(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-27
(54)【発明の名称】ルキソリチニブの経口用錠剤組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/519 20060101AFI20240820BHJP
A61K 9/22 20060101ALI20240820BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20240820BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240820BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20240820BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20240820BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240820BHJP
A61K 47/06 20060101ALI20240820BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20240820BHJP
A61K 9/32 20060101ALI20240820BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240820BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
A61K31/519
A61K9/22
A61K47/34
A61K47/10
A61K47/14
A61K47/38
A61K47/32
A61K47/06
A61K47/44
A61K9/32
A61P43/00 105
A61P7/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024509503
(86)(22)【出願日】2022-08-17
(85)【翻訳文提出日】2024-04-12
(86)【国際出願番号】 KR2022012298
(87)【国際公開番号】W WO2023022520
(87)【国際公開日】2023-02-23
(31)【優先権主張番号】10-2021-0108537
(32)【優先日】2021-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】521268484
【氏名又は名称】サムヤン、ホールディングス、コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】SAMYANG HOLDINGS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100189429
【氏名又は名称】保田 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213849
【氏名又は名称】澄川 広司
(72)【発明者】
【氏名】キム,ナム ヒョク
(72)【発明者】
【氏名】パク,サン ヨプ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ドン シク
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA38
4C076BB01
4C076CC14
4C076DD38M
4C076DD46M
4C076EE11M
4C076EE13M
4C076EE23M
4C076EE32M
4C076EE33M
4C076EE51M
4C076EE55M
4C076EE57M
4C076FF05
4C076FF32
4C076GG14
4C076GG16
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB05
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA35
4C086MA52
4C086NA10
4C086NA12
4C086ZA51
4C086ZB21
(57)【要約】
本発明は、骨髄増殖性疾患等のヤヌスキナーゼ-関連疾患の治療に有用なルキソリチニブ又はその薬学的に許容される塩の徐放性製剤及びその製造方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分としてルキソリチニブ;及び
徐放剤成分としてポリエチレンオキシド;
を含む、経口用錠剤。
【請求項2】
徐放性補助剤をさらに含む請求項1に記載の経口用錠剤。
【請求項3】
徐放性補助剤が、疎水性物質又は親水性物質である請求項2に記載の経口用錠剤。
【請求項4】
疎水性徐放性補助剤が、ベヘン酸グリセリル、エチルセルロース、アンモニウムメタクリル酸共重合体、セラック、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMC-P)、ワックス類、ガム類及びそれらの組み合わせから選択される請求項3に記載の経口用錠剤。
【請求項5】
親水性徐放性補助剤が、ポリエチレングリコール、ポビドン、ヒドロキシプロピルセルロース、糖アルコール類及びそれらの組み合わせから選択される請求項3に記載の経口用錠剤。
【請求項6】
ポリエチレンオキシドの粘度平均分子量が、100,000~4,000,000g/molである請求項1~5のいずれか1項に記載の経口用錠剤。
【請求項7】
ポリエチレンオキシドの粘度が、25℃における1~5%(wt/wt)水溶液において、1000cP~10000cPである請求項1~5のいずれか1項に記載の経口用錠剤。
