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特表2024-530931ミスフォールドタンパク質の治療及び予防のための組成物及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-27
(54)【発明の名称】ミスフォールドタンパク質の治療及び予防のための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20240820BHJP
   C07K 14/00 20060101ALI20240820BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20240820BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20240820BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20240820BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20240820BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20240820BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240820BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20240820BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240820BHJP
   A61P 39/02 20060101ALI20240820BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240820BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240820BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240820BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240820BHJP
   A61P 27/12 20060101ALI20240820BHJP
   A61P 21/02 20060101ALI20240820BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240820BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240820BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20240820BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20240820BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240820BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240820BHJP
   C12N 5/10 20060101ALN20240820BHJP
【FI】
A61K45/00
C07K14/00 ZNA
C12N15/113 Z
C12N15/864 100Z
C12N15/11 Z
C12P21/02 A
A61P25/16
A61P25/28
A61P25/14
A61P25/00
A61P39/02
A61P29/00
A61P35/00
A61P3/10
A61P27/02
A61P27/12
A61P21/02
A61P17/00
A61P11/00
A61P21/00
A61K38/16
A61P9/00
A61K48/00
C12N5/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506923
(86)(22)【出願日】2022-08-05
(85)【翻訳文提出日】2024-04-04
(86)【国際出願番号】 US2022074614
(87)【国際公開番号】W WO2023015299
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】63/230,443
(32)【優先日】2021-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502409813
【氏名又は名称】ザ・トラステイーズ・オブ・ザ・ユニバーシテイ・オブ・ペンシルベニア
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,シャオルー
(72)【発明者】
【氏名】ファン,リャンチャン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064CA19
4B064CC24
4B064CD20
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA24
4C084AA01
4C084AA02
4C084AA06
4C084AA17
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
4C084CA53
4C084NA14
4C084ZA021
4C084ZA022
4C084ZA071
4C084ZA072
4C084ZA151
4C084ZA152
4C084ZA161
4C084ZA162
4C084ZA331
4C084ZA332
4C084ZA361
4C084ZA362
4C084ZA591
4C084ZA592
4C084ZA891
4C084ZA892
4C084ZA941
4C084ZA942
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC351
4C084ZC352
4C084ZC371
4C084ZC372
4C084ZC521
4C084ZC522
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA20
4H045BA21
4H045EA20
(57)【要約】
本発明は、ミスフォールドタンパク質及びタンパク質凝集物の除去を促進するための組成物及び方法に関する。該組成物及び方法を使用して、ミスフォールドタンパク質又はタンパク質凝集物に関連した障害を治療又は予防し得る。特定の場合では、該組成物及び方法は、1つ以上のポリD/Eタンパク質のモジュレーターに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミスフォールドタンパク質又はタンパク質凝集物に関連した疾患又は障害を治療又は予防するための組成物であって、該組成物は1つ以上のポリD/Eタンパク質のモジュレーターを含んでいる、該組成物。
【請求項2】
前記モジュレーターが、1つ以上のポリD/Eタンパク質の発現又は活性を増加させる、請求項1の組成物。
【請求項3】
前記モジュレーターが、化合物、タンパク質、ペプチド、ペプチド模倣体、抗体、リボザイム、低分子化合物、核酸、ベクター、及びアンチセンス核酸からなる群の少なくとも1つである、請求項1の組成物。
【請求項4】
前記モジュレーターが、DAXX、ANP32A、SET、HUWE1、MTEF4、MYT1、NCKX1、MYT1L、ERIP6、FAM9A、IF2P、ARMD4、PPM1G、RAGP1、NUCL、NRDC、ZFHX3、ZBT7C、ZEB1、YTDC1、ZBT47、TTBK1、KAT6B、PELP1、PTMS、TRI26、RYR1、SETLP、CLSPN、CALR、BPTF、BAZ2B、ATAD2、CFA65、CENPB、CASZ1、CCER1、DC8L2、DCAF1、AN32B、ARI4B、AN32E、UBF1、SETD1B及びVIRからなる群より選択される少なくとも1つの発現又は活性を増加させる、請求項1の組成物。
【請求項5】
前記組成物が、1つ以上のポリD/Eタンパク質を含んでいる単離されたペプチドを含む、請求項1の組成物。
【請求項6】
前記の単離されたペプチドがさらに、細胞への単離されたペプチドの進入を可能とする細胞膜透過性ペプチド(CPP)を含む、請求項5の組成物。
【請求項7】
前記CPPが、HIV tatのタンパク質形質導入ドメインを含む、請求項6の組成物。
【請求項8】
前記の単離されたペプチドが、細胞外環境への該ペプチドの分泌を指令するための分泌シグナルペプチドを含む、請求項5の組成物。
【請求項9】
前記組成物が、1つ以上のポリD/Eタンパク質をコードしている単離された核酸分子を含む、請求項1の組成物。
【請求項10】
前記の単離された核酸分子が、発現ベクターを含む、請求項9の組成物。
【請求項11】
前記発現ベクターが、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを含む、請求項10の組成物。
【請求項12】
前記AAVベクターが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8及びAAV9からなる群より選択される1つ以上を含む、請求項11の組成物。
【請求項13】
前記の単離された核酸分子が、分泌シグナルペプチドを含んでいるペプチドと、1つ以上のポリD/Eタンパク質をコードしている、請求項9の組成物。
【請求項14】
前記疾患又は障害が、
ポリQ障害;
脊髄小脳失調症(SCA)1型(SCA1)、SCA2、SCA3、SCA6、SCA7、SCA17、ハンチントン病、歯状核赤核・淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、伝達性海綿状脳症(プリオン病)、シヌクレイノパチー、レビー小体型認知症(DLB)、多系統萎縮症(MSA)、タウオパチー、及び前頭側頭葉変性症(FTLD)からなる群より選択される神経変性疾患又は障害;
ALアミロイドーシス、AAアミロイドーシス、家族性地中海熱、老人性全身性アミロイドーシス、家族性アミロイドポリニュロパチー、透析アミロイドーシス、アポリポタンパク質AIアミロイドーシス、アポリポタンパク質AIIアミロイドーシス、アポリポタンパク質AIVアミロイドーシス、フィンランド型遺伝性アミロイドーシス、リゾチームアミロイドーシス、フィブリノーゲンアミロイドーシス、アイスランド型遺伝性脳アミロイドアンギオパチー、II型糖尿病、甲状腺髄様癌、心アミロイドーシス、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血、下垂体プロラクチン産生腫瘍、注射局在化アミロイドーシス、大動脈中膜アミロイドーシス、遺伝性格子状角膜変性、睫毛乱生症を伴う角膜アミロイドーシス、白内障、歯原性石灰性上皮腫瘍、肺胞蛋白症、封入体筋炎、及び皮膚アミロイド苔癬からなる群より選択される疾患又は障害;及び
p53凝集物に関連した癌
からなる群より選択される1つ以上である、請求項1の組成物。
【請求項15】
被検者の1つ以上の細胞又は組織を、請求項1の組成物と接触させる工程を含む、それを必要とする被検者に1つ以上のポリD/Eタンパク質のモジュレーターを含んでいる組成物を投与する方法。
【請求項16】
必要とする被検者におけるミスフォールドタンパク質又はタンパク質凝集物に関連した疾患又は障害を治療又は予防するための方法であって、該方法は、1つ以上のポリD/Eタンパク質の発現又は活性のモジュレーターを含んでいる組成物を該被検者に投与する工程を含む、該方法。
【請求項17】
前記組成物がDAXX、ANP32A、SET、HUWE1、MTEF4、MYT1、NCKX1、MYT1L、ERIP6、FAM9A、IF2P、ARMD4、PPM1G、RAGP1、NUCL、NRDC、ZFHX3、ZBT7C、ZEB1、YTDC1、ZBT47、TTBK1、KAT6B、PELP1、PTMS、TRI26、RYR1、SETLP、CLSPN、CALR、BPTF、BAZ2B、ATAD2、CFA65、CENPB、CASZ1、CCER1、DC8L2、DCAF1、AN32B、ARI4B、AN32E、UBF1、SETD1B及びVIRからなる群より選択される、1つ以上のポリD/Eタンパク質を含んでいる単離されたペプチドを含む、請求項16の方法。
【請求項18】
前記組成物が、1つ以上のポリD/Eタンパク質をコードしている単離された核酸分子を含む、請求項16の方法。
【請求項19】
前記方法が、神経細胞、グリア細胞、及び癌細胞からなる群より選択される少なくとも1つの細胞に該組成物を投与する工程を含む、請求項16の方法。
【請求項20】
前記疾患又は障害が、
ポリQ障害;
脊髄小脳失調症(SCA)1型(SCA1)、SCA2、SCA3、SCA6、SCA7、SCA17、ハンチントン病、歯状核赤核・淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、伝達性海綿状脳症(プリオン病)、シヌクレイノパチー、レビー小体型認知症(DLB)、多系統萎縮症(MSA)、タウオパチー、及び前頭側頭葉変性症(FTLD)からなる群より選択される神経変性疾患又は障害;
ALアミロイドーシス、AAアミロイドーシス、家族性地中海熱、老人性全身性アミロイドーシス、家族性アミロイドポリニュロパチー、透析アミロイドーシス、アポリポタンパク質AIアミロイドーシス、アポリポタンパク質AIIアミロイドーシス、アポリポタンパク質AIVアミロイドーシス、フィンランド型遺伝性アミロイドーシス、リゾチームアミロイドーシス、フィブリノーゲンアミロイドーシス、アイスランド型遺伝性脳アミロイドアンギオパチー、II型糖尿病、甲状腺髄様癌、心アミロイドーシス、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血、下垂体プロラクチン産生腫瘍、注射局在化アミロイドーシス、大動脈中膜アミロイドーシス、遺伝性格子状角膜変性、睫毛乱生症を伴う角膜アミロイドーシス、白内障、歯原性石灰性上皮腫瘍、肺胞蛋白症、封入体筋炎、及び皮膚アミロイド苔癬からなる群より選択される疾患又は障害;及び
p53凝集物に関連した癌
からなる群からなる群より選択される1つ以上である、請求項16の方法。
【請求項21】
組換えタンパク質を発現するように修飾された細胞に、1つ以上のポリD/Eタンパク質のモジュレーターを投与する工程を含む、組換えタンパク質を産生するための方法。
【請求項22】
前記モジュレーターが、1つ以上のポリD/Eタンパク質を含んでいる単離されたペプチド、及び1つ以上のポリD/Eタンパク質をコードしている核酸分子からなる群より選択される1つ以上を含む、請求項21の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
本発明は、米国国立衛生研究所によって授与されたCA182675及びCA184867の下で政府の支援を受けて行なわれた。当該政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年8月6日に出願された米国仮出願番号第63/230,443号の優先権及び恩典を主張し、その内容はその全体が本明細書に組み入れられる。
【0003】
発明の背景
タンパク質品質管理(PQC)システムは、細胞の機能及び生物の健康にとって重要である。現在、公知のPQCシステムの大半は、非天然タンパク質とのATP調節性相互作用を介して作動することにより、凝集を防いでフォールディングを促進する、多成分機構であり(Balchin, D., et al., Science 353, aac4354, 2016)、異なる機序によってタンパク質のフォールディングを幅広く可能とすることのできるシステムはほんの僅かしか同定されていない。さらに、広範に荷電したポリ-アスパラギン酸/グルタミン酸(ポリD/E)領域を含有しているタンパク質は、真核生物のプロテオームにおいてよく見られるが(Karlin, S., et al., Proc Natl Acad Sci USA99, 333-338, 2002)、それらの生物学的活性は依然として規定されていない。
【0004】
したがって、ミスフォールドタンパク質のATP非依存性を排除するための組成物及び方法が当技術分野において必要である。本発明は、この充足されていない必要性を充足する。
【0005】
発明の要約
1つの実施態様では、本発明は、ミスフォールドタンパク質又はタンパク質凝集物に関連した疾患又は障害を治療又は予防するための組成物に関し、該組成物は、1つ以上のポリD/Eタンパク質のモジュレーターを含んでいる。1つの実施態様では、該モジュレーターは、1つ以上のポリD/Eタンパク質の発現又は活性を増加させる。1つの実施態様では、該モジュレーターは、化合物、タンパク質、ペプチド、ペプチド模倣体、抗体、リボザイム、低分子化合物、核酸、ベクター、及びアンチセンス核酸からなる群の少なくとも1つである。
【0006】
1つの実施態様では、前記組成物のモジュレーターは、DAXX、ANP32A、SET、HUWE1、MTEF4、MYT1、NCKX1、MYT1L、ERIP6、FAM9A、IF2P、ARMD4、PPM1G、RAGP1、NUCL、NRDC、ZFHX3、ZBT7C、ZEB1、YTDC1、ZBT47、TTBK1、KAT6B、PELP1、PTMS、TRI26、RYR1、SETLP、CLSPN、CALR、BPTF、BAZ2B、ATAD2、CFA65、CENPB、CASZ1、CCER1、DC8L2、DCAF1、AN32B、ARI4B、AN32E、UBF1、SETD1B及びVIRからなる群より選択される少なくとも1つの発現又は活性を増加させる。
【0007】
1つの実施態様では、ミスフォールドタンパク質又はタンパク質凝集物に関連した疾患又は障害を治療又は予防するための組成物は、1つ以上のポリD/Eタンパク質を含んでいる単離されたペプチドを含む。1つの実施態様では、単離されたペプチドはさらに、細胞内への単離されたペプチドの進入を可能とする細胞膜透過性ペプチド(CPP)を含む。1つの実施態様では、CPPは、HIV tatのタンパク質形質導入ドメインを含む。1つの実施態様では、単離されたペプチドは、細胞外環境への該ペプチドの分泌を指令する、分泌シグナルペプチドを含む。
【0008】
1つの実施態様では、ミスフォールドタンパク質又はタンパク質凝集物に関連した疾患又は障害を治療又は予防するための組成物は、1つ以上のポリD/Eタンパク質をコードしている単離された核酸分子を含む。1つの実施態様では、単離された核酸分子は発現ベクターを含む。1つの実施態様では、該発現ベクターはアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを含む。1つの実施態様では、該AAVベクターは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8及びAAV9からなる群より選択される1つ以上を含む。1つの実施態様では、単離された核酸分子は、分泌シグナルペプチドを含んでいるペプチド及び1つ以上のポリD/Eタンパク質をコードしている。
【0009】
1つの実施態様では、該組成物の疾患又は障害は、1)ポリQ障害;2)脊髄小脳失調症(SCA)1型(SCA1)、SCA2、SCA3、SCA6、SCA7、SCA17、ハンチントン病、歯状核赤核・淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、伝達性海綿状脳症(プリオン病)、シヌクレイノパチー、レビー小体型認知症(DLB)、多系統萎縮症(MSA)、タウオパチー、及び前頭側頭葉変性症(FTLD)からなる群より選択される神経変性疾患又は障害;3)疾患又は障害は、ALアミロイドーシス、AAアミロイドーシス、家族性地中海熱、老人性全身性アミロイドーシス、家族性アミロイドポリニュロパチー、透析アミロイドーシス、アポリポタンパク質AIアミロイドーシス、アポリポタンパク質AIIアミロイドーシス、アポリポタンパク質AIVアミロイドーシス、フィンランド型遺伝性アミロイドーシス、リゾチームアミロイドーシス、フィブリノーゲンアミロイドーシス、アイスランド型遺伝性脳アミロイドアンギオパチー、II型糖尿病、甲状腺髄様癌、心アミロイドーシス、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血、下垂体プロラクチン産生腫瘍、注射局在化アミロイドーシス、大動脈中膜アミロイドーシス、遺伝性格子状角膜変性、睫毛乱生症を伴う角膜アミロイドーシス、白内障、歯原性石灰性上皮腫瘍、肺胞蛋白症、封入体筋炎、及び皮膚アミロイド苔癬からなる群より選択される;及び4)p53凝集物に関連した癌、からなる群より選択される1つ以上である。
【0010】
1つの実施態様では、本発明は、被検者の1つ以上の細胞又は組織を、本発明の組成物と接触させる工程を含む、それを必要とする被検者に、1つ以上のポリD/Eタンパク質のモジュレーターを含んでいる組成物を投与する方法に関する。
【0011】
1つの実施態様では、本発明は、それを必要とする被検者におけるミスフォールドタンパク質又はタンパク質凝集物に関連した疾患又は障害を治療又は予防するための方法に関し、該方法は、1つ以上のポリD/Eタンパク質の発現又は活性のモジュレーターを含んでいる組成物を被検者に投与する工程を含む。
【0012】
1つの実施態様では、該方法の組成物は、DAXX、ANP32A、SET、HUWE1、MTEF4、MYT1、NCKX1、MYT1L、ERIP6、FAM9A、IF2P、ARMD4、PPM1G、RAGP1、NUCL、NRDC、ZFHX3、ZBT7C、ZEB1、YTDC1、ZBT47、TTBK1、KAT6B、PELP1、PTMS、TRI26、RYR1、SETLP、CLSPN、CALR、BPTF、BAZ2B、ATAD2、CFA65、CENPB、CASZ1、CCER1、DC8L2、DCAF1、AN32B、ARI4B、AN32E、UBF1、SETD1B及びVIRからなる群より選択される1つ以上のポリD/Eタンパク質を含んでいる、単離されたペプチドを含む。
【0013】
1つの実施態様では、前記方法の組成物は、1つ以上のポリD/Eタンパク質をコードしている、単離された核酸分子を含む。
【0014】
1つの実施態様では、前記方法は、神経細胞、グリア細胞、及び癌細胞からなる群より選択される少なくとも1つの細胞に、該組成物を投与する工程を含む。
【0015】
1つの実施態様では、前記方法の疾患又は障害は、1)ポリQ障害;2)脊髄小脳失調症(SCA)1型(SCA1)、SCA2、SCA3、SCA6、SCA7、SCA17、ハンチントン病、歯状核赤核・淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、伝達性海綿状脳症(プリオン病)、シヌクレイノパチー、レビー小体型認知症(DLB)、多系統萎縮症(MSA)、タウオパチー、及び前頭側頭葉変性症(FTLD)からなる群より選択される神経変性疾患又は障害;3)疾患又は障害は、ALアミロイドーシス、AAアミロイドーシス、家族性地中海熱、老人性全身性アミロイドーシス、家族性アミロイドポリニュロパチー、透析アミロイドーシス、アポリポタンパク質AIアミロイドーシス、アポリポタンパク質AIIアミロイドーシス、アポリポタンパク質AIVアミロイドーシス、フィンランド型遺伝性アミロイドーシス、リゾチームアミロイドーシス、フィブリノーゲンアミロイドーシス、アイスランド型遺伝性脳アミロイドアンギオパチー、II型糖尿病、甲状腺髄様癌、心アミロイドーシス、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血、下垂体プロラクチン産生腫瘍、注射局在化アミロイドーシス、大動脈中膜アミロイドーシス、遺伝性格子状角膜変性、睫毛乱生症を伴う角膜アミロイドーシス、白内障、歯原性石灰性上皮腫瘍、肺胞蛋白症、封入体筋炎、及び皮膚アミロイド苔癬からなる群より選択される;及び4)p53凝集物に関連した癌、からなる群より選択される1つ以上である。
【0016】
1つの実施態様では、本発明は、組換えタンパク質を発現するように修飾された細胞に、1つ以上のポリD/Eタンパク質のモジュレーターを投与する工程を含む、組換えタンパク質を産生するための方法に関する。1つの実施態様では、該モジュレータ―は、1つ以上のポリD/Eタンパク質を含んでいる単離されたペプチド、及び1つ以上のポリD/Eタンパク質をコードしている核酸分子からなる群より選択される1つ以上を含む。
【0017】
本発明の好ましい実施態様の以下の詳細な説明は、添付図面と併せて読めばより良く理解されるだろう。本発明を説明する目的のために、図の実施態様には現在好ましいものが示されている。しかしながら、本発明は、図に示された実施態様のまさにその配置及び手段に限定されないことが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1図1Aから図1Iまで含んでいるが、これは、DAXXがタンパク質のミスフォールディング及び凝集を防ぐことを実証している例示的な結果を示す。図1A~1Bは、200nM(図1A)又は指定されたモル比(図1B)のGST(グルタチオンSトランスフェラーゼ)、DAXX及びHsp(熱ショックタンパク質)70/Hsp40の存在下又は非存在下における、例示的なルシフェラーゼの熱誘発性不活化(図1A、5nM)及び凝集(図1b、200nM)を示す。図1Cは、GST又はDAXX(各200nM)の存在下又は非存在下における、アタキシン1 82Q(50nM)の例示的な凝集を示す。図1D~1Fは、チオフラビンTとの結合(図1D)、電子顕微鏡(図1E;赤色の矢印、原線維;青色の矢印、大きなオリゴマー;尺度バー、100nm)、並びに沈降に続いて、ペレット及びSDS(硫酸ドデシルナトリウム)抵抗性凝集物並びにα-シヌクレイン総量についてのドットブロット、続いてスベリン酸ジスクシニミジル(DSS)との架橋(可溶性オリゴマーについて)(図1F)によってアッセイされるような、GST、Hsp70/Hsp40、HSP(Hsp70/Hsp40-Hsp104A503S)(各200nM)及びDAXX(100~400nM)の存在下における、α-シヌクレイン(70μM)の例示的な線維化を示す。図1G~1Iは、DAXX(50~600nM)の非存在下又は存在下におけるAβ42モノマー(10μM)の例示的な線維化(図1G及び1H)、及び、DAXXと共に又は伴わずにプレインベートされたAβ42で処理されたSH-SY5Y細胞の生存率(図11)を示す。ATP再生系が、熱ショックタンパク質と共に含まれたが、DAXXと共にではなかった。データは、平均値±標準偏差(iについてはn=4、残りについては3)であり、3回の独立した実験の代表である。P<0.05;対応のないスチューデントt検定。
図2図2図2Aから2Iまで含んでいるが、これは、DAXXがタンパク質の凝集物を溶かし、ミスフォールドされた種をアンフォールドすることを実証している、例示的な結果を示す。図2Aは、GST、DAXX又は熱ショックタンパク質(各100nM)で処理された熱変性ルシフェラーゼ(5nM)の例示的な活性を示す。図2Bは、天然ルシフェラーゼ、又はDAXX(0.1及び0.5μM)を用いて又は用いずに処理された熱で変性したルシフェラーゼ(各1μM)の例示的なβ鎖の含量を示す。図2Cは、GST又はDAXX(200nM)を用いて又は用いずに処理された、アタキシン1 82Q凝集物(50nM)の例示的な沈降分析を示す。図2D~2Eは、GST、熱ショックタンパク質(各0.2μM)又はDAXX(0.1、0.2及び0.4μM)と共にインキュベートされたAβ42線維の例示的なチオフラビンTへの結合(図20)及び沈降(図2E)の分析を示す。図2Fは、DAXXが、チオフラビンTへのミスフォールドルシフェラーゼDモノマー(3μM)の結合を減少させることを示している例示的な結果を示す。図2Gは、DAXX、GST又は熱ショックタンパク質(各100nM)と共に指定した時間かけてインキュベーションした時の、ミスフォールドルシフェラーゼDモノマー(50nM)のトリプシンによる消化に対する感受性の例示的な結果を示す。図2Hは、DAXX又は熱ショックタンパク質によるルシフェラーゼDの再活性化の例示的な反応速度分析を示す。図2Iは、DAXX又は熱ショックタンパク質70の存在下又は非存在下における、様々なサイズのアタキシン1-82Qの封入物を含有しているU2OS細胞の例示的な比率を示す。データは平均値±標準偏差(n=3)であり、2回(図2B)又は3回(残り)の独立した実験の代表である。P<0.05、**P<0.01、***P<0.001;図2B及び2Dについての対応のないスチューデントt検定、図2Iについての2元分散分析(ANOVA)。
図3図3図3Aから3Jまで含んでいるが、これは、他のポリD/Eタンパク質が、分子シャペロン、脱凝集酵素、及びアンフォルダーゼとして機能できることを実証している、例示的な結果を示す。図3Aは、ペプチドライブラリーにおける各アミノ酸の出現率(100%)と比較した、DAXX結合性ペプチドにおける各アミノ酸の出現率を示している例示的な結果を示す。図3Bは、漸増塩濃度の存在下における、DAXX及び熱ショックタンパク質(100nM)による、変性ルシフェラーゼ(50nM)の例示的な再活性化を示す。図3C~3Dは、DAXX、DAXXΔD/E又はDAXX D/Eとインキュベーション時の変性ルシフェラーゼ(5nM)の例示的な活性(図3C)及び溶解度(図3D)を示す。n-Luc、天然ルシフェラーゼ。図3E~3Fは、GST、ANP32A(図3E)又はSET(図3F)の非存在下又は存在下における、ルシフェラーゼ(200nM)の例示的な熱で誘発された凝集を示す。図3G及び3Iは、SET及びANP32A(各200nM)によるアタキシン1 82Q(50nM)凝集の例示的な防止(図3G)及び逆行(図3I)を示す。図3H及び3Jは、SET及びANP32A(各200nM)による、熱変性ルシフェラーゼ(5nM)(図3H)及びミスフォールドルシフェラーゼDモノマー(50nM)(図3J)の例示的な再活性化を示す。データは平均値±標準偏差(n=3)であり、3回の独立した実験の代表である。
図4図4は、図4Aから図4Fまで含んでいるが、これはDAXXが、p53及びMDM2の天然立体構造を維持及び回復することを実証している、例示的な結果を示す。図4Aは、DAXX(200nM)によるp53(100nM)の凝集の例示的な防止を示す。図4B、4D及び4Gは、DAXX(200nM)によるp53(図4B)、MDM2(図4D)、及びp53R175H図4G)(各100nM)の例示的な可溶化を示す。図4Cは、PAb1620、PAb240、又はDO1(汎p53抗体)を用いた、天然p53、又はGST若しくはDAXXと共にインキュベートされた変性p53の例示的な免疫沈降(IP)を示す。RM、上清中に残存するタンパク質。図4Eは、DAXX(100nM)の存在下若しくは非存在下におけるMDM2(45nM)による、又はDAXXと共に又はその非存在下においてプレインキュベートされた変性MDM2(45nM)による、p53の例示的なユビキチン化を示す。図4Fは、DAXX(5μM)による、p53及びp53R175H(5μM)の線維化の例示的な防止を示す。図4H及び4Iは、p53R175H又はp53R175H+DAXXを用いてトランスフェクトされたU2OS細胞の代表的な画像(図4H)、及びp53R175Hの蛍光輝点を含有している細胞の比率(図4I)を示す。尺度バー:10μm。図4Jは、対照細胞及びDAXXノックダウンMDA-MB-231細胞における例示的なp53R280K凝集物を示す。図4Kは、MDA-MB-231対照細胞、又はDAXXsiRNA及び/若しくはFlag-DAXXを用いてトランスフェクトされたMDA-MB-231細胞における、抗p53抗体(DO-1)及び抗プレ線維オリゴマー抗体(A11)の例示的な蛍光染色強度を示す。図4Lは、対照細胞及びDAXXを過剰発現しているMDA-MB-231細胞によって形成された、軟寒天コロニーの例示的な数及びサイズを示す。データは平均値±標準偏差であり、2回(図4J)又は3回(残り)の独立した実験の代表である。P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、ns、有意ではない;対応のないスチューデントt検定。
図5図5は、図5Aから図5Jまでを含んでいるが、これは組換えDAXXタンパク質の精製、並びにルシフェラーゼのミスフォールディング及び凝集を防ぐその能力を実証している、実験例の結果を示す。図5Aは、細菌BL21(DE3)及び昆虫Sf9細胞からDAXX-6×ヒスチジンを精製するためのスキームを示す。完全長タンパク質を生成するために、DAXXをN末端でGSTに(GSTとDAXXの間にTEVプロテアーゼ切断部位が挿入されている)及びC末端で6×ヒスチジンに融合させた。融合タンパク質をまず、グルタチオン樹脂を用いて精製した。ビーズ結合GST-DAXX-6×ヒスチジンタンパク質を、TEVプロテアーゼで処理して、DAXX-6×ヒスチジンを遊離させ、これを続いて、Ni-NTA樹脂で精製した。イミダゾールで溶出した後、DAXX-6×ヒスチジンをさらに、イオン交換(IEX)カラム及びゲルろ過カラムで精製し、必要であれば濃縮した。図5B及びCは、SDS-PAGE及びクーマシーブルー染色によって分析された、細菌BL21(DE3)細胞(図5B)及び昆虫Sf9細胞(図5C)から精製された例示的なDAXX-6×ヒスチジンを示す。ウシ血清アルブミン(BSA)を、タンパク質標準物質として使用した(図5C)。質量分析は、DAXX調製物のマイナーバンドの種の大半は、DAXXに由来したことを示した。図5Dは、HEK293T細胞からFlag-DAXXを精製するためのスキームを示す。Flag-DAXXをHEK293T細胞において一過性にトランスフェクトし、そして抗FlagM2ビーズを使用して精製した。3×Flagペプチドを用いた溶出後、Flag-DAXXをさらに、イオン交換カラム及びゲルろ過カラムを用いて精製し、必要であれば濃縮した。図5Eは、SDS-PAGE及びクーマシーブルー染色によって分析された、HEK293T細胞から精製された例示的なFlag-DAXXを示す。質量分析は、DAXX調製物のマイナーバンドの種の大半は、DAXXに由来したことを示した。図5F~5Hは細菌、昆虫細胞、及び哺乳動物細胞から精製されたDAXXタンパク質が、ルシフェラーゼの、熱誘発性不活化及び凝集から防御することを示している、例示的な結果を示す。ルシフェラーゼ(図5F及び5G、5nM;図5H、200nM)を42℃で、指定した濃度のGST、DAXX-6×ヒスチジン(細菌に由来)又は熱ショックタンパク質70(50%濃度の熱ショックタンパク質40を加える、以下と同じ)の存在下において1分間(図5F)、又はGST、DAXX-6×ヒスチジン(細菌に由来)、DAXX-6×ヒスチジン(昆虫細胞に由来)、若しくはFlag-DAXX(各200nM)の存在下若しくは非存在下において指定された時間(図5G及びH)加熱した。天然タンパク質と比べたルシフェラーゼ活性(図5F及び5G)、及び吸光度600nmで測定された相対的な濁度(図5H)が示されている。HEK293T細胞から精製されたDAXXタンパク質は、細菌細胞及び昆虫細胞から精製されたものより活性がより高いようであった。図5I及び5Jは、より多い量のルシフェラーゼについての、DAXXの例示的な防御活性を示す。ルシフェラーゼ(50nM)を42℃で、指定した濃度のGST、DAXX-6×ヒスチジン(sf9細胞に由来)、若しくは熱ショックタンパク質70の存在下において1分間(図5I)、又はGST、DAXX-6×ヒスチジン(Sf9細胞に由来)、若しくはHsp70/Hsp40(各200nM)の存在下若しくは非存在下において指定された時間かけて加熱した。ルシフェラーゼ活性は、天然タンパク質に対して標準化された。RT-CTRL、室温に保たれた対照ルシフェラーゼ試料。図5B、5C及び5Eのアッセイは、3回実施されて、類似の結果が得られた。数値によるデータは、平均値±標準偏差(n=3)であり、3回(図5F及び5J)又は2回(図5G~5I)の独立した実験の代表である。P<0.05、**P<0.01、***P<0.001;ns、有意ではない;対応のないスチューデントt検定。
