RNAは、任意の3'UU-オーバーハングを有するステムループ構造を含有する。ばらつきがあるかもしれないが、ステムは21~31bp(望ましくは25~29bp)でもよく、ループは4~30bp(望ましくは4~23bp)でもよい。細胞内のshRNA発現のために、ポリメラーゼIII Hl-RNAまたはU6プロモーター、ステムループRNAインサート用のクローニング部位、および4-5-チミジン転写終結シグナルを含有するプラスミドベクターを使用することができる。ポリメラーゼIIIプロモーターは、一般的に、詳細に明らかにされた開始部位および停止部位を有し、その転写物はポリ(A)テールを欠く。これらのプロモーターの終結シグナルはポリチミジントラクトによって規定され、転写物は典型的に2番目のウリジンの後ろで切断される。この位置で切断されると、発現されたshRNAに3'UUオーバーハングが生じる。これは合成siRNAの3'オーバーハングと似ている。哺乳動物細胞においてshRNAを発現させる、さらなる方法は、本明細書において引用された参考文献に記載され、当業者によく知られている。
【0141】
siRNA
遺伝子発現をダウンレギュレートするのに、短い21~25ヌクレオチド二本鎖RNAが有効である(Zamore et al., Cell 101: 25-33; Elbashir et al., Nature 411: 494-498, 2001、本明細書において参照により組み入れられる)。哺乳動物におけるsirNA アプローチの治療有効性はMcCaffrey et al. (Nature 418: 38-39.2002)によってインビボで証明された。
【0142】
標的遺伝子の配列が与えられれば、その遺伝子(例えば、FcγRIIaをコードする遺伝子)を不活性化するようにsiRNAが設計され得る。態様において、siRNAは、巨核球においてFcγRIIaタンパク質またはポリヌクレオチドのレベルを低減し、従って、血小板においてFcγRIIaタンパク質を低減する。このようなsiRNAは、例えば、患部組織に直接投与されてもよく、全身投与されてもよい。Pari遺伝子の核酸配列を用いて低分子干渉RNA(siRNA)を設計することができる。21~25ヌクレオチドsiRNAが、例えば、狼瘡を処置するための治療剤として用いられ得る。
【0143】
本発明の阻害性核酸分子は、血小板FcγRIIaポリヌクレオチドおよび/またはタンパク質発現のRNA干渉(RNAi)を介したノックダウン用の二本鎖RNAとして使用され得る。一態様において、血小板FcγRIIaタンパク質および/またはポリヌクレオチドの発現は巨核球において低減される。
【0144】
RNAiは、関心対象の特定のタンパク質の細胞発現を減少させるための方法である(Tuschl, Chembiochem 2:239-245, 2001; Sharp, Genes & Devel. 15:485-490, 2000; Hutvagner and Zamore, Curr. Opin. Genet. Devel. 12:225-232, 2002; およびHannon, Nature 418:244-251, 2002に概説されている)。dsRNAトランスフェクションによる、またはプラスミドに基づく発現系を用いたsiRNA発現を介した細胞へのsiRNA導入は、哺乳動物細胞において機能喪失型表現型を作り出すのにますます用いられてきている。
【0145】
本発明の一態様において、本発明の核酸塩基オリゴマーの8~19の連続した核酸塩基を含む二本鎖RNA(dsRNA)分子が作製される。dsRNAは、二本鎖化した2本の別個のRNA鎖でもよく、自己二本鎖化した1本のRNA鎖(小さなヘアピン(sh)RNA)でもよい。典型的に、dsRNAは約21または22塩基対であるが、所望であれば、もっと短くてもよく、もっと長くてもよい(約29核酸塩基まで)。dsRNAは標準的な技法(例えば、化学合成またはインビトロ転写)を用いて作製することができる。キットは、例えば、Ambion(Austin, Tex.)およびEpicentre(Madison, Wis.)から入手可能である。哺乳動物細胞においてdsRNAを発現させるための方法は、Brummelkamp et al. Science 296:550- 553, 2002; Paddison et al. Genes & Devel. 16:948-958, 2002. Paul et al. Nature Biotechnol. 20:505-508, 2002; Sui et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99:5515-5520, 2002; Yu et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99:6047-6052, 2002; Miyagishi et al. Nature Biotechnol. 20:497-500, 2002;およびLee et al. Nature Biotechnol. 20:500-505 2002に記載されている。これらのそれぞれが本明細書において参照により組み入れられる。
【0146】
低分子ヘアピン型RNAは、任意の3'UU-オーバーハングを有するステムループ構造からなる。ばらつきがあるかもしれないが、ステムは21~31bp(望ましくは25~29bp)でもよく、ループは4~30bp(望ましくは4~23bp)でもよい。細胞内のshRNA発現のために、ポリメラーゼIII Hl-RNAまたはU6プロモーター、ステムループRNAインサート用のクローニング部位、および4-5-チミジン転写終結シグナルを含有するプラスミドベクターを使用することができる。ポリメラーゼIIIプロモーターは、一般的に、詳細に明らかにされた開始部位および停止部位を有し、その転写物はポリ(A)テールを欠く。これらのプロモーターの終結シグナルはポリチミジントラクトによって規定され、転写物は典型的に2番目のウリジンの後ろで切断される。この位置で切断されると、発現されたshRNAに3'UUオーバーハングが生じる。これは合成siRNAの3'オーバーハングと似ている。哺乳動物細胞においてshRNAを発現させる、さらなる方法は、上記で引用された参考文献に記載されている。
【0147】
核酸塩基オリゴマーの送達
裸の阻害性核酸分子またはその類似体は哺乳動物細胞に侵入し、関心対象の遺伝子の発現を阻害することができる。それにもかかわらず、細胞へのオリゴヌクレオチドまたは他の核酸塩基オリゴマーの送達を助ける製剤を利用することが望ましい場合がある(例えば、米国特許第5,656,611号、同第5,753,613号、同第5,785,992号、同第6,120,798号、同第6,221,959号、同第6,346,613号、および同第6,353,055号を参照されたい。これらのそれぞれが、その全体が全ての目的のために本明細書において参照により組み入れられる)。
【0148】
試験試料
本発明の方法および組成物は、試験試料において分析物(血小板FcγRIIaタンパク質)を特定するのに有用である。一態様において、本発明の方法は、生物起源の分析物を検出するのに適している。試験試料には、生物起源の溶解または分散された分析物(FcγRIIaタンパク質)を含有する任意の液体が含まれるが、これに限定されない。例示的な試験試料には、体液(例えば、血液、血清、血漿、羊水、痰、尿、脳脊髄液、リンパ液、涙液、糞便、唾液、もしくは胃液)、組織抽出物、または血小板を含有する任意の液体もしくは生物学的流体が含まれる。本発明の目的のために試験試料がそれ自体で十分な流動性がなければ、望ましい流動性になるまで、例えば、ホモジナイゼーションによって、適切な流体と混合される場合がある。
【0149】
処置
本明細書に記載の方法は、対象に最適な処置を選択すること、次いで、任意で、施すことのために使用することができる。対象(例えば、脳卒中または心血管イベントに罹患したことがある患者)は、参照レベルと比べて血小板FcγRIIaタンパク質レベルの上昇を有することに基づいて選択することができる。従って、本明細書に記載の方法は、脳卒中、心血管イベント、および/または死亡を処置および/または予防するための方法を含む。一般的に、前記方法は、治療的有効量の本明細書に記載の処置を、このような処置を必要とするか、またはこのような処置を必要とすると決定されている対象に施す工程を含む。処置は、抗血小板剤、抗凝固剤、および/または本明細書に記載の任意の薬剤の投与を含む。抗血小板剤の非限定的な例には、アセチルサリチル酸(ASA)、クロピドグレル、ジピリダモール、エプチフィバチド、プラスグレル、チカグレロル、チクロピジン、およびボラパクサールが含まれる。抗凝固剤の非限定的な例には、アピキサバン、アルガトロバン、ベトリキサバン、ビバリルジン、ダビガトラン、デシルジン、エドキサバン、エノキサパリン、ヘパリン、レテプラーゼ、リバーロキサバン、ワルファリン、および第XIa因子(FXIa)阻害剤(例えば、Rami A. Al-Horani and Umesh R. Desani, Expert Opin Ther Pat. 26:323-345 (2016)に記載のものを参照されたい)が含まれる。
【0150】
有効量の薬剤を、1回または複数回の投与、適用、または投薬で投与することができる。治療用化合物の治療的有効量(すなわち、有効な投与量)は、選択された治療用化合物に左右される。組成物は、1日おきに1回を含めて、1日に1回または複数回から1週間に1回または複数回まで投与される。当業者は、対象を有効に処置するために、疾患または障害の重症度、以前の処置、対象の全身の健康状態および/または年齢、ならびに存在する他の疾患を含むが、これに限定されない、ある特定の要因が投与量およびタイミングに影響を及ぼすことがあると理解する。さらに、治療的有効量の本明細書に記載の治療用化合物による対象の処置は1回の処置または一連の処置を含んでいてもよい。
【0151】
治療用化合物の投与量、毒性、および治療効力は、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手順、例えば、LD50(集団の50%が死に至る用量)およびED50(集団の50%において治療に有効な用量)を求めるための標準的な薬学的手順によって決定することができる。毒性効果と治療効果の用量比が治療指数であり、比LD50/ED50で表すことができる。治療指数が大きな化合物が好ましい。毒性副作用を示す化合物が用いられる場合があるが、非感染細胞への潜在的な損傷を最小化し、それによって、副作用を低減するために、このような化合物を患部組織部位に標的指向する送達系を設計するように注意しなければならない。
【0152】
ヒトで使用するための投与量範囲を処方する際に、細胞培養アッセイおよび/または動物試験から入手したデータを使用することができる。このような化合物の投与量は、好ましくは、毒性がほとんど無いか、または全くない、ED50を含む循環濃度の範囲内にある。投与量は、使用される剤形および利用される投与経路に応じて、この範囲内で変化し得る。本発明の方法において使用されるどの化合物についても、最初に、細胞培養アッセイから治療的に有効な用量を推定することができる。用量は、細胞培養物において決定されたようなIC50(すなわち、症状の最大半量阻害を実現する試験化合物濃度)を含む循環血漿中濃度範囲に達するように動物モデルにおいて処方される場合がある。このような情報を用いて、ヒトにおける有用な用量をもっと正確に求めることができる。血漿中レベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって測定される場合がある。
