(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】ダイヤモンドウェハーベースの電子式乗り物パワーエレクトロニクス
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20240822BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574696
(86)(22)【出願日】2022-04-28
(85)【翻訳文提出日】2023-11-30
(86)【国際出願番号】 US2022026636
(87)【国際公開番号】W WO2023022761
(87)【国際公開日】2023-02-23
(32)【優先日】2021-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523453514
【氏名又は名称】ダイヤモンド ファウンドリー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ハレル,ジャン-クロード
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770AA02
5H770AA22
5H770BA02
5H770BA03
5H770CA01
5H770DA41
5H770JA10X
5H770PA11
5H770PA21
5H770PA42
5H770QA01
5H770QA04
5H770QA11
(57)【要約】
パワーデバイスエレクトロニクスシステムは、パワーエレクトロニクスチップが銅基板に取り付けられ、単結晶ダイヤモンド基板が銅基板に取り付けられた熱管理構成を含む。銅基板は、ダイヤモンド基板の第1の側とパワーエレクトロニクスチップの間に挟まれている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の銅基板に取り付けられた第1のパワーエレクトロニクスチップと、
前記第1の銅基板に取り付けられた第1のダイヤモンド基板であって、前記第1の銅基板は、前記第1のダイヤモンド基板の第1の側と前記第1のパワーエレクトロニクスチップとの間に挟まれている、第1のダイヤモンド基板と
を含むパワーデバイス。
【請求項2】
1つ又は複数の圧力ジェットをさらに含み、各圧力ジェットは、加圧された冷却液を、前記第1のダイヤモンド基板の前記第1の側の反対側にある前記第1のダイヤモンド基板の第2の側に向けるように構成されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記1つ又は複数の圧力ジェットが、前記第1のダイヤモンド基板の前記第2の側に冷却液の垂直衝撃流を供給するように構成された1つ又は複数の圧力ジェットを含む、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記第1のダイヤモンド基板が単結晶ダイヤモンド(SCD)基板である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記第1のパワーエレクトロニクスチップが、窒化ガリウムチップ、炭化ケイ素チップ、又は絶縁ゲートバイポーラトランジスタシリコンチップである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記第1のパワーエレクトロニクスチップが、1つ又は複数の金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)デバイスを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記1つ又は複数の金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)デバイスが、1つ又は複数の炭化ケイ素(SiC)MOSFETデバイスを含む、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記1つ又は複数のSiC MOSFETデバイスが、3つのSiC MOSFETデバイスを含む、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記第1のパワーエレクトロニクスチップのドレインが、前記第1の銅基板に導電的に結合されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
前記第1の銅基板に結合され、前記第1のパワーエレクトロニクスチップのドレインに導電的に結合された1つ又は複数の導電性ピラー構造をさらに含む、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
前記第1のパワーエレクトロニクスチップが、前記第1の銅基板に取り付けられ前記第1のパワーエレクトロニクスチップのソース接続に導電的に結合された前記第1のパワーエレクトロニクスチップの側とは反対側の前記第1のパワーエレクトロニクスチップの側の導電性ソースパッドを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項12】
前記パワーエレクトロニクスデバイスの前記導電性ソースパッドに結合された導電性クリップをさらに含み、前記導電性クリップは前記第1のパワーエレクトロニクスチップの前記ソース接続に導電的に結合されている、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
前記導電性クリップが、前記導電性ソースパッドに導電的に結合され、かつ物理的に取り付けられる、請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
前記第1のパワーエレクトロニクスチップが、前記第1の銅基板に取り付けられ前記第1のパワーエレクトロニクスチップのゲート入力に導電的に結合された前記第1のパワーエレクトロニクスチップの側とは反対側の前記第1のパワーエレクトロニクスチップの側の導電性ゲートパッドを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項15】
