(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-27
(54)【発明の名称】動的ホウ素結合を有する可逆性エポキシポリマー
(51)【国際特許分類】
C08G 59/40 20060101AFI20240820BHJP
C08G 79/08 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
C08G59/40
C08G79/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024507077
(86)(22)【出願日】2022-07-21
(85)【翻訳文提出日】2024-04-05
(86)【国際出願番号】 US2022037828
(87)【国際公開番号】W WO2023014508
(87)【国際公開日】2023-02-09
(32)【優先日】2021-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524046331
【氏名又は名称】エクソンモービル テクノロジー アンド エンジニアリング カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100228005
【氏名又は名称】澤田 英之
(72)【発明者】
【氏名】ワン ヤ シャン
(72)【発明者】
【氏名】チェン ケ ラン
(72)【発明者】
【氏名】アブバカー サイフディン エム
(72)【発明者】
【氏名】ガオ ウェンシ
(72)【発明者】
【氏名】シエ ルリン
(72)【発明者】
【氏名】チェン ニン
(72)【発明者】
【氏名】チャオ チアン
(72)【発明者】
【氏名】シエ タオ
(72)【発明者】
【氏名】ツァオ イハン
【テーマコード(参考)】
4J030
4J036
【Fターム(参考)】
4J030CB09
4J030CC06
4J030CD04
4J030CD11
4J030CE11
4J036AA01
4J036AD08
4J036DD09
4J036FA11
4J036FB12
4J036FB14
4J036JA11
(57)【要約】
少なくとも1種のエポキシ化合物と少なくとも1種の硬化剤との間の反応によって得ることができる可逆性エポキシポリマーであって、エポキシ化合物の少なくとも一部が、1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位若しくはその誘導部位を含有し;及び/又は硬化剤の少なくとも一部が、1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位若しくはその誘導部位を含有し;及び/又は反応系が、ヒドロキシル基とエポキシ基を含有する少なくとも1種の化合物及び少なくとも1種のBQH含有化合物若しくはそのエステル誘導体をさらに含み、前記BQH含有化合物は2つ以上のB-QH部位を含有し、ホウ酸部位の誘導部位は、ホウ酸部位中の酸素が第6主要族の他の元素に置き換えられている部位を意味し、各Qは独立に第6主要族の元素である、可逆性エポキシポリマー。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のエポキシ化合物と少なくとも1種の硬化剤との間の反応によって得ることができる可逆性エポキシポリマーであって、
前記エポキシ化合物の少なくとも一部が、1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位若しくはその誘導部位を含有し、前記ホウ酸部位の誘導部位は、前記ホウ酸部位中の酸素が第6主要族の他の元素に置き換えられている部位を意味し;及び/又は
前記硬化剤の少なくとも一部が、1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位若しくはその誘導部位を含有し、前記ホウ酸部位の誘導部位は、前記ホウ酸部位中の酸素が第6主要族の他の元素に置き換えられている部位を意味し;及び/又は
前記反応系が、ヒドロキシル基とエポキシ基を含有する少なくとも1種の化合物及び少なくとも1種のBQH含有化合物若しくはそのエステル誘導体をさらに含み、
前記BQH含有化合物は2つ以上のB-QH部位を含有し、各Qは独立に第6主要族の元素である、
可逆性エポキシポリマー。
【請求項2】
前記可逆性ホウ酸部位又はその誘導部位が、下記式(I)の構造:
【化1】
(式中、各Qは独立に第6主要族の元素である)
を有する、請求項1に記載の可逆性エポキシポリマー。
【請求項3】
式(I)中の-Q-B-Q-部位が、2~5個の炭素原子と一緒に、5~8個の環員を有するホウ素含有環を形成し、好ましくは2又は3個の炭素原子と一緒に、5又は6個の環員を含有するホウ素含有環を形成し、場合により前記ホウ素含有環がさらなる環と縮合されて縮合環系を形成している、請求項2に記載の可逆性エポキシポリマー。
【請求項4】
前記ホウ素含有環が、下記構造:
【化2】
を有し、
前記ホウ素含有環を含有する縮合環系が、下記構造:
【化3】
(式中、Aは5~10個の環員を有する環であり、各Qは独立に第6主要族の元素である)を有する、
請求項3に記載の可逆性エポキシポリマー。
【請求項5】
前記1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位又はその誘導部位を含有するエポキシ化合物が、2つ以上のエポキシ基を含有し、好ましくは前記エポキシ基が、エチレンオキシド基及びオキセタン基から選択される、
請求項1~4のいずれか1項に記載の可逆性エポキシポリマー。
【請求項6】
前記1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位又はその誘導部位を含有するエポキシ化合物が、下記構造を有する少なくとも1種の化合物:
【化4】
(式中、
mは0又は1であり;
各nは、独立に少なくとも1、好ましくは1、2又は3であり;
EPは、エチレンオキシド基又はオキセタン基であり;
各Qは、独立に第6主要族の元素であり;
各R
1及びR
2は、独立に二価のC
1-C
20ヒドロカルビルであり;かつ
Aは、5~10個の環員を有する環、好ましくは5又は6個の環員を有する環である)
から選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載の可逆性エポキシポリマー。
【請求項7】
前記1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位又はその誘導部位を含有する硬化剤が、エポキシ基と反応する能力がある2つ以上の官能基、好ましくはカルボキシル、アミノ、スルフヒドリル又は酸無水物から選択される官能基を含有する、
請求項1~6のいずれか1項に記載の可逆性エポキシポリマー。
【請求項8】
前記1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位又はその誘導部位を含有する硬化剤が、下記構造を有する少なくとも1種の化合物:
【化5】
(式中、
mは0又は1であり;
各nは、独立に少なくとも1、好ましくは1、2又は3であり;
各R
1及びR
2は、独立に二価のC
1-C
20ヒドロカルビルであり;
各Qは、独立に第6主要族の元素であり;
Xは、エポキシ基と反応する能力がある官能基、好ましくはカルボキシル、アミノ、スルフヒドリル又は酸無水物であり;かつ
Aは、5~10個の環員を有する環、好ましくは5又は6個の環員を有する環である)
から選択される、
請求項1~7のいずれか1項に記載の可逆性エポキシポリマー。
【請求項9】
前記1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位又はその誘導部位を含有するエポキシ化合物が、該エポキシ化合物の総質量に基づいて、10wt%~100wt%、好ましくは30wt%~100wt%又は30wt%~80wt%の量で存在する、
請求項1~8のいずれか1項に記載の可逆性エポキシポリマー。
【請求項10】
前記1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位又はその誘導部位を含有する硬化剤が、該硬化剤の総質量に基づいて、10wt%~100wt%、好ましくは30wt%~100wt%又は30wt%~80wt%の量で存在する、
請求項1~9のいずれか1項に記載の可逆性エポキシポリマー。
【請求項11】
前記BQH含有化合物又はそのエステル誘導体が、少なくとも2つのB-Qエステル結合を含有する化合物、少なくとも1つのB(QH)
2基を含有する化合物、ホウ酸、及びピロホウ酸から選択され、かつ各Qは独立に第6主要族の元素である、
請求項1~10のいずれか1項に記載の可逆性エポキシポリマー。
【請求項12】
前記少なくとも2つのB-Qエステル結合を含有する化合物が、3つのB-Qエステル結合を含有する化合物、好ましくは下記構造を有する化合物:
【化6】
(式中、R
a、R
b及びR
cは、独立にヒドロカルビル、好ましくはアルキル又はアリールであり、各Qは独立に第6主要族の元素である)
を含む、請求項11に記載の可逆性エポキシポリマー。
【請求項13】
前記少なくとも1つのB(QH)
2基を含有する化合物が、ベンゼン-1,4-ジボロン酸、3-カルボキシフェニルボロン酸、アミノベンゼンボロン酸、及びテトラヒドロキシジボロンから選択される、請求項11に記載の可逆性エポキシポリマー。
【請求項14】
前記ヒドロキシル基とエポキシ基を含有する化合物が、前記ヒドロキシル基とエポキシ基の間に1又は2個の炭素原子を有し、好ましくはグリシドールである、
請求項1~13のいずれか1項に記載の可逆性エポキシポリマー。
【請求項15】
3回再加工された後の前記可逆性エポキシポリマーの極限応力が、再加工前の前記可逆性エポキシポリマーの極限応力の少なくとも約50%、又は少なくとも約65%、好ましくは少なくとも約70%、さらに好ましくは少なくとも約72%である、
請求項1~14のいずれか1項に記載の可逆性エポキシポリマー。
【請求項16】
3回再加工された後の前記可逆性エポキシポリマーのヤング率が、再加工前の前記可逆性エポキシポリマーのヤング率の少なくとも約50%、又は少なくとも約65%、好ましくは少なくとも約70%、さらに好ましくは少なくとも約75%である、
請求項1~15のいずれか1項に記載の可逆性エポキシポリマー。
【請求項17】
前記可逆性エポキシポリマーが、少なくとも1種のエポキシ化合物と少なくとも1種の硬化剤との間の反応によって得られ、前記エポキシ化合物の少なくとも一部が、1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位若しくはその誘導部位を含有し、及び/又は前記硬化剤の少なくとも一部が、1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位若しくはその誘導部位を含有し、かつ前記可逆性エポキシポリマーの吸水率及び水浸漬後減量率の少なくとも1つが、室温で24時間水に浸漬された後に5wt%未満、好ましくは2wt%未満である、請求項1~10、15及び16のいずれか1項に記載の可逆性エポキシポリマー。
【請求項18】
前記可逆性エポキシポリマーが溶媒、好ましくはアルコールとDMFの混合物への溶解を受けた後に不溶性物質の含量が10wt%未満、好ましくは5wt%未満である、
請求項1~17のいずれか1項に記載の可逆性エポキシポリマー。
【請求項19】
前記ホウ酸部位の誘導部位が、前記ホウ酸部位中の酸素がSに置き換えられ、及び/又はQがO若しくはS、好ましくはOである部位を意味する、
請求項1~18のいずれか1項に記載の可逆性エポキシポリマー。
【請求項20】
前記可逆性エポキシポリマーが自己回復特性を有する、
請求項1~19のいずれか1項に記載の可逆性エポキシポリマー。
【請求項21】
前記可逆性エポキシポリマーが熱可塑性を有し、好ましくはプレス、射出成形、押出成形、ブロー成形、カレンダー掛け、発泡成形、溶媒可塑化、モールドプレス、鋳造、反応成形によって加工され得る、
請求項1~20のいずれか1項に記載の可逆性エポキシポリマー。
【請求項22】
請求項1~21のいずれか1項に記載の可逆性エポキシポリマーの調製プロセスであって、少なくとも1種のエポキシ化合物と少なくとも1種の硬化剤を反応させるステップを含み、
前記エポキシ化合物の少なくとも一部が、1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位若しくはその誘導部位を含有し、前記ホウ酸部位の誘導部位は、前記ホウ酸部位中の酸素が第6主要族の他の元素に置き換えられている部位を意味し;及び/又は
前記硬化剤の少なくとも一部が、1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位若しくはその誘導部位を含有し、前記ホウ酸部位の誘導部位は、前記ホウ酸部位中の酸素が第6主要族の他の元素に置き換えられている部位を意味し;及び/又は
前記反応系が、ヒドロキシル基とエポキシ基を含有する少なくとも1種の化合物及び少なくとも1種のBQH含有化合物若しくはそのエステル誘導体をさらに含み、前記BQH含有化合物は2つ以上のB-QH部位を含有し、各Qは独立に第6主要族の元素である、
プロセス。
【請求項23】
基材と、請求項1~21のいずれか1項に記載の可逆性エポキシポリマーとを含む複合材料。
【請求項24】
請求項1~21のいずれか1項に記載の可逆性エポキシポリマーと、少なくとも1種の添加剤とを含む組成物。
【請求項25】
請求項1~21のいずれか1項に記載の可逆性エポキシポリマー又は請求項23に記載の複合材料の、接着剤、コーティング、塗料、フローリング、ガラス代用品、ポリマー添加剤、金属基材、構造材料、モールディング、光学材料、カプセル化材料、包装材料、シーリング材料、医療材料、繊維強化プラスチックにおける使用、又は機能性材料としての使用。
【請求項26】
基材の回収プロセスであって、請求項23に記載の複合材料が溶媒への溶解を受けてから前記基材が回収される、プロセス。
【請求項27】
下記構造:
【化7】
(式中、
各mは、独立に0又は1であり;
kは、1~4であり;
各nは、独立に少なくとも1であり;
各R
1は、独立に二価のC
1-C
20ヒドロカルビルであり;
R
2は、二価のC
1-C
20ヒドロカルビルであり;
R
3は、H又はC
1-C
20ヒドロカルビルであり;
各Qは、独立に第6主要族の元素であり;
Xは、エポキシ基と反応する能力がある官能基であり;かつ
Aは、5~10個の環員を有する環である)
の1つを有する化合物。
【請求項28】
各mが、独立に0又は1であり;
kが、1又は2であり;
各nが、独立に1、2又は3であり;
各R
1が、独立に二価のC
1-C
20ヒドロカルビルであり;
R
2が、二価のC
1-C
20ヒドロカルビルであり;
R
3が、H又はC
1-C
20ヒドロカルビルであり;
各Qが、独立にO又はS、好ましくはOであり;
Xが、カルボキシル、アミノ、スルフヒドリル又は酸無水物から選択される官能基であり;かつ
Aが、5又は6個の環員を有する環である、
請求項27に記載の化合物。
【請求項29】
前記化合物が、下記構造:
【化8】
【化9】
(式中、m、n、R
1、R
2、R
3、Q、X及びAは、請求項27又は28の定義どおりである)
の1つを有する、請求項27又は28に記載の化合物。
【請求項30】
請求項1~4及び7~8のいずれか1項に記載の前記1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位又はその誘導部位を含有する硬化剤の製造方法であって、少なくとも1つのエポキシ反応基及び少なくとも2つのヒドロキシル基を含有する化合物を、少なくとも1つのエポキシ反応基及び1つのB(QH)
2基を含有する化合物又はそのエステル誘導体若しくはその無水物と反応させるステップを含み、各Qは独立に第6主要族の元素、好ましくはO又はSである、方法。
【請求項31】
前記反応が、脱水剤の非存在下又は存在下で行われ、好ましくは前記脱水剤が、モレキュラーシーブ、Na
2SO
4及びMgSO
4から選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記少なくとも1つのエポキシ反応基及び少なくとも2つのヒドロキシル基を含有する化合物と、前記少なくとも1つのエポキシ反応基及び1つのB(QH)
2基を含有する化合物又はそのエステル誘導体若しくはその無水物とのモル比が、0.5:1~2:1又は0.8:1~1.2:1の範囲内である、請求項30又は31に記載の方法。
【請求項33】