【0153】
薬学的組成物
本開示の薬剤は、前記薬剤を、適切な薬学的に許容される担体または希釈剤と組み合わせることで、(例えば、投与による)治療的使用のために、あるいは(例えば、脳卒中、心血管イベント、および/もしくは死亡を処置および/もしくは予防するための、またはその再発もしくは後の発生を予防するための)医用薬剤の製造において様々な製剤に組み込まれ、固体、半固体、液体、または気体の形で調製物に処方され得る。一部の態様において、前記薬剤は、抗血小板剤、例えば、アセチルサリチル酸(ASA)、クロピドグレル、ジピリダモール、エプチフィバチド、プラスグレル、チカグレロル、チクロピジン、またはボラパクサールである。態様において、前記薬剤はアセチルサリチル酸(ASA)を含有する。一部の態様において、前記薬剤は、抗凝固剤、例えば、アピキサバン、アルガトロバン、ベトリキサバン、ビバリルジン、ダビガトラン、デシルジン、エドキサバン、エノキサパリン、ヘパリン、レテプラーゼ、リバーロキサバン、ワルファリン、および第XIa因子(FXIa)阻害剤である(例えば、Rami A. Al-Horani and Umesh R. Desani, Expert Opin Ther Pat. 26:323-345 (2016)に記載のものを参照されたい)。一部の態様において、前記薬剤は、ADP受容体アンタゴニスト(例えば、プラスグレル、クロピドグレル、チカグレロル、チクロピジン、および他のチエノピリジン)、またはPARアンタゴニスト(例えば、ボラパクサール(SCH530348))である。製剤の例には、錠剤、カプセル、粉末、顆粒、軟膏、溶液、坐剤、注射液、吸入剤、ゲル、マイクロスフェア、およびエアロゾルが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0154】
薬学的組成物は、望ましい製剤に応じて、動物投与用またはヒト投与用の薬学的組成物を処方するのに一般的に用いられるビヒクルである希釈剤の薬学的に許容される無毒の担体を含んでいてもよい。希釈剤は、組み合わせの生物学的活性に影響を及ぼさないように選択される。このような希釈剤の例には、蒸留水、緩衝水、生理食塩水、PBS、リンガー溶液、デキストロース溶液、およびハンクス溶液が含まれるが、それらに限定されるわけではない。本開示の薬学的組成物または製剤は、他の担体、アジュバント、または無毒の、非治療的な、非免疫原性の安定剤、賦形剤などをさらに含んでいてもよい。前記組成物はまた、生理学的状態に近づけるために、さらなる物質、例えば、pH調節剤および緩衝剤、毒性調節剤、湿潤剤、ならびに界面活性剤を含んでいてもよい。
【0155】
様々なタイプの投与に適した製剤のさらなる例は、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mace Publishing Company, Philadelphia, Pa., 17th ed. (1985)において見られる。薬物送達法の簡単な総説については、Langer, Science 249: 1527-1533 (1990)を参照されたい。
【0156】
経口投与の場合、活性成分は、固体剤形、例えば、カプセル、錠剤、および粉末の形で投与されてもよく、液体剤形、例えば、エリキシル剤、シロップ、および懸濁液で投与されてもよい。活性成分を、不活性成分および粉末状担体、例えば、グルコース、ラクトース、スクロース、マンニトール、デンプン、セルロースまたはセルロース誘導体、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、サッカリンナトリウム、滑石、炭酸マグネシウムと一緒にゼラチンカプセルに入れてカプセル化することができる。望ましい色、味、安定性、緩衝能、分散、または他の公知の望ましい特徴を提供するために添加され得る、さらなる不活性成分の例は、赤色酸化鉄、シリカゲル、ラウリル硫酸ナトリウム、二酸化チタン、および食用白インクである。
【0157】
同様の希釈剤を用いて圧縮錠を作製することができる。錠剤とカプセルは両方とも、ある時間にわたって薬物を連続放出するための持続放出製品として製造することができる。圧縮錠は、いやな味を隠し、雰囲気から錠剤を保護するために糖衣錠でもよくフィルムコーティング錠でもよく、胃腸管内での選択的崩壊のために腸溶錠でもよい。経口投与用の液体剤形は、患者の受容を高めるために着色剤および着香剤を含有してもよい。
【0158】
非経口投与に適した製剤には、抗酸化物質、緩衝液、静菌剤、および製剤を、意図したレシピエントの血液と等張にする溶質を含有することができる、水性および非水性の等張性の無菌注射溶液、ならびに懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤、および防腐剤を含むことができる、水性および非水性の無菌の懸濁液が含まれる。
【0159】
薬学的組成物を処方するのに用いられる成分は、好ましくは、高純度の成分であり、潜在的に有害な汚染物質を実質的に含まない(例えば、少なくともナショナルフード(NF)グレード、一般的に少なくとも分析グレード、より典型的には少なくとも医薬品グレード)。さらに、インビボ使用が意図される組成物は通常、無菌である。ある特定の化合物を使用前に合成しなければならない程度まで、結果として生じる生成物は、典型的に、合成または精製プロセスの間に存在する可能性がある潜在的に毒性があるどの薬剤も、特に、どのエンドトキシンも実質的に無い。非経口(parental)投与用の組成物は、無菌であり、実質的に等張性であり、医薬品の製造管理及び品質管理の基準(GMP)の条件下で作製される。
【0160】
製剤は、対象および/または対象の組織における保持および安定化のために、例えば、対象による製剤の急速なクリアランスを阻止するために最適化されてもよい。安定化技法には、分子量を増加させるために、架橋結合、多量体化、またはポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、中性タンパク質担体などの基との連結が含まれる。
【0161】
保持を増加させるための戦略には、生分解性または生体腐食性の移植片の中への前記薬剤の封入が含まれる。治療活性のある薬剤の放出速度は、ポリマーマトリックスを通る輸送速度、および移植片の生分解によって制御される。ポリマー障壁を通る薬物の輸送は、化合物溶解度、ポリマー親水性、ポリマー架橋結合の程度、ポリマー障壁の薬物透過性をもっと高めるための水吸収時のポリマーの拡大、移植片の形状などの影響も受ける。移植片は、移植部位として選択された領域のサイズおよび形状に対応する寸法の移植片である。移植片は、粒子、シート、パッチ、プラーク、繊維、マイクロカプセルなどでもよく、選択された挿入部位と適合する任意のサイズまたは形状のものでもよい。
【0162】
移植片はモノリシックでもよい、すなわち、活性薬剤がポリマーマトリックスの端から端まで均一に分散されていてもよく、カプセル化されていてもよく、この場合、活性薬剤のリザーバーがポリマーマトリックスによってカプセル化されている。使用されるポリマー組成物の選択は、投与部位、望ましい処置期間、患者の許容度、処置しようとする疾患がどういったものかなどによって変わる。ポリマーの特徴には、移植部位での生分解性、関心対象の薬剤との適合性、カプセル化の容易さ、生理学的環境における半減期が含まれる。
【0163】
使用され得る生分解性ポリマー組成物は、分解されると、単量体を含む生理学的に許容される分解産物になる有機エステルまたはエーテルでもよい。単独で、または他の単量体と組み合わせて、無水物、アミド、オルトエステルなどが用いられる場合がある。ポリマーは縮合ポリマーである。ポリマーは架橋されてもよく、架橋されなくてもよい。ホモポリマーまたはコポリマーいずれかのヒドロキシ脂肪族カルボン酸のポリマーおよび多糖類が特に関心が高い。関心対象のポリエステルの中には、D-乳酸、L-乳酸、ラセミ乳酸、グリコール酸、ポリカプロラクトン、およびそれらの組み合わせのポリマーが含まれる。L-乳酸塩またはD-乳酸塩を用いることで、ゆっくりと生分解するポリマーが実現するのに対して、ラセミ体を用いると分解が大幅に増強される。グリコール酸と乳酸のコポリマーが特に関心が高く、生分解速度はグリコール酸と乳酸の比によって制御される。最も速く分解されるコポリマーのグリコール酸量と乳酸量はほぼ等しく、どちらのホモポリマーも分解に対して抵抗性である。グリコール酸と乳酸の比は移植片の脆性にも影響を及ぼし、大きな形状には、柔軟性のある移植片が望ましい。関心対象の多糖類の中には、アルギン酸カルシウム、および官能性を持たせた(functionalized)セルロース、特に水不溶性、約5kD~500kDの分子量などを特徴とするカルボキシメチルセルロースエステルがある。生分解性ヒドロゲルも、個々の本開示の移植片において用いられる場合がある。ヒドロゲルは、典型的に、液体を吸収する能力を特徴とするコポリマー材料である。使用され得る例示的な生分解性ヒドロゲルは、Heller in: Hydrogels in Medicine and Pharmacy, N. A. Peppes ed., Vol. III, CRC Press, Boca Raton, Fla., 1987, pp 137-149に記載されている。
【0164】
薬学的投与量
本明細書に記載の薬剤(例えば、アセチルサリチル酸(ASA)、クロピドグレル、ジピリダモール、エプチフィバチド、プラスグレル、チカグレロル、チクロピジン、ボラパクサール、アピキサバン、アルガトロバン、ベトリキサバン、ビバリルジン、ダビガトラン、デシルジン、エドキサバン、エノキサパリン、ヘパリン、レテプラーゼ、リバーロキサバン、ワルファリン、および第XIa因子(FXIa)阻害剤)を含有する本開示の薬学的組成物は、公知の方法、例えば、経口投与、ボーラス注入として、またはある期間にわたる連続注入による、筋肉内経路、腹腔内経路、脳脊髄内経路、頭蓋内経路、脊髄内経路、皮下経路、関節内経路、滑液嚢内経路、くも膜下腔内経路、局部経路、もしくは吸入経路による静脈内投与に従って使用され得る(例えば、ヒト個体などの個体に投与され得る)。前記薬剤はADP受容体アンタゴニストまたはPARアンタゴニストでもよい。
【0165】
本開示の薬学的組成物の投与量および望ましい薬物濃度は、想定される特定の用途に応じて変わる場合がある。適切な投与量または投与経路の決定は十分に当業者の技術範囲内である。動物実験は、ヒト療法のための有効用量を決定するための信頼性の高いガイダンスを提供する。有効用量の種間調整は、Mordenti, J. and Chappell, W. 「The Use of Interspecies Scaling in Toxicokinetics」, In Toxicokinetics and New Drug Development, Yacobi et al., Eds, Pergamon Press, New York 1989, pp. 42-46に記載の原理に従って実施することができる。
【0166】
