(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-27
(54)【発明の名称】植物調節エレメント及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/82 20060101AFI20240820BHJP
A01H 5/00 20180101ALI20240820BHJP
A01H 6/20 20180101ALI20240820BHJP
A01H 6/46 20180101ALI20240820BHJP
A01H 6/54 20180101ALI20240820BHJP
A01H 6/82 20180101ALI20240820BHJP
A01H 6/60 20180101ALI20240820BHJP
C12N 15/113 20100101ALN20240820BHJP
【FI】
C12N15/82 150Z
A01H5/00 A
A01H6/20
A01H6/46
A01H6/54
A01H6/82
A01H6/60
C12N15/113 Z ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508946
(86)(22)【出願日】2022-08-15
(85)【翻訳文提出日】2024-04-12
(86)【国際出願番号】 US2022074972
(87)【国際公開番号】W WO2023023485
(87)【国際公開日】2023-02-23
(32)【優先日】2021-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501231613
【氏名又は名称】モンサント テクノロジー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100216839
【氏名又は名称】大石 敏幸
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】チトゥール,ジャイシュリー・エム
(72)【発明者】
【氏名】フラシンスキー,スタニスラフ
(57)【要約】
本発明は、植物における遺伝子発現を調節するのに有用な組換えDNA分子及び構築物、ならびにそれらのヌクレオチド配列を提供する。本発明はまた、異種の転写可能なDNA分子に作動可能に連結された組換えDNA分子を含むトランスジェニック植物、植物細胞、植物部分、及び種子を提供する。また、組換えDNA分子及び構築物、ならびに組換えDNA分子及び構築物を含むトランスジェニック植物、植物細胞、植物部分、及び種子の使用方法も提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換えDNA分子であって、
a)配列番号1~3のうちのいずれかと少なくとも85パーセントの配列同一性を有する配列、
b)配列番号1~3のうちのいずれかを含む配列、及び
c)配列番号1~3のうちのいずれかのフラグメントであって、遺伝子調節活性を有する前記フラグメントからなる群から選択されるDNA配列を含み、
前記配列が、異種の転写可能なDNA分子に作動可能に連結されている、前記組換えDNA分子。
【請求項2】
前記配列が、配列番号1~3のうちのいずれかのDNA配列と少なくとも90パーセントの配列同一性を有する、請求項1に記載の組換えDNA分子。
【請求項3】
前記配列が、配列番号1~3のうちのいずれかのDNA配列と少なくとも95パーセントの配列同一性を有する、請求項1に記載の組換えDNA分子。
【請求項4】
前記DNA配列が、遺伝子調節活性を含む、請求項1に記載の組換えDNA分子。
【請求項5】
前記異種の転写可能なDNA分子が、農学的目的の遺伝子を含む、請求項1に記載の組換えDNA分子。
【請求項6】
前記農学的目的の遺伝子が、植物における除草剤耐性を付与する、請求項5に記載の組換えDNA分子。
【請求項7】
前記農学的目的の遺伝子が、植物における害虫抵抗性を付与する、請求項5に記載の組換えDNA分子。
【請求項8】
前記異種の転写可能なDNA分子が、dsRNA、miRNA、またはsiRNAをコードする、請求項1に記載の組換えDNA分子。
【請求項9】
トランスジェニック植物細胞であって、
a)配列番号1~3のうちのいずれかと少なくとも85パーセントの配列同一性を有する配列、
b)配列番号1~3のうちのいずれかを含む配列、及び
c)配列番号1~3のうちのいずれかのフラグメントであって、遺伝子調節活性を有する前記フラグメントからなる群から選択される配列を含む組換えDNA分子を含み、
前記配列が、異種の転写可能なDNA分子に作動可能に連結されている、前記トランスジェニック植物細胞。
【請求項10】
前記トランスジェニック植物細胞が、単子葉植物細胞である、請求項9に記載のトランスジェニック植物細胞。
【請求項11】
前記トランスジェニック植物細胞が、双子葉植物細胞である、請求項9に記載のトランスジェニック植物細胞。
【請求項12】
請求項1に記載の組換えDNA分子を含む、トランスジェニック植物またはその部分。
【請求項13】
請求項12に記載のトランスジェニック植物の後代植物またはその部分であって、前記組換えDNA分子を含む、前記後代植物またはその部分。
【請求項14】
トランスジェニック種子であって、前記種子が、請求項1に記載の組換えDNA分子を含む、前記トランスジェニック種子。
【請求項15】
商品生産物を生産する方法であって、請求項12に記載のトランスジェニック植物またはその部分を得ることと、それから前記商品生産物を生産することとを含む、前記方法。
【請求項16】
前記商品生産物が、種子、加工種子、タンパク質濃縮物、タンパク質単離物、デンプン、穀物、植物部分、種子油、バイオマス、細粉及び粗粉である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
転写可能なDNA分子を発現させる方法であって、請求項12に記載のトランスジェニック植物を得ることと、前記植物を栽培することとを含み、前記転写可能なDNAが発現する、前記方法。
【請求項18】
根組織において転写可能なDNA分子を優先的に発現させる方法であって、
a)異種の転写可能なDNA分子に作動可能に連結された配列番号2と少なくとも85パーセントの配列同一性を有するプロモーターまたはその活性フラグメントを含むベクターで植物細胞を形質転換することと、
b)前記細胞を誘導して植物を形成することとを含む、前記方法。
【請求項19】
前記ベクターが、前記プロモーターに作動可能に連結された配列番号3を含む配列をさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ベクターが、前記プロモーターに作動可能に連結された配列番号4を含む配列をさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記ベクターが、前記プロモーターに作動可能に連結された配列番号6を含む配列をさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記異種の転写可能なDNA分子が、農学的目的の遺伝子を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記農学的目的の遺伝子が、植物における除草剤耐性を付与する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記農学的目的の遺伝子が、植物における害虫抵抗性を付与する、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記異種の転写可能なDNA分子が、dsRNA、miRNA、またはsiRNAをコードする、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記植物細胞が、トウモロコシ細胞、ダイズ細胞、ワタ細胞、コムギ細胞、キャノーラ細胞、イネ細胞、及びトマト細胞からなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、2021年8月17日に出願された米国仮特許出願第63/234,175号の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表の組み込み
「BCS216120_01_SEQLIST_ST26.XML」という名前のファイルに含まれる配列表は、27,581バイト(Microsoft Windows(登録商標)で測定)であり、2022年8月11日に作成され、電子提出により本明細書とともに提出され、参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本発明は、植物分子生物学及び植物遺伝子工学の分野に関する。より具体的には、本発明は、植物における遺伝子発現を調節するのに有用なDNA分子に関する。
【背景技術】
【0004】
調節エレメントは、作動可能に連結された転写可能なDNA分子の転写を調節することによって遺伝子活性を調節する遺伝子エレメントである。このようなエレメントとしては、プロモーター、リーダー、イントロン、及び3’非翻訳領域を挙げることができ、これらは、植物分子生物学及び植物遺伝子工学の分野で有用である。
【発明の概要】
【0005】
このセクションは、本開示の一般的な要約を提供するものであり、その全範囲またはその全ての機能の包括的な開示ではない。
【0006】
本明細書では、植物において使用するための遺伝子調節エレメントが提供される。いくつかの実施形態は、調節エレメントを含む組換えDNA分子に関する。また、調節エレメントを含むトランスジェニック植物細胞、植物、及び種子も提供される。一実施形態では、調節エレメントは、転写可能なDNA分子に作動可能に連結されている。ある特定の実施形態では、転写可能なDNA分子は、調節配列に対し異種であってもよい。したがって、本明細書で提供される調節エレメント配列は、特定の実施形態では、異種の転写可能なDNA分子に作動可能に連結されたものとして定義され得る。いくつかの実施形態は、調節エレメントを使用する方法、ならびに調節エレメントを含む組換えDNA分子を作製及び使用する方法、ならびに転写可能なDNA分子に作動可能に連結された調節エレメントを含むトランスジェニック植物細胞、植物、及び種子に関する。
【0007】