前記第1のパワーエレクトロニクスチップの前記ゲートパッドに導電的に結合されたゲートルータ回路をさらに含む、請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
前記ゲートルータ回路が、ゲートドライバ回路及び電流センス回路を含む、請求項15に記載のデバイス。
【請求項17】
前記ゲートルータ回路が薄型フレックスプリント回路基板を含む、請求項15に記載のデバイス。
【請求項18】
第2の銅基板に取り付けられた第2のパワーエレクトロニクスチップと、前記第2の銅基板に取り付けられた第2のダイヤモンド基板とをさらに含み、前記第2の銅基板が、前記第2のダイヤモンド基板の第1の側と、前記パワーエレクトロニクスチップとの間に挟まれ、前記第2のパワーエレクトロニクスチップ、第2の銅基板、及び第2のダイヤモンド基板は、前記第1のダイヤモンド基板の第1の側と、前記第1の側の第2のダイヤモンド基板とが互いに向き合うように配置される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項19】
前記第2のパワーエレクトロニクスチップが、前記第1のパワーエレクトロニクスチップと逆並列に動作するように構成され、前記第1及び第2のパワーエレクトロニクスチップが、第1のハーフブリッジインバータを形成する、請求項18に記載のデバイス。
【請求項20】
フルHブリッジインバータを形成する前記第1のハーフブリッジインバータに導電的に結合された第2のハーフブリッジインバータデバイスをさらに含み、前記第2のハーフブリッジデバイスが請求項19に記載のように構成されている、請求項19に記載のデバイス。
【請求項21】
三相電力インバータを形成する前記第1のハーフブリッジインバータに導電的に結合された2つの追加のハーフブリッジインバータデバイスをさらに含み、前記2つの追加のハーフブリッジデバイスは請求項19に記載のように構成されている、請求項19に記載のデバイス。
【請求項22】
前記2つの追加のハーフブリッジインバータデバイスと前記第1のハーフブリッジインバータとを接続する少なくとも1つの剛性導電性バスバーをさらに含む、請求項21に記載のデバイス。
【請求項23】
動力乗り物システムであって、
銅基板に取り付けられたパワーエレクトロニクスチップを有し、前記銅基板は前記パワーエレクトロニクスチップとダイヤモンド基板との間に挟まれている、少なくとも1つのハーフブリッジデバイスと、
前記少なくとも1つのハーフブリッジデバイスに導電的に結合されたモータと
を含む動力乗り物システム。
【請求項24】
前記モータの出力シャフトに結合された車輪をさらに含み、前記モータの出力シャフトが前記車輪を回転させる、請求項23に記載の動力乗り物システム。
【請求項25】
前記モータの出力シャフトに結合されたプロペラをさらに含み、前記モータの前記出力シャフトが前記プロペラを回転させ、プロペラは媒体内で推力を発生するように構成される、請求項23に記載の動力乗り物システム。
【請求項26】
前記モータの出力シャフトに結合されたディファレンシャルをさらに含み、前記ディファレンシャルは、前記モータの前記出力シャフトからディファレンシャルの出力シャフトに回転を送達するように構成される、請求項23に記載の動力乗り物システム。
【請求項27】
前記ディファレンシャルの出力シャフトに取り付けられた少なくとも1つの車輪をさらに含み、前記ディファレンシャルの出力シャフトは前記車輪に回転を送達する、請求項25に記載の動力乗り物システム。
【請求項28】
前記モータの出力シャフトに結合されたギヤボックスをさらに含み、前記ギヤボックスにおいて、回転速度の一部前記モータの前記出力シャフトをトルクに変換するように構成される、請求項23記載の動力乗り物システム。
【請求項29】
前記少なくとも1つのハーフブリッジデバイスに導電的に結合された少なくとも1つのバッテリをさらに含む、請求項23に記載の動力乗り物システム。
【請求項30】
前記少なくとも1つのハーフブリッジデバイスに通信可能に結合されたコントローラをさらに含む、請求項23に記載の動力乗り物システム。
【請求項31】
前記少なくとも1つのハーフブリッジデバイスに結合された冷却ブロックをさらに含み、前記冷却液ブロックは少なくとも圧力ジェットを含み、各圧力ジェットは、加圧された冷却液を、前記銅基板が取り付けられている前記ダイヤモンド基板の側とは反対側である前記ダイヤモンド基板の側に向けるように構成される、請求項23に記載の動力乗り物システム。
【請求項32】
前記少なくとも1つの圧力ジェットが、前記第1のダイヤモンド基板の前記第2の側に冷却液の垂直衝撃流を供給するように構成された1つ又は複数の圧力ジェットを含む、請求項31に記載の動力乗り物システム。
【請求項33】
前記少なくとも1つのハーフブリッジデバイスが、フルHブリッジとして動作する2つのハーフブリッジデバイスを含む、請求項23に記載の動力乗り物。
【請求項34】
前記少なくとも1つのハーフブリッジデバイスが、3相インバータとして動作する3つのハーフブリッジデバイスを含む、請求項23記載の動力乗り物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の利益の主張
本出願は、同一出願人による、同時係属の米国仮特許出願第63/243,662号、2021年9月13日提出、表題「Diamond Wafer Based Electronic Vehicle Power Electronics」、代理人整理番号DFI-004-PROV2、及び同時係属の米国仮特許出願第63/233,616号、表題「Diamond Wafer Based Electronic Vehicle Power Electronics」、代理人整理番号DFI-004-PROVの優先権の利益を主張するものであり、これらの開示内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
EVパワーエレクトロニクスにおけるエネルギー効率の向上