図6図6は、図6Aから6Lまで含んでいるが、これは、DAXXがα-シヌクレイン及びAβ42の凝集を防ぎ、ATPとは独立して作用し、モノマーとして存在しているようであることを実証している、実験例の結果を示す。図6A及び6Bは、例示的なPFFにより誘発される可溶性α-シヌクレインモノマーの凝集、及びDAXXによるその阻害を示す。α-シヌクレインモノマー(13.3μM)を単独で、α-シヌクレイン中のPFF(133nM)と一緒に(図6A)、又はα-シヌクレイン中のPFF(133nM)と一緒に、GST(0.2μM)、熱ショックタンパク質(0.2μMのHsp70、0.1μMのHsp40、及び0.4μMのHsp104A503S)、及びDAXX-6×ヒスチジン(Sf9細胞に由来、0.1、0.2、及び0.4μM)の存在下において(図6B)インキュベートした。凝集を、リアルタイムの振動誘発変換(RT-QuIC)アッセイによってモニタリングした。図6C~6Eは、DAXXが、期間の延長されたインキュベーションにおいてAβ42の線維化を抑制し、その間にDAXXそれ自体は、原線維又は他の沈降可能な凝集物を形成しなかったことを示している、例示的な結果を示す。Aβ42モノマー(10μM)及びDAXX-6×ヒスチジン(Sf9細胞に由来、0.05、0.1、0.2、0.4及び0.6μM)を、単独で(図6C及び6E)又は一緒に(図6D)37℃で120時間インキュベートした。原線維の形成は、チオフラビンT蛍光アッセイによって分析された(図6C及び6D)。DAXXの溶解度は、沈降アッセイによって分析された(図6E)。図6F及び6Gは、DAXXが、新たなAβ42モノマーの凝集及びAβ42PFFにより誘発される新たなAβ42モノマーの凝集を加速するPFFを形成するのを遮断したことを示している、例示的な結果を示す。Aβ42モノマー(10μM)を37℃で単独で、Aβ42PFF(6nM)(図6F及び6G)と一緒に、100:1のモル比(Aβ42/DAXX)でDAXX-6×ヒスチジン(Sf9細胞に由来)とプレインキュベートされたAβ42(6nM)と一緒に、Aβ42/DAXXとDAXX-6×ヒスチジン(0.6μM)(DAXX)(図6F)と一緒に、又はDAXXの存在下においてAβ42PFF(6nM)と一緒にインキュベートした(図6G)。原線維の形成は、チオフラビンT蛍光アッセイによって分析された。図6F及び6Gのアッセイは同時に実施された。図6H及び6Iは、DAXXのシャペロン活性が、ATPの添加又はアピラーゼの処理によって影響を受けないことを示している、例示的な結果を示す。ルシフェラーゼ(0.2μM)を42℃で、GST(0.2μM)(図6H及び6I)、ATP(5mMのATP-Mg2++ATP再生系)を含む又は含まないDAXX-6xHis(昆虫細胞、0.2μM)、及び示されているようなアピラーゼ(図6H)、又はアピラーゼを含む若しくは含まないHsp70/Hsp40(それぞれ0.2及び0.1μM)(図6I)の存在下で加熱した。凝集の形成は、600nmでの吸光度によってモニタリングされた。図6Jは、DAXXがATPに結合しないことを示している例示的な結果を示す。組換えDAXX-6×ヒスチジン及びHsp70を、リン酸部分(AP-ATP)、リボース部分(EDA-ATP)、又はアデニン塩基を介して様々な位置で(6AH-ATP及び8AH-ATP)ATPとコンジュゲートしていない(-)又はATPとコンジュゲートしているアガロースビーズと共にインキュベートした。インプット試料及びプルダウン試料を、ウェスタンブロットによって分析した。図6Kは、DAXXが、相対的に低い分子量の相同種として存在することを示している、例示的な結果を示す。組換えFlag-DAXXタンパク質は、Superdex 200 10/300 GLカラムによって分析された。タンパク質の標準物質(kDa)が示されている。図6Lは、DAXXが、モノマーとして存在する可能性が高いことを示している、例示的な結果を示す。組換えFlag-DAXX(1μM)を、示された濃度のドデシル硫酸ナトリウムと25℃で30分間かけて架橋し、ウェスタンブロットによって分析した。Flag-p53(1μM)はテトラマーであると予想されているが、これは対照として使用された。類似の結果が、DAXX-6×ヒスチジンについても得られた。アッセイは、3回(図6B~6E、6K及び6L)又は2回(図6A及び6H~6J)実施され、類似の結果が得られた。数字によるデータは平均値±標準偏差(n=3)であり、3回の独立した実験の代表である(図6F及び6G)。
図7図7は、図7Aから図7Pまで含んでいるが、これはDAXXが、小さなルシフェラーゼ凝集物は溶かすことができるが、大きなルシフェラーゼ凝集物又はα-シヌクレイン原線維は溶かすことができないことを実証している、実験例の結果を示す。図7A~7Cは、DAXXが、熱変性ルシフェラーゼ凝集物を溶解し再活性化することを示している、例示的な結果を示す。熱変性ルシフェラーゼ(5nM)を25℃でGST(100nM)、DAXX-6×ヒスチジン(大腸菌に由来、100nM)、及び熱ショックタンパク質(100nMのHsp70、50nMのHsp40、及び200nMのHsp104A503S)と共に、示した時間の間(図7A)、又は示された量のGST又はDAXX-6×ヒスチジンと共に90分間インキュベートした(図7B及び7C)。天然ルシフェラーゼと比較したルシフェラーゼ活性(図7B)、及び沈降後の上清(SN)中のルシフェラーゼの量が示されている(図7A及び7C)。図7Dは、様々な入手源から精製されたDAXXタンパク質の脱凝集酵素活性を示している例示的な結果を示す。示された入手源から精製された漸増濃度のDAXXと共に25℃で90分間インキュベートされた、熱変性ルシフェラーゼ(5nM)の相対活性。図7E及び7Fは、より多量の変性ルシフェラーゼに対するDAXXの脱凝集酵素活性を示している、例示的な結果を示す。示された時間(図7E)又は90分間(図7F)、漸増モル比のDAXX-6×ヒスチジン(Sf9細胞に由来)と共に25℃でインキュベートされた、熱変性ルシフェラーゼ(50nM)の相対活性。図7Gは、DAXXが、5倍過剰量で、ルシフェラーゼ活性の最大の回復を達成することを示している、例示的な結果を示す。熱変性ルシフェラーゼ(0.1、0.2、0.5、1、及び2μM)を、DAXX-6×ヒスチジン(0.1μM)と共に25℃で90分間インキュベートした。ルシフェラーゼ活性は、天然ルシフェラーゼの活性との比較である。図7Hは、DAXXが、変性ルシフェラーゼの天然立体構造を回復することを示している、例示的な結果を示す。単独で又はGST(1μM)若しくはDAXX-6×ヒスチジン(0.1倍:0.1μM;0.5倍:0.5μM)と一緒に90分間インキュベートされた天然又は熱変性ルシフェラーゼ(1μM)は、円二色性(CD)分光法によって調べられた。データは、CAPITOによって分析され、図2Bにβ鎖の比率が示されている。図7Iは、熱及び尿素に因る処理によって生成された、様々なサイズのルシフェラーゼ凝集物を示している、例示的な結果を示す。熱又は尿素によって変性したルシフェラーゼ(1μM)を、Superdex 200 10/300 GLカラム上で分画した。画分をウェスタンブロットによって分析し、ルシフェラーゼの相対量が示されている。図7Jは、DAXXは、尿素変性ルシフェラーゼを再活性化することができないことを示している、例示的な結果を示す。GST(0.2μM)、DAXX(0.2及び1μM)又は熱ショックタンパク質(0.2μMのHsp70、0.1μMのHsp40、及び0.4μMのHsp104A503S)と共に25℃で90分間インキュベートされた尿素変性ルシフェラーゼ(5nM)の相対活性。図7K及び7Lは、熱(図7K)又は尿素(図7L)によって変性し、ゲルろ過クロマトグラフィー上で分画された、ルシフェラーゼの例示的な結果を示す。44~2,000kDaの範囲内の画分を、緩衝液、リゾチーム(0.1μM)、DAXX-6×ヒスチジン(0.1μM)、又はHsp70/Hsp40-Hsp104A503S(それぞれ0.1、0.05、及び0.2μM)と共に25℃で90分間インキュベートし、ルシフェラーゼ活性を決定した。図7M~7Pは、DAXXが、α-シヌクレイン原線維を溶解することができないことを示している、例示的な結果を示す。予め形成されたα-シヌクレイン原線維(0.2μM)を、GST(0.2μM)(図7M~7P)、示されたモル比(図7M及び7N)又は0.2μM(図7O及び7P)のDAXX-6×ヒスチジン、熱ショックタンパク質(0.2μMのHsp70、0.1μMのHsp40、及び0.4μMのHsp104A503S+ATP及びATP再生系)(図7M~7P)、又はDAXXと熱ショックタンパク質の両方(図7O及び7P)を用いて処理した。反応混合物を、ドットブロット(図7M及び7O)によって分析し、α-シヌクレイン総量と比較した可溶性α-シヌクレインを定量した(図7N及び7P)(n=3)。パネル図7A、7C、7hH、7I及び7K~7Pのアッセイが3回実施され、類似の結果が得られた。数字によるデータは平均値±標準偏差(n=3)であり、3回の独立した実験の代表である(図7B、7D~7G、及び7J)。**P<0.01、***P<0.001;ns、有意ではない;対応のないスチューデントt検定。
図8図8は、図8Aから図8Jまで含んでいるが、これはDAXXが、ミスフォールドルシフェラーゼDをアンフォールドし、細胞内のタンパク質の凝集及びオリゴマー化を防御することを実証している、実験例の結果を示す。図8A、コンパクトでミスフォールドされたルシフェラーゼDモノマー、アンフォールドされた中間体、及び天然立体配座体の図解、並びに短時間のトリプシンによる消化に対するそれらの感受性。図8B、DAXXは、ルシフェラーゼDのトリプシンに対する感受性を変化させる。ルシフェラーゼD(50nM)を、DAXX-6×ヒスチジン(100nM)、GST(100nM)、又は熱ショックタンパク質(100nMのHsp70、50nMのHsp40、及び200nMのHsp104A503S)と共に25℃でインキュベートした。指定された時点で、ルシフェラーゼの分注液を、2.5μMのトリプシンと共に22℃で2分間インキュベートし、ウェスタンブロットによって分析した。ルシフェラーゼのバンドの強度が示されている。代表的なウェスタンブロットが図2Gに示されている。図8C、DAXXは、ルシフェラーゼDの酵素活性を高める。ミスフォールドされたルシフェラーゼDモノマー(50nM)を、GST(100nM)又はDAXX-6×ヒスチジン(100nM)と共に、示された時間の間インキュベートし、ルシフェラーゼ活性についてアッセイした。図8D、DAXXは、細胞内の核局在ルシフェラーゼDM(構造不安定化)のレベルを上昇させるが、核局在ルシフェラーゼのレベルは上昇させない。核局在ルシフェラーゼ又は核局在ルシフェラーゼ(構造不安定化)を、空のベクター(EV)又はFlag-DAXXと一緒にHEK293T細胞内にトランスフェクトした。細胞溶解液を、ウェスタンブロットによって、トランスフェクションから24時間後に分析した。図8E及び8F、DAXXは、細胞内のアタキシン1 82Qの凝集を減少させるが、発現は減少させない。EV、Flag-DAXX(図8E~8F)又はGFP-Hsp70(図8F)と一緒にHA-アタキシン1-82Qを用いてトランスフェクトされたU2OS細胞を、ウェスタンブロット(図8E)、又は抗ヒトヘマグルチニン抗体(赤色)及び抗Flag抗体(緑色)を用いた免疫蛍光(図8F;尺度バー、10μm)によって分析した。様々なサイズのアタキシン1-82Q封入体を含有している細胞の比率の定量が図2Iに示されている。図8G、改良型の黄色蛍光タンパク質(YFP)である、Venusに基づいた二分子蛍光補完(BiFC)アッセイの図解。図8H~8J、DAXXは、細胞内のα-シヌクレインのオリゴマー化を阻害する。HEK293T細胞に、V1S及びSV2を用いて個々に、又は空ベクター(EV)若しくはDAXXと一緒にトランスフェクトした。細胞を、タンパク質の発現についてウェスタンブロットによって(図8H)、並びに二分子蛍光補完のシグナル及びFlag-DAXXの発現について蛍光顕微鏡(図8I;尺度バー、100μm)によって分析し、二分子蛍光補完シグナルの定量が(図8J)に示されている。パネル図8D~8F、8H及び8Iのアッセイは、2回実施され、類似の結果が得られた。数字によるデータは、平均値±標準偏差(n=3)であり、3回の独立した実験の代表である(図8B、8C、及び8J)。P<0.05、**P<0.01、***P<0.001;ns、有意ではない;対応のないスチューデントt検定。
図9図9は、図9Aから図9Hを含んでいるが、DAXXが、ミスフォールドタンパク質に結合し、その活性についてポリD/E領域に依存することを実証している、実験例の結果を示す。図9Aは、DAXX-ルシフェラーゼ相互作用が、熱ショック時に増加することを示している例示的な結果を示す。HEK293T細胞に、示されているようにHA-DAXX及びFlag-天然ルシフェラーゼをトランスフェクトし、熱ショックを用いて又は用いずに処理した。細胞溶解液を、抗Flagモノクローナル抗体(M2)ビーズを用いて免疫沈降(IP)させた。インプット試料及び免疫沈降試料をウェスタンブロットによって分析した。図9Bは、DAXXが、熱変性ルシフェラーゼに優先的に結合することを示している例示的な結果を示す。GST又はGST-DAXX(各100nM)を、Ni-NTAアガロース上に固定された、天然ルシフェラーゼ(N)又は熱変性(D)6×ヒスチジン-ルシフェラーゼと共にインキュベートした。インプット試料及びプルダウン試料を、ウェスタンブロットによって分析した。図9Cは、ルシフェラーゼ、p53、MDM2、H3.3、H4及びDAXXに由来するセルロース結合ペプチドへのDAXXの結合のスキャンの例示的な結果を示す。各ペプチドは13アミノ酸残基を含有し、これは隣接ペプチドと10だけ重なっている。図9DはDAXXのタンパク質配列を示す。ポリD/E領域は、赤色で印が付けられ、アスパラギン酸/グルタミン酸が4回連続して並んだもの(それぞれ14、11、7及び5残基を有する)に下線が引かれている。図9Eは、完全長DAXX及びその突然変異体の図解を示す。DAXX D/Eを、タンパク質の安定化のために、N末端でGSTに融合させた。図9Fは、DAXXΔD/E及びDAXX D/Eが、アンフォルダーゼ活性を欠失していることを示している、例示的な結果を示す。ミスフォールドルシフェラーゼDモノマー(50nM)を、DAXX ΔD/E又はDAXX D/(各100nM)と共に指定された時間インキュベートし、ルシフェラーゼ活性(平均値±標準偏差、n=3)についてアッセイした。図9G及び9Hは、DAXXΔD/E及びDAXX D/Eが、熱処理中に依然として可溶性であることを示している、例示的な結果を示す。組換えDAXXΔD/E(図9G)及びD/E(図9H)タンパク質を、42℃で指定された時間の間加熱した。ルシフェラーゼ(200nM)を陽性対照として使用した。凝集の形成を、600nmでの吸光度によってモニタリングし、ルシフェラーゼ対照に対して標準化した。図9A~9Cのアッセイを2回実施して、類似の結果が得られた。数字によるデータは、平均値±標準偏差(n=3)であり、2回の独立した実験の代表である(図9F~9H)。
図10図10は、図10Aから図10Lを含んでいるが、これはタンパク質のフォールディングにおける他のポリD/Eタンパク質の役割を実証している、実験例の結果を示す。図10Aは、ヒトSET及びANP32Aタンパク質の配列を示す。ポリD/E領域に陰影が付けられ、アスパラギン酸/グルタミン酸が連続して並んだものには下線が引かれている。図10B及び10Cは、ANP32A及びSETが、α-シヌクレインの線維化を遮断しないことを示している、例示的な結果を示す。α-シヌクレインモノマー(70μM)を、SET又はANP32A(各0.4μM)と共に7日間インキュベートした。試料を、電子顕微鏡(図10B)及びチオフラビンTによる染色(図10C)によって分析した。尺度バー、100nm。図10Dは、SET及びANP32Aが、尿素変性ルシフェラーゼを可溶化することができないことを示している、例示的な結果を示す。尿素変性ルシフェラーゼ(5nM)を、GST、SET、ANP32A(各0.2μM)、又は熱ショックタンパク質(0.2μMのHsp70、0.1μMのHsp40、及び0.4μMのHsp104A503S)と共に25℃で90分間インキュベートした。天然対照と比較した活性が示されている。図10E及び10Fは、ANP32A及びSETのアンフォルダーゼ活性を示している例示的な結果を示す。ミスフォールドルシフェラーゼD(50nM)を、GST、SET、又はANP32A(各200nM)と共に25℃でインキュベートした。指定された時点で、リフォールディングされたルシフェラーゼの分注液を、2.5μMのトリプシンと共に22℃で2分間インキュベートし、SDS試料緩衝液中で変性させ、ウェスタンブロット(図10E)によって分析し、定量が(図10F)に示されている。図10G及び10Hは、SET及びその欠失突然変異体の図解(図10G)、並びに各々の突然変異体におけるアスパラギン酸(D)及びグルタミン酸(E)の数(図10H)を示す。図10Iは、SET又はその欠失突然変異体(各200nM)と共に25℃で90分間インキュベートした、熱で失活させたルシフェラーゼ(5nM)の例示的な結果を示す。天然ルシフェラーゼと比較した活性が示されている。図10Jは、様々な種のポリD/Eタンパク質の数を示す。図10K~10Lは、ヒトにおけるポリD/Eタンパク質の遺伝子オントロジー分析を示している例示的な結果を示す。タンパク質は、それらの分子機能(図10K)及びタンパク質の分類(図10L)に基づいて円グラフに分類される。アッセイは、2回(図10B)又は3回(図10E)実施され、類似の結果が得られた。数字によるデータは、平均値±標準偏差(n=3)であり、2回の独立した実験の代表である(図10C、10D、10F及び10I)。**P<0.01;ns、有意ではない;対応のないスチューデントt検定。
図11図11図11Aから図11Oを含んでいるが、これはDAXXが、p53及びMDM2の両方の天然立体構造を維持していることを実証している、実験例の結果を示す。図11Aは、DAXXが、p53の線維化を消失させることを示している、例示的な結果を示す。組換え野生型p53及びDAXX-6×ヒスチジンタンパク質(各5μM)を、単独で又は一緒に37℃で2時間、チオフラビンT(25μM)の存在下でインキュベートした。アミロイド原線維の形成をチオフラビンTによってアッセイした。図11B及び11Cは、DAXXΔD/E及びDAXX D/Eが、p53の凝集を防御できないことを示している、例示的な結果を示す。天然p53(n-p53)(図11B)又は変性p53凝集物(d-p53)(図11C)(各100nM)を、GST、Flag-DAXX、DAXX D/E、又はDAXX ΔD/E(各200nM)と共に37℃で(図11B)又は25℃(図11C)で指定された時間インキュベートした。試料を沈降を介して上清画分(SN、可溶性)及びペレット画分(PE、不溶性)に分配し、ウェスタンブロットによって分析した。DAXX D/E試料及びDAXX ΔD/E試料が含まれる以外は、図4A及び4Bと同様。図11D、11E、11G及び11Hは、DAXXが、変性p53及びMDM2の天然立体構造を回復することを示している、例示的な結果を示す。天然p53(図11D)又はMDM2(天然MDM2、図11G)又は変性p53(図11E)又はMDM2(変性MDM2、図11H)(各1μM)を、単独で又は指定されたモル比のGST又はDAXX-6×ヒスチジン(0.5、1、2μM、Sf9細胞に由来)と一緒に3時間インキュベートし、サーマルシフトアッセイによって分析した。アンフォールディング曲線の遷移は、タンパク質のアンフォールディングが起こる温度(T)を示す。図11Fは、DAXXが、予め形成されたMDM2凝集物を溶解することを示している、例示的な結果を示す。変性MDM2(100nM)を、Flag-DAXX(200nM)と共に25℃で指定された時間インキュベートした。沈降後の上清画分(SN、可溶性)及びペレット画分(PE、不溶性)を、ウェスタンブロットによって分析した。図11Iは、DAXXが、MDM2により媒介されるp53のユビキチン化を増強することを示している、例示的な結果を示す。天然p53(20nM)を、天然MDM2(45nM)と共にDAXX(20又は100nM)の存在下又は非存在下で37℃で1.5時間インキュベートした。その後、E1、E2及びヒスチジン-ユビキチン(His-Ub)を、インビトロでのユビキチン化アッセイのために加えた。反応混合物をウェスタンブロットによって分析した。図11Jは、Flag-DAXX(100nM)の存在下若しくは非存在下における天然p53(20nM)の、又は、Flag-DAXX(100nM)と共に又は伴わずに25℃で3時間プレインキュベートされた変性p53(20nM)の、天然MDM2により媒介されるユビキチン化を示している、例示的な結果を示す。図11K及びIILは、DAXXが、細胞内のp53レベルを減少させるが、p53の広く拡散した核内局在化を変化させないことを示している、例示的な結果を示す。Flag-p53を、U2OS細胞に、空ベクター(CTRL)又はDAXXと一緒にトランスフェクトした。細胞を、免疫蛍光(図11K)及びウェスタンブロット(図11L)によって分析した。図11M~11Oは、対照ベクター(-)又はヘマグルチニン-DAXXを用いてトランスフェクトされた、野生型p53又はp53R175Hを誘導性発現しているH1299細胞の例示的な結果を示す。ドキシサイクリン(1μg/mL)によるp53の発現誘導時に、細胞を、タンパク質レベルについてウェスタンブロットによって分析し(相対的なp53/GAPDH比が示されている)(図11M)、p53のmRNAレベル(図11N)及びp53標的遺伝子(図11O)について定量逆転写PCRによって分析した。尺度バー:10μm。パネル内のアッセイは、2回(図11D、11E、11G、11H及び11K~11M)又は3回(図11B、11C、11F、11I、及び11J)実施され、類似の結果が得られた。数字によるデータは、平均値±標準偏差(n=3)であり、2回の独立した実験の代表である(図11A、11N、及び11O)。P<0.05、**P<0.01;ns、有意ではない;対応のないスチューデントt検定。
図12図12は、図12Aから図12Lを含んでいるが、DAXXが、突然変異体p53の天然立体構造及び機能を回復することを実証している、実験例の結果を示す。図12Aは、DAXXが、p53R175Hの凝集を防ぐことを示している、例示的な結果を示す。p53R175Hタンパク質(100nM)を、GST又はFlag-DAXX(各200nM)と共に37℃で指定された時間インキュベートした。血清画分及びペレット画分を、ウェスタンブロットによって分析した。図12Bは、DAXXが、p53R175HPFFにより誘発されたp53の線維化を遮断することを示している、例示的な結果を示す。野生型p53(5μM)を、示されているようなp53R175HPFF及びDAXXと共に又は伴わずにインキュベートした。原線維の形成を、チオフラビンTとの結合によってアッセイした。図12Cは、DAXXが、細胞内のp53R175Hの凝集を減少させることを示している、例示的な結果を示す。Flag-p53R175Hを、U2OS細胞に、空ベクター(CTRL)又はHA-DAXXと一緒にトランスフェクトした。細胞を、免疫蛍光法によって分析した。尺度バー:10μm。画像の一部も、図4Iに示されている。図12Dは、DAXXが、突然変異体p53の機能を部分的に回復することを示している、例示的な結果を示す。p53R175Hを誘導性発現しているH1299細胞に対照ベクター(-)又はHA-DAXXをトランスフェクトした。ドキシサイクリン(1μg/mL)によるp53発現の誘導時に、細胞を、p53標的遺伝子の発現について逆転写PCRによって分析した。図12E~12Gは、内因性突然変異体p53の凝集に対するDAXXの効果を示している、例示的な結果を示す。MDA-MB-231細胞を、対照又はDAXX 短鎖ヘアピン型RNAを発現しているレンチウイルスベクターを用いて形質導入したか(図12E及び12F)、又は示されているような対照siRNA、DAXXsiRNA及び/又はsiRNA抵抗形のDAXX(Flag-DAXX)を用いてトランスフェクトした(図12G)。細胞を、抗p53抗体(DO-1)及び抗原線維オリゴマー抗体(A11)を用いて免疫染色し(図12E及び12G)、定量した(図12F)。尺度バー:50μm。図12H~12Jは、DAXXのノックダウンが、MDA-MB-231細胞の増殖及び腫瘍原性を増強することを示している、例示的な結果を示す。対照細胞及びDAXX-ノックダウンMDA-MB-231細胞を、接着増殖、タンパク質の発現(図12H)、及び軟寒天コロニー形成(21日間)についてアッセイし、コロニーの数及びサイズ(図12I)、並びに代表的なコロニーの画像(図12J)が示されている。図12K及び12Lは、DAXXの過剰発現が、MDA-MB-231細胞の増殖及び腫瘍原性を阻害することを示している、例示的な結果を示す。pBabe又はpBabe-Flag-DAXXを用いて形質導入されたMDA-MB-231を、5日間、接着増殖について(図12K)及び軟寒天コロニー形成(21日間)についてアッセイし、代表的なコロニーの画像が示されている(図12L)。アッセイは2回(図12A)又は3回(図12C、12E及び12G)実施され、類似の結果が得られた。数字によるデータは、平均値±標準偏差(図12B及び12Dについてはn=3、図12I、12H及び12Kについては6)であり、3回の独立した実験の代表である。P<0.05、**P<0.01、***P<0.001;ns、有意ではない;対応のないスチューデントt検定。
図13図13は、任意の50残基窓内に35以上のD残基又はE残基を含有している、ヒトポリD/Eタンパク質の表を示す。ヒト由来のポリD/E含有タンパク質が、UniProtの識別番号(第一列)、タンパク質の記号(第二列)、及びタンパク質の名称(第三列)と共に列挙されている。窓内のD残基及びE残基の数が、それぞれ第四列及び第五列に列挙されている。ポリD/E領域の配列は第六列に列挙され、D/Eに陰影が付けられている。遺伝子オントロジー(GO)用語のリストは最後の列に列挙されている。列挙された全てのタンパク質は、タンパク質の分類又は分子機能に応じて、異なるカテゴリーにまとめられた(図10K及び10L参照)。
図14図14は、図14Aから図14Dを含んでいるが、これはタウ原線維に対するDAXXの作用の代表的な結果を示す。図14Aは、タウ線維化及びDAXXによる線維化の阻害の代表的な蛍光の結果を示す。図14Bは、可溶性タウを検出しているウェスタンブロット及びドットブロット分析の代表的な画像を示し、減少した線維化を実証している。図14Cは、タウによって脱凝集したタウ凝集物の代表的な蛍光の結果を示す。図14Dは、DAXXがタウ凝集物を溶解することを実証している、ウェスタンブロット及びドットブロットの分析の代表的な画像を示す。
図15図15は、図15Aから図15Dまでを含んでいるが、これは細胞内のタウ凝集に対するDAXXの代表的な効果を示す。図15Aは、DAXXの存在下におけるGFP-タウの代表的な画像を示し、減少した凝集を実証している。図15Bは、二分子蛍光補完(BiFC)アッセイの代表的な図を示す。図15Cは、DAXXを用いたBiFCアッセイの代表的な蛍光画像を示す。図15Dは、図15Cにおける蛍光の定量、及びタウについてのウェスタンブロットの代表的な画像を示し、DAXXが、タウオリゴマーの形成を遮断するが、分解についてタウを標的化しないことを実証している。
図16図16は、図16Aから図16Iまで含んでいるが、これは、DAXXがポリQ、FUS、及びTDP-43の凝集を阻害することを実証している、代表的なデータを示す。図16Aは、DAXXが、ハンチンチンの凝集を阻害することを実証している、ウェスタンブロットの代表的な画像を示す。図16Bは、DAXXがFUSの凝集を阻害することを実証している、ウェスタンブロットの代表的な画像を示す。図16Cは、TDP-43及びDAXXを同時発現している細胞内のTDP封入物の代表的な蛍光画像を示す。図16Dは、TDP-43を、完全長DAXX、ヒストン結合ドメインを欠失している切断短縮されたDAXX、及ポリD/E領域を欠失しているDAXXと共に発現させた場合の、TDP封入物に見られるフォールド回数の定量を示す。図16Eは、TDP-43を、完全長DAXX、ヒストン結合ドメインを欠失している切断短縮されたDAXX、及びポリD/E領域を欠失しているDAXXと共に発現させた場合の、TDP封入物に見られるフォールドのサイズの定量を示す。図16Fは、DAXX及びポリD/E領域(アミノ酸449~499)の配列を示す。図16Gは、完全長DAXX、完全なヒストン結合ドメインを欠失しているがポリD/E領域は維持している切断短縮されたDAXX、及びポリD/E領域を欠失しているDAXXの図解を示す。図16Hは、DAXXの発現が、TDP-43のQ331K突然変異体におけるTDP-43凝集物の形成を低減させることを実証している、ウェスタンブロットブロットの代表的な画像を示す。図16Iは、DAXXが、TDP-43のM337K突然変異体におけるTDP-43凝集物の形成を低減させることを実証している、ウェスタンブロットの代表的な画像を示す。
【0019】
詳細な説明
本発明は、多種多様な神経変性障害及び癌の病態に役割を果たしている、ミスフォールドタンパク質のための分子シャペロン、脱凝集酵素、及びアンフォルダーゼとしての、ポリD/E酸性領域含有タンパク質の役割の発見に関する。
【0020】
1つの態様では、本発明は、ミスフォールドタンパク質又はタンパク質凝集物に関連した疾患又は障害を治療又は予防するための組成物及び方法を提供する。本明細書において、ポリD/Eタンパク質は、分子シャペロンとして、タンパク質凝集物の脱凝集において、及び安定なミスフォールドモノマーのアンフォールディングにおいて、役割を果たすことが実証されている。したがって、特定の態様では、本発明を使用して、細胞内又は細胞外のミスフォールドタンパク質、タンパク質凝集物、又はタンパク質封入体を排除することができる。
【0021】
例えば、特定の実施態様では、本発明は、それを必要とする被検者における、神経変性障害を治療又は予防するための、組成物及び方法を提供する。例えば、特定の実施態様では、本発明は、ポリ-グルタミン(ポリQ)障害(この障害ではCAGコドンの反復配列が、ポリグルタミン鎖を有するタンパク質をコードし、これにより、ミスフォールドタンパク質凝集物がもたらされ得る)である神経変性障害の治療又は予防のための組成物及び方法を提供する。例示的なポリQ障害としては、脊髄小脳失調症(SCA)1型(SCA1)、SCA2、SCA3、SCA6、SCA7、SCA17、ハンチントン病、及び歯状核赤核・淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0022】
いくつかの実施態様では、本発明は、ミスフォールドタンパク質又はタンパク質凝集物に関連した障害の処置のための組成物及び方法を提供する。例えば、特定の実施態様では、該組成物及び方法は、アミロイドβ、α-シヌクレイン、タウ、プリオン、SOD1(スーパーオキシドジスムターゼ)、TDP-43、FUS、p53、p53突然変異体、又はポリグルタミン反復配列を伴うタンパク質(例えばハンチンチン及びアタキシン)のミスフォールドタンパク質及び/又はタンパク質凝集物に関連した疾患及び障害の処置のために使用される。
【0023】
ミスフォールドタンパク質又はタンパク質凝集物に関連した例示的な神経変性疾患としては、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、伝達性海綿状脳症(プリオン病)、シヌクレイノパチー、レビー小体型認知症(DLB)、多系統萎縮症(MSA)、タウオパチー、及び前頭側頭葉変性症(FTLD)が挙げられるがこれらに限定されない。しかしながら、本発明は、神経変性障害の治療又は予防に限定されない。むしろ、本発明は、ミスフォールドタンパク質又はタンパク質凝集物に関連したあらゆる疾患又は障害の治療又は予防を包含する。他のこのような疾患及び障害としては、ALアミロイドーシス、AAアミロイドーシス、家族性地中海熱、老人性全身性アミロイドーシス、家族性アミロイドポリニュロパチー、透析アミロイドーシス、アポリポタンパク質AIアミロイドーシス、アポリポタンパク質AIIアミロイドーシス、アポリポタンパク質AIVアミロイドーシス、フィンランド型遺伝性アミロイドーシス、リゾチームアミロイドーシス、フィブリノーゲンアミロイドーシス、アイスランド型遺伝性脳アミロイドアンギオパチー、II型糖尿病、甲状腺髄様癌、心アミロイドーシス、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血、下垂体プロラクチン産生腫瘍、注射局在化アミロイドーシス、大動脈中膜アミロイドーシス、遺伝性格子状角膜変性、睫毛乱生症を伴う角膜アミロイドーシス、白内障、歯原性石灰性上皮腫瘍、肺胞蛋白症、封入体筋炎、及び皮膚アミロイド苔癬が挙げられるがこれらに限定されない。
【0024】
いくつかの実施態様では、本発明は、p53凝集物に関連した癌の治療又は予防を包含する。
【0025】
1つの態様では、本発明は、ミスフォールドタンパク質を安定化させるための1つ以上のポリD/Eタンパク質の使用を包含する。特定の態様では、本明細書に記載の1つ以上のポリD/Eタンパク質を介した、機能的なミスフォールドタンパク質の安定化は、ミスフォールドタンパク質に関連した疾患又は障害を治療又は予防することができる。例えば、1つの実施態様では、本明細書に記載の1つ以上のポリD/Eタンパク質を介した、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)突然変異体の安定化は、CFTRの突然変異体が、分解されるのではなく機能することを可能とするだろう。ポリD/Eタンパク質を使用した、ミスフォールドタンパク質の安定化の使用は、部分的に機能するタンパク質の分解を伴う嚢胞性線維症及び他の疾患を処置することができると想定される。本明細書に記載の1つ以上のポリD/Eタンパク質を介した、タンパク質の安定化を使用して、嚢胞性線維症及びライソゾーム蓄積症、例えばゴーシェ病及びファブリー病を含むがこれらに限定されない、機能的な突然変異タンパク質の分解に関連した任意の疾患又は障害を処置することができる。
【0026】
1つの態様では、本発明は、ポリD/Eタンパク質の発現、活性又はその両方を増加させるための組成物及び方法を提供する。特定の実施態様では、該組成物は、1つ以上のポリD/Eタンパク質の発現、活性又はその両方を増加させる、核酸分子、発現ベクター、タンパク質、ペプチド、低分子などを含む。
【0027】
定義
特記されない限り、本明細書において使用する全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の専門家によって一般的に理解されているのと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似又は等価な任意の方法及び材料を、本発明の実践又は試験に使用し得、好ましい方法及び材料が記載されている。
【0028】
本明細書において使用する以下の用語の各々は、この章内の用語と関連した意味を有する。
【0029】
品目の「a(1つの)」及び「an(1つの)」は本明細書において、1つ又は1つを超える(すなわち少なくとも1つの)文法上の目的語の品目を指すために使用される。例えば、「1つの要素」は、1つの要素又は1つを超える要素を意味する。
【0030】
量、一時的な期間などの測定可能な数値に言及する場合に本明細書において使用されるような「約」は、特定の数値から±20%、±10%、±5%、±1%、又は±0.1%の変動を包含することを意味し、なぜなら、このような変動は、開示された方法を実施するのに適切であるからである。
【0031】
生物、組織、細胞、又はその成分の脈絡において使用される場合の「異常な」という用語は、「正常な」(予想される)それぞれの特徴を示す生物、組織、細胞、又はその成分とは少なくとも1つの観察可能な又は検出可能な特徴(例えば年齢、処置、日数など)において異なる、生物、組織、細胞、又はその成分を指す。ある細胞又は組織型についての正常であるか又は予想される特徴は、異なる細胞又は組織型にとっては異常である場合もある。
【0032】
本明細書において使用する「細胞療法」は、1つ以上の疾患又は障害を治療又は予防するための治療剤としての、被検者への生細胞の投与を指す。該細胞は、操作されていなくても、又は関心対象の治療用タンパク質を過剰発現するように遺伝子工学操作された細胞のように操作されていてもよい。細胞療法に使用するための細胞は、異種、同種、同系、又は自己であり得る。
【0033】
「疾患」は、動物が恒常性を維持できない、及び該疾患が回復しなければ該動物の健康は悪化し続ける、該動物の健康状態である。
【0034】
対照的に、動物の「障害」は、動物が恒常性を維持することができるが、動物の健康状態は、障害がない状態よりも好ましくない、健康状態である。未処置のまま放置しても、障害は、動物の健康状態のさらなる低下を必ずしも引き起こすわけではない。
