(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】粉末化された組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 27/00 20160101AFI20240822BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20240822BHJP
A23L 2/39 20060101ALI20240822BHJP
A23L 27/10 20160101ALI20240822BHJP
A23L 27/21 20160101ALI20240822BHJP
A23L 27/24 20160101ALI20240822BHJP
【FI】
A23L27/00 C
A23L5/00 D
A23L5/00 C
A23L5/00 M
A23L5/00 J
A23L2/00 Q
A23L27/10 C
A23L27/21 B
A23L27/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504590
(86)(22)【出願日】2022-07-25
(85)【翻訳文提出日】2024-03-14
(86)【国際出願番号】 EP2022070767
(87)【国際公開番号】W WO2023020784
(87)【国際公開日】2023-02-23
(32)【優先日】2021-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390009287
【氏名又は名称】フイルメニツヒ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】Firmenich SA
【住所又は居所原語表記】7,Rue de la Bergere,1242 Satigny,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ジアン ヂァン
(72)【発明者】
【氏名】ハワード マント
【テーマコード(参考)】
4B035
4B047
4B117
【Fターム(参考)】
4B035LC01
4B035LE01
4B035LG15
4B035LG21
4B035LG31
4B035LG35
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4B035LK02
4B035LP01
4B035LP24
4B047LB09
4B047LE06
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4B047LP07
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4B047LP19
4B117LC03
4B117LE01
4B117LG12
4B117LK15
4B117LK25
4B117LL01
4B117LP03
4B117LP06
(57)【要約】
本発明は、可溶性粉を含む担体と、少なくとも1種の活性成分とを含む、粉末化された組成物に関する。組成物を調製するための方法および本発明の組成物を含むフレーバー付けされた製品も本発明の対象である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末化された組成物であって、
a)可溶性粉を含む40~95%の担体であって、
iii.前記粉が、水溶液において10%w/wの粉濃度で測定した場合に、50%以上かつ99%未満の溶解度を有し、
iv.前記可溶性粉が、65℃および50s
-1の剪断速度、ならびに水溶液において30%w/wの粉濃度で測定した場合に、400mPa・s以下の粘度を有する、
担体と、
b)5~60%の少なくとも1種の活性成分と
を含み、
パーセンテージが、組成物の総重量に対する重量によって定義される、
組成物。
【請求項2】
前記組成物が、50~80%の前記担体を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が、10~20%の前記少なくとも1種の活性成分を含む、請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1種の活性成分が、フレーバー油、好ましくはオレンジフレーバー油を含む、請求項1から3までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項5】
前記可溶性粉が、可溶性米粉、好ましくは可溶性米麹粉である、請求項1から4までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項6】
前記可溶性粉が、不溶性粉の部分的加水分解によって、好ましくは、前記不溶性粉中に含まれるデンプンおよびタンパク質の部分的酵素的加水分解によって得られる、請求項1から5までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1種の活性成分が前記担体中にカプセル化されている、請求項1から6までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項8】
前記可溶性粉の可溶性画分が、10超、好ましくは20超のDE値を示す、請求項1から7までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項9】
前記担体が、不溶性粉、好ましくは不溶性米粉、非動物性タンパク質、好ましくはエンドウ豆タンパク質、可溶性繊維、好ましくはイヌリンおよび/またはアラビアガム、ならびにそれらの任意の混合物からなる群から選択される食品材料をさらに含む、請求項1から8までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項記載の粉末化された組成物を調製するための方法であって、
a.不溶性粉を内因性または外因性酵素的加水分解によって部分的に加水分解して、可溶性粉を得るステップと、
b.ステップa)で得られた前記可溶性粉、少なくとも1種の活性成分、および水を含む担体のブレンドを調製するステップと、
c.ステップb)で得られた前記ブレンドを噴霧乾燥させるかまたは押し出して、前記粉末化された組成物を得るステップと
を含む、方法。
【請求項11】
ステップa)における前記外因性酵素的加水分解を、デンプン加水分解酵素および任意選択的にタンパク質加水分解酵素を前記不溶性粉に添加することによって実施する、請求項10記載の方法。
【請求項12】
ステップa)における前記内因性酵素的加水分解を、デンプン加水分解酵素および任意選択的にタンパク質加水分解酵素を内因的に含む不溶性粉を好ましくは50~85℃の温度で熱処理することによって実施する、請求項10記載の方法。
【請求項13】
