(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-27
(54)【発明の名称】焦点深度が拡張された多焦点眼科用レンズ
(51)【国際特許分類】
G02C 7/06 20060101AFI20240820BHJP
G02B 5/18 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
G02C7/06
G02B5/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024510471
(86)(22)【出願日】2022-08-16
(85)【翻訳文提出日】2024-02-20
(86)【国際出願番号】 IB2022057662
(87)【国際公開番号】W WO2023031715
(87)【国際公開日】2023-03-09
(32)【優先日】2021-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】シン ホン
【テーマコード(参考)】
2H006
2H249
【Fターム(参考)】
2H006BD03
2H249AA04
2H249AA18
2H249AA55
(57)【要約】
眼科用レンズは、光軸回りに配置された第1の表面及び第2の表面を有する光学素子を含む。第1の表面及び第2の表面の少なくとも一方が、基本曲率及び複数のゾーンを有する表面プロファイルを含む。基本曲率は基本屈折力に対応する。複数のゾーンは、光軸に沿った光エネルギー分布に対応する複数の曲線を生成すべく適合されている。表面プロファイルは、焦点深度を拡張する複数の調整を含み、複数の調整は、複数の曲線の各1個を複数の曲線の別の1個の曲線に向けて拡張すべく適合されている。複数の調整は、少なくとも1個の球面収差を含んでよい。複数の調整は、少なくとも1個の縦色収差を含んでよい。複数の調整は、少なくとも1個の位相ずれ変更を含んでよい。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼科用レンズであって、
光軸回りに配置された第1の表面及び第2の表面を有する光学素子を含み、
前記第1の表面及び前記第2の表面の少なくとも一方が、基本曲率及び複数のゾーンを有する表面プロファイルを含み、前記基本曲率が基本屈折力に対応し、
前記複数のゾーンが、前記光軸に沿った光エネルギー分布に対応する複数の曲線を生成すべく適合されていて、
前記表面プロファイルが、焦点深度を拡張する複数の調整を含み、前記複数の調整が、前記複数の曲線の各1個を前記複数の曲線の別の1個の曲線に向けて拡張すべく適合されている眼科用レンズ。
【請求項2】
請求項1に記載の眼科用レンズにおいて、
前記複数の調整が少なくとも1個の球面収差を含む眼科用レンズ。
【請求項3】
請求項1に記載の眼科用レンズにおいて、
前記複数の調整が少なくとも1個の縦色収差を含む眼科用レンズ。
【請求項4】
請求項1に記載の眼科用レンズにおいて、
前記複数の調整が少なくとも1個の位相ずれ変更を含む眼科用レンズ。
【請求項5】
請求項1に記載の眼科用レンズにおいて、
前記複数の曲線が、近曲線、遠曲線、及び前記光軸に沿って前記近曲線と前記遠曲線との間に中間曲線を含み、
前記複数のゾーンが、前記近曲線を介して近傍矯正、前記遠曲線を介して遠方矯正、及び前記中間曲線を介して中間矯正を生成すべく適合され、前記遠方矯正が前記基本屈折力に対応している眼科用レンズ。
【請求項6】
請求項5に記載の眼科用レンズにおいて、
前記複数の調整が、前記遠曲線を前記中間曲線に向けて拡張すべく適合された第1の調整と、前記中間曲線を前記遠曲線に向けて拡張すべく適合された第2の調整と、前記近曲線を前記中間曲線に向けて拡張すべく適合された第3の調整を含む眼科用レンズ。
【請求項7】
請求項6に記載の眼科用レンズにおいて、
前記第1の調整が負の球面収差を含み、
前記第2の調整及び前記第3の調整が各々正の球面収差を含む眼科用レンズ。
【請求項8】
