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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】アンモニアを生成するための方法
(51)【国際特許分類】
   C01C 1/04 20060101AFI20240822BHJP
   B01J 27/18 20060101ALI20240822BHJP
   B01J 35/39 20240101ALI20240822BHJP
【FI】
C01C1/04 F
B01J27/18 M
B01J35/39
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503758
(86)(22)【出願日】2022-07-22
(85)【翻訳文提出日】2024-03-12
(86)【国際出願番号】 EP2022070577
(87)【国際公開番号】W WO2023002000
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】21382671.2
(32)【優先日】2021-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】599012422
【氏名又は名称】ベー・ブラウン・サージカル・ソシエダッド・アノニマ
【氏名又は名称原語表記】B. Braun Surgical, S.A.
(71)【出願人】
【識別番号】513233665
【氏名又は名称】ウニベルジテート ポリテクニカ デ カタル-ニア
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ポウ トゥロン ドルス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァネッサ サンス ベルトラン
(72)【発明者】
【氏名】カルロス エンリケ アレマン ランソ
(72)【発明者】
【氏名】ジョーディ サンズ
【テーマコード(参考)】
4G169
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169AA08
4G169BB05A
4G169BB05B
4G169BB14A
4G169BB14B
4G169BC09B
4G169BC09C
4G169CB82
4G169DA05
4G169EA02Y
4G169FA01
4G169FA08
4G169FB10
4G169FB58
4G169HA01
4G169HB06
4G169HC28
4G169HC32
4G169HD03
4G169HE01
4G169HF03
4G169HF04
(57)【要約】
本発明は、窒素及び水を、永久分極ハイドロキシアパタイトを含むか又は永久分極ハイドロキシアパタイトから成る触媒に接触させるステップを含むアンモニアを生成するための方法に関する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニアを生成するための方法であって、
窒素及び水を、永久分極ハイドロキシアパタイトを含むか又は永久分極ハイドロキシアパタイトから成る触媒に接触させるステップを含む、方法。
【請求項2】
前記永久分極ハイドロキシアパタイトは、
65%より高い、特に70%より高い、好ましくは75%より高い、より好ましくは65%から99%の結晶化度、及び/又は、
前記永久分極ハイドロキシアパタイトの総重量に基づいて、18%未満、特に0.1%から17%の非晶質リン酸カルシウムの割合、及び/又は、
前記永久分極ハイドロキシアパタイトの前記総重量に基づいて、36%より小さい、特に0.1%から35%のβ-リン酸三カルシウムの割合、及び/又は、
10Ωcmから10Ωcm、特に10Ωcmから10Ωcm、のバルク抵抗であって、前記バルク抵抗が、好ましくは、3か月後に、僅か4%から73%だけ、特に4%から63%だけ、好ましくは4%だけ増加するバルク抵抗、及び/又は、
3か月後の減少が、8%未満、特に8%から0.1%、好ましくは5%から3%、の表面静電容量、を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記永久分極ハイドロキシアパタイトは、
(a)ハイドロキシアパタイトを含むか若しくはハイドロキシアパタイトから成る試料を調製するステップと、
(b)ステップ(a)において調製された前記試料を、700℃から1200℃の間の温度にて焼結するステップと、
(c)250Vから2500Vの間のDC定電圧若しくはDC可変電圧を、少なくとも1分間、900℃から1200℃の間の温度にて印加するステップ、又は、
1.49kV/cmから15kV/cmの間の等価な電場を、少なくとも1分間、900℃から1200℃の間の温度にて印加するステップ、又は、
2500Vから1500000Vの間の静電気放電を、10分未満の間、900℃から1200℃の間の温度にて印加するステップ、又は、
148.9kV/cmから8928kV/cmの間の等価な電場を、10分未満の間、900℃から1200℃の間の温度にて印加するステップと、
(d)前記DC電圧若しくは前記等価な電場を維持しながら、ステップ(c)において得られた前記試料を冷却するステップ、又は、
前記静電気放電若しくは前記等価な電場を、維持しながら若しくは維持せずに、ステップ(c)において得られた前記試料を冷却するステップと、
を含む方法によって得られるか又は得ることが可能であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記永久分極ハイドロキシアパタイトは、
(a)ハイドロキシアパタイトを含むか又はハイドロキシアパタイトから成る試料を調製するステップと、
(b)ステップ(a)で調製された前記試料を、1000℃の温度にて、特に2時間、焼結するステップと、
(c)3kV/cmの等価な電場を、1000℃の温度にて、特に1時間、印加するステップと、
(d)前記等価な電場を、特に30分間維持しながら、ステップ(c)において得られた前記試料を冷却するステップと、
を含む方法によって得られるか又は得ることが可能であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記接触させるステップは、前記水と前記触媒との体積比が10000:1から0.1:1、特に1000:1から0.1:1、好ましくは1000:1から100:1で実施されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記接触させるステップは、或る圧力下で、特に、窒素の、0.01barから20barの圧力下で、好ましくは0.3barから10bar、特に6bar、の圧力下で、実施されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記接触させるステップは、前記触媒に対する窒素のモル比率が400から20、好ましくは200から60、特に120で実施されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記接触させるステップは、95℃以上から140℃、好ましくは95℃以上から120℃、より好ましくは100℃から120℃、特に120℃、の温度にて実施されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記接触させるステップは、0.0001時間から120時間、特に0.1時間から96時間、好ましくは24時間から72時間の間、実施されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記接触させるステップは、UV照射又はUV-Vis照射下であって、特に、200nmから850nm、特に240nmから400nm、好ましくは240nmから270nm、より好ましくは250nmから260nm、特に好ましくは253.7nm、の波長を有する前記UV照射又はUV-Vis照射下で、実施されることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記UV照射及び/又は可視光線照射は、0.1W/mから200W/m、特に1W/mから50W/m、好ましくは2W/mから10W/m、の放射度を有することを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記触媒の表面は、前記UV照射又はUV-Vis照射に暴露され、前記UV照射又はUV-Vis照射に暴露されている前記触媒の前記表面が、前記水によって被覆されていない、ことを特徴とする、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記接触させるステップは、前記窒素、及び、随意に水蒸気を除き、いかなるさらなるガスをも含有していないか又は基本的に含有していない大気下で実施されることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記接触させるステップは、空気、特に汚染空気を使用することによって実施され、前記窒素は、前記空気の一部であることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
空気、特に汚染空気から少なくとも窒素、特に窒素及び二酸化炭素を除去するための請求項1から12又は14のいずれか一項に記載の方法の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニアを生成するための方法と、空気、即ち地球の大気から少なくとも窒素(N)を除去するための当該方法の使用と、に関する。
【背景技術】
【0002】
窒素(N)固定は困難である。その理由は、窒素-窒素三重結合の結合エネルギ(941kJ/mol)が、極めて高い熱力学的安定性を供給するためである。
【0003】
ハーバー・ボッシュ法とは、活性触媒の存在下でHガス及びNガスからアンモニアを生成する、人工的窒素固定である。現在、この方法により、アンモニアの90%よりも多くが生成されている(L.Wang,M.Xia,H.Wang,K.Huang,C.Qian,C.T.Maravelias,及びG.A.Onzin,Joule,2018,2,1055-1074)。しかしながら、ハーバー・ボッシュ法は、エネルギ集約的方法である。エネルギ消費の理由は、現在の触媒系が必要とする温度(375-500℃)においてアンモニアの平衡濃度を上げるために、極めて高い圧力(100~300バール)が必要とされるためである(C.Smith,A.K.Hill,及びL.Torrente-Murciano,Energy Environ.Sci.,2020,13,331-344;K.H.R.Rouwenhorst,Y.Engelmann,K-van‘t Veer,R.S.Postma,A.Bogaerts,及びL.Lefferts,Green Chem.,2020,22,6258-6287;J.Humphreys,R.Lan,及びS.Tao,Adv.Energy Sustainability Res.2021,2,2000043;A.J.Martin,T.Shinagawa,及びJ.Perez-Ramirez,Chem,2019,5,263-283)。
【0004】
