(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-27
(54)【発明の名称】二重特異性融合ポリペプチド及びその応用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/46 20060101AFI20240820BHJP
C07K 16/22 20060101ALI20240820BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240820BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240820BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240820BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240820BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240820BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240820BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240820BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240820BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240820BHJP
A61P 27/06 20060101ALI20240820BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240820BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
C07K16/46 ZNA
C07K16/22
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61P35/00
A61P27/02
A61P27/06
A61P9/10
A61K39/395 N
A61K39/395 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508305
(86)(22)【出願日】2022-08-09
(85)【翻訳文提出日】2024-04-04
(86)【国際出願番号】 CN2022111142
(87)【国際公開番号】W WO2023016449
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】202110910605.4
(32)【優先日】2021-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】524051874
【氏名又は名称】ユアンプ バイオテクノロジー(ウーハン)カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】YUANPU BIOTECHNOLOGY(WUHAN) CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドン,シコン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,フイ
(72)【発明者】
【氏名】スン,ウェンジエ
(72)【発明者】
【氏名】リウ,イー
(72)【発明者】
【氏名】フェン,ヤン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C085AA13
4C085AA33
4C085BB11
4C085BB31
4C085CC22
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG01
4C085GG10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA24
4H045FA72
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
VEGFAを特異的に認識する第1ドメインと、VEGFCを特異的に認識する第2ドメインとを含む、血管内皮成長因子(VEGF)AとVEGFCに結合する二重特異性融合ポリペプチドを提供する。また、前記二重特異性融合ポリペプチドのVEGFA又はVEGFCに関連する疾患を治療又は予防する方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管内皮成長因子(VEGF)AとVEGFCに結合する二重特異性融合ポリペプチドであって、VEGFAを特異的に認識する第1ドメインと、VEGFCを特異的に認識する第2ドメインとを含む二重特異性融合ポリペプチド。
【請求項2】
前記第1ドメインは、VEGFAを特異的に認識する血管内皮成長因子受容体(VEGFR)又はその機能性断片、又はVEGFAに対する抗体又はその機能性断片であり、
前記第2ドメインは、VEGFCを特異的に認識するVEGFR又はその機能性断片、又はVEGFCに対する抗体又はその機能性断片であることを特徴とする請求項1に記載の二重特異性融合ポリペプチド。
【請求項3】
前記第1ドメインは、VEGFR1の免疫グロブリン(Ig)様ドメイン2及びVEGFR2のIg様ドメイン3を含み、又は
前記第1ドメインは、VEGFAに特異的に結合する抗体Fab断片、Fab’断片、F(ab’)
2断片、Fv断片、scFv断片、ナノ抗体、重鎖可変領域(VH)断片又は軽鎖可変領域(VL)断片を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の二重特異性融合ポリペプチド。
【請求項4】
前記第2ドメインは、VEGFR3のIg様ドメイン1、Ig様ドメイン2及びIg様ドメイン3を含み、又は
前記第2ドメインは、VEGFCに特異的に結合する抗体Fab断片、Fab’断片、F(ab’)
2断片、Fv断片、scFv断片、ナノ抗体断片、VH断片又はVL断片を含むことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の二重特異性融合ポリペプチド。
【請求項5】
前記二重特異性融合ポリペプチドは、免疫グロブリンのFc領域を含む第3ドメインをさらに含み、
好ましくは、前記免疫グロブリンは、IgA、IgG、IgM、IgD及びIgEから選ばれ、好ましくはIgGであり、より好ましくはIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4であり、
より好ましくは、前記免疫グロブリンのFc領域は、SEQ ID NO:12~15のいずれか一項に示されるアミノ酸配列、又はSEQ ID NO:12~15のいずれか一項と少なくとも約85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の二重特異性融合ポリペプチド。
【請求項6】
前記第1ドメイン、前記第2ドメイン及び/又は第3ドメインは、直接接続され又はリンカーを介して接続され、
好ましくは、前記リンカーは少なくとも6つのアミノ酸を含み、
より好ましくは、前記リンカーは、SEQ ID NO:7又は8に示されるアミノ酸配列、又は、SEQ ID NO:7又は8に示されるアミノ酸配列と比較して1、2又は3個のアミノ酸の挿入、置換又は欠失を有するアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項5に記載の二重特異性融合ポリペプチド。
【請求項7】
前記第1ドメインは、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列又はSEQ ID NO:1と少なくとも約85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列、及びSEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列又はSEQ ID NO:2と少なくとも約85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記第1ドメインは、SEQ ID NO:9に示されるアミノ酸配列又はSEQ ID NO:9と少なくとも約85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、又は、前記第1ドメインは、SEQ ID NO:16に示されるアミノ酸配列又はSEQ ID NO:16と少なくとも約85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の二重特異性融合ポリペプチド。
【請求項8】
前記第2ドメインは、
SEQ ID NO:3に示されるアミノ酸配列、SEQ ID NO:3に対応する75番目のアミノ酸がアスパラギンではないアミノ酸配列、又はSEQ ID NO:3と少なくとも約85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列、
SEQ ID NO:4に示されるアミノ酸配列又はSEQ ID NO:4と少なくとも約85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列、及び
SEQ ID NO:5に示されるアミノ酸配列又はSEQ ID NO:5と少なくとも約85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の二重特異性融合ポリペプチド。
【請求項9】
前記SEQ ID NO:3に対応する75番目のアミノ酸がアスパラギンではないアミノ酸配列において、75番目のアミノ酸はグルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン又はリジンに置換され、
好ましくは、前記SEQ ID NO:3に対応する75番目のアミノ酸がアスパラギンではないアミノ酸配列は、SEQ ID NO:6に示されるアミノ酸配列であることを特徴とする請求項8に記載の二重特異性融合ポリペプチド。
【請求項10】
前記第2ドメインは、SEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列、SEQ ID NO:10に対応する80番目のアミノ酸がアスパラギンではないアミノ酸配列、又はSEQ ID NO:10と少なくとも約85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記SEQ ID NO:10に対応する80番目のアミノ酸がアスパラギンではないアミノ酸配列において、80番目のアミノ酸はグルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン又はリジンに置換され、より好ましくは、前記SEQ ID NO:10に対応する80番目のアミノ酸がアスパラギンではないアミノ酸配列は、SEQ ID NO:11に示されるアミノ酸配列であることを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の二重特異性融合ポリペプチド。
【請求項11】
前記二重特異性融合ポリペプチドは、SEQ ID NO:17~24のいずれか一項に示されるアミノ酸配列、又はSEQ ID NO:17~24のいずれか一項に示されるアミノ酸配列と少なくとも約85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むことを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の二重特異性融合ポリペプチド。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の二重特異性融合ポリペプチドをコードする単離された核酸分子。
【請求項13】
核酸送達キャリアであって、請求項12に記載の単離された核酸分子を含む核酸送達キャリア、
好ましくは、前記核酸送達キャリアは、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス又は他の許容可能な核酸送達キャリアに由来するものを含む。
【請求項14】
請求項1~11のいずれか一項に記載の二重特異性融合ポリペプチドの二量体を含むことを特徴とする血管内皮成長因子(VEGF)AとVEGFCとの二重特異性結合分子、
好ましくは、前記二量体はホモ二量体又はヘテロ二量体である。
【請求項15】
請求項12に記載の単離された核酸分子を含む宿主細胞。
【請求項16】
請求項1~11のいずれか一項に記載の二重特異性融合ポリペプチド、請求項12に記載の単離された核酸分子、請求項13に記載の核酸送達キャリア、又は請求項14に記載の二重特異性結合分子、及び薬学的に許容される担体を含む薬物組成物。
【請求項17】
前記薬物組成物は、錠剤、散剤、顆粒剤、丸剤、注射剤、懸濁液、粉剤、乳剤、エアロゾル剤、ゲル剤、点眼剤、徐放剤又は徐放性インプラントの形態であることを特徴とする請求項16に記載の薬物組成物。
【請求項18】
容器に封入される請求項16又は17に記載の薬物組成物を含むキット、
前記容器は、好ましくはガラスアンプル、ガラス瓶、プラスチックアンプル、プラスチックボトル、プラスチック袋、又はプレフィルドシリンジである。
【請求項19】
治療有効量の請求項1~11のいずれか一項に記載の二重特異性融合ポリペプチド、請求項12に記載の単離された核酸分子、請求項13に記載の核酸送達キャリア、又は請求項14に記載の二重特異性結合分子又は請求項16又は17に記載の薬物組成物を被験者に投与することを含む、VEGFA又はVEGFCに関連する疾患を治療又は予防する方法。
【請求項20】
前記疾患は、血管新生性眼疾患及び癌関連適応症から選ばれ、好ましくは、前記疾患は、加齢黄斑変性、糖尿病黄斑浮腫、糖尿病網膜症、新生血管性緑内障、網膜静脈閉塞、角膜新生血管、角膜移植後新生血管、乳癌、腎臓癌、卵巣癌、卵管癌、腹膜癌、胃癌、結腸直腸癌、非小細胞肺癌、膀胱癌、膵臓癌、肝臓癌、子宮頸癌及び膠芽腫から選択されることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、融合ポリペプチドの分野に関し、より具体的には、VEGFAとVEGFCとを結合する二重特異性融合ポリペプチド及びその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
脈管形成とは、内皮細胞の前駆細胞又は脈管母細胞から新たな脈管を形成することをいう。血管新生とは、組織中に既に存在する血管の内皮細胞が増殖と遊走を起こして小血管を形成する過程である。脈管形成及び血管新生は、発育及びその後の生理学的動態バランス過程において重要であるが、癌及び複数の眼科疾患において病原性である可能性がある。
