(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】電池正極材料及びその製造方法と応用
(51)【国際特許分類】
H01M 4/58 20100101AFI20240822BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240822BHJP
H01M 10/0566 20100101ALI20240822BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240822BHJP
【FI】
H01M4/58
H01M4/36 C
H01M10/0566
H01M10/052
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579123
(86)(22)【出願日】2022-09-23
(85)【翻訳文提出日】2024-03-14
(86)【国際出願番号】 CN2022120748
(87)【国際公開番号】W WO2023046048
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】202111125874.6
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510177809
【氏名又は名称】ビーワイディー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】程斌
(72)【発明者】
【氏名】潘▲儀▼
(72)【発明者】
【氏名】庄明昊
(72)【発明者】
【氏名】叶▲ゆう▼珍
(72)【発明者】
【氏名】▲でん▼若▲い▼
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ02
5H029AJ03
5H029AK01
5H029AL01
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM07
5H029CJ02
5H029CJ22
5H029CJ28
5H029HJ01
5H029HJ02
5H029HJ04
5H029HJ05
5H029HJ14
5H029HJ15
5H050AA02
5H050AA08
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CB01
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050CB12
5H050EA08
5H050EA11
5H050FA18
5H050GA02
5H050GA22
5H050GA27
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA14
5H050HA15
(57)【要約】
電池正極材料は、コアと、コアに形成された第1シェル層とを含み、コアは、LiMnxFe1-xPO4を含み、第1シェル層は、LiMnyFe1-yPO4を含み、ここで、0<x≦0.4であり、0.6≦y≦0.9である。当該電池正極材料は、多層分布構造を有する。本発明は、上記電池正極材料の製造方法及びその応用をさらに提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア(10)と、前記コア(10)の表面に形成された第1シェル層(20)とを含む電池正極材料であって、
前記コア(10)は、LiMn
xFe
1-xPO
4を含み、前記第1シェル層(20)は、LiMn
yFe
1-yPO
4を含み、ここで、0<x≦0.4であり、0.6≦y≦0.9である、ことを特徴とする電池正極材料。
【請求項2】
前記コア(10)と前記第1シェル層(20)との質量比は、1:(1.5~9)である、ことを特徴とする請求項1に記載の電池正極材料。
【請求項3】
前記コア(10)の直径は、0.5μm~5μmである、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電池正極材料。
【請求項4】
前記第1シェル層(20)の厚さは、0.09μm~2.7μmである、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の電池正極材料。
【請求項5】
前記電池正極材料において、Fe元素とMn元素とのモル比は、1:(1~9)である、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の電池正極材料。
【請求項6】
前記第1シェル層(20)の表面には、第2シェル層がさらに形成され、前記第2シェル層は、LiFePO
4及び炭素を含む、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の電池正極材料。
【請求項7】
前記第2シェル層の厚さは、20nm~600nmである、ことを特徴とする請求項6に記載の電池正極材料。
【請求項8】
前記電池正極材料において、前記コア(10)の質量百分率は、10%~40%であり、前記第1シェル層(20)の質量百分率は、45%~80%であり、前記第2シェル層の質量百分率は、10%~20%である、ことを特徴とする請求項6又は7に記載の電池正極材料。
【請求項9】
ドープ元素をさらに含み、前記ドープ元素は、Ti、V、Co、Ni、Cu、Zn、Mg、Al、Ca、Mo及びWのうちの1つ又は複数を含み、前記ドープ元素の前記電池正極材料中の質量百分率は、0.1%~0.5%である、ことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の電池正極材料。
【請求項10】
前記第1シェル層(20)は、前記ドープ元素を含む、ことを特徴とする請求項9に記載の電池正極材料。
【請求項11】
前記炭素の当該電池正極材料中の質量百分率は、1%~3%である、ことを特徴とする請求項6に記載の電池正極材料。
【請求項12】
電池正極材料の製造方法において、
リチウム源、鉄源、マンガン源、リン源及び溶媒を反応釜内に入れて第1反応を行って、コア(10)を得るステップであって、前記コア(10)は、LiMn
xFe
1-xPO
4を含み、ここで、0<x≦0.4であり、前記第1反応は、温度が375℃~500℃であり、圧力が23Mpa以上である、ステップと、
リチウム源、鉄源、マンガン源、リン源、溶媒及び前記コア(10)を反応釜内に入れて第2反応を行って、前記コア(10)の表面に第1シェル層(20)を被覆して、第1シェル層(20)が形成されたコア(10)を得るステップであって、前記第1シェル層(20)は、LiMn
yFe
1-yPO
4を含み、ここで、0.6≦y≦0.9であり、前記第2反応は、温度が375℃~500℃であり、圧力が23Mpa以上である、ステップと、
第1シェル層(20)が形成された前記コア(10)を500℃~800℃で焼成して、前記電池正極材料を得るステップと、を含む、ことを特徴とする電池正極材料の製造方法。
【請求項13】
第1シェル層(20)が形成された前記コア(10)を焼成する前に、リチウム源、鉄源、リン源、炭素源、溶媒及び第1シェル層(20)が形成された前記コア(10)を反応釜内に入れて第3反応を行って、前記第1シェル層(20)の表面に第2シェル層を被覆するステップであって、前記第2シェル層は、LiFePO
4及び炭素を含み、前記第3反応は、温度が375℃~500℃であり、圧力が23Mpa以上である、ステップをさらに含む、ことを特徴とする請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記リチウム源は、無機リチウム塩及び有機リチウム塩を含み、前記無機リチウム塩は、炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、リン酸二水素リチウム、リン酸一水素リチウム、リン酸リチウム、硝酸リチウム、硫酸リチウム、クロム酸リチウム及び水酸化リチウムのうちの1つ又は複数を含み、前記有機リチウム塩は、シュウ酸リチウム、酢酸リチウム、安息香酸リチウム、クエン酸リチウム、安息香酸リチウムのうちの1つ又は複数を含む、ことを特徴とする請求項12又は13に記載の製造方法。
【請求項15】
好ましくは、前記鉄源は、酸化鉄、炭酸鉄、シュウ酸鉄、硫酸鉄、塩化鉄及び酢酸鉄のうちの1つ又は複数を含む、ことを特徴とする請求項12又は13に記載の製造方法。
【請求項16】
前記マンガン源は、一酸化マンガン、二酸化マンガン、水酸化マンガン、炭酸マンガン、シュウ酸マンガン、硫酸マンガン、硝酸マンガン、硫酸マンガン、塩化マンガン及び酢酸マンガンのうちの1つ又は複数を含む、ことを特徴とする請求項12に記載の製造方法。
【請求項17】