【請求項8】
ポリエチレンオキシドの含量が、ルキソリチニブ1重量部に対して、10~90重量部である請求項1~5のいずれか1項に記載の経口用錠剤。
【請求項9】
有機溶媒を含まない請求項1~5のいずれか1項に記載の経口用錠剤。
【請求項10】
希釈剤をさらに含む請求項1~5のいずれか1項に記載の経口用錠剤。
【請求項11】
滑沢剤をさらに含む請求項1~5のいずれか1項に記載の経口用錠剤。
【請求項12】
結合剤をさらに含む請求項1~5のいずれか1項に記載の経口用錠剤。
【請求項13】
コーティング層をさらに含む請求項1~5のいずれか1項に記載の経口用錠剤。
【請求項14】
素錠を基準として、精製水中での薬物溶出率が0%である時点から85%以上になる時点までの溶出時間-溶出率曲線の線形回帰モデルによる決定係数R
2が0.93以上の溶出パターンを示す請求項1~5のいずれか1項に記載の経口用錠剤。
【請求項15】
経口用製剤の製造方法であって、
(1)有効成分としてルキソリチニブ及び徐放剤成分としてポリエチレンオキシドを含む混合物を製造する工程;及び
(2)前記混合物を打錠する工程;
を含む、経口用錠剤の製造方法。
【請求項16】
前記工程(2)で打錠した混合物がさらに徐放性補助剤を含む請求項15に記載の経口用錠剤の製造方法。
【請求項17】
徐放性補助剤が、疎水性物質又は親水性物質である請求項16に記載の経口用錠剤の製造方法。
【請求項18】
疎水性徐放性補助剤が、ベヘン酸グリセリル、エチルセルロース、アンモニウムメタクリル酸共重合体、セラック、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMC-P)、ワックス類、ガム類及びそれらの組み合わせから選択される請求項17に記載の経口用錠剤の製造方法。
【請求項19】
親水性徐放性補助剤が、ポリエチレングリコール、ポビドン、ヒドロキシプロピルセルロース、糖アルコール類及びそれらの組み合わせから選択される請求項17に記載の経口用錠剤の製造方法。
【請求項20】
(3)前記工程(2)の打錠の結果得られた錠剤(素錠)の表面をコーティング基剤でコーティングする工程をさらに含む請求項15~19のいずれか1項に記載の経口用錠剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨髄増殖性疾患などのヤヌスキナーゼ-関連疾患の治療に有用なルキソリチニブ又はその薬学的に許容される塩の徐放性製剤及びこれの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ルキソリチニブ((3R)-3-シクロペンチル-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)ピラゾール-1-イル]プロパンニトリル)は、FDAが承認した最初のヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤であり骨髄繊維症の治療薬として承認された最初の薬剤である。国内では、Jakavi(登録商標)の製品名で販売されており、1日2回投与される。
【0003】
ルキソリチニブは、経口吸収が速く、半減期が約3時間と短いBCSクラスIの分子である(非特許文献1)。これらの特性により、ヒト被検者では最大ピーク/最低血漿濃度比が生じ、その結果、最適な治療のために1日に複数回の投与が必要となり、患者のコンプライアンスや望ましくない副作用の問題につながる可能性がある。ルキソリチニブ療法は、一般に血小板減少症(血小板数の低下)及び貧血(ヘモグロビンの低下)の副作用に関連している。血小板減少症は、用量依存的であり、用量制限な毒性作用が考慮される。従って、治療効果を達成しながら患者の副作用を軽減し、また、治療学的効果を達成するために必要な投与回数を減らすことなどによって薬物の投与を容易にルキソリチニブの新規、かつ改良された製剤が必要とされていた。
【0004】
特許文献1には、1日1回投与を目的としたルキソリチニブの徐放性製剤が開示されているが、この文献に開示された製剤は、薬物の急速な初期放出を引き起こす可能性のあるヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有しており、低pHで高い溶出度を有するルキソリチニブの物理化学的特性により、胃酸などにさらされた際の初期放出制御が効率的でない問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】韓国 特開 第10-2015-0085833号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Shiet al., J. Clin. Pharmacol. 2012 Jun;52(6):809-18. Epub 2011 May 20
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記説明した従来技術の問題点を解決するためのものであり、本発明の目的は、既存のルキソリチニブ製剤の急速な初期放出の問題を解決し、より改善された薬物放出パターン及び向上された薬物吸収度を示すことができるルキソリチニブの徐放性製剤及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明の一側面は、有効成分としてルキソリチニブ;及び徐放剤成分としてポリエチレンオキシド;を含む経口用錠剤を提供する。
一実施形態において、本発明の経口用錠剤は、徐放性補助剤をさらに含む。
一実施形態において、前記徐放性補助剤は、疎水性物質又は親水性物質である。
【0009】