ハーバー・ボッシュ法に必要とされる温度及び圧力を維持するには、人間が生成する全てのエネルギのうちの1~2%を世界的に消費する(E.Giamello,Nat.Chem.,2012,4,869-870)。加えて、ハーバー・ボッシュ法は、地球規模でのCO2排出量の1.4%を占めており(M.Capdevila-Cortada,Nat Catal 2019,2,1055)、よって、かなりの量の温室効果ガスの放出を引き起こす。さらなる不利点が、アンモニアへの低い転化率である(即ち、単通収率が、およそ15~20%であり、ガス再利用ステップが必要である)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記に鑑みて、本発明の根底にある目的は、したがって、従来のアンモニアの合成という文脈において、特に、ハーバー・ボッシュ法という文脈において、特に上記のような不利点を避ける、アンモニアを生成するための方法を利用可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、独立請求項1に従った方法と、請求項15に従った使用と、により達成される。この方法の好ましい実施形態が、従属請求項及び本説明において規定されている。全ての請求項の主題及び文言はそれぞれ、明示された引用により、ここにおいて説明に組み込まれている。
【0007】
本発明は、アンモニア(NH)を生成又は合成する方法に関する。当該方法は、窒素、即ち窒素ガス(N)及び水(H0)、特に液体の水及び/又は水蒸気を、永久分極ハイドロキシアパタイトを含むか又は永久分極ハイドロキシアパタイトから成る触媒に接触させるステップを含む。
【0008】
以降において、この発明の方法の上記のステップを、「接触させるステップ」と表記する。
【0009】
本発明は、触媒としての永久分極ハイドロキシアパタイト、又は、永久分極ハイドロキシアパタイトを含む触媒の存在下における、窒素及び水からのアンモニアの生成又は合成が、穏やかな反応条件(特に、10bar未満の圧力、及び、250℃未満の温度)下で達成可能であるという驚くべき知見に基づいている。よって、例えばハーバー・ボッシュ法と比較すると、エネルギ消費が大幅に低減され得、それにより、(大幅に)より低いコストでのアンモニアの生成を容易にする。加えて、本発明に従った方法は、いかなる温室効果ガスの放出をも生じないか又は基本的に生じない。
【0010】
本発明に従って使用されるような「永久分極ハイドロキシアパタイト」という用語は、高い結晶化度を有して、完全な、特にほぼ完璧な、構造的再分配を経たハイドロキシアパタイト、即ち、特に、少ない量の非晶質リン酸カルシウムと、増加した電気化学活性によって検出された空孔の存在と、単位質量及び単位表面当たりの電荷の蓄積と、を伴ったハイドロキシアパタイト、を意味する。永久分極ハイドロキシアパタイトは、経時的に消失しない電気化学活性及びイオン移動度を有する。永久分極ハイドロキシアパタイトの、対応する31P-NMRスペクトルは、図1に示されるようなものとなっている。好ましくは、当該スペクトルは、固体ハイドロキシアパタイトを用いて、リファレンスとしてリン酸(H3PO4)を使用して実施され、ハイドロキシアパタイトのリン酸基に対応する2.6ppmにおいて特有のピークを示す。
【0011】
本発明に従って使用されるような「熱分極ハイドロキシアパタイト」という用語は、好ましくは、(a)ハイドロキシアパタイト(Ca(POOH若しくはCa10(POOH)及び/又は非晶質リン酸カルシウム、を含むか又はそれ(ら)から成る試料を、特に700℃から1200℃の間の温度にて焼結するステップと、(b)250Vから2500Vの間のDC定電圧又はDC可変電圧を、特に、少なくとも1分間、及び/又は、900℃から1200℃の間の温度にて、特に1000℃から1200℃の温度にて、印加するステップ、あるいは、1.49kV/cmから15kV/cmの間の等価な場を、特に、少なくとも1分間、及び/又は、900℃から1200℃の間の温度にて、特に1000℃から1200℃の温度にて、印加するステップ、あるいは、2500Vから1500000Vの間の静電気放電を、特に、0分より長く24時間まで、例えば10分未満の間、及び/又は、900℃から1200℃の間の温度にて、特に1000℃から1200℃の温度にて、印加するステップ、あるいは、148.9kV/cmから8928kV/cmの間の等価な電場を、特に、0分より長く24時間まで、例えば10分未満の間、及び/又は、900℃から1200℃の間の温度にて、特に1000℃から1200℃の温度にて、印加するステップと、を含む方法(熱分極法)により得られるか又は得ることが可能である永久分極ハイドロキシアパタイトを意味する。
【0012】
本発明に従って使用されるような「試料」という用語は、特に、一つの試料、即ち一つのみの試料(単数)、又は、複数の試料、即ち二つ以上の試料を意味し得る。
【0013】
ステップ(a)における試料のハイドロキシアパタイトは、天然ハイドロキシアパタイト、即ち天然発生ハイドロキシアパタイト、及び/又は、合成ハイドロキシアパタイト、であり得る。
【0014】
さらに、ステップ(a)における試料のハイドロキシアパタイトは、結晶性ハイドロキシアパタイトであり得る。
【0015】
さらに、試料は、少なくとも一つのさらなるリン酸カルシウム材料、即ちカルシウムカチオン及びリン酸アニオンを含むか又はそれらから成る少なくとも一つのさらなる材料、を含み得るか又はそれ(ら)から成り得る。特に、少なくとも一つのさらなるリン酸カルシウム材料は、リン酸カルシウム塩又はリン酸カルシウム鉱物の形を取る。好ましくは、少なくとも一つのさらなるリン酸カルシウム材料は、ブルシャイト(CaHPO・2HO又はCa[PO(OH)]・2HO)、ブルシャイト様材料、非晶質リン酸カルシウム、リン酸三カルシウム、特にβ-リン酸三カルシウム、及び、前述のさらなるリン酸カルシウム材料のうちの少なくとも二つの混合物、から成る群から選択される。
【0016】
本発明に従って使用されるような「ブルシャイト」という用語は、化学式がCaHPO・2HOである、リン酸カルシウム材料、特に、リン酸カルシウム塩又はリン酸カルシウム鉱物、好ましくは、合成リン酸カルシウム材料、特に、合成リン酸カルシウム塩又は合成リン酸カルシウム鉱物、を意味する。WAXS(広角X線散乱)スペクトルにおいて、ブルシャイトの最も代表的なピークは、2θ=29°、31°、35°、42°、及び、51°において出現し、これらはそれぞれ、(141)反射、(221)反射、(121)反射、(152)反射、及び、(143)反射、に起因する(JCPDSカード番号72-0713)。
【0017】
本発明に従って使用されるような「ブルシャイト様材料」という用語は、ラマンスペクトル中の、878cm-1、848cm-1、及び、794cm-1においてピークを示すリン酸カルシウム材料を指し、これらのピークは、それぞれ、HPO 2-の基準振動モード、POH変形モード、及び、POH回転モード、に対応している。
【0018】
本発明に従って使用されるような「室温」という用語は、15℃から35℃、特に18℃から30℃、好ましくは20℃から30℃、より好ましくは20℃から28℃、特に20℃から25℃、の温度を意味する。
【0019】
発明の一実施形態では、永久分極ハイドロキシアパタイトが、
65%より高い、特に70%より高い、好ましくは75%より高い、より好ましくは65%から99.9%の結晶化度、及び/又は、
20nmから500nmまで、特に50nmから200nm、好ましくは70nmから100nmのサイズであって、好ましくは平均直径、特に広角X線散乱(WAXS)によって特定されたサイズを有する結晶子、及び又は、
前記永久分極ハイドロキシアパタイトの総重量に基づいて、18重量%未満、特に0.1重量%から17重量%若しくは9重量%未満、好ましくは5重量%未満、特に0.1未満の非晶質リン酸カルシウムの割合、及び/又は、
前記永久分極ハイドロキシアパタイトの前記総重量に基づいて、36重量%未満、特に0.1重量%から35重量%若しくは12重量%未満、好ましくは5重量%未満、0.5重量%未満のβ-リン酸三カルシウムの割合、及び/又は、
10Ωcmから10Ωcm、特に10Ωcmから10Ωcm、特に10Ωcmから10Ωcm、好ましくは10Ωcmのバルク抵抗、及び/又は、
3か月後の減少が、8%未満、特に8%から0.1%、好ましくは5%から3%の表面静電容量、及び/又は、を備えるか若しくは有する。
【0020】
本発明に従って使用されるような「バルク抵抗」という用語は、電子移動に対する抵抗を意味し、電気化学インピーダンス分光法によって特定され得る。
【0021】
好ましくは、前記バルク抵抗が、3か月後に、僅か0.1%から33%だけ、特に4%から63%だけ、好ましくは4%だけ、増加する。
【0022】
本発明に従って使用されるような「表面静電容量」という用語は、熱分極法により誘導された、ハイドロキシアパタイトの表面変化に起因する静電容量を意味し、電気化学インピーダンス分光法によって特定され得る。
【0023】
特に好ましくは、永久分極ハイドロキシアパタイトは、2.6ppmで又は2.6ppm前後で、即ち、ハイドロキシアパタイトのリン酸基に対応する2.5ppmから2.7ppmの範囲内において、特有のピークを示す31P-NMRスペクトルを有する。好ましくは、31P-NMRスペクトルは、固体永久分極ハイドロキシアパタイトを用いて、20℃から25℃の温度にて、且つ、リファレンスとしてリン酸(HPO)を使用して、実施されるか又は得られる。図9に、永久分極ハイドロキシアパタイトの31P-NMRスペクトルを示す。
【0024】
本発明の更なる実施形態では、前記触媒、特に前記永久分極ハイドロキシアパタイトは、
(a)ハイドロキシアパタイト、特に結晶性ハイドロキシアパタイト、及び/若しくは非晶質リン酸カルシウムを含むか、若しくはハイドロキシアパタイト、特に結晶性ハイドロキシアパタイト及び/若しくは非晶質リン酸カルシウムから成る試料を調製するステップと、
(b)ステップ(a)において調製された前記試料を、特に700℃から1200℃の間の温度にて焼結するステップと、
(c)250Vから2500Vの間のDC定電圧若しくはDC可変電圧を、特に少なくとも1分間及び/若しくは900℃から1200℃の間、特に1000℃から1200℃の温度にて、ステップ(b)で得られた前記試料若しくはそれらの形状体へ、即ちステップ(b)で得られた前記試料から得られた形状体へ印加するステップ、又は、
1.49kV/cmから15kV/cmの間の等価な電場を、特に少なくとも1分間、及び/若しくは900℃から1200℃の間、特に1000℃から1200℃の温度にて、ステップ(b)で得られた前記試料若しくはそれらの形状体へ、即ちステップ(b)で得られた前記試料から得られた形状体へ印加するステップ、又は、
2500Vから1500000Vの間の静電気放電を、特に0分より長く24時間まで、例えば10分未満の間、及び/若しくは900℃から1200℃の間、特に1000℃から1200℃の温度にて、ステップ(b)で得られた前記試料若しくはそれらの形状体へ、即ちステップ(b)で得られた前記試料から得られた形状体へ印加するステップ、又は、
148.9kV/cmから8928kV/cmの間の等価な電場を、特に0分より長く24時間まで、例えば10分未満の間、900℃から1200℃の間、特に1000℃から1200℃の温度にて、ステップ(b)で得られた前記試料若しくはそれらの形状体へ、即ちステップ(b)で得られた前記試料から得られた形状体へ印加するステップと、
(d)前記DC電圧若しくは前記等価な電場を維持しながら、ステップ(c)において得られた前記試料又は形状体を冷却するステップ、又は、
前記静電気放電若しくは前記等価な電場を維持しながら、ステップ(c)において得られた前記試料又は形状体を冷却するステップ、又は、
前記DC電圧若しくは前記等価な電場を維持しないで、ステップ(c)において得られた前記試料又は形状体を冷却するステップ、又は、
前記静電気放電若しくは前記等価な電場を、維持しないで、ステップ(c)において得られた前記試料又は形状体を冷却するステップと、を含む方法によって得られるか又は得ることが可能である。
【0025】
本発明に従って使用されるような「形状体(shaped body)」という用語は、特に、一つの形状体、即ち、一つのみの形状体(単数)、又は、複数の形状体、即ち、二つ以上の形状体、を意味し得る。
