(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-27
(54)【発明の名称】反応モジュールまたはシステム用プレート要素
(51)【国際特許分類】
B01J 8/02 20060101AFI20240820BHJP
B01J 19/00 20060101ALI20240820BHJP
C01B 32/40 20170101ALI20240820BHJP
【FI】
B01J8/02 E
B01J19/00 321
C01B32/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508353
(86)(22)【出願日】2022-08-11
(85)【翻訳文提出日】2024-04-01
(86)【国際出願番号】 EP2022072543
(87)【国際公開番号】W WO2023017121
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】102021208923.2
(32)【優先日】2021-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523161572
【氏名又は名称】イネラテック ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】INERATEC GmbH
【住所又は居所原語表記】Siemensallee 84, 76187 Karlsruhe, Germany
(71)【出願人】
【識別番号】324007482
【氏名又は名称】カールスルーエ インスティテュート フュア テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ピーター ファイファー
(72)【発明者】
【氏名】ゼバスティアン シュミット
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー パーフ
(72)【発明者】
【氏名】フローリアン ベッツナー
【テーマコード(参考)】
4G070
4G075
4G146
【Fターム(参考)】
4G070AB05
4G070BA01
4G070BB06
4G070CA01
4G070CA25
4G070CB02
4G070CB16
4G070CC20
4G075AA03
4G075AA39
4G075BA05
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4G075BB05
4G075CA02
4G075CA54
4G075DA02
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4G075EA06
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4G075FB01
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4G075FB04
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4G075FC20
4G146JA01
4G146JB04
4G146JC02
4G146JC18
4G146JC19
4G146JC22
4G146JD02
4G146JD10
(57)【要約】
本発明は、高温で吸熱反応を実施するためのリアクターモジュールを構築するためのプレート要素に関し、プレート要素は、全ての反応ガスが加熱要素の周りを流れることにより加熱され、反応ゾーンが同時に加熱されるように設計されている。本発明はまた、互いに押し付けられた本発明に係るプレート要素を使用するリアクターモジュールおよびリアクターシステム、ならびに吸熱化学反応、特にrWGS反応を効率的に実施するための対応する方法に関する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温で吸熱反応を実施するためのリアクターモジュール用のプレート要素であって、前記プレート要素は、少なくとも
・第1反応流体を供給するための、少なくとも1つの第1マイクロまたはミリ構造反応流体流路、および
・前記第1反応流体とは異なる第2反応流体を供給するための、少なくとも1つの第2マイクロまたはミリ構造反応流体流路、および/または
・1つ以上の生成流体を排出するための、少なくとも1つのマイクロまたはミリ構造生成流体流路、
を備え、
前記プレート要素は、触媒を充填することができる少なくとも1つの反応ゾーンを更に備え、
全ての反応流体流路は、前記少なくとも1つの反応ゾーンに材料接続され、
前記プレート要素は、少なくとも1つの加熱要素を備えるか、または収容することができ、
前記少なくとも1つの加熱要素は、前記反応ゾーンと熱的に接続している、
プレート要素。
【請求項2】
少なくとも前記第1反応流体流路と少なくとも前記第2反応流体流路が共通の混合ゾーンで一緒にされ、少なくとも1つの加熱要素が前記混合ゾーンに配置される、請求項1に記載のプレート要素。
【請求項3】
前記第1反応流体流路および前記第2反応流体流路はそれぞれ、少なくとも1つの別個に制御可能な加熱要素を別個に有する、請求項1に記載のプレート要素。
【請求項4】
前記加熱要素はセラミックシースで囲まれた抵抗線を備え、好ましくは、セラミックシースで完全に囲まれている、請求項1乃至3の何れか1項に記載のプレート要素。
【請求項5】
前記加熱要素は、少なくとも1つの高温耐性、好ましくは可撓性の材料を介して、「フォームフィット」で前記プレート要素に接続される、請求項1乃至4の何れか1項に記載のプレート要素。
【請求項6】
前記高温耐性、好ましくは可撓性の材料は、好ましくはアルミニウム、ジルコニウムまたはケイ素の酸化物/水酸化物、もしくはそれらの組み合わせから選択される、またはこれらからなる、またはこれらのうちの1つからなる、繊維材料またはフェルト材料を含む、請求項5に記載のプレート要素。
【請求項7】
前記プレート要素は、加熱要素を操作するための少なくとも1つの電気接続部、好ましくは複数のそのような電気接続部を含み、前記電気接続部は、好ましくは、前記反応流体および前記生成流体の流れ方向に対して実質的に垂直または反対方向に配置され、好ましくは、全ての電気接続部は、前記反応流体および前記生成流体の前記流れ方向に対して実質的に垂直または反対方向に配置される、請求項1乃至6の何れか1項に記載のプレート要素。
【請求項8】
前記少なくとも1つの加熱要素は、前記反応ゾーンに対して実質的に平行に配置される、請求項1乃至7の何れか1項に記載のプレート要素。
【請求項9】
前記少なくとも1つの加熱要素は、前記反応ゾーンに対して実質的に垂直に配置される、請求項1乃至7の何れか1項に記載のプレート要素。
【請求項10】
