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特表2024-531007高性能イソシアネートフリーポリウレタン樹脂コーティング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】高性能イソシアネートフリーポリウレタン樹脂コーティング
(51)【国際特許分類】
   C09D 175/04 20060101AFI20240822BHJP
   C08G 18/62 20060101ALI20240822BHJP
   C08G 18/71 20060101ALI20240822BHJP
   C08G 18/22 20060101ALI20240822BHJP
   C08G 18/20 20060101ALI20240822BHJP
   C08G 18/32 20060101ALI20240822BHJP
   C09D 135/08 20060101ALI20240822BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20240822BHJP
   C09D 127/12 20060101ALI20240822BHJP
   C09D 183/02 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
C09D175/04
C08G18/62 075
C08G18/71 080
C08G18/22
C08G18/20
C08G18/62 016
C08G18/32 050
C09D135/08
C09D7/63
C09D127/12
C09D183/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023526618
(86)(22)【出願日】2022-08-16
(85)【翻訳文提出日】2023-08-01
(86)【国際出願番号】 AU2022050906
(87)【国際公開番号】W WO2023019304
(87)【国際公開日】2023-02-23
(31)【優先権主張番号】2021218019
(32)【優先日】2021-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(31)【優先権主張番号】2022204302
(32)【優先日】2022-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523152938
【氏名又は名称】エー アンド アイ コーティングス グループ プロプライエタリー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】A & I COATINGS GROUP PTY LTD
【住所又は居所原語表記】7 Lackey Road Moss Vale, New South Wales 2577 Australia
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(72)【発明者】
【氏名】ジャン フー ロン
(72)【発明者】
【氏名】ベイリー スティーヴン
【テーマコード(参考)】
4J034
4J038
【Fターム(参考)】
4J034CA14
4J034CA15
4J034CA17
4J034CB03
4J034CB05
4J034CC09
4J034CC23
4J034CC26
4J034CD06
4J034DA01
4J034DB04
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4J034DF02
4J034DF16
4J034DF20
4J034DG02
4J034DP15
4J034DP16
4J034DP18
4J034DP19
4J034GA06
4J034HA01
4J034HA04
4J034HA06
4J034HA07
4J034HB16
4J034HC03
4J034HC35
4J034KA01
4J034KB02
4J034KC08
4J034KC13
4J034KC16
4J034KC17
4J034KC23
4J034KD02
4J034KD11
4J034KD12
4J034KE02
4J034RA07
4J038CD101
4J038CE051
4J038DG101
4J038DG251
4J038DL021
4J038GA03
4J038GA11
4J038GA15
4J038KA03
4J038KA04
4J038NA03
4J038NA05
4J038NA27
4J038PB05
4J038PC02
4J038PC03
4J038PC08
(57)【要約】
【課題】建築物の外表面を保護し、塗工者のイソシアネートへの曝露を実質的に最小限に抑えるのに有効な高性能低イソシアネートポリウレタントップコーティングを提供すること。
【解決手段】建築物の外表面を保護し、塗工者のイソシアネートへの曝露を実質的に最小限に抑えるのに有効な高性能低イソシアネートポリウレタントップコーティングを調製する方法であって、式(I)のフルオロエチレンビニルエーテル(FEVE)部分から選ばれる化合物Aを所定量与える工程と、一般式(II)のシラン官能性イソシアネートから選ばれる化合物Bを所定量与える工程(ただし、化合物Aと化合物Bは1:1の化学量論比で存在する)と、触媒である化合物Cを有効量与える工程;化合物A及びBを反応容器に導入し、不活性雰囲気下、所定温度及び所定時間で撹拌する工程を含み、得られるシラン官能性FEVE樹脂は、未反応のイソシアネートを実質的に有しない。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外表面を保護し、かつ塗工者をイソシアネートに曝すことを実質的に最小限にするのに有効な高性能ポリウレタントップコーティングを調製するための配合物であって、