【0003】
既に、脈管形成及び血管新生に非常に重要な血管内皮成長因子(VEGF)ファミリーが同定された。VEGFファミリーは、VEGFA、VEGFB、VEGFC、VEGFD、VEGFE及び胎盤成長因子(PLGF)を含む。VEGF受容体(VEGFR)は、主にVEGFR1、VEGFR2及びVEGFR3の3種類のサブタイプを含む。異なるVEGFは、それぞれの受容体(VEGFR)のサブタイプと結合し、VEGFRをリン酸化し、さらに対応する生物学的作用を発揮する。したがって、VEGFとその受容体VEGFRとの結合を遮断し、内皮細胞の増殖、血管増生及び漏れを効果的に抑制し、内皮細胞の増殖及び血管新生に関連する疾患を治療する目的を達成することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術に存在する技術的課題の1つを解決するために、本発明は、様々な血管内皮成長因子(VEGF)とその受容体VEGFRとの結合を効果的に遮断し、内皮細胞の増殖、脈管増生及び漏れを抑制することができる新規な融合ポリペプチドを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、血管内皮成長因子(VEGF)AとVEGFCに結合する二重特異性融合ポリペプチドであって、VEGFAを特異的に認識する第1ドメインと、VEGFCを特異的に認識する第2ドメインとを含む二重特異性融合ポリペプチドを提供する。
【0006】
本発明のいくつかの実施形態において、前記第1ドメインは、VEGFAを特異的に認識する血管内皮成長因子受容体(VEGFR)又はその機能性断片であってもよい。本発明のいくつかの実施形態において、前記第1ドメインは、VEGFAを特異的に認識する抗体又はその機能性断片であってもよい。
【0007】
本発明のいくつかの実施形態において、前記第2ドメインは、VEGFCを特異的に認識するVEGFR又はその機能性断片であってもよい。本発明のいくつかの実施形態において、前記第2ドメインは、VEGFCを特異的に認識する抗体又はその機能性断片であってもよい。
【0008】
本発明のいくつかの実施形態において、前記第1ドメインは、VEGFR1の免疫グロブリン(Ig)様ドメイン2及びVEGFR2のIg様ドメイン3を含んでもよい。本発明のいくつかの実施形態において、前記第1ドメインは、VEGFAに特異的に結合する抗体Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、Fv断片、scFv断片、ナノ抗体、重鎖可変領域(VH)断片又は軽鎖可変領域(VL)断片を含んでもよい。本発明のいくつかの実施形態において、前記第1ドメインは、VEGFR1のIg様ドメイン2、VEGFR2のIg様ドメイン3及びVEGFR2のIg様ドメイン4を含んでもよい。
【0009】
本発明のいくつかの実施形態において、前記第2ドメインは、VEGFR3のIg様ドメイン1、Ig様ドメイン2及びIg様ドメイン3を含む。本発明のいくつかの実施形態において、前記第2ドメインは、VEGFCに特異的に結合する抗体Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、Fv断片、scFv断片、ナノ抗体断片、VH断片又はVL断片を含む。
【0010】
本発明のいくつかの実施形態において、前記二重特異性融合ポリペプチドは、免疫グロブリンのFc領域を含む第3ドメインをさらに含む。本発明のいくつかの実施形態において、前記免疫グロブリンは、IgA、IgG、IgM、IgD及びIgEから選ばれる。本発明のいくつかの実施形態において、前記免疫グロブリンはIgGである。本発明のいくつかの実施形態において、前記免疫グロブリンは、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4である。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態において、前記第1ドメイン、前記第2ドメイン及び/又は第3ドメインは、直接接続され又はリンカーを介して接続される。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態において、前記二重特異性融合ポリペプチドは、前記第1ドメイン、前記第2ドメイン及び前記第3ドメインを含む。本発明のいくつかの実施形態において、前記二重特異性融合ポリペプチドは、任意の方式で連結された第1ドメイン、第2ドメイン及び第3ドメインを含む。本発明のいくつかの実施形態において、前記二重特異性融合ポリペプチドは、N-末端からC-末端までの第1ドメイン-第2ドメイン-第3ドメインを含む。本発明のいくつかの実施形態において、前記二重特異性融合ポリペプチドは、N-末端からC-末端までの第1ドメイン-第3ドメイン-第2ドメインを含む。本発明のいくつかの実施形態において、前記二重特異性融合ポリペプチドは、N-末端からC-末端までの第2ドメイン-第1ドメイン-第3ドメインを含む。本発明のいくつかの実施形態において、前記二重特異性融合ポリペプチドは、N-末端からC-末端までの第2ドメイン-第3ドメイン-第1ドメインを含む。本発明のいくつかの実施形態において、前記二重特異性融合ポリペプチドは、N-末端からC-末端までの第3ドメイン-第1ドメイン-第2ドメインを含む。本発明のいくつかの実施形態において、前記二重特異性融合ポリペプチドは、N-末端からC-末端までの第3ドメイン-第2ドメイン-第1ドメインを含む。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態において、前記二重特異性融合ポリペプチドは、前記第1ドメイン及び前記第3ドメインを含む。本発明のいくつかの実施形態において、前記第1ドメインは、前記第3ドメインのN末端に直接接続されるか、又はリンカーを介して前記第3ドメインのN末端に接続され、その逆も同様である。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態において、前記二重特異性融合ポリペプチドは、前記第1ドメイン及び前記第2ドメインを含む。本発明のいくつかの実施形態において、前記第1ドメインは、前記第2ドメインのN末端に直接接続されるか、又はリンカーを介して前記第2ドメインのN末端に接続され、その逆も同様である。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態において、前記二重特異性融合ポリペプチドは、前記第2ドメイン及び前記第3ドメインを含む。本発明のいくつかの実施形態において、前記第2ドメインは、前記第3ドメインのN末端に直接接続されるか、又はリンカーを介して前記第3ドメインのN末端に接続され、その逆も同様である。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態において、前記免疫グロブリンのFc領域は、SEQ ID NO:12~15のいずれか一項に示されるアミノ酸配列、又はSEQ ID NO:12~15のいずれか一項と少なくとも約85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態において、前記リンカーは少なくとも6つのアミノ酸を含む。本発明のいくつかの実施形態において、前記リンカーは、SEQ ID NO:7又はSEQ ID NO:8に示されるアミノ酸配列、又は、SEQ ID NO:7又は8に示されるアミノ酸配列と比較して1、2又は3個のアミノ酸の挿入、置換又は欠失を有するアミノ酸配列を有する。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態において、前記第1ドメインは、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列又はSEQ ID NO:1と少なくとも約85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列、及びSEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列又はSEQ ID NO:2と少なくとも約85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでもよい。本発明のいくつかの実施形態において、前記第1ドメインは、SEQ ID NO:16に示されるアミノ酸配列又はSEQ ID NO:16と少なくとも約85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでもよい。本発明のいくつかの実施形態において、前記第1ドメインは、SEQ ID NO:9に示されるアミノ酸配列又はSEQ ID NO:9と少なくとも約85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態において、前記第2ドメインは、SEQ ID NO:3に示されるアミノ酸配列、SEQ ID NO:3に対応する75番目のアミノ酸がアスパラギンではないアミノ酸配列、又はSEQ ID NO:3と少なくとも約85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列、SEQ ID NO:4に示されるアミノ酸配列又はSEQ ID NO:4と少なくとも約85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列、及びSEQ ID NO:5に示されるアミノ酸配列又はSEQ ID NO:5と少なくとも約85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態において、前記SEQ ID NO:3に対応する75番目のアミノ酸がアスパラギンではないアミノ酸配列において、75番目のアミノ酸はグルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン又はリジンに置換されている。本発明のいくつかの実施形態において、前記SEQ ID NO:3に対応する75番目のアミノ酸がアスパラギンではないアミノ酸配列は、SEQ ID NO:6に示されるアミノ酸配列である。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態において、前記第2ドメインは、SEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列、SEQ ID NO:10に対応する80番目のアミノ酸がアスパラギンではないアミノ酸配列、又はSEQ ID NO:10と少なくとも約85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。本発明のいくつかの実施形態において、前記SEQ ID NO:10に対応する80番目のアミノ酸がアスパラギンではないアミノ酸配列において、80番目のアミノ酸はグルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン又はリジンに置換されている。本発明のいくつかの実施形態において、SEQ ID NO:10に対応する80番目のアミノ酸がアスパラギンではないアミノ酸配列は、SEQ ID NO:11に示されるアミノ酸配列である。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態において、前記二重特異性融合ポリペプチドは、SEQ ID NO:17に示されるアミノ酸配列、又はSEQ ID NO:17と少なくとも約85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。本発明のいくつかの実施形態において、前記二重特異性融合ポリペプチドは、SEQ ID NO:18に示されるアミノ酸配列、又はSEQ ID NO:18と少なくとも約85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。本発明のいくつかの実施形態において、前記二重特異性融合ポリペプチドは、SEQ ID NO:19に示されるアミノ酸配列、又はSEQ ID NO:19と少なくとも約85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。本発明のいくつかの実施形態において、前記二重特異性融合ポリペプチドは、SEQ ID NO:20に示されるアミノ酸配列、又はSEQ ID NO:20と少なくとも約85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。本発明のいくつかの実施形態において、前記二重特異性融合ポリペプチドは、SEQ ID NO:21に示されるアミノ酸配列、又はSEQ ID NO:21と少なくとも約85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。本発明のいくつかの実施形態において、前記二重特異性融合ポリペプチドは、SEQ ID NO:22に示されるアミノ酸配列、又はSEQ ID NO:22と少なくとも約85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。本発明のいくつかの実施形態において、前記二重特異性融合ポリペプチドは、SEQ ID NO:23に示されるアミノ酸配列、又はSEQ ID NO:23と少なくとも約85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。本発明のいくつかの実施形態において、前記二重特異性融合ポリペプチドは、SEQ ID NO:24に示されるアミノ酸配列、又はSEQ ID NO:24と少なくとも約85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0023】
本発明の別の態様は、本発明の二重特異性融合ポリペプチドをコードする単離された核酸分子を提供する。
【0024】
本発明のさらに別の態様は、本発明の単離された核酸分子を含む核酸送達キャリアを提供する。本発明のいくつかの実施形態によれば、前記核酸送達キャリアは、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス又は他の許容可能な核酸送達キャリアに由来することができる。
【0025】
