(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-27
(54)【発明の名称】フェニルカルバメート結晶型及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 271/12 20060101AFI20240820BHJP
C07C 269/08 20060101ALI20240820BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240820BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20240820BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20240820BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20240820BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20240820BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20240820BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20240820BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20240820BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20240820BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240820BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240820BHJP
A61P 21/04 20060101ALI20240820BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20240820BHJP
A61P 21/02 20060101ALI20240820BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240820BHJP
A61K 31/27 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
C07C271/12
C07C269/08
A61P25/28
A61P25/24
A61P25/22
A61P25/16
A61P17/02
A61P25/14
A61P25/18
A61P25/08
A61P25/04
A61P29/00
A61P25/00
A61P21/04
A61P21/00
A61P21/02
A61P9/10
A61K31/27
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024507084
(86)(22)【出願日】2022-08-05
(85)【翻訳文提出日】2024-04-03
(86)【国際出願番号】 KR2022011648
(87)【国際公開番号】W WO2023014160
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】10-2021-0103371
(32)【優先日】2021-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513001916
【氏名又は名称】バイオ-ファーム ソリューションズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100125450
【氏名又は名称】河野 広明
(72)【発明者】
【氏名】チェ、ヨンムン
【テーマコード(参考)】
4C206
4H006
【Fターム(参考)】
4C206AA01
4C206AA03
4C206HA23
4C206KA16
4C206KA17
4C206MA01
4C206MA04
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4C206ZA94
4H006AA01
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4H006BB21
4H006BB31
4H006BC51
4H006RA10
(57)【要約】
本発明は、フェニルカルバメート誘導体化合物の結晶型とその用途に関するものであり、より具体的には、熱力学的により安定な結晶型であるパターン1結晶型及びその製造方法に関するものであり、様々な溶媒を利用して非定型及び結晶型を製造し、その中で力学的に安定なパターン1結晶型及び上記結晶型の薬学的用途を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線粉末回折パターンが、6.662°、8.153°、9.801°、11.303°、11.660°、13.280°、13.435°、14.703°、16.243°、16.948°、19.091°、19.419°、20.443°、21.124°、24. 202°、24.619°、28.998°及び31.697°の回折角(2θ)にピークを有する、
(1-(2-クロロフェニル)-(S)-1-ヒドロキシプロピル-(S)-2-カルバメート結晶型。
【請求項2】
上記X線粉末回折パターンが、7.392°、12.068°、12.874°、13.913°、15.256°、17.796°、18.266°、18.572°、19.895°、22.076°、22.354°、22.673°、23.174°、23.582°、25.260°、25.435°、25.932°、26.138°、26.614°、26.983°、27.965°、28.256°、28.805°、29.319°、29.690°、30.247°、30.483°、32.668°又は33.414°の回折角(2θ)の少なくとも1つに追加のピークを有する、
請求項1に記載の(1-(2-クロロフェニル)-(S)-1-ヒドロキシプロピル-(S)-2-カルバメート結晶型。
【請求項3】
請求項1において、上記(1-(2-クロロフェニル)-(S)-1-ヒドロキシプロピル-(S)-2-カルバメートは、下記式1で示される化合物である、
(1-(2-クロロフェニル)-(S)-1-ヒドロキシプロピル-(S)-2-カルバメート結晶型:
[化学式1]
【請求項4】
請求項1において、上記結晶型は、示差走査熱量計(DSC)測定時、89℃〜90℃で吸熱ピークを有することを特徴とする結晶型。
【請求項5】
(1-(2-クロロフェニル)-(S)-1-ヒドロキシプロピル-(S)-2-カルバメートに1、4-ジオキサン、t-ブタノール、ジクロロメタン及び水、又はこれらの混合溶媒からなる群から選択される1以上の溶媒を処理してアモルファス(amorphous)を形成する段階;及び