【0035】
疾患又は障害は、該疾患若しくは障害の兆候若しくは症状の重症度、このような兆候若しくは症状が患者によって経験される頻度、又はその両方が低減した場合に、「軽減」されている。
【0036】
化合物の「有効量」又は「治療有効量」は、該化合物が投与される被検者に有益な効果をもたらすに十分である化合物の量である。送達ビヒクルの「有効量」は、化合物に効果的に結合又は送達するに十分な量である。
【0037】
本明細書において使用する「説明資料」は、本明細書で列挙された様々な疾患又は障害の軽減を奏功するためのキット内の本発明の化合物、組成物、ベクター、又は送達系の有用性を伝達するために使用され得る、刊行物、記録、図、又は任意の他の表現媒体を含む。場合により、又は代替的には、説明資料は、哺乳動物の細胞又は組織内における疾患又は障害を軽減する1つ以上の方法を記載し得る。本発明のキットの説明資料は、例えば、本発明の同定された化合物、組成物、ベクター、若しくは送達系を含有している容器に添付されていても、又は、同定された化合物、組成物、ベクター、若しくは送達系を含有している容器と一緒に出荷されてもよい。あるいは、説明資料は、該説明資料及び該組成物がレシピエントによって協同的に使用されることを意図して、容器とは別々に出荷されてもよい。
【0038】
「患者」、「被検者」、「個体」などの用語は本明細書において同義語として使用され、インビトロであろうが又はインビボであろうが、本明細書に記載の方法を受け入れることのできる、任意の動物又はその細胞を指す。特定の非限定的な実施態様では、患者、被検者、又は個体はヒトである。
【0039】
「治療」処置は、そうした兆候又は症状を減少又は排除する目的のために、疾患又は障害の兆候又は症状を示す、被検者に投与される処置である。
【0040】
本明細書において使用する「疾患又は障害を処置すること」は、患者の経験する該疾患又は障害の兆候又は症状の重症度及び/又は頻度を低減させることを意味する。
【0041】
本明細書において使用する「生物学的試料」という語句は、核酸又はポリペプチドの発現が存在するか又は検出され得る、細胞、組織、又は体液を含んでいる、任意の試料を含むことを意図する。液体の性質である試料は本明細書において「体液」と称される。生物学的試料は、例えば、被検者のある領域を掻把若しくは拭き取ることによって、又は針を使用して体液を得ることによってを含む、多種多様な技術によって、患者から得てもよい。様々な身体試料を回収するための方法が当技術分野において周知である。
【0042】
本明細書において使用する「イムノアッセイ」は、標的分子に特異的に結合することにより、該標的分子を検出及び定量することのできる抗体を使用する、任意の結合アッセイを指す。
【0043】
抗体に関して、本明細書において使用する「特異的に結合する」という用語によって、試料中の特異的な抗原を認識するが、他の分子は実質的に認識又は結合しない抗体を意味する。例えば、ある種に由来する抗原に特異的に結合する抗体はまた、1つ以上の種に由来する抗原にも結合する場合がある。しかし、このような種間の交差反応性はそれ自体では、特異的であるとする抗体の分類を変更しない。別の例では、抗原に特異的に結合する抗体はまた、異なる対立遺伝子型の抗原にも結合する場合がある。しかしながら、このような交差反応性はそれ自体では、特異的であるとする抗体の分類を変更しない。
【0044】
場合によっては、「特異的な結合」又は「特異的に結合している」という用語は、第二の化学種と抗体、タンパク質又はペプチドとの相互作用に言及して、該相互作用が、化学種の上の特定の構造(例えば抗原決定基又はエピトープ)の存在に依存することを意味するために使用され得;例えば、抗体は、タンパク質全体ではなくむしろ、特定のタンパク質構造を認識し結合する。抗体がエピトープ「A」に対して特異的である場合、標識された「A」と抗体とを含有している反応中において、エピトープA(又は遊離の標識されていないA)を含有している分子の存在は、抗体に結合する標識されたAの量を減少させるだろう。
【0045】
遺伝子の「コード領域」は、遺伝子の転写によって産生されるmRNA分子のコード領域に対してそれぞれ相同的又は相補的である、遺伝子のコード鎖のヌクレオチド残基と、遺伝子の非コード鎖のヌクレオチドからなる。
【0046】
mRNA分子の「コード領域」は、mRNA分子の翻訳中のの転移RNA分子のアンチコドン領域と一致するか、又は終止コドンをコードする、mRNA分子のヌクレオチド残基からなる。したがって、コード領域は、mRNA分子によってコードされる成熟タンパク質内に存在しないアミノ酸残基(例えばタンパク質輸送シグナル配列内のアミノ酸残基)のコドンを含んでいる、ヌクレオチド残基を含み得る。
【0047】
核酸を指すために本明細書において使用する「相補的」は、2本の核酸鎖の領域間、又は同じ核酸鎖の2つの領域間の配列相補性という幅広い概念を指す。第一の核酸領域のアデニン残基は、第一の領域に逆平行である第二の核酸領域の残基と、該残基がチミン又はウラシルである場合に、特異的な水素結合を形成(「塩基対を形成」)することができることが知られている。同様に、第一の核酸鎖のシトシン残基は、第一の鎖に逆平行である第二の核酸鎖の残基と、該残基がグアニンである場合には、塩基対を形成することができることが知られている。核酸の第一の領域は、同じ又は異なる核酸の第二の領域に対して、もし2つの該領域が逆平行に並べられた場合に、第一の領域の少なくとも1つのヌクレオチド残基が、第二の領域の1つの残基と塩基対を形成することができる場合に、相補的である。好ましくは、第一の領域は第一の部分を含み、第二の領域は第二の部分を含み、これにより、第一の部分と第二の部分が逆平行に並べられた場合、第一の部分のヌクレオチド残基の少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約75%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%が、第二の部分内のヌクレオチド残基と塩基対を形成することができる。より好ましくは、第一の部分の全てのヌクレオチド残基が、第二の部分内のヌクレオチド残基と塩基対を形成することができる。
【0048】
「単離された」は、天然状態から変化した又は取り出されたことを意味する。例えば、生存動物内にその通常の状況で天然に存在する核酸又はペプチドは、「単離」されていないが、その天然の状況の共存物質から部分的に又は完全に分離された同核酸又は同ペプチドは「単離」されている。単離された核酸又はタンパク質は、実質的に精製された形で存在しても、又は、例えば宿主細胞内で非天然環境内で存在してもよい。
【0049】
「単離された核酸」は、天然に存在する状態でフランキングする配列から分離された核酸セグメント又は断片、すなわち該断片に通常隣接する配列、すなわちそれが天然に存在するゲノム内の断片に隣接する配列から取り出されたDNA断片を指す。該用語はまた、核酸に通常付随する他の成分、すなわち、細胞内で核酸に天然に付随するRNA又はDNA又はタンパク質から実質的に精製されている核酸に適用される。それ故、該用語は、例えば、ベクターに、自律複製プラスミド若しくはウイルスに、又は原核細胞若しくは真核細胞のゲノムDNAに組み込まれているか、又は、他の配列とは独立して別々の分子として(すなわち、PCR又は制限酵素による消化によって生成される、cDNA又はゲノム断片又はcDNA断片として)存在する、組換えDNAを含む。それはまた、追加のポリペプチド配列をコードしているハイブリッド遺伝子の一部である組換えDNAも含む。
【0050】
本発明の脈絡では、一般的に存在する核酸塩基について以下の略称が使用される。「A」はアデノシンを指し、「C」はシトシンを指し、「G」はグアノシンを指し、「T」はチミジンを指し、「U」はウリジンを指す。
【0051】
本明細書において使用する「ポリヌクレオチド」という用語は、ヌクレオチド鎖として定義される。さらに、核酸は、ヌクレオチドポリマーである。したがって、本明細書において使用する核酸及びポリヌクレオチドは、互換可能である。当業者は、核酸は、モノマー「ヌクレオチド」へと加水分解され得るポリヌクレオチドであるという一般的な知識を有する。モノマーヌクレオチドは、ヌクレオシドへと加水分解され得る。本明細書において使用するポリヌクレオチドは、組換え手段、すなわち、通常のクローニング技術及びPCRなどを使用した組換えライブラリー又は細胞ゲノムからの核酸配列のクローニング、及び合成手段によるなどを含むがこれらに限定されない、当技術分野において利用可能な任意の手段によって得られる、全ての核酸配列を含むがこれらに限定されない。
【0052】
本明細書において使用する「ペプチド」、「ポリペプチド」及び「タンパク質」という用語は同義語として使用され、ペプチド結合によって共有結合したアミノ酸残基を含む化合物を指す。タンパク質又はペプチドは、少なくとも2つのアミノ酸を含有しなければならず、タンパク質の配列又はペプチドの配列を含み得る、アミノ酸の最大数に制限は置かれない。ポリペプチドは、互いにペプチド結合によって接続された2つ以上のアミノ酸を含んでいる、任意のペプチド又はタンパク質を含む。本明細書において使用する該用語は、当技術分野において例えばペプチド、オリゴペプチド及びオリゴマーと一般的に称される短い鎖、及び当技術分野においてタンパク質(多くの種類がある)と一般的に称される、より長い鎖の両方を指す。「ポリペプチド」としては、例えば、とりわけ、生物学的に活性な断片、実質的に相同なポリペプチド、オリゴペプチド、ホモ二量体、ヘテロ二量体、ポリペプチドの変異体、修飾されたポリペプチド、誘導体、類似体、融合タンパク質が挙げられる。ポリペプチドは、天然ペプチド、組換えペプチド、合成ペプチド、又はその組合せを含む。
【0053】
本明細書において使用する「コンジュゲートした」は、第二の分子へのある分子の共有結合による付着を指す。
【0054】
「変異体」は該用語が本明細書において使用される場合、それぞれ参照核酸配列又はペプチド配列とは配列が異なるが、参照分子の不可欠な生物学的特性を維持した、核酸配列又はペプチド配列である。核酸変異体の配列の変化は、参照核酸によってコードされるペプチドのアミノ酸配列を変化させなくても、又は、アミノ酸の置換、付加、欠失、融合、及び切断短縮をもたらしてもよい。ペプチド変異体の配列の変化は典型的には限定されているか又は保存的であり、よって参照ペプチド及び変異体の配列は、全体的に極めて類似し、多くの領域において同一である。変異体及び参照ペプチドは、アミノ酸配列において、1つ以上の置換、付加、欠失の任意の組合せによって異なり得る。核酸又はペプチドの変異体は、対立遺伝子変異体などの天然に存在するものであっても、又は天然に存在することが知られていない変異体であってもよい。核酸及びペプチドの非天然の変異体は突然変異誘発技術によって作製されても、又は直接合成によって作製されてもよい。
【0055】
本明細書において使用する「1つ以上のポリD/Eタンパク質のモジュレーター」は、モジュレーターの非存在下におけるポリD/Eタンパク質の発現、活性、又は生物学的機能と比較して、ポリD/Eタンパク質の発現、活性、又は生物学的機能を改変する化合物である。
【0056】
範囲:本開示全体を通して、本発明の様々な態様を、範囲の形式で提示することができる。範囲の形式の記載は、単に利便性と簡潔さのためであると理解されるべきであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない制限と捉えられるべきではない。したがって、範囲の記載は、全ての可能な下位範囲並びにその範囲内の個々の数値を具体的に開示したと考えられるべきである。例えば、1~6などの範囲の記載は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6など、並びに、その範囲内の個々の数字、例えば1、2、2.7、3、4、5、5.3、及び6などの具体的に開示された下位範囲を有すると考えられるべきである。このことは、範囲の幅に関係なく適用される。
【0057】
記載
1つの態様では、本発明は、ミスフォールドタンパク質又はタンパク質凝集物に関連した疾患又は障害を治療又は予防するための組成物及び方法を提供する。例えば、本発明は、ミスフォールドタンパク質の認識及び排除を増加させるための組成物及び方法を提供する。特定の実施態様では、本発明は、タンパク質のフォールディングを支える。特定の実施態様では、本発明はタンパク質凝集物又は封入物の脱凝集及びリフォールディングを提供する。したがって、本発明を使用して、細胞内又は細胞外の両方の、ミスフォールドタンパク質、タンパク質凝集物、又はタンパク質封入物を治療又は予防することができる。
【0058】
本発明は、多種多様な神経変性障害及び癌の病態において役割を果たす、ミスフォールドタンパク質のための分子シャペロン、脱凝集酵素、及びアンフォルダーゼとしての、ポリD/E酸性領域含有タンパク質の役割の発見に関する。
【0059】
組成物
モジュレーター
いくつかの実施態様では、本発明は、ミスフォールドタンパク質、タンパク質凝集物、又はその組合せを防ぐか又は除去するための組成物を含む。いくつかの実施態様では、該組成物は、ミスフォールドタンパク質、タンパク質凝集物、又はその組合せに関連した1つ以上の疾患又は障害を予防又は治療するために使用するためのものである。いくつかの実施態様では、該組成物は、分子シャペロン活性、脱凝集酵素活性、アンフォルダーゼ活性又はその組合せを促進する、遺伝子又は遺伝子産物の機能、レベル、又は活性を増加させるためのモジュレーターを含む。いくつかの実施態様では、該組成物は、タンパク質のミスフォールディング、タンパク質の凝集、又はその組合せを促進する、遺伝子又は遺伝子産物の機能、レベル又は活性を低減させるためのモジュレーターを含む。いくつかの実施態様では、該組成物は、1)分子シャペロンの活性、脱凝集酵素の活性、アンフォルダーゼの活性、又はその組合せを促進する遺伝子又は遺伝子産物の機能、レベル又は活性を増加させるためのモジュレーター;及び2)タンパク質のミスフォールディング、タンパク質の凝集、又はその組合せを促進する、遺伝子又は遺伝子産物の機能、レベル、又は活性を減少させるためのモジュレーターを含む。
【0060】
当業者によって、本明細書に提供された開示に基づいた、遺伝子又は遺伝子産物のモジュレーションは、転写、翻訳、スプライシング、分解、酵素活性、結合活性又はその組合せのモジュレーションを含むがこれらに限定されない、遺伝子又は遺伝子産物のレベル又は活性のモジュレーションを包含する。したがって、遺伝子又は遺伝子産物のレベル又は活性のモジュレーションは、核酸の転写、翻訳、分解、スプライシング、又はその組合せのモジュレーションを含むがこれらに限定されず;それはまた、同様にポリペプチド遺伝子産物の任意の活性のモジュレーションも含む。
【0061】
1つの実施態様では、前記モジュレーターは、遺伝子又は遺伝子産物の産生を増加させることによって、例えば遺伝子の転写又は遺伝子産物の翻訳をモジュレートすることによって、遺伝子又は遺伝子産物の発現又は活性を増加させる。1つの実施態様では、該モジュレータ―は、外来性遺伝子又は遺伝子産物を提供することによって、遺伝子又は遺伝子産物の発現又は活性を増加させる。例えば、特定の実施態様では、該モジュレーターは、1つ以上のポリD/Eタンパク質をコードしている単離された核酸を含む。特定の実施態様では、該モジュレーターは、ポリD/Eタンパク質を含んでいる単離されたペプチドを含む。1つの実施態様では、該組成物は、1つ以上のポリD/Eタンパク質を含んでいる、1つ以上の単離されたペプチドを含んでいる、1つ以上のモジュレーターを含む。1つの実施態様では、該モジュレーターは、遺伝子又は遺伝子産物の分解を阻害することによって、該遺伝子又は遺伝子産物の発現又は活性を増加させる。例えば、1つの実施態様では、該モジュレーターは、1つ以上のポリD/Eタンパク質のユビキチン化、プロテアソームによる分解、又はタンパク質分解を減少させる。1つの実施態様では、該モジュレーターは、遺伝子産物、例えば1つ以上のポリD/Eタンパク質の安定性又は半減期を増加させる。
【0062】
遺伝子又は遺伝子産物のモジュレーションは、本明細書において開示された方法、並びに、当技術分野において公知であるか又は将来開発される予定の方法を含む、多種多様な方法を使用して評価され得る。すなわち、型通りの当業者は、本明細書に提供された開示に基づいて、遺伝子又は遺伝子産物のレベル又は活性のモジュレーションは、遺伝子産物をコードしている核酸(例えばmRNA)のレベル、生物学的試料中に存在するポリペプチド遺伝子産物のレベル、生物学的試料中に存在するポリペプチド遺伝子産物の活性、又はその組合せを評価する方法を使用して容易に評価され得ることを理解しているだろう。
【0063】
遺伝子又は遺伝子産物のレベル又は活性をモジュレートする本発明のモジュレーター組成物及び方法は、化合物、タンパク質、ペプチド、ペプチド模倣体、抗体、リボザイム、低分子化合物、核酸、ベクター、アンチセンス核酸分子(例えばsiRNA、miRNAなど)、又はその組合せを含むが、これに限定されると捉えるべきではない。当業者は、本明細書に提供された開示に基づいて、モジュレーター組成物が、遺伝子又は遺伝子産物のレベル又は活性をモジュレートする化合物を包含することを容易に理解するだろう。さらに、モジュレーター組成物は、化学分野の専門家には周知であるような、化学的に修飾された化合物及び誘導体を包含する。
【0064】
1つの実施態様では、本発明のモジュレーター組成物は、遺伝子又は遺伝子産物の発現、活性、又は生物学的機能を増加させる、アゴニストである。例えば、特定の実施態様では、本発明のモジュレーターは、1つ以上のポリD/Eタンパク質のアゴニストである。
【0065】
さらに、当業者は、本開示及び本明細書に例示された方法を具備した場合、該モジュレーターは、本明細書に記載されているような及び/又は当技術分野において公知であるような、遺伝子又は遺伝子産物のモジュレーションの生理学的結果などの、薬理学の分野において周知の基準によって同定され得るような、将来発見されるようなモジュレーターを含むことを理解するだろう。それ故、本発明は、いずれにしても、本明細書に例示又は開示されているような、任意の特定のモジュレーター組成物に限定されず;むしろ、本発明は、当技術分野において公知であり将来発見されるような、有用であると型通りの当業者によって理解されるであろうようなモジュレーター組成物を包含する。
【0066】
モジュレーター組成物を同定及び産生するさらなる方法は、当業者には周知である。あるいは、モジュレーターは、化学合成されてもよい。さらに、型通りの当業者は、本明細書で提供された教義に基づいて、モジュレーター組成物が、組換え生物から得ることができることを認識しているだろう。モジュレーターを化学合成するための及び天然源からそれらを得るための組成物及び方法は、当技術分野において周知であり、当技術分野において記載されている。
【0067】
当業者は、モジュレーターが、低分子化合物、ポリペプチド、ペプチド、抗体、タンパク質をコードしている核酸構築物、アンチセンス核酸、アンチセンス核酸をコードしている核酸構築物、又はその組合せとして投与されてもよいことを理解しているだろう。タンパク質又はタンパク質をコードしている核酸構築物の細胞又は組織への投与のための、数多くのベクター及び他の組成物及び方法が周知である。それ故、本発明は、遺伝子又は遺伝子産物のモジュレーターである、ペプチド又はペプチドをコードしている核酸を含む。例えば、本発明は、1つ以上のポリD/Eタンパク質を含む、ペプチド又はペプチドをコードしている核酸を含む(Sambrook et al., 2001, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York; Ausubel et al., 1997, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York)。
【0068】
ペプチド
1つの実施態様では、本発明の組成物は、1つ以上のペプチドを含む。1つの実施態様では、該組成物のペプチドは、1つ以上のポリD/Eタンパク質のアミノ酸配列を含む。1つの実施態様では、該ポリD/Eタンパク質は、少なくとも50、少なくとも55、少なくとも60、少なくとも65、少なくとも70、又は少なくとも75アミノ酸の任意の所与の連続配列内に、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45のアスパルギン酸(D)又はグルタミン酸(E)残基を含む。1つの実施態様では、該ポリD/Eタンパク質は、少なくとも35のアスパラギン酸(D)又はグルタミン酸(E)残基を、少なくとも50アミノ酸の任意の所与の連続配列内に含む。
【0069】
1つの実施態様では、ポリD/Eタンパク質は、デスドメイン関連タンパク質6(DAXX、代替的にはETS1関連タンパク質1、EAP1)、酸性ロイシンリッチ核リン酸化タンパク質32ファミリーメンバーA(ANP32A又はAN32A、代替的には酸性核リン酸化タンパク質pp32、pp32、又はロイシンリッチ酸性核タンパク質、LANP)、タンパク質SET(SET、代替的にはHLA-DR関連タンパク質II、又はグランザイムA活性化デオキシリボヌクレアーゼ阻害剤、IGAAD);E3ユビキチンタンパク質リガーゼHUWE1(HUWE1、代替的にはARF結合タンパク質1、ARF-BP1);転写終結因子4、ミトコンドリア(MTEF4);ミエリン転写因子1(MYT1又はMyTI);ナトリウム/カリウム/カルシウム交換体1(NCKX1、代替的には桿状体Na-C+K交換体);ミエリン転写因子1様タンパク質(MYT1L又はMyT1-L);グルタミン酸リッチタンパク質6(ERIP6、代替的にはタンパク質FAM194A);タンパク質FAM9A(FAM9A);真核細胞翻訳開始因子5B(IF2P又はeIF-5B、代替的には翻訳開始因子IF-2);アルマジロ様らせんドメイン含有タンパク質4(ARMD4);プロテインホスファターゼ1G(PPM1G、代替的にはプロテインホスファターゼマグネシウム依存性1γ);Ran GTPアーゼ活性化タンパク質1(RAGP1又はRanGAP1);ヌクレオリン(NUCL又はNCL、代替的にはタンパク質C23);ナルディライジン(NRDC、代替的にはN-アルギニン二塩基性転換酵素);ジンクフィンガーホメオボックスタンパク質3(ZFHX3又はZFH-3、代替的にはATモチーフ結合因子1);ジンクフィンガー及びBTBドメイン含有タンパク質7C(ZBT7C、代替的にはME180細胞タンパク質1へのパピローマウイルスDNAの組み込みによって罹患する);ジンクフィンガーEボックス結合ホメオボックス1(ZEB1、代替的にはNIL-2-Aジンクフィンガータンパク質又は転写因子8、TCF-8);YTHドメイン含有タンパク質1(YTDC1、代替的にはスプライシング因子YT521、YT521B);ジンクフィンガー及びBTBドメイン含有タンパク質47(ZBT47);タウ-チューブリンキナーゼ1(TTBK1、代替的には脳由来タウキナーゼ);ヒストンアセチルトランスフェラーゼKAT6B(KAT6B、代替的にはヒストンアセチルトランスフェラーゼMOZ2又はMOZ、YBF2/SAS3、SAS2及びTIP60タンパク質4(MYST-4);プロリン-グルタミン酸及びロイシンリッチタンパク質1(PELP1、代替的には転写因子HMX3);パラサイモシン(PTMS);三者モチーフ含有タンパク質26(TRI26、代替的には酸性フィンガータンパク質、AFP、RINGフィンガータンパク質95、又はジンクフィンガータンパク質173);リアノジン1(RYR1又はRYR-1);タンパク質SETSIP(SETLP、代替的にはSET偽遺伝子タンパク質18、SETSIP又はSETP18);クラスピン(CLSPN);カルレティキュリン(CALR、代替的にはカルレギュリン又は小胞体常在タンパク質60、ERp60、又はCRP55、HACBP、又はgrp60);ヌクレオソームリモデリング因子サブユニットBPTF(BPTF、代替的にはブロモドメイン及びPHDフィンガー含有転写因子又はウシアルツハイマー抗原);ジンクフィンガードメインタンパク質2Bに隣接するブロモドメイン(BAZ2B、代替的にはhWALp4);ATPアーゼファミリーAAAドメイン含有タンパク質2(ATAD2、代替的にはAAA核共調節因子癌関連タンパク質、ANCCA);繊毛及び鞭毛関連タンパク質65(CFA65、代替的にはコイルドコイルドメイン含有タンパク質108);主要セントロメア自己抗原B(CENPB又はCENP-B、代替的にはセントロメアタンパク質B);ジンクフィンガータンパク質castorホモログ1(CASZ1、代替的にはCastor関連タンパク質又はジンクフィンガータンパク質693);コイルドコイルドメイン含有グルタミン酸リッチタンパク質1(CCER1);DDB1及びCUL4関連因子8様タンパク質2(DC8L2、代替的にはWD反復配列含有タンパク質42C);DDB1及びCUL4関連因子1(DCAF1、代替的にはHIV-1 Vpr結合タンパク質、VprBP);酸性ロイシンリッチ核リン酸化タンパク質32ファミリーメンバーB(AN32B、代替的には推定HLA-DR関連タンパク質I-2、PHAPI2)、ATリッチ相互作用ドメイン含有タンパク質4B(ARI4B、代替的にはARIDドメイン含有4B);酸性ロイシンリッチ核リン酸化タンパク質32ファミリーメンバーE(AN32E、代替的にはLANP様タンパク質(LANP-L));核小体転写因子1(代替的には、上流結合因子1、UBF1);ヒストン-リジンN-メチルトランスフェラーゼSETD1B(SETD1B又はSET1B、代替的にはリジンN-メチルトランスフェラーゼ2G、以前にはA0A0A0MQV9);及びタンパク質virilizerホモログ(VIR又はVIRMA)からなる群より選択される1つ以上を含む。1つの実施態様では、該ポリD/Eタンパク質は、ヒトポリD/Eタンパク質を含む。
【0070】
1つの実施態様では、ポリD/Eタンパク質は、配列番号1~45からなる群より選択される1つ以上のアミノ酸配列を含んでいるタンパク質を含み、それらの対応するUniProt識別子が以下の表1に示されている。
【0071】
【表1】

【0072】
1つの実施態様では、ポリD/Eタンパク質は、以下に示されているような表2から選択された1つ以上のタンパク質を含む。UniProt識別子及びそれらの対応するタンパク質の名称は、以下の表2に示されている。さらに、該タンパク質をポリD/Eタンパク質として同定する様々な厳密さのパラメーターが示されている。例えば、3列目の「Y」は、50の連続アミノ酸残基配列内における、少なくとも30個のD残基又はE残基を示す。
【0073】
【表2】




【0074】
本発明はまた、本明細書に開示されたポリD/Eタンパク質に対してかなりの相同性を有している、任意の形態のポリD/Eタンパク質を含むと捉えられるべきであり、ここでの該形態は、分子シャペロン、脱凝集酵素、アンフォルダーゼ、又はその組合せとしてのその活性を維持している。いくつかの実施態様では、ポリD/Eタンパク質は、上記の表1に概略が示されているような配列に対して、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%相同である配列を含む。
【0075】
本発明はまた、本明細書に開示されたポリD/Eタンパク質に対してかなりの同一性を有している、任意の形態のポリD/Eタンパク質を含むと捉えられるべきであり、ここでの該形態は、分子シャペロン、脱凝集酵素、アンフォルダーゼ、又はその組合せとしてのその活性を維持している。いくつかの実施態様では、ポリD/Eタンパク質は、上記の表1に概略が示されているような配列に対して、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一である配列を含む。
【0076】
本発明はまた、本明細書に開示されたポリD/Eタンパク質の断片を含んでいる、任意の形態のポリD/Eタンパク質を含むと捉えられるべきであり、ここでの該断片は、分子シャペロン、脱凝集酵素、アンフォルダーゼ、又はその組合せとしてのその活性を維持している。いくつかの実施態様では、ポリD/Eタンパク質は、上記の表1に概略が示されているような配列の長さの、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列を含む。
【0077】
1つの実施態様では、前記組成物は、本明細書に記載のペプチドの組合せを含む。1つの実施態様では、該組成物は、本明細書に記載のような少なくとも2つのポリD/Eタンパク質を含む。1つの実施態様では、該組成物は、本明細書に記載のような少なくとも2つのポリD/Eタンパク質を含んでいる融合ペプチドを含む。1つの実施態様では、該組成物は、1)1つ以上のポリD/Eタンパク質、及び2)1つ以上の三者モチーフ(TRIM)タンパク質を含む。1つの実施態様では、該組成物は、1)少なくとも1つのポリD/Eタンパク質、及び2)少なくとも1つのTRIMタンパク質を含んでいる、融合ペプチドを含む。
【0078】
いくつかの実施態様では、TRIMタンパク質は、TRIM3、TRIM4、TRIM5、TRIM6、TRIM7、TRIM9、TRIM11、TRIM13、TRIM14、TRIM15、TRIM16、TRIM17、TRIM19(「PML」とも称される)、TRIM20、TRIM21、TRIM24、TRIM25、TRIM27、TRIM28、TRIM29、TRIM32、TRIM34、TRIM39、TRIM43、TRIM44、TRIM45、TRIM46、TRIM49、TRIM50、TRIM52、TRIM58、TRIM59、TRIM65、TRIM67、TRIM69、TRIM70、TRIM74、及びTRIM75からなる群より選択される1つ以上;及びTRIM30を含む。1つの実施態様では、前記の1つ以上のTRIMタンパク質はヒトTRIMタンパク質である。1つの実施態様では、前記の1つ以上のTRIMタンパク質は、マウスTRIMタンパク質である。TRIMタンパク質及びタンパク質のミスフォールディング及び凝集を予防又は治療するためのその使用は、国際(PCT)公開公報第:WO2016/196328A1号に開示され、これはその全体が本明細書に参照により組み入れられる。
【0079】
特定の実施態様では、前記ペプチドは、該ペプチドを所望の場所に標的化する、標的化ドメインを含む。例えば、特定の実施態様では、標的化ドメインは、標的化された細胞、タンパク質、又はタンパク質凝集物に結合することにより、治療用ペプチドを所望の場所に送達する。例えば、1つの実施態様では、標的化ドメインは、アミロイド-β、α-シヌクレイン、タウ、プリオン、SOD1、TDP-43、FUS、p53、p53突然変異体のタンパク質及びタンパク質凝集物、並びにハンチンチン及びアタキシンなどのポリグルタミン反復配列を伴うタンパク質を含むがこれらに限定されない、疾患又は障害に関連したタンパク質又はタンパク質凝集物に結合するように指向される。
【0080】
特定の実施態様では、標的化ドメインは、標的化された細胞、タンパク質、又はタンパク質凝集物への結合能を有する、ペプチド、核酸、低分子などを含む。例えば、1つの実施態様では、標的化ドメインは、標的化された細胞、タンパク質、又はタンパク質凝集物に結合する抗体又は抗体断片を含む。
【0081】
1つの実施態様では、前記ペプチドは、分泌シグナルペプチドを含む。例えば、1つの実施態様では、該ペプチドは、本明細書に記載のような、ポリD/Eタンパク質に(直接又はリンカードメインを介してのいずれかで)融合した分泌シグナルペプチドを含んでいる、融合ペプチドである。例えば、1つの実施態様では、該ペプチドは、DAXX、ANP32A、SET、HUWE1、MTEF4、MYT1、NCKX1、MYT1L、ERIP6、FAM9A、IF2P、ARMD4、PPM1G、RAGP1、NUCL、NRDC、ZFHX3、ZBT7C、ZEB1、YTDC1、ZBT47、TTBK1、KAT6B、PELP1、PTMS、TRI26、RYR1、SETLP、CLSPN、CALR、BPTF、BAZ2B、ATAD2、CFA65、CENPB、CASZ1、CCER1、DC8L2、DCAF1、AN32B、ARI4B、AN32E、UBF1、SETD1B及びVIRから選択された、ポリD/Eタンパク質に融合した分泌シグナルペプチドを含んでいる、融合ペプチドを含む。特定の実施態様では、分泌シグナルペプチドは、小胞体膜を横断して分泌経路へと移行するように融合ペプチドを仕向ける。1つの実施態様では、該融合ペプチドは、分泌シグナルペプチドと残りのペプチドとの間にタンパク質分解部位を含む。
【0082】
本発明のペプチドは、化学的方法を使用して作製されてもよい。例えば、ペプチドは、固相技術(Roberge J Y et al (1995) Science 269: 202-204)によって合成され、樹脂から開裂され、分取高速液体クロマトグラフィーによって精製されてもよい。自動合成は例えば、製造業者によって提供された説明書に従って、ABI431Aペプチド合成器(パーキンエルマー社)を使用して成し遂げられてもよい。
【0083】
前記ペプチドは、代替的には、組換え手段によって、又はより長いポリペプチドからの切断によって作製されてもよい。ペプチドの組成は、アミノ酸分析又はシークエンスによって確認され得る。
【0084】
本発明に記載のペプチドの変異体は、(i)アミノ酸残基の1つ以上が、保存された又は保存されていないアミノ酸残基(好ましくは保存されたアミノ酸残基)で置換されているものであり得、このような置換されたアミノ酸残基は、遺伝子コードによってコードされているものであってもそうでなくてもよい、(ii)1つ以上の修飾されたアミノ酸残基、例えば置換基の付着によって修飾された残基が存在するもの、(iii)ペプチドが、本発明のペプチドの選択的スプライシング変異体であるもの、(iv)ペプチド断片、及び/又は(v)該ペプチドが、別のペプチド、例えばリーダー配列若しくは分泌配列、又は精製のために使用される配列(例えばヒスチジンタグ)又は検出のために使用される配列(例えばSv5エピトープタグ)などに融合しているものであっても、そうでなくてもよい。該断片は、元来の配列のタンパク質分解的切断(マルチサイトのタンパク質分解を含む)を介して生成されたペプチドを含む。変異体は翻訳後修飾されていても、又は化学的に修飾されてもよい。このような変異体は、本明細書の教義から当業者の範囲内であると考えられる。
【0085】
本発明のペプチドは、翻訳後に修飾されてもよい。例えば、本発明の範囲内に該当する翻訳後修飾としては、シグナルペプチド切断、グリコシル化、アセチル化、イソプレニル化、タンパク質分解、ミリストイル化、タンパク質のフォールディング、及びタンパク質分解プロセシングなどが挙げられる。いくつかの修飾又はプロセシング事象は、追加の生物学的機構の導入を必要とする。例えば、シグナルペプチド切断及びコアのグリコシル化などのプロセシング事象は、イヌのミクロソーム膜又はツメガエル卵抽出物(米国特許第6,103,489号)を標準的な翻訳反応に加えることによって調べられる。
【0086】
本発明のペプチドは、翻訳後修飾によって、又は翻訳中に非天然アミノ酸を導入することによって形成された、非天然アミノ酸を含み得る。タンパク質翻訳中に非天然アミノ酸を導入するために多種多様なアプローチが利用可能である。例えば、特殊な転移RNA(tRNA)、例えば抑制特性を有するtRNAであるサプレッサーtRNAが、部位特異的非天然アミノ酸置換(SNAAR)のプロセスに使用されている。SNAARでは、タンパク質合成中に非天然アミノ酸を特有の部位に標的化させるように作用する、特有のコドンが、mRNA及びサプレッサーtRNA上に必要とされる(WO90/05785号に記載)。しかしながら、サプレッサーtRNAは、タンパク質翻訳系に存在するアミノアシルtRNA合成酵素によって認識可能であってはならない。特定の場合には、tRNA分子が、天然アミノ酸を特異的に修飾し、アミノアシル化tRNAの機能的活性を有意に変化させない化学反応を使用してアミノアシル化された後に、非天然アミノ酸が形成され得る。これらの反応は、アミノアシル化後修飾と称される。例えば、その同族tRNA(tRNALYS)に連結されたリジンのε-アミノ基は、アミン特異的光親和性標識で修飾され得る。
【0087】
本発明のペプチドを、タンパク質などの他の分子とコンジュゲートさせて、融合タンパク質を調製してもよい。これは、例えば、結果として得られた融合タンパク質が本発明のペプチドの機能性を維持するならば、N末端又はC末端での融合タンパク質の合成によって達成されてもよい。
【0088】