本発明のさらに別の態様は、本発明の二重特異性融合ポリペプチドが形成する二量体を含む、血管内皮成長因子(VEGF)AとVEGFCとの二重特異性結合分子を提供する。本発明のいくつかの実施形態において、本発明の融合ポリペプチドはホモ二量体を形成する。本発明のいくつかの実施形態において、本発明の融合ポリペプチドはヘテロ二量体を形成する。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態において、本発明の二重特異性融合ポリペプチドは、第1ドメイン、第2ドメイン及び第3ドメインを含み、前記第3ドメインは免疫グロブリンのFc領域を含む。本発明のいくつかの実施形態において、N-末端からC-末端までの第1ドメイン-第2ドメイン-第3ドメインを含む二重特異性融合ポリペプチドは二量体を形成する。本発明のいくつかの実施形態において、N-末端からC-末端までの第1ドメイン-第3ドメイン-第2ドメインを含む二重特異性融合ポリペプチドは二量体を形成する。本発明のいくつかの実施形態において、N-末端からC-末端までの第2ドメイン-第1ドメイン-第3ドメインを含む二重特異性融合ポリペプチドは二量体を形成する。本発明のいくつかの実施形態において、N-末端からC-末端までの第2ドメイン-第3ドメイン-第1ドメインを含む二重特異性融合ポリペプチドは二量体を形成する。本発明のいくつかの実施形態において、N-末端からC-末端までの第3ドメイン-第1ドメイン-第2ドメインを含む二重特異性融合ポリペプチドは二量体を形成する。本発明のいくつかの実施形態において、N-末端からC-末端までの第3ドメイン-第2ドメイン-第1ドメインを含む二重特異性融合ポリペプチドは二量体を形成する。
【0027】
本発明のさらに別の態様は、本発明に記載の単離された核酸分子を含む宿主細胞を提供する。
【0028】
本発明のさらに別の態様は、薬物組成物を提供する。本発明のいくつかの実施形態において、前記薬物組成物は、本発明に記載の二重特異性融合ポリペプチド、及び薬学的に許容される担体を含む。本発明のいくつかの実施形態において、前記薬物組成物は、本発明に記載の単離された核酸分子、及び薬学的に許容される担体を含む。本発明のいくつかの実施形態において、前記薬物組成物は、本発明に記載の核酸送達キャリア、及び薬学的に許容される担体を含む。本発明のいくつかの実施形態において、前記薬物組成物は、本発明に記載の二重特異性結合分子、及び薬学的に許容される担体を含む。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態において、前記薬物組成物は、錠剤、散剤、顆粒剤、丸剤、注射剤、懸濁液、粉剤、乳剤、エアロゾル剤、ゲル剤、点眼剤、徐放剤又は徐放性インプラントの形態である。いくつかの実施形態において、前記薬物組成物は、注射可能な調製物として調製されてもよい。いくつかの実施形態において、前記調製物は、硝子体内注射、皮下、皮内、筋肉内、静脈、髄腔内又は脊髄内投与に適している。
【0030】
本発明のさらに他の態様は、容器に封入される本発明に記載の薬物組成物を含むキットを提供する。本発明のいくつかの実施形態において、前記容器は、ガラスアンプル、ガラス瓶、プラスチックアンプル、プラスチックボトル、プラスチック袋、又はプレフィルドシリンジである。いくつかの実施形態において、本発明は、適切な容器内の本明細書に記載の薬物組成物を含む、ヒトの非経口投与に適した薬物単位剤形に関する。いくつかの実施形態において、前記適切な容器は、プレフィルドシリンジである。いくつかの実施形態において、該プレフィルドシリンジは注射針を含む。
【0031】
本発明のさらに別の態様は、VEGFA又はVEGFCに関連する疾患を治療又は予防する方法を提供する。前記方法は、治療有効量の本発明に記載の二重特異性融合ポリペプチド、本発明に記載の単離された核酸分子、本発明に記載の単離された核酸分子を含む核酸送達キャリア、本発明の二重特異性結合分子又は本発明に記載の薬物組成物を被験者に投与することを含む。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態において、前記疾患は、血管新生性眼疾患及び癌関連適応症から選ばれる。本発明のいくつかの実施形態において、前記疾患は、加齢黄斑変性、糖尿病黄斑浮腫、糖尿病網膜症、新生血管性緑内障、網膜静脈閉塞、角膜新生血管、角膜移植後新生血管、乳癌、腎臓癌、卵巣癌、卵管癌、腹膜癌、胃癌、結腸直腸癌、非小細胞肺癌、膀胱癌、膵臓癌、肝臓癌、子宮頸癌及び膠芽腫から選択される。
【0033】
発明の詳細な説明
定義
特に定義されない限り、本発明で使用される全ての技術的用語及び科学的用語は、本発明が属する分野で通常使用されるものと同じ意味を有する。本明細書を説明する目的で、以下の定義が適用され、適切な場合、単数形で使用される用語も複数形を含み、その逆もまた同様である。
【0034】
文脈で明確に説明しない限り、本明細書で用いられる「一」、「一種」及び「一つ」という表現は、複数の指示を含む。例えば、「1つの細胞」が言及されると、複数のこのような細胞及び当業者に知られる同等物などを含む。
【0035】
本明細書で使用される用語「約」とは、その後の数値の±20%の範囲を意味する。いくつかの実施形態において、用語「約」は、その後の数値の±10%の範囲を示す。いくつかの実施形態において、用語「約」は、その後の数値の±5%の範囲を示す。
【0036】
本明細書で使用される用語「血管内皮成長因子」又は「VEGF」は、165-アミノ酸の血管内皮成長因子、及び関連する121-、189-及び206-アミノ酸の血管内皮成長因子等(例えば、Leung et al., Science 246:1306(1989)及びHouckら、Mol. Endocrin.5:1806(1991)に記載される通り)、並びにこれらの成長因子の天然に存在するアレル形態及び加工された形態を意味する。VEGFファミリーは、VEGFA、VEGFB、VEGFC、VEGFD、VEGFE及び胎盤成長因子(PLGF)を含む。VEGFは、脈管内皮細胞の成長を高度に特異的に促進する因子であり、脈管透過性の増加、細胞外基質の変性、脈管内皮細胞の遊走、増殖及び脈管形成を促進するなどの作用を有する。
【0037】
本明細書で使用される用語「血管内皮成長因子受容体」、「VEGF受容体」又は「VEGFR」は、VEGFの細胞受容体を意味し、通常、脈管内皮細胞に発見された細胞表面受容体及びそのVEGF結合能を保留する変異体である。VEGFRファミリーは、主にVEGFR1、VEGFR2及びVEGFR3を含む。VEGFRファミリーのこの3つのメンバーは、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン及び細胞内のチロシンキナーゼドメインを含み、細胞外ドメインのいずれにも7つの免疫グロブリン(Ig)様ドメインを有する(
図1に示す)。タンパク質N末端からのこの7つの免疫グロブリンドメインは、それぞれIg様ドメイン1、Ig様ドメイン2、Ig様ドメイン3、Ig様ドメイン4、Ig様ドメイン5、Ig様ドメイン6及びIg様ドメイン7と呼ばれる。VEGFRは、その細胞外ドメインを介してVEGFと結合し、またVEGFRのIg様ドメインはVEGFと高い親和力を有する。VEGFR1とVEGFR2はほとんどの血管内皮細胞で発現し、VEGFR3は主にリンパ管内皮細胞で発現する。VEGFAは、VEGFR1及びVEGFR2と結合することにより、細胞内の関連シグナル伝達経路を起動し、細胞増殖、血管形成などの生理学的病理的過程に関与することができ、新生血管形成を促進し血管透過性を増加させるだけでなく、細胞アポトーシスを防止して血管の維持を実現することもできる。VEGFR1の2番目のIg様ドメイン(すなわち、Ig様ドメイン2)は、該受容体とVEGFとの結合を決定することが報告されている(Terri Davis-Smyth et al., The EMBO Journal, vol.15 no.18, pp4919-4927, 1996)。VEGFCは、VEGFR2及びVEGFR3と結合することができ、主にリンパ管の生成を調節するために用いられる。VEGFBは非新生血管が形成した腫瘍において作用する可能性があり、VEGFCとVEGFDは癌組織の新生血管と新生リンパ管の形成過程において作用することができ、VEGFEも潜在的な新生血管形成因子である。報道によれば、VEGFR3はVEGFDと結合することもできる。PLGFは、その受容体VEGFR1/Flt-1に特異的に結合することによってシグナル伝達経路を活性化し、内皮細胞と間質細胞の作用を媒介し、内皮細胞の分化成熟にも影響する。
【0038】
本明細書で使用される「融合ポリペプチド」という用語は、タンパク質をコードするポリヌクレオチドの遺伝的発現又はタンパク質合成方法を使用して、2つ又は複数のタンパク質又はその断片をそれぞれのペプチド骨格を介して共線状に連結することを意味する。好ましくは、前記ポリペプチド又はその断片は異なる由来である。いくつかの実施形態において、融合ポリペプチドは、異なる由来のペプチド断片、例えばVEGFR1、VEGFR2、VEGFR3、免疫グロブリン又は抗体断片に由来するものを含む。
【0039】
本明細書で使用される用語「親和力」又は「結合親和力」とは、分子(例えば、二重特異性融合ポリペプチド又は二重特異性結合分子)の単一の結合部位とその結合リガンド(例えば、抗原)との間の非共有結合相互作用の合計の強度を意味する。結合親和力は、通常、解離定数(KD)で表すことができ、解離定数(KD)は、解離速度(kd)と結合速度(ka)との比率、すなわち、KD=kd/kaである。親和力は、例えば表面プラズモン共鳴(SPR)など、当分野で公知の従来の方法により測定することができる。
【0040】
本明細書で使用される用語「特異的に認識する」又は「特異的に結合する」とは、融合ポリペプチド又は特異性結合分子がリガンドに対して認識及び結合選択性を有し、不要な又は非特異的な結合と区別できることを意味する。1つの実施形態において、例えばSPRにより測定された、本発明の二重特異性融合ポリペプチド又は二重特異性結合分子は、無相関タンパク質との結合度がVEGFA及びVEGFCとの結合度の約10%未満である。いくつかの実施形態において、本発明によって提供される二重特異性融合ポリペプチド又は二重特異性結合分子は、VEGFA及びVEGFCに結合するKDがいずれも10-7M以下であり、例えば、10-10M~10-11Mである。
【0041】
本明細書においてアミノ酸に対して使用される用語「置換」とは、あるアミノ酸配列における少なくとも1つのアミノ酸残基が別の異なる「置換」アミノ酸残基に置換されることを意味する。本明細書においてアミノ酸に対して使用される用語「挿入」とは、少なくとも1つの追加のアミノ酸をあるアミノ酸配列に組み込むことを意味する。挿入物は、通常、挿入される1又は2個のアミノ酸残基からなるが、例えば、約3~5個、又は最大で約10、15又は20個のアミノ酸残基が挿入された大きな「ペプチド挿入物」を調製してもよい。以上に開示したように、挿入される残基は、天然に存在していても、天然に存在していなくてもよい。本明細書においてアミノ酸に対して使用される用語「欠失」とは、あるアミノ酸配列から少なくとも1つのアミノ酸残基を除去することを意味する。
【0042】
本開示の融合ポリペプチド又はその断片は、1つ又は複数のアミノ酸残基、例えば必須又は非必須のアミノ酸残基に保存的アミノ酸置換を含んでもよい。「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基に置換されることである。本分野では、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分岐側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含む、類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーが定義されている。したがって、本明細書において、融合ポリペプチド又はリンカーにおける必須又は非必須のアミノ酸残基は、好ましくは同じ側鎖ファミリーに由来する別のアミノ酸残基で置換される。いくつかの実施形態において、アミノ酸セグメントは、構造が類似し、側鎖ファミリーのメンバーの順序及び/又は組成が異なるセグメントで置換されてもよい。あるいは、いくつかの実施形態において、飽和突然変異誘発によって導入されるなど、コード配列の全部又は一部にランダムに突然変異を導入してもよく、それによって得られた突然変異体は、本発明の融合ポリペプチドに取り込まれ、これらのポリペプチドが所望の標的に結合する能力をスクリーニングしてもよい。
【0043】
本明細書で使用される用語「抗体」は、完全な抗体及び任意の抗原結合断片(すなわち、「抗原結合部分」、「抗原結合ポリペプチド」又は「免疫結合剤」)、又はそれらの一本鎖を含む。「抗体」は、少なくとも2つの重鎖(H)及び2つの軽鎖(L)がジスルフィド結合により互いに連結された糖タンパク質、又はその抗原結合部分を含む糖タンパク質の一種である。各重鎖はいずれも重鎖可変(VH)領域及び重鎖定常領域(CH)を含む。各軽鎖はいずれも軽鎖可変(VL)領域及び軽鎖定常領域(CL)を含む。VH領域及びVL領域は、それぞれ3つのアミノ酸組成及び配列順序が高度に可変である領域を含み、高可変領域又は相補性決定領域(complementarity determining region、CDR)、CDR1、CDR2及びCDR3と呼ばれる。VH領域及びVL領域のうちCDR領域以外の領域のアミノ酸組成及び配列順序は相対的に保存され、骨格領域(framework region、FR)と呼ばれる。VH又はVLは、それぞれFR1、FR2、FR3及びFR4で表される4つの骨格領域を有する。
【0044】
免疫グロブリンには、IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMという5つの主要タイプが存在し、これらの主要タイプは、さらに、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2というサブタイプ(アイソタイプ)に分類することもできる。異なるタイプの免疫グロブリンに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ及びμと呼ばれる。異なるタイプ(κ又はλ)の免疫グロブリンのCLの長さはほぼ一致するが、異なるタイプの免疫グロブリンのCHの長さは異なり、例えば、IgG、IgA及びIgDはCH1、CH2及びCH3を含み、IgM及びIgEはCH1、CH2、CH3及びCH4を含む。ヒンジ領域(hinge region)は、CH1とCH2との間に位置し、プロリンを豊富に含み、伸展湾曲しやすく、抗原結合部位間の距離を変化させ、抗体が異なる位置にある抗原エピトープに結合するのに有利である。ヒンジ領域はパパイン、ペプシンなどによって加水分解されやすく、異なる加水分解断片を生成する。パパインがIgを加水分解する部位は、ヒンジ領域においてジスルフィド結合で連結された2本の重鎖のN末端に近く、Igを2つの完全に同じFab断片と1つのFc断片に分解することができる。Fab断片は、抗原結合断片(fragment antigenbinding、Fab)であり、1本の完全な軽鎖と重鎖のVH及びCHlドメインからなる。
【0045】
