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特表2024-531048ガソリンエンジンの排気ガス処理のための改善されたTWC触媒
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】ガソリンエンジンの排気ガス処理のための改善されたTWC触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/63 20060101AFI20240822BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20240822BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20240822BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20240822BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20240822BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
B01J23/63 A
B01J37/08 ZAB
B01J37/02 301D
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
F01N3/10 A
F01N3/28 301A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500310
(86)(22)【出願日】2022-08-17
(85)【翻訳文提出日】2024-01-05
(86)【国際出願番号】 GB2022052133
(87)【国際公開番号】W WO2023021287
(87)【国際公開日】2023-02-23
(31)【優先権主張番号】63/260,465
(32)【優先日】2021-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100197583
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 健
(72)【発明者】
【氏名】ミリントン、ポール
(72)【発明者】
【氏名】ムレサン、ニコレタ
(72)【発明者】
【氏名】パスキュイ、アンドレア エヴァ
(72)【発明者】
【氏名】ヴラコウ、マリア シー.
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AB03
3G091BA01
3G091BA14
3G091BA15
3G091BA19
3G091GA06
3G091GB04X
3G091GB06W
3G091GB07W
3G091GB09X
3G091GB10X
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4G169BC43B
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4G169BC51B
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4G169BC72A
4G169BC72B
4G169BC75A
4G169BC75B
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4G169FA03
4G169FB15
4G169FB29
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4G169FC10
(57)【要約】
第1の白金族金属(PGM)成分及び第1の担体材料を含む触媒組成物であって、第1のPGM成分は、白金(Pt)及びパラジウム(Pd)を含み、第1の担体材料上に担持されており、第1のPGM成分は、約5:95~約95:5のPt:Pdのモル比を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の白金族金属(PGM)成分及び第1の担体材料を含む触媒組成物であって、前記第1のPGM成分は、白金(Pt)及びパラジウム(Pd)を含み、前記第1の担体材料上に担持され、かつ
前記第1のPGM成分は、約5:95~約95:5のPt:Pdのモル比を有する、触媒組成物。
【請求項2】
前記Pt:Pdのモル比は、約5:95~約75:25である、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項3】
三元触媒作用のための、請求項1又は2に記載の触媒組成物。
【請求項4】
前記第1のPGM成分は、Pt及びPdからなる、請求項1~3のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項5】
前記Pt及び前記Pdは、少なくとも部分的に合金化され、好ましくは実質的に合金化される、請求項1~4のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項6】
前記第1のPGM成分は、Pt及びPdの合金からなる、請求項5に記載の触媒組成物。
【請求項7】
前記第1の担体材料は、無機酸化物を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項8】
前記無機酸化物は、酸化セリウム、セリア-ジルコニア混合酸化物、アルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物、アルミナ、マグネシア、シリカ、ランタン、ネオジム、プラセオジム、酸化イットリウム、及びそれらの混合酸化物若しくは複合酸化物、又はゼオライトのうちの1つ以上から選択される、請求項7に記載の触媒組成物。
【請求項9】
前記第1の担体材料は、アルミナ、好ましくはガンマ-アルミナ、セリア-ジルコニア混合酸化物、又はそれらの組み合わせから選択される、請求項8に記載の触媒組成物。
【請求項10】
前記アルミナ及び/又は前記セリア-ジルコニア混合酸化物は、ドープされている、請求項9に記載の触媒組成物。
【請求項11】
前記アルミナ及び/又は前記セリア-ジルコニア混合酸化物は、ランタン、ネオジム、イットリウム、ニオブ、プラセオジム、ハフニウム、モリブデン、チタン、バナジウム、亜鉛、カドミウム、マンガン、鉄、銅、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、セシウム、マグネシウム、カリウム及びナトリウムのうちの1つ以上の酸化物、好ましくはランタン、ネオジム、プラセオジム及びイットリウムのうちの1つ以上の酸化物、より好ましくはランタンの酸化物でドープされている、請求項10に記載の触媒組成物。
【請求項12】
前記ドーパントは、0.001重量%~20重量%、好ましくは0.5重量%~10重量%の量で、前記アルミナ及び/又は前記セリア-ジルコニア混合酸化物中に存在する、請求項10又は11に記載の触媒組成物。
【請求項13】
第2のPGM成分及び第2の担体材料を更に含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項14】
前記第2のPGM成分は、ロジウム(Rh)、Rh合金、Pt、Pt合金、Rh-Pt合金又はこれらの混合物を含む、請求項13に記載の触媒組成物。
【請求項15】
排気ガスを処理するための触媒物品であって、
基材と、
第1の白金族金属(PGM)成分及び第1の担体材料を含む第1の触媒領域であって、その第1のPGM成分は、白金(Pt)及びパラジウム(Pd)を含み、第1の担体材料上に担持されている、第1の触媒領域と、を含み、
前記第1のPGM成分は、約5:95~約95:5のPt:Pdのモル比を有する、触媒物品。
【請求項16】
前記Pt:Pdのモル比は、約5:95~約25:75、好ましくは約7:93~約20:80、より好ましくは約9:91~約15:85、更により好ましくは約9:91~約12:88、最も好ましくは約10:90である、請求項15に記載の触媒物品。
【請求項17】
三元触媒作用のための、請求項15又は16に記載の触媒物品。
【請求項18】