いくつかの実施形態では、組換えDNA分子であって、(a)配列番号1~3のうちのいずれかと少なくとも約85パーセントの配列同一性を有する配列、(b)配列番号1~3のうちのいずれかを含む配列、及び(c)配列番号1~3のうちのいずれかのフラグメントであって、遺伝子調節活性を有するフラグメントからなる群から選択されるDNA配列を含み、配列が、異種の転写可能なDNA分子に作動可能に連結されている、組換えDNA分子が提供される。特定の実施形態では、組換えDNA分子は、配列番号1~3のうちのいずれかのDNA配列と、少なくとも約85パーセント、少なくとも約86パーセント、少なくとも約87パーセント、少なくとも約88パーセント、少なくとも約89パーセント、少なくとも約90パーセント、少なくとも91パーセント、少なくとも92パーセント、少なくとも93パーセント、少なくとも94パーセント、少なくとも95パーセント、少なくとも96パーセント、少なくとも97パーセント、少なくとも98パーセント、または少なくとも99パーセントの配列同一性を有するDNA配列を含む。
【0008】
別の態様では、トランスジェニック植物細胞であって、(a)配列番号1~3のうちのいずれかと少なくとも約85パーセントの配列同一性を有する配列、(b)配列番号1~3のうちのいずれかを含む配列、及び(c)配列番号1~3のうちのいずれかのフラグメントであって、遺伝子調節活性を有するフラグメントからなる群から選択されるDNA配列を含む組換えDNA分子を含み、DNA配列が、異種の転写可能なDNA分子に作動可能に連結されている、トランスジェニック植物細胞が本明細書で提供される。ある特定の実施形態では、トランスジェニック植物細胞は、単子葉植物細胞である。他の実施形態では、トランスジェニック植物細胞は、双子葉植物細胞である。
【0009】
さらに別の態様では、トランスジェニック植物またはその部分であって、a)配列番号1~3のうちのいずれかと少なくとも85パーセントの配列同一性を有する配列、b)配列番号1~3のうちのいずれかを含む配列、及びc)配列番号1~3のうちのいずれかのフラグメントであって、遺伝子調節活性を有するフラグメントからなる群から選択されるDNA配列を含む組換えDNA分子を含み、配列が、異種の転写可能なDNA分子に作動可能に連結されている、トランスジェニック植物またはその部分が本明細書でさらに提供される。特定の実施形態では、トランスジェニック植物は、組換えDNA分子を含む任意の世代の後代植物である。また、成長した際にかかるトランスジェニック植物を生産する組換えDNA分子を含むトランスジェニック種子も提供される。
【0010】
いくつかの実施形態は、例えば、配列番号1~3から選択される配列を含むものなどの、本明細書に記載の組換えDNA分子を含有するトランスジェニック植物またはその部分を得ることと、それから商品生産物を生産することとを含む、商品生産物を生産する方法に関する。一実施形態では、商品生産物は、種子、加工種子、タンパク質濃縮物、タンパク質単離物、デンプン、穀物、植物部分、種子油、バイオマス、細粉及び粗粉である。
【0011】
いくつかの実施形態は、a)配列番号1~3のうちのいずれかと少なくとも85パーセントの配列同一性を有する配列、b)配列番号1~3のうちのいずれかを含む配列、及びc)配列番号1~3のうちのいずれかのフラグメントであって、遺伝子調節活性を有するフラグメントからなる群から選択されるDNA配列を含む組換えDNA分子を含むトランスジェニック植物を生産する方法であって、組換えDNA分子で植物細胞を形質転換して、形質転換された植物細胞を生産することと、形質転換された植物細胞からトランスジェニック植物を再生することとを含む、方法に関する。
【0012】
配列の簡単な説明
配列番号1は、Setaria italicaに由来するイントロン(I-SETit.eIF5A3-2-1:1:3)に対して5´側に作動可能に連結された、Andropogon gerardiiに由来するリーダー(L-ANDge.LTP:1)に対して5´側に作動可能に連結された、プロモーター(P-ANDge.LTP:1)から構成される調節発現エレメント群またはEXP、EXP-ANDge.LTP+ANDge.LTP+SETit.eIF5A3-2:2のDNA配列である。
【0013】
配列番号2は、Andropogon gerardiiに由来するプロモーターP-ANDge.LTP:1のDNA配列である。
【0014】
配列番号3は、Andropogon gerardiiに由来するリーダーまたは5´UTR、L-ANDge.LTP:1のDNA配列である。
【0015】
配列番号4は、Setaria italicaに由来するイントロン、I-SETit.eIF5A3-2-1:1:3のDNA配列である。
【0016】
配列番号5は、ジャガイモ光誘導性組織特異的St-LS1遺伝子(Genbankアクセッション:X04753)に由来するプロセス可能なイントロンを有するβ-グルクロニダーゼ(GUS、GOI-Ec.uidA+St.LS1.nno:1)の植物発現のために最適化された合成コード配列である。
【0017】
配列番号6は、Saccharum ravennaeに由来する3´UTR、T-SACra.Hsp16.9:2のDNA配列である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ここで、例示的な実施形態をより詳細に説明する。本明細書に含まれる説明及び特定の例は、説明のみを目的としており、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。別途注記のない限り、用語は、関連技術分野の当業者により、従来の用法に従って理解されるものとする。
【0019】
本明細書で提供されるのは、植物において遺伝子調節活性を有する調節エレメントである。これらの調節エレメントのヌクレオチド配列は、配列番号1~3として提供される。これらの調節エレメントは、植物組織内で、作動可能に連結された転写可能なDNA分子の発現に影響を及ぼし得、そのため、トランスジェニック植物内で、作動可能に連結された導入遺伝子の遺伝子発現を調節し得る。また、提供される調節エレメントを含有する組換えDNA分子を修飾、生産、及び使用する方法も提供される。また、本明細書に記載の1つ以上の調節エレメントを含む組換えDNA分子を含有するトランスジェニック植物細胞、植物、植物部分、及び種子を含む組成物、ならびにそれらを調製及び使用するための方法も提供される。
【0020】
DNA分子
本明細書で使用する場合、「DNA」または「DNA分子」という用語は、5’(上流)末端から3’(下流)末端へと読み取られる、ゲノム起源または合成起源の2本鎖DNA分子(すなわち、デオキシリボヌクレオチド塩基またはDNA分子のポリマー)を指す。本明細書で使用する場合、「DNA配列」という用語は、DNA分子のヌクレオチド配列を指す。本明細書で使用される命名法は、米国連邦規則集37編1.822条の命名法に対応し、WIPO標準ST.25(1998)附属書2、表1及び3の表に定められる。
【0021】
本明細書で使用する場合、「組換えDNA分子」とは、人間の介入なしには天然に一緒に生じないであろうDNA分子の組み合わせを含むDNA分子である。例えば、組換えDNA分子とは、互いに対して異種である少なくとも2つのDNA分子から構成されているDNA分子、自然界に存在するDNA配列から逸脱するDNA配列を含むDNA分子、合成DNA配列を含むDNA分子、または遺伝子形質転換もしくは遺伝子編集によって宿主細胞のDNAに組み込まれたDNA分子であってもよい。
【0022】
本出願における「単離されたDNA分子」、または等価の用語もしくは表現への言及は、DNA分子が、単独で、または他の組成物と組み合わせて存在するが、その自然環境内には存在しないものであることを意味するように意図されている。例えば、コード配列、イントロン配列、非翻訳リーダー配列、プロモーター配列、転写終結配列などのような、生物のゲノムのDNA内で天然に見出される核酸エレメントは、当該エレメントが生物のゲノム内にあり、当該エレメントが天然に見出されるゲノム内の位置にある限りは、「単離された」とは見なされない。ただし、これらのエレメントの各々、及びこれらのエレメントの下位部分は、当該エレメントが生物のゲノム内になく、当該エレメントが天然に見出されるゲノム内の位置にない限り、本開示の範囲内で「単離されている」ものである。同様に、殺虫性タンパク質またはそのタンパク質の天然に生じる任意の殺虫性バリアントをコードするヌクレオチド配列は、当該ヌクレオチド配列が、当該タンパク質をコードする配列が天然に見出される細菌のDNA内にない限り、単離されたヌクレオチド配列と考えられる。天然に存在する殺虫性タンパク質のアミノ酸配列をコードする合成ヌクレオチド配列は、本開示の目的において単離されていると見なされると考えられる。本開示の目的のために、任意のトランスジェニックヌクレオチド配列、例えば、植物もしくは細菌の細胞のゲノムに挿入された、または染色体外ベクターに存在するDNAのヌクレオチド配列は、細胞を形質転換するのに使用されるプラスミドもしくは同様の構造内に存在するか、植物もしくは細菌のゲノム内に存在するか、または植物もしくは細菌に由来する組織、後代、生体試料もしくは商品生産物において検出可能な量で存在するかに関わらず、単離されたヌクレオチド配列であると見なされると考えられる。
【0023】
本明細書で使用する場合、「配列同一性」という用語は、2つの最適にアラインメントしたポリヌクレオチド配列または2つの最適にアラインメントしたポリペプチド配列が同一である程度を指す。最適な配列アラインメントは、2つの配列、例えば、参照配列及び別の配列をアラインメントして、適切な内部ヌクレオチド挿入、欠失、またはギャップとの配列アラインメントにおけるヌクレオチドマッチ数を最大化することによって作製される。いくつかの実施形態では、配列番号1~4として提供されるDNA配列が、参照配列として使用される。
【0024】
本明細書で使用する場合、「配列同一性パーセント」または「同一性パーセント」または「同一性%」という用語は、同一性の割合に100を掛けたものである。参照配列に対して最適にアラインメントした配列についての「同一性の割合」は、最適アラインメント内のヌクレオチドマッチ数を、参照配列内のヌクレオチド総数、例えば、全長の参照配列全体のヌクレオチド総数で割ったものである。したがって、いくつかの実施形態は、本明細書で配列番号1~4として提供される、参照配列に対して最適にアラインメントされた場合、参照配列と少なくとも約85パーセントの同一性、少なくとも約86パーセントの同一性、少なくとも約87パーセントの同一性、少なくとも約88パーセントの同一性、少なくとも約89パーセントの同一性、少なくとも約90パーセントの同一性、少なくとも約91パーセントの同一性、少なくとも約92パーセントの同一性、少なくとも約93パーセントの同一性、少なくとも約94パーセントの同一性、少なくとも約95パーセントの同一性、少なくとも約96パーセントの同一性、少なくとも約97パーセントの同一性、少なくとも約98パーセントの同一性、少なくとも約99パーセントの同一性、または少なくとも約100パーセントの同一性を有する配列を含むDNA分子に関する。
