(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】真空遮断ユニット及び真空遮断器
(51)【国際特許分類】
H01H 33/662 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
H01H33/662 E
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503346
(86)(22)【出願日】2022-06-28
(85)【翻訳文提出日】2024-03-08
(86)【国際出願番号】 EP2022067708
(87)【国際公開番号】W WO2023001502
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】102021207964.4
(32)【優先日】2021-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521001582
【氏名又は名称】シーメンス エナジー グローバル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SIEMENS ENERGY GLOBAL GMBH & CO. KG
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】弁理士法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】ベンカート,カトリン
(72)【発明者】
【氏名】ゲッベルス,トビアス アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ニコリッチ,パウル グレゴール
【テーマコード(参考)】
5G026
【Fターム(参考)】
5G026EA04
5G026EB03
(57)【要約】
本発明は真空遮断器(50)の真空遮断ユニット(1)に関する。この真空遮断ユニット(1)は、1つの真空遮断バルブ(3)と、真空遮断バルブ(3)の長軸を中心にして筒状に周回し、絶縁材料で形成されていて、真空遮断バルブ(3)を取り囲む1つの絶縁スリーブ(5)と、絶縁スリーブ(5)内に組み込まれた複数のコンデンサ電極(7,8,9)と、を備えている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空遮断器(50)の真空遮断ユニット(1)であって、
前記真空遮断ユニット(1)が
真空遮断バルブ(3)と、
前記真空遮断バルブ(3)の長軸(37)を中心にして筒状に周回し、絶縁材料で形成されていて、前記真空遮断バルブ(3)を取り囲む1つの絶縁スリーブ(5)と、
前記絶縁スリーブ(5)内に組み込まれた複数のコンデンサ電極(7,8,9)と、
を含むことを特徴とする真空遮断ユニット(1)。
【請求項2】
前記複数のコンデンサ電極(7、8、9)が、それぞれ前記真空遮断バルブ(3)の前記長軸(37)を中心にしてリング状又は部分的にリング状に周回していることを特徴とする請求項1に記載の真空遮断ユニット(1)。
【請求項3】
前記複数のコンデンサ電極(7,8)から、互いに対向する電極面を有し、同心状に周回するコンデンサ電極(7,8)の複数の電極対(41~46)が形成され、同心状に周回している前記複数のコンデンサ電極(7,8)の電極対(41~46)が、
前記真空遮断バルブ(3)の前記長軸(37)に関して軸方向に互いに離間して配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の真空遮断ユニット(1)。
【請求項4】
同心状に周回するコンデンサ電極(7,8)の各電極対(41~46)が、
前記真空遮断バルブ(3)に面した前記絶縁スリーブ(5)の表面を周回するコンデンサ電極(7)と、
前記真空遮断バルブ(3)とは反対側の前記絶縁スリーブ(5)の表面を周回するコンデンサ電極(8)と、
で形成されることを特徴とする請求項3に記載の真空遮断ユニット(1)。
【請求項5】
前記同心状に延びるコンデンサ電極(7、8)が、前記絶縁スリーブ(5)に被着された導電性被覆層で形成されることを特徴とする請求項4に記載の真空遮断ユニット(1)。
【請求項6】
前記複数のコンデンサ電極(9)が、前記絶縁スリーブ(5)の内部で前記絶縁スリーブ(5)の長軸(37)に関して軸方向に互いに離間して周回し、互いに対向する電極面を有することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の真空遮断ユニット(1)。
