(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】ポリウレタンナノファイバー防水透湿フィルム、その製造方法及び使用
(51)【国際特許分類】
C08G 18/48 20060101AFI20240822BHJP
C08G 18/76 20060101ALI20240822BHJP
D04H 1/4358 20120101ALI20240822BHJP
D04H 1/728 20120101ALI20240822BHJP
【FI】
C08G18/48 033
C08G18/48 004
C08G18/76 085
D04H1/4358
D04H1/728
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024502101
(86)(22)【出願日】2023-08-11
(85)【翻訳文提出日】2024-01-12
(86)【国際出願番号】 CN2023112527
(87)【国際公開番号】W WO2024012601
(87)【国際公開日】2024-01-18
(31)【優先権主張番号】202211108048.5
(32)【優先日】2022-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524016699
【氏名又は名称】嘉▲興▼思佰特▲納▼米▲繊▼▲維▼科技有限▲責▼任公司
【氏名又は名称原語表記】JIAXING SIBAITE NANOFIBER TECHNOLOGY CO., LTD
【住所又は居所原語表記】Floor 3,Building 1, No. 258, Hongxing Road, Zhongdai Street, Pinghu City, Jiaxing,Zhejiang 314200 China
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100217412
【氏名又は名称】小林 亜子
(72)【発明者】
【氏名】▲趙▼▲興▼雷
(72)【発明者】
【氏名】金勇
(72)【発明者】
【氏名】蒋攀
(72)【発明者】
【氏名】▲華▼▲てぃん▼
(72)【発明者】
【氏名】王▲鵬▼
【テーマコード(参考)】
4J034
4L047
【Fターム(参考)】
4J034BA03
4J034DA01
4J034DB04
4J034DB05
4J034DB07
4J034DG03
4J034HA07
4J034HA08
4J034HA14
4J034HB02
4J034HC12
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC65
4J034HC67
4J034HC71
4J034KA01
4J034KB02
4J034KD12
4J034KE02
4J034RA19
4L047AA25
4L047AB08
4L047CB10
(57)【要約】
本発明は、ポリウレタンナノファイバー防水透湿フィルム、その製造方法及び使用を提供する。
前記ポリウレタンナノファイバー防水透湿フィルムは、2種類のイソチオシアネートと2種類のポリエチレングリコールとを原料として製造され、良好な耐水圧性能、耐引張性能及び透湿性能を有する。また、当該ポリウレタンナノファイバー防水透湿フィルムは、静電紡糸法により製造され、コストが安く、操作が簡単で、生産効率が高く、衣服、医療及び電子機器などの分野における応用見込みが良好である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタンナノファイバー防水透湿フィルムであって、前記ポリウレタンナノファイバー防水透湿フィルムの製造は、官能基数が2であるイソチオシアネートIと、官能基数が3であるイソチオシアネートIIと、官能基数が2であるポリエチレングリコールIと、官能基数が3であるポリエチレングリコールIIとを原料として含むことを特徴とするポリウレタンナノファイバー防水透湿フィルム。
【請求項2】
前記イソチオシアネートIは下記の構造を有する:
【数1】
ここで、mは1~3の正の整数である、
ことを特徴とする請求項1に記載のポリウレタンナノファイバー防水透湿フィルム。
【請求項3】
前記イソチオシアネートIIは下記の構造を有する:
【数2】
又は
【数3】
又は
【数4】
ことを特徴とする請求項1に記載のポリウレタンナノファイバー防水透湿フィルム。
【請求項4】
前記ポリエチレングリコールIは、PEG400、PEG800、PEG1000、PEG2000、PEG4000、PEG6000、PEG8000又はPEG10000のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載のポリウレタンナノファイバー防水透湿フィルム。