前記少なくとも1つのエポキシ反応基及び少なくとも2つのヒドロキシル基を含有する化合物が、前記少なくとも1つのエポキシ反応基を含有する1,2-ジオール化合物及び前記少なくとも1つのエポキシ反応基を含有する1,3-ジオール化合物から選択される、請求項30~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記少なくとも1つのエポキシ反応基及び1つのB(QH)
2基を含有する化合物が、3-アミノベンゼンボロン酸又はその水和物若しくはその無水物であり、及び/又は前記少なくとも1つのエポキシ反応基及び少なくとも2つのヒドロキシル基を含有する化合物が、1-アミノ-プロパン-1,2-ジオール、N-メチルアミノプロパンジオール及びN-エチルアミノプロパンジオールから選択される、請求項30~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記エポキシ反応基が、カルボキシル、アミノ、スルフヒドリル又は酸無水物から選択される、請求項30~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記反応が、各試薬が溶解され得る溶媒中で行われ、好ましくは前記溶媒が、C
1-C
6アルコール、THF、ジオキサン、DMF及びその混合物から選択される、請求項30~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記反応温度が、10℃から前記反応に用いられる溶媒の沸点まで、又は室温から前記反応に用いられる溶媒の沸点まで、又は室温から100℃まで、さらに好ましくは20℃~80℃又は20℃~65℃の範囲内である、請求項30~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記溶媒が、反応後に除去され、好ましくは前記溶媒が、蒸留によって、例えば噴霧乾燥、ロータリーエバポレーター及び真空乾燥によって除去され、さらに好ましくは蒸留温度が、80℃以下又は60℃以下である、請求項36又は37に記載の方法。
【請求項39】
前記反応時間が、4分~48時間、好ましくは15分~24時間の範囲内である、
請求項30~38のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照することにより開示内容を本明細書に援用する2021年8月5日に出願された米国仮出願第63/229,695号に対する利益及び優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本開示は、一般的に動的ホウ素結合を有する可逆性エポキシポリマー、可逆性エポキシポリマーの調製プロセス、基材と可逆性エポキシポリマーとを含む複合材料及び可逆性エポキシポリマーを含む組成物並びに1つの可逆性ホウ酸部位を含有する硬化剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
エポキシポリマー及びその複合材料は、優れた結合性、耐食性、電気絶縁性、高強度、軽量及び他の特性を含め、多くの利点を有する。それは電気、機械製造、化学的腐食保護、航空宇宙、船舶輸送及び多くの他の産業分野で広く利用されている。しかしながら、エポキシポリマーは、永久的架橋ネットワークを有する典型的な熱硬化性材料なので、硬化後は不溶性で、解けず、再生利用できない。通常は、廃棄エポキシポリマーは埋められるか又は焼却され、資源の多大な浪費及び環境汚染の原因となる。
従って、再生利用及び再加工できるエポキシポリマーの開発が非常に重要な問題になってきた。
【発明の概要】
【0004】
発明の概要
第1の一般態様において、本開示は、少なくとも1種のエポキシ化合物と少なくとも1種の硬化剤との間の反応によって得ることができる可逆性エポキシポリマーであって、エポキシ化合物の少なくとも一部が、1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位若しくはその誘導部位を含有し、このホウ酸部位の誘導部位は、ホウ酸部位中の酸素が第6主要族の他の元素に置き換えられている部位を意味し;及び/又は硬化剤の少なくとも一部が、1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位若しくはその誘導部位を含有し、このホウ酸部位の誘導部位は、ホウ酸部位中の酸素が第6主要族の他の元素に置き換えられている部位を意味し;及び/又は反応系が、ヒドロキシル基とエポキシ基を含有する少なくとも1種の化合物及び少なくとも1種のBQH含有化合物若しくはそのエステル誘導体をさらに含み、前記BQH含有化合物は2つ以上のB-QH部位を含有し、かつ各Qは独立に第6主要族の元素である、可逆性エポキシポリマーを提供する。
【0005】
第2の一般態様において、本開示は、本発明の可逆性エポキシポリマーの調製プロセスであって、少なくとも1種のエポキシ化合物と少なくとも1種の硬化剤を反応させるステップを含み、エポキシ化合物の少なくとも一部が、1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位若しくはその誘導部位を含有し、このホウ酸部位の誘導部位は、ホウ酸部位中の酸素が第6主要族の他の元素に置き換えられている部位を意味し;及び/又は硬化剤の少なくとも一部が、1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位若しくはその誘導部位を含有し、このホウ酸部位の誘導部位は、ホウ酸部位中の酸素が第6主要族の他の元素に置き換えられている部位を意味し;及び/又は反応系が、ヒドロキシル基とエポキシ基を含有する少なくとも1種の化合物及び少なくとも1種のBQH含有化合物若しくはそのエステル誘導体をさらに含み、前記BQH含有化合物は2つ以上のB-QH部位を含有し、かつ各Qは独立に第6主要族の元素である、プロセスを提供する。
【0006】
第3の一般態様において、本開示は、基材と、本発明の可逆性エポキシポリマーとを含む複合材料を提供する。
第4の一般態様において、本開示は、本発明の可逆性エポキシポリマーと、少なくとも1種の添加剤とを含む組成物を提供する。
第5の一般態様において、本開示は、本発明の可逆性エポキシポリマー及びその複合材料の、接着剤、コーティング、塗料、フローリング、ガラス代用品、ポリマー添加剤、金属基材、構造材料、モールディング、光学材料、カプセル化材料、包装材料、シーリング材料、医療材料、繊維強化材料における使用、又は機能性材料としての使用を提供する。
第6の一般態様において、本開示は、本発明の1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位又はその誘導部位を含有する硬化剤の製造方法であって、少なくとも1つのエポキシ反応基及び少なくとも2つのヒドロキル基を含有する化合物を、少なくとも1つのエポキシ反応基及び1つのB(QH)2基を含有する化合物又はそのエステル誘導体若しくはその無水物と反応させるステップを含み、各Qは独立に第6主要族の元素、好ましくはO又はSである、方法を提供する。
第1、第2、第3、第4、第5及び第6の一般態様の特定態様は、下記特徴の1つ以上を含み得る。
【0007】
一部の態様では、可逆性ホウ酸部位又はその誘導部位は、下記式(I)の構造を有する。
【化1】
式中、各Qは独立に第6主要族の元素である。
【0008】
一部の態様では、式(I)の-Q-B-Q-部位は、2~5個の炭素原子と共に、5~8個の環員を有するホウ素含有環を形成し、好ましくは2又は3個の炭素原子と共に、5又は6個の環員を含有するホウ素含有環を形成し、場合によりホウ素含有環は、さらなる環と縮合されて縮合環系を形成している。
【0009】
一部の態様では、ホウ素含有環は下記構造:
【化2】
を有し、
ホウ素含有環を含有する縮合環系は、下記構造を有する。
【0010】
【化3】
式中、Aは、5~10個の環員を有する環であり、各Qは独立に第6主要族の元素である。
【0011】
一部の態様では、1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位又はその誘導部位を含有するエポキシ化合物は、2つ以上のエポキシ基を含有する。
一部の態様では、エポキシ基はエチレンオキシド基及びオキセタン基から選択される。
【0012】
一部の態様では、1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位又はその誘導部位を含有するエポキシ化合物は、下記構造を有する少なくとも1種の化合物から選択される。
【化4】
式中、
mは0又は1であり;
各nは、独立に少なくとも1であり;
EPは、エチレンオキシド基又はオキセタン基であり;
各Qは、独立に第6主要族の元素であり;
各R
1及びR
2は、独立に二価のC
1-C
20ヒドロカルビルであり;かつ
Aは、5~10個の環員を有する環である。
【0013】
一部の態様では、各nは、独立に1、2又は3であり、Aは、5又は6個の環員を有する環である。
一部の態様では、1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位又はその誘導部位を含有する硬化剤は、エポキシ基と反応する能力がある2つ以上の官能基、好ましくはカルボキシル、アミノ、スルフヒドリル又は酸無水物から選択される官能基を含有する。
【0014】
一部の態様では、1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位又はその誘導部位を含有する硬化剤は、下記構造を有する少なくとも1種の化合物から選択される。
【化5】
式中、
mは0又は1であり;
各nは、独立に少なくとも1、好ましくは1、2又は3であり;
各Qは、独立に第6主要族の元素であり;
各R
1及びR
2は、独立に二価のC
1-C
20ヒドロカルビルであり;
Xは、エポキシ基と反応する能力がある官能基、好ましくはカルボキシル、アミノ、スルフヒドリル又は酸無水物であり;かつ
Aは、5~10個の環員を有する環、好ましくは5又は6個の環員を有する環である。
【0015】
一部の態様では、1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位又はその誘導部位を含有するエポキシ化合物は、エポキシ化合物の総質量に基づいて、10wt%~100wt%、好ましくは30wt%~100wt%又は30wt%~80wt%の量で存在する。
一部の態様では、1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位又はその誘導部位を含有する硬化剤は、硬化剤の総質量に基づいて、10wt%~100wt%、好ましくは30wt%~100wt%又は30wt%~80wt%の量で存在する。
一部の態様では、BQH含有化合物又はそのエステル誘導体は、少なくとも2つのB-Qエステル結合を含有する化合物、少なくとも1つのB(QH)2基を含有する化合物、ホウ酸、及びピロホウ酸から選択される。
【0016】
一部の態様では、少なくとも2つのB-Qエステル結合を含有する化合物は、3つのB-Qエステル結合を含有する化合物、好ましくは下記構造を有する化合物を含む。
【化6】
式中、R
a、R
b及びR
cは、独立にヒドロカルビル、好ましくはアルキル又はアリールであり、かつ各Qは独立に第6主要族の元素である。
【0017】
一部の態様では、少なくとも1つのB(QH)2基を含有する化合物は、ベンゼン-1,4-ジボロン酸、3-カルボキシフェニルボロン酸、アミノベンゼンボロン酸、及びテトラヒドロキシジボロンから選択される。
一部の態様では、ヒドロキシル基とエポキシ基を含有する化合物は、ヒドロキシル基とエポキシ基の間に1又は2個の炭素原子を有する。
一部の態様では、ヒドロキシル基とエポキシ基を含有する化合物は、グリシドールである。
一部の態様では、3回再加工された後の可逆性エポキシポリマーの極限応力は、再加工前の可逆性エポキシポリマーの極限応力の少なくとも約50%、又は少なくとも約65%、好ましくは少なくとも約70%、さらに好ましくは少なくとも約72%である。
一部の態様では、3回再加工された後の可逆性エポキシポリマーのヤング率は、再加工前の可逆性エポキシポリマーのヤング率の少なくとも約50%、又は少なくとも約65%、好ましくは少なくとも約70%、さらに好ましくは少なくとも約75%である。
一部の態様では、可逆性エポキシポリマーは、少なくとも1種のエポキシ化合物と少なくとも1種の硬化剤との間の反応によって得られ、エポキシ化合物の少なくとも一部は、1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位若しくはその誘導部位を含有し、及び/又は硬化剤の少なくとも一部は、1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位若しくはその誘導部位を含有し、かつ可逆性エポキシポリマーの吸水率及び水浸漬後減量率の少なくとも1つは、室温で24時間水に浸漬された後に5wt%未満、好ましくは2wt%未満である。
一部の態様では、可逆性エポキシポリマーが溶媒、好ましくはアルコールとDMFの混合物への溶解を受けた後、不溶性物質の含量は、10wt%未満、好ましくは5wt%未満である。
【0018】
第6の一般態様では、反応は、脱水剤の非存在下又は存在下で行われ、好ましくは脱水剤は、モレキュラーシーブ、Na2SO4及びMgSO4から選択される。
第6の一般態様では、少なくとも1つのエポキシ反応基及び少なくとも2つのヒドロキシル基を含有する化合物と、少なくとも1つのエポキシ反応基及び1つのB(QH)2基を含有する化合物又はそのエステル誘導体若しくはその無水物とのモル比は、0.5:1~2:1、例えば0.8:1~1.2:1の範囲内である。
第6の一般態様では、少なくとも1つのエポキシ反応基及び少なくとも2つのヒドロキシル基を含有する化合物は、少なくとも1つのエポキシ反応基を含有する1,2-ジオール化合物及び少なくとも1つのエポキシ反応基を含有する1,3-ジオール化合物から選択される。
第6の一般態様では、少なくとも1つのエポキシ反応基と1つのB(QH)2基を含有する化合物は、3-アミノベンゼンボロン酸又はその水和物若しくはその無水物であり、及び/又は少なくとも1つのエポキシ反応基と少なくとも2つのヒドロキシル基を含有する化合物は、1-アミノ-プロパン-1,2-ジオール、N-メチルアミノプロパンジオール及びN-エチルアミノプロパンジオールから選択される。
第6の一般態様では、エポキシ反応基は、カルボキシル、アミノ、スルフヒドリル又は酸無水物から選択される。
第6の一般態様では、反応は、各試薬が溶解され得る溶媒中で行われ、好ましくは溶媒は、C1-C6アルコール、THF、ジオキサン、DMF及びその混合物から選択される。
第6の一般態様では、反応温度は、10℃から反応に用いられる溶媒の沸点まで、又は室温から反応に用いられる溶媒の沸点まで、又は室温から100℃まで、さらに好ましくは20℃~80℃又は20℃~65℃の範囲内である。
第6の一般態様では、溶媒は反応後に除去され、好ましくは溶媒は蒸留によって、例えば噴霧乾燥、回転エバポレーター及び真空乾燥によって除去され、さらに好ましくは蒸留温度は80℃以下又は60℃以下である。
第6の一般態様では、反応時間は、4分~48時間、又は0.5時間~24時間の範囲内である。
【0019】
本発明の可逆性エポキシポリマーは熱可塑性を有し、再生利用及び再加工可能であり、かつ複数回再加工後された後でも良好な機械的特性を有し;本可逆性エポキシポリマーは、種々の技術的手段(例えば物理的又は化学的再生)によって容易に再加工することもでき、優れた自己回復特性、水安定性、熱安定性及び加工性を有し;本可逆性エポキシポリマーは、他の材料と共に優れた特性を有する複合材料を容易に形成することができる。本発明の1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位又はその誘導部位を含有する硬化剤の製造方法は、簡単で、効率的かつ高収率の合成方法である。
本開示の開示可逆性エポキシポリマーのこれら及び他の特徴及び特質並びにそれらの有利な用途及び/又は使用は、下記詳細な説明から明白だろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1A】実施例1の可逆性エポキシポリマーをホットプレスすることによって得られた試料を示す。
【
図1B】実施例1の可逆性エポキシポリマーを射出成形することによって得られた試料を示す。
【
図2】可逆性エポキシポリマーの化学的再生を示す。
【