式(I)のフルオロエチレンビニルエーテル(FEVE)部分から選ばれる化合物A:
【化1】
ここで、nは1以上、特に1~10の整数であり、Rは直鎖状又は分枝状の炭化水素鎖であり、
一般式(II)のシラン官能性イソシアネートから選ばれる化合物B:
【化2】
を含む、配合物。
【請求項2】
前記配合物が、1:1の化学量論比で存在する化合物Aと化合物Bとを含む、請求項1に記載の硬化性のイソシアネートフリーの配合物。
【請求項3】
前記配合物が、周囲温度において化合物Aと化合物Bとの反応を触媒するのに有効な触媒(化合物C)を更に含む、請求項1に記載の硬化性のイソシアネートフリーの配合物。
【請求項4】
前記触媒が、ビスマスキレート、アルミニウムキレート、錫キレート、亜鉛キレート、亜鉛錯体、及び1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)を含む塩基触媒から選択され、好ましくは、前記触媒はカルボン酸ビスマスである、請求項1に記載の硬化性のイソシアネートフリーの配合物。
【請求項5】
建築材料用の改良されたトップコートとしてのシラン官能化FEVE樹脂を製造するための配合物であって、
化学量論比1:1で存在する式(I)の化合物Aと式(II)の化合物B;有効な触媒量のカルボン酸ビスマス;を含み、
化合物Aと化合物Bとを触媒の存在下、周囲温度又はそれ以上で所定時間反応させることにより、未反応のイソシアネートを実質的に有さないシラン官能化FEVE樹脂が製造される、配合物。
【請求項6】
式(IV)の化合物Dを更に含有し、
化合物Dは、シランイソシアネート架橋剤である化合物Bと反応する、化合物Aの代わりに使用できるアクリルポリオールである、請求項5に記載の配合物。
【化3】
【請求項7】
式(V)の化合物Eを含有し、
化合物Eは、シランイソシアネート架橋剤である化合物Bと反応する、化合物Aの代わりに使用できるアスパラギン酸エステルである、請求項5に記載の配合物。
【請求項8】
建築物の外表面を保護し、かつ塗工者をイソシアネートに曝すことを実質的に最小限にするのに有効な高性能な非検出性のイソシアネートポリウレタントップコーティングを生成する方法であって、
式(I)のフルオロエチレンビニルエーテル(FEVE)部分から選ばれる化合物Aを所定量与える工程;
一般式(II)のシラン官能性イソシアネートから選ばれる化合物Bを所定量与える工程;
を含み、
前記化合物A及び化合物Bが、1:1の化学量論比で存在し;
触媒である化合物Cを有効量与える工程;化合物A及びBを反応容器に入れ、それらの化合物を不活性雰囲気中において所定温度で所定時間撹拌する工程;
を含み、
得られたシラン官能性FEVE樹脂は、未反応のイソシアネートを実質的に有しない、方法。
【請求項9】
前記不活性雰囲気が窒素によって与えられる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
触媒化合物Cの存在下における化合物AとBとの反応の温度が、周囲温度(15℃)~約80℃である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記化合物A及びBが約12時間~72時間撹拌される、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記触媒がカルボン酸ビスマスであり、反応中に約0.4%w/w~約20%w/wの量で存在する、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
外表面を保護し、かつ塗工者をイソシアネートに曝すことを実質的に最小限にするのに有効な高性能ポリウレタントップコーティングを調製するための配合物であって、
式(I)のフルオロエチレンビニルエーテル(FEVE)部分から選ばれる化合物A:
【化4】
ただし、nは1以上、特に1~10の整数であり、Rは直鎖状又は分枝状の炭化水素鎖であり、
一般式(II)のシラン官能性イソシアネートから選ばれる化合物B:
【化5】
ただし、nは1以上、特に1~10の整数であり、R及びR'は直鎖状又は分枝状の炭化水素鎖であり、R''は、H、又はOCH、OCHCH、又はORであり、
を含む、配合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高性能イソシアネートフリーポリウレタン樹脂コーティングに関する。
【0002】
特に、本発明は、イソシアネートの使用及び曝露を実質的に最小限にし、高い性能及び耐久性を提供する高性能シラン官能性ポリウレタン樹脂に関する。
【0003】
本発明は主に、イソシアネートの露出を最小限にすると同時に、広範囲の建造物及び基材に関してコーティングの有効性及び耐久性を向上させるために開発されており、本出願を参照して以下に説明する。ただし、本発明は、この特定の使用分野に限定されないことを理解されたい。
【背景技術】
【0004】
建築材料、金属、コンクリート、プラスチック及び木製基材から製造された屋外建築物、橋、機械、車両、ボート、飛行機、家具、床、ガラス、プラスチック等の公共インフラは、耐用年数を延ばすために表面保護を必要とする。このような基材は、天候及び風雨に曝されると劣化する可能性があり、有用性及び構造的完全性を維持するために、交換、アップグレード又は頻繁なオーバーホールが必要になる。
【0005】
ポリウレタン樹脂は、風化、溶剤、及び機械的損傷への高い耐性のため、最初に作り出され、保護トップコートとして基材に塗工された。
【0006】