【請求項5】
前記ポリエチレングリコールIIは下記の構造を有する:
【数5】
ここで、nは6~12の整数を表す。
ことを特徴とする請求項1に記載のポリウレタンナノファイバー防水透湿フィルム。
【請求項6】
イソチオシアネートI、イソチオシアネートII、ポリエチレングリコールI及びポリエチレングリコールIIを混合して溶媒で溶解するステップ(1)と、
触媒を添加し、昇温して還流反応させ、反応終了後に生成物を収集するステップ(2)と、
上記生成物を静電紡糸して、ポリウレタンナノファイバー防水透湿フィルムを製造するステップ(3)と、
を含むことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のポリウレタンナノファイバー防水透湿フィルムの製造方法。
【請求項7】
ステップ(1)において、前記イソチオシアネートI、イソチオシアネートII、ポリエチレングリコールI及びポリエチレングリコールIIのモル比は、8~16:1~1.5:8.4~24:1.05~3であり、前記溶媒は、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド、トルエン又はジメチルスルホキシドからなる群より選択される1種以上であることを特徴とする請求項6に記載のポリウレタンナノファイバー防水透湿フィルムの製造方法。
【請求項8】
ステップ(2)における触媒は、N,N-ジメチルエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン又はN-メチルモルホリンからなる群より選択される1種以上であり、前記反応温度は45~55℃であることを特徴とする請求項6に記載のポリウレタンナノファイバー防水透湿フィルムの製造方法。
【請求項9】
ステップ(3)における静電紡糸条件は、電圧が10~90kVであり、受取距離が10~50cmであり、給液速度が0.1~10mL/hであり、紡糸環境の温度が20~35℃であり、相対湿度が50~95%であることを特徴とする請求項6に記載のポリウレタンナノファイバー防水透湿フィルムの製造方法。
【請求項10】
衣服、医療及び電子機器などの分野における、請求項1~5のいずれか1項に記載のポリウレタンナノファイバー防水透湿フィルムの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水透湿フィルム材料の技術分野に関し、特にポリウレタン防水透湿フィルム、その製造方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
防水透湿生地は機能性生地の1種であり、液状水滴の浸透を阻止するとともに水蒸気の通過を許容するため、アウトドアウェア、手術衣、消防服、宇宙服などの機能性衣服、薄膜蒸留、医療用品、建築物の防護コーティングにおいて広く応用されている。防水透湿生地の製造方法から、防水透湿生地を高密度織物、コーティング織物及びラミネート織物の3種類に分類することができ、その中、高密度防水織物は透湿性が良いが防水性が悪く、コーティング織物は防水性が良いが透湿性が悪く、ラミネート織物は防水透湿機能フィルムを有するため、良好な防水透湿機能を有する。防水透湿フィルムはラミネート織物の重要部分として、フィルムの孔径及び構造を効果的に調整することにより、水蒸気が依然として通過できる一方で、液体水の浸透を防止することができる。
【0003】
静電紡糸は、新規な繊維製造技術であり、液滴は電圧の作用により「テーラーコーン」と呼ばれる円錐形状に徐々に変化し、液滴の表面張力が表面上の電荷反発力よりも小さいと、テーラーコーンの表面の溶液はジェットを比較的高い速度で噴射し、ジェットの伸長及び屈曲過程において、ナノファイバー中の溶媒が揮発・固化するという過程である静電紡糸を、紡糸口金先端の液滴と、収集装置との間に存在する電位差によって達成する原理である。静電紡糸によって製造されるマイクロフィルム/ナノファイバーフィルムは、孔径が小さく、空孔率が高く及び比表面積が大きいなどの利点を有し、空気濾過、油水分離、個人用保護装置及び各種のセンサなどの分野において広く応用されている。静電紡糸も防水透湿フィルムの製造方法として有効と考えられている。
【0004】