パワーインバータのアーキテクチャの大部分は、バッテリからの直流電圧を、電気トラクションモータに適合する3相交流形式に変換することで構成されている。今日の電力変換は、モデルによって50~250kW(ピーク400kW)の範囲に及ぶ。数年後には、MWシステム(トラック産業、海軍輸送、そしてより重要な空中eモビリティ)が出現するだろう。各相は、いわゆる「ハーフブリッジ」トポロジーで取り付けられた2つの電源スイッチを必要とする。動作中、3相は120度の角度でシフトされるため、常に2つのスイッチが同時に閉じられ(ON)、他の4つのスイッチは開いている(OFF)。
【0003】
インバータの効率を評価するため、スイッチが閉じたときの電圧差にスイッチに流れる電流を掛け合わせたもの、当然6(3×2=6個のスイッチ)を掛けたものを導通損失として計算する。発生する電力損失のレベルは相当なもので、設計者は常に航続距離を伸ばすために、又はバッテリのサイズを小さくするために、これを減らそうとしてきた。パワートラクションインバータを設計する際には、ワイヤボンドの応力及び容量、ゲートドライバの性能、システム全体のサイズ及びコストなど、いくつかの他の考慮事項も方程式の一部となる。結局、電力損失を減らすための経験則は、これまで「より多くのシリコン表面積を使うか、又はより良いヒートシンクを使う」ことだった。どちらの「推奨」にも大きな欠点がある。より多くのシリコンスイッチを使用することは、「オン」状態の電流がより多くのスイッチで共有され、したがって散逸する電力を低減するため、確かに電力伝導損失を低減するが、スイッチング損失はそれに応じて特にIGBTで増大する。その欠点は、使用する表面アタッチメントが指数関数的に増えること、ワイヤボンドなど電力経路に弱いリンクが増えること、ダイ間のばらつき、有害な寄生インダクタンスにつながる物理的距離の拡大、各ダイをコンパニオンダイに完全に同期させることの難しさであり、最終的には要求されない複雑さと、展開された労力に対する効率の悪さに行き着く。コストを考慮することで、この教義が間違っていることが証明された。
【0004】
一方、冷却戦略は長年にわたって実験や研究開発の関心事となってきた。設計者は、シリコンの改良だけに注目するのではなく、ダイの動作温度を下げることが電力効率、コスト削減、信頼性向上につながるという第2の感覚を持っていた。その直感は確かに正しいが、満足のいく結果を保証するために現在入手可能な材料では、到底到達できない。
【0005】
パワーシリコンの電気経路と熱経路は同一であり、どちらも相当に重要であるため、安全上の理由から電気的に隔離されている必要がある液体冷却液に熱経路を方向付け、可能な限り短く弾力性がある必要がある電気経路を方向付けるために、両者を文字通り切り離すことは極めて困難である。この切離しメカニズム(「誘電体」)は、
図1A~1Cに示される技術やテクノロジーによって達成されるが、この技術は過去40年間大きな進化を遂げることなく、広く採用されているにもかかわらず、芳しくない結果をもたらしている。
【0006】
図2は、パワーデバイスの一般的なアーキテクチャを示している。一般に、このデバイスは、アタッチメント2によって銅レイアウト3に取り付けられるシリコンダイ1を含み、銅レイアウト3は基板4と誘電体材料5を介して冷却液6に熱的に結合されている。電流は主に銅レイアウト3において横方向に流れるが、主にダイ1からアタッチメント2、レイアウト3、基板4、誘電体5を通って垂直方向に流れる。このようなアーキテクチャは、シリコンダイ1と冷却液6との間の熱経路における二次元ベクトル熱伝播が比較的劣るという特徴がある。例えば、冷却液6の温度が約80℃の場合、熱経路の熱インピーダンスのため、ダイ1の温度は通常175~200℃である。
図2の一般的なアーキテクチャは、
図3Aに示す簡略化された以下の熱インピーダンスRthモデルによって分解することができ、
図3のBに示す表にまとめることができる。
【0007】
図3は、ダイ1と冷却液6間の熱インピーダンス(Rth)が3つの主要なカテゴリーに分かれていることを示している:
1)誘電体材料5(Rth4):広範囲にわたる性能及び特性のため、誘電体材料は、1分間に4kVのオーダーの自動車用絶縁要件を満たす最高の熱伝導性を確保する必要があり、材料の厚み、よってRthを決定する。
2)基板及びメカトロニクス(Rth2、Rth6、Rth8):基板は、機械的堅牢性及びダイマウント性を提供し、インバータシステム(メカトロニクス)を通じて冷却液との熱的連続性を確保する露出面も提供する。
3)表面接合は、一緒に取り付けられた異なる素子の接合点であり、3つの主要なグループに分類することができる:
a)使用する材料、界面の厚さ、及び熱伝導性に依存する最良の熱伝導性を示すはんだ付け又は焼結拡散(Rth1)。
b)気孔率と浸透性に依存する独自のRth(Rth3、Rth5)を持つ材料間界面を誘導するセラミックスの金属への蒸着コーティング(例:Al2O3フレームスプレーコーティング);
c)圧力接触(Rth7):2つの表面が相互に押し付けられ、熱経路を形成する(しばしば電気経路も)。このタイプの界面は、加えられる圧力、共平面性、粗さ、及び表面の形状に大きく依存する。通常、性能は低く、時間とともに劣化する。
【0008】
直感的ではないが、液体対固体表面の接触(Rth8)はこのカテゴリーに属するが、採用する戦略によってはより安定し、品質/性能も向上する。平面上の層流は、冷却液の表面で固体に接触するわずかな分子のみが抽出されるカロリーを運ぶため、効率が低下する。残りの液体は冷却に積極的に関与しない。乱流は、より大きな表面接触面積とより多くのキャリアを作り出すが、より多くの材料の使用とシステム容積の増加(すなわち、薄いフィン)につながる特別なメカニズムを実装する必要がある。以上のように、冷却液に対するRth接合の総和は、単一次元の問題というよりも、材料特性、技術、表面積の集積である。進歩の余地はかなりある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A-1C】従来技術の実装におけるパワーエレクトロニクスへのダイヤモンドの付加の一般的な影響を示す、異なるウェハタイプの熱プロファイル及び側面回路図を示す。
【
図2】パワーデバイスにおける従来技術の電気/熱経路の断面図を示す。
【