【請求項7】
前記コンデンサ電極(7、8、9)の複数の電極対(41~46)が、互いに対向する電極面によって複数のコンデンサを形成し、
前記複数のコンデンサが、前記絶縁スリーブ(5)内に組み込まれた複数の電気導体によって直列に接続されていることを特徴とする請求項3から6のいずれか1項に記載の真空遮断ユニット(1)。
【請求項8】
少なくとも1つの電気抵抗器(49)が前記絶縁スリーブ(5)内に組み込まれており、
前記電気抵抗器(49)が、前記絶縁スリーブ(5)内に組み込まれた複数の電気導体(47)によって、2つのコンデンサ電極(7、8、9)で形成された少なくとも1つのコンデンサと直列又は並列に接続されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の真空遮断ユニット(1)。
【請求項9】
前記真空遮断バルブ(3)が少なくとも1つのシールド電極(31~35)を有し、
前記シールド電極(31~35)が、コンデンサ電極(7,8,9)と導電接続されている、及び/又は、容量結合されている、
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の真空遮断ユニット(1)。
【請求項10】
前記絶縁スリーブ(5)が、熱可塑性樹脂から、又は、誘電率増加充填剤を有するエポキシ樹脂から、形成されられることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の真空遮断ユニット(1)。
【請求項11】
前記絶縁スリーブ(5)が、前記複数のコンデンサ電極(7,8,9)と共に、3D印刷により製造されていることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の真空遮断ユニット(1)。
【請求項12】
前記絶縁スリーブ(5)に面する前記真空遮断バルブ(3)の表面の少なくとも1つの領域、及び/又は、前記真空遮断バルブ(3)に面する前記絶縁スリーブ(5)の表面の少なくとも1つの領域が、被覆(48)を有し、
前記被覆(48)が、前記絶縁スリーブ(5)と前記真空遮断バルブ(3)との間の電界を均一化することを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の真空遮断ユニット(1)。
【請求項13】
前記絶縁スリーブ(5)が、少なくとも2つのスリーブ部品(5.1、5.2)で構成されていることを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の真空遮断ユニット(1)。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1項により形成された真空遮断ユニット(1)を少なくとも1つ備えた真空遮断器(50)。
【請求項15】
それぞれが請求項1から13のいずれか1項により形成された真空遮断ユニット(1)を複数備え、それらの開閉路が電気的に直列に接続されている真空遮断器(50)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空遮断器の真空遮断ユニット及び真空遮断器に関する。
【0002】
真空遮断器は、真空遮断バルブ(真空遮断室)内に互いに相対的に移動可能な複数の開閉接触子が配置された電力用遮断器である。真空遮断器は、特に、保守が容易で、耐久性があり、容易に操作可能である。電圧要件を満たすために、真空遮断器は複数の真空遮断バルブを有することができ、それらの開閉路は電気的に直列に接続されている。この場合(真空遮断バルブの開閉路が開かれている場合)、個々の真空遮断バルブの過負荷を避けるために、真空遮断バルブに適した電圧配分をこれらの真空遮断バルブにかけることが必要となる。例えば、同じように形成された複数の真空遮断バルブが直列に接続されている場合には、これらの真空遮断バルブにできるだけ均一な電圧分配を行うことが求められる。
【0003】