現時点まで、防水透湿フィルムの製造に応用されるポリマーとしては、種々のものがある。中でも、ポリウレタンは、その高い耐久性と優れた弾性により、スポーツウェアや繊維工業における天然ゴムの代替品として主流となっている。ポリウレタン防水透湿フィルムには、主に微孔性の防水透湿フィルムと緻密性の防水透湿フィルムとの2種類があり、微孔性の防水透湿フィルムは表面にマイクロポアが多数分布しており、マイクロポアが水滴の通過を防止するが、水分子を単分子で通過させることを許容できることによって、防水透湿機能を達成し、緻密性の防水透湿フィルムは親水性高分子からなり、水蒸気が親水性基と作用して吸着-拡散-脱着等の物理的作用でフィルムを透過することによって、フィルムに透湿性を持たせる。微孔性のフィルムはより良好な防水透湿性を有するため、緻密性のフィルムよりも市場占有率がはるかに高い。ポリウレタン防水透湿フィルムは、衣服、医療、電子機器等の分野で好ましい材料として、それに対して研究作業を展開する研究者が多くいる。
【0005】
特許CN107556715Bは、防水透湿フィルム及びその製造方法を開示しており、原料としてバイオマス材料が選択され、自然に由来し、再生可能な資源に属し、再生不可能な石油化学資源への依存を減らすとともに、選択されるポリエステル原料はより良好な生分解性を有し、当該発明は環境保護の面で一定の革新性を有するが、当該方法で製造される防水透湿フィルムは、孔径が小さく、透湿性能の更なる向上が必要であり、且つ関連性能は一般衣服の要求しか満たすことができない。特許出願番号201910606694.6の明細書は、防水透湿ナノファイバー複合膜の製造方法を開示しているが、N,N-ジメチルホルムアミドにポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリウレタンを添加し、かつポリマー溶液にポリジメチルシロキサン、変性ナノシリカを添加し、超音波技術を用いて処理して紡糸液を得、静電紡糸装置でナノファイバーフィルムを得るが、その力学的特性と耐水圧性能は効果的に向上されていない。
【0006】
したがって、製造上及び実用上の要求をより良く満たすためには、良好な透湿性、耐水圧性能及び力学的特性を有するポリウレタン防水透湿フィルムを提供する必要がある。
【発明の概要】
【0007】
従来技術に存在する問題に対して、本発明は、良好な透湿性、耐水圧性能及び力学的特性を有するポリウレタン防水透湿フィルムを提供することを目的とする。
【0008】
この目的を達成するために、本発明の技術手段は以下の通りである。
【0009】
本発明はポリウレタンナノファイバー防水透湿フィルムを提供しており、前記ポリウレタンナノファイバー防水透湿フィルムの製造は、官能基数が2であるイソチオシアネートIと、官能基数が3であるイソチオシアネートIIと、官能基数が2であるポリエチレングリコールIと、官能基数が3であるポリエチレングリコールIIとを原料として含む。
【0010】
本発明の幾つかの実施態様において、前記イソチオシアネートIは下記の構造を有する:
【数1】
ここで、mは1~3の正の整数である。
【0011】
本発明の幾つかの実施態様において、前記イソチオシアネートIIは下記の構造を有する:
【数2】
又は
【数3】
又は
【数4】
【0012】
本発明の幾つかの実施態様において、好ましくは、前記ポリエチレングリコールIは、官能基数が2である(例えば、PEG400、PEG800、PEG1000、PEG2000、PEG4000、PEG6000、PEG8000又はPEG10000であってもよい)。
【0013】
本発明の幾つかの実施態様において、好ましくは、前記ポリエチレングリコールIIは、官能基数が3であり、下記の構造を有する:
【数5】
ここで、nは6~12の整数を表す。
【0014】
さらに、前記ポリウレタンナノファイバー防水透湿フィルムの製造方法は以下の通りである。
イソチオシアネートI、イソチオシアネートII、ポリエチレングリコールI及びポリエチレングリコールIIを混合して溶媒で溶解するステップ(1);
触媒を添加し、昇温して還流反応させ、反応終了後に生成物を収集するステップ(2);
上記生成物を静電紡糸して、ポリウレタンナノファイバー防水透湿フィルムを製造するステップ(3)。
【0015】
本発明のポリウレタンナノファイバー防水透湿フィルムの製造方法において、好ましくは、前記イソチオシアネートI、イソチオシアネートII、ポリエチレングリコールI及びポリエチレングリコールIIのモル比は、8~16:1~1.5:8.4~24:1.05~3(例えば、8:1:8.4:1.05、9:1:9.45:1.18、10:1:13:1.3、11:1:15.4:1.4、12:1:14.4:1.03、8:1.5:8.4:1.05、9:1.5:9.45:1.18、10:1.5:13:1.3、11:1.5:15.4:1.4、12:1.5:14.4:1.03又はその中のいずれかの点値であってもよい)である。ステップ(1)において、前記溶媒は、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド、トルエン又はジメチルスルホキシドからなる群より選択される1種以上であり、その使用量が4種の原料の質量の和である。