【0026】
ステップ(a)における試料のハイドロキシアパタイトは、天然ハイドロキシアパタイト、即ち、天然発生ハイドロキシアパタイト、及び/又は、合成ハイドロキシアパタイト、であり得る。
【0027】
さらに、ステップ(a)における試料のハイドロキシアパタイトは、結晶性ハイドロキシアパタイトであり得る。
【0028】
さらに、試料は、少なくとも一つのさらなるリン酸カルシウム材料、即ち、カルシウムカチオン及びリン酸アニオンを含むか又はそれらから成る少なくとも一つのさらなる材料、を含み得るか又はそれ(ら)から成り得る。特に、少なくとも一つのさらなるリン酸カルシウム材料は、リン酸カルシウム塩又はリン酸カルシウム鉱物の形を取る。好ましくは、少なくとも一つのさらなるリン酸カルシウム材料は、ブルシャイト(CaHPO・2HO又はCa[PO(OH)]・2HO)、ブルシャイト様材料、非晶質リン酸カルシウム、リン酸三カルシウム、特にβ-リン酸三カルシウム、及び、前述のさらなるリン酸カルシウム材料のうちの少なくとも二つの混合物、から成る群から選択される。
【0029】
本発明に従って使用されるような形状体は、多角形、例えば、三角形、正方形若しくは長方形、五角形、六角形、七角形、八角形、又は、九角形、の断面、あるいは、角のない、特に円形、卵形状、又は、楕円形の断面を有し得る。特に、形状体は、ディスク、プレート、錐体(円錐)、又は、円柱の形を取り得る。さらに、形状体は、0cmより大きく10cmまで、特に0cmより大きく1cmまで、好ましくは0cmより大きく0.2cmまでの厚さを有し得る。
【0030】
上述のステップ(a)は、第二リン酸アンモニウム(リン酸水素二アンモニウム、(NH42HPO4)及び硝酸カルシウム(Ca(NO)を反応物質又は出発材料として使用することにより、実施され得る。特に、ステップ(a)は、
(a)第二リン酸アンモニウム及び硝酸カルシウムの混合物、特に水性混合物、好ましくは水性アルコール性混合物を提供することと、
(a)ステップ(a)において提供された混合物を、特に室温にて攪拌することと、
(a)ステップ(a)において攪拌された混合物を水熱処理することと、
(a)ステップ(a)において水熱処理された混合物を冷却することと、
(a)ステップ(a)において混合物を冷却した後に得られた沈殿物を分離することと、
(a)ステップ(a)において分離された沈殿物を凍結乾燥して、ハイドロキシアパタイト、特に結晶性ハイドロキシアパタイト、を生成することと、
により、実施され得る。
【0031】
ステップ(a)は、第二リン酸アンモニウム、硝酸カルシウム、水、特に脱イオン化水、エタノール、及び、随意にキレート化カルシウム溶液を含むか又はそれらから成る混合物を使用することにより、特に実施され得る。有利にも、当該混合物のpH値、及び/又は、当該混合物を提供するために適用される硝酸カルシウム水溶液のpH値は、10~12、好ましくは11に調節され得る。よって、特にナノ粒子の形態であるハイドロキシアパタイトの形状及びサイズを制御することができる。さらに、ステップ(a)は、攪拌下、特に穏やかな攪拌下で、例えば150rpmから400rpmを適用して、実施され得る。さらに、ステップ(a)は、1分から12時間の間、特に1時間、実施され得る。ステップ(a)は、本発明に従って、エイジングステップとも称され得る。さらに、ステップ(a)は、60℃から240℃、好ましくは150℃、の温度にて実施され得る。さらに、ステップ(a)は、1barから250bar、好ましくは20bar、の圧力にて実施され得る。さらに、ステップ(a)は、0.1時間から72時間、好ましくは24時間実施され得る。さらに、ステップ(a)は、ステップ(a)において水熱処理された混合物を0℃から90℃、特に25℃の温度まで冷却することによって実施され得る。さらに、ステップ(a)は、遠心分離及び/又は濾過によって実施され得る。さらに、ステップ(a)において分離された沈殿物は、ステップ(a)が実施される前に、特に水、並びに/又は、エタノール及び水の混合物を使用して洗浄され得る。さらに、ステップ(a)は、1日から4日の間、特に2日から3日の間、好ましくは3日間、実施され得る。
【0032】
さらに、上述のステップ(b)は、700℃から1150℃の間、特に800℃から1100℃の間の温度にて、特に1000℃にて実施され得る。
【0033】
さらに、この方法は好ましくは、ステップ(b)とステップ(c)との間に、
ステップ(b)において得られた試料をプレスして、形状体を形成するか又はその形状体を形成する、即ち、ステップ(b)において得られた試料の形状体を形成する、さらなるステップ(bc)
を含む。
【0034】
特に、ステップ(bc)は、1MPaから1000MPa、特に100MPaから800MPa、好ましくは600MPaから700MPa、の圧力下で実施され得る。さらに、ステップ(bc)は、1分から90分の間、特に5分から50分の間、好ましくは10分から30分の間実施され得る。
【0035】
形状体は、多角形、例えば三角形、正方形若しくは長方形、五角形、六角形、七角形、八角形、又は、九角形、あるいは、角のない、特に円形、卵形状、又は、楕円形、の断面を有し得る。さらに、形状体は、0cmより大きく10cmまで、特に0cmより大きく5cmまで、好ましくは0cmより大きく2cmまでの厚さを有し得る。特に、形状体は、0.1cmから10cm、特に0.1cmから5cm、好ましくは0.5cmから2cmの厚さを有し得る。
【0036】
好ましくは、形状体は、ディスク、プレート、錐体、又は、円柱の形状である。
【0037】
有利にも、ステップ(c)を実施することにより、ステップ(b)において得られた試料又はその形状体の触媒活性が達成され得る。好ましくは、ステップ(c)は、陽極と陰極との間に、ステップ(b)において得られた試料を配置することにより、又は、その形状体を配置することにより実施され、ステップ(b)において得られた試料又はその形状体は、両方の電極に接触している。陽極及び陰極は、例として、ステンレス鋼プレート、特にステンレス鋼AISI 304プレート、の形を取り得る。さらに、陽極及び陰極は、相互距離が、0.01mmから10cm、特に0.01mmから5cm、好ましくは0.01mmから1mmであり得る。
【0038】
さらに、陽極及び陰極は、異なる形状を有することができる。電極は、多角形の断面、例えば、正方形若しくは長方形の断面、又は、角のない、特に円形、卵形状、若しくは、楕円形の断面、を有し得る。特に、電極は、0cmより大きく10cmまで、特に0cmより大きく5cmまで、好ましくは0cmより大きく1mmまでの厚さを有し得る。例えば、電極は、ディスク、プレート、又は、円柱、の形を取り得る。さらに、DC定電圧又はDC可変電圧、あるいは、等価な電場は、上述のステップ(c)において、1時間から24時間、特に0.1時間から10時間、特に1時間、印加され得る。
【0039】
さらに、上述のステップ(c)において印加されたDC電圧は、好ましくは500Vであり、これは、3kV/cmの定電場に等価である。
【0040】
さらに、上述のステップ(c)において印加された等価な電場は、好ましくは3kV/cmである。
【0041】
さらに、上述のステップ(c)における温度は、好ましくは少なくとも900℃、より好ましくは少なくとも1000℃、である。好ましくは、ステップ(c)における温度は、900℃から1200℃、特に1000℃から1200℃、特に1000℃、である。
【0042】
好ましくは、ステップ(c)は、ステップ(b)において得られた試料、又は、その、形状体、特にディスク状の形状体に対し、500VのDC定電圧又はDC可変電圧を、1000℃にて1時間印加することによって実施される。
【0043】
さらに、上述のステップ(d)は、ステップ(c)において得られた試料又は形状体を、室温まで冷却することによって実施され得る。
【0044】
さらに、上述のステップ(d)は、1分から72時間、特に15分から5時間、好ましくは15分から2時間、実施され得る。
【0045】
本発明の更なる実施形態では、前記触媒、特に前記永久分極ハイドロキシアパタイトは、
(a)ハイドロキシアパタイト、特に結晶性ハイドロキシアパタイト、及び/又は非晶質リン酸カルシウム、特に第二りん酸アンモニウム(リン酸二アンモニウム、(NH42HPO4)を含むか、若しくはハイドロキシアパタイト、特に結晶性ハイドロキシアパタイト、及び/又は非晶質リン酸カルシウム、特に第二りん酸アンモニウム(リン酸二アンモニウム、(NHHPO)から成る試料を調製するステップと、
(b)ステップ(a)で調製された前記試料を、特に1000℃の温度にて、特に2時間焼結するステップと、
(c)3kV/cmの等価な電場を、特に1000℃の温度にて、特に1時間、ステップ(b)で得られた前記試料若しくはそれらの形状体へ、即ちステップ(b)で得られた前記試料から得られた形状体へ印加するステップと、
(d)前記等価な電場を、特に30分間維持しながら、ステップ(c)において得られた前記試料若しくは形状体を冷却するステップと、
を含む方法によって得られるか又は得ることが可能である。
【0046】
ステップ(a)~(d)のさらなる特徴及び利点に関しては、従前の説明の全体が参照される。
【0047】
本発明に従って使用されるような永久分極ハイドロキシアパタイトのさらなる特徴及び利点に関しては、明示された引用によってその内容がここに組み込まれている、PCT出願の国際出願第2018/024727明細書が参照される。
【0048】
さらに、触媒は、単相触媒の形態であり得るか、又は、多相(多相性)触媒の形態であり得る。
【0049】
さらに、触媒、特に、その一つの相又は単相は、好ましくは、(永久分極ハイドロキシアパタイトに加えて)少なくとも一つのさらなるリン酸カルシウム材料、即ち、カルシウムカチオン及びリン酸アニオンを含むか又はそれらから成る少なくとも一つのさらなる材料、を含み得るか又はそれ(ら)から成り得る。特に、少なくとも一つのさらなるリン酸カルシウム材料は、リン酸カルシウム塩又はリン酸カルシウム鉱物の形を取り得る。好ましくは、少なくとも一つのさらなるリン酸カルシウム材料は、ブルシャイト(CaHPO・2HO又はCa[PO(OH)]・2HO)、ブルシャイト様材料、非晶質リン酸カルシウム、リン酸三カルシウム、特にβ-リン酸三カルシウム、及び、前述のさらなるリン酸カルシウム塩又はリン酸カルシウム鉱物のうちの少なくとも二つの混合物、から成る群から選択される。
【0050】
好ましくは、永久分極ハイドロキシアパタイトは、触媒の総重量に基づいて、少なくとも一つのさらなるリン酸カルシウム塩又はリン酸カルシウム鉱物の割合よりも大きな割合を有する。
【0051】
特に、永久分極ハイドロキシアパタイトは、触媒の総重量に基づいて、50重量%から99.9重量%、特に65重量%から99.9重量%、特に75重量%から99重量%、好ましくは80重量%から95重量%、特に85重量%から90重量%、特に85重量%から88重量%、の割合を有し得る。
【0052】
さらに、ブルシャイト及び/又はブルシャイト様材料は、触媒の総重量に基づいて、0重量%より大きく50重量%まで、特に0.1重量%から35重量%、特に1重量%から25重量%、好ましくは5重量%から20重量%、特に10重量%から15重量%、特に12重量%から15重量%の割合を有し得る。
【0053】
さらに、ブルシャイト及び/又はブルシャイト様材料は、特に広角X線散乱(WAXS)によって特定された、65%から99.9%、特に75%から99%、好ましくは80%から95%の結晶化度を有し得る。さらに、ブルシャイト及び/又はブルシャイト様材料の結晶子は、特に広角X線散乱(WAXS)によって特定された、20nmから500nm、特に50nmから200nm、好ましくは70nmから100nm、のサイズを有し得る。好ましくは、この文脈において「サイズ」という用語は、ブルシャイト及び/又はブルシャイト様材料の結晶子の平均直径を指す。さらに、非晶質リン酸カルシウムは、触媒の総重量に基づいて、18重量%未満、特に0.1重量%から、17重量%又は9重量%未満まで、好ましくは5重量%未満、特に0.1重量%未満、あるいは、0重量%より大きく15重量%、特に0重量%より大きく10重量%まで、好ましくは0重量%より大きく5重量%の割合を有し得る。
