IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オルガノイドサイエンシーズ・リミテッドの特許一覧

特表2024-531026抗がん剤効能評価またはスクリーニング方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】抗がん剤効能評価またはスクリーニング方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/02 20060101AFI20240822BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20240822BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALN20240822BHJP
   C12N 5/0786 20100101ALN20240822BHJP
   C12N 5/0784 20100101ALN20240822BHJP
   C12N 5/09 20100101ALN20240822BHJP
【FI】
C12Q1/02
C12M1/34 A
C12N5/0783
C12N5/0786
C12N5/0784
C12N5/09
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572883
(86)(22)【出願日】2022-09-16
(85)【翻訳文提出日】2023-11-24
(86)【国際出願番号】 KR2022013919
(87)【国際公開番号】W WO2023043278
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】10-2021-0124736
(32)【優先日】2021-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0092787
(32)【優先日】2022-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0095105
(32)【優先日】2022-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0096407
(32)【優先日】2022-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0099498
(32)【優先日】2022-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519427985
【氏名又は名称】オルガノイドサイエンシーズ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ORGANOIDSCIENCES, LTD.
【住所又は居所原語表記】(SAMPYEONG-DONG, KOREA PAPERLESS TRADE CENTER), 6F, 338 PANGYO-RO, BUNDANG-GU, SEONGNAM-SI, GYEONGGI-DO, 13493, REPUBLIC OF KOREA
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】イ,ボ・ユン
(72)【発明者】
【氏名】キム,サラン
(72)【発明者】
【氏名】シン,ユリ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ユン・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ヒーラ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ドン・ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジヒョ
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029BB11
4B029FA11
4B063QA05
4B063QQ08
4B063QR77
4B063QS24
4B065AA90X
4B065CA46
(57)【要約】
本発明は、抗癌剤または抗癌剤候補物質の効能を評価する方法であって、がんオルガノイドと免疫細胞の混合物を抗がん剤または抗がん剤候補物質で処理するステップを含む方法に関する。さらに、本発明は、抗がん剤の効能を評価するため、または抗がん剤をスクリーニングするための、がんオルガノイドと免疫細胞を含むシステムに関する。本発明による癌オルガノイドと免疫細胞の混合物は、特定の混合比率により、がん細胞が生体内に存在する腫瘍微小環境を模倣することができる。したがって、この混合物を利用すれば、生体内に投与した薬剤の効能を正確に予測することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記ステップを含む、抗がん剤候補物質の効能評価方法:
(a)がんオルガノイドおよび免疫細胞を1:0.5~5の割合で混合して共培養するステップ;
(b)前記(a)ステップの混合物に抗がん剤候補物質を処理するステップ;および
(c)前記(b)ステップの抗がん剤候補物質が処理された群で陽性対照群または抗がん剤候補物質未処理群に比べてがんオルガノイドの成長阻害または死滅が増加した場合、前記候補物質の効能に優れると決定するステップ。
【請求項2】
前記免疫細胞は、細胞傷害性T細胞、M1マクロファージ、M2マクロファージ、TIL、制御性T細胞および樹状細胞からなる群より選択される一つ以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記免疫細胞が細胞傷害性T細胞およびM1マクロファージである場合、
前記(a)ステップの共培養は、がんオルガノイド、細胞傷害性T細胞およびM1マクロファージを1:0.5:0.5~3の細胞数割合で混合して遂行することである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記免疫細胞がM1マクロファージおよびM2マクロファージである場合、
前記(a)ステップの共培養は、がんオルガノイド、M1マクロファージおよびM2マクロファージを1:1~3:0.5~5の細胞数割合で混合して遂行することである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記免疫細胞がTILである場合、
前記(a)ステップの共培養は、がんオルガノイドおよびTILを1:1~2の細胞数割合で混合して遂行することである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記免疫細胞が細胞傷害性T細胞および制御性T細胞である場合、
前記(a)ステップの共培養は、がんオルガノイド、細胞傷害性T細胞および制御性T細胞を1:3:0.5~3の細胞数割合で混合して遂行することである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記免疫細胞が細胞傷害性T細胞および樹状細胞である場合、
前記(a)ステップの共培養は、がんオルガノイド、細胞傷害性T細胞および樹状細胞を1:3:0.5~5の細胞数割合で混合して遂行することである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記抗がん剤は、化合物、ペプチド、ペプチドミメティクス、融合タンパク質、抗体、アプタマー、抗体-薬物複合体(ADC)、DNAまたはmRNAに相補的に結合するアンチセンス核酸、siRNA、shRNA、miRNAおよびリボザイムからなる群より選択される一つ以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記がんは、胆道がん、胃がん、肺がん、肝臓がん、大腸がん、結腸がん、小腸がん、膵臓がん、脳腫瘍、骨がん、黒色腫、乳がん、硬化性腺腫、子宮がん、子宮頸がん、頭頸部がん、食道がん、甲状腺がん、副甲状腺がん、腎臓がん、肉腫、前立腺がん、尿道がん、膀胱がん、血液がん、リンパ腫および線維腺腫からなる群より選択される一つ以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記がんオルガノイドの成長阻害または死滅は、がんオルガノイドの面積増減を通じて確認することである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
請求項1に記載の抗がん剤効能評価方法を使用した抗がん剤効能評価システムであって、がんオルガノイドおよび免疫細胞を含む抗がん剤効能評価システム。
【請求項12】
請求項1に記載の抗がん剤効能評価方法を使用した抗がん剤スクリーニングシステムであって、がんオルガノイドおよび免疫細胞を含む抗がん剤スクリーニングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がんオルガノイドおよび免疫細胞の混合物に抗がん剤または抗がん剤候補物質を処理するステップを含む抗がん剤または抗がん剤候補物質の効能評価方法に関する。また、がんオルガノイドおよび免疫細胞を含む抗がん剤効能評価システムまたは抗がん剤スクリーニングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
オルガノイドは、組織または器官に由来した細胞を3次元培養して製造した臓器類似体である。オルガノイドは、長期培養、凍結保存が可能であり、操作と観察が容易であるという長所を持つ。同時に不死化が必要なく、それによる細胞の本来特性が保持されることはもちろん、生体内でのみ見られた細胞階層的、組織学的構造を再現することで、細胞より一層高い次元の生理現象を研究することができる実験モデルである。このような特性によって、オルガノイドは、細胞の内在的特性が変化した不死化した細胞株、人体と構造が異なる動物モデルに比べて高い正確度で薬物評価をすることができ、特に、患者由来組織を利用するので、人を対象にした臨床に先立って、薬物の安全性はもちろん、効能まで予め確認することができる長所がある。ただし、既存の薬物評価モデルとして開発されたがんオルガノイドは、腫瘍微小環境を反映することができない限界点を有していたところ、多様な腫瘍微小環境を揃えたオルガノイドを開発し、これを薬物評価モデルとして使用するための努力が遂行される必要がある。
【0003】
腫瘍微小環境は、がん細胞周囲に血管、免疫細胞、線維芽細胞(fibroblast)、リンパ球、シグナル伝達分子、細胞外基質(extracellular matrix、ECM)などが取り囲まれている細胞環境である。腫瘍微小環境でがん細胞は、細胞外シグナル放出、がん細胞新生血管促進、末梢免疫寛容などを誘導して、微小環境に影響を与える。したがって、がん細胞は、微小環境を変化させたり、微小環境ががん細胞の成長または転移に影響を及ぼしたりするが、特に、リンパ球などと関連する腫瘍微小環境は、がんの発生および転移だけでなく、がんの免疫システム回避とも関連が高いため、抗がん剤による治療反応に影響を及ぼし、抗がん免疫療法の主要標的になる。
【0004】
例えば、腫瘍微小環境に存在する細胞傷害性T細胞(cytotoxic T cell、CD8+T cell)、制御性T細胞(regulatory T cell、Treg)、骨髄由来抑制細胞(myeloid-derived suppressor cell、MDSC)、樹状細胞(Dendritic cell、DC)、腫瘍関連マクロファージ(tumor-associated macrophage、TAM)、腫瘍-浸潤リンパ球(Tumor-infiltrating lymphocyte、TIL)、がん-関連線維芽細胞(cancer-associated fibroblast、CAF)などの細胞が免疫抗がん剤の効能に影響を及ぼすと知られており、これらは、がん組織内へのT細胞浸透を制限するだけでなく、腫瘍浸潤リンパ球の増殖と生存を減少させることで免疫抗がん剤の治療効果を阻害する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、腫瘍微小環境を揃えたがんオルガノイドを開発し、これを薬物評価のプラットホームとして使用するための多様な研究を進めた。その結果、腫瘍微小環境を構成する多様な細胞のうち一つである免疫細胞とがんオルガノイドを特定割合で共培養するシステムを確立した。また、前記システムでは、がんオルガノイドが適切に成長することによって薬物の効能を正確に確認することができることを実験的に立証して、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明において開示されているそれぞれの説明および実施形態は、それぞれの他の説明および実施形態にも適用されることができる。すなわち、本発明において開示されている多様な要素のすべての組み合わせが本発明の範疇に属する。また、後述された具体的な叙述によって本発明の範疇が制限されるものと認められない。