【0016】
好ましくは、ステップ(2)における触媒は、N,N-ジメチルエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン又はN-メチルモルホリンからなる群より選択される1種以上であり、その使用量が、反応系の全質量の0.02~0.03%(例えば、0.02%、0.022%、0.024%、0.026%、0.028%、0.03%又はその中のいずれかであってもよい)であり、反応温度は45~55℃(例えば45℃、46℃、47℃、48℃、49℃、50℃、51℃、52℃、53℃、54℃、55℃又はその中のいずれかであってもよい)である。
【0017】
好ましくは、ステップ(3)における静電紡糸条件は、電圧が10~90kV(例えば、10kV、20kV、30kV、40kV、50kV、60kV、70kV、80kV、90kV又はその中のいずれかであってもよい)であり、受取距離が10~50cm(例えば、10cm、15cm、20cm、25cm、30cm、35cm、40cm、45cm、50cm又はその中のいずれかであってもよい)であり、給液速度が0.1~10mL/h(例えば、0.1mL/h、0.2mL/h、0.3mL/h、0.4mL/h、0.5mL/h、0.6mL/h、0.7mL/h、0.8mL/h、0.9mL/h、1mL/h、2mL/h、3mL/h、4mL/h、5mL/h、6mL/h、7mL/h、8mL/h、9mL/h、10mL/h又はその中のいずれかであってもよい)であり、紡糸環境の温度が20~35℃(例えば、20℃、21℃、22℃、23℃、24℃、25℃、26℃、27℃、28℃、29℃、30℃、31℃、32℃、33℃、34℃、35℃又はその中のいずれかであってもよい)であり、相対湿度が50~95%(例えば、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又はその中のいずれかであってもよい)である。
【0018】
本発明のイソチオシアネートI及びイソチオシアネートIIは、いずれも以下の製造方法によって製造することができる:
(1)芳香族アミン系物質、トリエチレンジアミン、二硫化炭素を溶媒に添加して反応させ、反応完了後、濾過して淡黄色の固体を得る;
(2)ステップ(1)で得られた生成物とトリホスゲンを溶媒に加えて反応させる;
(3)反応終了後、ろ過、精製し、生成物がイソチオシアネートである。
例えば、本発明に係る4,4’-ジイソチオシアナトビフェニルは、4,4’-ジアミノビフェニルから上記反応により製造されることができる:
【数6】
【0019】
好ましくは、ベンゼン環系ジアミンは、p-フェニレンジアミン、パラキシリレンジアミン、2,4-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエン、4,4’-ジアミノビフェニル、ジアミノビフェニル又は4,4’-ジアミノジフェニルメタンのいずれかである。
【0020】
好ましくは、芳香族トリアミン単量体は、以下の構造で表されるもののいずれかである:
【数7】
【0021】
好ましくは、ステップ(1)において、前記溶媒は、テトラヒドロフラン又はジメチルスルホキシドであり、ベンゼン環系ジアミン、トリエチレンジアミン、二硫化炭素のモル比は、1:5~9:7~9(例えば、1:5:7、1:5:8、1:5:9、1:6:7、1:6:8、1:6:9、1:7:7、1:7:8、1:7:9又はその中のいずれかであってもよい)であり、反応温度は23~28℃(例えば、23℃、24℃、25℃、26℃、27℃、28℃又はその中のいずれかであってもよい)であり、反応時間は2~3h(例えば、2h、2.5h、3h又はその中のいずれかであってもよい)である。
【0022】
好ましくは、ステップ(2)において、前記溶媒は、テトラヒドロフラン、四塩化炭素又はジメチルスルホキシドのいずれかであり、トリホスゲンは、トリエチレンジアミンの1~1.1(例えば、1、1.05、2又はその中のいずれかであってもよい))のモル量の倍であり、反応温度は23~28℃(例えば23℃、24℃、25℃、26℃、27℃、28℃又はその中のいずれかであってもよい)であり、反応時間は2~3h(例えば2h、2.5h、3h又はその中のいずれかであってもよい)である。
【0023】
先行技術と比較して、本発明は以下の有益な効果を有する:
(1)本発明で提供するポリウレタンナノファイバー防水透湿フィルムは、良好な耐水圧性能、耐引張性能を有する。
