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特表2024-531049三元触媒作用用途のための硫黄含有有機化合物支援金属ナノ粒子合成
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】三元触媒作用用途のための硫黄含有有機化合物支援金属ナノ粒子合成
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/63 20060101AFI20240822BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
B01J23/63
B01D53/94 222
B01D53/94 ZAB
B01D53/94 245
B01D53/94 280
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500420
(86)(22)【出願日】2022-08-10
(85)【翻訳文提出日】2024-01-05
(86)【国際出願番号】 GB2022052077
(87)【国際公開番号】W WO2023017258
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】63/260,236
(32)【優先日】2021-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100197583
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 健
(72)【発明者】
【氏名】デプッチオ、ダニエル ピーター
(72)【発明者】
【氏名】キストラー、ケヴィン チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】リウ、ドンシア
【テーマコード(参考)】
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
4D148AA06
4D148AA13
4D148AA18
4D148AB01
4D148AB02
4D148AB09
4D148BA01Y
4D148BA02Y
4D148BA03X
4D148BA06X
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4D148DA11
4G169AA03
4G169AA09
4G169BA01B
4G169BB04B
4G169BB10B
4G169BC13B
4G169BC43B
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4G169CA03
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4G169DA06
4G169EA19
4G169EC22Y
4G169FA01
4G169FA02
4G169FB05
4G169FB06
4G169FB23
(57)【要約】
触媒物品を製造する方法であって、方法が、担体材料、パラジウムイオン、アルカリ土類金属イオン、及び有機化合物を含むスラリーを提供することであって、有機化合物が、スルホ基(-SOH)、スルホニル基(-S(=O)-)、及びスルフィニル基(-S(=O)-)から選択される官能基を含む、提供することと、スラリーを基材上に配置することと、スラリーを加熱して、担体材料上にパラジウムのナノ粒子及びアルカリ土類金属の硫酸塩のナノ粒子を形成することと、を含む、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒物品を製造する方法であって、前記方法が、
担体材料、パラジウムイオン、アルカリ土類金属イオン、及び有機化合物を含むスラリーを提供することであって、前記有機化合物が、スルホ基(-SOH)、スルホニル基(-S(=O)-)、及びスルフィニル基(-S(=O)-)から選択される官能基を含む、提供することと、
前記スラリーを基材上に配置することと、
前記スラリーを加熱して、前記担体材料上に前記パラジウムのナノ粒子及び前記アルカリ土類金属の硫酸塩のナノ粒子を形成することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記スラリーが、無機酸化物、好ましくは混合無機酸化物を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
スラリーを提供することが、前記担体材料、パラジウムイオン、アルカリ土類金属イオン、有機化合物、及び任意選択で無機酸化物のうちの2つ以上を溶媒中で合わせる1つ以上の工程を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記溶媒が、水を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
触媒物品を製造する方法であって、前記方法が、
パラジウムイオン、アルカリ土類金属イオン、及び有機化合物を含む溶液を提供することであって、前記有機化合物が、スルホ基(-SOH)、スルホニル基(-S(=O)-)、及びスルフィニル基(-S(=O)-)から選択される官能基を含む、提供することと、
担体材料を提供することと、
前記溶液を前記担体材料と接触させてスラリーを形成することと、
前記スラリーを基材上に配置することと、
前記スラリーを加熱して、前記担体材料上に前記パラジウムのナノ粒子及び前記アルカリ土類金属の硫酸塩のナノ粒子を形成することと、を含む、方法。
【請求項6】
前記溶液を前記担体材料と接触させて前記スラリーを形成した後、かつ前記スラリーを前記基材上に配置する前に、前記方法が、無機酸化物、好ましくは混合無機酸化物を前記スラリーに添加することを更に含み、かつ/又は
前記担体材料を提供することが、前記担体材料と無機酸化物、好ましくは混合無機酸化物との混合物を提供することを含み、前記溶液を前記担体材料と接触させてスラリーを形成することが、前記溶液を前記担体材料と前記無機酸化物との前記混合物と接触させることを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記有機化合物が、アミン官能基、好ましくは一級アミン官能基を更に含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記有機化合物が、スルホ基及び一級アミン基を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記有機化合物が、1~6個の炭素原子、好ましくは2~4個の炭素原子、より好ましくは2個の炭素原子を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記有機化合物が、アミノメタンスルホン酸、タウリン、ホモタウリン、4-アミノブタン-1-スルホン酸、2-アミノプロパン-1-スルホン酸、2-メチルタウリン、ジメチルスルホン、スルホナン(sulfonane)、システイン酸、ジメチルスルホキシド、及びアミノベンゼンスルホン酸のうちの1つ以上、好ましくはタウリンを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記溶液を前記担体材料と接触させて前記スラリーを形成する前に、前記溶液が撹拌され、好ましくは、前記溶液が、少なくとも30分間、より好ましくは少なくとも1時間、更により好ましくは少なくとも2時間撹拌される、請求項5~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記溶液及び/又はスラリーを提供することが、溶媒をパラジウム塩と接触させることを含み、好ましくは、前記パラジウム塩が、硝酸パラジウム及び酢酸パラジウムのうちの1つ以上、好ましくは硝酸パラジウムを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記アルカリ土類金属イオンが、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、及びバリウムイオンのうちの1つ以上、好ましくはバリウムイオンを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記溶液及び/又はスラリーを提供することが、溶媒をアルカリ土類金属塩と接触させることを含み、好ましくは、前記アルカリ土類金属塩が、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属硝酸塩、及びアルカリ土類金属酢酸塩のうちの1つ以上、好ましくはアルカリ土類金属酢酸塩を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記アルカリ土類金属塩が、酢酸バリウムを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記溶液が、水溶液である、請求項5~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記担体材料を提供することが、前記担体材料を含む第1のスラリーを提供することを含む、請求項5~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記溶液を前記担体材料と接触させて前記スラリーを形成することが、前記担体材料を含む前記第1のスラリーを前記溶液と混合することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記方法が、ワンポット方法である、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記方法が、前記スラリーを前記基材上に配置する工程の前に、前記スラリーを乾燥及び/又は仮焼することを含まない、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記担体材料が、酸化物を含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記担体材料及び/又は無機酸化物が、Al、SiO、TiO、CeO、ZrO、CeO-ZrO、V、La、及びゼオライトのうちの1つ以上を含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記担体材料及び/又は無機酸化物が、アルミナ、好ましくはガンマ-アルミナを含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記担体材料及び/又は無機酸化物が、セリア-ジルコニアを含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記担体材料及び/又は無機酸化物が、アルミナ及びセリア-ジルコニアを含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記アルミナ及び/又はセリア-ジルコニアが、ドープされている、請求項23~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記アルミナ及び/又はセリア-ジルコニアが、ランタン、ネオジム、イットリウム、ニオブ、プラセオジム、ハフニウム、モリブデン、チタン、バナジウム、亜鉛、カドミウム、マンガン、鉄、銅、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、セシウム、マグネシウム、カリウム、及びナトリウムのうちの1つ以上の酸化物、好ましくはランタン、ネオジム、及びイットリウムのうちの1つ以上の酸化物でドープされている、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
ドーパントが、0.001重量%~20重量%、好ましくは0.5重量%~10重量%の量で、前記アルミナ及び/又はセリア-ジルコニア中に存在する、請求項26又は27に記載の方法。
【請求項29】
前記担体材料が、アルミナ、好ましくはランタンドープアルミナを含み、前記無機酸化物が、アルミナ以外の無機酸化物、好ましくはセリアジルコニアを含む、請求項2~4及び6~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記担体材料及び/又は無機酸化物が、0.1~25μm、好ましくは0.5~5μmのD90を有する粉末の形態である、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記スラリーを前記基材上に配置する前に、結合剤;酸又は塩基;及び増粘剤のうちの1つ以上が、前記溶液及び/又はスラリーに添加される、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記方法が、ウォッシュコーティングを含む、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記スラリーが、10~40%、好ましくは15~35%の固形物量を有する、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記スラリーを前記基材上に配置することが、前記スラリーを前記基材と接触させること、並びに任意選択で、
真空を前記基材に適用すること、及び/又は
前記基材上の前記スラリーを乾燥させること、を含む、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記基材が、コーディエライトを含む、請求項1~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記基材が、ハニカムモノリス、ウォールフローフィルタ、又はフロースルーフィルタの形態である、請求項1~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記加熱が、