コーティングに使用されるポリウレタンは、通常、単一(1K)又は二成分(2K)生成物に分類される。単一成分ポリウレタンコーティングは、一般に、ポリイソシアネート及びポリオール成分の安定な混合物から製造される。より広く使用されている二成分ポリウレタンは、ヒドロキシル基を有する高分子化合物(ポリオール)、触媒及び添加剤(成分1)と、ポリイソシアネート樹脂溶液の形態の硬化剤(成分2)との混合物の形態で別々に貯蔵された2種の試薬を含む。架橋(硬化)は、成分1及び2が混合されるとすぐに開始する。使用されるイソシアネートは主に、トルエンジイソシアネート又はメチレンジフェニル4,4'-ジイソシアネート含む芳香族であるが、皮膚及び気道の刺激物質として知られ、繰り返しの露光により増感を引き起こす可能性があるヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネートを含むことができる。
【0007】
得られたポリウレタン網目構造は、高い化学的安定性や、基材の耐候性及び劣化に対する保護を提供する利点がある一方で、ポリウレタントップコーティングのライフサイクルは著しい色及び光沢の損失を伴って制限され、スポット腐食のためにタッチアップ及び再コーティングが必要とされる。加えて、頻繁に使用されるイソシアネートは、発癌性、変異原性、及び一般に毒性の物質として分類され、未反応イソシアネートへの曝露は、塗工者を長期間又は永続的な呼吸障害に潜在的に曝す可能性がある重大な健康上のリスクを意味する。この点が問題となる限りにおいて、2020年8月、欧州理事会は、製造又は輸入される物質中のジイソシアネートの累積濃度を0.1質量%未満に制限するために、Registration,Evaluation,Authorisation and Restriction Chemicals(REACH)に関する規則(EC)No.1907/2006の附属書XVIIを改訂した。
【0008】
健康への悪影響や環境への悪影響を低減し、また再コーティングコスト及び関連する労働コストを低減するために、屋外での使用を目的とした建築用途の高耐久性保護コーティングとして使用することができる組成物を開発するいくつかの試みがなされてきた。フッ素置換ポリマー材料は、コーティングにおける結合剤として使用されてきた。このようなコーティングは、低い表面エネルギー、絶縁性、ガス不透過性、及び水、油、化学物質、腐食汚れ捕集剤、UV放射、チョーキングに対する高い耐性を示すことが知られている。
【0009】
しかしながら、コーティングにおけるフルオロポリマーの使用は、それらの物理的特性のために制限される。フルオロポリマーは、コーティング工業で使用される従来の溶媒に難溶性である。通常、フルオロポリマー樹脂はコーティングを形成するために、200℃を超える温度に加熱されなければならない。加えて、当該樹脂の表面エネルギーが低いため、金属及び他の基材への接着を許容することを阻害する。
【0010】
塗工者の未反応イソシアネートへの曝露を低減するための他の試みは、代替化学物質を利用し、ポリウレタン網目構造を達成している。環状カルバメートに関するいくつかの研究は、環状カルバメートをポリアミンと反応させることで脂肪族ポリウレタンが得られ、塗工者のイソシアネートへの曝露の可能性を排除することを見出した。このアプローチの特定の欠点は、化学反応と出発物質を徹底的に見直す必要があり、その結果、標準的なポリウレタン系の特性に関連する肯定的な属性を伴わない網目構造が得られることである。
【0011】
したがって、塗工者がイソシアネートに曝されることを低減しながら、ポリウレタンの高品質なコーティング品質を提供するための実用的なシステム又はプロセスを開発する必要性が依然として存在する。
【0012】
本発明は、従来技術の欠点の少なくとも1つ以上を克服若しくは実質的に改善するか、又は少なくとも代替案を提供する、実用的な使用のためのトップコーティングを合成する実用的なシステム又はプロセスを提供しようとするものである。
【0013】
いずれかの先行技術情報が本明細書で参照される場合、そのような参照は、その情報がオーストラリア又はいずれかの他の国における当該技術分野における共通の一般的知識の一部を構成することを認めるものではないことを理解されたい。
【発明の概要】
【0014】
本発明は、第1の態様において、外表面を保護し、かつ塗工者がイソシアネートに曝されることを実質的に最小限にするのに有効な高性能ポリウレタントップコーティングを調製するための配合物であって、:式(I)のフルオロエチレンビニルエーテル(FEVE)部分から選ばれる化合物A
【化1】
(式中、nは1以上、特に1~10の整数であり、Rは、CH又は直鎖状若しくは分枝状の炭化水素鎖である。);及び
一般式(II)のシラン官能性イソシアネートから選ばれる化合物B:
【化2】
(式中、R,R及びRは直鎖状又は分枝状の炭化水素鎖、アリールであり得る、及びRはH,OCH,O(CH)nCHであり得る。ここで、nは少なくとも1~5であり得る。)を含む配合物に関する。
【0015】
本発明の配合物は、シラン官能性を使用して、改善された環境及び塗工者に優しい硬化機構に組み合わせて、改善されたUV耐性を特性として有する。有利なことに、前記配合物は、基材にトップコートを塗工する際に塗工者を健康への悪影響に曝す可能性がある従来のポリウレタン樹脂と比較して、測定可能な量の未反応イソシアネートを実質的に有さない高性能トップコーティングを調製することができる。
【0016】
好ましくは、前記配合物が1:1の化学量論比(化合物Aの水酸基当量(質量)に対して)で存在する化合物A及び化合物Bを含む。
【0017】
好ましくは、前記配合物は、周囲温度で化合物Aと化合物Bとの反応を触媒するのに有効な触媒(化合物C)を更に含む。これは、コーティングを形成するために加熱するという従来技術の要件を克服する。
【0018】
好ましくは、前記触媒は、ビスマスキレート、アルミニウムキレート、錫キレート、亜鉛キレート、亜鉛錯体、及び1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンを含む塩基触媒から選択することができる。最も好ましくは、前記触媒はカルボン酸ビスマスである。
