(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】微量及び超微量含油量の測定方法及び装置
(51)【国際特許分類】
G01N 1/40 20060101AFI20240822BHJP
G01N 33/00 20060101ALI20240822BHJP
G01N 1/22 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
G01N1/40
G01N33/00 C
G01N1/22 X
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528331
(86)(22)【出願日】2023-03-06
(85)【翻訳文提出日】2023-05-11
(86)【国際出願番号】 CN2023079824
(87)【国際公開番号】W WO2024021607
(87)【国際公開日】2024-02-01
(31)【優先権主張番号】202210882115.2
(32)【優先日】2022-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513065550
【氏名又は名称】中国科学院理化技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】胡 忠軍
(72)【発明者】
【氏名】王 炳明
(72)【発明者】
【氏名】李 強
(72)【発明者】
【氏名】▲ごん▼ 領会
【テーマコード(参考)】
2G052
【Fターム(参考)】
2G052AA10
2G052AB12
2G052AB26
2G052AD06
2G052AD22
2G052AD46
2G052EB13
2G052ED01
2G052FD09
2G052GA12
2G052JA04
2G052JA09
(57)【要約】
本発明は含油量の検出技術分野に関し、特に微量及び超微量含油量の測定方法及び装置に関する。本発明の測定装置は低温濃縮装置、抽出装置及び赤外分光計を備え、低温濃縮装置がデュワー容器及びU字管を備え、抽出装置が抽出溶媒容器、輸入管、導出管及び抽出液定量管を備え、U字管には、計量されたガスの総質量及び前記赤外分光計が測定した抽出液の油濃度に基づいてガス中の含油量を計算して取得する質量流量計が更に設けられる。本発明は更に測定方法を提供し、液体窒素冷却トラップによる濃縮方式を利用して、効果的に抽出することでガス中の含油量の測定を液体抽出溶媒中の油濃度の測定に変換し、赤外分光光度法を用いて正確な測定を行う。本発明の測定装置及び方法は、測定範囲が比較的広くて1500ppmW~1ppbWであり、超微量及び微量範囲における確実な測定を実現する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微量及び超微量含油量の測定装置であって、
ガス中の微量及び超微量油成分に対して濃縮サンプリングを行う低温濃縮装置と、油成分を抽出するための抽出装置と、抽出後の液体に対して含油量の分析を行うための赤外分光計とを備え、
前記低温濃縮装置は液体窒素を収容するためのデュワー容器と、液体窒素に浸漬するU字管とを備え、ガスが前記U字管を流れて液体窒素冷却トラップを形成してガス中の油成分の濃縮サンプリングを実現し、
前記抽出装置は抽出溶媒を貯蔵する容器と、抽出液を前記U字管内に輸入する輸入管と、抽出液を導出する導出管と、抽出液定量管とを備え、前記輸入管中の抽出溶媒が前記U字管に近接するガス入口から流れ込み、抽出された抽出液が前記U字管に近接するガス出口から流れ出して前記導出管を流れてから前記抽出液定量管に貯蔵され、前記抽出液定量管は更に抽出液の体積を測定するためのものであり、
前記U字管には、通過したガスの総質量を計量して、計量されたガスの総質量及び前記赤外分光計が測定した抽出液の油濃度に基づいてガス中の含油量を計算して取得するための質量流量計が更に設けられることを特徴とする微量及び超微量含油量の測定装置。
【請求項2】
前記U字管は伝熱式熱交換用鋼管又はガラス管であり、前記U字管内にグラスバブルズが更に充填され、且つ前記U字管の両側のグラスバブルズの界面は液体窒素の界面よりも高く、ガスと抽出溶媒との接触面積を増大させるためのものであり、油成分の抽出に寄与することを特徴とする請求項1に記載の微量及び超微量含油量の測定装置。
