(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池用電極及びその製造方法並びにリチウムイオン電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20240822BHJP
H01M 4/131 20100101ALI20240822BHJP
H01M 4/136 20100101ALI20240822BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20240822BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20240822BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20240822BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240822BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20240822BHJP
H01M 4/1391 20100101ALI20240822BHJP
H01M 4/1397 20100101ALI20240822BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/131
H01M4/136
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/58
H01M4/62 Z
H01M4/139
H01M4/1391
H01M4/1397
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023578016
(86)(22)【出願日】2022-09-22
(85)【翻訳文提出日】2024-03-18
(86)【国際出願番号】 CN2022120594
(87)【国際公開番号】W WO2023046027
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】202111122407.8
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510177809
【氏名又は名称】ビーワイディー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】袁▲暁▼涛
(72)【発明者】
【氏名】▲許▼占
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼▲しゅあん▼▲偉▼
(72)【発明者】
【氏名】叶涛
(72)【発明者】
【氏名】何科峰
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA02
5H050AA12
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB08
5H050DA09
5H050DA10
5H050DA11
5H050EA08
5H050EA10
5H050EA24
5H050FA02
5H050FA13
5H050FA16
5H050GA02
5H050GA07
5H050GA08
5H050GA10
5H050HA01
5H050HA04
5H050HA08
5H050HA09
(57)【要約】
リチウムイオン電池用電極及びその製造方法並びにリチウムイオン電池を開示し、該電極は、集電体と、集電体に積層して設けられたn層の極板層とを含み、nが2以上の整数であり、極板層に造孔剤が含まれ、集電体から徐々に離れる方向に沿って、各層の極板層における造孔剤の含有量は、徐々に多くなり、造孔剤は、常温で固体状態を呈する電解液添加剤から選択される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体と、前記集電体上に積層されたn層の極板層とを含むリチウムイオン電池用電極であって、nが2以上の整数であり、
各極板層は造孔剤を含み、前記集電体から徐々に離れる方向に沿って、各極板層の造孔剤の含有量は、集電体から離れる方向に、徐々に多くなり、前記造孔剤は、常温で固体状態を呈する電解液添加剤から選択される、リチウムイオン電池用電極。
【請求項2】
各極板層はさらに活物質を含み、100重量部の活物質に対して、前記集電体から徐々に離れる方向に沿って、第1極板層における造孔剤の含有量は、0~4重量部であり、第n極板層における造孔剤の含有量は、1~10重量部であり、第2極板層~第(n-1)極板層における造孔剤の含有量は、1~10重量部である、請求項1に記載の電極。
【請求項3】
各極板層は、空隙構造を有し、少なくとも一部の空隙構造には造孔剤が充填され、
集電体から徐々に離れる方向に、第i極板層における空隙構造の空隙率δ
iは、以下の式の通りである、請求項1又は2に記載の電極。
【数1】
(式中、1≦i≦nであり、iは、整数であり、ε
iは、第i極板層における造孔剤と活物質との重量比であり、ρ
1は、活物質の真密度であり、単位がg/cm
3であり、ρ
2は、活物質の限界圧密密度であり、単位がg/cm
3であり、ρ
3は、造孔剤の真密度であり、単位がg/cm
3である。)
【請求項4】
前記電極において、第n極板層における空隙構造の平均空隙率は、以下の条件を満たす、請求項1~3のいずれか一項に記載の電極。
【数2】
(式中、d
iは、第i極板層の厚さであり、単位がμmである。)
【請求項5】
前記電極において、隣接する2つの極板層における空隙構造の空隙率は、以下の条件を満たす、請求項1~4のいずれか一項に記載の電極。
δ
i+1=δ
i+(δ
n-δ
1)/n
【請求項6】
前記集電体から徐々に離れる方向に沿って、第1極板層の体積密度は、2.55g/cm
3~2.75g/cm
3であり、第n極板層の体積密度は、2.0g/cm
3~2.5g/cm
3であり、第2極板層~第(n-1)極板層の体積密度は、2.0g/cm
3~2.70g/cm
3である、請求項1~5のいずれか一項に記載の電極。
【請求項7】
前記電極において、n層の極板層の総厚さは、20μm~200μmである、請求項1~6のいずれか一項に記載の電極。