前記第1のPGM成分は、Pt及びPdからなる、請求項15~17のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項19】
前記Pt及び前記Pdは、少なくとも部分的に合金化され、好ましくは実質的に合金化される、請求項15~18のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項20】
前記第1のPGM成分は、Pt及びPdの合金からなる、請求項19に記載の触媒物品。
【請求項21】
前記第1の担体材料は、無機酸化物を含む、請求項15~20のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項22】
前記無機酸化物は、酸化セリウム、セリア-ジルコニア混合酸化物、アルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物、アルミナ、マグネシア、シリカ、ランタン、ネオジム、プラセオジム、酸化イットリウム、及びそれらの混合酸化物若しくは複合酸化物、又はゼオライトのうちの1つ以上から選択される、請求項21に記載の触媒物品。
【請求項23】
前記第1の担体材料は、アルミナ、好ましくはガンマ-アルミナ、セリア-ジルコニア混合酸化物、又はそれらの組み合わせから選択される、請求項22に記載の触媒物品。
【請求項24】
前記アルミナ及び/又は前記セリア-ジルコニア混合酸化物は、ドープされている、請求項23に記載の触媒物品。
【請求項25】
前記アルミナ及び/又は前記セリア-ジルコニア混合酸化物は、ランタン、ネオジム、イットリウム、ニオブ、プラセオジム、ハフニウム、モリブデン、チタン、バナジウム、亜鉛、カドミウム、マンガン、鉄、銅、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、セシウム、マグネシウム、カリウム及びナトリウムのうちの1つ以上の酸化物、好ましくはランタン、ネオジム、プラセオジム及びイットリウムのうちの1つ以上の酸化物、より好ましくはランタンの酸化物でドープされている、請求項24に記載の触媒物品。
【請求項26】
前記ドーパントは、0.001重量%~20重量%、好ましくは0.5重量%~10重量%の量で、前記アルミナ及び/又は前記セリア-ジルコニア混合酸化物中に存在する、請求項24又は25に記載の触媒物品。
【請求項27】
第2の触媒領域を更に含む、請求項15~26のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項28】
前記第2の触媒領域は、第2のPGM成分及び第2の担体材料を含む、請求項27に記載の触媒物品。
【請求項29】
前記第2のPGM成分は、ロジウム(Rh)、Rh合金、Pt、Pt合金、Rh-Pt合金又はこれらの混合物を含む、請求項28に記載の触媒物品。
【請求項30】
前記第1の触媒領域及び前記第2の触媒領域は、別個の層を形成し、前記第2の触媒領域は、前記第1の触媒領域上に直接堆積される、請求項27~29のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項31】
前記第1の触媒領域及び前記第2の触媒領域は、別個の層を形成し、前記第1の触媒領域は、前記第2の触媒領域上に直接堆積される、請求項27~29のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項32】
前記第1の触媒領域は、前記基材上に直接担持/堆積されている、請求項15~30のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項33】
前記第2の触媒領域は、前記基材上に直接担持/堆積されている、請求項27~29、及び31のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項34】
前記基材は、第1の端部及び第2の端部を有し、軸方向長さLを有する、請求項15~33のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項35】
前記第1の触媒領域は、前記軸方向長さL全体にわたって延在する、請求項34に記載の触媒物品。
【請求項36】
前記第2の触媒領域は、前記軸方向長さL全体にわたって延在する、請求項34又は35に記載の触媒物品。
【請求項37】
前記第1の触媒領域は、前記軸方向長さL未満にわたって延在する、請求項34又は36に記載の触媒物品。
【請求項38】
前記第2の触媒領域は、前記軸方向長さL未満にわたって延在する、請求項34、35、又は37のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項39】
前記第1の触媒領域は、前記第1の端部から延在する、請求項37に記載の触媒物品。
【請求項40】
前記第1の触媒領域は、前記第2の端部から延在する、請求項37に記載の触媒物品。
【請求項41】
前記第2の触媒領域は、前記第1の端部から延在する、請求項38に記載の触媒物品。
【請求項42】
前記第2の触媒領域は、前記第2の端部から延在する、請求項38に記載の触媒物品。
【請求項43】
前記第1の端部は、前記触媒物品の入口端部であり、前記第2の端部は、前記触媒物品の出口端部である、請求項34~42のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項44】
前記第1の触媒領域は、20g/ft~400g/ftのPt及びPdの合計量、好ましくは30g/ft~250g/ftのPt及びPdの合計量を含む、請求項15~43のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項45】
前記第2の触媒領域は、2g/ft~200g/ftのRh、好ましくは5g/ft~100g/ftのRhを含む、請求項27~44のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項46】
前記第1の触媒領域は、請求項1~12のいずれか一項に記載の触媒組成物である、請求項15~45のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項47】
請求項1~14のいずれか一項に記載の触媒組成物又は請求項15~46のいずれか一項に記載の触媒物品を含む、排出物処理システム。
【請求項48】
ガソリンエンジンのための、請求項47に記載の排出物処理システム。
【請求項49】
前記ガソリンエンジンは、化学量論的条件下で動作する、請求項48に記載の排出物処理システム。
【請求項50】
排気ガスを処理する方法であって、前記方法は、
請求項1~14のいずれか一項に記載の触媒組成物又は請求項15~46のいずれか一項に記載の触媒物品を提供することと、
前記触媒組成物又は前記触媒物品を、排気ガスと接触させることと、を含む、方法。
【請求項51】
前記排気ガスは、ガソリンエンジンからのものである、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記ガソリンエンジンは、化学量論的条件下で動作する、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
触媒物品を製造する方法であって、前記方法は:
約5:95~約95:5のモル比の白金(Pt)イオン及びパラジウム(Pd)イオンと、
担体材料と、
を含むスラリーを提供することと、
前記スラリーを基材上に配設することと、
前記スラリーを加熱して、前記担体材料上に前記Pt及び前記Pdのナノ粒子を形成することと、
を含む、方法。
【請求項54】