図3A】パワーデバイス内の従来技術の電気/熱経路の熱インピーダンスRthモデル表現である。
【
図3B】パワーデバイス内の例示的な従来技術の電気/熱経路の熱インピーダンスの計算のための関連値を含む表である。
【
図4A】典型的な炭化ケイ素(SiC)パワーデバイスの正規化オン抵抗(RdsON)対温度を示す線グラフである。
【
図4B】典型的なIGBTデバイスのコレクタ及びエミッタを横切る飽和電圧(V
CE(sat))対温度を示す線グラフである。
【
図5】現在のパワーデバイス規格に従って標準的なEVセダン航続距離に換算した3相250kWインバータシステムの電力伝導損失をまとめた表である。
【
図6】本開示の態様による改良型熱-電気経路パワーデバイスの断面図である。
【
図7】本開示の態様による改良型電気/熱経路パワーデバイスの熱インピーダンスRthモデル表現である。
【
図8】例示的な改良型電気/熱経路パワーデバイスの熱インピーダンスの計算のための関連値を含む表である。
【
図9】本開示の態様による改良型熱-電気経路パワーデバイスの製造方法中の基板の斜視図である。
【
図10】本開示の態様による改良型熱電気経路パワーデバイスの製造方法中の、基板の表面に取り付けられたトランジスタの斜視図である。
【
図11】本開示の態様による改良型熱-電気経路パワーデバイスの製造中の、トランジスタデバイス間の基板に結合された電気伝導柱構造の斜視図である。
【
図12】本開示の態様による改良型熱-電気経路パワーデバイスの製造中の、電気伝導性クリップ及び導電性柱を有する基板の横並びの斜視図である。
【
図13】本開示の態様による改良型熱電気/経路パワーデバイスの製造中の、基板上のトランジスタに取り付けられて装着された導電性クリップを示す斜視図である。
【
図14】本開示の態様による改良型熱-電気経路パワーデバイスの製造中の、導電体のトランジスタへの取り付け及び装着を示す破断斜視図である。
【
図15】本開示の態様による改良型熱-電気経路パワーデバイスの製造中の、ゲート接続用の薄型フレックスプリント回路基板(PCB)及び基板-クリップアセンブリを示す横並びの斜視図である。
【
図16】本開示の態様による改良型熱-電気経路パワーデバイスの製造中の、薄型フレックス(PCB)及びトランジスタのゲットパッドへのボンドワイヤの形成を示す破断斜視図である。
【
図17】本開示の態様による改良型熱-電気経路パワーデバイスの製造中の、基板-クリップアセンブリに結合された薄型フレックスPCB上に取り付けられたゲートドライバ、制御、及びセンス回路を示す破断斜視図である。
【
図18】本開示の態様による薄型フレックスPCB上の例示的なゲート制御回路レイアウトを示す回路図である。
【
図19】本開示の態様による改良型ハーフブリッジデバイスを形成する背中合わせの構成で整列された2つの改良型熱-電気経路パワーデバイスを示す図である。
【
図20】本開示の態様による改良型ハーフブリッジデバイスの領域におけるエポキシ化合物の形成を示す図である。
【
図21】本開示の態様による並列構成で配置された3つの改良型ハーフブリッジデバイスを示す図である。
【
図22】本開示の一実施例による、3つの改良型ハーフブリッジデバイスを並列構成で剛性接続するバスバーを示す図である。
【
図23】本開示の態様による、バスバーを介して接続された3つの改良型ハーフブリッジデバイスに取り付けられたクールジェット冷却液ブロックを示す図である。
【
図24】本開示の態様によるクールジェット冷却液ブロックに取り付けられた改良型ハーフブリッジデバイスの破断側面図である。
【
図25】本開示の態様による単一クールジェット冷却ブロックの破断図である。
【
図26】本開示の態様によるハーフブリッジデバイスに面して取り付けられたクールジェット冷却ブロックの側面の破断図である。
【
図27】本開示の態様によるクールジェット冷却ブロックの戻り側を示す破断側面図である。
【
図28】本開示の態様による3相電力インバータの各側に1つずつ取り付けられた2つの冷却液ブロックを示す図である。
【
図29】本開示の態様によるモータ位相電力連結部が取り付けられた完成した3相インバータアセンブリを示す図である。
【
図30】本開示の態様によるモータ位相電力連結部に結合されたモータ位相ファスナを有する3相インバータに取り付けられた2つの冷却液ブロックを示す。
【
図31】本開示の態様による、モータ位相ファスナと反対側の3相インバータに結合され得る一体化バルクコンデンサ及び他の受動回路を示す。
【
図32】本開示の態様による冷却ブロックを備えた完成した3相インバータの上面図を示す。
【
図33】本開示の態様による冷却ブロックを備えた完成した3相インバータの側面を示す。
【
図34】本開示の態様による改良型3相インバータを含む単純な電気自動車を示す。
【
図35】本開示の態様による改良型3相インバータを用いた単純な直接駆動式電気式乗り物を示すレイアウト図である。
【
図36】本開示の態様による改良型3相インバータを用いた直接駆動式電気式乗り物の代替実施態様を示すレイアウト図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
導入部
ダイヤモンド・ファウンドリー(Diamond Foundry)の新しい単結晶ダイヤモンドウェハーの登場と、現在実証されている量産化及びコスト削減により、電気式乗り物のパワーエレクトロニクスが大きく進歩し、航続距離が最大5.3%向上し、寿命も30万マイルを超えた。
【0011】
概要
電気式乗り物(EV)のパワーエレクトロニクスは、ますます放熱が制限されるようになっており、エレクトロニクスアーキテクチャの潜在的な範囲は、利用可能な材料によって制限されている。パワー半導体スイッチに誘発される熱応力は、半導体メーカーやインバータメーカーにとって、難しい選択であった。業界全体のエンジニアたちは、特に極端な熱伝導性と極端な電圧絶縁性を兼ね備えた材料など、EVパワーエレクトロニクスの進歩に必要な特性を真に満たしていない材料をエレクトロニクス設計に使用することに行き詰っている。
【0012】