一実施形態において、疎水性徐放性補助剤は、ベヘン酸グリセリル、エチルセルロース、アンモニウムメタクリル酸共重合体、セラック、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMC-P)、ワックス類、ガム類及びそれらの組み合わせから選択されてもよい。
【0010】
一実施形態において、親水性徐放性補助剤は、ポリエチレングリコール、ポビドン、ヒドロキシプロピルセルロース、糖アルコール類及びそれらの組み合わせから選択されてもよい。
【0011】
一実施形態において、本発明の経口用錠剤は、素錠を基準として、精製水中での薬物溶出率が0%である時点から85%以上になる時点までの溶出時間-溶出率曲線を線形回帰モデルによる決定係数R2が0.93以上の溶出パターンを示していてもよい。
【0012】
本発明の別の側面は、経口用製剤の製造方法であって、(1)有効成分としてルキソリチニブ及び徐放剤成分としてポリエチレンオキシドを含む混合物を製造する工程;及び(2)前記混合物を打錠する工程;を含む、経口用錠剤の製造方法を提供する。
【0013】
一実施形態において、前記本発明の経口用錠剤製造方法の工程(2)で打錠される混合物は、前記説明したように、徐放性補助剤をさらに含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明により提供されるルキソリチニブの経口用錠剤は、薬物の急速な初期放出を伴わない徐放性製剤の特徴を示し、pH変化による薬物放出パターンの変化を最小限に抑えることにより、薬物の体内血中濃度を効率的に有効レベル以上に維持することができる。従って、本発明によれば、既存のルキソリチニブ製剤の急速な初期放出の問題を解決し、より改善された薬物放出パターン及び向上された薬物吸収度を示すことができるルキソリチニブの徐放性製剤を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
用語の意義
明示的な別段の記載がない限り、本発明の明細書全体で使用されるいくつかの用語は、以下のように定義することができる。
本発明の明細書全体において、特に断らない限り、「含むこと」又は「含有すること」は、特に限定されることなく、特定の構成要素(又は構成成分)を含むことを意味し、他の構成要素(又は構成成分)の付加を排除するものと解釈されるものではない。
【0016】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0017】
本発明によるルキソリチニブの経口用錠剤は、有効成分としてルキソリチニブ;及び徐放剤成分としてポリエチレンオキシド;を含む。
本発明において、前記「ルキソリチニブ」は、ルキソリチニブの遊離塩基(別の塩を含まない基剤)、又はその薬学的に許容される塩(例えば、リン酸塩)又はその異性体、又はそれらの混合物であってもよい。また、それぞれの場合において、様々な水和物を形成し、また、それぞれの場合において、様々な結晶形を形成することもできる。例えば、それは、ルキソリチニブ無水物、半水和物、一水和物、二水和物、三水和物などの様々な水和物又は様々な溶媒和物、又はそれらの混合物であってもよい。
一実施形態において、前記「ルキソリチニブ又はその薬学的に許容される塩」は、ルキソリチニブリン酸塩であってもよい。
【0018】
本発明において、徐放成分として用いられる前記ポリエチレンオキシドは、製剤からの薬物の放出を制御できるものであれば特に限定されない。一実施形態において、このようなポリエチレンオキシド(以下、PEOと略することがある)としては、例えば、POLYOX WSR 303、POLYOX WSR 301、POLYOX WSR N60K、POLYOX WSR 205、POLYOX WSR N80又はそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。本発明において、分子量及びグレードなどが異なる2種以上のPEOを組み合わせて用いてもよい。
【0019】
一実施形態において、PEOの粘度平均分子量(g/mol)(2種以上のPEOが組み合わせて使用される場合は、その組み合わせの粘度平均分子量を意味する)は、例えば、50,000以上、100,000以上、150,000以上又は200,000以上であってもよく、また、7,000,000以下、6,000,000以下、5,000,000以下、4,000,000以下、3,000,000以下又は2,000,000以下であってもよく、より具体的には、100,000~4,000,000g/mol、150,000~3,000,000g/mol、又は200,000~2,000,000g/molであってもよいが、これらに限定されない。PEOの粘度平均分子量が前記レベルより低すぎると、薬物の放出が速すぎて徐放性製剤としての意味がなくなる場合があり、逆に前記レベルより高すぎると、生体内投与24時間後でも高い血中濃度を示し、繰り返し投与により血中薬物濃度の蓄積が起こる場合がある。
【0020】
一実施形態において、PEOの粘度(2種以上のPEOが組み合わせて使用される場合は、その組み合わせの粘度を意味する)は、25℃における1~5%(wt/wt)水溶液を基準として、例えば、1000cP以上、1100cP以上、1200cP以上、1300cP以上、1400cP以上又は1500cP以上であってもよく、また、10000cP以下、9000cP以下、8000cP以下、7000cP以下又は6000cP以下であってもよい。例えば、PEOの粘度は、25℃における1%(wt/wt)水溶液を基準として1000cP~6000cP、又は25℃における2%(wt/wt)水溶液基準として1500cP~7000cP、又は25℃における5%(wt/wt)水溶液基準として4000cP~10000cPであってもよいが、これらに限定されない。PEOの粘度が前記レベルより低すぎると薬物の放出が速すぎて徐放製剤としての意味がない場合があり、逆に前記レベルより高すぎると生体内投与24時間後でも高い血中濃度を示し、繰り返し投与により血中薬物濃度の蓄積が起こる場合がある。