本明細書で使用される用語「抗体」、「免疫グロブリン」又は「Ig」のFc領域は、免疫グロブリン重鎖又はその断片のC末端の定常ドメイン又は定常領域(CH)を意味し、結晶性断片(fragment crystallizable、Fc)であり、IgのCH2及びCH3ドメインからなる。本明細書において、用語「Fc領域」は、野生型Fc領域及び変異体Fc領域を含む。野生型Fc領域は、天然に存在するFc領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を示す。SEQ ID NO:9は、野生型ヒトIgG1のFc領域を示す。用語「変異体(ヒト)Fc領域」は、少なくとも1つのアミノ酸が変異することにより、そのアミノ酸配列が野生型(ヒト)Fc領域のアミノ酸配列と異なることを意味する。いくつかの実施形態において、野生型Fc領域と比較して、変異体Fc領域は、少なくとも1つのアミノ酸変異、例えば1~10個のアミノ酸変異を有する。いくつかの実施形態において、変異体Fc領域は、野生型Fc領域と比較して、1~3個のアミノ酸変異を有する。
【0046】
本明細書で使用される用語「ホモ二量体」は、本発明の融合ポリペプチドから形成され、2本の同じ本発明の融合ポリペプチドを含むことを意味する。本明細書で使用される用語「ヘテロ二量体」は、本発明の融合ポリペプチドから形成され、2本の異なる本発明の融合ポリペプチドを含むことを意味する。
【0047】
本明細書で使用される用語「個体」又は「被験者」とは、哺乳動物を意味し、ヒト及び非ヒト哺乳動物を含むがこれらに限定されず、例えば、哺乳動物は、馴養動物(例えば、ウシ、ウマ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、ネコ及びイヌ)、霊長類動物(例えば、ヒト及びサル)及びげっ歯動物(例えば、ウサギ、マウス及びラット)を含むがこれらに限定されない。
【0048】
本明細書で使用される数値範囲は、この範囲内の全ての数字を列挙したものとして理解されるべきである。例えば、1から20の範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20のグループからの任意の数字、数字の組み合わせ、又はサブ範囲を含むと理解されるべきである。
【0049】
本明細書で使用される用語「リンカー」は、鎖状のアミノ酸からなる天然及び/又は合成由来の(ペプチド)リンカーを意味する。本発明の二重特異性融合ポリペプチドにおける各ドメインは、リンカーを介して連結されてもよく、各リンカーは、少なくとも2つのポリペプチド又はドメインと融合及び/又は他の方式で(例えば、ペプチド結合を介して)連結される。いくつかの実施形態において、本発明の二重特異性融合ポリペプチドに存在する全てのリンカーのアミノ酸配列は同じである。他の実施形態において、本発明の二重特異性融合ポリペプチドに存在する少なくとも2つのリンカーのアミノ酸配列は異なる。リンカーは、このように2つ又はより多くのモノマードメインを連結するのに適した長さを有するべきであり、リンカーは、その連結された異なるドメインが正確に折り畳まれて適切に発現され、生物学的活性を発揮する機能を保証することができる。異なる実施形態において、リンカーはフレキシブルな配座を有する。適切なフレキシブルリンカーは、例えば、グリシン、グルタミン及び/又はセリン残基を有するものを含む。いくつかの実施形態において、リンカー中のアミノ酸残基は、5個のアミノ酸までの小さな繰り返し単位配列であってもよく、例えば、GGGSGG(SEQ ID NO:6)又はGGGSGGG(SEQ ID NO:7)に示されるアミノ酸配列を有する。
【0050】
参照アミノ酸配列に対して「百分率(%)配列同一性を有する」とは、最大百分率配列同一性を得るために配列比較及び(必要に応じて)ノッチを導入した後、候補配列において参照アミノ酸配列のアミノ酸残基と同じであるアミノ酸残基の百分率を意味するが、配列同一性に保存的に置換される一部はいずれ考慮しない。アミノ酸配列の同一性百分率を特定するために、例えばBLAST、ALIGN又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェアを使用して、当分野の範囲内の様々な方式で比較することができる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大の比較を実現するために必要な任意のアルゴリズムを含む、配列比較のための適切なパラメータを決定することができる。
【0051】
本明細書で使用される「薬学的に許容される担体」という用語は、薬物製剤における活性成分以外の被験者に対して毒性のない成分を意味する。薬学的に許容される担体は、緩衝剤、賦形剤、安定剤又は防腐剤を含むが、これらに限定されない。
【0052】
本明細書で使用される用語「治療」は、障害及び/又はそれに関連する疾患又は症状を軽減及び/又は改善し、障害症状の悪化を予防することを意味する。所望の治療効果は、疾患の発生又は再発の防止、症状の緩和、疾患の任意の直接的又は間接的な病理結果の減少、転移の防止、疾患の進行速度の緩和、症状の改善又は緩和、予後の緩和又は改善を含むが、これらに限定されない。しかし、疾患又は症状の治療は、当該疾患又はそれに関連する症状を完全に解消することを要求するものではない。
【0053】
本明細書で使用される「有効量」という用語は、所望の治療又は予防効果を達成するために、必要な用量及び期間における有効な量を意味する。
【0054】
以下、本発明の理解を助けるために、実施例及び図面を提供する。ただし、これらの実施例及び図面は、本発明を説明するためのものに過ぎず、何ら制限を構成するものではない。本発明の実際の保護範囲は特許請求の範囲によって示される。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で任意に修正、変更可能であると理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1】
図1はVEGFRファミリーの3種類のサブタイプのVEGFR1、VEGFR2及びVEGFR3の構造模式図を示す。
【
図2】
図2は構築された融合ポリペプチド鎖の構造模式図である。ただし、
図1と同じドメインには同じパターンが充填されており、「*」はVEGFR3のIg様ドメイン1に変異があることを示す。
【
図3】
図3は発現した融合ポリペプチド二量体の模式図を示す。
【
図4】
図4は本発明の二重特異性タンパク質とVEGFA及びVEGFCとの結合を示す。(A)本発明の二重特異性タンパク質BiFpC1、BiFpC2、BiFpC3、BiFpC4及びBiFpC5がVEGFAに結合したELISA結果を示し、(B)本発明の二重特異性タンパク質がVEGFCに結合したELISA結果を示し、(C)本発明の二重特異性タンパク質BiFpC2及びBiFpC6がVEGFA(VA)又はVEGFC(VC)に結合したELISA結果を示す。
【
図5】
図5は本発明の二重特異性タンパク質BiFpC2、BiFpC6がVEGFA及びVEGFCと同時に結合することを示す。(A)BiFpC2がVEGFA及びVEGFCと同時に結合することを示す。(B)BiFpC6がVEGFA及びVEGFCと同時に結合することを示す。
【
図6】
図6は本発明の二重特異性タンパク質がVEGFA又はVEGFCによって誘導されたHUVEC細胞の増殖に対する抑制を示す。(A)BiFpC2がVEGFAによって誘導されたHUVEC細胞の増殖を抑制することを示す。(B)BiFpC6がVEGFAによって誘導されたHUVEC細胞の増殖を抑制することを示す。(C)BiFpC2がVEGFCによって誘導されたHUVEC細胞の増殖を抑制することを示す。(D)BiFpC6がVEGFCによって誘導されたHUVEC細胞の増殖を抑制することを示す。
【
図7】
図7は本発明の二重特異性タンパク質のVEGFAとVEGFCに対する競合的結合を示す。(A)BiFpC2がEyleaと競合的にVEGFAに結合することを示す。(B)BiFpC6がVEGFR2と競合的にVEGFAに結合することを示す。(C)BiFpC2がVEGFR3-Fcと競合的にVEGFCに結合することを示す。(D)BiFpC6がVEGFR3と競合的にVEGFCに結合することを示す。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本発明の目的、技術案及び利点をより明確にするために、以下、実施例を参照しながら本発明をさらに詳細に説明する。ここで説明される具体的な実施例は、本発明を説明するためのものに過ぎず、本発明を何ら限定するものではない。なお、以下の説明では、本開示の概念を不必要に混同しないように、周知の構成や技術の説明を省略する。このような構造及び技術は、例えばSambrook,J.,Fritsch,E.F.及びManiais,T.(1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual,2nd edition,Cold spring Harbor Laboratory Pressのような多くの出版物においても記載されている。
【0057】
実施例1 発現プラスミドの構築
本実施例において、VEGFR1のIg様ドメイン2、VEGFR2のIg様ドメイン3、VEGFR3のIg様ドメイン1~3、及びSEQ ID NO:16に示されるVEGFAに対する一本鎖抗体断片(scFv)とヒトIgG1-Fcを選択し、下記表1に示される組み合わせを行った。
【0058】
【表1】
備考:「R1D2」は、VEGFR1のIg様ドメイン2を示す。「R2D3」は、VEGFR2のIg様ドメイン3を示す。「R3D1D2D3」は、VEGFR3のIg様ドメイン1、Ig様ドメイン2及びIg様ドメイン3を示す。「Fc」はヒト由来免疫グロブリンIgG1のFc領域を示す。「Fc(FL)」は、Fc(full-length、全長)を示し、ヒト由来IgG1のFc領域であり、「Fc」よりも5個のアミノ酸「EPKSC」が多いとともに、「Fc」よりもヒンジ領域に1個のジスルフィド結合が多い。示された突然変異部位は、突然変異が存在する融合ポリペプチド鎖のN末端から始まり、アミノ酸の番号付けを行う。
【0059】
上記表に示す構造に従って、8本の融合ポリペプチド鎖を得た。それらのアミノ酸配列はそれぞれ以下のとおりである。
BiFpC1:SEQ ID NO:17、
BiFpC2:SEQ ID NO:18、
BiFpC3鎖1:SEQ ID NO:19、
BiFpC3鎖2:SEQ ID NO:20、
BiFpC4:SEQ ID NO:21、
BiFpC5鎖1:SEQ ID NO:22、
BiFpC5鎖2:SEQ ID NO:23、
BiFpC6:SEQ ID NO:24。
【0060】
図2は、上記融合ポリペプチド鎖の構造模式図を示し、図中の「*」は、アミノ酸配列に突然変異があることを示す。
【0061】
上記8種の融合ポリペプチド鎖をコードする核酸配列を、標準分子生物学技術(例えば、Sambrook,J.,Fritsch,E.F.及びManiais,T.(1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual,2nd edition,Cold spring Harbor Laboratory Pressを参照)を用いて、それぞれ一過性発現ベクターptt5又は安定化発現ベクターFTP002に挿入する。具体的には、ベクターFTP002のEF-1αプロモーターの下流のマルチクローニングサイトにBiFpC1、BiFpC2、BiFpC4及びBiFpC6を挿入し、ベクターptt5のマルチクローニングサイトにBiFpC3鎖1、BiFpC3鎖2、BiFpC5鎖1及びBiFpC5鎖2を挿入した。8種類のプラスミド構築物FTP002-BiFpC1、FTP002-BiFpC2、ptt5-BiFpC3鎖1、ptt5-BiFpC3鎖2、FTP002-BiFpC4、ptt5-BiFpC5鎖1、ptt5-BiFpC5鎖2、FTP002-BiFpC6を得た。シーケンシングにより、挿入配列の正確性を検証した。
【0062】
実施例2 二重特異性タンパク質の発現
実施例1で構築された安定発現ベクターFTP002-BiFpC1、FTP002-BiFpC2、FTP002-BiFpC4、FTP002-BiFpC6を、カチオン性ポリマートランスフェクション試薬(ATG fect solution、品番ATO00017、武漢普健生物)を用いて、製造元の取扱説明書に従って、チャイニーズハムスター細胞系CHO HD-BIOP3(Horizon Discovery Ltd.、米国)にトランスフェクションした。4mM L-グルタミン(L-glutamine)(品番:A3704、Applichem)を含むFectoCHOTMCD培地(品番:716-06L、Polyplus)で培養した。発現ベクターは、EF-1αプロモーター及びグルタミン合成酵素(GS)の遺伝子をコードする。GSの発現はグルタミンの生物化学合成を可能にし、グルタミンはCHO HD-BIOP3細胞成長に必要なアミノ酸である。トランスフェクション後、細胞を25μM L-メチオニンスルホキシイミン(MSX、品番:M111096、Aladdin、中国)で混合して選択した。MSXによりGSを抑制し、選択の厳しさを増すためである。発現ベクターcDNAが宿主細胞ゲノムの転写活性領域内に組み込まれた細胞を有し、CHO HD-BIOP3野生型細胞を選択し、ここでCHO HD-BIOP3野生型細胞は内因性レベルのGSを発現しない。トランスフェクションされた細胞を96ウェルプレートに低密度(約0.8cells/well)で接種することにより、細胞を安定的に発現して指数関数的に成長することを可能にする。マスターウェル(masterwells)は、二重特異性タンパク質の発現をスクリーニングし、その後、無血清のDynamis培地(品番:A26175-02、Gibco、米国)において浮遊培養で拡大し、二重特異性タンパク質を発現させた。
【0063】
一過性発現ベクターptt5-BiFpC3鎖1及びptt5-BiFpC3鎖2は、コトランスフェクションの方式を採用し、カチオン性ポリマートランスフェクション試薬(ATG fect solution、品番ATO00017、武漢普健生物)を用いて、製造元の取扱説明書に従ってHEK-293細胞系にトランスフェクションした。二重特異性タンパク質を一過性的に発現するHEK-293細胞は、37℃、95%相対湿度、5%CO2のインキュベーター内で培養し、細胞の生存率がある程度に低下するまで収穫した(モノクローナルのスクリーニング及び培養を行わなかった)。一過性発現ベクターptt5-BiFpC5鎖1及びptt5-BiFpC5鎖2は、類似の方法で二重特異性タンパク質を発現した。
【0064】
図3は発現した二重特異性タンパク質の模式図を示す。
【0065】
実施例3 アフィニティークロマトグラフィーにより二重特異性タンパク質を精製し、その発現量及び凝集特性を検出した。
実施例2で発現した二重特異性タンパク質は培地に分泌された。二重特異性タンパク質を含む培地をプロテインAアフィニティーカラムUnimab 50(品番17010-050100、ナノマイクロテクノロジー、蘇州、中国)に加え、プロテインAアフィニティーカラムはリン酸塩緩衝溶液(pH7.4)で平衡化された。その後、結合した二重特異性タンパク質を0.1Mクエン酸ナトリウム緩衝溶液(pH3.4)により溶出した。溶出した二重特異性タンパク質は、酸(例えば、0.1Mクエン酸)又は塩基(0.1M Tris)で溶液のpHを調整し、二重特異性タンパク質を安定な状態にし、4℃で検出に供し又は分注した後-80℃で保存する。