前記リン源は、リン酸、リン酸二水素アンモニウム、リン酸一水素アンモニウム、及びリン酸二水素リチウムのうちの1つ又は複数を含む、ことを特徴とする請求項12又は13に記載の製造方法。
【請求項18】
前記炭素源は、グルコース、スクロース、ポリビニルアルコール、澱粉、及びクエン酸のうちの1つ又は複数を含む、ことを特徴とする請求項13に記載の製造方法。
【請求項19】
前記焼成は、不活性雰囲気中で行われ、前記不活性雰囲気は、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、ネオンガス、クリプトンガス、キセノンガス、及びラドンガスのうちの1つ又は複数を含む、ことを特徴とする請求項12又は13に記載の製造方法。
【請求項20】
正極、負極、セパレータ及び電解液を含む二次電池であって、前記正極は、正極板を含み、前記正極板は、集電体と、前記集電体に設置された正極材料層とを含み、前記正極材料層は、請求項1~11のいずれか一項に記載の電池正極材料を含む、ことを特徴とする二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2021年9月24日に中国国家知識産権局に提出された、発明の名称が「電池正極材料及びその製造方法と応用」である中国特許出願第202111125874.6号の優先権を主張するものであり、その全ての内容は、参照により本願に組み込まれるものとする。
【0002】
本願は、リチウムイオン電池の分野に関し、具体的には、電池正極材料及びその製造方法と応用に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリアニオン型リン酸鉄リチウムLiFePO4は、最も安全なリチウムイオン電池正極材料であるとよく知られているが、その理論エネルギー密度(586Wh/kg)が低いため、広汎な用途が大幅に制限されている。リン酸マンガンリチウムLiMnPO4は、リン酸鉄リチウムと類似する構造を有するとともに、より高い理論エネルギー密度(701Wh/kg)を有するため、高い利用可能性がある。しかし、リン酸マンガンリチウムは、電子伝導度及びリチウムイオンの拡散速度(それぞれ、<10-10S/cm、10-15cm2/sである)がリン酸鉄リチウム(10-9S/cm及び10-14cm2/s)よりも低いとともに、2価Mn溶解の問題が存在するため、優れる電気化学特性を備えることが非常に困難になる。現在、実施可能な解決手段は、MnをFeで部分的に置換してLiMnxFe1-xPO4(0<x<1)を形成し、エネルギー密度及び動力学特性に応じて折衷的なものをとって、これを基に材料に対して必要な改質を行って、特性に優れる材料を得ることである。
【発明の概要】
【0004】
本願の第1態様に係る電池正極材料は、コアと、前記コアに形成された第1シェル層とを含み、前記コアは、LiMnxFe1-xPO4を含み、前記第1シェル層は、LiMnyFe1-yPO4を含み、ここで、0<x≦0.4であり、0.6≦y≦0.9である。
【0005】
本願の一実施例では、前記コアと前記第1シェル層との質量比は、1:(1.5~9)である。
【0006】
本願の一実施例では、前記コアの直径は、0.5μm~5μmである。
【0007】
本願の一実施例では、前記第1シェル層の厚さは、0.09μm~2.7μmである。
【0008】
本願の一実施例では、前記電池正極材料において、Fe元素とMn元素とのモル比は、1:(1~9)である。
【0009】
本願の一実施例では、前記第1シェル層の表面には、第2シェル層がさらに形成され、前記第2シェル層は、LiFePO4及び炭素を含む。
【0010】
本願の一実施例では、前記第2シェル層の厚さは、20nm~600nmである。
【0011】
本願の一実施例では、前記電池正極材料において、前記コアの質量百分率は、10%~40%であり、前記第1シェル層の質量百分率は、45%~80%であり、前記第2シェル層の質量百分率は、10%~20%である。
【0012】
本願の一実施例では、前記電池正極材料は、ドープ元素をさらに含み、前記ドープ元素は、Ti、V、Co、Ni、Cu、Zn、Mg、Al、Ca、Mo及びWのうちの1つ又は複数を含み、前記ドープ元素の前記電池正極材料中の質量百分率は、0.1%~0.5%である。
【0013】
本願の一実施例では、前記第1シェル層は、前記ドープ元素を含む。
【0014】
本願の一実施例では、前記炭素の前記電池正極材料中の質量百分率は、1%~3%である。
【0015】
本願の第2態様に係る電池正極材料の製造方法は、
リチウム源、鉄源、マンガン源、リン源及び溶媒を反応釜内に入れて第1反応を行って、コアを得るステップであって、前記コアは、LiMnxFe1-xPO4を含み、ここで、0<x≦0.4であり、前記第1反応は、温度が375℃~500℃であり、圧力が23Mpa以上である、ステップと、
リチウム源、鉄源、マンガン源、リン源、溶媒及び前記コアを反応釜内に入れて第2反応を行って、前記コアの表面に第1シェル層を被覆して、第1シェル層が形成されたコアを得るステップであって、前記第1シェル層は、LiMnyFe1-yPO4を含み、ここで、0.6≦y≦0.9であり、前記第2反応は、温度が375℃~500℃であり、圧力が23Mpa以上である、ステップと、
第1シェル層が形成された前記コアを500℃~800℃で焼成して、電池正極材料を得るステップと、を含む。
【0016】
本願の一実施例では、第1シェル層が形成された前記コアを焼成する前に、前記製造方法は、リチウム源、鉄源、リン源、炭素源、溶媒及び第1シェル層が形成された前記コアを反応釜内に入れて第3反応を行って、前記第1シェル層の表面に第2シェル層を被覆するステップであって、前記第2シェル層は、LiFePO4及び炭素を含み、前記第3反応は、温度が375℃~500℃であり、圧力が23Mpa以上である、ステップをさらに含む。
【0017】
本願の一実施例では、前記リチウム源は、無機リチウム塩及び有機リチウム塩を含み、前記無機リチウム塩は、炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、リン酸二水素リチウム、リン酸一水素リチウム、リン酸リチウム、硝酸リチウム、硫酸リチウム、クロム酸リチウム及び水酸化リチウムのうちの1つ又は複数を含み、前記有機リチウム塩は、シュウ酸リチウム、酢酸リチウム、安息香酸リチウム、クエン酸リチウム、及び安息香酸リチウムのうちの1つ又は複数を含む。
【0018】
本願の一実施例では、前記鉄源は、酸化鉄、炭酸鉄、シュウ酸鉄、硫酸鉄、塩化鉄及び酢酸鉄のうちの1つ又は複数を含む。
【0019】
本願の一実施例では、前記マンガン源は、一酸化マンガン、二酸化マンガン、水酸化マンガン、炭酸マンガン、シュウ酸マンガン、硫酸マンガン、硝酸マンガン、硫酸マンガン、塩化マンガン及び酢酸マンガンのうちの1つ又は複数を含む。
【0020】
本願の一実施例では、前記リン源は、リン酸、リン酸二水素アンモニウム、リン酸一水素アンモニウム、及びリン酸二水素リチウムのうちの1つ又は複数を含む。
【0021】
本願の一実施例では、前記炭素源は、グルコース、スクロース、ポリビニルアルコール、澱粉、及びクエン酸のうちの1つ又は複数を含む。
【0022】
本願の一実施例では、前記焼成は、不活性雰囲気中で行われ、前記不活性雰囲気は、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、ネオンガス、クリプトンガス、キセノンガス、及びラドンガスのうちの1つ又は複数を含む。
【0023】
本願の第3態様に係る二次電池は、正極、負極、セパレータ及び電解液を含み、前記正極は、正極板を含み、前記正極板は、集電体と、前記集電体に設置された正極材料層とを含み、前記正極材料層は、第1態様に記載の電池正極材料を含む。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本願の一実施形態に係る電池正極材料を示す図である。
【
図2】構造Aを有する電池正極材料の構造概略図である。
【
図3】構造Bを有する正極材料の構造概略図である。
【
図4】本願の一実施形態に係る電池正極材料の製造方法を示す図である。
【
図5】本願の別の実施形態に係る電池正極材料の製造方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本願の実施例における図面を参照しながら、本願の実施例における技術手段を明確かつ完全に説明し、明らかに、説明される実施例は、本願の実施例の一部であり、全てではない。本願の実施例に基づいて、当業者が創造的な労働をしない前提で得られる他の全ての実施例は、いずれも本願の保護範囲に属するものである。
【0026】