【0021】
一実施形態において、本発明の経口用錠剤中のPEO含量は、ルキソリチニブ1重量部に対して、1重量部以上、5重量部以上、10重量部以上、20重量部以上、30重量部以上又は40重量部以上であってもよく、また、90重量部以下、80重量部以下又は70重量部以下であってもよく、より具体的には、10~90重量部、20~80重量部、又は40~70重量部であってもよいが、これらに限定されない。本発明の経口用錠剤中のPEO含量が前記レベルより少なすぎると薬物の放出が速すぎるため、徐放性製剤として意味がなく、逆に前記レベルより高すぎると粘性高分子の割合が多くなるため、打錠が不可能となり、薬物が十分に放出されずに体外に排泄されるおそれがある。
【0022】
前記PEOは、有機溶媒、例えば、アルコール、特に、エタノールを接触すると直ちに溶出してケル化する現象を示すため、このような溶媒を用いた湿式造粒及びその後の乾燥、ふるい分け、及び打錠工程を適用することができない。
【0023】
従って、一実施形態において、本発明の経口用錠剤は、有機溶媒(例えば、エタノールなどのアルコール)を含まない。すなわち、一実施形態において、本発明の経口用錠剤は、有機溶媒(例えば、エタノールなどのアルコール)を使用しない乾式法により製造される。
一実施形態において、本発明の経口用錠剤は、徐放性補助剤をさらに含む。
一実施形態において、前記徐放性補助剤は、水分の浸透に対する抵抗性を有する疎水性物質又は水分の浸透に対する補助及び粘度補助の機能を有する親水性物質であってもよい。
【0024】
一実施形態において、疎水性徐放性補助剤は、ベヘン酸グリセリル、エチルセルロース、アンモニウムメタクリル酸共重合体、セラック、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMC-P)、ワックス類、ガム類及びそれらの組み合わせから選択することができる。
前記ベヘン酸グリセリルは、本発明の経口用錠剤に含まれる場合、乾式造粒工程及び圧縮成形工程中に適切な滑沢剤として機能し、また、その強い疎水性特性により錠剤の形態を維持し、薬物放出を遅延させる。
【0025】
一実施形態において、前記アンモニウムメタクリル酸共重合体は、ポリ(エチルアクリレート/メチルメタクリレート/塩化トリメチルアンモニウムメタクリレート)(例えば、Eudragit(登録商標)RL又はEudragit(登録商標)RS、Evonik社製)であってもよいが、これに限定されない。
【0026】
一実施形態において、前記ワックス類は、カルナウバワックス、蜜ろう、微結晶ワックス又はそれらの組み合わせであってもよく、前記ガム類は、グアーガム、ローカストビーンガム、トラガカンタ、カラギーナン、アカシアガム、アラビアガム、ジェランガム、キサンタンガム又はそれらの組み合わせであってもよいが、これらに限定されない。
【0027】
一実施形態において、親水性徐放性補助剤は、ポリエチレングリコール、ポビドン、ヒドロキシプロピルセルロース、糖アルコール類及びそれらの組み合わせから選択することができる。
【0028】
一実施形態において、前記ポリエチレングリコール(例えば、商品名マクロゴール)の数平均分子量(g/mol)は、1,000~10,000g/molであってもよいが、これに限定されない。
【0029】
一実施形態において、前記糖アルコール類は、ソルビトール、マルチトール、キシリトール、エリトリトール又はそれらの組み合わせであってもよいが、これらに限定されない。
【0030】
好ましい一実施形態において、前記疎水性徐放性補助剤は、ベヘン酸グリセリルであってもよく、前記親水性徐放性補助剤は、ポリエチレングリコールであってもよい。
【0031】
一実施形態において、本発明の経口用錠剤中の徐放性補助剤の含量は、ルキソリチニブ1重量部に対して、0.05重量部以上、0.1重量部以上、0.12重量部以上又は0.15重量部以上であってもよく、また、5重量部以下、4重量部以下、3重量部以下又は2重量部以下であってもよいが、これらに限定されない。本発明の経口用錠剤中の徐放性補助剤の含量が前記レベルより少なすぎると、乾式造粒工程及び圧縮成形工程での不具合及びゲル化以後の錠剤形状の崩れなど問題が生じる場合があり、逆に前記レベルより多すぎると、結合力低下による乾式造粒工程及び圧縮成形工程での不具合などの問題が生じる場合がある。前記徐放性補助剤(例えば、ベヘン酸グリセリル)が同時に滑沢剤として機能する場合、その含量は、錠剤全重量に対して、5w/w%~20w/w%、10w/w%~20w/w%、又は10w/w%~15w/w%であってもよい。
【0032】
本発明の経口用錠剤は、前記説明した成分に加えて、薬学的に許容される担体又は添加剤の一つ以上さらに含むことができる。
【0033】
一実施形態において、本発明の経口用錠剤は、希釈剤をさらに含むことができる。
一実施形態において、前記希釈剤は、糖、糖アルコール、セルロース、デンプン、無機塩及びそれらの混合物からなる群から選択してもよく、より具体的には、ラクトース(無水物又は水和物、例えば、一水和物)、セルロース粉末、微晶質セルロース、ケイ化された微晶質セルロース、デンプン、糊化デンプン、炭酸カルシウム、シクロデキストリン、硫酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム、三ケイ酸マグネシウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、リン酸水素カルシウム二水和物、リン酸三カルシウム、カオリン、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、マンニトール、マルチトール、ソルビトール、キシリトール、ラクトース、デキストロース、マルトース、スクロース、グルコース、フルクトース、マルトデキストリン、デキストレート、デキストリン及びそれらの混合物からなる群から選択することができる。好ましくは、ラクトース又はマンニトールが前記から選択することができる。