【請求項3】
グラスバブルズの直径が0.5~2mmであり、充填後のグラスバブルズの空隙率が50~85%であることを特徴とする請求項1に記載の微量及び超微量含油量の測定装置。
【請求項4】
前記U字管の吸気端面及び排気端面にいずれも精度1~5umの除塵濾過器が設けられ、前記U字管のガス入口及びガス出口にいずれも自動制御弁が設けられることを特徴とする請求項1に記載の微量及び超微量含油量の測定装置。
【請求項5】
前記U字管の吸気端面及び排気端面は前記デュワー容器の外部に位置し、前記U字管の上下昇降調整を実現するためのものであることを特徴とする請求項1に記載の微量及び超微量含油量の測定装置。
【請求項6】
前記輸入管及び前記導出管にいずれも自動制御弁が設けられ、
前記抽出液定量管は二方向カテーテルにより一方の分岐が前記赤外分光計に導通接続され、自動的に送液するためのものであり、他方の分岐が排液するためのものであり、前記二方向カテーテルの上流における分流しない箇所には自動制御弁が設けられ、前記二方向カテーテルにおける排液のためのカテーテルにも自動制御弁が設けられることを特徴とする請求項1に記載の微量及び超微量含油量の測定装置。
【請求項7】
抽出溶媒がトリクロロトリフルオロエタン又は四塩化炭素であることを特徴とする請求項1に記載の微量及び超微量含油量の測定装置。
【請求項8】
前記デュワー容器に液体窒素の注入口及び排出口が更に設けられ、前記デュワー容器の内部に液体窒素液位計が設けられ、前記U字管の内部に温度計が設けられ、前記U字管の外部にヒータが設けられ、冷却トラップで濃縮サンプリングを行った後、加熱によってサンプルを室温に迅速に戻してから抽出することを特徴とする請求項1に記載の微量及び超微量含油量の測定装置。
【請求項9】
前記測定装置の測定範囲が1500ppmW~1ppbWであることを特徴とする請求項1に記載の微量及び超微量含油量の測定装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の装置による微量及び超微量含油量の測定方法であって、
液体窒素冷却トラップを用いてガス中の微量及び超微量の油成分に対して濃縮サンプリングを行うステップS1と、
抽出溶媒を加えて濃縮サンプルを抽出するステップS2と、
HJ637-2018水中石油・動植物油の測定標準に従って、前記赤外分光計を用いて抽出液の油濃度を測定し、更に抽出液中の油質量を算出するステップS3と、
質量流量計を用いて通過したガスの総質量を計量するステップS4と、
前記ステップS4において取得されたガスの総質量及び前記ステップS4において取得された油質量に基づいて、ガス中の含油量を計算して取得するステップS5と、を含むことを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の装置による微量及び超微量含油量の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は含油量の検出技術分野に関し、具体的には、微量及び超微量含油量の測定方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス中の含油量はガス製品の品質を評価する重要な指標の1つとされ、工業用圧縮ガス中の微量油の測定方法に係る問題は、中国国内外で重点的に研究する基本的な問題の1つであり、主に圧縮ガス中の微小量、微量及び超微量レベルの油濃度を正確に測定することである。酸素発生業界において、圧縮空気中の含油量は更に酸素発生装置の安全性に影響することとなる。ロケット発射に使用される窒素ガス、ヘリウムガス又は空気に含油量が高すぎると、衛星、ロケットのガス供給配管、燃料輸送システム及びエンジンシステムに危害を加えることとなり、窒素ガス、ヘリウムガス、空気などは特殊な工業部門、特に宇宙飛行工業部門に応用されるとき、使用過程においてその含油量への要件がより高い。我が中国の国家標準において、空気、ヘリウムガス中の含油量を制限することがなく、対応する検査方法もない。ガス中の微量含油量の測定には依然として成熟した簡便な分析方法がない。含油量を測定する主な方法は重量法及び分光光度法があり、重量法が液体中の高含有量の油の測定に適用される。
【0003】