【0007】
また、本明細書において特に定義されない用語に対しては、本発明の属する技術分野において通常的に使用される意味を有するものと理解されなければならない。また、文脈上、特に定義しない場合であれば、単数は複数を含み、複数は単数を含む。
【0008】
本発明の一様態は、下記ステップを含む、抗がん剤候補物質の効能評価方法を提供する:
(a)がんオルガノイドおよび免疫細胞を1:0.5~5の割合で混合して共培養するステップ;
(b)前記(a)ステップの混合物に抗がん剤候補物質を処理するステップ;および
(c)前記(b)ステップの抗がん剤候補物質が処理された群で陽性対照群または抗がん剤候補物質未処理群に比べてがんオルガノイドの成長阻害または死滅が増加した場合、前記候補物質の効能に優れると決定するステップ。
【0009】
抗がん剤、特に免疫抗がん剤の場合、患者が有している免疫細胞を利用してがんを死滅させるので、その効能を評価する評価プラットホームは、体内の免疫環境を模倣しなければならない。本発明においては、このような体内免疫環境をin vitroで模倣するために、がんオルガノイドと多様な免疫細胞を共培養することができる評価プラットホームを構築した。患者の免疫環境を完璧に模倣するためには、すべての種類の免疫細胞を共培養しなければならないが、各患者別に免疫細胞の割合が異なるため、これをin vitroで模倣することに限界があり、特に、薬物評価プラットホームに含まれる免疫細胞の割合が変わると、薬物の効能も変わるようになり、効能の予測が却って難しくなる短所があった。したがって、薬物に対する効能を正確に確認するための目的で、免疫細胞の種類を分類してそれぞれのプラットホームを構築した。また、薬物がターゲットする免疫細胞を考慮して、適切な効能評価プラットホームを選択することができるように多様な免疫細胞を利用してプラットホームを構築した。
【0010】
具体的に、前記ステップ(a)は、がんオルガノイドおよび免疫細胞を混合して共培養するステップであって、生体内腫瘍微小環境をインビトロ(in vitro)で再現するステップである。
【0011】
本発明において、前記免疫細胞は、細胞傷害性T細胞、M1マクロファージ、M2マクロファージ、TIL、制御性T細胞および樹状細胞からなる群より選択される一つ以上であってよい。
【0012】
本明細書において使用される用語「オルガノイド」は、3次元立体構造を有する細胞の塊を意味し、器官または組織から分離した細胞を3次元培養を通じて製造した臓器類似体を意味する。オルガノイドは、器官または組織を構成する特異的細胞集団を含んでおり、実際組織または器官と類似した形態で構造的組織化がなされているので、各組織または器官が有する特殊な形態および機能を再現することができる。
【0013】
本明細書において使用される用語「がんオルガノイド」は、腫瘍から分離した細胞から由来したオルガノイドを意味する。
【0014】
本明細書において使用される用語「細胞傷害性T細胞(Cytotoxic T cell、CD8+T細胞)」は、抗原特異的後天性免疫(acquired immunity、adaptive immunity)を遂行するリンパ球を意味する。細胞傷害性T細胞は、がん細胞、ウイルス、バクテリアなど病原体に感染した細胞を死滅させ、TNF-α、IFN-γのようなサイトカインを生成する。本発明による細胞傷害性T細胞は、腫瘍組織内に浸潤したものであるか、腫瘍組織から分離したものであってよい。本明細書において、前記細胞傷害性T細胞は、「分化されたT細胞」、「分化後T細胞」、「活性化されたT細胞」、「活性化T細胞」または「CD8+T細胞」と相互交換的に命名されることができる。
【0015】
本明細書において使用される用語「M1マクロファージ(古典的活性化マクロファージ:classically activated macrophage、M1)」は、腫瘍-関連マクロファージ(Tumor-associated macrophage、TAM)の一種であって、LPS、IFN-γ、IL-1β、TNF-α、TLR engagementなどのサイトカインによって活性化されたマクロファージを意味する。M1は、IL-6、IL-12およびTNF-αのような前炎症性サイトカインまたはケモカインを分泌し、抗原提示細胞(Antigen-presenting cell、APC)として機能してT細胞を活性化するか、腫瘍-浸潤リンパ球(tumor infiltrating lymphocyte、TIL)またはNK細胞を活性化することで病原体死滅またはがん細胞死滅を誘導するか、食作用(phagocytosis)を通じてがん細胞を直接死滅させることができる。本明細書において、前記M1マクロファージは、「M1」と相互交換的に命名されてよい。
【0016】
本明細書において使用される用語「M2マクロファージ(選択的活性化マクロファージ:alternatively activated macrophage、M2)」は、腫瘍-関連マクロファージ(Tumor-associated macrophage、TAM)の一種であって、IL-4、IL-13、IL-10などのサイトカインによって活性化されたマクロファージを意味する。M2は、MMPまたはCOX-2のような酵素、またはIL-10、TGF-βのような抗炎症性サイトカインを分泌し、これにより、炎症減少、傷治癒、組織回復と関連した免疫反応を遂行する。しかし、M2が分泌する酵素は、腫瘍周辺組織を破壊して腫瘍細胞の増殖と転移を促進させるか、血管新生の開始および保持に関与して腫瘍の成長を誘導することもある。本明細書において、前記M2マクロファージは、「M2」と相互交換的に命名することができる。
【0017】
本明細書において使用される用語「TIL(Tumor-infiltrating lymphocyte)」は、「腫瘍-浸潤リンパ球」とも呼ばれる、腫瘍組織の近くに存在するか、腫瘍組織内へ浸潤したリンパ球を意味する。また、TILは、多様な種類の免疫細胞で構成されているリンパ球の集団であってよい。本発明によるTILは、細胞表面にCD8タンパク質を発現するTILであってよく、具体的に、細胞表面にCD8タンパク質を発現し、腫瘍組織の近くに存在するか、腫瘍組織内へ浸潤したリンパ球の集団であってよく、好ましくCD8+T細胞であってよいが、これに制限されない。
【0018】
本明細書において使用される用語「制御性T細胞(regulatory T cell、Treg)」は、免疫反応を抑制して恒常性と免疫寛容(immune tolerance)を保持する役割をし、T細胞増殖およびサイトカイン生成を抑制して自己免疫を予防するのに重要な役割を遂行するリンパ球を意味する。本発明による制御性T細胞は、腫瘍組織内に浸潤したものであるか、腫瘍組織から分離したものであってよい。本明細書において、前記制御性T細胞は、「Treg細胞」または「Treg」と相互交換的に命名することができる。
【0019】
本明細書において使用される用語「樹状細胞(Dendritic cell、DC)」は、抗原提示細胞であって、抗原物質を処理して、これをT細胞に提示する役割を遂行するリンパ球を意味する。具体的に、樹状細胞は、腫瘍成長を抑制することができる免疫細胞であるヘルパーT細胞(CD4+T細胞)と細胞傷害性T細胞(CD8+T細胞)を活性化して、これらの機能を促進して、これにより腫瘍の進行を制御性する役割を遂行することができる。本発明による樹状細胞は、血液から分離したものであってよい。本明細書において、前記樹状細胞は、「DC細胞」または「DC」と相互交換的に命名することができる。
【0020】
本発明において、前記免疫細胞が細胞傷害性T細胞およびM1マクロファージである場合、(a)ステップの共培養は、がんオルガノイド、細胞傷害性T細胞およびM1マクロファージを1:0.5:0.5~3の細胞数割合で混合して遂行することができる。前記がんオルガノイド、細胞傷害性T細胞およびM1マクロファージが前記割合で混合されて共培養される場合にのみ生体内腫瘍微小環境を模倣することができる。前記割合以外の割合で共培養される場合には、薬物処理前であるにもかかわらず、がんオルガノイドが成長しないため、薬物の抗がん効果を確認することができず、またはM1マクロファージが自然的に死滅して腫瘍微小環境を再現し得ない問題が発生する。また、前記割合以外の割合で共培養される場合には、互いに異なるメカニズムで作用する薬物の効能が均一に示されない問題が発生するので、がんオルガノイド、細胞傷害性T細胞およびM1マクロファージを前述のような細胞数割合で混合することが重要である。
【0021】
本発明において、前記免疫細胞がM1マクロファージおよびM2マクロファージである場合、(a)ステップの共培養は、がんオルガノイド、M1マクロファージおよびM2マクロファージを1:1~3:0.5~5の細胞数割合で混合して遂行することができる。前記がんオルガノイド、M1マクロファージおよびM2マクロファージが前記割合で混合されて共培養される場合にのみ生体内腫瘍微小環境を模倣することができる。M1マクロファージは、腫瘍細胞死滅促進特性、M2マクロファージは、腫瘍細胞成長促進特性を示すことにより、前記割合以外の割合で共培養される場合には、薬物処理前であるにもかかわらず、がんオルガノイドが成長しないか、過度に成長する問題が発生し、また薬物の抗がん効果を正確に確認することができない問題が発生するので、がんオルガノイド、M1マクロファージおよびM2マクロファージを前述のような細胞数割合で混合することが重要である。
【0022】
本発明において、前記免疫細胞がTILである場合、(a)ステップの共培養は、がんオルガノイドおよびTILを1:1~2の細胞数割合で混合して遂行することができ、具体的に、1:1.5の細胞数割合で混合して遂行することができる。前記がんオルガノイドおよびTILが前記割合で混合されて共培養される場合にのみ生体内腫瘍微小環境を模倣することができる。前記割合以外の割合で共培養される場合には、薬物処理前であるにもかかわらず、がんオルガノイドの成長が顕著に増加して薬物に反応しないか、がんオルガノイドが成長しないため、薬物の抗がん効果を確認することができない問題が発生する。また、前記割合以外の割合で共培養される場合には、互いに異なるメカニズムで作用する薬物の効能が均一に示されない問題が発生するので、がんオルガノイドおよびTILを前述のような細胞数割合で混合することが重要である。
【0023】
本発明において、前記免疫細胞が細胞傷害性T細胞および制御性T細胞である場合、(a)ステップの共培養は、がんオルガノイド、細胞傷害性T細胞および制御性T細胞を1:3:0.5~3の細胞数割合で混合して遂行することができ、具体的に、1:3:1~3の細胞数割合、より具体的に1:3:3の細胞数割合で混合して遂行することができる。前記がんオルガノイド、細胞傷害性T細胞および制御性T細胞が前記割合で混合されて共培養される場合にのみ生体内腫瘍微小環境を模倣することができる。前記割合以外の割合で共培養される場合には、薬物によるがんオルガノイドの死滅率が顕著に低くいため、薬物の抗がん効果を確認することができない問題が発生する。また、前記割合以外の割合で共培養される場合には、互いに異なるメカニズムで作用する薬物の効能が均一に示されない問題が発生するので、がんオルガノイド、細胞傷害性T細胞および制御性T細胞を前述のような細胞数割合で混合することが重要である。
【0024】
本発明において、前記免疫細胞が細胞傷害性T細胞および樹状細胞である場合、(a)ステップの共培養は、がんオルガノイド、細胞傷害性T細胞および樹状細胞を1:3:0.5~5の細胞数割合で混合して遂行することができ、具体的に、1:3:0.5~1の細胞数割合で混合して遂行することができる。前記がんオルガノイド、細胞傷害性T細胞および樹状細胞が前記割合で混合されて共培養される場合にのみ生体内腫瘍微小環境を模倣することができる。前記割合以外の割合で共培養される場合には、がんオルガノイドが適切に成長しないか、薬物によるがんオルガノイドの死滅率が顕著に低くいため、薬物の抗がん効果を確認することができない問題が発生する。また、前記割合以外の割合で共培養される場合には、互いに異なるメカニズムで作用する薬物の効能が均一に示されない問題が発生するので、がんオルガノイド、細胞傷害性T細胞および樹状細胞を前述のような細胞数割合で混合することが重要である。
【0025】
本発明による抗がん剤候補物質の効能評価方法は、がんオルガノイドおよび免疫細胞を前記割合で混合した混合物に抗がん剤候補物質を処理する。すなわち、がん細胞が生体内で存在している形態である腫瘍微小環境を類似に再現したシステムを通じて抗がん剤候補物質の効能を評価する。したがって、抗がん剤候補物質が生体内に投与されたときの効能を正確に予測することができる。
【0026】
本発明による抗がん剤候補物質の効能評価方法において、前記ステップ(b)は、前記(a)ステップによってがんオルガノイドおよび免疫細胞が共培養された混合物に抗がん剤候補物質を処理するステップである。
