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特表2024-531004MEMSデバイスの製造方法及びMEMSデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】MEMSデバイスの製造方法及びMEMSデバイス
(51)【国際特許分類】
   B81C 1/00 20060101AFI20240822BHJP
   B81B 3/00 20060101ALI20240822BHJP
   B23K 26/382 20140101ALI20240822BHJP
【FI】
B81C1/00
B81B3/00
B23K26/382
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022576567
(86)(22)【出願日】2022-09-26
(85)【翻訳文提出日】2022-12-12
(86)【国際出願番号】 CN2022121224
(87)【国際公開番号】W WO2024036705
(87)【国際公開日】2024-02-22
(31)【優先権主張番号】202210973004.2
(32)【優先日】2022-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511027518
【氏名又は名称】エーエーシーアコースティックテクノロジーズ(シンセン)カンパニーリミテッド
【氏名又は名称原語表記】AAC Acoustic Technologies(Shenzhen)Co.,Ltd
【住所又は居所原語表記】A-Block, Nanjing University Research Center Shenzhen Branch, No.6 Yuexing 3rd Road, South Hi-Tech Industrial Park, Nanshan District, Shenzhen Guangdong 518057 People’s Republic of China
(74)【代理人】
【識別番号】100128347
【弁理士】
【氏名又は名称】西内 盛二
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ピンーホー
(72)【発明者】
【氏名】ライ,カキーン
【テーマコード(参考)】
3C081
4E168
【Fターム(参考)】
3C081AA20
3C081BA30
3C081CA03
3C081CA14
3C081CA15
3C081CA17
4E168AD12
4E168AD18
4E168JA14
4E168JA15
4E168JA17
(57)【要約】
【課題】本願はMEMSデバイスの製造方法及びMEMSデバイスを提供する。
【解決手段】MEMSデバイスの製造方法は、犠牲層の面の少なくとも一部に薄膜を堆積し、薄膜にスルーホールを加工し、犠牲層における薄膜に覆われた少なくとも一部の材料を除去し、犠牲層において除去された材料をスルーホールから排出することにより、犠牲層にチャンバを形成し、薄膜の犠牲層から離れた面に封止層を堆積し、スルーホールを封止することを含む。従来技術における製造方法に比べて、本願の製造方法は一層の薄膜のみを堆積する必要があり、生産周期を短縮し、且つ確実な現場の封止能力を有する。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
MEMSデバイスの製造方法であって、
犠牲層の面の少なくとも一部に薄膜を堆積することと、
前記薄膜にスルーホールを加工することと、
前記犠牲層における前記薄膜で覆われた少なくとも一部の材料を除去し、前記犠牲層において除去された材料を前記スルーホールから排出することにより、前記犠牲層にチャンバを形成することと、
前記薄膜の前記犠牲層から離れた面に封止層を堆積し、前記スルーホールを封止することとを含むことを特徴とするMEMSデバイスの製造方法。
【請求項2】
前記薄膜に前記スルーホールを加工完了する前に、前記犠牲層の面の少なくとも一部に構造層を堆積し、
前記構造層は、透かし彫り部を有し、前記薄膜の少なくとも一部の材料は、前記透かし彫り部を介して露出することを特徴とする請求項1に記載のMEMSデバイスの製造方法。
【請求項3】
前記犠牲層の面の少なくとも一部に前記構造層を堆積した後、前記構造層における前記薄膜を覆う少なくとも一部の材料を除去することにより、前記透かし彫り部を形成することを特徴とする請求項2に記載のMEMSデバイスの製造方法。