前記スラリーは、グリオキシム、グリオキシム誘導体、サリチルアルジミン、及びサリチルアルジミン誘導体の1つ以上を含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記触媒物品は、請求項53又は54に記載の方法によって得られたものであるか、又は得ることができる、請求項15~46のいずれか一項に記載の触媒物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガソリンエンジンからの排気ガス排出物を処理するのに有用な触媒化物品に関し、具体的には、触媒組成物、触媒物品、排出物処理システム、排気ガスを処理する方法、及び触媒物品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関では、炭化水素(hydrocarbon、HC)、一酸化炭素(carbon monoxide、CO)、及び窒素酸化物(nitrogen oxide、NO)を含む、様々な汚染物質を含有する排気ガスが生成される。排気ガス触媒的転化触媒を含む排出量制御システムは、大気に排出されるこれらの汚染物質の量を低減するために広く利用されている。ガソリンエンジンの排気処理に通常使用される触媒は、三元触媒(three way catalyst、TWC)である。TWCは、以下の3つの主な機能を果たす:(1)COの酸化、(2)未燃HCの酸化、及び(3)NOの還元。
【0003】
パラジウム(Palladium、Pd)及びロジウム(rhodium、Rh)は、ガソリン車両における有害な排出物を低減するために、TWC配合物において広く使用されている。実際、現在のTWC技術は、Pd/Rh系に大きく依存している。しかしながら、近年では、市場における需要の高まりにより、これらの貴金属価格は上昇して更に高価になってきている。一方、世界的にますます厳しくなる環境規制によって、自動車産業は、更により多くの貴金属を触媒コンバータに入れることを余儀なくされている。結果として、最近のPd需要がPd供給を上回ることによる潜在市場リスクが存在する。
【0004】
差し当たって、白金(platinum、Pt)が、その比較的安価な価格に起因して、ガソリン用途でのより魅力的な候補になっている。2021年7月からの過去12ヶ月の間、Pt及びPdの平均価格は、それぞれ、1オンス当たり約1085及び2660ドルであった(http://www.platinum.matthey.com)。したがって、同等な触媒性能を維持することが望まれながら、Pdを少なくとも部分的に置き換えるために、どのようにPtを触媒配合物に導入するかについて、巨大な経済的な刺激策が存在する。
【0005】
したがって、現在使用されている従来のTWC触媒と比較して、同等又は改善された活性を依然として有し得る、TWC用途のためのより安価な触媒を提供することが望まれている。
【発明の概要】
【0006】
本開示の一態様は、第1の白金族金属(platinum group metal、PGM)成分及び第1の担体材料を含む触媒組成物であって、第1のPGM成分が白金(Pt)及びパラジウム(Pd)を含み、第1の担体材料上に担持されており、第1のPGM成分が約5:95~約95:5のPt:Pdのモル比を有する。
【0007】
本開示の別の一態様は、排気ガスを処理するための触媒物品を対象とし、その触媒物品は、基材と、第1の白金族金属(PGM)成分及び第1の担体材料を含む第1の触媒領域と、を含み、第1のPGM成分は、白金(Pt)及びパラジウム(Pd)を含み、第1の担体材料上に担持されており、第1のPGM成分が、約5:95~約95:5のPt:Pdのモル比を有する。
【0008】
本発明はまた、本明細書に記載の触媒組成物又は触媒物品を含む排出物処理システムを包含する。
【0009】
本開示の別の一態様は、排気ガスを処理する方法を対象とし、この方法は、本明細書に説明される触媒組成物又は触媒物品を提供することと、触媒組成物又は触媒物品を排気ガスと接触させることと、を含む。
【0010】
本開示の別の態様は、触媒物品を製造する方法であって、約5:95~約95:5のモル比の白金(Pt)イオン及びパラジウム(Pd)イオンと、担体材料と、を含むスラリーを提供することと、そのスラリーを基材上に配設することと、スラリーを加熱して担体材料上にPt及びPdのナノ粒子を形成することと、を含む方法である。
【0011】
本発明はまた、本明細書に記載の触媒物品を包含し、その触媒物品は、本明細書に記載の触媒物品を製造する方法によって得られたものであるか、又は得ることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1a】第1の触媒領域が、最上層として、軸方向長さLの100%に延在し、第2の触媒領域が、底層として、軸方向長さLの100%に延在している、本発明による一実施形態を示す図である。
図1b図1aの変形例を描く図である。
図2a】第1の触媒領域が、入口端部から軸方向長さLの100%未満に延在しており、第2の触媒領域が、出口端部から軸方向長さLの100%未満に延在する、本発明による一実施形態を示す図である。第2の触媒領域及び第1の触媒領域の合計長は、軸方向長さL以下である。
図2b図2aの変形例を描いた図である。
図2c】第1の触媒領域が、入口端部から軸方向長さLの100%未満に延在し、第2の触媒領域が、出口端部から軸方向長さLの100%未満に延在する、本発明による一実施形態を示す図である。第2の触媒領域及び第1の触媒領域の合計長は、軸方向長さLよりも大きい。
図2d図2cの変形例を描いた図である。
図3a】実施例1からのライトオフ温度結果を示す図である。
図3b】実施例1からのライトオフ温度結果を示す図である。
図4】実施例1における異なるCO:Hの比に対するライトオフ温度結果を示す図である。
図5a】実施例2の排出結果を示す図である。
図5b】実施例2の排出結果を示す図である。
図5c】実施例2の排出結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、先行技術に関連する問題の少なくともいくつかに取り組むこと、又は少なくとも商業的に許容可能な代替解決策を提供することを目的とする。
【0014】
第1の態様において、本発明は、第1の白金族金属(PGM)成分及び第1の担体材料を含む触媒組成物を提供し、第1のPGM成分が白金(Pt)及びパラジウム(Pd)を含み、第1の担体材料上に担持されており、第1のPGM成分が約5:95~約95:5のPt:Pdのモル比を有している。
【0015】
本明細書において定義される各態様又は実施形態は、別途明確に示されていない限り、任意の他の態様又は実施形態と組み合わされ得る。具体的には、好ましい又は有利であると示された任意の特徴は、好ましい又は有利であると示された任意の他の特徴と組み合わせ得る。
【0016】
驚くべきことに、本発明の触媒組成物は、Pt置換を伴わないPdを含む従来の触媒組成物と比較して、同等又は改善された触媒(すなわち、TWC)活性を提供する。広範囲のTWC動作条件について、Ptは、Pdと比較して、より低い触媒(すなわち、TWC)活性を有するということが知られている。したがって、触媒組成物中の任意の量のPdをPtで置き換えても、その触媒活性に悪影響を及ぼさないことは驚くべきことである。しかしながら、本発明者らは、驚くべきことに、(すなわち、望ましくはより安価な触媒組成物を提供するために)そのような触媒組成物中の約5モル%~約95モル%のPdをPtで置き換えることにより、同等の又は更に改善された触媒(すなわち、TWC)活性を有する触媒組成物が提供されることを見出した。本明細書でより詳細に記載されるように、Pt対Pdのある特定の比(すなわち、ある量のPdを上記範囲内のPtで置き換えること)において、Pt置き換えのないPdを含む触媒組成物と比較して、実際に改善された触媒(すなわち、TWC)活性を有し得る触媒組成物を得ることができる。そのような触媒組成物はまた、Pt置換を伴わないPdを含む触媒組成物と比較して、より低いライトオフ温度を示し得る。
【0017】
更に、驚くべきことに、そのような触媒組成物は、排気ガス条件の変化、例えば、リーン(希薄)条件からリッチ条件への変化、及び異なるエージング条件に対してよりロバストであり得るということも見出された。増加した触媒(すなわち、TWC)活性と共に、これは、現在一般的に使用されている排気システムにおける使用のためには、特に有利な特性であり得る。
【0018】
特に、排気システムにおいて使用される場合、本発明の触媒組成物は、驚くべきことに、CO排出の大幅に改善された低減、NOx変換の改善、及び同等又は改善された炭化水素(HC)排出低減を組み合わせてもたらすことができる。したがって、本明細書に記載される触媒組成物は、Pt置換のないPdを含む従来使用されている触媒組成物よりも望ましく安価であり得るだけでなく、そのような触媒組成物はまた、望ましく改善された触媒性能を示し得る。理論に束縛されるものではないが、CO排出に対する性能の向上は、Ptの存在及びそのPdとの相互作用に起因して、PdがCOによってあまり被毒されないか、又はより良好なCO酸化活性を有することの結果であり得ると仮定される。