【0025】
調節エレメント
プロモーター、リーダー(5’UTRとしても既知)、エンハンサー、イントロン、及び転写終結領域(または3´UTR)などの調節エレメントは、生細胞における遺伝子の全体的な発現に不可欠な役割を果たす。本明細書で使用する場合、「調節エレメント」という用語は、遺伝子調節活性を有するDNA分子を指す。本明細書で使用する場合、「遺伝子調節活性」という用語は、例えば、作動可能に連結された転写可能なDNA分子の転写及び/または翻訳に影響を及ぼすことにより、作動可能に連結された転写可能なDNA分子の発現に影響を及ぼす能力を指す。植物において機能するプロモーター、リーダー、エンハンサー、イントロン、及び3´UTRなどの調節エレメントは、遺伝子工学による植物表現型の修飾に有用である。
【0026】
本明細書で使用する場合、「調節発現エレメント群」または「EXP」配列とは、作動可能に連結された調節エレメント群、例えば、エンハンサー、プロモーター、リーダー、及びイントロンの群を指し得る。例えば、調節発現エレメント群は、例えば、イントロン配列に対して5’側に作動可能に連結されたリーダー配列に対して5’側に作動可能に連結されたプロモーターから構成され得る。いくつかの実施形態では、EXPは、配列番号1として提示される。
【0027】
調節エレメントは、それらの遺伝子発現パターン、例えば、正及び/または負の効果、例えば、恒常的発現もしくは時間的、空間的、発達的、組織、環境的、生理学的、病理学的、細胞周期、及び/または化学的応答性の発現、ならびにそれらの任意の組み合わせ、加えて定量的または定性的指標によって特徴付けられ得る。本明細書で使用する場合、「遺伝子発現パターン」とは、作動可能に連結されたDNA分子が転写RNA分子へと転写される任意のパターンである。転写されたRNA分子は、翻訳されてタンパク質分子を生み出す場合もあれば、アンチセンスRNAまたは他の調節RNA分子、例えば、二本鎖RNA(dsRNA)、トランスファーRNA(tRNA)、リボソームRNA(rRNA)、マイクロRNA(miRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)などをもたらす場合もある。
【0028】
本明細書で使用する場合、「タンパク質発現」という用語は、転写RNA分子がタンパク質分子へと翻訳される任意のパターンである。タンパク質発現は、その時間的、空間的、発達的、または形態学的な性質によって、加えて定量的または定性的指標によって特徴付けられ得る。
【0029】
プロモーターは、作動可能に連結された転写可能なDNA分子の発現を調節するための調節エレメントとして有用である。本明細書で使用する場合、「プロモーター」という用語は、一般に、転写を開始するために、RNAポリメラーゼ、例えば、RNAポリメラーゼII、及びトランス作用性転写因子などの他のタンパク質の認識及び結合に関与するDNA分子を指す。プロモーターは、遺伝子のゲノムコピーの5’非翻訳領域(5’UTR)から最初に単離されてもよい。いくつかの実施形態では、プロモーターは、リーダー配列に対して5´側に作動可能に連結される。プロモーターは、合成的に生産または操作されたDNA分子であり得る。また、プロモーターはキメラであってもよい。キメラプロモーターは、2つ以上の異種DNA分子の融合により生産される。いくつかの実施形態では、プロモーターは、配列番号2、またはそのフラグメントもしくはバリアントとして提示される。いくつかの実施形態では、特許請求されるDNA分子及び本明細書に記載のその任意のバリアントまたは誘導体は、プロモーター活性を含むものとしてさらに定義され、すなわち、トランスジェニック植物細胞などの宿主細胞においてプロモーターとして作用することができる。なおさらなる特定の実施形態では、フラグメントは、それが由来する開始プロモーター分子が有するプロモーター活性を示すものとして定義される場合もあれば、フラグメントは、基礎レベルの転写をもたらし、転写開始するためにRNAポリメラーゼII複合体が認識及び結合するためのTATAボックスまたは同等のDNA配列から構成された「最小プロモーター」を含む場合もある。
【0030】
一実施形態では、本明細書で開示されるプロモーター配列のフラグメントが提供される。プロモーターフラグメントは、上記のようなプロモーター活性を含み得、また、単独で、または(例えば、キメラプロモーターを構築する際の)他のプロモーター及びプロモーターフラグメントとの組み合わせで、または他の発現エレメント及び発現エレメントのフラグメントとの組み合わせで有用であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書に開示のプロモーター活性を有するDNA分子の少なくとも約50、少なくとも約75、少なくとも約95、少なくとも約100、少なくとも約125、少なくとも約150、少なくとも約175、少なくとも約200、少なくとも約225、少なくとも約250、少なくとも約275、少なくとも約300、少なくとも約500、少なくとも約600、少なくとも約700、少なくとも約750、少なくとも約800、少なくとも約900、または少なくとも約1000の連続ヌクレオチド、またはそれ以上の長さの連続ヌクレオチドを含むプロモーターのフラグメントが提供される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示のプロモーター活性を有する、配列番号2と少なくとも約85パーセントの同一性、少なくとも約86パーセントの同一性、少なくとも約87パーセントの同一性、少なくとも約88パーセントの同一性、少なくとも約89パーセントの同一性、少なくとも約90パーセントの同一性、少なくとも約91パーセントの同一性、少なくとも約92パーセントの同一性、少なくとも約93パーセントの同一性、少なくとも約94パーセントの同一性、少なくとも約95パーセントの同一性、少なくとも約96パーセントの同一性、少なくとも約97パーセントの同一性、少なくとも約98パーセントの同一性、少なくとも約99パーセントの同一性、または少なくとも約100パーセントの同一性を有する、TATAボックスを含むDNA配列の少なくとも約50、少なくとも約75、少なくとも約95、少なくとも約100、少なくとも約125、少なくとも約150、少なくとも約175、少なくとも約200、少なくとも約225、少なくとも約250、少なくとも約275、少なくとも約300、少なくとも約500、少なくとも約600、少なくとも約700、少なくとも約750、少なくとも約800、少なくとも約900、少なくとも約1000、少なくとも約1050、少なくとも約1100、または少なくとも約1150の連続ヌクレオチドを含むプロモーターのフラグメントが提供される。開始プロモーター分子からこのようなフラグメントを生産するための方法は、当該技術分野で周知である。
【0031】
例えば、内部または5´欠失などの配列番号2のプロモーターエレメントに由来する組成物は、発現に正もしくは負の効果のいずれかを有するエレメントを除去すること、発現に正もしくは負の効果を有するエレメントを複製すること、及び/または発現に組織特異的効果もしくは細胞特異的効果を有するエレメントを複製もしくは除去することを含む、発現を改善または改変するために当該技術分野で既知の方法を使用して生産することができる。配列番号2のプロモーターエレメント(TATAボックスエレメントもしくはその同等の配列及び下流配列が除去されている3’欠失から構成される)に由来する組成物を使用して、例えば、エンハンサーエレメントを作製し得る。さらなる欠失を行って、発現に正または負の組織特異的、細胞特異的、または時間特異的な(例えば、限定されるものではないが、概日リズム)効果を及ぼす任意のエレメントを除去することができる。配列番号2として提供されるプロモーターエレメント及びそれに由来するフラグメントまたはエンハンサーを使用して、キメラ転写調節エレメント組成物を作製することができる。
【0032】
本明細書に記載のプロモーターまたはプロモーターフラグメントは、既知のプロモーターエレメント、例えば、TATAボックス及び他の既知の転写因子結合部位モチーフなどのDNA配列特性の存在について分析してもよい。このような既知のプロモーターエレメントの識別情報は、当業者により、元のプロモーターと同様の発現パターンを有するプロモーターのバリアントを設計するために使用され得る。
【0033】
本明細書で使用する場合、「リーダー」という用語は、遺伝子の非翻訳5’領域(5’UTR)から単離され、転写開始部位(TSS)とタンパク質コード配列開始部位との間のヌクレオチドセグメントとして一般に定義される、DNA分子を指す。代替的に、リーダーは、合成的に生産または操作されたDNAエレメントであってもよい。リーダーは、作動可能に連結されている転写可能なDNA分子の発現を調節するための5’調節エレメントとして使用され得る。リーダー分子は、異種プロモーターまたはそれらのネイティブプロモーターとともに使用されてもよい。いくつかの実施形態は、配列番号3として提示されるリーダーまたはそのフラグメントもしくはバリアントに関する。特定の実施形態では、このようなDNA配列は、宿主細胞(例えば、トランスジェニック植物細胞を含む)内でリーダーとして作用し得ると定義され得る。一実施形態では、このような配列は、リーダー活性を含むものとしてデコードされる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示のリーダー活性を有する、配列番号3と少なくとも約85パーセントの同一性、少なくとも約86パーセントの同一性、少なくとも約87パーセントの同一性、少なくとも約88パーセントの同一性、少なくとも約89パーセントの同一性、少なくとも約90パーセントの同一性、少なくとも約91パーセントの同一性、少なくとも約92パーセントの同一性、少なくとも約93パーセントの同一性、少なくとも約94パーセントの同一性、少なくとも約95パーセントの同一性、少なくとも約96パーセントの同一性、少なくとも約97パーセントの同一性、少なくとも約98パーセントの同一性、少なくとも約99パーセントの同一性、または少なくとも約100パーセントの同一性を有するDNA配列の少なくとも約10、少なくとも約15、少なくとも約20、少なくとも約25、少なくとも約30、少なくとも約35、少なくとも約40、少なくとも約45、少なくとも約50、少なくとも約55、少なくとも約60、少なくとも約65、少なくとも約70、少なくとも約75、少なくとも約80、少なくとも約85、少なくとも約90、または少なくとも約95の連続ヌクレオチドを含むリーダーのフラグメントが提供される。
【0034】