リン酸マンガンリチウムLiMnPO4は、リン酸鉄リチウムに比べて、より高い理論エネルギー密度を有するが、その電子伝導度及びリチウムイオン拡散速度がリン酸鉄リチウムの電子伝導度及びリチウムイオン拡散速度より低く、その容量の発揮に不利である。また、電池正極材料において、材料の内部のイオン及び電子が外部に輸送される距離が長いため、イオン及び電子の輸送が困難になり、リン酸マンガンリチウム正極材料の容量の発揮がさらに制限される。リン酸マンガンリチウム正極材料の電気化学特性を改善するために、本願は、電池正極材料を提供し、当該電池正極材料において、マンガン含有量が高く、電子及びイオンの伝導度が低いLiMnxFe1-xPO4(0.6≦x≦1)部分が外層に配置され、マンガン含有量が低く、電子及びイオンの伝導度が高いLiMnxFe1-xPO4(0<x≦0.4)部分が内層に配置されるため、電子及びイオンの輸送困難部分(輸送困難部分は、材料における輸送が困難である部分である)での距離を効果的に短縮させ、正極材料の電気化学特性を向上させる。
【0027】
図1に示すように、
図1は、本願の一実施形態に係る電池正極材料を示す。
図1に示すように、本願の電池正極材料は、コア10と、コア10の表面に形成された第1シェル層20とを含み、第1シェル層20は、コア10を完全に被覆する。コア10は、式Iに示すリチウム鉄マンガンリン酸化合物を含み、第1シェル層20は、式IIに示すリチウム鉄マンガンリン酸化合物を含む。
【0028】
LiMnxFe1-xPO4、式I、ここで、0<x≦0.4である。
【0029】
LiMnyFe1-yPO4、式II、ここで、0.6≦y≦0.9である。
【0030】
電池正極材料において、イオン及び電子の材料コアから外部への拡散経路が長いと、イオン及び電子の輸送に不利であり、本願は、LiMnPO4中にFe元素をドーピングすることにより、正極材料の導電性を向上させることができ、材料コア中の割合が高い鉄元素は、イオン及び電子の拡散速度を向上させ、さらに、正極材料の電気化学特性を改善し、第1シェル層は、割合が高いマンガン元素を有することにより、電池正極材料が高いエネルギー密度を有することを保証し、当該構造設置により、電池正極材料は、高いエネルギー密度を有するとともに高い導電性を有し、電池に適用される場合に、電池に高い充放電容量を有させる。
【0031】
本願のいくつかの実施形態では、LiMnxFe1-xPO4において、xの値は、具体的には、0.1、0.2、0.3又は0.4であってもよいが、これらに限定されず、LiMnyFe1-yPO4において、yの値は、具体的には、0.6、0.7、0.8又は0.9であってもよいが、これらに限定されない。xを0.4以下にすることにより、内層が高い伝導度を有することを保証でき、yを0.6以上にすることにより、材料全体が高いエネルギー密度を有することを保証することができる。本願のいくつかの実施形態では、xの値は、0.2~0.3であり、yの値は、0.8~0.9である。本願の電池正極材料において、コア中の鉄元素の質量百分率は、第1シェル層中の鉄元素の質量百分率より大きく、コア中の割合が高い鉄は、コアに高い導電性を有させ、コア中のイオン及び電子の輸送速度を向上させ、電池正極材料の内部のイオン及び電子の輸送を促進することができ、第1シェル層は、高いマンガン含有量を有することにより、電池正極材料全体が高いエネルギー密度を有することを保証する。
【0032】
以下、構造Bを有する正極材料を対照として、本願の構造を有する正極材料が材料の電気化学特性を改善できることを説明する。本願の正極材料について、構造Aを有するものを例とすると、構造Aを有する電池正極材料は、内部から外部への構成が順にLiMn
0.2Fe
0.8PO
4(40%)/LiMn
0.8Fe
0.2PO
4(60%)であり、LiMn
0.2Fe
0.8PO
4の電池正極材料中の質量百分率が40%であり、LiMn
0.8Fe
0.2PO
4の電池正極材料中の質量百分率が60%である。構造Bを有する正極材料は、内部から外部への構成が順にLiMn
0.8Fe
0.2PO
4(60%)/LiMn
0.2Fe
0.8PO
4(40%)であり、
図2及び
図3に示すように、
図2は、構造Aを有する電池正極材料の構造概略図であり、
図3は、構造Bを有する正極材料の構造概略図である。構造Aと構造Bは、2層の材料の配置位置が逆になり、即ち、構造A中のシェル層としてのLiMn
0.8Fe
0.2PO
4は、構造Bの場合にコアであり、構造A中のLiMn
0.8Fe
0.2PO
4とLiMn
0.2F
e0.8PO
4との質量比、及び構造B中のLiMn
0.8Fe
0.2PO
4とLiMn
0.2F
e0.8PO
4との質量比はいずれも、3:2であり、即ち、構造Aを有する電池正極材料と構造Bを有する正極材料は、エネルギー密度が同じであり、また、LiMn
0.8Fe
0.2PO
4とLiMn
0.2Fe
0.8PO
4は、材料密度がほぼ等しいため、構造Aと構造Bは、構造配置が異なるが、それらの粒子全体のサイズが近似する。
【0033】
構造Bを有する正極材料に対して、コアLiMn
0.8Fe
0.2PO
4中のマンガンの含有量が高いとともに鉄の含有量が低く、電子及びイオンのコアでの輸送が困難であり、即ち、コアが輸送困難層である。構造Bを有する正極材料に対して、その輸送困難層でのイオン及び電子の輸送の最大距離が0.843Rである。当該輸送距離の計算について、正極材料の半径がRであり、コアの半径がR
1であると仮定すると、コアLiMn
0.8Fe
0.2PO
4の正極材料中の質量百分率が60%であるため、R及びR
1が以下の関係を有する。
【数1】
【0034】
上記式によりR1=0.843Rを得て、即ち、構造Bを有する正極材料に対して、その輸送困難層でのイオン及び電子の最大輸送距離が0.843Rである。
【0035】
構造Aを有する電池正極材料に対して、そのシェル層が輸送困難層であり、電池正極材料の半径がRであり、コアの半径がR
2であると仮定すると、構造Aを有する電池正極材料の輸送困難層でのイオン及び電子の最大輸送距離がR-R
2であり、その計算は、具体的には、以下のとおりである。
【数2】
【0036】
上記式によりR2=0.737Rを得て、即ち、構造Aを有する電池正極材料に対して、その輸送困難層でのイオン及び電子の最大輸送距離が0.263Rである。したがって、LiMn0.8Fe0.2PO4をコアとする構造Bを有する正極材料に比べて、構造Aを有する電池正極材料の輸送困難層でのイオン及び電子の輸送距離がより短く、その距離短縮割合が69%であり、距離短縮割合は、(0.843R-0.263R)/0.843Rにより計算される。
【0037】
同様に、LiMn0.8Fe0.2PO4の正極材料中の質量百分率が70%である場合、構造Aを有する電池正極材料に対して、その困難層での輸送距離が0.331Rであり、構造Bを有する電池正極材料に対して、その困難層での輸送距離が0.888Rである。即ち、構造BのLiMn0.8Fe0.2PO4をコアとする分布構造に比べて、構造Aを有する電池正極材料の輸送困難層でのイオン及び電子の輸送距離がより短く、その距離短縮割合が63%である。本願は、他の含有量の構成を有する正極材料の輸送距離との比較を挙げ、表1に示すように、表1は、含有量が異なるLiMn0.8Fe0.2PO4を有する正極材料の輸送距離の比較表である。
【0038】
表1 含有量が異なるLiMn
0.8Fe
0.2PO
4を有する正極材料の輸送距離の比較表
【表1】
【0039】
上記計算から明らかに分かるように、同じエネルギー密度を有する前提で、本願の構造分布により、電池正極材料の輸送困難層でのイオン及び電子の輸送距離を効果的に短縮させることにより、電池正極材料の電気化学特性を改善することができ、これにより、電池正極材料は、電池のレート特性を効果的に向上させることができる。
【0040】
本願のいくつかの実施形態では、第1シェル層の電池正極材料中の質量百分率は、コアの電池正極材料中の質量百分率より大きく、さらに、コアと第1シェル層との質量比は、1:(1.5~9)である。コアと第1シェル層との質量比は、具体的には、1:1.5、1:2、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8又は1:9であってもよいが、これらに限定されない。コアと第1シェル層との質量比を上記範囲に制御することにより、電池正極材料が高いエネルギー密度を有するとともに、材料内部も高い導電性を有することを保証でき、第1シェル層の質量百分率が上記範囲内にある場合、コアシェル分布構造の正極材料に対する調整効果が高く、正極材料の電気化学特性を効果的に改善することができる。
【0041】
本願のいくつかの実施形態では、コアの直径は、0.5μm~5μmであり、具体的には、0.5μm、0.8μm、1μm、2μm、4μm又は5μmであってもよいが、これらに限定されない。本願のいくつかの実施形態では、第1シェル層の厚さは、0.09μm~2.7μmである。第1シェル層の厚さは、具体的には、0.09μm、0.1μm、0.5μm、1μm、2μm又は2.7μmであってもよいが、これらに限定されない。