前記少なくとも1つの第1反応流体流路および/または前記少なくとも1つの第2反応流体流路と材料連通する前記少なくとも1つの加熱要素は、前記反応ゾーンに熱的に接続され、前記加熱要素は、この反応ゾーンから10mm以下、好ましくは5mm以下の最小共通距離だけ間隔を置かれ、または、流れ方向において最も下流にある前記加熱要素の端部は、前記流れ方向において前記反応ゾーンから35mm以下、好ましくは25mm以下、より好ましくは15mm以下だけ間隔を置かれる、またはその両方である、請求項1乃至9の何れか1項に記載のプレート要素。
【請求項11】
前記の熱的な接続は、熱が、前記加熱要素から前記プレート要素を介して、もしくは加熱された反応流体を介して、またはその両方を介して、前記反応ゾーンに熱伝導することを含む、請求項10に記載のプレート要素。
【請求項12】
前記プレート要素の熱伝導率は、20℃で5W/mKから20W/mK、好ましくは20℃で8W/mKから16W/mK、より好ましくは20℃で10W/mKから15W/mK、および/または800℃で10W/mKから50W/mK、好ましくは800℃で15W/mKから40W/mK、より好ましくは800℃で20W/mKから35W/mKである、請求項1乃至11の何れか1項に記載のプレート要素。
【請求項13】
高温で吸熱反応を実施するためのリアクターモジュールであって、前記リアクターモジュールは、互いに押し付けられ、互いに密閉された少なくとも2つの請求項1乃至12の何れか1項に記載のプレート要素、好ましくは少なくとも3つまたは4つのプレート要素、より好ましくは正確に3つまたは4つのプレート要素を備え、少なくとも2つのプレート要素は互いに異なる、リアクターモジュール。
【請求項14】
前記リアクターモジュールに配置された少なくとも1つの加熱要素、好ましくは複数の前記加熱要素が、それぞれ前記第1反応流体もしくは前記第2反応流体、またはその両方と直接物理的に接触している、請求項13に記載のリアクターモジュール。
【請求項15】
反応流体流路もしくは混合ゾーン、またはその両方において、前記リアクターモジュールに配置された少なくとも1つの加熱要素、好ましくは前記複数の加熱要素の周囲および/または内部を反応流体が流れる、請求項13または14に記載のリアクターモジュール。
【請求項16】
一緒に押し付けられて互いに密閉された前記プレート要素のうち少なくとも2つが、前記反応流体を供給するための全てのプレート要素に共通の少なくとも2つの流路と、生成流体を排出するための全てのプレート要素に共通の少なくとも1つの流路とによって互いに材料接続されている、請求項13ないし15の何れか1項に記載のリアクターモジュール。
【請求項17】
少なくとも3つ、好ましくは少なくとも6つ、より好ましくは少なくとも9つ、特に好ましくは「3」の倍数の、実質的に同一の、請求項13乃至16の何れか1項に記載のリアクターモジュールを備えるリアクターシステム。
【請求項18】
前記リアクターモジュールが環境から分離して、好ましくは設置面に対して実質的に垂直に配置される耐圧容器を備える、請求項17に記載のリアクターシステム。
【請求項19】
全てのリアクターモジュールが、反応流体を供給するための少なくとも2つの共通流路と、生成流体を排出するための少なくとも1つの共通流路とを備える、請求項17または18に記載のリアクターシステム。
【請求項20】
前記耐圧容器は、前記リアクターシステムで使用される反応ガス、特に水蒸気流もしくは水素流、または両方の混合物で充填される、請求項17乃至19の何れか1項に記載のリアクターシステム。
【請求項21】
前記耐圧容器は加熱システムを備える、請求項17乃至20の何れか1項に記載のリアクターシステム。
【請求項22】
請求項17乃至21の何れか1項に記載のリアクターシステムを用いて、好ましくは高温で吸熱反応を実施するための方法。
【請求項23】
前記反応は、改質反応、特にメタン改質、アンモニア合成、アンモニア分解、メタノール分解または逆水ガス転化(rWGS)から選択され、好ましくはrWGSである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
第1反応流体および第2反応流体は、異なる別個に制御可能な加熱要素と熱的に接触しており、前記それぞれの加熱要素を介して前記反応流体の流れに入力されるエネルギーは異なる、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
前記第1反応流体および前記第2反応流体は互いに異なり、好ましくは、前記第1反応流体は実質的にCO
2を含む流体であり、前記第2反応流体はH
2を含む流体である、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記リアクターシステムの前記耐圧容器は、前記リアクターシステムで使用される反応ガス、特に水蒸気流もしくは水素流、または両方の混合物で充填され、ガス流は、1つ以上の加熱要素への1つ以上のフィードスルーにおける漏出を介して、反応チャンバに配置された前記触媒に到達する、請求項22乃至25の何れか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記リアクターシステムの前記リアクターモジュールの外側および前記耐圧容器の内側の圧力は、前記リアクターモジュールの前記反応チャンバの内側よりも大きい、請求項26に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
進行する地球温暖化や化石燃料の利用可能性の減少に伴う問題を考慮すると、廃ガス等の廃棄物をより価値の高い炭化水素化合物に変換するための、実用的で柔軟な解決策を見出すことがますます重要になっている。
【背景技術】
【0002】
このような変換のための容易に広く入手可能な出発生成物は、特にCO2である。しかし、CO2からの炭素をより高価値の炭化水素の生産に利用できるようにするためには、例えばCO2を一酸化炭素(CO)に変換して、まず「活性化」しなければならない。
【0003】
CO2のCOへの変換に関しては、様々なリアクターおよびプロセスが文献で議論されている。例えば、特許文献1には、いわゆるrWGS反応(逆水ガスシフト反応)を有利に実施できるリアクターが記載されている。しかしながら、吸熱rWGS反応は、メタンまたは煤の形成のような破壊的な副反応を回避または最小化するためにも、高温(典型的には600℃以上)を必要とする。このような高温を達成するためには、相当量のエネルギーをシステムに導入しなければならない(および/またはエネルギー損失、特に熱損失を最小限に抑えなければならない)。また、システムに導入されたエネルギーを他の(後続の)プロセス、すなわちrWGS反応だけに使用しないことも有利である。アンモニア合成のような他の吸熱高温プロセスも、このような熱/エネルギーの最適化と、それに対応するリアクターモジュールやリアクターシステムを必要とする。