前記粉が米麹粉である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
請求項1から9までのいずれか1項記載の組成物を含む、フレーバー付けされた物品。
【請求項15】
前記フレーバー付けされた物品が、飲料ドライミックス、ホット飲料、甘い物品、およびセイボリーな物品からなる群から選択される、請求項14記載のフレーバー付けされた物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可溶性粉を含む担体と、少なくとも1種の活性成分とを含む、粉末化された組成物に関する。組成物を調製するための方法および本発明の組成物を含むフレーバー付けされた製品も本発明の対象である。
【0002】
発明の背景
「クリーンラベル」または「ナチュラル」送達システムに対する消費者の需要は益々重要になっており、したがって、新たな送達システムの開発が推進されている。乾燥した粒子は、一般に、液体エマルションから調製され、次いで、この液体エマルションは、種々異なる方法(例えば、噴霧乾燥、薄膜乾燥、流動床乾燥など)によって乾燥させられる。大部分のエマルションは、担体と、フレーバーまたはフレグランスなどの活性成分とを含む。
【0003】
さらに、マルトデキストリンまたは加工デンプンなどの従来の担体は、粉からのデンプンの分離、デンプンの加工、および粉末を得るための乾燥ステップなどのエネルギー消費の大きな複数のプロセスによって製造される。しかしながら、担体材料としては、より環境への影響が少ない精製成分を、より少量使用することが望ましい。
【0004】
しかしながら、従来の担体を他の担体、特に天然に存在する担体で置換すると、担体材料中のフレーバーまたはフレグランスなどの活性成分の保持が不十分になることが多くなってしまう。さらに、一部の担体置換物の溶解度および/または粘度も担体材料中の活性成分の保持に悪影響を与えてしまう。
【0005】
上記に鑑みて、活性成分の効果的な保持(70%超)を可能にし、安価であり、かつエネルギー消費のより少ないプロセスで製造することができる更なる担体材料が常に必要とされている。
【0006】
発明の概要
本発明は、粉末化された組成物であって、
a)可溶性粉を含む40~95%の担体であって、
i.粉が、水溶液において10%w/wの粉濃度で測定した場合に、50%以上かつ99%未満の溶解度を有し、
ii.可溶性粉が、65℃および50s-1の剪断速度、ならびに水溶液において30%w/wの粉濃度で測定した場合に、400mPa・s以下の粘度を有する、
担体と、
b)5~60%の少なくとも1種の活性成分と
を含み、
パーセンテージが、組成物の総重量に対する重量によって定義される、
組成物に関する。
【0007】
本発明の別の態様は、本発明に係る粉末化された組成物を調製するための方法であって、
a.不溶性粉を内因性または外因性酵素的加水分解によって部分的に加水分解して、可溶性粉を得るステップと、
b.ステップa)で得られた可溶性粉、少なくとも1種の活性成分、および水を含む担体のブレンドを調製するステップと、
c.ステップb)で得られたブレンドを噴霧乾燥させるかまたは押し出して、粉末化された組成物を得るステップと
を含む、方法に関する。
【0008】
本発明の更なる態様は、本発明に係る組成物を含む、フレーバー付けされた物品に関する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】異なる固体含分レベルの調製された米麹溶液の流動粘度である。
【
図2】偏光下での顕微鏡写真である。左の写真は熱処理前の米麹粉であり、右の写真は熱処理後の米麹である。
【
図3】27%の固体含分での熱処理後の調製された米麹/米粉溶液の流動粘度である。
【0010】
発明の詳細な説明
特に明記しない限り、パーセンテージ(%)は、重量パーセンテージを示すことを意味する。
【0011】
本発明は、粉末化された組成物であって、
a)可溶性粉を含む40~95%の担体であって、
i.粉が、水溶液において10%w/wの粉濃度で測定した場合に、50%以上かつ99%未満の溶解度を有し、
ii.可溶性粉が、65℃および50s-1の剪断速度、ならびに水溶液において30%w/wの粉濃度で測定した場合に、400mPa・s以下の粘度を有する、
担体と、
b)5~60%の少なくとも1種の活性成分と
を含み、
パーセンテージが、組成物の総重量に対する重量によって定義される、
組成物に関する。
【0012】
特定の実施形態では、組成物は、45~95%の担体を含む。
【0013】
特定の実施形態では、組成物は、50~80%の担体を含む。
【0014】
本発明によれば、担体は可溶性粉を含む。粉は、これが先に与えられている溶解度要件を満たす場合に、すなわち、粉が、水溶液において10%w/wの粉濃度で測定した場合に、50%以上かつ99%未満の溶解度を有する場合に、「可溶性」であるとみなされる。
【0015】
溶解度は、乾燥重量ベースでの粉100グラムあたりの可溶性固体の重量として定義される。
【0016】
特定の実施形態では、溶解度は、25℃の水溶液における、好ましくは水における溶解度を指し、水溶液、好ましくは水は、7のpH値を有する。
【0017】
特定の実施形態では、組成物は、可溶性粉からなる担体を含む。
【0018】
特定の実施形態では、可溶性粉は、水溶液において10%w/wの粉濃度で測定した場合に、70%以上かつ90%未満の溶解度を有する。
【0019】
特定の実施形態では、可溶性粉は、水溶液において10%w/wの粉濃度で測定した場合に、70%~80%または84%~90%の溶解度を有する。
【0020】
特定の実施形態では、可溶性粉中のタンパク質の溶解度は30%以上である。タンパク質の溶解度は、乾燥重量ベースでのタンパク質100グラムあたりの可溶性タンパク質の重量として定義される。
【0021】
特定の実施形態では、可溶性粉は、可溶性トウモロコシ粉、可溶性米粉、可溶性大麦粉、可溶性オート麦粉、可溶性ソルガム粉、可溶性小麦粉、可溶性脱脂エンドウ豆粉、脱脂されたマメ科植物の粉、およびそれらの任意の混合物からなる群から選択される。
【0022】
特定の実施形態では、可溶性粉は、可溶性米粉、好ましくは可溶性米麹粉である。米麹は、麹菌(アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae))で発酵させた米であると理解される。
【0023】
特定の実施形態では、可溶性粉は、可溶性小麦粉、好ましくは可溶性小麦麹粉である。小麦麹は、麹菌(アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae))で発酵させた小麦であると理解される。
【0024】