【請求項4】
前記薄膜の材料は、シリコンベースの材料、ポリマー又は金属のうちの一種であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のMEMSデバイスの製造方法。
【請求項5】
レーザードリル又は表面アブレーションにより前記薄膜に前記スルーホールを加工することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のMEMSデバイスの製造方法。
【請求項6】
前記MEMSデバイスの製造方法は、真空環境で完成することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のMEMSデバイスの製造方法。
【請求項7】
MEMSデバイスであって、
前記MEMSデバイスは、請求項1~6のいずれか1項に記載のMEMSデバイスの製造方法を用いて製造され、
前記MEMSデバイスは、
チャンバを有する犠牲層と、
前記犠牲層の前記チャンバが設けられた側に設けられ、且つ前記チャンバを覆い、スルーホールを有し、前記スルーホールが前記チャンバと連通する薄膜と、
前記犠牲層の前記チャンバが設けられた側に設けられた構造層と、
第1封止部を含み、前記第1封止部が前記薄膜の前記犠牲層から離れた側に設けられ、前記第1封止部が前記スルーホールを塞ぐ封止層とを含むことを特徴とするMEMSデバイス。
【請求項8】
前記構造層には、透かし彫り部が設けられ、前記透かし彫り部は、前記薄膜の前記犠牲層から離れた側に隣接し、
前記第1封止部は、前記透かし彫り部の少なくとも一部の空間に充填されていることを特徴とする請求項7に記載のMEMSデバイス。
【請求項9】
前記封止層は、第2封止部を更に含み、前記第2封止部は、前記構造層の前記犠牲層から離れた側に設けられ、
前記第1封止部と前記第2封止部とは、接続部により接続され、前記接続部と前記第1封止部とは、囲んで窪み部を形成することを特徴とする請求項8に記載のMEMSデバイス。
【請求項10】
前記構造層の厚さは、前記薄膜の厚さよりも大きいことを特徴とする請求項7に記載のMEMSデバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、封止技術分野に関し、特にMEMSデバイスの製造方法及びMEMSデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術におけるデバイス内部のチャンバに対する封止処理方法は、チャンバの頂部に1層の薄膜層を堆積し、当該薄膜層は、エッチングプロセスを利用して形成された排気孔を有し、デバイスの内部のチャンバからガスを排出した後、薄膜で排気孔を更に封止することにより、小型のチャンバの封止を実現する。しかしながら、当該方法は、特定のシリコンベースの材料/ツールを必要とし、且つプロセスサイクル時間が長く、いくつかの実際の応用は、ウェハボンディング及び薄膜パッケージにより封止を実現するが、製造コスト及びメンテナンス作業が大幅に増加し、更に相補型金属酸化物半導体(Complementary metal oxide smon、CMOS)に基づくフロントエンド(Front end of the line、FEOL)にプロセス/材料の制限が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本願は、製造周期を減少させることができるMEMSデバイスの製造方法及びMEMSデバイスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本願の第1態様は、MEMSデバイスの製造方法を提供し、当該製造方法は、犠牲層の面の少なくとも一部に薄膜を堆積し、薄膜にスルーホールを加工し、犠牲層における薄膜で覆われた少なくとも一部の材料を除去し、犠牲層において除去された材料をスルーホールから排出することにより、犠牲層にチャンバを形成し、薄膜の犠牲層から離れた面に封止層を堆積し、スルーホールを封止することを含む。
【0005】
従来技術における製造方法に比べて、本願の製造方法は、1層の薄膜のみを堆積する必要があり、生産周期を短縮し、且つ確実な現場の封止能力を有することができる。
【0006】
可能な設計において、薄膜にスルーホールを加工完了する前に、犠牲層の面の少なくとも一部に構造層を堆積し、構造層は、透かし彫り部を有し、薄膜の少なくとも一部の材料は、透かし彫り部を介して露出する。
【0007】