一実施形態において、前記希釈剤が、結合剤としても機能する場合がある。
【0034】
一実施形態において、本発明の経口用錠剤において希釈剤が使用される場合、その使用量は、ルキソリチニブ1重量部に対して、0.5重量部以上、1重量部以上又は1.5重量部以上であってもよく、また、400重量部以下、200重量部以下、100重量部以下、50重量部以下、又は20重量部以下であってもよいが、これらに限定されない。希釈剤の含量が前記範囲にあると錠剤の製造に適する。
【0035】
一実施形態において、本発明の経口用錠剤は、滑沢剤をさらに含むことができる。
一実施形態において、前記滑沢剤は、可溶性滑沢剤、不溶性滑沢剤及びそれらの混合物からなる群から選択されてもよく、より具体的には、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル、デンプン、タルク、コロイド状シリカ、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、モノステアリン酸グリセリル、二酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、硬化植物油、軽質流動パラフィン、ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、モノステアリン酸ポリオキシエチレン、トリ酢酸グリセリル、スクロースモノラウラート及びそれらの混合物からなる群から選択することができる。これらの中でも、好ましくはステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸又はコロイド状シリカが選択され、より好ましくはステアリン酸マグネシウムを選択することができる。
【0036】
一実施形態において、本発明の経口用錠剤に滑沢剤が使用される場合、その使用量は、ルキソリチニブ1重量部に対して、0.005重量部以上、0.01重量部以上又は0.05重量部以上であってもよく、また、10重量部以下、5重量部以下又は1重量部以下であってもよいが、これらに限定されない。滑沢剤の含量が前記範囲にあると、錠剤の打錠安定性及び生産性の側面で好適である。
【0037】
本発明の経口用錠剤において、前記PEOは打錠工程において結合剤として作用することができる。従って、一実施形態において、本発明の経口用錠剤は結合剤を含まなくてもよい。しかし、本発明の経口用錠剤において結合剤の使用の可能性を完全に排除するものではないため、他の一実施形態において、本発明の経口用錠剤は、結合剤をさらに含んでいてもよく、その種類及び含量は、本発明の目的を達成できる範囲内で適切に選択することができる。
【0038】
本発明の経口用錠剤は、コーティング層をさらに含むことができる。
一実施形態において、前記コーティング層を形成するコーティング基材は、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びその塩、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、マクロゴールポリビニルアルコールグラフト共重合体、アクリル酸及びその塩の重合体、ポリメタクリレート、ポリ(ブチルメタクリレート、2-ジメチルアミノエチルメタクリレート、メチルメタクリレート)共重合体、ビニルピロリドン-ビニルアセテート共重合体、ゼラチン、グアーガム、部分加水分解デンプン、アルギネート、キサンタン及びそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0039】
一実施形態において、本発明の経口用錠剤がコーティング層をさらに含む場合、その含量は、コーティング前の錠剤(素錠)100重量部に対して、1重量部以上、2重量部以上、3重量部以上、4重量部以上、5重量部以上又は6重量部以上であってもよく、また、30重量部以下、25重量部以下、20重量部以下又は15重量部以下であってもよいが、これらに限定されない。コーティング層の含量が前記範囲より少ないと素錠全体が充分にコーティングされない場合があり、逆に前記範囲より多いと溶出速度が遅くなる場合がある。
【0040】
コーティングの目的は、素錠の安定性向上及び薬物の消失を防ぐことである。従って、必要に応じて、第1のコーティングの後に第2のコーティングを行ってもよく、その厚みも適宜選択すればよい。ただし、前述したようにコーティングにより薬物の溶出が遅れてはいけないため、適切な範囲を選択する必要がある。コーティングに必要なその他の成分及び方法は、当業者によって適宜採択することができる。
【0041】
一実施形態において、本発明の経口用錠剤のコーティング前の錠剤(素錠)の硬度は、10N~400Nであってもよい。より具体的には、本発明の経口用錠剤の素錠の平均硬度の最小値は10N、20N、30N又は50Nであり、平均硬度の最大値は400N、300N、200N又は150Nであってもよい。素錠の硬度が前記レベルより高いと打錠圧力が高くなりすぎて工程上問題が生じる可能性があり、逆に前記レベルより低いと錠剤が弱くなりコーティング、運搬、保管、梱包、服用時に割れる可能性がある。
【0042】
一実施形態において、本発明の経口用錠剤は、50rpm条件下、37℃の精製水中において、16時間内又は12時間内に85%以下、80%以下、75%以下、70%以下又は65%以下の溶出率を有することができる。