400℃~700℃、好ましくは400℃~600℃、より好ましくは450℃~600℃の温度で、及び/又は
10~360分間、好ましくは35~120分間行われる、請求項1~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記加熱が、仮焼を含む、請求項1~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記パラジウムナノ粒子が、0.1nm~20nm、好ましくは5~15nmの結晶子径を有する、請求項1~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記アルカリ土類金属硫酸塩ナノ粒子が、0.1nm~30nm、好ましくは5~25nm又は10~20nm、更により好ましくは12~16nmの結晶子径を有する、請求項1~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
M=C±70%、好ましくはM=C±50%、より好ましくはM=C±30%、更により好ましくはM=C±20%であり、Mが、前記Pdナノ粒子の結晶子径であり、Cが、前記アルカリ土類金属硫酸塩ナノ粒子の結晶子径である、請求項1~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
排出物処理システムでの使用のための触媒物品であって、前記触媒物品が、
基材と、
前記基材上の第1の触媒領域と、を含み、
前記第1の触媒領域が、担体材料、パラジウムナノ粒子、及びアルカリ土類金属硫酸塩ナノ粒子を含み、
前記アルカリ土類金属硫酸塩ナノ粒子が、0.1nm~30nmの結晶子径を有する、触媒物品。
【請求項43】
前記パラジウムナノ粒子が、0.1nm~20nmの結晶子径を有する、請求項42に記載の触媒物品。
【請求項44】
前記パラジウムナノ粒子が、5nm~15nmの結晶子径を有する、請求項43に記載の触媒物品。
【請求項45】
M=C±70%、好ましくはM=C±50%、より好ましくはM=C±30%、更により好ましくはM=C±20%であり、Mが、前記Pdナノ粒子の結晶子径であり、Cが、前記アルカリ土類金属硫酸塩ナノ粒子の結晶子径である、請求項42~44のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項46】
前記触媒物品の前記第1の触媒領域の断面を、FE-EPMAにより、画素(断面)サイズ0.34μm×0.34μm及び測定画素(断面)数256×256の条件下で面分析するときに、各画素について、前記アルカリ土類金属元素(Ae)の特徴X線強度(α:cps)及び前記パラジウム(Pd)の特徴X線強度(β:cps)を測定し、得られた各画素におけるα及びβを使用して計算したピアソン相関係数をRAe/Pdと指定するとき、RAe/Pdの値が、少なくとも0.75である、請求項42~45のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項47】
排出物処理システムでの使用のための触媒物品であって、前記触媒物品が、
基材と、
前記基材上の第1の触媒領域と、を含み、
前記第1の触媒領域が、担体材料、パラジウムナノ粒子、及びアルカリ土類金属硫酸塩ナノ粒子を含み、
前記触媒物品の前記第1の触媒領域の断面を、FE-EPMAにより、画素(断面)サイズ0.34μm×0.34μm及び測定画素(断面)数256×256の条件下で面分析するときに、各画素について、前記アルカリ土類金属元素(Ae)の特徴X線強度(α:cps)及び前記パラジウム(Pd)の特徴X線強度(β:cps)を測定し、得られた各画素におけるα及びβを使用して計算したピアソン相関係数をRAe/Pdと指定するとき、RAe/Pdの値が、少なくとも0.75である、触媒物品。
【請求項48】
Ae/Pdが、少なくとも0.76である、請求項46又は47に記載の触媒物品。
【請求項49】
1000℃で100時間エージングした後に、前記パラジウムナノ粒子が、60nm以下のリートベルト結晶子径を有し、かつ/又は任意のアルカリ土類金属含有種が、50nm以下の結晶子径を有し、好ましくは、1000℃で100時間エージングした後に、前記パラジウムナノ粒子が、40nm以下の結晶子径を有し、かつ/又は任意のアルカリ土類金属含有種が、30nm以下の結晶子径を有する、請求項42~48のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項50】
前記アルカリ土類金属が、カルシウム、ストロンチウム、及びバリウムのうちの1つ以上、好ましくはバリウムを含む、請求項42~49のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項51】
前記第1の触媒領域が、無機酸化物、好ましくは混合無機酸化物、より好ましくはセリア-ジルコニアを更に含む、請求項42~50のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項52】
前記触媒物品が、請求項1~41のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる、請求項42~51のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項53】
請求項1~41のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる触媒物品であって、前記触媒物品が、排出処理システムでの使用のためのものである、触媒物品。
【請求項54】
三元触媒作用のための、請求項42~53のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項55】
1g/in~3g/inの担体材料、パラジウムナノ粒子、アルカリ土類金属硫酸塩ナノ粒子、及び任意選択で無機酸化物の総装填量を有する、請求項42~54のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項56】
前記基材が、ウォールフローフィルタ基材を含む、請求項42~55のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項57】
前記基材が、フロースルー基材を含む、請求項42~56のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項58】
第1の触媒領域及び第2の触媒領域を含み、
前記第1の触媒領域が、担体材料、パラジウムナノ粒子、及びアルカリ土類金属硫酸塩ナノ粒子を含み、
前記第2の触媒領域が、白金及び/又はロジウムを含む、請求項42~57のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項59】
前記第1の触媒領域が、前記基材上に第1の層を形成し、前記第2の触媒領域が、前記基材上に第2の層を形成し、前記第1の層が、前記基材の第1の端部から延在し、前記第2の層が、前記基材の第2の端部から延在し、好ましくは、第1の触媒領域及び第2の触媒領域が各々、前記基材上に直接配置される、請求項58に記載の触媒物品。
【請求項60】
第3の触媒領域を更に含み、前記第2の触媒領域が、白金を含み、任意選択で
前記第3の触媒領域が、ロジウムを含み、前記第1の触媒領域及び/又は前記第2の触媒領域が各々前記第3の触媒領域と前記基材との間に位置するように、前記第1の触媒領域及び/又は前記第2の触媒領域の上に配置される、請求項58又は59に記載の触媒物品。
【請求項61】
前記担体材料が、アルミナ及び/又はセリア-ジルコニア、好ましくはアルミナを含む、請求項42~60のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項62】
前記アルミナが、ドープアルミナ、好ましくはランタンドープアルミナを含む、請求項61に記載の触媒物品。
【請求項63】
10g/ft~200g/ftのパラジウム、好ましくは50g/ft~150g/ftのパラジウムを含む、請求項42~62のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項64】
請求項42~63のいずれか一項に記載の触媒物品を含む、排出処理システム。
【請求項65】
ガソリンエンジンのための、請求項64に記載の排出処理システム。
【請求項66】
前記ガソリンエンジンが、化学量論的条件下で作動する、請求項65に記載の排出処理システム。
【請求項67】
排気ガスを処理する方法であって、前記方法が、
請求項42~63のいずれか一項に記載の触媒物品を提供することと、
前記触媒物品を排気ガスと接触させることと、を含む、方法。
【請求項68】
前記排気ガスが、ガソリンエンジンからのものである、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記ガソリンエンジンが、化学量論的条件下で作動する、請求項68に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒物品を製造する方法、その方法によって得ることができる触媒物品、排出処理システム、及び排気ガスを処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
三元触媒(three-way catalyst、TWC)は、化学量論的空燃比において、ガソリンエンジンの排気からのCO、HC、及びNOを無害な化合物へと同時に転化(約98%)することを可能にする。具体的には、CO及びHCのCO及び水蒸気(HO)への酸化は、主にPdによって触媒され、一方、NOのNへの還元は、主にRhによって触媒される。現代のTWCは、単層、二層、又は多層状担体上に堆積された担持白金族金属(以下、「platinum group metal、PGM」)触媒(Pd、Rh、Ptなど)を使用し、担体材料は、高比表面積を有する金属酸化物、主に安定化ガンマアルミナ、及びセリア含有酸素貯蔵材料からなる。担持触媒は、セラミックモノリス基材上にウォッシュコートされる。
【0003】
TWCウォッシュコートスラリーの従来の調製は、一般に、無機PGM前駆体、例えば硝酸塩、酢酸塩、水酸化物塩、又は塩化物塩の溶液を使用して、初期湿潤(incipient wetness)又は湿式含浸によってPGM元素を酸化物担体上に堆積させることを伴う。TWC性能を向上させるために、ウォッシュコート配合物に助触媒塩が添加されることも多い。モノリス基材が、調製されたままの状態のスラリーでウォッシュコートされると、続いて、乾燥工程及び仮焼工程が行われて、無機塩を分解し、PGM及び助触媒元素を担体材料上に固定させる。上記の方法を使用して調製された従来のTWCは、多くの場合、触媒活性種の特性(すなわち、PGM及び助触媒の平均粒径、これらの活性成分の連携、並びに金属-担体相互作用)に対して限定的な制御しか提供しない。これは主として、乾燥プロセス及び高温仮焼プロセス中の移動及び粒子成長が原因である。
【0004】
典型的には、Pdは、リッチTWC条件下でのNO還元反応についてRhよりも劣っている。バリウムなどのアルカリ土類金属は、Pdの触媒機能のための優れた助触媒であることが周知である。Baは、電子をPdに供与することができ、これにより、Pd(II)の電子配置がRhにより似たものになるため、Pd TWCのリッチNOx還元活性を改善することができる[非特許文献1]。Pd上のNO及びCO吸着強度の両方が、Ba助触媒されたPd触媒上で低減され、NO及びCO転化の向上がもたらされる[非特許文献2、非特許文献3]。Baはまた、PdOを安定化させ、三元触媒コンバータの寿命利用における高温曝露による焼結を抑制するのに役立つ。最後であるが重要なこととして、Baは、アルミナ担体材料のための良好な安定剤であり、これは、Pd種の高い分散を維持するのに役立つ。
【0005】
Ba成分を添加剤として使用する場合、活性Pd、Ba種、及び担体成分との相乗的相互作用を最適化するために、パラジウム及びバリウムの両方の位置及びサイズを制御することが重要である。しかしながら、既知の方法から得られた触媒では、Pdナノ粒子と比較してアルカリ土類金属含有種の粒径が一般に大きいことから、相互作用が最適化されない場合がある。更に、この相互作用は、既知の方法から得られた触媒ではエージング時に悪化する場合がある。したがって、得られた触媒物品におけるパラジウムナノ粒子とアルカリ土類金属含有種との間のより最適化された相互作用を可能にする触媒物品を製造する方法であって、理想的には、そのような改善された性能を可能にし、またエージングの影響を受けにくくする、同等の粒径及び緊密な近接性を有する、方法を提供する必要がある。
【0006】
ナノスケールの粒径を有する担体材料の細孔内に大部分が位置するPd種とのより密接な接触を容易にするために、バリウム種の粒径を減少させようとする多大な努力が歴史的になされてきた。BaSO化合物のボール/ビーズ粉砕は、ナノスケール硫酸バリウム種を作製するのにあまり有効ではない[特許文献1、特許文献6]。仮焼工程中に硫酸バリウム種を生成するために、前駆体として酢酸Ba又は水酸化Baを有するPdウォッシュコートに硫酸を添加した。より小さいBaSO粒径が得られた。しかしながら、これは、依然としてミクロンレベルであり、ナノスケールの目標からはかけ離れている[特許文献2~5]。米国特許出願公開第2020/030780号は、硫黄含有有機化合物の使用を伴う触媒物品を製造する方法を開示している。しかしながら、米国特許出願公開第2020/030780号は、予備焼成プロセスを使用して、最初に同じ担体上にPd及びBaの両方を固定することを伴う。このプロセスは、PGM含有量のコスト対収率比が高いため、コスト効率が低い。加えて、硫酸Ba種の粒径は、Pd粒径よりも実質的に大きい。米国特許出願公開第2020/030780号の方法はまた、重要なことに、担体材料のスラリーから出発することを伴い、そこにウォッシュコートの他の成分が連続して添加される。
【0007】
引用リスト:
特許文献:
特許文献1:米国特許第8741799号