【0019】
理論に束縛されるものではないが、Pt-Pd合金が触媒組成物中に形成され得るということも仮定され、この場合、合金はPd特性を実質的に維持する(例えば、大部分がPdを含むため)。これは、本明細書に記載される触媒組成物によって提供され得る、向上した又は同等の性能に寄与し得ると考えられる。言い換えれば、そのような合金が、Pd特性を維持していることは、Pdをより活性の低いPtで置き換えても、触媒組成物の触媒(すなわち、TWC)活性が低下しないということを意味し得る。例えば、Ptの存在は、実質的にPdの特性を維持しながら、金属上の汚染物質の吸着/解離エネルギーが変更されるように、Pdの電子的修飾を誘導し得る。これにより、理論に束縛されるものではないが、上述の有利な特性がもたらされ得る。
【0020】
本明細書で使用される「触媒組成物」という用語は、特に、好ましくはガソリンエンジンからの排気ガスの処理に使用するための、触媒活性を示す組成物を包含し得る。言い換えれば、触媒組成物は、COの酸化、未燃HCの酸化、及びNOの還元のうちの1つ以上に対して触媒活性を示し得る。好ましくは、触媒組成物は、三元触媒のためのものである。言い換えれば、触媒組成物は、三元触媒であってもよい。
【0021】
別段の指定がない限り、本明細書で使用される「第1」、「第2」、「第3」などの用語は、明確にすることのみを目的としており、特定の特徴を互いに区別するのに役立つラベルとして使用される。この表現は、例えば、特徴又は構成要素の任意の特定の順序を限定すること、又はある特徴が別の特徴よりも好まれるかどうかを示すことを意図するものではない。
【0022】
本明細書において使用される場合、「白金族金属(PGM)」という用語は、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、及びPtからなる群から選択される金属、好ましくはRu、Rh、Pd、Ir、及びPtからなる群から選択される金属を包含し得る。一般に、「PGM」という用語は、好ましくは、Rh、Pt、及びPdからなる群から選択される金属を指す。
【0023】
第1のPGM成分は、Pt及びPdを含む。好ましくは、第1のPGM成分は、Pt及びPdから本質的になるか、又は更にはPt及びPdからなるものである。第1の触媒成分は、Pt及びPdに加えて、Pt及びPd以外のPGMを含んでもよい。
【0024】
本明細書で使用される場合、「本質的になる」という表現は、特定の材料又は工程、及び、例えば、微量不純物などの、その特徴の基本特性に実質的に影響を及ぼさない、任意の他の材料又は工程を含むように、特徴の範囲を制限する。「から本質的になる」という表現は、「からなる」という表現を包含する。
【0025】
本明細書で使用される場合、「担体材料」という用語は、第1のPGM成分をその上又はその中に担持することができる任意の材料を包含し得る。担体材料は、任意の形態をとり得るが、典型的には粉末、より典型的には高表面積粉末の形態である。本発明の触媒組成物が、例えば、ウォールフローフィルタ又はフロースルーフィルタなどの触媒化フィルタを調製するために使用される場合、担体材料は、典型的には、TEMを使用して測定して、例えば、0.1~30μm、より典型的には0.5~25μm、更により典型的には1~20μmのD50を有する粉末の形態となる。そのような粒径は、フィルタをコーティングするために使用されるスラリーの望ましいレオロジー特性を容易にし得る。担体材料は、ウォッシュコートとして機能し得る。担体材料は、ウォッシュコートであり得るか、又はウォッシュコートの一部であり得る。
【0026】
担体材料はまた、三元触媒転化を容易にするために、燃料リーン条件及び燃料リッチ条件でそれぞれ酸素を貯蔵及び放出する酸素貯蔵材料としての役割を果たし得る。
【0027】
第1のPGM成分は、第1の担体材料上に担持される。この文脈で使用される「~上に担持される」という用語は、第1のPGM成分が、担体材料の外表面上(例えば、高表面積金属酸化物担体材料の表面上)にロードされるか、又は担体材料内、例えばその細孔内(例えば、ゼオライト担体材料の細孔内)に含有される状況を包含し得る。
【0028】
第1のPGM成分は、約5:95~約95:5のPt:Pdのモル比を有する。言い換えれば、第1のPGM成分は、Pt及びPdの総モル数に基づいて、約5~約50モル%のPtを有する。したがって、第1のPGM成分が、Pt及びPdからなる場合には、その第1のPGM成分は、第1のPGM成分の総モル数に基づいて、約5~約50モル%のPtを含む。
【0029】
Pt:Pdのモル比は、好ましくは約5:95~約90:10、より好ましくは約5:95~約75:25、更により好ましくは約10:90~約50:50、また更により好ましくは約10:90~約35:65、最も好ましくは約10:90~約25:75であり、例えば、好ましくは約7:93~約15:85、約7:93~約14:86、約7:93~約13:87、約7:93~約12:88、約7:93~約11:89、約8:92~約15:85、約8:92~約14:86、約8:92~約13:87、約8:92~約12:88、約8:92~約11:89、約9:91~約14:86、又は約9:91~約13:87のいずれかである。いくつかの好ましい実施形態では、Pt:Pdのモル比は、約9:91~約11:89であり得る。
【0030】
本発明者らはまた、驚くべきことに、TWC触媒などのPd含有触媒中で、約10モル%に近づくPdを、Ptで置換すると、本明細書に記載の改善された触媒性能を提供し得る一方で、PtとPdとの間の現在の価格差に起因して、より安価な触媒組成物を提供することもできるということを見出した。以下の実施例において実証されるように、最良の利点は、Pt:Pdのモル比が、約10:90に近づいている時に示された。しかしながら、特許請求された範囲全体にわたって(例えば、Pt:Pdのモル比が95:5に近づいている)場合に、少なくとも同等であるが、好ましくは改善された触媒(すなわち、TWC)性能を予想外に提供し得る、より安価な触媒が依然として提供され得る。
【0031】
Pt及びPdは、好ましくは少なくとも部分的に合金化され、より好ましくは実質的に合金化され、更により好ましくは完全に合金化される。本明細書で使用される「合金」又は「合金化された」という用語は、当該技術分野における通常の意味を有する。当業者に公知の技術を使用して、PtーPd合金が形成されたか否かを決定するのを助けるために、TEM及びXRD特性決定技術を使用し得る。理論に束縛されることを望むものではないが、そのような合金の形成は、本明細書で記載及び実証される、同等又は改善された触媒活性、より低いライトオフ温度及び耐エージング性などの有利な特性の達成に寄与し得ると仮定される。PtとPdとのそのような合金は、触媒組成物の製造中、例えば、実施され得る焼成及び/又は加熱ステップ中に形成され得る。代替的に、そのような合金は、触媒組成物の使用(例えば、エージング)中に、例えば、排気システムにおいて経験される高温に起因して形成し得る。すなわち、担体材料上に密接に近接し得るPtナノ粒子とPdナノ粒子との混合物は、例えば、そのような温度において、合体し合金を形成し得る。
【0032】
本明細書で使用される「実質的に合金化された」という表現は、対象の触媒領域内に含有されるPGMの少なくとも75%が合金相として存在することを指す。本明細書で使用される「部分的に合金化された」という表現は、対象の触媒領域内に含まれるPGMの少なくとも25%が合金化相として存在することを指す。
【0033】
そのような潜在的に有益な合金化が起こる可能性は、触媒組成物の製造中に、例えば、担体材料上でのPt及びPdの均一な分布を確実にするのに役立つ方法、好ましくは、TEMによって決定される平均粒径に関して、50nm未満、30nm未満、又は更に20nm未満などの小さい粒径を有するPt及びPdナノ粒子の担体材料上での均一な分布も確実にする方法を使用することによって高めることができる。換言すれば、担体材料上の小さなPt及びPdナノ粒子が近接していることは、第1のPGM成分中のPt及びPdの合金化の可能性を増加させるのに役立ち得る。第1のPGM成分は、好ましくはPt及びPdの合金からなる。