【0004】
特許文献2は、メタノール分解とrWGSのための「オンデマンド」合成用リアクターを記載している。ここでは、反応ガスが構造化された触媒ゾーンを通過し、触媒活性材料がこれらのゾーンの表面に積層され、抵抗加熱器を介して触媒層を加熱するために導電性材料の対応する構造も適用される。
【0005】
地域の要求に応じて規模を拡大したり縮小したりすることができ、理想的には、例えば輸送可能な支持フレームやコンテナで現場から現場へと輸送することができる、このような変換のためのリアクターシステムは、化石関連ガスや余剰ガスを処理または変換する場合に特に注目される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第102017120817号明細書
【特許文献2】国際公開第2021/063796号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
先行技術に鑑みて、本発明の1つの目的は、とりわけ、容易に拡張可能なアプローチを実行できる化学反応用リアクターを提供することである。
【0008】
本発明のもう1つの目的は、吸熱(またはわずかな発熱)反応における熱収支を最適化することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様によれば、本発明の基礎となる問題は、吸熱反応を実施するためのリアクターモジュール用のプレート要素によって少なくとも部分的に解決され、前記プレート要素は、少なくとも
・第1反応流体を供給するための、少なくとも1つの第1マイクロまたはミリ構造反応流体流路、および
・前記第1反応流体とは異なる第2反応流体を供給するための、少なくとも1つの第2マイクロまたはミリ構造反応流体流路、および/または
・1つ以上の生成流体を排出するための、少なくとも1つのマイクロまたはミリ構造生成流体流路、
を備え、
任意に、少なくとも前記第1反応流体流路と少なくとも前記第2反応流体流路が共通の混合ゾーンで一緒にされ、
前記プレート要素は、触媒を充填することができる少なくとも1つの反応ゾーンを更に備え、
全ての反応流体流路は、前記少なくとも1つの反応ゾーンに材料接続され、
前記プレート要素は、少なくとも1つの加熱要素を備えるか、または収容することができ、
前記少なくとも1つの加熱要素は、前記反応ゾーンと熱的に接続している。
【0010】
本発明に従って、「材料接続される」とは、例えば流路からゾーンへ、またはその逆に、流体を、接続された要素に、原則的に妨げられることなく流れ込むことができることを意味する。
【0011】
本発明に従って、「熱的に接続される」または「熱的連通」とは、例えば加熱要素から反応ゾーンへ、または加熱要素から反応流体へ、熱エネルギーを、対流、放射、および熱伝導によって伝達することができることを意味する。
【0012】
実施形態において、少なくとも1つの第1反応流体流路および/または少なくとも1つの第2反応流体流路と材料連通する少なくとも1つの加熱要素は、前記反応ゾーンに熱的に接続され、前記加熱要素は、前記反応ゾーンから10mm以下、好ましくは5mm以下の最小共通距離だけ間隔を置かれるか、もしくは流れ方向において最も下流にある前記加熱要素の端部は、前記流れ方向において前記反応ゾーンから25mm以下、好ましくは15mm以下の間隔を置かれるか、またはその両方である。
【0013】
実施形態において、「熱的に連通している」とは、少なくとも1つの加熱要素から反応ゾーンへプレート要素を介して伝導により熱が伝達されること、もしくは加熱要素から反応ゾーンへ加熱された反応流体を介して熱が伝達されること、またはその両方を意味する。
【0014】
実施形態において、「熱的に連通している」とは、プレート要素(またはリアクターモジュールまたはリアクターシステムの)の2つの領域が、熱伝導率が20℃で5W/mKから20W/mK、好ましくは20℃で8W/mKから16W/mK、より好ましくは20℃で10W/mKから15W/mK、および/または800℃で10W/mKから50W/mK、好ましくは800℃で15W/mKから40W/mK、より好ましくは800℃で20W/mKから35W/mKであるような方法で互いに熱伝導可能に接続されていることを意味する。これらの熱伝導率は、特に、触媒床内に配置されていない加熱要素によっても触媒を効率的に加熱することを可能にする。
【0015】
この(全ての)反応流体と反応ゾーンの両方の「直接」加熱は、反応ゾーン、特にここでは触媒において、より低い温度勾配が生じ、反応流体は均一に吸熱反応に必要な高温にされ、触媒における熱損失は、あったとしてもわずかであるから、先行技術で言及された例と比較して有利である。
【0016】
本発明に従って、「高温」とは、400℃から1500℃、好ましくは500℃から1200℃、より好ましくは600℃から1100℃、特に好ましくは700℃から1000℃の温度を意味する。
【0017】
本発明の実施形態において(
図1に示されるように)、前記第1反応流体流路と前記第2反応流体流路は共通の混合ゾーンで一緒にされ、少なくとも1つの加熱要素がこの混合ゾーンに配置される。この実施形態によれば、反応流体は、直接物理的に接触している加熱要素の周囲または前記加熱要素の内部を流れることが好ましい。
【0018】
本発明に従って、「直接物理的に接触」とは、反応流体が加熱要素の少なくとも一部と直接物理的に接触し、反応流体が加熱要素のこの部分によって偏向または方向転換され、および/またはハーゲン・ポアズイユの法則の意味における断面の変化によって流動特性に変化が生じることを意味する。
【0019】
本発明の実施形態において(
図2に示されるように)、前記第1反応流体流路および前記第2反応流体流路はそれぞれ、少なくとも1つの別個に制御可能な加熱要素を有する。また、この実施形態によれば、前記反応流体は、直接物理的に接触している前記加熱要素の周囲または前記加熱要素を通って流れることが好ましい。
【0020】
本発明の実施形態において、前記加熱要素はセラミックシースで囲まれた抵抗線を備え、好ましくは、前記線は前記セラミックシースで完全に囲まれている。
【0021】
本発明の実施形態において、前記加熱要素は、少なくとも1つの高温耐性、好ましくは可撓性の材料を介して、一の要素が他の要素と面一になるように前記プレート要素に接続される(「フォームフィット」)。
【0022】
本発明の実施形態において、前記高温耐性、好ましくは可撓性の材料は、繊維材料またはフェルト材料を含み、好ましくはアルミニウム、ジルコニウムまたはケイ素の酸化物/水酸化物、またはそれらの組み合わせから選択される。実施形態において、前記高温耐性、好ましくは可撓性の材料は、これらの材料のいずれかまたは全てを含む。
【0023】