(2)本発明で提供するポリウレタンナノファイバー防水透湿フィルムは、イソチオシアネートを原料として製造され、イソチオシアネートに含まれるビフェニル構造が一定温度で液晶状態を示し、系中により多くのミクロ孔構造を有するとともに、Sの原子半径が大きく、その構造内に比較的大きな孔径を有し、ガス透過率を向上させることができ、優れた透湿性を有する。
(3)本発明で提供するポリウレタンナノファイバー防水透湿フィルムは、静電紡糸法により製造され、コストが安く、操作が簡単で、生産効率が高く、衣服、医療及び電子機器などの分野における応用見込みが良好である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】実施例1で製造されたポリウレタンナノファイバー防水透湿フィルムのDSCチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、具体的な実施形態を参照しながら本発明を説明する。なお、以下の実施例は、本発明の例示であり、本発明を説明するためだけであり、本発明を限定するものではない。本発明の趣旨又は範囲から逸脱しない場合、本発明の思想に含まれる他の組み合わせや種々の改良を行うことができる。
【0026】
以下の実施例において、使用された化合物及び関連試薬は全て、市場から購入でき、その中、ポリエチレングリコール原料は、Dow Chemical、Bayer、山東万華及び藍星東大から入手可能である。
【0027】
(イソチオシアネートI-1の製造)
製造方法は以下の通りである。
【0028】
(1)ジアミノビフェニル18.2gをテトラヒドロフラン600mlを含む反応器に加え、撹拌を開始し、さらにトリエチレンジアミン67.2gを加え、温度を25℃に維持し、二硫化炭素44.16gをゆっくり滴下し、滴下終了後、淡黄色固体がゆっくり析出し、反応を2h続けた後、反応を停止し、濾過して淡黄色固体を得、濾過ケーキをn-ヘキサン150mlで3回洗浄した;
【0029】
(2)ステップ(1)で得られた濾過ケーキをテトラヒドロフラン1000mlに加え、系の温度を5℃に制御し、テトラヒドロフランに溶解したトリホスゲン195gを滴下し、滴下終了後2h以内に50℃に昇温して反応を行い、反応を2h続けた;
【0030】
(3)反応して得られた淡黄色固体をn-ヘキサンで数回叩解して精製し、生成物がイソチオシアネートI-1(収率62%)であり、溶媒として重クロロホルムを用い、
1HNMRの分析結果、δ7.3-7.5がビフェニル上の水素特徴ピークであり、LCMS測定により、生成物の分子量が270であった。
【数8】
【0031】
(イソチオシアネートI-2の製造)
製造方法は以下の通りである。
【0032】
(1)p-フェニレンジアミン10.8gをテトラヒドロフラン600mlを含む反応器に加え、撹拌を開始し、さらにトリエチレンジアミン66.09gを加え、温度25℃を維持し、二硫化炭素53.3gをゆっくり滴下し、滴下終了後、淡黄色固体がゆっくり析出し、反応を2h続けた後、反応を停止し、濾過して淡黄色固体を得、濾過ケーキをn-ヘキサン150mlで3回洗浄した;
【0033】
(2)ステップ(1)で得られた濾過ケーキをテトラヒドロフラン1000mlに加え、系の温度を5℃に制御し、テトラヒドロフランに溶解したトリホスゲン195gを滴下し、滴下終了後2h以内に50℃に昇温して反応を行い、反応を2h続けた;
【0034】
(3)反応して得られた淡黄色固体をn-ヘキサンで数回叩解して精製し、生成物がイソチオシアネートI-2(収率58%)であり、溶媒として重クロロホルムを用い、
1HNMRの分析結果、δ7.3がベンゼン上の水素特徴ピークであり、LCMS測定により、生成物の分子量が194であった。
【数9】
【0035】
(イソチオシアネートII-1の調製)
製造方法は以下の通りである。
【0036】
(1)化合物1 13.3gをテトラヒドロフラン600mlを含む反応器に加え、撹拌を開始し、さらにトリエチレンジアミン67.3gを加え、温度を25℃に維持し、二硫化炭素39.74gをゆっくり滴下し、滴下終了後、淡黄色固体がゆっくり析出し、反応を2h続けた後、反応を停止し、濾過して淡黄色固体を得、濾過ケーキをn-ヘキサン150mlで3回洗浄した;
【0037】
(2)ステップ(1)で得られた濾過ケーキをテトラヒドロフラン1000mlに加え、系の温度を5℃に制御し、テトラヒドロフランに溶解したトリホスゲン195gを滴下し、滴下終了後2h以内に50℃に昇温して反応を行い、反応を2h続けた;
【0038】