【0019】
触媒の存在下における化合物Aと化合物Bとの反応により、式(III)の化合物であるシラン官能性ポリウレタン樹脂を生成することが見出されている。
【化3】
(式中、nは1以上、特に1~10の整数である。)
式(III)への変換は、約72時間以内にフーリエ変換赤外分光法により未反応イソシアネートの存在を最小限又は実際に検出されずに実質的に完了する。フーリエ変換赤外分光法を使用することによって測定できるこの予想外の高い転化率は、未反応のイソシアネートが存在しないことを裏付けている。これは、従来技術のポリウレタン系からの著しい逸脱及び利点を表す。
【0020】
関連する態様では、本発明が外表面を保護し、塗工者のイソシアネートへの曝露を実質的に最小限にするのに有効な高性能樹脂コーティングを調製するための配合物であって、式(I)のフルオロエチレンビニルエーテル(FEVE)部分から選ばれる化合物A:
【化4】
(式中、nは1以上、特に1~10の整数であり、Rは直鎖状又は分枝状の炭化水素鎖である)、一般式(XX)のシラン官能性イソシアネートから選ばれる化合物B:
【化5】
(式中、RはCH、(CH)nCH(nは少なくとも1~5であり得る。)であり、式XXの化合物中の3つのアルコキシ基は互いに同じであっても異なっていてもよい、及びRはCH、(CH)nCH(nは少なくとも1~5であり得る。)であり得る)、を含む配合物に関する。
【0021】
一実施形態において、式(I)の化合物AはRがCHであり、n=1以上であるFEVE部分であり、式(XX)の化合物Bは、以下に示す3-イソシアナトプロピルトリエトキシシランである。
【化6】
【0022】
触媒の存在下における化合物Aと化合物Bとの反応は、式(III)の化合物であるシラン官能性ポリウレタン樹脂を生成することが見出されている。
【化7】
【0023】
式(XXI)への変換は、約72時間以内にフーリエ変換赤外分光法により未反応イソシアネートの存在を最小限又は実際に検出されずに実質的に完了する。フーリエ変換赤外分光法を使用することによって測定できるこの予想外の高い転化率は、未反応のイソシアネートが存在しないことを裏付けている。これは、従来技術のポリウレタン系からの著しい逸脱及び利点を表す。
【0024】
本発明の更なる関連する態様では、建築材料のための改善されたトップコートとして、シラン官能化FEVE樹脂を製造するための配合物が記載されており、化学量論比1:1で存在する式(I)の化合物A及び式(II)の化合物B;有効な触媒量のカルボン酸ビスマスを含み、化合物Aと化合物Bとを、触媒の存在下で、周囲温度又はそれ以上で所定時間反応させることにより、フーリエ変換赤外分光分析によって未反応のイソシアネートが実質的に測定されないシラン官能化FEVE樹脂を製造する。
【0025】
式(I)及び式(II)の化合物のシラン官能化反応生成物は、環境への悪影響及び塗工者の未反応イソシアネートへの曝露を伴わずに、高いUV耐性を有するフルオロポリマーの物理的利点、ポリウレタンの高い耐擦傷性及び耐候性が組み込まれた樹脂である。
【0026】
本発明によるシラン官能化反応生成物の更なる利点は、ポリウレタントップコートの接着強度を向上させるために複数のプライマーコートを必要とすることとは対照的に、トップコーティングを基材材料に直接塗工することができることである。
【0027】
本発明の配合物は、式(IV)の化合物Dを含むことができる。化合物Dは、シランイソシアネート架橋剤である化合物Bと反応する、化合物Aの代わりに使用できるアクリルポリオールである。
【化8】
(式中、nは1以上、特に1~10の整数であり、RはH又はCHであり、Rは直鎖状又は分枝状の炭化水素鎖である。)
【0028】
一般式(XX)の化合物Bと式(IV)の化合物Dとの反応により、式(V)の化合物であるシラン官能性アクリルポリウレタン樹脂が製造される。
【化9】
(式中、nは1以上、特に1~10の整数であり、RはH又はCHであり、Rは直鎖状又は分枝状の炭化水素鎖である。)
【0029】
関連する実施形態において、本発明の配合物は、式(VI)の化合物Eを含むことができる。化合物Eは、シランイソシアネート架橋剤である化合物Bと反応する、化合物Aの代わりに使用できるポリエーテルポリオールである。
【化10】
【0030】
関連する実施形態において、本発明の配合物は、式(VII)の化合物Fを含むことができる。化合物Fは、シランイソシアネート架橋剤である化合物Bと反応する、化合物Aの代わりに使用できるポリエステルポリオールである。
【化11】
【0031】
更に別の関連する実施形態では、本発明の配合物が式(VIII)の化合物Gを含むことができる。化合物Gは、シランイソシアネート架橋剤である化合物Bと反応する、化合物Aの代わりに使用できるポリブタジエンポリオールである。
【化12】
【0032】
なお、更なる関連する実施形態において、本発明の配合物は、式(IX)の化合物Hを含むことができる。化合物Hは、シランイソシアネート架橋剤である化合物Bと反応する、化合物Aの代わりに使用できるポリカーボネートポリオールである。
【化13】
【0033】
化合物E~Hを含む各種ポリオールは、極性、可撓性及び水酸基当量(質量)などの様々な特性を有し、本出願人らは、消費者の利益を有する固有の樹脂系を製造することを見出した。
【0034】
本発明の関連する態様では、建築物の外表面を保護し、塗工者のイソシアネートへの曝露を実質的に最小限にするのに有効な高性能トップコーティングを調製する方法であって、化学量論比1:1で、式(I)のフルオロエチレンビニルエーテル(FEVE)部分から選ばれる所定量の化合物A、及び一般式(II)のシラン官能性イソシアネートから選ばれる化合物Bを反応容器に導入する工程;触媒である化合物Cを有効量供給する工程;所定温度で所定時間、不活性雰囲気中で反応物を撹拌する工程;を含み、得られるシラン官能性FEVE樹脂は未反応イソシアネートを実質的に有しない方法が記載される。