特許文献2:米国特許出願公開第2012/0165185号
特許文献3:米国特許第8545780号
特許文献4:米国特許第8835346号
特許文献5:米国特許出願公開第2014/0329669号
特許文献6:国際公開第2014/156746号
特許文献7:米国特許出願公開第2020/030780号
【0008】
非特許文献:
非特許文献1:Applied Catalyst B,30,2001,287
非特許文献2:Journal of Molecular Catalysis A:Chemical,349,2011,94
非特許文献3:Applied Catalysis A:General403,2011,12
【発明の概要】
【0009】
本開示の一態様は、触媒物品を製造する方法であって、方法が、担体材料、パラジウムイオン、アルカリ土類金属イオン、及び有機化合物を含むスラリーを提供することであって、有機化合物が、スルホ基(-SOH)、スルホニル基(-S(=O)-)、及びスルフィニル基(-S(=O)-)から選択される官能基を含む、提供することと、スラリーを基材上に配置することと、スラリーを加熱して、担体材料上にパラジウムのナノ粒子及びアルカリ土類金属の硫酸塩のナノ粒子を形成することと、を含む、方法を対象とする。
【0010】
本開示の別の態様は、触媒物品を製造する方法であって、方法が、パラジウムイオン、アルカリ土類金属イオン、及び有機化合物を含む溶液を提供することであって、有機化合物が、スルホ基(-SOH)、スルホニル基(-S(=O)-)、及びスルフィニル基(-S(=O)-)から選択される官能基を含む、提供することと、担体材料を提供することと、溶液を担体材料と接触させてスラリーを形成することと、スラリーを基材上に配置することと、スラリーを加熱して、担体材料上にパラジウムのナノ粒子及びアルカリ土類金属の硫酸塩のナノ粒子を形成することと、を含む、方法を対象とする。
【0011】
本開示の別の態様は、排出物処理システムでの使用のための触媒物品であって、触媒物品が、基材と、基材上の第1の触媒領域と、を含み、第1の触媒領域が、担体材料、パラジウムナノ粒子、及びアルカリ土類金属硫酸塩ナノ粒子を含み、アルカリ土類金属硫酸塩ナノ粒子が、0.1nm~30nmの結晶子径を有する、触媒物品を対象とする。
【0012】
本開示の別の態様は、排出物処理システムでの使用のための触媒物品であって、触媒物品が、基材と、基材上の第1の触媒領域と、を含み、第1の触媒領域が、担体材料、パラジウムナノ粒子、及びアルカリ土類金属硫酸塩ナノ粒子を含み、触媒物品の第1の触媒領域の断面を、FE-EPMAにより、画素(断面)サイズ0.34μm×0.34μm及び測定画素(断面)数256×256の条件下で面分析するときに、各画素について、アルカリ土類金属元素(Ae)の特徴X線強度(α:cps)及びパラジウム(Pd)の特徴X線強度(β:cps)を測定し、得られた各画素におけるα及びβを使用して計算したピアソン相関係数をRAe/Pdと指定するとき、RAe/Pdの値が、少なくとも0.75である、触媒物品を対象とする。
【0013】
本開示の別の態様は、第1の態様における方法によって得ることができる触媒物品を対象とする。
【0014】
本発明はまた、第2、第3、又は第4の態様における触媒物品を含む、内燃エンジンのための排気システムも包含する。
【0015】
本開示の別の態様は、排気ガスを処理する方法であって、方法が、第2、第3、又は第4の態様の触媒物品を提供することと、触媒物品を排気ガスと接触させることと、を含む、方法を対象とする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
ここで、以下の非限定的な図面に関連して本発明を説明する。
【0017】
図1】基材の軸方向長さLに対して100%の長さを有する第1の触媒領域(単一層)を含有する、本発明による一実施形態を示す。
図2a】第1の触媒領域が、底部層として、軸方向長さLの100%に延在し、第2の触媒領域が、上部層として、軸方向長さLの100%に延在する、本発明による一実施形態を示す。
図2b図2aの変形例を図示する。
図3a】第1の触媒領域が、入口端部から軸方向長さLの100%未満に延在し、第2の触媒領域が、出口端部から軸方向長さLの100%未満に延在する、本発明による一実施形態を示す。第2の触媒領域及び第1の触媒領域の全長は、軸方向長さL以下である。
図3b図3aの変形例を図示する。
図3c】第1の触媒領域が、入口端部から軸方向長さLの100%未満に延在し、第2の触媒領域が、出口端部から軸方向長さLの100%未満に延在する、本発明による一実施形態を示す。第2の触媒領域及び第1の触媒領域の全長は、軸方向長さLよりも大きい。
図3d図3cの変形例を図示する。
図4a】第1の触媒領域が、入口端部から軸方向長さLの100%未満に延在し、第2の触媒領域が、出口端部から軸方向長さLの100%未満に延在する、本発明による一実施形態を示す。第2の触媒領域及び第1の触媒領域の全長は、軸方向長さL以下である。第3の触媒領域は、軸方向長さLの100%に延在し、上部層として第1の触媒領域及び第2の触媒領域に積層する。
図4b図4aの変形例を図示する。
図4c】第3の触媒領域が、底部層として、軸方向長さLの100%に延在する、本発明による一実施形態を示す。第1の触媒領域は、入口端部から軸方向長さLの100%未満に延在し、第2の触媒領域は、出口端部から軸方向長さLの100%未満に延在する。第2の触媒領域及び第1の触媒領域の全長は、軸方向長さL以下である。
図4d図4cの変形例を図示する。
図5a】第1の触媒領域が、入口端部から軸方向長さLの100%未満に延在し、第2の触媒領域が、出口端部から軸方向長さLの100%未満に延在する、本発明による一実施形態を示す。第2の触媒領域及び第1の触媒領域の全長は、軸方向長さL未満であるか、軸方向長さLに等しいか、又は軸方向長さLより大きい可能性がある。第3の触媒領域は、入口端部から軸方向長さLの100%未満に延在し、第4の触媒領域は、出口端部から軸方向長さLの100%未満に延在する。第3の触媒領域及び第4の触媒領域の全長は、軸方向長さL未満であるか、軸方向長さLに等しいか、又は軸方向長さLより大きい可能性がある。第1の触媒領域及び第2の触媒領域は、底部層を構成し、第3の触媒領域及び第4の触媒領域は、上部層を構成する。
図5b図5aの変形例を図示する。
図5c図5aの変形例を図示する。
図5d図5aの変形例を図示する。
図6a】第1の触媒領域が、底部層として、軸方向長さLの100%に延在し、第2の触媒領域が、中間層として、軸方向長さLの100%に延在し、第3の触媒領域が、上部層として、軸方向長さLの100%に延在する、本発明による一実施形態を示す。
図6b図6aの変形例を図示する。
図6c図6aの変形例を図示する。
図7a】第1の触媒領域が、入口端部から軸方向長さLの100%未満に延在し、第2の触媒領域が、出口端部から軸方向長さLの100%未満に延在する、本発明による一実施形態を示す。第2の触媒領域及び第1の触媒領域の全長は、軸方向長さLよりも大きい。第3の触媒領域は、軸方向長さLの100%に延在し、上部層として第1の触媒領域及び第2の触媒領域に積層する。
図7b図7aの変形例を図示する。
図7c図7aの変形例を図示する。
図7d図7aの変形例を図示する。
図7e図7aの変形例を図示する。
図7f図7aの変形例を図示する。
図7g】第1の触媒領域が、入口端部から軸方向長さLの100%未満に延在し、第2の触媒領域が、出口端部から軸方向長さLの100%未満に延在する、本発明による一実施形態を示す。第2の触媒領域及び第1の触媒領域の全長は、軸方向長さL未満であるか、軸方向長さLに等しいか、又は軸方向長さLより大きい可能性がある。第3の触媒領域は、入口端部から軸方向長さLの100%未満に延在し、第1の触媒領域及び/又は第2の触媒領域に少なくとも部分的に積層する。
図7h図7gの変形例を図示する。
図7i図7gの変形例を図示する。
図7j】第1の触媒領域が、入口端部から軸方向長さLの100%未満に延在し、第2の触媒領域が、出口端部から軸方向長さLの100%未満に延在する、本発明による一実施形態を示す。第2の触媒領域及び第1の触媒領域の全長は、軸方向長さL未満であるか、軸方向長さLに等しいか、又は軸方向長さLより大きい可能性がある。第3の触媒領域は、出口端部から軸方向長さLの100%未満に延在し、第2及び/又は第1の触媒領域に少なくとも部分的に積層する。
図7k図7jの変形例を図示する。
図7l図7jの変形例を図示する。
図8】本発明による、参照触媒及び本発明の触媒についての異なるラムダ(空燃比)値でのNO及びCO転化を示す。
図9】本発明による、参照触媒及び本発明の触媒についての異なるラムダ値でのTHC(全炭化水素)転化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、先行技術に関連する問題の少なくともいくつかに取り組むこと、又は少なくとも商業的に許容可能な代替解決策を提供することを目的とする。
【0019】
第1の態様では、本発明は、触媒物品を製造する方法であって、方法が、
担体材料、パラジウムイオン、アルカリ土類金属イオン、及び有機化合物を含むスラリーを提供することであって、有機化合物が、スルホ基(-SOH)、スルホニル基(-S(=O)-)、及びスルフィニル基(-S(=O)-)から選択される官能基を含む、提供することと、
スラリーを基材上に配置することと、
スラリーを加熱して、担体材料上にパラジウムのナノ粒子及びアルカリ土類金属の硫酸塩のナノ粒子を形成することと、を含む、方法を提供する。
【0020】
本明細書において定義される各態様又は実施形態は、別途明確に示されていない限り、任意の他の態様又は実施形態と組み合わされ得る。具体的には、好ましい又は有利であると示された任意の特徴は、好ましい又は有利であると示された任意の他の特徴と組み合わせ得る。
【0021】
スラリーは、好ましくは無機酸化物、より好ましくは混合無機酸化物を更に含む。
【0022】
担体材料、パラジウムイオン、アルカリ土類金属イオン、及び有機化合物を含むスラリーを提供することは、典型的には、担体材料、典型的にはパラジウム塩の形態のパラジウムイオン、典型的にはアルカリ土類金属塩の形態のアルカリ土類金属イオン、及び有機化合物を溶媒と接触させること、又は担体材料を含む第1のスラリーを、例えば、典型的にはパラジウム塩の形態のパラジウムイオン、典型的にはアルカリ土類金属塩の形態のアルカリ土類金属イオン、及び有機化合物と接触させることを含む。パラジウムイオン、アルカリ土類金属イオン、及び有機化合物は、任意の順序で、連続的に、又は一斉に第1のスラリーと組み合わされ得る。溶媒は、好ましくは、パラジウムイオン、アルカリ土類金属イオン、及び有機化合物の各々が溶媒中での高い溶解度を有するように選択される。したがって、スラリーを提供することは、好ましくは、担体材料、パラジウムイオン、アルカリ土類金属イオン、有機化合物、及び任意選択で無機酸化物のうちの2つ以上を溶媒中で合わせる1つ以上の工程を含む。溶媒は、好ましくは、水を含む。担体材料、パラジウムイオン、アルカリ土類金属イオン、及び有機化合物を含むスラリーを提供することは、典型的には、スラリーを長時間、例えば少なくとも30分間撹拌することを更に含む。
【0023】
方法は、スラリーを基材上に配置する工程を含む。言い換えれば、その構成成分の部分を含んで提供されるスラリーは、担体材料上に配置される。したがって、好ましくは、スラリーは、例えば、その構成成分の部分を混合することによって提供され、次いで、基材上に配置される。言い換えれば、好ましくは、スラリーを提供すること(例えば、その構成成分の部分を混合することによる)と、スラリーを基材上に配置することとの間に介在する工程がない。具体的には、スラリーは、基材上に配置される。したがって、好ましくは、提供されたスラリーを乾燥及び焼成して粉末を形成し(当然ながら、パラジウム及び/又はアルカリ土類金属の硫酸塩のナノ粒子を形成する可能性が高く、また、熱分解又は燃焼などによって実質的に全ての有機物を除去する)、次いで、そのような粉末を溶媒に添加することによって更に別個のスラリーを提供し、次いで、これを担体材料上に配置するなどの介在する工程はない。
【0024】
第2の態様では、本発明は、触媒物品を製造する方法であって、方法が、
パラジウムイオン、アルカリ土類金属イオン、及び有機化合物を含む溶液を提供することであって、有機化合物が、スルホ基(-SOH)、スルホニル基(-S(=O)-)、及びスルフィニル基(-S(=O)-)から選択される官能基を含む、提供することと、
担体材料を提供することと、
溶液を担体材料と接触させてスラリーを形成することと、
スラリーを基材上に配置することと、
スラリーを加熱して、担体材料上にパラジウムのナノ粒子及びアルカリ土類金属の硫酸塩のナノ粒子を形成することと、を含む、方法を提供する。
【0025】
驚くべきことに、排出処理システムにおいて使用される場合、本発明の方法によって製造された触媒物品(例えば、第1の態様又は第2の態様)は、好ましい触媒活性、特に好ましい三元触媒活性を示し得る。例えば、触媒物品は、化学量論的ガソリンエンジンの三元触媒排出削減中に、好ましい着火性能、特にNO、CO、及び全炭化水素の転化を示し得る。そのような好ましい触媒活性及び着火性能は、同じ/同様のPGM種、装填量、担体、及び構成を有する従来の触媒物品によって示されるものよりも優れている可能性がある。触媒物品は、従来の触媒物品と比較して、より耐久性があり得る。言い換えれば、そのような好ましい触媒活性は、エージング後であっても示され得る。
【0026】
有利なことに、そのような優れた性能は、触媒性能を損なうことなく、従来の触媒物品と比較してより低い装填量のPGM及び/又は助触媒金属(アルカリ土類金属など)を使用することを容易にし得る。これは、パラジウムなどのそのような金属の高いコストを考慮すると有益であり得る。更に、そのような優れた性能は、触媒性能を損なうことなく、高コストのPGMをより低コストのPGM又は他の遷移金属で部分的/完全に置換することを容易にし得る。
【0027】