(3)反応して得られた淡黄色固体をn-ヘキサンで数回叩解して精製し、最終の製品が得られ、イソチオシアネートII-1(収率53%)であり、溶媒として重クロロホルムを用いた
1HNMRの分析結果、δ7.3がベンゼン上の水素特徴ピークであり、LCMS測定により、生成物の分子量が251であった。
【数10】
【0039】
(イソチオシアネートII-2の調製)
製造方法は以下の通りである。
【0040】
(1)化合物2 28.9gをテトラヒドロフラン600mlを含む反応器に加え、撹拌を開始し、さらにトリエチレンジアミン100.8gを加え、温度を25℃に維持し、二硫化炭素66.24gをゆっくり滴下し、滴下終了後、淡黄色固体がゆっくり析出し、反応を2h続けた後、反応を停止し、濾過して淡黄色固体を得、濾過ケーキをn-ヘキサン150mlで3回洗浄した;
【0041】
(2)ステップ(1)で得られた濾過ケーキをテトラヒドロフラン1000mlに加え、系の温度を5℃に制御し、テトラヒドロフランに溶解したトリホスゲン296gを滴下し、滴下終了後2h以内に50℃に昇温して反応を行い、反応を2h続けた;
【0042】
(3)反応して得られた淡黄色固体をn-ヘキサンで数回叩解して精製し、最終の製品が得られ、イソチオシアネートII-2(収率49%)であり、溶媒として重クロロホルムを用いた
1HNMRの分析結果、δ7.1-7.2がベンゼン上の水素特徴ピークであり、LCMS測定により、生成物の分子量が417であった。
【数11】
【0043】
(イソチオシアネートII-3の調製)
製造方法は以下の通りである。
【0044】
(1)化合物1 13.3gをテトラヒドロフラン600mlを含む反応器に加え、撹拌を開始し、さらにトリエチレンジアミン67.3gを加え、温度を25℃に維持し、二硫化炭素39.74gをゆっくり滴下し、滴下終了後、淡黄色固体がゆっくり析出し、反応を2h続けた後、反応を停止し、濾過して淡黄色固体を得、濾過ケーキをn-ヘキサン150mlで3回洗浄した;
【0045】
(2)ステップ(1)で得られた濾過ケーキをテトラヒドロフラン1000mlに加え、系の温度を5℃に制御し、テトラヒドロフランに溶解したトリホスゲン195gを滴下し、滴下終了後2h以内に50℃に昇温して反応を行い、反応を2h続けた;
【0046】
(3)反応して得られた淡黄色固体をn-ヘキサンで数回叩解して精製し、最終の製品が得られ、イソチオシアネートII(収率65%)であり、溶媒として重クロロホルムを用いた
1HNMRの分析結果、δ7.1、7.5、7.7がベンゼン上の水素特徴ピークであり、LCMS測定により、生成物の分子量が479であった。
【数12】
[実施例1]
【0047】
ポリウレタンナノファイバー防水透湿フィルムの製造方法であって、具体的なステップは以下の通りである:
【0048】
(1)4molのイソチオシアネートI-1、0.3molのイソチオシアネートII-1、4.2molのPEG400及び0.53molの相対分子量1000のポリエチレングリコールIIをテトラヒドロフラン溶液に添加する;
【0049】
(2)0.01molのN,N-ジメチルエタノールアミンを加え、50℃まで昇温して還流反応させ、反応終了後に生成物を収集する;
【0050】
(3)上記生成物を静電紡糸して、紡糸時の温度を20℃、相対湿度を50%、電圧を10kV、受取距離を10cm、給液速度を0.1mL/hに制御するようにポリウレタンナノファイバー防水透湿フィルムを製造した。
[実施例2]
【0051】
ポリウレタンナノファイバー防水透湿フィルムの製造方法であって、具体的なステップは以下の通りである:
【0052】
(1)4molのイソチオシアネートI-1、0.29molのイソチオシアネートII-2、5molのPEG800及び0.56molの相対分子量1000のポリエチレングリコールIIをテトラヒドロフラン溶液に添加する;
【0053】
(2)0.01molのN,N-ジメチルエタノールアミンを加え、50℃まで昇温して還流反応させ、反応終了後に生成物を収集する;
【0054】
(3)上記生成物を静電紡糸して、紡糸時の温度を25℃、相対湿度を60%、電圧を20kV、受取距離を15cm、給液速度を0.5mL/hに制御するようにポリウレタンナノファイバー防水透湿フィルムを製造した。
[実施例3]
【0055】
ポリウレタンナノファイバー防水透湿フィルムの製造方法であって、具体的なステップは以下の通りである:
【0056】
(1)4molのイソチオシアネートI、0.27molのイソチオシアネートII-3、4.4molのPEG1000及び0.55molの相対分子量1000のポリエチレングリコールIIをテトラヒドロフラン溶液に添加する;
【0057】