本開示の任意の薬剤をインビボ投与する場合、通常の投与量は、投与経路に応じて、1日あたり、個体および/または対象の体重につき約10ng/kg~約100mg/kgまでまたはそれ以上になることがある。一部の態様において、用量は約1mg/kg/日~10mg/kg/日である。数日以上にわたって反復投与する場合、処置しようとする疾患、障害、または状態の重症度に応じて、症状の望ましい抑制が実現するまで処置は持続される。
【0167】
本開示の薬剤の有効量は、例えば、(投与方法に応じて)1日または数日にわたる1回または複数回の用量投与において約0.001mg/kg~約1000mg/kgまたはそれ以上になる場合がある。ある特定の態様において、1用量あたりの有効量は、約0.001mg/kg~約1000mg/kg、約0.01mg/kg~約750mg/kg、約0.1mg/kg~約500mg/kg、約1.0mg/kg~約250mg/kg、および約10.0mg/kg~約150mg/kgである。
【0168】
例示的な投与計画は、初回高用量の本開示の薬剤を投与し、その後に、定期的に投与される維持量を投与する工程を含んでいてもよい。他の投与計画が、医師が実現したいと望む薬物動態学的崩壊パターンに応じて有用な場合がある。例えば、個体に週に1~21回投薬することが本明細書において意図される。ある特定の態様において、約3μg/kg~約2mg/kg(例えば、約3μg/kg、約10μg/kg、約30μg/kg、約100μg/kg、約300μg/kg、約1mg/kg、または約2mg/kg)の投薬が用いられる場合がある。ある特定の態様において、投薬頻度は1日3回、1日2回、1日1回、1日おきに1回、週1回、2週間に1回、4週間に1回、5週間に1回、6週間に1回、7週間に1回、8週間に1回、9週間に1回、10週間に1回、または月1回、2ヶ月に1回、3ヶ月に1回であるか、またはそれより長い。療法の進行は従来の技法およびアッセイによって容易にモニタリングされる。投与される薬剤を含む投与計画は、使用される用量とは関係なく経時的に変化してもよい。
【0169】
本明細書に記載の薬学的組成物は、薬理学の分野において公知の任意の方法によって調製することができる。一般的に、このような準備方法は、本明細書に記載の薬剤または化合物を、担体もしくは賦形剤、および/または1種もしくは複数種の他のアクセサリー成分と結合させる工程、次いで、所望であれば、生成物を望ましいシングルドーズ単位またはマルチドーズ単位に成型および/または包装する工程を含む。
【0170】
薬学的組成物は、単一単位用量として、および/または複数の単一単位用量として、まとめて、調製、包装、および/または販売することができる。「単位用量」は、予め決められた量の活性成分を含む薬学的組成物の個別の量である。活性成分の量は、一般的に、対象に投与される活性成分の投与量、および/またはこのような投与量の便利な一部、例えば、このような投与量の1/2もしくは1/3に等しい。
【0171】
本明細書に記載の薬学的組成物中にある活性成分、薬学的に許容される賦形剤、および/または任意のさらなる成分の相対量は、処置される対象の身元、サイズ、および/または状態に応じて、さらに、組成物が投与される経路に応じて変わる。前記組成物は0.1%~100%(w/w)の活性成分を含んでいてもよい。
【0172】
提供される薬学的組成物の製造において用いられる薬学的に許容される賦形剤には、不活性な希釈剤、分散剤および/もしくは造粒剤、表面活性剤および/もしくは乳化剤、崩壊剤、結合剤、防腐剤、緩衝剤、潤滑剤、ならびに/または油が含まれる。賦形剤、例えば、カカオ脂および坐剤ろう、着色剤、コーティング剤、甘味剤、着香剤、および芳香剤も組成物に存在してよい。
【0173】
例示的な希釈剤には、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸ナトリウムラクトース、スクロース、セルロース、結晶セルロース、カオリン、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、塩化ナトリウム、乾燥デンプン、コーンスターチ、粉砂糖、およびそれらの混合物が含まれる。
【0174】
例示的な造粒剤および/または分散剤には、バレイショデンプン、コーンスターチ、タピオカデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、クレー、アルギン酸、グアーゴム、シトラスパルプ、寒天、ベントナイト、セルロース、および木製品、天然スポンジ、陽イオン交換樹脂、炭酸カルシウム、ケイ酸塩、炭酸ナトリウム、架橋ポリ(ビニル-ピロリドン)(クロスポビドン)、カルボキシメチルデンプンナトリウム(デンプングリコール酸ナトリウム)、カルボキシメチルセルロース、架橋ナトリウムカルボキシメチルセルロース(クロスカルメロース)、メチルセルロース、アルファ化デンプン(starch 1500)、結晶デンプン、水不溶性デンプン、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム(Veegum)、ラウリル硫酸ナトリウム、四級アンモニウム化合物、およびそれらの混合物が含まれる。
【0175】
例示的な表面活性剤および/または乳化剤には、天然乳化剤(例えば、アラビアゴム、寒天、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、トラガカントゴム、コンドルクス(chondrux)、コレステロール、キサンタン、ペクチン、ゼラチン、卵黄、カゼイン、羊毛脂、コレステロール、ろう、およびレシチン)、コロイド粘土(例えば、ベントナイト(ケイ酸アルミニウム)およびVeegum(ケイ酸マグネシウムアルミニウム))、長鎖アミノ酸誘導体、高分子量アルコール(例えば、ステアリルアルコール、セチルアルコール、オレイルアルコール、モノステアリン酸トリアセチン、ジステアリン酸エチレングリコール、モノステアリン酸グリセリン、およびプロピレングリコールモノステアレート、ポリビニルアルコール)、カルボマー(例えば、カルボキシポリメチレン、ポリアクリル酸、アクリル酸ポリマー、およびカルボキシビニルポリマー)、カラゲナン、セルロース誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、粉末セルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース)、ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(Tween(登録商標)20)、ポリオキシエチレンソルビタン(Tween(登録商標)60)、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(Tween(登録商標)80)、ソルビタンモノパルミテート(Span(登録商標)40)、ソルビタンモノステアレート(Span(登録商標)60)、ソルビタントリステアレート(Span(登録商標)65)、グリセリルモノオレエート、ソルビタンモノオレエート(Span(登録商標)80)、ポリオキシエチレンエステル(例えば、ポリオキシエチレンモノステアレート(Myrj(登録商標)45)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリエトキシ化ヒマシ油、ステアリン酸ポリオキシメチレン、およびSolutol(登録商標))、スクロース脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル(例えば、Cremophor(登録商標))、ポリオキシエチレンエーテル、(例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(Brij(登録商標)30))、ポリ(ビニル-ピロリドン)、ジエチレングリコールモノラウレート、トリエタノールアミンオレエート、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、オレイン酸エチル、オレイン酸、ラウリン酸エチル、ラウリル硫酸ナトリウム、Pluronic(登録商標)F-68、ポロキサマーP-188、臭化セトリモニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、ドクサートナトリウム、ならびに/またはそれらの混合物が含まれる。
【0176】
例示的な結合剤には、デンプン(例えば、コーンスターチおよびデンプンのり)、ゼラチン、糖(例えば、スクロース、グルコース、デキストロース、デキストリン、糖蜜、ラクトース、ラクチトール、マンニトールなど)、天然ゴムおよび合成ゴム(例えば、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、アイリッシュモスの抽出物、パンワ(panwar)ゴム、ガッチゴム、イソパルハスクス(isapol husks)粘液、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、結晶セルロース、酢酸セルロース、ポリ(ビニル-ピロリドン)、ケイ酸マグネシウムアルミニウム(Veegum(登録商標))、およびカラマツアラボガラクタン(larch arabogalactan))、アルギン酸塩、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、無機カルシウム塩、ケイ酸、ポリメタクリレート、ろう、水、アルコール、ならびに/またはそれらの混合物が含まれる。
【0177】
例示的な防腐剤には、抗酸化物質、キレート剤、抗菌性防腐剤、抗真菌性防腐剤、抗原虫性防腐剤、アルコール防腐剤、酸性防腐剤、および他の防腐剤が含まれる。ある特定の態様において、防腐剤は抗酸化物質である。他の態様において、防腐剤はキレート剤である。
【0178】
例示的な抗酸化物質には、αトコフェロール、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、モノチオグリセロール、メタ重亜硫酸カリウム、プロピオン酸、没食子酸プロピル、アスコルビン酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、および亜硫酸ナトリウムが含まれる。
【0179】
例示的なキレート剤には、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)ならびにその塩および水和物(例えば、エデト酸ナトリウム、エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、エデト酸カルシウム二ナトリウム、エデト酸二カリウムなど)、クエン酸ならびにその塩および水和物(例えば、クエン酸一水和物)、フマル酸ならびにその塩および水和物、リンゴ酸ならびにその塩および水和物、リン酸ならびにその塩および水和物、ならびに酒石酸ならびにその塩および水和物が含まれる。例示的な抗菌性防腐剤には、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、ブロノポール、セトリミド、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、クロロブタノール、クロロクレゾール、クロロキシレノール、クレゾール、エチルアルコール、グリセリン、ヘキセチジン、イミド尿素、フェノール、フェノキシエタノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、プロピレングリコール、およびチメロサールが含まれる。