【0054】
代替的に、触媒は、非晶質リン酸カルシウムを含有していないことがあり得る。
【0055】
さらに、リン酸三カルシウム、特にβ-リン酸三カルシウムは、触媒の総重量に基づいて、36重量%未満、特に0.1重量%から、35重量%又は12重量%未満まで、好ましくは5重量%未満、特に0.5重量%未満、あるいは、0重量%より大きく15重量%まで、特に0重量%より大きく10重量%まで、好ましくは0重量%より大きく5重量%までの割合を有し得る。
【0056】
代替的に、触媒は、リン酸三カルシウム、特にβ-リン酸三カルシウム、を含有していないことがあり得る。
【0057】
好ましくは、触媒はさらに、即ち、永久分極ハイドロキシアパタイトに加え、ブルシャイト及び/又はブルシャイト様材料、を含むか又はそれ(ら)から成る。このケースにおいて、触媒は好ましくは、2θ=29°、31°、35°、42°、及び、51°において、ピーク、特に代表的なピーク又は特有のピーク、を示す広角X線散乱(WAXS)パターンを有し、これらはそれぞれ、(141)反射、(221)反射、(121)反射、(152)反射、及び、(143)反射、に起因する(JCPDSカード番号72-0713)。好ましくは、当該パターンは、室温、好ましくは20℃から25℃の温度にて、並びに/あるいは、大気条件下、特に大気湿度及び/又は大気圧下において、実施されるか又は得られる。図10に、触媒の広角X線散乱(WAXS)パターンを示す。さらに、触媒は好ましくは、878cm-1、848cm-1、及び、794cm-1においてピークを示すラマンスペクトルを有する。当該ピークは、それぞれ、HPO 2-の基準振動モード、POH変形モード、及び、POH回転モード、に対応している。好ましくは、当該スペクトルは、室温、好ましくは20℃から25℃の温度にて、並びに/あるいは、大気条件下、特に、532nmにおける波長を有するレーザを使用して記録される、特に大気湿度及び/又は大気圧下において、実施されるか又は得られる。図11に、触媒のラマンスペクトルを示す。さらに、触媒は、特に、生成混合物の全ての生成物の収率の総和に関し、永久分極ハイドロキシアパタイト対ブルシャイト及び/又はブルシャイト様材料の総触媒活性比が、0.5:2、特に0.75:1.5、好ましくは0.8:1.25、であり得る。総触媒活性は、H-NMR(核磁気共鳴)分光法によって、好ましくは特定され得る。その目的のために、H-NMRスペクトルにおけるピークの面積が、好ましくは、得られた各生成物についてのプロトンの数に従って規格化される。さらに、触媒は、10Ωcmから10Ωcm、特に10Ωcmから10Ωcm、好ましくは10Ωcm、のバルク抵抗を有し得る。特に、バルク抵抗は、3か月後に、(僅か)4%から33%、特に4%から63%、好ましくは4%増加し得る。本発明に従って使用されるような「バルク抵抗」という用語は、電子移動に対する抵抗を意味し、電気化学インピーダンス分光法によって特定され得る。さらに、触媒は、3か月後の表面静電容量の減少が、15%未満、特に8%未満であり得る。好ましくは、組成又は材料は、3か月後の表面静電容量の減少が、0%又は0%より大きく15%まで、より好ましくは0%から5%まで又は0%より大きく5%までであり得る。
【0058】
さらに、本発明に従って使用されるような触媒は、粒子の形を取り得る。粒子は、特に広角X線散乱(WAXS)によって特定された、20nmから500nm、特に50nmから200nm、好ましくは70nmから100nm、の直径、好ましくは平均直径、を有し得る。
【0059】
さらに、本発明に従って使用されるような触媒は、特に先行の段落において述べたような粒子を有する、粉末の形態であり得る。
【0060】
さらに、本発明に従って使用されるような触媒は、形状体の形をとり得る。形状体は、多角形、例えば、三角形、正方形若しくは長方形、五角形、六角形、七角形、八角形、又は、九角形、の断面、あるいは、角のない、特に円形、卵形状、又は、楕円形、の断面、を有し得る。
【0061】
特に、形状体は、ディスク、プレート、錐体(円錐)、又は、円柱、の形状であり得る。
【0062】
さらに、形状体は、0cmより大きく10cmまで、特に0cmより大きく1cmまで、好ましくは0cmより大きく0.2cmまでの厚さを有し得る。
【0063】
さらに、触媒は、
(a)ハイドロキシアパタイト、特に天然ハイドロキシアパタイト若しくは合成ハイドロキシアパタイト、及び/又は、非晶質リン酸カルシウム、を含むか又はそれ(ら)から成る試料を提供するステップと、
(b)ステップ(a)において提供された試料を焼結するステップと、
(c)ステップ(b)において得られた試料に対し、又は、その形状体に対し、即ち、ステップ(b)において得られた試料から得られた形状体に対し、250Vから2500Vの間のDC定電圧又はDC可変電圧を、特に、少なくとも1分間、及び/又は、900℃から1200℃の間、特に1000℃から1200℃、の温度にて、印加するステップ、あるいは、
ステップ(b)において得られた試料に対し、又は、その形状体に対し、即ち、ステップ(b)において得られた試料から得られた形状体に対し、1.49kV/cmから15kV/cmの間の等価な電場を、特に、少なくとも1分間、及び/又は、900℃から1200℃の間、特に1000℃から1200℃、の温度にて、印加するステップ、あるいは、
ステップ(b)において得られた試料に対し、又は、その形状体に対し、即ち、ステップ(b)において得られた試料から得られた形状体に対し、2500Vから1500000Vの間の静電気放電を、特に0分超過から24時間、及び/又は、900℃から1200℃の間、特に1000℃から1200℃、の温度にて、印加するステップ、あるいは、
ステップ(b)において得られた試料に対し、又は、その形状体に対し、即ち、ステップ(b)において得られた試料から得られた形状体に対し、148.9kV/cmから8928kV/cmの間の等価な電場を、特に、0分超過から24時間、及び/又は、900℃から1200℃の間、特に1000℃から1200℃、の温度にて、印加するステップと、
(d)DC電圧又は等価な電場を維持しながら、ステップ(c)において得られた試料又は形状体を冷却するステップ、あるいは、
静電気放電又は等価な電場を維持しながら、ステップ(c)において得られた試料又は形状体を冷却するステップ、あるいは、
DC電圧又は等価な電場を維持せずに、ステップ(c)において得られた試料又は形状体を冷却するステップ、あるいは、
静電気放電又は等価な電場を維持せずに、ステップ(c)において得られた試料又は形状体を冷却するステップと、
を含む方法によって、得られ得るか又は得ることが可能であり得、
ステップ(c)を実施するために、ステップ(b)において得られた試料又はその形状体は、陽極と陰極との間に配列され、陽極及び陰極は、ステップ(c)中において、DC定電圧又はDC可変電圧、等価な電場又は静電気放電、を印加するために使用されており、それにより、ステップ(b)において得られた試料又はその形状体が、二つの電極のうちの一方から、好ましくは陽極から、間隔をあけて配置されるようにし、即ち、それにより、ステップ(b)において得られた試料又はその形状体が、二つの電極のうちの一方に対して、好ましくは陽極に対して、距離を有するようにする。
【0064】
好ましくは、ステップ(c)を実施するために、ステップ(b)において得られた試料又はその形状体は、陽極と陰極との間に配列され、陽極及び陰極は、ステップ(c)中において、DC定電圧又はDC可変電圧、等価な電場又は静電気放電、を印加するために使用されており、それにより、ステップ(b)において得られた試料又はその形状体が、二つの電極のうちの一方からのみ、好ましくは陽極からのみ、間隔をあけて配置されるようにし、即ち、それにより、ステップ(b)において得られた試料又はその形状体が、二つの電極のうちの一方に対してのみ、好ましくは陽極に対してのみ、距離を有するようにする。換言すると、ステップ(b)において得られた試料又はその形状体は、好ましくは、二つの電極のうちの他方に、より好ましくは陰極に、接触した状態に置かれる。
【0065】
さらに、ステップ(b)において得られた試料又はその形状体は、二つの電極のうちの一方から、好ましくは陽極から、0cm超過から10cm、特に0cm超過から5cm、好ましくは0cm超過から0.1cmの距離において、間隔をあけて配置される。
【0066】
電極のさらなる特徴及び利点に関しては、従前の説明の全体が参照される。
【0067】
さらに、ステップ(a)における試料のハイドロキシアパタイトは、天然ハイドロキシアパタイト、即ち、天然発生ハイドロキシアパタイト、及び/又は、合成ハイドロキシアパタイト、であり得る。
【0068】
さらに、ステップ(a)における試料のハイドロキシアパタイトは、結晶性ハイドロキシアパタイトであり得る。
【0069】
さらに、試料は、少なくとも一つのさらなるリン酸カルシウム材料、即ち、カルシウムカチオン及びリン酸アニオンを含むか又はそれらから成る少なくとも一つのさらなる材料、を含み得るか又はそれ(ら)から成り得る。特に、少なくとも一つのさらなるリン酸カルシウム材料は、リン酸カルシウム塩又はリン酸カルシウム鉱物の形を取る。好ましくは、少なくとも一つのさらなるリン酸カルシウム材料は、ブルシャイト(CaHPO・2HO又はCa[PO(OH)]・2HO)、ブルシャイト様材料、非晶質リン酸カルシウム、リン酸三カルシウム、特にβ-リン酸三カルシウム、及び、前述のさらなるリン酸カルシウム材料のうちの少なくとも二つの混合物、から成る群から選択される。
【0070】
この方法のさらなる特徴及び利点に関しては、従前の説明と、出願人の非公開欧州特許出願EP20383003.9と、の全体が参照される。
【0071】
好ましくは、水、又は、水の少なくとも或る量若しくは或る割合は、接触させるステップの間、液体の形を取る。接触させるステップを実施するために適用される反応条件に依存して、特に、印加される圧力、特に窒素圧力、及び/又は、適用される温度、に依存して、水の或る量又は或る割合は、接触させるステップの間、蒸気の形も取り得る。
【0072】
本発明の更なる実施形態では、前記接触させるステップは、前記水対前記触媒の体積比が10000:1から0.1:1、特に1000:1から0.1:1、好ましくは1000:1から100:1で実施される。
【0073】
さらに、接触させるステップは、水対触媒の重量比が10000:3から0.1:3、特に1000:3から0.1:1、好ましくは1000:3から100:3、で実施され得る。
【0074】
さらに、接触させるステップは、水及び触媒を含むか又はそれらから成る混合物の総重量に基づいて、0.1重量%から99.97重量%、特に0.1重量%から99.9重量%、好ましくは0.1重量%から99.7重量%、より好ましくは97重量%から99.7重量%、の水の割合を使用することにより、実施され得る。
【0075】
好ましくは、接触させるステップは、反応器のチャンバ内、特に不活性チャンバ内、で実施される。
【0076】
さらに、接触させるステップは、1から1000、特に1から100、好ましくは1から10のチャンバの体積に対する水の体積の比率を使用することにより、実施され得る。
【0077】
さらに、接触させるステップは、水及び触媒を含むか又はそれらから成る混合物の総重量に基づいて、0.03重量%から99.9重量%、特に0.3重量%から99.9重量%、好ましくは0.3重量%から3重量%の触媒の割合を使用することにより、実施され得る。