可能な設計において、犠牲層の面の少なくとも一部に構造層を堆積した後、構造層における薄膜を覆う少なくとも一部の材料を除去することにより、透かし彫り部を形成する。
【0008】
可能な設計において、薄膜の材料は、シリコンベースの材料、ポリマー又は金属のうちの一種である。
【0009】
可能な設計において、レーザードリル又は表面アブレーションにより薄膜にスルーホールを加工する。
【0010】
可能な設計において、MEMSデバイスの製造方法は、真空環境で完成する。
【0011】
本願の第2態様は、MEMSデバイスを提供し、上記内容の方法で製造され、上記効果を有する。MEMSデバイスは、犠牲層、薄膜、構造層及び封止層を含む。犠牲層はチャンバを有し、薄膜は、犠牲層のチャンバが設けられた側に設けられ、且つチャンバを覆い、薄膜は、スルーホールを有し、スルーホールは、チャンバと連通し、構造層は、犠牲層のチャンバが設けられた側に設けられ、封止層は、第1封止部を含み、第1封止部は、薄膜の犠牲層から離れた側に設けられ、第1封止部がスルーホールを塞ぐ。
【0012】
可能な設計において、構造層には、透かし彫り部が設けられ、透かし彫り部は、薄膜の犠牲層から離れた側に隣接し、第1封止部は、透かし彫り部の少なくとも一部の空間に充填されている。
【0013】
可能な設計において、封止層は、第2封止部を更に含み、第2封止部は、構造層の犠牲層から離れた側に設けられ、第1封止部と第2封止部とは、接続部により接続され、接続部と第1封止部とは、囲んで窪み部を形成する。
【0014】
可能な設計において、構造層の厚さは、薄膜の厚さよりも大きい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】従来技術におけるMEMSデバイスの構造である。
図2】本願に係るMEMSデバイスの製造方法である。
図3】ステップS1におけるMEMSデバイスの構造概略図である。
図4】ステップS3におけるMEMSデバイスの構造概略図である。
図5】ステップS4におけるMEMSデバイスの構造概略図である。
図6】ステップS5におけるMEMSデバイスの構造概略図である。
図7】ステップS2におけるMEMSデバイスの構造概略図であり、ここで、構造層が透かし彫り部を有していない。
図8】ステップS2におけるMEMSデバイスの構造概略図であり、ここで、構造層が透かし彫り部を有する。
図9】ステップS2におけるMEMSデバイスの構造概略図であり、ここで、薄膜が表示されていない。
【0016】
ここでの図面は、明細書に組み込まれ且つ本明細書の一部を構成し、本願に適合した実施例を示し、且つ明細書と共に本願の原理を説明するために用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本願の技術案をよりよく理解するために、以下は、添付の図面を参照して本願の実施例を詳細に説明する。
【0018】
説明した実施例は、本願の実施例の一部にすぎず、すべての実施形態ではないことは明らかである。本願の実施例に基づいて、創造的な作業なしに当業者によって得られる他のすべての実施例は、本願の保護範囲に含まれる。
【0019】
本願の実施例で使用される用語は、特定の実施例を説明することのみを目的とし、本願を限定する意図はない。本願の実施例および添付の特許請求の範囲で使用される単数形「1種」、および「当該」は、文脈が他の意味を明確に示さない限り、複数の形を含むことも意図される。
【0020】
理解すべきことは、本明細書で使用される用語“及び/又は”は関連対象の関連関係を説明するだけであり、3種類の関係が存在してもよく、例えば、A及び/又はBは、以下の関係を表すことができ、Aが単独で存在し、同時にAとBが存在し、Bが単独で存在するという3種類の状況が存在する。なお、ここで符号「/」とは、一般に、前後関連オブジェクトが「または」の関係であることを意味する。
【0021】
なお、本願の実施例に記載の「上」、「下」、「左」、「右」等の向きを示す用語は、図面の示す角度から記載したものであり、本願実施例を限定するものとして解釈されるべきではない。更に、この文脈では、ある要素が別の要素に「上」または「下」に接続されていると記載される場合、他の要素に「上」または「下」に直接接続することができるだけでなく、中間要素を介して、別の要素の「上」または「下」に間接的に接続されてもよいと理解されるべきである。
【0022】