本発明に従って、「フォームフィット」とは、好ましくは、3つの構成要素(加熱要素、高温耐性材料およびプレート要素)が、好ましくは、加えられた力がない場合または中断された場合であっても互いに対して固定されるように、加熱要素の外面が、インターロック表面構造によって高温耐性材料を介してプレート要素の表面に接続されることを意味する。
【0024】
本発明に従って、「高温耐性」とは、特に900℃まで、1100℃まで、または1500℃までの温度で、プレート要素またはリアクターモジュールの機能を損なうような材料の物理的または化学的変化が生じないことを意味する。
【0025】
本発明に従って、「可撓性」とは、材料がしなやかで弾力性があり、特に3つの空間方向の全てに弾力性があることを意味する。
【0026】
実施形態において、前記プレート要素は、加熱要素を操作するための少なくとも1つの電気接続部、好ましくは複数のそのような電気接続部を含み、前記電気接続部は、好ましくは、前記反応流体および前記生成流体の前記流れ方向に対して実質的に垂直に配置され、好ましくは、全ての電気接続部は、前記反応流体および前記生成流体の前記流れ方向に対して実質的に垂直に配置される。
【0027】
このように電気的フィードスルーを実質的に直交するように、あるいは加熱される気体の流れ方向に対してわずかに逆向きに(すなわち、垂直に「直立」配置されたプレート要素で「横方向に」突出するように)配置することは、プレートおよび特に流路が互いに対してより良好に密閉できるという利点と関連している。そこでは、流れの静圧の影響は最大になるが、フィードスルーに沿った動圧の影響はない。
【0028】
本発明の実施形態において、前記少なくとも1つの加熱要素は、前記反応ゾーンに対して実質的に平行に配置される(
図1参照)。
【0029】
本発明の実施形態において、前記少なくとも1つの加熱要素は、前記反応ゾーンに対して実質的に垂直に配置される。
【0030】
本発明において、「実質的に垂直」とは85°から95°の角度を意味し、「実質的に平行」とは175°から185°の角度を意味する。
【0031】
好ましい実施形態において、少なくとも1つの第1反応流体流路および/または少なくとも1つの第2反応流体流路と材料連通する前記少なくとも1つの加熱要素は、前記反応ゾーンに熱伝導的に接続され、この加熱要素は、この反応ゾーンから10mm以下、好ましくは5mm以下の最小共通距離だけ間隔を置かれ、および/または前記加熱要素は、前記流れ方向において前記反応ゾーンから35mm以下、好ましくは25mm以下、より好ましくは15mm以下だけ間隔を置かれる。
【0032】
実施形態において、前記流れ方向において最も下流にある前記加熱要素の端部は、前記流れ方向において前記反応ゾーンの開始点から45mm以下、好ましくは25mm以下、より好ましくは15mm以下にある。
【0033】
実施形態において、「熱的に接続する」とは、加熱要素からプレート要素を介して、もしくは加熱要素によって加熱された反応流体を介して、またはその両方を介して、熱伝導によって反応ゾーンに熱伝導することを含む。
【0034】
好ましい実施形態において、前記プレート要素の前記熱伝導率(プレート要素全体にわたる平均)は、20℃で5W/mKから20W/mK、好ましくは20℃で8W/mKから16W/mK、より好ましくは20℃で10W/mKから15W/mK、および/または800℃で10W/mKから50W/mK、好ましくは800℃で15W/mKから40W/mK、より好ましくは800℃で20W/mKから35W/mKである。特に、これらの熱伝導率は、触媒床内に配置されていない加熱要素を介した触媒の効率的な加熱を可能にする。
【0035】
本発明に従って、「最小共通距離」とは、外周部に位置する加熱要素の任意の部分から反応ゾーンの外周部の任意の部分までの、測定可能な最小の長さである。本明細書において、距離が小さいことは、「良好な熱伝導」と同義であり、これは距離が大きくなるにつれて、加熱要素から反応ゾーンへ入力される熱が著しく減少するか、または熱損失が増大するためである。
【0036】
第2の態様によれば、本発明の基礎となる問題は、高温で吸熱反応を実施するためのリアクターモジュールによって少なくとも部分的に解決され、前記リアクターモジュールは、上述したように、または本明細書全体にわたって記載されているように、互いに押し付けられ、互いに密閉された少なくとも2つのプレート要素、好ましくは少なくとも3つまたは4つのプレート要素、より好ましくは正確に3つまたは4つのプレート要素を備え、少なくとも2つのプレート要素は、特にその形状および/または構造に関して互いに異なる。
【0037】
本発明の実施形態において、互いに押し付けられ、互いに密閉された前記プレート要素のうち少なくとも2つが、前記反応流体を供給するための全てのプレート要素に共通の少なくとも2つの流路と、生成流体を排出するための全てのプレート要素に共通の少なくとも1つの流路とによって互いに材料接続されている。
【0038】
実施形態において、前記リアクターモジュールに配置された少なくとも1つの加熱要素、好ましくは前記加熱要素の大部分、より好ましくは全ての加熱要素が、それぞれ前記第1反応流体もしくは前記第2反応流体、またはその両方と直接物理的に接触している。
【0039】
本発明に従い、加熱要素の「大部分」とは、全ての加熱要素の少なくとも半分である。
【0040】
実施形態において、前記リアクターモジュールに配置された少なくとも1つの加熱要素、または好ましくは前記加熱要素の大部分は、反応流体流路もしくは混合ゾーン、またはその両方において、その周囲および/または内部を流れる反応流体を有する。
【0041】
第3の態様によれば、本発明の基礎となる問題は、上述したように、または本開示全体を通して説明したように、少なくとも3つ、好ましくは少なくとも6つ、より好ましくは少なくとも9つの実質的に同一のリアクターモジュールを備え、それらが互いに隣接して並列に接続されるリアクターシステムによって少なくとも部分的に解決される。
【0042】
本発明に従って、「実質的に同一の構造」とは、リアクターモジュールが、特に製造公差に起因するわずかな偏差を有していてもよいが、公差を除けば、機能、処理能力および他の主要なリアクター数値の点で同一であることを意味する。
【0043】
実施形態において、前記ヒーターは好ましくは回転電流(すなわち三相)で運転される。この意味では、リアクターシステム内で「3」の倍数で並列接続されたリアクターモジュールが特に効率的であり、したがって好ましい。
【0044】
本発明の実施形態において、前記リアクターシステムは、前記リアクターモジュールが環境から材料的に分離して配置される(すなわち、環境との物質移動が起こらない)耐圧容器を備える。好ましくは、前記リアクターモジュールは、ベース(すなわち、リアクターシステムが配置される床)に対して実質的に垂直に配置される。
【0045】
本発明の実施形態において、全てのリアクターモジュールは、反応流体を供給するための少なくとも2つの共通流路と、生成流体を排出するための少なくとも1つの共通流路とを備える。