請求項7に記載の眼科用レンズにおいて、
前記複数のゾーンが各々、入射光を屈折させるべく適合された度数領域を含み、
前記第1の調整、前記第2の調整、及び前記第3の調整が各々、各度数領域の非球面度を変化させることを含む眼科用レンズ。
【請求項9】
請求項7に記載の眼科用レンズにおいて、
前記複数のゾーンが、入射光を回折させるべく適合された環状リングを含み、前記環状リングが各々の多項式により画定され、
前記第1の調整が、前記遠方矯正のために前記基本曲率の非球面度を変化させることを含み、
前記第2の調整及び前記第3の調整が前記各々の多項式を変化させることを含む眼科用レンズ。
【請求項10】
請求項6に記載の眼科用レンズにおいて、
前記第1の調整が正の縦色収差を含み、
前記第2の調整及び前記第3の調整が各々負の縦色収差を含む眼科用レンズ。
【請求項11】
請求項10に記載の眼科用レンズにおいて、
前記複数のゾーンが入射光を回折すべく適合された環状リングを含み、前記環状リングが各々の多項式により画定され、
前記複数の調整が前記各々の多項式を変化させることを含む眼科用レンズ。
【請求項12】
請求項6に記載の眼科用レンズにおいて、
前記第1の調整が負の位相シフトを含み、前記第2の調整及び前記第3の調整が各々正の位相シフトを含む眼科用レンズ。
【請求項13】
請求項12に記載の眼科用レンズにおいて、
前記負の位相シフトが、-0.5λ≦p<0となるように境界が画定された位相p及び設計波長λに対応し、
前記正の位相シフトが、0<p≦0.5λとなるように境界が画定された位相p及び設計波長λに対応する眼科用レンズ。
【請求項14】
請求項13に記載の眼科用レンズにおいて、
前記複数のゾーンが、入射光を屈折させるべく適合された各々の度数領域を含み、
前記複数の調整が、前記各々の度数領域で各々の位相シフトの段高を変化させることを含む眼科用レンズ。
【請求項15】
請求項13に記載の眼科用レンズにおいて、
前記複数のゾーンが、各々の多項式により画定される複数の回折次数に入射光を回折させるべく適合された環状リングを含み、
前記複数の調整が、前記遠曲線に対して各々の負値を有し、前記中間曲線及び前記近曲線に対して各々の正の値を有するように位相シフト段高を変化させることを含む眼科用レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
本出願は、Xin Hongを発明者とする2021年8月31日出願の米国仮特許出願第63/238,835号「MULTIFOCAL OPHTHALMIC LENS WITH EXTENDED DEPTH-OF-FOCUS」の優先権を主張するものであり、その全文を引用により本明細書に同等且つ完全に再現すべく本明細書に取り込んでいる。
【0002】
本開示は一般に焦点深度が拡張された多焦点眼科用レンズに関する。
【背景技術】
【0003】
人には5種類の基本的感覚、すなわち視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚がある。視覚は人を取り巻く世界を視覚化し、周囲の環境と人を結びつける能力を与える。世界中の多くの人々が視力の質に問題を抱えており、眼科用レンズの使用を必要としている。例えば、人の目が年齢を重ねるにつれて、異なる距離の物を見るための適応能力が低下する。眼科用レンズは目の前方に装着及び/又は目に埋め込むことができる。多焦点レンズは、異なる焦点距離での視力矯正に使用される場合が多い。しかし、多焦点レンズは、特異な焦点ずれ画像と鮮明に合焦された像とが混在することに一部起因して視覚が乱れる恐れがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書で開示するのは、光軸回りに配置された第1の表面及び第2の表面を有する光学素子を含む眼科用レンズである。第1の表面及び第2の表面の少なくとも一方が、基本曲率及び複数のゾーンを有する表面プロファイルを含む。基本曲率は基本屈折力に対応する。複数のゾーンは、光軸に沿った光エネルギー分布に対応する複数の曲線を生成すべく適合されている。表面プロファイルは、焦点深度を拡張する複数の調整を含み、複数の調整は、複数の曲線の各1個を複数の曲線の別の1個の曲線に向けて拡張すべく適合されている。