上記アモルファスにアセトン(acetone)、クロロホルム(chloroform)、メタノール(MeOH)、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)、ジイソプロピルエーテル(diisopropyl ether)、エタノール(EtOH)、メチルエチルケトン(methylethyl ketone)、アセトニトリル(acetonitrile)、2-プロパノール(2-propanol)、tert-ブタノール(tertbutanol)、1、2-ジメトキシエタン(1、2- dimethoxyethane、DME)、1-プロパノール(1-propanol)、2-ブタノール(2-butanol)、水、1、4-ジオキサン(1、4-dioxane)、2-メチル-1-プロパノール(2-methyl-1-Propanol)、2-メトキシエタノール(2-methoxyethanol)、酢酸ブチル(butyl acetate)、メチルブチルケトン(methylbutyl ketone)、3-メチル-1-ブタノール(3-methyl-1-Butanol)、1-ペンタノール(1-pentanol)、キュメン(cumene)及びアニソール(anisole)からなる群から選択される溶媒、及びその混合溶媒で処理する段階;を含む、
請求項1記載の(1-(2-クロロフェニル)-(S)-1-ヒドロキシプロピル-(S)-2-カルバメート結晶型の製造方法。
【請求項6】
請求項5において、上記アモルファスを形成する段階は、溶媒に(1-(2-クロロフェニル)-(S)-1-ヒドロキシプロピル-(S)-2-カルバメートを溶解した後、急冷、凍結乾燥又は真空により溶媒を除去する段階を含むことを特徴とする、製造方法。
【請求項7】
請求項1記載の(1-(2-クロロフェニル)-(S)-1-ヒドロキシプロピル-(S)-2-カルバメート結晶型を含む、筋弛緩、筋硬直、硬直(spasticity)、攣縮(spasms)、痙攣、中枢神経系障害、筋萎縮性軸索硬化症(ALS)、多発性硬化症、痛み、脳卒中、てんかん、てんかん関連症候群、小児てんかん、小児てんかん関連症候群、記憶喪失-関連疾患、神経ガス誘発疾患、精神障害、運動障害及び神経損傷疾患からなる群から選択される疾患の予防又は治療用医薬組成物。
【請求項8】
請求項7において、上記疼痛は、侵害受容性疼痛、心因性疼痛、炎症性疼痛、病理学的疼痛、神経障害性疼痛、癌性疼痛、手術後疼痛、三叉神経痛疼痛、特発性疼痛、糖尿病性神経障害性疼痛及び片頭痛を含む群から選択された1つ以上のもの;
上記脳卒中は、虚血性脳卒中及び出血性脳卒中を含む群から選択された1つ以上のもの;
上記てんかんは、難治性てんかん、局所化関連てんかん、皮質てんかん、前頭葉てんかん、頭頂葉てんかん、後頭葉てんかん、側頭葉てんかん、全身性てんかん及びこれらの症候群を含む群から選択された1つ以上のもの;
上記てんかん関連症候群は、てんかん発作、難治性局所関連てんかん、難治性二次全身性発作、難治性複合部分発作又は難治性てんかん持続状態を含む群から選択された1つ以上のもの;
上記小児てんかん関連症候群は、良性筋間代性てんかん(BME)、乳幼児境界型重症筋間代性てんかん(SMEB)、重症乳児多焦点てんかん(SIMFE)、及び全身強直性間代発作を伴う難治性小児てんかん(ICE-GTC)、ドラベット症候群(Ds)、重症乳児間代性てんかん(SMEI)、良性新生児痙攣、良性新生児家族性痙攣、その他の新生児発作、熱性痙攣、早期乳児てんかん性脳症、早期筋間代性脳症、初期筋間代性脳症、西側筋間代性脳症の筋痙攣、乳児期の良性筋間質性てんかん、乳児の良性部分てんかん、良性乳児家族性痙攣、症候性/暗号性部分てんかん、筋間質性欠損を伴うてんかん、レノックス・ガスト症候群、筋間質性前庭性発作を伴うてんかん(ドゥース症候群)、後天性失語症クレフナー症候群)、低波睡眠中にスパイク波が持続するてんかん、エピル胃痙攣及び視床下部過誤腫を伴うてんかん、症状/暗号性部分てんかん及び小児期欠乏性てんかんを含む群から選択された1つ以上のもの;
上記記憶喪失-関連疾患は、老人性認知症及びアルツハイマー病を含む群から選択された1つ以上のもの;
上記神経ガス誘発性疾患は、痙攣、胃腸障害、嘔吐、鼻水、瞳孔縮小、気管支収縮、痙攣、フロッピー麻痺、無呼吸、発汗及び下痢を含む群から選択された1つ以上のもの;
上記神経系損傷疾患は、神経変性疾患、自閉症スペクトラム疾患及びプリオン疾患であって、上記自閉症スペクトラムは、アスペルガー症候群及び特に明記されていない全般的発達障害(PDD-NOS)からなる群から選択されるものであり、上記プリオン疾患は、クロイツフェルト・ヤコブ病、ゲルストマン・シュトラウスラー・シャインカー病、クル病及び致命的家族性不眠症からなる群から選択されるもの;
上記精神障害は、自閉症、うつ病、双極性障害、不安障害及び発作を含む群から選択された1つ以上のもの;
上記運動障害は、運動失調(ataxia)、皮質基底神経節変性(CBGD)、運動異常症、筋緊張異常、振戦、本態性振戦、パーキンソン病振戦、遺伝性痙性下肢麻痺、多系統萎縮、肝性筋痙攣、パーキンソン病、進行性核上麻痺、下肢不安症候群、レット症候群、硬直、シドナム舞踏病、その他の舞踏病、無定位運動、勃起症、固定観念、遅発性運動異常/緊張異常、チック、トゥレット症候群、錐体外路小脳萎縮(OPCA)、片麻痺、半顔面痙攣、ウィルソン病、強直性遅滞症候群、痛み下肢と移動つま先症候群、歩行障害及び薬物誘発性運動障害を含む群から選択された1つ以上のもの;又は
上記神経変性疾患は、ハンティントン病、ピック病、びまん性ルイス小体病、薬物中毒又は禁断症状、スティール-リチャードソン症候群、シャイ-ドラガー症候群、皮質基底変性、亜急性硬化性汎脳炎、滑膜炎、原発性進行性失語症、線条体変性、マカド-ジョセフ病、脊髄小脳運動失調症、感作性膠原病、黄斑変性、球根及び家具麻痺、脊髄及び脊髄筋萎縮、全身性エリテマトーデス、原発性側索硬化症、家族性痙攣性疾患、ベルドニヒ・ホフマン病、クゲルベルグ・ヴェランダー病、テイ・ザックス病、サンドホフ病、家族性痙攣性疾患、ヴォルフガルト・クゲルベルグ・ヴェランダー病、痙攣性片麻痺、進行性多巣性白質脳症及び家族性自律神経失調症を含む群から選択された1つ以上のもの;である、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェニルカルバメート化合物の結晶型及びその製造方法、並びにそれを含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
フェニルカルバメート化合物は、多発性硬化症、ルーゲル病、てんかん、中枢神経系障害を含む様々な神経疾患、筋肉疾患、脳卒中、精神疾患、記憶喪失関連疾患などに効果があることが知られている化合物である。薬理学的活性が高く、様々な疾患に対する薬理効果が優れており、毒性が低いため、医薬品として開発され、広く使用されている。
【0003】
フェニルカルバメート化合物のうち、(1-(2-クロロフェニル)-(S)-1-ヒドロキシプロピル-(S)-2-カルバメート(JBPOS0101)の場合、特に多発性硬化症(韓国特許第10-2014-0113919 A)又はルーゲル病(10-2014-0113918 A)の治療又は予防に効果があることが確認された物質であり、これに上記物質について、より安定性が改善され、様々な製剤として活用可能な様々な結晶型を合成するための研究が試みられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記物質の研究中、本発明者らは、フェニルカルバメート化合物は、カルバメート基が特に塩基性水性条件下で隣接するヒドロキシル基に移動する化合物において、熱力学的安定性に関連する物質の安定性を向上させるために研究した結果、熱力学的に安定でありながら優れた固体特徴を有する結晶型物質に対する本発明を完成するに至った。