特定の実施形態では、可溶性粉は、可溶性大麦粉、好ましくは可溶性大麦麹粉である。大麦麹は、麹菌(アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae))で発酵させた大麦であると理解される。
【0025】
天然に存在する粉は、通常、先に与えられているような溶解度要件を満たさず、したがって、これらの粉は、これらが前述の溶解度要件を満たすように処理される必要がある。典型的には、天然に存在する粉、すなわち、これらに含まれるデンプンおよびタンパク質は、先に与えられているような溶解度および粘度の要件を満たすように部分的に加水分解される必要がある(すなわち、100%未満が加水分解される)。
【0026】
特定の実施形態では、可溶性粉は、不溶性粉の部分的加水分解によって、好ましくは、不溶性粉中に含まれるデンプンおよびタンパク質の部分的酵素的加水分解によって得られる。不溶性粉は、任意の種類の不溶性粉であってよく、好ましくは、不溶性粉は、トウモロコシ粉、米粉、大麦粉、オート麦粉、ソルガム粉、小麦粉、およびそれらの任意の混合物からなる群から選択される。
【0027】
好ましくは、不溶性粉中に含まれるデンプンおよびタンパク質の酵素的加水分解は、カルボヒドラーゼ、例えば、アミラーゼ、プルラナーゼ、またはグルコアミラーゼなどの存在下で、かつプロテアーゼの存在下で行われる。前述の酵素を不溶性粉に添加して、加水分解を誘発してよいか(外因性加水分解)、または酵素がすでに不溶性粉中に存在していてよく(内因性加水分解)、加水分解を、ある特定のトリガー、例えば熱処理などによって開始するだけで済む。
【0028】
特定の実施形態では、可溶性粉の可溶性画分は、10超、好ましくは20超のDE値を示す。
【0029】
特定の実施形態では、可溶性粉の可溶性画分は、10~30、好ましくは15~25のDE値を示す。
【0030】
デキストロース当量(DE)は、例えば、Y. Rong, M. Sillick, C.M. Gregson. Determination of dextrose equivalent value and number average molecular weight of maltodextrin by osmometry. Journal of Food Science, 2009, 74 (1), pp. C33-C40.で報告されている方法を使用することによって決定され得る。したがって、特定の実施形態では、デキストロース当量(DE)は、浸透圧測定、好ましくは凝固点浸透圧測定によって決定される。
【0031】
DE値(デキストロース当量)は、可溶性粉中に含まれるデンプンの重合度、すなわち、可溶性粉における単糖単位の数を示す。
【0032】
DE値は、
DE=(生成物における還元糖(グルコースとして表される)/加水分解されたデンプンの総固体含分)×100
のように計算される。
【0033】
DE値が高いほど、単糖(グルコース)および短鎖ポリマーのレベルが高くなる。グルコース(デキストロース)は、100のDE値を有し、未処理(天然)デンプンのDE値は、おおよそ0である。加水分解されたデンプンは、異なる長さのポリマーの混合物からなり、DE値は、平均値である。
【0034】
本発明に係る粉末化された組成物中の担体は、先に定義されているようなある特定の粘度要件を満たす必要がある。粘度の測定には、例えば、Anton Paar MCR302レオメータ(Anton Paar USA Inc., Ashland, VA)が使用され得る。
【0035】
特定の実施形態では、可溶性粉は、65℃および50s-1の剪断速度、ならびに水溶液において30%w/wの粉濃度で測定した場合に、20~400mPa・sの粘度を有し、好ましくは、可溶性粉は、前述の条件で、30~300mPa・sの粘度を有する。
【0036】
特定の実施形態では、可溶性粉は、65℃および50s-1の剪断速度、ならびに水溶液において30%w/wの粉濃度で測定した場合に、15~350mPa・sの粘度を有する。
【0037】
特定の実施形態では、担体は1種類の可溶性粉を含む。別の実施形態では、担体は、例えば、2種、3種、4種、5種、またはそれより多くの異なる種類の可溶性粉などの幾つかの異なる種類の可溶性粉を含む。好ましくは、担体は、例えば可溶性米粉などの1種類のみの可溶性粉を含む。
【0038】
特定の実施形態では、担体は、可溶性粉とは別に、更なる食品材料を含む。更なる食品材料は、不溶性粉、好ましくは不溶性米粉、非動物性タンパク質、好ましくはエンドウ豆タンパク質、可溶性繊維、好ましくはイヌリンおよび/またはアラビアガム、ならびにそれらの任意の混合物からなる群から選択され得る。
【0039】
一実施形態では、先に定義されているような更なる食品材料に対する可溶性粉の重量比は、1:1以上である。
【0040】
一実施形態では、先に定義されているような更なる食品材料に対する可溶性粉の重量比は、5:1~1:1であり、好ましくは、重量比は、1:1である。
【0041】
特定の実施形態では、担体は非動物性タンパク質をさらに含む。非動物性タンパク質は、エンドウ豆タンパク質、レンズ豆タンパク質、米タンパク質、ジャガイモタンパク質、ひよこ豆タンパク質、そら豆タンパク質、緑豆タンパク質、ヒマワリ種子タンパク質、カボチャ種子タンパク質、亜麻タンパク質、チアタンパク質、キャノーラタンパク質、ルピナスタンパク質、アルファルファタンパク質、モリンガタンパク質、およびそれらの任意の混合物からなる群から選択され得る。
【0042】
特定の実施形態では、担体は、1種以上の不溶性粉、好ましくは不溶性米粉をさらに含む。
【0043】
特定の実施形態では、担体は、1種以上の可溶性繊維、好ましくはイヌリンおよび/またはアラビアガムをさらに含む。
【0044】
特定の実施形態では、担体は加工デンプンを実質的に含まない。「加工デンプン」は、化学的に加工されたデンプン、例えば、オクテニルコハク酸デンプンなどを意味する。「実質的に含まない」は、担体が、担体の総重量に基づいて、5重量%未満、好ましくは2重量%未満、さらにより好ましくは1重量%未満を占めることを意味する。
【0045】
特定の実施形態では、粉末化された組成物は、25℃超、好ましくは40℃超のガラス転移温度(Tg)を有する。そのようなガラス転移温度を有することには、粉末化された組成物が室温で保存安定性であり、すなわち、粉末化された組成物が室温で安全に保管可能であるという利点がある。
【0046】
特定の実施形態では、粉末化された組成物は40~50℃のガラス転移温度(Tg)を有する。
【0047】
ガラス転移温度の測定には、例えば、TA Instruments示差走査熱量計Q2000(TA Instruments, New Castle, DE)が使用され得る。
【0048】
特定の実施形態では、粉末化された組成物は、噴霧乾燥または押出しによって得られる。
【0049】
特定の実施形態では、粉末化された組成物は乳化剤をさらに含む。