【0005】
複数の調整は、少なくとも1個の球面収差を含んでよい。複数の調整は、少なくとも1個の縦色収差を含んでよい。複数の調整は、少なくとも1個の位相ずれ変更を含んでよい。
【0006】
より一般に、いくつかの実施形態において、眼科用レンズは、光軸回りに配置された第1の表面及び第2の表面を有する光学素子を含んでよく、第1の表面及び第2の表面の少なくとも一方は、基本曲率及び複数のゾーンを有する表面プロファイルを含む。基本曲率は、基本屈折力に対応していてよく、複数のゾーンは、光軸に沿った光エネルギー分布に対応する複数の曲線を生成すべく適合されていてよい。表面プロファイルは更に、焦点深度を拡張する複数の調整を含んでよく、複数の調整は、複数の曲線の各1個を複数の曲線の別の1個の曲線に向けて拡張すべく適合されている。いくつかの実施形態において、複数の調整は、少なくとも1個の球面収差、少なくとも1個の縦色収差、及び/又は少なくとも1個の位相ずれ変更を含んでよい。いくつかの実施形態において、複数の曲線は、光軸に沿って近曲線、遠曲線、及び近曲線と遠曲線との間の中間曲線を含んでよく、複数のゾーンは、近曲線を介して近方矯正、遠曲線を介して遠方矯正、及び中間曲線を介して中間矯正を行うべく適合されていてよい。いくつかの実施形態において、複数の調整は、遠曲線を中間曲線に向けて拡張すべく適合された第1の調整、中間曲線を遠曲線に向けて拡張すべく適合された第2の調整、及び近曲線を中間曲線に向けて拡張すべく適合された第3の調整を含んでよい。
【0007】
更なる例示的な実施形態において、眼科用レンズは、光軸回りに配置された第1の表面及び第2の表面を有する光学素子を含んでよく、第1の表面及び第2の表面の少なくとも一方は、基本曲率及び複数のゾーンを有する表面プロファイルを含んでよい。基本曲率は、基本屈折力に対応していてよく、複数のゾーンは、光軸に沿って、近曲線を介して近方矯正、遠曲線を介して基本屈折力に対応する遠方矯正、及び近曲線と遠曲線との間の中間曲線を介して中間矯正を生成すべく適合されていてよい。表面プロファイルは更に、焦点深度を拡張する複数の調整を含んでよく、複数の調整は、遠曲線を中間曲線に向けて拡張すべく適合された第1の調整、中間曲線を遠曲線に向けて拡張すべく適合された第2の調整、及び近曲線を中間曲線に向けて拡張すべく適合された第3の調整を含む。
【0008】
本開示の上述の特徴及び利点、並びに他の特徴及び利点は、添付の図面と合わせて、本開示を実施するための最良のモードに関する以下の詳細な説明から直ちに明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】焦点深度が拡張された眼科用レンズの模式的断面図である。
【
図3】眼科用レンズの一例における(光軸に沿った)距離に対する強度分布の模式的グラフである。
【
図4】第1の実施形態による複数の調整がなされた
図1の眼科用レンズの距離に対する強度分布の模式的グラフである。
【
図5】第2の実施形態による複数の調整がなされた
図1の眼科用レンズの距離に対する強度分布の模式的グラフである。
【
図6】第3の実施形態による複数の調整がなされた
図1の眼科用レンズの距離に対する強度分布の模式的グラフである。
【
図7】
図1の眼科用レンズに採用され得る屈折構造の模式的部分側面図である。
【
図8】
図1の眼科用レンズに採用され得る回折構造の模式的部分側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面を参照するに、同一参照番号で同一要素を指しており、