更に、触媒物品は、リッチ条件において驚くほど効率的なNO転化性能を提供し得る。これは、バリウムなどのアルカリ土類金属とパラジウムとの助触媒相互作用が、そのような触媒物品において特に有効であり得るからである。
【0028】
理論に束縛されるものではないが、そのような優れた性能は、パラジウムナノ粒子及びアルカリ土類金属の硫酸塩のナノ粒子の好ましい粒径分布、並びにパラジウムナノ粒子及びアルカリ土類金属の硫酸塩のナノ粒子の互いに対する好ましい分布によって提供され得、すなわち、互いに高い相関を有し得る(言い換えれば、とりわけ小さい粒径及び高度に均一に分布したナノ粒子、すなわち、高い均一性を有するパラジウムナノ粒子及びアルカリ土類金属の硫酸塩のナノ粒子の分布を有することによって、多数のパラジウム-アルカリ土類金属相互作用を有する)と仮定される。理論に束縛されるものではないが、方法において提供されるスラリーが基材上に配置される本発明の方法(例えば、第1の態様又は第2の態様)は、装填された担体材料上及び形成される最終担体材料内のパラジウム及びアルカリ土類金属のより小さい粒径及び均一な分布を可能にするのに役立ち得ると仮定される。これは、例えば、基材上に配置される更なるスラリーを形成する前に、調製されたスラリーが乾燥及び/又は焼成及び/又は仮焼される介在する工程が存在し得ないからであり得ると考えられる。理論に束縛されるものではないが、第2の態様におけるように、パラジウムイオン、アルカリ土類金属イオン、及び有機化合物を含む溶液を最初に提供し、その後、そのような溶液を任意の担体材料と混合することによって、溶液中の相互作用(例えば、1つ以上の錯体を形成すること)が、装填された担体材料上及び形成される最終担体材料内のパラジウム及びアルカリ土類金属の小さな粒径及び均一な分布の両方を可能にすることに更に役立ち得ることも仮定される。したがって、パラジウム-アルカリ土類金属の組み合わせの助触媒活性は、より多数の相互作用により最適化され得る。
【0029】
更に、理論に束縛されるものではないが、そのような方法が、パラジウム及びアルカリ土類金属硫酸塩の粒径が同等であること、すなわち同様の大きさであることを可能にし得ると仮定される。典型的には、従来の方法では、アルカリ土類金属硫酸塩ナノ粒子は、パラジウムナノ粒子よりも最大5倍、10倍、又は更に20倍大きくなり得る。本発明の方法では、同様のサイズの小さなナノ粒子を得ることが可能であり得るため、パラジウムとアルカリ土類金属との間の相互作用及び相関は、高くなり得る。これは、したがって、ナノ粒子が、担体材料上で互いに隣接して密接に位置し(例えば、均一に分布している場合)、例えば、担体材料における同じサイズの細孔に入ることができ得るからである。したがって、同様のサイズの粒子の高度に均一な分布が提供され得る。これは、上述の有利な効果が達成されることを可能にし得るが、パラジウムとアルカリ土類金属助触媒種との間の相互作用の可能性を最適化する。
【0030】
理論に束縛されるものではないが、得られたパラジウムのナノ粒子及びアルカリ土類金属の硫酸塩のナノ粒子のそのような分布は、有利なエージング特性、すなわち、エージング時の失活に対する耐性(例えば、NOx転化性能)の増加を達成するのに役立ち得るとも考えられる。これは、形成され得る小さなナノ粒子のより均一な分布に起因して、すなわち、パラジウムとアルカリ土類金属との直接相互作用の数が比較的多く、かつパラジウムとパラジウムとの直接相互作用及びアルカリ土類金属とアルカリ土類金属との直接相互作用の数が比較的少ない(すなわち、隣接するナノ粒子を基準とする)ことに起因して、エージング時に、そのような触媒物品は、そのより大きなナノ粒子を形成する同じ種の粒子の焼結/合体に対してより耐性があり、それによって不活性化され得るからであり得る。これは、例えば、「他の」種のナノ粒子が同じ種のナノ粒子の焼結/合体に対する物理的障壁として作用することを可能にする、粒子の高度に均一な分布に起因し得る。したがって、有利なことに、エージング時の失活に対してより高い耐性を有する触媒物品が提供され得る。
【0031】
本発明の方法とは対照的に、米国特許出願公開第2020/030780号に記載されているものなどの以前の方法は、例えば、スラリーを調製し、焼成して粉末を提供し、続いてウォッシュコーティングプロセスで使用される粉末から更なるスラリーを調製する、予備焼成粉末プロセスを必要とする。そのような追加の工程は、BaSOの比較的大きな結晶子径(例えば、32nm超)をもたらし得る。更なる利点は、BaSO結晶の成長が制限されるように担体材料(特にランタンドープアルミナについて)の細孔を利用して、インサイチュBaSOが方法中に形成し得ることであり得る。更に、パラジウムイオン、アルカリ土類金属イオン、及び有機化合物を含む溶液が担体材料と混合される前に別個に提供される第2の態様の方法とは対照的に、米国特許出願公開第2020/030780号(同様の有機化合物も使用する)の方法は、上述の更なる有利な効果を達成することができない可能性がある。米国特許出願公開第2020/030780号では、ウォッシュコートスラリーの成分は各々、例えば担体材料に連続して添加される。言い換えれば、米国特許出願公開第2020/030780号はまた、パラジウムイオン、アルカリ土類金属イオン、及び有機化合物を含む溶液を提供する少なくとも1つの工程を開示していない。この工程は、第2の態様の更なる有利な効果を達成する際の重要な要因であり得ると考えられる。
【0032】
本明細書で使用される「触媒物品」という用語は、触媒がその上又はその中に担持されている物品を包含し得る。物品は、例えば、ハニカムモノリス、又はフィルタ、例えば、ウォールフローフィルタ又はフロースルーフィルタの形態をとり得る。触媒物品は、排出処理システム、特にガソリンエンジン、好ましくは化学量論的ガソリンエンジンのための排出処理システムでの使用のためのものであり得る。触媒物品は、三元触媒作用での使用のためのものであり得る。
【0033】
パラジウムイオン、アルカリ土類金属イオン、及び有機化合物を含む溶液を提供することは、典型的には、典型的にはパラジウム塩の形態のパラジウムイオン、典型的にはアルカリ土類金属塩の形態のアルカリ土類金属イオン、及び有機化合物を溶媒と接触させることを含む。溶媒は、好ましくは、パラジウムイオン、アルカリ土類金属イオン、及び有機化合物の各々が溶媒中での高い溶解度を有するように選択される。パラジウムイオン、アルカリ土類金属イオン、及び有機化合物を含む溶液を提供することは、典型的には、溶液を長時間、例えば少なくとも30分間撹拌することを更に含む。理論に束縛されるものではないが、パラジウムイオン、アルカリ土類金属イオン、及び有機化合物を含む溶液を最初に提供することによって、これは、パラジウムイオン、アルカリ土類金属イオン、及び/又は有機化合物を含む錯体が、担体材料と接触する前に溶液中で形成することを可能にし得ると考えられる。したがって、溶液は、好ましくは、担体材料及び/又は任意の固体を含まない。
【0034】
溶液は、パラジウムイオン及びアルカリ土類金属イオンを含む。本発明の方法によって製造される触媒物品において、アルカリ土類金属硫酸塩などのアルカリ土類金属種は、パラジウムの助触媒として作用し得る。パラジウムは、三元触媒作用を行うのに特に好適であり得る。加えて、パラジウムは高価であり、これは、同じ量の金属に対して同様のレベルの触媒活性を提供することができることが有利であることを意味する。更に、本発明の方法でのパラジウムの使用は、特に好ましい摂動着火性能をもたらし得る。パラジウムは、合金の形態であり得る。パラジウムイオンに加えて、溶液は、例えば、ロジウム、白金、ルテニウム、オスミウム、及びイリジウムのうちの1つ以上などの他の白金族金属を含み得る。
【0035】
担体材料は、パラジウムイオン、アルカリ土類金属イオン、有機化合物、及び/又はそれらから形成される錯体、並びにナノ粒子をその上に又はその中に担持することができる任意の材料であり得る。担体材料は、任意の形態をとり得るが、典型的には粉末、より典型的には高表面積粉末の形態である。本発明の方法が、ウォールフローフィルタ又はフロースルーフィルタなどの触媒化フィルタを調製するために使用される場合、担体材料は、典型的には、TEMを使用して測定して、例えば、0.1~30μm、より典型的には0.5~25μm、更により典型的には1~20μmのD50を有する粉末の形態となる。そのような粒径は、フィルタをコーティングするために使用されるスラリーの望ましいレオロジー特性を容易にし得る。担体材料は、ウォッシュコートとして機能し得る。担体材料は、ウォッシュコートであり得るか、又はウォッシュコートの一部であり得る。
【0036】
担体材料はまた、三元触媒転化を容易にするために、燃料希薄条件及び燃料リッチ条件でそれぞれ酸素を貯蔵及び放出する酸素貯蔵材料としての役割を果たし得る。
【0037】
溶液を担体材料と接触させてスラリーを形成することは、典型的には、遊離担体材料を事前調製された溶液に添加してそのスラリーを形成すること、又は事前調製された溶液を、担体材料を含む事前調製されたスラリーと接触させてそのスラリーを形成することのいずれかと、スラリーを混合することと、を伴う。本明細書で使用される「スラリー」という用語は、不溶性材料、例えば、不溶性粒子を含む液体を包含し得る。スラリーは、(1)溶媒、(2)可溶性含有物、例えば、遊離パラジウムイオン、遊離アルカリ土類金属イオン、及び遊離有機化合物(すなわち、担体の外側)、並びに(3)不溶性含有物、例えば、溶液の成分と相互作用するか又は相互作用しない担持粒子、を含み得る。スラリーは、基材上に材料を配置する際に、特にガスの拡散を最大化し、触媒転化中の圧力降下を最小化するために、特に有効である。スラリーは、典型的には撹拌され、より典型的には少なくとも10分間、より典型的には少なくとも30分間、更により典型的には少なくとも1時間撹拌される。接触時間及び/又は撹拌時間が増加すると、担体材料上に装填されているパラジウムイオン、アルカリ土類金属イオン、有機化合物、及び/又はそれらから形成される錯体の量が増加し得る。したがって、スラリーは、典型的には、装填された担体材料を含む。本明細書で使用される「装填された担体材料」という用語は、その上に(例えば、高表面積金属酸化物担体材料の表面上に)装填された、及び/又はその中に(例えば、ゼオライト担体材料の細孔内に)装填された、パラジウムイオン、アルカリ土類金属イオン、有機化合物、及び/又はそれらから形成される錯体を有する担体材料を包含し得る。パラジウムイオン、アルカリ土類金属イオン、有機化合物、及び/又はそれらから形成される錯体は、典型的には、例えば静電気力、水素結合、配位結合、共有結合、及び/又はイオン結合によって担体に固定される。
【0038】
本明細書で使用される「基材」という用語は、例えば、セラミックハニカム若しくは金属ハニカム、又はフィルタブロック、例えばウォールフローフィルタ若しくはフロースルーフィルタを包含し得る。基材は、セラミックモノリス基材を含み得る。基材は、その材料組成、サイズ及び構成、セルの形状及び密度、並びに壁厚の点で異なり得る。好適な基材は、当該技術分野において既知である。
【0039】
スラリーを基材上に配置することは、当該技術分野で既知の技術を使用して行われ得る。典型的には、スラリーは、所定の量で特定の成形ツールを使用して基材の入口に注入され、それによって、装填された担体材料が基材上に配置され得る。以下でより詳細に考察されるように、後続の真空及び/又はエアナイフ及び/又は乾燥工程が、配置工程中に用いられ得る。担体がフィルタブロックである場合、装填された担体材料は、フィルタ壁上、フィルタ壁内(多孔性の場合)、又はその両方に配置され得る。
【0040】
スラリーの加熱は、典型的にはオーブン又は炉、より典型的にはベルト又は静的オーブン(static oven)又は炉において、典型的には一方向からの特定の流れの熱風中で行われる。加熱は、仮焼を含み得る。加熱は、乾燥も含み得る。乾燥及び仮焼工程は、連続的又は逐次的であり得る。例えば、基材が既にウォッシュコーティングされ、前のウォッシュコーティングと一緒に乾燥させた後に、別個のウォッシュコーティングが適用され得る。ウォッシュコーティングされた基材はまた、コーティングが完了したら、1つの連続的な加熱プログラムを使用して乾燥及び仮焼されることができる。加熱中に、溶液中で形成され得る任意の錯体は、少なくとも部分的に、実質的に、又は完全に分解し得る。言い換えれば、そのような錯体の配位子、例えば有機化合物の配位子は、パラジウム及び/又はアルカリ土類金属から少なくとも部分的に、実質的に、又は完全に除去又は分離され、最終触媒物品から除去され得る。次いで、そのように分離されたパラジウムの粒子は、金属-金属結合及び金属-酸化物結合を形成し始め得る。加熱(仮焼)の結果として、基材は、典型的には有機化合物を実質的に含まず、より典型的には有機化合物を完全に含まない。更に、同様のプロセスによって、アルカリ土類金属の硫酸塩の粒子が形成されると考えられる。
【0041】
本明細書で使用される「ナノ粒子」という用語は、XRDによって測定して、0.01nm~100nmのリートベルト結晶子径を有する粒子を包含し得る。ナノ粒子は、任意の形状、例えば、球形、プレート、立方体、円筒形、六角形、又はロッドであり得るが、典型的には球形である。
【0042】
加熱工程の後、基材は、典型的には冷却され、より典型的には室温まで冷却される。冷却は、典型的には、冷却剤/冷却媒体を用いて又は用いずに、典型的には冷却剤を用いずに、空気中で行われる。
【0043】
溶液を担体材料と接触させてスラリーを形成した後、かつスラリーを基材上に配置する前に、第2の態様の方法は、好ましくは、無機酸化物、好ましくは混合無機酸化物をスラリーに添加することを更に含む。加えて又は代替的に、担体材料を提供することは、担体材料と無機酸化物、好ましくは混合無機酸化物との混合物を提供することを含み得、溶液を担体材料と接触させてスラリーを形成することは、溶液を担体材料と無機酸化物との混合物と接触させることを含む。言い換えれば、一実施形態では、無機酸化物(すなわち、第2の担体材料)が添加される前に、溶液が担体材料(すなわち、第1の担体材料)に添加され、混合され得る。代替的に、別の実施形態では、担体材料及び無機酸化物(すなわち、第1の担体材料及び第2の担体材料)が最初に混合され得、次いで、溶液が担体材料の混合物に添加される。これらの工程の順序は、特に限定されず、使用される担体材料及び/又は無機酸化物に依存し得る。