【0035】
好ましくは、当該不活性雰囲気は窒素によって提供される。
【0036】
好ましくは、触媒である化合物Cの存在下における化合物AとBとの反応温度が周囲温度(15℃)~約80℃である。
【0037】
好ましくは、化合物A及びBが約12時間~72時間撹拌される。
【0038】
好ましくは、触媒がカルボン酸ビスマスであり、約0.4%w/w~約20%w/wの量で反応中に存在する。
【0039】
更に関連する態様において、本発明は、外表面を保護し、塗工者のイソシアネートへの曝露を実質的に最小限にするのに有効な高性能樹脂コーティングを調製するための配合物を対象とするものであって、式(X)のアスパラギン酸エステル部分から選ばれる化合物I:
【化14】
と、一般式(II)のシラン官能性イソシアネートから選ばれる化合物Bとを含む。
【0040】
触媒の存在下における化合物Iと化合物Bとの反応により、式(XI)の化合物であるシラン硬化ポリアスパラギン酸樹脂が製造されることが見出された。
【化15】
【0041】
ウレア形成を利用してポリアスパラギン酸コーティングを生成するために従来使用されるポリアスパラギン酸エステルは、ポリウレアに起因する反応速度を低下させるために嵩高い置換基を用いて設計されており、これにより、硬化プロセスが遅くなり、スプレー装置において使い勝手がよりよいものとなる。式IIの化合物を使用して式XIのシラン硬化ポリアスパラギン酸樹脂を生成すると、通常のイソシアネートの硬化条件下では反応性が高すぎる従来のポリアミンの使用が可能になる。したがって、本発明の更に別の関連する態様では、外表面を保護し、塗工者のイソシアネートへの曝露を実質的に最小限にするのに有効な高性能樹脂コーティングを調製するための配合物であって、式(XII)のポリアミン部分から選択される化合物J:
【化16】
と、一般式(II)のシラン官能性イソシアネートから選ばれる化合物Bとを含む配合物が記載される。
【0042】
触媒の存在下における化合物Jと化合物Bとの反応により、式(XIII)の化合物である高反応性テトラアミンなどのシラン硬化ポリアミン樹脂が製造されることを見出した。
【化17】
【0043】
本発明の利点には以下が含まれる:
【0044】
シラン官能化FEVE樹脂の製造において未反応イソシアネートを最小限にし、実質的に排除する;
【0045】
シラン官能化FEVE樹脂への高い転化率が達成される。その結果、塗工者の未反応イソシアネートへの有毒な環境曝露が実質的に排除される;
【0046】
得られたシラン官能化FEVE樹脂の物理的特性は、フルオロポリマーの高いUV耐性特性に加えて、ポリウレタンコーティングの特性を維持する。
【0047】
シラン官能化アクリルポリウレタン樹脂の製造における未反応イソシアネートを最小限にし、実質的に排除する;
【0048】
塗工前に加熱を必要とする従来技術のコーティング配合物の問題が克服される。
【0049】
得られるシラン官能化FEVE樹脂生成物、及びシラン官能化アクリルポリウレタン樹脂は、建築材料基材への接着性が改良されているため、プライマーコートの必要性を低減する。
【0050】
本発明の他の態様も、添付の実施例を参照して開示される。
【0051】
[実施例]
本発明の範囲内に含まれる他のいかなる形態にも関わらず、本発明の好ましい実施形態を単なる例として以下に説明する:
【0052】
実施例1:イソシアネート非検出のシラン官能化FEVE樹脂
イントロダクション
【0053】
ポリウレタン(PU)コーティングは一般に、耐候性及び劣化に対する適切な保護を提供すると考えられる。しかしながら、PUコーティングは、UV放射に対する耐性が比較的低く、未反応イソシアネートにより、塗工者が非常に望ましくない有害な健康影響に曝露されることが知られている。
【0054】
研究設計
トップコーティングとしての機能、及び未反応のイソシアネートを実質的に除去する機能を評価するために、様々なシラン官能化FEVE樹脂が生成されている。
【0055】
試験プロトコル
式(I)の化合物Aと式(II)の化合物Bとの反応物の転化率を、フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)を用いて追跡した。このようにして、未反応イソシアネートの存在を決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
本発明の範囲内に含まれる他のいかなる形態にも関わらず、本発明の好ましい実施形態を添付の図面を参照して単に例として以下に説明する:
図1図1は、約2300cm-1で特徴的なイソシアネートピークを示す、式(II)の化合物BのFT-IRスペクトルである。
図2図2は、式(I)の化合物AであるFEVEポリオール樹脂のFT-IRスペクトルである。
図3図3は、式(I)の化合物AであるFEVEポリオール樹脂と式(II)の化合物Bとの0時間時点における反応のFT-IRスペクトルである。
図4図4は、式(I)の化合物AであるFEVEポリオール樹脂と式(II)の化合物Bとの12時間時点における反応進行のFT-IRスペクトルである。
図5図5は、式(I)の化合物AであるFEVEポリオール樹脂と式(II)の化合物Bとの48時間時点における反応進行のFT-IRスペクトルである。
図6図6は、式(I)の化合物AであるFEVEポリオール樹脂と式(II)の化合物Bとの0、12及び48時間時点の複合反応進行を示すFT-IRスペクトルである。
図7図7は、配合されたシラン硬化FEVEポリウレタンの試験を示す。
図8図8は市販のポリイソシアネートEdolan XCIのFT-IRスペクトルである。
図9図9は、市販のポリイソシアネートHDI三量体Desmodur N3800のFT-IRスペクトルである。