図1に、光軸18の回りに配置された第1の表面14及び第2の表面16を有する光学素子12を含む眼科用レンズ10を模式的に示している。第1の表面14は前面又は後面であってよい。逆に、第2の表面16は、後面又は前面であってよい。眼科用レンズ10は、光軸18の回りに半径方向に対称である。眼科用レンズ10は、眼内レンズ、コンタクトレンズ、眼鏡レンズ、又は他の種類の矯正レンズであってもよい。後述するように、眼科用レンズ10は多焦点レンズであり、屈折視準が容易、視覚がより連続的、且つ視覚阻害要因が少ないという技術的利点をもたらす。
【0011】
図1を参照するに、光学素子12は、基本曲率22及び複数のゾーン24を有する表面プロファイル20を画定する。表面プロファイル20は、第1の表面14及び第2の表面16の少なくとも一方に組み込まれていてよい。
図2は眼科用レンズ10の模式的上面図である。複数のゾーン24は、内側領域26と外側領域28の間に拡がっていてよい。
図2を参照するに、複数のゾーン24は、例えば屈折及び/又は回折を介して、入射光と異なる仕方で相互作用をすべく適合された各度数領域又は環状リング30として構造化されていてよい。環状リング30は、段高が最小高と最大高の間で異なる状態で基本曲率22から(Y軸に沿って)拡大してよい。環状リング30の面積は、光軸18からの距離の関数として制御された仕方で変化してよい。複数のゾーン24は、異なる波長の入射光と相互作用すべく適合されていてよい。
【0012】
図1を参照するに、基本曲率22は基本屈折力に対応する。基本曲率22のプロファイルは変化でき、略凸形状、略凹形状、略平凹形状又は平凸形状を含んでよい。基本曲率22は、異なるゾーンで異なっていてよい。光学素子12は、1個以上の構造支持部材(図示せず)及び図示しない他の要素を含んでよい。一例において、光学素子12は、アクリレートとメタクリレート、又はヒドロゲル或いはシリコンの共重合体等の軟質アクリル材料で形成されている。光学素子12を形成すべく充分な屈折率を有する生体適合性材料を採用してよい。
【0013】
図3~
図6に、眼科用レンズ10の光軸18に沿った距離D(横軸)にわたる強度分布I(縦軸)のグラフである。
図3を参照するに、眼科用レンズ10は、焦点深度を拡張する複数の調整32を含む。
図1~2の複数のゾーン24は、光軸18に沿った光エネルギー分布に対応する複数の曲線34(
図3参照)を生成すべく適合されている。図示する例において、複数のゾーン24は三焦点矯正を行うべく適合されている。他の実施形態において、眼科用レンズ10は二重焦点矯正を行うことができる。代替的に、眼科用レンズ10は四焦点矯正を行うことができる。
【0014】
図3を参照するに、複数のゾーン24(
図1~2参照)は、光軸18上の第1の距離D1に各ピークを有する本来の近曲線42を介して近方矯正40を行うべく適合されていてよい。中間矯正44は、第2の距離D2に各ピークを有する本来の中間曲線46を介して行われてよい。遠方矯正48は、光軸18上の第3の距離D3に各ピークを有する本来の遠曲線50を介して行われてよい。遠方矯正48は基本屈折力に対応していてよい。非限定的な例において、近方矯正40は30~50cmでの視覚に対応し、中間矯正44は50~70cmでの視覚に対応していてよい。代替的に、光学素子12は、両眼の全体的な両眼視を向上させるべく、非利き目用に、対応する遠方度数より僅かに低い基本屈折力で設計されていてよい。
【0015】
図3を参照するに、複数の調整32が、複数の曲線34の各1個を複数の曲線34の別の1個の曲線に向けて拡張すべく適合されている。
図3を参照するに、第1の調整A1は、本来の遠曲線50を修正された遠曲線60まで本来の中間曲線46に向かう方向に拡張すべく適合されている。第2の調整A2は、本来の中間曲線46を修正された中間曲線62まで本来の遠曲線50に向かう方向に拡張すべく適合されている。
図3を参照するに、第3の調整A3は、本来の近曲線42を修正された近曲線64まで本来の中間曲線46に向かう方向に拡張すべく適合されている。
図3に示すように、修正された近曲線64、修正された中間曲線62、及び修正された遠曲線60の各ピークは、光軸18に沿って各々第1の距離D1、第2の距離D2、及び第3の距離D3のままであってよい。
【0016】