【請求項8】
nは、2~10の整数である、請求項1~7のいずれか一項に記載の電極。
【請求項9】
nは、2~5の整数である、請求項1~8のいずれか一項に記載の電極。
【請求項10】
各極板層は、さらに導電剤及びバインダーを含み、100重量部の活物質に対して、導電剤の含有量は、0.1~5重量部であり、バインダーの含有量は、0.5~5重量部であり、
前記活物質は、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リン酸鉄リチウム及びマンガン酸リチウムから選択される少なくとも1種であり、
前記導電剤は、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンブラック及び炭素繊維から選択される少なくとも1種であり、
前記バインダーは、ポリフッ化ビニリデン及び/又はポリテトラフルオロエチレンから選択され、
前記造孔剤は、リチウムジフルオロオキサラトボレート、ビスフルオロメチルジアミンリチウム、ホウ酸リチウム、四ホウ酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、硝酸リチウム及び塩化リチウムから選択される少なくとも1種である、請求項1~9のいずれか一項に記載の電極。
【請求項11】
前記造孔剤は、リチウムジフルオロオキサラトボレート及び/又はビスフルオロメチルジアミンリチウムである、請求項1~10のいずれか一項に記載の電極。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池用電極を製造する方法であって、
異なる含有量の造孔剤が含まれるn層の電極板を、造孔剤の含有量の少ない順に集電体上に積層して圧着して、リチウムイオン電池用電極を得るステップを含む、方法。
【請求項13】
以下の方法で製造される電極板の製造方法であって、
活物質、導電剤、バインダー及び造孔剤を気流粉砕して混合し、混合材料を得るステップと、
前記混合材料を加熱し溶融した後、電界紡糸を行って、繊維化材料を得るステップと、
前記繊維化材料に対してホットプレス成形を行って、電極板を得るステップと、
を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
多孔質電極を含み、前記多孔質電極は、請求項1~11のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池用電極又は請求項12又は13に記載の方法で得られたリチウムイオン電池用電極を、電解液に浸漬して得られる、リチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権情報)
本開示は、2021年9月24日に中国国家知識産権局に提出された、出願の名称が「リチウムイオン電池用電極及びその製造方法並びにリチウムイオン電池」である中国特許出願第202111122407.8号の優先権を主張するものであり、その全ての内容は参照により本開示に組み込まれるものとする。
【0002】
本開示は、リチウムイオン電池の技術分野に関し、具体的には、リチウムイオン電池用電極及びその製造方法並びにリチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウムイオン電池用電極の面密度及び圧密密度を向上させることにより、リチウムイオン電池のエネルギー密度を効果的に向上させることができる。しかしながら、電極の面密度及び圧密密度を向上させるプロセスにおいて、電極の厚さの増加に伴って、電極の内部の空隙の屈曲度が大きくなり、電極の内部のリチウムイオンの拡散経路が長くなるため、電極のインピーダンスが増加して、電極の動力学的性能に影響を与える。
【0004】
電極の動力学的性能を向上させるために、電極の内部に適切な空隙構造を形成し、リチウムイオンの電極の内部での高速拡散のためにチャネルを提供する必要がある。しかしながら、従来のリチウムイオン電池用電極には、内部の空隙構造の分布が不合理であり、電極の動力学的性能が低いという問題が依然として存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、従来のリチウムイオン電池用電極に存在する、内部の空隙構造の分布が不合理であり、電極の動力学的性能が低いという問題を解決するために、リチウムイオン電池用電極及びその製造方法並びにリチウムイオン電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示に係るリチウムイオン電池用電極は、集電体と、前記集電体に積層して設けられたn層の極板層とを含み、nは、2以上の整数であり、
前記極板層に造孔剤が含まれ、前記集電体から徐々に離れる方向に沿って、各層の前記極板層における前記造孔剤の含有量は、徐々に多くなり、前記造孔剤は、常温で固体状態を呈する電解液添加剤から選択される。
【0007】
さらに、前記極板層に活物質がさらに含まれ、100重量部の前記活物質に対して、前記集電体から徐々に離れる方向に沿って、第1層の前記極板層における前記造孔剤の含有量は、0~4重量部であり、第n層の前記極板層における前記造孔剤の含有量は、1~10重量部であり、第2層~第n-1層の前記極板層における前記造孔剤の含有量は、1~10重量部である。
【0008】
さらに、各層の前記極板層は、空隙構造を有し、前記造孔剤は、少なくとも一部の前記空隙構造内に充填され、
前記集電体から徐々に離れる方向に沿って、第i層の前記極板層における前記空隙構造の空隙率δ
iは、以下のとおりである。
【数1】
【0009】
式中、1≦i≦nであり、iは、整数であり、εiは、第i層の前記極板層における前記造孔剤と前記活物質との重量比であり、ρ1は、前記活物質の真密度であり、単位がg/cm3であり、ρ2は、活物質の限界圧密密度であり、単位がg/cm3であり、ρ3は、前記造孔剤の真密度であり、単位がg/cm3である。
【0010】
さらに、前記電極において、n層の前記極板層における前記空隙構造の平均空隙率は、以下の条件を満たす。
【数2】
【0011】
式中、diは、第i層の前記極板層の厚さであり、単位がμmである。
【0012】
さらに、前記電極において、隣接する2層の前記極板層における前記空隙構造の空隙率は、以下の条件を満たす。