複数の真空遮断バルブに所望の電圧分配を行うために、例えば、制御コンデンサ及び/又は制御抵抗器のような受動的な電気部品が真空遮断バルブに並列に接続される。しかしながら、これらの部品は、真空遮断器に必要な設置スペースを増加させる。特に、真空遮断バルブを取り囲む絶縁媒体として洗浄され除湿された圧縮空気を有し、さらに、従来の制御コンデンサを有する真空遮断器の場合、真空遮断バルブと制御コンデンサとの間、及び、制御コンデンサと真空遮断器の金属製遮断器ハウジングとの間に、比較的大きい絶縁距離が必要である。というのは、圧縮空気の絶縁強度は(六弗化硫黄などの他の絶縁ガスと比較して)相対的に低いからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、狭いスペースに設置可能な複数の制御コンデンサによって真空遮断器における電圧制御を可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、本発明により、請求項1の特徴を有する真空遮断ユニット、及び、請求項14の特徴を有する真空遮断器によって解決される。
【0006】
本発明の有利な形態は従属請求項の主題である。
【0007】
真空遮断器の本発明による真空遮断ユニットは、1つの真空遮断バルブと、この真空遮断バルブの長軸を中心にして筒状に周回し、絶縁材料で形成されていて、この真空遮断バルブを取り囲む1つの絶縁スリーブと、この絶縁スリーブ内に組み込まれた複数のコンデンサ電極とを含む。
【0008】
したがって、本発明による真空遮断ユニットは、従来の1つの制御コンデンサ又は複数のそのような制御コンデンサの代わりに、真空遮断バルブを取り囲む絶縁スリーブ内に組み込まれた多数のコンデンサ電極を有する。換言すれば、本発明によれば、従来の複数の制御コンデンサの静電容量が絶縁スリーブ内に組み込まれた複数のコンデンサ電極に分割される。この結果、従来の制御コンデンサに比べて、真空遮断バルブから及び真空遮断器の金属製遮断器ハウジングから複数のコンデンサ電極までの絶縁距離を小さくすることができ、このことにより、特に、遮断器ハウジング内に絶縁ガスとして洗浄され除湿された圧縮空気を充填する場合の設置スペースを節約できる。さらに、この絶縁スリーブは、絶縁ガスの効果を補助する固体絶縁体として有利に作用する。
【0009】
本発明による真空遮断ユニットの一形態では、複数のコンデンサ電極が、それぞれ、真空遮断バルブの長軸を中心にしてリング状に又は部分的にリング状に周回している。これにより好適に、真空遮断バルブの周囲の複数のコンデンサ電極の静電容量の均一な分布が実現される。
【0010】
本発明による真空遮断ユニットの別の一形態では、複数のコンデンサ電極から、互いに対向する電極面を有し同心状に周回しているコンデンサ電極の複数の電極対が形成され、同心状に周回している複数のコンデンサ電極のこれらの電極対は、真空遮断バルブの長軸に関して軸方向において互いに離間して配置されている。例えば、同心状に周回する複数のコンデンサ電極の各電極対は、真空遮断バルブに面した絶縁スリーブの表面を周回する1つのコンデンサ電極と、真空遮断バルブとは反対側の絶縁スリーブの表面を周回する1つのコンデンサ電極とで形成されている。ここで、同心状に周回する複数のコンデンサ電極は、例えば、絶縁スリーブに被着された導電性被覆層で形成される。
【0011】
本発明による上述の形態では、複数のコンデンサ電極の少なくとも一部により、同心状の複数の電極面を有しているリング状又は部分的にリング状の複数のコンデンサが形成され、これらのコンデンサは軸方向において互いに離間している。絶縁スリーブの互いに反対側の両表面に複数のコンデンサ電極を配設することにより、特に複数のコンデンサ電極が導電性被覆層で形成されている場合には、複数のコンデンサ電極の絶縁スリーブ内への組み込みが有利に簡単に行われる。
【0012】
本発明による真空遮断ユニットの別の一形態では、複数のコンデンサ電極が、絶縁スリーブの内部で絶縁スリーブの長軸に関して軸方向に互いに離間して周回し、互いに対向する電極面を有する。すなわち、本発明による真空遮断ユニットのこの形態では、複数のコンデンサ電極の少なくとも一部により、軸方向に互いに離間した複数の電極面を有する複数のコンデンサが形成される。
【0013】
本発明による真空遮断ユニットの別の一形態では、コンデンサ電極の複数の電極対が、互いに対向する電極面によって複数のコンデンサを形成し、これらのコンデンサが、絶縁スリーブ内に組み込まれた複数の電気導体によって直列に接続されている。すなわち、本発明による真空遮断ユニットのこの形態では、複数のコンデンサ電極に加えて、複数の電気導体が絶縁スリーブ内に組み込まれており、複数のコンデンサ電極で形成された複数のコンデンサをこれらの電気導体が電気的に直列に接続している。同様に、複数のコンデンサ電極で形成された複数のコンデンサは、特に、これらのコンデンサのコンデンサ電極が部分的にリング状に形成されている場合には、絶縁スリーブ内に組み込まれた複数の電気導体によって互いに並列に接続することができる。
【0014】