単結晶ダイヤモンド(SCD)は、複数の次元において、またそれぞれ決定的な要素において、特に極端な熱伝導性と極端な電気絶縁性を併せ持つという点で、最も極端な材料である。SCDは、5.7という低い誘電率、35GHzで0.0001を下回る損失正接、10MV/cmという高い絶縁耐力など、驚くべき誘電特性を示す。これは、20umのSCDが20kVを絶縁すると同時に、3,000W/mKという高い熱伝導率を実現できることを意味する。
【0013】
カリフォルニア州サウスサンフランシスコのダイヤモンド・ファウンドリー社は、商業的に関連するすべてのコンピュータ及びパワーエレクトロニクスチップに必要なダイサイズをカバーするウェハー寸法の単結晶ダイヤモンドの生産を達成した。
【0014】
パワートラクションインバータのジレンマ
EVのパワートラクションインバータ(PTI)は、電動モビリティの重要な要素である。その複雑さ、電気的及び熱的応力、そして最終的なコストのために、PTIは常に電動モビリティの実践において最も弱いリンクの1つであり、この新興市場の初期開発において特筆すべき失敗があり、OEM採用の技術的参入障壁となっている。走行条件や走行スタイルによって、インバータの能動的構成要素やその周辺要素にかなりの電気的及び熱的応力がかかることが多く、適切に対処しなければ、システムの寿命が大幅に短くなり、最終的には故障につながる。
【0015】
パワーインバータの進歩は、カスタムサブシステムの要件、ハイパワーエレクトロニクスの高度な統合、材料科学、メカトロニクス、及び熱管理によって悪化した複雑な設計と製造のために、遅々として進んでいない。電力密度は、現代のパワーインバータの性能の重要な指標であり、技術と効率を示している。参考として、最先端の設計は33kW/L(テスラモデル3は12L、4.8kg、400kW)及び36kW/L(アウディeトロンは5.5L、8kg、200kW)を示している。
【0016】
パワー半導体は基本的に以下の2つの要素によって駆動される:熱伝導性(パワー半導体を冷却する経路)及び電気伝導性(大電流を流す経路)。電気経路については長年研究され、多かれ少なかれ成功を収めてきたが、熱経路は常に主要な課題であった。
【0017】
高い熱伝導性と電気伝導性の必要性に加え、パワー半導体は高電圧を流すため、他の環境から電気的に絶縁される必要がある。これは安全要件である。残念ながら、(DBC基板のような)電圧絶縁バリアは通常、熱伝導性が低い。高熱伝導性化合物のような一般的な絶縁バリアは2~5W/mKを示し、酸化アルミニウム(Al2O3)などの最先端の酸化物は24~28W/mKを示し、より最新の窒化アルミニウム(AlN)は現実的に150~180W/mKを示すため、電気的絶縁を確保するために必要な厚さで半導体接合部温度(Tj)と冷却機構(通常は液体グリコール)の間にかなりの望ましくない熱差を維持する。
【0018】
シリコン絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Si IGBT)や炭化ケイ素金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(SiC MOSFET)などのパワー半導体は、MCU、ロジック、メモリ、DSPチップなどの他の電力散逸デバイスとは異なり、底面を通る同じ電気的・熱的経路を有する。現在、Si IGBTやSiC MOSFETの電気絶縁性と高電流伝達能力を確保するための最も一般的なソリューションは、DBC(Direct Bonded Copper)基板である。残念なことに、それらは高い熱伝達容量を提供しない。
【0019】
ダイヤモンドベースのパワーエレクトロニクス
その優れた特性から、ダイヤモンドとダイヤモンドをベースとしたソリューションは、パワー半導体の開発者にとって常に遠い方の関心事だった。ある人は、それを半導体アプリケーションの「聖杯」と呼ぶだろう。これは、超高熱伝導性と超高バンドギャップを示す自然界で唯一の既知の材料である。電気伝導性のグラフェン(炭素の同素体)とは異なり、ダイヤモンドは高級な絶縁体である。ダイヤモンド・ファウンドリーは現在、非常に古くからある問題に対して、実用的でコスト的にも手頃なソリューションを提供している。すなわち、パワー半導体に冷却経路を効率的に実装し、同時に誘電体絶縁を確保する方法である。
【0020】
ダイヤモンドの利点は長い間よく知られており、実際にこれについては驚きも新規性もない。新しく、そして革新的なことは、ダイヤモンド・ファウンドリーが、a.あらゆるチップ・ダイサイズに対応する高品質の単結晶ダイヤモンドウェハーを製造したこと、b.自動車用パワーエレクトロニクスに要求されるレベルまでコストを引き下げたこと、及びc.新しいダイヤモンドウェハーの能力を最大限活用した新しいパワーエレクトロニクスアーキテクチャを開発したことである。
【0021】
我々のチームや他のグループによる先行研究では、ダイヤモンドが様々な半導体においてピーク温度を20%も低下させ、このような低下により、その間の電力効率が10%向上することが示されている。
【0022】
SCDウェハーは、スイッチング半導体デバイスの接合部近傍で以下の複数のやり方で使用することができる:ダイレクトボンディング銅(DBC)基板においてセラミック(例えば、酸化アルミニウム(Al2O3)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ケイ素(Si3N4))に取って代わる;新しいディスクリートパッケージにおいてヒートスプレッダに取って代わる;半導体ウェハーの薄型化を可能にする。SCDウェハーは、あらゆる半導体技術に基づくインバータのサイズ、重量、及びコストの削減を可能にし、商業的な牽引力を得ている半導体の新しい形態に「賭ける」必要はない。
【0023】
低い接合部温度を維持することの重要性
パワー半導体スイッチに誘発される熱応力は、エネルギー効率の損失だけでなく故障をもたらす。一般的な経験則として、温度が10℃上昇するごとに半導体の寿命は半減し、例えば炭化ケイ素パワースイッチでは175℃から200℃へと、より高温に耐えるシリコン設計がトレンドとなっている。Vce(Sat)対温度係数がほぼ一定のIGBTとは異なり、MOSFET(SiCを含む)のRdsONは正の温度依存パラメータ(TDP)であり、これはRdsONが温度とともに増加することを意味する。
【0024】