図10図10は、市販のポリイソシアネートHDI三量体トロネートXF 800のFT-IRスペクトルである。
図11図11は、ヒドロキシル及びカルボニル官能基を示す脂肪族ポリオールAのFT-IRスペクトルである。
図12図12は、イソシアネート官能基を示すイソシアネートBのFT-IRスペクトルである。
図13図13は、ウレタン官能基が組み込まれたシラン変性イソシアネートフリー樹脂Cを形成するための、ポリオールAとイソシアネートBとの反応混合物のFT-IRスペクトルである(最初の混合から2時間後)。
図14図14は、ウレタン官能基が組み込まれた樹脂Cを形成するための、ポリオールAとイソシアネートBとの反応混合物のFT-IRスペクトルである(最初の混合から24時間後)。
図15図15は、ウレタン官能基が組み込まれた樹脂Cを形成するための、ポリオールAとイソシアネートBとの反応混合物のFT-IRスペクトルである(最初の混合から72時間後)。
図16図16は、ウレタン官能基が組み込まれた樹脂Cを生成するための反応のFT-IRスペクトルを組み合わせたものである。
図17図17は、ポリオール及びカルボニル官能基の存在を示す、Weathermax HBR高ビルドポリウレタン(Dulux)のパックAのFT-IR分析である。
図18図18は、イソシアネート及びカルボニル官能基の存在を示す、Weathermax HBR高ビルドポリウレタン(Dulux)のパックBのFT-IR分析である。
図19図19は、カルボニル及びウレタン官能基の存在を示す、本発明のシラン変性イソシアネートフリーポリウレタンのパックAのFT-IR分析である。
図20図20は、アミン及びカルボニル官能基の存在を示すシラン変性イソシアネートフリーポリウレタンのパックBのFT-IR分析である。
【0057】
第1のプロトコル(以下の反応シーケンスを参照)において、式(I)の化合物AであるFEVE部分(8)と、好ましくは3-(トリエトキシシリル)プロピルイソシアネートである、式(XX)の化合物Bであるシラン官能性イソシアネート(SFI)(10)とを化学量論比1:1で反応させて、式(XXI)のシラン官能性FEVE樹脂(11)を製造した。
【化18】
【0058】
触媒の有無にかかわらず、ある温度範囲を使用した。不活性窒素雰囲気中、一定の期間にわたって反応物を連続的に撹拌し、反応架橋剤(10)の転化を完了までの時間観察した。
【0059】
表1(下記)は、第1のプロトコルの結果を示す。
【0060】
表1は、一連の反応物、触媒、条件、触媒量及び転化率の全体的な結果を示す。
【表1】
SFI(10)-シラン官能化イソシアネート(10)
【0061】
更なる実施例において、式(XXI)のシラン官能化FEVE樹脂(11)は、(i)式(I)のFEVE部分(8)と、(ii)式(XX)のシラン官能化イソシアネート(10)とを、所定量、窒素の不活性雰囲気の存在下で反応させることによって合成した。ただし、化合物8及び10は1:1の化学量論比で存在させた。
【0062】
1回の試験反応において、カルボン酸ビスマス触媒の量を、シラン官能性イソシアネート(10)の0.4%w/wとした。その後、反応物を15℃で48時間撹拌した。この反応について、(10)の消費をフーリエ変換赤外分光法(FT-IR)によりモニターし、約2300cm-1の特徴的なNCOピークにより同定することができた。図1は、2300cm-1における特徴的なイソシアネートピークを示し、図2は、式(I)であるFEVE部分(8)のスペクトルを示す。
【0063】
図3~6において、式(XX)のシラン官能性イソシアネートの消費について、反応の進行をFT-IRによってモニターした。0、12、及び48時間の間隔で、FTIRスペクトルは、図6に見られるように、イソシアネート官能基がある程度、進行性の転化をしていることを示しており、特徴的なイソシアネートピークが存在せず、未反応イソシアネートが存在しないことを示している。これは、従来技術のコーティングからの著しい逸脱を表す。
【0064】
一般式XXの化合物8を使用し、コーティングの反応性及び硬化速度を実質的に損なうことなく、安定なシラン-樹脂系を生成することが見出されたが、最終コーティング系に有益な特性を有するいくつかの代替のイソシアネートシラン化合物が試験された。例えば、代替のイソシアネートシラン化合物は、以下を含むことができる:
【化19】
【0065】
試験は、式XIVのように、イソシアネートシランの炭素鎖を減少させることが、生成されたシラン樹脂の疎水性を減少させる効果を有し、式IIからエチレン基を除去することが、樹脂の分子量を減少させることを示す。
【0066】
提案された式XVのイソシアネートシランは、トリエトキシをトリメトキシに置換すると、加水分解速度及びその後の硬化速度を増加させるが、得られる樹脂は、安定性の低いシラン樹脂である可能性が高いことを示している。
【0067】
式XVIを参照すると、イソシアネートシランのシラン含有量の減少が示されている。得られるシラン樹脂に対する付随的な影響として、ポリシロキサン系の特性が低下し、ネットワーク密度が低下し、鎖の動き及び柔軟性が向上する。
【0068】
反応手順は、式IVの脂肪族アクリルポリオールであるCray Valley Synocure854BA 80(18)及びNuplex Setalux DA 870 BA(19)を使用すると、72時間以内にシラン官能基等価物と、アスパラギン酸エステルジアミンであるCovestro Desmophen 1420(20)とを生成しながら、15℃、ビスマスキレート触媒(17)の存在下ではシラン化誘導体を24時間以内に生成しながら、屈強であることも見出した。
【0069】
以下の表2にポリオール及びアスパラギン酸エステル樹脂18、19及び20のシラン官能化の試験結果を示す:
【0070】
【表2】
【0071】