【0180】
例示的な抗真菌性防腐剤には、ブチルパラベン、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、安息香酸カリウム、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、およびソルビン酸が含まれる。
【0181】
例示的なアルコール防腐剤には、エタノール、ポリエチレングリコール、フェノール、フェノール化合物、ビスフェノール、クロロブタノール、ヒドロキシベンゾエート、およびフェニルエチルアルコールが含まれる。
【0182】
例示的な酸性防腐剤には、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、βカロテン、クエン酸、酢酸、デヒドロ酢酸、アスコルビン酸、ソルビン酸、およびフィチン酸が含まれる。
【0183】
他の防腐剤には、トコフェロール、酢酸トコフェロール、メシル酸デテロキシム、セトリミド、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、エチレンジアミン、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、メタ重亜硫酸カリウム、Glydant(登録商標)Plus、Phenonip(登録商標)、メチルパラベン、Germall(登録商標)115、Germaben(登録商標)II、Neolone(登録商標)、Kathon(登録商標)、およびEuxyl(登録商標)が含まれる。
【0184】
例示的な緩衝剤には、クエン酸緩衝溶液、酢酸緩衝溶液、リン酸緩衝溶液、塩化アンモニウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、カルシウムクエン酸塩、グルビオン酸カルシウム、グルセプト酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、D-グルコン酸、グリセロリン酸カルシウム、乳酸カルシウム、プロピオン酸、レブリン酸カルシウム、ペンタン酸、リン酸一水素カルシウム、リン酸、第三リン酸カルシウム、水酸化リン酸カルシウム、酢酸カリウム、塩化カリウム、グルコン酸カリウム、カリウム混合物、リン酸二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸カリウム混合物、酢酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸ナトリウム混合物、トロメタミン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、アルギン酸、発熱物質を含まない水、等張食塩水、リンガー溶液、エチルアルコール、およびそれらの混合物が含まれる。
【0185】
例示的な潤滑剤には、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、シリカ、タルク、麦芽、グリセリルベハネート(glyceryl behanate)、硬化植物油、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ロイシン、ラウリル硫酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、およびそれらの混合物が含まれる。
【0186】
例示的な天然油には、扁桃油、杏仁油、アボカド油、ババス油、ベルガモット油、クロフサスグリ種子油、ボラージ油、カデ油、カミツレ油、キャノーラ油、カラウェー油、カルナウバ油、トウゴマ油、桂皮油、カカオ脂、ヤシ油、タラ肝油、コーヒー油、トウモロコシ油、綿実油、エミュー油、ユーカリ油、月見草油、魚油、亜麻仁油、ゲラニオール油、ヒョウタン油、グレープシード油、ヘーゼルナッツ油、ヒソップ油、ミリスチンイソプロピル油、ホホバ油、ククイナッツ油、ラバンジン油、ラベンダー油、レモン油、リツエアクベバ(litsea cubeba)油、マカダミアナッツ油、ゼニアオイ油、マンゴーシード油、メドーフォーム種子油、ミンク油、ナツメグ油、オリーブ油、オレンジ油、オレンジラフィー油、パーム油、パーム核油、桃仁油、ピーナッツ油、ケシ油、パンプキンシード油、ナタネ油、米ぬか油、ローズマリー油、ベニバナ油、ビャクダン油、サスクアナ(sasquana)油、サボリー油、シーバックソーン油、ゴマ油、シアバター油、シリコーン油、ダイズ油、ヒマワリ油、チャノキ油、アザミ油、ツバキ油、ベチバー油、クルミ油、および麦芽油が含まれる。例示的な合成油には、ステアリン酸ブチル、カプリル酸トリグリセリド、カプリン酸トリグリセリド、シクロメチコン、セバシン酸ジエチル、ジメチコン360、ミリスチン酸イソプロピル、鉱油、オクチルドデカノール、オレイルアルコール、シリコーン油、およびそれらの混合物が含まれるが、これに限定されない。
【0187】
経口投与用および非経口投与用の液体剤形には、薬学的に許容されるエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシル剤が含まれる。液体剤形は、活性成分に加えて、当技術分野において一般的に用いられる不活性希釈剤、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(例えば、綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにそれらの混合物を含有してもよい。不活性希釈剤に加えて、経口組成物は、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、甘味剤、着香剤、ならびに芳香剤などのアジュバントを含んでいてもよい。非経口投与用のある特定の態様において、本明細書に記載のコンジュゲートは、可溶化剤、例えば、Cremophor(登録商標)、アルコール、油、改良された油、グリコール、ポリソルベート、シクロデキストリン、ポリマー、およびそれらの混合物と混合される。
【0188】
注射用調製物、例えば、無菌注射用水性懸濁液または油性懸濁液を、適切な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を用いて、公知の技術に従って処方することができる。無菌注射用調製物は、例えば、1,3-ブタンジオール溶液として、無毒の非経口的に許容される希釈剤または溶媒に溶解した無菌の注射液、懸濁液、またはエマルジョンであってもよい。使用することができる許容可能なビヒクルおよび溶媒の中には、水、リンガー溶液、U.S.P.、および等張塩化ナトリウム溶液がある。さらに、無菌不揮発性油が溶媒または懸濁媒体として従来より用いられる。この目的では、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む任意の無刺激性不揮発性油を使用することができる。さらに、オレイン酸などの脂肪酸が注射剤の調製において用いられる。
【0189】
例えば、細菌保持フィルターで濾過することによって、または使用前に滅菌水もしくは他の無菌注射用媒体に溶解または分散することができる無菌固体組成物の形で滅菌剤を組み込むことによって、注射用製剤は滅菌することができる。
【0190】
薬物の効果を延長するために、皮下注射または筋肉内注射からの薬物吸収を遅くすることが望ましい場合がある。これは、水溶解度が低い結晶材料または非結晶材料の液体懸濁液を使用することによって成し遂げることができる。次いで、薬物の吸収速度は、その溶解速度に左右され、そして次に、溶解速度は結晶サイズおよび結晶形態に左右されることがある。または、非経口投与薬物形態の遅延吸収は、薬物を油ビヒクルに溶解または懸濁することによって成し遂げられることがある。
【0191】
直腸投与用または腟投与用の組成物は、典型的に、坐剤であり、これは、周囲温度で固体であるが、体温では液体である、従って、直腸または膣腔の中で融けて活性成分を放出する、適切な非刺激性の賦形剤または担体、例えば、カカオ脂、ポリエチレングリコール、または坐剤ろうと、本明細書に記載のコンジュゲートとを混合することによって調製することができる。
【0192】
経口投与用の固体剤形には、カプセル、錠剤、丸剤、散剤、および顆粒剤が含まれる。このような固体剤形では、活性成分は、少なくとも1種の不活性の薬学的に許容される賦形剤または担体、例えば、クエン酸ナトリウムもしくはリン酸二カルシウム、ならびに/または(a)増量剤もしくはエキステンダー、例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、およびケイ酸、(b)例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、スクロース、およびアラビアゴムなどの結合剤、(c)保湿剤、例えば、グリセロール、(d)崩壊剤、例えば、寒天、炭酸カルシウム、バレイショデンプンもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、ある特定のケイ酸塩、および炭酸ナトリウム、(e)溶解遅延剤、例えば、パラフィン、(f)吸収促進剤、例えば、四級アンモニウム化合物、(g)例えば、セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロールなどの湿潤剤、(h)吸収剤、例えば、カオリンおよびベントナイトクレー、ならびに(i)潤滑剤、例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびそれらの混合物と混合される。カプセル、錠剤、および丸剤の場合、剤形は緩衝剤を含んでいてもよい。
【0193】
ラクトースまたは乳糖ならびに高分子量ポリエチレングリコールなど賦形剤を用いて、同様のタイプの固体組成物を、軟ゼラチンカプセルおよび硬ゼラチンカプセルの中の増量剤として使用することができる。錠剤、糖衣錠、カプセル、丸剤、および顆粒剤の固体剤形は、腸溶コーティングおよび薬理学の分野において周知の他のコーティングなどのコーティングおよびシェルを用いて調製することができる。これらは任意で不透明剤を含んでいてもよく、活性成分を腸管のある特定の部分でしか放出しないか、または活性成分を優先的に腸管のある特定の部分において放出する、任意で遅延して放出する組成のものでもよい。使用することができるカプセル化組成物の例にはポリマー物質およびろうが含まれる。ラクトースまたは乳糖ならびに高分子量ポリエチレン(polethylene)グリコールなどの賦形剤を用いて、同様のタイプの固体組成物を、軟ゼラチンカプセルおよび硬ゼラチンカプセルの中の増量剤として使用することができる。
【0194】
活性成分は、上記のような1種または複数種の賦形剤を用いてマイクロカプセルの形をとってもよい。錠剤、糖衣錠、カプセル、丸剤、および顆粒剤の固体剤形は、腸溶コーティング、放出制御コーティング、および薬学的処方の分野において周知の他のコーティングなどのコーティングおよびシェルを用いて調製することができる。このような固体剤形において、活性成分は、スクロース、ラクトース、またはデンプンなどの少なくとも1種の不活性希釈剤と混合することができる。このような剤形は、通常の慣行のように、不活性希釈剤とは異なる、さらなる物質、例えば、錠剤化用潤滑剤および他の錠剤化用助剤、例えば、ステアリン酸マグネシウムおよび結晶セルロースを含んでいてもよい。カプセル、錠剤、および丸剤の場合、剤形は緩衝剤を含んでいてもよい。これらは任意で不透明剤を含んでいてもよく、活性成分を腸管のある特定の部分でしか放出しないか、または活性成分を優先的に腸管のある特定の部分において放出する、任意で遅延して放出する組成のものでもよい。使用することができるカプセル化剤の例にはポリマー物質およびろうが含まれる。