図4Aは、一般的なSiCデバイスの正規化RdsONを示す。一般的なRdsONは25℃で1(例えば7mOhm)と規定されているため、150℃で45%(10.39mOhm)、175℃で64%(11.64mOhm)、200℃で90%(12.87mOh)増加する。RdsON対Tjの伸びは、直線的領域(25~150℃)と指数関数的領域(150~200℃)に分かれる。つまり、同じ電流量(400A)の場合、電力伝導損失は25℃で1120W、100℃で1359W、150℃で1662W、175℃で1863W、200℃で2060Wとなる。
【0025】
図4Bは典型的な最新IGBTのV
ce(sat)を示す。400Aでの伝導損失は、25℃で800W、125℃で920W、150℃で1000Wとなる(これ以上のデータはない)。EVのインバータ周波数動作(15kHz)では、伝導損失はデバイスの累積伝導-スイッチング損失の約60%を占める。これは主にIGBTのいわゆる「テール効果」によるもので、これはシリコンチップの表面積に直接関係している。表面積が大きいほど、スイッチング損失は大きくなる。IGBTの伝導損失とスイッチング損失の合計は、25℃で1375W、125℃で1580W、150℃で1720Wとなる。SiC対IGBTの効率的な優位性はごくわずかであるにもかかわらず、SiC対IGBTの卓越したコスト差(約5倍)にもかかわらずSiCへの採用傾向が不可逆的であることは注目に値し、性能とEVの航続距離の伸びを優先するあまり、実装コストが損なわれていることを強調している。
【0026】
車載EVの冷却液温度は標準的に80℃に設定されているため、ここでの課題は、Tjをできるだけ冷却液の近くに維持し、SiCの指数関数的領域と直線的領域の一部でもTjによって誘発される不要な伝導損失を排除し、IGBTのダイ面積を削減できるようにすることである。IGBTなどのバイポーラ構造は、温度依存のラッチアップ条件がトリガーされない限り、順方向電流に関してかなり回復力がある。一般に、1000A/cm2までの電流密度が限界であり、IGBTメーカーは温度範囲にわたって通常この限界の80~90%にとどまることが認められている。ラッチアップ条件下でのIGBTの接合部温度をマスターすることは、大幅なダイサイズアクティブ領域の縮小を可能にし、それに比例してIGBTが当初から苦しんできたスイッチング損失にも影響を与える。ダイヤモンド・ファウンドリーのソリューションなどの熱管理ソリューションが適切に適用されれば、E-モビリティの周波数スイッチング範囲(10~20kHz)において、最新のSiCと旧来のIGBT技術が1/5のコストで同等になる可能性がある。
【0027】
EV走行距離への具体的な影響
図5は、3相250kWインバータシステムの電力伝導損失を、現在の標準的なEVセダン航続距離に換算したものである。各相電流400A(ピーク565A)の誘導損失は、80℃(冷却液)から200℃Tjにわたって調査されている。
【0028】
「節約されるインバータ電力損失」欄は、様々なTjにおいてバッテリから節約されるエネルギーを示しており、それに応じて航続距離がバッテリ容量から計算される。電力スイッチTjを冷却液温度(80℃)付近に維持できると仮定すると、節約できる電力損失の合計は、バッテリ充電1回あたり2812W、すなわち11.72マイル、言い換えると5.33%の航続距離延長に達する可能性がある。
【0029】
この研究は、これらの数値の15~20%と推定される回生電力の節約を考慮していない点で保守的である。これには、IGBTに関連する高速回復ダイオード(FRD)の電力損失温度依存性、SiC MOSFET内蔵ダイオードの熱依存性損失(温度に対して劣悪な性能を示す)、及びゲートドライバや付随部品などの関連回路の削減が含まれる。このような割合での小型化により、ケーブルの長さやバッテリ容量の数パーセントを占める端子の電力損失を根絶する直接統合インバータ-モータの可能性が開かれる。
【0030】
温度を超えて:EVパワーエレクトロニクスのシングル・フォーム・ファクター・アーキテクチャの実現
ダイヤモンド・ファウンドリーから現在入手可能な単結晶ダイヤモンドウェハーの驚異的な熱伝導性、電圧絶縁性、ウェハー仕上げ特性を組み合わせることで、当該産業界がGaN、SiC、IGBTのシリコンチップでは実現できなかった新規デバイスやシステム設計、より効率的な組立工程が可能になる。
【0031】
特に、ダイヤモンド・ファウンドリーのSCDウェハーは、1000kW/Lを超えるシングル・フォーム・ファクターのパワーインバータを可能にする(例えば、0.4Lシステムでは400kW)。これは、より高いシステム効率、損失及びシステムコストの削減をもたらし、エネルギーの節約と電気モビリティの航続距離の延長につながる。
【0032】
本開示の態様による新規な熱管理構成を
図6に示す。この構成では、熱インピーダンス要素を9個から4個に大幅に削減することができる。この構成では、半導体ダイ1は、銀アタッチメント2によって銅基板3に取り付けられる。銅基板2はSCDウェハー7に拡散接合される。熱経路を構成する簡素化された数の要素間の取り付けに使用される拡散プロセスは現在ナノメートルスケールまで縮小されていて、半導体ダイ1からダイヤモンドチップ7を通って冷却液6へ至る自由な熱伝播を保証する。SCDウェハー7を使用することで、破線の矢印で示すように、より立体的な熱伝播が可能になる。
【0033】
1つ又は複数の加圧冷却液ジェット8は、冷却液6をダイヤモンドウェハー7の露出した表面に供給し、層流、乱流、又は乱流の「薄いフィン」ソリューションよりも優れた性能をもたらす垂直衝撃流を提供する。
図7に描かれている対応する熱インピーダンスモデルと
図8は、これらの利点を要約したものである。
【0034】
総Rthが劇的に低減されたため(0.0155(現行技術水準およそ0.11))、シリコンダイのTjはロックダウン位置で冷却液温度と今や密接に関係し、冷却液より約12℃高いTj「クランプ」が形成され、
図5を参照して記載したものと比較して伝導損失の大幅な削減、インバータ設計の機械的形状の最適化、及び必要なアクティブシリコンダイ表面の削減が可能になる。
【0035】