【0005】
従って、本発明の目的は、熱力学的に安定な無水形態であり、優れた固体形態としての特性を示すフェニルカルバメート誘導体化合物である、1-(2-クロロフェニル)-(S)-1-ヒドロキシプロピル-(S)-2-カルバメート(JBPOS0101)の結晶型を提供することである。
【0006】
本発明の他の目的は、1-(2-クロロフェニル)-(S)-1-ヒドロキシプロピル-(S)-2-カルバメート(JBPOS0101)の結晶型の製造方法を提供することである。
【0007】
本発明の別の目的は、1-(2-クロロフェニル)-(S)-1-ヒドロキシプロピル-(S)-2-カルバメート(JBPOS0101)の結晶型を含む医薬組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記のような目的を達成するために、本発明は、下記化学式1で示される1-(2-クロロフェニル)-(S)-1-ヒドロキシプロピル-(S)-2-カルバメート(JBPOS0101)の結晶型を提供する:
[化学式1]
【0009】
本発明の他の目的を達成するために、本発明は、1-(2-クロロフェニル)-(S)-1-ヒドロキシプロピル-(S)-2-カルバメート(JBPOS0101)の結晶型の製造方法を提供する。
【0010】
本発明の他の目的を達成するために、本発明は、上記1-(2-クロロフェニル)-(S)-1-ヒドロキシプロピル-(S)-2-カルバメート(JBPOS0101)の結晶型を含む医薬組成物を提供する。
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
本明細書に記載される用語「結晶型」とは、結晶格子内に実質的に固定されたモル比の溶媒分子を含まない結晶性固体、すなわち、溶媒和物ではない結晶性固体を意味する。
本発明の(1-(2-クロロフェニル)-(S)-1-ヒドロキシプロピル-(S)-2-カルバメート)結晶型を製造するために、アモルファス(amorphous)形態の(1-(2-クロロフェニル)-(S)-1-ヒドロキシプロピル-(S)-2-カルバメート(JBPOS0101/S-P-17001、Bio-Pharm Solutions Co. Ltd.) APIの多形性をスクリーニングし、様々な溶媒を利用してスクリーニングし、様々な形態の多形性パターンを導き出した。このうち、室温及び高温(50℃)で全て熱力学的に安定な無水形態の結晶型であるパターン1(ED01748-006-001-00)を完成した。
【0013】
パターン1結晶型の融点は89℃であり、約200℃以上で分解されるまでTGAでかなりの質量損失がない特徴を持ち、GVS実験中、0-90%RHの範囲で質量の増加がほとんどなく(0.14%)、GVS実験後、40℃/75%RH又はRT/97%RHで高い湿度にさらされたときにもXRPDによる形態変化がない特徴を持つことが確認された。
【0014】
上記(1-(2-クロロフェニル)-(S)-1-ヒドロキシプロピル-(S)-2-カルバメート)のパターン1結晶型は、X線粉末回折パターン(XRPD)で、6.662°、8.153°、9.801°、11.303°、11.660°、13.280°、13.435°、14.703°、16.243°、16.948°、19.091°、19.419°、20.443°、21.124°、24.202°、24.619°、28.998°、31.697°の回折角(2θ)にピークを持つことを特徴とする。また、7.392°、12.068°、12.874°、13.913°、15.256°、17.796°、18.266°、18.572°、19.895°、22.076°、22.354°、22.673°、23.174°、23.582°、25.260°、25.435°、25.932°、26.138°、26.614°、26.983°、27.965°、28.256°、28.805°、29.319°、29.690°、30.247°、30.483°、32.668°又は33.414°の回折角(2θ)の少なくとも1つに追加のピークを持つことができる。
【0015】
本発明の一実施例において、上記(1-(2-クロロフェニル)-(S)-1-ヒドロキシプロピル-(S)-2-カルバメート)結晶型は、1、4-ジオキサン、t-ブタノール、ジクロロメタン及び/又は水のいずれか1つ以上の溶媒に溶解するか、又は溶解後一定時間静置してアモルファス(amorphous)を得、その後、溶媒を利用した多形性スクリーニングを通じて結晶化を試み、多形性パターンを導出した。
【0016】
上記多形性スクリーニングに使用する溶媒は、ジエチルエーテル(diethyl ether)、ペンタン(pentane)、エチル蟻酸(ethyl formate)、tert-ブチルメチルエーテル(tertbutylmethyl ether)、アセトン(acetone)、メチルアセテート(methyl acetate)、クロロホルム(chloroform)、メタノール、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)、ジイソプロピルエーテル(diisopropyl ether)、エチルアセテート(ethyl acetate)、エタノール、メチルエチルケトン(methylethyl ketone)、アセトニトリル(acetonitrile)、2-プロパノール(2-propanol)、tert-ブタノール(tertbutanol)、1、2-ジメトキシエタン(1、2- dimethoxyethane)、イソプロピルアセテート(Isopropyl acetate)、1-プロパノール(1-propanol)、2-ブタノール(2-butanol)、ヘプタン(heptane)、水、ギ酸、1、4-ジオキサン(1、4-dioxane)、プロピルアセテート(propyl acetate)、2-ペンタノン(2-pentanone)、2-メチル-1-プロパノール(2-methyl-1-Propanol)、トルエン(toluene)、イソブチルアセテート(isobutyl acetate)、メチルイソブチルケトン(methylisobutyl ketone)、1-ブタノール(1-butanol)、酢酸(acetic acid)、2-メトキシエタノール(2-methoxyethanol)、ブチルアセテート(butyl acetate)、メチルブチルケトン(methylbutyl ketone)、3-メチル-1-ブタノール(3-methyl-1-Butanol)、2-エトキシエタノール(2-ethoxyethanol)、1-ペンタノール(1-pentanol)、クメン(cumene)、アニソール(anisole)、ベンゾニトリル(benzonitrile)、ジメチルスルホキシド(dimethylsulfoxide)及びベンジルアルコール(benzyl alcohol)からなる群から選択される溶媒及びその混合溶媒を使用した。
【0017】