図3】実施例5で得られた可逆性エポキシポリマーと炭素繊維との複合材料の写真を示す。
【
図4】実施例6で得られた可逆性エポキシポリマー及び熱硬化性エポキシポリマーのDMA曲線を示す。
【
図5】実施例6で得られた可逆性エポキシポリマーのTGA曲線を示す。
【
図6】実施例7で得られた反応生成物1の粘度-T曲線を示す。
【
図7】実施例7で得られた反応生成物1のFTIRスペクトルを示す。
【
図8】実施例7で得られた反応生成物2のDMA曲線を示す。
【
図9】実施例7で得られた反応生成物2のFTIRスペクトルを示す。
【
図10】実施例8の可逆性エポキシポリマーのDMA曲線を示す。
【
図11】アイロンガンによるスクラッチ回復を示す。
【
図12】光学顕微鏡下で観察されたスクラッチ修復を示す。
【
図14】実施例11で調製されたNBNのH
1-NMRを示す。
【
図15】実施例11の可逆性エポキシポリマーのDMA曲線を示す。
【
図16】実施例11の可逆性エポキシポリマーのDSC曲線を示す。
【
図17】実施例11の可逆性エポキシポリマーのTGA曲線を示す。
【
図19】実施例15のバイアル1~4についての
1H NMRスペクトルを示す。
【
図20】異なる供給元からの原材料及びその生成物の外観を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
発明の詳細な説明
種々の特定の実施形態、バージョン、及び実施例について、請求項に係る発明を理解するという目的で採択される代表的実施形態及び定義を含めて本明細書に記載する。下記詳細な説明は、特定の好ましい実施形態を与えるが、当業者ならこれらの実施形態は単なる例示に過ぎず、本発明は他の方法で実施され得ることが分かるだろう。侵害を判断するという目的で、本発明の範囲は、いずれの1つ以上の添付請求項をも指し、列挙されているものに等価であるそれらの等価物、及び要素又は制限が含まれる。「発明」へのいずれの言及も、請求項によって定義される本発明の1つ以上を指すことがあるが、必ずしも全てではない。
本願の詳細な説明及び特許請求の範囲内の全ての数値は「約」によって修飾された指示値であり、当業者が予想するであろう実験誤差及び変動を考慮する。
【0022】
第1の一般態様において、本開示は、少なくとも1種のエポキシ化合物と少なくとも1種の硬化剤との間の反応によって得ることができる可逆性エポキシポリマーであって、エポキシ化合物の少なくとも一部が、1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位若しくはその誘導部位を含有し、このホウ酸部位の誘導部位は、ホウ酸部位中の酸素が第6主要族の他の元素に置き換えられている部位を意味し;及び/又は硬化剤の少なくとも一部が、1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位若しくはその誘導部位を含有し、このホウ酸部位の誘導部位は、ホウ酸部位中の酸素が第6主要族の他の元素に置き換えられている部位を意味し;及び/又は反応系が、ヒドロキシル基とエポキシ基を含有する少なくとも1種の化合物及び少なくとも1種のBQH含有化合物又はそのエステル誘導体をさらに含み、前記BQH含有化合物は2つ以上のB-QH部位を含有し、かつ各Qは独立に第6主要族の元素である、可逆性エポキシポリマーを提供する。
【0023】
本発明によれば、第6主要族の元素は、好ましくはO又はS、さらに好ましくはOである。Qは、第6主要族の元素、好ましくはO又はS、さらに好ましくはOである。
本発明によれば、「ホウ酸部位中の酸素が第6主要族の他の元素に置き換えられている」という表現は、ホウ酸部位中の酸素が、酸素と異なる、第6主要族の元素に置き換えられていることを意味し、例えばホウ酸部位中の酸素は、Sに置き換えられ得る。
実施形態では、ホウ酸部位の誘導部位は、ホウ酸部位中の酸素がSに置き換えられ、及び/又はQがO若しくはS、好ましくはOである部位を意味する。
本発明によれば、Qには置換基がない。
【0024】
一実施形態では、可逆性ホウ酸部位又はその誘導部位は下記式(I):
【化7】
(式中、各Qは独立に第6主要族の元素である)
の構造を有する。
【0025】
一実施形態では、式(I)の-Q-B-Q-部位は、2~5個の炭素原子と共に、5~8個の環員を有するホウ素含有環を形成し、好ましくは2又は3個の炭素原子と共に、5又は6個の環員を含有するホウ素含有環を形成し、場合によりホウ素含有環は、さらなる環と縮合されて縮合環系を形成する。
一実施形態では、ホウ素含有環は、下記構造:
【化8】
を有し、
ホウ素含有環を含有する縮合環系は、下記構造:
【0026】
【化9】
(式中、Aは、5~10個の環員を有する環であり、かつ各Qは独立に第6主要族の元素である)
を有する。
【0027】
本発明によれば、ホウ素含有環と縮合された環(A)は、5~10個の環員、例えば5~8、又は5、6、若しくは7環員を有する環である。環(A)は、飽和、若しくは一部不飽和若しくは芳香族の炭素環、又はN、O、及びSから選択される1~4(1、2、3、4)個のヘテロ原子を含有するヘテロ環式環であり、かつ上述の炭素環系又はヘテロ環式環系は、置換されず又は置換され、環上の置換基が連結して追加環を形成し得る。
【0028】
環(A)としてのヘテロ環式環の例としては、下記環の1つが挙げられる。
【化10】
【0029】
環(A)としての芳香環の例は、フェニル環又はナフタレン環を含む。
一実施形態では、ホウ素含有環を含有する縮合環系は、下記構造:
【化11】
(式中、各Qは独立に第6主要族の元素である)
を有する。
【0030】
エポキシ化合物
本発明のエポキシ化合物は、通常は2~10、好ましくは2~6、非常に特に好ましくは2~4、特に2つのエポキシ基を有する。エポキシ基は、エチレンオキシド基及びオキセタン基から選択され得る。エポキシ基は、特に、アルコール基とエピクロロヒドリンの反応で生成され得るグリシジルエーテル基である。エポキシ化合物は、一般的に1000g/モル未満の平均分子量(Mn)を有する低分子量化合物又は比較的高分子量の化合物(ポリマー)であり得る。それらは、脂肪族若しくは脂環式化合物、又は芳香族基を有する化合物であり得る。特に、エポキシ化合物は、2つの芳香族又は脂肪族6員環を有する化合物、又はそのオリゴマーである。産業上重要なエポキシ化合物は、エピクロロヒドリンと、少なくとも2個の反応性水素原子を有する化合物、特にポリオールとの反応によって得ることができる。特に重要なエポキシ化合物は、エピクロロヒドリンと、少なくとも2、好ましくは2個のヒドロキシ基を含み、かつ2つの芳香族又は脂肪族6員環を含む化合物との反応によって得られるものである。
一実施形態では、エポキシ化合物の少なくとも一部は、1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位又はその誘導部位を含有する。
一実施形態では、1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位又はその誘導部位を含有するエポキシ化合物は、2つ以上のエポキシ基を含有する。エポキシ基は、エチレンオキシド基及びオキセタン基から選択される。
【0031】
一実施形態では、1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位又はその誘導部位を含有するエポキシ化合物は、下記構造を有する少なくとも1種の化合物から選択される。
【化12】
式中、
mは0又は1であり;
各nは、独立に少なくとも1であり;
EPは、エチレンオキシド基又はオキセタン基であり;
各Qは、独立に第6主要族の元素であり;
各R
1及びR
2は、独立に二価のC
1-C
20ヒドロカルビルであり;かつ
Aは、5~10個の環員を有する環である。
【0032】
本開示では、mが0であるとは、EPが環(A)と結合していることを意味する。
実施形態では、各nは、独立に1、2又は3、好ましくは1又は2、さらに好ましくは1である。
各R1及びR2は、独立に二価のC1-C20ヒドロカルビルである。
別段の定めがない限り、本文書全体を通じて用語「ヒドロカルビルラジカル(radical)」、「ヒドロカルビル」及び「ヒドロカルビル基(group)」を意味の区別なく使用する。本開示の目的では、必要に応じてヒドロカルビルラジカルを直鎖、分岐又は環状(芳香族又は非芳香族、例えば飽和又は不飽和)であり得るC1-C20ラジカル、又はC1-C10ラジカル、C1-C6ラジカル、又はC5-C20ラジカル、C6-C20ラジカル、又はC7-C20ラジカル又はC5-C10ラジカルと定義し;他のヒドロカルビルラジカル及び/又は1つ以上の官能基で置換されたヒドロカルビルラジカルを含める。
環(A)は、上記定義どおりである。
【0033】
一実施形態では、1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位又はその誘導部位を含有するエポキシ化合物は、下記構造を有する少なくとも1種の化合物から選択される。
【化13】
式中、各R
1及びR
2は上記定義どおりであり、各Qは独立に第6主要族の元素である。
【0034】
一実施形態では、反応系は、可逆性ホウ酸部位又はその誘導部位のない少なくとも1種のエポキシ化合物を含み、これは、好ましくはグリシジルエポキシ化合物、さらに好ましくはポリエチレングリコール型、ポリプロピレングリコール型、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、水素化ビスフェノールA型エポキシ化合物から選択される。
本発明によれば、使用するエポキシ化合物又はその混合物が、室温で液体であり、特に8000~12000Pa・sの範囲の粘度を有するのが好ましい。エポキシ当量(EEW)は、エポキシ基1モル当たりのgでのエポキシ化合物の平均質量を与える。本発明のエポキシ化合物は、約100~約300、特に約150~約200の範囲のEEWを有するのが好ましい。
一実施形態では、1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位又はその誘導部位を含有するエポキシ化合物は、エポキシ化合物の総質量に基づいて、10wt%~100wt%、例えば20wt%~100wt%、30wt%~100wt%、40wt%~100wt%、10wt%~80wt%、20wt%~80wt%、10wt%~70wt%、10wt%~60wt%、10wt%~50wt%、好ましくは30wt%~100wt%又は30wt%~80wt%の量で存在する。
【0035】
硬化剤
硬化剤は、エポキシ反応基とエポキシ化合物のエポキシ基との反応を介してエポキシ化合物を架橋する。エポキシ化合物用硬化剤の一般的分類には、アミン、酸、酸無水物、フェノール、アルコール及びチオールが含まれる。
エポキシ反応基(「エポキシ基と反応する能力がある官能基」とも呼ばれる)は、カルボキシル、アミノ、スルフヒドリル又は酸無水物を含む。好ましい実施形態では、硬化剤は、少なくとも2、例えば2又は3つのエポキシ反応基を含む。
アミノ含有硬化剤(アミン硬化剤)は、脂肪族ポリアミン、脂環式ポリアミン若しくは芳香族ポリアミン又はその混合物を含む。スルフヒドリル含有硬化剤は、脂肪族又は芳香族ポリスルフヒドリル化合物又はその混合物を含む。硬化剤としての酸無水物は、脂肪族又は芳香族ポリ酸無水物又はその混合物を含む。
この種類のアミン硬化剤は、典型的に少なくとも2つの一級又は二級アミノ基を有し、一般的に2~6、さらに特に2~4つの一級又は二級アミノ基を有する。
【0036】
習慣的なアミン硬化剤の例は、
・脂肪族ポリアミン、例えばエチレンジアミン、1,2-及び1,3-プロパンジアミン、ネオペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、1,10-ジアミノデカン、1,12-ジアミノドデカン、ジエチレントリアミン等;
・脂環式ジアミン、例えば1,2-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ビス(アミノメチル)-シクロヘキサン、1-メチル-2,4-ジアミノシクロヘキサン、4-(2-アミノプロパン-2-イル)-1-メチルシクロヘキサン-1-アミン、イソホロンジアミン、4,4′-ジアミノジシクロ-ヘキシルメタン、3,3′-ジメチル-4,4′-ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,8-ジアミノトリシクロ[5.2.1.0]デカン、ノルボルナンジアミン、メンタンジアミン、メンテンジアミン等;
・芳香族ジアミン、例えばトリレンジアミン、キシリレンジアミン、特にメタ-キシリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、ビス(4-アミノフェニル)メタン(MDA又はメチレンジアニリン)、ビス(4-アミノフェニル)スルホン(DADS、DDS又はダプソンとしても知られる)等;
・環状ポリアミン、例えばピペラジン、N-アミノエチルピペラジン等;
・ポリエーテルアミン、特にポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレンオキシド、ポリ(l,4-ブタンジオール)、ポリ-THF又はポリペンチレンオキシドをベースとする二官能性及び三官能性一級ポリエーテルアミン、例えば、4,7,10-トリオキサトリデカン-1,3-ジアミン、4,7,10-トリオキサトリデカン-1,13-ジアミン、230の平均分子量を有するポリプロピレングリコールをベースとする一級ポリエーテルアミン、例えば、ポリエーテルアミンD230又はJeffアミン(登録商標)D230、400の平均分子量を有するポリプロピレングリコールをベースとする二官能性一級ポリエーテルアミン、及びこれらのアミンの混合物;
・ポリカルボン酸、特にジカルボン酸と、低分子量ポリアミンとの反応によって得ることができるポリアミドアミン(アミドポリアミン);又は
・フェナルカミン(phenalkamine)(フェノールアルカンアミンとも);
並びにまた上記アミンアミン硬化剤の混合物である。
【0037】
一実施形態では、硬化剤の少なくとも一部は、1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位又はその誘導部位を含有する。
一実施形態では、1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位又はその誘導部位を含有する硬化剤は、エポキシ基と反応する能力がある2つ以上(例えば2、3、4以上、好ましくは2又は3つ)の官能基、好ましくはカルボキシル、アミノ、スルフヒドリル又は酸無水物、さらに好ましくはアミノから選択される官能基を含有する。
【0038】
一実施形態では、1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位又はその誘導部位を含有する硬化剤は、下記構造を有する少なくとも1種の化合物から選択される。
【化14】
式中、
mは0又は1であり;
各nは、独立に少なくとも1であり;
Xは、エポキシ基と反応する能力がある官能基、好ましくはカルボキシル、アミノ、スルフヒドリル又は酸無水物であり;
各Qは、独立に第6主要族の元素であり;
各R
1及びR
2は、独立に二価のC
1-C
20ヒドロカルビルであり;かつ
Aは、5~10個の環員を有する環である。
n、R
1、R
2及びAの好ましい定義は、上記のとおりである。Xは、好ましくはアミノである。
本開示では、mが0であるとは、Xが環(A)と結合していることを意味する。
【0039】
実施形態では、1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位又はその誘導部位を含有する硬化剤は、下記構造を有する少なくとも1種の化合物から選択される。
【化15】
式中、X、R
1及びR
2は上記定義どおりであり、各Qは独立に第6主要族の元素である。
【0040】
本発明によれば、1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位又はその誘導部位を含有する硬化剤は、少なくとも1つのエポキシ反応基及び少なくとも2つのヒドロキシル基を含有する化合物を、少なくとも1つのエポキシ反応基及び1つのB(QH)2基を含有する化合物又はそのエステル誘導体若しくはその無水物と反応させることによって生成され得る。上述したように、各Qは、独立に第6主要族の元素、好ましくはO又はS、さらに好ましくはOである。好ましいエポキシ反応基は、上記定義どおりであり、特にXについて述べたとおりである。少なくとも1つのエポキシ反応基及び少なくとも2つのヒドロキシル基を含有する化合物の例は、2つのヒドロキシル基を含有する一級又は二級脂肪族アミンである。具体例としては、1-アミノプロパン-1,2-ジオール及びN-メチル-又はN-エチルアミノプロパンジオールが挙げられる。