本発明による真空遮断ユニットの別の一形態では、少なくとも1つの電気抵抗器が絶縁スリーブ内に組み込まれており、これらの電気抵抗器は、絶縁スリーブ内に組み込まれた複数の電気導体によって、2つのコンデンサ電極で形成された少なくとも1つのコンデンサと直列又は並列に接続されている。すなわち、本発明による真空遮断ユニットのこの形態では、複数のコンデンサ電極に加えて、少なくとも1つの電気抵抗器が絶縁スリーブ内に組み込まれ、これらコンデンサの少なくとも1つと直列又は並列に接続されている。
【0015】
本発明による真空遮断ユニットの別の一形態では、真空遮断バルブが少なくとも1つのシールド電極を有し、このシールド電極が1つのコンデンサ電極と導電接続されている、及び/又は、容量結合されている。すなわち、本発明による真空遮断ユニットのこの形態では、絶縁スリーブ内に組み込まれた複数のコンデンサ電極が、真空遮断バルブのシールド電極に印加された電位と直接接続されている、及び/又は、容量結合されている。
【0016】
本発明による真空遮断ユニットの別の一形態では、絶縁スリーブは、ポリオキシメチレン(POM)、ポリエチレンテレフタレート(PETP)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)又はポリアミド(PA6.6)のような熱可塑性樹脂から、又は、チタン酸バリウム(BaTiO3)のような誘電率増加充填剤を有するエポキシ樹脂から形成される。本発明による真空遮断ユニットのこの形態では、絶縁スリーブは、従来の方法、例えば射出成形によって製作される。この形態は、複数のコンデンサ電極を絶縁スリーブ内に、例えばその表面に、簡単に組み込むのに好適である。
【0017】
本発明による真空遮断ユニットの上記形態に代わる形態では、絶縁スリーブが複数のコンデンサ電極と共に3D印刷によって形成されている。例えば、この絶縁スリーブは、ポリラクチド(PLA)、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)、PVDF又は塩素化ポリエチレン(CPE)を材料として印刷され、複数のコンデンサ電極は、導電性フィラメントを材料として印刷される。本発明による真空遮断ユニットのこの形態では、絶縁スリーブと複数のコンデンサ電極とが3D印刷によって一緒に製作される。この実施形態は、絶縁スリーブ、及び/又は、複数のコンデンサ電極が幾何学的に複雑な構造の場合に、特に複数のコンデンサ電極が絶縁スリーブ内に埋め込まれる場合に、好適である。
【0018】
本発明による真空遮断ユニットの別の一形態では、絶縁スリーブに面する真空遮断バルブの表面の少なくとも1つの領域、及び/又は、真空遮断バルブに面する絶縁スリーブの表面の少なくとも1つの領域が被覆を有し、この被覆が絶縁スリーブと真空遮断バルブとの間の電界を均一にする。このような被覆は例えば半導体材料から形成される。本発明による真空遮断ユニットのこの形態により、絶縁スリーブと真空遮断バルブとの間の部分放電を回避する、又は、少なくとも低減することが可能となる。
【0019】
本発明による真空遮断ユニットの別の一形態では、絶縁スリーブは少なくとも2つのスリーブ部品から構成されている。本発明による真空遮断ユニットのこの形態は、真空遮断バルブの外径がその長軸に沿って変化する場合に有利である。その場合、複数のスリーブ部品でこの絶縁スリーブを構成することにより、真空遮断バルブの形状に適合する幾何学的形状を有する絶縁スリーブを組み立てることが可能になる。
【0020】
本発明による真空遮断器は、本発明による真空遮断ユニットを少なくとも1つ備えている。特に、この真空遮断器は、開閉路が電気的に直列に接続された本発明による真空遮断ユニットを複数有することができる。すでに上述したように、開閉路が電気的に直列に接続された複数の真空遮断バルブを備えた真空遮断器の場合、複数の真空遮断バルブへの電圧分配が重要であり、これによって個々の真空遮断バルブの過負荷を回避することができる。したがって、本発明による真空遮断ユニットは、特に、複数の真空遮断バルブを備えたこのような真空遮断器に適している。
【0021】
本発明の上述の特性、特徴及び利点、並びに、これらが達成される方法を、以下の実施例の説明と共により明瞭に理解できるように、図面と併せてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図5】真空遮断ユニットを2個備えた真空遮断器のブロック図 対応する部品には、図中で同じ参照符号が付されている。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1(FIG1)は、真空遮断器の本発明による真空遮断ユニット1の第1の実施例の断面図である。この真空遮断ユニット1は、1つの真空遮断バルブ3と、この真空遮断バルブ3を包囲する1つの絶縁スリーブ5と、絶縁スリーブ5内に組み込まれた複数のコンデンサ電極7、8とを含んでいる。