【0195】
本明細書に記載の薬剤の局部投与用および/または経皮投与用の剤形は、軟膏、ペースト剤、クリーム、ローション剤、ゲル、粉末、溶液、スプレー、吸入剤、および/またはパッチを含んでいてもよい。一般的に、活性成分は、薬学的に許容される担体または賦形剤と共に、ならびに/または有利な場合がある、任意の必要とされる防腐剤および/もしくは緩衝液と共に無菌条件下で混合される、
【0196】
さらに、本開示は、身体への活性成分の制御送達を提供するという、さらなる利益を有することが多い経皮パッチの使用を意図する。このような剤形は、例えば、適切な媒体に溶解して活性成分を溶解および/または分注することによって調製することができる。または、もしくはさらに、速度制御膜を設けることによって、ならびに/またはポリマーマトリックスおよび/もしくはゲルの中に活性成分を分散させることによって、速度を制御することができる。
【0197】
本明細書に記載の皮内薬学的組成物の送達において使用するための適切な装置には短針装置が含まれる。皮膚への針の実効貫通長を制限する装置によって皮内組成物を投与することができる。または、もしくはさらに、皮内投与の古典的なマントー法では従来の注射器を使用することができる。
【0198】
液体ジェット注射器を介して、および/または角質層に穴をあける針を介して液体製剤を真皮に送達し、真皮に到達するジェットを生じるジェット式注射装置が適している。圧縮ガスを用いて化合物を粉末の形で加速して、皮膚の外層を通って真皮に向ける衝撃粉末/粒子送達装置が適している。
【0199】
局部投与に適した製剤には、液体および/または半液体の調製物、例えば、リニメント剤、ローション剤、水中油型および/または油中水型エマルジョン、例えば、クリーム、軟膏および/もしくはペースト剤、ならびに/または溶液および/もしくは懸濁液が含まれるが、これに限定されない。局部投与可能な製剤は、例えば、約1%~約10%(w/w)活性成分を含んでいてもよいが、活性成分の濃度は、溶媒における活性成分の溶解度の限界と同じくらいの大きさでもよい。局部投与用の製剤は、本明細書に記載のさらなる成分のうちの1つまたは複数をさらに含んでいてもよい。
【0200】
本明細書に記載の薬学的組成物は、口腔前庭を介した肺投与に適した製剤の形で調製、包装、および/または販売することができる。このような製剤は、活性成分を含み、約0.5~約7ナノメートルまたは約1~約6ナノメートルの範囲の直径を有する乾燥粒子を含んでいてもよい。このような組成物は、都合良く、粉末を分散するように噴霧剤の流れを方向付けることができる乾燥粉末リザーバーを備えた装置を用いて、および/または自動推進式溶媒/粉末分注容器、例えば、密封容器の中にある低沸点噴霧剤に溶解および/または懸濁された活性成分を備える装置を用いて投与するために乾燥粉末の形をとる。このような粉末は、少なくとも98重量%の粒子が0.5ナノメートルより大きな直径を有し、数で少なくとも95%の粒子が7ナノメートルより小さな直径を有する、または、少なくとも95重量%の粒子が1ナノメートルより大きな直径を有し、数で少なくとも90%の粒子が6ナノメートルより小さな直径を有する、粒子を含む。乾燥粉末組成物は糖などの固体細粉希釈剤を含んでいてもよく、単位剤形で都合よく提供される。
【0201】
低沸点噴霧剤は、一般的に、大気圧で沸点が65°Fより低い液体噴霧剤を含む。一般的に、噴霧剤は前記組成物の50~99.9%(w/w)を構成することがあり、活性成分は前記組成物の0.1~20%(w/w)を構成することがある。噴霧剤は、さらなる成分、例えば、液体非イオン界面活性剤および/もしくは固体陰イオン界面活性剤ならびに/または固体希釈剤(活性成分を含む粒子と同じ桁の粒径を有してもよい)をさらに含んでいてもよい。
【0202】
肺送達用に処方された本明細書に記載の薬学的組成物は、溶液および/または懸濁液の液滴の形で活性成分を提供してもよい。このような製剤は、活性成分を含む、水性および/または希アルコール性の、任意で無菌の溶液および/または懸濁液として調製、包装、および/または販売することができ、都合よく、任意の吸入投与および/または噴霧装置を用いて投与され得る。このような製剤は、着香剤、例えば、サッカリンナトリウム、揮発油、緩衝剤、表面活性剤、および/または防腐剤、例えば、ヒドロキシ安息香酸メチルを含むが、これに限定されない1種または複数種のさらなる成分をさらに含んでいてもよい。この投与経路によって提供される液滴の平均直径は約0.1~約200ナノメートルの範囲にあってもよい。
【0203】
肺送達に有用な本明細書に記載の製剤は、本明細書に記載の薬学的組成物の鼻腔内送達に有用である。鼻腔内投与に適した別の製剤は、活性成分を含み、約0.2~500マイクロメートルの平均粒子を有する粗粉末である。このような製剤は、外鼻孔に近づけて保持される粉末容器から鼻腔を通って迅速に吸入することで投与される。
【0204】
経鼻投与用の製剤は、例えば、約0.1%(w/w)と低い濃度の活性成分から約100%(w/w)と高い濃度の活性成分を含んでいてもよく、本明細書に記載のさらなる成分のうちの1つまたは複数を含んでいてもよい。本明細書に記載の薬学的組成物は頬投与用の製剤の形で調製、包装、および/または販売することができる。このような製剤は、例えば、従来法を用いて作られた錠剤および/またはロゼンジの形でもよく、例えば、0.1~20%(w/w)活性成分を含有してもよく、残余は、経口で溶解可能および/または分解可能な組成物と、任意で、本明細書に記載のさらなる成分のうちの1つまたは複数を含む。または、頬投与用の製剤は、活性成分を含む、粉末、ならびに/またはエアロゾル化および/もしくは微粒化された溶液および/または懸濁液を含んでいてもよい。このような粉末状の、エアロゾル化された、および/またはエアロゾル化された製剤は分散されると、約0.1~約200ナノメートルの範囲内にある粒径および/または液滴サイズの平均を有してもよく、本明細書に記載のさらなる成分のうちの1つまたは複数をさらに含んでいてもよい。
【0205】
本明細書に記載の薬学的組成物は、眼投与用の製剤の形で調製、包装、および/または販売することができる。このような製剤は、例えば、水性または油性の液体担体または賦形剤に溶解した活性成分の0.1~1.0%(w/w)溶液および/または懸濁液を含む、例えば、点眼剤の形をとってもよい。このようなドロップは、緩衝剤、塩、および/または本明細書に記載のさらなる成分のうちの1つもしくは複数他をさらに含んでいてもよい。有用な他の眼投与可能な製剤には、微結晶の形で、および/またはリポソーム調製物の形で活性成分を含む製剤が含まれる。点耳剤および/または点眼剤も本開示の範囲内であると意図される。
【0206】
本明細書において提供される薬学的組成物の説明は、主に、ヒトに投与するのに適した薬学的組成物に関するが、このような組成物は、一般的に、あらゆる種類の動物に投与するのに適していると当業者により理解される。ヒトに投与するのに適した薬学的組成物を様々な動物に投与するのに適するように、この組成物を改変することは十分に理解されており、普通に熟練した獣医学薬理学者は、このような改変を通常の実験によって設計および/または実施することができる。
【0207】
本明細書において提供される薬剤は、投与の容易さおよび投与量の均一性のために単位剤形で処方することができる。しかしながら、本明細書に記載の薬剤の1日の全使用量は適切な医学的判断の範囲内で医師によって決定されると理解される。任意の特定の対象または生物に対する特定の治療に有効な用量レベルは、処置されている疾患および障害の重症度;使用される特定の活性成分の活性;使用される特定の組成物;対象の年齢、体重、全身の健康状態、性別、および食事;使用される特定の活性成分の投与時間、投与経路、および排出速度;処置の期間;使用される特定の活性成分と併用される、または使用される特定の活性成分と同時に存在する薬物;ならびに医学分野において周知の同様の要因を含む様々な要因に左右される。
【0208】
本明細書において提供される薬剤および組成物は、経腸(例えば、経口)、非経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、くも膜下腔内、皮下、脳室内、経皮、皮膚間、直腸、腟内、腹腔内、局部(例えば、粉末、軟膏、クリーム、および/もしくはドロップによる)、粘膜、経鼻、頬、舌下の経路;気管内注入、気管支注入、および/もしくは吸入による経路;ならびに/または口腔スプレー、鼻スプレー、および/もしくはエアロゾルとしての経路を含む任意の経路によって、投与することができる。特に意図される経路は、経口投与、静脈内投与(例えば、全身静脈内注射)、血液および/もしくはリンパ供給を介した局所投与、ならびに/または患部への直接投与である。一般的に、最も適切な投与経路は、薬剤がどういったものであるかということ(例えば、胃腸管の環境でのその安定性)、および/または対象の状態(例えば、対象が経口投与を許容できるかどうか)によって決まる。ある特定の態様において、本明細書に記載の薬剤または薬学的組成物は対象の眼に局部投与するのに適している。
【0209】
有効量に相当する薬剤の正確な量は、例えば、対象の種、年齢、および全身状態、副作用または障害の重症度、特定の薬剤の同一性、投与方法などに応じて対象によって異なる。有効量は単一用量(例えば、単一経口用量)に含まれてもよく、複数用量(例えば、複数経口用量)に含まれてもよい。ある特定の態様において、複数用量が対象に投与される時、または組織または細胞に適用される時、複数用量のいずれか2つの用量は、異なる量の本明細書に記載の薬剤または実質的に同じ量の本明細書に記載の薬剤を含む。
【0210】
本明細書中の他の場所で言及されるように、本開示の薬物は、皮下経路、静脈内経路、くも膜下腔内経路、筋肉内経路、鼻腔内経路、経口経路、経皮経路、非経口経路、吸入による経路、または脳室内経路を含むが、これに限定されない多数の投与経路を介して、投与され得る。
【0211】
本開示の一部の態様において、本明細書において定義される製剤はボーラス投与によって対象に投与される。
【0212】
熟練した臨床医によって有効であると決定された薬剤は、望ましい部位で望ましい効果(例えば、脳卒中、心血管イベント、および/または死亡の発生、再発、または後の発生の低減)を実現するのに十分な量で対象に投与することができる。本開示の一部の態様において、前記薬剤は少なくとも1年に1回投与される。本開示の他の態様において、前記薬剤は少なくとも1日1回投与される。本開示の他の態様において、前記薬剤は少なくとも1週間に1回投与される。本開示の一部の態様において、前記薬剤は少なくとも1ヶ月に1回投与される。
【0213】