【0034】
第1の担体材料は、好ましくは、無機酸化物を含む。無機酸化物は、好ましくは、酸化セリウム、セリア-ジルコニア混合酸化物、アルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物、アルミナ、マグネシア、シリカ、ランタン、ネオジム、プラセオジム、イットリウム酸化物、及びそれらの混合酸化物若しくは複合酸化物、又はゼオライトのうちの1つ以上から選択される。無機酸化物は、好ましくは、金属酸化物である。第1の担体材料は、アルミナ、好ましくはガンマ-アルミナ、セリア-ジルコニア混合酸化物、又はそれらの組み合わせから選択されることが好ましい。言い換えれば、第1のPGM成分は、好ましくはアルミナ及び/又はセリア-ジルコニア上に担持される。PtとPdとの間の相互作用を可能にするために、第1のPGM成分のPt及びPdが両方ともその上又はその中に一緒に担持されるという条件で、任意の数の担体材料が存在してもよい。
【0035】
アルミナ及び/又はセリア-ジルコニア混合酸化物は、好ましくはドープされている。アルミナ及び/又はセリア-ジルコニア混合酸化物は、好ましくは、ランタン、ネオジム、イットリウム、ニオブ、プラセオジム、ハフニウム、モリブデン、チタン、バナジウム、亜鉛、カドミウム、マンガン、鉄、銅、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、セシウム、マグネシウム、カリウム、及びナトリウムのうちの1つ以上の酸化物、好ましくはランタン、ネオジム、プラセオジム、及びイットリウムのうちの1つ以上の酸化物、より好ましくはランタンの酸化物でドープされる。そのようなドープされた酸化物は、担体材料として特に有効である。好ましくは、ドーパントは、0.001重量%~20重量%、及び好ましくは0.5重量%~10重量%の量で、アルミナ及び/又はセリア-ジルコニア混合酸化物中に存在する。
【0036】
第1の担体材料又は第1の担体材料の無機酸化物は、好ましくは、TEMによって測定した場合に、0.1~25μm、好ましくは0.5~5μmのD90を有する粉末の形態である。
【0037】
本明細書で使用される「混合酸化物」という用語は、一般に、当該技術分野において従来的に既知であるように、単相における酸化物の混合物を指す。本明細書で使用される「複合酸化物」という用語は、一般に、当該技術分野において従来的に既知であるように、2つ以上の相を有する酸化物の組成物を指す。
【0038】
触媒組成物は、好ましくは、第2のPGM成分及び第2の担体材料を更に含む。第2のPGM成分は、好ましくは、ロジウム(Rh)、Rh合金、Pt、Pt合金、Rh-Pt合金、又はそれらの混合物を含む。第2のPGM成分は、好ましくはRhを含む。したがって、触媒組成物は、好ましくは三元金属(すなわち、Pt、Pd、及びRh)触媒組成物であり、好ましくはTWCである。例えば、Rhが存在する場合、これは、より高いパーセンテージのPdが、例えば約25モル%を超えるPdによって置き換えられている触媒組成物の性能における任意の(わずかではあるが)劣化を相殺し得る。言い換えれば、Rhを更に含む触媒組成物では、第1のPGM成分中のPt含有量がより高くても(例えば、Pt:Pdのモル比が95:5に近づく場合でも)、より多くの量のPtが触媒性能の最小限の変化をもたらし得る場合であっても、同等又は改善された触媒性能が達成され得る。更に、そのような触媒組成物は、更に低コストの第1のPGM成分を有し得る。
【0039】
更なる一態様では、本発明は、排気ガスを処理する触媒物品を提供し、この触媒物品は:
基材と、
第1の白金族金属(PGM)成分及び第1の担体材料を含む第1の触媒領域であって、その第1のPGM成分が白金(Pt)及びパラジウム(Pd)を含み、第1の担体材料上に担持されている、第1の触媒領域と、を含み、
第1のPGM成分は、約5:95~約95:5のPt:Pdのモル比を有する。
【0040】
本明細書で使用される「触媒物品」という用語は、触媒がその上又はその中に担持されている物品を包含し得る。物品は、好ましくは、例えば、ハニカムモノリス、又はフィルタ、例えば、好ましくはウォールフローフィルタ又はフロースルーフィルタの形態を採り得る。触媒物品は、排出処理システム、特にガソリンエンジン、好ましくは化学量論的ガソリンエンジンのための排出処理システムでの使用のためのものであり得る。触媒物品は、三元触媒作用での使用のためのものであり得る。言い換えれば、触媒物品はTWCであり得る。
【0041】
本明細書で使用される「基材」という用語は、例えば、セラミックハニカム若しくは金属ハニカム、又はフィルタブロック、例えば、好ましくはウォールフローフィルタ若しくはフロースルーフィルタを包含し得る。基材は、セラミックモノリス基材を含み得る。基材は、その材料組成、サイズ及び構成、セルの形状及び密度、並びに壁厚の点で異なり得る。好適な基材は、当該技術分野において既知である。
【0042】
別段の記載がない限り、第1のPGM成分及び第1の担体材料に関連して第1の態様(本明細書に記載の触媒組成物)について上述した選好、実施形態、及び定義は、本態様(触媒物品)に等しく適用される。
【0043】
本明細書で使用される「領域」又は「触媒領域」という用語は、典型的にはウォッシュコートを乾燥及び/又は仮焼することによって得られる、触媒を含有する基材上のエリアを指す。「領域」は、例えば、「層」又は「ゾーン」として基材上に配置又は担持され得る。基材上のエリア又は配列は、一般に、基材にウォッシュコートを適用するプロセス中に制御される。「領域」は、典型的には、明確な境界又は縁部を有する(すなわち、従来の分析技術を使用して、一方の領域を別の領域から区別することが可能である)。
【0044】
典型的には、「領域」は、実質的に均一な長さを有する。この文脈における「実質的に均一な長さ」への言及は、その平均値から10%を超えて逸脱(例えば、最大長と最小長との間の差)しない長さ、好ましくはその平均値から5%を超えて逸脱しない長さ、より好ましくはその平均値から1%を超えて逸脱しない長さを指す。
【0045】
各「領域」は、実質的に均一な組成を有する(すなわち、領域のある部分とその領域の別の部分とを比較する場合、ウォッシュコートの組成に実質的な差がない)ことが好ましい。この文脈における実質的に均一な組成物とは、領域のある部分を領域の別の部分と比較する場合に、組成の差が、5%以下、通常は2.5%以下、最も一般的には1%以下である材料(例えば、領域)を指す。
【0046】
本明細書で使用される「ゾーン」という用語は、基材の全長の75%以下の長さなど、基材の全長未満の長さを有する領域を指す。「ゾーン」は、典型的には、基材の全長の少なくとも5%(例えば、5%以上)の長さ(すなわち、実質的に均一な長さ)を有する。
【0047】
触媒物品は、好ましくは、第2の触媒領域を更に含む。第2の触媒領域は、好ましくは、第2のPGM成分及び第2の担体材料を含む。第2のPGM成分は、好ましくは、ロジウム(Rh)、Rh合金、Pt、Pt合金、Rh-Pt合金、又はそれらの混合物を含む。第2のPGM成分は、好ましくはRhを含む。したがって、触媒物品は、好ましくは三元金属(すなわち、Pt、Pd、及びRh)触媒組成物であり、好ましくはTWCである。従来のTWC触媒と同様に、Rhを含む触媒領域は、Pd系触媒領域(すなわち、本明細書に記載される第1の触媒領域)とは異なる触媒領域である。例えば、Rhが存在する場合、これは、より高い割合(例えば、約25モル%超)のPdがPdで置き換えられた触媒組成物の性能の低下を相殺することができる。言い換えれば、Rhを更に含む触媒組成物では、第1のPGM成分中のPt含有量がより高くても(例えば、Pt:Pdのモル比が95:5に近づく場合でも)、より多くの量のPtが触媒性能の最小限の変化をもたらし得る場合であっても、同等又は改善された触媒性能が達成され得る。更に、そのような触媒物品は、更に低コストの第1のPGM成分を有し得る。
【0048】
触媒組成物、第1の触媒領域、及び/又は第2の触媒は、例えば、促進剤、結合剤、及び増粘剤のうちの1つ以上などの、追加の成分を含んでもよい。