【0078】
本発明の更なる実施形態では、前記接触させるステップが、或る圧力下で、特に、窒素の0.01barから20barの圧力下で、好ましくは0.3barから10bar、より好ましくは1barから10bar、特に6barの圧力下で実施される。
【0079】
本発明の更なる実施形態では、前記接触させるステップが、前記触媒に対する窒素のモル比率が400から20、好ましくは200から60、特に120で実施される。
【0080】
本発明の更なる実施形態では、前記接触させるステップが、95℃以上から140℃、好ましくは95℃以上から120℃、より好ましくは100℃から120℃、特に120℃の温度にて実施される。
【0081】
本発明の更なる実施形態では、前記接触させるステップが、0.0001時間から120時間、特に0.1時間から96時間、好ましくは24時間から72時間の間実施される。
【0082】
さらに、触媒は、コーティングされていない触媒の形態、即ち、いかなるコーティングをも欠いた触媒の形態であり得る。
【0083】
代替的に、触媒は、コーティングされた触媒の形態であり得る。例えば、触媒は、或る材料、特に、TiO、MgO、MnO、又は、それらの組み合わせ、といった光触媒活性材料、でコーティングされ得る。より具体的に、触媒は、3層構造を有するコーティングでコーティングされ得、特に、当該3層構造は、アミノトリス(メチレンホスホン酸)の二つの層と、オキシ塩化ジルコニウム(ZrOCl)又はジルコニア(ZrO)の一つの層と、で構成され得、オキシ塩化ジルコニウム(ZrOCl)又はジルコニア(ZrO)の層は、アミノトリス(メチレンホスホン酸)の二つの層の間に配列されるか又は挟まれている。コーティングされた触媒を使用することにより、本発明に従った方法の効率が、追加的に最適化され得る。
【0084】
さらに、触媒は、添加剤でドープされ得る。添加剤は、特に、ナノ粒子、即ち、平均細孔直径が1nmから100nmである粒子の形態であり得る。さらに、添加剤は、金属、セラミック、有機化合物、及びそれらの組み合わせから成る群から選択され得る。金属は、金、銀、銅、亜鉛、チタン、及び、それらの組み合わせ、特に合金、から成る群から選択され得る。セラミックは、無機の、非金属の、しばしば結晶性の、酸化物材料、窒化物材料、又は、炭化物材料、特にリン酸塩、ケイ酸塩、及びそれらの組み合わせから成る群から選択され得る。
【0085】
本発明の更なる実施形態では、前記接触させるステップが、UV(紫外線)照射又はUV-Vis(紫外可視光線)照射下で実施される。特に、前記UV照射又はUV-Vis照射は、200nmから850nm、特に240nmから400nm、特に200nmから280nm、好ましくは240nmから270nm、より好ましくは250nmから260nm、特に好ましくは253.7nmの波長を有してもよい。前記UV照射又はUV-Vis照射は、適切なUV源又はUV-Vis源、例えばUVランプ又はUV-Visランプによって提供されるか又は生成されてもよい。
【0086】
本発明の更なる実施形態では、前記UV照射及び/又は可視光線照射が、0.1W/m2から200W/m、特に1W/mから50W/m、好ましくは2W/mから10W/m2、より好ましくは3W/mの放射度を有する。
【0087】
本発明の更なる実施形態では、前記触媒の表面が、前記UV照射又はUV-Vis照射に暴露され、前記UV照射又はUV-Vis照射に暴露されている前記触媒の前記表面が、前記水によって被覆されていない。
【0088】
さらに、接触させるステップは、二酸化炭素が、無い状態で又は基本的に無い状態で、実施され得る。
【0089】
本発明に従って使用されるような「二酸化炭素が基本的に無い状態で」という用語は、遊離二酸化炭素が無いこと(特に、接触させるステップが実施され得る反応器の内壁上における、物理的に及び/又は化学的に吸収された二酸化炭素の存在は考慮しない)を意味する。
【0090】
さらに、接触させるステップは、メタンが、無い状態で又は基本的に無い状態で、実施され得る。
【0091】
本発明に従って使用されるような「メタンが基本的に無い状態で」という用語は、遊離メタンが無いこと(特に、接触させるステップが実施され得る反応器の内壁上における、物理的に及び/又は化学的に吸収されたメタンの存在は考慮しない)を意味する。
【0092】
さらに、接触させるステップは、二酸化炭素及びメタンが、無い状態で又は基本的に無い状態で、実施され得る。
【0093】
本発明の更なる実施形態では、前記接触させるステップが、前記窒素、及び、随意に水蒸気を除き、いかなる更なるガスをも含有していないか又は基本的に含有していない大気下で実施される。換言すると、本発明の更なる実施形態では、窒素を除き、更なるガスは、前記接触させるステップの間適用されないか又は基本的に適用されない。
【0094】
本発明に従って使用されるような「いかなるさらなるガスをも基本的に含有していない」又は「基本的にさらなるガスのない」という用語は、さらなる遊離ガスが無いこと(特に、接触させるステップが実施され得る反応器の内壁上における、物理的に及び/又は化学的に吸収されたさらなるガスの存在は考慮しない)を意味する。
【0095】
本発明の更なる実施形態では、前記接触させるステップが、空気、特に汚染空気、好ましくは工業による汚染された空気及び/又は交通による汚染された空気を使用することによって実施され、前記窒素が、前記空気の一部である。
【0096】
本発明に従って使用されるような「空気」という用語は、地球の重力によって保持されるとともに、地球という惑星を取り囲んでその惑星大気(いわゆる「地球の大気」)を形成している、ガスの層を意味する。
【0097】
本発明に従って使用されるような「汚染空気」という用語は、ガス状汚染物質を含んだ空気を意味する。汚染物質は、好ましくは、二酸化炭素、メタン、二酸化窒素、オゾン、窒素酸化物、二酸化硫黄、硫黄を含有するガス、シアン化物、揮発性有機炭素化合物(VOC)、及び、前述のガス状汚染物質のうちの少なくとも二つの混合物、から成る群から選択される。
【0098】
本発明に従って使用されるような「工業による汚染空気及び/又は交通による汚染空気」という用語は、ガス状汚染物質を含んだ空気を意味し、ガス状汚染物質は、交通、特に自動車交通、及び/又は、鉄道輸送、及び/又は、海上輸送、及び/又は、航空交通、並びに/あるいは、工業プラントに由来する。予想されるガス状汚染物質に関しては、従前の段落の全体が参照される。
【0099】
さらに、本発明に従った、方法、特に接触させるステップ、は、連続的な、半連続的な、又は、バッチのような様態で実施され得る。
【0100】
好ましくは、この方法は、
- 特に触媒及び/又は水から、アンモニアを抽出するさらなるステップ
を含む。例えば、アンモニアは、水、特に、pH1.5から2.5、好ましくはpH1.9から2.3、であって、特に、酸、好ましくは硫酸(HSO)、例えば7.6mMの硫酸、を使用する水、に触媒を溶解させることにより、抽出され得る。よって、アンモニアの、アンモニウム(NH)への転化が促進され得る。
【0101】
さらに、本発明は、空気、特に汚染空気、好ましくは工業による汚染空気及び/又は交通による汚染空気から、二酸化炭素及び/又は窒素、二酸化炭素及び窒素を除去するための発明に従った方法の使用に関する。
【0102】
この使用のさらなる特徴及び利点に関しては、従前の説明の全体が参照される。
【0103】
この発明のさらなる特徴及び利点は、従属請求項の主題と併せて以下の例から明瞭になるであろう。個々の特徴は、この発明の一つの実施形態において、単独で、又は、組み合わせにおいて個別的に、のいずれかで認識することができる。好ましい実施形態は、この発明の例示及びより良好な理解のために働いているに過ぎず、この発明をいかなる方式でも限定するものとして理解されるべきではない。
【0104】
この発明のさらなる特徴及び利点は、従属請求項の主題と併せて以下の例から明瞭になるであろう。個々の特徴は、この発明の一つの実施形態において、単独で、又は、組み合わせにおいて個別的に、のいずれかで認識することができる。好ましい実施形態は、この発明の例示及びより良好な理解のために働いているに過ぎず、この発明をいかなる方式でも限定するものとして理解されるべきではない。
【0105】
開示された内容をより良好に理解するために、本発明の実施形態の実際のケースを、概略的に又は図表により、且つ、専ら非限定的な例として示している、いくつかの図を添付している。
【0106】
図面には、以下の内容が概略的に表示されている。
【図面の簡単な説明】
【0107】
図1】(a)7.6mMのHSOを使用してpH2.1±0.2に調節した水15mL中に、96時間の反応後に溶解させたp-HAp触媒の、DMSO-d中におけるH NMR解析。当該反応は、表面に接触させた6barのN及び脱イオン化水20mLと、120℃と、UV照明と、を使用して行われた。アンモニウムに関連するトリプレットをオレンジ色の長方形で明色表示しており、HDOピークを緑色で示し、DMSO-dの劣化に由来する生成物を紫色でマークした。過フッ素化コーティング上で吸着されたCOに由来する生成物も示している(ラベルは、シフトをppmで表記)。(b)以下のものの、DMSO-d中におけるH NMR分析:(a)と同じ条件を使用するもののp-HAp触媒を用いなかった反応後の上澄部(ブランク;灰色で表記)。7.6mMのHSOを使用してpH2.1±0.2に調節した総量15mLの水を事前に添加して、NH の起こり得る形成を検出した;7.6mMのHSOを使用してpH2.1±0.2に調節した水15mL中に、反応後に溶解させたp-HAp触媒。反応条件は、(a)で記載したものと同一であるがUV照明を用いなかった(UVを用いない触媒;赤色で表記);及び、(c)ポジティブコントロールとして、(a)で分析した同じ触媒(UV放射を用いた触媒、青色で表記)。
図2】(a)以下のものの、DMSO-d中におけるH NMRスペクトル:UV照明下における96時間の反応後、NH を視覚化するために、7.6mMのHSOを使用してpH2.1±0.2に調節した水15mLを添加した上澄部;及び、同じHSO溶液中に溶解させたp-HAp触媒。アンモニウム形成に関連するトリプレットをマークした(明るいオレンジ色の長方形)。図7に、完全スペクトル(吸着されたCO2の反応に由来する生成物を含む)を示す。(b)UV照明を用いた及び用いなかった反応後の、触媒中及び上澄部中におけるNH の収率(触媒1g当たりのμmolで表現)。(a)及び(b)について、当該反応は、N(6bar)及びHO(20ml)を使用して、96時間、120℃で行われた。
図3】NH の収率に対する、(a)N圧力、(b)温度、(c)水の初期体積、及び、(d)反応時間、の影響。NH を視覚化するために、HSO溶液及びDMSO-d中に溶解させたp-HAp触媒のH NMRスペクトルと、HSO溶液及びDMSO-dを添加した上澄部のH NMRスペクトルと、を分析することにより、結果を評価した。NH の総収率(触媒1g当たりのμmolで表現)は、触媒及び上澄部から導出された収率の総和に対応する。全ての反応は、UV放射下において三部作成で実施された。反応は、以下の条件下:(a)反応時間が48時間、温度が120℃、及び、水の初期体積が20mL;(b)反応時間が48時間、N圧力が6bar、及び、水の初期体積が20mL;(c)反応時間が48時間、N圧力が6bar、及び、温度が120℃、並びに、(d)N圧力が6bar、温度が120℃、及び、水の初期体積が20ml、で行った。
図4】汚染空気の96時間の反応後における(a)触媒及び(b)上澄部の、DMSO-d中におけるH NMRスペクトル。7.6mMのHSOを使用してpH2.1±0.2に調節した水15mL中に触媒を溶解させ、一方で、同体積の溶液を上澄部に添加した。反応は、水(20mL)を使用してUV照明下で、大気圧において120℃にて行った。アンモニウム形成に関連するトリプレットをマークしている(明るいオレンジ色の長方形)。