配列番号3のリーダー配列(5’UTRとも称される)は、調節エレメントから構成される場合もあれば、または作動可能に連結された転写可能なDNA分子の転写もしくは翻訳に効果を及ぼし得る二次構造を採用する場合もある。配列番号3のリーダー配列またはそのフラグメントもしくはバリアントを使用して、作動可能に連結された転写可能なDNA分子の転写または翻訳に影響を与えるキメラ調節エレメントを作製することができる。
【0035】
本明細書で使用する場合、「イントロン」という用語は、遺伝子から単離または同定され得、翻訳前のメッセンジャーRNA(mRNA)プロセシング中にスプライシング除去される領域として一般に定義され得る、DNA分子を指す。代替的に、イントロンは、合成的に生成または操作されたDNAエレメントであってもよい。イントロンは、作動可能に連結された遺伝子の転写をもたらすエンハンサーエレメントを含んでもよい。イントロンは、作動可能に連結されている転写可能なDNA分子の発現を調節するための調節エレメントとして使用され得る。構築物はイントロンを含んでもよく、このイントロンは、転写可能なDNA分子に対して異種である場合もそうでない場合もある。イントロンの例としては、イネアクチンイントロン及びトウモロコシHSP70イントロンが挙げられる。
【0036】
植物では、遺伝子構築物にいくつかのイントロンを含めると、イントロンを欠く構築物と比較して、mRNA及びタンパク質の蓄積が増加する。この効果は、遺伝子発現の「イントロン媒介増強」(IME)と称されている。植物での発現を刺激することが既知のイントロンは、トウモロコシ遺伝子(例えば、tubA1、Adh1、Sh1、及びUbi1)、イネ遺伝子(例えば、tpi)、ならびにペチュニア(例えば、rbcS)、ジャガイモ(例えば、st-ls1)由来、及びArabidopsis thaliana(例えば、ubq3及びpat1)由来の遺伝子のような双子葉植物遺伝子で同定されている。イントロンのスプライス部位内の欠失または変異によって遺伝子発現が低減することが示されており、このことは、IMEにはスプライシングが必要であり得ることを示すものである。ただし、双子葉植物でのIMEは、A.thalianaのpat1遺伝子のスプライス部位内における点変異によって示されている。1つの植物における同じイントロンの複数回使用は、デメリットを呈することが示されている。このような場合、適切な組換えDNAエレメントを構築するために、基本的な制御エレメントを集めることが必要になる。他の調節エレメント(例えば、配列番号2及び/または配列番号3として提示される調節エレメント)と組み合わせて使用することができるイントロンの例は、配列番号4として提示される。いくつかの実施形態では、配列番号4と少なくとも約85パーセントの同一性、少なくとも約86パーセントの同一性、少なくとも約87パーセントの同一性、少なくとも約88パーセントの同一性、少なくとも約89パーセントの同一性、少なくとも約90パーセントの同一性、少なくとも約91パーセントの同一性、少なくとも約92パーセントの同一性、少なくとも約93パーセントの同一性、少なくとも約94パーセントの同一性、少なくとも約95パーセントの同一性、少なくとも約96パーセントの同一性、少なくとも約97パーセントの同一性、少なくとも約98パーセントの同一性、少なくとも約99パーセントの同一性、または少なくとも約100パーセントの同一性を有するイントロンを提供することができる。
【0037】
本明細書で使用する場合、「3’転写終結分子」、「3’非翻訳領域」、または「3’UTR」という用語は、mRNA分子の3’部分の非翻訳領域への転写中に使用されるDNA分子を指す。mRNA分子の3’非翻訳領域は、特異的切断及び3’ポリアデニル化(ポリAテールとしても既知)によって生成され得る。3’UTRは、転写可能なDNA分子に作動可能に連結され、その下流に位置し得、転写、mRNAプロセシング、または遺伝子発現に影響を及ぼし得るポリアデニル化シグナル及びその他の調節シグナルを含んでもよい。ポリAテールは、mRNAの安定性及び翻訳の開始において機能すると考えられている。3´転写終結分子の例は、ノパリンシンターゼ3´領域、コムギhsp17 3´領域、エンドウルビスコ小サブユニット3´領域、ワタE6 3´領域、及びコイキシン3´UTRである。
【0038】
典型的には、3´UTRが特定のDNA分子の組換え発現に用いるのに有益であることが認められている。弱い3’UTRはリードスルーを生じる可能性を有し、このリードスルーにより、隣接する発現カセット内にあるDNA分子の発現に影響が及ぶ恐れがある。転写終結を適切に制御することで、下流に局在するDNA配列(例えば、他の発現カセット)へのリードスルーを防ぐことができ、さらにRNAポリメラーゼを効率的にリサイクルして遺伝子発現を向上させることができる。転写の効率的な終結(DNAからのRNAポリメラーゼIIの遊離)は、転写の再開に必要な条件であり、そのため全体の転写レベルに直接影響する。転写終結に続いて、成熟mRNAが合成部位から遊離され、鋳型が細胞質に輸送される。真核生物のmRNAは、インビボでポリ(A)形態として蓄積され、従来の方法で転写終結部位を検出することが困難になる。もっとも、バイオインフォマティクス法による機能的かつ効率的な3´UTRの予測は、有効な3´UTRを容易に予測させるはずの保存されたDNA配列が存在しない点で困難である。
【0039】
実際的な観点から、典型的には、発現カセットで使用される3’UTRが以下の特徴を有することは有益である。第1に、3´UTRは、転写可能なDNA分子(例えば、導入遺伝子)の転写を効率的かつ効果的に終結し、任意の隣接DNA配列への転写物のリードスルーを防止することができるべきであり、任意の隣接DNA配列は、複数の発現カセットが1つのトランスファーDNA(T-DNA)中に存在する場合のように別の発現カセットから構成され得るか、またはT-DNAが挿入された隣接染色体DNAから構成され得る。第2に、3´UTRは、転写可能なDNA分子の発現を駆動するために使用されるプロモーター、リーダー、エンハンサー、及びイントロンによって付与される転写活性の低減を引き起こすべきではない。最後に、植物バイオテクノロジーでは、3´UTRは、しばしば、形質転換された植物から抽出される逆転写RNAの増幅反応のプライミングに使用され、(1)植物染色体に組み込まれた後の発現カセットの転写活性または発現を評価するために、(2)植物DNA内の挿入のコピー数を評価するために、及び(3)育種後に結果として生じる種子の接合性を評価するために使用される。また、3’UTRは、挿入されたカセットの完全性を特徴付けるために、形質転換された植物から抽出されたDNAの増幅反応にも使用される。調節エレメント(例えば、配列番号2、配列番号3、及び/または配列番号4として提示される調節エレメント)と組み合わせて有用な3´UTRは、配列番号6として提示される。
【0040】
本明細書で使用する場合、「エンハンサー」または「エンハンサーエレメント」という用語は、シス作用調節エレメント、別名シスエレメントを指し、これは、全体的な発現パターンの一態様を付与するが、作動可能に連結された転写可能なDNA分子の転写を駆動するには、通常は単独では不十分である。プロモーターとは異なり、通常、エンハンサーエレメントには、転写開始部位(TSS)もしくはTATAボックス、または同等のDNA配列は含まれていない。プロモーターまたはプロモーターフラグメントは、天然に、作動可能に連結されたDNA配列の転写に影響を及ぼす1つ以上のエンハンサーエレメントを含んでもよい。エンハンサーエレメントをプロモーターに融合して、キメラプロモーターシスエレメントを生産してもよく、これは、遺伝子発現の全体的な調節の態様を付与する。
【0041】
多くのプロモーターエンハンサーエレメントは、DNA結合タンパク質に結合するか、及び/またはDNAトポロジーに影響を及ぼして、DNA鋳型へのRNAポリメラーゼのアクセスを選択的に許可もしくは制限する局所的立体構造、または転写開始部位での二重らせんの選択的開放を促進する局所的立体構造を生成すると考えられている。エンハンサーエレメントは、転写を調節する転写因子に結合するように機能し得る。いくつかのエンハンサーエレメントは2つ以上の転写因子に結合し、転写因子は、異なる親和性で2つ以上のエンハンサードメインと相互作用し得る。エンハンサーエレメントは、欠失分析、すなわち、プロモーターの5´末端または内部から1つ以上のヌクレオチドを欠失させること、DNase Iフットプリンティング、メチル化干渉、電気泳動移動度シフトアッセイ、ライゲーション媒介ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によるインビボゲノムフットプリンティング、及び他の従来のアッセイを使用するDNA結合タンパク質分析を含むいくつかの技法によって、またはBLASTなどの従来のDNA配列比較方法による、既知のシスエレメントモチーフもしくはエンハンサーエレメントを標的配列もしくは標的モチーフとして使用するDNA配列類似性分析によって、同定することができる。エンハンサードメインの微細構造は、1つ以上のヌクレオチドの変異誘発(または置換)によって、または当該技術分野で既知の他の従来の方法によってさらに研究することができる。エンハンサーエレメントは、化学合成によって、またはそのようなエレメントを含む調節エレメントからの単離によって得ることができ、それらは、部分配列操作を容易にするために有用な制限酵素部位を含有する追加の隣接ヌクレオチドで合成することができる。したがって、作動可能に連結された転写可能なDNA分子の発現を調節するための本明細書に開示する方法によるエンハンサーエレメントの設計、構築、及び使用が、本明細書で企図される。エンハンサーは、配列番号2として提示されているプロモーターに由来し得る。
【0042】
本明細書で使用する場合、「キメラ」という用語は、第1のDNA分子を第2のDNA分子と融合させることによって生産される単一のDNA分子を指し、第1のDNA分子も第2のDNA分子も、通常はこの構成(すなわち、他方と融合した構成)では見出されない。したがって、キメラDNA分子は、他の方法では通常は自然界に見出されない新規のDNA分子である。本明細書で使用する場合、「キメラプロモーター」という用語は、このようなDNA分子の操作によって生産されたプロモーターを意味する。キメラプロモーターは、2つ以上のDNAフラグメントを組み合わせる(例えば、プロモーターをエンハンサーエレメントと融合させる)ことができる。したがって、作動可能に連結された転写可能なDNA分子の発現を調節するための本明細書に開示する方法によるキメラプロモーターの設計、構築、及び使用が、本明細書で企図される。
【0043】