【0041】
本開示では、反応は、脱水剤の非存在下又は存在下で行われ得る。脱水剤は、モレキュラーシーブ、Na2SO4及びMgSO4から選択され得る。使用される場合、脱水剤と、少なくとも1つのエポキシ反応基及び少なくとも2つのヒドロキシル基を含有する化合物、又は少なくとも1つのエポキシ反応基及び1つのB(QH)2基を含有する化合物又はそのエステル誘導体若しくはその無水物との比(g:モル)は、800:1以下、又は500:1以下、又は200:1以下、又は100:1以下、又は50:1以下、又は20:1以下、又は10:1以下、又は5:1以下、又は1:1以下、又は1:5以下であり得る。
実施形態では、反応は、脱水剤の非存在下で行われ得る。
実施形態では、少なくとも1つのエポキシ反応基及び少なくとも2つのヒドロキシル基を含有する化合物と、少なくとも1つのエポキシ反応基及び1つのB(QH)2基を含有する化合物又はそのエステル誘導体若しくはその無水物とのモル比は、0.5:1~2:1、又は0.8:1~1.2:1、又は0.9:1~1.1:1の範囲内、例えば1:1であり得る。
実施形態では、少なくとも1(例えば1、2、3又は4)つのエポキシ反応基及び少なくとも2つのヒドロキシル基を含有する化合物は、少なくとも1(例えば1、2、3又は4)つのエポキシ反応基及び2つのヒドロキシル基を含有する化合物であり、好ましくは少なくとも1つのエポキシ反応基を含有する1,2-ジオール化合物及び少なくとも1つのエポキシ反応基を含有する1,3-ジオール化合物から選択される。
【0042】
実施形態では、少なくとも1つのエポキシ反応基及び1つのB(QH)2基を含有する化合物のエステル誘導体は、B(QH)2基がB(QRa)2基を形成することを意味し、各Qは上記定義どおりであり;各Raは、独立にヒドロカルビル、好ましくはアルキル又はアリール、さらに好ましくはアルキルである。ヒドロカルビルは、1~20個の炭素原子、好ましくは1~10又は1~6又は1~4個の炭素原子を有し得る。アルキルは、1~20個の炭素原子、好ましくは1~10又は1~6又は1~4(例えば1、2、3又は4)個の炭素原子を有し得る。アリールは、6~10個の炭素原子を有し、例えばフェニルであり得る。
実施形態では、エポキシ反応基は、カルボキシル、アミノ、スルフヒドリル又は酸無水物、好ましくはアミノ、例えば、一級アミノ基又は二級アミノ基から選択される。
【0043】
実施形態では、反応は、各試薬が溶解され得る溶媒中で行われ、好ましくは溶媒は、C1-C6アルコール(例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール)、THF、ジオキサン、DMF及びその混合物、例えばメタノールとTHFの混合物又はエタノールとTHFの混合物から選択される。本開示の方法でによれば、溶媒の量が少なくされ得る。例えば、溶媒と、少なくとも1つのエポキシ反応基及び少なくとも2つのヒドロキシル基を含有する化合物又は少なくとも1つのエポキシ反応基及び1つのB(QH)2基を含有する化合物又はそのエステル誘導体若しくはその無水物との比(ml:モル)は、1000:1未満、例えば900:1~150:1(例えば800:1、700:1、600:1、500:1、400:1、300:1、250:1、200:1又は150:1)又は800:1~200:1、又は800:1~250:1の範囲内であり得る。
【0044】
実施形態では、反応温度は、10℃から反応に用いられる溶媒の沸点まで、又は室温から反応に用いられる溶媒の沸点まで、好ましくは室温から100℃まで(例えば20℃、30℃、40℃、50℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、90℃又は100℃)、さらに好ましくは20℃~80℃又は20℃~65℃の範囲内であってもよい。
反応時間は4分~48時間(例えば4分、5分、10分、15分、0.5時間、1時間、2時間、3時間、5時間、10時間、15時間、20時間、25時間、30時間、36時間、40時間、45時間又は48時間)、好ましくは15分~36時間又は0.5時間~24時間の範囲内である。
反応は、撹拌下で又は撹拌せずに行われ得る。
本開示では、溶媒は反応後に除去され、好ましくは溶媒は、蒸留によって、例えば噴霧乾燥、回転エバポレーター及び真空乾燥によって除去される。好ましい実施形態では、溶媒を除去する温度(又は蒸留温度)は、80℃以下(例えば75℃、70℃、65℃、60℃、50℃、40℃、30℃、又は20℃)又は60℃以下、又は20℃~80℃の範囲内、又は30℃~65℃の範囲内である。
少なくとも1つのエポキシ反応基及び1つのB(QH)2基を含有する化合物の具体例としては、3-アミノフェニルボロン酸又はその水和物又はその無水物が挙げられる。
【0045】
少なくとも1つのエポキシ反応基及び1つのB(QH)
2基を含有する化合物の無水物に関して、無水物は、トリマーの形態であり得、3つのB(QH)
2基が6員環を形成し、例えばトリオキサトリボリナン環を形成する。3-アミノフェニルボロン酸を例にとれば、その無水物は下記構造を有し得る。
【化16】
【0046】
実施形態では、1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位又はその誘導部位を含有する硬化剤を調製するための反応は、10℃~30℃で1~48時間行われ得る。反応は、溶媒(例えばアルコール)中で行われ得る。必要であれば、脱水剤、例えば硫酸マグネシウムが添加され得る。
【0047】
1-アミノプロパン-1,2-ジオール及び3-アミノフェニルボロン酸を例にとれば、1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位又はその誘導部位を含有する硬化剤は、以下のように調製され得る。
【化17】
【0048】
その後、反応生成物(NBN)をエポキシ化合物と反応させて、本発明の可逆性エポキシポリマーを形成することができる。
1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位又はその誘導部位を含有する硬化剤は、硬化剤の総質量に基づいて、10wt%~100wt%、例えば20wt%~100wt%、30wt%~100wt%、40wt%~100wt%、50wt%~100wt%、60wt%~100wt%、10wt%~90wt%、20wt%~80wt%、好ましくは30wt%~100wt%又は30wt%~80wt%の量で存在する。
【0049】
ヒドロキシル基とエポキシ基を含有する化合物、及びBQH含有化合物又はその誘導体
実施形態では、反応系は、ヒドロキシル基とエポキシ基を含有する少なくとも1種の化合物及び少なくとも1種のBQH含有化合物又はそのエステル誘導体をさらに含み、前記BQH含有化合物は、2つ以上のB-QH部位を含有し、各Qは独立に第6主要族の元素である。
ヒドロキシル基とエポキシ基を含有する化合物は、通常はヒドロキシル基とエポキシ基の間に1又は2個の炭素原子を有し、好ましくはグリシドールである。
BQH含有化合物又はそのエステル誘導体は、少なくとも2つのB-Qエステル結合を含有する化合物、少なくとも1つのB(QH)2基を含有する化合物、ホウ酸、及びピロホウ酸から選択され、各Qは独立に第6主要族の元素である。
当業者なら、2又は3つのB-QH部位が1個のB原子を共有し得ることを理解できるだろう。
【0050】
少なくとも2つのB-Qエステル結合を含有する化合物は、3つのB-Qエステル結合を含有する化合物を含む。用語B-Qエステル結合は、-B-Q-C-構造を指す。好ましくは、3つのB-Qエステル結合を含有する化合物は、下記構造を有する。
【化18】
式中、R
a、R
b及びR
cは、独立にヒドロカルビル、好ましくはアルキル又はアリールであり、各Qは独立に第6主要族の元素である。
【0051】
好ましくは、3つのB-Qエステル結合を含有する化合物は、下記構造を有する。
【化19】
式中、R
a、R
b及びR
cは、独立にヒドロカルビル、好ましくはアルキル又はアリールである。R
a、R
b及びR
cは、同一又は異なり得る。ヒドロカルビルは、1~20個の炭素原子、好ましくは1~10又は1~6又は1~4個の炭素原子を有し得る。アルキルは、1~20個の炭素原子、好ましくは1~10又は1~6又は1~4個の炭素原子を有し得る。アリールは、6~10個の炭素原子を有し得る。該化合物の典型例は、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリ-n-プロピル、ホウ酸トリイソプロピル、ホウ酸トリブチル、及びホウ酸トリ-tert-ブチルを含む。
一実施形態では、少なくとも1つのB(QH)
2基を含有する化合物は、ベンゼン-1,4-ジボロン酸、3-カルボキシフェニルボロン酸、アミノベンゼンボロン酸、及びテトラヒドロキシジボロンから選択される。
【0052】
実施形態では、ヒドロキシル基とエポキシ基を含有する化合物及びBQH含有化合物又はそのエステル誘導体は、前記2つの化合物と硬化剤の反応生成物として使用される。この関連で、ヒドロキシル基とエポキシ基を含有する化合物は、硬化剤と反応して中間反応生成物(反応生成物1(reaction product 1))を得ることができ、この反応は35℃~70℃又は40℃~60℃で0.5~5時間行われ;中間応生成物(反応生成物1)は、BQH含有化合物又はそのエステル誘導体と反応して反応生成物(反応生成物2(reaction product 2))を得ることができ、この反応は50℃~90℃又は60℃~80℃で0.5~5時間行われ得る。グリシドール、NH
2-R-NH
2(硬化剤)及びホウ酸トリエチルを例にとれば、反応スキームは以下のとおりであり得る。
【化20】
【0053】
【0054】
その後、反応生成物(反応生成物2)は、エポキシ化合物と反応して、本発明の可逆性エポキシポリマーを得ることができる。
好ましい実施形態では、ヒドロキシル基とエポキシ基を含有する化合物及びBQH含有化合物又はそのエステル誘導体は、前記2つの化合物と硬化剤の反応生成物としてではなくそのまま使用される。
【0055】
促進剤
実施形態では、反応系は、少なくとも1種の促進剤を含み得る。促進剤は、反応系の硬化を促進することができる。適切な硬化促進剤は、例えば、三級アミン、イミダゾール、イミダゾリン、グアニジン、尿素化合物、及びケチミンである。
適切な三級アミンは、例えば、N,N-ジメチルベンジルアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(DMP30)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、S-トリアジン(Lupragen N 600)、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル(Lupragen N 206)、ペンタメチルジエチレントリアミン(Lupragen N 301)、トリメチルアミノエチルエタノールアミン(Lupragen N 400)、テトラメチル-1,6-ヘキサンジアミン(Lupragen N 500)、アミノエチルモルホリン、アミノプロピルモルホリン、アミノエチルエチレン尿素又はN-アルキル置換ピペリジン誘導体である。
適切なイミダゾールは、イミダゾール自体及びその誘導体、例えば、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、N-ブチルイミダゾール、ベンズイミダゾール、N-C1-C12-アルキルイミダゾール、N-アリールイミダゾール、2,4-エチルメチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチルイミダゾール又はN-アミノプロピルイミダゾール等である。適切なイミダゾリンは、イミダゾリン自体及びその誘導体、例えば、2-フェニルイミダゾリン等である。
適切なグアニジンは、グアニジン自体又はその誘導体、例えば、メチルグアニジン、ジメチルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン(TMG)、メチルイソビグアニド、ジメチルイソビグアニド、テトラメチルイソビグアニド、ヘキサメチルイソビグアニド、へプタメチルイソビグアニド又はジシアンジアミン(DICY)等である。
適切な尿素化合物は、尿素自体及びその誘導体、例えば、3-(4-クロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素(モヌロン(monuron))、3-フェニル-1,1-ジメチル尿素(フェヌロン(fenuron))、3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素(ジウロン(diuron))、3-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素(クロロトルロン(chlorotoluron))、及びトリル-2,4-ビス-N,N-ジメチル-カルバミド(Amicure UR2T)等である。
適切なケチミンは、例えば、Epi-Kure 3502(エチレンジアミンとメチルイソブチルケトンからの反応生成物)である。
【0056】
可逆性エポキシポリマー及び再生利用
一実施形態では、本発明の可逆性エポキシポリマーは、少なくとも1種のエポキシ化合物と少なくとも1種の硬化剤との間の反応であって、エポキシ化合物の少なくとも一部が、1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位又はその誘導部位を含有する、反応によって得ることができる。
一実施形態では、本発明の可逆性エポキシポリマーは、少なくとも1種のエポキシ化合物と少なくとも1種の硬化剤との間の反応であって、硬化剤の少なくとも一部が、1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位又はその誘導部位を含有する、反応によって得ることができる。
一実施形態では、本発明の可逆性エポキシポリマーは、少なくとも1種のエポキシ化合物と少なくとも1種の硬化剤との間の反応であって、反応系が、ヒドロキシル基とエポキシ基を含有する少なくとも1種の化合物及び少なくとも1種のBQH含有化合物又はそのエステル誘導体をさらに含み、前記BQH含有化合物は2つ以上のB-QH部位を含有する、反応によって得ることができる。
一実施形態では、本発明の可逆性エポキシポリマーは、少なくとも1種のエポキシ化合物と少なくとも1種の硬化剤との間の反応であって、エポキシ化合物の少なくとも一部が、1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位又はその誘導部位含有し、かつ硬化剤の少なくとも一部が、1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位又はその誘導部位を含有する、反応によって得ることができる。
【0057】
一実施形態では、本発明の可逆性エポキシポリマーは、少なくとも1種のエポキシ化合物と少なくとも1種の硬化剤との間の反応であって、エポキシ化合物の少なくとも一部が、1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位又はその誘導部位を含有し、かつ反応系が、ヒドロキシル基とエポキシ基を含有する少なくとも1種の化合物及び少なくとも1種のBQH含有化合物又はそのエステル誘導体をさらに含み、前記BQH含有化合物は2つ以上のB-QH部位を含有する、反応によって得ることができる。
一実施形態では、本発明の可逆性エポキシポリマーは、少なくとも1種のエポキシ化合物と少なくとも1種の硬化剤との間の反応であって、硬化剤の少なくとも一部が、1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位又はその誘導部位を含有し、かつ反応系が、ヒドロキシル基とエポキシ基を含有する少なくとも1種の化合物及び少なくとも1種のBQH含有化合物又はそのエステル誘導体をさらに含み、前記BQH含有化合物は2つ以上のB-QH部位を含有する、反応によって得ることができる。