【0046】
本発明の実施形態において、前記耐圧容器は、前記リアクターシステムで使用される反応ガス、特に水蒸気流もしくは水素流、または両方の混合物で充填される。
【0047】
本発明の実施形態において、前記耐圧容器は加熱システムを有する。
【0048】
第4の態様によれば、本発明の基礎となる問題は、上述したような、また本開示全体にわたって記載されているようなリアクターシステムを用いて、特に高温で吸熱反応を実施するための方法によって、少なくとも部分的に解決される。
【0049】
本発明の実施形態において、前記反応は、改質、特にメタン改質、アンモニア合成、アンモニア分解、メタノール分解または逆水ガス転化(rWGS)から選択される。
【0050】
本発明の実施形態において、前記第1および第2反応流体は、異なる別個に制御可能な加熱要素と熱的に接触しており、好ましくは材料接触しており、前記それぞれの加熱要素を介して前記反応流体の流れに入力されるエネルギーは異なる。
【0051】
本発明の実施形態において、前記第1および第2反応流体は互いに異なり、好ましくは、前記第1反応流体は実質的にCO2を含み、前記第2反応流体はH2を含む流体である。
【0052】
実施形態において、前記リアクターシステムの前記耐圧容器は、前記リアクターシステムで使用される反応ガス、特に水蒸気流もしくは水素流、または両方の混合物で充填され、ガス流は、好ましくは、1つ以上の加熱要素への1つ以上のフィードスルーにおける規定された漏出を介して、反応チャンバに配置された前記触媒に到達する。
【0053】
実施形態において、前記リアクターシステムの前記リアクターモジュールの外側および前記耐圧容器の内側の圧力は、前記リアクターモジュールの前記反応チャンバの内側よりも大きい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【発明を実施するための形態】
【0055】
本発明の意味における「プレート要素」とは、2つの対向する、好ましくは互いに間隔をあけて配置された異なる構造の直方体または正方形の表面によって画定される3次元体であり、プレート要素は最大厚さを有するが、構造によっては必ずしも一定の厚さを有する訳ではない。
【0056】
プレート要素の最大厚さは、表面の長さに対して著しく小さく、好ましくは厚さは最大長さの1/1000未満、より好ましくは1/100未満である。
【0057】
プレート要素は好ましくは長方形である、すなわち幅よりも長さ(高さ)の方が長い。
【0058】
実施形態において、プレート要素の長さは50cmから5m、好ましくは1mから3m、より好ましくは1mから2mである。
【0059】
実施形態において、プレート要素の幅は5cmから100cm、好ましくは10cmから60cm、より好ましくは20cmから50cmである。
【0060】
実施形態において、プレート要素の厚さは1mmから50mm、好ましくは2mmから30mm、より好ましくは3mmから20mmである。
【0061】
実施形態において、プレート要素は、金属または金属合金を含み、好ましくはこれらからなる。好ましくは、この合金は耐高温鋼である。この鋼は、好ましくは化学的に安定であり、特に炭素の混入(メタルダスティング)に対して耐性がある。
【0062】
適切な例示的な鋼は、Alloy 800 H/HT、Inconel CA 602、Inconel 693、またはDIN規格2.4633または1.4876、更にAlloy 601、Alloy 690、Alloy 693およびAlloy 699 XAとして知られている。鋼はまた、メタルダスティングやすすの発生に対する耐性を高めるために、少なくとも部分的にアリタイゼーション、水ガラスコーティング、または錫コーティングを施すことができる。
【0063】
本発明に係るプレート要素は、反応流体または生成流体を反応ゾーンに供給または反応ゾーンから排出する役割を果たす、少なくとも3つのマイクロまたはミリ構造の流路を有する。
【0064】
本発明の意味における「マイクロまたはミリ構造」の流路の特性上の寸法は、流路の断面を記述できる「最大の断面長さ」を意味する。このような流路は、円形の直径を持つか(この場合、最大の断面長さは直径である)、または楕円形もしくは卵形であることができ、この場合、少なくとも2つの特徴的な断面長さがあり、そのうちの大きい方が「最大の断面長さ」である。正方形のダクトや直方体の断面を持つダクトの場合、最大の断面長は対角線である。
【0065】
本発明の実施形態において、流路は、プレート要素に、例えばフライス加工で組み込むことができる。管束リアクターにおいて典型的に使用されるような管(内径および外径を有する)の意味における流路断面は、好ましくは、本発明の意味における「流路」ではない。
【0066】
従って、本発明の意味におけるプレート要素内の流路は、管束リアクターで使用されるような管ではない。
【0067】
実施形態において、この「マイクロまたはミリ構造」の流路の「最大の断面長さ」は、500μmから100mm、好ましくは800μmから50mm、特に好ましくは1mmから40mm、より好ましくは2mmから20mmの範囲である。
【0068】
実施形態において、流路は、互いに隣り合わせに、および/または、互いに重なり合って配置され、実質的に平行に走る。複数の流路が互いに隣り合って(または互いに重なって)存在することにより、プレート要素内およびプレート要素間の全体的な熱伝導が増加する。
【0069】
実施形態において、流路は、本発明に係るプレート要素内および/またはプレート要素間に配置される。実施形態において、流路は、本発明に係る2つのプレート間に配置される、すなわち、流路は、本発明に係る第1プレートを本発明に係る第2プレートと接続して一対のプレートを形成することによって形成される。
【0070】
反応流体流路と生成流体流路は、同じ形状/設計であっても、異なる形状/設計であってもよい。
【0071】
これらの反応流体および生成流体流路(好ましくは垂直に、すなわち「直立」プレート内に配置される)に加えて、プレート要素は、これらが一緒に接合されてリアクターモジュールまたはリアクターシステムを形成する場合、好ましくはそれぞれがリアクターモジュールまたはリアクターシステムに接続される少なくとも2つの反応流体供給装置、好ましくはそれぞれが反応体供給源に接続される少なくとも2つの反応流体供給装置を、生成流体を回収して更なる処理(検出、分離、後続する反応、特にフィッシャー・トロプシュ反応またはメタノール合成)に供給する少なくとも1つの生成流体排出装置と共に含む。
【0072】
反応流体供給装置および生成流体排出装置の両方は、好ましくは、マイクロおよびミリ構造の反応流体流路または生成流体流路に対して垂直に配置され、装置が構築される底部(
図1の「エンドプレート」(1.10)参照)に対して平行に、または本発明に係るプレートのスタック(リアクターモジュール、リアクターシステム)の積層方向に対して平行に延びる。