【0050】
本発明によれば、粉末化された組成物は、少なくとも1種の活性成分を含む。
【0051】
活性成分は、好ましくは酸化を受けやすい(「酸化性」)フレーバー付け成分および/または賦香成分を含み、また、天然由来または合成由来であり、かつ単一化合物またはそれらの混合物の形態であるものを含む、フレーバーおよび/またはフレグランス産業で現在使用されているフレーバー成分およびフレグランス成分または組成物の両方を包含する。そのようなフレーバー成分および/またはフレグランス成分の具体例は、現在の文献、例えば、Fenaroli's Handbook of flavor ingredients, 1975, CRC Press; M.B. JacobsのSynthetic Food adjuncts, 1947,Van Nostrand編;またはS. ArctanderのPerfume and Flavor Chemicals, 1969, Montclair, New Jersey (USA)で見ることができる。現在のフレーバー付け成分および/または賦香成分の多くの他の例は、入手可能な特許文献および一般文献で見ることができる。フレーバー付け成分および/または賦香成分は、溶媒、アジュバント、添加剤、および/または他の成分、一般に、フレーバーおよびフレグランス産業で現在使用されているものとの混合物の形態で存在し得る。
【0052】
本明細書で使用される場合、「フレーバー付け成分」は、消費者製品にフレーバーもしくは味を付与すること、または消費者製品の味および/もしくはフレーバー、もしくはさらにそのテクスチャもしくは口当たりを改変することができるものとして、芳香化の当業者に周知の化合物である。フレーバー付け成分は、呈味調整剤または呈味化合物であり得る。
【0053】
呈味化合物の例は、塩、無機塩、有機酸、糖、アミノ酸およびそれらの塩、リボヌクレオチド、ならびにそれらの供給源である。
【0054】
「呈味調整剤」は、消費者の味覚受容体に作用するか、または消費される製品に口当たり(ボディ感、丸味、または口コーティングなど)に関連する官能特性を提供する、活性成分として理解される。呈味調整剤の非限定的な例は、塩味、脂肪感、旨味、コク味、熱感もしくは冷感、甘味、酸味、ピリピリ感、苦味、または酸っぱさを増強、改変、または付与する活性成分を含む。
【0055】
「賦香成分」という用語は、表面上に適用したときに快楽効果を付与するために、賦香調製物または組成物中の活性成分として使用される化合物を意味すると理解される。言い換えるなら、賦香化合物であるとみなされるそのような化合物は、単に香りを有するものとしてではなく、組成物または物品または表面の匂いを有利にまたは心地良いように付与または改変することができるものとして香料の当業者に認識されるはずである。さらに、この定義は、必ずしも匂いを有するわけではないが、賦香組成物、賦香された物品または表面の匂いを調節することができ、結果として、そのような組成物、物品、または表面の匂いの使用者による知覚を改変することができる、化合物を含むことも意味する。これは、悪臭中和成分および組成物も含有する。ここで、「悪臭中和成分」という用語は、悪臭を中和および/またはマスキングすることによって、悪臭、すなわち、ヒトの鼻に不快または攻撃的な匂いの知覚を低減することができる、化合物を意味する。特定の実施形態では、これらの化合物は、既知の悪臭を引き起こす重要な化合物と反応する能力を有する。これらの反応によって、悪臭物質の空中浮遊レベルが低減され、結果として、悪臭の知覚が低減される。
【0056】
クエン酸が主要な天然に存在する酸である果物に由来するかまたはこれに基づくフレーバーは、例えば、柑橘果物(例えば、レモン、ライム)、リモネン、イチゴ、オレンジ、およびパイナップルを含むが、これらに限定されることはない。一態様では、フレーバー食品は、果物から直接抽出されたレモン、ライム、またはオレンジジュースである。フレーバーの更なる態様は、オレンジ、レモン、グレープフルーツ、キーライム、シトロン、クレメンタイン、マンダリン、タンジェリン、およびその他の柑橘果物、またはそれらの変種もしくは交配種から抽出されたジュースまたは液体を含む。特定の態様では、フレーバーは、オレンジ、レモン、グレープフルーツ、キーライム、シトロン、クレメンタイン、マンダリン、タンジェリン、その他の柑橘果物、またはそれらの変種もしくは交配種、ザクロ、キウイフルーツ、スイカ、リンゴ、バナナ、ブルーベリー、メロン、生姜、ピーマン、キュウリ、パッションフルーツ、マンゴー、西洋梨、トマト、およびイチゴから抽出または蒸留した液体を含む。
【0057】
特定の実施形態では、少なくとも1種の活性成分は、フレーバー油、好ましくはオレンジフレーバー油を含む。
【0058】
特定の実施形態では、粉末化された組成物は、組成物の総重量に基づいて、5~30%の量の少なくとも1種の活性成分を含む。特定の実施形態では、粉末化された組成物は、組成物の総重量に基づいて、10~20%の量の少なくとも1種の活性成分を含む。別の実施形態では、粉末化された組成物は、組成物の総重量に基づいて、6~10%の量の少なくとも1種の活性成分を含む。
【0059】
特定の実施形態では、少なくとも1種の活性成分は担体中にカプセル化されている。「カプセル化された」は、少なくとも1種の活性成分が担体マトリックス中に閉じ込められていることを意味する。活性成分をカプセル化することによって、酸化などの外部の影響から活性成分が保護される。
【0060】
特定の実施形態によると、フレーバーは、国際公開第2014/128071号に記載されているように、原形質分離した微生物中にカプセル化され得る。
【0061】
本発明の別の態様は、本発明に係る粉末化された組成物を調製するための方法であって、
a.不溶性粉を内因性または外因性酵素的加水分解によって部分的に加水分解して、可溶性粉を得るステップと、
b.ステップa)で得られた可溶性粉、少なくとも1種の活性成分、および水を含む担体のブレンドを調製するステップと、
c.ステップb)で得られたブレンドを噴霧乾燥させるかまたは押し出して、粉末化された組成物を得るステップと
を含む、方法に関する。
【0062】
本発明に係る方法のステップa)では、不溶性粉を内因性または外因性酵素的加水分解によって部分的に加水分解して、可溶性粉を得る。
【0063】
特定の実施形態において、ステップa)では、不溶性粉を内因性酵素的加水分解によって部分的に加水分解して、可溶性粉を得る。
【0064】
特定の実施形態において、ステップa)では、不溶性粉を外因性酵素的加水分解によって部分的に加水分解して、可溶性粉を得る。
【0065】
粉は、これが先に与えられている溶解度要件を満たす場合に、すなわち、粉が、水溶液において10%w/wの粉濃度で測定した場合に、50%以上かつ99%未満の溶解度を有する場合に、「可溶性」であるとみなされる。したがって、不溶性粉は、所定の条件で、50%未満の溶解度を有する。