図5】脱イオン化水がp-HAp触媒を被覆していないことと、形成されたアンモニア分子の、液体に向けてのマイグレーションと、を示すスケッチ。
図6】以下のもののH NMRスペクトル:触媒を用いないUV放射下の反応における上澄部(水)(ブランク反応;灰色で表記);UV放射を用いない反応後に、HSO溶液及びDMSO-d中に溶解させたp-HAp/c触媒(コントロール反応;赤色で表記);並びに、UV放射下の反応後に、HSO溶液及びDMSO-d中に溶解させたp-HAp/c触媒(標準反応;青色で表記)。全てのケースにおいて、反応は、N(6bar)及びHO(20ml)を使用して、96時間、120℃にて行われた。
図7】以下のもののH NMRスペクトル:NH からの1:1:1トリプレットを視覚化するために、HSO溶液及びDMSO-dを添加した上澄部;並びに、UV放射下の反応後に、HSO溶液及びDMSO-d中に溶解させたp-HAp/c触媒。反応は、N(6bar)及びHO(20ml)を使用して、96時間、120℃にて行われた。
図8】触媒(a)、上澄部(b)、及び、それら両方の総和(c)、における、ギ酸、アセトン、及び、酢酸、の収率(触媒1g当たりのμmolで表現)。COの脱着に由来する生成物の収率を、UV照明下でN(6bar)及びHO(20ml)を使用して、48時間又は96時間、120℃にて行った反応について評価した。
図9】永久分極ハイドロキシアパタイトの31P-NMRスペクトル。
図10】永久分極ハイドロキシアパタイト、並びに、ブルシャイト及び/又はブルシャイト様材料、を含むか又はそれらから成る、発明の触媒の広角X線散乱(WAXS)パターン。
図11】永久分極ハイドロキシアパタイト、並びに、ブルシャイト及び/又はブルシャイト様材料、を含むか又はそれらから成る、発明の触媒のラマンスペクトル。
【発明を実施するための形態】
【0108】
1.ハイドロキシアパタイト(HAp)の合成
0.5Mの(NHHPOを脱イオン化水に溶解させたもの15mLを、0.5MのCa(NOをエタノールに溶解させたもの25mLに対し、2mL/分の速度で添加して(水酸化アンモニウム溶液を使用して事前にpH11に調節)、1時間放置してエイジングさせた。この方法全体は、穏やかな攪拌(150rpm)下で室温にて実施した。オートクレーブDigestecDAB-2を使用して、24時間、150℃における水熱処理を適用した。オートクレーブは、開く前にクールダウンさせた。沈殿物を遠心分離によって分離し、水と、エタノール-水の60/40v/v混合物と、で洗浄した(2回)。それを3日間凍結乾燥した後、得られた白色粉末を、Carbolite ELF11/6B/301炉を使用して、2時間、1000℃にて空気中で焼結した。
【0109】
2.ハイドロキシアパタイト(HAp)の分極化
HAp粉末150mgを、型に入れて620MPaにて10分間プレスすることにより、厚さがおよそ1.5mmであって直径が1.766mmの、機械的整合性を有するディスクを得た。このHApディスクを二つのステンレス鋼(AISI 304)間に配置するとともに、GAMMA電源を用いてPtケーブルにより伝導される500VのDC定電圧の1時間の印加を、このような期間中、同じ実験室炉を使用して温度を1000℃に保ったまま行い、熱分極を行った。ディスクを、印加電位を30分間維持しながらクールダウンさせて、最終的に全てのシステムの電源を切り、一晩放置して冷却させた。
【0110】
3.合成
高圧ステンレス鋼反応器を用いて触媒反応を実施した。反応器は、過フッ素化ポリマー(120mL)でコーティングされた不活性反応チャンバを有しており、ここに触媒及び水の両方を組み込んだ。反応器には、ガス(即ち、N)が入るための入口弁と、ガス状反応生成物を回収するための出口弁と、が装着されていた。反応器の中央には、触媒を直接的に照射するためにUVランプ(GPH265T5L/4、253.7nm)も配置されており、当該ランプは、UV透過性石英管により保護されていた。全ての表面が、反応媒体と反応器表面との間のいかなる接触をも回避するために、過フッ素化ポリマーの薄膜でコーティングされており、この方式で、他の触媒効果を排除した。
【0111】
重量が約150mgの触媒試料と、脱イオン化液体水と、を反応チャンバ内へ最初に組み込んだ。チャンバは、初期空気含有量を取り除くために、Nで広範囲にパージした。その後、Nガスを導入して、反応チャンバ圧力(室温にて測定)を、目標圧力まで増加させた。
【0112】
反応生成物を、H NMR分光法により分析した。全てのH NMRスペクトルを、600MHzにて動作するBruker Avance-II+分光器を用いて取得した。テトラメチルシラン(TMS)内部標準を使用して、化学シフトを校正した。全てのケースにおいて512回のスキャンを記録した。触媒から反応生成物を取り出すために、反応した触媒10mgを、7.6mMのHSOを使用してpH2.1±0.2まで調節した水15mL中に溶解させて、アンモニアのNH への転化を促進し、超音波処理ステップ(5分)及び攪拌ステップ(1分)を伴う4サイクルを適用した。その後、H NMR試料調製のために、反応した触媒溶液500μLを、不安定重水素核(deuteron)(即ち、DO)を有する溶媒ではなく、DMSO-d 100μLと混合して、定量分析には所望されないアンモニウム重水素化類似体の形成を回避した。同じ処理を水上澄部にも適用した。
【0113】
4.アンモニアへのN 固定
p-HAp電解触媒を、従前の著作物(J.Sans,E.Armelin,V.Sanz,J.Puiggali,P.Turon,及びC.Aleman,J.Catal.,2020,389,646-656;J.Sans,V.Sanz,J.Puiggali,及びP.Turon,Cryst. Growth Des.2021,21,748-756)に記載されるように調製した。簡潔に述べると、異方性成長を制御するために先程提案した手順を使用したHApの水熱合成後、結果的に生じた粉末を、1000℃にて焼結した。その後、型に入れてプレスすることにより、厚さがおよそ1.5mmであって直径が1.766mmのディスクを得た。その後、このディスクに500VのDC電圧を1時間、1000℃にて印加して分極させた。
【0114】
p-HAp上におけるアンモニアの電解触媒合成(electrocatalytic synthesis)を調査するために、UV光線で照明される不活性反応チャンバ(即ち、過フッ素化ポリマーでコーティングされたチャンバ)を有するステンレス鋼反応器内で、120℃にて反応を実施した。初期空気含有量を取り除くために、チャンバをまずNでパージし、それに続き、N(6bar)で充填した。図5にスケッチされているように、この反応器内に20mLの体積の脱イオン化水を導入して、p-HApディスクの非照射側に接触させた。このことは、p-HApを使用した従前の炭素固定反応であって、水1mLを触媒に接触させてCOの電解還元を促進する反応に対して、有意な変化を表している(M.Rivas,L.J. del Valle,P.Turon,C.Aleman,及びJ.Puiggali,Green Chem.,2018,20,685-693)。本研究において、水は、(水分解からの)アンモニア形成のためのプロトン源としてだけではなく、形成された生成物の回収を容易にするための媒体(以降において「上澄部」と呼称)としても作用することが期待され、したがって、液体の体積が顕著に増加した。
【0115】
96時間の反応後にp-HApディスクの表面上に生成された生成物を、H NMR分光法を使用した迅速NH 分析のための手順を適応させて識別した(R.Y.Hodgetts,A.S.Kiryutin,P.Nichols,H.-L.Du,J.M.Bakker,D.R.Macfarlane,及びA.N.Simonov,ACS Energy Lett.,2020,5,736-741)。より具体的には、反応した触媒10mgを、7.6mMのH2SO4を使用してpH2.1±0.2に調節した水15mL中に溶解させて、アンモニアのNH への転化を促進し、超音波処理ステップ(5分)及び攪拌ステップ(1分)を伴う4サイクルを適用した。その後、1H NMRの試料調製のために、反応した触媒溶液500μLを、DMSO-d 100μLと混合した。図1aに例示されるように、1H NMRは、全てのケースにおいて示されたこの手順を使用して、特徴的なDMSO-dシグナル及びH2Oシグナルに加え、酸環境における重水素とのプロトン交換に由来する、3.49ppmにおけるHDOフィンガープリントを収集した(図1aにおいて緑色の長方形)(G.Fulmer,A.J.M.Miller,N.H.Sherden,H.E.Gottlieb,A.Nudelman,B.M.Stoltz,J.E.Bercaw,K.I.Goldberg,Organometallics,2010,29,2176-2179)。さらに、1.01pmにおけるシグナル及び3.18pmにおけるシグナル(図1aにおいて紫色の長方形)は、系統的に検出されるものであり、触媒に由来する電気活性種によるDMSO-dの酸化からの劣化生成物(即ち、それぞれCH3及びメタンスルホン酸)に起因した(S.Enami,Y.Sakamoto,K.Hara,K.Osada,R.M.Hoffmann,及びJ.A.Colussi,Environ. Sci. Technol.,2016,50,1834-1843;S.Mukhopadhyay,M.Zerella,及びT.A.Bell,Stud. Surf. Sci. Catal.,2004,147,523-528)。図1aは、7ppm前後において、14Nへのスピンカップリングを理由とする、相対的に鮮明な1:1:1のNH トリプレットとしてアンモニウムの存在の検出を可能にしている。内部標準として既知の濃度のNH のシグナルに対して1:1:1トリプレットを積分することにより、NH の定量化(触媒1g当たり11.0±1.6μmol)を実施した。
【0116】
1H NMRスペクトルにおいては、CO固定に由来する他の生成物、即ち、ギ酸(8.07ppm)、アセトン(2.06ppm)、及び、酢酸(1.92ppm)、も識別された。p-HApがCO2の電解還元を触媒していることが判明したが、反応チャンバ内におけるこのようなガスの源は、最初は不明であった。種々のテストが、反応器チャンバの徹底的パージを有することと、N以外のガスを取り除くこと、並びに、いくつかのブランク反応及びコントロール反応を確保することと、を意図した後、結論付けられたこととして、炭素固定反応の源は、反応チャンバの全ての表面をコーティングしていた過フッ素化ポリマーにより吸着されたCOであった。よって、NH の収率は、触媒の無い状態(ブランク反応)においてはゼロであり、p-HApにUV光線が照射されていないとき(コントロール反応)においては非常に低い(1.3±0.5μmol/g)ものの、ギ酸、アセトン、及び、酢酸、に関連する弱いシグナルは、前者のケースでは依然として検出可能である一方で、後者のケースでは検出されなかった(図1b及び図6)。フルオロポリマーは、強力な極性C-F結合の、CO分子に対する親和性を理由として、「親CO2性」材料であることが知られており(G.Li,B.Zhang,及びZ.Wang,Macromolecules,2016,49,2575-2581;Y.F.Zhao,K.X.Yao,B.Y.Teng,T.Zhang,及びY.Han,Energy Environ.Sci.,2013,6,3684-3692;D.P.Liu,Q.Chen,Y.C.Zhao,L.M.Zhang,A.D.Qi,B.H.Han,ACS Macro Lett.,2013,2,522-526;J.J.Reisinger,及びM.A.Hillmyer,Prog. Polym. Sci.,2002,27,971-1005)、結果は、UV照射下の120℃における、過フッ素化コーティング上で吸収されたガスの脱着を示唆している。