また、一実施形態において、本発明の経口用錠剤は、0.1NのHCl水溶液中、37℃、50rpm条件下で、8時間内又は5時間内に70%以下、60%以下又は50%以下の溶出率を有することができる。
【0043】
一実施形態において、本発明の経口用錠剤は、素錠を基準として、薬物溶出率が0%である時点から85%以上になる時点までの精製水中での溶出時間-溶出率曲線を線形回帰モデルにより得た決定係数R2が0.93以上である溶出パターンを示すことができる。より具体的には、前記決定係数R2は0.95以上、0.97以上、0.99以上又は0.995以上であってもよい(R2の最大値は1)。前記溶出パターンは、例えば、韓国薬局方溶出試験法の2(パドル、50rpm)によって決定することができる。
【0044】
前記決定係数R
2は、溶出時間-溶出率曲線から線形回帰モデルにより求めた溶出時間(X)-溶出率(Y)傾向線と実験値との差の程度を表し、薬物溶出率が0%である時点から85%以上になる時点までの薬物放出パターンの直線性を知るためのものであり、線形回帰モデルが直線的によくフィットしているかどうかを示す指標である。R
2が1に近づくと、すべての反応変数が予測変数とフィットすると言える。すなわち、傾向線による1次式のR
2値が1に近づくほど、ゼロ次放出として制御することが可能となり、体内で薬物が同じ速度で放出され、血中の有効薬物濃度が維持されることを意味する。決定係数R
2は、以下の式によって計算される:
【数1】
【0045】
一実施形態において、本発明の経口用錠剤の形状は、長方形、楕円形、菱形、円形、多角形(例えば、三角形、四角形、五角形、六角形など)等の様々であってもよい。錠剤の形状は、患者が服用する際の便宜性、パンチ製造及び管理の容易性、錠剤打錠、コーティング、包装及び取り扱いなどの製造関連容易性、溶出パターンの制御性、錠剤の硬度、摩損度、崩壊性などの物性に関連する変数の制御の容易性などを総合的に判断して決定することができる。また、各投与量に応じて適切な形状を選択することができる。
【0046】
一実施形態において、特に最大用量の場合であっても、本発明の経口用錠剤のコーティング前の錠剤(素錠)の全重量は、錠剤の平均重量として、好ましくは1100mg以下である。より好ましくは880mg以下、さらに好ましくは660mg以下、さらに好ましくは550mg以下、さらに好ましくは440mg以下、最も好ましくは350mg以下であってもよい。
【0047】
一実施形態において、本発明の経口用錠剤は、ヤヌスキナーゼ-関連疾患、より具体的には骨髄増殖性疾患の治療に有用である。
【0048】
本発明の別の側面によれば、(1)有効成分としてルキソリチニブと徐放剤成分としてポリエチレンオキシドを含む混合物を製造する工程;及び(2)前記混合物を打錠する工程;を含む経口用錠剤の製造方法を提供する。
【0049】
一実施形態によれば、前記本発明の経口用錠剤製造方法の工程(2)で打錠される混合物は徐放性補助剤をさらに含む。
【0050】
前記経口用錠剤の製造方法において、有効成分としてのルキソリチニブ、徐放剤成分としてのポリエチレンオキシド、及びさらなる成分としての徐放性補助剤は、前記説明と同様である。
一実施形態において、前記工程(2)で打錠される混合物は、希釈剤をさらに含んでもよく、本明細書で使用できる希釈剤、前記説明と同様である。
一実施形態において、前記工程(2)で打錠される混合物は、滑沢剤をさらに含んでもよく、本明細書で使用できる滑沢剤は、前記説明と同様である。
一実施形態において、前記工程(2)で打錠される混合物は、結合剤をさらに含んでもよく、本明細書で使用できる結合剤は、前記説明と同様である。
【0051】
一実施形態において、本発明の経口用錠剤の製造方法は、(3)前記工程(2)で打錠の結果得られた錠剤(素錠)の表面をコーティング基剤でコーティングする工程をさらに含んでもよく、本明細書で使用できるコーティング基剤は、前記説明と同様である。
【0052】
一般的な経口用固形製剤製造方法は下記の工程を含む:
工程1:滑沢剤以外の添加剤(例えば、徐放剤、徐放性補助剤、希釈剤、結合剤など)の混合する工程
工程2:前記添加剤の混合物に薬物を添加して混合する工程
工程3:前記薬物と添加剤の混合物を造粒する工程
工程4:前記造粒物と滑沢剤を混合する工程
工程5:滑沢工程を終えた前記造粒物を打錠する工程
工程6:前記錠剤をコーティングする工程
また、前記各工程において、ふるい分けによって混合物の粒度を均一にする工程を加えてもよい。この工程は、混合物の流動性及び圧縮成形性に役に立つ場合がある。
【0053】
本発明の経口用錠剤は、前記の一般的な方法をそのまま適用するか、又は適切な変更を加えて製造することができる。
【0054】
例えば、一実施形態において、本発明の経口用錠剤は、有効成分としてのルキソリチニブ、徐放剤成分としてのポリエチレンオキシド及び希釈剤をふるい分けして混合し、そこに徐放性補助剤としてベヘン酸グリセリル又はマクロゴール、及び滑沢剤をさらに加えて混合し、得られた混合物を打錠するという方法で製造することができる。他の実施形態では、ルキソリチニブ、ポリエチレンオキシド、希釈剤及び徐放性補助剤としてベヘン酸グリセリル又はマクロゴールをふるい分けして混合し、そこに滑沢剤をさらに加えて混合し、得られた混合物を打錠するという方法で製造することができる。別の実施形態では、ルキソリチニブ、ポリエチレンオキシド、希釈剤、徐放性補助剤としてベヘン酸グリセリル又はマクロゴール、及び滑沢剤をふるい分けして混合し、次いで乾式圧縮造粒を行い、そこに滑沢剤をさらに加えて混合し、得られた混合物を打錠するという方法で製造することができる。
【0055】