【0024】
この真空遮断バルブ3は1つの遮断バルブハウジングを有し、この遮断バルブハウジングは金属製の1つの中央領域13と、金属製の2つの端部領域15、17と、2つの絶縁領域19、21とで形成されている。中央領域13は、端部領域15、17及び絶縁領域19、21よりも大きな直径を有し、絶縁領域19、21の間に配置されている。絶縁領域19、21はそれぞれ非導電性の材料、例えばセラミック材料で形成されている。図示の実施例では、各絶縁領域19、21は3つのリング状の絶縁セグメント23で構成されている。端部領域15、17は遮断バルブハウジングの互いに対向する端面を形成している。
【0025】
さらに、真空遮断バルブ3は、導電性の2つの開閉接触子25、27を有する。ここで、第1の開閉接触子25は、遮断バルブハウジングの第1の端部領域15に固定して接続され、第1の絶縁領域19を通って遮断バルブハウジングの中央領域13内に延びている。第2の開閉接触子27は、開閉接触子25、27が互いに接触する第1の開閉位置と、開閉接触子25、27が互いに離間している
図1に示す第2の開閉位置との間で、図示されていないメカニズムによって第1の開閉接触子25に対して移動可能である。第2の開閉接触子27は、第2の端部領域17の開口を通って遮断バルブハウジングから引き出され、第2の絶縁領域21を通って遮断バルブハウジングの中央領域13内に突き出ている。第2の開閉接触子27に金属ベローズ29の一端が取り付けられており、金属ベローズ29の他端は遮断バルブハウジングの第2の端部領域17に接続されており、その両端の間で第2の開閉接触子27を取り囲んでいる。
【0026】
さらに、この真空遮断バルブ3は複数のシールド電極31~34を有している。第1のシールド電極31は遮断バルブハウジングの第1の端部領域15に配置され、第1の端部領域15から遮断バルブハウジングの内部に突き出し、そこで第1の開閉接触子25をリング状に取り囲んでいる。第2のシールド電極32は、遮断バルブハウジングの中央領域13の、第1の端部領域15側の端部に配置され、そこで第1の開閉接触子25をリング状に取り囲んでいる。
【0027】
第3のシールド電極33は遮断バルブハウジングの第2の端部領域17に配置され、第2の端部領域17から遮断バルブハウジングの内部に突き出し、そこで第2の開閉接触子27とベローズ29とをリング状に取り囲んでいる。第4のシールド電極34は遮断バルブハウジングの中央領域13の、第2の端部領域17側の端部に配置され、そこで第2の開閉接触子25をリング状に取り囲んでいる。
【0028】
遮断バルブハウジングの中央領域13の内面及びシールド電極32、34は、特に蒸気シールドを形成し、この蒸気シールドは開閉接触子25、27から蒸発する材料を吸収し、この材料が絶縁領域19、21の内壁に堆積してその電気絶縁効果を損なうのを防止する。
【0029】
絶縁スリーブ5は真空遮断バルブ3の長軸37を中心にして筒状に延びている。この絶縁スリーブ5は2つのスリーブ部品5.1、5.2で構成されている。第1のスリーブ部品5.1は、第1の絶縁領域19及び遮断バルブハウジングの中央領域13の第1の部分の周囲を周回している。第2のスリーブ部品5.2は、遮断バルブハウジングの第2の絶縁領域21及び中央領域13の第2の部分の周囲を周回している。真空遮断ユニット1の製造時には、第1のスリーブ部品5.1は第1の端部領域15の側から遮断バルブハウジング上にかぶさって押し出され、第2のスリーブ部品5.2は第2の端部領域17の側から遮断バルブハウジング上にかぶさって押し出される。
【0030】
各コンデンサ電極7、8は、絶縁スリーブ5の内部に、すなわち、絶縁スリーブ5内に埋め込まれて、長軸37を中心にしてリング状に周回している。ここで、このコンデンサ電極7、8の実施例では、同心状に周回しているコンデンサ電極7、8の6つの電極対41~46は互いに対向する電極面で形成され、したがって、各電極対41~46は、内側コンデンサ電極7と、この内側コンデンサ電極7を取り囲んで周回する外側コンデンサ電極8とを有する。電極対41~46は、長軸37に関して軸方向に互いに離間して配置されており、3つの電極対41~43は第1の絶縁領域19を取り囲んで配置され、さらに3つの電極対44~46は第2の絶縁領域21を取り囲んで配置されている。