より好ましくは、パターン1結晶型をスクリーニングするための溶媒である、アセトン(acetone)、クロロホルム(chloroform)、メタノール(MeOH)、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)、ジイソプロピルエーテル(diisopropyl ether)、エタノール(EtOH)、メチルエチルケトン(methylethyl ketone)、アセトニトリル(acetonitrile)、2-プロパノール(2-propanol)、tert-ブタノール(tertbutanol)、1、2-ジメトキシエタン(1、2- dimethoxyethane、DME)、1-プロパノール(1-propanol)、2-ブタノール(2-butanol)、水、1、4-ジオキサン(1、4-dioxane)、2-メチル-1-プロパノール(2-methyl-1-Propanol)、2-メトキシエタノール(2-methoxyethanol)、ブチルアセテート(butyl acetate)、メチルブチルケトン(methylbutyl ketone)、3-メチル-1-ブタノール(3-methyl-1-Butanol)、1-ペンタノール(1-pentanol)、キュメン(cumene)及びアニソール(anisole)からなる群から選択される溶媒及びその混合溶媒を使用した。
【0018】
また、本発明の他の態様として、本発明は、上記1-(2-クロロフェニル)-(S)-1-ヒドロキシプロピル-(S)-2-カルバメート(JBPOS0101)の結晶型を含む医薬組成物を提供する。
【0019】
上記医薬組成物は、フェニルカルバメート又はその誘導体と同様の用途の医薬組成物として使用することができ、より具体的には、筋肉弛緩、筋硬直、硬直(spasticity)、攣縮(spasms)、痙攣、中枢神経系障害、筋萎縮性軸索硬化症(ALS)、多発性硬化症、痛み、脳卒中、てんかん、てんかん関連症候群、小児てんかん、小児てんかん関連症候群、記憶喪失関連疾患、神経ガス誘発疾患、精神障害、運動障害及び神経損傷疾患からなる群から選択される1つ以上の疾患の治療又は予防用組成物であることができる。
【0020】
より詳細には、上記疼痛は、侵害受容性疼痛、心因性疼痛、炎症性疼痛、病理学的疼痛、神経障害性疼痛、癌性疼痛、術後疼痛、三叉神経痛疼痛、特発性疼痛、糖尿病性神経障害性疼痛及び片頭痛を含む群から選択された1つ以上のもの;上記脳卒中は、虚血性脳卒中及び出血性脳卒中を含む群から選択された1つ以上のもの;上記てんかんは、難治性てんかん、局在化関連てんかん、皮質てんかん、前頭葉てんかん、頭頂葉てんかん、後頭葉てんかん、側頭葉てんかん、全身性てんかん及びこれらの症候群を含む群から選択された1つ以上のもの;上記てんかん関連症候群は、てんかん発作、難治性局在化関連てんかん、難治性二次全身発作、難治性複合部分発作又は難治性てんかん持続状態を含む群から選択された1つ以上のもの;上記小児てんかん関連症候群は、良性筋間代性てんかん(BME)、乳幼児境界型重症筋間代性てんかん(SMEB)、重症乳児多焦点てんかん(SIMFE)、及び全身強直性間代発作を伴う難治性小児てんかん(ICE-GTC)、ドラベット症候群(Ds)、重症乳児間代性てんかん(SMEI)、良性新生児痙攣、良性新生児家族性痙攣、その他の新生児発作、熱性痙攣、早期乳児てんかん性脳症、早期筋間代性脳症、初期筋間代性脳症、西側筋間代性脳症の筋痙攣、乳児期の良性筋間質性てんかん、乳児の良性部分てんかん、良性乳児家族性痙攣、症候性/暗号性部分てんかん、筋間質性欠損を伴うてんかん、レノックス・ガスト症候群、筋間質性前庭性発作を伴うてんかん(ドゥース症候群)、後天性失語症クレフナー症候群)、低波睡眠中にスパイク波が持続するてんかん、エピル胃痙攣及び視床下部過誤腫を伴うてんかん、症状/暗号性部分てんかん及び小児期欠乏性てんかんを含む群から選択された1つ以上のもの;上記記憶喪失-関連疾患は、老人性認知症又はアルツハイマー病を含む群から選択された1つ以上のもの;上記神経ガス誘発疾患は、痙攣、胃腸障害、嘔吐、鼻水、瞳孔縮小、気管支収縮、痙攣、フロッピー麻痺、無呼吸、発汗及び下痢を含む群から選択された1つ以上のもの;上記神経系損傷疾患は、神経変性疾患、自閉症スペクトラム疾患及びプリオン疾患であって、上記自閉症スペクトラムは、アスペルガー症候群及び特に明記されていない全般的発達障害(PDD-NOS)からなる群から選択されるものであり;上記プリオン疾患は、クロイツフェルト・ヤコブ病、ゲルストマン・シュトラウスラー・シャインカー病、クル病及び致命的家族性不眠症からなる群から選択されるもの;上記精神障害は、自閉症、うつ病、双極性障害、不安障害及び発作を含む群から選択された1つ以上のものであること;上記運動障害は、運動失調(ataxia)、皮質基底神経節変性(CBGD)、運動異常症、筋緊張異常、振戦、本態性振戦、パーキンソン病振戦、遺伝性痙性下肢麻痺、多系統萎縮、肝性筋痙攣、パーキンソン病、進行性核上麻痺、下肢不安症候群、レット症候群、硬直、シドナム舞踏病、その他の舞踏病、無定位運動、勃起症、固定観念、遅発性運動異常/緊張異常、チック、トゥレット症候群、錐体外路小脳萎縮(OPCA)、片麻痺、半顔面痙攣、ウィルソン病、強直性遅滞症候群、痛み下肢と移動つま先症候群、歩行障害及び薬物誘発性運動障害を含む群から選択された1つ以上のもの;上記神経変性疾患は、ハンティントン病、ピック病、びまん性ルイーソ体病、薬物中毒又は離脱症状、スティール-リチャードソン症候群、シャイ-ドラガー症候群、皮質基底変性、亜急性硬化性汎脳炎、滑膜炎、原発性進行性失語症、線条体変性、マカド-ジョセフ病、脊髄小脳運動失調症、感作性膠原病、黄斑変性、球状及び家具麻痺、脊髄及び脊髄筋萎縮、全身性エリテマトーデス、原発性側索硬化症、家族性痙攣性疾患、ベルドニグ・ホフマン病、クゲルベルグ・ヴァレンダー病、テイ・ザックス病、サンドホフ病、家族性痙攣性疾患、ヴォルフガルト・クゲルベルグ・ウェランダー病、痙攣性下肢麻痺、進行性多巣性白質脳症及び家族性自律神経失調症を含むが、これらに限定されない。
【0021】
また、本発明の上記医薬組成物は、様々な経口投与形態又は非経口投与形態で製剤化することができる。例えば、錠剤、丸剤、硬・軟質カプセル剤、液剤、懸濁剤、乳化剤、シロップ剤、顆粒剤、エリキシル剤(elixirs)等の任意の経口投与用製剤とすることができる。これらの経口投与用製剤は、各製剤の通常の構成に応じて、上記有効成分の他に、例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロース及び/又はグリシン等の希釈剤や、シリカ、タルク、ステアリン酸及びそのマグネシウム又はカルシウム塩及び/又はポリエチレングリコール等の活性化剤等の医薬上許容可能な担体を含むことができる。
【0022】
また、上記経口投与用製剤が錠剤である場合、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、デンプンペースト、ゼラチン、トラガカンス、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム及び/又はポリビニルピロリジンなどの結合剤を含むことができ、場合によっては、デンプン、寒天、アルギン酸又はそのナトリウム塩などの崩壊剤や、沸騰混合物及び/又は吸収剤、着色剤、香料又は甘味料などを含むこともできる。
【0023】
そして、上記医薬組成物は、非経口投与形態で製剤化することもでき、この場合、皮下注射、静脈内注射、筋肉内注射又は胸腔内注射などの非経口投与方法によって投与される。このとき、上記非経口投与用製剤に製剤化するために、上記医薬組成物は、有効成分が安定剤又は緩衝剤と共に水で混合されて溶液又は懸濁液に製造され、このような溶液又は懸濁液がアンプル又はバイアルの単位投与型に製造することができる。