本発明のペプチドの環式誘導体もまた、本発明の一部である。環化は、ペプチドが、他の分子との会合のためにより好ましい立体構造を想定することを可能とし得る。環化は、当技術分野において公知である技術を使用して達成され得る。例えば、ジスルフィド結合は、遊離スルフヒドリル基を有している2つの適切な間隔を置いた成分の間に形成され得るか、又は、一方の成分のアミノ基と別の成分のカルボキシル基との間にアミド結合が形成され得る。環化はまた、Ulysse, L., et al., J. Am. Chem. Soc. 1995, 117, 8466-8467によって記載のようなアゾベンゼン含有アミノ酸を使用して成し遂げられてもよい。結合を形成する成分は、アミノ酸の側鎖、非アミノ酸成分、又は2つの組合せであり得る。本発明の1つの実施態様では、環式ペプチドは、右の位置にβ-ターンを含み得る。アミノ酸Pro-Glyを右の位置に付加することによって、β-ターンが本発明のペプチドに導入され得る。
【0089】
上記のようなペプチド結合の連結を含有している環式ペプチドよりもより可動性がある、環式ペプチドを生成することが望ましくあり得る。より可動性のあるペプチドは、ペプチドの右の位置と左の位置にシステインを導入し、2つのシステイン間にジスルフィド橋を形成することによって調製され得る。2つのシステインは、β-シート及びターンを変形しないように並べられる。ペプチドは、ジスルフィド結合の長さと、β-シート部分内の水素結合数がより少ないことの結果として、より可動性である。環式ペプチドの相対的な可動性は、分子動態シミュレーションによって決定され得る。
【0090】
本発明のペプチドは、塩酸、硫酸、臭化水素酸、リン酸などの無機酸、又はギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、サリチル酸、ベンゼンスルホン酸、及びトルエンスルホン酸などの有機酸との反応によって、薬学的塩へと変換されてもよい。
【0091】
本発明のペプチドはまた、修飾を有していてもよい。修飾(通常、一次配列を変化させない)としては、ポリペプチドのインビボ又はインビトロでの化学誘導体化、例えばアセチル化又はカルボキシル化が挙げられる。グリコシル化、例えば、その合成工程及びプロセシング工程中又はさらなるプロセシング工程中のポリペプチドのグリコシル化パターンを修飾することによって;例えば、グリコシル化に影響を及ぼす酵素、例えば哺乳動物グリコシル化酵素又は脱グリコシル化酵素にポリペプチドを曝すことによって作製されたものも含まれる。リン酸化アミノ酸残基、例えばホスホチロシン、ホルホセリン、又はホスホトレオニンなどを有する配列も包含される。
【0092】
タンパク質分解に対するそれらの抵抗性を向上させるために、又は溶解特性を最適化するために、又は治療剤としてそれらをより適切なものとするために、通常の分子生物学的技術を使用して修飾されたペプチドも含まれる。このような変異体は、天然に存在するL-アミノ酸以外の残基、例えばD-アミノ酸又は非天然合成アミノ酸を含有している変異体を含む。本発明のペプチドはさらに、それらの治療適用に有用である、非アミノ酸以外の部分にコンジュゲートされていてもよい。特に、該ペプチドの安定性、生物学的半減期、水溶性、及び/又は免疫原性特徴を改善する部分が有用である。このような部分の非限定的な例はポリエチレングリコール(PEG)である。
【0093】
水溶性ポリマーへの生物学的に活性な化合物の共有結合的付着は、これらの化合物についての体内分布、薬物動態、及びしばしば毒性の改変及び制御のための1つの方法である(Duncan et al., 1984, Adv. Polym. Sci. 57:53-101)。これらの効果を達成するために多くの水溶性ポリマー、例えばポリ(シアル酸)、デキストラン、ポリ(N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド)(PHPMA)、ポリ(N-ビニルピロリドン)(PVP)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリ(エチレングリコール-プロピレングリコール共重合体)、ポリ(N-アクリロイルモルホリン(PAcM)、及びポリ(エチレングリコール)(PEG)が使用されている(Powell, 1980, Polyethylene glycol. In R. L. Davidson (Ed.) Handbook of Water Soluble Gums and Resins. McGraw-Hill, New York, chapter 18)。PEGは、理想的な特性のセット:非常に低い毒性(Pang, 1993, J. Am. Coll. Toxicol. 12: 429-456)、水溶液中での優れた溶解性(Powell、同上)、低い免疫原性、及び抗原性(Dreborg et al., 1990, Crit. Rev. Ther. Drug Carrier Syst. 6: 315-365)を有する。タンパク質上に1本の鎖又は複数の鎖のポリエチレングリコールを含有している、PEGにコンジュゲートした又は「PEG化」タンパク質治療薬は、科学文献に記載されている(Clark et al., 1996, J. Biol. Chem. 271: 21969-21977; Hershfield, 1997, Biochemistry and immunology of poly(ethylene glycol)-modified adenosine deaminase (PEG-ADA). In J. M. Harris and S. Zalipsky (Eds) Poly(ethylene glycol): Chemistry and Biological Applications. American Chemical Society, Washington, D.C., p 145-154; Olson et al., 1997, Preparation and characterization of poly(ethylene glycol)ylated human growth hormone antagonist. In J. M. Harris and S. Zalipsky (Eds) Poly(ethylene glycol): Chemistry and Biological Applications. American Chemical Society, Washington, D.C., p 170-181)。
【0094】
本発明のペプチドは、従来の技術によって合成されてもよい。例えば本発明のペプチドは、固相ペプチド合成を使用して化学合成によって合成されてもよい。これらの方法は、固相合成法又は液相合成法のいずれかを使用する(例えば、J. M. Stewart, and J. D. Young, Solid Phase Peptide Synthesis, 2ndEd., Pierce Chemical Co., Rockford Ill. (1984) 及びG. Barany and R. B. Merrifield, The Peptides: Analysis Synthesis, Biology editors E. Gross and J. Meienhofer Vol. 2 Academic Press, New York, 1980, pp. 3-254 for solid phase synthesis techniques;及びM Bodansky, Principles of Peptide Synthesis, Springer-Verlag, Berlin 1984、及びE. Gross and J. Meienhofer, Eds., The Peptides: Analysis, Synthesis, Biology, suprs, Vol 1, for classical solution synthesis参照)。
【0095】
前記ペプチドは、メリーフィールド型固相ペプチド合成によって化学合成されてもよい。この方法は、通常、約60~70残基長までのペプチドを生成するために実施され得、場合によっては、約100アミノ酸長までのペプチドを作製するために使用され得る。より長いペプチドも、断片の縮合又は天然の化学的ライゲーションを介して合成で作製されてもよい(Dawson et al., 2000, Ann. Rev. Biochem. 69:923-960)。合成ペプチド経路の利用の利点は、大量のペプチド、さらには天然には稀にしか存在しないペプチドさえも、比較的高い純度で、すなわち、研究、診断又は治療目的に十分な純度で生成できることである。
【0096】
固相ペプチド合成は、Stewart et al. in Solid Phase Peptide Synthesis, 2nd Edition, 1984, Pierce Chemical Company, Rockford, Ill.;及びBodanszky and Bodanszky in The Practice of Peptide Synthesis, 1984, Springer-Verlag, New Yorkによって記載されている。初めに、適切に保護されたアミノ酸残基を、そのカルボキシル基を通して、誘導体化された不溶性のポリマー支持体、例えば架橋されたポリスチレン又はポリアミド樹脂へと付着させる。「適切に保護された」は、アミノ酸のα-アミノ基上、及び任意の側鎖官能基上の両方における保護基の存在を指す。側鎖保護基は、合成の全期間を通して使用される溶媒、試薬及び反応条件に対して一般的に安定であり、最終ペプチド生成物に影響を及ぼさないであろう条件下で除去可能である。オリゴペプチドの段階合成は、最初のアミノ酸からのN-保護基の除去、及び所望のペプチド配列への次のアミノ酸のカルボキシル末端のそこへのカップリングによって実施される。このアミノ酸はまた、適切に保護されている。進入してくるアミノ酸のカルボキシルは、支持体に結合したアミノ酸のN末端と反応させることによる、反応基への形成によって、例えば非対称酸無水物であるカルボジイミド、又は「活性エステル」基、例えばヒドロキシベンゾトリアゾール若しくはペンタフルオロフェニルエステルへの形成によって活性化され得る。
【0097】
固相ペプチド合成法の例としては、α-アミノ保護基としてtert-ブチルオキシカルボニルを利用するBOC法、及び、アミノ酸残基のα-アミノを保護するために9-フルオレニルメチルオキシカルボニルを利用するFMOC法が挙げられ、どちらの方法も、当業者には周知である。
【0098】
N末端遮断基及び/又はC末端遮断基の取り込みも、固相ペプチド合成法には慣例であるプロトコールを使用して達成され得る。C末端遮断基の取り込みのために、例えば、所望のペプチドの合成は典型的には、樹脂からの開裂により、所望のC末端遮断基を有しているペプチドが得られるように化学的に修飾されている支持用樹脂を固相として使用して実施される。C末端が一次アミノ遮断基を有しているペプチドを提供するために、例えば、合成はp-メチルベンズヒドリルアミン(MBHA)樹脂を使用して実施され、これによりペプチド合成が完了すると、フッ化水素酸を用いた処理により、所望のC末端のアミド化されたペプチドが遊離される。同様に、N-メチルアミン遮断基のC末端への取り込みは、フッ化水素酸での処理によりN-メチルアミド化C末端を有しているペプチドを遊離する、N-メチルアミノエチル誘導体化ジビニルベンゼン樹脂を使用して達成される。エステル化によるC末端の遮断も、従来の手順を使用して達成され得る。これは、樹脂からの側鎖ペプチドの遊離を許容し、所望のアルコールとの後続の反応が起こり、エステル官能基の形成が可能となる、樹脂/遮断基の組合せの使用を伴う。メトキシアルコキシベンジルアルコール又は同等なリンカーを用いて誘導体化されたジビニルベンゼン樹脂と組み合わせたFMOC保護基を、この目的のために使用することができ、支持体からの開裂は、ジクロロメタン中のトリフルオロ酢酸によって奏功される。例えばDCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド)を用いた適切に活性化されたカルボキシル官能基のエステル化は、その後、所望のアルコールの添加によって進行し得、続いて、エステル化ペプチド産物の脱保護及び単離が行なわれ得る。
【0099】
本発明のペプチドは、ペプチド合成の標準的な化学的又は生物学的手段によって調製され得る。生物学的方法としては、宿主細胞内又はインビトロでの翻訳系における、ペプチドをコードしている核酸の発現が挙げられるがこれらに限定されない。
【0100】
本発明には、本発明のペプチドをコードしている核酸配列が含まれる。1つの実施態様では、本発明は、1つ以上のポリD/Eタンパク質のアミノ酸配列をコードしている核酸配列を含む。したがって、本発明のペプチドをコードしている核酸配列のサブクローンは、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Springs Laboratory, Cold Springs Harbor, New York (2012)、及びAusubel et al. (ed.), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons (New York, NY) (1999及び以前の版)によって記載されているような、遺伝子断片をサブクローニングするための、従来の分子遺伝子操作を使用して生成され得、その各々はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。その後、サブクローンをインビトロ又はインビボで細菌細胞内で発現させて、より小型のタンパク質又はポリペプチドを生成し、これを特定の活性について試験することができる。
【0101】
特定の製剤と組み合わせた、このようなペプチドは、有効な細胞内薬剤であり得る。しかしながら、このようなペプチドの有効性を高めるために、本発明の1つ以上のペプチドは、「トランスサイトーシス」、例えば細胞によるペプチドの取り込みを促進する第二のペプチドと一緒に、融合ペプチドとして提供されてもよい。例えば、1つの実施態様では、該ペプチドは、該ペプチドが細胞に進入することを可能とするための、細胞膜透過性ドメイン、例えば細胞膜透過性ペプチド(CPP)を含んでいてもよい。1つの実施態様では、CPPは、HIV Tatに由来する。
【0102】
説明するために、本発明の1つ以上のペプチドは、HIVタンパク質TatのN末端ドメインの全部又は断片、例えばトランスサイトーシスを促進することができるTatの残基1~72又はそのより小さな断片との融合ポリペプチドの一部として提供されてもよい。1つの実施態様では、該ペプチドは、HIV Tatのタンパク質形質導入ドメインを含む。他の実施態様では、1つ以上のペプチドは、アンテナペディアIIIタンパク質の全部又は一部との融合ポリペプチドとして提供されてもよい。該ペプチドの取り込みを媒介する他の細胞膜透過性ドメインは、当技術分野において公知であり、本発明の融合ペプチドに使用するために同等に適用可能である。
【0103】
核酸
1つの実施態様では、本発明の組成物は、1つ以上の単離された核酸を含む。1つの実施態様では、単離された核酸は、1つ以上のポリD/Eタンパク質をコードしている。1つの実施態様では、単離された核酸は、少なくとも50、少なくとも55、少なくとも60、少なくとも65、少なくとも70、又は少なくとも75アミノ酸の任意の所与の連続配列内に少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、又は少なくとも45のアスパラギン酸(D)残基又はグルタミン酸(G)残基を含んでいる、1つ以上のポリD/Eタンパク質をコードしている。1つの実施態様では、単離された核酸は、少なくとも50アミノ酸の任意の所与の連続配列内に、少なくとも35のアスパラギン酸(D)残基又はグルタミン酸(E)残基を含んでいる、1つ以上のポリD/Eタンパク質をコードしている。
【0104】
1つの実施態様では、単離された核酸は、DAXX、ANP32A、SET、HUWE1、MTEF4、MYT1、NCKX1、MYT1L、ERIP6、FAM9A、IF2P、ARMD4、PPM1G、RAGP1、NUCL、NRDC、ZFHX3、ZBT7C、ZEB1、YTDC1、ZBT47、TTBK1、KAT6B、PELP1、PTMS、TRI26、RYR1、SETLP、CLSPN、CALR、BPTF、BAZ2B、ATAD2、CFA65、CENPB、CASZ1、CCER1、DC8L2、DCAF1、AN32B、ARI4B、AN32E、UBF1、SETD1B及びVIRからなる群より選択される1つ以上のポリD/Eタンパク質をコードしている。
【0105】
1つの実施態様では、単離された核酸は、配列番号1~45からなる群より選択される1つ以上の配列を含んでいる、1つ以上のポリD/Eタンパク質をコードし、それらの対応するUniProt識別子は、上記の表1に示されている。1つの実施態様では、単離された核酸は、上記に示されているような表2から選択された1つ以上のタンパク質を含んでいる、1つ以上のポリD/Eタンパク質をコードしている。
【0106】
特定の実施態様では、1つ以上のポリD/Eタンパク質に対応するペプチドは、公知の技術を使用して、インビボ又はインビトロの細胞内で1つ以上の核酸から発現される。
【0107】
単離された核酸のヌクレオチド配列は、RNAへと転写されるDNA配列、及びポリペプチドへと翻訳されるRNA配列の両方を含む。他の実施態様によると、ヌクレオチド配列は、本発明のペプチドのアミノ酸配列から推測される。当技術分野において公知であるように、翻訳されたペプチドの生物学的活性を維持しながら、いくつかの代替的なヌクレオチド配列が、重複コドンに因り可能である。
【0108】
本発明はまた、本明細書に開示されているようなヌクレオチド配列に対してかなりの相同性を有している、任意の核酸も包含し、ここでの単離された核酸は、分子シャペロン、脱凝集酵素、アンフォルダーゼ、又はその組合せとしてその活性を維持する、ポリD/Eタンパク質をコードしている。いくつかの実施態様では、単離された核酸は、上記の表1に概略が示されているようなヌクレオチド配列に対して、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%相同であるヌクレオチド配列を含む。
【0109】
本発明はまた、本明細書に開示されているようなヌクレオチド配列に対してかなりの同一性を有している、任意の核酸を含むと捉えられるべきであり、ここでの前記の単離された核酸は、分子シャペロン、脱凝集酵素、アンフォルダーゼ、又はその組合せとしてその活性を維持する、ポリD/Eタンパク質をコードしている。いくつかの実施態様では、単離された核酸は、上記の表1に概略が示されているようなヌクレオチド配列に対して、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一であるヌクレオチド配列を含む。
【0110】
本発明はまた、本明細書に開示されているポリD/Eタンパク質の断片をコードしている核酸の任意の断片を含むと捉えられるべきであり、ここでの前記の単離された核酸は、分子シャペロン、脱凝集酵素、アンフォルダーゼ、又はその組合せとしてその活性を維持する、断片をコードしている。いくつかの実施態様では、単離された核酸は、上記の表1に概略が示されているようなヌクレオチド配列の長さの、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%のヌクレオチド配列を含む。
【0111】
1つの実施態様では、前記核酸は、融合ペプチド、例えば、本明細書に記載のようなポリD/Eタンパク質に融合した標的化ドメイン及び/又は分泌シグナルペプチドを含んでいる融合ペプチドをコードしている。1つの実施態様では、該核酸は、分泌シグナルペプチドを含んでいるペプチドをコードしている。例えば、1つの実施態様では、該核酸は、本明細書に記載のようなポリD/Eタンパク質に(直接又はリンカードメインを介してのいずれかで)融合した分泌シグナルペプチドを含んでいる融合ペプチドをコードしている。例えば、1つの実施態様では、該核酸は、DAXX、ANP32A、SET、HUWE1、MTEF4、MYT1、NCKX1、MYT1L、ERIP6、FAM9A、IF2P、ARMD4、PPM1G、RAGP1、NUCL、NRDC、ZFHX3、ZBT7C、ZEB1、YTDC1、ZBT47、TTBK1、KAT6B、PELP1、PTMS、TRI26、RYR1、SETLP、CLSPN、CALR、BPTF、BAZ2B、ATAD2、CFA65、CENPB、CASZ1、CCER1、DC8L2、DCAF1、AN32B、ARI4B、AN32E、UBF1、SETD1B及びVIRから選択された、ポリD/Eタンパク質に融合した分泌シグナルペプチドを含んでいる融合ペプチドをコードしている。特定の実施態様では、分泌シグナルペプチドは、融合ペプチドを、小胞体膜を横断して分泌経路へと移行するように仕向ける。1つの実施態様では、該融合ペプチドは、分泌シグナルペプチドと残りのペプチドとの間にタンパク質分解部位を含む。
【0112】
1つの実施態様では、前記組成物は、本明細書に記載の核酸分子の組合せを含む。例えば、特定の実施態様では、該組成物は、本明細書に開示されているような少なくとも2つのポリD/Eタンパク質をコードしている、単離された核酸分子を含む。1つの実施態様では、該組成物は、少なくとも2つのポリD/Eタンパク質をコードしている、少なくとも2つの単離された核酸分子を含む。1つの実施態様では、該組成物は、1)1つ以上のポリD/Eタンパク質をコードしている1つ以上の核酸、及び2)1つ以上のTRIMタンパク質をコードしている1つ以上の核酸を含む。1つの実施態様では、該組成物は、1)少なくとも1つのポリD/Eタンパク質、及び2)少なくとも1つのTRIMタンパク質をコードしている核酸を含む。1つの実施態様では、該組成物は、1)少なくとも1つのポリD/Eタンパク質、及び2)少なくとも1つのTRIMタンパク質を含んでいる融合ペプチドをコードしている核酸を含む。
【0113】
いくつかの実施態様では、核酸によってコードされるTRIMタンパク質は、TRIM3、TRIM4、TRIM5、TRIM6、TRIM7、TRIM9、TRIM11、TRIM13、TRIM14、TRIM15、TRIM16、TRIM17、TRIM19(「PML」とも称される)、TRIM20、TRIM21、TRIM24、TRIM25、TRIM27、TRIM28、TRIM29、TRIM32、TRIM34、TRIM39、TRIM43、TRIM44、TRIM45、TRIM46、TRIM49、TRIM50、TRIM52、TRIM58、TRIM59、TRIM65、TRIM67、TRIM69、TRIM70、TRIM74及びTRIM75からなる群より選択される1つ以上;及びTRIM30を含む。1つの実施態様では、前記の1つ以上のTRIMタンパク質は、ヒトTRIMタンパク質である。1つの実施態様では、前記の1つ以上のTRIMタンパク質は、マウスTRIMタンパク質である。TRIMタンパク質をコードしている核酸、並びにタンパク質のミスフォールディング及び凝集を予防又は治療するためのそれらの使用は、国際(PCT)公開番号第:WO2016/196328A1号に開示され、これはその全体が本明細書に参照により組み入れられる。
【0114】
したがって、本発明は、例えばSambrook et al.(2012, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York)及びAusubel et al.(1997, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York)に記載のような、外来性DNAを細胞内に導入し、細胞内で外来性DNAを同時に発現するための、発現ベクター及び方法を包含する。
【0115】
1つ以上のポリD/Eタンパク質をコードしている所望の核酸を、多種類のベクターにクローニングすることができる。しかしながら、本発明は、任意の特定のベクターに限定されると捉えられるべきではない。代わりに、本発明は、当技術分野において容易に入手可能である及び/又は周知である、非常に多数のベクターを包含すると捉えられるべきである。例えば、所望の本発明のポリヌクレオチドを、プラスミド、ファージミド、ファージ誘導体、動物ウイルス及びコスミドを含むがこれらに限定されない、ベクターにクローニングすることができる。特に関心の高いベクターとしては、発現ベクター、複製ベクター、プローブ生成ベクター、及びシークエンスベクターが挙げられる。
【0116】
具体的な実施態様では、発現ベクターは、ウイルスベクター、細菌ベクター及び哺乳動物細胞ベクターからなる群より選択される。上記に考察された組成物の少なくとも一部又は全部を含む、数多くの発現ベクター系が存在する。原核細胞及び/又は真核細胞ベクターに基づいた系は、ポリヌクレオチド又はその同族のポリペプチドを生成するために本発明と共に使用するために使用され得る。多くのこのような系は市販され、広く入手可能である。
【0117】
さらに、発現ベクターは、ウイルスベクターの形態で細胞に提供されてもよい。ウイルスベクターの技術は当技術分野において周知であり、例えばSambrook et al.(2012)及びAusubel et al.(1997)、並びに他のウイルス学及び分子生物学マニュアルに記載されている。ベクターとして有用であるウイルスとしては、レトロウイルス、アデノウイルス
アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、及びレンチウイルスが挙げられるがこれらに限定されない。一般的に、適切なベクターは、少なくとも1つの生物において機能的である複製起点、プロモーター配列、簡便な制限酵素エンドヌクレアーゼ部位、及び1つ以上の選択マーカーを含有している(例えば、第WO01/96584号;第WO01/29058号;及び米国特許第6,326,193号参照)。
【0118】
多くのウイルスに基づいた系が、哺乳動物細胞への遺伝子導入のために開発されている。例えば、レトロウイルスは、遺伝子送達システムのための簡便なプラットフォームを提供する。選択された遺伝子を、当技術分野において公知である技術を使用して、ベクターに挿入し、レトロウイルス粒子にパッケージングすることができる。その後、組換えウイルスを単離し、インビボ又はエクスビボのいずれかで被検者の細胞に送達し得る。多くのレトロウイルス系が当技術分野において公知である。いくつかの実施態様では、アデノウイルスベクターが使用される。多くのアデノウイルスベクターが当技術分野において公知である。1つの実施態様では、レンチウイルスベクターが使用される。
【0119】
例えば、レンチウイルスなどのレトロウイルスに由来するベクターは、導入遺伝子の長期間の安定した組み込み及び娘細胞におけるその増殖を可能とするので、長期間の遺伝子導入を達成するのに適したツールである。レンチウイルスベクターは、肝細胞などの非増殖細胞を形質導入することができるという点において、マウス白血病ウイルスなどの発癌レトロウイルスに由来するベクターを上回るさらなる利点を有している。それらはまた低免疫原性というさらなる利点も有する。1つの実施態様では、該組成物は、アデノ随伴ウイルス(AAV)に由来するベクターを含む。アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターは、様々な障害の処置のための強力な遺伝子送達ツールとなっている。AAVベクターは、病原性がないこと、最小限の免疫原性、及び安定かつ効率的な方法で有糸分裂後の細胞を形質導入できる能力を含む、遺伝子療法に理想的に適したものとする多くの特色を有している。AAVベクター内に含有される特定の遺伝子の発現は、AAV血清型、プロモーター、及び送達法の適切な組み合わせを選択することによって、1種類以上の細胞に特異的に標的化させることができる。
【0120】
1つの実施態様では、コード配列がAAVベクター内に含有されている。30を超える天然のAAV血清型が入手可能である。AAVキャプシドには多くの天然変異体が存在し、これは、関心対象の組織に特に適した特性を有するAAVの同定及び使用を可能とする。AAVウイルスは、従来の分子生物学的技術を使用して工学操作され得、これにより、核酸配列の細胞特異的送達のために、免疫原性を最小限にするために、安定性及び粒子の寿命を調整するために、効率的な分解のために、核への正確な送達のために、これらの粒子を最適化することが可能となる。
【0121】
したがって、1つ以上のポリD/Eタンパク質の発現は、1つ以上のコード配列を含有している、組換え工学操作されたAAV又は人工AAVを送達することによって達成され得る。AAVの使用は、それが比較的無毒性であり、効率的な遺伝子の導入を提供し、特定の目的のために容易に最適化することができるために、DNAの一般的な外来性送達の形態である。例示的なAAV血清型としては、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、及びAAV9が挙げられるがこれらに限定されない。
【0122】
ベクターへの構築のために望ましいAAV断片は、capタンパク質(vp1、vp2、vp3及び超可変領域を含む)、repタンパク質(rep78、rep68、rep52及びrep40を含む)、及びこれらのタンパク質をコードしている配列を含む。これらの断片は、多種多様なベクター系及び宿主細胞において容易に利用され得る。このような断片は、単独で、他のAAV血清型配列若しくは断片と組み合わせて、又は他のAAV若しくは非AAVウイルス配列に由来する配列と組み合わせて使用され得る。本明細書において使用する人工AAV血清型としては、非天然キャプシドタンパク質を含むAAVが挙げられるがこれらに限定されない。このような人工キャプシドは、異なる選択されたAAV血清型、同じAAV血清型の非連続部分から、AAV以外のウイルス源から、又はウイルス以外の入手源から得られることのできる異種配列と組み合わせて、選択されたAAV配列(例えばvp1キャプシドタンパク質の断片)を使用して、任意の適切な技術によって作製され得る。人工AAV血清型は、キメラAAVキャプシド、組換えAAVキャプシド、又は「ヒト化」AAVキャプシドを含み得るがこれらに限定されない。したがって、1つ以上のポリD/Eタンパク質の発現に適した、例示的なAAV又は人工的なAAVとしては、とりわけ、AAV2/8(米国特許第7,282,199号参照)、AAV2/5(米国国立衛生研究所から入手可能)、AAV2/9(国際特許公開番号第WO2005/033321号)、AAV2/6(米国特許第6,156,303号)、及びAAVrh8(国際特許公開番号第WO2003/042397号)が挙げられる。
【0123】
所望のポリヌクレオチドの発現のために、各プロモーター内の少なくとも1つのモジュールが、RNA合成のための開始部位を配置するように機能する。最善の既知のこの例はTATAボックスであるが、TATAボックスを欠失しているいくつかのプロモーター、例えば哺乳動物の末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ遺伝子用のプロモーター、及びSV40遺伝子用のプロモーターでは、開始部位それ自体の上にある個別の配列が、開始の場所を固定するのに役立つ。
【0124】
追加のプロモーター配列、すなわちエンハンサーは、転写開始頻度を調節する。典型的には、多くのプロモーターが近年、同じように開始部位の下流に機能的配列を含有していることが知られているが、これらは開始部位から30~110bp上流の領域内に位置している。プロモーター配列間の間隔は頻繁には可動性であり、よって、プロモーターの機能は、配列が互いに反転又は移動している場合にも保存されている。チミジンキナーゼ(tk)プロモーターでは、プロモーター配列間の間隔は、活性が下降し始める前には、50bp離れるまで増加してもよい。プロモーターに応じて、個々の配列は、転写を活性化するために共同的に又は独立的にのいずれかで機能することができるようである。
【0125】
プロモーターは、コーディングセグメント及び/又はエキソンの上流に位置する5’非コード配列を単離することによって得ることができるような、遺伝子又はポリヌクレオチド配列に天然に会合しているものであってもよい。このようなプロモーターは、「内因性」と称され得る。同様に、エンハンサーは、その配列の下流又は上流のいずれかに位置する、ポリヌクレオチド配列に天然に会合したものであり得る。あるいは、組換え又は異種プロモーター(これは、その天然環境においてポリヌクレオチド配列と通常は会合していないプロモーターを指す)の制御下に、コーディングポリヌクレオチドセグメントを配置することによって、特定の利点が獲得されるだろう。組換え体又は異種のエンハンサーは、その天然環境においてポリヌクレオチド配列に通常は会合していないエンハンサーも指す。このようなプロモーター又はエンハンサーは、他の遺伝子のプロモーター又はエンハンサー、及び任意の他の原核細胞、ウイルス又は真核細胞から単離されたプロモーター又はエンハンサー、「天然に存在」しない、すなわち、異なる転写調節領域の異なる配列及び/又は発現を変化させる突然変異を含有しているプロモーター又はエンハンサーを含み得る。プロモーター及びエンハンサーの核酸配列を合成で作製することに加えて、配列は、本明細書に開示された組成物と関連して(米国特許第4,683,202号、米国特許第5,928,906号)、組換えクローニング技術及び/又は核酸増幅技術、例えばPCR(商標)を使用して生成され得る。さらに、ミトコンドリア、葉緑体などの核以外の細胞小器官内の配列の転写及び/又は発現を指令する制御配列も同様に使用され得ると考えられる。
【0126】
当然、発現のために選択された細胞型、細胞小器官、及び生物内におけるDNAセグメントの発現を効率的に指令する、プロモーター及び/又はエンハンサーを使用することは重要であろう。分子生物学の技術分野の専門家は一般的に、タンパク質の発現のための、プロモーター、エンハンサー、及び細胞型の組合せの使用法を知っている。例えば、Sambrook et al.(2012)を参照されたい。使用されるプロモーターは、組換えタンパク質及び/又はペプチドの大規模生産において有利であるので、導入されたDNAセグメントの高いレベルの発現を指令するのに適した条件下で、構成性で、組織特異性で、誘導性で、及び/又は有用であり得る。該プロモーターは、異種であっても又は内因性であってもよい。
【0127】
1つの実施態様では、前記のプロモーター又はエンハンサーは、神経組織において1つ以上のポリD/Eタンパク質の発現を特異的に指令する。例えば、特定の実施態様では、該プロモーター又はエンハンサーは、ニューロン、星状膠細胞、乏突起膠細胞、プルキンエ細胞、錐体細胞などにおける1つ以上のポリD/Eタンパク質の発現を特異的に指令する。
【0128】
1つの実施態様では、前記のプロモーター又はエンハンサーは、癌組織における1つ以上のポリD/Eタンパク質の発現を特異的に指令する。例えば、特定の実施態様では、該プロモーター又はエンハンサーは、上皮癌、胆管細胞癌、黒色腫、大腸癌、直腸癌、卵巣癌、子宮内膜癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、神経膠芽腫、子宮頸癌、頭頚部癌、乳癌、膵臓癌、膀胱癌を含むがこれらに限定されない、組織内の1つ以上のポリD/Eタンパク質の発現を特異的に指令する。
【0129】
所望のポリヌクレオチドの発現を評価するために、細胞内に導入される予定の発現ベクターはまた、ウイルスベクターを通してトランスフェクト又は感染させることが求められた細胞集団からの、発現している細胞の同定及び選択を容易にするための、選択マーカー遺伝子又はレポーター遺伝子のいずれか又はその両方を含有していてもよい。他の実施態様では、選択マーカーは、別のDNA片上に担持され、同時トランスフェクション手順に使用されてもよい。選択マーカー遺伝子及びレポーター遺伝子の両方を、適切な調節配列とフランキングさせて、宿主細胞における発現を可能とし得る。有用な選択マーカーは当技術分野において公知であり、例えば、抗生物質耐性遺伝子、例えばneoなどを含む。
【0130】
レポーター遺伝子は、トランスフェクトされた可能性のある細胞を同定するために、及び調節配列の機能性を評価するために使用される。容易にアッセイ可能なタンパク質をコードしているレポーター遺伝子は、当技術分野において周知である。一般的には、レポーター遺伝子は、レシピエントの生物若しくは組織に存在しないか又はそれによって発現されず、そして、その発現がいくつかの容易に検出可能な特性、例えば酵素活性によって顕現されるタンパク質をコードしている遺伝子である。レポーター遺伝子の発現は、DNAがレシピエント細胞に導入された後の適切な時間にアッセイされる。
【0131】