【0042】
本願のいくつかの実施形態では、電池正極材料において、Fe元素とMn元素とのモル比は、1:(1~9)である。電池正極材料において、Fe元素とMn元素とのモル比は、具体的には、1:1、1:3、1:5又は1:9であってもよいが、これらに限定されない。例えば、電池正極材料は、内部から外部への構成がLiMn0.2Fe0.8PO4(20%)/LiMn0.8Fe0.2PO4(80%)である場合、Fe元素とMn元素とのモル比は、1:2.125である。電池正極材料におけるFe元素とMn元素とのモル比を上記範囲に制御することにより、電池が高いエネルギー密度を有することを保証することができる。
【0043】
本願のいくつかの実施形態では、電池正極材料は、ドープ元素をさらに含み、ドープ元素は、Ti、V、Co、Ni、Cu、Zn、Mg、Al及びCaのうちの1つ又は複数を含み、電池正極材料のイオン及び電子の伝導を改善することができる。本願では、電池正極材料のコア及び第1シェル層にはいずれも、元素をドーピングして導電性を向上させることができ、本願のいくつかの実施形態では、ドープ元素は、電池正極材料の第1シェル層に位置する。本願のいくつかの実施形態では、ドープ元素の電池正極材料中の質量百分率は、0.1%~0.5%である。ドープ元素の電池正極材料中の質量百分率は、具体的には、0.1%、0.3%、0.4%又は0.5%であってもよいが、これらに限定されない。
【0044】
本願のいくつかの実施形態では、電池正極材料の第1シェル層の表面には、第2シェル層がさらに形成され、第2シェル層は、LiFePO4及び炭素を含む。Mnは、電解液において溶出が発生するとともに、電極と電解液との界面に堆積して高抵抗層を形成して、電池の内部抵抗を増加させ、電池のレート特性及びサイクル特性を低減するため、第1シェル層の表面にLiFePO4を被覆することにより、第1シェル層と電解液とを隔離して、Mnの溶出を抑制することができる。本願のいくつかの実施形態では、LiFePO4の電池正極材料中の質量百分率は、10%~20%である。LiFePO4の電池正極材料中の質量百分率は、具体的には、10%、13%、15%又は20%であってもよいが、これらに限定されない。本願では、第2シェル層中の炭素は、電池正極材料の導電性を向上させ、大きいレートの充電及び放電を実現することができる。本願のいくつかの実施形態では、炭素の電池正極材料中の質量百分率は、1%~5%である。炭素の電池正極材料中の質量百分率は、具体的には、1%、3%、4%又は5%であってもよいが、これらに限定されない。本願のいくつかの実施形態では、第2シェル層の厚さは、20nm~600nmである。第2シェル層の厚さは、具体的には、20nm、50nm、100nm、200nm、300nm、400nm、500nm又は600nmであってもよいが、これらに限定されない。本願のいくつかの実施形態では、第2シェル層の厚さは、25nm~400nmである。
【0045】
本願に係る電池正極材料は、高いエネルギー密度を有するだけでなく、高い導電性を有し、大きいレートの充電及び放電を実現することができ、電池に適用される場合に電池のサイクル特性及びレート特性を効果的に改善することができる。
【0046】
本願は、電池正極材料の製造方法をさらに提供し、
図4は、本願の一実施形態に係る電池正極材料の製造方法を示し、
図4に示すように、当該方法は、
リチウム源、鉄源、マンガン源、リン源及び溶媒を反応釜内に入れて第1反応を行って、コアを得るステップ100であって、コアは、LiMn
xFe
1-xPO
4を含み、ここで、0<x≦0.4であり、第1反応は、温度が375℃~500℃であり、圧力が23Mpa以上である、ステップ100と、
リチウム源、鉄源、マンガン源、リン源、溶媒及びコアを反応釜内に入れて第2反応を行って、コアの表面に第1シェル層を被覆して、第1シェル層が形成されたコアを得るステップ200であって、第1シェル層は、LiMn
yFe
1-yPO
4を含み、ここで、0.6≦y≦0.9であり、第2反応は、温度が375℃~500℃であり、圧力が23Mpa以上である、ステップ200と、
第1シェル層が形成されたコアを500℃~800℃で焼成して、電池正極材料を得るステップ300と、を含む。
【0047】
本願のいくつかの実施形態では、溶媒は、水を含む。本願のいくつかの実施形態では、リチウム源は、無機リチウム塩及び有機リチウム塩を含み、無機リチウム塩は、炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、リン酸二水素リチウム、リン酸一水素リチウム、リン酸リチウム、硝酸リチウム、硫酸リチウム、クロム酸リチウム及び水酸化リチウムのうちの1つ又は複数を含み、有機リチウム塩は、シュウ酸リチウム、酢酸リチウム、安息香酸リチウム、クエン酸リチウム、及び安息香酸リチウムのうちの1つ又は複数を含む。本願のいくつかの実施形態では、鉄源は、酸化鉄、炭酸鉄、シュウ酸鉄、硫酸鉄、塩化鉄及び酢酸鉄のうちの1つ又は複数を含む。本願のいくつかの実施形態では、マンガン源は、一酸化マンガン、二酸化マンガン、水酸化マンガン、炭酸マンガン、シュウ酸マンガン、硫酸マンガン、硝酸マンガン、硫酸マンガン、塩化マンガン及び酢酸マンガンのうちの1つ又は複数を含む。本願のいくつかの実施形態では、リン源は、リン酸、リン酸二水素アンモニウム、リン酸一水素アンモニウム、及びリン酸二水素リチウムのうちの1つ又は複数を含む。
【0048】
本願のいくつかの実施形態では、第1反応は、温度が375℃~500℃であり、圧力が23MPa~60Mpaであり、反応時間が0.5h~10hである。本願のいくつかの実施形態では、第1反応の反応時間は、0.5h~3hであり、0.5h~3hの反応時間であれば、構造が安定するコアを形成することができる。第1反応の反応時間は、具体的には、0.5h、1h、2h、3h、5h又は10hであってもよいが、これらに限定されない。本願のいくつかの実施形態では、第2反応は、温度が375℃~500℃であり、圧力が23MPa~60Mpaであり、反応時間が0.5h~10hである。本願のいくつかの実施形態では、第2反応の反応時間は、0.5h~3hであり、0.5h~3hの反応時間であれば、構造が安定する第1シェル層を形成することができる。本願の実施形態では、第1反応及び第2反応は、不活性雰囲気中で行われるものであり、不活性雰囲気は、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、ネオンガス、クリプトンガス、キセノンガス、及びラドンガスのうちの1つ又は複数を含む。
【0049】
本願のいくつかの実施形態では、焼成は、温度が500℃~800℃であり、時間が2h~10hである。焼成の温度は、具体的には、500℃、600℃、700℃又は800℃であってもよいが、これらに限定されず、焼成の時間は、具体的には、2h、4h、6h又は10hであってもよいが、これらに限定されない。
【0050】
本願は、超臨界流体法を使用してコア及び第1シェル層を製造し、反応の温度が375℃以上であるとともに圧力が23Mpa以上である場合、反応釜内の溶媒は、超臨界流体状態にあり、反応の活性を大幅に向上させることができ、緻密な結晶構造の形成に役立ち、また、当該方法は、操作しやすく、一回焼成すれば電池正極材料を得ることができ、反応時間を大幅に短縮させる。
【0051】
本願のいくつかの実施形態では、電池正極材料の製造方法は、第2シェル層を製造するステップをさらに含み、
図5は、本願の別の実施形態に係る電池正極材料の製造方法を示し、
図5に示すように、当該方法は、
リチウム源、鉄源、マンガン源、リン源及び溶媒を反応釜内に入れて第1反応を行って、コアを得るステップ100であって、コアは、LiMn
xFe
1-xPO
4を含み、ここで、0<x≦0.4であり、第1反応は、温度が375℃~500℃であり、圧力が23Mpa以上である、ステップ100と、
リチウム源、鉄源、マンガン源、リン源、溶媒及びコアを反応釜内に入れて第2反応を行って、コアの表面に第1シェル層を被覆して、第1シェル層が形成されたコアを得るステップ200であって、第1シェル層は、LiMn
yFe
1-yPO
4を含み、ここで、0.6≦y≦0.9であり、第2反応は、温度が375℃~500℃であり、圧力が23Mpa以上である、ステップ200と、
リチウム源、鉄源、リン源、炭素源、溶媒及び第1シェル層が形成されたコアを反応釜内に入れて第3反応を行って、第1シェル層の表面に第2シェル層を被覆するステップ300であって、第2シェル層は、LiFePO
4及び炭素を含み、第3反応は、温度が375℃~500℃であり、圧力が23Mpa以上である、ステップ300と、
第1シェル層及び第2シェル層が形成されたコアを500℃~800℃で焼成して、電池正極材料を得るステップ400と、を含む。