マイクロ電子機械システム(Micro-Electro-Mechanical System、MEMS)は、サイズが数ミリメートル乃至より小さいハイテクノロジー装置を指し、その内部構造は、一般的にミクロン又はナノメートルオーダーである。MEMSデバイスにおいてフローティングの構造を有し、一般的に犠牲層除去プロセスを用いてフローティングの構造を製造する。
【0023】
図1に示すように、従来技術の方法を利用してMEMSデバイスを製造し、まず、エッチングプロセスを利用して犠牲層10内の一部の材料を除去し、犠牲層10にチャンバ101を形成する。チャンバ101の頂部に薄膜20を堆積し、ここで、エッチングプロセスを利用して薄膜20の一部の材料を除去することにより、スルーホール201を形成する。その後、チャンバ101内のガスをスルーホール201から排出し、さらに封止層40を利用してスルーホール201を封止し、チャンバ101に対する封止を完了する。ここで、犠牲層10のチャンバ101が設けられた側に構造層30が更に堆積され、薄膜20が構造層30内に穿設され、且つ構造層30の厚さが薄膜20の厚さと同じである。スルーホール201を封止した後、平坦化(Chemical Mechanical Polishing、CMP)を利用してMEMSデバイスを処理する。出願人は、研究により、従来技術における製造方法を利用してチャンバ101を排気した後に現場の封止を実現することができず、生産サイクル時間が長いと発見した。また従来技術における製造方法は、平坦化処理(Chemical Mechanical Polishing、CMP)を必要とし、構造欠陥の問題(例えば孔、ひび割れ又は層剥離)を引き起こしやすい。また、従来技術における製造方法は、シリコンベースの材料を用いて薄膜層20を製造することを限定し、他の材料との熱膨張係数が異なるため、薄膜層20に構造欠陥(例えばひび割れ及び層剥離)が存在しやすい。
【0024】
上記の少なくとも1つの課題を解決するために、本願は、MEMSデバイスの製造方法を提供し、図2に示すフローチャート及び図3図6に示すMEMSデバイスの加工プロセスにおける構造変化を参照し、当該方法は下記のステップを含む。
【0025】
ステップS1:犠牲層1の面の少なくとも一部に薄膜2を堆積する。
【0026】
ステップS3:薄膜2にスルーホール21を加工する。
【0027】
ステップS4:犠牲層1における薄膜2で覆われた少なくとも一部の材料を除去し、犠牲層1において除去された材料をスルーホール21から排出することにより、犠牲層1にチャンバ11を形成する。
【0028】
ステップS5:薄膜2の犠牲層1から離れた面に封止層4を堆積し、スルーホール21を封止する。
【0029】
本実施例において、図3に示すように、まず犠牲層1の面に薄膜2を堆積し、次に図4に示すように、薄膜2にスルーホール21を加工し、図5に示すように、犠牲層1における薄膜2で覆われた少なくとも一部の材料を除去し、犠牲層1において除去された材料をスルーホール21から排出することにより、犠牲層1にチャンバ11を形成し、図6に示すように、薄膜2の犠牲層1から離れた面に封止層4を堆積し、スルーホール21を封止することにより、チャンバ11に対する封止が完了する。従来技術における製造方法に比べて、本願の実施例の製造方法は、1層の薄膜2のみを堆積する必要があり、生産周期を短縮し、且つ確実な現場の封止能力を有することができる。
【0030】
具体的には、図2に示すように、ステップS3(薄膜2にスルーホール21を加工する)の前にステップS2を更に有する。
【0031】
本実施例において、図7に示すように、犠牲層1の面の少なくとも一部に構造層3を堆積し、ここで、図8に示すように、構造層3は、透かし彫り部31を有し、薄膜2の少なくとも一部の材料は、透かし彫り部31を介して露出し、ステップS3において薄膜2にスルーホール21を加工しやすい。
【0032】
ここで、犠牲層1の面に複数の構造層3を堆積し、隣接する2つの構造層3の間に間隔を有することにより、透かし彫り部31を形成することができる。又は、構造層3の一部の材料を除去することにより、透かし彫り部31を形成する。具体的には、ガスエッチングプロセスを用いて構造層3の一部の材料を除去することができ、それにより透かし彫り部31を形成する。
【0033】
また、構造層3の材料は、シリコン酸化物、金属酸化物、又は、シリコン酸化物の熱膨張係数材料に近い材料であってもよい。一方、構造層3の材料の熱膨張係数が薄膜2の熱膨張係数に近いとき、及び/又は、構造層3の材料の熱膨張係数が封止層4の熱膨張係数に近いとき、熱膨張係数の差異が大きいことによる材料欠陥問題(例えば孔、ひび割れ又は層剥離)が生じにくく、封止不良の可能性を低減し、製造されたMEMSデバイスの動作信頼性及び耐用年数が高い。他方では、本願の実施例の製造方法は、構造層3の製造プロセスを拡張し、MEMSデバイスの製造の制限を減少させる。