一実施形態において、本発明の経口用錠剤の製造は、原料成分の秤量、その後、(任意の)造粒、混合、打錠、コーティングの順で製造することができる。造粒は、乾式造粒、湿式造粒などにより行うことができる。
【0056】
一実施形態において、湿式造粒により造粒が行われる場合、造粒物は、結合剤溶液を製造し、これに薬物を希釈剤などとともに加えて混合し、得られた混合物を結合剤溶液と混合して造粒物を形成し、この造粒物をふるい分け、乾燥することにより得られる。その後、残りの成分を後混合により混合し、打錠する。前記結合剤溶液は、前記説明したものと同様である。結合剤溶媒としては水などを使用することもできるが、PEOは有機溶媒、例えば、アルコール、特に、エタノールと接触すると直ちに溶出してゲル化する現象を示すため、このような溶媒は使わない。
【0057】
一実施形態において、造粒が乾式造粒により行われる場合、薬物と希釈剤などの混合物は、ローラーコンパクターなどを使用して圧縮され、ふるい分けされ、その後、残りの成分を後混合により混合し、次いで、得られた混合物を打錠する。
【0058】
以下の実施例は、本発明の理解を容易にするために提示される。ただし、以下の実施例は本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲はこれによって何ら限定されるものでない。
【実施例】
【0059】
使用されたポリエチレンオキシドの成分
・POLYOX WSR 205:粘度平均分子量:600,000g/mol、粘度(5%水溶液、25℃):4500~8800cP
・POLYOX WSR N60K:粘度平均分子量:2,000,000g/mol、粘度(2%水溶液、25℃):2000~4000cP
・POLYOX WSR 301:粘度平均分子量:4,000,000g/mol、粘度(1%水溶液、25℃):1650~5500cP
・POLYOX WSR N80:粘度平均分子量:200,000g/mol、粘度(5%水溶液、25℃):65~90cP
【0060】
使用された徐放性補助剤の成分
・ベヘン酸グリセリル
・マクロゴール4000(数平均分子量4000g/molのポリエチレングリコール)
【0061】
実施例1
<素錠の製造>
2.64gのルキソリチニブリン酸塩、18.5gのPOLYOX WSR 205及び5.12gのマンニトールをふるいにかけて混合し、0.44gのベヘン酸グリセリルと0.3gのステアリン酸マグネシウムを加えて混合した(滑沢工程)。この混合物を1錠当たり270.0mgの重量に基づいて長方形のパンチで打錠した。
【0062】
実施例2
<素錠の製造>
2.64gのルキソリチニブリン酸塩、18.5gのPOLYOX WSR N60K、5.12gのマンニトールをふるいにかけて混合し、0.44gのベヘン酸グリセリルと0.3gのステアリン酸マグネシウムを加えて混合した(滑沢工程)。この混合物を1錠当たり270.0mgの重量に基づいて長方形のパンチで打錠した。
【0063】
実施例3
<素錠の製造>
2.64gのルキソリチニブリン酸塩、18.5gのPOLYOX WSR301及び5.12gのマンニトールをふるいにかけて混合し、0.44gのベヘン酸グリセリルと0.3gのステアリン酸マグネシウムを加えて混合した(滑沢工程)。この混合物を1錠当たり270.0mgの重量に基づいて長方形のパンチで打錠した。
【0064】
実施例4
<素錠の製造>
2.64gのルキソリチニブリン酸塩、15.0gのPOLYOX WSR 205、5.12gのマンニトール及び4.5gのベヘン酸グリセリルをふるいにかけて混合し、0.3gのステアリン酸マグネシウムを加えて混合した(滑沢工程)。この混合物を1錠当たり275.6mgの重量に基づいて長方形のパンチで打錠した。
【0065】
比較例1
<素錠の製造>
2.64gのルキソリチニブリン酸塩、4.75gの微結晶セルロース、9.16gのラクトース水和物、0.87gのヒドロキシプロピルメチルセルロース(2208 K15)及び3.46gのヒドロキシプロピルメチルセルロース(2208 K4)をふるいにかけて混合した。次いで、6.0gの水を加えて混合し、得られた混合物を50℃で乾燥して溶媒を揮発させた後、ふるい分けして造粒物を得た。
ふるい分けした造粒物に、0.216gの軽質無水ケイ酸、0.104gのステアリン酸マグネシウム及び0.432gのステアリン酸を加えて混合した(滑沢工程)。この混合物を1錠当たり216.4mgの重量に基づいて長方形のパンチで打錠した。
【0066】
比較例2
<素錠の製造>
2.64gのルキソリチニブリン酸塩、4.75gの微結晶セルロース及び9.16gのラクトース水和物をふるいにかけて混合した。ついで、5.69gのEudragit(登録商標)RSをエタノール10.0gに溶出して溶液を加えて混合し、50℃で乾燥して溶媒を揮発させた後、ふるい分けして造粒物を得た。
ふるい分けした造粒物に、0.28gのステアリン酸マグネシウムを加えて混合した(滑沢工程)。この混合物を1錠当たり270.0mgの重量に基づいて長方形のパンチで打錠した。
【0067】
比較例3
<湿式造粒の製造>
2.64gのルキソリチニブリン酸塩、18.5gのPOLYOX WSR 205及び5.12gのマンニトールをふるいにかけて混合した。次いで、6.0gのエタノールを加えて混合し、50℃で乾燥して溶媒を揮発させた後、ふるい分けする工程を適用した。
しかし、POLYOXは、エタノールと接触すると直ちに溶出してゲル化する現象を示し、混合物は乾燥後のふるい分け工程を適用できない状態であった。従って、比較例3では、造粒工程を完了することができず、その後の打錠工程を行うことができなかった。
【0068】
試験例1:苛酷安定性試験
実施例1~4及び比較例1~2で製造された各錠剤をHDPE瓶に入れ、60℃に保ちながら、保存時間による錠剤中のルキソリチニブの含量及び類縁物質の含量の変化を確認した。その結果を下記表1及び表2にそれぞれ示した。