【0024】
また、上記医薬組成物は、滅菌されていてもよく、防腐剤、安定化剤、水和剤又は乳化促進剤、浸透圧調整のための塩及び/又は緩衝剤などの補助剤をさらに含んでもよく、その他の治療上有用な物質をさらに含んでもよく、混合、造粒又はコーティングの通常の方法に従って製剤化することができる。
【0025】
そして、上記有効成分は、ヒトを含む哺乳類に対して、1日当たり0.01〜750mg/kg(体重)、好ましくは0.1〜500mg/kg(体重)の治療的有効量で投与されることを含むことができる。「治療的有効量」という用語は、上記疾患の緩和及び/又は治療効果を示すことができる投与量を意味する。このような医薬組成物は、1日1回又は2回以上分割して、経口又は非経口経路を介して投与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1は、1-(2-クロロフェニル)-(S)-1-ヒドロキシプロピル-(S)-2-カルバメート(JBPOS0101)のアモルファス形成のために、1、4-ジオキサンを処理した後(ED01748-009-001-00、パターン2)、X線粉末回折パターンを比較した結果である。
図2は、1-(2-クロロフェニル)-(S)-1-ヒドロキシプロピル-(S)-2-カルバメート(JBPOS0101)のアモルファス形成のために、1、4-ジオキサンを処理した後(ED01748-009-001-001-00パターン2)、一晩保管後(ED01748-009-005-00パターン3)、それぞれX線粉末回折パターンを比較した結果である。
図3は、1-(2-クロロフェニル)-(S)-1-ヒドロキシプロピル-(S)-2-カルバメート(JBPOS0101)のアモルファス形成のために、t-butanolを処理した後(ED01748-009-006-00、パターン1)、t-butanol及び水を一緒に処理した後(ED01748-013-002-00、パターン1)、それぞれX線粉末回折パターンを比較した結果である。
図4は、1-(2-クロロフェニル)-(S)-1-ヒドロキシプロピル-(S)-2-カルバメート(JBPOS0101)のアモルファス形成のために、ジクロロホルム溶液を処理した後、溶液を蒸発させて形成された物質(ED01748-013-002-00、パターン1)のX線粉末回折パターンを比較した結果である。
図5は、アモルファス物質の製造及び確認のために、2種類のDSC Aを行った後に生成された結晶に対する
1H NMR結果である。
図6は、溶融・急冷及び外部刺激によって形成された結晶形を光学顕微鏡で観察した結果である。
図7は、溶融・急冷後、保管により形成された結晶型のX線粉末回折分析結果である。
図8は、溶融・急冷後、保管により形成された結晶形を光学顕微鏡で観察した結果である(一晩(左)、4日(右))。
図9は、アモルファスであるパターン1、2、3、4、6結晶型のXRPD回折図(diffractogram)結果をオーバーレイして示したものである。
図10は、1-(2-クロロフェニル)-(S)-1-ヒドロキシプロピル-(S)-2-カルバメート(JBPOS0101)パターン1結晶型のXRPD回折結果である。
図11は、1-(2-クロロフェニル)-(S)-1-ヒドロキシプロピル-(S)-2-カルバメート(JBPOS0101)パターン1結晶型の光学顕微鏡観察写真である。
図12は、1-(2-クロロフェニル)-(S)-1-ヒドロキシプロピル-(S)-2-カルバメート(JBPOS0101)パターン1結晶型の
1H NMR結果である。
図13は、1-(2-クロロフェニル)-(S)-1-ヒドロキシプロピル-(S)-2-カルバメート(JBPOS0101)パターン1結晶型のUPLC純度を測定したUV検出クロマトグラム結果を示す。
図14は、1-(2-クロロフェニル)-(S)-1-ヒドロキシプロピル-(S)-2-カルバメート(JBPOS0101)パターン1結晶型のDSCサーモグラムである。
図15は、1-(2-クロロフェニル)-(S)-1-ヒドロキシプロピル-(S)-2-カルバメート(JBPOS0101)パターン1結晶型の200℃以上の温度でのTGAサーモグラムである。
図16は、1-(2-クロロフェニル)-(S)-1-ヒドロキシプロピル-(S)-2-カルバメート(JBPOS0101)パターン1結晶型の質量プロットにおけるGVS変化を示したものである。
図17は、1-(2-クロロフェニル)-(S)-1-ヒドロキシプロピル-(S)-2-カルバメート(JBPOS0101)パターン1結晶型のGVSイソダムプロットを示したものである。
図18は、GVS前後、1-(2-クロロフェニル)-(S)-1-ヒドロキシプロピル-(S)-2-カルバメート結晶型のXRPD分析結果を比較したものである。
図19は、GVS前後の純度の変化をUPLCにより観察した結果である。
図20は、競争的スラリー形成結果として、パターン1及びパターン3結晶型とそれらの混合物をDIPE及びヘプタンで処理した後、それぞれの結晶型に対して測定したXRPDをオーバーレイして示したものである。
図21は、競争的スラリー形成結果として、パターン1、パターン3、パターン6及びパターン11又はこれらの混合物をDIPE及びヘプタンで処理した後、それぞれの結晶型に対して測定したXRPDをオーバーレイして示したものである。
すなわち、本発明は、1-(2-クロロフェニル)-(S)-1-ヒドロキシプロピル-(S)-2-カルバメート(JBPOS0101)の他の塩あるいは他の結晶型と比較して融点が高く、分解時まで質量損失がほとんどなく、熱力学的に安定した無数のパターン1結晶型に対するものであり、湿度にさらされた場合でもXRPDによって確認される形態変化がなく、保存安定性に優れた特徴を有する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
一態様として、本発明は、X線粉末回折パターンが、6.662°、8.153°、9.801°、11.303°、11.660°、13.280°、13.435°、14.703°、16.243°、16.948°、19.091°、19.419°、20.443°、21.124°、24.202°、24.619°、28.998°及び31.697°の回折角(2θ)にピークを有する、1-(2-クロロフェニル)-(S)-1-ヒドロキシプロピル-(S)-2-カルバメート(JBPOS0101)の結晶型に関するものである。
【0028】