【0052】
本願のいくつかの実施形態では、炭素源は、グルコース、スクロース、ポリビニルアルコール、澱粉、及びクエン酸のうちの1つ又は複数を含む。第3反応は、温度が375℃~500℃であり、圧力が23MPa~60Mpaであり、反応時間が0.5h~10hである。超臨界流体法を使用して緻密な第2シェル層の形成に役立ち、これによりMnの溶出をより効果的に抑制する。本願のいくつかの実施形態では、第3反応は、不活性雰囲気中で行われる。
【0053】
本願に係る電池正極材料の製造方法は、簡単であり、操作可能性が高く、レート特性及びサイクル特性に優れる電池正極材料を製造することができる。
【0054】
本願に係る正極板は、集電体と、集電体に設置された正極材料層とを含み、正極材料層は、本願の電池正極材料を含む。本願のいくつかの実施形態では、正極材料層の製造は、電池正極材料、導電剤、バインダー及び溶媒を混合して正極ペーストを形成し、正極ペーストを塗布し、乾燥させた後に正極材料層を得るステップを含んでもよい。正極ペーストを製造する場合、バインダーと溶媒とを混合して、十分に撹拌した後に、導電剤を添加し、撹拌した後に、電池正極材料を添加し、撹拌した後に篩にかけて、正極ペーストを得る。導電剤、バインダー及び溶媒は、電池の分野の一般的な選択である。例えば、バインダーは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニルアルコール(PVA)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド(PI)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリレート、ポリオレフィン、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)及びアルギン酸ナトリウムから選択される1つ又は複数であってもよい。導電剤は、カーボンナノチューブ、カーボンブラック及びグラフェンから選択される1つ又は複数であってもよい。
【0055】
本願に係る二次電池は、正極、負極、電解液、及び正極と負極との間に位置するセパレータを含み、正極は、本願に係る正極板を含む。
【0056】
本願では、二次電池の負極は、本分野における公知の任意の負極であってもよい。本願のいくつかの実施形態では、負極は、炭素系負極、シリコン系負極、スズ系負極及びリチウム負極のうちの1つ又は複数を含んでもよい。炭素系負極は、黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン、グラフェンなどを含んでもよく、シリコン系負極は、シリコン、シリコンカーバイド、酸化ケイ素、シリコン金属化合物などを含んでもよく、スズ系負極は、スズ、炭化スズ、酸化スズ、スズ金属化合物を含んでもよく、リチウム負極は、金属リチウム又はリチウム合金を含んでもよい。リチウム合金は、具体的には、リチウムケイ素合金、リチウムナトリウム合金、リチウムカリウム合金、リチウムアルミニウム合金、リチウムスズ合金及びリチウムインジウム合金のうちの少なくとも1つであってもよい。本願のいくつかの実施例では、負極の集電体は、銅箔であり、負極活物質は、天然黒鉛、人造黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン、チタン酸リチウム、三酸化二鉄、リン酸チタンリチウム、二酸化チタン、シリコン、一酸化ケイ素、スズ及びアンチモンのうちの1つ又は複数を含み、バインダーは、ポリアクリル酸(PAA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、カルボキシメチルセルロース(CMC)及びスチレンブタジエンゴム(SBR)のうちの1つ又は複数を含み、導電剤は、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、Super-P、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、活性炭及びグラフェンのうちの1つ又は複数を含む。本願では、負極の製造方法については、本分野における公知の任意の方法を使用してもよい。
【0057】
本願では、二次電池のセパレータは、当業者に公知の任意のセパレータであってもよく、例えば、セパレータは、ポリオレフィン微多孔膜、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンフェルト、ガラスマット又は極細ガラス繊維紙のうちの1つ又は複数であってもよい。
【0058】
本願では、二次電池の電解液は、電解質リチウム塩を非水溶媒に溶解した溶液を含む。本願のいくつかの実施形態では、電解質リチウム塩は、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF6)、ケイフッ化リチウム(LiSiF6)、テトラフェニルホウ酸リチウム(LiB(C6H5)4)、塩化リチウム(LiCl)、臭化リチウム(LiBr)、テトラクロロアルミン酸リチウム(LiAlCl4)、リチウムフルオロハイドロカボニルサルフォネート(LiC(SO2CF3)3)、LiCH3SO3、LiN(SO2CF3)2及びLiN(SO2C2F5)2のうちの1つ又は複数を含む。本願のいくつかの実施形態では、非水溶媒は、鎖状酸エステル及び環状酸エステルのうちの1つ又は複数を含む。本願のいくつかの実施形態では、鎖状酸エステルは、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)及びジプロピルカーボネート(DPC)のうちの1つ又は複数を含む。本願のいくつかの実施形態では、鎖状酸エステルは、フッ素、硫黄又は不飽和結合を含む鎖状有機エステル類を含む。本願のいくつかの実施形態では、環状酸エステルは、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ビニレンカーボネート(VC)、γ-ブチロラクトン(γ-BL)及びスルトンのうちの1つ又は複数を含む。本願のいくつかの実施形態では、環状酸エステルは、フッ素、硫黄又は不飽和結合を含む環状有機エステルを含む。本願のいくつかの実施形態では、非水溶媒は、鎖状エーテル及び環状エーテル溶液のうちの1つ又は複数を含む。本願のいくつかの実施形態では、環状エーテルは、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン(2-MeTHF)、1,3-ジオキソラン(DOL)及び4-メチル-1,3-ジオキソラン(4-MeDOL)のうちの1つ又は複数を含む。本願のいくつかの実施形態では、環状エーテルは、フッ素、硫黄又は不飽和結合を含む環状有機エーテルを含む。本願のいくつかの実施形態では、鎖状エーテルは、ジメトキシメタン(DMM)、1,2-ジメトキシエタン(DME)、1,2-ジメトキシプロパン(DMP)及びジグライム(DG)のうちの1つ又は複数を含む。本願のいくつかの実施形態では、鎖状エーテルは、フッ素、硫黄又は不飽和結合を含む鎖状有機エーテルを含む。本願のいくつかの実施形態では、電解液中の電解質リチウム塩の濃度は、0.1mol/L~15mol/Lである。本願のいくつかの実施形態では、電解質リチウム塩の濃度は、1mol/L~10mol/Lである。
【0059】
本願のいくつかの実施形態では、電池の製造は、積層工法又は巻回工法のいずれかを使用することができる。本願のいくつかの実施例では、積層工法を使用して電池を製造する。
【0060】
本願に係る二次電池は、本願の電池正極板を使用するため、高いサイクル特性及び安全性を有する。
【0061】
以下、複数の実施例を挙げて本願の技術手段をさらに説明する。
【実施例1】
【0062】
電池正極材料の製造方法において、当該電池正極材料は、構造が内部から外部へ順にLiMn0.2Fe0.8PO4(30%)/LiMn0.8Fe0.2PO4(60%)/LiFePO4(10%)/Cであり、その一般組成式がLiMn0.54Fe0.46PO4/Cである。当該電池正極材料中の電池正極活物質は、LiMn0.2Fe0.8PO4、LiMn0.8Fe0.2PO4及びLiFePO4である。LiMn0.2Fe0.8PO4(30%)は、LiMn0.2Fe0.8PO4の電池正極活物質中の質量百分率が30%であることを示し、LiFePO4(10%)は、LiFePO4の電池正極活物質中の質量百分率が10%であることを示す。
【0063】
1)LiMn0.2Fe0.8PO4コアの製造
化学量論比で、炭酸リチウム、酢酸鉄(II)、酢酸マンガン及びリン酸を秤量するとともに水中に溶解して、混合溶液を得て、混合溶液を高圧反応釜に入れ、高圧反応釜にアルゴンガスを導入して不活性雰囲気を維持し、撹拌状態で380℃に昇温させ、反応釜の圧力を24Mpaとし、1h反応させた後に沈殿を集め、沈殿を水及びエタノールで洗浄して乾燥させた後にLiMn0.2Fe0.8PO4コアを得る。