【0073】
好ましくは、反応流体供給装置と生成流体排出装置の両方が、本発明に係るプレートの第1および/または第2端部に貫通孔を介して配置される。
【0074】
反応流体供給装置と生成流体排出装置の両方を、反応流体および/または生成流体の不要または制御不能な漏れに対する密閉は、耐熱Оリング(約300℃までの温度が可能)、雲母シール、または溶接リングシールによって達成することができる。同様に、プレート同士を密閉することもできる。
【0075】
実施形態において、本発明に係るプレート要素は、1つの表面に反応流体流路と生成流体流路の両方を有する。
【0076】
実施形態において、本発明に係るプレート要素は専ら反応流体流路を有し、別のプレート要素は専ら生成流体流路を有するか、またはプレート要素は専ら反応流体流路または生成流体流路を有する。
【0077】
実施形態において、特にプレート要素で実施される反応がrWGS反応である場合、少なくとも1つの反応流体はCO2を含むか、または実質的にこれからなる流体である。少なくとも1つの更なる反応流体はH2を含むか、またはこれからなる流体である。CO2反応流体およびH2反応流体は、別個の異なる反応流体流路で反応ゾーンに供給され、運転中に触媒を含むこのゾーンに入るまで混合されない。
【0078】
実施形態において、生成流体はCOを含む。更に、生成流体は、CO2、H2、CH4、またはそれらの混合物から選択される1つ以上の流体を含んでもよい。
【0079】
本発明に係るプレート要素は、触媒、特に固定触媒床充填を運転中に充填可能、または触媒が充填された少なくとも1つの反応ゾーンを有する。実施形態において、触媒は、二酸化炭素(CO2)および水素(H2)から一酸化炭素(CO)および水(H2О)への転化を促進するのに適している。この変換は、逆水ガスシフト(rWGS)と呼ばれる。
【0080】
実施形態において、固定床触媒は実質的に、500μmから5mm、好ましくは1mmから3mmの平均直径を有する粒子からなる。
【0081】
実施形態において、反応ゾーンは基本的に、反応流体流路および生成流体流路を形成するプレート要素の側とは反対側に、任意にリアクターモジュールの更なるプレートと相互作用しながら配置される。
【0082】
実施形態において、この反応ゾーンは、プレート要素のこの側の幅の少なくとも50%、好ましくは少なくとも80%にわたって延びるとともに、プレート要素の全長の最大30%、好ましくは最大20%にわたって延びる。
【0083】
実施形態において、反応ゾーンは、反応物流体および生成物流体の流れ方向に対して実質的に平行に配置される。
【0084】
好ましくは、反応ゾーンは5cmから50cm、好ましくは10cmから30cm、より好ましくは12cmから25cmの長さ(プレート要素が好ましくは「直立」または垂直に配置されている場合は「高さ」)を有する。
【0085】
反応、特に吸熱反応、特にrWGS反応は反応ゾーンで行われる。従って、反応ゾーンは、本発明に係る加熱要素と予熱された反応流体との熱的接続によって、少なくとも650℃、好ましくは少なくとも700℃、好ましくは600℃から1500℃または1100℃、より好ましくは700℃から1000℃、特に好ましくは700℃から900℃、より好ましくは720℃から780℃の温度に加熱される。
【0086】
実施形態において、反応ゾーン自体には加熱要素はない。
【0087】
実施形態において、反応ゾーンは、もっぱら予熱された反応流体を介して、および反応ガスを加熱するために設けられた加熱要素との熱的な接触によって、吸熱反応を行うために必要な温度まで加熱される。
【0088】
本発明に係るプレート要素、特にリアクターモジュールにおける本発明に係るプレート要素は、少なくとも1つの第1反応流体流路または少なくとも1つの第2反応流体流路、ならびに反応ゾーンと熱的に接触する少なくとも1つの加熱要素を有する。
【0089】
本発明の意味における「加熱要素」とは、加熱要素から反応流体流路を流れ反応ゾーン内に流入する流体に熱エネルギーを伝達するのに適した装置を意味する。この目的のために、加熱要素は、反応流体流路および反応ゾーンを流れる流体と熱的に接触していなければならない。熱エネルギーは伝導、放射、対流によって伝達される。好ましくは、反応流体は400℃から1500℃、または720℃から1100℃、好ましくは750℃から900℃の温度に加熱される。
【0090】
好ましくは、加熱要素は、電流が流れるとオームの法則に従って発熱する抵抗線を備える。
【0091】
更に好ましくは、抵抗線は、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、セラミックシースに包まれており、その断面(直径または断面における最大の長さ)は2mmから8mm、好ましくは3mmから6mmである。
【0092】
実施形態において、加熱要素の長さは5cmから40cm、好ましくは10cmから20cmである。このような加熱要素の構造は、米国特許第9,867,232号明細書に例として記載されている。このタイプの好ましい加熱要素は、いわゆる「フローヒーター」である。
【0093】
好ましくは、少なくとも1つの加熱要素は、「フォームフィット」方式で、少なくとも1つの高温耐性、好ましくは可撓性材料を介して、本発明に係るプレート要素に接続される。
【0094】
実施形態において、可撓性材料は繊維マットであり、外部からの力が加熱要素のセラミックに顕著に伝達されることなく、2倍から5倍に圧縮することができる。
【0095】
高温耐性、好ましくは可撓性材料は、好ましくはAl2O3および/または雲母から選択される。好ましくは、高温耐性で可撓性の材料は、繊維マットまたはフリースとして実現される。繊維マットまたはフリースの厚さは、好ましくは1mm未満である。
【0096】
少なくとも1つの加熱要素は、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、高温耐性の、好ましくは可撓性の材料によって囲まれている。これは、加熱要素の抵抗線のセラミックシースが破損した場合に、この材料が電圧フラッシュオーバーに対する破壊保護としても機能するという利点と関連している。
【0097】
好ましくは、高温耐性、好ましくは可撓性材料は、1つ以上の加熱要素(
図4および
図5参照)の周囲の両側に、平行に配置される。本発明に係るプレート要素への接続は、好ましくはプレスによって達成される。
【0098】
少なくとも1つの加熱要素は更に、少なくとも1つの支持装置を備えることができる。支持装置は、実質的に加熱要素と平行に延び、加熱要素のセラミックと直接材料接触するか、または同じ材料で構成される(
図6参照)。
【0099】
本発明に係るプレート要素は、少なくとも1つの加熱要素を作動させるための電気接続部も有する。
【0100】