δi+1=δi+(δn-δ1)/n
【0013】
さらに、前記集電体から徐々に離れる方向に沿って、第1層の前記極板層の体積密度は、2.55g/cm3~2.75g/cm3であり、第n層の前記極板層の体積密度は、2.0g/cm3~2.5g/cm3であり、第2層~第n-1層の前記極板層の体積密度は、2.0g/cm3~2.70g/cm3である。
【0014】
さらに、前記電極において、n層の前記極板層の総厚さは、20~200μmである。
【0015】
さらに、nは、2~10の整数である。
【0016】
さらに、nは、2~5の整数である。
【0017】
さらに、各層の前記極板層に導電剤及びバインダーがさらに含まれ、100重量部の前記活物質に対して、前記導電剤の含有量は、0.1~5重量部であり、前記バインダーの含有量は、0.5~5重量部であり、
前記活物質は、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リン酸鉄リチウム及びマンガン酸リチウムから選択される少なくとも1種であり、
前記導電剤は、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンブラック及び炭素繊維から選択される少なくとも1種であり、
前記バインダーは、ポリフッ化ビニリデン及び/又はポリテトラフルオロエチレンから選択され、
前記造孔剤は、リチウムジフルオロオキサラトボレート、ビスフルオロメチルジアミンリチウム、ホウ酸リチウム、四ホウ酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、硝酸リチウム及び塩化リチウムから選択される少なくとも1種である。
【0018】
さらに、前記造孔剤は、リチウムジフルオロオキサラトボレート及び/又はビスフルオロメチルジアミンリチウムである。
【0019】
本開示に係る、上記いずれか一項に記載のリチウムイオン電池用電極を製造する方法は、
異なる含有量の造孔剤が含まれるn層の電極板を、造孔剤の含有量の少ない順に集電体に順に積層して圧着して、前記リチウムイオン電池用電極を得るステップを含む。
【0020】
さらに、前記電極板の製造方法は、
活物質、導電剤、バインダー及び造孔剤を気流粉砕して混合し、混合材料を得るステップと、
前記混合材料を加熱し溶融した後、電界紡糸を行って、繊維化材料を得るステップと、
前記繊維化材料に対してホットプレス成形を行って、前記電極板を得るステップとを含む。
【0021】
本開示に係るリチウムイオン電池は、多孔質電極を含み、前記多孔質電極は、上記いずれか一項に記載のリチウムイオン電池用電極又は上記方法で得られたリチウムイオン電池用電極を、電解液に浸漬して得られる。
【発明の効果】
【0022】
上記技術手段により、本開示に係るリチウムイオン電池用電極は、造孔剤の含有量が徐々に増加する多層の極板層を含み、かつ造孔剤が常温で固体状態を呈する電解液添加剤であり、該電極が電解液に浸漬された後、その中の造孔剤が電解液に溶解して、勾配空隙構造を有する電極を形成し、リチウムイオンの電極の内部での迅速な拡散のためにチャネルを提供することにより、リチウムイオンが優れた拡散経路を有するため、本開示に係るリチウムイオン電池用電極は、良好な動力学的性能を有する。
【0023】
本開示の追加の態様及び利点は、一部が以下の説明において示され、一部が以下の説明において明らかになるか又は本開示の実施により把握される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図面は、本開示のさらなる理解を提供し、かつ明細書の一部を構成するものであり、以下の具体的な実施形態とともに本開示を説明するものであるが、本開示を限定するものではない。
【0025】
【
図1】本開示の実施例に係る単一の極板層における造孔剤の溶解プロセスの概略図を概略的に示す。
【
図2】本開示の実施例に係る、造孔剤が溶解した後の多層の極板層の配列関係の概略図を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら、本開示の具体的な実施形態を詳細に説明する。ここで記述した具体的な実施形態は、本開示を説明し解釈するためのものに過ぎず、本開示を限定するものではないことを理解されたい。
【0027】
本開示の第1態様に係るリチウムイオン電池用電極は、集電体と、上記集電体に積層して設けられたn層の極板層とを含み、nが2以上の整数であり、上記極板層に造孔剤が含まれ、上記集電体から徐々に離れる方向に沿って、各層の上記極板層における上記造孔剤の含有量は、徐々に多くなり、上記造孔剤は、常温で固体状態を呈する電解液添加剤から選択される。
【0028】
本開示に係るリチウムイオン電池用電極において、各極板層に含まれる造孔剤が電極の製造プロセスにおいて各極板層の内部の空隙構造を維持する作用を果たすことにより、上記リチウムイオン電池用電極は、良好な空隙構造を有し、また、造孔剤が常温で固体状態を呈する電解液添加剤であり、かつ集電体から徐々に離れる方向に沿って、各層の極板層における造孔剤の含有量が徐々に多くなるため、該電極が電解液に浸漬された後、その中の造孔剤が電解液に溶解して、勾配空隙構造を有する電極を形成し、リチウムイオンの電極の内部での迅速な拡散のためにチャネルを提供することにより、リチウムイオンが優れた拡散経路を有するため、本開示に係るリチウムイオン電池用電極は、良好な動力学的性能を有する。
【0029】
さらに、本開示に係るリチウムイオン電池用電極は、内部の空隙の屈曲度が小さく、高い単位質量あたりの容量、低いインピーダンス及び高いレート放電維持率を有する。
【0030】
図1は、本開示の実施例に係る単一の極板層における造孔剤の溶解プロセスの概略図を概略的に示し、
図1に示すように、電解液に浸漬された後、極板層における造孔剤が溶解して空隙構造を形成する。
図2は、本開示の実施例に係る、造孔剤が溶解した後の多層の極板層の配列関係の概略図を概略的に示し、集電体は、
図2の下方に設けられる。
【0031】
本開示において、上記極板層には活物質がさらに含まれてもよい。各層の極板層において、活物質と造孔剤の相対的使用量は、一定の範囲内で変化してもよく、例えば、100重量部の上記活物質に対して、上記集電体から徐々に離れる方向に沿って、第1層の上記極板層における上記造孔剤の含有量は、0~4重量部であってもよく、第n層の上記極板層における上記造孔剤の含有量は、1~10重量部であってもよく、第2層~第n-1層の上記極板層における上記造孔剤の含有量は、1~10重量部であってもよい。