キメラ調節エレメントは、例えば、制限酵素消化及びライゲーション、ライゲーション非依存性クローニング、増幅中のPCR生産物のモジュラーアセンブリ、または調節エレメントの直接化学合成、ならびに当該技術分野で既知の他の方法などの、当該技術分野で既知の様々な方法によって作動可能に連結され得る様々な構成エレメントを含むように設計することができる。結果として生じる様々なキメラ調節エレメントは、同じ構成エレメントまたは同じ構成エレメントのバリアントから構成され得るが、構成部分が作動可能に連結されることを可能にする1つまたは複数の連結DNA配列を含む1つまたは複数のDNA配列が異なる。いくつかの実施形態では、配列番号1~3として提供されるDNA配列は、調節エレメント参照配列を提供することができ、参照配列を構成する構成エレメントは、当技術分野で既知の方法によって接続されることができ、1つ以上のヌクレオチドの置換、欠失、及び/または挿入もしくは細菌及び植物細胞の形質転換において天然に生じる変異を含むことができる。
【0044】
本明細書で使用する場合、「バリアント」という用語は、第1のDNA分子と類似するが同一ではない組成である、例えば、調節エレメントなどの第2のDNA分子を指し、第2のDNA分子は、例えば、多かれ少なかれ同等の転写活性を通じて、第1のDNA分子の一般的な機能、例えば同一または類似の発現パターンを依然として維持する。バリアントは、第1のDNA分子のより短いもしくは短縮バージョン、または第1のDNA分子の配列の改変バージョン、例えば、制限酵素部位が異なる、及び/または内部の欠失、置換、もしくは挿入を有するバージョンであり得る。また、「バリアント」は、参照配列の1つ以上のヌクレオチドの置換、欠失、または挿入を含むヌクレオチド配列を有する調節エレメントも包含し得、このとき、誘導体調節エレメントは、対応する親調節分子よりも大きいかもしくは小さいかまたは同等の転写もしくは翻訳活性を有する。また、調節エレメント「バリアント」は、細菌及び植物細胞の形質転換で天然に生じる変異から生じるバリアントも包含する。いくつかの実施形態では、元の調節エレメントの一般的な機能、例えば同じまたは類似の発現パターンを依然として維持しながら、配列番号1~4として提供されるポリヌクレオチド配列を使用して、元の調節エレメントのDNA配列と組成が類似するが、同一ではないバリアントを作製してもよい。このようなバリアントの生産は、本開示に照らして十分に当業者の範囲内であり、本明細書において企図される。
【0045】
特定の導入遺伝子の望ましい発現態様に対する、本明細書で説明される修飾、重複、または欠失の効力は、結果を検証するために本明細書の研究実施例において説明されるものなど、安定し、かつ一過性の植物アッセイにおいて実験により検査してもよく、当該効力は、出発DNA分子においてなされた変更及び変更の目的に応じて変わり得る。
【0046】
構築物
本明細書で使用する場合、「構築物」という用語は、少なくとも1つのDNA分子が別のDNA分子に機能的に作動可能な様式で連結されている、すなわち作動可能に連結されたDNA分子を含む、ゲノム組み込みまたは自己複製が可能な、任意の源に由来する、プラスミド、コスミド、ウイルス、ファージ、または直鎖もしくは環状DNA分子もしくはRNA分子などの任意の組換えDNA分子を意味する。本明細書で使用する場合、「ベクター」という用語は、形質転換、すなわち、宿主細胞中に異種DNAまたはRNAを導入する目的で使用され得る、任意の構築物を意味する。構築物は、典型的には、1つ以上の発現カセットを含む。本明細書で使用する場合、「発現カセット」とは、1つ以上の調節エレメント、典型的には少なくともプロモーター及び3’UTRと作動可能に連結された、少なくとも1つの転写可能なDNA分子を含む組換えDNA分子を指す。
【0047】
本明細書で使用する場合、「作動可能に連結された」という用語は、第2のDNA分子に接続された第1のDNA分子を指し、ここで、第1及び第2のDNA分子は、第1のDNA分子が第2のDNA分子の機能に影響するよう配置される。2つのDNA分子は、単一の連続したDNA分子の一部である場合もそうでない場合もあり、隣接する場合もそうでない場合もある。例えば、プロモーターが細胞内の目的の転写可能なDNA分子の転写を調節する場合、このプロモーターは転写可能なDNA分子と作動可能に連結されている。例えば、リーダーは、DNA配列の転写または翻訳に影響を及ぼすことができる場合、DNA配列に作動可能に連結されている。
【0048】
いくつかの実施形態では、転写可能なDNA分子に作動可能に連結された本明細書に記載する1つ以上の調節エレメントは、T-DNAを含むAgrobacterium tumefaciensから単離されたTiプラスミドの右境界(RBまたはAGRtu.RB)領域及び左境界(LBまたはAGRtu.LB)領域を有する二重腫瘍誘発(Ti)プラスミド境界構築物において提供され、T-DNAは、A.tumefaciens細胞によって提供されるトランスファー分子とともに、T-DNAを植物細胞のゲノムに組み込むことを可能にする(例えば、米国特許第6,603,061号を参照されたい)。また、構築物は、細菌細胞における複製機能及び抗生物質選択をもたらすプラスミド骨格DNAセグメント、例えば、ori322などのEscherichia coli複製開始点、oriVまたはoriRiなどの広宿主域複製開始点、及びスペクチノマイシンもしくはストレプトマイシンに対する抵抗性を付与するTn7アミノグリコシドアデニルトランスフェラーゼ(aadA)をコードするSpec/Strpなどの選択可能マーカー、またはゲンタマイシン(Gm、Gent)選択可能マーカー遺伝子についてのコード領域も含んでもよい。植物形質転換については、宿主細菌株は、多くの場合、A.tumefaciens ABI、C58、またはLBA4404であるが、植物形質転換の当業者に既知の他の株も機能することができる。
【0049】
転写可能なDNA分子が、タンパク質として翻訳及び発現される機能的mRNA分子に転写されるような方式で、構築物を集成し細胞内に導入するための方法は、当該技術分野で既知である。構築物及び宿主細胞を調製及び使用するための組成物及び方法は、当業者に周知である。植物における核酸の発現に有用な典型的なベクターは、当該技術分野で周知であり、Agrobacterium tumefaciensのTiプラスミドに由来するベクター及びpCaMVCNトランスファー制御ベクターを含む。
【0050】
本明細書で提供される任意の調節エレメントを含めた様々な調節エレメントを構築物に含んでもよい。任意のこのような調節エレメントは、他の調節エレメントと組み合わせて提供され得る。このような組み合わせは、望ましい調節機能をもたらすように設計または修飾され得る。一実施形態では、構築物は、3´UTRに作動可能に連結された転写可能なDNA分子に作動可能に連結された少なくとも1つの調節エレメントを含んでもよい。
【0051】
いくつかの実施形態では、構築物は、本明細書で提供されるか、または当該技術分野で既知の任意のプロモーターまたはリーダーを含み得る。例えば、プロモーター(例えば、配列番号2またはそのフラグメントもしくはバリアント)は、例えば、熱ショックタンパク質遺伝子に由来するものなどの異種非翻訳5´リーダーに作動可能に連結されてもよい。代替的に、リーダー(例えば、配列番号3またはそのフラグメントもしくはバリアント)は、例えば、カリフラワーモザイクウイルス35S転写プロモーターなどの異種プロモーターに作動可能に連結されてもよい。
【0052】
発現カセットはまた、特に葉緑体、白色体、もしくは他の色素体細胞小器官、ミトコンドリア、ペルオキシソーム、液胞、または細胞外の位置に対する、作動可能に連結されたタンパク質の細胞レベル以下での標的化に有用なペプチドをコードする、輸送ペプチドコード配列も含んでもよい。多くの葉緑体局在化タンパク質は、核遺伝子から前駆体として発現され、葉緑体輸送ペプチド(CTP)によって葉緑体へと標的化される。このような単離された葉緑体タンパク質の例としては、限定されるものではないが、リブロース-1,5-ビスリン酸カルボキシラーゼの小サブユニット(SSU)、フェレドキシン、フェレドキシンオキシドレダクターゼ、集光性複合タンパク質I及びタンパク質II、チオレドキシンF、ならびにエノールピルビルシキミ酸リン酸シンターゼ(EPSPS)に関連するものが挙げられる。葉緑体輸送ペプチドは、例えば、米国特許第7,193,133号に記載されている。非葉緑体タンパク質をコードする導入遺伝子と作動可能に連結された異種CTPを発現させることにより、非葉緑体タンパク質を葉緑体に対して標的化させ得ることが実証されている。
【0053】
転写可能なDNA分子
本明細書で使用する場合、「転写可能なDNA分子」という用語は、タンパク質コード配列を有するもの、ガイドRNA(gRNA)をコードするもの、及び遺伝子抑制に有用な配列を有するRNA分子(例えば、siRNA、miRNA、dsRNA)を生産するものを含むがこれらに限定されない、RNA分子に転写されることが可能な任意のDNA分子を指す。DNA分子の種類には、同じ植物からのDNA分子、別の植物からのDNA分子、異なる生物からのDNA分子、あるいは合成DNA分子、例えば、遺伝子のアンチセンスメッセージを含むDNA分子、または導入遺伝子の人工、合成、もしくは別様の修飾バージョンをコードするDNA分子が含まれ得るが、これらに限定されない。本明細書に記載の構築物に組み込むための転写可能なDNA分子の例としては、例えば、DNA分子が組み込まれる種以外の種からのDNA分子もしくは遺伝子、または同じ種に由来するか、もしくは同じ種に存在するが、古典的な育種技法ではなく遺伝子工学的方法によってレシピエント細胞に組み込まれる遺伝子が挙げられる。
【0054】
本明細書で使用する場合、「異種の転写可能なDNA分子」という用語は、転写可能なDNA分子が作動可能に連結されている調節エレメントのうちの1つ以上に関して異種である転写可能なDNA分子を指す。
【0055】
「導入遺伝子」とは、少なくとも宿主細胞ゲノム内の位置に関して宿主細胞に対して異種である転写可能なDNA分子、及び/または細胞の現行世代もしくは任意の過去の世代に宿主細胞のゲノムに人工的に組み込まれた転写可能なDNA分子を指す。
【0056】
調節エレメント、例えば、プロモーター(例えば、配列番号2またはそのフラグメントもしくはバリアント)は、調節エレメントに関して異種である転写可能なDNA分子に作動可能に連結され得る。本明細書で使用する場合、「異種」という用語は、そのような組み合わせが自然界に通常見出されない場合に、2つ以上のDNA分子(またはヌクレオチド配列)の組み合わせを指す。例えば、2つのDNA分子(またはヌクレオチド配列)は、異なる種に由来してもよく、及び/または2つのDNA分子(またはヌクレオチド配列)は、異なる遺伝子、例えば、同じ種からの異なる遺伝子、もしくは異なる種からの同じ遺伝子に由来してもよい。したがって、調節エレメントは、作動可能に連結された転写可能なDNA分子に関して、そのような組み合わせが自然界に通常見出されない場合、すなわち、転写可能なDNA分子が、調節エレメントに作動可能に連結されて天然に生じない場合、異種である。