眼科用レンズ10は屈折型多焦点であってよい。複数の段402を有する屈折構造の屈折型三焦点プロファイル400の一例を
図7に示す。各段の光学的段高は、物理的高さに、眼科用レンズ10の屈折率と、眼科用レンズ10が使用される周囲媒体の屈折率との差を乗じた値である。
図7を参照するに、複数の段402は、入射光を屈折させるべく適合された各度数領域を画定する。複数の段402の物理的な高さ、パターン及び間隔は、目下の用途に基づいて変化し得ることが分かる。図示する例において、第1の領域404で近方矯正40を行い、第2の領域406で中間矯正44を行い、第3の領域408で遠方矯正48を行うことができる。
【0017】
眼科用レンズ10は、回折型多焦点であってよい。複数の段502を有する回折型三焦点プロファイル500の一例を
図8に示す。上述のように、各段の光学的段高は、物理的な高さに、眼科用レンズ10の屈折率と、眼科用レンズ10が使用される周囲媒体の屈折率との差を乗じた値である。無色構造の場合、段の光学的段高は光の波長よりも大きいが、光の波長の2倍以下である。換言すれば、λ≦Δn・H≦2λであり、ここにHは各段の物理的な高さ、λはゾーンが構成された光の波長、Δnは屈折率の差である。非無色構造の場合、段の光学的段高は0と光の波長の間、又は0≦Δn・H≦λの間にある。複数の段502の物理的な高さ、パターン及び間隔は各々、目下の用途に基づいて各々変化し得ることが分かる。
【0018】
図示する例において、第1の領域504で近方矯正40を行い、第2の領域506(高さH1を有する)で中間矯正44を行い、第3の領域508(高さH2を有する)で遠方矯正48を行なうことができる。一実施形態において、環状リング30の直径は、回折型フレネルレンズ基準により設定される。回折型段は、眩しさを低減すべくアポダイズ(基準に対して段の高さを徐々に下げる)されてよい。
【0019】
図3の複数の調整32は、多くの仕方で構造化できる。
図4に、第1の実施形態による、修正された遠曲線160、修正された中間曲線162、及び修正された近曲線164を示す。本実施形態において、第1の調整A1は負の球面収差を含み、第2の調整A2は正の球面収差を含み、第3の調整A3は正の球面収差を含む。眼科用レンズ10が屈折型多焦点である場合、これは、対応する度数領域又は環状リング30の非球面度を修正することにより実現できる。
【0020】
眼科用レンズ10が回折型多焦点である場合、第1の調整A1(
図3参照)は、遠方矯正48(
図3参照)のために基本曲率22(
図1参照)の非球面度を変化させることを含んでよい。
図2を参照するに、環状リング30は、入射光を、各々の多項式により画定される複数の回折次数に回折すべく適合されていてよい。第2の調整A2及び第3の調整A3は、環状リング30の各々の多項式を変化させることを含んでよい。一例において、回折ゾーンの半径の2乗(R
i)は以下の関係式で定義される。
R
i
2=[(2i+1)λf+g(i)]、g(i)=[(ai
2+bi)f]
ここに、iはゾーン番号、λは設計波長、g(i)はiの非定数関数、aは第1のスケーリングパラメータ、bは第2のスケーリングパラメータ、fは近方矯正40の焦点距離である。環状リング30の各多項式を変化させることは、所望の拡張量を実現すべく、第1のスケーリングパラメータaと第2のスケーリングパラメータbの一方又は両方の大きさを調整することを含んでよい。
【0021】
球面収差操作は、
図4の修正された近曲線164が修正された中間曲線162に類似するように、回折構造における近方矯正40と中間矯正44に同様の効果を及ぼすべく適合されていてよい。表面プロファイル20は、基本回折力を中和すべく基本曲率22に組み込まれた屈折力補償器を有する部分開口回折構造を含んでよい。
【0022】
ここで
図5を参照するに、第2の実施形態による、修正された遠曲線260、修正された中間曲線262、及び修正された近曲線264を示している。本実施形態において、第1の調整A1は、正の縦色収差を含む。第2の調整A2及び第3の調整A3は、各々の負の縦色収差を含む。