別の態様として、本発明は、(1-(2-クロロフェニル)-(S)-1-ヒドロキシプロピル-(S)-2-カルバメートに1、4-ジオキサン、t-ブタノール、ジクロロメタン及び水、又はこれらの混合溶媒からなる群から選択される1以上の溶媒を処理してアモルファスを形成する段階;上記アモルファスにアセトン(acetone)、クロロホルム(chloroform)、メタノール(MeOH)、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)、ジイソプロピルエーテル(diisopropyl ether)、エタノール(EtOH)、メチルエチルケトン(methylethyl ketone)、アセトニトリル(acetonitrile)、2-プロパノール(2-propanol)、tert-ブタノール(tertbutanol)、1、2-ジメトキシエタン(1、2- dimethoxyethane、DME)、1-プロパノール(1-propanol)、2-ブタノール(2-butanol)、水、1、4-ジオキサン(1、4-dioxane)、2-メチル-1-プロパノール(2-methyl-1-Propanol)、2-メトキシエタノール(2-methoxyethanol)、酢酸ブチル(butyl acetate)、メチルブチルケトン(methylbutyl ketone)、3-メチル-1-ブタノール(3-methyl-1-Butanol)、1-ペンタノール(1-pentanol)、クメン(cumene)及びアニソール(anisole)からなる群から選択される溶媒及びその混合溶媒で処理する段階を含む、上記(1-(2-クロロフェニル)-(S)-1-ヒドロキシプロピル-(S)-2-カルバメート結晶型の製造方法に関するものである。
【0029】
別の態様として、本発明は、上記(1-(2-クロロフェニル)-(S)-1-ヒドロキシプロピル-(S)-2-カルバメート結晶型を含む、筋弛緩、筋硬直、硬直(spasticity)、攣縮(spasms)、痙攣、中枢神経系障害、筋萎縮性軸索硬化症(ALS)、多発性硬化症、痛み、脳卒中、てんかん、てんかん関連症候群、小児てんかん、小児てんかん関連症候群、記憶喪失関連疾患、神経ガス誘発疾患、精神障害、運動障害及び神経損傷疾患からなる群から選択される疾患の予防又は治療用医薬組成物に関するものである。
【0030】
以下、本明細書を具体的に説明するために実施例を挙げて詳細に説明する。しかしながら、本明細書による実施例は、様々な他の形態に変形することが可能であり、本明細書の範囲が以下に述べる実施例に限定されるものと解釈されるものではない。本明細書の実施例は、当業界で平均的な知識を有する者に本明細書をより完全に説明するために提供されるものである。
【0031】
<実験方法>
1.X線粉末回折(X-Ray Powder Diffraction(XRPD))
X線粉末回折パターンは、Bruker AXS D2 diffractometerを介してCuKα照射(30kV、10mA)を使用して測定した。分析は、θ-θジオメトリ、LynxEye detectorを使用して、5〜42°2θ、ステップサイズ0.024°2θ、ステップあたり0.1秒で測定した。
【0032】
データ収集に使用したソフトウェアはDIFFRAC.SUITEで、データはDiffrac Plus EVA v 16.0.0.0.0.0を使用して分析・表示した。
サンプルを周囲条件で実行し、粉砕せずに受け取った粉末を使用して、平板試料として準備した。約1-2mgのサンプルをシリコンウェーハに軽く押して平坦な表面を得た。
【0033】
2. Single Crystal X-Ray Diffraction (SCXRD)
SCXRD分析はRbar3 Ltd.によって行われた。
【0034】
3.核磁気共鳴分光法(Nuclear Magnetic Resonance Spectroscopy(NMR))
400.1326MHzで動作する5mm PABBOプローブを搭載したBruker AVIIIHD NMR分光計を使用して、溶液相1H NMRスペクトルを取得した。特に明記し、TMS内部標準を使用して参照しない限り、サンプルはd6-DMSOで調製した。
【0035】
4.示差走査熱量計(DSC)
DSCデータは、34ポジションのオートサンプラーを搭載したMettler DSC 3+で収集した。装置は、認定されたインジウムを使用してエネルギーと温度について校正された。通常、0.5-3mgの各サンプルをピンホールアルミパンで30℃から300℃まで10℃/分で加熱した。窒素パージは50 mL/minでサンプル上に維持された。機器制御とデータ処理にはSTARe v15.00を使用した。
【0036】
5.熱重量分析(TGA)
DSCデータは、34ポジションオートサンプラーを搭載したMettler TGA 2で収集した。機器は、認定されたイソダムとニッケルを使用してエネルギーと温度で校正された。通常、5-30mgの各サンプルをピンホールアルミパンで30℃から400℃まで10℃/分で加熱した。窒素パージは50mL/minでサンプル上に維持された。機器制御とデータ処理にはSTARe v15.00を使用した。
【0037】
6.偏光顕微鏡(PLM)
サンプルは、デジタルビデオカメラを搭載したNikon DLM偏光顕微鏡を使用して画像を撮影した。少量のサンプルをガラススライド上に置き、浸漬油に取り付け、ガラススリップで覆い、個々の粒子を可能な限り分離した。サンプルは、λ偽色フィルターに結合された適切な倍率と部分偏光で観察された。
【0038】
7.レーザー回折による粒度分布(PSD)
PSDは、RODOS/ASPIROS乾式分散装置が搭載されたSympatec HELOS/BF粒度計を使用し、2.5Barで25mm/sのスレッド速度で測定した。R10.1/0.18μm-35μm及びR30.5/0.9μm-175μmレンズを組み合わせて観察に使用した。特に明記しない限り、1ms0.2%Ch27のトリガー条件を使用した。
【0039】
8.重量測定蒸気吸着(GVS)
収着等温線は、SMS Analysis Suiteソフトウェアで制御されるSMS DVS独自の吸湿分析装置を使用して得られた。サンプル温度は全体的に25℃に保たれた。湿度は、乾燥窒素と湿潤窒素の混合ストリームを200mL/minの総流量で制御した。相対湿度は、サンプル近くにある校正済みのロトロニックプローブ(ダイナミックレンジ1.0-100%RH)で測定した。%RHの関数としてのサンプルの重量変化(質量緩和)は、マイクロスケール(精度±0.005mg)によって継続的に監視された。5-20mgのサンプルを大気条件下であらかじめ用意したステンレス鋼メッシュバスケットに保管した。
【0040】
9.UPLCによる熱力学的溶解度の測定
熱力学的溶解度は、水又は緩衝液に十分な化合物を懸濁し、媒体及び化合物の予想溶解度に応じて適切な濃度の化合物を提供することにより、水溶性溶解度を決定した。定量は、標準校正曲線を参照してUPLCによって行われた。標準注入で主要ピークと同じ滞留時間で見つかったピークの統合によって決定されたピーク領域を使用して、QuanLynxで溶解度を計算した。
【0041】
<実施例1>アモルファス(amorphous)の1-(2-クロロフェニル)-(S)-1-ヒドロキシプロピル-(S)-2-カルバメートの製造
1-(2-クロロフェニル)-(S)-1-ヒドロキシプロピル-(S)-2-カルバメート(JBPOS0101/S-P-17001)はBio-Pharm Solutions Co. Ltd.から入手した。フェニルカルバメート化合物であるJBPOS0101の製造方法は韓国特許第10-2014-0113918 Aに記載されている。
【0042】
1-(2-クロロフェニル)-(S)-1-ヒドロキシプロピル-(S)-2-カルバメートの結晶型に対するCRL batch参照記号はED01748-006-001-00で、下記表1の特徴を有する。
【0043】
【0044】
上記物質の様々な多形質スクリーニングのために、まずアモルファス化し、アモルファス化した物質を様々な溶媒を通じた多形質スクリーニングのための材料として使用した。
【0045】
<1-1>1、4-ジオキサンによるアモルファスの製造