【0057】
転写可能なDNA分子は、概して、転写物の発現が所望される任意のDNA分子であり得る。このような転写物の発現により、結果として生じるmRNA分子の翻訳、したがってタンパク質発現がもたらされ得る。代替的に、例えば、転写可能なDNA分子は、特定の遺伝子またはタンパク質の発現低下を最終的に引き起こすように設計され得る。一実施形態では、これは、アンチセンス方向に配向した転写可能なDNA分子を使用することによって達成され得る。当業者は、かかるアンチセンス技術の使用に精通している。この様態で任意の遺伝子を負に調節してもよく、一実施形態では、転写可能なDNA分子は、dsRNA、siRNA、またはmiRNA分子の発現を介して特定の遺伝子を抑制するように設計されてもよい。
【0058】
したがって、一実施形態は、構築物がトランスジェニック植物細胞のゲノムに組み込まれる場合、所望のレベルまたは所望のパターンで転写可能なDNA分子の転写を調節するように、異種の転写可能なDNA分子に作動可能に連結された、配列番号1~3として提供されるものなどの調節エレメントを含む組換えDNA分子を提供する。一実施形態では、転写可能なDNA分子は遺伝子のタンパク質コード領域を含み、別の実施形態では、転写可能なDNA分子は遺伝子のアンチセンス領域を含む。
【0059】
農学的目的の遺伝子
転写可能なDNA分子は、農学的目的の遺伝子を含み得る。本明細書で使用する場合、「農学的目的の遺伝子」という用語は、特定の植物組織、細胞、または細胞タイプで発現した場合に、望ましい特性を付与する転写可能なDNA分子を指す。農学的目的の遺伝子の生産物は、植物の形態、生理学、成長、発達、収量、穀粒組成、栄養プロファイル、病害もしくは害虫抵抗性、及び/または環境的もしくは化学的耐性に対する効果を引き起こすために植物内で作用する場合もあれば、植物を常食とする害虫の餌で殺虫剤として作用する場合もある。一実施形態では、配列番号1~3として提供されるものなどの調節エレメントは、調節エレメントが、農学的目的の遺伝子である転写可能なDNA分子に作動可能に連結されるように、構築物に組み込まれる。このような構築物を含むトランスジェニック植物において、農学的目的の遺伝子の発現は、有益な農学的形質を付与し得る。有益な農学的形質としては、例えば、限定されるものではないが、除草剤耐性、昆虫防除、変更された収量、疾患抵抗性、病原体抵抗性、変更された植物成長及び発達、変更されたデンプン含量、変更された油含量、変更された脂肪酸含量、変更されたタンパク質含量、変更された果実成熟、動物及びヒトの栄養強化、生体高分子生産、環境ストレス抵抗性、医薬品ペプチド、加工品質の改善、風味の改善、ハイブリッド種子生産有用性、繊維生産の改善、炭素隔離の増強、ならびに望ましいバイオ燃料生産を挙げることができる。
【0060】
当技術分野で知られている農学的目的の遺伝子の例としては、除草剤抵抗性(米国特許第6,803,501号、第6,448,476号、第6,248,876号、第6,225,114号、第6,107,549号、第5,866,775号、第5,804,425号、第5,633,435号、及び第5,463,175号)、収量の増加(米国特許第USRE38,446号、第6,716,474号、第6,663,906号、第6,476,295号、第6,441,277号、第6,423,828号、第6,399,330号、第6,372,211号、第6,235,971号、第6,222,098号、及び第5,716,837号)、昆虫防除(米国特許第6,809,078号、第6,713,063号、第6,686,452号、第6,657,046号、第6,645,497号、第6,642,030号、第6,639,054号、第6,620,988号、第6,593,293号、第6,555,655号、第6,538,109号、第6,537,756号、第6,521,442号、第6,501,009号、第6,468,523号、第6,326,351号、第6,313,378号、第6,284,949号、第6,281,016号、第6,248,536号、第6,242,241号、第6,221,649号、第6,177,615号、第6,156,573号、第6,153,814号、第6,110,464号、第6,093,695号、第6,063,756号、第6,063,597号、第6,023,013号、第5,959,091号、第5,942,664号、第5,942,658号、第5,880,275号、第5,763,245号、及び第5,763,241号)、真菌病抵抗性(米国特許第6,653,280号、第6,573,361号、第6,506,962号、第6,316,407号、第6,215,048号、第5,516,671号、第5,773,696号、第6,121,436号、第6,316,407号、及び第6,506,962号)、ウイルス抵抗性(米国特許第6,617,496号、第6,608,241号、第6,015,940号、第6,013,864号、第5,850,023号、及び第5,304,730号)、線虫抵抗性(米国特許第6,228,992号)、細菌病抵抗性(米国特許第5,516,671号)、植物成長及び発達(米国特許第6,723,897号、及び第6,518,488号)、デンプン生産(米国特許第6,538,181号、第6,538,179号、第6,538,178号、第5,750,876号、第6,476,295号)、修飾された油生産(米国特許第6,444,876号、第6,426,447号、及び第6,380,462号)、高油生産(米国特許第6,495,739号、第5,608,149号、第6,483,008号、及び第6,476,295号)、修飾された脂肪酸含量(米国特許第6,828,475号、第6,822,141号、第6,770,465号、第6,706,950号、第6,660,849号、第6,596,538号、第6,589,767号、第6,537,750号、第6,489,461号、及び第6,459,018号)、高タンパク質生産(米国特許第6,380,466号)、果実成熟(米国特許第5,512,466号)、動物及びヒトの栄養強化(米国特許第6,723,837号、第6,653,530号、第6,5412,59号、第5,985,605号、及び第6,171,640号)、生体高分子(米国特許第USRE37,543号、第6,228,623号、及び第5,958,745号、ならびに第6,946,588号)、環境ストレス抵抗性(米国特許第6,072,103号)、医薬品ペプチド及び分泌可能なペプチド(米国特許第6,812,379号、第6,774,283号、第6,140,075号、及び第6,080,560号)、加工特性の改善(米国特許第6,476,295号)、消化性の改善(米国特許第6,531,648号)、低ラフィノース(米国特許第6,166,292号)、工業用酵素生産(米国特許第5,543,576号)、風味の改善(米国特許第6,011,199号)、窒素固定(米国特許第5,229,114号)、ハイブリッド種子生産(米国特許第5,689,041号)、繊維生産(米国特許第6,576,818号、第6,271,443号、第5,981,834号、及び第5,869,720号)、ならびにバイオ燃料生産(米国特許第5,998,700号)のためのものが挙げられる。
【0061】
代替的に、農学的目的の遺伝子は、例えば、アンチセンス(例えば、米国特許第5,107,065号を参照)、阻害RNA(「RNAi」、例えば、公開されている出願U.S.2006/0200878及びU.S.2008/0066206、ならびに米国特許出願第11/974,469号に記載されているように、miRNA-、siRNA-、トランス作用性siRNA-、及び段階的sRNA-媒介メカニズムによる遺伝子発現の調節を含む)、または共抑制媒介メカニズムによって、内因性遺伝子の遺伝子発現の標的化された調節を引き起こすRNA分子をコードすることによって、上述の植物の特性または表現型に影響を与えることができる。RNAはまた、所望の内因性mRNA生産物を切断するように操作された触媒RNA分子(例えば、リボザイムまたはリボスイッチ;例えば、U.S.2006/0200878を参照されたい)であってもよい。転写可能なDNA分子が遺伝子抑制を引き起こし得る分子に転写されるような方式で、構築物を構築し細胞内に導入するための方法が、当該技術分野で既知である。
【0062】
選択可能マーカー
選択可能マーカーをコードする転写可能なDNA分子は、配列番号1~3として提供されるものなどの調節エレメントとともに使用してもよい。本明細書で使用する場合、「選択可能マーカー」という用語は、トランスジェニック植物、組織もしくは細胞における発現、またはその欠如が、何らかの方法でスクリーニングまたはスコアリングされ得る任意の転写可能なDNA分子を指す。選択可能マーカー、ならびにそれらの関連する選択及びスクリーニング技法は、当該技術分野で既知であり、β-グルクロニダーゼ(GUS)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、抗生物質抵抗性を付与するタンパク質、及び除草剤耐性を付与するタンパク質をコードする転写可能なDNA分子を含むが、これらに限定されない。選択可能マーカー導入遺伝子の例は、配列番号5として提供される。
【0063】
ゲノム編集
いくつかの実施形態は、ゲノム修飾を実行するために、部位特異的ゲノム修飾酵素及び/または任意の関連タンパク質(複数可)をコードする異種DNA配列に作動可能に連結された配列番号1~3のうちのいずれかと少なくとも約85パーセントの配列同一性、少なくとも約86パーセント、少なくとも約87パーセント、少なくとも約88パーセント、少なくとも約89パーセント、少なくとも約90パーセント、少なくとも91パーセント、少なくとも92パーセント、少なくとも93パーセント、少なくとも94パーセント、少なくとも95パーセント、少なくとも96パーセント、少なくとも97パーセント、少なくとも98パーセント、もしくは少なくとも99パーセントの配列同一性もしくはそれ以上を有する配列またはそのフラグメントを含む発現カセット(複数可)を含む、組換えDNA構築物に関する。これらの部位特異的ゲノム修飾酵素発現カセット(複数可)は、鋳型化編集のためのドナー鋳型と同じ分子もしくはベクターにおいて(シス)、または別個の分子もしくはベクターにおいて(トランス)存在してもよい。ゲノムDNAを修飾する、種々の配列特異的ゲノム修飾酵素(もしくはタンパク質及び/またはガイドRNAの複合体)に関わるいくつかの編集方法が、当該技術分野で既知である。いくつかの実施形態では、部位特異的ゲノム修飾酵素は、所望のゲノム部位または遺伝子座において2本鎖切断(DSB)またはニックを誘発することによりゲノムを修飾する。いくつかの実施形態では、ゲノム修飾酵素によって導入されたDSBまたはニックを修復するプロセス中に、ドナー鋳型DNAが、DSB部位またはニック部位でゲノム内に組み込まれ得る。いくつかの実施形態では、ゲノム修飾酵素によって導入されたDSBまたはニックを修復するプロセス中に、挿入変異または欠失変異(インデル)がゲノム内に導入されてもよい。いくつかの実施形態では、部位特異的ゲノム修飾酵素は、シチジンデアミナーゼを含む。いくつかの実施形態では、部位特異的ゲノム修飾酵素は、アデニンデアミナーゼを含む。本開示において、部位特異的ゲノム修飾酵素としては、エンドヌクレアーゼ、リコンビナーゼ、トランスポザーゼ、デアミナーゼ、ヘリカーゼ、リバーストランスクリプターゼ及びそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0064】