【0066】
二重特異性タンパク質1mLを取り、紫外分光光度法を用いて『中国薬典2020版』に従って紫外定量を行い、280nmでの吸収光を記録し、二重特異性タンパク質の吸収係数で割って、二重特異性タンパク質の濃度を得た。二重特異性タンパク質の発現量は、計算式:濃度(mg/mL)×アフィニティー溶出体積(mL)/CHO細胞上清体積(L)=二重特異性タンパク質発現量(mg/L)を採用することができる。細胞上清Titerを測定することにより発現量を表すこともでき、実験方法は非同(成都)生物科技有限公司により提供される。
【0067】
また、発現した二重特異性タンパク質の凝集特性を検出した。発現した候補二重特異性タンパク質をモレキュラーシーブ(SEC)HPLCにより検出した。被検試料を1.0mg/mLに希釈し、モレキュラーシーブカラム(Sepax Zenix-C SEC-300)に10μL(10μg)を注射して分析した。流速0.65mL/分、カラム温度35℃、214nmで検出し、移動相は200mMリン酸塩緩衝液+300mM NaCl、pH7.0であった。二重特異性タンパク質多量体、メインピーク、フラグメントは適切なピークを統合することにより測定される。
【0068】
【0069】
表2のデータから分かるように、異なる構造の二重特異性タンパク質の間の発現量の差が大きく、そのうち、BiFpC2、BiFpC5及びBiFpC6の発現量が25mg/Lを超えて高く、他の二重特異性タンパク質の発現量が低く、前記3種類の二重特異性タンパク質の発現量の約1/5だけであった。また、異なる構造は、一段階のアフィニティ精製後に得られたタンパク質サンプルにおいて、純度の差も非常に顕著であり、例えばBiFpC5は、発現量が大きいが、明らかにメインピークの純度が低く(目的産物はSEC-HPLC検出結果におけるメインピークの純度によって表すことができる)、主な不純物は断片化分子であり、また、例えばBiFpC3は、発現量が非常に低く、同時に多量体不純物を多く(20%を超える)含有する。以上で説明したように、異なる分子構造設計は、発現量と純度において非常に大きな差がある。
【0070】
実施例4 本発明の二重特異性タンパク質とVEGFA及びVEGFCとの結合を検出
本実施例はELISAにより本発明の二重特異性タンパク質とVEGFA及びVEGFCとの結合をそれぞれ検出した。
【0071】
4.1 二重特異性タンパク質とVEGFAとの結合を検出
50μL/ウェルでリン酸塩緩衝液(1×PBS)中の0.2μg/mLのヒトVEGFA(品番:Z03073-10μg、Genscript、中国)で96ウェルプレートをコーティングし、プレートを密封して4℃で一晩コーティングした。各ウェルを洗浄バッファー1×PBST(8.01g NaCl、0.2g KCl、1.42g Na2HPO4、0.27g KH2PO4、0.05% Tween-20、pH7.4)で2回洗浄した後、200μL/ウェルの1%ウシ血清アルブミンBSA(BIOFROXX)を含むPBSTを加えてブロッキングした。96ウェルプレートを密封し、37℃で2時間インキュベートした後、各ウェルを1×PBSTで2回洗浄し、ブロッキング試薬を除去した。本発明の二重特異性タンパク質BiFpC1、BiFpC2、BiFpC3、BiFpC4及びBiFpC5、及び陽性対照Eyleaを、4倍シリーズの希釈物(1×PBSで希釈)で、各ウェル(50μL/ウェル)に加え、37℃で1時間インキュベートした。その後、各ウェルを1×PBSTで3回洗浄し、未結合の二重特異性タンパク質を除去した。その後、100μL/ウェルの1:8000希釈されたHRPコンジュゲートヤギ抗ヒトIgG(H+L)(品番Ab6858、Abcam、米国)を添加し、37℃で0.5時間インキュベートした。プレートを1×PBSTで3回洗浄した後、TMB基質(Solarbio、100μL/ウェル)を加えた。暗中、37℃で10分間インキュベートした。最後に100μLの2M硫酸を各ウェルに加えて反応を停止した。マイクロプレートリーダーSynergy Lx(BioTek Instruments、米国)を用いて、450nmにおける光学濃度を測定した。EC50は、二重特異性タンパク質、陽性対照又は陰性対照タンパク質が50%のVEGFAに結合する際に必要なタンパク質サンプル濃度を示す。試験はいずれも二連で行った。
【0072】
結果を
図4Aに示す。
図4Aに示すように、本発明の二重特異性タンパク質BiFpC1、BiFpC2、BiFpC3、BiFpC4及びBiFpC5は濃度依存的にVEGFAに結合することができ、結合効果は陽性対照Eyleaに相当する。
【0073】
4.2 二重特異性タンパク質とVEGFCとの結合を検出
50μL/ウェルでリン酸塩緩衝液(1×PBS)中の2.0μg/mLのVEGFC(品番:Z03286-10μg、Genscript、中国)で96ウェルプレートをコーティングし、プレートを密封して4℃で一晩コーティングした。各ウェルを洗浄バッファー1×PBST(8.01g NaCl、0.2g KCl、1.42g Na2HPO4、0.27g KH2PO4、0.05%Tween-20、pH7.4)で2回洗浄した後、200μL/ウェルの1%BSA(BIOFROXX)を含むPBSTを加えてブロッキングした。プレートを密封し、37℃で2時間インキュベートした後、各ウェルを1×PBSTで2回洗浄してブロッキング試薬を除去した。二重特異性タンパク質BiFpC1、BiFpC2、BiFpC3、BiFpC4及びBiFpC5の4倍シリーズの希釈物(リン酸塩緩衝液1×PBSで希釈)、及び陽性対照OPT-302(0.04~40nM、リン酸塩緩衝液1×PBSで希釈)を各ウェル(100μL/ウェル)に加え、37℃で1時間インキュベートした。各ウェルを1×PBSTで3回洗浄し、未結合の二重特異性タンパク質を除去した後、100μL/ウェルの1:8000希釈されたHRPコンジュゲートヤギ抗ヒトIgG(H+L)(品番Ab6858、Abcam、米国)を添加し、37℃で0.5時間インキュベートした。プレートを1×PBSTで3回洗浄し、TMB基質(Solarbio、100μL/ウェル)を加えた。暗中、37℃で10分間インキュベートした。最後に100μLの2M硫酸を各ウェルに加えて反応を停止した。450nmに設定した比色マイクロプレートリーダーSynergy Lx(BioTek Instruments、米国)を用いて直ちに光学濃度を測定した。EC50は、二重特異性タンパク質、陽性対照又は陰性対照タンパク質が50%のVEGFCに結合する際に必要なタンパク質サンプル濃度を示す。試験はいずれも二連で行った。
【0074】
結果を
図4Bに示す。
図4Bから分かるように、本発明のBiFpC1、BiFpC2、BiFpC3及びBiFpC4は、濃度依存的にVEGFCと結合し、結合力が陽性対照OPT-302に相当する。二重特異性タンパク質BiFpC5は基本的にVEGFCとは結合しない。
【0075】
また、
図4A-Bから分かるように、異なる構造形式は、2つの標的に対する結合力が大きく区別され、VEGFA標的にとって、BiFpC1、BiFpC2及びBiFpC3は、同じ結合ドメインを使用し、且つEyleaと一致するが、明らかに各構造のVEGFAに対する結合力が異なり、同時に、BiFpC4及びBiFpC5は、別の同じ結合ドメインを使用するが、VEGFAに対する結合力も異なる。また、既存の文献から分かるように、BiFpC1、BiFpC2及びBiFpC3に使用される結合ドメインは、VEGFAに対する結合力がBiFpC4及びBiFpC5に使用される結合ドメインよりもはるかに高いが、本実施例の実験で得られたデータから分かるように、BiFpC4及びBiFpC5は、逆により高い親和力を有し、VEGFC標的にとって、BiFpC1、BiFpC2、BiFpC3、BiFpC4、BiFpC5及び対照分子OPT302と同様に、同様のVEGFC結合ドメインを使用したが、標的結合力に対して依然として大きな差があり、特にBiFpC5は、VEGFCに対する結合能力を完全に喪失した。以上から分かるように、同じ標的結合ドメインを採用しても、全体構造の違いにより、異なる分子は完全に異なる標的結合能を示し、増加、低下、さらには喪失する可能性がある。
【0076】
4.3 BiFpC2及びBiFpC6のVEGFA又はVEGFCに対する結合を検出
本実施例は、BiFpC2及びBiFpC6と抗原VEGFA又はVEGFCとの結合を比較した。
【0077】
100μL/ウェルで炭酸塩緩衝液(1×CBS)中の0.5μg/mLのVEGFA(品番:Z03073-10μg、Genscript、中国)で96ウェルプレートをコーティングした。プレートを密封し、4℃で一晩コーティングした。各ウェルを洗浄バッファー1×PBST(8.01g NaCl、0.2g KCl、1.42g Na2HPO4、0.27g KH2PO4、0.05%Tween-20、pH7.4)で2回洗浄した後、200μL/ウェルの1%BSA(BIOFROXX)を含むPBSTを加えてブロッキングした。プレートを密封し、37℃で2時間インキュベートした後、各ウェルを1×PBSTで2回洗浄してブロッキング試薬を除去した。BiFpC2又はBiFpC6の4倍シリーズの希釈物(すべてリン酸塩緩衝液1×PBSで希釈)を各ウェル(100μL/ウェル)に加え、37℃で1時間インキュベートした。各ウェルを1×PBSTで3回洗浄して未結合の二重特異性タンパク質を除去した後、100μL/ウェルの1:10000希釈されたHRPコンジュゲートヤギ抗ヒトIgG(H+L)(品番Ab97225、Abcam、米国)を添加し、37℃で0.5時間インキュベートした。プレートを1×PBSTで3回洗浄した後、TMB基質(Tiangen、100μL/ウェル)を加えた。暗中、37℃、インキュベーション時間は10分であった。最後に、50μLの2M硫酸を各ウェルに加えた。450nmに設定した比色マイクロプレートリーダーSynergy Lx(BioTek Instruments、米国)を用いて直ちに光学濃度を測定した。EC50は、二重特異性タンパク質が50%のVEGFA量に結合する際に必要なタンパク質サンプル濃度を示す。試験はいずれも二連で行った。
【0078】
100μL/ウェルで炭酸塩緩衝液(1×CBS)中に2.0μg/mLのVEGFC(品番:Z03286-10μg、Genscript、中国)で96ウェルプレートをコーティングし、プレートを密封して4℃で一晩コーティングした。各ウェルを洗浄バッファー1×PBST(8.01g NaCl、0.2g KCl、1.42g Na2HPO4、0.27g KH2PO4、0.05%Tween-20、pH7.4)で2回洗浄した後、200μL/ウェルの1%BSA(BIOFROXX)を含むPBSTを加えてブロッキングした。プレートを密封し、37℃で2時間インキュベートした後、各ウェルを1×PBSTで2回洗浄してブロッキング試薬を除去した。二重特異性タンパク質BiFpC2、二重特異性タンパク質BiFpC6の4倍シリーズの希釈物(リン酸塩緩衝液1×PBSで希釈)を各ウェル(100μL/ウェル)に加え、37℃で1時間インキュベートした。各ウェルを1×PBSTで3回洗浄し、未結合の二重特異性タンパク質を除去した後、100μL/ウェルの1:10000希釈されたHRPコンジュゲートヤギ抗ヒトIgG(H+L)(品番Ab97225、Abcam、米国)を添加し、37℃で0.5時間インキュベートした。プレートを1×PBSTで3回洗浄し、TMB基質(Tiangen、100μL/ウェル)を加えた。暗中、37℃で10分間インキュベートした。最後に50μLの2M硫酸を各ウェルに加えて反応を停止した。450nmに設定した比色マイクロプレートリーダーSynergy Lx(BioTek Instruments、米国)を用いて直ちに光学濃度を測定した。EC50は、二重特異性タンパク質が50%のVEGFC量に結合する際に必要なタンパク質サンプル濃度を示す。試験はいずれも二連で行った。
【0079】
図4Cに示すように、本発明の二重特異性タンパク質BiFpC2及びBiFpC6は、濃度依存的にVEGFA又はVEGFCに結合することができ、2種類の二重特異性タンパク質は、相当するVEGFA及びVEGFCに対する親和力を有する。
【0080】
実施例5 二重特異性タンパク質とVEGFA及びVEGFCとの結合親和力を検出
上述したように、VEGFAはVEGFR1とVEGFR2に結合することができ、VEGFCはVEGFR2とVEGFR3に結合することができる。本発明で構築された候補二重特異性タンパク質がVEGFAとVEGFCに特異的に結合できることを証明するために、本実施例はさらに表面プラズモン共鳴法(SPR)により候補二重特異性タンパク質の結合親和力を検出した。前記のデータを総合的に考慮した後、さらにデータが好ましいBiFpC1、BiFpC2、BiFpC4及びBiFpC6構造を選択し、Biacoreにより標的親和力を評価した。
【0081】
5.1 二重特異性タンパク質とVEGFAとの結合親和力を検出
Biacore S200又はBiacore 8000機器(GE Healthcare)において、HEPES-EP+(GE Healthcare、10mM Hepes pH7.4+150mM NaCl+3mM EDTA+0.05%(v/v)界面活性剤P20)をランニングバッファーとして、25℃分析温度で、表面プラズモン共鳴測定を行い、候補二重特異性タンパク質BiFpC1、BiFpC2、BiFpC4及びBiFpC6とヒトVEGFA(品番:Z03073-10μg、Genscript、中国)との結合親和力を測定した。10μg/mLの4種類の候補タンパク質、及びVEGFAに特異的に結合する陽性対照品、Eylea(Bayer、ドイツ)を、それぞれプロテインAカップリングによりプロテインAチップ(品番:29157555、GE Healthcare)に捕捉した。また、ヒトVEGFAをランニングバッファー内に希釈し、10、5、2.5、1.25、0.63、0.31、0.16、0.08及び0(ブランク)nM濃度のヒトVEGFA溶液を調製した。
【0082】
各分析サイクルは、(1)フローセル2(Fc2)に上記候補タンパク質を捕捉すること、(2)30μL/分(120秒)でVEGFA溶液をフローセル1及びフローセル2(Fc1及びFc2)に注射すること、(3)1×HBS-EP+緩衝液を30μL/分でチップに360秒流して解離相をモニタリングすること、(4)10mMグリシン塩酸緩衝液、pH1.5で注射してプロテインAチップ表面を再生すること、を含む。BiacoreTM Insight Evaluationソフトウェアを用いて、1:1結合モデルとの標準二重参照とフィッティングを用いてデータを加工し、結合速度(ka)と解離速度(kd)を測定した。KD=kd/kaから平衡解離定数(KD)を算出し、結果を以下の表3に示す。
【0083】
【0084】