本開示の薬剤を対象に投与するための、さらなる例示的な用量には、以下:1~20mg/kg/日、2~15mg/kg/日、5~12mg/kg/日、10mg/kg/日、1~500mg/kg/日、2~250mg/kg/日、5~150mg/kg/日、20~125mg/kg/日、50~120mg/kg/日、100mg/kg/日、少なくとも10μg/kg/日、少なくとも100μg/kg/日、少なくとも250μg/kg/日、少なくとも500μg/kg/日、少なくとも1mg/kg/日、少なくとも2mg/kg/日、少なくとも5mg/kg/日、少なくとも10mg/kg/日、少なくとも20mg/kg/日、少なくとも50mg/kg/日、少なくとも75mg/kg/日、少なくとも100mg/kg/日、少なくとも200mg/kg/日、少なくとも500mg/kg/日、少なくとも1g/kg/日、ならびに500mg/kg/日未満、200mg/kg/日未満、100mg/kg/日未満、50mg/kg/日未満、20mg/kg/日未満、10mg/kg/日未満、5mg/kg/日未満、2mg/kg/日未満、1mg/kg/日未満、500μg/kg/日未満、および500μg/kg/日未満である治療に有効な用量が含まれるが、これに限定されない。
【0214】
ある特定の態様において、複数用量が対象に投与される時に、または組織もしくは細胞に適用される時に、複数用量を対象に投与する頻度、または複数用量を組織もしくは細胞に適用する頻度は、1日3用量、1日2用量、1日1用量、1日おきに1用量、2日おきに1用量、週1用量、2週間に1用量、3週間に1用量、または4週間に1用量である。ある特定の態様において、複数用量を対象に投与する頻度または複数用量を組織もしくは細胞に適用する頻度は1日1用量である。ある特定の態様において、複数用量を対象に投与する頻度、または複数用量を組織もしくは細胞に適用する頻度は1日2用量である。ある特定の態様において、複数用量を対象に投与する頻度または複数用量を組織もしくは細胞に適用する頻度は1日3用量である。ある特定の態様において、複数用量が対象に投与される時に、または組織もしくは細胞に適用される時に、複数用量の第1の用量と最後の用量との間の期間は、1日、2日、4日、1週間、2週間、3週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、1年、2年、3年、4年、5年、7年、10年、15年、20年、または対象、組織、もしくは細胞の一生である。ある特定の態様において、複数用量の第1の用量と最後の用量との間の期間は3ヶ月、6ヶ月、または1年である。ある特定の態様において、複数用量の第1の用量と最後の用量との間の期間は対象、組織、もしくは細胞の一生である。ある特定の態様において、本明細書に記載の用量(例えば、単一用量、または複数用量の任意の用量)は、独立して、0.1μg~1μg、0.001mg~0.01mg、0.01mg~0.1mg、0.1mg~1mg、1mg~3mg、3mg~10mg、10mg~30mg、30mg~100mg、100mg~300mg、300mg~1,000mg、または1g~10gの本明細書に記載の薬剤を両端の値を含めて含む。
【0215】
本明細書に記載の用量範囲は、提供される薬学的組成物を成人に投与するためのガイダンスを提供すると理解される。例えば、小児または青少年に投与される量は医療従事者または当業者によって決定されてもよく、成人に投与される量より少なくてもよく、同じでもよい。ある特定の態様において、本明細書に記載の用量は、体重が70kgの成人に対する用量である。
【0216】
本開示の特定の薬剤の投与量は、薬剤の1回または複数回の投与が与えられている個体において実験的に求められてもよい。
【0217】
本開示の薬剤の投与は、例えば、レシピエントの生理学的状態、投与の目的が治療または予防かどうか、および熟練した従事者に公知の他の要因に応じて、連続的でもよく断続的でもよい。薬剤の投与は、予め選択された期間にわたって連続的でもよく、一連の、間隔をおいた投薬でもよい。
【0218】
特定の投与量および送達方法に関するガイダンスは文献に示されている。例えば、米国特許第4,657,760号;同第5,206,344号;または同第5,225,212号を参照されたい。異なる処置および異なる障害には異なる製剤が有効であり、特定の臓器または組織の処置が意図される投与には、別の臓器または組織とは異なるやり方の送達が必要となる場合があることは本開示の範囲内である。さらに、投与量は1つまたは複数の別個の投与によって投与されてもよく、連続注入によって投与されてもよい。数日以上にわたる反復投与の場合、状態に応じて、疾患の症状の望ましい抑制が起こるまで処置を持続することができる。しかしながら、他の投与計画が有用な場合がある。療法の進行は、従来の技法およびアッセイによって、ならびに/または本明細書において提供される方法によって、モニタリングすることができる。
【0219】
組み合わせ処置
本明細書に記載の薬剤または組成物は、前記薬剤または組成物とは異なりかつ例えば併用療法として有用であり得る、1種または複数種のさらなる薬学的薬剤(例えば、治療活性のある、および/または予防活性のある薬剤)と組み合わせて投与できることも理解される。前記薬剤または組成物は、疾患の処置を必要とする対象において疾患を処置する際に、疾患の予防を必要とする対象において疾患を予防する際に、および/または疾患を発症するリスクの低減を必要とする対象において疾患を発症するリスクを低減する際に、これらの活性、効能、および/または効力を改善する、さらなる薬学的薬剤と組み合わせて投与することができる。ある特定の態様において、本明細書に記載の薬剤と、さらなる薬学的薬剤を含む本明細書に記載の薬学的組成物は、前記薬剤およびさらなる薬学的薬剤のうちの1つを含むが、両方の薬剤を含まない薬学的組成物にはない相乗効果を示す。
【0220】
本開示の一部の態様において、本開示の第1の治療剤と異なる治療剤が、本開示の薬剤の投与の前に、本開示の薬剤の投与と組み合わせて、本開示の薬剤の投与と同じ時間に、または本開示の薬剤の投与後に投与される。一部の態様において、第2の治療剤は、抗酸化物質、抗炎症剤、抗菌剤、ステロイドなどのうちの1つまたは複数より選択することができる。
【0221】
一部の態様において、前記薬剤または組成物は、例えば、併用療法として有用であり得る、1種または複数種のさらなる薬学的薬剤と同時に、その前に、またはその後に投与される。薬学的薬剤には、治療活性のある薬剤が含まれる。薬学的薬剤には、予防活性のある薬剤も含まれる。薬学的薬剤には、有機低分子、例えば、薬物化合物(例えば、連邦規則集(CFR)において定められるように、ヒトでの用途または獣医学用途のために米食品医薬品局に認可された化合物)、ペプチド、タンパク質、炭水化物、単糖、オリゴ糖、多糖類、核タンパク質、ムコタンパク質、リポタンパク質、1種または複数種の合成タンパク質、タンパク質に連結された低分子、糖タンパク質、ステロイド、核酸、DNA、RNA、ヌクレオチド、ヌクレオシド、オリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、脂質、ホルモン、ビタミン、および細胞が含まれる。ある特定の態様において、さらなる薬学的薬剤は、本明細書に記載の疾患を処置および/または予防するのに有用な薬学的薬剤である。それぞれのさらなる薬学的薬剤は、その薬学的薬剤について決められた用量および/またはタイムスケジュールで投与され得る。さらなる薬学的薬剤はまた、単一用量で互いと共に、および/または本明細書に記載の薬剤もしくは組成物と共に投与されてもよく、異なる用量で別々に投与されてもよい。1つのレジメンで使用するための特定の組み合わせは、本明細書に記載の薬剤と、さらなる薬学的薬剤ならびに/または実現しようとする望ましい治療効果および/もしくは予防効果が適合することを考慮に入れている。一般的に、さらなる薬学的薬剤が個々に利用されるレベルを超えないレベルで、さらなる薬学的薬剤が組み合わされて利用されると予想される。一部の態様において、組み合わせて利用されるレベルは、個々に利用されるレベルより少ない。
【0222】
さらなる薬学的薬剤には、免疫調節剤、抗炎症剤、免疫抑制剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、心血管剤、コレステロール低下剤、抗糖尿病剤、抗アレルギー剤、避妊剤、および疼痛緩和剤が含まれるが、これに限定されない。ある特定の態様において、本明細書に記載の薬剤または薬学的組成物は、外科手術を含むが、これに限定されない医療処置と組み合わせて投与することができる。
【0223】
ハードウェアおよびソフトウェア
本発明はまた、対象および処置の選択に関連する本発明の方法の実施に関与するコンピュータシステムに関する。コンピュータシステムは、例えば、対象が、FcγRIIaタンパク質のレベルの上昇および/またはFcγRIIaタンパク質のレベルの一貫した上昇を有するかどうか決定するのに使用することができる。コンピュータシステムは、本明細書に記載の任意の方法によって集められた実験データを使用することができ、データから、本明細書に記載の任意の方法に従って、対象の脳卒中、心血管イベント、および/または死亡のリスクを決定することができる。
【0224】
コンピュータシステム(またはデジタル装置)は、結果を受信する、伝送する、表示する、および/もしくは記憶するのに、結果を分析するのに、ならびに/または結果および分析の報告を生成するのに使用され得る。コンピュータシステムは、任意で、固定媒体を有するサーバに接続されてもよい、媒体(例えば、ソフトウェア)および/またはネットワークポートから(例えば、インターネットから)、命令を読み取ることができる論理装置であると理解され得る。コンピュータシステムは、CPU、ディスクドライブ、入力装置、例えば、キーボードおよび/またはマウス、ならびにディスプレイ(例えば、モニタ)のうちの1つまたは複数を備えてもよい。通信媒体を通して構内または遠隔地にあるサーバに命令または報告の伝送などのデータ通信を行うことができる。通信媒体は、データを伝送および/または受信する任意の手段を備えてもよい。例えば、通信媒体はネットワーク接続、無線接続、またはインターネット接続でもよい。このような接続はワールドワイドウェブ上で通信を提供することができる。本発明に関するデータは、受信者による受信および/または確認のために、このようなネットワークもしくは接続(または物理的報告の郵送、例えば、プリントアウトを含むが、これに限定されない、情報を伝送するための他の任意の適切な手段)で伝送できると想定される。有形の媒体において、例えば、メモリドライブまたはディスクなどのコンピュータ可読形式でコンピュータによって作成された計算の結果(例えば、配列分析またはハイブリッド捕捉プローブ配列のリスト)を、コンピュータモニタもしくは他のモニタ上に表示された出力として、または単に紙に印刷された出力として記録することができる。結果はコンピュータスクリーン上に報告することができる。受信者は個人あるいは電子システム(例えば、1つもしくは複数のコンピュータおよび/または1つもしくは複数のサーバ)でもよいが、これに限定されない。
【0225】