【0044】
有機化合物は、スルホ基(-SOH)、スルホニル基(-S(=O)-)、及びスルフィニル基(-S(=O)-)から選択される官能基を含む。理論に束縛されるものではないが、そのような硫黄含有基は、溶液中でアルカリ土類金属イオンと相互作用及び/又は錯体化し得ると考えられる。更に、アルカリ土類金属の硫酸塩のナノ粒子が形成されることを可能にするのは、そのような硫黄含有基の存在である。
【0045】
有機化合物は、好ましくは、アミン官能基、好ましくは一級アミン官能基を更に含む。理論に束縛されるものではないが、そのような官能基は、溶液中でパラジウムイオンと相互作用し得ると考えられる。したがって、有機化合物は、溶液中でパラジウムイオン及びアルカリ土類金属イオンの両方と、別個に、又は例えば有機化合物の同じ分子と相互作用及び/又は錯体を形成し得る。理論に束縛されるものではないが、そのような相互作用は、存在する場合、上述の有利な効果を更に達成するのに役立ち得ると仮定される。すなわち、事前形成された溶液中のそのような相互作用は、そのような金属イオンが、例えば溶液中で、したがって装填された担体材料上のスラリー中で、及び最終的には最終触媒物品において一緒に密接に「保持」されることから、得られた各種ナノ粒子の均一な分布及び相関を可能にするのに役立ち得る。この点に関して、有機化合物は、好ましくは、スルホ基及び一級アミン基を含む。
【0046】
有機化合物は、1~6個の炭素原子、好ましくは2~4個の炭素原子、より好ましくは2個の炭素原子を含み得る。そのような有機化合物は、溶液中での溶解度、金属種と錯体を形成する能力、及び加熱時に分解して得られる所望のサイズのナノ粒子を形成する能力の間の良好なバランスを提供し得る。
【0047】
具体的には、有機化合物は、好ましくは、アミノメタンスルホン酸、タウリン、ホモタウリン、4-アミノブタン-1-スルホン酸、2-アミノプロパン-1-スルホン酸、2-メチルタウリン、ジメチルスルホン、スルホナン(sulfonane)、システイン酸、ジメチルスルホキシド、及びアミノベンゼンスルホン酸のうちの1つ以上、より好ましくはタウリンを含む。ある特定の実施形態では、有機化合物(例えば、タウリン)及びパラジウムは、8:1以下、好ましくは、4:1以下のモル比を有することができる。代替的な実施形態では、有機化合物(例えば、タウリン)及びパラジウムは、8:1~2:1、好ましくは4:1~2:1のモル比を有することができる。
【0048】
第2の態様では、溶液は、好ましくは、溶液を担体材料と接触させてスラリーを形成する前に撹拌される。好ましくは、溶液は、少なくとも30分間、より好ましくは少なくとも1時間、更により好ましくは少なくとも2時間撹拌される。理論に束縛されるものではないが、そのような撹拌は、溶液の成分を均一に分散させるのに役立ち得、有機化合物とパラジウムイオン及びアルカリ土類金属イオンのうちの1つ以上との間で溶液中に形成され得る任意の錯体を形成するのに十分な時間を与えた後に、担体材料が導入され、溶液中で形成された任意の種がその上に装填され得ると考えられる。例えば、代わりに、アルカリ土類金属イオンが溶液に添加される前に担体材料が添加される場合、有機化合物とパラジウムイオンとの間に形成される錯体は、例えばアルカリ土類金属イオンとの相互作用を形成することなく、担体材料上に装填され得る。代替的に、代わりに、パラジウムイオンが溶液に添加される前に担体材料が添加される場合、有機化合物とアルカリ土類金属イオンとの間で形成される錯体は、例えばパラジウムイオンと相互作用することなく、担体材料上に装填され得る。しかしながら、第1の態様で説明したように、方法の工程のこの代替的な順序をとることによって、十分に有効な方法も提供され得る。
【0049】
溶液及び/又はスラリーを提供することは、好ましくは、溶媒をパラジウム塩と接触させることを含み、好ましくは、パラジウム塩は、硝酸パラジウム及び酢酸パラジウムのうちの1つ以上、好ましくは硝酸パラジウムを含む。
【0050】
アルカリ土類金属イオンは、好ましくは、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、及びバリウムイオンのうちの1つ以上、好ましくはバリウムイオンを含む。バリウムは、パラジウムと組み合わせて優れた助触媒活性を提供することが知られている。溶液及び/又はスラリーを提供することは、好ましくは、溶媒をアルカリ土類金属塩と接触させることを含み、好ましくは、アルカリ土類金属塩は、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属硝酸塩、及びアルカリ土類金属酢酸塩のうちの1つ以上、好ましくはアルカリ土類金属酢酸塩を含む。好ましくは、アルカリ土類金属塩は、酢酸バリウムを含む。
【0051】
溶液は、好ましくは、水溶液である。これは、当該分野における典型的なウォッシュコーティング技術と一致する。したがって、本発明の方法を実行するために、同様の成分を使用することにより、従来の方法で使用される技術及び装置を修正して本発明の方法を実行することは簡単であろう。したがって、有機化合物は、好ましくは、水溶性が高い。
【0052】
担体材料を提供することは、好ましくは、担体材料を含む第1のスラリーを提供することを含む。第1のスラリーは、好ましくは、担体材料及び水を含む。本明細書に記載されるように、第1のスラリーは、1つ以上の担体材料及び/又は無機酸化物を含み得る。その後、溶液を担体材料と接触させてスラリーを形成することは、好ましくは、担体材料を含む第1のスラリーを溶液と混合することを含む。したがって、装填された担体材料が結果として提供され得る。
【0053】
方法は、好ましくは、ワンポット方法である。そのような「ワンポット」調製方法は、従来の方法と比較して簡略化されており、低コストであり得る。この方法はまた、有機化合物の利用を最大化し得る。更に、そのような方法は、ウォッシュコートにおいて使用されるスラリーを再形成する前に、スラリー/懸濁液を乾燥及び焼成して粉末を作製する必要性を回避する。これは、例えば、米国特許出願公開第2020/030780号で使用されている方法である。言い換えれば、本発明の方法は、好ましくは、スラリーを基材上に配置する工程の前に、スラリーを乾燥及び/又は仮焼することを含まない。
【0054】
担体材料は、好ましくは、酸化物を含む。担体材料及び/又は無機酸化物は、好ましくは、Al、SiO、TiO、CeO、ZrO、CeO-ZrO、V、La、及びゼオライトのうちの1つ以上を含む。Al(酸化アルミニウム又はアルミナ)、SiO、TiO、CeO、ZrO、CeO-ZrO、V、La、及びゼオライト。酸化物は、好ましくは、金属酸化物である。担体材料及び/又は無機酸化物は、より好ましくはアルミナ、更により好ましくはガンマ-アルミナを含む。担体材料及び/又は無機酸化物は、好ましくは、セリア-ジルコニアを含む。担体材料及び/又は無機酸化物は、好ましくは、アルミナ及びセリア-ジルコニアを含む。アルミナ及び/又はセリア-ジルコニアは、好ましくはドープされ、より好ましくは、ランタン、ネオジム、イットリウム、ニオブ、プラセオジム、ハフニウム、モリブデン、チタン、バナジウム、亜鉛、カドミウム、マンガン、鉄、銅、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、セシウム、マグネシウム、カリウム、又はナトリウムのうちの1つ以上の酸化物でドープされ、更により好ましくは、ランタン、ネオジム、又はイットリウムの酸化物でドープされている。そのようなドープされた酸化物は、担体材料として特に有効である。好ましくは、ドーパントは、0.001重量%~20重量%、及びより好ましくは0.5重量%~10重量%の量でアルミナ及び/又はセリア-ジルコニア中に存在する。
【0055】
担体材料は、好ましくは、アルミナ、好ましくはランタンドープアルミナを含み、無機酸化物は、アルミナ以外の無機酸化物、好ましくはセリアジルコニアを含む。
【0056】
担体材料及び/又は無機酸化物は、好ましくは、TEMによって測定された0.1~25μm、好ましくは0.5~5μmのD90を有する粉末の形態である。
【0057】
スラリーを基材上に配置する前に、結合剤、酸又は塩基、及び増粘剤のうちの1つ以上が、溶液及び/又はスラリーに添加され得る。
【0058】
結合剤は、例えば、ウォッシュコートスラリー中で個々の不溶性粒子を一緒に結合するための小さな粒径を有する酸化物材料を含み得る。ウォッシュコートにおける結合剤の使用は、当該技術分野において周知である。
【0059】
増粘剤は、例えば、ウォッシュコートスラリー中で不溶性粒子と相互作用する、官能性ヒドロキシル基を有する天然ポリマーを含み得る。増粘剤は、基材上へのウォッシュコートコーティング中のコーティングプロファイルの改善のためにウォッシュコートスラリーを増粘する目的を果たす。増粘剤は、通常は、ウォッシュコート仮焼中に焼き取られる。ウォッシュコートのための特定の増粘剤/レオロジー調整剤の例としては、グラクトマナガム(glactomanna gum)、グアーガム、キサンタンガム、カードランシゾフィラン、スクレログルカン、ジウタンゴム、ホイーランゴム、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシルエチルセルロース、メチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、及びエチルヒドロキシセルロースが挙げられる。
【0060】
方法は、好ましくは、ウォッシュコーティングを含む。好適なウォッシュコーティング技術は、当業者に既知である。
【0061】
スラリーは、好ましくは10~40%、好ましくは15~35%の固形物量を有する。そのような固形物量は、装填された担体材料を基材上に配置するのに好適なスラリーレオロジーを可能にし得る。例えば、基材がハニカムモノリスである場合、そのような固形物量は、基材の内壁上へのウォッシュコートの薄層の堆積を可能にし得る。基材がウォールフローフィルタである場合、そのような固形物量は、スラリーがウォールフローフィルタのチャネルに入ることを可能にし得、スラリーがウォールフローフィルタの壁に入ることを可能にし得る。
【0062】
スラリーを基材上に配置することは、好ましくは、スラリーを基材と接触させること、並びに任意選択で、真空を基材に適用すること、及び/又は基材上のスラリーを乾燥させること、を含む。これは、基材上のスラリー中に含有され得る装填された担体材料の好ましい分布をもたらし得る。乾燥は、好ましくは、60℃~200℃、より好ましくは70℃~130℃の温度で、及び/又は10~360分間、好ましくは15~60分間生じる。
【0063】
基材は、好ましくは、コーディエライトを含む。基材は、ハニカムモノリス、ウォールフローフィルタ、又はフロースルーフィルタの形態であり得る。基材は、「ブランク」、すなわち、ウォッシュコーティングされていない基材であり得る。代替的に、基材は、既にその上に装填された1つ又はウォッシュコートを有し得る。そのような状況では、最終触媒物品は、異なるウォッシュコートの複数の層を含み得る。
【0064】
加熱は、好ましくは、400℃~700℃、好ましくは400℃~600℃、より好ましくは450℃~600℃の温度で、及び/又は10~360分間、好ましくは35~120分間行われる。加熱は、好ましくは、仮焼を含む。
【0065】
パラジウムナノ粒子は、好ましくは、0.1nm~20nm、好ましくは5~15nmのリートベルト結晶子径を有する。結晶子径は、X線回折(X-ray diffraction、XRD)によって測定され得る。そのような粒径は、有利なことに、高い活性及びエージング時の失活に対する耐性などの、上で考察される好ましい特性を可能にし得る。
【0066】
アルカリ土類金属硫酸塩ナノ粒子は、好ましくは、0.1nm~30nm、好ましくは5~25nm、より好ましくは5~20nm、又は10~20nm、更により好ましくは12~16nmのリートベルト結晶子径を有する。結晶子径は、XRDによって測定され得る。そのような粒径は、有利なことに、高い活性及びエージング時の失活に対する耐性などの、上で考察される好ましい特性を可能にし得る。更に、ナノ粒子のそのようなサイズは、パラジウムナノ粒子に好ましいサイズと組み合わせて、同等の粒径の結果として上述の有利な特性を達成するのに役立ち得る。
【0067】
別途本明細書に記載がない限り、本明細書に記載の任意の結晶子径は、XRDによって測定され得る。好適な技術は、当該技術分野において既知である。例えば、そのような技術は、以下のように説明され得る。X線回析データを入手するために、X’Pert Pro MPD回析計を、BraggBrentanoHDミラー、1/4°発散スリット、20mmマスク、サンプルスピナー、及びPIXcel検出器とともに使用することができる。5°~115°の範囲、0.02°の工程サイズ、及び50分の総スキャン時間にわたって、三重スキャンを実行することができる。データは、HighScore Plusソフトウェアを使用して分析することができる。遷移アルミナ相は、部分的又は未知の結晶構造方法を使用してモデル化することができ(参照により本明細書に組み込まれる、N.V.Y.SCARLETT and I.C.MADSEN,Quantification of phases with partial or not known crystal structure,Powder Diffraction(2006),21(4),278-284)、他の全ての相は、リートベルトを使用してモデル化することができる。結晶子径及び歪みは、擬似ボイトプロファイル関数に基づいて測定することができ、機器の広がりについて補正することができる。XRDによって測定された結晶子径は、本発明の分野におけるそのような種のナノ粒径を決定するための一般的なパラメータである。