【0066】
不溶性粉は、任意の種類の不溶性粉であってよく、好ましくは、不溶性粉は、トウモロコシ粉、米粉、大麦粉、オート麦粉、ソルガム粉、小麦粉、およびそれらの任意の混合物からなる群から選択される。より好ましくは、不溶性粉は、米粉であり、最も好ましくは米麹粉である。
【0067】
内因性酵素的加水分解は、不溶性粉が、不溶性粉中に本来的に(内因的に)存在する酵素によって可溶性粉に変換されることを意味する。言い換えるなら、不溶性粉中に含まれるデンプンおよびタンパク質を加水分解するために外部(外因性)酵素を不溶性粉に添加する必要はない。デンプンおよびタンパク質を加水分解することができる酵素を実質的に含む不溶性粉の例は、米麹粉、小麦麹粉、および大麦麹粉である。
【0068】
特定の実施形態では、本発明に係る方法のステップa)における不溶性粉は、米麹粉、小麦麹粉、および大麦麹粉からなる群から選択される。好ましくは、不溶性粉は、米麹粉である。
【0069】
特定の実施形態では、ステップa)における内因性酵素的加水分解を、デンプン加水分解酵素および任意選択的にタンパク質加水分解酵素を内因的に含む不溶性粉を好ましくは50~85℃の温度で熱処理することによって実施する。より好ましくは、ステップa)における内因性酵素的加水分解を70℃で実施する。好ましくは、熱処理を、1~6時間、より好ましくは2~4時間行う。好ましくは、熱処理を、水溶液中に、より好ましくは水中に存在する不溶性粉を用いて行う。
【0070】
特定の実施形態では、先に定義されているような内因性酵素的加水分解のための熱処理に、好ましくは80℃~100℃の温度、より好ましくは80℃~90℃の温度で行われる酵素失活ステップが続く。
【0071】
対照的に、外因性酵素的加水分解は、不溶性粉が、デンプンと、任意選択的に、不溶性粉に含まれるタンパク質とを加水分解することができる外部酵素の添加によって可溶性粉に変換されることを意味する。デンプンを加水分解することができる酵素の例は、アミラーゼ、プルラナーゼ、またはグルコアミラーゼなどのカルボヒドラーゼである。タンパク質を加水分解することができる酵素の例は、パパイン、ブロメライン、フィクチン、アクチニジン、ジンジベイン、またはカルドシンなどのプロテアーゼである。
【0072】
特定の実施形態では、ステップa)における外因性酵素的加水分解を、デンプン加水分解酵素および任意選択的にタンパク質加水分解酵素を不溶性粉に添加することによって実施する。
【0073】
本発明に係る方法のステップa)の最中に、不溶性粉を部分的に加水分解して、可溶性粉を得る。「部分的に加水分解された」は、先に定義されているように、不溶性粉中に含まれるデンプンおよびタンパク質が、溶解度および粘度の要件を満たす可溶性粉を得るために、完全には(100%では)加水分解されていないことを意味する。
【0074】
特定の実施形態では、本発明に係る方法のステップb)の最中に、
7.5~47.5%の担体、
0.75~30%の少なくとも1種の活性成分、および
50~85%の水
を含む、ステップa)で得られた可溶性粉を含む担体、少なくとも1種の活性成分、および水のブレンドが調製される。
【0075】
本発明に係る方法のステップb)で得られるブレンドは、高剪断混合、超音波処理、または均質化などの任意の既知のブレンド方法によって調製され得る。そのような方法は、当業者に周知である。
【0076】
特定の実施形態では、本発明に係る方法のステップb)で得られるブレンドは、エマルション、好ましくは水中油型エマルションである。
【0077】
本発明に係る方法のステップc)では、ステップb)で得られたブレンドを噴霧乾燥させるかまたは押し出して、粉末化された組成物を得る。噴霧乾燥および押出しはどちらも、当業者に周知の方法である。
【0078】
ステップc)の第1の変法では、本発明に係る組成物は、ステップb)で得られたブレンド、好ましくはエマルションを噴霧乾燥させることによって形成され、固体含分(担体の質量を担体および水の総質量で割ったもの)は、好ましくは20%以上である。噴霧乾燥法の一例は、国際公開第2019/162475号で見ることができる。
【0079】
ステップc)の第2の変法では、本発明に係る組成物は、ステップb)で得られたブレンドを押し出すことによって形成される。
【0080】
押出しは、当業者に周知の食品加工において使用される技術である。押出しの最中に、混合される成分は、必要な形状を生み出すように設計された多孔板またはダイの開口に通される。次いで、押し出された食品は、ブレードによって特定のサイズに切断される。成分の混合物をダイに通す機械は、押出機と呼ばれ、押し出された成分の混合物は、押出物としても知られている。押出機は、典型的には、固定式バレル内にしっかりと適合している大型の回転スクリューであり、その端にダイがある。押出しプロセスは、例えば米国特許出願公開第20190289891号明細書に記載されている。
【0081】
押出しによって、最終的な製品の均一性を確実にする連続的で効率的なシステムを介した食品の大量生産が可能になる。
【0082】
組成物がステップc)で押出し(押出しカプセル化)によって形成される場合、ステップa)で得られた可溶性粉は、ステップb)におけるブレンドの調製で成分として使用される前に噴霧乾燥させられ得る。
【0083】
組成物がステップc)で押出し(押出しカプセル化)によって形成される場合、好ましくは、二軸押出機が押出しステップの最中に使用される。
【0084】
特定の実施形態では、本発明に係る方法は、80%以上、好ましくは90%以上の少なくとも1種の活性成分の保持をもたらす。
【0085】
特定の実施形態では、少なくとも1種の活性成分は、フレーバー油であり、本発明に係る方法は、80%以上、好ましくは90%以上のフレーバー油保持をもたらす。
【0086】
フレーバー油保持は、(最終的な粉末化された組成物における絶対フレーバー油含分/調製プロセスで使用されるフレーバー油の絶対量)×100のように計算される。フレーバー油保持は、フレーバー油が担体材料にどの程度効果的に組み込まれ得るかを示す。
【0087】
最終的な粉末化された組成物における油含分は、例えば、時間領域核磁気共鳴(TD-NMR, Minispec mq20, Bruker, Billerica, USA)によって決定され得る。
【0088】
本発明の別の対象は、本発明の組成物を含む消費者製品である。好ましくは、そのような製品は、フレーバー付けされたまたはフレグランス付けされた製品である。
【0089】
一態様では、本発明は、本発明に係る組成物を含むフレーバー付けされた物品に関する。
【0090】
特定の実施形態では、フレーバー付けされた物品は、飲料ドライミックス、ホット飲料、甘い物品、およびセイボリーな(savory)物品からなる群から選択される。