コンピュータシステムは1つまたは複数のプロセッサを備えてもよい。プロセッサは、1つもしくは複数のコントローラ、計算ユニット、および/またはコンピュータシステムの他のユニットと関連付けられてもよく、望みに応じてファームウェアに埋め込まれてもよい。ソフトウェアで実行される場合、ルーチンは、任意のコンピュータ可読メモリに、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリ、磁気ディスク、レーザーディスク、または他の適切な記憶媒体に記憶することができる。同様に、このソフトウェアは、任意の公知の配信方法を介して、例えば、通信チャネル、例えば、電話線、インターネット、無線接続などで、または可搬型の媒体、例えば、コンピュータ可読ディスク、フラッシュドライブなどを介して演算装置に配信され得る。様々な工程が、様々なブロック、操作、ツール、モジュール、および技法として実行することができ、そして次に、これらはハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、またはハードウェア、ファームウェア、および/もしくはソフトウェアの任意の組み合わせで実行することができる。ハードウェアで実行される場合、ブロック、操作、技法などの一部または全てが、例えば、カスタム集積回路(IC)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルロジックアレイ(FPGA)、プログラマブルロジックアレイ(PLA)などにおいて実行することができる。
【0226】
クライアントサーバ、リレーショナルデータベースアーキテクチャを本発明の態様において使用することができる。クライアントサーバアーキテクチャは、ネットワーク上にある、それぞれのコンピュータまたはプロセスがクライアントまたはサーバであるネットワークアーキテクチャである。サーバコンピュータは、典型的に、ディスクドライブ(ファイルサーバ)、プリンタ(プリントサーバ)、またはネットワークトラフィック(ネットワークサーバ)の管理専用の強力なコンピュータである。クライアントコンピュータには、ユーザがアプリケーションを走らせるPC(パーソナルコンピュータ)またはワークステーション、ならびに本明細書において開示された例示的な出力装置が含まれる。クライアントコンピュータは、ファイル、装置などのリソースのために、および処理能力でさえサーバコンピュータに頼る。本発明の一部の態様において、サーバコンピュータはデータベース機能の全てを取り扱う。クライアントコンピュータは、全てのフロントエンドデータ管理を取り扱うソフトウェアを有してもよく、ユーザからのデータ入力も受信してよい。
【0227】
コンピュータ実行可能コードを備え得る機械可読媒体は、有形の記憶媒体、搬送波媒体、または物理的伝送媒体を含むが、これに限定されない多くの形態をとってもよい。非揮発性記憶媒体には、例えば、光学ディスクまたは磁気ディスク、例えば、任意のコンピュータにある任意の記憶装置などが含まれる。揮発性記憶媒体には、ダイナミックメモリ、例えば、このようなコンピュータプラットフォームのメインメモリが含まれる。有形の伝送媒体には、同軸ケーブル;コンピュータシステム内のバスを含むワイヤを含む、銅線および光ファイバーが含まれる。搬送波伝送媒体は、電気信号もしくは電磁気信号、または音波もしくは光波、例えば、高周波(RF)および赤外線(IR)データ通信の間に発生した音波もしくは光波の形をとってもよい。従って、コンピュータ可読媒体の一般的な形態には、例えば、フロッピーディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、他の任意の磁気媒体、CD-ROM、DVDもしくはDVD-ROM、他の任意の光学媒体、パンチカード紙テープ、穴のパターンを有する他の任意の物理的記憶媒体、RAM、ROM、PROMおよびEPROM、FLASH-EPROM、他の任意のメモリチップもしくはカートリッジ、データもしくは命令を運ぶ搬送波、このような搬送波を運ぶケーブルもしくはリンク、またはコンピュータがプログラミングコードおよび/もしくはデータを読み取ることができる他の任意の媒体が含まれる。これらの種類のコンピュータ可読媒体の多くが、実行のために1つまたは複数の命令の1つまたは複数のシーケンスをプロセッサに搬送することに関与し得る。
【0228】
本コンピュータ実行可能コードは、サーバ、PC、またはモバイル装置、例えば、スマートフォンもしくはタブレットを含むプロセッサを含み得る任意の適切な装置で実行することができる。どのコントローラまたはコンピュータも任意でモニタを備え、モニタは、陰極線管(「CRT」)ディスプレイ、フラットパネルディスプレイ(例えば、アクティブ・マトリクス型液晶表示装置、液晶表示装置など)などでもよい。コンピュータ回路は、非常に多くの集積回路チップ、例えば、マイクロプロセッサ、メモリ、インタフェース回路などを備える箱の中に入れられることが多い。箱はまた、任意で、ハードディスクドライブ、フロッピーディスクドライブ、大容量リムーバブルドライブ、例えば、書き込み可能なCD-ROM、および他の一般的な周辺要素も備える。キーボード、マウス、またはタッチセンススクリーンなどの入力装置は、任意で、ユーザからの入力を提供する。コンピュータは、一組のパラメーターフィールドへの、例えば、GUIにおけるユーザ入力の形で、または前もってプログラムされた命令、例えば、様々な異なる特定の操作のために前もってプログラムされた命令の形で、ユーザ命令を受信するための適切なソフトウェアを備えてもよい。
【0229】
キット
別の局面において、本発明は、試料中の血小板上にあるFcγRIIaタンパク質のレベルを決定するための、および/または脳卒中、心血管イベント、死亡などのリスクを評価するためのキットを提供する。キットを用いて、本発明に従ってバイオマーカー(例えば、FcγRIIaタンパク質)を検出することができる。一態様において、キットは、FcγRIIaタンパク質を特異的に認識する薬剤を備える。特定の態様において、前記薬剤は抗体である。さらに、キットは、FcγRIIaのレベルが上昇したと決定された対象に投与するための薬剤(例えば、抗血小板剤、例えば、アセチルサリチル酸(ASA)、クロピドグレル、ジピリダモール、エプチフィバチド、プラスグレル、チカグレロル、チクロピジン、またはボラパクサール、および抗凝固剤、例えば、アピキサバン、アルガトロバン、ベトリキサバン、ビバリルジン、ダビガトラン、デシルジン、エドキサバン、エノキサパリン、ヘパリン、レテプラーゼ、リバーロキサバン、ワルファリン、ならびに第XIa因子(FXIa)阻害剤)を含むが、これに限定されない、本明細書において提供される任意の薬剤)を備えてもよい。
【0230】
フローサイトメトリー方法が、試料中の血小板上にあるFcγRIIaタンパク質のレベルを決定するのに用いられる時に、蛍光標識抗体レベルが有用である。さらなる態様において、このようなキットは、本明細書に記載の任意の方法において使用するための説明書を備えてもよい。様々な態様において、説明書は、適切な操作パラメータをラベルまたは別々の添付文書の形で提供する。例えば、説明書は、消費者に、試料を収集する方法、検出しようとするプローブもしくは特定のバイオマーカーを洗浄する方法、またはFcγRIIaレベルの測定値に基づいて血小板反応性を決定する方法を知らせてもよい。さらに他の態様では、キットは、較正用の標準として使用される対照(例えば、バイオマーカー試料)を含む1つまたは複数の容器を備えてもよい。さらに他の態様において、キットは、血栓症を処置するための1種または複数種の治療剤(例えば、アセチルサリチル酸(ASA);ADP受容体アンタゴニスト、例えば、プラスグレル、クロピドグレル、チカグレロル、チクロピジン、および他のチエノピリジン;PARアンタゴニスト、例えば、ボラパクサール;抗凝固剤、例えば、アピキサバン、アルガトロバン、ベトリキサバン、ビバリルジン、ダビガトラン、デシルジン、エドキサバン、エノキサパリン、ヘパリン、レテプラーゼ、リバーロキサバン、ワルファリン、および第XIa因子(FXIa)阻害剤など)を備えてもよい。態様において、本発明は、試料中の分析物を検出するための試験装置を備えるキットを提供する(例えば、米国特許第US10502737B2号を参照されたい)。一態様において、キットは、本明細書に記載のラテラルフロー装置を備える。一部の態様において、キットは容器を備える。容器の非限定的な例には、箱、アンプル、瓶、バイアル、チューブ、バック、パウチ、ブリスター包装、または当技術分野において公知の他の適切な容器形態が含まれる。一態様において、このような容器は無菌でもよい。このような容器は、プラスチック、ガラス、ラミネート紙、金属箔、または医用薬剤を保持するのに適した他の材料から作られてもよい。
【0231】
所望であれば、装置は、試料中のFcγRIIaタンパク質の存在もしくは非存在を特定するために、および/または脳卒中、心血管イベント、および/または死亡などのリスクを評価するために装置を使用するための説明書と一緒に提供される。説明書は、一般的に、キットの成分を用いて本明細書に記載の方法を実施する方法についての情報を含む。説明書は、(存在する時に)容器に直接印刷されてもよく、容器に貼られるラベルとして印刷されてもよく、容器の中に供給される、または容器と一緒に供給される別々のシート、パンフレット、カード、または折りたたみ印刷物として印刷されてもよい。本開示のキットの中に供給される説明書は、典型的に、ラベル上または添付文書上にある書面での説明書であるが(例えば、1枚の紙がキットに入れられる)、機械可読説明書(例えば、磁気記憶ディスクまたは光学記憶ディスクに書かれた説明書)も許容される。本明細書に記載の任意の方法を実施するために説明書が提供されることがある。
【0232】
所望であれば、キットはまた、標準的なメジャーピペット、試験バイアル、および/または試料抽出において用いられる液体(例えば、エタノール、メタノール、有機溶媒、適切な緩衝液、例えば、リン酸緩衝食塩水、または水)も備えてもよい。
【0233】
本開示のキットは適切な包装の中にある。適切な包装には、バイアル、瓶、ジャー、柔軟性のある包装(例えば、密封されたマイラーまたはプラスチックバック)などが含まれるが、これに限定されない。キットは、任意で、さらなる成分、例えば、緩衝液および解釈的な情報を提供してもよい。通常、キットは、容器と、容器の表面にあるか、または容器に付けられたラベルまたは添付文書を備える。
【0234】
本発明の実施では、特に定めのない限り、当業者の十分に範囲内にある、分子生物学(組換え法を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学、および免疫学の従来の技法を使用する。このような技法は、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」, second edition (Sambrook, 1989); 「Oligonucleotide Synthesis」 (Gait, 1984); 「Animal Cell Culture」 (Freshney, 1987); 「Methods in Enzymology」 「Handbook of Experimental Immunology」 (Weir, 1996); 「Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells」 (Miller and Calos, 1987); 「Current Protocols in Molecular Biology」 (Ausubel, 1987); 「PCR: The Polymerase Chain Reaction」, (Mullis, 1994); 「Current Protocols in Immunology」 (Coligan, 1991)などの文献において完全に説明されている。これらの技法は、本発明のポリヌクレオチドおよびタンパク質の産生に適用することができ、従って、本発明の作製および実施において考慮され得る。特定の態様に特に有用な技法が、以下のセクションにおいて議論される。