【0049】
促進剤としては、例えば、非PGM遷移金属元素、希土類元素、アルカリ若しくはアルカリ土類族元素、及び/又は周期表の同じ若しくは異なる族内の上記元素のうちの2つ以上の組み合わせが挙げられ得る。促進剤は、そのような元素の塩であり得る。特に好ましい促進剤は、バリウムであり、その特に好ましい塩は、酢酸バリウム、クエン酸バリウム、及び硫酸バリウム、又はこれらの組み合わせであり、より好ましくはクエン酸バリウムである。
【0050】
結合剤は、例えば、ウォッシュコートスラリー中で個々の不溶性粒子を一緒に結合するための小さな粒径を有する酸化物材料を含み得る。ウォッシュコートにおける結合剤の使用は、当該技術分野において周知である。
【0051】
増粘剤は、例えば、ウォッシュコートスラリー中で不溶性粒子と相互作用する、官能性ヒドロキシル基を有する天然ポリマーを含み得る。増粘剤は、基材上へのウォッシュコートコーティング中のコーティングプロファイルの改善のためにウォッシュコートスラリーを増粘する目的を果たす。増粘剤は、通常は、ウォッシュコート仮焼中に焼き取られる。ウォッシュコートのための特定の増粘剤/レオロジー調整剤の例としては、グラクトマンナンガム、グアーガム、キサンタンガム、カードランシゾフィラン、スクレログルカン、ジウタンゴム、ホイーランゴム、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシルエチルセルロース、メチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、及びエチルヒドロキシセルロースが挙げられる。
【0052】
好ましくは、第1の触媒領域及び第2の触媒領域は別個の層を形成し、第2の触媒領域は第1の触媒領域上に直接堆積される。すなわち、第1の触媒領域は、第2の触媒領域と基材(例えば、フィルタ壁)との間に挟まれる。別の好ましい一実施形態では、第1の触媒領域及び第2の触媒領域は別個の層を形成し、第1の触媒領域は、第2の触媒領域上に直接堆積される。
【0053】
第1の触媒領域は、基材上に直接担持/堆積されてもよい。すなわち、第1の触媒領域は、基材と直接接触している。あるいは、第2の触媒領域は、基材上に直接担持/堆積されてもよい。
【0054】
典型的には、基材は、軸方向長さLを有する第1の端部及び第2の端部を有する。いくつかの好ましい実施形態では、第1の触媒領域は、軸方向長さL全体にわたって延在し、かつ/又は第2の触媒領域は、軸方向長さL全体にわたって延在する(例えば、図1a及び図1b)。他の好ましい実施形態では、第1の触媒領域は、軸方向長さL未満にわたって延在し、かつ/又は第2の触媒領域は、軸方向長さL未満にわたって延在する(例えば、図2a~図2d)。第1の触媒領域が軸方向長さL未満に延在する場合、第1の触媒領域は、第1の端部又は第2の端部から延在してもよい。第2の触媒領域が軸方向長さL未満に延在する場合、第2の触媒領域は、第1の端部又は第2の端部から延在してもよい。第1又は第2の触媒領域が軸方向長さL未満に延在する場合、第1又は第2の触媒領域は、例えば、軸方向長さLの10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%にわたって延在してもよく、例えば10%~90%、又は10%~50%、又は10%~30%、又は30%~90%、又は50%~90%、又は70%~90%、又は20%~80%、又は30%~70%、又は40%~60%にわたって延在してもよい。第1及び第2の触媒領域は、完全に、少なくとも部分的に、部分的に重複してもよく、又は全く重複しなくてもよい。各構成は、触媒物品の意図される用途に応じて特定の利点を提供する。
【0055】
いくつかの好ましい実施形態では、第1の端部は触媒物品の入口端部であり、第2の端部は出口端部である。本明細書で使用される「出口端部」及び「入口端部」という用語は、触媒物品が排気システム内に配置されるときの排気流の相対的な意図される方向に関して使用され、例えば、排気ガスの意図される方向は、入口端部から出口端部に向かう方向である。
【0056】
第1の触媒領域は、好ましくは、20g/ft~400g/ftのPt及びPdの合計量、好ましくは30g/ft~250g/ft、又は40g/ft~200g/ftのPt及びPdの合計量を含む。第2の触媒領域は、好ましくは、2g/ft~200g/ftのRh、好ましくは5g/ft~100g/ftのRhを含む。
【0057】
いくつかの好ましい実施形態において、本態様の触媒物品の第1の触媒領域は、第1の態様による触媒組成物である。言い換えれば、いくつかの好ましい実施形態では、本態様の触媒物品の第1の触媒領域は、第1の態様による触媒組成物から形成される
【0058】
更なる態様では、本発明は、本明細書に記載の触媒組成物又は触媒物品を含む排出処理システムを提供する。
【0059】
排出処理システムは、好ましくは、ガソリンエンジンのためのものである。
【0060】
ガソリンエンジンは、好ましくは、化学量論的条件下で作動する。
【0061】
更なる態様では、本発明は、排気ガスを処理する方法であって、本明細書に記載の触媒組成物又は触媒物品を提供することと、触媒組成物又は触媒物品を排気ガスと接触させることと、を含む、方法を提供する。
【0062】
排気ガスは、好ましくは、ガソリンエンジンからのものである。触媒物品は、そのような排気ガスを処理するのに特に好適である。更に、ガソリンエンジンからの排気は、典型的には、ディーゼルエンジンからの排気よりも過酷、例えば高温である。したがって、本明細書に記載の触媒物品の有利なエージング特性は、そのために特に有益である。ガソリンエンジンは、好ましくは、化学量論的条件下で作動する。
【0063】
更なる態様では、本発明は、触媒物品を製造する方法を提供し、方法は:
スラリーであって:
約5:95~約95:5のモル比の白金(Pt)イオン及びパラジウム(Pd)イオン、並びに
担体材料、を含むスラリーを提供することと、
スラリーを基材上に配置することと、
スラリーを加熱して、担体材料上にPt及びPdのナノ粒子を形成することと、を含む。
【0064】
本明細書で使用される「スラリー」という用語は、不溶性材料、例えば、不溶性粒子を含む液体を包含し得る。スラリーは、(1)溶媒、(2)可溶分、例えば、遊離Ptイオン及びPdイオン(すなわち、担体の外側)、及び(3)不溶分、例えば、担持される粒子、を含み得る。スラリーは、基材上に材料を配置する際に、特にガスの拡散を最大化し、触媒転化中の圧力降下を最小化するために、特に有効である。スラリーは、典型的には撹拌され、より典型的には少なくとも10分間、より典型的には少なくとも30分間、更により典型的には少なくとも1時間撹拌される。したがって、スラリーは、典型的には、ロードされた担体材料を含む(すなわち、担体材料は、好ましくはロードされた担体材料である)。本明細書で使用される「ロードされた担体材料」という用語は、その上に(例えば、高表面積金属酸化物担体材料の表面上に)ロードされた、及び/又はその中に(例えば、ゼオライト担体材料の細孔内に)ロードされたPtイオン及びPdイオンを有する担体材料を包含し得る。Ptイオン及びPdイオンは、典型的には、例えば、静電力、水素結合、配位結合、共有結合、及び/又はイオン結合によって担体に固定される。担体材料は、好ましくは、本明細書に記載の第1の担体材料である。
【0065】
スラリーを提供することは、典型的には、溶媒、担体材料、並びにPtイオン及びPdイオン(例えば、硝酸Pt又は硝酸PdなどのPt塩及び/又はPd塩から)を混合することを含む。
【0066】
スラリーを基材上に配設することは、当該技術分野で既知の技術を使用して行われ得る。典型的には、スラリーは、所定の量で特定の成形ツールを使用して基材の入口に注入され、それによって、ロードされた担体材料が基材上に配設され得る。後続の真空及び乾燥工程が、配設ステップ中に用いられてもよい。担体がフィルタブロックである場合、ロードされた担体材料は、フィルタ壁上、フィルタ壁内(多孔性の場合)、又はその両方に配設され得る。
【0067】