【0034】
ここで、シリコン酸化物は、シリカ(SiO)、テトラエトキシシラン(TEOS)、ポリシリコン(Poly-Si)を含んでいてもよい。ポリマーは、ポリイミド(polyimide)、シリコン-ガラス接合構造材料(Silicon On Glass)、パリレン(parylene)などを含んでもよい。金属酸化物は、アルミナ(Al)、チタニア(TiO)を含んでもよい。
【0035】
より具体的には、本実施例において、ステップS2においてステップS2.1を更に含み、図7図8に示すように、犠牲層1の面の少なくとも一部に構造層3を堆積した後、構造層3における薄膜2を覆う少なくとも一部の材料を除去することにより、透かし彫り部31を形成する。
【0036】
本実施例において、図7図8に示すように、犠牲層1の面の少なくとも一部に構造層3を堆積し、構造層3も薄膜2を覆い、構造層3における薄膜2を覆う少なくとも一部の材料を除去することにより、透かし彫り部31を形成し、それにより薄膜2の少なくとも一部の材料を透かし彫り部31を介して露出させ、ステップS3(薄膜2にスルーホール21を加工する)を容易に行う。
【0037】
ここで、実施例において、図8図9に示すように、構造層3における薄膜2を覆う一部の材料を除去することにより、構造層3が段差32を有し、薄膜2のエッジは、段差32内に位置することにより、構造層3が薄膜2のエッジを押さえることにより、薄膜2が透かし彫り部31から脱落する可能性を低減する。
【0038】
別の実施例において(図示せず)、構造層3における薄膜2を覆う全ての材料を除去することにより、透かし彫り部31を形成し、段差32がなく、構造層3が薄膜2のエッジを押さえない。
【0039】
上記実施例において、薄膜2の材料は、シリコンベースの材料(on-based material)、ポリマー材料(polymer material)又は金属材料(Metal material)のうちの1種である。
【0040】
ここで、シリコンベースの材料は、シリカ(SiO)、窒化ケイ素(Si)、テトラエトキシシラン(TEOS)、ポリシリコン(Poly-Si)、アモルファスシリコン(a-Si)を含んでいてもよい。ポリマー材料は、ポリイミド(polyimide)、シリコン-ガラス接合構造材料(Silicon On Glass)、パリレン(parylene)を含んでいてもよい。金属材料は、アルミナ(Al)、窒化チタン(TiN)、窒化タンタル(TaN)、チタニア(TiO)を含んでいてもよい。
【0041】
上記薄膜2の材料において、構造層3の熱膨張係数に近い材料を選択して薄膜2を製造することができ、又は、封止層4の熱膨張係数に近い材料を選択して薄膜2を製造することができ、熱膨張係数の差異が大きいことによる材料欠陥問題(例えば孔、ひび割れ又は層剥離)が生じにくく、封止不良の可能性を低減し、製造されたMEMSデバイスの動作信頼性及び耐用年数が高い。他方では、従来技術の方法においてシリコンベースの材料を使用することを限定することに比べて、本願の実施例の製造方法は、薄膜2の製造可能な材料を拡張し、スルーホール21を加工できるプロセス方法を更に拡張し、MEMSデバイスの製造制限を減少させる。
【0042】
ここで、シリコンベースの材料を用いて薄膜2を製造するとき、ドライエッチングプロセスを利用してスルーホール21を製造することができる。ポリマー材料を用いて薄膜2を製造するとき、フォトリソグラフィ又はレーザプロセスを利用してスルーホール21を製造することができる。金属材料を用いて薄膜2を製造するとき、ウェットエッチングプロセスを利用してスルーホール21を製造することができる。
【0043】
また、金属材料を利用して薄膜2を製造するとき、薄膜2のスルーホール21は、封止層4により封止される過程において、薄膜2は、より高い温度を受けることができ、欠陥又は層剥離の問題が発生しにくく、MEMSデバイスの動作信頼性及び耐用年数がより高い。
【0044】
上記実施例において、図3図4に示すように、ステップS3において、レーザードリル又は表面アブレーションにより薄膜2にスルーホール21を加工する。
【0045】