図6のような構成の高度な材料と熱管理技術は、熱インピーダンスの大幅な低減とインバータの小型化を実現し、EVの大幅な航続距離延長、コスト削減、及び極めて高い信頼性への道を開く。さらに、この技術は拡張可能であり、高い電力効率と信頼性がミッション・クリティカルである同様の市場(すなわち、発電、充電ステーション、送電網バランシング、その他)にも適応可能である。
【0036】
例示的な実施態様
400kWパワーインバータの設計紹介:
単一スイッチに関する記載
この例では、19.5×0.6mmの銀(Ag)メッキ銅トップ基板102を20×0.3mmのSCDチップ104に取り付けることで単一スイッチの構築が始まる。次に、
図10に示すように、3つのトランジスタ、例えばIGBT又はMOSFETを、例えばAg焼結技術を用いてトップ基板に取り付ける。
【0037】
例として、限定するものではないが、MOSFET106は、8×8mmのシリコンチップ上に形成された130A 1200Vの炭化ケイ素(SiC)MOSFETデバイスであり得る。次に、
図11に示すように、MOSFETのドレイン接続用の大電流電力経路(V Lトランスレータ)用の3つの電気伝導性ピラー構造108がトップ基板に取り付けられる。例として、限定するものではないが、ピラー構造は6mm幅のAgメッキ銅ピラーであり得る。次に、
図12に示すように、電気伝導性、例えば銅製のクリップ110が3つのSiC MOSFETの上に取り付けられ、MOSFETのソース接続用の大電流電力経路を形成して焼結される。
【0038】
図13に示すように、クリップは、例えば焼結技術を使用してMOSFETのソースパッド接続に取り付けられ、装着される。MOSFET106への電気的接続は、
図14に示すように、MOSFET上のトップパッド112をクリップ110上の対応する突起114に焼結することによって作ることができる。
図15に示すように、MOSFETのゲート接続118用のゲートルータを形成するために、薄いフレックスプリント回路基板(PCB)116が設置される。PCB116上の導電性延長部120は、
図16に示すように、例えばワイヤボンド122によってゲート接続部118に電気的に接続される。
図17に示すように、薄いフレックスPCBゲートドライバ回路124及び電流センス回路126が追加され、ゲートルータ116と相互接続される。
図18に等価回路図として対応するデバイスを示す。
【0039】
その後、
図17に示すタイプの2つの同一構造を、
図19に示すように、SCDチップ104が外側を向くように背中合わせに整列させて、次に
図20に示すように、エポキシで複合化127することができる。
図20に示すエポキシ化デバイスは、ハーフブリッジインバータに用いてもよいし、単一方向のモータ制御、いわゆるハーフHブリッジに用いてもよい。デバイスの各側のソース110は、反平行に接続されてもよい。デバイスの各側はまた、電流の逆流を遮断するためにダイオードと並列に接続されてもよい。ハーフブリッジデバイスは、同期整流器を使用するスイッチモード電源に一体化することもできる。
【0040】
2つのハーフブリッジインバータデバイスを一緒に配置して、モータ制御用のフルHブリッジ、又は、AC-ACコンバータ、DC-DCコンバータ、DC-ACコンバータなどの電力コンバータを作り出すことができる。
【0041】
図21において以下に示すように、3つのハーフブリッジデバイスを並列に配置して、3相インバータデバイスを作り出すこともできる。各デバイスは、各ハーフブリッジデバイスの両側のソース領域の間にゲート制御が位置するように整列される。この並列配置により、各ハーフブリッジデバイス間に短距離の剛性接続を形成することができる。
図21に示すタイプの3つのハーフブリッジデバイスは、
図22に示すように、バスバー128、129を介するなどして剛性接続することができる。3相インバータデバイスの場合、3つのハーフブリッジデバイスの一方の側のそれぞれのドレイン(128)が接続され、各ハーフブリッジデバイスの他方の側のソースが接続されてもよい(129)。リッジドバスバー128は3相電力インバータのVBUS(+)バスバーを形成し得、リッジバスバー129は3相電力インバータのVBUS(-)バスバーを形成し得る。バスバーは、ハーフブリッジデバイス間の電気的接続と構造的剛性の両方を提供する。
【0042】
単結晶ダイヤモンドチップ(SCD)104は、各ハーフブリッジデバイス内のMOSFETの効率的な冷却を可能にする。
図22に示すように、冷却ブロック130を3相インバータデバイスの各側に結合することができる。各ハーフブリッジデバイスは、放射冷却用の冷却フィン、又は液体冷却もしくは蒸発冷却用の流体インターフェースを含み得る。冷却ブロック130は、冷却液とSCD表面間の熱伝導を改善するために、クールジェット冷却液ブロックとして実装することができる。
図24に示すクールジェット冷却液ブロックは、ベンチュリ効果を利用して冷却液をSCD表面にジェット噴射し、高い流量と、冷却液体及びSCD間の高い接触量とを実現する。示されるように、冷却液は冷却吸入ポート131から冷却ブロック130に入る。冷却液は冷却液吸入キャビティ132を満たし、圧縮チャンバ133に到達する。冷却液はベンチュリ134を通って速度を増し、ベルノズル135の表面に沿って広がり、SCD104に衝突する冷却液ジェットプルームを形成する。冷却液ジェットプルームは、SCD104のMOSFET106の下にある領域に向けられてもよい。冷却液はSCD104の上に分散し、熱をMOSFET106とSCD104から遠ざける。高温の冷却液は、冷却ブロック130を出て、冷却液吸入ポート131に戻る前に冷却され得るリターンキャビティ136を通って循環する。冷却液は、ラジエータとフィンブロックを介した膨張冷却と放射冷却によって冷却され得る。
【0043】
冷却ブロック130は、例えば、限定するものではないが、MOSFET106のそれぞれに1つずつ、複数のベルノズル135を含み得る。前述したように、各ノズル135は、MOSFETの1つの真後ろに位置し、MOSFETの真後ろのSCD104に冷却液のジェット流を向けるように配置され得る。冷却液Oリングシール137は、SCD104の周囲からの冷却液の流出を防止し得る。
【0044】
下の