電気接続部は、好ましくは、本発明に係るプレート要素から横方向、垂直方向(すなわち、反応流体および生成流体の流れ方向ではない)に、好ましくは、加熱要素の出口側に発せられる(
図4および
図5参照)。
【0101】
実施形態において、抵抗線の熱による断線を避けるために、抵抗線の断面は、周囲に接続部に向けて反応流体が流れる領域、すなわち周囲に反応流体が流れない領域に向かって拡大されている。
【0102】
断面積の増大は、好ましくは、太くなったワイヤまたは2本の撚りワイヤによって達成される。
【0103】
抵抗線の断面が大きくなると、周囲のセラミックを含む加熱要素全体の直径が大きくなる。従って、プレート要素からのリードスルーも、この直径の増大に適合させることができる。
【0104】
実施形態において、フィードスルーは、好ましくは、周囲に反応流体が流れる加熱要素と同一平面上にプレート要素から出るように配置される。これは、通電/加熱中の抵抗線の長さの変化を補償し、電圧フラッシュオーバーを回避するという利点がある。
【0105】
好ましくは、プレート要素は、電気接続部を作成可能なスロットを側面に備えている。
【0106】
好ましくは、少なくとも1つの加熱要素(または加熱要素の大部分)は、反応ゾーンに対して実質的に平行に配置される(
図1参照)。この配置は、加熱要素と反応ゾーンとの間の熱的な接触を最大化することができるという利点を有する。特に、熱エネルギーは、比較的薄くて堅固な壁(すなわち、不要なまたは重要なヒートシンクが無い)を通る熱伝導によって、本発明に係るプレート要素を経由して直接反応ゾーンに「直接」伝導される。更に、熱は加熱された反応流体を介して触媒床にも導入される。従って、触媒床内の温度を最大にすることができ、これは触媒床内における吸熱反応に特に有利である。
【0107】
この実施形態については、
図1で以下に詳しく説明する。
【0108】
一組のプレート(1.0)。
【0109】
第1プレート要素(1.1)。
【0110】
第2プレート要素(1.2)。
【0111】
触媒(1.3)[プレート1またはプレート4に挿入]を充填できる反応ゾーン。
【0112】
生成流体を1.3から排出する生成流体流路(1.4)。
【0113】
ゾーン(1.3)に第1反応流体を供給する第1反応流体流路(1.5)。
【0114】
ゾーン(1.3)に第2反応流体を供給する第2反応流体流路(1.6)。
【0115】
反応流体流路(1.5)と(1.6)の両方からの反応流体流が組み合わされる混合ゾーン(1.7)。
【0116】
加熱要素(1.8)。
【0117】
混合ゾーン(1.7)内で加熱要素(1.8)から離れた位置に配置された支持装置(1.9)。
【0118】
一対のプレートの一端を閉鎖し、組み合わされた反応流体の流れが反応ゾーン(1.3)に分流されるようにするエンドプレート(1.10)。
【0119】
図1に示すように、少なくとも1つの加熱要素は、基本的に反応ゾーンのレベルに配置され、好ましくは反応ゾーンの上方から、または反応ゾーンの出口から開始される。これには、加熱要素から反応ゾーンへの熱伝導が反応ゾーンの長さにわたって均一であり、触媒が妨げられることなく冷却されて、例えばメタンの生成等の副反応を引き起こしてしまうことがないという利点がある。
【0120】
図2は、基本的に
図1の実施形態に対応する代替的な実施形態を示しているが、2つの異なる反応流体(例えば、混合物中のCO
2およびH
2)も、それぞれの場合において反応に必要な温度まで、別々の流路で加熱される点、すなわち、加熱要素の周囲/加熱要素の内部を流れることによって加熱される点が異なっている。これには少なくとも2つの利点がある。一方では、この実施形態において、異なる反応流体も別々に、かつ的を絞った方法で加熱することができる(異なる流体は、反応に必要な温度まで「持ってくる」ために異なる熱入力を必要とする)。一方、反応流体は、反応ゾーンに到達するまで別々に供給され、反応ゾーンでのみ混合される。これは、加熱された反応流体はすでに互いに反応する可能性があり、特に反応流体流路の内壁にすすが形成される可能性があるため、rWGSのような反応に有利である。
【0121】
図2の参照符号は、
図1の参照符号に対応し、運転中の熱膨張によるセラミックの破損から加熱要素を「弾性的に」保護する繊維マットを示す(2.1)が追加されている。
【0122】
図3から
図5は、混合ゾーンにおいて反応流体が内部および周囲を流れる加熱要素の配置に焦点を当てた実施形態を示しており、この場合、加熱要素は直線状配列で配置されている。
【0123】
図3は、加熱要素用の凹部(3.5)を有する、
図2に断面で示されるような4枚のプレート(3.1)から(3.4)(第1、第2、第3および第4プレート要素)の分解図である。使用される加熱要素の対応する配列は(3.6)であり、それによって加熱要素(詳細D参照)は、両側に配置された繊維マット(3.7)によって、プレート要素の熱膨張によるセラミックの破損から保護されている。プレート(3.4)において、(3.8)は生成流体流路を示す。(3.9)は反応ゾーンを示し、この場合は固定床触媒で満たされた凹部である。反応流体流路はプレート要素3.3と3.2にある(プレート要素の反対側にあるため、図では見えない)。反応流体は偏向スロット3.12から反応ゾーン(3.9)に入る(
図2参照)。ここで(3.11)は反応流体供給装置、(3.10)は生成流体排出装置である。
【0124】
図3の断面(A)を
図4と
図5に示す。そこでは、(4.1)は雲母の層であり、セラミック(4.4)が破損した場合の破壊保護として機能する。すでに上述したように、繊維マット(4.2)はセラミックを破損から保護する役割を果たす。(4.3)は加熱ワイヤを示す。最後に、(4.5)は2枚のプレート間の溝にある雲母シールを示す。対応する参照符号は
図5にも適用されるが、ここでは電気的接続、特にボルト(5.1)と、発熱線とボルトの間の溶接(5.2)が追加されて示されている。
【0125】
最後に、
図6は、90°回転させた2つの異なる断面図で支持要素(6.4)を示し、その各々が、対になった2つのセラミック(6.3)と、その中に配置されたワイヤ湾曲部(6.1)を有する加熱ワイヤとを保護している。ここで、(6.2)は2つのプレート要素を通る境界壁を示す。(6.5)は、ガスを偏向させ、支持要素(6.4)と触媒床を支持するための溝を積層方向に持つベースプレートを示す。
【0126】
本発明に係るプレート要素は更に、少なくとも1つの熱回復ゾーンを含んでもよい。このゾーンでは、好ましくは、熱伝導が、高温の生成流体から向流で案内される反応流体へと行われる。
【0127】