【0027】
本明細書において使用される用語「抗がん剤」は、がんの予防または治療効果を示す物質であって、具体的に、がん細胞、がんオルガノイドまたは腫瘍などを死滅させるか、またはその成長を抑制することができる物質を意味する。
【0028】
本明細書において使用される用語「抗がん剤候補物質」は、がんの予防または治療効果を示すものと予想される物質を意味し、具体的に、がん細胞、がんオルガノイドまたは腫瘍などを死滅させるか、またはその成長を抑制するものと予想される物質を意味する。
【0029】
本明細書において、前記「抗がん剤」は、「薬物」と相互交換的に使用されてよく、また前記「処理」は、「添加」または「投与」と相互交換的に使用されてよい。
【0030】
具体的に、前記抗がん剤または抗がん剤候補物質は、がんオルガノイドおよび/または免疫細胞をターゲットするものであってよい。例えば、前記抗がん剤または抗がん剤候補物質は、がんオルガノイドのみをターゲットするものであるか、免疫細胞のみをターゲットするものであるか、がんオルガノイドおよび免疫細胞を同時にターゲットするものであってよい。例えば、免疫細胞をターゲットする抗がん剤は、アテゾリズマブ(atezolizumab)、ペンブロリズマブ(Pembrolizumab)、抗-TIGIT抗体または抗-CD47抗体であってよい。前記「抗-CD47抗体」は、がん細胞で発現するCD47とマクロファージが発現するSIRPαの結合を直接的に遮断することで、マクロファージによるがん細胞の食作用(phagocytosis)を向上させることができる。
【0031】
本発明において、前記抗がん剤または抗がん剤候補物質は、化合物、タンパク質、融合タンパク質、化合物-タンパク質複合体、薬物-タンパク質複合体、抗体、化合物-抗体複合体、薬物-抗体複合体、アミノ酸、ペプチド、ウイルス、炭水化物、脂質、核酸、抽出物、分画物などを制限なく含む。
【0032】
例として、前記抗がん剤または抗がん剤候補物質は、化合物、ペプチド、ペプチドミメティクス、融合タンパク質、抗体、アプタマー、抗体-薬物複合体(ADC;Antibody Drug Conjugate)などを含むことができるが、これに制限されるものではない。好ましく、前記抗がん剤または抗がん剤候補物質は、抗体であるか、または免疫抗がん剤であってよい。
【0033】
本明細書において使用される用語「抗体」は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、二重特異性抗体、多重特異性抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体を含み、新規抗体の他に既に当該技術の分野において公知になっているか、または市販の抗体も含まれる。前記抗体は、2本の重鎖と2本の軽鎖を含む全長の形態だけでなく、抗体分子の機能的な断片を含む。前記抗体分子の機能的な断片は、少なくとも抗原結合機能を保有している断片を意味し、ここには、Fab、F(ab´)、F(ab´)、Fvなどが含まれ得るが、これに制限されるものではない。用語「ペプチドミメティクス(Peptide Mimetics)」は、ホルモン、サイトカイン、酵素基質、ウイルスまたは他の生物学的分子の活性リガンドを生物学的に模倣するペプチド、または改変されたペプチドを意味する。用語「アプタマー(Aptamer)」は、それ自体で安定した三次構造を有しながら、標的分子に高い親和性と特異性で結合できる特徴を有する一本鎖核酸(DNA、RNAまたは改変核酸)を意味する。
【0034】
また他の例として、前記抗がん剤は、DNAまたはmRNAに相補的に結合するアンチセンス核酸、siRNA、shRNA、miRNA、リボザイムなどを含むことができるが、これに制限されるものではない。
【0035】
本明細書において使用される用語「アンチセンス核酸」は、特定mRNAの配列に対して相補的な核酸配列を含有しているDNA、RNA、またはこれらの断片または誘導体を意味し、mRNAの配列に相補的に結合またはハイブリダイズしてmRNAのタンパク質への翻訳を阻害する作用をする。用語「siRNA(低分子干渉RNA:small interfering RNA)」は、特定mRNAの切断(cleavage)を通してRNAi(RNA干渉:RNA interference)を誘導することができる短い二重鎖RNAを意味する。siRNAは、標的遺伝子のmRNAと相同な配列を有するセンスRNA鎖と、これと相補的な配列を有するアンチセンスRNA鎖を含む。siRNAは、標的遺伝子の発現を抑制できるので、遺伝子ノックダウン方法または遺伝子治療方法などに使用される。用語「shRNA(小ヘアピンRNA:short hairpin RNA)」は、一本鎖RNAであって、水素結合により二重鎖部分を形成するステム(stem)部分と、環状を帯びるループ(loop)部分とに区分されるRNAを意味する。ダイサー(Dicer)などのタンパク質によりプロセッシングされてsiRNAに変換され、siRNAと同一の機能を遂行することができる。用語「miRNA(micro RNA)」は、標的RNAの分解を促進するか、またはこれらの翻訳を抑制させることで遺伝子発現を転写後に調節する21~23ntのノンコーディングRNAを意味する。用語「リボザイム(ribozyme)」は、特定塩基配列を認識して自己的にそれを切断する酵素のような機能を有したRNA分子を意味する。リボザイムは、ターゲットメッセンジャーRNA鎖の相補的な塩基配列で特異性を有して結合する領域と、ターゲットRNAを切断する領域とで構成される。
【0036】
本発明の方法によって効能が評価されるかスクリーニングされる抗がん剤または抗がん剤候補物質は、例えば、胆道がん、胃がん、肺がん、肝臓がん、大腸がん、結腸がん、小腸がん、膵臓がん、脳腫瘍、骨がん、黒色腫、乳がん、硬化性腺腫、子宮がん、子宮頸がん、頭頸部がん、食道がん、甲状腺がん、副甲状腺がん、腎臓がん、肉腫、前立腺がん、尿道がん、膀胱がん、血液がん、白血病、リンパ腫、線維腺腫などを予防または治療するものであってよいが、これに制限されるものではない。
【0037】
本発明による抗がん剤候補物質の効能評価方法において、前記ステップ(c)は、前記(b)ステップの抗がん剤候補物質が処理された群で陽性対照群または抗がん剤候補物質未処理群に比べてがんオルガノイドの成長阻害または死滅が増加した場合、前記候補物質の効能に優れると決定するステップである。
【0038】
本明細書において使用される用語「陽性対照群」は、当業界において抗がん剤として使用されている薬物を処理した群を意味する。
【0039】
具体的に、前記がんオルガノイドの成長阻害または死滅は、がんオルガノイドの面積増減を通じて確認するものであってよい。また、前記がんオルガノイドの面積が減少する場合、がんオルガノイドの成長阻害または死滅が増加されたものと判断するものであってよい。また、前記がんオルガノイドの面積増減は、当業界に公知になっている方法で確認することができ、例として、HCS(ハイコンテントスクリーニング:High-Content Screening)、フローサイトメトリ(Flow-cytometer)などの分析方法を通じて確認することができるが、これに制限されるものではない。
【0040】
本発明の他の一様態は、前記抗がん剤候補物質の効能評価方法を使用するための抗がん剤効能評価システムであって、がんオルガノイドおよび免疫細胞を含む抗がん剤効能評価システムを提供する。
【0041】
本発明による抗がん剤効能評価システムにおいて、各用語は、特に言及しない限り、前述したとおりである。
【0042】
本発明の抗がん剤効能評価システムは、腫瘍微小環境を模倣したものであって、生体内腫瘍微小環境を構成する腫瘍としてがんオルガノイド、および免疫細胞として細胞傷害性T細胞、M1マクロファージ、M2マクロファージ、TIL、制御性T細胞および樹状細胞からなる群より選択される一つ以上を含む。
【0043】
具体的に、前記抗がん剤効能評価システムは、前記免疫細胞が細胞傷害性T細胞およびM1マクロファージである場合、がんオルガノイド、細胞傷害性T細胞およびM1マクロファージを1:0.5:0.5~3の細胞数割合で含むものであってよい。前記がんオルガノイド、細胞傷害性T細胞およびM1マクロファージが前記割合で混合されて共培養される場合にのみ生体内腫瘍微小環境を模倣することができる。前記割合以外の割合で共培養される場合には、薬物処理前であるにもかかわらず、がんオルガノイドが成長しないため、薬物の抗がん効果を確認することができず、またはM1マクロファージが自然的に死滅して腫瘍微小環境を再現し得ない問題が発生する。また、前記割合以外の割合で共培養される場合には、互いに異なるメカニズムで作用する薬物の効能が均一に示されない問題が発生するので、がんオルガノイド、細胞傷害性T細胞およびM1マクロファージを前述のような細胞数割合で混合することが重要である。
【0044】
また、前記抗がん剤効能評価システムは、前記免疫細胞がM1マクロファージおよびM2マクロファージである場合、がんオルガノイド、M1マクロファージおよびM2マクロファージを1:1~3:0.5~5の細胞数割合で含むものであってよい。前記がんオルガノイド、M1マクロファージおよびM2マクロファージが前記割合で混合されて共培養される場合にのみ生体内腫瘍微小環境を模倣することができる。M1マクロファージは、腫瘍細胞死滅促進特性、M2マクロファージは、腫瘍細胞成長促進特性を示すことにより、前記割合以外の割合で共培養される場合には、薬物処理前であるにもかかわらず、がんオルガノイドが成長しないか、過度に成長する問題が発生し、また薬物の抗がん効果を正確に確認することができない問題が発生するので、がんオルガノイド、M1マクロファージおよびM2マクロファージを前述のような細胞数割合で混合することが重要である。
【0045】
また、前記抗がん剤効能評価システムは、前記免疫細胞がTILである場合、がんオルガノイドおよびTILを1:1~2の細胞数割合で含むものであってよく、具体的に、1:1.5の細胞数割合で含むものであってよい。前記がんオルガノイドおよびTILが前記割合で混合されて共培養される場合にのみ生体内腫瘍微小環境を模倣することができる。前記割合以外の割合で共培養される場合には、薬物処理前であるにもかかわらず、がんオルガノイドの成長が顕著に増加して薬物に反応しないか、がんオルガノイドが成長しないため、薬物の抗がん効果を確認することができない問題が発生する。また、前記割合以外の割合で共培養される場合には、互いに異なるメカニズムで作用する薬物の効能が均一に示されない問題が発生するので、がんオルガノイドおよびTILを前述のような細胞数割合で混合することが重要である。
【0046】
また、前記抗がん剤効能評価システムは、前記免疫細胞が細胞傷害性T細胞および制御性T細胞である場合、がんオルガノイド、細胞傷害性T細胞および制御性T細胞を1:3:0.5~3の細胞数割合で含むものであってよく、具体的に、1:3:1~3の細胞数割合、より具体的に1:3:3の細胞数割合で含むものであってよい。前記がんオルガノイド、細胞傷害性T細胞および制御性T細胞が前記割合で混合されて共培養される場合にのみ生体内腫瘍微小環境を模倣することができる。前記割合以外の割合で共培養される場合には、薬物によるがんオルガノイドの死滅率が顕著に低くいため、薬物の抗がん効果を確認することができない問題が発生する。また、前記割合以外の割合で共培養される場合には、互いに異なるメカニズムで作用する薬物の効能が均一に示されない問題が発生するので、がんオルガノイド、細胞傷害性T細胞および制御性T細胞を前述のような細胞数割合で混合することが重要である。
【0047】
また、前記抗がん剤効能評価システムは、前記免疫細胞が細胞傷害性T細胞および樹状細胞である場合、がんオルガノイド、細胞傷害性T細胞および樹状細胞を1:3:0.5~5の細胞数割合で含むものであってよく、具体的に、1:3:0.5~1の細胞数割合で混合して含むものであってよい。前記がんオルガノイド、細胞傷害性T細胞および樹状細胞が前記割合で混合されて共培養される場合にのみ生体内腫瘍微小環境を模倣することができる。前記割合以外の割合で共培養される場合には、がんオルガノイドが適切に成長しないか、薬物によるがんオルガノイドの死滅率が顕著に低くいため、薬物の抗がん効果を確認することができない問題が発生する。また、前記割合以外の割合で共培養される場合には、互いに異なるメカニズムで作用する薬物の効能が均一に示されない問題が発生するので、がんオルガノイド、細胞傷害性T細胞および樹状細胞を前述のような細胞数割合で混合することが重要である。
【0048】
本発明による抗がん剤効能評価システムは、がんオルガノイドおよび免疫細胞を前記割合で混合した混合物を含むので、がん細胞が生体内で存在している形態である腫瘍微小環境を類似に再現することができる。したがって、抗がん剤が生体内に投与されたときの効能を正確に予測することができるので、抗がん剤効能評価に有用に活用されることができる。
【0049】