(2)0.01molのN,N-ジメチルエタノールアミンを加え、50℃まで昇温して還流反応させ、反応終了後に生成物を収集する;
【0058】
(3)上記生成物を静電紡糸して、紡糸時の温度を28℃、相対湿度を70%、電圧を30kV、受取距離を20cm、給液速度を1mL/hに制御するようにポリウレタンナノファイバー防水透湿フィルムを製造した。
[実施例4]
【0059】
ポリウレタンナノファイバー防水透湿フィルムの製造方法であって、具体的なステップは以下の通りである:
【0060】
(1)4molのイソチオシアネートI-2、0.44molのイソチオシアネートII-1、4.8molのPEG2000及び0.53molの相対分子量1500のポリエチレングリコールIIをテトラヒドロフラン溶液に添加する;
【0061】
(2)0.01molのN,N-ジメチルエタノールアミンを加え、50℃まで昇温して還流反応させ、反応終了後に生成物を収集する;
【0062】
(3)上記生成物を静電紡糸して、紡糸時の温度を30℃、相対湿度を75%、電圧を40kV、受取距離を25cm、給液速度を2mL/hに制御するようにポリウレタンナノファイバー防水透湿フィルムを製造した。
[実施例5]
【0063】
ポリウレタンナノファイバー防水透湿フィルムの製造方法であって、具体的なステップは以下の通りである:
【0064】
(1)4molのイソチオシアネートI-2、0.4molのイソチオシアネートII-2、5.2molのPEG4000及び0.52molの相対分子量2000のポリエチレングリコールIIをテトラヒドロフラン溶液に添加する;
【0065】
(2)0.01molのN,N-ジメチルエタノールアミンを加え、50℃まで昇温して還流反応させ、反応終了後に生成物を収集する;
【0066】
(3)上記生成物を静電紡糸して、紡糸時の温度を33℃、相対湿度を80%、電圧を50kV、受取距離を30cm、給液速度を3mL/hに制御するようにポリウレタンナノファイバー防水透湿フィルムを製造した。
[実施例6]
【0067】
ポリウレタンナノファイバー防水透湿フィルムの製造方法であって、具体的なステップは以下の通りである:
【0068】
(1)4molのイソチオシアネートI-2、0.25molのイソチオシアネートII-3、5.6molのPEG6000及び0.35molの相対分子量1000のポリエチレングリコールIIをテトラヒドロフラン溶液に添加する;
【0069】
(2)0.01molのN,N-ジメチルエタノールアミンを加え、50℃まで昇温して還流反応させ、反応終了後に生成物を収集する;
【0070】
(3)上記生成物を静電紡糸して、紡糸時の温度を35℃、相対湿度を85%、電圧を60kV、受取距離を35cm、給液速度を4mL/hに制御するようにポリウレタンナノファイバー防水透湿フィルムを製造した。
[実施例7]
【0071】
ポリウレタンナノファイバー防水透湿フィルムの製造方法であって、具体的なステップは以下の通りである:
【0072】
(1)4molのイソチオシアネートI-1、0.26molのイソチオシアネートII-2、5.2molのPEG8000及び0.36molの相対分子量1500のポリエチレングリコールIIをテトラヒドロフラン溶液に添加する;
【0073】
(2)0.01molのN,N-ジメチルエタノールアミンを加え、50℃まで昇温して還流反応させ、反応終了後に生成物を収集する;
【0074】
(3)上記生成物を静電紡糸して、紡糸時の温度を22℃、相対湿度を90%、電圧を70kV、受取距離を40cm、給液速度を5mL/hに制御するようにポリウレタンナノファイバー防水透湿フィルムを製造した。
[実施例8]
【0075】
ポリウレタンナノファイバー防水透湿フィルムの製造方法であって、具体的なステップは以下の通りである:
【0076】
(1)4molのイソチオシアネートI-1、0.31molのイソチオシアネートII-3、4.8molのPEG10000及び0.37molの相対分子量2000のポリエチレングリコールIIをテトラヒドロフラン溶液に添加する;
【0077】
(2)0.01molのN,N-ジメチルエタノールアミンを加え、50℃まで昇温して還流反応させ、反応終了後に生成物を収集する;
【0078】
(3)上記生成物を静電紡糸して、紡糸時の温度を28℃、相対湿度を95%、電圧を80kV、受取距離を45cm、給液速度を6mL/hに制御するようにポリウレタンナノファイバー防水透湿フィルムを製造した。
[実施例9]
【0079】
ポリウレタンナノファイバー防水透湿フィルムの製造方法であって、具体的なステップは以下の通りである:
【0080】