表3の結果から分かるように、本発明のBiFpC1、BiFpC2、BiFpC4及びBiFpC6はいずれもVEGFAとの結合親和力が高く、KDはEyleaに類似し、10-11Mレベルに達することができる。
【0085】
5.2 二重特異性タンパク質とVEGFCとの結合親和力を検出
Biacore S200又はBiacore 8000機器(GE Healthcare)において、HEPES-EP+(GE Healthcare、10mM Hepes pH7.4+150mM NaCl+3mM EDTA+0.05%(v/v)界面活性剤P20)をランニングバッファーとして、25℃の分析温度とした表面プラズモン共鳴測定により、本発明の二重特異性タンパク質とヒトVEGFCとの結合親和力を特定した。
【0086】
二重特異性タンパク質BiFpC1、BiFpC2、BiFpC4、BiFpC6、及びVEGFCを特異的に認識する陽性対照OPT-302を、10μg/mLの固定濃度でProtein AとカップリングすることによりProtein Aチップ(品番:29157555、GE Healthcare)に捕捉した。ランニングバッファー内に希釈することにより、10、5、2.5、1.25、0.63、0.31、0.16、0.08及び0(ブランク)nM濃度のヒトVEGFC(品番:Z03286-10μg、Genscript、中国)を調製した。各分析サイクルは、(1)フローセル2(Fc2)に二重特異性タンパク質を捕捉すること、(2)30μL/分(120秒)でVEGFCをフローセル1及びフローセル2(Fc1及びFc2)に注射すること、(3)1×HBS-EP+buffer緩衝液を30μL/分でチップに360秒流して解離相をモニタリングすること、(4)10mMグリシン塩酸緩衝液、pH1.5でチップ表面に注射再生することによって構成される。BiacoreTM Insight Evaluationソフトウェアを用いて、1:1結合モデルとの標準二重参照とフィッティングを用いてデータを加工し、結合速度(ka)と解離速度(kd)を測定した。KD=kd/kaの関係から平衡解離定数(KD)を算出した。結果を下記表4に示す。
【0087】
【0088】
表4の結果から分かるように、本発明のBiFpC1、BiFpC2、BiFpC4、BiFpC6及びVEGFCはいずれも高い結合親和力を有し、KDは10-10Mレベルに達することができ、中でもBiFpC2及びBiFpC6はさらに10-11Mレベルに達し、陽性対照OPT-302(10-10Mレベル)をはるかに超え、より高いVEGFCに対する親和力を示した。
【0089】
上記の結果から分かるように、試験された4つの構造はいずれも強いVEGFA親和力を示したが、VEGFC親和力に対して大きく異なり、中でもBiFpC2及びBiFpC6は極めて強いVEGFC親和力を有し、対照分子OPT-302の10倍程度であった。これもまた、同じドメインを使用しても、分子構造の違いにより、標的分子に対する分子の結合能力に大きな影響を与えることを説明している。
【0090】
実施例6 本発明の二重特異性タンパク質が同時にVEGFA及びVEGFCと結合することを検証
本実施例は、本発明の二重特異性タンパク質BiFpC2及びBiFpC6が同時にVEGFA及びVEGFCに結合できるか否かを検出した。
【0091】
Biacore 8000機器において、HEPES-EP+(GE Healthcare、10mM Hepes pH7.4+150mM NaCl+3mM EDTA+0.05%(v/v)界面活性剤P20)をランニングバッファーとして、分析温度25℃で、表面プラズモン共鳴測定を行い、本発明の二重特異性タンパク質BiFpC2及びBiFpC6がヒトVEGFA及び/又はVEGFCと結合する能力を特定した。
【0092】
実施例3で発現された二重特異性タンパク質BiFpC2及びBiFpC6を、10μg/mLの固定濃度でProtein Aチップを介して、Protein Aとカップリングするように、当該Protein Aチップ(品番:29157555、GE Healthcare)に捕捉した。A-B-A連続サンプル導入モードを採用し、動作操作は、具体的には、フローセル2(Fc2)に二重特異性タンパク質を30~40秒捕捉し、30μL/分(120秒)で20nMのVEGFA又は500nMのVEGFCをフローセル1及びフローセル2(Fc1及びFc2)に注射し、さらに30μL/分(120秒)で500nMのVEGFC又は20nMのVEGFAをフローセル1及びフローセル2(Fc1及びFc2)に注射し、最終的に10mMのグリシン塩酸緩衝液(pH1.5)で注射し、30μL/分(60秒)でチップ表面を再生する。Biacore
TM Insight Evaluationソフトウェアを用いて、1:1結合モデルとの標準二重参照とフィッティングを用いてデータを解析し、結果を
図5に示す。
【0093】
図5Aに示すように、本発明の二重特異性タンパク質BiFpC2は、二重特異性タンパク質に結合する2種類のリガンドに由来する共鳴単位の増加(VEGFAに由来する初期22.3RU、次にヒトVEGFCに由来する別の8.8RU)、及び別のサンプル導入方式による共鳴単位の増加(VEGFCに由来する初期17.3RU、次にヒトVEGFAに由来する別の12.8RU)により、ヒトVEGFA及びヒトVEGFCに同時に結合できることが実証された。また、二重特異性タンパク質BiFpC2が異なるサンプル導入順序で2種類のリガンドに結合した後、共鳴単位の累積加算値はそれぞれ31.1RUと30.1RUであり、両者に顕著な差異がない。
【0094】
図5Bに示すように、本発明の別の二重特異性タンパク質BiFpC6は、二重特異性タンパク質に結合する2種類のリガンドに由来する共鳴単位の増加(VEGFAに由来する初期30.6RU、次にヒトVEGFCに由来する別の9.8RU)、及び別のサンプル導入方式による共鳴単位の増加(VEGFCに由来する初期17.6RU、次にヒトVEGFAに由来する別の22.0RU)により、ヒトVEGFA及びヒトVEGFCに同時に結合できることが実証された。また、二重特異性タンパク質BiFpC6が異なるサンプル導入順序で2種類のリガンドに結合した後、共鳴単位の累積加算値はそれぞれ40.3RUと39.9RUであり、両者にも顕著な差異がない。
【0095】
実施例7 本発明の二重特異性タンパク質の異なる温度での安定性の測定
実施例3で得られた二重特異性タンパク質BiFpC2及びBiFpC6をアフィニティークロマトグラフィーした後、20mMクエン酸-クエン酸ナトリウム、pH4.8の緩衝液系に置いた。サンプルを下記安定性スキームの条件で放置し、サンプルを回収した。
【0096】
サンプルを、低温4℃でそれぞれ1、3、6、15、30、60、90日間放置し、室温25℃でそれぞれ3、6、15、30日間放置し、高温40℃でそれぞれ1、3、6日間放置した。時間ゼロ、及び各サンプリング時点でサンプリングした後、二重特異性タンパク質サンプルは、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)HPLCにより、標的タンパク質分子量百分率(メインピーク%)に基づいてサンプルを分析した。具体的には、被検サンプルを1.0mg/mLに希釈し、モレキュラーシーブカラム(Sepax Zenix-C SEC-300)に10μL(10μg)を注入して分析した。流速0.65mL/分、カラム温度35℃、214nmで検出し、移動相は200mMリン酸塩緩衝液+300mM NaCl、pH7.0であった。二重特異性タンパク質ピーク(メインピーク)、ポリピーク及びフラグメントピークは、適切なピークを統合することにより測定した。その結果、ChemStationを用いてクロマトグラムを解析し、ポリピークとフラグメントピークの間に介在する溶出ピークのAUCと全AUCの比を用いてメインピーク(%)を算出した。結果を下記表5に示す。
【0097】
【0098】
上表の結果から分かるように、二重特異性タンパク質BiFpC2及びBiFpC6は室温及び低温条件下で安定であった。他の副材料を添加しない場合、室温25℃で30日間放置した後、二重特異性タンパク質BiFpC2のメインピークは84.2%から81.1%に変化し、二重特異性タンパク質BiFpC6のメインピークは87.0%から84.6%に変化した。低温4℃で90日間放置した後、二重特異性タンパク質BiFpC2のメインピークは84.2%から84.9%に変化し、二重特異性タンパク質BiFpC6のメインピークは87.0%から85.8%に変化した。これに対して、二重特異性タンパク質BiFpC2及びBiFpC6は、高温環境下で不安定であった。40℃で6日間放置した後、二重特異性タンパク質BiFpC2のメインピークは84.2%から35.3%に変化し、二重特異性タンパク質BiFpC6のメインピークは87.0%から49.7%に変化した。そのため、プロセス中に二重特異性タンパク質が高温環境に接触することを避ける必要がある。BiFpC6の安定性は、BiFpC2の安定性よりも良い。
【0099】
実施例8 本発明の二重特異性タンパク質のVEGFA又はVEGFCによって誘導されたHUVEC細胞増殖に対する抑制
HUVEC細胞はヒト臍帯静脈血管内皮細胞であり、インビトロでVEGF/VEGFRシグナル伝達経路に関連する薬物を測定するのに最も一般的な細胞系である。本実施例で使用されるHUVEC細胞は、Sciencell社(品番#8000)から購入した。
【0100】
8.1 VEGFAによって誘導されたHUVEC細胞増殖について
VEGFAは内皮成長因子であり、細胞膜表面の受容体VEGFR1及びVEGFR2と結合して細胞内の関連シグナル伝達経路を起動し、細胞増殖、血管形成などの生理的病理的過程に関与する。
【0101】
0.1ng/mLから1μg/mLまでの二重特異性タンパク質の用量範囲を評価した。二重特異性タンパク質BiFpC2の各測定濃度を50μLで、10ng/mL(最終濃度)VEGFAを50μL含むウェルに加えた。測定は、二連で行った。市販のVEGFAの中和性タンパク質Eyleaを陽性対照とし、測定培地のみを添加したウェルを溶媒ブランク対照とした。対照品Eyleaは、二重特異性タンパク質BiFpC2と同じ質量濃度範囲で測定した。VEGFA/タンパク質混合物を含む96ウェルプレートを、37℃、95%相対湿度、5%CO2で60分間インキュベートした。
【0102】
HUVEC細胞は、ECM完全培地(5%FBS、ペニシリンG(1×)、ストレプトマイシン(1×)及び内皮細胞成長添加剤ECGS(1×)を含む)において、37℃、5%CO2インキュベーターで培養した。24時間後、細胞を1×DPBS(Ca2+、Mg2+を含まない)で洗浄し、細胞を1mLの0.6%トリプシン/EDTAで消化し、細胞を培養フラスコ底部から脱離させた後、ECM完全培地9mLを加えて消化反応を終了した。その後、細胞を1000×g、室温で5分間遠心した。細胞塊を測定培地(0.5%FBSを含むECM測定培地)で再懸濁した。細胞密度は、自動化セルカウンター(Countstar、品番:IC1000、Motic)を用いて測定した。密度を調整した後、5000個の細胞(100μL中)/ウェルで96ウェルプレートの中間ウェルに添加し、周囲のウェルにDPBSを添加して培養中の培地の蒸発を防止した。96ウェルプレートを組織インキュベータ(37℃、95%相対湿度、5%CO2)に一晩置いた。24時間後、タンパク質/VEGFA混合物(100μL)を96ウェルプレートで培養したHUVEC細胞に加え、さらに72時間インキュベートした。
【0103】
反応終了後、CellTiter-Glo
TM細胞活性測定キット(Promega、米国)を使用し、製品の取扱説明書に従ってHUVEC細胞活性を測定した。簡単に言えば、測定キットを室温まで平衡させ、CellTiter-Glo
TM緩衝液を注射器でCellTiter-Glo
TMSubstrateに注射し、均一に混合し、100μL/ウェルの量で100μL/ウェル培地を捨てた96ウェルプレートの細胞に加え、室温で10分間反応させた後、マイクロプレートリーダーSynergy Lx(BioTek Instruments、米国)で化学発光を測定した。結果を
図6Aに示す。
図6Aにおける相対発光値は、データの4パラメータ抑制曲線フィッティング(GraphPad Prism、バージョン番号5.0)を用いて計算され、ここで、50%VEGFA誘導の応答が抑制された場合、二重特異性タンパク質BiFpC2又はEyleaの濃度をIC
50とする。
図6Aに示すように、本発明の二重特異性タンパク質BiFpC2は、濃度依存的に、VEGFAによって誘導されたHUVEC細胞の増殖を抑制した。したがって、本発明の二重特異性タンパク質BiFpC2がVEGFAを効果的に中和できることが証明された。
【0104】
BiFpC2と類似の方法により、同様にBiFpC6のVEGFA誘導によるHUVEC細胞増殖に対する抑制作用を検証した。測定方法を以下に説明する。
【0105】
0.46ng/mLから3μg/mL(最終濃度)までの二重特異性タンパク質の用量範囲を評価した。各測定濃度の45μLの二重特異性タンパク質BiFpC6を、45μLの45ng/mLのVEGFAを含むウェルに加えた。測定は、二連で行った。測定培地のみを添加したウェルを溶媒ブランク対照とした。VEGFA/タンパク質混合物を含む96ウェルプレートを、37℃、95%相対湿度、5%CO2で60分間インキュベートした。
【0106】
HUVEC細胞は、ECM完全培地(5%FBS、ペニシリン、ストレプトマイシン(1×)及び内皮細胞成長添加剤ECGS(1×)を含む)を有するT75細胞培養フラスコで培養し、37℃、5%CO2インキュベーターで培養した。増殖実験において、被検サンプルを添加する24時間前に、細胞を1×PBSで洗浄し、3mLの0.25%トリプシン/EDTAで細胞を消化し、細胞を培養フラスコの底部から脱離させ、その後、7mLのECM完全培地を添加して消化反応を停止させた。その後、細胞を150×g、室温で5分間遠心した。細胞塊を測定培地(0.5%FBSを含むECM培地)で再懸濁した。細胞密度は、自動化セルカウンター(Countstar、品番:IC1000、Motic)を用いて測定した。密度を調整した後、5000個の細胞(100μL中)/ウェルで96ウェルプレートの中間ウェルに加え、周囲のウェルに無菌水を添加して培養中の培地の蒸発を防止した。96ウェルプレートを組織インキュベータ(37℃、95%相対湿度、5%CO2)に一晩置いた。24時間後、タンパク質/VEGFA混合物(80μL)を96ウェルプレートで培養したHUVEC細胞に加え、さらに72時間インキュベートし続け、そのうち、VEGFAの最終濃度は10ng/mLであった。
【0107】
反応終了後、CellTiterGlo細胞活性測定試薬を用いてHUVEC細胞活性を測定した。簡単に言えば、測定キットを室温まで平衡させ、各ウェルに90μLの測定試薬を加え、プレート振とう器で2分間均一に振とうし、室温で10分間反応させた後、Fluoroskan
TMマイクロプレートリーダー(ThermoFisher)で化学発光を測定した。結果を
図6Bに示す。