この熱回収ゾーンは、特に「直立プレート」の場合、好ましくは反応ゾーンの上方に位置する。この生成流体と反応流体との間の熱回収は、特に良好な熱交換がプレート要素の流路で行われるという事実によって、先行技術の例と比較して(例えば、管状リアクターと比較して)有利に増大されるが、これは、例えば壁における熱伝導係数を最大にするために管の直径と間隔が乱流を必要とするか、または管の壁厚が流路を分離するプレートの厚さよりも大きくなければならない管状バンドルリアクターにおける場合よりも少ない熱抵抗を克服すればよいからである。流路においては、流路の高さが低くなるにつれて、層流により熱伝導率は相反的に増加する。
【0128】
実施形態において、これらの熱回収ゾーンにおいて、反応ガスが本発明に係る加熱要素の助けを借りて反応ゾーンに入る前の最終温度にされる前に、400℃以上、好ましくは600℃以上、より好ましくは700℃以上への反応流体の予熱または加熱が達成される。
【0129】
実施形態において、この(生成流体と反応流体との間の熱交換のための)熱回収ゾーンは、加熱要素の上流(反応流体の流れ方向)に、好ましくは加熱要素の最も遠い上流端から少なくとも10cm上流に、より好ましくは少なくとも20cmまたは50cm上流に配置される。
【0130】
更なる態様において、本発明は、吸熱高温プロセスを実施するためのリアクターモジュールに関し、リアクターモジュールは、上述し本開示全体にわたって記載された本発明に係る少なくとも2つのプレート要素、好ましくは少なくとも3つまたは4つのプレート要素、より好ましくは正確に4つのプレート要素を備える。
【0131】
好ましくは、リアクターは、少なくとも一対のプレート要素、またはプレート要素のスタック、またはプレート要素の対のスタックを備える。このようなスタックを構築するために、第1プレート要素を、例えば雲母を含む円周シールによって第2プレート要素に押圧する。このプロセスは、所望のスタックサイズに達するまで繰り返され、リアクターモジュールが構築される。
【0132】
好ましくは、第1プレート要素は反応流体流路を備え、第2プレート要素は生成流体流路を備える。これにより、加熱要素を通る反応流体の流れが確保されるという利点がある。更に、プレートスタックからの反応流体の不要な排出が防止される。
【0133】
また、(例えば雲母を介した)プレートの密閉は、スタック内または一対のプレート内で発生する温度勾配に起因する材料の膨張の任意の様々な度合いを補正する要素としても機能する。
【0134】
実施形態において、シールは「可逆的」、すなわちプレート要素を破壊することなく破壊することができる。これにより、メンテナンスや修理のためにスタックや一対のプレートを解体することが容易になる。
【0135】
更なる実施形態において、上述し本開示全体にわたって記載されたリアクターシステムを形成するために本発明に係る少なくとも2つのリアクターモジュールが並列に接続され、これにより処理能力は、技術的に合理的な範囲内で、所望に応じてスケールアップおよびスケールダウンすることができる。
【0136】
好ましくは、少なくとも3つ、少なくとも6つまたは9つのリアクターモジュールが並列に接続される。
【0137】
リアクターシステムは、好ましくは、リアクターモジュールまたはプレート要素のスタックまたはプレート要素の対が環境と物質移動することなく操作され得る耐圧容器も備える。これは、プレート要素から導出される少なくとも1つの加熱要素用の電気接続部が完全に密閉される必要がなく、1種類以上の漏出した反応流体を回収できるという利点と関連する。
【0138】
リアクターモジュールは、好ましくはサスペンションを介して取り付けられる。このように、プレート要素の高温領域が外側ハウジングに熱伝導的に接続されないため、(比較的低温の上端部にある)サスペンションは有利である。
【0139】
実施形態において、耐圧容器はパージガスで加圧され、rWGSの場合は水素で加圧される。これには、リアクターモジュールから漏出することがある反応流体をスタックに「流し」戻すことができるという利点がある。パージガスが吸熱高温プロセスに関与する場合、パージガスの割合を反応流体の組成に含めることができる。
【0140】
容器はステンレス鋼製でもよい。
【0141】
容器は内部加熱を備えていてもよい。これには、例えば、反応流体中に存在するか、反応流体に添加される可能性のある水蒸気が容器の壁に凝縮しないという利点がある。
【0142】
容器は、電気接続用のフィードスルーも備えてもよい。これらのフィードスルーには、不活性ガス、好ましくは窒素が充填される。これには、例えば適切なセンサによって漏れを検出でき、電気接続部における発火を回避できるという利点がある。
【0143】
プレート要素を有する本発明に係るリアクターモジュールおよびシステムの可変(スケーラブル)構造、ならびに本発明に係るプレート要素の数によって規定される可変スタック高さは、本発明に係るリアクターシステムの異なるモジュールサイズを迅速かつ予測可能に(処理能力に関して)設定できるという利点を有する。
【0144】
実施形態において、本発明に係る各プレート要素は、本発明に係るリアクターにおいて、同じ数の反応流体流路および生成流体流路を有する。従って、処理能力とスタック高さの直接的な相関を得ることが可能である。
【0145】
更に本発明によれば、上述の本発明に係るリアクターモジュールまたはリアクターシステムを用いて吸熱高温プロセスを実施する方法がある。
【0146】
更に本発明によれば、吸熱高温プロセス、好ましくは改質反応、特にメタン改質、アンモニア合成、アンモニア分解、メタノール分解または逆水ガス転化(rWGS)から選択されるプロセスを実施するための本発明に係るリアクターの使用があり、rWGSを実施することが特に好ましい。
【実施例】
【0147】
本発明に係るリアクターシステムは、
図2に示すように、6個の同一のリアクターモジュールから構成された。プレート要素は基本的にAlloy2.4633(耐高温耐薬品ニッケル-クロム-鉄合金)から成る。リアクターシステムは、以下の表に従った運転パラメータで運転された。リアクターには合計1kgのニッケル系触媒を充填した。
【0148】
【0149】
図7は、触媒床内の平均反応温度(x軸)に対するガスの体積分率(y軸)について、このリアクターシステムで測定された値を示している。×印は、熱力学的に予想される体積分率(線で示す)に対する、成分CO
2、H
2、CO、およびCH
4(上から下へ)の測定値を示す。以下の表からもわかるように、本発明に係るリアクターシステムにおける不要なメタン(副反応)の割合は、改善された熱収支により、熱力学的計算に基づいて予想されるよりも著しく低い。同時に、所望のCOの割合は計算値よりも高い。
【0150】
【0151】
図8は、CO
2、H
2、CO、CH
4、およびH
2/CO比の体積割合の測定値(%)(左y軸)を、運転時間(x軸)の関数として示している。最初の2時間は加熱段階を示し、その間に濃度比が初めて変化する。特定の時間範囲においてデータが欠落しているように見えるのは、検出器ユニットがこれらの時間範囲において下流のフィッシャー・トロプシュ合成の生成物濃度を測定したためである。
【国際調査報告】