【0091】
特定の実施形態では、フレーバー付けされた物品は、タンパク質粉末、タンパク質ドリンク、タンパク質バー、肉類似物(meat analogues)、海産物類似物(seafood analogues)、およびセイボリーな物品からなる群から選択される。
【0092】
肉類似物は、豚肉類似物、鹿肉類似物、牛肉類似物、子牛肉類似物、ウサギ肉類似物、ソーセージ類似物、デリミート類似物、ハム類似物、サラミ類似物、ペパロニ類似物、鶏肉類似物、七面鳥肉類似物、ガチョウ肉類似物、キジ肉類似物、ハト肉類似物、クジラ肉類似物、子羊肉類似物、ヤギ肉類似物、ロバ肉類似物、およびリス肉類似物を含み得る。
【0093】
海産物類似物は、魚類似物、ホタテ貝類似物、エビ類似物、カニ肉類似物、甲殻類類似物、二枚貝類似物、イカ類似物、巻貝類似物、およびホヤ類似物を含み得る。
【0094】
フレーバー付けされた物品が微粒子状または粉末状の食品である場合、乾式混合によって乾燥粒子をこの物品に容易に添加することができる。典型的なフレーバー付けされた物品は、インスタントスープまたはソース、朝食用シリアル、粉末化された牛乳、ベビーフード、粉末化されたドリンク、粉末化されたチョコレートドリンク、スプレッド、粉末化されたシリアルドリンク、チューインガム、発泡タブレット、シリアルバー、およびチョコレートバーからなる群から選択される。粉末化された食品またはドリンクは、水、牛乳および/もしくはジュース、または別の水性液体での製品の再構成後に消費することが意図され得る。
【0095】
本明細書で提供される粉末化された組成物は、飲料、流体酪農製品、調味料、焼いた食品、フロスティング、ベーカリーフィリング、キャンディ、チューインガム、および他の食品製品にフレーバーを伝えるのに適切であり得る。
【0096】
飲料は、コーラ、レモンライム、ルートビア、重柑橘類(「デュータイプ」)、フルーツフレーバーのソーダおよびクリームソーダを含む炭酸ソフトドリンク;粉末化されたソフトドリンク、ならびにファウンテンシロップおよびコーディアルなどの液体濃縮物;コーヒーおよびコーヒーベースのドリンク、コーヒー代替物およびシリアルベースの飲料;ドライミックス製品およびそのまま飲めるお茶(ハーブおよび茶葉ベース)を含むお茶;果物および野菜ジュース、およびジュースフレーバーの飲料、ならびにジュースドリンク、ネクター、濃縮物、パンチ、および「エイド」;炭酸および無炭酸の両方である甘味付けされたおよびフレーバー付けされた水;スポーツ/エネルギー/健康ドリンク;アルコール飲料+ビールおよび麦芽飲料、サイダー、ならびにワイン(スティル、スパークリング、酒精強化ワイン、およびワインクーラー)を含む、アルコール不含および他の低アルコール製品;加熱(インフュージョン、低温殺菌、超高温、抵抗加熱、または商業用無菌滅菌)で処理されて高温充填包装された他の飲料;ならびに濾過または他の保存技術によって作製された低温充填製品を含むが、これらに限定されることはない。
【0097】
流体酪農製品は、非冷凍、部分冷凍、および冷凍された流体酪農製品、例えば、牛乳、アイスクリーム、シャーベット、およびヨーグルトなどを含むが、これらに限定されることはない。
【0098】
調味料は、ケチャップ、マヨネーズ、サラダドレッシング、ウスターソース、フルーツフレーバーのソース、チョコレートソース、トマトソース、チリソース、およびマスタードを含むが、これらに限定されることはない。
【0099】
焼いた食品は、ケーキ、クッキー、ペストリー、パン、ドーナツなどを含むが、これらに限定されることはない。
【0100】
ベーカリーフィリングは、低または中性pHのフィリング、高、中または低固体フィリング、フルーツまたは牛乳ベースの(プリンタイプまたはムースタイプ)フィリング、ホットまたはコールドメイクアップフィリング、および無脂肪から全脂肪までのフィリングを含むが、これらに限定されることはない。
【0101】
本発明の組成物は、以下の製品例において特に興味深いものであり得る:
・焼いた食品(例えば、パン、乾燥したビスケット、ケーキ、他の焼いた食品)、
・シリアル製品(例えば、朝食用シリアル、調理済みの既製米製品、米粉製品、キビおよびソルガム製品、生または調理済みの麺およびパスタ製品)、
・乳製品(例えば、フレッシュチーズ、ソフトチーズ、ハードチーズ、牛乳ドリンク、乳清、バター、部分的または完全に加水分解された乳タンパク質含有製品、発酵乳製品、コンデンスミルク、および類似物)、
・酪農ベースの製品(例えば、フルーツまたはフレーバー付けされたヨーグルト、アイスクリーム、フルーツアイス、冷凍デザート)、
・非酪農成分(植物ベースのタンパク質、植物性脂肪)を含有する酪農類似物(模造酪農製品)、
・菓子製品(例えば、チューインガム、ハードキャンディー、およびソフトキャンディー)、
・チョコレートおよびコンパウンドコーティング、
・脂肪および油またはそのエマルションをベースとする製品(例えば、マヨネーズ、スプレッド、マーガリン、ショートニング、レムラード、ドレッシング、スパイス調製物)、
・スパイスを加えた、マリネした、または加工した魚製品(例えば、魚肉ソーセージ、すり身)、
・卵または卵製品(乾燥卵、卵白、卵黄、カスタード)、
・デザート(例えば、ゼラチンおよびプリン)、
・大豆タンパク質または他の大豆画分で作製された製品(例えば、豆乳およびこれから作製された製品、大豆レシチン含有調製物、豆腐もしくはテンペ、またはこれらから製造された製品、醤油などの発酵製品)、
・野菜調製物(例えば、ケチャップ、ソース、加工および再構成された野菜(reconstituted vegetables)、乾燥野菜、急速冷凍野菜、調理済みの野菜、酢漬けした野菜、野菜濃縮物またはペースト、調理された野菜、ジャガイモ調製物)、
・スパイスまたはスパイス調製物(例えば、マスタード調製物、西洋わさび調製物)、スパイス混合物、および特に、例えばスナックの分野で使用されるシーズニング剤、
・スナック製品(例えば、焼いたまたは揚げたポテトチップスまたはジャガイモ生地製品、パン生地製品、トウモロコシ、米または粉状ナッツをベースとする押出物)、
・出来合いの料理(例えば、インスタント麺、米、パスタ、ピザ、トルティーヤ、ラップ)、ならびにスープおよびブロス(例えば、ストック、セイボリーキューブ、乾燥スープ、インスタントスープ、調理済みのスープ、レトルトスープ)、ソース(インスタントソース、乾燥ソース、既製ソース、グレービー、甘いソース)、
・派生的な肉製品(例えば、ミートパティ、ソーセージ、チリ、ソールズベリーステーキ、ピザのトッピング、ミートボール、ひき肉、ボローニャ、チキンナゲット、ポークフランクフルト、牛肉)。
【実施例】
【0102】
測定方法:
粉の溶解度の測定:
溶解度は、10%の粉固体(乾燥ベース)を含有する水溶液を調合することによって決定した。複製サンプルを各粉サンプルについて調製した。これらの溶液を卓上遠心分離機(Cole Parmer Niles, IL)に装填し、6000rpmで10分間回転させた。上清を廃棄し、沈殿物をアルミニウムパンに移送し、一定の重量になるまで100℃のオーブンで乾燥させた。溶解度を計算し、乾燥重量ベースでの粉100グラムあたりの可溶性固体の重量として表した。
【0103】
タンパク質含分および溶解度の測定:
粉の粉末の窒素含分を分析し、次いで、窒素含分の乗算係数6.25を使用して総タンパク質含分を計算した。タンパク質の溶解度は、20%の粉(乾燥ベース)を含有する水溶液を調合することによって決定した。十分な混合後に、溶液を遠心分離して、沈殿物(不溶性画分)および上清(可溶性画分)を完全に分離した。得られた上清をその窒素含分について分析した。次いで、上清におけるタンパク質含分を、係数6.25を使用して窒素含分に基づいて計算した。タンパク質の溶解度は、上清におけるタンパク質の量を溶液全体におけるタンパク質の量で割ったものとして定義される。
【0104】
DE値の測定:
デキストロース当量(DE)は、Y. Rong, M. Sillick, C.M. Gregson. Determination of dextrose equivalent value and number average molecular weight of maltodextrin by osmometry. Journal of Food Science, 2009, 74 (1), pp. C33-C40.で報告されている方法を使用して測定した。熱処理した米麹溶液の遠心分離後に、上清を浸透圧測定分析のために収集した。
【0105】
粘度の測定:
乾燥ベースでの粉の異なる固体含分における流動粘度は、Anton Paar MCR302レオメータ(Anton Paar USA Inc., Ashland, VA)を使用して65℃で測定した。すべてのサンプルを測定前に完全に水和し、同心シリンダを使用した。
【0106】
保持される油含分:
時間領域核磁気共鳴(TTD-NMR, Minispec mq20, Bruker, Billerica, USA)を油含分の測定に使用した。校正は、純粋なフレーバー油を使用して行った。噴霧乾燥および押出しのプロトタイプを3回1組で分析し、平均を報告した。
【0107】
ガラス転移温度:
ガラス転移温度(Tg)の測定は、TA Instruments示差走査熱量計Q2000(TA Instruments, New Castle, DE)で行った。少量のサンプル(約10mg)を密閉Tzeroパンに密封した。プログラムは、以下のステップからなる:-20℃で5分間平衡化するステップ、10℃/分で100℃に昇温させるステップ、-20℃に冷却するステップ、-20℃で5分間等温に保つステップ、および10℃/分で100℃に昇温させるステップ。ガラス転移温度を第2の加熱昇温(再走査)の変曲点として取得した。各サンプルを2回1組で実行し、平均を報告する。
【0108】
例1:可溶性米麹粉の調製
米粉(Ingredion, NJ, USA)および米麹粉(Kohsei Industrial Co., LTD, Japan)を含水量およびタンパク質含分について分析した。プロペラミキサを使用して撹拌しながら、70℃の予熱した水にそれぞれの粉を添加することによって、90グラムの米麹粉または米粉と210グラムの水との混合物を調製した。この混合物は、米粉および米麹粉について、乾燥ベースでそれぞれ15%および27%の固体含分を有していた。急激な粘度上昇を避けるために、それぞれの粉を30分の期間でゆっくりと添加して、デンプンのゼラチン化および加水分解の時間を与えた。すべての粉末を添加した後に、撹拌しながらバッチを70℃で4時間保った。混合物の粘度は、デンプンおよびタンパク質がより小さな分子に分解された結果、経時的に低下した。4時間のインキュベーション後に、溶液のpHを4.0に調整した。次いで、温度を上昇させ、80℃で10分間保って、酵素を失活させた。より高い固体含分の可溶性米麹粉も上記と同じ手順に従って調製した。粘度の特性評価のために、15%、27%、32%、36%、および40%の固体含分の一連の米溶液を得た。
【0109】
図1は、熱処理した粉溶液の流動粘度を示す。固体含分15%の米粉(非米麹粉)の対照が最も高い粘度を有し、その一方で、より高い固体含分の米麹粉溶液がはるかにより低い粘度を示したことを観察することができる。これは、米麹粉においてデンプンが熱処理後により小さな分子に実質的に分解されたことを示唆している。
【0110】
表1は、全体的な粉の溶解度および粉のタンパク質の溶解度を示す。熱処理後に、米麹粉は、27~40%の範囲の固体含分で70~90%の溶解度を示した。米麹粉は、8.3%の含分のタンパク質、8.5%の含水量、および2%未満の脂質を含み、残りのデンプンが主要物となっている。したがって、デンプンは、上記の熱インキュベーションの最中に大部分が加水分解される。さらに、米麹粉および米粉(非米麹粉)の両方の測定したタンパク質溶解度が15%未満であり、その一方で、熱処理した米麹粉のタンパク質溶解度は30~34%に上昇し、これは、米麹粉中のタンパク質が熱処理後に部分的に加水分解したことを示唆している。
【0111】
【0112】
図2は、熱処理前後の米麹粉の顕微鏡写真を示す。強い複屈折が処理前の米麹粉について観察され、これは、デンプン顆粒の半結晶構造を示した。熱処理後に、複屈折は完全に消失し、これは、デンプンの完全なゼラチン化を示唆していた。
【0113】
要約すると、米麹粉中のデンプンおよびタンパク質はどちらも、熱インキュベーションの最中により小さな分子に分解され、より高い溶解度およびより低い粘度をもたらす。得られた可溶性米麹粉は、クリーンラベルのカプセル化担体として使用することができる。
【0114】
例2:米麹粉を用いた噴霧乾燥オレンジフレーバーの調製
サンプルF~Hを20kgのバッチサイズで作製した。スクレープ表面撹拌機を備えた蒸気ジャケット式ケトル内で撹拌しながら、米麹粉を70℃の予熱した水に添加することによって、混合物を調製した。急激な粘度上昇を避けるために、米麹粉を30分の期間でゆっくりと添加して、デンプンのゼラチン化および加水分解の時間を与えた。すべての粉末を添加した後に、撹拌しながらバッチを70℃で4時間保った。混合物の粘度は、デンプンおよびタンパク質がより小さな分子に分解された結果、経時的に低下した。4時間のインキュベーション後に、屈折計を使用して、溶液のブリックスを測定した。溶液のpHを4.0に調整し、温度を上昇させ、80℃で10分間保って、酵素を失活させた。得られた溶液を噴霧乾燥機の供給タンクに移送し、スチームジャケット式ケトルに移送し、撹拌しながら65℃に加熱した。次いで、オレンジフレーバー油(20%w/wのペイロード(payload))を溶液に添加し、10分間混合して、プレエマルションを形成した。得られた粗エマルションを、第1の段階については14MPaで、第2の段階については1.4MPaで、2段階高圧Gaulin M12ホモジナイザ(Manton-Gaulin Company, Boston, MA, USA)に通過させた。最後に、均質化されたエマルションを、高圧ノズル霧化器を備えたボックスタイプの乾燥機(Ernest D. Menold Inc., Lester, PA, USA)で噴霧乾燥させた。霧化圧力を7MPaに設定し、入口空気温度および出口空気温度をそれぞれ180℃および80℃に設定した。得られた粉末をそれらの油含分について分析した。