【0031】
第1の電極対41及び第2の電極対42の外側コンデンサ電極8は、絶縁スリーブ5内に組み込まれた電気導体47によって互いに導電接続されている。同様に、第2の電極対42及び第3の電極対43の内側コンデンサ電極7は互いに導電接続され、したがって、電極対41~43は電気的に直列に接続された複数のコンデンサを形成する。さらに、
図3に示された実施例に類似して、これらのコンデンサの間に、及び/又は、これらのコンデンサと並列に、絶縁スリーブ5内に組み込まれた複数の電気抵抗器49を接続することができる。
【0032】
さらに、第1の電極対41の内側コンデンサ電極7は遮断バルブハウジングの第1の端部領域15と導電接続され、第3の電極対43の外側コンデンサ電極8は遮断バルブハウジングの中央領域13と導電接続されている。この導電接続の代わりに、これらのコンデンサ電極7、8を、第1の端部領域15および中央領域13にそれぞれ印加されている電位に単に容量結合することも可能である。
【0033】
これに対応して、第4の電極対44及び第5の電極対45の外側コンデンサ電極8、ならびに、第5の電極対45及び第6の電極対46の内側コンデンサ電極7は、互いに導電接続されており、したがって、電極対44~46も、電気的に直列接続された複数のコンデンサを形成している。これらのコンデンサの間に、及び/又は、これらのコンデンサと並列に、絶縁スリーブ5内に組み込まれた複数の電気抵抗器49を接続することもできる。
【0034】
さらに、第4の電極対44の内側コンデンサ電極7は遮断バルブハウジングの第2の端部領域17と導電接続され、第6の電極対46の外側コンデンサ電極8は遮断バルブハウジングの中央領域13と導電接続されている。ここでも、導電接続の代わりに、これらのコンデンサ電極7、8を、第2の端部領域17および中央領域13のそれぞれに印加されている電位に単に容量結合することも可能である。
【0035】
絶縁スリーブ5のスリーブ部品5.1、5.2は、それぞれがスリーブ内に組み込まれたコンデンサ電極7、8、電気導体47、及び、場合によっては電気抵抗器49と共に、例えば3D印刷によって製造される。この場合、スリーブ部品5.1、5.2は、例えば、PLA、ABS、PVDF又はCPEを材料にして印刷され、コンデンサ電極7、8、電気導体47、および、場合によっては電気抵抗器49は、導電性フィラメントを材料にして印刷される。
【0036】
コンデンサ電極7,8の相互作用により、例えば10pFから500pFの範囲の制御静電容量が実現される。
【0037】
図2(FIG2)は、本発明による真空遮断ユニット1の第2の実施例の断面図である。この真空遮断ユニット1は、ここでも、1つの真空遮断バルブ3と、真空遮断バルブ3を取り囲む1つの絶縁スリーブ5と、絶縁スリーブ5内に組み込まれた複数のコンデンサ電極7、8とを含んでいる。
図2に示す本発明による真空遮断ユニット1の実施例が
図1に示す実施例と実質的に異なるのは、コンデンサ電極7、8の配置、および、それらと真空遮断バルブ3のシールド電極31~35との電気的な結合だけであり、ここでは、真空遮断バルブ3は、
図1に示す実施例のシールド電極31~34に加えて、さらなる複数のシールド電極35を有し、これらのシールド電極はそれぞれ、遮断バルブハウジングの絶縁領域19、21の2つの隣接する絶縁セグメント23間でリング状に周回している。
【0038】
コンデンサ電極7、8はここでも電極対41~46を形成し、各電極対41~46のコンデンサ電極7、8は同心状に周回し、互いに対向する電極面を有する。しかしながら、
図1に示される実施例とは異なり、コンデンサ電極7、8は絶縁スリーブ5の内部には配置されておらず、すなわち、絶縁スリーブ5内に埋め込まれておらず、内側コンデンサ電極7は、絶縁スリーブ5の、真空遮断バルブ3側の表面上で長軸37を中心にしてリング状に延び、外側コンデンサ電極8は、絶縁スリーブ5の、真空遮断バルブ3とは反対側の表面上で長軸37を中心にしてリング状に延びている。さらに、
図1に示す実施例とは異なり、コンデンサ電極7、8は電気導体47によって互いに接続されているのではなく、電極対42、43、45及び46の複数の内側コンデンサ電極7は、それぞれ、2つの隣接する絶縁セグメント23間に配置されたシールド電極35と導電接続されている。
【0039】
さらに、絶縁スリーブ5の、コンデンサ電極7で覆われていない表面領域(真空遮断バルブ3側の領域)、及び、この領域とは反対側の真空遮断バルブ3の表面領域(絶縁スリーブ5側の領域)は、例えば半導性材料を含む被覆48を有することができ、これらの被覆は絶縁スリーブ5と真空遮断バルブ3との間の空間の電界を均一化する。このような被覆48は、