適切なレポーター遺伝子は、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、分泌アルカリホスファターゼをコードしている遺伝子、又は緑色蛍光タンパク質遺伝子を含み得る(例えば、Ui-Tei et al., 2000 FEBS Lett. 479:79-82参照)。適切な発現系は周知であり、周知の技術を使用して調製され得るか、又は市販で得ることができる。内部欠失構築物は、固有の内部制限酵素部位を使用して、又は固有ではない制限酵素部位の部分的消化によって生成され得る。その後、構築物は、高いレベルのsi(低分子干渉)RNAポリヌクレオチド及び/又はポリペプチドの発現を示す、細胞内にトランスフェクトされ得る。一般的には、最高レベルのレポーター遺伝子発現を示している、最小5’フランキング領域を有する構築物が、プロモーターと同定される。このようなプロモーター領域は、レポーター遺伝子と連結され得、これを使用して、プロモーターにより駆動される転写を調節する能力について薬剤を評価し得る。
【0132】
発現ベクターの脈絡において、前記ベクターは、宿主細胞、例えば哺乳動物細胞、細菌細胞、酵母細胞又は昆虫細胞に、当技術分野の任意の方法によって容易に導入され得る。例えば、発現ベクターは物理的、化学的又は生物学的手段によって宿主細胞内に導入され得る。
【0133】
ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための物理的方法としては、リン酸カルシウム沈降法、リポフェクション、粒子衝撃、マイクロインジェクション、電気穿孔法などが挙げられる。ベクター及び/又は外来性核酸を含んでいる細胞を産生するための方法は、当技術分野において周知である。例えば、Sambrook et al.(2012, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York)及びAusubel et al.(1997, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York)を参照されたい。
【0134】
関心対象のポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための生物学的な方法は、DNAベクター及びRNAベクターの使用を含む。ウイルスベクター、特にレトロウイルスベクターは、哺乳動物、例えばヒト細胞に遺伝子を挿入するための最も広く使用される方法となっている。他のウイルスベクターは、レンチウイルス、ポックスウイルス、I型単純ヘルペスウイルス、アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルスなどに由来し得る。例えば、米国特許第5,350,674号及び第5,585,362号を参照されたい。
【0135】
ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための化学的手段としては、コロイド分散系、例えば巨大分子複合体、ナノカプセル、マイクロスフィア、ビーズ、及び脂質に基づいた系(水中油滴型エマルション、ミセル、混合ミセル、及びリポソームを含む)が挙げられる。インビトロ及びインビボでの送達ビヒクルとしての使用のための好ましいコロイド系は、リポソーム(すなわち人工膜小胞)である。このような系の調製及び使用は当技術分野において周知である。
【0136】
外来性核酸を宿主細胞に導入するために使用される方法に関係なく、宿主細胞における組換えDNA配列の存在を確認するために、多種多様なアッセイが実施され得る。このようなアッセイとしては、例えば、当業者には周知である「分子生物学的」アッセイ、例えばサザンブロット及びノザンブロット、逆転写PCR及びPCR;「生化学的」アッセイ、例えば免疫学的手段(ELISA又はウェスタンブロット)によって又は本発明の範囲内に該当する薬剤を同定するために本明細書に記載のアッセイによって、特定のペプチドの有無を検出するなどが挙げられる。
【0137】
任意のDNAベクター又は送達ビヒクルを使用して、所望のポリヌクレオチドを細胞にインビトロで又はインビボで導入することができる。非ウイルス送達系が利用される場合、好ましい送達ビヒクルはリポソームである。それ故、上記の送達系及びプロトコールは、Gene Targeting Protocols, 2ed., pp 1-35 (2002)及びGene Transfer and Expression Protocols, Vol. 7, Murray ed., pp 81-89(1991)に見られ得る。
【0138】
「リポソーム」は、封入された脂質二重層又は凝集体の生成によって形成された、多種多様な単層及び多層脂質小胞を包含している一般用語である。リポソームは、リン脂質二重膜及び内部水性媒体を有する小胞構造を有するとして特徴付けられ得る。多層リポソームは、水性媒体によって隔てられた複数の脂質層を有する。それらは、リン脂質が過剰の水溶液中に懸濁されると自発的に形成する。脂質成分は、閉じた構造の形成前に自己再編成を受け、脂質二重層の間に水と、溶けた溶質とを封入する。しかしながら、本発明はまた、通常の小胞構造とは、異なる構造を溶液中で有する組成物も包含する。例えば、脂質は、ミセル構造を推定し得るか、又は単に脂質分子の不均一な凝集物として存在し得る。リポフェクタミン-核酸複合体も考えられる。
【0139】
1つの実施態様では、本発明の組成物は、本明細書に記載のような、1つ以上のポリD/Eタンパク質をコードしているRNAを含む。1つの実施態様では、RNAは、DAXX、ANP32A、SET、HUWE1、MTEF4、MYT1、NCKX1、MYT1L、ERIP6、FAM9A、IF2P、ARMD4、PPM1G、RAGP1、NUCL、NRDC、ZFHX3、ZBT7C、ZEB1、YTDC1、ZBT47、TTBK1、KAT6B、PELP1、PTMS、TRI26、RYR1、SETLP、CLSPN、CALR、BPTF、BAZ2B、ATAD2、CFA65、CENPB、CASZ1、CCER1、DC8L2、DCAF1、AN32B、ARI4B、AN32E、UBF1、SETD1B及びVIRからなる群より選択される1つ以上のポリD/Eタンパク質をコードしている。
【0140】
1つの実施態様では、RNAは、配列番号1~45からなる群より選択される1つ以上の配列を含んでいる、1つ以上のポリD/Eタンパク質をコードし、それらの対応するUniProt識別子が上記の表1に示されている。1つの実施態様では、単離された核酸は、上記に示されているような表2から選択された1つ以上のタンパク質を含んでいる、1つ以上のポリD/Eタンパク質をコードしている。
【0141】
1つの実施態様では、前記組成物は、1つ以上のポリD/Eタンパク質の1つ以上の成分をコードしている、インビトロで転写された(IVT)RNAを含む。1つの実施態様では、IVT RNAは、一過性トランスフェクションの形態として細胞に導入されてもよい。RNAは、合成で生成されたプラスミドDNA鋳型を使用して、インビトロでの転写によって生成される。任意の入手源に由来する関心対象のDNAは、PCRによって、適切なプライマー及びRNAポリメラーゼを使用して、インビトロでのmRNA合成のための鋳型へと、直接変換され得る。DNA源は例えば、ゲノムDNA、プラスミドDNA、ファージDNA、cDNA、合成DNA配列、又は任意の他の適切なDNA源であり得る。インビトロでの転写のために望ましい鋳型は、1つ以上のポリD/Eタンパク質である。
【0142】
1つの実施態様では、PCR用に使用する予定のDNAは、オープンリーディングフレームを含有している。DNAは、生物のゲノムに由来する天然に存在するDNA配列に由来していてもよい。1つの実施態様では、DNAは、関心対象の完全長の遺伝子又は遺伝子の一部である。該遺伝子は、5’及び/又は3’非翻訳領域(UTR)のいくらか又は全てを含み得る。該遺伝子は、エキソン及びイントロンを含み得る。1つの実施態様では、PCRに使用する予定のDNAは、ヒト遺伝子である。別の実施態様では、PCRに使用するためのDNAは、5’及び3’非翻訳領域を含んでいる、ヒト遺伝子である。DNAは代替的には、天然生物に通常は発現されていない人工DNA配列であってもよい。例示的な人工DNA配列は、遺伝子の一部を含有し、これは互いにライゲートして、融合タンパク質をコードするオープンリーディングフレームを形成しているものである。互いにライゲートされているDNAの一部は、1つの生物に由来するものであっても、又は1つを超える生物に由来するものであってもよい。
【0143】
1つの実施態様では、本発明の組成物は、本明細書に記載の1つ以上のポリD/Eタンパク質をコードしている修飾された核酸を含む。例えば、1つの実施態様では、該組成物は、ヌクレオシドの修飾されたRNAを含む。1つの実施態様では、該組成物は、ヌクレオシドの修飾されたmRNAを含む。ヌクレオシドの修飾されたmRNAは、例えば、増加した安定性、低い免疫原性、及び増強された翻訳を含む、非修飾mRNAを上回る特定の利点を有する。本発明において有用であるヌクレオシドの修飾されたmRNAはさらに、米国特許第8,278,036号に記載され、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられている。
【0144】
修飾された細胞
本発明は、1つ以上のポリD/Eタンパク質を含む細胞、1つ以上のポリD/Eタンパク質をコードしている核酸、又はその組合せを含んでいる組成物を含む。1つの実施態様では、該細胞は、本発明のタンパク質及び/又は核酸を発現するように遺伝子的に修飾されている。特定の実施態様では、遺伝子的に修飾された細胞は、本発明の組成物で処置される被検者に対して自己である。あるいは該細胞は、被検者に対して、同種、同系、又は異種であり得る。特定の実施態様では、該細胞は、発現されたタンパク質を、細胞外空間に分泌又は遊離して、該ペプチドを1つ以上の他の細胞に送達することができる。
【0145】
遺伝子的に修飾された細胞は、インビボ又はエクスビボで、当技術分野において標準的な技術を使用して修飾され得る。細胞の遺伝子修飾は、発現ベクターを使用して、又は裸の単離された核酸構築物を使用して実施され得る。
【0146】
1つの実施態様では、前記細胞は、本明細書に記載の1つ以上のタンパク質をコードしている単離された核酸を使用して、エクスビボで得られ修飾される。1つの実施態様では、該細胞は、タンパク質及び/又は核酸を発現するように遺伝子的に修飾された被検者から得られ、被検者に再投与される。特定の実施態様では、該細胞は、エクスビボ又はインビトロで、細胞集団を産生するために増殖され、ここでの該集団の少なくとも一部は、必要とされる被検者に投与される。
【0147】
1つの実施態様では、前記細胞は、該タンパク質を安定に発現するように遺伝子的に修飾される。別の実施態様では、該細胞は、該タンパク質を一過性に発現するように遺伝子的に修飾される。
【0148】
治療法
本発明はまた、タンパク質のミスフォールディング、タンパク質凝集物、又はその組合せに関連した疾患又は障害のための治療法も提供する。
【0149】
1つの実施態様では、本発明は、被検者に1つ以上のポリD/Eタンパク質のモジュレーターを含んでいる組成物を投与する方法を提供する。1つの実施態様では、該被検者は、タンパク質のミスフォールディング又はタンパク質凝集物に関連した疾患又は障害を有する。1つの実施態様では、該被検者は、アミロイド-β、α-シヌクレイン、タウ、プリオン、SOD1、TDP-43、FUS、p53突然変異体のミスフォールドタンパク質及び/又はタンパク質凝集物、又はハンチンチン及びアタキシンなどのポリグルタミン反復配列を伴うタンパク質に関連した疾患又は障害を有する。
【0150】
様々な実施態様では、本発明の方法によって処置可能な疾患及び障害としては、ポリQ障害、例えば、脊髄小脳失調症(SCA)1型、SCA2、SCA3、SCA6、SCA7、SCA17、ハンチントン病、歯状核赤核・淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、伝達性海綿状脳症(プリオン病)、シヌクレイノパチー、レビー小体型認知症(DLB)、多系統萎縮症(MSA)、タウオパチー、前頭側頭葉変性症(FTLD)、ALアミロイドーシス、AAアミロイドーシス、家族性地中海熱、老人性全身性アミロイドーシス、家族性アミロイドポリニュロパチー、透析アミロイドーシス、アポリポタンパク質AIアミロイドーシス、アポリポタンパク質AIIアミロイドーシス、アポリポタンパク質AIVアミロイドーシス、フィンランド型遺伝性アミロイドーシス、リゾチームアミロイドーシス、フィブリノーゲンアミロイドーシス、アイスランド型遺伝性脳アミロイドアンギオパチー、II型糖尿病、甲状腺髄様癌、心アミロイドーシス、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血、下垂体プロラクチン産生腫瘍、注射局在化アミロイドーシス、大動脈中膜アミロイドーシス、遺伝性格子状角膜変性、睫毛乱生症を伴う角膜アミロイドーシス、白内障、歯原性石灰性上皮腫瘍、肺胞蛋白症、封入体筋炎、及び皮膚アミロイド苔癬が挙げられるがこれらに限定されない。
【0151】
特定の実施態様では、前記方法は、p53凝集物に関連した癌の治療又は予防を含む。いくつかの実施態様では、前記の癌は、1つ以上のp53突然変異に関連した癌を含む。いくつかの実施態様では、前記の癌は、ヒトp53の配列と比較して、175、220、245、248、249、273、280及び282からなる群より選択される1つ以上のアミノ酸残基の位置における突然変異に関連した癌を含む。いくつかの実施態様では、前記の癌は、ヒトp53のR175H、Y220C、G245D、G245S、R248L、R248Q、R248W、R249S、R273H、R273C、R273L、R280K又はR282Wを含むがこれらに限定されない、1つ以上のp53突然変異に関連した癌を含む。1つの実施態様では、前記の癌は、1つ以上のp53立体構造的突然変異に関連した癌を含む。1つの実施態様では、前記の癌は、R175X、G245X、R249X、R280X又はG245Xを含むがこれらに限定されない、1つ以上のp53突然変異に関連した癌を含み、ここでのXは、任意のアミノ酸突然変異を示す。1つの実施態様では、前記の癌は、R175H、G245S、R249S、R280K又はG245Dを含むがこれらに限定されない、1つ以上のp53立体構造的突然変異に関連した癌を含む。
【0152】
いくつかの実施態様では、前記方法は、急性リンパ球性癌、急性骨髄性白血病、胞巣状横紋筋肉腫、骨癌、脳癌、乳癌、肛門癌、肛門管癌、又は肛門直腸癌、眼癌、肝内胆汁管癌、関節癌、頚部癌、膀胱癌、又は胸膜癌、鼻癌、鼻腔癌、又は中耳癌、口腔癌、膣癌、外陰癌、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性癌、大腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、食道癌、子宮頚部癌、消化管カルチノイド腫瘍、神経膠腫、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、腎臓癌、喉頭癌、肝臓癌、肺癌、悪性中皮腫、黒色腫、多発性骨髄腫、上咽頭癌、非ホジキンリンパ腫、中咽頭癌、卵巣癌、陰茎癌、膵臓癌、腹膜癌、綱癌、及び腸間膜癌、咽頭癌、前立腺癌、直腸癌、腎臓癌、皮膚癌、小腸癌、軟組織癌、胃癌、精巣癌、甲状腺癌、子宮癌、尿管癌、及び膀胱癌を含むがこれらに限定されない、1つ以上の癌の治療又は予防を含む。
【0153】
本明細書に詳述された方法を含む本開示を備えれば、本発明は、すでに確立されているタンパク質のミスフォールディング又はタンパク質凝集物に関連した疾患の処置に限定されないことが当業者によって理解されるだろう。特に、疾患又は障害は、被検者にとって有害な時点になるまで顕現している必要はなく;実際に、疾患又は障害は、処置が投与される前に、被検者において検出される必要はない。すなわち、疾患又は障害の有意な兆候又は症状が、本発明が利点を提供し得る前に、起こっている必要はない。それ故、本発明は、本明細書の何処かで以前に考察されているような、モジュレーター組成物を、疾患又は障害の発症前に被検者に投与することができ、これにより、疾患又は障害を予防することができることから、タンパク質のミスフォールディング又はタンパク質凝集物に関連した疾患又は障害を予防するための方法を含む。
【0154】
当業者は、本明細書の開示を備えれば、タンパク質のミスフォールディング又はタンパク質凝集物に関連した疾患の予防が、タンパク質のミスフォールディング又はタンパク質凝集物に関連した疾患の発生又は進行に対しての予防措置としてのモジュレーターを、被検者に投与する工程を包含することを理解しているだろう。本明細書の何処かでより完全に考察されているように、遺伝子又は遺伝子産物のレベル又は活性を調節する方法は、ポリペプチド遺伝子産物のレベル及び活性を調節するだけでなく、転写、翻訳のいずれか、又はその両方を含む、核酸の発現を調節するための多数の技術も包含する。
【0155】
さらに、本明細書の何処かで開示されているように、当業者は、本明細書において提供された技術を備えれば、本発明は、タンパク質のミスフォールディング又はタンパク質凝集物に関連した多種多様な疾患を治療又は予防する方法を包含し、ここで遺伝子又は遺伝子産物のレベル又は活性を調節することは、該疾患を治療又は予防することを理解しているだろう。疾患が、タンパク質のミスフォールディング又はタンパク質凝集物に関連しているかどうかを評価するための様々な方法が、当技術分野において公知である。さらに、本発明は、将来発見されるこのような疾患の治療又は予防を包含する。
【0156】
1つの態様では、前記方法は、ミスフォールドタンパク質を安定化させるための、1つ以上のポリD/Eタンパク質の使用を含む。特定の態様では、本明細書に記載の1つ以上のポリD/Eタンパク質を介した、機能的なミスフォールドタンパク質の安定化は、ミスフォールドタンパク質に関連した疾患又は障害を治療又は予防することができる。例えば、1つの実施態様では、本明細書に記載の1つ以上のポリD/Eタンパク質を介した、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)突然変異体の安定化は、CFTRの突然変異体が、分解されるのではなく機能することを可能とするだろう。ポリD/Eタンパク質を使用して、ミスフォールドタンパク質を安定化させることは、部分的に機能するタンパク質の分解に関連した嚢胞性線維症及び他の疾患を処置するために使用され得ると想定される。本明細書に記載の1つ以上のポリD/Eタンパク質を介した、タンパク質の安定化は、嚢胞性線維症及びライソゾーム蓄積症、例えばゴーシェ病及びファブリー病を含むがこれらに限定されない、機能的な突然変異タンパク質の分解に関連した任意の疾患又は障害を処置するために使用され得る。
【0157】
本発明は、遺伝子又は遺伝子産物のモジュレーターの投与を包含する。本発明の方法を実践するために、当業者は、本明細書に提供された開示に基づいて、適切なモジュレーター組成物を製剤化しそして被検者に投与する方法を理解しているだろう。本発明は、任意の特定の投与法又は処置処方計画に限定されない。
【0158】
1つの実施態様では、前記方法は、1つ以上のポリD/Eタンパク質の発現又は活性を増加させる組成物の有効量を、必要とする被検者に投与する工程を含む。
【0159】
例えば、1つの実施態様では、前記方法は、1つ以上のポリD/Eタンパク質の発現又は活性を増加させる組成物の有効量を、必要とする被検者に投与する工程を含む。1つの実施態様では、前記方法は、1)1つ以上のポリD/Eタンパク質の発現又は活性を増加させる組成物の有効量、及び2)1つ以上のTRIMタンパク質の発現又は活性を増加させる組成物の有効量を、必要とする被検者に投与する工程を含む。
【0160】
1つの実施態様では、ポリD/Eタンパク質は、DAXX、ANP32A、SET、HUWE1、MTEF4、MYT1、NCKX1、MYT1L、ERIP6、FAM9A、IF2P、ARMD4、PPM1G、RAGP1、NUCL、NRDC、ZFHX3、ZBT7C、ZEB1、YTDC1、ZBT47、TTBK1、KAT6B、PELP1、PTMS、TRI26、RYR1、SETLP、CLSPN、CALR、BPTF、BAZ2B、ATAD2、CFA65、CENPB、CASZ1、CCER1、DC8L2、DCAF1、AN32B、ARI4B、AN32E、UBF1、SETD1B及びVIRからなる群より選択される1つ以上を含む。1つの実施態様では、該ポリD/Eタンパク質は、ヒトポリD/Eタンパク質を含む。
【0161】
1つの実施態様では、ポリD/Eタンパク質は、配列番号1~45からなる群より選択される1つ以上の配列を含む。配列番号及びそれらの対応するUniProt識別子は、上記の表1に示されている。1つの実施態様では、ポリD/Eタンパク質は、上記に示されているような表2から選択された1つ以上のタンパク質を含む。
【0162】
いくつかの実施態様では、TRIMタンパク質は、TRIM3、TRIM4、TRIM5、TRIM6、TRIM7、TRIM9、TRIM11、TRIM13、TRIM14、TRIM15、TRIM16、TRIM17、TRIM19(「PML」とも称される)、TRIM20、TRIM21、TRIM24、TRIM25、TRIM27、TRIM28、TRIM29、TRIM32、TRIM34、TRIM39、TRIM43、TRIM44、TRIM45、TRIM46、TRIM49、TRIM50、TRIM52、TRIM58、TRIM59、TRIM65、TRIM67、TRIM69、TRIM70、TRIM74、及びTRIM75からなる群より選択される1つ以上;及びTRIM30を含む。1つの実施態様では、前記の1つ以上のTRIMタンパク質はヒトTRIMタンパク質である。1つの実施態様では、前記の1つ以上のTRIMタンパク質は、マウスTRIMタンパク質である。タンパク質のミスフォールディング及び凝集を予防又は治療するために、TRIMタンパク質、TRIMタンパク質をコードしている核酸、及びその組合せを使用する方法は、国際(PCT)公開番号第:WO2016/196328A1号に開示され、これはその全体が本明細書に参照により組み入れられる。
【0163】
1つの実施態様では、前記方法は、1)1つ以上のポリD/Eタンパク質の発現又は活性を増加させる組成物の有効量、及び2)1つ以上のTRIMタンパク質の発現又は活性を増加させる組成物の有効量を、必要とする被検者に投与する工程を含む。
【0164】
1つの実施態様では、前記方法は、被検者の少なくとも1つの神経細胞において、1つ以上のポリD/Eタンパク質の発現の発現又は活性を増加させる工程を含む。例えば、特定の実施態様では、該方法は、少なくとも1つのニューロン、膠細胞、星状膠細胞、乏突起膠細胞、プルキンエ細胞、錐体細胞などにおける、1つ以上のポリD/Eタンパク質の発現又は活性を増加させる工程を含む。
【0165】
1つの実施態様では、前記方法は、被検者の神経組織を、1つ以上のポリD/Eタンパク質の1つ以上の成分の発現又は活性を増加させる組成物の有効量と接触させる工程を含む。例えば、特定の実施態様では、該方法は、被検者のニューロン、膠細胞、星状膠細胞、乏突起膠細胞、プルキンエ細胞、錐体細胞などを、1つ以上のポリD/Eタンパク質の発現又は活性を増加させる組成物の有効量と接触させる工程を含む。1つの実施態様では、神経細胞は、タンパク質のミスフォールディング、タンパク質凝集物、又はその組合せによって影響を受けている。
【0166】
1つの実施態様では、前記方法は、被検者の少なくとも1つの癌細胞において、1つ以上のポリD/Eタンパク質の発現又は活性を増加させる工程を含む。いくつかの実施態様では、前記方法は、1つ以上の癌細胞を、1つ以上のポリD/Eタンパク質の発現又は活性を増加させる組成物の有効量と接触させる工程を含む。いくつかの実施態様では、癌は、p53の凝集に関連している。
【0167】
当業者は、本発明のモジュレーターが、単独で又は任意の組合せで投与され得ることを理解しているだろう。さらに、本発明のモジュレーターは、単独で、又はそれらを互いに同時に、前に及び/又は後に投与され得るという時間的な意味で任意の組合せで投与され得る。当業者は、本明細書で提供された開示に基づいて、本発明のモジュレーター組成物が、ミスフォールドタンパク質又はタンパク質凝集物に関連した疾患又は障害を予防又は治療するために使用され得、そしてモジュレーター組成物が、単独で、あるいは、予防的な結果又は治療的な結果を発揮するための別のモジュレーターとの任意の組合せで使用され得ることを理解しているだろう。
【0168】
様々な実施態様では、本明細書に記載の本発明のモジュレーターのいずれかを、単独で、又はタンパク質のミスフォールディング又はタンパク質凝集物に関連した疾患に関連した他の分子の他のモジュレーターと組み合わせて投与され得る。様々な実施態様では、本明細書に記載の本発明のモジュレーターのいずれかを、単独で、又はタンパク質のミスフォールディング若しくはタンパク質凝集物に関連した疾患を治療又は予防するのに使用され得る、他の治療剤又は予防剤と組み合わせて投与され得る。本発明のモジュレーターと組み合わせて使用され得る例示的な治療剤としては、抗アミロイドβ抗体及び抗タウ抗体が挙げられるがこれらに限定されない。
【0169】
遺伝子療法
被検者の細胞を、1つ以上のポリD/Eの発現又は活性を増加させるタンパク質をコードしている核酸組成物と接触させる工程は、タンパク質のミスフォールディング又はタンパク質凝集物に関連した、疾患又は障害の1つ以上の症状の発症を阻害又は遅延させることができる。
【0170】
1つの実施態様では、本発明の核酸組成物は、1つ以上のペプチドをコードしている。例えば、1つの実施態様では、核酸組成物は、1つ以上のポリD/Eタンパク質のアミノ酸配列を含むペプチドをコードし得る。1つの実施態様では、該核酸組成物は、DAXX、ANP32A、SET、HUWE1、MTEF4、MYT1、NCKX1、MYT1L、ERIP6、FAM9A、IF2P、ARMD4、PPM1G、RAGP1、NUCL、NRDC、ZFHX3、ZBT7C、ZEB1、YTDC1、ZBT47、TTBK1、KAT6B、PELP1、PTMS、TRI26、RYR1、SETLP、CLSPN、CALR、BPTF、BAZ2B、ATAD2、CFA65、CENPB、CASZ1、CCER1、DC8L2、DCAF1、AN32B、ARI4B、AN32E、UBF1、SETD1B及びVIRからなる群より選択される1つ以上のポリD/Eタンパク質をコードしている。
【0171】
1つの実施態様では、核酸組成物は、配列番号1~45からなる群より選択される1つ以上の配列を含んでいる、1つ以上のポリD/Eタンパク質をコードしている。配列番号及びそれらの対応するUniProt識別子は、上記の表1に示されている。1つの実施態様では、該核酸組成物は、上記に示されているような表2から選択された1つ以上のタンパク質を含んでいる、1つ以上のポリD/Eタンパク質をコードしている。
【0172】
本発明によると、1つ以上のポリD/Eタンパク質の減少した又は不十分な活性に関連した、正常な遺伝子又は突然変異遺伝子を有する細胞に、タンパク質を供給する方法も提供される。突然変異遺伝子を有する細胞にタンパク質を供給することは、レシピエント細胞の正常な機能を可能とするはずである。ペプチドをコードしている核酸を、細胞内に、ベクターで導入し得、これにより、核酸は染色体外に留まる。このような状況において、核酸は、染色体外の位置から細胞によって発現されるだろう。より好ましいのは、核酸又はその一部が、細胞のゲノムに組み込まれるか、又は細胞内に存在する内因性突然変異遺伝子と組換えられるように、細胞内に導入される状況である。組換え、組み込み、及び染色体外での維持のための両方のための遺伝子導入用ベクターは、当技術分野において公知であり、任意の適切なベクターが使用され得る。電気穿孔法、リン酸カルシウム共沈降法、及びウイルス形質導入法などの、細胞へのDNAの導入法は、当技術分野において公知であり、方法の選択は、実施者の能力範囲内である。
【0173】
上記で一般的に考察されているように、野生型遺伝子が「正常な」レベルで発現されているが、遺伝子産物の機能が不十分であるヒトにおいてさえも、本発明のペプチドのレベル又は活性を増加させるために、核酸(適用可能である場合)が遺伝子療法に使用され得る。
【0174】
「遺伝子療法」は、従来の遺伝子療法(持続効果が1回の処置によって達成される)及び遺伝子療法剤の投与(治療に有効なDNA又はmRNAの1回投与又は反復投与を含む)の両方を含む。オリゴヌクレオチドは、それらの取り込みを増強させるために、例えば、それらの負に荷電したホスホジエステル基を荷電していない基によって置換することによって修飾されていてもよい。本発明の1つ以上のポリD/Eタンパク質は、遺伝子療法を使用して、例えば神経細胞若しくは神経組織に局所的に、又は全身的に(例えば、特定の組織型に選択的に標的化するベクター、例えば組織特異的なアデノ随伴ウイルスベクターを介して)送達され得る。いくつかの実施態様では、個体から収集された初代細胞を、本発明のペプチドのいずれかをコードしている核酸を用いてエクスビボでトランスフェクトし、その後、トランスフェクトされた細胞を、個々の生体に戻すことができる。
【0175】
遺伝子療法は、当技術分野において周知である。例えば、細胞内抗体を生成するための遺伝子療法の使用を開示する第WO96/07321号を参照されたい。遺伝子療法はまた、ヒト患者においても成功裏に実証されている。例えば、Baumgartner et al., Circulation 97: 12, 1114-1123 (1998), Fatham, C.G. ‘A gene therapy approach to treatment of autoimmune diseases’, Immun. Res. 18:15-26 (2007);米国特許第7,378089号を参照(どちらも参照により本明細書に組み入れられる)。また、Bainbridge JWB et al. “Effect of gene therapy on visual function in Leber’s congenital Amaurosis”. N Engl J Med 358:2231-2239, 2008;及びMaguire AM et al. “Safety and efficacy of gene transfer for Leber’s Congenital Amaurosis”. N Engl J Med 358:2240-8, 2008も参照されたい。
【0176】
ペプチド又はタンパク質をコードしている核酸(場合によりベクター内に含有されている)を患者の細胞にインビボ及びエクスビボで導入するための主に2つのアプローチがある。インビボでの送達では、特定の場合では、核酸は、直接患者に、時には、タンパク質が最も必要とされる部位に注入される。エクスビボでの処置では、患者の細胞を取り出し、核酸をこれらの単離された細胞に導入し、そして修飾された細胞は、直接投与されるか、又は、例えば、多孔性膜内に封入され、これが患者に移入される(例えば、米国特許第4,892,538号及び第5,283,187号参照)。核酸を生細胞に導入するために利用可能な多種多様な技術がある。技術は、核酸がインビトロで培養細胞に導入されるか、又はインビボで目的の宿主細胞に導入されるかに応じて変更される。哺乳動物細胞への核酸のインビトロでの導入に適した技術としては、リポソームの使用、電気穿孔法、マイクロインジェクション、細胞融合、DEAE-デキストラン、リン酸カルシウム沈降法などが挙げられる。遺伝子のエクスビボでの送達のために一般的に使用されるベクターは、レトロウイルスベクター及びレンチウイルスベクターである。
【0177】
遺伝子療法は、一般的に認められている方法に従って、例えばFriedman et al., 1991, Cell 66:799-806又はCulver, 1996, Bone Marrow Transplant 3:S6-9; Culver, 1996, Mol. Med. Today 2:234-236によって記載のように実施されるだろう。1つの実施態様では、患者の細胞はまず、1つ以上のポリD/Eタンパク質の発現又は活性を確認するために、当技術分野において公知である診断法によって分析されるだろう。発現制御配列に連結された遺伝子又はその機能的均等物のコピーを含有し、細胞内で複製することのできる、ウイルスベクター又はプラスミドベクターを調製する。該ベクターは、細胞内で複製することができる場合がある。あるいは、該ベクターは、複製欠損であってもよく、遺伝子療法に使用するためにヘルパー細胞内で複製される。適切なベクターは、米国特許第5,252,479号及びPCT公開出願第WO93/07282号及び米国特許第5,691,198号;第5,747,469号;第5,436,146号及び第5,753,500号に開示されているように公知である。その後、該ベクターは、患者に注入される。トランスフェクトされた遺伝子が各標的化細胞のゲノム内に永久的に組み込まれない場合、処置は定期的に繰り返さなければならない可能性がある。
【0178】
当技術分野において公知である遺伝子導入システムは、本発明の遺伝子療法の実践において有用であり得る。これらは、ウイルス導入法及び非ウイルス導入法を含む。多くのウイルスが、遺伝子導入用ベクターとして、又は、遺伝子導入ベクターを修復するための基盤として使用され、これらには、パポバウイルス(例えばサルウイルス40、Madzak et al., 1992, J. Gen. Virol. 73:1533-1536)、アデノウイルス(Berkner, 1992;Curr. Topics Microbiol. Immunol. 158:39-66)、ワクシニアウイルス(Moss, 1992, Current Opin. Biotechnol. 3:518-522; Moss, 1996, PNAS 93:11341-11348)、アデノ随伴ウイルス(Russell and Hirata, 1998, Mol. Genetics 18:325-330)、ヘルペスウイルス(単純ヘルペスウイルス及びエプシュタインバーウイルスを含む)(Fink et al., 1996, Ann. Rev. Neurosci. 19:265-287)、レンチウイルス(Naldini et al., 1996, PNAS 93:11382-11388)、シンドビスウイルス及びセムリキ森林ウイルス(Berglund et al., 1993, Biotechnol. 11:916-920)、トリ起源のレトロウイルス(Petropoulos et al., 1992, J. Virol. 66:3391-3397)、マウス起源のレトロウイルス(Miller, 1992, Hum. Gene Ther. 3:619-624)、及びヒト起源のレトロウイルス(Shimada et al., 1991; Helseth et al., 1990; Page et al., 1990; Buchschacher and Panganiban, 1992, J. Virol. 66:2731-2739)が含まれる。アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルスも使用されるが、大半のヒト遺伝子療法プロトコールは、不能にしたマウスレトロウイルスに基づいている。
【0179】
当技術分野において公知である非ウイルス遺伝子導入法としては、リン酸カルシウム共沈降法などの化学的技術;機械的技術、例えばマイクロインジェクション;リポソームを介した膜融合により媒介される導入;並びに直接的なDNAの取り込み及び受容体により媒介されるDNA導入(Curiel et al., 1992, Am. J. Respir. Cell. Mol. Biol 6:247-252)が挙げられる。ウイルスにより媒介される遺伝子導入を、リポソームによる送達を使用した、インビトロでの直接的な遺伝子導入と組み合わせることができ、これにより、ウイルスベクターを、非分裂細胞の周辺ではなく、腫瘍細胞に指向させることが可能となる。その後、プロデューサー細胞の注入は、連続的なベクター粒子源を提供するだろう。この技術は、手術不可能な脳腫瘍を有するヒトでの使用に認可されている。
【0180】
生物学的遺伝子導入法と物理学的遺伝子導入法を組み合わせたアプローチにおいて、任意のサイズのプラスミドDNAを、アデノウイルスヘキソンタンパク質に特異的であるポリリジンにコンジュゲートさせた抗体と組み合わせ、その結果得られた複合体を、アデノウイルスベクターに結合させる。その後、三分子複合体を使用して、細胞に感染させる。アデノウイルスベクターは、結合したDNAが損傷される前に、エンドソームの効率的な結合、内部移行、及び分解を許容する。アデノウイルスに基づいたベクターの送達のための他の技術については、米国特許第5,691,198号;第5,747,469号;第5,436,146号及び第5,753,500号を参照されたい。