一実施形態では、本発明の可逆性エポキシポリマーは、少なくとも1種のエポキシ化合物と少なくとも1種の硬化剤との間の反応であって、エポキシ化合物の少なくとも一部が、1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位又はその誘導部位を含有し、硬化剤の少なくとも一部が、1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位又はその誘導部位を含有し、かつ反応系が、ヒドロキシル基とエポキシ基を含有する少なくとも1種の化合物及び少なくとも1種のBQH含有化合物又はそのエステル誘導体をさらに含み、前記BQH含有化合物は2つ以上のB-QH部位を含有する、反応によって得ることができる。
【0058】
可逆性エポキシポリマーのTgは、-50℃~200℃の範囲内であり得る。
可逆性エポキシポリマーは、種々の技術的手段、例えば物理的再生、例えばホットプレス、射出成形又は化学的再生によって容易に再加工もされ得る。
実施形態では、可逆性エポキシポリマーは、化学的再生によって再加工される。この関連で、可逆性エポキシポリマーは、溶媒への溶解を受けてから溶媒除去後にホットプレス又は射出成形によって成形され得る。この目的では、溶媒はアルコール(例えばC1-C6アルカノール、特にメタノール及びエタノール)、酸、アルカリ塩基、フェノール、アセトン、N,N-ジメチルメタンアミド(DMF)又は若しくはその混合物又はその水との混合物、特にアルコールと水の混合物、例えば75wt%のエタノールを含有する水溶液又はアルコールとDMFの混合物、例えばエタノール-DMF溶液(体積比:1:1)を含み得る。本発明の可逆性エポキシポリマーは、溶媒に溶解させることによってオリゴマーに変換され、次にオリゴマーは、例えば溶媒を除去することによって可逆性エポキシポリマーに変換され、さらにホットプレス又は射出成形によって加工され得る。
【0059】
実施形態では、本発明の可逆性エポキシポリマーが、溶媒、好ましくはアルコールと水の混合物、さらに好ましくはエタノールと水の混合物、特に75wt%のエタノールを含有する水溶液又はアルコールとDMFの混合物、例えばエタノール-DMF溶液(体積比:1:1)への溶解を受けた後、不溶性物質の含量は、10wt%未満、好ましくは5wt%未満、さらに好ましくは2wt%未満又は1wt%未満又は0.5wt%未満又は0.1wt%未満又は0.05wt%未満である。好ましい実施形態では、本発明の可逆性エポキシポリマーが溶媒への溶解を受けた後は不溶性物質がない。不溶性物質の含量は以下のように調べる:ポリマーの初期質量を秤量し(W0);ポリマーを溶媒に溶解させた後、真空濾過を利用することによって不溶性物質を分離し、さらに真空乾燥させて秤量する(W1)。不溶性物質の含量をポリマーの初期質量に基づいて計算する:W1/W0×100%。
【0060】
実施形態では、可逆性エポキシポリマーは、物理的再生によって再加工される。例えば、可逆性エポキシポリマーは微粉砕され、150℃、0.5MPaで5分間ホットプレスされ得る。
実施形態では、3回再加工された後の可逆性エポキシポリマーの極限応力は、再加工前の可逆性エポキシポリマーの極限応力の少なくとも約50%、又は少なくとも約55%、又は少なくとも約65%、好ましくは少なくとも約70%、さらに好ましくは少なくとも約72%又は73%又は74%である。例えば、3回再加工された後の可逆性エポキシポリマーの極限応力は、再加工前の可逆性エポキシポリマーの極限応力の約50%、約55%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%であり得るか、或いは再加工前の可逆性エポキシポリマーの極限応力の約50%~約90%、又は約55%~約85%、約55%~約80%、約55%~約75%、又は約60%~約85%、約60%~約80%、約60%~約75%、又は約65%~約85%、約65%~約80%、約70%~約85%、約70%~約80%、約72%~約85%、約72%~約80%の範囲内であり得る。
【0061】
実施形態では、3回再加工された後の可逆性エポキシポリマーのヤング率は、再加工前の可逆性エポキシポリマーのヤング率の少なくとも約50%、又は少なくとも約60%、又は少なくとも約65%、好ましくは少なくとも約70%、さらに好ましくは少なくとも約75%である。例えば、3回再加工された後の可逆性エポキシポリマーのヤング率は、再加工前の可逆性エポキシポリマーのヤング率の約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%であり得るか、或いは再加工前の可逆性エポキシポリマーのヤング率の約50%~約98%、又は約60%~約98%、約70%~約98%、約75%~約98%の範囲内であり得る。
実施形態では、3回再加工された後の可逆性エポキシポリマーの極限歪みは、再加工前の可逆性エポキシポリマーの極限歪みの少なくとも約50%、又は少なくとも約60%、又は少なくとも約65%、好ましくは少なくとも約70%、さらに好ましくは少なくとも約75%又は少なくとも約80%である。例えば、3回再加工された後の可逆性エポキシポリマーの極限歪みは、再加工前の可逆性エポキシポリマーの極限歪みの約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、又は約95%であり得る。
本開示では、極限応力、極限歪み及びヤング率を以下のように特徴づけることができる:可逆性エポキシポリマーを150℃、0.5MPaで5分間ホットプレスによって成形して試験バーを得(ISO 37:2017、2型/3型試験片に準拠)、5mm/分の引張速度下25℃で引張機(例えばINSTRON 5966万能試験システム又はZwick/Roell万能試験機)によって試験バーの応力-歪み曲線を特徴づけた。5つの測定値の平均値として結果を報告する。
【0062】
実施形態では、本発明の可逆性エポキシポリマーは、少なくとも1種のエポキシ化合物と少なくとも1種の硬化剤との間の反応であって、エポキシ化合物の少なくとも一部が、1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位若しくはその誘導部位を含有し、及び/又は硬化剤の少なくとも一部が、1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位若しくはその誘導部位を含有する、反応によって得られる。前記可逆性エポキシポリマーは、室温で24時間水に浸漬された後に5wt%未満又は4wt%未満、又は2wt%未満、好ましくは1.5wt%未満、さらに好ましくは1wt%未満の吸水率及び/又は水浸漬後減量率を有する。吸水率及び水浸漬後減量率は、以下のように調べる:ポリマーの初期質量をm0として記録し、室温で24時間水に浸漬させた後にポリマーの質量をm1として記録し;120℃の環境で一定質量に達するまで乾燥させた後にポリマーの質量をm2として記録し;吸水率は、以下のように計算する:(m1-m0)/m0×100%。水浸漬後減量率は、以下のように計算する:(m0-m2)/m0×100%。
本発明の可逆性エポキシポリマーは熱可塑性を有し、好ましくはプレス、射出成形、押出成形、ブロー成形、カレンダー掛け、発泡成形、溶媒可塑化、モールドプレス、鋳造、反応成形によって、例えば造粒及びさらなるホットプレス又は押出によって加工することができる。「熱可塑性ポリマー」とは、熱によって融解され、その後、加熱前後の固体状態特性の認識できる変化なしで冷却され得るポリマーを意味する。
【0063】
可逆性エポキシポリマーの調製プロセス
本発明のさらなる態様は、本発明の可逆性エポキシポリマーの調製プロセスに関するものであり、このプロセスは、少なくとも1種のエポキシ化合物と少なくとも1種の硬化剤を反応させるステップを含み、エポキシ化合物の少なくとも一部が1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位若しくはその誘導部位を含有し、このホウ酸部位の誘導部位は、ホウ酸部位中の酸素が第6主要族の他の元素に置き換えられている部位を意味し;及び/又は硬化剤の少なくとも一部が1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位若しくはその誘導部位を含有し、このホウ酸部位の誘導部位は、ホウ酸部位中の酸素が第6主要族の他の元素に置き換えられている部位を意味し;及び/又は反応系が、ヒドロキシル基とエポキシ基を含有する少なくとも1種の化合物及び少なくとも1種のBQH含有化合物又はそのエステル誘導体をさらに含み、前記BQH含有化合物は2つ以上のB-QH部位を含有し、かつ各Qは独立に第6主要族の元素である。
【0064】
上述したように、反応系は、さらに少なくとも1種の促進剤を含み得る。
本プロセスでは、反応物質は、10分~24時間、例えば1時間~12時間混合されて均一混合物を得ることができる。混合中に必要に応じて気泡が除去され得る。次に、混合物は、40℃~200℃、例えば50℃~150℃で10分~36時間、例えば1時間~30時間反応する。次に、混合物は、40℃~200℃、例えば50℃~150℃で少なくとも0.5時間、後硬化され、必要に応じて気泡が除去され得る。
本発明の可逆性エポキシポリマーは、従来の硬化成形プロセスによって調製され得る。
【0065】
複合材料、組成物及び使用
本発明のさらなる態様は、基材と、本発明の可逆性エポキシポリマーとを含む複合材料に関する。基材は、炭素繊維及びフィラーを含み得る。基材は、硬化前の反応物質と混合されるか、又は可逆性エポキシポリマーと混合されるか、又は再生可逆性エポキシポリマーと混合され得る。
本発明の複合材料は熱可塑性を有する。本発明の複合材料は、プレス、射出成形、押出成形、ブロー成形、カレンダー掛け、発泡成形、溶媒可塑化、モールドプレス、鋳造、反応成形によって、例えば造粒及びさらなるホットプレス又は押出によって加工することができる。
本発明の複合材料は、溶媒への溶解を受けてから基材(例えば繊維及びフィラー)が回収され得る。適切な溶媒は上述したとおりである。本発明の一態様は、基材の回収プロセスに関し、このプロセスでは、本発明の複合材料は、溶媒への溶解を受けてから基材が回収される。
本発明のさらなる態様は、本発明の可逆性エポキシポリマーと、少なくとも1種の添加剤とを含む組成物に関する。該添加剤は技術上周知であり、例えば、フィラー;酸化防止剤(例えば、ヒンダードフェノール類、例えばCiba-Geigyから入手可能なIRGANOX(商標)1010又はIRGANOX(商標)1076);ホスファイト(例えば、Ciba-Geigyから入手可能なIRGAFOS(商標)168);クリング防止(anti-cling)添加剤;粘着付与剤、例えばポリブテン、テルペン樹脂、脂肪族及び芳香族炭化水素樹脂、アルカリ金属及びステアリン酸グリセロール及び水素化ロジン;UV安定剤;熱安定剤;ブロッキング防止剤;離型剤;帯電防止剤;顔料;着色剤;染料;ワックス;シリカ;フィラー;タルク;モディファイヤー;等が挙げられる。
【0066】
可逆性エポキシポリマーの混合及び加工
本明細書に記載の可逆性エポキシポリマー、組成物及び複合材料は、従来の機器及び方法を用いて、例えば個々の成分を乾式ブレンドし、その後ミキサーで溶融混合することによって、又は成分を一緒に直接ミキサーで混合することによって加工又は形成され得る。ミキサーとしては、例えば、バンバリーミキサー、Haakeミキサー、ブラベンダー内部ミキサー、又は一軸若しくは二軸押出機等があり、押出機には、重合プロセスのすぐ下流で使用される混練押出機及びサイドアーム押出機も含まれる。さらに、必要に応じて、ポリマー、ブレンドに、ブレンドの1種以上の成分に、及び/又はブレンドから形成された製品、例えばフィルムに添加剤を含めてよい。添加剤の例は、上述したとおりである。
可逆性エポキシポリマーは、いずれの物理的形態でもあり得る。一実施形態では、ポリマーの顆粒と定義され、いずれもの加工手順前の重合反応器から分離されている反応器顆粒が用いられる。別の実施形態では、ポリマーは、溶融押出から形成されるペレットの形態である。ポリマーは、添加剤とブレンドするために使用されるときは上記物理的形態であり得る。
本発明の成分は、いずれの適切な手段によってもブレンドされ得る。典型的に、均質な単相混合物であり得る密接に混合された組成物をもたらすようにブレンドされる。例えば、それらは、ポリマー中の添加剤の適切な分散を達成するのに十分である静的ミキサー、バッチミキサー、押出機、又はその組み合わせでブレンドされ得る。
【0067】
混合ステップは、例えば、タンブルブレンダーを用いる第1の乾式ブレンディングを含むことがあり、ブレンダーでは、ポリマーと添加剤が最初に、密接混合ではなく、接触させられた後に押出機内で溶融ブレンドされ得る。成分をブレンドする別の方法は、可逆性エポキシポリマーペレットを押出機又はバッチミキサー内で直接添加剤と溶融ブレンドすることである。この方法は、「マスターバッチ」手法を伴うこともあり、この手法では、純ポリマーを、より高い添加剤濃度であらかじめ調製された適量の添加剤と混ぜ合わせることによって最終添加剤濃度が達成される。この混合ステップは、物品を製作するために利用される加工法の一部として、例えば射出成形機又はブローフィルムライン若しくは繊維ラインの押出機内で行われ得る。
本発明の好ましい態様では、可逆性エポキシポリマーと添加剤は、装置、例えば押出機(一軸又は二軸)又はバッチミキサー内で「溶融ブレンド」される。ポリマーは、タンブラー、ダブルコーンブレンダー、リボンブレンダー、又は他の適切なブレンダーを用いて添加剤と「乾式ブレンド」されることもある。さらに別の実施形態では、ポリマーと添加剤は、手法の組み合わせ、例えばタンブラー後に押出機によってブレンドされる。好ましいブレンディング方法は、例えば、射出成形又はブロー成形のような成形ステップのために組成物を溶融させて運ぶために用いられる押出機内で、物品製作ステップの一部としてブレンディングの最終段階を含めることである。これは、ポリマーが完全に溶融される前又は後のいずれかに、押出機に添加剤を直接注入することを含む可能性がある。ポリマーの押出技術については、例えば、PLASTICS EXTRUSION TECHNOLOGY 26-37(Friedhelm Hensen, ed. Hanser Publishers 1988)を参照されたい。
【0068】
本発明の別の態様では、組成物は、成分を有意な程度まで溶解させる溶媒を使用することによって、いずれの適切な手段によっても、溶液中でブレンドされ得る。このブレンディングは、添加剤及び可逆性エポキシポリマーが溶液中に留まるいずれの温度又は圧力でも起こり得る。溶液プロセスと同様に、添加剤は、別のブレンディングステップで全て一緒に乾燥ポリマーに添加されるのではなく、仕上げ列に直接添加される。
このように、押出機を伴う方法を利用する物品の製作、例えば射出成形又はブロー成形の場合、所望組成を達成するために可逆性エポキシポリマーと添加剤を組み合わせるいずれの手段も、この形成プロセスは原材料の再融解及び混合を含むので、完全に処方されたプレブレンドペレットと同様によく機能し;組み合わせ例としては、純ポリマーペレットと添加剤、純ポリマー顆粒と添加剤、純ポリマーペレットとプレブレンドペレット、及び純ポリマー顆粒とプレブレンドペレットの単純ブレンドが挙げられる。ここで、「プレブレンドペレット」は、可逆性エポキシポリマーと添加剤をある濃度で含む組成物のペレットを意味する。しかしながら、圧縮成形プロセスでは、溶融成分の混合はほとんど起こらず、構成ペレット(又は顆粒)と添加剤の単純ブレンドよりプレブレンドペレットが好ましいだろう。当業者なら、構成成分の密接混合のための必要性とプロセス経済のための要望とのバランスを取るのに適したポリマーのブレンディング手順を決められるだろう。
【0069】
本発明のさらなる態様は、本発明の可逆性エポキシポリマー及びその複合材料の、接着剤、コーティング、塗料、フローリング、ガラス代用品、ポリマー添加剤、金属基材、構造材料、モールディング、光学材料、カプセル化材料、包装材料、シーリング材料、医療材料、繊維強化材料における使用、又は機能性材料としての使用に関する。
機能性材料は、建築及び建設、農業、自動車、航空宇宙、エネルギー、風力エネルギー、電気及び電子工学、消費財に使用することができる。
【0070】
本発明のさらなる態様は、下記構造の1つを有する化合物に関する。
【化22】
式中、
各mは、独立に0又は1であり;
Kは、1~4であり;
各nは、独立に少なくとも1であり;
各R
1は、独立に二価のC
1-C
20ヒドロカルビルであり;
R
2は、二価のC
1-C
20ヒドロカルビルであり;
R
3は、H又はC
1-C
20ヒドロカルビルであり;
各Qは、独立に第6主要族の元素であり;
Xは、エポキシ基と反応する能力がある官能基であり;かつ
Aは、5~10個の環員を有する環である。