【0032】
本開示のいくつかの実施例において、100重量部の上記活物質に対して、上記集電体から徐々に離れる方向に沿って、第1層の上記極板層における上記造孔剤の含有量は、0~2重量部であってもよく、第n層の上記極板層における上記造孔剤の含有量は、4~8重量部であってもよく、第2層~第n-1層の上記極板層における上記造孔剤の含有量は、2~6重量部であってもよい。この場合、上記リチウムイオン電池用電極は、電解液に浸漬された後、より合理的な勾配空隙構造を有する。
【0033】
本開示において、各層の上記極板層は、空隙構造を有し、上記造孔剤は、少なくとも一部の上記空隙構造内に充填される。各層の上記極板層における上記空隙構造の空隙率は、造孔剤の含有量により決定され、具体的には、上記集電体から徐々に離れる方向に沿って、第i層の上記極板層における上記空隙構造の空隙率δ
iは、以下のとおりである。
【数3】
【0034】
式中、1≦i≦nであり、iは、整数であり、εiは、第i層の上記極板層における上記造孔剤と上記活物質との重量比であり、ρ1は、上記活物質の真密度であり、単位がg/cm3であり、ρ2は、活物質の限界圧密密度であり、単位がg/cm3であり、ρ3は、上記造孔剤の真密度であり、単位がg/cm3である。
【0035】
例示的に、活物質がリン酸鉄リチウムである場合、第i層の上記極板層における上記空隙構造の空隙率δ
iは、以下のとおりである。
【数4】
【0036】
式中、3.6は、リン酸鉄リチウムの真密度であり、単位がg/cm3であり、2.7は、リン酸鉄リチウムの限界圧密密度であり、単位がg/cm3である。
【0037】
本開示において、上記リチウムイオン電池用電極全体の圧密密度をさらに向上させるために、上記電極において、n層の上記極板層における全ての上記空隙構造の空隙率は、以下の条件を満たすことができる。
【数5】
【0038】
式中、diは、第i層の上記極板層の厚さであり、単位がμmであり、0.22及び0.44は、それぞれ本開示のリチウムイオン電池用電極が高い電極性能(例えば、体積エネルギー密度)を有する場合の最大空隙率及び最小空隙率である。
【0039】
本開示において、上記リチウムイオン電池用電極における勾配空隙構造の合理性をさらに向上させるために、上記電極において、隣接する2層の上記極板層における上記空隙構造の空隙率は、以下の条件を満たすことができる。
δi+1=δi+(δn-δ1)/n
【0040】
上記場合、各層の極板層における空隙構造の空隙率の分布が合理的であり、かついかなる隣接する2層の極板層の間の空隙率が均一に遷移するため、リチウムイオンの電極での拡散のために優れた拡散経路を提供することができる。
【0041】
本開示において、各層の上記極板層の体積密度は、一定の範囲内で変化してもよく、例えば、上記集電体から徐々に離れる方向に沿って、第1層の上記極板層の体積密度は、2.55g/cm3~2.75g/cm3であってもよく、第n層の上記極板層の体積密度は、2.0g/cm3~2.5g/cm3であってもよく、第2層~第n-1層の上記極板層の体積密度は、2.0g/cm3~2.70g/cm3であってもよい。
【0042】
本開示において、具体的には、集電体に近接する極板層が中間層及び最上層の極板層よりも高い体積密度を有するため、上記リチウムイオン電池用電極全体が高いレベルの体積密度を有して、上記リチウムイオン電池用電極が高いエネルギー密度を有し、また、最上層(電極の表面)の極板層が低い体積密度を有するため、上記リチウムイオン電池用電極の表面が大きい空隙率を有して、リチウムイオンが電極の内部に拡散することに役立つ。
【0043】
本開示において、上記電極において、n層の上記極板層の総厚さは、一定の範囲内で変化してもよく、例えば、n層の上記極板層の総厚さは、20μm~200μmであってもよい。
【0044】
本開示において、具体的には、各層の極板層の厚さを均一に分布させてもよく、ニーズに応じて特定の空隙率を有する極板層の厚さを増加させるか又は減少させてもよい。
【0045】
本開示において、上記極板層の総層数nは、一定の範囲内で変化してもよく、例えば、nは、2~10の整数であってもよく、本開示のいくつかの実施例において、nは、2~5の整数である。具体的には、nの値が大きいほど、上記リチウムイオン電池用電極の内部の空隙構造の勾配分布が均一になるが、nの値の増加に伴って、電極の製造効率が低下するため、実際のニーズに応じて適切なnの値を選択することができる。
【0046】
本開示において、各層の上記極板層に導電剤及びバインダーがさらに含まれてもよく、100重量部の上記活物質に対して、上記導電剤の含有量は、0.1~5重量部であってもよく、上記バインダーの含有量は、0.5~5重量部であってもよい。
【0047】
上記活物質、導電剤、バインダー及び造孔剤は、一定の範囲内で選択されてもよく、例えば、上記活物質は、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リン酸鉄リチウム及びマンガン酸リチウムから選択される少なくとも1種であってもよく、上記導電剤は、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンブラック及び炭素繊維から選択される少なくとも1種であってもよく、上記バインダーは、ポリフッ化ビニリデン及び/又はポリテトラフルオロエチレンから選択されてもよく、上記造孔剤は、リチウムジフルオロオキサラトボレート、ビスフルオロメチルジアミンリチウム、ホウ酸リチウム、四ホウ酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、硝酸リチウム及び塩化リチウムから選択される少なくとも1種であってもよく、本開示のいくつかの実施例において、上記造孔剤は、リチウムジフルオロオキサラトボレート及び/又はビスフルオロメチルジアミンリチウムである。
【0048】
本開示の第2態様に係る、第1態様におけるいずれか一項に記載のリチウムイオン電池用電極を製造する方法は、異なる含有量の造孔剤が含まれるn層の電極板を、造孔剤の含有量の少ない順に集電体に順に積層して圧着して、上記リチウムイオン電池用電極を得るステップを含む。