【0068】
好ましくは、M=C±70%、好ましくはM=C±50%、より好ましくはM=C±30%、更により好ましくはM=C±20%であり、Mは、Pdナノ粒子のリートベルト結晶子径であり、Cは、アルカリ土類金属硫酸塩ナノ粒子のリートベルト結晶子径である。言い換えれば、Pdナノ粒子のリートベルト結晶子径及びアルカリ土類金属硫酸塩ナノ粒子のリートベルト結晶子径は、好ましくは、上述の理由のために、サイズが同等である、すなわち同様の大きさである。
【0069】
更なる態様では、本発明は、排出物処理システムでの使用のための触媒物品であって、触媒物品が、基材と、基材上の第1の触媒領域と、を含み、第1の触媒領域が、担体材料、パラジウムナノ粒子、及びアルカリ土類金属硫酸塩ナノ粒子を含み、アルカリ土類金属硫酸塩ナノ粒子が、0.1nm~30nmのリートベルト結晶子径を有する、触媒物品を提供する。
【0070】
従来の触媒物品と比較して、そのような触媒物品は、化学量論的ガソリンエンジンの三元触媒排出削減中に、特にNO、CO、及び全炭化水素について好ましい着火性能を示し得る。触媒物品はまた、本明細書に記載の他の好ましい特性、例えば、エージング時の失活に対する高い耐性、及びリッチ条件におけるNOx転化性能などの高い活性を示し得る。
【0071】
パラジウムナノ粒子は、好ましくは、0.1~20nmの結晶子径を有する。パラジウムナノ粒子は、好ましくは、5nm~15nmのリートベルト結晶子径を有する。
【0072】
好ましくは、M=C±70%、好ましくはM=C±50%、より好ましくはM=C±30%、更により好ましくはM=C±20%であり、Mは、Pdナノ粒子の結晶子径であり、Cは、アルカリ土類金属硫酸塩ナノ粒子の結晶子径である。
【0073】
好ましくは、触媒物品の第1の触媒領域の断面を、FE-EPMAにより、画素(断面)サイズ0.34μm×0.34μm及び測定画素(断面)数256×256の条件下で面分析するときに、各画素について、アルカリ土類金属元素(Ae)の特徴X線強度(α:cps)及びパラジウム(Pd)の特徴X線強度(β:cps)を測定し、得られた各画素におけるα及びβを使用して計算したピアソン相関係数をRAe/Pdと指定するとき、RAe/Pdの値は、少なくとも0.75である。ピアソン相関係数(積率相関係数)は、当業者に既知であり、FE-EPMAによる面分析の結果に基づいて計算される。相関係数RAe/Pdは、FE-EPMAによる面分析におけるアルカリ土類金属元素(Ae)の特徴X線強度を第1変数(α)とし、パラジウム(Pd)の特徴X線強度を第2変数(β)としたとき、式RAe/Pd=(共分散)/(αの標準偏差×βの標準偏差)によって決定される。そのような計算は、当業者に既知である。言い換えれば、好ましくは、そのような触媒物品において、アルカリ土類金属元素及びパラジウムは、高度に相関している。すなわち、基材上のパラジウムの分布を基準として、アルカリ土類金属が高分散状態で存在し得る。したがって、パラジウムの助触媒種として作用するアルカリ土類金属の能力は、最適化され得る。
【0074】
更なる態様では、本発明は、排出物処理システムでの使用のための触媒物品であって、触媒物品が、基材と、基材上の第1の触媒領域と、を含み、第1の触媒領域が、担体材料、パラジウムナノ粒子、及びアルカリ土類金属硫酸塩ナノ粒子を含み、触媒物品の第1の触媒領域の断面を、FE-EPMAにより、画素(断面)サイズ0.34μm×0.34μm及び測定画素(断面)数256×256の条件下で面分析するときに、各画素について、アルカリ土類金属元素(Ae)の特徴X線強度(α:cps)及びパラジウム(Pd)の特徴X線強度(β:cps)を測定し、得られた各画素におけるα及びβを使用して計算したピアソン相関係数をRAe/Pdと指定するとき、RAe/Pdの値が、少なくとも0.75である、触媒物品を提供する。ピアソン相関係数(積率相関係数)は、当業者に既知であり、FE-EPMAによる面分析の結果に基づいて計算される。相関係数RAe/Pdは、FE-EPMAによる面分析におけるアルカリ土類金属元素(Ae)の特徴X線強度を第1変数(α)とし、パラジウム(Pd)の特徴X線強度を第2変数(β)としたとき、式RAe/Pd=(共分散)/(αの標準偏差×βの標準偏差)によって決定される。そのような計算は、当業者に既知である。言い換えれば、好ましくは、そのような触媒物品において、アルカリ土類金属元素及びパラジウムは、高度に相関している。すなわち、基材上のパラジウムの分布を基準として、アルカリ土類金属が高分散状態で存在し得る。したがって、パラジウムの助触媒種として作用するアルカリ土類金属の能力は、最適化され得る。
【0075】
好ましくは、RAe/Pdは、少なくとも0.76である。言い換えれば、アルカリ土類金属及びパラジウムは、好ましくは、高度に相関している。そのような高い相関は、従来の触媒物品のより大きいアルカリ土類金属硫酸塩ナノ粒子、すなわち、小さいパラジウムナノ粒子を有するが、はるかに大きいアルカリ土類金属硫酸塩ナノ粒子を有するものでは容易に達成されない場合がある。
【0076】
好ましくは、1000℃で100時間エージングした後に、パラジウムナノ粒子は、60nm以下のリートベルト結晶子径を有し、かつ/又は任意のアルカリ土類金属含有種は、50nm以下のリートベルト結晶子径を有し、好ましくは、1000℃で100時間エージングした後に、パラジウムナノ粒子は、40nm以下のリートベルト結晶子径を有し、かつ/又は任意のアルカリ土類金属含有種は、30nm以下のリートベルト結晶子径を有する。
【0077】
アルカリ土類金属は、好ましくは、カルシウム、ストロンチウム、及びバリウムのうちの1つ以上、好ましくはバリウムを含む。
【0078】
第1の触媒領域は、好ましくは、無機酸化物、好ましくは混合無機酸化物、より好ましくはセリア-ジルコニアを更に含む。
【0079】
触媒物品は、本明細書に記載の方法によって得ることができ得る。
【0080】
触媒物品は、好ましくは、排出処理システムでの使用のためのものである。
【0081】
触媒物品は、好ましくは、三元触媒作用のためのものである。
【0082】
触媒物品は、好ましくは、1g/in~3g/inの担体材料、パラジウムナノ粒子、アルカリ土類金属硫酸塩ナノ粒子、及び任意選択で無機酸化物の総装填量を有する。
【0083】
いくつかの実施形態では、触媒物品は、20~150g/ft、好ましくは、40~120g/ft、より好ましくは、80~120g/ftのPd装填量を有することができる。代替的に、触媒物品は、150g/ft以下、好ましくは、120g/ft以下、より好ましくは、100g/ft以下のPd装填量を有することができる。
【0084】
基材は、好ましくは、ウォールフローフィルタ基材を含む。基材は、好ましくは、フロースルー基材を含む。
【0085】
触媒物品は、好ましくは、第1の触媒領域及び第2の触媒領域を含み、第1の触媒領域は、担体材料、パラジウムナノ粒子、及びアルカリ土類金属硫酸塩ナノ粒子を含み、第2の触媒領域は、白金及び/又はロジウムを含む。
【0086】
好ましくは、第1の触媒領域は、基材上に第1の層を形成し、第2の触媒領域は、基材上に第2の層を形成し、第1の層は、基材の第1の端部から延在し、第2の層は、基材の第2の端部から延在し、好ましくは、第1の触媒領域及び第2の触媒領域は各々、基材上に直接配置される。
【0087】
好ましくは、触媒物品は、第3の触媒領域を更に含み、第2の触媒領域は、白金を含み、任意選択で、第3の触媒領域は、ロジウムを含み、第1の触媒領域及び/又は第2の触媒領域が各々第3の触媒領域と基材との間に位置するように、第1の触媒領域及び/又は第2の触媒領域の上に配置される。
【0088】
別の好ましい実施形態では、第1の触媒領域は、基材上に第1の層を形成し、第2の触媒領域は、基材上に第2の層を形成し、第1の層は、基材上に直接配置され、第2の層は、第1の層上に直接配置される。別の好ましい実施形態では、第1の触媒領域は、基材上に第1の層を形成し、第2の触媒領域は、基材上に第2の層を形成し、第2の層は、基材上に直接配置され、第1の層は、第1の層上に直接配置される。別の好ましい実施形態では、触媒物品は、第3の触媒領域を更に含み、第3の触媒領域は、第1の層又は第2の層上に直接配置され、任意選択で、第2の触媒領域は、白金を含み、第3の触媒領域は、ロジウムを含む。
【0089】
言い換えれば、本発明の方法によって形成された触媒領域を含む触媒物品は、例えば、上部層、中間層、又は底部層としてそのような触媒層を有し得る。本明細書で使用される「底部層」という用語は、基材(すなわち、基材壁)に最も近いか又はそれと接触している層(例えば、ウォッシュコート層)を包含し得る。本明細書で使用される「上部層」という用語は、底部層よりも基材(すなわち、基材壁)からより離れた層(例えば、ウォッシュコート層)を包含し得、底部層の上に位置し得る。そのような層状触媒物品では、担体材料の上部層及び/又は底部層は、その上に更なるPGM、例えば白金を有し得る。そのような層状触媒物品では、上部層及び/又は底部層は、複数のPGMを含み得、すなわち、二元金属(例えば、Pd-Rh又はPd-Ptを含有する)又は三元金属(例えば、Pd-Rh-Pt)であり得る。触媒物品は、2つ以上の触媒ゾーン、例えば、上流ゾーン及び下流ゾーンを含み得る。ゾーンは、異なるPGM(例えば、Rh上流及びPd下流、又はその逆)を有することによって互いに異なり得るか、又は異なるタイプのPGM、例えば単一金属、二元金属又は三元金属の量だけ異なり得る。
【0090】
上記の好ましい実施形態のいずれにおいても、第1の触媒領域、第2の触媒領域、及び/又は第3の触媒領域は、ゾーンの形態であり得、そのようなゾーンは、基材の100%未満、例えば90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、又は10%以下を覆う。ゾーンは、基材の入口端部又は出口端部から延在し得る。
【0091】
基材は、軸方向長さLを有する第1の端部及び第2の端部を有し得る。
【0092】
第1の触媒領域は、軸方向長さLの100パーセントにわたって延在することができる(例えば、図1図2a、図2b、及び図6a~図6cを参照されたい)。いくつかの実施形態では、第1の触媒領域は、軸方向長さLの20~99%、30~90%、又は40~80%にわたって延在することができる。代替的に、第1の触媒領域は、軸方向長さLの30~70パーセントにわたって延在することができる。好ましくは、軸方向長さLの40~60パーセント、より好ましくは、45~55パーセントにわたって延在することができる(例えば、図3a~図5d及び図7a~図7lを参照されたい)。
【0093】
第2の触媒領域は、軸方向長さLの100パーセントにわたって延在することができる(例えば、図2a、図2b、及び図6a~図6cを参照されたい)。
【0094】
第2の触媒領域は、軸方向長さLの30~70パーセントにわたって延在することができる。好ましくは、軸方向長さLの40~60パーセント、より好ましくは、45~55パーセントにわたって延在することができ、最も好ましくは、第2の領域及び第1の領域の全長は、軸方向長さL以上である(例えば、図3a~図5d及び図7a~図7lを参照されたい)。
【0095】
第2の触媒領域は、第1の触媒領域と、軸方向長さLの0.1~99パーセントにわたって重複することができる(例えば、図3c及び図3dを参照されたく、第1の触媒領域は、第2の触媒領域に積層することができるか、又は第2の触媒領域は、第1の触媒領域に積層することができる)。代替的に、第2の触媒領域及び第1の触媒領域の全長は、軸方向長さLに等しくてもよい(例えば、図3a及び図3bを参照されたい)。なお別の代替例では、第2の触媒領域及び第1の触媒領域の全長は、軸方向長さL未満、例えば、軸方向長さLの95%、90%、80%、又は70%以下であることができる。
【0096】
第3の触媒領域は、軸方向長さLの100パーセントにわたって延在することができる(例えば、図4a~図4d及び図6a~図6cを参照されたい)。
【0097】
第3の触媒領域は、軸方向長さL未満、例えば、軸方向長さLの95%、90%、80%、又は70%以下であることができる(例えば、図5a~図5d及び図7g~図7lを参照されたい)。
【0098】
第2の触媒領域は、第1の触媒領域と、軸方向長さLの0.1~99パーセントにわたって重複することができ(例えば、図7a~図7lを参照されたい)、第1の触媒領域は、第2の触媒領域に積層することができるか、又は第2の触媒領域は、第1の触媒領域に積層することができる)。代替的に、第2の領域又は第1の領域のいずれかは、軸方向長さLの30~70パーセントにわたって延在することができる。好ましくは、軸方向長さLの40~60パーセント、より好ましくは、45~55パーセントにわたって延在することができ、最も好ましくは、第2の領域及び第1の領域の全長は、軸方向長さL以下である(例えば、図4a~図4dを参照されたい)。
【0099】
担体材料は、好ましくは、アルミナ及び/又はセリア-ジルコニアを含み、好ましくはアルミナを含む。アルミナは、好ましくは、ドープアルミナを含み、好ましくはランタンドープアルミナを含む。
【0100】
触媒物品は、好ましくは、10g/ft~250g/ftのパラジウム、好ましくは20g/ft~150g/ftのパラジウムを含む。有利なことに、そのようなパラジウムレベルは、従来の触媒物品のレベルよりも低くあり得るが、触媒活性を損なうことはない。
【0101】
更なる態様では、本発明は、本明細書に記載の触媒物品を含む排出処理システムを提供する。
【0102】
排出処理システムは、好ましくは、ガソリンエンジンのためのものである。
【0103】
ガソリンエンジンは、好ましくは、化学量論的条件下で作動する。
【0104】
更なる態様では、本発明は、排気ガスを処理する方法であって、方法が、本明細書に記載の触媒物品を提供することと、触媒物品を排気ガスと接触させることと、を含む、方法を提供する。
【0105】