図6Bにおいて、4パラメータ曲線フィッティング(GraphPad Prism、バージョン番号8.0)を用いて抑制曲線を生成し、ここで、50%VEGFA誘導の応答が抑制される場合、二重特異性タンパク質BiFpC6濃度をIC
50とする。
図6Bに示すように、本発明の二重特異性タンパク質BiFpC6は、濃度依存的に、VEGFAによって誘導されたHUVEC細胞の増殖を抑制した。したがって、本発明の二重特異性タンパク質BiFpC6がVEGFAを効果的に中和できることが証明された。
【0108】
8.2 VEGFCによって誘導されたHUVEC細胞増殖について
VEGFCは内皮成長因子であり、細胞膜表面の受容体VEGFR2及びVEGFR3と結合して細胞内の関連シグナル伝達経路を起動し、細胞増殖、血管形成などの生理的病理的過程に関与する。
【0109】
0.01μg/mLから200μg/mLまでの二重特異性タンパク質の用量範囲を評価した。二重特異性タンパク質BiFpC2の各測定濃度を50μLの100ng/mL(最終濃度)VEGFCを含むウェルに50μL加えた。測定は、二連で行った。モノクローナル抗体FTL001(Sound Biopharma、中国)を測定における陰性対照とし、測定培地のみを添加したウェルを溶媒ブランク対照とした。対照モノクローナル抗体は、二重特異性タンパク質と同じ質量濃度範囲で測定した。VEGFC/タンパク質混合物を含む96ウェルプレートを、37℃、95%相対湿度、5%CO2で60分間インキュベートした。
【0110】
HUVEC細胞は、通常とおり、完全培地(5%FBS、ペニシリンG(1×)、ストレプトマイシン(1×)及び内皮細胞成長添加剤ECGS(1×)を含む内皮細胞培地ECM)で培養した。24時間後、細胞を1×DPBS(Ca2+、Mg2+を含まない)で洗浄し、1mLの0.6%トリプシン/EDTAで細胞を消化し培養フラスコ底部から脱離させ、完全培地9mLを加えて消化反応を終了させた。その後、細胞を1000×gで室温で5分間低速遠心した。細胞塊を測定培地(0.5%FBSを含むECM測定培地)で再懸濁した。自動化セルカウンター(Countstar、品番:IC1000、Motic)で細胞密度を測定し、密度を調整した後、5000個の細胞(100μL中)を96ウェルプレートの中間ウェルに加え、周囲のウェルにDPBSを添加して培養中の培地の蒸発を防止した。96ウェルプレートを組織インキュベータ(37℃、95%相対湿度、5%CO2)に一晩置いた。24時間後、二重特異性タンパク質(又はモノクローナル抗体)/VEGFC混合物(100μL)をHUVEC細胞に加え、72時間インキュベートした。
【0111】
反応終了後、CellTiter-Glo
TM(Promega、米国)の取扱説明書に従って、測定キットを室温まで平衡化して使用した。使用前に、CellTiter-GloRBufferを注射器でCellTiter-Glo
TM Substrateに注射し、均一に混合して使用した。100μLの培地を捨て、さらに100μLの混合済み測定液を加え、室温で10分間反応させた後、マイクロプレートリーダーSynergy Lx(BioTek Instruments、米国)を用いて化学発光を測定した。結果を
図6Cに示す。
【0112】
図6Cにおける相対発光値は、データの4パラメータ抑制曲線フィッティング(GraphPad Prism、バージョン番号5.0)を用いて計算され、ここで、50%VEGFC誘導の応答が抑制される場合、二重特異性タンパク質BiFpC2又は陰性対照の濃度をIC
50とする。
図6Cから分かるように、二重特異性タンパク質BiFpC2は、濃度依存的に、VEGFCによって誘導されたHUVEC細胞の増殖を抑制した。本発明の二重特異性タンパク質がVEGFCを効果的に中和できることが証明された。
【0113】
BiFpC2と類似の方法により、同様にBiFpC6のVEGFC誘導によるHUVEC細胞増殖に対する抑制作用を検証した。測定方法を以下に説明する。
【0114】
1.5ng/mLから10μg/mL(最終濃度)までの二重特異性タンパク質の用量範囲を評価した。各測定濃度の45μLの二重特異性タンパク質BiFpC6を、45μLの225ng/mLのVEGFCを含むウェルに加えた。測定は、二連で行った。測定培地のみを添加したウェルを溶媒ブランク対照とした。VEGFC/タンパク質混合物を含む96ウェルプレートを、37℃、95%相対湿度、5%CO2で60分間インキュベートした。
【0115】
HUVEC細胞は、ECM完全培地(5%FBS、ペニシリン、ストレプトマイシン(1×)及び内皮細胞成長添加剤ECGS(1×)を含む)を有するT75細胞培養フラスコで培養し、37℃、5%CO2インキュベーターで培養した。増殖実験において、被検サンプルを添加する24時間前に、細胞を1×PBSで洗浄し、3mLの0.25%トリプシン/EDTAで細胞を消化し、細胞を培養フラスコの底部から脱離させ、その後、7mLのECM完全培地を添加して消化反応を停止させた。その後、細胞を150×g、室温で5分間遠心した。細胞塊を測定培地(0.5%FBSを含むECM培地)で再懸濁した。細胞密度は、自動化セルカウンター(Countstar、品番:IC1000、Motic)を用いて測定した。密度を調整した後、5000個の細胞(100μL中)/ウェルで96ウェルプレートの中間ウェルに加え、周囲のウェルに無菌水を添加して培養中の培地の蒸発を防止した。96ウェルプレートを組織インキュベータ(37℃、95%相対湿度、5%CO2)に一晩置いた。24時間後、タンパク質/VEGFC混合物(80μL)を96ウェルプレートで培養したHUVEC細胞に加え、さらに72時間インキュベートし続け、そのうち、VEGFCの最終濃度は50ng/mLであった。
【0116】
反応終了後、CellTiterGlo細胞活性測定試薬を用いてHUVEC細胞活性を測定した。簡単に言えば、測定キットを室温まで平衡させ、各ウェルに90μLの測定試薬を加え、プレート振とう器で2分間均一に振とうし、室温で10分間反応させた後、Fluoroskan
TMマイクロプレートリーダー(ThermoFisher)で化学発光を測定した。結果を
図6Dに示す。
図6Dにおいて、4パラメータ曲線フィッティング(GraphPad Prism、バージョン番号8.0)を用いて抑制曲線を生成し、ここで、50%VEGFC誘導の応答が抑制される場合、二重特異性タンパク質BiFpC6濃度をIC
50とする。
図6Dに示すように、本発明の二重特異性タンパク質BiFpC6は、濃度依存的に、VEGFCによって誘導されたHUVEC細胞の増殖を抑制した。したがって、本発明の二重特異性タンパク質BiFpC6がVEGFCを効果的に中和できることが証明された。
【0117】
実施例9 本発明の二重特異性タンパク質のVEGFAとVEGFCに対する競合的結合を測定
9.1 VEGFAに対する競合的結合
1×PBS(8.01g NaCl、0.2g KCl、1.42g Na
2HPO
4、0.27g KH
2PO
4、0.05%Tween-20、pH7.4)中の1.0μg/mL Eylea(Bayer、ドイツ)で、100μL/ウェルの量で96ウェルプレートをコーティングし、プレートを密封し4℃で一晩コーティングした。各ウェルを1×PBST(1×PBS、0.05%Tween-20、pH7.4)で2回洗浄した後、1%BSA(BIOFROXX)を含むPBSTを200μL/ウェル加えてブロッキングした。プレートを密封し、37℃で2時間インキュベートした後、各ウェルを1×PBSTで2回洗浄してブロッキング試薬を除去した。本発明の二重特異性タンパク質BiFpC2、陽性対照コンベルセプト(Conbercept)眼用注射液(康弘、中国)及び陰性対照ヒトIgG1、kappa Isotype Control(品番HG1K、Sino Biological、中国)を、それぞれ3倍シリーズの希釈物(1×PBS中)で、5nMのVEGFA(品番Z03073、Genscript、中国)二量体と、37℃で1時間プレインキュベートした。プレインキュベート終了後、共インキュベート物を100μL/ウェルの量で各ウェルに加え、37℃で1時間インキュベートした。各ウェルを1×PBSTで3回洗浄した後、100μL/ウェルの1:75000希釈されたVEGFAウサギモノクローナル抗体(品番11066-R105、Sino Biological、中国)を添加し、37℃で0.5時間インキュベートした。各ウェルを1×PBSTで3回洗浄した後、100μL/ウェルの1:75000希釈されたヤギ抗ウサギIgG(H+L)ポリクローナル抗体(品番511203、ZEN BIO、中国)を添加した。プレートを1×PBSTで3回洗浄し、TMB基質(品番PR1200、Solarbio、100μL/ウェル)を加えた。暗中、37℃、10分間インキュベートした。最後に、50μLの2M硫酸を各ウェルに加えて反応を停止した。マイクロプレートリーダーSynergy Lx(BioTek Instruments、米国)を用いて、450nmにおける光学濃度を測定した。測定は、二連で行った。結果を
図7Aに示し、ここで、IC
50は、50%のVEGFAが二重特異性タンパク質又は陽性対照に競合的に結合された場合の二重特異性タンパク質又は陽性対照の濃度を示す。
図7Aに示すように、本発明の二重特異性タンパク質BiFpC2は濃度依存的にEyleaと競合的にVEGFAに結合し、且つ競合的結合活性は陽性対照コンベルセプトに相当する。そのうち、二重特異性タンパク質BiFpC2のIC
50は10.6nMであり、陽性対照のIC
50は16.9nMであった。陰性対照は競合的活性がなかった。
【0118】
BiFpC2と類似の方法により、同様にBiFpC6のVEGFAに対する競合的結合能力を検証した。測定方法を以下に説明する。
【0119】
炭酸塩コーティング緩衝液(炭酸ナトリウム 1.59g、炭酸水素ナトリウム 2.93g、超純水1000mL、pH9.6)中の0.5μg/mL VEGFA165(品番Z03073-50、GenScript、中国)を用いて100μL/ウェルの量で96ウェルプレートをコーティングし、プレートを密封して4℃で一晩コーティングした。各ウェルを1×PBST(1×PBS、0.05%Tween-20、pH7.4)で2回洗浄した後、260μL/ウェルの1%BSA(品番A8020、Solarbio、中国)を含むPBSTを加えてブロッキングした。プレートを密封し、37℃で1.5時間インキュベートした後、各ウェルを1×PBSTで2回洗浄してブロッキング試薬を除去した。本発明の二重特異性タンパク質BiFpC6を3倍シリーズの希釈物(1×PBST+0.1%BSA中)と0.5μg/mLのHuman VEGFR2(品番KDR-H5227、AcroBiosystems、中国)を1:1の割合で十分に均一に混合した後、100μL/ウェルの量で対応するELISAプレートウェルに加え、37℃で1時間インキュベートした。各ウェルを1×PBSTで3回洗浄した後、100μL/ウェルの1:8000希釈されたHRP-Anti 6*His抗体(品番HRP-66005、Proteintech、中国)を添加し、37℃で45分間インキュベートした。1×PBSTでELISAプレートを3回洗浄し、100μL/ウェルのTMB基質(品番PA107-01、天根生化科技(北京)有限公司、中国)を加え、37℃で10分間、光を避けてインキュベートした。最後に100μLのシュウ酸停止液(無水シュウ酸63.0g、超純水1000mL)を各ウェルに加えて反応を停止した。マイクロプレートリーダー(北京普朗新技術有限公司、中国)を用いて450nmにおける光学濃度を測定した。結果は
図7Bに示すように、本発明の二重特異性タンパク質BiFpC6は濃度依存的にHuman VEGFR2と競合的にVEGFA165に結合し、ここで二重特異性タンパク質BiFpC6のIC
50は996.3ng/mLであった。
【0120】
9.2 VEGFCに対する競合的結合
50μL/ウェルで1×PBS(8.01g NaCl、0.2g KCl、1.42g Na
2HPO
4、0.27g KH
2PO
4、0.05%Tween-20、pH7.4)中の1.25μg/mLのVEGFR3-Fc(品番FL4-H5251、ACRO Biosystems、中国)で96ウェルプレートをコーティングし、プレートを密封し、4℃で一晩コーティングした。各ウェルを1×PBST(1×PBS、0.05%Tween-20、pH7.4)で2回洗浄した後、200μL/ウェルの1%BSA(BIOFROXX)を含むPBSTを加えてブロッキングした。プレートを密封し、37℃で2時間インキュベートした後、各ウェルを1×PBSTで2回洗浄した。二重特異性タンパク質BiFpC2と陰性対照ヒトIgG1、kappa Isotype Control(品番HG1K、Sino Biological、中国)を、それぞれ3倍シリーズの希釈物(1×PBS中)と、2.5nMのVEGFC-his(品番VEC-H4225、AcroBiosystems、中国)二量体とを、37℃で1時間プレインキュベートした。プレインキュベート終了後、共インキュベート物を各ウェル(100μL/ウェル)に加え、37℃で1時間インキュベートした。各ウェルを1×PBSTで3回洗浄した後、100μL/ウェルの1:5000希釈されたHRPコンジュゲート6*His、His-Tagモノクローナル抗体(品番66005、Proteintech、米国)を添加し、37℃で0.5時間インキュベートした。プレートを1×PBSTで3回洗浄し、TMB基質(品番PR1200、Solarbio、100μL/ウェル)を加えた。暗中、37℃で10分間インキュベートした。最後に50μLの2M硫酸を各ウェルに加えて反応を停止した。マイクロプレートリーダーSynergy Lx(BioTek Instruments、米国)を用いて、450nmにおける光学濃度を測定した。測定は、二連で行った。結果を
図7Cに示す。
図7Cに示すように、二重特異性タンパク質BiFpC2は、濃度依存的に、天然受容体VEGFR3と競合的にVEGFCに結合する。ここで、二重特異性タンパク質BiFpC2のIC
50は4.8nMであり、陰性対照は競合的活性がなかった。
【0121】
BiFpC2と類似の方法により、同様にBiFpC6のVEGFCに対する競合的結合能力を検証した。測定方法を以下に説明する。
【0122】
100μL/ウェルの炭酸塩コーティング緩衝液(炭酸ナトリウム1.59g、炭酸水素ナトリウム2.93g、超純水1000mL、pH9.6)中の1μg/mLのHuman VEGFC Protein(His Tag)(品番10542-H08H、北京義翹神州科技コフン有限公司、中国)で96ウェルプレートをコーティングし、プレートを密封して4℃で一晩コーティングした。各ウェルを1×PBST(1×PBS、0.05%Tween-20、pH7.4)で2回洗浄した後、260μL/ウェルの1%BSA(品番A8020、Solarbio、中国)を含むPBSTを加えてブロッキングした。ELISAプレートを密封し、37℃で1.5時間インキュベートした後、各ウェルを1×PBSTで2回洗浄した。二重特異性タンパク質BiFpC6を3倍シリーズの希釈物(1×PBST+0.1%BSA中)と0.1μg/mLのBiotinylated Human VEGFR3/FLT4 Protein、His、Avitag