スラリーの加熱は、典型的にはオーブン又は炉、より典型的にはベルト又は静的オーブン又は炉において、典型的には一方向からの特定の流れの熱風中で行われる。加熱は、仮焼を含み得る。加熱は、乾燥も含み得る。乾燥ステップ及び仮焼ステップは、連続的又は逐次的であり得る。例えば、基材が既にウォッシュコーティングされ、前のウォッシュコーティングと一緒に乾燥させた後に、別個のウォッシュコーティングが適用され得る。ウォッシュコーティングされた基材はまた、コーティングが完了したら、1つの連続的な加熱プログラムを使用して乾燥及び仮焼されることができる。加熱中に、スラリー中に形成され得る任意の錯体は、少なくとも部分的に、実質的に、又は完全に分解し得る。言い換えれば、そのような錯体、例えば有機化合物の配位子は、Pt及びPdから少なくとも部分的に、実質的に、又は完全に除去又は分離され、最終触媒物品から除去される。次いで、そのように分離されたPt及びPdの粒子は、金属-金属結合及び金属-酸化物結合を形成し始め得る。加熱(仮焼)の結果として、基材は、典型的には有機化合物を実質的に含まず、より典型的には有機化合物を完全に含まない。
【0068】
本明細書で使用される「ナノ粒子」という用語は、TEMによって測定される0.01nm~100nmの直径を有する粒子を包含し得る。ナノ粒子は、任意の形状、例えば、球形、プレート、立方体、円筒形、六角形、又はロッドであり得るが、典型的には球形である。
【0069】
加熱ステップの後、基材は、典型的には冷却され、より典型的には室温まで冷却される。冷却は、典型的には、冷却剤/冷却媒体を用いて又は用いずに、典型的には冷却剤を用いずに、空気中で行われる。
【0070】
スラリーは、好ましくはグリオキシム、グリオキシム誘導体、サリチルアルジミン、及びサリチルアルジミン誘導体の1つ以上を含む。理論に束縛されるものではないが、このような分子と、Pt及び/又はPdとを含む錯体が形成され得ると考えられる。このような化合物は、驚くべきことに、Pt及びPdの均一な分布を可能にするのに役立ち、例えば、本明細書に記載及び実証される有利な特性を達成するのに役立つということが見出された。
【0071】
本明細書に記載の触媒物品は、好ましくは、本態様の方法によって得られたものであるか、又は得ることができるものである。しかしながら、当業者に公知の代替方法もまた、本明細書に記載される触媒物品を製造するために使用されてもよいが、本態様の方法は特に好適であり得る。
【0072】
これから、以下の非限定的な実施例に関連して、本発明を説明する。
【0073】
実施例1:合成触媒活性試験におけるライトオフ性能
合計1重量%のPGMロード量を有する一連のPd-Pt担持セリア-ジルコニア触媒を、Pd(NO及びPt(NO前駆体を使用して、インシピエントウェットネス法によって作製した。乾燥後、650℃で2時間にわたって仮焼した。Pd及びPtのモル%比は、以下の表1に示すように、100:0(Pdのみの参照用)、95:5、90:10、79:21、65:35、47:53、及び0:100(Ptのみの参照用)である。
【0074】
【表1】
表1:実施例1における触媒のPGMロード量
【0075】
表2のTWCエージング条件に従って触媒をエージングし、典型的なTWCガス組成を有する連続ガス混合物下で試験した。表1の触媒を、10℃/分の傾斜率を用いて110~500℃で試験した。使用した総流量は、固定床反応器内に配置した、0.2gのコーディエライトと混合した0.2gの触媒に対して5L/分であった。使用したガス及びそれらの濃度を表3に示す。
【0076】
【表2】
表2:実施例1の触媒のエージング条件
【0077】
【表3】
表3:実施例1のライトオフ実験のためのガス混合物組成
【0078】
結果を図3a及び図3bに示し、これらは、各触媒について測定したライトオフ温度(T60)を示す。図3aはリーン運転停止後のエージング条件を示し、図3bはリッチ運転停止後のエージング条件を示す。触媒3(90:10のPd-Ptモル比を有する)は、比較触媒1及び7と比較して、エージング処理後のリッチ及びリーン運転停止条件の両方の後でより良好な性能を示した。
【0079】
次いで、触媒3(90:10のPd-Ptモル比を有する)を、H:CO比を変化させた6つの更なるTWCガス混合物にわたって試験し、結果を比較触媒1(Pdのみ)と比較した。触媒3は、全ての場合において、特にH濃度が増加した場合により良好に機能し、図4に示されるように、Pd-Pt合金の場合に、活性に対するより大きなH促進効果を示した。このデータは、Pd-Pt合金が、様々なTWCガス条件に対してよりロバストであることを示唆している。
【0080】
実施例2:車両試験の手順及び結果
触媒物品の一般的な合成
Pd:Pt100:0、90:10、50:50、及び27:73モル%を有する触媒物品を、Pd-DMG(ジメチルグリオキシム)塩基性溶液を、pHを7未満に低下させて維持するためにHNO溶液と共に少量ずつウォッシュコートに添加したことを除いて、標準的なウォッシュコート手順(当業者に公知)に従って調製した。完全に配合された触媒は、100g/ftのPd又はPd+Ptと、16g/ftのRhとを、Pd最上層を備える以下の構造で含有する:
最上層:Laドープアルミナ(0.7g/ft)、希土類ドープセリアジルコニア(0.7g/ft)、Pd(+Pt)-DMG(100g/ft)、BaSO(200g/ft)、及び
下層:Laドープアルミナ(0.7g/ft)、希土類ドープセリアジルコニア(0.7g/ft)、ロジウム(16g/ft)。
【0081】
【表4】
表4:実施例2における触媒物品の最上層PGMロード量
【0082】
表4の触媒物品は、ガソリンエンジンベンチエージングを用いてエージングされ、化学量論的ガス混合物下で仕上げられた。エンジンベンチエージングは、触媒において約1000℃のピーク床温度で、4モードエージングサイクルを使用して、50時間にわたり、4.6Lエンジンを使用して行った。触媒は、FTP駆動サイクルを介して2.4Lの車両上で試験され、排出物は、触媒(密結合系内に配置される)の直後に測定された。車両試験の結果を図5a~図5cにまとめる。
【0083】
図5a~図5cに示すように、結果は、実施例1の触媒について観察されたものと同様の傾向を示している。触媒物品Bは、比較触媒物品Aと比較して、総累積CO排出量では約12%の改善と、わずかに良好なNO変換率(5%未満)とを示し、HC性能の悪化はなかった。
【0084】
この一連の触媒物品内で、Pdは、総排出量を有意に変化させることなく50モル%までPtで置き換えることができ、触媒物品B(90:10のPd-Ptモル比を有する)について有意な利益を観察することができる。
【0085】
実施例3:車両試験の手順及び結果
比較触媒物品E
第1の触媒領域:
第1の触媒領域は、CeZr混合酸化物、La安定化アルミナ、及びBa促進剤のウォッシュコート上に担持されたPdからなり、ウォッシュコートスラリー調製中にPd源として硝酸Pd溶液を使用した。第1の触媒領域のウォッシュコートロード量は、約1.8g/inであり、Pdロード量は42g/ftであった。
【0086】
次いで、標準的なコーティング手順を使用して、セラミック基材(600cpsi、壁厚4.3ミル、直径118.4mm、及び長さ91mm)の入口面から、基材の長さの80%を目標のコーティング深度として、このウォッシュコートをコーティングし、100℃で乾燥させた。
【0087】
第2の触媒領域:
第2の触媒領域は、CeZr混合酸化物及びLa安定化アルミナのウォッシュコート上に担持されたRhからなる。第2の触媒領域のウォッシュコートロード量は、約1.3g/inであり、Rhロード量は8g/ftであった。
【0088】
次いで、標準的なコーティング手順を使用して、上記第1の触媒領域を含むセラミック基材の出口面から、基材の長さの80%を目標とするコーティングの深さで、この第2のウォッシュコートをコーティングし、100℃で乾燥させ、500℃で45分間仮焼した。
【0089】
触媒物品F
本発明による触媒物品Fは、34g/ftのPdロード量及び8g/ftのPtロード量を有する第1の触媒領域におけるPtによる部分的なPd置換と、Pt:Pdモル比が約11:89であったこととを除いて、比較触媒物品Eと同様の手順に従って調製された。
【0090】
第2の触媒領域は比較触媒物品Eと同じであった。
【0091】