他の実施形態では、出願人は、1液シラン硬化システム及びハイブリッドシステムを試みた。しかしながら、初期の焦点は、以下の反応シーケンスで示されるタイプの2液システムであり、第2のアクリル樹脂を組み込むことにより、硬化速度及び完全硬化を改善することを試みている。
【化20】
【0072】
これらの樹脂系は、パックB中のアミノシラン化合物であるアミノプロピルトリメトキシシラン(APTMS)及びアミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)を介して連結され、2液コーティングシステムを生成する。
【0073】
本出願人は、新規な樹脂を使用して、樹脂が湿気硬化性である一液配合物を作製するなど、他のタイプの配合物を提案している(下記参照)。更なる研究は、一液システムのための単一の樹脂系を可能にするために、樹脂の硬化速度及び完全硬化を改善するであろう。
【化21】
【0074】
シラン官能性FEVE樹脂11を使用して、新規な配合物が生成された。その結果(図7参照)は、コーティングの耐擦傷性及びFEVE紫外線耐性が向上していることを示している。図7は、配合されたシラン硬化FEVEポリウレタン(11)の試験を示し、1192時間のQUV露光後の光沢保持を示している。
【0075】
実施例-FTIRにおける本発明によるシラン変性ポリウレタンと標準的なポリウレタンとの比較
【0076】
使用機器は以下を含む:
-Shimadzu 8400s フーリエ変換赤外分光計
-PIKE MIRacle 単反射ATR
【0077】
ベースイソシアネート検出に使用される市販のイソシアネート:
-Edolan XCI 脂肪族ポリイソシアネート(Tanatex chmical)
-Desmodur N3800 脂肪族ポリイソシアネート HDI三量体(Covestro)
-TolonateXF 800 脂肪族ポリイソシアネート HDI三量体(Vencorex)
【0078】
フーリエ変換赤外分光計(FT-IR)を、イソシアネート(-NCO)、カルボニル(-C=O-)及びヒドロキシル/アミノ(OH/NH)基を検出するための計測ツールとして使用し、それらの赤外線吸収を測定し、スペクトルに変換した。吸収又は放出される波長は官能基ごとに計測される(表3)。
【0079】
【表3】
【0080】
図8~10は、特徴的なIR吸光度による市販のイソシアネート中のイソシアネートの存在を示す。
【0081】
表4は市販の硬化剤樹脂のイソシアネートピークの分析を示し、関連する波長範囲において計測ピークが明らかに見えている。
【表4】
【0082】
シラン変性ポリウレタンイソシアネートフリー樹脂Cの形成のために使用される試薬としては以下のものが挙げられる:
-ヒドロキシル官能基を有する脂肪族アクリルポリオール樹脂及び/又はFEVE樹脂A;並びに
-イソシアネートBは3-イソシアナトプロピルトリエトキシシランである。
【0083】
組成物は以下を含む:
-化合物AとしてFEVEポリオール樹脂(Lumiflon LF-200)を固形樹脂で処方中に約45~53%w/w;
-化合物Bとして3-イソシアナトプロピルトリエトキシシランを処方中に10~23%;
-FEVEポリオール樹脂のためのキシレン溶媒を30~35%w/w;及び
-触媒としてビスマスカルボキシレート(K-Kat628)を処方中に0.2~0.6%w/w
【0084】
本発明のシラン官能性ポリウレタン樹脂は、ビスマスカルボキシレートの存在下で、FEVEポリオール樹脂(ルミフロン(Lumiflon)LF-200)と3-イソシアナトプロピルトリエトキシシランとを反応させることによって生成され、反応の経過をFTIRによって追跡することにより、未反応又は残留イソシアネートの存在が評価される。
【0085】
図11~16を参照すると、イソシアネートフリーポリウレタン樹脂Cの生成を、PIKE MIRacle単一反射ATRを備えたShimadzu 8400s フーリエ変換赤外分光計によってモニターした。反応は、2300cm-1付近でのイソシアネートピークの消費と、1530cm-1付近でのカルバメート吸光度の形成によって完了したことが示されている(表1)。
【0086】
イソシアネートBの分析により、2265cm-1に強く鋭いピークが得られた。この吸光度のピークをイソシアネート基と同定した(図12)。
【0087】
A及びBの反応混合物の分析により、2300cm-1のイソシアネートの消費と、1530cm-1のウレタンの生成が示される(図13-15)。24時間後、2300cm-1のイソシアネートのピークが完全に消費したことにより反応が完了したと結論付けられた。
【0088】
3500cm-1付近の吸光度が最終生成物中に存在することが注目されたが、微量のイソシアネートの完全な除去を助けるために、成分Aがわずかに化学量論的に余分に使用されているためと予想される(図16)。
【0089】
Weathermax HBR高ビルドウレタンのパックBの分析により、2259cm-1に強く鋭いピークが得られた。この吸光度のピークは、イソシアネートとして同定され、パックAの大部分がイソシアネートで構成されることを示す(図18)。
【0090】
イソシアネートを有しないポリウレタンCの分析により、3470cm-1に幅広い中程度のピークが得られ、1730cm-1に弱く鋭いピークが得られた。これらの吸光度ピークは、それぞれアミン基及びエステルカルボニルとして同定された(図20)。
【0091】
市販のWeathermax HBRコーティング組成物中のイソシアネートの存在は明らかであり、かつ明確であり、約2300cm-1に鋭いピークがある(図18)。イソシアネートを有しないポリウレタンCの分析では、イソシアネートの徴候を示さず、1530cm-1における、組み込まれたカルバメート/ポリウレタン官能基の存在を示す(図19)。
【0092】
利点