ガス中の含油量の濃度範囲が一般的に数百ppm以下であり、且つ油の成分が複雑で一般的に直接測定できず、サンプルを予め定量的に濃縮する必要があり、よく使用される吸収方法には溶媒の吸収、材料の吸着、凝縮濃縮などがある。分析方法において、油の主な成分がいずれも長鎖アルカン又はアレーンであり、2930cm-1、2960cm-1及び3030cm-1にはいずれも、それぞれCH3-基におけるC-H結合の非対称伸縮振動周波数、-CH2-基におけるC-H結合の非対称伸縮振動周波数及び芳香環におけるC-H結合の非対称伸縮振動周波数に対応する特性吸収ピークがある。赤外光度法は赤外分光光度法及び非分散赤外光度法に分けられる。赤外分光光度法は、それぞれメチル基、メチレン基及び芳香環の特性吸収を測定することができ、且つ脂肪族炭化水素と芳香族炭化水素との相互影響を補正し、異なる供給源又は種類の油分分析に適用され、特殊な標準油を決定しなくても正確な定量分析を行うことができる。
【0004】
液体水素及び液体ヘリウムの温度領域において、潤滑油成分が低温環境において固体粒子となって、コア可動部材の高速ターボ膨張機に事故が発生し又は低温システムの配管が詰まって、ヘリウム液化機又は冷凍機全体の冷凍性能が大幅に低下することをもたらすこととなり、これはビッグサイエンス装置などの低温システムにおいてよく発生した事故である。従って、ヘリウムガス作業物質中の含油量が10ppbよりも低いように求められる。安全のために、ヘリウムガス又は水素ガス作業物質の純度をリアルタイムに監視する必要があり、含油量が規準を超えると緊急処理プログラムに入る。これは超微量及び微量範囲における測定であるため、確実な濃縮スキーム及び分析方法である必要があるからである。
【0005】
油汚染に起因して低温システムに深刻な事故が発生することを回避するために、様々な水素/ヘリウム冷凍機又は液化器は実際の動作において高純度のヘリウムガス作業物質中の含油量を監視・分析する必要があり、一般的に含油量が10ppbW(即ち、ug/kgであり、Wで濃度の質量比を示す)を超えないように求められる。現在低温工程において主に用いるのはリンデ社製の多成分組成分析装置WE34M-3/SM38の油モジュールであり、その動作原理は光電効果を利用し、即ち交流電流が2つの金属電極間に放電することでガスを刺激して発光させるものである。フォトダイオードを含むセンサ及び信号増幅器によって光電流を電圧値に変換して、AD変換装置を介して被測定物質の濃度を取得することができる。ヘリウムガス中の油の含有量を検出するために、油を揮発性がより高くて1~3個の炭素原子を含有するガス状炭化水素類に熱分解してからWE34M-3に送り込んで検出する必要がある。ヘリウムガス中の油霧は1つの濾過器により分離及び濃縮され、濃縮時間を10分間~数時間に設定する。多すぎる油霧に起因して一般的にストレーナの過積載をもたらし、濃縮時間が短すぎる場合には油は押出されてストレーナを通過することとなって真に測定したが装置を汚染してしまう。熱分解室内の熱分解生成物は炭化水素化合物の分子形式でCxHyに1~3個の炭素原子を含有するままで測定され、単位をvpmとする。測定結果を補正係数(油霧からの補正、濃縮段階にストレーナに堆積した油霧の質量)に乗じて濃縮段階に濾過器を通過したヘリウムガスの総質量で割って、油霧がヘリウムガスに占める質量比率を取得することができ、単位をppbとする。しかしながら、上記テスト方法及び装置は以下の問題がある。第1)としては、含油量のテスト範囲が狭く、純ヘリウム中の含油量の範囲が0~250ppbであるが、低温工程において数百ppm等級がある場合が多く、油成分の含有量が250ppbよりも大きい場合、光電分析の濃縮濾過及び分解蒸留並びに分析室を汚染し、計器データが実際の含油量を反映できず、ひいては計器が汚染されて損傷されてしまう。第2)としては、キャリアガスがヘリウムガスであるしかなく、各種類の成分の油を標定する必要があり、実際の低温工程における油成分が異なり、複数種類の成分の混合物である場合もある。第3)としては、このような1つのスキームがあるだけでは、測定精度の比較を行うことができず、実際の低温工程において、テストデータに合格を表示するが低温システムに油汚染事故が発生する場合もある。
【0006】