新しい比較触媒物品E及び触媒物品Fを、1.6Lターボエンジンを装備した商用車上で、乗用車等の国際排出ガス・燃費試験法(Worldwide Light Duty Testing Procedure、WLTP)下で、密結合位置に配置されたレンガを用いて試験した。車両排気希釈バッグデータを表5に示す。
【0092】
コスト削減に加えて、驚くべきことに、本発明の触媒物品Fは、比較触媒物品Eと比較して、NO排出制御において優れた活性を示した(例えば、NO性能が約37%改善したことを参照)。
【0093】
【表5】
表5:車両希釈バッグデータによる排出量の結果
【0094】
実施例4:車両試験の手順及び結果
比較触媒物品G
第1の触媒領域:
第1の触媒領域は、希土類ドープCeZr混合酸化物、La安定化アルミナ、及びBa促進剤のウォッシュコート上に担持されたPdからなり、ウォッシュコートスラリー調製中にPd源として硝酸Pd溶液を使用した。第1の触媒領域のウォッシュコートロード量は、約2.0g/inであり、Pdロード量は68g/ftであった。
【0095】
次いで、このウォッシュコートを、標準的なコーティング手順を使用して、セラミック基材(600cpsi、壁厚3ミル、直径118.4mm及び長さ114.3mm)上にコーティングし、続いて100℃で乾燥させた。
【0096】
第2の触媒領域:
第2の触媒領域は、希土類ドープCeZr混合酸化物及びLa安定化アルミナのウォッシュコート上に担持されたRhからなる。第2の触媒領域のウォッシュコートロード量は、約2.0g/inであり、Rhロード量は、6g/ftであった。
【0097】
次いで、この第2のウォッシュコートを、標準的なコーティング手順を使用して、上記の第1の触媒領域を含有するセラミック基材上にコーティングし、100℃で乾燥させ、500℃で45分間仮焼した。
【0098】
触媒物品H
本発明による触媒物品Hは、51g/ftのPdロード量及び17g/ftのPtロード量(Pt:Pdのモル比は約15:85であった)を有する第1の触媒領域におけるPtによる部分的Pdの置換と、Pd-DMG及びPt-DMGを硝酸Pdの代わりに使用したことを除いて、比較触媒物品Gと同様の手順に従って調製した。
【0099】
第2の触媒領域は比較触媒物品Gと同じであった。
【0100】
触媒物品I
本発明による触媒物品Iは、34g/ftのPdロード量及び34g/ftのPtロード量(Pt:Pdのモル比は約35:65であった)を有する第1の触媒領域におけるPtによる部分的Pdの置換と、Pd-DMG及びPt-DMGを硝酸Pdの代わりに使用したことを除いて、比較触媒物品Gと同様の手順に従って調製した。
【0101】
第2の触媒領域は比較触媒物品Gと同じであった。
【0102】
比較触媒物品G及び触媒物品H、Iは、ガソリンエンジンベンチエージングを使用してエージングした。エンジンベンチエージングは、触媒において約1030℃のピーク床温度で、リーンスパイクエージングサイクルを使用して、100時間にわたり、4.0Lエンジンを使用して行った。触媒は、RDE適合駆動サイクルを介して2.0Lエンジンベンチ上で試験され、排出物は、触媒(密結合系内に配置される)の直後に測定された。車両排気モーダルバッグデータのまとめを、表6に示す。
【0103】
コスト削減に加えて、驚くべきことに、本発明の触媒物品H及びIは、比較触媒物品Gと比較して、THC、CO、及びNO排出制御に対して同等の活性を示した。
【0104】
【表6】
表6:車両モーダルデータによる排出量の結果
【0105】
前述の詳細な説明は、説明及び例示の目的で提供されており、添付の特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。本明細書に示される現時点で好ましい実施形態の多くの変形例は、当業者には明らかであり、添付の特許請求の範囲及びそれらの等価物の範囲内に留まる。
図1a
図1b
図2a
図2b
図2c
図2d
図3a
図3b
図4
図5a
図5b
図5c
【手続補正書】
【提出日】2024-02-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の白金族金属(PGM)成分及び第1の担体材料を含む触媒組成物であって、前記第1のPGM成分は、白金(Pt)及びパラジウム(Pd)を含み、前記第1の担体材料上に担持され、かつ
前記第1のPGM成分は、約5:95~約95:5のPt:Pdのモル比を有する、触媒組成物。
【請求項2】
前記Pt及び前記Pdは、少なくとも部分的に合金化され、好ましくは実質的に合金化される、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項3】
前記第1の担体材料は、無機酸化物を含む、請求項1又は2に記載の触媒組成物。
【請求項4】
前記無機酸化物は、酸化セリウム、セリア-ジルコニア混合酸化物、アルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物、アルミナ、マグネシア、シリカ、ランタン、ネオジム、プラセオジム、酸化イットリウム、及びそれらの混合酸化物若しくは複合酸化物、又はゼオライトのうちの1つ以上から選択される、請求項3に記載の触媒組成物。
【請求項5】
第2のPGM成分及び第2の担体材料を更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項6】
前記第2のPGM成分は、ロジウム(Rh)、Rh合金、Pt、Pt合金、Rh-Pt合金又はこれらの混合物を含む、請求項5に記載の触媒組成物。
【請求項7】
排気ガスを処理するための触媒物品であって、
基材と、
第1の白金族金属(PGM)成分及び第1の担体材料を含む第1の触媒領域であって、その第1のPGM成分は、白金(Pt)及びパラジウム(Pd)を含み、第1の担体材料上に担持されている、第1の触媒領域と、を含み、
前記第1のPGM成分は、約5:95~約95:5のPt:Pdのモル比を有する、触媒物品。
【請求項8】
前記Pt:Pdのモル比は、約5:95~約25:75、好ましくは約7:93~約20:80、より好ましくは約9:91~約15:85、更により好ましくは約9:91~約12:88、最も好ましくは約10:90である、請求項7に記載の触媒物品。
【請求項9】
前記Pt及び前記Pdは、少なくとも部分的に合金化され、好ましくは実質的に合金化される、請求項7又は8に記載の触媒物品。
【請求項10】
前記第1の担体材料は、無機酸化物を含む、請求項7~9のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項11】
前記無機酸化物は、酸化セリウム、セリア-ジルコニア混合酸化物、アルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物、アルミナ、マグネシア、シリカ、ランタン、ネオジム、プラセオジム、酸化イットリウム、及びそれらの混合酸化物若しくは複合酸化物、又はゼオライトのうちの1つ以上から選択される、請求項10に記載の触媒物品。
【請求項12】
第2の触媒領域を更に含む、請求項7~11のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項13】
前記第2の触媒領域は、第2のPGM成分及び第2の担体材料を含む、請求項12に記載の触媒物品。
【請求項14】
請求項1~6のいずれか一項に記載の触媒組成物又は請求項7~13のいずれか一項に記載の触媒物品を含む、排出物処理システム。
【請求項15】
排気ガスを処理する方法であって、前記方法は、
請求項1~6のいずれか一項に記載の触媒組成物又は請求項7~13のいずれか一項に記載の触媒物品を提供することと、
前記触媒組成物又は前記触媒物品を、排気ガスと接触させることと、を含む、方法。
【請求項16】
触媒物品を製造する方法であって、前記方法は:
約5:95~約95:5のモル比の白金(Pt)イオン及びパラジウム(Pd)イオンと、
担体材料と、
を含むスラリーを提供することと、
前記スラリーを基材上に配設することと、
前記スラリーを加熱して、前記担体材料上に前記Pt及び前記Pdのナノ粒子を形成することと、
を含む、方法。
【請求項17】
前記スラリーは、グリオキシム、グリオキシム誘導体、サリチルアルジミン、及びサリチルアルジミン誘導体の1つ以上を含む、請求項16に記載の方法。
【国際調査報告】