本発明のまた他の一様態は、前記抗がん剤候補物質の効能評価方法を使用するための抗がん剤スクリーニングシステムであって、がんオルガノイドおよび免疫細胞を含む抗がん剤スクリーニングシステムを提供する。
【0050】
本発明による抗がん剤スクリーニングシステムにおいて、各用語は、特に言及しない限り、前述したとおりである。
【0051】
具体的に、前記抗がん剤スクリーニングシステムは、前記免疫細胞が細胞傷害性T細胞およびM1マクロファージである場合、がんオルガノイド、細胞傷害性T細胞およびM1マクロファージを1:0.5:0.5~3の細胞数割合で含むものであってよい。前記がんオルガノイド、細胞傷害性T細胞およびM1マクロファージが前記割合で混合されて共培養される場合にのみ生体内腫瘍微小環境を模倣することができる。前記割合以外の割合で共培養される場合には、薬物処理前であるにもかかわらず、がんオルガノイドが成長しないため、薬物の抗がん効果を確認することができず、またはM1マクロファージが自然的に死滅して腫瘍微小環境を再現し出すことができない問題が発生する。また、前記割合以外の割合で共培養される場合には、互いに異なるメカニズムで作用する薬物の効能が均一に示されない問題が発生するので、がんオルガノイド、細胞傷害性T細胞およびM1マクロファージを前述のような細胞数割合で混合することが重要である。
【0052】
また、前記抗がん剤スクリーニングシステムは、前記免疫細胞がM1マクロファージおよびM2マクロファージである場合、がんオルガノイド、M1マクロファージおよびM2マクロファージを1:1~3:0.5~5の細胞数割合で含むものであってよい。前記がんオルガノイド、M1マクロファージおよびM2マクロファージが前記割合で混合されて共培養される場合にのみ生体内腫瘍微小環境を模倣することができる。M1マクロファージは、腫瘍細胞死滅促進特性、M2マクロファージは、腫瘍細胞成長促進特性を示すことにより、前記割合以外の割合で共培養される場合には、薬物処理前であるにもかかわらず、がんオルガノイドが成長しないか、過度に成長する問題が発生し、また薬物の抗がん効果を正確に確認することができない問題が発生するので、がんオルガノイド、M1マクロファージおよびM2マクロファージを前述のような細胞数割合で混合することが重要である。
【0053】
また、前記抗がん剤スクリーニングシステムは、前記免疫細胞がTILである場合、がんオルガノイドおよびTILを1:1~2の細胞数割合で含むものであってよく、具体的に、1:1.5の細胞数割合で含むものであってよい。前記がんオルガノイドおよびTILが前記割合で混合されて共培養される場合にのみ生体内腫瘍微小環境を模倣することができる。前記割合以外の割合で共培養される場合には、薬物処理前であるにもかかわらず、がんオルガノイドの成長が顕著に増加して薬物に反応しないか、がんオルガノイドが成長しないため、薬物の抗がん効果を確認することができない問題が発生する。また、前記割合以外の割合で共培養される場合には、互いに異なるメカニズムで作用する薬物の効能が均一に示されない問題が発生するので、がんオルガノイドおよびTILを前述のような細胞数割合で混合することが重要である。
【0054】
また、前記抗がん剤スクリーニングシステムは、前記免疫細胞が細胞傷害性T細胞および制御性T細胞である場合、がんオルガノイド、細胞傷害性T細胞および制御性T細胞を1:3:0.5~3の細胞数割合で含むものであってよく、具体的に、1:3:1~3の細胞数割合、より具体的に1:3:3の細胞数割合で含むものであってよい。前記がんオルガノイド、細胞傷害性T細胞および制御性T細胞が前記割合で混合されて共培養される場合にのみ生体内腫瘍微小環境を模倣することができる。前記割合以外の割合で共培養される場合には、薬物によるがんオルガノイドの死滅率が顕著に低くいため、薬物の抗がん効果を確認することができない問題が発生する。また、前記割合以外の割合で共培養される場合には、互いに異なるメカニズムで作用する薬物の効能が均一に示されない問題が発生するので、がんオルガノイド、細胞傷害性T細胞および制御性T細胞を前述のような細胞数割合で混合することが重要である。
【0055】
また、前記抗がん剤スクリーニングシステムは、前記免疫細胞が細胞傷害性T細胞および樹状細胞である場合、がんオルガノイド、細胞傷害性T細胞および樹状細胞を1:3:0.5~5の細胞数割合で含むものであってよく、具体的に、1:3:0.5~1の細胞数割合で混合して含むものであってよい。前記がんオルガノイド、細胞傷害性T細胞および樹状細胞が前記割合で混合されて共培養される場合にのみ生体内腫瘍微小環境を模倣することができる。前記割合以外の割合で共培養される場合には、がんオルガノイドが適切に成長しないか、薬物によるがんオルガノイドの死滅率が顕著に低くいため、薬物の抗がん効果を確認することができない問題が発生する。また、前記割合以外の割合で共培養される場合には、互いに異なるメカニズムで作用する薬物の効能が均一に示されない問題が発生するので、がんオルガノイド、細胞傷害性T細胞および樹状細胞を前述のような細胞数割合で混合することが重要である。
【0056】
本発明の抗がん剤スクリーニングシステムは、腫瘍微小環境を模倣したものであって、生体内腫瘍微小環境を構成する腫瘍としてがんオルガノイド、および免疫細胞として細胞傷害性T細胞、M1マクロファージ、M2マクロファージ、TIL、制御性T細胞および樹状細胞を含む。
【発明の効果】
【0057】
本発明によるがんオルガノイドおよび免疫細胞の混合物は、特定割合で混合して、がん細胞が生体内で存在している形態である腫瘍微小環境を類似に再現することができる。したがって、これを活用する場合、薬物が生体内に投与されたときの効能を正確に予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1a】細胞傷害性T細胞(Cytotoxic T cell、以下、「CD8+T細胞」)およびM1マクロファージ(classically activated macrophage、以下、「M1」)割合によるがんオルガノイドの死滅程度を示すグラフである。
図1b】細胞傷害性T細胞およびM1マクロファージ割合によるM1の死滅程度を示すグラフである。
図2】CD8+T細胞およびM1割合によるがんオルガノイドの成長阻害程度を示すグラフであって、0時間、24時間、48時間および72時間にわたって共培養した結果に関する。
図3】抗-CD47抗体処理による食作用(Phagocytosis)活性化程度を示すグラフである。
図4】CD8+T細胞割合増加によるがんオルガノイド死滅に対する薬物の全般的な効能(overall efficacy)を示すグラフである。
図5】M1割合増加によるがんオルガノイド死滅に対する薬物の全般的な効能(overall efficacy)を示すグラフである。
図6】がんオルガノイド死滅に対する薬物の全般的な効能(overall efficacy)を示すグラフである。
図7a】がんオルガノイド、M1およびM2マクロファージ(alternatively activated macrophage、以下「M2」)の共培養割合によるがんオルガノイドの成長率を示すグラフであって、M1が含まれない条件(「1:3:0」)またはM2が含まれない条件(「1:0:5」)で共培養した結果に関する。
図7b】がんオルガノイド、M1およびM2の共培養割合によるがんオルガノイドの成長率を示すグラフであって、がんオルガノイドおよびM1が1:0.5の細胞数割合で固定されて混合された条件で共培養した結果に関する。
図7c】がんオルガノイド、M1およびM2の共培養割合によるがんオルガノイドの成長率を示すグラフであって、がんオルガノイドおよびM1が1:1の細胞数割合で固定されて混合された条件で共培養した結果に関する。
図7d】がんオルガノイド、M1およびM2の共培養割合によるがんオルガノイドの成長率を示すグラフであって、がんオルガノイドおよびM1が1:3の細胞数割合で固定されて混合された条件で共培養した結果に関する。
図8a】がんオルガノイド、M1およびM2の共培養割合によるがんオルガノイドの成長率を示すグラフであって、M1が含まれない条件(「1:3:0」)またはM2が含まれない条件(「1:0:5」)で共培養した結果に関する。「Non」は、薬物未処理群を意味し、「CD47」は、例示薬物として抗-CD47抗体を処理した薬物処理群を意味する。前記死滅率は、薬物処理72時間後(72h)に成長率を測定した結果に基づいて分析した。
図8b】がんオルガノイド、M1およびM2の共培養割合によるがんオルガノイドの死滅率を示すグラフであって、M1が含まれない条件(「1:3:0」)またはM2が含まれない条件(「1:0:5」)で共培養した結果に関する。「Non」は、薬物未処理群を意味し、「CD47」は、例示薬物として抗-CD47抗体を処理した薬物処理群を意味する。前記死滅率は、薬物処理72時間後(72h)に成長率を測定した結果に基づいて分析した。
図9a】がんオルガノイド、M1およびM2の共培養割合によるがんオルガノイドの成長率を示すグラフであって、がんオルガノイドおよびM1が1:0.5の細胞数割合で固定されて混合された条件で共培養した結果に関する。「Non」は、薬物未処理群を意味し、「CD47」は、例示薬物として抗-CD47抗体を処理した薬物処理群を意味する。前記死滅率は、薬物処理72時間後(72h)に成長率を測定した結果に基づいて分析した。
図9b】がんオルガノイド、M1およびM2の共培養割合によるがんオルガノイドの死滅率を示すグラフであって、がんオルガノイドおよびM1が1:0.5の細胞数割合で固定されて混合された条件で共培養した結果に関する。「Non」は、薬物未処理群を意味し、「CD47」は、例示薬物として抗-CD47抗体を処理した薬物処理群を意味する。前記死滅率は、薬物処理72時間後(72h)に成長率を測定した結果に基づいて分析した。
図10a】がんオルガノイド、M1およびM2の共培養割合によるがんオルガノイドの成長率を示すグラフであって、がんオルガノイドおよびM1が1:1の細胞数割合で固定されて混合された条件で共培養した結果に関する。「Non」は、薬物未処理群を意味し、「CD47」は、例示薬物として抗-CD47抗体を処理した薬物処理群を意味する。前記死滅率は、薬物処理72時間後(72h)に成長率を測定した結果に基づいて分析した。
図10b】がんオルガノイド、M1およびM2の共培養割合によるがんオルガノイドの死滅率を示すグラフであって、がんオルガノイドおよびM1が1:1の細胞数割合で固定されて混合された条件で共培養した結果に関する。「Non」は、薬物未処理群を意味し、「CD47」は、例示薬物として抗-CD47抗体を処理した薬物処理群を意味する。前記死滅率は、薬物処理72時間後(72h)に成長率を測定した結果に基づいて分析した。
図11a】がんオルガノイド、M1およびM2の共培養割合によるがんオルガノイドの成長率を示すグラフであって、がんオルガノイドおよびM1が1:3の細胞数割合で固定されて混合された条件で共培養した結果に関する。「Non」は、薬物未処理群を意味し、「CD47」は、例示薬物として抗-CD47抗体を処理した薬物処理群を意味する。前記死滅率は、薬物処理72時間後(72h)に成長率を測定した結果に基づいて分析した。
図11b】がんオルガノイド、M1およびM2の共培養割合によるがんオルガノイドの死滅率を示すグラフであって、がんオルガノイドおよびM1が1:3の細胞数割合で固定されて混合された条件で共培養した結果に関する。「Non」は、薬物未処理群を意味し、「CD47」は、例示薬物として抗-CD47抗体を処理した薬物処理群を意味する。前記死滅率は、薬物処理72時間後(72h)に成長率を測定した結果に基づいて分析した。
図12】腫瘍-浸潤リンパ球(Tumor-infiltrating lymphocyte、以下、「TIL」)単独培養;またはTILおよびがんオルガノイドの共培養を通じて製造されたTILに対してFACS分析を遂行した結果に関するものであって、全体TILに対して細胞表面にCD8タンパク質を発現するTILの割合を示す。
図13a】肺がんオルガノイドとTILの共培養割合による肺がんオルガノイドの成長率を示すグラフである。「Non」は、薬物未処理群を意味し、「Atez」は、薬物処理群を意味し、例示薬物としてアテゾリズマブを処理した。成長率は、薬物処理直後(0h)、24時間後(24h)、48時間後(48h)、72時間後(72h)にそれぞれ測定した。
図13b】肺がんオルガノイドとTILの共培養割合による肺がんオルガノイドの死滅率を示すグラフである。「Non」は、薬物未処理群を意味し、「Atez」は、薬物処理群を意味し、例示薬物としてアテゾリズマブを処理した。薬物処理直後(0h)、24時間後(24h)、48時間後(48h)、72時間後(72h)にそれぞれ成長率を測定した結果に基づいて死滅率を分析した。