【0117】
p-HApディスクに接触している水媒体への、当該触媒の表面上に形成されたアンモニア分子の移動(図5)は、考察すべき重要な態様である。液体中におけるアンモニアの存在を把握するために、7.6mMのHSOを使用してpH2.1±0.2に調節した水15mLを、H NMRスペクトルの収集前に上澄部に添加した。上澄部について記録したHスペクトルと、溶解させた触媒について記録したHスペクトルと、の比較により、アンモニウムトリプレットが、後者よりも前者において高強度であることが明らかになった(図2a)。実際に、収率は、溶解させた触媒におけるよりも上澄部における方が70%高かった。図2bにはこのことが反映されており、図2bは、溶解させた触媒及び上澄部におけるアンモニウムの収率を、UV照明を用いないコントロール実験を使用して達成したものと比較している。UV光線を用いない場合、p-HApの有効障壁が高くなりすぎており、窒素固定を求めて活性化エネルギ障壁を克服するためには、入射UV照明が必要とされる。これらの結果は、液相から直接的に取り出すことが可能な、生成アンモニアの抽出においてだけではなく、アンモニアの蓄積による触媒被毒の防止においても、重要な含意を有する。これに加え、図7に証明されるように、CO固定に関連するピークも上澄部において検出された。
【0118】
上澄部の分析は、脱着したCOの固定に由来する生成物の収率における、反応時間の影響を研究するためにも使用した。図8に結果を表示しており、図8は、p-HAp触媒、上澄部、及び、それら両方の総和、における、6barのNを使用して120℃にてUV照明下における、48時間及び96時間の反応後の、ギ酸、アセトン、及び、酢酸、の収率を比較している。反応時間の増分は、CO固定反応において多大なインパクトを有しており、このことは、ギ酸及び酢酸において特に顕著であった(即ち、収率が、それぞれ97%前後及び130%前後だけ増加した)。よって、炭素系の有価生成物の総収率は、反応時間を48時間から96時間に延長すると、触媒1g当たり、55.9±8.5μmolから113.2±15.6μmolに増加した。全体的に、これらの結果は、過フッ素化コーティングからのCO分子の脱着と、それに続く、当該CO分子の価値有機生成物への転化と、が漸進的に生じることを示している。
【0119】
5.アンモニアの収率に対する、圧力、温度、水の体積、及び、時間、の影響
図3は、アンモニアの収率に対する、異なる因子の影響を記載している。全てのケースにおいて、反応は、p-HAp電解触媒を使用してUV照明下で行われた。まず、温度及び水の初期含有量をそれぞれ120℃及び20mLに保ったまま、初期N圧力を1barから6barに変更することにより、実験を実施した。48時間の反応後に、NH の収率が、N圧力と共に増加したことが認められる(図3a)。実際に、触媒によって吸着された生成NH の量は、圧力が2bar以下の反応について、事実上ゼロである。このような圧力を上回ると、4barにおいてp-HAp触媒上の吸着が安定化するとはいえ、総収率は迅速に増加した。
【0120】
考察に値する別の重要な因子が、反応温度である。これは、N圧力、水の初期含有量、及び、反応時間、をそれぞれ6bar、20mL、及び、48時間に保ったまま、95℃から140℃に変動させた(図3b)。触媒上のNH の収率が温度と共に増加したものの、120℃及び140℃にて上澄部において収集されたアンモニウムは、事実上同一であった(即ち、それぞれ、触媒1g当たり、9.8±1.5μmol及び9.9±1.0μmol)。結果的に、反応温度を95℃から120℃に上げたときには、合成されたNH の総収率が、劇的な向上(112%)を経験し、これに対し、反応温度を120℃から140℃に変更したときには、このような増分が非常に低かった(16%のみ)。これらの結果が示すこととして、p-HAp触媒により誘導される窒素固定反応は、自然界(周囲温度)でニトロゲナーゼにより促進される固定よりも高い温度にて起こるものの、必要とされる温度は、ハーバー・ボッシュ法で適用される温度(375~500℃)よりもはるかに低い。
【0121】
反応器に導入される水は、NH 生成のためのプロトンの源であるが、その体積は、考察に値するキーパラメータである。p-HAp触媒に接触する、0mL、10mL、20mL、及び、40mL、の水を考慮して反応を行った(図5参照)。水の無い状態で、触媒から抽出されたNH の量は、事実上ゼロであった(図3c)。このケースにおいて、総収率(触媒1g当たり2.0±0.3μmol)は、触媒の取り扱い中における、触媒上での大気からの水の吸着に起因した。よって、水接触角測定値は、p-HApが非常に親水性材料であることを示した(M.Rivas,L.J. del Valle,E.Armelin,O.Bertran,P.Turon,J.Puiggali,及びC.Aleman,ChemPhysChem,2018,19,1746-1755)。その後、NH の収率は、水の体積と共に増加したが、この向上は、20mlの閾値を一旦超えるとあまり明白ではなくなった。よって、収率は、水の体積が、それぞれ、10mlから20ml、及び、20mlから40ml、に変動したときに、63%及び34%だけ増加した。
【0122】
圧力、温度、及び、水の初期含有量、をそれぞれ6bar、120℃、及び、20ml、に保ったまま、NH4+の収率に対する時間の影響を、24時間、48時間、及び、96時間、の反応を考慮して調べた(図3d)。相対収率の増分は、時間の増加に伴って減少した。よって、総収率は、時間が24時間から48時間に増えると150%だけ増加し、一方で、この増分は、時間が48時間から96時間に変化すると、僅か76%に減少した。触媒及び上澄部からの収率の段階的変化は、同じ挙動を辿った。
【0123】
6.概念実証:汚染空気
概念実証として、この触媒の性能を、大気圧における汚染空気で探索した。より具体的には、化石燃料(fossil carburant)の燃焼により汚染された空気を、乗用車及びトラックの交通量の大きな道路から捕捉して、反応チャンバに移動させた。N及びOに加えて、CO2、CH4、及び、他の汚染物質の含有量は、周囲空気の平均よりも有意に高かった。したがって、この汚染空気を、最適化された反応条件に暴露することにより、CO固定、CH固定、及び、N固定、のいずれにも由来する有価生成物を得ることが期待された。水20mlに、120℃にてUV放射下で接触するp-HApを使用して、反応を行った。図4に、96時間の反応後における、触媒溶液及び上澄部の代表的なH NMRスペクトルを示し、これに対し、以下の表1には、3つの独立したレプリカについて識別された異なる反応生成物についての平均収率を列挙している。
【0124】
認められるように、NH が触媒及び上澄部の両方において観察されたが、上澄部において検出された量は、触媒において検出された量の4倍であった。アンモニウムの総収率は、触媒1g当たり20.7±4.7μmolであった。この値は、6barのN及び96時間を120℃にて使用して観察したもの(触媒1g当たり27.3±2.8μmol)よりも低かったが、差異は、期待した差異未満であり、例えばO及びNOなどの、空気の他の成分及び/又は汚染物質が、窒素固定に好影響を与え得ることを示唆した。
【表1】
【0125】
炭素固定に由来する有価生成物も検出された。過フッ素化コーティングからのCO脱着の結果として事前に検出された、ギ酸、アセトン、及び、酢酸、に加えて、エタノールも識別された。従前の研究により、p-HApが、CO及びCHの混合物からの炭素固定により、エタノールの形成を触媒することが立証されているため、このことは驚くべき結果ではなく、CHは、一般的な都市域における揮発性有機化合物排出物質の中に含まれている。全体的に、これらの結果が証明したこととして、p-HAp触媒は、汚染空気を浄化して、肥料及び他の化学物質を製造するための原材料として用いることが可能な有価化合物を、穏やかな反応条件を使用して生成する。N及びHを使用する、アンモニアの従来の生成により排出されたCOが、かなりの量の温室効果を生じるため、N及びCOの同時固定がパラドクスであることは、注記に値する。この文脈において、p-HApは、肥料の生成における不利点を伴わない、人為的気候変動と戦う正しい方向における一ステップであると思われる。
【0126】
7.結論
p-HApを用いた、N及び水からのアンモニアの電解合成を、穏やかな反応条件を使用して証明した。当該反応の収率は、温度、N圧力、水の体積、及び、反応時間、を考慮することによって最適化された。生成アンモニアの主要部分は、触媒から、触媒の表面に接触している水上澄部へとマイグレートし、その回収を容易にするとともに、触媒飽和を回避する。一方で、この触媒は、COを、ギ酸、エタノール、及び、アセトン、といった有価化学生成物に転化することも可能である。窒素固定方法及び炭素固定方法の共存、並びに、生成物の、液相へのマイグレーションは、p-HApが、汚染空気の触媒浄化に特に好適であることを示唆する。この文脈において、車両排出物により汚染された1barの空気を使用してもたらされた反応は、結果的に、触媒1g当たり、138.4±23.8μmolの有価化学物質(即ち、炭素固定方法及び窒素固定方法から118.7±19.8μmol/g及び20.7±4.7μmol/g)の形成を生じた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2024-04-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニアを生成するための方法であって、
窒素及び水を、永久分極ハイドロキシアパタイトを含むか又は永久分極ハイドロキシアパタイトから成る触媒に接触させるステップを含む、方法。
【請求項2】
前記永久分極ハイドロキシアパタイトは、
65%より高い、特に70%より高い、好ましくは75%より高い、より好ましくは65%から99%の結晶化度、及び/又は、
前記永久分極ハイドロキシアパタイトの総重量に基づいて、18%未満、特に0.1%から17%の非晶質リン酸カルシウムの割合、及び/又は、
前記永久分極ハイドロキシアパタイトの前記総重量に基づいて、36%より小さい、特に0.1%から35%のβ-リン酸三カルシウムの割合、及び/又は、
107Ωcmから105Ωcm、特に106Ωcmから105Ωcm、のバルク抵抗であって、前記バルク抵抗が、好ましくは、3か月後に、僅か4%から73%だけ、特に4%から63%だけ、好ましくは4%だけ増加するバルク抵抗、及び/又は、
3か月後の減少が、8%未満、特に8%から0.1%、好ましくは5%から3%、の表面静電容量、を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記永久分極ハイドロキシアパタイトは、
(a)ハイドロキシアパタイトを含むか若しくはハイドロキシアパタイトから成る試料を調製するステップと、
(b)ステップ(a)において調製された前記試料を、700℃から1200℃の間の温度にて焼結するステップと、
(c)250Vから2500Vの間のDC定電圧若しくはDC可変電圧を、少なくとも1分間、900℃から1200℃の間の温度にて印加するステップ、又は、
1.49kV/cmから15kV/cmの間の等価な電場を、少なくとも1分間、900℃から1200℃の間の温度にて印加するステップ、又は、
2500Vから1500000Vの間の静電気放電を、10分未満の間、900℃から1200℃の間の温度にて印加するステップ、又は、
148.9kV/cmから8928kV/cmの間の等価な電場を、10分未満の間、900℃から1200℃の間の温度にて印加するステップと、