【0049】
本開示の方法において、異なる含有量の造孔剤を有する多層の電極板を直接的に組み合わせた後に圧着して上記リチウムイオン電池用電極を得て、組み合わせが便利で迅速であり、また、電極板における造孔剤の含有量を調整するか又は異なる含有量の造孔剤を有する電極板を交換することにより、異なる空隙率の要件を満たす電極を迅速に得ることができ、これにより、電極の設計中により多くの選択肢を有することができる。
【0050】
さらに、上記電極板の製造方法は、活物質、導電剤、バインダー及び造孔剤を気流粉砕して混合し、混合材料を得るステップと、上記混合材料を加熱し溶融した後、電界紡糸を行って、繊維化材料を得るステップと、上記繊維化材料に対してホットプレス成形を行って、上記電極板を得るステップとを含む。乾式電極を使用して、異なる含有量の造孔剤を有する電極板を予め製造し、後続きの選択及び調整に役立つ。
【0051】
本開示に係るリチウムイオン電池は、多孔質電極を含み、上記多孔質電極は、第1態様におけるいずれか一項に記載のリチウムイオン電池用電極又は第2態様に記載の方法で得られたリチウムイオン電池用電極を、電解液に浸漬して得られる。
【0052】
以下、実施例により本開示をさらに説明するが、本開示は、これによって何ら限定されない。本実施例に係る原料、試薬、機器及び装置は、特に説明しない限り、いずれも購入により得ることができる。
【0053】
本開示の実施例に係る電極板は、
活物質、導電剤、バインダー及び造孔剤を気流粉砕して混合し、混合材料を得るステップと、次に上記混合材料を加熱し溶融した後、電界紡糸を行って、繊維化材料を得るステップと、最後に上記繊維化材料に対してホットプレス成形を行って、上記電極板を得るステップとを含む方法で製造される。造孔剤の添加量を調整し、かつ上記操作を繰り返すことにより、異なる含有量の造孔剤が含まれる電極板を得る。
【実施例1】
【0054】
以下の方法でリチウムイオン電池用電極を製造した。
【0055】
(1)ホットプレス法で第1層の電極板を集電体(アルミニウム箔)に圧着し、第1層の電極板に活物質(リン酸鉄リチウム)、導電剤(カーボンチューブ+カーボンブラック)及びバインダー(ポリテトラフルオロエチレン)が含まれ、100重量部の活物質に対して、導電剤の含有量が1重量部であり、バインダーの含有量が3重量部であり、第1層の電極板の厚さが50μmであり、空隙構造を有し、計算によると、空隙構造の空隙率が0.25であり、
(2)ホットプレス法で第2層の電極板を第1層の電極板に圧着し、かつ融着処理を行って、リチウムイオン電池用電極を得て、第2層の電極板に活物質(リン酸鉄リチウム)、導電剤(カーボンチューブ+カーボンブラック)、バインダー(ポリテトラフルオロエチレン)及び造孔剤(リチウムジフルオロオキサラトボレート、真密度が2.12g/cm3である)が含まれ、100重量部の活物質に対して、導電剤の含有量が1重量部であり、バインダーの含有量が3重量部であり、造孔剤の含有量が4重量部であり、第2層の電極板の厚さが50μmであり、空隙構造を有し、造孔剤が少なくとも一部の空隙構造内に充填され、計算によると、空隙構造の空隙率が0.294である。
【0056】
本実施例で製造されたリチウムイオン電池用電極は、2層の極板層を有し、集電体から徐々に離れる方向に沿って、各層の極板層における空隙構造の空隙率が徐々に増加し、総厚さが100μmであり、平均空隙率(上層と下層の厚さに基づいて加重平均して得られるもの)が0.272である。
【実施例2】
【0057】
以下の方法でリチウムイオン電池用電極を製造した。
【0058】
(1)ホットプレス法で第1層の電極板を集電体(アルミニウム箔)に圧着し、第1層の電極板に活物質(リン酸鉄リチウム)、導電剤(カーボンチューブ+カーボンブラック)及びバインダー(ポリテトラフルオロエチレン)が含まれ、100重量部の活物質に対して、導電剤の含有量が1重量部であり、バインダーの含有量が3重量部であり、第1層の電極板の厚さが33.3μmであり、空隙構造を有し、計算によると、空隙構造の空隙率が0.25であり、
(2)ホットプレス法で第2層の電極板を第1層の電極板に圧着し、第2層の電極板に活物質(リン酸鉄リチウム)、導電剤(カーボンチューブ+カーボンブラック)、バインダー(ポリテトラフルオロエチレン)及び造孔剤(リチウムジフルオロオキサラトボレート)が含まれ、100重量部の活物質に対して、導電剤の含有量が1重量部であり、バインダーの含有量が3重量部であり、造孔剤の含有量が2重量部であり、第2層の電極板の厚さが33.3μmであり、空隙構造を有し、造孔剤が少なくとも一部の空隙構造内に充填され、計算によると、空隙構造の空隙率が0.272であり、
(3)ホットプレス法で第3層の電極板を第2層の電極板に圧着し、かつ融着処理を行って、リチウムイオン電池用電極を得て、第3層の電極板に活物質(リン酸鉄リチウム)、導電剤(カーボンチューブ+カーボンブラック)、バインダー(ポリテトラフルオロエチレン)及び造孔剤(リチウムジフルオロオキサラトボレート)が含まれ、100重量部の活物質に対して、導電剤の含有量が1重量部であり、バインダーの含有量が3重量部であり、造孔剤の含有量が4重量部であり、第3層の電極板の厚さが33.3μmであり、空隙構造を有し、造孔剤が少なくとも一部の空隙構造内に充填され、計算によると、空隙構造の空隙率が0.294である。
【0059】
本実施例で製造されたリチウムイオン電池用電極は、3層の極板層を有し、集電体から徐々に離れる方向に沿って、各層の極板層における空隙構造の空隙率が徐々に増加し、総厚さが100μmであり、平均空隙率が0.272である。
【実施例3】
【0060】
以下の方法でリチウムイオン電池用電極を製造した。
【0061】
(1)ホットプレス法で第1層の電極板を集電体(アルミニウム箔)に圧着し、第1層の電極板に活物質(リン酸鉄リチウム)、導電剤(カーボンチューブ+カーボンブラック)及びバインダー(ポリテトラフルオロエチレン)が含まれ、100重量部の活物質に対して、導電剤の含有量が1重量部であり、バインダーの含有量が3重量部であり、第1層の電極板の厚さが33.3μmであり、空隙構造を有し、計算によると、空隙構造の空隙率が0.25であり、