図14a】大腸がんオルガノイドとTILの共培養割合による大腸がんオルガノイドの成長率を示すグラフである。「Non」は、薬物未処理群を意味し、「Atez」は、薬物処理群を意味し、例示薬物としてアテゾリズマブを処理した。成長率は、薬物処理直後(0h)、24時間後(24h)、48時間後(48h)、72時間後(72h)にそれぞれ測定した。
図14b】大腸がんオルガノイドとTILの共培養割合による大腸がんオルガノイドの死滅率を示すグラフである。「Non」は、薬物未処理群を意味し、「Atez」は、薬物処理群を意味し、例示薬物としてアテゾリズマブを処理した。薬物処理直後(0h)、24時間後(24h)、48時間後(48h)、72時間後(72h)にそれぞれ成長率を測定した結果に基づいて死滅率を分析した。
図15】大腸がんオルガノイド、CD8+T細胞および制御性T細胞(regulatory T cell、以下、「Treg」)の各共培養割合による大腸がんオルガノイドの成長率を示すグラフである。代表的な例として、図面に記載された「1:3:0」は、大腸がんオルガノイド、CD8+T細胞およびTregが1:3:0の細胞数割合で混合されたことを意味する。前記成長率は、共培養開始直後(0h)、24時間後(24h)、48時間後(48h)、72時間後(72h)にそれぞれ分析した。
図16】肺がんオルガノイド、CD8+T細胞およびTregの各共培養割合による肺がんオルガノイドの成長率を示すグラフである。代表的な例として、図面に記載された「1:3:0」は、肺がんオルガノイド、CD8+T細胞およびTregが1:3:0の細胞数割合で混合されたことを意味する。前記成長率は、共培養開始直後(0h)、24時間後(24h)、48時間後(48h)、72時間後(72h)にそれぞれ分析した。
図17】大腸がんオルガノイド、CD8+T細胞およびTregの共培養割合による大腸がんオルガノイドの死滅率を示すグラフであって、Tregが含まれない条件(「1:3:0」)またはCD8+T細胞が含まれない条件(「1:0:3」)で共培養した結果に関する。「Non」は、薬物未処理群を意味し、「Atez」は、例示薬物としてアテゾリズマブを処理した薬物処理群を意味し、「TIGIT」は、例示薬物として抗-TIGIT抗体を処理した薬物処理群を意味する。前記死滅率は、薬物処理72時間後(72h)に成長率を測定した結果に基づいて分析した。
図18】大腸がんオルガノイド、CD8+T細胞およびTregの共培養割合による大腸がんオルガノイドの死滅率を示すグラフであって、大腸がんオルガノイドおよびCD8+T細胞が1:1の細胞数割合で固定されて混合された条件で共培養した結果に関する。「Non」は、薬物未処理群を意味し、「Atez」は、例示薬物としてアテゾリズマブを処理した薬物処理群を意味し、「TIGIT」は、例示薬物として抗-TIGIT抗体を処理した薬物処理群を意味する。前記死滅率は、薬物処理72時間後(72h)に成長率を測定した結果に基づいて分析した。
図19】大腸がんオルガノイド、CD8+T細胞およびTregの共培養割合による大腸がんオルガノイドの死滅率を示すグラフであって、大腸がんオルガノイドおよびCD8+T細胞が1:3の細胞数割合で固定されて混合された条件で共培養した結果に関する。「Non」は、薬物未処理群を意味し、「Atez」は、例示薬物としてアテゾリズマブを処理した薬物処理群を意味し、「TIGIT」は、例示薬物として抗-TIGIT抗体を処理した薬物処理群を意味する。前記死滅率は、薬物処理72時間後(72h)に成長率を測定した結果に基づいて分析した。
図20】肺がんオルガノイド、CD8+T細胞およびTregの共培養割合による肺がんオルガノイドの死滅率を示すグラフであって、Tregが含まれない条件(「1:3:0」)またはCD8+T細胞が含まれない条件(「1:0:3」)で共培養した結果に関する。「Non」は、薬物未処理群を意味し、「Atez」は、例示薬物としてアテゾリズマブを処理した薬物処理群を意味し、「TIGIT」は、例示薬物として抗-TIGIT抗体を処理した薬物処理群を意味する。前記死滅率は、薬物処理72時間後(72h)に成長率を測定した結果に基づいて分析した。
図21】肺がんオルガノイド、CD8+T細胞およびTregの共培養割合による肺がんオルガノイドの死滅率を示すグラフであって、肺がんオルガノイドおよびCD8+T細胞が1:1の細胞数割合で固定されて混合された条件で共培養した結果に関する。「Non」は、薬物未処理群を意味し、「Atez」は、例示薬物としてアテゾリズマブを処理した薬物処理群を意味し、「TIGIT」は、例示薬物として抗-TIGIT抗体を処理した薬物処理群を意味する。前記死滅率は、薬物処理72時間後(72h)に成長率を測定した結果に基づいて分析した。
図22】肺がんオルガノイド、CD8+T細胞およびTregの共培養割合による肺がんオルガノイドの死滅率を示すグラフであって、肺がんオルガノイドおよびCD8+T細胞が1:3の細胞数割合で固定されて混合された条件で共培養した結果に関する。「Non」は、薬物未処理群を意味し、「Atez」は、例示薬物としてアテゾリズマブを処理した薬物処理群を意味し、「TIGIT」は、例示薬物として抗-TIGIT抗体を処理した薬物処理群を意味する。前記死滅率は、薬物処理72時間後(72h)に成長率を測定した結果に基づいて分析した。
図23】大腸がんオルガノイド、CD8+T細胞および樹状細胞(regulatory T cell、以下、「DC」)の共培養割合による大腸がんオルガノイドの成長率を示すグラフであって、大腸がんオルガノイドおよびCD8+T細胞が1:0.5の細胞数割合で固定されて混合された条件で共培養した結果に関する。代表的な例として、図面に記載された「1:0.5:0.5」は、大腸がんオルガノイド、CD8+T細胞およびDCが1:0.5:0.5の細胞数割合で混合されたことを意味する。前記成長率は、共培養開始直後(0h)、24時間後(24h)、48時間後(48h)、72時間後(72h)にそれぞれ分析した。「Non」は、薬物未処理群を意味し、「Atez」は、例示薬物としてアテゾリズマブを処理した薬物処理群を意味する。
図24】大腸がんオルガノイド、CD8+T細胞およびDCの共培養割合による大腸がんオルガノイドの成長率を示すグラフであって、大腸がんオルガノイドおよびCD8+T細胞が1:1の細胞数割合で固定されて混合された条件で共培養した結果に関する。代表的な例として、図面に記載された「1:1:0.5」は、大腸がんオルガノイド、CD8+T細胞およびDCが1:1:0.5の細胞数割合で混合されたことを意味する。前記成長率は、共培養開始直後(0h)、24時間後(24h)、48時間後(48h)、72時間後(72h)にそれぞれ分析した。「Non」は、薬物未処理群を意味し、「Atez」は、例示薬物としてアテゾリズマブを処理した薬物処理群を意味する。
図25】大腸がんオルガノイド、CD8+T細胞およびDCの共培養割合による大腸がんオルガノイドの成長率を示すグラフであって、大腸がんオルガノイドおよびCD8+T細胞が1:3の細胞数割合で固定されて混合された条件で共培養した結果に関する。代表的な例として、図面に記載された「1:3:0.5」は、大腸がんオルガノイド、CD8+T細胞およびDCが1:3:0.5の細胞数割合で混合されたことを意味する。前記成長率は、共培養開始直後(0h)、24時間後(24h)、48時間後(48h)、72時間後(72h)にそれぞれ分析した。「Non」は、薬物未処理群を意味し、「Atez」は、例示薬物としてアテゾリズマブを処理した薬物処理群を意味する。
図26】大腸がんオルガノイド、CD8+T細胞およびDCの共培養割合による大腸がんオルガノイドの死滅率を示すグラフであって、大腸がんオルガノイドおよびCD8+T細胞が1:0.5の細胞数割合で固定されて混合された条件で共培養した結果に関する。「Non」は、薬物未処理群を意味し、「Atez」は、例示薬物としてアテゾリズマブを処理した薬物処理群を意味する。前記死滅率は、薬物処理72時間後(72h)に成長率を測定した結果に基づいて分析した。
図27】大腸がんオルガノイド、CD8+T細胞およびDCの共培養割合による大腸がんオルガノイドの死滅率を示すグラフであって、大腸がんオルガノイドおよびCD8+T細胞が1:1の細胞数割合で固定されて混合された条件で共培養した結果に関する。「Non」は、薬物未処理群を意味し、「Atez」は、例示薬物としてアテゾリズマブを処理した薬物処理群を意味する。前記死滅率は、薬物処理72時間後(72h)に成長率を測定した結果に基づいて分析した。
図28】大腸がんオルガノイド、CD8+T細胞およびDCの共培養割合による大腸がんオルガノイドの死滅率を示すグラフであって、大腸がんオルガノイドおよびCD8+T細胞が1:3の細胞数割合で固定されて混合された条件で共培養した結果に関する。「Non」は、薬物未処理群を意味し、「Atez」は、例示薬物としてアテゾリズマブを処理した薬物処理群を意味する。前記死滅率は、薬物処理72時間後(72h)に成長率を測定した結果に基づいて分析した。
図29】肺がんオルガノイド、CD8+T細胞およびDCの共培養割合による肺がんオルガノイドの成長率を示すグラフであって、肺がんオルガノイドおよびCD8+T細胞が1:0.5の細胞数割合で固定されて混合された条件で共培養した結果に関する。代表的な例として、図面に記載された「1:0.5:0.5」は、肺がんオルガノイド、CD8+T細胞およびDCが1:0.5:0.5の細胞数割合で混合されたことを意味する。前記成長率は、共培養開始直後(0h)、24時間後(24h)、48時間後(48h)、72時間後(72h)にそれぞれ分析した。「Non」は、薬物未処理群を意味し、「Atez」は、例示薬物としてアテゾリズマブを処理した薬物処理群を意味する。
図30】肺がんオルガノイド、CD8+T細胞およびDCの共培養割合による肺がんオルガノイドの成長率を示すグラフであって、肺がんオルガノイドおよびCD8+T細胞が1:1の細胞数割合で固定されて混合された条件で共培養した結果に関する。代表的な例として、図面に記載された「1:1:0.5」は、肺がんオルガノイド、CD8+T細胞およびDCが1:1:0.5の細胞数割合で混合されたことを意味する。前記成長率は、共培養開始直後(0h)、24時間後(24h)、48時間後(48h)、72時間後(72h)にそれぞれ分析した。「Non」は、薬物未処理群を意味し、「Atez」は、例示薬物としてアテゾリズマブを処理した薬物処理群を意味する。
図31】肺がんオルガノイド、CD8+T細胞およびDCの共培養割合による肺がんオルガノイドの成長率を示すグラフであって、肺がんオルガノイドおよびCD8+T細胞が1:3の細胞数割合で固定されて混合された条件で共培養した結果に関する。代表的な例として、図面に記載された「1:3:0.5」は、肺がんオルガノイド、CD8+T細胞およびDCが1:3:0.5の細胞数割合で混合されたことを意味する。前記成長率は、共培養開始直後(0h)、24時間後(24h)、48時間後(48h)、72時間後(72h)にそれぞれ分析した。「Non」は、薬物未処理群を意味し、「Atez」は、例示薬物としてアテゾリズマブを処理した薬物処理群を意味する。
図32】肺がんオルガノイド、CD8+T細胞およびDCの共培養割合による肺がんオルガノイドの死滅率を示すグラフであって、肺がんオルガノイドおよびCD8+T細胞が1:0.5の細胞数割合で固定されて混合された条件で共培養した結果に関する。「Non」は、薬物未処理群を意味し、「Atez」は、例示薬物としてアテゾリズマブを処理した薬物処理群を意味する。前記死滅率は、薬物処理72時間後(72h)に成長率を測定した結果に基づいて分析した。
図33】肺がんオルガノイド、CD8+T細胞およびDCの共培養割合による肺がんオルガノイドの死滅率を示すグラフであって、肺がんオルガノイドおよびCD8+T細胞が1:1の細胞数割合で固定されて混合された条件で共培養した結果に関する。「Non」は、薬物未処理群を意味し、「Atez」は、例示薬物としてアテゾリズマブを処理した薬物処理群を意味する。前記死滅率は、薬物処理72時間後(72h)に成長率を測定した結果に基づいて分析した。
図34】肺がんオルガノイド、CD8+T細胞およびDCの共培養割合による肺がんオルガノイドの死滅率を示すグラフであって、肺がんオルガノイドおよびCD8+T細胞が1:3の細胞数割合で固定されて混合された条件で共培養した結果に関する。「Non」は、薬物未処理群を意味し、「Atez」は、例示薬物としてアテゾリズマブを処理した薬物処理群を意味する。前記死滅率は、薬物処理72時間後(72h)に成長率を測定した結果に基づいて分析した。
【発明を実施するための形態】
【0059】
以下、実施例を通じて本発明をより詳細に説明しようとする。これらの実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例により制限されるものではない。
【0060】
実施例1.がんオルガノイド、細胞傷害性T細胞およびM1マクロファージを含む抗がん剤効能評価およびスクリーニングシステム
がんが生体内存在している環境を類似に再現することで、薬物が生体内に投与されたときの効能を正確に予測することができるインビトロ(in vitro)スクリーニングシステムを確立しようとした。