図1、
図3又は
図4に示す実施例にも設けることができる。
【0040】
図2に示す真空遮断ユニット1の絶縁スリーブ5のスリーブ部品5.1、5.2は、例えば、POM、PETP、PVDF又はPA6.6のような熱可塑性樹脂から、又は、チタン酸バリウム(BaTiO
3)のような誘電率増加充填剤を有するエポキシ樹脂から、射出成形のような従来の方法を用いて製造される。続いて、コンデンサ電極7、8が、例えば、金属電極として、又は、導電性被覆層として、絶縁スリーブ5上に被着される。
【0041】
図3(FIG3)は、真空遮断ユニット1の第3の実施例の断面図である。この真空遮断ユニット1は、1つの真空遮断バルブ3と、真空遮断バルブ3を取り囲む1つの絶縁スリーブ5と、絶縁スリーブ5内に組み込まれた複数のコンデンサ電極9とを備えている。真空遮断バルブ3及び絶縁スリーブ5は
図1に示す実施例のように形成されているので、ここでは再び説明しない。
【0042】
各コンデンサ電極9は、絶縁スリーブ5の内部で、すなわち、絶縁スリーブ5の中に埋め込まれて、長軸37を中心にしてリング状に周回している。絶縁スリーブ5の各スリーブ部品5.1、5.2において、6つのコンデンサ電極9が長軸37に関して軸方向に互いに離間して配置され、それぞれ3つの電極対41、42、43及び44、45、46を形成し、これらはそれぞれ、スリーブ部品5.1、5.2内に組み込まれた電気導体47によって電気的に直列接続された複数のコンデンサを形成する。更に、これらのコンデンサの間に、及び/又は、これらのコンデンサと並列に、絶縁スリーブ5内に組み込まれた複数の電気抵抗器49を接続することができる。
【0043】
さらに、遮断バルブハウジングの各端部領域15、17はそれに最も近いコンデンサ電極9と導電接続され、遮断バルブハウジングの中央領域13の、端部領域15、17側の各端部はそれに最も近いコンデンサ電極9と導電接続されている。
図1に示された実施例と類似して、遮断バルブハウジングの両端部領域15、17及び中央領域13と、コンデンサ電極9との導電接続を止めることができ、その時には、これらコンデンサ電極9と、端部領域15、17および中央領域13に印加されているそれぞれの電位との単なる容量結合により置き換えられる。
【0044】
したがって、
図3に示す真空遮断ユニット1の実施例が
図1に示す実施例と実質的に異なるのは、各電極対41~46の2つのコンデンサ電極9が同心状に配置されているのではなく、軸方向に互いに対向する電極面を備えて軸方向に互いに離間して配置されていることだけである。
図1に示す実施例の場合のように、絶縁スリーブ5のスリーブ部品5.1、5.2は、コンデンサ電極9、電気導体47、及び、場合によってスリーブ部品5.1、5.2内に組み込まれた電気抵抗器49と共に、例えば3D印刷によって製造される。
【0045】
図4(FIG4)は、真空遮断ユニット1の第4の実施例の断面図である。この実施例が
図3に示された実施例と実質的に異なるのは、スリーブ部品5.1、5.2内に組み込まれた複数のコンデンサ電極9の数と間隔であり、並びに、どのコンデンサ電極9も絶縁スリーブ5内に組み込まれた電気導体47によって互いに電気的に導電接続されていないことである。したがって、ここでは複数のコンデンサ電極9の電気的結合は単に容量的にのみ行われ、この場合、2つの別のコンデンサ電極9の間に配置された1つのコンデンサ電極9は、それに隣接するこれら2つのコンデンサ電極9とそれぞれ1つのコンデンサを形成する。
【0046】
図5(FIG5)は本発明による真空遮断器50のブロック図を示す。この真空遮断器50は1つの遮断器ハウジング51を有し、この遮断器ハウジングの中に
図1~
図4に示す真空遮断ユニット1のいずれかのように形成された真空遮断ユニット1が2つ配置され、その開閉路52、53は電気的に直列接続されている。遮断器ハウジング51には、例えば洗浄され除湿された圧縮空気が充填されている。これらの真空遮断ユニット1の複数の可動開閉接触子27は、開閉路52、53の開及び閉のために、例えば共通の遮断駆動装置(図示せず)によって同期して駆動可能である。
【0047】
本発明を好適な複数の実施例により詳細に図解し説明したが、本発明は開示した実施例により限定されるものではなく、本発明の保護の範囲から逸脱することなく、当業者によって他の変形をそこから導き出すことができる。
【手続補正書】