(2)ホットプレス法で第2層の電極板を第1層の電極板に圧着し、第2層の電極板に活物質(リン酸鉄リチウム)、導電剤(カーボンチューブ+カーボンブラック)、バインダー(ポリテトラフルオロエチレン)及び造孔剤(リチウムジフルオロオキサラトボレート)が含まれ、100重量部の活物質に対して、導電剤の含有量が1重量部であり、バインダーの含有量が3重量部であり、造孔剤の含有量が4重量部であり、第2層の電極板の厚さが33.3μmであり、空隙構造を有し、造孔剤が少なくとも一部の空隙構造内に充填され、計算によると、空隙構造の空隙率が0.294であり、
(3)ホットプレス法で第3層の電極板を第2層の電極板に圧着し、かつ融着処理を行って、リチウムイオン電池用電極を得て、第3層の電極板に活物質(リン酸鉄リチウム)、導電剤(カーボンチューブ+カーボンブラック)、バインダー(ポリテトラフルオロエチレン)及び造孔剤(リチウムジフルオロオキサラトボレート)が含まれ、100重量部の活物質に対して、導電剤の含有量が1重量部であり、バインダーの含有量が3重量部であり、造孔剤の含有量が8重量部であり、第3層の電極板の厚さが33.3μmであり、空隙構造を有し、造孔剤が少なくとも一部の空隙構造内に充填され、計算によると、空隙構造の空隙率が0.334である。
【0062】
本実施例で製造されたリチウムイオン電池用電極は、3層の極板層を有し、集電体から徐々に離れる方向に沿って、各層の極板層における空隙構造の空隙率が徐々に増加し、総厚さが100μmであり、平均空隙率が0.292である。
【実施例4】
【0063】
以下の方法でリチウムイオン電池用電極を製造した。
【0064】
(1)ホットプレス法で第1層の電極板を集電体(アルミニウム箔)に圧着し、第1層の電極板に活物質(リン酸鉄リチウム)、導電剤(カーボンチューブ+カーボンブラック)及びバインダー(ポリテトラフルオロエチレン)が含まれ、100重量部の活物質に対して、導電剤の含有量が1重量部であり、バインダーの含有量が3重量部であり、第1層の電極板の厚さが25μmであり、空隙構造を有し、計算によると、空隙構造の空隙率が0.25であり、
(2)ホットプレス法で第2層の電極板を第1層の電極板に圧着し、第2層の電極板に活物質(リン酸鉄リチウム)、導電剤(カーボンチューブ+カーボンブラック)、バインダー(ポリテトラフルオロエチレン)及び造孔剤(リチウムジフルオロオキサラトボレート)が含まれ、100重量部の活物質に対して、導電剤の含有量が1重量部であり、バインダーの含有量が3重量部であり、造孔剤の含有量が2重量部であり、第2層の電極板の厚さが25μmであり、空隙構造を有し、造孔剤が少なくとも一部の空隙構造内に充填され、計算によると、空隙構造の空隙率が0.272であり、
(3)ホットプレス法で第3層の電極板を第2層の電極板に圧着し、第3層の電極板に活物質(リン酸鉄リチウム)、導電剤(カーボンチューブ+カーボンブラック)、バインダー(ポリテトラフルオロエチレン)及び造孔剤(リチウムジフルオロオキサラトボレート)が含まれ、100重量部の活物質に対して、導電剤の含有量が1重量部であり、バインダーの含有量が3重量部であり、造孔剤の含有量が4重量部であり、第3層の電極板の厚さが25μmであり、空隙構造を有し、造孔剤が少なくとも一部の空隙構造内に充填され、計算によると、空隙構造の空隙率が0.294であり、
(4)ホットプレス法で第4層の電極板を第3層の電極板に圧着し、かつ融着処理を行って、リチウムイオン電池用電極を得て、第4層の電極板に活物質(リン酸鉄リチウム)、導電剤(カーボンチューブ+カーボンブラック)、バインダー(ポリテトラフルオロエチレン)及び造孔剤(リチウムジフルオロオキサラトボレート)が含まれ、100重量部の活物質に対して、導電剤の含有量が1重量部であり、バインダーの含有量が3重量部であり、造孔剤の含有量が8重量部であり、第4層の電極板の厚さが25μmであり、空隙構造を有し、造孔剤が少なくとも一部の空隙構造内に充填され、計算によると、空隙構造の空隙率が0.334である。
【0065】
本実施例で製造されたリチウムイオン電池用電極は、4層の極板層を有し、集電体から徐々に離れる方向に沿って、各層の極板層における空隙構造の空隙率が徐々に増加し、総厚さが100μmであり、平均空隙率が0.287である。
【実施例5】
【0066】
以下の方法でリチウムイオン電池用電極を製造した。
【0067】
(1)ホットプレス法で第1層の電極板を集電体(アルミニウム箔)に圧着し、第1層の電極板に活物質(リン酸鉄リチウム)、導電剤(カーボンチューブ+カーボンブラック)、バインダー(ポリテトラフルオロエチレン)及び造孔剤(リチウムジフルオロオキサラトボレート)が含まれ、100重量部の活物質に対して、導電剤の含有量が1重量部であり、バインダーの含有量が3重量部であり、造孔剤の含有量が4重量部であり、第1層の電極板の厚さが33.3μmであり、空隙構造を有し、造孔剤が少なくとも一部の空隙構造内に充填され、計算によると、空隙構造の空隙率が0.294であり、
(2)ホットプレス法で第2層の電極板を第1層の電極板に圧着し、第2層の電極板に活物質(リン酸鉄リチウム)、導電剤(カーボンチューブ+カーボンブラック)、バインダー(ポリテトラフルオロエチレン)及び造孔剤(リチウムジフルオロオキサラトボレート)が含まれ、100重量部の活物質に対して、導電剤の含有量が1重量部であり、バインダーの含有量が3重量部であり、造孔剤の含有量が8重量部であり、第2層の電極板の厚さが33.3μmであり、空隙構造を有し、造孔剤が少なくとも一部の空隙構造内に充填され、計算によると、空隙構造の空隙率が0.334であり、
(3)ホットプレス法で第3層の電極板を第2層の電極板に圧着し、かつ融着処理を行って、リチウムイオン電池用電極を得て、第3層の電極板に活物質(リン酸鉄リチウム)、導電剤(カーボンチューブ+カーボンブラック)、バインダー(ポリテトラフルオロエチレン)及び造孔剤(リチウムジフルオロオキサラトボレート)が含まれ、100重量部の活物質に対して、導電剤の含有量が1重量部であり、バインダーの含有量が3重量部であり、造孔剤の含有量が12重量部であり、第3層の電極板の厚さが33.3μmであり、空隙構造を有し、造孔剤が少なくとも一部の空隙構造内に充填され、計算によると、空隙構造の空隙率が0.368である。
【0068】