いくつかの実施形態は、ゲノム編集システムの1つ以上の構成要素をコードする、異種の転写可能なDNA分子に作動可能に連結された、本明細書に記載の遺伝子調節エレメントに関する。ゲノム編集システムは、宿主細胞のゲノムに、1つ以上の挿入、欠失、置換、塩基修飾、転座、または逆位を導入するために使用され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の遺伝子調節エレメントは、例えば、CRISPR-Casエフェクタータンパク質、ジンクフィンガータンパク質、または転写活性化因子(TAL)タンパク質などの配列特異的DNA結合ドメインをコードする異種の転写可能なDNA分子に作動可能に連結される。いくつかの実施形態では、配列特異的DNA結合ドメインは、融合タンパク質であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の遺伝子調節エレメントは、CRISPR-Casエフェクタータンパク質をコードする、異種の転写可能なDNA分子に作動可能に連結される。いくつかの実施形態では、CRISPR-Casエフェクタータンパク質は、Type I CRISPR-Casシステム、Type II CRISPR-Casシステム、Type III CRISPR-Casシステム、Type IV CRISPR-Casシステム、Type V CRISPR-Casシステム、またはType VI CRISPR-Casシステムから選択される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の遺伝子調節エレメントは、ガイドRNAをコードする、異種の転写可能なDNA分子に作動可能に連結される。本明細書で使用する場合、「ガイドRNA」または「gRNA」は、標的DNA配列を認識し、CRISPRエフェクタータンパク質を標的DNA配列に導く、または「ガイドする」RNAを指す。ガイドRNAは、標的DNAと相補的である領域(crRNAと称される)及びCRISPRエフェクタータンパク質と結合する領域(tracrRNAと称される)から構成される。ガイドRNAは、単一のRNA分子(sgRNA)または2種の別々のRNA分子(2種gRNA)であり得る。いくつかの実施形態では、gRNAは、リバーストランスクリプターゼのためのRNA鋳型(pegRNA)をさらに含んでいてもよい。
【0065】
いくつかの実施形態は、CRISPR-Casエフェクタータンパク質を含むCRISPR-Casゲノム編集システムの1つ以上の構成要素をコードする、異種の転写可能なDNA分子に作動可能に連結された、本明細書に記載の遺伝子調節エレメントに関する。CRISPR-Casエフェクタータンパク質の例としては、限定されるものではないが、Cas9、C2c1、C2c3、C2c4、C2c5、C2c8、C2c9、C2c10、Cas12a(Cpf1とも称される)、Cas12b、Cas12c、Cas12d、Cas12e、Cas12h、Cas12i、Cas12g、Cas13a、Cas13b、Cas13c、Cas13d、Casl、CaslB、Cas2、Cas3、Cas3´、Cas3”、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9(Csnl及びCsx12としても既知である)、Cas10、Csyl、Csy2、Csy3、Csel、Cse2、Cscl、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmrl、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csbl、Csb2、Csb3、Csxl7、Csxl4、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csxl、Csxl5、Csfl、Csf2、Csf3、Csf4(dinG)、Csf5、Cas14a、Cas14b、及びCas14cエフェクタータンパク質が挙げられる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の遺伝子調節エレメントは、ヌクレアーゼ活性部位(例えば、RuvC、HNH、及び/またはNUCドメイン)に変異を含むCRISPR-Casエフェクタータンパク質に作動可能に連結される。ヌクレアーゼ活性部位に変異を有し、したがって、もはやヌクレアーゼ活性を含まないCRISPR-Casエフェクタータンパク質は、一般に、「dead」、例えば、dCasと称される。いくつかの実施形態では、ヌクレアーゼ活性部位に変異を有するCRISPR-Casエフェクタータンパク質ドメインまたはポリペプチドは、変異のない同じCRISPR-Casエフェクタータンパク質と比較して、活性が障害されているか、または活性が低減していることがある。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の遺伝子調節エレメントは、ヌクレアーゼ活性部位に変異を有するCRISPR-Casエフェクタータンパク質に作動可能に連結されて、リバーストランスクリプターゼ酵素に作動可能に連結されたニッカーゼ活性を生成する。
【0066】
細胞形質転換
転写可能なDNA分子に作動可能に連結された、配列番号1~3として提供されるものなどの1つ以上の調節エレメントを含む形質転換された細胞及び植物の生産方法も提供される。
【0067】
「形質転換」という用語は、レシピエント宿主へのDNA分子の導入を指す。本明細書で使用する場合、「宿主」という用語は、細菌、真菌、または植物を意味し、これには、任意の細胞、組織、器官、または細菌、真菌、もしくは植物の後代が含まれる。特に目的となる植物組織及び細胞には、プロトプラスト、カルス、根、塊茎、種子、茎、葉、実生、胚、及び花粉が含まれる。
【0068】
本明細書で使用する場合、「形質転換された」という用語は、本明細書に記載の構築物などの外来DNA分子が導入された細胞、組織、器官、または生物を指す。導入されたDNA分子をレシピエント細胞、組織、器官、または生物のゲノムDNAに組み込んで、導入されたDNA分子が次の後代に受け継がれるようにしてもよい。「トランスジェニック」または「形質転換された」細胞または生物にはまた、細胞または生物の後代、及び交配でかかるトランスジェニック生物を親として用いた育種プログラムから生産され、外来DNA分子の存在からもたらされる改変された表現型を示す後代も含まれ得る。また、導入されるDNA分子をレシピエント細胞内に一過性に導入して、導入されたDNA分子が次の後代に受け継がれないようにしてもよい。「トランスジェニック」という用語は、1つ以上の異種のDNA分子を含む細菌、真菌、または植物を指す。
【0069】
DNA分子を植物細胞に導入するための、当業者に周知の方法が多数存在する。このプロセスは、概して、好適な宿主細胞を選択するステップと、宿主細胞をベクターで形質転換するステップと、形質転換された宿主細胞を得るステップとを含む。植物構築物を植物ゲノムに導入することによって植物細胞を形質転換するための方法及び材料は、周知かつ実証された方法のうちのいずれかを含むことができる。好適な方法としては、限定されるものではないが、中でも細菌感染(例えば、Agrobacterium)、バイナリーBACベクター、DNAの直接送達(例えば、PEG媒介の形質転換、乾燥/阻害媒介のDNA取込み、エレクトロポレーション、炭化ケイ素繊維による撹拌、及びDNAコーティング粒子の加速)、遺伝子編集(例えば、CRISPR-Casシステム)が挙げられる。
【0070】
宿主細胞は、任意の細胞または生物、例えば、植物細胞、藻類細胞、藻類、真菌細胞、真菌、細菌細胞、または昆虫細胞であってもよい。特定の実施形態において、宿主細胞及び形質転換された細胞としては、作物植物からの細胞が含まれ得る。
【0071】
トランスジェニック植物は、次いで、本明細書に記載のトランスジェニック植物細胞から再生され得る。従来の育種技法または自家受粉を用いて、このトランスジェニック植物から種子が生産され得る。このような種子、及びこのような種子から成長した得られた後代植物は、配列番号1~3から選択される配列を含むものなど、本明細書に記載される組換えDNA分子を含有し、したがってトランスジェニックである。
【0072】
トランスジェニック植物は、自己受粉して、ホモ接合性トランスジェニック植物の種子(本明細書に記載の組換えDNA分子のホモ接合性)を提供するか、または非トランスジェニック植物もしくは異なるトランスジェニック植物と交配して、ヘテロ接合性トランスジェニック植物の種子(本明細書に記載の組換えDNA分子のヘテロ接合性)を提供することができる。このようなホモ接合性及びヘテロ接合性のトランスジェニック植物はともに、本明細書では「後代植物」と称される。後代植物は、元のトランスジェニック植物の子孫であり、本明細書に記載の組換えDNA分子を含有するトランスジェニック植物である。トランスジェニック植物を使用して生産された種子は、収穫され、トランスジェニック植物の世代を、すなわち、本明細書に記載の組換えDNA分子を含み、農学的目的の遺伝子を発現する後代植物を成長させるために使用され得る。異なる作物に一般的に使用される育種方法の説明は、いくつかの参考書籍のうちの1つに見出すことができ、例えば、Allard,Principles of Plant Breeding,John Wiley&Sons,NY,U.of CA,Davis,CA,50-98(1960);Simmonds,Principles of Crop Improvement,Longman,Inc.,NY,369-399(1979);Sneep and Hendriksen,Plant breeding Perspectives,Wageningen(ed),Center for Agricultural Publishing and Documentation(1979);Fehr,Soybeans:Improvement,Production and Uses,2nd Edition,Monograph,16:249(1987);Fehr,Principles of Variety Development,Theory and Technique,(Vol.1)及びCrop Species Soybean(Vol.2),Iowa State Univ.,Macmillan Pub.Co.,NY,360-376(1987)を参照されたい。