【0071】
実施形態では、可変記号は下記定義を有する。
各mは、独立に0又は1であり;
Kは、1又は2であり;
各nは、独立に1、2又は3であり;
各R1は、独立に二価のC1-C20ヒドロカルビルであり;
R2は、二価のC1-C20ヒドロカルビルであり;
R3は、H又はC1-C20ヒドロカルビルであり;
各Qは、独立にO又はS、好ましくはOであり;
Xは、カルボキシル、アミノ、スルフヒドリル又は酸無水物から選択される官能基であり;かつ
Aは、5又は6個の環員を有する環である。
【0072】
実施形態では、化合物は下記構造の1つを有する。
【化23】
【0073】
【化24】
式中、m、n、R
1、R
2、R
3、Q、X及びAは、上記定義どおりである。
本発明によれば、この態様の化合物は、本発明の可逆性エポキシポリマーを調製するたために使用可能である。
【実施例】
【0074】
実施例
極限応力、極限歪み及びヤング率を以下のように特徴づけた:可逆性エポキシポリマーを150℃、0.5MPaで5分間ホットプレスにより成形して試験バーを得(ISO 37:2017、2型/3型試験片に準拠)、試験バーの応力-歪み曲線を引張機(例えばINSTRON 5966万能試験システム又はZwick/Roell万能試験機)によって5mm/分の引張速度下25℃で特徴づけた。結果を5つの測定値の平均値として報告する。
実施例1
ビスフェノールAエポキシE-44樹脂(10.0g)、グリシドール(7.6g)、ホウ酸トリメチル(5.4g)、ポリエーテルアミン(D230、9.3g)、及び0.093gのN,N-ジメチルベンジルアミン(ポリエーテルアミンD230に基づいて、1wt%)を20℃で4時間撹拌した。気泡を除去した。次に、混合物を開放容器に移し、70℃のオーブンに入れ、12時間硬化させた。得られた材料を粉砕し、70℃の真空オーブンに入れて残留小分子をさらに除去して可逆性エポキシポリマーを得た。
得られた可逆性エポキシポリマーは、種々の方法で加工可能である。ポリマーは、
図1に示すように150℃、0.5MPaで5分間ホットプレスにより成形するか又は150℃、20r/分の条件で射出成形することができる。
機械的特性を調べるため、可逆性エポキシポリマーを150℃、0.5MPaで5分間ホットプレスにより成形して試験バーを得た(ISO 37:2017の2型試験片)。エポキシ試料の応力-歪み曲線を引張機(Zwick/Roell万能試験機)によって5mm/分の引張速度下25℃で特徴づけた。可逆性エポキシポリマーの極限応力は28.72MPaであり、破断点歪みは1.85%であり、ヤング率は1.64GPaだった。
【0075】
実施例2
この例では、可逆性エポキシポリマーの再生特性を評価した。実施例1の手順に従って調製した可逆性エポキシポリマーをR0と名付け、次にR0を微粉砕して粉末顆粒材料を得た。粉末顆粒材料を150℃、0.5MPaで5分間ホットプレスによりさらに成形してR1を得た。次に、同様の方法でR1からR2を調製し、R2からR3を調製した。実施例1に記載の手順に従ってR0~R3の機械的特性を調べて、表1にまとめた。
【0076】
【0077】
実施例3(比較例)
ビスフェノールAエポキシE-44(10.0g)、ポリエーテルアミン(D230、2.53g)、及び0.025gのN,N-ジメチルベンジルアミンを100℃で3時間混合し、140℃で1時間、後硬化させることによって参考エポキシポリマーを調製した。実施例1に記載の手順に従って機械的特性を調べた。得られたエポキシポリマーの極限応力は38.64MPaであり、破断点歪みは2.44%であり、ヤング率は1.58GPaだった。得られたエポキシポリマーはホットプレスにより再生できなかった。
【0078】
実施例4
実施例1の手順に従って可逆性エポキシポリマーを調製した。得られた可逆性エポキシポリマー(0.5g)を75wt%エタノール溶液(10ml)の中に70℃で5時間入れ、
図2に示すように、透明均質溶液を得た。真空濾過後に未溶解固体は収集されなかった。
この溶液の溶媒を70℃で10時間かけて蒸発させ、70℃の真空で5時間かけて化学的再生エポキシポリマーを得た。再生エポキシポリマーを150℃、0.5MPaで5分間ホットプレスにより成形して試験バーを得た(ISO 37:2017の2型試験片)。実施例1に記載の手順に従って原初エポキシポリマー及び再生エポキシポリマーの機械的特性を調べて表2に示した。
【0079】
【0080】
実施例5
ビスフェノールAエポキシE-44樹脂(10g)、グリシドール(7.6g)、ホウ酸トリメチル(5.4g)、ポリエーテルアミン(D230、9.3g)、0.093gのN,N-ジメチルベンジルアミン(ポリエーテルアミンD230に基づいて、1wt%)を20℃で1時間撹拌した。気泡を除去してプレ重合エポキシポリマーを得た。
このプレ重合エポキシポリマーを炭素繊維(CF)織物にコーティングし、室温で4時間硬化させてからさらに70℃で12時間硬化させ、次に70℃の真空オーブンに入れて残留小分子をさらに除去して、
図3に示すように、プリプレグ複合材料を得た(200mm×10mm×0.3mm)。可逆性エポキシポリマーは、複合材料の30wt%を占める。
5層のプリプレグ複合材料を150℃、0.5MPaで5分間ホットプレスして、より厚いCF複合材料を得た(200mm×10mm×1.3mm)。ホットプレス複合材料から試験バー(50mm×10mm×1.3mm)をカットした。実施例1に記載の手順に従って機械的特性を調べた。CF複合材料の極限応力は782.6MPaであり、破断点歪みは3.54%であり、ヤング率は22.91GPaだった。
【0081】
実施例6
ビスフェノールAエポキシE-44(6.16g)、ポリエーテルアミン(D230、4.66g)、グリシドール(4g)及びホウ酸トリエチル(TEB、3.94g)を20℃で4時間撹拌した。気泡を除去した。次に、混合物を開放容器に移し、70℃のオーブンに入れて24時間硬化させた。得られた材料を粉砕し、70℃の真空オーブンに入れて残留小分子をさらに除去して可逆性エポキシポリマーを得た。Zwick/Roell万能試験機を、試験バーISO 37:2017の3型試験片を調べるINSTRON 5966万能試験システムに交換して、実施例1に記載の手順に従って機械的特性を調べた。可逆性エポキシポリマーの極限応力は27.75MPaであり、破断点歪みは1.07%であり、ヤング率は2.90GPaだった。
従来の熱硬化性エポキシポリマーと比較するため、熱硬化性エポキシポリマーの比較試料を下記プロセスにより調製した:ビスフェノールAエポキシE-44(14.97g)及びポリエーテルアミン(D230、3.79g)を室温でよく混合し、型に移して150℃で3時間、後硬化させて熱硬化性エポキシポリマーを得た。
【0082】
DMA試験
動的機械分析(DMA)を利用してポリマーのレオロジー挙動を解析して加工性を示した。10℃/分の冷却速度による150℃~70℃の温度勾配、直線領域で制御される歪み振幅、及び1Hzの周波数で行われる8mmのパラレルプレートジオメトリを備えたARES-G2レオメーター(TA Instruments)を用いて貯蔵弾性率(G’)、損失弾性率(G’’)及びタンジェントデルタを測定した。
貯蔵/損失弾性率(G’/G’’)対T及びタンジェントデルタ対Tの曲線を
図4に示した。DMA曲線から、ガラス転移状態後、熱硬化性エポキシポリマーについては、材料がゴム状段階になり、貯蔵弾性率の値が絶えず損失弾性率の値より高いことが分かる。温度を上げても、材料は粘弾性領域に入ることができず、ネットワーク構造は常に固定され、材料はマクロフローを有し得ず、加工され得ないことを意味している。しかしながら、実施例6の可逆性エポキシポリマーについては、ガラス転移後、材料は粘弾性領域にり、G’及びG’’が急に相対的に低い値に下がる。140℃で、G’及びG’’は両方とも1E+04~1E+05Paの範囲内であり、このような低い粘度での良好な加工性を示唆している。また、タンジェントデルタ曲線から、ガラス転移後でさえ、可逆性エポキシポリマーのタンジェントデルタ値は未だに約1であり、系内の会合相互作用、すなわちホウ酸エステル交換を示唆している。
【0083】
TGA試験
PerkinElmerからのPyris 1熱重量分析装置で窒素流下にてTGAを行った。試料を50℃で分5分間維持してから、50.00℃から600.00℃まで10.00℃/分で加熱した。
図5に示すように、実施例6の可逆性エポキシポリマーは350℃まで安定している。
【0084】
実施例7
まず最初に、ポリエーテルアミン(D230、4.66g)及びグリシドール(4g)を一緒に50℃で1時間混合して反応生成物1(RP1)を得た。
【化25】
RP1は粘性液体だった。3℃/分の加熱速度による25℃~100℃の温度勾配、直線領域で制御される歪み振幅、及び1Hzの周波数で行われる8mmのパラレルプレートジオメトリを備えたARES-G2レオメーター(TA Instruments)を用いて動的機械分析(DMA)によりRP1の粘度-T曲線をも測定した。RP1の粘度-T曲線を
図6に示した。
【0085】
PerkingElmerからのSpectrum 100で減衰全反射(ATR)法によりRP1のIRスペクトルを記録した。赤外分光法の走査範囲は650~4000cm
-1だった。RP1の対応するFTIRスペクトルを
図7に示した。751cm
-1辺りのピーク(エポキシ基のC-O-C振動に相当)の消失は完全な反応を証明した。
【0086】
2番目に、RP1とホウ酸トリエチル(TEB、3.94g)を70℃で1時間混合して反応生成物2(RP2)を得た。
【化26】
【0087】
6℃/分の加熱速度による0℃~100℃の温度勾配、直線領域で制御される歪み振幅、及び1Hzの周波数で行われる8mmのパラレルプレートジオメトリを備えたARES-G2レオメーター(TA Instruments)を用いてRP2の動的機械分析(DMA)を行った。反応生成物2は室温下で固体状態であり、ガラス転移温度は、
図8に示すように約50℃だった。
PerkingElmerからのSpectrum 100で減衰全反射(ATR)法によりRP2のIRスペクトルを記録した。赤外分光法の走査範囲は650~2000cm
-1だった。
図9に示すように、FTIRスペクトルの953cm
-1辺りのピークはBO
4連鎖構造の形成を示した。
3番目に、ビスフェノールAエポキシE-44(6.16g)をRP2に添加し、70℃でよく混合した。次に、混合物を開放容器に移し、70℃のオーブンに入れ、24時間硬化させた。得られた材料を粉砕し、70℃の真空オーブンに入れて残留小分子をさらに除去して可逆性エポキシポリマーを得た。
実施例6に記載の手順に従って機械的特性を調べた。可逆性エポキシポリマーの極限応力は30.45MPaであり、破断点歪みは1.17%であり、ヤング率は3.10GPaだった。
【0088】
実施例8
ビスフェノールAエポキシE-42樹脂(10g)、グリシドール(8.7g)、ホウ酸トリメチル(6.1g)、ポリエーテルアミン(D230、7.25g)、0.07gのN,N-ジメチルベンジルアミン(D230に基づいて、1wt%)を20℃で3時間撹拌した。気泡を除去してプレ重合エポキシ樹脂を得た。次に混合物を開放容器に移し、70℃のオーブンに入れて12時間硬化させた。得られた材料を粉砕し、70℃の真空オーブンに入れて残留小分子をさらに除去して可逆性エポキシポリマーを得た。可逆性エポキシポリマーを150℃、0.5MPaで5分分間ホットプレスにより成形した。
動的機械分析(DMA)を利用して可逆性エポキシポリマーのレオロジー挙動を解析して加工性を示した。10℃/分の冷却速度による120℃~30℃の温度勾配、直線領域で制御される歪み振幅、及び1Hzの周波数で行われる8mmのパラレルプレートジオメトリを備えたARES-G2レオメーター(TA Instruments)を用いて貯蔵弾性率(G’)、損失弾性率(G’’)及びタンジェントデルタを測定した。
実施例8の可逆性エポキシポリマーのDMA曲線を
図10に示した。この材料は、高温で急速に粘弾性領域まで進む(損失弾性率の値は貯蔵弾性率の値より高い)。また、高温で粘度は非常に低く、良好な加工性を示唆している。
【0089】
実施例9(比較例)
ビスフェノールAエポキシE-44樹脂(10.0g)、グリシドール(7.6g)、ポリエーテルアミン(D230、9.3g)、及び0.093gのN,N-ジメチルベンジルアミン(硬化促進剤)を20℃で4時間撹拌した。気泡を除去した。次に、混合物を開放容器に移し、70℃のオーブンに入れて12時間硬化させた。ポリマーは非常に脆く、機械的特性を調べられなかった。
【0090】
実施例10
この例は、可逆性エポキシポリマーの自己回復特性を実証する。
ナイフを用いて実施例1の可逆性エポキシポリマーの平坦面にスクラッチを付けた。
図11に示すアイロンガンを用いる100℃で30秒間の局所プレスによりスクラッチ面は消失した。
また、Zeiss光学顕微鏡(Axio Imager.Z2m)によって反射光による明視野下でスクラッチを観察した。その間にホットドライヤーを用いて試料を直接加熱した。
図12(上段の写真)に示すように、わずかな垂直応力のため、バインダークリップを用いて中央に試料を安定化し、スクラッチは早急に(3分)完全に消失できた。
図12(下段の写真)に示すように、新たな面を直接加熱し、5分後に、スクラッチはほとんど完全に消失した。
破砕片をつなぎ合わせて、それらを80℃のオーブンに30分間入れることによって割れ目修復実験を行った。
図13に示すように、破砕試料を原初の形状に復元することができ、破砕領域の境界面はほとんど完全に消失した。
【0091】
実施例11
第1ステップ:1つの可逆性ホウ酸部位を含有する硬化剤NBNの合成:
【化27】
3-アミノ-1,2-プロパンジオール(9.1g)、3-アミノベンゼンボロン酸(13.6g)、メタノール(100ml)、及び硫酸マグネシウム(10.0g、脱水剤として機能する)を20℃で24時間撹拌した。硫酸マグネシウム固体を濾過により除去することによって黄色溶液を得た。60℃でロータリーエバポレーションによりメタノール溶媒を除去して黄色粉末生成物を得た。この粉末(NBN)を粉砕し、70℃で一定質量(21.5g)まで真空乾燥させた。
【0092】
NBNを500MHz Bruker Avance IIIで溶媒としてCDCl3を用いて特徴づけた。結果を
図14に示した。1H-NMR(500 MHz, CDCl3) δ 6.80-7.26 (4H, ベンゼン); 4.39-4.61 (2H, OCH2); 4.06 (H, OCH); 2.83-3.00 (2H, CH2)。位置3.5~3.6に少量のメタノール溶媒からのわずかな不純物ピークがあった。
第2ステップ:可逆性エポキシポリマーの合成。NBN(2.85g、0.015mol)、メタノール(3g)、ヘキシルアミン(1.01、0.01mol)、2,2-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)プロパン(13.6g、0.04mol、0.08molのエポキシ基含有)を室温で1時間撹拌した。この前駆体をアルミニウムプレート中に100℃で5時間注いだ。次にこの材料をクラッシャーで粉砕し、粉砕材料を70℃で12時間真空中に置いてメタノール溶媒を除去した。最後に、粉末を0.5MPa下200℃で10分間ホットプレスにより成形した。
【0093】
水安定性試験
約0.5gの成形可逆性エポキシポリマー材料を水に浸漬させ、この材料の吸水率を様々な温度で記録した。材料の初期質量をm0として記録し、特定時間水に浸漬された後の材料の質量をm1として記録した。120℃の環境で材料が一定質量に達するまで約5時間乾燥された後の材料の質量をm2として記録した。吸水率を以下のように計算し:(m1-m0)/m0×100%、水浸漬後減量率を以下のように計算した:(m0-m2)/m0×100%。
可逆性エポキシポリマーの吸水率は、室温にて10時間で0.4%であり、24時間で0.9%だった。これも、可逆性エポキシポリマーが基本的に吸水性でなかったことを示唆している。65℃では、吸水率は10時間で4.4%、24時間で7.4%だった。これは、温度がホウ酸エステル結合の加水分解にある程度の影響を与えることを示した。室温で24時間又は65℃で24時間浸漬された可逆性エポキシポリマーが120℃で一定質量に達するまで約5時間乾燥されたとき、水浸漬後減量率は、それぞれ、0.4%及び0.7%だった。試験偏差を考慮すると、基本的に減量しなかった。
【0094】
可逆性エポキシポリマーを室温で20日間水に浸漬させたが、ポリマーの外観は浸漬後に同じままだった。