本実施例で製造されたリチウムイオン電池用電極は、3層の極板層を有し、集電体から徐々に離れる方向に沿って、各層の極板層における空隙構造の空隙率が徐々に増加し、総厚さが100μmであり、平均空隙率が0.332である。
(比較例1)
【0069】
以下の方法でリチウムイオン電池用電極を製造した。
【0070】
ホットプレス法で単層の電極板を集電体(アルミニウム箔)に圧着して、リチウムイオン電池用電極を得て、上記単層の電極板に活物質(リン酸鉄リチウム)、導電剤(カーボンチューブ+カーボンブラック)及びバインダー(ポリテトラフルオロエチレン)が含まれ、100重量部の活物質に対して、導電剤の含有量が1重量部であり、バインダーの含有量が3重量部であり、上記単層の電極板の厚さが100μmであり、空隙構造を有し、計算によると、空隙構造の空隙率が0.25である。
(比較例2)
【0071】
以下の方法でリチウムイオン電池用電極を製造した。
【0072】
ホットプレス法で単層の電極板を集電体(アルミニウム箔)に圧着して、リチウムイオン電池用電極を得て、上記単層の電極板に活物質(リン酸鉄リチウム)、導電剤(カーボンチューブ+カーボンブラック)、バインダー(ポリテトラフルオロエチレン)及び造孔剤(リチウムジフルオロオキサラトボレート)が含まれ、100重量部の活物質に対して、導電剤の含有量が1重量部であり、バインダーの含有量が3重量部であり、造孔剤の含有量が2重量部であり、上記単層の電極板の厚さが100μmであり、空隙構造を有し、造孔剤が少なくとも一部の空隙構造内に充填され、計算によると、空隙構造の空隙率が0.272である。
(比較例3)
【0073】
以下の方法でリチウムイオン電池用電極を製造した。
【0074】
(1)ホットプレス法で第1層の電極板を集電体(アルミニウム箔)に圧着し、第1層の電極板に活物質(リン酸鉄リチウム)、導電剤(カーボンチューブ+カーボンブラック)、バインダー(ポリテトラフルオロエチレン)及び造孔剤(リチウムジフルオロオキサラトボレート)が含まれ、100重量部の活物質に対して、導電剤の含有量が1重量部であり、バインダーの含有量が3重量部であり、造孔剤の含有量が4重量部であり、第1層の電極板の厚さが33.3μmであり、空隙構造を有し、造孔剤が少なくとも一部の空隙構造内に充填され、計算によると、空隙構造の空隙率が0.294であり、
(2)ホットプレス法で第2層の電極板を第1層の電極板に圧着し、第2層の電極板に活物質(リン酸鉄リチウム)、導電剤(カーボンチューブ+カーボンブラック)、バインダー(ポリテトラフルオロエチレン)及び造孔剤(リチウムジフルオロオキサラトボレート)が含まれ、100重量部の活物質に対して、導電剤の含有量が1重量部であり、バインダーの含有量が3重量部であり、造孔剤の含有量が2重量部であり、第2層の電極板の厚さが33.3μmであり、空隙構造を有し、造孔剤が少なくとも一部の空隙構造内に充填され、計算によると、空隙構造の空隙率が0.272であり、
(3)ホットプレス法で第3層の電極板を第2層の電極板に圧着し、かつ融着処理を行って、リチウムイオン電池用電極を得て、第3層の電極板に活物質(リン酸鉄リチウム)、導電剤(カーボンチューブ+カーボンブラック)及びバインダー(ポリテトラフルオロエチレン)が含まれ、100重量部の活物質に対して、導電剤の含有量が1重量部であり、バインダーの含有量が3重量部であり、第3層の電極板の厚さが33.3μmであり、空隙構造を有し、計算によると、空隙構造の空隙率が0.25である。
【0075】
本比較例で製造されたリチウムイオン電池用電極は、3層の極板層を有し、集電体から徐々に離れる方向に沿って、各層の極板層における空隙構造の空隙率が徐々に減少し、総厚さが100μmであり、平均空隙率が0.272である。
(試験例)
【0076】
実施例1~5及び比較例1~3で製造されたリチウムイオン電池用電極をそれぞれ正極として対応する負極、電解液と共にリチウムイオン電池に組み立て、電池の設計容量が1.8Ahである。
【0077】
負極板の製造プロセスとして、人造黒鉛、導電剤であるカーボンブラック、増粘剤であるCMC、バインダーであるSBRを質量比96.4:1:1.2:1.4で混合し、脱イオン水を加えて撹拌機の作用下で撹拌して、均一な負極ペースト系を得て、ペーストを銅箔集電体に塗布し、乾燥させ、ロールプレスし、切断して負極板を得た。
【0078】
電解液の製造について、環状カーボネート、鎖状カーボネート、カルボン酸エステルから選択される1種又は複数種であってもよい有機溶媒を混合し、次に十分に乾燥したLiPF6を混合溶媒に溶解させて、濃度が1mol/Lの電解液を製造した。
【0079】
各リチウムイオン電池における正極の屈曲度、単位質量あたりの容量、単位面積当たりの容量、内部抵抗及び放電容量比を本技術分野における一般的な方法で測定した。
【0080】
屈曲度の測定について、FIB-SEMにより極板を層ごとに切断し、次に極板構造に対して三次元再構成を行い、ソフトウェアシミュレーションにより極板の屈曲度を得ることができる。
【0081】
単位質量あたりの容量の測定について、組み立てられた電池を化成しグレーディングした後、0.33Cの定電流及び定電圧で3.8Vまで充電し、0.05Cでカットオフし、次に0.33Cで2.0Vまで放電して放電容量を得て、放電容量と電池の総塗布量との比を単位質量あたりの容量とし、単位がmAh/gである。
【0082】
単位面積当たりの容量について、上記放電容量と正極板の総面積との比を単位面積当たりの容量とし、単位がmAh/cm2である。
【0083】
内部抵抗について、電池を50%SOCに調整し、2h静置し、電圧V1を記録し、1.5Cで30s放電し、電圧V2を記録し、(V1-V2)/1.5Cによりインピーダンス値を得ることができる。
【0084】
レート放電容量比について、0.33Cの定電流及び定電圧で3.8Vまで充電し、0.05Cでカットオフし、次に0.2Cで2.0Vまで放電し、そして0.33Cの定電流及び定電圧で3.8Vまで充電し、0.05Cでカットオフし、2Cで2.0Vまで放電し、2Cで放電して得られた容量と0.2Cで放電して得られた容量との比をレート放電容量比とする。
【0085】
【0086】
表1から分かるように、実施例1~5のリチウムイオン電池用正極は、低い屈曲度を有する。
【表2】
【0087】