【0061】
具体的に、がんオルガノイド、細胞傷害性T細胞(Cytotoxic T cell、以下、「CD8+T細胞」)およびM1マクロファージ(classically activated macrophage、以下、「M1」)が共存する共培養(co-culture)システムを利用し、共培養時に下記の3つの条件を満たす各オルガノイドまたは細胞の割合を確認した:
(1)がんオルガノイドおよびM1死滅が低い条件(前記オルガノイド、CD8+T細胞およびM1の共培養時、薬物未処理群でがんオルガノイドまたはM1の死滅が高く観察される場合には、薬物の効能を正確に分析することができない)
(2)食作用(Phagocytosis)が活性化される条件
(3)互いに異なるMoA(Mode of Action)特性を示す薬物の効能を評価することができる条件。
【0062】
また、がんオルガノイド、CD8+T細胞およびM1の割合で、オルガノイドまたは細胞の数が5.0×10個であることを1と設定し、割合によるオルガノイドまたは細胞の具体的な数は、以下のとおりである:
0.2=1.0×10個のオルガノイドまたは細胞
0.5=2.5×10個のオルガノイドまたは細胞
1=5.0×10個のオルガノイドまたは細胞
3=15.0×10個のオルガノイドまたは細胞
5=25.0×10個のオルガノイドまたは細胞
10=50.0×10個のオルガノイドまたは細胞
【0063】
前述のような条件をすべて満たすがんオルガノイド、CD8+T細胞およびM1の割合は、以下の実施例1.1~1.3を通じて確認した。
【0064】
実施例1.1.がんオルガノイド、細胞傷害性T細胞およびM1マクロファージが共存する条件確立
がんオルガノイド、CD8+T細胞およびM1で構成された細胞を共培養する場合で、1種類の細胞でも死滅されれば、薬物の効能を正確に評価し難い問題点が発生する。したがって、本実施例1.1においては、薬物を処理していない状態でがんオルガノイド、CD8+T細胞およびM1を共培養したとき、前記細胞がすべて生存する条件を確立しようとした。
【0065】
具体的に、がんオルガノイド、CD8+T細胞およびM1は、大腸がん患者由来のものを使用した。また、下記の表1に示したように、がんオルガノイドを1の割合で固定した後、CD8+T細胞は、0.1~10の割合、およびM1は0.1~5の割合に設定して2時間にわたって共培養し、各割合によるがんオルガノイドまたは細胞の死滅程度を分析した。このとき、分析は、フローサイトメトリ(Flow-cytometer)で遂行し、がんオルガノイドのマーカーはCFSE(+)、M1マクロファージのマーカーはCD11B(+)を使用した。
【0066】
【表1】
【0067】
その結果、図1aに示したように、グループ11および12のCD8+T細胞割合が高い条件(5以上)とグループ9のM1割合が高い条件(5以上)でがんオルガノイドの高い死滅が観察された。また、図1bに示したように、グループ11および12のCD8+T細胞の割合が高い条件(5以上)でも、M1マクロファージの高い死滅が発生することを確認した。
【0068】
これを総合すれば、薬物を処理していない状態では、グループ3、4、5、6、7、8および10の条件ががんオルガノイド、CD8+T細胞およびM1が均衡を成して生存することができることを確認した。
【0069】
したがって、がんオルガノイドの割合が1であるとき、CD8+T細胞の割合を3以内およびM1の割合を3以内に設定することが抗がん剤のスクリーニングシステムに最適化された割合であることが分かる。
【0070】
実施例1.2.共培養時間によるがんオルガノイド成長阻害および死滅程度確認
前記実施例1.1から確認したような、がんオルガノイド、CD8+T細胞およびM1で構成されたスクリーニングシステムにおいては、がんオルガノイドの成長阻害および死滅が観察されない細胞の構成割合を確認した。よって、共培養時間を異に設定した後(24時間、48時間、72時間)、がんオルガノイドの成長程度を分析した。
【0071】
具体的に、下記の表2に示したように、がんオルガノイドを1の割合で固定した後、CD8+T細胞は0.2~3の割合、およびM1は0.1~3の割合に設定して共培養し、各割合による食作用を分析した。このとき、前記CD8+T細胞およびM1の割合は、前記実施例1.1で適用した割合よりさらに狭い範囲でテストし、分析は、HCS(ハイコンテントスクリーニング:High-Content screening)で遂行し、初期オルガノイドの面積を100%に設定し、反応時間による面積の変化を割合で示した。
【0072】
【表2】
【0073】
その結果、図2に示したように、細胞割合によって成長程度に差はあるが、前記割合では72時間以上共培養しても、がんオルガノイドの成長が阻害される影響は示されないことを確認した。前記結果を通じて、がんオルガノイド、CD8+T細胞およびM1を1:0.2~3:0.1~3の割合に設定することが抗がん剤のスクリーニングシステムに最適化された割合であることが分かる。
【0074】
実施例1.3.食作用(Phagocytosis)が活性化される条件確立
前記実施例1.1から確認したような、がんオルガノイド、CD8+T細胞およびM1で構成されたスクリーニングシステムがM1をターゲットにする薬物の効能を評価するのに使用できるのかを確認するために、前記システムに抗-CD47抗体を処理した後、食作用によるがんオルガノイドの死滅程度を確認した。
【0075】
具体的に、がんオルガノイドおよびCD8+T細胞は大腸がん患者由来のものを使用し、M1はCHA15細胞株を使用した。
【0076】
また、前記表2に示したように、がんオルガノイドを1の割合で固定した後、CD8+T細胞は0.2~3の割合、およびM1は0.1~3の割合に設定して共培養し、各割合による食作用を分析した。このとき、前記CD8+T細胞およびM1の割合は、前記実施例1.1で適用した割合よりさらに狭い範囲でテストし、分析はフローサイトメトリ(Flow-cytometer)で遂行し、がんオルガノイドのマーカーはEpCAM(+)、M1のマーカーはCD11B(+)を使用した。食作用の場合、がんオルガノイドマーカーとM1マーカーが重複で示される(double positive)割合で確認した。
【0077】
その結果、図3に示したように、M1が存在しないグループ2を除いたすべての条件で食作用が観察され、特に、グループ3、4、6および7でM1に結合する抗-CD47抗体を処理する場合には、未処理群に比べて食作用が活性化されることを確認した。
【0078】
前記結果を通じて、がんオルガノイド、CD8+T細胞およびM1を1:0.2~0.5:0.1~3の割合に設定することが抗がん剤のスクリーニングシステムに最適化された割合であることが分かる。
【0079】
実施例1.4.互いに異なるMoA(Mode of Action)特性を示す薬物の効能を評価することができる条件確立
前記実施例1.1から確認したような、がんオルガノイド、CD8+T細胞およびM1で構成されたスクリーニングシステムが薬物の効能を評価するのに使用できるのかを確認するために、前記システムに既存の免疫抗がん剤として使用されていた抗-PD-L1抗体であるアテゾリズマブ(Atezolizumab)、抗-CD47抗体、およびこれらの併用を処理した後、食作用によるがんオルガノイドの死滅程度を確認した。
【0080】
アテゾリズマブは、がん細胞のPD-L1と結合してPD-1/PD-L1機序を防いでCD8+T細胞を活性化させ、抗-CD47抗体は、M1のCD47と結合してSIRP-a/CD47機序を防いでマクロファージを活性化させる。よって、本発明のスクリーニングシステムが互いに異なるメカニズムで作用する二種類の薬物の両方に対して効能を評価することができるのかを確認しようとした。
【0081】
具体的に、がんオルガノイドおよびCD8+T細胞は、大腸がん患者由来のものを使用し、M1はCHA15細胞株を使用した。
【0082】
また、前記表2に示したように、がんオルガノイドを1の割合で固定した後、CD8+T細胞は0~3の割合、およびM1は0~3の割合に設定して共培養し、前記共培養物に抗-PD-L1抗体であるアテゾリズマブ(Atezolizumab、Selleck、#A2004)10nMおよび/または抗-CD47抗体10nMを処理した後、各割合によるがんオルガノイドまたはM1の死滅程度を分析した。このとき、前記CD8+T細胞およびM1の割合は、前記実施例1.1で適用した割合よりさらに狭い範囲でテストし、分析は、薬物処理後72時間にわたってオルガノイド面積の変化をHCS(ハイコンテントスクリーニング:High-Content Screening)装備を利用して分析した。以後、全般的な効能(Overall efficacy)を薬物処理72時間後に非処理群のオルガノイド面積に対比して、薬物処理群の面積変化を算出することで薬物の効能性を評価した。
【0083】
その結果、図4に示したように、がんオルガノイドおよびM1の割合が1および1で固定され、CD8+T細胞の割合が変わるグループ1、3、6および8の結果においては、CD8+T細胞の割合が高くなるほど全般的な効能が増加し、特に、アテゾリズマブ処理群でがんオルガノイドの高い成長阻害および死滅効果が示されることを確認した。
【0084】
また、図5に示したように、がんオルガノイドおよびCD8+T細胞の割合が1および0.5で固定され、M1の割合が変わるグループ2、4、5、6および7の結果においては、M1の割合が高くなるほど全般的な効能が増加し、特に、抗-CD47抗体処理群でがんオルガノイドの高い成長阻害および死滅効果が示されることを確認した。
【0085】
ただし、図6に示したように、アテゾリズマブ単独、抗-CD47抗体単独およびこれらの併用に対するがんオルガノイドの死滅効果が類似していると同時に、高く示されるグループは、グループ5、6および7であることを確認した。
【0086】
したがって、前記実施例1.1~1.3の結果を総合すれば、がんオルガノイド、CD8+T細胞およびM1を共培養したとき、がんオルガノイドの成長を阻害しないとともに、がんオルガノイドおよびM1の死滅を引き起こさずに、互いに異なる薬物が単独でまたは併用で処理されたとき、全般的な効能を類似に示し得るがんオルガノイド、CD8+T細胞およびM1の割合は、グループ5の1:0.5:0.5、グループ6の1:0.5:1、およびグループ7の1:0.5:3であることを確認した。
【0087】
実施例2.がんオルガノイド、M1マクロファージおよびM2マクロファージを含む抗がん剤効能評価およびスクリーニングシステム
がんが生体内存在している環境を類似に再現することで、薬物が生体内に投与されたときの効能を正確に予測することができるインビトロ(in vitro)効能評価およびスクリーニングシステムを確立しようとした。
【0088】
具体的に、がんオルガノイド、M1マクロファージ(classically activated macrophage、以下、「M1」)およびM2マクロファージ(alternatively activated macrophage、以下、「M2」)が共存する共培養(co-culture)システムを確立するために、共培養時に(1)がんオルガノイドが適切に成長し、(2)薬物の効能が高く観察される条件を満たすこれらの混合割合を導き出した。下記の表3に示したように、がんオルガノイドを1の割合で固定した後、M1を0.5~3の割合に設定し、M2を0.5~5の割合に設定した。このとき、各オルガノイドまたは細胞の数が5.0×10個であることを1に設定した。
【0089】
【表3】
【0090】
がんオルガノイドは、患者から得た肺がん組織を単一細胞(single cell)に分離して、これをECM(extracellular matrix)とともに培養することで、3D構造を有するように製造した。形成されたがんオルガノイドは、病理分析を通じて腫瘍であることを確認し、Tryp-LE使用を通じて単一細胞に分離した後に使用した。M1およびM2はiPSCから分化されたものを使用し、当業界に知られている一般的な方法を使用してH9細胞株からM1またはM2に分化させた。
【0091】
実施例2.1.がんオルガノイドが適切に成長する条件
がんオルガノイドが免疫細胞と共培養される場合にも適切に成長することができるようにする、がんオルガノイド、M1およびM2の混合割合を導き出した。
【0092】
具体的に、前記表3による混合割合で共培養した後、共培養開始直後(Oh)、24時間後(24h)、48時間後(48h)、72時間後(72h)にがんオルガノイドの面積をそれぞれ測定して、次のような数式で成長率を分析した。
【0093】
がんオルガノイド成長率(%)=(共培養24、48または72時間後のがんオルガノイド面積)/(共培養開始直後のがんオルガノイド面積)×100
【0094】
その結果、図7a~7cから見られるように、すべての混合割合でがんオルガノイドの成長は阻害されず、M2の割合が高くなるほどがんオルガノイドの成長率が増加する傾向を示した。