【0181】
リポソーム/DNA複合体は、インビボでの直接的な遺伝子導入を媒介することができることが示されている。標準的なリポソーム調製物では、遺伝子導入プロセスは非特異的であるが、局所的なインビボでの取り込み及び発現は、例えば、インサイツでの直接投与後に、腫瘍貯蔵所において報告されている。
【0182】
遺伝子療法の脈絡における発現ベクターは、その中にクローニングされているポリヌクレオチドを発現するのに十分である配列を含有している、そうした構築物を含むことを意味する。ウイルス発現ベクターでは、該構築物は、該構築物のパッケージングを支持するのに十分なウイルス配列を含有している。ポリヌクレオチドがタンパク質をコードしている場合、発現はタンパク質を産生するだろう。ポリヌクレオチドがアンチセンスポリヌクレオチド又はリボザイムをコードしている場合、発現は、アンチセンスポリヌクレオチド又はリボザイムを産生するだろう。したがって、この脈絡では、発現は、タンパク質の産物が合成されることを必要としない。発現ベクターにクローニングされたポリヌクレオチドに加えて、該ベクターはまた、真核細胞において機能するプロモーターも含有している。クローニングされたポリヌクレオチド配列は、このプロモーターの制御下にある。適切な真核細胞プロモーターとしては、上記のものが挙げられる。発現ベクターはまた、配列、例えば選択マーカー及び本明細書に記載の他の配列も含み得る。
【0183】
特定の実施態様では、前記方法は、単離された核酸を神経組織に直接標的化する、遺伝子導入技術の使用を含む。受容体により媒介される遺伝子導入は、例えば、ポリリジンを介した、タンパク質リガンドへの核酸分子(通常、共有結合により閉じたスーパーコイルドプラスミドの形態)のコンジュゲーションによって達成される。リガンドは、標的細胞/組織型の細胞表面上の対応するリガンド受容体の存在に基づいて選択される。これらのリガンド-DNAコンジュゲートは、所望であれば、血中に直接注入されてもよく、標的組織に指向され、ここでDNA-タンパク質複合体の受容体との結合及び内部移行が起こる。DNAの細胞内破壊の問題を克服するために、エンドソーム機能を破壊するために、アデノウイルスを用いた同時感染が含められ得る。
【0184】
医薬組成物及び製剤
本発明はまた、本発明の方法を実践するための、本発明の医薬組成物又はその塩の使用を包含する。このような医薬組成物は、被検者への投与に適した剤形の、本発明の少なくとも1つのモジュレーター組成物又はその塩からなり得るか、あるいは医薬組成物は、本発明の少なくとも1つのモジュレーター組成物又はその塩、及び1つ以上の薬学的に許容される担体、1つ以上の追加の成分、又はこれらの中のいくつかの組合せを含み得る。本発明の化合物又はコンジュゲートは、医薬組成物中に、当技術分野において周知であるような、生理学的に許容される陽イオン又は陰イオンとの組み合わせなどの生理学的に許容される塩の剤形で存在し得る。
【0185】
1つの実施態様では、本発明の方法を実施するのに有用である医薬組成物は、1ng/kg/日から100mg/kg/日の用量を送達するように投与され得る。別の実施態様では、本発明の実施のために有用である医薬組成物は、1ng/kg/日から500mg/kg/日の用量を送達するように投与され得る。
【0186】
本発明の医薬組成物中の活性成分、薬学的に許容される担体、及び任意の追加の成分の相対量は、処置される被検者の正体、サイズ、及び容態に応じて、さらに該組成物が投与される予定である経路に応じて変更されるだろう。例えば、該組成物は、0.1%から100%(w/w)の活性成分を含み得る。
【0187】
本発明の方法において有用である医薬組成物は、経口、直腸、膣内、非経口、局所、肺内、鼻腔内、頬側、眼内、又は別の投与経路のために適切に開発され得る。本発明の方法で有用な組成物は、哺乳動物の皮膚、膣、又は任意の他の組織に直接投与され得る。他に考えられる製剤としては、リポソーム調製物、活性成分を含有している再封入された赤血球、免疫学的製剤が挙げられる。投与経路(群)は、当業者には容易に明らかであり、処置される疾患の種類及び重症度、処置される動物又はヒト被検者の種類及び年齢などを含む、任意の数の要因に依存するだろう。
【0188】
本明細書に記載の医薬組成物の製剤は、薬理学の分野において公知であるか又は将来開発される任意の方法によって調製され得る。一般的には、このような調製法は、活性成分を担体又は1つ以上の他の補助成分と合わせる工程、その後、必要であれば又は所望であれば、製品を所望の単一用量単位又は複数回用量単位へと成形又は梱包する工程を含む。
【0189】
本明細書において使用する「単位用量」は、所定の量の活性成分を含んでいる、医薬組成物の分離量である。活性成分の量は一般的には、被検者に投与されるであろう活性成分の用量、又は、このような用量の好都合な割合、例えばこのような用量の半分若しくは三分の一などに等しい。単位用量剤形は、1日1回量であっても、又は1日複数回投与用量の1回分であってもよい(例えば、1日約1~4回又はそれ以上)。1日複数回投与用量が使用される場合、単位用量剤形は、各用量について同じであっても、又は異なっていてもよい。
【0190】
本明細書で提供される医薬組成物の記載は原則的に、ヒトへの倫理的な投与に適した医薬組成物に関するが、このような組成物は一般的には、全種類の動物の投与にも適していることが当業者によって理解されるだろう。様々な動物への投与に適した組成物とするための、ヒトへの投与に適した医薬組成物の修飾は、よく理解され、通常の技能の獣医薬理学者は、いずれにしても単に通常の実験を用いて、このような修飾を設計及び実施し得る。本発明の医薬組成物の投与が考えられる被検者としては、ヒト及び他の霊長類、哺乳動物、例えば商業的に関連のある哺乳動物、例えばウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ネコ、及びイヌが挙げられるがこれらに限定されない。
【0191】
1つの実施態様では、本発明の組成物は、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤又は担体を使用して製剤化される。1つの実施態様では、本発明の医薬組成物は、治療有効量の本発明の化合物又はコンジュゲート、及び薬学的に許容される担体を含む。有用である薬学的に許容される担体としては、グリセロール、水、食塩水、エタノール、及び他の薬学的に許容される塩溶液、例えばリン酸塩及び有機酸の塩が挙げられるがこれらに限定されない。これら及び他の薬学的に許容される担体の例は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(1991, Mack Publication Co., New Jersey)に記載されている。
【0192】
担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、その適切な混合物、及び植物油を含有している、溶媒又は分散媒体であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング剤の使用によって、分散液の場合には必要とされる粒径の維持によって、及び界面活性剤の使用によって維持され得る。微生物の作用の防御は、様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって達成され得る。多くの場合、等張剤、例えば、糖、塩化ナトリウム、又はポリアルコール、例えばマンニトール及びソルビトールを該組成物中に含めることが好ましいだろう。注射用組成物の吸収延長は、該組成物中に、吸収を遅延する物質、例えばモノステアリン酸アルミニウム又はゼラチンを含めることによってもたらされ得る。1つの実施態様では、薬学的に許容される担体は、DMSOのみではない。
【0193】
製剤は、従来の賦形剤、すなわち、当技術分野において公知である、経口、膣内、非経口、鼻腔内、静脈内、皮下、腸内、又は任意の他の適切な投与形態に適した薬学的に許容される有機又は無機の担体物質と混合して使用され得る。医薬調製物は滅菌され、所望であれば、補助物質、例えば潤滑剤、保存剤、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を及ぼすための塩、緩衝剤、着色剤、香味剤、及び/又は芳香物質などと混合されていてもよい。それらはまた、所望であれば、他の活性物質、例えば他の鎮痛剤と組み合わせてもよい。
【0194】
本明細書において使用する「追加の成分」は、以下の1つ以上を含むがこれらに限定されない:賦形剤;界面活性剤;分散剤;不活性な希釈剤;造粒剤及び崩壊剤;結合剤;潤滑剤;甘味剤;香味剤;着色剤;保存剤;生分解性組成物、例えばゼラチン;水性ビヒクル及び溶媒;油性ビヒクル及び溶媒;懸濁化剤;分散剤又は湿潤剤;乳化剤、粘滑剤;緩衝剤;塩;増粘剤;充填剤;乳化剤;抗酸化剤;抗生物質;抗真菌剤;安定化剤;及び薬学的に許容されるポリマー性又は疎水性物質。本発明の医薬組成物に含まれ得る、他の「追加の成分」は、当技術分野において公知であり、例えば、Genaro, ed.(1985, Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, PA)に記載され、これは参照により本明細書に組み入れられる。
【0195】
本発明の組成物は、該組成物の全重量の約0.005%から2.0%の保存剤を含み得る。保存剤は、環境における汚染物質への曝露の場合の腐敗を防止するために使用される。本発明によると有用である保存剤の例としては、ベンジルアルコール、ソルビン酸、パラベン、イミド尿素、及びその組合せからなる群より選択されるものが挙げられるがこれらに限定されない。特に好ましい保存剤は、約0.5%~2.0%のベンジルアルコール及び0.05%~0.5%のソルビン酸の組合せである。
【0196】
前記組成物は好ましくは、化合物の分解を抑制する、抗酸化剤及びキレート剤を含む。いくつかの化合物のために好ましい抗酸化剤は、約0.01%~0.3%の好ましい範囲内のBHT(ジブチルヒドロキシトルエン)、BHA(ブチルヒドロキシアニソール)、α-トコフェロール、及びアスコルビン酸、より好ましくは、該組成物の全重量に対して0.03重量%~0.1重量%の範囲内のBHTである。好ましくは、該キレート剤は、該組成物の全重量に対して、0.01重量%~0.5重量%の量で存在する。特に好ましいキレート剤としては、該組成物の全重量に対して約0.01重量%~0.20重量%の範囲内の、より好ましくは0.02重量%~0.10重量%の範囲内のエデト酸塩(例えばエデト酸二ナトリウム)及びクエン酸が挙げられる。該キレート剤は、該製剤の有効期間に有害であり得る、組成物内の金属イオンをキレートするのに有用である。BHT及びエデト酸二ナトリウムがそれぞれ、いくつかの化合物にとっては特に好ましい抗酸化剤及びキレート剤であるが、当業者には公知であるように、それ故、他の適切かつ等価な抗酸化剤及びキレート剤に置き換えられてもよい。
【0197】
液体懸濁液は、水性又は油性ビヒクル中への活性成分の懸濁を達成するために、従来の方法を使用して調製され得る。水性ビヒクルとしては、例えば、水、及び等張食塩水が挙げられる。油性ビヒクルとしては、例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコール、植物油、例えば落花生油、オリーブ油、ゴマ油、又はココナッツ油、分別植物油、及び鉱油、例えば液体パラフィンが挙げられる。液体懸濁液はさらに、懸濁化剤、分散剤又は湿潤剤、乳化剤、粘滑剤、保存剤、緩衝剤、塩、香味剤、着色剤、及び甘味剤を含むがこれらに限定されない、1つ以上の追加の成分を含み得る。油性懸濁液はさらに、増粘剤を含み得る。公知の懸濁化剤としては、ソルビトールシロップ、硬化食用脂、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム、アカシアゴム、及びセルロース誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースが挙げられるがこれらに限定されない。公知の分散剤又は湿潤剤としては、天然ホスファチド、例えばレシチン、アルキレンオキシドと脂肪酸との、長鎖脂肪族アルコールとの、脂肪酸とヘキシトールから誘導された部分エステルとの、又は脂肪酸とヘキシトール無水物から誘導された部分エステルとの縮合生成物(例えばそれぞれステアリン酸ポリオキシエチレン、ヘプタデカエチレンオキシセタノール、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、及びポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)が挙げられるがこれらに限定されない。公知の乳化剤としては、レシチン及びアカシアが挙げられるがこれらに限定されない。公知の保存剤としては、メチル、エチル、又はn-プロピル-パラ-ヒドロキシ安息香酸、アスコルビン酸、及びソルビン酸が挙げられるがこれらに限定されない。公知の甘味剤としては、例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、ショ糖、及びサッカリンが挙げられる。油性懸濁液のための公知の増粘剤としては、例えば、蜜蝋、硬パラフィン、及びセチルアルコールが挙げられる。
【0198】
水性又は油性溶媒中の活性成分の液体溶液は、液体懸濁液と実質的に同じ方法で調製され得、主な相違は、活性成分が、溶媒中に懸濁されるのではなく溶解されていることである。本明細書において使用する「油性」液体は、炭素含有液体分子を含み、そして水より極性の低い特徴を示すものである。本発明の医薬組成物の液体溶液は、液体懸濁液に関して記載された各成分を含み得、懸濁化剤は、溶媒中の活性成分の溶解を必ずしも補助しないであろうことが理解される。水性溶媒としては、例えば、水及び等張食塩水が挙げられる。油性溶媒としては、例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコール、植物油、例えば落花生油、オリーブ油、ゴマ油、又はココナッツ油、分画植物油、及び鉱油、例えば液体パラフィンが挙げられる。
【0199】
本発明の医薬調製物の粉末製剤及び顆粒製剤は、公知の方法を使用して調製され得る。このような製剤は、被検者に直接投与されてもよく、使用して例えば錠剤を形成し、カプセル剤に充填するか、又はそこに水性若しくは油性ビヒクルを添加することにより水性若しくは油性懸濁剤若しくは液剤を調製してもよい。これらの各製剤はさらに、分散剤又は湿潤剤、懸濁化剤、及び保存剤の1つ以上を含み得る。追加の賦形剤、例えば充填剤及び甘味剤、香味剤、又は着色剤も、これらの製剤中に含まれ得る。
【0200】
本発明の医薬組成物はまた、水中油滴型エマルション又は油中水滴型エマルションの剤形で調製、包装、又は販売されてもよい。油相は、植物油、例えばオリーブ油又は落花生油、鉱油、例えば液体パラフィン、又はこれらの組合せであり得る。このような組成物はさらに、1つ以上の乳化剤、例えば天然ゴム、例えばアカシアゴム又はトラガカントゴム、天然ホスファチド、例えば大豆又はレシチンホスファチド、脂肪酸とヘキシトール無水物の組合せから誘導されたエステル又は部分エステル、例えばモノオレイン酸ソルビタン、及びこのような部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートを含み得る。これらの乳化剤はまた、例えば甘味剤又は香味剤を含む、追加の成分を含有し得る。
【0201】
材料を、化学的組成物で含侵又はコーティングするための方法は、当技術分野において公知であり、これには、化学的組成物を表面上に沈着又は結合させる方法、化学的組成物を物質の合成中に物質の構造に取り込む方法(すなわち、例えば生分解性物質などを用いて)、及び水性又は油性溶液又は懸濁液を、吸着材量に吸着させる方法(後続の乾燥を伴う又は伴わない)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0202】
投与処方計画は、有効量を構成するものに影響を及ぼし得る。治療用製剤は、疾患の診断前又は診断後のいずれかに被検者に投与され得る。さらに、数回の分割用量、並びに、時間差用量が、1日1回若しくは順次投与され得るか、又は用量は連続注入され得るか、又はボーラス注射であり得る。さらに、治療用製剤の用量は、治療状況又は予防状況の緊急性によって指示される通りに比例的に増加又は減少させてもよい。
【0203】
本発明の組成物の被検者、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトへの投与は、公知の手順を使用して、疾患を予防又は治療するに有効な用量及び時間をかけて実施され得る。治療効果を達成するのに必要とされる治療用化合物の有効量は、使用される具体的な化合物の活性;投与時刻;該化合物の排泄速度;処置期間;該化合物と組み合わせて使用される他の薬物、化合物、又は物質;処置される被検者の疾患又は障害の状態、年齢、性別、体重、容態、全身の健康状態、及び病歴、並びに医学分野において周知の同様な要因などの要因に応じて変更され得る。用量処方計画は、最適な治療応答を提供するように調整され得る。例えば、数回の分割用量を1日1回投与し得るか、又は用量は、治療状況の緊急性によって指示される通りに比例的に減少させてもよい。本発明の治療用化合物の有効用量範囲の非限定的な例は、約1~5、000mg/kg(体重)/日である。当業者は、関連因子を研究し、過度な実験を行なうことなく治療用化合物の有効量に関する決定を行なうことができるだろう。
【0204】
前記化合物は、1日数回もの頻度で被検者に投与されても、又はそれはより低い頻度で、例えば1日1回、週1回、2週間に1回、1か月に1回、又はさらにより低い頻度で、例えば数か月間に1回又はさらには1年に1回又はそれより低い頻度で投与されてもよい。1日あたりに投薬される化合物の量は、非限定的な例では、毎日、隔日、2日間に1回、3日間に1回、4日間に1回、又は5日間に1回投与され得ることが理解される。例えば、隔日投与では、1日あたり5mgの用量が、月曜日に開始され得、1回目の次の5mg/日の用量は水曜日に、2回目の次の5mg/日の用量は金曜日に投与されるなどである。用量の頻度は、当業者には容易に明らかであり、そして処置される疾患の種類及び重症度、動物の種類及び年齢などであるがこれらに限定されない、任意の数の要因に依存するだろう。
【0205】
本発明の医薬組成物中の活性成分の実際の用量レベルは、被検者に毒性を及ぼすことなく、特定の被検者、組成物、及び投与形態において所望の治療応答を達成するのに有効である、活性成分の量を得るために変更されてもよい。
【0206】
当技術分野において通常の技能を有するメディカルドクター、例えば医師又は獣医は、必要とされる医薬組成物の有効量を容易に決定し処方し得る。例えば、医師又は獣医は、所望の治療効果を達成し、所望の効果が達成されるまで用量を徐々に増加させるために、必要とされるよりも低いレベルで医薬組成物中に使用される本発明の化合物の用量を開始することができる。
【0207】
特定の実施態様では、用量の投与の簡易さ及び均一性のために、用量単位剤形で該化合物を製剤化することが特に有利である。本明細書において使用する用量単位剤形は、処置される予定の被検者のための単位用量として適した物理的に個別の単位を指し;各単位は、必要とされる薬学的ビヒクルと共に、所望の治療効果を生じるために計算された治療用化合物の所定の量を含有している。本発明の用量単位剤形は、(a)治療用化合物の固有の特徴及び達成しようとする具体的な治療効果、並びに(b)被検者における疾患の処置のために、このような治療用化合物を配合/製剤化する際の当技術分野における固有の限界によって指示され、かつ直接依存する。
【0208】
1つの実施態様では、本発明の組成物は、1日あたり1~5回又はそれ以上の範囲である、用量で被検者に投与される。別の実施態様では、本発明の組成物は、1日1回、2日1回、3日に1回から1週間に1回、及び2週間毎に1回を含むがこれらに限定されない、用量の範囲内で被検者に投与される。本発明の様々な組合せ組成物の投与頻度は、年齢、処置しようとする疾患又は障害、性別、全身の健康状態、及び他の要因を含むがこれらに限定されない多くの要因に応じて、被検者毎に変更されるであろうことが当業者には容易に明らかであるだろう。したがって、本発明は、いずれかの特定の用量処方計画に限定されると捉えられるべきではなく、任意の被検者に投与しようとする正にその用量及び組成は、担当医師によって、被検者についての全ての他の要因を考慮に入れながら決定されるだろう。
【0209】
投与用の本発明の化合物は、約1mg~約10,000mg、約20mg~約9,500mg、約40mg~約9,000mg、約75mg~約8,500mg、約150mg~約7,500mg、約200mg~約7,000mg、約3050mg~約6,000mg、約500mg~約5,000mg、約750mg~約4,000mg、約1mg~約3,000mg、約10mg~約2,500mg、約20mg~約2,000mg、約25mg~約1,500mg、約50mg~約1,000mg、約75mg~約900mg、約100mg~約800mg、約250mg~約750mg、約300mg~約600mg、約400mg~約500mg、並びにその間の任意の及び全ての全体的な増分又は部分的な増分の範囲内であり得る。
【0210】
いくつかの実施態様では、本発明の化合物の用量は、約1mg~約2,500mgである。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の組成物中に使用される本発明の化合物の用量は、約10,000mg未満、又は約8,000mg未満、又は約6,000mg未満、又は約5,000mg未満、又は約3,000mg未満、又は約2,000mg未満、又は約1,000mg未満、又は約500mg未満、又は約200mg未満、又は約50mg未満である。同様に、いくつかの実施態様では、本明細書に記載のような第二の化合物(すなわち、本発明の組成物によって処置されるのと同じ又は別の疾患を処置するために使用される薬物)の用量は、約1,000mg未満、又は約800mg未満、又は約600mg未満、又は約500mg未満、又は約400mg未満、又は約300mg未満、又は約200mg未満、又は約100mg未満、又は約50mg未満、又は約40mg未満、又は約30mg未満、又は約25mg未満、又は約20mg未満、又は約15mg未満、又は約10mg未満、又は約5mg未満、又は約2mg未満、又は約1mg未満、又は約0.5mg未満、及び任意の及び全ての全体的な増分又は部分的な増分である。
【0211】
1つの実施態様では、本発明は、単独で又は第二の医薬的薬剤と組み合わせて、本発明の化合物又はコンジュゲートの治療有効量を入れる容器を含んでいる、包装された医薬組成物;及び、被検者における疾患の1つ以上の症状の治療、予防、又は低減のための該化合物又はコンジュゲートの使用説明書に関する。
【0212】
「容器」という用語は、医薬組成物を入れるための任意の器物を含む。例えば、1つの実施態様では、容器は、医薬組成物を含有している包装である。他の実施態様では、容器は、医薬組成物を含有している包装ではなく、すなわち、容器は、包装された医薬組成物又は未包装の医薬組成物、及び該医薬組成物の使用説明書を含む、器物、例えば箱又はバイアルである。さらに、包装技術は、当技術分野において周知である。医薬組成物の使用説明書は、医薬組成物を含有している包装上に含まれていてもよく、したがって、該説明書は、包装製品と機能的に高まった関係を築くと理解されるべきである。しかしながら、説明書は、その目的の機能、例えば、被検者における疾患の治療若しくは予防、又は被検者への造影剤若しくは診断剤の送達などを遂行する該化合物の能力に関する情報を含んでいてもよいことが理解されるべきである。
【0213】
本発明のいずれかの組成物の投与経路としては、経口、鼻腔内、直腸、非経口、舌下、経皮、経粘膜(例えば舌下、舌、(経)頬側、(経)尿道、膣内(例えば経膣及び膣周囲)、鼻腔(内)、及び(経)直腸)、膀胱内、肺内、脳内、硬膜外、脳室内、十二指腸内、胃内、くも膜下腔内、皮下、筋肉内、皮内、動脈内、静脈内、気管支内、吸入及び局所投与が挙げられる。1つの実施態様では、該組成物は、被検者の脳脊髄液に投与されてもよい。
【0214】
適切な組成物及び剤形としては、例えば、錠剤、カプセル剤、キャプレット剤、丸剤、ゲルカプセル剤、トローチ剤、分散剤、懸濁剤、液剤、シロップ剤、顆粒剤、ビーズ、経皮パッチ、ゲル剤、散剤、ペレット剤、濃い懸濁剤、ロゼンジ剤、クリーム剤、ペースト剤、プラスター剤、ローション剤、ディスク、坐剤、鼻腔内又は口腔内投与用の液体スプレー、吸入用の乾燥粉末又はエアロゾル化製剤、静脈内投与用の組成物及び製剤などが挙げられる。本発明において有用であろう製剤及び組成物は、本明細書に記載されている具体的な製剤及び組成物に限定されないことが理解されるべきである。
【0215】
診断法
本発明は、タンパク質のミスフォールディング又はタンパク質凝集物に関連した疾患又は障害を有しているか又は発症するリスクのある被検者を診断するための方法を提供する。例えば、1つの実施態様では、該方法は、診断マーカーとして、1つ以上のポリD/Eタンパク質の発現又は活性のレベルを使用する工程を含む。1つの実施態様では、該方法は、1つ以上のポリD/Eタンパク質をコードしている核酸における、遺伝子の突然変異の存在を検出する工程を含む。
【0216】
1つの実施態様では、前記方法は、タンパク質のミスフォールディング又はタンパク質凝集物に関連した疾患又は障害を有しているとして被検者を診断するために使用される。1つの実施態様では、該方法は、タンパク質のミスフォールディング又はタンパク質凝集物に関連した疾患又は障害を発症するリスクがあるとして被検者を診断するために使用される。
【0217】
1つの実施態様では、前記方法は、タンパク質のミスフォールディング又はタンパク質凝集物に関連した神経変性疾患又は障害のための治療法の有効性を評価するために使用される。1つの実施態様では、該方法は、タンパク質のミスフォールディング又はタンパク質凝集物に関連した癌のための治療法の有効性を評価するために使用される。
【0218】
1つの実施態様では、前記方法は、被検者から生物学的試料を回収する工程を含む。例示的な試料としては、血液、尿、糞便、汗、胆汁、血清、血漿、組織生検材料などが挙げられるがこれらに限定されない。例えば、1つの実施態様では、該試料は、神経組織の少なくとも1つの細胞を含む。1つの実施態様では、該試料は、ニューロン、星状膠細胞、乏突起膠細胞、プルキンエ細胞、錐体細胞などを含む。1つの実施態様では、該試料は、癌を発症するリスクのある組織に由来する任意の細胞を含む。いくつかの実施態様では、該試料は、癌を発症する高いリスクのある組織に由来する細胞を含む。1つの実施態様では、該試料は、癌性であると疑われる組織に由来する細胞を含む。
【0219】
1つ以上のポリD/Eタンパク質の低下した発現又は活性を検出するための方法は、核酸レベル又はタンパク質レベルのいずれかにおいて、遺伝子又はその産物を調べる任意の方法を含む。このような方法は当技術分野において周知であり、これには、核酸ハイブリダイゼーション技術、核酸逆転写法、及び核酸増幅法、ウェスタンブロット、ノザンブロット、サザンブロット、ELISA、免疫沈降法、免疫蛍光法、フローサイトメトリー、免疫細胞化学的検査が挙げられるがこれらに限定されない。特定の実施態様では、破壊された遺伝子の転写が、例えば、特定のタンパク質に対して指向される抗体を使用して、タンパク質レベルで検出される。これらの抗体は、ウェスタンブロット、ELISA、免疫沈降法、フローサイトメトリー、又は免疫細胞化学技術などの、様々な方法において使用され得る。
【0220】
組換えタンパク質の製造法
特定の実施態様では、本発明は、関心対象の組換えタンパク質の産生における、1つ以上のポリD/Eタンパク質の使用法を提供する。組換えタンパク質は、自発的にミスフォールド及び凝集し得、したがって、それらの機能性及び有用性は低下し得ることが、当技術分野において認識されている。したがって、1つ以上のポリD/Eタンパク質を使用して、関心対象の組換えタンパク質のタンパク質凝集物を脱凝集させることができ、これにより、関心対象の機能的な組換えタンパク質の生成及び回収が可能となる。
【0221】
特定の実施態様では、本発明は、本明細書に開示された1つ以上のポリD/Eタンパク質を使用して、関心対象の組換えタンパク質の産生を増加させる方法を提供する。タンパク質は、細胞に基づいた発現系において過剰発現させると、高い濃度でミスフォールド及び凝集し得、その結果、早期の細胞死がもたらされることが、当技術分野において認識されている。したがって、タンパク質のミスフォールディングを防止又は対処することのできるタンパク質、例えば本開示のポリD/Eタンパク質を使用して、機能的な組換えタンパク質の増加した産生を可能としつつ、ミスフォールディング及び細胞死を防ぐことができる。
【0222】
特定の実施態様では、前記方法は、細胞に、1つ以上のポリD/Eタンパク質、1つ以上のポリD/Eタンパク質をコードしている核酸分子、又はその組合せを投与する工程を含む。特定の実施態様では、該細胞は、関心対象の組換えタンパク質を発現するように修飾されている。該細胞は、酵母発現系、細菌発現系、昆虫発現系、又は哺乳動物発現系を含むがこれらに限定されない、任意の発現系であり得る。
【0223】
細胞維持法
1つの実施態様では、本発明は、細胞療法に使用するための細胞維持法を含む。細胞療法に使用するための細胞、例えば治療用タンパク質を過剰発現するように工学操作された細胞は、タンパク質のミスフォールディング及び凝集を受ける可能性があり、これにより、早期な細胞死に至ることが認識されている。したがって、本開示のポリD/Eタンパク質を使用して、タンパク質のミスフォールディング及び凝集を防ぐか又は対処して、細胞を健康に保ち、使用できるようにすることができる。1つの実施態様では、該方法は、該細胞に1つ以上のポリD/Eタンパク質、1つ以上のポリD/Eタンパク質をコードしている核酸分子、又はその組合せを投与する工程を含む。
【0224】
実験実施例
本発明は、以下の実験実施例を参照することによってさらに詳述される。これらの実施例は、単に説明のために提供され、特記されない限り、限定するものではない。したがって、本発明は、いずれにしても、以下の実施例に限定されていると捉えるべきではなく、むしろ、本明細書において提供された教義の結果として、明らかとなる任意の及び全ての変化形を包含すると捉えられるべきである。
【0225】
さらに説明することなく、当業者は、以前の記載及び以下の説明的実施例を使用して、本発明を作製及び利用し、特許請求された方法を実践することができると考えられている。それ故、以下のデータの裏付けのある実施例は、本発明の好ましい実施態様を具体的に指摘し、いずれにしても開示の残りを限定するものと捉えられるべきではない。
【0226】
実施例1:DAXXは、新規な種類のタンパク質のフォールディングの可能因子を示す
多様な細胞内プロセスに関与しているポリD/Eタンパク質であるDAXX(Yang, X., et al., Cell 89, 1067-1076, 1997; Chang, H. Y., et al., Science 281, 1860-1863, 1998; Perlman, R., et al., Nat Cell Biol 3, 708-714, 2001; Zhao, L. Y., et al., JBiol Chem 279, 50566-50579, 2004; Tang, J., et al., Nat Cell Biol 8, 855-862, 2006; Lewis, P. W., et al., Proc Natl Acad Sci USA 107,14075-14080, 2010; Song, M. S., et al., Nature 455, 813-817, 2008; Mahmud, I. & Liao, D., Nucleic Acids Res 47, 7734-7752, 2019)は、アポトーシス受容体Fas(CD95/Apo-1としても知られる)の細胞内デスドメインと関連したアダプタータンパク質として初めて同定された(Yang, X., et al., Cell 89, 1067-1076, 1997; Chang, H. Y., et al., Science 281, 1860-1863, 1998)。それは続いて、さらなるアポトーシスのシナリオ及び幅広い他の細胞内プロセスにも関与していた(Perlman, R., et al., Nat Cell Biol 3, 708-714, 2001; Zhao, L. Y., et al., J Biol Chem 279, 50566-50579, 2004; Tang, J., et al., Nat Cell Biol 8, 855-862, 2006; Lewis, P. W., et al., Proc Natl Acad Sci USA 107, 14075-14080, 2010; Song, M. S., et al., Nature 455, 813-817, 2008; Mahmud, I. & Liao, D., Nucleic Acids Res 47, 7734-7752, 2019)。Daxxの欠損症により、マウスの胚の致死がもたらされ(Michaelson, J. S., et al., Genes Dev 13, 1918-1923; 199)、一方、DAXXの再発性体細胞突然変異は、ヒト腫瘍に関連している(Jiao, Y., et al., Science 331, 1199-1203, 2011; Gopal, R. K., et al., Cancer Cell 34, 242-255, 2018)。大半の場合には、その作用について具体的な機序が提唱されているが、DAXXと数多くの細胞内タンパク質との会合は、DAXXが、その顕著に多様な機能の基礎になっているか又は寄与する生化学活性を有しているかどうかに関して、興味ある疑問を発生させる。それ故、このような統合した活性が、DAXXに存在する場合には、それはタンパク質のフォールディングに関連している可能性があると理論付けられた。
【0227】
本明細書において、DAXXが、いくつかのタンパク質フォールディング活性を有することが示されている。DAXXは凝集を防ぎ、既存の凝集物を可溶化し、ミスフォールドされたモデル基質の種、及び神経変性に関連したタンパク質をアンフォールドする。特に、DAXXは、そのインビボで検証されたクライアントタンパク質、腫瘍サプレッサーp53及びその主なアンタゴニストのMDM2の凝集を効率的に防ぎかつ逆行させる。DAXXはまた、腫瘍に関連し凝集しがちなp53突然変異体の天然の立体構造及び機能を回復し、それらの発癌特性を低減させることができる。これらのDAXX活性は、ATP非依存性であり、その代わりに、ポリD/E領域に依拠する。ANP32A及びSETを含む、他のポリD/Eタンパク質もまた、独立型のATP非依存性分子シャペロン、脱凝集酵素、及びアンフォルダーゼとして機能することができる。したがって、ポリD/Eタンパク質はおそらく、別個の機序を介して作動する、多機能タンパク質管理制御システムを構成する。
【0228】
結果
DAXXは効果的な分子シャペロンである
分子シャペロンは、タンパク質のミスフォールディング及び凝集を抑制する(Balchin, D., et al., Science 353, aac4354, 2016))。DAXXが分子シャペロンとして作用できるかどうかを調べるために、組換え完全長DAXXタンパク質を、細菌細胞、昆虫細胞、及び哺乳動物細胞から精製し(図5A~5E)、シャペロンのモデル基質のルシフェラーゼ及び神経変性に関連したミスフォールディングしがちなタンパク質に対してそれを試験した。ルシフェラーゼを高温でインキュベートした場合、それは酵素活性を急速に失い、光散乱によって検出可能な凝集物へと合体した。細菌から精製されたDAXXは、ルシフェラーゼを、熱誘発不活化(図1A及び9F)、及びそのコシャペロンのHsp40と共にあるHsp70に似た、凝集(図1bB)から防御した。昆虫Sf9及びヒトHEK293T細胞から精製されたDAXXタンパク質もまた、ルシフェラーゼが熱変性するのを防御した(図5G~5J)。
【0229】
神経変性疾患に関連したタンパク質は、アミロイド原線維を含む、凝集した種へと自発的に集合し得る(Knowles, T. P., et al., Nat Rev Mol Cell Biol 15, 384-396, 2014)。インビトロでインキュベートすると、脊髄小脳失調症1型(SCA1)に関連している、増幅したポリグルタミン鎖を有するアタキシン-1タンパク質(アタキシン1 82Q)は、ペレット化可能な凝集物を形成し、これはドデシル硫酸ナトリウム(SDS)(フィコエリトリン、PE)を用いて溶解できた。DAXXは、アタキシン1 82Qの凝集を強力に防ぎ、事実上全てのアタキシン1 82Q分子を上清(SN)中に保持した(図1C)。