【0073】
形質転換された植物は、目的の遺伝子または複数の遺伝子の存在、ならびに配列番号1~3として提供されるものなどの調節エレメントによって付与される発現レベル及び/またはプロファイルについて分析してもよい。当業者は、形質転換された植物の分析に利用できる多数の方法を認識している。例えば、植物分析の方法としては、限定されるものではないが、サザンブロットまたはノーザンブロット、PCRベースのアプローチ、生化学的分析、表現型スクリーニング法、現地評価、及び免疫診断アッセイが挙げられる。転写可能なDNA分子の発現は、TaqMan(登録商標)(Applied Biosystems(Foster City,CA))の試薬及び製造業者が説明する方法、ならびにTaqMan(登録商標)Testing Matrixを用いて決定したPCRサイクル時間を用いて測定され得る。代替的に、Invader(登録商標)(Third Wave Technologies(Madison,WI))の試薬及び製造業者が説明する方法を使用して、導入遺伝子の発現を評価することができる。
【0074】
本明細書に記載される植物の部分も提供される。植物部分としては、限定されるものではないが、葉、茎、根、塊茎、種子、胚乳、胚珠、及び花粉が挙げられる。植物部分は、生存可能、非生存可能、再生可能、及び/または非再生可能であり得る。また、配列番号1~3として提供されるものなどの、本明細書に記載のDNA分子を含む形質転換された植物細胞も提供される。形質転換またはトランスジェニック植物細胞は、再生可能及び/または非再生可能な植物細胞を含む。
【0075】
配列番号1~3として提供されるものなどの本明細書に記載の組換えDNA分子を含有するトランスジェニック植物またはその部分から生産される商品生産物。いくつかの実施形態では、商品生産物は、配列番号1~3からなる群から選択されるDNA配列またはそのフラグメントもしくはバリアントを含む検出可能な量のDNAを含有する。本明細書で使用する場合、「商品生産物」は、配列番号1~3として提供されるものなどの本明細書に記載の組換えDNA分子を含有するトランスジェニック植物、種子、植物細胞、または植物部分に由来する材料から構成される任意の組成物または生産物を指す。商品生産物には、加工種子、穀物、植物部分、及び粗粉が含まれるが、これらに限定されない。配列番号1~3として提供されるものなどの本明細書に記載の組換えDNA分子に対応する検出可能な量のDNAを含有する商品生産物が企図される。商品生産物の含量または供給源を決定するために、試料におけるこのDNAのうちの1つ以上の検出が用いられ得る。本明細書で開示される検出方法を含めて、任意の標準的なDNA分子の検出方法を使用してもよい。
【0076】
本明細書に記載の実施形態は、指定されない限り、限定することを意図するものではない、例示の目的で提供される以下の実施例を参照することによって、より容易に理解され得る。当業者は、以下の実施例で開示される技法が、本発明の実施において良好に機能することが本発明者らによって発見された技法を代表するものであることを理解するはずである。しかし、当業者は、本開示に照らして、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、開示されている特定の実施形態において多くの変更を行うことができ、依然として同様または類似の結果を得ることができることを理解すべきであり、したがって、記載されている全ての事項は、限定的な意味ではなく例示的なものとして解釈されるべきである。
【実施例】
【0077】
実施例1
調節エレメントの同定及びクローニング
この実施例は、Andropogon gerardii(ビッグブルーステム)に由来する調節発現エレメントの同定、合成、及びクローニングについて説明する。
【0078】
単子葉種Andropogon gerardii(ビッグブルーステム)のゲノムDNAから、新規の脂質トランスファータンパク質(LTP)プロモーター及びリーダーを同定し、単離した。独自に構築したゲノムDNA配列のバイオインフォマティクス分析を使用して、ホモログLTP遺伝子配列を見出した。Andropogon gerardii LTP遺伝子の同定されたプロモーター及びリーダーを合成し、Setaria italicaに由来するイントロンに作動可能に連結した。イントロンの選択は、根優先(root-preferred)プロモーター及びリーダーに作動可能に連結された場合、トウモロコシにおけるイントロン増強された根の発現を実証する実験データに基づいていた。
【0079】
Andropogon gerardiiからの同定されたEXP及び対応するプロモーター及びリーダー、ならびにSetaria italicaからのイントロンを表1に提示する。
【表1】
同定したEXPを合成し、β-グルクロニダーゼ(GUS)発現を駆動するために使用される発現カセットにおいて、バイナリー植物形質転換ベクター構築物に、当該技術分野で既知の方法を使用してクローニングして、実施例2に記載するように、安定して形質転換されたトウモロコシ植物におけるEXPの活性を評価した。
【0080】
実施例2
安定して形質転換されたトウモロコシ植物におけるGUS発現を駆動するEXP-ANDge.Ubq:5の分析
トウモロコシ植物を、ベクター、具体的には、β-グルクロニダーゼ(GUS)導入遺伝子の発現を駆動するEXP、EXP-ANDge.LTP+ANDge.LTP+SETit.eIF5A3-2:2(配列番号1)を含有する植物発現ベクターで、形質転換した。得られた植物をGUSタンパク質発現について分析して、発現に対する調節エレメント群(EXP)の効果を評価した。
【0081】
トウモロコシ植物を植物GUS発現構築物で形質転換した。EXP-ANDge.LTP+ANDge.LTP+SETit.eIF5A3-2:2(配列番号1)を、当該技術分野で既知の標準的な方法を使用して、ベース植物発現ベクターにクローニングした。得られた植物発現ベクターは、Agrobacterium tumefaciensからの左境界領域(B-AGRtu.左境界)、除草剤グリホサートに対する抵抗性を付与する形質転換された植物細胞の選択に使用される第1の導入遺伝子選択カセット、EXP-ANDge.LTP+ANDge.LTP+SETit.eIF5A3-2:2の活性を評価するための第2の導入遺伝子カセット(3´UTR(T-SACra.Hsp16.9:2、配列番号6)に作動可能に連結された、プロセス可能なイントロン(配列番号5)からなるGUSのコード配列に対して5´側に作動可能に連結されたEXP-ANDge.LTP+ANDge.LTP+SETit.eIF5A3-2:2(配列番号1)を含む導入遺伝子カセットから構成された)、及びAgrobacterium tumefaciensからの右境界領域(B-AGRtu.右境界)を含有していた。
【0082】
トウモロコシ植物細胞は、当該技術分野で周知であるように、Agrobacterium媒介性形質転換によって上述のバイナリー形質転換ベクター構築物を使用して形質転換した。得られた形質転換された植物細胞を誘導して、トウモロコシ植物全体を形成した。
【0083】
定性的及び定量的GUS分析を使用して、形質転換された植物の選択した植物器官及び組織内での発現エレメントの活性を評価した。組織化学的染色によるGUS発現の定性分析については、全マウントまたは切片化組織を、1mg/mLのX-Gluc(5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-b-グルクロニド)を含有するGUS染色溶液で37℃で5時間インキュベートし、35%EtOH及び50%酢酸で脱染色した。GUS発現は、解剖顕微鏡または複合顕微鏡で、選択した植物器官または組織の青色発色を目視検査することにより定性的に判断した。
【0084】
酵素アッセイによるGUS発現の定量的分析については、形質転換されたトウモロコシ植物の選択された組織から全タンパク質を抽出した。1~2マイクログラムの総タンパク質を、50マイクロリットルの総反応体積中の1mM濃度の蛍光発生基質、4-メチルウンベリフェリル-β-D-グルクロニド(MUG)とインキュベートした。37℃で1時間のインキュベーションの後、350マイクロリットルの200mM重炭酸ナトリウム溶液を添加することによって反応を停止させた。反応生産物、4-メチルウンベリフェロン(4-MU)は、ヒドロキシル基がイオン化される高pHで最大限に蛍光性である。塩基性の炭酸ナトリウム溶液の添加により、アッセイを停止させると同時に、蛍光生産物4-MUの定量のためにpHを調整する。FLUOstar Omega Microplate Reader(BMG LABTECH)(励起:355nm、発光:460nm)を用いて、生成した4-MUの蛍光を測定し、その量を推定した。GUS活性値は、ナノモル単位の4-MU/時間/mg全タンパク質で提供される。
【0085】
R
0世代におけるGUS発現について、以下の組織を試料採取した。V4段階の葉及び根、V7段階の葉及び根、VT段階の葉及び茎/節間、R1段階の穂軸/シルク、ならびに受粉後日数(DAP)21のR3段階の種子胚。表2は、試料採取した組織の平均定量的GUS発現を示している。
【表2】
表2で見ることができるように、最も高いGUS発現は、V4及びV7の根、ならびにVTの茎/節間で見られた。定性的には、V4の根では一次根、側根、及び根端を通してGUS発現が観察された。V7の根の断面では、外皮組織においてGUS発現が観察された。EXP-ANDge.LTP+ANDge.LTP+SETit.eIF5A3-2:2(配列番号1)は、主に根及び茎における発現を駆動する。
【0086】
本発明の原理を例示及び説明したが、かかる原理から逸脱することなく、本発明の編成及び詳細を変更することができることが、当業者には明らかであるはずである。発明者らは、特許請求の範囲の趣旨及び範囲内にある全ての変更を特許請求する。本明細書で引用される全ての刊行物及び公開された特許文献は、あたかも個々の刊行物または特許出願の各々が参照により組み込まれることが明確かつ個別に示されているのと同じ程度まで、これにより本明細書に組み込まれる。
【配列表】
【国際調査報告】