本実施例において、図3図4に示すように、レーザードリル又は表面アブレーションにより薄膜2にスルーホール21を製造し、スルーホール21の直径がサブミクロンの範囲内又はナノメートルの範囲内にあることにより、封止層4によりスルーホール21を封止する時、材料の欠陥問題(孔及びひび割れ)が発生しにくく、封止層4と薄膜2が階層化するという問題が発生しにくく、製造されたMEMSデバイスの動作信頼性がより高く且つ耐用年数がより長い。
【0046】
本願の実施例の方法は、犠牲層1における除去しようとする材料の面積又は深さの寸法に応じて、スルーホール21のサイズを調整し、犠牲層1における除去しようとする材料がスルーホール21から排出される時間を制御し、その製造過程が柔軟であり、異なるユーザーの使用需要を満たすことができる。
【0047】
上記実施例において、真空環境で上記ステップを完了してMEMSデバイスを製造し、それによりチャンバ11内の水分及び/又は有機ガスを乾燥させることにより、MEMSデバイスの動作性能を安定したレベルに維持し、MEMSデバイスの動作信頼性及び耐用年数を向上させる。
【0048】
上記実施例において、本願の実施例の製造方法は、MEMSデバイスを平坦化処理する必要がなく、酸化物材料に欠陥が存在するという問題(例えば孔、ひび割れ又は層剥離)を引き起こしにくく、MEMSデバイスの動作信頼性及び耐用年数がより高い。
【0049】
本願の実施例の製造方法を利用することは、下記の利点を更に有し、相補型金属酸化物半導体(Complementary metal oxide smon、CMOS)プロセスと互換性があり、シリコンに基づく製造フロー(Si-based fabrication flows)と統合しやすく、生産サイクル時間の短縮に役立つ。
【0050】
本願の第2態様は、MEMSデバイスを提供し、図6に示すように、当該MEMSデバイスは、上記MEMSデバイスの製造方法を利用して製造され、当該MEMSデバイスは、犠牲層1、薄膜2、構造層3及び封止層4を含む。犠牲層1はチャンバ11を有し、薄膜2は犠牲層1のチャンバ11が設けられた側に設けられ、且つチャンバ11を覆い、薄膜2はスルーホール21を有し、スルーホール21はチャンバ11と連通する。構造層3は、犠牲層1のチャンバ11が設けられた側に設けられている。封止層4は第1封止部41を含み、第1封止部41は薄膜2の犠牲層1から離れた側に設けられ、第1封止部41はスルーホール21を塞ぐ。本願の実施例のMEMSデバイスは、上記内容の製造方法で製造され、上記内容の効果を有し、ここでは説明を省略する。
【0051】
具体的には、図6に示すように、構造層3には、透かし彫り部31が設けられ、透かし彫り部31は、薄膜2の犠牲層1から離れた側に隣接し、第1封止部41は、透かし彫り部31の少なくとも一部の空間に充填され、薄膜2のスルーホール21を封止することに用いられ、それによりチャンバ11に対する封止を図る。
【0052】
ここで、実施例において、図6に示すように、第1封止部41は、透かし彫り部31の一部の空間を充填することができる。別の実施例において(図示せず)、第1封止部41は、透かし彫り部31の全ての空間を充填することができる。
【0053】
より具体的には、図6に示すように、封止層4は、第2封止部42を更に含み、第2封止部42は、構造層3の犠牲層1から離れた側に設けられ、第1封止部41と第2封止部42とは、接続部43により接続され、接続部43と第1封止部41は、囲んで窪み部を形成する。
【0054】
本実施例において、図6に示すように、第2封止部42は、構造層3を他の物質から遮断するために用いられ、それにより構造層3の動作性能を保証する。
【0055】
図6に示すように、構造層3の厚さは、薄膜2の厚さよりも大きく、構造層3の厚さは、ミクロンレベルであり、薄膜2の厚さは、ナノレベルである。薄膜2の厚さがナノレベルであるとき、犠牲層1におけるチャンバ11の形成過程及びチャンバ11の内部がきれいであるか否かを観察しやすい。
【0056】
以上は本発明の実施形態に過ぎず、当業者であれば本発明の思想を逸脱することなく改良を加えることができるが、これらは全て本発明の保護範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0057】
10 犠牲層
101 チャンバ
20 薄膜
201 スルーホール
30 構造層
40 封止層
1 犠牲層
11 チャンバ
2 薄膜
21 スルーホール
3 構造層
31 透かし彫り部
32 段差
4 封止層
41 第1封止部
42 第2封止部
43 接続部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】