【0064】
2)LiMn0.8Fe0.2PO4第1シェル層の製造
化学量論比で、炭酸リチウム、酢酸鉄(II)、酢酸マンガン及びリン酸を秤量するとともに水中に溶解して、混合溶液を得て、混合溶液を高圧反応釜に入れて、LiMn0.2Fe0.8PO4コアを添加し、高圧反応釜にアルゴンガスを導入して不活性雰囲気を維持し、撹拌状態で380℃に昇温させ、反応釜の圧力を24Mpaとし、1h反応させた後に沈殿を集め、沈殿を水及びエタノールで洗浄して乾燥させた後に、コアシェル構造のLiMn0.2Fe0.8PO4/LiMn0.8Fe0.2PO4を得る。
【0065】
3)第2シェル層の製造
化学量論比で、炭酸リチウム、酢酸鉄(II)、グルコース及びリン酸を秤量するとともに水中に溶解して、混合溶液を得て、混合溶液を高圧反応釜に入れて、コアシェル構造のLiMn0.2Fe0.8PO4/LiMn0.8Fe0.2PO4を添加し、高圧反応釜にアルゴンガスを導入して不活性雰囲気を維持し、撹拌状態で380℃に昇温させ、反応釜の圧力を24Mpaとし、1h反応させた後に沈殿を集め、沈殿を水及びエタノールで洗浄して乾燥させた後に、生成物を700℃で5h焼成して、電池正極材料LiMn0.2Fe0.8PO4(30%)/LiMn0.8Fe0.2PO4(60%)/LiFePO4(10%)/Cを得る。
【0066】
4)二次電池の製造
製造された電池正極材料、導電剤、及びバインダーを90:5:5の質量比でN-メチルピロリドンに分散させ、導電剤がカーボンブラック及びカーボンナノチューブであり、バインダーがPVDF5130であり、ペーストの固形分が50%である。ペーストをアルミニウム箔の表面に塗布し乾燥させた後に、61mm×72mmの正極板に切断し、正極板とセパレータ及び黒鉛負極とを組み立てて電池を得る。
【実施例2】
【0067】
実施例2と実施例1とは、コアと第1シェル層との質量比が異なるという点で相違し、実施例2の電池正極材料は、構造がLiMn0.2Fe0.8PO4(10%)/LiMn0.8Fe0.2PO4(80%)/LiFePO4(10%)/Cであり、その一般組成式がLiMn0.66Fe0.34PO4/Cである。当該電池正極材料中の電池正極活物質は、LiMn0.2Fe0.8PO4、LiMn0.8Fe0.2PO4及びLiFePO4である。LiMn0.2Fe0.8PO4の電池正極活物質中の質量百分率が10%であり、LiMn0.8Fe0.2PO4の電池正極活物質中の質量百分率が80%である。実施例1と同じ方法を使用して電池を製造する。
【実施例3】
【0068】
実施例3と実施例1とは、コアと第1シェル層との質量比が異なるという点で相違し、実施例3の電池正極材料は、構造がLiMn0.2Fe0.8PO4(40%)/LiMn0.8Fe0.2PO4(45%)/LiFePO4(15%)/Cであり、その一般組成式がLiMn0.44Fe0.56PO4/Cである。当該電池正極材料中の電池正極活物質は、LiMn0.2Fe0.8PO4、LiMn0.8Fe0.2PO4及びLiFePO4である。LiMn0.2Fe0.8PO4の電池正極活物質中の質量百分率が40%であり、LiMn0.8Fe0.2PO4の電池正極活物質中の質量百分率が45%である。実施例1と同じ方法を使用して電池を製造する。
【実施例4】
【0069】
実施例4と実施例1とは、コアと第1シェル層との質量比が異なるという点で相違し、実施例4の電池正極材料は、構造がLiMn0.2Fe0.8PO4(10%)/LiMn0.8Fe0.2PO4(75%)/LiFePO4(15%)/Cであり、その一般組成式がLiMn0.62Fe0.38PO4/Cである。当該電池正極材料中の電池正極活物質は、LiMn0.2Fe0.8PO4、LiMn0.8Fe0.2PO4及びLiFePO4である。LiMn0.2Fe0.8PO4の電池正極活物質中の質量百分率が10%であり、LiMn0.8Fe0.2PO4の電池正極活物質中の質量百分率が75%である。実施例1と同じ方法を使用して電池を製造する。
【実施例5】
【0070】
実施例5と実施例1とは、コアと第1シェル層との質量比が異なるという点で相違し、実施例5の電池正極材料は、構造がLiMn0.2Fe0.8PO4(20%)/LiMn0.8Fe0.2PO4(70%)/LiFePO4(10%)/Cであり、その一般組成式がLiMn0.6Fe0.4PO4/Cである。当該電池正極材料中の電池正極活物質は、LiMn0.2Fe0.8PO4、LiMn0.8Fe0.2PO4及びLiFePO4である。LiMn0.2Fe0.8PO4の電池正極活物質中の質量百分率が20%であり、LiMn0.8Fe0.2PO4の電池正極活物質中の質量百分率が70%である。実施例1と同じ方法を使用して電池を製造する。
【実施例6】
【0071】
実施例6と実施例5とは、コアの成分が異なるという点で相違し、実施例6の電池正極材料は、構造がLiMn0.4Fe0.6PO4(20%)/LiMn0.8Fe0.2PO4(70%)/LiFePO4(10%)/Cであり、その一般組成式がLiMn0.64Fe0.36PO4/Cである。当該電池正極材料中の電池正極活物質は、LiMn0.4Fe0.6PO4、LiMn0.8Fe0.2PO4及びLiFePO4である。LiMn0.4Fe0.6PO4の電池正極活物質中の質量百分率が20%であり、LiMn0.8Fe0.2PO4の電池正極活物質中の質量百分率が70%である。実施例1と同じ方法を使用して電池を製造する。
【実施例7】
【0072】
実施例7と実施例5とは、第1シェル層の成分が異なるという点で相違し、実施例7の電池正極材料は、構造がLiMn0.2Fe0.8PO4(20%)/LiMn0.9Fe0.1PO4(70%)/LiFePO4(10%)/Cであり、その一般組成式がLiMn0.67Fe0.33PO4/Cである。当該電池正極材料中の電池正極活物質は、LiMn0.2Fe0.8PO4、LiMn0.9Fe0.1PO4及びLiFePO4である。LiMn0.2Fe0.8PO4の電池正極活物質中の質量百分率が20%であり、LiMn0.9Fe0.1PO4の電池正極活物質中の質量百分率が70%である。実施例1と同じ方法を使用して電池を製造する。
【実施例8】
【0073】
実施例8と実施例5とは、第1シェル層の成分が異なるという点で相違し、実施例8の電池正極材料は、構造がLiMn0.2Fe0.8PO4(20%)/LiMn0.6Fe0.4PO4(70%)/LiFePO4(10%)/Cであり、その一般組成式がLiMn0.56Fe0.44PO4/Cである。当該電池正極材料中の電池正極活物質は、LiMn0.2Fe0.8PO4、LiMn0.6Fe0.4PO4及びLiFePO4である。LiMn0.2Fe0.8PO4の電池正極活物質中の質量百分率が20%であり、LiMn0.6Fe0.4PO4の電池正極活物質中の質量百分率が70%である。実施例1と同じ方法を使用して電池を製造する。
【実施例9】
【0074】
実施例9と実施例5とは、コア及び第1シェル層の成分が異なるという点で相違し、実施例9の電池正極材料は、コア及び第1シェル層にCoがドーピングされ、構造が内部から外部へ順にLiMn0.19Fe0.8Co0.01PO4(20%)/LiMn0.79Fe0.2Co0.01PO4(70%)/LiFePO4(10%)/Cであり、その一般組成式がLiMn0.591Fe0.40Co0.009PO4/Cである。当該電池正極材料中の電池正極活物質は、LiMn0.19Fe0.8Co0.01PO4、LiMn0.79Fe0.2Co0.01PO4及びLiFePO4である。
【0075】
実施例9における電池正極材料の製造方法は、以下のステップ1)~2)を含む。
【0076】
1)LiMn0.19Fe0.8Co0.01PO4コアの製造
化学量論比で、炭酸リチウム、酢酸鉄(II)、酢酸マンガン、酢酸コバルト及びリン酸を秤量するとともに水中に溶解して、混合溶液を得て、混合溶液を高圧反応釜に入れ、高圧反応釜にアルゴンガスを導入して不活性雰囲気を維持し、撹拌状態で380℃に昇温させ、反応釜の圧力を24Mpaとし、1h反応させた後に沈殿を集め、沈殿を水及びエタノールで洗浄して乾燥させた後にLiMn0.19Fe0.8Co0.01PO4コアを得る。
【0077】
2)LiMn0.79Fe0.2Co0.01PO4第1シェル層の製造
化学量論比で、炭酸リチウム、酢酸鉄(II)、酢酸マンガン、酢酸コバルト及びリン酸を秤量するとともに水中に溶解して、混合溶液を得て、混合溶液を高圧反応釜に入れて、LiMn0.19Fe0.8Co0.01PO4コアを添加し、高圧反応釜にアルゴンガスを導入して不活性雰囲気を維持し、撹拌状態で380℃に昇温させ、反応釜の圧力を24Mpaとし、1h反応させた後に沈殿を集め、沈殿を水及びエタノールで洗浄して乾燥させた後に、コアシェル構造のLiMn0.19Fe0.8Co0.01PO4/LiMn0.79Fe0.2Co0.01PO4を得る。