ED01748-006-001-001-00(15mg)の一部を1、4-ジオキサン(0.1mL)に溶解した。得られた溶液をドライアイス/アセトンバスで瞬間凍結し、凍結乾燥させて白色の固体であるED01748-009-001-001-00を調製し、XRPD分析の結果、異なるパターンを持つ結晶型(パターン2)であることが確認された(
図1)。また、実験室条件でXRPDディスクに一晩放置したED01748-006-001-0000後にサンプルを再分析した結果、新しいパターン(ED01748-009-005-00、パターン3)を持つ結晶型が確認された(
図2)。
【0046】
<1-2>1、4-ジオキサン/水によるアモルファスの製造
ED01748-006-001-00(10mg)を1、4-ジオキサン(0.2mL)と水(0.1mL)に溶解した。
得られた溶液をドライアイス/アセトンバスで瞬間凍結し、凍結乾燥させて白色固体ED01748-013-001-001-00を得た。物質のXRPD分析の結果、1、4-ジオキサンから凍結乾燥して得られたものと同じパターンを持つ結晶質(パターン2)であることが確認された。
【0047】
<1-3>t-ブタノールによるアモルファスの製造
ED01748-006-001-001-00(10mg)の一部をt-ブタノール(0.25mL)に溶解した。得られた溶液をドライアイス/アセトンバスで瞬間凍結させ、乾燥させて固まった粘性を有するED01748-009-006-006-00を得た。材料のXRPD分析により、パターン1の結晶性であることを確認した(
図3)。
【0048】
<1-4>t-ブタノール/水によるアモルファスの製造
ED01748-006-001-001-00(10mg)の一部をt-ブタノール(0.2mL)及び水(0.1mL)に溶解させた。得られた溶液をドライアイス/アセトンバスで瞬間凍結し、凍結乾燥させて粘性を有する物質の混合物(ED01748-013-002-00)を得た。XRPD分析の結果、パターン1と一致することを確認した(
図3)。
【0049】
<1-5>DCM溶液からの蒸発によるアモルファスの製造
ED01748-006-001-00(20mg)の一部をジクロロメタン(DCM)(2mL)に溶解し、溶液を真空中で急速に蒸発させて無色の粘性物質を得た。一晩放置した後、サンプル全体が固化し(ED01748-009-004-00)、XRPD分析はパターン1と一致した(
図4)。
【0050】
<1-6>アモルファス物質の製造のためのDSC実験
アモルファス物質の製造と確認のために、ED01748-006-001-00を対象に2種類のDSC実験(A/B)を行った。
【0051】
DSC A実験
ED01748-006-001-00の一部をDSCで110℃になるように10℃/分で加熱し、50℃/分で30℃まで冷却した。DSCファンの内容物は
1H NMRで分析した。その結果、溶融及び冷却後のサンプルの分解又は移動は観察されなかった(
図5)。
【0052】
DSC B実験
ED01748-006-001-00の一部をDSCで110℃になるように10℃/分で加熱した後、10℃/分で-30℃まで冷却し、再び300℃に加熱した。
【0053】
最後にサンプルを加熱するにつれて14.6℃(中間点15.3℃)のガラス転移(Tg)が観察され、約190℃以上で分解するまで他の熱的変化は観察されなかった。
【0054】
DSC実験AとBともに、試料を溶解した後、冷却してアモルファス物質を生成し、NMRによる分解の証拠はなかった。実験Bは、材料の低いガラス転移(Tg開始14.6℃)を示し、アモルファス材料の安定性が問題になる可能性があることを示しています。
【0055】
<1-7>溶融・急冷によるアモルファスの製造
ED01748-006-001-001-00(それぞれ約10mg)2つのサンプルをバイアルに入れ、周囲圧力下で10分間110℃に予熱したドライピストルに入れた。溶融したサンプルを取り出し、ドライアイスで急速冷却した。光学顕微鏡で観察した結果、
図6のようにガラス滴が観察された。最初のサンプルのこのガラス物質は、それを特徴づける部分に衝撃を与えることで急速に結晶化した。XRPDによる分析の結果、これはパターン1であることが確認された(
図7)。物質は
1H NMR又はUPLCによって顕著な分解は見られず、サンプルは98.7%のUPLC純度を示した。
【0056】
冷却した物質の2番目のサンプルを密閉されたバイアルにオーバーナイトで保管した後、光学顕微鏡で観察した。微量の結晶質物質が存在し(
図8左)、これを4日間放置した後、完全に結晶化したことを確認した(
図8右)。
【0057】
<実施例2>溶媒を用いたアモルファス1-(2-クロロフェニル)-(S)-1-ヒドロキシプロピル-(S)-2-カルバメートパターン1結晶型の製造
様々な溶媒(主にICHクラスII及びIII)を用いて、実施例1から得られたアモルファス1-(2-クロロフェニル)-(S)-1-ヒドロキシプロピル-(S)-2-カルバメートの多形性パターンを確認した。
【0058】
ED01748-006-001-00の一部(各10mg)をバイアルに計量し、開いたバイアルをドライピストル(110℃に予熱)で周囲圧力下で10分間溶融させた。溶融したサンプルを取り出し、ドライアイスで急速冷却した。その結果生成したアモルファスのガラス物質は、アセトン(acetone)、クロロホルム(chloroform)、メタノール(MeOH)、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)、ジイソプロピルエーテル(diisopropyl ether)、エタノール(EtOH)、メチルエチルケトン(methylethyl ketone)、アセトニトリル(acetonitrile)、2-プロパノール(2-propanol)、tert-ブタノール(tertbutanol)、1、2-ジメトキシエタン(1、2- dimethoxyethane、DME)、1-プロパノール(1-propanol)、2-ブタノール(2-butanol)、水、1、4-ジオキサン(1、4-dioxane)、2-メチル-1-プロパノール(2-methyl-1-Propanol)、2-メトキシエタノール(2-methoxyethanol)、酢酸ブチル(butyl acetate)、メチルブチルケトン(methylbutyl ketone)、3-メチル-1-ブタノール(3-methyl-1-Butanol)、1-ペンタノール(1-pentanol)、キュメン(cumene)及びアニソール(anisole)のいずれかの溶媒で処理した。サンプルを室温で2-3時間振盪し、t-BuOHと1、4-ジオキサンを除く溶媒を冷蔵庫に移した。残りのサンプルは室温で一晩攪拌した。
【0059】
すべての固体サンプルを光学顕微鏡及びXRPDで分析した。実験でほとんどの溶液は2日間冷蔵庫で保管した後、CHCl3とアニソール(anisole)を利用して残った溶液を室温で蒸発させて除去した。CHCl3は分離前に生成された溶液を蒸発させて素早く溶解する固体を提供し、アニソルは分離前に室温で溶解する固体を提供し、部分蒸発後に固体を得た。蒸発による残留固形物を光学顕微鏡とXRPDで分析した。
【0060】