従って、大型低温工程における微量(百万分の一、ppm)及び超微量(十億分の一、ppb)含油量の分析問題を解決する必要がある。低温冷凍循環を行うために用いた圧縮機潤滑油の成分が異なって、真空ポンプなどの他の装置及び環境からの油汚染成分が未知であるため、様々な油汚染成分を含む微量及び超微量含油量を正確に測定できる方法及び装置について研究する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記技術的問題を克服するために、本発明は微量及び超微量含油量の測定方法及び装置を提供し、液体窒素冷却トラップによる濃縮方式を利用して、効果的に抽出することでガス中の含油量の測定を液体抽出溶媒中の油濃度の測定に変換し、赤外分光光度法を用いて正確な測定を行い、宇宙飛行などの特殊な分野における油ガスサンプルを厳しく制御する環境分析に適用される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は微量及び超微量含油量の測定装置を提供し、ガス中の微量及び超微量油成分に対して濃縮サンプリングを行う低温濃縮装置と、油成分を抽出するための抽出装置と、抽出後の液体に対して含油量の分析を行うための赤外分光計とを備え、
前記低温濃縮装置は液体窒素を収容するためのデュワー容器と、液体窒素に浸漬するU字管とを備え、ガスが前記U字管を流れて液体窒素冷却トラップを形成してガス中の油成分の濃縮サンプリングを実現し、
前記抽出装置は抽出溶媒を貯蔵する容器と、抽出液を前記U字管内に輸入する輸入管と、抽出液を導出する導出管と、抽出液定量管とを備え、前記輸入管中の抽出溶媒が前記U字管に近接するガス入口から流れ込み、抽出された抽出液が前記U字管に近接するガス出口から流れ出して前記導出管を流れてから前記抽出液定量管に貯蔵され、前記抽出液定量管は更に抽出液の体積を測定するためのものであり、
前記U字管には、通過したガスの総質量を計量して、計量されたガスの総質量及び前記赤外分光計が測定した抽出液の油濃度に基づいてガス中の含油量を計算して取得するための質量流量計が更に設けられる。
【0009】
好ましくは、前記U字管は伝熱式熱交換用鋼管又はガラス管であり、前記U字管内にグラスバブルズが更に充填され、且つ前記U字管の両側のグラスバブルズの界面は液体窒素の界面よりも高く、ガスと抽出溶媒との接触面積を増大させるためのものであり、油成分の抽出に寄与する。
【0010】
好ましくは、グラスバブルズの直径が0.5~2mmであり、充填後のグラスバブルズの空隙率が50~85%である。
【0011】
好ましくは、前記U字管の吸気端面及び排気端面にいずれも精度1~5umの除塵濾過器が設けられ、前記U字管のガス入口及びガス出口にいずれも自動制御弁が設けられる。
【0012】
好ましくは、前記U字管の吸気端面及び排気端面は前記デュワー容器の外部に位置し、前記U字管の上下昇降調整を実現するためのものである。
【0013】
好ましくは、前記輸入管及び前記導出管にいずれも自動制御弁が設けられ、
前記抽出液定量管は二方向カテーテルにより一方の分岐が前記赤外分光計に導通接続され、自動的に送液するためのものであり、他方の分岐が排液するためのものであり、前記二方向カテーテルの上流における分流しない箇所には自動制御弁が設けられ、前記二方向カテーテルにおける排液のためのカテーテルにも自動制御弁が設けられる。
【0014】
好ましくは、抽出溶媒がトリクロロトリフルオロエタン又は四塩化炭素である。
【0015】
好ましくは、前記デュワー容器に液体窒素の注入口及び排出口が更に設けられ、前記デュワー容器の内部に液体窒素液位計が設けられ、前記U字管の内部に温度計が設けられ、前記U字管の外部にヒータが設けられ、冷却トラップで濃縮サンプリングを行った後、加熱によってサンプルを室温に迅速に戻してから抽出する。
【0016】
好ましくは、前記測定装置の測定範囲が1500ppmW~1ppbWである。
【0017】
本発明は以上に記載の装置による微量及び超微量含油量の測定方法を更に提供し、
液体窒素冷却トラップを用いてガス中の微量及び超微量の油成分に対して濃縮サンプリングを行うステップS1と、
抽出溶媒を加えて濃縮サンプルを抽出するステップS2と、
HJ637-2018水中石油・動植物油の測定標準に従って、前記赤外分光計を用いて抽出液の油濃度を測定し、更に抽出液中の油質量を算出するステップS3と、
質量流量計を用いて通過したガスの総質量を計量するステップS4と、