【0078】
実施例5と同じ方法を使用して第2シェル層及び電池を製造する。
【実施例10】
【0079】
実施例10と実施例5とは、第2シェル層がLiFePO4を含有しないという点で相違し、実施例10の電池正極材料は、構造がLiMn0.2Fe0.8PO4(25%)/LiMn0.8Fe0.2PO4(75%)/Cであり、その一般組成式がLiMn0.65Fe0.35PO4/Cである。当該電池正極材料中の電池正極活物質は、LiMn0.2Fe0.8PO4及びLiMn0.8Fe0.2PO4である。実施例1と同じ方法を使用して電池を製造する。
【実施例11】
【0080】
実施例11と実施例5とは、各層の質量百分率が異なるという点で相違し、実施例11の電池正極材料は、構造がLiMn0.2Fe0.8PO4(20%)/LiMn0.8Fe0.2PO4(75%)/LiFePO4(5%)/Cであり、その一般組成式がLiMn0.64Fe0.36PO4/Cである。当該電池正極材料中の電池正極活物質は、LiMn0.2Fe0.8PO4、LiMn0.8Fe0.2PO4及びLiFePO4である。実施例1と同じ方法を使用して電池を製造する。
【実施例12】
【0081】
実施例12と実施例1とは、コアと第1シェル層との質量比が異なるという点で相違し、実施例12の正極材料は、構造がLiMn0.2Fe0.8PO4(60%)/LiMn0.8Fe0.2PO4(30%)/LiFePO4(10%)/Cであり、その一般組成式がLiMn0.36Fe0.64PO4/Cである。当該電池正極材料中の電池正極活物質は、LiMn0.2Fe0.8PO4、LiMn0.8Fe0.2PO4及びLiFePO4である。LiMn0.2Fe0.8PO4の電池正極活物質中の質量百分率が60%であり、LiMn0.8Fe0.2PO4の電池正極活物質中の質量百分率が30%である。実施例1と同じ方法を使用して電池を製造する。
(比較例1)
【0082】
比較例1と実施例1とは、正極材料の構造が異なるという点で相違し、比較例1の正極材料は、構造がLiMn0.8Fe0.2PO4(70%)/LiMn0.2Fe0.8PO4(20%)/LiFePO4(10%)/Cであり、その一般組成式がLiMn0.6Fe0.3PO4/Cである。実施例1と同じ方法を使用して電池を製造する。
(比較例2)
【0083】
比較例2と実施例1とは、比較例2において水熱法により製造されるという点で相違し、比較例2の正極材料の製造方法は、
化学量論比で、炭酸リチウム、酢酸鉄(II)、酢酸マンガン及びリン酸を秤量するとともに水中に溶解して、混合溶液を得て、混合溶液を水熱反応釜に入れ、水熱反応釜にアルゴンガスを導入して不活性雰囲気を維持し、撹拌状態で175℃に昇温させ、8h反応させた後に沈殿を集め、沈殿を水及びエタノールで洗浄して乾燥させた後にLiMn0.2Fe0.8PO4コアを得て、
化学量論比で、炭酸リチウム、酢酸鉄(II)、酢酸マンガン及びリン酸を秤量するとともに水中に溶解して、混合溶液を得て、混合溶液を水熱反応釜に入れて、LiMn0.2Fe0.8PO4コアを添加し、水熱反応釜にアルゴンガスを導入して不活性雰囲気を維持し、撹拌状態で175℃に昇温させ、8h反応させた後に沈殿を集め、沈殿を水及びエタノールで洗浄して乾燥させた後に、コアシェル構造のLiMn0.2Fe0.8PO4/LiMn0.8Fe0.2PO4を得て、
化学量論比で、炭酸リチウム、酢酸鉄(II)、グルコース及びリン酸を秤量するとともに水中に溶解して、混合溶液を得て、混合溶液を水熱反応釜に入れて、コアシェル構造のLiMn0.2Fe0.8PO4/LiMn0.8Fe0.2PO4を添加し、水熱反応釜にアルゴンガスを導入して不活性雰囲気を維持し、撹拌状態で175℃に昇温させ、6.5h反応させた後に沈殿を集め、沈殿を水及びエタノールで洗浄して乾燥させた後に、生成物を720℃で7h焼成して、電池正極材料LiMn0.2Fe0.8PO4(30%)/LiMn0.8Fe0.2PO4(60%)/LiFePO4(10%)/Cを得ることである。比較例2における製造された材料中の元素及び総含有量が実施例1と同じであるが、製造されたシェル層とコアとが互いに滲み合って遷移構造を形成するため、予期する設計構造を実現できず、電子及びイオンの材料での輸送が明らかに向上しない。実施例1と同じ方法を使用して電池を製造する。
(比較例3)
【0084】
比較例3と実施例5とは、第1シェル層の成分が異なるという点で相違し、比較例3の正極材料は、構造がLiMn0.2Fe0.8PO4(20%)/LiMn0.5Fe0.5PO4(70%)/LiFePO4(10%)/Cであり、その一般組成式がLiMn0.39Fe0.61PO4/Cである。LiMn0.2Fe0.8PO4の電池正極活物質中の質量百分率が20%であり、LiMn0.5Fe0.5PO4の電池正極活物質中の質量百分率が70%である。実施例5と同じ方法を使用して電池を製造する。
【0085】
効果比較例
本願によって製造された電池正極材料の特性を検証するために、本願は、効果比較例をさらに提供する。
【0086】
1)実施例1~12及び比較例1~3における電池に対して電気化学特性の測定を行い、25℃で2.8~4.3Vの電圧測定範囲において、実施例1~12及び比較例1~3における電池に対して0.1C定電流定電圧充電を行い、オフ電流が0.02Cであり、0.1C定電流放電を行い、初回充電容量及び放電容量を記録し、放電比容量=電池初回放電容量(ミリアンペア時)/正極材料重量(グラム)、及びエネルギー密度=放電比容量(mAh/g)×平均放電電圧(V)の式で電池のパラメータを計算し、測定結果を表2に示す。
【0087】
表2 実施例1~12及び比較例1~3における電池の電気化学特性パラメータ表
【表2】
【0088】
本願の実施例1における第1シェル層は、LiMn0.8Fe0.2PO4であり、LiMn0.8Fe0.2PO4の電池正極材料中の質量百分率が60%であり、LiMn0.2Fe0.8PO4の質量百分率が30%であり、当該構造分布により、電池正極材料は、高い伝導度を有することにより、電池は、高いレート特性を有する。実施例2におけるLiMn0.8Fe0.2PO4の電池正極材料中の質量百分率が80%であることにより、電池は、高いエネルギー密度を有するが、LiMn0.8Fe0.2PO4層が実施例1に比べてより厚いため、そのレート特性が低い。実施例3におけるLiMn0.8Fe0.2PO4の電池正極材料中の質量百分率が45%であることにより、電池は、高いエネルギー密度を有するが、そのレート特性が実施例1に比べてより高い。実施例4における第2シェル層の電池正極材料中の質量百分率が15%であるとともに、LiMn0.8Fe0.2PO4の質量百分率が75%であり、材料全体は、実施例1より高いエネルギー密度を有する。実施例5におけるLiMn0.8Fe0.2PO4の質量百分率が70%であり、そのレート特性が実施例1に類似する。実施例6におけるコアの成分は、LiMn0.4Fe0.6PO4であり、実施例5に比べて、実施例6は、より高いエネルギー密度を有し、そのレート特性も比較的低い。実施例7における第1シェル層は、LiMn0.9Fe0.1PO4であり、高いマンガン含有量により、電池は、より高いエネルギー密度を有するが、そのレート特性が低い。実施例8における第1シェル層は、LiMn0.6Fe0.4PO4であり、そのマンガン含有量が実施例5より低いため、そのレート特性が高く、エネルギー密度が低い。実施例9における電池正極材料にCo元素がドーピングされ、実施例5に比べて、実施例9における電池は、高いレート特性を有する。実施例10における第2シェル層は、LiFePO4を含有せず、第1シェル層の含有量が高いため、高いエネルギー密度を有し、第2シェル層の含有量が低く、マンガン溶解問題を抑制する効果が低いため、電池のサイクル特性が低い。実施例11における第2シェル層は、一定のLiFePO4を含有し、実施例10に比べて、電池は、より高いサイクル特性を有する。実施例12におけるLiMn0.8Fe0.2PO4の電池正極材料中の質量百分率が30%であり、その電池のエネルギー密度が比較的低い。
【0089】
比較例1におけるLiMn0.8Fe0.2PO4は、材料コアであり、その一般組成式が実施例5に類似するが、そのレート特性が実施例5よりはるかに低い。比較例2は、水熱法を使用して正極材料を製造し、水熱法で製造された材料は、結晶性が低いため、後続きの焼成過程においてシェル層とコアとが互いに滲み合って遷移構造を形成し、材料における層分けが明らかではなく、予期する設計構造を実現できず、電子及びイオンの材料での輸送が明らかに向上しない。比較例3における第1シェル層は、LiMn0.5Fe0.5PO4であり、そのマンガン含有量が低く、電池のエネルギー密度が低い。
【0090】