(d)前記DC電圧若しくは前記等価な電場を維持しながら、ステップ(c)において得られた前記試料を冷却するステップ、又は、
前記静電気放電若しくは前記等価な電場を、維持しながら若しくは維持せずに、ステップ(c)において得られた前記試料を冷却するステップと、
を含む方法によって得られるか又は得ることが可能であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記永久分極ハイドロキシアパタイトは、
(a)ハイドロキシアパタイトを含むか又はハイドロキシアパタイトから成る試料を調製するステップと、
(b)ステップ(a)で調製された前記試料を、1000℃の温度にて、特に2時間、焼結するステップと、
(c)3kV/cmの等価な電場を、1000℃の温度にて、特に1時間、印加するステップと、
(d)前記等価な電場を、特に30分間維持しながら、ステップ(c)において得られた前記試料を冷却するステップと、
を含む方法によって得られるか又は得ることが可能であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記接触させるステップは、前記水と前記触媒との体積比が10000:1から0.1:1、特に1000:1から0.1:1、好ましくは1000:1から100:1で実施されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記接触させるステップは、或る圧力下で、特に、窒素の、0.01barから20barの圧力下で、好ましくは0.3barから10bar、特に6bar、の圧力下で、実施されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
前記接触させるステップは、前記触媒に対する窒素のモル比率が400から20、好ましくは200から60、特に120で実施されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項8】
前記接触させるステップは、95℃以上から140℃、好ましくは95℃以上から120℃、より好ましくは100℃から120℃、特に120℃、の温度にて実施されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項9】
前記接触させるステップは、0.0001時間から120時間、特に0.1時間から96時間、好ましくは24時間から72時間の間、実施されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項10】
前記接触させるステップは、UV照射又はUV-Vis照射下であって、特に、200nmから850nm、特に240nmから400nm、好ましくは240nmから270nm、より好ましくは250nmから260nm、特に好ましくは253.7nm、の波長を有する前記UV照射又はUV-Vis照射下で、実施されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項11】
前記UV照射及び/又は可視光線照射は、0.1W/mから200W/m、特に1W/mから50W/m、好ましくは2W/mから10W/m、の放射度を有することを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記触媒の表面は、前記UV照射又はUV-Vis照射に暴露され、前記UV照射又はUV-Vis照射に暴露されている前記触媒の前記表面が、前記水によって被覆されていない、ことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記接触させるステップは、前記窒素、及び、随意に水蒸気を除き、いかなるさらなるガスをも含有していないか又は基本的に含有していない大気下で実施されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項14】
前記接触させるステップは、空気、特に汚染空気を使用することによって実施され、前記窒素は、前記空気の一部であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項15】
空気、特に汚染空気から少なくとも窒素、特に窒素及び二酸化炭素を除去するための請求項1又のいずれか一項に記載の方法の使用。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0126
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0126】
7.結論
p-HApを用いた、N及び水からのアンモニアの電解合成を、穏やかな反応条件を使用して証明した。当該反応の収率は、温度、N圧力、水の体積、及び、反応時間、を考慮することによって最適化された。生成アンモニアの主要部分は、触媒から、触媒の表面に接触している水上澄部へとマイグレートし、その回収を容易にするとともに、触媒飽和を回避する。一方で、この触媒は、COを、ギ酸、エタノール、及び、アセトン、といった有価化学生成物に転化することも可能である。窒素固定方法及び炭素固定方法の共存、並びに、生成物の、液相へのマイグレーションは、p-HApが、汚染空気の触媒浄化に特に好適であることを示唆する。この文脈において、車両排出物により汚染された1barの空気を使用してもたらされた反応は、結果的に、触媒1g当たり、138.4±23.8μmolの有価化学物質(即ち、炭素固定方法及び窒素固定方法から118.7±19.8μmol/g及び20.7±4.7μmol/g)の形成を生じた。
以下の項目は、国際出願時の特許請求の範囲に記載の範囲である。
(項目1)
アンモニアを生成するための方法であって、
窒素及び水を、永久分極ハイドロキシアパタイトを含むか又は永久分極ハイドロキシアパタイトから成る触媒に接触させるステップを含む、方法。
(項目2)
前記永久分極ハイドロキシアパタイトは、
65%より高い、特に70%より高い、好ましくは75%より高い、より好ましくは65%から99%の結晶化度、及び/又は、
前記永久分極ハイドロキシアパタイトの総重量に基づいて、18%未満、特に0.1%から17%の非晶質リン酸カルシウムの割合、及び/又は、
前記永久分極ハイドロキシアパタイトの前記総重量に基づいて、36%より小さい、特に0.1%から35%のβ-リン酸三カルシウムの割合、及び/又は、
107Ωcm から105Ωcm 、特に106Ωcm から105Ωcm 、のバルク抵抗であって、前記バルク抵抗が、好ましくは、3か月後に、僅か4%から73%だけ、特に4%から63%だけ、好ましくは4%だけ増加するバルク抵抗、及び/又は、
3か月後の減少が、8%未満、特に8%から0.1%、好ましくは5%から3%、の表面静電容量、を有することを特徴とする、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記永久分極ハイドロキシアパタイトは、
(a)ハイドロキシアパタイトを含むか若しくはハイドロキシアパタイトから成る試料を調製するステップと、
(b)ステップ(a)において調製された前記試料を、700℃から1200℃の間の温度にて焼結するステップと、
(c)250Vから2500Vの間のDC定電圧若しくはDC可変電圧を、少なくとも1分間、900℃から1200℃の間の温度にて印加するステップ、又は、
1.49kV/cmから15kV/cmの間の等価な電場を、少なくとも1分間、900℃から1200℃の間の温度にて印加するステップ、又は、
2500Vから1500000Vの間の静電気放電を、10分未満の間、900℃から1200℃の間の温度にて印加するステップ、又は、
148.9kV/cmから8928kV/cmの間の等価な電場を、10分未満の間、900℃から1200℃の間の温度にて印加するステップと、
(d)前記DC電圧若しくは前記等価な電場を維持しながら、ステップ(c)において得られた前記試料を冷却するステップ、又は、
前記静電気放電若しくは前記等価な電場を、維持しながら若しくは維持せずに、ステップ(c)において得られた前記試料を冷却するステップと、
を含む方法によって得られるか又は得ることが可能であることを特徴とする、項目1又は2に記載の方法。
(項目4)
前記永久分極ハイドロキシアパタイトが、
(a)ハイドロキシアパタイトを含むか又はハイドロキシアパタイトから成る試料を調製するステップと、
(b)ステップ(a)で調製された前記試料を、1000℃の温度にて、特に2時間、焼結するステップと、
(c)3kV/cmの等価な電場を、1000℃の温度にて、特に1時間、印加するステップと、
(d)前記等価な電場を、特に30分間維持しながら、ステップ(c)において得られた前記試料を冷却するステップと、
を含む方法によって得られるか又は得ることが可能であることを特徴とする、項目1から3のいずれか一項に記載の方法。
(項目5)
前記接触させるステップは、前記水と前記触媒との体積比が10000:1から0.1:1、特に1000:1から0.1:1、好ましくは1000:1から100:1で実施されることを特徴とする、項目1から4のいずれか一項に記載の方法。
(項目6)
前記接触させるステップは、或る圧力下で、特に、窒素の、0.01barから20barの圧力下で、好ましくは0.3barから10bar、特に6bar、の圧力下で、実施されることを特徴とする、項目1から5のいずれか一項に記載の方法。
(項目7)
前記接触させるステップは、前記触媒に対する窒素のモル比率が400から20、好ましくは200から60、特に120で実施されることを特徴とする、項目1から6のいずれか一項に記載の方法。
(項目8)
前記接触させるステップは、95℃以上から140℃、好ましくは95℃以上から120℃、より好ましくは100℃から120℃、特に120℃、の温度にて実施されることを特徴とする、項目1から7のいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
前記接触させるステップは、0.0001時間から120時間、特に0.1時間から96時間、好ましくは24時間から72時間の間、実施されることを特徴とする、項目1から8のいずれか一項に記載の方法。
(項目10)
前記接触させるステップは、UV照射又はUV-Vis照射下であって、特に、200nmから850nm、特に240nmから400nm、好ましくは240nmから270nm、より好ましくは250nmから260nm、特に好ましくは253.7nm、の波長を有する前記UV照射又はUV-Vis照射下で、実施されることを特徴とする、項目1から9のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
前記UV照射及び/又は可視光線照射は、0.1W/m から200W/m 、特に1W/m から50W/m 、好ましくは2W/m から10W/m 、の放射度を有することを特徴とする、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記触媒の表面は、前記UV照射又はUV-Vis照射に暴露され、前記UV照射又はUV-Vis照射に暴露されている前記触媒の前記表面が、前記水によって被覆されていない、ことを特徴とする、項目10又は11に記載の方法。
(項目13)
前記接触させるステップは、前記窒素、及び、随意に水蒸気を除き、いかなるさらなるガスをも含有していないか又は基本的に含有していない大気下で実施されることを特徴とする、項目1から12のいずれか一項に記載の方法。
(項目14)
前記接触させるステップは、空気、特に汚染空気を使用することによって実施され、前記窒素は、前記空気の一部であることを特徴とする、項目1から12のいずれか一項に記載の方法。
(項目15)
空気、特に汚染空気から少なくとも窒素、特に窒素及び二酸化炭素を除去するための項目1から12又は14のいずれか一項に記載の方法の使用。

【国際調査報告】