前記ステップS4において取得されたガスの総質量及び前記ステップS4において取得された油質量に基づいて、ガス中の含油量を計算して取得するステップS5と、を含む。
【発明の効果】
【0018】
従来技術に比べて、本発明の有益な効果は以下のとおりである。
本発明に係る微量及び超微量含油量の測定方法及び装置において、液体窒素冷却トラップによる濃縮方式を利用して、効果的に抽出することでガス中の含油量の測定を液体抽出溶媒中の油濃度の測定に変換し、赤外分光光度法を用いて正確な測定を行い、測定精度が1500ppmW~1ppbWであり、測定範囲がより広く、超微量及び微量範囲における確実な測定を実現し、低温工程における汚染源を容易・迅速・正確に見つけることができ、それにより更に汚染源に基づいて低温システムにおける油汚染の問題を解決し、油が酸化又は分解された各種類の物質が分子レベルで異なる波長の赤外線を吸収する程度が少々異なるため、赤外スペクトルに基づいて識別でき、宇宙飛行などの特殊な分野における油ガスサンプルを厳しく制御する環境分析に適用され、応用分野が広い。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は本発明に係る微量及び超微量含油量の測定装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に図面を参照しながら具体的な実施形態によって本発明を更に詳しく説明する。以下の説明は本発明の好適な実施形態であり、指摘すべきことは、当業者であれば、本発明の実施例の原理を逸脱せずに、更に種々の改良及び潤色を行うことができ、これらの改良及び潤色も本発明の保護範囲として見なされる。
【0021】
図1は本発明に係る微量及び超微量含油量の測定装置を示す模式図であり、ガス中の微量及び超微量油成分に対して濃縮サンプリングを行う低温濃縮装置1と、油成分を抽出するための抽出装置2と、抽出後の液体に対して含油量の分析を行うための赤外分光計3とを備え、
前記低温濃縮装置1は液体窒素を収容するためのデュワー容器11と、液体窒素に浸漬するU字管12とを備え、ガスが前記U字管12を流れて液体窒素冷却トラップを形成してガス中の油成分の濃縮サンプリングを実現し、
前記抽出装置2は抽出溶媒を貯蔵する容器21と、抽出液を前記U字管内に輸入する輸入管22と、抽出液を導出する導出管23と、抽出液定量管24とを備え、前記輸入管22中の抽出溶媒が前記U字管12に近接するガス入口から流れ込み、抽出された抽出液が前記U字管12に近接するガス出口から流れ出して前記導出管23を流れてから前記抽出液定量管24に貯蔵され、前記抽出液定量管24は更に抽出液の体積を測定するためのものであり、
前記U字管12には、通過したガスの総質量を計量して、計量されたガスの総質量及び前記赤外分光計3が測定した抽出液の油濃度に基づいてガス中の含油量を計算して取得するための質量流量計121が更に設けられる。
【0022】
前記U字管12は伝熱式熱交換用鋼管又はガラス管であり、前記U字管内にグラスバブルズ122が更に充填され、且つ前記U字管12の両側のグラスバブルズの界面は液体窒素の界面よりも高く、ガスと抽出溶媒との接触面積を増大させるためのものであり、油成分の抽出に寄与する。好ましくは、グラスバブルズ122の直径が0.5~2mmであり、充填後のグラスバブルズ122の空隙率が50~85%である。
【0023】
前記U字管12の吸気端面及び排気端面にはいずれも精度が好ましくは1~5umである除塵濾過器123が設けられ、前記U字管12のガス入口及びガス出口にはいずれも液体窒素冷却トラップの濃縮及び抽出を行うガスの質量を定量的に制御できる自動制御弁4が設けられる。
【0024】
前記U字管12の吸気端面及び排気端面は前記デュワー容器11の外部に位置し、前記U字管12の上下昇降調整を実現するためのものである。
【0025】
前記輸入管22及び導出管23にはいずれも抽出溶媒の添加及び抽出液の収集を制御するための自動制御弁4が設けられ、前記抽出液定量管24は二方向カテーテル5により一方の分岐が前記赤外分光計3に導通接続され、自動的に送液するためのものであり、他方の分岐が排液するためのものであり、前記二方向カテーテル5の上流における分流しない箇所には自動制御弁4が設けられ、前記二方向カテーテルにおける排液のためのカテーテルにも、抽出液サンプルを前記赤外分光計3に入れて測定・分析し及び抽出液を排出するように制御するための自動制御弁4が設けられる。好ましくは、抽出溶媒がトリクロロトリフルオロエタン又は四塩化炭素である。抽出液の油濃度が前記赤外分光計3の測定上限を超えると、抽出液を希釈してからサンプリングして測定してもよく、複数回希釈してもよい。