機械的特性を調べるため、可逆性エポキシポリマーを200℃、0.5MPaで10分間ホットプレスにより成形して試験バー(ISO 37:2017の2型試験片)を得た。エポキシ試料の応力-歪み曲線をINSTRON 5966万能試験システムにより5mm/分の引張速度下25℃で特徴づけた。実施例11の可逆性エポキシポリマーの機械的特性は以下のとおり:ヤング率は1.23GPaであり、極限応力は43.54MPaであり、破断点歪みは4.57%だった。さらに、室温で24時間の浸漬後、可逆性エポキシポリマーの機械的特性は基本的に変化せず:ヤング率は1.24GPaであり、極限応力は40.13MPaであり、破断点歪みは4.41%だった。
【0095】
DMA
DMA TA Q800で張力を固定して実施例11の可逆性エポキシポリマーのDMA(差次的機械分析(Differential Mechanical Analysis))を行った。材料を3mm×15mm×0.6mmのスプラインにカットし、5℃/分の加熱速度による40℃~170℃の温度勾配、1Hzの周波数、及び直線範囲で制御される歪みで調べた。DMA曲線を
図15に示した。
DSC
DSC Q200を利用して実施例11の可逆性エポキシポリマーのガラス転移温度(T
g)を10℃/分の加熱速度で調べ、T
gが76℃であるDSC曲線を
図16に示した。
TGA
TGA Q500熱重量分析装置を用いて空気流下10℃/分の加熱速度で実施例11の可逆性エポキシポリマーの50℃と800℃の間の質量変化を調べた。Td5が325℃であるTGA曲線を
図17に示した。
【0096】
実施例12
第1ステップで、NBN硬化剤を実施例11の手順と同じ手順に従って調製した。
第2ステップで、NBN(0.95g、0.005mol)、メタノール(1.0g)、2,2-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)プロパン(6.8g、0.02mol、0.04molのエポキシ基含有)及びヘキシルアミン(1.01g、0.01mol)を室温で1時間撹拌した。この前駆体をアルミニウムプレート中に100℃で5時間注いだ。次にこの材料をクラッシャーで粉砕し、粉砕材料を真空中に70℃で12時間置いた。最後に、粉末をホットプレス型に入れ、0.5MPa、200℃で10分間成形した。
高温下での割れ目回復をも調べた。成形材料を矩形試料(20mm×5mm×0.5mm)にカットした。
図18に示すように、180℃下で3分間2枚のガラス間に2つの矩形試料をクランプすることによって溶接した。この試料は粘性状態に達した。
図18から、溶接が2つの試料間の境界面を消失させたことが分かる。張力機(Zwick/Roell万能試験機)により25℃にて5mm/分の引張速度下で機械的特性を調べた。
可逆性エポキシポリマーの機械的特性は以下のとおり:ヤング率は1.64GPaであり、極限応力は56.28MPaであり、破断点歪みは6.00%だった。
溶接試料の機械的特性は以下のとおり:ヤング率は1.63GPaであり、極限応力は44.51MPaであり、破断点歪みは3.26%だった。
明らかなように、機械的特性は非常によく回復され得る。この材料のヤング率は、原初材料と一致し得る。応力は80%回復された。
【0097】
実施例13
第1ステップで、NBN硬化剤を実施例11の手順と同じ手順に従って調製した。
第2ステップで、NBN(0.95g、0.005mol)、メタノール(1.0g)、ヘキシルアミン(3.03、0.03mol)、2,2-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)プロパン(13.6g、0.04mol、0.08molのエポキシ基含有)を室温で1時間撹拌した。この前駆体をアルミニウムプレート中に100℃で12時間注いだ。次にこの材料をクラッシャーで粉砕し、粉砕材料を真空中に70℃で12時間置いてメタノール溶媒を除去した。最後に、粉末を0.5MPa下200℃で10分間ホットプレスにより成形した。
可逆性エポキシポリマーの機械的特性は以下のとおり:ヤング率は2.04GPaであり、極限応力は51.28MPa、破断点歪みは31.35%だった。
【0098】
実施例14
可逆性エポキシポリマーをそれぞれ実施例1及び実施例11の手順に従って調製した。得られた可逆性エポキシポリマー(0.5g)をそれぞれエタノール-DMF溶液(体積比:1:1、10ml)に70℃で0.5時間入れた。両溶液の濾過後に未溶解固体は収集されなかった。
【0099】
実施例15-NBN硬化剤のIn situでの生成をNMR分光法によってモニターした。
【化28】
【0100】
4つのバイアルで、以下のように溶液を調製した。
バイアル1:0.50mlのメタノール-d4中の3-アミノベンゼンボロン酸。
バイアル2:0.50mlのメタノール-d4中のNBN。
バイアル3:0.50mlのメタノール-d4中のNBN(0.20mmol、38mg)及び3-アミノベンゼンボロン酸(0.20mmol、27mg)。
バイアル4:0.50mlのメタノール-d4中の3-アミノベンゼンボロン酸(0.20mmol、27mg)及び3-アミノ-1,2-プロパンジオール(0.20mmol、18mg)。
図19に示すように
1H NMRスペクトルを600MHz Avance III NMRで測定した。6.77ppmのピークの消失によって3-アミノベンゼンボロン酸の消費をモニターし、6.60ppmのピークの出現によってNBN硬化剤の生成をモニターした。In situ NMRは、NBN硬化剤の生成は脱水剤なしで室温にて起こることを示した。
【0101】
実施例16-脱水剤を用いるNBN硬化剤の合成
過剰量のモレキュラーシーブ(40g)を脱水剤として用いて、3-アミノ-1,2-プロパンジオール(ジオール)(4.6g、0.050mol)及び3-アミノベンゼンボロン酸(6.8g、0.050mol)を50mLのメタノールに溶解させた。混合物を25℃で21時間撹拌した後に濾過して脱水剤を除去した。45℃でロータリーエバポレーターを用いて白色粉末が得られるまで全ての揮発性物質を除去した。得られた生成物を真空下で24時間乾燥させて93%の収率を得た。
【0102】
実施例17-脱水剤を用いないNBN硬化剤の合成
3-アミノ-1,2-プロパンジオール(ジオール)(1.8g、0.020mol)及び3-アミノベンゼンボロン酸(BA)(2.7g、0.020mol)を表3に示す溶媒に、全ての溶質が溶けて清澄溶液が得られるまで溶解させた。混合物を指示温度で指示時間撹拌した(表3参照)。45℃でロータリーエバポレーターを用いて全ての揮発性物質を除去し、白色粉末として所望生成物を得た。得られた生成物を真空下50℃で24時間乾燥させた。詳細を表3に示した。
【0103】
【0104】
実施例18-異なる供給元からの3-アミノベンゼンボロン酸一水和物の使用
【化29】
【0105】
Adamas Reagent Co., Ltd又はWuxi AppTec Co., Ltdからの3-アミノベンゼンボロン酸一水和物を用いてNBNの合成を実証した。3-アミノベンゼンボロン酸一水和物(15.5g、0.10mol)及び3-アミノ-1,2-プロパンジオール(9.1g、0.10mol)をそれぞれフラスコ内で混合した。メタノール(30ml)を添加して混合物を溶かした。混合物を室温で5分間撹拌した。反応混合物を真空下で白色粉末が得られるまで乾燥させた。得られた白色粉末を真空オーブンを用いて70℃で24時間乾燥させ、粉末NBNを得た。NBNの収率は実施例17の収率と類似した。異なる供給元からの原材料及びその生成物の外観を
図20に示した。明らかなように、異なる供給源からの3-アミノベンゼンボロン酸一水和物を使用することによってNBNを合成することができる。
【0106】
実施例19-3-アミノベンゼンボロン酸無水物の使用
【化30】
【0107】
3-アミノベンゼンボロン酸無水物(71mg、0.20mmol)及び3-アミノ-1,2-プロパンジオール(55mg、0.60mmol)をフラスコ内で1mlのメタノールと混合した。混合物を室温で5分間撹拌した。反応混合物を真空下で白色粉末が得られるまで乾燥させ、得られた生成物を真空オーブンを用いて70℃で24時間乾燥させて粉末NBN(107mg、93%)を得た。
【0108】
他の実施形態
本出願をその詳細な説明と併せて記載したが、前述の説明は、添付の特許請求の範囲によって定義される本出願の範囲を例示するものであり、限定する意図でないことを理解すべきである。他の態様、利点、及び変更形態は下記特許請求の範囲内である。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のエポキシ化合物と少なくとも1種の硬化剤との間の反応によって得ることができる可逆性エポキシポリマーであって、
前記エポキシ化合物の少なくとも一部が、1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位若しくはその誘導部位を含有し、前記ホウ酸部位の誘導部位は、前記ホウ酸部位中の酸素が第6主要族の他の元素に置き換えられている部位を意味し;及び/又は
前記硬化剤の少なくとも一部が、1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位若しくはその誘導部位を含有し、前記ホウ酸部位の誘導部位は、前記ホウ酸部位中の酸素が第6主要族の他の元素に置き換えられている部位を意味し;及び/又は
前記反応系が、ヒドロキシル基とエポキシ基を含有する少なくとも1種の化合物及び少なくとも1種のBQH含有化合物若しくはそのエステル誘導体をさらに含み、
前記BQH含有化合物は2つ以上のB-QH部位を含有し、各Qは独立に第6主要族の元素である、
可逆性エポキシポリマー。
【請求項2】
前記可逆性ホウ酸部位又はその誘導部位が、下記式(I)の構造:
【化1】
(式中、各Qは独立に第6主要族の元素である)
を有する、請求項1に記載の可逆性エポキシポリマー。
【請求項3】
式(I)中の-Q-B-Q-部位が、2~5個の炭素原子と一緒に、5~8個の環員を有するホウ素含有環を形成し、好ましくは2又は3個の炭素原子と一緒に、5又は6個の環員を含有するホウ素含有環を形成し、場合により前記ホウ素含有環がさらなる環と縮合されて縮合環系を形成している、請求項2に記載の可逆性エポキシポリマー。
【請求項4】
前記ホウ素含有環が、下記構造:
【化2】
を有し、
前記ホウ素含有環を含有する縮合環系が、下記構造:
【化3】
(式中、Aは5~10個の環員を有する環であり、各Qは独立に第6主要族の元素である)を有する、
請求項3に記載の可逆性エポキシポリマー。
【請求項5】
前記1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位又はその誘導部位を含有するエポキシ化合物が、2つ以上のエポキシ基を含有し、好ましくは前記エポキシ基が、エチレンオキシド基及びオキセタン基から選択される、
請求項1
に記載の可逆性エポキシポリマー。
【請求項6】
前記1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位又はその誘導部位を含有するエポキシ化合物が、下記構造を有する少なくとも1種の化合物:
【化4】
(式中、
mは0又は1であり;
各nは、独立に少なくとも1、好ましくは1、2又は3であり;
EPは、エチレンオキシド基又はオキセタン基であり;
各Qは、独立に第6主要族の元素であり;
各R
1及びR
2は、独立に二価のC
1-C
20ヒドロカルビルであり;かつ
Aは、5~10個の環員を有する環、好ましくは5又は6個の環員を有する環である)
から選択される、請求項1
に記載の可逆性エポキシポリマー。
【請求項7】
前記1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位又はその誘導部位を含有する硬化剤が、エポキシ基と反応する能力がある2つ以上の官能基、好ましくはカルボキシル、アミノ、スルフヒドリル又は酸無水物から選択される官能基を含有する、
請求項1
に記載の可逆性エポキシポリマー。
【請求項8】
前記1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位又はその誘導部位を含有する硬化剤が、下記構造を有する少なくとも1種の化合物:
【化5】
(式中、
mは0又は1であり;
各nは、独立に少なくとも1、好ましくは1、2又は3であり;
各R
1及びR
2は、独立に二価のC
1-C
20ヒドロカルビルであり;
各Qは、独立に第6主要族の元素であり;
Xは、エポキシ基と反応する能力がある官能基、好ましくはカルボキシル、アミノ、スルフヒドリル又は酸無水物であり;かつ
Aは、5~10個の環員を有する環、好ましくは5又は6個の環員を有する環である)
から選択される、
請求項1
に記載の可逆性エポキシポリマー。
【請求項9】
前記BQH含有化合物又はそのエステル誘導体が、少なくとも2つのB-Qエステル結合を含有する化合物、少なくとも1つのB(QH)
2基を含有する化合物、ホウ酸、及びピロホウ酸から選択され、かつ各Qは独立に第6主要族の元素である、
請求項1
に記載の可逆性エポキシポリマー。
【請求項10】
前記少なくとも2つのB-Qエステル結合を含有する化合物が、3つのB-Qエステル結合を含有する化合物、好ましくは下記構造を有する化合物:
【化6】
(式中、R
a、R
b及びR
cは、独立にヒドロカルビル、好ましくはアルキル又はアリールであり、各Qは独立に第6主要族の元素である)
を含む、請求項
9に記載の可逆性エポキシポリマー。
【請求項11】
前記可逆性エポキシポリマーが、少なくとも1種のエポキシ化合物と少なくとも1種の硬化剤との間の反応によって得られ、前記エポキシ化合物の少なくとも一部が、1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位若しくはその誘導部位を含有し、及び/又は前記硬化剤の少なくとも一部が、1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位若しくはその誘導部位を含有し、かつ前記可逆性エポキシポリマーの吸水率及び水浸漬後減量率の少なくとも1つが、室温で24時間水に浸漬された後に5wt%未満、好ましくは2wt%未満である、請求項1
に記載の可逆性エポキシポリマー。
【請求項12】
前記ホウ酸部位の誘導部位が、前記ホウ酸部位中の酸素がSに置き換えられ、及び/又はQがO若しくはS、好ましくはOである部位を意味する、
請求項1
に記載の可逆性エポキシポリマー。
【請求項13】
前記可逆性エポキシポリマーが自己回復特性を有する、
請求項1
に記載の可逆性エポキシポリマー。
【請求項14】
請求項1~
13のいずれか1項に記載の可逆性エポキシポリマーの調製プロセスであって、少なくとも1種のエポキシ化合物と少なくとも1種の硬化剤を反応させるステップを含み、
前記エポキシ化合物の少なくとも一部が、1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位若しくはその誘導部位を含有し、前記ホウ酸部位の誘導部位は、前記ホウ酸部位中の酸素が第6主要族の他の元素に置き換えられている部位を意味し;及び/又は
前記硬化剤の少なくとも一部が、1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位若しくはその誘導部位を含有し、前記ホウ酸部位の誘導部位は、前記ホウ酸部位中の酸素が第6主要族の他の元素に置き換えられている部位を意味し;及び/又は
前記反応系が、ヒドロキシル基とエポキシ基を含有する少なくとも1種の化合物及び少なくとも1種のBQH含有化合物若しくはそのエステル誘導体をさらに含み、前記BQH含有化合物は2つ以上のB-QH部位を含有し、各Qは独立に第6主要族の元素である、
プロセス。
【請求項15】
下記構造:
【化7】
(式中、
各mは、独立に0又は1であり;
kは、1~4であり;
各nは、独立に少なくとも1であり;
各R
1は、独立に二価のC
1-C
20ヒドロカルビルであり;
R
2は、二価のC
1-C
20ヒドロカルビルであり;
R
3は、H又はC
1-C
20ヒドロカルビルであり;
各Qは、独立に第6主要族の元素であり;
Xは、エポキシ基と反応する能力がある官能基であり;かつ
Aは、5~10個の環員を有する環である)
の1つを有する化合物。
【請求項16】
各mが、独立に0又は1であり;
kが、1又は2であり;
各nが、独立に1、2又は3であり;
各R
1が、独立に二価のC
1-C
20ヒドロカルビルであり;
R
2が、二価のC
1-C
20ヒドロカルビルであり;
R
3が、H又はC
1-C
20ヒドロカルビルであり;