【0023】
回折型多焦点の場合、これは回折力に関連付けられた負の色収差により実現でき、回折次数が高いほど縦色収差は負側に大きくなる。遠方矯正48は正の縦色収差を有することになる。
図5を参照するに、回折次数が高いほど色収差が多いため、修正された近曲線264は修正された中間曲線262よりも低く且つ広くなり得る。遠方矯正48、中間矯正44及び近方矯正40に適した回折次数の選択は、特定の用途において所望の拡張量を実現すべく最適化できる。いくつかの実施形態において、第1の回折次数を遠方矯正48に使用し、第2の回折次数を中間矯正44に使用し、第3の回折次数を近方矯正40に使用する。いくつかの実施形態において、第1の回折次数を遠方矯正48に使用するのに対し、第2の回折次数は空であり、第3の回折次数を中間矯正44に使用し、第4の回折次数を近方矯正40に使用する。他の実施形態において、第1の回折次数を遠方矯正48に使用し、第2の回折次数を中間矯正44に使用する一方、第3の回折次数は空であり、第4の回折次数は近方矯正40に使用する。他の実施形態において、異なる焦点範囲に異なる回折次数を使用してよい。
【0024】
ここで
図6を参照するに、第3の実施形態による、修正された遠曲線360、修正された中間曲線362、及び修正された近曲線364を示している。本実施形態において、第1の調整A1は負の位相シフトを含む。第2の調整A2及び第3の調整A3は各々、正の位相シフトを含む。負の位相シフトは、-0.5λ≦p<0となるように境界が画定された位相p及び設計波長λに対応している。正の位相シフトは、0<p≦0.5λとなるように境界が画定された位相p及び設計波長λに対応していてよい。
【0025】
図1、2を参照するに、複数のゾーン24は、入射光と相互作用すべく適合された各々の度数領域又は環状リング30を含む。第3の実施形態(
図6)において、眼科用レンズ10が屈折型多焦点である場合、複数の調整32は、各々の度数領域において各々の位相シフト段高を変化させることを含む。近方矯正40を最適化すべく、
図6を参照するに、眼科用レンズ10は、修正された近曲線364が修正された中間曲線362よりも相対的に高い(幅は相対的に狭い)ように適合されていてよい。
【0026】
第3の実施形態(
図6)において、眼科用レンズ10が回折型多焦点である場合、複数の調整32は、遠方矯正48の回折次数を考慮する場合は負値を有し、中間矯正44及び近方矯正40のための回折次数を考慮する場合に各々の正の値を有するように単一又は複数の位相シフト段高を選択することを含む。換言すれば、複数の調整32は、修正された遠曲線360に対して各々の負値を有し、修正された中間曲線362及び修正された近曲線364に対して各々の正の値を有すべく、位相シフト段高を変化させることを含んでよい。
【0027】
要約するに、眼科用レンズ10は、複数の曲線34の各1個を複数の曲線34の別の1個の曲線に向けて拡張することにより、広範囲の連続的な視覚をもたらす。眼科用レンズ10は、遠方矯正48を広げることにより遠用屈折の視準を改善する。また、焦点がずれた像と合焦像を互いに向けて平滑化することにより、視覚障害が最小限に抑えられる。
【0028】
詳細な説明及び図面又は図形は本開示を補強及び記述するものであるが、本開示の範囲を規定するのは請求項だけである。請求項に記載の開示を実施する最良のモード及び他の実施形態のいくつかについて詳細に説明してきたが、添付の請求項で規定される開示を実施する様々な代替的な設計及び実施形態が存在する。更に、図面に示す実施形態又は本明細書の記述で言及された様々な実施形態の特性は必ずしも互いに独立した実施形態であると理解すべきではない。むしろ、一実施形態の複数の例のうち一つに記述された特性の各々を他の実施形態からの1個以上の他の所望の特性と組み合わせて、文章で、又は図面の参照により説明されない他の実施形態が得られる可能性がある。従って、そのような他の実施形態も添付の請求項の範囲内に含まれる。
【国際調査報告】