【0095】
実施例2.2.薬物の効能が高く示される条件
抗がん剤の効能が高く示されるようにする、がんオルガノイド、M1およびM2の混合割合を導き出した。
【0096】
具体的に、前記表3の混合割合によるがんオルガノイド、M1およびM2の共培養物に対して薬物を処理していないものを対照群(以下、「薬物未処理群」)に設定し、実験群(以下、「薬物処理群」)としては、M1をターゲットする抗-CD47抗体を例示薬物として処理したものを設定した。これらを72時間にわたって共培養した後、薬物処理72時間後(72h)にそれぞれ成長率を測定し、測定した成長率を通じて下記の方法で死滅率を分析した。
【0097】
がんオルガノイド死滅率(%)=[1-(薬物処理群のがんオルガノイド成長率)/(薬物未処理群のがんオルガノイド成長率**)]×100
【0098】
薬物処理群のがんオルガノイド成長率(%)=(薬物処理72時間後のがんオルガノイド面積)/(共培養開始直後(0h)のがんオルガノイド面積)×100
【0099】
**薬物未処理群のがんオルガノイド成長率(%)=(薬物未処理72時間後のがんオルガノイド面積)/(共培養開始直後(0h)のがんオルガノイド面積)×100
【0100】
その結果、図8aおよび8bから見られるように、がんオルガノイド、M1およびM2の中で、M2を除いて、がんオルガノイドおよびM1のみ1:3の混合割合で共培養される場合、抗-CD47抗体によるがんオルガノイドの死滅率は約25%で高く示された。一方、がんオルガノイド、M1およびM2の中で、M1を除いてがんオルガノイドおよびM2のみ1:5の混合割合で共培養される場合、抗-CD47抗体によるがんオルガノイドの死滅率は約5%程度で顕著に低い水準で示された。
【0101】
一方、図9aおよび9bから見られるように、がんオルガノイドおよびM1が1:0.5の割合で共培養される場合、M2の割合増加によるがんオルガノイドの死滅率は、混合割合間に有意な差を示さず、抗-CD47抗体を処理した薬物処理群のすべてでがんオルガノイドの死滅率は最大約10%に過ぎないことから、薬物の効能が高く示されていないことを確認した。
【0102】
一方、図10aおよび10bから見られるように、がんオルガノイドおよびM1が1:1の割合で共培養される場合、M2が0.5~5の割合で混合されたすべての場合で薬物によるがんオルガノイドの死滅率が増加して、最大約23%の高い水準を示すことを確認した。
【0103】
併せて、図11aおよび11bから見られるように、がんオルガノイドおよびM1が1:3の割合で共培養される場合、M2が0.5~5の割合で混合されたすべての場合で薬物によるがんオルガノイドの死滅率が増加して、最大約25%の高い水準を示すことを確認した。
【0104】
前記結果は、がんオルガノイド、M1およびM2の共培養割合が1:1~3:0.5~5であることが抗がん剤効能評価またはスクリーニングシステムに最適化された割合であり、本システムは、薬物作用にマクロファージが関与する抗がん剤の効能評価またはスクリーニングに適合していることを示唆する。
【0105】
実施例3.がんオルガノイドおよびTILを含む抗がん剤効能評価およびスクリーニングシステム
がんが生体内に存在している環境を類似に再現することで、薬物が生体内に投与されたときの効能を正確に予測することができるインビトロ(in vitro)効能評価およびスクリーニングシステムを確立しようとした。
【0106】
具体的に、がんオルガノイドおよび腫瘍-浸潤リンパ球(Tumor-infiltrating lymphocyte、以下、「TIL」)が共存する共培養(co-culture)システムを利用した。
【0107】
実施例3.1.TILの取得
TILは、腫瘍組織に浸潤するか、これを取り囲む細胞であって、がん細胞を認識して死滅させる役割を遂行する。TILには多様な種類の免疫細胞が含まれているが、その中でも腫瘍を攻撃できるCD8+T細胞が大部分を占める。また、TILは、腫瘍組織から分離されるため、ここに含まれるCD8+T細胞は、既に活性化されており、がん細胞を認識および攻撃することができる状態であることが特徴である。
【0108】
すなわち、本発明による抗がん剤効能評価およびスクリーニングシステムには、組織から分離したTILを使用することで、CD8+T細胞の活性化過程を省略した。また、活性化されたCD8+T細胞がさらに長く保持される条件を導き出し、これを本システムに適用した。
【0109】
具体的に、腫瘍組織を細く切った後、分離し出される免疫細胞および組織を集めてCD8+T細胞培養液に培養することで、免疫細胞のみ成長するようにして、TILを取得した。以後、TILを単独培養するか、またはTILとがんオルガノイドを20:1の細胞数割合(TIL:がんオルガノイド=1×10個:5.0×10個)で混合して共培養し、各過程を経たTILをFACSを通じて分析した。このとき、マーカーとしてはCD56およびCD8を使用し、CD56はTILに存在する全免疫細胞を分析する用途、CD8は、TILに存在する全免疫細胞のうちCD8+T細胞を分析する用途で使用した。このようなFACS分析結果においては、CD8+割合が20%以上である場合、該当免疫細胞を薬物の効能評価に使用が可能であると見なす。下記の表4は、全TILに存在するCD8+T細胞の割合に関する。
【0110】
【表4】
【0111】
その結果、図12および前記表4から見られるように、培養開始1日目から7日目までは単独培養と共培養の結果に有意な差が示されてはいない。しかし、培養開始14日目からは、相当な差を示したが、単独培養方法の場合、CD8+T細胞の割合が約23.9%であって、7日目(約90.3%)に比べて半分以上に急激に減少したのに対し、共培養方法の場合、CD8+T細胞の割合は全細胞割合の中で約97.1%であって、7日目(約91.4%)に比べてむしろ増加した。
【0112】
ただし、培養21日目からは、共培養方法の場合にもCD8+T細胞の割合が約37.9%であって、14日目(約97.1%)に比べて半分以上に急激に減少した。
【0113】
前記結果は、がんオルガノイドとの共培養を通じて取得したTILは活性化されたCD8+T細胞を長期間保持しているので、これを使用する場合、正確度が向上し、再現性が高い、さらに優れた品質の抗がん剤効能評価およびスクリーニングシステムを確立することができることを示唆する。
【0114】
実施例3.2.がんオルガノイドおよびTILの共培養割合
がんオルガノイドおよびTILの共培養システムを活用した薬物効能評価およびスクリーニングシステムを確立するために、がんオルガノイドおよびTILの最適混合割合を導き出した。
【0115】
具体的に、共培養時に、(1)がんオルガノイドが適切に成長し、(2)薬物の効能が高く観察される条件を満たすがんオルガノイドおよびTILの割合を確認した。がんオルガノイドは、肺がんまたは大腸がん患者の腫瘍組織から分離したがん細胞を利用して製造したものを使用し、TILは、前記実施例1.1によってがんオルガノイドと14日間に共培養して取得したものを使用した。
【0116】
下記の表5に示したように、がんオルガノイドを1の割合で固定した後、TILを0.5~3の割合に設定し、オルガノイドまたはTILの数が5.0×10個であることを1に設定した。
【0117】
【表5】
【0118】
また、前記割合によるがんオルガノイドおよびTILの共培養物に対して薬物を処理していないものを対照群(以下、「薬物未処理群」)に設定し、実験群(以下、「薬物処理群」)としては、現在がん治療剤として市販されて使用されているアテゾリズマブ(atezolizumab)を例示薬物として処理したものを設定した。これらを72時間にわたって共培養した後、薬物処理直後(0h)、24時間後(24h)、48時間後(48h)、72時間後(72h)にそれぞれ成長率を測定し、測定した成長率を通じて、下記の方法で死滅率を分析した。がんオルガノイド死滅率(%)=[1-(薬物処理群のがんオルガノイド成長率)/(薬物未処理群のがんオルガノイド成長率**)]×100
【0119】
薬物処理群のがんオルガノイド成長率(%)=(薬物処理24、48または72時間後のがんオルガノイド面積)/(0時間のがんオルガノイド面積)×100
【0120】
**薬物未処理群のがんオルガノイド成長率(%)=(薬物未処理24、48または72時間後のがんオルガノイド面積)/(0時間のがんオルガノイド面積)×100
【0121】
その結果、図13aおよび13bから見られるように、肺がんオルガノイドおよびTILが1:0.5の割合で共培養される場合、肺がんオルガノイドは薬物に対して反応せず、これにより、対照群と実験群で肺がんオルガノイドの成長率および死滅率が類似に示された。特に、薬物処理群で肺がんオルガノイドの死滅率は約5%に過ぎないことから、薬物の効能を正確に判断することができないことを確認した。
【0122】
また、肺がんオルガノイドおよびTILが1:3の割合で共培養される場合、薬物処理群でがんオルガノイドの死滅率は約5%に過ぎないことから、薬物の効能を正確に判断することができないことを確認した。
【0123】
一方、肺がんオルガノイドおよびTILが1:1.5の割合で共培養される場合、薬物処理群では肺がんオルガノイドの成長が阻害され、死滅が増加するなどのアテゾリズマブの抗がん効果が示された。特に、薬物処理群において、肺がんオルガノイドの死滅率は約20%であって、他の混合割合に比べてアテゾリズマブは高い水準の肺がんオルガノイド死滅率を示すことを確認した。
【0124】
併せて、図14aおよび14bから見られるように、大腸がんオルガノイドおよびTILが1:0.5の割合で共培養される場合、大腸がんオルガノイドは薬物に対して反応せず、これにより、対照群と実験群で大腸がんオルガノイドの成長率および死滅率が類似に示された。特に、薬物処理群で大腸がんオルガノイドの死滅率は約5%に過ぎないことから、薬物の効能を正確に判断することができないことを確認した。
【0125】
また、大腸がんオルガノイドおよびTILが1:3の割合で共培養される場合、薬物処理群でがんオルガノイドの死滅率は約5%に過ぎないことから、薬物の効能を正確に判断することができないことを確認した。
【0126】
一方、大腸がんオルガノイドおよびTILが1:1.5の割合で共培養される場合、薬物処理群においては、大腸がんオルガノイドの成長が阻害され、死滅が増加するなどのアテゾリズマブの抗がん効果が示された。特に、薬物処理群において大腸がんオルガノイドの死滅率は約10%であって、他の混合割合に比べてアテゾリズマブは高い水準の大腸がんオルガノイド死滅率を示すことを確認した。
【0127】
前記結果は、がんオルガノイドおよびTILの共培養割合を1:1.5に設定することが抗がん剤効能評価またはスクリーニングシステムに最適化された割合であることを示唆する。
【0128】
実施例4.がんオルガノイド、細胞傷害性T細胞および制御性T細胞を含む抗がん剤効能評価およびスクリーニングシステム
がんが生体内存在している環境を類似に再現することで、薬物が生体内に投与されたときの効能を正確に予測することができるインビトロ(in vitro)効能評価およびスクリーニングシステムを確立しようとした。
【0129】
具体的に、がんオルガノイド、細胞傷害性T細胞(Cytotoxic T cell、以下、「CD8+T細胞」)および制御性T細胞(regulatory T cell、以下、「Treg」)が共存する共培養(co-culture)システムを確立するために、共培養時に(1)がんオルガノイドが適切に成長し、(2)薬物の効能が高く観察される条件を満たすこれらの混合割合を導き出した。下記の表6に示したように、がんオルガノイドを1の割合で固定した後、CD8+T細胞およびTregは0~3の割合に設定した。このとき、各オルガノイドまたは細胞の数が5.0×10個であることを1に設定した。
【0130】
【表6】
【0131】
がんオルガノイドは、大腸がんまたは肺がん患者の腫瘍組織から分離した幹細胞を利用して製造した。分離した幹細胞を3D構造で成長することができるように、ECM(Extracellular matrix)と混ぜてdomeを作製した後、培養を通じてオルガノイドを形成させて使用した。CD8+T細胞およびTregは、大腸がんまたは肺がん患者から得た血液から取得した。血液に存在する免疫細胞を分化し、分化された免疫細胞からCD8+およびTreg細胞をMACS(磁気活性化細胞選別:magnetic activated cell sorting)方法を利用して分離した。
【0132】
実施例4.1.がんオルガノイドが適切に成長する条件
がんオルガノイドが免疫細胞(CD8+T細胞およびTreg)と共培養される場合にも適切に成長することができるようにする、がんオルガノイド、CD8+T細胞およびTregの混合割合を導き出した。
【0133】
具体的に、前記表6による混合割合で共培養した後、共培養開始直後(Oh)、24時間後(24h)、48時間後(48h)、72時間後(72h)にがんオルガノイドの面積をそれぞれ測定して、次のような数式で成長率を分析した。