表2から分かるように、実施例1~5のリチウムイオン電池用正極は、高い単位質量あたりの容量及び単位面積当たりの容量を有し、かつ空隙率の増加に伴って、単位質量あたりの容量が徐々に高くなるが、単位面積当たりの容量が先に上昇し、その後に低下する傾向を呈する。
【表3】
【0088】
表3から分かるように、実施例1~5のリチウムイオン電池用正極は、低いインピーダンスを有する。
【表4】
【0089】
表4から分かるように、実施例1~5のリチウムイオン電池用正極は、高いレート放電維持率を有する。
【0090】
表1~4のデータから分かるように、実施例1~5のリチウムイオン電池用正極は、低い屈曲度及びインピーダンス、高い単位質量あたりの容量、単位面積当たりの容量及びレート放電維持率を有するため、本開示のリチウムイオン電池用電極が良好な動力学的性能を有することを示す。
【0091】
以上、図面を参照しながら本願の実施例を説明したが、本願は、上記具体的な実施形態に限定されるものではなく、上記具体的な実施形態は、限定的なものではなく、例示的なものに過ぎず、当業者であれば、本願の示唆で、本願の趣旨及び特許請求の範囲の保護範囲から逸脱せずに多くの形態を有することができ、これらは、いずれも本願の保護範囲内に属する。
【手続補正書】
【提出日】2024-03-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体と、前記集電体上に積層されたn層の極板層とを含むリチウムイオン電池用電極であって、nが2以上の整数であり、
各極板層は造孔剤を含み、前記集電体から徐々に離れる方向に沿って、各極板層の造孔剤の含有量は、集電体から離れる方向に、徐々に多くなり、前記造孔剤は、常温で固体状態を呈する電解液添加剤から選択される、リチウムイオン電池用電極。
【請求項2】
各極板層はさらに活物質を含み、100重量部の活物質に対して、前記集電体から徐々に離れる方向に沿って、第1極板層における造孔剤の含有量は、0~4重量部であり、第n極板層における造孔剤の含有量は、1~10重量部であり、第2極板層~第(n-1)極板層における造孔剤の含有量は、1~10重量部である、請求項1に記載の電極。
【請求項3】
各極板層は、空隙構造を有し、少なくとも一部の空隙構造には造孔剤が充填され、
集電体から徐々に離れる方向に、第i極板層における空隙構造の空隙率δ
iは、以下の式の通りである、請求項
1に記載の電極。
【数1】
(式中、1≦i≦nであり、iは、整数であり、ε
iは、第i極板層における造孔剤と活物質との重量比であり、ρ
1は、活物質の真密度であり、単位がg/cm
3であり、ρ
2は、活物質の限界圧密密度であり、単位がg/cm
3であり、ρ
3は、造孔剤の真密度であり、単位がg/cm
3である。)
【請求項4】
前記電極において、第n極板層における空隙構造の平均空隙率は、以下の条件を満たす、請求項
1に記載の電極。
【数2】
(式中、d
iは、第i極板層の厚さであり、単位がμmである。)
【請求項5】
前記電極において、隣接する2つの極板層における空隙構造の空隙率は、以下の条件を満たす、請求項
1に記載の電極。
δ
i+1=δ
i+(δ
n-δ
1)/n
【請求項6】
前記集電体から徐々に離れる方向に沿って、第1極板層の体積密度は、2.55g/cm
3~2.75g/cm
3であり、第n極板層の体積密度は、2.0g/cm
3~2.5g/cm
3であり、第2極板層~第(n-1)極板層の体積密度は、2.0g/cm
3~2.70g/cm
3である、請求項
1に記載の電極。
【請求項7】
前記電極において、n層の極板層の総厚さは、20μm~200μmである、請求項
1に記載の電極。
【請求項8】
nは、2~10の整数である、請求項
1に記載の電極。
【請求項9】
nは、2~5の整数である、請求項
1に記載の電極。
【請求項10】
各極板層は、さらに導電剤及びバインダーを含み、100重量部の活物質に対して、導電剤の含有量は、0.1~5重量部であり、バインダーの含有量は、0.5~5重量部であり、
前記活物質は、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リン酸鉄リチウム及びマンガン酸リチウムから選択される少なくとも1種であり、
前記導電剤は、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンブラック及び炭素繊維から選択される少なくとも1種であり、
前記バインダーは、ポリフッ化ビニリデン及び/又はポリテトラフルオロエチレンから選択され、
前記造孔剤は、リチウムジフルオロオキサラトボレート、ビスフルオロメチルジアミンリチウム、ホウ酸リチウム、四ホウ酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、硝酸リチウム及び塩化リチウムから選択される少なくとも1種である、請求項
1に記載の電極。
【請求項11】
前記造孔剤は、リチウムジフルオロオキサラトボレート及び/又はビスフルオロメチルジアミンリチウムである、請求項
1に記載の電極。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池用電極を製造する方法であって、
異なる含有量の造孔剤が含まれるn層の電極板を、造孔剤の含有量の少ない順に集電体上に積層して圧着して、リチウムイオン電池用電極を得るステップを含む、方法。
【請求項13】
以下の方法で製造される電極板の製造方法であって、
活物質、導電剤、バインダー及び造孔剤を気流粉砕して混合し、混合材料を得るステップと、
前記混合材料を加熱し溶融した後、電界紡糸を行って、繊維化材料を得るステップと、
前記繊維化材料に対してホットプレス成形を行って、電極板を得るステップと、
を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
多孔質電極を含み、前記多孔質電極は、請求項1~11のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池用電
極を、電解液に浸漬して得られる、リチウムイオン電池。
【請求項15】
多孔質電極を含み、前記多孔質電極は、請求項12に記載の方法で得られたリチウムイオン電池用電極を、電解液に浸漬して得られる、リチウムイオン電池。
【国際調査報告】