【0115】
表2は、担体として可溶性米麹粉を用いた噴霧乾燥粉末における油含分を示す。熱処理した非米麹粉(対照)は、非常に高い粘度を示し、均質化または噴霧することができなかった。対照的に、熱処理した米麹粉は、オレンジ油で噴霧乾燥させることに成功した。85%超の油保持が達成され、良好なカプセル化性能を示した。これは、追加の乳化剤を必要とすることなく、熱処理した(可溶性)米麹粉を噴霧乾燥担体として使用することができることを実証している。特に、米麹粉中の部分的に加水分解されたタンパク質は、効果的な乳化剤として機能し得る。
【0116】
【0117】
例3:米麹粉と米粉とのブレンドを用いた噴霧乾燥オレンジフレーバーの調製
異なる比(1:1および1:2)での米麹粉と米粉(非米麹粉;Ingredion, Bridgewater, NJ, USA)とのブレンドも噴霧乾燥カプセル化について評価した。各ブレンドについて、サンプルを20kgのバッチサイズで作製した。スクレープ表面撹拌機を備えた蒸気ジャケット式ケトル内で撹拌しながら、ブレンドした粉を70℃の予熱した水に添加することによって、混合物を調製した。急激な粘度上昇を避けるために、粉ブレンドを30分の期間でゆっくりと添加して、デンプンのゼラチン化および加水分解の時間を与えた。すべての粉末を添加した後に、撹拌しながらバッチを70℃で4時間保った。混合物の粘度は、デンプンおよびタンパク質がより小さな分子に分解された結果、経時的に低減する。4時間のインキュベーション後に、加水分解度の指標として屈折計を使用して、溶液のブリックスを測定した。溶液のpHを4.0に調整し、次いで、温度を上昇させ、80℃で10分間保って、酵素を失活させた。少量のサンプルを分析のために採取し、残りの溶液を噴霧乾燥機の供給タンクに移送し、スチームジャケット式ケトルに移送し、撹拌しながら65℃に加熱した。次いで、オレンジフレーバー油(20%w/wのペイロード)を溶液に添加し、10分間混合して、プレエマルションを形成した。得られた粗エマルションを、第1の段階については14MPaで、第2の段階については1.4MPaで、2段階高圧Gaulin M12ホモジナイザ(Manton-Gaulin Company, Boston, MA, USA)に通過させた。最後に、均質化されたエマルションを、高圧ノズル霧化器を備えたボックスタイプの乾燥機(Ernest D. Menold Inc., Lester, PA, USA)で噴霧乾燥させた。霧化圧力を7MPaに設定し、入口空気温度および出口空気温度をそれぞれ180℃および80℃に設定した。得られた粉末をそれらの油含分について分析した。
【0118】
図3は、米麹粉、ならびに異なる比での米麹と米粉(非米麹粉)とのブレンドの流動粘度を示す。
【0119】
表3は、担体として米麹粉と米粉(非米麹粉)とのブレンドを使用した噴霧乾燥オレンジ油の油保持を示す。1:2の比では、熱処理した米ブレンドの粘度が高すぎるため、噴霧乾燥カプセル化のために処理することができない。1:1の比では、熱処理した米ブレンドをオレンジ油で噴霧乾燥させることに成功し、高い油保持(85%超)が達成された。これは、可溶性米麹粉を米粉(非米麹粉)と組み合わせて噴霧乾燥担体として使用することができることを実証している。
【0120】
【0121】
例4:米麹およびエンドウ豆タンパク質を用いた噴霧乾燥ベジタリアンプロセスフレーバーの調製
驚くべきことに、可溶性米麹粉と非動物性タンパク質とのブレンドは、担体材料として作用することができるのみならず、同時に、加熱プロセスの最中に起こるメイラード反応によってある特定のフレーバーを組成物に付与することも見出された。1:1の比での可溶性米麹粉とエンドウ豆タンパク質(PurisPea 870H, Cargill, MN, USA)とのブレンドをベジタリアンプロセスフレーバーの噴霧乾燥カプセル化について評価した。サンプルを20kgのバッチサイズで作製した。スクレープ表面撹拌機を備えた蒸気ジャケット式ケトル内で撹拌しながら、粉末化されたブレンド(米麹粉およびエンドウ豆タンパク質)を70℃の予熱した水に添加した。粘度が急激に上昇することを避けるために、バッチの固体含分は20%であり、粉末を30分の期間でゆっくりと添加して、ゼラチン化および加水分解の時間を与えた。すべての粉末を添加した後に、撹拌しながらバッチを70℃で2時間保った。混合物の粘度は、デンプンおよびタンパク質がより小さな分子に分解された結果、経時的に低減した。次いで、ベジタリアンプロセスフレーバービーフタイプの成分を撹拌しながらケトルに添加した。これらの成分は、還元糖、アミノ酸、脂質などである。米麹粉、エンドウ豆タンパク質、およびプロセスフレーバー成分を含むバッチの総固体含分は、50%であった。バッチを121℃に1時間加熱して、メイラード型反応を促進し、次いで、噴霧乾燥のために室温に冷却した。米麹粉およびエンドウ豆タンパク質から分解されたアミノ酸もメイラード反応に寄与することが予想されていたことに留意すべきである。
【0122】
ベジタリアンプロセスフレーバービーフタイプの対照サンプルも、米麹粉およびエンドウ豆タンパク質を添加することなく作製した。簡潔に言うと、還元糖、アミノ酸、脂質などを含む原材料を、スクレープ表面撹拌機を備えた蒸気ジャケット式ケトルに添加した。バッチを121℃に1時間加熱し、次いで、噴霧乾燥のために室温に冷却した。
【0123】
反応ペーストを、第1の段階については14MPaで、第2の段階については1.4MPaで、2段階高圧Gaulin M12ホモジナイザ(Manton-Gaulin Company, Boston, MA, USA)に通過させた。最後に、均質化されたエマルションを、高圧ノズル霧化器を備えたボックスタイプの乾燥機(Ernest D. Menold Inc., Lester, PA, USA)で噴霧乾燥させた。霧化圧力を7MPaに設定し、入口空気温度および出口空気温度をそれぞれ180℃および80℃に設定した。等負荷での官能評価を塩水のベースで行い、これらの結果は、米麹粉およびエンドウ豆タンパクで作製されたサンプルが対照よりも大きな脂肪旨味感およびより強い硫黄のノートを有することを示した。官能結果を以下の表4に示す。
【0124】
【国際調査報告】