【0134】
がんオルガノイド成長率(%)=(共培養24、48または72時間後のがんオルガノイド面積)/(共培養開始直後のがんオルガノイド面積)×100
【0135】
その結果、図15および16から見られるように、すべての混合割合で大腸がんまたは肺がんオルガノイドの成長は阻害されずに適切に成長し、各混合割合間に有意な差が示されてはいない。
【0136】
実施例4.2.薬物の効能が高く示される条件
CD8+T細胞をターゲットする抗がん剤およびTregをターゲットする抗がん剤の効能が高く示されるようにする、がんオルガノイド、CD8+T細胞およびTregの混合割合を導き出した。
【0137】
具体的に、前記表6の混合割合によるがんオルガノイド、CD8+T細胞およびTregの共培養物に対して薬物を処理していないものを対照群(以下、「薬物未処理群」)に設定し、実験群(以下、「薬物処理群」)としては、CD8+T細胞をターゲットするアテゾリズマブ、またはCD8+T細胞およびTregをターゲットする抗-TIGIT抗体を例示薬物として処理したものを設定した。これらを72時間にわたって共培養した後、薬物処理72時間後(72h)にそれぞれ成長率を測定し、測定した成長率を通じて下記の方法で死滅率を分析した。
【0138】
がんオルガノイド死滅率(%)=[1-(薬物処理群のがんオルガノイド成長率)/(薬物未処理群のがんオルガノイド成長率**)]×100
【0139】
薬物処理群のがんオルガノイド成長率(%)=(薬物処理72時間後のがんオルガノイド面積)/(共培養開始直後(0h)のがんオルガノイド面積)×100
【0140】
**薬物未処理群のがんオルガノイド成長率(%)=(薬物未処理72時間後のがんオルガノイド面積)/(共培養開始直後(0h)のがんオルガノイド面積)×100
【0141】
その結果、図17から見られるように、大腸がんオルガノイド、CD8+T細胞およびTregの中で、Tregを除いて、大腸がんオルガノイドおよびCD8+T細胞のみ1:3の混合割合で共培養される場合、アテゾリズマブによるがんオルガノイドの死滅率は約26%で高く示されるが、抗-TIGIT抗体によるがんオルガノイドの死滅率は約5%に過ぎないことから、薬物の効能を正確に判断することができないことを確認した。また、大腸がんオルガノイド、CD8+T細胞およびTregの中で、CD8+T細胞を除いて、大腸がんオルガノイドおよびTregのみ1:3の混合割合で共培養される場合、アテゾリズマブおよび抗-TIGIT抗体によるがんオルガノイドの死滅率は約2%程度で顕著に低い水準で示されることにより、薬物の効能を正確に判断することができないことを確認した。
【0142】
また、図18から見られるように、大腸がんオルガノイドおよびCD8+T細胞を1:1の混合割合で共培養する場合、Tregの混合割合が増加するほど抗-TIGIT抗体によるがんオルガノイドの死滅率は増加するが、その最大水準は約6%に過ぎず、アテゾリズマブによるがんオルガノイドの死滅率もまた最大約10%水準に過ぎないことから、薬物の効能を正確に判断することができないことを確認した。
【0143】
一方、図19から見られるように、大腸がんオルガノイドおよびCD8+T細胞を1:3の混合割合で共培養する場合、Tregの混合割合が増加するほど抗-TIGIT抗体によるがんオルガノイドの死滅率は増加して、その最大水準は約10%に到達し、アテゾリズマブによるがんオルガノイドの死滅率もまた約25%で高く示された。すなわち、前記混合割合では、他の混合割合に比べてアテゾリズマブおよび抗-TIGIT抗体のようなすべての薬物の効能が高い水準で示され、その効能は最大2倍以上増加することを確認した。
【0144】
併せて、図20から見られるように、肺がんオルガノイド、CD8+T細胞およびTregの中で、Tregを除いて、肺がんオルガノイドおよびCD8+T細胞のみ1:3の混合割合で共培養される場合、アテゾリズマブによるがんオルガノイドの死滅率は約27%で高く示されるが、抗-TIGIT抗体によるがんオルガノイドの死滅率は約6%に過ぎないことから、薬物の効能を正確に判断することができないことを確認した。また、肺がんオルガノイド、CD8+T細胞およびTregの中で、CD8+T細胞を除いて肺がんオルガノイドおよびTregのみ1:3の混合割合で共培養される場合、アテゾリズマブおよび抗-TIGIT抗体によるがんオルガノイドの死滅率は約1%程度で顕著に低い水準で示されることにより、薬物の効能を正確に判断することができないことを確認した。
【0145】
また、図21から見られるように、肺がんオルガノイドおよびCD8+T細胞を1:1の混合割合で共培養する場合、Tregの混合割合が増加するほど抗-TIGIT抗体によるがんオルガノイドの死滅率は増加するが、その最大水準は約6%に過ぎず、アテゾリズマブによるがんオルガノイドの死滅率も約10%水準に過ぎないことから、薬物の効能を正確に判断することができないことを確認した。
【0146】
一方、図22から見られるように、肺がんオルガノイドおよびCD8+T細胞を1:3の混合割合で共培養する場合、Tregの混合割合が増加するほど抗-TIGIT抗体によるがんオルガノイドの死滅率は増加して、その最大水準は約10%に到達し、アテゾリズマブによるがんオルガノイドの死滅率もまた約25%で高く示された。すなわち、前記混合割合では、他の混合割合に比べてアテゾリズマブおよび抗-TIGIT抗体のすべての薬物の効能が高い水準で示され、その効能は最大2倍以上増加することを確認した。
【0147】
前記結果は、がんオルガノイド、CD8+T細胞およびTregの共培養割合を1:3:0.5~3に設定することが抗がん剤効能評価またはスクリーニングシステムに最適化された割合であることを示唆する。
【0148】
実施例5.がんオルガノイド、細胞傷害性T細胞および樹状細胞を含む抗がん剤効能評価およびスクリーニングシステム
がんが生体内存在している環境を類似に再現することで、薬物が生体内に投与されたときの効能を正確に予測することができるインビトロ(in vitro)効能評価およびスクリーニングシステムを確立しようとした。
【0149】
具体的に、がんオルガノイド、細胞傷害性T細胞(Cytotoxic T cell、以下、「CD8+T細胞」)および樹状細胞(regulatory T cell、以下、「DC」)が共存する共培養(co-culture)システムを確立するために、共培養時に(1)がんオルガノイドが適切に成長し、(2)薬物の効能が高く観察される条件を満たすこれらの混合割合を導き出した。下記の表7に示したように、がんオルガノイドを1の割合で固定した後、CD8+T細胞を0~3の割合に設定し、DCを0.5~5の割合に設定した。このとき、各オルガノイドまたは細胞の数が5.0×10個であることを1に設定した。
【0150】
【表7】
【0151】
がんオルガノイドは、患者から得た大腸がんまたは肺がん組織を単一細胞(single cell)に分離して、これをECM(extracellular matrix)とともに培養することで3D構造を有するように製造した。形成されたがんオルガノイドは、病理分析を通じて腫瘍であることを確認し、Tryp-LE使用を通じて単一細胞に分離した後に使用した。
【0152】
CD8+T細胞は、PBMCから分離して使用した。ドナーから得た血液に対してフィコール(Ficoll)を利用してPBMCを分離し、T細胞活性化過程を経てMACSを通じてCD8+T細胞を分離した。
【0153】
DCは、iPSCから分化されたものを使用し、当業界に知られている一般的な方法を使用してH9細胞株からDCに分化させた。
【0154】
実施例5.1.がんオルガノイド、CD8+T細胞およびDCの共培養割合
具体的に、前記表7の混合割合によるがんオルガノイド、CD8+T細胞およびDCの共培養物に対して薬物を処理していないものを対照群(以下、「薬物未処理群」)に設定し、実験群(以下、「薬物処理群」)としては、CD8+T細胞をターゲットするアテゾリズマブを例示薬物として処理したものを設定した。薬物は、共培養開始直後に処理し、共培養開始直後(Oh)、24時間後(24h)、48時間後(48h)、72時間後(72h)にそれぞれがんオルガノイドの成長率を測定し、測定した成長率を通じて、下記の方法で死滅率を分析した。
【0155】
がんオルガノイド死滅率(%)=[1-(薬物処理群のがんオルガノイド成長率)/(薬物未処理群のがんオルガノイド成長率**)]×100
【0156】
薬物処理群のがんオルガノイド成長率(%)=(薬物処理24、48または72時間後のがんオルガノイド面積)/(薬物処理直後(0h)のがんオルガノイド面積)×100
【0157】
**薬物未処理群のがんオルガノイド成長率(%)=(薬物未処理24、48または72時間後のがんオルガノイド面積)/(共培養開始直後(0h)のがんオルガノイド面積)×100
【0158】
その結果、図23図25から見られるように、薬物を処理していないとき、すべての混合割合で大腸がんオルガノイドの成長は阻害されず、適切に成長し、各混合割合間に有意な差が示されてはいない。
【0159】
ただし、大腸がんオルガノイド、CD8+T細胞およびDCを1:0.5:0.5~5の混合割合で共培養する場合には、薬物によるがんオルガノイドの成長阻害効果が有意に示されてはいないが(図23)、大腸がんオルガノイド、CD8+T細胞およびDCを1:1~3:0.5~5の混合割合で共培養する場合には、薬物によるがんオルガノイドの成長阻害効果が示された(図24および25)。
【0160】
特に、図26から見られるように、大腸がんオルガノイドおよびCD8+T細胞を1:0.5の混合割合で共培養する場合、DCの混合割合が増加するほどアテゾリズマブによるがんオルガノイドの死滅率は増加するが、その最大水準は約5%に過ぎないため、薬物の効能を正確に判断することができないことを確認した。
【0161】
また、図27から見られるように、大腸がんオルガノイドおよびCD8+T細胞を1:1の混合割合で共培養する場合、アテゾリズマブによるがんオルガノイドの死滅率の最大水準は約10%に過ぎないことから、薬物の効能を正確に判断することができないことを確認した。
【0162】
一方、図28から見られるように、大腸がんオルガノイドおよびCD8+T細胞を1:3の混合割合で共培養する場合、DCが如何なる割合で混合しても、アテゾリズマブによるがんオルガノイドの死滅率は約20%~25%で高く示された。すなわち、前記混合割合では、他の混合割合に比べて薬物の効能が高い水準で示され、その効能は2.5倍~5倍以上増加することを確認した。
【0163】
併せて、図29図31から見られるように、薬物を処理していないとき、すべての混合割合で肺がんオルガノイドの成長は阻害されずに適切に成長し、各混合割合間に有意な差が示されてはいない。
【0164】
ただし、肺がんオルガノイド、CD8+T細胞およびDCを1:0.5:0.5~5、または1:1:0.5~1の混合割合で共培養する場合には、薬物によるがんオルガノイドの成長阻害効果が有意に示されてはいないが(図29および30)、肺がんオルガノイド、CD8+T細胞およびDCを1:1:5、または1:3:0.5~5の混合割合で共培養する場合には、薬物によるがんオルガノイドの成長阻害効果が示された(図30および31)。
【0165】
特に、図32から見られるように、肺がんオルガノイドおよびCD8+T細胞を1:0.5の混合割合で共培養する場合、DCの混合割合が増加するほどアテゾリズマブによるがんオルガノイドの死滅率は増加するが、その最大水準は約5%に過ぎないことから、薬物の効能を正確に判断することができないことを確認した。
【0166】
また、図33から見られるように、肺がんオルガノイドおよびCD8+T細胞を1:1の混合割合で共培養する場合、アテゾリズマブによるがんオルガノイドの死滅率の最大水準は約10%に過ぎないことから、薬物の効能を正確に判断することができないことを確認した。
【0167】
一方、図34から見られるように、肺がんオルガノイドおよびCD8+T細胞を1:3の混合割合で共培養する場合、DCが如何なる割合で混合しても、アテゾリズマブによるがんオルガノイドの死滅率は約28%~40%で高く示された。すなわち、前記混合割合では、他の混合割合に比べて薬物の効能が高い水準で示され、その効能は5倍~8倍以上増加することを確認した。
【0168】
前記結果は、がんオルガノイド、CD8+T細胞およびDCの共培養割合を1:3:0.5~5に設定することが抗がん剤効能評価またはスクリーニングシステムに最適化された割合であることを示唆する。
図1a
図1b
図2
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
図7c
図7d
図8a
図8b
図9a
図9b
図10a
図10b
図11a
図11b
図12
図13a
図13b
図14a
図14b
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
【国際調査報告】