排気ガスは、好ましくは、ガソリンエンジンからのものである。触媒物品は、そのような排気ガスを処理するのに特に好適である。更に、ガソリンエンジンからの排気は、典型的には、ディーゼルエンジンからの排気よりも過酷である。したがって、本明細書に記載の触媒物品の有利なエージング特性は、そのために特に有益である。ガソリンエンジンは、好ましくは、化学量論的条件下で作動する。
【0106】
本明細書で使用される「領域」という用語は、典型的にはウォッシュコートを乾燥及び/又は仮焼することによって得られる基材上のエリアを指す。「領域」は、例えば、「層」又は「ゾーン」として基材上に配置又は担持されることができる。基材上のエリア又は配列は、一般に、基材にウォッシュコートを適用するプロセス中に制御される。「領域」は、典型的には、明確な境界又は縁部を有する(すなわち、従来の分析技術を使用して、一方の領域を別の領域から区別することが可能である)。
【0107】
典型的には、「領域」は、実質的に均一な長さを有する。この文脈における「実質的に均一な長さ」への言及は、その平均値から10%を超えて逸脱(例えば、最大長と最小長との間の差)しない長さ、好ましくはその平均値から5%を超えて逸脱しない長さ、より好ましくはその平均値から1%を超えて逸脱しない長さを指す。
【0108】
各「領域」は、実質的に均一な組成を有する(すなわち、領域のある部分とその領域の別の部分とを比較する場合、ウォッシュコートの組成に実質的な差がない)ことが好ましい。この文脈における実質的に均一な組成は、領域のある部分を領域の別の部分と比較する場合、組成の差が5%以下、通常は2.5%以下、及び最も通常には1%以下である材料(例えば、領域)を指す。
【0109】
本明細書で使用される「ゾーン」という用語は、基材の全長の75%以下の長さなど、基材の全長未満の長さを有する領域を指す。「ゾーン」は、典型的には、基材の全長の少なくとも5%(例えば5%以上)の長さ(すなわち、実質的に均一な長さ)を有する。
【0110】
基材の全長は、その入口端部とその出口端部と(例えば、基材の両端部)の間の距離である。
【0111】
本明細書で使用される「基材の入口端部に配置されているゾーン」へのいかなる言及も、基材上に配置又は担持されているゾーンであって、基材の入口端部までの方が、基材の出口端部までよりも近い、ゾーンを指す。したがって、ゾーンの中点(すなわち、その長さの半分での点)は、基材の入口端部までの方が、基材の出口端部までよりも近い。同様に、本明細書で使用される「基材の出口端部に配置されているゾーン」へのいかなる言及も、基材上に配置又は担持されているゾーンであって、基材の出口端部までの方が、基材の入口端部までよりも近い、ゾーンを指す。したがって、ゾーンの中点(すなわち、その長さの半分での点)は、基材の出口端部までの方が、基材の入口端部までよりも近い。
【0112】
基材がウォールフローフィルタである場合、一般に、「基材の入口端部に配置されているゾーン」へのいかなる言及も、基材上に配置又は担持されているゾーンであって、
(a)基材の入口チャネルの入口端部(例えば、開いている端部)までの方が、入口チャネルの閉じた端部(例えば、遮断された端部若しくは塞がれた端部)までよりも近い、ゾーン、及び/又は
(b)基材の出口チャネルの閉じた端部(例えば、遮断された端部若しくは塞がれた端部)までの方が、出口チャネルの出口端部(例えば、開いている端部)までよりも近い、ゾーンを指す。
【0113】
したがって、ゾーンの中点(すなわち、その長さの半分での点)は、(a)基材の入口チャネルの入口端部までの方が、入口チャネルの閉じた端部までよりも近く、及び/又は(b)基材の出口チャネルの閉じた端部までの方が、出口チャネルの出口端部までよりも近い。
【0114】
同様に、基材がウォールフローフィルタである場合、「基材の出口端部に配置されているゾーン」へのいかなる言及も、基材上に配置又は担持されているゾーンであって、
(a)基材の出口チャネルの出口端部(例えば、開いている端部)までの方が、出口チャネルの閉じた端部(例えば、遮断された端部若しくは塞がれた端部)までよりも近い、ゾーン、及び/又は
(b)基材の入口チャネルの閉じた端部(例えば、遮断された端部若しくは塞がれた端部)までの方が、入口チャネルの入口端部(例えば、開いている端部)までよりも近い、ゾーンを指す。
【0115】
したがって、ゾーンの中点すなわち、その長さの半分での点)は、(a)基材の出口チャネルの出口端部までの方が、出口チャネルの閉じた端部までよりも近い、及び/又は(b)基材の入口チャネルの閉じた端部までの方が、入口チャネルの入口端部までよりも近い。
【0116】
ウォッシュコートがウォールフローフィルタの壁に存在する(すなわち、ゾーンが壁内のものである)場合、ゾーンは、(a)と(b)との両方を満たし得る。
【0117】
「ウォッシュコート」という用語は、当該技術分野において周知であり、通常、触媒の生成中に基材に適用される接着性コーティングを指す。
【0118】
本明細書で使用される頭字語「PGM」は、「白金族金属(platinum group metal)」を指す。「白金族金属」という用語は、一般に、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、及びPtからなる群から選択される金属、好ましくはRu、Rh、Pd、Ir、及びPtからなる群から選択される金属を指す。一般に、「PGM」という用語は、好ましくは、Rh、Pt、及びPdからなる群から選択される金属を指す。
【0119】
本明細書で使用される「混合酸化物」という用語は、一般に、当該技術分野において従来的に既知であるように、単相における酸化物の混合物を指す。本明細書で使用される「複合酸化物」という用語は、一般に、当該技術分野において従来的に既知であるように、2つ以上の相を有する酸化物の組成物を指す。
【0120】
本明細書で使用される重量%として表されるドーパントの量、特に総量へのいかなる言及も、担体材料又はその耐火金属酸化物の重量を指す。
【0121】
本明細書で使用される「装填量」という用語は、金属重量基準でのg/ftの単位の測定値を指す。
【0122】
本明細書において「a」又は「an」に言及する場合、これは、単数形及び複数形を包含する。
【0123】
以下の非限定的な実施例は、単に本発明を例示するものである。当業者は、本発明の趣旨及び特許請求の範囲の範囲内にある多くの変形例を認識するであろう。
【0124】
多数の触媒物品を以下の実施例に従って調製した。具体的には、本発明の驚くべき結果を実証するために、各方法がウォッシュコートの成分の異なる添加順序を必要とする多数の触媒物品を調製した。
【0125】
参照触媒1-標準的なウォッシュコート(タウリンを含まない)。
【0126】
底部層前部ゾーンウォッシュコートスラリーを、以下によって調製した。
(i)粉砕し、セリア及びジルコニア混合酸化物を含有するスラリーを作製し、
(ii)酢酸バリウム及び硝酸パラジウムを上記スラリー(i)に添加し、
(iii)粉砕された4%Laドープアルミナを上記混合スラリー(ii)に添加し、
(iv)ウォッシュコート(iii)をレオロジー調整剤で増粘する。
【0127】
底部層前部ゾーンウォッシュコートの最終組成物は、セリアジルコニア複合体1.6g/in、4%Laドープアルミナ0.7g/in、Ba元素300g/ft、及びPd元素98g/ftを含有していた。
【0128】
底部層後部ゾーンウォッシュコートスラリーを、以下によって調製した。
(i)粉砕し、4%Laドープアルミナを含有するスラリーを作製し、
(ii)硝酸白金をスラリー(i)に添加して混合し、
(iii)セリア及びジルコニア混合酸化物を粉砕する。
(iv)上記2つのスラリー(ii)及び(iii)をブレンドする。
(v)ウォッシュコート(iv)をレオロジー調整剤で増粘する。
【0129】
底部層後部ゾーンウォッシュコートの最終組成物は、セリアジルコニア複合体1.6g/in、4%Laドープアルミナ0.7g/in、及びPt元素98g/ftを含有していた。
【0130】
上部層ウォッシュコートを、以下によって調製した。
(i)粉砕し、セリア及びジルコニア混合酸化物を含有するスラリーを作製し、
(ii)硝酸ロジウム溶液をスラリー(i)に添加し、
(iii)スラリー(ii)のpHを調整して、Rhを混合酸化物上に沈殿させ、
(iv)粉砕された4%Laドープアルミナをスラリー(iii)に添加し、
(v)ウォッシュコート(iv)をレオロジー調整剤で増粘する。
【0131】
上部層ウォッシュコートの最終組成物は、セリアジルコニア複合体1.0g/in、4%Laドープアルミナ0.35g/in、及びRh元素2g/ftを含有していた。
【0132】
フォロースルー基材上のウォッシュコートコーティング
(i)後部ゾーン用量を最初に50%~55%用量長にして精密コーティング方法を使用する。80%以上の水分除去まで乾燥させる。
(ii)前部ゾーンウォッシュコートを50%~55%の用量長目標までコーティングする。80%以上の水分除去まで乾燥させる。
(iii)仮焼する。
(iv)50%~55%の用量長を目標とする精密コーティング方法によって上部層に適用する。入口用量と出口用量との間で80%以上の水分除去まで乾燥させる。
(v)仮焼する。
【0133】
参照触媒2-Pd、BaSO、及び担体材料を含有する予備焼成粉末
底部層前部ゾーンウォッシュコートスラリーを、以下によって調製した。
(i)粉砕し、4%Laドープアルミナを含有するスラリーを作製し、
(ii)硝酸Pd溶液を上記撹拌スラリーに添加し、
(iii)酢酸Baを上記撹拌スラリー(ii)に添加し、
(iv)タウリンを上記撹拌スラリー(iii)に添加する。
(v)スラリー(iv)を空気中110℃で一晩乾燥させ、500℃で2時間仮焼し、
(vi)研磨し、篩い分けし、(v)からの予備焼成粉末のスラリーを作製し、
(vii)粉砕し、セリア及びジルコニア混合酸化物のスラリーを作製し、
(viii)(vi)及び(vii)からのスラリーを一緒に混合して、ウォッシュコートスラリーを形成し、
(ix)(viii)におけるウォッシュコートスラリーをレオロジー調整剤で増粘する。
【0134】
予備焼成粉末(v)の最終組成物は、4%ランタニドドープアルミナ上に8.1%Pd元素及び24.5%Ba元素を含有していた。ウォッシュコートの最終組成物は、セリアジルコニア複合体1.6g/in、4%Laドープアルミナ0.7g/in、Ba金属300g/ft、及びPd金属98g/ftである。
【0135】
参照触媒2の底部層後部ゾーンウォッシュコートスラリー及び参照触媒2の上部層ウォッシュコートを、それぞれ参照触媒1と同じ方式で調製した。
【0136】
ウォッシュコートコーティングの適用は、参照触媒1と同じであった。
【0137】
本発明の触媒1-タウリン直接バッチ添加
底部層前部ゾーンウォッシュコートスラリーを、以下によって調製した。
(i)粉砕し、セリア及びジルコニア混合酸化物を含有するスラリーを作製し、
(ii)別個の容器で粉砕し、4%Laドープアルミナスラリーを含有するスラリーを作製し、
(iii)上記2つのスラリー(i)及び(ii)を連続的に混合しながら一緒にブレンドし、
(iv)硝酸パラジウムを上記(iii)のスラリーに添加して混合し、
(v)酢酸Baを上記スラリー(iv)に添加して混合し、
(vi)タウリンを上記スラリー(v)に添加して混合し、
(vii)(vi)におけるウォッシュコートスラリーをレオロジー調整剤で増粘する。
【0138】
底部層前部ゾーンウォッシュコートの最終組成物は、セリアジルコニア複合体1.6g/in、4%Laドープアルミナ0.7g/in、Ba金属300g/ft、及びPd金属98g/ftを含有していた。
【0139】
本発明の触媒1の底部層後部ゾーンウォッシュコートスラリー及び本発明の触媒1の上部層ウォッシュコートを、それぞれ、参照触媒1と同じ方式で調製した。
【0140】
ウォッシュコートコーティングの適用は、参照触媒1と同じであった。
【0141】
本発明の触媒2-Pd、酢酸Ba、及びタウリンの予備溶液
底部層前部ゾーンウォッシュコートスラリーを、以下によって調製した。
(i)硝酸パラジウム及び酢酸バリウムの溶液を混合し、
(ii)タウリンを上記混合溶液(i)に添加し、混合を維持し、
(iii)粉砕し、4%Laドープアルミナを含有するスラリーを別個に作製し、
(iv)工程(ii)における予備溶液を、予備粉砕した4%Laドープアルミナスラリー(iii)に添加して混合し、
(v)粉砕し、セリア及びジルコニア混合酸化物を含有するスラリーを別個に作製し、
(vi)得られたセリアジルコニア混合酸化物スラリー(v)を工程(iv)のバッチに添加し、
(vii)(vi)におけるウォッシュコートスラリーをレオロジー調整剤で増粘する。
【0142】
底部層前部ゾーンウォッシュコートの最終組成物は、セリアジルコニア複合体1.6g/in、4%Laドープアルミナ0.7g/in、Ba元素300g/ft、及びPd元素98g/ftを含有していた。
【0143】
本発明の触媒2の底部層後部ゾーンウォッシュコートスラリー及び本発明の触媒2の上部層ウォッシュコートを、それぞれ、参照触媒1と同じ方式で調製した。
【0144】
ウォッシュコートコーティングの適用は、参照触媒1と同じであった。
【0145】
実施例1:BA種及びPD種のXRD分析
全ての触媒のBa種の結晶子径をXRDによって分析し、結果を表1に示す。
【0146】
【表1】
【0147】
ウィザライト(BaCO)は、参照触媒1がタウリンを含まないプロセスによって作製されたため、参照触媒1において検出された。BaCOの推定結晶子径は、約36nmであり、標準偏差は5nmであった。バライト(BaSO)は、ウォッシュコートバッチ中にタウリンが存在する参照触媒2及び2つの本発明の触媒において検出された。2つの本発明の触媒のBaSO結晶子径は、約16nmであり、これは、予備焼成粉末プロセスによって作製された参照触媒2(約32nm)よりもはるかに小さい。それらはまた、タウリンを含まない標準的なバッチプロセスによって調製された参照触媒1(約36nm)よりも有意に小さい。フレッシュ触媒中のPd種(Pd又はPdO)に由来するXRDピークはなく、これは、Pd種が高度に分散していることを示している。
【0148】