【提出日】2024-03-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空遮断器(50)の真空遮断ユニット(1)であって、
前記真空遮断ユニット(1)が
真空遮断バルブ(3)と、
前記真空遮断バルブ(3)の長軸(37)を中心にして筒状に周回し、絶縁材料で形成されていて、前記真空遮断バルブ(3)を取り囲む1つの絶縁スリーブ(5)と、
前記絶縁スリーブ(5)内に組み込まれた複数のコンデンサ電極(7,8,9)と、
を含むことを特徴とする真空遮断ユニット(1)。
【請求項2】
前記複数のコンデンサ電極(7、8、9)が、それぞれ前記真空遮断バルブ(3)の前記長軸(37)を中心にしてリング状又は部分的にリング状に周回していることを特徴とする請求項1に記載の真空遮断ユニット(1)。
【請求項3】
前記複数のコンデンサ電極(7,8)から、互いに対向する電極面を有し、同心状に周回するコンデンサ電極(7,8)の複数の電極対(41~46)が形成され、同心状に周回している前記複数のコンデンサ電極(7,8)の電極対(41~46)が、
前記真空遮断バルブ(3)の前記長軸(37)に関して軸方向に互いに離間して配置されていることを特徴とする請求項
1に記載の真空遮断ユニット(1)。
【請求項4】
同心状に周回するコンデンサ電極(7,8)の各電極対(41~46)が、
前記真空遮断バルブ(3)に面した前記絶縁スリーブ(5)の表面を周回するコンデンサ電極(7)と、
前記真空遮断バルブ(3)とは反対側の前記絶縁スリーブ(5)の表面を周回するコンデンサ電極(8)と、
で形成されることを特徴とする請求項3に記載の真空遮断ユニット(1)。
【請求項5】
前記同心状に延びるコンデンサ電極(7、8)が、前記絶縁スリーブ(5)に被着された導電性被覆層で形成されることを特徴とする請求項4に記載の真空遮断ユニット(1)。
【請求項6】
前記複数のコンデンサ電極(9)が、前記絶縁スリーブ(5)の内部で前記絶縁スリーブ(5)の長軸(37)に関して軸方向に互いに離間して周回し、互いに対向する電極面を有することを特徴とする請求項
1に記載の真空遮断ユニット(1)。
【請求項7】
前記コンデンサ電極(7、8、9)の複数の電極対(41~46)が、互いに対向する電極面によって複数のコンデンサを形成し、
前記複数のコンデンサが、前記絶縁スリーブ(5)内に組み込まれた複数の電気導体によって直列に接続されていることを特徴とする請求項
3に記載の真空遮断ユニット(1)。
【請求項8】
少なくとも1つの電気抵抗器(49)が前記絶縁スリーブ(5)内に組み込まれており、
前記電気抵抗器(49)が、前記絶縁スリーブ(5)内に組み込まれた複数の電気導体(47)によって、2つのコンデンサ電極(7、8、9)で形成された少なくとも1つのコンデンサと直列又は並列に接続されていることを特徴とする請求項
1に記載の真空遮断ユニット(1)。
【請求項9】
前記真空遮断バルブ(3)が少なくとも1つのシールド電極(31~35)を有し、
前記シールド電極(31~35)が、コンデンサ電極(7,8,9)と導電接続されている、及び/又は、容量結合されている、
ことを特徴とする請求項
1に記載の真空遮断ユニット(1)。
【請求項10】
前記絶縁スリーブ(5)が、熱可塑性樹脂から、又は、誘電率増加充填剤を有するエポキシ樹脂から、形成されられることを特徴とする請求項
1に記載の真空遮断ユニット(1)。
【請求項11】
前記絶縁スリーブ(5)が、前記複数のコンデンサ電極(7,8,9)と共に、3D印刷により製造されていることを特徴とする請求項
1に記載の真空遮断ユニット(1)。
【請求項12】
前記絶縁スリーブ(5)に面する前記真空遮断バルブ(3)の表面の少なくとも1つの領域、及び/又は、前記真空遮断バルブ(3)に面する前記絶縁スリーブ(5)の表面の少なくとも1つの領域が、被覆(48)を有し、
前記被覆(48)が、前記絶縁スリーブ(5)と前記真空遮断バルブ(3)との間の電界を均一化することを特徴とする請求項
1に記載の真空遮断ユニット(1)。
【請求項13】
前記絶縁スリーブ(5)が、少なくとも2つのスリーブ部品(5.1、5.2)で構成されていることを特徴とする請求項
1に記載の真空遮断ユニット(1)。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1項により形成された真空遮断ユニット(1)を少なくとも1つ備えた真空遮断器(50)。
【請求項15】
それぞれが請求項1から13のいずれか1項により形成された真空遮断ユニット(1)を複数備え、それらの開閉路が電気的に直列に接続されている真空遮断器(50)。
【国際調査報告】