分析方法:HPLC法
【表1】
【表2】
【0069】
試験例2:溶出試験及び溶出パターンの直線性の評価
1.溶出試験
実施例1~4及び比較例1で製造された各錠剤について、韓国薬局方第10改正溶出試験法のパドル法に従い、以下の条件でn=3の溶出試験を行った。
<溶出試験方法>
溶出液:精製水
回転速度:50rpm
温度:37℃
溶出検液の採取時点:0.25時間、0.5時間、0.75時間、1時間、1.5時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、12時間、14時間、16時間、18時間、20時間、24時間
分析方法:HPLC分析法
【0070】
2.溶出パターンの直線性の評価
実施例1~4及び比較例1で製造された各錠剤について行った溶出試験の結果から、溶出時間(X)と溶出率(Y)との方程式を、0時間時点から約85%溶出時点までの溶出曲線の線形回帰モデルによる傾向線として算出し、その結果を下記表3に示した。
【表3】
【0071】
以上の試験結果より、実施例1~4の徐放性錠剤の放出プロファイルは、比較例1と比較して直線に近い(すなわち、R2が1に近い)ことが確認することができる。
【0072】
実施例5
<素錠の製造>
2.64gのルキソリチニブリン酸塩、15.0gのPOLYOX WSR 205、5.12gのマンニトール、4.5gのベヘン酸グリセリル及び0.1gのステアリン酸マグネシウムをふるい分けして混合した。この混合物をローラーコンパクター(CHAMUNDA社製のCPMRC-200/50モデル)で0.8トンの圧力下で造粒物に調製した。この造粒物をふるい分けした後、ふるい分けした0.2gのステアリン酸マグネシウムを混合した(滑沢工程)。得られた造粒物を錠当たり275.6mgの重量に基づいて長方形パンチで打錠した。
【0073】
<コーティング錠の製造>
実施例4及び5の各素錠を用い、80%エタノール中のOpadry 20A(カラーコーン)分散液から1錠当たり3.0mgのOpadry 20Aを1次コーティングし、次いで、精製水中のOpadry 200F(カラーコーン)分散液から1錠当たり8.0mgのOpadry 200Fを2次コーティングすることにより、コーティング錠を製造した。
【0074】
試験例3:コーティング錠の溶出試験
前記実施例4及び5で製造された各コーティング錠について、韓国薬局方第10改正溶出試験法のパドル法に従い、以下の条件でn=3の溶出試験を行った。その結果を下記表4に示した。
<溶出試験方法>
溶出液:精製水
回転速度:50rpm
温度:37℃
溶出検液採取時点:0.25時間、0.5時間、0.75時間、1時間、1.5時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、12時間、14時間、16時間、18時間、20時間、24時間
分析方法:HPLC分析法
【表4】
【0075】
実施例6~10
<素錠の製造>
下記表5に示す組成を用いて、実施例1と同様の方法で錠剤を製造した。
【表5】
【0076】
試験例4:溶出試験及び溶出パターンの直線性の評価
実施例6~10で製造された各錠剤について、試験例2の「1.溶出試験」と同様の方法で溶出試験を行い、その結果を下記表6に示した。溶出検液採取時点は、試験開始時点(0時間)、及び試験開始後0.25時間、0.5時間、0.75時間、1時間、1.5時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、12時間、14時間、16時間であった。
また、溶出試験の結果から、溶出時間(X)と溶出率(Y)との方程式を、0時間時点から溶出率が85%以上になる時点までの溶出曲線に対する線形回帰モデルによる傾向線として算出し、その結果を下記表7に示した。
【表6-1】
【表6-2】
【表7】
【0077】
以上の結果から、疎水性徐放性補助剤だけでなく、親水性徐放性補助剤がPolyoxの特徴であるゼロ次放出制御に影響を与えないことが確認された。
【0078】
比較例4:ルキソリチニブ徐放製剤との生体内での薬物動態学特性を比較するために比較群として用いる速放性製剤の製造
26.4gのルキソリチニブリン酸塩、17.84gの微結晶セルロース、18.5gのラクトース水和物、1.3gのデンプングリコール酸ナトリウム、0.8gのポビドン(k-30)及び0.8gのヒドロキシプロピルセルロースをふるいにかけて混合した。次いで、これに適量の精製水を加え、得られた混合物を造粒し、50℃で乾燥して溶媒を揮発させた後、ふるい分けして造粒物を得た。ふるい分けした造粒物に、0.42gの軽質無水ケイ酸と0.2gのステアリン酸マグネシウムを加えて混合した。この混合物を1錠当たり425.0mgの重量に基づいて長方形のパンチで打錠した。素錠の硬度は約140Nであった。
【0079】
試験例5:薬物動態(PK)試験
比較例4と実施例6、8~10で製造された各ルキソリチニブ錠(ルキソリチニブとして20mgの用量)について、生体内での薬物動態特性を比較するために、ビーグル犬を用いた非臨床薬物動態(PK)試験を行った。実験動物はビーグル犬(N=5)で、空腹時に水とともに投与し、48時間まで所定の時間間隔で採血した。各検体について採取した血液サンプルを、血漿分離後、凍結保存し、LC/MS/MS装置で経時的に血中濃度を分析し、その当データからAUC、Cmax、半減期を算出した。その結果をまとめ、下記表8に示した。
【表8】
【0080】
以上の結果から、実施例の製剤は、Cmaxが低く、半減期が長い徐放性製剤の特性を示すことが確認された。特に、実施例8~10の場合、AUCが比較例4(速放性製剤)のAUCに近く、薬物吸収に有利であることがわかる。
【国際調査報告】