シラン官能化FEVE樹脂の生成における未反応イソシアネートを最小限にし、実質的に排除する;
シラン官能化FEVE樹脂への高い転化率が達成される。その結果、塗工者の未反応のイソシアネートへの有毒な環境曝露が実質的に排除される;
得られるシラン官能化FEVE樹脂の物理的特性は、フルオロポリマーの高いUV耐性特性に加えて、ポリウレタンコーティングの特性を維持する。
塗工前に加熱を必要とする従来技術のコーティング配合物の問題が克服される。
得られたシラン官能化FEVE樹脂製品は、建築材料基材への接着性を改善し、したがってプライマーコートの必要性を低減する。
【0093】
解釈
実施形態:
本明細書を通して、「一実施形態」又は「実施形態」という言及は、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構成、又は特徴が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体にわたる様々な場所に現れる「一実施形態において」又は「ある実施形態において」という語句は、必ずしもすべて同じ実施形態を指すわけではないが、同じ実施形態を指してもよい。更に、特定の特徴、構造、又は特性は、1つ又は複数の実施形態において、本開示から当業者に明らかであるように、任意の適切な方法で組み合わせることができる。
【0094】
同様に、本発明の例示的な実施形態の上記の説明では、開示を簡素化し、様々な発明の態様のうちの1つ又は複数の理解を助ける目的で、本発明の様々な特徴が単一の実施形態、図、又はそれらの説明にまとめられることがあることを理解されたい。しかしながら、この開示方法は、請求された発明が各請求項に明示的に列挙されるよりも多くの特徴を必要とするという意図を反映するものとして解釈されるべきではない。むしろ、以下の特許請求の範囲が表すように、決して先に開示した単一の実施形態の全ての特徴に発明的要素が存在するわけではない。したがって、特定の実施形態の詳細な説明に続く特許請求の範囲は本明細書によって、特定の実施形態の詳細な説明に明示的に組み込まれ、各請求項は本発明の別個の実施形態として独立している。
【0095】
更に、本明細書に記載されるいくつかの実施形態は、他の実施形態に含まれるいくつかの特徴を含むが、他の特徴を含まず、当業者によって理解されるように、異なる実施形態の特徴の組み合わせは本発明の範囲内であり、異なる実施形態を形成することを意味する。例えば、以下の特許請求の範囲において、特許請求される実施形態のいずれも、任意の組み合わせで使用することができる。
【0096】
対象の異なる例
【0097】
本明細書で使用される場合、共通の対象を説明するための序数形容詞「第1の」、「第2の」、「第3の」などの使用は、別段の指定がない限り、単に、同様の対象の異なる例が参照されていることを示し、また、そのように説明される対象が時間的に、空間的に、ランク付け又は任意の他の方法で、所定の順序にならなければならないことを示唆するものではない。
【0098】
具体的内容
本明細書で提供される説明では、多数の具体的な詳細が説明される。しかし、本発明の実施形態は、こうした特定の詳細なしで実施できることが理解される。他の例では、この説明の理解を曖昧にしないために、周知の方法、構造、及び技法は詳細に示されていない。
【0099】
用語
図面に示された本発明の好ましい実施形態を説明する際に、明確にするために特定の用語が用いられる。しかしながら、本発明はそのように選択された特定の用語に限定されることを意図するものではなく、各特定の用語は同様の技術的目的を達成するために同様の方法で動作する全ての技術的等価物を含むことを理解されたい。「前方」、「後方」、「半径方向に」、「周囲に」、「上方に」、「下方に」などの用語は、基準点を提供する便宜上の用語として使用され、限定的な用語として解釈されるべきではない。
【0100】
「Comprising」及び「Including」
以下の特許請求の範囲及び本発明の前述の説明において、文脈が明示的な言葉又は必要な含意のために他に必要とする場合を除いて、「comprise」という単語又は「comprises」若しくは「comprising」などの変形は、包括的な意味で、すなわち、述べられた特徴の存在を特定するが、本発明の様々な実施形態における更なる特徴の存在又は追加を排除しないように使用される。
【0101】
本明細書で使用される「including」、「which includes」、又は「that includes」という用語のいずれか1つは、その用語に続く要素/特徴を少なくとも含むが、他を排除するものではないことも意味する自由な用語である。したがって、「including」は「comprising」と同義である。
【0102】
発明の範囲
したがって、本発明の好ましい実施形態であると考えられるものが記載されているが、当業者は本発明の趣旨から逸脱することなく、他の及び更なる修正が行われ得ることを認識し、本発明の範囲内にあるそのようなすべての変更及び修正を特許請求することを意図する。例えば、上記の任意の式は単に、使用され得る手順の代表例である。機能はブロック図から追加又は削除され得るものであり、動作は機能ブロック間で交換され得る。ステップは、本発明の範囲内で記載される方法に追加又は削除され得る。
【0103】
特定の実施例を参照して本発明を説明してきたが、当業者であれば、本発明を他の多くの形態で実施することができることを理解するのであろう。
【産業上の利用可能性】
【0104】
上記から、記載された構成は、イソシアネートの露出を最小限にし、ポリウレタンのトップコート品質を保持するために、トップコート配合物及びシラン官能化トップコート配合物の合成方法に適用可能であることが明らかである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
【国際調査報告】