【0235】
以下の実施例は、当業者に、本発明の組成物および方法を作製および使用する方法の完全な開示および説明を提供するために示され、本発明者らが本発明とみなすものの範囲を限定することが意図されない。
【実施例】
【0236】
実施例1:単施設前向き試験
血小板FcγRIIaタンパク質レベルによって、心血管リスクが高い患者と心血管リスクが低い患者を特定することができるかどうか決定するために、単施設前向き試験を完了した。患者(n=197)は心筋梗塞による入院(ST上昇と非ST上昇を両方とも含めた)から退院する直前に登録した。登録した患者全員を経皮的冠動脈形成術(PCI)によって処置した。<11,000の血小板FcγRIIaタンパク質レベルをもつ患者では、一次エンドポイント(心臓発作、脳卒中、死亡、および冠動脈再建の複合)は低かった(
図2)。患者全員をアセチルサリチル酸(アスピリング(aspiring);ASA)(81mg)で処置し、クロピドグレル(約64%)およびチカグレロル(約36%)による処置を、血小板FcγRIIaタンパク質レベルが高い患者と血小板FcγRIIaタンパク質レベルが低い患者において均衡させた。
【0237】
臨床的特徴は、高レベル群でよく目につく老齢、糖尿病、および以前の血管再建を除いて均衡がよく取れている。心臓発作、脳卒中、血管再建、および死亡の組み合わせのCox多変量解析から、年齢、糖尿病、および以前の血管再建を共変数として含めた時に、>11,000の血小板FcγRIIaタンパク質レベルについて3.0のハザード比(p=0.02)が証明された。
【0238】
血管再建の発生率は、血小板FcγRIIaタンパク質レベルが高い患者と、血小板FcγRIIaタンパク質レベルが低い患者において同様であった(低い血小板FcγRIIaタンパク質n=3、3.2%;高い血小板FcγRIIaタンパク質n=4、3.8%、p=0.815)。血小板FcγRIIaタンパク質レベルが≧11,000の患者は、6ヶ月後に明らかになる心臓発作、脳卒中、および死亡のリスクが大きかった(
図3)。Cox回帰分析を行った。血小板FcγRIIaタンパク質レベルは、心筋梗塞(MI)、脳卒中、および死亡が無いことに関連する唯一の共変数(ハザード比3.9、p=0.035)であった。
【0239】
血小板FcγRIIaタンパク質レベルの予測能力を評価した。心血管イベントがある患者を特定するための高レベルの感度は0.82(95%信頼区間0.57~0.92)であり、特異度は0.51(95%信頼区間0.43~0.58)であった。心血管イベント(心臓発作、脳卒中、および死亡)はまれであった(患者全員のうち8%がイベントを経験した)。低い血小板FcγRIIaタンパク質レベルの負の予測値は0.97(95%信頼区間0.89~0.98)であり、高い血小板FcγRIIaタンパク質レベルの正の予測値は0.14(95%信頼区間0.10~0.46)であった。
【0240】
11,000のFcγRIIaタンパク質分子/血小板の閾値が、心臓発作患者における後の心血管イベントの高リスクおよび低リスクを特定するのに有効であった。血小板FcγRIIaタンパク質レベルは連続変数とみなすことができる。理論に拘束されるつもりはないが、心血管イベントとFcγRIIaタンパク質レベルとの間の関係は連続している可能性がある。表3では、FcγRIIaタンパク質レベルとイベントリスクとの間の関係を示すためにFcγRIIaタンパク質レベルをグループ化した。これらの結果は、患者リスクを評価するための閾値FcγRIIaタンパク質レベルの使用を支持する。
【0241】
(表3)血小板FcγRIIaタンパク質発現と心血管イベントとの間の関連性
【0242】
これらの結果は多数の結論を支持する。血小板FcγRIIaタンパク質レベルの増加は血小板反応性の一貫した増加と関係付けられた。試料間の比較を行い、経時的に変化を評価するために、較正と共に血小板FcγRIIaタンパク質レベルを定量した。血小板機能試験とは異なり、血小板FcγRIIaタンパク質レベルの測定値はアッセイ条件の影響を実質的に受けない。≧11,000の血小板FcγRIIaタンパク質レベル/血小板によって、心筋梗塞(MI)、脳卒中、および/または死亡のリスクが約4倍大きい患者が特定された。
【0243】
これらの結果は、頭蓋内アテローム動脈硬化性疾患(ICAD)によって引き起こされる脳卒中の患者に拡大し得る。これらの結果は、個別化療法のガイドとしてのFcγRIIaタンパク質レベルの使用を支持する。
【0244】
実施例2:FcγRIIaタンパク質レベルと後の脳卒中/心血管イベントのリスクとの関連性
血小板FcγRIIaタンパク質レベルが、11,000のFcγRIIaタンパク質/血小板の閾値より大きい患者またはその閾値より小さい患者において、再発性一過性脳虚血発作(TIA)/脳卒中ならびに心筋梗塞(MI)および死亡の発生率を比較するための研究を行う。
【0245】
フローサイトメトリーを用いて血小板FcγRIIaタンパク質レベルを定量する。理論に拘束されないが、FcγRIIaタンパク質は血小板活性化と関連付けられる(
図4)。一次イベントの5日以内に軽症脳卒中/一過性脳虚血発作(TIA)患者から採血を行う。最後の来診時に二度目の採血を行う。どちらの場合でも、3mlブルートップバキュテイナー(クエン酸三ナトリウム)を収集する。
【0246】
Schneider DJ, McMahon SR, Chava S, Taatjes-Sommer HS, Meagher S, Ehle GL, Brummel-Ziedins KE. FcγRIIa: A New Cardiovascular Risk Marker. J Am Coll Cardiol 2018;72:237-238に記載のアッセイを、以下の工程:1)クエン酸三ナトリウム(ブルートップバキュテイナー)による血液の血液凝固阻止;2)緩衝液と蛍光色素標識抗FcγRIIaタンパク質抗体(Becton Dickinson Biosciences)を含む反応チューブへの血液添加;3)Optilyse-C(Beckman Coulter)による血小板固定と赤血球溶解;および4)緩衝液による希釈後のフローサイトメトリーを用いた試料分析;を含むラボアッセイを開発するように、適合させる。キットを用いて工程1~4を完了する。工程3の後に、5日後まで10%未満の変動係数で分析を行う。血小板表面にあるFcγRIIaタンパク質の分子の数を特異的に定量するために、フローサイトメトリーを出力の標準化と組み合わせる(Schneider DJ, McMahon SR, Chava S, Taatjes-Sommer HS, Meagher S, Ehle GL, Brummel-Ziedins KE. FcγRIIa: A New Cardiovascular Risk Marker. J Am Coll Cardiol 2018;72:237-238)。FcγRIIaタンパク質レベルの定性的ではなく正確な評価によって、患者間の、および経時的な比較が容易になる。血小板FcγRIIaタンパク質レベルを定量するのに用いられるアッセイの強度の非限定的な例には、1)特異的な定量を可能にするための出力の標準化、2)5%未満のアッセイ内変動係数(McMahon SR, Chava S, Taatjes-Sommer HS, Meagher S, Brummel-Ziedins KE, Schneider DJ. Variation in platelet levels of FcγRIIa protein after myocardial infarction. J Thromb Thrombolysis. 2019;48:88-94)、3)1 ヶ月の過程を通じて約10%の個人内変動係数(McMahon, et al.)、および4)アッセイ結果に対する抗血小板剤および抗凝固剤の効果の欠如(McMahon, et al.)が含まれ得る。
【0247】
データ分析は以下を伴う:1)一次エンドポイントを対象にした高い血小板FcγRIIaタンパク質対低い血小板FcγRIIaタンパク質のハザード比;2)重要な共変数、年齢、性別、糖尿病、公知のアテローム動脈硬化性血管疾患(前の脳卒中、冠状動脈疾患(CAD)、末梢動脈疾患);3)予測分析;4)閾値と連続変数を評価する、閾値の感度分析を含む;6)1年までベースラインのレベルを比較する。分析は、FcγRIIaタンパク質レベルとの連続的または段階的なリスク相関を考慮に入れている。どの患者が脳卒中、心血管イベント、もしくは死亡のリスクが低いかまたはどの患者がそのリスクが高いかについての範囲が特定される。
【0248】
血小板FcγRIIaタンパク質レベルによって、後の脳卒中/心血管イベントのリスクが高い患者と、後の脳卒中/心血管イベントのリスクが低い患者とが特定される。血小板FcγRIIaタンパク質レベルが低いと、イベントのリスクが低い患者が特定される。これに対して、レベルが高いと、イベントのリスクが高い患者が特定される。初期の血小板FcγRIIaタンパク質レベルが高かったが、2回目の測定が高レベルの閾値(例えば、11,000のFcγRIIaタンパク質/血小板)未満に減少した患者の間では、脳卒中/心血管イベントの低い有病率が観察される。
【0249】
実施例3:脳卒中患者におけるFcγRIIaタンパク質レベル
脳卒中にかかったことがある114人の患者においてFcγRIIaタンパク質/血小板のレベルを求めるために研究を行った。患者の臨床的特徴を以下の表4に示した。血小板FcγRIIaは、一過性脳虚血発作(TIA)/脳卒中の患者において4,017~21,414分子/血小板(平均=11,092 SD=4017)の範囲の発現を示した。
【0250】
【0251】
他の態様
前述の説明から、本明細書に記載の発明を様々な使用および条件に合わせるために、本明細書に記載の発明に変更および修正が加えられる場合があることは明らかである。このような態様も以下の特許請求の範囲の範囲内である。
【0252】
本明細書における変数の任意の定義における要素の一覧の説明は、任意の1つの要素として、または列挙された要素の組み合わせ(もしくはサブコンビネーション)として、その変数を定義することを含む。本明細書における態様の説明は、その態様を任意の1つの態様として、または他の任意の態様もしくはその一部と組み合わせて含む。
【0253】
本明細書で述べられた全ての特許および刊行物は、それぞれの独立した特許および刊行物が参照により組み入れられるように詳細かつ個々に示されるのと同じ程度に参照により本明細書に組み入れられる。本願は、米国特許第10,502,737 B2号 およびLiebeskind, et al.,「Endothelial shear stress and platelet FcγRIIa expression in intracranial atherosclerotic disease」, Frontiers in Neurology, vol. 12, article 646309 (2021)と関連していてもよい。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】