図26の正面図は、3相インバータに面して取り付けられる冷却ブロックの側面の図を示している。示されているように、冷却ブロックは、ハーフブリッジデバイスの3つのMOSFETのうちの1つの後ろに配置されるようにそれぞれ構成された3つのベルノズル135を含み得る。リターンキャビティ136は、ベルノズル135の間の空間に配置され得る。
図27は、本開示の態様による冷却ブロックの戻り側の破断図を示す。示されるように、この冷却液ブロックは、3相インバータを冷却するために一緒に結合される3つのノズルアセンブリ139を含む。冷却液ブロックは、本開示の態様によるハーフブリッジデバイスを含むインバータデバイスを冷却するのに十分な数のノズルアセンブリを含み得る。対応するハーフブリッジデバイスのそれぞれの側面のための戻りキャビティ136が存在し、各戻り経路は、冷却液が冷却液出口ポート138に流れるように接続される。
【0045】
図28は、2つの冷却液ブロックを利用する3相インバータを示し、1つが3相電力インバータの各側面に取り付けられ、3相インバータ内の3つのハーフブリッジデバイスのそれぞれの側面を冷却するように構成されている。
図29は、モータ位相電力連結部140が取り付けられた完成した3相インバータアセンブリを示している。モータ位相電力連結部140は、ハーフブリッジデバイスの片側がオン状態のときにのみ電流が流れるように、各ハーフブリッジデバイスのドレインとソースを接続する。
図30は、モータ位相電力連結部140に結合されたモータ位相ファスナ141を有する3相インバータに取り付けられた2つの冷却液ブロックを示している。
図31は、モータ位相ファスナ141と反対側の側面で3相インバータに結合され得る集積バルクコンデンサ及びその他の受動回路142を示す。
【0046】
図32は、本開示の態様による冷却ブロックを備えた完成した3相インバータの上面図である。図示のように、3相インバータは、モータ位相ファスナ141、バスバー129、128を含み、冷却ブロック130は、冷却液入口ポート131及び冷却液出口ポート138を含む。
図33は、本開示の態様による冷却ブロックを備えた完成した3相インバータの側面図である。側面図において、モータ位相電力連結部140、ハーフブリッジデバイス143、及び受動回路142も見ることができる。
【0047】
本開示の追加的な態様によれば、3相インバータデバイスは、電気式乗り物、例えば、電気自動車、飛行機、ヘリコプター、列車、船舶、又は潜水艦に組み込むことができる。
【0048】
図34は、本開示の態様による3相インバータを含む単純な電気自動車を示す。図示のように、単純な電気自動車は、3相電気モータ202に結合された3相インバータ及び冷却液ブロックアセンブリ201を含み得る。電気モータ202の各相は、3相インバータ201のモータ位相ファスナに導電的に結合され得る。電気モータ202の出力シャフトは、駆動輪205を接続したアクスル204に回転速度を加えるように構成されたディファレンシャル(及び任意選択的にギヤボックス)203に結合され得る。3相インバータは、バッテリ又は他の電源206から直流(DC)電力を取り込み、電気モータ202が出力シャフトの回転速度に変換できる3相電力に変換する。コントローラ208は、3相インバータに結合され、電気モータを動作させる位相を制御するように構成され得る。バッテリ又は他の電源206は、壁コンセントからのAC電力など外部電源から電気を受け取り得る充電回路207から電気を受け取り得る。充電回路207は、例えばAC-DCコンバータであり得、本開示に記載のハーフブリッジデバイスを利用し得る。3相インバータの冷却液ブロックは、ラジエータ209及び冷却液ポンプ210を含む冷却液システムに結合され得る。安定性のために、電気自動車は追加の車輪211も含み得る。
【0049】
図35は、電気オートバイなどの単純な直接駆動式電気式乗り物を描いている。
図34に描かれた電気自動車とは異なり、直接駆動式電気式乗り物はディファレンシャルを省略し、代わりに電気モータ202が駆動輪205を直接駆動する。直接駆動式電気式乗り物は、本開示の態様に従って、駆動輪205のそれぞれに電気モータ202及び3相インバータ201を含み得る。本開示の態様による直接駆動式乗り物は、対応する電気モータ及びインバータを有する任意の数の駆動輪を含み得る。本開示のいくつかの追加的な態様によれば、複数の電気モータが3相インバータに結合され得る。
【0050】
図36は、直接駆動式電気式乗り物の代替実施形態を示す。図示の乗り物では、3相インバータ201が、液体を介して推力220を発生させるために使用されるプロペラ、液体スクリュ又は他のデバイスに接続された電気モータ202を駆動する。この実施形態は、飛行機、ボート、潜水艦、ヘリコプター、クアッドコプター、その他などの多くの乗り物に実装され得る。いくつかの実施態様では、複数の電気モータ202とインバータ201が同じ冷却液ループに含まれ、ラジエータ209と冷却液ポンプ210を共有してもよい。
【0051】
用語集
MOSFET:Metal Oxide Field Effect Transistor(金属酸化膜電界効果トランジスタ):電力スイッチ
IGBT:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ:電力スイッチ
Vce(Sat):飽和時のコレクタ-エミッタ間電圧
RdsON:MOSFETトランジスタの抵抗ドレイン・ソースON状態
PTI’s: パワートラクションインバータ
OEM:Original Equipment Manufacturer(相手先商標製品製造会社)(すなわち、自動車ブランド/メーカー)
DC:直流
AC:交流
kW:キロワット、1000ワット
MW:メガワット、1000kW
SAC305:はんだペースト Sn(錫)Ag(銀)Cu(銅)それぞれ97、3、0.5%混合物
W/mK:ワット毎メートル(3次元)毎ケルビン、熱インピーダンスの尺度
IMS:絶縁金属基板
Rth:熱インピーダンス
kV:キロボルト、1000ボルト
SiC:炭化ケイ素、トランジスタの製造に使われる技術
mOhm:ミリオーム、オームを1000で割ったもの
Tj:ジャンクション温度、シリコンチップの温度
【国際調査報告】