【0026】
前記デュワー容器11に液体窒素の注入口及び排出口が更に設けられ、前記デュワー容器11の内部に液体窒素液位計13が設けられ、前記U字管12の内部に温度計が設けられ、サンプリングの完全性を実現するように油滴がサンプリング管の内壁に凝結することを防止するために、前記U字管12の外部にヒータが設けられ又は断熱処理し、冷却トラップで濃縮サンプリングを行った後、加熱によってサンプルを室温に迅速に戻してから抽出する。更に振動装置を設置して振動抽出を実現し、抽出をより効果的且つ均一にしてもよい。
【0027】
本発明は以上に記載の装置による微量及び超微量含油量の測定方法を更に提供し、
液体窒素冷却トラップを用いてガス中の微量及び超微量の油成分に対して濃縮サンプリングを行うステップS1と、
抽出溶媒を加えて濃縮サンプルを抽出するステップS2と、
HJ637-2018水中石油・動植物油の測定標準に従って、前記赤外分光計を用いて抽出液の油濃度を測定し、更に抽出液中の油質量を算出するステップS3と、
質量流量計を用いて通過したガスの総質量を計量するステップS4と、
前記ステップS4において取得されたガスの総質量及び前記ステップS4において取得された油質量に基づいて、ガス中の含油量を計算して取得するステップS5と、を含む。
【0028】
中華人民共和国標準化法におけるHJ637-2018水中石油類及び動植物油類を測定する赤外分光光度法に基づいて、分子官能基2930cm-1(CH3)、2960cm-1(CH2)、3030cm-1(芳香族炭化水素)は低温工程に使用される油類の主な組成部分であって、いずれもこの3種の官能基で示されてもよく、従って、低温工程における様々な油分子特性を含む標準油(メチル基、メチレン基及び芳香族炭化水素)の基準油溶液を調合して異なる油濃度の標準サンプルに調製し、赤外分光計を用いて標準サンプルの吸光度を測定して油濃度と油溶液の吸光度との線形関係を取得し、次に抽出液サンプルに対して赤外分光計によってその吸光度を測定し、上記線形関係に基づいて抽出液サンプルの油濃度を算出する。好ましくは、抽出液サンプルを10回赤外分析する必要があり、各データの相対標準偏差(RSD)が0.5%以内にあるデータのみが有効であり、測定のランダム誤差を回避する。
【0029】
従来技術に比べて、本発明の有益な効果は以下のとおりである。
本発明に係る微量及び超微量含油量の測定方法及び装置は、液体窒素冷却トラップによる濃縮方式を利用して、効果的に抽出することでガス中の含油量の測定を液体抽出溶媒中の油濃度の測定に変換し、赤外分光光度法を用いて正確な測定を行い、測定精度が1500ppmW~1ppbWであり、測定範囲がより広く、超微量及び微量範囲における確実な測定を実現し、低温工程における汚染源を容易・迅速・正確に見つけることができ、それにより更に汚染源に基づいて低温システムにおける油汚染の問題を解決し、油が酸化又は分解された各種類の物質が分子レベルで異なる波長の赤外線を吸収する程度が少々異なるため、赤外スペクトルに基づいて識別でき、宇宙飛行などの特殊な分野における油ガスサンプルを厳しく制御する環境分析に適用され、応用分野が広い。
【0030】
最後に説明すべきことは、以上の各実施例は単に本発明の技術案を説明するためのものであって、それを制限するものではなく、上記各実施例を参照して本発明を詳しく説明したが、当業者であれば理解されるように、それは依然として上記各実施例に記載の技術案を修正し、又はその中の一部又は全部の技術的特徴を等価置換することができるが、これらの修正又は置換は、対応する技術案の本質を本発明の各実施例の技術案の範囲から逸脱させるものではない。
【符号の説明】
【0031】
1 低温濃縮装置
11 デュワー容器
12 U字管
121 質量流量計
122 グラスバブルズ
123 除塵濾過器
13 液位計
2 抽出装置
21 抽出溶媒容器
22 輸入管
23 導出管
24 抽出液定量管
3 赤外分光計
4 自動制御弁
5 二方向カテーテル
【国際調査報告】