TM(品番FL4-H82E1、AcroBiosystems、中国)とを1:1の割合で十分に均一に混合した後、100μL/ウェルの量で対応するELISAプレートウェルに加え、37℃で1時間インキュベートした。各ウェルを1×PBSTで3回洗浄した後、100μL/ウェルの1:8000希釈されたStreptavidin-HRP(SA)(品番YXXO5701-HRP、普健生物(武漢)科技有限公司、中国)を添加し、37℃で45分間インキュベートした。プレートを1×PBSTで3回洗浄し、100μL/ウェルのTMB基質(品番PA107-01、天根生化科技(北京)有限公司、中国)を加え、37℃、光を避けて10分間インキュベートした。最後に100μLのシュウ酸停止液(無水シュウ酸63.0g、超純水1000mL)を各ウェルに加えて反応を停止した。マイクロプレートリーダー(北京普朗新技術有限公司、中国)を用いて450nmにおける光学濃度を測定した。結果は
図7Dに示すように、二重特異性タンパク質BiFpC6は濃度依存的に天然受容体VEGFR3と競合的にVEGFCに結合する。ここで、二重特異性タンパク質BiFpC6のIC
50は5405ng/mLであった。
【0123】
実施例10 カニクイザル(Macaca fascicularis)nCNVモデルにおける本発明の二重特異性タンパク質のインビボ試験
8匹の滲出型加齢黄斑変性(neoAMD)モデルカニクイザル(広西雄森霊長類実験動物養殖開発有限公司)を使用した。すべての動物モデリング当日をD1とした。眼底レーザ光凝固により、カニクイザルの両眼の脈絡膜新生血管(Choroidal neovascularization、CNV)を誘導した。D15に、蛍光眼底造影(FFA)検査により動物の眼底蛍光漏れの状況を評価し、下記の基準に従ってCNVに対して漏れの段階分けを行った。
【0124】
段階1:スポットに高蛍光が現れなかった。
段階2:スポットが高蛍光であったが蛍光漏れがなかった。
段階3:スポットが高蛍光、蛍光が軽度に漏れ、漏れがスポットのエッジを超えなかった。
段階4:スポットが高蛍光、蛍光が重度に漏れ、漏れがスポットのエッジを超えた。
【0125】
D16に、段階4の漏れスポットを有する5匹の動物を選択して2群に分けた(段階4のスポットの平均漏れ面積及び段階4のスポット率に基づいて群分けし、2群間に顕著な差異がないようにした)。1群の3匹の動物に、本発明の二重特異性タンパク質BiFpC2を投与し、もう1群の2匹の動物に、陽性対照Eyleaを投与した。群分け当日、動物に硝子体腔を経て、100μMの20μMの二重特異性タンパク質BiFpC2又は43μM陽性対照Eyleaを片眼で単回注射した。試験期間中、毎日動物に対して一般的臨床観察を行い、D1、D15、D18、D22及びD29に動物に対して秤量及び一般的眼科検査を行った。動物に対して、D1、D15、D22及びD29に、眼底写真(FP)、FFA及び光干渉断層撮影(OCT)検出を行った。段階4のスポットの蛍光漏れ面積及び網膜下の高反射シグナル物質(SHRM)の厚さの計4つの指標に基づいて有効性評価を行い、結果は以下の通りであった。
【0126】
段階4蛍光スポット率:D22(投与後1週間)及びD29(投与後2週間)に、治療前と比較して、二重特異性タンパク質BiFpC2及び陽性対照Eyleaで治療された動物はいずれも有意に低下した段階4蛍光スポット率を示し、且つ二重特異性タンパク質BiFpC2群と陽性対照Eylea群との間に統計学的差異は見られなかった(p>0.05)。
【0127】
段階4蛍光スポットの平均漏れ面積:D15(投与前)に、二重特異性タンパク質BiFpC2群と陽性対照Eylea群との間の段階4スポットの平均漏れ面積に統計学的差異がなく(p>0.05)、D29に、二重特異性タンパク質BiFpC2及び陽性対照Eyleaはいずれも蛍光漏れ面積を減少させることができ、且つ2群の間の平均蛍光漏れ面積に統計学的差異がなかった(p>0.05)。
【0128】
段階4蛍光スポットの平均漏れ面積減少量及び改善率:D22及びD29に、二重特異性タンパク質BiFpC2の平均蛍光漏れ面積減少量は陽性対照Eylea群と比較していずれも統計学的差異がなかった(p>0.05)。D29に、二重特異性タンパク質BiFpC2群の平均蛍光漏れ面積改善率は陽性対照群と比較して統計学的差異がなかった(p>0.05)。
【0129】
SHRM平均厚さ:D15、D22及びD29に、二重特異性タンパク質BiFpC2群及び陽性対照Eylea群のSHRM平均厚さを比較したところ、統計学的差異がなかった(p>0.05)。
【0130】
本実施例では、カニクイザルの脈絡膜新生血管モデルを用いて、100μLの各眼20μMの二重特異性タンパク質BiFpC2又は43μMの陽性対照Eyleaを一回の硝子体腔注射で投与した。投与後の1週間(D22)、2週間(D29)に、二重特異性タンパク質BiFpC2は、モル濃度が陽性対照品Eyleaの半分のみである場合、蛍光漏れの面積を減少させ、網膜下の高反射シグナル物質の厚さを低減することができ、且つEyleaに相当する効果を有することが観察された。
【0131】
実施例11 ラットnCNVモデルにおける本発明の二重特異性タンパク質のインビボ試験
ラットのnCNVモデルにおいて、段階4蛍光スポット百分率、段階4蛍光スポット面積及び網膜厚さの3つの指標により、二重特異性タンパク質投与後7、14、21日に測定した。その結果、本実施例の試験条件において、脈絡膜新生血管ラットモデルに対して、BiFpC2高用量群(15μg/眼、硝子体腔1回注射)は、新生血管の生成及び漏れに対して一定の抑制作用を有することを発見した。
【0132】
本発明の技術案は、上記の具体的な実施例に限定されず、本発明の技術案に基づいて行われる技術的変形は、いずれも本発明の保護範囲内に含まれる。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-04-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管内皮成長因子(VEGF)AとVEGFCに結合する二重特異性融合ポリペプチドであって、VEGFAを特異的に認識する第1ドメインと、VEGFCを特異的に認識する第2ドメインとを含む二重特異性融合ポリペプチド。
【請求項2】
前記第1ドメインは、VEGFAを特異的に認識する血管内皮成長因子受容体(VEGFR)又はその機能性断片、又はVEGFAに対する抗体又はその機能性断片であり、
前記第2ドメインは、VEGFCを特異的に認識するVEGFR又はその機能性断片、又はVEGFCに対する抗体又はその機能性断片であることを特徴とする請求項1に記載の二重特異性融合ポリペプチド。
【請求項3】
前記第1ドメインは、VEGFR1の免疫グロブリン(Ig)様ドメイン2及びVEGFR2のIg様ドメイン3を含み、又は
前記第1ドメインは、VEGFAに特異的に結合する抗体Fab断片、Fab’断片、F(ab’)
2断片、Fv断片、scFv断片、ナノ抗体、重鎖可変領域(VH)断片又は軽鎖可変領域(VL)断片を含むことを特徴とする請求項
1に記載の二重特異性融合ポリペプチド。
【請求項4】
前記第2ドメインは、VEGFR3のIg様ドメイン1、Ig様ドメイン2及びIg様ドメイン3を含み、又は
前記第2ドメインは、VEGFCに特異的に結合する抗体Fab断片、Fab’断片、F(ab’)
2断片、Fv断片、scFv断片、ナノ抗体断片、VH断片又はVL断片を含むことを特徴とする請求項
1に記載の二重特異性融合ポリペプチド。
【請求項5】
前記二重特異性融合ポリペプチドは、免疫グロブリンのFc領域を含む第3ドメインをさらに含み、
好ましくは、前記免疫グロブリンは、IgA、IgG、IgM、IgD及びIgEから選ばれ、好ましくはIgGであり、より好ましくはIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4であり、
より好ましくは、前記免疫グロブリンのFc領域は、SEQ ID NO:12~15のいずれか一項に示されるアミノ酸配列、又はSEQ ID NO:12~15のいずれか一項と少なくとも約85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項
1に記載の二重特異性融合ポリペプチド。
【請求項6】
前記第1ドメイン、前記第2ドメイン及び/又は第3ドメインは、直接接続され又はリンカーを介して接続され、
好ましくは、前記リンカーは少なくとも6つのアミノ酸を含み、
より好ましくは、前記リンカーは、SEQ ID NO:7又は8に示されるアミノ酸配列、又は、SEQ ID NO:7又は8に示されるアミノ酸配列と比較して1、2又は3個のアミノ酸の挿入、置換又は欠失を有するアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項5に記載の二重特異性融合ポリペプチド。
【請求項7】
前記第1ドメインは、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列又はSEQ ID NO:1と少なくとも約85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列、及びSEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列又はSEQ ID NO:2と少なくとも約85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記第1ドメインは、SEQ ID NO:9に示されるアミノ酸配列又はSEQ ID NO:9と少なくとも約85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、又は、前記第1ドメインは、SEQ ID NO:16に示されるアミノ酸配列又はSEQ ID NO:16と少なくとも約85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むことを特徴とする請求項
1に記載の二重特異性融合ポリペプチド。
【請求項8】
前記第2ドメインは、
SEQ ID NO:3に示されるアミノ酸配列、SEQ ID NO:3に対応する75番目のアミノ酸がアスパラギンではないアミノ酸配列、又はSEQ ID NO:3と少なくとも約85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列、
SEQ ID NO:4に示されるアミノ酸配列又はSEQ ID NO:4と少なくとも約85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列、及び
SEQ ID NO:5に示されるアミノ酸配列又はSEQ ID NO:5と少なくとも約85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むことを特徴とする請求項
1に記載の二重特異性融合ポリペプチド。
【請求項9】
前記SEQ ID NO:3に対応する75番目のアミノ酸がアスパラギンではないアミノ酸配列において、75番目のアミノ酸はグルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン又はリジンに置換され、
好ましくは、前記SEQ ID NO:3に対応する75番目のアミノ酸がアスパラギンではないアミノ酸配列は、SEQ ID NO:6に示されるアミノ酸配列であることを特徴とする請求項8に記載の二重特異性融合ポリペプチド。
【請求項10】
前記第2ドメインは、SEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列、SEQ ID NO:10に対応する80番目のアミノ酸がアスパラギンではないアミノ酸配列、又はSEQ ID NO:10と少なくとも約85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記SEQ ID NO:10に対応する80番目のアミノ酸がアスパラギンではないアミノ酸配列において、80番目のアミノ酸はグルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン又はリジンに置換され、より好ましくは、前記SEQ ID NO:10に対応する80番目のアミノ酸がアスパラギンではないアミノ酸配列は、SEQ ID NO:11に示されるアミノ酸配列であることを特徴とする請求項
1に記載の二重特異性融合ポリペプチド。
【請求項11】
前記二重特異性融合ポリペプチドは、SEQ ID NO:17~24のいずれか一項に示されるアミノ酸配列、又はSEQ ID NO:17~24のいずれか一項に示されるアミノ酸配列と少なくとも約85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むことを特徴とする請求項
1に記載の二重特異性融合ポリペプチド。
【請求項12】
請求項
1に記載の二重特異性融合ポリペプチドをコードする単離された核酸分子。
【請求項13】
核酸送達キャリアであって、請求項12に記載の単離された核酸分子を含む核酸送達キャリア、
好ましくは、前記核酸送達キャリアは、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス又は他の許容可能な核酸送達キャリアに由来するものを含む。
【請求項14】
請求項
1に記載の二重特異性融合ポリペプチドの二量体を含むことを特徴とする血管内皮成長因子(VEGF)AとVEGFCとの二重特異性結合分子、
好ましくは、前記二量体はホモ二量体又はヘテロ二量体である。
【請求項15】
請求項12に記載の単離された核酸分子を含む宿主細胞。
【請求項16】
請求項
1に記載の二重特異性融合ポリペプチド
、及び薬学的に許容される担体を含む薬物組成物。
【請求項17】
前記薬物組成物は、錠剤、散剤、顆粒剤、丸剤、注射剤、懸濁液、粉剤、乳剤、エアロゾル剤、ゲル剤、点眼剤、徐放剤又は徐放性インプラントの形態であることを特徴とする請求項16に記載の薬物組成物。
【請求項18】
容器に封入される請求項1
6に記載の薬物組成物を含むキット、
前記容器は、好ましくはガラスアンプル、ガラス瓶、プラスチックアンプル、プラスチックボトル、プラスチック袋、又はプレフィルドシリンジである。
【請求項19】
請求項
1に記載の二重特異性融合ポリペプチド
の、VEGFA又はVEGFCに関連する疾患を治療又は予防
用医薬組成物製造のための使用。
【請求項20】
前記疾患は、血管新生性眼疾患及び癌関連適応症から選ばれ、好ましくは、前記疾患は、加齢黄斑変性、糖尿病黄斑浮腫、糖尿病網膜症、新生血管性緑内障、網膜静脈閉塞、角膜新生血管、角膜移植後新生血管、乳癌、腎臓癌、卵巣癌、卵管癌、腹膜癌、胃癌、結腸直腸癌、非小細胞肺癌、膀胱癌、膵臓癌、肝臓癌、子宮頸癌及び膠芽腫から選択されることを特徴とする請求項19に記載の
使用。
【国際調査報告】