各Qが、独立にO又はS、好ましくはOであり;
Xが、カルボキシル、アミノ、スルフヒドリル又は酸無水物から選択される官能基であり;かつ
Aが、5又は6個の環員を有する環である、
請求項
15に記載の化合物。
【請求項17】
前記化合物が、下記構造:
【化8】
【化9】
(式中、m、n、R
1、R
2、R
3、Q、X及びAは、請求項
15又は
16の定義どおりである)
の1つを有する、請求項
15又は
16に記載の化合物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0108
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0108】
他の実施形態
本出願をその詳細な説明と併せて記載したが、前述の説明は、添付の特許請求の範囲によって定義される本出願の範囲を例示するものであり、限定する意図でないことを理解すべきである。他の態様、利点、及び変更形態は下記特許請求の範囲内である。
本発明のまた別の態様は、以下の通りであってもよい。
〔1〕少なくとも1種のエポキシ化合物と少なくとも1種の硬化剤との間の反応によって得ることができる可逆性エポキシポリマーであって、
前記エポキシ化合物の少なくとも一部が、1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位若しくはその誘導部位を含有し、前記ホウ酸部位の誘導部位は、前記ホウ酸部位中の酸素が第6主要族の他の元素に置き換えられている部位を意味し;及び/又は
前記硬化剤の少なくとも一部が、1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位若しくはその誘導部位を含有し、前記ホウ酸部位の誘導部位は、前記ホウ酸部位中の酸素が第6主要族の他の元素に置き換えられている部位を意味し;及び/又は
前記反応系が、ヒドロキシル基とエポキシ基を含有する少なくとも1種の化合物及び少なくとも1種のBQH含有化合物若しくはそのエステル誘導体をさらに含み、
前記BQH含有化合物は2つ以上のB-QH部位を含有し、各Qは独立に第6主要族の元素である、
可逆性エポキシポリマー。
〔2〕前記可逆性ホウ酸部位又はその誘導部位が、下記式(I)の構造:
【化31】
(式中、各Qは独立に第6主要族の元素である)
を有する、前記〔1〕に記載の可逆性エポキシポリマー。
〔3〕式(I)中の-Q-B-Q-部位が、2~5個の炭素原子と一緒に、5~8個の環員を有するホウ素含有環を形成し、好ましくは2又は3個の炭素原子と一緒に、5又は6個の環員を含有するホウ素含有環を形成し、場合により前記ホウ素含有環がさらなる環と縮合されて縮合環系を形成している、前記〔2〕に記載の可逆性エポキシポリマー。
〔4〕前記ホウ素含有環が、下記構造:
【化32】
を有し、
前記ホウ素含有環を含有する縮合環系が、下記構造:
【化33】
(式中、Aは5~10個の環員を有する環であり、各Qは独立に第6主要族の元素である)を有する、
前記〔3〕に記載の可逆性エポキシポリマー。
〔5〕前記1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位又はその誘導部位を含有するエポキシ化合物が、2つ以上のエポキシ基を含有し、好ましくは前記エポキシ基が、エチレンオキシド基及びオキセタン基から選択される、
前記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の可逆性エポキシポリマー。
〔6〕前記1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位又はその誘導部位を含有するエポキシ化合物が、下記構造を有する少なくとも1種の化合物:
【化34】
(式中、
mは0又は1であり;
各nは、独立に少なくとも1、好ましくは1、2又は3であり;
EPは、エチレンオキシド基又はオキセタン基であり;
各Qは、独立に第6主要族の元素であり;
各R
1
及びR
2
は、独立に二価のC
1
-C
20
ヒドロカルビルであり;かつ
Aは、5~10個の環員を有する環、好ましくは5又は6個の環員を有する環である)
から選択される、前記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の可逆性エポキシポリマー。
〔7〕前記1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位又はその誘導部位を含有する硬化剤が、エポキシ基と反応する能力がある2つ以上の官能基、好ましくはカルボキシル、アミノ、スルフヒドリル又は酸無水物から選択される官能基を含有する、
前記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の可逆性エポキシポリマー。
〔8〕前記1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位又はその誘導部位を含有する硬化剤が、下記構造を有する少なくとも1種の化合物:
【化35】
(式中、
mは0又は1であり;
各nは、独立に少なくとも1、好ましくは1、2又は3であり;
各R
1
及びR
2
は、独立に二価のC
1
-C
20
ヒドロカルビルであり;
各Qは、独立に第6主要族の元素であり;
Xは、エポキシ基と反応する能力がある官能基、好ましくはカルボキシル、アミノ、スルフヒドリル又は酸無水物であり;かつ
Aは、5~10個の環員を有する環、好ましくは5又は6個の環員を有する環である)
から選択される、
前記〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の可逆性エポキシポリマー。
〔9〕前記1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位又はその誘導部位を含有するエポキシ化合物が、該エポキシ化合物の総質量に基づいて、10wt%~100wt%、好ましくは30wt%~100wt%又は30wt%~80wt%の量で存在する、
前記〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の可逆性エポキシポリマー。
〔10〕前記1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位又はその誘導部位を含有する硬化剤が、該硬化剤の総質量に基づいて、10wt%~100wt%、好ましくは30wt%~100wt%又は30wt%~80wt%の量で存在する、
前記〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の可逆性エポキシポリマー。
〔11〕前記BQH含有化合物又はそのエステル誘導体が、少なくとも2つのB-Qエステル結合を含有する化合物、少なくとも1つのB(QH)
2
基を含有する化合物、ホウ酸、及びピロホウ酸から選択され、かつ各Qは独立に第6主要族の元素である、
前記〔1〕~〔10〕のいずれかに記載の可逆性エポキシポリマー。
〔12〕前記少なくとも2つのB-Qエステル結合を含有する化合物が、3つのB-Qエステル結合を含有する化合物、好ましくは下記構造を有する化合物:
【化36】
(式中、R
a
、R
b
及びR
c
は、独立にヒドロカルビル、好ましくはアルキル又はアリールであり、各Qは独立に第6主要族の元素である)
を含む、前記〔11〕に記載の可逆性エポキシポリマー。
〔13〕前記少なくとも1つのB(QH)
2
基を含有する化合物が、ベンゼン-1,4-ジボロン酸、3-カルボキシフェニルボロン酸、アミノベンゼンボロン酸、及びテトラヒドロキシジボロンから選択される、前記〔11〕に記載の可逆性エポキシポリマー。
〔14〕前記ヒドロキシル基とエポキシ基を含有する化合物が、前記ヒドロキシル基とエポキシ基の間に1又は2個の炭素原子を有し、好ましくはグリシドールである、
前記〔1〕~〔13〕のいずれかに記載の可逆性エポキシポリマー。
〔15〕3回再加工された後の前記可逆性エポキシポリマーの極限応力が、再加工前の前記可逆性エポキシポリマーの極限応力の少なくとも約50%、又は少なくとも約65%、好ましくは少なくとも約70%、さらに好ましくは少なくとも約72%である、
前記〔1〕~〔14〕のいずれかに記載の可逆性エポキシポリマー。
〔16〕3回再加工された後の前記可逆性エポキシポリマーのヤング率が、再加工前の前記可逆性エポキシポリマーのヤング率の少なくとも約50%、又は少なくとも約65%、好ましくは少なくとも約70%、さらに好ましくは少なくとも約75%である、
前記〔1〕~〔15〕のいずれかに記載の可逆性エポキシポリマー。
〔17〕前記可逆性エポキシポリマーが、少なくとも1種のエポキシ化合物と少なくとも1種の硬化剤との間の反応によって得られ、前記エポキシ化合物の少なくとも一部が、1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位若しくはその誘導部位を含有し、及び/又は前記硬化剤の少なくとも一部が、1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位若しくはその誘導部位を含有し、かつ前記可逆性エポキシポリマーの吸水率及び水浸漬後減量率の少なくとも1つが、室温で24時間水に浸漬された後に5wt%未満、好ましくは2wt%未満である、前記〔1〕~〔10〕、〔15〕及び〔16〕のいずれかに記載の可逆性エポキシポリマー。
〔18〕前記可逆性エポキシポリマーが溶媒、好ましくはアルコールとDMFの混合物への溶解を受けた後に不溶性物質の含量が10wt%未満、好ましくは5wt%未満である、
前記〔1〕~〔17〕のいずれかに記載の可逆性エポキシポリマー。
〔19〕前記ホウ酸部位の誘導部位が、前記ホウ酸部位中の酸素がSに置き換えられ、及び/又はQがO若しくはS、好ましくはOである部位を意味する、
前記〔1〕~〔18〕のいずれかに記載の可逆性エポキシポリマー。
〔20〕前記可逆性エポキシポリマーが自己回復特性を有する、
前記〔1〕~〔19〕のいずれかに記載の可逆性エポキシポリマー。
〔21〕前記可逆性エポキシポリマーが熱可塑性を有し、好ましくはプレス、射出成形、押出成形、ブロー成形、カレンダー掛け、発泡成形、溶媒可塑化、モールドプレス、鋳造、反応成形によって加工され得る、
前記〔1〕~〔20〕のいずれかに記載の可逆性エポキシポリマー。
〔22〕前記〔1〕~〔21〕のいずれかに記載の可逆性エポキシポリマーの調製プロセスであって、少なくとも1種のエポキシ化合物と少なくとも1種の硬化剤を反応させるステップを含み、
前記エポキシ化合物の少なくとも一部が、1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位若しくはその誘導部位を含有し、前記ホウ酸部位の誘導部位は、前記ホウ酸部位中の酸素が第6主要族の他の元素に置き換えられている部位を意味し;及び/又は
前記硬化剤の少なくとも一部が、1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位若しくはその誘導部位を含有し、前記ホウ酸部位の誘導部位は、前記ホウ酸部位中の酸素が第6主要族の他の元素に置き換えられている部位を意味し;及び/又は
前記反応系が、ヒドロキシル基とエポキシ基を含有する少なくとも1種の化合物及び少なくとも1種のBQH含有化合物若しくはそのエステル誘導体をさらに含み、前記BQH含有化合物は2つ以上のB-QH部位を含有し、各Qは独立に第6主要族の元素である、
プロセス。
〔23〕基材と、前記〔1〕~〔21〕のいずれかに記載の可逆性エポキシポリマーとを含む複合材料。
〔24〕前記〔1〕~〔21〕のいずれかに記載の可逆性エポキシポリマーと、少なくとも1種の添加剤とを含む組成物。
〔25〕前記〔1〕~〔21〕のいずれかに記載の可逆性エポキシポリマー又は前記〔23〕に記載の複合材料の、接着剤、コーティング、塗料、フローリング、ガラス代用品、ポリマー添加剤、金属基材、構造材料、モールディング、光学材料、カプセル化材料、包装材料、シーリング材料、医療材料、繊維強化プラスチックにおける使用、又は機能性材料としての使用。
〔26〕基材の回収プロセスであって、前記〔23〕に記載の複合材料が溶媒への溶解を受けてから前記基材が回収される、プロセス。
〔27〕下記構造:
【化37】
(式中、
各mは、独立に0又は1であり;
kは、1~4であり;
各nは、独立に少なくとも1であり;
各R
1
は、独立に二価のC
1
-C
20
ヒドロカルビルであり;
R
2
は、二価のC
1
-C
20
ヒドロカルビルであり;
R
3
は、H又はC
1
-C
20
ヒドロカルビルであり;
各Qは、独立に第6主要族の元素であり;
Xは、エポキシ基と反応する能力がある官能基であり;かつ
Aは、5~10個の環員を有する環である)
の1つを有する化合物。
〔28〕各mが、独立に0又は1であり;
kが、1又は2であり;
各nが、独立に1、2又は3であり;
各R
1
が、独立に二価のC
1
-C
20
ヒドロカルビルであり;
R
2
が、二価のC
1
-C
20
ヒドロカルビルであり;
R
3
が、H又はC
1
-C
20
ヒドロカルビルであり;
各Qが、独立にO又はS、好ましくはOであり;
Xが、カルボキシル、アミノ、スルフヒドリル又は酸無水物から選択される官能基であり;かつ
Aが、5又は6個の環員を有する環である、
前記〔27〕に記載の化合物。
〔29〕前記化合物が、下記構造:
【化38】
【化39】
(式中、m、n、R
1
、R
2
、R
3
、Q、X及びAは、前記〔27〕又は〔28〕の定義どおりである)
の1つを有する、前記〔27〕又は〔28〕に記載の化合物。
〔30〕前記〔1〕~〔4〕及び〔7〕~〔8〕のいずれかに記載の前記1分子当たり1つの可逆性ホウ酸部位又はその誘導部位を含有する硬化剤の製造方法であって、少なくとも1つのエポキシ反応基及び少なくとも2つのヒドロキシル基を含有する化合物を、少なくとも1つのエポキシ反応基及び1つのB(QH)
2
基を含有する化合物又はそのエステル誘導体若しくはその無水物と反応させるステップを含み、各Qは独立に第6主要族の元素、好ましくはO又はSである、方法。
〔31〕前記反応が、脱水剤の非存在下又は存在下で行われ、好ましくは前記脱水剤が、モレキュラーシーブ、Na
2
SO
4
及びMgSO
4
から選択される、前記〔30〕に記載の方法。
〔32〕前記少なくとも1つのエポキシ反応基及び少なくとも2つのヒドロキシル基を含有する化合物と、前記少なくとも1つのエポキシ反応基及び1つのB(QH)
2
基を含有する化合物又はそのエステル誘導体若しくはその無水物とのモル比が、0.5:1~2:1又は0.8:1~1.2:1の範囲内である、前記〔30〕又は〔31〕に記載の方法。
〔33〕前記少なくとも1つのエポキシ反応基及び少なくとも2つのヒドロキシル基を含有する化合物が、前記少なくとも1つのエポキシ反応基を含有する1,2-ジオール化合物及び前記少なくとも1つのエポキシ反応基を含有する1,3-ジオール化合物から選択される、前記〔30〕~〔32〕のいずれかに記載の方法。
〔34〕前記少なくとも1つのエポキシ反応基及び1つのB(QH)
2
基を含有する化合物が、3-アミノベンゼンボロン酸又はその水和物若しくはその無水物であり、及び/又は前記少なくとも1つのエポキシ反応基及び少なくとも2つのヒドロキシル基を含有する化合物が、1-アミノ-プロパン-1,2-ジオール、N-メチルアミノプロパンジオール及びN-エチルアミノプロパンジオールから選択される、前記〔30〕~〔33〕のいずれかに記載の方法。
〔35〕前記エポキシ反応基が、カルボキシル、アミノ、スルフヒドリル又は酸無水物から選択される、前記〔30〕~〔34〕のいずれかに記載の方法。
〔36〕前記反応が、各試薬が溶解され得る溶媒中で行われ、好ましくは前記溶媒が、C
1
-C
6
アルコール、THF、ジオキサン、DMF及びその混合物から選択される、前記〔30〕~〔35〕のいずれかに記載の方法。
〔37〕前記反応温度が、10℃から前記反応に用いられる溶媒の沸点まで、又は室温から前記反応に用いられる溶媒の沸点まで、又は室温から100℃まで、さらに好ましくは20℃~80℃又は20℃~65℃の範囲内である、前記〔30〕~〔36〕のいずれかに記載の方法。
〔38〕前記溶媒が、反応後に除去され、好ましくは前記溶媒が、蒸留によって、例えば噴霧乾燥、ロータリーエバポレーター及び真空乾燥によって除去され、さらに好ましくは蒸留温度が、80℃以下又は60℃以下である、前記〔36〕又は〔37〕に記載の方法。
〔39〕前記反応時間が、4分~48時間、好ましくは15分~24時間の範囲内である、
前記〔30〕~〔38〕のいずれかに記載の方法。
【国際調査報告】