【0230】
原線維軸に垂直に積み重なったβ鎖からなる(クロスβ構造)、高度な秩序を示すアミロイド原線維は、パーキンソン病(PD)及びアルツハイマー病(AD)を含む、神経変性疾患の病理学的特徴である(Knowles, T. P., et al., Nat Rev Mol Cell Biol 15, 384-396, 2014)。DAXXは、チオフラビンT(ThT)結合アッセイ(図1D)、電子顕微鏡(EM)(図1E)、及びSDS耐性(SR)並びにペレット凝集物を検出するドットブロットアッセイ(図1F)によって示されるように、パーキンソン病に関連したタンパク質のα-シヌクレイン(α-Syn)の線維化を抑制した。少量のDAXX(0.1~0.4μM)は、約175倍から700倍モル過剰(70μM)であったα-シヌクレインモノマーの凝集を防ぐのに十分であった。このDAXX活性は、Hsp70/Hsp40よりも強力であり、酵母脱凝集酵素Hsp104の増強形態であるHsp70/Hsp40+Hsp104A503Sと同等であるようであった(Jackrel, M. E., et al., Cell 156, 170-182, 2014)。
【0231】
アミロイド原線維は、プリオン様の自己を鋳型とする様式で増殖し得、この特性は、患者において相互接続されたニューロン領域に沿って原線維凝集物が広がる基盤のようである(Jucker, M. & Walker, L. C., Nature 501, 45-51, 2013)。可溶性α-シヌクレインモノマーの凝集は、α-シヌクレインの予め形成された原線維(PFF)によって加速された(図6A)。DAXXは、用量依存的にα-シヌクレインモノマーに対して準化学量論的なモル比で、この播種された線維化を抑制し、比較的高い用量でそれをほぼ完全に遮断した(図6B)。
【0232】
タンパク質の線維化に対するDAXXの効果をさらに評価するために、より強い凝集傾向を有する基質である、アルツハイマー病に関連したアミロイドβペプチドAβ42が使用された。DAXXは、低いモル比(1:200から1:17)でAβ42の線維化を抑制し、延長したインキュベーション後でさえも、それを可溶化状態に維持した(図1G、1H、及び6C~6E)。結果として、DAXXの存在下において、Aβ42モノマーは、新たなAβ42モノマーの凝集を加速する、PFFを形成できなかった(図6F)。さらに、DAXXは、Aβ42PFFにより誘発される新たなAβ42モノマーの凝集をほぼ完全に消失させた(図6G)。それ故、DAXXは、疾患関連タンパク質の自発的凝集及び播種による凝集の両方を抑制する。
【0233】
線維化の前に、α-シヌクレイン及びAβ42モノマーは、神経毒性である可溶性オリゴマーを形成する(Kayed, R., et al., Science 300, 486-489, 2003)。DAXXは、Hsp70/Hsp40-Hsp104A503Sと似た、様々なサイズのα-シヌクレインオリゴマーの形成を遮断した(図1E及び1F)。さらに、単独でプレインキュベートされたAβ42ペプチドは、ヒト神経芽細胞腫SH-SY5Y細胞に対して毒性であったが、DAXXと共にプレインキュベートされたAβ42ペプチドは、最小限の毒性を示した(図11)。それ故、DAXXは、毒性の前原線維オリゴマーの形成を防ぐ。
【0234】
古典的シャペロンとは異なり、DAXXの活性は、ATPの添加を必要とせず(図1A~1H、5F~5J、及び6B~6H);ATP-ジホスホヒドロラーゼアピラーゼの処理によって影響も受けなかった(図6H及び6I)。DAXXは、ATPに結合することができなかった(図6J)。古典的な分子シャペロンはしばしば、ダイマー又は大型のオリゴマー複合体へと集合する(Balchin, D., et al., Science 353, aac4354, 2016)。対照的に、サイズ排除クロマトグラフィー及び化学的架橋研究は、DAXXが、モノマーとして主に存在することを示唆した(図6K及び6L)。
【0235】
DAXXはタンパク質脱凝集酵素である
脱凝集酵素は、既存のタンパク質凝集物を溶解し、ミスフォールドタンパク質のリフォールディングを許容し、したがって、エネルギー的にコストのかかるタンパク質の分解及び再合成のプロセスは回避される(Saibil, H., Nat Rev Mol Cell Biol 14, 630-642, 2013)。細菌から精製されたDAXXタンパク質は、熱による変性によって生成したルシフェラーゼ凝集物を溶解することができ、時間依存的及び用量依存的にそれらを再活性化することができた(図2A及び7A~C)。Sf9細胞及びHEK293T細胞から精製されたDAXXタンパク質は、類似の能力を示した(図7D~7F)。DAXXは、5倍過剰でルシフェラーゼ活性の最大の回復を達成した(図7G)。円二色性(CD)分光分析は、DAXXが、熱で処理されたルシフェラーゼのβ鎖含量を、非加熱ルシフェラーゼのそれに近いレベルまで減少させ(図2B及び7H)、このことは、DAXXが、変性ルシフェラーゼのコア構造を、天然に近い状態に戻すことを示す。
【0236】
ルシフェラーゼは、熱処理時に比較的小さなサイズの凝集物を形成したが、それは尿素による処理時には大きなサイズの凝集物を生成した(図7I)(Glover, J. R. & Lindquist, S., Cell 94, 73-82, 1998)。DAXXは、尿素により生成されたルシフェラーゼ凝集物に対して殆ど活性を示さなかったが、一方、Hsp70/Hsp40-Hsp104A503Sは、低い活性を示した(図7J~7L)。疾患関連タンパク質について試験した場合、DAXXは、いくつかの凝集物に対しては強力な活性を示したが、他の凝集物に対しては示さなかった。DAXXは、無定形なアタキシン1 82Q凝集物を容易に解体し(図2C)、事実上全てのAβ42原線維を可溶性状態へと変換することができた(図2D及び2E)。しかしながら、DAXXは、単独ではα-シヌクレイン原線維を溶解することができず;脱凝集のためにHsp70/Hsp40-Hsp104A503Sと相乗作用することもなかった(図7M~7P)。そのシャペロン活性について、DAXXの脱凝集酵素活性は、ATPとは独立していた(図2A~2E及び7A~7P)。
【0237】
DAXXは、タンパク質のアンフォルダーゼである
アンフォルダーゼは、動力学的に捕捉された状態から、安定でミスフォールドされたモノマーを解放することができ、これは、以前にHsp70シャペロン系について示されていた特性である(Jackrel, M. E., et al., Cell 156, 170-182, 2014; Sharma, S. K., et al., Nat Chem Biol 6, 914-920, 2010)。DAXXが、アンフォルダーゼ活性を有しているかどうかを試験するために、本発明者らは、ルシフェラーゼ突然変異体LucDを使用し、これは反復凍結解凍サイクル時には緻密でモノマーのミスフォールドされた状態をとる[[20]]。ミスフォールドLucDモノマーは、天然のLucDよりも多くのチオフラビンTに結合し、高いβ-シート含量を反映している(Sharma, S. K., et al., Nat Chem Biol 6, 914-920, 2010)。DAXXは、ミスフォールドLucDモノマーのチオフラビンTへの結合を減少させ、これはアンフォールディング活性に合致する(図2F)。短時間でのトリプシンによる消化に対する感受性は、アンフォールド状態についての別の指標である(図11A20。DAXXと共に短時間(2分間)のインキュベーションは、トリプシンに対するLucDの感受性を増強し、このことは、緻密なLucDモノマーの迅速なアンフォールディングを示唆し、一方、DAXXと共により長い時間のインキュベーション(5~30分間)により、トリプシンの酵素活性は増加するが、トリプシンに対するLucDの感受性は徐々に低下し(図2G、8B及び8C)、このことは天然状態へのLucDのリフォールディングを示す。これらのDAXXの効果は、Hsp70/Hsp40-Hsp104A503Sのそれと類似していた。さらに、DAXXの存在下におけるLucDの再活性化は、飽和動態に従い、見かけのVmax’及びK’は、Hsp70/Hsp40-Hsp104A503Sの存在下のものと同等であった(図2H)。要するに、これらの結果は、DAXXが、ミスフォールドモノマーをリフォールドするための触媒としての役目を果たすことを示唆する。
【0238】
細胞内でのDAXXの効果
細胞内でのタンパク質凝集に対するDAXXの効果を評価するために、それを、核局在化ルシフェラーゼ(nLuc)又はその構造の不安定化された誘導体(nLucDM)と共にHEK293T細胞において同時発現させた(Gupta, R., et al., Nat Methods 8, 879-884, 2011)。DAXXは、用量依存的に、nLucDMのレベルを上昇させたが、nLucは上昇させなかった(図8D)。さらに、U2OS細胞では、DAXXは、アタキシン1 82Q封入物のサイズ及び数を減少させ、その効果はHSP70よりも強力であった(図2I、8E及び8F)。
【0239】
オリゴマー中間体に対するDAXXの効果をさらに評価するために、二分子蛍光補完(BiFC)システムを使用し、ここではα-シヌクレインをツメガエルタンパク質のN末端(V1)断片及びC末端(V2)断片に融合させた(図8G)(Outeiro, T. F., et al., PLoS One 3, e1867, 2008)。V1-α-シヌクレイン(V1S)及びα-シヌクレイン-V2(SV2)を個々にではなく一緒に発現させた場合に、ツメガエル蛍光の再構成が起こり(図8H~8J)、分裂しているツメガエルの部分が近づき、これはα-シヌクレインのオリゴマー化を反映している。DAXXは、BiFCシグナルを顕著に減少させたが、V1S及びSV2タンパク質レベルは減少させなかった(図8H~8J)。要するに、これらの結果は、DAXXが、細胞内の凝集物及び前原線維オリゴマーの形成を抑制することを示す。
【0240】
ポリD/Eドメインの役割
タンパク質のフォールディングを支えるためのDAXXの様々な活動は、ミスフォールドされた立体構造を認識する内在的能力を示唆した。一貫して、DAXX及びnLucを、HEK293T細胞において同時発現させた場合、それらの相互作用は、熱ショック時に増加した(図9A)。インビトロで、DAXXは、天然ルシフェラーゼよりも、熱変性ルシフェラーゼに優先的に結合し(図9B)、このことは、DAXXが、ミスフォールドされたポリペプチドと、同ポリペプチドの天然の立体配座体を区別することができることを示す。
【0241】
古典的な分子シャペロン及び脱凝集酵素は、疎水性アミノ酸に富んだ、アンフォールドタンパク質の鎖状ペプチドセグメントを認識することができる(Balchin, D., et al., Science 353, aac4354, 2016)。DAXXがミスフォールドタンパク質を認識する分子的基礎を定義するために、ルシフェラーゼ、4つの生理学的に関連したクライアントタンパク質(p53、MDM2、H3.3及びH4)(Zhao, L. Y., et al., J Biol Chem 279, 50566-50579, 2004; Tang, J., et al., Nat Cell Biol 8, 855-862, 2006; Lewis, P. W., et al., Proc Natl Acad Sci USA 107, 14075-14080, 2010)、及びDAXXそれ自体に由来するペプチドからなる、セルロースに結合したペプチドライブラリーが作製された。DAXXは、このライブラリーの小さなサブセットに結合し(図9c)、このことは、それが異なるアミノ酸組成を有するペプチドを識別できることを示す。全てのペプチドライブラリーに対する、DAXX相互作用性ペプチドにおける各アミノ酸残基の相対的存在率の分析は、DAXXが、塩基性残基のアルギニン及びリジンを強く好み、より低い程度では、疎水性残基のイソロイシン及びロイシンを好み、酸性残基アスパラギン酸及びグルタミン酸;極性残基システイン、アスパラギン及びセリン;並びに芳香族残基トリプトファンを好まないことが明らかとなった(図3A)。それ故、DAXXは、一部には静電気的相互作用を通して、ミスフォールドタンパク質を認識する可能性が高い。
【0242】
この見解を試験するために、変性ルシフェラーゼを回復するDAXXの活性を、漸増塩濃度(0~300mMの塩化カリウム)の存在下で調べた。DAXXの活性は最初に強くなり(0~25mM)、最大(25~150mM)に達し、その後、徐々に下降した(150~300mM)(図3B)。これに対して、Hsp70/Hsp40-Hsp104A503Sの活性は、主に未変化のままであった(図3B)。高いイオン強度におけるDAXX活性の減少は、静電気的相互作用の関与に合致する。しかし、その活性の初期の増加及びその後の維持は、核酸などのポリアニオンからDAXXを区別し、これは、塩の増加と共に活性の単調な減少を示す(Rentzeperis, D., Jonsson, T. & Sauer, R. T., Nat Struct Biol 6, 569-573, 1999)。したがって、DAXXは、調節的に、静電気的相互作用を利用し得る。
【0243】
注目すべきことには、DAXXは、主にアスパラギン酸及びグルタミン酸の領域を含む(図9D)(Yang, X., et al., Cell 89, 1067-1076, 1997)。このポリD/E領域を欠失(ΔD/E)しているか又は殆どそれからなる(D/E)突然変異体が作製された(図9E)。DAXXΔD/Eは、熱による失活からルシフェラーゼを防御しなかったか(図3C)、ルシフェラーゼの凝集物を可溶化しなかったか(図3D)、又はLucDモノマーをアンフォールドせず(図9F~9H);DAXX D/Eもそうしなかった。したがって、DAXXのポリD/E領域は、様々なタンパク質フォールディング活性にとって、不十分であるが必要である。
【0244】
他のポリD/Eタンパク質の活性
1つ以上のアスパラギン酸及びグルタミン酸の連続配列(酸性の一続き)を含む伸長されたポリD/E領域を含有しているタンパク質が、初めて1970年代に報告され(Walker, J. M., et al., Nature 271,281-282, 1978)、続いて様々な真核細胞において発見された(Karlin, S., et al., Proc Natl Acad Sci USA 99, 333-338, 2002)。他のポリD/Eタンパク質がタンパク質のフォールディングを促進できるかどうかを調べるために、本発明者らは、ANP32A及びSETを分析し、そのどちらもそれらのC末端領域にポリD/E領域を含有している(図10A)(Adachi, Y., et al., J Biol Chem 269, 2258-2262, 1994; Vaesen, M., et al., Biol Chem Hoppe Seyler 375, 113-126, 1994)。組換えANP32A及びSETタンパク質は、ルシフェラーゼが、熱誘発性凝集するのを防御し(図3E及び3F)、アタキシン1 82Qが自発的に凝集するのを防いだ(図3G)。しかしながら、DAXXとは異なり、ANP32A及びSETは、α-シヌクレインの線維化を遮断しなかった(図10B及び10C)。
【0245】
ANP32A及びSETも、熱変性ルシフェラーゼを再活性化でき(図3H)、アタキシン1 82Q凝集物を溶解することができた(図3I)。DAXXと同様に、それらは、尿素変性ルシフェラーゼ(図10d)又はα-シヌクレイン原線維を再活性化することはできなかった(データは示されていない)。ANP32A及びSETは、エネルギー的に捕捉された状態からミスフォールドLucDモノマーを解放でき、それらのリフォールディングを促進することができた(図3I、10E及び10F)。SETポリD/E領域から14以上のアミノ酸を除去することにより、そのルシフェラーゼ活性化能は劇的に低下し(図10G~10I)、このことは、ポリD/E領域の大半が至適活性に必要とされることを示唆する。
【0246】
ポリD/Eタンパク質は、比較的長い酸性の一続きに基づいて以前に調査された(Karlin, S., et al., Proc Natl Acad Sci USA99, 333-338, 2002; Wang, D. et al., Nature 538, 118-122, 2016)。DAXX、ANP32A及びSETにおけるポリD/Eドメインの分析は、アスパラギン酸残基及びグルタミン酸残基の出現が、50アミノ酸窓において35に等しいか又はそれ以上であることを示した。この基準を使用して、様々なプロテオームが探索され、後生動物においてかなり多数のポリD/Eドメインタンパク質が同定され、これにはヒトにおいて45、そしてマウスにおいて51が含まれる。これらのタンパク質はまた、アラビドプシス(Arabidopsos)(25)及びサッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisae)(18)にも存在するが、大腸菌(E.coli)には存在しない(図10J及び13)。遺伝子オントロジー分析は、ヒトポリD/Eタンパク質が、様々な細胞内プロセスに関与していることを示した(図10K及び10L)。これらのタンパク質の正確な数は、その活性に寄与するポリD/Eドメインの組成のさらなる分析を必要とする。それにも関わらず、ポリD/Eタンパク質は、真核細胞ゲノムにおいて高頻度に見られるようであり、それらの数は、進化中にも有意に増幅している。
【0247】
DAXXシャペロンによる、p53及びMDM2のフォールディング
ポリD/Eタンパク質が、それらのインビボで検証されたクライアントタンパク質のフォールディングを促進するかどうかを評価するために、p53及びそのユビキチンリガーゼであるMDM2に対するDAXXの効果を調べた(Zhao, L. Y., et al., J Biol Chem 279, 50566-50579, 2004; Tang, J., et al., Nat Cell Biol 8, 855-862, 2006)。p53は、非常に不安定なタンパク質であり、精製された組換えp53は、容易にミスフォールドされそして凝集する(Butler, J. S. & Loh, S. N., Protein Sci 15, 2457-2465, 2006)。DAXXは、実質的に全てのp53分子を可溶化形に維持しつつ、p53の凝集を遮断した(図4A)。p53はまたアミロイド原線維も形成し得(Ishimaru, D. et al., Biochemistry 42, 9022-9027, 2003; Ano Bom, A. P. et al., J Biol Chem 287, 28152-28162, 2012)、これも同様にDAXXによって消失した(図11A)。さらに、DAXXは、既存のp53凝集物に対して強力な脱凝集酵素活性を示し、実質的にそれら全てを可溶性状態へと変換して戻した(図4B)。これに対して、DAXXΔD/EもDAXX D/Eのどちらも、p53に対してシャペロン活性及び脱凝集酵素活性を示さなかった(図11B及び11C)。
【0248】
野生型(PAb1620)又は突然変異型(PAb240)のp53の立体構造に対して特異的な抗体を使用して、本発明者らは、DAXXが、ミスフォールドされたp53を、その天然の立体構造へと回復したことを観察した(図4C)。さらに、サーマル変性シフトアッセイ(Zhang, R. & Monsma, F., Curr Opin Drug Discov Devel 13, 389-402, 2010)は、DAXXは天然p53の転移温度(T)に有意に影響を及ぼさなかったが、それは、変性p53の転移温度を、天然p53の転移温度まで上昇させたことを示した(図11D及び11E)。
【0249】
p53について、DAXXはまた、凝集物からMDM2分子を可溶化することができ、そしてそれらの天然の立体構造を回復した(図4D、11G及び11H)。DAXXは、天然のMDM2(n-MDM2)により媒介されるp53のユビキチン化を増強し、熱処理されたMDM2(d-MDM2)に対するリガーゼ活性を部分的に回復した(図4E及び11I)。MDM2は、天然p53よりも容易に、変性p53をユビキチン化した。DAXXとのプレインキュベーションは、変性p53のユビキチン化を再び減少させ(図11J)、このことはDAXXがp53の天然の立体構造を回復することを示す。
【0250】
DAXXが、MDM2により媒介されるp53のユビキチン化を促進できることと合致して、DAXXは、U2OS細胞におけるp53タンパク質レベルを低下させた(図11K及び11L)。DAXXはまた、p53が誘導性発現されていたH1299細胞において、p53のタンパク質レベルを低下させ、p53標的遺伝子の発現を低下させた(図11M~11O)。まとめると、これらの結果は、DAXXが、p53及びMDM2の両方の天然立体構造を維持し、p53-MDM2調節ネットワークの頑強さを増強させることを示す。
【0251】
突然変異体p53に対するDAXXの効果
p53は、ヒト腫瘍において最も頻繁に突然変異する遺伝子である(Muller, P. A. & Vousden, K. H., Cancer Cell 25, 304-317, 2014)。腫瘍関連突然変異のかなりの割合が、p53タンパク質の立体構造を不安定化させ、その凝集を加速させ、より高悪性度の腫瘍表現型の原因となる。DAXXが突然変異体p53の機能を救出することができるかどうかを調べるために、立体構造突然変異の「ホットスポット」であるR175Hが使用された。野生型p53と比較して、p53R175Hはより速いペースで凝集した。にもかかわらず、DAXXは、p53R175Hの凝集をほぼ完全に妨げた(図12A)。p53R175Hはより容易にアミロイド原線維を生成し、これは再びDAXXによって効果的に遮断された(図4F)。DAXXはまた、予め形成されたp53R175HのPFFが野生型p53の線維化を誘導することを不可能にさせた(図12B)。さらに、DAXXは、ほぼすべての既存のp53R175Hの不溶性凝集物を、溶液へと戻すように転移させることができた(図4G)。U2OS細胞において、DAXXは、蛍光輝点として出現したp53R175Hの凝集物を強力に減少させた(図4H、4I及び12C)。DAXXはまた、この突然変異体を誘導性発現するH1299細胞においてp53R175Hのタンパク質レベルは減少させたが、mRNAレベルは減少させず、p21及びPumaを含むp53標的遺伝子の発現を増加させた(図11M、11N及び12D)。これらの結果は、DAXXが、p53R175Hを天然状態に変換し、それをMDM2により媒介される分解に対して応答性となるようにし、その正常な機能を回復することを示唆する。
【0252】
突然変異体p53及び関連した発癌表現型に対するDAXXの影響をさらに調べるために、アミロイド原線維へと凝集する立体構造的突然変異体p53R280Kを有していた乳癌MDA-MB-231細胞が選択された(Ano Bom, A. P. et al., J Biol Chem 287, 28152-28162, 2012)。独立した短鎖ヘアピンRNA(shRNA)によるDAXXのノックダウンは、細胞内p53R280Kの原線維凝集物を増加させた(図4J、12E及び12F)。短鎖干渉RNA(siRNA)によるDAXXのノックダウンは、類似の結果をもたらした(図4K及び12G)。これに対して、siRNA抵抗性DAXXの強制発現は、DAXX siRNAの作用を逆行させただけでなく、p53R280K凝集物をさらに減少させた(図4K及び12G)。
【0253】
DAXXのノックダウンは、接着プレート上のMDA-MB-231細胞の増殖を増加させ(図12H)、インビトロでの腫瘍原性の尺度である、軟寒天培地中でのそれらの増殖能を増強させた(図12I及び12J)。逆に、DAXXの強制発現は、MDA-MB-231細胞の接着増殖を妨害し(図12K)、これらの細胞によって形成された軟寒天コロニーの数及びサイズを、それぞれ約50%及び約40%減少させた(図4L及び12L)。要するに、これらのデータは、DAXXが、凝集しがちなp53突然変異体の天然の立体構造及び機能を回復し得、それらの発癌特性を低減させ得ることを示唆する。
【0254】
DAXXはタウの凝集を防ぐ
神経変性疾患への適用を決定するために、タウの分子シャペロンとしてDAXXが機能する能力を調べた。ヘパリンの存在下でインキュベートすると、組換えタウタンパク質は、予想された通り(Goedert, M. et al., Nature, 383:550-553, 1996)、アミロイド原線維を自発的に産生した。これは、アミロイド特異的色素であるチオフラビンT(ThT)に対する増加した結合によって(図14A)、並びに、上清(SN)中の可溶性タウ、及びペレット中のSDS可溶性凝集物(PE)及びSDS抵抗性凝集物(SR)を検出するウェスタンブロットアッセイ及びドットブロットアッセイ(図14B)によって示された。HEK293T細胞から精製されたFlag-DAXXは、低い準化学量論的な比でタウの線維化を効率的に防止し、1:20又は1:10のタウに対するモル比で約50%減少させ(図14A)、タウ分子の大半を可溶性状態に維持した(図14B)。この観察は、DAXXが、タウの分子シャペロンであり、そのミスフォールディング及び凝集を防ぐことを示す。ATP加水分解に由来するエネルギーによって駆動される多成分機構である、HSP70及びHSP90の系などの古典的シャペロンとは異なり(Balchin, D., et al., Science, 353:aac4354, 2016)、DAXXは、単独で及びATPの非存在下において、タウの凝集を防ぐ(図14A及び14B)。
【0255】
DAXXは、既存のタウの原線維を溶解する
既存のタウ原線維と共にインキュベートした場合、Flag-DAXXは、これらの凝集物を部分的に溶解することができ、チオフラビンTに対するそれらの結合を減少させ(図14C)、これらの凝集物のかなりの部分を可溶性状態へと変換した(図14D)。したがって、DAXXはまた、タウの脱凝集酵素でもある。その分子シャペロン活性のために、DAXXは、補助因子又はATPを用いることなく、タウの凝集物を溶解する。
【0256】
DAXXは、細胞内でタウが、不溶性原線維及び可溶性オリゴマーへと凝集するのを防ぐ
細胞内でのタウの凝集に対するDAXXの効果を調べるために、家族性前頭側頭葉変性症に関連している、P301L突然変異を有しているヒトタウ(2N4R)の最長のアイソフォームの増強緑色蛍光タンパク質(GFP)融合物を使用した(Dumanchin, C., et al., Human Molecular Genetics, 7:1825-1829, 1998; Hutton, M., et al., Nature, 393:702-705, 1998)。単独でHEK293細胞において発現させると、GFP-タウP301Lのみが、細胞溶解液中に凝集した種を形成し、これは沈降アッセイにおいて不溶性ペレット(PE)画分において検出された(図15A)。DAXXは、GFP-タウP301L凝集物を用量依存的に減少させ、高用量で凝集物の大半を遮断することができた。これとは対照的に、DAXXは、GFP-タウP301Lの全体レベルには影響を及ぼさず(図15A)、このことはDAXXが、その分解を促進するよりもむしろ、GFP-タウP301Lの溶解度を増強することを示す。
【0257】
不溶性原線維凝集物の形成の前に、タウは、神経変性に連関した他のミスフォールディングしがちなタンパク質と同じように((Kayed, R., et al., Science, 300:486-489, 2003)、可溶性オリゴマー種へと集合し、これは神経毒性である可能性がある(Lasagna-Reeves, C. A., et al., Molecular Neurodegeneration, 6:39, 2011)。細胞内でタウオリゴマーに対するDAXXの効果を評価するために、蛍光タンパク質Venusに基づいた二分子蛍光補完(BiFC)アッセイを実施した(Shyu Y. J., et al., Biotechniques, 40:61-66, 2006)。タウを、それぞれVenusのN末端断片(VN)及びC末端断片(CN)に融合させ、タウ-VN及びタウ-VCを生成した(Tak, H., et al., PLoS One, 8:e81682, 2013)(図15B)。タウ-VN及びタウ-VCを、HEK293T細胞において、個々にではなく一緒に発現させた場合、蛍光シグナルが発生した。したがって、タウオリゴマー化は、VN部分とVC部分を近付け、Venusを再構築した(図15B~15D)。DAXXは、用量依存的に蛍光シグナルを減少させた。高用量では、DAXXはタウのオリゴマー化をほぼ完全に消失させた(図15、C及びD)。DAXXは、タウ-VN及びタウ-VCのレベルに対して全く効果を示さなかったか又は最小限の効果しか示さなかった(図15D)。したがって、DAXXは、タウオリゴマーの形成を遮断するが、分解のためにタウを標的化しない。要するに、これらの結果は、DAXXが、細胞内のタウの溶解性を増強し、それが不溶性凝集物及び可溶性オリゴマーへと自発的に凝集するのを防ぐことを示す。
【0258】
DAXXは、病原性ポリQタンパク質の凝集を低減する
ハンチンチンに対するDAXXの抑制効果を評価するために、74個のグルタミン反復配列を有するハンチントン病遺伝子の増強緑色蛍光タンパク質(GFP)でタグ化されたエキソン1断片を発現する、PC12(ラット褐色細胞腫)細胞を使用し(GFP-HDQ74)、これはドキシサイクリン(Dox)依存性テトラサイクリン発現調整プロモーターによって駆動される(PC12HD-Q74細胞と称される)(Wyttenbach, A., et al., Human Molecular Genetics, 10:1829-1845, 2001)。様々な量のDAXXをPC12HD-Q74細胞にトランスフェクトし、ドキシサイクリンによってGFP-HD Q74の発現を誘導した。図16Aによって示されているように、DAXXは、用量依存的に、ペレット化可能なGFP-HD Q74凝集物(PE)のレベルを低減した。これとは対照的に、DAXXは、上清(SN)中の可溶性GFP-HDQ74のレベルには影響を及ぼさなかった。したがって、DAXXは、凝集しているGFP-HD Q74のレベルを低減させたが、可溶性のそのレベルは低減させない。これらの結果は、アタキシン1 82Q凝集の抑制におけるDAXXの強力な効果と共に(Huang, L., et al., Nature, 597:132-137, 2021)、DAXXが、病原性ポリQタンパク質の凝集を防止及び逆行することにおいて非常に効果的であることを示す。
【0259】
DAXXは、ALS(筋萎縮性側索硬化症)に関連したタンパク質FUS及びTDP-43の凝集を防止する
FUS凝集物を誘導的に生成する無細胞系を使用して、FUS凝集に対するDAXXの効果を調べた。マルトース結合性タンパク質(MBP)及びFUSの緑色蛍光タンパク質(GFP)の融合物(MBP-FUS-GFP)は非常に溶解度が高い。しかしながら、融合タンパク質からMBP部分が、プロテアーゼのPreScissionによって一旦切断されると、残りの部分であるFUS-GFPは、低い溶解度を示し、徐々に凝集するようになった(Hofweber, M., et al., Cell, 173:706-719, 2018)。予想された通り、MBP-FUS-GFPをPreScissionで処理した場合、MBP-FUS-GFPは急速にFUS-GFPに変換された(10分未満)(図16B、上のパネル)。DAXXの非存在下では、SDS可溶性のFUS-GFPのレベルは、経時的に低下し(4~48時間)、このことは、FUS-GFPの一部分がSDS不溶性の凝集物を形成したことを示す(図16B、左上)。これとは対照的に、DAXXの存在下では、SDS可溶性のFUS-GFPのレベルは、全実験期間中に同じであり続け(48時間まで)、このことはDAXXが、SDS不溶性のFUS-GFPの形成を防止することを示す(図16B、右上)。これらの結果は、DAXXが、家族性ALSに関連したタンパク質のミスフォールディングを遮断することができることを示す。
【0260】
野生型TDP-43に対するDAXXの効果を調べるために、DAXX及びTDP-43をU2OS細胞において同時発現させた。単独でU2OS細胞において発現させると、TDP-43は凝集して、比較的大きな封入物となった(図16C図16E)。しかしながら、同時発現させると、DAXXは、TDP-43封入物の数及びサイズを顕著に減少させた(図16C~16E)。DAXXの抑制効果が、ポリD/E領域に依存するかどうかを評価するために(アミノ酸449~499)(図16F)、DAXX(365~740)(これはポリD/E領域を含んでいた)及びDAXXΔD/E(これはポリD/E領域を欠失していた)を使用した(図16G)。DAXX(365~740)は、TDP-43封入物の数及びサイズを減少させたが、DAXXΔD/Eは減少させなかった(図16C~16E)。それ故、TDP-43に対するDAXXの抑制活性は、ポリD/E領域に依拠する。
【0261】
家族性ALSに関連したTDP-43突然変異体に対するDAXXの効果を調べるために、GFP-TDP43 Q331K及びGFP-TDP43 M337Vを使用し、そのどちらもRNAとの結合において欠陥があった。これらの突然変異体は、ペレット化可能な凝集物(PE)を形成し、これはウェスタンブロットによって検出され得る(図16H及び16I)。DAXXの強制発現により、これらのTDP-43突然変異体によって形成された凝集物は減少したが、可溶性TDP-43(SN)は減少しなかった。それ故、DAXXはまた、TDP-43突然変異体のレベルも減少させる。要するに、これらの結果は、DAXXが、野生型及び突然変異型TDP-43のミスフォールディング及び凝集の防止において非常に効果的であることを示す。
【0262】
考察
この試験は、DAXX及び他のポリD/Eタンパク質が、タンパク質の品質管理の複数の局面(タンパク質の凝集の防止、予め形成されたタンパク質凝集物の溶解、及びモノマーのミスフォールドタンパク質のアンフォールディング)に参加し得ることを明らかとする。ここで試験されたポリD/Eタンパク質は、様々な強度を有するようであり、DAXXは、SET及びANP32Aよりも強力であり、これはこのファミリー内の階層、及び基質特異性の相違を反映し得る。DAXXは、p53及びMDM2にとって特に有効であり、このことは、ポリD/Eタンパク質が、それらのインビボでのクライアントの立体構造をモジュレートするのに必須であり得ることを示唆する。したがって、DAXX及びおそらく他のポリD/Eは、全体的な及び特定のタンパク質フォールディングプロセスの両方において役割を果たし得る。
【0263】
タンパク質のフォールディング及びミスフォールディングは、疎水性相互作用の脈絡において主に理論付けられている(Balchin, D., et al., Science 353, aac4354, 2016)。ポリD/E領域の関与は、静電気的相互作用もまた、タンパク質のフォールディング及びミスフォールディング、並びに、この領域を含有しているタンパク質の作用機序に対して有意に寄与し得ることを示唆する。それにも関わらず、DAXXは単にポリアニオンとして作用しない。むしろ、DAXXの他の部分は、動力学的にポリD/E領域の作用を調節するようである。ATP非依存性及び多機能性と共に、静電気的相互作用の重要性は、ポリD/Eタンパク質が、新規なクラスのタンパク質フォールディング可能因子を示し得ることを示し、これは古典的なATP依存性系、並びに、三分子モチーフ(TRIM)タンパク質からなるものなどのATP非依存系とは機構的に明確に異なる(Guo, L. et al., Mol Cell 55, 15-30, 2014; Zhu, G. et al., Cell Rep 33, 108418, 2020)。
【0264】
ヒト腫瘍にp53突然変異が高頻度に存在することを考えると、p53突然変異体の熱安定性及び正常な機能の回復は、癌療法にとって非常に有益であろう(Bykov, V. J. N., et al., Nat Rev Cancer 18, 89-102, 2018)。それにも関わらず、このような結果を達成するための低分子化合物の開発は、1つのp53突然変異体についてさえも困難である。この研究は、DAXXが、多種多様なp53突然変異体に対する活性を回復することができることを示唆する。それ故、DAXXの機能を支えることは、突然変異体p53の腫瘍抑制機能を治療的に再確立するための代替的なアプローチを示し得る。