(1)4molのイソチオシアネートI-2、0.33molのイソチオシアネートII-1、4.6molのPEG400及び0.38molの相対分子量1000のポリエチレングリコールIIをテトラヒドロフラン溶液に添加する;
【0081】
(2)0.01molのN,N-ジメチルエタノールアミンを加え、50℃まで昇温して還流反応させ、反応終了後に生成物を収集する;
【0082】
(3)上記生成物を静電紡糸して、紡糸時の温度を30℃、相対湿度を70%、電圧を90kV、受取距離を50cm、給液速度を8mL/hに制御するようにポリウレタンナノファイバー防水透湿フィルムを製造した。
[実施例10]
【0083】
ポリウレタンナノファイバー防水透湿フィルムの製造方法であって、具体的なステップは以下の通りである:
【0084】
(1)4molのイソチオシアネートI-2、0.36molのイソチオシアネートII-2、4.4molのPEG800及び0.4molの相対分子量2000のポリエチレングリコールIIをテトラヒドロフラン溶液に添加する;
【0085】
(2)0.01molのN,N-ジメチルエタノールアミンを加え、50℃まで昇温して還流反応させ、反応終了後に生成物を収集する;
【0086】
(3)上記生成物を静電紡糸して、紡糸時の温度を35℃、相対湿度を65%、電圧を30kV、受取距離を35cm、給液速度を10mL/hに制御するようにポリウレタンナノファイバー防水透湿フィルムを製造した。
(比較例1)
【0087】
ポリウレタンナノファイバー防水透湿フィルムの製造方法であって、具体的なステップは以下の通りである:
【0088】
(1)0.3molのイソチオシアネートII-1、4.2molのPEG400及び0.53molの相対分子量1000のポリエチレングリコールIIをテトラヒドロフラン溶液に添加する;
【0089】
(2)0.01molのN,N-ジメチルエタノールアミンを加え、50℃まで昇温して還流反応させ、反応終了後に生成物を収集する;
【0090】
(3)上記生成物を静電紡糸して、紡糸時の温度を20℃、相対湿度を50%、電圧を10kV、受取距離を10cm、給液速度を0.1mL/hに制御するようにポリウレタンナノファイバー防水透湿フィルムを製造した。
(比較例2)
【0091】
ポリウレタンナノファイバー防水透湿フィルムの製造方法であって、具体的なステップは以下の通りである:
【0092】
(1)4molのイソチオシアネートI-1、5molのPEG800及び0.56molの相対分子量1000のポリエチレングリコールIIをテトラヒドロフラン溶液に添加する;
【0093】
(2)0.01molのN,N-ジメチルエタノールアミンを加え、50℃まで昇温して還流反応させ、反応終了後に生成物を収集する;
【0094】
(3)上記生成物を静電紡糸して、紡糸時の温度を25℃、相対湿度を60%、電圧を20kV、受取距離を15cm、給液速度を0.5mL/hに制御するようにポリウレタンナノファイバー防水透湿フィルムを製造した。
【0095】
上記実施例、比較例で製造した防水透湿フィルムについて、透湿量、耐水圧、引張強度、破断伸度及び示差走査熱量分析を含む項目の検出を行う。透湿量は、ASTM E96-1995 BW規格を参照して測定される。耐水圧はJIS L1092B規格を参照して測定される。引張強度及び破断伸度はASTM D-412規格を参照して測定され、その結果を以下の表に示す。
【0096】
【0097】
比較例1、比較例2及び実施例1の比較から、実施例1のポリウレタン防水透湿フィルムは、透湿率、耐水圧、破断伸度及び破断強度が高く、より良好な性能を有することがわかる。以上の比較例と実施例を比較すると、本発明で提供するポリウレタンナノファイバー防水透湿フィルムは、良好な耐水圧性能及び耐引張性能を有し、本発明で提供するポリウレタンナノファイバー防水透湿フィルムは、イソチオシアネートを原料として製造され、イソチオシアネートに含まれるビフェニル構造は、一定温度で液晶状態を示し(
図1に示す)、系内により多くのミクロ孔構造を有するとともに、Sの原子半径が大きく、その構造内に大きな孔径を有し、ガス透過率を向上させることができ、良好な透湿性能を有する。また、本発明で提供するポリウレタンナノファイバー防水透湿フィルムは、静電紡糸法により製造され、コストが安く、操作が簡単で、生産効率が高く、衣服、医療、電子機器などの分野における応用見込みが良好である。
【0098】
以上の実施形態は、本発明の技術思想及び特徴を説明するためのものにすぎず、当業者が本発明の内容を理解して実施することを目的とするものであって、これで本発明の保護範囲を制限できず、本発明の精神に基づいて実質的に行った等価な変更又は修飾はいずれも本発明の保護範囲内に含まれるべきである。
【国際調査報告】