Baは、TWC技術において周知のPd助触媒である。Baは、電子をPdに供与することができ、これにより、Pd(II)の電子配置がRhにより似たものになるため、PdのリッチNOx還元機能を改善することができる。この促進効果を最大化するためには、Ba-Pdの緊密な接触が望ましい。典型的には、Pd種は、高度に分散しており(この研究ではXRDによって測定できない)、大部分は、担体材料の細孔に位置している。より小さい粒径のBa種は、とりわけ、担体の細孔に入る可能性がより高く、BaのPdとの緊密な近接性をもたらすため好ましい。本発明の2つの触媒は、参照のものの約半分のサイズを有するフレッシュBa種を得、したがって、Pd-Ba相互作用が向上し、リッチNOx転化が改善されることが予想される。
【0149】
全ての触媒を、1000℃での触媒床のピーク温度を目標とするストイック/燃料カットエージングサイクルで100時間エンジンベンチエージングした。コーティングされたモノリスからスクラップしたウォッシュコートをXRD測定に使用した。
【0150】
Ba酸化アルミニウム(BaAl)、ヘキサセルシアン(BaAlSi)、及びウィザライト(BaCO)を含む複数のBa種が、エージングされた触媒において検出された。それらの各々は、正確なサイズ測定のための検出限界未満の濃度を有する。結晶性PdOは、エージングされたサンプル中で検出され、結晶子径を表1に報告する。両方の本発明の触媒におけるPdOのより小さいリートベルト結晶子径は、Pd種の焼結が抑制されることを意味する。結果は、Baの添加がPdO種の熱安定性を増加させる他の文献報告と一致する。PdO結晶子径が小さいほど、熱安定性が高くなる。
【0151】
実施例2:PDとBAとの相互作用のFE-EPMA分析
FE-EPMAによる面分析の結果に基づいてピアソン相関係数(積率相関係数)を計算し、表2に示す。全てのフレッシュ触媒は、同様に高いPd-Ba係数を有し、これは、約0.7~0.8である。しかしながら、エージングされた本発明の触媒1及び本発明の触媒2は、参照触媒よりもはるかに高いPd-Ba共配置を実証する。これは、アルカリ土類金属元素及びパラジウムが、TWCエージング後であっても、本発明の触媒において高度に相関していることを意味する。したがって、パラジウムのための助触媒種として作用するアルカリ土類金属の能力が最適化される。
【0152】
【表2】
【0153】
実施例3:エンジン試験における着火性能試験
全ての触媒を、1000℃での触媒床のピーク温度を目標とするストイック/燃料カットエージングサイクルで100時間エンジンベンチエージングし、ガソリンエンジンで試験した。着火性能は典型的な条件であり、ガス体積空間速度は115K/時であり、温度勾配は30℃/分であり、空燃比(Air and Fuel Ratio、AFR)のラムダは14.45で0.5の振幅で摂動される。THC、CO、及びNOの転化は、供給ガスの濃度と、触媒の出口でのガスの濃度とを比較することによって計算された。
【0154】
HC、CO、及びNOのT50着火温度を表3に示す。データは、本発明の本発明の触媒1及び本発明の触媒2の両方が、2つの参照触媒と比較した場合に、有意に改善された着火性能を与えることを明確に示す。具体的には、本発明の触媒2は、本発明の触媒1よりも活性であり、T50が約15~20℃低い(T50は、転化が50%に到達するときの温度である)。
【0155】
【表3】
【0156】
実施例4:エンジン試験におけるラムダ掃引試験
ラムダ掃引試験は、典型的な条件であり、ガス体積空間速度は115K/時であり、温度は400℃に固定され、空燃比(AFR)のラムダは15.5~13.5で掃引し、0.5の振幅が掃引中に摂動される。THC、CO、及びNOの転化は、供給ガスの濃度と、触媒の出口でのガスの濃度とを比較することから計算された。全ての触媒を、1000℃での触媒床のピーク温度を目標とするストイック/燃料カットエージングサイクルで100時間エンジンベンチエージングし、ガソリンエンジンで試験した。
【0157】
CO及びNO転化トレースを図8に示す。データは、本発明の本発明の触媒1及び本発明の触媒2の両方が、ラムダが0.985未満である場合に、リッチ条件で有意に改善されたNO転化を与えることを明確に示す。本発明の触媒2は、具体的には、ラムダが1に近い場合の化学量論点(CO-NOクロスオーバー点)において約10%高いCO及びNO転化、並びに2つの参照触媒よりも広いラムダウィンドウも示す。THC転化トレースを図9に示す。本発明の触媒2は、参照触媒1及び2よりも活性であり、ラムダが0.99未満である場合、リッチ側でより高いTHC転化を有する。本発明の触媒の改善されたリッチ活性は、より密接なPd-Ba相互作用に関連すると考えられる。
【0158】
実施例5:エンジン試験における暖機試験
全ての触媒を、1000℃での触媒床のピーク温度を目標とするストイック/燃料カットエージングサイクルで100時間エンジンベンチエージングし、ガソリンエンジンで試験した。暖機試験は、典型的には95Kのガス毎時空間速度で行った。エンジンアウトからの汚染物質を490℃に予熱し、次いで冷触媒に向けた。全炭化水素、一酸化炭素、及びNOxの50%転化に達する時間を記録し、それぞれT50HC、T50CO、及びT50NOと名付けた。THC、CO、及びNOの転化は、供給ガスの濃度と、触媒の出口でのガスの濃度とを比較することによって計算された。同様に、各汚染物質について75%に到達する時間も記録し、T75HC、T75CO、及びT75NOと名付けた。
【0159】
表4のデータは、本発明の本発明の触媒1及び本発明の触媒2の両方が、2つの参照触媒よりも速く暖機することを明確に示す。具体的には、本発明の触媒2は、ある特定の転化レベルに到達するための最短時間を示す本発明の触媒1よりも更に活性である。
【0160】
【表4】
【0161】
前述の詳細な説明は、説明及び例示の目的で提供されており、添付の特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。本明細書に示される現時点で好ましい実施形態の多くの変形例は、当業者には明らかであり、添付の特許請求の範囲及びそれらの等価物の範囲内に留まる。
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図3c
図3d
図4a
図4b
図4c
図4d
図5a
図5b
図5c
図5d
図6a
図6b
図6c
図7a
図7b
図7c
図7d
図7e
図7f
図7g
図7h
図7i
図7j
図7k
図7l
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2024-02-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒物品を製造する方法であって、前記方法が、
担体材料、パラジウムイオン、アルカリ土類金属イオン、及び有機化合物を含むスラリーを提供することであって、前記有機化合物が、スルホ基(-SOH)、スルホニル基(-S(=O)-)、及びスルフィニル基(-S(=O)-)から選択される官能基を含む、提供することと、
前記スラリーを基材上に配置することと、
前記スラリーを加熱して、前記担体材料上に前記パラジウムのナノ粒子及び前記アルカリ土類金属の硫酸塩のナノ粒子を形成することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記スラリーが、無機酸化物、好ましくは混合無機酸化物を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
スラリーを提供することが、前記担体材料、パラジウムイオン、アルカリ土類金属イオン、有機化合物、及び任意選択で無機酸化物のうちの2つ以上を溶媒中で合わせる1つ以上の工程を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
触媒物品を製造する方法であって、前記方法が、
パラジウムイオン、アルカリ土類金属イオン、及び有機化合物を含む溶液を提供することであって、前記有機化合物が、スルホ基(-SOH)、スルホニル基(-S(=O)-)、及びスルフィニル基(-S(=O)-)から選択される官能基を含む、提供することと、
担体材料を提供することと、
前記溶液を前記担体材料と接触させてスラリーを形成することと、
前記スラリーを基材上に配置することと、
前記スラリーを加熱して、前記担体材料上に前記パラジウムのナノ粒子及び前記アルカリ土類金属の硫酸塩のナノ粒子を形成することと、を含む、方法。
【請求項5】
前記溶液を前記担体材料と接触させて前記スラリーを形成した後、かつ前記スラリーを前記基材上に配置する前に、前記方法が、無機酸化物、好ましくは混合無機酸化物を前記スラリーに添加することを更に含み、かつ/又は
前記担体材料を提供することが、前記担体材料と無機酸化物、好ましくは混合無機酸化物との混合物を提供することを含み、前記溶液を前記担体材料と接触させてスラリーを形成することが、前記溶液を前記担体材料と前記無機酸化物との前記混合物と接触させることを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記有機化合物が、アミノメタンスルホン酸、タウリン、ホモタウリン、4-アミノブタン-1-スルホン酸、2-アミノプロパン-1-スルホン酸、2-メチルタウリン、ジメチルスルホン、スルホナン(sulfonane)、システイン酸、ジメチルスルホキシド、及びアミノベンゼンスルホン酸のうちの1つ以上、好ましくはタウリンを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記アルカリ土類金属イオンが、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、及びバリウムイオンのうちの1つ以上、好ましくはバリウムイオンを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記溶液及び/又はスラリーを提供することが、溶媒をアルカリ土類金属塩と接触させることを含み、好ましくは、前記アルカリ土類金属塩が、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属硝酸塩、及びアルカリ土類金属酢酸塩のうちの1つ以上、好ましくはアルカリ土類金属酢酸塩を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記アルカリ土類金属塩が、酢酸バリウムを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記方法が、前記スラリーを前記基材上に配置する工程の前に、前記スラリーを乾燥及び/又は仮焼することを含まない、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記担体材料及び/又は無機酸化物が、Al、SiO、TiO、CeO、ZrO、CeO-ZrO、V、La、及びゼオライトのうちの1つ以上を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
排出物処理システムでの使用のための触媒物品であって、前記触媒物品が、
基材と、
前記基材上の第1の触媒領域と、を含み、
前記第1の触媒領域が、担体材料、パラジウムナノ粒子、及びアルカリ土類金属硫酸塩ナノ粒子を含み、
前記アルカリ土類金属硫酸塩ナノ粒子が、0.1nm~30nmの結晶子径を有する、触媒物品。
【請求項13】
前記パラジウムナノ粒子が、5nm~15nmの結晶子径を有する、請求項12に記載の触媒物品。
【請求項14】
排出物処理システムでの使用のための触媒物品であって、前記触媒物品が、
基材と、
前記基材上の第1の触媒領域と、を含み、
前記第1の触媒領域が、担体材料、パラジウムナノ粒子、及びアルカリ土類金属硫酸塩ナノ粒子を含み、
前記触媒物品の前記第1の触媒領域の断面を、FE-EPMAにより、画素(断面)サイズ0.34μm×0.34μm及び測定画素(断面)数256×256の条件下で面分析するときに、各画素について、前記アルカリ土類金属元素(Ae)の特徴X線強度(α:cps)及び前記パラジウム(Pd)の特徴X線強度(β:cps)を測定し、得られた各画素におけるα及びβを使用して計算したピアソン相関係数をRAe/Pdと指定するとき、RAe/Pdの値が、少なくとも0.75である、触媒物品。
【請求項15】
1000℃で100時間エージングした後に、前記パラジウムナノ粒子が、60nm以下のリートベルト結晶子径を有し、かつ/又は任意のアルカリ土類金属含有種が、50nm以下の結晶子径を有し、好ましくは、1000℃で100時間エージングした後に、前記パラジウムナノ粒子が、40nm以下の結晶子径を有し、かつ/又は任意のアルカリ土類金属含有種が、30nm以下の結晶子径を有する、請求項12~14のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項16】
第1の触媒領域及び第2の触媒領域を含み、
前記第1の触媒領域が、担体材料、パラジウムナノ粒子、及びアルカリ土類金属硫酸塩ナノ粒子を含み、
前記第2の触媒領域が、白金及び/又はロジウムを含む、請求項12~15のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項17】
前記第1の触媒領域が、前記基材上に第1の層を形成し、前記第2の触媒領域が、前記基材上に第2の層を形成し、前記第1の層が、前記基材の第1の端部から延在し、前記第2の層が、前記基材の第2の端部から延在し、好ましくは、第1の触媒領域及び第2の触媒領域が各々、前記基材上に直接配置される、請求項16に記載の触媒物品。
【請求項18】
第3の触媒領域を更に含み、前記第2の触媒領域が、白金を含み、任意選択で
前記第3の触媒領域が、ロジウムを含み、前記第1の触媒領域及び/又は前記第2の触媒領域が各々前記第3の触媒領域と前記基材との間に位置するように、前記第1の触媒領域及び/又は前記第2の触媒領域の上に配置される、請求項16又は17に記載の触媒物品。
【国際調査報告】