【0265】
神経変性疾患は、人口の高齢化につれて、次第に高頻度に出現するようになっている。これらの疾患は進行性であり最終的には致死的であるが、依然として治癒不可能である。DAXXなどの個々のポリD/Eタンパク質の効力及び多機能性は、これらの疾患の処置において、それらを価値あるものとし得る。ポリD/Eタンパク質を支える低分子化合物は有益であり得るが、個々のポリD/Eタンパク質の直接的な発現は代替選択肢を与え得る。神経変性疾患は、一部には血液脳関門という高い障壁並びに全身的及び慢性的に投与される低分子薬の強い副作用に因り、従来の薬理学的処置には不応性であった。アデノ随伴ウイルスによって媒介される遺伝子導入は、中枢神経障害を処置するための概念的に重要なアプローチとなっている(Deverman, B. E., et al., Nature Reviews Drug Discovery, 17:641-659, 2018))。アデノ随伴ウイルスは、1回の投与後に、分裂していないニューロンを形質導入することができ、治療用遺伝子の恒久的な発現を可能とし(Deverman, B. E., et al., Nature Reviews Drug Discovery, 17:641:659, 2018; Naldini, L., Journal of Biological Chemistry, 295:9676-9690, 2015)、アデノ随伴ウイルスにより媒介される遺伝子療法の可能性は、近年のプラスの臨床成績によって強調されている(Mendell, J. r., et al., New England Journal of Medicine, 377:1713-1722, 2017)。神経変性に関連した様々なタンパク質の凝集を抑制する際のそれらの強力な効果から、DAXX及び他のポリD/Eタンパク質は、疾患修飾療法を可能とし得る。
【0266】
特定のタンパク質ミスホールディング病は、細胞外環境において凝集したタンパク質が関与する。例えば、アルツハイマー病は、細胞内のタウ凝集物に加えて、細胞外のアミロイドβ(Aβ)斑に関連し、一方、生物及び組織の細胞外環境に抗体の軽鎖タンパク質が、異常に蓄積する場合に、ALアミロイドーシスが起こる。本発明のデータは、DAXXが、アミロイドβの凝集を防ぎかつ逆行することができることを実証する。それ故、DAXX(及び他のポリD/Eタンパク質)を使用する1つの方法は、中枢神経系における細胞外アミロイドβ斑及び他の凝集物を排除するために、脳脊髄液にこれらのタンパク質を投与することである。あるいは、DAXX及び他のポリD/Eタンパク質を静脈内に投与して、脳内の凝集物並びに他の組織及び臓器の凝集物を排除することができる。
【0267】
細胞外効果を達成するための別の方法は、細胞外環境へ分泌させるために、ある型のDAXX(及び他のポリD/Eタンパク質)を細胞内において発現させることである。例えば、DAXXを、小胞体膜を横断し分泌経路へと移行するようにタンパク質を仕向ける、分泌シグナルペプチドと融合させてもよい。分泌シグナルペプチドを有する大半のタンパク質は、最終的には細胞外環境に分泌される。
【0268】
方法
データの報告
サンプルサイズを予め決定するために、統計学的方法は全く使用されなかった。実験は無作為化されず、治験担当者は、実験中の割り当て及び転帰の評価について知っていた。
【0269】
抗体及び組換えタンパク質
以下のタンパク質/エピトープに対する抗体は、示された業者から購入された:GAPDH(グリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ)(sc-47724)、ヒスチジン(sc-8036)、グルタチオンSトランスフェラーゼ(sc-138)、p53(DO1、sc-126)、MDM2(sc-965)、緑色蛍光タンパク質(sc9996)、DAXX(sc-8043)、α-シヌクレイン(syn211、sc-12767)(サンタクルツバイオテクノロジー社);Flag(14793番)及びDAXX(4533S版)(セルシグナリングテクノロジー社);p53(PAb1620、OP33番;PAb240、OP29番)、MDM2(OP46番)(カルバイオケム社);ヘマグルチニン(ab137838)及びルシフェラーゼ(ab21176)(アブカム社);緑色蛍光タンパク質(GTX113617)(ジーンテックス社);タウ(AHB0042)(サーモフィッシャーサイエンティフィック社);タウ(ABN454)(ミリポア社)及びβ-アミロイド1-42(805509番)(バイオレジェンド社)。セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲート抗ウサギIgG抗体(7074S番)及び抗マウスIgG抗体(7076S番)は、セルシグナリングテクノロジー社から;IRDye(登録商標)800CW(926-32211、抗ウサギ抗体)及びIRDye(登録商標)680RD(926-68070、抗マウス抗体)二次抗体はリカー社から;抗FlagM2アフィニティゲル(A2220)、3×Flagペプチド(F4799)、蛍ルシフェラーゼ(L9420)、及びAβ42(A9810)はシグマアルドリッチ社から;熱ショックタンパク質70(HSP72、ヒト、ADI-NSP-555)、Hsp40(Hdj1、ヒト、ADI-SPP-400)、及びATP再生溶液(BML-EW9810-0100)はEnzo Life Sciences社から;6×ヒスチジン-ユビキチン(U-530)、UBE1(E-304)、及びUBE2D2(E2-622)はボストンバイオケム社から購入した。α-シヌクレイン(RP-003番、RP-001)は、プロテオス社から購入した。ウェスタンブロットについては、抗DAXX抗体、p53、MDM2、及びα-シヌクレイン抗体は、1:1000の希釈率で、IRDye(登録商標)800CW及びIRDye(登録商標)680RDは1:10,000の希釈率で、他の全ての抗体は1:2,000の希釈率で使用された。
【0270】
プラスミド
ヘマグルチニン-DAXX、Flag-DAXX、Flag-DAXXΔD/E、Flag-p53、Flag-p53R175H、Flag-MDM2、Flag-アタキシン1 82Q、HA-アタキシン1 82Q、Flag-nFluc-GFP及びFlag-nFlucDM-GFPをコードしているプラスミドを、pRK5において構築し、GFP-Hsp70を、以前に記載されている通りに(Tang, J. et al., Nat Cell Biol 8, 855-86, 2006; Guo, L. et al., Mol Cell 55, 15-30, 2014; Zhu, G. et al., Cell Rep 33, 108418, 2020; Chu, Y. & Yang, X., Oncogene 30, 1108-1116, 2011; Chen, L. et al., Cell Rep 18, 3143-3154, 2017)、pEGFP-C3において構築した。C末端の62残基が、SKLSYEQDGLHAGSPAALE(配列番号46)、続いて6×ヒスチジンタグ(pT7lucC-ヒスチジン)によって置換された、フォティヌス・ピラリス(Photinus pyralis)変異体であるLucDHisを発現しているプラスミドは、Pierre Goloubinoff博士(Sharma, S. K., et al., Nat Chem Biol 6, 914-920, 2010)からの贈り物であった。V1S及びSV2プラスミドは、α-シヌクレインを、それぞれpBiFC―VN173(アドジーン社、22010番)及びpBiFC-VC155(アドジーン社、22011番)にクローニングすることによって作製された。DAXXshRNAプラスミドは、以下のようなオリゴ配列と共にpLKO.1中に作製された:shDAXX1番、GCCTGATACCTTCCCTGACTA(配列番号47);shDAXX2番、GCCACACAATGCGATCCAGAA(配列番号48)。GST-DAXX-6×ヒスチジン及びGST-DAXX D/Eをコードしている細菌発現プラスミドを、追加のクローニングサイトを含んでいるpGEX-1λTの誘導体であるpGEX-1ZTにおいて作製した。ANP32A、SET及びSET欠失突然変異体をコードしているプラスミドを、pET28aにおいて作製した。昆虫細胞におけるタンパク質の発現のために、DAXX-6×ヒスチジンを、pFastBac-GSTにクローニングした。タウ-VN173をpBiFC-VN173(アドジーン社のプラスミド22010番)にクローニングし、タウ-VC155をpBiFC-VC155(アドジーン社のプラスミド22011番)にクローニングした。GFP-タウP301Lは、pEGFP-N1において作製され、ここではEGFP(増強緑色蛍光タンパク質)はタウタンパク質のC末端に融合されている。Flag-DAXXは、以前に記載されているようにpRK5において構築された(Huang L., et al., Nature, 597:132-137, 2021; Tang, J., et al., Nature Cell Biology, 8:855-862, 2006)。
【0271】
細胞培養
HEK293T、H1299、U2OS、MDA-MB-231、SH-SY5Y及びSf9細胞はATCCから購入した。HEK293T細胞をDMEM培地中で、H1299細胞はRPMI-1640培地中で、MDA-MB-231細胞はL15培地中で、U2OS細胞はMcCoy5培地中で、SH-SY5Y細胞はDMEM/F12(1:1)培地中で培養し、各々ペニシリン/ストレプトマイシン及び10%ウシ胎児血清を含有している。PC12HD-Q74細胞を入手し(Wyttenbach, A., et al., Human Molecular Genetics, 10:1829-1845, 2001)、75μg/mlのハイグロマイシン、ペニシリン/ストレプトマイシン、2mMのL-グルタミン、10%の熱で失活させたウマ血清(HS)、5%のテトラサイクリン仕様ウシ胎児血清(FBS)、及び100μg/mlのG418を有する高グルコースDMEM中で培養した。これらの細胞を、37℃で、5%二酸化炭素を含む加湿インキュベーター中で培養した。Sf9細胞を、抗真菌性抗生物質を含有しているSf-900III培地中で27℃で培養した。プラスミドを、リポフェクタミン2000(インビトロジェン社)を使用して培養細胞中にトランスフェクトした。
【0272】
タンパク質の精製
Hsp104A503Sは、記載(Jackrel, M. E. et al., Cell 156, 170-182, 2014)のように精製された。細菌細胞及び昆虫細胞においてDAXXを発現させるために、pGEX-GST-DAXX-6×ヒスチジンを、Rosetta2(ノバゲン社)に形質転換し、pFB-GST-DAXX-6×ヒスチジンを、sf9細胞に形質転換した。細胞を、Ni-NTA溶解緩衝液(50mMのNaHPO、300mMのNaCl、10mMのイミダゾール(pH8.0)、1mMのPMSF、2mMのジチオトレイトール、及び1mg/mLのリゾチーム)を用いて溶解し、続いて超音波処理にかけた。溶解液を、グルタチオンビーズ(GEヘルスケア社、17527901番)と共に4℃で4時間から一晩かけてインキュベートした。グルタチオンビーズを、0、0.25、0.5、1、0.5、0.25、及び0MのKClをそれぞれ含有しているNi-NTA溶解緩衝液を用いて、そしてAcTEV緩衝液(50mMのトリスHCl(pH8.0)及び0.5mMのEDTA)を用いて2回順次洗浄した。その後、ビーズは、AcTEVプロテアーゼ(インビトロジェン社、12575015番)と共に、25mMのジチオトレイトールの補充されたAcTEV緩衝液中で25℃で2~3時間インキュベートした。上清を回収し、Ni-NTAビーズ(インビトロジェン社、R90115)と共に4℃で2~4時間インキュベートした。Ni-NTAビーズを、Ni-NTA洗浄緩衝液(50mMのNaHPO、10mMのNaCl、及び10mMのイミダゾール(pH7.0))を用いて洗浄し、Ni-NTA溶出緩衝液(50mMのNaHPO、10mMのNaCl、及び500mMのイミダゾール(pH7.0))を用いて4℃で1時間かけて溶出した。溶出後、DAXX-6×ヒスチジンを、PD10脱塩カラム(GEヘルス社、GE17-0851)にトリス緩衝液(20mMのトリス-HCl、150mMのNaCl、pH7.4、2mMのジチオトレイトール)又はリン酸ナトリウム緩衝液(20mMのリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.4、0.2mMのEDTA、0.02%のアジ化ナトリウム)と共にのせた。6×ヒスチジン-ANP32A、6×ヒスチジン-SET、及び6×ヒスチジンでタグ化されたSET断片は、Ni-NTAビーズによって細菌から精製された。GST及びGST-DAXX D/Eは、グルタチオンビーズを使用して細菌から精製され、35mMの還元グルタチオンを用いて4℃で1時間かけて溶出された。
【0273】
HEK293T細胞からタンパク質を精製するために、Flag-DAXX、Flag-p53、Flag-p53R175H、Flag-MDM2、及びFlag-アタキシン1 82Qを、HEK293T細胞にトランスフェクトした。細胞を、IP溶解緩衝液(20mMのトリス-HCl(pH7.4)、150mMのNaCl、0.5%のトリトンX-100、0.5%のNP-40、及び10%グリセロール)中で超音波処理をかけながら溶解した。上清を、抗FlagM2アフィニティゲル(シグマ社)と共に4℃で4時間から一晩かけてインキュベートした。ゲルを、0、0.25、0.5、1、0.5、及び0MのKClを含有している溶解緩衝液を用いて、その後、トリス緩衝液又はリン酸ナトリウム緩衝液を用いて順次洗浄した。組換えタンパク質は、3×Flagペプチドを用いて4℃で1時間かけて溶出した。
【0274】
タンパク質を、NGCクロマトグラフィーシステム(バイオラッド社)又はAKTA FPLCシステム(GEヘルスケア社)によって駆動された、MonoQ(GE社)、Superdex200Increase10/300GL(GE社)、及び/又はSuperose6 10/300GLカラムによってさらに精製した。細菌から精製されたDAXX-6×Hisを、図1a、1b、2a、3cにおいて使用し;HEK293T細胞から精製されたFlag-DAXXは、図4A~4Gにおいて使用され;そしてsf9細胞から精製されたDAXX-6×ヒスチジンは、特記されない限り、他の実験においても使用された。
【0275】
Flag-DAXXは、以前に記載されているように(Huang L., et al., Nature, 597:132-137, 2021; Tang, J., et al., Nature Cell Biology, 8:855-862, 2006)、HEK293T細胞から精製された。Flag-DAXXプラスミドを用いてトランスフェクトされたHEK293T細胞を、IP溶解緩衝液(20mMのトリス-HCl(pH7.4)、150mMのNaCl、0.5%のトリトンX-100、0.5%のNP-40及び10%のグリセロール)中に超音波をかけながら溶解した。上清を、抗FlagM2アフィニティゲルと共に4℃で4時間から一晩かけてインキュベートした。ゲルを、追加の0、0.25、0.5、1、0.5、0.25、及び0MのKClを含有している溶解緩衝液を用いて、その後、トリス緩衝液又はリン酸ナトリウム緩衝液を用いて順次洗浄した。組換えタンパク質は、3×Flagペプチドを用いて4℃で1時間かけて溶出し、その後、濃縮し、遠心フィルターを用いて脱塩した。タウ-441(ヒトタウの最長アイソフォーム)を、以前に記載(Li, W. and Lee, V. M., Biochemistry, 45:15692-15701, 2006)されている通りに精製した。これもまた6×ヒスチジンタグに融合していたMBP-FUS-GFPは、Ni-NTA樹脂によって以前に記載(Hofweber, D.S., et al., Cell, 173:701-719, 2018)されている通りに精製された。
【0276】
タンパク質のミスフォールディング及び凝集の防止
ルシフェラーゼ不活化アッセイのために、5又は50nMのルシフェラーゼを、42℃で単独で又は示されたタンパク質の存在下で、ルシフェラーゼリフォールディング緩衝液(LRB:25mMのHEPES-KOH(pH7.4)、150mMのKAOc、10mMのMg(AOc)2及び10mMのジチオトレイトール)中で加熱した。熱ショックタンパク質を、陽性対照として使用した。ATP-Mg2+及びATP-再生系(Enzo Life Sciences社)は、熱ショックタンパク質を含む試料中に含まれたが、DAXXを含む試料中には含まれなかった。指定された場合には、濃度は、Hsp70の濃度に言及され、Hsp40及びHsp104の濃度は、Hsp70の濃度のそれぞれ半分及び二倍であった。ルシフェラーゼ活性は、ルシフェラーゼアッセイシステム(プロメガ社、E1500)を使用してマイクロプレートリーダー(バイオテック社)で測定された。データは、BioTek Gen5によって取得され、天然ルシフェラーゼ対照に対する比率として表現される。ルシフェラーゼの凝集をアッセイするために、200nMのルシフェラーゼを、42℃で単独で又は示されたタンパク質の存在下において、HEPES緩衝液(50mMのHEPES-KOH、pH7.4、50mMのKCl、5mMのMgCl、2mのジチオトレイトール)中で加熱した。ルシフェラーゼの凝集は、マイクロタイターリーダー(バイオテック社)で600nmでの吸光度を測定することによってモニタリングされた。
【0277】
アタキシン1 82Q、p53、α-シヌクレイン、及びAβ42の凝集は、沈降によってアッセイされた。示されたタンパク質の存在下で37℃で定期的に振盪しながらインキュベートした後、反応混合物を、17,000×gで4℃で15~30分間遠心分離にかけた。α-シヌクレインの上清画分を、0.1mMのスベリン酸ジスクシンイミジル(DSS、サーモサイエンティフィック社、21555番)を用いて又は用いずに25℃で30分間処理した。その後、ペレット(PE)画分及び上清(SN)画分を分離し、ウェスタンブロットによって分析した。α-シヌクレイン及びAβ42について、ペレット画分中のSDS可溶性(PE)及びSDS抵抗性(SR)凝集物、並びに、全インプット量も、ニトロセルロース膜上のドットブロットによって調べた。
【0278】
防止のために、精製されたタウ-441(10μM)を、示された濃度のFlag-DAXXの非存在下又は存在下において、37℃で24時間かけて、反応緩衝液(20mMのトリス-HCl、pH7.4、100mMのNaCl、1mMのEDTA、及び1mMのジチオトレイトール)中のヘパリン(10μM)によってタウの凝集を形成するように誘導した。タウの線維化は、以前に記載されているように(Harischandra, D. S., et al., Science Signaling, 12:aau4543, 2019))、チオフラビンTとの結合によって分析された。タウの凝集は、沈降アッセイによっても調べられた。13,000rpmで4℃で30分間かけて遠心分離にかけた後、ペレット画分を、ウェスタンブロットによって分析して、SDS可溶性(PE)無定形凝集物を検出し、ドットブロットによって分析して、比較的大きなSDS抵抗性(SR)原線維凝集物を検出した(Guo, L., et al., Molecular Cell, 55:15-30, 2014; Huang, L., et al., Nature, 597:132-137, 2021; Zhu, G., et al., Cell Reports, 33:108418, 2020)。脱凝集のために、予め形成されたタウ原線維(1μM)を、示された濃度のFlag-DAXXと共に又はその非存在下で、反応溶液(50mMのHEPES、pH7.5、50mMのKCl、5mMのMgCl、及び1mMのジチオトレイトール)中で37℃で24時間インキュベートした。反応混合物を、チオフラビンTとの結合及び上記のような沈降アッセイによって分析した。
【0279】
タンパク質の線維化
自発的及び/又はPFFにより誘発されたα-シヌクレイン、Aβ42及びp53の線維化を、変更を加えて以前に記載されている通りに(Ano Bom, A. P. et al., J Biol Chem 287, 28152-28162, 2012; Yen, C. F., et al., Sci Adv 2, e1600014, 2016; Mansson, C. et al., J Biol Chem 289, 31066-31076, 2014)、リアルタイムで揺れる誘起変換アッセイ(RT-QuIC)によって分析した。予め形成された原線維(PFF)は、α-シヌクレイン(1mg/ml)、Aβ42(10μM)、及びp53R175H(10μM)を37℃で連続的に振盪(1,000rpm)しながら、それぞれ7日間、1日間、及び2時間インキュベートすることによって作製された。PFFに、使用前に2分間超音波処理をかけた。α-シヌクレインPFF(133nM)を、10μMのチオフラビンTの存在下において、トリス-HCl緩衝液(20mMのトリス-HCl、pH7.4、150mMのNaCl)中のヒトα-シヌクレインモノマー(13.3μM)に加えた。Aβ42(10μM)の線維化は、10μMのチオフラビンTを含む、リン酸ナトリウム緩衝液(20mMのリン酸ナトリウム緩衝液、pH8.0、0.2mMのEDTA、0.2%のアジ化ナトリウム)中で実施された。示されている場合には、Aβ42PFF(6nM)を加えて線維化を誘導した。p53及びp53R175H(5μM)の線維化は、25μMのチオフラビンTを含むトリスーHCl緩衝液中で実施した。示されている場合には、p53R175HPFF(1μM)を使用して線維化を誘導した。RT-QuICアッセイを、Nunc(商標)マイクロウェル(商標)96ウェルオプティカルボトムプレート中で、マイクロプレートリーダー(バイオテック社)で実施された。反応混合物を37℃でインキュベートし、示された期間、断続的に(1分間振盪し、1分間休みのサイクル)振盪した。チオフラビンT蛍光は、実験全期間を通して、2分間毎、5分間毎、又は15分間毎に記録された。
【0280】
α-シヌクレインの線維化はまた、ペンシルバニア大学の電子顕微鏡資源研究所で透過型電子顕微鏡(EM)によってアッセイされた。試料は、陰性染色を介して染色され、FEI Tecnai-12電子顕微鏡によって走査された。
【0281】
タンパク質凝集物の脱凝集及び再活性化
ホタルルシフェラーゼ(シグマ社)を、42℃で10分間かけて熱により失活させ、ルシフェラーゼリフォールディング緩衝液(LRB:25mMのHEPES-KOH、pH7.4、150mMの酢酸カリウム、10mMの酢酸マグネシウム、及び10mMのジチオトレイトール)中で5又は50nMの最終濃度で反応に分配した。変性ルシフェラーゼを、示されたタンパク質と共に25℃で90分間又は指定した時間インキュベートした。反応混合物を、ルシフェラーゼ活性について、並びに、沈降によりルシフェラーゼの溶解度についてアッセイした。
【0282】
α-シヌクレイン原線維(0.5μMのモノマー濃度)を、GST(0.5μM)、DAXX-6×ヒスチジン(0.25、0.5又は1μM)又はHSP(0.5μM)と共に、ATP再生系(Enzo社)の存在下で、30℃で90分間インキュベートした。試料を、17,000×gで4℃で20分間遠心分離にかけた。上清を除去し、ペレットを、ペレット緩衝液(PB:50mMのトリス-HCl、pH8.0、8Mの尿素、150mMのNaCl、それに加えてプロテアーゼ阻害剤混液)中で煮沸した。その後、総試料、上清試料及びペレット試料を、ニトロセルロース膜上にブロットし、抗α-シヌクレイン抗体と共にインキュベートした。試料を、ImageJを使用して定量し、(上清中のシグナル)/(ペレット中のシグナル+上清中のシグナル)として標準化した。
【0283】
凝集したアタキシン1 82Q、p53及びp53R175Hを、これらのタンパク質を37℃で振盪しながら24~48時間インキュベートすることによって生成した。凝集したMDM2は、50℃で10~15分間の熱による失活によって生成された。凝集したアタキシン1 82Q、p53及びMDM2タンパク質を、17,000gで15分間遠心分離にかけた。ペレットを再度懸濁し、示されたタンパク質と共に25℃でインキュベートした。反応混合物を、17,000×g及び4℃で15分間遠心分離にかけた。その後、ペレット画分及び上清画分を、試料緩衝液中に再度懸濁し、ウェスタンブロットによって分析した。
【0284】
LucDについてのアンフォルダーゼアッセイ
LucDHis(LucD)は、凍結解凍サイクルによって不活化され、モノマーを、以前に記載されている通りに単離した(Sharma, S. K., et al., Nat Chem Biol 6, 914-920, 2010)。チオフラビンTアッセイのために、ミスフォールドLucDモノマー(3μM)を、示された濃度のDAXX及び60μMのチオフラビンTの存在下でインキュベートした。チオフラビンTの添加は、DAXXの活性に対して検出可能な効果は全く及ぼさなかった。チオフラビンTとの結合は、マイクロプレートリーダー(バイオテック社)によって、記載(Sharma, S. K., et al., Nat Chem Biol 6, 914-920, 2010)のような励起/発光スペクトル450/485nmで測定された。トリプシン消化アッセイのために、LucD(50nM)を、単独で又は示されたタンパク質の存在下で25℃で様々な時間かけてインキュベートした。その後、試料を、トリプシン(2.5μM)を用いて22℃で3分間処理し、ウェスタンブロットによって分析した(Sharma, S. K., et al., Nat Chem Biol 6, 914-920, 2010)。定常状態の速度論分析を、100nMのDAXX又は熱ショックタンパク質を、漸増濃度のミスフォールドLucDモノマーと共に30分間インキュベートすることによって実施した。ルシフェラーゼ活性がアッセイされた。速度論曲線を当てはめ、速度論的パラメータのVmax及びKを、グラフパッドプリズム8によって計算されたミカエリス・メンテンを使用した非線形回帰によって計算した。
【0285】
円二色性(CD)分光光度計
熱で変性させたルシフェラーゼ(1μM)を、GST及びDAXXと共に及びその非存在下で、リン酸ナトリウム緩衝液中で3時間かけて示された通りにインキュベートした。楕円率は、10mmの経路長を有する石英キュベット中で260~200nmで25℃でAviv円二色性分光光度計を使用して記録された。天然及び熱変性ルシフェラーゼ(各1μM)を、それぞれ陽性対照及び陰性対照としてのせた。生データは、CAPITO(https://data.nmr.uni-jena.de/capito/index.php)によって分析された。緩衝液又はDAXXを含んでいる緩衝液に由来するバックグランドシグナルが差し引かれた。
【0286】
ATP結合アッセイ
ATPへの結合は、ATPアフィニティ試験キット(AK-102、Jena Bioscience社)を使用してアッセイされ、これはリン酸部分(AP-ATP-アガロース)、リボース部分(EDA-ATP)、又は様々な位置でのアデニン塩基(8AH-ATP)及び(6AH-ATPアガロース)を介してATPとコンジュゲートしたアガロースビーズ、並びにATPのコンジュゲートしていないブランクのアガロースビーズを含有していた。ビーズ(50μLのスラリー)を、洗浄緩衝液を用いて3回平衡化し、その後、DAXX-6×ヒスチジン又はHsp70(各々1μg)と共に4℃で3時間僅かに攪拌しながらインキュベートした。その後、ビーズを、洗浄緩衝液で3回洗浄し、結合したタンパク質を、溶出緩衝液を用いて溶出した。インプットタンパク質及び結合したタンパク質を、ウェスタンブロットによって分析した。
【0287】
ペプチドアレイ
セルロースに結合したペプチドアレイが、6つのタンパク質配列(ルシフェラーゼ、p53、MDM2、H3.3、H4及びDAXX)を示す600個のペプチドのために、Biopolymers and Proteomics Core、コッホ研究所、マサチューセッツ工科大学によって作製された。配列は、10個のアミノ酸が重複している、鎖状の13アミノ酸長として合成された。組換えDAXXを使用して、ペプチドアッセイをプローブし、DAXXに結合することができたペプチドは、抗DAXX抗体によって検出された。アレイを走査し、相対的なアミノ酸の出現率を決定した。全ペプチドにおけるその出現率と比較した、プローブされたペプチド中の各アミノ酸の出現率が決定された。
【0288】
サーマルシフトアッセイ
サーマルシフトアッセイは、記載(Zhang, R. & Monsma, F., Curr Opin Drug Discov Devel 13, 389-402, 2010)の通りに実施された。変性p53又はMDM2(各1μM)を、DAXXと共に又はその非存在下で、総容量9μL中で25℃で一晩かけてインキュベートした。1μLのサイプロオレンジ(インビトロジェン社、使用前に1:300に希釈)を、384ウェルプレートフォーマット中の各試料に加えた。蛍光強度を、1分間あたりの1℃の速度で、アプライドバイオシステムズ7500逆転写PCR機器を使用してモニタリングした。DAXXシグナルは、バックグラウンドとしてインキュベートされた試料から差し引かれた。
【0289】
インビトでのユビキチン化
前以て変性させたFlag-p53(20nM)又は予め変性させたFlag-MDM2(45nM)を、Flag-DAXX(100nM)と共に25℃で3時間インキュベートした。予め変性させたMDM2について、20nMのZn2+を反応混合物に加え、Zn2+にキレートしているRINGドメインのフォールディングを促進した。インビトロでの反応を、100nMのE1、1μMのE2、及び2μgのヒスチジン-ユビキチン(His-Ub)を使用して、示されたタンパク質を含む、最終容量20μlの反応緩衝液(40mMのトリス-HCl(pH7.6)、2.5mMのATP、2mMのジチオトレイトール)中で実施した。反応は37℃で1.5時間実施され、SDS(最終濃度1%)の添加によって停止し、5分間煮沸した。p53及びそのユビキチン化はウェスタンブロットによって検出された。
【0290】
Aβ42神経毒性アッセイ
Aβ42オリゴマーの細胞毒性を、96ウェルプレート中に播種されたSH-SY5Y細胞において、CCK8アッセイを使用して評価した(Zhu, G. et al., Cell Rep 33, 108418, 2020)。Aβ42モノマー(10μM)を、DAXX-6×ヒスチジン(Sf9細胞に由来、0.05、0.1、0.2、0.4及び0.6μM)と共に定期的に振盪しながら(1,000rpm)37℃で24時間インキュベートして、オリゴマーを形成した。予め形成されたオリゴマーを、細胞培養培地中に1時間かけて懸濁し、SH-SY5Y細胞に24時間かけて加えた。生細胞を、CCK8(Dojindo、CK04番)によって計数した。
【0291】
免疫蛍光及び二分子蛍光補完(BiFC)アッセイ
細胞をカバーガラス上に蒔き、示されたsiRNA、shRNA及び/又はcDNAを用いてトランスフェクトした。細胞を、PBS中4%パラホルムアルデヒドを用いて15分間かけて室温で固定し、0.25%のトリトンX-100を含有しているPBSを用いて10分間かけて透過性処理をした。細胞をPBSで3回洗浄し、PBST中1%ウシ血清アルブミン(BSA)を用いて30分間かけて室温で遮断し、その後、示された一次抗体と共に4℃で一晩かけてインキュベートし、続いて、蛍光標識された二次抗体と室温で1時間かけてインキュベートした。カバーガラスを、スライドガラスの4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)(H-1200;ベクターラボラトリーズ社)を含有している培地中にのせた。BiFCアッセイのために、V1S及びSV2α-シヌクレインプラスミドを、HEK293T細胞に、1:1のモル比で同時トランスフェクトした。免疫蛍光法は、トランスフェクションから24時間後に実施された。蛍光画像を、共焦点顕微鏡(ソフトウェアツァイスZen2.3を含むツァイスLSM880)によって取得し、Fiji(ImageJ 1.52p)によって分析した。
【0292】
軟寒天コロニー形成
細胞を、MDA-MB-231細胞について7,500個の細胞/ウェルの密度で、6ウェルプレート中の、10%ウシ胎児血清の補充された培養培地と予め混合された0.36%の軟寒天の上層に播種し、37℃で3週間インキュベートした。コロニーを、4%PFA溶液中0.05%のクリスタルバイオレットを用いて、記載のように(Zhang, Y. et al., Cell Metab 33, 94-109 e108, 2021)、画像撮影及び定量化のために染色した。画像は、Fiji(ImageJ 1.52p)によって分析された。
【0293】
遺伝子オントロジー分析
遺伝子オントロジー分析を、Panther(進化関係を通したタンパク質分析)分類システム(http://pantherdb.org)によって実施した。
【0294】
ポリD/Eタンパク質の分析
現在の研究中に分析された全ての参照プロテオームfastasは、ホモサピエンス[UP000005640]、マウス[UP00000589]、カエノラブディティス・エレガンス(C. elegans)[UP000001940]、アラビドプシス(Arabidopsis)[UP000006548]、酵母[UP000002311]、大腸菌(E.coli)[UP000000625]を含む、Uniprotデータベースからダウンロードされる。D/Eエンリッチメント領域の定義:任意の50アミノ酸窓において35に等しいか又は35を超える、アスパラギン酸の出現及びグルタミン酸の出現の合計が、D/Eエンリッチメント領域として定義される((D%+E%)/50>=35/50)。Pythonノートブックを使用して、D/Eエンリッチメント領域探索機能を実施した。簡潔に言えば、全てのリファレンスタンパク質配列を、アミノ酸毎に開始から終了まで任意の可能な50アミノ酸窓において調べた。一旦D/Eエンリッチメント領域が、タンパク質配列中に発見されれば、その開始位置、終了位置、Dの計数、Eの計数、及びそのタンパク質の固有の名称が、項目として記述された。最後に、D/Eエンリッチメントの全ての項目が、1つの種あたりエクセルファイルとして出力され、その後、同タンパク質の異なるアイソフォームが手作業で除外された。
【0295】
BiFCアッセイ
HEK293T細胞を、10%ウシ胎児血清(FBS)の補充されたDMEM培地を含む6ウェルプレートに24時間かけて播種され、よって細胞は、トランスフェクション時には80~90%の集密度まで増殖した。細胞に、示されたプラスミドを用いて同時トランスフェクトした。12時間後、細胞を、新鮮な培地と交換し、さらに12時間培養した。蛍光を、Revolve Microscope Demo(Echo Laboratories社)で観察した。
【0296】
定量及び統計分析
ウェスタンブロット上のタンパク質バンドの定量、軟寒天培地中のコロニーの数及びサイズ、並びに細胞内の蛍光シグナルが、ImageJによって実施された。統計分析は、グラフパッドプリズム8によって実施された。個々のデータ点は、プロット及び図表に示されている。データは平均値±標準偏差として提示された。対応のないスチューデントt検定を使用して、2つの集団間の平均値の統計学的有意性を評価した(P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、ns、有意ではない)。
【0297】
本明細書に引用される各々の及びあらゆる特許、特許出願、並びに刊行物の開示は、これによりその全体が参照により本明細書に組み入れられる。本発明は具体的な実施態様を参照して開示されているが、本発明の他の実施態様及び変化形も、本発明の真の精神及び範囲から逸脱することなく、当業者によって考案され得ることは明らかである。添付の特許請求の範囲は、このような全ての実施態様及び均等な変化形を含むと捉えられることを意図する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7-1】
図7-2】
図8
図9
図10-1】
図10-2】
図11-1】
図11-2】
図12-1】
図12-2】
図13-1】
図13-2】
図13-3】
図13-4】
図14
図15-1】
図15-2】
【配列表】
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【国際調査報告】