その結果、ほとんどの溶媒でパターン1又はパターン3が確認され、パターン4はジエチルエーテル、パターン1とパターン3の混合物はクロロホルムと酢酸プロピル、パターン6はトルエンとアニソール、パターン3とパターン6の混合物はベンゾニトリルで確認された。トルエンからのパターン6物質はXRPDによりパターン6とパターン3の混合物に変化することが観察された。アニソールによるパターン6物質は一晩放置した後、XRPDによりパターン6とパターン1の混合物に変化した。得られた様々なパターンのXRPD回折図を
図9に示す。
【0061】
<実験例1>(1-(2-クロロフェニル)-(S)-1-ヒドロキシプロピル-(S)-2-カルバメート)結晶型パターン1(ED01748-006-001-00)の分析
Bio-Pharm Solutions Co. Ltd.から入手した1-(2-クロロフェニル)-(S)-1-ヒドロキシプロピル-(S)-2-カルバメート(JBPOS0101/S-P-17001)のXRPDによる結晶型は
図10及び下記表2の通りであり、これはパターン1と定義した。
【0062】
【0063】
パターン1の特徴は以下のように確認された。
【0064】
【0065】
結晶化したED01748-006-001-00パターン1の光学顕微鏡画像は、
図11の通りである。また、上記ED01748-006-001-001-00の
1H NMR分析結果は、
図12のように構造と一致した。また、UPLC純度は98.6%であり、UV検出クロマトグラムで決定した(
図13)。また、示差走査熱量法(DSC)によるED01748-006-001-001-00の熱分析を行った結果、81℃(ピーク82℃)で始まる小さな吸熱反応と、融解温度と一致する89℃(ピーク90℃)で始まる吸熱反応を示すことを確認した(
図14)。
【0066】
また、約200℃以上の温度で、分解によりTGAで観察された質量損失に相当する229℃の広範囲のピークが発生した。TGAは、約200℃を超えるまで大きな質量損失がなく、237℃でも95%の質量が残っていることを示している。305℃では100%の質量が失われた(
図15)。
【0067】
ED01748-006-001-00は、GVS実験結果でも、図面の等温線プロットのように、0-90%RH(相対湿度)の範囲で0.14%の質量が増加したことを示した。これは増量増加が微々たるものであり、湿度による保管安定性が向上した結果を示すものである(
図16、17)。
【0068】
GVS実験後、XRPDを測定した結果、観察された形態の変化はなかった。40℃/75%RH又はRT/97%RHのストレス条件下でED01748-006-001-00を保管した場合に、XRPDによる形態変化が確認されなかった(
図18)。また、純度の変化はUPLCにより40℃/75%RH後97.4%及びRT/97%RH後97.7%であることが観察された(
図19)。
【0069】
<実験例2>(1-(2-クロロフェニル)-(S)-1-ヒドロキシプロピル-(S)-2-カルバメート)結晶型(ED01748-006-001-00)パターン1の溶解度測定
ED01748-006-001-00 パターン1の溶解度を測定するために、37℃で生物学的培地(FaSSGF(空腹時模擬胃液)及びFaSSIF(空腹時模擬腸液)で実験を行った。サンプルを10mgずつ4つのバイアルに分注し、それぞれ2つのバイアルに対してFaSSGF及びFaSSIFを1mLずつ添加し、オービタルシェーカーで24時間培養した。培養後、各サンプルは全ての固体が溶解し、溶解度は下記のように測定した。
【0070】
【0071】
<実験例2>(1-(2-クロロフェニル)-(S)-1-ヒドロキシプロピル-(S)-2-カルバメート)結晶型パターン1の熱力学的安定性確認
【0072】
<2-1>パターン1及びパターン3の競争的スラリー実験
常温及び50℃で様々な結晶型パターンの相対的な熱力学的安定性を調査するために、競争的なスラリー実験を行った。
【0073】
パターン1とパターン3の混合物(ED01748-028-003-00、4x20mg)をバイアルに計量した。これらをそれぞれ250μLのDIPE又はヘプタンのいずれかのパターン1(ED01748-006-001-001の飽和溶液で処理した(50mgのED01748-006-001-001をDIPE又はヘプタンで処理し、50℃で加熱し、必要に応じて一部を除去し、0.45μmのシリンジフィルターでろ過してスラリーを形成した)。得られたスラリーを室温又は50℃で攪拌した。小さなサンプルを定期的に取り出し、XRPDで分析し、下表のように進行状況をモニターした。分析後、固体をバイアルに戻し、必要に応じて追加の飽和溶液を追加してスラリーを維持した。4日後、UPLCで物質の純度を確認した。DIPEは両方のサンプルで純度が98%に低下し、ヘプタンのサンプルは98.5%の純度を示した。
【0074】
【0075】
上記表中の物質のXRPD結果を
図20に示す。DIPEとヘプタン中の2つの無水形態であるパターン1とパターン3の混合物の競合スラリーは、室温と50℃の両方で全てパターン1に変換することを示し、XRPDによりパターン3が残っていないことを確認した。ヘプタンからパターン1への変換がDIPEよりも遅いのは、物質の溶解度の違いであると考えられる。以上の結果から、パターン1がパターン3に比べて熱力学的に安定していることを確認した。
【0076】
<2-2>パターン1、パターン3、パターン6及びパターン11の競争的スラリー実験
パターン1とパターン3の混合物(ED01748-028-003-00、10mg部分)を4つのバイアルに計量し、パターン6(ED01748-034-002-00、5mg)とパターン11(ED01748-037-002-00、5mg)を各バイアルに添加した。これらをそれぞれDIPE又はヘプタンで調製したパターン1(ED01748-006-001-00)の濾過された飽和溶液300μLで処理した。得られたスラリーを室温及び50℃で攪拌した。小さなサンプルを定期的に取り出し、XRPDで分析し、以下の表に記載されているようにモニタリングした。
【0077】
分析後、固形物をバイアルに戻し、スラリーを維持するために必要な場合は追加の飽和溶液を注入した。25日後、ヘプタン実験で得られた固体物質の純度をUPLCで確認し、UPLCによって純度の著しい低下は見られなかった。
【0078】
【0079】
室温及び50℃でのDIPEにおけるパターン1、パターン3、パターン6及びパターン11材料の混合物の競合スラリーは、すべて1日後にパターン1材料に変換された。すなわち、パターン1は、実験条件において、室温及び50℃でのDIPEのパターン3及びパターン6及びパターン11よりも熱力学的に安定していることが確認された。ヘプタンの場合、パターン1及び11の混合物が室温及び50℃で25日政治後も存在したが、パターン6は残っておらず、このような結果から、パターン1がパターン11及びパターン6と比較して熱力学的に安定していることを確認した(
図21、
図22)。
【0080】
以上、本発明についてその好ましい実施例を中心に説明した。本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者は、本発明が本発明の本質的な特性から逸脱しない範囲で変形された形態で実施することができることを理解できるであろう。したがって、開示された実施例は限定的な観点ではなく、説明的な観点から考慮されるべきである。本発明の範囲は、前述の説明ではなく、請求の範囲に示されており、それと同等の範囲内にあるすべての差異は、本発明に含まれるものと解釈されるべきである。
【国際調査報告】