以上は、本願の実施形態であるが、これにより本願の範囲を限定するものと理解してはならない。なお、当業者にとって、本願の原理から逸脱することなく、いくつかの改良及び修正を行うことができ、これらの改良及び修正も本願の保護範囲にあると見なされる。
【手続補正書】
【提出日】2024-03-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア(10)と、前記コア(10)の表面に形成された第1シェル層(20)とを含む電池正極材料であって、
前記コア(10)は、LiMn
xFe
1-xPO
4を含み、前記第1シェル層(20)は、LiMn
yFe
1-yPO
4を含み、ここで、0<x≦0.4であり、0.6≦y≦0.9である、ことを特徴とする電池正極材料。
【請求項2】
前記コア(10)と前記第1シェル層(20)との質量比は、1:(1.5~9)である、ことを特徴とする請求項1に記載の電池正極材料。
【請求項3】
前記コア(10)の直径は、0.5μm~5μmである、ことを特徴とする請求項
1に記載の電池正極材料。
【請求項4】
前記第1シェル層(20)の厚さは、0.09μm~2.7μmである、ことを特徴とする請求項
1に記載の電池正極材料。
【請求項5】
前記電池正極材料において、Fe元素とMn元素とのモル比は、1:(1~9)である、ことを特徴とする請求項
1に記載の電池正極材料。
【請求項6】
前記第1シェル層(20)の表面には、第2シェル層がさらに形成され、前記第2シェル層は、LiFePO
4及び炭素を含む、ことを特徴とする請求項
1に記載の電池正極材料。
【請求項7】
前記第2シェル層の厚さは、20nm~600nmである、ことを特徴とする請求項6に記載の電池正極材料。
【請求項8】
前記電池正極材料において、前記コア(10)の質量百分率は、10%~40%であり、前記第1シェル層(20)の質量百分率は、45%~80%であり、前記第2シェル層の質量百分率は、10%~20%である、ことを特徴とする請求項
6に記載の電池正極材料。
【請求項9】
ドープ元素をさらに含み、前記ドープ元素は、Ti、V、Co、Ni、Cu、Zn、Mg、Al、Ca、Mo及びWのうちの1つ又は複数を含み、前記ドープ元素の前記電池正極材料中の質量百分率は、0.1%~0.5%である、ことを特徴とする請求項
1に記載の電池正極材料。
【請求項10】
前記第1シェル層(20)は、前記ドープ元素を含む、ことを特徴とする請求項9に記載の電池正極材料。
【請求項11】
前記炭素の当該電池正極材料中の質量百分率は、1%~3%である、ことを特徴とする請求項6に記載の電池正極材料。
【請求項12】
電池正極材料の製造方法において、
リチウム源、鉄源、マンガン源、リン源及び溶媒を反応釜内に入れて第1反応を行って、コア(10)を得るステップであって、前記コア(10)は、LiMn
xFe
1-xPO
4を含み、ここで、0<x≦0.4であり、前記第1反応は、温度が375℃~500℃であり、圧力が23Mpa以上である、ステップと、
リチウム源、鉄源、マンガン源、リン源、溶媒及び前記コア(10)を反応釜内に入れて第2反応を行って、前記コア(10)の表面に第1シェル層(20)を被覆して、第1シェル層(20)が形成されたコア(10)を得るステップであって、前記第1シェル層(20)は、LiMn
yFe
1-yPO
4を含み、ここで、0.6≦y≦0.9であり、前記第2反応は、温度が375℃~500℃であり、圧力が23Mpa以上である、ステップと、
第1シェル層(20)が形成された前記コア(10)を500℃~800℃で焼成して、前記電池正極材料を得るステップと、を含む、ことを特徴とする電池正極材料の製造方法。
【請求項13】
第1シェル層(20)が形成された前記コア(10)を焼成する前に、リチウム源、鉄源、リン源、炭素源、溶媒及び第1シェル層(20)が形成された前記コア(10)を反応釜内に入れて第3反応を行って、前記第1シェル層(20)の表面に第2シェル層を被覆するステップであって、前記第2シェル層は、LiFePO
4及び炭素を含み、前記第3反応は、温度が375℃~500℃であり、圧力が23Mpa以上である、ステップをさらに含む、ことを特徴とする請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記リチウム源は、無機リチウム塩及び有機リチウム塩を含み、前記無機リチウム塩は、炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、リン酸二水素リチウム、リン酸一水素リチウム、リン酸リチウム、硝酸リチウム、硫酸リチウム、クロム酸リチウム及び水酸化リチウムのうちの1つ又は複数を含み、前記有機リチウム塩は、シュウ酸リチウム、酢酸リチウム、安息香酸リチウム、クエン酸リチウム
のうちの1つ又は複数を含む、ことを特徴とする請求項12又は13に記載の製造方法。
【請求項15】
好ましくは、前記鉄源は、酸化鉄、炭酸鉄、シュウ酸鉄、硫酸鉄、塩化鉄及び酢酸鉄のうちの1つ又は複数を含む、ことを特徴とする請求項12又は13に記載の製造方法。
【請求項16】
前記マンガン源は、一酸化マンガン、二酸化マンガン、水酸化マンガン、炭酸マンガン、シュウ酸マンガン、硫酸マンガン、硝酸マンガン
、塩化マンガン及び酢酸マンガンのうちの1つ又は複数を含む、ことを特徴とする請求項12に記載の製造方法。
【請求項17】
前記リン源は、リン酸、リン酸二水素アンモニウム、リン酸一水素アンモニウム、及びリン酸二水素リチウムのうちの1つ又は複数を含む、ことを特徴とする請求項12又は13に記載の製造方法。
【請求項18】
前記炭素源は、グルコース、スクロース、ポリビニルアルコール、澱粉、及びクエン酸のうちの1つ又は複数を含む、ことを特徴とする請求項13に記載の製造方法。
【請求項19】
前記焼成は、不活性雰囲気中で行われ、前記不活性雰囲気は、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、ネオンガス、クリプトンガス、キセノンガス、及びラドンガスのうちの1つ又は複数を含む、ことを特徴とする請求項12又は13に記載の製造方法。
【請求項20】
正極、負極、セパレータ及び電解液を含む二次電池であって、前記正極は、正極板を含み、前記正極板は、集電体と、前記集電体に設置された正極材料層とを含み、前記正極材料層は、請求項1~11のいずれか一項に記載の電池正極材料を含む、ことを特徴とする二次電池。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
本願の一実施例では、前記リチウム源は、無機リチウム塩及び有機リチウム塩を含み、前記無機リチウム塩は、炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、リン酸二水素リチウム、リン酸一水素リチウム、リン酸リチウム、硝酸リチウム、硫酸リチウム、クロム酸リチウム及び水酸化リチウムのうちの1つ又は複数を含み、前記有機リチウム塩は、シュウ酸リチウム、酢酸リチウム、安息香酸リチウム、及びクエン酸リチウムのうちの1つ又は複数を含む。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0019】
本願の一実施例では、前記マンガン源は、一酸化マンガン、二酸化マンガン、水酸化マンガン、炭酸マンガン、シュウ酸マンガン、硫酸マンガン、硝酸マンガン、塩化マンガン及び酢酸マンガンのうちの1つ又は複数を含む。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0047
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0047】
本願のいくつかの実施形態では、溶媒は、水を含む。本願のいくつかの実施形態では、リチウム源は、無機リチウム塩及び有機リチウム塩を含み、無機リチウム塩は、炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、リン酸二水素リチウム、リン酸一水素リチウム、リン酸リチウム、硝酸リチウム、硫酸リチウム、クロム酸リチウム及び水酸化リチウムのうちの1つ又は複数を含み、有機リチウム塩は、シュウ酸リチウム、酢酸リチウム、安息香酸リチウム、及びクエン酸リチウムのうちの1つ又は複数を含む。本願のいくつかの実施形態では、鉄源は、酸化鉄、炭酸鉄、シュウ酸鉄、硫酸鉄、塩化鉄及び酢酸鉄のうちの1つ又は複数を含む。本願のいくつかの実施形態では、マンガン源は、一酸化マンガン、二酸化マンガン、水酸化マンガン、炭酸マンガン、シュウ酸マンガン、硫酸マンガン、硝酸マンガン、塩化マンガン及び酢酸マンガンのうちの1つ又は複数を含む。本願のいくつかの実施形態では、リン源は、リン酸、リン酸二水素アンモニウム、リン酸一水素アンモニウム、及びリン酸二水素リチウムのうちの1つ又は複数を含む。
【国際調査報告】